モバP「天体観測を2人と」(60)

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P「……これで終わり、っと」カタタッ

ちひろ「およ、プロデューサーさん、もう事務の仕事終わらせたんですか?」

P「はい。これで今日のノルマは終わりなので、今すぐ定時で帰れちゃいますね。まだ帰りませんけど」

ちひろ「それはお疲れ様で……って、残られるんです? 今日はいつも以上に頑張っていらしたので、明日のオフに向けて何か用事があるのだと思ってたんですが」

P「いえ、明日は何もなくて……今日に用事がありまして、だから残るんですよ。とりあえずその時間まで、もう少し仕事をするつもりです」

ちひろ「は、はぁ。良く分かりませんが、仕事をして下さるのはこちらも有り難いです。少し手伝って頂いても……?」

P「しょうがないですねぇ。2人が集まるまでですよ?」

ちひろ「やったー! ……2人?」

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P「……うん、そろそろですね。それじゃあちひろさん、私はここらで」

ちひろ「えっ、も、もう少しやって頂けませんか? もう少し、もう少しー!」

P「もう1時間ちょっとは経ったじゃないですか」

ちひろ「1時間ちょっとじゃ終わらない量なんですよぉ」

P「全く、毎度毎度超得ショップとか開いているから遅くなっちゃうんですよ?」

ちひろ「う……だ、だってその方が売り上げがあるんですもん。いいじゃないですか、ね、ね?」

P「だからもう時間なんですってば。もうそろそろ……」

ガチャッ

P「あ、ほら戻ってきましたよ」

ちひろ「?」

アーニャ「プリヴェート……えと、ただいま帰りました、ですね」

ちひろ「あらお帰りなさい。アーニャちゃん、遅くまでお仕事だったのね」

P「おう、おかえりアーニャ。今日のモデルの仕事、どうだった?」

アーニャ「Совершенный、完璧でした。みなさん優しかったです」

P「そうか。お疲れ様、だなー」ナデナデ

アーニャ「ん、スパシーバ……ありがとうございます」

P「さてと、アーニャが帰ってきたと言うことは……」

アーニャ「ダー、もうすぐ来ると……あ、来たようですね」

ガチャ

のあ「P、戻ったわ」

ちひろ「あっ、そうでしたね。のあさんとアーニャちゃん、今日は一緒にモデルの取材があったんでしたっけ」

アーニャ「ダー、のあさんに送って貰いました」

P「はぁ、ちひろさん。いい加減事務所の子のスケジュール覚えてあげましょうよ」

ちひろ「150人以上のスケジュールをそらで覚えてるプロデューサーさんがおかしいんですよ!?」

P「またそんなこと言って……のあさんもお疲れ様です。車のキーは?」

のあ「……ここにあるわ」

P「どうも。さて、2人とも仕事終わったばかりだけど……行けるか?」

アーニャ「ヤー、私は平気です。楽しみにしてましたから」

のあ「愚問ね。これくらいは疲れにも入らないわ」

P「はは、それは頼もしいことで。じゃ、ちひろさん。私はここであがらせて頂きます」

ちひろ「あー、なるほど。2人ってのあさんとアーニャちゃんの事だったんですね。ご飯でも食べに行くんですか?」

P「いえ、2人には食べてから来るようにと言っておいたので。もう済ませてるよな?」

アーニャ「ダー、私は食べましたが、のあさんが飲み物しか飲んでなかったです」

P「えっ、そうなのか。のあさん、どうかされたんですか?」

のあ「……人前で物を食べるのは、あまり好ましくないわ」

P「でも、これから結構時間かかりますし」

のあ「平気よ。貴方は私が無理をしているように見えるのかしら?」

P「それは……」

P「……」

のあ「……」

P「……大丈夫みたいですね。じゃあ、2人とも準備は出来たって事で」

ちひろ「え、なんですか今の。交信でもしてたんですか」

アーニャ「Тайна……不思議、ですね。でも、羨ましいです」

のあ「……貴方も私と同じよ。羨むことなんて必要ないわ」

アーニャ「そうなんですか?」

のあ「それはPが一番知っているわ。……そろそろ行きましょう、時間は私たちなど知らずに動いているのだから」

P「おっと、そうですね。時間は待ってくれないし行くとしましょう。それじゃちひろさん、残りあと少しですし、お仕事頑張ってくださいね」

ちひろ「あ、お疲れ様です……って、結局3人で何処に行くか聞いてないですよ! も、もしかして言えないことなんですか!?」

P「そんな食い付くようなことでも無いですって。ああ2人とも、先に車に向かっておいてくれ。ちょっと机の上を片付けてから直ぐに向かうよ」

のあ「分かったわ。アーニャ、行くわよ」ガチャッ

アーニャ「ダー。では、失礼します」ペコツ

パタン

P「さてと、書類とかまとめてまとめて……っと」

ちひろ「うーん、一体何処に……2人の共通点……共通点……」

P「もー、ちひろさん。アイドルのプロフィールとか確認してないんですか? パソコン閉じてっと……」

ちひろ「アイドルのスケジュールもプロフィールも、なんで覚えてるんですか貴方は!?」

P「スリーサイズも任せてください、それがプロってもんですよ。――ん、こんなところかな。ではちひろさん、今度こそお疲れ様でした」

ちひろ「ちょ、待って下さい! せめて、何処に行くのかは教えて頂けますか? 気になってお仕事できないですよー!」

P「あはは、虐めてすみません。今日は、とある物を見に行くだけなんですよ」

ちひろ「見に行く? こんな時間にですか?」

P「ええ、丁度私達の仕事終わりが2人と重なっていたので、まさしく今夜がベストだと思いまして」

ちひろ「今夜……あっ、もしかして今夜がピークだっていう……」

P「ええ、そうです。だから、これから行くんですよ」




P「――ちょっと星を観に、ね」

高速道路・車内


『それでは、今晩の天気です。○○地方は明日の朝まで雲一つ無い夜空となり、絶好の天体観測日和になるでしょう。
 お出かけになる際には、少し空を眺めると、素敵な流れ星が見えるかもしれませんね』
『流(なが)れ星だけに、長(なが)く見えるといいですね。ふふっ』
『……楓ちゃん、流石にそれは私にもわからないわ』
『そうですか……川島さんに躱されちゃいました……』


P「楓さん、今回のラジオでも飛ばしてるなぁ……とりあえず、今夜は雲が無いみたいだから安心したよ」

アーニャ「ダー、良かったです。曇りじゃ、悲しいですからね」

のあ「そして丁度、今夜は流星群。……星を観る運命に導かれているわ」

P「今は19時ちょっとか……目的地までもう少し時間掛かりそうだ。アーニャ、疲れてるみたいだから休んでていいぞ」

アーニャ「シトー!? あ、えっと、どうして分かったんですか?」

のあ「……言ったでしょう? 一番知っているのはPだと」

P「なんでのあさんが得意気なのか分からないですけど、これでもアイドルをよく見ているつもりだからな。休める内に休んでおかないと辛いぞー?」

アーニャ「……いえ、大丈夫です。というより、Напряженность……テンションがあがっているので、眠れそうにないです」

P「はは、そうか。じゃ、目的地までもうちょっと我慢してな」

アーニャ「ダー」

のあ「……」

アーニャ「のあさん、どうかされましたか?」

のあ「Как ваше здоровье?」

P・アーニャ「「!?」」

のあ「……? ……発音、間違っていたかしら」

アーニャ「ニ、ニェト、いえ、逆に完璧で、неожиданностью……えっと、驚きました」

のあ「……そう、良かったわ。それで、どうなのかしら」

アーニャ「ダー、私は大丈夫です。スパシーバ、のあさん」

P「ちょ、アーニャアーニャ! のあさんは何て?」

アーニャ「『体調は大丈夫なの?』だそうです。のあさんに直接聞けばいいのでは……?」

P「えっ……ああそういえばそうか。いや、のあさんがロシア語話したから混乱してな……ハンドル操作誤るところだったわ」

のあ「P、貴方はもう少し落ち着きを持った方がいいわ。それも、貴方の美点なのだけど」

P「突然担当アイドルが外国語話したらびびりますって……」

アーニャ「のあさん、とても綺麗な発音でした。日本語、ロシア語……何カ国語話せるんですか?」

のあ「……4から先は数えていないわ」

P・アーニャ「「4(チィトゥリ)!?」」

のあ「……P、貴方は前を向きなさい」

P「おっとと、すみません! いやー、俺もロシア語をしっかり話せれば良かったんだけどな。ごめんな、アーニャ」

アーニャ「ニェート、いいえ、大丈夫です。初めは驚きましたが、プロデューサーが本気だったというのは分かりましたので」

のあ「……」

P「そっか、ありがとうなー。さて、そろそろレナさんのラジオの時間かな。えっとラジオ局は……」カチカチ

のあ「(……アーニャ、気付いたかしら?)」

アーニャ「(? 何がですか?)」

のあ「(彼の一人称。事務所にいたときとは変わっているの)」

アーニャ「(……あ、ホントですね。私から俺、になっています。どういうことなんでしょう?)」

のあ「(ロシア語の一人称には敬語が無いけれど、日本語にはある。これで分かるかしら?)」

アーニャ「(アー……今はフランクになっている、という事ですか?)」

のあ「(ええ。今の彼はオフの彼、という事よ。いつもとさほど違いはないようだけれど)」

アーニャ「(でも私達には、えっと、素を見せているわけですね。なんだか、嬉しいですね)」

のあ「(……私もよ)」

『ハァイ、こんばんは。兵藤レナの「カジラジ」、今夜も始まるわよ♪』

P「ん、2人とも、何を話してるんだ?」

のあ「貴方が気にすることもないわ。女同士の、他愛もない会話よ」

アーニャ「プロデューサーには、秘密です」

P「む、そうか。気になるけど秘密なら仕方ないなー……気になるけど!」

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数十分後

P「よーし、着いたぞー」

アーニャ「虫のГолос……さざめきが聞こえますね。都会とは違って緑が一杯で……空気も綺麗、です」

のあ「P、ここに来たのは何の意味が?」

P「ここ、俺の実家の近くなんですよ。丁度、天体観測に打って付けな秘密の場所がありまして」

アーニャ「秘密の場所、ですか?」

P「ああ。山と山の間にあって、道を逸れて獣道を進まないと行けない所なんだ。昔はそこを拠点にしてよく遊んでなー」

のあ「つまり貴方の思い出の地、ということでいいのかしら?」

P「まぁそうですね。星を観るのは俺も好きだったんで、2人になら教えてもいいかなーと思いまして」

のあ「……そう。なら、案内を頼むとしましょう」

P「分かりました、それじゃ行きましょう。荷物担いでっと……あ、のあさん、アーニャ、懐中電灯渡しておきますね」

のあ「秘密……特別……行きましょう、アーニャ」

アーニャ「ダー、そうですね」

アーニャ(のあさん、嬉しそうです。……少しのあさんのこと、分かった気がします)

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歩き始めて15分

アーニャ「……フゥ」

P「アーニャ、大丈夫か? ごめんな、結構距離があったのすっかり忘れてて……」

のあ「……P。貴方、仕事以外では天然なのかしら」

P「うっ、仕事でも結構ドジ踏んでます……すみません……」

アーニャ「大丈夫です。私はまだ、Энергия……元気です」

P「そう言われてもな……もう少し歩くことになるし、明日に響いちゃうのは流石になぁ」

のあ「アーニャ、貴方が疲れているのは私にも分かる。人の無理は顔に出るのよ」

アーニャ「で、でも、折角ここまで来ました。戻るわけには……」

P「そうだが……うーむ」

のあ「……P、貴方がアーニャを抱えて歩けば良いと思うのだけれど?」

アーニャ「!? の、のあさん、それはちょっと、Позорно……!」

P「あ、そうですね。俺は足腰が無駄に丈夫なんで全然行けますし」

アーニャ「プロデューサーも何を!?」

のあ「今日の仕事の影響で、デニムを着ていて正解だったようね」

P「抱えて転びそうになったら危険だし、ここはおんぶが定石か。よーし、カモンあーにゃー」

アーニャ「アー、その、あう」

のあ「アーニャ、物事には流れがある。逆らうのもまた1つの手、けれど流れに身を任せるのも、また違う可能性を生み出すわ」

アーニャ「のあさん、よく分からないです……」

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アーニャ「アー、結構歩いてますが、重くないですかプロデューサー? 荷物も片手に持ってますし……」

P「全っ然、むしろ軽すぎて驚いたくらいだ。荷物もこれくらいなら平気だし……ああ、アーニャが重そうだとか思っていた訳じゃなくてな?」

アーニャ「ダー、そうですか。なら、良かったです……」

のあ「P、あとどれくらい歩くのかしら?」

P「あと数分って所ですね。いやぁ良かったです、人の手が加わっていないので、しっかり道覚えてますよ」

アーニャ「あと数分でこれも終わり、ですか」

のあ「……残念そうね?」

アーニャ「あ、いえ、そういうわけじゃ、なくて」

P「ん、疲れてるなら帰りも背負っていくぞ?」

アーニャ「! ……いいんですか?」

P「アーニャが良ければいくらでも。アイドルの体調管理のためならこれくらい何ともないしな」

アーニャ「ダー♪ なら、お願いします」ギュッ

P「おおう!? お、おお、分かった、分かったから、そう首に抱きつかれると背中とか色々と困っちゃうぞ!?」

のあ「……そういえばアーニャ、乗り心地は如何かしら?」

P「いや、何聞いてるんですかのあさん。聞いてどうするんですか」

のあ「特に理由は無いわ。質問に、必ずしも理由なんていらないものよ」

アーニャ「ダー、その、プロデューサーの背中があったかくて……心地よいです」

P「アーニャも何恥ずかしいこと言ってるの!? やめて、なんかにやけちゃうから止めて!?」

のあ「……P」

P「あ、はい。何でしょうか」

のあ「私も疲れて来たわ。帰りはおぶって貰えるかしら」

P・アーニャ「「!?」」

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また数分後

P「お、あった、ここだここだ! 2人ともお疲れ様。ここが目的地、俺の秘密の場所だ」

のあ「ここが……なるほど。山と山の間で、谷を臨む地形になっているのね」

アーニャ「スゴイです。まるで山が私たちに空を見せるかのような……」

P「隆起とかを繰り返して、丁度この崖部分だけが谷の中で出っ張る形になってるんだ。だから、こうして山と山の間の視界がひらけていてな」

のあ「……見事な月と星空ね。周りに明かりがないから、より輝きが分かる」

アーニャ「プロデューサー、もう大丈夫です。谷底を見てみたいので、降ろして頂けますか?」

P「おお、分かった。近くは絶壁だから、懐中電灯持って気をつけてなー」スッ

アーニャ「おぶって下さってスパシーバ、ありがとうございました、プロデューサー」トテトテ

のあ「……P、気になっていたのだけど、その荷物は何かしら」

P「ああ、これですか? 今開けますね」ガサガサ

のあ「レジャーシートと……タオルケット」

P「あと残りは虫除け、双眼鏡、カメラですね。ずっと上向いているのは、首が痛くなっちゃいますからね。今渡しておきますので、好きな場所で広げちゃってください」

トテトテ

アーニャ「プロデューサープロデューサー、崖下、凄く深くて……どうかされたんですか?」

P「ああ、アーニャ。今、流れ星を見るためにシートとタオルケットを用意したから、2人で使ってくれって話をしててな」

アーニャ「ダー、分かりました。プロデューサー、用意がいいです、さすがですね」

のあ「……? P、タオルケットが2枚しかないのだけど……」

P「安心してください。もちろん、のあさんとアーニャの分ですよ?」

アーニャ「え? でも、それじゃあ……」

のあ「……貴方の分が無いのはどういうことかしら?」

P「あーその、自分1人暮らしでして、タオルケットは最小限にローテーションするため2枚しか持って無くて……」

アーニャ「アー……では、プロデューサーはどうされるんですか?」

P「俺はこうして立って空を見上げるよ。小さい頃から見慣れているし、大丈夫だ」

のあ「……」

アーニャ「そうしたら、プロデューサーがшее……首を痛くしちゃいます。それは、ダメです」

P「大丈夫だって。心配してくれてありがとうな」ナデナデ

のあ「……」

アーニャ「ん……で、でも……」

P「ほら、そろそろ用意しよう。時間から見るに、もうすぐピークの時間帯らしいし……」

のあ「 P 」

P「はい? って、のあさん!? な、なんでそんなに怒ってるんです!?」

アーニャ(怒っている? いつもと変わりがないような……)

のあ「私は、貴方と共にある、アーニャも同じよ。それなのに、貴方は私達から離れようとするのかしら?」

アーニャ(! 何やらаура、オーラを感じます。これが、のあさんの感情でしょうか?)

P「いや、そういうわけじゃないですって。今回用意出来なかったのは自分のミスですし……」

のあ「聞こえなかったのかしら。貴方と共にあるのよ? 貴方のミスは、私のミス。それを貴方だけに被せる気なんて無いわ」

アーニャ「のあさん……。プロデューサー、私も同じです。貴方にだけ、ミスを被せたくないです」

P「アーニャまで……いや、大丈夫だって。気にしないで平気だからさ」

のあ「……アーニャ。このシート、2人で使うには結構大きいみたいよ」

アーニャ「? 大きい、ですか?」

のあ「ええ。そして、タオルケットは私と貴方で2枚、ここにいるのは3人」

アーニャ「! Действительно……なるほど、そういうことですね」

のあ「シートと荷物、頼んだわ」

アーニャ「ダー、すぐに敷きますっ」タッ

P「? 2人とも何を話して……アーニャは荷物持ってシートを敷きに行ったのか?」

のあ「P、行くわよ」ガシッ

P「へ? おぉ!? の、のあさん、何で引っ張るんですか、ちょっ、強っ!?」ズルズル

のあ「あの子では、貴方を運ぶほどの力は無いわ。でも、私はどうかしら」

P「十分すぎますよ!? いや、どこからこんな力出るんですか、服伸びちゃいますって!」ズリズリ

アーニャ「のあさん、シートはここで平気ですか?」

のあ「ええ、良い場所よ、感謝するわ。……P、受け身の準備をしなさい。……投げるわ」

P「え」

ブンッ

P「」

ズテーン

アーニャ「わぁ、プロデューサーが一足早くミチオール、流星に……」

P「おごご……あれ、そこまで痛く、ない? ……あ、丁度シートの真ん中に落ちたのか。凄いなのあさん……」

のあ「アーニャ、行くわよ」

アーニャ「ダー」

P「え、2人とも何で隣に座っ」

アーニャ「プロデューサー。姿勢を倒して、Верх……ええと、仰向けになってください。私たちもそうしますから」グイッ

P「えっ、どういう」ポフッ

のあ「アーニャ、貴方のタオルケットよ」

アーニャ「スパシーバ」

バサッ モゾモゾ

P「えっ、えっ」

のあ「……これで」

アーニャ「Совершенный、完璧、です」ムフー

P「……」

P(……どうも、Pです)

P(のあさんに見事に投げられ、起き上がったと思ったら仰向けにされて、そのまま押さえつけられて)

P(右にのあさん、左にアーニャ。2人も仰向けに寝転んで、それぞれタオルケットの一部を真ん中の俺にかけて)

P(真ん中……はい、2人とサンドイッチ状態になりました。少しズレれば肩が触れそうな距離です)



アーニャ「あっ、今、また流れました。ピークの時間はまだですが、結構見えるものですね」

のあ「ええ、性急な星が多いようね」

P「……あの、2人とも。これはどういうことなんですかね?」

アーニャ「どういうこと、とは?」

のあ「タオルケットが2枚しかないのだから、3人で使えるようにした。ただそれだけよ、何かおかしいかしら?」

P「いや、俺のこと考えてくれたのは凄く嬉しいんですけど……その、なんといいますか、こう女性2人に挟まれるのは何とも恥ずかしいというか……」

アーニャ「? プロデューサー、Контора、事務所ではいつも誰かに挟まれていると思うんですが」

のあ「……今日、私達が仕事へ出かける前には、奏と千枝に挟まれていたわね」

P「ご、誤解を招く言い方止めて下さいのあさん! あれは奏が千枝に『キスの仕方を教える』とか言ってたからでして!」

アーニャ「プロデューサー……」

P「アーニャ、ジト目でこっち見るの止めよう。無罪なのに精神ダメージが凄い。俺、泣きそう」

のあ「それくらいの事があったのは事実。なら、これくらいの事は我慢できるでしょう?」

P「わ、分かりましたよ。2人の厚意は素直に嬉しいですし、耐えます、色々と我慢します……」

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P「お、流れたっ、と」カシャッ

アーニャ「アー、撮れましたか?」

P「デジカメじゃないから何とも。でも、こっちの一眼レフの方が味があってな。きっと良い1枚が撮れてるはずだよ」

のあ「……P」

P「ええ、もちろん焼き増ししてお渡ししますよ。アーニャにも、な?」

アーニャ「ホントですか? スパシーバ、プロデューサー!」ギュッ

P「お、おう。嬉しいのは良く伝わったから、離れて貰えると、うん」

のあ「……感謝するわ」ギュウ

P「What!? のあさん分かってやってますよね、わざとですよねそれ!?」

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P「お、また1つ流れ……おお、また流れた」

アーニャ「ダー、綺麗です。もうピークの頃合いなんでしょうか?」

P「今、物理的に時計見えないから分からないけど、もうそれくらい時間経ったって事かな」

アーニャ「もっと見えるといいですね。星は、いつ見てもいいものです」

のあ「……」

P「のあさん、どうかしましたか?」

のあ「いいえ、ただ星を観ていただけよ。星の海から、1つ1つと輝きが消えていくその瞬間を」

P「ああ、そうですね……流れ星って、小惑星とかが燃え尽きる瞬間の輝きですからね」

のあ「消滅の一瞬に、一際輝きを放つ。私たちが見ていることを知らずに、星は輝きを私たちに届けるわ」

アーニャ「その瞬間が、私達にはとてもПрекрасно……美しくて、幻想的です」

のあ「Wish upon a star……なんて、貴方が居れば必要ないこと。もちろん、アーニャもそのはずよ」

P「? 俺、ですか? まぁ、星に願いを掛けるんだったら、その実現のために頑張った方がいいと俺は思いますからね」

アーニャ「『When you wish upon a star』、ほしにねがいを、ですね。のあさん、大胆です……けど、私もそう思いたいです」

のあ「……物知りな子は、嫌いじゃないわ」

P「……あれ? もしかして俺、話に微妙に乗れてない?」

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アーニャ「わぁ……ミチオール、流星がこんなにも沢山……」

P「おおー、見事なもんだ。こうして星を観るのは何年ぶりだろうか、はー……綺麗だなぁ」

のあ「……やはり、今のような顔が一番ね、貴方は」

P「えっ、な、なんですか急に。そう言われるとなんか恥ずかしいですね」

のあ「いいのよ……とにかく笑いなさい、P。貴方は笑顔の方がいいから」

アーニャ「私も、今みたいなプロデューサーのワクワクする顔、好きですよ?」

P「アーニャまで……照れるなぁ」

アーニャ「プロデューサーの顔を見ていると、私もワクワクしてどきどきして……アイドルになって良かったです」

のあ「貴方との仕事が、また1つ私を、アーニャを輝かせる。星を観て再認識したわ」

P「……だったら、俺が笑顔のままで、2人をトップまで持っていかないといけないですね。はは、大仕事だ」

アーニャ「ダー♪ よろしくお願いします、プロデューサー」

のあ「私たちとあなたの夢、叶えましょう? きっと行けるわ」

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P「……すっかり流星群も落ち着いたなぁ。2人とも、そろそろ戻ろうか?」

アーニャ「ダー、そうですね。とても、楽しみました」

のあ「見事の一言だったわ。2人と観て居たから、かしら」

P「はは、ありがとうございます。また機会があったら行きましょう、スケジュール調整は任せて下さい」

アーニャ「今からУдовольствие、楽しみです。プロデューサーとのあさんとなら、何度でも行きたいですね」

P「よし、じゃあタオルケットとシートをまとめますかー」

のあ「……そういえばP、帰りはおぶって貰えるのかしら?」

P「あ、あれ本気だったんですか……!? 出来なくはないですけど、シュールな光景になりますよ?」

のあ「……自信はそれなりにあるわ」

アーニャ「! ……アー」

P「む、胸を強調しないで下さい!」

のあ「……冗談よ。それと、女性は胸だけじゃないわ、アーニャ」

アーニャ「ス、スパシーバ、のあさん……」

-----
数十分後 山の麓

アーニャ「あの、結局下山の時もおぶってくださってスパシーバ、プロデューサー」

P「ん、気にしないでいいぞ。只でさえも遅くなっちゃったし、これ以上アーニャに負担掛けちゃうのは良くないしな」

のあ「……私も、もう少し負ぶさりたかったのだけれど」

P「流石に長時間は勘弁して下さい……体力的には全く辛くないですけどメンタルが持たないです……」

アーニャ「のあさん、プロデューサーのНазад、背中はどうでしたか?」

のあ「……クセになる匂いだったわ」

P「それっておんぶの感想じゃないですよね!?」

P「……しかし、本当に綺麗な流星群だったなぁ」

アーニャ「ダー、私も北海道で何度かズヴェズダ、星を観ていましたが、さっきの星は本当に綺麗でした」

P「手を伸ばせば手に入りそうなくらいに、な。まぁ、今は星よりもアイドルのことで手一杯だからいらないけども」

のあ「……そうね。遠くに一つ輝く星の、果てなき時と比べてみれば、私たちは遙かに貴方の傍にいるわ」

P「く、比べる対象が果てしないですね」

アーニャ「それくらい傍に居れる、いつも傍に居る、ということだと思います。のあさん、素直じゃ無いです」

のあ「……どうかしらね?」

アーニャ「ふふっ。私、のあさんの事、ちょっぴり分かった気がします」

P「お、おお。なんだ、とりあえず2人が仲良くなって良かったよ」

のあ「貴方は、こういう時はまずきちんと察しなさい」

アーニャ「プロデューサー、そういうのはズルイですよ?」

P「Ouch!? 2人とも、脇腹つねらないで! 痛くすぐったいから!」

のあ「……もうすぐ日が変わるわ。アーニャ、貴方、明日の仕事は?」

アーニャ「明日はお休み、ですね。プロデューサーが空けておいてくれました」

のあ「……良い働きね。私も休みになっているのだけど……これも貴方かしら?」

P「俺の我が儘で呼んだんですから、それくらいのアフターケアは当然ですよ。
 ……さて、もうここに用はないですし、帰りましょうか。2人とも、荷物を積むのでちょっと待っててくださいね」タタタ…

アーニャ「ダー、分かりました」

のあ「……」

アーニャ「……のあさん? どうかしましたか?」

のあ「彼の用意が終わるまでに、少し話があるのだけど……いいかしら」

アーニャ「? はい、なんですか?」

のあ「――」

――――
――

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翌日・朝 P宅



P「休みを貰ったはいいが、何をするべきか……うーむ」

P「『有給消化しないとダメなんですよ、働き過ぎです!』とかちひろさん言ってたけど、俺としてはアイドルのプロデュースが趣味みたいなもんだったからなぁ」

P「やばい、完全に無趣味じゃないか、俺。杏と変わらないじゃないか……」

P「とりあえずは着替えたけど、外に出る目的がないのは問題だよなぁ」

P「運動は……茜とか相手にしているからご無沙汰でもないし……どうすりゃいいんだろう」

ピンポーン♪

P「んお、平日の朝になんだ? 新聞勧誘お断りの張り紙付けてるんだが……」スタスタ

ガチャッ

P「はい、どちらさまで――」

アーニャ「ドーブラエ ウートラ! ふふ、おはようございますプロデューサー」

のあ「……貴方、案外早起きね。感心するわ」

P「……」

パタン

アーニャ「!? し、閉めないでください、プロデューサー!」

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P「あー、ごめんな。ビックリして現実逃避しようとしてた」

アーニャ「アー、私たちも、急に来てしまってИзвините、ごめんなさい、です」

のあ「……Я виноват」

P「の、のあさん、分からないです、日本語でお願いします」

のあ「……悪いのは私ね」

P「ああいや、来ることが悪いことじゃないですって。それで、2人とも今日はどうしたんだ?」

アーニャ「えと、昨日、あの秘密の所から帰ろうとプロデューサーが荷物を積んでいるとき、のあさんからお誘いがあって――」

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アーニャ『……のあさん? どうかしましたか?』

のあ『彼の用意が終わるまでに、少し話があるのだけど……いいかしら』

アーニャ『? はい、なんですか?』

のあ『……私たちは明日、彼の手によってオフが重なったわ』

アーニャ『そうですね、プロデューサー、優しいです』

のあ『ええ。それと、明日は彼もオフということは知っている?』

アーニャ『あ、今日のスケジュール表に書いてあった気がします。必ず入れなくてはいけないお休みだとか……?』

のあ『そう。つまり、彼は明日やることがないと言うことよ。……これで、分かる?』

アーニャ『! アー、分かりました。私も、のあさんのПредложение、提案に賛成、です』

-----


P「……それで、俺の家に来ることになったの? アーニャ、それでわかったの?」

アーニャ「ダー、きっとのあさんは、プロデューサーと休日を過ごしたいと思ったので」

のあ「……正解と言いたいけれど、言葉が抜けているわ。アーニャ、貴方ともよ?」

アーニャ「あ……スパシーバ、嬉しいです。私も、プロデューサーと、のあさんと一緒に、今日を過ごしたいです」

のあ「……P、そういうことよ。私達はここで待っているわ」

P「えっ、どこかに出かけるんですか?」

のあ「それを決めるのは貴方よ。ただ、私達は貴方と居るためにここへ来た。それだけは知っておいて欲しいわ」

アーニャ「ご迷惑、ですか?」

P「ん、それはないぞ? 俺も今日は全くやることがなくて助かったくらい、かな。ちょっと待っててくれ、財布とか車のキーとか用意するから」

パタン

アーニャ「フゥ、良かったです。やはりプロデューサーは、優しいですね」

のあ「そうね。……アーニャ、アイドルはよく星に例えられるのは、知っているかしら」

アーニャ「シトー? アー、聞いたこと、あります。輝かしいから……ですか?」

のあ「そのようね。でも、私はそう思っていない。アイドルは、1人では輝く事など出来ない、成り立たないわ」

アーニャ「……プロデューサー、ですね」

のあ「ええ、私たちと彼は、互いに互いを導く存在……星よりも近く、いつも傍に……」


ガチャッ


アーニャ「あっ」

のあ「……」

P「お待たせしました。着替えは済んでたので早く用意出来て……あれ、何か会話中だったか?」

のあ「いいえ、なんでもないわ。昨日も言ったように、女同士の他愛のない会話よ」

アーニャ「……そうですね。それに、きちんと言葉は、伝わりました」

P「ん、それなら良かった。それじゃ、行きましょうか。
  まずは……カムフラージュのために2人の帽子を買うところからかなぁ」

アーニャ「あ、Извините、ごめんなさい、被り忘れてました……そうですね、行きましょう」ギュ

のあ「……ええ、そうしましょう」スッ

P「……あの、何で2人とも、ごく自然に俺の手を握って来たの?」

アーニャ「アー、いやでしたか?」

P「あ、嫌じゃないです。逆に嬉しいです」

のあ「……正直者ね」

アーニャ「流石、プロデューサーですね」

P「……褒められていない気がするのは気のせいか。うん、気のせいなんだろうな」

のあ「……P、1つ聞きたいのだけれど、ホームパーティとは、何をどうするものなのかしら」

アーニャ「!」

P「ホームパーティですか。字の如く、家で宴会をするんですよ。あ、ホームパーティ好きなアーニャも居ますし、時間があれば今日やってみますか?」

のあ「ええ、そうして貰えると有り難いわ。アーニャ、手伝って貰えるかしら?」

アーニャ「ダー、もちろんお手伝いします。ふふ……のあさんも優しくて……私、大好きです」

P「ん、アーニャ、日本語ちょっとだけ間違えてるぞ。『のあさんも』だと、他にもいることになっちゃうからな」

アーニャ「……」ジー

P「?」

アーニャ「プロデューサーは、ずっと傍に居るのにズルイですね?」

P「えっ、何が!? 何で!?」

のあ「……アーニャ、彼に対しては考えたら負けよ。先のことだけを考えなさい」

アーニャ「ダー、そうします。それじゃあ、気を取り直して、行きましょうプロデューサー!」グイ

P「え、まだ何がズルイか分かってないぞ俺。何、気にしたら負けなのか?」

のあ「そういうことにしておきなさい。言ったでしょう、貴方はただ笑っていなさいと」

P「……ああもう、分かりましたよっ。なら、笑って今日も行こうじゃないですか!」








のあ「ふふ……それでこそ貴方よ。さぁ、急ぎましょう。今日も変わらず――」

アーニャ「Время、時間は忙しなく動いていますから。ね、プロデューサー?」








お わ り

以上になります、ここまで見て頂きありがとうございました

3月くらいに1つこちらに投下してから、次をと考えていたら7月になっていました、笑えない
他のSSでのあさんに色々とキャラが付いていたり、アーニャにボイスが付いたりと、嬉しいことだらけでCoPとして幸せです
のあさんやアーニャのSS、もっと増えてもいいのよ?

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