妖精「あれ? お前の羽の色変じゃね?」 (18)

長身「おい、お前の羽の色……」

白い妖精が集落の中を歩いていると、後ろから虹色の羽を持った長身の妖精が、何か軽蔑する様な目つきで白い妖精を眺めてきた。

妖精「何? 何か羽についてる?」

長身「俺達妖精の羽は七色に光り輝いているはずなのに……。何故お前の羽は濁った色をしているのだ?」

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妖精「私のは生まれつき土留め色なの。悪かったわね」

すると長身の妖精は突然顔を真っ赤にして怒り出した。

「妖精界では羽の色が、綺麗な虹色で無くてはならない! 来い! お前を長老の元へ連れていく!」

こうして妖精は、長老の家へしょっ引かれた。

ー長老の家ー

長身「見て下さい! こいつの羽は、我々の様に七色ではありません! きっと悪魔に違いない!」

長身「こんな奴、部族の恥晒しだ! 集落から永久追放してやりましょう!」

白い妖精は慌てて弁解する。

妖精「私は生まれつき濁った色の羽なんです。故意に濁らせている訳では無いんです! 追放だけは……やめて」

長身「何を言うか! たとえ偶然でもゴミはゴミだ! なぁ長老!」

長老は無言だったが、頷いた様にも見えた。

妖精「羽の色が違うからって、すぐ追放するんですか? 私は今まで、皆さんに迷惑をかけて来なかったはずです!」

長身「てめぇ、長老に向かって……」

長老「落ちつけ」スッ

長老「何もせずとも、其方の様な者は妖精として認められないのじゃ」

妖精「そんな……」

長老「ほれほーれ、早くそのゴミを集落の外へ追い出すのじゃー」

長身の妖精が彼女の両手に素早く手錠をかけ、外へ連れ出した。

外では、長老の家に連行された極悪人が誰か、一目見ようと野次馬達が集まっていた。

家から、白い妖精が出てくると皆は顔をしかめた。

「何だあの妖精! 羽の色が変だぞ! まるで悪魔じゃないか!」
「初めてみたわ! あんな子、我が一族ではないわ!」

周囲から非難を受けながら、彼女は集落の門に辿り着いた。

長身「この中には約一週間分の食糧と水が入っている。それから魔物の巣には近寄らない方がいい」

妖精「ふーん、やけに親切なのね」

長身「し、親切ではない! 長老からの命令で……///」

妖精「そうなんだ……じゃあね」

彼女は集落の門をくぐると、湖畔を目指して静かに飛んでいった。

長身「あいつ……可愛かったなぁ」

白い妖精は、湖畔をあても無く放浪していた。

人間「そんでよー」
人間2「ギャハハハ、分かるわその気持ち」

妖精「人間ッ!?」

妖精は近くにあった岩場に身を隠し、そっと耳を傾ける。

どうやら人間達は『妖精狩り』に来たらしい。

妖精の羽は高値で売れるので、人間達は血眼になって探していた。

妖精「あいつら……羽をいつでも切り落とせるよう剣を持ってる」

妖精「は、早く逃げなきゃ」ガサッ

人間1「おい、物音がしたぞ。周囲を調べてみろ!」

妖精(わ~! こっちに……もうヤケだああ!)バッ

人間2「おおぉ、妖精じゃん! 銃で撃ち落とすぞ!」

人間1「了解ッ!」パン

幸か不幸か、銃弾は妖精の左足に命中した。

人間1「よしッ! 羽の色は土留め色だが、売るには申し分無い! 兄貴に戦果を披露しようじゃないか」

妖精(うぅ、痛いよぉ)




ーキャンプ場ー

人間1「兄貴、妖精を一匹GETしたぜ! 早速貰うモン貰っちゃうか?」

兄貴は意外にも首を横に振った。

兄貴「まだいい。近くにもまだ仲間が潜んでいるやもしれぬ。探し出し捕獲してこい」

人間2「マジかよ~兄貴の命令なら従うけどさぁ」

やがて深夜になり、狩りに出かけた手下が全員帰ってきた。

人間1「ここ一帯をくまなく探したけど、全くいなかったぜ」

兄貴は頷くと、妖精を一匹捕獲した褒美として、砂金を一人につき10gずつ与えていった。

兄貴「今すぐ羽を切り取り、市場へ売りに行きたいがもう夜が更けた。皆、もう休め」

こうして手下や兄貴は全員寝入り、妖精は魔力を封じ込める鎖に繋がれた。

妖精は鎖を断ち切ろうと、自らが操れる最大限の魔力を試してみたが、鎖はびくともしなかった。

妖精「どうしよう……あら?」

妖精「この鎖、木に繋がれてる。木には魔力を封じる力が無いから……」

妖精「そうだ! あの木を燃やそう」

妖精「木を燃やしたは良いけれど、撃たれてろくに走れないよぉ」

妖精「……でも諦めたら最後よ。絶対に、絶対に集落に戻ってみせるわ」

妖精「皆が私を受け入れてくれるのか疑問だけど、希望を捨てちゃダメ」



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