【習作】百合SS、 (47)

「ねえ、あなたの瞳には一体何映っているのかしら」
そう問いかけるのは私の向かい座っている、高校二年生のわりに幼い顔立ちに、長いおさげが目立つ女の子
ここでは彼女を「A子」とでも呼ばせてもらおう
A子がそう問いかけていた相手は向かいに座る私ではなく、ここから中庭を隔てた教室にいる
(いかにも、名家のお嬢様風な・・・)
先輩であった。
うっとりとした表情で、A子は先輩を見つめている
そう、A子は「同性愛者」なのだ
だから他の生徒は彼女を避けている、なにしろ彼女の想いは軽い物ではなく
「あなたのためならなんだってできる」程の物だ
「あなたの為なら、私はなんだってできるのに」
考えたそばから、A子はそんな事を口走る
「ああ、私、こうしてるだけで凄く幸せ」
A子がそんな少女漫画チックな言葉を迷いなく吐く、
まあ少なからずそこにも避けられる原因はあるのだろうが。
なぜ、私はそんなA子の側にいるのかと思った人も少しはいるだろう
それは私が解説役をしたいからでも、A子と同じく先輩が好きだからでもない
他ならぬ私が、彼女を初めて見た時・・・「A子のためなら、なんだってできる」と
そう、思わされてしまったからだ。

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彼女は避けられていると前記したが、先輩に対する彼女の想いを理解できない者はごく少ないと言っていい
なにしろその先輩の美しい事、端正な顔立ち、流れるような黒髪、白くきめ細かい肌は、誰もが先輩を
(この世のものともおもえぬほど、美しい)
と、そう思わせるに十分な程だ

そうそう、いつまでも文章中で私を「私」としか表現できないのは不便なので
私の事は無難に「B子」とでも書かせてもらおう

「B子、ねえ見て、先輩が本を読んでる!」
「そりゃあ、本くらい読むでしょ」
「よく見て、あの本・・・政治経済の本なのよ!!」

知った事か。
あやうくこんな言葉が出かかったが、私の口から出たのは
「あ」
という、はっとした声だけだった

先輩と、目が合った

先輩は、確かにこちらを見ていた

「B子?」
「あ・・・」
目を、そらせなかった
まるで、蛇に見込まれた蛙のように、私は動けなかった
「B子!」
「!」ビクッ
A子の声で、私は我に帰った
「ずるい!何見つめあってるの」
「いや、見つめ合ってるってそんな」
「羨ましい・・・」
(・・・先輩の目、まるで私を敵視するような・・・?)
そう思ったが、杞憂だとろうと忘れる事にした

「A子、そろそろ帰ろう」
「まだ、眺めていたいわ」
「いいから」
少し乱暴かとも思ったが、無理やりA子の手を引いて
一緒に帰る事にした
そして、その道中
「ちょっと、どうしたのよ」
「A子はさ、先輩に告白はしないわけ?」
質問を投げ掛けた瞬間、A子は立ち止まって
「えっ?」と言い、顔を赤くした
「教えて」
「告白・・・なんて」
こんな、冴えない女があの先輩に告白なんて、嫌われるかもしれないのに
(私に、出きるわけがないじゃない)
とでもいいたそうな顔をして、A子は下を向いた
「でも、先輩が好きなんでしょ」
「私は・・・見てるだけ、それでもいいの」
彼女は自分に言い聞かせるようにそう言った、
「・・・そっか」
「なんでそんなことを聞くのよ」
「友達は、こういう話をするものだよ」
「ふうん、じゃあ私からも聞いちゃおうかな」
「何?」
「B子は、どうして私の友達になったの?」
「友達なんて、なろうとしてなるものじゃないよ」
「じゃあ、私が友達じゃあいや?」
その質問に、私は少し戸惑って
「出来れば、友達であり続けたいな」と答えた

自分の部屋で、私は絵を描いていた
私は運動が得意で、よく部活の助っ人として呼ばれるのでその様子は実に
「似つかわしくない」
物だった、
「まだ、寒い」
私はそう呟いて、絵を描く手を止めた
(A子は、今どうしてるんだろう)
窓の外を見ると、はらはらと白い物が落ちてきていた
「積もりそうだね」とA子にメールをし、再び絵を描き始めた。

翌朝、やはり雪はすっかり積もっていた
朝早くから既に何人かの大人が雪かきを初めていたようで
道は確保されている
「おはよう」
「おはよう、早く食べちゃいなさい」
リビングではお母さん既に朝ごはん作って待っていた
テーブルの上には、豆腐の味噌汁に、目玉焼きとトーストが二枚
ほかほかと立ち上る湯気が、私の目をさまさせた
卵の黄身を割り醤油を少し垂らして、それにパンをちょん、とつけて食べるのが私の好みで
パンの一枚目をそうして平らげ、残った白身はもう一枚のパンにのせて食べる
その間に熱い味噌汁を火傷しないよう少しずつ、はふはふ言いながら飲んでいく
珍しくもない朝食だが、これが冬の寝起きの空きっ腹には堪らない。
「いってきます」
味噌汁をもう一杯おかわりした後、私は家を出た


教室に入ると、そこにA子の姿はなかった
「おかしいな・・・」
普段なら、朝早くから来て先輩を見ているのに
(まあ、そういうこともあるか)
そう思って、ちらと先輩の教室を見ると
先輩と、また目が合ってしまった
でも、今回は以前のような冷たい眼差しではなく、
いつも通りの優しい目でこちらを見ていた

しばらくすると、先生が教室に入ってきて
「A子さんは今日、風邪でお休みらしいです」と告げた
A子が風邪・・・
そう思うと、今日という日をとたんにつまらなく感じて来た
(どうやら私は、あの子がいないとダメらしい)
くすり、と笑うと
(帰りに、A子の好きな物を買っていってあげよう。)
その日の事はもうあまり覚えていない
A子と友達であるというだけで、クラスの皆から避けられている
話しかけられる事があるとすれば、精々部活の助っ人依頼くらいのものだ
最も私もそんな奴らとつるむ積もりもないので
別に居心地が悪いというわけでもなかった。

「A子、」
「B子・・・お見舞いに来てくれたの?」
「まあね、A子の好きなチョコクッキー買ってきたけど、食べる?」
「いいの?」
「手作りにしようかとも思ったんだけどね、すぐ顔見たかったから買ってきちゃった」
「じゃあ、明日からは手作り?」
「A子がそれがいい、って言うなら」
「じゃあお願い!B子の作るお菓子、美味しいもの」
「外見に似合わず、ね」
「あら、そんなことないわ、良く似合ってると思う」
「とにかく、早く治して学校来なよ」
「クッキーがあんまり美味しいと、それを楽しみにわざと休んじゃうかもね」
「A子、今日は先輩の話、しないね」
「・・・風邪だから、かな」

その翌日、黄色い歓声が聞こえたと思うと
「A子さんは・・・いる?」
先輩が、A子を訪ねて来た

教室にいる面々が顔を見合わせた
「A子・・・?ああ、あいつか、いてもいなくてもかわんないから忘れてましたw」
「先輩があんなやつに・・・あいつなんかやらかしたの?」
私はそこに割り込んでいって
「A子に何か用ですか?」
「用・・・そうね、もしかして、いないの?」
「・・・今、風邪で休んでますよ」
「そう・・・じゃあ、また来るわね」
残念そうにして、先輩は立ち去っていった

私は直感で、
(これは、なにかある・・・)
そう、思った

その日の帰り、昨日作ったクッキーを持ってA子の家に行った
しばらく談笑して、その日は帰った
先輩の事はあえて伏せておいた、A子も、今日は先輩の話はしなかった
熱が、まだあるようだった。

先輩は、その後も毎日私達の教室に現れた
私は思いきって聞いてみることにした
「A子に、何かしたんですか?」
彼女が先輩の話をしない理由は、きっと先輩にある
そう思ったからだ
教室が静まり帰り、先輩の顔が一瞬ぴくりと歪んだ
そして、先輩は少しため息をついて
「私、A子さんにお礼を言いたいの」
「お礼を?」
「ええ、そう」

「だって彼女は、私の命の恩人なんだもの」


「A子、先輩がA子にお礼を言いたいって、教室まで来てたよ」

「えっ?」
私の言葉に、少し間を開けてから彼女は驚き、顔を赤くした
「先輩・・・」
A子は頬をリンゴのように赤くしながら、ポーっとした顔で宙を見ている
私は明日のお見舞いはリンゴがいいか・・・などと思いつつ、何があったのか聞き出す事にした

「あの日B子と別れたあと、先輩が不良に絡まれてたのを見かけたの」
「それで、頭が真っ白になって、気がついたら先輩を助けに行ってた」
「え!?それで・・・大丈夫だったの?」
「うん、私はB子と友達なんですよ!って言ったら皆一目散に逃げていったよ」
私は護身術という名目で昔から空手と柔道を習っている
自分で言うのもなんだが、腕には相当の自信がある
不良の12人20人くらいなら無傷で制圧することも出来るだろう
だが、まさか自分の技がこんなふうに役に立つとは思っていなかったので
「まさか、こんな形でねえ」
と、思わず口をついて出てしまった
どうやらA子は、思い詰めて先輩について話さなかったのではなく
少し距離が縮まったはずの先輩の事をあまりにも考えすぎて、話せなかったようだ
「全く、呆れるわ」
「うふ、ふふ・・・」
A子は、まだ赤いままだった

(しかし、それだけで「命の恩人」?)
確かに、何人もの不良に絡まれればそう思うかもしれない
先輩も頭が真っ白になっていた事だろう
それに、確かに私は色んな大会で立て続けに優勝しているが、
不良達がそんな私の事を知っていたのだろうか・・・
結局、私はもやもやとしたままだった

翌週の月曜日、A子は風邪をなおして学校に来ていた

「おはよう、B子」
「おはよう」

やっと、学校でもA子と一緒に過ごせる
A子といれるだけで幸せ・・・なんて、A子のような事を考えてしまい
私は少し照れくさかった
「A子さん、いるかしら?」
先輩が、またもやA子を訪ねてきた
「せ、先輩!」
A子が私の向かいの席から離れ、先輩へと駆け寄って行った
前は見てるだけだったのに、A子、よかったね
そう思おうとしたけど、誰もいなくなった席を見て、
(A子が、私を必要としなくなってしまう・・・)気がして
本当は、A子と先輩を二人きりにさせてあげたかったのに
体が勝手に動いて、気が付けばA子の手を掴んでいた
(私も一緒に)
その言葉を口にしようとした瞬間、我に帰って
「・・・頑張って」
それだけ言って、私は席に戻った

中庭で、先輩とA子が話している
A子は言うまでもなく緊張でガチゴチになっていた
会話の内容は聞こえないが、先輩は楽しそうに笑っていた
結局、二人の会話は朝のホームルームが始まるまで続いた


それから休み時間の度に、先輩はA子に会いに来た
「せ、先輩・・・」
A子は、急激に縮まった先輩との距離に馴染めず
今にも溶け出しそうな顔をしている
「A子さん、一緒に帰らない?」
「いいい、いいんですか!?」
「私からお願いしてるのよ、ダメ?」
「A子は私と一緒に帰るんで」

私は自分を抑えることが出来なかった
「あら・・・あなたは」
「話くらい、聞いてますよね」
A子はおどおどと私と先輩を交互に見ている
「やっぱり、あなたがB子さんね」
「はい、A子の友達の」
「A子さんったら、私といる間ずっとあなたの話をしてたわよ、楽しそうにね」
私は先輩を睨み付けた
私と話す先輩の言葉に、心がないのを感じたからだ
「び、B子・・・?」
「そういえば、あなたも私を助けてくれたんだったわね」
そう言うと先輩は悪戯な笑みを浮かべて
「じゃあ、三人で帰りましょう?」
と言った

やっぱ改行したほうがいいですかね、
こっから改行で

帰り道、A子は恨めしげに此方を見ている

「二人とも、すこし寄り道していかない?」

「そんなことしていいんですか?先輩ともあろう人が」

「ちょ、ちょっとB子!いいじゃない寄り道くらい」

「いいのよA子さん、私、皆が思ってるほど優等生じゃないのよ?」

A子を怒らせても仕方がないので、目的を聴く事にした

「どうして寄り道を?」

「あなた達にお礼がしたいからよ」

嘘だ、

今の言葉を聞いてわかった、この人は私達にお礼をしたいわけじゃない

「友達のいない子に手を差し伸べて、気分が良さそうですね」

「B子!なんでさっきからそんな事ばかり・・・」

「随分、嫌われちゃったみたいね」

先輩は冷たく笑った

「私は、出来る事なら二人と仲良くしたいと思ってるのよ?」

そう言うと一歩私に近づいて、

「心も体も・・・ね」

と、耳元で囁いた

私は思わず顔を赤らめてしまった、

それと同時に、この人の本性を確信した、恐らく先輩も勘づいていたのだろう

(この人は、自分と同類だ)

という事に

私は以前、才色兼備、文武両道の秀才として人気者だった

ところが、A子と仲良くなったとたんに、皆手のひらを返した

憧れの視線が、ゴミを見るような冷たい視線に変わったのだ

この人は、そうなる前の私と全く同じ「人気者」で

それと同時に「同性に恋をする」同類。

今まで、自分の性癖を隠してきたのだろう

絶対に白日に晒すまい、と

だけど、私という「同類」がいる事を知り、A子と私(名前だけ)に不良の手から救われ、恋をした

他はどうでもいい、この性癖をさらけ出して皆から避けられても、この子達の側に居られるなら大丈夫だと

そして、葛藤している

私を蹴散らし、A子だけを愛するか、同類の私を含めた三人で仲良く過ごすか

だからこそ、私には先輩の言葉が嘘らしく聞こえたに違いない

私は先輩にとって

(居てもいなくてもいい)

存在だったから。

「先輩、あなたは・・・」

「しーっ」

「ち、ちょっとB子、今何を言われたのかしら・・・?」

「先輩が、ご飯奢ってくれるって」

「B子さんが機嫌をなおしてくれてよかったわ」

「先輩!ホントごめんなさいうちの食いしん坊が!」

「食い気では、私もA子には負けるよ」

「余計な事言わなくていーの!」

「ふふ・・・」

私は、A子が幸せならそれでいいのだ

この人が悪い人ではなくただただ苦悩している人である事がわかった以上、私はもう探りをいれまい

「先輩ってお金持ちそうですよね!」

A子がそう言うと、先輩がビクッと反応した

「そ、そうね、なにが食べたい?あ、親御さんには連絡入れないとダメよ?」

恐らく、好きな相手の前でイメージを崩したくないのだろう、

名家のお嬢様風・・・ではあっても、実際は普通の「女の子」だったようで

私は先輩がとことん同類である事を知って少し満足したと共に、先を歩く先輩の後ろ姿から少し凛々しさが消えているのを見て

少し、先輩に申し訳ない嘘をついてしまったかな、と思った。

結局、ファミリーレストランに入ることになった

「お会計、5080円になります」

おかしい、先輩はコーヒー一杯だけだし、私は水しか頼んでないのに、恐るべしA子

「ぷは!美味しかったです!ご馳走さまでした!」

「ご馳走さまでした」

「・・・さ!そろそろ帰りましょうか!」

その声は、少し震えていた

先輩、本当にごめんなさい

その後、私達は先輩とメアドを交換し、それぞれの家に帰った

私は自分の部屋で先輩へのメールを打っていた

「今日はごめんなさい、あんな態度をとってしまって・・・今は私も、先輩と仲良くやっていけたらいいと思っています(>_<;)」

そんな旨のメールを送ると、数分とかからず返信が来た

「あなたの事、信じてるからね(^_-)」

絵文字とか使うんだ。

そう思いつつ、私からもたった一言だけ、

「私もです」と返した

お互い性癖が同じで
お互い好きな相手が同じで
お互い秘密を知っている

いつ私が蹴落とされるかはわからないけど、
そうなったらそうなったで、仕方のない事だろう
きっと、この人は彼女を幸せにしてくれるに違いない、と
先輩もそう思っている事だろう

A子は、人気者を惹き付ける、そういう人間なのだ
飛び抜けて可愛らしいわけでもないし、頭がいいわけでも、運動神経がいいわけでもない
ただ、周りに避けられても気にせず、今ある幸せだけを見つめているような瞳が
相手の内懐を突かない純粋な言葉が
私や先輩に、「A子の幸せ」を願わせるのかもしれない



私は、正直言って人気者だ

誰もが私を「美しい」とか「流石」とか、そんな言葉で誉め讃える

だけど、もう限界

(我慢をするのは、もう・・・限界なのよ

私は、普通の家に生まれて、偶然お嬢様学校に入っただけ

それなのに・・・)

私は、疲れきっていた

見栄っ張りな性格も災いして、人一倍知識を身につけた

誰がどう見ても「秀才」のイメージが崩れないように

少しでも頭がよさそうに見せるために、つまらない政治経済の本まで買ってしまった

でも、だそこまでしたからこそ今になってイメージを崩すまいと、どんどんこの沼に足を取られてしまう

実際は、こんな駄目な人間なのに・・・

少し凛々しく振る舞うだけで、皆が私に黄色い声をあげる

もう、こんな生活にはうんざりしている、でも、私の性格がそれを止めることを許さない

(自分も周りも、いやになるわ)

ある日、B子さんと一緒に活動した事があった、生徒会関連の事だったと思う

その子の仕事の早さに私は目を奪われた

いや、仕事の早さよりも、その態度に目を引かれたのかも

だって、彼女の目に「私」が映っていなかったから

こんな事は初めてだった、私は彼女の事が知りたくて仕方がなくなってしまった

私は、彼女の事を知ってそうな人に、彼女の事を聞いてまわった

・・・今思うと、少しストーカーみたいだけど

解ったことは、彼女が運動神経バツグンで、成績も常に上位だと言うこと

(あれ?でも・・・)

彼女はあの時、一度も話しかけられていなかった

それこそ「避けられている」ような・・・

それほど凄い人がどうして周りから好かれていないのだろう

私は、ますます彼女にのめりこんで行った。


中庭越しに彼女のいる教室を眺める、彼女も私も丁度窓際の列だったから彼女の顔までしっかり見えた

彼女はずっと1人の女の子と喋っていた、地味で、幼げな顔立ちの、おさげの女の子と

(あの子がうらやましい・・・)

そう思ってしまった

私の中で既に彼女は、それほどに特別な存在になっていた

彼女の一挙一動気になって仕方がない、

私の見ていないところではどんな表情をしてるんだろう

(って私、少女マンガの恋する乙女みたいじゃない・・・)

恋・・・
まさかね、私に限って女の子に恋なんてするわけないじゃない。

そう思って彼女の方を見ると、彼女と

目が、合った

私は息が詰まりそうになった、こんな視線を受けたのは初めてだった

彼女は”私の事を見ようとしていない”

目が合っているにもかかわらず、それしか言い表せる言葉がなかった

初めての経験に胸がドキドキする、

彼女が欲しい、と本気で思うほどに

(あれ?なんだか彼女、顔色が悪くなったような・・・)

それで私は我に帰り、目を反らした

(もしかしたら、今ので私の印象が悪くなったかも?)

そういえば、私の事を何て呼ぼうか決めてなかったわ、
面倒だから。C子でいい、少しダサいかしら?



「おい姉ちゃん、ちょっと俺らと遊んでよ」

そんな古典的セリフで、不良達が私の行く手を阻んだ

私は、わざと路地裏連れていかれて、

「た、助けて・・・」

「誰も来やしねえよ、ほら、こっちこプベッ!」

皆から誉められるために習った見栄っ張り拳の威力をなめてはいけない

ここで反撃すれば目撃されることもないわ

「せ、せんぱい!」

そう思った瞬間、後輩らしき人物の声が聞こえたものだから、私は驚いて後ずさってしまった

後輩(?)は私の前に躍り出て

「~~~~~!」

声にならない声を発していた

どうやらパニックになっているらしい

私が不良達を睨み付けると、先ほどのパンチを見て恐れをなした不良達が一目散に逃げていった

影で倒れてる不良が後輩に見つからないようにしながら、後輩と二人して路地裏から出た

「ぶ、無事でよかったです・・・!ありがとうB子!」

(B子?)

そういえばこの子、あの・・・

再開

私が、B子さんについて聞き回っていた時小耳にはさんだ話によると

B子さんは俗にいう「天才」で、これはもう以前から知っていた話なのだが

その実は、私の想像する物とは全く違う物だった

授業中はまともに授業を聞いていたためしがない、つまり努力せずしての天才だったのだ

これも、避けられている原因の一つであることは否めない

私が天才天才と言われながら誰からも好かれていたのは、その才が努力ありきの物だったからだし

彼女のその「努力しなくても出来る」事に憤りを覚える人間は少くないだろう

生徒だけに限らず、教師までもが彼女を嫌な顔をして扱っている事も考えるまでもない

「ふむ・・・」

私は、少しずつ彼女達のことが分かって行くのが堪らなくたのしかった

「じゃあここの問題、C子さん解いて」

「あ、はい」

正直ぼーっとしていた私だが、それでもさらさらと問題を解いていく

こんな問題はずっと前に何度も予習していたので、聞いていなくても普通に出来ただけだけど

「おお、」「さすがC子さん」「凄い・・・」

そんな声が後ろから聞こえてくる

B子さんが同じ事をしたら、舌打ちを浴びせるだろうに・・・

これだから、私は周りの人とは仲良くしたくない

後輩も、A子さんとB子さんだけが私にとって初めての「かわいい後輩」と呼べる存在だった

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