モバP「パントマイム」 (50)



「パ」から始まる加蓮まゆユッコの短編集です。
ここからでもどうぞ。

前回
モバP「パイナップル」



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―事務所―



加蓮「さ、それじゃもう一回やろっか」

裕子「ま、まだやるんですか……?」ハア… ハア…

加蓮「大丈夫、次はきっとうまくいくよ」

裕子「じゃ、じゃあもう一回やってみます。むむむ~……」グググ…







北条加蓮(16)
http://i.imgur.com/cxJvw5y.jpg

堀裕子(16)
http://i.imgur.com/PrmidF1.jpg





奈緒「おーっす、帰ったぞー」ガチャ

裕子「さいきっく~…… テレパシー!」シュバッ!! シュバッ!!

加蓮「……う~ん、ビビっと来ないな~」

裕子「も、もうダメです…… さいきっく休憩……」バタン

奈緒「……何やってんだお前ら?」

加蓮「あ、奈緒おかえり~」ヒラヒラ

裕子「ふにゃ~……」グッタリ



神谷奈緒(17)
http://i.imgur.com/weBUZrb.jpg






―――



奈緒「テレパシーの練習?」

加蓮「うん。裕子の持ち歌のタイトルにもなってるし、スプーン曲げよりも可能性が
   ありそうかなって思ってさ」

奈緒「で、裕子はお前に全身を使ってサイキックパワーを送り続けていたわけか」

加蓮「動きをつけた方が相手にも伝わりやすいんじゃないかって話になって。何回か
   それっぽい思念を受信したような気がするんだけどね」

裕子「そ、そうなんですか!? じゃあテレパシーは成功したんじゃ……」ガバッ!!




奈緒「それって裕子の表情や動きから推測しただけじゃないのか?裕子って思ってる
   こととか顔に出やすいタイプだし」バッサリ

加蓮「アタシもよくわかんなくなっちゃった。最初はテレパシーだったはずなのに、
   いつの間にかパントマイム見てるみたいな気分になったし」ポリポリ

裕子「んなっ!? 」ガーン!!



奈緒「あはは、加蓮は察しが良いからな。それにこういうのってどうしても相手の
   気持ちを読み取ろうとしちまうから、目の前でやったらダメだろ」

加蓮「それもそうだね。見てる方としては結構面白かったけど」クス

裕子「私は真剣だったんですよ!? オモチャにしないでください!! 」グワッ!!

奈緒「まあ落ち着けよ。いざとなれば『サイキックパントマイマー』として活動すれば
   いいじゃねえか。お前もパフォーマンスの幅が広がるぞ」ドウドウ

裕子「さいきっくパントマイマー!? カッコいい響きです!! 」キラキラ

加蓮(奈緒は場を丸く収めるのがうまいね)ヒソヒソ

奈緒(伊達にお前と凛とユニット組んでねえよ。これくらいお安い御用だぜ)ヒソヒソ







***



裕子「さいきっくムーンウォーク!」スイ~、スイ~

奈緒「ホントに何でも出来るんだな……」ポカーン

加蓮「スプーン曲げ以外ならね。裕子は基本的にスペック高いんだよ」クス

裕子「CDデビューのイベントでも、裕子のステージはすっげえ盛り上がったもんな。
   輝子も別のベクトルですごかったけど」

加蓮「あ、そういえば輝子はどうだったの?ちゃんと凛に会えた?」

奈緒「ああ、ばっちり凛の家まで送ってきたぜ。今頃キノコの栽培に使えそうな土を
   凛と一緒に選んでるんじゃねえかな」






裕子「どうでしたかさいきっくムーンウォーク!これで私もさいきっくダンサーに
   なれるでしょうか?」

加蓮「あんたパントマイムの練習してたんじゃないの?いつの間にダンスの練習に
   変わったのよ」ジロリ

裕子「はっ!? しまった!? つい夢中になっちゃって……」

奈緒「それ以前にサイキックトレーニングしてたんだろ?本来の目的から離れすぎだ」





裕子「そ、そうでした!私はパントマイマーでもダンサーでもありませんでした!
   エスパーユッコ復活!」

奈緒「エスパーの才能が一番無いのがつくづく残念だな……」

裕子「エスパーユッコは万能なんです!おけらの七つ芸ってヤツです!」ビシッ!!

奈緒「それ器用貧乏って意味だぞ。どっちみちダメだろ」ヤレヤレ



加蓮「……そうだ。いいこと思いついた」ピポパ

加蓮「あ、もしもしまゆ?今どこにいるの?え?もうすぐ事務所?ちょうど良かった、
   ちょっとお願いがあるんだけどさ……」

裕子「まゆちゃんに何をお願いするんでしょう?」

奈緒「さぁな。加蓮は人に甘えるのがホントに上手いよな」

加蓮「うん、何でもいいから。それじゃよろしくー♪」ピッ




奈緒「それで、まゆに何をさせるつもりだよ?」ジロリ

加蓮「大したことじゃないよ。事務所に来る前に、近くのコンビニで適当にお菓子を
   買って来てって頼んだだけ。そろそろおやつの時間だしね」

裕子「どうしてまゆちゃんにお願いしたんですか?いつもなら加蓮ちゃん自分で買いに
   行ってるじゃないですか」





加蓮「裕子のテレパシーの練習になるかなって思ってさ。今からまゆに裕子が頭の中で
   イメージしたお菓子をテレパシーで送ってみるのはどう?それでまゆが、裕子の
   イメージ通りのお菓子を買って来たらテレパシー成功ってことで」ニヤリ

奈緒「へえ、面白そうだな。やってみたらどうだ?」

裕子「なるほど!いいでしょう!エスパーユッコの真の実力をお見せします!」スクッ





加蓮「まゆはここにいないから、今なら思いっきりパントマイムしても大丈夫だよ。
   より鮮明にイメージする為にもやった方がいいって」ニヤニヤ

裕子「わかりました!さいきっく~……ミラクル テレパシー!」カッ!!

奈緒「お前がパントマイム見たいだけだろ。本人はすごくマジメにやってるんだから、
   あまりからかってやるなよ」

加蓮「いいじゃん裕子の芸の幅も広がるし。それに見てると面白いよ」クス





裕子「さいきっくひらひら~…… すいすい~…… 」パタパタ

奈緒「魚のマネ……?もしかして鯛焼きか?」

裕子「あたりです!奈緒ちゃんにテレパシーが通じました!」ニコッ

加蓮「鯛焼きってコンビニに売ってたっけ?アタシ見た事ないんだけど」

裕子「えっ!? ありませんでしたか!? 」魚ッ!!

奈緒「こりゃ失敗だな。さて、まゆは何を買って来るのやら……」







***



まゆ「買ってきましたよぉ」ドサッ

加蓮「これって……」

奈緒「どら焼きか……?」

まゆ「加蓮さんは何でもいいとおっしゃったので。お嫌いでしたかぁ?」







佐久間まゆ(16)
http://i.imgur.com/YJvoUeq.jpg




裕子「あんこが中に入った焼き菓子という点ではかなり近いんじゃないでしょうか?
   テレパシー成功率70パーセントってところですね!」ニコッ

奈緒「ポジティブだなお前は。確かにそう言われてみれば微妙なラインだけど」

まゆ「テレパシー?何の話ですかぁ?」キョトン

裕子「いいからいいからまゆちゃんは座って下さい♪ お茶淹れて来ますね♪」ルンルン♪





―――



裕子「サイキックミラクル テレパシー♪」カチャカチャ (BGM:『ミラクルテレパシー』)



まゆ「テレパシーの練習ですか。まゆに変な電波送らないでくれます?」ジト

加蓮「ごめんごめん、でも言っちゃったら意味ないしさ。それにまゆも突然頭の中で
   裕子の声が聴こえたり、鯛焼きの絵が浮かんだりしなかったんでしょ?」

まゆ「もしそんなことになったら、事務所に行く前にまず病院に寄りますねえ」






奈緒「じゃあやっぱり失敗だったのか。一所懸命テレパシーを送ってる裕子見てたら
   もしかしたら成功するんじゃないかって思っちまったけど、やっぱりそんなに
   うまくいかねえよな」ハハハ

加蓮「成功してもそれはそれでリアクションに困るけどね。でも裕子もご機嫌だし、
   これでよかったんじゃない?まゆもありがと」

まゆ「別に構いませんけど。ですが今度からはまゆにも一言くらい言ってくださいね。
   裕子さんの超能力には懐疑的ですが、何があるかわかりませんので」

奈緒「確かに裕子の回りでは時々不可解な現象が起きるな……」

加蓮「たまたまでしょ。裕子はちょっと変わってるけど普通のコだよ」






P「ただいま戻りましたー」ガチャ



まゆ「あ、Pさぁん♪ お帰りなさぁい♪」パタパタ

P「お、みんなでティータイムか。ちょっと帰って来るのが遅かったな」

加蓮「ん?何持ってるのPさん?もしかしてお菓子とか?」ジロリ

P「ああ。美優さんのドラマの撮影現場に寄った時にもらったんだ。監督さんからの
  差し入れだけど、食べきれないからどうぞって箱に詰めてもらったよ」ゴソゴソ







奈緒「そりゃもったいないことをしちまったな。まあ冷蔵庫に入れといたらレッスンが
   終わった誰かが食べるだろ。ちなみに何をもらってきたんだ?」



P「ん?鯛焼きだが」パカッ



まゆ「」

加蓮「」

奈緒「」




P「ど、どうしたんだみんな急に黙り込んで。鯛焼きがどうかしたのか……?」アセアセ

まゆ「『まゆ』じゃなくて『みゆ』さん……」

加蓮「た、たまたまだよ。美優さん時代劇に出てるし、そんな現場だったら差し入れが
   鯛焼きでも別におかしくないでしょ……」

奈緒「でもこのタイミングでピンポイントに鯛焼きをもらって来るか……?多少の
   誤差はあったけど、やっぱり裕子の超能力はマジなんじゃ……」





裕子「お茶淹れましたよ~。あれ?プロデューサー帰って来てたんですか?」スタスタ

P「おう、ただいま裕子。よかったら鯛」奈緒「わー!わー!」

まゆ「ゆ、裕子さん、申し訳ありませんけどPさんの分もお茶を淹れてくれませんか?
   まゆ達は裕子さんが戻るまで待ってますので」アタフタ

裕子「え?でもプロデューサーのお茶はいつもまゆちゃんが淹れてるのに……」

加蓮「ついでだよついで!まゆよりも給湯室の近くにいる裕子が淹れた方が早いでしょ!
   サイキックパワーでPさんのお茶も美味しく淹れてあげてよ!」アタフタ

裕子「そこまで言うならそうしますけど……」クルッ ←Uターン





奈緒「今のうちに鯛焼きを冷蔵庫に隠して……」ゴソゴソ

まゆ「Pさん、鯛焼きをもらったことは裕子さんに内緒にしてくださいね?」ギロリ

P「ど、どうしてだ?何か困る事でもあるのか?」ビクッ

加蓮「アタシからもお願いするよ。何となくだけど、もし裕子本人が知っちゃったら
   とんでもないことになりそうだから」

奈緒「少なくともあたし達の手には負えねえな……」

P「話が見えないんだが…… 一体お前達は何と戦ってるんだ……?」







***



裕子「ん~!おいしい!このどら焼きすっごくおいしいですよまゆちゃん!」パクパク

まゆ「うふふ、そこまで喜んでいただけるとまゆも買ってきた甲斐がありましたよ。
   たまには和菓子と緑茶もいいですねえ」

奈緒「ん?誰とメールしてるんだ加蓮?」

加蓮「ちょっとね……」ポチポチ






裕子「よし!栄養補給もしたし、さいきっくミラクルテレパシーの練習に戻ります!
   次こそは成功しそうな気がしてきました!」スクッ

まゆ「も、もう結構ですよ裕子さん。食後すぐに動くと体に悪いですし……」ビクビク

奈緒「そ、そうだぞ!あまり乱発しすぎるとサイキックなくなっちまうぞ……」アセアセ

裕子「大丈夫です!日頃からトレーニングは欠かしてませんから!」ニコッ

奈緒(ヤバい、完全にやる気になってやがる……)ダラダラ

まゆ(まゆ達に害があるわけではありませんが、止めた方がいい気がします……)ダラダラ






加蓮「ちょっと待って裕子。また私からテレパシーに注文つけてもいいかな」



奈緒(え?)

まゆ(加蓮さん?)

裕子「いいですよ!今のエスパーユッコに不可能はありません!」ニコッ




加蓮「じゃあ凛にテレパシーで事務所に来てって伝えてくれる?凛の家は事務所から
   近いし、テレパシーが伝わったら10 分くらいで来ると思うんだ」

裕子「わかりました!凛ちゃんですね!」

まゆ(か、加蓮さん、大丈夫なんですか……?)ヒソヒソ

加蓮(大丈夫、凛は絶対に来ないから。さっき凛にメールしたんだけど、お父さんと
   お母さんが商店街の会長さんのところに行ってるらしいから、今日は夕方まで
   店番なんだって。それに万が一どっちかが帰って来ても、輝子の土選びが難航
   してるからしばらく動けそうにないって)ヒソヒソ

奈緒(こうなることを予測していたわけか。抜かりねえなお前は……)ヒソヒソ

加蓮(アタシも別に超能力を信じてるわけじゃないけど、今の裕子を勢いづかせちゃう
   のも何となく怖いからさ。だから悪いけど失敗してもらうよ)ギラリ





裕子「ええと、凛ちゃんをイメージするんだったらシュシュを取って……」パサッ

まゆ「?」



裕子「ふーん、あんたが私のプロデューサー?(やや低音)」ファサ



まゆ「ぶふっ!? げほっ、げほっ……」

奈緒「ああ、そういえばまゆは裕子がテレパシーを送る時にパントマイムするって
   知らなかったな」サスサス

まゆ「ふ、不意打ちすぎますよぅ…… しかも微妙に似てるし……」ケホッ、ケホッ

加蓮「もはやパントマイムじゃなくてモノマネになってるけどね。どうして凛のマネを
   する人ってみんな最初にそのセリフを言うんだろ?」






裕子「じゃあ…残していこうか、私たちの足跡…!(やや低音)」キリッ

まゆ「ふふふっ……、くくくくっ……!」プルプル…

奈緒「こんなワケわかんねえパントマイムとテレパシーで来るはずねえよな。ていうか
   もし凛に見られたら間違いなく怒られるぞ」ハア…

加蓮「それはそれで面白そうだけど。イタリアツアー懐かしいね」クスクス

裕子「さいきっくテレパシー!凛ちゃんにとどけー!」シュバッ!! シュバッ!!







~そして10分後~



裕子「むむっ!? 手応えを感じました!テレパシーの送信に成功したみたいです!」ピキーン



加蓮「気のせいじゃない?それじゃそろそろお開きにして……」








 スタスタスタ…



奈緒「……おい、誰かこっちに来てないか?」ビクッ

まゆ「か、仮に誰か来たとしても、ここはアイドルが集まる事務所ですから不思議では
   ありませんよ……」ドキドキ

加蓮「だ、大丈夫だよ、凛は絶対に来ないから……」ビクビク

裕子「こい…… こい…… 凛ちゃんこい……」ブツブツ








 ガチャ



晶葉「失礼する。助手はいるか?」ヒョコ



まゆ「はぁ~~~~~……」ヘナヘナヘナ…

加蓮「よかったぁ~…… あきえもんかぁ~……」ペタン

晶葉「な、なんだその反応は……?」







池袋晶葉(14)
http://i.imgur.com/dOa8ctH.jpg





裕子「あれ~?おかしいなあ、どら焼きのイメージが残ってたのかなあ?」ハテナ?

晶葉「私は青いタヌキではないぞ。甘いものは脳の栄養になるから嫌いではないが」

P「ん?晶葉?仕事でもないのに事務所に来るなんて珍しいな。何か用か?」ヒョコ

晶葉「いや、特に無いのだが何となく呼ばれた気がしてな。調子が悪い電化製品とか
   あれば修理してやるぞ」

P「それは助かる。最近プリンターの紙詰まりが多いんだが、少し見てくれないか?」

晶葉「あのボロプリンターか。いい加減に新しいのに買い換えたらどうだ?」スタスタ



裕子「まだまだトレーニングが足りませんね。パントマイムやるのも結構疲れますし、
   次はもっとスマートにテレパシーが送れるようにします」フウ

まゆ「それがいいと思いますよお。さっきの動きはどう見てもテレパシーを送っている
   ようには見えませんでしたし。お疲れ様でした」クス

奈緒「」

加蓮「ん?どしたの奈緒?さっきから静かだけど」





奈緒「加蓮…… お前気付いてないのか……?」

加蓮「え?何のハナシ?」キョトン

奈緒「裕子は凛を呼んだんだろ?それで晶葉が来たんだよな?」

加蓮「そうだけど、それがどうしかしたの?」



奈緒「『渋谷』凛を呼んで『池袋』晶葉が来た。これって偶然か……?」



加蓮「あ」






奈緒「……」

加蓮「……」

奈緒「ぐ、偶然だよな!超能力なんてあるはずねえよな!」ワハハ!!

加蓮「そうだよたまたまだよ!それにそれだったら晶葉じゃなくて有香の方が近いし、
   裕子にテレパシーなんて不可能だって!」アハハ!!



おわり






訂正>>11

裕子「CDデビューのイベントでも、裕子のステージはすっげえ盛り上がったもんな。
   輝子も別のベクトルですごかったけど」



奈緒「CDデビューのイベントでも、裕子のステージはすっげえ盛り上がったもんな。
   輝子も別のベクトルですごかったけど」





 ここまで。作者は都民ではないので東京出身で東京の地名性の子は凛と晶葉と有香
しか知りませんが、他にもいますか?奈緒も神谷町があるけど千葉出身だしなあ。
 パントマイム=テレパシーがやや力技でしたが、思念を届けようとバタバタしてる
ユッコをイメージするとそれっぽくなるかと。身振りや手振りは言葉が通じなくても
ある程度伝わりますから便利ですね。では

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