比企谷「八十稲羽に転校…え?マジで?…」 3スレ目(684)



―――――――――――


放課後

総武高校 奉仕部部室


     コン コン ガラッ

川崎「よう、由比ヶ浜」

葉山「やあ」

由比ヶ浜「あ、二人共。 わざわざごめんね?」

葉山「別にいいよ。 それで、ヒキタニ君の事なんだけど……」

由比ヶ浜「うん」


葉山「僕としては、いつも通り、という印象の中に」

葉山「どことなく壁を感じたかな?」

葉山「まあ……久しぶりに会ったから」

葉山「いつもの彼を そう思っただけかもしれないけどね」

川崎「あたしはどうにもねぇ……」

川崎「なーんか昔の自分を見ているみたいでイライラしちゃったよ」

由比ヶ浜「昔の……?」

川崎「誰かに頼るのが、イヤでイヤでしょうがなかった時の、ね……」

由比ヶ浜「…………」

川崎「……心配かい?」

由比ヶ浜「え?」

川崎「そんなに気になるのなら、スキーに行けば良かったのに」

由比ヶ浜「……そうしたかったんだけどね」


由比ヶ浜「私のお父さんと、お母さんに」

由比ヶ浜「もう心配かけたくなくて……」

葉山「……なるほど」

川崎「……そういう事か。 悪かったね、余計な事を言って」

由比ヶ浜「ううん……」

由比ヶ浜「二人共ありがとう」

由比ヶ浜「向こうには、ゆきのんも花村くん達も居るし」

由比ヶ浜「何かあったら連絡くれると思うから……」

葉山「ああ……僕に何か出来る事があれば、遠慮なく言ってくれ」

葉山「じゃ、また明日」

川崎「あたしも出来るだけやってやるよ」

川崎「またな」


由比ヶ浜「うん。 本当にありがとう」

由比ヶ浜「またね!」

     ガララッ…… パタン

由比ヶ浜「…………」


由比ヶ浜(やっぱり……何かおかしいって思ってるんだね、ゆきのん)

由比ヶ浜(どうしたんだろう……ヒッキー)

由比ヶ浜(…………)

由比ヶ浜(でも……しばらくは我慢しないと)

由比ヶ浜(さいちゃんとかに勉強教えてもらっている身だし……)

由比ヶ浜(入院して遅れた分を早く取り戻さないと)

由比ヶ浜(…………)



―――――――――――


夕方

ジュネス八十稲羽店 フードコート


花村「ったく、あいつら! 人の気も知らねーで!」

里中「そう言う噂、立てられる身にもなってみろじゃん!」

天城「…………」

雪ノ下「……1年生の方はどうだった?」

りせ「だいたい同じ……ううん、ある意味もっと酷いかも」

白鐘「僕のクラスは、なぜか巽くんが一括してくれて表面上は静かになりました」

雪ノ下「そう……」


比企谷「……まあ、気にするな」

比企谷「こうなる可能性は予測していた」

比企谷「俺は気にしていない」


一同「…………」


里中「そうは言うけどさ」

天城「気持ちは良くないよ……」

花村「ダチが悪く言われてんだぞ? 気分いい訳無いだろ、比企谷」

比企谷「人の噂も75日だ」

比企谷「もっとも……その頃に俺は、ここから居なくなるけどな」


一同「…………」


りせ「……比企谷先輩」

りせ「その言い方は良くないと思う」

比企谷「事実は事実だろ」

白鐘「その通りです。 けど……」

白鐘「ここで……八十稲羽で過ごした事を無駄だと言ってる様に聞こえます」

比企谷「……そんなつもりじゃなかったが」

比企谷「悪かった。 謝る」

白鐘「……いえ」

比企谷「さて、俺はそろそろ帰る」


一同「!?」


花村「おいおい……せっかく人が心配して集まってんのに」

比企谷「今のところ、有効な打開策は見いだせない」

比企谷「正直……俺と居るところを目撃されると、お前らも噂に巻き込まれるぞ?」


一同「…………」


比企谷「今は様子を見るしかない」

比企谷「それでいいだろ?」


一同「…………」


比企谷「……じゃあな」

     スタ スタ スタ…


一同「…………」


里中「……なーんか、ヤな感じ」

天城「確かに比企谷くんの言う通りだけど……」

りせ「そりゃ……悪い噂、立てられたくはない……でも……」

雪ノ下「…………」

白鐘「……比企谷先輩なりの気遣いでしょう」

花村「やっぱ……そうだよな」

白鐘「それに……」

花村「ん? それに?」

白鐘「…………」

白鐘「もしかしたら、ストックホルム症候群かもしれません」


雪ノ下「!」

花村「ストックホルム?」

里中「何それ? 病気?」

雪ノ下「1973年にスエーデンの首都、ストックホルムで起こった」

雪ノ下「銀行強盗・立てこもり事件に起因する事から付けられた俗称よ」

天城「それで?」

白鐘「簡単に言いますと……」

白鐘「本来は被害者の立場なのに、長く犯人と接する事で情が移り」

白鐘「犯人と共に行動したり、犯人に有利な行為をしたりする事を指します」

りせ「……?」

りせ「それと比企谷先輩に何の関係があるの?」

白鐘「実は先日……」

白鐘「比企谷先輩が、警察署に入っていくのを目撃しました」

雪ノ下「…………」


白鐘「僕は堂島さんを訪ねて、比企谷先輩が何をしているのか聞いたんです」

白鐘「彼は……足立さんの面会をしに来ていると答えてくれました」


一同「!?」


花村「いやいやいや! ちょっと待て!」

花村「何で比企谷が面会しに行くんだよ!?」

花村「フツー家族とかがやるんじゃねーのか!?」

白鐘「僕も詳しく聞いた訳じゃありませんので……」

白鐘「かと言って、比企谷先輩にもたずねにくいですし……」


一同「…………」


里中「……最近、忙しいってよく言ってたけど」

里中「これの事だったのかな?」


天城「ストック…なんとかは置いておいても」

天城「比企谷くんにとって足立さんは親戚……本当の意味で身内なんだよね」

りせ「みんなと比べると、全然違う立場に居るんだ、比企谷先輩」

りせ「……あたし達、喜びすぎてたのかな?」

花村「そ、それは……どうなんだろうな……」

雪ノ下「…………」

白鐘「……皮肉ですね」

里中「え?」

白鐘「比企谷先輩に関しても彼の提案した対処策」

白鐘「『様子を見る事』くらいしか思いつけないなんて……」


一同「…………」


警察署 取調室


堂島「……今日はここまでだ」

足立「そうですか」

堂島「次は一応、3日後くらいを予定している」

堂島「まあ、ここのところ平和だし、余程の事が起こらない限り変更は無いだろう」

足立「…………」

堂島「…………」

堂島「……じゃあな、足立」

     ガタタ…

足立「…………」

足立「堂島さん」

堂島「ん?」


足立「くだらない事を聞くんですけど」

足立「『大人になる』って、どういう事なんでしょうねぇ……?」

堂島「…………」

堂島「……はっきり『こうだ』と言える答えを」

堂島「俺は持っていないな……」

足立「…………」

堂島「だが……」

足立「……?」

堂島「俺の場合は、菜々子が生まれた時かもしれん」

足立「…………」


堂島「人の親になって、家族が増えて、それを俺は養っている」

堂島「いや……養っていかなければならない」

堂島「そう自覚はしたな……」

足立「…………」

堂島「お前の求める答えでは無いかもしれんが」

堂島「そういう事ではないかと俺は思っている」

足立「…………」

足立「そうですか……」

堂島「……でもな」

足立「え?」


堂島「それが出来ていない奴を 俺は総じて『子供』だと思ってしまう」

堂島「どれほど金を稼いでいようが、どれほど有名人であろうが」

堂島「どれほど俺より年上の人物でもな」

足立「…………」

堂島「……役に立ったか?」

足立「……少しは」

堂島「そうか」

堂島「じゃ、またな。 足立」

     パタン…

足立「…………」



―――――――――――


数日後

足立宅


比企谷「…………」


テレビ『……続いて、天気予報です』

テレビ『ここしばらく晴天が続きましたが、明日以降は』

テレビ『大陸からの低気圧の為、全国的に暴風雪となる見込みです』

テレビ『山間部は特に注意が必要で』

テレビ『暖房器具や食料の備蓄等、あらかじめ備えた方が良いかもしれません』

テレビ『今回の低気圧は非常に勢力が強く』

テレビ『平野部の積雪もかなりのものになると予想され……』


比企谷「…………」


ジュネス


花村「おう、比企谷」

クマ「センセイ、いらっしゃいませクマー!」

比企谷「よう」

比企谷「今日は盛況だな」

花村「ああ。 オヤジの言葉を借りると『防災特需』だとよ」

比企谷「不謹慎だが、的を射てるな」

花村「お前もか?」

比企谷「ああ。 使い捨てカイロとか、カートリッジ式ガスボンベとかをな」

花村「今日の売上トップツーだぜ、それ」


比企谷「まだあるか?」

花村「あるけど、お一人様1パックまでって制限がかけられてる」

比企谷「そうか……心もとないが、しょうがないな」

花村「不安なら八高(八十神高校)の体育館が緊急の避難所になるそうだから」

花村「そっちに行ったらどうだ?」

花村「天城屋って手もあるぜ?」

比企谷「……今の状況じゃ八高は無いな」

比企谷「天城屋も迷惑だろうし」

花村「……下手したら命に関わるんだ。 なりふり構うなよ」

花村「そうだ! 俺んちでもいいぜ! クマも来るし!」

比企谷「ケータイもある。 いざとなったら公的機関に助けてもらうさ。 じゃあな」

花村「お、おい、比企谷……」

花村「…………」



―――――――――――


帰り道


比企谷(食料品は何とかなったな)

比企谷(電気ガス水道が止まらなければ、どうとでもできる)

比企谷(乾電池の備蓄はあったし、懐中電灯も手回し充電だから問題ない)

比企谷(…………)

     ピピピ…… ピピピ……

比企谷「…………」 ガチャ

比企谷「もしもし」

比企谷「! ……雪ノ下か」

比企谷「何の用だ?」


雪ノ下「ご挨拶ね、比企谷くん」

雪ノ下「いくらあなたでも自然災害には敵わないでしょう?」

雪ノ下「今の内に天城屋に来るといいわ」

雪ノ下「自家発電装置も備えてあるし食料の備蓄も申し分ない」

雪ノ下「あなた一人くらい大丈夫よ」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「……その事は今は置いておきなさい」

雪ノ下「宿泊料の事は気にしなくていい。 それが嫌ならツケにしておくから」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「部屋は私の部屋を使えばいい。 私は姉さんの部屋に行く」

雪ノ下「…………」


雪ノ下「…………」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「……そう」

雪ノ下「わかったわ。 でも困ったら、いつでも訪ねてきて」

雪ノ下「じゃ……」

     ブッ… ツー ツー

雪ノ下「…………」

―――――――――――

比企谷(……ったく)

比企谷(花村も雪ノ下も心配しすぎだっての……)

比企谷(…………)


     ピピピ…… ピピピ……

比企谷「……またか」 ガチャ

比企谷「はい、もしもし……堂島さん?」

比企谷「…………」

比企谷「……ああ、その事なら心配しないでください」

比企谷「備えはしましたので」

比企谷「…………」

比企谷「いえ、お気持ちだけで結構です」

比企谷「…………」

比企谷「はい、その時はお世話になります」

比企谷「じゃ……」

     ブッ…… ツー ツー

比企谷「…………」


     ピピピ…… ピピピ……

比企谷「……おいおい」


―――――――――――


比企谷「はあ……」

比企谷「…………」

比企谷(白鐘に小町……由比ヶ浜や戸塚)

比企谷(里中や天城、久慈川まで……)

比企谷(…………)

比企谷(俺……そんなに危なっかしいと思われているのか)

比企谷「はあ……」



―――――――――――


翌日


     ビュオオオオオオオオオッ…


テレビ『お昼のニュースです』

テレビ『今日の天気は全国的な荒れ模様となっており』

テレビ『交通機関に大きな乱れが起こっています』

比企谷「…………」

テレビ『首都圏の空港・港は、ほとんどが欠航し』

テレビ『高速道路も現在、通行見合わせが続いております』

テレビ『鉄道網は、新幹線が始発から運行を見合わせており……』

比企谷「…………」


     コン コン…

比企谷「……!?」

比企谷(…………)

比企谷(気のせい……だよな?)

比企谷(警報で学校は休校だと連絡があったし)

比企谷(わざわざこんな状況で来る奴なんて……)

     コン コン…

比企谷「……はーい」

比企谷「どちら様でしょうか?」

???「……私よ、比企谷くん」

比企谷「!?」

     ガチャ…

比企谷「雪ノ下……」




     厚手のダウンジャケットにニット帽、それに耳あて

     ついでにゴーグルまでかけている雪ノ下がそこに居た。

     はっきり言えば、この前のスキーの格好を思い出す姿である。



     そして、スキーの時と決定的に違うのは

     背中に少し大きめのリュックを背負っていた事だ。

     知らない奴が見たら、どう見ても冬山登山に行く様にしか見えん。



雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

比企谷「……念の為に聞くが」

比企谷「何をしに来た?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「元気なら……それでいい」

雪ノ下「これ、差し入れだから」

比企谷「リュックサイズかよ……」

雪ノ下「あら? 足りないとでも言うつもり?」

比企谷「そうは言ってないだ……ん?」

雪ノ下「……ふ……くっ……」


比企谷「どうした? 雪ノ下?」

雪ノ下「……何でもないわ。 ちょっと……手がかじかんでるだ…あ!」

     ドササッ!

比企谷「お、おい……」

雪ノ下「……っ……少し手を滑らせただけよ」

比企谷「…………」

比企谷「ともかく中に入れ、雪ノ下」

雪ノ下「平気よ」

比企谷「いいから! とにかく入れ!」

雪ノ下「あ……」

     パタン…


花村「…………」


花村(おいおい……えらいもん見ちまったぜ)

花村(にしても雪ノ下さんのあの荷物の量……どう見ても泊まり込むつもりだよな)

花村(…………)

花村(とうとう覚悟を決めたのか……って、待てよ?)

花村(そんな彼女を招き入れた比企谷は……)

花村(…………)

花村(……ふっ)

花村(しかたねぇ。 二人の静かな時間を邪魔できねぇよな)


花村「よし」

花村「帰るぞ、クマ」

クマ「ええ!? どうしてクマ!?」

花村「いいから帰んの!」

花村「ここまで来てなんだが、比企谷も大丈夫だって言ってたし」

花村「必要になったら、俺らに連絡するだろ」

クマ「で、でも……」

花村「すまねえな、付き合わせちまって」

花村「帰ったら、何か暖かいもん作って食わせてやるからよ」

花村「それで我慢してくれねぇか?」

クマ「…………」


クマ「しょうがないクマね。 ここはヨースケの顔を立ててやるクマ!」

花村「お前、どこでそんな……まあいいや」

花村「花村ワゴンはクールに去るぜ……」

クマ「何言ってるクマ?」

花村「ツッコミ入れんじゃねーよ! せっかくの気分が台無しだろーが!」///

クマ「ヨースケがわからないクマ……」


比企谷「雪ノ下、手を見せてみろ」

比企谷「ついでに足先もだ」

雪ノ下「…………」

     スッ スッ… シュルッ…

比企谷「……少し腫れてるな」

比企谷「だが、この程度ならしもやけレベルだ」

比企谷「ちょっと待ってろ」

雪ノ下「…………」

―――――――――――

比企谷「風呂場にぬるま湯を用意した」

比企谷「しばらくそれに手足を浸しておけ」

雪ノ下「……わかったわ」

比企谷「10分ぐらいしたら、温度の高いのに変えるからな」


比企谷「…………」 ピッ ピッ ピッ

     ルルルルル……ルルルルル……ガチャ

比企谷「天城か?」

比企谷「ぶしつけだけどな、陽乃さん、近くに居ないか?」

比企谷「…………」

比企谷「そうか、居ないならいい」

比企谷「後で『荷物は届いた』とだけ、陽乃さんに伝えてくれ」

比企谷「それでわかると……は?」

比企谷「…………」

比企谷「『必要なものは全部入れた』……?」

比企谷「陽乃さんがそう言えと……ね」


比企谷「ともかく、頼んだぞ。 じゃあな……」

     ブッ…… ツー ツー

比企谷「…………」

比企谷(……あの人、やっぱり絡んでるのかよ)

比企谷(嫌な予感しかしねぇな……)

―――――――――――

比企谷「どうだ? 雪ノ下」

雪ノ下「……平気よ」

比企谷「見せてみろ……」

比企谷「…………」

雪ノ下「…………」

比企谷「よし、お湯を変えるぞ」


     チャプン…

比企谷「これでよし……」

比企谷「今、温かいコーヒー入れてやる」

雪ノ下「…………」

―――――――――――

比企谷「ほら、コーヒー」

雪ノ下「……ありがとう」

雪ノ下「…………」 ズズッ…

比企谷「痛くない様なら、軽く揉んでおけ」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「詳しいのね」


比企谷「……よく小町もなってたからな」

雪ノ下「そうだったの……」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

比企谷「……ところで、雪ノ下」

雪ノ下「何かしら?」

比企谷「持ってきた荷物、中身は何だ?」

雪ノ下「食料品と水と乾電池……それに固形燃料よ」

雪ノ下「それがどうかしたの?」

比企谷「……陽乃さんは何か入れてないのか?」

雪ノ下「姉さん? なぜ、姉さんが出てくるの?」

比企谷「いや……陽乃さんに出かける事を伝えたのかと思って」

雪ノ下「……帰るつもりだったから言ってないわ」


比企谷「そうか……」

比企谷「まあそれはいい」

雪ノ下「…………」

比企谷「……俺は大丈夫だって言っただろう?」

比企谷「らしくないぞ、雪ノ下」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

比企谷「……まあ」

比企谷「ありがとう……な」///

雪ノ下「……え」

比企谷「もう少ししたら、本格的に体を温めるからな」

雪ノ下「…………」




―――――――――――









     ビュオオオオオオオオオッ…











テレビ『現在、各県に暴風雪波浪警報が勧告されており』

テレビ『気象庁の発表で、この状況は今日・明日いっぱい続く見込みで』

テレビ『各自治体は、可能なら避難所を利用するよう呼びかけています』


雪ノ下「…………」

比企谷「……どうだ? 手と足先は?」

雪ノ下「平気よ」

比企谷「正直に言っておけ。 こんなところで虚勢を張っても意味がない」

雪ノ下「……痒いわ」

比企谷「正常な反応だ。 けど、掻くなよ? 我慢しろ」

雪ノ下「……わかったわ」

比企谷「もうすぐ鍋焼きうどんができる」

比企谷「これ食って体を中から温めるんだ」

雪ノ下「…………」


雪ノ下「…………」


雪ノ下(……本当に何をやっているんだか)

雪ノ下(無事なのを確認したかった。 それだけなのに)

雪ノ下(逆に心配をかけてどうするのよ……)

雪ノ下(…………)


比企谷「……どうした、雪ノ下?」

比企谷「熱いうちに食わないと意味がない」

雪ノ下「! ……ご、ごめんなさい」

雪ノ下「いただきます」

―――――――――――

     カチャ カチャ…

比企谷「…………」


比企谷「こたつ、どうだ?」

雪ノ下「暖かいわ」

比企谷「テレビ、なんて言ってる?」

雪ノ下「ほとんど同じよ」

雪ノ下「それに首都圏の情報ばかりで、こっちの方は全く話題になっていない」

比企谷「……そうか」

比企谷「…………」

雪ノ下「…………」

比企谷「……なあ、雪ノ下」

雪ノ下「……何かしら」


比企谷「これはな、決してやましい気持ちや下心とか、そういうのじゃなくて」

比企谷「外の吹雪は一向に弱まらないし、気温は氷点下で」

比企谷「冷静に雪ノ下の状況とかを考慮して、脳内シュミレーションの結果」

比企谷「最終的にこれが一番いいんじゃないか?という……その……」

比企谷「そう、一案として聞いて欲しい」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「……わかったわ」

比企谷「よし」

比企谷「その、な……」///

雪ノ下「…………」

比企谷「きょ、今日……ここに泊まった方がいいんじゃないか?」///

雪ノ下「!」///

比企谷「だ、だから、一案だ! やましい気持ちはこれっぽっちもない!」///

雪ノ下「わ、わかっているからっ」///


比企谷「な、なら、いいが……」///

雪ノ下「…………」///

比企谷「…………」///

比企谷「お、お茶を入れてくる」///

雪ノ下「わ、わかったわ……」///

     スタ スタ スタ…

雪ノ下「……ふう」///

雪ノ下「…………」///

雪ノ下「……あ」

雪ノ下「姉さんに連絡しておかないと……」 ピッ…


     ルルルルル……ルルルルル……ガチャ

雪ノ下「……もしもし、姉さん?」

雪ノ下「その……」

雪ノ下「…………」///

雪ノ下「さ、最初から、こうなる事を望んだのではなくて」///

雪ノ下「結果的にこうなってしまった、というか、いろいろ考えが足りなかった、というか……」///

雪ノ下「…………」///

雪ノ下「け、結論を言うわ……」///

雪ノ下「ひ、比企谷くんのところに、と、泊まりますっ……」///

雪ノ下「ご、ごめんな……え?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「リュックのサイドポケット?」

雪ノ下「…………」


雪ノ下「必要な物?……いったいどういう意味」

     ブッ… ツー ツー

雪ノ下「……切れた」

雪ノ下「……?」

     ゴソ ゴソ…

雪ノ下「」///

雪ノ下(あ、あの人っ! 何を考えてるのっ!?)///

雪ノ下(わ、私は、比企谷くんとそういう事をしたいわけじゃ……!)///

比企谷「雪ノ下?」

雪ノ下「!!!」///

雪ノ下「ひ、比企谷、くんっ……」///


雪ノ下「こ、これは、ち、違うのっ」///

比企谷「それはなんだ?」

雪ノ下「……え?」

比企谷「箱のサイズから推測すると……チョコかなんか?」

雪ノ下「…………」

比企谷「……違うのか?」

雪ノ下「チョ、チョコじゃない、わ……」

雪ノ下「でも、当たらずとも遠からず、と、言うところね」

比企谷「そうか……」

比企谷「ほら、お茶。 入ったぞ」

雪ノ下「あ、ありがとう……」


雪ノ下(よ、良かった……比企谷くんは、こういうのに疎いのね……)


比企谷(……やっぱり入れてやがったな、陽乃さん)

比企谷(こんな事もあろうかと、対処法を考えてて良かったぜ)



比企谷(秘技、しらばっくれ!!) ババーン!



比企谷(いつまでもあんたのマリオネットで いねぇからな……)

比企谷(ふふふふふふ……勝った)


雪ノ下「……あら?」

比企谷「?」

比企谷「どうした、雪ノ下?」

雪ノ下「ポケットの奥に……まだ何か……」

     ゴソ ゴソ…

雪ノ下「……何かしら? 軟膏(なんこう)みたいだけど……」

比企谷「! 見せてみろ」

雪ノ下「ええ……」

比企谷「…………」

比企谷「……しもやけに効く塗り薬だ」

雪ノ下「……え?」

比企谷(まったく。 一本取ったと思ったらこれだよ……)

雪ノ下「…………」

比企谷「雪ノ下、使っておけ。 これで痒みも止まると思う」




―――――――――――









     ビュオオオオオオオオオッ…









テレビ『引き続き、各地の暴風雪による被害状況をお伝えします』

テレビ『首都圏の交通網は完全に麻痺しており』

テレビ『帰省の足がほとんどない状況です』

テレビ『また、この大雪の被害で亡くなった方も5人となり……』


雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

     コン コン

比企谷「!?」

雪ノ下「……誰かしら?」

比企谷「わからん……ともかく、雪ノ下はここに居てくれ」

     スタ スタ スタ…

雪ノ下「…………」



―――――――――――


比企谷「大家だった。 雪下ろしを手伝ってくれだと」

雪ノ下「わかったわ」

比企谷「いや、雪ノ下はいい。 俺だけ出る」

雪ノ下「でも……」

比企谷「このアパートの住人総出だ。 俺一人というわけじゃない」

雪ノ下「…………」

比企谷「……雪ノ下はしもやけの事もある。 大人しくしていてくれ」

雪ノ下「……わかったわ」

比企谷「じゃ、行ってくる」

雪ノ下「…………」



―――――――――――


2時間後


比企谷「ううっ……さぶさぶさぶっ」

比企谷「重労働の割に、全然暖まらなかったな……」

比企谷「…………」

比企谷「……ん?」

雪ノ下「お帰りなさい」

比企谷「…………」

雪ノ下「今、けんちん汁、温め直すわ」

比企谷「……晩飯、作ってくれたのか」


雪ノ下「勘違いしないで」

雪ノ下「やる事なくて暇だったし……」

雪ノ下「あなたに貸しを作ったままなのも釈然としなかったから」

比企谷「……さいですか」

比企谷「つーか、手は大丈夫なのか?」

雪ノ下「お陰様でね」

比企谷「ならいい」

雪ノ下「比企谷くんこそ、しもやけは大丈夫?」

比企谷「男はなりにくいって俗説があってな」

比企谷「残念ながら、俺はその証明をしている一人だ」

雪ノ下「そう」 クスッ




―――――――――――









     ビュオオオオオオオオオッ…









比企谷「……さて」

比企谷「だいぶ夜も更けてきましたし、そろそろ寝るか」

雪ノ下「そ、そうね」

比企谷「しかしながら、大きな問題がひとつあります」

雪ノ下「……当ててみましょうか?」

雪ノ下「布団が一つしかない……とか」

比企谷「……プラス、俺の匂い付きです」

雪ノ下「その言い方、気持ち悪いから止めて」

比企谷「せっかくクイズ方式にして場を和ませようとしたのに……」

雪ノ下「事実は変えられないでしょう?」


比企谷「まあな」

比企谷「足立さんの使ってたものはすべて引き払った後だし……」

比企谷「だけど否応なく、雪ノ下さんには俺の布団を使っていただきます」

雪ノ下「丁寧な口調で言ってるけど最悪ね」

比企谷「我慢しろ……俺はこたつで寝るから」

雪ノ下「冗談はその腐った魚のような目だけにして」

雪ノ下「どう考えても押しかけて迷惑かけている私がこたつでしょ?」

比企谷「そんなに俺の匂いつきが嫌か」

雪ノ下「当たり前の事言わないでくれるかしら」

比企谷「…………」

雪ノ下「…………」

比企谷「……まあいい」

比企谷「そこまで言うのなら、そうしてもらおう」

雪ノ下「…………」


比企谷「ちょっと待ってろ」

雪ノ下「……え?」

―――――――――――

     シュン シュン シュン…

雪ノ下「お湯を沸かしてどうするの?」

比企谷「湯たんぽ作ってるんだよ」

雪ノ下「!」

比企谷「おっと、勘違いするなよ?」

比企谷「どっちがどうなろうが、これは最初からやるつもりだったからな?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「手伝える事、あるかしら?」

比企谷「風呂場横のケースからバスタオルを2~3枚取ってきてくれ」

雪ノ下「わかったわ」


雪ノ下「これくらいでいいかしら?」

比企谷「おう」

雪ノ下「何に使うの?」

比企谷「熱湯を入れたペットボトルに巻きつける」

雪ノ下「なるほど……手製の湯たんぽ、というわけね」

比企谷「気をつけろよ、相当熱いからな」

雪ノ下「ええ」

―――――――――――

比企谷「……これでいい」

比企谷「こたつは片付けて、こたつ布団にくるまった方がいいだろ」

雪ノ下「そうね」


比企谷「下はタタミだが、ありったけの服を敷き詰めておいた」

比企谷「……正直、敷布団の代わりになるとは思えんがな」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

比企谷「……なあ、雪ノ下」

雪ノ下「何かしら?」

比企谷「…………」

比企谷「今日だけでいい」

比企谷「……いや、ただの一度だけでいい」

雪ノ下「…………」

比企谷「俺の言う通りにしてくれないか?」


雪ノ下「!」

雪ノ下「比企谷くん……」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

雪ノ下「……だったら」

比企谷「え?」

雪ノ下「私もわがままを言わせてもらえるかしら?」

比企谷「……何だよ?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「比企谷くんと、同じ部屋に居させて」

比企谷「…………」

比企谷「はあ!?」///




―――――――――――









     ビュオオオオオオオオオッ…









比企谷「…………」

雪ノ下「…………」


比企谷(……雪ノ下の奴、何を考えているんだ?)

比企谷(まあ……布団に入ってくれただけ良しとすべきか)

比企谷(…………)

比企谷(……くそっ、落ち着かねぇし、吹雪うるさいし、眠れねぇ……)


雪ノ下(…………)

雪ノ下(よくよく考えたら……)

雪ノ下(すごい事言ったのよね……私)///

雪ノ下(…………)

雪ノ下(でも……)

雪ノ下(…………)


雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

雪ノ下「……比企谷くん」

比企谷「ん?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「ごめんなさい」

比企谷「…………」

比企谷「もう気にしてない」

雪ノ下「違う。 今回の事じゃない」

比企谷「……は?」




雪ノ下「あなたを見送りに行かなくて……ごめんなさい」



比企谷「!」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

比企谷「……それも もう気にしていない」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

雪ノ下「……そう」

比企谷「…………」

雪ノ下「…………」

比企谷「……なあ」

雪ノ下「何かしら?」


比企谷「理由……聞いてもいいか?」

雪ノ下「!」

比企谷「…………」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「バカバカしい理由よ」

雪ノ下「あきれるくらいにね……」

比企谷「それでもいい」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「私ね……比企谷くんに」

雪ノ下「『さよなら』を言いたくなかった」

比企谷「……ほう。 俺は『しゃべる玩具』なのにか?」

雪ノ下「……ええ」


雪ノ下「奉仕部に来た頃のあなたは、見た目からして近寄りたくない人物だったわ」

比企谷「……言っとくが、平塚に無理矢理入部させられたんだからな?」

雪ノ下「そうね」 クスッ

雪ノ下「そして、話をしてみて更に印象が悪くなった」

比企谷「……悪かったな」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「でも……由比ヶ浜さんも入部して、三人でいろいろやって」

雪ノ下「あなたとの掛け合いが……いつの間にか当たり前になっていた」

比企谷「…………」

雪ノ下「比企谷くんが私をどう思っているのか、わからないけど」

雪ノ下「一定の距離を取ってくれるあなたの存在が……心地よかった」

比企谷「…………」


雪ノ下「……なのに」

雪ノ下「突然、比企谷くんは転校する事になって」

雪ノ下「私は動揺した……」

比企谷「…………」

雪ノ下「一年後に帰ってくる。 これは一時的なもので、あなたは消えるわけじゃない」

雪ノ下「そうだとわかってても……比企谷くんに別れを告げたら」

雪ノ下「もう永遠に会えない気がして……嫌だった」

比企谷「…………」

雪ノ下「本当に子供みたいな、くだらない理由……」

比企谷「…………」

比企谷「……そうだな。 その通りだ」

雪ノ下「…………」


比企谷「けど」

雪ノ下「…………」

比企谷「話してくれて、俺はありがたかった」

比企谷「いろいろと根に持っていたし」

雪ノ下「……ごめんなさい」

比企谷「もういい」

比企谷「正直言うと、あの時……由比ヶ浜が死んでしまったと思ったあの夜」

比企谷「雪ノ下は充分、俺に貸しを返してくれたさ……」

雪ノ下「……!」

     ガバッ!

雪ノ下「違う! 私は……私は!」

雪ノ下「そんなつもりで、ああいう事をしたわけじゃないっ!」


     ムクリ…

比企谷「……落ち着け、雪ノ下」

比企谷「近所迷惑だぞ?」

雪ノ下「……っ」

比企谷「…………」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「どうしたのよ……比企谷くん」

雪ノ下「いったい、あなたに何があったの?」

雪ノ下「なぜ、そんなに壁を作ろうとするの?」

比企谷「……俺はいつも通りだろ」

比企谷「らしくないのは、雪ノ下の方だ」


雪ノ下「私は――」







     ……ピウィ~……







雪ノ下「!?」

比企谷「!?」




     テレビに電源は入っていなかった。

     理屈を言えば、画像が映るわけがない。

     ただ一つの理由を除いて……



     そう……これは【マヨナカテレビ】

     ここ、八十稲羽で起きた殺人事件において重要な役割を果たし

     雨の日の夜0時に見られる、謎の怪現象……

     もっとも、今回は雨ではなく雪だが。








     そして……いつも通り、というか、法則通り

     不鮮明だが、人物像を映し出していく……






雪ノ下「!!!!!!」

比企谷「…………」

雪ノ下「……う…そ…」

比企谷「…………」


     ブツンッ!


比企谷「…………」

雪ノ下「……どうして、こんな」

比企谷「アメノサギリ?が言ってただろ?」

比企谷「【マヨナカテレビ】に映るのは、大衆が『何か起これ』と望んだ人物になるって」

雪ノ下「……っ!」


雪ノ下「……なぜ、そんなに冷静で居られるの?」

雪ノ下「どうして、そんなに他人事に言えるの!?」

雪ノ下「どうしてっ……!」

比企谷「…………」

雪ノ下「わた、し……もう……あなたが……ぐっ……わからないっ」

雪ノ下「怖くないの……?……ひぐっ……恐ろしくないの?……ぐすっ……」

雪ノ下「わ、たし……うぐっ……怖いっ……ぐっ……くっ……ひっく……」

比企谷「…………」

     ギュッ……

比企谷「……心配するな」

比企谷「テレビの世界を悪用する奴はもう居ない」

比企谷「だから、大丈夫だ。 安心しろ」

比企谷「雪ノ下」




     私は……泣いていた。

     怒りと悲しみと……得体の知れない恐怖感、全てが混ざり合った様な

     形容しがたい感情から……



     【マヨナカテレビ】は、比企谷くんを映していた。

     それは……他のみんな、つまり大勢の人が、比企谷くんに『何か起これ』と

     奇異の目で彼を見ている、という事。



     比企谷くんは……泣きじゃくる私を抱きしめてくれた。

     ちょうど、あの時の私がそうした様に。 でも……

     彼は、体温を感じるほど私の近くに居るのに










     比企谷くんは、どこか……遠くに居る様にしか思えなかった。







というところで今日は終了です。
ちょっとゆきのん、可愛くなりすぎかなぁ……
それではまた。



―――――――――――


????


マーガレット「ようこそ、ベルベット・ルームへ」

マーガレット「申し訳ございません。 ただいま、我が主イゴールは所用で……」

マーガレット「あら? お客様は?」

マーガレット「…………」

マーガレット「……そう」

マーガレット「この前と同じく、心当たりは無いのね」

マーガレット「…………」

マーガレット「ふふっ……そうなのかしら?」

マーガレット「なら……」


マーガレット「少し、ペルソナについての逸話でも話しましょうか?」

マーガレット「…………」

マーガレット「イザナギ? いいえ、違うわ」

マーガレット「ジャアクフロストというペルソナの事よ」

マーガレット「…………」

マーガレット「昔……1000年を一人で過ごした異形の者が居たわ」

マーガレット「それがジャアクフロスト」

マーガレット「彼はある日……ある望みを叶えたくて」

マーガレット「険しい道を乗り越え、辛い思いをしながらも」

マーガレット「神様の元へとたどり着いた」

マーガレット「そこでジャアクフロストは、神様にお願いする」




マーガレット「『僕に友達をください』と……」



マーガレット「…………」

マーガレット「神様は、その願いを聞き入れ」

マーガレット「一日だけジャアクフロストに友達を与えた」

マーガレット「ジャアクフロストは喜び、友達と一緒になって野を駆け回り」

マーガレット「いろんな事をして楽しい思い出を作った」

マーガレット「…………」

マーガレット「……でも」

マーガレット「約束の一日が終わると、友達は居なくなり」

マーガレット「数日経つと、彼は……激しく後悔した」


マーガレット「どうして自分は友達を望んだのだろう?」

マーガレット「こんなに寂しくて悲しくなるのなら」

マーガレット「最初から友達なんて望まなければ良かった……と」

マーガレット「…………」

マーガレット「ん? どうしてそんな話をするのか?ですって?」

マーガレット「ふふふ……どうしてでしょうね」

マーガレット「今のお客様をみたら、なぜか話したくなったの」

マーガレット「ただ……それだけよ」

マーガレット「…………」

マーガレット「あら? そろそろお目覚めの時刻見たいね」

マーガレット「また会えるか分かりませんが、いつでもお客様の御来房を歓迎いたします」

マーガレット「ふふふ……」



―――――――――――


数日後

天城屋 雪ノ下の部屋


雪ノ下「…………」

雪ノ下(……あれから、数日が過ぎた)

雪ノ下(大吹雪の影響で、今週いっぱい学校は休みとなり)

雪ノ下(みんなと落ち着いて話す事が出来ていない)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(【マヨナカテレビ】の事……誰も気がついていないのかしら)

雪ノ下(…………)


雪ノ下(そもそも、私も何故ここに居る天城さんにすら話さないのだろう?)

雪ノ下(きっと、みんな力になってくれるはずなのに……)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(……でも)

雪ノ下(今の比企谷くんに何をしても)

雪ノ下(無駄な気がする)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(どうすれば……)

雪ノ下(…………)



―――――――――――


足立宅


比企谷「ふう……」

比企谷「雪下ろし、面倒くせぇ……」

比企谷「…………」

比企谷「……腹減ったな」

比企谷「何か作るか」

比企谷「…………」

比企谷「カップラーメンにするか」



―――――――――――


     ズルズル……

比企谷「ふう……」

比企谷「ごちそうさま……っと」

比企谷「…………」

比企谷(……この後、どうすっかな)

比企谷(…………)

比企谷(ゲームでもするか?)

比企谷(…………)

比企谷(気分じゃないな……)

比企谷(…………)

比企谷(風呂でも沸かすか……)

比企谷(…………)


比企谷(らしくないよな……俺も雪ノ下も)

比企谷(あの日は結局、何事もなく次の日の朝を迎え)

比企谷(昼に吹雪が収まったから、雪ノ下はそのまま帰っていった)

比企谷(…………)

比企谷(お互い、気まずい時間を過ごした気がする)

比企谷(食事以外で、口を開く事はなかったからな……)

比企谷(…………)

比企谷(……でもまあ)

比企谷(結果オーライってところか)

比企谷(…………)



―――――――――――


更に数日後の昼休み

教室


     ガヤガヤ…… ガヤガヤ……

里中「……学校の雰囲気、変わんないね」

天城「嫌な感じ……」

天城「比企谷くんも休み時間になったら、どこかに行ってしまうし……」

雪ノ下「…………」

花村「…………」

花村「……?」

花村「えーっと……雪ノ下さん」

雪ノ下「何かしら?」


花村「気のせいなら謝るけど……比企谷と何かあった?」

雪ノ下「……無いわ」

花村「……本当に?」

雪ノ下「くどいわね。 無いものは無い、としか言えないわ」

花村「そ、そう……」

花村「なら、いいんだけど……」

里中「…………」

天城「…………」


里中(どう見ても何かあったっぽいじゃん)

天城(あの大雪の日から、何となく沈んでる様に思ったけど)

天城(私にかかってきた比企谷くんの電話……関係してるのかな?)

花村(比企谷の奴、焦って どえらい失敗したんじゃねーだろうな……)



―――――――――――


放課後

ジュネス フードコート


里中「うう~っ! 寒い寒い!」

天城「いくら天気が良くても ここはまだまだ寒いね、千枝」

花村「悪いな。 他に集まれるとこ、あればいいんだけど……」

白鐘「いえ、構いません」

りせ「逆に考えれば誰も来ないだろうし、ちょうどいいんじゃない?」

花村「そう言ってもらえると助かるぜ」

花村「ほら、ホット缶コーヒー。 俺の奢りだ」


白鐘「それで……比企谷先輩は、どうなんですか?」

白鐘「雪ノ下先輩が居ないのと何か関係があるんでしょうか?」

里中「う~ん……それがねー」

里中「あたしらにもよく分かんなくて……」

天城「私が知っているのは、比企谷くんから妙な電話があったって事くらいかな?」

白鐘「電話……というと?」

天城「なんかね、陽乃さん近くに居るか?って聞かれて」

天城「居ないって答えると『荷物は届いた』って伝えてくれって言われたの」

りせ「荷物?」

天城「私には何の事だか……ただ」

天城「陽乃さんにね、比企谷くんから連絡があったら」

天城「『必要なものは全部入れた』って言っておいて欲しいと頼まれてもいたの」



一同「…………」


花村(うげ……陽乃さんが絡んでんのかよ)

花村(何となく読めてきたぜ……)


白鐘「……天城先輩。 つかぬ事を伺いますが」

天城「うん」

白鐘「その時、雪ノ下先輩はどこに居たか、わかりますか?」

天城「たぶん自室に居たと思うよ?」

天城「あの日は風邪気味で調子が悪いって、陽乃さんが言ってたし」

白鐘「…………」


花村(さすが白鐘……鋭いな)


花村「ところで、一年生の方はどうだ?」

花村「例の噂話」

りせ「あまり変わってない感じ……」

りせ「今回の大雪騒動で多少は無くなるかなって思ったんだけど……」

白鐘「僕のクラスも同様です」

花村「そうか……俺らのクラスも似た様なもんだ」

花村「もうすぐ2月だってのに よくもまあ飽きないもんだぜ」

里中「は? 2月に何かあったっけ?」

花村「おいおい里中……お前も一応女の子だろーが」

里中「一応は余計!」

花村「2月つったら、バレンタインデーに決まってるだろ?」


里中「ああ、花村には永遠に関係のない話の」

花村「うっせーよ!?」

天城「私は毎年、お父さんには必ずあげてるかな」 クスッ

りせ「そういやあったね、バレンタインデー」

りせ「義理で良ければあげるよ? 花村先輩」

花村「マジで!?」

里中「義理宣言されて そこまで喜ぶのはどーよ?」

花村「やかましい!」

花村「日本全国に居る一個だけが確定している連中より」

花村「いくらかはマシだっての!!」

天城「何の事かわからないけど……義理でいいなら私もあげようか? 花村くん」

花村「もちろん大歓迎だぜ、天城!」

     アハハ……



―――――――――――


足立宅


     ピピピ…… ピピピ……

比企谷「ん?」 ピッ

比企谷「はい、もしもし……花村か」

花村『よう、比企谷。 今一人か?』

比企谷「ああ。 それで、何か用か?」

花村『ああ』

花村『ちょっと学校とかじゃ聞きづらい内容なんでな』

比企谷「……いったい何だよ?」

花村『単刀直入に言うぜ?』



花村『お前……雪ノ下さんと何があった?』


比企谷「…………」

花村『悪いがな、比企谷』

花村『あの大雪の日、俺、お前の部屋に』

花村『大荷物背負った雪ノ下さんが入っていくの、見かけちまった』

比企谷「!」

花村『別に詳細に話せ、とは言わねぇよ』

花村『陽乃さんも絡んでるみたいだし、俺がどうこうするって事でもねえ』

花村『ただ……気になってな』

比企谷「…………」


比企谷「……結論を言えば、本当にやましい事は無かった」

比企谷「それだけだ」

花村『…………』

比企谷「状況を簡単に説明するがな」

比企谷「雪ノ下は、俺に差し入れを持ってきた。 が……」

比企谷「寒さで体調を崩してな……やむを得ず、俺の部屋に泊まらせたんだよ」

比企谷「あの天候で帰らせても悪化させるだけだからな」

花村『…………』

比企谷「本当だぞ?」

花村『……まず最初に言っとくけどな』

比企谷「は……?」


花村『お前、何、羨ましい事態に陥ってんだよ!!』

花村『俺も遭遇してーよ!!』

比企谷「…………」

花村『……コホン』

花村『まあ、それは置いといて、だ』

比企谷「……ああ」

花村『本当に何も無かったんだな?』

比企谷「もちろんだ。 やましい事は何もな」

花村『そうかよ……となると』

花村『逆に『何も無かった』のがショックだったのかな、雪ノ下さん』

比企谷「ない。 それは絶対ない」

花村『なんで言い切れるんだよ……』


花村『お前なぁ……女の子が一人暮らしの男の部屋を訪ねて』

花村『しかも部屋に泊まるのってさ……もうそりゃ覚悟を決めたって事じゃーねーのかよ?』

比企谷「…………」

花村『それでいて何も無かったってなると……』

花村『女としての魅力が~的な事になるんじゃねーの?』

比企谷「だからないって、マジで」

花村『ルパ○ダイヴくらいしてやりゃ良かったのに』

比企谷「いや、それやったら、いろんな意味で俺が終わるっての……」

花村『まあ、だいたいわかったわ』

比企谷「本当かよ……」


花村『……けどな』

花村『少しは察してやってもいいんじゃないのか?』

比企谷「…………」

花村『年頃の女の子が、好きでもない男の家に泊まろうなんて気』

花村『絶対に起きないと思うぜ?』

花村『お前もいろいろあるんだろうとは思うがな……』

比企谷「……状況がそうさせただけだっての」

花村『…………』

花村『オーケー。 それでいいのなら、もうこの話はおしまいにしとく』

花村『今の俺の気持ちは、夏に言った事とほとんど同じだしな』

比企谷「…………」

花村『後、この事は誰にも言わねーから。 じゃあな』

     ブッ…… ツー ツー

比企谷「…………」



―――――――――――


数日後の放課後

通学路


     ピピピ……ピピピ……

比企谷「ん?」 ピッ

比企谷「もしもし……ああ、白鐘か」

比企谷「…………」

比企谷「晩飯?」

比企谷「適当に済ませるつもりだが……」

比企谷「…………」


比企谷「愛屋で一緒にね……」

比企谷「……そういや、そんな約束してたな」

比企谷「わかった。 時間は何時にする?」

比企谷「…………」

比企谷「18時くらいに……了解だ」

比企谷「じゃ、その時に」 ピッ

     ブッ…… ツー ツー

比企谷「…………」



―――――――――――


18時

大衆食堂 愛屋


     ガララッ ラッシャイ

白鐘「比企谷先輩、ここです」

比企谷「おう、白鐘」

比企谷「もう注文したか?」

白鐘「いえ、まだです」

比企谷「そうか。 何を食うかな」

白鐘「僕は……肉丼セットにしようかな」

比企谷「そうだな。 晩飯だし、丼の方がいいか」

比企谷「俺もそれでいこう」


白鐘「では……すみません、肉丼セット2つお願いします」

     アイヨー

比企谷「…………」

白鐘「…………」

白鐘「この前の大雪、大変でしたね」

比企谷「そうだな」

白鐘「僕も我が家の慣れない雪下ろしで骨が折れました」

比企谷「へえ……って」

比企谷「しもやけとか、大丈夫だったのか?」

白鐘「え? ああ、休み休みで、近所の方も手伝ってくれましたし……」


比企谷「そうか……女の子はなりやすいってイメージがあってな」

白鐘「え?」

比企谷「ん?」

比企谷「何か変なこと言ったか?」

白鐘「いえ……ただ」

比企谷「ただ?」

白鐘「僕の事……女の子だって認識してくれてるんだって思って……」///

比企谷「……別にフツーだろ」

白鐘「ところが今だにラブレター送ってくる女生徒の方が多くて」

白鐘「何となく勘違いされてると思うんですが……」

比企谷「あー……それは違うと思うが……確かに言い切れないな」


白鐘「やっぱり、こんな格好を続けているから、なんでしょうね」

比企谷「まあ否定はしない」

白鐘「ふふふ……」

比企谷「何笑ってんだよ」

白鐘「すみません。 やっぱり比企谷先輩だなって思って」

比企谷「…………」

     オマチー

比企谷「おっ……来たか」

白鐘「美味しそうですね」

白鐘「いただきます」

比企谷「いただきます」


白鐘「うん、美味しいですね」

比企谷「ああ」

白鐘「…………」

白鐘「比企谷先輩」

比企谷「ん?」

白鐘「今、僕……料理を勉強しているんです」

比企谷「……ほう」

白鐘「今度、ご馳走したいんですが」

白鐘「構わないでしょうか?」

比企谷「…………」

比企谷「そうだな、近い内に食わせてくれ」

白鐘「ええ、ぜひ」


白鐘「……それから」

比企谷「……まだあるのか」

白鐘「…………」

白鐘「いつか……聞かせてください」

比企谷「…………」

比企谷「……告白の事なら、もう少し時k」

白鐘「それだけじゃないです」

比企谷「!」

白鐘「どんな事でもいいんです」

白鐘「いつだったか、妹さんの話をしてくれましたよね?」

白鐘「ささいな事でいいんです……好きな色とか、嫌いな食べ物とか」

白鐘「少しずつでもゆっくりでも構わない」




白鐘「僕は……あなたを知りたい」



比企谷「…………」

白鐘「だから――」 ホロリ……

白鐘「あ、あれ……」

比企谷「…………」

     ポタ…… ポタ……

白鐘「す……すみません……っ」

白鐘「こんな……つも、り……なかった、ん、です……けど……」

白鐘「や、だな……と、とまら……うぐっ……ひっく……」

比企谷「……っ」



比企谷(……落ち着け)

比企谷(いまさら、こんな事で動揺するな)

比企谷(すべてが……水の泡になるんだぞ!)


比企谷「…………」

比企谷「……どうした、白鐘」

比企谷「薬味がキツかったのか?」

白鐘「うっ……ぐすっ……ひっく……」

比企谷「…………」

―――――――――――

白鐘「……すみません、取り乱してしまって」

比企谷「……いや」


     マイドアリー

白鐘「今日は、ありがとうございました」

比企谷「礼を言う様な事じゃないだろ」

白鐘「…………」

白鐘「……言いにくい事なんでしょうけど」

白鐘「僕は、話してくれるのを待っています」

比企谷「……何の事だ」

白鐘「ふふっ。 それじゃ、僕はこれで……」

     スタ スタ スタ…

比企谷「おい……」

比企谷「…………」



―――――――――――


2月初旬の朝

通学路


花村「ううっ……寒っ」

花村「今日も雪か……」

里中「シャキッとするじゃん、花村」

天城「でもここの所、よく降るよね」

雪ノ下「…………」

里中「そういやクマくん、元気にしてる?」

花村「ああ、元気も元気、無駄に元気すぎて」

花村「こっちが参ってるくらいだっての」

天城「そうなんだ」 クスッ


花村「おおよ」

花村「昨日なんて無理やり誘った比企谷と豆まきしたんだぜ?」

里中「へぇ~。 あの比企谷くんが」

花村「クマの奴、力加減を知らないから思い切りぶつけて来やがったんで」

花村「俺と比企谷で共同戦線はって、投げ返してやったら」

花村「降参クマ~!とか言ってさ」

天城「私も参加したかったな」

里中「あたしも手伝ったけど、天城屋は恵方巻きイベントだったもんね」

     アハハ……

雪ノ下「…………」


雪ノ下(……結局)

雪ノ下(何の進展もないまま日々が過ぎていく)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(比企谷くんの酷い噂は やや収まってきたものの)

雪ノ下(それでも毎日、耳に入らない事はない)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(比企谷くんも相変わらずだし……)

雪ノ下(彼の思う通りに事が進んでいる気がする)

雪ノ下(真意もわからないまま……)

雪ノ下(…………)


     タッ タッ タッ

りせ「先輩達っ!」

里中「ん? りせちゃん?」

天城「どうしたの? そんなに走ってきて」

りせ「はあっ……はあっ……」

りせ「……く、詳しい事は、お昼休み……ええと」

りせ「屋上で話します!」

りせ「必ず来てください! できれば、比企谷先輩も連れてきて!」

花村「はあ? 比企谷もか?」

りせ「お願いします! じゃ!」

     タッ タッ タッ…


里中「…………」

天城「…………」

花村「…………」

雪ノ下「…………」

花村「……いったいどうしたんだ?」

里中「何か、あったっぽいね」

天城「比企谷くんまで呼ぶって事は、相当な事、なのかな……」

雪ノ下「…………」


里中(それにしても雪ノ下さん、どうしてこんなに静かなの?)

天城(最近の雪ノ下さん……最初の頃みたいな雰囲気だし)

花村(……やっぱ、無理にでも聞き出すべきだったか?)


昼休み

屋上


りせ「――という訳です」

花村「」

里中「」

天城「」

白鐘「」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」


花村「【マヨナカテレビ】に……比企谷が映っただと!?」

里中「ど、どういう事!?」

里中「事件はもう終わったんでしょ!?」

天城「何が……起きてるの……」

りせ「あたしもわかんない……昨日、偶然見ただけだし」

白鐘「…………」

白鐘「アメノサギリ?が言ってましたね」

白鐘「【マヨナカテレビ】は、大衆が望むものを見る為の窓、と……」

花村「!」

里中「あっ!」

天城「この噂話……つまり」

天城「みんな、比企谷くんに『何か起これ』と思っているという事!?」

白鐘「おそらくは……」


花村「なんてこった……」

里中「後でクマくんにも知らせとかないと」

天城「そうだね、千枝」

花村「それはそうと、大丈夫なのか? 比企谷」

比企谷「別に……何も問題ない」

花村「はあ?」

花村「いや、怖くないのか?つー意味で」

比企谷「冷静になれ」

比企谷「テレビの世界を悪用する奴はもう居ない」

比企谷「この怪現象はどうにも出来ないが、何か起こる事はもうねーよ」

花村「だからそうじゃねーって!」


花村「大勢の奴が、お前に対して悪く思っているって事なんだぞ!?」

里中「そうじゃん、比企谷くん」

天城「本音を言っていいんだよ?」

りせ「あたし達、話を聞くくらいなら出来るよ?」

比企谷「大丈夫だ」

比企谷「実を言うと……【マヨナカテレビ】の事はもう知っていた」


一同「!?」


雪ノ下「…………」

比企谷「知った日からずっと見てたが……あの映像しか映っていない」

比企谷「さっきも言ったが、もうあの世界を悪用する奴は居ないからな」

比企谷「それに……あんな噂立てられてる時点で」

比企谷「周りが俺に対して悪意ありまくりなのも自明の理だ」


花村「おい……比企谷」

比企谷「隠してた訳じゃない」

比企谷「ただ……言ってどうなるって事でもないだろ?」

花村「……っ」

里中「…………」

天城「…………」

りせ「…………」

白鐘「…………」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

比企谷「話はついたし、俺はもう行く。 じゃあな」

白鐘「あ……」

白鐘「…………」


花村「……クソッ」

花村「そりゃ……お前の言う通りだけどよ……けど……けどっ」

里中「…………」

里中「結局……比企谷くんにとって、あたしらって」

里中「どうでもいい存在だったのかな……」

天城「千枝。 それは言い過ぎだよ」

白鐘「そ、そうですよ……比企谷先輩には……きっと」

白鐘「きっと……何か、理由が……」

白鐘「…………」

りせ「……なんか……バラバラだね、あたし達」

りせ「ほんの少し前まで、仲良くパーティとかしてたのに……」


花村「……雪ノ下さんは、どう思ってるんだ?」

花村「比企谷をこのまま放っておいていいのか?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「本人がああ言ってる以上……どうしようも出来ないわ」


一同「!?」


里中「ちょっと……雪ノ下さん、それってどういう意味?」

天城「比企谷くんの事、どうでもいいの?」

白鐘「待ってください」

白鐘「冷静な態度だったので、少し気になっていたんですけど……雪ノ下先輩」

白鐘「もしかしたら【マヨナカテレビ】の事、知っていたんですか?」

雪ノ下「…………」


雪ノ下「ええ」


一同「!」


雪ノ下「みんなに黙っていた事は謝るわ」

雪ノ下「でも……」

雪ノ下「比企谷くんは、あんな感じで、何でもないって壁を作ってて」

雪ノ下「どう対処したらいいか、わからない」

雪ノ下「今までのやり方は、どれもダメだった」

りせ「で、でも」

雪ノ下「今の状況で比企谷くんに出来る事は、何もない」

雪ノ下「それとも、何かいい案はあるのかしら?」

りせ「そ、それは……」


里中「そんな言い方ないじゃん」

里中「この場にいるみんなが言いたい事は」

里中「あたしらへの信頼ってそんなに無かったの?って事で……」

雪ノ下「信頼だけでは、解決できない事もあるわ」


一同「…………」


里中「……そう」

里中「そういう事なら、もうこの話はおしまいね」

里中「行こ、雪子」

天城「……うん、千枝」


花村「お、おい、里中……はあ」

花村「…………」

花村「まあ……気持ちとしては、俺も同じか」

花村「正直、多少はいい感じになってるって思ってたんだけどな……」

花村「残念だぜ、雪ノ下さん。 じゃあな」

りせ「……バイバイ、雪ノ下先輩」

白鐘「…………」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「……あなたは行かないのかしら?」

白鐘「…………」

白鐘「いえ、もう行きます」

白鐘「また、今度」

雪ノ下「…………」








     何かが……終わった気がした








―――――――――――


数日後

警察署 面会室


比企谷「どうも、足立さん」

足立「やあ、比企谷くん」

比企谷「…………」

足立「…………」

比企谷「何にしようか、迷ったんですけどね」

比企谷「これ……最後の差し入れのたい焼きです」

足立「ありがとう」

比企谷「…………」

足立「…………」


比企谷「突然の電話で驚きました」

足立「そうかい。 君にも驚く事があるんだね」

比企谷「いつの間にご両親とまた会っていたんですか?」

足立「会ったのは先週くらい」

足立「古典的だけど、手紙を出して連絡した」

足立「いつまでも学生の君に お世話になる訳にはいかないしね」

比企谷「…………」

足立「いつだったかの……サバの味噌煮」

足立「やっぱりね、旨くないんだよ」

比企谷「…………」

足立「でも……妙に懐かしくてさ」


足立「味付けといい、火の通り方といい、全然変わっていなかった」

比企谷「…………」

足立「そう思ったらさ、何だか悔しくなってね」

比企谷「悔しい?」

足立「ああ」

足立「何が僕と向き合う覚悟だよ」

足立「結局……何も変わっていないじゃないか、と思ってしまった」

比企谷「…………」

足立「……僕は」

足立「両親に洗いざらいぶちまけてやった」

足立「これで愛想を尽かすだろうと踏んでね」

比企谷「…………」


足立「だけど……予想外の事が起こった」

比企谷「というと?」

足立「怒られたんだよ。 今まで見た事もない怖い顔でね」

比企谷「…………」

足立「そこからはね……この透明な板を挟んで大ゲンカ」

足立「その時の担当警官も逃げ出したかっただろう。 ククク……」

比企谷「…………」

足立「…………」

足立「……しかしね」

足立「何かが変わった気がした」

比企谷「……そうですか」


足立「そんな訳で、もう君の面会は必要ない」

足立「後は僕の両親が電話した通り、面倒みてくれる」

足立「長い事お疲れ様」

比企谷「……いえ」

足立「…………」

足立「ふふふ……それにしても」

足立「どうして僕や君は、こんな力を持ってしまったんだろうね?」

足立「いまさらだけど……もし無かったらと、どうしても考えてしまうよ」

比企谷「…………」

比企谷「俺も不思議に思っています」

比企谷「ここに……八十稲羽に来るまで何とも無かった」

足立「僕と同じだね……何か、きっかけでもあったのかなぁ」

比企谷「…………」



比企谷(きっかけ……?)


比企谷「…………」

足立「…………」

比企谷「それじゃ……俺はこれで」

足立「ちょっと待ってくれ」

比企谷「はい?」

足立「今の僕は……君から見て、どう思う?」

比企谷「…………」

比企谷「正直に言っても?」

足立「ぜひ」

比企谷「そうですね……」


比企谷「ようやく一人で立ち上がって、スタートラインについたと思います」

足立「……相変わらずはっきり言うねぇ」

足立「本当に生意気だよ、君は」

比企谷「性分なので」

足立「ふふふ……見てろよ」

足立「必ず君よりハッピーになって見返してやるからな」

比企谷「前途は多難なようですが」

足立「何……ちょうどいいハンデさ」

比企谷「…………」

足立「…………」

     ハハハ……



―――――――――――


比企谷「…………」 ピッピッピッ……

     ルルルルル……ルルルルル……ガチャ

比企谷「もしもし……比企谷です」

比企谷「突然すみません、堂島さん。 今、いいですか?」

比企谷「…………」

比企谷「実は、無理なお願いだと思うんですが」

比企谷「頼みたい事があるんです」

比企谷「…………」

比企谷「はい……それは――」



―――――――――――




天城屋


雪ノ下「…………」

雪ノ下「…………」 グッ

     コン コン

陽乃「はーい。 誰かしら?」

雪ノ下「私です、姉さん」

陽乃「雪乃ちゃん?」

     ガチャ…

陽乃「どうしたの?」

雪ノ下「…………」


雪ノ下「相談したい事があります」

雪ノ下「比企谷くんの事で」

陽乃「…………」

陽乃「いいわ。 入って」

雪ノ下「はい」

―――――――――――

陽乃「それで? 比企谷くんの事って?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「全てを話します。 でも……」

雪ノ下「口を挟まず最後まで聞いて欲しい」

陽乃「……わかったわ」



―――――――――――


雪ノ下「――という事なの」

陽乃「…………」

雪ノ下「信じられないでしょうね」

雪ノ下「今、テレビ画面に手を突っ込んで見せるわ」

陽乃「雪乃ちゃん」

雪ノ下「……はい」

陽乃「私もね……あなたに隠してた事があるの」

雪ノ下「え……」

陽乃「去年の夏くらいにね……比企谷くんと ある約束をしたのよ」

雪ノ下「!」


陽乃「雪乃ちゃんが事件に関わっている事は、薄々わかっていたわ」

陽乃「だけど私……何があっても雪乃ちゃんを守るよう」

陽乃「比企谷くんに約束させたの」

雪ノ下「!!」

陽乃「ふふっ……考えていたのとは随分違ったけど」

陽乃「彼、しっかりと約束を果たしてくれたみたいね」

雪ノ下「…………」

陽乃「それで? 私に相談したい事は何かしら?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「今……比企谷くんは、酷い噂の中に居るわ」

雪ノ下「でも、彼は、いつも以上に壁を作ってしまっている」

雪ノ下「私は……どうにかしたいけど、どうすればいいか、わからない」


陽乃「…………」

雪ノ下「教えて、姉さん」

雪ノ下「私はどうすればいいの?」

雪ノ下「どうしたら、比企谷くんを元に戻せるの?」

陽乃「…………」

陽乃「ねえ、雪乃ちゃん」

雪ノ下「はい」

陽乃「それってさ……聞く相手を間違っていないかしら?」

雪ノ下「え……」

陽乃「雪乃ちゃんはそれを知っていながら、私に質問してない?」

雪ノ下「……っ!」








     やっぱり……私の姉は、一枚上手だった








―――――――――――


数日後 降雪の休日

ガソリンスンタンド


     サクッ… サクッ… サクッ…

比企谷「…………」

比企谷「おい」

店員「ん?」

店員「どうしたんだい? もしかしてアルバイトの……」

比企谷「お前……誰だ?」

店員「え?」

比企谷「はっきり言って気にも留めていなかったがな……」

比企谷「このガソリンスタンドに バイトは一人も居ないそうだぞ?」

店員「…………」


比企谷「俺は改めて、ここ八十稲羽に来た時を思い返した」

比企谷「この街に来て、何かおかしな事はなかったか?」

比企谷「テレビの世界に入る前に、この妙な力を手に入れた連中に共通点はないか?」

比企谷「それらを考慮した結果……」

比企谷「ふと、お前の事を思い出した」

店員「…………」

比企谷「何気ない会話と握手をしたが……」

比企谷「俺はその後すぐ、体調を崩した事を覚えている」

店員「…………」

比企谷「あの時は油の匂いに当てられたと自己完結していたが」

比企谷「様々な事を知った『今』なら……怪しい出来事だ」

店員「…………」


比企谷「それに少し聞いて回ったが、お前の姿は」

比企谷「必ず雨の日に目撃され、名前を知っている奴は一人も居なかった」

店員「…………」

比企谷「もう一度言う」

比企谷「お前は……誰だ?」

店員「…………」

店員「……フ」

店員「フフフフフフ……ハハハハハハッ!」

比企谷「…………」

店員「よく気がついたね……褒めてあげるよ」

比企谷「そんなもんいらねぇ。 さっさと質問に答えろ」

店員「フフフ……我が名は――」








     ――イザナミ――






というところで今日は終わりです。
ちょっと急展開すぎるかな……P4(厳密には真エンド)知っていないと
分からないかも、と思いつつもこうしてしまった……。
そして、ようやくここまで来たなぁ。長かった。
次回、出来るだけ早く投下出来るよう頑張ります。それでは、また。



―――――――――――


ジュネス フードコート


花村「…………」

花村「…っえっくしッ!!」

花村「……さぶっ」 ズビッ…

花村「…………」


??「……花村?」


花村「?」

花村「! ……里中」

里中「何してんの? こんな雪の中のフードコートで」


花村「お前こそ何しに来たんだよ?」

里中「あ、あたし? あたしは……」

里中「…………」

花村「…………」

花村「コーヒー、飲むか?」

里中「あたしはミルクティーがいいじゃん」

花村「へいへい」

―――――――――――

里中「ふう……」

花村「…………」

里中「…………」


花村「俺さ……」

里中「うん」

花村「無い知恵絞って今回の事、なんとかできねーか 考えてみた」

里中「…………」

里中「いいの浮かんだ?」

花村「浮かんだら こんなとこいねーよ」

里中「そっか……」

花村「少なくともよ……【マヨナカテレビ】を何とかしたい」

花村「けど、それはあの世界『そのもの』が問題になってくる」

花村「どうにかなんて出来る訳がねぇ……」

里中「……だね」

花村「かと言って噂をやめさせるなんて出来ねーし」

花村「くよくよ考えてたら、なぜかここに足が向いたんだ」


里中「ふうん……」

花村「改めて聞くが、お前は何でここに来たんだ?」

里中「…………」

里中「あたしは、比企谷くんのこと考えてた」

花村「はあ? お前いまさら参戦すんの?」

里中「そういう意味じゃないっての!」

里中「由比ヶ浜さんが言ってたじゃん?」

里中「比企谷くんは、誰よりも心の痛みを知ってるから」

里中「ぶっきら棒な態度を取るんじゃないかって」

花村「…………」

里中「だったら」


里中「あたしらにこんな思いまでさせて、自分から人を遠ざけようとするのは」

里中「どんな痛みからなんだろうって思ってさ……」

花村「痛み、ね……」

里中「…………」

里中「最初……転校して来たばかりの比企谷くん」

里中「緊張をほぐす意味も兼ねて、せっかく案内を買ってでたのに図星突かれてさー」

里中「あたし、何てひねくれた奴なんだろう!」

里中「って思ったの」

花村「ははは、俺も覚えてるぜ」

花村「お前が初対面でこんなに悪態つくなんて、どんな奴だよ?」

花村「って驚いたな」

里中「…………」

里中「でもさ」


里中「あの時の比企谷くん……」

里中「雪ノ下さんが見送りに来なくて……きっと心に痛みを感じていた」

里中「だから……ああいう態度をとったのかなって」

里中「『今』は、思えるじゃん」

花村「……何でもないってフリして、か」

里中「…………」

花村「…………」

花村「……なあ、里中」

里中「うん」

花村「思えば、ここだったな。 あいつとの付き合いが始まったのって」

里中「そうだね……花村がささやかな歓迎会だって言って」

花村「ああ……」


花村「…………」

里中「…………」

花村「やっぱり……比企谷と過ごした『これまで』を」

花村「ナシには出来ねーよな」

里中「うん。 そうじゃん」

里中「後……残り1ヶ月程度だけど」

里中「このままにしたくないじゃん!」

花村「だよな!」

     ハハハハハハ……

花村「ふう……」

花村「……そういやよ」

里中「うん?」


花村「結局、【マヨナカテレビ】って何だったんだろうな?」

里中「怪現象じゃん」

花村「あーいや、そうじゃなくてな」

花村「情報の出処?みたいな意味」

花村「俺も軽い噂話程度には知ってたけど、詳しくは……そうだ!」

花村「お前から聞いた気がするぜ?」

里中「あたし? そうだっけ?」

花村「お前は誰から聞いたんだ?」

里中「え~っと……あたしも他の女子が話してるのを聞いてって感じだったと思う」

花村「そうか……けど」

花村「そうなると誰が最初に流したんだ……?」


里中「そりゃ偶然見かけた奴なんじゃん?」

花村「偶然……ね」

花村「…………」

里中「花村?」

花村「……なあ、里中」

里中「うん」

花村「【マヨナカテレビ】ってさ、初めて見た時、どう思った?」

里中「え? う~ん……」

里中「ちょっと不気味だな……って思ったじゃん」

花村「俺もだ。 特に俺は、小西先輩だと分かっちまったからな……」

花村「運命の人とかいう前置きがあっても嫌なイメージしか沸かなかった」

里中「ああ……そういや噂話は、運命の人が見えるって話だったね」


花村「……おかしいと思わねぇか?」

里中「何が?」

花村「何の予備知識もナシであれ見て」

花村「運命の人、なんて明るいイメージ……沸くと思うか?」

里中「うーん……そりゃ確かに沸かないじゃん」

里中「けど世の中、いろんな人が居るし……てか、何が言いたいの?」

花村「……上手く言えねーけど」

花村「【マヨナカテレビ】を大勢の人間に見させる為に」

花村「『誰か』が、故意に噂話を流したと思えねーか?」

里中「……!」



―――――――――――


白鐘宅


     ピピピ…… ピピピ…… ガチャ

白鐘「はい、もしもし。 白鐘です」

白鐘「堂島さん? 珍しいですね、どうしました?」

白鐘「…………」

白鐘「え……」

白鐘「…………」

白鐘「比企谷先輩が……?」

白鐘「…………」

白鐘「いえ……僕に心あたりはありませんが」

白鐘「はい……はい……」

白鐘「それでは……」


     ブッ…… ツー ツー

白鐘「比企谷先輩があの人と面会……?」

白鐘「いまさら何故?」

白鐘「…………」


白鐘(事件自体はとっくに終わっている)

白鐘(何か知りたいとしても、どうしてそんな事を……)

白鐘(何の意味が……?)

白鐘(…………)

白鐘(皆目見当もつかないな……)

白鐘(どういう事なのだろう?)



―――――――――――


天城屋 雪ノ下の部屋


雪ノ下「…………」


雪ノ下(……そう)

雪ノ下(私は知っている)

雪ノ下(今の比企谷くんを元に戻せそうな方法を思いつける)

雪ノ下(きっかけなり情報なり、あるいはそのものを教えてくれそうな人を……)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(どうして……)

雪ノ下(どうして私は、連絡を取ろうとしないの)

雪ノ下(このケータイのボタン押すだけで済む話でしょ!?)

雪ノ下(……どう……して)


雪ノ下(…………)


     ピピピ…… ピピピ……


雪ノ下「ひゃっ!?」

雪ノ下「…………」 ドキドキ

雪ノ下「び、びっくりした……」

     ガチャ

雪ノ下「もしもし……白鐘くん?」

雪ノ下「どうしたのかしら?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「堂島さんから?」

雪ノ下「…………」


雪ノ下「え?」

雪ノ下「どうしていまさら比企谷くんがあの人との面会を?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「……思い当たる節(ふし)なんてないわ」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「ごめんなさい、お役に立てなくて」

雪ノ下「じゃ……」

     ブッ…… ツー ツー

雪ノ下「…………」


雪ノ下(何をしているのかしら……比企谷くん)

雪ノ下(…………)


テレビの世界


クマ「…………」

クマ「……およ?」

クマ「この気配は……センセイクマ?」

クマ「…………」

クマ「どうして入ってきたクマ?」

クマ「それはともかく、お迎えに向かうク……」

クマ「!?」

クマ「…………」

クマ「……どういう事クマ?」

クマ「これは……この感じ方は……!!」

クマ「ともかく、ヨースケに知らせるクマ!!」



―――――――――――


ジュネス フードコート


     ルルルルル……ルルルルル……

里中「どう? 花村?」

花村「……ダメだな。 繋がらねぇ」 ピッ

花村「比企谷、電源切ってんのかもな……」

里中「そう……」

花村「どうすっかな……他の連中に声かけてみるか?」

里中「うん、そうだね」

里中「じゃ、あたし、雪子にかけてみる」

花村「おう。 んじゃ俺は……」


     ピピピ…… ピピピ……

花村「うおっと!?」

花村「あ~……ビビった」 ピッ

花村「はい、もしもし?」

花村「お、白鐘か。 ちょうどいい……ん?」

花村「…………」

花村「はあ? 比企谷が?」

花村「いや、初耳だな……つーか、何してるんだ? あいつ……」

花村「ともかく、心当たりなんぞ全くねーよ」

花村「…………」

花村「は? 何がちょうどいいのかって? ああそれはな……」


花村「今、里中と話しててな……くだらねー妄想かもしれないが」

花村「【マヨナカテレビ】の噂を故意に流した奴が居るんじゃね?って」

花村「話になってな……」

花村「…………」

花村「ああ、もちろん根拠なんてねーよ」

花村「元々の噂話とあまりに掛け離れているんじゃね?ってだk」


??「ヨースケ!!」


花村「どわっ!? いきなり出てくんなよ! クマ吉!」

花村「それに人が電話してる最中に大声出すなっての!」

クマ「そ、それどころじゃないクマ!! 一大事クマよ!!」


花村「あん? ……すまん白鐘、ちょっと待っててくれ」

花村「どうしたんだよ、クマ?」

里中「雪子ごめん、ちょっと待ってて」

里中「どうしたの? クマ?」

クマ「い、今、テレビの中にセンセイが居るクマ!!」

花村「……そりゃ確かに珍しいけど、俺も時々お前に会いに行ってたし」

花村「出入り口は出しっぱなしにしてたんだろ?」

花村「あいつ、元気だったか?」

クマ「そんなのんびりした話じゃないクマ!!」

クマ「センセイは……センセイは……!」

クマ「『あの世界』の『どこ』に居るのか、わからんクマよ!!」

花村・里中「……え?」


花村「…………」

里中「…………」

クマ「…………」

花村「えーっと……つまり、それって?」

里中「今までの……被害者と同じ?」

クマ「そうクマ!!」

花村「」

里中「」

花村「たたたたた、大変だ!! お、おい! 白鐘!!」

里中「ゆゆゆゆゆ、雪子! お、おおお、お、落ち着いて聞いて!!」



―――――――――――


天城屋 雪ノ下の部屋


雪ノ下「…………」

     コン コン

雪ノ下「はい?」

??「雪ノ下さん、大変だよ!」

雪ノ下「天城さん? どうしたの?」

     ガチャ

天城「い、今、千枝から電話があって……」

天城「比企谷くん、テレビの世界で行方不明になってるらしいの!」

雪ノ下「!?」

雪ノ下「どういう事なの!?」


天城「私もついさっき聞いたばかりだから、よくわからない……」

天城「でも、花村くんが一度みんなで集まろうって」

天城「ジュネスのあの場所で待ってるって……」

雪ノ下「わかったわ、天城さん」

雪ノ下「すぐに出かける準備するから!」

天城「うん。 玄関ロビーで待ってるね」

天城「一緒に行こう!」


―――――――――――


ジュネス フードコート


雪ノ下「ごめんなさい、遅くなって……」

花村「ああ、雪ノ下さん」

花村「白鐘達も今来たところだ。 気にしないでくれ」

雪ノ下「それで、比企谷くんは? 今、どうなってるの!?」

里中「雪ノ下さん、気持ちは分かるけど落ち着いて……」

りせ「とにかく比企谷先輩が行方不明なのは間違いないんでしょ?」

りせ「だったら早くあの世界に行かないと……」

花村「ちょっと待ってくれ」

花村「どうもいろいろ起こってるみたいでな……少し整理しようぜ」

白鐘「そうですね。 では、まず僕から話します」

白鐘「実は今朝、堂島さんから比企谷先輩についての電話があったんです」

りせ「堂島さんが?」


白鐘「ええ」

白鐘「数日前の話だそうですが……ふと気になって僕にかけたみたいです」

りせ「いったい比企谷先輩は何をしたの?」

白鐘「それが……生田目との面会を頼んだそうです」

りせ「……え?」

りせ「いまさら……何で?」

白鐘「堂島さんも不思議に思ったそうで」

白鐘「彼、立会いのもとでなら、と、許可したそうです」

りせ「ふうん……それで?」

白鐘「堂島さんの話だと、事件に関する事なのかどうか微妙だそうですが」

白鐘「生田目がこの街に帰って来たばかりの頃の事を聞いていたとか……」


白鐘「久慈川さんも心当たりはありませんか?」

りせ「う~ん……ないなぁ」

花村「俺らにも聞いてたが、白鐘は何でこんなに気にするんだ?」

白鐘「……わかりません。 ただ」

天城「ただ?」

白鐘「比企谷先輩は、無駄な事を嫌う人です」

白鐘「今回の僕たちの事も、この面会の件も」

白鐘「必ず何か、理由があるはずです」

雪ノ下「…………」

花村「よし、とりあえずそれは置いておいて」

花村「俺たちの話だがな……」

白鐘「【マヨナカテレビ】の噂話がどうとか言ってましたね?」

花村「ああ」


花村「里中と話してて思ったんだが……【マヨナカテレビ】の噂話ってさ」

花村「『誰か』が、意図的に流したんじゃねーの?って思ってな」

白鐘「『誰か』が、意図的に……?」

りせ「けど、仮にその通りだとしても、そんな事して何の得になるの?」

天城「私もそう思う……いくらなんでも無理があるんじゃないかな?」

花村「まあ根拠なんてねぇよ」

花村「今回の比企谷の事を考えてたら、ふと、な……」

雪ノ下「…………」

白鐘「ともかく、これで一通りの情報は出ましたね?」

花村「ああ」

白鐘「なら、こうなった理由は分かりませんが……」

白鐘「比企谷先輩を救出に向かいましょう」



―――――――――――


テレビの世界


りせ「…………」

りせ「……っ」

りせ「ダメ……居場所、わかんない」


一同「!?」


花村「ど、どうしてだ!?」

花村「比企谷の事なら、だいたいわかってんだろ!?」

りせ「あたしに言われても……けど、一言いうなら」

りせ「あたし達……まだまだ比企谷先輩の事、理解してないって事だよ」


花村「くっ……!」

里中「そんな事、言われても……」

天城「ここにいる私たち以上に比企谷くんを知っている人なんて……」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「……居るわ」


一同「え!?」


雪ノ下「一人だけ……私に心当たりがある」

雪ノ下「きっと、何とかしてくれるわ……」


一同「……?」


雪ノ下「とりあえず、外に出ましょう」



―――――――――――


由比ヶ浜の部屋


     ピピピ…… ピピピ……

由比ヶ浜「あ、ケータイ鳴ってる」 ガチャ

由比ヶ浜「もしもし?」

由比ヶ浜「! ゆきのん! 待ってたよ!」

由比ヶ浜「それで、ヒッキーは……え?」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「!?」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「そ、それって……かなりヤバイんじゃないの!?」


雪ノ下「ええ……もう八方塞がりという状況よ」

雪ノ下「でね、由比ヶ浜さん」

雪ノ下「今聞いた情報から、わかる範囲で構わない」

雪ノ下「比企谷くんについて、何かわからないかしら?」

雪ノ下「どんなささいな事でもいいの。 何か、気がつかなかった?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「……そう」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「ううん……私の方こそ、ごめんなさい」

雪ノ下「必ず何とかしてみせ……え?」


由比ヶ浜「私、そっちに行く!」

由比ヶ浜「ゆきのんの説明だけじゃ伝わらない事もあると思う」

由比ヶ浜「だから……そっちに行って直接見て、聞いて」

由比ヶ浜「答えを出すよ、私!」

由比ヶ浜「じゃ!」

     ブッ…… ツー ツー

由比ヶ浜「急がなきゃ……!」

     ダッ!


雪ノ下「…………」

花村「どうだった? 雪ノ下さん」

雪ノ下「……私の説明だけじゃ良く分からないから」

雪ノ下「今からこっちに来るって……」

花村「そうか……ありがたいな」

白鐘「…………」

白鐘「みなさん、どうでしょう?」

白鐘「由比ヶ浜さんがここに来るのは、早くても夕方頃です」

白鐘「その間に出来るだけ情報を集めませんか?」

里中「というと?」


白鐘「僕の意見としては2つあります」

白鐘「比企谷先輩の足取りと、何を調べていたのか」

白鐘「まず、堂島さんに連絡して何とか生田目に面会できないか聞いてみます」

白鐘「彼が比企谷先輩と何を話したのか、知りたい」

白鐘「それから比企谷先輩のここ数日の動きですね」

白鐘「推測ですが、この街で何かを調べていた可能性があります」

天城「具体的にはどうしたらいいかな?」

白鐘「簡単に言えば聞き込みですね」

白鐘「彼を誰かが見かけていないか、聞きいてまわるのが手っ取り早いでしょう」

りせ「うん、よくわかったよ、白鐘くん」

白鐘「それでは……そうですね」

白鐘「夕方の17:00くらいに一度ジュネスに集まりましょう」

クマ「了解クマー!!」



―――――――――――







     数時間後








八十稲羽駅 駅前


由比ヶ浜「ゆきのん!」

雪ノ下「! 由比ヶ浜さん」

雪ノ下「わざわざごめんなさい……使った交通費は」

由比ヶ浜「そんな話は後でいいよ、ゆきのん」

由比ヶ浜「それよりも早く、みんなに会わせてくれる?」

雪ノ下「……ええ、わかったわ」

雪ノ下「そこにタクシーを待たせてあるから、それに乗って」

雪ノ下「ジュネスに向かうわよ」

由比ヶ浜「うん!」


     ブロロロロロ……

由比ヶ浜「……ところでゆきのん」

雪ノ下「何かしら?」

由比ヶ浜「ヒッキー、どんな風に……ううん、そうじゃない」

由比ヶ浜「私が帰った後、どんな様子だった?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「……ひと言では言えないわ」

雪ノ下「最初は、小さな違和感だったけど……スキーに行ってから」

雪ノ下「いいえ……その前からも、人付き合いが悪くなっていった気がする」

由比ヶ浜「…………」


雪ノ下「何かにつけて忙しいと言ってたけど、ちゃんと理由はあったの」

雪ノ下「足立さん……今回の事件の真犯人の足立さんに」

雪ノ下「よく面会しに行ってたらしいわ」

由比ヶ浜「え!?」

雪ノ下「驚くでしょうね……あなたも知っての通り」

雪ノ下「比企谷くんがここに来てからの保護者であり同居人。 彼が真犯人だったの」

由比ヶ浜「…………」

雪ノ下「それを知ってから、私たちも比企谷くんに話しかけ辛くなった」

雪ノ下「酷い噂も無くならないし……」

由比ヶ浜「? 噂?」


雪ノ下「……どこから漏れたのか」

雪ノ下「今学期が始まってから、比企谷くんが」

雪ノ下「足立さんと親戚である事がバレてしまってたの」

由比ヶ浜「!!」

由比ヶ浜「ヒッキー……」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「………っ」

雪ノ下「……私っ」

雪ノ下「どうする事も出来なかった……!」

雪ノ下「どうする事も……」

由比ヶ浜「ゆきのん……」

由比ヶ浜「…………」



―――――――――――


ジュネス フードコート


花村「由比ヶ浜さん、久しぶり!」

由比ヶ浜「うん、花村くん。 それにみんなも!」

クマ「ユイちゃん、元気そうで何よりクマ!」

里中「こんな状況じゃ無かったら、もっと良かったんだけど……」

由比ヶ浜「そうだね……でも、今はくよくよ考えても仕方ないよ!」

由比ヶ浜「で、私に話したい事って何かな?」

白鐘「僕から話しましょう」

白鐘「ですがその前に、今の状況を説明しておきます」


白鐘「――という訳で、比企谷先輩は」

白鐘「テレビの世界に居る事はわかっていますが、居場所がわかりません」

白鐘「そこで……」

由比ヶ浜「私に……ヒッキーの『何か』を教えて欲しいんだね」

由比ヶ浜「責任重大だぁ……」

天城「大丈夫だよ、由比ヶ浜さん。 肩の力、抜いていこう!」

由比ヶ浜(ううっ……余計プレッシャー)

白鐘「それでは、ここからが新たな情報ですが……」

白鐘「まず、生田目ですけど……堂島さんの言う通りでした」

りせ「なんか、八十稲羽に帰ってきた頃の話を聞いたっていう?」

白鐘「ええ」


白鐘「この街に帰ってきて おかしな出来事は無かったか?とか」

白鐘「妙な奴に話しかけられなかったか?とか……」

花村「妙な奴だって?」

白鐘「ええ……ですが、生田目は特に思いつかず」

白鐘「この街に帰ってきた時、給油の為にガソリンスタンドに寄った事くらいしか」

白鐘「思い出せなかったそうです」

花村「え!?」

由比ヶ浜「どうしたの? 花村くん?」

花村「いや……それが」

花村「この街で最近の比企谷を見かけた奴が居ないか、聞き込みしてたんだけど」

花村「ほら、商店街近くにあるガソリンスタンド」

花村「あそこのバイトの事を聞いてったってのが何人か居たんだよ」


白鐘「バイト……ですか?」

里中「ああ、確かにそんな人いたね」

里中「時々見かけた気もするけど、ひょろっと背の高い男の人だったかな?」

花村「これも聞いた話だが……あそこでバイト雇ってたっけ?みたいなのや」

花村「よく雨の日に見かけるな、とか、そういや名前を知らない、とか」

花村「そんな話を聞いた」

白鐘「…………」

花村「俺は商店街には行きづらいんで、そんな奴まったく知らねーけど」

花村「念のため、スタンドを訪ねてみたんだが……やっぱりバイトは雇っていないそうだ」

りせ「なんか……怪しいね、そのバイトの人」


白鐘「ふむ……」

白鐘「確証は持てませんが、比企谷先輩は」

白鐘「今回の事件に関する『何か』を見つけ出し、それを追求しようとして」

白鐘「今の事態におちいった……という事になるのでしょうか」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「どうかしら? 由比ヶ浜さん?」

雪ノ下「何か……答えを出せるかしら?」

由比ヶ浜「……ごめん、ゆきのん」

雪ノ下「そう……」


一同「…………」


白鐘「……こうなれば、その不可思議な人物を探す方が」

由比ヶ浜「あ、待って、白鐘くん」

白鐘「え?」


由比ヶ浜「私が知りたい事は、そういう事じゃないの」

由比ヶ浜「みんなから見た『ヒッキーの事』を教えてくれないかな?」


一同「!」


白鐘「……そうでした」

白鐘「僕たちの今の目的は、比企谷先輩の『何か』を知る事」

花村「だな……ついつい推理の方に傾いちまってたぜ」

里中「そうだね……」

里中「じゃあ、あたしから言うじゃん?」

由比ヶ浜「うん!」



―――――――――――


りせ「――って感じかな」

由比ヶ浜「…………」


花村(これで一通りの意見を聞いたけど……)

里中(みんな似たり寄ったりじゃん)

天城(参考になるのかな……)

クマ(センセイ……どうしたクマ?)

白鐘(みなさんも薄々変化に気づきながら、やがてそれに慣れていった)

白鐘(そんな印象を受けますね……)


由比ヶ浜(……でも、ヒッキーは、以前から壁を作る癖があった)

由比ヶ浜(だけど今回のは、それを段々と強めていった感じ……どうしてだろう?)

由比ヶ浜(ヒッキーをよく知ってるゆきのんが戸惑うくらいに……なぜ?)


白鐘「……どうでしょう? 由比ヶ浜さん」

由比ヶ浜「…………」


一同「…………」


由比ヶ浜「……ね、白鐘くん」

白鐘「! は、はい」

由比ヶ浜「今から……足立さんに面会って出来る?」


一同「え!?」


白鐘「い、今からですか!?」

花村「もう19:00時過ぎてるぞ……面会時間、さすがに終わってるんじゃないのか?」


由比ヶ浜「でも、どうしても会っておきたい」

由比ヶ浜「ゆきのんからも聞いたけど、どうして足立さんにそこまでこだわったのか」

由比ヶ浜「私、知りたい」


一同「…………」


白鐘「……わかりました」

白鐘「堂島さんに相談してみましょう」

白鐘「聞いてくれるかどうか、分かりませんが……」

由比ヶ浜「うん、お願い」


花村(さすが、というべきか……俺はそんなこと少しも考えなかったぜ)

里中(でも……親戚だから、仕方なくやってたっていう気もするし)

雪ノ下(…………)



―――――――――――


八十稲羽警察署

面会室


堂島「……ったく」

堂島「こういう事は、これっきりにしてもらいたいな」

白鐘「何度もすみません……」

堂島「まあいい。 なんだかんだ言って世話にはなったし」

堂島「比企谷の保護者代理を引き受けてもいる」

堂島「多少の骨は折ってやるさ」

     ガチャ……

足立「……!?」


堂島「来たか、足立」

足立「……これはどういう事ですか? 堂島さん」

堂島「さあな……俺にもわからん」

堂島「ただ、ここに居る連中は、お前に聞きたい事があるそうだ」

足立「僕に……?」

堂島「事件の事じゃないらしい……ま、話を聞いてやってくれ」

足立「はあ……」


由比ヶ浜「こ、今晩は……足立さん」

足立「今晩は」

由比ヶ浜「覚えていますか? 私のこと……」


足立「ええと……確か」

足立「そうだ、去年の夏くらいに比企谷くんがアパートに連れ込んだ娘だね?」


一同「!?」


花村「え!? あいつ、何しちゃってんの!?」

クマ「アダっちー、もっと詳しく言うクマ!」

由比ヶ浜「い、今は関係無いし、違うから!!」///

足立「相変わらず賑やかだねぇ……君たちは」 クスクス

由比ヶ浜「は、話を戻します!」

由比ヶ浜「それで、ですね……その」

由比ヶ浜「ヒッキー……比企谷くんとは、面会でどんな話をしたんですか?」


足立「う~ん……特別な事は何もしてないと思うけど」

由比ヶ浜「それでも構いません。 話してください」

足立「…………」

足立「……時々差し入れや着替えを持ってきてくれてただけだよ」

足立「僕の両親の代わりにね」

由比ヶ浜「…………」

足立「彼とは別れ際に数言話すくらいだった」

由比ヶ浜「どんな話ですか?」

足立「……最初は鬱陶しかったんだけどね」

足立「ある面会の時、『あなたという人間を知る為』にここに来てるって言ってたよ」

由比ヶ浜「え……」

足立「そういやその時……自分は昔、学校をサボった事があるって言ってたっけ」

足立「話を聞く限りじゃ小学生くらいの時の事みたいだった」


由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「他にもありますか?」

足立「そうだね……」

足立「…………」

足立「後は、いろいろ褒めてくれたかな」

由比ヶ浜「褒める?」

足立「僕の料理は旨かった、とか、刑事になるのは大変だったろう、とか……」

由比ヶ浜「…………」

足立「……シャクに障るんだけどね」

足立「けっこう嬉しかったんだよ、これが」


足立「なんかね……上手く言えないけど」

足立「親を含めて、僕の周りにそんな事を褒めてくれる人は居なかった」

足立「いや……厳密にはそう思う事が出来なかったんだと思う」

由比ヶ浜「…………」

足立「なのにね……こんな立場になった僕に比企谷くんは」

足立「いいところもあるって、言うんだよ……」

足立「いや、もちろんはっきりそう言った訳じゃないけどね」

足立「けど僕は……そんな感じに受け取った」

由比ヶ浜「…………」

足立「…………」

足立「……そしたらさ」

足立「クソだと思ってた世の中が、少しだけ明るく見えた気がしたんだ」

足立「比企谷くんのおかげだと思うと、ちょっと腹も立つけどね」

由比ヶ浜「…………」


花村(あいつ……こんな事してたのか)

里中(足立さんも……いろいろ抱えてたんだ)

天城(テレビの世界の足立さんは、あくまで一面……)

りせ(けど、あたし達は それが足立さんの全てだって、無意識に考えてた)

白鐘(比企谷先輩は一番間近に居て、それもあって)

白鐘(そうでない事を見抜き、一人、足立さんと向き合っていたのか……)

クマ(さっすがセンセイクマ!)

雪ノ下(…………)


足立「まあ……ついこの前、さすがにこのままじゃいけないと思って」

足立「両親に手紙を出して……ん?」

足立「君、どうしたんだい?」




由比ヶ浜「……っ……ぐすっ……ひくっ……」



一同「」


里中「ど、どうしたの!? 由比ヶ浜さん……」

天城「お腹でも痛いの?」

由比ヶ浜「……ぐっ……違う……くっ……」

花村「…………」

由比ヶ浜「私……たぶん分かったと思う……ぐすっ……でも……」

由比ヶ浜「バカだよ……ヒッキー……大バカだよっ……!」

由比ヶ浜「ヒッキーは……ヒッキーはっ……!」


一同「…………」



―――――――――――


????


比企谷「…………」

比企谷「……う」

比企谷「…………」

比企谷「……ここは?」

比企谷「…………」


比企谷(……霧がかかっている)

比企谷(という事は、テレビの世界か……)


比企谷(…………) ゴソゴソ……スチャ(メガネ装備)

比企谷(鳥居? 初めて見る場所だな……)

比企谷(あの偽バイト……雪ノ下のペルソナと同じ”イザナミ”と名乗っていた)

比企谷(どういう事だろう……何か関係があるのだろうか)

比企谷(…………)

比企谷(ともかく、あいつが俺をここへ放り込んだのは間違いない)

比企谷(さて……どうしたもんかな)


     ――随分と冷静だね――


比企谷「!」

比企谷「イザナギ!」


     ガキィンッ!


イザナミ「おやおや……いきなり攻撃してくるとは」

イザナミ「何をそんなに怯えているんだ?」

比企谷「くっ……! イザナギ!」


     ヒュバッ!


イザナミ「その力は少し邪魔だね」


     ギュルルルルッ!


比企谷「ぐっ!?」

イザナミ「ふふふ……これでゆっくり話ができる」

比企谷「!? ……話、だと?」


イザナミ「そうさ」

比企谷「いまさら何の話だ?」

イザナミ「ん? 君は疑問に思わないのか?」

イザナミ「なぜ私がこんな事をしているのか……」

比企谷「おおよそ想像はついている」

イザナミ「ほう?」

比企谷「お前もアメノサギリ?同様、嫉妬から行動している」

比企谷「おそらく、この街における人間たちの醜悪さを眺める為に」

比企谷「今回の騒動を巻き起こした」

イザナミ「なかなかの推測だね。 けど、惜しいが不正解だ」

比企谷「何?」

イザナミ「私は別に人間の『醜悪さ』を眺めたい訳じゃない」


イザナミ「ただ……”力”を与えた人間が、何をするのか」

イザナミ「どう行動するのか」

イザナミ「退屈しのぎに眺めていただけだよ」

比企谷「…………」

イザナミ「まあ言ってしまえば……」

イザナミ「あの足立とかいう人間と同じだ」

イザナミ「私にはそれができる力が備わっていた。 だからやった」

イザナミ「予想もつかない展開でなかなか楽しかったよ」

比企谷「…………」

比企谷「……けんな」

イザナギ「ん?」




比企谷「ふざけんなッ!!」



イザナギ「……ほう」

イザナギ「意外だな。 君はそんな感情的な人間だと思わなかったが」

比企谷「てめぇの下らない娯楽趣味のせいで」

比企谷「どれだけの人間が傷ついたと思ってやがる!?」

イザナギ「…………」

比企谷「てめぇは……てめぇだけは!」

比企谷「必ず俺がぶちのめしてやるッ!!」

イザナギ「ふふふ……いいぞ」

イザナギ「その憎しみ……実に心地よい」

イザナミ「もっと私を憎め……その心を怒りで満たせ……」


イザナミ「そして……ここで永遠に私と暮らすのだ」

比企谷「!?」

比企谷「何を言ってやがる!?」

イザナミ「ふふふ……」

イザナミ「戯れに始めた事だったが、存外、面白い事ができそうなのでな」

イザナミ「その為にはまず……」

イザナミ「お前の【シャドウ】を出さねばならん」

比企谷「!?」

比企谷「なんだと!?」

イザナミ「お前はもう囚われの身」

イザナギ「抵抗は無意味だ」


比企谷「…………」

比企谷「……やめろ」

比企谷「来るなっ……! 来るんじゃねぇ!!」

イザナミ「ふふふふふふふ……」

     スッ…

比企谷「やめろ……やめろ……!」

比企谷「やめろ、やめろ、やめろっ!」





比企谷「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」







―――――――――――


テレビの世界


花村「さて……閉店ギリギリで危なかったけど」

花村「何とかここに来れたな」

里中「後は、比企谷くんを見つけるだけね」

天城「けど……由比ヶ浜さん」

天城「本当に危ないから、天城屋で待ってた方がいいと思うんだけど……」

雪ノ下「私もそうした方がいいと思う」

由比ヶ浜「…………」

白鐘「安心してください。 必ず連れて帰りますから」

由比ヶ浜「…………」


雪ノ下「……どうしたの? 由比ヶ浜さん?」

クマ「ユイちゃん、もしかして気分でも悪いクマ?」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……これって、もしかして?」


一同「?」


由比ヶ浜「…………」 グッ…!

由比ヶ浜「ペルソナッ!」


     カッ!!


一同「!?」


由比ヶ浜「出た!!」

由比ヶ浜「私にもペルソナがあった!!」


里中「ウソッ!?」

天城「由比ヶ浜さんにもペルソナが!?」

花村「……まあ状況的には、俺らと同じだしな」

花村「けど……」

雪ノ下「…………」

クマ(な、なんか……怖い顔してるペルソナクマ……)

白鐘(まるで般若のお面をつけているみたいな……)


白鐘「……ちなみに何という名前のペルソナですか?」


由比ヶ浜「ダーキニーって言ってるよ?」

白鐘「ダーキニー……」


花村(白鐘、何か知ってるのか?)

白鐘(詳しくは無いのですが……)

白鐘(確か、鬼の女と書いて『鬼女』というたぐいの化物の名前だったかと)

花村(……あの外見 まんまだな)

里中(何となく分かる様な気も……)

天城(由比ヶ浜さんって、怒らせると怖いのかも……)


由比ヶ浜「これで私も付いてっていいよね?」

里中「う、うん。 とっても強そうじゃん?」

天城「た、頼りになりそうだね、千枝」


りせ「……っ!!」

りせ「見つけた! 見つけたよ、比企谷先輩!」


一同「!」


花村「そうか……朗報だな」

里中(って事は……由比ヶ浜さんの意見、バッチリ合ってたって事じゃん)

天城(さすが由比ヶ浜さん)

クマ(およよ……これが愛の力、というやつクマね~)

白鐘(……僕も早く、あなたくらい比企谷先輩の事)

白鐘(理解できる様になりたい……)

雪ノ下(…………)







     ああ……そうか……

     今……はっきりと分かった






     どうして私は、由比ヶ浜さんに連絡を取ろうとしなかったのか

     答えは、簡単だった……












     私は

     比企谷くんを理解できている由比ヶ浜さんに嫉妬して

     頼りたくなかったんだ……













     どうやっても彼女に勝てないんだ、という事を

     認めたくなくて……














     ――私の中の”何か”が――














     ――凍りついた気がした――






という所で、今日はここまでです。
引っ張りすぎですよね……すみません。

後、ガハマさんのペルソナ『ダーキニー』ですけど、メガテンかよ!と突っ込まれた方
正解です。 初めは完二のペルソナ、タケミカヅチを使おうかなぁ……と思ってたんですけど
どうも彼女のイメージに合わなかったので、急遽、こうしました。
余計な事ですが、羅刹女とかも候補に上げてましたw

あくまで私個人のイメージですのでご了承ください……それではまた。

乙ー
小町を出せないのはしゃーないとして
由比ヶ浜が理解してるとか…物語的にこれも仕方ないのだろうか

俺ガイルの現時点の原作でも八幡のこと理解出来てんのは小町だけだしな…
原作は読めば読むほど小町と戸塚の天使さが際立つ気がする
ガハマさんと雪ノ下がアレすぎて…

>>253 >>254
原作では雪ノ下とガハマさん、そんなにアレなんですか……申し訳ない。
私、アニメしか知らないので……

小町の事は考えたんですけど、私がガハマさんのファンという事もあってこうしました。

ちょっと修正。まあ、こんなクソ長いのまとめるところなんて無いと思いますけど。
前回の>>249>>250の間にこの二レスを入れたいです。↓


由比ヶ浜「ううー。 それにしても霧で見えにくいなぁ……」

里中「あ! そういえば由比ヶ浜さん、メガネかけてないじゃん」

由比ヶ浜「メガネ?」

由比ヶ浜「あ、今、気がついたけど、みんなしてるね?」

花村「よし! クマ、なんか可愛いの出してやれ!」

クマ「はいはい……って、ヨースケ、無茶ぶりクマよ~」

クマ「はい、ユイちゃん。 壊れた時にと思って作ったスペアクマ!」

由比ヶ浜「ありがとう、クマくん」

     スチャ… (メガネ装備)

由比ヶ浜「わ! 見える様になった!」

由比ヶ浜「すごいね、これ。 どういう仕組みなの?」

クマ「クマのオメ目と同じレンズを使ってるクマ!」

花村「説明になってねーだろ、それ……」


花村「ま、それはともかく」

里中「うん! 早いとこ、比企谷くん、助けに行くじゃん!」

天城「いよいよだね……」

りせ「映画で言う、ラストバトルって感じ?」

白鐘「みなさん、気を引き締めていきましょう」

クマ「わかっているクマ!」

由比ヶ浜「待ってて、ヒッキー……!」

     ゾロ ゾロ ゾロ…

雪ノ下「…………」

続きは後ほど投下します。



―――――――――――


黄泉比良坂(よもつひらさか)


花村「お~……何かそれっぽい場所だな」

里中「鳥居? なんで鳥居?」

天城「確か、新しくできる場所って、入れられた人の影響が出るんだよね?」

白鐘「そういえば そうでした」

由比ヶ浜「って事は、ここはヒッキーにとって何か関係のある場所なの?」

クマ「そういう事になるクマね」

雪ノ下「…………」

里中「……ねえ、花村」

花村「ん?」

里中「比企谷くんの【シャドウ】ってどんなだったの?」


花村「いや。 あいつは【シャドウ】を出していない」

里中「え? そうなの?」

花村「言われるまで俺も忘れていたけど……確か」

花村「急に苦しみ出して、ハッ!っとした瞬間、ペルソナを出したんだ」

里中「へぇ~」

クマ「むふふ、センセイは特別クマ!」

天城「じゃあ……今回は見られるかも?」


一同「!?」


天城「え? な、何か、変な事、言った?」


白鐘「いえ……でも」

白鐘「あまり考えたくないですね……」

花村「比企谷の【シャドウ】か……確かにな」

里中「なんか……えげつないの出しそう」

天城「あ~……そういう事か」

クマ「だ、大丈夫クマよ~。 ……たぶん」

由比ヶ浜「…………」


由比ヶ浜(……でも、ヒッキーが抱えてる『何か』を知るのには)

由比ヶ浜(一番効果的かも……怖いけど)

由比ヶ浜(…………)

由比ヶ浜(ヒッキーが私たちに見せたくない心の一面……か)


りせ「……みんな」


白鐘「ああ、すみません。 久慈川さん」

花村「どうだ? 比企谷は元気にしてるか?」

りせ「…………」

りせ「比企谷先輩は大丈夫。 ちゃんと元気でいるわ」

りせ「だけど……」

里中「だけど?」

りせ「何て言うか……巨大で強力な力を持つ『何か』も居る……!」


一同「!?」


里中「【シャドウ】?」

りせ「反応は確かに似てる。 でも……『何か』が違う」


花村「なんか……すべての元凶っぽいな」

りせ「充分気をつけて。 ここ、雑魚の【シャドウ】もかなり強いよ」

白鐘「どうやら一筋縄では行かないようですね……」

里中「わかったよ、りせちゃん。 気をつけて行くじゃん!」

天城「うん。 そうだね千枝」

クマ「クマも頑張るクマ!」

由比ヶ浜「まずは、ヒッキーを助けないとね! ゆきのん!」

雪ノ下「…………」

由比ヶ浜「……?」

由比ヶ浜「ゆきのん?」

雪ノ下「……ごめんなさい、由比ヶ浜さん」

雪ノ下「頑張りましょう」

由比ヶ浜「うん!」



―――――――――――


里中「ふう……」

花村「だいぶ進んだと思うが……どうだ?」

りせ「…………」

りせ「うん! 比企谷先輩、近くにいるよ!」

天城「いよいよだね」

クマ「センセイ、お待たせクマー!」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「あ! あそこ! 誰かいるよ!」

白鐘「確かに人影が……行ってみましょう!」

     タッ タッ タッ…



一同「!!」


花村「比企谷!?」

クマ「センセイ! 大丈夫クマ?」

???『……?』

???『ああ、花村達か』

里中「なんだ、元気そうじゃん」

里中「心配する事なかったみたいね」

???『ふふ、里中。 いつも気遣ってくれてありがとう』

天城「え……?」

???『みんなも来てくれたんだ。 とっても嬉しいよ』

白鐘「なにか……雰囲気が」


りせ「気をつけて、みんな……」

りせ「そいつ、【シャドウ】だよ!」


一同「!!?」


由比ヶ浜「って事は……まさか!?」

雪ノ下「比企谷くんの【シャドウ】……」

影・八幡『うん。 そうなるかな』

花村「……なんか、考えてたのとイメージ違うな」

里中「随分フレンドリーっていうか……」

影・八幡『ホント!? 嬉しいなぁ』


影・八幡『本当はね、僕……ずっと』

影・八幡『友達が欲しくて欲しくて、しょうがなかったんだ』


一同「!?」


影・八幡『ほら、小学校とかで歌った事ないかい?』

影・八幡『友達100人できるってやつ』

影・八幡『僕はね、あれをずっと『できる』って信じていた』


???「やめろっ!!」

一同「!?」


花村「お、あのふてぶてしい目つき。 本物の比企谷だな」

里中「そういうので分かるってのもアレだけど……」

天城「ま、まあ、ある意味トレードマークだし」

りせ「フォローになってないような……」



影・八幡『どうしてだよ? 僕は本音を言ってるだけじゃない?』


比企谷「だまれ……そんなもん言って欲しかねーんだよ!」


影・八幡『いいじゃない。 ここに居る人達は』

影・八幡『君が望んで望んで、欲しくてたまらなかった』

影・八幡『大切な人達じゃないか』


一同「」

比企谷「やめろっつってんだろっ!!」


花村(た、大切……ねえ……)

里中(面と向かって言われると、恥ずかしいじゃん……)///



影・八幡『きっと大丈夫だよ』

影・八幡『今までみたいな事は起きないって』


比企谷「!!!」


花村「今までみたいな事?」

天城「どういう意味なの?」


比企谷「聞くなっ! お前ら、聞くんじゃねーよ!」


影・八幡『いろいろあったよね……』

影・八幡『今でもどうしてか分からない』

影・八幡『自分は、ただ話しかけただけなのに何故か嫌われる』


白鐘「え……」



影・八幡『小学校の担任に『みんな比企谷くんの事、嫌いなのは分かるけど』とか言われたし』

影・八幡『それを察して大人しくしていたら、いつの間にかハブられるし』

影・八幡『そうそう……いつだったか、運動会での練習』

影・八幡『女子から誰とも相手にされなくて、延々とエア・オクラホマミキサーをやらされたっけ』


一同「」


比企谷「やめろって言ってんだろっ!」 ブンッ!


影・八幡『おっと、危ないなぁ』 クス クスッ

影・八幡『誕生会に呼ばれた時も自分のチキン『だけ』用意されていなかったり』

影・八幡『自己責任だけど、給食のカレーを鍋ごとひっくり返してしまった時』

影・八幡『誰も片付けを手伝ってくれなかったし、加齢臭なんてあだ名を付けられたりもした』


一同「…………」


比企谷「やめろっ……やめろって……言ってるだろっ……」


影・八幡『変わると思ってた中学も酷かった』

影・八幡『ここでもいろいろあだ名を付けられたね……』

影・八幡『オタガヤだの、引きこもりくんだの、一年生の比企谷さんのお兄さんだの……』

影・八幡『挙句が『比企谷菌』と、病原菌扱いだ』


花村(……おいおい)

里中(聞いててお腹がキューってなる……)

天城(壮絶すぎ……)



影・八幡『でも……僕は諦めなかった』

影・八幡『いつかは、きっと、と、愛想の本を読んだりして努力は怠らなかった』

影・八幡『そして……』


比企谷「……!!」

比企谷「ま……まさか!?」


影・八幡『そんな僕にも好きな女の子ができた』


一同「!」


比企谷「や、やめろ……てめぇ、マジやめろっ!!」



影・八幡『失敗する事も考えてたけど……僕は勇気を振り絞って告白した』

影・八幡『そしたら……』


比企谷「言うなっ! 頼むから、な!? お願いだっ!!」

比企谷「それだけは、それだけはっ!!」


影・八幡『『マジキモイ。 やめてくんない?』であえなく撃沈』


比企谷「もういいだろっ!? もう終われよっ!!」


花村(? まだなんかあるのか?)

里中(そうとうキツイ振られ方だけど……)

天城(これだけでも充分嫌だよね……)

りせ(でも、ちょっと知りたい……)




影・八幡『そしてその翌日。 クラス全員、僕が振られた事を知っていた』



一同「」


比企谷「……っ」


影・八幡『ショックだったよね。 しかもその女の子が』

影・八幡『それを広めた張本人だったし』


一同「…………」


影・八幡『あ、そうそう。 このエピソードでナルガヤとかいうあだ名も……ん?』


クマ「もうやめるクマ!」

由比ヶ浜「うん……もういいよ、ヒッキー」

雪ノ下「少し黙ってて」

白鐘「もう……そのあたりにしてあげてください」


影・八幡『…………』

影・八幡『ダメだよ。 僕にちゃんとわからせないといけない』

影・八幡『”違う”んだって事を』


花村「それなら俺たちがやる」


影・八幡『え?』


花村「俺たちに任せてくれ」



影・八幡『…………』

影・八幡『……いや、君たちでは無理だよ』


花村「なんで言い切れるんだよ?」


影・八幡『久保美津雄の時……僕はね』

影・八幡『君たちが怖くなったからさ』


里中「怖い? あたしらが?」


影・八幡『久保美津雄は、まるで鏡を見ている様な錯覚を覚えるほど』

影・八幡『僕の影法師だったんだ』

影・八幡『そして君たちは、その久保美津雄をなんて言ってたか覚えているかい?』


一同「……!!」


花村「そういう事か……」

里中「うわ……あたしらキモイとか言いまくってたじゃん……」

天城「じゃあ……どうしてあの時、感情的に攻撃したの?」


影・八幡『同属嫌悪ってやつだと思う』

影・八幡『僕は、久保美津雄の気持ちが痛いほど分かった』

影・八幡『彼もまた心に傷を持ち、居場所を求めていたのだと……』

影・八幡『でも、同時に誰かを傷つける行動を取ったあいつが許せなかった』

影・八幡『……いや』

影・八幡『まるで未来の自分を見せられてるようで、気に食わなかったのかもしれない』


一同「…………」


花村「……なんつーか」

花村「想像以上にトラウマ抱えていたんだな、お前って」


影・八幡『まあね……』

影・八幡『さ、わかっただろう? 君たちでは無理だって』


花村「やかましい。 ちょっと黙ってろ」


影・八幡『え……』


花村「ったく……【シャドウ】でもしっかり比企谷してんな」

花村「何一人で自己完結してんだよ?」

花村「全部自分だけで解決しようとすんな」


影・八幡『…………』


比企谷「…………」

花村「比企谷……」

花村「もう分かってんだろうけど【シャドウ】は、お前の一面だとしても」

花村「言ってる事は全部『本心』だ」

比企谷「…………」

花村「もう答えは出てる」

花村「いや、出してくれたんだ。 由比ヶ浜さんが」

比企谷「!」

里中「なんて言うかさ、あたしらも比企谷くんがおかしいって思ってはいたじゃん?」

天城「でもね……単純に私たちの事、どうでも良くなったのかな?って」

天城「それくらいにしか感じられなかった」


りせ「今【シャドウ】が言ってくれたよね?」

りせ「あたし達の事、大切な人達だって……」

クマ「センセイ、もう秘密にしなくていいクマ」

白鐘「抱え込む事もありません」

雪ノ下「だから……もうそんなに自分を責めないで」

由比ヶ浜「ヒッキーは、何も悪くない」


比企谷「……っ」


影・八幡『…………』

影・八幡『ふふっ……やれやれ』

影・八幡『予想外だったね。 ここまで見抜かれているなんてさ』


影・八幡『自分のせいで周りの人達を傷つけている、と思い込んでいるの』

影・八幡『バレているみたいだよ?』


比企谷「…………」


影・八幡『せっかく徐々に、少しずつ、距離をとって』

影・八幡『それとなく疎遠になって、ひっそり生きるつもりだったのにね』


比企谷「…………」


影・八幡『由比ヶ浜なんて生き返ったものの一度死なせてしまったし』

影・八幡『久保は本当に死んでしまった』

影・八幡『堂島さんも怪我をしてしまうし、生田目も殺しかけた』

影・八幡『足立さんですら、自分と関わらなければ、こんな事起こらなかったと思っている』

影・八幡『周りの人達が不幸になるのは、全て自分が悪いんだ、と……」



一同「…………」


由比ヶ浜「ね、ヒッキー」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「私たちって……ヒッキーを傷つけてきた人達と同じかな?」

比企谷「……っ!」

由比ヶ浜「もし、違うって思ってるのなら……」

由比ヶ浜「証明して欲しい」

比企谷「……証…明?」

由比ヶ浜「うん!」

由比ヶ浜「あの【シャドウ】を……『自分』を認めてあげて? そして……」

由比ヶ浜「ヒッキーがずっと抱えてた事……思ってた事、言って欲しい」


比企谷「い、言えるわけ……」

花村「おいおい。 そりゃねーだろ、比企谷」

花村「俺らもよ、【シャドウ】や見せたくない気持ちを お前に見られてきたんだぜ?」

比企谷「…………」

里中「そーいやさ」

里中「どっかの誰かさん、由比ヶ浜さんに信頼がーとかって言ってたじゃん?」

天城「うん。 確かに言ってたね、千枝」

比企谷「…………」

りせ「ほんの少しでいいんだよ、比企谷先輩」

クマ「勇気を出して欲しいクマ!」

比企谷「…………」


白鐘「比企谷先輩」

白鐘「僕は、あなたから逃げません」

白鐘「だから、先輩も逃げないでください」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「ヒッキー」

由比ヶ浜「私たちと過ごした時間は……絶対無駄じゃない」

由比ヶ浜「あなたは、ずっと私の『特別』だよ?」

比企谷「…………」

雪ノ下「……私に何が出来るわけでもない。 でも」

雪ノ下「傍にいるくらいは、してあげられる」

雪ノ下「あなたは……もう一人じゃないわ」

比企谷「…………」



影・八幡『……僕には分かるよ』

影・八幡『君が僕と向き合う事、どんなにか怖いのか……』

影・八幡『だって僕は、君だからね』 クスッ


比企谷「…………」


影・八幡『僕は……君のトラウマそのものと言っていい存在だ』

影・八幡『できるなら、消してしまいたいと思っているのも知ってる。 でもね……』

影・八幡『こんな形で対話できてるけど、僕はずっと君の中に居た』


比企谷「!」


影・八幡『だから、あえて言うよ?』






影・八幡『もう一度だけ、頑張ってみようよ?』





比企谷「…………」





一同「…………」





比企谷「……っ」

比企谷「…………」

比企谷「……そうやって」

比企谷「俺は自分を奮い立たせてきたさ……何度も、何度も」


一同「…………」


比企谷「この方法はダメだった……」

比企谷「あれがいけなかったんだ……」

比企谷「だからみんな、あんな事を俺にするんだ……」

比企谷「じゃあ次は、ってな……」


影・八幡『…………』




     そうして行く内に……失敗と反省を繰り返して行動すれば

     いずれ誰かが俺を受け入れてくれる。



     少しずつでも、あの歌の様に

     友達と呼べる人間や、仲間、そして

     彼女と呼べる存在に囲まれて笑って過ごせる時が、いつか来る。









     そう信じて









     でも返ってくるものはいつも侮蔑、嘲笑、軽蔑……

     正直、気が狂いそうだった。



     朝、学校に行ったら自分の机がベランダに放り出されてた事があった。

     下駄箱にゴミを入れられてた事もあった。

     ラブレターに喜んでたら、イタズラだった事なんて何度もあった。





     どれが「きっかけ」かなんて……もうわからない。

     ある日、俺の心は折れた。



     何やっても嫌われる。

     どうやっても気持ち悪いって言われる。

     自分を受け入れる人間なんて何処にも居ない。








     だったら








     最初から嫌われてやる。

     俺に近寄ってくんな。

     俺を傷つけるな。



     どうせ馬鹿にしたいんだろ。

     笑い者にしたいんだろ。

     気持ち悪いんだろ。

     




     ぼっちは楽だった。

     心は痛まないし、誰かを気遣う心配もない。

     もう開き直って嫌われてもいいやって思ってるから

     何かに動じる事もなくなった。



     …………



     けど





     世界は何も変わらない。

     変化しない。

     ただ、流れていく。



     無機質に、無感情に、機械的に。



     そこに求めていた”もの”は

     『かつて』欲しかった”何か”は

     当たり前だが、何もなかった。





     総武高校に通いだしてすぐ

     俺は事故に会った。



     後で知る事になるが、雪ノ下と由比ヶ浜が

     ほんの少し関わっていた、あの事故。

     俺は3週間、入院する事になった。





     当然だが……本当に当然なのだが

     俺には家族と看護師、それに医者しか話しかけてくる人が居なかった。

     他人からの見舞い、なんてものも当たり前にない。



     6人部屋の角のベッドに俺は居た。

     隣のおっさんには、職場の同僚と学生時代の友人らしき人が見舞いに来ていた。

     向かいの小学生は、その隣の女の子と仲が良さそうだった。



     別にどうでもいい。 俺には関係ない。

     いまさら何に期待している。

     俺は、自分にこれでいいんだ、と、言い続けた。



比企谷「でもよ……」

比企谷「多少なりとも人付き合いが続くようになって」

比企谷「少しは変わるかも、とか思い出してた」

比企谷「だが、その矢先に今度は一年間の転校……」

比企谷「なんかさ……もう究極に意地の悪い神様が」

比企谷「とにかく俺をぼっちにしたいんだな、としか考えられなかった」


影・八幡『…………』


比企谷「だけど……ここに来てからの毎日」

比企谷「何て言うか、悪くなかった」

比企谷「もしかしたら、大丈夫なのかも……探していた”何か”かもと」

比企谷「少し考える様になっていた」


一同「…………」


比企谷「だが、どうしても踏み出せなかった……」

比企谷「過去の経験が……裏切られた時のクソな痛みが、フラッシュバックしやがる」


影・八幡『…………』


比企谷「俺は……」

比企谷「それが……怖くて……ぐ……怖くて……くっ……」

比企谷「ただ……怖くて……うあっ……ぐっ……」


一同「…………」


比企谷「………ふ……ぐっ………く……」

比企谷「うっ………くっ……ひぎっ……」

比企谷「…………はっ……」


影・八幡『…………』


比企谷「…………」

比企谷「ああ……そうだとも」

比企谷「お前は、確かに俺だよ」

比企谷「俺は……ずっと友達と呼べる存在が欲しかった」

比企谷「大勢の人間に囲まれて、笑って過ごせる日常が欲しかった」

比企谷「誰からも好かれ、受け入れられる人間でありたいと……思っていた」


影・八幡『…………』


比企谷「……そうさ、本当は」









比企谷「ひとりでなんて……居たくなかった!」









     シュウウウウウウウウ……!


一同「!!」


花村「【シャドウ】が……!」

里中「うん! 受け入れたんだね、比企谷くん」

天城「良かった……」


影・八幡『これでお別れ……ううん』

影・八幡『元通りだね』


比企谷「…………」


影・八幡『話せて良かったよ……けど』

影・八幡『もう一つ……いや、四つかな?』

影・八幡『けじめを付けないと いけない事があるね』


比企谷「……言われなくても分かってるっての」


影・八幡『そうだった』 クスッ

影・八幡『君は僕だものね』


比企谷「…………」


影・八幡『さよならは言わないよ?』


比企谷「ああ、それも分かってる」

比企谷「お前は俺で……俺は、お前だからな」


影・八幡『…………』 ニコッ



     ヒィイイイイイインッ!


白鐘「ペルソナ、ですね……」

由比ヶ浜「うん……!」

雪ノ下「…………」

クマ「およよー……白いイザナギクマ!」

りせ「何だか、神々しいね」

りせ(強さは、あまり変わってない感じしたけど……)

比企谷「…………」

花村「大丈夫か? 比企谷」

比企谷「…………」///

花村「へへっ、なぁーに赤くなってんだよ!」

比企谷「……るせーよ」///


花村「まっ、これで俺らの気持ちがわかっただろ?」

花村「お前だけ恥ずかしい一面、見せてなかったもんな!」

里中「……そういやさ、花村」

花村「あん?」

里中「そー言うあんたの『恥ずかしい一面』をあたしは知らないじゃん?」

花村「!」

天城「確かにそうだね、千枝」

由比ヶ浜「……ねえ、みんな」

由比ヶ浜「それを言ったら、私なんてヒッキー以外、見てないんだけど……」


一同「!?」


比企谷「ふふふ……確かに不公平だな」


比企谷「安心しろ由比ヶ浜」

比企谷「俺がきっちりと教えてやる」

花村「いやいやいや! べ、別に、知らなくてもいいんじゃね!?」

花村「俺のなんて、面白くも何ともねーし!」

里中「花村! あんたのせいでヤブヘビになっちゃったじゃん!」

天城「そうだよ。 どうしてくれるの、花村くん!」

花村「お前ら!? 俺だけ悪者にしやがって! ずっりぃぞ!」

由比ヶ浜「うふふ~楽しみだなぁ♪」

りせ「き、聞く気、満々だね……由比ヶ浜さん」

白鐘「……勘弁してください」

雪ノ下「……同じく」

クマ「クマは喜んで話すクマ!」


比企谷「……さて」

比企谷「落ち着いたところで、俺の知った情報と状況を教えておく」

白鐘「お願いします」

―――――――――――

白鐘「イザナミ……ですか」

雪ノ下「…………」

比企谷「まあ、雪ノ下のペルソナと関係があるのか、無いのかはわからん」

比企谷「ともかくあいつは、そう名乗り」

比企谷「俺みたいな才能持ちを能力者にした」

比企谷「先のわからない娯楽作品へ仕立て上げる為にな」


里中「最っ低じゃん!」

花村「だな……理由があればいいわけじゃねーが」

花村「できれば聞きたくなかった動機だぜ……!」

りせ「とにかく、後は元凶のそいつを倒せばいいって事ね?」

比企谷「そうなるな」

由比ヶ浜「じゃあ話は簡単だね!」

由比ヶ浜「早くやっつけに行こう!」

クマ「クマ!」

雪ノ下「ちょっと待ってくれるかしら」

天城「どうしたの? 雪ノ下さん」

雪ノ下「その……犯人のイザナミは、どうして比企谷くんの【シャドウ】を呼び起こしたの?」

雪ノ下「もっとはっきり言うと、比企谷くんで『何』をしたかったの?」

比企谷「……はっきり言ってわからん」


比企谷「あいつは俺の【シャドウ】を見た途端」

比企谷「大きく失望していた様に見えた」

雪ノ下「失望?」

比企谷「……そういや」

比企谷「おぞましいが、ここで永遠に暮らす為とか何とか言ってたと思う」


一同「!?」


りせ「暮らす? 比企谷先輩と?」

花村「モテモテだな、比企谷!」

比企谷「うれしくねーっての……」


比企谷「とにかくだ」

比企谷「あいつが今回の騒動の元凶なのは間違いない」

比企谷「詳しくはあいつと対峙してから聞けばいいだろう」

比企谷「そして……叩きのめす!」

     オオー!

由比ヶ浜「ヒッキー、ちょっとかっこいいね!」

比企谷「そんなつもりじゃない」

由比ヶ浜「あ、そうだ! 私のペルソナ見てよ!」

由比ヶ浜「えいっ!」

     カッ!

比企谷「無駄にペルソナ出してん……!?」

由比ヶ浜「どう? かっこいいでしょ!」

比企谷「お、おう……」


由比ヶ浜「ダーキニーって言うんだ」

由比ヶ浜「とっても強いんだよ?」


比企谷(ダーキニーって……鬼女……うわぁ)

白鐘(比企谷先輩……知っているみたいですね)

花村(まあ……驚くわな)


比企谷「……あ」

花村「? どうした? 比企谷?」

比企谷「…………」///

比企谷「……その、言うの忘れてたが」///

比企谷「助けに来てくれて」///

比企谷「ありがとう、な……」///



一同「!」


花村「へへ、気にすんなよ!」

里中「当然の事じゃん!」

天城「どういたしまして」 クスッ

りせ「ふふふ、ちょっとくすぐったいね」

クマ「クマはセンセイの為なら頑張るクマ!」

白鐘「このくらい、当たり前ですよ」

由比ヶ浜「これくらい何でもないよ! ヒッキー!」

雪ノ下「お礼を言われる程の事じゃないわ」


     アハハ……



―――――――――――


黄泉比良坂(よもつひらさか)最深部


     ゾロ ゾロ ゾロ…

比企谷「……よお」

イザナミ「ん? ……ほう、君か」

イザナミ「【シャドウ】に食われなかった様だな」

比企谷「俺一人だと、やばかったと思う」

イザナミ「ふん……くだらぬな」

花村「はあ!? くだらねーだと!?」

花村「人の命がかかっているってのに、何言ってやがる!」



イザナミ「失望しただけだよ……」

イザナミ「イザナギを持つ者にな」


比企谷「失望?」


イザナミ「そうだ」

イザナミ「表面上は恨み、妬み、嫉(そね)んでおきながら」

イザナミ「結局は誰かを求める矮小な存在であったのだから」


里中「それのどこがおかしいじゃん!?」


イザナミ「そうとも。 おかしくはない」

イザナミ「『普通の人間』としてね」


天城「どういう意味?」

天城「じゃあ、あなたは『何』を求めているの!?」


イザナミ「ふふふ……」

イザナミ「それは、我と対等なる者」

イザナミ「絶対者なる我と同等の力を持つ者」

イザナミ「我と等しく、憎しみを抱き、恨む者」


一同「……!?」


りせ「何を言ってるの? 訳わかんないよ!」



イザナミ「わからぬのも当然だ」

イザナミ「常人では届き得ぬ高みに我は居るのだからな」


クマ「ムキー! よくわからんけど、バカにするなクマ!」

白鐘「御託はたくさんです。 あなたの引き起こした事象により」

白鐘「人が傷つき、亡くなった方もいる」

白鐘「その償いは……必ずしてもらいます!」


イザナミ「ほう……言っておくが、我は『きっかけ』を与えただけに過ぎん」

イザナミ「『力』を得た者が勝手にやった事……それでも我に責任があるとでも?」


由比ヶ浜「当たり前でしょ!」

由比ヶ浜「あなたを野放しにしてたら、今回みたいな事がまた起こる!」

雪ノ下「必ず、ここで終わらせる!」









     ペ   ル   ソ   ナ  !!









イザナミ「ふふふ……愚かな」

イザナミ「人の身でありながら、絶対的な力を持つ我に逆らうとは」

イザナミ「役者の分を超え真実を求めすぎた代償……たっぷりと払うがよい」


     ゴウンッ……!!


比企谷「くっ……霧が」

雪ノ下「霧が一段と濃くなった……!」

花村「ちっ……!」


     ふふふ……


りせ「!!」

りせ「み、みんな! あそこ!」

白鐘「……!」

白鐘「なんて……大きさだ!」




     イザナミは、それまでの中性的な人間形態?をやめ

     濃い霧を出したかと思うと……巨大な化物へと変化していた。



     その姿は

     大きなスカート……いや、釣鐘状の白い物体に

     包帯をぐるぐる巻きにした人間らしき形状の上半身が

     それにちょこんと乗っかっている。



     これまでに出会ってきた【シャドウ】のデザインに似た何かを感じるが

     大きさが規格外に違っていた。



クマ「あんなの、ただのコケおどしクマ!」

由比ヶ浜「そうよ! 怖くなんか……怖くなんか、ないんだからっ!」


     さあ……かかって来るがよい


由比ヶ浜「ダーキニー!!」

花村「ジライヤ!!」

天城「コノハナサクヤ!!」

里中「トモエ!!」

クマ「援護は任せるクマ!! キントキドウジ!!」

白鐘「スクナヒコナ!!」

雪ノ下「回復は任せて!! イザナミ!!」

りせ「しっかりアナライズするから!! ヒミコ!!」


比企谷「イザナ――」


     ――我は汝――

     ――汝は我――


比企谷「ぐっ!?」


雪ノ下「!?」

雪ノ下「比企谷くん!?」


     ――汝、ついに真実の絆を得たり――


比企谷(こ、これは……!?)



     ――真実の絆――

     ――それは即ち――


比企谷(間違いない、イザナギが……ペルソナが目覚めた時)

比企谷(あの時に聞こえた、謎の声!!)


     ――真実の目なり――


比企谷(…………)


     ――今こそ汝は見ゆるべし――

     ――様々な究極の力――

     ――汝のその内に宿せし事を――


比企谷(…………)


―――――――――――

イゴール「ほほう……これは」

イゴール「節目の年を超えられたお客様に」

イゴール「更なる”力”が目覚めた様でございますな……」

マーガレット「これが……”ワイルド”の真の力」

イゴール「誠に……希少なる存在」

イゴール「ふふふ……」

―――――――――――


雪ノ下「大丈夫!? 比企谷くん!?」

比企谷「…………」

比企谷「……!」

比企谷「これは……この力は?」

雪ノ下「比企谷……くん?」

比企谷「……っ!」 グッ…!


比企谷「スカアハ!」


一同「!?」


花村「え!?」

里中「イザナギじゃないの!?」



     ガ ル ダ イ ン!

     ヒュゴオオオオオオオッ!!


りせ「す、すごい力を持ってるよ! あのペルソナ!」

里中「なになに!? ここに来て比企谷くん、覚醒!?」

由比ヶ浜「ヒッキー、かっこいい!」


比企谷「コウリュウ!」


一同「!!?」


クマ「ま、また、知らないペルソナクマ!」

白鐘「い、いったい、何が!?」

天城「今はありがたいから、いいんじゃないかな?」


比企谷「フツヌシ!」

比企谷「マダ!」

比企谷「ロキ!」

比企谷「ルシフェル!」

比企谷「イシュタル!」

比企谷「ルシファー!」


花村「おいおいおい!? 何回チェンジしてんだよ!?」

雪ノ下「ここまで来るとバーゲンセールね……」

由比ヶ浜「ゆ、ゆきのん。 的確だけど、ありがたみが全然無くなるからやめよう?」

クマ「さっすがセンセイクマ!」



     ズゴゴゴゴゴ……


里中「まあ、それはともかく、これで決まったっぽいじゃん?」

天城「そうだよね」

天城「私たちのペルソナの攻撃も入ってるし」

白鐘「さすがに耐えられないでしょう……」

白鐘「……ん?」

りせ「…………」

白鐘「どうしました? 久慈川さん?」

りせ「なんで……どうしてなの……?」 カタ カタ カタ…

白鐘「久慈川さん?」


りせ「みんな、気をつけて! あいつ……」







りせ「全然、弱ってないっ!」






一同「!?」


     ふふふ……どうしたんだい?

     まさか、そんな小さな力で我を倒す気でいたのかな?


一同「…………」







     我を消すなど不可能だ

     なぜそれが分からない?

     くくく……何も理解していない証拠だね













     愚か者め!








里中「嘘でしょ……」

天城「あんなに攻撃を受けたのに……」

花村「へっ……いいじゃねーかよ」

花村「これこそラスボスって感じでな……!」

クマ「ク、クマ、まだ戦えるクマ!」

白鐘「……まだ、これからです!」

由比ヶ浜「た、倒せる……よね?」

雪ノ下「……と、当然よ、由比ヶ浜さん」

りせ「…………」

比企谷「………っ」







     この時――

     その場にいる誰もが戦慄を覚えた。






というところで、今日はここまでです。
ヒッキーの【シャドウ】は、こんな感じにしました。
ご期待に添えてればいいのですが……

原作を読まれた方はご存知だと思いますけど、ヒッキーの過去話を中心に書きました。
私は原作を知らないのですが、あるサイトでまとめてるものを見て
それを参考にしています。

ペルソナのアルカナは、間違っているものもあるかもしれませんが
ひとつご容赦ください。

ようやく、ようやく!ゴールが見えてきました……!
一応あと、3話くらいで終わるかな?という見通しを立ててます。
それでは、また!



――――――――――


花村「うわああああああああっ!!」

里中「花村ぁっ!!」

里中「こんのぉ……! トモエ!」


白鐘「はあ……はあ……」

天城「待ってて、みんな! コノハナサクヤ!」


花村「……す、すまねぇ、天城」

クマ「ペルクマー!!」


比企谷「くそっ! どうなってやがる!?」

比企谷「アメノサギリ?だって、2~3体は倒せてるくらいだろ!」

比企谷「ルシファー!!」


     ドゴォォォォォンッ!!


雪ノ下「久慈川さん、どうなの!?」

りせ「ダメ……わかんないよ!」

りせ「あいつのパラメーターは、とっくに限界を超えたダメージを受けてる」

りせ「それなのに……それなのに!」

由比ヶ浜「ダーキニー!!」

由比ヶ浜「もう! 手応えはあるのに、全然弱っている気がしない!」

由比ヶ浜「どこかに弱点とか無いの!?」




     俺たちは、全力でイザナミを攻撃していた。

     しかし、まったくダメージになっている様子がない……

     奴の反撃が大した事ないのが唯一の救いだが

     終わりが見えてこない戦いというのは、正直、精神的にキツイ。



     イザナミさん、早いとこ死んでくれませんか?

     割とマジで



花村「はあっ、はあっ……クソッ」

花村「ジライヤ!!」

由比ヶ浜「ダーキニー!!」


比企谷「……!」

比企谷(ちっ……花村達、直接攻撃が多くなってる)

比企谷(MP的なのが切れかけてるみたいだな……)

比企谷(…………)


雪ノ下「……比企谷くん」

比企谷「どうした? 雪ノ下?」

雪ノ下「私のペルソナも限界が近いわ……このままじゃジリ貧よ」

比企谷「……分かってる」

比企谷「真綿で首を締められてる気分だな」

雪ノ下「的確だけど、今、言わないでくれる?」


白鐘「スクナヒコナ!」

クマ「いい加減、しつこいクマ!」

里中「トモエ!」

天城「はあ……はあ……」


比企谷(くそっ……!)

比企谷(どうする!?)

比企谷(どうすればいい!?)


花村「ち、畜生……」

花村「昔やった、ゲームを思い出すぜ……」

里中「はあ、はあ……ゲーム?」


花村「なんつったかな……」

花村「ラスボスに有効なアイテム忘れて、無駄に攻撃してたってのがあんだよ」

里中「イザナミにもそういうのあれば……って事?」

花村「あるのなら、今からでも取ってく……うおっと!?」

花村「あ、あぶねぇ……」

里中「うかうか無駄話もしてらんないね……」

花村「そうだ、思い出した!」

花村「ひ○りの玉ってアイテムだ!」

比企谷「バーカ……あれはな、それ無しでも一応倒せんだよ」

花村「え? マジで?」

比企谷「確かにラスボス、めちゃくちゃ強いけどな……ん?」

比企谷「ひ○りの……『玉』?」

比企谷「!!」




     俺は、不意に上着のポケットをまさぐった。

     手にガラス状の、ゴルフボール位の大きさの球体が触れる。

     そうだ……いつ貰ったのか忘れていたが

     誰かから嘘を暴き、真実を照らすとか何とか言われたと思う。



     もうみんな限界が近い。

     はっきり言って……はたから見たら痛い動作でしかないが

     俺はそれを、謎の球体を自分の頭の上に掲げた……!




     シーン…


一同「…………」


由比ヶ浜「……何してるの? ヒッキー?」

比企谷「…………」

天城「それ、ガラス玉?」

花村「……おいおい」

花村「思いつきでも安易すぎだろ?」

比企谷「…………」///

比企谷「お、俺だって、やりたくてやってる訳じゃ」///


     ……ヒィイイイイイインッ!


一同「!?」




     掲げた玉……『宝珠』は

     俺に恥をかかせるのに十分なタイムラグの後、輝きだした……!



     瞬間。

     辺りをおおってた霧が晴れ、イザナミの姿に変化が起こる。




     ズズ……ズズズ……


里中「うわっ!? な、何あれ!?」

天城「き、気味が悪い……」

りせ「あれが……あいつの本性!」

花村「マジにドラ○エⅢと同じかよ……」

雪ノ下「>>1って、本当に表現力が無いわね」

比企谷「メタ発言はその辺にしとけ。 あと>>1が泣きそうになってるぞ」

由比ヶ浜「それもメタ発言だよ! ヒッキー!」

白鐘「なんて禍々しい姿だ……」

クマ「ここからが本番クマね!」




     ほう……そんな物、どこで手に入れたんだい?

     ……まあ、そんな事はどうでもいいか



     いいだろう

     我の本当の力、存分に見せてあげよう









     ドゴ――――――――――ンッ!!!







花村「うわあああああああああああっ!!」

里中「きゃあああああああああああっ!!」

クマ「およよよよよよよよよよよよよよよっ!!」




     本性?を表したイザナミは……

     おぞましい外見をしていた。



     大きさこそ違わないものの骨と皮だけの複数の手足と体。

     そしてその外皮は暗い紫色をしていて

     よりおどろおどろしさを倍増させている。



     一言で言うなら、地獄に住まう亡者を複数体混ぜて、巨大にした様な

     そんな印象だった。



雪ノ下「くっ……! イザナミ!!」 メディアラハン!(味方全体大回復)

天城「い、いきなり攻撃が強くなった!?」

由比ヶ浜「ダーキニー! みんなを守って!!」

りせ「今までとは比べ物にならない!」

白鐘「ええ……ですが!」

比企谷「これだけ本気になったっつー事は」

比企谷「痛いとこ突かれたっていう証拠でもある!」

白鐘「その通りです! スクナヒコナ!」




     ……とは言うものの

     すでに疲弊している俺たちにとって、状況は決して楽観できない。

     正直、俺がもっと早くこれに気がついていれば……!



     だが、それを責める奴は誰もいなかった。

     嬉しくもあり、辛くもあり、くすぐったい様でもあり

     そして……不思議と力が湧いてくる様な気もした。




――――――――――


比企谷「はあっ、はあっ……!」

比企谷「ど、どうだ!? 久慈川っ!?」

りせ「もう少し……もう少しだよ!」

りせ「ダメージは確実に入ってる!」

花村「はあ……はあ……そ、そいつは……朗報……はあ……はあ……」

里中「ぜえ……ぜえ……」

クマ「キ、キントキ、ドウジ……っ!」

由比ヶ浜「ダーキニー……! お願い……もう少し、頑張って……」

雪ノ下「くっ……はあ……はあ……」

白鐘「……スクナ、ヒコ……ナ……っ!」


比企谷(くそったれ……!)

比企谷(みんなの疲労が激しい)

比企谷(このままじゃ……くそ!!)


比企谷「ルシファー!!」



     ほう……まだそんな力を残しているのか

     やはり君は、侮れない実力を持っている様だね



比企谷「はあっ……はあっ……」




     そろそろ終わりにしよう……

     我は恨む……幾千の輝きを

     幾千の命を!






     『幾千の呪言』






比企谷「何!?」


     イザナミがそう言葉を発すると

     俺の足元から地の底へと誘う黒い腕が数本伸びてきた!

     それらが俺の足をつかもうとワラワラと蠢く。

     やばい、逃げ場がない!


比企谷「く、くそっ!」

花村「比企谷っ!!」

     ドンッ!!

比企谷「!?」

比企谷「花村ッ!!」




     間一髪。

     鈍い衝撃と共に俺は安全圏へ押し出された。

     だが……



花村「うわあああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」

比企谷「花村ぁ――――――――――!!」

雪ノ下「だめ! 比企谷くん!」

雪ノ下「もう間に合わないっ!!」


     断末魔の叫びと共に、地面へと引きずり込まれる花村……

     俺は……なす術なく、それを見る事しかできなかった……


比企谷「くそっ……たれがあああっ!!」









     『幾千の呪言』








比企谷「!!」

比企谷「くそっ、また!!」


     ドンッ!!


比企谷「!?」

由比ヶ浜「…………」

比企谷「」

比企谷「由比ヶ浜っ!!」



由比ヶ浜「……」 ニコッ



比企谷「っ!!」

比企谷「バカ……ヤロウッ!!」

雪ノ下「由比ヶ浜さんっ!!」




     くくく……面白いね

     だが、少々面倒だ。

     先にその他大勢に消えてもらおう





     『幾千の呪言』






クマ「およよ――――――――――!!」

里中「きゃあああああああああああっ!!」

天城「い、いやああああああああああっ!!」

りせ「ひ、比企谷先輩、ごめんなさいっ!!」

白鐘「くっ……! せめて、雪ノ下先輩だけでもっ!!」

     ドンッ!!

雪ノ下「きゃあっ!」

雪ノ下「し、白鐘くんっ!?」

白鐘「後は……任せ」


     ズズズズズズズ……


比企谷「……っ」

雪ノ下「…………」





     ふふふ……




比企谷「…………」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「比企谷くん」

比企谷「なんだ、雪ノ下」

雪ノ下「何かいい打開策はあるかしら?」

比企谷「……考え中だ」

雪ノ下「無いなら無いって、言ってもいいのよ」

比企谷「死んでも言えるか」


雪ノ下「ふふっ……そう」

雪ノ下「それでこそ比企谷くんよね」

比企谷「…………」

雪ノ下「……ねえ、比企谷くん」

比企谷「…………」

雪ノ下「あなたの手を……握ってもいいかしら?」

比企谷「…………」

比企谷「……ああ」

     スッ……

雪ノ下「……ありがとう」

比企谷「……どういたしまして」




     さて、さよならだ……

     死という現実を受け入れるんだね

     興ざめだよ……こんな幕切れになるなんて





     『幾千の呪言』








     地面から伸びてくるたくさんの黒い腕

     俺と雪ノ下は……どうする事もできずに

     地の底へと飲み込まれていく……



     すまない……白鐘

     すまない……みんな

     せっかく俺を助けてくれたのに……



     そんな懺悔の気持ちの中で

     雪ノ下と繋いだ手のぬくもりだけが

     唯一の救いだった……



―――――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――

―――――――――

―――




     ……………………



     ……ん?



     ……誰だ? 俺に話しかけるのは?



マーガレット「どういうつもりかしら? ここまで来て」


     ……うるせぇ

     俺は全力を尽くした……

     もう寝かせてくれ……


マーガレット「立ちなさい。 あなたはこんな所で倒れる人ではないわ」


     むちゃ言うな……

     俺はもう死んだんだよ……


マーガレット「死んだ? 何を言ってるのかしら?」

マーガレット「死人が話せるの?」



     …………


マーガレット「あなたは分かっているはずよ」

マーガレット「絆の本質を……」


     …………


マーガレット「絆が、あなたに与えてくれるモノを……」


     …………


マーガレット「ほら、耳を澄ませてみて?」

マーガレット「せっかく我が主の目を盗んで来たのだから」

マーガレット「無駄足にさせないでくれないかしら?」



     …………


葉山「ヒキタニくん。 どうしたんだい?」

葉山「こんな所で寝っ転がって……」

葉山「君はこんな事でへこたれる人間じゃないだろう?」


     …………


川崎「……言わんこっちゃない」

川崎「一人で頑張っても辛いって、お前が教えてくれた事だろ?」

川崎「さあ、立ちな。 立ち上がって、さっさと顔を見せに来い」 クスッ



     …………


戸塚「八幡……きっと今、辛いんだろうね」

戸塚「でも、僕は知ってる」

戸塚「八幡は必ず立ち上がれる人間だって……」


     …………


小町「お兄ちゃん」

小町「小町……お兄ちゃんの事、大好きだよ」

小町「だから、立ち上がって……きっと大丈夫だから」



     …………


花村「何してんだよ、比企谷」

花村「お前はここで倒れる人間じゃねーよ」

花村「けど……確かにキツイよな。 よし」

花村「あんまし足しにならねーかも知れないが、俺の力……」

花村「お前に託すぜ!」

花村「スサノオ!」


     !?


花村「これは……このペルソナは、お前がくれたもんだ」

花村「もう一息だ。 頑張ろうぜ! 相棒!」


里中「比企谷くん」

里中「正直……腹の立つ事も多かったけど」

里中「あたしは比企谷くんと知り合えて、良かったと思ってるじゃん?」 クスッ

里中「スズカゴンゲン!」


天城「比企谷くん……私ね」

天城「本当のあなたを知る事ができて、嬉しかったよ」

天城「私と同じ様に、いろいろ抱えている人間だってわかったから」

天城「アマテラス!」


りせ「あたしと比企谷先輩の出会いは、あんまり良くなかったね」

りせ「でも……最初から今までずっと変わらない態度で、芸能人としてじゃなく」

りせ「あくまで一人の人間として見てくれた事。 けっこう新鮮で、嬉しかったよ!」

りせ「カンゼオン!」


クマ「センセイ……クマは、嬉しかったクマ」

クマ「センセイに出会えて、みんなに出会えて」

クマ「そんなきっかけを クマにたくさんくれたセンセイは、きっと立ち上がれるクマ!」

クマ「だから、頑張って欲しいクマ!」

クマ「カムイ!」


白鐘「比企谷先輩……大丈夫です」

白鐘「僕の事を認め受け入れてくれた先輩は、誰よりも優しく強い存在です」

白鐘「絶対にこんな事でへこたれる様な人ではありません」

白鐘「あなたとの食事は、いつも楽しいです。 また行きましょう」 クスッ

白鐘「ヤマトタケル!」


由比ヶ浜「やっはろー! ヒッキー!」

由比ヶ浜「これでさ、お互いの事、ある程度わかったよね? ふふっ」

由比ヶ浜「ヒッキーは、もっと、きっと、頑張れるよ!」

由比ヶ浜「でもね、私……これからもヒッキーの事、知っていきたいな」

由比ヶ浜「だから、頑張ろう? 私も応援するから!」 クスッ

由比ヶ浜「ダキニテン!」


雪ノ下「……比企谷くん」

雪ノ下「あなたの抱えてた事……想像もできなかった」

雪ノ下「でも……それでも、私の力を必要としてくれるのなら」

雪ノ下「私は協力を惜しまない」

雪ノ下「だから、こんな事で負けないで立ち上がって」

雪ノ下「伊邪那美大神(いざなみのおおかみ)!!」


足立「なんだい なんだい? こんな所でつまづいてるのか」

足立「僕の事、言えた義理じゃないね……くくく」

足立「……でも、少し安心したよ」

足立「何の事はない。 君も僕と『同じ』って事なんだからね……」

足立「さ、休憩はおしまい。 この優しくないクソな世の中を切り開いていくんだ」

足立「きっと君には……それができるさ」

足立「僕が持つ事の出来なかった”モノ”を」

足立「たくさん持っている比企谷くんになら、ね」




     …………

     ……どいつもこいつも勝手な事いいやがって。

     マジにしんどいっつーの……



     ……でも

     ここで立ち上がったら



     俺……ちょっとカッコいいかもな。



―――――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――

―――――――――

―――




     ……む?


比企谷「…………」


     ……どういう事だ?

     なぜ、死なない?


比企谷「…………」

比企谷「さあな」




     ……まあいい






     『幾千の呪言』






比企谷「…………」




     理屈は分からないが

     地面から生える気味の悪い黒い腕達は

     俺を掴む事ができないでいる。





     なんだと……?

     ……ならば

     天より落ちし裁きの雷鳴よ……





     『大雷』






比企谷「…………」





     並の人間なら、間違いなく黒焦げであろう巨大な電撃

     確かに俺に直撃したが、耐えられなくはなかった






     どういう事だ……?

     なぜ、我と互角なのだ?





比企谷「俺が知るかよ」

比企谷「……けどな」

比企谷「今なら、不思議といろんな事が見える」

比企谷「これのおかげかも知れない」

比企谷「ペルソナッ!!」









     伊 邪 那 岐 大 神 !!
     (いざなぎのおおかみ)










     そ、その力は……!?

     有り得ない……”個”の意思が我の力を超えるというのか!?



比企谷「”個”の意思ね……」

比企谷「お前には、これがそう見えるのか」



     …………



比企谷「何となく……お前の気持ちが分かった気がする」

比企谷「さあ、もう終わりにしよう」

比企谷「自称”イザナミ”さんよ?」




     バカな……人間ごときが世迷言を

     我は神だ……



比企谷「そうかよ」

比企谷「だったら、俺のやる事なんざ気にする必要もないよな」


     俺はクマのメガネを外し、放り投げた


比企谷「伊邪那岐大神(いざなぎのおおかみ)……」

比企谷「人の世に満ちる嘘……幾千の呪言を吹き晴らし」

比企谷「真実を射止める究極の言霊」

比企谷「今こそ、発せぇぇっ!!!」









     『幾万の真言』










     ……ああああああああああああああああああああああああああああっ!!

     バ、バカ、な……!!


比企谷「はあっ……はあっ……」


     なぜ……人間に……これほどの力が……

     お前は……いったい……?


比企谷「…………」


     なんという事だ……

     この我が……滅び……消えゆくとは……


比企谷「……なあ」

比企谷「一つ聞いておきたい」



     …………


比企谷「お前、数ある神の名前から」

比企谷「なんで『イザナミ』を選び、名乗ったんだ?」


     …………


比企谷「推測だが……神話のイザナミは」

比企谷「お前の境遇に近い存在であるから、じゃないのか?」


     …………


比企谷「だからこそ」

比企谷「『イザナギ』役をする存在が欲しくなったんじゃないのか?」




     人間の『負の感情』にもいろいろある。

     嫉妬……憎しみ……悲しみ……欲望……妬み……

     この世界は、人の意思によって……もっと言うなら

     負の意識で作られたのなら



     クマを含めた、『意志ある【シャドウ】』もまた、そういった”モノ”から

     存在が確定していったんじゃないだろうか?





     クマは以前、『寂しくて』外見を可愛くした、と、言っていた

     アメノサギリ?は、表面上は公平さを売りにしていたが

     『嫉妬』からクマの【シャドウ】に干渉していた



     イザナミは、俺に『自分を憎め』と言っていた

     イザナミが欲しがっていたものは『寂しさ』から

     自分と同じく『憎しみ』を抱く者……つまり

     『仲間』が欲しかったんじゃないだろうか……



比企谷「…………」


     …………

     それを知ってどうなる?

     神たる存在の我を打ち破ったお前が

     なぜ、そんなことを聞く?


比企谷「気になったからに過ぎないし、それに……」


     ……それに?


比企谷「ぼっちの気持ちは、同じぼっちにしか分からねーからな」


比企谷「俺にも経験がある」

比企谷「寂しさや孤独を紛らわせる為に」

比企谷「自分より劣る命を使って遊んだものさ」


     なに?


比企谷「蟻地獄にアリを放り込んで、必死に這い上がろうとする様をながめたり」

比企谷「捕まえた昆虫をクモの巣に掛からせて藻掻くのを見たりな」


     …………


比企谷「お前も”神”を名乗り、人間でそれをやっていたにすぎん」

比企谷「結局……そういう意味では」

比企谷「お前は俺たち人間と『変わらない』事をしていたんだよ」

比企谷「なぜなら……」









比企谷「お前は『人の負の意識』から生まれたのだから」









     …………

     ふ……ふふ…………ふふふっ!

     ふはははははははっ……


比企谷「…………」


     ……そうだ

     その通りだ、人の子よ……

     我は……人が……憎かった……


比企谷「…………」


     理由なぞない

     ただ……『憎かった』のだ


比企谷「…………」



     考えた事もなかった……

     なぜ、我はこれほど人間が憎いのだろうと

     憎いから憎い……そう思っていた


比企谷「…………」


     ……人の子よ。 今、はっきりと思い出した。

     我がイザナミを名乗ったのは……

     神話でのイザナミに協賛したからだ

     これこそが、我の存在意義なのだと、思えたからだ


比企谷「…………」



     だが……全ては、虚構に過ぎなかったのだな……

     我は……神などではなく……

     ”力”を持った……ただの【シャドウ】でしかないのだな……

     だから……我は……負けたのか……


比企谷「……そいつは少し違うかもな」


     ……む?


比企谷「お前が【シャドウ】なのは、まあ、そうだろう」

比企谷「でも、ただの【シャドウ】じゃないのも確かだ」

比企谷「言ってみれば人間に近い存在の【シャドウ】かもしれん」



     人間に近い……【シャドウ】……


比企谷「……よし」

比企谷「一つプレゼントしてやる」


     プレゼント……?


比企谷「お前は今から、『渚』だ」


     なぎ……さ……?


比企谷「もう『イザナミ』じゃないんだろ?」

比企谷「だったら……ちゃんとした『名前』を名乗らないとな」



     …………


比企谷「昔な、あるアニメで海と陸の間の……という表現を聞いたことがある」

比企谷「そりゃ波間、『渚』の事だろう、と俺は思った」

比企谷「人と【シャドウ】の間みたいな存在のお前に」

比企谷「ピッタリだと思わないか?」


     …………


比企谷「…………」


     なぎさ……か……

     いい……名前……だな……ふふ……



     人の、子よ……いや……

     比企、谷……八幡……


比企谷「…………」


     礼、を……いう……

     あり……が…………とう……


比企谷「…………」

比企谷「……どういたしまして」

比企谷「ゆっくり休むといい……」

比企谷「渚」




     俺に礼を言うと

     力尽きた『渚』は、静かに、風に舞う砂の様に

     崩れて消えて行った……



     そして――



     …………




――――――――――


????


イゴール「ふふふ……ようこそ、我がベルベットルームへ」

イゴール「こうやってお客様をここへお招きするのも」

イゴール「恐らくこれで最後となりましょう……」

イゴール「神に近しき”力”を持つ存在すら打ち破り」

イゴール「お客様は、新たな『世界』の誕生すら成し遂げられました」

イゴール「お見事でございましたな……」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……それはお客様ご自身の目で」

イゴール「ご覧になられた方が早いでしょう……」


イゴール「間もなく、すべての霧は晴れ」

イゴール「おのずと目的地は見えてまいりますから……」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……それにしても素晴らしい」

イゴール「お客様の節目の年にふさわしい、実に」

イゴール「有意義な旅にございました……」

イゴール「幾度となく視界を曇らせる虚飾や嘘の霧に阻まれながらも」

イゴール「安易な出口や、まやかしの終点の誘惑に打ち勝ってこられた」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……その通りにございまする」


イゴール「お客様の独自解釈や、大切な人々と絆を築き」

イゴール「真実へまた一歩、また一歩、と近づいてゆく……」

イゴール「その度にわたくし自身も心躍る思いでした」

イゴール「これ程の旅路に立ち会えた事を わたくしも誇りに思っております」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……」

マーガレット「もう間もなく到着します」

イゴール「おお……そろそろ”旅路の真の終点”でございますな」

イゴール「契約はついに果たされました」

イゴール「わたくしの役目もこれまでにございます……」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……あなたは最高のお客人でございました」

イゴール「ありがとうございます……」


マーガレット「私からも一言お礼を」

マーガレット「素晴らしき旅路を本当にありがとう」

マーガレット「本音を言うと……少しさみしい気もするけどね」

イゴール「……さあ、お行きなさい」

イゴール「そして、その目で直にご覧になられるとよろしいでしょう」

イゴール「お客様が最後に勝ち取った”世界”が」

イゴール「どの様な素晴らしき明日であるかを……」

マーガレット「行ってらっしゃい、お客様」 クスッ



――――――――――


     チチチ…… チュピ、チュピー…

比企谷「…………」

比企谷「……ん」

比企谷「…………」

比企谷「ここは……?」


     そこは、どこかの深い森だった。

     それも杉とかじゃなく、ブナやナラ、名前もわからない木々が

     雑然と生い茂っている印象だ。


比企谷(…………)


比企谷(ともかく、みんなを探さないと……ん?)


     不意に、俺は自分の左手が誰かの手を握っている事に気がつく。


比企谷「……雪ノ下」

比企谷(そういや、あの時……もうダメかと思ったあの瞬間……)

比企谷(…………)

比企谷(見たところ、異常は無さそうだな)

比企谷(起こしてみるか……)

比企谷「……おい、雪ノ下」

比企谷「起きろ、雪ノ下」 ペシペシ

雪ノ下「……ん」

雪ノ下「…………」


雪ノ下「! 比企谷くん……」

比企谷「気がついたか、雪ノ下」

雪ノ下「ここは……どこなの?」

比企谷「俺にもわからん……」

比企谷「最後、イザ……『渚』を倒したと思うんだが」

比企谷「どうにも記憶がはっきりしない」

雪ノ下「『渚』?」

比企谷「みんなを見つけた後で詳しく説明する」

比企谷「立てるか?」

雪ノ下「ええ、多分大丈夫だと……?」



     雪ノ下は、自分の右手が俺の左手を握っているのに気がついた。


雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

雪ノ下「……も、もういいから」///

比企谷「お、おう……」///


――――――――――


花村「……!」

花村「比企谷!」

花村「それに雪ノ下さんも」

比企谷「生きていたか、花村!」

花村「へへっ、勝手に殺すんじゃねーよ!」




     俺と雪ノ下は、森を少々さまよい、少し開けた場所に出る。

     そこに元気そうな花村と、他の全員が揃って休んでいた。

     みんな特に問題はなさそうだった。



花村「ところでここは、どこなんだ?」

花村「いや、その前にイザナミとの戦いは、どうなったんだ?」

比企谷「俺が知る限りの事は、今話す」

――――――――――

比企谷「――という訳だ」

花村「へえ……『渚』ね」


りせ「という事は……あの鳥居?がたくさんある世界は」

りせ「比企谷先輩に関係していたんじゃないんだ」

比企谷「ああ。 『渚』が神話を元にイメージしたのかもな」

天城「じゃあ……この世界は?」

比企谷「こればっかりはな……どうも俺の記憶がはっきりしなくて」

比企谷「誰かに俺が新しく作った世界、とかなんとか言われた気がする……」

由比ヶ浜「ヒッキーが作った世界?」

里中「へえー。 比企谷くんてアウトドア派なんだ?」

比企谷「超インドア派です」

雪ノ下「……そうよね」

白鐘「ま、まあ、それはともかく、しばらく探索しませんか?」

クマ「帰るのは、いつでもできるクマ!」



――――――――――


     ザッ ザッ ザッ…

里中「それにしても空気がおいしいじゃん?」

天城「八十稲羽も負けてないと思うけど……」

りせ「爽やか~」

花村「自然は豊かっぽいな」

由比ヶ浜「ヒッキーは自然が好きなの?」

比企谷「……嫌いじゃねーけど」

雪ノ下「腑に落ちないの? 自分で作ったのに?」

比企谷「…………」

白鐘「……あ! どうやら森はあそこで終わりみたいです!」

クマ「ウッホホーイ!」


一同「!!」


     森を抜け、俺たちの目に飛び込んできた物は

     本当の意味で大自然が広がる世界だった。



     飛び回る小鳥たち……広大な花畑とそこを舞う蝶蝶……

     飲めそうなくらい透き通った水が流れる清流……

     遠くに見える雪をかぶった高い山々……



     見ていて吸い込まれそうなほど、綺麗な景色だった。



花村「おおー! スゲー!」

里中「絶景かな、絶景かな♪」

天城「風も気持ちいいね、千枝!」

由比ヶ浜「すごい……」

りせ「本当にそれしか言えないね」

白鐘「同感です」 クスッ

雪ノ下「…………」

雪ノ下「比企谷くん?」

比企谷「ん?」

雪ノ下「思っている事があるのなら、はっきり言ってくれないかしら?」


比企谷「…………」

比企谷「……この世界、リスとかの動物はいるのに」

比企谷「人間が居ないと思ってな……」

由比ヶ浜「え?」

比企谷「もし」

比企谷「この世界……俺の『意思』が反映されているのなら、俺は」

比企谷「まだ『人間』に対しての不信感が拭(ぬぐ)えていないのかもな……」


一同「…………」


比企谷「……水を差して済まない」

比企谷「だが、これで本当の意味で」

比企谷「すべてが終わったんだ……とは思う」




     ……結局

     俺は『俺』のままって事なのだろうか。



     見た目こそ素晴らしい、北欧風の様な大自然が広がるこの世界。

     完璧である必要は無いだろうが……



     ケチをつけるのも自分であるのが、妙に滑稽に思えて仕方なかった。


というところで、今日はここまでです。
投下遅れてすみませんでした……

あと、私、ペルソナシリーズはP4しかやっていないので……
P3はごめんなさいです……

材木座スルー

ホントだ材木座さん・・・

平塚先生もいない...



――――――――――


天城屋のとある一室


花村「はあ? クイズ大会?」

クマ「そうクマ!」

花村「おいおい……俺たちテレビの世界から戻ってきたばかりじゃねーかよ」

比企谷「はっきり言って疲れてるんだが……」

クマ「クマはビンビンに元気クマ!」

花村「……パスさせてくれ」

比企谷「……また今度でいいだろ」

クマ「え~! だってユイちゃん、明日帰っちゃうし」

クマ「チャンスは今しかないクマ!」


比企谷「どうする? 花村?」

花村「どうするって言われてもなぁ……」

クマ「むふふ……ちゃんと豪華景品も用意してるクマよ~?」

花村「景品? 何だよ?」

クマ「それは優勝してからのお楽しみクマ!」

比企谷「……って言われてもな」

花村「……クマのバイト代で手に入る豪華景品なんて」

花村「お菓子詰め合わせとか、ホームランバー10本とかだろ?」

クマ「ムキー! ヨースケ、馬鹿にするなクマー!」


??「あら。 面白そうな話、してるわね?」


比企谷「!」

花村「!」


     ガラッ

陽乃「うふふ~ごきげんよう♪」

比企谷「……どうも」

花村「……どうもっす」

陽乃「私からも景品用意するから、参加して楽しもうよ?」

比企谷「……疲れてるんで」

花村「……お、俺も」

陽乃「そっか。 残念ね」

陽乃「じゃあ仕方ない。 誰かさんと誰かさんの恥ずかしい話でもして」

陽乃「雪乃ちゃんと盛り上がって来ようかな?」


比企谷「はい?」

花村「は、恥ずかしい話?」

陽乃「んー? たとえばぁ……」

陽乃「修学旅行、クラブの時、ヘベレケ状態の男子高校生の写メとか」

比企谷「!!」

陽乃「夏祭りの時のウブな男子高校生のエピソードとか」

花村「!!」

陽乃「ガールズトークで盛り上がりそうよね~」 ニヤニヤ

花村「ク、クマ吉! ちょうどクイズとかやりたかったんだ!」

花村「ぜひ参加させてくれ!」

比企谷「お、俺もだ!」

クマ「ムホホー! そうこなくっちゃクマ~!」

陽乃「良かったね、クマくん♪」




     俺たちは、あの世界……テレビの中の世界から戻って

     再び天城屋に宿泊している。



     『渚』との戦いは一晩中に及んだみたいで

     テレビから出てきた時は、翌日の午後になっていた。



     そういえば特に気にもしていなかったが、あの世界とこちら側は

     時間がリンクしている。 時差がない。

     どうしてなのだろう?





     由比ヶ浜は昨日 唐突にここへ来たため

     両親に連絡した時、やっぱり怒られたみたいだ。

     とりあえず詳しい事情を話せないので、どうしても行きたかったから

     という苦しい言い訳みたいな理由で押し通した様子。



     ……なんか、すみません。






     で、そのお礼、という事でもないが

     慰労も兼ねて天城屋に……という流れで今に至る。



     オフシーズンで空(す)いているし、格安で泊まれたから

     お得でちょっと贅沢な気分を味わっていたところ

     クマが今の話を持ちかけてきたのだった……




―――――――――――


クマ「レデース、アン、じぇんとるメーン!」

クマ「いよいよこの日がやって来た!」

クマ「気力・能力・クマの気分! 優勝目指して突き進め!」

クマ「マヨナカ横断ミラクルクイズ~!!」

クマ「ドンドンドン、パフーパフー! クマ!」


花村「盛り上げ演出もお前の口かよ……」

比企谷「着ぐるみも白タキシード着てるし……ノリノリだな」


クマ「司会・進行はワタクシ、ジャッスミークマ沢がお送りしますクマ!」


雪ノ下「……このネーミングの元になったネタ」

雪ノ下「今の若い人たち、わかるのかしら?」

由比ヶ浜「ニューヨークへ行きたいかー、でしょ?」

天城「私は○留さんかな。 トメさんの愛称でお馴染みの」

里中「勝てば天国、負ければ地獄。 気力体力時の運! 早く来い来い木曜日!」

白鐘「>>1は参加したかったみたいですが」

白鐘「当時、交通費が片道3万円もかかるので断念したそうです」

りせ「あれって結構大変だったらしいよ?」

りせ「泥んこクイズとかバラマキクイズとかの準備もそうだし」

りせ「それに国際問題になりかけた事とかもあったらしくって……」

陽乃「敗者復活や罰ゲームは、今でもいいアイデアだと思うわよね~」

花村「何でみなさん、そんなにお詳しいんですか……」

比企谷「あと、メタ発言はやめなさい」


クマ「それでは、さっそく始めるクマ!」

クマ「第一問!」

クマ「ユイちゃんがGWに八十稲羽へ来たきっかけは、次の内のどれクマ?」


     A 平塚先生の傷心旅行に付き合わされた

     B 福引の景品

     C ユイちゃん自身が観光目的で

     D 修学旅行


里中「あ~……そういや何だっけ?」

由比ヶ浜「これ、私が答えてもいいの?」

クマ「構わないクマ!」


     ポーン!

由比ヶ浜「Bの福引の景品!」

     ピンポン ピンポーン!

クマ「正解クマ! さっすがユイちゃんクマ!」

由比ヶ浜「えへへ~」

比企谷「本人なんだから、答えられて当たり前だろ……」

花村「これ、この頃には居なかった白鐘とかには超不利なんじゃね?」

クマ「細かいことは気にすんなクマ!」

花村「おかしいだろ!? クイズとして!」

りせ(まあその時の事、話では聞いてたし)

白鐘(過去を知る事もできるので、ちょっと面白いですけどね)


クマ「第二問!」

クマ「ユイちゃんと一緒にやって来た、セイセイの先生、平塚先生!」

クマ「ぶち切れてセンセイに最初に食らわせた技は、次の内のどれクマ?」


     A 衝撃のファー○トブリット

     B 撃滅のセ○ンドブリット

     C 抹殺のラ○トブリット

     D シェ○ブリット・バースト


比企谷「今から考えると、十分訴訟できるレベルだったぞ、あれ」

里中「あれは理不尽だったね~」

雪ノ下「どうせ比企谷くんが、余計な事を言ったからなのでしょうけど……」


     ポーン!

花村「Cの抹殺の○ストブリット!」

     ブブー!

クマ「外れクマ!」

クマ「正解はAの衝撃の○ァーストブリットクマ!」

花村「いい!? そうだったっけ?」

クマ「ちっちっちっ。 ジャッスミークマ沢は『最初に』って、ちゃんと言ったクマ!」

白鐘(……技の名前から推測できそうなんですけど)

りせ(教師なのに暴力振るったの?)

里中(確かにすごいキャラの先生だったじゃん……)

花村「つか、クマ。 お前あの時いなかったのになんで知ってるんだ?」

クマ「さぁ~て、どんどん行くクマ!」

花村「無視かよ!?」


クマ「第三問!」

クマ「ユキノンが転校してきた時、あるエピソードから付けられた」

クマ「ユキノンへの告白行為の俗称は、次の内のどれクマ?」


     A 雪ノ下越え

     B 雪ノ下チャンス

     C 雪ノ下またぎ

     D 雪ノ下くぐり


花村「そういやあったな~。 何だっけ?」

天城「つけられる方は迷惑なんだけどね……あれ」


     ポーン!

比企谷「……Dの雪ノ下くぐり」

     ピンポン ピンポーン!

クマ「さっすがセンセイクマ! 大正解クマ!」

雪ノ下「くっ……私も押したのに」

由比ヶ浜「次があるよ、ゆきのん!」

里中「なんだかんだ言っても、面白くなってきたじゃん」

りせ「もうすぐあたしかな?」

白鐘「僕の登場は、まだ先そうですね」


クマ「第四問!」

クマ「GW明け、ユキノンが見かけた怪しい人物の名前」

クマ「実はナオトだったけど、ユキノンは間違って覚えてたクマ」

クマ「その間違ってた名前は、次の内のどれクマ?」


     A 白三河 直美

     B 白無垢 直江

     C 白装束 直道

     D 白北澤 直茂


花村「あ~、あったあった! えっと……何だっけ?」

比企谷「おかげで怪しい人物って認識だったな」

白鐘「……名刺でも作って渡せば良かったですね」


     ポーン!

天城「Bの白無垢 直江!」

     ピンポン ピンポーン!

クマ「ユキちゃん正解クマ~!」

天城「やった!」

里中「よく覚えてたね、雪子」

天城「やっぱり珍しい名前だったし……旅館の女将として」

天城「名前は覚えられる様、頑張ってたから♪」

白鐘「なるほど。 仕事柄、そういう事ができる様になってたんですね」

比企谷(……俺はよっぽどの奴じゃないと、なかなか覚えられない)


クマ「第五問!」

クマ「りせちゃんの実家のオトーフ屋さんを訪ねたセンセイとヨースケ」

クマ「その時買ったものは、次の内のどれクマ?」


     A おからを3パック

     B 絹ごし豆腐を3丁

     C 豆乳を1リットル

     D がんもどきを6つ


花村「確かにお前、なんか買ってたな?」

比企谷「もう覚えてねーよ……豆腐じゃなかったと思うが」


     ポーン!

りせ「Dのがんもどきを6つ!」

     ピンポン ピンポーン!

クマ「正解クマ!」

りせ「うふふ! あたしよく覚えてるよ?」

りせ「花村先輩は鼻の下伸ばしてて、比企谷先輩の目がすっごく怪しかったな♪」

雪ノ下「…………」 ゴゴゴ…

由比ヶ浜「…………」 ゴゴゴ…

花村「ク、クマ! さっさっと次の問題に行け!」

比企谷「早くしろ!」


クマ「第六問!」

クマ「夏休みに入って、アダっちーの部屋に集結した時」

クマ「男性陣がヒマ潰しにやっていたのは、次の内のどれクマ?」


     A 人○ゲーム

     B モン○ターハ○ター

     C 大乱闘ス○ッシュブ○ザーズ

     D トランプの7ならべ


里中「ああ、あたしらがお昼作ってた時だね」

天城「クマくんがすっごく喜んでたよね? 確か」


     ポーン!

花村「これは覚えてるぜ。 Aの○生ゲームだ!」

     ピンポン ピンポーン!

クマ「おおー! ヨースケ、正解クマ!」

クマ「クマ、石油王になって、世界経済を引っ張ったクマよ~」

雪ノ下「比企谷くんは?」

比企谷「……小さな工場経営者で終わった」

比企谷「ちなみに花村は学校の用務員で定年」

花村「暖かな家庭を築いたんだからいいんだよ!」

白鐘「な、なんだか、細かい設定まである終わり方ですね……」

由比ヶ浜「私もちょっと参加したかったかも♪」


クマ「第七問!」

クマ「修学旅行での行く先が、センセイのかつて母校だと知った時」

クマ「センセイがハルさんを例えた正確な言葉は、次の内のどれクマ?」


     A 四次元ポケットを持った未来のネコ型ロボット

     B 4Dポケット持ってる青いタヌキ型ロボット

     C 4Dポケット持った自称ネコ型ロボット

     D 4Dポケット持ってる自称キャット型ロボット


花村「そんなもん本人以外、分かる訳ねーだろ!?」

由比ヶ浜「うーん……でも、ヒッキーの性格を考えると……?」


     ポーン!

白鐘「Dの4Dポケット持ってる自称キャット型ロボット!」

     ピンポン ピンポーン!

クマ「正解クマ!」

白鐘「やった!」

クマ「ナオト、よく分かったクマね~」

白鐘「ははは……まあ、なんとなくですけど、比企谷先輩の事ですし……」///

雪ノ下「…………」

由比ヶ浜「…………」

比企谷「……あの。 どうかしました?」

花村(……な、なんか、緊張感が高まってる様な)

里中(空気、変わったじゃん……)

天城(次は当てるっ!)

りせ(愛のなせる技かぁ♪)


クマ「第八問!」

クマ「修学旅行中、偶然ばったり出会ったハルさんとセンセイ達」

クマ「その時ハルさんは次の内、どの理由でそこに居たクマ?」


     A 就職活動

     B お見合いをする為

     C 休学届けを出してる大学に用事

     D 実家に呼ばれて仕方なく


花村(……あれ、本当に偶然だったのかな)

比企谷(……まるでこちらを監視しているのかと思える様なタイミングだった)


     ポーン!

陽乃「Cの休学届けを出してる大学に用事!」

     ピンポン ピンポーン!

クマ「ハルさん正解クマ!」

陽乃「やった! やっと私も答えられる問題が出たわ♪」

雪ノ下(でも……あの後のクラブでの出来事)

雪ノ下(何があったのだろう?)

由比ヶ浜(あれは酷かったなぁ……)

里中(雪子含め、覚えていなくて幸いだけど……)

白鐘(今にして思えば、大暴露大会でしたね……)

花村(あの時の写メ……まだ持ってるんだよなぁ、陽乃さん……)

比企谷(まあ楽しかった感覚があるのみだが)

りせ(また行きたいな♪)


クマ「第九問!」

クマ「修学旅行最終日、大衆食堂はがくれで食事した時」

クマ「りせちゃんは美味しいけど、次の内の何を気にして控えてたクマか?」


     A カルシウム

     B ビタミン

     C タンパク質

     D 炭水化物


花村「あそこのラーメン確かに旨かったよな!」

里中「うーん……なんだったっけ?」


     ポーン!

天城「Dの炭水化物!」

     ピンポン ピンポーン!

クマ「正解クマ!」

天城「やった♪」

りせ「うそっ!? あたしも押したのに~!」

里中「早押しだからねー」

雪ノ下「私も分かったのに」

由比ヶ浜「女の子なら誰でも気にするよね~」

白鐘「僕はあまり気にした事はありませんが?」

りせ「……その栄養。 全部胸に行ってるのかなぁ」

白鐘「!?」///


クマ「第十問!」

クマ「センセイの善意で始まった勉強会」

クマ「その時に暴露されたヨースケのうっふん♡な本のタイトルで」

クマ「正しくないのは、次の内のどれクマ?」


     A お姉さんの谷間でイって♥

     B 姉ちゃんとやろう!

     C 揉みしだかれたおっ○い

     D 破れたパンストと生足


花村「そのネタ、もう引っ張んのやめて!?」///

里中「あははははは……」


     ポーン!

天城「たぶん、Cの揉みしだかれた○っぱいだと思う」

     ピンポン ピンポーン!

クマ「ユキちゃん正解クマ!」

天城「うふふ、二問連続正解! 正しくは巨乳だったよね?」

里中「ゆ、雪子……」///

白鐘(できない……僕にこの問題を答える事はっ)///

りせ(恥ずかしくて答えられなかった……)///

雪ノ下(……まあ健全な男子ならしょうがないけど)///

由比ヶ浜(なんで天城さん答えられるの!? 勉強会って、何の勉強したの!?)///


クマ「第十一問!」

クマ「八十神高校・文化祭で行われた女装コンテスト!」

クマ「クマの優勝で幕を閉じたけど、この時のセンセイが」

クマ「女装でかぶっていたものは 次の内のどれクマ?」


     A 黒髪ロングのカツラ

     B 金髪ロングのカツラ

     C 銀髪ロングのカツラ

     D 茶髪ロングのカツラ


比企谷「古傷をえぐるんじゃねぇ!!」///

花村「早く忘れたい……」/// シクシク…


     ポーン!

由比ヶ浜「Aの黒髪ロングのカツラ!」

     ピンポン ピンポーン!

クマ「ユイちゃん正解クマ!」

由比ヶ浜「よし!!」

天城「私も覚えてたのに~」

里中「確か……ガタイのいいサ○コとか言われてたじゃん?」

りせ「そうそう!」

比企谷「もう忘れてください……」

白鐘「ぼ、僕は、悪くなかったと思いますよ?」

     アハハ……



―――――――――――


クマ「さて」

クマ「問題も随分終わって、盛り上がってきましたが!」

クマ「いよいよ次が! ラストファイナル千秋楽問題クマ!」

クマ「ドンドンドン、パフーパフー! クマ!」

花村「ラストもファイナルも千秋楽も同じ意味だっつーの!!」

クマ「もー。 ヨースケは人間がちっちゃいクマね」

クマ「だからカノジョ出来ないクマ」

花村「うっせーよ!?」


天城「けっこう面白かったね、千枝」

里中「ふふ、まあね」

陽乃「白熱したわ~♪」

りせ「いよいよ最終問題かぁ」

白鐘「現在の正解数は……僕と、比企谷先輩」

白鐘「それに雪ノ下先輩と由比ヶ浜さんが同数でトップです」


それ以外(よりにもよって、その顔ぶれで横並びトップですか……)


比企谷「お約束なら最後は、ポイント1億点というのがデフォだな」

天城「あれ興ざめする……」

里中「今までの展開なんだったの?って感じになるじゃん?」

クマ「も、もちろん、そんな事はないクマよ、センセイ?」


花村(やる気だったな……こいつ)


クマ「それでは、ラストファイナル千秋楽問題!」

クマ「最後の戦いにおいて、センセイが掲げた不思議なアイテム!」

クマ「その時、その事を思い出すきっかけとなったゲームのアイテム名は」

クマ「次の内のどれクマ?」


     A ドラ○エの「に○のしずく」

     B ド○クエⅣの「おう○んのうでわ」

     C ドラク○Ⅱの「は○いのつるぎ」

     D ○ラクエⅢの「ひか○の玉」


比企谷「どれもこれも皆懐かしい……」

比企谷「終わったドラ○エのレベル上げも楽しい思い出だ」

花村「……想像すると切なくなるから止めろって」


     ポーン!

雪ノ下「DのドラクエⅢの「ひかりの玉」!」

     ピンポン ピンポーン!

クマ「ユキノン、大正解クマ~!!」

里中「お見事!」

天城「さすが雪ノ下さんね」

りせ「っていうか、当事者の比企谷先輩が答えられないって……」

比企谷「いや……はぐ○メタルと戯れ、パルプ○テ祭りをしたなと思い出に浸って」

由比ヶ浜「そ、そろそろ帰ってこよう? ヒッキー?」

白鐘「優勝は雪ノ下先輩ですね」

陽乃「うふふ、さすが雪乃ちゃんね♪」

>>473修正↓


     ポーン!

雪ノ下「Dのド○クエⅢの「○かりの玉」!」

     ピンポン ピンポーン!

クマ「ユキノン、大正解クマ~!!」

里中「お見事!」

天城「さすが雪ノ下さんね」

りせ「っていうか、当事者の比企谷先輩が答えられないって……」

比企谷「いや……はぐ○メタルと戯れ、パルプ○テ祭りをしたなと思い出に浸って」

由比ヶ浜「そ、そろそろ帰ってこよう? ヒッキー?」

白鐘「優勝は雪ノ下先輩ですね」

陽乃「うふふ、さすが雪乃ちゃんね♪」


クマ「いや~、白熱したクイズバトルだったクマ!」

比企谷「ときどき古傷に塩水かけられた気がするがな」

花村(……俺はヤブヘビになりそうだから、あえて突っ込まないでおこう)

陽乃「それにしても花村くんの趣味って、そうなんだー」

花村「やめてー!! 俺のライフ、もうマイナス!!」///

里中「で? なんか優勝者には豪華景品が贈られるとか言ってたけど?」

クマ「もっちろん、進呈するクマ!」

クマ「マヨナカ横断ミラクルクイズ、優勝者には……」


一同「…………」


クマ「クマからの熱いホウヨウと共に、愛情たっぷりの口づけが」



     ガシッ!!


クマ「はがッ!!?」

比企谷(うおっ!? 雪ノ下!?)

比企谷(一瞬の内にクマの着ぐるみ外して、中身の頭にアイアンクローをかました!?)


     ギリッ…ギリッ…ギリリッ!!


クマ「イタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタッ!!?!?」

雪ノ下「…………」 ゴゴゴ…

由比ヶ浜(し、しかも片手でクマくんを持ち上げてる!?)

クマ「ユキノン、ユキノン! 冗談じゃなく痛いクマ!?」

雪ノ下「痛くしてるから当然ね」

クマ「何が気に入らないクマ!? ジュネスのおば様には大人気なのに!?」


花村「……まあ雪ノ下さんは『ジュネスのおば様』じゃねーからな」

花村「つーか、店で何してんだよ、お前……」

花村「あと、俺と比企谷が優勝した時も景品それだったのか?」

クマ「当たり前クマ!」

比企谷「雪ノ下さん、やっちゃってください。 遠慮なく」

由比ヶ浜「え~っと……」

りせ「まあ仕方ないかな」

白鐘「ですね」

天城「一度締めないといけないと思ってたし」

里中「いい機会じゃん?」

陽乃「あらあら♪」

クマ「」










     ア―――――――――――!!










―――――――――――


天城屋 露天風呂(現在女性風呂)


     チャプン…

由比ヶ浜「ふう……」

由比ヶ浜「やっぱりここの露天風呂はいいな♪」

由比ヶ浜「気持ちいい~」

     ガララ…

雪ノ下「……あ」

雪ノ下「由比ヶ浜さん」

由比ヶ浜「あ、ゆきのん」


雪ノ下(……誰もいないと思ったのに)

雪ノ下「こんな遅い時間にどうしたのかしら?」

由比ヶ浜「ん? 私、明日帰るし」

由比ヶ浜「まあ記念にって、思って」

雪ノ下「そう……」

由比ヶ浜「そう言うゆきのんは?」

雪ノ下「エロクマを締めて、少し汗をかいたから」

由比ヶ浜(クマくん……大丈夫かな)

由比ヶ浜「そ、そうなんだ……」


由比ヶ浜「そだ、まだお礼 言ってなかったね」

雪ノ下「何の事?」

由比ヶ浜「交通費とかここの宿泊費とか出してくれて」

雪ノ下「ううん。 それこそ気にしないで、由比ヶ浜さん」

雪ノ下「むしろ足りないくらかも、と思ってるの」

由比ヶ浜「でも……」

雪ノ下「お金、という形になってしまったけど」

雪ノ下「感謝の気持ちに変わりはないわ。 だから……どうしても気になるのなら」

雪ノ下「何か別の形で返してくれたらいいから」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「うん。 わかったよ、ゆきのん」


雪ノ下「…………」

由比ヶ浜「…………」

雪ノ下「……ところで」

由比ヶ浜「ん?」

雪ノ下「比企谷くんが私たち……ううん、もっと言うと」

雪ノ下「周りの人達を傷つけない為に、身を引いていってるって」

雪ノ下「どうして足立さんとの あの会話で分かったのかしら?」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「それだけじゃないよ」

雪ノ下「え?」

由比ヶ浜「私はね、ゆきのんやみんなの意見も聞いて」

由比ヶ浜「その上で足立さんとの話でそう思っただけ……」

雪ノ下「…………」


由比ヶ浜「今にして思うとね」

由比ヶ浜「年末に私がここを離れる時……ヒッキーは」

由比ヶ浜「不必要に謝っていたなって思えるの」

雪ノ下「…………」

由比ヶ浜「その時は……私も小さな違和感しか感じられなかった」

由比ヶ浜「でも、みんなとゆきのんの話……それに」

由比ヶ浜「足立さんとの話で、ヒッキーは」



由比ヶ浜「関わってきた、全員に謝っているんじゃないかって思えた」



雪ノ下「!」


由比ヶ浜「私から見たらヒッキーは何も悪くない」

由比ヶ浜「でもヒッキーは……ヒッキー自身は、そうじゃないんだって」

由比ヶ浜「自分を責め続けているんだって感じて、悲しくなったな……」

雪ノ下「…………」

由比ヶ浜「とまあ、こんな感じかな?」

雪ノ下「……ありがとう」

雪ノ下「よく分かったわ」

由比ヶ浜「どういたしまして♪」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「ね、ゆきのん」

雪ノ下「何かしら?」




由比ヶ浜「ヒッキーに気持ち、伝えた?」



雪ノ下「…………」

雪ノ下「……あなたが気にする事じゃない」

由比ヶ浜「そう」

由比ヶ浜「だったら……ちょっと意地悪するね」

雪ノ下「え?」

由比ヶ浜「そういうのって、ずるいんじゃないの? ゆきのん」

雪ノ下「……何がずるいの?」

由比ヶ浜「臆病で、傷つく事を恐れて、進もうとしていない」

由比ヶ浜「そんな風に見えるから」

雪ノ下「っ!」


     バシャッ!

雪ノ下「勝手な事を言わないで!」

雪ノ下「私は……私はそんな理由でしないんじゃない!」

由比ヶ浜「じゃあ、どんな理由?」

雪ノ下「!!」

雪ノ下「そ、それは……」

雪ノ下「…………」

由比ヶ浜「……黙っちゃうんだ」

雪ノ下「…………」

由比ヶ浜「…………」


     ザバァ……

由比ヶ浜「さて、そろそろあがろっと」

雪ノ下「…………」

     ペタ ペタ ペタ… ガララッ

由比ヶ浜「ねえ、ゆきのん」

雪ノ下「……何かしら?」

由比ヶ浜「私……どんな事があっても」

由比ヶ浜「ヒッキーとゆきのんが『特別』である事に……」

由比ヶ浜「変わりはないから」

雪ノ下「…………」

由比ヶ浜「じゃ、お休み」

     ガララ…… ピシャ

雪ノ下「…………」



―――――――――――


雪ノ下の部屋


     コン コン

雪ノ下「はい? どなたですか?」

??「私よ、雪乃ちゃん」

雪ノ下「姉さん? 今頃、何の御用ですか?」

陽乃「とりあえず開けてくれるかな?」

雪ノ下「…………」

     ガチャ…

陽乃「ありがとう」


雪ノ下「いえ……それで? ご要件は?」

陽乃「例のクイズの景品を渡そうと思って」

雪ノ下「景品?」

陽乃「うふふ。 ちょっとお邪魔するわね?」

雪ノ下「はあ……」

―――――――――――

雪ノ下「姉さんもそんな約束をしていたんですか」

陽乃「ふふっ。 まあクマくんの景品だけじゃ辛いかな?って思ってたから」

陽乃「あんなのだとは、さすがに思わなかったけど♪」

雪ノ下(……本当かしら)

陽乃「で、これ」 スッ…


雪ノ下「……クッキー?」

雪ノ下(姉さんにしては無難な景品ね?)

陽乃「それは残念賞」

陽乃「参加した人数分用意しておいたの」

陽乃「みんなに配った物と同じ物よ」

雪ノ下「え?」

陽乃「そして、ここからが本当の優勝景品」

雪ノ下「…………」

陽乃「何か悩み事があれば、相談に乗っちゃいます♪」

雪ノ下「……姉さん」

陽乃「うふふ、どう? 豪華でしょ?」

雪ノ下「…………」


陽乃「まあ真面目な話」

陽乃「今日、帰ってきたみんなの中で、雪乃ちゃんだけ」

陽乃「浮かない顔してたから」

雪ノ下「……そんな事は」

陽乃「ううん、もっとはっきり言うと」

陽乃「雪乃ちゃん、何か抱え込んだんじゃないのかな?」

雪ノ下「…………」

陽乃「…………」

陽乃「……言えない、かな?」

雪ノ下「…………」

陽乃「……そっか」


陽乃「そういえばね、比企谷くん」

雪ノ下「…………」

陽乃「今回、私の見立てでは、彼が一番劇的に変わった」

雪ノ下「え?」

陽乃「……ううん、そうじゃなくて」

陽乃「ものすごく落ち着いた雰囲気になった気がする」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「……私には、わかりません」

陽乃「そう」

陽乃「でもね、雪乃ちゃん」

雪ノ下「はい?」

陽乃「きっと彼は、これからモテるわよ~?」

雪ノ下「…………は?」


雪ノ下「何を言ってるんですか、姉さん。 くだらない……」

陽乃「あら? 冗談だと思うの?」

雪ノ下「本気でそうおっしゃってるのなら、病院を紹介しますが?」

陽乃「うふふ、大した自信ね♪」

雪ノ下「だから自信などでは……」

陽乃「けどね、雪乃ちゃん」

陽乃「本当にそれでいいの?」

雪ノ下「…………」

陽乃「由比ヶ浜さんは、とっても頑張ってる」

陽乃「境遇に負けず一生懸命で、健気に、それでいて実直に」

陽乃「白鐘くんもそうね。 あの娘は、決定的に『経験』が足りていない」

陽乃「だけど、一途に比企谷くんと向き合っている」

雪ノ下「…………」


陽乃「私は……雪乃ちゃんが何を抱え込んでいるのか、わからない」

陽乃「確かなのは、そのままでいい訳がないって事くらいかな」

雪ノ下「…………」

陽乃「…………」

雪ノ下「お話はおしまいですか?」

陽乃「……雪乃ちゃん」

雪ノ下「もうお引き取りください。 休みますので」

陽乃「…………」

陽乃「……そう」

陽乃「じゃ……そうするわ」

陽乃「お休みなさい、雪乃ちゃん」


     パタン…

雪ノ下「…………」


雪ノ下(……もう、何もかもが)

雪ノ下(遅かったのよ……姉さん)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(私は……)




     何かを……すべきじゃない――






―――――――――――


由比ヶ浜達の部屋


     ヴヴヴ……ヴヴヴ……

由比ヶ浜「……ん」

由比ヶ浜(ケータイ……メール?)

     カチャ…

由比ヶ浜「……!」



  Re 比企谷

  明日、帰る前に高台で話せないか?



由比ヶ浜「…………」


比企谷「…………」

     ヴヴヴ……ヴヴヴ……

比企谷「!」



  Re 由比ヶ浜

  わかった。 10時くらいに



比企谷「…………」









     俺は、覚悟を決めた







という所で今日はここまでです。ついに……ついにここまで来ました!

次回、最終回(予定)になります。やっと言える~

今回のクイズはP4Gのネタを使わせていただきました。
やった事はありませんが、某動画サイトで映像を見まして……使いたくなったのでw
まあP4Gアニメーション化記念という事で、大目に見てください。

投下も遅れに遅れてすみません……あと
>>432>>433わざとですw
>>436アニメを見た限りでは、ちょっと違うかな~?と思ったので。

それでは、また!

おつー

ペルソナもはまちも殆ど知らないのにここなんとなく見てたら両方に興味湧いてきて困るな!

>>503
何という強者……でも読んでいただき、ありがとうございます!
それから>>447修正↓


雪ノ下「……このネーミングの元になったネタ」

雪ノ下「今の若い人たち、わかるのかしら?」

由比ヶ浜「ニューヨークへ行きたいかー、でしょ?」

天城「私は○留さんかな。 トメさんの愛称でお馴染みの」

里中「勝てば天国、負ければ地獄。 知力体力時の運! 早く来い来い木曜日!」

白鐘「>>1は参加したかったみたいですが」

白鐘「当時、交通費が片道3万円もかかるので断念したそうです」

りせ「あれって結構大変だったらしいよ?」

りせ「泥んこクイズとかバラマキクイズとかの準備もそうだし」

りせ「それに国際問題になりかけた事とかもあったらしくって……」

陽乃「敗者復活や罰ゲームは、今でもいいアイデアだと思うわよね~」

花村「何でみなさん、そんなにお詳しいんですか……」

比企谷「あと、メタ発言はやめなさい」

それでは始めます



―――――――――――


翌日の朝

天城屋 玄関ロビー付近


天城「あら? 由比ヶ浜さん、おはようございます」

由比ヶ浜「ああ、天城さん。 おはよう」

天城「お散歩かな?」

由比ヶ浜「ううん……」

由比ヶ浜「ちょっと高台に行ってきます」

天城「高台? ああ、いい天気だし、景色を眺めてくるんだね」

由比ヶ浜「違うよ」

天城「え?」


由比ヶ浜「ヒッキーと話をする為に行くの」

天城「!?」

由比ヶ浜「お昼までには、必ず戻るからね?」

由比ヶ浜「じゃ!」

     スタ スタ スタ…

天城「ちょ……由比ヶ浜さん!?」

天城「…………」


天城(……由比ヶ浜さん、なんか、すごく緊張してる感じだった)

天城(これは……やっぱり……?)



―――――――――――


天城屋 とある一室


りせ「それはもう告白しかないんじゃない?」

天城「やっぱりそうかな……」

里中「いよいよかぁ~……うう、なんかあたしまで緊張するじゃん」

里中「比企谷くん、どうするのかなぁ……」

りせ「ね、ね!」

りせ「こっそり見に行こうよ!」

天城「……りせちゃん」

りせ「え?」


天城「私……確かに興味あるけど」

天城「できたら二人きりにさせてあげて欲しいの」

天城「さっきの由比ヶ浜さんを見たから……見てしまったから」

里中「雪子?」

天城「由比ヶ浜さん、緊張感がすごかった」

天城「きっと……全身全霊を傾けて、勇気を振り絞って、告白するつもりだと思うの」

りせ「…………」

里中「…………」

りせ「……わかったよ、天城先輩」

りせ「あたしだってそういう気持ち、大切にしてあげたいし」

里中「そうだね……それがいいよ、絶対」

天城「ありがとう、二人共……」



―――――――――――


天城屋 玄関ロビー付近


白鐘「おはようございます、比企谷先輩」

比企谷「白鐘……おはよう」

白鐘「もうチェクアウト済ませたんですか?」

比企谷「ああ……」

比企谷「…………」

比企谷「そうだ、白鐘」

白鐘「はい?」

比企谷「今日の午後、空いているか?」


白鐘「午後ですか?」

白鐘「堂島さんに改めてお礼を言いに行こうと思って……」

白鐘「ああ、予定では無いので、空いている状態です」

比企谷「そうか……」

白鐘「比企谷先輩?」

比企谷「なら、話をしたいんだが……構わないか?」

白鐘「!」///

白鐘「え、ええ! もちろんです!」///

白鐘「場所は……いつもの愛屋にしますか?」///

比企谷「……いや、できれば静かな場所にしたい」

白鐘「え……」


比企谷「そうだな……夕方の5時くらいに、鮫川河川敷公園でどうだろう?」

白鐘「…………」


白鐘(これは……もしかして……)


白鐘「……わかりました」

比企谷「すまないな」

比企谷「それじゃ、その時に……」

白鐘「はい」

     スタ スタ スタ…

白鐘「…………」

白鐘(……返事をくれるんですね、比企谷先輩)

白鐘(…………)




     覚悟

     危険な事、不利な事、困難な事を予想して、受け止める心構えをする事。

     仏語。 迷いを脱し、真理を悟る事。

     来るべき辛い事態を避けられないものとして、諦める事。 観念する事。

     覚える事。 記憶する事。

     知る事。 存知。



     正直……今の俺にとって、どの意味にも当てはまる気がする。

     曖昧なままで済ませる方が楽なのだろう事は確実だ。









     だが、それは他ならない俺自身が嫌なんだ。

     嫌悪していた「もの」を受け入れた瞬間から……もう自分を騙す事は出来ないと













     分かってしまったのだから








―――――――――――


高台


由比ヶ浜「…………」

比企谷「……待たせたな、由比ヶ浜」

由比ヶ浜「! ヒッキー……」

由比ヶ浜「ううん、そんな事ないよ」

比企谷「…………」

比企谷「寒くはないか?」

由比ヶ浜「ふふっ、ちょっとだけ寒いかな?」

由比ヶ浜「まだ二月半ばだしね」

比企谷「…………」


比企谷「それで、話なんだが……」

由比ヶ浜「待って、ヒッキー」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「その前に、これを受け取って」

     スッ…

比企谷「…………」

比企谷「……チョコか?」

由比ヶ浜「うん」

由比ヶ浜「バレンタインデーは過ぎちゃってるけど……」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「あと、ね」




由比ヶ浜「もう一度、告白させて欲しい」



比企谷「…………」

由比ヶ浜「私が連れ去られて出来なくなって……」

由比ヶ浜「病院でやった様な、中途半端なやつじゃない」

由比ヶ浜「ちゃんとした告白を……私、したい」

比企谷「…………」

比企谷「なあ、由比ヶ浜」

由比ヶ浜「お願い、ヒッキー」

比企谷「…………」


比企谷「……わかった、由比ヶ浜」

由比ヶ浜「ありがとう、ヒッキー」

由比ヶ浜「…………」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「今の私は、ヒッキーにいろいろ見られたから」

由比ヶ浜「正直に言うと……恥ずかしい、と言うか、怖い、って言うか」

由比ヶ浜「気持ち悪いって思われているかも知れない、と思ってる自分が居る」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「あの世界に行くまでの私は」

由比ヶ浜「『特別』の意味を履き違えていたのかなって思う」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「だけどね」

由比ヶ浜「やっぱり、変わらないんだよ」




由比ヶ浜「ヒッキーの事、好きだって気持ちは……」



比企谷「…………」

由比ヶ浜「最初はね。 ヒッキーの事、怖い人かな?って思った」

由比ヶ浜「でも、ゆきのんとも一緒に話とか、部活とかやっていく内に」

由比ヶ浜「いつの間にか、自然な自分で居られる事に気がついた」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「いつまでもその時間が続くって……ううん」

由比ヶ浜「続いて欲しいって、そう思う様になっていて」

由比ヶ浜「私は……戸惑った」


比企谷「……戸惑った?」

由比ヶ浜「うん……」

由比ヶ浜「今まで、経験した事が無かったくらい」

由比ヶ浜「居心地が良くて……ね」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「それからの私は……自分の『価値』を探し始めた」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「ゆきのんとヒッキーにとって、何かしらの役に立ちたいって」

由比ヶ浜「私がゆきのんとヒッキーを『特別』に思うのと同じように」

由比ヶ浜「私を『特別』にして欲しかったから……」

比企谷「…………」


由比ヶ浜「そんなのは……私のわがままだって」

由比ヶ浜「二人の気持ちを全然考えていないって……」

由比ヶ浜「あの時……あの世界で、やっと分かった」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「けど……けどね……」

由比ヶ浜「それでも……ね」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「ヒッキーの事、好きである事に嘘はないし」

由比ヶ浜「三人で過ごす『特別』より、もっと……」

由比ヶ浜「あなたと一緒に居たい」

由比ヶ浜「あなたと毎日を過ごしたい」

由比ヶ浜「あなたの事を……これからも知っていきたい」

比企谷「…………」


由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「お願い、ヒッキー」

由比ヶ浜「私と……付き合ってください」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」

比企谷「……なあ、由比ヶ浜」

由比ヶ浜「……うん」

比企谷「…………」


比企谷「お前が初めてなんだ」

比企谷「俺が『真っ当(まっとう)』な告白なんていうものを受けるの」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「真っ当(まっとう)……?」

比企谷「今までな……俺は」

比企谷「女子の間での罰ゲーム告白とか、そういうのしか経験がない」

由比ヶ浜「! わ、私は……!」

比企谷「由比ヶ浜がそんな事をしないのは、もう分かってる」

由比ヶ浜「…………」

比企谷「…………」

比企谷「……どうして、なんだろうな」


比企谷「由比ヶ浜みたいな可愛い女の子が、俺を好きだって言ってくれて」

比企谷「それが嘘偽りない事だって、真剣に向き合ってくれているって、分かってるのに」

比企谷「俺は……俺の心は……」

比企谷「………………っ!」 ギリッ…!



比企谷「お前じゃないって、言ってるんだよ……!!」



由比ヶ浜「……っ」

比企谷「…………」

比企谷「由比ヶ浜が……どんなにか……」

比企谷「頑張ってきたのか……努力してきたのか……」

比企谷「俺に向き合ってくれたのか……分かっているのに……!」

比企谷「俺は……ぐっ……俺、はっ……くっ……ううっ……」


由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……泣かないでよ、ヒッキー」

比企谷「……ぐっ……ふっ……ひぐっ……ぐっ……くっ……」

由比ヶ浜「こういうのってさ……普通ふられた方が泣くものなんだよ?」

比企谷「……はっ……ぐっ……くっ……ぎっ……」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……そっか」

由比ヶ浜「ヒッキーは『痛み』に敏感で、いつも泣いていたんだ」

由比ヶ浜「自分でない『誰か』の『痛み』でも……」

比企谷「……ぐっ……ひぐっ……くっ……うぐっ……」

由比ヶ浜「…………」


由比ヶ浜「ヒッキー……私、ちょっと嬉しい」

比企谷「……ひぐっ……くっ……はっ……ぐっ……?」



由比ヶ浜「また一つ、あなたを知ることが出来たから」



比企谷「……ぐっ……由比、ヶ浜……」

由比ヶ浜「彼女になれなかったのは……すごく残念だけど」

由比ヶ浜「私にとって、ヒッキーが『特別』なのは変わらない」

由比ヶ浜「これからも、ずっと……」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「で、これからどうするの?」


比企谷「!」

比企谷「…………」

比企谷「けじめをつけるつもりだ」

由比ヶ浜「……そっか」

由比ヶ浜「頑張ってね、ヒッキー」

比企谷「……ああ」

由比ヶ浜「じゃ、私は、ここの景色をもうしばらく楽しんでから旅館に帰るね?」

比企谷「…………」

比企谷「分かった」

由比ヶ浜「うん! それじゃ、また後で」

比企谷「…………」

比企谷「ああ……また後でな」

     スタ スタ スタ…


由比ヶ浜「…………」


     最初から……


由比ヶ浜「…………」


     勝ち目なんて無かったのかな……


由比ヶ浜「…………」


     ううん……そうじゃないよね


由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「いい景色……」


由比ヶ浜「天気もいいし、空気も澄んでて、遠くまで見渡せるし」

由比ヶ浜「…………」


     後悔はない……と思う。

     私は、私の思う様に行動して

     自分の気持ちをヒッキーに伝えたんだから。


由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……これで」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「OK……もらえたら……」

由比ヶ浜「最高……だった……の、にな……」




     そして……ヒッキーもそれに対して

     本当の想いを、気持ちを、返してくれた。

     だから……



由比ヶ浜「……っ……ふぐっ……くっ……」

由比ヶ浜「うあっ……ああっ……あああああああああっ……!」

由比ヶ浜「ぁ……ああああああああっ……ひっ……ぐっ……」

由比ヶ浜「……うっ……うっ……うあっ……あああっ…………!」




     すごく悲しいけど

     とんでもなく痛いけど

     経験した事ないくらい辛いけど



由比ヶ浜「うああああああああああああああああっ……!」

由比ヶ浜「ひぐっ……ああああああ……ああああああああああっ……!」

由比ヶ浜「ヒッ、キー……! ああああああああああああああああああっ……!」

由比ヶ浜「うあっ……ひぐっ……っ………ああっ………!」

由比ヶ浜「あああああああああああああああああああああああっ……!」

由比ヶ浜「ひっ……ひぐっ……うああっ……あああああああっ……」






     私は……ヒッキーを好きになって

     良かったって思える。

     だって、それは……











     私を……ちゃんと見てくれたという事なのだから








―――――――――――


バス車内


     ブロロロロロッ…

比企谷(…………)

比企谷(……今頃)

比企谷(泣いているんだろうか……由比ヶ浜)

比企谷(…………)

比企谷(……由比ヶ浜の事)

比企谷(泣かせてばかりだな……俺……)




     俺は、俺の気持ちを出来るだけ簡潔に

     だが容赦なく由比ヶ浜にぶつけた。



     やんわりと断る事も考えたが……

     でもそれは由比ヶ浜は元より、何においても

     自分の為にならないと判断した。



     これでいいのかどうかなんて

     もちろん分かる訳もない。

     ……だけど









     完全に間違いだとも思えなかった








―――――――――――


午後

八十稲羽駅


一同「…………」


由比ヶ浜「……え~っと」

由比ヶ浜「み、みんな。 見送りに来てくれてありがとう」

里中「う、うん。 当然じゃん?」

天城「む、向こうでも、元気でね」

花村(……いいか、クマ)

花村(どうして目が腫れてるの?とか、野暮なツッコミ、絶対入れんなよ……?)

クマ(ヨ、ヨースケ……そんなに睨まなくてもわかるクマよ)

白鐘「…………」


比企谷「…………」

りせ(比企谷先輩も泣いた感じがある……)

りせ(どんな話をしたのかな……?)

陽乃「…………」

雪ノ下「…………」


     まもなく、1番線に停車中の列車が発車いたします

     黄色い線の内側へと……


里中「あ……そろそろ時間だね?」

天城「それじゃあね、由比ヶ浜さん」


クマ「ユイちゃん、また遊びに来て欲しいクマ!」

花村「今度は本格的に遊ぼうぜ! 由比ヶ浜さん!」

白鐘「お元気で」

りせ「またね、由比ヶ浜さん」

陽乃「じゃ、向こうでも元気でね」

雪ノ下「……元気でね、由比ヶ浜さん」

比企谷「…………」

比企谷「……またな、由比ヶ浜」


由比ヶ浜「うん!」

由比ヶ浜「みんな、また会おうね!」

由比ヶ浜「じゃ!」



     プシュー バタン☆

     ガタンゴトン ガタンゴトン…


一同「…………」


花村「行っちまったな……」

比企谷「……ああ」

花村「…………」

花村「さて……と」

花村「ちょいと腹減ったな。 おい、クマ」

花村「愛屋でラーメンでも食わねーか? 一杯だけなら おごってやるぜ?」

クマ「ご馳走になるクマ!」


里中「雪子、あたしらも喫茶店でお茶でも飲まない?」

天城「うん。 そんな気分かも」

りせ「あたしも付き合っていいですか?」

天城「いいよ、りせちゃん」

花村「じゃあな、比企谷」

里中「またね、白鐘くん、雪ノ下さん」

比企谷「……お、おう」

白鐘「え……あ、はい」

陽乃「さて、私もジュネスに寄っていこうかな」

陽乃「じゃあね、雪乃ちゃん」

雪ノ下「え?」

雪ノ下「…………」


     ゾロ ゾロ ゾロ…

比企谷「…………」

白鐘「…………」

雪ノ下「…………」

比企谷「……帰るわ」

白鐘「そ、そうですね」

雪ノ下「……じゃ」


白鐘(……由比ヶ浜さん)

白鐘(泣き腫らしていたけど、とても清々しい笑顔だった)

白鐘(…………)

白鐘(僕には……どんな答えをくれるのだろう)

白鐘(比企谷先輩)

ちょっと急用が……すみません、中断します。



―――――――――――


夕方

鮫川河川敷公園


     スタ スタ スタ…

比企谷「待たせたな、白鐘」

白鐘「いえ」

白鐘「僕も今来たところです」

比企谷「そうか……」

比企谷「良かったら飲むか?」

比企谷「缶コーヒー買ってきた」

白鐘「いただきます」


     ズズッ…

白鐘「……ふう」

比企谷「…………」

白鐘「あの……甘いものがお好きなんですか?」

比企谷「ん?」

白鐘「この缶コーヒー、甘めなので」

比企谷「確かに好きだが……MAXコーヒーに一番近い味なんでな」

白鐘「MAXコーヒー?」

比企谷「俺好みの素晴らしい缶コーヒーだ」

比企谷「残念ながら八十稲羽には売っていなかったので、それを飲んでる」

比企谷「まさかジュネスにも置いていないとは……誤算だった」


白鐘「へえ……勝手なイメージなんですが」

白鐘「比企谷先輩はブラックコーヒーを好まれると思っていました」

比企谷「ブラックも飲めなくはないが……」

比企谷「人生は苦い事の連続だから、コーヒーくらい甘くてちょうどいいんだよ」

白鐘「ははは……言い得て妙ですね」

白鐘「なんだか不思議な説得力があります」

比企谷「今度、本物のMAXコーヒーを飲ませてやる」

比企谷「疲れた時に飲むと、最高に旨いぞ」

白鐘「ふふっ、楽しみにしておきます」

比企谷「…………」

白鐘「…………」


比企谷「それで、話なんだが」

白鐘「はい」

比企谷「俺は……」

比企谷「…………」



比企谷「白鐘の気持ちを受け入れる事はできない」



白鐘「…………」

白鐘「……そうですか」

比企谷「…………」

白鐘「理由を聞いてもいいでしょうか?」

比企谷「…………」




比企谷「俺の心が求めているのは、白鐘じゃないからだ」



白鐘「…………」

比企谷「…………」

白鐘「はっきり……言いますね」

比企谷「…………」

白鐘「でも……」

比企谷「…………」

白鐘「僕は……あなたのそういう所」

白鐘「好きです」

比企谷「…………」


白鐘「やっぱり……初めてだからでしょうか」

白鐘「僕は……上手くやる事が出来なかった」

比企谷「バカ言うな」

白鐘「え……」

比企谷「上手いか、下手か、なんて些細な事だ」

比企谷「異性を好きになるなんて、どんな奴でもある事だしな」

比企谷「だが……」

白鐘「…………」



比企谷「それを相手に伝えられるかどうかは、大きな差ができる」



白鐘「……!」


比企谷「お前は……立派に伝えた」

比企谷「だからこそ、俺は……」

比企谷「答えをはっきりと返さなくてはいけないと思った」

白鐘「…………」

比企谷「…………」

白鐘「…………」

白鐘「……ひとつ、聞かせてください」

比企谷「なんだ?」

白鐘「比企谷先輩とは比べ物になりませんが……」

白鐘「この『痛み』に……どう対処したらいいでしょう……」

比企谷「…………」


比企谷「……それは人それぞれだと思うが」

比企谷「俺は……泣く事しか出来なかったな」

白鐘「そうですか……」

比企谷「…………」

白鐘「…………」

比企谷「最後に言っておくが」

白鐘「…………」

比企谷「きっとその『痛み』は無駄にならない」

比企谷「必ず『何か』の役に立つと思う」

比企谷「ソースは俺」

白鐘「…………」

白鐘「ふふっ……そうですね。 きっと……」


比企谷「…………」

白鐘「…………」

比企谷「それじゃ白鐘」

比企谷「またな」

白鐘「……ええ、また」

白鐘「MAXコーヒー、楽しみにしてます」

比企谷「……ああ」

     スタ スタ スタ…

白鐘「…………」

白鐘(……予想していたじゃないか)

白鐘(こうなる可能性は……)




     原因を考えればキリがない。

     出会った時期

     知り合ってから過ごした時間

     気持ちの伝え方……そして







     僕自身の経験の無さ





白鐘「…………」


     それらを全て上回っているであろう由比ヶ浜さんですら

     彼の隣に居る事を許してもらえなかった。

     僕に……勝ち目なんてある訳が……


白鐘「…………」


     いや……そんなのは言い訳に過ぎない。

     比企谷先輩は、はっきりと『求めている』のは僕じゃないと言った。

     恐らく、由比ヶ浜さんにもそう言ったのだろう……


白鐘「……っ」








     ……けど







白鐘「……うくっ……くっ……」

白鐘「……うっ……ぐっ……くっ……ひぐっ……」

白鐘「ひっく……くっ……うぐっ……うあっ……」

白鐘「………ふ……ぐっ………く……」

白鐘「うっ………くっ……ひぎっ……」

白鐘「…………はっ……」

白鐘「……うぐっ……ぐっ……はっ……っ……あぐっ……」

白鐘「……ひぐっ……うっ……うぐっ……ぎっ……ぐっ……」







     やっぱり……僕は……

     それでも、僕は……












     あなたの隣で、笑っていたかった……








―――――――――――




天城屋 玄関ロビー付近


天城「あら? 比企谷くん?」

比企谷「……今晩は、天城」

天城「…………」

天城(何か……辛そうな顔してるな)

天城「それで、今時分どうしたの?」

比企谷「良かったら、雪ノ下を呼んできて欲しい」

天城「!」


比企谷「……ケータイ、かけてみたけど繋がらなくてな」

比企谷「頼めるか?」

天城「うん。 わかったよ、比企谷くん」

天城「ちょっと待ってて」

     スタ スタ スタ…

比企谷「…………」

―――――――――――

天城「…………」

     コン コン

天城「雪ノ下さん、居るかな?」

雪ノ下「天城さん? 何かしら?」

天城「今、玄関ロビーに比企谷くんが来てるの」


雪ノ下「…………」

天城「……もう言わなくても分かると思うけど」

天城「雪ノ下さんに会いに来たって……」

雪ノ下「…………」

天城「…………」

天城「ケータイに出ないんだってね、雪ノ下さん」

雪ノ下「…………」

天城「…………」

天城「どうしたの? 雪ノ下さん」

天城「会ってあげないの?」

雪ノ下「…………」

天城「…………」


天城「ねえ、雪ノ下さん」

雪ノ下「…………」

天城「比企谷くん……辛そうだったよ」

雪ノ下「…………」

天城「…………」

天城「……そう」

天城「また、同じ事しちゃうんだ」

雪ノ下「……?」

天城「私、千枝から聞いて知っているよ?」

天城「向こうからこっちに転校する 比企谷くんを見送りに来なかった事」

雪ノ下「!!」


天城「どうしてそういう行動をとったのかは知らないけど」

天城「比企谷くんは、きっと傷ついたと思う」

雪ノ下「……っ」

天城「雪ノ下さんは、比企谷くんをまた傷つけたいの?」

     ガチャ

雪ノ下「…………」

天城「…………」

雪ノ下「……会ってくるわ」

天城「うん」

天城「それが良いと思うよ」



―――――――――――


雪ノ下「……おまたせ、比企谷くん」

比企谷「……おう」

雪ノ下「いったい何の用かしら?」

比企谷「ご挨拶だな……」

比企谷「明日でも良かったんだが、教訓は生かさないといけない」

雪ノ下「何の話?」

比企谷「去年の夏、花村に忠告されたんだよ」

比企谷「『ある日』ってのは、突然来るって……」

雪ノ下「…………」

比企谷「少し話がしたい」

比企谷「どこか、静かな場所で」

雪ノ下「…………」



―――――――――――


雪ノ下「……ここなら、大丈夫だと思う」

比企谷「……よりにもよって、山野アナが泊まったあの部屋かよ」

雪ノ下「懐かしいでしょう?」

比企谷「封印したい記憶が盛りだくさんだ……」

雪ノ下「出たの?」

比企谷「超常現象的な事は何もない」

雪ノ下「じゃあ、何g」

比企谷「いい加減、本題に入らせてくれ」

雪ノ下「…………」

比企谷「よし」


雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

雪ノ下「……ねえ」

比企谷「……おう」

雪ノ下「本題とやらはまだ?」

比企谷「もう少々お待ちください……」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」


比企谷「……よし」

比企谷「最初は……やっぱり外見だな」

雪ノ下「いきなりすぎて良く分からないのだけど」

比企谷「初めて雪ノ下と会った時、噂以上に美少女で驚いた」

雪ノ下「!?」///

比企谷「同時に」

比企谷「俺とは絶対にかかわり合いたくないって顔をされたのも覚えてる」

雪ノ下「…………」

比企谷「平塚に無理やり入部させられて、それも奉仕部とかいう」

比企谷「訳の分からない部活の部長やってるし」

比企谷「なんか、噂とは裏腹な部分もあるんだな、と、しばらくして思った」

雪ノ下「…………」


比企谷「……でもよ」

比企谷「俺も……雪ノ下や由比ヶ浜と同じだったんだ」

雪ノ下「…………」

比企谷「あの部室で過ごす時間……悪い気はしていなかった」

比企谷「いや……むしろ居心地がいいとすら感じていた」

雪ノ下「…………」

比企谷「ところが、だ」

比企谷「俺はだんだんと雪ノ下のギャップが鼻につくようになっていった」

雪ノ下「え……」

比企谷「お前の【シャドウ】が言ってたよな?」


比企谷「周りは自分を聖女か何かみたいに『勝手な』イメージを抱き」

比企谷「そのイメージに合致しない、というだけで去っていくと」

雪ノ下「…………」

比企谷「何の事はない」

比企谷「俺の心にもそういう気持ちがあったって事だ」

雪ノ下「……そう」

比企谷「…………」

比企谷「もっとも、俺は……」

比企谷「そんな自分が気持ち悪くてしょうがなかった」

雪ノ下「……え?」

比企谷「…………」




比企谷「俺は……雪ノ下の事が好きだから」



雪ノ下「っ!?」///

比企谷「その時は素直にその気持ちを受け入れる事が出来なかった」

比企谷「だが、今なら、はっきり言える」

比企谷「雪ノ下を好きでいながら同時に嫌なところに目が行ってしまう事に」

比企谷「自己嫌悪していたのだと」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

比企谷「ここ八十稲羽に来て、事件に関わっていく内」

比企谷「花村達や雪ノ下、由比ヶ浜にも嫌悪する自分が居る事が分かった」

比企谷「みんなもそういうものを抱え、生きてきたんだと、やっと気がつけた」


比企谷「俺はもうごまかさない」

比企谷「自分にも、雪ノ下にも、周りにも」

比企谷「俺が、雪ノ下雪乃が好きだという気持ちを」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

雪ノ下「……バカよ、あなた」

比企谷「…………」

雪ノ下「どうして私なの……」

雪ノ下「私は……あなたを傷つけてばかりいたのに……!」

雪ノ下「何かをすればするほど、あなたの心を踏みつけてきたのにっ……!」

比企谷「…………」


雪ノ下「由比ヶ浜さんは……あなたを一生懸命追いかけていた」

雪ノ下「そして私がいくら考えても分からなかった、あなたの気持ちに気がついた」

比企谷「…………」

雪ノ下「白鐘くんは、いつも真摯にあなたと向き合っていた」

雪ノ下「自分の気持ちに素直に従い、あなたの事を想って行動していた」

比企谷「…………」

雪ノ下「私は……私だけが……」

雪ノ下「あなたを……傷つけて来た……」

比企谷「…………」

雪ノ下「比企谷くんの【シャドウ】が言ってた あなたの過去に出てきた」

雪ノ下「あなたを傷つけてきた人達と同じ様な言葉で……」

比企谷「…………」

比企谷「……まあそうだな」


雪ノ下「…………」

比企谷「正直 あれは面食らったが、同時にあそこまではっきり言われると」

比企谷「かえって清々しかったし、それに」

比企谷「『そう思われてもいい』と思って行動もしていたから」

比企谷「別段 気にする必要もない」

雪ノ下「…………」

比企谷「かつての俺が望んでいた」

比企谷「『誰からも好かれる人間』なんてものになる事は不可能だし」

比企谷「それに……」

比企谷「お前は、俺を傷つけている『だけ』じゃなかっただろ?」

雪ノ下「……!」




     引き合いに出すのは良くないが……

     きっと由比ヶ浜は、近すぎて

     白鐘は、逆に遠すぎたんだと思う。



     そういう事なのだと俺は感じている。

     もちろんこれは俺のわがままで、彼女たちの責任じゃない。



     俺にとって……雪ノ下がいつもいい距離でいてくれた。

     そして……居て欲しい時にそばに居てくれた。



雪ノ下「……でも、それは」

雪ノ下「私一人の力で出来たわけじゃない」

雪ノ下「それに……そうする事以外、思いつけなかったからにすぎないわ」

比企谷「……そうか」

比企谷「なら、雪ノ下」

雪ノ下「え?」

比企谷「お前の気持ちを聞かせてくれ」

雪ノ下「!!」


比企谷「もう一度言うが、俺は雪ノ下雪乃が好きだ」

比企谷「腐った魚の目だの何だのと容赦のない罵倒してくるが」

比企谷「博学なくせして妙に負けず嫌いだったり」

比企谷「物事に対して加減を知らず、常に120%力を出して倒れこんだり」

雪ノ下「…………」

比企谷「それでいてアドリブが効かず、慌ててトチってしまうところや」

比企谷「姉に対するコンプレックスは人一倍大きかったり……」

雪ノ下「…………」

比企谷「ふと見たら可愛いもの見てにやけてて」

比企谷「とんでもなく可愛い一面を見せてくれたり……」

雪ノ下「…………」///


比企谷「そういった欠点や美徳も含め、雪ノ下雪乃という存在が」

比企谷「俺は好きだ」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「よくもまあ、そんな歯の浮く様な口説き文句が出てくるわね」

比企谷「俺もそう思う」

雪ノ下「だったら、少しは改善する努力をしなさい」

比企谷「時間がなくてな」

雪ノ下「……そう」

比企谷「…………」

雪ノ下「話を要約すると」

雪ノ下「あなたを普段から容赦のない罵倒をする私と……その」///

雪ノ下「か、彼氏、か、彼女の……関係になりたい、と、いう事で……いいのかしら?」///

比企谷「ああ。 それで合っている」


雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

雪ノ下「……あなたは、本当にバカなのね」

比企谷「否定はしない」

比企谷「由比ヶ浜や白鐘からの告白を断る、なんていう」

比企谷「もったいないお化けどころか、もったいない魔王すら真っ青になる行動をとったからな」

雪ノ下「本当に……バカよ」

雪ノ下「もう……これ以上……あなたを傷つけない様にしようと思ってたのに」

雪ノ下「結局……あなたの最大のトラウマである告白までさせてしまったのだから」

比企谷「…………」


雪ノ下「私には……その価値がある?」

比企谷「お前が考えてる以上にな」

雪ノ下「いつか、また傷つけられて後悔する事になるかも知れないわ」

比企谷「逆もアリアリだと思え」

雪ノ下「それは想像できない」

比企谷「え? なにその上から目線?」

雪ノ下「ふふっ……」

比企谷「…………」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「私は……私の気持ちは――」




     やっぱり……ずるい気がする。

     私は、由比ヶ浜さん程の努力もせず

     白鐘くんくらいの慎重さも無く

     告白の勇気すら持てなかった。



     そんな私が……私の想いが報われるなんて

     おかしいし、間違っている。









     でも……











     彼の告白は嬉しくて

     罪悪感はあったけど……

     由比ヶ浜さんや白鐘くんの顔がチラついたけど……










     それでも、私は






雪ノ下「比企谷くんを……比企谷くんの事が」




     どうしようもないくらいに

     断ち切る事なんて出来ないくらいに




雪ノ下「……好きです」///

比企谷「!!」

比企谷「…………」///

比企谷「そ、そうか……」///

比企谷「よ……はうっ……」

     フラッ……ドササッ!


雪ノ下「ひ、比企谷くん!?」

比企谷「わ、悪い……」

比企谷「なんか、急に体中の力が抜けた……」

雪ノ下「大丈夫?」

比企谷「たぶん……」

     カタカタカタ…

雪ノ下「……凄く震えてるけど、本当に大丈夫なのかしら?」

比企谷「……たぶん」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

雪ノ下「そんなに……緊張してたの?」

比企谷「…………まあ、な」///


雪ノ下「ふふっ……」

雪ノ下「本当にあなたってバカね」

比企谷「……しょうがねーだろ」

雪ノ下「OKの勢いで、押し倒されるかと思ってたわ」

比企谷「それこそアホか、出来るわけねーだろ……」

比企谷「ぼっち歴の長い俺にとって」

比企谷「準備運動なしで北極海に飛こめと言ってるのと同義だ」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「なら……」

     ギュッ…

比企谷「!」///

雪ノ下「このくらいなら耐えられる?」


比企谷「余裕かましやがって……」///

雪ノ下「嫌なの?」

比企谷「……最高です」///

雪ノ下「どんな風に?」

比企谷「いい匂いがして、落ち着きます」///

雪ノ下「変態ね」

比企谷「ええ、そうですとも。 変態ですとも。 肯定しますとも」///

比企谷「大好きな雪ノ下雪乃の匂いですからね」///

雪ノ下「…………」

比企谷「……雪ノ下?」

雪ノ下「私も……変態ね」

雪ノ下「あなたの匂い、大好きよ」///




     ……こうして俺と雪ノ下は

     お互いの気持ちを確かめ合い、付き合う事になった。

     そこ。 ムードが無いとか、超特急展開とか言わない。

     八幡さん、いっぱいいっぱいだったんです……



     事情も知り、いち早くそれを見破った天城が

     里中や他の連中に電話しまくった事は言うまでもない。

     ……おい、お赤飯はいらないからな?





     由比ヶ浜と白鐘には、ケータイで俺から直接伝えた。

     正直、血を吐きそうな感覚を覚えたが

     これもまた俺自身の『けじめ』として、やらなければならないと思い

     そうした。



     二人共……静かに

     『おめでとう』と言ってくれた。



     おっと……もちろん可愛い妹の小町と

     マイベストフレンド・戸塚にも伝えた。

     材木座? そんな奴知らん。





     それからの俺と雪ノ下だが……

     まあ、何て言うか、しばらくぎこちない感じが続いた。

     なぜかって?



     お互い男女交際の経験なぞ皆無だからである。

     やりたいな、と思う事はいろいろあるのだが

     それをする為にいちいち時間がかかってしまう。

     こらそこ。 決してエロい事じゃないからな?





     ああ、それと……周りが俺たち以上に歯がゆかったみたいで

     花村は何かに付け『リア充見せつけんな! 羨ましい!』とか言うし

     里中達は『キスくらい済ませた?』とか聞いてくる。

     ……やっとこさ手をつないだくらいです。



     でも……そんなぎこちなさも、周りの反応も

     何か新鮮で楽しく感じてしまう自分がいた。

     八幡さん、いつの間にか悟っちゃいましたか……





     後は……【マヨナカテレビ】

     『渚』も居なくなり、俺が『作った』というテレビの世界の影響か

     もう映ることは無くなっていた。

     本当の意味で事件は解決したと言える。

     そして……










     三学期も終わり、八十稲羽を後にする日が来たのだった









―――――――――――


3月21日 午後

八十稲羽駅 駅前


比企谷「ふう……」

花村「お、来たな比企谷」

比企谷「そりゃ来るだろ」

比企谷「切符代、無駄にしたくないし」

花村「へへっ、相変わらず変わんねーな、お前!」

クマ「センセイ、ずっとこっちにいればいいクマに……」

比企谷「悪いな、クマ」


堂島「お、もう来てたのか、比企谷くん」

比企谷「堂島さん。 お世話になりました」

堂島「ま……言われるほど世話をした覚えは無いがな」

堂島「足立の事は任せてくれ」

菜々子「お兄さん、こんにちは」

鳴上「こんにちは」

比企谷「菜々子ちゃんに鳴上まで見送りに来てくれたのか」

比企谷「ありがとう」

菜々子「ううん。 菜々子の方こそありがとうです」

菜々子「雪乃お姉さん達と一緒に遊べて楽しかった!」

鳴上「良かったな、菜々子」

     ハハハ……


里中「おー、何か盛り上がってるじゃん?」

天城「こんにちは、比企谷くん」

りせ「とうとう今日が来ちゃったね……」

りせ「ちょっと寂しいかも」

白鐘「その気になれば、いつでも会いに行けますよ」

比企谷「みんなも来てくれたか」

比企谷「ありがとう」

白鐘(……正直言うと、僕は少し迷いましたが)

白鐘(やっぱり、あなたを見送りたかった)

白鐘(いけないな……まだ引きずっているのか、僕は)


天城「何だかあっという間だったね……」

里中「『渚』を倒してから、ホントそんな感じ」

花村「さ、里中さん? 今は……ほら堂島さんとか、いらっしゃいますし……」

里中「おっと……そうだったじゃん」

堂島「ん? 俺が何か?」

花村「いえいえ、お世話になったな~って話してて」

堂島「ふん……まあ、そういう事にしておこう」

堂島「俺も無粋な真似はしたくないしな」

花村「ははは……」

花村(やっぱ凄みがある人だな……)

りせ「……あれ?」

りせ「そういえば雪ノ下先輩は?」

クマ「そういえば遅いクマね?」


里中「また来なかったりして?」

比企谷「それはない」

比企谷「仮にあったとしても、よっぽどの理由ができたんだろうさ」

天城「お~……」

りせ「信頼されてるなぁ」

花村「くそっ……羨ましいっ」

クマ「ヨースケ……みっともないクマ」

花村「うっせーよ!? お前に言われたくないっての!」

     ハハハ……


     ブロロロロロ…… キキィ

陽乃「お待たせ~比企谷くん♪」

陽乃「お待ちかねの雪乃ちゃんだよ?」

雪ノ下「ね、姉さん……」///

比企谷「そ、そういうのやめてください。 割とマジで」///

陽乃「んふふー♪」


花村(相変わらず見計らったように登場する人だな……陽乃さん)

里中(でも嬉しそうじゃん。 比企谷くん)

天城(ちょっと羨ましいかも……)

りせ(普段も結構ラヴラヴしてるしなぁ)

白鐘(……目を背けるんじゃない、僕)


クマ「……?」

クマ「ユキノン、その荷物は何クマ?」

雪ノ下「私の荷物だけど?」

里中「え? どこかに出かけるの?」

雪ノ下「出かけるも何も……比企谷くんと同じ電車に乗って帰るのだけど?」


一同「」

菜々子「?」


雪ノ下「……どうかしたのかしら?」

比企谷「えーっと……とりあえず言っておくが」///

比企谷「俺は何も聞いてませんよ?」///


雪ノ下「……姉さん?」

陽乃「うふふ、ごめんね~?」

陽乃「秘密にした方が絶対面白いと思って♪」

里中「うわ……本当に一緒に帰るんだ」

天城「二人っきりで……」

白鐘(……耐えるんだ、僕)

りせ「まあこの二人だし、ある意味自然かも」

花村「普段からバカップル丸出しだからな」

比企谷「どこがだ。 俺たちは清い交際を行っている」

菜々子「お兄ちゃん。 ばかっぷるって、どういう意味?」

鳴上「見ていてイライラしてしまう程の仲y」

堂島「悠! 真面目に答えるんじゃない!」

堂島「菜々子には早すぎる単語だ!」


花村「まあ何にしてもこれで『さよなら』とは思わねぇぜ、俺」

花村「今年のGWとかさ、こっちに来いよ」

花村「いや、むしろ、俺らがそっちに行くってのもアリだよな!」

里中「おお、花村にしちゃいいこと言うじゃん?」

天城「どっちにしても、楽しそうだよね♪」

りせ「うんうん! 集まって楽しく騒ごう!」

白鐘「いいですね、それ」

比企谷「そうだな。 俺も同じ気持ちだ」

雪ノ下「予定が決まったら連絡するわ」

     ハハハ……

鳴上「そろそろ時間じゃないのか?」

里中「あー……もうそんな時間かぁ」

天城「名残惜しいね……」



―――――――――――


駅のホーム


花村「それじゃまたな、比企谷」

比企谷「ああ、またな。 花村」

クマ「センセイ。 あの世界の事はクマに任せるクマ!」

比企谷「頼んだぞ」

クマ「何かあったら連絡するクマ」

里中「由比ヶ浜さんにもよろしくね、雪ノ下さん」

天城「みんなで一緒に楽しく騒ごうって、言っておいてね」

雪ノ下「もちろんよ」



     まもなく、1番線に停車中の列車が発車いたします

     黄色い線の内側へと……


りせ「あ、もう電車が出ちゃう……」

鳴上「向こうでもお元気で」

菜々子「元気でね、お兄さん、お姉さん!」

比企谷「ありがとう、鳴上、菜々子ちゃん」

雪ノ下「そちらもお元気で」

花村「必ず、近い内にまた会おうぜ!」

鳴上「機会があれば、俺も」

白鐘「僕も楽しみにしてます」

比企谷「もちろんだ」

比企谷「必ず、また会おう!」



     プシュー バタン☆

     ガタンゴトン ガタンゴトン…


一同「…………」


花村「……行っちまったな」

里中「……うん」

天城「それにしても……なんか、さ」

天城「気分的にハネムーンを見送った気が……」

りせ「あ! それそれ!」

りせ「あたしもそんな気がした!」

花村「ははは……俺だけじゃなかったか。 そう思ったの」


白鐘(……へこみます) シクシク…

菜々子「はねむーん??」

鳴上「結婚した男女が……」

堂島「だから早すぎるから、真面目に答えるんじゃない!」

里中「あの二人、上手くいくかな?」

天城「今のところ、心配はないと思うな」

りせ「意外と……由比ヶ浜さんが、いろいろ仕掛けたりして」

里中「ドロドロしそうだからやめなさいよ、そういうの……」

天城「でも、ちょっと興味あるなぁ」

里中「雪子!?」

     ハハハ……

陽乃「…………」



―――――――――――


電車内


比企谷「よっ……と」

雪ノ下「あ、私の荷物も金網に上げてもらえるかしら?」

比企谷「おう、いいぞ」

     ドサドサ

比企谷「ふう……」

雪ノ下「ありがとう」

比企谷「どういたしまして」

比企谷「…………」

雪ノ下「…………」


比企谷「それにしても……」

比企谷「なんで電車で帰ろうと思ったんだ?」

雪ノ下「私と帰るのは不服?」

比企谷「一言も言ってねーだろ……」

雪ノ下「そうとしか聞こえないのだけど?」

比企谷「ともかく、事前に言っておいてくれ……心臓に悪い」

雪ノ下「お年寄りじゃあるまいし……」

比企谷「弁当とかおやつとか、雪ノ下の分が準備できないだろ?」

雪ノ下「……今回に限り、姉さんに言ってくれないかしら?」

比企谷「ごめん。 そりゃ無理だわ」

雪ノ下「そうでしょう? ふふっ」


     ガタンゴトン ガタンゴトン…

雪ノ下「ねえ……」

比企谷「ん?」

雪ノ下「比企谷くんは、『渚』……ううん」

雪ノ下「イザナミとイザナギについて、どう思う?」

比企谷「どう……とは?」

雪ノ下「説明が足りなかったわね」

雪ノ下「神話のイザナミとイザナギの事」

比企谷「ああ……そういう事か」

雪ノ下「自分のペルソナと同じ名前だし……少し調べたりしたわ」

比企谷「実を言うと俺もだ」

雪ノ下「どう思ったのかしら?」




     国生みの二神の神話

     むかしむかし、あるところに仲睦まじい

     男神イザナギと女神イザナミがおりました。



     しかし、ある日。

     女神イザナミは子供を産んで死んでしまう。

     それを男神イザナギは たいそう悲しみ、暗い黄泉の国に行って

     そこの住人になっていた女神イザナミを連れて帰ろうとした。





     女神は、黄泉の国の神に頼んでくるから待っているようイザナギに言うが

     イザナギは我慢できず、女神の様子を見に行ってしまう。

     だがそこに居たのは、全身に蛆虫が沸いた、変わり果てた姿の女神だった。



     恐ろしくなったイザナギは、その場を逃げ出し

     それに気がついた、女神イザナミは怒り狂って追いかける。



     追いつかれそうになるもイザナギは、何とか現世に戻り

     この世とあの世を結んでいた洞窟の出入り口を大岩で塞ぎ

     追いついてきた女神イザナミに別れを告げたのだった……



比企谷「まあ、何て言うか……」

比企谷「両方とも望んだ事でない結果に終わらせてしまったな」

雪ノ下「……そうね」

比企谷「イザナギは……妻であるイザナミを心底愛していた」

比企谷「でも何の代償もなく、死んでしまったイザナミが帰ってくると思い込んでいた」

比企谷「そこに隙があったな」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「イザナミは……きっと迎えに来てくれて喜んだと思う」

雪ノ下「黄泉の国の神に何をお願いしようとしたのか分からないけど」

雪ノ下「蛆虫が湧いた姿で帰る事は望まなかったと思うわ」

比企谷「…………」


雪ノ下「きっと……怒り狂ったのは」

雪ノ下「見られたくない姿を好きな人に見られて、我を忘れたからじゃないかしら」

比企谷「…………」

比企谷「かもしれないな」

雪ノ下「…………」

比企谷「イザナギが約束を破ってしまったのも」

比企谷「暗い黄泉の国、という気味の悪いところから」

比企谷「出来るだけ早く妻を連れて去りたかった、というのがあったのかもしれない」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「そうかもしれないわね……」

比企谷「…………」

雪ノ下「…………」


雪ノ下「”こんな酷い仕打ちをするのなら”……」

比企谷「!」

雪ノ下「”私は、あなたの国の人間を一日1000人殺します”」

比企谷「…………」

比企谷「”ならば……”」

比企谷「”俺は一日に1500の母屋を建てよう”」

比企谷「”1000が死のうとも万が生まれてくる”」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

雪ノ下「……ぷっ」

比企谷「……くくっ」

     ハハハハハハ……








     だけど――
     それでも――













     俺は――
     私は――












     お前の事が――
     あなたの事が――











     大好きです――
















―――

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―――――――――

―――





     約1ヶ月後





総武高校 奉仕部部室


比企谷「…………」

雪ノ下「…………」

由比ヶ浜「…………」

比企谷「……今日もヒマだな」

雪ノ下「平和でいい事じゃない」

由比ヶ浜「先週は忙しかったよね~」

比企谷「忙しいっつーか……」

比企谷「まさか材木座の小説もどきを 3本も読ませられるとは思わなかった……」

雪ノ下「相変わらずの誤字脱字と稚拙な文章だったわね……」

由比ヶ浜「私、もうどんな内容だったか忘れちゃった……」

比企谷「俺は少し覚えてるぞ」


雪ノ下「八幡、当ててみましょうか?」

雪ノ下「あれでしょ? スキーのシーン」

比企谷「……雪乃はニュータイプかよ」

雪ノ下「あれって絶対、私たちとのスキーを参考に描いたものよね」

由比ヶ浜「あ~……冬休みの時の」

由比ヶ浜「私も行きたかったなぁ」

雪ノ下「私は……先週の事といえば」

雪ノ下「八幡の浮気ね」

比企谷「おいこら、人聞きが悪すぎだろ」

由比ヶ浜「あははっ! あれね~」

由比ヶ浜「まさかヒッキーが本気ラブレター貰うなんてね~」




     新学期が始まって俺たちは3年生になった。

     今年は、いよいよマジで進路を決めなくてはならない重要な年。

     節目の年を超えても次の節目が早くも来ちゃいましたよ……



     俺と雪乃は、春休み中2回程デートして

     お互いの呼び名が名前になっていた。

     ……まあ映画見て図書館に行っただけですけどね。

     おっと、買い物もお付き合いしましたよ、と……





     新学期に入って、初めて登校した時

     「やっはろー!」という耳慣れた変わった挨拶にびくついた。

     はっきり言って、どう顔を突き合わせればいいのか悩んでいたからだ。



     だが由比ヶ浜は、俺と雪乃が戸惑うくらいナチュラルに声をかけてきた。

     正直……動揺はしたが、まあ由比ヶ浜なりの気遣いだと思うことにし

     彼女は今日も元気に奉仕部部員として活動している。





     ……ん? ラブレター?

     まあはっきり言って、99,9999%イタズラだと思ったのだが

     なんと0,0001%の奇跡が起こりました。



     ラブレターをくれたのは、今年入学した1年生の女子で

     まーこれが、初々しいのなんのって……なんといっても小町と同い年だし

     ……雪乃さん、睨まないでください。



     結果? もちろん断りましたとも。

     彼女いる歴が約2ヶ月程度の元ぼっちに二股なんて出来る訳が……

     あ、いえ。 雪乃という素晴らしい彼女がわたくしに居りますので。



     コン コン

比企谷「ん? 誰か来たか」

雪ノ下「どうぞ。 入ってください」

     ガララッ

由比ヶ浜「ようこそ、奉仕部へ!」

由比ヶ浜「依頼は何か……な…?」

     ゾロ ゾロ ゾロ…

由比ヶ浜「え……? あれ?」

比企谷「……!」

雪ノ下「……え?」

雪ノ下「これは……どういう事なの?」




     部室に入ってきたのは全部で3人だった。

     1人は全く知らない顔

     肩くらいまである茶髪のストレートで、何だかおどおどした様子

     顔立ちは無難に可愛いく、なかなかのスタイルの女生徒だ。



     もう1人は……見覚えはあるのだが思い出せない。

     背中くらいまであるウェーブがかった黒髪で

     特筆すべきなのは胸。 間違いなく由比ヶ浜より大きいぞ、この女生徒。



     最後の1人はよく知っている顔だった。

     どうしてここにいる? 何か事件でも起こったのか?



比企谷「白鐘!?」

白鐘「お久しぶりです、比企谷先輩」

雪ノ下「どうしてここに……それにこちらの二人は?」

?「何だ? 我が分からんか?」

?「比企谷八幡」 クスッ

比企谷「!?」

比企谷「その声……お前、まさか」

比企谷「『渚』か!?」

渚「ふふ、そうだ。 お前が名付けた『渚』だ」

渚「今は『新宮渚(しんぐう なぎさ)』と名乗っている」

雪ノ下「ど、どうして生きてるの!?」

渚「さあ……我にもわからん」

渚「気がついたら、あの世界に横たわっていたのだ」


比企谷「…………」

比企谷「……よし、それはまあいいだろう」

比企谷「ここに来た目的は何だ?」

比企谷「全員、総武高校の制服を着ているのが」

比企谷「わたくし、とっても気になります」

渚「まあそんなに身構えるな。 もう我は何の力も無いただの小娘にすぎん」

渚「ここに来た理由は3人それぞれにあるが……ひとつだけ共通している事があってな」

渚「全員、比企谷八幡が目的だ」

雪ノ下「……なぜかしら」

雪ノ下「私にとって凄く不都合な気がするのだけど」

由比ヶ浜「……目的?」


渚「たとえば、我はな」

渚「比企谷八幡の子を宿したいと思っている」


一同「はあっ!?」///


比企谷「待て待て待て! それは別の意味でってオチだよな!?」

渚「いや? 本気でお前の子供が欲しいと思っているぞ?」

比企谷「」

雪ノ下「な、何でそんな事をっ……」

渚「クマから聞いたが、比企谷八幡は」

渚「あの世界に人間が居ない事を憂いておったのだろう?」

渚「だから、我が一肌脱ごうと思ってな♪」

比企谷「脱ぎすぎです」


渚「もちろん、それがどういう事なのか、どういう意味合いなのかも理解しておる」

渚「それに……我は誰でもいいという訳ではない」

渚「お前と、お前の子供が欲しいのだ……」///

比企谷(う……可愛い……)///

雪ノ下「待ちなさい! あなた、突然出てきて何を言ってるのかしら!?」

雪ノ下「そもそも【シャドウ】である あなたに子供が産めるかどうかも分からないし」

雪ノ下「お産やその費用、それにその後の生活基盤すらあなたには無いわ!」

渚「ほほう。 それがあれば、そなたも認めるのだな?」

雪ノ下「認めるわけ無いでしょう!?」

由比ヶ浜「そ、そうだよ!」


比企谷「し、白鐘!」

比企谷「お前は何をしに来たんだ!?」

白鐘「……表向きはこの2人の監視です」

比企谷「……裏があんのかよ」

白鐘「だ、だって!」

白鐘「僕はまだ、諦めらめきれないんです! 先輩の事!」///

比企谷「」

雪ノ下「」

由比ヶ浜「」


白鐘「僕は……考えました。 考えて気がついたんです」

白鐘「先輩には、僕の、ほんの一部しか見せていないって!」///

比企谷「お、落ち着け、白鐘っ!」

白鐘「先輩、どうですか? この女生徒用の制服」

白鐘「似合っていませんか?」

比企谷「あ、ああ。 合っているぞ……」

白鐘「これからは……僕の『女』としての部分を引き出して」

白鐘「先輩にアタックしていきますのでっ」///

比企谷「」

雪ノ下「」

由比ヶ浜「」

比企谷(……頭痛くなってきた)

雪ノ下(……八幡のせいじゃ……いえ、やっぱりせいかしら?)

由比ヶ浜(…………)


??「…………」

比企谷「それで……白鐘、こっちの茶髪の娘は誰なんだよ?」

白鐘「……声を聞けばわかりますよ」

雪ノ下「声?」

渚「ほれ、咲霧(さきり)。 挨拶しておけ」

咲霧「あ、はい。 私、天野咲霧(あまの さきり)といいます」(cv中尾○聖)

比企谷「」

雪ノ下「」

由比ヶ浜「……え? 何この声?」

比企谷「ま、まさか……その声……その名前……!?」

比企谷「お前、アメノサギリ?か!?」


咲霧「はい」(cv中尾○聖)

由比ヶ浜「ゆきのん、アメノサギリって?」

雪ノ下「後で説明するわ」

雪ノ下「それで……ええと、咲霧?さん」

雪ノ下「八幡にどんな用事があるのかしら?」

咲霧「それは……」(cv中尾○聖)

咲霧「比企谷様が、私を……可愛い私を望まれたからです」///(cv中尾○聖)

比企谷「身に覚えがありませんよ!?」

咲霧「ほら、私に止めを刺すとき」(cv中尾○聖)

咲霧「今度はもっと可愛い姿で生まれてくるんだな……って」(cv中尾○聖)

咲霧「おっしゃってたではありませんか」(cv中尾○聖)

比企谷「」

雪ノ下「……言ったのね?」


白鐘「そういうわけで僕たち、これから総武高校に通いますので」

比企谷「はあ!?」

比企谷「いや白鐘はともかく、他の二人は学力とか戸籍とか保護者とか――」

渚「それについては手紙を預かっておる」

雪ノ下「手紙?」

渚「陽乃、という女からだ」

比企谷「」

雪ノ下「」

由比ヶ浜「陽乃さん?」



     雪乃ちゃんへ


 どう? 驚いたかなー?

 実は内緒にしてたけど、クマくんに頼んで

 私も「あの世界」に行ってたんだ♪


 で、そこで渚ちゃんと咲霧ちゃんに出会ってね

 彼女たちに事情を聞いて、そういう事なら、と

 手を貸すことにしたの。 うふふ♪


 ん? どうしてかって?

 それはねー



 倦怠期を回避する為だよ♪


 ライバル多いとさ、雪乃ちゃんも努力を怠らないでしょ?

 比企谷くんを取られまいと頑張るでしょ? だからだよ!

 人間て、平和が続くと飽き飽きしちゃうものだから

 いい意味で緊張感を持ってもらうためにやったんだ♪

 えらい、私! 姉の鏡だね!


 ま、そういうわけで、彼女たちの学力と住処と保護者

 それに戸籍は私が何とかしました。


 それじゃ、雪乃ちゃん。 頑張ってね♡


     あなたの姉より♡


雪ノ下「」

比企谷「あの人、マジで何者なんだよ!? いろんな意味で!」

渚「という事で比企谷八幡」

渚「さっそく子作りをしようではないか♪」

渚「中出しし放題だぞ?」

由比ヶ浜「学校で何言ってるの!?」///

白鐘「そうですよ!」///

白鐘「もっと……こう、プラトニックな関係になりましょう!」///

白鐘「この僕と!」///

由比ヶ浜「そ、それもダメー!」

由比ヶ浜「私だって隙を伺っているんだから!」



一同「え」


由比ヶ浜「はっ!?」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」

雪ノ下「……どういう意味なのかしら?」

由比ヶ浜「あは……は…は……」

雪ノ下「…………」

由比ヶ浜「だ、だって!」

由比ヶ浜「ヒッキー、私の本命チョコ受け取ってくれたんだもん!」

比企谷「なっ!?」


雪ノ下「……八幡?」

比企谷「い、いや、あれは、由比ヶ浜のけじめ的なものだと思って!」

由比ヶ浜「それを受け取ってくれたから……私」

由比ヶ浜「きっとまたチャンスが来るって思えたんだから!」

比企谷「ちょ、そんな解釈してたんですか!? 由比ヶ浜さん!?」

渚「そうだな、由比ヶ浜とやら」

渚「最近ではNTRというのも流行っておるらしいしのう♪」

雪ノ下「断じて流行っていません!」

咲霧「まあまあ。 比企谷様も困っておいでですし……」(cv中尾○聖)

比企谷「お前はその声を何とかしてくれ……」

比企谷「口調も手伝って、どうしてもフ○ーザ様に聞こえてしまう……」


雪ノ下「八幡……どうするつもりなの?」

比企谷「どうすると言われても……」

比企谷「つーか、これ俺のせいなの?」


渚「比企谷八幡♡」

咲霧「比企谷様……」///(cv中尾○聖)

白鐘「比企谷先輩……」///

由比ヶ浜「ねねね、ヒッキー!」///

雪ノ下「…………」 ゴゴゴ…


比企谷「は……はは…は……」

比企谷「……はあ」









     やはり、俺の青春ラブコメは間違っている














     …………
















     ……でも
















     どこか、それを楽しく思える自分がいて

     そんな自分は――
















     嫌いじゃなかった








     おしまい


という事で終了です。
皆さん、本当に長い間お付き合いいただき、ありがとう&お疲れ様でした!
改めてスレ見直したら、立てられたのが昨年の6/30で
私が投下し始めたのが同7/4……真面目に一年近くかかって完結となりました(汗)

私自身もこんなに……と言うか1000レスを越え、次スレに移ったのも初めてで
本人もよく続けられたものだ……と、ちょっと驚いております。
ラスト、気に入っていただけるかどうか不安ですが
冗談みたいに始まってるし、冗談みたいに終わった方がいいかなぁ~と思って
こうしました。

何にしても完結できたのは、たくさんの乙とレスをいただけたからで、ものすごく励みになりました!
改めてお礼を言わせていただきます。本当にありがとうございました!
あ、もちろん立てた人も、ありがとうございますね!

乙ありです。
P3は要望多いんですけど、私やった事がなくて……P4Uも同じです。

次回作は、思いついたら、でしょうか。
キャラ崩壊……(特にはまちは)アニメしか見てない弊害でしょうねぇ……誠にすみません。
まとめの※で半分くらいそのツッコミでしたし(汗)

そういえば、立て逃げ何回か手を出しているので
そっちの方でお会いするかもしれませんねw

立て逃げ過去作↓

声優「んギモッヂイィ~///」(アタシ…何やってんだろ…)

山田「こ、この度IS学園に転校してきた北野誠一郎君です」

男「ヤンデレ症候群……ですか」医師「ええ」

良かったら読んでみてください。

再び乙ありです。
こんなクソ長いのにまとめている人もいらっしゃるので
もしかしたら参考になるかも?と、間違い箇所と修正をピックアップしてみました。


1スレ目(修正レスは、いずれも1スレ目内)

>>546を修正→>>548


2スレ目(修正レスは、いずれも2スレ目内)

>>13を修正→>>906

>>45を修正→>>47

>>139を修正→>>220

>>190>>191が二重投下(同じ内容のレス)

>>338を修正→>>340

>>500を修正→>>502

>>583を修正→>>585

>>881>>882が二重投下(同じ内容のレス)

>>949>>950は無しの方向で


2スレ目追加修正

2スレ目>>579の修正↓


比企谷「…………」



     ……ざけんな

     何が救うだ。 お前のせいで由比ヶ浜は……!



     俺を好きだと言ってくれた由比ヶ浜はっ……!

     由比ヶ浜はっ!!



比企谷「……っ」 ギリッ!


3スレ目

>>249>>250の間に>>262>>263の2レスを挿入

>>447を修正→>>511

>>474を修正→>>476

>>552業務連絡なので不要レス


名前のミス

序盤に多い
×由比ケ浜 → ○由比ヶ浜

3スレ目の終盤まで……
×生天目 → ○生田目


一人称のミス

材木座は『吾輩』ではなく『我』
また、彼は比企谷を苗字ではなく『八幡』と呼称

他にもまだあるかもしれませんがご容赦を……
2スレ目多っ! それでは!

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年03月12日 (水) 22:48:09   ID: oR5D0LHg

1・2両方とも見ました。とても楽しみにしています。頑張ってください

2 :  SS好きの774さん   2014年03月14日 (金) 18:00:38   ID: DFW7L03_

上に同じく

3 :  SS好きの774さん   2014年03月19日 (水) 20:08:12   ID: Y7gyNRNZ

こう来るか・・・続きが気になる

4 :  SS好きの774さん   2014年03月20日 (木) 00:04:44   ID: AmSmiiin

ヒッキーのシャドウはでるのだろうか・・?期待してます!

5 :  SS好きの774さん   2014年03月20日 (木) 18:59:49   ID: 0vj_xvtN

ヒッキーのシャドウえげつないそうになりそうだけど、楽しみにしています。

6 :  SS好きの774さん   2014年04月13日 (日) 19:07:25   ID: Wt_nfW1F

更新早く~

7 :  SS好きの774さん   2014年04月14日 (月) 18:29:16   ID: Ca8UNUi6

更新待ってます!!

8 :  SS好きの774さん   2014年04月15日 (火) 20:40:23   ID: 8O4OFCQ0

ヒッキーのシャドウは子供っぽい気がする
もっとかまって欲しいとか、理解して欲しいとか言いそう

9 :  SS好きの774さん   2014年05月03日 (土) 23:25:54   ID: hZ0gRjeb

更新されてないのに、あたかも更新したような表示。
2014年05月03日 21:28:25

10 :  SS好きの774さん   2014年05月15日 (木) 00:03:01   ID: WERwv-QY

ガハマさんがどうフラれるのか

11 :  SS好きの774さん   2014年05月26日 (月) 17:38:21   ID: Z_tMiLdT

お疲れさまでした!
面白かったです!

12 :  SS好きの774さん   2014年05月26日 (月) 17:52:28   ID: qM32-eTm

また別のSS書いてほしいです

13 :  SS好きの774さん   2014年05月26日 (月) 20:48:34   ID: 5sCec2lk

毎回更新楽しみに待ってました!!完結お疲れ様です。また何か書いてほしいです。

14 :  SS好きの774さん   2014年06月08日 (日) 18:40:47   ID: ds-GEc43

うん、まるでヒッキーじゃないこの感じやばいね。

シャドウだって、もっともっとドス黒いものが出るだろうし、なんか味気ねーなぁ。他のキャラのシャドウは良かったのに、最後にギャグテイストで台無しだわ

15 :  SS好きの774さん   2014年09月17日 (水) 04:44:23   ID: Jrqf1YSb

八幡はほぼ鳴上の行動なぞっただけ
都合よく改変して名前を借りただけの別キャラ
唐突で適当なオリキャラと寒い終わり方
途中から流し読みだったわ

16 :  SS好きの774さん   2014年09月20日 (土) 06:29:14   ID: pVmSQTN3

↑ここまで長いのをよく頑張った

17 :  SS好きの774さん   2014年10月19日 (日) 20:55:48   ID: vm-xpToC

お疲れさん
サイコーっした

18 :  SS好きの774さん   2015年02月27日 (金) 22:29:40   ID: _OBGymTn

寒い上にキャラ崩壊が許容限界
p4のキャラすら把握してない

でも一番許せないのが渚(笑)
気持ち悪すぎる

19 :  SS好きの774さん   2015年03月01日 (日) 22:57:14   ID: 2Dq4g3bX

3スレ全てみたが、やはり千枝ちゃんの語尾がなにかおかしい…「じゃん」あんなに使っていたか?

20 :  SS好きの774さん   2015年03月04日 (水) 12:45:13   ID: OP0aW9yS

すげーな。このSS、アンチも読んでしまうのか。
全部読むのに3日かかったけど、面白かった。
P4知らない人は是非P4やってみるといい。
大筋のストーリーは同じだけど、細かな改変が行われていて
「そうきたか」という部分が多々ある。
また、このSSでは弾かれた完二や堂島一家の絆とか
語られていない箇所がたくさんある。

21 :  SS好きの774さん   2015年06月28日 (日) 01:58:21   ID: SNKiWxGp

後、ここからP4・はまち共に改変が酷くなってまいります。
受け入れてもらえるか、ちょっと不安……それでは、また。

って前スレでも言ってたし

多少はね?

千枝の口調おかしいのは確かに気になったけどさ

22 :  SS好きの774さん   2015年07月14日 (火) 17:12:08   ID: VwanxJXD

いくらなんでも比企谷と雪ノ下のキャラ崩壊しすぎじゃね

23 :  SS好きの774さん   2015年10月31日 (土) 06:57:19   ID: aKHW5LID

まぁ、でも面白かったから良いんじゃない。         
約1年間お疲れ様でした。

24 :  SS好きの774さん   2016年02月02日 (火) 22:17:03   ID: HoUm2MZo

はまちの方は知らないが楽しめた。乙

25 :  SS好きの774さん   2016年05月16日 (月) 02:05:16   ID: nz6A6Nap

今度は4じゃなくて1と2ベースで書いて欲しいな、フィレモンに八幡がどう対応するのかみものだわ

26 :  SS好きの774さん   2018年02月22日 (木) 18:59:15   ID: zfvrt5qy

千枝の口調が変
じゃん!って言いすぎだろ

27 :  SS好きの774さん   2018年02月24日 (土) 22:32:08   ID: S_QYswOD

オリキャラはいらない。
渚とサギリはいらなかった。あと、千枝も口調おかしいし
ペルソナやったことあるのかな?と思った。

機会があれば5とかマリー出してペルソナゴールデンとかもやってほしい。
面白かったし

28 :  SS好きの774さん   2018年10月21日 (日) 13:31:44   ID: setdAYIE

いやー、長かった!そして最高の感動をありがとー♪
只一つ!不満が有るとすれば、戸塚がクマーんに負けたこと。
忙しい中 申し訳無いが、もっと多くのSS書いてください。

29 :  SS好きの774さん   2020年01月26日 (日) 23:22:02   ID: Hd6NPdiM

真面目に最後のハーレムは苦痛で流し読みしてたわ、それ以外は普通に面白かったわ(サキサキの口調が変、男が喋ってんのかと思った)

30 :  SS好きの774さん   2023年12月17日 (日) 23:25:51   ID: S:J4dU5x

ハーレムシーンはいらなかったかな〜。。。
でも、両作への深い理解がビシバシ!と感じられました!
ぶっちゃけ良作ですね!!!

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