偽街の子供達「アイを探しに行こう」 (106)



イバリ「いち」

ネクラ「に」

ウソツキ「さん」

レイケツ「し」

ワガママ「ご」

ワルクチ「ろく」

ノロマ「なな」

ヤキモチ「はち」

ナマケ「きゅう」

ミエ「じゅう」

オクビョウ「じゅういち」

マヌケ「じゅうに」

ヒガミ「じゅうさん」

ガンコ「じゅうよん」

偽街の子供達「…………」



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オクビョウ「足りない?」

イバリ「足りない」

マヌケ「足りないの?」

ノロマ「ひとり足りないよ」

レイケツ「最後が来てない」

ミエ「やっぱり」

ネクラ「いないと問題かな」

ナマケ「問題だよ」

ヒガミ「だってずるい」

ワガママ「来ないのはずるい」

ワルクチ「サボり魔め」

ヤキモチ「探そう」

偽街の子供達「アイを探そう」




オクビョウ「本当に行くの?」

ガンコ「行くの」

ナマケ「私も行くの?」

レイケツ「あなたも行くの」

ノロマ「じゃあ、出ぱ――」

ほむら「あら。あなたたち、どこかへ行くの?」

偽街の子供達「!」




レイケツ「こんにちはご主人様」

ほむら「こんにちは。それで、どこに行くのかしら。まどかのところ?」

ヤキモチ「違う」

ヒガミ「カナメマドカのところじゃない」

ウソツキ「これからインキュベーターを殺しに行く」

ミエ「いっぱい駆除する!」

ほむら「そう。頑張るのよ。いってらっしゃい」

偽街の子供達「はーい」



ネクラ「なんでウソをついたの?」

ウソツキ「なんとなく」

オクビョウ「ウソばれたら怒られる?」

イバリ「ばれなきゃいい」

ノロマ「そうだね」

マヌケ「でもなんでアイを探すんだっけ?」

イバリ「教室で聞いたから」

ワガママ「アイは待ってても来ない」

ミエ「アイとはこちらから探すもの!」




 ~回想~


レイケツ「木の上でご主人様の教室を監視」

ワガママ「これってヒマ」

ノロマ「ヒマだね」

ネクラ「監視ってヒマ」

マヌケ「うん。ひ」ズルリ

レイケツ「あ、落ちた」

ワルクチ「バーカバーカミキサヤカー」

ガンコ「でもちゃんと監視しないと」

ヒガミ「カナメマドカを?」

イバリ「カナメマドカを」

ナマケ「なんで?」

ヤキモチ「ご主人様が見てるのに」




ミエ「カナメマドカはもう安定してる」

ウソツキ「きっと円環の理には戻らないよ」

オクビョウ「でもご主人様が全員で見張れって」

レイケツ「過保護」

ワルクチ「クレイジーサイコレズ」

ヤキモチ「愛かな」

マヌケ「愛だよ」

イバリ「そういえば、全員そろってる?」

ウソツキ「そろってる」

ナマケ「いるいる」

ヒガミ「うそだ」

ネクラ「最後のアイは?」

ノロマ「いないね」

レイケツ「そのうち来るんじゃない?」

ウソツキ「そうそう。来るよ」

ナマケ「どうでもいいから教室を見てよう」





 ~教室内~


和子先生「愛とは求めるものですかっ、それとも求められるものですか!? はい中沢君!」

中沢「えっ!? いや、えっと……その、どっちでもいいんじゃないでしょうか……?」

和子先生「そんなわけありません!」バキ

中沢「ひぃっ」ビクッ

和子先生「待ってれば愛が来るなんて大間違いですッ! 結婚のチャンスとはっ、愛というものはこちらから探すものなんですよ!? わかりますか! 相手のほうから勝手に求めてくると思うだなんて、思い上がりもいいところです!」

さやか「まぁーたダメだったのか……」アハハ

杏子「ダメだったみたいだな」ククク

まどか「は、はじめて見たけどすごい剣幕だね……」ウエヒヒ


ほむら「…………」ジイー




偽街の子供達「……」

ネクラ「待ってればアイが来るなんて大間違い」

ノロマ「待ってればアイが来るなんて大間違い?」

オクビョウ「アイとはこちらから探すもの?」

ミエ「アイとはこちらから探すもの!」

偽街の子供達「……」

イバリ「探そう」

ガンコ「うん。探そう」

偽街の子供達「アイを探そう」



 ~回想終了~


誕生日祝ったのと同じ人かな?期待するぜ



マヌケ「というわけだったけど」

ワガママ「木の上には?」

オクビョウ「キグルミ鳥」

ミエ「バラの植え込みは?」

ヒガミ「ヒゲ綿毛」

ネクラ「じゃあ路地裏?」

レイケツ「落書きの童が飛んでる」

ナマケ「いないね」

ヤキモチ「アイがいない」

ウソツキ「見つからない」

ノロマ「木の上は?」

ワルクチ「キグルミ鳥、こいつ食え」

ノロマ「え。やめて」

マヌケ「やっぱりいない」

ガンコ「どこにもいない」

偽街の子供達「……」

イバリ「手わけをしよう」

ネクラ「そうしよう」




イバリ「私はあっち」

ワルクチ「私もあっち」

ミエ「私も!」

ネクラ「じゃあ私も」

レイケツ「私はこっち」

ウソツキ「なら私もだ」

ワガママ「私も私も」

ヒガミ「私はそっち」

ヤキモチ「私もそっち」

ガンコ「そっちなら私も」

マヌケ「私はどっち?」

レイケツ「知るか」

ノロマ「私もどっち?」

ワルクチ「そこで立ってろ」

ナマケ「私どっちでもいいや」

>>10 ごめん別人。

俺もあれ好きだったから書き方真似してるだけ。
クララドールズSSもっと増えろ。



 ~アイ捜索班そのいち~


ヤキモチ「どこを探す?」

ヒガミ「どこを探そうか」

ガンコ「とにかくあっちから……あ」

ヒガミ「あ」

ヤキモチ「あ」

QB「……」




ヤキモチ「インキュベーターだ」

ヒガミ「捕まえる?」

ガンコ「もう捕まえた。殺そう」

QB「君たちはいつもそうだね。わけがわからないよ」ジタバタ

ヤキモチ「でもこいつ、物知りだよ」

ヒガミ「アイの居場所を知ってるかも」

ガンコ「殺そう」

ヤキモチ「聞いてみるだけならいんじゃない?」

ヒガミ「ウソをつかないし、いいかも」

QB「おや。話をするのかい? 珍しこともあ」

ガンコ「殺した」

ヒガミ「え」

ヤキモチ「え」

ガンコ「え?」




QB「いきなり。ひどいじゃないか。話をするんじゃなかったのかい?」ヒョコ

ヒガミ「あ。代わりが来た」

ヤキモチ「インキュベーター。アイはどこにいるか知ってる?」

QB「愛? 僕にはよくわからないけど、いるというのはおかしな表げ」

ガンコ「てい」

QB「きゅぷ」

ヤキモチ「あ」

ヒガミ「また」

ガンコ「インキュベーターは[ピーーー]もの」

ヤキモチ「そうだけどさ」

ヒガミ「利用するのはいいんじゃない?」




QB「愛については僕じゃあわからないけど、暁美ほむらなら知ってるんじゃないかな」ヒョコ

ガンコ「また獲物が来た」

ヤキモチ「ご主人様が?」

ヒガミ「アイのことを知ってるの?」

QB「『希望よりも熱く、絶望よりも深いもの』。ほむらは愛についてそう語っていたよ」

ヒガミ「ふーん」

ガンコ「じゃあご主人様に聞いてみる?」

ヤキモチ「聞いてみよう」

QB「……もし愛を見つけたのなら、それがどういうものか教えてくれないかな。君たちの感じ方は、僕としてもとても興味深いものだからね」

ヤキモチ「やだ」

ヒガミ「じゃあね、インキュベータ」

ガンコ「バイバイ」

QB「」グサグサグサ




 ~アイ捜索班そのに~


 ワイワイガヤガヤ


ワガママ「百貨店に来てみた」

ウソツキ「すごい人ごみ」

レイケツ「なんでここに来たの?」

ワガママ「百貨店にはなんでもそろってる」

ウソツキ「アイが売ってるかもしれない」

レイケツ「売ってるわけない」

ウソツキ「わからないよ?」

レイケツ「わかるの」

ウソツキ「あ。1980円」

ワガママ「え? ホント?」

レイケツ「それはおもちゃの着せ替え人形」




ワガママ「でもこれ欲しい。かわいい」

レイケツ「お金なんてないでしょ」

ウソツキ「ご主人様のお財布からくすねたやつがある」

ワガママ「え」

ウソツキ「ウソじゃないよ?」

レイケツ「おい」

ワガママ「いいのかな。買えるのかな」

ウソツキ「いいのいいの」

レイケツ「いいわけないでしょ」

???「何か探しているのですか?」

偽街の子供達「!?」





 ~その頃の某バーガーチェーン店~


さやか「でもさー、まどか。こういうバーガーチェーン店でもこっちとアメリカじゃ違うんでしょ?」パクパク

杏子「ああ、向こうのほうだとジュースとかポテトとか、かなりデカいって聞くよな。うらやましい話だよ」モグモグ

まどか「うん。こっちはセットが小さくってちょっとびっくりしちゃった。でも私にはちょうどいいかも」

杏子「ふーん。多ければ多いほどいいもんだと思うけどねぇ」ムシャムシャ

さやか「そりゃ杏子はそうでしょうよ」

杏子「あん? 何か引っかかる言い方だな、おい」

まどか「あはは。それとこのライスバーガーとか、日本独自のものじゃないのかな。珍しくって頼んでみたけど、おいしいね」ウエヒヒ


 キャイキャイ


ほむら「……」ジイー

ほむら(今日はあの子たちもいない分、わたしがしっかりまどかを見守らないと)

店員「いらっしゃいませ。おひとり様でございますね。ご注文は何に致しますか?」

ほむら「ライスバーガーのセットを――」

ほむら(わたしもマドカと同じものを……あれ?)

店員「かしこまりました。ライスバーガーのセットですね」

ほむら「すいません。やっぱりコーヒーのMを単品で」

店員「はい。承りました」

ほむら(思ったよりもお金がないわ……)ショボン




???「どうしたのです? 探し物だったら手伝えるかもしれないのです」

レイケツ「モモエナギサだ」ヒソヒソ

ウソツキ「どうしよう」ヒソヒソ

ウソツキ「どうしようか」ヒソヒソ

なぎさ(うーん。探し物をしてるみたいだからつい声をかけちゃいましたが、この子たち、どっかで見たことがあるような気がするのです。小学校の違うクラスの子でしょうか……)

ワガママ「アイの居場所をナギサに聞いてみる?」ヒソヒソ

レイケツ「無駄。どうせチーズしか探せないよ」ヒソヒソ

ウソツキ「あとはチーズの看護とか」ヒソヒソ

なぎさ(特にこの独特の雰囲気とかに覚えがあるのです。あとチョロチョロして何か探しているのにも親近感がわくのです。なんででしょう?)

ウソツキ「じゃあ、もうチーズでいいんじゃない?」ヒソヒソ

ワガママ「じゃあもうチーズにしよう」ヒソヒソ

レイケツ「は?」

なぎさ「内緒話は終わったのです?」

ワガママ「チーズ!」

ウソツキ「チーズを探してるの」

レイケツ「え」

なぎさ「そうなのですか!」キラキラ




なぎさ「チーズのことならなぎさに任せてください。なぎさはチーズの探究者といってもいいほどチーズが好きなのです!」

レイケツ「いやちが――」

ウソツキ「それは心強いね」

ワガママ「でもチーズに違いなんてあるの?」

なぎさ「それはもちろん! カマンベールにマスカルポーネ。至高のパルミジャーノ・レッジャーノ。
 さらには、ただでさえ素晴らしいチーズを、素晴らしくおいしいチーズケーキにしてくれるお姉さんをご紹介できるのです!」

レイケツ「ちょっと待――」

ワガママ「ケーキ! 食べる!」

ウソツキ「食べるの?」

ワガママ「食べるの!」

なぎさ「ふふふ。今日は都合のいいことにそのお姉さんと一緒にケーキを作る約束をしてるのです。
 なのでいまから手分けしてチーズを買いましょう!」

ワガママ「おー!」

ウソツキ「おー」

レイケツ「おい」





 ~マミホーム~


マミ(なぎさちゃん、チーズケーキの材料を買いに行ったけれども、そろそろ帰ってくるかしら。迷子になってないといいけれど……)

 ピンポーン

マミ(あら。帰ってきたわね)パタパタ

マミ「お帰りなさい、なぎさちゃん」ガチャリ

なぎさ「ただいまなのです、マミ!」

ウソツキ「おじゃまします」

ワガママ「ケーキ!」

レイケツ「なんでこんなところに……」

マミ「」




マミ「えっ、っと……なぎさちゃん。この子たちはお友達かしら?」

なぎさ「はい! チーズ友達なのです! そこで会ったので誘いました!」

ウソツキ「誘われた」

ワガママ「ケーキ!」

レイケツ「……ふん」

マミ(チーズ友達……?)

なぎさ「チーズもお金を分け合って買ったのです! ……あ。もしかして駄目だったのですか?」

マミ「……いいえ、ダメなんかじゃないわ。初めまして。いらっしゃい。なぎさちゃんの友達なら大歓迎よ」ニコリ

レイケツ「……トモエマミ」

ワガママ「ケーキ?」

ウソツキ「ううん。チーズだよ」

マミ「? えっと、とりあえず入って? 一緒にケーキを作りましょう」

なぎさ「ケーキを作ってお茶会なのです!」




マミ「そうそう。うまいわね。そうやってかき混ぜて――」

レイケツ「なんでこんなことを……」

ワガママ「ケーキのため」

ウソツキ「ケーキのためなら仕方ない」

マミ「ふふっ。そうね。おいしいものを食べたいのなら、手間をかけることが大切だもの」

なぎさ「チーズ作りも一緒なのです。おいしいチーズには、とても時間がかかるのです」

レイケツ「作ったことあるの?」

なぎさ「うっ。いえ、聞きかじりで実践はさすがにないですけど……」

マミ「ふふっ。でもものづくりはなんでも一緒よ。手間をかければかけるほどおいしくなるの。
 それで、おいしくする一番のコツはね、愛情をいっぱい込めることなのよ」

なぎさ「技術より愛情なのですか。マミらしい考えなのです」

ウソツキ「うん? 愛情って、アイのこと?」

レイケツ「……アイ?」

ワガママ「ケーキの中にアイがいるの?」

マミ「あら。そういう表現もできるわね。詩的で素敵だわ」

なぎさ「ならばなぎさはありったけのチーズ愛をこのケーキに込めるのです……!」

レイケツ「胃もたれしそう」

なぎさ「!?」

マミ「ふふふ、仲が良いのね。……あら、みんな終わったわね。あとはオーブンで焼くだけよ!」




なぎさ「完成したのです!」

ワガママ「ケーキ!」

ウソツキ「ケーキ?」

レイケツ「まぁるいケーキ」

なぎさ「まあるいケーキはなぎさが好きなのです!」

マミ「うふふ、きれいにできたわね。じゃあ、お茶をいれるからちょっと待っ――!」

マミ(魔獣の反応!)




マミ(こんな早い時間から湧くなんて……。しかも、ちょっと数が多いわね。佐倉さんたちに任せきりにするわけにはいかないし、仕方ない、か)チラ

なぎさ「どうしたのですか?」

マミ「ごめんなさい。ちょっと急用が入っちゃったの」

なぎさ「!」

マミ(なぎさちゃんは素質があるといってもまだ魔法少女とは無関係だから、秘密にしておかないとね)

ウソツキ「魔獣かな」ヒソヒソ

レイケツ「魔獣だね」ヒソヒソ

なぎさ「えっと、じゃあ、お茶会は……」

マミ「残念だけど、中止になっちゃうわね」

ワガママ「ケーキは? ケーキは?」

マミ「そうね。ケーキはこの入れ物にいれて、っと。はい。これで持って帰って?」

ワガママ「ケーキ!」

マミ「ふふ、喜んでくれてありがとう。……なぎさちゃんもこれでいいかしら?」

なぎさ「……マミにも都合がありますもんね。わかったのです」ニコッ

マミ「ごめんね、なぎさちゃん。前からの約束だったのに」

なぎさ「大丈夫なのです。気にしないでください!」

マミ「そう。ありがとう。あなたたちもごめんなさいね」

レイケツ「別にいい」

ウソツキ「うん。気にしない」

ワガママ「ケーキ♪」




レイケツ「トモエマミハは行っちゃったね」

ワガママ「行っちゃった」

ウソツキ「……いってしまったわ?」

ワガママ「円環の理に導かれて!」

レイケツ「お前ら黙れ」

なぎさ「? なんのことかよくわからないのですけど……このケーキはあげるのです」

ワガママ「ケーキ!」

ウソツキ「あれ? いいの?」

なぎさ「なぎさはいいのです。マミと一緒に食べに来たのですから、マミがいなければケーキの意味がないのです」

レイケツ「そうなの」

なぎさ「そうなのです。ケーキは次の楽しみにとっておくので、全部持って帰っていいのです」

ワガママ「ケーキ♪ ケーキ♪」

ウソツキ「残念残念」

レイケツ「……そういう時もある」

なぎさ「じゃあ、また今度なのです!」

レイケツ「バイバイ」

ウソツキ「またね」

ワガママ「じゃーねー」




ワガママ「ケーキ?」

レイケツ「ケーキ」

ウソツキ「まぁるいケーキ」

ワガママ「まぁるいケーキはアイがいる」

ウソツキ「ケーキはアイ!」

レイケツ「アイを見つけた」

ワガママ「じゃあ、ご主人様に持って帰ろう」




 ~アイ捜索班そのさん~



イバリ「……」

ワルクチ「……」

ミエ「……」

ネクラ「……」

魔獣「ウ゛オオオオオオ――」シュウウ

ネクラ「アイを探しに川原に来てみたら」

ワルクチ「魔獣がいっぱい湧いてたから」

イバリ「とりあえず倒したけど……」

ミエ「私が一番いっぱい倒したよ!」

ネクラ「うん。でも――」

さやか「あれ? 魔獣の反応って、ここらへんだったよね」

杏子「ああ。でも、いねーな。反応も全部消えてるし、どういうことだこれ」

偽街の子供達(……どうしよう)




杏子「わけわかんないけど無駄足かな、こりゃ……。とりあえずマミに連絡入れとくか」

さやか「わたしはまどかに電話しとくよ。バーガー屋の途中でいきなり席外しちゃったから、フォローしとかないと」



ネクラ「どうしよう」ヒソヒソ

イバリ「まだ見つかってないし、そっと逃げる?」ヒソヒソ

ワルクチ「鯖相手に?」ヒソヒソ

ミエ「なんかやだ」ヒソヒソ



杏子「さやか。マミは途中で気づいてたって。一応、確認しにこっちに向かってたみたいだけど、来なくていいって言っといたよ」

さやか「マミさん、今日はなぎさとお茶会だって楽しみにしてたからねぇ。中止になってなきゃいいけど」

杏子「どうだか。マミのやつも真面目だからなー。そういうときぐらいあたしたちに任せてくれてもいいのにさ。
 で、まどかはどうだった? まだバーガー屋にいるって?」

さやか「あー、もう帰ってる途中だって。悪いことしたなぁ」

杏子「マジか。しゃーねーな。なんか埋め合わせを考えておこーぜ」

さやか「そーだねー。ちょっと早いけど、もう家に帰ろっか……ん?」

ワルクチ「げ」

イバリ「あ」

ネクラ「うわー」

ミエ「見つかった……」





杏子「どうした、さやか……って、ガキがいるな。魔獣が湧いてたところだってなのに大丈夫か?」

さやか「魔獣が消えた後に来たのかな? ぱっと見だと大丈夫そうだけど、いちおう声をかけてみよっか。
 おーい、そこの子たちー!」

ネクラ「……なに?」

イバリ「何か用?」

杏子(あからさまに嫌そうな顔だな……)

さやか「いや、こんなところでなにしてんのかなーって思ってさ。どうしたの?」

ワルクチ「別に」

ミエ「探しものをしてる」

杏子「探し物?」

イバリ「うん。探しもの」

ネクラ「今日はずっと探してる」

ワルクチ「なかなか見つからない」

ミエ「大切なもの!」

さやか(あれ? あたしの時と杏子の時じゃ、あからさまに態度が違うような……)




さやか「え、えっと、大切なものって何? おねーさんに教えてみ?」

イバリ「あなたに関係あるの?」

ネクラ「関係ないよね」

ミエ「ないない」

ワルクチ「無関係」

さやか「ぐっ。いや、ほら、なんていうかさ。ちょっと気になったというかなんというか……」

杏子「あー、あれだ。教えてくれればあたしたちも探し物を手伝えるかもしれないだろ?」

ミエ「……言われてみれば」

ネクラ「手伝ってくれるの?」

さやか「うんっ、手伝う手伝う! だからおねーさんに教えてみなさいな!」

杏子「……おいさやか。お前、なんでそんな必死なんだ?」

さやか「へっ? いや違いますよっ?
 初対面の子供達なのに、なんか杏子のほうにやたら懐かれてて悔しいとかじゃないからね!?」

杏子「……いやいいけどさ。まあ今日はこの後の予定もないしな。ちょっとくらい探し物にも付き合ってやれるよ」

ワルクチ「そっか」

イバリ「なら教える」

ネクラ「今日ずっと探してるのはアイ」

ミエ「アイを探してる」




杏子「愛?」

さやか「……愛?」

さや杏「…………」

さやか「ぶうぅっ!」

偽街の子供達「!?」

杏子「ちょ、おいさやか。笑うなよバカっ。相手はガキだろ? お前デリカシーないな!」ヒソヒソ

さやか「い、いやだって不意打ち過ぎてっ。こんな子供たちから愛を探してるっていわれちゃぁ、もうさやかさんの腹筋は限界で……!」プルプル

杏子「じゃあ、せめてこらえろよアホ! 探し物してるって言ったとき、真剣な目ぇしてただろうがっ」ヒソヒソ

イバリ「……笑われてる?」

ワルクチ「なんで笑われてるの?」

ミエ「知らないけど、ミキサヤカに笑われてる」

ネクラ「ミキサヤカに?」

イバリ「サクラキョウコは笑ってない」

ミエ「ミキサヤカだけ」

ワルクチ「鯖だけ」

ネクラ「……ていっ」

さやか「あぁ、やっとおさまってき――ごぶうっ!」

杏子(ドロップキック!?)



さやか「お、おいこら……。笑ったのは悪かったけど、いきなりドロップキックはひどいんじゃないですかねぇ……!」ヨロヨロ

ネクラ「何のこと?」

ミエ「知らない」

ワルクチ「そもそも誰この青魚?」

イバリ「知らない」

さやか「なんだとう!?」

杏子「落ち着けさやか。さっきから言ってるが、相手はガキだ。それにお前にも悪いとこはあったぞ」

さやか「いいや、杏子っ。あたしはもう怒ったよ! そもそも最初っから態度が悪かったしね! 年上を敬うってことを教えてや――」

ワルクチ「うるさい失恋女」

さやか「!?」

杏子(あ。さっきのキックより効いてるな、こりゃ)




さやか「失恋……いやあたしはもう吹っ切ったもん……あんなデリカシーのない男は……だから恭介なんか……仁美も親友でわだかまりなんて……」ブツブツ

イバリ「デリカシーのない?」

ミエ「ミキサヤカ?」

ワルクチ「じゃあ自分の悪口?」

ネクラ「斬新」

さやか「うっ、うぅううう」

杏子「お前らやめてやれ。さやかも大人げなかったけど、死体殴りは止めてあげろ」

ミエ「……わかった」

ネクラ「しょうがない」

さやか「うわーん! 杏子ぉー!」

杏子「おい抱き付いてくんな、さやか。殴るぞ」

さやか「ひどっ!?」

イバリ「それで結局手伝ってくれるの?」

ミエ「探しものの手伝い」

ワルクチ「探しもののアイ」

ネクラ「アイはどこにいるの?」




杏子「うーん。愛はどこにいる、か。そうだな……あたしの教会には、もういないだろうな」ボソッ

さやか(あ……)

杏子「まあ何だ。外を探し回るより、家に帰って探してみろよ。案外、身近なところからでてくるもんだぜ、探し物ってさ」

イバリ「家?」

ミエ「自分の家?」

ネクラ「身近なところ?」

ワルクチ「アイは身近なところにいる?」

杏子「ははっ、そうそう。ま、近すぎて気が付かないかもしれないけどさ、一回落ち着いて自分の周りを見てみなよ。
 ……なんかの拍子でなくしちまったら、後悔してもしきれないからさ」

さやか「杏子……」

杏子「ん? なーに暗い顔してんだよさやか。お前のテンションさっきからやばいんだし、ソウルジェムが濁りきるぞ?」

さやか「え? あ゛」

杏子「ってことで、もう帰るか。お前らもあんまり遅くないうちに帰れよ? んじゃぁな」

イバリ「さよなら」

ミエ「じゃあねー」

さやか「あ、杏子のやつ……! んじゃねー、クソガキども」

ワルクチ「さっさと消えろ」

ネクラ「もう会わないといいね」

さやか「べー、だ。――ちょっと待ってって杏子ー」

杏子「おせーぞさやか」

偽街の子供達「………」




イバリ「家」

ミエ「自分の家」

ネクラ「身近なところ」

ワルクチ「アイは身近なところにいる」

偽街の子供達「……」

ネクラ「……帰ろっか」

イバリ「帰ろ」

ミエ「ご主人様のところに帰ろう」

ワルクチ「ご主人様の近くで探そう」


なぎさがアイを勘違いするのはまだしも、さや杏が勘違いするのはちょっとおかしくないか?

>>41
む。すまん、ちょっとご都合主義だったかも。
朝のHRの先生ご乱心が頭に残ってたせいで「アイ」→「愛」変換になったと思ってくれ。

まあ、いま思いついたんですけどね



 ~アイ捜索班そのよん~


オクビョウ「暗くなってきた」

ナマケ「だんだん暗くなってきた」

マヌケ「でも見つからないね」

ノロマ「ちっとも見つからない」

オクビョウ「どうしよう」

ナマケ「もういいよ。ほかの誰かが見つけてるよ」

マヌケ「そうかな。……あ」

オクビョウ「どうしたの?」

ノロマ「あ。カナメマドカ」

ナマケ「歩いてくるね」

まどか「……」テクテク




オクビョウ「カナメマドカだ」

マヌケ「帰ってるところかな」

ナマケ「そういえば、カナメマドカと言えば」

ノロマ「愛?」

マヌケ「愛だよ」

オクビョウ「ならアイの居場所を知ってるかも」

ナマケ「そうだね」

マヌケ「なら聞いてみよう」

オクビョウ「でもいいのかな。怒られない?」

ナマケ「カナメマドカが相手だもんね」

マヌケ「ご主人様にばれたら……」

オクビョウ「やっぱりやめたほうが――」

ノロマ「カナメマドカに聞いてみるの? おーい」

まどか「……うん?」

オクビョウ「!?」

ナマケ「!?」

マヌケ「!?」






オクビョウ「なんでこういうときだけ……」

ナマケ「テンポは遅いのに……」

マヌケ「どうしたの?」

ノロマ「え? え? わたし悪いことした?」

まどか「ええっと、わたしに何かようかな……?」


オクビョウ「どうする」ヒソヒソ

ナマケ「メンドクサイことになる前に隠そう」ヒソヒソ

ノロマ「よくわからないけどわかった」ヒソヒソ


オクビョウ「えっと――」

マヌケ「アイってどこにいるか知ってる?」

オクビョウ「!?」

ナマケ「!?」

ノロマ「!?」




まどか「『あい』……?」


オクビョウ「こいつのせいでもうごまかせない」ヒソヒソ

マヌケ「え?」

ナマケ「仕方ない。こいつのせい」ヒソヒソ

マヌケ「あれ?」

ノロマ「こいつのせいで、このまま聞こう」ヒソヒソ

マヌケ「……なんかヤな感じ」


まどか「ええっと、『あい』って人の名前? 友達とはぐれちゃったの?」

オクビョウ「人?」

ナマケ「人じゃないね」

マヌケ「人ではないよね」

ノロマ「人?」

まどか「あ、そうなんだ……」

まどか(友達の名前じゃないなら『I』かな。自分探し? でもこの子たちぐらいの歳で英語のスペルは知らないような……あ、そういえば朝のHRで早乙女先生が!)

まどか「もしかしてLoveの愛?」

ほむら「……何をやっているの?」

オクビョウ「!?」

ナマケ「!?」

マヌケ「!?」

ノロマ「!?」

まどか「!?」




まどか「ほ、ほむらちゃん!?」アタフタ

ほむら「こんばんは、まどか」

まどか「こ、こんばんは!」

まどか(ううっ。わたしいまLoveとか結構はずかしいことを言ってたのに……///)

ほむら(何でこの子たちがまどかに話しかけているのかしら。今日はインキュベーターを駆除しに行ってたはずじゃ……?)


マヌケ「なんでご主人様が?」ヒソヒソ

ノロマ「不思議じゃないよ。カナメマドカの傍だもん」ヒソヒソ

オクビョウ「怒られる? 怒られる?」ヒソヒソ

ナマケ「……やだな」ヒソヒソ





ほむら「それで、あなたこそどうしたのかしら。もうそれなりに遅い時間よ?」

まどか「その、さやかちゃんと杏子ちゃんと寄り道してた帰りにこの子たちに話しかけられて……」

ほむら「そう。この子たちに」ジッ

オクビョウ「な、なに?」

マヌケ「何にもしてないよ?」

ナマケ「悪いことは、なんにも」

ノロマ「してないしてない」

ほむら(追及する前から言い訳をはじめたわね。……怪しい)

まどか「あれ? ほむらちゃん、もしかしてこの子たちと知り合いなの?」

ほむら「……ええ。もう遅い時間になるから探してたの」

まどか「そうなんだっ」


ナマケ「あ。怒られないで済みそう」ヒソヒソ

オクビョウ「怒られないの? ホントに?」ヒソヒソ

マヌケ「マドカの前だから」ヒソヒソ

ノロマ「怒られないですむね」ヒソヒソ





ほむら「そうね……もう遅い時間だし、この子たちを送るついでにあなたも送っていこうかしら?」

まどか「え、でも……」

ほむら「気にしないで。あくまでついでよ」

まどか「……そっか。なら途中までお願いしちゃおっかな。一緒に帰ろ、ほむらちゃん」

ほむら「いいわよ、まどか」ファサア

オクビョウ「花火をやろう」

マヌケ「打ち上げ花火」

ノロマ「パーンって上げるきれいなやつ」

ナマケ「普通の花火でいいよ」

まどか(何でいきなり花火の話……?)

ほむら「…………やめなさい。近所迷惑でしょう」




まどか「そういえば、ほむらちゃん。この子たち愛を探してるって言ってたんだけど、どういうことかわかる?」

ほむら「『あい』?」

ナマケ「えっと」

オクビョウ「その」

マヌケ「そうだよ」

ノロマ「最後のアイを探してる」

ほむら「ああ、アイのことね。何をしてるかと思えば、そういうこと……」

ナマケ「そういうこと」

オクビョウ「怒らない?」

ほむら「別にいまさら怒らないわ」

オクビョウ「怒られない!」

まどか「てぃひひ、良かったね。でも愛を探してるって言われても、どうすればいいかなぁ」

ノロマ「マドカにもわからないの?」

マヌケ「愛なのに?」

まどか「そ、それは、わたしまだ中学生だし、そういう経験は全然ないし……」ゴニョゴニョ





ほむら「ふふっ、そうね。まどかには、まだ少し早いかもしれないわね」

まどか「もうっ。ほむらちゃんまで! そういうほむらちゃんはどうなの?」

ほむら「あら。秘密よ?」ファサ

まどか「うぅ……あっ。でも、わたしだって結婚の約束をしたことだってあるんだよ!」

ほむら「!?」

ナマケ「Gott ist tot」

オクビョウ「Gott ist tot?」

ノロマ「Gott ist tot」

マヌケ「Gott ist tot!」

まどか「あ、だめだよ! あなたたちなんでほむらちゃんにザクロなんて投げようとしてるの!?」





まどか「どこからだしたの、もう。食べ物を粗末にしちゃダメだよ?」

マヌケ「持ってた」

ナマケ「最初から持ってた」

ノロマ「いつも持ってるよ」

オクビョウ「食べる用と投げる用」

まどか「どうしよう。変ないたずら覚えちゃってるのかな……」

マヌケ「でも、マドカは結婚するの?」

ノロマ「愛なの?」

まどか「ちがうよぉ。さっきのは幼稚園の頃の約束」ティヒヒ

オクビョウ「なんだ」

ナマケ「そっか」

ほむら「あ、ああ、なるほど。幼稚園の頃ね。そうよね。そういうこともあるわよね」

まどか「えへへ、ちょっと見栄を張ってみちゃった」





まどか「でも、わたしも一回くらいラブレターとかもらってみたいなぁ」

ほむら「あら。そんなにいいものじゃないわよ」

まどか「えー。そうかなぁ?」

ほむら「ええ。そもそも愛という言葉自体も、昔は肯定的なものじゃなかったもの」

マヌケ「そうなの?」

オクビョウ「愛なのに?」

ほむら「愛だからこそ、よ。
 威張り、根暗、嘘吐き、冷血、我が儘、悪口、鈍間、焼き餅、怠け、見栄、臆病、間抜け、僻み、頑固。
 愛というものは、そんな悪徳と一緒に並べられた否定的なものでしかなかったの」

ナマケ「一緒」

ノロマ「仲間」

まどか「ほむらちゃん、物知りだね。わたし全然知らなかったなぁ」

ほむら「そんなにたいしたものではないわ。雑学みたいなものよ。
 『愛より憂いが生じ、愛より恐れが生ず。愛を離れたる人に憂いなし、なんぞ恐れあらんや』」

マヌケ「なにそれ?」

オクビョウ「呪文?」

ほむら「つまり愛とは執着のことであって、煩悩の一つでしかない。愛を捨て去ることによってこの世から解脱して涅槃に向かう。
   まあようするに、愛を捨てることによって神になるという方法論のことね」チラ

まどか「……神様に、なる」

マヌケ「神様」

ナマケ「円環の理?」

まどか(……円環の理?)

ほむら(……戻ろうとする兆候はないわね)

オクビョウ「安定してるね」

ノロマ「うん」





まどか「そうなんだ。ダメだなぁ、わたし。知らないことだらけだ。もっと勉強しなきゃ」

マヌケ「わたしも知らない」

オクビョウ「知らなかった」

ナマケ「知らないよ、ふつー」

ノロマ「知らない」

まどか「ティヒヒ、そうだね。……でも、それが愛だっていうのはなんだか寂しいね」

ほむら「そうね。でも、神様なんてきっと淋しいものよ」

まどか「そうなのかな……」

オクビョウ「神様はさみしい?」

ナマケ「ひとりぼっち」

マヌケ「ずっとずっと」

ノロマ「ひとりぼっち」

まどか「そっか。やっぱり、神様になろうって人は、すごい人たちなんだね。
 そんな淋しいこと、わたしなんかに耐えられるわけないもん」

ほむら「……」




ほむら「……そうね。だから、今とは違う自分になろうだなんて思わないほうが良いわ。
 あなたは鹿目まどかのままでいればいい。いままで通り、これからも」

まどか「うん、そうだね。……あ、ほむらちゃん。わたし、こっちだから」

ほむら「そう。わたしたちはこっちだわ」

ナマケ「家の方向」

オクビョウ「こっちが家」

マヌケ「こっちだっけ?」

ノロマ「こっちだよ」

まどか「そっか。それじゃあ、お別れだね」

ほむら「ええ」

まどか「ほむらちゃん。また明日」

ほむら「また明日。……あら」





まどか「どうしたの、ほむらちゃん?」

ほむら「いえ、大したことじゃないのよ。ただ、月が出てるなと思って」

オクビョウ「月?」

マヌケ「半分でてるね」

ノロマ「半分の月」

ナマケ「半分欠けた月」

まどか「わあ、ほんとだ。おっきい半月」

ほむら「……ねえ、まどか」

まどか「なに、ほむらちゃん?」

ほむら「……」ファサ

オクビョウ(……あ、ご主人様が笑った)

ナマケ(あれ? でも)

マヌケ(いつもと違う?)

ノロマ(なんだかきれいにご主人様が笑った)


ほむら「今夜は、月がきれいですね」


まどか「? えっと、うん。そうだね」

ほむら「ええ、それだけよ。……さようなら、まどか」

オクビョウ「バイバイ」

ナマケ「さよなら」

マヌケ「じゃあねー」

ノロマ「また明日ね」






 ~ほむホーム~



マヌケ「ただいまー」

オクビョウ「帰ったよー」

ナマケ「帰宅だね」

ノロマ「ただいま」

ミエ「おかえりー」

イバリ「帰ってきた」

ヤキモチ「ご主人様と一緒だ」

レイケツ「おかえりなさい、ご主人様」

ワガママ「おかえり!」

ほむら「……ただいま」






ほむら「全員そろってるのね」

ヒガミ「揃ってるよ」

ネクラ「みんないるね」

ほむら「そう。……あなたたち、今日はインキュベーターを駆除しに行ったのよね。そっちの成果はどうだったの?」

マヌケ「あ」

イバリ「いや」

オクビョウ「その」

ヒガミ「え?」

ガンコ「ころしたよ?」

ヤキモチ「インキュベーターなら、とりあえず殺した」

ほむら「あら?」

ほむら(アイを探しに行ってるものだと思ったのだけど、違ったのかしら)

ウソツキ「うん。いっぱい殺した」






ミエ「わたし魔獣をいっぱい倒した!」

ワルクチ「ハゲ狩りをした」

ほむら「ああ。そういえば、川原のほうで魔獣の反応があったわね」

ネクラ「たくさんいたよね」

イバリ「たいしたことなかった」

ほむら「そう。魔獣は杏子たちが始末したものだと思っていたけれど、あなたたちがやってくれたのね。ご苦労様」

ウソツキ「うんうん。いっぱい倒した」

ワルクチ「お前もう黙ってろ」

ウソツキ「え」





ほむら「杏子とさやかも魔獣を狩りに行っていたみたいだけど、鉢合わせなかった?」

イバリ「会った」

ヤキモチ「会ったの?」

ナマケ「平気だったの?」

ミエ「特に問題はなかったよ」

ヒガミ「バレなかったんだ」

オクビョウ「無事にすんだんだ」

ノロマ「良かったね」

ネクラ「でもミキサヤカにはドロップキックした」

ワルクチ「青魚に失恋女って言ってやった」

ほむら「二人ともよくやってくれわね」ナデナデ






ヤキモチ「……そんなことより、机の上に何かある」

ほむら「あら、本当ね。何かしら、この入れ物。誰かもって来たの?」

ネクラ「知らない」

ナマケ「なにこれ?」

ワガママ「ケーキ!」

ウソツキ「ケーキ」

ノロマ「まぁるいケーキ?」

レイケツ「ケーキの中にアイがいるんだって」

ほむら(ああ、この子たちはアイを探してたのね。……でも)

ほむら「あなたたち、ケーキなんて買うお金をどこから――あ」

ウソツキ「あ」

ワガママ「あ」

ヒガミ「あ?」

マヌケ「どうしたの?」

レイケツ「……」

ほむら(もしかして財布の中身が思ったより少なかったのは……)ジイー




ウソツキ「ち、ちがうの」

ワガママ「う、うん。ちがうよ?」

ヤキモチ「違うの?」

ガンコ「何が違うの?」

レイケツ「こいつが一人でやったの」

ウソツキ「!」

オクビョウ「そうなんだ」

ワガママ「そうだよ! わたし関係ないもん!」

ウソツキ「!?」

ワルクチ「ご主人様。全部こいつのせいだって」

ノロマ「……なんの話?」

ナマケ「さあ?」






ほむら「……はあ。まあいいわ。ケーキ代を払ったって考えればいいのだし」

マヌケ「いいの?」

イバリ「いいのかな」

ほむら「いいわよ。……もうしないようにね?」

ウソツキ「うん。もうしないもうしない」

ほむら「じゃあみんなで食べましょう」

レイケツ「うん」

ワガママ「ケーキ♪」

ほむら「はいはい。切り分けましょう」

ガンコ「切ろう」

ネクラ「十五等分」

ノロマ「包丁は?」

ナマケ「メンドウだから、このマチ針使おう」

オクビョウ「この黒くておっきいやつ?」

マヌケ「わかった!」

ほむら「わたしが切るわ」





ほむら「はい。それじゃあ好きなのをとっていきなさい」

ワガママ「わたし一番おっきいの!」

ヤキモチ「わたしもそれがいい」

ミエ「それわたしのだよ」

オクビョウ「わたしはこっちでいいや」

ナマケ「わたし残ったのにするから早くして」

イバリ「そうだよ。早く配ろう」

ネクラ「配らないと食べれない」

ワガママ「わたしがおっきいやつ食べるの!」

ミエ「わたしだよ」

ヤキモチ「わたしのだもん」

ウソツキ「わたしのおかげで材料が買えたんだから、わたしが――」

レイケツ「お前は一番ちいさいのだよ」

ウソツキ「!?」



ほむら「さて、全員にいきわたったわね」

ノロマ「あ。ちょっと待って」

ワルクチ「遅いぞ木偶」

ほむら「あら、まだ取ってなかったのね。……はい。それじゃ、いただきます」パク

ナマケ「いただきまーす」パクパク

ネクラ「食べる」ムシャムシャ

ほむら(……あれ。この味、巴さんの……?)

ほむら「あなたたち、これをどこで――」

レイケツ「おいしい」パクパク

ワガママ「ケーキ♪ ケーキ♪」モグモグ

ウソツキ「小さい……」パク

ほむら(……まあ、聞かなくてもいいわよね)パクリ




マヌケ「おいしいね」

オクビョウ「でも、アイっておいしいものなの?」

イバリ「この中にアイがいるんだよね」

ヒガミ「これがアイなの?」

ほむら「そうね。本当は、こんなにおいしいものじゃないわ」

ノロマ「やっぱりそうなんだ」

ワルクチ「本当はまずいの?」

ほむら「いいえ。まずいわけじゃないの。そうね。だから――」

ミエ「だから?」

ほむら「確かに、これも愛よ」ニコリ


         
            
              



レイケツ「今日も木の上でご主人様の教室を監視」

ワガママ「これってやっぱりヒマ」

ノロマ「どうしてもヒマだね」

ネクラ「どうやっても監視ってヒマ」

マヌケ「うん。ひ」ズルリ

レイケツ「あ、落ちた」

イバリ「学習しないな」

ナマケ「どうでもいいから教室を見てよう」





 ~教室内~



和子先生「みなさん、昨日の抜き打ちテストを乗り越えたからっていい気になっていませんか?」ドヨーン

生徒達「!?」

和子先生「いえいえまだまだこれからですよぉ? 中間テストも期末テストもこの先にあります。怖いですね、まずいですね~。
 それに今日の三限目になにがあるかといえば……はい中沢君!」

中沢「へっ!? いやえっと、ちょっと何の事だか……」

和子先生「ふふ、いけませんねぇ。今日の三限目は担任の私の授業ですよ? また抜き打ちテストがあるかもしれないんですよぉ?」

杏子「おいあの先生ついに生徒に八つ当たりをし始めたぞ」

さやか「てか昨日より荒れてるって、何があったのさ……」

まどか「……」ボー

和子先生「はいはい、それでは朝のHRはこれでおしまいです。みなさん、ちゃんと勉強しておくように」






杏子「しっかしやべーな。抜き打ちテストかぁ」

さやか「あたしはもう諦めたわ。まどかはどう思う?」

まどか「……」ボー

さやか「……まどかー?」

まどか「ふぇ!?」

さやか「え。いやそんな驚かなくても……。てかどうしたの、ボーっとしちゃって」

まどか「いやっ、別になんでもないよ、うん!」

杏子「そういやまどか。昨日は悪かったね、途中でいきなりどっか行っちゃって」

さやか「ああ、そうそう。ごめんね昨日は! 今日はあたしと杏子のおごりでまどかをどっかに連れてこうって話になったんだ」

杏子「ああ。ホントはマミのやつも誘ったんだけど、あいつはなぎさとお茶会のやり直しをするらしくってさ。予定は大丈夫か?」

まどか「あ、うん。放課後は特に何もないから大丈夫なんだけど……」

さやか「おいおいなんだー? さやかちゃんに遠慮なく言っちゃいなさいよ」

まどか「えっとその、おごってもらわなくてもいいから……ほむらちゃん、誘ってもいいかな?」

さやか「……え?」




まどか「あ、ダメ、かな……?」

杏子「……あたしは別にいーよ。あいつとはたまに飯食いに行くこともあるしさ」

さやか「は?」

まどか「そうなんだ。ふたりきりで行くの?」

杏子「ああ。あたし、まどかが転校してきた一年くらい前に風見野から来ただろう?」

まどか「そういえば杏子ちゃんも転校してきたんだっけ」

さやか「いや、ちょっと杏子!?」

杏子「で、顔合わせてすぐに、ほむらのやつが風見野にあるうまいラーメン屋を教えてくれたらおごるっていうからさ、一緒に食いに行ったんだ」

さやか「はぁあああああ!?」

まどか「へえー。杏子ちゃん、ほむらちゃんと仲良しさんなんだね」

杏子「まあ仲良しってわけでもないけどな。それ以来、ちょくちょくあたしのおすすめのとこに――」

さやか「杏子ぉ! あんた食べ物でつられてんじゃないわよ!」

杏子「んだよ、さやかはさっきからうるさいなぁ。別にいいだろ。そもそもさやかがなんであいつのこと嫌ってるかもよくわかんねーし」

さやか「なんか気にいらないの!」

杏子「ほら。ほむらの話になったらいつもそれだ。わけわかんねー。まどか。気にしないで誘っちまえよ」

まどか「ウィヒヒ、わかった!」

さやか「あ、ちょっとまどかぁ!」



ほむら(まどか達は何を話してるのかしら。……あら? まどかがこっちに来てるような――)

まどか「ほむらちゃん!」

ほむら「え?」





ミエ「話しかけられてるね」

マヌケ「でも驚いてる」

イバリ「驚いてるね」

ワガママ「あれは愛かな」

ネクラ「きっと愛だよ」

イバリ「……そういえば全員そろってる?」

ワルクチ「青魚なんていない」

ウソツキ「いないいない」

レイケツ「そうじゃない」

オクビョウ「確認する?」

ノロマ「確認しよう」




イバリ「いち」

ネクラ「に」

ウソツキ「さん」

レイケツ「し」

ワガママ「ご」

ワルクチ「ろく」

ノロマ「なな」

ヤキモチ「はち」

ナマケ「きゅう」

ミエ「じゅう」

オクビョウ「じゅういち」

マヌケ「じゅうに」

ヒガミ「じゅうさん」

ガンコ「じゅうよん」

偽街の子供達「…………」

偽街の子供達「色から生まれ空にはあらず、此岸の淵こそ我らが舞台」

偽街の子供達「最後のアイは、まだ来ない」



おしまい。



夜に割とどうでもいいおまけ放りこんだらHTML依頼出してくる。

初SSの初スレだったからなんか失敗してたらすまん。



イバリのホームランネタを書けなかったのが無念。



クララドールズSS増えろ。


月が綺麗ですねの意味を調べたのだな

意外に見ててくれた人いたんだな。ありがとう

てか>>89が鋭いな……。


それじゃ、おまけを投下



ホントは途中で入れるつもりだったけどクララドールズが絡まないからやめた小話。
それをまどほむ場面の元ネタ説明のためより説明くさくしてみた。

・おまけ ~詢子さんは物知り!~ そのいち


まどか「……で、愛っていうのは悪徳なんだって、そんな話を今日一緒に帰った友達としてたんだ」

詢子「へぇー、小乗仏教だな、そりゃ。中学生で知ってるとは、なかなか物知りな子だなぁ」

まどか「小乗仏教?」

詢子「ああ。お釈迦様の説いた教えだよ。出家主義で、他人との関わり合いが重視されない考えだな」

まどか「お釈迦様の教え……」

詢子「ああ。仏教の元の教えともいえるものだから原始仏教とも言うな。己に厳しい修業を課し、煩悩を消し去ることで彼岸へと渡る。
 言っちゃえば一人で修業して一人で救われようって考えだから、独善的でもある。だから『あなたがたの教えは小さい』っていう皮肉を込めて『小乗』仏教ともいうんだ」

まどか「じゃあおっきいほうもあるのかな?」

詢子「あるぞ。まどか。学校の授業で『南無阿弥陀仏』のところは習ったか?」

まどか「へっ!? いや、その、まだ日本に戻ってきてそんな経ってないから、日本史はちょっと……」

詢子「あー、そっか。そうだったな。
 簡単に話すとな、昔々に阿弥陀っていうただ人間が、ある時『必ずすべての人を救い、「浄土」に導こう。それまでは決して成仏しない』っていう誓いを立てたんだ」

まどか「へぇ……」

詢子「そして阿弥陀は仏になって阿弥陀仏と呼ばれるようになった。
 すべての人を救おうという誓いを立てた阿弥陀が仏になったんだ。
 だからその名前を唱えれば、それだけで死後、阿弥陀仏の慈悲(愛)によって極楽浄土に導かれる。そんな大勢を救える教えが、大乗仏教とよばれるんだ」

まどか「……そうなんだ。なんだか、わたしにはそっちの話のほうがしっくりくるや」

詢子「まどかにはそうだろうな。
 わたしからしてみりゃ、ちょーっと他力本願過ぎると思うけど……ま、どっちが間違ってるってわけじゃないし、そもそも愛がどうだっていうのは、時代による言葉自体の意味の移り変わりが大きいんだけどな」

まどか「結論それなんだ……」ウエヒヒ

詢子「ああ。キリスト教の影響だ何だっていろいろあるから、もっと知りたかった自分で調べてみろ。全部話すには、ちょっと複雑すぎるからな」

まどか「はぁい」




・おまけ ~詢子さんは物知り!~ そのに

詢子「そういうわけで、自己犠牲っていうのは究極の愛にして神様に至る道だっていう考えはよくあるものなんだ」

まどか「ふうん」

詢子「たとえばさ、まどか。『I love you』って、まどかならどう訳すよ?」

まどか「え? それは普通に『あなたを愛してる』でしょ?」

詢子「『わたしはあなたのためなら[ピーーー]る』」

まどか「へ?」

詢子「『I love you』の和訳だよ。二葉亭四迷っていう明治の文豪が、とある本でそういう和訳をして評判になったんだ」

まどか「ふえー。なんだかすごい訳し方だね」

詢子「だろぉ? 意訳って言っちまえばそれまでだけどさ、自分の命を投げ出してもいいって覚悟することは、確かに愛なんだよ」

まどか「なんだか大人な話だね」

詢子「まどかにはちょっと早いかもな。ちなみ同じ明治期の文豪で、また違った訳し方をしたやつもあるぞ?」

まどか「え? ほかにもあるの?」

詢子「ああ。夏目漱石が大学の講義に話した逸話だ。こっちは結構ポピュラーな話だけど知らないか?」

まどか「夏目漱石……ええっと『吾輩は猫である』とか書いた人だよね。それくらいしか知らないや……」

詢子「そっか。一般教養だしそのうち授業でもやるだろうから覚えておけよ」

まどか「うっ。はぁい。……それで、漱石さんのはどんな和訳なの?」

詢子「『今夜は月がきれいですね』」

まどか「……え?」

詢子「二人きりの夜、月を一緒に見上げてきれいだなと思う。そして、隣にいる愛おしい人にもきれいだなと思っていてほしい。共感してほしい。自分と同じことを思ってほしい。
 そんないじらしくて切ない想いを表してるんだ。詩的だよなぁ。わたしには絶対思いつかんわ」

まどか(一緒に月を見上げて……えーっと、二人きりじゃなかったけどそのシチュエーションって……)

まどか「え……え? えぇええええええええ!?」

詢子「なんだぁ? そんな驚くことだったか?」


 ・
 ・
 ・


 ~教室~



まどか「……」ボー

まどか(いやでもあの時はふたりきりじゃなかったしそもそもほむらちゃんがそのこと知っていたかどうかつまりただ月を見た感想だったかもで聞くわけにもいかなくて――)

さやか「……まどかー?」

まどか「ふぇ!?」

さやか「え。いやそんな驚かなくても……。てかどうしたの、ボーっとしちゃって」

まどか「いやっ、別になんでもないよ、うん!」

 おしまい♪



 ちなみに仏教と和訳の件は、ネットで拾い集めたものを自己解釈したうえ変容させて作品に当てはめてるから、これを知識として身に着けないようにお願いします。


ピー音入ったorz

まあ、あれだ。和訳をちゃんと知りたかったら検索してください。


読んでくれた人はありがとう。

次は違う感じにクララドールズが活躍する話を書く。


クララドールズSSもっと増えろ。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年09月07日 (日) 17:54:42   ID: rvoBWXz1

だからなんでこのSSの評価が低いんだよ?

2 :  SS好きの774さん   2014年10月30日 (木) 06:23:33   ID: MGWMoi3m

高いだろ
不自然に

3 :  SS好きの774さん   2014年11月12日 (水) 14:42:48   ID: KoVfn0Pq

オリジナルキャラ?違和感が酷い

4 :  SS好きの774さん   2014年11月12日 (水) 17:55:53   ID: mH-UwEiy

※3
オリジナルキャラってノロマとかナマケ達のこと?
劇場版の叛逆の物語に登場する偽街の子供たちのことですよ

5 :  SS好きの774さん   2014年11月28日 (金) 04:53:25   ID: tUGLJpMs

自己解釈がすぎてオリキャラに見えるな
これならノロマ達の名前は出すなよ不愉快だ

6 :  SS好きの774さん   2014年12月01日 (月) 18:35:07   ID: mPEoTad_

なぜこんなのが高評価なんだよ?

7 :  SS好きの774さん   2015年03月04日 (水) 23:14:32   ID: Nj3_Z-Ku

え、面白いんだが。

嫉妬乙。

8 :  SS好きの774さん   2015年10月23日 (金) 05:55:24   ID: 6KEBNXnv

普通につまらない
勝手すぎる内容にまどかマギカのキャラを当てはめただけだから無理矢理すぎて何が何やら
こんな物ならオリジナル作品でやればいいんじゃないか

9 :  SS好きの774さん   2017年05月05日 (金) 22:09:17   ID: LHvewECC

7←それな、5←ならクララドールズの説明見ろよ最後のアイはまだ来ないって書いてるよだからアイを探してるんだと思う長文すまんな

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