奈緒「雨の降る街」 (7)

奈緒「あれ? 降り出した?」

加蓮「みたいだね。さっきまであれだけ晴天だったのに」

凛「プロデューサー傘持っていってなかったよね。もうすぐ駅に着く頃じゃない?」

加蓮「奈緒の出番だね」

奈緒「……は?」

凛「うん。奈緒の出番だ」

奈緒「ちょ。な、なんでアタシが……」

加蓮「前も届けたじゃない」

凛「プロデューサーだって待ってるよ」

奈緒「い、いやいやいや。そんな訳ないから! 凛か加蓮が迎えに行けばいいだろ!」

凛「そうしたいけど今からボイスレッスンなんだよね」

加蓮「私はちょっと風邪気味だから」コホコホ

奈緒「そんな都合よく風邪にかかるかっ!」

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加蓮「まあまあ」

凛「文句言わないで」

かれりん「早く行きなさい」

奈緒「覚えてろよお前ら……」


 …………
  ……


P「ありがとな」

奈緒「べ、別に。2人に言われて仕方無くだから。勘違いすんなよな」

P「それでも助かったよ。奈緒を待っててよかった」

奈緒「待たなくたって駅前のコンビニで傘買えばよかったじゃん……」

P「奈緒が迎えに来てくれるから買う必要が無いんだよ」

奈緒「次はないから」

P「またまた」

奈緒「ぜっ、絶対来ないからな!」

P「俺としてはこうして奈緒と並んで事務所に向かうのは好きなんだけどな」

奈緒「馬鹿! 変なこと言うなよ!」

P「変か?」

奈緒「変だよ! あ、アタシといて何がいいんだか……」

P「卑下するなよ。それに最近は奈緒と一緒にいられる時間も減ったからな。こんな機会があるのは嬉しいさ」

奈緒「ふんっ。担当アイドルをほったらかしにするなんていい身分だよな」

P「そう言うなよ……。担当アイドルも増える一方だし……」

奈緒「それはそれは。事務所が儲けていい事じゃないですか」

P「怒るなって……。埋め合わせはちゃんとするから」

奈緒「期待せずに待ってるよ——あれ?」

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神谷奈緒(17)

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北条加蓮(16)

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渋谷凛(15)

P「どうした?」

奈緒「いや、あそこの公園に」

P「ん? ああ、遊具の下で雨宿りしてるのか……」

奈緒「仁奈くらいの歳かな?」

P「だな。親もいないみたいだし……。悪い、先帰っててくれ」

奈緒「ちょ。Pさん? なんだよ、もうっ」

奈緒(まさかスカウトする気かな? な訳ないか。傘あげてるだけだな、あれ)

奈緒「本当に馬鹿だなぁ……」



P「悪い悪い。待ってたのか」

奈緒「別にいいけど。事務所まで鞄を傘にして帰るつもり?」

P「すまんな。小雨になるまで雨宿りしてから帰るよ。ちひろさんにはそう伝えといてくれ」

奈緒「なんで。傘あるじゃん」

P「え?」

 
 …………
  ……


奈緒「Pさん、もっと詰めていいからな? 肩濡れてるし」

P「これで充分だよ。奈緒には迷惑かけっぱなしだし」

奈緒「気にしなくていいのに……」

P「担当アイドルに風邪引かせる訳にもいかないからな」

奈緒「ふーん……」

P「な、なんだよ」

奈緒「べっつにー? 担当アイドルに迎えに来させといて相合い傘までさすなんてプロデューサーの鏡だと思っただけ」

P「ご、ごめんてば……。今度好きなアニメのグッズ買うからさ」

奈緒「それ一緒に買い物行くって事?」

P「その方が奈緒の好きなもの選べるけど、嫌か?」

奈緒「い、嫌じゃないけど。ちゃんと予定空けとけよな」

P「了解」

奈緒「……なあPさん」

P「ん?」

奈緒「Pさんにとって、アタシってただの担当アイドル?」

P「いや。仲間、かな」

奈緒「仲間?」

P「おう。奈緒だけじゃなくて凛や加蓮も。俺が初めて担当したユニットだから、特別な仲間だよ」

奈緒「ふーん」

P「な、なんだよ。訳と恥ずかしい事言ったのに」

奈緒「自覚してたんだ」

P「ヒドい」

奈緒「うそうそ。冗談だよ」

P「奈緒にからかわれる俺って……」

奈緒「そっちも充分ヒドいじゃん!」

P「冗談冗談」

奈緒「もうっ」

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