人魚「人魚姫ねぇ…」(17)

人魚「あーやだやだ、どうしてこう人間ってのは辛気臭い話が好きなんだよ」

人魚姉「えー? 私は好きだけどなぁ、悲恋の物語」

人魚「俺の性には合わねーよ、ウダウダしてて…」

人魚姉「まぁ、貴女には合わないかもねぇ、ていうかまた男みたいな喋り方して…」

人魚「別にいいじゃねーか、最近は他人が居たら"極力"気を付けるようにしてるし」

人魚姉「極力ねぇ…まぁ良いけど…あら?」 \タイヘンダー/

人魚友「姉さん人魚ちゃん!!大変大変っ!!」

人魚「友じゃねぇか、そんなに慌ててどうしたんだよ?」

人魚友「あっちから人間の軍艦と一緒に魔物が来るのっ!!早く逃げないとっ!!」

人魚姉「一緒にって…軍艦と魔物は戦ってるの?」

人魚友「うんっ、魔物すごい数だよ!!軍艦は1隻で…砲撃で何とか応戦してるけど…」

人魚「ギリギリか…で、人間の艦が沈んだら、次はこっちに来るよな…だったら」

人魚姉「…人魚ちゃん?何をする気なの?」

人魚「ん?少しでも味方が多いうちに魔物を狩ってくるんだよ」

人魚姉「それは無理よ!!」

人魚友「無理だよー!!無理だよー!!」

人魚「まさかのNG連打」

人魚姉「えっ?」

人魚「こっちの話だ、気にするな」

人魚姉「そ、そう?あんまりおメタは駄目よ?ってそうじゃなくて!!危険過ぎるわ!!」

人魚「大丈夫だって、俺強いし、物語と違って人間に姿を見せるなって掟も無いだろ?」

人魚友「確かに人魚ちゃんは強いけど…あの数は無理だって!!」

人魚「大丈夫だよ、ヤバくなったら逃げるから…んじゃ、行ってくるわ!!」ギュンッ

人魚姉「ちょっと…!! はやっ!? もうあんな遠くに…」

人魚友「はっやーい…人魚ちゃんホント人魚辞めてるなぁ…」

人魚姉「ホント、人魚は人魚でも人型魚雷よねー…あ、回天的な意味じゃないわよ?」

人魚友「姉さんも割と発言で世界観ぶち壊してるよね…一応魔法式の魚雷はあるけど…」


………

―――海上、とある国の軍艦



王子「魔族め、クラーケンを母艦代わりに使うとは…考えたな…」

艦長「…魔法・射撃型だけではなく自爆型の魔物まで…奴ら本気ですな」

王子「こちらの状況は…最初の攻撃で魚雷発射管が大破、主砲も1門潰されているのだな?」

艦長「はい、潰された砲の代わりに魔法部隊が海上に展開して応戦中ですが…」

王子「兵もそろそろ限界だろう…此処に居ても仕方ない、私も出るぞ!!」

艦長「いけません王子!!敵の狙いは貴方の首なのですぞ!?」

王子「しかし!!このまま黙って指をくわえている訳には…!! 何だっ!?」\ズドンッ/

艦長「状況を報告せよ!!」

オペ子「敵、有翼型リザードマンの攻撃です!! 副砲全門、完全に沈黙しました!!」

王子「有翼型リザードマン!?まさか四天王の一角か!?」

艦長「なんという事だ…四天王が直接仕掛けてくるとは…」

王子「援軍は来られそうか…?」

艦長「…厳しいでしょうな…空間魔法通信により援軍要請を打電しましたが…」

王子「…もはやこれまでか……今度は何だっ!?」\ズドドドッ/

艦長「状況を報告せよ!!」

オペ子「!? て、敵、海中の魔物が空を飛んで…いえ!!海中から次々と打ち上げられています!?」

艦長「どういう事だ!? 援軍にしては速すぎる…一体何が…」

王子「はっ…あれは…!?」


………

―――海上、軍艦周辺



竜人「俺を楽しませる奴は居ないのか!?」

魔術師「…くそっ、これでも食らえっ!! 大火球っ!!」ドンッ

竜人「…っ!! ふん、少しはやるようだな…だが所詮その程度か!!」ズバンッ

魔術師「ぐはっ…無念………」ボチャンッ…

竜人「フハハハハッ!! 大人しく明け渡せ!!雑魚共っ!! …何事だっ!?」\ズドドドッ/

部下A「判りません!!突然海中から我々の味方のみが吹き飛ばされています!!」

部下B「敵の攻撃でクラーケンの足にダメージを確認!!」

竜人「母艦が攻撃を受けただと!? …ぐぁっ!?」

部下A「リザードマン様!? 海中から水柱が…ギャッ!?」

部下B「部下A!? グギャッ!?」

竜人「何がどうなって…ぐぁぁっ!?」ズドンッ

人魚「敵エースを撃破!! なーんてなっ!!」

竜人「く、空中に人魚…!? 先ほどからの騒ぎの原因は貴様か!?」

人魚「…1発で沈めるつもりだったのに、浅かったか…おらぁっ!!」ヒュンッ

竜人「尾鰭で空中を蹴り泳ぐ人魚だと……馬鹿な、ありえん…!?」ドボーンッ!!

人魚「…不意打ちが成功して良かったぜ、ガチでやり合ったらヤバかったな、今の…」

人魚「っと、正体バレちまったし…助走距離も無いから全力潜行の不意打ちは使えねぇか…」

人魚「軍艦、ヤバそうだな……しゃぁねぇ、助けるか…!!」


………

―――再び、軍艦艦内



艦長「リザードマンが…一瞬でたたき落とされた…!!」

王子「空を舞う人魚…彼女は、味方なのか…?」

艦長「敵ではなさそうですな…今の衝撃は!?」\ズドンッ/

オペ子「海中からの攻撃です!!左舷に敵の攻撃が集中しています!!」

王子「魔法部隊は!?」

オペ子「リザードマンの攻撃でほぼ壊滅状態です…!!残存兵力3割です…」

艦長「くっ、このままでは…!!」

オペ子「艦の損傷拡大!!左舷後方部からの浸水を確認!!」

艦長「隔壁降ろせ!!これ以上浸水をさせるな!!」

王子「…このままでは艦が沈むのも時間の問題か…艦長、悪いが行かせて貰うぞ…!」ダッ!

艦長「王子!? くっ…やむおえんか…!?」




………

―――軍艦、甲板


王子「…投影魔法で見てはいたが、酷いな…」

兵士A「負傷者の手当てを急げ!! 動ける者は…王子!?此処は危険です!!艦内にお戻りを…!!」

王子「沈みかけた艦に安全な場所などあるものか、私も戦うぞ!」

兵士A「し、しかし…!」

王子「案ずるな、そう簡単に討ち取られたりはしない…この宝剣に誓おう…!!」チャキッ

兵士A「…王子…どうか、ご武運を…!」

王子「…あぁ!! っ!?何だっ!?」\ウワァァァ/

兵士B「ほ、報告します!! 後方より敵母艦が急接近!! 敵が艦にあがってきています!!」

王子「クラーケンが急接近だと!? …そうか、リザードマンの攻撃で砲を失ったのだったな…」

兵士A「お、王子…」

王子「怯むな!! 戦える兵、魔法部隊は我に続け!! 敵を艦内には絶対に入れるな!!」

兵士たち「ハッ!!」



………

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