「春雨」 (15)


「雨ですね」

事務所の窓から外を見つめるあずささんがぽつりと呟いた。

率直な感想を述べるならば私は雨は嫌いだ。
折角セットした髪が濡れたり崩れたりするし、どんより暗い空模様にはこっちの気分まで薄暗くなってしまうから。


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やんわりとそう告げると

「私は、雨もいいものだって思いますよ」

窓に向いていた体がこちらに向き直り、柔らかい微笑みを湛えながらそう言った。

「雨の日は確かに色々大変です。濡れてしまったり、電車だって混みます」

まさしく朝に体験して来た出来事である。


「けれど、それだけじゃないと思うんです」

楽しそうにあずささんは続ける。

「例えば、公園や道端のお花は雨が降ったら嬉しそうに、元気に花びらを咲かせます」

そう話すあずささん自身もなんだか嬉しそうだ。

「私が良く行くお店なんかは雨の日だけ、ちょっとお酒が安く飲めたり」

言いながらちょっぴりはにかんだ微笑みを浮かべるあずささんはとても可愛らしい。

「それに……」

そこで言葉を止めたあずささんは、再び窓の方へ視線を移し空を見上げた。
ねずみ色の雲に覆われた空模様とは対照的に、その表情はどこまでも明るい。


「それに、雨は必ず止みます」

思わずハッとするような凛とした声。
空を見つめるその瞳には、何か自信のような物が見て取れる。
優しさの中にある彼女の芯の強さが、その声と言葉から感じられた。
いつの間にか微笑みにもそれが滲み出ているように思える。


「確かに朝から雨だと気分は沈んでしまいますよね。街の人の顔も暗いですし傘を持って歩くのは煩わしいかもしれません。だけど」

私は何も言わず、彼女の後ろ姿を見つめている。
それに気付いたのか振り返り、私の目を見据えてこう続けた。

「雨が止んで、晴れたら、きっと綺麗な虹が見られるって。そう思ったら楽しみになってきませんか?」

その先の事を思って雨を愉しむ。
それが出来るのはきっと、あずささん位なんじゃないか。
けれど、とてもあずささんらしいなとも思った。


ふと、私の頬が綻んでいる事に気付く。
雨で憂鬱な気分も、あずささんの微笑みで消えてしまったようだ。
優しくて、温かい。まるで太陽のようなその微笑みに、知らず知らず惹かれていたのだろうか。

その笑顔が見られるのなら、雨も意外と悪くないのかもしれない。

文学的だなぁ・・

あと、スレタイでアイマスSSってわかるようにしたほうがいいと思う。


「帰りに、さっき言ったお店に飲みに行こうと思うんですけど。良かったら一緒にどうですか?」

さっきまでの笑顔が急に不安げな表情に変わってしまった。
断る理由もないので二つ返事で承諾すると、途端に満面の笑みを浮かべ嬉しそうにしている。

終業までの数時間。
私は始めて、雨が止まない事を祈った。

おわり

終わりです。

凄く短いですね。
春というには少し遅い気もしますが、梅雨を先取りしたと思えばまぁセーフでしょうか。

ほんの少しでも楽しんでいただければ幸いです。
それではお目汚し失礼しました。

>>7
ご指摘ありがとうございます。
語り部が誰なのかをぼかしたかったのでスレタイにキャラクター名を入れませんでした。

ですが確かに何のSSなのかが分からないのは良くないですね……。
今後の参考にさせていただきます。
ありがとうございました。

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