Heart Ful Zombie (12)

【プロローグ】

東京は郊外にある住宅地。その中にある少し大きめの公園で一人の男が呻いていた。
男の黒目は白く変色し、皮膚の色は白みがかってひび割れている。
ゾンビ・・・。
見るからにゾンビの容貌となった男は「あー」とも「うー」ともつかない声を発して園内の中を徘徊する。
何故そうなったか、原因は不明。
もしこれがゾンビなるものであったならば、ここから爆発的にゾンビが増殖するであろう。
その“一人目”のゾンビはここで小さく産声を上げたのだ。

そして、

スカートスーツ姿の20代前半とおぼしき女が一人・・・公園内を帰り道として侵入したのだった。
その名は滝本留衣(タキモト ルイ)。
第一の犠牲者となるであろう女であった・・・。


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【ゾンビです】


ゾンビ「あー・・・」ガササ

留衣「っ!」ビクッ

ゾンビ「あー・・・」ズルズル

留衣「な、何?誰!?」

ゾンビ「あー・・・」ズルズル

留衣「あの、誰って聞いてるんですけど?」ジロ

ゾンビ「あ、すいません。ゾンビです」

留衣「ああ、そうでしたか。私は滝本留衣っていいます。こちらが名刺です」サッ

ゾンビ「ああ、こりゃご丁寧に・・・おお、大企業にお勤めなんですね!凄いな!」

留衣「いえいえそんな。まだ入ったばかりですし、たまたま入れたもののようですから」テレテレ

ゾンビ「またまた、ご謙遜をww」

留衣「・・・あの」

ゾンビ「はい?」

留衣「何の御用でしょうか?」

ゾンビ「あ、続き、やりますか?」

留衣「いえ、そうではなくて」

ゾンビ「はあ」

留衣「これは、あれですか?何かの罰ゲーム的な?」

ゾンビ「うん?仰ってる意味が分かりかねますが」

留衣「ええっと、ゾンビ役、ですよね?」

ゾンビ「あー!あははは!はいはい、違います違います。ゾンビ役ではなくてゾンビなんですよ、僕」

留衣「本物・・・ってことですか?」

ゾンビ「まあ、そうです」

留衣「凄い!居るもんなんですねえ、ゾンビとか」

ゾンビ「そんなに珍しくはないと思いますよ。映画とか沢山あるじゃないですか」

留衣「でもリアルで見るのは初めてですよ」

ゾンビ「はっはっは」

留衣「ふふふ。じゃあ、ゾンビ頑張って下さいね」カツカツカツ

ゾンビ「待って待って!」

留衣「はい?」クル

ゾンビ「いやいやいや、帰っちゃ駄目ですよ」

留衣「そう言われても・・・私これから家のことやらなきゃいけませんし」

ゾンビ「うん。いや、あのですね。ぶっちゃけ貴女の都合とかどうでもいいんですよ」

留衣「それは私にも言えますよ。ゾンビさんの都合なんて私には関係ありませんから」

ゾンビ「いや、そうだけど」

留衣「弟がまだ小学生なんです。お父さんは仕事でまだ帰ってきてないし、お母さんは去年癌で・・・」

ゾンビ「・・・亡くされたのですか?」

留衣「いや、治ってますけどね」

ゾンビ「お母さんの癌のくだり要らなくね?」

留衣「家事サボるんです、あの人だらしなくて」

ゾンビ「家事くらいやらせろよ」

留衣「人の家庭の事情に首突っ込まないで頂けますか?」

ゾンビ「君が勝手に話し始めたんだけどね?いや、それよりですね、貴女はここで僕に食べられるというシナリオなんで、そこらへん」

留衣「貴女じゃなくて滝本留衣です」

ゾンビ「あ、すいません。留衣さんですね」

留衣「何で下の名前で呼ぶんですか?馴れ馴れしいですね」

ゾンビ「あ、じゃあ滝本さん」

留衣「はい、何でしょう」

ゾンビ「あの、ですから、食べていいですか?」

留衣「ごめんなさい。ゾンビさんはタイプじゃないので」

ゾンビ「いや、タイプとかそういうことは聞いてないんだけど」

留衣「それに、いきなり食べていいかなんて・・・女性を口説くならもっと言葉を選んで下さい」

ゾンビ「勘違いしてない?食べるってそういう意味じゃないからね?」

留衣「そういう意味?」

ゾンビ「ですから、滝本さんが言う食べるってエッチのことでしょ?」

留衣「ほら、そうじゃない」

ゾンビ「違うって。僕の言う食べるはそういう比喩じゃなくて、本当の意味で食べるっていう」

留衣「ゴム無し!?」

ゾンビ「コンドームのある無しじゃねぇよ!」

留衣「初対面の男性にいきなり『生中出しさせろ』なんて初めて言われました」

ゾンビ「もしもし?言ってないよ?言ってない。誰もそんなこと言ってない」

留衣「でも・・・そんなストレートに言われたのに、私の心はドキドキしてる」

ゾンビ「もう病気だよそれ」

留衣「ゾンビの精子でも受精するのかしら?」

ゾンビ「知らねえよ。そもそも犯(ヤ)らねえよ?どちらかといったら殺(ヤ)るの方だよ?」

留衣「ああ、やっぱり犯(ヤ)られちゃうのね」ゾクゾク

ゾンビ「ドMもほどほどにしなさいよ。ヤらないっての」

留衣「どっちなの?ヤると言ったりヤらないと言ったり」ムス

ゾンビ「何怒ってんの?だからヤらないってば。[ピーーー]方のヤるだよ?」

留衣「殺されるのは初めてね」

ゾンビ「当たり前じゃね?何回も殺される人って居ないよ?一回で終りだよ?」

留衣「痛いの?」

ゾンビ「そりゃ痛いよ。生きたまま肉をかじられて内臓まで食べられるんだから」

留衣「内臓まで・・・」ゾクゾク

ゾンビ「何興奮してんの?見方によっては僕より危ないよ、滝本さん」

留衣「ううん、留衣って呼んで」

ゾンビ「馴れ馴れしいな君。どういう心境の変化?」

留衣「話は・・・分かりました」

ゾンビ「本当に分かってる?」

留衣「私は喜んでゾンビ様の餌になりましょう」

ゾンビ「様付け?知らない内に滝本さんからの格付けが上がってるんだけど」

留衣「ううん、留衣って呼んで」

ゾンビ「気持ち悪いよ。いいよ、滝本さんで。やりにくい」

留衣「上から88、62、87です」

ゾンビ「誰が3サイズ聞いたの?そんなに自分のプロポーションに自信があるの?」

留衣「気持ち悪いなんて言われたので」

ゾンビ「傷付いたんだ。ごめんね、なんか」

留衣「ううん、もっとなじって欲しいの」

ゾンビ「やっぱり極度のドMだね。 まあ何でもいいや。食べれるなら」

留衣「こ、ここで!?」

ゾンビ「どこでも一緒だよ」

留衣「こんな所でなんて・・・ケダモノみたい」ドキドキ

ゾンビ「ねえ、やっぱり分かってないでしょ?プレイの一環だと思ってない?死ぬんだよ、君」

留衣「死ぬほどの・・・」ゾクゾク

ゾンビ「死ぬほどじゃなくて、死ぬの。生命の危機って分かれよ。緊張感出せよ」

留衣「そ、そうね。ゾンビ様の仰る通りだわ、私ったら演技もしないなんて」

ゾンビ「うん、多分ね、反省してるところ違う。そこじゃない」

留衣「キャーーッ!だ、誰かぁーー!」

ゾンビ「今更!?しかも迫真の演技だな!」

留衣「いや!駄目!やめてぇえええーー!」ビリビリィッ

ゾンビ「ちょっと!?何やってんの!?何で自分の服引き裂いてんの!?」

留衣「ああ、駄目!それは、それだけはぁ!」ブチィ

ゾンビ「ブラまで剥ぎ取った!ちょっと!猥褻物チン列罪だよそれ!」

留衣「はぁはぁ・・あ、後はお願いします」

ゾンビ「やだよ!やりにくい!何でそんなノリノリなの!?」

留衣「私のおっぱいはお気に召されませんか?」プルルン

ゾンビ「違う!もう何もかもが違う!」

留衣「これでもDカップなんです」

ゾンビ「はいはい、大きいね。じゃ、僕はもう帰るよ」

留衣「ええ!?そんな、ここまでしといて」

ゾンビ「勝手に君がやったんだよ!僕はむしろ何もしてないよ!」

留衣「じゃあ今して下さい」

ゾンビ「しねえっての!空気読めよ!」

留衣「じゃあこの服どうしてくれるんですか!紳士服のアオキで三着セットで五万円で買ったのに!」

ゾンビ「安物じゃねえか!大手企業に勤めてるんだからもっと良いの着ろよ!ってかお前が勝手に破いたんだろ!」

留衣「はあはあ」

ゾンビ「はあはあ」

留衣「・・・分かりました」

ゾンビ「分かってくれた?じゃ、僕はもう帰るよ」

留衣「明日!またチャレンジしますから同じ時間、同じ場所で待ってて下さい!」ダッ

ゾンビ「ちょ、滝本さん!?チャレンジって何!?え!?待たないよ!?待たないからねーー!?」


【二度目】

ゾンビ「この際ハッキリ言いますけど」

留衣「はい」

ゾンビ「貴女を食べるつもりはもうありませんから」

留衣「ちゃんと待っててくれたのに?」

ゾンビ「確かに。ここでこの時間での待ち合わせを勝手に貴女が言って、それに律儀に従ってしまった僕ですけどね」

留衣「食べる為に」

ゾンビ「違います」

留衣「何故」

ゾンビ「・・・その前に、それは何ですか?赤い、血のような染みがYシャツに付いてますが」

留衣「ニワトリの血です」

ゾンビ「僕が聞きたいのは何故鶏の血がYシャツに付着してるかです」

留衣「匂いに釣られるかと」

ゾンビ「僕がゾンビだから?」

留衣「ゾンビだから」

ゾンビ「・・・」

留衣「・・・」

ゾンビ「いやまあ、確かにね、ゾンビだからさ、血とか良い匂いだなと思いますよ、ぶっちゃけ」

留衣「でしょ!?」

ゾンビ「待ってください」

留衣「?」

ゾンビ「目の前に人が居るんですから血とか以前に貴女を食べればいいと思うんですよ」

留衣「ええ、ですから、それに至るまでの誘い込みとしてですね、血を」

ゾンビ「ああ、釣るとか言ってたっけ」

留衣「そうそう。釣りで言う『撒き餌』的な?」

ゾンビ「僕は魚じゃありません」

留衣「例えですよ例え」

ゾンビ「失礼な人だなあ」

留衣「だって今日来ないかもしれないと思ったんだもん」

ゾンビ「まあ、確かに来るつもりは無かったんですけどね」

留衣「でしょう?どうでした?やっぱり血の匂いに反応しました?」

ゾンビ「まあ・・・」

留衣「鹿児島産の地鶏ですからね」

ゾンビ「マジで?高級じゃん」


留衣「念には念をと思いまして」

ゾンビ「何ならその肉ごと持ってきてくれれば良かったのに・・・」

留衣「うちにまだありますよ?来ますか?」

ゾンビ「行かないよ。家族と住んでるんでしょ?ゾンビなんか行ったら大変だよ。彼氏連れてくわけじゃないんだから」

留衣「っ!/////」ボッ

ゾンビ「なに頬染めてんの?」

留衣「わ、私は別に、その・・・彼氏として・・・でも////」

ゾンビ「えーと?待とうか。滝本さんさ、僕のことタイプじゃないとか言ってたよね?」

留衣「いえ、それは顔とかの話で・・・でも、性癖っていう話なら相性バッチリかなって・・・///」テレテレ

ゾンビ「ブサイクって遠回しに言ってるね。いやだからさ、そこが間違ってるんだよ、認識。食べられちゃうんだよ?相性も何もそれ一回こっきりだからね?」

留衣「ワンナイトラブ、ですか?」

ゾンビ「うん、ワンナイト。ラブは要らないけどね。ってかワンナイトの後は君に次の夜は来ないからね?」

留衣「ステキ・・・」ポー

ゾンビ「聞いてる?人の話」

留衣「あなたは人じゃなくてゾンビでしょ?」

ゾンビ「そんなつまらないところは引っ掛かるんだ?もっと大事なところに気付いてくれないかな」

留衣「ここ、ですか?///」ツン

ゾンビ「うん、触らないでくれる?会って二度目で若い女性に股間を触られた経験無いよ。生前でも」

留衣「私がハジメテ、ですね♪」

ゾンビ「なに喜んでんの?人として、女としてどうなの?ってことを言ってるんだけど」

留衣「ところでゾンビさんは昨夜から何も食べてないんですか?」

ゾンビ「食べてないよ。食べ損ねた。君が帰ってから誰一人公園に来なかったし、昼間は基本寝てるからさ」

留衣「寝るんだ」

ゾンビ「寝るよそりゃ。寝なきゃ頭働かないし」

留衣「・・・思ったんですけど」

ゾンビ「なに?」

留衣「ゾンビって頭働くんですか?映画とかじゃ基本喋りませんよね?」

ゾンビ「あー、あれはね。喋ったら怖くないじゃん?現に君も今怖がってないでしょ?僕のこと」

留衣「むしろ好き」

ゾンビ「聞かなかったことにするよ。だからね、頭は働くの。喋らないのはだから、ポーズだな」

留衣「ポーズ?」

ゾンビ「そう。『俺はゾンビだぞー!』っていうポーズなんだよ、あれは」

留衣「最初はゾンビ様も『あー』とか言ってましたよね?」

ゾンビ「そう。あのまま君がキャー!とかなってたら良かったんだけどさ、滝本さん睨んできたじゃん?・・・怖かったんだよ」

留衣「立場が逆ですね」

ゾンビ「気付いてくれた?」

留衣「はい」

ゾンビ「それは良かった」


留衣「じゃあ・・・早速・・・します?///」

ゾンビ「しないよ。最初に言ったじゃん、食べないって」

留衣「指とか、どうです?」

ゾンビ「食べないよ」

留衣「先っぽだけでも」

ゾンビ「それ拒否る女の子に言う男の台詞だよね?」

留衣「でも昨夜から何も食べてないんでしょ?」

ゾンビ「食べてないよ」

留衣「お腹空きません?」

ゾンビ「空いてるけどさ」

留衣「私なんか・・・食べ頃だと思うなあ・・・///」スル…

ゾンビ「やめて。上着脱がなくていいから」

留衣「ハッ・・!」

ゾンビ「え?なに?」

留衣「もしかして私・・・大事にされてる?」

ゾンビ「どれだけ前向きなの?凄いね。これがポリアンナ症候群(※)ってやつ?」

※ポリアンナ症候群
心的疾患のひとつ。ポリアンナイズム(Pollyannaism)とも。現実逃避の一種で、楽天主義の負の側面を表すもの。
直面した問題の中に含まれる(微細な)良い部分だけを見て自己満足し、問題の解決にいたらないこと。

留衣「心はもう、繋がっているのですね?」

ゾンビ「繋がってないよ」

留衣「体もいずれは・・・///」

ゾンビ「繋がらないよ。百歩譲って食べられるだけだよ」

留衣「でも愛し過ぎて殺して食べてしまうなんて殺人鬼も世の中には居るじゃないですか」

ゾンビ「そんな本当にごく一部のマイノリティー(少数派)を例題に出されても困るから。ってか僕らゾンビが食べる理由は愛とかじゃなくて欲求だから」

留衣「肉欲・・・」ポッ

ゾンビ「言い方悪いよ。それ性的な表現じゃね?」

留衣「だって、食べることで興奮するんでしょ?」

ゾンビ「違う!全然違う!食欲を満たすの!」

留衣「食欲が満たされればおのずとそのあとに・・・」

ゾンビ「しない!ってかどうやってすんの!?食べちゃったらもうその対象は胃の中なんだから性交渉は出来ないでしょ!」

留衣「まさか、[田島「チ○コ破裂するっ!」]?」

ゾンビ「やめろよ!そういう言葉を若い女の子が軽々しく使うんじゃないよ!」

留衣「私は週一で[田島「チ○コ破裂するっ!」]します」

ゾンビ「どんなカミングアウト!?聞いてないから!」

留衣「ゾンビ様はどれくらいの周期で?」

ゾンビ「デリカシーの欠片も無いなキミは!普通そういうこと異性に聞く!?」

留衣「ゾンビでも勃つんですかね?」

ゾンビ「知らないよ!試してないから!そういう欲求も無いから!」

留衣「試してみます?何なら私の口でも使います?」

ゾンビ「いやん♪逆に食べられちゃう♪――――ってそうじゃねえよ!」

留衣「恥ずかしい?」

ゾンビ「恥ずかしいよ!当たり前だろ!」

留衣「皮被ってるんですか?私は気にしませんよ?日本男性の包茎率は七割だそうですから」

ゾンビ「ほっといてよ!(泣)」

留衣「私が剥いてあげますよ」

ゾンビ「うるさいなあ!もうね、滝本さんはすでに僕のプライドを粉々にしてるんだよ!」

留衣「」パシャッ!

ゾンビ「ぶわっ!眩しい!何撮ってんの!?」

留衣「ゾンビ様の顔を待ち受けにしていいですか?」

ゾンビ「撮ってから聞くなよ!順番おかしいだろ!」

留衣「・・・ありがとうございます!大事にしますね」

ゾンビ「許可してないよ!?相変わらず人の話聞かないなキミは!」

留衣「また明日来ます!今日よりずっと私を食べたくさせてやるんだから!おやすみなさい!」ダッ

ゾンビ「ちょ!もう来ないから!絶対来ないからなーー!」

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