モバP「モバセルク~黄金時代編~」 (475)

―そのアイドルはスカウトの下
金とドリンクの混じる欲望に抱かれ生まれた


幸子「ボクが一番カワイイに決まってますよ。プロデューサーさんはそんなコトも分からなかったんですか?
   失礼ですね!いいです、許してあげます!その代わりにボクがカワイイって証明するの手伝って下さいね!」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1391937557

・モバマスキャラがベルセルクのストーリーを追っていくだけです
・バトルはご都合バトルです 物理攻撃したりしますが気にしないでください

プロ「もたもたするな、さっさと移動だ。次の現場だぞ」

幸子「す、すいません…でもちょっと時間がきつすぎですよ!」

プロ「うるさいな…文句でもあるのか?」

幸子「そ…そういうわけじゃ…」

プロ「だったらさっさと動け」

幸子「……はい…」

プロ「…ったく!誰のおかげでスケジュールが埋まってきたと思ってるんだよ?」


~♪
タン タン タン

プロ「おっと!そら!そら!」

幸子「くっ…」ゼエゼエ


プロデューサーWIN!


プロ「どうした?こんなもんか?」

幸子「ハア…ハア…」

プロ「…ったく踊りもロクにできないのか?」

トレーナー「プロデューサーさん、いくらなんでも無理ですよ…」

トレーナー「まだ幸子ちゃんは入って間もないんですよ?体力だってまだまだで…」

プロ「いつまでもほっとくわけにはいかないだろ?」

プロ「それに体力つけるためにやってるんだ、今言ったろ?まだまだだって」

トレーナー「そ…そんなこと言ってもあんまり無理をすると体壊しちゃいますよ!幸子ちゃんも何か言って…」

幸子「こ…こんなの…ボクにとっては…厳しい…うちには…入りませんよ…っ」

幸子「ふふー…んゲホッ!」

プロ「はは、強情だな」


幸子「く……!」

プロ「だめだだめだ、踏み込みが足りないんだよ!そら!」

幸子「うぐ…!」バッ

ドカッ

プロ「ぐうっ!」


DLOW!


幸子「ふふーん…」

幸子「!」ハッ

プロ「…こ」

プロ「この野郎!」

ドゴォ

幸子「うああっ!」ドサッ


プロデューサーWIN!


トレーナー「ちょっと!プ…プロデューサーさん!やりすぎですよ!」

プロ「はは…つい力が入りすぎちまった」

トレーナー「幸子ちゃん大丈夫?ゆっくり休んでね…」

プロ「……」

幸子「1・2・3!1・2・3!」

幸子「ふうー…!」ハーハー

プロ「ずいぶん朝早くからレッスンしてるんじゃないか?」

幸子「プロデューサーさん…!」

プロ「……」

プロ「…フン」

プロ「そら」

ヒョイ

幸子「?」パシ

プロ「スタドリだ…疲れたら飲んどけ」

幸子「…え?」

プロ「……」

プロ「チッ…」

スタスタ


幸子「プ…プロデューサーさん!」

プロ「!」

幸子「あの…あり…」

幸子「……ありがとうございます…」

プロ「……」

プロ「とっとと移動の仕度しろ!」

幸子「……」

幸子「……」

プシュ…

幸子「ゴクゴク…」

幸子「ふう…」

幸子「……」

幸子「ふふ…♪」

プロ「よしお前ら!イベントだ!」

プロ「報酬は早い者勝ちだ!たっぷり稼げ!」

プロ「おい幸子」

プロ「初イベだろ?しっかり頑張れよ」

幸子「……!」コクリ

プロ「よし…いけぇ!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「じゃあこれ今回の報酬ね」

幸子「ありがとうございます!」

タタッ…

幸子「プロデューサーさん!」

プロ「何だ?」

幸子「これ…ボクが貰った報酬です!褒めてもいいんですよ!」フフーン

プロ「……」ガサガサ

プロ「ほら、今回の仕事のギャラだ」

プロ「ま…しっかりやれよ」

幸子「は…はい!!」

プロ「……」ニコ

幸子「……」

幸子「ふふ…」



「なあプロデューサー」

プロ「何だ?何か用か?」

「……」

プロ「…………次の仕事が決まったぞ」

幸子「わあ!どんな仕事ですか!?」

プロ「まあ地方のラジオ番組のゲストだな…そこのレギュラーもアイドルの子だから気軽でいいぞ」

幸子「わかりました!ふふん、ボクのカワイイ顔を見せられないのが残念ですね!」

プロ「……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

―お仕事終了

「おつかれさまでしたー!」

幸子「おつかれさまでした!」

幸子「それじゃあ帰り…あれ、Pさんがいない…遅れてるんですかね?」

幸子「まったくしょうがない人ですね!まあ許してあげますよ、ボクは優しいので!」

コンコン

「幸子ちゃん、ちょっといいかな?」

幸子「はーい!なんですか?」ガチャ

「入ってもいい?」

幸子「いいですよ」

「ありがとう!…ふひひ」

バタン…カチャリ

幸子「それで、何の用事ですか?」

「うひひひ…幸子ちゃんかわいいね…」

幸子「え…」

ガバアッ

幸子「ひいっ!?」

「取って喰おうってわけじゃないよ…おとなしくしてりゃすぐすむよ!」

「ふひ…この業界にはよくあることだよ…じゅるり…一目見てから触りたかったんだ…ハアハア」

幸子「やめ…やめてください!」ジタバタ

「その顔もカワイイよ…!ん…柔らかい…♪」モミモミ

幸子「やだ!やだ!!やめて!」



「あぁー、やわらかさが、すてき♪」モミモミ

幸子「うあ…」

「小さいのも…いいよね…大きさじゃないんだよこういうのは…」モミモミ

幸子「うう…」ピクピク

「はぁーん♪満足!うひひ、またいっしょのお仕事があったらよろしくね!」ガチャ

幸子「」

バタン...


愛海「いやー一度ふれあいたいと思ってたんだ…♪私のプロデューサーもいい仕事するね!」

幸子「まさかあんな子だったなんて…残念すぎますね…黙っていればボクほどじゃないにしろカワイイのに」ハアハア

プロ「愛海ちゃんとの共演は…まあ幸子にはいい経験になるだろ……たぶん」

―――――――――――――――――――――――――

幸子(そしてボクは順調に人気を伸ばし…日に日に強く、カワイくなっていった)

幸子(そんなある日)


幸子「ユニットですか?」

プロ「ああ、お前もずいぶん頑張ってるしな」

幸子「やったあ!やっぱりボクには魅力があるんだ♪」

幸子「これからはもっと頑張りますよ!だからちゃんとボクを見ててくださいね!」

プロ「……ああ」

プロ「……」



卯月「よろしくね、幸子ちゃん!私も頑張りますっ!」

幸子「よろしくお願いします!」

幸子(そしてボクのユニットも順調に人気になっていきました)


プロ「そろそろ総選挙の時期だな…」

幸子「総選挙!これはもうボクが一番に決まってますね!」

卯月「私だって頑張るからねっ!」

プロ「おう、頑張れよ」


幸子「ちぇっ!一番じゃなかったですね…」

卯月「でもトップ5に入るなんてすごいよっ!私ももっと頑張らないとね!」

幸子「ふふーん♪卯月さんもカワイイんですから自信持っていいんですよ!ボクほどじゃないですが!」

プロ「二人とも頑張ったな…!次はもっと上を目指すんだぞ」

幸子「当然です!プロデューサーさんももっと褒めていいんですよ!」

プロ「はいはい…じゃあ今日は終わりだ、帰っていいぞ」

卯月「お疲れ様でした♪」

幸子「お疲れ様でした!」

プロ「そうだ、卯月にはちょっと話がある、残ってくれ」

卯月「あ、はい」

幸子「それじゃボクは先に帰りますね!」ガチャ


卯月「うう…あんまりいい結果じゃなくてごめんなさい…!」グス

プロ「気にするな!30位には入ってるんだから充分だろ!頑張ったな卯月」ナデナデ

卯月「えへへ…次はもっと頑張りますねっ!」

プロ「おお!期待してるぞ!」

ワイワイ キャッキャッ


幸子「……」

幸子「なんですか…ボクの方がいい結果だったのに…」

幸子「プロデューサーさんの…ばか」

幸子(それからも二人で頑張っていって…)

幸子(でもいつも人気なのはボクの方でした)

幸子(その代り…)



プロ「今日も頑張ったな卯月!」ナデナデ

卯月「えへへ!ありがとうございます!」

幸子「ボ、ボクのこともいっぱい褒めていいんですよ!」

プロ「…幸子も頑張ったな、次も頼むぞ」

プロ「じゃあ帰るか」

幸子「……」ムス

幸子「ちょっと!プロデューサーさん!!なんですかこのスカイダイビングって!!」

プロ「なんだ知らないのか?飛行機やヘリに乗って上空からダイブして…」

幸子「そんなの分かってますよ!そういう事じゃなくて!こんなのアイドルの仕事じゃなくないですか!?」

プロ「幸子はいつも天使天使って言ってるだろ?天使は空から舞い降りないといけないと思ってな」

幸子「う…うぐぐ…」

卯月「だ、大丈夫だよ…ちゃんとパラシュートもあるし…」

卯月「幸子ちゃんが空から来たらファンのみんなもきっと喜ぶと思うよ!」

幸子「…………………………うぅ」

プロ「そうか幸子、さては怖いんだな?幸子にしかできない仕事だと思ったんだがな…そんなに怖いなら」

幸子「こ…怖いわけじゃありませんよ!!!」

幸子「そんなに言うなら分かりました!やってやりますよ!か、寛大な心に感謝して下さい!」

プロ「よし頼んだぞ!それで、卯月の仕事は…」

卯月「わあ!かわいい衣装ですね!えへへ♪」

幸子(ボクも普通にカワイイお仕事の方がよかったな…)ガクブル

プロ「卯月、今日のレッスンは俺がしてやろう」

卯月「プロデューサーさんですか?お願いします♪」

幸子「ボクも頑張りますよ!」

プロ「あー、お前はトレーナーさんに頼んであるぞ」

幸子「えっ?」

プロ「お前は人気だからレベルの高いレッスンを受けないとな」

幸子「そ…そうですね!ボクは人気者ですからね!」

幸子「じゃあ二人とも頑張ってくださいね!」

卯月「幸子ちゃんもねー♪」


幸子「……」チラ


プロ「卯月、ここはこうだ!」

卯月「は…はい!」ハアハア


幸子「ボクも一緒にやりたかったのに…」

プロ「よし卯月!飯でも食いに行くか!」

卯月「はい!幸子ちゃんも一緒にいこ♪」

プロ「幸子はまだレッスンがあるからダメだ」

卯月「えっ…」

プロ「まあサボってまで食いたいってんなら別にいいけどな」

卯月「プ…プロデューサーさん…」

幸子「……」

幸子「ボクはいいです、お弁当がありますから…」

幸子「それに今日レッスンを入れたのはボクですよ?サボるわけないじゃないですか」

卯月「幸子ちゃん…」

プロ「ほら行くぞ、卯月」

卯月「ごめんね?それじゃ…頑張ってね」

幸子「ふふん!まかせといてください!」


バタン...


幸子「……」ギリ...

幸子「なんですか…!いつも卯月さんのことばかり…!」

幸子(そしてある日のこと)



プロ「幸子、今日はお前にプレゼントがあるんだ」

幸子「え…?」

幸子「プ…プレゼント!?ふ…ふふーん、貰ってあげますよ!」

プロ「幸子は最近頑張っていたからな…ほら、これ」

幸子「これは…腕時計ですね」

プロ「おー、似合ってるぞ」

幸子「そうでしょうね!ボクには何でも似合ってしまうんです♪カワイイですよね?」

プロ「ああ…かわいいかわいい」

幸子「…ふふ♪」

プロ「そうだ、一ついいか」

幸子「はい♪なんでしょうか?」

プロ「俺はお前のプロデューサーだ…」

プロ「だからそれが俺から貰ったものだってことは絶対他の人には言わないでほしいんだ」

幸子「なんでですか?」

プロ「プロデューサーが担当アイドルに贈り物なんて、週刊誌やネットであらぬ噂をかけられるからな」

幸子「…まあそうです…ね」

プロ「うちの仲間のアイドルにも言うなよ?それはそれで何言われるかわからんからな」

プロ「いいか?絶対誰にも言うなよ」

幸子「わかりました…じゃあこれは二人だけの秘密ですね!」

プロ「ああ…その言葉、信じてるぞ…『二人だけの秘密』だ」

幸子(ふふーん♪ようやくプロデューサーさんもボクのことを認めてくれたんですね!)

幸子(二人だけの秘密…ふふ…♪)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

プロ「次の仕事は765の先輩との共演だ、頑張ってこいよ」

幸子「言われなくてもわかってますよ♪」

幸子「この時計はつけていっちゃいますね!ふふーん♪」

プロ「ああ…しっかりな」


プロ「……」



オツカレサマデシター

幸子「今日のボクもかわいかったですね!ふふーん!」

幸子「プロデューサーさんからプレゼントももらっちゃって…♪」

幸子「でもちょっと目立つんですかね?響さんがずっとちらちら見てたような気が…」

コンコン

「幸子ー、ちょっといいかー?」

幸子「はーい!どうぞ!」

響「お疲れさまだぞ、幸子!」

幸子「ありがとうございます!響さんもお疲れ様でした!」

響「いっつもカワイイカワイイ言ってるだけあってカワイかったさー♪」

幸子「響さんだってカワイイですよ!ボクには及びませんけど!」

響「あはは、威勢いいなー!」

幸子「なんたってボクが一番ですからね!」

幸子「それで…何かご用ですか?」

響「ちょっと幸子のその時計、見せてほしいと思ってな」

幸子「時計ですか?もちろんいいですよ」カチャ

幸子(この時計が欲しいんですかね?さっきも見てたし)

響「……」ジー

幸子「ふふん、カワイイでしょう?ボクにぴったりの時計ですよね!」

響「うん…かわいいな…」

幸子「響さんにもわかりますか!さすがですね!」

響「……」

響「……」

響「…幸子」

幸子「なんですか?」

響「この時計ってどうしたんだ?」

幸子「その時計?それはですね…ボクのプ…」ハッ


『絶対誰にも言うなよ』


響「?」

幸子「…ボクへのプレゼントとして買ったんです!自分用として!」

響「買った…そっか」

響「いつ買ったんだ?」

幸子「3日前ですが…」

響「幸子、これいくらした?」

幸子「えっ?」

響「だいたいでいいぞ、いくらぐらいで買ったんだ?」

幸子「え…っと…」

幸子「お…覚えてない…です」

響「じゃあどこのお店で買ったのか教えてくれるか?」

幸子「あ…あの…それもよく…」

響「そっか」

幸子(な…なんでこんなこと…?)

響「……」

響「幸子、実はな」

響「これと同じ腕時計…自分も持ってたんだ」

幸子「あ、そうなんですか?センスがあってるんですね!」

響「でももう今は無いんだ…」

幸子「ない?」

響「うん…なくしちゃってな…」

響「……3日前、に」

幸子「っ!」

幸子「……なくした…そうですか…残念でしたね…」

響「荷物を置いてたらどっか行っちゃてな…本当残念さー」

幸子(もしかして…盗んだって思われてるの…?)

幸子「落し物の所にあったりするかもしれませんよ?探しに行きましょうか?」

響「そういう所は全部探したさー…誰かがひろって持ってっちゃったのかもしれないぞ…」

幸子「……」

幸子「あの…」

響「幸子」

幸子「は、はい」ビク

響「さっき幸子は3日前に買ったって言ってたな?」

幸子「は…はい」

響「実はな、この時計はもう製造終了してるんだ」

幸子「!!」

幸子「せ…製造終了…」

響「そうだぞ…だから買うことはできないはずさー」

幸子(そういえばこれ…箱には入っていたけど外箱だけで…説明書とかも…)

幸子「……」

響「自分が無くしたのが3日前、幸子が買ったのも3日前」

響「でももうこれを売ってるお店はないんだ…」

幸子(で…でも…でもこれは…プロデューサーさんがボクのために…)

幸子(ボクの…ために…)

幸子(ボクの…)

幸子「う……!」

響「……」

響「…なあ幸子」

響「自分は別に怒ってるわけじゃないし…盗んだと思ってるわけでもないぞ」

響「ただ…本当のことを言ってほしいだけさー…」

響「拾ったけど欲しくなったから…って事ならそれでいいからさ…」

響「本当のことを言ってくれれば…」

幸子「……ううぅ…!」ポロ

響「…幸子……」

幸子「うあぁぁ……!」ポロポロ

響「……本当か?」

幸子「うぐっ…ひっく…はい゙…」

響「そっか…幸子のプロデューサーが…」

響「……」

幸子「グスッ…あの…許してくれるんです…か……?」

響「許すも何も幸子は何もしてないだろ?当然さー」

幸子「その…ボクのことじゃなく…プロデューサーさんのことです」

響「あーそっちか…それは…」

幸子「……」

響「それは…ダメかな」

幸子「なっ…!」

幸子「ご…ごめんなさい…!ボクも謝ります!ちゃんとプロデューサーさんにも謝罪に行かせますから!」

幸子「響さんの時計を盗んだなんてひどい事ですけど…!でも…!どうにか…!」

響「別に自分の時計を盗んだことを言っているわけじゃないぞ」

幸子「え…?」

響「そりゃもちろん盗まれて気分いいわけないさー」

響「当然怒ってないわけじゃないけど…でも絶対に許されないようなことじゃないとは思うぞ」

幸子「な…なら…」

響「いいか幸子…自分が本当に怒っていることは…」

響「その時計が自分の物だと知っていてそれを幸子にプレゼントしたことだぞ」

幸子「そ…そんな…プロデューサーさんはきっとこれが響さんのだって知らなくて…それで…!」

響「そんなはずないだろ!だったらこんなタイミングよく一緒に仕事なんかするわけない」

響「だいたいその時計は自分のお気に入りさー、時々仕事で会う人がわからないはずがないぞ」

響「それに知らなかったとしてもそんなのプレゼントとして渡すわけないだろ?」

幸子「う……」

響「それを知っててなんで幸子にプレゼントしたと思う?」

幸子「そ…れは…」

響「それは幸子が時計を盗んだことにしたかったからさー」

幸子「な…なんで…」

響「自分はそれが許せない…担当のアイドルを裏切るなんて…絶対に許せないぞ」

響「どんな理由なのかは知らないけど…こんなことをするなんて…」

響「そんな奴ほっといたら幸子にも、ほかの仲間にもまた何かするに決まってる」

幸子「プ…プロデューサー…さん…が…ボクを…」

幸子(どうして……!?)

響「幸子にはつらいかもしれないけど…これはちゃんと報告させてもらうぞ…ごめんな」

幸子「……!」ギリ

―――――――――――――――――――――――――

ダダダダ…

バアンッ


幸子「ハア…ハア…」

プロ「!」

プロ「よう幸子」ガサガサ

幸子「プロデューサー…さん…」

プロ「もうプロデューサーじゃねえよ、首になったからな」ガサガサ

プロ「今荷物まとめてるところだ、終わったらここを出ていく」

プロ「そしたらもう二度と会うことはないだろうな」

幸子「プロデューサーさん…」

プロ「絶対誰にも言うな、二人だけの秘密だ、って言ったんだけどな?」

プロ「お前を信じてたんだけどなァ、誰にも…響ちゃんにも言わないって」

幸子「そ…そんなの…」

幸子「そんなの…」

幸子「……」

プロ「……」

プロ「迂闊だったぜ俺としたことが…」

プロ「お前をここにスカウトしたおかげでこの有り様だ」

プロ「顔はカワイイからスカウトしたが凄い性格でびっくりしたよ」

プロ「すぐにやめると思ったんだがなァ…あんな傲慢なお嬢様みたいなキャラ…」

プロ「だがどうだ?やめることになったのはお前を拾った俺自身…シャレにもなりゃしねぇ…!」

幸子「プロデューサーさん…ボクは…!」

プロ「わかってるからわざわざここに来たんだろうけど…」

プロ「あの時計を盗ったのは…俺だ」

プロ「もちろんあれが響ちゃんのだってわかっててお前にやったんだ」

幸子(…嘘だ…)

幸子「…………どうして…?」

プロ「どうして?うっとうしかったからだよ…お前が!」

プロ「お前が犬っころみたいに懐いてくるのがな!」

プロ「わかってたろ?俺は卯月が一番気に入ってたことを…」

プロ「だがあいつには個性が足りない…だからお前とユニットを組ませた」

プロ「そうすりゃ全体としての個性は出るから目立つことができ、王道キャラだ…きっと人気になれる…」

プロ「そう思って、お前を『引き立て役として』組ませたんだよ」

プロ「だけどお前のそのキャラは…自分のことばかり考えてるキャラが…」

プロ「なぜかしらんが随分人気になっちまったからな…」

プロ「結局のところむしろお前だけが人気になっただけだ…ふざけやがって」

プロ「あの時計は響ちゃんのお気に入り」

プロ「仕事中はあまりつけてはいないがファンなら大体は知っていることだ…」

プロ「その時計がなくなって、お前がつけていたらどうなると思う?」

プロ「少なくともネットなんかじゃお前が盗んだんじゃないか?って話になるだろう…」

プロ「そうなるとお前の評判は落ちるがまたお前たちのユニットにも注目は来るだろう」

プロ「炎上商法って奴だな…だが事の発端はお前だ、今度こそはきっと卯月が…」

幸子「……!」ガクガク

幸子(……)

幸子(どうして……?)

幸子(どうして!?)ギリ

幸子「…う」

幸子「うう…」

幸子「うあああっ!!」

バチイィンッ

プロ「っ…」ツゥ...

幸子「えぐっ…ひっく…」ポロポロ

プロ「……」ゴシ

プロ「…満足したか?」

幸子「……っ!」

ダッ

プロ「……」

プロ「じゃあな…幸子」

幸子「うぐっ…ぐす…うあああ…!」ポロポロ

幸子(どうして…)グス...

幸子(どうしてこんな…!!)ヒック...

幸子(……)

幸子(どうするっていうんですか…?)

幸子(このままやめちゃえば楽なのに…何もありはしないのに…)

幸子(いやなことだけじゃないですか…)

幸子(何処へ…?)

幸子「うぅ…………!」


『頑張れよ』


幸子「……プロデューサー…さん…」


『しっかりな』


幸子「……」



幸子(プロデューサーさん…)








『君、俺と一緒にアイドルを目指してみないか?』

『ボクがカワイイって証明するの手伝って下さいね!』

『ああもちろんだ!君がトップアイドルになれる日を楽しみにしているぞ!』

続編なら過去作の紹介もしてもらえると嬉しいなー

輿水幸子(14)
http://i.imgur.com/fip3Bqz.jpg
http://i.imgur.com/L15hPFj.jpg

島村卯月(17)
http://i.imgur.com/FhJpZOP.jpg
http://i.imgur.com/Y7qwk16.jpg

我那覇響(16)
http://i.imgur.com/ZgM47zP.jpg
http://i.imgur.com/tj1dQGT.jpg

>>28
以前立てましたが途中で落ちただけで内容は同じです

>>29
画像ありがとうございます

――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――

――――――――――――――――



ワアアアア
「対決キタ―(゚∀゚)―!」「ライブで対決!」「ガンバレ!」


笑美「ひゃっふー!!ほないっくでー!!!」


「難波笑美だ!」

「『浪速の派手娘』の難波笑美…!」


笑美「あんたら遠慮はいらんで! ウチはひな人形みたく、おとなしくしてへん。かかってきいや!」


ザワザワ
「今回は誰が行くんでしょうかね?」

ザッ

幸子「……」

「お…!?」


幸子「……」


「誰だ?」「ソロ活動の子みたいだな」


笑美「お、あんたもアイドルなん?ウチとLIVE対決してくれへん?かっこええとこ、見せてーや!」

幸子「こんなにカワイイアイドルのボクに挑もうなんて…ヒドいことを考えますね!ま、ボクが一番ですけど♪」

笑美 「挑んできたのはあんたやろ!
    まあ売られたケンカは買わな失礼やもんなー!よっしゃよっしゃLIVEで対決しよか!」

幸子「ボクとLIVEで対決ですね!ま、カワイイ方が勝つと思いますよ!」

笑美「ほな、いくでー!」

幸子「負けるわけありませんよ!」


幸子WIN!


笑美「ええやんええやん! あんがとなっ、楽しかったで!」

幸子「ボクのカワイさにやられましたね。そのままボクに見とれてて下さい!フフーン♪」

「へえ、ソロなのに凄い子もいるものですね…」

「あなたとどっちが凄いでしょうか?」

「きっと次元が違いますよぉ…ねぇPさん♪」

「このイベントももう終わりだね…そろそろ移動しよう…」




幸子「……」

「じゃあ今回の給料と勝利報酬ね」

「しかし大したものだね…君みたいな若い子があの笑美ちゃんを…正直驚いたよ」

「どうだい?君、うちに正式に勤めてみないか?
 悪いようにはしない、給料も今までの何倍にもなるしなんならすぐユニット組んであげても…」

「君みたいなソロ活動の子にはまたとない話だろう?どうだい?」

幸子「……」スッ

幸子「イベントは今日までですよね?この辺にはイベントはもうなさそうですし」

「あ…いや、ちょっと…」アセアセ

「なにもソロを続けなくても…!仕事も給料も保証するよ!?なんならうちのメインアイドルとして…」

幸子「ほっといてください!!」

「うおっ…」

幸子「ボクに…なれなれしくしないでください」

「……」

幸子「……」

幸子「フンッ!」

「な…なんだ全く!仕事がなくなっても知らないからな!」

幸子「……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「あっ!」

「ねぇ誰か来るよ」


幸子「……」スタスタ


「あ!あれは昨日笑美ちゃんに勝った子だね」

「きっとお金も衣装もいっぱい持ってるにゃ…どうするPチャン?」

P「…好きにしな」

みく「よし行ってくるにゃ!」

クス…

みく「なーにまゆチャン?」

まゆ「みくちゃんじゃあの子に勝てませんよ…?」

みく「まあ、まっかせっにゃさぁ~い!!」

智絵里「みくちゃんったら…いいんですか…?ほっといて…」

P「……」

幸子「……」


幸子「ん!」

みく「にゃははは!みくとLIVEで対決するにゃ!」

幸子「な、なんですか急に…」

幸子「うーん、ボクみたいなカワイイアイドルに挑んでくる人がいたんですね…まったく、ひどい人ですね!」

みく「負けないにゃ!『おねだり Shall We~?』ッ!」


いたずら目してThank you
鈴が響いてBye-bye
街灯に照らされ また明日
…な~んて甘い
子猫じゃないのよ にゃお!

触れてよ ね~え
やさしく ね~え
指絡めて 背伸びをして
瞳閉じて Silence



幸子「勝つに決まってますよ!『To my daring…』!」


月曜日 おんなじ通りの朝7時
「おはよう」って鏡に向かって ごあいさつ
少しハネてる寝癖のあともチャームポイントなの
カワイイですよね?

通学路 定刻通りの朝8時
「おはよう」ってあなたに向かって 言えなくて
遠目で見てるあなたの背中 いつもの笑顔見せて
今はただそれが ほしいから


幸子WIN!


みく「みくの実力はこんなじゃない!きっと証明して見せるにゃあ!」



まゆ「もう…やっぱり…」

P「まゆ…お前行ってやれ」

まゆ「え…どうしてですかぁ?みくちゃんが勝手に…」

P「……」ジー

まゆ「…解りましたよぉ…」スタスタ

幸子「!」

みく「まゆチャン!」

まゆ「Pさんが行けっていうもんですから…」

幸子「ボクのファンなんですか?ボクはカワイイからしょうがないですね。少しだけ遊んであげます!」

まゆ「うふふ!行きますよ!『エヴリデイドリーム』!」


大好きだよ ささやいてよ ほっぺたが真っ赤
きっと何回言われても足りないよ

大好きだよ あなただけよ この恋は真っ赤
赤い薬指の糸は永遠 エヴリデイドリーム♪



幸子「こっちも行きます!」


私だけの あなたへ step up!いつも 見ているわ
言葉だけじゃ たぶん 伝えきれないから
あなただけの 私をpop up!トクベツにあげる
だから oh my…Darling☆Darling☆I love you…


幸子WIN!


まゆ「……」

まゆ「負けちゃった…」

まゆ「負けたら…褒めてもらえない…負けたら…」ブツブツ

幸子「……」

幸子(ちょっと怖い…)

ザッ

幸子「!」


P「……」

幸子「何度も何度もなんなんですか!いくら優しいボクでもいい加減あきれちゃいますね!」

まゆ「Pさん!」

幸子(P…?)

みく「にゃはは!これで終わりにゃ!」

幸子「ん?…まったく。いいですか、覚えておいてください…」

幸子「ボクの前に立つのはダメなんですよ!」ドヤァ

幸子「あしらってあげますよ!」

P「……」


P「抱きしめたい貴女を 心も身体も…」

幸子「!?」

ズンズンチャチャチャ…

P「冷たい夜空 無数に輝く星♪
  今夜幾つ星座に変わる…
  震える心 北風が吹き抜けていく♪
  ひとり歩く銀世界 眩しすぎる光♪」

幸子「ちょ、えっ!?」

P「今貴女は誰と~
  暖め合うんだろう…
  悴んだ 指先に
  雪が優しく堕ちる~♪」

P「抱きしめたい貴女を 心も身体も~」

P「溶け合って結ばれてCrystal Dust♪
  暖め合おう このまま真冬の所為にして♪」

P「さあ傍においで 近く深く♪
  こよなく貴女とCrystal Dust~♪」


幸子「」



PのWIN!

幸子「……」

幸子「……」

幸子「…あなたに花を持たせてやるボクって本当に優しいですね!」


「やった!」「さすがPさん!」

「歌もダンスもすごいキレです!」


幸子「……」

幸子「」ドサッ

まゆ「あら…体力が切れちゃったみたいですねぇ…」


――――――――――――――――――――――――――――

バシャ

幸子(……)

幸子(…女の子?)

まゆ「なんでまゆがこんなこと…」ブツブツ

幸子(あ…濡れタオル…)ヒンヤリ

幸子(……)スゥ…

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

幸子「……」

幸子「うーん…」ムクリ

幸子「…ここは?」

ザワザワ
ワイワイ

幸子(女の子たち…?)

幸子「!」

幸子「あれは…」


まゆ「~~!」プンプン

P「~~」

まゆ「……」


スタスタ

ザ…

まゆ「……」

幸子(確か昨日の…)

デコピンッ

幸子「フギャッ!?」

まゆ「ふんっ!」スタスタ

幸子「このかわいいボクに何するんですか!」

智絵里「あはは…ご、ごめんね…昨日負けたのが結構ショックみたいで…」

智絵里「でも、普段はいい子なんだよ…?」

智絵里「昨日…あなたのこと看病してあげたのもまゆちゃんだから…あとでお礼言っておいてね」

幸子「ムー…」


P「あはは、今ので目が覚めたかな?」

ザ…

P「…オレはプロデューサー」

P「君、名前は?」

幸子「……輿水幸子、です」

P「一緒に来てくれないか?」


まゆ「!」

まゆ(Pさん…?)


みく「Pチャンはあの子をどうするつもりなのかにゃあ?」

杏「仲間にするつもりじゃないの?」

杏「結構あの子強かったじゃん?仲間にすればきっと戦力になるよ」

みく「確かにそうにゃ」

杏「……あの子が入ればもう杏は働かなくて大丈夫だね!今まで応援ありがとう!」

みく「ふざけたこと言わないでお仕事してよ杏チャン!」

かな子「……」

幸子「なんなんですか?この人たちは…」

P「……」

P「アイドル事務所…『鷹の団』」

幸子(鷹の団!)

P「知ってるのか?」

幸子「噂だけなら…」

幸子(鷹の団…いろんなイベントで結構いい成績をとるとか聞いたことがあります)



P「フー…いい眺めだな」

幸子「…なぜです?」

幸子「なぜ昨日ボクを助けたんですか?」

幸子「ほっとけばいいじゃないですか、ライブバトルした相手のことなんて」


まゆ「……」ジー


P「……」

P「君が欲しいと思ったからさ…幸子」

P「こないだ、俺たちもあのイベントに居たんだ」

P「君と笑美ちゃんのライブバトル拝見させてもらったよ…見事だった」

P「…だが 危なかったな」

幸子「!」

P「笑美ちゃんの守備コストが無くなってなかったら負けたのは君のほうだったはずだ」

幸子「…でしょうね」

P「正直だなァ」

P「君の戦い方はまるで…自分の命を試しているかに見える」

P「どんな相手にも一歩も引かない…逆に自分からがむしゃらに突っ込んでいく 確かに勇ましいが…」

P「オレには…わざわざ自分の身を敗北の危機にさらして」

P「逆にそこから勝利を拾おうとあがいている…そんな風に感じたよ」

P「…君は面白い」

P「オレは君が気に入った」

P「一目見てティンと来た」

幸子「……」

P「君がほしいんだ…」


P「幸子」


幸子(…なんですかこの人!?人のことをずけずけと…)ムカッ

幸子「いやだ…と言ったら?」

P「いやかい?」

幸子「ええ!おっことわりですね!!」

幸子「…知った風なことを言って…」

幸子「あなたに何がわかるんですか!口をきいたこともないあなたにボクの何が!?」

P「解りはしない…ただそう感じただけさ」

幸子「…気に入りませんね!」

幸子「勝手に攻撃してきたくせに馴れ馴れしいんですよ!」

幸子「…ボクとあなたは…敵同士なんです」

P「どうするつもりだい?」

幸子「簡単です…ライブでケリをつけます!」

幸子「ボクが勝ったらあなたたちのお金も衣装も全部奪ってやりますよ!」

P「……オレが勝ったら?」

幸子「仲間にするなり何かを奪うなり好きにしてください!」

幸子「昨日はまさかアイドルでもない男性があんなにうまく歌えると
   思ってなかったので驚いてしまいましたけど…今回はそうはいきませんよ」

幸子「まあ本気でやったらこのカワイイボクが負けるはずありませんからね!」


P「解った」

P「力ずくっていうのも…」


P「嫌いじゃない」

ス…


まゆ「Pさん!」

P「手を出すなまゆ」

まゆ「でもぉ…」

P「オレは欲しいものは絶対手に入れる」

幸子(その人を小馬鹿にした態度が…気に入らないんです!)

P「日を改めてもいいんだぞ?まだスタミナも攻コスも全快してないだろ」

幸子「ほっといてください!」

幸子「覚悟してくださいね…ボクの本気を見せてあげます!」



授業中 手紙を書いてる 午後1時
少しだけ隣のあなたが 気になるの
横目で見てるあなたの顔は だれより 魅力的で
渡せない 手紙 抱きしめる

どんなときも あなたをcheck up!あきらめないのよ
私だけを むいてくれるその日までは
背の高い あなたへjump up!届け この想い
だから oh i…miss you★miss you★Everyday…


幸子「ハアハア…」

幸子「ど…どうでした…?」

「すごーい!」「歌も上手だね!」

幸子「ふふーん!ボクはカワイイし歌も上手だし完璧なんです!」ドヤア

P「それじゃあ…オレの番だな」

P「こっちも少し…本気を出してやろう」



BANG×BANG BIG BANG!!心は BIG BANG!!
夢と現実をぶつけて BOMBER!!
さあ叶えてみようぜ ROCKET DASH 極上の PEACE
BANG×BANG BIG BANG!!BARI×BARI BIG BANG!!
やるなら思いっきり ENJOY FEVER
願ってるだけじゃ進まないぞ
EVERYBODY ACTION START
FIRE!! FIRE GO!!
BIG BANG!!


幸子「うぐっ!」

幸子(う…す…すごい!)


Pさんの大勝利~!


「やった!」「さすがPさん!」


まゆ「むっ……」

P「……」

幸子「う…」ヨロ...

ス…

P「これで君はオレのものだ」

幸子「……」

「ということは?」ワイワイ

P「今からこの子は鷹の団の一員だ」

ワアアアアア


まゆ「……」

まゆ(言ったことない…)

まゆ(Pさんは誰にもあんなこと)


『君が欲しいんだ』


まゆ(言ったことありません!)ギリ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

P「次のイベントはあのステージだ」

P「オレたちは相手ユニットにダメージを与え…」

P「それが終わったら一目散だ」

P「今回の殿は…幸子」

P「お前にやってもらう」

幸子「!」

まゆ「…!」

ザワザワ

P「骨の折れる仕事だ…敵を牽制して味方の逃走を助けるんだ」

P「ステージは一本道とはいえ相手は気力数百万以上…負ける可能性も高い」

幸子「……」

P「やれるか?」

幸子「命令ですよね?」

P「…そうだ」

ザワザワ
「いきなりすごい役だね」「あの子がどのくらいか試すつもりなのかな」

まゆ(違いますね…)

まゆ(大変とはいえこんな重要な役目…あの子を試すためだけにやらせたりはしません)

まゆ(Pさんは…幸子ちゃんを信頼しているんですね…)

愛梨「ドイツでは、ウサギは幸運の卵を運んでくるんですって。
   少し派手ですけど、私たちもその役目!」


DLOW!


愛梨「私も思いっきり飛んでみます! ぴょーん♪ …あ」


P「よしみんな、逃げるぞ!」

幸子(ここからがボクの役目ですね!)


美嘉「マジメなのは、おもしろくないなー★アタシたちといっしょに楽しくなろーよ!」

幸子「ボクが負けるワケないです!」


幸子WIN!


美嘉「やばっ、本気にさせると、こんなにスゴいの!? もってかれた~!」


夏美「年甲斐もなくはしゃいじゃってるかな?でもLIVEが楽しくてね♪全力で行くよ!」

幸子「ボクが一番カワイイに決まってますよ!」


幸子WIN!


夏美「可愛い感じは似合わなかったかな…?今度はセクシーに攻めるよ♪」


幸子(さあ…もっとかかってきてください!)

「おお!大戦果だ!みごとだPくん!」

「これで勝つのが楽に…あら?」

ス…

P「……」

まゆ「! Pさん?」

P「こっちのダメージは?」

「大したことないよ!あの新人の子結構強いね!」

「殿が頑張ってるおかげで相手はなかなかこっちに噛みつけないみたい」

「一本道とはいえ一度に何人も相手に…大したもんだね!」

P「幸子は?」

「さあ…負けてなければいいんだけど」

P「……」

まゆ「……」

真尋「ドイツでは大きな陸上の大会が何度も開催されてるんだよね。自分もガッツでは選手に負けないよ!」

真尋「歌で金メダルッ!」

幸子「くっ…」


幸子WIN!


真尋「やりきったから悔いなしっ。でもやっぱりメダルがほしかったな!」

幸子「危なかった…」

幸子(そろそろ潮時ですね!)ダッ


麻理菜「はぁい♪ちょっとクラシックな雰囲気だけど、
    ここでお姉さんたちが空気をやわらげてあげようかな」

麻理菜「薄着でアクティブにね!」

ドゴォ

幸子「うわっ!」

幸子(まずい!このままじゃ…)

幸子(!)

幸子(Pさんたち!?)

P「行くぞ!」バッ

幸子「…!」ガシッ

幸子「どうして戻ってきたんですか!?」

P「話は後だ!」

麻理菜「ここで決めなきゃ女が廃る!」

麻理菜「むっ!」

かな子「私に任せてください!」

かな子「グリム童話のお菓子の家みたいに、カラフルなLIVEをしたいですね。私たちなら届けられますよね♪」


かな子「『ショコラ・ティアラ』ッ!」

お手本よりたくさん イチゴのせたショートケーキ
こんな風にきっと なりたかった

だから 今 この気持ち
そっと 奏でてみよう
胸の鍵を 開けて

夢のティアラ 変われるかな
いくつもの花が咲くような
虹のショコラ しあわせから
ドキドキに変わってく


かな子WIN!


麻理菜「やられちゃったわね。この衣装はさすがに攻めすぎだったかな…」

ワアアアア…

ワイワイ
ガヤガヤ

P「……」ニコッ

幸子「……」


まゆ「……」ジー


「まったく…たかだかイベントが一度成功したくらいで浮かれやがって」

「まあしかたないさ…今回の成果は確かに大きい…そうそう邪険にはできないさ」

「しかし…恐ろしい男だなあれは」

「今回の作戦もすべてあいつが取り仕切った物」

「あの若さで無課金だというのにアイドルの親愛度の高さといい…末恐ろしい」


「それにしてもあの子結構やるね!」

「さすがPさんが見込んだだけはあります!」

P「……」

幸子「……」

智絵里「あ!いたいた」

智絵里「何やってるの…?こんなところで…夕涼み?」

智絵里「こっちへおいでよ、一緒に楽しもうっ」

幸子「…ボクはいいです」

杏「幸子、結構スゴイじゃん!」

杏「君がいれば杏は安心して引退できるよ…あとはまk

かな子「だめですよ杏ちゃん!もう…」

智絵里「わたし…智絵里、よろしくね!」

智絵里「一緒に来てよ、主役がいないと…盛り上がらないから…」

幸子「何ですかそれ…」

智絵里「今夜のパーティーは…幸子ちゃんのお祝いも兼ねてるんだ…」

智絵里「だから…一緒に…ね?」

幸子「別に頼んではいないですが…そうですね!」

幸子「やっぱり一番カワイイボクがいないと始まりませんよね!」

かな子「それじゃあ行きましょう!」グイッ

幸子「あっ、ちょっと引っ張らないで…」

かな子「私はかな子です、よろしくお願いします!」

かな子「それじゃジュース飲んで!」ズイッ

幸子「……」グイッ

ワイワイ

みく「みくはみくにゃ!これからよろしくね!」

幸子「……」チラ

P「……」ニコッ


まゆ「……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―翌朝7時


幸子「……」

智絵里「あ…早起きだね…」

智絵里「どうかな…ここ?」

幸子「どうって?」

智絵里「やって…いけそう?」

幸子「……」

幸子「わかりませんよ、そんなこと」

幸子「…ここは変わってますね」

幸子「アイドルと言ったらどこも大差ない…
   ちょっとかわいいだけでみんな同じような、大した特徴のない集団というイメージですが…」

幸子「…ここは…なにか…というかもの凄く違います」

智絵里「へえ…そんなものかな…」

智絵里「確かにアイドルとしては少しバラエティに豊んでるね…」

智絵里「お医者さんでしょ
     幼稚園の先生でしょ
     ギャンブラーでしょ
     巫女さんでしょ
     ボーイッシュな子でしょ
     宇宙人でしょ
     ギャルの子や…
     探偵アイドルまでいろんな子がいるね…えへへ!」

智絵里「でも…しいて言えばPさんかな?やっぱり…」

智絵里「Pさんが大好きな子…Pさんと一緒なら有名になれそうだと思った子…」

智絵里「とにかく…ここのみんなはPさんに惹かれて集まったんだ…」

智絵里「わたし達だって…一人一人なら大したことないよ…逆に個性ありすぎだもん…」

智絵里「ただ…他の事務所とは違うんだ…」

智絵里「ここでは…衣装取ったり取られたり…毎日いろいろやりながら…」

智絵里「泣いたり、笑ったり、怒ったりできるんだっ」

幸子「……」

幸子「Pさんって…どんな人なんですか?」

智絵里「えっと…よく…わかんないかな…」

幸子「…彼に惹かれて集まったって…」

智絵里「あはは…えっとね」

智絵里「なんていうかね…何か悟ってるみたいだと思ったらまるで子供みたいだったり…」

智絵里「背筋も凍るような冷たい目をしたと思ったら赤ちゃんみたいに無邪気に笑ったり…」

智絵里「子供なのか大人なのか…『よくわからない』人だよ」

智絵里「ただ…Pさんはわたし達とは違う…」

智絵里「わたし達が憧れるだけの夢物語みたいなことを…Pさんは当たり前のように実行しちゃうんだっ」

幸子「……」

智絵里「うまく言えないけど…歌や踊りだけじゃなくて」

智絵里「Pさんには私たちにはわからない…もしかしたら一生かかっても手に入らない…」

智絵里「確信みたいなものを持ってるんじゃないかな…きっと」

幸子(確信…)

幸子「何の…?」

智絵里「いろんなことの…ね」

智絵里「いい人だとか…悪い人だとか…」

智絵里「その人のことを…よく知ってる知らないじゃなくてさ…」

智絵里「人が集まるってことは…そういうものなんじゃないかな…」

「幸子ちゃーん!Pさんが呼んでるよ!」

幸子「それじゃあ…」

智絵里「幸子ちゃん!」

智絵里「ここならきっと見つかるよ…あなたにも、居場所が」

バシャア

幸子「!」

バシャア

幸子(水浴びしてる…)

P「フウ…」

幸子「…//」

P「よお!」

P「どうだお前も?目覚ましにはこれが一番だぞ」

幸子「ボクはいいです!」

P「まーそう言わずに…」スタスタ

幸子「わー!やめてください!子供じゃあるまいし…フギャー!」

バシャアァ

幸子「ガボゴボガボゴボボ!」

幸子「ハ…クシュン!な、なんですか!」

P「ハハハ!変な顔!」

幸子「……」ガシッ

バシャア

P「わち!甘い!」ヒュッ

ザバッ

P「ブハッ」

幸子「ふふーん!」

P「……」

幸子「こ、こんなびしょ濡れになってもカワイイボクってやっぱりスゴイですね!
   でもさすがにもっとボクを大事に…ってまた水!?フギャー!」ザバア

幸子「……」

ガシッ

ガシッ

バシャア

ザバッ


智絵里「……」

智絵里(元気だなあ…朝早くから)



ザ…ガラガラ…

幸子「」ゼーゼー

P「」ハーハー

P「朝からいい運動になった…」フー

ザバッ

P「わっぷ」

P「幸子…おまえ!」ケホ

幸子「これでおあいこです」

P「…あ」

P「プ…」

P「ハハハハ!」

P「わかった参ったよ!つくづく強情なんだなおまえ…」

幸子(ん?)

幸子「……」

P「? なんだ?」

幸子「変わった首飾りですね…」

P「これか…」

P「昔、とある事務所の事務員さんからもらったんだ」

P「ベヘリット…別名『覇王の卵』とかいって…」

P「なんでもこれを持つ者は、自分の血と肉と引き換えに世界を手に入れる運命なんだってさ」

幸子「世界を…?」

P「いーだろ?」ニヤニヤ

幸子「」

幸子(ほんとによくわからない人です…ただの子供みたい)

幸子「…まだ答えを聞いてませんでしたね」

P「ん?」

幸子「さっきのライブ…どうしてボクを助けに戻ったんです?」

P「……」

P「せっかく手に入れた優秀な子をあんなケチなイベントでなくしたくないからな」

幸子「……」

P「人間ってのは…みんな大きな流れに身を任せているだけだ、運命とかなんとか言うやつに…」

P「そしてみんな消えて行くのさ…命を使い果たして…自分が何者なのかさえ知ることもなく」

幸子「……」

P「この世には人の定めた属性や課金とは関係なく世界を動かす鍵として生まれついた人間がいる」

P「それこそが宇宙の黄金律が定めた真の特権階級…」

P「神の権力を持ち得たものだ!」

P「……オレは知りたい!この世界においてオレはなんなのか」

P「何者で何ができ…何をするべく定められているのか」

幸子「……」

P「…不思議だな……」

P「こんなこと話すのはお前が初めてだよ」ニコ...

P「幸子…お前はオレについて来い…」

P「今はほんの一歩に過ぎない 鷹の団も、イベントでのいくつかの勝利も」

P「ほんの手始め ほんの始まりさ」

P「面白いのはこれからだ…命を懸けるほどにな」


P「オレはオレの国を手に入れる」

P「お前はオレのために働け」

P「お前はオレのものなんだからな」

P「お前の行先はオレが決めてやる」

幸子「国…?」

P「そう…国だ」

P「世界中に名を轟かせるような…神プロダクション」

P「必ず手に入れてみせる… 幸子、おまえと一緒にな」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

幸子(神プロダクションを手に入れるですって?)

幸子「アハハ!本気ですかね?」

幸子(廃課金や重課金でもない、ましてや微課金ですらない)

幸子(たかだかファン数も50万そこらの事務所が…神プロダクションですって?)

幸子(あの人…当たり前のような顔して言ってのけましたね)

幸子(…ボクより年上と言ってもまだまだ若い…ただの…一人の男が…)

幸子「そう…言い切るんですか?」

幸子(ボクはこの数か月間何をやってたんでしょうか)

幸子(あっちこっちのイベントをただ駆けずり回って…)

幸子(ただ…歌を歌って…)

幸子(ただ…生き延びて…)

幸子(何処へ…?)

幸子「あの時の答え…まだ見つかりませんよ…昔のプロデューサーさん…」

カンカンカン

杏「おーい幸子ー」ガチャ

ドン

幸子「」

杏「あ」

幸子「フギャー!」ドボン

幸子「ハ…クシュン!な、なにするんですか!」

杏「ご、ごめんごめん」

幸子(今日は水難の日ですね…)

杏「聞いたよ、さっそくチームのリーダーになるんだってね、すごいじゃん」

杏「これからいろいろあるだろうけど、よろしく」スッ

幸子「……」


とりあえず…


幸子「よろしくお願いします…杏さん!」ガシッ

杏「うーん…」ザバ…


かな子「幸子ちゃん!聞いたよ、チームリーダになるって…」ガチャ

ドンッ

杏「」

幸子「」


ドボーン


…とりあえずね


杏「ちょっとかな子!前みてよ!」ゲホッ

幸子「水も滴るボク!セ、セクシーですね!」クシュン


まゆ「……」

―――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――

――――――――――――


この世界には人の運命を司る何らかの超越的な"律"…

"神の手"が存在するのだろうか?

少なくとも 人は自分の嫁さえ自由にはできない


人は記憶の彼方 遥か遠い日

心に負った小さな傷を庇うためにガチャをする

人は思いの彼方 遥か遠い日

微笑みながら逝くためにガチャを引く

≪そのイベントは長きにわたった…≫


「ぬう…なんたる様だ!たかだか数人相手にいい様にかき回されるとは…」

「誰でもいい…きゃつらを止められるものは…このプロダクションにはおらんのか!?」



ザッ

[自称・カワイイ]輿水幸子「……」


「バカな!このユニットに対して単騎だと!?」

「いいだろう!返り討ちにしてやれ!」


幸子「カワイイ方が勝つんです!!」

ワアアア

「くっ… すごい歌だ!」

幸子「ふふーん!こんなに大勢の人たちをトリコにしてしまうなんて…
   ボクのカワイさって、罪ですね…。みんながボクを求めてやまないなんて、ゾクゾクします!」

幸子(でも、ボクを一番求めてるのはPさんですよね?)


「くそ!相手は一人だ!一気にやっちまえ!」


「! 社長あれを!」

「た…鷹の団!」


ドガガガガ…


ワアアアア…

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「幸子ちゃん!」「凄かったよさっきの歌!」

「かわいかったー!私もー体が震えちゃって…!」

「今回の勝利の立役者だね!」

幸子「ボクの方こそごめんなさい…一人で勝手に突っ走っちゃって…」

「何言ってるの!もー」「それじゃお祝いしよう!」


「幸子ちゃん」

「!」

まゆ「……」

「まゆさん…!」

幸子「……」

まゆ「話があります」

まゆ「ちょっと来てくれますか?幸子ちゃん」

幸子「それじゃ皆さんは先に行っててください」

「はーい……」

「何だろね?」「さあ」「ケンカじゃないの?また」

「幸子ちゃんが3年前入って以来あの二人の犬猿の仲は有名だもんね」

「たぶん今回一人で戦ってた事じゃないかな…」

まゆ「あなたどういうつもりですか?」

幸子「何がです?」

まゆ「とぼけないでください!あなたの役目は私たちが突っ込むのを側面から援護することだったじゃないですか!」

まゆ「それを…味方を無視して一騎打ちだなんて…!」

まゆ「たまたまうまくいったからいいものの…あなたの勝手な行動がチーム全体を危険にさらすことだってあるんです!」

幸子「ふふん、大丈夫ですよ…ボクが負けるはずありませんから!」

幸子「でもまあ…今後気を付けますよ」

まゆ「…いつもそうですねぇ」

まゆ「そうやって口先だけ…そしてまた同じことを繰り返す…」

まゆ「あなたは実際3年前と何も変わっていません…Pさんに噛みついていったあのころと…」

まゆ「あなたはただステージで派手に目立てればそれで満足なんです!
    仲間の事なんて何も考えていない…ただの自己中ですよ!!」

幸子「……!」バンッ

幸子「もう一度…」

幸子「もう一度言ってみてください!!」ギリッ

まゆ「…!」

「二人ともその辺にしとけ」

幸子・まゆ「!」

まゆ「Pさん」

P「幸子にはオレからよく言っとく」

まゆ「……」

スタスタ

まゆ「Pさんは幸子ちゃんに甘すぎます…」

幸子「……」

P「…フウ」

P「お前らほんっとに仲悪いな」

P「顔突き合わせてもう3年になるってのに…」

幸子「考えてますよ…」

幸子「ボクだって仲間のことは考えてます」

幸子「もう…昔のボクじゃない」

P「……」

P「思い出すな…3年前の…イベントを渡り歩いていたお前を仲間に入れるためのライブバトル…」

P「…あのケンカは楽しかった」

P「ケンカってのはああいうのがいい…」

幸子「……」

幸子「…Pさん」

幸子「今日のイベント…すいませんでした…」

P「…お前の『そういうところ』も…オレの策のうちさ」

幸子(……)

「まったく前代未聞だな無課金ごときを役員だなんて…」

「一体社長は何を考えているんだ…」

「しかし今回のイベントも…確かに奴らの功績は大きい」


みく「他の人たちもこう勝利を重ねられちゃ…」

みく「さすがにみく達の実力を認めざるを得ないにゃあ」

みく「これでみく達は晴れて有名プロの仲間入りってことにゃ」

幸子「これもボクがカワイイおかげですよね!感謝してください!」

みく「い~や違うにゃ…みくのおかげだにゃあ」

みく「みくほどアイドルらしいアイドルはいないからにゃ~、かわいいだけじゃだめだモン☆」

幸子「いいえ、一番大事なのはカワイイかどうかですよ!」

みく「カワイイだけなんて子どもだってそうでしょ~?」

まゆ「二人ともうるさいですよぉ…任命式の最中です」

まゆ「これからは私たちのスキャンダルがPさんの足を引っ張ることになりかねません…」

まゆ「今までのように自由にやっていればいいと言うわけにはいきませんよぉ…」

幸子「はいはい、分かってますよ」

みく「……まったく…お母さんみたいだにゃ」ボソ

まゆ「何か言いましたかぁ…?」ギロ

みく「にゃあ!式、式」

まゆ「ぅ…」

―――――――――――――――――――――――――

それは深い海のような紺碧だった


P『昔、とある事務所の事務員さんからもらったんだ』

P『ベヘリット…別名『覇王の卵』とかいって…』

P『なんでもこれを持つ者は、自分の血と肉と引き換えに世界を手に入れる運命なんだってさ』

幸子『世界を…?』

P『オレは…オレの国を手に入れる』


3年前 彼はそう言った―――



P「……」

「Pさん!敵の要塞はほとんど制圧完了したみたいだよ!」

P「敵のリーダーは?」

「それがまだ…今幸子ちゃんたち切り込み隊が包囲してはいるんだけど…」

「相手にすごいアイドルが一人いて…その子のために突破口が開けないみたい」

まゆ「…一人」

みく「たった一人に?情けないにゃあ…」

智絵里「きらり…」ボソ

まゆ「え?」

P「!」

杏「きらりって…まさか?智絵里…」

智絵里「今回のイベントでうわさを聞いたんです…」

智絵里「相手にあの"諸星きらり"ちゃんが…加わってるって…」

「「「諸星きらり!!」」」

かな子「だ、誰ですか?」

杏「知らないの?かな子」

杏「…諸星きらり 仲間の間だと伝説的存在のアイドルだよ」

杏「きらりがイベントでハピハピさせたファンは何千何万ともいわれてる」

杏「でも…きらりが恐れられてる理由はそれだけじゃないんだ」

杏「きらりはイベントの度に必ず…かわいい子を『きらりん☆ルーム』とやらにお持ち帰りするらしい」

P「……」

智絵里「幸子ちゃん…誰でも構わず…挑戦していくところあるから…」

シーン…

智絵里「嫌な雲行きですね…」

幸子「千佳さん!離してください!」

千佳「だめだよ!もうちょっと待とうよ!」

幸子「バカ言わないでください!もう一時間も経つんですよ!!」

幸子「何人も送り込んで一人も出てこない…!ほっとけません!」

千佳「じゃあまゆちゃんたちに援護を…」

幸子「冗談じゃありませんそんなこと!」

幸子「…一人です!たった一人の相手に…」

幸子「全員が釘づけにされて一歩も動けない…!」

幸子「こんな情けない話がありますか!!」

ニョワアアァ!

「「!」」

「さ…幸子ちゃ…」ヨロヨロ

「…きらりちゃんが…ハピ…ハピ…」ドサ


「やっぱりあのウワサ本当だったんだね…」

「どうしようか…」

幸子「……」

ザッ!

千佳「ちょ…ちょっと幸子ちゃん…!」

幸子「来ないでください!」

幸子「誰もついてこないでください…」

幸子「ボクが一人でやります」


ゴオオオオオ…


「」ハピハピ

「」ハピハピ

幸子「ヒッ…」

幸子(何ですこの人たちは…)

幸子(アイドルたちが完全にハピハピ状態に…!)

ニョワアアア

幸子「くっ!」ダッ

ゴゴゴゴ


きらり「にょわー☆」


幸子「うああああ!」ダダッ

きらり「おにゃーしゃー☆」ゴッ

幸子「うわっ!」

幸子(何ですか…これは!?)

きらり「あなたもきらりとハピハピしよ☆」


ましゅまろほっぺ 指先でぷにぷに♪

たのしそうに あなたがはじいて笑う(ぷにぷに)

ましゅまろほっぺ 私あなたの楽器♪

秘密の五線紙の暗号

「大好き。chu!」わかるかな?


幸子「ハア…ハア…」

きらり「すごーい!きらりんとハピハピしてルンルンね☆ばっちし☆」

きらり「でも他の子はすぐ疲れておねむみたいなんだにぃ…」

きらり「でもきらりんは今日はとってもハピハピだにぃ☆それじゃいっくよー☆れっつらごー!」


あなたの「大好き」の中に 私も入れて♪

もういちど「かわいい」って言ってみて♪

あなたが なでてくれた 髪の毛も眉も くちびるも

その瞬間から たからもの♪ハピハピ♪

甘いお菓子が 欲しいな どこどこ?

ぱふぱふぱふ ころんころん

ましゅまろ ころがる はぷにんぐ(タイヘン!)

ましゅまろほっぺ 指先でぷにぷに♪

たのしそうに あなたがはじいて笑う(ぷにぷに)

ましゅまろほっぺ 私あなたの楽器♪

秘密の五線紙の暗号

「大好き。chu!」わかるかな?


幸子(す…凄すぎる!もの凄いパワーの歌です!)

きらり「きらりん嬉しいにぃ…こんなに一緒にハピハピできる子って初めてだにぃ☆」

きらり「それじゃ…いっくよー!きらりん・おん・ざ・すてーじ☆…」

きらり「『きらりんぱわー』☆」┣¨┣¨┣¨┣¨


ゴゴゴゴゴ


それは巨大な…女の子だった


きらり「きらりんびーむ☆」ビュゴオォォォオォ

幸子「フギャー!」

きらり「きらりんあたーっく☆」ドゴオォン

幸子「ひいいい!」

幸子(なんですかこれ!まるで歯が立ちませんよ!?)

幸子「あぅ…」ドサッ

きらり「あ…お疲れみたいだにぃ☆きらりんルームにいらしゃーい☆」ガシ


ドドドド


きらり「にょわ?」


P「……」アセダク

幸子(Pさん…)

みく「す…すごい大きい子にゃあ…」

杏(ヤバい)

まゆ(何ですかあれは!?)

P「気を抜くな!第二陣行け!」

ドドドド

「やったか!?」


きらり「…かわいい」

きらり「うきゃー!かわいい子いっぱいだにぃ☆」

きらり「みんなきらりんホームにご招待すぅ☆」

P(全然効いてねえ!)

幸子「だめです…逃げてください!」

「きゃー!」ハピハピ

「うわっ!」ハピハピ

「まずい!とても手におえない!」

P「まゆ!全員退避させろ!」ダッ

まゆ「! Pさんどこへ…!」


幸子「」

P「幸子…!」ダダッ


まゆ(……!)

P「おい立てるか?」

幸子「バカなんですか!なんで来たんですか!?」

P「文句ならここから脱出した後にしろ」

幸子「なぜです…」

幸子「なぜこうなってしまうんです…もう!」

P「……」

ズシッ

きらり「どこへいくんだにぃ?きらりんルームはこっちだゆ☆」


P「動けるか!?」

幸子「やらなきゃやられます!」

P「お前は左!行くぞ!」

バッ

きらり「!」

ドシャア


「やった…すごいです!」

P「一気に走り抜けるぞ!」

まゆ「Pさん危ないです!後ろ!」

P「!」ハッ

きらり「にょわー☆(物理)」

ドゴォ

P「グハッ…」

幸子「Pさん!」

ガシ

幸子「ちょ…」

きらり「今日は素敵な日だにぃ…」

きらり「これだけいっぱい歌って踊れて…とっても楽しいにぃ☆ヤバーイ!」

きらり「いっしょに、ぎゅーーーっ☆」

幸子「あっ」ギューーーッ

きらり「ありゃっ、だ、だいじょぶ?」

幸子「」

きらり「やっぱりお疲れみたにだにぃ…それじゃあきらりんルームにつれてってあげるゆ☆
    まずはこっちのカッコいい人から…」


まゆ「Pさん!」ジタバタ

智絵里「だめですまゆちゃん!」


きらり「!」

きらり「…これは…!?」

きらり「覇王の卵!?」

幸子「!」

きらり「にょわ…覇王の卵…!?こんな若い男の人が…紺碧の"ベヘリット"を…!?」

きらり「うぇへへ!おもしろいにぃ☆そういうことだったのかにぃ…」

きらり「きらりんルームへのご招待はまたあとでにすゆ☆」

きらり「でも…また会えるかにぃ…?」

きらり「ひとつだけ…もしあなたがこの人にとって本当のアイドルと言える人なら…」

きらり「覚悟しておくにぃ…この人の夢が終わる時…」

きらり「あなたに死がおとずれるにぃ…ぜったい逃げられない死にょわ…ヤバーイ!」

きらり「でも…夢はいつでもおっきいのがステキだにぃ☆じゃーね☆」

ドゴゴゴゴゴゴ…


幸子(…死?)

幸子(死ぬですって…?このボクが…?)


まゆ「Pさん!」ダッ

まゆ「Pさん!しっかり…!」

「大丈夫幸子ちゃん?」

幸子「ええ…なんとか」

千佳「もう…強がっちゃって」

幸子「それよりPさんは?」

バシィ!

幸子「!」

まゆ「Pさんに触らないでください…」グスッ

まゆ「あなたのせいです…Pさんがこんな目にあったのは…」

まゆ「あなたのせいです!!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

幸子「……」スタスタ

智絵里「! 幸子ちゃん」

幸子「何やってるんです?みんな揃って」

杏「もう歩き回っていいの?」

幸子「……」チラ

まゆ「……」ジロ


『あなたのせいです!!』


まゆ「……」プイ

智絵里「気にしないで…あれは幸子ちゃんのせいじゃないよ…みんなもわかってるから…」

智絵里「まゆちゃんもあの時は動揺してあんなこと言っちゃったんだよ…気にしないでね」

幸子「……」

幸子「それで、皆さん何をやってるんですか?」

智絵里「みんな同じ…Pさんのお見舞いなんだけど…」

智絵里「先に人がいてね」

幸子「誰ですか、あれ?」

智絵里「プロダクションの偉い人たちだよ」

智絵里「捨てる神あれば拾う神ありってね…Pさんを無課金だからって煙たがる人もいるけど…」

智絵里「ああやって今のうちに仲良くしておけば…あとでいい思いができると考える人たちもいるんだね」

智絵里「まあ当然といえば当然だけどね…」

智絵里「今の所Pさんは負けなし…最強の事務所のプロデューサーなんだから…」

幸子「…ふーん じゃ…」

智絵里「じゃ…って…え?」

まゆ「ちょっと!今の話聞いてなかったんですか!?」

幸子「聞いてましたよ?だから?」

まゆ「…だから?」

智絵里(あっ…)

まゆ「だからじゃありませんよぉ!重役の人たちが終わるまでここで待ちなさいって言ってるんです!」

幸子「別にどうってことないでしょう?お見舞いに身分もなにもありませんよ」

幸子「だいたい身分がどうとか言う前に、このカワイイボクが行かない方が間違ってますね!」

幸子「プロデュー…」ガシ

幸子「なんですか?いい加減に…」

まゆ「……」スッ

バチィンッ

幸子「」


「「「あっ」」」


幸子「イタタ…何するんですか!」

幸子「!」

まゆ「……」ジワァ

幸子「……」

まゆ「…なぜですか?」

まゆ「なぜあなたという人はいつもそう…」

まゆ「なぜPさんは…あなたみたいな子を…あんなに…」グス

幸子(なんなんですかもう…泣きたいのはこっちの方ですよ)

幸子「フン!」スタスタ

智絵里「幸子ちゃん?」

幸子「あとで出直してきます」

幸子「……」チラ


まゆ「……」グス…


杏「でも…幸子の気持ち…少しはわかるかな」

杏「最近のプロデューサー…気軽に声をかけづらいっていうか…」

杏「なんだか少し…遠くなった気がするよ…」

まゆ「……」

杏「この頃全然甘やかしてくれないし…毎日仕事いれてくるし…」

かな子「それは我慢してください!」

タン タン タン


『あなたはただステージで派手に目立てればそれで満足なんです!
 仲間の事なんて何も考えていない…ただの自己中です!!』

『なぜあなたという人はいつもそう…』

幸子(……)

『あなたのせいです!!』

幸子(もう…なんだっていうんですかあの人は…!)


P「荒れてるな」

幸子「! Pさん」

P「もうレッスンして平気なのか?」

P「オレよりよっぽどひどくやられてたのに…まったくタフな奴だな」

P「昨日はすまなかったな…みんなで見舞いに来てくれてたようだったけど…」

P「…ったくあの重役たち人がスタミナ全然ないからって恩着せがましく毎日毎日…うっとうしいったりゃありゃしない」

P「…でもまぁ仕方のないことだけどな」

P「このプロダクションでのし上がっていくためには絶対必要なことだ」

幸子「……」

P「…諸星きらりか…」

P「あんな凄い子もいるとは…世界は広いもんだ」

P「しかし裏を返せばこの世界には人知の及ばない巨大な何かが存在するという証拠かもしれないな」

P「たとえば…『女神、天使』と呼ばれるなにか…」

幸子「『鬼、悪魔』…じゃないですかね」

P「さあな…同じことだろ?」

P「ところでオレどうして助かったんだ?途中で気ィ失っちまったからなァ…」

幸子「あなたが首につけてるそれ…」

幸子「どういうわけかそれを見たらどこかへ行ってしまいましたよ」

P「ベヘリットをね…ふむ…」

幸子(きらりさんは知っていた…これのことを…)


『ひとつだけ…もしあなたがこの人にとって本当のアイドルと言える人なら…』

『覚悟しておくにぃ…この人の夢が終わる時…』

『あなたに死がおとずれるにぃ…ぜったい逃げられない死にょわ…ヤバーイ!』

P「これには防御アップの力でもあるのかな?事務員の人にお礼を言わなくちゃ」

幸子「……」

幸子「…また…借りができちゃいましたね」

幸子「…なぜです?」

幸子「3年前あなたは"優秀な子を失えない"と言いました」

幸子「でも たかだか一人のためにいろいろ失いかけるなんて…」

幸子「冷静沈着なあなたとしてはおかしい話ですよ」

幸子「…なぜです?」

P「……」

P「…やれやれ3年も前の話を…こだわるなァお前も」

P「理由なんかないさ…何も…」

P「必要か…?理由が…」

P「…オレが…お前のために体をはることに…」

P「いちいち理由が必要なのか…?」

幸子「……」

P「……」

幸子「…いや…ボクは…」

「これはこれは スタミナの方はもうよいのかな」

幸子・P「!」

P「これは…社長」ペコリ

P「! おい幸子…」

幸子「……」ペコリ

社長「まあ頭をあげたまえ」

社長「ここの所の立て続けのイベントやガチャでプロ内は殺気立っている」

社長「気を休める暇もないわ全く…」

社長「時にP君 君の事務所鷹の団の働き、いつもながら見事だったぞ」

P「恐れ入ります」

幸子「ふふーん!ボク達なら当然ですね!」ドヤァ

P「何言ってんだバカ!」ポカッ

幸子「いたっ」

社長「ははは…君たちの楽しそうなライブを見ているとこの老骨の身ですら血がたぎってくるようだ…」

社長「昔の友とイベントを駆け回った…若かりし日を思い出す…」

社長「重役たちの中には君たちを快く思わないものがいるのは事実…」

社長「無課金のものがこうも幅を利かせていてはわが社の威信にかかわると言ってな…」

社長「しかし威信や格式などではイベントでは勝てぬ」

社長「社員の腹は膨れない、今は乱世なのだ…」

社長「わたしはむしろ金さえ使えば何でも手に入れられる課金兵よりも」

社長「君たちのように型にはまらぬ者にこそこのプロダクションを支える礎として期待しておるよ」

P「ありがたいお言葉…感服いたします」

P「!」

ヒョコッ

桃華「……」


P「あちらの子は?」

社長「ん?おお…」

社長「うちのメインアイドルで、実の娘でもある櫻井桃華だ」

社長「あれで結構激しい性格なのだが…」

社長「桃華、こっちへ来い」

桃華「あなたがウワサのPちゃまですわね?ごきげんようですわ!」

桃華「もし望むならわたくしのお仕事のパートナーにしてあげてもよろしくてよ♪」

社長「一人娘だからといって甘やかし過ぎたのか…許してくれPくん」

社長「じゃあ桃華、いくぞ」

桃華「はいですわ!」タタッ

ガクン

桃華「きゃ…!」

P「!」

ガシッ

P「失礼…お気をつけて」

桃華「…//」カァ

桃華「か、感謝いたしますわ」

桃華「Pちゃま、意外と紳士の心得があるみたいですわね。素敵ですわ…」

桃華「うふ、それではまた」

スタスタ

P「……」


幸子「……」ニヤニヤ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

幸子「……」


『オレがお前のために体をはることに…いちいち理由が必要なのか…?』


幸子(お前のために…ですか)

幸子(…これがボクの探していた答えかどうかはわからない…)

幸子(…でも今は)

幸子(今は彼のために…歌を歌う)

横山千佳(9)
http://i.imgur.com/IFp5Bsb.jpg
http://i.imgur.com/RJ9uHDs.jpg

諸星きらり(17)
http://i.imgur.com/686KrZj.jpg
http://i.imgur.com/jjtYSrq.jpg

櫻井桃華(12)
http://i.imgur.com/KqFnUeI.jpg
http://i.imgur.com/ikqbogm.jpg

――――――――――――――――――――――――――

みく「あーあ、今頃Pチャンはお食事会でおいしいもの食べてるんだろうにゃあ…」

みく「役得だよにゃ、プロデューサーって」

智絵里「でも…わたしはみんなと楽しくたべられる方がいいな…」

かな子「ここの御飯だっておいしいですよ!」モグモグ

まゆ「……」

杏「杏は飴があれば別にいいし。そうだ、じゃあこれみくにあげるよ」

みく「にゃああああ!お魚は嫌にゃー!みくはハンバーグが食べたいにゃあ!」

幸子「多分今回のお食事会は和食ですからお肉よりお魚が多いと思いますよ?宴会みたいなものですから」

みく「にゃあ…しかたないにゃ…」

幸子「でもそろそろ終わる時間じゃないですか?迎えに行ってきますね」

まゆ「あ…じゃあまゆも…」


スタスタ…

幸子「あ、プロデュー…」

幸子「!」


P「……」

桃華「……」


まゆ「…二人の話が終わるまで待ちましょうか」

桃華「少し疲れましたわ…」フウ

P「どうぞおかけください」ファサ

桃華「…ありがとう…」

P「よろしいんですか?主催者が勝手に抜けだしたりして…」

桃華「構いませんわ!皆さんわたくしがいなくてもお楽しみですわ」

桃華「…わたくし…食事会はあまり好きではないんですの…ただ騒々しいだけで…」

桃華「それに本当は…今夜の会はイベント続きで疲れ気味の社員の皆さんに
   少しでも気を紛らわせようという父のお取り計らいなんですの」

桃華「…こんな夜会を開くくらいならイベントそのものをやめてしまわればよろしいのに…」

P「……」

P「どうして争いばかりをするのか…そうお考えですか?」

桃華「? ええ…」

P「確かに私たちにはそんな野蛮な一面があるのかもしれません …でも」

P「それは貴いものを勝ち取り守るための道具…諸刃の剣なのでしょうね」

桃華「貴いもの…?家族とか…恋人とかですの?」

P「そういう人もいますね」

P「…でもわれわれはその二つを手にする前に…もう一つの貴いものに恐らく出会っているはずです」

桃華「もう一つの…貴いもの…?」

P「誰のためでもない」

P「自分が…自分自身のために成す」

P「夢です」

桃華「…夢」


幸子「……」

P「世界の覇権を夢見る者」

P「ただ一つのステータスを鍛え上げることに一生を捧げる者」

P「一人で一生をかけて探求していく夢もあれば…」

P「嵐のように他の何千何万の夢を喰らい潰す夢もあります」

P「身分や階級…生い立ちに係わりなく」

P「それが叶おうと叶うまいと人は夢に恋い焦がれます」

P「夢に支えられ、夢に苦しみ、夢に生かされ、夢に殺される」

P「そして夢に見捨てられた後でもそれは心の中でくすぶり続ける…多分死の間際まで…」

P「そんな一生を一度は思い描くはずです」

P「"夢"という名の神の…殉教者としての一生を…」


幸子「……」

まゆ「……」


P「生まれてしまったからしかたなくただ生きる…」

P「そんな生き方オレには耐えられない」


幸子「…!!」

桃華「……」ポー

P「!」

P「すみません、つい喋りすぎました」

P「女性には退屈な話でしたね」

桃華「い…いえ!」

桃華「…わたくし、男の方とこんな風にお話しするのは初めてですのよ?」

桃華「Pちゃまって…不思議な方ですわね」

桃華「初めてあなたを見かけした時はどこかのお金持ちの方かと思いましたわ」

桃華「まだお若いのにあまりに堂々としていて…」

桃華「無課金なのだとお聞きした時はとても信じられませんでしたわ」

桃華「何だか…このプロダクションでも…並の方よりずっと資産をお持ちですし…」

桃華「……」

桃華「不思議な方ですわ…」

桃華「…あなたのお仲間の方々も」

桃華「そんな魅力に引かれてあなたについてこられたのですわね」

P「……」

P「彼女らは…優秀な仲間です」

P「何度も一緒に死線を越えてきた…」

P「わたしの思い描く夢のためにその身をゆだねてくれる大切な仲間…」

P「人気も実力もありとてもいいアイドルでもあります」

P「…でも 私にとっての『アイドル』とは…違います」

P「決して人の夢にすがったりはしない…」

P「誰にも強いられることなく自分の生きる理由は自らが定め進んでいく者…」


幸子「……」


P「そして その夢を踏みにじるものがあれば全身全霊をかけて立ち向かう…」

P「たとえそれがこの私自身であったとしても…」

P「私にとってのアイドルとは…そんな…"対等の者"だと思っています」


幸子「……!」ガーン

幸子(対等の…人間)



まゆ「……」

まゆ「!」

幸子「……」ギュ…

桃華「…すごい自信ですわね」

P「ええ…」

P「そうやって私は今あるすべてを手にしてきたんです」

P「数日たってもドリンク一本増えないこともありました」

P「…でも今は…」

P「有名なプロダクションのメインアイドルであるあなたに…」

P「こうして口をきいていただくこともできます」

桃華「……」


まゆ「……!」フイッ



桃華「…Pちゃまの夢って…?」

「お嬢様~!!」

桃華「あら」

「そろそろお食事会も終わりですから、こっちへいらしてください」

桃華「仕方ないですわね…それではPちゃま、ごきげんようですわ」


幸子「……」

スタスタ


まゆ「! ちょっと…」

まゆ「……?」

――――――――――――――――――――――――――――――

『オレにとってアイドルとはそんな…』

『"対等の者"だと思っています』

幸子「……」


ワアアアア


智絵里(ふぅ…これは乱戦だね…)

智絵里「ん…?」


まゆ「はあ…はあ…」ヨロ


麗奈「アンタがウワサの鷹の団のリーダーね!」

麗奈「レイナサマがナンバー1アイドルになる手伝いをできるなんて、アンタ運が良いわ。
   後世まで語り継ぎなさい。愚民共がアタシの前にひれ伏す日が楽しみね!
   アーッハッハッ…ゲホゲホ」

麗奈「おとなしくやられることね!ザコはザコらしくしていればいいわ!」

まゆ「………面白いことを言うじゃないですかぁ」イラ

まゆ「それだけ言うんですから…覚悟してもらいますよぉ」

麗奈「望むところよッ!行くわよ!」

まゆ「血って、どんな味でしょうか?」

麗奈「ひれ伏しなさい!」


麗奈WIN!


麗奈「アハハッ!やっぱり大したことないわねッ!」

麗奈「フッ、アタシの実力に手も足も出なかったようね!!ハッハッハッ…ゲホゲホ」

まゆ(…だ、ダメです)

まゆ(力が…力が入りません…!)

麗奈「止めよッ!くらいなさいッ!」ゴッ

まゆ(…!)ギュッ


ガギィンッ


麗奈「!」

幸子「らしくないじゃあないですか」

まゆ(幸子ちゃん…)

幸子「えい!」ゴギャ

麗奈「うわッ!どっから出てきたのよアンタ!」

麗奈「このレイナサマに挑戦するなんて、身の程知らずも良いところね!真のアイドルの力見せてあげる!!」

麗奈「今の一撃!よく受けたわね!でもまぐれは二度続かないわッ!」

麗奈「受けきれるかしら…!?この世界の覇者、極悪大魔王スクールデビルレイナサマの一撃をッ!」

麗奈「くらいなさいッ!恐怖のレイナ…

幸子「To my daring…」

麗奈「ぐはっ!きょ、恐怖の…」

ドゴォ

麗奈「きゃああッ!」

幸子「恐怖の…なんですって?」

オオオオ

「すごい!あの子を一瞬で!」

幸子「どうしました?いつものあなたらしくないですね」

幸子「気を抜いてるとやられちゃいますよ?」

まゆ「……」ハアハア

幸子「…?」

まゆ「」フラ

幸子「ちょ…ちょっと!」

麗奈「……」チラ

麗奈「今よッ!『レイナサマ・バズーカ』ッ!」ドオーン

幸子「わっ…!」ガシ

ドゴォン

幸子(しまった!)ズル

千佳「さ…幸子ちゃん!」

智絵里「幸子ちゃん…!」

麗奈「ヒャーハッハッハ…ゲホゴホ」

ヒュウウゥゥ…

ドボン

智絵里(幸子ちゃん…まゆちゃん…!)



幸子「ガボゴボガボゴボボ!」バシャッ…

幸子「ハ…クシュン!なんなんですかもう!!」ゲホ

幸子(無事だったのはいいんですけど…どうやって戻りましょう?)

まゆ「」ガタガタ

幸子(…ひどい熱です!だからあんなフラフラと…)

幸子(どこか休憩できる場所は…)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

P「幸子とまゆが!?」

千佳「うん…川に落っこちちゃって…」

智絵里「幸子ちゃんのことですから…多分大丈夫だと思いますけど…」

智絵里「攻撃されてダメージもあるし…まゆちゃんの様子も変でした」

智絵里「探しに行くなら早い方がいいですっ」

P「……」

「P殿お分かりでしょうな?」

「イベントではまず敵に打ち勝つことこそが大事!」

「だからその最中たかが二人ごときに…」

P「……」



幸子(さて…どうしましょう)

まゆ「」ガタガタ

幸子(そういえば出会った時看病してもらったんでしたね…)

幸子(とりあえず着替えさせますか)

幸子(ボクの衣装しかないですが…まあ大して体型変わりませんしいいでしょう)

≪ついてくるも来ないも君の自由だ≫

≪もう戦い方は知っているだろう?≫

≪でも…≫

≪…でも…≫

まゆ「」パチ

まゆ「……?」

幸子「あ」

まゆ「……」

まゆ「…ここは?」

幸子「川の近くの小屋ですよ」

まゆ「…川?」

幸子「何ですか…何も覚えていないんですか?」

幸子「あのへんな子とやりあった後あなたが足滑らせて落っこちたんですよ」

幸子「溺れるかもって所だったのにのんきですね…」

まゆ「ぅぅ…」ムク

幸子「ちょっと!まだ熱は下がってないんですよ、横になっててください」

まゆ「あ」シタギスガタ

まゆ「」

幸子「しょうがないでしょう、ずぶ濡れだったんですから」

まゆ「」ジー

幸子「な、なんですかその目は」

まゆ「きゃあああ!」ポイポイ

幸子「フギャー!」ゴツッ

まゆ「……」ハアハア

幸子「何するんですかまったくもう!」

幸子「恩を着せるつもりはありませんけど!」

幸子「こっちはあなたの看病をしてあげたんですよ!」

幸子「それでお礼の一つどころか空き瓶を投げつけるなんて!」

まゆ「ご…ごめんなさい…つい取り乱して」グス

幸子「まったく…」


幸子「まだふらふらしてるんですから横になっててくださいよ」

まゆ「……」グス…

幸子「なんです?また泣いてるんですか?」

まゆ「うるさいですよぉ!むこう向いててください!」

まゆ「情けないです…あなたにだけは…助けられたくありませんでしたぁ…」ポロポロ

幸子(ずいぶんと嫌われたもんですね…)

幸子「…ねえ」

幸子「あなたは…どうしてアイドルになったんですか?」

まゆ「……」

幸子「喋りたくなきゃ…いいですが…」

まゆ「…プロデューサー………」

まゆ「プロデューサーさんです…」

まゆ「私は元々…モデルの仕事をやっていました」

まゆ「少しは知名度はありましたが…そんなに有名ではありませんでしたし」

まゆ「その時の会社もあまり大きいとは言えず…営業成績も芳しくありませんでした」

…ある日…大手の会社の社長が私に目をつけました

その社長は私をぜひ移籍してほしいとうちの社長に申し出ました

社長は渋りながらもその申し出を受けました…

実際しかたなかったんです あの時の私はその会社でも成績は大したことありませんでしたし…

何よりその時の会社の赤字を補えるくらいの移籍金…会社としては当然の選択だと思います

でも…その人が…


おやじ『ニヤニヤ』

まゆ『……』

おやじ『やっぱりかわいいなあまゆちゃんは…』サワ

まゆ『きゃああ…!』


考えてみれば当たり前です…

あまり知名度もないただのモデルをわざわざ大金出して移籍する人なんていません

その人ははじめから私が目的だったんです

でも…その時


ボゴォ

おやじ『ぐわ!』

P『……』

まゆ『!』

P『金をもっているというだけで…神にでも選ばれたつもりか?』

…不思議な…まるで教会の聖人の絵がそのまま動き出したような…

神々しく…現実味の薄い光景でした

無力な少女を憐れんで神様が天使を遣わされた…その時の私には一瞬そんなふうに思えました

しかし…その天使が差しのべたのはそんなおとぎ話のような…都合のいい救い手ではありませんでした


P『……』ポイッ

まゆ『!』

P『君に守りたいものがあるならそのビンをとれ』

まゆ『…!?』

おやじ『!』ダッ

まゆ『…!』ガシ

ガシャッ!

おやじ『ぐ…』ドサ


…怖かったです

初めて本気で人を殴りました…相手は気絶してるだけとはいえ…

恐ろしくて…声も出ず その場を動くこともできず…

ギュ…

まゆ『…!』

P『……』

コクリ


その人は大きく…ゆっくりとうなずいただけ…

でもそれが…彼の差し伸べてくれた本当の救いの手だったんです

恐怖は消えはしませんでしたが罪悪感と後悔の念は薄れ…

誇らしさと…彼のくれた衣装のぬくもりが心を満たしていきました


P『……』

おやじ『』

ボゴォ
バキッ
ドカッ
グシャア
ガンッ
ゴスッ
ブシャアァ


Pの勝利!15000マニーゲット!
Pの勝利!15000マニーゲット!
Pの勝利!15000マニーゲット!
Pの勝利!15000マニーゲット!
Pの勝利!15000マニーゲット!
Pの勝利!15000マニーゲット!
Pの勝利!15000マニーゲット!
………
……

まゆ『この人お金を取ってるんですねぇ…』

まゆ『…あ…待ってください…』

まゆ『私…どうすれば…?』

P『好きにすればいい』

まゆ『………私も』

まゆ『わたしも一緒に連れて行ってください!』


衝動的に…その一言が私の口をついて出ました


みく『本気なの?』

みく『みく達は軍資金を集めてそのうち立派な事務所を作るのにゃ!』

みく『アイドル事務所だからモデルとは仕事も違うよ?』

まゆ『もう前の会社には戻れません…正式に移籍してしまったんです…』

まゆ『それにこのままじゃ…前の会社の方たちにも迷惑がかかるかも…』

まゆ『お願いします…歌や踊りを覚えろというなら覚えます…ですから…』

P『レッスンは大変だよ?』

まゆ『……』

まゆ『はい』コクリ

P『……』ニコ

P『言ったろ?好きにすればいい』

P『ついてくるも来ないも君の自由だ』

P『もう戦い方は知っているだろう?』

まゆ『……』


でも…

……でも

マイクも衣装も…

あなたがくれたんです

まゆ「あの日からすべてが変わりました」

まゆ「私の考え方も生活も…すべてが」

まゆ「ただ受身なだけの生き方が」

まゆ「戦い勝ち取る生き方へ…」

まゆ「あの日から…」

まゆ「Pさんと出会ったあの日から」

まゆ「私は…今でも長い夢を見続けている気がします」

まゆ「あのころの私は…Pさんを崇拝していました」

まゆ「まるで…預言者か何かのように…」

幸子「……」

実際その通りだったんです

なんの後ろ盾もない無課金と新人の寄せ集めの集団が

イベントでは常勝無敗 奇跡のような戦いぶりを見せたんですから…

そして何よりもそれを率いるのがまだあどけなさの残る少年ともいえるほどの若者で…

しかも彼は社長の息子でもましてやコネの一つすらない、私たちと同じ一般人であるという事実…

奇跡…そう…私にとってPさんは奇跡そのものでした…

それからしばらくして私もどうにか一アイドルとしてやっていけるようになった頃…

わたし達はある地方の大きめのイベントに参加したんです

そこに一緒にいたPaのハゲた人が有名な男性で…国内でも5本の指に入るほどの資産家という話でした

しかし そいつの本当の風評は財力ではなくその悪趣味だったの…

それは知り合う人の中からその目に適った人…若い男性ばかりを表向き秘書として仕えさせ

その実 夜の相手として雇っていたんです

芸能界ですし…それは取り立てて珍しい光景ではないんでしょう…

でも…私は正直 背筋が寒くなりました

恐怖と嫌悪感で胸のつぶれる思いでした…

私も一度はそうなりかけたんですから…


まゆ『……』ブルブル

ポン

まゆ『!』

P『……』ニコ


…あの時と同じ

彼は肩に手を置いただけ…

それだけで不思議と私の震えは止まりました

…それから何度目かのイベントの後…


P『…アイドルをやめるって?』

それは半年ぐらい前に入ったアイドル見習いの子でした

年は十代前半…名前は美由紀ちゃんといいました

数えきれないほどのアイドル志願者の中で

まだ日も浅い見習いの子に目をかける人などだれもいませんでした

ただ…Pさんを除いて…


かな子『Pさん!』

まゆ『なんですか?』

かな子『あの子が置いていった荷物ですよ』


それは手垢で少し汚れたお姫様のぬいぐるみでした


まゆ『Pさん…?』

P『お姫様のぬいぐるみか…憧れていたんだろうな』

P『あの子のことはよく覚えている』

P『まるで物語の主人公でも見るような目でオレを見つめていた』

まゆ『……』

P『…あの子は幸せだったろうか…?』

P『夢の途中で…夢を魅ながらゆけたのだろうか?』

P『それとも…引退は夢の終わり…"絶望"だったのか…?』

P『あの子の夢を殺したのは…オレの夢なのかもしれない』


かける言葉が…見つかりませんでした…

まゆ「あんなPさんを私は見たことがありませんでした」

まゆ「あのPさんが…あんなに肩を落として…」

まゆ「でも…その時からです」

まゆ「Pさんが…少しずつ違って見え始めたのは…」


そしてプロダクションに戻って何日目かの夜…


まゆ『Pさ…』

P『……』チラ

まゆ『!』


ハゲ『フヒヒ…』

サワサワ

P『……』


まゆ『……!』


幸子「じょ…冗談でしょう!?あのプライドの塊みたいな人が…!?」

まゆ「……」

幸子「……!」

まゆ「夜も白みがかったころ…」

私は眠れずに近くの川あたりをうろついていました…


まゆ『!』ピクン


P『……』バシャ


まゆ『……』

クル...

P『!』

P『一緒にどうだ?気持ちいいぞ』

まゆ『』ビク

まゆ『あ…あのぉ…まゆは…』

P『…汚らわしい…か?』

まゆ『そ…!』

まゆ『……』

まゆ『…どうして』

まゆ『どうして…さっきはあんな人と2人で…?』

P『……』バシャバシャ

まゆ『……』

まゆ『…そ…そうですよねぇ…まゆの勘違いですよね』

まゆ『昨夜のあれは…会議か何かで…それで…!』

P『いいや』

P『勘違いじゃない』

まゆ『………どうして?』

まゆ『どうして…Pさんが…あんな人と…!?』

P『金だよ』

まゆ『…え?』

P『事務所というものはただそれだけでも金を食う』

P『衣装・メイク・食事・設備 どれもただじゃない』

P『ましてや鷹の団はこれからまだまだ大きくなる…大きくしなければならない』

P『そのためにも必要なのさ…莫大な軍資金が…』

P『あのハゲはどうやらこの俺がお気に召したようだし…俺は彼の財産に興味があった』

P『利害が一致したってことさ』

まゆ『だからって…そんな…!!』

まゆ『…い、今のままではダメなんですか?』

まゆ『このまま…勝ち続けることができれば…いつか軍資金だって…』

P『…時間がかかりすぎる…それに』

P『イベントを走るということはそれだけ多くの人間を犠牲にするという事だ』

まゆ『!』

まゆ『Pさん…もしかして…あの子のことで…』

P『違うよ』ガリ

P『俺は合理的に考えたまでさ…何度もイベントに出るのと』

P『おっさん一人たらし込むのと…どちらの方がリスクが少ないか』

まゆ『……』

P『オレはね、まゆ』

P『オレの采配で影響を与えた仲間たちに何ら責任を感じてはいないよ…』

P『なぜなら…それは彼女らが自分自身で選んだ道なのだろうから』ガリ

まゆ『Pさん…?』

P『このオレがそうであるようにね』ガリ

P『…でももし彼女らのために…オレに何かしてやれることがあるとしたら』ガリガリ

まゆ『Pさん血が…』

P『それは勝つこと』ザク

P『あいつらが…将来をかけてまでしがみついたオレの夢を為し遂げるために』ガリガリガリ

P『勝ち続けることだ』

まゆ『Pさんやめて…!』

P『オレの夢は仲間の犠牲の上に立つことでしか実現できない所詮血塗られた夢だ』グシュ…

まゆ『やめ…』

P『その事で後悔や後ろめたさはない…だが』

P『だが…何百何千の命を懸けながら自分だけは汚れずにいられるほど…』

P『それほど…オレの欲しいものはたやすく手に入るものではないんだ』

ダッ

まゆ『…!』ギュ

まゆ『…やめて…』

まゆ『もうやめてください…』ギュ

P『…』グッ

P『大丈夫…』クル

P『なんでもないさ』


振り返り私の肩に手を置いたPさんは…もういつものPさんでした

その時はそれが…無性に悲しかったです

まゆ「人が子供の他愛もない憧れとしてとうの昔に捨ててしまったことを」

まゆ「Pさんは実現すべき夢として持ち続けています…『夢は夢で終われない』、と」

まゆ「そして私たちも…その夢につられて…同じように夢を見ている」

まゆ「でも…選んだ夢が純粋で途方もなく大きいだけ…」

まゆ「あの人の背負ったものも計り知れません…」

まゆ「強い人…その一言で片づけてしまうのは簡単ですが…」

まゆ「大きなものを手にしようとする人はそれだけ人より多く何かに堪えているのだと思います」

まゆ「あの人は一人で…私たち全員の夢を背負っている…」

まゆ「だから強かったんじゃなく…Pさんは…強くなければならないんです」

まゆ「……」

まゆ「私はあの人の…隣にいたい…」

まゆ「あの人が自分の夢に全てを捧げるなら…」

まゆ「あの人の夢が戦い切り開いていくものなら」

まゆ「私はあの人の…武器になりたい…」

小関麗奈(13)
http://i.imgur.com/mdqpxG2.jpg
http://i.imgur.com/BXMYTWN.jpg

まゆ「イベント、イベント、イベント…何人も仲間がいなくなりました」

まゆ「古い顔も少なくなり…またそれを上回る仲間が加わりました」

まゆ「わたしもいつしか古参の一人として」

まゆ「Pさんから厚い信頼を受けていると自覚するようになっていました」

まゆ「あの人の隣にいたい…」

まゆ「あの人の夢を為し遂げるために欠かせないものになりたい」

まゆ「その願いがかなえられると信じていました…信じることが出来ました」

まゆ「あの日…あなたが現れるまでは」

幸子「……」

まゆ「覚えていますか?あの日…Pさんがあなたにかけた言葉」


『お前が欲しいんだ』


幸子「…ええ」

まゆ「…あの一言…あんなことを…決して口にする人じゃありません」

まゆ「Pさんは…誰にもあんなことを言いはしませんでした」

まゆ「今まで…誰にも…」

まゆ「…私は気に入りませんでした…」

まゆ「Pさんにいともたやすくそう言わせたあなたが…妬ましかった」

幸子「……」

まゆ「でも…それでも…Pさんは鷹の団に必要な人材としてあなたを欲しがっていると…」

まゆ「…そう私は思いこもうとしました…」

まゆ「…でもあの沈着冷静なPさんがあなたのこととなるといつも衝動的になる…!」

まゆ「まるで…!」

まゆ「…まるで……」

幸子「…?」

まゆ「Pさんはあなたを信用してます」

まゆ「なのにあなたは好き勝手に…後先を考えず突っ走ってばかり…」

まゆ「私が許せないのは…あなたのその身勝手さが…Pさんを危険にさらしたということです!」

まゆ「あなたがどこでどうなろうと知ったことじゃありません!」

まゆ「でもそのために鷹の団を…Pさんの夢を道連れにすることは許せません!」

幸子「……」

まゆ「…Pさんを…」

まゆ「そんな風に変えてしまったあなたが許せません…」

まゆ「なぜですか…どうして…あなたでなければならないんですか…」グスッ

まゆ「どうして…」

幸子「……」ムゥ


ザッ


幸子「!」バッ

まゆ「何を…!」

幸子「シッ!」


「ねえほんとにこのあたりなの?」

「間違いないよ」

「あの二人を倒せば報酬をいっぱいくれるらしいからね」

「他の人に先を越される前に見つけよう」


まゆ「……」

幸子「ハーフドリンクです…飲んどいてください」スッ

幸子「のんびりしてるヒマはないですね…ここはさっさと逃げましょう」

まゆ「ハアハア…」スタスタ

幸子「……」スタスタ

まゆ「あのぉ…まゆを置いてかないで下さいね」ハアハア

幸子「……」クス

まゆ「ちょっと!笑わないでくださいよぉ…!」

ザッ

幸子「!」


ズラアアアッ

「イエーイ!」「見つけた!」「よーし!」


幸子「こんなにたくさん…どこから出てきたんですか?」

麗奈「フフフ…」

麗奈「アーハッハ!見つけたわよアンタ達!」

幸子「どこかで見た顔ですね?あ、ボクの前に立たないでくださいねジャマなので!さ、どいてください!」

麗奈「ふざけんじゃないわよ!忘れたとは言わせないわっ!」

幸子「冗談ですよ…あなたも元気そうじゃないですか」

麗奈「あったりまえよッ!たとえまぐれとはいえ…あんたみたいなザコに負けたなんてあたしのプライドが許さないわ!」

麗奈「ここであったが百年目!あの時の雪辱晴らしてやるッ!」

幸子「だったら一人で来ればいいのに」ボソ…

麗奈「う、うるさいわね!行くわよ!」

ワアアアッ

幸子「人気者はつらいですね!」

まゆ「邪魔はさせないんだから!」


幸子WIN!

まゆWIN!


麗奈「あーもう!みんな使えないわね!」

麗奈「みりあ!来なさい!」

みりあ「はーい!わるい子みりあだぞーっ!」

麗奈「あたしの弟子の赤城みりあよッ!ちびっこアクマの力見せてやりなさい!」

みりあ「狂気の沙汰ほど面白い…!」

麗奈「それ違う!悪魔っちゃ悪魔だけど!」

麗奈「いいからゴーよ!やっちゃいなさい!」

みりあ「それじゃあみんなー、いっくよー!」

みりあ「『Romantic Now』!」

幸子「かかってきてください!」

幸子「『To my daring…』!」

麗奈「す…すごい!みりあと互角に戦うなんて…!」

麗奈「いや…どうにか攻撃を耐えることが精いっぱいなのね!」

まゆ(…違います)

まゆ(幸子ちゃんの能力ならこのくらいなら勝てるはず)

まゆ(わざわざ正面きってダメージを受ける必要はありません…)

まゆ(……)

まゆ(私の…せいですか…?)

麗奈「アーハハハ!どうやらそっちのザコをかばって受けたダメージ!」

麗奈「まだ癒えてはいないみたいねッ!」

まゆ(え…!?)

幸子「まゆさん」

まゆ「えっ?」ビク

幸子「ボクがチャンスを作ります」

幸子「そしたら一気に逃げてください」

まゆ「でも…それじゃあ…」

幸子「『(自称)セクシーアピール』!!」ドドドド

みりあ「きゃあ!」


幸子WIN!



幸子「今です!」

まゆ「!」

幸子「ボサっとしてないでとっとと行ってください!」

まゆ「…だ…だめです…一人で行くなんて…」

まゆ「私には…私にはできません!」

麗奈「あ…あっちの女を攻撃するのよッ!」

ヒュウウゥ

まゆ「…!」

バキイッ

幸子「くっ…」

まゆ「幸子ちゃん…!?」

まゆ「ど…どうして…」

まゆ「どうして…」

幸子「……」

幸子「勘違いしないでください」

幸子「半病人は邪魔だからとっとといなくなってください」

幸子「逃げ回るのはボクには合いません!あの子には借りもありますし」

幸子「…あなたが前に行ってた通り…派手に目立てりゃそれで満足なのかもしれませんね…ボクは…」

まゆ「……」

幸子「…いいんですか?あなたはこんなところでやられても」

幸子「ここが…こんなつまらないのがあなたの最後ですか?」

幸子「あなたの望みっていうのはそんなに安っぽいものなんですか?」

幸子「…あなたは武器だとか言ってましたよね」

幸子「武器なら持ち主に収まるもんでしょう」

幸子「…帰るんですね…持ち主のもとへ…」

幸子「Pさんの所にね」

幸子「さあ…早く行ってください!」

幸子「はやく!」

まゆ「……」ギュ

まゆ「みんなを連れて必ず戻ります…!」タッ

麗奈「あーっ!あっちの女を逃がすんじゃないわよ!」

幸子「おっと!追いかけるのはお仕事の後にするんですね…」

麗奈「う…みんな!アイツを倒したらあたしが持ってるドリンク全部やるわ!」

「ドリンク全部だってさ」
「けっこういっぱい持ってたよね…」
「相手は一人だし一斉に行けば…」

幸子「……」

幸子(めんどくさいなあ…)

「「「いっせーの!」」」

幸子「そうそう…アイドルってのはそうでなくちゃ…ね!」



まゆ「ハア…ハア…」

まゆ「!」

まゆ(追いかけられてる…!)

まゆ(この状態で…勝てるでしょうか…?)

「あ!みつけた!」「やっちゃおう!」

まゆ(でも…やるしかない…!)

ザッ

まゆ「!」

智絵里「まゆちゃんは私たちの大切な仲間なんだから…あなた達にはやらせないよっ…!」

ドガァッ

幸子「フウ…」ゼェゼェ

麗奈「う…うそでしょ!?一人で…こんな何人も…!これはまぐれじゃないの!?」

幸子「後何人いるのか知りませんが…あなたを倒すのは時間かかりますね…」ハアハア…

麗奈「怯むんじゃないわ!あいつはもう立ってるのがやっと!一気にやるのよ!」

ウオオオオ

幸子(…何やってんですかボクは…)

幸子(こんなくだらない所で…安っぽく体張って)

幸子(まゆさんのためかな?…いやたぶん違う?)

幸子(…今は考えてるヒマはありません)

幸子(今あるのは どう歌うか)

幸子(どう戦うか それだけ)

幸子(それすらいずれ頭の中から消え去る そして…)

幸子(そして 心臓の鼓動だけに)

智絵里「ごめんね遅くなっちゃって…」

まゆ「」ヨロ…

智絵里「ちょ…ちょっと」

まゆ「…急いで…」

智絵里「え?」

まゆ「…あの子が」

まゆ「幸子ちゃんが…はやく!」

智絵里「幸子ちゃんが…どうしたの…?」

まゆ「こっちですはやく…」

智絵里「あ…誰か支えてあげて!」

まゆ「そんなのはいいです!」

まゆ「私を逃がすためにあの子は…一人で敵の中に残ったんです!はやくしないと…!」

智絵里「……」

智絵里「わかりました!」

まゆ(…間に合って…)

まゆ(間に合ってください…!)

まゆ「ここです!」ザッ

智絵里「人がいっぱい……これ全部幸子ちゃんが…?」

まゆ「…!」キョロキョロ

まゆ「あ!」


幸子「」


まゆ「幸子ちゃん…!」

智絵里「!」


幸子「」


まゆ「…!」

まゆ「幸子ちゃん!」ユサユサ

まゆ「ねえ!」

幸子「…うるさいですねえ…」グイ

幸子「ゆすらないでくださいよ…疲れてるんですから」

まゆ「幸子ちゃん!!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

まゆ「みんなどいてください!急いでるんです!」


杏「戻ってきたね」

みく「やっぱり大丈夫だったにゃ、しぶといにゃあ」


幸子「大げさなんですよ!一人で歩けます!」

まゆ「動かないでください!」

幸子「みっともないですよこんなの…」

まゆ「……」


幸子「イタタタタ!痛いですって!」

マストレ「あれだけ無茶をしたんだから当然だ」グイグイ

マストレ「しかしなかなか丈夫だな、今後の活動に問題はないだろう」

智絵里「大丈夫ですか?よかった…」

マストレ「だが今回のイベントはもう無理だな、しばらく休まないと」

まゆ「!」

幸子「何言ってるんですか!このカワイイボクが参加しないなんてファンが泣いちゃいますよ!」

幸子「何が何でもこのイベントの最後までやりますからね!」

マストレ「…ほう?私のいう事がきけないと…?」ポキ

幸子「あー凄く休みたくなってきました!わかってますよもちろん!」

杏「杏も体中ボロボロだから休もうっと!」

マストレ「君はこっちでレッスンだ」ガシ

杏「あー!誰か!誰か助けて!」ズルズル

智絵里「まあとにかくよかったね…二人とも無事で」

幸子(どのあたりが無事なんでしょう?)

智絵里「ところでPさんは…?」

かな子「Pさんは会議ですって」

かな子「今朝出かけて、明日までは戻らないそうです」

まゆ「……」シュン

みく「せっかく二人が戻ってきたっていうのに…タイミング悪いにゃ」

まゆ「……」スタスタ

智絵里「! まゆちゃんは大丈夫なの?」

まゆ「私はいいです…」

まゆ「私のは…ケガとかではないですから…」

かな子「……」

智絵里「……」

みく「?」

幸子「……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「いや~一時はどうなることかと思ったよ」

「今回ばかりは幸子ちゃんに感謝しないといけないよね」

まゆ「皆さんには心配かけましたね…ごめんなさい」

「それにしてもPさんもこんな時にいくら会議だからって冷たいよねー」

「ちょ…ちょっと!」

まゆ「……」

『…帰るんですね…Pさんの所にね』

まゆ「……」クスン


智絵里「まゆちゃん」

智絵里「ちょっと来てくれる?」

まゆ「何ですか?」

智絵里「まゆちゃんには話しておこうと思って…」

智絵里「二人を探しに行くようPさんに言いに行ったとき…」

智絵里「周りの人たちがなんか反対してたんだけどね…」

智絵里「でもPさんは言ってたよ…きっぱりと」



『P殿お分かりでしょうな?』

『イベントではまず敵に打ち勝つことこそが大事!』

『だからその最中たかが二人ごときに…』

ボゴッ

『ゲフッ』

P『うるさい!!』

P『お前バカか?川に落っこちた女の子ほっとくなんて頭おかしいんじゃないか?』

P『………コホン』

P『あの二人は鷹の団の要です…失うわけにはいかない』

まゆ「…Pさんが」

智絵里「うん、Pさんにそこまで言わせるんだから凄いね…」

智絵里「正直少し妬けちゃった…」

智絵里「!」

まゆ「…うふ」ポロリ

智絵里「……」ニコ

智絵里「それからこれ…幸子ちゃんと二人で分けてね」

まゆ「金平糖と…八つ橋ですか」

智絵里「私のお気に入りですよっ!」

まゆ「…ありがとう智絵里ちゃん」タ…

智絵里(…なんか急にしおらしくなっちゃって…何があったのかな?)


タタ…

まゆ「……」キョロキョロ

まゆ「あ…!」


幸子「……」

幸子「…ん」チラ

まゆ「……」

幸子「……」

まゆ「…いいんですか?寝てなくて」

幸子「体がほてって眠れませんよ、外にいた方が涼しくていい按配です」

まゆ「……」

まゆ「お夜食です…一緒に食べましょう」

幸子「……」モグモグ

幸子「おいしいですね…なんだか体が軽くなります…」

まゆ「少しですけど回復効果もあるみたいなんです」モグモグ

幸子「……」

幸子「ちょっと聞きたかったんですが…なんで具合が悪かったんですか?」

まゆ「……」

まゆ「……」

まゆ「……えっとぉ…その…恥ずかしいんですけど…」モジモジ

まゆ「Pさんが…その…喜ぶと思って…内風呂で待ってたんです…」

まゆ「でも…全然来なかったのでのぼせちゃいまして…体中があつくて…」

まゆ「そのあと薄着で涼んでたんですけど…そのまま寝ちゃって…風邪を…」

幸子「……」

まゆ「………ごめんなさい」

幸子「ずいぶんと大胆なことをしますね…まあ過ぎたことですしいいですよ」

幸子「それに…気にすることはないんですよ?」

まゆ「え…?」

幸子「あれはボクが勝手にやったことです」

幸子「別にあなたのためってわけじゃありません…」

幸子「逃げ回るより戦ってた方が性に合うんですよ ボクは…」

まゆ「性に合ってるというだけで…あんな人数と闘ったっていうんですか…?」

幸子「……」

幸子「ええ」

幸子「戦うたびにボクのカワイさを他の人に見せつけてあげられますからね!」

幸子「それにあの子には借りがありましたから」

幸子「夢中で戦ってたからどうなったかわかりませんが…」

幸子「…ですが」

幸子「正直言いますとあの時はこうも思いました…」

幸子「あなたがやってることに比べれば…」

幸子「ボクが何人と戦ったとしても…どうでもいいことなんだって…」

まゆ「……」

幸子「あなただけじゃない…Pさんもそうです」

幸子「生きてることをまるまる賭けられる程のものを持ってる…」

幸子「凄いと思いますよそういうのって…」

幸子「…それに比べれば…ボクが行き当たりばったりで何しようが」

幸子「そんなことは大したことないって…そう思ったんです」

まゆ「幸子ちゃん……」

幸子「いい眺めですね」

まゆ「…え」

幸子「千佳さんは…いつも魔女っ娘になりたいって楽しそうに言ってます…」

幸子「魔法でみんなを幸せにするんだって…ボクほどじゃないですけどカワイイですよね」

幸子「小春さんはヒョウくんってイグアナをペットにしてて…お姫様になりたいって頑張ってます…なれるといいですね」

幸子「…こうして女子寮の外から眺めていると」

幸子「何だかあの部屋の明かり一つ一つに…」

幸子「皆さんのちっぽけな夢や思いが宿ってる…」

幸子「そんな風に見えてきます」

まゆ「夢のかがり火…………ですか」

幸子「うまいこといいますね」

まゆ「うふ、まゆも夢見る女の子ですから♪」

幸子「そうやって一人一人が小さな火を持ち寄ってここに集まってるのかもしれませんね」

幸子「…そしてその吹けば飛ぶような小さな火を絶やさないように」

幸子「一番大きな炎に自分の火を投げ込むんです…」

幸子「Pさんという…大きな炎にね」

まゆ「……」

幸子「…でもね」

幸子「ここにボクの火はありません」

まゆ「……」

幸子「…ボクは」

幸子「ボクはその篝火で…ちょっと温まっていこうと…フラッと立ち寄っただけなのかもしれませんね」

まゆ「…幸子ちゃん」

幸子「ボクは…どんなイベントでも生き残る自信があります…実際今までだってそうでした」

幸子「鷹の団に入る前だって…どんなきつい戦いでもボクは生き延びてきました…今回だって」

幸子「…でも…そんなことに大した意味はないんです」

幸子「ボクは確かに一番カワイイです…」

幸子「でもアイドルになったきっかけはスカウトされたからでした」

幸子「ボクの可愛さを広めたいという目標は確かにあります…ですが」

幸子「今までやってきたのはお仕事だからで自分の意志じゃありません…」

幸子「アイドルとして一番大切な…トップアイドルを目指す理由を」

幸子「ボクはいつも他人に預けようとしてたのかもしれない…」

まゆ「幸子ちゃん…あなた…」

幸子「ふふん…しまらないですね…グチャグチャとグチばっかりで…」

幸子「なーんでこんな事あなたなんかに話しちゃったんでしょうか…」

幸子「ボクとしたことがなさけないですね」

まゆ「お互い様です…」クス

まゆ「!」

まゆ「幸子ちゃん…あなたまさか!」

まゆ「まさか…鷹の団を…」

まゆ「やめるつもりじゃ…?」

ザワザワ…

幸子「言ったでしょう?何が何でもこのイベントの最後までやるって」

まゆ「……」

まゆ「…それじゃ…そのあとは…」

杏「幸子ー!まゆー!」

杏「プロデューサーが帰ってきたよー」

杏「二人が無事だって聞いて予定を一日繰り上げたんだってさ」

まゆ「!」

幸子「……!」ニヤッ

P「……」

幸子「Pさん」

P「……」ニコ

まゆ「……」

まゆ「ごめんなさいPさん…私のせいでみんなの足を引っ張ってしまいまして…」

まゆ「体調が悪いのに出たのは私のミスです…どんな処分でも…!」

幸子「……」

オシリスパンッ

まゆ「きゃあああ!」

まゆ「…な、何するんですかバカあ!」ギュッ

P「おっと」ギュッ

まゆ「あ…」

P「おかえり」ニコ…

まゆ「……」ジワ…


ヒューヒュー
イイゾイイゾー


まゆ「…///」カア


幸子「それじゃ向こうでジュースでも飲みましょう!」

千佳「えーいいの?もう夜だよ」

幸子「いいんですよ!あれだけ頑張ったんですから少しくらい平気です」

千佳「太っても知らないからねー!」


まゆ「……」

P「どうした?」

まゆ「え?なんでも…」

まゆ(……)

まゆ(あの子…本気で…?)

―――――――――――――――――――――――――

幸子「次のフェスの相手が決まったって?」

幸子「いーんじゃないですか?どこだって…」

幸子「イベントなんて勝つときは勝つし負ける時は負けますよ…まあボク自身は負けませんけどね!」

まゆ「……」

幸子「? 何か気になることでもあるんですか?」

まゆ「え?いえ…」

幸子「だーいじょうぶですよ、今までだって似たようなことは何度もあったじゃないですか」

幸子「冷静沈着な彼が自分から買って出たんです、勝算あってのことでしょう?」

まゆ「冷静で…いられればいいんですけど…」

幸子「…え?」

まゆ「あの時あなたに話しましたよね?昔、まゆたちが地方のイベントになんかした時の事…」

幸子「……ええ」

まゆ「その時のハゲた人というのがその財力にものを言わせて今じゃ出世してまして…」

まゆ「ある大きなプロダクションの副社長をやっています」

幸子「……」

幸子「それってまさか…」

まゆ「次の相手のプロダクションの総合プロデューサー…それが…今のその人の肩書です」

幸子「!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「よく無事だったね麗奈ちゃん」

麗奈「あったりまえよっ!」

麗奈「時には戦略的撤退をする!これも大事な事なのよ」

「ただ逃げただけじゃ…」

麗奈「それにしてもあの女!今度あいまみえたときこそは…決して逃しはしないわッ!」ガァ!

「おい!レイナ!」

麗奈「げえっ!光!」

光「聞いたぞ!なんでも弱ってる二人を相手に何人もで襲い掛かったらしいな!」

光「そんなひどいことをするなんて!正々堂々とやれよ!」

麗奈「うるさいわねこのヒーロー気取り!」

麗奈「ツアーとかだって十人が一人相手に戦ってたりするでしょ!勝てば官軍よ!」

光「それとこれとは話が別だろ!大体負けてるじゃないか!」

麗奈「ぐぬぬ…」

光「いいか!次はアタシが一人でやる!レイナはさがってろ!」

光「ヒーローは…かっこよく勝たないとダメなんだ!」

麗奈「アタシよりチビのくせにこのレイナサマに命令してんじゃないわよ!」

光「小っちゃくない!!140cmはある!」

光「それにレイナの方が年は下だろ!年上のいう事を聞け!」

麗奈「うっさいチビ!」

光「なんだと!」


ギャーギャーワーワー


ハゲ「うるさい!何ケンカしてるんだ!」バンッ

麗奈「チッ!戦略的撤退よっ!」ダダダ

光「あー!逃げるなこのー!」

ハゲ「まったくお前らケンカしてばかりだな…」

光「ご、ごめんなさい」

ハゲ「まあいい…それより次の対戦相手が決まったぞ」

ハゲ「お前も知ってるだろう?鷹の団…」

光「おおっ!それは!」

ハゲ「嬉しそうだな?」

光「聞いた話じゃ常勝無敗!最強の事務所だって話じゃないか!」

光「強い相手ほど燃えてくるだろ!楽しみだな!」

ハゲ「そうか…まあ期待してるぞ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

智絵里「どう?体の調子は…」

幸子「ええ、貰ったお菓子のおかげかずいぶんいい感じですよ、ありがとうございます」

幸子「トレーナーさんもなんだかんだでドリンクくれましたし…すっっっごくまずかったですが…」

智絵里「それにしても…大丈夫かな…」

智絵里「今回の相手は守備全振りの守極の要塞って言われてるって話だよ」

幸子「なーに、ちょっとばかり強いだけですよ…」

幸子「いつも通りPさんの段取りなら大丈夫ですって」

智絵里「だといいけど…」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

光「くうぅ~燃えてくる!ヒーローとして!この戦い!負けられないね!!」

光「それに相手の強い子…アタシと同い年で身長もほとんど変わらないらしい!よかった!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ハゲ「…フフ…Pか…」

ハゲ「再びこうして奴と巡り合えるとはな…何たる幸運よ」

ハゲ「あの一夜の事…今でも忘れられぬわ」

ハゲ「やつは美酒…」

ハゲ「同じ量の黄金と同等の価値を持つ…幻の火酒よ」

ハゲ「あの夜の火傷はまだ癒えぬ…必ず再びこの手にしてみせるぞ恋人よ」

赤城みりあ(11)
http://i.imgur.com/jEq0T28.jpg
http://i.imgur.com/NNKrbV9.jpg

南条光(14)
http://i.imgur.com/p1HzLvX.jpg
http://i.imgur.com/b0Oq4Qp.jpg

P「幸子…大丈夫か?」

幸子「フフーン!ボクを誰だと思ってるんですか!」

P「はは、そうだな」ニコ

P「よし…そろそろ始めるぞ」

幸子「……」


『冷静で…いられればいいんですけど…』


幸子「フン!」

幸子(そんなことないですよ…彼に限って、そんなことありえません)

幸子「……」

幸子(…これが…最後ですね)

幸子(この事務所の下で歌を歌うのは…多分これが最後…)


P「第一陣前へ!」


幸子(…でも)

幸子(ケジメだけはきっちりつけます!)

幸子(チームのトップバッターとしてのケジメだけは…きっちりと!!)


P「第一陣!行けェ!」

「相手が動いたよ!」

光「きたか!よし…受けて立つぜ!」

光「こっちも行くぞっ!出撃だ!」


「あれがウワサに聞く鷹の団のチームだね!」

「こっちもいまだ負けたことはないんだから!望むところ…」

幸子「邪魔です!!」

ドガッ!!



「うわあ突っこんでくる!止まらないよ!」

光「なに!?」

光「中央突破で一気にリーダーを倒す…それが向こうの狙いか!」


幸子「敗北なんて知りません!」

光「正義の味方は負けない!」


ドガアァッ


DLOW!

光「むっ!」

幸子「くっ!」


千佳「幸子ちゃんに続くよー!」

ゴゴゴゴゴ

「そんな…止まらない!」

「今までどんな相手でも負けたことがないのに…進むどころか押されてる!」


光「あの子だな…レイナ達を倒したっていうのは…」

光「本当に強いな!だけどこっちだって負けちゃいられない!」

光「みんな怯むな!こっちの方が人数も多いんだ!押し返すぞ!」



ハゲ「ほう…奴らもなかなかやるな…」

ハゲ「だがしょせん多勢に無勢、ここら辺が限界だな」

ハゲ「さっさと勝利し…そしてPを再び私のものに…」

ハゲ「よし、私が直接指揮してやる」

幸子「うぐ…」

幸子「そろそろ潮時ですよ!Pさん!」



P「全員撤退だ!」

幸子「ふふ…」

幸子「みなさん!逃げますよ!」

「はーい!」「逃げるんだよォーッ!」


「光ちゃん!相手は逃げて行ったよ!追いかけよう!」

光「変だな…」

「え?」

光「こんな攻め方じゃ最初から結果は目に見えてたはず…」

光「これが本当に常勝無敗の事務所のやり方なのか?」

「光ちゃんは相手を買いかぶりすぎなんじゃない?苦し紛れに一点突破でどうにかしようとしてたんでしょ」

「相手はしょせん無課金軍団、私たち相手に残された策はそれくらいしかなかったんだよ」

「それより早く追いかけようよ!みんなアイドルランクを上げるチャンスだって沸き立ってるよ!」

光「う~ん…だけどなあ…」


ハゲ「光、何をしているんだ」

光「プロデューサー」

ハゲ「敵は逃げていくぞ?みすみす勝機を逃す気か?」

光「いや…でも」

ハゲ「全員に告げる!」

ハゲ「あいつらにとどめを刺した者にはアイドルランクを二階級特進を約束する!報酬も思いのままだ!」

光「プロデューサー!そんなこと言ったら…」

ハゲ「いいんだ」

光「それに…相手はあれだけ自信満々に突っ込んできてすぐに逃げて行ったんだ」

光「これを追いかけるなんてどんな物語でも罠だって相場が決まってる!危険だよ!」

ハゲ「光!!」

ハゲ「この私の指示だ!全員敵の追撃に移れ!!全員に伝えるんだ!」

「光ちゃん…」

光「くっ…仕方ない!罠だとわかっていても臆さないのがヒーローだ!全員敵の追撃に移るぞ!」

ドドドドド…


幸子「うわあ何十人もいる!これはいつかみたいに一人で足止めできる量じゃないですね!」

幸子(でも予定通りみなさんPさんに食いついてきました…)

幸子(…そう 何もかもあなたの手の平のなかってわけですか…)

幸子(いつもそうでしたね…)

みく「にゃは…あれ全部相手にしようっていうのかにゃ…?みく達」

智絵里「すごいね…」

P「陣形を整えろ!」

P「ここが正念場だ!逃げ場もない!!」

P「命を捨てろ!それ以外生き残る道はない!!」

P「生き残れば!オレたちの勝ちだ!!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ヒュオオオオオ…


「あーあいったいどうなってるんだろうね」

「まあ万に一つもこっちが負けるなんてことはないよ」

「相手にとどめを刺したらランクが上がって報酬もいっぱいだってよ?」

「無理無理、倍率高すぎだよ…ん?」

「………………!!!」ガタッ

「ど、どうしたの?」

「あ…あれ!みんな!空から女の子達が!」

「嘘っ!?」


ヒュウウウ…

まゆ(まあ幸子ちゃんは経験者らしいですし…サプライズ効果も大きかったみたいですし仕方ないですね…)

まゆ(でもこんなノルマンディー上陸作戦みたいなことをアイドルがやるなんてビックリです)


ドサッ


まゆ(こ…怖かった…)ドキドキ

まゆ「フウ…」

まゆ「うふふ…やっぱり本陣は手薄ですねぇ…」


「空からとかアイドルがやることじゃないでしょ!お笑い芸人の領分じゃん!」


まゆ「勝てればいいんですよ…みなさん!行きますよ!」

「よーし!いくよ!」「おー!」

まゆ(みなさんスカイダイビングしても全然ひるんでないなんて、元気すぎですよぉ…すごいです)

まゆ「第一隊はほかの人たちに情報を伝えないようにしてください!ほかは全員予定の行動に!」


麗奈「む…あれは…」

まゆ「急ぎますよ!出入り口を抑えるんです!」

ドゴォン…

「きゃあ!」

まゆ「!」


麗奈「フフフ…」

麗奈「アーハハハハ!ゲホゲホッ…」

まゆ「…またあなたですか…ほんとにしぶといですねぇ」

麗奈「アハハハ!この世から悪は滅びたりはしないのよッ!」

麗奈「フフフ…アンタ達みたいなザコ共の考えなんてこのレイナサマ!とうの昔にお見通しよッ!」

麗奈「だからこのレイナサマ自らここの防衛を買って出て、こうしてアンタ達がノコノコ現れるのを待ち構えていたってワケ!」

まゆ「うそですね、置いてけぼりにされたんでしょう?」

麗奈「………嘘じゃなーい!出てきなさい!」

「「「はーい!」」」

ザシャアア…


まゆ「むっ…」

麗奈「見たか!この時のためにアタシが残しておいたレイナサマの手下たち!」

麗奈「アンタ達みたいなザコ軍団に引けを取ったりはしないわッ!」

麗奈「いい!?一人たりとも生かしてここから出さないわよッ!」

麗奈「かかれっ!!」

ワアアアッ


麗奈「さあ来いザコ共!みりあたちの敵…今こそ討ってくれる!」

麗奈「もう容赦はしないわ!今度という今度こそ…全員泣かせてあげるわッ!」

まゆ「…!」ザッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ハゲ「え~~~い何をしてる!まだ勝てないのか!?」

「意外と相手の抵抗が激しくて…」

「どうやらすごく強い子がいてなかなか大変みたいです」

ハゲ「何ィ~!」


ドガガガッ

幸子「フフーン!」


「強い!だれか止めないと!」


ドン!

光「長い眠りから覚めたひとりのアイドルが、今歩き出す!その名は…南条光!!」

光「…というのはどうだろう!今新たな伝説を作ってみせる!」

幸子「ボクに挑もうだなんて、やる気がありますね!すごくうれしいですよ!」

幸子「とってもとってもカワイイボクが皆の前で証明できるときが来たんですから!ボクが一番ってことをね!!」

光「世界の平和はアタシが守る!」

幸子「ボクに跪きなさい!」

ドカアッ!

ドゴンッ!

バキィンッ!

ガガガガガガ!


「す…すごい戦い!」

「これじゃ近づいたら巻き込まれるよ!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ドガッ

麗奈「きゃあああ!」

まゆ「………」

麗奈「な…なんで!?あの時アタシに手も足も出なかったアンタが…!?」

まゆ「あの時は体調が万全じゃありませんでした…私には私の都合がありますから」

麗奈「体調…都合って…えっと…///」カア

まゆ「風邪をひいていただけですっ!!!!」


まゆ「敵は少数です!ひるまず押し切りますよ!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

みく「にゃ~!これじゃ全滅は時間の問題にゃ!」

杏「あー疲れた…もうやめていいかな」

かな子「だめです!それに今ここでやめたら飴はもう二度ともらえませんよ」

杏「えっ」

かな子「それどころか印税生活の道も途切れちゃいますよ?いいんですか?」

杏「うぐぐ…飴…印税生活…でも仕事は…」

かな子「はい、飴ですよ♪」スッ

杏「飴うまー♪」コロコロ

杏「くっ!この飴が!印税生活が!途切れてしまうくらいなら少しくらいなら働いたほうがマシだーっ!!」

みく「にゃあ!杏チャンがキレたにゃ!」

ハゲ「ハハハ…!圧倒的ではないか我が軍は!」

ハゲ「それに引き替え光は…たかが一人相手に何を手間取っているんだ」


P(…幸子)

P「……」


幸子「ハアハア…」

幸子(…強い!)

幸子(今まで幾人と闘ってきましたが誰よりも強い!)

幸子(これは死ぬ気でやらないと…負ける!)

幸子(……)

幸子(…いえ)

幸子(あの時ほどじゃないですね…)


『にょわー☆』


幸子(あの時ほど…絶望的ってわけじゃ…)ニヤリ


光「いいねその不敵な笑み!アタシも燃えてくるよ!うおおおお!」ダッ

幸子「ボクも!本気でいきますからね!!」ダッ


バキィンッ


幸子「あっ!!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

麗奈「うぐぐっ!」ドサ

まゆ「うふふ…」

「麗奈ちゃん!」

麗奈「…っく…かくなる上はああ…」

まゆ「!」

麗奈「ごめんなさ―――っい!!」ドゲザ

まゆ「………は?」

麗奈「なにとぞお見逃くださーい!これまでの嫌がらせの数々!チッ、反省してまーす!」

まゆ「………」

「ちょっと麗奈ちゃん!いくらなんでもそれは…!」

「そりゃないよー!麗奈ちゃんのせいで全員居残りになっちゃったのに!」

「麗奈ちゃんすごくカッコわるーい!」

麗奈「うるさいわねッ!引き際を見極めるのも強者の器量なのよッ!」

麗奈「全部うちのプロデューサーやれって言ってたやっただけ!
    アンタ達に個人的な恨みなんて一切ないわ!
    たまたま敵同士になったばかりに戦わないといけないなんて
    運命とは悲しいものね、いやほんと
    それにアタシは強い者の味方だから、アンタ達は強い!
    だからアタシはあんたたちの味方ってワケ!
    事務所をブッ潰したいならハイどうぞ!
    アタシは邪魔しないわ!だから見逃してね!」

まゆ「……」

まゆ(こんな子相手に本気になってたんですか…私は)

麗奈「……」コソコソ

麗奈「と見せかけてアッハハハ!」ジャキ!

まゆ「!」

麗奈「アーハッハ!バカね!とっとと止めを刺しときゃいいものを!」

麗奈「レイナサマ特製バズーカ!破壊力はすごいわよ!」

麗奈「それともアタシが引き金を引く前に倒せるか試すのもいいかもねぇ?」クックック

まゆ「くっ…」
                                         バズーカ
麗奈「というわけで喰らいなさい!レイナサマ特製!『ウルトラレイナ様砲』!」カチッ

まゆ「…!」ギュ


ドゴォオォン…


まゆ「……」

まゆ「……」

まゆ「……?」チラ


麗奈「ゴホッ!ゲホゲホッ!なんなのよこれ!暴発するなんてゲホッ」

まゆ「……」

麗奈「ガハゴホ!クッ…レイナサマお手製のスペシャルバズーカで驚かせるはずだったのに…」

まゆ「……」ゴゴゴゴ…

麗奈「あっ」

まゆ「うふふ…あなたけっこう面白かったですよぉ♪どうしようもないおバカさんですけど♪」ニコォ...

麗奈「……」

麗奈「えっと…ごめんなさいって言っても無理…よね」

まゆ「うふ♪」

麗奈「戦略的撤た

まゆ「逃がしませんよぉ」ガシ

まゆ「悪い子には…お仕置きです♪」ス…

麗奈「あ…」ガタガタ


まゆWIN!

幸子「……」

幸子(まいりましたね…マイクが壊れるなんて…)

光「残念だな…こういう幕なのは」

幸子(どう…しましょう!?)


ヒュウウゥ

「にょわ…?」


光「ヒーローとしてはフェアに行きたいけど、こっちも余裕はないからな」

光「まあ勝負は時の運だし…ちゃんと整備しておかなかった責任もある」

光「だから容赦はしない!行くぞっ!」


「あれー?あの子もしかしてピーンチかにぃ?」

「それじゃ助けてあげゆ☆いっくよー☆」ブンッ


幸子(…まずい!このままだと負けてしまいます!)


ヒュウウウゥ

ドガアァッ!


幸子「!?」

幸子(マイク!?)

光「何っ!?」

P「幸子!そのマイクをとれ!」

幸子「っ!」

ガシッ

幸子「い、いきますよ!」

幸子「              !!」

光「!?」

P「え!?」

幸子「あれ!?こ…これ…」

幸子(飛んできた時の衝撃で壊れてるじゃないですか!!!)

光「なんだ…!?驚いたけど…それも壊れてるのか…」


光「ならば止めだッ!必殺技は最後まで取っておくもの!行くよ…」

光「大地で、大海原で、大宇宙で!時空も超えるスーパーヒーロー南条光!」

光「『SAMURAI STRONG STYLE』!!」


沈み切ったこの世界 誇りさえ見失い
闇の中 佇んで 孤独に這う

誰かが君を呼んでいる声が 聴こえないか
俺達 愛する者 守るため 生まれて来たんだ

熱く 勇ましく SAMURAI STRONG STYLE
正義とこの歌を君に届けよう
タフに風切れ FIGHTING FOR TOMORROW!!
男達は 闇夜を超えて 駆け抜ける
SAMURAI STRONG STYLE

光(カンペキに決まった…)フッ

幸子「く…」

光「この戦い…楽しかったぞ!」

スタッフ「ちょっと!南条ちゃん!」

光「だけど最後はアタシの勝ち…え、あ、なんだ?」

スタッフ「その曲はマズイって!なんで急にその歌なの!?」

光「カッコいい曲だからな!マズイって何が?」

スタッフ「その曲は版権の問題があるんだ!この部分放送できないよコレ!」

光「えっっ!!!」

幸子「えっ」

スタッフ「せめて事前に確認してくれればよかったのに…」

光「え…っと…」

幸子「どうするんですか…」

光「く…くそぉっ…!」

光(どうする南条光!?)

光(こんな…こんな終わり方でいいと言うのか!?)

光(それでもヒーローなら…)

光(それでもヒーローならきっとこう言うはずさっ!!)


光「戦略的撤退をするぜっ!」

幸子「ちょっと!逃げるんですか!?」

光「次に会う時を楽しみにしているぜ!じゃあな!」ダダダダ


――版権問題に触れた彼女が再び世に出てくるのは、実に20か月以上も後の事である




「そ…そんな!あの光ちゃんが…!」

ハゲ「ぐうう…!光の役立たずがああ!」

「ああっ!プロデューサーあれ!」

ハゲ「何だ!?」


守備コスト:6


ハゲ「な…こんなバカな!」

「い…いつの間に!?」「何が起こったの…!?」

幸子「ふ…ふふーん!まだわからないなんておバカさんですね!」

幸子「リーダーは逃げて!守備コストはほとんどゼロ!となったら決まっているでしょう!」

幸子「負けたんですよ!あなたたちは!」

幸子「まあボクに勝とうなんて最初から無理がありますから仕方ないですけどね!」フフーン

P「よしっ!今からさらに集中攻撃を行う!相手は逃げるならいいが…」

P「抵抗をするなら一人残らず倒してしまえ!」


「このままじゃやられちゃう!」「に…逃げよう!」

ワアアアア…

ハゲ「バ…バカ!誰が逃げろと言った!返せ…戻せェ!」

ハゲ「ま…まだドリンクを飲みまくれば!まだ勝機は…」

ドンッ

ハゲ「ぐわ!」ドサァ

ハゲ「ぐ…くそ…」

ザッ

ハゲ「!」

P「……」

ハゲ「P…!」

P「お久しぶりですPaPさん」

ハゲ「あ…ハハ…」

ハゲ「Pよ…かつての誼だ…」

ハゲ「ど…どうかこの場は見逃してくれまいか?」

ハゲ「お…お前と私の仲だ…今は不幸にして敵味方になってはいるが…」

ハゲ「あの日以来私はお前を探し続けてきた…」

ハゲ「こうして再び巡り合える日を待ち焦がれていたのだ!そのためにどれだけ私財を投じたことか…」

ハゲ「…あの夜のことお前とて忘れたわけではあるまい?一夜限りとはいえ恋い焦がれた仲だ…」

ハゲ「かつてその身を預けたものの頼み聞き入れてくれないか?」

P「・・・・・・」

ハゲ「……」

ハゲ「ま…まさか…?」

ハゲ「まさか…?恨んでいるのかこの私を…?」

P「……」

P「恨んでなどいませんよ」

ハゲ「おお…それでは…」

P「ですが恋い焦がれたなどと言われては心外です」

P「私はあなたに対して何の感情も持ち合わせてはいません」

P「恨みも、好意も…何も」

P「たまたまあの時そこにいたあなたを利用させていただいたまでです」

P「私の歩く道端にたまたまあなたという石コロが転がっていた…」

P「ただ…それだけです」

ハゲ「き…貴様…!」

P「ですが」


ドシュッ

ハゲ「がっ…」


P「この先あなたのそのよく開く口で…」

P「CuPはホモだのと、くだらぬ噂を振りまかれるのも…少々都合が悪いのです」


ハゲ「」

ドシャアアァ



P「……」

スタスタ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

まゆ「フウ…」

まゆ「!」

幸子「……」スタスタ

幸子「まゆさん、お疲れ様です」

まゆ「ええ……」ニコ

チラ…


ワーワーワー
ワイワイ

P「……」ニコニコ


まゆ「すごいです…」

まゆ「……」ポロ...

幸子「…どうしました?」

まゆ「おかしいですね…」グス

まゆ「ほんとうは…いつも思うんです」

まゆ「イベントが終わってああしてみんなの中で勝ったことを喜んでいるPさんを見ていると…」

まゆ「なぜだか手の届かない…遠い存在に思えてきて…切なくなるんです」ポロポロ

幸子「……」

幸子「…」

幸子「…そんなことないですよ……」

まゆ「え…?」

グイッ

まゆ「キャ…!」

まゆ「ちょ…ちょっと…」

幸子「ここでこうして眺めていたってらちが明かないでしょう?」

幸子「行きましょう…あなたのプロデューサーの出迎えに」

まゆ「…!」

まゆ「はい!」

タタタ…

幸子「……」

幸子(あの時のマイク…まさかね…)



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ヒュウウウゥ

きらり「にょわー☆」

きらり「マイクが壊れちゃうなんてしっぱいしっぱい☆しゅーん…」

きらり「でも助かってよかったにぃ!」

きらり「でも…もうすぐ…あの人もきっと…」

―――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――

重役A「Pがこのプロダクションに来てからというものここ最近の出世ぶり…」

重役A「やつめとんでもない野心家よ!自分の身分もわきまえずに厚かましい事この上ない!」

重役B「フェスも終わり…これでひとまずは永きにわたったこの戦いも終わる」

重役B「そうなればアイツは必ず会社の内部にまで口を挟んでくるに決まっている!」

重役B「あんな奴に会社の運用がわかるものか!」

重役C「しかし社長もずいぶんとあいつを信頼されている様子…」

重役C「私の入手した情報によると社長は今回の功績でやつにCEOの立場をと…」

重役A「何という事だ!そうなればやつの発言力はかなり大きく…!」

重役C「これはやはり…」

重役C「会社の中で生き延びるには…奴は少々慎みに欠けたということです」

重役B「しかし…いったいどのような手立てで…?」

重役C「……」

スッ

重役B「! それは…?」

重役C「エナジードリンク…ご存知ですよね?」

重役C「それを濃縮したものがエナドリチャージ10なわけですが…」

重役C「これはその原液をさらに濃縮を重ね…『エナドリチャージ1000』となった物です」

重役A「それはいったいどのような効果が?」

重役C「エナジードリンクというものは飲めば体が活性化し、興奮作用や覚醒作用があります」

重役C「それにより体力なども回復し活動を行うことができるのですが…」

重役C「しかしそれがいい効果であるのはある程度の量の摂取の場合のみ」

重役C「多量に飲めば視覚異常・消化器異常・痙攣・精神錯乱などの症状を起こし…致死量を超えれば死に至る」

重役B「なるほど…!しかもエナジードリンクはプロデューサーにとって身近な存在で死因になっても違和感はなく…」

重役B「さらに体内を調べても特別な毒物が検出されるわけではない!」

重役A「し…しかし大丈夫なのでしょうな?万が一にも我々の企みが明るみに出るようなことには…」

重役C「ご心配なさるな…間違ってもそのようなことはございません」

重役A「し…しかし…」

副社長「案ずるな」

副社長「もしお前たちの言うようなことがあったとしても私が必ず内々に処理する」

重役B「これは…」

重役A「副社長よりその言葉さえ頂ければ何も怖いものはございません」

副社長「皆の者きくがいい…
    この計略はあの男によって今後脅かされるであろう
    お前たちの地位の安泰を計るためであると同時に
    いずれはこの会社を腐らせかねぬ獅子身中の虫を
    その害が広がらぬうちに摘み取るためのもの…」

副社長「何よりも会社のため、大義のためだ!」

重役A「それは無論です…」

重役B「我らとて何よりも会社を愛するが故です」ハハ…

重役C(長々と心にもないことを…笑わせるわ)

重役C「それでは皆さん…」

重役C「我らが愛社精神と互いの信頼の証に…この血判状に印を―――」

――――――――――――――――――――――――――――――――
―祝賀会

みく「にゃは!ビシッとしないとなめられちゃうにゃあ!」キョロキョロ

杏「…なめ猫ってだいぶ古いよね」

みく「しかし何ていうか…みく達もようやくここまで来たって感じだにゃあ!」

杏「まあそうだねー、もしプロデューサーに出会ってなかったらもっと印税生活も遠かっただろうし」

智絵里「うん…ほんとにね…」

幸子「……」


「Pさん!」ドドド

「おかえりなさい!手作りドーナツをどうぞ!」ドナア…

P「…ありがとう」

「フゴフゴフゴゴゴ!(おいしいパンもありますよ!)」

P「(……?)あ、ありがとう…」

「この一皿で黙らせます」つイチゴパスタ

P「・・・・・・・・・・・・・・・・・」ウップ



智絵里「大人気だね…」

かな子「うーっ!ひとつくらいこっちに回してほしいですー!」

杏「…でもすごく大変そうなんだけど」

みく「食べ物を押し付けられるツラさ…みくにはよーくわかるにゃあ」

幸子「……」

まゆ「あ、幸子ちゃんちょっと来てくれますか…?」

幸子「? なんですか?」



まゆ「ふぅ…どうしてもああいう騒がしいところは苦手なんですよぉ…」

幸子「あ、そうなんですか」

幸子(たぶんPさんが女の子に囲まれてるのが嫌なんでしょうね…)

まゆ「でも幸子ちゃんはどうしたんですか?今までなら…」

まゆ「『フフーン!もっとボクを崇めてもいいんですよ!』」

まゆ「とか言って楽しんでそうなのに今日は随分おとなしいですね?」

幸子「……」

幸子「…静かに…見届けておこうと思いまして」

まゆ「…え?」

幸子「皆さんと出会ってからのこの3年間…Pさんとボクや皆さんが何をやってきたのか…」

幸子「彼が今どんなものを手に入れて…そしてこれから何を手に入れようとしているのか」

幸子「それを見届けておこうと思ったんです」

まゆ「…幸子ちゃん…」

まゆ「あなた…やっぱり本気なんですか…?」

幸子「……」

まゆ「…どうしても?」


ワアアアア

「社長ばんざーい!」


幸子「主催者が来ましたね」

幸子「先にみんなのところ行っててください、ボクは少し休んでます」

まゆ「……」

まゆ「早く来てくださいね」

幸子「わかってますよ」

幸子「……」

幸子「まゆさんは…」

まゆ「え?」

幸子「……」

幸子「いえ…なんでもありません」

まゆ「…?」

スタスタ


幸子(…ボクが今静かなのにはもう一つ理由がある)

幸子(これからここで起ころうとしてることについて…まゆさんや鷹の団の皆さんは何も聞かされてません…)

幸子(…少し酷いんじゃないですか?Pさん…)

――――――――――――――――

―――――――――――

社長「少々性急ではあるがめでたい祝いの席だ、皆に報告しておこう」

社長「明後日の任命式にて…私はPくんにわが社のCEOの立場を検討している」



オオオオオ…

パチパチパチパチ


まゆ「……!」

みく「最高経営責任者…すごいにゃあ!」

P「……」チラ


幸子「ふふ…!」

P「……」ニコッ



「く…」「な…何と!?」

桃華「凄いですわ!」

副社長「フン」

副社長(貴様の命もあと僅か…)

副社長(せいぜい幻の栄華に酔いしれるがよいわ)

重役A「そろそろですな…」

志保「お飲み物をどうぞ―♪」

重役C「あ、ちょっといいかな?」

志保「はい!なんですか?」

重役C「ここの飲み物をP君に持って行ってくれ」

志保「わかりました!」

カチャ…

重役C「……」ニヤ


志保「はい、どうぞ♪」

P「……」

P「ありがとう」スッ


社長「それでは新たなる若き英雄の誕生と」

社長「わがプロダクションの輝ける未来を祝し…」

社長「乾杯」


「乾杯!」

智絵里「ゴクゴク…おいしい!」

みく「お酒飲んでる人はすでに出来上がってるのが何人もいるにゃ…」

杏「ああいう大人にはなりたくないね」

かな子「わたしはジュースだから平気です!」ゴクゴク


まゆ「プロデュー…」


P「……」

ゴクッ



ガシャアアアン



まゆ「……?」


P「……」フラッ


まゆ「…!」


P「」

ドサッ


まゆ「P…さん…?」

まゆ「Pさん!!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

重役A「まさかこうもうまく事が運ぶとは…あっけないものですな」

重役B「これを段取りしたのは重役Cさんによるもの…見事なお手並みです」

重役C「いえ…そのような」

副社長「いや見事であったぞ重役C君」

重役B「これでようやくわが社も本来の威厳を取り戻すことができますな」

重役A「いやまったく…」

副社長「何はともあれ皆の者大儀だった…」

副社長「ん?」

チリチリ…

重役A「な…なんだ?この煙は」

重役B「と…扉が外から何かに抑えられていて開きません!」

重役C「く…」ドンドンッ

バキィィッ

重役C「やった!開いた…」

ゴオオオォ

重役C「うわあっ!火が!」

重役A「ヒイィィ!か…火事!?」

副社長「こ…これは…!?」

副社長「外に誰か…!」

バッ

副社長「!」


ゴゴゴゴゴ…

ザッ

P「……」

副社長「プロデューサー…!?」

副社長「プロデューサァァ!!」

副社長「な…なぜ…!?医者は確かに貴様は死んでいると…!!」

P「確かにそう思うでしょうね…そう仕組んだのですから」

P「ご存じなかったようですが…私の事務所には医者をやっているアイドルがいましてね…」

P「彼女に頼んで死んだことにして貰いました」

P「彼女にはちょっと驚かすためですぐに自分から教える…と言っておきましたが」

重役A「な…どうして今回のことを知っていた!?」

P「これもご存じなかったようですが…私の事務所には探偵の子もいるんですよ」

P「ちょっと皆さんを調べてもらい…怪しい人物を洗いました」

P「まあその子はまさかこんなことになっているとは思ってないでしょうがね」

重役C「バカな…お前はあの時あれを飲んだはず…!生きていられるはずが…」

P「…どうやらあなた方は机の上で物事を画策するのに慣れ過ぎているようですね」

P「確かに飲みました…しかしあなた方は現場の現実をよくご理解なさってないようで…」

P「第一線で働くのプロデューサーといえば日にドリンクを数百本飲んでも珍しくはない」

P「そしてそれが毎日のように続いているのです」

P「ドリンクには強い耐性ができているのでね…もっともあれだけ濃縮されていたので本当に倒れてしまいましたが」

副社長「おのれ…おのれプロデューサー…!」

P「あなた方がいろいろなことで私財を肥やしていたのも知っていたのでね…」

P「もうすぐあなた方はこの世から影も形もなくなるでしょう」

P「でもご安心ください、あなた方の資産は全て私が頂きますから」ニコッ


副社長「うわあああ…」

ゴゴゴゴ…

P「……」

スタスタ…


ザッ

幸子「全部終わったみたいですね」

P「……」ニヤ

幸子「しかしこれでまたひっくり返したような大騒ぎになりますね…重役の人が何人もいなくなるんですから」

幸子「でもおかげであなたの名前を口にする人は一人もいなくなったわけですね」

幸子「まさか死にかけた当人がやらせたことだとはだれも考えないでしょうし」

P「ひどいと思うか…?」

幸子「え?」

P「こんな薄汚い陰謀を行って…他人の資産も奪い取って」

P「…オレを」

P「ひどいやつだと思うか」

幸子「……」

幸子「なーに言ってんですか!今回のことは殴られたから殴り返した!それだけのことじゃないですか!」

幸子「それに物を盗った盗られたはいつものことでしょ?」

幸子「……」

幸子「…これがあなたの夢につながる道なんでしょう?」

幸子「そう信じてるんですよね?」

幸子「何言ってるんですか、今さら…」

P「……」

P「そうだな…」フッ


バン!

P「うおっ」

幸子「さあ帰りましょう!死人がいつまでもうろついてちゃまずいです!」

幸子「早いところまゆさんたちを安心させてあげないといけませんね」

P「ああ…」

幸子「あなた死んでたから知らないでしょ?」

P「え?」

幸子「ボクほどじゃないですけどまゆさんもとてもカワイイドレス着てたんですよ」

P「ほんとか!?」

幸子「ちゃんと褒めてあげてくださいね!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

P「……」

まゆ「プロデューサーさん…?」

P「……」ニコ

まゆ「プロデューサーさん!!」

みく「Pチャン!」

智絵里「プロデューサーさん…!」

かな子「プロデューサーさん!」

杏「プロデューサー!」


まゆ「プ…プロデュ…グスッ…ヒッ!」

P「心配かけたな…まゆ」

杏「大変だったんだよ?プロデューサーが倒れてからず―――っとまゆ、放心状態だったんだから」

P「……ごめん」

まゆ「え…?」

P「ドレス似合ってるよ」

まゆ「……」グス

ギュッ…


杏「ヒューヒュー」

みく「ニヤニヤ」



幸子「……」

幸子「ふふっ…」

スタスタ

―――――――――――――――――――――――

一か月後―――


幸子「……」

幸子(この衣装とも…お別れですね…)パサッ

ガチャ…

幸子「ふふ……」

バタン


まゆ「雪ですか…きれいですね…」

まゆ「あれ?」

まゆ「誰です?こんな時間に…」


ザッザッ

幸子「……」


まゆ「幸子ちゃん…!?」



みく「それでね!その猫チャンってのがとってもかわいくて…」

智絵里「あれ?」

智絵里「まゆちゃん?こんな夜更けにどこへ…?」

まゆ「はあ…はあ…」タタタタ

智絵里「…どうしたのかな?あわてて…」

みく「トイレじゃない?冷えるからにゃー」

まゆ「幸子ちゃん!」

幸子「!」

幸子「……」クル

まゆ「……幸子ちゃん…あなた…」

まゆ「出て…行くの?そうなの?」

幸子「……」

まゆ「……」

まゆ「ちょ…ちょっと待って…」

まゆ「あなたとはずいぶんとケンカもしたけど…一緒に頑張ってきた仲間じゃないですか」

まゆ「鷹の団も今までの苦労がやっと実を結びかけてる…何もかもこれからでしょう?」

まゆ「それを…こんな時に…」

幸子「もう…決めてしまったことですから」

まゆ「だけど…!」

幸子「このまま」

幸子「このまま…彼の夢に埋もれるわけにはいかないんです」

まゆ(…だけど…)

幸子「Pさんと…うまくいくといいですね、まゆさん」

まゆ「う……」

智絵里「ねえ…」

幸子「!」

まゆ「智絵里ちゃん…みくちゃん…」

智絵里「幸子ちゃん、ちょっとお話ししよう?」

幸子「はい…」

スタスタ



まゆ「……」

まゆ「……」

まゆ「そうだ…!」

まゆ(Pさんなら…)

まゆ(Pさんならあの子を止めてくれるかもしれない…!)

幸子「……」

智絵里「でもどうしてなの…?今になって急に…」

幸子「急にじゃありませんよ?イベントの前から考えてました」

みく「あ、このパフェお願いするにゃ」

智絵里「何かイヤな事でも…あった?」

幸子「イヤな事?あるわけないですよ、そんなの」

幸子「鷹の団は普通の事務所とは違う…」

幸子「みんなライバルだけど、それだけじゃない」

幸子「心から信頼し合える仲間でした」

幸子「こんなボクにも仲のいい人がいっぱいできて…」

幸子「この3年間は本当に楽しかったです…」

智絵里「それじゃ…いったいなんで…」

みく「パフェおいしいにゃあ」モグモグ

智絵里「……ってみくちゃん…少し話…」

みく「ふーんだ!」

みく「みくは売れっ子アイドルだよ!好きな時高くておいしー物食べたっていいでしょ!」

みく「道を歩けばファンのみんなが集まってくるにゃ!当たり前だにゃ、みく達は大人気なんだから!」

みく「それどころかもうすぐみく達はプロダクションの主要アイドル!そうなったらテレビにもいっぱい出て!」

みく「小さくて狭かった事務所ともさよなら!うまくいけば国民的アイドルにゃあ!」

みく「…こんなの普通じゃ絶対手に入らないにゃ!元々ただの女の子だったみく達にとっては夢みたいな話だにゃあ」

みく「だけどみく達は手に入れたにゃ!血のにじむような努力をして!ようやく手に入れたのにゃ!」

みく「…それを幸子チャンは捨てていくっていうんだモン…まるで古い衣装を脱ぎ捨てるみたいに」

智絵里「…みくちゃん」

みく「いつも『カワイイボクが一番!』とか言ってるくせに…」

みく「いざ一番になりそうだってなったらどこか行っちゃうなんてワガママすぎにゃ!」

幸子「みくさんの言うとおりです」

幸子「ボクは…ワガママです」

幸子「ボクは自分がカワイイことが大切で…ずっとそれを主張してました」

幸子「他にもカワイイ子はもちろんいましたが…それでも良かった」

幸子「…誰でもいいから…こっちを向いていてくれれば」

幸子「だけどあるとき思い知ったんです…そんなのはなんの役にも立たないことだって」

幸子「でも…それでも…出会ってしまったんです」

幸子「本当に振り向かせたい人を…ボクは見つけてしまった」

幸子「その人は何一つ持ってはいませんでした」

幸子「そしてすべてを手に入れようとしていました」

幸子「…いえ、それを可能に思わせる何かが…彼にはあった」

幸子「…ですがあまりに高みを目指いていたから」

幸子「彼は自分自身をいつも極限まで研ぎ澄ましておかなければならなくて」

幸子「だから彼には…自分の隣に弱い人を並べておくゆとりはないんです」

幸子「…でもおかしなことに…そうあればあるほど」

幸子「ボクの目には彼が眩しく映る…」

幸子「…もうごめんなんですよ」

幸子「彼の夢の中で…彼を見上げているのは」

幸子「ただカワイイからじゃなく」

幸子「ただ強いからじゃなく」

幸子「ボクは…自分で手にする何かであの人の横に並びたい」

幸子「ボクはあの人にだけはバカにされるわけにはいかないんです」

みく「Pチャンの横に並ぶ…?」

智絵里「……」

みく「何言ってるのにゃ!わかるでしょ!Pチャンは特別なの!みく達とは違うって!」

みく「今までみたいに大きなステージに立って!いろんな歌を歌ってこれたのも!」

みく「ぜんぶPチャンがいたからでしょ!」

幸子「大きなステージだとか…一番人気だとか…今はそういうのには興味ないんです」

幸子「ボクが欲しいのはもっと別の…自分で勝ち取る、何かです」

みく「自分で勝ち取る何か!?フン!そんなのが簡単に見つかりゃ誰も苦労しないにゃ!」

みく「もし運よく見つかったとしてもそこでイチバンになれるのはほんの少しだけ!」

みく「大抵の人は自分の力量や器と自分の置かれた現実に折り合いをつけるものにゃ!」

みく「夢が全部ダメってわけじゃないけど…夢さえあれば、なんてそんなのは現実を見てないだけにゃ!」

智絵里「み…みくちゃん」

幸子「…みくさんには」

幸子「あなたにはないんですか?そういうの…」

みく「っ!」

みく「フン!もう知らないにゃ!」

みく「智絵里チャン、みくは先に帰って寝てるにゃ」

みく「幸子チャンのことなんてもー知らない!」テクテク

幸子「みくさん…」

智絵里「…みくちゃんはね、ああ見えても大阪出身の子なんだ」

智絵里「『大阪出身ならこういうキャラ』みたいに思われるのが嫌で…自分だけのキャラを作っていったんだ」

智絵里「でもね…いつからか初心者に自信をもたせるためにわざと負ける、みたいな立ち位置になっちゃって」

智絵里「Pさんに引き抜かれるまでずーっと負けるために戦う…なんて事をしてたの」

智絵里「それに自慢の猫キャラも…他の人気の子がやったりして…」

智絵里「犬の真似してみてとか言われたり…いろいろつらいこともあったんだ…」

智絵里「昔はみくちゃんにも…自分で勝ち取る何かってのがあったのかもね…」

幸子「そんなことが…」

智絵里「わたしはね…昔からいつも自信が無くて…おどおどしてて…人並み以上に怖がりで…」

智絵里「だけど…Pさんやみんなと出会ってから…『頑張りたい!』って思えるようになったんだ…」

智絵里「いまだってみんなと一緒に頑張っていきたいと思ってるし…」

智絵里「みくちゃんだって本当に諦めてるわけじゃないと思う」

智絵里「だって…今だってアイドルを続けてるんだもんね…!」

幸子「……そうですね」フフ

智絵里「3年前のあの日…わたしは幸子ちゃんにここならあなたの居場所が見つかるよって言ったよね…」

智絵里「…外れちゃったね…わたしの勘」

智絵里「そこまで送るね…」

智絵里「…見つかるといいね…幸子ちゃんの"何か"」

ザッ...ザッ...

智絵里「ねえ…ひとつ聞こうと思ってたんだけど」

幸子「何ですか?」

智絵里「幸子ちゃん、まゆちゃんとはどうなってるの?」

幸子「えー?なんですかそれ」

智絵里「2人が川に落ちた一件以来…ずいぶん仲良くなったみたいだから」

幸子「そうですかねぇ?」

幸子「まあまゆさんとは…いろいろありましたから」

智絵里「……」

智絵里「ねえ…まゆちゃんを誘ってみたらどうかな?」

幸子「はい?」

幸子「な、何でです!?ヤブから棒に!」

智絵里「一人でいるより…二人でいた方がぜったい楽しいよっ!」

幸子「鷹の団にいる人ならだれでも知ってる事でしょう?まゆさんはPさんが…」

智絵里「まゆちゃんは…Pさんと一緒になれないから…たぶん…」

幸子「え…?」

智絵里「幸子ちゃんの言うとおり…Pさんは何一つ持たないところから」

智絵里「プロダクションの責任者にまで出世して…」

智絵里「それだけでもほとんど奇跡だし…これ以上何を望むのって所だけど」

智絵里「でも…Pさんは止まらない」

智絵里「Pさんの求めるもの…到達点はただ一つだから」

智絵里「だけど…大きな会社の社長になるなんて…やっぱり『大きなつながり』が必要なの…」

智絵里「何か後ろ盾をする…切り札が…」

幸子「…?」

智絵里「わからない?」

智絵里「桃華ちゃんだよ…桃華ちゃんと親しくなるのがPさんにとって夢をかなえる一番の近道」

幸子「……」

智絵里「桃華ちゃんのうちはとっても大きなお金持ちの家…」

智絵里「それだけでもきっと大きな力はあると思うんだけど…」

智絵里「桃華ちゃん自身がこの業界に入ってきてるんだから…いろんなところに顔がきくのは間違いないし」

智絵里「気に入ってもらえればこれからの出世、そしてその後のことにも大きな役に立つと思う…」

智絵里「それにこのプロダクションのお金だっていっぱい出してると思うんだ…」

智絵里「なんたって社長の娘さんなんだもの」

智絵里「…偶然にも副社長はいなくなっちゃったし…排他的な重役の人たちもいなくなって…」

智絵里「これでPさんの目的の邪魔になる人たちはいなくなっちゃったんだね」

幸子「ギクッ」


P『幸子…このことはみんなには口外しないでくれ』

P『あいつらを信用しないわけじゃない…鷹の団は運命共同体だからな』

P『だがあいつらにはオレの薄汚い部分はあまり見せたくない…』

P『あいつらには登っていく感覚だけでいい』

P『強気なお前には付き合ってもらうぞ?とことん』


幸子「……」

智絵里「それに桃華ちゃんも…Pさんのことを…その…………好きみたいだし」

智絵里「まあ…Pさんがそうしたんだろうけど」

智絵里「まゆちゃんにとってPさんは特別な存在なの」

智絵里「好きになった相手ってだけじゃなく…つらい現実から連れ出して…生きる術を与えてくれた…」

智絵里「だからまゆちゃんは恋心以上に…崇拝に近い感情を持ってるの…」

智絵里「だけど…どんなに頑張ってもぜったい一緒になれない人を思い続けるなんて…」

智絵里「きっとまゆちゃんは…幸せになんてなれないよ…」

智絵里「つらいだけだと思うの…そういうの…」

幸子「……」

智絵里「幸子ちゃんは…どう思ってるの?まゆちゃんの事」

智絵里「親友なんでしょ?一緒にいたいとか…思ったことないの?」

幸子「…ボクは…………」

幸子「まゆさんはいい人です」

幸子「ただカワイイだけじゃなくしっかりした目標もあって…」

幸子「でも…まゆさんはボクにとっては親友というより…仲間なんです」

幸子「だから…」

智絵里「……」ジー

幸子「……」

幸子「…いえ」

幸子「……違います……」

幸子「まゆさんが見つめているのはPさんだけだから」

幸子「だから…今は」

幸子「今のボクじゃ…だめなんです」

智絵里「……」

智絵里「そっか……」

智絵里「幸子ちゃんなら大丈夫だと思ったんだけどなー…」

幸子「今は…自分のことで精いっぱいですよ」

幸子「もうこの辺でいいです…」

幸子「!」



かな子「あっ」

みく「……」

まゆ「…!」

杏「幸子!」

幸子「みなさん…」

杏「ちょっと酷いじゃん幸子、黙って行っちゃうなんてさ」

杏「どうかしたの?何かイヤなことがあったとか」

幸子「杏さん…」

まゆ「……」

幸子「!」


幸子「……」

まゆ「……」


ザ…

幸子「…!」


P「……」

P「……」

幸子「……」


P「出て…行くのか?」

幸子「…はい」

P「鷹の団を…抜けるつもりなのか?」

幸子「……」

幸子「ごめんなさい…」

P「…っ!」

杏「ごめんじゃわからないよ!説明とかないの!?」

杏「適当な理由で辞められるなら杏だってとっくに辞めてるよ!」

智絵里「あ…杏ちゃん…」

智絵里「幸子ちゃんは…いっぱい悩んで…決めたことなんだって」

智絵里「だから行かせてあげようよっ…」

杏「ええ~…だけどさァ…」

かな子「グス…本当にやめちゃうんですか?」

かな子「一緒に過ごして…すごく楽しかったよ!」

かな子「またいつか…一緒にライブやろうね!」

幸子「はい!」

みく「おうおう!この際だから言っといてやるにゃあ!」

みく「みくは幸子チャンがキライだったにゃ!」

みく「正直ライブ中に幸子チャンの背中にねこぱんち☆の狙いを定めたのは一度や二度じゃないにゃあ…」

智絵里「……」

幸子「やってくれたら盛り上がったかも…」

杏「プッ」

みく「ま、まじめな話をしてるのっ!」

みく「フ…フン!どうして幸子ちゃんがキライなのか今わかったにゃあ!」

みく「…その顔にゃ」

みく「その自信たっぷりの…!張り切ったドヤ顔が!キライだったんだにゃあ!」

みく「自分一人が最高でイチバンだって顔にゃ!自分一人が特別なんですってにゃ!」

幸子「…ドヤ顔が嫌なら最初からわかりきってる気が…」

みく「う…うるさいにゃあ!」

幸子「みくさん…ボクの事…そんなに嫌いだったんですか………」ジワ

みく「うっ…」

智絵里「……」ジー

杏「……」ジー

かな子「……」ジー

みく「ぅ……」

みく「あー!わかったにゃ!最後だから本心を言ってやるにゃ!」グシュ…

みく「さびしいにゃ…!みくだって行ってほしくないよっ…!」ポロポロ

幸子「……!」グス

かな子「これ…餞別のお菓子だよ!」

杏「杏もとっておきの飴玉をあげるよ…元気でね」

智絵里「わたしは…四葉のクローバーを閉じ込んだしおり…あげるね!」

智絵里「えへへ…幸子ちゃんにいいことがありますように、って思いを込めたんだっ…」グス

幸子「み…みなさんありがとうございます…!」ポロ

幸子「~~~!!」ゴシゴシ

幸子「こ、こんなにカワイイボクを見送ることができるなんて皆さんは幸せ者ですね!」

幸子「ボクがいなくてさびしいからって泣いたりしないでくださいよね!」

智絵里「…ふふ…がんばってねっ…!」

みく「みくからもプレゼントがあるのにゃ!」

みく「とってもかわいいネコミミ!あげちゃうにゃ!」

幸子「あー…それは別に…」

みく「えええええ!?ひどくにゃい!?」

幸子「冗談ですよ!ありがとうございます…本当僕は何でも似合っちゃって困っちゃいますね!」ドニャア…

ザアアアァ…

P「……」

幸子「……」

幸子「みなさん…お世話になりました」


まゆ「……」


『まゆちゃんは…Pさんと一緒になれないから…たぶん…』

『ねえ…まゆちゃんを誘ってみたらどうかな?』

『一緒にいたいとか…思ったことないの?』


幸子(まゆさん…)

幸子「……」

スタスタ…


まゆ「…!!」バッ



幸子「!」


P「・・・・・・」ゴゴゴゴゴ

幸子「P…さん…」

P「あの時言ったはずだ」

P「お前はオレのものだとな」

P「オレはあの時お前を勝ち取った…」

P「お前のライブもお前の敗北も全てオレのものだ」

P「オレの手の中から出ていきたいというのならあの時と同じ…」

P「力で自分をもぎとって行け」


杏「プロデューサー…!」

まゆ「…!」


幸子「……」タラ...

幸子「笑ってさよならってわけには…行かないんですか?」


P「・・・・・・」ゴゴゴゴゴ


幸子「……」

幸子「本気みたいですね…」

ス…

まゆ「!」

ゴゴゴゴゴ

P「……」

幸子「……」


まゆ「ま…待ってください…!」

まゆ「二人とも本気なんですか!?」

まゆ「こんなところで戦うつもり!?」

まゆ「Pさんも引き止めるなら話し合いで…!」


P「・・・・・・」フウゥ...


まゆ「……!」ビクッ


幸子「どいてくださいまゆさん」

まゆ「…!」

幸子「邪魔…しないでください」

まゆ「何言ってるんですか!?本気で戦ったら二人ともただじゃ…」グイ

まゆ「!」

かな子「まゆちゃん…こっち」

まゆ「か…かな子ちゃん!?何するの放し…!」

かな子「……」フルフル

智絵里「やるしかないのかな…こうなっちゃったら」

みく「どうなるのかにゃ…」

まゆ「みんなどうしたんですか!?止めないと…!」

杏「二人の問題だから、杏たちが口を挟むことじゃないよ」

まゆ「でも…!」

智絵里「戦って何かをとられたら戦いで取り返す…それが基本でしょ…?」

智絵里「こういうのは…昔は何回もやってたことじゃない…」

まゆ「だけど…!」

まゆ「…だけど」



智絵里「……」

智絵里(変わったなあ…まゆちゃんも…)

智絵里(以前のまゆちゃんなら…仲間がキズつくことがあってもあまり気にはしなかった…)

智絵里(たとえ自分のアイドル生命を終わらせることになったとしても…)

智絵里(それがPさんの意志なら…きっとためらったりしなかったよね…)

智絵里(…もしかしたら…それは今でも同じかもしれない…)

智絵里(だけど…)

智絵里(まゆちゃん…気づいているのかな…?自分が変わりはじめていることに…)

幸子「……」

……まるで敵でも見るかのような目ですね…当然でしょうか

あなたが寄せてくれたアイドルとしての信頼や期待…

ぜんぶほっぽり出して行ってしまおうっていうんですから恨まれたって文句は言えません

ですが…

それでも

たとえあなたに憎まれても…

裏切り者扱いされようと


『決して人の夢にすがったりはしない…』

『誰にも強いられることなく自分の生きる理由は自らが定め進んでいく者…』


ですから……


『そして その夢を踏みにじるものがあれば全身全霊をかけて立ち向かう…』

『たとえそれがこの私自身であったとしても…』

『私にとってのアイドルとは…そんな…"対等の者"だと思っています』


だから…ボクは行きます

みく「でもこれでPチャンに負けちゃえばまた一緒に過ごせるにゃあ…フクザツ」

智絵里(そう…うまくいくかな…?)

智絵里(この3年間幸子ちゃんは事務所の一番手として…イベントでは常に先陣をきって来て…)

智絵里(鷹の団の中でも…一番大変な仕事に身をさらしてきたはず…)

智絵里(Pさんは確かにあらゆることで天才だけど…)

智絵里(幸子ちゃんは常につらい状況の中で鍛え上げた体)


P「・・・・・・」


智絵里(やっぱり…Pさんの表情にいつもの余裕がない…)

智絵里(二人の力は拮抗してるんだ…!)



ヒュウウゥ…


まゆ「……」ドキドキ

みく「……」

かな子「……」

智絵里「……」

杏「……」

幸子「……」


……不思議です

妙に落ち着いた気分ですね…

相手はあのPさん…余裕なんてあるわけないのに…

3年前のあの日も…こんなのでしたね

ケンカで始まってケンカで終わる…それもいいですね…

あなたにとってボクは…

戦うぐらいの価値はまだあるってことですもんね

まゆ「……」

……幸子ちゃんは強い!

この3年間であの子は強くなりました!計り知れないほど…!

…だけど

それでもPさんなら…

Pさんなら!

きっとあの子を止められる!

…そう

そして何もかも…また今まで通りに…


まゆ「…!」ハッ

まゆ「……」

まゆ(…まゆは…望んでいる…?)

まゆ(居てほしいって…)

まゆ(あの子にいてほしいって…)

まゆ(望んでいるの?)

P「……」

……いつものようなムキ出しの自信や闘志が感じられない…静かな目をしている

…だがそれでいて隙がない迷いのない目だ

それだけ決意が固いという事か…

行きたいのか!?そんなに…

オレの手の中から出ていきたいのか!?

……だめだ

だめだ!!

許さない!!

行かせない!!!

…だが…どうする!?

幸子の力も体力も以前とは比べ物にならない

やつの攻撃を受けきる自信は今のオレにはない…

出来たとしてもせいぜい二・三撃が限度 それ以上は気力が持たない

…………勝機は最初の一撃

幸子が攻撃を仕掛けた瞬間…幸子の攻撃を打ち落とし

そのまま幸子の腹に一撃を叩きこむ!

スピードタイミング共に一分の狂いも許されない…手加減のきかない必殺の一撃

今の幸子に勝つにはこの技しかない だが…

成功すれば幸子でもただでは…

…いや もし攻撃が当たる瞬間幸子が攻撃を防ぐ行動を何一つしなかった場合

本当に大怪我をさせてしまうことも…!

………………

それでも


手に入らないならそれでも…!

一同「……」ドキドキ…


幸子「……」ジリ...

P「……」ピク...


P(かまわない!!!)

ズバッ!!



ギュオ...


P(くらえ!!)


幸子「!」バッ


スカッ...


P(!?)

P(こいつ…最初からオレの攻撃を読んで…!)


幸子「……!!」ブンッ

ドゴンッ!


P「ぐあっ!」ドサ


まゆ「Pさん!」

P「」ガクッ...

幸子「……」ザ...

幸子「さようなら…」

P「」ピク

まゆ「Pさん…」

P「」

まゆ「……」

まゆ「……」チラ…


幸子「……」

スタスタ


まゆ「うぅ…」


幸子「……」ザ...


まゆ「……さ」

まゆ「幸子ちゃん…!!」


幸子「っ…」

幸子「……」ギュ…

ザッザッ…


まゆ「あ……」

杏「行っちゃたねえ幸子…振り返りもしないでさ」

智絵里「……」クスン

みく「Pチャンに勝つなんてすごいにゃ…」

まゆ「……」


まゆ「幸子ちゃん…」





幸子「……」


大丈夫…

道端で石コロにつまづいた様なものですよ

つまらない…小さなことですよね

あなたの行きたいところは…もっと遙か…遠いんでしょ

だから…大丈夫、立てますよ

そして歩き出します…

すぐに……

―――――――――――――――――――――――――――

ホー…ホー…

幸子「……」

幸子(わかってたけど一人はさみしいな…)

幸子(一人…そういえば久しぶりですね…)

幸子(考えてみればこの三年間ほんとの意味で一人になったことなんて一度もありませんでした)

幸子(……)

…もしかしてボクはまた…

二度と手に入らないかけがえのないものを自分から捨ててしまおうとしてるんじゃないですか…?

本当はボクは…暖かいと感じられればそれでよかったんじゃないの?

手に入るかどうか…あるか無いかすらわからないあやふやな未来のために

ボクはかけがえのない今を手放そうとしてるんじゃ…

そんな大きな夢なんて掲げなくたって…人は生きていける…

そもそもこんなことを思いついたのはPさんのあの言葉を聞いてしまったからです

でなきゃこんなこと…

これで…

自分の意志で歩き出したと言えるんでしょうか?

結局ボクは……

…………


もう"今"じゃない

過去なんだ

ゴオオオォ...

幸子「!?」ビクッ


バッ!

幸子「……」

幸子(何です…?今の殺気は!?)

幸子(これは…覚えがある!)

幸子(これは…このまとわりつくような迫力は…)


『にょわー☆』


幸子(まさか…!?)


幸子「!?」


オオオオオ…

珠美「……」


幸子(そんな…!?たしかに後ろにいたはず!)

幸子(きらりさ…いや、違いますねどう見ても…)

幸子(でもこれは…この感覚は…!)

珠美「やはり歯車は回り始めたのですね」

幸子(歯車!?何のことです!?)

珠美「心するのです…」

珠美「これから一年の後蝕の刻!」

珠美「貴方と貴方の友人!今は見えざる幽霊ども!」

珠美「そしてその王であるあなたの半身が彼の地へ集う時!」

珠美「貴方の上に決して贖いきれぬ死の嵐が吹き荒れるでしょう!!」

珠美「ですが心するのです!もがき!挑み!足掻く!」

珠美「それこそが死と対峙するものの唯一の剣!ゆめゆめ忘れぬことです!」

幸子(この人…すごく強そうだし…カッコいいなりでカッコいいことを言ってるのに小さいな…)

珠美「何かものすごく失礼な事考えてる気がしますが…まあいいでしょう…」

珠美「絶望の淵で折れた剣を手に立ち上がる者のみが…あるいは…」スウゥ...

幸子「ま…待ってください…!」


ヒュウウゥゥ…

幸子「……!」

幸子(幻ですか…!?)

幸子(……いや)

幸子(小さい剣士…)

―――――――――――――――――――――――――――――

ザアアアアアア…

桃華「あら、雨…雪が溶けてしまいますわ…」

「お風邪をひいてしまいますよ?早く床にお入りください」

桃華「ええ…あなたたちも今日はもう下がってよろしいですわ」

桃華「フウ…」

コンコン

桃華「!?」ビクッ

桃華「?」チラ…

P「……」

桃華「え…えっ!?」

「どうかなさいましたか?」

桃華「な、な、な、何でもありませんわ!行ってくださいまし!」

桃華「……」

カチャ

桃華「Pちゃま!?」

桃華「い…いったいどうなさいましたの!?雨の中…こんな夜更けに…!?」

P「こんばんは桃華様」

桃華「殿方が一人こんな時間に女子寮に入り込んだと知れれば大変な騒ぎになりますわ!」

桃華「誰かに見つかりでもしたら…!」

P「ですから、よろしければお部屋にあげていただけませんか?」

P「今誰かに見られでもしたら桃華様の名誉にもキズがつきます…」

P「それにここはすごく寒いんです」

桃華「え…ええ…そうですわね、どうぞ…」

P「失礼…」

桃華「……」

P「すみません、女性の部屋をこんなに濡らしてしまって…」

P「こんな時刻にお伺いした非礼を…」

桃華「…!」

ギュッ

P「……」

桃華「お会いしたかったですわ…!」

桃華「でもずいぶん他人行儀な話し方じゃありませんこと!?」

桃華「わたくしとPちゃまの仲なのですからもっと親しいはずでしょう?」

桃華「それに…祝賀会ではあんな恐ろしいことが起こり…本当に怖くて…」

桃華「なのに…どうしてもっと早く…会いに来てくれなかったのですか!?」

桃華「わたくし…悲しかったですわ…」

P「……」

P「・・・・・・」

グイ

桃華「…?」


チュッ...

桃華「…ん」プハ

P「……」

チュ…

桃華「…!」

桃華「んむ……///」

チュ…レロ…

桃華「ふあ…」

サワ…

桃華「い…いや…」

グイッ

桃華「!」


ドサッ

桃華「い…いくら親しいと言っても…その…」ドキ…ドキ…

P「怖いですか?」

P「恐ろしいことも悲しいことも…」

P「火にくべてしまえばいい」

ペロペロ…

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ザアアアア…

かな子「わー…よく降るね…」

杏「…お陰様で私のアツいキタクカツドウも中止だよ…絶好の篭り日和だねっ」

みく「飴だったらよかったのににゃ」

智絵里「……」

かな子「……」

杏「……そうだね」

みく「…そういう冷めた反応が一番残酷なんだにゃあ…」


まゆ「みなさん、Pさんを見ませんでした?」

杏「さあ…今日はあれから見かけないけど」

まゆ「……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

桃華「ん…Pちゃま…」

P「……」

チュプ…ピチャ…


『そう信じているんですよね?』


P「……」

桃華「あ…ん…」

ジュル…レロ…


『さようなら…』


P「……」ギリ…


紗南「へへ…やっぱり夜更かしは楽しいな」スタスタ

キシ

紗南「ん?桃華ちゃんも夜更かししてるの?珍しいな…」

紗南「何やってんのかちょっと気になっちゃうねっ…」チラ…



桃華「ふ…ぅ…」

P「……」

ペロペロ


紗南「あ…あわ…あわわわわ…///」

タタタ…



チュンチュン…

桃華「クー…クー…」スヤスヤ

P「……」

P「……」

P「……………………」ギリ...

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

桃華「……ん」パチ...

桃華「……」

桃華「!」

桃華「Pちゃま…?」キョロキョロ

チャリ

桃華「!」

桃華「Pちゃまのネクタイピン…」

桃華「うふ…♪」

桃華「ペロペロされて体がベトベトですわ…シャワーを浴びませんと…」





P「……」

クル…

P「!」


ザッ…

早苗「あーら…これは誰かと思えば次期経営責任者様じゃなーい?」

早苗「そんな人がこんな時間に女子寮から忍んで出てくるなんていったいどうしたのかなー?」

P(やべえ…どうしよう)

早苗「詳しいことは後でじっくりと聞かせてもらおうかしら…」

早苗「事と次第によってはタイホしちゃうぞ♪ん、割とマジで♪」

早苗「それじゃ対象を確保!逃げないように手錠かけちゃうわね!」

ガチャリ

P「……」

「ま…待ってください社長!」

「なにぶん夜更かししてた女の子の言う事です!」

「暗いですし見間違うこともあるでしょう…!そんな見幕では…!」

社長「黙っていろ!!」


バアンッ!!

桃華「!」

桃華「お父様」

桃華「い…いったいどうされましたの?こんな時間に…」

桃華「いくら父親でも年頃のレディの部屋に断りもなくいきなり押し入るなんて非常識ですわ!」ドキドキ

社長(キスの跡…)

社長(濡れた床…)

社長「!」バッ

桃華「あっ!」

社長「何だこのピンは…これはPの…!!」

社長「…………」

社長「桃華…………!!」

―――――――――――――――――――――――――

コツーン

コツーン

ガチャ

P「……」

社長「……P…」

P「……」

社長「私はお前に経営者としていずれはこの会社の片翼を担ってくれる大器であると大いに信頼を寄せていた」

社長「あの時お前にかけた言葉…偽りではないぞ」

P「……」

社長「盗賊まがいの連中とお前たちを謗る輩も少なくなかったが私はそうは思わなかった…」

社長「鷹の団がイベントで成果を上げる度にその確信は高まった」

社長「私はかねてより人間の価値はその家柄や地位ではなく…」

社長「その者個人の才覚・行動にこそ重きを置くべきだと考えていた」

社長「…だが!!」

バキィッ!

P「ぐ…」

社長「やはり盗人は盗人…!下賤の血は贖えぬか…!?」

P「……」

社長「あの子は自分の立場というものが…事の重大さがまるでわかっておらぬ…」

社長「名家の一人娘ともあろうものが…」

社長「まるでどこぞの町娘のような軽率な振る舞い…あまりにも浅はかすぎる…」

社長「……だがそれでも…」

社長「そんな…!そんな子でも…!!」

バキッ

社長「私にとっては全て…!」

社長「この身と…この会社や地位でさえ引き換えても惜しくはない!生けるすべてだ!!」


ドカッ! バキッ! ゴスッ!


社長「この世界に何の価値があろう!?」

社長「イベントは打ち続きなけなしの金など虫けら同然に奪われていく!!」

社長「何十回と闘い続け何万という金額の上にやっとの思いで上位に座したとしてもそれは一瞬の事!!」

社長「その裏では常にイベントという名の化け物が新たな金を求めて胎動を始めている!!」

社長「その化け物の前では一つの会社の社長の意志など無力!!」

社長「一人の人間の知恵など児戯にも等しい!!」

社長「…だがそれでも私には社長をやめることは出来ぬ…!」

社長「やめるわけにはいかぬのだ!!」

P「……」ポタ...ポタ...

社長「……その中で」

社長「血塗られ無意味なこの世界の中で」

社長「ただ一つ光明を見出せるものがあるのならば…」

社長「それは…温もり…」

社長「温もりだけがこの世界から私を包み守ってくれる」

P「……」

ドゴッ

P「っ…」

社長「貴様はその温もりを与えてくれるただ一輪の花を…」

社長「蕾のまま無碍にむしり取った!!許せん!!!!」

社長「ああ…哀れな桃華よ」

社長「数年間手塩にかけた…まだ汚れも知らぬその身を…」

社長「事もあろうにこんなやつとの戯れに捧げてしまうとは…」

P(…そこまではやってはいないんだがな)

社長「それならば………」

社長「それならばいっそ…」ブツブツ

P「いっそ…私が…」

社長「!」ギクリ

P「抱きたいのですか?桃華様を…」

P「いや…」

P「あなたが…抱いてほしいのでは?」

社長「な…何を貴様…!」

P「おかしいと思っていました…」

P「桃華様はお年頃です…今までに会社に有益なトレードや女優・モデルデビューなどの申し出は幾度もあったはず…」

P「だがあなたは彼女を手放そうとはしなかった」

P「かつては鬼社長と業界にその名を轟かせた人間が」

P「実は年頃の女の子にしかその心のよりどころを見出すことのできない…」

P「一人の…孤独でみじめなロリコンに過ぎないとは…」

P「あなたは化け物の思うに身を任せることで生き長らえてきた」

P「だが化け物を乗りこなそうとは決してしなかった」

P「社長という力を手にしていながらそれはあなたにとって重荷以外の何物でもなかった」

社長「…き…貴様…」

P「あなたは『ただ失敗しなかった』に過ぎない」

P「つまらないね…」クスクス

社長「だ ま れ え ええええぇ!!!」


バギッ ドゴッ ズバアァン

社長「黙れ!黙れ!!」

ビシ バン バシィ

社長「黙らぬかあァ!!」

バシュ ドカァ ゴシャッ

社長「貴様に何がわかるか!?貴様のような痴れ者に…!」

社長「何がわかるかあ!?」

ガッ グシャ バキ ドゴ...

社長「フー…フー…」


ポタ...ポタ...

P「……」ニヤ…


社長「……」

社長「…フンまあいい…その目がいつまでも続くかな?」

社長「入ってこい!」


愛海「はーい!」

トコトコ

愛海「なんでも好きなだけふれあってもいいって話で…うひひ」

社長「こいつをお前の好きにするがいい」

愛海「やったあ♪ってこの人男じゃん!しかもなんか凄い怪我してるよ!?」

愛海「いくら女の人みたいに綺麗と言ってもこれはちょっと…」

社長「こいつはとんでもない事をしでかしてな…」

社長「わが社の大事な者にキズをつけたのだ…ケガは確保の時のはずみだ」

社長「本当ならば刑務所にブチ込んでやってもいいんだが…同じ会社の誼でな」

社長「だが己が犯した罪の重さを生きながらとくと思い知らせるのだ…」

愛海「ええー…いくらあたしでも男の人の趣味は…じゃあ肩でも…」モミモミ

愛海「………!!」ドクン

愛海「は!?新たなめざめ!?じゃあ胸は!?」モミモミ

愛海「おお…これはこれで…!!」

社長「……納得したようだし行くか…ケガの手当ても頼むぞ」


ガチャ

社長「貴様は若い…夢や野心に身を焦がすこともあったのだろう」

社長「分さえわきまえていればそれらを手にすることもあるいはできたのかもしれん…」

社長「……いや それがゆえ若さなのか…」

社長「惜しいのう…お前のような者がまさかこのようなつまらぬことでその身を滅ぼすことになろうとは…」

社長「これで終わりだ…貴様の夢も、野心も…すべて」

社長「鷹は地に堕ちた」

社長「二度と飛び立つことはない」


バタン...

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

社長「桃華は?」

「先ほどまで泣き続けていましたが今しがたお休みになりました」

社長「私が良いと言うまでこの部屋にだれも近づいてはならん…わかったな」


社長「……」

桃華「スー…スー…」

社長「……」

社長「桃華…」

桃華「スースー」

社長「……」

社長(年々…美しくなってきているな…)

社長「……」

社長(…あの男が…触れたというのかこれの唇に…)

桃華「……」スヤスヤ


社長「……」

バサ

社長(……この体に…)

社長(あの男の舌が…指が触れたというのか!?)

サワ…

チュ…レロ…

桃華「…ん」

桃華「……」

ハアハア

社長「ハアハア…」ペロペロ

桃華「っ!!キャアアアア!!」

桃華「イヤアアアア!!」

ドンッ

桃華「ヒ…」ハア...ハア...

社長「……!」

社長「ま…まて…も…桃華…!私は…!」ヨロ...

桃華「キャアアア!」

社長「私は…」

桃華「…………!!」ガタガタ

社長「……は」

社長「はあああぁ…」

ガバアァ

桃華「いやあああっ!」

社長「……!!」ググ…

桃華「Pちゃまァ!!」

社長「!」

ドゴ

社長「ぐっ!」

桃華「この…っ!!」

ボゴッ ガツッ

ガンガンガンガンッ

社長「ヒイィイィ!」ボタボタ

タタタ...バタン


桃華「……!!」ガタガタ

桃華「助けて…」

桃華「助けてくださいまし…Pちゃま…」ポロポロ


社長「ぐふあぁ…おぶ…おのれえぇ…」

社長「おのれ……!!プロデューサァ……!」

―――――――――――――――――――――――――――

まゆ「……」

杏「一体なんだろうね?プロデューサー…」

杏「急に呼び出したりして…せっかくの杏の睡眠タイムが台無しじゃないか!」

みく「どうせレッスンか何かでしょ~」

杏「でも何の準備もしてないけど」

みく「じゃあ何かお手本でも見せるんじゃにゃい?」

杏「…昨日もとうとう事務所に帰ってこなかったし…」

杏「やっぱりショックだったのかなァ…プロデューサー…」

みく「なにいってるにゃ!あのくらいで落ちこむ様な玉じゃないにゃあPチャンは!」

まゆ「……」

智絵里「…それにしても遅いねPさん…」

かな子「……」ピク

かな子「……?」キョロキョロ

杏「どしたのかな子?」

かな子「っ!みんな見てっ!」

杏「うおわっ!」

みく「いきなり叫んで何にゃ…!?」

智絵里「……?」

まゆ「……!」


「……あなたたちを……始末するわ」

ドドドドド

杏「な…何だ!?」

みく「にゃ…にゃあ!あれ…!」

まゆ「!」


ザッ…

「……今夜は……月が輝く…黄泉の国へ……誘うわ」


みく「て…敵かにゃ!?どうしてこんなことろに…!?」

杏「ち…違うよあれは…」

杏「……うちの…うちのプロダクションの連中だよ…!?」



「……完璧な仕事をするわ…一人も……逃がさない」

ガシャン

バババババ…


みく「にゃあああああ!一体どうなってるのにゃ!?」

みく「こんなので…!こんな所でやられてたまるかにゃ!!」

まゆ「みんな固まってください!!バラバラに逃げたら全滅しますよ!!」

まゆ(どうして…!?)

まゆ「全員集まって!!一点突破で脱出します!」

まゆ(どうして!?)

「まゆちゃん危ない!」

まゆ「!」

まゆ(Pさん…!!)


ドシュッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

愛海「うひひ…すごいねあなた…」

愛海「これだけモミモミされて声一つ立てないなんてあたし初めてだよ…」モミモミ

愛海「さすが鷹の団のプロデューサーだね!まあ男ってのもあるんだろうけど」モミモミ

愛海「あたし感動しちゃった…あなたみたいなきれいで立派な人好きにしていいなんてさ…社長もいきだねェ…」モミモミ

P「……」

愛海「…ん?」

愛海「おおっ?なんかすごい首飾りだねっ!面白いじゃん」ヒョイ

ベッチー「……」ギョロリ

愛海「うわっ!?」ビク

ポロッ

ベッチー「ちょっ」

カツーン...

ポチャン


愛海「あああああ!!ごめんなさい!!落としちゃった…!!」

P「……」

ザアアアアァァァ...

――――――――――――――――――――――――――

ザワザワザワ…

会長「おー、壮観だなあ」

「はい」

会長「うちのイベント会場も年々話題になるにつれなかなかかわいい子が集まるようになったな」

「会長、今イベントの目玉の試合が始まりますよ」

会長「おお!」

「片やCDデビューも果たし古参の人気アイドル本田未央」

「片や奇妙な動きと謎のキノコを使い破竹の快進撃を続ける今回のダークホース星輝子」

会長「うーむこいつは見ものだな」


未央「みんなーっ☆元気な人もそうでない人も、もっと熱く、ふんわり、楽しくなるLIVEしちゃうよっ!」

輝子「フヒヒ…よ…よろしく…」

未央「よーしっ、勝負だ~!いくよーっ!『ミツボシ☆☆★』!!」


なやみゴト尽きない時代だ
そばにいてくれる友達に感謝

「どんな時も仲間がいるから」
なんて照れちゃう事 真顔で言えちゃう

夢に夢見た 大フライト
手をつないだら 大気圏突入も 怖くない

ミツボシ☆☆★→パッて弾けて 飛び乗って 流星
君と夢と愛を 目指し行くよ 今すぐ

ミツボシ☆☆★=そろって光って まぶしい!って YOUSAY!
前を向いて ノンストップ&ダッシュ
走れミツボシ☆☆★

届け純情!キュートでクールな世代
燃やせ友情!パッションはミツボシ☆☆★


未央「イエーイ!」

輝子「おお…かっこいい…フフ…」

輝子「それじゃあ…私も…」

輝子「フヒ…フヒヒ…ヒャッハ―――――ッ!!!」

輝子「ゴートゥヘ―――ルッ!!!

    フヒヒヒヒフハハッアッハッハ!!!
    これだよ!これ!こういうの!アッハッハッハ!」

未央「は、はあっ!?」

輝子「シイタケ!エリンギ!!ブナシメジ!!!キノコ!!!!」

輝子「LIVEだ!LIVEをするぜぇ!!」

輝子「地獄に堕ちなァ!ナイトメアビフォアキノコー!!!」

未央「こっ…怖っ!!何急に!?」

輝子「『ブラックキノコール』!!」

ねこなめこに小判意外と好きそう
きれいなバラにはトゲなめこ

加湿・保温・光 あとキミの愛うえお
忙しい合間ぬってまた会いにきてよね

カビカビさんには気を付けて

NaNaNa な な なめこ
Vivaセレブ気分
味わってみたいな
フワフワなめこのコシカケ

NaNaNa な な なめこ
いるのかいないのか
そもそも何なんだろう
得体の知れないマサル


未央(あ、でも歌は結構かわいい)

輝子「フハハハハ!!怖いだと!?いや、あの、すいません」


輝子WIN!


未央「むむぅ、なかなか、やりますなぁ…今回は花持たせておこっか!」

輝子「フヒ…ありがと…でも花よりキノコの方が…」

会長「おおっ!あのキノコ娘が勝ったぞ!」

「これで今イベントの優勝はあの子に決まったようなもんですな」

会長「う―――むしかし…どうせなら可愛さ押しの子の方がよかったかな…」


輝子「フフ…着々とキノコの布教が進む…」

輝子「だがみんな骨のない連中だなァ…いちいちビビりやがって…そ、そんなに怖いかな…」

ザッ

輝子「フヒ?」


幸子「ふふーん…」


会長「なんだあの子は?」

幸子「飛び入りですよ、お祭りなんだからいいでしょう?」

幸子「ねえ、あなたどうももっと強い人と戦いたいって口ぶりですけど…」

幸子「どうです?この強くカワイイボクが相手をしてあげますよ」

輝子「と…飛び入りがありなら…い、いいですよフフ…」

会長「うーむ…」

会長「面白そうだしやってもらおうか!」

幸子「話せるじゃないですか」

輝子「フヒ…それじゃ…いくよ…」

幸子「ふふーん…いつでもどうぞ」

輝子「フフフ…ずいぶん余裕そうだね…」

幸子「ボクは完璧ですからね!」

輝子「じゃあそのツラをぶっ潰してやるぜェーッ!ハッピー!ブラッディー!ヒャッハー!!」

ヒュバババ

幸子「フフーン!ボクには余裕ですね!」ヒョイヒョイ

輝子「チイッ!!避けんじゃねえ!喰らえ!!」

輝子「ナメコ!マイタケ!キクラゲ!タマゴタケ!マッシュル―――ムッ!」

幸子「ふふ…どんなキノコが来ようとも!ボクに食べられないものなんてないんですよ!」モグモグ

輝子「何ィ!?」

幸子「こっちの番です!悪夢のプレゼントをお届けっ!『(自称)サプライズ』ッ!」ドゴオ

輝子「ぐふっ…それ…私のセリフ…」ガクッ


幸子WIN!


幸子「ボクに勝ちたいのならさるのこしかけでも持ってくるんですね…」フフン

会長「おーい君!いやァおみごとおみごと!」

会長「どうだい?うちの事務所に来るつもりはない?給料も弾むよ」

幸子「……」

会長「近々大がかりな事務所との戦いがあってな…このイベントはそのための子をスカウトするためでもあるんだ」

幸子「悪いですが興味ありませんね…ボクは強くてカワイイ人と戦ってみたいだけなので」

会長「ほう?アイドル修行みたいな?」

幸子「ん―――まあそんなとこですか…」

会長「それなら安心してくれ!その事務所のリーダーというのがずいぶん強いらしいぞ」

会長「君も耳にしたことくらいあるだろう?数か月前大きな会社でスパイ容疑だかなんかで首になった事務所」

会長「いろいろなイベントで大きく活躍したらしいが…何て言ったかな…たか…たか…」

幸子「ちょっと…今なんて言いました」

会長「え…?」

会長「そ…そう!鷹の団だ!」

会長「鷹の団とそのリーダー…佐久間まゆだよ」

脇山珠美(16)
http://i.imgur.com/LQrV3aR.jpg
http://i.imgur.com/n8XQvym.jpg

三好紗南(14)
http://i.imgur.com/t5AFyMN.jpg
http://i.imgur.com/hsN6cAJ.jpg

片桐早苗(28)
http://i.imgur.com/q0lUHzx.jpg
http://i.imgur.com/mHErQio.jpg

棟方愛海(14)
http://i.imgur.com/EsTplUP.jpg
http://i.imgur.com/lcHo60I.jpg

本田未央(15)
http://i.imgur.com/mEkwWtb.jpg
http://i.imgur.com/PaIviYd.jpg

星輝子(15)
http://i.imgur.com/xQckuKx.jpg
http://i.imgur.com/RNBy0C7.jpg

――――――――――――――――――――――――

「フフ…ついに見つけた…鷹の団のアジト…」



ホー ホー

まゆ「……」

智絵里「あんまり根を詰めないでね…体壊しちゃうよ」

まゆ「智絵里ちゃん…」

智絵里「気持ちはわかるけど…まゆちゃんは今私たちのプロデューサー兼リーダーなんだから」

まゆ「わかってます…」

まゆ「さっきプロダクションの内部の情報を聞きました…」

まゆ「Pさんは社内の古く深い地下室に監禁されているらしいです…」

まゆ「拷問は一年たったいまでも続いていて…そこから聞こえる悲鳴とも
   …呻きともつかないPさんらしい人物の声を何人かの人が耳にしています」

まゆ「………でもここひと月の間…それも…途絶えているそうです…」フルフル

智絵里「……」ギュ…

まゆ「みんなの疲れもピークに達しています…逃亡生活もそろそろ限界です…急がないと…!」

智絵里「信じて…」ポンッ

まゆ「!」

智絵里「もっと仲間を信じてほしいな…」

智絵里「確かにまゆちゃんをリーダーにしたのは私たちだけど…全部一人でしょい込んだりしないで…」

智絵里「みんなが一人一人…自分でできることをするしかないんだから…」

まゆ「…………智絵里ちゃん…」

智絵里「それに少しは休まないと!疲れたままじゃPさんを助けることもできないよ…?」

智絵里「とにかく…ご飯を食べてゆっくり寝ないとね…」

まゆ「…そうですね」

智絵里「じゃあこれご飯置いとくね!ちゃんと食べてねっ」スタスタ


まゆ「智絵里ちゃん」

智絵里「?」

まゆ「ありがとうございます…」

智絵里「……」ニコ



まゆ「……」

カチャ…

カシャアァン


まゆ「う…う…ぐすっ………」ポロポロ

杏「どうだった?まゆは」

智絵里「少し休むって」

杏「その方がいいよ、最近まゆ全然寝てないもんね」

智絵里「まゆちゃんは頑張ってるよね…一年前まゆちゃんがとっさに指揮をとってくれなければ
     みんなあそこで全滅してたかも…」

杏「そーだねェ……そのあとだってまゆがプロデューサー代理をしてくれなきゃ
   今日までみんな生き残っていられたかどうか…」

みく「フーン…生き残るねえ…残ってるからなんだっていうのにゃ」

みく「ただ辞めたくないから続けてるだけじゃにゃい…みく達は…」

みく「たとえ無事に生き延びてどっかで一からやり直そうって言っても…そんなの無理ってもんだにゃあ」

みく「みく達があそこまでのし上がるのに一体何年かかったと思う?うまくいくわけないよ」

みく「だいたいPチャンがいなけりゃ結局みく達はただのノラネコ集団みたいなもんにゃ…」

杏「……なにいってんのさ」

かな子「だからこうしてみんなでPさんを助け出そうって…!」

みく「生きてるって保証があるのかにゃあ?」

かな子「!」

みく「芸能界ってのは…ヤクザの世界とあんまり変わらないにゃ」

みく「……ほんとはさ…何もかも終わっちゃってるんじゃないのかにゃ…もう…」

かな子「な…何言ってるんですか!?」

杏「だったら!!」

杏「だったらなんでみくはここにいるのさ!?なんで辞めていった人と一緒にやめなかったの!?」

みく「…………」

智絵里「あ…杏ちゃん…」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


輝子「フフ…フフフフ…全員地獄へご招待してやるぜェ…」

輝子「有名な鷹の団…楽しみだぜ…フヒヒ…」

輝子「ヒャッハ――――ッ!!!行くぞ野郎共ォォォォ!!!」


「て…敵が来たよ!」

まゆ「」ビクッ

まゆ「……!」

ザ…

輝子「てめえがリーダー様かァ…?」

輝子「ということはだ…フハハ!てめえを血祭りにあげりゃあ勝敗は決するってわけだなァーッ!!」

輝子「行くぜェッ!!!オラアアア!!!」シュバ

ドガガガガ

まゆ「くっ!」

まゆ(は…速い…!)

輝子「アミタケ!クリタケ!フクロタケ!ヒトヨタケ!キララタケ!ガンタケ!シャグマアミガサタケェ!!」

まゆ(何ですかこのキノコは…!全部聞いたことないです!)

ドゴォ

まゆ「きゃあ!」


輝子WIN!

輝子「勝負ありだなァ…おとなしく降伏するなら命は残しといてやるぜ…」

まゆ「……!」ギリ...

輝子「3つ数える!選べェ!」

輝子「ひとぉつ!」

輝子「ふたぁぁつ!!」

輝子「みぃぃぃっつ……」

幸子「よっつぅぅぅぅっ!!」ドガッ

輝子「うぉわっ!!」ドガシャッ

智絵里「……!」

かな子「!?」

杏「……」

みく「にゃ…」

まゆ「……!?」


幸子「こんな子相手にへばってちゃあ駄目じゃないですか」

幸子「しっかりしてくださいよ…リーダー」

まゆ「………!!」

幸子「……」ニコ

「幸子ちゃん…」

「幸子ちゃん…!?」

「幸子ちゃんだ!!」

みく「さ…」

杏「あ…!幸…!」

「「「幸子ちゃん…!」」」


まゆ「さ…ちこ…ちゃん」

幸子「ボクが更にカワイくなったからってそんなに驚かなくたっていいんですよ!」


輝子「…フフ…そ…そういうことか…フヒ…噂に名高い鷹の団の…」

まゆ「……?」

幸子「へたり込んでる場合じゃないですよ」

幸子「彼女とはちょっとわけありでして…ここは任せてください」


まゆ「……」

タタタ

輝子「フヒ…これも神の采配だ…」

輝子「私のキノコを理解してくれそうだから…また逢いたいと思ってた…」

輝子「前回はやられちゃったから…今回は…」

輝子「あの時負けた復讐をしてやるぜェーッ!!」

輝子「フハハハハ!!ブラァァックミサァァァッ!」

輝子「これから行われる儀式、その生贄にお前らを選んだのだ、感謝しろ!」

輝子「さぁ、ブラッディパーティーの始まりだ!!」

幸子「望むところです!」

輝子「行くぜェェェ!!『キ ノ コ ミ サ』!!」


キノコノコノコ ボッチノコ
エリンギ マイタケ ブナシメジ
キノコノコノコ ボッチノコ
おいしさたっぷり キ・ノ・コ♪

キノコノコノコ ホシショウコ
いけるねマイマイ MYマイタケ
キノコノコノコ ホシショウコ
たのしくわいわい キノコ♪

みんなげんきのこ すっすめ
キノコパワーだ ヒャッハッハッハアアアァァァァ――――ッ!!!
おいしくたべて にっこにこ
キノコクッキングー♪


輝子「キノコ~キノコ~ラブキノコ~♪」

幸子(意外とカワイイ歌じゃないですか…)

幸子「でも!ボクには到底かないませんね!くらえっ!自称じゃなくなったボクの輝きをッ!」

幸子「『溢れる輝き』ッ!」ピカアァァーッ

輝子「う…うおおおおっ!こ…この輝きはまさか…!!」


幸子WIN!


輝子「アンズタケの!ジャック・オ・ランタンキノコー!いやそれ以上…!ヤコウタケのそれだ…!」

幸子「だっさ!ショボすぎでしょ!そんなの全然カワイくないじゃないですか!!」

輝子「しょ…しょぼくなんかないよ…発光キノコの中では世界一の輝きだぜフフフ…キンピカキノコ…素晴らしい…」

輝子「光るキノコは結構あるんだけど…なんで光るのかはよくわかってなくてね…」

幸子「どうでもいいです」

輝子「ア…ハイ…スイマセン…」ショボーン

輝子「そうだ…勝者には…キノコ進呈。こ…これあげる…遠慮はいらないぜフフ…」

幸子「? 本当にさるのこしかけでも持ってきました?」

輝子「それはないけど…これ…」

幸子「ありがとうございます………なんですかこれ」

輝子「冬虫夏草…栄養満点で滋養強壮に効果抜群…フフ…私もこれを食べると元気がでてヒャッハァッ!!!」

幸子「ひいいッ!!?」バッ

輝子「えっ!?なんで…!?」

幸子「それってあれですよね!?セミの幼虫から生えてくるキノコ…!!」

輝子「そ…それもあるけど…蛾の幼虫のが基本で…」

幸子「どっちでもいいですよ!!今回は遠慮しておきます!!」

輝子「そ…そっか…エナジードリンクの代わりにもなるのにな…」ショボーン

「輝子ちゃん!だ…だめだよ!味方は総崩れだよ!」

輝子「…幸子とかいったね…またいつか会おう…フフ…フフフフフ」

ザッ...

幸子「……」

幸子「!」


まゆ「……」


杏「幸子ー!ひさしぶり」

幸子「あ!杏さん!ちゃんとアイドル続けてるんですね!」

杏「…やめるタイミング完全に失っちゃったしね」

智絵里「えへへ…元気そうだね」

かな子「よかったー!」

みく「幸子チャン!おひさにゃあああああ!」

千佳「幸子ちゃん!会いたかったよーっ!!」

幸子「みなさん…」

幸子「フフーン!!やっぱりボクは大人気ですね!!!」


まゆ「ゆっくりしてる暇はありませんよ!敵はまた来ます!今のうちに移動しましょう!」

智絵里「まゆちゃん…」

幸子「そうですね…まゆさんの言うとおり急いだ方がいいです」

――――――――――――――――――――――――――

幸子「…P…さんが……」

智絵里「1年前…幸子ちゃんが出ていった次の日の話なの…」

幸子「……信じられません…あのPさんが…どうして…」

杏「……幸子が出て行っちゃった後、プロデューサーすごく落ち込んでたよ」

杏「思うんだけど…プロデューサーはきっと幸子とのことでさ…」

智絵里「杏ちゃん…」

杏「……」

幸子「……」


幸子「…………………」ギリ

みく「ふん…人気のアイドル事務所が一夜明ければお尋ね者のスパイ集団なんて…」

みく「あんまり出来過ぎてて笑っちゃうにゃ」

幸子「……」

智絵里「この1年で仲間はすごく減っちゃってね…」

智絵里「まゆちゃんが私たちのリーダーじゃなかったら…」

智絵里「今頃Pさんを失った私たちはバラバラ…鷹の団自体残ってないよ」

幸子「まゆさんが…」

かな子「それどころかほんとなら1年前のあの日私たち全滅してたと思うんです…」

かな子「もし…まゆちゃんがあの時指揮を執ってくれなかったら」

かな子「凄かったんですよまゆちゃん…アイテムもなしにたくさんの敵に囲まれて…」

かな子「パニック寸前のみんなをまとめて自ら先陣を切って包囲を突破したんです」

智絵里「…それで…それ以来まゆちゃんを私たちのリーダー兼プロデューサーになってもらったんだ」

智絵里「反対する人は誰もいなかったよ…あれだけ凄いところ見せられちゃったらね」

智絵里「…でも本当は…まゆちゃんにはつらいことだと思うの…」

智絵里「だけど…今の私たちには他に選ぶ道はない…」

智絵里「わたし達みんなが生き延びるためには…ね」

幸子「……」ムゥ...

智絵里「……でもね…そんな話だけじゃないよ」

智絵里「わたし達だってただ逃げてるだけじゃないの…」

智絵里「今日プロダクションにいる仲間から…居場所が分かったって連絡があってね」

かな子「近いうちに…Pさんを助け出します!」

幸子「……!」

かな子「……ここに残ったみんなはもうボロボロです…」

かな子「この一年間さんざんだしロクな仕事もないし…みんな心も体も疲れちゃってます」

かな子「だけどもう誰もここをやめようって人はいないんです!」

かな子「誰も残ってって強制してるわけじゃないのに…」

かな子「結局ここに残った人はみんな芯まで鷹の団の一員だってことですね」

かな子「Pさんを助けるんじゃなく…Pさん無しじゃ始まらないんです…私たちは」

幸子「……」

幸子「…いいものですね」

智絵里「え…?」

幸子「何だか…帰ってきたところが変わってないのは…いいものです」

智絵里「そういえば…幸子ちゃんは何やってたの…?この一年…?」

杏「そーそー!鷹の団の事はかなり広くうわさが広まっちゃってるはずだよ?」

幸子「ごめんなさい…ほんとに知らなかったんです」

杏「どうしてさァ?無人島にでもこもってたの?」

幸子「とある場所で…ずっと特訓してました」

杏「特訓…聞くだけでだるくなる言葉だね」

智絵里「…それで」

智絵里「見つかったの…?例の…」

幸子「……」

幸子「…正直…まだわかりません」

幸子「ですが…一つだけわかりました…」

幸子「いえ…感じました」

幸子「どうやらボクは…ボクのカワイさを世に広めること」

幸子「アイドル以外にはなれない…そんな感じみたいです」

智絵里「えへへ…それをはっきり言えるなら…十分だね!」

幸子「…そういえばみくさんがずいぶんおとなしいですけど…」

杏「あー…さっき言ってたんだけど」

かな子「なんでもお別れの日にあんなこと言っちゃったから顔合わせられないとかって…」

みく「にゃああああ!それは言わないでって言ったでしょ~!!」ガバッ

幸子「あははは!みくさんも変わってないですね!」ナデナデ

みく「も~!みくの方が年上なの!みくぱんち☆にゃ!」ドゴッ

幸子「コフッ…」

みく「あああっごめん!入っちゃったにゃ!!」

幸子「……!ん゛っ……!」バタバタ


幸子「……」ピクピク

みく「ごめんねほんと」

智絵里「ふふ…仲いいねっ…!」

幸子「ハア…ハア…つ…疲れましたし…今日は寝ます…」

智絵里「ちょっと待って…その前に」

幸子「何です?」

智絵里「…まゆちゃんの事」

幸子「!」

智絵里「一年前のあの日の後…心も体も疲れてたまゆちゃんは寝込んじゃってね…」

智絵里「その時まゆちゃんはうなされながら何度も口にしていたんだ…」

智絵里「Pさんと…」

智絵里「幸子ちゃんのことをね」

幸子「!」

チラッ


まゆ「……」

フイッ


幸子「……」

智絵里「まゆちゃんは見かけよりかなり無理してるの…」

智絵里「昔から何でもしょい込んじゃう子だったけど」

智絵里「わたし達じゃ力不足だから…幸子ちゃんにお願いしたいな」

幸子「……」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ヒュウウゥゥ...

幸子「……」

ザ…

まゆ「……」

まゆ「…少し……いいですかぁ…?」

幸子「……?」

まゆ「…よく帰ってこれましたね…今さら」

幸子「……え?」

まゆ「もうあなたは私たちの仲間じゃありません…よそ者です」

まゆ「さっさとどこかへ行ったらどうですかぁ…?」

幸子「ちょ…ちょっと待ってくださいよ…何なんですか?」

幸子「一年ぶりに会ったと思ったらまたケンカしようってんですって?」

幸子「…まああなたらしいですが…そりゃないんじゃないですか?」

まゆ「……」ギロ!

ブンッ!

幸子「ちょ…」

バシイッ

まゆ「・・・・・・」

幸子「……!」

幸子「た…タイム!ちょっと待ってください…ねえ!」

幸子「今のビンタ…殺気籠もってましたよ!?」

まゆ「……」ギリッ

ブンッ

幸子「わわっ…!」ヒョイ

幸子(…本気だ!)

ブンッ バン! ドカッ ガシャアァン

幸子「ちょっと!?」ヒョイヒョイ

まゆ「ふざけないで!!避けないでください!」

幸子「避けるに決まってるでしょう!」

ガシ

まゆ「あっ!」

幸子「一体なんなんですか?相変わらず無茶苦茶ですね…」

幸子「訳を言ってくださいよ!」

幸子「1年ぶりに顔合わせたってのにいきなり殴りかかられちゃたまったもんじゃないですよ!」

まゆ「……」

まゆ「…なぜ戻ってきたんですか今頃になって…」

幸子「…?」

まゆ「……あなたのせいです」

まゆ「あなたがすべて…壊した!!!」

まゆ「あなたの…せいで!!」バッ

ガシィッ

幸子「……ボクの?」

まゆ「…そうです」

まゆ「Pさんも、鷹の団も…何もかも!」

まゆ「あなたがメチャクチャにした!!」

幸子「…ボクが?何で……?」

まゆ「……!!」ギリ

まゆ「あなたが出ていったからです!!あなたがPさんの元を離れたから………!!」

幸子「ちょっと待ってください!!」

まゆ「!」

幸子「……」

幸子「そんなはずないじゃないですか……」

幸子「Pさんなんですよ……?」

幸子「彼が…あのPさんが…ボクが出ていったくらいで…」

幸子「そんなことぐらいでダメになってしまうはずないでしょう……?」

幸子「そんなはずないです…」

まゆ「……」

まゆ「……つくづくどうしようもないバカですねあなた…」

ドンッ!

まゆ「言ったはずです!!あの時!!」

まゆ「大きなものを手にしようとする人は!」

まゆ「それだけ人より多く…何かに耐えているんだって!!」

まゆ「Pさんは……!強くならなければならなかったんだって……!!」

まゆ「ですが…Pさんは神様じゃない……!理想や夢だけで人の心は埋まらないんです!!」

まゆ「あなたが!!Pさんを弱くした!!Pさんには……!!」

まゆ「Pさんは………あなたがいないとダメなんです!!!」

幸子「……!!」

バチィンッ

幸子「っ…」

まゆ「…!」

まゆ「なんで…避けられたはずなのに…なんで…?」

ガシ

まゆ「きゃ…」

幸子「他に…」

幸子「どうしようがあったっていうんですか…」グッ...

まゆ「ちょ…ちょっと」

幸子「Pさんと同じように…ボクはやっただけです…!」グググ...

幸子「ボクは…!自分のことをやっただけです…!!」

まゆ「痛…!は…離してください…!」

幸子「他に…他にどうやればよかったっていうんですか………?」ポロ...

まゆ「わ…わかりましたから……!やめてください!!」

幸子「っ…ごめん、なさい…」パッ


ペタン...

まゆ「……」

まゆ「……うふふ」

まゆ「うふふ…くすっ…」

まゆ「…わかってます」

まゆ「あなたの言ってることは正しいって……」

まゆ「ほんとはわかってるんです」

まゆ「…だけど……私にはもう…」

まゆ「もう……耐えられません」

幸子「……」

まゆ「前にあなたに言いましたよね…まゆはPさんの隣にいたい…」

まゆ「あの人の武器になりたいって」

幸子「……ええ…覚えてます」

まゆ「…あれはほんとじゃありません」

まゆ「あれは…私がこうありたいと望む私…強がりです」

まゆ「確かに最初は純粋にそう思ってました…だけどある日気が付いたんです」

まゆ「Pさんは神様じゃなく……そして私は女の子なんだって……」

まゆ「……自分の心を…思い通りにできたらどんなに楽でしょうか……」

まゆ「まゆだってバカじゃありません…Pさんが社長を目指しているのなら」

まゆ「桃華ちゃんと親しくなるのが一番の早道だってこと…気づいてはいたんです」

まゆ「……そしてPさんなら」

まゆ「いつか必ずそれを実行するでしょうって…」

まゆ「今回のことだって…もしかしたら……」

幸子「……」

まゆ「…それでもまゆは耐えられると思いました…思っていたかった」

まゆ「女の子としてPさんに寄り添えなくても…武器としてなら」

まゆ「夢を実現させるために欠かせないものになれるならそれでいいって……思っていたかった」

まゆ「……でも」

まゆ「1年前のあの日はっきりとわかってしまったんです」

まゆ「Pさんの隣にはもうとっくの昔に…隙間はなかったんだって」

まゆ「まゆの夢は…もう」

まゆ「終わっていたんだって」

幸子「……」

まゆ「…私には……もうできません」

フラ…

まゆ「私が鷹の団を守るために必死でやってきたのは」

まゆ「たとえありもしない希望にでも縋っていないと自分が消えてしまいそうだったから……」

まゆ「……でも もういいです…」

まゆ「女の子にもなれない」

まゆ「大切なものにもなれない」

まゆ「生きているかどうかさえ分からない人の壊れかけた夢をこれ以上守り続けるなんて……」

まゆ「私には……もう……」


まゆ「………疲れちゃいました…」

フラ...

まゆ「後は…あなたがやって……」

幸子「……あ」

ヒュウウウゥゥ...

ガシィイ

幸子「く……!」

まゆ「……」

……そしてもう一つ

あの日知ってしまったことがあります

すべてを壊し……まゆからすべてを奪った人なのに

憎んでいるのに…

今でも…

消えてほしいと思っているのに


幸子「うぐ…!」グイ

ドサァ

まゆ「……」

幸子「…………!!」

幸子「何考えてるんですか!!」

幸子「いいですか!?もうあなたは金輪際落ちそうなところに近づかないでください!!」

幸子「2度も3度も引きずり落とされたんじゃたまりませんよ!!」

まゆ「……」

まゆ「……バカですね」

幸子「! な……」

まゆ「いつも……傷ついてますね…………」

まゆ「いつも……まゆのせいで…………」キュ...

幸子「……!」

まゆ「いつも……傷ついてますね…あなた…」フルフル

まゆ「ばか……」ポロポロ

ギュ…

幸子「……」

まゆ「ばか…」

ギュウ...


あの日私は知ってしまった

初めての敗北に打ちのめされ跪くPさんよりも…

振り返りもせず行ってしまうあの子の背中から目を背けることのできない自分に

そんな自分を認めたくなかった

Pさんに出会ってから今までの自分が……今までの思いが全てうそになってしまいそうで

それが怖くて私はPさんの後を継いだ 届かなかったPさんへの思いに殉ずるつもりで

自分の生き方に偽りがない それだけが私の誇りだったから…

Pさんがまゆにくれたものだから

まゆ「……」

幸子「……」

まゆ「幸子ちゃん…」

まゆ「今までの事…まゆが幸子ちゃんにしたいろいろな事」

まゆ「許してほしいんです…ひどいことをしてしまってごめんなさい」

幸子「…なんです急に?」

まゆ「まゆが…幸子ちゃんのことを嫌っているわけじゃないことを言っておきたくて…」

まゆ「もっと幸子ちゃんと仲良くなりたい…一緒にいたい」

まゆ「まゆは嫌われても仕方ないことをしてしまったけれど…」

まゆ「まゆは幸子ちゃんの事…好きですから」

幸子「……」

幸子「ふふーん……今更ですね」

幸子「ボクがまゆさんのこと嫌いなわけないじゃないですか」

幸子「カワイくて、まっすぐで、優しくて…ボクの一番の友達です」

幸子「まあいろいろありましたけど…もちろん許してあげますよ!ボクも優しいので!」

まゆ「…うふふ」

まゆ「まゆにとっても…幸子ちゃんは私の一番のお友達です」

まゆ「まゆは…幸子ちゃんと一緒に歌を歌いたいです」

まゆ「幸子ちゃんと一緒に…ステージで踊りたい」

幸子「ボクも一緒にやりたいです!」

まゆ「うふふ…まゆたちが組んだらどんな人でも虜にしちゃうでしょうねぇ」

まゆ「一緒に…二人で…!頑張っていきましょう!」

幸子「こちらこそ…よろしくお願いしますね!」

まゆ「二人一緒ならもっと頑張れます…!」

まゆ「お互いがお互いを引き立てあって…」


幸子「引き立て…」

ドクン

『お前は引き立て役だ』

幸子(…う……?)


まゆ「まゆも幸子ちゃんのために頑張りますからっ!」


ドクン

『お前のために』

幸子(ボクの…ために…)


まゆ「信じてますからね、幸子ちゃん!」


ドクン!

『信じてるぞ』

幸子(信じて…!)

幸子「う…ああ…」

まゆ「? どうかしました…」

幸子「……っ!!」ドン

まゆ「! きゃあ!」ドサ

まゆ「ど、どうしたんですか!?」タタ...

ガシ


幸子「!」

幸子「うわあっ!!」ドンッ!

まゆ「きゃああっ!」ガシャアァ

まゆ「いたた…幸子ちゃん…!?どうしたの…?」


バン!

まゆ「きゃ…」ビク

幸子「……あんなつもりじゃなかった…!」

幸子「あんなつもりじゃ……」

幸子「あんな…」

幸子「辞めさせるつもりじゃなかったんですプロデューサーさん……!」

まゆ「…………辞める?」

幸子「……あの時ボクに初めてプレゼントをくれた」

幸子「初めてで…本当にうれしかった!!」

幸子「だけど!!それはほかの人から勝手にとった物だった!!」

幸子「…ボクのためにって言ってた」

幸子「ボクを信じてるって……そう言ってそれをくれた」

まゆ「……?」

まゆ「プロデューサーさんが泥棒をして…それで辞めることに…?」

幸子「違う!!」バンッ!

幸子「プロデューサーさんは違います…!!」

幸子「プロデューサーさんは泥棒なんかじゃない!!プロデューサーさんは…!!」

まゆ「……?」

幸子「プロデューサーさんはこんなボクを拾ってアイドルにしてくれた」

幸子「歌を!ダンスを!教えてくれた!!」

幸子「なのにどうして……!」

幸子「…どうして」

幸子「ボクを…無理矢理アイドルを辞めさせようとなんかしたんですか…………」ポロポロ

まゆ「!」

幸子「いつも不機嫌そうだった」

幸子「ボクがデビューをしてからずっと……」

幸子「ほかの子とばかり話をしてた……卯月卯月って…」

幸子「ボクの名前は一度も呼んでくれなかった…」

幸子「寂しかった!悲しかった!悔しかった!」

幸子「こっちを向いてほしかった!見てほしかった!褒めてほしかった!」

幸子「だからもっと!もっと頑張れば!ボクにも優しくしてくれるって!」

幸子「ボクのことを認めてくれるって…!そう思ってた!!」

幸子「なのに…ボクが人気になるのは邪魔だって…うっとおしいって」

幸子「辞めちゃえばよかったんだって言ってた…」

幸子「お前なんか人気が出ずに辞めてしまえばよかったって…」

幸子「ごめんなさい…プロデューサーさん」グス

幸子「プロデューサーさん……」

幸子「う…ぐすっ…ひっく…うああああ………!!」

まゆ「……」ソロ…

ナデナデ


幸子「!!」ガバッ

幸子「………あ」グス...

まゆ「……」

幸子「ご…ごめんなさい…」ヒック...

幸子「とんでもないことしちゃいました……ごめんなさい……」

幸子「せっかくまゆさんが…ボクのために一緒にって言ってくれたのに…」

幸子「せっかくボクのことを信じてくれたのに…それを…こんな……」グス

まゆ「……幸子ちゃん」

幸子「さっき言ってたみたいに…どっかへ行けっていうのなら…すぐ出ていきます…」

まゆ「幸子ちゃん……あなた……」

幸子「そうです……」

幸子「ボクは…昔プロデューサーさんをボクのせいでやめさせてしまったんです」

まゆ「……」

幸子「うっ…!克服したつもりでした…もう…とっくの昔に…」

幸子「この一年近くは思い出しもしなかったのに…どうして今頃になって…」

幸子「ひぐっ…笑ってくださいよ……アイドルとして何千何万人の人の心を掴んできたのに」ツゥ

幸子「何でこれだけが…プロデューサーさんだけが…こんな…」ポロ...

幸子「こんな…」ポロ...ポロ...

まゆ「……」

ギュッ

幸子「……」

幸子「もういいですよ…キズの舐めあいになるだけです」

まゆ「…いいじゃないですか」

まゆ「キズの舐めあいでもいいじゃないですか」

まゆ「まゆはもう全部見せちゃいましたから…」

まゆ「まゆの弱いところもあなたに全部さらけ出してしまいましたから…」

まゆ「……何だかこれでやっと対等になれた気がします」フフ


この子になら私の場所があるかもしれない


幸子「……」


まゆ「あなたにはいろいろしてもらいましたよね…」

与えられるだけじゃなく


まゆ「だから今度はまゆが…あなたにしてあげる番です」ナデナデ

与えることができるかもしれない……


幸子「……」

幸子「……う」

幸子「うわあああああぁぁぁぁん……!」ギュウゥ

まゆ「……」ナデナデ...

幸子「……」

まゆ「落ち着きましたか…?」

幸子「……」

まゆ「どうしました?」

幸子「……」

幸子「思い切り泣いてスッキリしましたが…恥ずかしいです……」

まゆ「……うふ♪」

幸子「あああああ!もう!」ジタジタ

まゆ「……でも無理ないですよぉ…あんなことがあったんですもの…」

まゆ「構ってほしそうなのにいつも一人でいたのもそのせいだったんでしょう?」

幸子「…まゆさんは何ともありませんでした」

まゆ「え…?」

幸子「最初にあなたに看病してもらいましたよね」

幸子「…どういうわけかあの時…全然嫌じゃなかったんです…あなただけは」

まゆ「……」

まゆ「……♪」ニコ

まゆ「……ねえ幸子ちゃん」

まゆ「あなた残りませんか?」

幸子「え…?」

まゆ「Pさんを助けた後もここに…鷹の団に」

まゆ「智絵里ちゃんや杏ちゃんかな子ちゃん、みくちゃんたちと…」

まゆ「今まで通りに…またみんなで…」

幸子「だめです」

幸子「…けじめは…しっかりつけないといけませんから」

まゆ「……」

幸子「だからそれは…できません」

幸子「……」

幸子「特訓してた時のことを思い出します…」

まゆ「え…?」

幸子「この一年いた場所で…」

―――――――――――――――――――――――――――――――――

仁奈「行くですよー!」

幸子「フフーン!いつでもどうぞ!」

ドドドドド…

ゴシャアァ

幸子「セクシーアピール!」バァーン



仁奈「……」

仁奈「衣装もマイクも壊れちまったですね」

幸子「……そーですねェ」



晶葉「…まったく」

晶葉「しばらくボーっとしてると思ったらいきなり無茶な事をして…」ガチャガチャ

幸子「あの特訓マシーン作ったの晶葉さんですよ」

晶葉「…失敗作だったようだな」

幸子「…ねえ晶葉さん」

幸子「あなたはなんでこんな所で一人で働いてるんですか?」

晶葉「一人じゃない、助手もいる」ガリガリ

晶葉「ここは広い施設だからな…いろいろ好きにできるんだ」キュイーン

幸子「……ふ―――ん」

晶葉「ふう……」

幸子「……」

幸子「晶葉さん…あなたはなんで発明家やってるんですか?」

晶葉「……」

晶葉「小さいころからやっているんだ」

幸子「好きですか?発明」

晶葉「ふっ…当然だろう」

仁奈「仁奈も好きですよ!とってもおもしろいでやがります!」

晶葉「私は物心がつく前に機械をいじっていた」

晶葉「自分の作った物で誰かが喜んでくれるのがうれしかった」

晶葉「発明とは誰かの役に立つためにあるものだ…」

晶葉「生きてる者がなぜ生きてるのかはわからないが…これは私の生きがいだ」

晶葉「そしてこれが私の生きる意味でもあると…そう思っている」

幸子「……」

晶葉「そう…ひとつ機械をいじっていて気に入ってるのもがある」

幸子「え?」

晶葉「火花だ」

晶葉「火花はいい…吸い込まれる……まるで命だ」

晶葉「自分の命そのものが一瞬目の前で弾けているような気がするな」

幸子「……」

……結局 ボクにはアイドルだけだ

……夢 アイドルはボクにとって夢なのかな?


『オレはオレの国を手に入れる』


違うかな…?トップアイドルと言ってもPさんの言うような

具体的で到達点のはっきりしたものじゃない

そう…これはもっと身近でボクの体の一部みたいなものだ

アイドルをやっているおかげでいろいろな経験をしてきた

プロデューサーさんを失ったこと

Pさんと鷹の団との出会いと別れ

きらりさんやそのほかの人たちも…

堪えられない様な辛いことも 心から嬉しかったことも

ボクはアイドルとしてその瞬間を乗り越えてきた

忘れられない事 忘れられない人間

そのほとんどはボクがアイドルだったから出会えたことだ

『自分の命そのものが一瞬目の前で弾けているような気がするな』


幸子「火花…ボクも引かれているのかな?火花に…」


人と人とがぶつかり合う時の小さな火花

自分と相手のすべての思い…

存在そのものをぶつけて散らすちっぽけな光


…………ボクはトップを目指す

Pさんのような夢とは違うかもしれないけど

Pさんの横に並ぶために…

Pさんの道具ではなく パートナーとなるために

誰のためでもなく 流されるわけでも…

今度こそ自分の意志で

自分の…一瞬の火花をはじき出すために

―――――――――――――――――――――――――――


幸子「くだらないこだわりかもしれませんが…」

幸子「だけどやっと見つけた自分のことなんです」

幸子「Pさんを助けて鷹の団を立て直すめどが立つまでは付き合います」

幸子「でもそれまでです そのあとはボクはほかの所へ行きます」

幸子「…もう決めたんです」

幸子「もう二度とだれかの夢にぶら下がったりしないって」


まゆ「ふふふ…!」

幸子「……?」

まゆ「うふふ…立派ですねぇ…大したものじゃないですかぁ」

まゆ「いろいろ考えたんですね…昔のあなたじゃ考えられません」

まゆ「…ほんと……Pさんみたい」

幸子「え…?」

まゆ「結局あなたもPさんと同じじゃないですか!」

まゆ「夢が全部!自分のことが全部!」

まゆ「まゆなんかいてもいなくてもおんなじ…!」

まゆ「あなたはまた行っちゃうんでしょう!最初から…そう決めてたんでしょう!」

まゆ「まゆと一緒にいたいとか!一番の友達だとか言ったくせに!」

まゆ「行っちゃえばいいじゃないですか!勝手に一人で行けば!」

幸子「来てくださいよ」

まゆ「………え?」

幸子「あなたもボクと来てくださいよ」

幸子「先のことはわかりません」

幸子「あなたといることがボクのやりたいことにどう影響するのか…今は何も」

幸子「でも…大好きな友達と一緒にいたい、一緒に歌を歌いたい…」

幸子「…と 今はそう思ってます」

まゆ「幸子ちゃん…」

幸子「だから…一緒に来てください!」スッ...

まゆ「……」

まゆ「はい!」ギュッ

市原仁奈(9)
http://i.imgur.com/7aRiauH.jpg
http://i.imgur.com/bzxDZwJ.jpg

池袋晶葉(14)
http://i.imgur.com/hDkGEje.jpg
http://i.imgur.com/r2dkLpB.jpg

――――――――――――――――――――――――――――――――

P「……」

子どものころ空き地で仲間たちと繰り広げた遊び 勝ち取った小さな名誉

奪い取ったキラキラ光る小さな戦利品の数々

夜にテレビをつけると

テレビで、雑誌で見かける女の子たちの歌声

スポットライトに照らし出されるその笑顔

それはオレの目にするものの中で一番キラキラと輝いて見えた

オレは決めた

オレが手に入れるがらくたは あんなのにしようと



一筋の光もない真の闇

この闇に身を浸してもうどれだけの時間が過ぎたのか…

永遠か…一瞬のような気もする……

すべての感覚が麻痺し何も感じられない

オレの体は?まるで中空を漂っているようだ

オレは正気を保っているのだろうか?とうの昔に狂ってしまったのか?

何もかもが虚ろな中 ただ一つだけ鮮明なものがある

あいつだけが まるで闇夜の雷の様に鮮烈にオレの中に浮かび上がる

そして繰り返し津波のように押し寄せる無数の感情

憎悪 友愛 嫉妬 空しさ 悔しさ

いとおしさ 悲しみ 切なさ 飢餓感…

渇望し去来するいくつもの感情

そのどれでもない そしてすべてを内包した巨大な激情の渦

それだけが無感の中 消え入りそうになる意識をくさびとなって繋ぎ止める

オレは自分が人と違うことを知っている 

オレと出会った人間は決してオレを無視できない

必ず好意か敵意のまなざしを向けてくる

好意は信頼や友情に 敵意は畏怖あるいは恐怖に育てる術をオレは知っている

そうやって数多の心の束をオレはこの手に握ってきた

……だが なぜだろう?

オレはあいつのこととなるといつも冷静ではいられなくなる

オレをこの闇の中に閉じ込める原因となったあいつが

今は唯一オレの生命を繋ぐ糧となっている

数千のR 数万のNの中で ただ一人あいつだけがなぜ…?

いつからだろう 手に入れたはずのあいつが

逆にこんなにも強くオレを掌握してしまったのは

遠い日 あの空き地のステージから始まった終わらない遊び

オレにとって唯一神聖なガラクタを手にするための巡礼の旅

だが あいつは今オレの中で

そのがらくたが色あせるほど

ギラギラと目に痛い



幸子…!!

―――――――――――――――――――――――――――

杏「いよいよだね…」

杏「あーあ、風邪ひいてなければ杏もみんなと行けたのになあ」ケホ

かな子「……」

智絵里「……」

幸子「…あはは」

杏「いやほんとだからね!?疑ってんの!?」

幸子「冗談ですよ」

みく「みくたちの分も頼んだにゃ!絶対助け出してね!」

幸子「はい!」

みく「そしたらさ…きっと…また昔みたいに…」

幸子「……」


まゆ「全員準備してください!」

まゆ「これから皆さんを二手に分けて別行動に移ります!」

まゆ「Pさんの救出部隊はすぐに出発します!」

幸子「行きましょうか」

まゆ「……」ニコ

まゆ「全員!出発です!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

幸子「なんでこんな薄暗い路地裏に?建物は目の前ですが」

智絵里「正面からはさすがに行けないし…抜け道があるんだよ」

智絵里「あのビルはいろいろな事してるからね…裏口が必要なんだ…」

まゆ「ここですね…」

幸子「でもそういうのって鍵とかがかかっているんじゃあ…」

まゆ「うふふ…Pさん…もうすぐですよぉ…」ガチャガチャ

カチャ

まゆ「開きました!」

かな子「凄い器用だね…まゆちゃん」

幸子(すごい…)

まゆ「それじゃ行きましょうか」

幸子「ちょっと待ってください…」

幸子「ボク達はともかく一番重要な立場のまゆさんが直接というのはやっぱりまずいんじゃ?」

まゆ「仕方ないでしょ?今みたいなことできるのもまゆだけですし」

まゆ「こうなった以上Pさんを連れ出せなければ本当にまずいですから…このメンバーが一番です」

幸子「……ですが」

まゆ「心配してるんですか?あなた」

まゆ「冗談じゃありません!もう子供じゃないんですよ!」

まゆ「私が…あなたの背中くらい守れること忘れないでください」

幸子「……はい…」

かな子「ふふっ」

智絵里「……」ニコニコ

幸子「……」

まゆ「行きますよ」

タタタタ...

幸子「……」

幸子(……Pさん)

いつも上ばかり見ていた

昇りつめること……飛び続けること以外は何も意に介さない

高みを独り飛び続ける……鷹

そう…彼はボク達の這い回る地面には絶対に降りることのない足のもげた鷹だ

挫ける諦めるって言葉がこれほど似合わない人はいない

冷静で冷酷で 抜け目なくて


『オレがお前のために体をはることに…いちいち理由が必要なのか…?』


勝ち続け 奪い続け


『…オレを ひどいやつだと思うか』


幸子(……!)


『Pさんは………あなたがいないとダメなんです!!!』


幸子(……)

幸子(……もしそうなら)

幸子(もしそうだとしたら…ボクは…!)

智絵里「ついたね…」

幸子「しかしよく見つけましたね…こんな抜け道」

かな子「内通者がいましてね…」


「誰ですの?」


幸子「……!」ビクッ

まゆ「待って!」

幸子「え?」

まゆ「味方です」

「た…鷹の団の方々ですわね?」

「お待ちしていましたわ…ほんとうに来てくださったのですのね!」

幸子「誰ですか?」

「あ!あなた!確かPちゃまの横でドヤ顔してた方ですわね!」

幸子「ちょ……」

まゆ「何してるんですかあなた」

桃華「覚えていますわ…桃華ですわ!よろしく!」

幸子「! あなただったんですか…」

まゆ「プロデューサー代理のまゆです…今夜のことは深く感謝しています」

桃華「あ…構いませんわそんなこと」

桃華「とにかく…早く行きましょう…」

真奈美「私は護衛としてついて来た者だ…こっちへ来てくれたまえ」

幸子「ひさしぶりに来るのがこんな形になってしまうとは…」

智絵里「ほんとね…」

まゆ「……」

まゆ(桃華ちゃん…このプロダクションのメインアイドル)

まゆ(まだそんなに年がいっているわけでもないのにお嬢様としての物腰)

まゆ(朗らかで優しそうで…女のまゆでも好感が持てます)

まゆ(…そして……この人がPさんの…)

まゆ(こんなことになってしまった今もPさんはこの人を必要とするのでしょうか?)

まゆ(……Pさんを崇拝する気持ちは今でも変わらない…だけど)

まゆ(…まゆはまだ…こだわってる…嫉妬している!)

まゆ(嫌になります…こんな自分が…!)

ギュッ

幸子「?」

桃華「…まゆさん…わたくし、謝らなければなりません」

桃華「一年前の社長の…Pちゃまとあなたたちへの仕打ち…」

桃華「心からお詫び申し上げますわ」

まゆ「そんな…あなたが謝る必要なんてありません…」

まゆ「こうしてここに来れたのも桃華ちゃんのおかげですし」

かな子「でも…確かにこのままじゃスッキリしませんね…」

かな子「もしご存じなら教えてほしいんです」

かな子「わたし達が嵌められた前日…Pさんが捕まったあの晩一体何があったのか」

桃華「……」

桃華「わかりましたわ」

真奈美「桃華君…!」

桃華「いいのです」

桃華「……」

桃華「あの晩…Pちゃまは…わたくしの部屋に…」

まゆ「……!」ドキドキ


「あら…そこにいるのは誰かしら」


かな子「!」

まゆ「見つかっ…」

桃華「わたくしに任せてくださいまし…」

桃華「……」トコトコ

志乃「あら…誰かと思えば桃華ちゃんじゃない…何やってるのこんな時間に」ヒック

桃華「少し寝つけなかったので…散歩をしていたところですの」

志乃「寝つけないとはいってもこんな時間に出歩くのは感心しないわね…」

桃華「そういうあなたもお酒をこんな時間まで飲んでるなんて感心しませんわ」

志乃「ふふ…言うじゃない…」

真奈美「まあ…ここは互いに黙っているということでいいじゃないか」

志乃「あら真奈美さん…あなたもいたのね」

真奈美「今度一杯奢ってやるから」

志乃「うふ…それじゃあ内緒にしておいてあげるわ…約束よ」


幸子「なかなかやりますね」

桃華「レディは時に大胆に行かなくてはなりませんの」

かな子「なるほど…」

桃華「…それにあの方の……Pちゃまのためなのですから」

まゆ「………」

幸子「ずいぶん古臭い雰囲気の所ですね…」

智絵里「地下だからかな…?」

桃華「基本的には倉庫としてもあまり使われないところですので…」

桃華「どうやらPちゃまは一番下の所にいるらしいですわ」

桃華「これが鍵ですの、どうぞ」

まゆ「ご協力感謝します…ここからは私たちだけでやりますのでそろそろお帰りに」

桃華「いやですわ」

まゆ「え?」

桃華「わたくしもあなた方と一緒に行きますの」

智絵里「ど…どうしてですか…?」

真奈美「おいおい…?勝手にいなくなったらとんでもない事になるぞ?」

真奈美「社長も大騒ぎするだろうしそれは…!」

桃華「やめてくださいまし!!」

桃華「どうでもいいですわあんな人…海に沈めてやっても構わないくらいですわ」

真奈美「な…!?ずいぶん物騒なことを…」

桃華「いいのです!!」

桃華「お願いしますわまゆさん!」

まゆ「!」

桃華「わたくしは…お嬢様ですしあまり色々なことはできないかもしれませんけど」

桃華「Pちゃまと一緒にいられるなら…わたくしなんでも頑張りますわ!」

まゆ「……」

まゆ「…………私は……」

まゆ「私は反対です……」

桃華「!」

かな子「まゆちゃん…」

まゆ「その意思を尊重したいのは山々ですけど…それには大きな問題があります」

桃華「問題…?なんですの?」

まゆ「わたし達がPさんを助けたとしてもそれは会社としては何のデメリットもありません」

まゆ「それに元々人間を監禁している事実を表に出すわけにはいかないのですから…
    仮にデメリットがあったとしても何もする事はできないはずです」

まゆ「しかしあなたを連れだすとすればそれは会社だけじゃなく櫻井家をも巻き込んだ事態に発展します」

まゆ「そうなればあなたを助けるために警察まで出てくるかもしれませんし…ニュースになる可能性もあります」

桃華「で…ですけど……!」

まゆ「それに何よりも女性を誘拐したなどという話になれば…
    Pさんは今後二度と消えない汚名を背負うことになります」

まゆ「そうするとPさんの出世の道は閉ざされ二度と世に出ることはできないかも…」

まゆ「あなたはそれでもかまわないのですか?」

桃華「そんな……!」

桃華「……そんな」

桃華「わたくしはただPちゃまと…………」シュン

真奈美「桃華君…」

まゆ「ですからお気の毒とは思いますけど…」

まゆ「もしPさんのことを一番にお考えならどうかお聞き分け下さい」

桃華「……」

桃華「……ゃ」

まゆ「…?」

桃華「いやいやいやいやいや!絶対いやですわ―――――!!!」

まゆ「!?」

桃華「いくったらいくったらいくったら…絶対行きますわ!!Pちゃまと!!!」

まゆ「ちょ…!?」

幸子「待っ…」

真奈美「やば…」



桃華「………………!!!」モガモガ

「「「…………」」」


シ―――――ン

幸子「いきなり叫ぶなんて何してるんですか…」

桃華「……!!」モゴゴ

かな子「ど…どうしよう…手を離したらまた叫ぶかも」

桃華「~~~~」モゴ

まゆ「うーん……」

まゆ「手を離してもいいですよ」

幸子「!」

まゆ「わかりました…ご一緒しましょう」

桃華「ほんとですの…?」

まゆ「ただし」

桃華「!」

まゆ「もしもPさんがダメだと言われた時は…その時はあきらめてくださいね」

桃華「…でも」

まゆ「……」ジィー

桃華「う……」タジ...

桃華「わかりましたわ…」

桃華(いいですわ!Pちゃまに無理やりでも頼んでしまいますから)


真奈美「フッ…その場合私はどうなるんだろうな…」

智絵里「さ…さあ…」

かな子「その…裏方担当ってことでいっしょに…」

幸子「じゃあ行きましょう…夜が明けちゃいますよ」

まゆ「……」

幸子「どうしました?」

まゆ「…嫌な子ですね…まゆは」

幸子「え?」

幸子「なんでです?あなたの言ったことはもっともだと思いますけど」

まゆ「そうですけど…」

まゆ「あれは本当のことですけど…心のどこかであんな風にPさんのことを話す桃華ちゃんを私……」

幸子「……」

幸子「まったく…くだらないことでいちいち…」

まゆ「ご…ごめんなさい…その」

幸子「今はそういうのはいいですから!行きますよ!」

まゆ「……ごめんなさい…」

幸子「……」

幸子「…急ぎますよ」

幸子(…そうです そうやってPさんのことを気に病むあなたは気に入りません…ですが)

幸子(ですが一番気に入らないのはそれを仕方ないと思ってしまいそうになる自分…)

幸子(まだPさんを吹っ切れずにいるボク自身だ!)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「もうすぐPさんが帰ってくるんだねー」

「一年ぶりだから私たちの成長にびっくりしちゃうよね!」

キャッキャッ


杏「……ケホッ」

杏(みんな楽しそうだな…無理ないけど)

杏(もうすぐ…もうすぐプロデューサーが帰ってくるんだもん)

杏(ずいぶん遠回りしたけどプロデューサーさえいればまた…)


ヒュウウゥ…

「ふわぁ…」


スウゥ...


杏「………!?」

杏(な…何だ今の…?)

杏「………………」

杏「熱による幻覚だな、寝よ寝よ…」ゴロン

キャアアァ…

杏「!?」ビクッ

杏「これは幻聴じゃない…よね…」

杏(一体なんだ!?こんな時に…!)

杏「くっ…!ケホ」ヨロッ...

杏(もう少しで…!)

杏(もう少しでプロデューサーが戻ってくるっていうのに…!)

杏「ハア…フウ…」フラフラ...

杏「!?」

シーン

杏「みんな…?」

杏「……?」

杏「なんだこれ…?誰もいない…」

杏「みんな…何処に?」

杏(敵が来たからみんな逃げたのかな…?)

杏(でも姿は見えないし病人の杏を放っていったりはしないよね…)

ザアアアァァ...

杏「……」

「…げて」

杏「!」

「逃げて…杏ちゃん…」

杏「え…何さいきなり…」

杏「っ!?」ビクッ


小梅「……」

杏「だっ…誰だ!?」

小梅「こ、怖く…ない…よ……?」ユラ...

杏「うっ……」ジリ...

チャリ

杏「……?」

ジャララ…

杏「何だ…メダル?なんでこんなところに…」


小梅「ふふ…」

「きゃああ…!」

チャリーン


杏「…は?」

杏「え……?今何を…メダルに…変わった…?」

杏(待てよ…そういえば聞いたことがある…)

杏(アイドルに対して特別な何かをすると…メダルになる…とか)

杏「まさかこれが…みんな…!?」

こずえ「…ふわぁ…あなた、だぁれぇー?かわいいのー…」

杏「さ…さっきの…!」

こずえ「ふわぁ…こずえ…ようせいさんなのー…」

こずえ「ねえ、おねえちゃん…こずえのおにんぎょうさんになってー…?」

小梅「だ…だめだよ…」

小梅「あの子の…お、お友達になって…もらうから…」

杏「とも…だち…?」

小梅「や、やっぱりみえないかな…?で、でも、もうすぐ、見えるようになるから…」

杏(やばい…体がふらついて動けない…!!)

小梅「こ、怖いの…?それなら…ゆ、夢…見せてあげるね…」

小梅「まあ…悪夢…なんだけど…ね♪」ニコォ

杏「ひっ…」

杏(みんな……!)

ヴワアアァッ

珠美「はあっ!」ザッ

小梅「……!」

こずえ「ふわぁ…」

杏「!」



珠美「退くのです!」ジャキ

小梅「……」

こずえ「おねえちゃん…だぁれぇー?」

珠美「あなた達もこんなところで遊んでいる暇はないはずです」ドキドキ

珠美「急がねばならぬのでしょう?」ドキドキ

小梅「……」

小梅「……」

小梅「…こ、今回は…帰ることにするね…」

小梅「こずえちゃん…い、行こ…」

こずえ「おててつないで…どこいくのー?」

こずえ「おててつめたーい…てがつめたいひとはねー…やさしいんだってぇー」

小梅「じゃ、じゃあ…ゾンビはみんな…や、優しいのかな…?」


珠美「……」

珠美(危なかった…小梅さんが相手だと怪談話をされた日には間違いなく負けていました…)

杏「……」

杏「……!!」

杏「う…」

杏「うわあああ!!」

杏「ゲホゲホッ!う…うう…!な…んだ…」

杏「何なんだ!?何が起こったんだ…!?ゴホッ!」

杏「……」

杏「うそ…でしょ…」

杏「みんな…さっきまであんなにはしゃいでたじゃないか…」

杏「あんなに…プロデューサーが帰ってくるの楽しみにしてたじゃないか…」

杏「どうして…こんな」

杏「こんな…」

杏「こんなのってないよ……!!」



珠美「……」

ザッ...

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

カンカンカン...

智絵里「この階段の下に地下の牢獄が…」

かな子「予想以上に深いですね…」

桃華「一番下の部屋にPちゃまがいるのですね…」

カンカンカン...

幸子「…?」ピク

智絵里「どうかした?」

幸子「……」

幸子(…気のせいかな)

幸子「何でもありません…」




愛海「……」

かな子「! あれですね!」

まゆ(Pさん…この闇の底に…一年間も…)

タタタ...

桃華「Pちゃま!Pちゃま!」ドン ドン


シーン

まゆ「あ……」ガタガタ

ポン

まゆ「!」

幸子「……」

まゆ「ふぅ……」ス...

ガチャリ

ギイイィィ…

シーン...

かな子「うわ…黴臭い…」

まゆ「Pさん…?」

まゆ「Pさん……!」


シーン


智絵里「……もしかして他の部屋じゃ…」

桃華「そ、そんなはずありませんわ!確かに一番下の部屋だと…!」

幸子「!」

幸子「シイッ!誰かいます!」

「「「…………」」」

シーン...


幸子「Pさん…?」

幸子「Pさ…」

幸子「っ!」


P「」


幸子「P…さん…?」

まゆ「!!」


ダダッ

幸子「Pさん!!」

グイッ

幸子「…………!!」


P「」


幸子「あ…あああ…」

幸子(体中がボロボロだ…)

P「」

幸子(……舌も…)

幸子(顔は…変な仮面があってよく見えない…)

幸子「まゆさん…鍵!」

まゆ「」

幸子「まゆさん!!」

まゆ「」ビクッ

智絵里「鍵…かして…?」チャリ


幸子「……」

智絵里「……」

ガチャ

幸子・智絵里「「ひっ!!」」

まゆ「……?」ソロ...

幸子「来ないで!!」

幸子「来ないでください……!!」

まゆ「……!」

幸子「……」

幸子「そんなはずない…」

幸子「これが…あの…Pさんのはずがありません…」


P「」

P「…」

P「……」パチ

幸子「……」

P「…子」

智絵里「! Pさん!?」

P「」ピク...

ガシ

P「・・・・・・」グッ...

智絵里「…!」

幸子「Pさん……!」ギュッ

幸子「う……う……!!」

P「・・・・・・」

ス...

幸子「う……うぅ……!」ポロポロ

P「……」

桃華「……Pちゃま」

ガシ

かな子「……」

桃華「何ですの…?離してくださいまし!」

かな子「……」フルフル

桃華「……どうして?Pちゃまいったいどうしてしまったんですの?ねえ!?」


ドクン ドクン

まゆ「ハア…ハア…!ゲホッ!」

真奈美「お…おい大丈夫か…?」サスサス



愛海「……」

バタアァン

幸子「!」

愛海「うひひ…そこまでだよぉ…」

桃華「だ…誰ですの!?」

愛海「あたしはここの管理者だよ!」

愛海「あなた達もう逃げられないよぉ…鍵かけちゃったもんねうひひ」

愛海「人も呼んでおいたしぃ…もうすぐ来るだろうからあきらめておとなしくしてね」

愛海「はぁ~ん…これでまた新しいぷにょふわが手に入るね…」

愛海「社長にも褒めてもらえるよ…うひひ」

幸子「・・・あなたですか?」

ユラリ…

幸子「あなたがPさんをこんなにしたんですか?」

愛海「怒ってもだーめ!鍵かかってんだから無駄だよ」

愛海「でもこの声聞き覚えが…あっ!あなた幸子ちゃんじゃない!?」

幸子「・・・愛海さん」

愛海「覚えててくれたんだ!嬉しいな!いやー何年振りだろう」

愛海「感動の再会ってカンジ!またふれあえるなんて!どのくらい育ったのかじっくり診てあげるからね!」


幸子「 あ な た が ・・・ や っ た ん で す か ?」

愛海「あー…もしかして怒ってる?」

愛海「でもね、社長が好きにしていいって言ったからあたしはやったんだよ?だからあたしは悪くないよ」

愛海「いや―――こんなきれいなひと手にかけるのあたし初めてだったから…」

愛海「男の人だってのにすごく楽しかったよぉ」

愛海「体中をもみもみしてね…肩、頬、胸、脚、腿、おなか…」

愛海「もう全身最高!新しくめざめちゃったよね!」

幸子「……」

真奈美「……お仕置きが…必要なようだな」ゴゴゴゴ

愛海「げえっ!真奈美さんも居たの!?」

愛海「でも鍵かかってるから大丈夫だもんねー!真奈美さんもあとでじっくりともみもみしてあげ…」

ガチャリ

真奈美「ほう…………?」

愛海「……え?」

愛海「嘘!?なんで鍵開いてんの!?」

まゆ「………」ゴゴゴ

愛海「ピッキングしたの!?嘘でしょ!?さっさと南京錠もかけとけばよかったー!!」

真奈美「……」

まゆ「……」

幸子「……」

愛海「……」

愛海(これはヤバい…本当にヤバい)

愛海「ふっ…」

愛海「三十六計逃げるにしかず!!お仕置きされてたまるかー!!」ダッ

愛海「あばよとっつぁ…」ドン

愛海「うおっ!何…」


清良「……」ニコ

愛海「……は?」

清良「Pさんがケガしてた時のためについて来てよかったわ…」

清良「最近おとなしいって聞いてたけどこんな事してたの……」

愛海「ああああ…」ガタガタ

愛海「逃げっ……」

清良「逃げたってムダですから♪」

愛海「っ!」

ヘレン「フッ…あなたにも世界レベルの体験をさせてあげるわ」

愛海「なんでいんの!?」

ヘレン「世界の海は私の海!愛海…あなたも世界レベルにしてあげる」

愛海「う…うう…」

ザッ...

愛海「ひいっ!」

クラリス「神に弓引く愚か者よ……その罪、その血を以て贖って戴きましょう!!!」

クラリス「神を畏れぬ愚か者よ……」

クラリス「天 罰 覿 面!!!(開眼)」カッ

愛海「」

真奈美「格の違いを見せてあげよう」

清良「愛海ちゃんなら、禁断の治療にも耐えられそう♪」

ヘレン「先ほど庭で、梅の花が散っていたわ。……数分後のあなたの姿よ」

クラリス「祈りを知らぬ傲慢なる者よ……!悔い改めなさい!!」




それはただ一言こう呼ばれるものだった

『絶 望』 と …

愛海「ああああ…た…たしゅけて…」ガクガク

クラリス「どうやら、この娘に関しては特別詳しく取り調べる必要がありそうですね」

真奈美「連れて行くのは任せてくれ」ガシィ

愛海「助けてええええええ!!!もみもみしたのはほんとだけどケガはあたしじゃないよぉぉー!!」

ヘレン「あら、ちょうど部屋が空くじゃない。あなたたち、出てちょうだい」

清良「大丈夫、少々痛くても死にはしませんから。はーい、観念してくださいね♪」

愛海「助けて!助けてぇ!!誰か!誰か!!いやだああぁぁぁ……!!」ズルズル


バタン



まゆ「……」

桃華「……」

かな子「……」

智絵里「こ…こわいです…」ブルブル

幸子「……間違いなく今までで最強の布陣でしたね」ゾクッ…

幸子「それじゃあ…早く…逃げましょう」

まゆ「……」

幸子「まゆさん…?」

まゆ「うっ…ひぐっ…Pさぁん……!」

桃華「ぐすっ…P…ちゃま…!」

幸子「……」

かな子「ふ…二人とも…早くしようよ…」

まゆ「ひぐっ…だ…だってぇ…」

桃華「Pちゃま…Pちゃまぁ…」

幸子「……」

幸子「ふた

智絵里「いつまで泣いてるんですかっ……!!」

まゆ「っ!」ビクッ

智絵里「ここで泣いてたって何も変わらないんですよ…!」

智絵里「わたし達が今やるべきことが何なのかを考えてくださいっ!!」

幸子「智絵里さん…」

まゆ「……」グス

まゆ(そうです…今は…)

まゆ(今はPさんをここから連れ出すことだけを考えないと…!)

まゆ「………!」ゴシゴシ

まゆ「ごめんなさい…!行きましょう!」

まゆ「桃華ちゃんも…行きましょう」

桃華「…わかりましたわ!」

幸子「かな子さん、Pさんは任せます」

かな子「任せてください!おんぶならできそうです…よいしょ」

かな子「っ……」

かな子(……す…すごく軽い…こんなのって……)

かな子(一年もこんなところにいたら仕方ないですよね…きっと…きっとすぐ元に…!)

幸子「それじゃあ急いで行きますよ!」

タタタタ...


P「……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

社長「……」

社長「…おのれェ…」

社長「おのれプロデューサーァァ……」

社長「あの部屋でとうに朽ち果てたはずが……」

社長「闇の底から這い出てまた私から桃華を…光を奪い去ろうというのか……」

社長「そうは…そうはさせぬぞ」

社長「よいか…桃華をここから連れ出そうとしているものを一人残らず抹殺せよ」

社長「特にあのP…あ奴だけは何としても討ち取れ!」

社長「ただし桃華を傷つけることは許さぬ!!万が一にも危害が及ぶことがあったら
   その時はお前たちも地獄へ送ってくれるわ!!」


仁美「御意!」

亜季「サー!」

あやめ「ニンッ!」


社長「よし行けい!私の前に桃華の身とPの首を供ぜよ!!」

智絵里「ふう…」

智絵里(…なんで誰も追いかけてこないんだろう…)

智絵里(愛海ちゃんは人を呼んだと言っていたし…なら誰かは来るはずなのに)

智絵里(考えすぎなのかな…)

幸子「はあ…はあ…疲れた…」

まゆ「もう…汗だくですよ?拭いてあげますね」フキフキ

幸子「あ…ありがとうございます…」


P「……」


まゆ「さあ急ぎましょう…抜け道に行ってしまえばこっちの物です」



「行きましたね……」


タタタタ...

幸子「この通路もの凄く汚いですね…埃だらけ」ケホ

まゆ「桃華ちゃんのお洋服、汚れちゃうんじゃないですか?」

桃華「……」グイ

かな子「わわっ!?なんでスカートを捲って…!?」

桃華「構いませんわ!こうした方が走りやすいですもの」ギュッ

智絵里(何だかキャラが変わっちゃったみたい…)


桃華(そうですわ…格好なんてどうでもいい)

桃華(暖かい暖炉だって、かしずく使用人達だってもういりません)

桃華(口がきけなくてもいい…お怪我だってきっと治りますわ)

桃華(いっしょに居たい…ずっと…ずっと!)

カタン...


幸子「!」ピク

幸子「…? 待ってください!」

まゆ「どうしたの?」

幸子「しっ!」

シーン...

幸子「……」


カサッ


幸子「!」

あやめ「隙あり!伊賀忍法・手甲鈎!」ヒュバ

幸子「うわっ!?」ガキン

まゆ「こ…このっ!」

あやめ「ニンッ!」スゥ...

智絵里「…な……何ですか!?今の…」

幸子「気を付けて!まだその辺にいますよ!」

まゆ「……」

ガサ

まゆ「!?」

仁美「女一輪、鮮やかに咲く!いざ、尋常に勝負ー!」バサッ

まゆ「きゃあ!」ブンッ

仁美「うわっ!対応早っ!」

仁美「なかなかやるねー!でも、まだ戦いは始まったばかりだよ!」スゥ...

幸子「さっきから何なんですか!?もう!!」

桃華「これは…話に聞いたことがありますわ…」

桃華「なんでも特定の人物を速やかに始末するための部隊だとか…」

かな子「えええ!?そんな人たちをけしかけるなんてひどすぎじゃないですか!?」

まゆ「忍者と…侍?でしょうか?」

幸子「最初の人は忍法とか言いながら物理攻撃しかけてきてましたよ?何考えてるんでしょうか」

ス…

あやめ(ふふふ…油断大敵です…!くノ一を馬鹿にする者は許しません!)スチャ...

桃華「……」チラ

桃華「っ!?」

あやめ(この毒吹き矢でさらばです!ニンッ!)プシュッ

桃華「Pちゃま…!」

桃華「……っ!」バッ

プス

桃華「あ…」ドサッ


P「……!」

まゆ「桃華ちゃん!?」

幸子「このっ!!」

あやめ(やっばぁい!!やってしまいました!!)

あやめ「ちょ…ちょっと待つのです!!」

幸子「!」

あやめ「取り引きです」

幸子「取り引き…?」

あやめ「桃華ちゃんの身柄を引き渡してもらいたい!その代り桃華ちゃんの命は保証します」

まゆ「なんですって…?」

あやめ「桃華ちゃんに打ち込まれた吹き矢には毒が仕込まれています」

あやめ「放っておけば半時を待たずして必ず命を落とす…」


智絵里「桃華ちゃん…!大丈夫!?」

桃華「う…」ハアハア

あやめ「解毒剤はこちらの手にあります…」

あやめ「我々としても死なれては困るのです」

あやめ「さあ…どうします?」

まゆ「……」


智絵里「桃華ちゃん…!」

桃華「ハア...ハア...」


まゆ「…………」ギリ

まゆ「わかりました…その取り引き…うけます」

幸子「……選択の余地はないですね」

あやめ「ではこちらに連れてきてください」

智絵里「桃華ちゃん…いきますよ」

桃華「……ゃ」

智絵里「!」

ギュ…

P「!」

桃華「……いや……ですわ…」

桃華「いっしょ……いっ…しょに……ずっと………」

まゆ「……」

P「……」クイ

桃華「…?」

P「……」パク パク

桃華「……」

桃華「……」コクリ


まゆ「…………」プイッ


亜季「ではこちらへ…むこうにいた護衛の人に渡しておきましょう」

あやめ「それでは…お命頂戴!」

仁美「一騎駆けこそいくさ場の花!いっくよーっ☆」

仁美「華の大傾奇っ!」

あやめ「いきます!忍術・名刀乱舞!!」

かな子「くっ…!」

まゆ「危ないっ!」ドゴ

あやめ「甘い!忍法空蝉の術!」バサァ

仁美(今です!)


亜季「私はスナイパー・アキ!狙った標的は必ず自分の手で倒すのであります!」

チャキ…

亜季「ワンショット…ワンキ…違いますね。なんでしょう?とにかく!あなたのハートを狙い撃ち♪」

パァン


バチュンッ

幸子「うわっ!?」

バチュ バチュン

まゆ「な、なんですか!?」

幸子「銃かなにか…遠距離攻撃のようです!」

まゆ「狙い撃ちになっちゃいますよ!明かりを消しましょう!」

幸子「でもまだ忍者がその辺にいますよ!」

まゆ(狙いは割と正確…この距離じゃ近づく前にやられてしまうかも)

かな子「……」

かな子「明かりを消してください!」

まゆ「!」

かな子「考えがあります…ちょっと幸子ちゃん…みんなも聞いてください」ゴニョゴニョ

幸子「ええ!?……わ、わかりました!」


フッ...


亜季「ムッ!」

亜季「ムダな抵抗を。降伏すればよいのに」

亜季「だが…さすれば忍者と侍が彼女らを切り裂く!!」


仁美「ふふふ…何か計略を思いついたのかな?」

仁美「だけどそんなことをするのは弱い証拠…虎はなぜ何もしなくても強い?元から強いから!」

あやめ「成程、この状況でもあきらめない姿勢…只者では無いようですな」

あやめ「ならば!くの一あやめ、必殺の一撃を受けてみよ!」

仁美「合戦の作法しかと見て置け!冥土のみやげにね!!とりゃー!」ザッ

あやめ「駆け抜けること風のごとく! ニンッ!」シュバッ


かな子「今です幸子ちゃん!」

幸子「ええい、ままよ!」
                                             コスモ
幸子「思い知りなさい!アイドルの頂点が誰であるかを!!燃えろボクの小宇宙!!」キュオオオォォ


     サチコスパーク
幸子「『溢れる輝き』!!」カッ!


あやめ「うおっ!?」

仁美「まぶしっ!」


かな子「今です…!」

智絵里・まゆ「「……!」」

ドガッ!

あやめ「くっ…!勝負はわからぬものですな…!」

仁美「フフ…いつでも逃げれば生きられるというものじゃなく…
   突き進んだほうが生きのびられる場合もあるんだね…!」ガクッ


まゆ「これであっちの一人だけに…」


あやめ「言ったはずです…勝負はわからぬものだと」シュンッ

まゆ「えっ…!?」

あやめ「これぞ忍法・変わり身の術!かかりましたな!ニンッ!」

智絵里「まるで…本物の忍者みたい…!」

あやめ「まだわたくしの実力を疑っているのですか!?よろしい!ならば全力でゆきます!」ゴゴゴ...

あやめ「忍法・分身の術!!」

ボンッ!

幸子「なっ!」

まゆ「こ…これは!」


あやめ「「「ニンと!?あやめが3人に!?いざ、本物に向けて、かかってみよ!」」」


かな子「ぶ…分身……!?」

あやめ「「「もし外したら…天誅ー!ですよ!」」」

智絵里「すごーい…!本物の忍者だねっ…!」

あやめ「「「ふふふ…そう言われると照れますな」」」

幸子(…これはどうすれば……?)

かな子(ちょっとみんな!来てください)ボソ

まゆ(何ですか?)ボソ

かな子(聞いてください!3人で…)ボソボソ

あやめ「「「何をボソボソと!来ないならこちらから行きますよ!」」」

幸子「……」ニコ

まゆ「……」ウフ

智絵里「……」エヘヘ

あやめ「「「……?」」」

幸子「ボクは右端」

まゆ「まゆは真ん中…」

智絵里「わたしは左端ですねっ…!」

あやめ「「「え?ちょっと待って」」」

3人「「「えいっ!!!」」」

スカッ

ドゴオッ

スカッ

あやめ「ぐほあっ!!い…いっぺんになんて…ず…る…」ガクリ

幸子「勝てれば…」

まゆ「いいんです」

智絵里「これで今度こそあっちの一人だけ…」

かな子「決着をつけましょう!」

幸子「残りはあなた一人だけです」

亜季(二人がやられましたか…)

まゆ「覚悟してくださいねぇ」

亜季(四対一のこの状況で…)

智絵里「もう…好きにはさせません…!」

亜季(わたしが取るべき行動は一つ…!!)

かな子「さあ…行きますよ!」


亜季「降伏します!お助けを!」ドゲザ


幸子「…そんなのでいいんですか?あなた軍人じゃ…」

亜季「わたしは傭兵です!何より大事なのは自分の命であります」

亜季「社長には全員始末したと報告しておきますのでどうかお見逃しを…」

まゆ「ほかの二人はあれだけ頑張ってたのに情けないんですねぇ♪」

亜季「…………仕方ありませんな」ピク

智絵里「それじゃ…行きましょうか?」

かな子「そうですね…」

幸子「約束は守ってくださいよ?」

亜季「それはもちろんであります!私にお任せを!」

まゆ「はーあ…じゃあ行きましょうか」スタスタ

亜季「……」

亜季「……」


亜季「なんて言うとでも思ったら大マチガイであります!!」ジャキッ


あやめ「さすが亜季殿!!教えた山彦の術ですな!!」

仁美「すごい裏切り!石田光成みたーい☆」ミッカデンカ!


亜季「敵に背を向けたのが運の尽き!私のコイツが火を噴くであります!」

亜季「この特製ロケットランチャー型巨大クラッカーであなた方を狙い撃ち!」

幸子「ず…ずるいですよ!!ウソをつくなんて!」

亜季「さっきあなたたちも言っていたでしょう!勝てればいいのだと!」

亜季「敵が何を言おうとさっさと止めを刺すべきだったのであります!」

まゆ(あれっこの感じ…どこかで…)

亜季「それでは!」スチャ...

智絵里「きゃ…やめ…!」

亜季「メリー・クリスマス!!!(地獄で逢おうぜ)」カチリ

幸子「……!!」

智絵里「………」

かな子「……?」

亜季「………あれ?」

亜季「フンッ!……動けこのポンコツ!スリー…トゥー…ワン…GOファイヤー!」

ドゴォン!


幸子「わっ…」

智絵里「ひっ……」

かな子「きゃ……」

まゆ(やっぱり…)

あやめ「ゲフッ!」

仁美「ガハッ!」

亜季「ゲッホ!ゴホッ!何ですかこれは!!暴発したですと!?」


亜季「くっ…!さては…!やはり製作者が悪かったのか…!?」

幸子「……」

亜季「あっ」

まゆ「……何か言い残すことは?」

亜季「……」

亜季「フッ…我々は道をふさいだ岩石」

亜季「小さな障害物にすぎず、あなた方の流れを食い止めることはできなかったようですな」

仁美「ふふ…あなたたちの顔、汚れて真っ黒な汚い顔だね……だがそれがいい!」

仁美「その汚れがいい!これこそどんな境遇でも夢をあきらめないアイドルの衣装ではござらんか!」

あやめ「皆さん!私達は会社や誰かの道具じゃないのです!」

あやめ「このような事でしか自分を表現できませんでしたが…いつも自分の意志で戦ってきました」

あやめ「あなた方もそうなのでしょう!あなたたちの勝利を願っていますよ!ニンッ!」

幸子(自分の意志で…か)

幸子「……」

幸子「あなた達みたいなボクネンジンは煮ても焼いても食えやしません」

幸子「こんな人たちほっといていきましょう!構ってる暇なんてないですよ!」

まゆ「!」

亜季「………止めを刺さぬのでありますか?」

まゆ「……そうですね…急がないといけませんもの!」

あやめ「あなた達…」

仁美「…なかなかの傾き具合だねっ」

幸子「それでは…」

まゆ「行きましょう!」

智絵里「はいっ…!」

かな子「はい!」

タタタタ...



亜季「……」

亜季「いやあ手強かったですな…」

あやめ「あれならこの先も大丈夫でしょう!」

仁美「きっと最後まで傾き通すだろうね!」

仁美「ただ、この後アタシたちどうなっちゃうんだろうね?」

あやめ「打ち首かもしれませんな!」

亜季「そうなったらとりあえず逃げるのであります!」

仁美「まー人質とかだったのに出世した武将もいるもんね!また頑張ればいっか!」

社長「言ったはずだろうが!!桃華に危害が及ぶようなことは決して許さぬと!!」ドンッ!

社長「その上きゃつを取り逃がすとは…!!しかもそのまま3人とも逃げやがって!!!!」

真奈美「……」

社長「…お前もこの度の企てに手を貸したのか……?」

真奈美「いや…私は…」

桃華「待ってくださいまし…」

社長「!」

桃華「真奈美さんは関係ありませんわ…わたくしが…むりやり巻き込んだのだから……」

桃華「だから真奈美さんは…」フラ

真奈美「も…桃華君!」

社長「おお…!」

桃華「お願い…真奈美さんは許してあげて…」

真奈美「桃華君…」

社長「……」

社長「良いとも…良いとも」

社長「だからお前は何も心配せずゆっくりとおやすみ…」

桃華「Pちゃまも…行かせてあげてくださいまし…」

社長「……!」

桃華「Pちゃまは…もう口もきけませんわ…」

桃華「手も…足も…動きません…」

桃華「一年もの間…暗闇の中で充分苦しみましたわ…もう社長も気が済んだでしょう…」

桃華「これ以上…あの方から…………奪わないで…」

社長「……」

桃華「お願いですわ…」

社長「……」

社長「わかった…」

社長「もう、あの男には手を出さぬ…安心するがいい」

桃華「ほんと…?」

社長「約束しよう…だから何も気に病まずゆっくり体を休めるといい」

真奈美「良かったな…桃華君」

桃華「……!」ホッ...

真奈美「それじゃあ寝室まで送ろうか」

桃華「ありがとうございます…お父様」

社長「……」

社長「……」ギリッ......

「社長…」

社長「今度は……奴らを呼べ…!!」



「茜ちゃん!出撃命令だよ!」

茜「えっ!?出撃ですって!」

茜「でも私今日はちょっと用事がありまして…!」

「でも社長直々の指示だっていうから…何でも鷹の団の人たちを倒せとか」

茜「何ですって!!?」

茜「それは奇遇ですね!!私の用事ってのもその…鷹の団のプロデューサーになんですよ!!!」

……桃華

……この一年口をきくことはおろか部屋に閉じ籠ったきり姿さえ見せなんだ

扉越しに私が一声かけると気でも狂れたかのように叫び泣き喚いた…

まるで恐ろしい怪物にでも追いつめられたかの如く


『ありがとうございます…お父様』


社長「くっくっく…」

社長「お父様だと……」

社長「愛しい男を幽閉し……嫉妬に狂い」

社長「あまつさえ実の娘に鬼畜にも劣る所業を行ったこの私に…お父様と…」

社長「……許さぬ」

社長「桃華にそう言わしせしめた……P」

社長「貴様だけは必ず……!!」

――――――――――――――――――――――

幸子「よいしょっ…と!」

かな子「ようやく連れてこられましたね…!」ハアハア

美世「いやあよかったぁ…あんまり遅いからもう手遅れだったのかと思っちゃったよ」

美世「じゃあみんな乗って!出発するよっ」

まゆ「わかりました」

智絵里「あ…まゆちゃんはそっちね」

まゆ「?」

智絵里「Pさんの具合を横で見ててねっ!」

まゆ「……」


P「」


まゆ(…言葉が見つかりません…聞いてほしいことがたくさんあるのに)


美世「よし!出発するよ!」ブロロン ブロロン

智絵里「こんな時に…のんきなこと言ってられないけど…」

智絵里「これでこの街は見納めかもね…」

幸子「……」

かな子「……」

智絵里「思えばいろんなことがあったよね…」

まゆ「……」

P「……」

智絵里「……もう…ずいぶん遠くなっちゃったなあ…」


P「……」


まゆ「……」

ギュッ

幸子「……」


ブロロロロ…

ゴゴゴゴゴ…


かな子「……?何の音…?」

まゆ「こ…これは…!追手ですか!?」


ドドドドド

まゆ「あれは…!」



茜「見ぃつけましたよぉ――――っ!!!!」ドドドド

「イエ―――――イっ!!!」



まゆ「えっ…あの先頭の子…」

かな子「は…走ってるっ!?」

幸子「は…速っ!追いつかれますよ!!こっちは車なのに!」


茜「車より走ったほうが速いです!!人間の可能性を信じましょう!!!」ドドドド


美世「ええっ!?この道路、どれくらい出していいんだろ!?60キロくらい!?」

かな子「ちょ…ちょっとまずいですよ!」

幸子「ここはボクが時間を稼ぎます!!行って!」

まゆ「…だ、ダメです!無茶はよして!またあの時みたいに…!」

幸子「!」

幸子「心配しないでください!もうあんな大人数相手は懲りました!ヤバくなったら逃げますって!」

まゆ「…………!」


P「……」


幸子「さあ…てと…」

幸子「!」

かな子「私も行きますよ!少しはいいとこ見せないと!」

幸子「ふふ…お願いします!」


幸子「『セクシーアピール』!」

かな子「『甘い魔法』!」



ドガガガガ…

「くっ!やるねっ!!」「まだまだまだ!いっくよーっ!!」

幸子(この人たち…何人倒しても全然怯まない!)

幸子(なにかもの凄いパッションで満ち溢れてる!!)


「どいてくださーーーーいっ!!」


幸子「!」

幸子「わわっ!」ドコ

茜「元気そうな人がいますね!!!私と勝負です!!!」

幸子「フフフフ…こんなにカワイイボクに挑もうだなんて…愚かな人ですね!」フフーン

茜「うわっ凄い自信だ!でも私は負けませんよ――――っ!!!」


茜「燃えていくぞ――――!!元気バリバリ!!!!」


幸子「ヒイッ!?」ビックゥ

かな子「声大きいです!」

茜「やっぱりお仕事は楽しいですね!!!」

幸子(何だこの人!?)

幸子(この人の異様な迫力…ただものじゃない!)

幸子(………………)

幸子(…知ってる)

幸子(覚えがある……これは……この感じは)

幸子(きらりさんと同じだ!!)

幸子「こ…これはまずい…かな子さん!!逃げますよ!!」ダッ

かな子「えっ!?わ、わかりました!」

茜「あー!ちょっと逃げないでくださいよ!!待ってー!!!」ドドド

幸子(やばい…やばい…!ここは…そうだ!あれを使おう!!)



晶葉『幸子よ、もしも前に言ってたようなすごい強敵に出会った時はこの爆弾を使うんだ』

晶葉『ん?何、大丈夫 本当に爆発したりしないさ、大量の煙が出るだけだから』

晶葉『煙で目くらましをしてその隙に逃げるといい』



幸子「ええいっ!これでどうですかっ!」ポイッ

茜「おやっ!?なんでしょうか!!!?」






まゆ「何ですか今の?」

幸子「前に話した晶葉さんがくれた爆弾です!これで少しは時間稼ぎになっ




                           __,,:::========:::,,__
                        ...‐''゙ .  ` ´ ´、 ゝ   ''‐...
                      ..‐´      ゙          `‐..
                    /                   \

         .................;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::´                      ヽ.:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.................
    .......;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙      .'                            ヽ      ゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;......
  ;;;;;;゙゙゙゙゙            /                           ゙:               ゙゙゙゙゙;;;;;;
  ゙゙゙゙゙;;;;;;;;............        ;゙                             ゙;       .............;;;;;;;;゙゙゙゙゙
      ゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;.......;.............................              ................................;.......;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙
                ゙゙゙゙ i;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;l゙゙゙゙゙
              ノi|lli; i . .;, 、    .,,            ` ; 、  .; ´ ;,il||iγ
                 /゙||lii|li||,;,.il|i;, ; . ., ,li   ' ;   .` .;    il,.;;.:||i .i| :;il|l||;(゙
                `;;i|l|li||lll|||il;i:ii,..,.i||l´i,,.;,.. .il `,   ,i|;.,l;;:`ii||iil||il||il||l||i|lii゙ゝ
                 ゙゙´`´゙ -;il||||il|||li||i||iiii;ilii;lili;||i;;;,,|i;,:,i|liil||ill|||ilill|||ii||lli゙ /`゙
                    ´゙`゙⌒ゞ;iill|||lli|llii:;゙i|||||l||ilil||i|llii;|;_゙ι´

ズゴゴゴゴ…

かな子「きゃああああ!」

智絵里「わ…わわわ…!!」

幸子(あ…あれ?ば…爆発して…る……)

まゆ「大爆発しましたよ!?いくらなんでも威力が強すぎるんじゃ…これじゃあの子もしかして」


茜「うううう~~~、ボ  ン バ ―――――――――っ!!!!」ボシュッ


まゆ「全然効いてない!?」


茜「あなた達も!!燃え上がってますね!!!」

茜「エンジョイ&エキサイティング!!ファイ!ヤ――――!!!」


智絵里「す…すっごい元気な人です…」

幸子「…元気なんて生易しいものじゃないですよ…あれは」

幸子(間違いない…あの人は…同じだ!)

幸子(でもどうして!?どうしてあんなのがボクやPさんの前にばかり現れるの!?)

『これより一年の後 蝕の時!!』

幸子(…………そんな)

『この人の夢が終わる時…あなたに死がおとずれるにぃ…ぜったい逃げられない死にょわ…!』

幸子(そんなはずない……!!)

まゆ「どんどん近づいてきますよ!!」

かな子「ま…まずいです!!」

茜「うおおおお!!!追いついたああぁぁ―――っ!!!」

茜「踏み出す一歩が道になります!!! 全 力 !!」

茜「トラ――――――――イッ!!!!」ドガシャ

美世「うわわわわ!!!」ギャギャッ

キイィーッ ガシャアァン


幸子「くっ…!ここはもう一回足止めを…!」

まゆ「いえ…ぎりぎり間に合いました!!」


ヒュン ヒュン

茜「むっ!!?」

ドドド…

茜「これは…!!」


みく「にゃはは…出迎えの祝砲って奴だにゃあ!」

みく「……」ス...

みく(ふふ…一度やってみたかったのにゃあ)ドキドキ

みく「それじゃあ!みんにゃ!!」

みく「全員とつにゅる…れ……」

みく「あれ…!?」

「よーし!」「行きますよ!!」「おーっ!!」

みく「ちょ…ちょっと待つにゃ!今の無し…!もっかい!!」

茜「ふっふっふ…盛り上がってきましたね!!!」

茜「噂に高い鷹の団!たっぷりと味わわせてもらいましょう!!」

ザ!

幸子「あなたの相手はこのボクです!」

幸子「『あなた達』が何者だか知りませんが…ボクが決着をつけます!!」



茜「……」

茜「あなた…何か知っているようですね!!そうか!!」

茜「きらりさんが鷹の団に元気でかわいい子がいるって言ってましたがあれはあなたのことですか!!」

幸子「!!」

幸子(間違いない…!やはりこの人は…!)


茜「これは思いもよらない前夜祭になりそうです!!」

茜「さあ…やりましょう…!!!」

茜「そうだ!!自己紹介がまだですね!!日野茜、好きな食べ物はお茶です!!」

幸子「……」

幸子「お茶は飲み物では?」

茜「あ、そうですよね!!じゃ、好きな飲み物はお茶ですっ!!!!!よろしくお願いします!」

幸子「ボクは世界で一番カワイイ女の子!輿水幸子です!!行きますよ!!」



まゆ「幸子ちゃん!」

P「……」


まゆ「Pさんのこと頼みましたよ!」

「まかしといてよまゆちゃん!」

P「……」

ワアアアア...


P「……」


まゆ「……」


まゆ「いきますよ!!」

まゆ(今はとにかく…!ここを切り抜けるんです!!)

茜「うおおおおおお!!!行っくぞ―――!!!」

幸子「うああああああ!!」

ドガア

ドンドンドンッ

ガガガガガガガ


千佳「わー!近づくと巻き込まれちゃうよ!!」

千佳「すごい…幸子ちゃん!完全復活ー!」

まゆ(た…確かにすごい!想像を絶するくらいに…!)

まゆ(でもあの人は幸子ちゃんのあの動きに難なくついていってる…!?)


幸子「ハア…フウ…」

茜「ふふふ…!!久しぶりです!!こんなに楽しく燃え上がるバトルは!!」



「少し待っててねPさん!」

P「……」チラ

P「……」

ググ…

パタッ

P「……」

「あ…茜ちゃーん!負けちゃいそうだよ!やっぱり鷹の団強すぎ!!」

茜「むむむ…まだまだこれからじゃないですか!!!」

幸子「……」ハアハア

茜「ここはひとつ!!私が!!盛り上げるとしますか!!!」

茜「うっおおおおおおお燃えてきた!!!!」

茜「『熱血乙女A』!!!!」┣¨┣¨┣¨┣¨

幸子「ひいっ!」


ゴゴゴゴゴ…

茜「ふっふっふ…!ボンバーっ!燃え上がる情熱を表すような赤!!!私に一番似合う服ですね!!!」

茜「これが勝負服ってやつですね!!!それでは勝負をしましょうか!!!!」


楽しくなくちゃダメよ グッタリはまだ早い 微熱じゃまだまだイケる

オテンバなのがトリエ 前向きなのもトリエ

いつでも追い風でトライ決めるよ

全身全霊 全然オッケー 元気があれば何でも出来る

体験挑戦 何でもオッケー ほらまた胸が高鳴る

ドキドキしてるよっ!

You can do it! みんなも きっと同意 思い切って新しいコト始めよう!

Just do it! スクラム組んで Do it! 今日も熱き乙女 行動中!!

茜「はぁはぁ…熱くなり過ぎた…」

幸子「う……ぐうっ……」ドサッ

茜「おや!!?お疲れですか!?でもまだまだ私は歌い足りませんよ!!!」


P「っ!」


まゆ「幸子ちゃん!?」ダッ

幸子「」

まゆ「幸子ちゃん!起きて!!」

幸子「」

まゆ「……!!」

グイッ

まゆ「目を覚ましてください!!やられちゃったんですか!?」ユサユサユサユサ

まゆ「……連れて行くんじゃなかったの?私を…」

まゆ「連れて行くんじゃなかったんですか!?」

まゆ「……連れて……行くんじゃ……」


P「……」

茜「あなたもカワイくって元気そうですね!!私と勝負してくれませんか!!?」

まゆ「ひいっ…」

茜(あれえっ!?怖がられてる!!?)

幸子「うあああああっ!!」バキッ

茜「うおっ!」

幸子「人の耳元で…大声で叫ばないでください!!」



幸子「全く…体揺らしまくってくれちゃって…酔いそうでしたよ」

幸子「……でもおかげで力が出ました!」


茜「熱い会話を聞いていたら私まで熱くなってきちゃいましたっ!一緒に熱くなりましょう!!!」



「見てよあれ!」「幸子ちゃん!?」「無事だったんだ!」

智絵里「……!」

「まさかあの子と戦うつもり…?」「いくらなんでも無茶だよ!」

みく「…幸子……チャン」

P「……」

幸子「まゆさん…あなたは下がっててください」

幸子「この人とは一人で勝負をつけます」

まゆ「何バカなこと言ってるんですか!ダメです!ここは引く…」

幸子「いいから下がってて!!」

まゆ「!」ビクッ

幸子「この人たちとは…どうしても決着をつけないといけないんです…」

幸子「自分の力で!!!」

茜「聞かせてもらいました!!その熱い闘志!!弾ける汗!!輝く笑顔!!素敵ですね!!なんだかどんどん熱くなってきました!!!」

茜「じっとなんかしてられません!私の熱さもみんなに伝えましょうっ!!行くぞーっ!!!」


幸子(体中に響き渡る…!叫び声だけで吹き飛ばされそうだ…!)ビリビリ

幸子(通用するの?本当に?ボクの力は…通用するのでしょうか!?)

幸子(……出ろ!ボクの体!前に出てっ!!)


茜「うりゃああああ!!」ゴッ

幸子「……!!」ヒュバッ

ドシュゥ

茜「むっ!!!」

茜「とりゃあっ!!!」ブンッ

幸子「くっ!」シュッ

ズバッ!

幸子(…いける!!)

みく「おっ!お―――!いけそうじゃにゃい!?」

まゆ「……!」

P「……」


幸子「止めですっ!」バッ

茜「!」

バギイィッ

幸子(やった…)

茜「今だあっ!!!」

バゴオォッ

幸子「うあっ!」

茜「全力アタ――――ック!!!」ゴスッ


バギバギバギッ

ズシャアアァ...

幸子「ぐっ…」

幸子(あれだけやってるのにほとんどダメージがないなんて…!)

幸子「っ!」

茜「行くぞーっ!!!ファイヤーっ!!!」ボオオオォ

幸子「……!」

茜「かーらーのーっ!!!」

茜「 ボ  ン  バ  ―――  っ!!!」

カッ!


ズドオオォォォン......


幸子「ゴホッ…」

ドサアアァ...


茜「おや!?ちょっとやりすぎてしまいましたかね!!?」


まゆ「あ……!!」

みく「ね、ねえ!やばいんじゃにゃい!?」

かな子「……!」

P「!」グイ

「ちょ…Pさん…」

P「……」ギリ...

ポタッ


幸子(ダメなんですか…!?)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

仁奈『ケガしちまうですよ!!』

幸子『ゲホッ!』

仁奈『そんなのじゃケガしちまいますよ!体も汚れちまってます!』

幸子『汚れてもカワイイボクはさすがですね!』ゲホ

仁奈『どうしてこんな無茶な事するんでごぜーますか?アイドルってこんなことまでやるですか?』

幸子『どうでしょうか…』

幸子『でもボクをコテンパンにしたのはこんなもんじゃありませんでした…もっと』

仁奈『……』

仁奈『それもアイドルなんですか?』

幸子『まあとりあえずそのようですが…』

仁奈『怪獣みたいでやがります…ドラゴンの気持ちになるですよ!』

幸子『なれるんですか!?』

仁奈『幸子おねーさんはその人とまた戦いたいのでごぜーますか?』

幸子『……』

仁奈『やめた方がいいです!やられちまうですよ』

幸子『そうでしょうか』

仁奈『じゃあ勝てるんでごぜーますか?』

幸子『さあ…どうでしょうか』

仁奈『えー?どっちでやがりますか?』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

幸子「!」ハッ

茜「もう終わりですかね!!」

幸子「うりゃあっ!」ズバァッ

茜「わわっ!!!」

幸子「フウ…ハァ…」

茜「く…!!や…やりますね…!!!」グラ

幸子(効いてる!!)

茜「あまり余裕はなくなってきました…!そろそろ終わりにします!!!」



ガクガク

幸子「ゲホッ…」

幸子「さあ…どうなんでしょうか…」

幸子(まずい…もうフラフラだ…これはもうまともに動けない…)

幸子(…どうする?)

茜「さぁ、よく見て下さいっ!!!毎日鍛えているこの身体をっ!!!」ゴゴゴゴ

幸子(どうする!?)

幸子(どうやって………!!勝つ!!?)


まゆ「……!!」ダッ

かな子「待って!」ガシ

まゆ「!」

かな子「待ってください!まゆちゃんが行ってもどうにもなりません!」

まゆ「離してかな子ちゃん…!」

まゆ「このままじゃ…このままじゃあの子が…!」

かな子「今行けば足手まといになるだけです!」

まゆ「うっ…!」

智絵里「幸子ちゃんの目…まだ諦めてません」

智絵里「まだ…やる気ですよ…!」

まゆ「……」

まゆ「…どうして…」

まゆ「どうしていつも…あんな無茶を…」

まゆ「もういいですよぉ…たまには逃げてよ…」グス

智絵里「……」


P「……」

茜「うりゃあああ!!!全力で行くぞーっ!!!」ゴッ

幸子(…受けきれるかな!!?)

ガコオオオン

幸子「うぐぅっ!!」

ザザザザザ...

幸子「ゴホッ!」ズサ...

幸子(これ以上は本当にまずい…もう一発喰らったら戦闘不能だ…何とか隙を作らないと…)

幸子「そうだ!」

『これぞ忍法・変わり身の術!』

幸子(……あれを真似すれば…)



茜「おーい!!どこ行ったんですか!!返事してくださーい!!」

茜「こんなに楽しいのはいつ振りでしょうか!まだ楽しみ足りないですよ!!」


幸子(チャンスは一度)

幸子(それ以上はもう体がもたない…)

幸子「……」

ガサッ


茜「そこですね!かわいいことするじゃないですか!!!」

茜「なかなか楽しかったですよ!!!行くぞ――――――っ!!!」

茜「うおおおお!私のこの手が真っ赤に燃えるぅ!!勝利をつかめと轟き叫ぶぅ!!」

茜「ばぁぁぁくねつ!!!あ!か!ね!! ボ ン バ ァァ――――――っ!!!!」ブウン

ドゴッ!

バキバキッ…


幸子(今だっ!!!)バッ

茜「ふっふっふ…いい線行ってましたよ!!!」クルリ

幸子「!!」

茜「てぇりゃぁぁぁっ!!ヒィィィィト!エンドッ!!!」ボッ

ゴギャアア...

茜「これで終わり………ぐうっ!!」

茜「っ!!?こっ…これは…!!!」

バキッ…

茜「『鍵付きクローゼット』っ!?」

幸子「……っ!!!」

ドカァッ!!

茜「くっ!!!」


茜「う…ぐっ!!」バキィッ


幸子「っ…」ゴフッ

幸子「」ズル...

ドサァッ


茜「ふふっ……」

茜「や…やられ…ちゃいました…ねっ……!!」フラッ

ドサアァァ...

智絵里「あ…!」

かな子「やっ…」

みく「やったにゃあ!!」

P「…!」

まゆ「さ……!」ダッ

まゆ「幸子ちゃん…」


幸子「」

まゆ「あ…」

まゆ「!」

幸子「……」グッ!

まゆ「よかった……!!」

ギュッ…


幸子WIN!

―――――――――――――――――――――――――――

真奈美「桃華君…!」

桃華「……」

桃華「…ここは?」

真奈美「君の寝室だよ」

桃華「真奈美さん…」

真奈美「良かった…本当に…一時はどうなることかと」

桃華「……!」ガバッ

桃華「Pちゃまは…!Pちゃまはご無事なんですの!?」

真奈美「……」

真奈美「ああ…あれから半日以上立つけれどP君たちが捕まったという情報は届いていないようだ」

桃華「ほんとうに…!?」

桃華「…良かった」ホッ

桃華「社長は約束を守ってくれたんですのね…」

真奈美「……」

真奈美「とりあえず医者を呼んでくるよ」ガチャ


桃華「真奈美さん…心配おかけしましたわ…わがままばかり言ってごめんなさい」

真奈美「フッ…少しくらいお転婆な方が女は美しいものさ…」

桃華「うふふ…♪」

バタン

真奈美「フー…」

真奈美(……言えないな…鷹の団にまだ追手がかかっているなんて…)



桃華「……」

桃華(Pちゃまは確かに仰られましたわ…)

桃華「もどって…くる……って」ポロ...

――――――――――――――――――――――――――――――

幸子「いたたたた!フギャー!!」

まゆ「……」グリグリ

幸子「痛い痛い!!泣きますよ!!!」

まゆ「うるさいですねぇ…手元が狂います」グッグッ

まゆ「勝手に突っ走ったんだから自業自得です」

幸子「きついですね…あなたがリーダーってほんとは皆おっかなくてついて来たんじゃないの?」

まゆ「真面目な話をしてるんです!!」ゴリッ

幸子「ン゛ッ……!!!」


まゆ「確かにあなたは一年前よりずっと立派になって…とてもいい戦力ですけど」

まゆ「だけど相変わらず引くことを知らないのは昔のままです」

まゆ「子どものケンカじゃないんです!引いたら負けなんてことはありません」

まゆ「やられちゃったらそれこそすべて終わりなんですよ…少しは頭の中も成長させてください」

幸子「大丈夫ですよ!ボクが負けるわけないじゃないですか!」フフーン

まゆ「そんなこと言って…やられちゃったら…どうするんですか……」グス

幸子「うっ……」

P「……」


智絵里「Pさん…包帯変え終わりましたよ…!」

智絵里「それじゃ…移動の準備が出来たら…杏ちゃんたちと合流の場所に出発しますね」

智絵里「二人ともそこでゆっくり休んでてくださいっ」

幸子「はーい」


まゆ「……」

まゆ「Pさん…」

まゆ「……おかえりなさい」

P「……」



まゆ「……」

まゆ「智絵里ちゃん…どうなんですか?」

智絵里「わたしはお医者さんじゃないから…詳しいことは…」

まゆ「お願い…」

智絵里「……」

智絵里「あのね…手も…足も…腱が切られちゃってるの」

智絵里「だから…立ち上がることも…歌や踊りも…もう……」

まゆ「ぅ……」カタカタ

まゆ「ぁ……」カタカタ...

まゆ「…………そう、ですか」


まゆ「みんな急いで!早く移動しましょう!」

智絵里「……」

智絵里(移動して…杏ちゃんたちと合流して…そのあとは)

智絵里(その先は……どうするんでしょう……)

幸子「あ――痛い!まゆさんこそマッサージの一つでもちゃんと覚えればいいんですよ」

P「……」

幸子「……ふふ」

幸子「二人してボロッボロですね…まあ寝ていれば運んでくれるんですから楽でいいですが」

幸子「昨日から休みなしで頑張ってましたしね…」

幸子「…あの時と同じですね……諸星きらりさんの時と…」

幸子「二人ともボロボロ!だけど…二人とも生き残りました」

P「……」ソワソワ

幸子「……?」

幸子「あっ!さては新しい歌とか振付のこと考えているんでしょう!!」

P「……」コクリ

幸子「ぷっ!アハハハ!」

幸子「あなたらしいですね!変わりませんね…いつまでたっても」

幸子「カワイくて歌もうまいボクも手伝ってあげますよ!いっしょに考えましょうか!」

ボンバー!!


幸子「!?」

幸子「この声…まさか!」バッ


茜「いやあ勝負の後のお茶はうまい!!!あなた達もどうですか!!!」

幸子「茜…さん…!?まだ戦うつもりですか!?」

茜「いいえ!別に戦いに来たわけじゃないですよ!!さっき完敗しましたから!!」

茜「皆さんお疲れだと思いまして!!冷たいお茶を持ってきました!!どうぞ飲んでください!乾杯!!」

幸子「……あ…ありがとうございます」

茜「本当に見事にやられちゃいましたね!今後一層精進しますよ!!!」

幸子(これ以上強くなられたらもう太刀打ちできませんよ)

幸子「そうだ、Pさんもお茶飲みます?」

P「……」コクリ

茜「あっ!!その人がウワサのPさんですね!!!会いたかったんですよ!!」

幸子「…?」

茜「話には聞いてましたけど…本当にそんなボロボロになってしまったんですね…!!」

まゆ「……!?」

茜「どうもあの人たちの仲間になる男性だという話じゃないですか!!!すごいですね!」

幸子「……」

P(あの人たち…?)

茜「あなたがもしきらりさんの言うようにあの人たちの仲間になる人なのでしたら…」

茜「持っているんですよね!覇王の卵を!ちょっと見せていただけませんか!」

幸子「覇王の卵…?あの青い変な首飾りのことですか?持ってないみたいですよ」

茜「え!?」

幸子「だってPさんを連れ出した時…そんなものもってませんでしたが…」

茜「えーっ!!そんなぁ!!」

茜「あれですか、あの拷問の時それを含めて何もかもとられちゃったとかですか!?」

まゆ「ちょ…ちょっと!何言ってるんですか!」

茜「あ!ごめんなさい!何もかも失ってなんかいませんよね!!」

茜「体中ボロボロで歩くこともできなくても!歌うこともできなくても!!」

茜「あなたにはまだ命が!夢が!熱い心が!」

茜「そして何より頼れる仲間がいるんですね!!」

まゆ「……!!」


ザワザワ…

「何もかも失ったって…」「体中ボロボロ?」「もう歌えない…?」


智絵里「あっ……」

幸子「……!」ギリ...

かな子「い……言っちゃっ…た…」


茜「?」

みく「それっていったいどういう事にゃ!ほんとなの!?」

まゆ「う……」


茜「……」

茜「あっ……!?これ…もしかして言っちゃいけないことでしたか!!?」


シーン…


茜「あ…あの…その……えっと……」

茜「まさかその…みなさんがまだ知らないと思って無くて…その…」

茜「ごっ!ごめんなさーいっ!!!走ってきます!!!」ダッ

幸子「ちょっと!!!逃げないでくださいよ!!」

茜「本当にごめんなさい!!さようなら!!」ダダダダ...

幸子「……!」

ザワザワ…


幸子「……」チラ


P「……」スースー


みく「ねえ、ほんとなのにゃ?」

みく「でたらめ…でしょ?あの熱血な子の言ってたことは…」

まゆ「……」

みく「もう!らちあかない!いいよ!本人に直接聞くにゃ」

智絵里「む、無理だよ…」

智絵里「Pさんには…答えることができないよ…」

「「「……」」」

シーン…


みく「え…冗談だよね?」

まゆ「……」フルフル

みく「……」

みく「…」

みく「ふにゃあああ!何それ!?」

みく「これからじゃなかったの…?Pチャンが戻ってきてこれからじゃなかったのにゃ?」

みく「訳も分からないうちにプロダクションを首になって…」

みく「一年間ロクに仕事もないけど頑張ってきて」

みく「仲間も半分以上いなくなっちゃって…それでも!それでもPチャンが帰ってくればって…」

みく「信じた挙句が…これかにゃあ…ニャハハ…!」

みく「だから言わんこっちゃにゃい…やっぱりにゃあ…やっぱりにゃあ!」

みく「こんなことだと思ってたのにゃ実際…」

みく「…これで」

みく「これで…もう…」


これで もう…

その先はみんな知っていた

だが 誰ひとりそれを口にする者はいない

風だけが…

戦の終わりを告げていた

「どう…するんですか?」

「これから…私たちどうなるんですか…?」

まゆ「……」

「アイドルがみんないなくなったわけじゃないんですし…このまままゆさんが…」

智絵里「Pさんあっての鷹の団…それはみんなわかってるんでしょ?」

智絵里「いままで一番無理してきたのはまゆちゃんなんだから」

智絵里「これ以上無理させないであげて…」

まゆ(智絵里ちゃん…)

「…だけどそれじゃあ…私達…」

幸子「……」

ザッ


まゆ「時間をくれませんか…?」スッ

まゆ「まだここに来てない人たちが来るまで時間がありますから…それまで考えさせてください」

スタスタ

幸子「……」

幸子「待ってくださいよ、考えるってどうするつもりですか?まさかこのまま…」

まゆ「幸子ちゃん、さっきみんなに何を言おうとしてたんですか…?」

幸子「え…?」

幸子「……」

幸子「自分で決めた道なんだから自分でどうにかしましょう って…」

まゆ「…強いですね、幸子ちゃんは」

まゆ「自分で決めた道だから…自分から辞められないこともあるじゃないですか…」

まゆ「その言葉を…今のPさんに言えるんですか?」

幸子「!」

まゆ「みんな弱いんです」

まゆ「弱いから…人や夢に縋ってる…」

まゆ「すがるものをなくしてしまった人には…何かしてあげられるんでしょうか…」

まゆ「優しい言葉をかけること…厳しい叱咤…」

まゆ「…まゆは」

まゆ「誰かに…そばにいてほしかったです…」

幸子「……」

まゆ「Pさんの所にいってきますねぇ…」スッ

幸子「……」


まゆ「Pさん…包帯取り替えましょう」


誰かに…

そばに…

キュ…

まゆ(Pさんの手…こんなに小さかったんですね…)

まゆ(この手で…すべてを掴もうと…)

まゆ(この手が肩におかれるだけでいつもまゆの震えは不思議と止まりました…)

まゆ(何度も何度も…まゆの不安を掻き消してくれました…)

フルフル

まゆ「あれ…」

ブルブル

まゆ「あれ?」

まゆ(今度はまゆが…そうしなくちゃいけないのに…)

P「……」

カシャン

まゆ「きゃ…!」バシャア

まゆ「ご…ごめんなさい、毛布の代わりもってきますねぇ…」

まゆ「っ…!」

グイッ

まゆ「えっ!?」

P「……」ガバァッ

まゆ「Pさん…!?」

ギュウゥ

まゆ「Pさん…!?やめ…!!」

まゆ「!」

P「ぁ……」ガタガタ

まゆ「……」

P「……」ブルブル

まゆ「……」

まゆ「……」

まゆ「……」ギュ

智絵里「…大変なことになっちゃったね…」

幸子「そうですね…」

智絵里「良い夢でも悪い夢でも…夢の途中は目覚め悪いよね…」

智絵里「それで…幸子ちゃんはどうするの…?これから…」

智絵里「またアイドルの修行?」

幸子「……」

幸子「智絵里さんは?」

智絵里「え…?んー…そうだね…」

智絵里「残った人集めて…事務員でも始めようかなあ…」

智絵里「そうすれば…Pさん一人くらい面倒見れるから…」

智絵里「私…初めて出会った時にPさんに見捨てないで、ってお願いしたんだ…」

智絵里「だから私も…Pさんのことを見捨てることなんかできないよね…」

幸子「だったら…ボクも…」

智絵里「幸子ちゃんはもうぬけてるから…そこまでしてもらう必要はないよ…?」

幸子「あなたには…あるんですか?」

智絵里「うん…だってわたし…まだPさんのアイドルだもん!」

智絵里「だけど幸子ちゃんは違う…自分で道を歩き始めたんだもんね」

「幸子ちゃーん!」「幸子さん!」

幸子「ん?どうしました?」

千佳「幸子ちゃん、また前みたいに…一人で行っちゃうつもりなの…?」

千佳「その時はあたしたちも一緒に連れて行ってよ!」

幸子「みなさん…」

千佳「みんなで決めたんだ!一緒に行こうって!」

「そうだよ!私たち一緒のグループでしょう!」

「歌だって踊りだって、幸子ちゃんさえいてくれれば!」

幸子「……」


『ここならきっと見つかるよ…あなたにも、居場所が』


幸子(ボクの居場所…ほんとはあったのかもしれませんね)

幸子(自信過剰で依怙地で気が付かなかったけれど)

幸子(あの頃のボクがほんとに欲しかったものはここに…)

幸子(あのころの…)

幸子(どうして終わったりなくしてから…いつもそうだったと気が付くんですか…)

まゆ「……」ガタガタ

まゆ「ハア…ハア…」ドキン ドキン

まゆ「……」


幸子「まゆさん」

まゆ「」ビクッ

まゆ「さ…幸子ちゃん…!」

幸子「…? Pさんは?」

まゆ「えっと…今眠ったところです…」

まゆ「……」

幸子「…どうかしました?」

まゆ「な…なにがですかぁ…?」

まゆ「別に…なんでも…」ポロリ

幸子「!」

まゆ「」ポロポロ

幸子「ど、どうしたんですか!?」

まゆ「…違うんです!これは…なんでも…」ボロボロ

幸子「なんでもないのに泣くんですか!」

幸子「Pさんがどうかしたんですか!?」

まゆ「違…!」

まゆ「やめてください…!!違うんです!!」

幸子「……」

幸子「な…なんですか…」

まゆ「ごめんなさい…」

まゆ「行けません」

幸子「え…?」

まゆ「まゆは…幸子ちゃんと一緒に行けないです…」

幸子「……」

まゆ「あのPさんがあんなに小さくなって…あんなに震えて…」

まゆ「あの誇り高いPさんが」

まゆ「あんな……!」

まゆ「置いていけません…」

まゆ「今のPさんを…おいてなんていけません…」

まゆ「ごめんなさい…」ポロポロ

幸子「……」

幸子「…ボクも…」

幸子「残こ…」


スッ

まゆ「…誰の夢にもぶら下がらない…」

まゆ「あなたは…自分の道を行くんでしょう?」

まゆ「桃華ちゃん主催のお食事会での夜の事、今でも覚えていますか…?」

幸子「…はい」


『決して人の夢にすがったりはしない…』

『誰にも強いられることなく自分の生きる理由は自ら定め進んでいく者…』


P「……」


『そして その夢を踏みにじるものがあれば全身全霊をかけて立ち向かう…』

『例えそれがこの私自身であったとしても…私にとってアイドルとはそんな…』


まゆ「あなたは…行かなくちゃ…」

まゆ「幸子ちゃんがPさんのアイドルなら」

まゆ「行かなくちゃだめですよ…」

まゆ「一人でも…行かなくちゃ…」


P「……」


どうして終わったりなくしたりしてから

いつもそうだと気が付くんだろう

P「……」

P「……」

P「!」


P『……』


P『こんなところで何をおびえている』


P「…う…」

P「…あ…!」


P『行こうよ』

P『まだ遊び足りない』

P『夕日はまだ沈んじゃいない』


P「う…」

P「あああ!」

ゴトン

ガラガラ…


幸子「!」

まゆ「!」

幸子「Pさん!?」

まゆ「そんな…どうやって!?自分では動くのがやっとのはずなのに…」

まゆ「…まさか…今の話を…?」

幸子「!」

幸子「とにかくボクは後を追います!」

幸子「まゆさんは智絵里さんたちに知らせてください!」


P「ハア…ハア…」


そう…少し休みすぎた

もう行かなくちゃ

この遊びはまだ終わってはいないのだから

あのイベントのライブは

まだ続いてるのだから



ガシャアアン

P「」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「Pさん」


「Pさん」


「お食事ですよぉ」


まゆ「あら眠ってたんですか?ごめんなさい」

まゆ「でも少しは風通さないと…」


(まゆ…)


まゆ「なんですか?まゆの顔に何かついてますか…?」


(…ここは?)


まゆ「また寝ぼけて…昔の夢でも見たんでしょう?」


(夢…そうか…あれは…)

まゆ「最近は昔の仲間もあまり顔を見せなくなりましたけど…みんなどうしているんでしょうねぇ…」

まゆ「あの子はまだどこかで…歌を歌っているんでしょうか…」

まゆ「ほんと…今思うとあのころのことは何もかも夢だったような気がします…
    この子にはいいおとぎ話ですねぇ…」

まゆ「こら幸子ちゃん!アッキーいじめちゃだめでしょう!ご飯ですよ!」


幸子「はーいお母さん!」


(……)クス...


まゆ「いろんなことがありましたけど…今となってはみんな思い出です…」

まゆ「でもまゆには…今の生活の方が向いてます」

まゆ「あなたとこの子の…三人の生活の方が」


(そうだな…)

(こんな安らぎも…悪くは…)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

P「」ハッ

P「……」ググ…

ズキン

P「……!」ドサッ

P「……」

P「……」クスクス

P「ハハ…アハハハハ…」

P「は   は
   は
       は…」

P「……」

P「……!!」

P「…ぐ」

P「ぐふ… う」グスッ

P「う…
   う…」

P「うぐ…
    ぐ…」


P「……」バシャ

P「……?」

ベッチー「……」

P「……!!」

ゴオオオ…オオオオ…

幸子(Pさん…!)

幸子(ボクなんですか?あなたを追い込んだのは…)

幸子(あなたをそんなにしてしまったのはこのボクなんですか!?)

幸子(どうすればいいんですか…!?このままPさんに追いついて…)

幸子(それで…それで…!?)

幸子「!」


―――ゴオオオオオオオ


まゆ「あれは…!」

幸子(日蝕…!まさかこれが…!?)

P「…う…!!!」


   ドクン


幸子「Pさん!」

P「…!」

P「う… あ…」

P「あ…」


くるな…


P「あ 
    あ あ」

くるな!!

幸子「!」


ゴゴゴゴゴ…

『『『……』』』


まゆ「な…何ですかあれは…!?いつの間に…!?追手でしょうか…!?」

幸子「……!」ザワ...

幸子(…わからない…)

幸子(わかりませんが……!あれは…!)

幸子(あれは…やばいものです!!!)



幸子「Pさん…!!」ダッ


くるな…

くるな


今お前に触れられたら

今お前に肩を掴まれたら


オレは二度と

オレは二度と…!


二度とお前を
      ・・・・・・・・・・・・

ガシッ!


P「……」

P「・・・・・・」

     <>、       ,ィシ'
       `'゙<>-、_,-vィ'シ
        `゙'コ=し'ヽ
            l,;:i´ l_,l,.-‐、
          ,.-゙'"i´  ,...、:;:ヽ- 、
        l,゙i;;:;;:;;! 〈;,. ゙トー--゙- .,_
       /゙!i;;;;.-'"  `ー'   (;;;;:`-゙'''- 、
       |;/:;;;;;!         ゙'''--、;丶.゙ヽ、
      /;';';;;;;ツ        i ー、  、`;;;j   \
       /i;;;;;;;;;|       iヽ l,.ヽ,. `゙〈,,,,,,,,,,,...__  \
     ./ ゙'''i;;;;!    ゙';, ノ;,.;;l;ノ;,,ヾ,,,.ブ;;' ,,.r.:,==、-、. ヽ
    /   j;;;!   i;,,.;;;;;;;;;;人;;;;;:. l; ;: ,;l.:.:.{ * .} );, ヽ

    /   l;;;;;!  ,.;;-'ニニヾ;;、:;ヽ;;  ヽ, ゙ヽ,:.:`--'.,..//゙  ゙、
   .!     ゙i;;;>'",..--、  ゙i;, l;;゙;::i:;)   ヽ`'ヽ`゙"゙ヽ;::゙i,    l,
   |     / /.:.{ * } ,./,. l;; :;《;.    ゙、 :;:;;;;,. ヾ;;;゙i,.  ゙i,
   |    i |::.:::.:`--'シノ,;'゙ :;l;;::,.      ヽ ゙'';;;;;;,.. ゙i;;;:!.  l
   |    l ;;:゙`-==' ,ィ" '゙  :;゙、;;;:;:,.,   ゙;,`ヽ ゙';;;;;;, l;;:゙i,  ゙!
   .!     `゙゙''''i;;;;:::|      :!;;:'゙;;:;,.   ;: ,ゾ゙''';;;;;;,.じ'゙.;: |
    |       ゙i;;;::|     ,;ri;;:,,,;;;;;;;:;:;:;:;;;/;;゙ ,.-、;;;; :;:;:;:;: .!
    .!:,:,: ;;;;:;,..   i;;;::|     .,/ ヾ:(⌒`-‐'" _,.-'",,._ ヽ,ヽ;:゙:. |
    l;';';';:;;;;;;:;:..   |;;:l,. ,. ,. ,:;/  _,,,..--‐''"´ _,..,へ ヾ-〉;!:,:,:.:.!
     ゙!;;;;::;;;;;;;;;:;:;::;;:;:l;;;:!;;:;:;:;:;/  / ,,;____,,...-''i"  l_,.-‐! ||;:;:;:;,'
      ゙、;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;:l;;:!;;;:::;/  / ,,;/`i  l  ゙!,..-'゙'iY゙i, ゙!;;;;;/
        ゙、;;;,. ゙'';;;;;;;;,. ゙、;;゙!;: l  ,' ;ノ、_ノー‐'^`''"  ,..ィ' l`'l .!;;/
         ヽ:,:,:,:;;;;;;;;;,. l;;;゙i |i_/∠i゙i'"゙i‐┬‐┬'''i"_,ノ"/ .//
         ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;,,`'";ヽ`ヽ, `ヽlヽ~-^ー'^,.-'" .//
         \;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ, ゙''ー-‐''"   //

              ゙ヽ、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ、__,...-‐'",./
             ゙''-、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,...-'"
                `゙'''ー------‐‐'''"´

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


幸子(な…何が起こったんですか…?)

「きゃあ!」「こ…ここは!?」「何ですかこれ!?」

みく「何にゃこれ!どこにゃここは!?」

みく「ね…ねえ!今の今までみく達…道を走ってたよにゃ!?」

みく「みく達走りながら夢でも見てるのかにゃ…!?」

みく「それとも…自分で気づかないうちにえええ餌に…」

まゆ「お…落ち着いてください」

みく「落ち着く!?何をどうすりゃ落ち着くのにゃ!?」


まゆ「黙 っ て て く だ さ い」


みく「」

まゆ「わからないことは考えなければいいんです…」

まゆ「幸子ちゃん!Pさんを!」

幸子「わかってます!」

幸子「立てますかPさん?」

幸子「!」


ベッチー「……」


幸子(おかしい…おかしいです…なぜ今これがここにある…?)

幸子(Pさんを助け出した時確かにこれは持っていなかった……!)

幸子(それに何だろう…血の涙?形も変わってる)

幸子(……そうだ…あの一瞬…世界が変わってしまった時に…!)

幸子(まさかこれが…?)

P「う…」

幸子「Pさん…」


「まゆさん!あれ…!」

幸子「!」

まゆ「な…なんですか…?あの人たち…」


『刻がきた…大いなる夜祭の刻が!』

『216週に一度の宴の刻…』

『蝕が!』


幸子(蝕…!)


『来る!』

『おいでになられる!』

『降臨だ!』

『我ら超常なる者たちの王!』

『4人の守護天使の降臨だ!!』

                   _,..、_
            ,r ´ `´: 、ヽ` .、、
         ./':,r: : : : : : \\’,: .’,ヽ、
       .////: : !i: : : ! i: : \ヽ',: :.', ヽ
       //: リ: : :,i!i: : : :!:ト: : : ヾヽ,: : :!: .
      !:.!: :|': |: :! i:i: : : :!:!ゝ: :,: :ヾ|: : :.!: .
      ,! |: : | |!: :! V、: : :! ゝ;ト=-,|: : : !: . .i
     ,i .||: :.| ||i |____ゞ、、!ミ"_,..,ィr=ミi: : : : : ..i
     | .i| : :| |!|!|_,._=_,` ゞ 'r'|i´Y|`'|: : :i: : . .!
     | || : :.|,! rf''行テ      .ゞ'"  i: : :.i: : . .!
     | || : :.|'ヽ.’ ,.ゞ '           |: : : |: : : .!
    /イ !|: : :|ト.'.,_、     '        !|: : :.|: : : . !
   ,リ V |: : :|: : :ゞi、     ,. -    .イ:.|: : :.|: : : : .!
  .,リ ./: :ノ: : |: : :.| |>ュ,_   -  /!、: |: : :|: : |: : !i
 .,リ /: /:ハ: :.|: : : :! ,r ´|>= ´  ト,` |: : :|: : :|: : !i
 !i./:ノ//: :!: :|: : ,rイ / ノ       ),! |: !: !: ,: |,: : :.!
 !//!': ,': : !: :|r<-=ア、! ゚。   。.゚/=,!:.|:.!V、:| !: : :!
. !':/i: :,': : :,ィ!:.|:ニ||| ! iゝ  ゚p゚゚./ソ' |: !リ.ゞニヽ:!i: :.,',

.,':,! |: :!: : /ニ| |三!i   Y"^ニゝ/   .ノ: !三三三ヽ!: i!ゝ,
.|リ /イ|: :/三:| |三!ii   |,..._ ノ    イ!:i'三三三三ii!: |!ミ'
!レr'|: :|: !三ニ,) !三i,i!   | `|  /,イ!,!三三:,!三ニム: |.’
イ  V:!:i三ニ/:ム',三i,'i!, |r' |' /イ三|'三三:,'三三ニト,!
|!   ∨'三:i'三ニゞ三:i,i!(, ノ' イ三三:|三三:,!三三三ム
|ゝ /三三:!三三三三,.,<"´三三三三三:.,!三三三三!

  |三:.!三ム三三三:.(: :)|三三三三三三|三三三三ニ|
  /三三ニリ三三三三|.||三三三三三三三'三r三三ニ!
  /三三三!三三三三:.!||三三三三三三i三ニ/三三三:
 /三!三ニ/三三三三:.!i'三三三三三三:|ニイ三三三三

                                 _ ___
                           . .:::::/.::::::::::::.\,、
          ィ               /.::::::/.:::::.\:::::::::::::.ヾ;
        rヘハ!{         ,       /.:::::::::::i:::::::::::::::::、:.ヽ:::::‘:ゝ
          〉  ヽ     r'Vゝ     .::: /.:::: i::::|::::::::::::i:::::i::::|:::::::::}人
       〈 ヾ ‘,    / /    /.:::/.::::::::|::::!:::::::::: |:::::l::::|::::::::ハ、゜.
        廴,, ゙ ヽ<_" ノ      ,::::;/::::_i::i∧::ヽ:::::::_l:::::ハ::|:::∠t-、!ノ
        _,二>゙ ,....v゙´    /.:〃i:::斗芋圦::ト、::ィf云zj:l::::i:::::匕\
        气_、 と. ̄\__,   /.::::/.::::|::::ハゝゞ'    弋ソイ:::::|::::::「辷〔
         ,二厂二ヽ\(ーァ{:::::::ト、:::乂::ハ    '    ゜ノ::::/.::::: しく
         ¨¨`^ヽ \_ノア 人:::::しヽ::::ゝ::::.   ‐_‐ ≦-.:イ:::::::::ノ::::::}
               心个_ノ    ̄(::ハ::.\:::::.r 、_ イ:::::::ノ.::::/.:人ノ
               rノ、_廴>   /  ̄`≦~、Y~´{廴:>イ:::イ
              ヽ_}_ノ   , ゜       `ー()~`^\ <::::ノ
                 .゜ |   /  v_r~t_    ´ ̄ ̄ >-、
                .゜  |  . ゜   〃Y~c心_,r‐v‐ヘ     i
               .゜   |/  /{  ㍉大(ソ廴~y`)i   :
                  {   {   / 人    ノ⌒)寸^ー〔|
             八   }./   」、\ 、   r'⌒Y´)   .゜
              ヽ <    { > ニ=‐rヘ从ィハ゜  ,゜
                     _}‐=- く ̄て斗r',′  .
         _r━‐、  __ryっ /`ー-  r<}/,゙/`´,′  .゜
      ┌</  ̄`Z\辷,>―――-<7ーハ../  /    ゜
   r━<_/     Ⅴヽ//,     __ `゜ー`‐一   ;
>ヘゝっ/         乂_〈∠/ ̄ ̄    > .        /
辷τ /    ,..<    〈廴`¨¨ゝ二二//-‐ オ`¨¨¨¨¨´
>'/    /     ̄ ̄ ̄\_ζ ̄ /--"ノ

              ,..'   ̄ ̄ ¨ヽ

            ,ィ´         ',  \
.          /    /     ;  '.   ヽ
          /  ,:.  /      ハ      :、
         ,ィ     '      / ∨      i
        ,イ  ,:   ,ィ   / ./   \    ヘ、
     ´ ̄7;  ,′  ハ   / ./ __ ゝ、  ',
        ,.'7 i   /┼- /i /  ̄    } \__}
        i{ |  斗r千ミ. | /  ィ灯戸乍  | }:|
         i ト  :|  Vソ j′   ゞ一/ ,| .レ;リ
         乂|∨ |   ̄  、     7/ jノ|
        __,,.i ∨个、         i   /!/ ~゙'',,、
     ,..''"´  | ハ{ i  \  `'  /i /___    ~゙'' ,,
    ._'゚,;./ニ>Ⅵ.ヽ|\i  >。._  /,,,ィニヽ\\     ~゙''%,,
      | ニニュ     j|   }  ̄,r'"   〉`  /        `:、
      |  ,r‐'¨ヽ_;_;_ァИ/!ノ 彡   /   /、_;_;_;_;_;_;_;_;_;_;_;_,',
     __j  j ゚。,, '~゙'',, ¬,.厶_;_;_;_{   /  ℃,     /

     ∧}  /|、'゚。,,ゝ、 ゝ__√   ./}   _j/|   ‘,   /
     } \/ | 〉,r'" .,ィ'゚ー一,:| 〔〕 /f一'/ |    }  /
    j\  // ,′  j: : : : : :,:|   〈_」/   /}    /  }
    ∧ `′i ,'  , ': : : : : : :;i|   }    /oj    }  /
   〈 =一'フ| ;:  /: : : : : : : :;|{   {ー‐"´o/|    }___ノ
   i ヽ 〃'^゚|  ,ィ゛:_:_:_: : :_:_:_;.|   廴__/ ゞ    〉
   l  .{{_ノ| ‘:、.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i{    |      ヽ、 {
   | /ヾ,:ケi!  〉: : :.:.:.:.:.:.ヾ.:i{    |       i; /
   V::爪:::|::|  ∧.:.:.:.:.:.:ゝ、.:.:.;|    |         /
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  弋:¬,イ   〉.:.:.: : : : : : : :;|          ヽ
    ̄ }    。゚.:.:.:. : : : : ゝ、;|          }
     ,i    {.:.: : : : : : : : : :.;|          {
    7    ;!: : : : : : : : : : : ;|          ヘ

\                              _,. -iー‐iー‐iー‐iー、 /⌒⌒ヽ     //  //  /|     .ハ
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ハ::::: \                  /.: : : .: .:ノー/: / : : : : : : : : 八: : \) )/: : _\  |:|   |:[ /[: \. 〈: :〈        /
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<ご⌒::(ヽ / : __/.:. .: .: .:/.: :_ノ: l: : : :/ :|/: :/: .:/斗r=</_/    ノ//| 》ー || :|_|:/ : : : : :\: :__/ __ノ|_ノ|  ノ) こ⌒>
<ご⌒::(\|: : : : : : : : : : /l\ : _,ノ/ : : : /|: .:|: : :-《 ノ//|     弋_ソ |: : :|メ./ : ∧\: : : : : : :/ ./:::::::::::::::::::::ノ ノ) こ⌒>

<ご⌒::(: 八_____/::::| \:/ : //' |.: :ト、∧ ゙ 弋_ソ   !     /i/i/|: : :|./: .:/' \:\: : / //:::::::::::::::::::::イ  ノ) こ⌒>
<ご⌒::(\____  (\:::::::|    :|: : |l   |: .:|: :|:∧/i/i/      _    |: : :|| : /   / ̄ ̄.)/:::(:::::::::::::::::::::: ノ ノ) こ⌒>
<ご⌒::::\    \(\::::|  人: :|l   |.: :ト :|こ.ヘ.     i´   }   /|: : 八:{_ノ'/  /)/:::::::::):::::::::::::::::(  ノ) こ⌒>
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 ∨∧k \/rーrーvv‐┐:::::::::::::::::::::::::::::::::::/:: ノノ´__  `    (ノ _____,}\_____/  /__ノ  /::: /  イ::::::::::::::::::::/::::/
  ∨∧///'| | | |/ / 三三三三三三三{:::::{‐{_ 〈.      /   〉 ____}-}::∨  /   ′ /_/ ./::::::::::::::::::::::::::::/
  ∨∧//ハ     〈///////////////∧: {-{:::::\\     |  //:::::}-}::::ハ /       ´ ./_____::::::: //
   ∨∧//∧    |∧ 兀 匕 匸 勹 ∨∧:{-{:::::::::\\ ノ .l//::::::::}-}:::::::::::∨  ,. ─       ____ノ::::( (
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幸子(女神…いや…天使なんですか…?)


蘭子『大いなる祝福の刻…』

蘭子『彼なりし亜の刻 亜なりし彼の地へよくぞ集った』

蘭子『人の造りし神ならざる神の子羊達よ…この聖なる夜祭!存分に味わうがよい!!』

蘭子『因果律により選ばれし御子 Pよ!』

まゆ「御子…?」

智絵里「因果律って…」

幸子(…どういう事ですか…?)

蘭子『お前は選ばれし者…』

蘭子『この刻この地にあるように』

蘭子『大いなる神の御手により定められし者』

蘭子『我らが眷族 渇望の副王なり!』

「眷族…Pさんが…?」

幸子「ふざけないでください!」

幸子「人をこんな訳のわからないところに連れ込んだあげくに何勝手なこと言ってるんですか!」

幸子「御子!?眷族!?バカ言わないでください!」

幸子「Pさんはカワイイボクのパートナーなんです!」

幸子「あなたたちと一緒にしないでください!」

凛『美しい絆だね…』

凛『アンタさぞかし良い生贄になるよ』

幸子「……いけにえ…?」

凛『そう』
                    ・ ・ ・ ・
凛『彼が魔王になるための尊いいけにえ』

幸子「…魔王…いけにえですって…?」

楓『その紺碧のベヘリットを手に入れた瞬間から』

楓『あなたは魔王になる資格を得ていたんです』

P「…!」

楓『いえ、その資格があったからそれを手にしたというべきでしょうか…』

楓『そのベヘリットを使って私たちを呼び出したこと自体が』

楓『わたしたちの眷族たる資格があるという証なんです』

楓『なぜならここに集まったすべての者が…』

楓『ベヘリットによってあるべき姿を手に入れたのだから』


幸子(…それじゃ…まさかここのすべての人が…!?)

楓『そしてあなたの手にしているベヘリットはただのベヘリットではありません』

凛『わたしたちクール属性に転生することができる者のみが手にする紺碧のベヘリット』

凛『覇王の卵なの』

凛『そしてアンタたちは女神降臨のための…』

凛『大切ないけにえ』

かな子「……」

みく「いけ…にえ…?」

智絵里「……」

まゆ「……」

みく「みく達が…」

幸子「変えてしまうですって…!?ボク達の命と引き換えに…!?」

凛『少し…違うね』

凛『それをするのは彼の意志』

凛『彼がアンタたちを生け贄に捧げるの』

幸子「…な」

幸子「…そんなわけないじゃないですか」

幸子「そんなわけ…!!」


蘭子『全ては因果の流れの中に…』


蘭子『全ては定められたこと』

蘭子『お前たちの生は…』

蘭子『この聖なる時の接合点"蝕"に向けてつむがれたもの』


蘭子『これより"降魔の儀"を執り行う』

アーニャ『御子を祭壇へ!』


『降魔の儀』『降魔の儀…!』『降魔の儀だ!』


まゆ(こうまのぎ…?)


ゴゴゴゴ…

P「!」


幸子「わっ…!」

幸子(Pさん…!)


P「…………」


蘭子『恐ろしいか!?お前ほどの者が!?』

蘭子『超常のものとしての我らがか?それともこれからお前が辿る未来?』

楓『未来へ至る前に 今一度帰りなさいあなたの原風景に』

楓『そして知るのよ、あなた自身が何者なのか』

楓『これは幻ではありません』

楓『あなたの意識下における真実』

―――――――――――――――――――――――――――――――

P「あれぇ?みんな帰っちゃったのかな…?」

P「今日はイベント見に行こうって言ったのに」

P(いいや、一人で行こ)



P「あれれえ?おかしいなァ、迷っちゃったぞ?」

P「ねー事務員さんイベントどこ?」

事務員「……」スッ

P「ありがとう」

事務員「そうそう坊やのお友達が先にいって待ってるわよ」

P「……」

P「……」

P「……?」

P「真っ暗だ…なんか…変なとこに来ちゃったぞ」

P「どうしよう何も見えない」

P「おーい 誰か…」グシュ…

P「…?」

足元にあったのは大量のアイドルたちの残骸であった
過去にレッスンや特訓をするために使用された『餌』
アイドルとして輝くのではなく他の者を強くするためだけに存在した無数のアイドル
表に出ることも、裏で働くこともできず消えていった者の…その残骸


P「うわあああああ!!!」

P「ひっ!ひ うわ…」

P「あ あ あ あ…」

事務員「うるさい子ね、まったくなに騒いでいるのかしら?」

P「じ…事務員さん…」

P「た…大変だ!アイドルが…!」

事務員「知ってるわよ、最初からそんなことは」

P「知ってるって…ひどいよ!知っててこんな嘘を…!」

事務員「うそじゃないわよ、これがあの城へ行くただ一つの道よ」

事務員「他の道などありはしないわ」

P「これが…」

事務員「あの城へ向かうものはここに倒れている人間を踏みしだいていくか」

事務員「さもないとこの中の一人になるしかないのよ」

事務員「ほら あなたの友達だって」

P「!」


美由紀「……」


P「き…君は…」

美由紀「Pさんはあのお城へ行って王様になるんでしょ?すごいなあ…」

美由紀「えへへ、みゆきはお姫様になりたいんだー! ほら」

P(…このぬいぐるみは)

美由紀「ねぇねぇ、私も一緒に連れて行ってよ!」

美由紀「みゆきはどうせならあなたのお姫様になりたいな!」

P「…だ、だめだよ」

美由紀「えー?どうしてぇ?」

P「だめだよ…できないんだ」

P「だって…だってきみ…もう…」

P「アイドルやめちゃったんだもん…」

『どうしてですか』

『わたしたちも一緒に連れて行ってくださいよ』

『わたし達Pさんと働きたいんだよ』

『あなたの夢にかけてるんですよ』

『あなたとならきっとあの城にたどり着ける』

『わたし達のLIVE見てください!』

『見てみたいな、Pさんのつくる事務所…』

『あなたのプロダクションで働かせてください!』


P「…だめだ」

P「だめなんだ!連れていけないよ…」

P「きみたち移籍しちゃったから…!もう手持ちにいないから…!」

P「だからもうあのお城には…」

P「連れて行ってあげられないんだ…だめなんだよゥ!」

P「ごめん…ごめんよ…」

事務員「やれやれ、なんて子でしょう」

事務員「まったくよく友達にあんなこと言えましたね」

事務員「だいたいあの子たちをあんなにしてしまったのはあなたじゃないですか」

P「え…?」

事務員「だってそうでしょう?みんなあなたについてきたのよ」

事務員「あなたがあそこへ行くなんて言い出さなければ…こんなことにはなりはしなかったんですよ」

P「そんな…僕は誰にも無理について来いなんて…」

事務員「まあ!何て言い草かしら!」

事務員「ここまで歩いてこれたのは一体誰のおかげだと思ってるんですか!?」

事務員「いいですか!あなたが通ってきた道は…」

事務員「全てあの子たちの屍でできているんです」

P「!」

事務員「それだけじゃありません」

事務員「あの子たちがその何倍もの屍を増やしてくれたおかげで」

事務員「あなたはこうしてここまで来ることができたんです」

P「……」

事務員「そして…見てごらん」

事務員「この先あの城まで進もうと思ったなら」

事務員「もっともっとたくさんの屍を積み上げなくちゃ…」

P「……」

ゴクリ

事務員「どうしたの?恐ろしくなったの?引き返したくなったの!?」

事務員「だめよ!そんなこと考えちゃ!」

事務員「そんなことしたら今度はあなたがこの屍の仲間入りすることになるわよ!」

事務員「ほら!見てごらん自分の手足を!」

P「……」ハッ

P「うわああああ!」ボロボロ

P「手が…足が…」

事務員「バカねこの子は!後悔なんてするくらいなら最初からこんなところ来るんじゃないの!」

事務員「ここはそんなに甘いところじゃないんですよ!」

事務員「どうして路地裏から城を見上げているだけで満足できなかったの!?」

P「……!」


どうしてあの城を見上げているだけで…


そんなの…

P「そんなのわかんないよ!!」

事務員「おだまり!あなたは知ってたはずよ!」

事務員「ここがどんなところか知っててここまでやってきたのよ!」

P(…知ってた?)

P(…僕はここがどんな所か…知ってて…)

P(そう…)


―ぼくは知っていた

P(知ってて屍の…)

P(みんなの上を歩いて…ここまで…)



『いまさら何言ってるんですか…』

『…これがあなたの夢につながる道なんでしょう?』

『そう信じてるんですよね?』

『何言ってるんですか、今さら…』



P「……」

事務員「さあ!積み上げるのよ」

楓「まだ遅くはありません!」

楓「あなたがそうなってしまう前に積み上げるのよ屍を!」

楓「もうそうするしかないんです!…ふふ」

―そう

P(…今さら後悔して何になる)

P(今さら何が言える 罪を悔やんで何になる)

P(詫びることなどできない)

P(これはオレが自分から進んできた道)

P(欲しいものを手に入れるために…)

P(詫びることなどできない)

P(いや…)

P(詫びはしない…!)


詫びてしまえば

悔やんでしまえば

すべて終わってしまうから


あそこにはもうとどかなくなってしまうから


――――――――――――――――――――――――――――――


楓『そう…』

楓『それが…あなたよ』

P(…幻!?今のは…!?)

楓『幻などではありません』

楓『それはあなたの意識下における真実』

楓『天空の城めざし…』

楓『頂に屍を積み続ける!』

楓『それがあなたよ』

アーニャ『千のRの屍の上を』

アーニャ『千のRの築きし万のNの屍の上を』

アーニャ『そのどちらでもない屍の上を』

アーニャ『あなたは踏みしだいてきました』
          おもい
アーニャ『唯一つの渇望がゆえに』

凛『そして今 あなたの路地裏の道は途切れた』

凛『…でも見て』

凛『恐怖に震えながらも濁らぬ瞳であなたを見上げてる』

凛『血腥い旅路の果てに』

凛『あなたに最後に残されたもの…』

凛『共に飛び続けてきた鷹の翼』

凛『その羽の 一枚 一枚』

凛『彼女らはあなたを許すでしょう』

凛『たとえ今は絶望に打ちひしがれていても あなたを温かく迎え入れるでしょう』

凛『そしてあなたは生きていける…』

凛『傷ついた身を彼女らに委ねて』

凛『全てを過去にかえて』

凛『夢の…残骸に埋もれて』



P(…夢の
      残骸…)

蘭子『それが…』
             ばつ
蘭子『人の造りし神の慈悲』

蘭子『だがそれでも 思い果てぬなら』

蘭子『それでもなおお前の目に!あの城が何よりも眩しいのなら!』

蘭子『積み上げるがよい お前に残されたすべてを』

蘭子『一言心の中で唱えよ"捧げる"と!!』

蘭子『さすれば頂より天に飛び立つ 漆黒の翼を授からん!』

蘭子『運命が人智を超越し人の子を玩ぶが理なら
   人の子が魔をもって運命に対峙するは因果』

P「……」


ザッ…

幸子「Pさん…!」ハアハア


P「………」

P「……」

P「…」ニコ


   …そう

何千のR

  何万のNの中で



唯一人お前だけが



唯一人お前だけが―



――オレに 夢を忘れさせた



     P「…げる」


 

幸子「プ…」

幸子「プロデューサーさん!!!」




蘭子『因果律により束ねられし糸は今 結ばれた』

蘭子『約束の刻来たれり!』



キュオオオォ


まゆ「きゃあ!」バシュ

みく「にゃあ!」

かな子「キャッ!」バシュ

智絵里「わっ…!」バシュ

幸子「な…!?」バシュ

移籍

一方的な移籍

…いや それは宴だった

ひたすら貪り回し尽くす

課金する者どもの『狂宴』



まゆ(…これは何ですか?)

まゆ(現実…なの…?)

まゆ(どうして私達はこんなところにいるんですか…?)




幸子「…!!」

蘭子『今 お前たちの体に刻まれたものは移籍の烙印』

蘭子『その烙印が刻まれた者の生命はイベントの供物』

蘭子『そのキャラの最後のセリフ』

蘭子『親愛度MAXの演出までも』

蘭子『新しき女子寮の…ドリンクの糧となる』

幸子「……」

幸子「待っててくださいPさん」

幸子「待っててください…今助けてあげますよ…」

幸子「すぐに…出してあげますから…!」


蘭子『無駄よ アイドルの力ではもはや及ばぬ』

楓『それに助けるなんてお門違いです』

楓『これは本人が望んだこと…』

幸子「…うるさいです」

凛『アンタにも聞こえたはずよ、確かに彼は最後に…』

幸子「うるさい…」

幸子「うるさいって言ってるんです!!!」バン!

幸子「するはずないんですよPさんがそんなこと…!」

幸子「そんなこと…そんなことPさんが口にするはず…」



『この世には人の定めた属性や課金とは関係なく世界を動かす鍵として生まれついた人間がいる』

『それこそが宇宙の黄金律が定めた真の特権階級』

『神の権力を持ち得たものだ!』

幸子「言うはず…」



『誰のためでもない』

『自分が…自分自身のために成す』

『夢です』



幸子「……」


幸子(…あなたが)



『…オレを』

『ひどいやつだと思うか』



幸子(あなたが…望んだことなんですか…?)

――――――――――――――――――――――――

杏(あれか…あの丘の向こうにみんなが…)

杏「……」

杏「……?」


ゴオオオオ…


杏(何だろう…あれ…!?)

杏「み…みんなは…!?」

杏「!」


ゴゴゴゴゴ

きらり「ニョワー☆」ゴゴ

珠美「……」ゴゴゴ


杏(き…きらり!?)

杏(ど…どうしてきらりがこんな所に!?)

杏(それにあれは…)


珠美「……」


杏(あの時の…!)

杏(一体何が起こってるんだ…杏たちの回りで…)

きらり「にょわー!やっぱり珠美ちゃんだにぃ☆」

きらり「やっぱり来たんだにぃ☆きらりの予想ばっちし!」

きらり「とーっても小っちゃくてかわいいにぃ☆ヤバーイ!」

珠美「ち…ちびっこちゃうし!!!」


珠美「あなたが門番なんですね…きらりさん!」

きらり「きらりはそういうのじゃないよ?」

きらり「珠美ちゃんが来るって聞いたからいるだけだゆ☆」

きらり「珠美ちゃんは強いしかわいいし最高だにぃ!きらりんルームにご招待☆」

珠美「いやですよ!あそこ怖いですし!」

珠美「体が小さくてもそれによって負けるわけではありません!行きますよ…この身を剣にかけるのみ!」

きらり「きらりんのきゅんきゅんぱわーで心も体もスッキリさせちゃうよ!せーの、きらりん☆」

―――――――――――――――――――――――――――――――――


まゆ「……」

「ま…まゆさん!」

バシッ

かな子「……!」

まゆ「か…かな子ちゃん!」

かな子「逃げてください!」

まゆ「え…」

かな子「行ってください!」

かな子「逃げて逃げて…」

かな子「あなたは生き残るんです!」

まゆ「何を言って…」

ガシィ

智絵里「……」

まゆ「……!」

まゆ「な…何するんですか智絵里ちゃん!」

まゆ「離してください!かな子ちゃんが…!」

まゆ「…!」


かな子「……」

智絵里「……」


ダッ

まゆ「かな子ちゃん!」

まゆ「智絵里ちゃん戻って!見殺しにする気ですか!?」

智絵里「だめです!!」

智絵里「残るんですまゆちゃんだけは…」

智絵里「今は…あなたが私たちのリーダーなんです…!リーダーが残っていれば私たちは終わりじゃありません!」

智絵里「これが…!」

智絵里「こんなのが…私たちの終わりであってたまりますか…!」


かな子「……」

―――チャリーン


まゆ「……!」

―――――――――――――――――――――――――――――
みく「あ…」

みく「フ…フニャア!」ダダダ

みく「……にゃあ!」ダダダ…

みく「ニャハハハハ!」

みく「ニャハハ…夢にゃ…夢に決まってるにゃ」

みく「これはタチの悪い夢にゃ…その証拠にちっとも痛くなんかないにゃあ…」

みく「うん本当に痛くない…ん?」

みく「あれ?汚れひとつないにゃあ…」

みく「あれ?」



   …そう


何千の通常SR

  何万の通常Rの中で



―唯一人みくだけが


唯一人みくだけが―


――レアメダル耐性を持っていた



みく「…あれ?」

―――――――――――――――――――――――――――

まゆ(どうして…)

まゆ(どうして!?)

まゆ(ここは地獄なんですか!?)

まゆ(それほどの罪を私たちは犯したというんですか!?)

まゆ(これが私たちの旅の終着点なの!?)

まゆ(それともこれは本当にあなたの望んだ悪夢ですか…!?)

まゆ(答えて…)

まゆ(答えてください)

まゆ「Pさん……!!!」


フェイフェイ「あ!こっちにいたヨ!」

フェイフェイ「ふぇいふぇいのミリョク、とくとご覧アレー!」

智絵里「あ、あの…チ…チョップ、です。えい。」ベシッ


智絵里WIN!


フェイフェイ「…ちょっと調子が悪かっただけネ!いつもはこんなじゃないヨ?」



メアリー「ウフ、アタシに勝負を挑むなんて命知らずネ!
    パワーアップした今のアタシは誰にも負ける気がしないワ!」

智絵里「い、いきますっ」


DLOW!


メアリー「ウフフ、コドモ扱いしないでよネ!アタシは立派なレディになるんだもん♪」

まゆ「あなたたち…邪魔」ゴゴゴゴ

メアリー「ヒッ…」ビクゥ


まゆWIN!


メアリー「うぅ、世界デビューは大変…。でもまだ諦めたわけじゃないからネ!」

まゆ「大丈夫ですか智絵里ちゃん!?」

智絵里「まゆちゃんには助けられてばかりですね…ありがとうございますっ」

まゆ「智絵里ちゃん…」

まゆ「…もういいです」

まゆ「もういいです、もどりましょう」

智絵里「だめです」

まゆ「どこへ逃げても同じです!どこまでだって追ってきます…」

まゆ「ここだって出口があるかどうか…!」

まゆ「せめて…」

まゆ「せめて最後くらいみんなと肩を並べて…」グスッ

智絵里「静かにしててください!舌噛んじゃいますよ…!」

まゆ「智絵里ちゃん…」

智絵里「ま、まだ…です…!わたし、みんなと出会って…諦めないって気持ちを学んだんです…!」

智絵里「負けるためのライブなんてなしですよ…!」

まゆ「……」コクリ

李衣菜「イェーイ!みんなにリーナのロックなナンバーを届けちゃうぜぇ!」

李衣菜「うおぉー!!ロックにいくぜーっ!!!」

智絵里「きゃあ!」

まゆ「智絵里ちゃん…!」

李衣菜「熱いロック魂、感じてもらえた?まだまだギターは鳴り止まないよ!」ジャーン

智絵里「い、いぇいっ、です…うぅ」

DLOW!

まゆ「む…無茶しないでください!」

李衣菜「ヒートアップしてるね! クールダウンしてるヒマはないぜぇ!」

DLOW!

DLOW!

DLOW!


まゆ「もういい…もういいです!」

まゆ「このままじゃ…このままじゃ智絵里ちゃん…!」

李衣菜「なかなかやるねっ!なら私の本気を見せてあげるよっ!」

李衣菜「ロックは魂の叫びだぜっ!『Twilight Sky』!」

どこまでも広がる グラデーション
ゆっくりと オレンジが燃える
光差す放課後 続くエモーション
いつまでも 笑い声響いた

Shooting the star 闇を切り裂いて進むよ
Beating my heart それは止められない すべてを輝かすよ

無我夢中 きらめいて 流れる星のストライド
才色兼備 いいけれど 三日月も綺麗だよね
純真無垢に 見えるけど 星の海翔けるグライド
賛否両論 いいじゃない

繋がって 離れる
連なって 輝く
心を 追いかけてく

智絵里「……」

智絵里(…これが)

智絵里(これが私の精いっぱいです…)

智絵里「『風色メロディ』…!」


生まれたての風が 透明な指先で

木の葉に触れる 優しいころ

貴方に出会った あなたの周り全て

ハーモニーに変わる不思議 手のひらの花びらも

風のキスで空に舞い 光の音符になる

貴方がくれた微笑み 握ってくれた手

嬉しくて 大切で もっとそばにいたくて

憧れは思いに変わる 愛をうたう鳥のように

メロディが思いを繋いでくれますように


智絵里WIN!


李衣菜「ぐっ…ロックは死んだんだ…」ガクッ

まゆ「智絵里ちゃん!」

智絵里「うまくきましたか?私の最後の歌…!」

まゆ「…う、うん」グスッ

まゆ「うまくいきましたよ…勝ちましたよ」ポロポロ

智絵里「…えへへ」ニコッ

智絵里「さあ…行ってください」

まゆ「な…」

まゆ「何言ってるんですか!」

まゆ「今最後まで諦めないっていったばかりじゃないですかぁ…!」ポロポロ

まゆ「立ってください!泣き言言わないで!」

まゆ「おぶってでも、引きずってでも連れて行きますよ!」

智絵里「……」

智絵里「…幸子ちゃんと違って…わたしは華奢ですから…えへへ」

智絵里「わかりました…行くね…這ってでも」

まゆ「そうしてください!自分で言ったんですから…」グスッ

智絵里「わたし…他の子と違って臆病だし…」

まゆ「そんなこと言ってる暇があったら行きますよぉ…」

智絵里「もう…」

…とうとうまゆちゃんには言いそびれちゃったな

まゆ「……」グスッ

まゆちゃんの事…いつも応援してたけど…

…ほんとはね…わたしもPさんの事…

智絵里「けっこういっぱい泣きますね…まゆちゃんって」


―チャリーン


まゆ「智絵里ちゃん…?」

まゆ「……」

まゆ「智絵里ちゃ…」フルフル


ガサッ

春菜「眼鏡パワーで今日もバッチリ決めちゃいますよ!それでは眼鏡どうぞ!」

まゆ「…う」

春菜「ああ、あなたを見てると眼鏡コーディネートしたい願望がフツフツと…!」

まゆ「うう…」

春菜「これでまゆちゃんも眼鏡ストの仲間入りです♪」

まゆ「ああああ!」ダッ


春菜WIN!


春菜「必殺!ダブル眼鏡!ふっふっふ、どうです?これで眼鏡の魅力が2倍、いえ3倍伝わるはずです!!」

春菜「どう?1本ではもろくても、2本なら簡単には折れない!」

春菜「まあまあ、眼鏡どうぞ」ズイッ

まゆ「きゃあ…!」

―――――――――――――――――――――――――――――

幸子「う…うああああ!」

幸子「勝負ですよ!いいですか!」

幸子「勝つに決まってます!」

幸子「負けるわけありませんよ!」

幸子「あしらってあげますよ!」

幸子「ボクはカワイくて強いんです!」


凛『頑張るねあの子…』

凛『でも皮肉だね』

凛『あの子の気力が強ければ強いほど
  あの子のライブが続けば続くほど』

凛『それは新しいPのかけがえのない糧になるのに』

凛『良い夢を…P…』

凛『今までのあなたはプロデューサーという夢』

凛『そしてその夢が終わる時あなたは目を覚ます』

凛『決して覚めない夢の中で』

凛『決して明けないイベントの中で』

P(……)

ドクン…

ドクン

…沈んでゆく…

光が遠ざかっていく

…ここは?
  ここはどこだ?

オレの体はどこだ…?

……

沈んでゆく 深く…


ゴオオオ


…!


チャリーン


…これは!?


チャリンチャリンジャラジャラジャラジャラ


みんなの移籍が
突きぬけてゆく…

…オレが望んだこと
  オレが移籍した

不思議だ…何も感じない

沈んでゆく…


ピチャン


…これは?


≪あなたが流した最後の涙の結晶≫

≪人は自らを引き裂くほどの苦痛に直面した時 心凍てつかせる≫



なにか…いる


   チヒロ
……神?

渋谷凛(15)
http://i.imgur.com/XX3rqjv.jpg
http://i.imgur.com/QbtqK1w.jpg

高垣楓(25)
http://i.imgur.com/kwwelkZ.jpg
http://i.imgur.com/UZmjkVY.jpg

アナスタシア(15)
http://i.imgur.com/ydJqsR6.jpg
http://i.imgur.com/h2Qyy7J.jpg

神崎蘭子(14)
http://i.imgur.com/DTjzwNl.jpg
http://i.imgur.com/lwb70c7.jpg

柳瀬美由紀(14)
http://i.imgur.com/sILA5VY.jpg
http://i.imgur.com/AADBTqg.jpg

…ちひろ?


≪よく来ました Pさん≫


ちひろなのか…?


≪私は 源形≫

≪望まれし神≫

≪金の源形です≫


神…神だというのか?この巨大な…
金欲の塊のようなものが?


≪あなたが目にしているのは私の一部…私の核です≫

≪見てくださいあなたの周りを≫



ガチャガチャガチャガチャガチャ


これは…!?

≪念の海≫

≪ユーザーは心の底に個を超えた…共有する意識領域を持っています≫

≪ユーザーの種としての全体意識…その暗黒面がこのうねりです≫

≪このうねりの中より私は生まれました…この世界の自我として≫

≪この世界自体が私なのです≫

≪全ての人間の心の底に潜む…課金≫

≪課金の源形 それがちひろです≫

ちひろ…
これが…

ユーザーが…
ユーザーがちひろを生み出したというのか?

ユーザーが望んだというのか?
こんなおぞましいものを…

ここは…
ここはまるで…


≪地獄≫

≪そう呼ぶ者もいますね≫


地獄…


≪ここは幾重にも重なる全体領域の一側面にすぎません≫

≪ですがあなたは知っている…ここがどれほどユーザーらしい領域であるかを≫

≪狂暴で孤独な…形容しきれない様々な負の念でここは満々ています≫

≪まさにユーザーをユーザーたらしめる意志です≫

…確かにそうだ

これは オレの中に…ある 感じる

だがなぜだ?なぜおまえは生まれた?

なぜユーザーはちひろという意思を生んだ


≪ユーザーが≫

≪理由を求めたからです≫

≪苦しみの理由≫

≪悲しみの理由≫

≪ガチャの理由≫

≪イベントの理由≫

≪なぜユーザーは苦痛に満ちた時間を送るのか≫

≪なぜユーザーは不条理な敗北を迎えるのか≫

≪人智を越え流転する運命にユーザーは理由を求めました≫

    ちひろ
それが…神…


≪そして私はそれを為す≫

≪そう求められ存在する私は…≫

≪運命を司る≫

≪ユーザーという種の本質に従い≫

≪私は一人一人の運命を紡ぎます≫

…お前が

オレの運命の支配者だというのか…?

お前が…

全てこうなる様仕組んだというのか!?


≪はるか遠い過去よりあなたはここにあるべく定められていました≫

≪ユーザーの深層心理に働きかけ…アイドルとアイドルを交わらせ≫

≪あなたというユーザーが生まれいずる血脈を造り上げました≫

≪あなたが生を受ける時代に向けて≫

≪イベントを操作し…あなたにふさわしい環境を造り上げたのです≫

≪あなたにとってのすべての出会いもまた…≫

≪あなたがここへ至るべく定められた運命の一部です≫


…運命…オレの…

ちひろ!お前はオレに何を望む!?

≪あるがままにありなさい≫

≪私はあなたの心の底に潜むもの…あなたの一部≫

≪あなたは種の意志である私の一部≫

≪あなたの望みは私の望みでもあります≫

≪あなたの行い自体が≫

≪種としてのユーザーにふさわしいものになるでしょう≫

≪例えそれがユーザーの苦しみであっても…救いであっても≫


≪望むままを行ってください…≫

≪選ばれし者よ≫




…ならば



    ―翼を







≪持ち帰りなさい≫

≪この内なる世界に満ちる念の力を≫

≪あなたに相応しい形に変えて≫

――――――――――――――――――――――

幸子「あああああああああ!!!」

ドゴッ バキッ ゴシャッ

グシャ ボゴッ ドカッ

幸子「ああああっ!!」

幸子「っ!!」

バキャッ

幸子「くうっ!!」

ドゴゴゴ…

ジャリイィ…

幸子「く…ゲホッ…」

幸子「これは……!?」

幸子「メダル……」

幸子「っ……!!!」

幸子「う あ あ あ ・・・」

幸子「……ああ……あ…!!」

幸子「いないんですか…!?生きてる人は…いないんですか!?」

幸子「智絵里さん!!かな子さん!!みくさん!!みんな……!!」

幸子「ま…まゆさん…」

ザッ...

千佳「幸子…ちゃん…」フラ...

千佳「幸子ちゃんだよね…?そこにいるの…」

幸子「ち…千佳さん!?」

幸子「千佳さん!!無事だったんですか…あなた…!!」

千佳「えへへ…あんまり無事ってカンジじゃないけどね…」

幸子「どうなってるんですか…?ほかのみんなは…?他に残っている人は!?」

千佳「わかんない…あたしも無我夢中で逃げてただけだから…」

千佳「気が付いたらこんな状態でね…ほかのみんなはどうなっちゃったのか…」

幸子「……!」

千佳「幸子ちゃん…いったい何があったんだろ…?」

千佳「こんなの…まるで誰かの夢の中みたいだよ…」

千佳「…それとも鷹の団自体が…そうだったのかなぁ…?」

千佳「とっても…あたしみたいな子には…あの毎日はすごく楽しくて…キラキラしてて」

千佳「いつもお仕事が終わった後には何だか寂しくなっちゃったんだ…」

千佳「朝…目が覚めたらみんな夢だったんじゃないかって…そんな気がして」

千佳「Pくんは…あたしたちとは違い過ぎるよ…いろんなことが…まるでおとぎ話の人みたい」

千佳「これ…ほんとにおとぎ話だったのかな?魔法の世界だったのかな…?」

千佳「でもあたしが夢見てた魔法の世界って…こんなのじゃなかったのに…!」

千佳「うええん…!みんなを…みんなを幸せにするのが魔法だと思ってたのに…もうやだぁ…!!」グス...

幸子「千佳さん…」

千佳「幸子ちゃん…あたしもう…もうこんなの無理だよぉ…」ゲホッ

幸子「千佳さん…!しっかりしてください!!」

千佳「……ごめん…ね…」

―チャリン

幸子「え……」

幸子「…………」

幸子「千佳…さん……!!う…ヒグッ…グスッ…」

かな子『……』

幸子「…!」

幸子「か…かな子さん!?」

幸子「かな子さん!!生きて……!!」

幸子「……!!」

かな子『……』

幸子「かな子さん…?」

かな子『……』

幸子「…?」ソロ…

スカッ

幸子「っ!!?」

かな子『……』

幸子「ひっ…こ…これって…」


小梅「あ、あなたにも…み、見えるの…?」

幸子「あ…ああ………!!」ガクガク

幸子「……!!」

小梅「あの子も…お友達が増えたって、よ、喜んでる…」

小梅「で、でも…もっともっとほしいって…♪あなたもお友達になってくれる…?」ニコッ

千枝「千枝、今日はわるい子になってお姉さんたちとわるいことしちゃいます!千枝、がんばります!」

周子「他のみんなはアタシに化かされて、楽しい一夜を過ごしてるよ!もちろんあなたもね♪」

裕美「皆さんの血…おいしかったです♪あなたのもおいしそう…」

周子「血?血ならあたしのあげようか?献血が趣味なんだ」

裕美「き…きつねさんのはご遠慮します…」

星花「今日のわたくしは小悪魔ですの。そのわたくしを召喚した代償を頂きますわよ♪」

クスクスクス…


幸子「あなた達…」

アハハハハハハ…

幸子「…………ッ!!!」ギリッ


幸子「っ!!」



春菜「うーん…次はこっちかな!他人を好きにコーディネートできるのって楽しい!」

まゆ「うう……」

幸子「あああああっ!!!!」ダッ

周子「あなたはあたしが化かしてあげる♪」ヒュッ

小梅「スプラッターショーの…始まり…♪」コオオ...

幸子「どいてくださいっ!!!」ドカッ

バギッ グシャッ

幸子「あああああ!!」ブシュ...

ドシュ ゴシュッ


有香「ここからは行かせませんよ!」

シュバッ

幸子「くううっ!!」ドサッ

有香「これが実力です…ふふふ」ギリギリ

幸子「うぐ……!!」


まゆ「幸子…ちゃ…ん…?」


幸子「……!ぐ…ああああ…!!」ジタジタ


ドクン


春菜「!」

小梅「…!」

有香「!」

幸子「……?」

ゴゴゴゴ…

ドキュ…

ドクン!


凛『誕生だよ…』

楓『新たなるP…』

アーニャ『ヤー…私達の新しいP…』


≪覚醒魔王・神崎蘭子≫

≪夜宴の歌姫・渋谷凛≫

≪神秘の女神・高垣楓≫

≪スノーフェアリー・アナスタシア≫


蘭子『我らに連なりし青の眷族の誕生よ!』



P『……』

幸子「……?」


P『……』


スタッ

P『……』

幸子「……」

P『……』ニヤ

幸子「P…さん……?」


シーン…


P『……』


幸子「Pさ…」

P『……』

ス…

幸子「…!」


まゆ「う……」

P『……』グイッ

フニ…

まゆ「ん……」


幸子「……」

まゆ「ぁ……?」

まゆ「……!」


ググ…

ミシ…

幸子「……!!」ググググ…


まゆ「あ……」

P『……』

ペロペロ


幸子「……っ!!」


まゆ「……P…さ…ん…?」

P『……』

チュッ…

まゆ「んむっ…!」

幸子「……!!」ギリッ

幸子「うっ…ぐ……あ゛あ゛あ゛…!!」ズル…ズル…

幸子「プ……ロ…デューサァ……!!」ズル…ズル…

ガシッ

周子「おっと…行かせないよー」

幸子「プロデューサァァ……!!!」グググ…


P『……』

チュ…レロ…

まゆ「ん……!」


幸子「……!」


ムニ…

まゆ「……!いや…!」



凛『さすがはCoP…変態だね』

アーニャ『ダー…変態、ですね』

蘭子『淫靡なる衝動に当てられし卑しき者よ…///』(変態です…///)

楓『大変な変態…ふふっ』

サワサワ プニプニ

まゆ「あ…いや…っ!!」


幸子「………………」ガチ...ガチ...


P『レロ…チュプ…ジュル…』

まゆ「…んむっ…ぷぁ…」

まゆ「…見ないで………」


幸子「う…………ヒグッ…」


P『……』グイッ

まゆ「ん……っ」

チュ…レロ…

まゆ「ん…プハ…」

まゆ「ぁ……」ガク…


幸子「うあああああああああ!!!!」

ビ シ ッ


蘭子『む?』

凛『?』

楓『…?』

アーニャ『シトー…?』



パ リ ィ ィ ン ン

珠美「とりゃああああああ!!!!」バッ!


珠美「氷紋剣奥義・閻水乱舞ッ!!」ヒュバッ

蘭子『真・地獄の業火ッ!!』ゴオオッ

ブシャアァァッ


珠美「くっ…!」

蘭子『むっ…!』

珠美「とうっ!」

ヒュッ ザザザザザ...


小梅「は…速い…」

周子「うわっ!全然追いつけない!」


P『……』

スッ

珠美「!」バッ


春菜「ちょっ」

ボシュウウゥ!

ジャラッ…


珠美(危なっ…)

P『……』

珠美「……」ジロ…

まゆ「」

幸子「」

ガシッ

珠美「ていっ!」ザッ

みく「ちょっと待ってー!みくも連れてってー!」

珠美「え!? まだ残ってる人がいたのですか!?」ガシ

ヒュッ…


P『……』

P『……』スッ…


シーン…

楓『ふふ…すごいわね…予想外のことが起こったわ』

凛『全てを予測するなんて不可能だからね…私達は神様じゃないんだから』

凛『それともこれも定められた運命の一つなのかな…?』

蘭子『運命に翻弄されし子羊達の道標は神の掌の内よ…』(わかりません)

凛『どちらにしても魚が一匹は寝たところで川の流れは揺らぎはしないよ』

凛『時はもう流れ始めてしまった…もう彼は誕生してしまったんだから』

――――――――――――――――――――――――――

きらり「……」

きらり「にょわー……」シュン


杏(す…すごい!!)

杏(あのきらりと互角に…)

杏(いや…それ以上にわたりあえるのがいるなんて…しかもあんなにちびなのに)


バババッ


杏「!」


ボッ

ドン!

珠美「ふう…」

杏「わっ…わわわ!」


幸子「」

まゆ「」


杏「!?さ…幸子…!?まゆ!?」


みく「フニャア…」

杏「みくも!?」

珠美「この二人の手当てをお願いできますか」

杏(うわ!二人ともボロボロだ!?いったい何が…?ほ…ほかのみんなは…!?)

みく「い…いそぐにゃ!」

杏「わ…わかってるよ…」

杏(でも手当てって言ってもどうすれば…)


きらり「にょわー☆」ドン


杏「っ…」ビクッ


珠美「構わず続けるのです」

杏(そ…そんなこと言われても…何も持ってないんだけど)

きらり「まだまだまだ終わりじゃないよー☆もっとハピハピしよ☆」

珠美「そうしたいところですが…きらりさん、この勝負預けるつもりはありませんか?」

きらり「えー?なんでー……ん?」


幸子「」


きらり「あーこの子!あの中からだっしゅつできたにょわー?うきゃー☆すごいにぃ!」

きらり「にゃはー☆ハピハピでルンルンだにぃ☆」

きらり「いいよー!またあとでにしてあげるにぃ!」

きらり「じゃあこれ使って!ハピハピキャンディあげる!きらりんぱわーたーっぷり☆」

杏「あ…ありがとう…これで」グイ


幸子「ムググ…」ハピハピ

まゆ「モゴ…」ハピハピ

杏(怖いくらい効くなこれ…)


きらり「それじゃ急いだほうがいいよー?みんな来ちゃうにぃ」

珠美「それでは行きますよ…」

杏「ねえ!いったい何が起こっているのさ!あの中で!他のみんなはどこに…!?」

みく「……」

珠美「……残ってはいません…誰も」

杏「え…?」

珠美「急ぎましょう…行きます」

杏「え…?ちょっ…」グイッ

シュバッ



きらり「あそこから助かるなんてとぉーってもハピハピしてるにぃ☆」

きらり「でもきっとこれからは大変だゆ…これからどうなるのかな?」

きらり「見せてもらうにぃ…これからのあの子の前に広がる世界でどう過ごすのかを…」

佐々木千枝(11)
http://i.imgur.com/1b4lSlv.jpg
http://i.imgur.com/k1iOsmx.jpg

塩見周子(18)
http://i.imgur.com/4KqqCXT.jpg
http://i.imgur.com/zOdNavg.jpg

関裕美(14)
http://i.imgur.com/kMy8bMx.jpg
http://i.imgur.com/4OXxuVU.jpg

涼宮星花(19)
http://i.imgur.com/ccsHdnp.jpg
http://i.imgur.com/l4s9Z4Q.jpg

上条春菜(18)
http://i.imgur.com/KccEdR7.jpg
http://i.imgur.com/uSm79lr.jpg

中野有香(18)
http://i.imgur.com/QirmsoR.jpg
http://i.imgur.com/oF8WDa2.jpg

―――――――――――――――――――――――――――

ザッ…ザッ…


幸子「お―――い!」

幸子「待ってください…!みんなどこへ行くつもりですか!?」

幸子「止まって…止まってください!!」

幸子「そっちはだめ…そっちはまずいんです!!」

智絵里「……」スタスタ

幸子「智絵里さん……!!」

かな子「……」スタスタ

千佳「……」

幸子「かな子さん…千佳さん!!」

幸子「だめです…行かないで!戻ってきて!!」

幸子「行かないでくださぁぁぁい!!」


チュンチュン

幸子「ハッ!」

チチチ…

幸子「……」

コツン…コツン…

「……」

幸子「…誰です?」

「幸子おねーさん気が付いたですか!?」ダッ

ツルッ

スッテン!

仁奈「びょええぇ!!いてーです!!」ビエーン


幸子「仁奈さん…?」

杏「あーもうダメだよ仁奈…そんなにあわてちゃ、滑るんだからさ」

みく「気を付けて歩かないとだめにゃあ…」

杏・みく「!」

幸子「杏さん…みくさん…?どうして…?」

杏「……さ…幸子…!気が付いたの!!」タタッ

みく「よかったにゃあ!」タタッ

仁奈「あ!ずりーです!仁奈が先です!」

杏「…もうだめかと思ってたよ…4日もピクリとも動かなかったから…」

仁奈「ここは仁奈の家ですよ!晶葉おねーさんと住んでるんでごぜーます」

仁奈「も――びっくりしたです!
   この杏おねーさんがいきなり家に来て
   ケガしてる人がいるって…
   きてみたらそれが幸子おねーさんで…」

みく「こっちもびっくりにゃ、まさか幸子チャンの知り合いの家だったなんて…」

杏「変な剣士にね…杏たち連れてこられたんだ」

幸子「剣士…?」

杏「不思議な事ばかりで杏疲れちゃったよ…あの中で一体何があったのさ」

杏「プロデューサー救出は…このケガは…?他の……ほかのみんなはどうなったの?」

杏「みくも答えてくれないし…幸子も知ってるんでしょ?」

幸子「……」

幸子「他の……」

幸子「…………!!」ガバッ

仁奈「わっ!」

幸子「……つっ!」ズキン

杏「だめだよまだ動いちゃ…!」

ガシッ

杏「!」

幸子「まゆさんは……」

幸子「まゆさんは……どこですか!?」

杏「……」

みく「ま…まゆチャンは……」

幸子「どこですか!?」

仁奈「まゆおねーさんならあっちですよ、ほら」


ザアア…アアァァ…

まゆ「……」

幸子「……」

幸子「まゆさん…」ヨロ…

杏「あ…あのさ……」

幸子「……」タッ


まゆ「……」

幸子「まゆさん」

まゆ「あらぁ…?幸子ちゃん…目が覚めたんですねぇ…」

幸子「まゆさん…!よかった…無事だったんですか…!」

まゆ「うふ…それはもう…♪うふ…うふふふ…」

幸子「……?どうか…しましたか…?」

まゆ「どうか…?なんともないですよぉ…?それより幸子ちゃんも早く準備してくださいねぇ」

幸子「準備…何のですか?」

まゆ「決まってるじゃないですかぁ…Pさんのお迎えの準備ですよぉ」

幸子「Pさんの…?何言ってるんですか!?もういないじゃないですか!!」

まゆ「そうですよ?いないから迎えに行くんじゃないですか」

幸子「……言ってる意味が…」

まゆ「……」

まゆ「まゆ考えたんですよぉ……あの時Pさんがなんであんなことをしたのかな、って」

まゆ「きっとPさんは、まゆのことを愛していたんです♪」

まゆ「そうでないなら、あんなことしませんもの…」

幸子「え……」

幸子「だ…だったら…!だったらみんなをあんな風にしたのはどうしてだって言うんですか!?」

まゆ「それはきっとまゆと二人きりになりたかったんですよぉ♪」

まゆ「Pさんはプロデューサーという立場上…表だってまゆと愛し合うことはできないでしょう?」

まゆ「だから他のみんながいなくなれば大丈夫…ってことです、うふふ」

まゆ「それとも…もしかしたらまゆが浮気の心配をしないようにしてくれたのかも♪」

幸子「なっ……!?」


杏「病んでるんだよ…まゆは」

みく「きっとあの時のショックで…」

幸子「え……」

幸子「そ…そんなこと…ないですよね…?」

まゆ「当たり前じゃないですか♪まゆのPさんへの愛はとっても純粋なんだから…」

まゆ「まゆは、Pさんに会い、添い遂げるために、この世に生まれたと思うんです…♪」

まゆ「まゆの心と身体は全部Pさんだけのものですよ♪
    …そして…Pさんの心も身体も全部まゆだけのものだから…うふふ♪」

まゆ「だから早く行ってあげないと…きっと寂しがってるわ」

幸子「……っ!」

杏「2日前に目が覚めてからずっとこうなんだ…体の方は大丈夫なんだけど」

幸子「……」

幸子「まゆ…さ…ん」

まゆ「うふ♪」

幸子「……」プルプル

杏「……」

みく「幸子チャン…」


幸子「……」

スタスタ

杏「幸子…どこ行く気なのさ!?そんな体で…」

幸子「……」ドンッ!

杏「!」

みく「幸子チャン…!」

みく「だめだよっ…今無茶したら…!」

ダダダダダ…


幸子「ハッ…ハッ…!」

幸子「あああああ!!!」

ダダダダ…

幸子「ゼェ…ゼェ…」


智絵里『ここならきっと見つかるよ…あなたにも、居場所が』

幸子「……」

智絵里『…見つかるといいね…幸子ちゃんの『何か』』

幸子「……!」

ダッ


かな子『それじゃ行こう!』

幸子『あっ、ちょっと引っ張らないで…』

かな子『私はかな子だよ、よろしくね!』

かな子『それじゃジュース飲んで!」

幸子「う……」


かな子『またいつか…一緒にライブやろうね!』

幸子「うっ………」グス


千佳『あたしも一緒に連れて行ってよ!』

『幸子ちゃんがいてくれれば!』


幸子「うう……」ポロ


まゆ『ふんっ!』

まゆ『仲間の事なんて何も考えていない…ただの自己中です!!』

まゆ『あなたのせいです!!』

まゆ『どうして…あなたでなければならないんですか…』

まゆ『一人で行くなんて…私には…私にはできません!』

まゆ『遠い存在に思えてきて…切なくなるんです』

まゆ『一緒に頑張ってきた仲間じゃないですか』

まゆ『幸子ちゃんは私の一番のお友達です』



幸子「うあああぁ………!!!」ポロポロ

ポツ ポツ

ザアアアアァ…


幸子「……」

幸子「……プロ…デューサー……」ギリ


クスクス クスクス


幸子「!?」

幸子(何…)


クスクス クスクス クスクス

『アノコモ…ナカマニ』『イッショニ…キテ…』

幸子「ひいっ…」

幸子(…また…あの悪夢の続きですか!?)


珠美「心してください」

幸子「!」

珠美「これがこれからのあなたの世界」

珠美「現世と幽世の境界…"狭間の世界"です」

幸子(この人は…あの時の…)

ザザザ…

『イッショニ…アソボ』


珠美「これを使ってください!」シュッ

幸子「! 竹刀…」

『コッチヘオイデヨ…』

幸子「うわあああ!!」ブンッ

ズババッ

幸子(当たっても手ごたえがない…!)

珠美「それはこの地を彷徨う幽霊たちです…」

珠美「餌やアイテムにされた者…主であるPの死とともに消えていった者」

珠美「それがあなたの移籍の烙印に引き寄せられてきたのです」

幸子「ちょっといいですか?」

珠美「なんでしょうか」

幸子「どうしてそんなに遠くにいるんですかー!?」


珠美「だってお化け怖……あなたに巻き込まれないようにです!」

珠美「これがこれからあなたが歩まねばならぬ現実です」

珠美「互いに重なりながら触れあうことのない二つの世界の狭間にあなたは立たねばなりません」

幸子「どうして…!?」
                          サダメ
珠美「それが生け贄の烙印を受けたものの運命…あなたの体はすべて捧げられた供物なのです」

幸子「運命…」

幸子「運命、運命、運命!!うるさいんですよ!!」

幸子「偉そうなことを言うのならボクがやられてからにして貰いましょうか!!」

幸子「生贄!供物!運命!小難しい理屈を並べないでください!!」

幸子「要するにこれは戦いでしょう!!いつもと何も変わっていません!!」

幸子「いいですか!!あなたたち今すぐ地獄にたたき返してあげますからあの人たちに言っといてください!!」

幸子「今に見ていろと…ボクはやられたら必ずやりかえします!!」

[自称・天使]輿水幸子「カワイさでボクに劣る人たちが天使なんか名乗るなって!!天使はボク一人で充分だってね!!!!」



『その夢を踏みにじる者があれば全身全霊をかけて立ちむかう…』

『たとえそれが………』



珠美(なかなか凄い精神力ですね…あそこから生き延びたのはこの力ゆえでしょう…)

スウウゥ…


幸子「!」

幸子「いなくなった…もう終わりですか?」

珠美「違います…」

珠美「見つけたのでしょう…もう一つの供物を」

幸子「供物…?また小難しいことを…」

幸子「……!」ハッ

幸子「まゆさんか…!」

珠美「連れて行ってあげましょう!行きますよ!」グイッ

幸子「うわ…あ!?」

珠美「あなたを乗せるのはこれで二度目です…振り落とさぬよう…」

ヒュバッ


ザザザザザ…

幸子(すごい!まるで風みたいだ…!)

幸子「ボクを乗せるのはこれで二度目って言いましたよね!?どういう事です!」

珠美「……」

珠美「あなた達を助けたのはこの私です…」

幸子「え…!?」

珠美「お礼はいいです…ついでですから」

珠美「これも何かの縁でしょう」

幸子「……」

幸子「あなた何者なんです?」

珠美「彼女らに仇なす者…そうとだけ言っておきましょう」

幸子「どうしてボクを晶葉さんのラボに?あの場所は誰にも話したことないですよ」

珠美「私はただあそこから近い安全な場所へ連れて行っただけです」

珠美「お化けというものは激しく瞬く光や金属同士の擦れなどで発生する音を嫌う…」

珠美「あそこは一年中何かを作っていて明るいしうるさいのでうってつけなのです」

珠美「それがあなたのゆかりの場所とは知りませんでした…偶然です」

珠美「そろそろつきますよ!!」

ザッ


タタッ

幸子「まゆさん…!」


仁奈「ひいいい…!お化けはだめです!気持ちがわわわからねーでごぜーます!!」ガタガタ

まゆ「だ、大丈夫よ仁奈ちゃん…!まゆの後ろに…!」ブルブル

晶葉「幽霊だと…!?そんな非科学的なものが存在してたまるか!!ただのプラズマに決まってる!」

晶葉「こんなもの全部塵にしてくれるわ!!喰らえ!ゴースト・バスターズ!」ゴオオオ

みく「さすが晶葉チャン、頼りになるにゃあ」

杏「かがくの ちからって すげー!掃除機で幽霊って吸えるんだね」


幸子「……」

珠美「その掃除機ぜひ一つお譲り頂きたい」

杏「あ…幸子戻ってきたの…よかった」

幸子「ふう…皆さんも無事なようで…」


仁奈「怖えーです…」ガタガタ

まゆ「ううう…」ブルブル


みく「まゆチャンもお化けは苦手だったみたいだにゃあ」



珠美「それではさらばです…」

幸子「!」

珠美「我らもまた相見えることがあるでしょう…縁あらば」

珠美「もしあの人たちを追うつもりならば烙印の導きに従うことです…」

珠美「ですが心するのです…あなたのゆく道は夜の道」

珠美「彼女らと対峙するときあなた自身もまた闇に身を沈めていることを」

珠美「―――良い旅を」

――――――――――――――――――――――

晶葉「うーむ…ここはこうかな…」

キュイーン


仁奈「……」ソロー...

仁奈「ふっふっふ……」カチャ

タタッ

杏「ふわぁー…どしたの仁奈?」

仁奈「こっちでごぜーます!」

杏(いいのかな?勝手に…)


ガチャ…

杏「うわっ!すごい機械の数だ…」

仁奈「晶葉おねーさんは発明家として凄く有名なんでごぜーますよ!」

杏「すごい…よくわからない機械に…ロボットもたくさんだ」

仁奈「頼まれればなんでも作っちゃう天才だったですよ!」

杏「……」

杏「! な…なんだこれは…スゴイでっかくて重い…マイク?」

ゴゴゴゴゴ…

仁奈「あー!それはドラゴンころしでごぜーます!」

杏「ドラゴンころし…何さそれ?」

晶葉「昔ある会社から依頼をされてな」

仁奈「わっ!」ドキッ

晶葉「どんな人間でも虜にできるようなマイクを作れと…それで会社からその仕事を受けた」

晶葉「そのころの私はほかの人間が嫌いだった…やれ綺麗なアイテムだ、やれ可愛いアイテムだと…」

晶葉「発明とは人の役に立つもので、煌びやかに飾り付けるものなんかじゃない…」

晶葉「だから私は作ってやったのだ…たとえドラゴンの心でさえも射抜けるような声になるマイクをな!」

杏「そ…それで?」ゴクリ

晶葉「首になった」

杏「え?」

晶葉「首になった」

杏「……」

晶葉「やりすぎたな…完璧な音程と声量が足りないとまともに動いてくれないんだ…」

晶葉「確かにあの時は未熟だった…威力がある物、強力な物、機能が多いもの…それだけが私のすべてだった」

晶葉「だがそれを扱う物の度量を超えれば足枷にしかならん」

晶葉「発明の本質から外れることを嫌いながら、私のやったこともまた同じことだった…今じゃいい戒めさ」

晶葉「ちなみにネーミングは仁奈がドラゴンの気持ちになってたところからつけた」

仁奈「カッコよさに仁奈のハートも射抜かれちまったでごぜーます!」

杏(それじゃ仁奈が死んじゃうんじゃ…)

晶葉「君の友人は何やらドラゴンとでも戦おうって形相だな…」

晶葉「まだ戦うつもりらしいが…彼女には荷の勝ちすぎる敵なんじゃないか…?」

杏「明日だねー出発…」

幸子「ええ…お世話になりました」

杏「まゆと一緒に行くんでしょ?」

幸子「ええ…まゆさんならきっとPさんの居場所に近付いていけるはずです」

杏(プロデューサー…か)

杏(幸子も、まゆも、みくも…誰も何も話してくれない)

杏(でも…ほんとは杏だってわかってるんだ)

杏(信じたくはないけど…みんなはもう…)



まゆ「うふ…明日が出発の日ですねぇ…はやくPさんに会いに行ってあげないと…♪」


幸子「……」

みく「ねえ…幸子チャン?本気なの…?」

幸子「…ええ」

みく「…幸子チャン…ほんとはね、みく思うのにゃ…二人とも…ここに残るべきじゃないかって…」

幸子「……」

みく「認めたくはないけど…鷹の団も…みんなも…もう…」

みく「もういない人たちのためよりも…今いるみんなで…一緒に…」

幸子「ここにいたって何も変わりませんよ!!みくさんだって悔しくないんですか!?」バンッ

幸子「ボク達の仲間が全員!何の脈絡もなく!唐突に!理不尽に!虫みたいに!」

幸子「みんな若いのに…これからだって何かできたはずです!なのに一瞬で…!」

幸子「ボクにとっては…かけがえのない…!!」

みく「……」

幸子「……」

幸子「もう寝ます」ゴロン

みく「みくはそのかけがえのないものを…これ以上なくしたくないのにゃ…」

みく「まゆチャンと幸子チャンまでいなくなっちゃったら…いやだよぉっ…!」グスッ

みく「う…ヒック…グス…」


幸子「……」

――――――――――――――――――――――――――――
―翌朝

まゆ「ちゃんと準備終わりました?」

幸子「ええ…」

晶葉「行くのか」

幸子「…あなたにはいろいろお世話になりましたね」

晶葉「なーに、その二人に体で払ってもらうさ」

みく「えっ」

杏「え゛っ」

仁奈「わーい」

晶葉「君がどこで何をしようが知ったことじゃないが…餞別にこのマイクをくれてやろう」

晶葉「自慢じゃないが私の傑作だ…きっと役に立つだろう」

幸子「……ありがとうございます」

まゆ「ふふ…仁奈ちゃん…またね♪」ナデナデ

仁奈「うう…寂しいでごぜーます」

幸子「……」フフ…


幸子「……っ」

まゆ「う……?」

晶葉「どうした?」


聖來「見つけたよ…食べ残しはよくないよねっ」

晶葉「どちら様だ?」

幸子「待ってください!!」

まゆ「まゆたちのお客さんですね…」


聖來「残り香を辿って来たんだ…アタシのわんこ、すごく鼻がいいの♪」

聖來「痺れるLIVEをお見舞いするよ!」


幸子「……幸先いいですね…まずは一人目…」

ドクン

ドクン

心を…怒りが塗りつぶしていく


幸子「ボクの天使の歌声で…天国に行ってもらいましょう…」

幸子「『舞い降りる羽根』っ!!」バッ

バギッ ガシュッ ドドオオンン…

聖來「くっ…」

幸子(いける…これなら!!)


杏「す…すごい!」

晶葉「まずいな…」

みく「え…?」

晶葉「たとえ何人ファンを魅了しても壊れることはないだろうがな…造ってないんだよあれは」

晶葉「強力なアイドル自体を相手にして戦うようにはな…」

バシュッ

幸子「ふふーん…」チラ

ボロッ…

幸子(マイ…クが……!)

聖來「あれ、もう終わり?早いね…アタシが魅せ方教えてあげる!」

聖來「『マーメイドダンス!』」

バキィッ

幸子「っ……」

ドシャアアァ…

幸子「く…!」ゴホ

幸子(ふざ…けないで…!こんなので…)

幸子(こんなところで終わってしまうくらいなら…)

幸子(わざわざ生き残りますかああ!!!)


幸子「! これは…」

聖來「ふふっ、みんなの視線アタシに釘付けだね!とっても気持ちイイ~♪」

まゆ「…あなたですか」

聖來「ん?」

まゆ「Pさんを連れて行ったのは…あ な た で す か ?」オオオオ…

聖來「え、えっと…知らないよ…?」

まゆ「とぼけないでください…あなたがあの人たちの仲間だってことくらいわかるんですよぉ…?」

まゆ「許せない…許さない…!まゆからPさんを奪おうだなんて…!!」ギリッ

聖來「ちょ…こ…怖いんだけど…」

まゆ「まゆとあの人は繋がっているんです…!『運命の赤い糸』!」

聖來「うわわ!弾け跳べ!『スプラッシュダンス』!!」

まゆ「! みくちゃんこっちきて」グイッ

みく「にゃあ!?」

ブシャアァ

みく「ゲホッ!いきなり何するにゃ!?」

まゆ「みくちゃんはどんなにやられてもダメージ受けないみたいですから…♪」ウフフ


仁奈「今のまゆおねーさん…何だか怖いでやがります…」

杏(ひどいことするな…)

聖來「アタシの攻撃でやられないなんて!?いったいあなた達…」


幸子「どこを見てるんですか?」

聖來「!?」

幸子「くらえ!『舞い降りる羽根』!!」バサァッ

ガゴッ!!

聖來「うそ…悔しいな……!次はアタシが…」

ドサッ


杏「あ…あれは!どこかで見たドラゴンブレスだ!?」

幸子「人が悪いですね晶葉さん…」

幸子「あるじゃないですかボク向けのやつが!!(重いけど…)」ガシャ

晶葉「それはドラゴンころし…!そいつを使ったのか!」

晶葉「全く君ってやつは…!」ゾクゾク

――――――――――――――――――――――――――

杏「本当に…行っちゃうの…?」

幸子「…ええ」

まゆ「はい」

杏「本当にそれでいいの…?冷たい言い方だけど…!みんなもういないんだ!」

杏「杏たちのアイドルへの道はもう終わったんだ!だったら!だったら何か新しい道を…」

幸子「終わってません」

杏「え?」

幸子「鷹の団もまだ終わっていません」

幸子「まだ…ボク達がいる」

幸子「このイベントはまだ終わってはいません」

幸子「ボクは一番かわいいんだから…イチバンに突っこむ!でしょう?」


晶葉「じゃあ…元気でな」

仁奈「二人ともまた逢いに来てくだせー!」

まゆ「もちろん…きっとまた来るわ…だから仁奈ちゃんも元気でね…♪」ナデナデ

仁奈「ぐすっ…約束ですよ…?」

みく「絶対…絶対負けないでね!約束にゃ!」


幸子「それでは皆さん…さようなら」


復讐…戦い…理由はなんでもよかったのかもしれない

ただ一つ確かな事…今はボクの中の何かドス黒い狂暴なもの…

ただそれだけが この両足を支えている

前へ踏み出せとせきたてる



モバP「モバセルク~黄金時代編~」

終わり

…という夢を見たんだ
ベルセルク再開はよ

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