八幡「仮面」 (21)

・地の文多用
・9巻未読

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俺は比企谷八幡。訳有って奉仕部という一見するといかがわしさを感じさせる部活に所属している。
訳と言っても要は教師を心無い言葉で傷つけたという理由だ。(なにそれ。職権乱用にもほどがあるだろ。)
まあそうして無理やり所属させられた部活である。入部当時こそ理由を付けて退部を狙っていたものの、今では奉仕部はそれなりに居心地のいい場所になった。

「どうしたのかしら自信過剰谷くん。」

雪ノ下雪乃。容姿端麗、成績優秀、持久力こそ欠けるが運動神経も悪くない、というか抜群だ。そして俺の所属する奉仕部の部長でもある。
だがこれらの一面は彼女に関わりのないものから見ても得られる感想であり、彼女の性格を何ら修飾するものではない。(奉仕部自体知名度が低いので最後は知らない人間が多いが。)
先ほどの発言から分かるように(今のはかなり優しい方、というか単なる事実かもな。)この女は口を開けば人を貶すことを言うのだ。まあその貶される対象は最近においては十中八九俺になるんだけどな。
彼女曰く、その完璧な容姿や能力のせいで小さい頃から周囲に妬まれ、いじめの対象になってきたそうだ。(とはいえ大抵返り討ちにあっているのだろう。)そしてその所為で友人がいない、と。
だが俺から言わせれば歯に衣着せぬ物言いをするその性格が手伝って友人がいないのだ。言ってしまえば彼女は高嶺の花だ。妬みの対象になることはあるだろう。それと同様に尊敬の対象にだってなる。陽乃さんが最たる例だ。
こんな完璧超人ならば仲良くなろうとした奴だって過去にはいた筈だ。馴れ合いを求められた事があるはずだ。
小中学生の頃の女ってよくやってただろ?『○○ちゃんってホント可愛いよね~。』『え~ウチ全然可愛くないよ~××の方が全然可愛い!』みたいなしょうもない腹の探り合い。
そういうのに限って幅を利かせてる割に大したのじゃないよな。容姿も能力も。ま、普通に考えりゃ1番多いのは平均に近い人間だからそういう人間が幅を利かせるのはしょうがない。(高校生以上になるとそうでもないけどな。)

「何も言ってねえししてもいねえだろ。お前こそどうした。つうかなんだその呼び方。」

雪ノ下雪乃という女は良くも悪くも正直だ。言わなくてもいい事を言う。彼女は建前を持たない。だから馴れ合いに迎合しないのを理由に、全てにおいて負けているという劣等感を晴らすためいじめられたのだ。
雪ノ下も言っていたが蹴落とす努力はするのに自分を高める努力をしないのが大抵の人間だしな。だがそれは一定のレベルまでだ。
それを証明する訳ではないがそれなりの根拠はある。在学する俺が言うのもなんだがここ千葉市立総武高等学校は県内において相当レベルの高い進学校だ。そして雪ノ下は更にレベルの高い国際教養科に籍を置いている。
つまり周囲の人間もレベルが高い。そもそもの原因である劣等感は大きくないだろう。それに頭いい奴ばかりだから足引っ張るより自分を高めた方がいいって考えるだろうし。
話を聞く限り国際教養科において雪ノ下はそれなりにうまいことやっているようで、周囲から憧れられているようだ。まあ雪ノ下が成長したとも言えるし、周りが大人になったからとも言える。
高校生にもなっていじめなんてあまり聞かないしな。無関心の方が自分のためにも相手の為にも良いって分かるようになってくるんだろうな。
まあ受け入れられているのならそれでいい。彼女が周囲のために変わろうとする必要なんてない。俺の…、俺の尊敬する雪ノ下はそうでなくてはいけないし、そうであって欲しい。
でも毒舌は少し控えて欲しいかも。

「いえ、なにか主人公面してモノローグを語っているような気がしたのよ。普段現実逃避のために自称高スペックを謳うのは構わないけれど、主人公になった気になっているのは流石にいただけないわ。
この世界において貴方が主人公になるという事は有り得ないのだから。貴方の命を賭けてもいいわ。」

「賭けるの俺の命かよ…。というかどこぞのアメコミの改造された傭兵さんじゃないんだからメタっぽい発言は止めとけ。」

あ、言ったそばからメタ的なんだけど『命』の場合『賭ける』じゃなくて『懸ける』じゃないのか?

「その傭兵さんとやらのことは知らないけれど、貴方も彼のように作者に干渉出来ればその腐った目を腐りかけた目に治せるかもしれないわね。
それと私は幾ら貴方の様な社会不適合者であっても命は等価値だと思うの。けれども貴方に関わるのにあたって何も得るものがないなんてごめんだわ。だから何かしら得るものがあるようゴミ谷君のゴミの様な価値しかない命でも『賭ける』のよ。」

「あれ、俺の心読んでるよねお前?エスパーなの?てか後半1つ文挟んだだけで言ってること矛盾してるよね。その短い間に雪ノ下の認識を改める何かがあったの?」

作者に干渉しても鮮度が少し上がるだけの俺の目ってある意味凄くね?
それにしても意外な事にデッド○ール知ってるんだなこいつ。アメコミにも造詣があるのか。さすが俺がユキペディアと呼ぶだけはある。
いや、たしか雪ノ下は中学の時留学していたんだったな。それで知ったのだろうか。
お堅そうなものばかり読んでるイメージが雪ノ下にはあるが、パンさん然り海外の大衆文化には割と興味を持っているみたいだ。


「それに『命を賭ける』も『命を懸ける』も普通に使うわ。普段国語3位を誇るくせにその程度の頭なのね。可哀想だわ、たまたまアホ谷君より下の点数を取っただけでこのレベルよりも低いと思われる人間が。」

「せめて俺を哀れめ。」

別に俺もメタ的な事が言いたかっただけで本当は分かってたよ?本当だよ?

「…………ふふっ。」

こいつは最近よく笑顔を見せる。それだけ見れば戸塚レベルに可愛いんだが…。毒舌(考えてみれば毒舌なんてもんじゃない、言葉の暴力だ)がそれを相殺、いやマイナスまで持っていっている。
まあそれなりに打ち解けられた証拠だろうか。俺がそうな様に雪ノ下も会話をそれなりに楽しんでくれているのだろう、歓迎すべきことだ。
進級の危機を孕んでいるのだからもし関係が悪化したとしても辞める訳にはいかないし、いつまでいるか分からないのだから尚更、関係は円滑であるべきだ。

「やっはろー!」

ガラッと音を立てて由比ヶ浜が入ってきた。相変わらず頭の悪そうな挨拶だ。

由比ヶ浜結衣。このいかにもな女は言ってしまえば俺のボッチ化を早めた原因。まあ早まっただけだからいいけど。いや、本当に。別に事故がなかったらクラスに溶け込めてたとか思ってないよ?全然。
こいつはクラスにおいてトップカーストに属している。なのに俺みたいな底辺ともつながりがある妙な奴だ。
あれ?犬助けて骨の1、2本でこいつとお近づきになれたならもうちょっと体張れば俺を養ってくれる優秀な女性と結婚できるんじゃね?よし、将来の選択肢に入れておこう。
まあその事故のことでちょっとしたすれ違いがあって気まずかったこともあったけれどそれなりにうまくやれている。いい奴だし。
あえて言うならそのアホっぽい挨拶俺の周囲に広めるの止めてくれる?あ、でも戸塚の「やっはろー」可愛かったなあ。戸塚は天使。デュフフ。

「おう。」

「こんにちは由比ヶ浜さん。」

「ゆきの~ん!聞いてよ~―――――――」

こうして部員が全員揃い、今日も活動が始まった。といっても本読んでるだけだけどな。

「そろそろ終わりにしましょう。」

雪ノ下がそう言い、それを合図に俺達は部室を出た。雪ノ下が鍵を返しに職員室に向かったので俺は帰ろうとした、が、由比ヶ浜が何か言いたげにしている。
正直言って由比ヶ浜の提案には嫌な記憶が多い。というより俺にとってプラスであった事は少ない。ここはさっさと帰ってしまおう、としたが声を掛けられてしまった。遅かったか。

「ね、ねえヒッキー。これからちょっとあ、遊びに行かない?勿論ゆきのんも一緒にさ!」

ほら。

「嫌だ。雪ノ下と二人で行ってこいよ。」

「即答だし!せめてもうちょっと考えてから断ってよ!」

「まず雪ノ下が嫌がるだろ。それにお前しょっちゅう三浦達と遊び行ってるんだしわざわざ俺達と行かなくてもいいだろ。なにより今日は俺が飯当番だから無理。」

最後は嘘だ。

「べ、別にゆきのんは嫌がらないよ!それに優美子達と遊んでてもゆきのんとかヒッキーと遊ぶのはまた別だし…。でも家事があるんじゃ仕方ないか…。」

少し罪悪感がある。少しだけ。

「そういうこと。悪いな。また誘ってくれよ、じゃあな。」

思ってもいないことを口にする。

「うん、じゃあね。また…、明日…。」

あいつ、ちょっと元気なかったか?悪いことしたな。でもま、関係は円滑であった方が良いとは言ったものの、積極的に動こうとは思えないんだから仕方がない。
あいつにあいつの都合がある様に俺にも俺なりの都合があるんだからな。とりあえず買い物でもして帰るか。

「おかえりーお兄ちゃん!」

帰宅すると小町が出迎えてくれた。既に小町は帰ってきていたか。ま、今日当番だから当たり前だが。

「おう、ただいま。もう飯は準備始めたのか?」

「んー、まだだよ。」

「お、そうか。丁度良い、今日は俺作るから明日頼むわ。」

別に代わる必要なんてないんだけどな。自分でもよく分からんことをした。

「小町的には毎日お兄ちゃんに作ってあげたい位だけどね~。今の小町的にポイント高い。」

「はいはい高い高い。玄関で出迎えてくれたのもポイント高いよ。」

「いやそれは偶然。」

そこ正直に言っちゃうんだ。ちょっと本気で可愛いところあるなって思ったのに。あ、今の八幡的にポイント高い。
なんて下らんやり取りをしつつ食事を済ませ、今は自室だ。


最近、疲れ、倦怠感をよく感じる。特に何をしている訳ではない。普通の高校生のように学校で授業を受け、部活動をして、家で寝るだけだ。
あえて特別な事をあげるなら妹を学校に送ったり家事をやっているくらい。
え、友人と遊ぶ?それって普通の高校生やってんの?知らなかったわ~。俺マジ異端。世が世なら審問受けられるよ俺。
まあ茶化すのはここまで。独白で茶化すのって1人ノリツッコミくらいの空しさがあるね。
ともかく、最近ダルさとも言える謎の疲れがある。人間関係を少し持つようになって、それに疲れているのだろうか。
いや、自分がそこまで社会不適合者とは思わない。思いたくもない。友人がいないだけで話したり交流持つのが苦手な訳ではない。中学の時積極的にメール送ってたし。あ、嫌な思い出が…。
人間関係で直接疲れている訳じゃなくそれに対するストレスから疲れているのだろう。ダルさにも説明がいく。ストレスを感じない人間なんていないのだから。
したいことが出来ないとかそういう日常のストレスに加え、人間関係からのストレスだ。仕方ない。そのうち小町にでも解消法を聞いてみよう。アイツもストレス溜まってそうだし。

「とりあえず寝るか…。」

そうひとりごちて眠りについた。

翌日。朝飯を済ませ、いつものように小町に学校に送る。このガキ、いつも楽しやがって…。
まあ二人乗りで女が漕いでるなんて滅多に見る光景じゃない、というか見たことない。しかも小町は妹だ。年下だ。ここは兄の寛大さで受け入れよう。今のポイント高いだろ。
あ、朝飯のこと言っとくか。

「おい小町、お前今日もトマト入れやがったな。俺嫌いだって前も言ったろ?朝飯くらい好きなもの食わしてくれとは言わんがせめて嫌いなものは入れないでくれよ。」

「お兄ちゃんはホントダメダメだなぁ~。小町はお兄ちゃんの為にやってあげてるんだよ~。送ってもらってるのもお兄ちゃんの健康を思ってだねぇ。今の小町的にポイント高い。」

うぜぇなこいつ。幾ら千葉の兄妹でもシスコンばかりじゃねえんだぞ。

「俺を思うなら尚更だ。それに俺は運動はそれなりに出来る。スポーツテストもA判定だしな。健康を思って運動させるのは要らん気遣いだ。」

「分かった分かった考えとくよ。あ、学校だ。じゃね~お兄ちゃん。送ってくれてありがと~。」

「おう、今日の晩飯忘れんなよ。」

小町を送り届け、学校へ向かう。
途中、公園に寄った。昨日、割と早めに寝たのにいつもより疲れている。と、言うより疲れが取れず、段々溜まっているような感じだ。だから公園で休んでいくことにした。
小町を二人乗りで送らなければいいと思うだろうがそういう訳にもいかない。アイツは雪ノ下の言う通り俺の妹とは思えないほど良くできた奴だ。独りを好むところは俺と似ているが。(俺の場合好もうとも好まざるとも独りだけどな。)
だからアイツは俺が送るのを拒否すればどんな理由を付けたところで俺の体調が優れないことに気付くだろう。出来ることなら心配は掛けたくない。余計な気を回させたくもない。
幸い二人乗りなら顔は見えないし顔を見られるのも学校の手前の少しの間だ。もしかしたら俺の体調も心情も察した上でいつも通りの対応をしてくれたのかもな。いや、そこまで察せる訳はないか。

「このままだと遅刻しそうだ。連絡入れておくか。平塚先生に殴られるのもたまらん。」

言って携帯電話を取り出した、が指が止まる。
いつも俺が遅刻する時は連絡はしない。普段そこまで大きな遅刻はしないし、仮に事情があってもあの先生はいつも屁理屈ばかりで面倒臭がりやの俺の言うことを鵜呑みにするとも思えないからな。
まあなんだかんだで面倒見のいい先生だ。滅多に連絡など入れない俺が連絡すれば信じてくれる可能性は高い。だがそれは無駄な心配を掛けることにもなる。
別に大きな病気や事故でもあるまいし、HRが終わる頃には着くだろう。連絡はしなくていいな。
そう結論付け、携帯電話を仕舞った。

結論から言えば俺は珍しくHRを過ぎ、1時限目が終わる頃に登校するというぼっちにあるまじき行為をやってしまった。まあ休み時間にさりげなく入れば目立つこともないだろう。
学校から電話が1回あったが無視した。寝坊による遅刻という体裁を保つためだ。自宅には誰もいないからこの嘘はバレる心配はない。
とりあえず授業が終わって教員が出てくるのを待っていると、我らが平塚大先生が教室から出てきて目ざとく俺を発見した。
どう取り繕うかと考えたが、平塚先生は俺に声を掛けると「次からは連絡しろ。」の一言で済ませた。
てっきり鉄拳が飛んでくると思っていた俺は驚いて「え、結婚前提にお付き合いを始めた恋人でも出来たんですか!?」と言ってしまった。
しまった、失言だ。

「比企谷、次は抹殺のラストブリットまで喰らいたいか?」

「す、済みません。失言でした…。」

「まあいい、2時限目が始まるまでには着席しておけ。次の授業の教師には私から遅刻したことを伝えておいてやる。」

「分かりました。ありがとうございます。」

「うむ。」

そう言って先生は職員室に向かっていった。それにしても妙に優しかったな。本当に良いことがあったんだろうか。
とにかく助かった。いい時間だしさりげなく教室に入り、いつも通りイヤホンを耳に挿し顔を伏せ寝たふりをした。
疲れからか碌に授業を受けられず、昼休憩を迎えた。ま、捨ててる理数系だし問題ないだろ。

昼という事でいつも通り俺だけのベストプレイスに向かおうとした。が、声を掛けられた。

「おはよう!ね、ねえ八幡。一緒にお昼食べない?嫌なら別にいいんだけど…。」

戸塚彩加。天使。以上。説明不要。てかこれなんてラブコメ?そんな上目使いで言われて断れるわけないじゃん!

「お、おう。別に良いぞ。俺がよく昼食べてるいい場所があるんだ。食うならそこで食おうぜ。」

今日から俺だけのベストプレイスは俺達の、いや、俺達2人だけのベストプレイスだ。

「ほ、本当!?もし断られたらどうしようと思ってたけど良かった~。嬉しいよ八幡!」

俺がお前の頼みを断るわけないだろう!戸塚の為なら死ねる!

よ…読みにくい…!

続けて

>>11
文章読みづらいかな
推敲してある程度体裁整えてるつもりなんだけど
それとも単純に長い?

死ぬ程読みづらいな
次から気をつける

先に投稿したのはこのままでいいよね
言わなくても分かるだろうけど取り敢えず今日はここまでで

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