モバP「夢見る少女じゃいられない」 (68)

モバマスSSです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1398771485

こんばんは。
長富蓮実SSです。

CDショップ

菜々「き、緊張しますね…」

P「珍しいですね」

菜々「ナナだって緊張しますよ。初めてのサイン会なんですから」

P「CD発売おめでとうございます」

菜々「全てPさんのおかげですって」

P「そろそろ始まるな」

菜々「お客さんが二十…いや、十人くらい来てくれるといいなって」

P「もっと一杯来ますって」

菜々「き、来ますかね…」

菜々「ありがとうございまーす」

菜々「あ、それ可愛いですね」

P(大盛況だな…結構な数来てくれてる)

菜々「あ、いいですね~」

菜々「え?ウーサミン♪」

P(菜々さんも楽しそうだし良かった)

P「そろそろか…」

菜々「え、もう終わりですか?」

P「人の流れも途切れましたし、配った整理券分はほぼ――」

「あ、あの、まだ平気ですか?」

菜々「あ、はい。どうぞー」

「わ、私、安部さんのファンでその…、サインお願いします」

菜々「ありがとうございまーす。えっとなんて書けばいいですか?」

「は、はい。それじゃ、長富蓮実さんへとお願いします」

菜々「どういう字ですか?長さの長に、富山の富ですか?」

蓮実「はい。名前の方は蓮の花の蓮に、果実の実です」

菜々「分かりました。…はいっ出来ました」

蓮実「あ、ありがとうございます!大切にしますから」

菜々「はいっ!そうしてくれると菜々も嬉しいです」

古典シリーズ?

P「終わりかな」

菜々「そうですねー」

P「最後に来てくれた人、熱心なファンでしたね」

菜々「皆さん熱心でしたよー」

P「まぁ、確かにそうですね」

菜々「こんなナナを好きになってくれる人がいるなんて思いませんでした」

P「日頃の努力のおかげですね」

菜々「ナナ一人じゃ何も出来ないのは今も昔も変わりませんけどね」

P「そんなことはないと思いますけど」

菜々「そんなことありますって。さっ、それじゃ帰りますか」

P「そうですね」

菜々「ナナは着替えてきますね」

P「行ってらっしゃい」

>>7
はい。一応その括りです。

書いてませんでしたね。すみません。

蓮実「あ、あの…」

P「はい?あ、先程の…長富さんでしたっけ?」

蓮実「はい、そうです」

P「どうかされましたか?忘れ物ですか?」

蓮実「いえ、そういう訳ではなくて…質問したいことがありまして」

P「…今、安部は席を外しているんですけど」

蓮実「あ、いえ、プロデューサーさんの方になんです」

P「なんですか?」

蓮実「どうやったら、安部さんみたいなアイドルになれるんでしょうか…?」

P「本人に聞いてみたらどうです?」

蓮実「え、いや、そんな…」

菜々「お待たせしま―…って何してるんですか?」

P「お、丁度良い所に」

菜々「丁度いい…?何かあったんですか?」

蓮実「あ、あの…どうやったら、安部さんみたいなアイドルになれますか?」

菜々「え…?えーっと、ですね」チラッ

菜々(どう答えればいいんだろう…?)

P「思ったことを言えばいいと思いますよ」

菜々「え、えっと、そうですね…ナナ、私は自分を出せるように努力していますね」

蓮実「自分を…」

菜々「こういう業界ですし、中々自分の意見を通しづらい所もあります。だけど、その中でも自分らしさを大事にしてます。そうじゃないと、私を使ってくれる意味がなくなっちゃいますしね」

蓮実「なるほど…勉強になります」

菜々「アイドルになりたいんですか?」

蓮実「へっ?いや、そんななりたいなんて、大それたことは…」

菜々「いいじゃないですか、思うだけなら誰にも迷惑掛けないんですし」

蓮実「た、確かに…。それじゃ、えっと…はい。なりたいです」

菜々「その気持ちを大事にしてくださいね。それじゃ、私はウサミン星に帰りますので」

蓮実「あ、わざわざ相談に乗って下さってありがとうございます!」

車内

P「中々いいこと言いましたね」

菜々「そ、そうですかね」

P「ウサミン星がどうとか言い出したら止めようと思いましたけど」

菜々「TPOは弁えているつもりですよっ」

菜々「それに、何だか他人じゃない感じがしたんですよ」

P「そうなんですか」

菜々「はい。今はこうやってお仕事させて頂いてますけど、Pさんと会わなかったら、まだ私はあっち側にいましたから」

P「俺じゃなくてもいつか見つけ――」

菜々「残念ながら、ないですよ。だって、ナナは何回もオーディション受けたんですよ?」

菜々「眩しい世界を見ることを諦めようとした瞬間に、声を掛けられたんですから」

P「そうですか…」

菜々「はい。でも、きっと未練たらしくてオーディション出て落ちてを繰り返してたでしょうね…」

菜々「だから感謝してますよ」

P「他の事務所が見る目なくて助かりましたよ」

菜々「そう言ってくれると、ナナも少し救われます…」

事務所

周子「うーん…加蓮の方」

加蓮「よっし!」

凛「こんなの無効でしょ」

周子「まぁまぁ、そんな抗議することのほどじゃ」

P「ただいま…ってどうかしたのか?」

周子「ん?おかえり。大したことじゃないよ」

加蓮「あ、お帰り。ちょっとコレ見てよ」

P「ん?ビデオ?」

凛「さっきのレッスン終わった後に撮ったんだけど…」

加蓮「どっちのダンスがいいと思う?」

P「北条…お前大丈夫なのか?」

加蓮「ん?平気平気。一曲くらいなら。それに最近ね、ものすごい調子がいいんだ。体中から力が出てきてるみたい」

加蓮「あ、加蓮でいいよ。なんか変な感じするし」

P「…加蓮。無理はするなよ」

加蓮「分かってるって。それで、どっちがいいと思う?」

P「ん?そうだなぁ…」

P「加蓮、お前どれだけこの歌踊ったことあるんだ?」

加蓮「ん?踊ったのは数回かな。だけど、ずっと踊るイメージはしてたよ。毎晩ね」

凛「私は久しぶりに踊ったんだけど…」

P「ここだけ見ると加蓮だな。凛はちょっとあやふやな所がある」

加蓮「よっし!」

凛「まぁ、確かに久しぶりだったし、手の振りがあやふやになってた所はあるかな」

凛「ちなみに、これ踊った後、加蓮は倒れこんだよ」

加蓮「そ、それはいいでしょ」

P「頼むから無理するなよ」

加蓮「自分の体のことは自分が一番分かってるから。安心して」

P「ならいいが…」

事務所

まゆ「だからこの場合は……」

志希「ふむふむ」

幸子「なるほど…」

P「三人で何してるんだ?」

まゆ「あ、どうも。えっとですね」

志希「まゆちゃんから話すコツを聞いてたんだー」

まゆ「他の人の受け売りですけどね」

P「モデルなのにそんなこともやってたのか」

まゆ「ちょっとだけですけどね。褒めてくれてもいいですよぉ?」チラッ

P「凄いなまゆは」

まゆ「はいっ」

志希「むー、アタシが教えられるのは化学的なこと位だしなぁ…」

幸子「ボクは特に…あ、でもスカイダイビングのやり方だったら」

P「それを教えてどうするんだ…もう一度飛ぶか?」

幸子「い、いえっ!遠慮しておきます」

P「そうか。まぁ、俺も飛びたくはないな」

まゆ「Pさんも飛んだんですかぁ?」

P「まぁ、一人で飛ばせるのは可哀想だったし…」

幸子「あんなにためらいなく行くとは思いませんでしたよ…」

P「ダラダラしてたら永遠に飛べないと思ったからな」

まゆ「あ、Pさん、質問いいですか?」

P「ん?どうした?」

まゆ「小梅さんが最近、あの子が…とか言ってるんですけど、誰のことなんですか?」

幸子「……」ヒクッ

P「あの子は…あの子だな」

P(なんて言っていいか分からない)

まゆ「あの子…って誰のことなんですか?」

P「本人に聞いてみたらどうだ?」

志希「聞いてみたら、キミと同じであの子はあの子と帰ってきたにゃー」

幸子「でしょうね…」

まゆ「まさか…この事務所にいる幽霊…なんてことはないですよね」

P「ははは」

幸子「ははは」

志希「なんか二人とも笑いが渇いてるにゃ…」

ギュ

まゆ「まゆのこと守って下さい…ね?」

幸子「なっ…!」

P「心配しなくても平気だと思うぞ」

まゆ「そうなんですか?」

P「あぁ、いい子だから」

志希(それは平気なのかにゃ?)

P「さてと…」

グイッ

P「へ…?」

楓「こんばんは」

P「あ、どうも」

楓「飲みに行きますよ」

P「あ、はい…」

楓「私の部屋ですけど」

P「はい」

楓「大丈夫です。菜々ちゃんもいます」

P「何が大丈夫なんだろうか」

楓「さぁ、レッツゴー」

ちひろ(電光石火で帰っていきましたね…)

楓の部屋

楓「かんぱーい♪」

菜々「かんぱーい」

P「乾杯」

P「一体、どうしたんですか」

楓「いえ、最近飲んでないなぁと思いまして」

菜々「なんか懐かしいですね」

P「そうですね」

楓「そう言えば、サイン会成功おめでとうございます」

菜々「あ、ありがとうございまーす」

菜々「あ、そう言えば、今日ナナに似た子がいたんですよー」

楓「ウサミン星のお友達ですか?」

菜々「そんなんじゃないんですけど。なんて言うか、昔のナナに似てる人に会ったんですよ」

楓「そうなんですね」

菜々「そう言えば、聞いた話なんですけどPさんっ!」

P「は、はい」

菜々「新しく入ってきた加蓮ちゃんもそんな話らしいじゃないですか」

P「そんな話?」

菜々「ナナと似てるって…」

P「あぁ、その話ですか」

楓「二人で納得しないで欲しいんですけどー」ギュー

P「痛い、痛いから止めて下さい。話しますんで」

楓「最初からそうして下さい。仲間外れは嫌です」プー

菜々(可愛い…)

P「――まぁ、こんな感じですかね」

楓「なるほど…サンタへの願いの中にはそんなものがあったんですね」

菜々「気持ち、凄い分かります…ナナもお願いしてましたもん」

菜々「あ、勿論織姫と彦星にもお願いしてましたけどね」

P「そうでしたね」

菜々「はい。そうでした。きっと加蓮ちゃんも今が楽しくてしょうがないでしょうね」

P「そんなことを言ってましたね」

菜々「ですよね。って何だか野村再生工場みたいですね…」

楓「どこかの会社の名前ですか?」

P「そんな言葉よく知ってるな」

菜々「野球は好きですよ。地元にもチームがありますから。あ…」

楓「どういうことですか?」

P「えっとですね。プロ野球のある監督の手法について表した言葉なんですけど…」

楓「はい」

P「なんと言いますか…その監督は一度ピークが過ぎてダメになってしまったピッチャーを復活させる為に、寿命を削る変化球を覚えさせていたんですよ」

楓「寿命を縮めるんですか?何だか使い物にならなくなってしまった人をイジメているように見えますけど…」

P「えぇ、そう言う人もいました。ただ、潰しているだけだと」

菜々「そうでしたね」

P「しかし、ある名選手がその意見を真っ向から批判したんです」

楓「そうなんですか?」

P「はい。ピッチャーというのは、自分のプライドや球を或いは自分自身を再び相手にぶつけられるならどんな代償だって惜しくない、それこそ命だって惜しくないそうです」

楓「自分が自分であるというアイデンティティの為ならどうなってもいいと言うことですか?」

P「解釈は間違ってないと思います」

楓「それと…菜々ちゃんとどんな関係が…?」

菜々「何度もダメだった私をここまで立派にしてくれましたから」

楓「あぁ、そういう…感じですか。別に何か武器をゲットした訳じゃなくて」

P「ウサミン星より強烈なモノを教える自信はありません…」

菜々「ですけど、一瞬だけでも輝くステージの上で安部菜々はアイドルのナナでいれたら…ナナは、どんな代償も払うつもりですよ」

P「大袈裟な…」

菜々「む…大袈裟じゃないですよーだ」グイ

P「あ、それ、日本酒…ま、いっか」

楓「私達も飲みましょうか」

P「そうですね…」

菜々「ん…」スー

楓「私も寝ますね」

P「お疲れ様です」

楓「……」ジー

P「どうかしましたか?」

楓「…一緒に寝ますか?」

P「遠慮しておきます」

楓「釣れないですね」

P「流石にそれはマズイですから」

楓「今ならお月様しかみてませんけど?」フフ

P「いや、しかし…」

楓「ふふ。冗談ですよ。おやすみなさい。あ、泊まっても構いませんよ。夜遅いですし」

P「それではお言葉に甘えて…」

楓「流石にお酒飲むと少しだけ甘えてくれますね」

P「…少しだけですけどね」

楓「それで、十分です。おやすみなさい」

P「おやすみ」

事務所

P「二日酔いかな…」ズキズキ

ちひろ「大丈夫ですか?」

P「えぇ、問題はなさそうです」

ちひろ「ほどほどにしてくださいよ」

志希「キミ、キミー、二日酔いなんて情けない。これあげるよ」

P「なんだこれ」

志希「体内のアルコールの分解を速める薬かな」

P「なるほど。ありがとな」

志希「さぁ、グイっと」

P「…なんだか、不穏な感じを受けるんだが」

志希「そんなことはないって。キミなら大丈夫」

P「まぁ、いいけど」グイッ

P「意外に飲みやすいな」

志希「まぁ、レモネードで割ったからね」

P「意外と効きそうな感じだ。ありがとな」

志希「いえいえー。何か変化あったら教えて」

P「……ん?」

志希「ん?」

P「ちょっと待った。これは二日酔いを止める薬じゃないのか?」

志希「そうだよ。代わりにアタシに酔わせる薬」

P「……」

志希「この感じだとあんまり効いてないのかなぁ…。あー、プライド傷つくなぁ」

P「人を実験台にするなよ」

志希「実際、どう?」

P「ちょっと、心臓の鼓動が早い気がする」

志希「ドキドキ、キュンキュンしてる?」

P「それはないな」

志希「ざんねーん。あ、多分、数分で酔いもソレも治まるから。それじゃ、レッスン行ってきまーす」

ちひろ「お疲れ様です…」

P「薬が効かない自分の体が怖くなってきました」

事務所

ちひろ「……あれ?」

P「どうかしましたか?」

ちひろ「いえ、プロデューサーさん宛に封筒が」

P「俺宛に…?」

ちひろ「カミソリとかですかね?」

P「そんなことはないと思いますけど」

ちひろ「そのまま捨てますか?」

P「待って下さい。とりあえず、差出人を…」

P(長富蓮実…あぁ、あの子か)

P「一応知らない名前じゃないです」

ちひろ「知り合いの方ですか?」

P「まぁ、一応は。ってレベルですけどね」

ちひろ「ならいいですけど…」

P「さて、なんでしょうかね…ん?」

P(履歴書…?)

ちひろ「履歴書ですね」

P「みたいですね」

ちひろ「何か募集してましたっけ?」

P「ちひろさんの記憶にないならないと思いますよ」

ちひろ「ですよねぇ…それじゃ、一体…?」

P「売り込みですかね…」

ちひろ「売り込みですか…?募集していませんが」

P「ですよねぇ。一応送ってみたという所でしょうか」

ちひろ「そういうことですかね」

すみません中座します

ちひろ「どうしましょうか」

P「うーん…」

ちひろ「一応会ってみますか?」

P「会ってどうします?」

ちひろ「え…良かったら入って貰おうかなって」

P「まぁ、確かにここまでした熱意は買ってあげたいですけど…」

ちひろ「何か引っ掛かるんですか?」

P「いや、大したことじゃないんですけど」

ガチャ

菜々「おはようございまーす」

P「おはよう」

ちひろ「おはようございまーす」

菜々「はいっ!お二人で何見てたんですか?」ヒョイ

菜々「誰かの履歴書ですか」

菜々「あ、この子この間の…」

ちひろ「知ってるんですか?」

菜々「えぇ、この間のサイン会で最後に来てくれた子です」

ちひろ「そうなんですね」

菜々「それで、なんでその子の履歴書がこんな所に?」

ちひろ「事務所に郵送で送られて来たんですよ」

菜々「なるほど…」

P「菜々さんはどうしたいですか?」

菜々「え、ナナですか?」

P「会って話でもしますか?」

菜々「話すって何を…?」

P「あ、いえ、自分に似ているって言ったので話すこととかあるかなって」

菜々「そういうことですか…」

菜々「スケジュールは空けられるんですか?」

P「出来なくはないですね」

菜々「お話だけしてもいいですか?」

P「構いませんよ」

菜々「ありがとうございます」

ちひろ「それじゃ、連絡しておきますね」

車内

菜々「良かったんですか?」

P「話す機会を設けたことですか?」

菜々「はい」

加蓮「何の話してるの?」

P「ん?アイドルになりたいって子の話だな」

加蓮「アタシの話?」

P「違うけど。あ、そうだ、どうだ最近」

加蓮「まぁ、地味な練習ばっかりで、隣でハードなレッスン受けてる他の人を見ると焦るよね」

加蓮「でも、楽しいよ」

P「ならいいけどな」

菜々「あ、加蓮ちゃん、一ついいですか?」

加蓮「ん?なに?」

菜々「例えば、アイドルと話す機会があったとして何を聞きたいですか?」

加蓮「どういうこと?」

菜々「あ、えっと、今度ナナのファンの子とお話する機会があるんですけど…」

加蓮「なるほどね。あ、どうやったらそうなれますか。とか聞きたいんじゃない?」

菜々「なるほど」メモメモ

加蓮「真面目だねぇ…」

数日後
事務所

コンコン

蓮実「あ、あの失礼します…」

P「はい。こんにちは。こちらでお願いします」

蓮実「あ、わざわざ、あんなもの送ってすみません。これ、つまらない物ですが…」

P「お土産ですか?」

蓮実「はい。落雁です」

P「ありがとうございます。あとで皆で頂きますね」

応接室

菜々「あ、こんにちはー」

蓮実「お、お久しぶりです」ペコリ

菜々「まぁまぁ、座って下さい」

蓮実「は、はい…」

蓮実(緊張する…)

蓮実「ほ、本日は…」

菜々「あ、そんなにかしこまらないでいいですよー」

蓮実「は、はい」

菜々「それで、えっと…いきなりで悪いんですけど何か聞きたいこととかありますか?」

蓮実「えっと、そうですね…えーと…」

蓮実(頭が真っ白に…)

菜々「あ、じゃあこっちから聞いていいですか?」

蓮実「はい」

菜々「ナナが聞くのは変かもしれないですけど、なんでナナのファンでいてくれるんですか?」

蓮実「可愛くて元気だし、それに…輝いてますから」

菜々「て、照れますね…」ポリポリ

蓮実「あ、あと、一歳上とは思えない位知識が豊富なのもいいと思いますっ」

菜々「はい?」

蓮実「私も、親の影響で昔のアイドルが好きなんです。でも、安部さんもそれに負けず劣らず詳しいなって」

菜々「あ、なるほどそういう意味ですか」

菜々(びっくりした…)ホッ

事務所

ちひろ「ビビっときましたか?」

P「はい?」

ちひろ「あ、いえ、スカウトする時ってそんなこと言ってるじゃないですか」

P「あぁ…どうですかねぇ」

ちひろ(あまり心惹かれるものは無かったんですかね…?)

まゆ「Pさん、いいですか?」

P「どうした?」

まゆ「ここのクレープ屋さん行ったことありますか?」

P「お、ここか。行ったことあるぞ。以前美嘉と行った」

まゆ「美味しかったですか?」

P「美味しかったな。行きたいのか?」

まゆ「まゆ一人だと食べきれるか分からないので…」

P「そうか。家から近いから休み合えば行くか」

まゆ「はい♪あ、お家から近いんですね」

P「そうだな。歩いてすぐのトコだな」

まゆ「大きなマンションですかぁ?」

P「よく知ってるな」

まゆ「この間このクレープ屋さんを通った時に、また来れるように目印にしてたんですよぉ」

P「そうなのか」

まゆ「はい」

ちひろ(さりげなく家の位置特定しちゃいましたね…)

応接室

蓮実「安部さんは凄いです。最近テレビ露出も多いし」

菜々「まぁ、プロデューサーさんが頑張ってくれるからですけどね」

蓮実「それでも、凄いと思います。私なんか、オーディション受けても書類通るか通らないかだったりするし…」

菜々「……昔話をしてもいいですか?」

蓮実「はい?」

菜々「多分面白い話じゃないと思いますけど、ごめんなさい」

蓮実「い、いえ…」

菜々「ナナもですね、蓮実ちゃんと同じ境遇だったんですよ」

菜々「ううん。もっと酷かったですね。オーディションなんか殆ど通りませんでしたし」

菜々「自信満々に行っても、上には上がいるってことは何度も思い知らされました」アハハ

蓮実「え……」

菜々「昔のアイドルってグランプリとかで選ばれて華々しい道を歩いているじゃないですか」

菜々「まぁ、ウチの事務所にも余所と取り合いになるレベルの子もいますけど」

菜々「ナナは違いました」

菜々「蓮実ちゃんは耐えられますか?」

蓮実「はい?」

菜々「頑張ってもテレビで活躍出来るアイドルになれないかもしれません」

菜々「努力しても、褒めてくれるのは身内だけかもしれません。もしかしたら、身内からも白い目で見られるかもしれません」

菜々「振り向いたら自分の歩いた道には何もないかもしれません」

蓮実「……」

菜々「あ、ごめんなさい。ナナったら…」

蓮実「いえ、勉強になりました」

菜々「そんな、勉強だなんて…」

ガチャ

ちひろ「あの、すみませんけど…」

蓮実「あ、はい。それじゃ、安部さん、これからも応援してますので頑張って下さい」

菜々「はい。ナナも頑張りますねー!」

事務所

菜々「うー…」

P「どうかしました?」

菜々「あ、お疲れ様です」

P「お疲れ様です」

菜々「実はですね――」

P「なるほど。間違ってはないと思いますけど」

菜々「でも、アイドルに憧れてる子に…」

菜々「それにナナのキャラじゃないこと言っちゃったかもしれないですし」

P「真面目ですもんね」

菜々「真面目ですかねぇ…」ポリポリ

周子「一番真面目かもしれないよね」

菜々「周子ちゃん…」

周子「入った経緯とか聞いてもそうだし、ウサミン♪ってやってる時以外は凄いマトモなこと言ってるし」

菜々「周子ちゃん…あの」

周子「ん?どした?」

菜々「もう一回ウサミン♪ってやってくれませんか。可愛かったので」

周子「え、いや、もうやらないって」

P「なんだやらないのか」

周子「…やって欲しいの?」

P「しかし、菜々さんが言うとさっきの言葉に重みがありますよね」

菜々「そうですかね」

P「要は夢見る少女じゃいられないってことですよね」

菜々「そうですね…。勿論テレビや雑誌の中に憧れを見るだけだったら問題ないですけど」

ピリリリリ

P「はい。こちら――はい。どうも。どうかされましたか?」

P「はい。え、あ、はい。分かりました。お待ちしています」

菜々「どちら様からですか?」

P「長富さんからだった。もう一度だけ話したいって」

菜々「いいですけど…お仕事は?」

P「今日はもう仕事は終わりでレッスンだけだから少しずらせますね」

菜々「了解しましたー」

P「なんでも質問に対する答えを直接話したいそうだ」

菜々「質問…?」

菜々(なんだろ…?)

P「あと、俺も同席して欲しいって」

菜々「なんですかね…」

応接室

蓮実「わざわざすみません。お忙しいのに…」

P「構いませんけど。どうかされましたか?」

蓮実「…はい。答えを持ってきました」

菜々「答えですか?」

蓮実「安部さん言っていたアイドルについての答えです」

蓮実「正直、アイドルにだって、誰の憧れになることも出来ずに消えていく可能性だってあるということは分かっていました」

蓮実「尤も、その可能性の中にすら私は含まれることはなかったのですが」

蓮実「自分に才能らしい才能はないってオーディションで暗に言われてそれを認めるのが怖かったので目を逸らしていました」

菜々「そ、そこまでは流石にナナは思いませんけども…」

蓮実「たとえ話ですけど、プロデューサーさんだったら今の私をアイドルとして採用してくれますか?」

P「しないですね」

菜々「えっ…」ビクッ

P「願いだけで出来る仕事じゃないですしね」

P(何か足りない気がするんだよなぁ…)

蓮実「です…よね」グッ

菜々「Pさん…」

P「えぇ、確かに今のアイドルとは違う層に対して売り込める可能性はゼロではありませんが、現状では何とも…」

蓮実「そこまではっきり言って頂けると嬉しいです」

蓮実「夢でお腹は膨れませんから」

菜々「な、何かないんですか?アドバイスとか…」アタフタ

菜々「昔のナナを見てるようで何かしてあげたいんですよっ」

P「…研修生という体ならば考えなくはないですけど」

菜々「ど、どういうことですか?」

P「暫くレッスンだけということですね。仕事出来るレベルになったと感じたら仕事を始めていくという感じならば」

蓮実「いいんですか…?」

P「この先ずっと芽が出ない可能性もありますよ?デビューが約束されたものではありません」

P「もしかしたらどこかでレッスンをして、オーディション受けて他の事務所に所属した方が早くデビューする可能性もありますけど」

蓮実「……」

P「こればかりは本人に任せます」

P「お金も掛かることですし、こ――」

蓮実「やります。やらせて下さい」

蓮実「頑張ります。意気込みじゃなくて結果で見せますから…。プロデューサーさんや他の方々に認めて貰うって結果を」

蓮実「子供の頃からの憧れなんです、今やっと掴めそうなチャンスなんです。何も生まないかもしれません」

蓮実「それに、練習以外の雑用でもなんでもこなします。皆さんが終わった後に一人で練習するのでも構いません。お願いします」

菜々「な、ナナからもお願いします」

P「…分かりました。それでは、後日細かい書類などを用意するので、また来てください。時間はこっちから指定しますね」

蓮実「はい。ありがとうございますっ…!」

事務所
菜々「ありがとうございました」ペコリ

P「別に菜々さんにお礼を言われるようなことはしてませんよ」

菜々「でも、何だかちょっと嬉しかったんですよー」

P「夢を掴むかは彼女次第ですけどね」

菜々「それは勿論そうですね。ナナも頑張ってきますっ!」

ちひろ「ちょっと甘くないですか?」

P「そうですかね」

ちひろ「なりたいって言ったら私でもなれちゃいそうな位です」

P「ちひろさんならなれますよ。どうです?」

ちひろ「い、いいですよ。私がなったら、誰が事務作業するんですか」

P「冗談ですよ」

P「そうですね、ちょっとだけ可能性を感じたんです。ほんの少しだけ。新しい層を開拓するアイドルになれる可能性を」

ちひろ「ならいいんですけど」

P「親衛隊とか出来るかもしれませんよ」

ちひろ「流石にそれはないと思いますけど…」

ちひろ(親衛隊とかいつの話ですか…)

P「分かりませんよ?」

ちひろ「どうしてですか?」

P「なんてたってアイドルですから」

ちひろ「…似合いませんね」

P「自分でも分かってます。なのでお手本をお願いします」

ちひろ「え……」

P「さぁ」

ちひろ「わ、分かりました」

ちひろ「なんてったってア~イドルっ♪」キャピ

ちひろ「こうで――」

カシャ

P「いい笑顔でした。ありがとうございます」

ちひろ「え、ちょっと…えー!」

P「大丈夫ですよ。可愛かったですから」

ちひろ「え、そうですか」ポッ

ちひろ「…って全然よくないですから!」

終わりです。
見て下さった方ありがとうございます。

言い忘れていましたが、古典シリーズです。

尤も古典要素はありませんでしたが。

簡単な解説

タイトルは途中でどなたが仰られていましたが、相川七瀬さんの曲名ですね。

正直タイトルを考えた時に偶然被ってしまっただけですけども。

機会があれば一度聞いてみてください。


野村再生工場と出てきましたが、これは有名な野村克也監督を評した言葉です。

また、選手潰しと言っていた人々を批判した選手は堀内恒夫です。

彼の文章を掲載しておきます。

ヤクルトの、相手の嫌な事を徹底して付く戦略の中でも、シュートは重要でね、一回終わった投手でも、シュートを自分の源にすることで蘇る。

打者からすると嫌らしい球ですけど、死んだ投手を生き返らせる、戦略ともそれはあっている、野村監督の再生の要の中の一つでもあり、興味深いですね。

ただ、その分、負担が大きく寿命を減らす、中には野村の投手再生は潰しているだけだ、と言うのもいますけど、

投手の生き死にを知らん輩だから言えるのでね、もう死んだ自分がマウンドで、自分の球、プライドの、

自分自身を再び相手にぶつけられる、投手として生まれ、生きて、死んでも死に切れない、

あの場でまた自分に成れるのならば、どんな代償だって、命も惜しくないんですよ、投手は。

それをね、投手の使い捨てだの何だのと、野村批判がしたいだけなんだろうけどね、投手を侮辱するにも程がある。全く。



こちらが、実際に復活した方々です。http://nomurasaisei.web.fc2.com/


もう一つ堀内氏には有名なエピソードがありますが、それは割愛させて頂きます。

何故か野球の話が混ざってしまいました。

さて、次は未央なのですが、正直まだ白紙の状態です。

期待が大きいこともあって古典と絡めることが出来たらなと思ってます。

やっぱこういう扱いになるか・・・
最初から好きなキャラなんだけどね、蓮実ちゃんは
読んでる途中でこのまま切られることも覚悟した
順風満帆が似合うキャラも逆境が似合うキャラも居るからね

身も蓋もない捨てキャラの存在も運営は匂わせてる訳だし・・・

>>61
加入時のセリフがアイドルじゃなくて、アイドルの卵と言っているのでこういう流れになりました。

仰る通り、順風満帆が似合うキャラも逆境が似合うキャラも居ると私も思います。

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