もこっち「モジョヤドリ?」ギンコ「そうだ」 (60)

蟲師とわたもてクロス書きます。
短篇の予定です。



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あぁ参った…
室穴に吸い込まれて…やっと出れたと思ったら
見ず知らずの町だった…

地面は嫌に固く…猛スピードで走る鉄の…なんだ…馬車?(いや馬はついていないが…)

何より蟲の気配がほとんどない…

そんな事を考えていると…少し開けた場所に着いた。

子供たちが遊んでいる…

ありがたい…広場か…俺も少し休もう。
見知らぬ土地を闇雲に歩くのは危険だ。

いい案配の長椅子がある。
あそこに腰かけよう。

っと…先客だ…。

どうやら少女のようだ。
思い詰めたような顔をしているな…。

虚ろな目でその長椅子に腰掛けると大きなため息を着いた…。

ギンコ「隣いいかい?」

少女「エッ!?エット…!!ショノノノ…!!ド…ドウゾ…」

ギンコ「なんか困り事かい?ずいぶんと大きな溜め息をついてたようだが…?」

蟲師をやってると人の困り事が飯の種だ。
つい聞いてしまう。
まぁ癖みたいなもんだ。

しかしまぁ…この状況では困ってるのはどう考えても俺の方だ…
正直誰かに構っている事は出来ないが…


そんな風に思いを巡らせていると
その少女は前髪を必要以上にいじくり回しながら答えた。

少女「ショノ…アノ…ワタ…ワタタシ…」

ギンコ「急に話し掛けてすまないな。なに、怪しい者じゃない。俺は流れで蟲師をやってるギンコっていう者だ」

少女「むしし?が…害虫駆除の人?」

ギンコ「違う違う。そうじゃない。俺の言ってる蟲ってのはこの世とあの世の狭間に生きる命の事さ」

少女「オカルト的な…話デスカ?ソソソ…そう言うのはチョット…!」ダッ

少女が立ち去ろうと立ち上がる…!その時だ…

カララ…

妙な音が聞こえた。
耳の下辺りに木製の鈴のような物が着いている。

あれは…

ギンコ「おいあんた…それ…」

少女「エッ!?」

ギンコ「珍しい蟲だな…文献では読んだが初めて見た。あんた男っ気がなくて困ってたりしないか?」

少女「ナナナ…ナゼソレヲ…!?」

ギンコ「やっぱりか…そいつは蟲の仕業さ。あんたに取りついてる蟲のな」

少女「じゃ…それを取り除けば…!!」

ギンコ「もちろんだ。人並みに春が来るだろうぜ」

少女「わ…わたし!ともこ…ともこっていいます!」

ギンコ「そうかい。ともこさんよ。そいつの、駆除…俺に任せてみないか?」

ギンコ「まぁ立ち話もなんだ…報酬についても話さなきゃならんし…そこらに茶屋はないのか?」

もこっち「茶屋?カフェなら…」

ギンコ「まぁじゃそこでいい。この世界の勝手は分からんからな…案内してくれ」



俺がそういうと少女は頷き、ぎちない様子でキョロキョロしながら案内してくれた。

少女は何故か半歩後ろから道案内をしてくる。
隣を歩いてくれればいいが、そう言っても「イエイエイエイエイエイエイエ…」というだけで応じなかった。

なるほど…こいつは厄介だ。

カフェに入るといい感じの香ばしい臭いに包まれた。

小綺麗な洋風の店内は、来たこともないのになんだかひどく落ち着いた。

もこっち「わ…わたしが…注文してくるので…ギンコさんは座っていて下さい…!」

ギンコ「そうかい?わるいな」

空いてる席に座る。
軽快な音楽が心地いい。

俺は大きな窓から見える異世界の様な景色を眺めていた。



???「あっ!もこっち!」

ともこ「ゆ…ゆうちゃん…!」

ゆうちゃんと呼ばれた少女はともこの友人のようだ。かなり親しげに話している。


ゆう「あれ?もこっち一人?」

ともこ「え…っと…いやその…」

チラッとともこがこちらを見た。
一応依頼人の友人なら顔見知りになっておいた方がいいだろう。
軽く手を上げ会釈をする。

ともこ「っ…!?」

ゆう「えっ!?あの人と二人!?もしかして…もこっち彼氏できたの?」

ともこ「ーーーーっ!…うん。ま…まぁね…」

ゆうちゃん「えーっ!おめでとう!」

ともこ「あ…ありがと…」

ゆうちゃん「じゃ二人っきりのトコ邪魔しちゃ悪いし…!わたし行くね!」

ともこ「あっ…うん。ま…またね!ゆうちゃん…」ホッ

二人はそこで別れ、ともこは注文の品を受け取り席に来た。

ともこ「お…おま…おまたせしました…」

ギンコ「あぁ悪いな。いくらだ?」

ともこ「イエ…ショノ…このぐらいいいです…」

ギンコ「大の大人が年端もいかぬ娘に茶を奢って貰ったなんて恥ずかしくて外を歩けん。いくらなんだ?」

ともこ「いいんですッ!それより…さっきの話!蟲の…!」

ギンコ「あ…あぁじゃお言葉に甘えさせて貰うか…」

ともこ「早く…ッ!早くその蟲とか言うのをを取って下さいっ!」

ギンコ「まぁ落ち着け。既にその蟲はあんたの一部だ。無理に取り出せるような代物じゃない…今回ばかりは焦っても仕方ない。とりあいず説明も含め少し話を聞かせてくれ」

しかしこの様子じゃ会話もままならないだろうな…
少し俺になれて貰うか…

ギンコ「もこっち…か」

ともこ「エッ…?」

ギンコ「もこっちって言うんだろ?あんたのあだ名…」

ともこ「そ…そうです…けどそう呼ぶのは…さっきの子だけです…」

ギンコ「そうなのか?他の友達はなんて呼ぶんだ?」

ともこ「…」

ギンコ「ん?」

ともこ「いないんです…」

ギンコ「え?」

ともこ「あの子以外…友達はいないんです…」

ギンコ「そ…そうか…そりゃ悪い事聞いたな…」

…こりゃ根は相当深そうだ…。

ズズッと香ばしい薫りのする茶を啜る…

ギンコ「っ!?なんだこれは…!?」

ともこ「!?」

ギンコ「これはうまいな…!!なんていう飲み物なんだ!?」

ともこ「た…ただのコーヒーですけど…」

ギンコ「決めた…!これを報酬にするぞ!」

ともこ「え?」

ギンコ「この世界にはこんなうまいものがあるのか…すごい…いや…うまい…」ズズッ

ギンコ「コーヒーというのか…」

ともこ「は…はい。お湯さえあれば簡単に出来る物も…」

ギンコ「なんと…湯だけで…!?それはすごいな…」

ともこ「…はい」

ギンコ「なるほど…そうと決まれば報酬も決まった事だしさっそく取りかかるか…」

ともこ「は…はい!お願いします…!」

ギンコ「この辺に人気の無い場所はあるか?出来れば宿屋がいい。話はそこでしよう」

ともこ「や…やどやどどど…////」

ギンコ「なに変な事はしないさ…俺も小娘に手を出すような下世話な男じゃない。」

ともこ「////」

ギンコ「信じてくれるか?」

もこっちは喫茶を出て綺羅びやかな街に俺を案内した。

あまりに大きな角張った建物が乱立してたっており、昼間だというのに祭りのような光る装飾は嫌でも目を引いた。

もこっちはキョロキョロしながらその中の一つの前で止まる。

顔は赤面し瞳はこちらを見ず目の中を忙しなく泳ぎ回っていた。

もこっち「こ…ここで…」

見上げるとまるで城のような建物がそびえていた。

入り口には「竜宮城」と書かれていた。

陸に竜宮城…か…。

入り口でもこっちは立ち止まった。

ギンコ「どうした?入らないのか?」

もこっち「こ…緊張して…腰が抜けてしまって…」

ギンコ「生娘か…そりゃ…まぁそれもしょうがねぇ…」

よっ、と力をこめもこっちを抱きあげる。

もこっち「チョッ…!チョト…アワワワ…!////」

ギンコ「落ち着け…取っては食やしねぇさ」

もこっちは乾き木のように軽かった。

もこっちを抱えたまま部屋に入る。

もこっち「ももも…もう大丈夫ですから…っ!」

慌てるもこっちをゆっくり下ろすともこっちは慌てて離れた。

しかし慌て過ぎて寝床に転んだ。

もこっち「…っ!あは……あはは…もう訳わかん無い…なにこれ…わたしこんな所で何してるんだろ?」

もこっちに取りついている蟲は「モジョヤドリ」という蟲だ。

異性を求めさせ異性を遠ざける。

異性を求める心を喰らいそして遠ざけ求めさせ続ける…と文献には書かれていた。

蟲避けの煙を炊きながら俺はもこっちに蟲の話をした。

もこっち「モジョヤドリ?」

ギンコ「あぁ」

もこっち「あれ…?なんか…普通に話せる…」

ギンコ「落ち着いたか?この煙の中では蟲の影響をほぼ抑えられる…」

もこっち「すごい…わたし…わたし…今まで家族以外の男の人とまともに話した事なんてなかったのに…」

ギンコ「そりゃそうだろうな…異性と話すだけで気が狂う程の羞恥心に見舞われたはずだ」

もこっち「すごい…!今ならなんでも出来そうな気がするよ!」

ギンコ「焦るな。まだ完全に祓えた訳じゃない。蟲の影響を抑えられるのはあくまでもこの煙の中でだけだ…」

もこっち「ゲホッゲホッ…」

ギンコ「辛いか?」

もこっち「ゲホッ…少し…」

ギンコ「そうだろうな…お前の中の蟲が…嫌がってるのさ」

カララ…カララ…

もこっち「えっ…」

耳障りで不気味な音が鳴る。

俺の目にはもこっちの頭のてっぺん…丁度つむじの辺りからむくむくと木のような物が生えてくるのが見えた。

木の鈴のような物を実のように繁らせていた。

それが震える木に揺られその奇っ怪な音を奏でていた。

どうやら俺を敵と見なしたようだ。

もこっち「う…うぅ…」

頭を抱えるもこっちに薬と水を渡す。

ギンコ「痛むか?これを飲め」

もこっち「んぐっんぐっ…ぷはっ!はぁ…はぁ…」

だが所詮は…音を鳴らすだけの蟲。

追加の煙を炊きながら葉巻に火をつける…

吐いた煙が蟲避けの煙に混じり合い溶けた。

もこっち「うー気持ち悪い…」

ギンコ「そうか…俺のいう通りにすればすぐに祓える。」

もこっち「ど…どうすれば…」

ギンコ「まずは…………服を脱げ…」

もこっち「…え?////」

ギンコ「…信じて着いてきたんだろ?」

もこっち「…っ!!!////」

ギンコ「俺はお前を救いたいだけだ…何もしやしないさ…大丈夫だ」

もこっち「でも…でも…///」

ギンコ「脱いでる所は見ないし…そうだな…は恥ずかしい所は…この手拭いで隠してくれていい」

もこっち「バス…タオル…?///」

もこっちはバスタオルとやらを握りしめると…意を決したように服に手をかけた。

俺はもこっちに背を向ける…
後ろから衣擦れの音が聞こえる。

その気は無くともこれは少し…

もこっち「ぬ…脱げました…///」

振り向くともこっちは一糸纏わぬ姿でバスタオルを抱えていた。

その体には根のような物が張り巡らされていた。

ギンコ「ちょっと…いいか?」

その体に張っている根の部分に触れてみる。
植物とはまるで思えない速度で俺の手を「避けた」。

ギンコ「やはりか…」

指でその根のような物を追うと根は更に逃げる。

もこっち「あっ…あふっ!!////」ビクンビクン

もこっちの身が少し跳ね媚声を上げる…。

ギンコ「くすぐったいか?悪いが耐えてくれ」

もこっち「ふぁ…ふぁい…!///」ハァハァ

根の行動原理を探るように触れる。

もこっちは口に手を当て涙目でそれに耐えた。

もこっち「はぁ…はぁ…////」

ギンコ「よし…うつ伏せになってくれ…」

上着を椅子に掛けるともこっちはそれを惚けた顔で見ていたが俺が上の服を全て脱ぐと
もこっちは目を見開いた。

ギンコ「お前…御祓(みそぎ)をしてこれるか?」

もこっち「み…みそぎって…お…お風呂の事ですよね…?」

ギンコ「そうだ。その間にこちらも準備を整えておく」

もこっちは頭をシーツに埋めると…うーーー!と唸り…
少し止まった後…

もこっち「もう…なんでもいいか…」

ふらふらと立ち上がり風呂場に行った…

俺は蟲タバコで一服すると
体に蟲避けの塗り薬を塗った。
昔ワタヌキを祓った時に刺された古傷に少し染みる…。

ギンコ「っ…」

ガラッ…

もこっち「お…終わりました…///」

もこっちが胸の上からタオルを巻いて出てきた。
ほんのり上気した顔は女そのものだった。

ギンコ「あぁ。じゃあ今度は仰向けに寝てくれ」

もこっち「あ…仰向け…!?///」

もこっちの覚悟が一瞬揺らぐのが分かった。

ギンコ「もちろんタオルはしておいてくれて構わない。灯りも消そう」
それを聞いて少し安心したのか、もこっちは静かに頷くと…恐る恐る仰向けに寝そべった。

ダイアル式の調光を絞ると部屋の中は星空のように静かに光った。

どうやらそういう仕様のようだ。

ギンコ「ほう…部屋にいつつ星が見えるのか…これは気が利いてるな…」

もこっち「はやく…早く済ませて下さい…!」

俺は視線を偽の星空から名残惜しみつつもこっちに落とした。

さて…

白い布をもこっちの目を当てる。

もこっち「目…目隠し…?///」

ギンコ「あぁこれをしてないとやりずらい。我慢してくれ」

もこっち「ふぁ…い…」

まずは…足首からか…。
俺が触れようとすると足の先まで張っていた根ははやりふくらはぎの方へと逃げる。

体に着いた塗り薬を擦り付けるようにもこっちの体に触る。

普通なら手を離せばまたもこっちの体に根を這わすだろうが今回は蟲避けの薬が着いた部分に戻る様子は無さそうだ。

ギンコ「うむ…これならいけるな…」

うす暗い部屋の中で漏れる媚声と濡れた肌の擦れ合う湿った音だけが
壁を震わせた。

もこっち「ふっ…!ふぁ…!はっ…!はうっ…////」

ギンコ「もう少しだ…我慢してくれ」

俺は体全体で追い詰めるように下から上を根を追いやった。途中乳房や尻を触ったがそんなのはお構い無しで一気に追い込む。

もこっちはもうどこを触っても口から手を離し抑えられない声を上げていた。

もこっち「あっあっ…ああぁ…!!ダメダメダメダメ…!!!また…っ!!あーーーーーーっ!!!」

ギンコ「もう少しだ!!我慢してくれ!!」

作業を続ける内に体に這い回っていた根はもこっちの首の辺りまで集まった。

体全体に巡っていた物が一ヶ所に集まったせいで苦しそうにもこっちの顔を蠢いていた。

もこっち「あ…あふ…!!」ビクンビクン

ギンコ「よしっ…!」

薬は顔を除いて体全体に塗られた。

更にゆっくり…首からジワジワと薬を塗り込む。

もこっちに馬乗りになりながら後頭部から上にかけて頭を撫で上げる…

まだ乾き始めた髪が手にするりと絡んだ。

次の瞬間…もこっちは少し苦しそうな声をあげた。

もこっち「う…うおげ…」

追い詰められた蟲がいよいよ行き場を失い宿主であるもこっちの口から出ようとしているのだ。

ギンコ「そうだ!もこっち!吐けっ!吐いちまえっ!」

もこっち「うぼぇぇぇ…!!オロロロロロロロロ…!!」

ビタビタビタッ!

もこっちは巨大な苗のような蟲を一気に吐き出した。

ギンコ「よしっ!」

ギンコはもこっちの吐き出した苗を見るなり手早く苗を折り、中にあった赤い球のような物を瓶入れ、封と書いた紙で塞いだ。

カラカラン…

瓶に入った赤い球は蟲の核。
これでもう繁殖も出来んはずだ。

もこっちは…?と目をやるとどうやら疲れて気を失ったようだ。

ギンコ「ふぅ…」

上着に手を伸ばそうとするとぎゅっと腰の辺りを何かに捕まれた。

もこっち「スゥ…スゥ…」ギュッ…

ギンコ「…はぁ…やれやれ…」フゥ…

俺は蟲タバコに火をつけると一服しながらもこっちの髪を撫でた。

もこっち「えへへ…へへっ…へへへ…」

ギンコ「…」フッ

すっかり目の下のクマも取れただの年頃の娘になった娘と俺は一晩過ごした。



寝ずに…………

結局一睡も出来なかった。
今まで蟲に寄って抑えられていた色香か…

妙なもんだ。
ただの小娘かと思っていたが
蟲を祓った途端…絶世の美女がとなりにいるような感覚だ。

もこっち「あ…朝?」

ギンコ「あぁ」

もこっち「え!?やばっ!!」

ギンコ「どうした?」

もこっち「学校!一限なんだっけ!?歴史…だったっけ…!?」ダッ

ギンコ「落ち着け…!焦った所で間に合わん!…」

もこっち「ん?…あれ?今日は…なんだ…日曜日か…!」

ギンコ「お前さん焦ったりホッとしたり…忙しい奴だな…」

もこっち「ってかそんな事はいいんです!親も心配するしもう帰らなきゃ!」

ギンコ「あぁ…確かにな。とりあいずここを出よう。報酬ももらわにゃ行かんしな…」

もこっち「はいっ!」

竜宮城を出て二人は近くのスーパーへ行きインスタントコーヒーを買った。

一瓶でいいのか?ともこっちが聞くと
こんな旨いもの沢山買ったら飲みすぎて体をこわしそうだとギンコは笑った。

もこっちから必要な情報を聞き
ギンコは狩房家を目指した。

蟲師の体験や蟲の対処方を長年記録しているのが狩房家。

ここが日本であれば恐らくギンコがいた世界の未来か、または別の世界だが世界が変わっても普遍な存在である蟲がある以上蟲と深く関わっているもの…恐らく狩房家はこの世界にも存在すると踏んだのだ。









そして幾年月…






ここは海沿いの里医者の家。

ギンコの馴染みの化野という医者の家だ。

土間に子供達がはしゃぎながら入ってきた。

子供「ねぇ!先生!蟲師のお兄ちゃんの話聞かせてよー!」

化野「お!?来たな!ちびっこどもー!今日はどの品の話にする?」

子供「この羽織に書いてあるお山の話はー?」

化野「おぉ!いいぞー!それはなー!」

ギンコ「名のある絵師が無名の頃に書いた作品だ。10年に一度絵の山からは煙が上る不思議な絵だ」

唐突に話を横取りされ化野は数秒固まった…

化野「ギ…ギンコォォォォォ!!!お前どこにいたんだよぉぉぉ!!文も届かねぇしよぉぉぉ!!!」

ギンコ「うわっおい抱きつくな!」



俺はあの時代の狩房家に辿り着き、文献を便りに時を歪める室穴のありかを探し当て元の時代へ戻ってきていた 。

早く化野にコーヒー飲ませたかった。
こいつの驚く顔ったら無い。
何せ時を越えて来た話だ。
いつもの蟲の話以上に身を乗り出して聞いていた。

「モジョヤドリ」の核は向こうの時代の狩房家に蟲師だと証明する為に使ってしまい惜しい事をしたと思ったがこのコーヒーだけでかなりの高値で売り付けられるかと思い諦めた。

次元を越えた黒い茶「コーヒー」は化野も大層気に入り全部買い取ると言い出した。

バカをいうな。

俺はまだコーヒーを一緒に飲みたい相手がいるんだよ…

たま婆「淡幽様…ギンコが見えました…」

淡幽「えっ?」






ギンコ「よう」

淡幽「帰ったか…死んでしまったかと思ったぞ」

ギンコ「お前さんに礼がてら珍しい物が手に入ったんでな。一緒に楽しもうと思ってよ」

淡幽「礼?」

ギンコ「あーそれは後で話す。婆さんが今淹れてきてくれる…世にも珍しい茶だ」

淡幽「へぇ…それは楽しみだな」

それから少し俺がいない間の世の流れ等を話していると

たま婆「淡幽様。ギンコからの土産の茶が入りました」

淡幽「これが…黒い茶か…すごくいい香りがする…香ばしい香りだ」

ギンコ「一口飲んでみてくれ。もし苦かったら砂糖と牛乳を入れると飲みやすい」

淡幽「いただきます…」スズッ

淡幽「っ!?」

ギンコ「どうだ?うまいだろ?」

淡幽「あぁ好きな味だ!」

ギンコ「そうか…!コーヒーという飲み物だそうだ!」

淡幽の嬉しそうな顔を見て俺も嬉しかった。

そしてもう一つ淡幽に言っておきたい事があった。



その前にまずは仕事だ。

いつものように蟲の話をする。

モジョヤドリの治療の話をした時淡幽は何故か少し拗ねているようだった。

ふう…と筆を作業を終えると

淡幽「年頃の娘の肌の味はどうだった…?」

ギンコ「嫌な聞き方をするな。俺はこれっぽっちもそんな気起こしちゃいねぇよ」

淡幽「どうだか?」

ギンコ「何すねてんだよ」

淡幽「別にすねてなどおらん」

ギンコ「ふっ…でな。俺がその時代からどうやって帰ってきたか…っていうとだ」



向こうの時代の狩房家の話にはさっきのすねっぶりが嘘のように食いついて来た。

一頻り聞いたあと淡幽は少し黙って、重い口を開いた。

淡幽「なぁ狩房家の呪いはいつ解けると書いてあったんだ?」

ギンコ「聞きたいか?」

淡幽「…当たり前だろ」

ギンコ「俺の視てきた未来など宛にはならん」

淡幽「それでも…聞きたいんだ」

ギンコ「そうか…四代目…つまりあんたで終わっ…うわっ!!」

言うが早いか淡幽は俺に抱き付いてきた。

淡幽「ありがとう…!ギンコ…ありがとう…」

俺は、泣きながら何度も礼をいう淡幽の綺麗な短めの黒髪を撫でた。

ギンコ「宛にならんっていっとるだろ?」

淡幽「それでも…それでも未来に光が見えているというのはありがたい物だぞ?」グスッ

ギンコ「そうだな…確かに…そうだ」

そう言って淡幽の頭に手を置くと
淡幽は更にきつく抱きついてきた。

ギンコ「っ…少し苦しいぞ…」

淡幽「年頃の娘にうつつを抜かした罰だ…」

ギンコ「まだ言うのかよ…どうぞお好きなだけ締め付けて下さいませー」ヤレヤレ

淡幽「反省の色がみられーん!」ギュウウ

ギンコ「ちょ…ほ…ほんとに苦しいって…絞まってる絞まってる…!」



淡幽「ギンコ…お前はいい匂いがするな…」

ギンコ「そうか?煙臭いと思うが…」

淡幽「私にとってはそれがお前の匂いであるならいい匂いなのさ」

ギンコ「そ…そうか///ちと…照れるな」

淡幽「ふふっ足が直ったらどこに連れていってくれるんだ?」

ギンコ「行きたい所考えておけよ…」







淡幽「ギンコの側なら…どこでもいい」

ギンコ「…」

俺は返事の代わりに淡幽の手を握った。

エピローグ

もこっち「気持ちは嬉しいけどごめんなさい…私好きな人がいるんだ…だから…お友達からよろしくね!」

男子「ガーン!」

あれから私はモテにモテた。
一日に何回も告白されたし
ナンパもされた。

夢が叶ったはず…なのに…

蟲を祓ってくれた銀の髪のあの人は…変わりに初恋という病をおいて行った。

結局彼氏が出来るのは当分先になりそうである。

ゆう「もこっちー!?いくよー?」

もこっち「はーい!ゆうちゃん今いくー!」



またどこかで会えたらいいな…

ギンコさん…













終劇

終わりましたー!

拙い文章で読んでて疲れてしまった方もいたと思いますが最後まで読んで下さいってありがとうございました。

丁度蟲師とわたもての単行本が並んでおいてあったのでもしかしてもこっちの奇行って蟲の仕業?と思い書いてみました。

完全に勢いでした。
反省はしていません。

では、またどこかで…

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