むりやり小説ゲーム (999)

このスレでは
作家さんが要所要所キーワードとなる部分を空白にして小説を書き、
その空白をレス番指定された人が埋めていって小説を完成させるという
読者参加型小説ゲームを行っています。
(例)
   18 名前: 作家さん 投稿日: 2011/11/01(火) 00:00:00
      主人公「よし、朝ご飯に>>20を食べよう」

   19 名前: 参加者 投稿日: 2011/11/01(火) 00:00:08
      シュールストレミング

   20 名前: 参加者 投稿日: 2011/11/01(火) 00:00:10
      ダイヤ

   21 名前: 作家さん 投稿日: 2011/11/01(火) 00:02:40
      主人公「硬いよ…」

と言う感じで書き込んでいきましょい!

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1367586285

まとめ
http://www.geocities.jp/neetgundam/matome/
http://www.geocities.jp/yardoramatome/
http://www.geocities.jp/qxybb760/top.html
http://muriyari.web.fc2.com/
http://muriyari4th.rash.jp/site/

避難所
http://jbbs.livedoor.jp/computer/32524/

○募集○
・まとめサイトの人が持っていない過去ログをupしてくれる人
・他にまとめサイトを作ってくれる人
・過去の作品をまとめてくれる人
・作家さん。要するに書き手。 ←NEW

【タイムスケジュール】
http://kmix.dabits.net/ts/
(その時に予約されているスケジュールが書かれています)
※予約・確認にはタイムスケジュールスクリプトをご利用ください。(予約は随時受付中)
※開始時間より2時間前には予約するようにしてください。
※押す可能性が多々あるので、かなり長めに時間指定しておいてください
※予約する際は、前後の予定を考慮し、1人あたり2時間は確保できるようにして下さい。
※様々な都合で時間を指定出来ない作者さんもいらっしゃるので、 譲りあったりなどのご協力もお願い致します。

という訳でとりあえず規制されてる人も居ると言う事で。今日はこちらで。

で、話は変わるのですが……寝る人氏(コテこれにしようよwwwwwwwwww)が作家デビューするかもしれないと言う事で、
何か参考に出来そうな物に切り替えようかなぁとも思っています。

という訳で、例の如く安価で決めちゃいます。下から選んでください。>>5

1:普通に十三話やれよバカヤロー

2:外伝的なお話で解説しながらやってみろバカヤロー

3:いっそ普通に短編にしとけバカヤロー

って今気付いたタイムスケジュールの時間一時間ズレてた!!オワタ ↓

安価は絶対なので、多分。よって普段通りやらせて貰います。
とはいえ、折角なのでちょっと工夫しながらやってみる事にします。どうせ大失敗してイミフに終わるオチが待ってます。

もう暫くお待ち下さい。

〜〜今回出てきそうな主な登場人物紹介〜〜 (増えすぎたので一部紹介に切り替えます)

【アルテナ・アルメリア】
異世界の駄目駄目女神なあるあるさま。アン達を主人公の下へ送りつけ、焼酎飲んでにやにやする役目。……じゃなかったみたい。

【白渡 矜持】
ゴッドカンパニー現社長であり、デウス・エクス・マキナの力の一部を持つ真っ白な人。主人公とホモホモしたい様子。

【観笠 ミカ】
主人公のアパートのお隣に住む女子高生自宅警備員もとい神様。面倒くさがりで機械に囲まれていないと発狂します。



〜〜今回主にこれだけで勝負します。で、これなんの話か産業でwwwwwwww〜〜

三十歳童貞で飛び降り自[ピーーー]れば神になれる主人公と、別世界からやって来たロリちゃん達とラブコメする物語です。
だった筈なのですが、演劇部を復興させようとしたり、良く分からない化物と戦ったりする物語です。
残り一行書くことなくなりました。理不尽なお話でもありますので、深く考えちゃダメなのよ!

———— 勇者なムスメ 第十三話

「マスタぁぁぁ〜〜、ウォッカ、ロックでぇぇぇぇ!!」

「やれやれ、まだ飲むのかい? これで六杯目になるのだが……、今日は金はあるのか?」

「うん、金はあるっ! 多分……あ、プラダのバッグ、溶けたんだったぁ〜〜あひゃひゃ!!」

「……これで最後にするんだぞ」

時刻は午後の十一時を指している。店内は私以外に客は居らず、マスターのちょび髭さんも暇そうにする中、グラスを用意してくれている。
店内にはジャズのようで、実はサンバのような、良く分からないリズミカルな音楽が流れている。
客席はたったの八つ。テーブル席は無く、カウンターに八つしか席が無い、小さなお店。

そのお店に、謎のシンガーのようなモノや、どの芸能人かも分からない汚いサイン。そして、妙ながに股ポーズをしたぽっちゃりアイドル。
壁にはそういった類の物が雑多に飾られており、その雰囲気が客を遠ざけているとしか思えないで居る。

しかし、そのお店を私は最近気に入って、ちょっとした隠れ家のようにも使わせて貰っているのである。

「で、なんでそんなに小汚い格好なんだ?」

マスターのちょび髭さんが、グラスにお情け程度にしか入っていないウォッカを私に差し出し、言う。
私はそれを受け取り、さっと一口で飲み干しては、ちょっとしたヤケを起こすような勢いで話すのだ。

「あれよ、あれぇ〜、急に月一が来て、トラブっちゃった系」

「全く分からんぞ。なんだ、生理なのか?」

「うわー、ちょび髭さんって、私みたいな超美人なギャルにまでそんなコト言っちゃう系なのぉ〜?」

「……突っ込まなきゃ良かった」

とりあえず、今日はお金が無い為、これ以上お酒を頼めないのだが、今日は紐を用意してある。
それは、上手くいけばそろそろやって来る頃合なのだが、多分その紐は私を避けているので、可能性は低い。

その為、今日はいっそこの店で寝ようか、どうしようかと考えていると……>>11

大地震到来

その為、今日はいっそこの店で寝ようか、どうしようかと考えていると……大地震到来である。
グラグラと揺れる、なんて甘ったるい言葉じゃ通じないほど店内は揺れ、そして壁に飾るように置いてあったグラスやボトルは落下し、割れていく。
店主のちょび髭さんは、咄嗟の出来事でおたおたと動き、そして結局はカウンターの下で屈み込むという行動に出るのだった。

「後一分もすれば、収まるわよぉ〜、こんなの」

「あんたも何落ち着いてるんだ! このボロ店の天井が落ちてくるかもしれないんだぞ!?」

「う〜ん、震度六強ね。まぁ、大地震の分類かしら」

「一分ってあんた——って、確かに揺れがだんだん収まったような……?」

「今頃、天野家ではちょっとした騒ぎになってるかしら。フフ」

「……ジャスト一分で収まりやがった……」

ちょび髭さんは、ちゃっかり腕時計で時間を見ていたらしく、私の予言に軽い驚きを見せていた。
とはいえ、普通の人間ならば地震というものは恐ろしく感じてしまうもの。何せ、常に大地に足を着いて生きている訳だ。
それが突然揺れ出し、光景が崩れいく。それは本当に恐怖で、生きた心地がしないものである。

「……ちょび髭さぁん、お代わり〜!」

「あんな地震の後で出せる酒なんてねぇ……! ……まぁ、ビールくらいなら生きているのがあるが?」

「ん〜、ビール余り好きじゃないのよねぇ。……でも仕方ないっか。それでぇ〜!」

「畜生、客は来ねぇし、地震に遭うしで、俺も飲まなきゃやってられっか、くそったれ……!!」

そうして、ちょび髭さんが自分もと、生き残ったグラスを手にしグラスにビールを注ぎ込む。
ちょび髭さんがそうしてビールを煽り飲もうとした瞬間、まさかの客の来店で彼の顔は一瞬引き攣り、そして後に晴れやかとなった。

「いらっしゃーせー!!」

「……ここは、居酒屋なのかな? それにしても先ほどの地震のせいだね、随分と荒れているようで」

「せ、席ならこちらを! 今すぐ片付けもしますのでっ!!」

私の今日の紐、白渡様のご来店である。私が笑顔で彼に手を振ると、彼は>>15

正義の仮面ヒーローに変身した

私の今日の紐、白渡様のご来店である。私が笑顔で彼に手を振ると、彼は正義の仮面ヒーローに変身した。
仮面ライダーのつもりらしい。自作のお面を着け、仮面ライダーデウスと名乗っている。

「……なんでお面?」

「違うね、変身だよ。そうしなくてはいけなかったんだ」

「どうしてか聞いても良いかしらぁ」

「君がお酒臭すぎるからだよ」

「もぉ〜、どうしてそんな事を言うのぉ〜? くじ引き人事のせいでこうなったの、貴方も知ってるくせにぃ〜」

「とりあえず、余り肩を触らないでくれるかな。ベルトが唸って君をプチッと捻りつぶしてしまうかもしれない」

「只のベルトの曲にぃ〜。……で、正直な話、どうして私って邪険にされてるのかしらね?」

「酒癖が悪いのが一番だね。それよりも……」

彼はその時だけ、仮面を脱いではとりあえずと出されたビールを飲み、何とも言えない顔をする。味が合わないのか、不味いとも言える表情だった。
そんな表情のまま、グラスだけを見つめる彼は言う。どうしてあんな事をしたのかと。

答えは二つあり、簡単だった。世界を救う為の一つの手段、そして、彼女達の第二の人生を、と思ったのだ。
だがその行為に彼は余り快くは思っていない様子である。

「早急すぎる。まだ彼の覚醒には三年弱も月日が必要なのに」

「で、その間に特異点が広がりきっちゃったら、どうする訳ぇ?」

「それは……、こちらでも手段を講じている最中なんだ」

「その割には、随分時間が掛かってる様子ですが〜、社長様」

彼は再び仮面ライダーに変身もとい仮面を着けなおした。そしてこちらに顔を向け……>>17

店員に追い出された

彼は再び仮面ライダーに変身もとい仮面を着けなおした。そしてこちらに顔を向け……店員に追い出された。
あれ、この店って店員居たんだと、ちょび髭さんを見ると、何やらやれやれといったジェスチャーをしてみせる。

「……変態は当店にはいらないっす」

それは突然背後から忍び寄るようにやって来た。この私ですら今まで気配を感じ取る事が出来なかったとは、
この娘、見た目は若いが中々経験を積んでいる様子。侮れないと、彼女に挨拶してみる事に。

「あらあら、こんばんわぁ〜。私のコト、知ってる?」

「変態は当店にはいらないっす」

「……あの? その? はい? ——って、私まで追い出されちゃうのぉぉぉ!?」

「おととい来やがれっす。あ、今日の分はツケなんで、明日払わないと怖い人に頼んじゃうっす」

その店員は、ただそれだけ言って扉を閉め、私はきょとんとした顔でその店を眺めるしかなかった。
先に追い出された変態仮面ライダー白渡矜持は、そんな私を見て、面白かったのだろう、小声で笑っていた。

「今日は良いものを見れたよ。ありがとう、呼んでくれて」

「くっ、ココの払いを社長に任せようと思ったのに、ツケられちゃったじゃない」

「暫く連絡も寄越さないと思えば、毎回毎回、そんな風に渡り歩いていたのかい?」

「だって、ミカミカが監視してるってコトに気付いて慌てて逃げてきたのよ。私より先に彼を監視していたなんて、
 あぁ、恐ろしいわあの自宅警備員」

「ちなみに、監視任務を与えたのは僕だけどね。で、相変わらず彼女のことが苦手なのかい?」

「だってあの人、私の顔を見ると絶対>>21してくるのよ?」

額に肉書こうと

「だってあの人、私の顔を見ると絶対額に肉書こうとしてくるのよ?」

「寧ろそれは好かれているんじゃないかな?」

「フン、あんな女、ちょっと私より見た目が若いからって、調子に乗ってるだけよ!
 それより、何で私、ルーシーに狙われてるのか教えて欲しいわよ」

「あぁ、あれね。寧ろ面白そうだから放っておくことにしたんだ。その方が君の望む彼の覚醒は早いかもしれないよ」

「その為に私、狙われちゃうの? そりゃまぁ、あの娘の妹には悪いことをしたけれどぉ〜」

「キミは勝手に黙示録を盗み見、そして行動に移した。その行動力だけは評価しよう。しかし余りにも博打的過ぎる」

彼が言いたい事はたった一つである。黙示録、要するに預言書の手順通りに事を運べなかった場合、どう責任を取るつもりかと言うのだ。
この世界の次の主は、既に天野秀というろくでもない男に決まっている。そして、彼の覚醒を早めなければいけない理由も有った。
それが、特異点である。今では臨海市に六ヶ所も特異点が発生し、それは徐々に広がりつつあるのだ。

それを、私やゴッドカンパニー社長の白渡矜持では止める術を持ち合わせていない。
ならば、私は彼を強引に覚醒させ、世界を統べさせるという行動に走り、あわよくば専務くらいに出世出来ないかと目論んでいる。

「しかし、アルテナ、キミの考えがどうあれ、このような事態が起こったのも事実。……全てを彼に話してみようとも思っているんだ」

「それこそ唐突ね。……真意は?」

「彼に、久々に会いたい……」

私が漫画喫茶で生活している間、彼は天野秀に多大な金を援助した出来事があり、彼自身が天野秀に入れ込んでいる様子も一応は知っていた。
しかし、彼に会いたいといった彼の表情はまるで……>>25

変身後の大魔神

私が漫画喫茶で生活している間、彼は天野秀に多大な金を援助した出来事があり、彼自身が天野秀に入れ込んでいる様子も一応は知っていた。
しかし、彼に会いたいといった彼の表情はまるで……変身後の大魔神のように変態的だ。天野秀は、彼と次に出会うとき、下手をすればあの穴を犯されるだろう。

「フフ、フフフフフフ」

そうして妄想に耽り醜く笑う彼を見て、私は違う側面を感じ取っていた。

今日の夕刻、商店街を通り過ぎ、私が姿を見せなくなっても、勇者のアンや魔王のマール、そしてエルやノエルは良くやっていると、
母親となったような気持ちとなって彼女達を眺めていた。その矢先、例の私を倒そうとする自称勇者候補の魔界のお姫様に、気付かれてしまう。
とりあえず逃げとこうと、年甲斐も無く全力疾走。ハイヒールが邪魔で途中何度も転びそうになるのだが——私はとある場所でついに転んでしまった。

「わ、わわわわっ! ちょっと、こんな所に石を置いたの——って、これは……」

プラダのバッグがそこでぐにゃりと、張り付くようになっては酸のように溶かされていく。
何かの塊に躓いて私は転んでしまったらしい。しかし、それは余りにも柔らかく、それでいて嗅いでいると吐き気を催す異臭を放っていた。

「ともかく、急いで逃げないと、お姫様が来るわ……そうだ!」

そこで一計を思い浮かべた私は、その肉塊に愛用していた毛皮を巻き、その場を後にする。
そうして悠々と逃げ延び、今日はどこでお酒を飲もうかと思案する傍ら、先程の肉塊について思考する——。

この臨海市で、度々異様な出来事が起こっている。魔犬が放たれ、人を喰らうといった出来事。
そして、リヴァイアサンと呼ばれる水竜が現れ、街を飲み込もうとする出来事。

しかし、それらはまだ視覚として認知できる出来事であり、それとは違う出来事がこの街で起こっている。
それが特異点を通じて起きている出来事であり、一番の懸念でもあった。

「ところで、僕を呼び出したのはこの店でお酒を飲みたかったから、という訳でも無いのだろう?」

妄想の世界から戻ってきた白渡矜持が、今日の夕刻の出来事を思い返す私にそう告げた。
一応、彼に探りを入れつつ、特異点絡みの第八の世界についての見解を求めるつもりで居た。

しかし、折角だから>>29なんて事を聞いてみよう。

一緒にいる訛りが酷い女子高生の姿をした召喚士について

しかし、折角だから一緒にいる訛りが酷い女子高生の姿をした召喚士についてなんて事を聞いてみよう。
というか、何か居るのだ。さっきからずっと、何かを喋ってるのだけど聞き取れないそれが居るのである。

「で、あの娘誰?」

「キミの従者と同様の存在だよ。僕にも従者は必要さ」

「ゴリディアじゃなくって?」

「……そのネタは勇者絡みの時だけにしてくれないかな。ついでに彼女にとある者を召喚するようお願いしているんだ」

「もしかして、さっきから意味不明な台詞を喋っているのって、呪文?」

「みたいなものだよ。さて、そろそろ彼女が来るようだ。僕達はこれでお暇する事にしよう」

彼は仮面ライダーのお面を再び着けては、その召喚士に合図する。
すると一際「うみみゃぁ!!」と鳴いた彼女は、何故かドヤ顔で私を見たのである。
何か嫌な予感がすると、呆然とその場を見ていた私の視界を、途端眩ませる強烈な光。そして……。

「……見つけましたですよ。お馬鹿女神」

「……髪はぼさぼさ、文字入りTシャツ、手にマジックペン、貴女は……観笠ミカッ!!」

「さぁ、今日こそあの暴挙に出た理由を語ってもらうのです。さもなければ肉の刑ッ!!」

既に白渡矜持は例の召喚士を連れてこの場から去ろうと背を向けていた。
つまり、今までの無駄話は時間稼ぎであり、あの召喚士の手によってミカミカを転移召喚、私に会わせようと企んでいたのだ。

「誰が肉の刑になんて! 貴女こそ、とっとと天界にお帰りなさい!!」

「とか言いつつ、>>32を企んでいるのは見え見えなのです」

巨大豆の木でごまかそう

「とか言いつつ、巨大豆の木でごまかそうを企んでいるのは見え見えなのです。……というか、生やしてどうしようと考えていたのですか?」

「……よじ登って逃げてみようかしらって」

「……呆れて物が言えません。後、白渡社長もちょっとこちらへ」

「ぼ、僕はそろそろ眠らないと補正力を回復させられないんだけど……?」

「先の地震による補正力の行使は必要ないと考えるのです。そんな事より、天野秀を監視した結果を報告しますので——」

—— そうしてやってきたのはおしゃべり漫画喫茶『しゃべってびっぷ』である。
喋れる漫画喫茶って何なのだろうと思えば、漫画について討論をする客があちこち目に入る。
今時個室で漫画を読んだりするのはもう古いというのが謳い文句なのだそうだ。

「なんでウチまで付き合わされるん、社長」

「……僕も被害者だよ、リアリア」

「ふぅん、その娘ってリアリアって名前なのね。ミカミカみたいなものね」

「貴女こそアルアルでしょう。どこの大辞典野郎ですか」

「煩いわね。で、何なのよ大事な話って……」

「では社長と久々にお会いも出来ましたので、重大なお話を述べさせて貰います。
 以前、私が泣く泣く借金までして、社長の指示で例のアパートを買い取り、天野秀を住まわせた後、ずっと監視を続けてまいりました」

「うん、それは知っているよ。それで?」

「……今回、私の部屋と彼の部屋、そして刑事の来島元大との部屋の仕切り壁が全て、彼の力で取り払われました。
 それは既にご報告差し上げましたが、実はその後気付いたことがありまして……」

つまり、その壁を取り払った後の彼は少々様子がおかしいと言うのだ。それは……>>34

常時賢者モードに

つまり、その壁を取り払った後の彼は少々様子がおかしいと言うのだ。それは……常時賢者モードになっていると言う。
私の知る限りでは、私の部下でもあり、実は私の上司でもあった存在、練曲ネルにセクハラ行為を及んでいる筈である。
何気に彼は娘となった少女達には余り手を出そうとせず、そのもやもやを彼女にぶつけているとも取れていた。

それを知っていた私は反論する。しかし、観笠ミカは余計な一言を付け加えて仕切りなおすのだ。

「これだから馬鹿なのです、馬鹿女神で馬鹿魔人なのです」

「馬鹿馬鹿煩いわよ! あぁ、もう、苛々するわねぇ!」

「と、馬鹿女神の小じわを増やせたところで、改めて続きをお話します」

「だから何でウチがこんな話に付き合わないとあかんの……?」

「もう暫く我慢だから、リアリア」

「彼が常時賢者モードに入ったのは、実に最近です。そして今日も尚、賢者モードに移行中であります。
 これは覚醒には良い条件でありますが、それには負のカルマが足りません。要するに変態的数値なのです」

「……変態的数値ってあんたねぇ」

「これが常に120%となり、ビルの屋上から飛び降りてこその覚醒条件でありました。
 で、今回馬鹿女神アルテナが年頃の少女を多数送り込んだ為、彼は実はオーバーヒートしていたのです」

観笠ミカは言う。一言で片付けるのならば、私はやりすぎで肉の刑なんだと言いたい様子。
そうして一定の数値を振り切ってしまった天野秀は、今では最早性欲が残っていないそうなのだ。

それだと、いざという時に覚醒には至らない。そうして特異点に飲み込まれ、世界が第八世界に飲み込まれリバースし、消えてしまう。

「じゃあ、どうすれば良いのかと言う事で、一つご提案があるのです。……この際です、いっそ、>>36してみてはどうでしょう」

孤島で生活

「じゃあ、どうすれば良いのかと言う事で、一つご提案があるのです。……この際です、いっそ、孤島で生活してみてはどうでしょう」

「……彼が?」

「馬鹿女神を送りたいところなのですが、その通り、天野秀を送り込ませるのです」

「……勇者と、魔王と、魔法剣士と、エルフの生活はどうするの?」

「確かに彼女達は学校に通っていますので、この場に留まらせるのです。面倒くらいは私が看ましょう」

「ふざけないで! 私は反対よ! 天野秀も、彼女達も、もう一つの家族のようなモノ!
 それを離れ離れにさせるなんて持っての他!!」

「……随分私情を挟まれた気分です。馬鹿女神」

私は社長の白渡矜持を見る。それに合わせるように、この判断はどうだと観笠ミカも彼を見る。
そして、暇そうにあくびをしては、関西弁の召喚士、リアリアと呼ばれた少女も帰りたそうに彼を見た。

そうして皆から見られた白渡矜持は、一人目を閉じて黙し、そして……そのまま寝た振りをして逃れようとするものだから、
私と観笠ミカが彼の頬を思い切り抓ったところで、ようやく社長は決断するのだった。

「分かった、分かった!! じゃあこうしよう、観笠ミカの提案は面白い。だから承諾!」

「じゃあ、私の意見は……! それに、天野秀や彼女達の想いは……!!」

「あ、うん、じゃあそれも汲んでおいて、やっぱ無しで!!」

「社長、そんな適当な決断ではなく、英断をして欲しいのです」

「あぁ、もう!! じゃあ間を取って一週間島送り! 要するに旅行にしてあげればどうだろう? ほら、海回ってアニメに必要じゃないか」

「……あえて私、女神アルテナは観笠ミカ、もとい……ミカエラ・ミケイラに問うわ。……この物語に海回って必要?」

「じゃあ答えるのが世の情けなのです。そうですね、ぶっちゃければ、>>39

水棲人の海中回も必要

「じゃあ答えるのが世の情けなのです。そうですね、ぶっちゃければ、水棲人の海中回も必要なのです」

「……まさか、貴女……! ダメよ、危険だわ。そんな事、私が許さない!」

「でも私が許すのです。既にとあるマーメイドにこちらの世界に来て貰うよう、メールを出しております。
 後は一週間で彼女が天野秀を堕落させてくれるのを待つばかりなのです」

「……なんて事、まさか、あのマーメイドが、この世界に……!!」

「なぁ社長、マーメイドって何なん?」

「あぁ、それはね……、巨乳ロリの事だよ……」

「社長、なんでそんな辛そうに言葉を振り絞るん?」

「それはね……、彼女の胸の魅力が半端無くて精気を吸い取られる程だからなんだよ……!」

「ふぅん。それより社長、ウチ、帰りたい」

「いいや、リアリア。……キミにも観笠ミカと共に、南の孤島に出向いて貰うよ。あ、連絡は密にしてね。じゃないと僕が孤独死するからね」

その時、リアリアと呼ばれた少女は物凄く嫌そうに、それこそ人生が終わるような顔をして社長の白渡矜持を見ていた事を覚えている。
そして、私も行くのといった顔をした引き篭もりの観笠ミカもまた、絶望の色を表情に出してしまっていた。

決行日は七月某日にすべきだという意見が出たが、私が中学校や高校に通う彼女達を想い、夏休みに入った頃と頼み、
そうして夏休みまで彼女達を静かに見守る事になったのだ——。

—— 決行日となった七月の二十日、海の日である。私と社長、白渡矜持はクルーザーに乗りながら、天野秀達を監視する事になる。
白渡矜持は、決行日の海の日の以前に、天野秀に接触、またまた強引にチケットと金を渡して来たらしい。

そのお金を彼が用いたのかは定かではないが、彼の水着は新調されたのか、何故か>>41であった。

ダイバースーツ

そのお金を彼が用いたのかは定かではないが、彼の水着は新調されたのか、何故かダイバースーツであった。
潜る気まんまんの二十六歳、果たして初のダイビングは成功するのか。芋焼酎を飲みながらモニターを眺めるのである。

「ふむ、あのもっこり具合。なんてステキなサイズなのだろう」

「白渡社長、ぶっちゃけ……キモイわよ?」

「アルテナ、最近すっかり突っ込みキャラが確定してしまったようだね。僕は少し嬉しいよ」

「誰がそうさせたのよ。それより、いい加減私のお給料もあげてくださいよぉ、社長さぁん」

「……それだけは、何があっても、世界が滅びても……無理」

「ちぇ、ケチんぼ。……あら、やっぱり私が育てた勇者アンちゃんは、スク水姿も可愛いわね」

「キミは随分あの勇者に入れ込んでいるようだけど、何故なんだい?」

「そんな事言われると魔王ちゃんに怒られちゃうわ。あの二人は、丹念に育てたつもりよ。特に紋章の方だけど。
 で、何故かって問われると、そうねぇ……、来る日に備えて、かしら?」

「そうやって何食わぬ顔でそう話し、酒を浴びるその姿は本当に恐ろしいと思うよ」

私こそ、貴方が恐ろしいと思う、と口にしようとした瞬間である。まさかのリヴァイアサン三世の登場。
そして、そのリヴァアイサンの頭部に乗り、波乗りするように現れたのは、マーメイドの例の少女だった。

「あら、ミカミカが驚いて飛び退いてる。いい気味だわぁ」

「うちのアリアリも、基本物事に興味の無い娘なんだが……、食いついて見ているよ」

そうして私と社長の白渡矜持、二人が笑いながら大型クルーザーでリゾート気分を満喫していると……>>44

岩礁に乗り上げあっけなく沈没

そうして私と社長の白渡矜持、二人が笑いながら大型クルーザーでリゾート気分を満喫していると……岩礁に乗り上げあっけなく沈没。
リヴァイアサン三世の登場の際の津波の影響である。それに押し流されたクルーザーは、見事に使い物にならなくなる。

「どうしますぅ、白渡社長……ぶくぶく」

「そうだねぇ……暫く水中を満喫しようか、ぶくぶく」

「嫌よ私は、お酒飲めないもの。ぶくぶく」

「それじゃ、孤島上陸作戦と行こうか。ぶくぶく」

「ところで社長、あえて聞くわ。……泳げるの?」

「……溺れるしかないようだ」

社長は泳げない。これは豆知識だと後にこっそりWEBにでも上げておこう。なんて思いながらも、
彼の手を引っ張り、何とか孤島目指してバタ足する三百歳と三ヶ月の私。
酸素は周囲に空気を発生させ、呼吸困難に陥る事も無いのだが……とにかく進まないのであった。

「はぁ、どうして私がこんな目に遭うのよぉ〜!!」

「ごめんね、僕が機械仕掛けで……」

「全く、前主は何を考えて貴方なんて造ったのかしら」

「それもまた、来る日の為じゃないのかな……?」

全く進む気配は無く、海の中をじたばたと前進しようとする私達。そして、次第に無駄話をする気力も無くなった頃、
海の中を巨大な黒い影が蠢くように泳いでいる事に気付く。それはまるで、>>46という姿であり、孤島を目指しているようにも見えた。

ワタリガニ

全く進む気配は無く、海の中をじたばたと前進しようとする私達。そして、次第に無駄話をする気力も無くなった頃、
海の中を巨大な黒い影が蠢くように泳いでいる事に気付く。それはまるで、ワタリガニという姿であり、孤島を目指しているようにも見えた。

二人して、同時に蟹が居たと呟いてしまう。それは既に海中で目視する事は出来ない。
相当の巨体、人の数十倍の大きさはあるであろうそれは、カニ歩きで海中を歩行、そうして孤島を目指し、ジグザグに歩行していくのであった。

「……どうしますぅ?」

「とりあえず、彼等なら大丈夫だろう。ミカミカも居るからね」

「アレに戦闘能力無いじゃないの」

「限定的に、だけどね。……それより、鮫が追いかけてきているんだけど」

「……社長、ごめんなさい。ここでお別れよぉ〜」

私は手を放す。社長はゆっくり沈没し、そして鮫に飲み込まれていく。そう、コレも運命である。
そうして私は彼を犠牲にして生き延びるのだ。とはいえ、あの程度で死ぬ社長ではないので、寧ろ囮にして正解だったと確信するのである——。

それはほんの少し過去の時間。かの存在は、女神アルテナに召されこの世界の空気を吸う事になる。
彼女はある決意を秘め、例の孤島を目指すクルーザーに忍び込み、そして沈没する際、転移魔法で難を逃れる事になった。

「……此処が、彼女が旅行で来ている島……」

黒と金の装飾が目立つローブを羽織るその女は、杖を手にし、海岸を辿るように歩く。
波が静かに打ち寄せ、海岸を湿らせ、彼女のブーツを塗らしていく。そうして、彼女は幾らかの距離を歩いた時である。

「アレは……竜……?」

遠くからでも視認できたそれは、異様な大きさの水竜。そして彼女——マリア・マリステイルは後に、その騒動に巻き込まれていくのであった——。


———— つづきます

お疲れ様でした。

やっぱり難しいもんですね。意図して変な安価を出してみました。

えっ蟹って泳げるの!? ってコトで時間的にはまだ余裕はあるかもですが、終わりますー。
召喚士とか全く予想外でした。でも関西弁可愛い。でもどうするのこれ。

どこかでプッシュしていきたいと思います。とか言うだけなら簡単なのですが〜
そんな訳で、お付き合いありがとうございましたー。

とりあえず規制さんもいるのでこっちにべっちょり。

【05/04 (土) 00:43時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

05/04 (土)
  21:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 勇者なムスメ 第十四話 『そうだ孤島へ行こう!』


>>50
お、お陰で変な安価?をむりやり回避する術を披露できたんだからね! とかミサカは眠い目をこすりながら言い訳みるのです。

してが抜けてたので

        ∧ ∧
J ` 7    (`・ω・)   ))
) ね Ζ  /っ(⌒joノ ^ヽ   ))

> る く  .しー ) ::   '::::\
7 ヘΓ     t_,, -‐''´``ー '  ))


なんだか海回らしいので、ちょっぱやで頑張ってきました。
が……圧倒的時間不足! 後四人くらい詰め込もうと思ったのに! うん、ペーパーマンが悪いんです。

という訳で今日の扉絵的な3暇つぶし、置いていきますね。
http://muriyari4th.rash.jp/mngupload/src/mngup38.jpg

ではもう暫くお待ち下さい。


……誰か、イルヨネ?

〜〜新キャラ及び今回出てきそうな、本当に主な登場人物紹介〜〜 (増えすぎたので一部紹介に切り替え中)

【天野 秀】
本編主人公であり絶対神なのですが、覚醒条件がシビアすぎて未だに凡人以下の蛆虫状態。尚、顔だけイケメンになりました。

【天野 アン】(アン・アンダルシア)
歴代最強勇者と名高い十二歳。気づけば凄い頑固な金髪ロリに……と思ったら只の情緒不安定。今回の絵のキャラ。

【天野 マール】(マール・マルグリッド)
十三代目魔王なのに全然魔王らしくない十三歳。主人公にアピールしつつも、すっかり演劇部馬鹿に。

【天野 メル】(メル・メルエッド)
魔王の付き人な魔法剣士。彼女が居ないと天野家は描写出来ないほどのムードメーカー。氷魔法や重力をも操ります。

【天野 ノエル】(ノエル・エル)
出番が薄い為前回メタな活躍をした三女。読書好きは只のラノベ中毒でした。さり気なく主人公を恋愛的に狙っている模様。

【天野 アリス】(アリス・アリストテレス)
ラグナロク計画の一環で主人公家の養子に。負けず嫌いな為何でも張り合っちゃう駄目な子。神様が嫌いなのだそうで。

【練曲 ネル】(ネルティ・ネルシェイド)
チェリークロックで働くウェイトレス。そして大賢者でゴッドカンパニー重役。おまけに主人公に惚れてるフラグ付きで大出世。

【川下 浅海】
鶏鳴中学校の教師であり、アンの担任。美人ですがメイクが濃い為、男が寄り付かないようです。

【七福 ことみ】
アンの同級生。御三家の一人で、破邪の紋を持ち悪い人をばっさばっさと倒す設定に。のんびり屋さん。

【三枝 瞳】
マールの親友。大人しい性格だった少女も、突然機械化する設定に。尚バストサイズはCカップだそうです。

【二野 理子】
御三家の護手である家の出身。自意識過剰でちょっぴり暴走気味。魔法少女に変身(物理)します。

【トルテ・トールソン】
演劇部所属の褐色少女。でも実はアリスの一味であり、ラグナロク計画に参加しつつも演劇したがる元気娘。

【観笠 ミカ】
主人公のアパートのお隣に住む女子高生自宅警備員もとい神様。面倒くさがりで機械に囲まれていないと発狂します。

【加々美 麗華】
メルと同じ女子高、聖アイリス学園に通うお嬢様系。サキュバス属性があるようで、男を虜にしちゃうアイドル候補。

【七福 まこと】
聖アイリス女学園に通う女子高生。ことみの姉であり、破魔の紋を継ぐ護手。でもレズ度が高く残念な人。

【リア・アンリアーユ】
安価によって突然現れたりありあさん。関西弁な召喚士で物事に関心が薄い。リア充が嫌いな模様。

【マリア・マーリティ】
かつで勇者アンと冒険していた魔道師まりまりさん。世界平和を愛する人だったのですが……。必殺魔法はマス○。

———— 勇者なムスメ 第十四話

今日は一家団欒でお買い物の為に外出する事となっていた。そもそも、どうして水着なんて買いに行こうという事になったのか、
それは白尽くめの男、白渡矜持と名乗る男が差し出した船のチケット、そして旅行のプランの影響であった。

「海の日から一週間、この地図にある孤島を使って欲しい。凄く良い環境でね、リゾート気分を満喫出来るよ。
 それに、海も綺麗だし探検場所に洞窟だってある。それを……タダで行けるチャンスなんだ」

すげぇ怪しいと俺はこいつを睨んでいたのだが、終始笑顔を見せるその男に、結果的に屈服するようにチケットを受け取る羽目となる。
受け取らないと、ハッテン場という恐ろしい場所に連れられ、危ない目に遭うとか脅された為だ。

「なんて強引な……。しかし、旅行なんて温泉に行こうとして行けなかったし、チャンスと言えばチャンスなんだよな」

ふと、水着選びに夢中となる娘達を見て思う。以前、そうだ温泉に行こうと提案されたのだが、金がなく却下。
そしてスーパー銭湯で我慢して貰うという、父親代わりとはいえ情けない思いを皆にさせてしまう。

だが今回は違う。何もかもタダ。しかも別荘は超豪華だと言うではないか。
問題は食材はあれど、自炊しなければならない事なのだが、それくらいお手のものなのである。

「フハハハ、ついに俺も旅行デビューだぜ!! 後は……バイトどうやって休もう」

娘達の輪から離れ、別の場所でベンチに座りながら言い訳を考え、そしてまた唸る。
良いアイデアが浮かばない。何せ一週間もシフトから抜けるのである。相田店長にクビを言い渡され兼ねないのであった。

「……ネルネルに相談してみるか」

ふと携帯を取り、彼女の番号を選んでダイヤルする。暫くして、凄く気だるそうな声で応対されるのであった。

「折り入って話がある。大賢者の知恵、そして力を貸してほしい!」

「ぅー、唐突だぞ……、手短にしてくれ。昨日ニコ生し過ぎて眠いのだぁ……」

「分かった。……七月二十日から、一週間バイトを休む方法を教えてくれ!」

>>57

有給でも使うんだね

「有給でも使うんだね」

「お前、それで休めたらこんな相談してねぇ。ヤツは鬼だぞ、相田店長様だぞ」

「なら知らない。ふあぁ……おやすみ〜」

「おい、待て! 俺の一週間リゾート満喫計画が破綻してしまうじゃないか!!」

「……一週間リゾート計画?」

その言葉に心変わりしたのか、彼女は途端俺に親身となって相談に乗ってくれる事になる。
結果的に、練曲ネルの方から相田店長を説得してくれる事になり、何とか計画は進む事になる。
しかし、その中に彼女が加わる事が条件でもあった。俺が已む無しと承諾すると、彼女は妙に上機嫌となった。

「わ、本当か!? 後で嘘とか絶対ダメだからな! ……むふふ、水着何にしよう」

「……一つ聞こう。お前、泳げるのか?」

「無礼な、私を誰だと心得る! 大賢者練曲ネルにして、ネルティ・ネルシェイドなる者ぞ!!」

「泳げる、泳げないに大賢者関係ないよな?」

「……15メートルくらいなら。ぼそ」

「まー、精々溺れないようにしてくれよな。んじゃ」

「おい、ちょっ————」

さて、アルバイトの件は片付いたし、俺も新しい水着でも選別しにいくか。
なんて思いを抱き、皆のところへ戻ってみると……、何故か娘達は>>59のコーナーに居るのである。

タコ焼き屋

さて、アルバイトの件は片付いたし、俺も新しい水着でも選別しにいくか。
なんて思いを抱き、皆のところへ戻ってみると……、何故か娘達はタコ焼き屋のコーナーに居るのである。

「美味しいわね、これ。はむはむ」

「確かに、タコがちゃんと入っていますし。はむはむ」

「この感触、たまんないぃ〜はむはむ」

「うぅ、タコがぐにゃぐにゃして気持ち悪いのだわ……」

何故かその場所で皆、たこ焼きを食べて休憩を取っているのであった。
俺が水着を買いにきたんだろう、と言えば、皆は一斉にこちらを向いて、そして買い物バッグをやはり一斉に見せるのだ。

「もう買ったわ」

「うんうん、もう買ってあるから〜。さ、たこ焼きたこ焼き〜!」

「おい待て、マール、メル。……金は、どうした?」

「あら、それなら……この封筒から」

その封筒は幾つもあり、一つ百万も入っている恐ろしい金包みである。これもまた、白尽くめの男、白渡矜持が俺に手渡した金だった。
以前、一億近い金を貰い、何度も突っ返そうとしたのだが、今回も入用だろうとまた金を渡される。
一体どこのブルジョワで貴族のキザ男なんだと捻くれる中、この金も万が一が怖いので保管しておこうと思っていたのだ。

それをあっさり使われた俺は、この二人に教育が必要だと意気込む中、ノエルが俺の腕を突っつき言う。

「ところで、アン、見ませんでした? ……彼女、貴方に相談があると言っていましたが」

「え? ……そういや、アイツだけ居ないな。何処いったんだ、全く……」

まさかの娘一名の迷子で、迷子案内でも使うべきかどうするかと悩んでいると……>>62

足首を何かに突付かれた

まさかの娘一名の迷子で、迷子案内でも使うべきかどうするかと悩んでいると……足首を何かに突付かれた。
つんつん、つんつん、と、気付いて欲しそうに、優しく、でもどこか切なそうに突付いて来る。

当然俺も足元を見るのである。そして……巨大なナマコを発見する事になる。

「なんで、デパートの水着売り場に巨大なナマコが……。しかも、シュノーケルで突付くのかよ!」

「……しゅこー、しゅこー」

「で、何してんだ、アン」

「ナマコの中に入って。相談があるの。誰にも聞かれてはいけない相談」

「……なんだそりゃ」

皆はまだたこ焼きに夢中で、少しの間席を外しても大丈夫そうだと、ナマコ色をしたナマコテントのようなその中へ。
その空間は、ある意味寝袋のような形をしている為、縦長である。大の大人がなんとか一人隠れれそうな程度の大きさであった。

その中に何とか身を入れてみると、アンが強引にナマコテントを閉じてしまう。
お陰で中は真っ暗だ。彼女の微かに漏れる吐息が聞こえる。しかし、何故かこのような状況になっても、ロリコンな筈の俺は反応する事が無くなっていた。
何故だろう、彼女が宅配で運ばれ、全裸を拝んだ日には着せ替えごっこでひたすら愉しむほど変態だったハズなのに。

「……で、相談」

「あ、ああ。なんだ、相談って」

「実は……泳げない」

「あぁ、それで浮き輪設定なのか」

「……浮き輪? ってなに?」

「水に浸かってもぷかぷか浮いていられる、とんでもないマジックアイテムだ!」

「……それ、欲しい。ついでにコレも欲しい」

ついでにと言われ、アンが俺に見せたのは>>65。これを海で使いたいらしい。

バナナボート

ついでにと言われ、アンが俺に見せたのはバナナボート。これを海で使いたいらしい。
アンには失礼かもしれないが、割とマトモなアイテムだったのでびっくりしてしまった。ただ、それは掌サイズのバナナボート。
こんな物をどうするのかと尋ねれば、我が家のアヒル隊長をアヒル勇者に改造されたそれのお供にしたいのだそうだ。

「これでアヒル勇者も一人ぼっちじゃないから」

「アヒルも連れて行くのかよ。ていうか、ゲームを強請られるかと思ったが……」

「もう買った。たくさん買った。PSPもPSVITAもニンテンドーDSもDSLLも——」

「……金は、どうした」

「この封筒から」

「……お前等、帰ったら纏めて説教な」

この時はアンの頭を小突く程度で許してやる事にする。しかしコレが必死で働き、貯めこんだ金だったらどうするだろう。
結構、いや、かなり怒り狂ってしまいそうだ。子供が物欲に負けて、親の金をくすねる事は割りと良く聞かれる話。
しかし実際にやられてみると、何よりも切ない気分になりそうなのである。今回はまだ、他人の金みたいなものなので……違う意味で恐怖を感じていた。

「と、とにかく、これ以上無駄な買い物は禁止だ! よし、そういう訳でバナナボートを買いにいくぞ」

「うん、バナナボート買う」

「アン、後……ナマコから出る前に服を着なさい。全裸はいただけない」

「……ちぇ」

何故か舌打ちされたようにも思えた。うん、それはきっと気のせいだ。
そしてそろそろ自分の分の水着も調達しなければならない。どうせだから、ダイビングスーツでも着込もうかと思っている。
海が相当綺麗だと言うし、ダイビング経験は無いが、真似事くらいは出来るだろうと意気込んでいたのである。

で、実際ダイビングスーツのお供として、>>68まで購入してしまったのである。

サメよけの全長を長く見せる特殊ふんどし

で、実際ダイビングスーツのお供として、サメよけの全長を長く見せる特殊ふんどしまで購入してしまったのである。
鮫なんて居る訳無いし。そこまで遠泳したりするつもりはないし。でも、万が一鮫に出くわしたら怖いし、死んじゃうし?

そんな勢いで買ったそれを広げてみる。とても両手を広げただけではその褌は伸びきらないが、
何故こんな真っ赤なそれを買ってしまったのだろうと後悔していると、隣に居たマールがこんな事を言い始める。

「ねぇ、秀様。今回の旅行って、船で行くのよね?」

「んー? ああ、その予定だな。しかも貸切らしいから気兼ねなく行けるって訳だ」

「それじゃあ、……お友達とか、呼んでもいいのかな……?」

「マール、お前……!」

「へっ、な、なんで肩を掴むの!? なんで顔を近づけるの!? も、もしかして……!」

「……お前、友達、出来たんだなッ!!」

「あ、そっち……。しかも、何だかちょっと傷つくのは何でかな……」

「良し、いいぞ、どんどん連れて来い! そして楽しい旅行にしようじゃないか、わっはっはー!!」

—— 豪華客船の中で、俺はどうしてこうなったと、我が天野家一行を眺めていた。
確かに俺は友達をどんどん連れて来いとは言った。しかし、十人以上は居るじゃないか。挙句に、呼んでないのまで今回付いてきた。

「それにしても、孤島ってどんな所なのかしら。楽しみだわ! ね、天野君」

「何で川下先生までついてきてるんですかねぇ?」

「それは当然、>>71

監視のため

「それは当然、監視のために決まってるでしょう〜。るんるん」

「なんで浮かれてるんだよ……。まぁ、俺一人でこんなに面倒は見切れないし、助かるといえば助かるのだが」

「確かに、ちょっと多すぎね。プチ修学旅行みたいになってるし」

「うちのメルはまぁ、あの性格だから友達は居るだろうと思ってたけども……、マールなんかは、なんか演劇部の合宿もするぞーとか意気込んでるし」

「青春ねぇ……はぁ、羨ましい」

デッキに出ては潮風を浴びる川下は、若い連中を見て寂しい目をするのである。
その気持ちは分からなくも無いと、恐らく俺も寂しい目線で娘やその友達達を眺めてしまっていたのだろう。
カモメが鳴くその海の上で、三十路が目前となった俺達は、無性に寂しい気持ちとなってしまっていた。

「ところで、天野君。……将来って、どうするつもりなの?」

「まさかこれから旅行で楽しもうって時に、そんな重い話を同級生から切り出されるとは思わなかったわ」

「それもそうね。でも、こんな時くらいしか話す機会、余り無いし」

「お前、結構連日家に押しかけてきてるじゃないか……」

「それはそれ! これはこれよ! というか、最近ご飯作りに来てる感じだし……」

川下は、単に俺を案じてくれているだけだ。しかし、娘を五人も抱え、これから仕事も兼ねて暮らしていくとなれば、
果たして俺は何処までやれるのだろうと、最近不安に感じる事がある。その影響なのか、最近自家発電すら捗らない。

「……天野君がもし良かったらだけどね」

ふと、また不安に駆られた俺に川下は告げる。彼女は俺に仕事を紹介してあげてもいいと言う。
では、今のアルバイトを辞める必要が出てくるだろうと思うと、それもまた心残りがあったりするのだった。
長く居すぎたのだろうか、あのファミレスに愛着が無いといえば嘘となっていたのだ……。

「お、こんな場所に居たのか。……加齢臭がするな」

川下の話を邪魔するかのように、あのファミレスで働く大賢者、ネルが姿を見せる。
何やら失礼な一言を添えられ、川下が不貞腐れる中、大賢者様はこれから向かう孤島について、突然一言で講釈するのである。

「これから向かう島、孤島とも無人島とも呼ばれているが……、実は、>>75

リアが異世界から召喚した無人島なんだ

>>76
そうだ版権物はダメだったな。>>75ナイス。

「これから向かう島、孤島とも無人島とも呼ばれているが……、実は、リアが異世界から召喚した無人島なんだ」

「……誰だよそれ。というか、川下の前でその話はするな! 後、彼女をお前は知らない設定なのに知ってる事にしちゃダメだ!」

「と言われても、アレ、ゴッドカンパニーの社員だし? 私重役だし?」

「むぅ……。それで、異世界とやらの無人島だからどうなのだ?」

「魔物が居る。うん、それだけ。後アイスクリームが食べたいから取って来て」

「あのぉ、天野君。この人が、確か同じアルバイトの……?」

「ああ、練曲ネルって言って、俺が寂しいときはちっぱいを触らせてくれる仲——げふぅぅ!!」

「誰が触らせるか! 毎回臭いを嗅いでくる変態がッ!!」

「……やっぱり天野君って、ロリコンだったのね……」

「いや、私はこう見えても実は二十歳だ。割とお姉さんなのだ」

「うん、そんなの聞いてないのよ、ネルネルなんとかさん」

何故かデッキでは、川下と練曲の無言の戦いが始まってしまっていた。どうやらこの二人、余り相性が良く無さそうである。
こういう場面は苦手だと、腹を蹴られた俺がゴキブリのように這い逃れようとすると、
今度は上空からお尻が振ってくる事になる。確かこの娘は、Cカップに育つ胸を持つ中学生の三枝瞳という少女だ。

「ご、ごめんなさい、お尻で、お顔を踏んづけてしまって……」

彼女は俺の頭部をお尻で踏んだ状態でそう詫びるのだが、どうして俺は踏まれているのだろう。
遠くからマールの声がする。どうやら広い船内で鬼ごっこなる遊びをしているようで、それで彼女はGとなった俺で転んでしまったようだ。

賢者モードとなっている俺が、頭をお尻で踏まれて興奮するはずが無い。よって、>>79という行動に出るのだった。

カンチョー(小学生かよ)

賢者モードとなっている俺が、頭をお尻で踏まれて興奮するはずが無い。よって、カンチョーという行動に出るのだった。
小学生かよ、と心の中で突っ込みつつも、その行為に及んだ俺は……、何だかミサイル兵器に追われているのである。
何処から飛んできた? 一瞬彼女の全身がミサイルランチャーのように変化したように見えた。そこから飛んできたような?

「って、死ぬわ! 誰か、助けてくれぇぇぇぇぇ!!!」

そう言えば彼女、リヴァイアサン二世から店を守る為、自身の腕を兵器化させて戦った光景を眺めた事がある。
あれは最早最終兵器そのものであり、そしてその兵器から放たれたミサイルに追われた俺は、只管船内を逃げ回っていた。

「全く……、監督係がこんな様じゃ、世話が焼けちゃう……」

そのミサイル群から救ってくれたのは、やはり鬼ごっこに参加中の二野理子という少女だった。
魔法少女を好むようで、わざわざ生着替えしては魔法少女のピンクのヒラヒラ衣装に着替える彼女の、桃色光線によって救われる事になる。

「はぁ、助かったぁ……。ありがとうな、ピンク色」

「違うわよっ! 私は二野理子!! ちゃんと覚えてくれないと結婚できないでしょう!?」

「え、あの宣言子持ちだから無理だとか言ってなかったか?」

「ところがどっこい、貴方の娘をこき使う為に結婚を申し込みたいのよね〜」

「なんて底の浅い野望なのか……」

「底が浅いとか言うなっ! ところで、七福ことみを見なかった? ちょっと御三家を集めて話し合いたかったのだけど……」

「御三家? あぁ、世界を守る護手のなんとかってヤツ?」

「まぁ、一応そうなのだけど。……あの娘、姿が見えないのよね……何処行ったのやら」

そうして、俺は今も居候中である七福ことみを捜すことになる。そんな彼女も、御三家の一人である。
先のミサイルを放った少女、三枝瞳もそうで、二野理子もまた、御三家の一人。その三人は、世界を護るという使命を帯びている……らしい。

全く、突飛な話ばかりで凡人の俺は付いていけないと嘆きつつも、七福ことみを求め船内を捜し回った結果……>>81

なぜか本人は見つからずその姉と母が見つかった

全く、突飛な話ばかりで凡人の俺は付いていけないと嘆きつつも、七福ことみを求め船内を捜し回った結果……、
なぜか本人は見つからずその姉と母が見つかった。その姉、ことこちゃんはメルの友達ということで招待したが、母は聞いていない。

「で、何でお母さんまで居るんですかね」

「寧ろ居てはいけない理由がありますか?」

「いや……無いですけど……でも……ねぇ?」

「あの孤島には禍々しい邪気を感じます。娘のことみやことこでは、手に余ると思いまして、
 引退した身ではありますが、皆様方の手助けになればと……!」

「既にハイレグ姿になった状態で言われても説得力無いですけどね! つうか歳考えろ!!」

「三十八で何が悪いのです!! 着てはいけない理由もないでしょう!?」

「お母さん、やっぱり……着替えた方がいいと思うんだ……」

「ことこまでそんな酷い事を言うのね! お母さん悲しいわ!!」

この旅行を恐らく一番楽しみにしているのは、この七福家の母、ことこであろう。
何故にまだ島にも着いていないのに、際どい水着に着替えて麦藁帽子まで被っているのか。
最早やってられないと、改めてことみちゃんを捜そうとすると、姉のまことちゃんがこんな事を言う。

「あの娘、船に弱いから……、今頃トイレに篭ってると思います」

「成程ね、それで姿が見えないのか……」

「あの、それと……天野さん。憎き天野メルのお父さん! その、今回旅行に招いてくださり、あ、ありがとうございました……!」

七福まことちゃんは、今回の旅行に招待してくれた事に礼を言うのである。が、何故>>84という態度を取られているのだろう。

ツンデレ

七福まことちゃんは、今回の旅行に招待してくれた事に礼を言うのである。が、何故ツンデレという態度を取られているのだろう。
何故か服の襟元を掴まれ、お礼を言われた理由を尋ねてみると、彼女はこう弁明した。

「私の恋人を奪った娘を教育した父親に招待されて、嬉しいわけがないでしょ……!?」

「な、なんだかややこしい関係の、ようで……げほ、げほ」

「でもリゾート地にまで連れて行ってくれるのは、本当に嬉しいんだ。それだけは、まぁ……うん」

「頼むから、襟袖掴むの勘弁してくれ……!」

『ぴんぽんぱんぽ〜ん、間も無く、孤島のリゾート地に到着するっす。天野家とそのお供はとっとと下船の準備をしやがれっす。
 尚、到着予定時間は11:37分っす。それでは、ごーとぅーへぶんっす』

まことちゃんに絡まれる中、随分と適当でやる気の無い棒読みが聞こえてくるのであった。
船内アナウンスが流れたせいか、皆がそれぞれ荷物を纏め、下船の準備に入るのである。
そうして、俺もまた自室に戻っては、荷物を確認してバッグを担ぎ、そして改めてデッキでどんな島なのかを確認するのだった。

召喚士によって召喚された島とか言っていたが、緑が溢れてとても心地が良さそうな島である。
ただ、妙な鳥が上空を旋回するように舞っていた。カモメ? オオワシ? まさかのニワトリ? いやどれも違う、これは……。

「コカトリスですね。あ、本当にアレ、石化能力を持つんですよ」

「ノエル、アレを知っているのか」

「エルフ世界ではこの世界で言う鶏のように飼われておりますから。卵は美味しいんですよ」

「へぇ、それは食べてみたいなぁ……って、どうするんだよ、アレ!!」

「まだコカトリスはこちらに気付いていません。……此処から弓で狙撃します」

「え、まさか船の上で? まだ十キロは離れてるのに——」

ノエルは弓道部に入っており、帰宅も演劇部に所属するアンやマール達よりもやや遅い。
真面目に練習に取り組んでいるそうで、その弓捌きは鶏鳴中でも筆頭となるのである。だが、この時俺が見た彼女の弓の扱いは、最早想像を超えている。

>>86という射かたをする人を初めて見たのであった。

矢をぶん投げる

矢をぶん投げるという射かたをする人を初めて見たのであった。それはもう只の投擲である。

「我、放つは刹那なる閃の矢——ソニック・ハンドスロォォォッ!!」

「……手でぶん投げただけだよね。その技名とか要らないよね」

「気合が入ります。ちなみに消費MPは64と割と高めです」

「ちなみに最大MPは?」

「私のレベルが58ですから、434ですね。ちなみにヒール・メテオはMP400消費です」

「……まぁ、とりあえず、あの鳥が実際射抜かれて落ちたところを見ると、凄いというべきなのだろうが……」

遠くで、『コケェッ!』という鳴き声がし、ノエルはどこか勝ち誇った顔でその島を見据えているのである。
そうして船は島へ停泊、その際に俺達が島へ降り立つのだが、早速出くわしたのがその落下したコカトリスの化物である。

この中で、唯一といっていい程ファンタジーに耐性の無い川下は、そこで目を回し失神してしまうのだった。
無理もない、俺だってアン達が居ないままこんな化物の死骸を見合わせれば、恐らく失神していただろう。
それ程巨体であった。鶏の百倍はあるだろうそれを、早速捌こうとするノエルとアン。そしてこんがり焼き上げようとするマールが居た。

「コカトリスとか久しぶり。コカトリスの腿が食べたい……」

「確かにこちらでは、鶏が一般的ですからね。ええ、きっと美味でしょう……フフフフ」

「じゃあ早速、私が魔法で美味しく上手に焼けましたぁってやってあげるわね」

「おいおい、先に別荘へ行くべきだろう。荷物持ったままメシ食うつもりかよ」

「別荘って、まさかアレのこと?」

マールが指差すそれが、恐らくこの島で一週間お世話になる別荘だ。……見た目はまるで>>88じゃないか。

前方後円墳

マールが指差すそれが、恐らくこの島で一週間お世話になる別荘だ。……見た目はまるで前方後円墳じゃないか。
確かに豪華かもしれない。そして巨大かもしれない。だが、そこは墓だ。どう見ても建物というよりは墓である。

「あのぉ……おえっぷ、あそこで、寝泊りするのかなぁ……」

「ああ、ことみちゃん、ようやく復活したんだ。……どうやらそうらしくってね」

「うぅ、私暗くてジメジメしてる所、苦手ぇ……おえっぷ」

どうやら相当船酔いで参っていることみちゃんと、そしてコカトリスを目にして失神した川下を休ませる為に、
一部は先に別荘へ。そしてどうしてもコカトリスを食べたいと意気込む連中は一先ず海岸に置いていく事になるのだった。

そうして、前方後円墳のような別荘へ辿り着き、入り口が分からないと嘆く羽目となるのだった。

「おーい、マール、メル、そっちはあったかぁ〜?」

「こっちはないみたい〜!」

「こっちも入り口は見当たらないわ。もしかして、穴を掘って入るのかしら」

「んな訳あって堪るか。お母さんはどうっすか〜?」

「誰がお母さんですか! 貴方のような大きくてデキの悪い息子を産んだ覚えはありません!」

「いや、そんなのどうでもいいですから、ことこさん」

「あ、入り口っぽいの見つけた! ……けど……」

遠くからまことちゃんが入り口を見つけたと声を発した為、先に別荘へ向かったメンバーの皆がそこへ集う。
そして、皆が互いに顔を見合わせる羽目となった。何かスイッチがあるだけなのだ。これが入り口なのかと、押してみると……>>92

隣にホテルが現れた

遠くからまことちゃんが入り口を見つけたと声を発した為、先に別荘へ向かったメンバーの皆がそこへ集う。
そして、皆が互いに顔を見合わせる羽目となった。何かスイッチがあるだけなのだ。これが入り口なのかと、押してみると……隣にホテルが現れた。

「「「前方後円墳意味ねぇぇぇぇぇッッ!!!」」」

皆が叫んでいた。しかし、いざ豪華ホテルが隣に現れてみると、それはそれで嬉しくもなるのであった。
ロビーも豪華、シャンデリアも豪華、ソファも豪華、室内も豪華、何もかもが豪華。前方後円墳が別荘じゃなくて良かったと、皆が思っただろう。

「でも、お母さん。誰も居ない豪華ホテルってのも、気味悪いよね」

「確かに言われてみると……。しかも無駄に五十階まであるみたいだし、怖いわね」

「ことみ、部屋はどこが良い? 下の方が良い?」

「おえっぷ……、私は……何処でも……おえっぷ」

七福家は、どうやら三人一緒の部屋にするつもりでいるらしい。でも部屋数は恐らく百を越えている為、
別に一人別々で良いのでは、と思っていると、マールが俺の腕を掴みこんな事を言うのだ。

「私と秀様は最上階の五十階ね! メルはその隣で、ノエルとアン、そしてアリスは二階に追いやりなさい」

「いえっさー、魔王様! 勇者とエルフと勇者候補は二階に追いやるであります!」

「それじゃ、早速行きましょう、秀様! ……このチャンス、逃す訳にはいかないわ……ぼそ」

「へ、お、おい、俺達も皆一緒でもいいんじゃないか、なぁ?」

「どうして? これだけお部屋があるのに、勿体無いじゃない」

「じゃあどうして俺とマールだけ同じ部屋なんだ……?」

「そ、それはっ……>>95

ホテルのマザーコンピューターが決めた

「そ、それはっ……ホテルのマザーコンピューターが決めたからよっ!?」

「ファンタジーな割りにいきなりハイテク化したな。……って、確かになんかコンピューター端末のようなモノが……」

ロビーの中央に、柱のような大きさの端末がある事に気づいた俺は、試しに幾つもある画面に触れてみる。
すると突然文字が現れ、『天野秀様、ホテル・ゴートゥーヘブンへようこそ』と描かれるのであった。
ちょっとすげぇ、と感動しながらも色々と項目を選び触れていく。最初に触れたのは部屋割りとあった場面だ。

『では最初の質問です。貴方は誰とハッピーエンドを迎えたいですか?』

「な、何かいきなり人生を決めるような選択が出てきたぞ……!?」

「勿論秀様なら2番の魔王様と魔王城で結婚を選んでくれるわよねッ!?」

「だから、娘と結婚出来るか! お前は大事な娘なんだ、そんな大事な娘と結婚してどうする!」

「む〜、大事だからこそ結婚して愛してくれる方が嬉しいんだけど……」

『はよ選択wwwwwwwwwwはよwwwwwwwwwwはよwwwwwwwwww』

「こ、こいつ……草を生やして急かしやがった……!?」

ちなみに、一番は勇者、二番は魔王、三番は魔法剣士、四番はエルフ少女、五番は……魔界のお姫様?
そして更に六番から……百番まで選択可能であった。これだけあると寧ろ選べないと嘆く中、端末は草を生やして急かすのだ。

「ちなみに百番は……ハーレムルートじゃなく、孤独にビルから飛び降りルート? こんなの選んで堪るかっつうの」

『後五秒、四秒。早くするっすwwwwwwwwwwwwwwww』

「ええい……、ならば俺は>>97を選択するッ!!」

コンマ以下二桁番目

「ええい……、ならば俺はコンマ以下二桁番目を選択するッ!! ……って、54番? どれどれ……」

『あー、それ選んじゃうっすかwwwwwwwwwwある意味バッドエンドルートっすねwwwwwwwwオツっすwwwwwwwwww』

「なんか選んで逆に煽られると、余計に腹が立ってくるんだが……」

「秀様、どうして私を選んでくれなかったのよぉ、馬鹿ぁぁぁぁ!!」

「とか言ってマールは何処か行っちゃうし。やれやれだぜ……」

『ピ、ピピピッ、五十四番の部屋割りを施行します。このあたりの番号は修羅場を想定しております故——地獄へ落ちやがれっすwwwwwwwwww』

—— そして画面に映し出されたのは、リアという召喚士の名前が有った。それと同時に、見覚えの無い名すらそこにある。
マリア・マーリティとは誰のことだろう。少なくとも船内にはいなかったと思われる存在だ。

「んー、まぁいっか。娘達と同じ階ならそれで……。あれ、ちょっとだけ寂しいぞ?」

これまで、豪華にはなったものの、狭い部屋で六人暮らしをしてきたのだ。壁が取り払われ、観笠ミカとも同居する羽目とはなったが、
それでもいざ離れ離れになってしまうと、案外寂しく感じてしまうものだと思えてしまう。
そんなちょっぴり情けない気持ちを抱きながらも、実は五十四階まであったそのホテルの部屋へ向かうと、既に一人、面倒くさそうにして俺を見る少女が居た。

「……何なん? ジロジロ見て」

「……なんでも、ない……」

「じゃあ、見んとって。……はずいし」

着替えようとしていたのだろう、その少女は束ねた髪を下ろし、ワンピースの水着を手にしているのだった。
実はまだ、俺は彼女と一切話をしていない。ただ、白渡矜持という男に、彼女を頼むなんて言われた程度なのだ。

「……もう一人、この部屋で相部屋となるんやってな」

「え? あー、マリアとかいう人だっけ。どんな人なのかなぁ、うん」

「興味あるん? たらしなん? スケベなん? でも気をつけたほうがええよ。……きっと、その人、>>100やから」

仏教徒

「興味あるん? たらしなん? スケベなん? でも気をつけたほうがええよ。……きっと、その人仏教徒やから」

「何故に仏教徒なんだか。というか何で分かるんだ?」

「……勘って事にしといて」

どこか素っ気無い雰囲気で話をする少女だった。その少女が、マリアと言う存在は気をつけろと忠告する。
だが理由が仏教徒だから気をつける必要はあるのだろうか。勧誘が実はしつこいとか、そんな類なのだろうか。
色々思案してみるも、もう一つ意図が見えない以上、そのマリアという人を見てから判断しようと思うしかないのである——。

—— 『調査報告書』とだけ記されたそこには、一行、彼はたらしでスケベな人ということで終わらせる事にした。
白渡社長が私に命じたのは、ただ彼と話し、同じ空気を吸い、同じ境遇で色々と彼を自分の眼で見て欲しい、という事だった。
何故そんな事を命じられたのかは定かではない。ただ、あえて言えば……全ては我々ゴッドカンパニーが仕組んだ事であるという事。

ただ、マリア・マーリティという女性の名だけは良く知らない。その存在は、あのダメ女神アルテナが従者として呼び寄せた存在なのだそうだ。
要するに、私と社長のような関係性を持ち、暗に動く事を得意とするのだろう。警戒が必要であると認識する。

「でも……折角やから、やっぱちょっと泳ぎたい……」

そうしてホテルの中で水着に着替えようとした直後、あの男は現れる。間抜け面で私を見ていた。
しかし、いざ男の人に下着姿を見られると、異常に恥ずかしい気持ちとなり、つい攻撃的になってしまう。

「……何なん? ジロジロ見て」

開口一番だった。すると彼は途端申し訳無さそうにしては、視線を逸らす。大人の曲に子供っぽく、なんだか情けない。
でも、次期社長であり、神となるその人……案外可愛らしいのかもしれない。少しだけ思わせぶりな事を言ってみよう。

「じゃあ、見んとって。……はずいし」

これで彼は私をもう少し意識するような視線で見る事になるだろう。と思っていたのだが……>>102

常時視線を感じるようになってしまった

これで彼は私をもう少し意識するような視線で見る事になるだろう。と思っていたのだが……、
常時視線を感じるようになってしまった。これは返ってやり過ぎたのかもしれないと、失態を悔いる。
が、彼の視線はまるで観察するような達観したような視線だった。これが常時賢者モードに入っている神の視線だと思うと、ぞくりとするモノがある。

と同時に、ぞわぞわと背筋を走るような、それは一種の快感すら覚えてしまうのだった。
それを紛らわそうと、もう一人相部屋となる予定のマリアという存在を口に出してみる。すると、彼はこちらに視線を向けながらも、想像に耽るのだ。

何故か嫉妬した。だから私はこう言っていた。

「興味あるん? たらしなん? スケベなん? でも気をつけたほうがええよ。……きっと、その人仏教徒やから」

彼女は、何かしら宗教的観念を持っているのは間違いないのだが、それがどのような宗教に当て嵌まるのかは定かではない。
だが、面倒なので仏教と言うことにしてしまおう。そして、彼女には余り近づくなと言っておこう。

何故そんな事を言ってしまったのだろうと、海岸で一人、海を眺めながら思っていた。
既にワンピースタイプのスカイブルーの水着に着替え、日焼け止めも塗っている。しかし、思った以上に太陽の照りが強い。

「天野さん、偶にはその、わ、私と遊びませんこと!?」

「えー、琴で遊ぶのはちょっと遠慮かなぁ。ビーチバレーしたいんだもん」

「じゃ、じゃあそれで! 私、こう見えてもビーチバレーには自信がありますのよ!」

「ちょっと待ったぁ!! 天野メル、また私の加賀美さんを奪おうとしてッ!!」

「へ、別に奪ってなんか無いけど——って、なんで髪の毛引っ張るのさぁ!! 痛いってばぁ!!」

遠くで、天野秀から言わせれば華のJK集団が、なにやら妙な三角関係を演じている。
私の年齢からすれば、彼女達とほぼ同世代と言う事になる。つまり、髪の毛の引っ張り合いをして遊ばないといけないようだ。

「そんなの、やってられへんし……」

そうして、一人ぼっちとなりながらも砂を弄り一人で遊んでいると……>>104

気づいたら大阪城ができていた

そうして、一人ぼっちとなりながらも砂を弄り一人で遊んでいると……気づいたら大阪城ができていた。
いっそ、本物の大阪城を召喚してやろうかと思うほど孤独。慣れているとは言えど、この和やかな雰囲気で孤独なのは、思った以上に堪えた。

「マールッ、そっちに行きました!」

「オッケー、今度こそ二匹目のコカトリス、ゲットするんだからね!! 三枝さん、今よ!!」

「は、はいっ! 捕獲網装填、発射準備出来ましたッ! ことみさん!!」

「任せてぇ〜! いっくよ〜、動けなるなるよ〜の符ッ!」

「トドメはこの私、二野理子に任せてよねッ! 光の色を越えし桃色の——って、金髪、邪魔しないでよっ!!」

「……腿肉、ももにく……じゅるり」

「あーあ、私が片付ける前に真っ二つに……しょんぼり」

何故か二匹目のコカトリスが発生、それを美味しく調理しようと目論む天野秀曰く、麗しきJC集団。
だが、二人ほど姿が見られない。情報に寄れば魔界のお姫様とその従者である。ふとその姿を捜してみると……、
既に沖の方まで遠泳に出ているようで、バナナボートでじゃれあっているようにも見えたのだった。

皆、それぞれ楽しそうにする中、また私はぞくりと視線を感じてしまった。
見られている。私の背中を、私の大阪城を、全部、全部見られている気分で、ぞわぞわとする。

つい己の身体を抱いてしまう。不思議な感覚だった。味わったことの無いその感覚に身を任せると、自分が自分じゃなくなりそうで……。

これ以上、この場に居て見られ続けたら、私はどうかしてしまいそうだと立ち上がる。すると、その視線の主は私に声掛けるのだ。

「一人なのか? 良かったら俺とネルネルネルネと一緒に遊ぶか?」

「ネルネル言うな! つうかお菓子にするな!!」

それは、上司にもなるのだが話はまだしたことの無い人物、練曲ネルという存在だった。
社内では大賢者という事もあり、皆が警戒しては彼女を遠ざける中、それでも平気で己の道を歩んでいたと聞かされている。

そんな彼女は、天野秀を連れて私と>>107をしようなんて言う。

スイカ割りをしながらビーチバレー

そんな彼女は、天野秀を連れて私とスイカ割りをしながらビーチバレーをしようなんて言う。
それを同時にやるものだから、どうするものかと思えば、JK集団を集めて対戦し、勝った方はスイカを割る権利が与えられるそうだ。
だが、一振りを外せばまた対戦のやり直し。意外と過酷なルールとなるそれは、思った以上に白熱するのである。

「くっ、メル……やるじゃないか、お父さん、本気で怒ったぞ」

「秀が怒っても大したことないしぃ〜。かがみん、トス上げて!」

「任せなさい。それっ!」

「いい打点ッ! ……行くよっ、グラビティで素晴らしきあたーっくっ!!」

「ふん、魔法剣士の魔法なんぞ知れたこと。私の大結界の前には無効なのだぁ!!」

「わー、卑怯だー。コート全体にバリア貼っちゃうなんてインチキだー!!」

何故か魔法戦となりつつあるそのビーチバレー、ついには天野メルは己の得物である剣すら抜いてしまう。
ビーチボールだけに触る必要は無いと、魔法剣で大賢者の結界を攻撃する中、七福まことが矢を放ち、ボールを割らないように宙に滞空させている。
それを、どうしようなんて目つきで私を見るのが天野秀。また、ぞくりと視線で感じてしまうのだ。

「確か、リアちゃんって召喚士なんだよな? ……あのボール、召喚で引き寄せて相手に送り込めないか?」

「……へっ!? あ、うん、やってみる……」

「ん、大丈夫か? なんだか様子がおかしい——ぶへらぁっ!!」

「やーいやーい、余所見してるからだよーだ」

「おのれメル、我が娘ながらやるではないか。俺のイケメン顔に打球をぶつけるとはなぁぁぁぁ!!」

何故か、この時の間だけは物凄く時間が早く感じられた。一瞬で試合は終わり、スイカが割られようとする。
それを練曲ネルが妨害しようとして、実力行使でメルとまことに羽交い絞めにされる中、加賀美麗華が目隠しをしつつ、おたおたと歩くのだ。

その彼女の胸を天野秀は賢者モードの視線を向けている。それが何だか嫌だと思った私はつい、>>109

ドラゴンの腕だけを召喚し、秀の前でちらつかせてみた

その彼女の胸を天野秀は賢者モードの視線を向けている。それが何だか嫌だと思った私はつい、ドラゴンの腕だけを召喚し、秀の前でちらつかせてみた。
ある意味練成術とも呼んでもいい私の召喚術、その私の才能を社長は買ってくれている。
だからこそ私はこの場に居る事が出来るし、驚いて尻餅をつく天野秀を見て、笑うことも出来るのだ。

人と関わるのって、こんなに楽しい事なんだ。私はその時初めて知るのである。

だがその時、アリスとトルテと呼ばれる少女が慌ててこちらに向かっては、天野秀に血相を変えて話すのだった。

「た、大変なの! 海の底から、とんでもなく大きな水竜がッ!!」

「という訳で、天野パパは逃げたほうが良いと思うよぉ〜」

「水竜だって!? アレは二度も倒した筈じゃ……」

「恐らく……三代目。でも、それとは別に何かが頭に乗っかっているのよ!」

「アレ、何だか人魚っぽかったような、そうでもないようなぁ〜」

その少女達の言葉を聞いて思い出す。今回、マーメイドに協力を要請し、天野秀を賢者モードから解き放つ事になっている。
どうやらその存在がお目見えのようである。突如、遠くから津波が押し寄せるのが見えるのだった。

「ぬわっ、マズイ! ネルネル、結界を張ってくれ!!」

「むぅ、指示されると癪だが、状況が状況だ……仕方が無いか」

「みんな、この中に入るんだ! 早く!!」

そうして、周囲に居た皆が結界の中に入り、津波から難を逃れようとするのだが、
ついその光景をじっと見つめてしまっていた私は、気付けば取り残されていた。天野秀が、私に向けて手を差し出す。

「早く、掴まれ!! 急がないと————!!」

中に入れなかった。入る勇気が私に無かった。皆が集うその場所に入りたくても、届かない。
突如津波が完全に私を覆い、水の中へ誘うのだった。私には、対象を召喚する力があれど、自身を転移させるような力は無い。
そして、水中で呼吸するような術を持ち合わせていない。ああ、つまらない終わり方だったと、水の中で海へ引き寄せられる感覚を味わいながら思うのだった。

「————ッ!!」

その時、声がした。腕をぎゅっと握られ、そして……あの人が居た。それは、私を>>111という窮地から救ってくれた白渡社長のようだった。

社会の波に翻弄され溺れる

その時、声がした。腕をぎゅっと握られ、そして……あの人が居た。それは、私を社会の波に翻弄され溺れるという窮地から救ってくれた白渡社長のようだった。

彼が現れ、私に紋を示してくれるまで、私は只の凡人に過ぎなかった。関西から家庭の事情でこちらへやって来て、
そして一人暮らしを強いられ、そして天野メル達とは違う高校に通っていた私は、そこで関西弁であることもあり、異端者扱いを受ける。

だが、方言だけが私を苦境へ誘ったわけでは無かった。人という存在がどこか怖くなったのは、家庭の事情のせいだろう。
父も、母も、親戚も、皆が顔を合わせれば必ず言い争うような家庭で過ごしてきた私は、人とは醜い存在なのではないかと、どこかでそう思うようになる。

その曲がった性格が、高校生活をやはり苦難に変える。相容れる事を知らなかった私は、
親切に手を差し伸べてくれた人すら足蹴にし、そして自ら孤独へ進むような道を選んできた。

でも、心の中ではどこか寂しくて、どこか助けを求めていて、どこかへ羽ばたきたい。けれど、もう疲れた。
それは無意識だった。車が行き交う国道に、身を投げ入れようとしていたらしい。それを腕を引いて止めてくれたのが、白渡社長である。

「キミは社会では凡人に過ぎないだろう。だが、僕にとっては、キミは逸材のようだ」

その言葉を受けた私は、彼に付き従うようになった。ゴッドカンパニー社員という肩書きを得、
そして彼の思惑通りに動く駒になろうと、我が身にそう刻むように言い聞かせた。そして、この島へやって来て、また私は死へ誘われる——。

—— 眼を開いたら、まさか天野秀と口付けしているとは、流石に想定外にも度が過ぎた。
それが人工呼吸の関連だと知ることになるのは後だとしても、この時ばかりは頭が真っ白になった後、全身が真っ赤になるような感覚に陥ったのだ。

「ふぁ、ふぁ、ふぁぁぁぁ……」

「良かった、無事のようだ。……助かったぞセレン。とはいえ、元はお前のせいだよなぁ」

「にゃはは、……ごめんなさいなのでしたっ!」

人魚族と呼ばれる少女、それがセレンと呼ばれる存在だった。それが天野秀を賢者モードから解き放つ、観笠ミカの一計の筈なのだが、
どう見ても小学生レベルの女の子。練曲ネルのような少女がまた増えているのである。

だが、今はそんな存在は最早どうでも良くなっていた。ただ、天野秀とキスをしてしまったと勘違いした私は、>>113

一族の掟上、共に生きることを決意した

だが、今はそんな存在は最早どうでも良くなっていた。ただ、天野秀とキスをしてしまったと勘違いした私は、一族の掟上、共に生きることを決意した。
一族の掟、それは凡人である私が妄想の中で決めた出来事で、特殊で在りたいと願った事。
ファーストキスの相手と一生を添い遂げると、そして全てをその人に捧げると決めているのである。

何故かリヴァイアサン三世と名づけられているそれと、人魚の癖に足を生やしているそれと皆がバーベキューを行い、
主にコカトリスの肉を食していく中、私は恐る恐る天野秀の隣に回り、彼に語りかける。

「あ、あの……」

「具合はどうだ? メシ、食べられそうか?」

「そ、それは……。うん、大丈夫……なんやけど」

「うん? もしかして別に具合が悪いのか?」

「……そう、みたい……。うん、ウチ、別に具合が悪いねん……」

彼を取り巻くこの環境で、ライバルはざっと見ただけでもかなり多い。先ず彼の娘となった四人が全員彼を狙っている。
唯一、天野メルだけは主である天野マールを応援する立場を取っているようであった。

そして今日接してみて、練曲ネルも怪しいし、川下ってババアも恐らく黒だと気付く。
後は女のカンとなるのだが、恐らく……七福まことという少女も怪しいのだ。こうして頭の中で並べるだけでも随分な数。

それでも、私の掟に従い生きると決めた以上、それを曲げるつもりは無いと、彼に言う。

「あ、あの、その……ウチ」

彼の視線がまた私を貫く。背筋がぞわぞわする。それだけじゃない、今は胸が張り裂けそう。
鼓動が早くなるような感覚。頭がぼうっと熱くなるような感覚。胸が苦しく、それでも伝えたいと必死になりたいと気持ちが逸る。

「えと、その、ね……!」

心臓がバクバクする、という状況を始めて味わった私は、必死で言葉を紡いで彼の気を留めようと必死になった。
言うんだ、早く言って、スッキリしよう。それでも、拒否されればどうしよう。怖い。でも、言いたいと……そこでようやく叫ぶことが出来るのだった。

「ウチを、ウチを……貴方の>>115にしてくださいっ!!」

「ウチを、ウチを……貴方の嫁にしてくださいっ!!」

「…………」

彼は無言で私を見つめる。言ってしまった、凄く恥ずかしい。身体が焼けてしまいそうなくらいに、そして消え去りたいくらいに。
だけど、頑張って返事を聞かないと。そうして震えだす脚に力を振り絞り、じっと耐えるようにこの場に留まる。
それでも、彼は中々返事をくれない。次第にその真摯な顔つきは……次第に変化していき……変態の顔になっていた。

「……スケベか」

「は、はい?」

「スケベしたいんか!? そうかそうか!!」

「はぁ!? ちょ、ちょっと!?」

「せやせや、じゃあ子作りせなあかんなぁ〜。よし、今すぐ林の茂みに——ぐはぁぁぁっ!!」

「変態は黙って鶏肉でも食ってろッ!!」

既に突っ込み役と化している練曲ネルに邪魔をされたというべきか、助けられたというべきか。
地に伏せる彼を見て、ふんぞり返る彼女を見て思う。結果的には、この方が良かったのかもしれないと、この時はほんの少しだけ安堵するのだった。

しかし彼の賢者モードはこの時、私が想いをぶつけ、そうして解いた形になったのだと確信していた。
だが、後ほど知ることになる。あの変態顔ですら演技だったと言う事を。そして、わざとうやむやにしようと企んでいたことを。
それを上司の練曲ネルからおそらくという形で伝えられ、私はその食事会から逃げ出し、ホテルへ戻るのだった。

ホテルの室内で、私はベッドで塞ぎこむように横になっていた。辛い、思った以上にキツイ。
振られた? 違う、まだチャンスは幾らでもある。でも……どうして私をあんな風に振ったのか、意図が分からない。

その時、室内の扉が開かれる。彼だと思った私は、無言でベッドのシーツに隠れ、そのまま時間を過ごすのだ。
しかし次に聞こえてきたのは女の声。それはまるで私の話を聞いていたかのように状況を把握していた。

「……あの男を、我が物にしてみたいと思う?」

大魔道師と呼ばれるその女性の誘惑に、今の私は抗う術を持ち合わせて居なかったのだ——。

———— つづきます

くぅ疲、気力ゲージはもうゼロなの!

というのはさておき、次回で完全にルート確定させたいなんて思っちゃってます。
宜しければお付き合いくださいってことで、今回もありがとうございましたー。

途中20分くらいレス付かなくてちょっぴり泣きそうになったんだとさ。

【05/05 (日) 01:30時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

05/05 (日)
  21:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 勇者なムスメ 第十五話 『人魚娘VS大魔道娘VS変態』

ついでにべっちょり。そろそろ予約増えてもいいんじゃないかな。ちらっ。

あー、そういう事でしたら予約キャンセルしておきますね

>>122
いやちょっとまってね。それは今日(昨日か)の話。火曜以後を予定。出し物がなんもきまってないのよ。
ここままじゃ引きこもりの一日みたいなつまらない話題になりそう。

>>123
その辺りは案外安価でどうにかなったりとかあると思いますが、
とりあえず予約の件は先にタイムスケジュールに予約とってくれれば、その予約とは別に取りますので、取って貰えると助かります。

で、明日はやる方向でいいのでしょうかー?

うーん、予定通り>>120でとりあえず進めますね。

そういえば規制されてるって方はまだ規制中なのかな?
度々一部が解除されていってるらしいですが、はてさて……。

という訳で今日もこそーり始めさせて貰います。時間ちょっとずらしちゃったけど予定通りでもう暫くお待ち下さい。

あ、登場人物は>>55で代用します。遠慮してしまう程多いし長いので……。

———— 勇者なムスメ 第十五話

孤島へバカンスにやって来て、早五日目。最近では同じ環境で遊び飽きたと騒ぐ娘も居れば、
コカトリスがこの孤島から絶滅し、もっと美味い素材が欲しいと洞窟に探検に出る娘も居たり、
挙句に二日ほど行方不明になっては翌日ころりと姿を見せてへらへらする娘も居たりする。

その島はちょっとした混沌で包まれていた。そして、監督責任のあった身である俺は、その職務を放棄。
もう無理だ、あいつ等自由すぎて付いていけんと空を眺める。今日も晴天、真夏の暑さを感じられる。そんな空に向けて俺は叫んだ。

「もう……やってられっかぁぁぁぁ!!!」

その声は遠くまで響き渡った事だろう。出来れば、木魂してくれれば尚感傷に浸れたのかもしれない。
そしてやってくる空虚感。もう、とてつもなく虚しいと振り返れば、木陰でやはり俺をじっと覗く少女が居た。

「……まーた覗いてるだけなのか?」

「こ、これは様子見や! これからの事を考える為の下調べやの!」

「……ま、いいけどさ」

最近ではこの関西弁の少女、リアちゃんに度々覗かれる日々が続いている。ストーカー気質でもあったらしい。
しかし何故こうまで俺を追い回すのか、その理由は正直分かっている為、身の振り方を難しく考えてしまっていた。

彼女はどういう訳か、俺を好いてくれている。以前のように孤独でひたすら自分だけの時間を過ごし、遊び歩いていた俺ならば、
その好意を寧ろ受け取り、逆に押し付けて居ただろう。しかし、今はどうにも環境が違いすぎる。

娘が五人も居る。その娘達を養わなければならない。だが俺はアルバイトしかしていない情けない二十六歳。
そして、そんな際に彼女なんて作ってみよう、恐らく俺は更に駄目になる。彼女が出来て逆に這い上がれ、なんて気質は持ち合わせていないのだ。
何より、その彼女と言う存在に物凄く頼り、甘えてしまいそうになる。それが怖くもあり、こうして逃げているのであった。

だが、初日にやって来た人魚の娘とか名乗るその少女に、度々洗脳を受けそうになっている事もあり、
益々俺は情緒不安定になりつつあり、またまた空に向けて叫んでいた。

「ちくしょぉぉぉぉ、職を、仕事をくれぇぇぇぇぇ!!! あ、暇で楽で残業も無い仕事がいいっす!!!」

とか一人、真昼間でそうして叫んでいると……背後から覗いていた少女が>>131と俺に言葉を発した。

甘えんな

とか一人、真昼間でそうして叫んでいると……背後から覗いていた少女が「甘えんな」と俺に言葉を発した。
俺の事を好いていてくれているハズの少女は、真顔で俺にそう言っていた。おかしい、彼女は本当に俺のことが好きなのか?

いやいや、これは飴と鞭で言うところの鞭である。しかし常に鞭を与えてきそうな雰囲気を持ち合わせている為、
うかつに手を出すことも出来ず、悶々とした日々を過ごしている……と言いたい所なのだが、これがまた不思議な事である。

「もう二週間くらい抜いてないんだよなぁ。……前は一日三回とかザラだったのに」

「……一日、三回……絶倫やん……!」

「しかし何故だろう、色々と不安になりすぎて壊れたんだろうか、俺」

「さ、三回もウチ、頑張れるやろか……」

「まぁ深く考えても仕方ないか。オナ禁によってお肌も更につるつるになり、イケメン顔がグレードアップすることだしなっ!」

「さ、最初は前、最後に後ろとか、あ、あかん! ウチ、もう……!!」

背後で何か呟いている少女はさておきと、これ以上海岸に留まっていても暑いだけであると、
ホテルに戻り部屋のベッドで寝転がることにしようと、波の音を伺いながらも歩みを進めていた。
今日の波はいつも以上に穏やかだ。余りにも落ち着いて心地の良い音で、逆に不安になる。何かが起こる前振れじゃないのかと。

そうして海岸からホテルへ続く砂道を歩いていると、もう一人のストーカー気質の少女が現れる。
幼女とも言うべきなのかもしれないが、残念ながら少しでも胸が膨らめばそれはもう少女だというのが俺の持論である。

「こんな所に居たですか!」

「げっ、またお前か、セレン!」

「今日こそあたちの琴の旋律を聴いて興奮するのですよっ!」

「お前のそれ、すげぇ下手糞だから聞きたくねぇんだってばよ!!」

「な、何ですとっ! へ、下手糞だなんて、そんなの……あんまりなのですよぉぉぉうえぇぇぇえん」

で、ちょっと強く反論すれば直ぐに泣き出してしまうのが厄介であった。しかし、>>135をすれば彼女はすっかり泣き止んでしまう

いないいないばあ

で、ちょっと強く反論すれば直ぐに泣き出してしまうのが厄介であった。しかし、いないいないばあをすれば彼女はすっかり泣き止んでしまう。

「いな〜い、いな〜い……」

「うぇぇぇん、ひっく、うぇぇぇぇん!!」

「……ばぁっ!!」

「……あは、あははっ、お兄ちゃんきんも〜!」

「お、おう……。そ、そうだな……」

「という訳で今度こそあたちの琴の旋律を——」

そしてループがやって来る。俺がまた下手糞だといえば、彼女は本気でまた泣き始めるのである。
繰り返すのも疲れた俺は、彼女を避ける日々が続いていた。そもそも、あの琴の調を聴いた途端、俺が俺で無くなりそうで怖いのである。

心の奥底がぞわりと動き出すような感覚。頭の中が何かに支配されそうになる感覚。何かが這い回るような感覚。
最初にあの琴の調を聴いた時に感じたものである。その感覚に身を任せてしまえば、自分が消えてしまいそうでもあったのだ。

「—— ふぅ、なんとか撒けたな……」

一目散にセレンに背を向けて逃げ出した俺は、ホテルへ速攻に戻り、部屋に入っては即ロックを掛けるのである。
これでようやく落ち着ける。今日はもう、ホテルに引き篭もろうと部屋を見渡せば、あの女性がぽつんと椅子に座っていた。

年齢は十八なのだそうだが、その落ち着いた雰囲気に豊満な胸元は、年齢以上の美しさが備わっていた。
その女性の名はマリアと言うらしい。だが、俺はまだ彼女ときちんと話したことが無かった。

というよりは、どうにも彼女から俺を避けている節があるのだった。

「あー、こんにちは。相部屋で寝起きも一緒なのにその挨拶は変だって!? そ、そうだね! その通りだね!!」

「……ですね」

「いやぁ、今日は快晴夏晴れ! 雲が一つも無くって、散歩日和っすよぉ!」

「……ですね」

俺、こういうタイプ苦手だわ。だから……>>137する事に決めたのだ。

この部屋から脱出

俺、こういうタイプ苦手だわ。だから……この部屋から脱出する事に決めたのだ。
さぁ、いざ脱出。ロックを外して表へ出るだけと、扉を開こうとしたその時、マリアが途端開いてはダメだと叫ぶのだった。

「な、何故だ!?」

「……窓の外、見て」

「お、おう……って、なんじゃこりゃぁぁぁぁ!!」

「ホテル全体が水に包まれてる。この魔法はあの人魚の仕業ね」

「落ち着いて言ってる場合か! ……川下、大丈夫かな」

「恐らく、この部屋以外を水で覆っている筈だわ。犯人は恐らく、水を伝って悠々とこの部屋に侵入してくるつもりよ」

「おのれ人魚め……姑息な手段を! だが、脱出出来ないとなれば、俺はあの琴の音色を聴かなきゃならんのか……!」

「どうしても、聴きたくない?」

「え? あ、あぁ……。だってアイツ、マジで下手だし」

「……じゃあ、脱出に協力してあげる。私もウォーターホテルに泊まる趣味は無いし」

ではどう脱出を手伝ってくれるのかと言えば、彼女は樫の木で出来たような、古びた印象を受ける杖を持ち出した。
水晶のような球がいくつも嵌め込まれているそれは、一メートル以上はあるであろう、長い杖である。

「それじゃ、方法を選んで。その一は気泡を作って正面から脱出。そのニは窓の外からダイブして風に乗って悠々着地。
 そして第三は……この床を爆破させてそのまま脱出。さぁ、どうしたい?」

「どれも随分物騒だな……。じゃあ、俺は>>141を選ぶぜっ!」

その一

「どれも随分物騒だな……。じゃあ、俺はその一を選ぶぜっ!」

「一番人魚とのエンカウント率が高い方を選ぶのね。突破できる自信は?」

「……無いッ!!」

「ふぅ、まぁいいわ。それじゃ、もう少し私に身を寄せて——」

彼女が呪文のような言葉を紡ぐと、俺とマリアを包む気泡が出来上がる。それは触れても簡単には割れないくらい、しっかりしたものであった。
その気泡を動かし、そして歩調も合わせつつ、真正面からホテルを脱出しようと目論むのである。

「あの人魚、今回こそ本気というか、怒ったみたいね」

「……逃げ出したせいで、本気で怒らせたのか、俺……」

「聴いて大人しく身を任せたほうが、色々と楽になるのだけど?」

「い〜や〜だ〜! あんなジャイアンリサイタル、絶対聴いてやるもんかッ!!」

『だぁ〜〜れが、ジャイアンリサイタルだってぇ…………!?』

「な、なんか声が聞こえて……!?」

「水を通して人魚が発した声よ。人魚族はそうして遠く離れた相手にも声を届けられる性質があるの。そして遠く離れた相手の声も聴き取る事ができる……」

「つまり、会話全部丸聞こえって訳じゃねぇか!! な、なんて事だ……!!」

「安心していいのよ天野君。貴方は私が護るもの」

「……どこかで聞いた事のあるような台詞っすね、それ」

そうして、マリアの魔法により出来上がった気泡の中で、すっかり完全浸水したホテルを脱出しようと階段を下りていくと……>>144

でかいカニが待っていた

そうして、マリアの魔法により出来上がった気泡の中で、すっかり完全浸水したホテルを脱出しようと階段を下りていくと……でかいカニが待っていた。
階段を塞いでいるその巨体の蟹は、俺達の存在を感知したのか、ぐるりと旋回するのである。

「アルテナ様達の船を沈めた蟹ではないのね」

「な、何の話だ?」

「こちらの話だから気にしないで。とはいえ、どうしたものかしら、これは」

「そんなの、マリアさんの魔法で一発、ちょちょいのちょいじゃないっすかねぇ!?」

「……気泡、破れちゃうの」

「……護ってくれるんじゃ無かったんですかねェ!?」

「安心して天野君。私は貴方を護ったつもりでいたもの」

「過去形にしやがった!!」

そんな下らないやり取りをする間、巨大蟹が大人しく待ってくれる訳が無い。
蟹の鋏が、俺達を八つ裂きにしようと伸びてくる。それは最早猶予が無く、目を閉じて幸運を願うしか無かったのである。

その時、俺達の居た場所が光り輝き、次の瞬間砂浜に落下するように落ちるのであった。リアの転移召喚であった。

「ふぅ〜、危機一髪やったね!」

「お、おう……って、リアが救ってくれたのか」

「ちょっと人魚ちゃんが暴走してるから、お説教してあげないとって思って……。べ、別にあんたの為にやったんじゃないんだからね!?」

「なんで取ってつけたようにツンデレるのか」

「フフ、ここまでは作戦通りね……ぼそ」

その時、マリアが小声で何かを呟いたような気がするが、その直後、更に巨大な蟹が登場するのである。
先程の蟹の三倍はあるだろう。赤い彗星蟹と名づけたいほどそれは茹でられたように真っ赤であり、やはり三倍の速度で蛇行するように向かってくるのだった。

今度こそ本気で逃げたほうが良さそうだと思い背を向けるのだが、マリアはあの超巨大蟹を見据え、そして……>>146

大蛸を召還

今度こそ本気で逃げたほうが良さそうだと思い背を向けるのだが、マリアはあの超巨大蟹を見据え、そして……大蛸を召還。
何気に大魔道士というヤツは、召喚魔法まで扱えるらしい。それは巨大蟹の大きさに勝る程の巨大蛸であった。

「むっ、ウチも負けへんで! 大王イカちゃん召喚やっ!」

「お、お前まで召喚せんでええ! もうええんや—— って、手遅れだった……」

「大王イカちゃん、墨攻撃や! 赤い彗星蟹に一撃喰らわしてやって!!」

『げっそぉ〜〜〜!!』

「そっちがその気なら、私も……タッコー、やっぱり墨攻撃よ! 勿論対象は赤い彗星蟹に!!」

『たっこぉ〜〜〜!!』

「……あぁ、今日も空が青いなぁ……」

現実逃避していた。砂浜は巨大蟹に、巨大蛸、そして巨大イカ。何故か人間っぽい鳴き声付きなのである。
対抗するように巨大蟹もカニカニ鳴き始めたし、もうやだこんな世界と空を眺めることで、心を落ち着けようとしていた。

「くっ、やるやん、そっちの蛸! なら大王イカちゃん、絡めとりや! 相手の動きを—— 足を斬られたぁぁぁ!!」

「ふふ、そのようなお粗末なイカだからそのような目に—— こっちも足が鋏でぇぇぇ!!」

『かにぃ、かにぃ……』

あ、巨大蛸と巨大イカが負けそう。でもどうでもいいや、空は青いんだから、こっちの方眺めている方が心が落ち着くんだから。
なんて思っていると、どこからともなく気味の悪い音色が聞こえてくる。それは、俺の心を底から突き動かすような音色でもあり、そして……。

「こ、この琴の旋律は!! まさかセレン!!」

「今よ、巨大蛸、天野秀を絡めとりなさい!!」

「ウチの巨大イカちゃんも絡めとりで天野秀の動きを封じるんや!!」

そう、巨大生物も、そして彼女達も、全てがグルだった。そしてこの場に現在、娘たちも皆出払っているのである。
すっかり巨大生物に絡め取られた俺は、セレンのジャイアンリサイタルの調を聴かされることとなる。

そんな恐ろしい音色を聴かされた為、俺は……>>150

性格、歌声までジャイアン化

そんな恐ろしい音色を聴かされた為、俺は……性格、歌声までジャイアン化。ちなみに意識は遥か遠くに在った——。

真っ白だ。でもそれは厳密には白ではない。ただ、何もかもが透明で透き通って見えるだけ。
そこに光も無く、そして闇も無い。そんな明暗の無い世界に俺の意識は漂っているんだと認識していた。

何故このような場所を漂っているのだろうと、ふと不思議に思う。しかし、思うように身を動かすことも出来ず、
ただ漂うしかないのに、恐怖は感じられない。寧ろ穏やかで、心地良くて、もっとこの流れに身を任せたいと思えてしまう。

『聞こえますか、私の声が——』

突如、意識に語りかけてくるような感覚がした。声が聞こえるのだが、耳を通して聞こえてきた訳では無く、
脳内、寧ろ意識的に声が響いてくるような感覚に、一瞬身を震わせてしまうのだった。

「あ、あんた……誰だ……?」

『私は、貴方の中に、心の臓に宿る紋に眠る僅かな意識——』

何を言っているのだと胸元を押さえてしまう。それは、異常な高鳴りを見せており、その鼓動を手で感じる度に自分が自分で無くなりそうになっていく。
その中でも声は続き、語り掛けてくる。俺がどうしてそのような紋を、心臓に宿されているのか。

『私は、あえて貴方を選びました。その本来の予見は、今となっては次元の違う話となりました。しかし、今回事態が変わります——』

ふと、現実意識と今現在の意識がリンクする。ジャイアン化した様子の俺は、リアの首根っこを掴み、歌いながら乳を揉んでいるのであった。
いやいやと首を振り、リアは関西弁で拒否を示しては手をじたばたとさせて逃れようとする。しかし、俺と言うジャイアンにその掌は当たっているようで、当たらな。い。

『琴の音色、目醒めの旋律は不完全でした。よって、このような貴方が生まれてしまったのです——』

「……つまり、誰のせいなんだ?」

『誰のせいでもありません。それでもあえて言うのならば、貴方の責任です——』

「じゃあ、どうすれば良いってんだよ……」

『願うのです。貴方が本来在りたいと、世界を、己を願うのです。純粋に、そして欲望に身を任せ、全てを受け容れるのです——』

ふと、現実意識が現在の意識に流れ込んでくる。リアの膨らみかけの胸を揉んでいるジャイアンな俺は、>>153という感情を抱いているようだ。

ジャイ子ォオオオオオオオオオオオオオ

ふと、現実意識が現在の意識に流れ込んでくる。リアの膨らみかけの胸を揉んでいるジャイアンな俺は、
『ジャイ子ォオオオオオオオオオオオオオ』という感情を抱いているようだ。
リアをジャイ子と認識しているようで、妹をイジめる兄のような、そんな感覚が近いのだろう。しかし、その俺はその感情を認識できていない。

『貴方という存在は酷いものです。時には強引で、時には我侭で、時には臆病で、時には性欲的。
 しかし貴方はそれら全てを一切否定して、逃げ続け生きてきています。それをゆっくりと、受け容れるのです——』

気付けば、心の中は様々な感情が湧き上がっていた。しかし、それら全ては七つの大罪という言葉で片付けられてしまう。
傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲、それら全ての罪が俺の中に備わり、眠っている。それが目を覚まし、心の中で暴れている。
気が狂いそうでもあった。その感情を抑えきれず、次第に飲み込まれそうになり、諦めの色すら示しそうになる。

だが、次第にその感情にも慣れていく。ただ、受け容れるだけでいいんだと判断したその瞬間、それらの罪は心の中でゆっくりと穏やかになるのだった——。

『間も無く、意識が合わさることになります。貴方はまだ、ようやく最初の一歩を踏み出した段階。でもどうか、道をしっかり歩めますよう——』

その中性的な声は聞こえなくなり、そうして突如砂浜に足を付けた感覚、そして潮風を肌に浴びる感覚が蘇るのだった。
掌には僅かに膨らんだ少女の胸の感覚。そして認識する。リアを動けなくしては、押し倒し、涎を垂らしては興奮状態にあったようだ。

「こ、こんなの、ウチ、望んでへん! もっと、ちゃんとした形で……抱いて欲しい……!」

「……あー、成程、そういう事か」

「へっ? あ、ちゃうで、ちゃうねん! ウチ、別にそんな軽い気持ちじゃなくって……!!」

「いや、そういう事じゃない。……しっかし、良くもまぁ、三人ともグルになってやってくれたものだ」

「……セレン、この様子を見て貴女はどう思う?」

「うーん、いつも通りに見えるのです。もしかして旋律間違えたですか?」

「さぁ、どうかしらね……」

マリアとセレンが互いに顔を見合わせ話す中、俺はこの三人に先ずちょっとしたお仕置きが必要だと判断する。
今の俺は正直である。そして、ちょっとした不思議な力も扱えそうだ。なのでここは一つ、お試しに>>156というお仕置きを披露しよう。

分身の術

マリアとセレンが互いに顔を見合わせ話す中、俺はこの三人に先ずちょっとしたお仕置きが必要だと判断する。
今の俺は正直である。そして、ちょっとした不思議な力も扱えそうだ。なのでここは一つ、お試しに分身の術というお仕置きを披露しよう。
とりあえず百体程と、願うように念じる。するとそれは、実際の身体を持つ自分となって姿を現していくのである。

「マ……マリア、見て欲しいのです! 天野秀が分裂してるのです!!」

「分身!? いいえ……それ以上の力。こんなのって……!!」

「ぜ、全員、手をくねくねさせているのです。その数……百人は居るですよ!」

「不味いわ、リア、転移魔法を—— って、リアはもうダメね、お尻ぺんぺんされているわ」

「あひぃぃぃ、もう、もうせえへんからぁ、もうしませんからぁぁぁ、ゆるぢでぇぇぇっ!!」

「……ちょっと嬉しそうにも見えるのですよ」

「痛みすら快感に変えている……! これが天野秀の、そして絶対神として目覚めた力……! こ、これ程恐ろしいものだなんて……!!」

マリアとセレンは、彼女達なりに俺を分析している様子だが、少し違う点がある。
これは、力ではない。現実には願いに過ぎないのだと。それを認識し、チェスの駒を操るように願いとして実現させる。
そうして増えた天野秀は、お尻ぺんぺん行為をする事で対象に痛みと快感を与えてやることが出来るようになっている。

「さて、そういう訳だから、マリア、そしてセレン、お仕置き……させて貰おう!」

「ちょ、ちょっと待って! 私は今回ただ手を貸せと協力を申し出られただけで—— ひゃぁっ!!」

「あたちも観笠ミカにメールを貰って、協力する為にこっちの世界にやって来て—— ふにゃん!!」

そうして、海岸でちょっとしたお仕置き大会を開いていると、その最中に見覚えのある姿が現れる。
白尽くめの男、今の自分ならそのその存在が薄らだが認識できる。こいつは普通の人間ではなく、機械的な存在だと。

「白渡矜持……か」

「その様子だと、ちょっとした覚醒を迎えたようで、鮫に食べられながらも一計を案じた甲斐があったよ」

「その目的は?」

「勿論あるよ。だが、あえて個人的な意見で言わせて貰おう。それは……>>158

天野秀を中心に世界が変わること

「勿論あるよ。だが、あえて個人的な意見で言わせて貰おう。それは……天野秀を中心に世界が変わることかな」

「何故中心が俺なのか教えて欲しいんだが」

「既に分かっている筈だよ。その分身の奇跡がどういう賜物かを。キミは、この世界という箱庭を統べなければならない」

「……嫌だと首を振れば?」

「この世界が裏返り、全てが無くなってしまう。キミの娘達も、そして……キミ自身も。それを僕たちはリバースを呼んでいる。
 最近、その侵食が激しくて、特異点が多数確認されているのもその影響なんだ。と、ここまで言えばシリアスな話なのだけどね——」

彼は端的に言う。俺がこの世界群を統べ、安定さえさせればこの世界は尤もらしく回るのだと。
但し、そのリバース化を防ぐ為に、常に多元的に感覚を持っておかなければならないと言う事。

その感覚は未だに持ち合わせていないのだろう。理解し難く、本能的にも認識は出来ないで居る。

「まぁ、まだ目覚めたばかりの赤子のようなものだ。……だから僕がキミをサポートしよう。
 僕はその為に生まれてきた存在だ。だから遠慮はする必要は無いんだよ」

「白渡矜持、その好意は恐らく本意なのだろう。しかし……その邪な感情は何なんだ?」

「アハハ、見えてしまうのか、参ったな……。この感情、実は僕もキミにお尻ぺんぺんされたいって思っている。そんな感情さ」

既にお仕置きされた三人娘は、砂浜でぐったりと寝転がる羽目となっていた。少々やり過ぎたと思う中、
白渡矜持のその発言に軽い恐怖を感じてしまう。この辺りもまだ、人間といった証明であった。

「キミは神だ。それと同時に人間だ。……さぁ、どう中心に世界を変えてくれるのか、楽しみにしているよ。
 あ、そうそう、それと……ゴッドカンパニーの社長の座は今日からキミの物だ。僕は陰からキミをサポートするとしよう」

「……社長?」

「前主もそうだった。というか、前主が築いた表向きの会社、その社長の座さ。興味無いかい?」

いきなり奇妙な会社の社長になりますか、と言われて、普通ならば素直に頷く人間は少ないだろう。
では俺はどうだろう。その神が統べる会社……とはどうなのかとも思いつつも、その問いに……>>161

承諾する

いきなり奇妙な会社の社長になりますか、と言われて、普通ならば素直に頷く人間は少ないだろう。
では俺はどうだろう。その神が統べる会社……とはどうなのかとも思いつつも、その問いに……承諾する。

「そうか、キミならそう言ってくれると思ったよ。でも、アルバイトは続けたほうが良いかもしれないね」

「……会社が実体を持たない団体だからか?」

「いや、事務所的な物は幾つかあるんだ。社屋らしいとは呼べないけどね。ただ、社長の収入は……ゼロだ!!」

「……何だと……!!」

「あくまでゴッドカンパニーは有限会社。そして利益も正直言って無いに等しい!!
 紋章という力を配り、神のような力を人に与えることが出来るけども、結局低年収でその力を売っているに過ぎないッ!!」

「なんと恐ろしい会社だ。つまり俺はタダ働きなのか!!」

「あ、ちなみに紋章のデザインを考えて紋章に力を吹き込むのも絶対神である社長の仕事だから、頑張ってね」

白渡矜持はそう言って手を振って去ろうとするものだから、ではあの金はどうやって生み出したのかと、彼の動きを封じ、本意を引き出した。
すると心の声で、実は錬金していただなんて言えない、とひっそり漏らすのである。

会社自体は利益も無く、社員に対する給与は余りにも低く、挙句に保険には一切入れてもらえない。
そして社長としての収入も無かった白渡矜持は、こっそり錬金術を用いて私腹を肥やしていたのである。

「い、いや、金はやっぱりこの世界では必要だろう? ……僕、実はオタクなんだ。だから——」

「宜しい、ならばこうしようじゃないか。早速社長としての最初に使命をキミに言い果たそう」

これでは余りにもゴッドカンパニーの社員たちが可哀想ではないかと感じた俺は、>>164

全員退職してもらい再就職先を世話

これでは余りにもゴッドカンパニーの社員たちが可哀想ではないかと感じた俺は、全員退職してもらい再就職先を世話する事を提案。
すると、白渡矜持は血相を変えて俺の肩を掴み、揺さぶりながら反論するのである。

「それはいけない! 我々会社の組織はある種の秘密結社でもある! 不正に現れた悪魔や紋使いを制する役割もあったりするし——」

「白渡、お前は補正力を持つ。そして俺もまた、似たような事が多少なりと出来るだろう。……社員が、哀れなんだよ」

「ニート気味のフリーターであるキミが言う事か!?」

「だからこそさ! でもまぁ、経済の話になればそれはそれこそ人間の問題。……彼等をそこへ放とうじゃないか」

「社員にそれぞれ役割として与えてある紋も、取り返すのかい?」

「……まぁ、その辺りは少し考えよう。無理に奪う必要も無いけども、保持するのならば条件を付ける形でね」

そうして、ゴッドカンパニーは再編される事になるだろう。白渡はいよいよ仕方ないといった面持ちで、
先に本土へ戻り、社員達に連絡を入れようと島を出て行くことになる。

「まぁ、最大の問題はやっぱり……再就職先だよなぁ、今の世の中厳しいしなぁ」

ホテルの部屋に戻り、水害に遭った場所をすべて補正して戻していく実験を行いつつも、そんな事を考える。
水浸しとなった部屋、通路、何もかもを補正することは出来るのだが、どうにもシャンデリアや家具の位置が違うと、何度も試みてしまう。
そうして、次第に再就職先について思案する事を忘れ、必死に補正業務に走っていると……、俺をこんな風にした切欠を与えた張本人が現れる。

「ふふ、久しぶりよねぇ〜、秀クン!」

「出たな三百歳とそして一歳のババアめ」

「三百歳と三ヶ月よ! そこ大事だから間違えないで欲しいわぁ〜」

「相変わらず酒臭いな、女神アルテナは」

「これでもブレスケアしてるのに、そんなに臭いかしら」

ふと思う。彼女がどうして俺の前に今となって姿を現したのかを。何か意図がある筈なのだが、まだ達観出来ていないのか、それが見えない。
そして彼女は俺に腕を回し、焼酎臭さを撒き散らしながら俺の傍でこんな事を言う。

「折り入ってお話があるのぉ。……それはね、>>166

世界を新しくしてみたいと思わない?

「折り入ってお話があるのぉ。……それはね、世界を新しくしてみたいと思わない?」

「やっぱり知ってるんだな。……で、あえて尋ねるがその世界を新しくするとは?」

「簡単よ。……何もかもを、再統一させちゃうの。私の統べるリィンガルドも、そしてその他の世界も、そして……裏返った第八の世界も」

「まさか、そんな事をアン達を送りつけた時から考えていたのか?」

「どちらにしても、貴方が覚醒しなければ裏返りは防げず、母体となる世界も、私の統べるリィンガルドも、無くなるようなモノ。
 そうなれば無意味……。だから、深くは考えていなかったわ。でも……あの娘達に第二の人生を与えてあげたかったのは、本当なの」

「何故そこまで、アンやマール達に深入りさせる?」

「……紋章ってね、育つの。使えば使うほど、才能がある人程、それを引き出して、紋章もその才能や力を学んでいく。
 そういう風に作ったのが、前主。……つまり貴方に神の紋章を移した存在ね。でも、最初は良かれと思ってやってきたの」

「アンをずっと見ていたようだな」

「あ、乙女の思考を覗くのはエッチでイケないんだゾぉ〜」

「ババアが言うとマジ怖いから普通にお願いします」

彼女は、リィンガルドの世界を渡り歩くアンを、魔界から拾ってきたという。
それは、魔界を統べる神であり、ゴッドカンパニー部長であるルーシー・フェイルとの交渉に拠る物であった。
そうして、彼女はアンを十一代目勇者に子として授けることになる。彼はその時、固辞したらしいが、彼女の才をアルテナは訴え、彼は頷くことになる。

「そうして、彼女は育ったんだけど、……結構悲しい思いばかりをさせてしまった。才があるからこそ彼女を見て来て思ったの。
 あぁ、私間違えていたって。人間だったのに、人間である事を忘れて、機械的に成すべき事しか考えれなくなっていたって」

「その話と、新世界とどう繋がる?」

「全てを失くしましょう? 神とか、そう言ったもの……全てを」

彼女の認識は、人に近いものであった。神の力も、魔法のような力も、何もかも失くしてしまえばいい。
世界を再編し、一つに戻しては全てを失くし、本当に人に何もかもを返す。それを彼女は望んでいるようだ。

ではどう返答したものかと悩んだ結果……>>170

折衷案でどうかと

ではどう返答したものかと悩んだ結果……折衷案でどうかと提案する。それは、その発想を危険視した存在への対抗手段でもある。
アルテナは暫く唸るように悩むのだが、しかし次の瞬間、彼女は何故か抱きついては俺の耳元で囁くのだった。

「……決めたわ、貴方を私、信じてみる。……これからは、私は貴方の部下よ、秀クン」

「お、おい、アルテナ!? 酒臭いんだがっ!?」

「ふふ、もっと嗅がせてあげるぅ〜。そぉれ、そぉ〜れ」

「……吐きそうに、なってきた……」

「そ、そこまで嫌がる事ないじゃないの! ……もう」

彼女は俺から身を離し、拗ねたように口を尖らせる。その姿だけはほんの少し可愛らしいとも思えてしまった。
しかし、次の彼女の一言で前言撤回を申し立てないとならないと思わされるのであった。

「あ、そうそう、それと……私今回頑張ったと思うからぁ、出世、お願いねっ!」

「……ゴッドカンパニーは事実上の解散を迎えるつもりだが?」

「へぇ〜そうなのぉ〜。なら出世は……って、なんですってぇぇぇ!!?」

彼女はあわよくば、部長として七つの世界を統べる役割から、出世を果たし母体世界の勤務を希望していたらしい。
つまり、リィンガルドを統べる業務にも飽きが来ていたそうな。アンについてあれだけ語っておきながら、本心の一部はこうである。

「じゃ、じゃあ……私の努力は、出世は、年収アップはどうなるのよぉ〜〜!!」

「再就職先を検討している。……って、こんな事に神の力ってのを行使して良いのかどうか」

「はぁ、結局私の野望って何だったのよぉ〜。……ま、いいけどね。あ、それと最後に一つ聞かせて——」

アルテナとの話も終わり、彼女と別れた後に部屋に戻る。マリア達はまだ海岸でのびている為、部屋には居ない。
しかし代わりに、練曲ネルが暇そうにベッドの上で足をばたばたさせていた。

「あ、おかえり。白渡矜持から話を聞いたから、すっ飛んで戻ってきたのだけど」

「……その割にはお前、随分余裕があるように見えるけど」

「別に早く戻りすぎて、暇になって>>173していた訳ではないのだぞ」

一人逃走中ごっこ

「別に早く戻りすぎて、暇になって一人逃走中ごっこしていた訳ではないのだぞ」

「部屋の中で、一人で?」

「一人で。…………虚しくなんてなかったのだからな!」

うん、間違いなく虚しかったんだなと頷くと、更に足をじたばたとさせてベッドの上で音を立てるのである。
やれやれと彼女の隣に座っては、ふとファミレスに彼女が新人として入ってきた時の事を口にした。

「思えば、あの日からお前は俺を見ていたんだな」

「なっ! い、いきなり何を言う!! そ、そんな風に見た覚えは……」

「分かってる。あくまで俺が神だった、なんて運命で、それを監視するよな役割だったんだろう?」

「厳密にはリバース化についても研究していたが、ニコ生とアルバイトで忙しくて進んでいないとも言うのだ」

「……働け大賢者」

「すみませぬ……」

ふと間が空いてしまう。それは、計ったようでもなく、自然と出来た会話の間だった。
一瞬の静けさ。電灯を付ける事すら忘れていた為、室内は月明かりが照明となり、俺と練曲ネルを照らす。
彼女に自然と視線を向けてしまう。月明かりのせいか、普段以上に可愛くも、そして美人にも見える彼女は、俺を見据えて言った。

「……どうする、つもりなのだ?」

「どうするって、何をだよ……」

「お前は神かもしれない。だが、その前に一人の人間だ。……誰を、選ぶのだ?」

彼女は言う。そろそろ選択してあげても良いんじゃないかと。それとも、ただ一人だけで歩むつもりなのかとも話す。

それは重大な決断なのかもしれない。この先、その人の為だけに動く場合も出てくるかもしれないし、それでも尚一人で在り続けるかもしれない。

アンを選べば、なんだか将来俺が彼女の世話を焼いているような世界が見える気がする。
マールを選べば、なんだか将来、魔王城という愛の巣で暮らす二人が見える気がする。
メルを選べば、なんだか将来彼女の存在を追及しつつ、ふらりふらりと世界を旅する世界が見える気がする。
ノエルを選べば、なんだか将来オタク道まっしぐらとなり、二人ともラノベばかり読んでいる生活が見える気がする。
アリスを選べば、なんだか将来殺されそうになりながらもデレられ、元の鞘に収まる世界が見える気がする。
ネルを選べば、なんだか将来ファミレスの店長になった彼女にこき使われる世界が見える気がする。
リアを選べば、なんだか将来関西に移り住んで大阪の良さを必死に訴える自分が居る世界が見える気がする。

そして孤独を選べば、それは何気にハーレムになりそうでその先が見えない。全く掴めない。

そんな選択を、今決めるとするなら俺はどうするだろう……>>175

きっと全員が幸せになれる選択肢を選んでいる

そんな選択を、今決めるとするなら俺はどうするだろう……。きっと全員が幸せになれる選択肢を選んでいる。
自分がどうであれ、彼女達の父親であり、そして誰かを傷つけ、傷つけられながらも必死でその道を模索し、最後は笑い会える世界をと——。

「……で、どうなのだ? お前、何気にモテモテだからな」

「……選べない」

「へ? なんと言った?」

「選ぶなんて無理だ。俺は使命どうこうよりもそれ以前に、個人を幸せにすら出来ていない。娘達も同様だ。
 だから……、結論付けるなんて出来ないよ。それに……、その中にはネル、お前も入っているんだから」

「な、なにキザ臭い台詞をさらっとまぁ……。……それって、ただの優柔不断ではないのか?」

「放っておけ。俺は神だ! 何があろうとも必ず皆を幸せにしてみせよう。フハハハハハァッ!!」

「こんな変態に幸せにされても、余り嬉しくも無いのだが……全く」

ネルにそうして呆れられる中も、本土に戻ってからは大変だと心構えをするのである。
先ずは人間らしく就職先を探そう。人間として立派に生きる事も重要だ。さもなければ、誰を幸せにする事も不可能だ。
とはいえ……、これから夏休みに入り、ファミレス『チェリークロック三号店』は異常に忙しくなる時期である。

果たして、就職活動なんてしている暇があるだろうか、試しにネルに相談してみると……。

「九月まで無理だな。何せ私の大賢者メニューのせいで火の車だからだ!」

「……次のアイデアとか、ちゃんと練ってるのか?」

「そこは苗字の通り捻くれて考えている。安心するのだ。わはははははー」

———— 八月、夏休みもいよいよ本番ともあり、陽射しも更に強く、蒸し暑い日々が続いている。
蝉の声も更に強まり、朝も大抵蝉の声で目覚めてしまう。そして、日常が始まっていく。

だが、孤島から戻ってきた俺の日常は随分と変わり果てていた。まず、朝起きては神の業務である>>178を行わなければならない。

長ったらしい朝の演説

だが、孤島から戻ってきた俺の日常は随分と変わり果てていた。まず、朝起きては神の業務である長ったらしい朝の演説を行わなければならない。
次元放送を発し、縮小気味となったゴッドカンパニーの社員達に、朝礼を行う。ちなみに皆、真面目に聞いてくれていないのだ。

「であるからして、本日もまた平和に、健やかに——」

「社長〜、放送長いっすよぉ〜、もうそろそろ出社させて下さいよぉ〜」

「私もまだ化粧の途中でぇ〜。早くしてくださいよ〜社長〜〜!!」

非難轟々とはまさにこの事か。社員の皆から早くしろ、早く終わらせろと散々文句を垂れられ、
挙句に部長クラスのアルテナにも文句を垂れられる始末であった。

「あのね秀クン、ぶっちゃけ……どうでもいいわよ、その演説」

「……コホン、それでも俺は、めげない、諦めない! 朝礼と言う名の演説は続けるぞッ!!」

「俺、会社辞めたくなってきたわー」

「私もー。なんかもうヤダ。この会社もうヤダ」

俺もいきなり社長を辞めたいと思いたくなる中、今度はアン達に朝食を作ってあげる仕事が待っている。
適当なところで次元放送を締め、まだ眠る娘達の為に朝食を用意するのが丁度七時。
ちなみに朝礼は六時に行い、一時間程長々演説するのである。……やはり、この演説辞めた方が良いかもしれない。

「よし、今日は俺特製の目玉焼きで勝負だ! 上手く割れろよ、俺の卵ッ!!」

卵を一気に一パック、神の力で割ってみせる。今日も二つ失敗であり、まだ思うように使いこなせないかと首を振る。
そうして今度はコンロを使わず、フライパンを熱する訓練である。そうして、半熟以下の生卵状態の目玉焼きが出来上がった。

そこでマールが先に目を覚ます。娘の中では彼女が一番の早起きで、俺が朝食を作っていると、彼女は必ず文句を言う。

「もう、神様となったんでしょう!? なのに朝食の用意なんて、この私に任せてくれないと!」

「え、あ……すいません。つい癖で」

「朝から夜まで色々と動き回って、そのままだと倒れてしまうわ。……心配なの、純粋に」

魔王の紋を持つ娘、そして十三代目魔王で在ったマール・マルグリッド。目つきはちょっぴり釣り目でキツイけれど、娘の中では一番心優しい。
そして何より気配りが出来る。将来、彼女を嫁に出来る男が羨ましいとも思う中、彼女は俺からフライパンを奪い取る。

「目玉焼きはね、やっぱりこうしなきゃ!!」

だが、目玉焼きを>>180にしてしまう悪い癖を持つ少女でもある。

トーストにライドオン

だが、目玉焼きをトーストにライドオンにしてしまう悪い癖を持つ少女でもある。まぁそれ自体は悪くないのだ。
しかし生の食パンに目玉焼きを乗せ、そのままトースターにスライドさせてしまうのは本当にいただけない。

「……頼むから、トースター壊すのそろそろ勘弁してくれないか?」

「あら、そうなればまた神の力とやらで直せばいいじゃない!」

「俺は便利屋じゃないんだぞ! ちなみにトースターを直すのにMPが8も必要だ」

「最大MPはいくつだったりするの?」

「神様レベルが2の為、まだMP24だ。凄いだろう!!」

「ちなみに私、魔王レベル78だからMP696もあるのよね。まだまだね〜」

「くっ、いつか娘達を追い越してみせる……必ずッ!!」

そうしてやり取りしていると、今度は居候中のことみちゃんが目を覚ます。
やはり俺とマールのやり取りを聞き付け、台所のほうへ顔を出しては、眠そうに朝の挨拶をしてくれるのだ。

「ふわぁぁ〜、おはようございまひゅ……ふわぁ」

「相変わらず朝眠そうだね、ことみちゃん」

「んでも、頑張って起きないと……。いつ神様を狙う危ない輩が現れるか分かりませんし、御三家筆頭として頑張らないと〜……ふわぁ」

「ははは、無理しなくていいんだよことみちゃん」

「そうよ、もう少し私と秀様とラブラブ、じゃなくて、イチャイチャ、でもなくて! ゆっくりお話くらいさせてよね!」

「なはは〜、そうでした。マールさんも今じゃないとアンちゃん達に邪魔されて、お話すら出来ませんもんね」

七福ことみ、御三家の談合の結果、御三家筆頭となっては彼女が皆の指揮を司る事となる。
そんな御三家でもまだまだ新米な女の子は、やっぱりどこかのんびりとしており、朝は毎回アホ毛なる寝癖が付いていた。

ぴょんと跳ねている髪に気づき、俺が手ぐしで直してやると、>>184となるのも日課となっていた。

エステサロンへ通う

ぴょんと跳ねている髪に気づき、俺が手ぐしで直してやると、エステサロンへ通うとなるのも日課となっていた。
逃げるように着替えて飛び出す彼女は、何故エステサロンに通っているのだろうと、この時初めて疑問に思うのだった。

「なぁマール、ことみちゃんって、俺が手ぐししてやるとさ、エステ行って来ますぅって飛び出して行くじゃん」

「確かにそうね。……手ぐしやめれば?」

「娘のように愛でたいだけなのに……」

「……あの娘、もしかして秀様に……危険だわ、ぐぬぬ」

「いやいや、あの天然のことみちゃんだぞ、それはない、うん。……好かれるのは嬉しいけど」

「う、浮気はダメなんだから! 秀様は私だけを見てくれればそれでいいんだからぁ〜!!」

「はぁ、朝から相変わらず煩いですね。お早うございます」

今度はノエルが目を覚ます。思ったよりも普通の時間に目を覚まし、普通に挨拶をする彼女は、
やはり普通に朝、牛乳を飲むのである。尚、弓道部に所属する彼女は、この後学校へ向かう予定なのだそうだ。

「今日、朝練がありますので……」

「分かった、トーストを急がせよう。……っと、トースター直さないとな」

「カロメでいいです。あれ、下さい」

「ダメだぞ、朝はちゃんと摂らないと。そりゃカロメが悪いとは言わないが……」

「だって、マールがまたやらかしてるみたいだし、黒こげ目玉焼きのトーストは飽きました」

その後、マールが「何ですってぇ!?」とお怒りになり、それを>>187という一言で一蹴するのもまた日課である。

喝ッ!

その後、マールが「何ですってぇ!?」とお怒りになり、それを「喝ッ!」という一言で一蹴するのもまた日課である。
普段の彼女からは発せられない声で言われるものだから、相変わらず慣れないのだろう。俺もまた、びくっと身体を震わせるのである。

「はぁ、朝からつまらない事させないで下さい。それじゃ、秀さん、マールも、行って来ます」

「ああ、行ってらっしゃい」

「あの娘、ほんと順応してるわよね、この世界に」

「まぁ、彼女らしいかもしれないな。……マールは女子力、高まったのか?」

「そ、その話はやめて! というか、心の中を覗くのはホント、やめたほうがいいわよ!?」

そして朝食が出来上がる。それと同時にメルが目を覚まし、いきなりトーストに齧り付く。
まるで犬のようだと俺もマールも苦笑する。その中であっさり一枚食べ終わる彼女は、もう一枚と手を伸ばそうとする。

「こらこら、メル、その前にいただきますはどうした?」

「えー、そこにご飯があれば食べちゃうじゃん! って訳で、いっただっきまぁす!」

「食べたら歯を磨くんだぞ。マールもきちんとしないと、虫歯になっちゃうんだからな」

「わ、分かってるわよ。……神様になってから、ちょっと小言増えたのよね、ひそひそ」

「そう言えばそうだよね、なんかやたら父親らしくなっちゃったというか、正直ウザイっていうか、ひそひそ」

「聞こえてるぞ、お前等……」

そうして朝の食事が進む中、ようやくお目覚めになるのがアリス。そしてその数分後にアンが目を閉じたまま起き上がる。
アリスは何故か朝起きれば必ずトイレに向かうので、戻ってくると手を洗ったかと尋ねるのも日課となっていた。

「ちゃんと洗ってるから安心して。というか、最近本当に世話焼きよ、秀ったら」

「娘達の世話を焼くのも俺の役目だろう? 当たり前の事なんだ」

「でも、正直>>189

収入がもっとあればと娘は心から思う

「でも、正直収入がもっとあればと娘は心から思うのだわ」

「……月収十二万じゃ、ダメっすよねー。……で、アリス、物欲を感じるのだが?」

「ぎくっ! ……その、ちょっと服がワンパ過ぎて、なんて言うか……」

「まぁ、やりくりしてみよう。後、こっそり寝首掻こうとするのも禁止な」

「ぎくっ! ……それは、なんて言うか……うん、考え直すのだわ」

メルとマールが淡々と俺達の会話をつまみにしては食事を進める中、アリスはさっさと食べ終わっては、ファッション雑誌なんて物に目を通す。
何だかんだでひらひらした物が好きらしい彼女は、やはり俺が神様となった事を余り快くは思ってくれていない。
だが、天野秀だからという理由で、彼女は思い留まってくれている部分がある。いつか彼女に、アルテナと決めた世界を見せてあげたいと思う。

そしてアンは、相変わらずパジャマを着崩れさせ、目を閉じながらトーストが乗った皿を齧るのだった。

「アン、それはトーストではない! ただの皿だ!! つうか歯で割るなよ!?」

「ふみゅ、ふみゅ……あ、そうだった。いけない、私とした事が……ふみゅ、ふみゅ」

「ふみゅふみゅ言って咀嚼しようとするな—— また今日も皿が一枚犠牲になった」

「今日もお皿のお墓立てとくー?」

「そんなのいいから、メルは食べ終わったら後片づけだ! アリスも大股開いて雑誌を読まない! あぁ、もう、アンもちゃんとメシ食え、メシ!!」

「……秀様、見ていて飽きないわ」

そうして慌しい朝が過ぎていこうとする中、アパートの呼び鈴が鳴るのである。
その来客は御三家の一人である、三枝瞳。彼女はマールとお出かけするつもりでやって来たようだ。

「あの、天野さん……マールさん、いらっしゃいますか?」

「そんな畏まらなくてもいいよ瞳ちゃん」

「畏まってるわけじゃなくて、>>191

気持ち悪いと思ってます

「畏まってるわけじゃなくて、気持ち悪いと思ってます」

「……これでも、俺、神様なんですけどぉ?」

「それでも気持ち悪いと思ってます。……根はスケベなの知ってますから……」

どうにも彼女には嫌われている様子なのだが、無理もない。彼女には結構セクハラ気味なハプニングが多かった。
しかしいつか、俺は実は根っから良い子なんだと分かって欲しいものだと応対していると、背後からばたばたと慌てて着替えたマールが俺を押し退ける。

「という訳で、少し帰りが遅くなるかも! 行ってきまぁ〜す!!」

「遅くなるようなら連絡入れるんだぞ! 変なおじさんについて行くんじゃないぞ!」

「もう、何歳だと思ってるのよ!」

何歳以前に、まだこの世界に慣れていないと思うからこそ心配なのだが。と、彼女と瞳ちゃんの背を見送るのである。
それと同時に、アリスもまた外出すると部屋を出る。恐らくトルテと遊びに行くのだろう。

「アリスも帰り、遅くなるようなら連絡くれよな!」

「はいはい、分かってるから。……じゃあ行ってきます……」

そうして残ったのはメル、そしてアンと俺である。俺もそろそろ午後の訓練に入らなければと、ベッドの上で胡坐を掻いた。
知覚を広げる訓練だ。少しでも感覚を広げようと意識する中、また呼び鈴が鳴り、今度はメルが応対するのである。

「はいはーい! あ、やっぱりかがみんだ!」

「やっぱりって何ですの!? そう言えばお父上の秀さんは……瞑想してますわね」

「まぁ日課らしくってさ。じゃあいつものトコ、行こうっか〜! って訳で、行ってくるね〜!!」

気付けばアパートの部屋には、メルも居なくなり、やっぱりゲームばかりするアンと二人きりになる。
静かになったのは良い物だが、この後俺はアルバイトに出掛けなければならない。ふと、アンに切り出した。

「アン、今日の予定は?」

「……ゲーム」

「それ以外は?」

>>193

誰も居なくなってた! 強引に締めちゃいますね

「それ以外は?」

「……ゲーム」

アンだけは相変わらず、友達が少ないのか家で一人お留守番をする事が多い。そして、その間もゲームに夢中となる。
先ず、アンのコミュ障を直してやるのが先決かもしれない。アリスも、姉であるせいか遠慮気味で一緒に遊ぼうともしないし、アン自ら彼女を遠ざける節がある。
そうして、今日もまた一人二次元世界に没頭する彼女を心配に思いつつも、俺はバイト先へ出掛けるのである。

—— レストラン『チェリークロック三号店』は今日も大盛況である。正直下手な肉体労働よりも忙しい。
それが嬉しいかと言われれば否である。そりゃ勿論、暇でお給料を貰えた方が嬉しいものだ。しかし、労働の対価をそこで見出すようではいけない。

「やはり、身体を動かして働いた気分にならなくてはな!」

「何悟っちゃってるのよ、蛆虫」

「げぇっ、相田店長!」

「ネルネルが呼んでるからさっさと行って蛆虫」

そうして店長にこき使われ、ネルネルこと練曲ネルの所へ行けば、突如新メニューが必要になったからアイデアを搾り出せといわれる始末であった。
そんな彼女の大賢者メニューは、若干だがマンネリ化を迎えている。新たな発想が必要なのだそうだ。

「という訳で、何かを考えて欲しいのだが……」

「いっそ、目玉焼きをトースターに入れる勢いで行けばどうだ?」

「何だそれは、何処の阿呆が行う所業だ」

「うちの魔王様がしょっちゅうやってくれるのだが……」

「……ギース様の娘様ともなれば、話は別だ。……うむ、これでいこう!!」

後に、彼女は目玉焼きにアイスクリームを乗せた混沌アイズなんてメニューを考案、微妙に不味いけどハマると評判となるのであった。
そうして今日もアルバイトを終えては、午後十時に帰宅する。そして、娘達におかえりなさいと言われ、ほっこりとしてしまうのだ。

そんな日課は長くは続かない。世界の裏返り化を防ぐ為、そして特異点を通して様々な影響に苦しんでいく人々。
それらから神として、人間として、世界を変えるべく戦う俺と、そして娘達と仲間達。寧ろこれはまだ、彼から言わせれば舞台が整っただけなのかもしれない。

しかしそれでも日常を愛し、それを守り通すべく奔走する。これは、そんな物語の幕開けでもあった——。


———— 第一部 完 ってカンジでどこかでつづきます 

日常パートがつまらないせいなのか、誰も居なくなってた\(^o^)/
個人的には延々とやってもいいくらいなのですが、まだまだセンスが足りないようでしたとほほ。

話的にも案外区切りが良いかもと思って、第一部完ってカンジで締めてます。
次回は……安価で決めて貰う事にします。ともあれ、お付き合いありがとうございましたー。


【05/06 (月) 01:41時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

05/06 (月)
  21:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 正直言うと安価次第


べっちょりっと

どうやら出来ても深夜一時が限界って事で、少し早めに切り上げるようにします。
自分で安価取って締めるとか虚しすぎわろちーな。

今やってる話って、VIP+移転に際に前のヤツを無理矢理打ち切って、急遽こしらえたヤツなんですよね。
よくここまで育ったものです。で、なんかこの辺りで終わらせてもいい気もしまして……。ここらで心機一転も考えていいのかも。

という訳で安価で選んでくださいな。>>198

1:それでも最後まで続けなさい。 十六話 『コミュ障直すし』
2:新しいのやろうず〜wwwwwwww

3.短編やろうず〜



また想定外な事を言ってくれやがりまして。
とりあえず1は保留にしまして、今日くらいは違うのやってみます。

普通に何も考えてないや……。どうしよ。そんな訳でもう暫くお待ち下さい。


—— ネットの回線というのは便利なもので、今日も今日で親友と夜、話し込むことになる。
とはいえ、私は大体聞き手となって、只管物事に没頭する時間が続くのだが、彼女が話したいと言うのだから私も拒否する理由は無い。
ラインを繋ぎ、音声会話を行うのだが、やはり今日も私が口を開くことは無さそうである。

『っていうかさぁ、今日ね、あのハゲ教頭が居るじゃん?』

「……うん」

『あのハゲ、私のスカートが短いって説教するのよ。でも視線がずっと太股に行っててさぁ』

「……それで?」

『もうキモイってレベルじゃ済まないよ! ああ、思い出すだけでサブイボ立っちゃう!!』

「今日の愚痴、終わり?」

『えー、もっと色々聞いてよー。後ね、今日の帰りなんだけど——』

話は一応聞いている。しかし私は作業で忙しい。ネットゲームと呼ばれるその存在で、上位を目指す為にマウスを捌く作業で忙しいのだ。
話し相手となる彼女もまた、愚痴を零しつつ私に付き合ってくれている。これが交換条件のようなものだった。

私に付き合って遊んでくれる代わりに、私が彼女の話を聞いて相槌を打つ作業である。

『だからね、帰りに一万円拾っちゃったら普通ネコババするじゃん? でも私は聖人だから、警察行っちゃったワケ。
 凄いでしょ、聖人過ぎでしょ!? って、ああぁぁぁ!! やられたぁぁぁぁ!!!』

彼女は絶叫し、そして腹が立ったのか物を投げてストレスを発散させていた。
その音をマイクが拾い、私の耳元に届いてしまう。つい繭を顰めがちになってしまった。

「音、結構響くから、やめて……」

『はぁ〜、もう、このオンラインゲームマジクソゲー!! やってらんない!!』

昨今、ガンダムオンラインなる物が流行り、そしてそれを踏まえた某社が製作したロボット物ゲーム。
それがガンオンを上回り、今となってはネットゲームはこれしかやる価値がないと言われるほど普及されたその名は……>>201

ジェイムスン教授ゲーム

昨今、ガンダムオンラインなる物が流行り、そしてそれを踏まえた某社が製作したロボット物ゲーム。
それがガンオンを上回り、今となってはネットゲームはこれしかやる価値がないと言われるほど普及されたその名は……ジェイムスン教授ゲーム。
その教授が、俗にいうMSを製作し、そして新たなプレイヤーにこう言うのだ。

『そこに新しいロボットもといバーチャルマシンが三台あるじゃろう。一台好きなのを持って行き給え』

そう、初っ端はポケットモンスターのパクリなのである。オーキド博士のパクリでもあるジェイムスン教授が、
MSもといバーチャルマシンを開発し、戦争が起こってはプレイヤーは傭兵のように各地を転戦するゲームである。

では何が売りなのかと言えば、勿論グラフィックも素晴らしい。操作性も、アクション感もまるで自分が操作している気分になれる。
人によっては「見える!」とか「踏み込みが足りん!」とサーベルを振り回したりするらしい。

『でさぁ〜、これ、再出撃出来ないんですけどぉ?』

「修理しないと再出撃出来ない仕様だから」

『はぁ〜、もう待ち時間する事なぁ〜い。……あ、そだ、課題もうやった?』

「あんなの自動プログラムに任せてる」

『わー、チートだ、チート女が居るー! ……私にもプログラム、ちょうらい!』

「……このゲームの機体パーツを取ってきてくれたら考えてあげる」

『機体パーツじゃ分からないじゃない。何を拾ってくればいいのよ』

「核ミサイル北朝鮮仕様を十発ほど」

『はい、無理ー。そんなの無理無理ー。……明日の学校サボっちゃおうかなぁ』

2030年、SKYPEは消え去り、LINEが完全に用いられるようになった今、彼女はそれを用いて愚痴る中、
私はひたすらゲーム画面の世界を眺め、そしてキーボードをひたすらに叩き、次々とマシンを破壊していく。

ああ、私ってなんて素晴らしいエースパイロットなのだろう、と自惚れていると……>>207

もっと凄いエースパイロットに襲撃されていた

ああ、私ってなんて素晴らしいエースパイロットなのだろう、と自惚れていると……、もっと凄いエースパイロットに襲撃されていた。
森林からの強襲である。パートナーでもあった話し相手となっている彼女、マユリはもうこのゲーム上には居ない。

「……ごめん、話は後」

『ちょっと何、どうしたのよ。何か問題?」

「相手が凄い強い。単機で私に挑んできた……。ランキング三位のこの私に……!」

『ふーん、あんたが言うのなら相当なのね。そう言えばもう直ぐ大会なんだっけー?」

「だから今忙しいって言ってる! あぁ、バズ喰らった!! 腕持って行かれた!! エネルギーゲージが尽きた!! うわぁぁぁぁぁ!!!!」

『あ、やられたのね、ニヤニヤ』

「誰のせいだと思ってるの、誰の」

『そう怒らないでよ。今度チェリークロック百号店って所でゴッドメニューっていうの、ご馳走するからさぁ」

「やだ、あれ、ぶっちゃけ不味いから。ウェブマネーで許してあげる」

『あんた、どれだけがめついのよ……。友達辞めようかなぁ〜』

俗に言うネットゲーマー。いや、もとい廃人とも呼ばれている私は、いつかプロゲーマーになりたいのが夢である。
ゲームだけで生活できるって素晴らしいじゃないかと、夢に描いた頃から既にゲームは仕事という意識が芽生えていた。
しかし所詮は人間、時にはチートプログラムを用いて悦に浸ろうとも考えた事のある私は、今では反射神経を鍛える事に必死となっている。

「次こそ、あの真っ黒なヤツに勝つ……。その前に、AIM練習しないと……!」

『それよりさぁ〜、たまにはボードゲームとかで遊ばない? 知り合いに呼ばれててさぁ〜』

「やだ。反射神経鍛えたいから—— あれ?」

『どうしたの? ついにパソコンでもご臨終?』

「……妙なメールが来た……。内容は、>>210ってだけ」

反射神経を鍛えるだけじゃ無駄

「……妙なメールが来た……。内容は、反射神経を鍛えるだけじゃ無駄ってだけ」

『やーい、言われてやんのー。で、差出人は?』

「あんのうん……平仮名で書かれてる」

『平仮名って、お茶目なのか、ギャグのつもりか、どっちにしてもキモイといえばキモイけどね』

「……IP探ってくる」

『やめときなさい、最近サイバーが煩いでしょ? この前もウイルス全世界に拡散で大規模被害って遭ったところだし』

「でも気になる。後でまた回線繋げるから」

『はいはーい。といっても、今日はもう寝るから、また明日ね〜』

—— その存在は、ゲーム上でも正体不明として出没し、そして誰にも届かない、圧倒的な強さを誇り君臨するのである。
しかし何故かランキングには乗らず、そのランキング二位のユーザー名おしっこさんも言っている。

『あれは普通の存在じゃねぇ、もっと遥かな高みの……とにかくとんでもない物を味わったぜ……』

今となってはこのゲームが普及し、様々なコンシューマ機からもこのゲームを遊ぶ事が出来る。
とはいえ、コンシューマ機で主に生き残ったのはPS5のみ。そこから接続するユーザーが殆どである。

そんなゲーム名、ジェイムスン教授ゲームが一つの発端となった。私もまた、廃ユーザーとなり、そのゲームに夢中となっている。
その影響は計り知れない。最早一日一食摂るのも面倒だと思うほど、それに没頭する私は、その正体不明を必死に突き止めようとタイピングするのである。

「これじゃない、あれでもない。……何処からなの、コイツ」

困れば困るほど、迷えば迷うほど、独り言が増えていく。情報が頭の中で迷走し、それを整理しようと言葉を紡いでしまう。
そうして必死にその存在を追えば追うほど、沼の深みに嵌るような感覚に陥っていくのである。

そうして、その日にその正体不明の存在から二度目のメールが来るのである。それは……>>213というお誘いでもあった。

ちょっと脳みそいじってみない★

そうして、その日にその正体不明の存在から二度目のメールが来るのである。それは……ちょっと脳みそいじってみない★というお誘いでもあった。
疑問符でもなく記号。星型に何の意味があるのかと、流石に意図できなかった私は、その対象に返信してみる事にした。

『貴方は何者なのですか? どうして私のメアドを知っているのでしょう?』

その日の返事は流石に無く、私は明日を待つ事にした。……明日は学校があるんだと、突然現実に戻ったような感覚。
そろそろ、将来も真面目に考える時期でもあった私は、それでもプロゲーマーになりたいなんて夢を描き、眠りに落ちるのである——。

—— 日は進む。春も過ぎ、夏がやって来た。学校から戻ってはまたジェイムスン教授ゲームを、
そしてまた朝起きて学校へ。また帰宅してはジェイムスン教授ゲームである。それはもう、繰り返しの日々であった。
その間もメールの返信はやって来ず、次第に苛立ちすら覚え出した私は、この日マユリに愚痴ってしまうのだった。

「メールの返事が来ない件について」

『あー、まだ根に持ってるの? でもあの日以来、ゲームに出てきて無いじゃん。あ、新パーツゲットッ!』

「でも、メアドなんて殆ど晒した事無いのに、そこへ送ってきたから……気になって」

『そんなの偶然とか、或いはハッキングされてたとかぁ? またまたパーツゲットッ!』

「……ガチャ運良すぎ」

『ふふん、これで私のミサイラーとしての立場は更に上がったわ。全身ミサイル兵器の完成よっ!!』

「ミサなんて時代遅れ。今の時代はロケット砲一択だから」

『それより、大会ってもう直ぐじゃん、私これで出てもいいかなぁ?』

「まぁ、いいけど……」

ふと、マユリに言われて大会の事を思い出す。第十三回ジェイムスン教授ゲーム世界大会予選。
それに優勝したチームは、なんとネットゲーマーになれるチャンスが巡ってくる。オマケで賞金一千万円が付いて来るが、金なんて二の次だ。

『でもさ、もう一人……三人一組なんでしょ? 誰誘うの?」

「まだ決めてない……」

と、その時またメールが届くのだ。例の正体不明の存在である。『脳みそこねこねすればメアドなんてゆゆー』とか言うものだから、
ぶち切れていっそ氏ねと返信してやると、今度は……>>217

なんでお前はそれがわかった!?

と、その時またメールが届くのだ。例の正体不明の存在である。『脳みそこねこねすればメアドなんてゆゆー』とか言うものだから、
ぶち切れていっそ氏ねと返信してやると、今度は……『なんでお前はそれがわかった!?』とメーラーが受け取るのである。

「マユリ、これ……見てみて」

『うん? 今機体のメンテ中—— って、また結構電波と関わってるねぇ。互いに惹かれ合ってるねぇ』

「私電波じゃないし」

『十分電波ですよーっと。よし、軽機動タイプのミサイラー完成っ。ちょっとバトルフィールドに行ってくるー』

「待って、私も行きたいから」

『じゃ、いつものロビーに集合ねー』

俗に言うチャットロビー的な存在は、最早今時キーボードで文字を打つ人が少なくなり、
今となっては音声会話が主流である。そして、インターネット上に存在する架空のそれらは、現実とは違い軽々しく声を掛けてくる。
マユリのキャラクターはなぜか人気がある。普通の女キャラにしか見えないのだが、魅力的に見えるのだろう。皆が必死でナンパしているのである。

『ねー、もしかしてソロ? なら俺達のクラン入らない?』

『おいおい、先にチームだろ。とりあえず今日一緒にやろうぜ?』

『ぶひ、マユマユちゃんは俺たちが先に声を掛けたんだずら。お前等どっかいけずら』

『ごめんねー、今日も友達とフィールド篭るから、また今度ねー』

その連中をばっさりと一言、そして私の方へ彼女のキャラクターが駆け寄ってくるのである。
何故こんなアバターが人気なのだろう。私もチビキャラをやめてノーマル女キャラにすれば、モテモテなのだろうか。

『んじゃ、いこっか。って、今何か聞こえなかった……?』

突然マユリがそんな事を口走る。このロビーには様々な人が集っている為、雑音が入ってきただけだろうと私は返答。
しかし、そうじゃない、もっとハッキリと、でも聞き取れないような声で……恐らく>>219と言っていたと、不安がるのだった。

ターゲット発見

突然マユリがそんな事を口走る。このロビーには様々な人が集っている為、雑音が入ってきただけだろうと私は返答。
しかし、そうじゃない、もっとハッキリと、でも聞き取れないような声で……恐らくターゲット発見と言っていたと、不安がるのだった。
冗談だろうと私は極力明るめに言ってあげるのだが、その瞬間私も凍りつくのである。

『第一対象と第二対象を目視——』

ジェイムスン教授ゲーム、実はこの物語には様々な背景が描かれている。元は機械化した教授がどうこう、という設定があったそうだが、
今となってはそんなのは只の初期設定に過ぎないと、様々なユーザーが様々な憶測を交え、議論している。
実はこのゲームって将来の俺達の地球じゃないのか、なんて空想を現実と混同させる連中すら居たりする。

ちょっとしたカルト集団でもあるその連中には、極力関わりたくはないとは思っていた。
しかし、その集団は違う側面でこのゲームを分析している事もあった。それは、このゲームに幽霊は存在するのか、という話だ。

度々、ユーザー名が文字化けしていたり、よく分からなかったり、或いはユーザー名が表示されていたとしても、
プロフィール欄に不備があったり、そのアバターとなるキャラクターが半透明だったりするそうである。
どうせバグの一種だろうと、私も、そして大多数は片付ける。しかしカルト集団はこのゲームに幽霊は存在すると位置づけた。

「……マユリ、幽霊って信じてる?」

『幽霊? そんなの居たらお友達になって、カンニングの手伝いとかしてもらってるわよ』

「つまり、信じていない?」

『そうね、どっちかっていうと……居て欲しいって思うタイプかも』

「さっきの声、もしかすると……」

『……冗談でしょ? きっと何かのノイズを拾っただけだって』

もしかすると、以前戦闘した黒い機体も、そして良く分からない謎のメールも、その幽霊だったりするのだろうか。
いやいやまさか、と首を振りモニターを見つめる。そして、ゲームに没頭する為、一時的に全てを忘れようとした瞬間——>>221

ハッキング集団が割り込んできた

もしかすると、以前戦闘した黒い機体も、そして良く分からない謎のメールも、その幽霊だったりするのだろうか。
いやいやまさか、と首を振りモニターを見つめる。そして、ゲームに没頭する為、一時的に全てを忘れようとした瞬間—— ハッキング集団が割り込んできた。
途端、色んなキャラクターのユーザー名が文字化けする。モニターに表示されているメニュー欄全てが壊れていく。

ゲームの世界が崩壊していく。キャラが、景色が、空間が、パネルのように崩れ落ちていく——。

—— ジェイムスン教授ゲームは、再起不能の状態に陥った事が世界規模でニュースとして取り上げられる。
それは夕方のニュースにも大々的に知らされ、皆が驚き、そして不安にもなったようである。
未だに警察は、サイバーテロの一貫だと捉えられたその行為の首謀者を、捕まえることは出来ていない。

それから一ヶ月もの月日が過ぎた。私は家に閉じこもり、学校へも次第に足が運ばなくなっていた。
気力が出ない。生きる気力が、活力が湧いてこない。今までの時間は何だったのだろうと、ふと思う。

「……虚しいよ、マユリ」

「ったく、折角遊びに来てあげたのに、このザマなんだから。しっかりしなさいよね」

「……だって、ジェイムスン教授ゲームが……」

「コレを機に、まっとうな人生を歩めば? 一歩間違えれば将来何も無くなるわよ」

「でも、あのゲームが……大好きだったのに……」

「仕方ないじゃない。開発チームも原因を追求するも不明でお手上げなんでしょ? もうあのゲームは、終わったの」

「……そうなのかな。本当に……そうなのかな」

気がつけば、ふらふらと立ち上がり、パソコンの電源を入れて何度もジェイムスン教授ゲームのアイコンをクリックしていた。
何度も、何度も、その度にエラーが起こり、繋がりませんと表示される。それが受け容れられないと、またクリックするのを繰り返していた。

「ちょっと、アイ、もうやめなさいってば!!」

マユリが私の肩を掴み、抱くようにしては私の動きを止める。しかし、私は既にとある一文に釘付けとなっていた——。

『助けて——脳みそいじいじされちゃう——』

幽霊、それは電子的な妖精なのかもしれないし、説明が付かないことが実際起きているのは事実である。
ジェイムスン教授ゲームにログイン出来た事自体が奇跡である。しかし、周囲の光景は以前の無機質な空間とは違い、>>223という風に変わっていた。

人間たちが剣や魔法で戦うRPG

虹色の空、グロテスクな大地

幽霊、それは電子的な妖精なのかもしれないし、説明が付かないことが実際起きているのは事実である。
ジェイムスン教授ゲームにログイン出来た事自体が奇跡である。しかし、周囲の光景は以前の無機質な空間とは違い、人間たちが剣や魔法で戦うRPGという風に変わっていた。
おかしい、バーチャルマシンは何処へ行ったのだろう。何故私は本来の自分の姿をしていて、おまけに布の服の姿なのだろう。

「……マユリもログインしてみてくれない?」

「そんなの出来るわけ無いじゃない。……にしても、三台もPC持ってて、使いこなせてるの?」

「それくらい私には余裕のよっちゃん。……いいから早く」

「はいはい、ログインログインっと。どうせ出来る訳が—— 出来ちゃったし……」

「ジェイムスン教授ゲームは、ハッキング集団に壊されそうになってる。きっと、何かを書き換えられようとしてるんだ」

「どうしてそんな結論になっちゃったの。そもそもゲームが突然別ゲームになるって有り得るの?」

「普通は無いけど……、でも、助けてって、私にゲームは語りかけてくれた! だから……私は、ゲームを助ける!!」

「ゲームしてゲームを助けるって、正直どうなのよそれ……」

しかしどうにも勝手が違いすぎる。いきなりアクションゲームがロールプレイングゲームとなれば、大体のユーザーは混乱するだろう。
私も未だに受け容れる事が出来ない。しかも、ゲーム画面がどうにも古臭いのである。まるで何かのミニゲームのような作りであった。

「うんと、武器屋で武器を買えばいいのね。……わお、いきなり最強の剣って名前の武器が5ゴールドで!」

「凄く罠っぽい……全財産10ゴールドだし、やくそうっていうのが8ゴールドだし……」

「えへへへ、最強の剣買ってみた! 装備してみた!! ……外せない……。オマケに攻撃翌力、ゼロだし!!」

「罠乙。マユリは放っておいて先に町の外へ出ればいいのかな……?」

そうして、私のキャラクターは最初の町という所から外へ出ようと移動する。すると、>>225

↓でお願いします。というか重い……

そうして、私のキャラクターは最初の町という所から外へ出ようと移動する。すると、ゼリー状のモンスターが現れた。

「どう見てもあのスライムよね」

「というか、これ……昔のネトゲに似てる」

「あー、こういうのあったよねー、所謂クリゲーってやつでしょ? あ、ポーリン倒せた」

「確か……ラグナ○クオンラインとか言うゲーム」

「そうそう、それそれ。でもあそこの会社、パズドラ�っての出して爆死して無くなったんじゃなかったっけ」

「そこまで知らないけど……、ポーリン一匹経験1、次のレベルまで500って書いてる……」

「……マゾゲーやだー、いーやーだー」

確かにこのままでは、圧倒的に時間が掛かりすぎて話にならない。そして、こちらのキャラクターが弱すぎる為、
モンスター一匹を倒すのに一分も費やしてしまう。これではレベルを一つ上げるのに一時間以上掛かってしまいそうだ。

「……どうしよう?」

「どうもこうも……クソゲーだからクリアでしょ、フツー」

「でも、このままだとジェイムスン教授ゲームが戻ってこない……!」

「じゃあ、BOTでもすればぁ〜?」

「そういうのダメ、絶対。……使おうかな……ぼそ」

—— そうしてようやくレベルも一つ上がり、次の舞台に移ってみようとフィールドを移動する私のキャラクターとマユリのキャラクター。
どちらも布の服状態で、見栄えのしないキャラクターである。それも、一日を費やせば多少なりとも見た目が変わっていくのであった。

しかし、一日をこんなゲームに費やした私達は……>>230という状態に陥っていた。

山賊スタイル

しかし、一日をこんなゲームに費やした私達は……山賊スタイルという状態に陥っていた。
NPCを襲う事が出来るらしいこのゲーム、つまりそうして楽しようと考えた私達は、夜を見計らい……キャンプを張るNPCの寝込みを襲うのだ。

『きゃぁぁぁぁ!! 侵入者ヨー!!』

「うるさーい、大人しくやられちゃえっ!」

『ぎゃぁぁ〜やられたぁぁ〜〜!!』

「うん、このスタイル中々良いよね、経験もお金もがっぽがっぽ」

「気になるのが……、この悪行値っていうの。……もう70もあるみたい」

「そんなの無視無視! さぁ、次のNPCを襲うわよぉ! 女騎士マユリ、いざ参るッ!!」

「騎士が山賊、いとシュール」

翌日、何気にレベルは山賊スタイルを確立させたせいか、20を越えていた。この分だとカンストも早そうだと安堵する。
そうして、マユリはまたNPC一行を襲い、私が背後から魔法で援護をするのである。

「ヒーラーなのに攻撃魔法が使えるって、チートじゃない?」

「とある僧侶さんだってニフラムやバギくらい使えるのだから、光魔法くらい使えてもおかしくないし」

「でも、私の剣の一撃より強いってなんかなぁ……」

「じゃあ、装備を変えてみればどうかな。……町に戻って装備を整えてみよう」

—— この時、私もマユリも共に悪行値というのが100となっていた。これ以上は上がらない様子である。
つまり、この時点で私達は悪者だとこのゲームの世界で位置づけられる事になる。

『敵だ! 八つ裂きにしろー!!』

町を守る衛兵に襲われ、四苦八苦しながらも逃走に成功した私達が次に取った手段は……>>234

国王軍と対戦

町を守る衛兵に襲われ、四苦八苦しながらも逃走に成功した私達が次に取った手段は……国王軍と対戦である。
しかし、町の衛兵にすらやられそうになる私達が、その連中に勝てる筈が無いのであった。

「げっ、私のHP、もう20しかないんだけど!!」

「早く逃げて! 死んだらキャラデリすらありえそうだし!!」

「えええっ! 二日も掛けてここまで育ったのに! こ、こうなったらスキルの……ボーリングするの? これ」

「ボウリングバッシュ、とある範囲に強大なダメージを与えるみたい。……死ぬ前にやってみれば?」

「よおっし、じゃあ……ぽちっとな!!」

『ぬわぁぁぁぁぁーやられーーーたぁーーーー!!:』

「……うわ、何これ強い。チートじゃない!」

「但しスキルポイント、殆ど残ってないっぽい。暫くは休んだほうが良さげ」

—— そうして、気付けば私達は目的を覚えていながらも、実は忘れている時間が過ぎていくのである。
とうとう私もマユリもカンストだと思えば、レベルは実は99ではなく、最大9999まで存在する事に絶望したり、
最強スキルだと思っていたボウリングバッシュも実はゴミスキルで、ガーターラッシュとかいうスキルのほうが強かったとオチを得たり、
更に魔法を撃ちすぎてキャラクターが壁にハマり、暫く出られなくなるという悲しい経験もした。

「けど、とうとう来たわね……。二週間、長かった……!!」

「まさか、ラスボスが国王が大魔王に変化したという設定だとは……」

「ちなみにこの大魔王、美少女らしいわよ」

「……ならば、犯るしかない」

しかし、いざ勇み入ったその城の、最後の最後の扉を何をしても開くことは出来ないのだった。
キーアイテムも揃えているし、何の不備もない筈なのにとアイテム欄を睨み、疑問に思う。

「ねぇねぇ、困ったときはGMスイッチ押してみない?」

「……ジムスイッチ?」

「ゲームマスターをコールするスイッチよ! ……ま、押してみるね。ぽちっとなっ!!」

マユリが勝手にこのゲームにバグがありますと、GMスイッチを押した途端>>236

世界が止まる!

マユリが勝手にこのゲームにバグがありますと、GMスイッチを押した途端、世界が止まる!
PCも止まる! フリーズオンラインの始まりである。

「ちょ、ちょっと!? なんで動かなくなるの!?」

「マネージャも起動しない……、電源押してもPCが起動しなおせない……!?」

「も、もしかして……パソコン、壊しちゃった……?」

「……マユリぃ……」

「ひぃっ、ごめん、ごめんなさい!! パソコンは買って返すから!! チェリークロックでメイド服着てバイトしたら時給1200円だから、それで頑張るからぁ!!」

「……この文字……なんだろ……」

「へっ? ……画面に直接指で触れてね?」

完全にフリーズ状態となったと思われるパソコンが大きく音を鳴らしたと思えば、文字が突然現れる。
普通のフォントを使われたその黒い文字。そして直接指で触れてね、と書かれたそれに、マユリが恐る恐る触れてしまうのだった——。

—— 謎機能であり、恐ろしいともいえる機能である。私も、マユリも、今となってはこのロールプレイングゲームのキャラクターになりきっていた。
腕を動かせば、直接腕が動かせる。足を動かそうとすれば、勿論足も動かせる。キャラと感覚が完全にリンクされている。
というよりは、最早そのものとなっている。マユリは最初こそ凄いとはしゃいでいたのだが、今となっては帰りたくてどうしようもないらしい。

「ねぇ、どうしたら戻れるの、私の元の身体はどうなってるのよぉ!!」

「分からない……。もう一度GMスイッチ押してみたけど、何も起こらないし……」

「やっぱり、ゲームクリアするしかないのかなぁ?」

「……じゃあ、ぱっぱと美少女大魔王を倒してこよう」

そうして扉を開く。何度クリックしても開かなかった巨大な鋼のような扉は、私が直接軽く押すだけで動いてしまうのだ。
それは轟音を立てて開かれ、そして奥に鎮座していると思われる国王もとい魔王が、私達を見据えていた。

しかしその魔王、実は……>>239であった。

どこにもいない

しかしその魔王、実は……どこにもいないであった。マユリはあれ、と首を傾げている。
私は魔王が居たと思われる付近を調べてみる。巨大な椅子が在り、周囲は松明で照らされた空間。

「……椅子の裏に、隠し階段が……無い……」

「そんなのある訳ないでしょ!? でもこれ、冗談抜きでどうするの。クリア不可能状態じゃないの!!」

「じゃあ試しにもう一度、GMスイッチをぽちっと—— なにも おこらなかった ようだ」

「もうだめ、私、ゲームの中で死ぬんだわ。せめて最後に彼氏くらい作っておくんだった……!!」

その城の中で完全にお手上げ状態となった私とマユリは、その場所で多大な時間を費やす事になる。
流石にやる事の無くなった私は、ついには松明片手にダンスの練習に励む事となり、壊れてしまう。
それを見たマユリは、最早笑う事も忘れ、怒る事も忘れ……、呆然と私を見つめているのだった。

「……うん、ステキ、とっても、ステキネ」

「ふふ、あははは、松明リンボーダンスはさいっこー、あはははは!!」

「……ノド、かわいてキタワ。アハ……」

「わーい、わーい、りんぼー、りんぼーっ!!」

しかしこれが儀式となり、まさかその存在を降臨させられるとは思いも寄らなかった。
突然城の上空、屋根すらものともせず降りてきた存在は、真っ黒な騎士のようにも見える。
直感だった。なぜかコレと、以前戦った事がある。そう、ジェイムスン教授ゲームの中でだ。

「…………」

その黒騎士は、無言で私に斬りかかり、そして……>>241

ランカーの黒騎士に袋にされた

その黒騎士は、無言で私に斬りかかり、そして……ランカーの黒騎士に袋にされた。
黒い機体同様の動き、そしてその動きに翻弄され、火器兵器ではなく、剣で滅多打ちにされた私のHPはほぼゼロとなっていた。

視界が真っ赤となっている。エマージェンシーを知らせているその色の中、黒騎士がゆっくりと私へ歩み寄る。
このまま、むざむざと殺されてたまるかと、光の攻撃魔法を放つも、与えるダメージは0と表示されるのだ。

「…………」

このまま殺されれば、私はどうなるのだろう。死んでしまうのだろうか、それとも消滅してしまうのだろうか。
現実世界に身体が残っているのならばまだ、悲しんでくれる人も居るだろう。しかし、消滅してしまえばどうだろう。
何もかもが消えてなくなる。私の費やした時間も、私が過ごしてきた思い出も、そして私自身も。

初めてそこで、本気で死にたくないと願ったのだ。そして、助けを求めたのだ。

「いや、やだ……死にたくない、マユリ、助けて!!」

手を伸ばす。マユリは身体を震わせ、ただ座り込んでしまったまま、動いてくれない。
剣も遠く離れた場所に転がっており、彼女が今から急いで剣を拾い、私を助けてくれようと動いてくれたところで、最早間に合わない。
既に黒騎士の禍々しい剣が私を貫こうと振り上げられている。そのまま下ろされてしまえば、私は終わりだ。

「やだ……やだぁぁぁぁ、死にたくない、死にたく———」

ずさっ、と音がした貫く音がして、私は息絶えたのだろうと目を閉じる。終わった、私のゲーマー人生は完全に終わってしまった。
しかし、音が聞こえる。息が吸える。そんな不思議な感覚の中、私はまた目を開くのだ。

「……なぁ、本当にこんな奴等を仲間に引き入れるのか?」

その黒騎士の声を初めて聞いた私は、きょとんとした顔をしていたのだろう。突如黒騎士の隣に現れた存在が、私を見て笑っていた。

「だってだって、こうして電脳空間に適正があるんです。使わない手はありません!」

その存在は、カルト集団が言っていた幽霊と呼ばれる存在だった。フェアリーにしか見えないそれは、気付けば私の肩に乗っている。
そして、黒騎士が剣を捨てては、私に手を差し伸ばして言う。

「先ほどは済まない。以前から君を見ていた……。だから、>>244

仲間になってくれ

「先ほどは済まない。以前から君を見ていた……。だから、仲間になってくれ」

ロールプレイングゲームのような風景は崩れていく。そして、気付けば他にユーザーの居ないあの懐かしの光景が戻っていた。
ジェイムスン教授ゲームのロビーだ。しかし、今の私はその中の空気を、存在を肌で感じ取れている。
不思議な感覚だった。まるで現実にこの世界にやって来たと思えるその場所で、私は気付けばその騎士の手を取ってしまっていた。

「……はい」

「そっか、仲間になってくれるか。大仕掛けを打った甲斐があったなぁ」

「と言う前に、せめて……説明して」

「っと、すまんすまん! おーい、デンデン、説明してやってくれ!!」

「はいは〜い、電脳妖精一号機のデンちゃんが説明するですよ〜!!」

「……これ、やっぱり敷き紙もとい式神じゃなくって、妖精だったんだ……」

「は? 今何を仰いました? あんな古臭い本に眠ってる腐れ式神と一緒にしないで欲しいですよ」

2030年、インターネットは更なる普及を見せ、既に当然のように皆が扱えるその空間。
しかし、様々な出来事がその空間を練り歩き、そして問題を起こしては現実の人々を苦しめる。
それはある種の書き換えと呼ばれるハッキングでもあり、それを防いでいるのが黒騎士、そしてこの電脳妖精なのだそうだ。

「つまり、そうした電脳組織を結成しているのですよ〜。この人と共に」

「うんうん、つまりそういう事! いやぁ、俺も実はまだ良くわかってなくてさぁ」

そこで黒騎士の兜を初めて脱いだ彼を見て、私は>>246

ログ読み込んでくれない…。というわけで↓で…

そこで黒騎士の兜を初めて脱いだ彼を見て、私はいかにも黒騎士な顔なので爆笑。
笑いが止まらない私は、何故笑われているのか不思議がるその彼を見て更に大爆笑。

「アハ、アハハハハハハ、しげってる、しげってるぅアハハハハハッ!!」

「……なぁデンデン、なんで俺、笑われてるんだ?」

「兜を脱いでもまだ兜だったってオチだからなのですよ。つまり貴方は不細工極まりないのですよ」

「……だから俺、電脳世界しか愛せないんだよ」

「そこで笑われてるのですけどねー、にしし」

しかしマユリだけは違う、それまで呆然としていては話を聞いていた彼女だったが、彼の顔を見て反応が変わるのだ。
突如恋する乙女のような視線となった彼女は、その黒騎士の手を掴んで、言うのだ。

「わ、私も、な、仲間にして! 私も一緒に……電脳空間を、救ってみたい……!!」

「へ? あ、ああ……、お、おけ……」

「彼、手を握られた経験すら無かったのでドキドキしてるのですよ。初体験脱童貞、よかったのです」

「手を握られただけだ! ……で、でも、う、うん……、やっぱり人って、いいかも……?」

「アハハハハ、手を握られただけで感動してるしげるとか、アハハハハハハ!!」

「……デンデン、俺、こいつだけは許せない、やっぱりデリートさせてぇ」

「ダメなのですよ、彼女は大事な戦力、ううん、寧ろ彼女が居なければ——」

—— 電脳空間は広大だった。様々なURLから無限に築き上げられる世界、その場所を私達は漂い回る事になる。
私達は、主にゲーム関連に携わる事となり、主な仕事はジェイムスン教授ゲームを守る警備業務となる。

そうして、時は過ぎ、ジェイムスン教授の大会に私達は三人でチームを結成、出場しては……>>250で終わる事になるのだった。

オンゲの世界で一生

そうして、時は過ぎ、ジェイムスン教授の大会に私達は三人でチームを結成、出場しては……オンゲの世界で一生を終わる事になるのだった。

最期なんてあっさりとしたものだ。決勝に出た際どうしても勝ちたかった私は、その身をこのゲームに委ねる。
そして、どうしても勝ちたいと焦った動きは、相手の的となってしまい、次々と被弾。
後にマユリ達に庇われながらも、私の機体は完全に爆発、後に私の意識もすっ飛んでしまうのだ。

人間としての私は、そうして人生を終えた。終わってみると、あ、こんなものだったのかという感覚が強かった。
そうして羽を生やした妖精となった私は、今ではマユリのサポートの役割を担っている。

「……六時の方向、ウイルス二十匹。中型タイプの模様」

「はいはい、じゃあぱっぱと片付けちゃいますか。それにしても……あんたが妖精って、やっぱり気味が悪いわ」

「だって死んでバッドエンドだったもの。それでもこうして生きてる方が不思議」

「ま、それもそうね。私も、こうしてまだ話が出来るだけ、幸せなのかも……」

「もしかして、ちょっとは悲しんでくれた?」

「ん、まーね。一応泣いてもあげたんだよ。さ、それよりも敵のおでましよ、気合入れていくわよッ!!」

「……ありがとう」

「……何か言った?」

「別に、なんでも」

マユリはそうして電脳空間の、ジェイムスン教授ゲームを守る業務を果たす為、剣を携える。
ミサイラーは既にやめたらしい彼女は、今では近接メインという行動を取っており、良く私を冷や冷やとさせるのであった。

それは、想像以上に過酷な業務。しかし、ウイルスに侵食されたモノは、削除され消えてなくなる運命。
運命を防ぐ為、私は、そしてマユリは、今日も二人コンビを組んでは立ち向かうのだ——。


———— ういるすばすたーず おわり

乙!

という訳でなんだかちょっぴりバッドエンドっぽいですが、終わりますー。
そういや途中、ROで騎士キャラ70にしてたっけなぁ、とか思い返しておりました。マジバッシュゲーwwwwwwwwww

やっぱり大人しくホラーっぽいのをしたほうが良かった気もしますが、ともあれお付き合いありがとうございましたー。


次からやっぱり大人しく完結させる方向にします。バスケ物復活させようと思ってたのですがやっぱ微妙ーとか思っちゃいましてはい。

バスケ物とかまた懐かしいものを…

【05/07 (火) 00:19時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

05/07 (火)
  20:00〜22:00/ネルシト氏 - 何も考えてない
  22:05〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 何も考えてない第十六話 『勇者、コミュ障直します』


>>255
正直色々やり尽くしてネタが無くなっておりましてはい……。
前の探偵モノリメイク復活させちゃおうかなぁとも……。

はじめまして。今回むりやり小説ゲームにデビューすることになりました。お手柔らかに。

今までの説明は知ってると思うのでパスします。

ではタイトルと登場人物を

タイトル『こいつ誰だよ!』

登場人物紹介

【木下 蔵吉】
三流大学生だが、あまり授業には出ない。ほぼ引きこもり状態。

【織田信長】
自称。本物かどうかは全く不明。ただの春になると出てくる人かもしれない。

それでは、もう少しお待ちください。

俺は、こいつをどうしようかと思って悩んでいる。早朝に俺をたたき起こしたオッサンは、よりによって信長だと名乗りやがった。
どうやら俺の名前を読み間違えてサルの秀吉だと思っているらしい。

織田信長「サル。どうした浮かぬ顔して」
木下蔵吉「おれはサルじゃねー!」

よく考えたら戦国時代の人間にタメ口をきくと何があるかわからない。が向こうさんも非常事態だと認識してるのかおとなしい。
本来なら、名古屋弁がうるさいのだが、面倒くさいので標準語で書く。

木下蔵吉「だいたい織田信長というなら、なんだその服装は?」
自称、織田信長は>>259 を着ていた。

意外と安価とちるな↓で

なまはげっぽい衣装

木下蔵吉「だいたい織田信長というなら、なんだその服装は?」
自称、織田信長は、なまはげっぽい衣装を着ていた。

織田信長「いやこれはだな。怪しまれないように変装して」
木下蔵吉「余計怪しいわ!」
とりあえず気を落ち着かせていきさつを聞くことにした。たぶん『ドリフターズ』みたいな話を聞かされることになると思うが。

織田信長「やっとかめで、ここに着いた時。周りの人間が、わしを見て笑うのよ。よく見たら皆けったいな服を着てる。それで近場をうろついていた人間に小判を見せて、服をもらったのじゃ」
木下蔵吉「そうじゃなくて、本能寺から後を話せっ!」

だいたい。なんでなまはげ姿の二人組がうろついているのかも謎だった。おそらく近所の県人会でなまはげ同窓会でもあったのだろうと強引に思い込む。
織田信長「わしが寺に寝泊りした頃。胸騒ぎがして眠れず森蘭丸と・・・>>265

ksk

バンブーダンス

二人でひたすら桃鉄を

織田信長「わしが寺に寝泊りした頃。胸騒ぎがして眠れず森蘭丸と・・・二人でひたすら桃鉄を」

木下蔵吉「おいこらおっさん!おかしいだろ?」
織田信長「キェエエエエエーーーーーーッ!うつけ者めがあああああああ!」

頭のおかしいオッサンだと思っていたら急に天を突くような大音声で叫んだので、鼓膜がジンジンしたよ。近くに住んでる大家に知れたらまずいので、ひたすらなだめた。
木下蔵吉「信長殿落ち着いて、落ち着いて」
織田信長「恐れ多くも、六天大魔王様に向かって、おいこらとは何だ!」

自分の名称を間違えてるっぽい。魔王?だいたい桃鉄ってなんだよ。ファミコンのゲームじゃないかと言おうとしたら。

織田信長「桃鉄が、気に入らぬのか」
木下蔵吉「当たり前だ。桃鉄というのは・・・」
織田信長「桃鉄というのは、太ももを鉄のように硬くなった●ン●ンでつつくという男色のたしなみじゃ」
木下蔵吉「紛らわしい呼び方すんな!」

という風に腹の立つオッサンであったが。話を聞くとどうやらこちらの言葉でタイムスリップしてこの世に来たらしい。
SS界隈では散々手垢のついた設定でもある。

織田信長「一つ尋ねたいが・・・>>267はどうしてる?」

いつも夕飯

急に神妙な顔つきになって尋ねたから、こちとらてっきり信忠の事だと思ったら、意外な内容。
時間はいつの間にか8時、朝食を食べていい頃だった。

【業務連絡】
急用が入ったので15分ほど中断します。

了解ー

【再開】

しかし、何故に夕飯なのか・・・?

それが不思議だったが、腹が減っては聞き取りもできぬというわけで朝食の準備に取り掛かる。
いつも朝ごはんはコーンフレークの牛乳がけにヨーグルトと決めている。
ただこの献立は、戦国時代人にはどうだろうと思っていると・・・。

織田信長「これは・・・>>271

兵糧にしては弱すぎる!

織田信長「これは・・・兵糧にしては弱すぎる!」
木下蔵吉「当たり前だーっ!だいたい今どことも戦争していない!日本は平和だ」
織田信長「何やら四角い箱の中で、人が戦争前だとしゃべっておったがのう。さて?」

ふとテレビをみると刈上げの某将軍様が偉そうな態度で画面に映っていた。
ここで、北朝鮮情勢やら中東情勢を知らせると、このオッサンが本宮ひ●しの漫画『夢幻のごとく』の展開になりそうなので、電源を切った。

とりあえず、コーンフレークを一口すすめて黙らせようとした。

木下蔵吉「いいから騙されたと思って食べてみなよ」

織田信長は匙でコーンフレークを口に入れると・・・>>273した。

「これは…食の天下統一!」とか言い出

織田信長は匙でコーンフレークを口に入れると・・・「これは…食の天下統一!」とか言い出した。

織田信長「こんな旨い物がこの世の中にあったなんて・・・デアルカ」

やっぱり戦国人は今の食べ物に弱いと思って一安心し、ちょっといたずら心が芽生えて、他の食材も試したくなった。

信長は水車のようにケロッグを口に運んでいる。俺はお菓子の箱からうまい棒を出してみせた。

織田信長「なんじゃそれは、乾いたちくわのような面妖な食べ物じゃな」
信長は、うまい棒を口に入れると・・・>>275

安っぽい味だと文句を垂れた

信長は、うまい棒を口に入れると・・・安っぽい味だと文句を垂れた。

残念ながらコンソメとコーンパフの微妙なハーモニーは戦国時代人には早すぎたようだ。

信長はコーンフレークの箱を長々と見つめていて物ほしそうだった。

俺はこの後の予定を考えていた、久々に大学に出ようと思ったがこのオッサンを放置するわけにも行かず。放置すれば必ずやトラブルを起こすであろうことを考えると頭が痛くなった。
今思ったのだが、彼は武士の魂でもある刀をどこに置いたのだろうか?なまはげ衣装の中には刀らしい物はなかった。
その点を信長に聞いてみると・・・。

信長「刀かぁ、刀は・・・>>277

銃とかあるし、正直もういらないかなーって……

信長「刀かぁ、刀は・・・銃とかあるし、正直もういらないかなーって……」
蔵吉「でえええええああああええええええ!」
信長「何を驚いているのじゃ」

俺はあまりのこだわりのなさに全身の力が抜けた。刀は武士の魂のはずなのに、こいつは・・・・。
いやその前に、本物の日本刀を手に入れた元なまはげの二人組みは、さぞや金儲けをしたに違いないと思うと悔しくて・・・・。

蔵吉「あーあーもったいない」
信長「サル、これからは種子島の時代じゃぞ」
蔵吉「いやそうじゃなくて、あれを売ったら大金に・・・」
信長「刀なんぞ安いもんじゃ。わしにはこのお宝がある」
と見せてもらった風呂敷包みの中には、>>279

玉手箱

信長「刀なんぞ安いもんじゃ。わしにはこのお宝がある」
と見せてもらった風呂敷包みの中には、玉手箱。

蔵吉「お前は漁師の子倅かぁーっ!」
と思わず玉手箱で信長の頭を叩こうかと思ったが、二人してジジイになるのが怖いのでやめた。
信長「そしてこの中身にはお宝の・・・」
蔵吉「わーっ開けるんじゃない!」
だが、時はすでに遅し、開けられた箱の中には、何やら古そうな筒と、色の付いた小粒がざらりざらりと溜まっていた。
信長「こちらは南蛮渡来の遠眼鏡。こっちは甘い甘い金平糖」

アホだ。やっぱり戦国人はアホだと俺ははっきり思いました。望遠鏡なんてそこらじゅうに売ってるわ・・・。まてよ、あの時代の望遠鏡でも売れば・・・・と思ったら。
信長「あら、この遠眼鏡、>>281

火事がよく見えるわい

信長「あら、この遠眼鏡、火事がよく見えるわい」

その方角はもしや大学・・・イ!とおもって遠眼鏡の先を追ってみれば、何もない。
信長の遠眼鏡をひったくってレンズを見たら、なぜか赤い色に塗ってあった。

信長「たわけ者めが!南蛮商人に騙されたわ!」
俺はこのやれやれな、隙だらけの六天大魔王こと織田信長をどうするかで途方にくれた・・・。

(多分続かない)

いやー初めてなんで緊張しました。口から胃が飛び出しそう!私のつたないSSに付き合っていただいてどうもありがとうございました。
この後は、もっともっと上手い人が登場します。お楽しみに。

(予定のめどがないのでこのまま一旦終了)

乙!

【05/07 (火) 00:19時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

05/07 (火)
  22:05〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 何も考えてない第十六話 『勇者、コミュ障直します』

お疲れ様ですん。最初は緊張で必死になっちゃうんですけど、慣れると安価次第では本当に楽しくなりますよん。
コンゴモ キタイ シテマスヨ?

という訳で、誰かの後でやるなんて本当に久しぶりになるのです、ちょっと感動です。
昔は予約すら中々取れずなくらいでしたが、あの頃にいつかは戻るのかー!?

ではもう暫くお待ち下さい。


でもそういや、自分がやる頃には誰も居なくなってたなんてオチ、よくありました……。

登場人物はやっぱり>>55見てねって事で……。


〜〜これ何の物語なのか産業で〜〜

神様見習いになった主人公が修行しつつも、娘達と共に世界を変えようと頑張ります。
大体ラブコメしています。しかし主人公は立場的に余り見向き出来ません。
時々シリアスカオスとこんにちは。ロリコンさん、いらっしゃい。

———— 勇者なムスメ 第十六話

世間的には夏休みと言われる八月、友達の居る子供達は、大体その有余る時間を友達と過ごす事になるだろう。
俺もまた、昔はゲームっ子でもあり、知人を招いてゲーム大会を開催したりしたものだし、
祭りにも必ず参加している、割とコミュニティ能力にも長けた少年であった。

そんな自分が捻くれていったのは、高校生くらいからだろう。中学生で徐々に現実と言うものを見せ付けられ、
高校生の時に現実に圧し潰されそうになる。こういった思いを抱いた学生は、意外と多いのではなかろうか。

その一人でもあった俺は、中学でその当時の同級生、川下浅海に恋をしては、自分を保とうと大々的に悪戯をする。
皆が茶化しては、俺はにやにやと勝ち誇る。そして川下は文句を言っては俺に掴みかかる好戦的な少女。

しかし高校生となり、彼女に想いを告げられず離れ離れとなった俺は、その影響もあり寡黙な少年と成り果てた。
世の中、何だか思い通りに動いてくれない。そう思うようになり、そんな自分が今となっては恨めしいとも思う。

「……しかし、これで夏休みほぼ連続か」

「…………」ピコピコ ピコピコ

「……最近ではDSばかりしておるこの馬鹿娘を、いよいよどうにかせねば……昔の俺みたいになってしまう」

「…………」ピコピコ チュドーン

「宜しい、今日は俺とアンしかこの家に居ない午後の昼下がり、ある決断を神である俺は行う!!」

「…………」チラッ

「先ずはアンにお友達を増やしてあげよう大作戦だ。出来ればこれには彼女達の協力が欲しい。だが……その前に……」

「…………」スッ

アンは、八月に入ったというのにも関わらず、ひたすらにゲーム三昧。とにかくゲームであった。
まだオンゲに手を出していないのが救いだが、ひっそりと彼女は携帯でソーシャルゲームに手を出している事を俺は知っている。
このままでは友達要らずとか言って、実は寂しい人生を送る事になると危惧した俺は……。

「だが、その前に……! アンに>>289を教えないとお友達が出来ないだろう!!」

ソーシャルスキルトレーニングとマジレス

「だが、その前に……! アンにソーシャルスキルトレーニングとマジレスを教えないとお友達が出来ないだろう!!
 おっと、マジレスは要らないな。改めて——アンにソーシャルスキルトレーニングを教えないとならないだろう!! おお、俺って頭良さそう!!」

「…………」ピロピロリン

「よって、早速……待てよ、具体的に何を教えればいいんだ? ぱっと思い浮かんだだけでよく分からないぞ。
 こういう時は次元ネットワークを用いて誰かに情報を求めるしかない。……社員、社員はおらぬかぁぁ!!」

『シャインハ タダイマ ゼンイン アナタヲキョヒシテオリマス』

「がっでむ!! おのれリストラを決定させてから随分態度を硬化させおって。再就職先まで融通してやってるのに!!
 ええい、ならば……教えてグーグル先生!!」

『ただ今このURLは問題により表示できません』

「じーざすっ!! グーグル先生まで死亡だと!? これは罠か、何かの陰謀かぁぁぁ!!!」

「…………」テレッテッテッテー ジュンペーハレベルアップッ

「こうなれば……ネルネルに教えを請うしかない。携帯、携帯はいずこぉぉぉ!!!」

「…………」ウワッ ウザッ!!

「……携帯のアンテナが立っていないのである。コレはどう言う事なのであるか。うむ、分からないのである」

ベッドの上で腕組みして考えてみる。もしかして、最近混線が混線を呼んで、回線が死んでいる?
それともただのメンテナンス関連の具合で、たまたま繋がらないだけだろうか。

座して待つしかない。しかし、このままだと折角の時間が勿体無いと、俺はアンに声掛ける。

「なぁ、P3P、そんなに面白い?」

「…………>>292

実際闘う相手がいないから、これしかない

「…………実際闘う相手がいないから、これしかない」

「お前は何と戦いたいんだ……」

「強い敵、ラスボス、神、絶対神、天野秀とかいう人」

「……俺、まだレベル3なのでバトルはやめてね」

「だからゲームの中で戦ってる。……私、最近レベルダウンしたから、今98しかないし」

「レベルダウンって要素、あったんだ……。というかお前レベル99だったんだ……」

彼女は、娘として迎え入れた内の最初の娘でもあり、一番特殊な雰囲気を持つ少女でもあった。
この世界でゲームと出会い、ゲームに没頭するようにはなっているが、それ以外には興味を持たないのである。
かといって、何もやらないわけではない。孤島へ旅行に出向いたときは、何気に元気にコカトリスを狩り、リアルモンハンを満喫。
そして海に浮き輪を用いて出ては、結局溺れてバナナボートに救われるという事もあったりした。

つまり、切欠さえ与えてやれば彼女はそのように動くのだ。その切欠が、どうやら俺との暮らしの中で薄いのだろう。

「……アン、今日はマール達も友達の家に行くとかで、当分帰ってこない」

「知ってる……」

「だから、二人で出かけようか。ちょっと遊びに」

「…………!?」

アンはゲーム機を投げ捨て、俺にくるりと振り返ってきらきらとした眼差しを向けていた。
あれ、案外誘えばこんな風に反応してくれるのか? と、想定外だった為、ついたじろいでしまう。

「私、行ってみたい場所があるの。夏と言えば……そしてこの時期と言えば……>>294! そこで闘いたい!!」

クーラーがガンガンに効いたゲームセンター

「私、行ってみたい場所があるの。夏と言えば……そしてこの時期と言えば……クーラーがガンガンに効いたゲームセンター! そこで闘いたい!!」

「……最近、クーラー解禁させてるじゃないか。不満なのか?」

「リモコン温度28度。冷房のくせに28度」

「こ、これが節約術というものだ! しかしそんな無駄知識だけはすっかり得てしまったんだな……」

「だから、クーラー、クーラー浴びて闘いたい」

「わーった、わーった! ……しかし、折角だからあそこへ行ってみようか」

「……あそこ?」

—— そこは、電車で揺られて一時間、正直言えば結構な距離がある。そして、そこはとてつもない数の人間が闊歩しているのである。
何せ日本で最大の都市でもある東京なのだから。人が居ない方が不気味な訳である。
そこの秋葉原と呼ばれるオタクの聖地、そこに最近超巨大なアミューズメント施設が出来たそうなのだ。

ゲームも出来て、アトラクションも揃っている。レストランも多数あり、グルメパークとしても有名となりつつある。
将来、チェリークロック四号店をそこに展開したいという噂を聞いたが、果たしてそれは実現するのだろうか。

そんな場所にやって来た俺は、あちこちをきょろきょろと眺めるアンの腕を引き、早速中へ入ってみる事にした。

「……ふわぁぁ……」

「おい、アン、驚くのは良いんだけど……涎垂れてる、涎」

「……ここが、ゲームの聖地……。見たことの無いのが、いっぱい」

「良いから涎拭け、涎」

かくいう俺自身も、この場へは初めてやって来た。その為興奮を隠せないでいる。
だが娘の手前もあり、一応大人の、そして紳士たる父親として振舞わなければと必死になるのだが……。

気付けば俺が>>296に夢中になっていたのだった。

ポピュラスみたいな神様ゲーム

気付けば俺がポピュラスみたいな神様ゲームに夢中になっていたのだった。
実際はRTS風味でもあるのだが、グラフィックが懐かしく、これは面白いとレバーをガチャガチャと動かしてしまう。
傍から見ていたアンは、早く自分の好みのゲームがしたくてうずうずとしていた。そして、次第に彼女は苛立ちを見せ始める。

「……むー」

「ふほほっ、しかもこれ対戦まで出来るんだな! よし、今度はこいつとバトルだ!!」

「…………」

「こ、こいつ……出来る、強いぞ! 神殿の建て方が半端ねぇ! うお、カミカゼラッシュとは卑怯な!!」

そうしてかなりの時間、アンを放ってはゲームに夢中となっていた俺が、ふとアンに振り返って気付く。
あれ、あいつの姿が見当たらない。何処へ行ったのかと持たせている携帯に繋げようとする。しかし……。

『現在、この電話はお使いになれません。詳しくはWEBで!!』

「……携帯使えないのって、金払ってなかったせいなのか……」

そのアミューズメント施設、四階まで存在するその場所のフロアの広大さは、東京ドーム二つ分である。
つまりそれが四層あるのだ。そこでアンが迷子とか洒落にならないと、途端おろおろとしてしまう。

「アイツ、絶対こっちに戻って来れないぞ……どうする、迷子お呼び出しセンターでも使おうか……或いは……」

一先ず冷静になろうと深呼吸、そして、神の力を用いてアンを捜し出せないか、という結論に至る。
基本的に私利私欲の為にこの力を用いることは禁じようと思っているのだが、今回は修行も兼ねて、その視力、聴力を広げてみせる。

だが、余りにも多すぎる人と、その声。結局アンの姿はこの程度では見つけ出す事が出来ないでいた——。

—— 一人でゲームばっかりしてずるい、と、気付けばあちこちをふら付いてしまっていた。
見る物が何もかも新鮮、そして、どれも楽しそう。煌びやかな音と色が私を出迎えてくれる。

「ここは……格闘ゲームコーナー?」

偶然なのか、私を闘いが呼んでいるのか、気付けばそんな場所に迷い込んでいた。
折角だから少し遊んでみようかな、と、色々並ぶゲーム機、そしてプレイする人々を見ていると……>>298

ウメハラが混じっていた

か、勝てない…!

偶然なのか、私を闘いが呼んでいるのか、気付けばそんな場所に迷い込んでいた。
折角だから少し遊んでみようかな、と、色々並ぶゲーム機、そしてプレイする人々を見ていると……ウメハラが混じっていた。

小足見てから昇竜なんて伝説を生んだ人、らしいのだが、実はこの人は二代目のようである。
最近脚光を浴びる事になった若手のその動きは、ウメハラそのものと呼ばれ、その人の周囲には多数の人がギャラリーとなっていた。

「うぉぉぉ、超反応来たぞぉぉ!!」

「やっべぇ、あの読みと動きが超能力者にしか見えん!!」

次々とその人を称えるような言葉が送られ、私も見ていて羨ましくなってくる。
正直に言えば、そこまで凄い動きをしている訳ではない、反応なら負けないと、戦ってみたいと思うようになる。

「けど、順番……五十人待ち……」

それが私を躊躇わせた。二代目ウメハラと闘う為には五十人も並ぶその列に加わらなければならない。
他にも行ってみたい場所はあるのだが、折角だから並んでみようとひょっこり、五十一人目となるのであった。

すると、五十人目となるその人が、私に振り返って言うのだ。

「お嬢ちゃん、小さいねー。何歳? というかスパ4とかした事あるの?」

「…………」

「えー、何とか言ってよ。この列、割とガチだからさぁ、お嬢ちゃんなんかが挑んだら負けちゃうかもよ?」

なんだか失礼な男だとその男をつい睨みがちに見てしまう。しかし、この男はなにやらへらへらと笑うだけ。
どうにも掴めないその人物に声掛けられながらも、列は次第に消化されていくのである。

「……うーん、これで二代目の四十連勝か。HPゲージも全く減らないし、こりゃ凄いね」

「…………」

「それにしても、キミ、全く喋ってくれないね。折角だからもっとお話しようよ?」

その男が余りにしつこかったので、つい>>301

カエルになる魔法を

その男が余りにしつこかったので、ついカエルになる魔法を……使える訳が無い。
私は電撃しか扱えない。だが、かつての勇者達は様々な魔法に長けていたとも言われている。

その勇者達が宿る紋が手を貸してくれたのか、目の前のその対象は見事にカエルになるのだった。……二足歩行できるカエルだった。

「あーれ? 急に背が縮んだような!? って、あれ? 俺、カエルになってね!?」

「…………」

「うお、なんで、なんで!? やべぇ、マジやべぇ! 俺の中でついにクロノトリガー始まったか! グランドリオンは何処ぞ!!」

「……一人、これで脱落」

大丈夫、カエルは後半中途半端で役立たずだから。なんて思いでようやく私と二代目ウメハラとの対戦がやって来た。
スパ4、正式名称スーパーストリームファイター4。つまりパクリゲーのそれは、リョウというキャラクター達が集う格闘ゲームである。

「お、おい……相手、女の子だぞ……小学生か……?」

「マジ金髪とか初めてなんすけど。つうかアレ、ゲーム出来るの?」

「可愛いんだけどさぁ……なんか、怖いよねー、あの目。死んでるっていうか」

ギャラリーが、相手が私と言う事もあり、妙な盛り上がりを見せている。要するにゲーム以前の問題のようだ。
私が珍しいのか、それとも私みたいな歳の娘が二代目ウメハラに挑むのが珍しいのか、それぞれなのだろう。
しかし負ける気はしなかった。とりあえずケインというキャラを選択し、私はぬめぬめとしたレバーを握るのである。

『レディー……ファイッ!!』

「うおー、出た、いきなり二代目の連続波動砲、雑魚は死ぬッ!!」

「お、おい、相手の娘、全部弾き返しているぞ……!? レバー二回転技なのに!!」

「けど二代目の本領は此処からだぞ。ほら出た。波動しつつの間合いに接近の後の竜巻ハメ……られていないだとッ!?」

「おかしいだろ! 全部小パンだけで弾き返してるぞ!! あんなのアリかよ!!」

見える、私には彼の動きが見えるのだ。手に取るように掴め、相手を翻弄し1ラウンドをゲットする。
この調子で勝ち続けようと意気込んだ結果……>>304

本気を出したウメハラに返り討ち

見える、私には彼の動きが見えるのだ。手に取るように掴め、相手を翻弄し1ラウンドをゲットする。
この調子で勝ち続けようと意気込んだ結果……本気を出したウメハラに返り討ちであった。これが、プロの本気である。

おかしい、反応では負け無かった筈なのに、と悔いていると、私の頭の上に二足歩行のカエルが飛び乗った。

「いやぁ、思ったよりやるじゃんか。オラァびっくりしただよ。ちなみに敗因は引き出しの薄さと攻め手の無さだな」

「…………」

「でも、やり込めば二代目に勝てるレベルだ。とりあえずお疲れさん。……ところでさぁ、俺、何時になったら戻れるのかな?」

「……知らない」

「つ、つれねぇなぁ……。って待て、二代目ウメハラが席を立ち上がってこっちに来るぞ!?」

それは思ったよりも長身であった。190cmもあるだろうその男性は、束ねた髪を揺らしてこちらに歩み寄ってくる。
ついにリアルバトルが始まるのかとうずうずしていると、彼は笑みを浮かべて私に手を差し伸べてきた。

「いい勝負だった。またやろう」

「…………」

「あれ、握手知らない? もしかしてガチ外人?」

「……知ってる」

そうして、私は彼の握手に応じて手を差し伸べた。私の掌とは違い、彼の掌は大きく、ごつごつとしている。
これが本気でゲームをする人間の掌なのかと眺めた後、手で感触を味わってしまう。

しかし、握手に応じた瞬間、私の背をぞっとしたモノが駆け上がる。彼は……普通の人間じゃない。
恐らく彼は……>>308だ。だから、ゲームとはいえあそこまでの動きが出来るのだ。

新人類UMEHARA

貧乏神

しかし、握手に応じた瞬間、私の背をぞっとしたモノが駆け上がる。彼は……普通の人間じゃない。
恐らく彼は……新人類UMEHARAだ。だから、ゲームとはいえあそこまでの動きが出来るのだ。

新人類じゃ負けても仕方ないと悔やむ。私では彼にはゲームで勝つことはやはり出来ないだろう。
とはいえ、妙な悪寒を感じたのも事実。何だったのだろうと首を傾げながらその格闘ゲームコーナーを離れるのだった——。

—— 永らく、その人物とは連絡を取ることを忘れていた。しかし、この時初めて連絡しないとならないと、携帯を手に取った。
この電話という手段は中々に便利だ。ダイヤルするだけでその相手と話をする事が出来る。

但し、相手方は必ず一分置いて対応する為、こちらも一分もの間待たされることになるのだ。

『……私だ』

「ええ、そりゃ知ってますとも」

『用件を聞こう』

「最近隠蔽魔法によって隠されていた存在を確認しました。どうしますかねぇ?」

『……裏返りの邪魔となる者は、消せ』

「しかしね、相手がちょっと悪い。……ありゃ、噂に聞く最強の勇者ってヤツです。……つまり、貴方でしか倒せない部類のレベルなんですわ」

『生憎、私は東京という場所には居ない。そして、使えない僕は不要である——』

要するに、見つけた以上は自力で始末しろ、というのが彼のお告げである。酷い上司に出会ったものだと、格闘ゲーム台に目を向ける。
握手しただけで分かるのだ、あの存在の力の強さ、そして心の強さ。しかし、勝機は無くもない。

「……此処、利用させて貰おうかねぇ」

そう、この場所を利用すれば最強の勇者と呼ばれる存在にも勝てるかもしれないと、早速手段を講じる。
先ずはあの女の素性をもう暫く探ろう。仲間が居ては厄介だと、彼女の背を再び捜すのだった。

「クレーンゲームコーナーに居るのか。……丁度いい、少し仕掛けてやろうか」

彼女はどうやらイラックマのぬいぐるみに興味がある様子。ならば、>>311を行い彼女を動揺させてやろう。

わざと取らずに10000円浪費

彼女はどうやらイラックマのぬいぐるみに興味がある様子。ならば、わざと取らずに10000円浪費を行い彼女を動揺させてやろう。
既に念力を用い、あの筐体に仕掛けてある。これでどうあろうとも、彼女はイラックマにありつけない訳だ。

「…………」ピコピコピコピコ

「いっひっひ、無駄無駄、どれだけ狙ってもクレーンアームの力は最低レベル。何も掴めんさ……」

「…………」ティルルルゥーン

「ほぉら、無駄だって。結局取れずに終わるのさ! そうして一万円程注ぎ込んで後悔しやがれ!」

「……やめた、クソゲー」

「……あ、あれ? やめやがった!? ちぃ、瞬時にクソゲーと判断するあの直感力、侮れん……!」

そうして彼女は次々にゲームを梯子し、そして俺が彼女が遊ぼうとする筐体に仕掛けを行う。
次に彼女は1ゲームだけでクソゲーと判断し、次に向かおうとする。そうして数時間が経過した。

「ぜぇ、ぜぇ……くそ、あの女、一回だけでゲームを判断しやがって……。これも、あの直感力なのか!?」

「…………」ティロフィナーレッ!!

「よぉし、今度こそ金を注ぎ込ませてやるぜぇ……はぁぁぁぁ……!!」

「なぁ、二代目ウメハラ、何やってると思う?」

「あの金髪の女の子に惚れたんじゃね?」

「両手向けてるしな。ちょっとした手品かもしれんぞ?」

いつしか、俺の背後には知名度のせいで随分とギャラリーが出来ていた。リアルストーキングゲームに走っているとすら判断される始末である。
もう、こんなちまちまとした手じゃやってられるかと、勢い任せで>>313

ゲーム機で彼女を取り囲む

いつしか、俺の背後には知名度のせいで随分とギャラリーが出来ていた。リアルストーキングゲームに走っているとすら判断される始末である。
もう、こんなちまちまとした手じゃやってられるかと、勢い任せでゲーム機で彼女を取り囲むよう仕掛けた。
そうしてゲームが次々目の前にやって来る様子に恐怖せよ、怯え、竦んでしまえと嘲笑う。

しかしギャラリーはそんな普通じゃ起こりえない事に興味を示さず、俺にばかり興味を示してはひそひそと話を続けるのであった——。

—— アンが好きそうな格闘ゲームコーナーに行ってみるも、そこに居たのは喋るカエル勇者ショーという下らない出し物であった。
普通の人間ならば、面白いと、どうなっているのかと、そのカエル勇者に視線を向けるだろう。
しかし、俺はもう普通じゃなくなった。全く普通にありそうな出来事だと判別できてしまい、それが悲しくも思えるのだった。

「とりあえず、アンを捜しに行こう。……クレーンコーナーとかに居そうな気もするが……」

そうして、あちこち足を向けて捜し回った結果、奇妙な男とその取り巻きを見つけてしまう。
彼の掌の先には、アンがゲーム筐体に囲まれており、そしてアン自体は……1ゲームプレイしてはクソゲーと呟いているばかりであった。

あいつ、なんであんなに金持ってるんだろう。また封筒からくすねたのか、と思いつつも、例の男をガン見するのである。
何故、アンに掌を向けている? 俺に惚れろ的な光線でも放っているつもりなのかと暫く様子見していると……。

「お、二代目が唸り出したぞ!!」

「ぐぬぬぬぬぬぅぅぅぅぅ!!!」

「やべぇ、あの唸り方は小足昇竜なんてレベルじゃねぇ!!」

全く意味が分からんと、アンを連れ戻そうとその方へ足を向けた途端であった。
先程からずっとアンに掌を向けていたその二代目と呼ばれた存在が、俺に気づいては足早に俺を掴むのである。

「オイ、邪魔すんな凡人が」

「邪魔って、何の邪魔なんだ?」

「そ、それはだな……色々こっちにも事情があんだよ!!」

「とはいえ、俺の娘に変な事されても困るのでね……」

娘と口走った直後、その男の反応が変わり、そして……>>315

フリー○みたいな新人類に変身

娘と口走った直後、その男の反応が変わり、そして……フリー○みたいな新人類に変身するのである。
明らかにそれは俺に対して敵意を示している。先ずはこの存在に対してリサーチを行おうと、彼の本質を見極めようとする。

するとどうだろう、真っ黒なのだ。漆黒の霧が包む空間が見え、そこを孤独に歩く人のようで、人ではないその姿。
咄嗟に気づく。これが第八世界の光景、そしてそこで住まうしか無くなった、裏返った人間の末路なのかと。
気付けば、周囲が暗転したような空間に迷い込んでいた。そこには、俺とその対象のみが存在するだけである。

「……お前、こっちの世界の存在じゃないんだな」

「それがどうしたぁぁぁ!! この姿となった以上、貴様は帰さんぞぉぉ!!」

「もしかして、変身を後三回残してる?」

「ほう、よく気付いたな……。そうして変身を繰り返し、俺は真の姿になるという事を……!!」

「そこまでは知らなかったが、ご親切にどうも」

「貴様こそ、この姿を見てどうしてそう、堂々たる態度で居られるのか。……あぁ、怖すぎて感覚が麻痺したってオチかねぇ?」

「まぁ……そうだな、裏返りっていうのを初めて目にしたから、思うように言葉が出ない」

あくまでそれは、フリーザ様みたいな姿ではあるのだが、爪をあちこちに生やした二足歩行可能な爬虫類のようでもある。
武器は勿論爪なのだろう。そして、念力のような部類も操るようで、意外と好戦的な能力を持ち得ている様子。
しかし、この存在もまだ小者なのだろうと確信するが……神様レベル3の俺が、果たして勝てるだろうか。

ただ、この男にも情のようなモノを感じる。周囲に被害を及ぼしたくないと、この妙な結界を張ってある。
誰も近寄れず、その中の光景が見えないような結界。上手くできたものだと、その結界に触れて学んでいると——。

「余所見……してんじゃネェッ!!」

それは跳ねるように飛び掛る。一瞬で間合いを詰められる。爪が既にこちらに迫っている。
ならばこちらは>>317という行動を取るしかない。

昇竜拳でカウンター

それは跳ねるように飛び掛る。一瞬で間合いを詰められる。爪が既にこちらに迫っている。
ならばこちらは昇竜拳でカウンターという行動を取るしかない。爪が伸びきった瞬間、あの力を使う。

「———— 時間圧縮、MP30消費、但し効果は実質一秒ッ! からのぉぉぉ!!」

「なッ、い、何時の間に間合いにッ!!」

時間が一瞬、凝縮されたように止まり、且つ自分だけがその一瞬の間とはいえ、動く事が出来る。
その間に間合いを詰め、相手の顎を捉えるように拳を打つ。それは、見事なまでの手応えがあったのだった。

「きさ、ま……時間を止めた、のか……?」

「まぁ、そういう訳だ……。悪いが、これで手打ちにしてくれないかな」

「トドメを……刺さないだと……?」

「お前は、この場を壊したくないと、傷つけたくないと、この結界を張ったのだろう? 違うか?」

「……この場に居る奴等は、言わば仲間だ。俺を受け容れてくれる……仲間なんだ」

「なら、それでいい。俺も娘を守る為に戦ったって事で、手打ちと行こう」

手を差し出してみる。噛まれるんじゃないか、引っ掻かれるんじゃないかと冷や冷やでもあったのだが、
既に敵意をその男から見出せないと確信出来ていた。だからこそ、手打ちを示そうと、手を伸ばす。

彼は躊躇った。だが瞬時だけである。既に俺の手を取った彼は、人の姿に戻っているのであった。

「まさかリアルでスパ4させられるとは思わなかった。だが、楽しかった……」

「ふん、チート技みたいな事を使い勝ったと思うな? 次こそは、最終形態の俺がお前を倒す!!」

そうして、何故か妙なライバルが誕生した瞬間をも、アンはじっと眺めているのだった。
どうやら、結界内部で起こっていた事も彼女には視認出来ていたらしい。彼女は、頬を膨らませて俺に言う。

「ヒドイ、秀だけ戦って、私、戦えてない。激おこ」

「……じゃ、じゃあ、どうすれば許してくれるんだ……?」

>>322

徹スパ4に付き合って

「徹スパ4に付き合って」

「お、おう……。今日だけだからな。徹夜しても朝寝坊は許さないからな。それが出来るなら良し」

「……わかった、頑張るから」

二代目ウメハラと名乗る存在は、夜となったこの時間、顎を擦りながら再び格闘ゲームコーナーに戻る事になる。
そして去る間際、アンに「徹スパで強くなれたらまた再戦しようか」と告げ、アンも無言ながらも頷くのだった。
結局、コミュ障を直すとも行かなかったが、この場に連れて来たのは良かったのかもしれない。

「強くなって、今度こそウメハラフルボッコ……!」

「随分燃えてるなお前。……負けず嫌いでもあったか」

「次もまた、連れて来て欲しい……。でも、もう別のゲームに夢中にならないで」

いつしか、アンは俺へ手を伸ばし、そして俺の手を握り締めるのだ。思ったよりも握力が高く、ちょっぴり痛いと思う中、
その小さな掌の温もりを感じながらも思い返すのだ。俺は、まだまだ娘達を知らなさ過ぎるのだろうと。
すっかり、駅付近は人が随分と行き交う時間となる中、俺とアンは手を握りながら話す。

「……なぁ、アン、次から、もっと友達作れよ」

「どうして?」

「それは……楽しいからだ」

「ことみが居るし、吾妻も居る。マールもいるし……別に困らない。それに……」

「……アリスは、その中に入れてあげないのか?」

アリスはアンの妹であり、双子として産まれた存在。しかし、アリスはアンを受け容れようとしていても、アンはアリスを受け容れようとしない。
その本意を聞き出そうと思ったのだが、彼女は暫くの間、だんまりを決め込むのだった。
駅のホームに電車が到着すると知らせる中、彼女が聞こえないように>>324と呟いたのが印象的だった。

生きるって辛いわー

駅のホームに電車が到着すると知らせる中、彼女が聞こえないように「生きるって辛いわー」と呟いたのが印象的だった。
まだそこまで生きていないだろうと心の中で突っ込みつつも、そのまま帰宅すれば、家に先に戻っていたマール達に詰め寄られる羽目となる。

その後、散々文句を言われた俺は、今度デートしてやると軽い調子で言った為、マールはすっかりご機嫌となってファッションサイトを携帯で眺めている。
メルに、「アレ、ちゃんと責任取るんでしょうねぇ〜?」と冷やかされる中、俺は「さぁ?」と流しつつも徹スパ4の準備を進めるのだった。

約束は約束だと、早速アンと対戦しようとすると、アリスが私もやりたいと、俺とアンの間に割り込んでくるのだった。
その瞬間、寂しそうな顔をしたように見えたが、一瞬で膨れ顔。もはや餅を膨らませたかのようになった彼女は……。

「寝る。おやすみ」

「え? 徹スパ4はどうするんだ? 二代目ウメハラとの再戦は?」

「もういい。おやすみ」

「…………」

アリスがふと視線を落とす。モニターにはキャラ選択画面が映っていた。その様子を見ていたノエルは、
静かにその部屋を立ち、風呂場へ向かうのである。彼女なりの気遣いのつもりなのかもしれない。

そうして、台所でデザートに挑戦するマールとメルの鼻歌を聴いていると、アリスがぽつりと漏らすのだ。

「私、やっぱり……出て行ったほうがいいのかな」

「……そんな事は……」

「だって……、こうまで、嫌われてるって思うと、なんだかもう……!」

ぎゅっと、コントローラーが握り締められ、そこにぽつりと雫が一粒零れるのである。
いつも強気で、挑発的、それでいて何にも屈しないという雰囲気を持つ五女アリス。その娘が、この時初めて泣いたのだ。

それほどまでに、アンに触れてもらえない、話しても貰えないのが辛いのは重々分かる。
しかし、アンの心境が掴めない俺もまた、これ以上アリスに返す言葉が見つからない。

そんな、天野家が抱えるやや複雑な家庭環境に、割り言ってくる悪魔が居た。その名は川下浅海。
後日、彼女がアリスの悩みを解決してあげようと動く事になるのだが、それがまた、騒動を呼んでしまうのである——。


———— つづきます

一時がリミットということで、以上で終わりますー。ウメハラ人気杉わろりん。

安価出た当初は知らないしどうしようなんて思いましたが、ウメハラさんフリーザ様でしたかーはーこれは生きるの辛い。
格闘ゲームとか実はやったこと殆ど無いんですよね。はどーけんも上手く出せません。

そんな訳で、今回もお付き合いありがとうございましたー。


【05/08 (水) 00:50時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

05/10 (金)
  22:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 多分死んでる十七話 『お姫様の告白と女教師の浅知恵』

いつかタイムスケジュールがいっぱいに埋まりますように。死亡フラグみたいに願ってべっちょり。

「ねえ天野君。アリスを……私の家で暫く預かってもいいかな?」

「三食おやつ付きが必須だからな。じゃなきゃアリスは飼えんぞ」

「ひ、人をペットのように……! もういいっ! お姉ちゃんも、秀も、もう知らないんだから!!」

気付けば家を飛び出していた。泳いで、ひたすら泳いで家を飛び出す。その光景は普段から考えれば、とても可笑しな出来事に見えるのだろう。
既に空は晴天に近い様子を見せており、気のせいか、徐々に水位が下がっていくように思える。
それでも、ひたすら前を向いて泳いでいこうなんて思いながら、学校で習った平泳ぎなんて泳法をしていると……。

「……水、無くなった……。町も、徐々に元通りに……?」

これは、白渡矜持と名乗る男の仕業か、或いは天野秀の神の力の賜物なのか、どちらなのだろう。
どちらにしても、今の私には関係のないことだ、と自分に言い聞かせては公園に足を向けていた。
近所の公園、第一特異点が広がるその場所、上空を見上げれば、普通の人は空しか見えないのであろう。

「本当に、真っ黒な穴……」

その漆黒の空間、それは空に、その宙に、穴を開けるように広がっている。
その同じような出来事を、私も操る事ができよう。しかし所詮は真似事でもあり、これ以上の綺麗な闇は生み出せない。

「……あの中に、入ってしまえば……どうなるのだろう」

なんだか、何もかもがどうでも良くなってくる。あの穴を見続けていると、その中に身を投げ出したくなってくる。
次第に、思考する力もその穴に奪われていくような感覚に陥ってくる。ただ、次第に見ているだけになっていく。

そんな折、私の名を呼ぶ声に気付き、我に返ったようにはっとした直後、川下先生が姿を見せるのだった。

「やっぱり、そう遠くまでは行ってなくて良かったわ。……追いかけてきたのが天野君じゃなくて、残念?」

「そ、そんな事は……ないけれど」

「大丈夫、これも全て作戦よ。名づけて、アリスちゃんを構わないと大変になるんだぞ作戦ね」

「とても作戦名とは言えないのだわ」

「まぁまぁ、とりあえず手は打ってきておいたから、早速私の家に行く? それとも……二人で遊びに行っちゃう?」

その中で選ぶよりは、寧ろ>>360のほうがいいと口に出してみることに。

あの穴に色々投げ込んでみる

その中で選ぶよりは、寧ろあの穴に色々投げ込んでみるほうがいいと口に出してみることに。
すると彼女は不思議そうにして空を見上げる。後に、私に向き直って何も無いと言うのだ。当然だった。

「でも、もしかしてアリスにしか見えない穴が開いているの?」

「そういう事ね。その穴は各地に点々としていて、いずれこの世界を飲み込んでしまうほど広がり、繋がっていく……。それが、裏返り」

「えーと、それって……まずい事?」

「この世界の事象すべてが飲み込まれる瞬間。だから秀は急遽、神として覚醒を強いられたって訳なの」

「……あの変態でスケベでセクハラする人がねぇ」

彼女が口にする天野秀像は、度々聞くが毎度散々なものである。とにかく、変態というレッテルが貼られてある。
かくいう私は、秀にそこまでセクハラをされた訳でも無く、ほんの少し彼女に嫉妬してしまうのであった。

アンも、マールも、ノエルも、そしてあのメルでさえも、何かしらセクハラを行っていた天野秀。
しかし私だけには手を出そうとせず、どれだけ彼にアピールしても振り向いてもらえる事は無かった。
既に娘が多数住まうその狭い家で、免疫が出来ていたのかもしれない。それでも、ちょっとしたハプニングからの展開を望んでいた。

だが、既に彼は娘として彼女達を、私を扱う術を覚え始めている。それは、神と目醒めた時、更に強まってしまうのだ。

「どうしたのよ、突然。空き缶なんて拾い上げて……って、本気で投げるの!?」

「……誰も試した事、ないと思ってッ!!」

「わ、わわわ、空に投げた空き缶が……消えた!?」

「やっぱり、飲み込まれるだけなのね……」

恐らく、あの穴は第八世界にも繋がる穴に違いない。闇よりも深い、おぞましい世界が広がる異形の穴。
その空き缶を飲み込んだ穴を見続け、思う。その次の瞬間、まるで空き缶を投げつけてきたお返しとも言うように、>>362が降って来た。

金食い虫

恐らく、あの穴は第八世界にも繋がる穴に違いない。闇よりも深い、おぞましい世界が広がる異形の穴。
その空き缶を飲み込んだ穴を見続け、思う。その次の瞬間、まるで空き缶を投げつけてきたお返しとも言うように、金食い虫が降って来た。
羽が生えている。天道虫に近い形状だが、メッキのような金色で覆われたそれは、一匹だけこの世界に舞い降りた。

「……先生、あれ、見える?」

「金色ね。……虫、よね?」

「もう一つ何か投げ入れてみる……!」

「だ、大丈夫なの? そんな事をして」

「もし先生に何かがあれば、私が先生を護ってあげるわッ!!」

今度は石ころを拾い上げて、その穴目掛けて全力投球してみせる。それは一直線に穴へ向かい、そして吸い込まれるように消えていく。
後に、やはりというべきなのか、同様にというべきなのか、金色の天道虫のようなそれが蛇行するように舞い降りてくるのだった。

「……お金でも食べるのかな」

「お金を食べる虫なんて居る訳ないでしょう? ……居るかもしれないけど」

「先生の癖に曖昧、おまけにあやふやなのね」

「せ、先生だって人間なんですー! 知らない事もいっぱいあるんですー! 特に……異世界のコトなんて、分かる訳無いじゃない」

先生が拗ねる中、私はその二匹の金食い虫を目線だけで追っていた。そもそも、金を食べるかどうかも怪しい存在。
気付けば、ポケットから百円玉を取り出している。試しにと、それを指先で持ち、虫目掛けてちらつかせてみるのだ。

それは次第に引き寄せられるようにこちらにやって来た。やはりお金を食べるものなのだろうと、私は勘違いをしていた。

『ブゥゥゥゥゥゥン』

羽音が間近で聞こえる。そして、気付けば百円玉は……>>365

九十九円玉に

羽音が間近で聞こえる。そして、気付けば百円玉は……九十九円玉に。この世界では有り得ない通貨となるのである。
虫は気付けば、遠くの金に惹かれたのか、嗅ぎ取ったのか、遠くまで飛び去っていた。

「……先生、これは何に見える……?」

「百円玉、には見えるようで見えないわね……九十九円って書いてるし。でも良かった、あの虫が人を食べるような虫じゃなくて」

「何が、どうなっているの……」

「どうしたの? 顔が真っ青よ……?」

「……レベルが、ひとつ、下がってる……!!」

「前々から不思議なのだけど、何故数値が見えるのよ、貴女達は」

先生が不思議がるのも無理は無いのだが、見えるものは仕方が無い。職業プリンセスな私のレベルがひとつ落ちていた。
あれは、触れたものすべて、一つ分だけマイナス補正にしてしまう虫なのだ。それが多量に発生すれば、この世のすべてがマイナスの補正を受けてしまう。
そう直感した時、その穴の向こうの恐ろしさ、そしてとんでもない虫を発生させてしまった事を後悔してしまう。

そしてそれは、レベルだけではなく、人の年齢すら食べてしまう虫である事を、後ほど私達は知ることになる——。

—— アリスが家を飛び出して一時間が過ぎただろう。街は補正力のお陰もあり、平和を取り戻している。
白渡サマサマである。MPが尽きた状態の俺では、こうまで直ぐに補正力を発揮することは出来なかっただろう。
そんな自分もMPが僅かに回復し、アリスをどう連れ戻そうかと携帯を手に持ち思案していた。

「アイツ、携帯まで置いていきやがったしなぁ……。アン、どうすればいいと思う?」

「ゲームで忙しいから」

「……なぁ、アン。前々から思っていたんだ。……アリスはお前の妹だろう。なのに、アイツが居なくなって、どうしてそう平然と居られるんだ!?」

「だって、妹だなんて思ったこと、一度も無いから」

最早論ずる以前の問題だった。彼女は、天野家の中でも妹になるというのにも関わらず、そんな冷たいことを言い放つのだ。
しかも、ゲーム画面ばかり目にして、こちらに振り返ろうともせず、呆気なく言葉にしてしまうのだ。

途端、彼女を許せなくなった俺は……>>368

罰として難しい資格を取るまでゲーム禁止

途端、彼女を許せなくなった俺は……罰として難しい資格を取るまでゲーム禁止宣言を行う。
そして、神の力を用いて、折角回復したMPを消費してまで、ゲーム機すべてを没収するのである。……四次元コンテナって凄い便利だ。
しかし、アンには消されたという判断が下されたのだろう。今では立ち上がり、俺を睨み返すのである。

「例え秀でも、この暴挙は許さない……」

「お、反抗期か。うんうん、多感な時期だもんな。だが……俺も今日ばかりは怒っているんだ。何故か分かるか?」

「そんなの、どうでも良い。二代目ウメハラとの再戦だってあるの。ゲームしたいの」

「約束はまぁ分かるけど。だが……あえて問う、アリスとゲーム、どちらが大事だ!!」

「ゲーム」

「即答とか……怒る気すら失せて悲しくなってくるじゃないか……だが、俺は怒る! そして娘を叱るッ!!」

「……秀だからって、手加減できないから。死んでも……知らないから」

彼女は俺に向き直るようにしては、気付けば剣を握っていた。メルの剣をいつの間にか勝手に拝借したようだ。
その剣を持つ彼女の眼差しは、あまりにも威圧的であった。眼差しだけで何もかもの命を奪うような、そんな鋭い視線。
俺はいつしか忘れてしまっていたのかもしれない。この娘が、歴代最強の勇者であり、それを誰もが恐れる存在だという事を。

「……俺も災難だ。こんな聞き分けも出来ない、恐ろしい娘を持つとはな……」

彼女のかつての父親も勇者であったらしい。その勇者だった父は、娘として扱ってきたアンをどういう風に叱っていたのだろう。
或いは、その勇者には貫禄があり、一言でアンを黙らせるほどの存在だったのかもしれない。だが、生憎俺には貫禄なんてモノは無い。

「けどな、俺達は家族だ。家族を……どうでもいいと、ゲームが大事と切り捨てるように育てた覚えは、無いッ!!」

激昂し、アンに掴みかかろうと、畳を蹴り彼女目掛けて一直線。そして……>>371

畳が全部吹っ飛ぶ

激昂し、アンに掴みかかろうと、畳を蹴り彼女目掛けて一直線。そして……畳が全部吹っ飛ぶ。
俺も吹っ飛ぶ。家具も吹っ飛び、部屋にある物すべてが吹っ飛んで、壁際に叩きつけられる。
何が起こったのか、理解すら出来ない。彼女は剣を一度も薙ぎ払ってはいないのだ。なのに、壁に叩きつけられた。

「…………」

「アン、お前ぇ……!!」

「……MPの無い秀なんて、雑魚。……私には触れない」

「言いやがったなぁッ……!!」

部屋は滅茶苦茶だ。家具の殆どは形を崩し、ただのがらくたと化している。
キャビネットも崩壊し、押入れにあった同人やフィギュアもただのゴミと化し、テレビもぐちゃぐちゃに割れ、台所も最早見る陰すら無し。
それでも、俺は立ち向かう。娘を叱る為に、その娘に立ち向かい、何度も壁に叩きつけられる。

ゲームだけでここまでキレるのか。これって相当末期じゃないか。なのにこうなるまでゲーム任せで放置させていた俺に、すべての責任がある。
何としてでも、ここでアンを立ち直らせる。本来の輝きを取り戻させて見せると、八つ裂きのようにされたTシャツを脱ぎ捨てた。

「……どうして、触るコトすら出来ないのに……」

「るっせぇぇぇ!! それでも俺が、お前を叱る為なんだよォォォ!!!」

突っ走る。なのにまた衝撃だ。壁に突き刺さるように叩きつけられる。なのに観笠ミカ側の壁は一切壊れないのは、彼女の保護魔法だからだろうか。
今頃、アイツは俺を監視しているのだろうか。だったらそろそろ助けて欲しい。じゃないと、一生彼女を叱れそうに無かったりする。

だが、アイツが再びゲームに向き合おうとするのだけは防がなければと、何とか立ち上がる。足はもう震えるだけで、使い物にすらならない。

「分からない……。どうして、そこまでして……私を……」

「お前が、帰ってくるであろうアリスに謝り、そして家族として認めるのならば……ゲームだって返してやる!
 だが、それすらしようとしないお前は、俺はずっと許さない……! この身が例え、果てようともだ!!」

アンはメルの本来持つ剣を床に落とす。畳が吹き飛び、床板が剥き出しとなるその場に刺さる。
彼女は顔を伏せ、何かを呟いたかと思えば……>>373

この喧嘩の結末をビジョンにして見せた。

アンはメルの本来持つ剣を床に落とす。畳が吹き飛び、床板が剥き出しとなるその場に刺さる。
彼女は顔を伏せ、何かを呟いたかと思えば……この喧嘩の結末をビジョンにして見せた。

分からない。アンは勇者だ。そして彼女が扱える魔法は電撃だけだと本人すら言っている。なのに、彼女は奇跡を起こしてみせる。
しつこく話しかけられ、カエルにしてしまったのもそうだ。彼女がそんな力を持っているのならば、この長い生活、既に一度くらい見せていることだろう。
それでも尚も、彼女は本来の力を隠し続けているのだろうか。そして、その力は、神をも越える勇者たる力だというのだろうか。

「こうなってしまう。それでも……いいの?」

父とも呼べるのかどうか怪しい俺が、アンに剣で胸元を刻まれている様子が描き出されている。
俺を貫く彼女の様子は、それでも平然としていて、何かが壊れた人形のように、あっさりと命を奪うのだ。
それでも構わない、とすら思っていた。しかし、その光景に映るアンの様子が恐ろしく感じた瞬間、身体は一切動かなくなった。

いつしか、光景は変わる。孤独となった勇者は、追われる立場となる。神を葬った罪を背負い、そして自分の立場を護るべく、
それでも剣を振るい、かつての知り合い、友達、そして家族すら命を奪っていくのだ。
やはり彼女は平然として立っている。命を奪っている。その表情は、壊れた人形のように。

「そして、こうなってしまう。……私は誰にも負けない。だけど、秀がそれでも挑むのなら、未来はこの一つだけ」

「まるで……従えっていうような言い方だな……!」

「そんな事は言わない。……私は秀は好き。ゲームも好き。だけど……人は嫌い」

「じゃあことみちゃんはどうなる! あの娘は、お前の友達だろう! 大事な友達だろう!?」

「彼女も特別。でも……その好きとは違うから。それに、好きな物だって、私は……破壊出来る」

どうして、ゲームを奪っただけでこうなる。どうして、彼女はこうも簡単に狂い出せる。
分からない。もうどうして良いのか、手が打てない。娘を立ち直らせるどころか、叱る事すら出来ないのかと思った瞬間、全身から力が抜け切ってしまった——。

—— 補正力の影響だろうか。部屋は全て元に戻っている。そして、時は夕刻ともなっていた。
ノエルが俺の掌を握ってくれている。そして、心配そうにマールが俺の顔を覗き込んでいた。

「やっと起きたようですね。全く……」

「本当に、神様となってその体たらく、情けないわ。誰にやられたのかも、想像は付いてるけど」

どういう事だと身を起こすと、マールは一枚のメモを俺に見せるのだ。それはアンの文字で、>>375と言う言葉で別れを告げていた。

2代目ウメハラと格ゲー武者修行に行きます

どういう事だと身を起こすと、マールは一枚のメモを俺に見せるのだ。それはアンの文字で、2代目ウメハラと格ゲー武者修行に行きますと言う言葉で別れを告げていた。
それは単なる家出のようにも思える。しかし、こちらから捜し出さないと、彼女は二度とこの家を、このボロアパートの地を踏むことは無いだろう。

治癒魔法のお陰だろう、身体は思ったより軽くなっている。MPだってそこそこに回復している。これなら、アンを捜し出せる。
しかし、身体を起こした直後、肋骨がずきずきと痛みを訴える為、再び俺はベッドの上に寝かされるハメとなる。

「まだ無理です。思った以上に身体の内部、つまり内臓や神経がぼろぼろとなっていたんですから、私の治癒程度では、まだ動けません」

「じゃあ、俺が自分の力で身体を癒せば……アンを……!」

「そうまでして、何故あの娘を追うのですか? そもそも、アンとどうしてそのような事に?」

「事情を話せば、まず俺が臨海市を水没させてしまった事から話すべきか——」

すべての事情を話すのに、三十分も掛からない。掻い摘んで話せばこんなものである。
あっさりとした言い方をしてしまったものだが、内心ではこの日だけでこんなに色々と起こったのかと、驚いているのである。
アリスを放っておいて、彼女の心を掴めず、ある意味では家出に追いやってしまった。
そうして、アンを叱ろうとして逆効果。完膚無きまでに叩きのめされ、挙句に愛想を付かされる始末。

「父親、失格だな……」

「秀様、前から思っているの。……何故、父親に拘るのかしら?」

「何言ってるんだよ、マール。俺は一家の長みたいなものだし、お前達を預かった身なんだ……だから……」

「正直言うわ。秀様は素敵で、私は大好きよ。でも……本気で父親とは思ったこと、一度もないかな」

「同感、私もです。残念ながら、私にはアーライラに実の父がおりますし」

「……えっと、その、つまり?」

「父親というその柵を、そろそろ解いてみてはどうでしょう……?」

ノエルも、マールも、そう言って俺に微笑みかけてくれる。俺は、どうやら父親で在り過ぎようと、頑張りすぎていたのかもしれない。
では俺は、彼女達にとってどう在るべきなのか、それを問われることになる——。

しかし、この時メルが黙して俺を眺め、何を思っているのか……気づくことは無かったのだ。


———— つづきます

よくある家族のケンカ、でも命の奪い合いになるなんてごめんですーって訳で終わります。
普通の両親から産まれて本当に良かったです。メラでも使えたら焼き殺されませんし。でも花火の時絶対便利そう。

そんな訳で、お付き合いありがとうございましたー。


相変わらず酷いけど、割とそれっぽい展開になってきたんじゃないかな……!?(震え声)

【05/11 (土) 01:42時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

05/11 (土)
  21:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 勇者なムスメ 第十八話 『変態過ぎる家族故に一緒になりたいのです』


サブタイに実は意味ないつもりだった。そしてネタ切れでべっちょり

うーん相変わらず風邪で辛いんですがーなんで今の風邪ってこんなしぶといの。
というか只の鼻炎な気がする割には熱っぽいんですよねーはぁしぬ。

それでは、もう暫くお待ち下さい。


あ、いつもの如く登場人物紹介はカットします。再編集めんどいって訳じゃないんだからね!!

———— 勇者なムスメ 第十八話

あれから一日が過ぎた。アルバイトの方は無理を言って休ませて貰っており、相田店長は不満そうに声を荒げていたのだが、
練曲ネルが俺と電話をする相田店長に口添えでもしてくれたのだろう。彼女は、溜息混じりに俺の休暇を許可してくれた。

だが、それよりも本日は余り客入りが良く無さそうとも呟いている。その理由を、俺は練曲ネルから直々に聞いている。

『ニュースは全く見ていないと言うのだな?』

「うーん、それどころじゃないっていうか、まぁ色々とあってね……」

『何があったかは想像が付かない訳じゃ無いが……、今、街で起こっている出来事は、恐らく想像出来なかった事でもあろう』

「で、何が起こってるって言うんだよ」

『ニュースも合わせて見てみろ。まだ被害者は数人程度だが、一日で消え去るという事件が起きている……』

彼女の言うとおりにテレビを本来の目的で久々に点けては、画面を覗き込む。
臨時ニュースという事で、中継も慌しそうに動いているその番組内は、キャスター側も信じられないといった素振りで原稿を読み上げているのだ。
そしてテロップを目にして驚愕する。人が一日で多数失踪しているというのだ。

『しかも奇妙なのが、服や鞄等、着衣はそのまま残り、身体だけが消えるという不明な出来事だ。この辺り、何か思い当たる節は?』

「いいや、さっぱりだ。白渡辺りならもう何か掴んでるんじゃないのか?」

『さぁな。私はアレをちょっぴり苦手としている。しかし……神様でもあろうお前が何も分からないと、暢気にされていては困るのだぞ?』

「いやぁ、面目ない……と、冗談抜きでのんびり構えている暇は無さそうだ。間違いなくこれは、普通に行われるような犯罪ではないんだな?」

『断定は出来ないけども、恐らく、いや、ほぼ間違いなく……何かが蠢いているハズなのだ』

テレビの画面をリモコンで様々と変えてみるのだが、やはりどの番組も臨時ニュースに切り替わり、
同様の事件を、専門家も交えて論議をするしかない段階に陥っており、警察側も現状ではお手上げなのだそうだ。

しかし、とある番組にチャンネルを変えた時、奇妙な虫を目撃したような、と語る人物がインタビューを受けている。

奇妙な虫……、少し、臨海市を覗いてみようと視野を広げてみる。第三者のように、遠くから街を眺めるような、そんな感覚で。
そうして分かった事は……>>384

俺のレベルが大きく移動するたびに下がっている!

奇妙な虫……、少し、臨海市を覗いてみようと視野を広げてみる。第三者のように、遠くから街を眺めるような、そんな感覚で。
そうして分かった事は……俺のレベルが大きく移動するたびに下がっている!
良く分からないが、視野を広げ、そして視点を絞り込もうとする。この場所が観たいと、意識を広げようとする。
そうした段階で、レベルが4になっていた俺の神様レベルが、とうとう1に逆戻り。最大MPまで減ってしまうオチが待っていた。

「ぬおおおおお!! 何が、何が起こっているんだ、ネルゥゥゥゥ!!!」

『お、落ち着け! ど、どうした、何が起こったって言うんだ! それを教えろ!!』

「それが俺にも良く分からん!! 超スピードでレベルが1に落ちていた! 最大MPはゴーヤ分を含めて、12しかねぇ!!」

『えーと、要約すると……何をしたのだ?』

「何かが起こっているんだろうと、臨海市を奥義、神の視点で覗いてみたんだ。そしたら……レベルが、レベルがぁぁ!!」

『神の所業にまで干渉し、レベルダウンさせる何かが臨海市に存在する? しかし、それと人の消失とどう関わりが……。
 ええい、埒が明かん! 私も今日はチェリークロックを休む! 白渡達を集めて緊急会議を行おう!!』

「え、でも俺、今日も用事が……」

『ゴッドカンパニーの社長であり、この世の神でもあり、挙句にこの世界の救世主とも呼べる存在が、
 これ以上の用事があって抜け出そうと企むか。……良いご身分なことで』

「いや、でも……その、娘達をだな……」

『そんな事、後でも良いだろう! この世に何かが起きようとしているのだ! それが起こってからでは、娘達がなんて事を言っていられないぞ!?』

確かにその通りかもしれない。今、アリスやアンを見つけ出し、連れ戻したとしよう。
それでも、この俺達が平和に暮らしたい世界が無くなってしまっては、無意味だ。ならば、今は練曲ネルの提案を承諾するしかない。
だが、それでもやはり気掛かりだった。川下が去り際に俺に言った台詞が、再び脳裏に蘇って来る。

そう、彼女は俺の部屋から去り、アリスを捜してみると飛び出していった時、俺に>>386と言っていたのだ。

こういうことに慣れてはいけないのよ

そう、彼女は俺の部屋から去り、アリスを捜してみると飛び出していった時、俺に「こういうことに慣れてはいけないのよ」と言っていたのだ。
あの川下浅海のくせに、随分マトモな事を言った印象しか残っていなかったのだが、今となっては実感が無いこともない。

可笑しな出来事が当たり前だった。おまけに、俺自身が可笑しな存在だった。笑うしかないじゃないか。
しかし、それでも人間だ。俺も、紋章を持つ不思議な力を操る人も、そして俺の娘もまた、皆、所詮は人。
人間なんて、所詮慣れていってしまうのだ。当たり前だと実感し、それを当たり前のように操り始めて、そして、当たり前のように暮らしていく。

俺もまた、その当たり前を、本当に日常の一部と取り込んでいこうとしていた。そうして、世界は廻り始めようとしていた。
だが、あいつのその言葉が再び浮かんだとき、俺は皆が初めてこの家の敷居を跨いだ事を思い出す。

「……ネル、すまない。少しだけ遅れても構わないか?」

『この期に及んでまだ何か言うつもりなのか!? ……分かった、程ほどにしておいてくれ』

「迷惑、掛けるな」

『いつもの事だろう? あ、お詫びはきちんと61アイスクリームで返すのだぞ?』

練曲ネルもまた、俺を察してくれたのか、ちゃっかりアイスを強請りつつも、俺に笑いかけて電話を終えるのだった。
アイツもまた、俺の我侭をこうして聞いてくれる。そして、必ず最後は仕方ないと笑いかけてくれるのだ。
それがきっと俺にとって心地良いのだろう。だからこそ、アイツとは短い付き合いなのだが、それ以上にも感じる時がある。

「……良し、腹は決まった。先ずはアリスを取り戻しに行こう。マール、ノエル、準備は良いか?」

「え、ええ、私は別に構わないのだけど……」

「メルが、あの調子なのです」

「……なんか、落ち込んでる? 構ってオーラが放たれてる?」

「メルがあんな風になるのは、大体何かに悩んでいる時なのだけど……」

マールがやれやれと両手を軽く広げては俺を見る。つまり、メルもまた何かに悩んでいるのか、或いは……。

ではどうするべきだろう。先にメルと話をしてみるか、アリスを連れ戻すか、俺は……>>388

メルから

ではどうするべきだろう。先にメルと話をしてみるか、アリスを連れ戻すか、俺は……メルから話を聞く事に。
そうしてベッドの上で塞ぐように悩む姿を見せる彼女に、声を掛けてみると……。

「……ちょっと、二人で話してもいいかな?」

「もしかして、重いのか? 生理なのか?」

「それと、どうして二人で話すってのが繋がるの?」

「メルがご立腹である……。あの、寧ろ悪戯して大笑いするタイプのメルが、真面目にご立腹である……!」

「そんなのいいから。……私も、そろそろちゃんと話しておきたいって思ったし」

俺がマールとノエルに振り返ると、彼女達はメルを察してなのか、アンの所在を掴んでみようと独自に動き出すのである。
そうして、彼女達が去った午後の昼下がり、陽射しがメルを照らし、髪を明るく輝かせるのである。

「……ふふん、作戦成功」

「は? 作戦だと?」

「そう、割と作戦。でもどうってことの無い作戦。話をしておきたいって言うのは、本当なんだ」

「……こんな重大な時に、お前って奴は。ともかく、さっさと済ませるぞ」

「そうだね、さっさと済めばそれで良いんだけどね」

メルは、気付けばテーブルで粘土を練り始める。この行為に特に意味は無いらしいが、
基本彼女はそういった素材さえあれば、命を宿らせ、その対象を動かすことが出来る力を持っている。
また妙な物を生み出すのではないだろうなと身構えてしまっていると、彼女はふと手を止めて、言うのだ。

「私って、この家に……二番目に来たんだよね。魔王様よりも先に」

「そうだったなぁ。その後ヤマト運輸でマールが送られてきたんだったか。いやぁ、あの時は驚いたもんだ」

「……やっぱり、一番は、あの勇者?」

その言葉の真意が掴めない。むしろ、一番とか二番とか決めているつもりは毛頭無い。そのつもりであったのだ。
しかし、彼女からしてみれば、案外それは違うのかもしれない。アンに肩入れしつつある状態にあるのかもしれないと。

彼女は言った。一番はやはり>>390であって欲しいと。

魔王様 と見せかけて私

彼女は言った。一番はやはり魔王様 と見せかけて私であって欲しいと。
これまで、度々魔王であるマールをと、口にしてきた彼女が、日差しに照らされ、そうして小さく微笑むのだ。
何故、この時に、突然こんな事を? メルはいつも笑顔でしっかりしてくれているし、時々悪戯が過ぎたり、抜けている時もあれど、彼女は大丈夫だ。

そんな風に思い込んでいた。それがそもそも間違いなんじゃないかと、その時気付く。
俺はメルの事もやはり何も知らない。突然現れて、氷の魔法を操り、粘土を魔物に変えて動かし、そして魔王様をと僕らしく振舞う少女。
しかし、それもまた慣れていった。彼女がこんな風に振舞って当然と、そして、マールを慕い、そうして天野家として暮らす事に慣れていた。

「一番は私。……じゃ、ダメ?」

「……そんな、突然……」

「そうでもないんだぁ。でも、秀の事が魔王様みたいに好きぃ〜! ってカンジでもない。アンみたいに構ってオーラも放たないし、
 ノエルみたいに秀を観察しながら本を読んだりしない。アリスみたいに振り返らせようと、ハプニングを装ったりもしない。
 でも、私も一応女の子だし、一応娘だし、一応……構って欲しいなんて時だって、全く無い訳じゃないんだよ」

だからって、こんな重大な時に何故そんな話をする。頭の中では、アリスにどう謝り、そしてアンにどう謝り連れ戻そうかと渦を巻いている。
なのに、目の前で娘の一人で居た存在が、見たことの無いような優しい笑みを漏らし、俺に語りかけてくる。その状況がもう、俺には分かっていない。

「そもそも、私って魔王様から生まれた僕って事になっている。うん、私もそう思うし、思いたい。
 でも、……時々夢で見るんだ。その前の記憶のような出来事が。真っ暗な世界を漂っているそんな自分が、見えるんだ」

「……夢?」

「寂しいんだ。とっても、孤独で、誰も居なくて、恐ろしくて、何度も逃げ出してる。それでも逃げ出せないの。ずーっと、通路の中を歩いているみたいで。
 そして、何度も遠くに見える光を掴もうと手を伸ばすんだ。それでも、やっぱり手が届かなくて、切なくなって、辛くなって目を覚ますの」

どうして、夢の話なんて俺に聞かせてくれるのだろう。そう思っている時点で、やはり俺は彼女を理解できていなかったのかもしれない。
気付けば、粘土は某二頭身フィギュアの形を成しており、アン、マール、ノエル、アリス、そして俺の姿が形造られていた。

「でも、こっちの世界で、こうして暮らす内に、幸せだなぁって思えた。怖くなくなっていったんだ。だんだん、夢も見ないようになっていった……ハズだったんだけど。
 また、最近良く見るんだ。その絶望的な夢を。でも、こんなの……誰に話していいか、分からないじゃん……」

言葉が出なくなっていく。俺がいかに、実は自分しか見ていなかったのだろうと。メルは大丈夫だろうと、ずっと放っておいてしまった事を悔いる。
それを見せず、ずっと笑顔で振舞っていたのだろう。しかし、それが今日耐え切れなくなって告白したのかと言えば、それは違う。

「だから私決めたんだ。……これからは、>>392

今出たところです蕎麦屋なんちて。

「だから私決めたんだ。……これからは、今出たところです蕎麦屋なんちて」

「……は、はい?」

「そんな感じで、私の事は上手く言っておいてよ。つまり、ウソついてねってコト」

彼女は立ち上がる。気付けば、粘土はカラーリングまで施されており、自分以外の抜けた二頭身フィギュアに、彩が与えられていた。
何時の間にこんな事を、と思った矢先、彼女は俺の横を通り過ぎるのだ。

「自分が知りたい。いつか、皆と一緒に居たいから……。魔王様とも、秀とも、一緒に。
 だから、それを見つけるまで……お別れさせて」

「お、おい!? いきなり何だよ、それ! そんなの、俺が神の力を用いて——!!」

「ダメだよ、そういうの。……これは、自分で見つけ出さないと、ダメなんだ。大丈夫! きっと……そうだなぁ、二週間くらいで戻ってくるから!!」

「だからって、行かせるか——」

既に遅かった。足元が凍り付いており動きが取れない状態に陥っている。彼女はそれを、時間がくれば解除されるように施してあると言う。
そうしてメルは、俺に一度だけ振り返り、荷物も無くその場を去っていく。携帯もやはり、この部屋へ置いたままなのだ。

「……言いたい事だけ言って出て行きやがって……! しかも、良く分からないじゃないか……!!」

どうして彼女がこの場を一時的にも去ろうと決めたのか、俺にはやはり分からない。
ただ言える事が一つはあった。もう、皆が居ないと俺は俺じゃなくなってしまう。家族じゃなくなってしまう。そして、寂しく思えてしまうと——。

—— 私が何故魔法剣士としての素質があり、紋を持ち得ているのか、疑問があった。
魔王様から生まれた僕の筈なのに、何故紋章があるのだろう。何故生まれる前の記憶が、僅かに残っているのだろう。

この世界に来て、次第にそれは些細な事に変わりつつあった。そして、この世界へ誘う切欠を与えてくれた魔王、マールに幸せをと思い、動いてきた。
しかしどうだろう、この家に暮らし、普通に生活し、慣れていく中、次々と娘が増えていき、取り巻きも増えていく。
次第に天野秀は遠ざかる。この家の主にして、私達の支柱でもあった存在は、徐々に遠い所に運ばれていく、そんな感覚があった。

魔王様には頼れない。だって彼女はまだ幼いから。本当に、血が繋がっていなくても妹のようなものだから。

「特異点、また広がってる……」

ふと、表に出た際に目に付いたそれを眺めてみる。不思議と恐怖の感情は湧いてこない。あんなに黒くて巨大な空間がこの世を覆おうとしているのに。
寧ろ、その特異点の空間を眺めて、>>395というような感情すら浮かんでいた。

あの中に入ってみたい

ふと、表に出た際に目に付いたそれを眺めてみる。不思議と恐怖の感情は湧いてこない。あんなに黒くて巨大な空間がこの世を覆おうとしているのに。
寧ろ、その特異点の空間を眺めて、あの中に入ってみたいというような感情すら浮かんでいた。
懐かしい、とも思えるようなその空間は、一つだけじゃない。遠くにももう一つ、そして更に遠くに一つと、次々に現れている。

その穴を、目的も無くただ次々と追っていってみようと思った私の足取りは、思った以上に軽くなる。

距離を置いてみたいと思った。感情が整理できない部分がある。魔王様に幸せになって欲しいと願う自分が居る。
しかし、自分だって少しは構って欲しいと我侭になりたい感情がある。そして、あの中で、幸せに暮らしたいと願う自分が居る。

でも、私自身の存在に疑問を持ち、そして夢で恐怖する中、やはり平然を装い、長女として振舞うのは無理がある。
思った以上に辛かったのかもしれない。振り返れば、私は長女らしい事を殆どやっていなかった。精々、料理を担当していた位だろう。

「……もっと、違う意味で役に立ちたかったな……」

ふと言葉に出る素直な気持ち。そして、次に思う人間としての嫉妬心。私が居ないと、やはり大変だ、なんて思って欲しい。
そうして必要として欲しい、なんて気持ちが抱かれる時点で、私は何をあの人に求めているのか、悲しくも理解してしまうのだ。

「……なんで、好きになっちゃうんだろう」

子供だと思う。けど、それでも甘えたい、愛されたいなんて気持ちが、次第に生まれていた。だからダメだった。
だから、ねんどろいどなんて人形を造ってみた。思ったより出来が良くてびっくりしたけれど、私の居ないあの四つの人形のように、暮らすのも良いと思う。
私はこのまま過ごしていては、不協和音になる可能性がある。思った以上に、私は嫉妬強く、醜い存在じゃないのかと感じたからだ。

穴が四つ、五つと確認できて、それを眺めながらも次々と場所を変えていく。思ったよりそれらを眺めていくのが楽しかった。
同時にやはり、懐かしさすら感じてしまう。穴に入ってみれば、恐らく後戻りは出来なくなるだろう。けれど……興味は強まった。

「行けない事は、無いんだけどなぁ……!」

とあるビルの屋上に上り、その穴へ手を伸ばそうとする。もっと遥か高くに存在するその穴までは、魔法を用いれば届くかもしれない。
しかし、私がその屋上で飛び跳ねていたせいか、その穴に夢中になっていたせいか、背後の存在に気付きすらしなかったのだ。

「……誰!?」

「その穴の向こうへ行きたいのかな?」

男だ。これが黒尽くめの男なのかーとちょっぴり感動してしまう程、真っ黒尽くしである。とはいえ、流石に肌の色を黒くする事は不可能のようで。
その辺りも凝るべきじゃないかと暢気に思いながらも、その問いに頷いてみると……>>397

あなたが本島に大切にしてる記憶と交換で

男だ。これが黒尽くめの男なのかーとちょっぴり感動してしまう程、真っ黒尽くしである。とはいえ、流石に肌の色を黒くする事は不可能のようで。
その辺りも凝るべきじゃないかと暢気に思いながらも、その問いに頷いてみると……。

「あなたが本島に大切にしてる記憶と交換で」

「本当のことかぁぁ!!」

「失礼、だが言葉は間違ってはいないとも。所詮、この世界も島のような箱庭に過ぎないのだから」

「……本島、本来の世界の島、箱庭……」

「そして、私がこれから誘うのは、第八世界、リバースとも呼ばれる世界墓地——」

気付けば、その穴へ繋がる階段が出来ている。透明なのに、はっきりと存在が分かるのだ。
高く、高く、螺旋状にも思えるほどそれは続いている。途中落っこちたら大変なんじゃないだろうか。

「さて、交換条件だ。貴女は、この世界を捨てる勇気は、覚悟は、あるのかな?」

「……私は、そんなの……無い……。捨てたくないもん。でも、あの穴の先は、見てみたい……」

「まぁ、どちらにしても穴を潜ればその思いは杞憂となろう。それが、隔離されたゴミ捨て場とも言う存在なのだから」

彼は先に階段を上がっていく。真っ直ぐに、迷うことなく、一段一段と上がっていくのだ。
私もまた、誘われるかのようにその階段に足を踏み入れる。透明なその場を、空を駆け上がるように進んでいく。

次第に、何かが失われていくような気がした。次第に、何かが奪われていくような気がした。穴は、とうとう目前まで広がっている。
深く、遠くまで続く漆黒の闇。そこへ私はこの身を投げ入れようとしている。ただ、懐かしいという感情が導くままに。

「それでは、私と共に参ろう。第八の世界と呼ばれた世界墓地へ——」

意識が薄れていく。気が遠くなっていく。それでも、何故か感覚はハッキリとしている。まるで、時間を遡るかのような感覚に。
ただ、身を任せるしかなく流されていく。そうして今では違う世界を確認する事が出来ている。

これのどこが、世界墓地なのだろう。これのどこが、隔離されたゴミ捨て場なのだろう。どう見ても此処は……>>401

マトリックス的世界

これのどこが、世界墓地なのだろう。これのどこが、隔離されたゴミ捨て場なのだろう。どう見ても此処は……マトリックス的世界だ。
空がある。一筋の雲が流れいく。風も吹いている。木々が心地良く音を奏でている。蝉の音も聞こえ、耳を煩わせる。
世界だ。なんてことの無い、平和そうな世界。しかしそれは、何だかとてつもなく寂しい世界。

何故そう思うのだろう。緑も豊かなのに。こんなに過ごしやすいのに、何故だろうと首を傾げてしまう。
すると、隣に居た男は、私に向き直る事も無く、山々が連なる景色を見つつ言う。

「神は、いや……全能なる絶対神が、どうしてこの世に生まれたと思うかな?」

「それは……分からないけれど」

「だろう。私にもはっきりとは分からない。けれども、この世界が、母体となる世界の大元なのも、間違いない。
 そうして、次の舞台の為に切り捨てられた世界が、この第八世界と名づけられた墓場なのだ」

「……それで、寂しいって思うのかな」

「いや、それは違う。この世界にも人は住んでいるが、皆希望を無くし、ただ、惰性で生きるだけの家畜のようなモノ。
 何故希望が無くなったか。それは、神が居なくなったからなのだよ」

「まるで、洗脳から解かれた後みたい」

「その通り。永過ぎる洗脳から解かれて、そしてどう生きていいのか、皆分からなくなってしまった。
 それでも、本能的に自活出来るものだから、何となく皆生きている。だから、文明も元の世界のようには発展はしていない」

「でも、とても墓地と呼ぶほどでは……」

「この世界は、地球そのものを形取っているが、人口は恐らく百万と居ないだろう。死に絶える世界なのだ。
 そして、この世界と母体となる世界が繋いでいるカラクリは、それだけではない。……案内してあげよう」

緑が溢れるその山中を、私とその男は歩いていた。何か、空っぽになっていく感覚があった。ハッキリと、過去は思い出せない。
だけど、この世界を寂しいと言ったのは何故だろうと、懐かしさを感じるこの場を眺めて思うのだ。

山を抜けると、途端荒野とも、砂漠とも取れる場所が広がっていた。何かが滅茶苦茶となった大地、としか言いようが無い。
その場に足を踏み入れるその男性を追い、私もその場へ足を踏み入れた。乾いている土だと思ったのに、沼のようにぬめりこんでくる。

「もう少し先を行けば、>>404を見せられるだろう」

盗賊の巣

「もう少し先を行けば、盗賊の巣を見せられるだろう」

「盗賊が居るんだ? この世界に」

「いや、既にもう居ない。私のように動ける人間もまた稀でね。そういう呪いがこの世界には施されていると私は考えている」

「……呪い……」

「それが洗脳の名残なのか、どうかも私には読み取れない。だが、歴史があろう場所を我々有志は数回り、そして確認したのがこの一つ、盗賊の巣でもある」

「……遺跡……」

「ほう、この洞穴のような場所を遺跡と言い当てるか。面白い直感をしている……」

男は微笑しつつもやはり先陣切って中に入っていく。それを、やはり私も後を追う。
その中は、壁画のような絵が沢山残っている。その殆どは崩れて無くなっているのだが、私は何故かそれを覚えている。
何も思い出せなくなったのに、何故そんな事を思い出せそうになっているのだろう。そして、何か大事な事を忘れてしまったのは何故だろう。

「此処が最奥だ。この場に……盗賊が見つけ出していた数々のガラクタを私は回収した。だからこの場にはコレしか残っていないのだが」

「……本?」

「預言書とも私は言っている。そして、この書を持つ者が、オラクルという存在としてこの世界の中心に立っていた者なのだろうと。
 私は推測した。それは神の僕、或いは神そのものなのではないか。つまりこれは、預言書もとい……日記帳に過ぎないのだろうとね」

「年月とか書いてないんだね。ただ、雑記みたいな……」

「ああ、だが、訳せば……この世界は捨て、次の世界となる場を築かなければならないとも記されている。
 それが、本来の世界、アスワルドとも呼ばれているその場所なのだ。……だが、重要なのは、この記述だ」

「……これって、七つの世界と中心世界の話? ううん、違う。もっと違う何かの……」

「つまりこれが真なる世界。我々の世界は所詮、箱庭だと告げたのもその為。……しかし、真なる世界は……>>407

果てがない

「つまりこれが真なる世界。我々の世界は所詮、箱庭だと告げたのもその為。……しかし、真なる世界は……果てがない」

「それって、どういう事……?」

「そもそも、この記述によると、世界の存在概念の根本が覆されているとも考えられる。そんな暴挙、果たして誰が可能だろうか。
 勿論そんな事が可能だとすれば、それは神であろう。そして神は、次々と土台となる世界を造り、切り捨ててきた……」

「だから、果てが無いの?」

「いいや、その神が創る世界群には果てはあるだろう。しかし、それらは所詮隔離された箱庭……」

つまり、彼はこの世界が連なって出来た箱庭達こそが、パラレルワールドなのだと言いたいようなのだ。
しかし、この場を見たことがあると感じた私は、その中を何度も見返しているのである。
確か、私は好奇心が強すぎると……災厄を齎すのだろうと、遥か昔に言われたコトが無かっただろうか。

「しかし、もう一点不思議があってね。アーティファクト……神が造りし道具として、神具と私は呼んでいるが、
 何故かこの捨てられた世界にも多数残っていてね。この私の腕の甲にある紋章もまた、神具を取り込んだものだ」

「……もん、しょう……」

「他人からすれば、あたかも魔法のように見えるそれも、やはり神の奇跡を用いて操っているに過ぎないって訳で……どうした、様子がおかしいようだが?」

「……私……は……」

その後、私はこの人が時間の許す限り、共にこの世界を歩いて回る。私が生まれた場所は、本当に何もない、言わば田舎のような村。
そもそも、村としての概念すらあったのかも怪しいその場所で、私は生まれて異端扱いを受ける事になる。
持つべきではない好奇心。そして、その興味が妙な方向へ向いていると、村から追い出され、盗賊に売り飛ばされてしまう。

かといって、盗賊達もまた惰性で義務を行うような集団。そうしなければならない、という本能だけで盗みを働き、
盗んだ品は、飾るわけでもなく、大事にするわけでもなく、ゴミのように野ざらしにされるのである。

そうして、私もその中で野ざらしにされるだけ。触られる事も、話しかけられる事すらも無かった。
しかし、盗賊の一員で幹部という位置づけでもあったその人だけは、私が話す言葉に耳を傾けてくれるのだ。

「ほう、面白い事を言うんだな。世界がたくさんあるんじゃないかって? でも、そんな事言ったらお頭に何されるか分かったもんじゃないぞ?」

「でもでも! きっとあるよ! だってこれ、世界がたくさんあるって書いてるもん」

「お前、それを読めるのか!?」

そうだ、私はかつて預言書にも触れている。そして、僅かにそれを読み進めて、文字ばかりで飽きて嫌になったんだ。
だけど、それが読めたからと、その人は……>>409

翻訳の極意を私に叩き込んだ

そうだ、私はかつて預言書にも触れている。そして、僅かにそれを読み進めて、文字ばかりで飽きて嫌になったんだ。
だけど、それが読めたからと、その人は……翻訳の極意を私に叩き込んだ。しかし、何故かその人は本が読めないというのだ。
読む気になれないとも言う。その存在に興味を示す事が出来ないのだという事を、当時の私は気づく事は出来なかった。

そしてある日、売り飛ばされた割には外へ出てもお咎め無しの為、私は外をこの人と共に練り歩く事になる。
この時はまだ、大地は沼のようにぬかるんではいなかったし、湿った土が残っているだけだと思っていた。

「しかし、不思議だな。お前と居ると……色んな場所を見て回りたくなる。それまで、何もかもどうでもいいとすら思っていたのに」

「でも、見て回って楽しかったでしょ!?」

「ああ、色々と発見も出来るしな。……メル、そのヘソの所に出来た痣は何だ?」

「うーんと、預言書に言うところの、神具だったかなぁ。何かを間違って取り込んじゃったみたい。
 でも、それは身体の中でデータ化されるから、別に身体に害はないんだって!」

「本当に大丈夫か? まぁ、俺はご免だな。……生憎、その気分にすらなれない」

そんな風にこの人と世界を見て周り、そして書を読み進めて、私は次第に他の世界に向かう方法があるのではないかと子供ながらに思い込む。
そうして、この人と色んな発掘道具を用いては実験を行い、そうして……私はとうとうその穴を生み出す事に成功した。

「凄いな……掘り出したこの神具の長剣を熱して、その後急速に冷凍。それがこの剣の力の発動条件か」

「でも、人が一人入れそうな穴しか出来なかった……」

「行けばいいさ、メル。……お前は、違う世界が見たいんだろう?」

「でも、一緒に行きたい。一緒に行って……、もっと色んな場所を……」

「無理なんだ。俺には、そう思おうとしても、それが出来ない。だがお前は選ばれたんだろうな……その向こうへ行きたいと願う事が出来る」

その人は、私に微笑みかけて送り出そうとしてくれた。その笑顔は、誰かに似ている。優しいけど、変態で、頼りないあの人に。

「さぁ、行って来い。そして、コレも持っていけ!!」

彼が剣を私に投げ込んでくる。それを受け取った私は、その暗闇の中、長い旅を続ける事になる……。

気が付けば、私はその遺跡とも洞穴とも言える場所に横たわってしまっていた。この世界に誘った男の人が、私が気が付いた事に気付き、振り返る。
突然私は倒れたらしい。そして、>>412と、うわ言を繰り返していたともいう。

演劇部

気が付けば、私はその遺跡とも洞穴とも言える場所に横たわってしまっていた。この世界に誘った男の人が、私が気が付いた事に気付き、振り返る。
突然私は倒れたらしい。そして、演劇部と、うわ言を繰り返していたともいう。何故だろうと、私も首を傾げるのだが……。

「演劇か、成程……面白いなぞらえ方が出来るものだ」

「なぞらえって言うか、良くわかんないけど……」

「箱庭で行われる演劇、そしてそれは、脚本が必要だ。……仕組んだ者を炙りだす為にも、やはり計画の実行は必要だ」

「……計画?」

「我々、七十二から成る有志は、この世界が母体と成った世界を覆す為に尽力している」

「そんな事……出来るの?」

「それらは、我々が長年費やした研究の結果でもある。すべては、遺された神具のお陰とも言うべきなのだが」

「……世界の、裏返り……」

「まぁ、記憶を失い、こちらで死人のように暮らす事を決めた君には関係のない話であったか」

彼はこの場を去ろうと立ち上がり背を向ける。そして、最後に私に彼は意志を尋ねた。
私はそれに頷く。記憶が混濁する中、気付けば剣を手にし、立ち上がってはこの頭の中で新たな世界を思い描いているのである——。

—— 誰も居なくなった部屋で、呆然と一時間もの時間を費やしてしまっていた。そして、携帯が鳴った事で俺は我に帰る事になる。
練曲ネルの催促電話でもあった。何時になったら話し合いの場に来るのだと。今は仕方なくと、足取りもままならない状態でその場へ向かうのだ。

「……夕方から、バーに来るハメになるとは」

「チェリークロックで話し合う訳にもいかないだろう。それに、此処は……白渡の隠れ家でもある」

「アイツ、既に中に居るのか?」

「お前はまだなのかと、何杯も酒を煽りつつ待っているぞ……」

ネルが呆れている。その顔を見てぞっとする中、俺がそのバーの扉を開くと……>>414

酒じゃなくてウイスキーボンボンを食いまくっていた。

ネルが呆れている。その顔を見てぞっとする中、俺がそのバーの扉を開くと……酒じゃなくてウイスキーボンボンを食いまくっていた。
何とも、酒とチョコレートの混じった口臭で迫られたものだから、ある意味悶絶しそうになってしまう。
その中で、練曲ネルが観笠ミカと向かい合う形でテーブルに付き、俺はネルの隣へ逃げるように座るのだ。

「僕から逃げるなんて、酷いや天野君!!」

「最近激しく気持ちが悪いぞ、白渡」

「相変わらずなのですねー、この二人。はぁ、メンドイ」

「そういえば、魔界の部長のルーシーは来ないのか?」

「メンドイので連絡も入れてないのです。どうせ変身するしか能がありませんしー」

「……ルシフェルっぽい名前の割りに扱いが酷いな、それ」

—— そうして、観笠ミカがメンドイと何度も繰り返す為、話は要点だけ絞られる事になる。
豪雨によって臨海市が水没した理由は未だに調査中。しかし、白渡が介入出来た時点で、第三者の能力の犯行の線が強い。
そして、今回の人間が消失してしまう件もまた、第三者的な存在が行っていると推測。しかし……。

「金色の虫? 白渡、それは何だ?」

「うーん、詳しくはミカミカちゃんのタブレットPCを見てよ」

「ミカミカ言わないで欲しいのです。……はい、これ」

「……天道虫みたいだけど、金色だな……何匹か居るようだが」

「最初は二匹を確認。しかし何故か徐々に増殖中……。そして、人がその虫に惹かれて追いかけるこのシーンが問題なんだけど」

「路地裏に駆け込んでいって、その後虫だけ戻ってきたな……。なんだこれ」

「恐らく、レベルダウンの影響も、そして人が消えた理由もこれだろうね。発生した理由が分からないんだけど」

俺が腕組みし、そのタブレットPCから流れる映像を睨んでいると、ふと携帯が鳴り響く。
どうやら魔王様からの連絡のようだ。メルの件はなんと言ったものかと思いつつも、電話に出ると……>>416

おとなりの刑事さんが自分をかばって虫に消されたらしい

俺が腕組みし、そのタブレットPCから流れる映像を睨んでいると、ふと携帯が鳴り響く。
どうやら魔王様からの連絡のようだ。メルの件はなんと言ったものかと思いつつも、電話に出ると……おとなりの刑事さんが自分をかばって虫に消されたらしい。
消された、つまりこの場合どうなるのかと白渡に振ってみるが、恐らく無に帰す形となるのだろうと答えるだけであった。

「マール、その虫は付近に居るのか!?」

『もう一匹は焼き払ったんだけど……! でも、刑事さんが……!!」

「……ともかく、どうにかするのは後だ。今はとにかく、家に戻っておいてくれ!!」

『でも、アンは、アリスはどうするの!? あの子達も、もしあの虫に触れられたら……!!』

「……くそ、どうすればいいんだ……!」

つい、テーブルを強く叩いてしまうものだから、皆を驚かせてしまったらしい。観笠ミカも、練曲ネルも、こちらに視線を向けていた。
しかし、白渡だけはまるで展開を読んでいたかのように、何故か指を鳴らした。すると背後から聞き覚えのある声がするのだ。

「……え、えと、天野さん、お久しぶり……です……」

「……リアか! あれから連絡も無くて、ちょっと寂しかったんだぞ?」

「そ、それは、色々とウチも多忙やって、その……!」

「ハッキリ言ってあげなよ。会いに行く勇気が出なかったってね」

「社長! じゃなかった、白渡さん、そんなん言うたらあかんって! もう……!!」

何故白渡矜持がリア・アンリアーユを呼び寄せたのか、その意味は一つしかないのだろう。
彼女には転移召喚という、ある意味ルーラを凌駕する魔法を扱う事が出来る。これを実際俺が行おうとするならば、MPが足りない。
つまり、彼女の力を用いて連れ戻せばいいと言うのだ。この時改めて、白渡に感謝してしまうのである。

「じゃあ、ウチの肩に捕まって、会いたい人の顔を想像してみて!!」

「よ、よし、掴んだぞ。こんなカンジでいいか?」

「あ、わ、わ……か、肩、触られてしもうてる……!!」

何故か肌も熱っぽいリアは、声も裏返り、そして……>>418

弓なりにえびぞる

何故か肌も熱っぽいリアは、声も裏返り、そして……弓なりにえびぞる。何故に海老反りなのか理解に苦しむ中、転移魔法が発動する。
どうせなら、呼び寄せたほうが絶対に良かった。お陰で俺はリアと共に、妙な場所に飛ばされるハメとなる。

「な、何だ、此処ぉ!!」

「……ホテルの室内、みたいやね……あはは」

「こんな時にコメディってるんじゃねぇ! リア、次は集中してくれ。……命が掛かってるんだ」

「分かっとる! ウチだって遊びやない、真剣やもん—— って、携帯、また鳴ってる」

「ええ!? あ、ノエルか……もしもし、ノエルか!?」

『……はい、ノエルです』

「アンみたいな事を言うな。アンの探索はリアの力を借りるから中止だ。家に戻っていてくれ!」

『それが、そうも行きません……多数の虫に囲まれました……』

「ちっ! リア、急いでくれ。ノエルの所へ飛ぶッ!!」

「あ、うん、分かった! イメージ描いて、強く願って!」

『……最後に、聞いてくれますか?』

「何を言ってるんだ! 俺が直ぐ行く、十秒だ、それまで持たせてくれ——」

この世界は、神様が居る。情けない神様が、この世を良くしようとレベル上げに必死になりながら、生活をしている。
しかし、所詮は未熟にも程がある存在。それは、結局様々な物を失ってしまうのかもしれない。

『いいえ、寧ろ来ないで下さい。……アンは、秋葉原に居ます』

「そ、そんな事、今言わなくても……! リア、早く!!」

「イメージが、纏まってへん! せやから飛ばれへんッ!!」

『最後に、声を聞けて……良かったです——』

既に景色は飛んでいた。しかし、そこにはもう何も無い。ノエルの衣服すらその場には残ってすら居なかった。あったのは、一枚のメモのみ。
服ごと彼女を消し去ったのかと、金色の虫を見やる。思った以上に数は居ないようで、数匹程度しかその場には残っていない。

何かが吹っ切れたのだろう。気が付けばその場に居た虫を全て灰にし……>>420

大きな満月を背に残骸の上で勝ち誇っていた。英雄王の如く

メタルキングクラスの経験値を獲得

何かが吹っ切れたのだろう。気が付けばその場に居た虫を全て灰にし……大きな満月を背に残骸の上で勝ち誇っていた。英雄王の如く。
俺の大事な娘を、無に帰しやがった。それだけで大罪。そして、このような虫を導き出した人間を俺は必ず裁かなければならない。

「な、なぁ、天野さん。こんなメモ残って—— 天野、さん……!?」

「……クククク、アハハハハ!! ハァァハハハハハハハッ!!」

「数匹の虫の灰の残骸の上で、なんか狂っちゃってる……!?」

「なぁ、リア。……何だろうな、この理不尽さって」

「へ、そんなの、ウチに言われても……」

「潰してやる、この虫を生んだ奴も、この世界に誘った奴も、何もかも。俺の娘に手を出した責任を、その身で償わせてやる……!!」

何故かあの虫一匹で随分な経験を得る事が出来た為、レベルも一気に上がるのである。
レベルダウン、そして正しく刻んできた人々の年齢やその実力を、全て吸い取った虫である。それを叩けば、やはり一気に報酬を得たのだろう。
だからこそ、俺は勝ち誇る事が出来る。既に神として困る事は無いほど、実力を得る事が出来ている。とはいえ、多様は出来ないだろうが……。

「……さて、始めるか。……全てを炙り出してやる……」

「ちょ、ちょっと、天野さん、落ち着いて! そんなに動転してたら、出来る事も出来なく——」

リアが何か語りかけてくるが、それは耳を塞いでいるように聞こえない。夢中になっているんだ、自分の力というモノに。
先ずは虫のそれらを知覚で感知、遠隔で潰していく。そして辿るのだ、大元を——


—— 夜闇、増殖していたと思われる虫が、次々に弾け飛んでいく。もし想像出来るとすれば、それは天野秀、ただ一人しか居ないのではないだろうか。
何度も連絡を入れようとしているのに繋がらない。何かが彼を狂わせているとしか思えない狂気の沙汰が起こっている。

潰されているのは、弾け飛んでいくのは虫だけではない。木も、草も、動物も、そして人もなのだ。虫をメインに、無差別的にそれが行われている。
こんな時、どうして私は一人なのだろう。どうしてメルは居てくれないのだろう。どうして、家族の誰も、居てくれないのだろう。

「秀様、一体何が起こっているっていうの……!?」

街をひたすら駆ける中、ひたすらに不安が舞い込んできては押し潰されそうになる。折角、ノエルからアンの姿を見かけたと連絡を受け取ったのに。
この秋葉原という場所でもまた、車が、街頭が、そしてやはり人もまた、弾け飛んでいる。

とにかく、急いで臨海市まで戻らないと、と駅の方へ向かっていると……偶々アンを見かけてしまうのだ。しかし彼女は……>>423

「俺より強い奴に会いに行く」的な顔をしていた

とにかく、急いで臨海市まで戻らないと、と駅の方へ向かっていると……偶々アンを見かけてしまうのだ。
しかし彼女は……「俺より強い奴に会いに行く」的な顔をしていた。纏っていた制服も随分と汚れ、所々破れが目立つ。
彼女は秋葉原の遠くへ行こうと、その出来事が起こっているのにも関わらず、知らぬ顔で過ぎ去ろうとする。それが許せなくもなり、私はアンの肩を掴むのだった。

「待ちなさい、アンッ!!」

「……マール。久しぶり。……でもないかも」

「この出来事を見て! 何とも思わないの!? 貴女、勇者でしょ!?」

「……車とか、色々弾け飛んでる。人も……弾けてる。それだけ」

「それだけって、貴女ね!! それでも——」

「私、勇者なんてやめたから。……ううん、元々……勇者じゃなかったのかも……」

真顔で彼女はそう答えた。そうして、秀様が何故アンと喧嘩をしたのかも、全て合点が行くのである。
これは秀様が悪い訳では無い。彼女が、いいや、私の妹が最低なだけなのだ。その最低な妹を修正するのも、姉の役目。

「……退いて。私はもっと強い人に会いに行くの」

「退かないわ。何故なら——」

かつて、お父様……魔王ギースは、その力を持ってしても勇者アンには敵わず、敗北を喫する事になる。
魔王の中でも一、二を争う実力の持ち主であった彼は、その力の全てを発揮せず、彼女に敗れる事にはなった。しかし、それでも彼女を追い込んだのもまた事実。
その力が、紋章が、私の額に隠れるように眠っている。その力を全て解放させようと強く念ずる。アンという馬鹿な妹を、天野家に戻す為に——。

「何故なら、私が貴女より強い存在だからよ……!!」

勇者がぎろりとこちらを見据える。その眼光がどれ程恐ろしいモノなのか、それを浴びなければ分からないのかもしれない。
視線だけで動きを止め、威圧させられてしまう。私の身体が途端に震えだす。

父もまた、私には魔王の素質が無いと、それでも私に紋章を継がせてくれた。しかし、完全に倒れる前にもまた、私にこう言ってくれていた。

「勇者に対する事が出来るのは、魔王の私だけ……。……さぁ、決着を付けましょう、アン・アンダルシア——!!」


———— つづきます

乙!

えーと……以上で終わります。

主人公は狂っちゃうし、アンちゃんお馬鹿過ぎだし、ノエルちゃん消えちゃったし、メルちゃん悪堕ちしたし、
アリスちゃんは使いづら……いえなんでもないです。マールさんしかいない! おかしいな、なんか酷すぎるwwwwwwwwww

って訳で、次回から主役はマールさんに決定ですね。やったね!

ではでは、今日もお付き合いありがとうございましたー。

【05/12 (日) 01:04時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

05/12 (日)
  21:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 魔王なムスメ 第十九話 『永きの因縁に決着を——邪魔しないでよ!』


しょうがとー飲んでおきます。べっちょり。

>>282
からの続き。
『こいつ誰だよ!』第二話

登場人物紹介

【木下 蔵吉】
三流大学生だが、あまり授業には出ない。ほぼ引きこもり状態。

【織田信長】
自称。本物かどうかは全く不明。ただの春になると出てくる人かもしれない。

もうしばらくお待ちください。

やはり授業に行かないと罰が当たったのかもしれない。
うちに来た誇大妄想の闖入者をどうするかで頭を悩ませている。
だいたいなんで俺がサルよばわりされなきゃならないのか。このオッサンは偉人の癖に漢字も読めないのかと腹が立っている。
そう、この押しかけオヤジの名前は六天魔王こと信長なんだが、その信長はというと・・・。

信長「おーいサル。ぶどう酒おかわり」
蔵吉「ぶどう酒じゃねえっ!コーラだ」

物珍しいのかコーラに舌鼓をうっているオッサンが信長だ。情けない。

蔵吉「おい、オッサン」
信長「オッサンではない。六天大魔王様。織田信長である」
蔵吉「俺はこれからあるところへ行く。いいか誰が来てもこの戸を開けるなよ」
信長「さっそく篭城か。わしは篭城は嫌いでの。家臣の反対を押し切って桶狭間では奇襲したのが運良く成功したわい」
蔵吉「(なんだ偶然かよ。聞きたくなかった)とにかくオッサンはこちらの世界に不慣れだから開けるなよ」
信長「あいや、わかった」

本当にわかったのかといいつつ。俺はアパートを後にする。早く行かないと六天魔王より恐ろしい教授が待っている。
俺は一抹の不安を振り切って大学へと急いだ。

信長「あー暇じゃ暇じゃ。誰か来ないかのう。サルは出るなと念を押していたが、ここは天下様の知恵と要領の見せ所じゃ」
と、運悪く訪問者がベルをならす。
信長「おおこれは、出陣のほら貝ならぬ訪問者の来た合図だな。今あけるぞ」

と戸を開けるとそこには>>431

ドッペルゲンガー

完全に19時からだと思ってた↓

と戸を開けるとそこにはドッペルゲンガーが

信長「お前は誰じゃ」
ドッペル「お前は誰じゃ」
信長「真似するな」
ドッペル「真似するな」
信長「ううこのままじゃ・・・どうする?」
ドッペル「ううこのままじゃ・・・どうする?」
信長は一旦戸の影に隠れた・・・15秒経過した後に急に

信長「バァ!」
ドッペル「バァ!」

信長は混乱してきた。こやつ何者じゃろうと。もしかしてわしの命を狙っている忍びの者かも知れない。変装してるのかも。
信長はドッペルの>>434を引っ張ろうとした。

背中から伸びる線みたいなもの

信長はドッペルの背中から伸びる線みたいなものを引っ張ろうとした。

しかしそれは掴むことができなかった。その線は霊能力者が見れば、おそらく信長本人の頭とおへそをつないでいるのだが。
残念ながらこの男は「神も仏もない」という、日本の無神論者の先駆けみたいな男だったので見えなかった・・・。

ドッペルゲンガーは、かき消すように消えた。

信長「ふう。幻をみていたのか・・・」
信長は一息ついた。普通の人間なら幽霊に気づいて小便をちびるもんだが、さすが大槻教授より早くアンチオカルトを極めた男である。

オカルト界では、ドッペルゲンガーを見た人間は死期が近いと噂されている。あの芥川龍之介も、自殺直前にドッペルゲンガーを見たという噂もあるぐらいだ。
となるとこのSSも、もうすぐ終了なのかも知れぬ・・・。

信長「ふう。幻を見たら小便が近くなったわい」
コーラをがぶ飲みしてたせいだと思うのだが、信長はトイレへと向かった。
トイレのドアを開けて驚いた。その理由は>>436

すごく死神っぽい人が

トイレのドアを開けて驚いた。その理由はすごく死神っぽい人が

死神というと鰤みたいな、新撰組のメンバーのような身なりではない。もちろん大きな鎌を片手にした髑髏人間でもない。
ただただ、不気味でやせ衰えてその顔は恨みがましい三白眼と瘴気に満ちていた。
身体を触られたらこちらが病気になりそうな、おぞましい外見である。

じょ〜じょじょ〜。ばしゃしゃしゃしゃ。

信長は思わず、小便をまちきらして便所から逃げ出した。今まで見たどんな残虐な戦の場面よりも恐ろしく、かつ禍々しい表情の悪鬼がそこにいた。
コペルニクス的転換で信長は、頑固な霊界信者になってしまった。大槻教授が、霊能者にジョブチェンジしたようなものである。

信長は必死にお経を思い出そうとしたが、今まで寺と敵対してたのでろくにお経を知らなかった。
思わず口をついて出た呪文は>>438

イオナズン

思わず口をついて出た呪文はイオナズン

信長は叫んだ。
「イオナズン!」
それは本能がもたらした未来からの贈り物だったのかもしれない。ドラクエを知らない信長が、どうしてこの呪文を知っていたのか、それは誰にもわからない。
信長の願いが届いたのかにわかに雲が集まり夕立が降り雷鳴がとどろいた。
便所の前の死神は、先ほどのドッペルゲンガーに見習ったかのようにうっすらと消えていったのだった。

数時間後、嫌がる蔵吉に無理やり付いてきた女生徒と蔵吉は、小便の洪水の中、失神してる信長を見たのであった。

ー続きます。

乙!

ホラーは知らないんだよなー。どうしようかなこれから。
とはいえ最後まで読んでいただきありがとうございました。新キャラだしたかったんだけどなー。仕方ないから自分で出しちゃった。

次回

05/13 (月)
  19:30〜21:30 /No.27 ネルシト氏
『お前は誰だ』第三話

【05/12 (日) 19:05時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

05/12 (日)
  21:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 魔王なムスメ 第十九話 『永きの因縁に決着を——邪魔しないでよ!』
05/13 (月)
  19:30〜21:30/ネルシト氏 - 『お前は誰だ』第三話

お、おぉぅ、予約取るときはぼっちだったのに始まってたのかー乙なのです。

今日も登場人物紹介はカットという暴挙。だって長いんだもん。

そんな訳でもう暫くお待ち下さい。

———— 勇者なムスメ 第十九話

秋葉原と呼ばれる都会の交差点は、無残にも砕けた木々や車、ガードレールや信号等、様々なものが転がっている。
それは、神のような所業により、弾けて潰されていく。人もまた、弾けて潰されていく。血飛沫が、直ぐ傍で舞っては頬を朱に染めてしまう。
直ぐ隣で、人が死んだ。頭から爪先までぷつんと紐が切れたように折れて弾けたのだ。その人は、何も思う事が出来なかったかもしれない。

「…………ッ!!」

しかし、直後その無残に弾けた死骸は、落雷に打たれるような形で灰と化すのである。
目の前に居る金髪の少女、その最強と謳われる勇者は、指を天高く掲げるだけで次々と豪雷を呼び寄せるのだ。

「いつまで逃げてるつもり……? 戦いにすらなっていない」

物静かに、それでも挑発的に放った言葉には、どこか突き放すような意味が込められているようにも感じられる。
妹の不出来を正そうと、勇者アン闘いを挑んだ私だったが、此処まで差があるとはと愕然となってしまう中、その雷撃を避けるので精一杯である。

「まだ私は、剣すら抜いていないというのに」

「そもそも、剣なんて持っていないじゃない!!」

「魔法で生み出せばいいだけ。別に代わりを用意してもいいし……」

「くっ、馬鹿にしてぇぇぇ——!!」

彼女が雷を得意とするのならば、私は炎の魔法を得意としている。ありったけの魔翌力を篭めて、火球を生み出し彼女に放つ。
その私にとっては相当のその魔法の火球ですら、彼女は容易く薙ぎ払ってしまう。私の力が、思った以上に通じないという証明が、何度も続くのだ。

「もう、諦めて。……貴女は私に勝てない」

諦めるものか。今、きっと凄く大変な事が起きているのだ。ここで私が挫けて、アンを連れ帰る事が出来なければ、
恐らく最悪の事態を招いてしまうだろう。そうなる前に、私が彼女に勝利して連れ帰るのだ。そうしないと……何より、彼女が一人ぼっちになってしまう。

だが、通常に放つ私の魔法は全て簡単に弾かれてしまう。それならば、いっそ賭けに出るしかない。
動きを止めた私は、彼女に指差し嘲笑ってみせる。先ずは何気に高いプライドを持つあの馬鹿妹を逆に挑発してみせる。

「勝てないと言う割りに、もう三十分も私を倒せていない。……歴代最強の勇者が聞いて呆れるわ。それに、私はまだホンキじゃないのよ」

「嘘ばっかり……」

「その証拠に、ほら……私はまだ、>>446

勝負下着を着けていない

「その証拠に、ほら……私はまだ、勝負下着を着けていない」

「……何の関係が?」

「つまり……私にはまだ変身が遺されているという事! さぁ、勝負下着に履き替えて欲しくなければ、急いで叩く事ね。
 そうしなければ……、貴女は私の強大な力の前に敗れ去るのよ。初の敗北を喫する事になる!!」

「……面白そう。早く履き替えてみせて」

「……へ!?」

まっずい、想定外だ。そもそも、私の勇者アン像が根本から間違っているだけであった。
そう、彼女は強い者が居るのなら戦いたいなんて思ってしまうバトルマニア的変態気質。
普段表情が無く、おまけにゲームばかり没頭するのだが、実は心底負けず嫌いで、その割りに強い存在を求めようとする。
それを打ち倒し快感を得るタイプなのだ。その事をすっかり失念していた私は、カウンター大作戦を躊躇う事になる。

どでかい一撃を、こちらに仕掛けてくるアンにゼロ距離で浴びせれば、勝負は見えるかもしれない。
そう思っていたのだが、今ではアンはやはり無表情で、私の生着替えを待っているのだ。

「早く、早く」

「くっ、そ、その……!!」

「恥ずかしい? 大丈夫、私しか傍に人は居ないから」

「そ、そういう問題じゃ……!!」

「何を躊躇っているの? 着替えて変身というのをしないと、マール、貴女は死ぬだけ」

「わ……分かってるわよ! ……五分、五分だけ時間ちょうだい!!」

「パンツ一枚にそんなに時間が?」

「ちょっと身に着けづらい下着なのよ! そ、そういう事で……勇者、貴女はそこで待っていなさいッ!!」

不味い、非常に不味い。大体、変身も出任せそのものなのに、挙句に下着で変身ってちょっとしたエロゲーじゃないか。
更に最大の問題がある。……そんな着替えは一切持ち合わせていないのだ。ふとスカートを捲ってみると、白い生地が目に映るのである。

「……ど、どうしたものかしら……って、あら?」

ふと地面を見ると、そこには何故か>>448という勝負下着が!

水色のパンティ

地面の下着をはいて膀胱炎になったらって発想はないのか?

ふと地面を見ると、そこには何故か水色のパンティという勝負下着が! 生地の色が変わっただけである。
ううむ、と私は悩む。そもそもこれは、誰の下着? それに先ず新品なのか、或いは中古なのか。
どんな人が履いていたのか。下手をすれば男の人が履いていた可能性だってある。ちなみにサイズは割りと丁度良さそう。

「……私って、黒とか好きそうって言われるけど、清楚なほうが好きなのよね。……よしっ!!」

その水色とも空色ともいうような、柄すら無い一般的なショーツを持っては、アンの前に立ち塞がる。

「フフフフ……、待たせたわね、勇者アン。これから私は本当に、ほんとぉぉぉ〜に、生着替えして変身するわ。
 そして、地獄の業火で貴女を焼き尽くし、灰に帰すの。そうされたくなければ……、今私を叩く事ね!!」

「……いいから早く」

「うっ、早くって……?」

「そんな普通の下着なら、三秒で着替えられるから。はよはよ」

「……分かった。分かりましたぁ〜! もういい、怒ったわ。こうなったらヤケよ、生着替えしてやるんだから!!」

何となく手に持っていたそのショーツの裏地を確認する。新品なのか、中古なのか、どうにも判断が出来ないその下着。
最早打つ手無し、どうにでもなれと言った気持ちで今履いている下着を下ろし、その水色の下着を身につけた。

「わ……ホントにぴったり!!」

「……わくわく」

「……一応演技しておいたほうがいいのかしら」

「……わくわく」

「フフフ、今、私は水色パンティーを身につけ、変身を終えたわ。今、私は歴代の魔王、父をも越える力を身につけた大魔王!!」

「……変身してない。インチキ」

「はいっ!? 一応変身したのよ!? つもりなだけだけど……ぼそ」

「私が言う変身とは、マールがもっと醜い豚のような化物となって、目玉も十個くらいあって、腕も三十本くらい、足は短くて、
 翼は生えてるんだけど[ピザ]過ぎて空が飛べない的なお飾りの事を言いたいの」

「…………」

どうやら、彼女は魔物化してのパワーアップの事を変身と指していた様子。それもまた間違いではないのだが、
一度なると先ず戻れないのが魔物化のネックであり、私はそういう事に長けていない。

しかし今、水色の下着を身につけた今ならば、>>451が使えそうな気がする!

文字規制忘れてた!次からさがるかー ↓

水関係を操る能力

しかし今、水色の下着を身につけた今ならば、水関係を操る能力が使えそうな気がする!
水と言えば人魚と海の世界からやって来たセレンが居るのだが、彼女程に長けた力が私に扱えるだろうか。
試しに指先に念じて水を発生させようとすると、それはいとも容易く行えるのだ。

「もしかして……私って、下着の色で扱える魔法が変わるの?」

「何をぶつぶつ言っているの? そんな手品を見たくてのんびりしていた訳じゃない」

「フ……フフフフ、今気付いたわ! 私の、私という存在を、今己で再確認したのよっ!! いつも白を履いていたからいけなかったのね!!」

「……女子は清楚でなければいけないわ」

「そ、それは言いっこ無しよ! でもこれなら……元々の紋章で炎を扱え、そして下着の力で水をも操れる。
 これなら、融合魔法が可能よ……。さぁ、見せてあげるわッ!!」

最早勢いでしか私は動いていなかった。どちらにしても、何か新しい事を起こさないと、私は敗れるだろう。
だからこそ、片手に水を、片手に炎を纏い、それを合わせ新たな魔法結果を生み出そうとする。
勿論普通ならば上手く行く筈の無いその咄嗟の出来事。そしてやはり上手くいかなかったので、そのまま闇雲に投げつける羽目に。

「ええいっ、上手くいかないじゃないの!! これでも喰らえッ!!」

「……そんなの、簡単に—— そ、そんな!?」

「え、……ちょ、ちょっと、大丈夫!?」

それはただ、投げつけただけ。大した事すらしていないその魔法は、メラレベルのつまらないモノである。
しかし、アンの腕は焼け焦げたようにも、水圧で押し潰されたようにもなっている。最早彼女の左腕は使い物にならないだろう。

「くっ、油断した……。いつのまにか、そこまで魔力を高めていたなんて……!」

「ええっ!? あ、いや、そうね!! そうなのよ、私、実はこっそりパワーアップしたのだから!!」

「分かった……。私も本気を出す……。雷鳴よ、我の声に応え、天をも貫く咆哮となりて——」

お遊びでは私に敵わないと判断したのだろう。気付けば、彼女の周囲には紫電のような筋が自分を覆うようになっており、
彼女の目の前のコンクリートが突如割れ、そこから雷の剣が生まれ、そして彼女の右手に収まる。

なんか更に不味い事になっている。目の色が先程までとは違う。これが……勇者の伝説の力なのか。
けれど、対抗策はきっとある。そうだ、水と炎が操れるんだから……>>454

お湯を沸かして美味しいカップラーメンをふるまって停戦

>>454
なんという平和的解決方法

なんか更に不味い事になっている。目の色が先程までとは違う。これが……勇者の伝説の力なのか。
けれど、対抗策はきっとある。そうだ、水と炎が操れるんだから……お湯を沸かして美味しいカップラーメンをふるまって停戦しよう!

直感。危険だと判断した。次の一撃をまともに浴びれば、私は絶命する。容易く命を落としてしまう。
それ程の威圧的な何かが、彼女の眼差しにあった。それは、何者も恐れず、果敢に挑み、ひれ伏せてしまう恐ろしい力。

「——そして、我が刃に集いし猛りを今、放たんッ!!」

「あ、あの、アン? ここらでお腹空いたりしない?」

既に彼女は私目掛けて、魔法で生み出した雷の刃を持ち、上空へ舞い上がっていた。
真っ白の下着が目に入る。そしてその猛った紫電を纏った彼女は、私を一撃で斬り去ろうとしている。

「だ、だから! カップラーメンを食べましょう!? そう、カップラーメンを——!」

「一撃必殺の雷鳴の刃——ギガブレイクッッ——!!」

「いやぁぁぁ、パクリっぽい技で死ぬのはいやぁぁぁ!!」

「…………」

私は頭を抑え、屈んでは死にたくないと叫んでいた。何とも情けない魔王の最期である。と、静寂に包まれた中思ってしまう。
そうして気付くのだ。アンの動きが止まってしまっている事に。既に闘気すら感じられない彼女の腹から、虫が鳴る音がした。

「……お腹、空いてた。力が出なくなった」

「……わ、私、生きてる! 生きてるって素晴らしい!!」

「カップラーメン、ご馳走してくれるのなら、停戦に応じる」

—— 近所のコンビニは既に店員も避難しているのだろう。もぬけの殻となっていた。
誰も居ないその場所で、適当に定番のカップヌードルを二つ、そして魔法で用意したお湯を注ぎ込むのである。
なんて便利なんだろう、融合魔法。持ってて良かった、融合魔法。

しかしアンは、カップヌードルは>>459が至高だと文句を言い始める。

カレー

シーフード

どんべえ

しかしアンは、カップヌードルはカレーが至高だと文句を言い始める。

「しょうゆなんて認めない。カレーがいい。カレーカレーカレー」

「もう蓋も開けて、お湯も注いだわよ? 文句言わないで食べなさい」

「じゃあ二つ食べるから。……自分で持ってくる」

アンはそう言って勝手にコンビニを物色し始めるのである。後できちんとお代をレジカウンターに置いていくつもりだった私は、
余りお小遣いが無いから、勝手に色々持ち出してはダメだと、座り込んだまま彼女に言う。
遠くで相槌を打つような声がしたが、今は何より食事である。何より凄く疲れたと、溜息混じりにカップヌードルの蓋を開く。

「それにしても、私って結構自信あったんだけど……まだまだなのね」

お箸を割ってみる。割り箸ってどうしてこうも上手く割れないのだろうと、軽くしょげつつも右手に持つ。
今ではお箸の使い方も女子力アップの為にマスターしているとはいえ、先程の戦のせいなのか、思うように箸が操れない。
身体が震えているのだ。手も、足も、全身が先程の疲労と恐怖で震え始めている。

「何もかもが適当だけど……、あの力、化物よ……」

本来、私達が化物だと呼ばれなくてはならないのだろう。それくらい、圧倒する力を私は持っていない。
このままじゃ駄目なのだろうかとすら思えてしまう。そう思いつつも、カップヌードルを啜るのだ。

「……あの……」

「はぁ、駄目ね。味も分からなくなってる……。もっと、頑張らないと。魔王として、JCとして!」

「あ、あのぉ……!」

「よし、決めたわ! アンに負けないくらい力も身につけて、美人になって、そしてアンをひれ伏せて見せるわよっ!! フフフ、アハハハハ——!!」

「あのぉ!!」

「今良い場面なの! 邪魔しないでよッ! アン……じゃなくて、三枝さん……!?」

「はい、三枝です……」

そこには、アンではなくて親友の三枝瞳が立っていた。しかし、既に彼女は武装モードに入っている。
魔装神機だかなんだか知らないが、彼女は略して魔神とも呼ばれる特殊な分類の……人なのかも正直怪しい。
しかし、大人しくて頼りないところもあるけれど、心遣いの出来る優しい女の子だと私は認識している。

そんな彼女が、このアキバのコンビニに武装モードで突如現れ、そして私に声を掛けた理由は……>>463

もうすぐ全ジャンル天下一武道会があるって知ってる?

>>463
ごめん版権ネタしちゃった。

そんな彼女が、このアキバのコンビニに武装モードで突如現れ、そして私に声を掛けた理由は……、
もうすぐ全ジャンル天下一武道会があるって知ってる? なんてものであった。はい? と、口に含んでいたヌードルが零れ落ちていく。

「だから、その……天下一ぶどーかい……」

「あの、三枝さん。今ってそんな事を言ってる場合じゃ……」

「し、知ってます。御三家も既に動いていて。ただ、先に……天野さんと、このお話したかったから」

「私の事はマールで良いってば。でも……何故にその大会の話を?」

「そこで優勝できれば、美人で人気者になれます。そして何より最強を語れます。だから……今度、一緒に出てみませんか?」

「い、良いけど……具体的には何をするの?」

「アキバで、コスプレアイドルバトラーとして踊ったり歌ったり、戦ったり……です」

何なのだろう、その大会。それで天下が取れるのだろうかとすら疑問に思うのだが、三枝さんはどうやら真剣な様子なのだ。
何故こんな時に、とも思ったのだが、こんな時だからこそなのかもしれないと、私は頷いた。

と、同時に隣でアンがカレーヌードルのお湯が欲しいと強請るのである。

「マール、お湯。お湯」

「はいはい、全く世話の掛かる妹ね……」

「……お二人、仲、良いですよね……」

「はぁ? 私が、コレとぉ?」

「傍から見ていると、いつもそう思います。……さっきまで、ホンキで喧嘩してたのも知ってますけどね」

三枝さんは苦笑しつつも私達を見るのである。そして、ふとカレーヌードルを啜っているアンを見てしまう。
彼女に仲が良いと言われたせいなのか、>>467といった顔でずるずると音を立てていた。

ヌードルは対して辛くないのにすごく辛そう

三枝さんは苦笑しつつも私達を見るのである。そして、ふとカレーヌードルを啜っているアンを見てしまう。
彼女に仲が良いと言われたせいなのか、ヌードルは対して辛くないのにすごく辛そうといった顔でずるずると音を立てていた。
あれ程カレーと喚いていたのに、何故か凄く辛そうにするのだ。辛い物は苦手でも無かった筈なのにと、つい間近で彼女を見てしまう。

「……なに……?」

「そんなに辛いの?」

「そういう訳じゃ……。……ううん、今日は辛い」

「ちょっと一口ちょうだいよ。辛いかどうか、この魔王が判断してあげるわ」

「ダメ。絶対ダメ! 一口でも食べたらギガブレイク」

「ふふ、アンさんも知られたくない事があるんですよ」

三枝さんはそう言って微笑んだ。そして、その緩んだ気を引き締めるかのように遠くを見据える。
今もあちこちで何かが弾ける音が聞こえてくる。その音を聞いていたせいなのか、彼女の表情が固くなる。
これ程までに深刻そうな三枝さんを初めて見た私は、食事をする手を止めてしまっていた。

「今、あちこちで大変な事が起きています……。人が消えて、そして、神様まで暴走してる」

「……秀様なのね、やっぱり」

「あの人は、大事な人を虫に消されてしまいました……。今、皆が彼を止めようとしています。でも、神の力に私達が歯向かえる訳がありません。
 だから私は迎えに来たのです。唯一彼を止められる存在を……」

「それで、私を?」

「お話しておきたかったのも事実です。だって私は、もしかすると今日で……」

彼女は顔を落とす。つまり、今日で死ぬのかもしれないと彼女は勝手に悟ってしまっている。
でもそうはさせないと私は立ち上がり彼女の肩に手を置いた。アンのずるずると音を立てるのが余計ではあったけれど。

「三枝さんは、ううん、瞳は……私が必ず護ってあげる」

「……>>469

感動的なシーンね、ずるずる

「三枝さんは、ううん、瞳は……私が必ず護ってあげる」

「……感動的なシーンね、ずるずる」

「そうですね、私もうるっとしてしまいました……ずるずる」

「って、そこはアンじゃなくて瞳の台詞! って、瞳も私のカップヌードル食べないで!!」

「だって、これ……マールちゃんの味がする……ずるずる」

「何気に百合思考でもあったみたい。ずるずる」

「……私のカップヌードルがぁ……」

レジカウンターには、なけなしとまではいかないながらも、涙を流してしまう程手放すのが惜しい五百円玉が置かれてある。
それもこれも、お小遣いが毎月千円しかない天野家の主でもあり、神様でもある天野秀がいけないのだ。
せめて二千円。お小遣い値上げも含めて、彼を止める為……私は飛んでいる。

「凄いわね、瞳。……空飛べるって……」

「そうですか? 普通のように結構飛んでるんです。ある日遅刻しそうになった時も……」

「うわー、瞳って案外悪い子なのねー?」

「そ、そんな事……うぅ、やっぱり悪い子ですか……?」

「そんなにしょげないでよ。でもアンも凄いわね……。建物を飛び跳ねて、見事に追いついてきてる」

「身体能力だけはマールちゃんとは流石に随分と違うみたいですね」

「むぅ……、もっと運動もしないとダメなのかしら」

「今でも十分ですよマールちゃんは。だって……この二の腕だって、丁度良いぷにぷに感で……」

両肩を持つような形で、瞳に運ばれる私であったが、その体制がいかに無防備だったかを思い知らされる。
気付けば二の腕を何度もぷにぷにと触られ、次第に恥ずかしくなってしまう。そんな中、彼女は感想を述べたのだ。

「丁度良いぷにぷに感で……>>471

まるで親戚の・・・あら何に言ってるのかしら今の却下却下

筋肉が付いても安心ですね!

「丁度良いぷにぷに感で……まるで親戚の・・・あら何に言ってるのかしら今の却下却下」

「親戚? ……今何か聞こえたわ。またキャラ増えるのかって絶望した声が」

「空耳じゃないですか? うん、私に親戚なんて居ませんから……。イルンデスケドネ」

「で、いい加減二の腕ぷにぷにするの、やめてくれない? ……恥ずかしいんだけど」

「そうやって照れるマールちゃんも可愛いですよ。ふふ」

「むぅ、なんか最近、アグレッシブよね……」

「そうかもしれません。……で、見えますか? あそこです」

瞳はそうして私に視線で合図する。既に臨海市に入っているのだが、その一部の場所の空間だけは捻じ曲がっているようにも見える。
その中心に秀様が居ると彼女は言う。そして、その捻じ曲がったような空間は、彼を守護するような結界だと言うのだ。

「どうしてあんなモノを用意したかは分かりません。ですが……ゴッドカンパニーもお手上げのようで」

「何気にサポートキャラばかりだものね、あの会社」

「つまり、そのサポートを受けられれば、私でも、マールちゃんでも、あの結界を突破できるかもしれないって訳なんですが……」

その結界部分を眺めていると、時折結界が弾けるようにゆらめき、そして元の姿に戻っていく。
誰かがその結界に穴を開けようとしているのだろう。しかし、それは何度やっても無駄足のようであった。

「理子さんが、ずっとああやって魔法で頑張ってくれてます。ことみちゃんも……。でも、私達だけでは、無理なんです……」

「ふぅん、そういう事。確かにアレ、簡単にはこじ開けれなさそうね」

「だから、私達皆が協力して、サポートも貰って、そして力を一つに合わせれば……」

「ねぇ、アン! 貴女なら、アレ、壊せるんじゃないのぉー!?」

遠くから私達を追うような形で駆けて来る彼女に声を発すると、彼女は私の方へ向いてはひとつ頷くのだ。
試しにやってみよう、といった顔つきでもあった。そんな彼女は、コンビニを立つ際、こんな事を言っていた。

私が、秀様を止めようと、力を貸しなさいと彼女に言った時の話である。アンは力を貸せと言われ、>>474

さっきの勝負下着を譲渡するなら考えないでもない。

私が、秀様を止めようと、力を貸しなさいと彼女に言った時の話である。アンは力を貸せと言われ、
さっきの勝負下着を譲渡するなら考えないでもない、と返されるのだ。何故、と疑問に感じるわけで。
実際、妹とはいえ恥ずかしいという気持ちがありながらも、私は彼女に下着を手渡した。

ほんの少し、温もりを確かめる様子があった。そして、彼女も自ら脱いでいた下着を私に手渡すのだ。

「代わりに、これ」

「って、なんで貴女が履いてたパンツを履かないといけないのよ!」

「寒いと思って」

「……そう言えばノーパンって、どんな気分なのかしら」

「これ、要らないのなら捨てる……」

「あー、うん、一応貰うわね。で、何で私の履いてたパンツが欲しいのよ」

「……水、操れるのかなって思って。でも履いてみた結果、扱えないみたい」

「当たり前でしょ。アレは私だけの能力よ。……下着で操る魔法を変えるRPGって、多分流行るわよ」

「エロゲで終わると思う……」

「それでもゲームになるじゃない! うん、誰か作ってくれないかしら!」

そうして無駄話をする間も、アンはほんの少し居心地の悪いような、複雑そうな顔をしているのである。
もしかして、私の履いていた下着に何か不備があったのだろうか。実は軽くお漏らしなんてしてしまっていたとか……!
そんな風に内心冷や冷やする中、彼女は先にすたすたと歩いて行ってしまうのだ——。

—— 二代目ウメハラは死んでいた。その事実もまた、私を打ちのめしてしまう。
彼は突如アミューズメント施設に顔を出さなくなり、そして、後に皆がニュースを介して知る事になったそうだ。
彼等の仲間が、私にそう教えてくれた。それを聞いた私は、呆然と立ち尽くしてしまうのだ。

どうして、大事にしようとしていた人は消えていってしまうのだろう。居なくなってしまうのだろう。
護るべき人はたくさん居た。けれど、一人、また一人と私の傍から消え、居なくなり、或いは死んでしまう。

こんな思いをするのならば、もう人と関わるのはたくさんだ。それが、昔に抱いた私の感情だ。

だけど、秀は特別だった。何故か私は彼に惹かれていく。その存在を、私が求めていたかのように。
だからこそ、あんなケンカはしたくもなかったのだ。彼と対峙し、私に何度も叱り付けようと挑んで来たとき、私は>>476と思ってしまっていた。

もうどうにでもな〜れ

なんて投げやりな!

だけど、秀は特別だった。何故か私は彼に惹かれていく。その存在を、私が求めていたかのように。
だからこそ、あんなケンカはしたくもなかったのだ。彼と対峙し、私に何度も叱り付けようと挑んで来たとき、
私はもうどうにでもな〜れと思ってしまっていた。本当に、どうにでもなれと……。しかし、家を出て行った時、私は涙を浮かべていた。

「わ、たし……、泣いて……る……?」

大事な人に嫌われた。マリアの時と同様に。私がろくでもない存在だと、彼はきっと思っている。
それでいい、私から離れていけば彼は傷つかないし、私も傷つかない。けれど、それはとても悲しい事なんだと、涙を流してしまっている。
何度も耐えてきて、慣れたはずなのに。寧ろ慣れて、平気で思いたいのに。なのに彼に嫌われたと、私は傷ついてしまっている。

孤島へのバカンスにマリアが居るとは思わず、私は暢気にその島で、皆と楽しく遊んでいた。
本当に楽しい時間だった。この世界なら、もしかすると私は受け容れて貰えるのではないかとも思い始めていた。

そして、大事なモノを失う事もなく、こうしてゆっくりと過ぎる時間を、皆と分かち合えるのではないかと——。

「久しぶりね……勇者アン・アンダルシア」

その声を聞いた時、私の心の中に様々な感情が湧いてくる。その姿は、多少は変わっていてもやはりあの人そのものであった。
誰も居ない砂浜。いや違う、彼女の魔法によって本能的に皆が追い払われているのだと確信した私は、それに振り返る。

「マリア・マーリティ。略してまりまり……。どうして、この世界に」

「女神様の従者としてね。……でも、本当は貴女に会いに来たとも言うのかしら」

「今さら……私に何の用?」

「用事がある訳じゃないの。……人も、魔物も関わらず平気で命を断って来た貴女が、今どんな風にして暮らしているのかを見に来たってトコ」

相変わらず、性格の悪いような事を言ってくれるのだが、彼女の言い分もまた事実。
私は勇者としても驕っていた時期があった。私は誰にも負けないと、対するものは命を断つと、剣を、魔法を振るってきた。
そうして、皆の心が、私から離れていってしまう。私のその当時はもう、自暴自棄でもあった。

「でも、今じゃこんなに平気で暮らしてる。でも、コカトリスは平気で食べちゃう訳ね」

「食物連鎖の一環に過ぎない……」

「それでも、貴女は強さが尋常じゃない。そんな力を振るわれれば、そんな一環も崩されて当然」

何が言いたいのか、私には分からない。けれど、油断は出来ないと彼女を見据えていた。
しかし、彼女は突然笑みを漏らす。ますます理解が出来ないと、唖然とする私に彼女は……>>479

その強さが欲しい!

何が言いたいのか、私には分からない。けれど、油断は出来ないと彼女を見据えていた。
しかし、彼女は突然笑みを漏らす。ますます理解が出来ないと、唖然とする私に彼女は……。

「その強さが欲しい!」

「……え?」

「今でも思うの。その力があれば、この世の理すら破壊出来るんじゃないかって。まぁ、しないけど」

「本当に、何が言いたいの……?」

「そうね、あえて言うのなら——」

海の潮風が彼女の長い髪を揺らしていた。私の髪もまた強く揺らいでしまう。
そんな事すら気にも留めないほど、次の彼女の台詞が私を混乱させてしまう。

「—— 謝りたかったの。あの時、貴女を簡単に突き放してパーティから抜けた事。……怖くなったのよ、その強さが、貴女自身が。
 眼を背けたの。これ以上、貴女を私は背負いきれないと、重過ぎると、だから嘘を言ってあの村に留まるって発言をした」

マリアは、私と二人で旅をする中も、私を妹のように扱ってくれていた。そして、唯一私に付き従い、良くしてくれる彼女にだけ心を開いていた。
甘えていた。時には彼女に護られ、私が庇い、上手くやっていけると確信すら持っていた。しかし、ある日彼女は言う。

この村は、人も魔物も共存している。その可能性があるというのにも関わらず、私は悪だと判断すれば、即命を奪う存在だと。

「実は、半分は嘘なの。……そうでもしないと、私は貴女から離れる事が出来なかった。だってアンを、私は妹のように思っていたのも、また事実だから。
 けど……その思いの裏腹に、貴女が怖い、恐ろしい、信じられないといった気持ちを抱いてしまう。そんなの、貴女にも失礼じゃない……」

「…………」

「けど、それはやはり間違いだったのかなって。だからこうして、私は貴女に謝りたいって思ってた。
 でも……びっくりした。貴女は思った以上にやっぱり強い。この世界に流されても尚、こうして普通に生きている……」

それは強さなのか、いや違う。天野秀が居たからだ。彼が居なければ、私はこうして普通に暮らしてはいけなかっただろう。
そして、敵でもあったマールもまた、私を思ってくれている事を知っている。時折、姉として振舞う彼女が憎らしいとも思うけれど、それは愛嬌という奴なのだろう。

「だから、こんな風に謝っても、貴女の心を慰められないかもしれない。それでも、私は——」

その時から、分かっていたんだ。私はただ、独り善がりで我侭で、単に成長していない子供だったんだと。

それが、天野秀との喧嘩の際に、ストレスが弾けるように爆発してしまった。もう、戻れないとすら思っていた。
けど、マールが私の肩を掴み、引き止めようと私に全力を向けてくれたその姿に……>>481

少しずつ柔らかくなろう

それが、天野秀との喧嘩の際に、ストレスが弾けるように爆発してしまった。もう、戻れないとすら思っていた。
けど、マールが私の肩を掴み、引き止めようと私に全力を向けてくれたその姿に……少しずつ柔らかくなろうとすら、決心させてくれるのだ。
それに彼女は強かった。その父がまた強かったように、彼女のその娘なのだと実感させられる。特に左腕に傷を負わせた一撃は、私では放てないモノでもあった。

カレーヌードルをマールに強請ってみた。マリアに、あれが食べたいと旅をする時強請ったように。
彼女は、あんな喧嘩をした後だというのにも関わらず、私を甘やかしてくれるのだ。いつも通りに、文句を言いつつ自由にさせてくれる。

三枝瞳に、仲が良いと言われて、正直恥ずかしかった。マールと姉妹のようになれるのかもしれないと感じてしまったから。
姉として気付けば慕っているのかもしれない。その気持ちが確信に変わり、辛くないカレーを、辛いと誤魔化してしまう。

涙腺が緩むなんて、勇者らしくない。でも、そんな勇者で居るのも、もう終わり。私は疲れたんだ。だから……。

「その下着、履かせて」

「はぁ、なんでよっ!?」

下着を強請ったマールの顔はとても面白かった。目を丸くするってこういう事なのかとも思った。
真っ赤になって慌てる天野家としての私の姉、その彼女は、嫌々ながらも私の前で下着を下ろすのだ。

そして身につけてみる。温かい。それと同時に恥ずかしい。何でだろう、この温もりが恥ずかしい。
居心地が悪いようで、とても良い。けど、変な気持ち。それを彼女に悟られまいと、私は先に秀の所へ向かおうとする。

「……行こう、マール」

「え、ええ……。それはいいけど……うぅーん」

彼女は、私の下着を身につけるかどうか悩んでいる様子であった。もしかして、私のは履きたくないのだろうか。
だとしたらほんの少しだけショックなのかもしれない。でも、それが普通だとも思えるのだが……。

ふと、上空を見上げる。ノーパンの状態でマールは三枝瞳に運ばれているのだ。やっぱり無理にでも履かせるべきであっただろう。
そんな彼女は、私に声を発し、あの結界を崩せるかどうか試せとも言う。上等だと、私もまた、その結界に突き進む。

「……はぁぁぁぁぁッッ!!」

その必殺の一撃は、結界を大きく突き動かすように揺らめかせた。しかし、私の力だけは足りない。神の前では無力な証拠でもある。
しかし、今の私は一人じゃない。今は、私の姉である魔王以上の存在、マールが居るのだ。その彼女が追い討ちを掛けるように渾身の炎の一撃を放つ。

私は天野家ではとても不出来な妹だ。でも、そんな私は、彼女の姉でもある。実際にも双子の姉と言われ、随分戸惑った。
しかし、こんな私でも彼女と向き合い、少しでも姉らしく振舞えるのならば……、いつかアリスと一緒に、>>483してもいいと思えたのだ。

家族麻雀

私は天野家ではとても不出来な妹だ。でも、そんな私は、彼女の姉でもある。実際にも双子の姉と言われ、随分戸惑った。
しかし、こんな私でも彼女と向き合い、少しでも姉らしく振舞えるのならば……、いつかアリスと一緒に、家族麻雀してもいいと思えたのだ。
そして、姉の圧倒的な麻雀力を見せ付けるのである。それは旋風のように、何もかもを見通す力を持ち、彼女に完封勝利する。

それって、妹虐めではないだろうか、と余計な事を思ったせいだろう、結界から弾き飛ばされる。

「うあっ!!」

「アン!? ……こんの、馬鹿親ぁぁぁぁぁッ!!」

何故そこで馬鹿親とキレちゃうのか。気付けばマールのその魔法の勢いは更に増し、次第に結界を大きく揺らがせた。
支援すると、三枝瞳も彼女を支えながらも、羽から主砲のようなモノを生み出し、光線を放つのである。
それでも、マールの放つ魔法のほうが遥かに強く、それは私をも驚かせ、そしてその力を畏怖させるのだ。

「……これが、魔王の力……」

この結界を解いた時、そして天野秀と再会を果たした時、すべては終わるのだろうか。いや、寧ろ始まりなのかもしれない。
それに私は、彼に会って言わなければならない。ごめんなさいと一言、彼に許してもらい、彼に私を叱って貰わなければならない。
だから今、その為に、結界を破り彼に出会わなければならない。ふと上空を見上げる。やっぱり下着は履いていない彼女が、全力を持って結界をこじ開けようとする。

「……突っ込むッ!!」

会いたいから。謝りたいから。また、頭を撫でて欲しいから。そして……天野家の娘として暮らしたいから。
私をリィンガルドで育ててくれた父を、一時は恨んだ事もあった。何故私に勇者を継がせたのかと。
普通の見習い僧侶として、一生を終わらせてくれれば良かったのにと。だけど、今は違う。

魔法で生み出した刃を再び結界に突き立てる。その中、気付けばその父だった人に、私は言っていた。

「ありがとう、お父さん。……私は、彼の娘になります……」

それは、私の一撃だけではこじ開けられなかっただろう。結界は見事に消え去り、それと同時にマールと三枝瞳が中へ突っ込んでいく。
私も後を追う。そして、マールの姿を見つつ思う。彼女、ノーパンになると>>485という魔法まで扱えるらしい。

10秒間神のあらゆる力を無効化

それは、私の一撃だけではこじ開けられなかっただろう。結界は見事に消え去り、それと同時にマールと三枝瞳が中へ突っ込んでいく。
私も後を追う。そして、マールの姿を見つつ思う。彼女、ノーパンになると10秒間神のあらゆる力を無効化という魔法まで扱えるらしい。
つまり、ノーパンになった彼女は最強なのである。何もかもを無効化する力を持ち得ているのだから。問題は……彼女はノーパンを恐らく今後嫌がるであろう事。

「……来るなよ」

「どうして! どうしてこんな事をするのよッ!!」

「当たり前だろうッ!! だって、だって……なぁ!!」

既に、先に突入を仕掛けていた三枝瞳とマールが、天野秀と対面を果たしているのである。
しかし、天野秀の様子がおかしい。まるで、この世に絶望しているとしか思えない。だからこその、あの愚行なのだろうか。

「だって、なぁ……! アリスも、アンも居なくなった! そしてメルも、俺のせいで居なくなったんだ!!」

「嘘……。メル、が……?」

マールもまた、その言葉に衝撃を受けたのだろう、動揺を隠せないでいる。それを、三枝瞳が支えている。
しかし、天野秀の告白はまだ終わらない。彼は、私にとっても信じられない事を口にした。

「それに、それに……! ノエルが、ノエルが……死んだ……死んじまった……! 消えて、無くなった……!!」

彼だって人間だ。心が痛くもなるだろう。その痛みが、私には良く分かってしまう。
孤独となり、その怒りを何処へ向けて良いのかも分からない。そして彼もまた、大人になりきれていない存在。
それはやはり、理不尽な運命、世の中を呪うだろう。そうして、彼は黄金虫をこの世から全て取り払う事を決め、強引な手段を取った。

「経験値は十分だったさ……。一匹、二匹潰すだけでレベルも一気に跳ね上がった。いや、違うな……やろうと思えば、きっと出来たんだ。
 だから、俺はその大元を断とうとすべてを捻り潰し、元凶を辿っているだけだ……。復讐する為にな……!!」

「それで、沢山の物が、大勢の人が……弾け飛んでいるんですよ……!?」

「るっせぇぇぇ!! 知った事じゃねぇ!! ノエルが死んだんだ。もう、戻らないんだ!! ……許せるハズがねぇ、こんな事を起こした元凶をなァ!!」

彼は見境なく、その力を発揮しようとしている。再び、周囲に神風が巻き起こり、私達の接近を許さないよう、阻むのだ。
それでも、私は言わなければならない。私は此処に居ると、そして、ごめんなさいと、そして……もう一度、娘にして欲しいと。

痛かった。髪が随分と乱れ、千切れていった。多少の自信のあった肌も、今では殆ど朱に染まり、一部は骨のような部分が垣間見えている。
耳朶も引き裂かれている。腕の感覚も、足の感覚も、今では殆ど残っていない。それでも、天野秀の身体に触れて、抱きつく事が出来たんだ……。

「—— 私は、秀の事が好き、大好き! だから……だから、もう一度、娘に……して下さい——!!」

意識が途絶えていく。けど、何故か安らいでいる。そして、彼が呆然となった後、私に微かな声で、>>487と言ってくれていた……。

我に返るとはこういうことを言うのか…

意識が途絶えていく。けど、何故か安らいでいる。そして、彼が呆然となった後、
私に微かな声で、「我に返るとはこういうことを言うのか…」と言ってくれていた……。
その後、どうなったのか、私は家のベッドで目を覚まし、マールから事情を聞かされていた。

「で、あれがこうなって、これがこうなったワケ」

「……全然、分からない……」

「何でよ、あれがこうで、これがこうよ、こう!!」

「あれ、これで分かる訳がない……」

「はっ! そ、それもそうね!! とりあえず……補正力様ばんざーいってカンジで、あの後大体のモノは元通り。
 でも問題は、命ね。こればかりは神様でも呼び戻せないみたい。……存在を戻す事は出来るかも、とも言っていたけれど」

「……ノエルの事?」

「それだけじゃない。あの後、秀様は自力で元凶を辿って、そして……川下先生の家に向かってるわ」

「どうして?」

「……彼女が、アリスが……あの金色の虫を呼び寄せていたの。それを知った秀様は、もう廃人のようだったわ……。けど……」

マールが私の頬を突く。ノエルが居なくなり、治癒魔法を操る存在は既に居ないのに、私の身体は以前のように完治の状態であった。
不思議と思いつつ突かれて反応し、身体を起こしてしまう中、彼女は言った。

「それ、秀様が頑張ったのよ。で、こいつが戻ってきてくれたから、俺もまた頑張れるって……。これは、伝言」

「そ、そうなんだ……。……なんで、全裸?」

「傷を癒すのに、部位毎にやってたからね。……全部見られてるわよ?」

秀に、身体の全部見られてる。その一言が私の顔を真っ赤にさせていく。何だか凄く恥ずかしい。どうしてだろう。
気持ちが落ち着かない。息が詰まりそう。頬を抑えて落ち着こうとしているのに、もう居てもたってもいられない。

「……どうしたのよ、突然」

「わ、分からない……。でも、今、なんだか凄く恥ずかしくて……>>489

ちょっと外まで頭を冷やしてくる

「わ、分からない……。でも、今、なんだか凄く恥ずかしくて……ちょっと外まで頭を冷やしてくる」

頭がぼうっとする。訳がわかんない。どうしてこんなに身体が熱いのだろう。
そして気付く。全裸のまま外へ飛び出してしまっていた。まさか公園の方まで出向いているなんて。

「でも、頭を冷やすのなら、全裸のほうが良いのかな……」

既に外は夜となっており、星空が主張するように輝きを見せている。周囲には誰も居ない事を確認し、
公園のベンチに腰掛け、気持ちを整理してみようと全裸のまま星を眺めるのである。

傍から見れば、可哀想としか思えないだろう。そして、見る人によっては盗撮だってありえそうなこの状態。
しかし、頭の中は天野秀でいっぱいになっていた。彼が私を助けてくれたのはまだ良いとして、全部を見られたなんて、もうダメだとすら思えてしまう。

「うぅぅ……ダメ、恥ずかしい……。なに、これ……」

「それは、恋ですね」

「恋……。私、やっぱり秀のコト、好きなんだ……」

「そうでしょうね。それは見ていて知っていましたけど」

「……ノエルの亡霊の声がする。もう私も末期……」

「失礼ですね。私はこうして生きています。……私も、ダメだと思ったんですけどね」

「……うそ、ノエル……生きて……!?」

「久しぶり、って訳でもないですが……、アン、随分変わりましたね。丸くなりましたか」

それは紛れもなく、ノエルの姿であった。彼女は死んだと、消えてなくなったと聞かされていた。
しかし、こうして現に彼女は再び私に姿を見せてくれている。しかし、今まで何をしていたのだろうという疑問も出てくるのだが……。

「あの時、私、この三枝さんの親戚に助けて頂きまして。一条愛実って方に」

ノエルの傍に、もう一人居た。三枝瞳の親戚という事もあって、雰囲気が僅かながらに似ているとも言える。
しかし、彼女よりも年下であろうその少女の背はとても小さい。まるで見習い娘のようだ。

「え、えとっ! お初にお目にかかりましてでございまする! 一条愛実って書いてめぐみって言いますっ! 後、趣味は……>>491なんですっ!」

ぽっくりさん

「え、えとっ! お初にお目にかかりましてでございまする! 一条愛実って書いてめぐみって言いますっ! 後、趣味は……ぽっくりさんなんですっ!」

「ぽっくり逝くのが趣味なんですよねー」

「ち、違いますっ! ぽっくりさんは常に傍に居るんです! という占いですっ!!」

「だ、そうです。その彼女に助けて頂きまして。彼女、神隠しなんて事が出来るんですよ」

「うぅ、まだ修行中の身な為、その程度しか出来ないのですが……」

それでノエルは助かったようである。しかし、御三家以外にもまだこのような存在がいるものなのかと、私も驚いている。
だが、それ以上に驚く事がある。何故皆、私の全裸に突っ込まないのだろう。……何故だろう。

「さて、一度家に戻りましょう。秀さんは今何処へ?」

「川下先生の家。アリスが金色の虫を引き寄せた元凶らしいからって……」

「少し、事情を整理した方が良いかもしれませんね。では行きましょう」

「ねぇ、ノエル。その前に一つ良い?」

「どうしましたか、アン」

「……私が全裸で、突っ込まないの?」

「いつもの事でしょう?」

私はこの時、もう一つ決めた事がある。どうにも私は周りに可笑しな子扱いされている節がある。
流石に今日は気が動転していたからというのもあれど、いつもは全裸で外を出歩くような真似はしないのだ。昔はしない事も無かったのだが……。

だから、今日から私は変わるのだ。そう、マールのように女子力を高めてみようと心の中で宣言する中、
私とノエル、そして先程紹介された一条愛実という少女と共に家に戻るのである。

帰ってきてみると、マールは誰かと電話をしている様子であった。話から察するに、三枝瞳なのだろう。
どうやら自分はアンの看病に、そして彼女に天野秀を監視する役割をお願いしていたらしい。

「うん、うん、それで……秀様、怒っていない? 大丈夫そう? え? 突然アリスに>>493しだしたって!?」

ありったけの99円玉を没収

「うん、うん、それで……秀様、怒っていない? 大丈夫そう? え? 突然アリスにありったけの99円玉を没収しだしたって!?」

「ねぇ、ねぇ、マール」

「はい!? お金奪われてアリスが泣き出した!? 意味分からないわ……。って何よアン、今大事な話——」

「大事な話の途中で悪いのですが、ちょっと状況を整理したいのですが」

「って、ぶえぇぇぇぇぇッッ!?」

ノエルの姿を確認したマールは、その様な不思議な驚き方をした後、固まっていた。
何がどうなっているのかさっぱり分からないといった表情である。私も彼女を見た時は、少しはそんな気持ちになっただろう。
そうして、ノエルがマールに自分が生存している事情を教え、そして電話をすぐさま天野秀へ繋げるのであった。

「そう、そうなの! だからノエルは生きているの!! 現にこうして——」

「お電話代わりました。私です。何やら私のせいで、随分ご迷惑をおかけしたみたいで……ええ、ええ。確かに危なかったのですが——」

彼女達がそうして家で話をする中、私は衣服を身に纏い、再び外へ出る。川下先生の家へ向かうつもりだ。
夏場ということもあるのだが、最近は夜も涼しさを取り戻している。しかし、服を着て外に出ると、意外と暑いものだ。

川下先生の家へ向かう途中に、秀とアリスと出会う事が出来た。彼はなんとかアリスを連れ戻す事が出来たらしい。
ならば、後は私の仕事だと前へ出る。アリスはどうして私が、というような表情の後、秀の背後に隠れるようにした。

「……アリス」

「……な、何よ……お姉ちゃん……」

「今まで、ごめんなさい。そして……私は、変わるから。姉として、マールみたいに慕われるように、頑張るから……」

「お、お姉ちゃん……!?」

そもそもの事件の発端は、私なのかもしれない。私がアリスを邪険にして遠ざけて逃げていたからだ。
だけど、今向き合わなければ私も変われないし、秀に認めてもらえない。だから、謝って、そして自分が変わる決意を彼女に示した。
もう逃げないと。辛くても、人と向き合っていくと決めた私の頭を、秀が撫でるのだ。

「偉いな、アンは。……俺も、一から罪を背負ってやり直しだ……」

彼は、已む無き事情があったとしても、その圧倒的な力で多数の人を死に追いやった。その罪を感じているのだろう。その眼差しは、余りにも切なく、それでいて虚ろであった。
しかし、天野家はまだ一人欠けている。天野メルこと、メル・メルエッド。彼女が揃わない限り、私達がまた昔のように暮らす事は出来ないのだ——。


———— つづきます

そろそろ終盤か…?
おつー!

なんかすっごく強引ですねって事で以上で終わります。
もうちょっと行数抑えてテンポ上げた方がいいのかなー。最近詰め込む癖がある事に気づきまして。

ともあれ、今日もお付き合いありがとうございましたー。


PSO2復帰したら案外楽しかった……。どうしよう絵描く暇無いよう

【05/13 (月) 01:23時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

05/13 (月)
  19:30〜21:30/ネルシト氏 - 『お前は誰だ』第三話
05/14 (火)
  22:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 勇者なムスメ 第二十話 『その少女、救世主である』

そうそう、今日お昼寝してたら予約が入れる場所が無いと、愕然とするくらいいっぱいになる夢を見ました。所詮夢ですよねべっちょり。

>>495
一応初期に2クールって宣言しちゃいましたし、次の話も本格的に決めた事ですしで……。
途中で○○ルートってなってたら、もう終わってたと思います……。

お前は誰だ 第三話

【人物紹介】

木下蔵吉=なぜか信長らしいオッサンにサルと呼ばれる大学生。ほぼ大学には行ってないようです。

織田信長=自称信長だけど、発言がそれらしくないわ、蔵吉に突っ込まれても意に介さないわ、なまはげの格好だわ、お化けに弱いわで謎の人。

もうしばらくお待ちください。

数時間後、嫌がる蔵吉に無理やり付いてきた女生徒と蔵吉は、小便の洪水の中、失神してる信長を見たのであった。

信長は部屋の隅でなにやら呪文を唱えて震えている。同級生の女性は失禁の後片付けをしている。俺は信長に状況を聞いているが、「もう一人のわし」やら「骸骨男」
やら意味不明なことを口ばしる。そして呪文を唱え始める。

信長「お化けなんて嘘さ。お化けなんていないさ」
クラスメイトの女性「それ歌でしょ」
蔵吉「おいおい無神論者がだらしないこと言うな。日本全国6千万人の信長ファンのビジネスマンの夢が壊れるぞ」
信長「だってワシみたんだもん」
蔵吉「俺ここに住んで1年かそこらだけど、>>501だぞ」

お化けも逃げ出すって評判のアパート

蔵吉「俺ここに住んで1年かそこらだけど、お化けも逃げ出すって評判のアパートだぞ」
信長「どういうことじゃ」
クラスメイトの女性「えー?あたしわかんない(ニコニコ)」
蔵吉「実は近所に住んでいる大家さんが神様なのだ」
クラスメイトの女性「えー!そんなの初耳ぃー!」
蔵吉「ウサギの耳まねはやめなさい。ぜんぜん可愛くないから」
信長「神様とはどういうことじゃ?」
蔵吉「なんつーか霊媒師つーか新興宗教の神様なんだよなこれが」
クラスメイトの女性「へえーっ!すごいじゃん!」
信長「ふん。わしの時代にも、神の名をかたり世の中を惑わす者がいたので論破してやったわ。その大家もそのたぐいじゃろ」

とそこに大家が血相変えてやってきた。
大家「木下さーん!>>503

回覧板です

とそこに大家が血相変えてやってきた。
大家「木下さーん!回覧板です(ピコピコピコ)」

蔵吉「あ、はい」
いつ見ても大家のおばさんには威圧される。紫の着物をまとい、髪の毛は顔の二倍ぐらいの日本髪で、キラキラ光るカンザシを10箇所ぐらいにつけて、SMの
女王様のようなツルのメガネをかけている。しかもチェーンがついていて怪しい雰囲気をかもし出している。そのレンズの奥の目は鋭く何故か白目が血走っているのだ。足元には何故かピコピコ鳴るサンダルをはいている。

大家「それにしてはクンクン匂うわね。あんた何か隠していないでしょうね」
ギクッ。さすが霊能者気づいたか?

蔵吉「いや、いつもどおりですよ。きれいに使ってますよ」
大家「>>505

あんたの綺麗はうちの汚いレベルだからねえ

蔵吉「いや、いつもどおりですよ。きれいに使ってますよ」
大家「あんたの綺麗はうちの汚いレベルだからねえ」

神様の割にはむかつくババァである。さっそく皮肉を言いやがった。
クラスメイトの女子「あのー.神様?」
大家「?」
クラスメイトの女子「神様は人類を愛で包むの!皮肉はAUTO!チェンジ!」
蔵吉「うわっ。おまえしっしっ!(こいつキリストの神様と間違えてるよ)」
大家「>>507

オバマのものまねにしてはよわいな

大家「オバマのものまねにしてはよわいな」
大家はピコピコと音を立てて戻っていった。

蔵吉「ふぅー。部屋に入らなくて良かった」
クラスメイトの女子「ねぇねぇ回覧板にはなんて書いてある?」
蔵吉「おまえの名前」
クラスメイトの女子「うそだぁ。あたしそんなのに騙されないぞ!ぷんぷん」
蔵吉「いいか今読んでやる。今川真子」
歩きながら部屋に入ったので気づくと信長がいた。
「今川」と聞いて信長の表情はまるで>>509

やたらニヤニヤ

「今川」と聞いて信長の表情はまるでやたらニヤニヤ

今川真子「よかったー。信長さん怒ってないわ」
蔵吉「おいおい明智じゃないんだから怖がることはないだろう」
信長「(ニヤニヤ)」
何故か知らないが信長はやたらニヤニヤしている。まるでストリップに来たスケベオヤジのような顔をしていた。
先ほどまでお化けに怯えていたのと全く真逆なので、あの大家も意外と霊験あらかたなのかなと思った。

蔵吉「申し送れましたが同じ学部の今川真子さん」
信長「ほう。奇遇じゃのう。まるでわしが、昔成敗した武将と同じ名前じゃわい」
今川真子「>>512

ニヤニヤしてジリジリ近づきながら言わないでください

今川真子「ニヤニヤしてジリジリ近づきながら言わないでください」
今川は巻尺を取り出して長さを計り始めた。この娘は時々予期しないことをする。
ジャッ(巻尺が戻る音)。
今川真子「さっきから15センチほどにじりよってるんだけどー。やだー信長さんセクハラ?」
信長「節句原?なんて家来はおらぬぞ!」
蔵吉「あのなオッサン。今は戦国時代じゃないから、夜・這・い・は禁止」
真子「ヨバイってなあに?」
蔵吉「夜這いっていうのはな・・・///△///。そろそろ自宅に帰ったらどうだ」
真子「(察し・・・)わかった。明日はちゃんと朝から来るんだよーっ!」
真子は帰っていった。その姿を見送りながらアパートへ戻ると、信長のオッサンは人差し指と人差し指をこねくり回しながら、ふくれっ面をしていた。
信長「ちぇっ。>>514

この…りあじゅう?…がっ!

信長「ちえっ。この…りあじゅう?…がっ!」
蔵吉「一応いっておきますけど、あれは同級生でなんも進展ないの?」
しかしこのオヤジはなんでリア充って知ってたんだろうか?それをそれとなく聞いてみると。
信長「オルガンチノが言ってた」
蔵吉「嘘つけ!あいつらスペイン語じゃないか!」
信長「ふふふ天下様とあろう者は下々のことを知っていて当たり前じゃ」

恐るべし信長の情報収集能力。この後、信長は現代にあわせて進化することになるのであった・・・。

ーーーーーーーーーーー続くかどうか未定。


おつー!

どうも読んでいただいてありがとうございました。この後全然考えてないので未定です。
予約もいつ取れるかわからないので、できれば時間決めないでレス付いたら書き込むって方式でやれないかな?

またやれそうになったらいつもの場所に予約しておきます。週末かな?

いやーまだなれないし難しいわ。

【05/13 (月) 01:23時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

05/14 (火)
  22:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 勇者なムスメ 第二十話 『その少女、救世主である』

アリスが制する声すら聞かず、海浜公園を海の方向へ、そしてその先にある建物へ跳ねるように向かおうとした途端だった。
急に周囲が静寂に変わる。まるで時間が止まったようなその光景を目にした私は……、これらの出来事がすべて、とある小説に書かれていたことに気が付いた。

何だっただろう、思い出せない。そもそも私は魔道書以外の本を読むような人間ではない。
それは、こちらの世界に来てからでもそうだった。しかし何故か記憶に残っている。ふと、それが脳裏に浮かんだとも言うべきだろう。

気付けば、時が止まったその景色を眺めてしまっていた。動いていた船も、歩いていた人も、吹いていた風も、何もかもが止まってしまう。
その中でも私は自由に動ける。それが不思議と思い、景色を見ていると、背後から声がする。

「しかしまぁ、都合が良いのか、悪いのか……。なぁ、嬢ちゃん」

「貴方……さっきのホームレス」

髪がうねりにうねったその男の体臭はやはりキツイ。時が止まっても、動ける人は私のように居る。
そして、その対象から放たれる臭いまでは止められないのだろう。つい鼻を摘んでしまいそうになる中、男はその酷い口臭で物を言う。

「こいつぁ、神の仕業かねぇ……。となると、既に事が始まったってぇ訳だ」

「事……って……?」

「革変、とでも言うのかねぇ……。いや、もっと不味いな、こいつは」

「……貴方、一体何者?」

「俺か? 俺はなぁ……、最強の魔界の鎧に宿ってこっそりこちらの世界にやって来たというのに、
 気付けばゴミとされ、捨てられて……、なんかどうでも良くなってホームレス生活を楽しんでいた存在だ……」

「……魔界の鎧? もしかして……」

「あぁ、エルフの世界アーライラの神でもあり、ゴッドカンパニー部長である、オルス・オルベイロンだ……。
 鎧に閉じ込められて、長い間ゴミ捨て場で鎧のまま生活してたらなぁ、腐っちまってなぁ……ガハハハハッ……」

可哀想な人だった。要するに存在すら忘れられ、ゴミの山で鎧のまま暮らし、ようやく表へ出られたと思えば、
どうでも良くなってホームレス生活に興じるなんて、既に人として終わってしまっている存在でもあった。

そして何より、これ以上この人と話をすることは出来ない。何故なら臭いから。
さっさと天野秀を助け出しに行こうと再び背を向けようとすると、そのキツイ口臭を放つこの男、私に>>547と言ったのだ。

「なぁ俺ってそんなに臭うか?」

そして何より、これ以上この人と話をすることは出来ない。何故なら臭いから。
さっさと天野秀を助け出しに行こうと再び背を向けようとすると、そのキツイ口臭を放つこの男、私に「なぁ俺ってそんなに臭うか?」と言ったのだ。
頷いた。同時にゲロの臭いがするとも言っておいた。するとこのエルフの長でもある男、嘆くのだ。

「なんと……、アーライラ時代は、聖者とも、聖神とも称えられていたこの俺が、臭い、だとぉ……!?」

「……とっても臭い。だからもういい?」

「むぅぅ……、これは、全て片付いたら風呂に行かないといかんか……。だが、金が無い……」

「……あの、もう行ってもいい?」

「金、金……、しかし、今更白渡とかに連絡を取るのも気が引ける上に何を言われたものか……むむむ」

「…………」

何故こんな状況なのに、こんな人に無駄に関わっているのだろう、と、鼻を摘みながらその人を眺めていると、
遠くから声が聞こえ、それがマールやノエル達だという事に気づく。そしてノエルはその人を見て……早速吐いた。

「う、うぅぇぇぇ……オルス様、ではありませんかおぇぇぇぇ……」

「む、ノエルよ、貴様も思ったよりこの世界に馴染んで……って、目の前で履くな貴様」

「無理です、臭すぎます。何故マールやアンは耐えられるのですか……!?」

「私はほら、魔物とかで慣れちゃってるから、かも?」

「私は……ギリギリいっぱいだから、そろそろ逃げたい……。それよりも、マール、聞いて……!」

丁度良いと、私はマールに、この出来事が天野秀と関わりがあり、メルが彼を連れ去っていたことを伝えると、
彼女は打って変わって表情を変え、蒼白と鳴りつつも海の向こうを見やるのである。
一方、口元を押さえ吐き気を堪えるノエルは、何故こんな時にオルス・オルベイロンが現れたのか、本人に問うていた。

「今まで姿を消して、おまけにホームレスって、それでもアーライラの神様なんですか!?」

ノエルからお説教を受けるオルスという男であったが、いざ天野秀を捜しに行くと話題が変わった途端、
彼は恐らくであろう敵の居る場所を、そして敵陣にそのまま向かうのは危険だと示唆するのである。

ではどうしろと言うのか、私達が訪ねると……>>549

ひとまず風呂にゆっくりつかりたい。

ではどうしろと言うのか、私達が訪ねると……ひとまず風呂にゆっくりつかりたいのだそうで。
後にアリス達とも合流し、やはり皆吐きそうになりつつも、何故こんな時に銭湯なんてと、口を揃えて言っていた。
しかし、既に天野秀は敵に思うように操られている可能性があるとも彼は言う。

—— 以前、家族でやって来たスーパー銭湯は、やはり時が止まっているせいなのだろう、張っていたお湯すら物体のようになっている。
しかし、私達がそれに触れれば、何故か時間を取り戻すかのように自然な姿に戻っていく。
銭湯内には客が数人止まった状態で残っている。その中で、何とか男風呂に押し込んだそのオルスと、壁を挟んで話をするのであった。

「つまり、今敵陣に突っ込んだら、私達に勝ち目はないんでしょう? じゃあどうすれば良いのよ!」

「ふむ、魔王を継いだ娘、思ったより勝気なのだな。……胸を拝んでおきたかった」

「そんなのどうでもいいわよ!! いいから答えなさいよスケベ中年!!」

「うむ、俺はホームレスになりながらも、加賀美目羅なる男を個人的に調べてきたつもりだ……。
 そして分かった事は、彼奴は陣を用いて行動を起こす男。その陣なる力が思ったより強大でな……」

「つまり、魔方陣的な何か? そんなの、魔法で無効化させちゃえば良くない?」

「そうもいかない。何故なら彼奴の持つ力がそれ程強大であり、神をも封じ込めるモノであるからだ」

何故か時折鼻息が荒くなりながらも、オルスは久々に風呂に浸かった為なのか、極楽気分で話すのである。
その調子がやはり苛立つのだろう、マールも、そしてノエルもどこか苛立ちを隠せないでいる。
だが、アリスだけは私とお風呂に入れたのが幸せなのだろうか、肩を並べてほんの少しご機嫌なのだ。

とはいえ、今の状況は好ましくない。練曲ネルが爪を噛んでは口にした。

「正面からでは、打つ手が無いのではないか……!?」

「その通り。だが……、何故アルテナが勇者と魔王の紋を育てていたのか、今分かったよ。
 彼女達ならば、神すら屈服させる力を持っていよう。この二人だけならば、正面からの突破は可能。しかし……危険すぎる」

そこで、彼は壁を挟んだその天井の隙間から、>>551を二つも放り投げてくるのである。

お風呂おもちゃの黄色いあひる

そこで、彼は壁を挟んだその天井の隙間から、お風呂おもちゃの黄色いあひるを二つも放り投げてくるのである。
それを彼はアーティファクトの一種で、一度だけ用いることが出来る特殊な魔法儀式を封じてあると説明した。

「それを用いれば、一度、短時間の間だけ、力を封じられてもひっくり返すことが出来よう。
 それを、ノエル、貴様が持っていけ。……後、アリスとか言っていたか。貴様にもくれてやろう」

「な、なんか上から目線で癪だけど、一応貰っておくのだわ……」

「……それにしても、何故にアヒルなのですか、オルス様」

「それは……気分だッ!!」

「「……この人さいてー」」

—— 銭湯を後に、そして加賀美目羅が居るであろう所在も掴んだ私達は、天野秀、そしてメルを助け出すべく、行動に移すことになった。
時刻なんで既に分からない。今が夜なのか、朝なのかも分からない。空間が捻じ曲がり、あちこちとうねりが見え出す中、
加賀美目羅が敷いているであろう陣の直ぐ傍までやって来た私達は、その建物を前に昂ぶるのである。

中にはどんな強敵が居るのだろう。それだけで胸が弾む私や、メルと思い人を必ず救うと意気込むマール。
そして、ひよこを手に持ち、何が来ようとも負けないと凄むアリスに、気乗りしなさそうなのに、誰よりも静かに闘志を抱くノエル。

四人しか居ない。それでも、この四人でも十分に戦える。やれると信じ、此処まで来た。
背後には、せめて見送りにとオルスや練曲ネルが、そして二野理子や三枝瞳、私の親友まで姿を見せていた。

「貴女達、私のダーリンを助けられなかったら、桃尽くしの刑だから覚えておきなさいッ!!」

二野理子がそんな良く分からないことを叫ぶ中、三枝瞳が心配そうにマールの掌を取り、悲しそうな眼をして彼女に言う。

「私も、力になれれば良かったのに……。ごめんなさい、私が不甲斐なくて……」

「そんな事無いわ。瞳は私の親友だもん、こうしてくれるだけで、すっごくパワー貰っちゃった!」

マールと三枝瞳、どうしてこうまで仲良くなったのだろう。あまり相性が良くなさそうにも見えたのだが、
今ではちょっぴり百合が入っていそうにも見える。そうして、私の親友でもある七福ことみも、彼女達を真似ようとしたのか、私に……。

>>553」と言ったのだ。

助けられなかったら、桃当ての刑(ただのヒップアタック)だから覚えなさいッ!!

「助けられなかったら、桃当ての刑(ただのヒップアタック)だから覚えなさいッ!!」と言ったのだ。
二野理子は自分を真似られて、照れながら文句を言っているのだが、私は思う。何故彼女を真似たのだと。

「だ、だから! 覚えておきなさいッ! 絶対、絶対に……生きて帰ってきて……!」

「……大丈夫。私は誰にも負けないから」

「その自信が怖いんだよぉ、アンちゃん……!」

「さて、全員、向かう前にちょっと額を出してくれ」

ことみの間に割り入るようにやってきた練曲ネルは、何故か私達の額を見えるようにしろと指示する。
「何故?」とマールが、「どうしてです?」とノエルも口にする。しかし彼女は、先に何かを呟いたと思えば、アリスの額に口付ける。

「な、何するのよ、このおでこ魔人!!」

「誰がおでこ魔人だ! ったく……、せめて、私から大賢者最高の補助魔法、額にキッスをしてあげようと言うのに。
 ちなみに効果は全能力アップというチートで、MP消費は100もするんだぞ!?」

「な、なら受けておきましょうか……ねぇ、マール」

「そ、そうね……。良かった、おでこが広くなる魔法じゃなくって」

「誰がこんな時にそんな魔法を掛けるかぁぁぁ!!」

その言い方、つまりおでこを広くする魔法は存在するような口ぶりであった。そんな言い合いを行う中でも、ネルの祝福をマールも、ノエルも受け、
そして最後に私にと、彼女は額にキスをする。一瞬彼女の温もりを感じたと思えば、その額から全身を何かが駆け巡っていく。
熱いようで、どこか不思議と心地良い。その感覚は全身に巡った後、私の中で馴染むように消えていく。

「これで良し! ……私にしてやれる事は、これくらいしか無いが……。天野秀を、頼む……」

練曲ネルが頭を下げて私達にお願いするのを、私も、皆も驚いてしまっていた。そして気付く、彼が彼女にとって、どれだけ大事な存在か。
必ず助け出すと、彼女の掌を握り、市庁舎を睨む。あの中に、天野秀が恐らく捕らえられている。

「さ、……行きましょう」

マールの一言で、私達はその中へ駆け出していく。その異様なビルのような建物、そこでは数々の試練が私達を阻んでいく。
それでも突き進む中、私はある事をまた思い出していた。……小説で、読んだ事がある展開そのものだと……。


———— つづきます

乙!

一人安価は大変でした。途中で来た人は身内なのか風来坊なのか?

という訳でやっぱりぐだぐだな中、以上で終わりますー。

土曜、日曜で無理にでも終わらせます。下手をすれば明日で終わります。
その次で勝負です。そこで人を集めてみせるのだ〜。……コレの繰り返しであります大将。

ともあれ、お付き合いありがとうございました〜。

【05/18 (土) 01:10時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

05/18 (土)
  20:30〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 下手すれば最終回なムスメ 第二十二話 『決戦、そして伝説へ……』

>>555 風来坊じゃないですかねーべっちょり。

えーと、誰も居なさそうな気もしないでもないですが、ぼちぼちとー。
もう暫くお待ち下さいです。

———— 勇者なムスメ 第二十二話

その建物の中はあちこちが歪んでおり、正しい空間とは思えない状態となっていた。
点々として歪んだ箇所を避けるように奥へ、上へと駆け上っていく。しかし、やはりそれを阻むものが居る。
しかし、それらの数は思ったよりも少なく、こうして私達が突入を仕掛けることも、想定の範囲内とは少々言い難いものであった。

「ここから先は通さんぞぉぉぉ——」

「邪魔! とっとと消えて!!」

「こ、この俺を倒すとは……ぐふぅ……」

「なんで、こんなに手応えの無いのばかりなのでしょう」

「さぁね。でも、その方が好都合じゃない」

「マールの言うとおりね。さっさと終わらせて、帰ってみんなでゲームでもするのだわ」

しかし、これは手応えが無いというよりは、まだ防衛ラインを組めていないとも言える。
時間が止まり、普通の人間は一切動けなくなっている。その為、相手側としても動かせる駒が少ないのだろうか。
ともなれば、迅速に行動すれば早々に上階まで突破出来るだろう。しかし、問題は空間の歪みでもあった。

「ねぇ、アン。今……何階くらいかしら」

「……普通に考えると、百階以上」

「なのに、今のこの階層は二階です。上がっているのに、戻ったり進んだり飛んだり……」

「どうするの、これ……!」

いくら駆け上がっても、最上階はおろか先に進めているような感覚すら無くなっていた。
しかし、こんな時こそ>>560の出番であると、私はそれを取り出した。

ガム

いくら駆け上がっても、最上階はおろか先に進めているような感覚すら無くなっていた。
しかし、こんな時こそガムの出番であると、私はそれを取り出した。

「……どこでもガム〜」

「あのね、アン。こんな時に何を持ち出してるのよ」

「いえ、待ってくださいマール。……目印にするんですね?」

「ううん、食べるの」

「……目印と言ってください、お願いしますから」

「お姉ちゃん、私にも分けて欲しいのだわ」

「うん、あげる。ちなみにロッテじゃなくてロッチ製だから安心」

「……ロッチって、凄く怪しいのですが……」

そうして、皆が口にガムを放り込み、暫くその味を確かめるように噛み締めるのだが、
皆一様に不味いといった様子を見せ、どうやら更にテンションが落ちた様子。私達一行のスピードは落ちてしまう事に。

「アン、ガムをもう一枚ください」

「はい、あげる。……ノエル、食べすぎ。もっとちゃんと噛んで」

「い、いえ、私は目印にしたいだけですので……。べっちょりっと」

「壁に貼り付けたら汚い。そういうのダメ」

「意外と……面倒くさいですね、貴女って」

この建物には、階段が四箇所程有り、どこからも上階へ向かえるようにはなっている。そして上ってみても、景色が突然変わるような感覚に陥り、
二階から十階まで飛んだと思えば、今度は三階、そして六階と、よく分からない状態となっていた。
その為、ノエルがガムを噛んではそれをフロア表示板に貼り付け、様子を探っていたのだが……。再び二階に戻ってしまった時、ノエルは手を叩いた。

「分かりました! この二階から十階までの謎が……解けました!」

「な、なんですってぇぇ!?」

「では……ネタバレといきましょう。この階層がループする秘密、実は……>>563

ランダムでワープするしかけ

「では……ネタバレといきましょう。この階層がループする秘密、実は……ランダムでワープするしかけなんです!」

「で、その仕組みは解けたの?」

「大体掴めただけで、確実には……。でも、素直に六階まで上れるルートは見つけました。先ずは東口の階段を——」

そこから先は、ノエルが先導する形となっていた。彼女を背に、私とマール、そしてアリスといった並びで駆けて行く。
二階、三階、四階、ここまで順調に進めており、そもそもどうしてこんな構造になっているのか疑問に思う。

空間の歪みは恐らく、天野秀が何かを起こし、時間を止めた影響なのだろう。
ともなれば、これは恐らく加賀美目羅なる人物の仕業なのかもしれない。つまり、時間を稼ぎたいという魂胆だと認識する。

「ふう、やっと六階ですね。ここから先はまた調べ直しになるので、繰り返しになるかもしれませんが……」

「でも、ちゃんと抜け道というか、きちんと進めるようにはしてるのね。私ならそんな事はしないわ」

「そんなダンジョンあったら困るじゃない。……これはビルだけど……」

「まぁ、とりあえず進むしかありません。もうかれこれ二十分も経ってますし。体感ですけど」

「そうね、急ぎましょう! って……何か居るわよ?」

「お決まりの中ボス戦って奴ね! どうせ弱いのだろうけど……」

それは二人組みのようで、しかし人の姿というよりは、影にしか見えないとも言えた。
合わさるようで、分裂しているようにも見える二人組み。それは、すぅっと地面から伸びるように迫ってくる。

「アン、一気に叩くわよ!」

「……うん」

この建物の中で、まともに力を操れるのはやはり私とマールのみであり、ノエルやアリスもまた、力を封じられるような形になっていた。
それを打破する切り札を彼女達も持つのだが、それを扱うとなればまだ先であろう。邪魔者は随時私達が排除してきていた。

「アン、上から!!」

マールが中央を突き進み、炎の魔法を辺り一帯に敷くように撒いていく。床に潜むように動く影を炙りだそうというのだ。
そして、マールの指示通りに天井を蹴り、炙りだされた影に、紫電の刃を突き立て、それで終わると思っていた。

所詮、この程度では私達は止められない。しかし、影自体は瞬時に消え、その直後……>>565

文字に変化して襲い掛かる。しかも外国語なのでこちらからは判断不可能。

所詮、この程度では私達は止められない。しかし、影自体は瞬時に消え、その直後、
文字に変化して襲い掛かる。しかも外国語なのでこちらからは判断不可能。何かが次々と浮かび上がって襲い掛かってくるのだ。

「これって、英語とか、ドイツ語とか、そんな言語じゃありません! 恐らく、失われた古代語的なモノ!!」

「なんでそんなのが都合よく襲い掛かって来るわけッ!?」

「分かりません! とにかく、逃げるしかなさそうです。幸い、通路は開けておりますから!」

そう、襲い掛かってくる敵はどれも、殺意を持ち本気で倒しに掛かるような存在ではなく、
罠を用いて相手を翻弄し、じわじわと嬲っていくような、そんなタイプばかりが存在していたのだった。
六回で文字に追われ、それに飲み込まれれば額に文字が浮かび上がるようである。アリスは犠牲になってしまったのだ。

「ひぃぃ、どうみてもこれ、肉なのだわ!!」

「いいえ、よく見ると肉の正しい書き方ではありません。ほら、線が突き破ってるじゃないですか」

「でも、どう見ても……肉よね」

「肉アリス」

「ひぃぃぃぃん!!」

一つの文字に襲われても、こうしてアリスは平気そうに肉の字を落とそうと額を擦っている。
では殺意が感じられない罠ばかりなのかと言えば、そうでもなく……、七階では普通に鉄球が転がってきた。
八階では天井が落ちてくるという古典的名罠から派生し、地面が上がっていくという、どちらも一緒のようなトラップに見舞われる。

そうして九階、十階とようやく抜けた所で、私達が目にしたものは……>>567

休憩コーナー

そうして九階、十階とようやく抜けた所で、私達が目にしたものは……休憩コーナー。
『ゆっくり休んでいってね!!』と表示板に書かれてあり、ノエルは先ず罠を疑い、あちこち動き回っては様子を調べるのだった。

「ふむ、ふむ……、ソファ、オッケー。観葉植物、オッケー。何故か灰皿、これもオッケー。そして自販機……一本千円!? エヌジーです!!」

「うわ、ホント。缶コーラ一本千円って、ぼったくりじゃない!」

「……お金、無い」

「いいんじゃない? こうして座ってるだけで。……でも、喉が渇いたのだわ」

親切に休憩コーナーなんて用意されており、その奥に通路があり、階段もきちんと目視出来ていた。
まるでセーブポイントのように造られているそこの自販機はぼったくりにも程があり、私達のお小遣いでは手が出ない。
それでも、四人も居るのだから、皆がお金を出し合えば……という話になり、やさすいを一本購入するのだった。

「優しいお水ってコンセプトらしいわよ、このお水。という訳で一口……ごく、ごく……」

「わー、マール、飲みすぎなのだわ! もうだめ、もうストップー!!」

「こ、これは……ほんのり優しい桃の味が……!」

「つ、次私だからね! って、もう半分くらいしか残ってないんだけど……」

「ほら、私って……主に炎の魔法を操るから……、つい喉が渇いちゃって」

「マール、その件でちょっと。……パンツ、脱いで」

「はぁ!? なんでパンツを脱ぐ必要があるのよ!!」

「……マールはノーパンが最強だから仕方ないの」

丁度休憩を取れる場所でもあった為、私はそこで彼女の下着を取り払い、本来の力を引き出せるように仕向ようとする。
そうする事で、彼女は一種の変身のような儀式を終え、天野秀の神の力すら無効化させる魔法を数秒の間操る事ができるのだ。

しかし、あれこれと言い訳をしては、中々下着を脱ごうとしないマールに掴みかかり、いざ下着を下ろそうとしたところ……>>570

生えていた

しかし、あれこれと言い訳をしては、中々下着を脱ごうとしないマールに掴みかかり、いざ下着を下ろそうとしたところ……生えていた。
いざ浴衣をたくし上げたところ、下着も履かずに、それを生やしている姿を確認。それは、恐らく成人男性よりは遥かに小さいサイズだろう。

「これがポークビッツなのね……ごくり」

「可愛らしいですね。……で、マールって女性でしょう?」

「そ、そうなんだけど! なんか、気がついたら生えていて……。ど、どうしていいか分からなくなって、それで隠していたんだけど……!」

「何時からなんですか、これ」

「分かんない……。でも、お祭りの時には、もう既に……」

千切って炒めたら案外美味しいのだろうか。しかし、彼女の身体自身には特に影響は無いようなので、
そのまま履かずに行動する事を命じると、その部分がこすれて痛いと彼女は嘆くのだった。

そして休憩も終わり、改めて上階へ繋がる階段を進む中、ノエルは口にした。

「でも、きちんと女性器もあって、それで生えるんですね。……これが、ふたなり……!」

「ノエル、興奮しすぎ」

「ごめんなさい、アン。でも……ふたなりはちょっと夢だったのです。だって、秀さんの穴に挿れる事だって出来るでしょう?」

「ちょっとそこ!! わ、私のその……コレについて色々妄想広げるのはやめて!!」

全く持って緊張感の無いパーティでもあった。そう、これは家族でもあって、同じ目的を抱き、進むパーティでもある。
かつての私の組んでいたパーティとは全く違う。しかし、どこか懐かしいとも感じつつも、その感情を抱いてはっと瞬きをしてしまう。

「……知ってる……? それとも、見たことがある……?」

「お姉ちゃん? 突然止まったら危ないのだわ」

「アリスは、この展開、ううん、この光景や感情をどこかで抱いた事はある……?」

「何それ。よく分からないけど……」

先ほどから奇妙な感覚があった。そして、その感覚に従うならば、この先、十一階で私達は彼女によって足止めを喰らう事になる。
それは、予想通りとも、想定通りとも取れるように現れる。メル・メルエッド。私達が取り戻すべき存在の一人が、見たことの無い剣を持ち、立ち塞がる。

>>573」と、私達を目にした彼女は言った。

剣は、ペンよりも強し…

「剣は、ペンよりも強し…」と、私達を目にした彼女は言った。それは当然じゃないかと私も思う。
しかしふと見れば、彼女の左手には羽ペンのようなモノが握られている。今までのメルは、そのような物は持っていなかった筈なのだ。

「メル!! 私よ、マールよ!! 迎えに来たのよ!! なのに……操られているの? どうして、私に、皆に剣を向けるの? ねぇ、答えて!!」

「但し、ペンは剣よりも優れし物……」

「な、何を言ってるのよ……! って、何を描こうとして……!?」

「離れてください、マール! 今、彼女は落とし穴を描きました!!」

「だ、だからって何で—— って、なんで穴がッ!?」

「即ち、剣とペン、この二つが合わさり最強となる……」

理屈は分からない。しかし、彼女が絵を描くように何かを描けば、その何かが私達に災いとなって降りかかる仕組みのようだ。
このような魔法のようなモノ、以前の彼女は身につけてすら居なかった筈。彼女の身に何が起こったのかと案ずる暇は無かった。

「穴、穴、穴……ついでにそこからリヴァイアサン多数……」

「こ、こんな狭い場所であんな巨大な竜を召び出されては一溜まりもありません! 何とか止めて下さい!!」

「分かった……!!」

要は、穴に落ちなければ良い。そして、その穴から竜を呼び出される前に決着を着けるしかない。
傷つけないように攻撃するなんて、しかも相手は妙な力を操るメルである。難度が高すぎる。
それでもと、紫電を放ち彼女を撹乱。動きを一瞬封じれたのを視認し、懐へ突っ込んだ。

「小賢しい……」

動きを紫電で止めることが出来た。それは間違いでもあった。彼女はペンで縄を描いていた。
いつしか私の目前で蜘蛛の糸の網目のような縄が突如現れては、私の動きを包むように封じてしまう。
彼女の傍で縛られ、転がるようになった私に、メルは剣を振り下ろそうとした。

血が散った。真っ赤なそれが、宙を漂い、メルの頬や私の顔を塗らしていく。
マールが庇ってくれた。しかし、その剣の傷は胸元に突き刺さり、彼女はいよいよ息を切らせ、それでもメルを取り戻そうと……>>576

骨を消しゴムとして使用

血が散った。真っ赤なそれが、宙を漂い、メルの頬や私の顔を塗らしていく。
マールが庇ってくれた。しかし、その剣の傷は胸元に突き刺さり、彼女はいよいよ息を切らせ、それでもメルを取り戻そうと、骨を消しゴムとして使用。
どこから取り出したのだろう、その骨を用いて、彼女の描いた蜘蛛の糸を、骨で消してしまうのだ。

「……ここは、私に任せて……。私の、魔王としての責任でもあるの。部下でもあり、僕でもあり、そして同時に親友でもあって……。
 今では大事な家族の、私の姉でもあるメルを、取り戻さないといけない、私の責任でもあるの!! だから!!」

「で、ですが、マール一人で、今のメルに対抗するなんて……!!」

「ノエルも、アリスも、アンを助けてあげて。……きっと、上に秀様も、そして例の敵も居る筈だから……」

すっかり糸も消えては、自由を取り戻した私、そしてノエルとアリスにそう言ったマール。
彼女も、もしかすると私のような感覚があるのかもしれない。どこかで読んだ事のある本、その出来事そのものなのではないか。
その先は霧が掛かっていて見通すことが出来ない、そんな感覚でもあり、デジャヴのようにはっとする事ばかり。

「さぁ、行って! アンも何となくは分かってるんでしょう!? この先、何が起こるかを……!!」

首を横に振った。でも、妙な感覚はやはり残っている。マールはメルを取り戻すのだろう。しかし、それは決着が着いた頃。
そして、私達も、皆も……どうなるのか、先はやはりよく見えない。なのに、何かが起こるという事は確信してしまっていた。

通路をひたすらに突き進んで行き、そこでようやく上階へ繋がる階段を見つけることが出来た。
既にマールやメルの姿は見られない。二人とも無事だろうかと、ノエルは時折振り返る。それを、アリスが制するように言う。

「あの魔王様なのよ。大丈夫に決まっているのだわ」

「そうですね。……次は、私達の出番です。秀さんを助ける為、コレを使いますよ」

「このアヒルの玩具ね……。ほんとに大丈夫なんだか」

「オルスを信頼して下さい。ああ見えても、神様職に就いていた頃は、結構真面目だったんですから」

十二階、そこには一つだけ扉があった。そして、その階層だけは全体的に空間が歪んでおり、屋上へ繋がるであろう先へも進めそうに無い。
そして、気付けば後戻りすら出来ない状況に陥っていた。下層へ繋がる階段すらぐにゃりと歪んでしまい、降りれそうに無い。

進むしかないと、私はノエルとアリスと共にその扉を開く。するとその中には……>>578

愛し合う恋人達が

進むしかないと、私はノエルとアリスと共にその扉を開く。するとその中には……愛し合う恋人達が。
余りにも様子がおかしな光景だった。真っ白な、いや、透明なような空間が広がっている。
それは無限にも繋がるような、気が遠くなるような景色。それをじっと見ていると、景色に飲み込まれそうになる。

その中で、一つの真っ白いベッドがある。豪華とは言えないながらも、シンプルな飾りつけがされたその上に、天野秀が寝かされている。
全裸となり、どこか虚ろな表情をして、その景色を眺めている。その隣に、本来この場に居てはいけない存在が居るのである。

「白渡矜持……!? 何故、此処に……!!」

彼は、天野秀の隣で、彼の頬を指でなぞっては、こちらに振り返り私達を見た。
そして、その二人を隠すかのように、間に立ち塞がるのは乱れた長髪の男、加賀美目羅である。

「私から説明したほうが良いかな?」

「好きにしてくれていいよ。……もう直ぐなんだ、もう直ぐで……彼は僕の物になる……!」

「これは……どういう事なのよ!!」

アリスが言い放つと、加賀美目羅が小さく笑んでは、ちょっとした余興だと話を始めるのだ。

「第八世界、裏返りとも、リバースとも呼ばれる世界の墓地。先ずその世界から説明をしてあげなくてはいけないか——」

彼は言う。そこは、こちらの世界の前の世界でもあり、実験場として用意されていた世界でもあるのだと。
そして、その世界を捨てた前主は、新たな世界でやはり実験を行うのである。今度は、七つの小さな世界を用意して、平衡化を計る。
そうした理由は、母体となるこの世界の永遠なる繁栄であった。それは、世界的寿命なるモノが箱庭世界に存在するからこそである。

「つまり、前主はこの世界を永遠に残そうとした。元々、どの世界も箱庭に過ぎないのだからね……」

「ちょっと待って。全く意味が分からないのだわ……。そもそも、この世界も、魔界も、色んな場所に寿命があるの!?」

「その通り。そして、それが尽きる前にわざわざ前主は新たな箱庭を用意していた。だが、そうこうしている内に、その前主の寿命は尽きてしまう」

そうして用意されたのがゴッドカンパニーという表向きは普通の小さな有限会社。しかし、実際は世界の命運を握る会社でもある。
それを解散させ、ある思惑を抱いた天野秀、それが邪魔になったとも彼は話す。

「彼はね、世界を全く違う次元のモノにしようと考えていた。そう、神という存在を取っ払う事を考えた……。
 しかし、それは困る。私の目的はあくまで、この世界を裏返らせ、神が存在する中で一つにする事なのだから……」

そう、加賀美目羅は私達には分からない言葉を並べ話をする。しかし、どうしても天野秀と、白渡矜持のベッドシーンに視線が移ってしまう。
何故互いに全裸なのか。何故白渡矜持は彼をこんな風に愛しているのか。そして今、何故>>583という行為で彼を弄んでいるのか。

お灸

そう、加賀美目羅は私達には分からない言葉を並べ話をする。しかし、どうしても天野秀と、白渡矜持のベッドシーンに視線が移ってしまう。
何故互いに全裸なのか。何故白渡矜持は彼をこんな風に愛しているのか。そして今、何故お灸という行為で彼を弄んでいるのか。

視線に気付いたのか、今度は白渡矜持がこんな事を言う。

「お灸は良いものだ。この香りも素晴らしい。そして、彼の身体を健康的にもしてくれる。加賀美君もそう思うだろう?」

「……それは少し私には理解出来ないが」

「だからダメなんだ、君は。まぁそれでも、手を貸すと約束したからね。勇者達御一行には悪いけれどね

「だからって……何故彼に手を貸すんですか、ゴッドカンパニーの元社長が!」

「僕は、舞台の演出者でもあるんだ。それに、この舞台すらも意味が有ると感じたからこそ、僕は此処に来た……」

この場に、この舞台に何の意味が有るのか。既に紫電の刃を生み出し、加賀美目羅をいつでも刺せるよう、位置取りしていた。
動こうと思えば直ぐに動ける。しかし、気が失いそうになるような、無限に繋がるその景色が目に入るせいだろう。
だんだん、何が正しいのか、何が良い事なのか、妙な錯覚のせいで判断力が鈍ってしまうのだ。

「さて、白渡矜持に戦闘力は皆無と言っていい程無いのでね、私が彼を、そして天野秀を庇わなければならない。
 とはいえ、不利な状況には変わりないのだろう……」

いつしか、彼の左手には分厚い辞書のような古びた本が用意されていた。
その本にどのような意味があるのか、或いはそれがどのような武器になるのか、この時の私達には知る由も無い。

「実は私も、この書を用いるのは初めてでね。どのような奇跡が起こるのか、楽しみだ……。
 では先ず、手始めに私の手駒でもある全員を、この場に召喚するとしよう——」

—— 右手に剣を持ち、左手にペンを持つ少女。それは、剣で防御を行い、ペンで攻撃するような形を取っている。
ペンを振るい、何かを描けばその事象が目の前で災いとなって起こる。それを、この骨だけで消し通すのは無理があった。

「はぁ、はぁ……、いい加減……目を覚ましなさいよ……!!」

彼女はまた無言でペンを振るう。すると今度は信じられない出来事が起こるのだ。
彼女は、私の父を知っている。しかし、その姿をへんてこな画風で描き、呼び起こすとは思わなかった。

「目が……一つしか無いわよ、これ……!」

我が父であり、魔王でもあったその存在は、潰れた人の形を成していた。しかし、その口から放たれる業火は本物。
それを避けるのも精一杯となり、身体中が僅かに焼かれる中……私は、>>586を起こそうと骨を投げ捨てていた。

史上最強の雨男

我が父であり、魔王でもあったその存在は、潰れた人の形を成していた。しかし、その口から放たれる業火は本物。
それを避けるのも精一杯となり、身体中が僅かに焼かれる中……私は、史上最強の雨男を起こそうと骨を投げ捨てていた。

我が父は、運が無い男であった。かつで、母と式を挙げようとした最中も、雨に見舞われる始末である。
そして私が産まれた日もまた大雨であったらしい。そして、誕生日を祝われる中もも常に雨が降る日でもあった。
彼はそんな天命を持っている。家族の縁事には必ず雨となるそれを、受け継がなかった私は幸運だ。

「その骨は……私のあばらよ! それを見るがいいわ、我が父よ!!」

「……雨……?」

その目が一つで顔も身体も潰れたような存在が、私の骨を目にした瞬間、この一帯に降り注ぐ雨。
天井はあるのに、それが雨雲となったようになり通路一帯に降り注ぐ。そして、インクが流れるように父の姿をしたそれもまた、溶けていく。

「……私の父は、あんな顔でも、あんな身体でもないわ。もっと不細工だったわよ、メル」

「雨程度で……私は……!」

「もう、あんまり気張っていられないのよね……。これで最後にするわ。それで……目を覚まさせてあげる……!」

羽ペンのインクも、雨の雫で流れ落ちていったのだろう。彼女が何度宙に絵を描こうとも、災いは起きる気配は無い。
その雨が未だに豪雨のように降り注ぐ中、私は残る力を持って彼女に抱きつくようにしがみ付いた。

「な、何をする……!」

「……私がノーパンだったら、こんな事が出来るんだって……!!」

賭けだった。彼女に魔法を、何もかもを注ぎ込むように念じて、意識して、彼女の身体に抱きついていた。
温もりはちゃんとある。何度も肌で感じたその温もりが、私とメルと二人で過ごした記憶を呼び覚ましていく。

直後、私の背を剣が貫いた。一度だけじゃない、二度、三度と、私を亡き者にしようと、彼女の剣が貫いた。
とっても痛い。それでも、痛覚が麻痺を始めたのだろうか、絶叫するほどの痛みはもう感じられない。
それよりもただ、私は走馬灯のように彼女との思い出を描き、そして最後にもう一度、彼女の名を呼んだ。

「メル……メル・メルエッド……。お願い、私のこの思いを……受け取って……!」

我が身体から、次々と溢れ出る血の雫が雨と混じり、落ちていた羽ペンを塗らしていく。それが奇跡になったのかもしれない。
その羽ペンは、彼女の失われた記憶を取り戻すかのように、ある日の出来事を描いていく。そして彼女は次第に……>>591

落ち着きを取り戻し、マールに抱き着きなきだした 

我が身体から、次々と溢れ出る血の雫が雨と混じり、落ちていた羽ペンを塗らしていく。それが奇跡になったのかもしれない。
その羽ペンは、彼女の失われた記憶を取り戻すかのように、ある日の出来事を描いていく。そして彼女は次第に……。

「あ、あぁぁぁ……あぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあッッ!!!」

突如、彼女の思いが私に流れ込んだ。そして気付く、彼女も苦しんでいたんだと。その苦しみを分かってあげられなかったのだと。
だけど、彼女は馬鹿だ。それこそ、私に相談するべきだった。彼女もまた、天野秀を好いてしまっていたなんて、気づける訳が無かったのだ——。

—— 記憶は完全に消えていた筈だった。それでも、今では全てをはっきりと思い出せる。
加賀美目羅の傀儡ともなり、協力しようと動いていた自分を悔いる。そして、自分は裏返った世界の人間だと、塞ぎこんでいた事を恥じるのだ。

「ごめん、なさい、ごめんな……さい……」

彼女のお陰で、落ち着きを取り戻し、マールに抱き着きなきだした私は、その冷たくなりつつある身体をぎゅっと胸に抱く。
もう、彼女は、我が主として振舞ってくれた気優しいこの人は、私の為に命を失くそうとしてしまっている。

もう、何も語ってくれない。何も見てくれない。目を閉ざし、どこか満足そうに微笑んだまま、冷たくなっていく。
私には彼女の身体を癒す術なんて持っていない。ただ、彼女が起こした奇跡の雨が、降り注ぐだけだった。

この場にアンや、アリス、そして回復術を身につけるノエルもやって来ている事を知っている。
ノエルに頼めば、まだ何とかなるかもしれない。マールを抱え、始まりを迎えるその場所へ私は駆け出していた。
救いたい。私の命なんかどうでも良い。私の為に一生懸命となり、そして命を差し出してしまった彼女を助けたい。

「はぁ、はぁ…………そん、な……!!」

そこは始まりを迎える場所、と加賀美目羅は言っていた。しかし、私達にとっては、終わりを迎える場所なのかもしれない。
私のせいでもあったんだ。私がつまらない感情で動いてしまったから、この災厄を呼んでしまったのだ。

「……よく頑張ったよ、君達は。しかし、アヒル如きで苦戦を強いられるとは思わなかった。……だが、もう終わりだ」

アリスも、ノエルも血塗れとなってその空間で倒れていた。アンもまた、かろうじて立つのがやっとの状態で、加賀美目羅にトドメの一撃を受けようとしている。
そして、私が抱えて連れてきたマールもまた、完全に冷たくなり物言わぬ屍と化している。

終わりだ。何もかも終わりなんだ。そう思った瞬間、ベッドに居た白渡矜持が、天野秀を抱き起こすのだ。

「さぁ、見るんだ。……君の娘の終わりを。そして絶望するといい……。深い、深い悲しみに絶望するんだ……」

多数の男女の屍を踏みつけるかのように立つ加賀美目羅は短剣を持っていた。そうして、その屍を蹴るかのようにしてはアンに歩み寄り、
最早立つしか出来ないでいた彼女の胸元にそれを刺し、奥深くまで貫く。そしてその光景を虚ろながら見てしまった天野秀は……>>593

常時賢者モードが切れた

数の男女の屍を踏みつけるかのように立つ加賀美目羅は短剣を持っていた。そうして、その屍を蹴るかのようにしてはアンに歩み寄り、
最早立つしか出来ないでいた彼女の胸元にそれを刺し、奥深くまで貫く。そしてその光景を虚ろながら見てしまった天野秀は……常時賢者モードが切れた。

彼に課せられた枷。それは、彼が前主の声を聞き、自分がどういった存在なのかを知った直後に自身を縛る形となる。
それが、鎖が千切れるかのように切れていく。次第に生気を取り戻していく彼を見たアンは、最後に彼の名を呼んだ。

「秀……、ごめん、な……さい……。わたし……勇者には……なれ……」

「……アン……」

加賀美目羅の前で、その凶刃を受けて、アンは膝をついて、そのまま緩やかに倒れていった。
無限に続くかのようなその空間、その宙に漂うかのように倒れた彼女の血は溢れ出し、空間に溶け込んでいく。
アリスやノエルが流したそれもまた、空間に溶け込むように消えていく。その光景を絶望したまま眺めているわけには、もう出来なかった。

「……天野秀ッ!!」

「…………アンが、アリスが、ノエルが……。それに、マールまで……」

「しっかりしなさいよッ!! あんた、神様でしょ!! なのに、私みたいにこんな小者達に操られて!!
 おまけに勝手に絶望してるんじゃないッ!! 前を向いて、まだ望みはあるかもしれないじゃないッ!!」

「あ、あぁぁ、ぁぁぁ……こんな、こんな事って……!!」

「いい加減にして、天野秀ッ! あんたがそんなんじゃ、皆も……マールも、報われないじゃないか——」

「お喋りは、そこまでにして貰おうか……」

それは転移するかのように、気付けば直ぐ傍までやって来ていた加賀美目羅は、アンを貫いた短剣を掲げていた。
そこから血が滴るように雫が零れ落ちていく。抗わないと、刺されてしまう。しかし、剣に手を掛けるのが遅すぎた。

「色々と協力には感謝しよう。そして最後の協力を申し出るとする。この場で[ピーーー]」

短剣が私を貫こうとする。避けきれないと判断したその最中、白渡矜持が企んでいた出来事が起こるのだ。
彼は加賀美目羅に手を貸すとは言っていた。しかし、計画に、裏返りに協力したわけではない。

「枷は解けた。さぁ、天野秀、僕に……奇跡を見せてくれ」

突如、加賀美目羅の振り下ろそうとする腕が止まる。空間が突然開けたような感覚。そして……始まりと呼ばれる由縁である>>596が起こったのだ。

太古の神々と恐竜の復活

突如、加賀美目羅の振り下ろそうとする腕が止まる。空間が突然開けたような感覚。
そして……始まりと呼ばれる由縁である太古の神々と恐竜の復活が起こったのだ。
それは、加賀美目羅にとって想定外の事態。彼は突如乱れ、白渡矜持に掴みかかるのである。

「ふざけるな! これは何事だ、何が起こったか説明しろ!!」

「変わるんだよ、すべてが……。そして、僕の存在も、もう必要はなくなるだろう」

「変わるだと!? 第八世界はどうなる! そして、母体と世界、アスワルドもどうなるというのだ!!」

「元に返すのさ。そう、それが彼の願いでもあるんだから……。その枷を、強引にでも解くのが、僕の役割だった……」

白渡矜持は、加賀美目羅に身体を揺さぶられているせいなのか、役割を終えたと認識したのか、
指先から、髪の毛から、端から身体を崩し、徐々にその存在が無くなっていくのである。

信じられない光景だった。タイムスリップしている感覚とは、こういう事を言うのだろうか。
火山が噴火する光景。氷河期に入る光景。そして、歴史が始まる光景を私達は遠くから目にしてしまっている。

「おのれ、おのれおのれ!! 貴様だ、天野秀。貴様さえ居なければ、私は、いや、我々は救われた!!
 貴様さえ……貴様さえ居なければァァァァァァ————」

今この場に居る空間が崩れ出す。横たわっていたアリスも、ノエルも、マールも、そしてアンもまた、その崩れ出した空間に飲み込まれていく。
そして私もまた、ぎりぎりまで踏みとどまろうとするも、虚しくその空間に飲み込まれていく。

その最中、加賀美目羅は天野秀に刃を突き立てた。そして、彼自身の用いる力で、天野秀の全身を黒き闇で焦がそうとした。
しかしそれらも全て無駄な行為。その刃も、黒炎も、彼自身に跳ね返り……己の命を断つ行為となってしまう。

「そ、んな……、こんな事……。この箱庭を、本来の世界に、返すだと——」

最早、そこに加賀美目羅の存在は消えて無くなり、そして空間へ溶けていく私に、天野秀は何かを言ったんだ——。

—— レストラン、チェリークロック三号店。そこは、スペシャルメニューが評判なお店。
そこは女子にとって人気でもあり、それでいてちょっとした溜まり場ともなっていた。そこで働くのは、ちょっぴり変わった店員達である。

「ほぉら、さっさと仕事しろ! あ、ネルネルはのんびりしていていいからね」

「むぅ、私だけ甘いのは困るのだ。……皆から冷たい目で見られるのだぞ」

そこで、私もお小遣い稼ぎにと仕事に励んでいるのだが、相田店長と練曲ネルとのやり取りは見ていて飽きず、
大体最初は店長が練曲ネルを愛でようとするのだが、毎度>>599となるのがパターンとなっていた。

狐とタヌキの化かしあい

そこで、私もお小遣い稼ぎにと仕事に励んでいるのだが、相田店長と練曲ネルとのやり取りは見ていて飽きず、
大体最初は店長が練曲ネルを愛でようとするのだが、毎度狐とタヌキの化かしあいとなるのがパターンとなっていた。
何とか手篭めにしようとする相田店長は、毎度狸でもある練曲ネルに、してやられるのである。

「店長、あんまり私のお尻ばかり狙うようなら、今日のスペシャルメニュー、取りやめにしても良いのだが?」

「ぐっ! 卑怯ねネルネル。しかし……それを取りやめにされると、我が店の売り上げが……!」

「そういう訳で、私ばかり余り甘やかさないで欲しいのだ。皆に公平にお願いするぞ」

「仕方ないわね……。って、メルちゃん、休憩そろそろ終わりじゃない?」

「あ、そうでした! アハハ、つい二人のやり取り見ていると、楽しくなっちゃって」

「こ、これは見世物じゃないぞ! 全く……」

このお店のアルバイトの中では、練曲ネルと一番仲が良いとも言える。しかし、もう一人とっても大事な人が、そこで働いていたような気もする。
しかしそれはどうにも思い出せず、そして偶に練曲ネルも、何かを思い出そうとして唸り、そして切なそうな顔をしては仕事に戻る。

「なぁ、天野メル。……天野って、誰かもう一人居なかったか?」

「さぁ……。天野杏さんなら居るけれど。私達を養ってくれてる綺麗なお姉さまが!」

「そうじゃない。もっとこう、オープンスケベのようで、実はむっつりなだけで、でもイケメンで悔しい掘れちゃうびくんびくんってなっちゃう男が……」

「やだなぁ、ネル先輩。そんなの居るわけないじゃないですかー!」

「そ、それもそうだな。うむ、私が大賢者な設定も恐らく気のせいだ。よーっし、二人でさっさとスペシャルメニュー、仕上げようじゃないか!
 今日はアイスてんこ盛りで、スイーツで攻めるぞ! メル、アイスクリームの用意を頼むのだ!!」

そうして上機嫌となった練曲ネルと、私はスペシャルメニューのアイスクリームてんこ盛りのトロピカルパフェを考案する事になる。
それを最初に頼んだのが、弓道部の帰りなのだろう。天野ノエルなのである。

「あら、メル姉様。今日はパフェなのですね」

「その、姉様っていうのやめない? なんというか……痒いんだよね……」

「呼び方、お嫌いですか? それじゃ、使えないメル姉と呼びますが?」

彼女は、我が家の三女。こうして時々毒を吐くのだが、実は根は優しく、何より誰よりも気がつく女の子。
しかし、少々潔癖的で粘着的なところがある。今日もパフェを一口、そして>>601だと評価した彼女は、スペシャルメニューに粘着的であった。

生クリームが1ml分多い

彼女は、我が家の三女。こうして時々毒を吐くのだが、実は根は優しく、何より誰よりも気がつく女の子。
しかし、少々潔癖的で粘着的なところがある。今日もパフェを一口、そして生クリームが1ml分多いと評価した彼女は、スペシャルメニューに粘着的であった。

「こ、細かい……。そんなちょっぴりくらい、別に良いじゃん!」

「いけません。これだからメル姉は困るんです。あ、それと……あちらに、メル姉のお友達が」

「おっ、ホントだ。かがみんが居るー!! かっがみ〜ん!!」

「わ、わわわ、天野さん、急に現れないでくださいませ!! 言っておきますけど、今日はスペシャルメニューを食べに来ただけですのよ!?」

「一応、私も居るんだけどー? 私は無視かなー、天野メルは」

「あ、ことこちゃんも居たんだ。ふぅん……なるほどねぇ、ニヤリ——」

—— 天野メル、私の姉であり、長女。その彼女は、生活費を天野杏に全て負担させるのは悪いと、
自ら働くようになり、その費用を少しでもと、家計に回す健気さを持つ。しかし、十六歳にして少々やんちゃが過ぎるのも彼女の短所。
彼女の友達である加々美麗華を七福ことこは好いている事を知っている姉のメルは、ニヤリと頬を歪ませた。

「さーては、かがみんと一緒にカップル席に座りに来たんでしょー?」

「ち、違うに決まってるだろっ! そんな事は、無いんだぞ……!?」

「あれ、ことこさんって、天野さんとカップル席に……!? ら、ライバルが直ぐ傍に……!!」

「ちっがーう!! 誰が、こんな天然で奔放者と一緒に座るか!! わ、私はその加々美さんと、その……ブツブツ」

姉は今日もいつも通り。そして今日も愉快に日常を過ごしていっている。そして私もまた、このレストランで日常を過ごす。
パフェの味は概ね良好だと、それを肴に今日もあの小説を読んでいた。

「……不思議。何故私達の名前が、舞台が本になっているのやら」

臨海市が、そして私達やその周囲の人間、はたまた、このレストランまで舞台となった本。それは天野家で偶然見つけたもの。
著者不明であり、子供っぽい文章が連なるものではあったのだが、私達が登場するという事で、ついその本を読み耽ってしまうのだった。

「しかし、天野秀? この人は誰なのか……ううん……」

聞き覚えのある名前。でも、思い出せそうで思い出せないその人は、なんだかとても大事な人だったような気がする。
そうして、本と睨めっこをする私に、次女でもあるマールが友達を連れて店を訪れ、私に>>603と声掛けたのだ。

鼻毛が出てるわ、レディ失格ね

聞き覚えのある名前。でも、思い出せそうで思い出せないその人は、なんだかとても大事な人だったような気がする。
そうして、本と睨めっこをする私に、次女でもあるマールが友達を連れて店を訪れ、私に「鼻毛が出てるわ、レディ失格ね」と声掛けたのだ。
つい鼻を抑えてしまう。すると彼女は大笑い。最近どうも悪戯が過ぎる次女マールは、それまで一番面倒見が良い女の子であった。

しかし今では、姉のメルの影響を受けたのか、つまらない事を言ってはレディ失格と言うのである。
女子力アップを掲げる辺りは本当にブレが無い彼女は、私の隣に座るのだ。

「あ……ノエルさん、こんにちは……」

「三枝さんも一緒なんですね。そして……あぁ、この珍獣も居ましたか」

「オイィ! 珍獣とは酷いなお前!! 鼻毛出てる癖に!!」

「出ていません。それよりマール、何故栄田さんまで?」

「なんかこの珍獣、どうしても来たいって、出番が欲しいってしつこくって……」

「だから俺は珍獣じゃねぇ!! と、というか、マールこそ本当は俺に来て欲しかったんだろう!?」

「はい? 私、貴方なんて呼びたくも無かったのだけど。それに、私好きな人ちゃんと居るし?」

「……え、マジで……? マジなので……?」

栄田颯太、私とマールのクラスメイトの一人は、マールに片思いである。そして、何気にその事に気付いている彼女もまた、
度々こうして好きな人アピールを行い、栄田颯太は愕然とする。しかし翌日、それを忘れた彼は、またマールにアタックするのである。

本当に無駄だと溜息を吐いてしまう中、三枝さんはおろおろとしつつも、私に尋ねてきた。

「あ、あの、マールさんって、本当に好きな人、居るんですか……?」

「居ません。あんなの嘘です。……多分ですけど」

「ほっ、良かったぁ……。あ、あれ? 私、なんで安心しているんだろう……」

そして三枝瞳もまた、マールにちょっぴり想いを寄せている様子である。我が次女は何気にモテモテなのであった。
しかし、三枝瞳の想いには気付かないマールは、私の頼んだパフェを勝手に食し、美味しいからと三枝瞳に食べさせようとする。

「ほら、瞳、口開けて。あ〜〜んって、ほら、あ〜〜〜ん」

「あ、その、えと……あ〜ん……」

何だろう、時折この二人のやり取りを見ていると、>>605という気分になってくる。

力が抜ける

何だろう、時折この二人のやり取りを見ていると、力が抜けるという気分になってくる。
そしてそれは、珍獣の栄田颯太もそうなのだろう。腑抜けた顔でマールと三枝瞳を眺めているのであった——。

—— 瞳と、そして三女のノエルと、オマケで珍獣。その皆と三十分程時間を過ごし、私はある目的を思い出す。
突如立ち上がった際、ノエルが持っていた小説がぽろっと床に落ちるのである。それを拾い上げた私は、ノエルに言った。

「ねぇ、何度もこればかり読んで、飽きない?」

「別に、飽きはしません。寧ろ不思議ばかりです。……誰が書いたんだろうって。それよりも、突然立ち上がられたらびっくりします」

「ごめんごめん。ちょっとね、今日私とアリスが食事当番でしょ? 買出しするの忘れちゃってて!」

「あ、あの……マールちゃん、行っちゃうの?」

「え、えっと……。それじゃ、瞳もスーパーまで付き合ってくれる?」

「うん、行く……! もうちょっとだけ、一緒に居たいし……!」

「ノエルはどうするの? まだ残るの?」

「ええ、本を読みながらスペシャルメニューを食すのが私の日常。……あれ、もしかして、これって寂しい?」

「そうね……割と寂しいわね……。じゃあ、メル姉をきちんと連れて帰ってきて。それじゃ私と瞳は先に行くから」

「あれ? 俺は? 俺は蚊帳の外!?」

「珍獣はさっさと檻に帰りなさい」

私がそうバッサリと切り捨ててやると、珍獣栄田はしゅんと落ち込んではとぼとぼと会計を済ませて外へ向かうのだった。
それを見届けた私と瞳も席を立ち、ノエルに別れを告げ、友達とはしゃぐメル姉に声を掛けた後、買い物へ向かうのだった。

「ねぇ、瞳。今晩お夕飯、食べていく?」

「ホントに、いいの……? まだ一緒に居て、いいの……?」

「その、まだ一緒にっていうの、やめない? なんか……痒いのよ」

「ふふ、ごめんなさい。でも、嬉しかったから……つい」

そうして笑顔を見せてくれる瞳の為に、今日の夕飯は>>607にしようと決めるのだ。

カレー

そうして笑顔を見せてくれる瞳の為に、今日の夕飯はカレーにしようと決めるのだ。
定番と言えば定番だと、瞳とそうして話をしていると、商店街の肉屋の前で頭を抱えるアリスを発見してしまう。
どうやらその友達のトルテも一緒のようだ。二人して何故か頭を抱える様子を見せるので、何事かと話しかけるのである。

「それが、マル姉、お金が足りないのだわ……」

「私も、お金あんまり持ってないんだ……とほほ」

「その、マル姉っての、やめてよ。……丸いって思われるから」

「え? なんで? マル姉はマル姉じゃないの? それより、松坂牛高すぎなのだわ!」

「今晩はカレーよ。だからそんな高級なお肉は要らないの。あ、でも牛すじは欲しいわね——」

—— 我が家の次女、マル姉はなんと、焼肉の予定を急遽変更、カレーにすると言い出した。
暴挙である。育ち盛りの私にとって、それは暴挙。これでは胸が育たないではないかと、せめて松坂牛を強請る。
しかし彼女は牛すじを選んだ。やはり暴姉である。こうなれば、もう少し良いお肉をと、あの手段で行くしかない。

「トルテ、いい? ひそひそ、ひそひそ」

「ふむ、ふむふむふむ。なるほどー、その手に乗るよ、アリス!」

「二人とも、一体何を話しているのよ。さては何か企んでいるわね?」

「ふふん、マル姉が牛すじなんてつまらない物を選ぶのなら、私は今日で演劇部を辞めるのだわ!!」

「私も、わたしもぉ〜!!」

「な……なんですってぇぇぇぇ!!!」

演劇部、私もトルテも、マル姉も所属するその部の人数はかなり少ない。なので、私達が抜けられると、演劇部部長の彼女は困るのだ。
それを知っての交換条件である。せめて上バラ肉を私達は請求すると訴えたところ……>>609

巡り巡ってチキンカレーに落ち着く

演劇部、私もトルテも、マル姉も所属するその部の人数はかなり少ない。なので、私達が抜けられると、演劇部部長の彼女は困るのだ。
それを知っての交換条件である。せめて上バラ肉を私達は請求すると訴えたところ……巡り巡ってチキンカレーに落ち着くのであった。

そうして三枝瞳や私の友達でもある留学生、トルテ・トールソンと共におんぼろアパートに帰宅する。そうすると、やはりアレが待っている。
ゲーム漬けでひたすらにゲーム三昧な私の姉でもある四女、天野アン。今日もやはり学校から帰っては、ゲーム三昧であった。
彼女は今日は友達をつれて居てきたらしい。一緒に格闘ゲームをする七福ことみは、連敗中の様子であった。

「ふえぇぇ、アンちゃんに全く勝てないよぉ……」

「勇者である私に勝とうなんて百年甘いの」

「というか、アンちゃん、勇者ってのやめた方がいいよ……。クラスで浮いてるから。吾妻君さえ引いてるから……」

「そんな馬鹿な。私が引かれている筈が……!」

我が天野家四女は、少々中ニ病をこじらせている。中一でもある為、ちょっぴり早い発症ではあるが、驚く事でも無い。
けど、そんなアン姉も私は好きだ。彼女を見ていると、何だか幸せになる。姉妹の中でも特別、アン姉が好きだった。

「おっじゃましまーす!! うわ、アンちゃん、今日もやってるんだー」

「トルテも勝負する? 勇者に勝てないという所をとくと見せてあげる……」

「うーん、今日は夕飯食べたら帰るつもりだしー。アリスはアンちゃんに勝てるの?」

「も、勿論勝てるのだわ! 中ニ病をこじらせたアン姉なんて、私の闇の力でちょちょいのちょいなのよ!!」

「ほら、アリス! 貴女今日は夕飯担当でしょ。中ニしてないで、私と台所へ来なさい!」

そうして、私はマル姉の暴挙により台所へ立たされ、じゃがいもの皮むきをさせられてしまう。
やはり我が次女は暴君もとい暴姉だ。いつか演劇部の活動中に闇の力でぎゃふんと言わせてあげないと。

そうして、部屋の方ではアン姉にまたまた挑むことみが、ついに五十連敗するという出来事が起こるのであった——。

—— 今夜はチキンカレー。牛すじと鶏肉が入っているそれを、家族の皆と、その友達とで食す事になる。
しかし、私達姉妹だけでも手狭な部屋に、三枝瞳、トルテ・トールソン、そして親友の七福ことみが居ると、もうそれは押し込められた空間となっていた。

「狭いわね……」

「狭いよー、狭いよー」

姉のマールが呟き、そしてメルがそう叫ぶ中、ノエルは心頭滅却すれば狭さもまた涼しと勝手に悟りを開いていた。
そして、私にくっつくようにしたアリスのせいで、思うようにチキンカレーが食べられない。こうなってはもう、>>611するしかない。

アルバイトして自立してヤカン学校に通って部屋借りる

姉のマールが呟き、そしてメルがそう叫ぶ中、ノエルは心頭滅却すれば狭さもまた涼しと勝手に悟りを開いていた。
そして、私にくっつくようにしたアリスのせいで、思うようにチキンカレーが食べられない。
こうなってはもう、アルバイトして自立してヤカン学校に通って部屋借りるしかない。

狭いのはやだ。アリスが常にくっついてくるのも暑苦しいからやだ。そして何より、貧乏がやだ。
いつか自立して、部屋の中で広々と勇者ごっこするのが私の夢だ。けど、だからといってアリスが、そして皆が嫌いという訳ではない。
ちょっぴり独立を夢見る年頃なのだ。一人でもきっと暮らしていける、なんて夢を見たい年頃が、今の私。

「ごめんね、送って貰っちゃってぇ……」

「ううん、ことみは親友だから。勇者として当然」

「だから勇者っての、私も引くからやめようよぉ……」

七福ことみを途中まで送る事になり、私がそれを引き受けることになった。既に夏は過ぎ、秋風が私達の肌を伝う。
涼しくなりそれが寒くも感じたのか、風が吹いたとき、ことみは肌寒そうに身を抱えた。

「……勇者ジャケット、着る?」

「え、何そのネーミング……」

「勇者ハンカチもあるけれど、使う?」

「その場面でハンカチは使わないかな……。それよりアンちゃん、この本だけど……」

「……この本、私が勇者になって大活躍するんだけど、あまり最強さが描かれていない駄目な本?」

「え、えと、まぁそうかもしれないけど……楽しかったよ。返すね」

「うん……。感想、どうだった……?」

「うんとね……ぶっちゃけつまらないかも……? 私、もっとメルヘンな方が好きだから……」

ことみには不評だった本を受け取り、歩きつつもその本をぺらぺらと捲り、さっと眺めるのだ。
最後、勇者も倒れ、魔法剣士が神に必死に語りかけ、そして皆を思った神は箱庭を、正しい世界を返していく……。
しかし、最後のシーンは描かれておらず、その場面で、天野秀となる主人公の最後の言葉が残されるだけなのだ。

「皆が幸せで居られる世界へ—— か……」

そうして、日常が過ぎていく。もう直ぐ文化祭という事もあり、川下浅海はこのクラスの出し物は、>>613にすると独断するのだった。

警察官24時

そうして、日常が過ぎていく。もう直ぐ文化祭という事もあり、川下浅海はこのクラスの出し物は、警察官24時にすると独断するのだった。
副担任のアルテナ・アルメリアもまた、それに賛成し、二人で勝手に盛り上がるのである。

「やっぱり警察官よね、時代は!!」

「その通りよ〜、ふふ、先生とは気が合うわぁ〜!」

「でも、アルテナさんはお酒の癖が悪いので、当日は禁止ですよ!」

「えっ? お酒の無い人生に意味あるのかしら、ねぇ、ねぇ!!」

「ちっ、ババア共が浮かれやがって……」

「「あ〜づ〜ま〜く〜ん? ちょっと後で職員室まで来て貰おうかしらぁ〜」」

「うげっ、お、俺は何も言ってないぞ!? そうだ、アンだ。天野アンが言ったんだ!!」

「……また私のせいにされた……」

吾妻仁、度々私に絡む少年であるが、勇者である私に喧嘩で負けて以来、どうにも大人しくなっていた。
そして、気付けば私とアリス、そしてことみと彼とで過ごす事が多くなっていく。

文化祭の準備もそうして四人で組む形となっては進んでいくハズなのだが、吾妻仁はサボったりしては逃避し、
つまらないけど楽しいとか言いつつ、ことみはまたあの本を読んで逃避。
そしてアリスは演劇部の練習がーと言って逃避。残る私は、勇者ごっこをして逃避するのであった。

「こら、天野さん! ちゃんと警察官の衣装作らないとでしょう!?」

「でも先生、私勇者だから裁縫は出来ない」

「全く、天野姉妹はいつもこうなんだから……。今度、私がお裁縫、直接教えてあげるわね」

「……ご遠慮したいのですが」

そうして、川下浅海にも度々絡まれながら、文化祭当日がやって来た。
警察官24時、その内容はただの文化祭の巡回任務となる。但し警察官のコスプレ込みであった。

私とアリス、そして七福ことみが歩いていると、突如カメラを持った>>615が登場するのである。

天野秀

私とアリス、そして七福ことみが歩いていると、突如カメラを持った天野秀が登場するのである。
何故か私はこの人を知っている。アリスも、そしてことみもまた、彼の事を知っているのか、立ち止まり幽霊を見たかのような表情となっている。
しかし彼はそんな事もお構いなしと、勝手にスカートの中を盗撮の後、川下浅海に捕まるのだった。

「ちょっと、貴方!? って……あれ、貴方、もしかして天野君!?」

「うげっ、まさか川下浅海か!? 随分ケバくなりやがって—— 痛てぇっ!!」

「ちょっと、職員室まで付き合って貰います。あ、天野姉妹と七福さんはまた巡回、お願いね」

「ねぇ、アン姉……さっきの人って……」

「私も、なんだか見覚えがあるの……。アンちゃんは……? って、アンちゃン、もしかして泣いてるの?」

「分からない……。でも、涙が溢れて……」

その盗撮魔に出会い、とても懐かしく、それでいて嬉しくも思えた。けど、それがどうしてなのか、よく思い出せないでいた。
職員室に連れられた盗撮魔に、もう一度会いたいと、私も、そしてアリスも駆け出してしまう。
しかし、途中でそれは川下浅海から逃れたらしい。突然、マールとノエルの声がするのであった。

「盗撮魔が逃げたわ、追うわよノエル!!」

「ええ、なんかあの人、懐かしいけれど……危険ですから!!」

その後、マールとノエルと合流し、四人で逃げる盗撮魔を追いかけるのだが、逃げ足だけは異常に早い。
しかし、その盗撮魔は屋上に逃れようとして、学校をサボり、私達を見物に来たメルに激突してしまう。

「ちょ、ちょっとぉ、痛いじゃないのさぁ……って、ウソ……」

「く、くそ、これでは逃げられ……ない……? 囲まれてる……?」

天野家の皆が、天野秀を取り囲み、彼の逃げ道は完全に無くなった途端、彼はとうとう盗撮の事実を暴露する。
どうしても、私達の下着が見たかったのだと涙ながらに告げる彼に、私は気付けば手を伸ばしていた。
私だけじゃない、マールも、メルも、ノエルも、アリスも、皆が彼に手を差し伸べる。

「一緒に逃げましょう。ね?」

「いいんですか? といっても、私も同じ気持ちですけど」

「それじゃ、一緒にチェリークロックまで逃げちゃいますかぁー!」

「なんでファミレスに逃げるの!? でも、それもいいかもだけれど……」

「……一緒に、逃げよう? 私が、勇者が一緒に居るから……」

それは、まともに働かず、一人暮らしを満喫し、だらだらと日常を過ごす男と、異世界からやって来た少女達と暮らす事により、
娘達の為に右往左往し、奔走する男、そして思いを馳せる少女達の物語。
そして、それは世界も変わり、盗撮魔を連れて共犯となり、その働かない二十七歳を更正させようと奮闘する天野家の物語……。


———— お わ り

結局フリーターのままなのかww
長時間乙でした!

くぅ疲、って事で以上でこの物語は終わります。最後に娘達のメッセージを……なんてモノはありません。

途中の強引な所から一気に終わらせようと思ったのですが、やっぱりエンディングはのんびりやりたかったかも。
出来たら番外編とかしたいなーとか思っちゃってますが、まぁそれもいつか、そして安価次第でって事で……。

此処までお付き合い頂いて、ありがとうございましたー。


まともに終わらせれたの、今回が久々かもしれない……。

【05/19 (日) 01:30時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

05/19 (日)
  21:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 少女と絵本と時々エロ本 第一話 『そいつは同人を描いていた』

純粋にラブコメしたいんですぅぅべっちょり。

すいません。突発的な用事ができて遅れてしまいました。

トリップがまとめサイトとこちらとでは表示が違うみたいです。

もう少々お待ちください。

————『お前は誰だ』第四話

【あらすじ】
過去からやってきた“自称”信長にひょんなところからサルと間違われて居候された大学生の奮戦記。

【登場人物】

木下蔵吉=信長にサルと間違われた不運の大学生。前回ではリア充と言われたがはてさて?

織田信長=自称・過去からやってきた六天大魔王だが、コーラ好きだったり霊媒体質だったりでさあ大変!

今川真子=主人公の同級生。常に巻尺を携帯してる。神経質なのか不思議ちゃんなのか今時点では謎。

大家=霊能者。ファッションが変。今回は出番がないと思う。

過去からやってきた天下様が勝手に俺の部屋に上がりこんで、シリアルを食い漁り、小便を漏らし、あげくセクハラまでしやがって、この俳諧老人には、手を焼いている。
今度は夕食とうるさいので、まさか外食に連れ出すわけにも行かず。適当なレトルト食品を食べさせることにした。

信長「サル、わしは腹が減ったぞ」
蔵吉「今作るから待ってろ」
面倒くさいのでレトルトカレーで済ますことにする。戦国時代にカレーがあったとは思えないが、こちらが食ってみれば向こうも納得するだろう。
皿にてきとうにご飯を盛り、カレールゥを直接かけて拒否されたら困るので、別の容器に移した。

蔵吉「はいできましたよ」
とルゥの入った器とライスをテーブルの上に置く。
案の定信長は、テーブルの前で固まっている。

信長「>>625

なんかヤダ、茶色いし

信長「なんかヤダ、茶色いし」

俺は黙って茶色いものをごはんにかけて口へ運んだ。
すると信長は、「食った」と叫び声を上げた。
何か誤解されても困るので、俺は丁寧に説明してやった。

蔵吉「おほん。この料理は、天竺渡来のカレーライスと呼ばれるものである。見た目は悪いが匂いを嗅いでみろ。うまそうな香りだぞ」
信長は、少し首を突き出して、カレーの入った容器の前に、おそるおそる鼻を突き出し、手であおいでみた。
その後鼻をウサギのように動かして、一言「言われてみれば、なにやら珍妙な香りじゃのう」
信長はカレーの汁を指先につけて舐めてみた。

信長「辛っ!こんな塩辛いもの食えるか!」
蔵吉「だからご飯に載せて食べるんだよ」

信長はおそるおそるカレー汁をご飯にかけて口の中に入れた。
信長「>>627

うまい

信長はおそるおそるカレー汁をご飯にかけて口の中に入れた。
信長「うまい」

やれやれこれで一安心と思っていると、やはり戦国時代人だけあって質問の嵐に遭ってしまった。
信長「この赤いのはなんだ」
信長「この黄色いのはなんだ」
信長「この透明なぷよぷよしたものはなんだ」
信長「この微妙な味加減はおまえが発明したものか?」
信長「どうやって作った?」

最初は丁寧に説明していたが、調理法となると俺も知らなかった。
蔵吉「一通り出来上がったものが袋に入っていて、それをゆでたら出来上がり」
信長「その中のものはどうやって作ったのじゃ」
蔵吉「知らない」
信長「そのような得体の知れないものを、よく平気で食えるな」
蔵吉「あんただって今食ってるじゃないか」

なんとか二人とも食べ終えることができたが、信長は付け合せの福神漬けの製法まで聞いてきて、ウザくてかなわない。
あんまりしつこくカレーの作り方を尋ねられたので、俺は>>629というやり方で調べることにした。

工場見学

俺は工場見学というやり方で調べることにした。

信長のおっさんを工場に連れて行くのは少々ためらわれた。小便漏らしの件から信長のいでたちは上下トレーナーに靴下。インナーは俺のパンツ。
このパンツをはかせるのも一苦労だった。

信長「妙な兜じゃな」
蔵吉「頭に被るなっ!」

何とか身振り手振りで下半身につけるものだと教えてやった。白いブリーフをはいたちょん髷男の姿は何かのコントのようであった。
俺は笑いをこらえるのに苦労した。

そうだ『ちょん髷』だ。彼をこのまま表に出すとしたら一番のネックはちょん髷になるだろう。問題は信長がちょん髷を切ることにどれだけ抵抗するかである。
俺は慎重に事を運ぶことにした。

蔵吉「信長様、もし仮にそのちょん髷を切るように俺、いや私がお願いしたらどうしますか?」
信長「>>631

大銀杏に結いなおす

信長「大銀杏に結いなおす」
蔵吉「相撲取りかよ!」

てっきり代激怒して「ちょん髷は武士の魂」とか言われると思ったら。予想外の回答で全身の力が抜けた。
蔵吉「ならそのちょん髷ほどいちゃってもいいんですか?」
信長「ああ、わしも早くサルみたいな髪型にしてみたいわ」

意外だった。こりゃ案外楽に外に出せると思った。外に出せるのなら食事や留守番で困ることもないわけだ。
現代生活に慣れたら、簡単なアルバイトをしてもらえるかもしれない。
と、俺が取らぬ狸の皮算用をしていると、その表情があまりにも嬉しそうに見えたのか、信長が発言した。

信長「>>633

そんなに嬉しいなら褒美をくれ

信長「そんなに嬉しいなら褒美をくれ」

俺は一瞬「?」となった。なんで赤の他人のあんた、(仮に家来のサル=秀吉にまちがわれていたとしても)部下が上司に褒美を渡すのはおかしい。
俺は信長に聞いてみる事にした。

蔵吉「なんで俺があなたに褒美を与えなきゃならんのですか?」
信長「ほれ、あの女子との仲をとりもってやったじゃろう」
俺「えええええ?」
信長が、今川真子にセクハラした覚えしかないのだが。あの物事を気にしない彼女を送る途中『激おこぷんぷん丸』だったのは秘密だ。
信長「わしがにじり寄ったことで、サルもめでたく結婚か。ああめでたいのう。褒美くれ」
俺「なんでそうなる?」

戦国時代人の思考パターンが読めずに疲れた俺は眠ることにした。
俺「そろそろ寝るわ」
信長「>>635

イヤじゃー今すぐ工場見学に行くんじゃー

俺「そろそろ寝るわ」
信長「イヤじゃー今すぐ工場見学に行くんじゃー」
俺「おっさんは子供か!」
その後、深夜1時まで、すぐに行けるのではない事、根回しが必要なこと、今行っても工場が稼動してるか不明なこと、しばらく大学に行くので(その予定はなかったが)
次の休みまで無理なことをこんこんといい年したおっさんに諭すのであった。

その晩俺は、30人学級の生徒が全て信長という悪夢を見た。

————————続きます。

次回はいつになるか未定です。おつきあいいただき有難うございました。
工場見学は予想すらしてなかった・・・。(^^;)

おつー!

【05/19 (日) 10:43時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

05/19 (日)
  21:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 少女と絵本と時々エロ本 第一話 『そいつは同人を描いていた』

5分程遅刻しますー

ふう、なんとか間に合った……。

えー、そういう訳で……神様も勇者も魔王も、出来れば魔法や奇跡も撤廃した世界作りを宣言します。
そんな私に清き一票をー!! 安価でなのはちゃん登場しても本当にコスプレだけにする覚悟であります。

思えば能力物ばかりになってたんで……そんな訳でもう暫くお待ち下さい。


—— 例えば、ある日誰も居らず、自分だけの住処として、庭として時折周囲のゴミ掃除なんて、あるまじき行為を行いながらも、
自分だけの空間を作る為に努力してきたその屋上に、よくある安物の黒テントが張られていたらどうするであろう。
そして翌日、それがいきなり撤去されていたらどうするだろう。自分ならば、触らぬ祟りに何とやら。手を触れずにそれは無くなった。

しかし今度は、巨大なうさぎのぬいぐるみが置かれていたらどうするだろう。水槽が置かれ、亀が泳いでいたらどうするだろう。
自分だけの庭でもあり、住処のように使ってきたその屋上は、そのテントが張られていた日から、侵略行為を受けることになる。

だが、侵略行為を受けつつも、俺はその何者かを未だに目視する事は出来ず、歯痒い時間を過ごしていた。
次第に俺のほうから痺れを切らせ、校舎を練り歩き情報を集めようとするも、やはり誰にも相手にされないのである。

不味ったと舌打ちする。こんな時、避けられるというのは非常に面倒くさいものだと気付いた時には既に遅し。
生徒が皆一様に俺が進む道を作るように脇に避けていく。好きでこうなった訳でもないのだが、と、仕方なくその道を堂々と歩くのだ。

しかし、全校生徒が皆俺の事を知っている訳では無く、更に言えばこんな俺でも避けずに相手をしてくれる数人の知り合いは居るし、親友も居る。
だが、その日は苛立ってしまっていたせいか、その俺を知らない全く関係のない人間と接触してしまう事になる。

「痛ッ……」

物語ではよくある話なのかもしれない。しかし、この学校だけに限れば廊下で衝突というのは割りと良く有る話で。
三千人という規模を抱え、吸収合併を繰り返し行ってきた私立開成高校は、この付近では知らない者は居ない有名校ともなっていた。

ぱらぱらと本が落ちる。そして俺はぎょっとした後、一冊の本を掴んだのだ——。


それが、半年前の話になるだろうか。今日も屋上で、俺とそいつは二人、だらだらと昼を過ごしていた。
どちらも孤独と言えば孤独、しかしながら、彼女の孤独にはちょっとした理由もあり、俺からどうこう言うつもりは無いのだが。

「……風が、気持ちいい……」

肩まで伸びたその髪を揺らし、太陽の光を浴びながら目を細め、それでも空を眺めるこの少女。
彼女が屋上にやって来るようになったのは理由があった。それは……>>642

マンドレイク故に太陽光が食事だから

>>642
確かに神様でも勇者でも魔王でもないがww

肩まで伸びたその髪を揺らし、太陽の光を浴びながら目を細め、それでも空を眺めるこの少女。
彼女が屋上にやって来るようになったのは理由があった。それは……マンドレイク故に太陽光が食事だから、だそうだ。

別名マンドラゴラとも呼ばれるその植物、主に薬として用いられるそうなのだが、何故自分がマンドレイクと例えたのか、
そいつはこいつの頭の中を覗くしかないのだが、例えこいつの頭の中を覗けても、お花畑が広がっていそうなので恐ろしいのである。

「光が、美しい……」

もし、彼女を一言で例えるのならば、変なのだ。おかしいのだ。キチガイ……とまではあえて言わないとしても、
恐らく一般的な生徒よりも、そして俺よりも頭がおかしいと思える時が多々見受けられる。
今もそう、儚い少女を演じているつもりなのだろうが、それはただ、アイデアが浮かばないだけ。

「……なぁ、儚いちゃん、その植物の着ぐるみ、何なんだよ」

「儚いじゃなくて、儚。ちゃんと名前で呼んでって制約を与えた筈ですよ?」

「制約ってまた意味不明な事を……。そうじゃなくて、その着ぐるみなんだが」

「うん、これ、マンドレイク。抜いたら叫んで貴方は死ぬ!!」

「……まーたいつものメンヘラーの始まりか……」

「何故そこで頭を抱えるです? バファリン飲むですか?」

「どこぞの妖精みたいな話し方をすんな。お前を見ていたら頭が痛くなっただけだ」

「ふむ、私を見ていたら頭の頭痛が痛いのですね。……じゃあ、もっと見せてあげます」

もう滅茶苦茶だ。出来れば関わりたくもないとも思い始めるのだが、そんな彼女とこうして話をするのには意味がある。
彼女は、主に日光を浴び、元気を貰っていると言いつつも、絵を描いているのである。

俺が半年前に拾った本も、彼女の描いた一冊の本……、ぱっと見はエロ本としか思えないそれは、同人誌と言うそうだ。

「なぁ、そろそろ次のエロ本、じゃなかった……同人誌、描いてくれよ」

本来の目的でもあるそれを、俺が試しに強請ってみたところ……>>647

制作費が驚くほどかかるとか。

ネタと引き換え

本来の目的でもあるそれを、俺が試しに強請ってみたところ……、制作費が驚くほどかかるとか。
木の根となった右腕を揺らしてそう説明した彼女、実のところ最近同人誌には一切手をつけていない。

しかし、絵を描こうと、専用の用紙には向かい合い、色鉛筆なんて物を使っては描こうとしているのだが、
そこに描かれていた途中の絵を覗いてみれば、それはまるで子供の落書き以下の物が出来上がっていた。

「わ、わわ……の、覗いちゃダメです……!」

「いいじゃんか、減るもんじゃないし」

「これだから金髪は。デリカシーに欠けてます。ちょっとエロ本が見たいだけだからって……」

「でもさ、前々から不思議だなって思ってたこと、言ってみていいか?」

「む……何ですか? 手短にお願いします」

そいつは、俺よりも背が低い。恐らく、女子の中ではかなり背が低い分類に値するだろう。
そして俺もまた、男子の中では背が低い。このご時勢で170cmも無いとか終わっている。
背だけで言えば、ある意味似たもの同士なのかもしれない俺は、その自分よりも背が低い彼女に言ってやる。

「何で同人はプロ並に上手いのに……、絵本描こうとするとガキ以下なんだ?」

「ふぁっ!?」

「ふぁって驚かれてもな……。こら、根っこわさわさすんな」

「や、やっぱりなのですか。やっぱり……、私はエロ同人誌しか描けない身体なのですかぁぁぁ!!!」

「その、なんつうかさ……、この裸でピーで、ピーな事してぐちゅぐちゅにされてる女の子、凄い肉感的じゃん。
 けどこの絵本のキャラ、饅頭が潰れてるっていうか……ゆっくりが潰れた顔してるぞ?」

俺がそう指摘してやると、ショックでもあったのか、そのマンドレイクの着ぐるみを脱ぎだした彼女は、後に……>>650

饅頭にジョブチェンジ

俺がそう指摘してやると、ショックでもあったのか、そのマンドレイクの着ぐるみを脱ぎだした彼女は、後に……饅頭にジョブチェンジ。
不貞腐れた彼女は、饅頭型の寝袋を広げて用意、その中に閉じこもる事になる。

「おーい、何してんだ。つうか尻が見えてるぞ、パンツ丸見えだぞ?」

「いいんです、もう……。絵本が描けないこの身体、好きにすればいいんですっ!!」

饅頭型の寝袋の中で、篭った声が聞こえてくる。しかしお尻だけはやはり丸出しであった。
こいつの描くエロ本も中々好みで良いのだが、この丸みのある小さなお尻を実際に見るのも中々……。
だがしかし、この尻の持ち主は、マンドレイkうの着ぐるみを着たりする変態メンヘラーだ。やはり触るのは危険。

しかし、好きにして良いと言われ、男として黙っている訳にもいかないのではないか。
男として、背が小さくても、馬鹿にされようとも、その己の道を貫き歩んできた今、長谷川儚に挑戦状を叩きつけられているのだ。
男を、この女に試されている。ここで触れず、逃げるような真似をするのならば、もう俺は男じゃないと言われているようなモノだ。

「……そうか、好きにして良いんだなぁ?」

「はぁ……。もういい……、やっぱり絵なんて、嫌—— ひゃぁっ!!」

「ふん、儚の癖に水色の縞パンなんて履きやがって。いいや、それも俺に対する挑戦状なんだろう!
 分かっている、分かっているぞ長谷川儚! だが俺はお前の尻を揉み倒し、真の男に近づいてみせるわぁぁぁぁ!!!」

「や、やめ……、ひ、ぅぅん……!!」

「ふははははぁ、これが良いんだろう、これが良いんだろうッ!!」

「お前等……何してんだ……?」

俺がこの長谷川儚の挑戦を受け、それに挑み乗り越えようと尻を両手で弄っていたところである。
気がつかなかったと手を止めた。と同時に、ぎこちなく振り返る。そこには、とある男女が立っている。

一人は俺の親友、そしてライバルでもあり、俺より20cmも背が高く羨ましくも思う存在、志藤猛であった。
そしてもう一人の、髪を二つに束ねた少女は、俺の行為を見て「>>653」と言うのだ。

わたしもやるー☆

と、とりあえず↑で……

あらよく見たら安価が下だった。

てっきり>>652だと思ってた

一人は俺の親友、そしてライバルでもあり、俺より20cmも背が高く羨ましくも思う存在、志藤猛であった。
そしてもう一人の、髪を二つに束ねた少女は、俺の行為を見て「わたしもやるー☆」と言うのだ。

突如、自分の尻を掴む両手の感覚。そして、臀部を指先がうねる様に動き始める。
何故この馬鹿女、日和野萌は俺の尻を揉むのだ、掴むのだ。おかしいだろうと振り返る。

「お前、何で俺の尻ばっか揉んでるんだよ! 対象がちげーだろっ!!」

「合ってるに決まってるじゃない。もみもみ、もみもみっと……、いいお尻してるよね、ほんと」

「な、何確かめるように揉んでるんだ! と、とっとと離れろよ!!」

「それなら、お得意の乱暴で私を突き放せばいいんじゃないかなぁ?」

「お、女は……殴らない主義だ!」

「ふぅん、そんな事言ってると……高速もみもみしちゃうから!!」

「お、おい、おま…………あ、ん……」

「喘いだ、ついに鴨志田が喘いだぞ! こりゃ傑作だ、ハハハハハ!!」

屈辱である。その屈辱塗れの中、昼休みを終える予鈴が鳴るのだった。
この学校、わざわざベルを鳴らして録音したものを流しているのだが、その音を聞いた日和野は俺から残念そうに手を放す。

「あぁ〜あ、これからだったのに……。これから生尻を丹念に……」

「や、やらなくていい! やらなくていいから!!」

「……ま、仕方ないわね。私は先に授業へ戻るわ。ほーら、そこの饅頭被ってる儚ちゃんも、授業受けないとー!!」

そうして、皆が屋上から退散しようとする中、俺はあくまでその場所から動こうとはしない。
何故なら、授業が面倒くさいからだ。それに、今は屈辱塗れで、校内を恥ずかしくて歩けない。

だからと、俺は屋上でいつもの作業である>>657を行うのだった。

宇宙との交信

海の再現

だからと、俺は屋上でいつもの作業であるだからと、宇宙との交信を行うのだった。
昼間だから意味が無い? 学校の屋上から交信出来るのか? いやいや、その考えが先ず甘い。
宇宙人というのは、UFOに乗っている。まぁそれは文明それぞれなのだろう。だが、今時グーグル先生とやらでも、この高校を確認できるご時勢。

そう、宇宙人が俺の姿を、俺の電波を捉えられない訳が無いと、両手を掲げるのであった。

「聞け、大宇宙よ、そしてその大宇宙の遥か遠くの星で暮らす人々、総じて宇宙人と呼ばれるものよ!!
 俺は発する! この電波を!! そして、辱めを受けたこの気持ちを洗い流してくれたまえ——」

「まーた、その謎の儀式やってんのか、お前」

「ぎく……、志藤、まだ居たのか……」

「俺も体育はかったりーんだわ。単位さえ取れればどうってことないってね」

ちなみにこの謎の儀式と彼は言うが、俺にとっては大事な儀式。その名も、男儀式。
宇宙人やUFOは、ついでに来ればいいなとも思っていたりするのだが、時折本気で交信を試みたりもする。
しかし本来は、夕陽に向かって叫ぶのが男、という番組のワンシーンに憧れて始めたものであった。

「んで、ちょっとは男らしくなれたのか?」

「……いや、分からねぇ。でも……絶対俺は男らしくなる。背もこれからまだ伸びる筈だ!!」

「伸びない伸びない。いや、今のお前で十分だろ」

志藤はそっと俺の頭に手を置くものだから、それを強引に払い除けてやる。
すると彼はやれやれといった様子で微笑する。そんなこいつもまた、不良と呼ばれるであろう側の存在でもあった。

「にしても、こんな背も小さくて、童顔で、声も甲高い。女装させれば女にしか思えないだろうお前が、俺より強くて、この学校をシメてるんだからなぁ。
 世の中不思議だわ。本当に不思議だ。……理解できん」

過去に一度、俺と志藤は喧嘩を行ったことがある。背丈でも、筋力でも圧倒的不利な状況でも、俺は諦めずそいつに立ち向かう。
そうして、俺は彼に勝利する事が出来、気付けばこいつと良くつるむようになっていた。

ちなみに、こいつが俺を気に入った一番の理由は、>>661らしい。

>>657
こういう流れだと宇宙人を出したくなってしまう。

>>661
ごめんリロードした時は確かに書かれてなかった。ごめん!

ちなみに、こいつが俺を気に入った一番の理由は、こういう流れだと宇宙人を出したくなってしまう。……らしい。
彼より俺の方が強いその理由を、インチキだの、人外だの、挙句に宇宙人だのと言い訳したのが切欠なのだろう。

「で、謎の儀式もとい宇宙との交信は出来たのか?」

「いいや、一切聞こえてこないな……。まぁ、二の次だから良いんだけど」

「ったく、さっさとお前が宇宙人という証拠でも見せてくれよ。じゃないと俺が生きていられん」

「そこまで卑屈になるなよ。それに、今の俺とお前は、マブダチだろ!?」

「何時の時代の言葉だそれ! ……まぁ、そうだな、お前がそう言うのなら……」

何やら突然様子を変えては、俺から視線を逸らす志藤猛。最近思うのだ、こいつが何を考えているのか、時々分からないと。
しかし、俺にとってこの学校の中で話せる相手は、志藤くらいしか居ないのだ。
他の人間は、当初は舐められ気味でもあったのだが、噂も広まったせいなのだろう、今度は見事に避けられる。

それでも相手にしてくれるのは、男では志藤くらい。後は日和見萌、そしてメンヘラー女の長谷川儚である。

「にしてもよぉ……、お前、何だかんだで彼女に夢中じゃないか?」

「ふぁっ!? い、いきなり何を言い出す!? お、俺は別に日和見なんて……!!」

「ん? 何を言ってるんだ。俺が言ってるのは長谷川だぞ。最近ずっとエロ本を請求してるらしいじゃないか」

「あ、ああ……そっちね、ああ、そっちか。でもなぁ、アイツ、最近エロ本描いてくれないんだ」

「絵本だっけ? なんか頑張ってるらしいな。……で、お前、日和見が好きなのか?」

「ち、ちげぇ! んな訳ないだろいてこますぞごるぁ!!」

「いてこますって何処の用語だよ……。まぁ落ち着け、ついでに日和見はやめとけ」

「……ちなみに、それは何でだ?」

「それは……>>665

勘だよ勘

パパが占い師

「それは……勘だよ勘」

「んだよそれ……、お前とアイツが幼馴染だから、何か知ってるのかと思えば……」

「それに、お前にアイツは合わないと思うぞ。……ずっとお前はM気質になったままになるだろうな」

「そ、それは困る! っていうか、俺はアイツの事なんとも思っていないぞ!?」

「へいへい、わーった、わーった」

いよいよ屋上で駄弁るのも飽きてしまったのか、その場から去ろうと昇降口へ向かう志藤。
しかし去り際、彼は妙な事を言った。単なる噂話に過ぎないが—— 居るらしいのだ、宇宙人が。

またまたご冗談を、と、残りの時間は儚が描いたエロ同人誌を読み耽り、誰も居ない事を確認し事を起こしながら、放課後。
今日もまた無駄に充実した一日を過ごしたと背伸びをしては、さっさと帰ろうと屋上を去ろうとした。

しかし、ある日のようにまた俺は衝突してしまう。壁にではなく、やはり人。そしてそれは、瞬きを行うことすら忘れてしまう程の存在であった。

「……痛ぁ……」

「……え、えと……。……銀髪?」

「…………」

開いた扉の直ぐ傍で、その少女は尻餅をついたまま、俺をきっと睨むのである。
しかし、突然の出来事、おまけにどこの外国人だと思えるような風貌に生唾を飲み込んでしまう。

こんな生徒、この学校に居たっけ。しかし、こんな娘が居たら絶対に目立つ筈。
それに、この学校の制服を着ているのだ。実は在籍してたなんてオチなのかもしれない。それにしても……。

「何をじっと見ているの」

その言葉を言われるまで、俺はずっと彼女の……>>668を凝視してしまっていた。

デカパイ

のどぼとけ

その言葉を言われるまで、俺はずっと彼女の……デカパイを凝視してしまっていた。
大きい。日和見もまた、そこそこの大きさだと認識していたが、彼女を遥かに超える大きさ。
それは少し動けば、たゆんたゆんと動いてくれそうな程、柔らかそうで、魅力的。

「……だから、何をじっと見ているの」

「……え、えと、お前……でかいな」

「そう。それだけ?」

「それだけって、お前……」

「それにしても……勘付かれた? いつも此処に居ると聞いてきたのだけど……」

彼女にとって、俺は単なる障害物でしかなかったのかもしれない。彼女は屋上をゆっくりと見渡した。
その後に、儚が描いた同人誌を見つけ、手に取り、ぱらぱらと捲っていく。

「……やっぱり、この屋上に通っていたのね、あの娘。……にしても、地球人の性行為なんて描くとは……」

ぱらぱらと、風が吹くように彼女はその本を読み飛ばしていく。そして全てを読み終えた後、彼女は本をそのまま捨てるように放す。
本が落ちる音がして、それには目もくれず、饅頭型寝袋とマンドレイク着ぐるみを眺めていた。

「……そこの貴方。……貴方と言っているの!」

「お、俺の、事か……?」

「今、この屋上には貴方しか居ないでしょう。……長谷川儚は、何処?」

「お前、あいつを知っているのか……?」

「……知っているも何も、私と儚は同じ星の生まれ。即ち宇宙人よ」

こんな時、俺はどんなリアクションをすれば良いのだろう。>>671

証拠を見せろと宣言し、宇宙人に対して裸になることを要求

こんな時、俺はどんなリアクションをすれば良いのだろう。やはりここは、証拠を見せろと宣言し、宇宙人に対して裸になることを要求するべきだろう。
問題は彼女が素直にその言葉に従うかどうか。見た目は可愛いというより、美人なのかもしれないが、背丈のせいでやはり可愛らしい分類なのだろう。
だが、彼女の魅力はやはり胸。メロンだの、スイカだの、そんな例えでも収まらないと思えるほど豊満な胸。

生で見たいではないか。そうしてやはり俺の男が試されるのである。男として当然の性的欲求、それをどう彼女を通して実現させようか。

「……宇宙人、と言ったな、お前……」

「ええ、そうよ。それがどうかした?」

「宇宙人なら……証拠くらいあるんじゃないか?」

「証拠……?」

「そうだ、証拠だ! 俺は宇宙と半年以上交信をしてきたが、一度も宇宙人を見たこと無いし、聞いた事も無ぇ!!
 だからいきなり現れて、宇宙人ですかなんて信じられる訳が無い!!」

「別に貴方に宇宙人だと信じてもらわなくても良いのだけど」

「しかぁし!! 俺は知っている。宇宙人は全裸になればハッキリ分かるものなんだと!!
 だからお前は直ぐ脱ぐべきだ!! 制服を脱ぎ捨て、全裸になれ!! そして俺に宇宙人だという事を証明しろッ!!」

「……下らない。でも、それで満足するのなら……」

「……え?」

恐らく、今の俺は鳩が豆鉄砲を喰らったともいえる顔をしているに違いない。
気付けば彼女は制服を上下とも脱ぎ捨て、その姿を晒していたからだ。まさか、下着を履いていないとは思っていなかった。
首筋から、どう見ても人間だと思われるその肌の色、そして、何より傷一つもない綺麗な肌に見惚れてしまう。

そして、やはり行き着く所は胸なのだ。なんだあのデカさは、メロンやスイカじゃ例えられないじゃないか。

「これで満足した?」

それでも涼しい声色で彼女が言うものだから、性的興奮はおろか、自分はこの勝負に敗れたのではとすら錯覚してしまう。
しかしこの時既に、屋上へ残りの荷物を取りに来ていた長谷川儚がこの場に居た。そして、彼女も儚に気付くのである。

「……ようやく、見つけたわ。儚」

彼女は咄嗟にマンドレイクの着ぐるみを身につけた後、>>673

助けて!宇宙人のふりをする痛い人のふりをする姉にさらわれるぅ〜!

>>673
笑った。メンヘラ度はどっちが上だ?

彼女は咄嗟にマンドレイクの着ぐるみを身につけた後、言った。

「助けて!宇宙人のふりをする痛い人のふりをする姉にさらわれるぅ〜!」

「……マンドレイクになったつもりなのだろうけど、そんなの許さない。今日こそ、星に一緒に帰るの!!」

「い〜や〜で〜すぅ〜〜! 絶対に帰らない。絶対に! あの星は……臭いんだもん!!」

「臭い!? どこが臭いの!? 消臭力だっていっぱい置いてあるのに!!」

「……巨乳全裸女子に、マンドレイク女子。……酷いなこいつは」

その後、十分程度だろう、巨乳全裸女子VSマンドレイク女子の良く分からない戦いが見られる事になったのだが、
結果的に夜風が冷たくもなり、マンドレイク女子が勝利する事となる。
全裸巨乳女子は、その冷えた風を浴びてはくしゃみをした後、マンドレイクの枝攻撃を喰らい撃沈した。

「……フッ、電波姉をも倒すこの私のマンドレイク振り、見ました?」

「何故そこでドヤ顔となって俺に振る!! ……つうか、うん、何であの枝攻撃で気絶してるんだ、この人」

「それは勿論、私がマンドレイク族だからです。宇宙人ではないからです」

「……どっちもどっちだろ、お前等」

しかしこの妹、全裸である姉を気絶させて勝ち誇った後、夕陽を浴びては鉛筆を掲げ、また絵本なんてモノの製作に取り掛かる。
実の姉かどうかは知らないが、いくらなんでもこれは酷いだろうと、仕方なく俺が彼女に制服の上着を着せてやる。
流石に脱がした責任は俺にある。そして、今夜のオカズもゲットした今、彼女を労わるべきだろうと判断した。

そうして、その直後に気がついたのだろう、彼女は目を開き、俺を見る。

「……この、上着は?」

「俺の制服だ。全裸だと流石に寒いだろうと思ってだな……」

「……>>676

出来れば下も欲しいのだが

お前や・・・ちょっとトイレ行きたくなった。

「俺の制服だ。全裸だと流石に寒いだろうと思ってだな……」

「……出来れば下も欲しいのだが」

「おっと、そうだった。これじゃ丈が足りな……イカ」

「何故そこでイカ? 実は宇宙人的侵略者かもしれないイカ娘が好きなの?」

「い、いや、その……俺は肝心な部分を見落としていたと思って、な……はは、ははは」

「ああ……、男の人はは大体このような部位を見たがるものだと認識してるから、見たければ好きに見ればいいわ。でも、寒いから……何か頂戴」

「ソ、ソデスネー、トイウカ、セイフクアルンダカラー、ソレキナサイヨー、アハハ」

何だこの女、何故俺に見られて羞恥心一つ見せようとしないのだ。もしかして、俺を男と認識していないのか?
でも彼女は間違いなく、男の人はと言っている。つまり俺を一応、男だとは認識はしてくれている。
じゃあ何故だ、何故俺にじろじろと秘部まで見られているのに、身悶え一つしないのだ。理解に苦しんでしまう。

今ではすっかり制服姿となったその銀髪少女は、絵本を描こうとする儚に改めて向き直り、言うのだ。

「ところで、夏コミの原稿、何処まで進んでいるの?」

「……ぎくっ」

「ぼちぼち、アイデアだけでも聞かせて欲しいのだけど……。まさか夏コミ、出展しないとか言い出すんじゃないでしょうね?」

「そ、それは、その……。……私、絵本が描きたいから……」

「じゃあ、こうしましょう。夏コミまで原稿間に合わなければ、儚、星に帰るのよ。消臭力だって二十個は用意してるんだから、もう臭くもない筈」

「そ、そんな提案酷いよお姉ちゃん!!」

「……本来なら、力尽くで引っ張って行く所を、このような提案で我慢しているの。……それに、気付いて」

それは、長谷川儚にとって面倒な事ともなったのだろう。しかし、俺にとってはエロ本が拝めるという事もあり、少々楽しみでもある。
既に姉は去り、儚だけが取り残されていた。鉛筆を止め、紙だけをぼーっと眺めていたその少女、ぽつりと言うのだ。

「私……本当は絵本が描きたい。だって……>>680

帯がつくし、本の作りもペラペラじゃないし、私の顔と略歴が載るから。

>>680
夢がないなww

「私……本当は絵本が描きたい。だって……帯がつくし、本の作りもペラペラじゃないし、私の顔と略歴が載るから」

「ちょっと待て、顔載せたいのが理由かよ。略歴って、同人も描いてましたとかなったらどうするんだよ」

「む、そ、それは……その……何とかなります。何とか……。それに……」

要するに、絵本を描きたいのは単に彼女にとって人生設計の一つにしか過ぎないのかもしれない。
しかし、何故か突然言葉を詰まらせるその少女を、今日は久々に送ってやる事にした。

彼女も、俺も、寮暮らしである。俺の住まう寮は何もかもが適当であり、男女共同寮ともなっているのだが、
長谷川儚の住まう寮は、普通の女子寮。ちなみに、彼女の寮は安値で暮らせるという事もあり大人気。

しかし俺の住まう寮は、安値ではあったが、余りにも適当すぎて住まう人間が俺しか居ないというとんでもない寮であった。

「……それじゃ、私、こっちですから」

「ん、ああ……じゃあ、また明日な」

「……バイバイ」

俺と、彼女の寮は比較的近い場所にあった。交差点を越えて、三叉でいつもの別れとなる。
久々に彼女を途中まで送ったとはいえ、やはりあの言葉はどうにも俺にはキツイ。

「バイバイ、ねぇ……」

長谷川儚、彼女は俺にとって独特すぎた。そんな彼女に魅力を感じては、興味を惹かれていっているのかもしれない。
しかし、その姉もまた独特で、胸は魅力的だが……あの姉妹、仲はあまり良くは無いのだろうとも思えてしまう。

「まぁ、そんなのどうでも良いっか。帰って風呂だ、風呂——」

ともあれ、姉の事は一先ず忘れ、風呂に入って深夜ゆっくりオカズにしてやろうと企んだ直後であった。
俺の住まうオンボロ寮の前で、あの銀髪が揺れている。その銀髪はこちらに気付き……>>683

ずんずんずんとやって来た。

光線銃のようなもので体に悪そうなビーム?を撃ってきた

ともあれ、姉の事は一先ず忘れ、風呂に入って深夜ゆっくりオカズにしてやろうと企んだ直後であった。
俺の住まうオンボロ寮の前で、あの銀髪が揺れている。その銀髪はこちらに気付き……ずんずんずんとやって来た。

何故アイツが俺の住まう寮に居る。この時の俺は見事に動揺してしまっていた。
彼女の顔を見た瞬時に、あの裸体が思い浮かべられてしまったからだ。あの豊満な胸、そしてあのスレンダーな腰つき、そして女性の大事な箇所を。
不味いと股間を抑えてしまいそうになった直後、彼女は俺に顔を近づけ、怒り狂う。

「何故!!! 何故、私が今日、この寮に住むと言ってあるのにも関わらず、鍵が閉まっているの!!!」

「……へ? あ、あぁ、鍵か、鍵ね……」

「おかしいわ! 大体、連絡を入れているのにどうして大家は対応しようとしないの!? おかしいでしょう!!」

「しょうがない、婆ちゃん、耄碌してるからな……」

「そう言えば、確かに電話で聞いた声は、年配の女性の方の声だったわ」

「ちょっと痴呆が入っててね。でも婆ちゃん、親切だし優しいしで、良い人なんだぞ?」

「親切で優しくて良い人……。貴方、そのお婆さんに惚れているの?」

「んな訳あるかっ!! 七十過ぎてんだぞあの婆ちゃん!! どんだけ俺は熟女好きなんだよ!!」

「違うの。随分熱っぽく語るから、つい……」

どうやらこの少女、本気で天然なのかもしれない。何でも熱く語ればそれに惚れているのかといえば、そうじゃない。
いや、惚れているというか、人柄は好いているが、女性として婆ちゃんを好いている訳でもなく……もう良く分からない。

そうしてやや困惑気味に鍵を強引に開け、扉を開く。この扉、中々開かない為、両手でぐっと押してやる必要がある。
そこでやっと、引き戸はガラッと鈍い音を立てて開かれるのだが、中はやはり埃っぽく、長谷川姉は咳き込む仕草を見せていた。

「なんて、埃臭い寮……」

「仕方ない、俺も掃除する癖とかねーし、婆ちゃんも歳だ、余り無理できないからなぁ」

「……成程、ともなれば、今晩は……>>686でお掃除です」

全手動お掃除マシーン

「……成程、ともなれば、今晩は……全手動お掃除マシーンでお掃除です」

そう言えば、今宵は食事は自分で賄わないといけない日でもあったと思い出す中、
共用キッチンとなっている箇所で立ち、食材を睨み、呟く。まともなモノが無いと。

そして振り返る。そこには、共用の居間が有り、そこを全手動お掃除マシーンで掃除を始める銀髪が居た。

「おい、宇宙人」

「はい、宇宙人です」

「……どこぞの勇者のような返しはやめろ。で、その機械はなんだ?」

「全手動お掃除マシーンよ。見て分からない?」

「いや……一般的に、それを掃除機と言うのだが? それ、寮の備品なんだが?」

「ほう、これが掃除機なる物なの。ふぅん……宇宙人だから知らなかったわ」

「その割には、使い方を良くご存知で?」

「フフ、宇宙人は文明を、この掃除機を一目見て理解できるの。これも、スイッチを押せば一発ね」

「ほう、面白い事を言うな宇宙人……」

そうして、掃除機で掃除を行いながら、はしたない胸を揺らすこの銀髪を見て思い浮かぶ。
彼女の言い分からすれば、宇宙人ならば、料理も出来て当たり前なのではなかろうか。

「じゃあ、宇宙人、この食材を見てくれ」

「にんじん、たまねぎ、じゃがいも……ね」

「へぇ、宇宙人も野菜には詳しいんだな?」

「こ、これは偶然、知識として仕入れていただけで……」

「なら、この食材を使って料理をしてみてくれよ。宇宙人なら出来るだろう?」

にんまりと笑んでしまう俺を、何度もちらちらと様子を伺うように見た長谷川姉。
そして意を決したのか、包丁を握り締め、フライパンを振り回した結果>>688

トムヤンクンを作った

にんまりと笑んでしまう俺を、何度もちらちらと様子を伺うように見た長谷川姉。
そして意を決したのか、包丁を握り締め、フライパンを振り回した結果、トムヤンクンを作った。
何故、にんじん、たまねぎ、じゃがいもだけでトムヤンクンが出来る。何故、葱が乗っかっている。食材は何処から用意したのだ。

疑問が疑問を呼びつつも、トムヤンクンを仕上げご満悦いった様子の長谷川姉。
その顔、まさに勝ち誇った表情である。さぁ、食べて、私にひれ伏せといったような、見下した目線である。

だが、まだ勝負は終わっていない。俺が、美味いと判断するまでは、この勝負負けてはいないのだ——。

—— そのタイ料理は美味にも程があった。この巨乳、掃除も、料理も得意と来たものだ。
気付けば埃っぽかったオンボロ寮がぴかぴかとなり、まるで素材が磨かれたような輝きを放っている。
そして料理に感動した俺は涙を流し、そうして彼女を受け容れざるを得ない状況に陥っていた。

「それにしても、貴方の部屋って、オジサンばかりね」

「有名な格闘選手のポスターを、オジサン呼ばわりとか失礼過ぎんだろ……」

「けど、他に禄なモノが無いわ。……これは、エロ本と言われている奴ね。なになに、快楽丼?」

「ぬわぁぁぁ! そ、それは見るな、見るんじゃない!!」

「別に、妹のエロ同人だって見ているのに、今更……って、こ、これは……!!」

「だ、だから……見るなと言ったんだ……」

「宇宙人に陵辱される一品ばかり……。けど、主に触手ばかり……。……変態でしたか」

「お、俺は男だ。男である故に、変態でなければいけないんだ……がくり」

長谷川姉は、俺の部屋まで掃除したいとしつこく迫り、まぁ今回だけと彼女を部屋に招いた。
それが失態だった。快楽丼を見られ、膝をついて呆然とする俺を変態呼ばわりしたこの巨乳、今度は俺の部屋で>>690を行うのだ。

宇宙人である自らについてタップリと講義

【05/20 (月) 20:55時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

05/21 (火)
  22:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 予約取るの忘れてた。 少女と絵本と宇宙人、時々エロ本 第二話『その姉に話は通じない』

一応

水だけで平気に過ごしている

テレパシー

この街のミステリーサークルがある裏山

日和見萌は、志藤を呼びに来たらしい。ほんの少しでも胸を弾ませた俺が馬鹿みたいだと思っていると……、
柔道部の部長が探していたわ、なんて思いだしたように告げては、志藤を連れて帰っていってしまう。
騒がしい奴だったとも思うのだが、俺に対する用事がこれだけかよ、と思うと、少々悲しくも思えてしまうのだった。

そうして昼休み、屋上へ足を向けるのだが、謎のテント、謎の寝袋、謎の着ぐるみなんてモノは一切無くなっている。
相変わらずともなった殺風景なその場所で、ちまちまと購買で買ったサンドイッチを摘むのだった。

「はぁ、何でメシなんてちまちま食ってるんだ、俺……」

いつもなら一口でぱっと食べてしまう勢いなのだ。それが男らしさ、なんて思っているのだが、
食欲も出ず、一人でそうして飯を食っているのが虚しくも思えてきたのである。

そう、いつもなら隣で儚が、訳の分からない事をぼやきつつ、自分で作った弁当を食べ、
そして俺が美味そうだなと声にすると、彼女はあげませんとそっぽを向く。それがいつものやり取りだった筈。

「しゃーねぇ、さっさと食って寝るか……」

何だか今日はもうやる気が出ないと、残りのサンドイッチを口に放り込み、寝転がる。
今日も空は青い。七月に入り、いよいよ夏休みが近い。その前に試験という難関が待ってはいるのだが……、どうせ俺は赤点だ。
適当にテストを受けて、適当に補修に出よう。それで卒業出来るのなら簡単なもんだ。

「ふわぁ……丁度良い頃に……眠く、なってきやがった……」

ふと、睡魔が訪れる。陽射しは眩しいが、眼を閉じればすんなりと眠りに入る事が出来そうだ。
そうしてうとうととしていると、次の休憩時間の際に、柔道部部長なんて面倒くさいのが現れる。

「うらぁぁぁぁぁぁ!! 鴨志田響、俺との約束を放って昼寝とはいい度胸だなぁぁぁぁぁ!!」

ヤバイ、うとうととしていたのに、それを妨げるこの声の主に、本気で苛立ちそうだ。
毎回毎回、俺に勝とうと勝負を挑んでくるこの面倒な柔道部部長、そろそろ本気で>>735にしてやろう。

ヒラ部員に格下げになるくらいけちょんけちょん

ヤバイ、うとうととしていたのに、それを妨げるこの声の主に、本気で苛立ちそうだ。
毎回毎回、俺に勝とうと勝負を挑んでくるこの面倒な柔道部部長、そろそろ本気でヒラ部員に格下げになるくらいけちょんけちょんにしてやろう。

—— そうして放課後、俺は柔道部の使用する柔道場へ足を運び、その巨体である柔道部部長を何度も投げ飛ばす。
部員達は信じられないといった様子で彼を、そして俺を眺めている。体格差は30cm以上。体重だって40kg以上は差があるかもしれない。

「なんで、なんで簡単に部長は投げ飛ばされているんだ……!?」

「そもそもあのチビって、あの噂の金髪だろ? あんな小さいのに……何でだよ」

皆が、そういう言葉を並べて口にしているのだが、俺からすれば、ただ単に相手の重心を利用しているとしか言えない。
ただ、分かるようになった。見えるようになった。それが、どう行動すれば良いのか教えてくれる。
柔道部部長の懐に潜り込み、今度は背負いを決めた所で、とうとうこの男は降参を宣言したのである。

「……よし、お前の負けだ。よって、お前は今日から部員に格下げな」

「ぐ……賭けは賭けだ、仕方が無い……。だが、貴様との勝負は、勝つまで諦めんぞぉぉぉ!!」

「……次は二度と勝負しに来るなという賭けにしないと、やってられんな……」

そうしてふと時計を見る。既に午後六時、どうやら相当長い間この男と勝負に付き合ってしまっていたらしい。
時計を見て、やがて約束があった事を思い出す。裏山に行かなければならないんだったと、柔道場を、そして校門を飛び出す。
だが、そこから走っても二十分は掛かるであろうそこへ、全力で駆けるのは中々至難な話であった。

「しかし……男なら、男なら……弱音は吐かねぇ!!」

儚が俺を避ける理由が知りたい。それだけの為に、俺は全力で走っていた。
そうして裏山の入り口に到着したのは午後六時半前。既にあの宇宙人は、裏山の中へ入っていってしまったのだろうか。

「ブルマ一つの為に、何してんだろう、俺は」

本気でそう思いつつも、裏山の蛇道をひたすらに進んでいた。そうして、開けた盆地が見えてくるはずであった。
だが俺が見たのは、小石が並ぶように出来上がっていたミステリーサークルである。それは、思った以上に広大であった。

俺はその場の周囲を見渡した。残念ながら、宇宙人の姿は見られない。既に帰ったのかもしれないと、来た道を引き返そうとすると……>>737

意味ありげな光があたりを照らした

俺はその場の周囲を見渡した。残念ながら、宇宙人の姿は見られない。既に帰ったのかもしれないと、来た道を引き返そうとすると……、
意味ありげな光があたりを照らした。そして、その光は空からかと見上げるも、空は真っ暗なまま。
ではどうやって、と改めて周囲を確認すると、それは木の枝から光がミステリーサークルに向けて放たれていた。

そして中央に、何故か体操服でブルマ姿となった宇宙人が現れていたのだ。

「……うーん、今度のレイヤーコス、これはやっぱり冴えないわ。チェンジで」

「えー、個人的にはうはうはなんだけどにゅん。仕方ないにゅん、チェンジを許可だにゅん」

「じゃあ着替えるわ。羽未、次の衣装をお願い」

その、誰が築いたのか分からないミステリーサークルは、自称宇宙人と謎の気持ちの悪い語尾を用いる少女のコスプレ会場と化していた。
何だこれは、そもそも、あの語尾は何なんだ。にゅんって何なんだ。俺の頭の中がパニックを引き起こしてしまっている。

「じゃあ次、メイドバトラーだにゅん。実はコレ、某ネトゲでも使われた衣装でごにゅごにゅ」

「何でも良いわ。これが宣伝になるのなら、私は何でも着る」

「その意気込み、ステキだにゅん。そして次の夏コミも、その巨大乳で男達から金を搾り上げるにゅん!」

「……ところでそこのヘタレな顔をしたヘタレ少年。私を見てどう思う?」

「……凄く、大きいです。……じゃねぇぇぇ!! お前何してんだ! つうか、男の前で生着替えとかヤバイだろ!!」

「ほう、こいつが噂の金髪少年Kなのかにゅん」

「う、うぉ……にゅんにゅん言う奴が近づいてきやがった……!!」

「ふむ、ふむふむ……にゅん。アナタ……、イマイチだね」

「なんかさらっと普通にイマイチ言われた! 何気にムカツクんだが!?」

「でも……これは女装させれば最高の素材だにゅん。夢、グッジョブにゅん!」

何故かそこでポニーテールなにゅんにゅん娘は宇宙人にそう言うのだ。何がどういう事なのだろうと固まっていると……>>739

女性の衣装を服の上から当てられた

中二病かつツンデレな上、コスプレ好きな生徒会長がやってきた

何故かそこでポニーテールなにゅんにゅん娘は宇宙人にそう言うのだ。何がどういう事なのだろうと固まっていると……、
女性の衣装を服の上から当てられた。なんか、凄いひらひらが付いてる華やかなドレスのような、何だろうこれは。

「にゅんにゅん、やっぱり! この男の娘、ゴスロリが似合うにゅん!!」

「……ふぁっ!? ご、ごすろり?」

「ゴシックロリータだにゅん。……そんな事も知らないの? ばーか」

「こいつ、ムカツク事は語尾無しでさらっと言いやがる!!」

「けど、夢、こんな逸材どうやって見つけたにゅん?」

「……宇宙人に、不可能無し!!」

「そこでドヤ顔、そこに痺れにゅ、憧れにゅん!!」

もうやだこいつら、俺は帰る。そう決心し背を向けたのだが、にゅんにゅん少女に腕を掴まれてしまうのだった。
着る前で返さないといったその目つき、こいつは只のにゅんにゅん娘じゃないと確信した。
この女、意外と修羅場を潜ってきた男の目をしている。こいつ、もしやこの甘ったるい外見の中に、男を潜めているのだろうか。

そこでこの甘ったるい女に興味を示してしまった俺が間違いだった。
高科羽未、俺と宇宙人と同じ年齢のそのポニテ娘は、脱衣術を心得ていたのである。
気付けば俺はパンツ一枚にされ、そして最後の砦すら、彼女の脱衣術によって奪われる事になる。

「な、なななな、何するんだよぉ!!」

「何するんだよぉ頂きましたにゅん! これは……ハァハァ、ハァハァ」

「ふ、服返せ! 返せつってんだろ!!」

「服ならこちらのゴスロリ衣装を。……いいから早く着ちゃってよ」

そうして、俺は初の女装を、ゴシックロリータな格好で果たすのであった。そうして、ゴスロリ姿となった俺を見た宇宙人は……>>742

俺に謎の光線を浴びせ、本物の女にしてしまった。

そうして、俺は初の女装を、ゴシックロリータな格好で果たすのであった。そうして、ゴスロリ姿となった俺を見た宇宙人は……、
俺に謎の光線を浴びせ、本物の女にしてしまった。眩い光が、俺の視界を眩ませ、そして気付けば胸が僅かに膨らんだ女の子となったのだ。

「……この宇宙人に、不可能無し!!」

「いやあ、夢、本当に女の子にしたら、つまらないんだけどにゅん」

「それは何故?」

「男の娘というジャンルに出展できないにゅん。それに、そのジャンルでナンバーワンに輝かせてこそなのだにゅん」

「そう、それじゃ……元に戻す?」

「といってもにゅん……もう少し様子を見るにゅん」

二人の会話からすれば、この状況は打破出来ないでもないらしい。しかし、どうやら目の前のにゅんにゅん娘は、
この状況をもう少し楽しみたいと思っている様子であり、俺に向き直っては妙な笑顔を見せた。

「それじゃ、じわじわと脱いでいくんだにゅん!」

「ふ、ふざけんな! お、俺を返せ!! 男の中の男を目指していた俺を返してくれぇぇぇ!!」

「あらら、いよいよ本気でパニくってるにゅん。……でも、せめて一揉み!!」

「や、やめろ! 胸に触るな。触ったら容赦しねぇ、女でもだ!!」

「ふふふ、ちこう寄れ、寄るのだにゅ〜ん」

「ややや、やめ……やめてくれ、たの、むから———— あ」

胸を触られた。揉まれた。その瞬間、>>745

触られたところだけ男に戻る

胸を触られた。揉まれた。その瞬間、触られたところだけ男に戻るのである。
胸が男のようなその状態に戻るのだ。俺の胸板が戻ってきたと喜んだのも束の間、それはぽろりと落ちた。

「……なんだ、コレ」

「胸パットだにゅん。まさか本気で女の子になったと思ったにゅん?」

「じゃ、じゃあ……、お、俺の股間の息子様も、ちゃんと……ね、ねぇぞ!?」

「ちゃんとあるにゅん。この巻かれた特殊貞操帯を外せば……ほらね」

「お、おぉぉ……俺の息子様、息子様が帰還なされた……! って、どういう事だってばよ!!」

「さっきの懐中電灯の灯りで視界を眩ませた瞬間、夢が仕込んだんだにゅん」

「この宇宙人に、不可能無し!!」

「お前……さっきからそればっかりじゃないか。じゃあ、本気で女になった訳じゃないんだな!?」

「……女になりたいのなら、本当に性転換ビーム当ててあげるけど?」

「お断りします。本当の本当にお断りしますッ!!」

それは結果的にドッキリで終わる。しかし、その時俺の心の中に、妙な感覚が芽生えたのも事実。
もし、本当に女の子になってしまったのなら、俺はどんな姿になり、どのように生まれ変わるのだろう。
今の人生も百八十度程回転して変わってしまうのだろうか。そして、その中で女となった俺はどう生きるのだろう。

そんな妙な妄想に走ってしまい、本来の目的を見失っていた事に気づく。
確か、ブルマを見つけ出し、儚に寄生した病原菌であるワクチンを製作する為、此処に来た筈だ。
決して、女装しに来た訳でもなく、妙なドッキリにつき合わされに来た訳ではない。

「で、宇宙人、……ワクチンはどうなったんだ?」

「その件だけれど、>>747

ワクチンの代わりに人口のチンチンを装着すれば大丈夫だ

「その件だけれど、ワクチンの代わりに人口のチンチンを装着すれば大丈夫だ!」

「悪い宇宙人、マジで意味分からん。説明しやがれ」

「チン繋がりで思い浮かべただけよ。気にしないで。……そして、これが宇宙秘密道具の一つ、人口チンチン」

「……おい、そこのにゅんにゅん、コイツを何とかしろ」

「うぅん、それは羽未でも無理だにゅん。だってあの子、おかしくなる時は本気でおかしくなるから」

「お前、毒を吐く時だけは素が出るタイプなんだな……」

「そして、この人口チンチンで、儚の処女を奪う日が来たわ。奪うのは勿論響、貴方よ」

「俺は付いてるから! 自分の使うわ!!」

「……なら使って」

「……は?」

「あの子も、エロ同人を描く上でそろそろ処女では限界でしょう。……彼女も一歩、大人の道を歩む時が来たの」

「確かににゅん。最近の彼女のエッチシーン、正直まんねりだにゅん。陵辱とかいやいや言うし……」

「だ、だからって、俺が本気で儚と、せ、せせせ、せくろろろろ」

「セックスよ、ヘタレ」

「……冗談、だろ? というか、儚に避けられてるのを何とかする為に、こうして……」

「だからこその、人口チンチンよ」

本当の、本当に話が繋がらない女だと俺は今日確信した。こいつは、長谷川夢は最早終わった存在だ。
例え、誰もが目を惹く美少女で、胸も掌では収まらない大きさだろうとも、これではダメだ。恐らく彼女は一生独身人生だ——。

—— そうして俺は人口チンチンを何故か受け取り、部屋に戻るのだった。時刻は夜十一時となっている。
もう、今日は疲れた、寝ようと布団の中に入る。そうすると、何やら夢を見るのだ。宇宙人ではない、本当の夢。
それは声がする。その人生もまた、大宇宙の意志であり、パンツを見せることもまた大宇宙の意志らしい。意味が分からん。

そうして起床すると、股間に違和感が。……そう、それは、>>750

サイズが半分になっている!

そうして起床すると、股間に違和感が。……そう、それは、サイズが半分になっている!
早朝、俺の部屋では「なんじゃこりゃあぁぁぁぁ!!!」という声が響くのである。そうして、俺は慌てて鏡を見るのだ。
寝間着を脱いでは全裸となり鏡を見る。異常は無い筈。……いや、異常ありまくりじゃないのか、これは。

「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!!」

「朝から煩いわね……どうしたのよ、いったい」

「宇宙人、貴様、よくもやってくれたな!! というか、本当に性転換ビームを!!」

「あら……そんな事、本当に出来ると思ったの? ふわぁ……まだ朝の五時半よ」

「で、出来ないのか? じゃあ、何で……俺のタマタマ様がないんだってばよ!!」

「知らないわよ、そんな事。……もう一時間だけ寝るわ。おやすみなさい」

「おい待て、夢、待ってくれ!! お前にしか相談出来ないだろ、こんな事」

「……そう言われると、やぶさかでも無くなるわね。……少し見せてみなさい」

それは、一般的に言えばふたなりという存在に分類されるらしい。夢は俺の奇妙な体型変化に次第に興味を示し、
そして俺が眠っている間に見た夢の話をすると、彼女はぱぁっと表情を輝かせて言うのだ。

「居るのね、やっぱり……本当に大宇宙の意志は存在するのねッ!!」

「おい、宇宙人、それを言い出したのはお前だろう」

「こ、こほん。……ともあれ、おめでとう響、今日から貴女は女性器をも備えた立派なふたなりよ」

「……息子様、4cmしかないんですけど。どうやって生きていけばいいんですかね……」

「そうね……、真面目に考えて、ここから元に戻るのか、女となるのか、見物だわ」

「いやいや待て待て、人の話を聞け、つーか聞いてくれ!!」

見た目は殆ど変わっていない。それだけ、元が女の子らしかったのだろう。あえて言えば、肌の艶が少々変わったくらいだ。
声もほぼそのままで、息子だけが半分のサイズとなり、色々と消失し、そして生え変わったその身体。

その中途半端な身体を持った俺は、男となり、男の中の男を得る為苦労するのだが、それは女へと成り代わる分岐路ともなっていたのだった——。

———— つづきます

割と真面目に青春群像劇を、それは今日、二話で早くも潰えました。
性転換って確かレオナちゃん以来です。そして覚えている中で七度目の性転換です。

いいんだ、パンツを見せることは大宇宙の意志なんだ。てわけで、お付き合いありがとうございましたー。


どうでもいい話かもですが、>>740で四話のネタバレをされちゃった。てへぺろ。

【05/22 (水) 01:23時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

05/24 (金)
  22:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 少女と絵本と宇宙人、時々エロ本 第三話 『そのふたなりに戸惑う少女』


ついでにべっちょり

————『お前は誰だ』第5話

【あらすじ】
過去からやってきた“自称”信長にひょんなところからサルと間違われて居候された大学生の奮戦記。

【登場人物】

木下蔵吉=信長にサルと間違われた不運の大学生。

織田信長=自称・過去からやってきた六天大魔王だが、カレーに興味を持ち工場見学ではしゃぐ子供のようなおっさん。

今川真子=主人公の同級生。常に巻尺を携帯してる。神経質なのか不思議ちゃんなのか今時点では謎。

大家=霊能者。ファッションが変なのだが、どんなんだったか書き手が忘れている。

もうしばらくお待ちください。

いつも寝覚めが悪く、それが自主休校の原因となっているんだが、戦国時代からやってきた居候のせいで規則正しい生活がおくれるようになった。
最近の目覚まし時計は、織田信長のカレー工場行きたいコールである。

信長「カレー工場行きたいわ。カレー工場どんなんじゃ♪」
蔵吉「うるせえ!夏休みまでお預けだ!」

そして二人で朝食。しかしなんで俺の金でこのオヤジを養わなきゃならないんだ。そう根本的なことに気づいた。
別に俺がこのおっさんをここにおいておく義理もない。ではどこに連れて行くのがベストか?
俺は織田信長を>>759に連れて行くことに決めた。

ハロワ

ハロワに連れて行くことにした。

精神病院と警察も候補だったが、精神病院は金がかかるし、警察はふざけるなって叱られそうだったので、これにした。
身元は俺が引き受けるのは仕方ないとして、どーせ一日中暇なんだし、アルバイト程度なら収入も増えて少しは家計の足しになるだろう。

信長「おっいよいよカレー工場じゃな」
蔵吉「まあ、似たようなものかな」

ウキウキ気分でスキップし始めた信長のちょん髷を帽子で隠して、近所のハローワークへ行くことにした。
ハロワは3つ先の駅にある。

蔵吉「いいかこれから外で起きることでいちいち叫んだりするなよ。目立つからな」
信長「わし目立つのは>>761

暗殺者を捻り潰す次に好きじゃ

信長「わし目立つのは暗〔ピー〕を捻り〔ピー〕次に好きじゃ」

かーっ!こいつの時代錯誤は何とかならんのか。俺は信長をしつこく説き伏せた。
蔵吉「暗〔ピー〕はいないし、目立ったら病院に連れて行かれるぞ」
信長「病院ってなんじゃ? 」

そうなのだ、すべてはここから、はじめなきゃならないのだ。お芝居か本気か知らないが、こいつは常識がない。
タイムカードの押し方はおろか電車の乗り方、いや時計だって怪しいものだ。
信長の時代は、よく知らないが丑の刻とかそんなもんだろう。
俺がモチベーションをかなり失っていると、玄関の呼び鈴が押された。

戸を開けると、大学で同期のおせっかい焼き娘こと今川真子がいた。
今川「そろそろ真面目に授業に出なさい!今日は首に縄つけてでも引っ張っていくわ」
蔵吉「あーまたうっせーのがもう一人来た」
信長「>>762

ごめん↓で

信長「おう連れてけ連れてけ」

結局この日は俺は今川真子に連れて行かれて臨時受講日になってしまった。だからといってこの間みたいに小便だらけにされてはかなわん。

蔵吉「コーラは飲みすぎるなよ。危険だからガスコンロは使用禁止」
真子「もう、早くしてよね」
蔵吉「ごめん。信長一人にしておくといろいろと不安だ」
真子「ならセクハラおやじ
信長さんを大学に連れて行けばいいんじゃない(ヒソヒソ声)」
蔵吉「ええっ!ちょっとまてこいつは文明と常識を知らない」
とんでもない提案をしやがった。

真子「信長さんはどうなの?大学行ってみる?」
信長「>>766

わしが直々に指導してやろう

信長「わしが直々に指導してやろう」

まったくこいつは何を言い出すんだ。仕方ないので、セクハラおやじ信長を大学へ連れて行くハメに。
切符は全部俺が買って、自動改札機を通らせフォローした。まるで大きな子供だ。

電車が来ると信長は、「大きな蛇じゃのう!」と叫んだのであわてて口をふさいだ。そのまま乗り込む俺達。
座席に逆に座って電車見物されては困るので、俺と真子でしっかり囲んで、大学のある駅に着いた。

駅から出る。はしゃぐ信長。
信長「ついにわしの相撲必勝講座を講義する時が来たか」
蔵吉「お前は親方か!」

大学門の前でしっかり服装チェックして、大学へ。
蔵吉「いいか!これから俺達は授業を受ける。ここは本がたくさんあるから俺達が来るまで大人しくしてろよ」
と信長を図書館に入れて、不安なまま授業へ向かった。

図書館に入った信長はあたりを物珍しそうに眺めたあと、>>768した.

歴史書を発見

>>768
それはやばい

図書館に入った信長はあたりを物珍しそうに眺めたあと、歴史書を発見した.

信長「よくわかる戦国・安土桃山時代か読んでみよう」

果たして信長に現代文がわかるのか不明だが、そこはいち早く地球儀を見て地球は丸いと悟った男である。
何とか読むことができたようだった。

信長「むむ、むむっ、このうつけ者めがーっ!」
と思わず叫び声を上げた信長の見たページは>>77について書いてあった。
館内の学生が一斉に信長をチラ見した。

すまん安価↓でおねがいします。

信長の見たページはペリーについて書いてあった。
館内の学生が一斉に信長をチラ見した。

すぐに司書がやってきて「館内は静かに」と小声できつく言い放つ。
信長「だってこいつが・・・」
司書「何を言っているんですかあなたは、今度騒いだらでていってもらいます」
信長「ちぇっ」
そんなお騒がせ男信長に一人の男が近づいてきた。
知らない学生「やあはじめまして。どうしたのかい?」
信長「>>774

何だ? この奇妙な船は

信長「何だ? この奇妙な船は」
謎の大学生「ああこれは黒船だね」
信長「くぅくぅくろふりぇね〜!」
謎の大学生「おや知らなかったのかい。丁度いい僕らの部で詳しく教えてあげよう。来るかい?」

どうやら信長は隣にあった江戸時代の歴史書を間違って持ってきたらしい。そりゃ見たら驚くことだろう。
そして謎の大学生はとある部の部室に信長を連れて行ってしまった。

サークルの教室があつまった一角の一番はずれにその部はあった。名前は>>776研究会。

真実の歴史

名前は真実の歴史研究会。いわゆるオカルト部らしい。
部員は少なく、部室にはオカルト雑誌の『ムァー』や「TAMAC出版」の本が散乱。
今月の研究テーマはジンギスカンは義経。
壁には大きな字で「地震兵器廃絶して住みよい社会」とのスローガンが。

蔵吉「セクハラおやじ信長どこいったんだろう」
真子「校内放送で呼べばいいんじゃない」
蔵吉「放送員に織田信長って叫ばせる気か」
真子「あら、同姓同名の別人だと思うわよ」
蔵吉「思うかっー!」

オカルト部に連れて行かれた信長・・・どうなる?

つづく

次回予定は未定なので定まったら玲の避難所で案内しますね。
今まで付き合っていただきありがとうございました。

【05/22 (水) 01:25時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

05/24 (金)
  22:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 少女と絵本と宇宙人、時々エロ本 第三話 『そのふたなりに戸惑う少女』

っいのちだいじに

産卵前の海がめのコスプレ

>>788
怪しすぎるwwww

失敗作の絵本三点

次回作のモデルになる条件を突きつけた

ウソ発見器を使用

戻るを通り越して通常の二倍程に

では実際どうするの、と彼女に尋ねてみれば、乳首で・・・(省略)

俺には理解できない境地がそこにあったようで、更に言えば世界は広いんだな、と感慨深くも感じてしまう。
確かに、男ならば女性のその乳房には触れ、触りたいものだろう。かくいう自分もそうだった。今も多分そう。

しかし、世の中には乳首だけで絶頂を迎える人間もまた居るらしく、それを開発とも例えた彼女の性知識は、
その緩そうな幼い顔からはとても想像出来ない程、そこそこに広かった。

流石に伊達にエロ同人を描いちゃいないんだなと、ここで初めて彼女を尊敬することになる。

「だ、だから、その……乳首を、こうして、こんな風にすると……いいんです……」

「いや、指先だけでやられてもなぁ……実感しないというか?」

「……じゃあ! ……じゃあ、実際、試して……みます?」

「じ、実際に、試す……だとっ!?」

「私が試しに触ってみます。だからその……ミュータントな着ぐるみ、脱いでください……」

実際、儚が俺の身体を使って実践してやろうと口にした彼女の頬は真っ赤であった。
そして、海亀の着ぐるみを脱ごうか、脱ぐまいかと、チャックが付いた部分に手を掛け悩むのだ。
本当に良いのだろうか、本当にそんな事を彼女にさせてしまって良いのだろうか。でも、ココまで来たんだ、興味が湧いて仕方がないじゃないか。

触られると、どんなカンジなんだろう。どんなキモチなんだろう。そんな興味が次第に心の中に生まれていた。

「わ、分かった……。脱ぐ、脱ぐからな……。……恥ずかしいから、アッチ向いててくれ」

「同性みたいになったのに、何故恥ずかしがるんですか……。わ、私まで恥ずかしくなっちゃう……」

「そ、それはだな、その……ええい、とにかく、脱ぐからなッ!!」

そうして、勢いよく海亀の着ぐるみを脱いだ場面を、ふらふらとやって来た日和見、そして志藤に見られた俺は……>>813

鴨志田男装疑惑が学校に蔓延することになった

そうして、勢いよく海亀の着ぐるみを脱いだ場面を、ふらふらとやって来た日和見、そして志藤に見られた俺は……
鴨志田男装疑惑が学校に蔓延することになった為、暫く不登校を決め込むことにした。

まさかの女子であったという噂があっという間に広がった開成学園の生徒は、本当に暇人ばかりなのかとも思う中、
寮の部屋で閉じこもり、一人ベッドで寝転がっては涙を流すのである。

「俺の男が、俺の息子が、俺のぉ…………あ、乳首ちょっと感じてきたかも」

とはいいつつ、儚に教えられた知識が気になって仕方がなく、あの場面では日和見、そして志藤に邪魔をされて触ってもらえなかった。
じゃあ自分で触ればいいじゃないかと、暇つぶしみたいに乳首で遊ぶ時間が増えていた。

「ここを……アイツが、儚が……指先で摘んで……」

妄想してしまう。あの時、もし彼女が俺の胸を、乳首を弄んでくれていたのなら、どんな風になっていたのだろうと。
彼女の小さな掌、そしてすらっと伸びた指先を思い浮かべ、そして触れているという感覚に酔いしれる。

「そう、儚……、ちょっと、イイ、かも……」

指先が、更に突起に触れようと伸びてくる。彼女の紅潮した顔が直ぐ近くにあり、潤んだ瞳で俺を見つめてくれている。
その瞳の奥に、女となっては胸を触られて、ほんの少しでも快感を得てしまった自分が映っている。
いやらしい、けど、コレが自分なんだ。そうだ、これが……私なんだ、と、思い描いてしまう。

「ん、……ぁ、変、だ……声が、でちゃ……ぅ」

突起を彼女に微かに摘まれて、変な声を発してしまう。そして儚もまた、たじろぐのだが直ぐに優しい笑みで返してくれる。
「キモチ、良かったんですか?」そう言って、両方の突起を優しく摘んでは、上下に動かしてしまうのだ。

「そ、それ、なんか……びりって、くるぅ……!」

「そう、びりって来るのね」

「う、うん、びりって、電流が走るみたいな……ん、あれ?」

「これが男の中の男の自慰行為なのね」

「……う、宇宙人、貴様何時からそこに居たぁぁぁぁ!!!」

「ノックはしたわ。でも、貴方が、いいえ、貴女が行為に耽っていたから、観察していたの」

まさか、妄想プレイに走っていた己の恥ずかしい姿を見られていたなんて。もう、こうなったら……>>816するしかないじゃないか。

この体験を告白手記に

まさか、妄想プレイに走っていた己の恥ずかしい姿を見られていたなんて。
もう、こうなったら……この体験を告白手記にするしかないじゃないか。
そうして宇宙人なんて居なかったんだとふんぞり返り、まっさらなノートに手記を書こうと珍しく机に向かっていると、更に声がした。

「あ、あの……鴨志田君、私で……エッチな事するの、ダメとは言わないです。けど……、手記はやめてほしいかな……」

「げぇぇッ! 儚、なんでお前まで!? ていうか、何で姉妹揃ってるんだ!?」

「それをこれから話そうとしたら、あの男の中の男の——」

「やめろぉぉぉ、それは言うなぁぁぁぁ!!!」

「しかしまさかの乳ニーなんて、流石の宇宙人である私でもちょっと無理だわ。ねぇ儚」

「……こくこく」

「そこだけ姉妹仲良くドン引きすんじゃねぇぇぇ!!」

—— 七月九日、はれ。俺が女になってしまった日であります。
友達に教えられた一人で抜く方法、というのを試してみました。最初はどうって事なかったようにも思えたんです。
自分で触っているという認識が邪魔をしていたんです。だから、友達を連想してみたんです。
そしたらどうでしょう、触られてるって感覚が私を突き動かしたのです。胸の奥がもやっとして、だんだんそれが膨らんで、堪らなくなりました。
次第に、乳首はどんどん大きくなっていて、これが女の感覚なんでしょう。不思議と、そこが敏感になっていたんです。

と、適当に手記を綴りながらも俺は自称宇宙人の話を聞いていた。

「いきなりよ、この子が現れて、これ以上鴨志田君に手を出さないで、なんて言われたの。
 それは無理〜って答えてあげたんだけど、そうしたら、じゃあこの子、そっちがその気ならって言ったのよ」

「だ、だから……私、……転寮を決めた……です……」

「ふむふむ、それで? ……敏感になって、もうそこだけ触ってほしくて、堪らなくなりましたっと……」

「ねぇ、変態、私達の話を聞いている?」

「あぁ、聞いているぞ。転寮を決めたんだろう? おめでとう。…………え?」

「だから、この子……この寮に住むって言い張るのよ」

「だって! これ以上この姉に鴨志田君が玩具にされたら、私も……辛いし」

こんな時、俺はどんな返事をすれば良いのだろう。そうだ、>>821と返しておこう。

そういえば玩具的なのを貰ったな…

こんな時、俺はどんな返事をすれば良いのだろう。そうだ、そういえば玩具的なのを貰ったな…と返しておこう。
机の引き出しにしまってあった人口チンチン。つまりは大人の玩具であり、張形である。

「なぁ、儚、本気でこの寮に住むのかぁ?」

「そ、そうです。そうですけど……って、な、何ですか、それは!」

「あら、前に私があげた人口チンチンじゃない」

「じ、人口チンチン!? お姉ちゃん、鴨志田君になんてモノを!!」

「そしてお前の姉は言った。お前のエロ同人は最近マンネリだそうだなぁ?
 だからお前の姉はこれをくれたとも言っていい。……お前を大人にするいい機会だ……」

「へ? あ、あの……何を言ってるのか、分からない……です」

「じゃあ私が言ってあげるわ儚。マンネリを打破すべく、あの子とセックスしなさい!!」

「はぁぁぁ!?」

そりゃ驚くだろうな、そりゃ呆れるだろうな、しかし、これがお前の姉である長谷川夢である。
恐ろしい銀髪である。さらっと言葉にしてしまうところも凄いと思うのだが、その思考がまた凄い。

当然、逃げるように部屋を出て行こうとする儚であったが、彼女は既に夢の手中にあった。
いつしか夢と儚の間には手錠を嵌められ、彼女は夢を引っ張っていかない限り、この部屋から逃れられない。

「では響、最初はどうしたいのか言ってみなさい。その間に、この子の制服、脱がしておくから」

「ちょっと待って! ちょっと待ってってば!! お姉ちゃん、いくらなんでもおかしいって!!」

「うぅむ、そうだなぁ……やはり最初は乳首プレイからいこうか」

「鴨志田君も! そこで変にお姉ちゃんに乗らないで!! お願いだから正気に戻ってよぉ……!!」

流石にこれ以上は可哀想だからと、その張形を再び机の中にしまおうとしたのだが、
やはり思考がおかしい姉には、可哀想といった言葉は存在しないのであろう。そして、彼女もまた脱衣術を身につけていたのである。

気付けば上半身を裸にさせられた儚の、その小さな膨らみを見た俺は……>>823

おかあさーん!!と叫んで乳首を吸い出した

気付けば上半身を裸にさせられた儚の、その小さな膨らみを見た俺は……おかあさーん!!と叫んで乳首を吸い出した。
そこに乳首があったら、誰だって吸いたくなるだろう! この思考はまさに男のそのものなのかもしれない。
この時はまだ気付いてすら居なかったが、まだ可能性はあったのだ。そう、男に戻れるチャンスは、まだあったのかもしれない。

「おかぁぁぁぁさぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

「…………気持ち悪いです」

「…………マザコンの中のマザコンだったのね」

「んちゅ、ぱ、んふ、お母さんのおっぱい、おいひぃ—— ぶほぉっ!!」

「お腹への蹴りだけで許してあげますけど、次はありません」

「私も口直しで一発殴っておいて良い?」

「いいよ、二発ぐらいボディに決めちゃって」

あれ、おかしいな、この姉妹……仲が悪い筈なのに、俺を蹴る殴るの暴力行為の時だけは何故か息が合っているよ。
とはいえ、一瞬でも確かに儚に母親を感じてしまったのも事実だったのかもしれない。
突然口走ったそれは、過去に味わった寂しさを思い出しては、癒して欲しかったのかもしれない。

母もまた、背が小さめで、胸もそこまで大きくは無かった。自分の背が伸びないのもまた、その母の遺伝じゃないかとよく疑った。
しかし、そうして母のせいにするのは男らしくは無いと、今では思わなくは無くなったが……。
そうやって、亡くなった母を思い出していたのかもしれない。母を失ってから、俺は誰が見ても明らかに変わっただろう。

「……痛てて……まだ腹が痛いんだが……」

どうやら一瞬の間だけでも気絶してしまっていたらしい。長谷川姉妹にノックアウトさせられるようでは、男の中の男は程遠い。
とはいえ、最早男の中の男を目指せるかどうかも怪しいのだが、と腹を擦っていると……。

「マザコンの鴨志田君、お夕飯ができました。……マザコンでもやっぱり食べたいですか?」

未だにお母さーんと乳首を吸われた事を根に持っているのだろう、冷ややかな視線で俺を見つめる儚。
しかし彼女、本気でこの寮に居座るつもりで居るようだ。そして、彼女の作る夕飯は割りとマトモなモノであった。但し全て肉料理。

そして肝心なのはお味である。出来は良いと思えるトンカツを一口、そして口の中に何故か>>829の味が広がるのである。

おかあさーん!!

そして肝心なのはお味である。出来は良いと思えるトンカツを一口、そして口の中に何故かおかあさーん!! の味が広がるのである。
これがお袋の味なのか、お母さんの味なのか。紛れも無くあの母の手料理だとすら思えてしまう程、味は似ていた。

トンカツに擦ったしその葉を混ぜる一工夫を行うのが母であったのはよく覚えている。しかし、何故それを儚が、と彼女を見る。
すると儚は俺の視線に気付き、目を逸らすのかと思えば……またドン引きされるのであった。

「……なんで、泣いてるんですか?」

「え? 俺、泣いてる? おかしいな……、そんなつもりは……」

「女となって、涙もろくなっちゃいましたか」

「かもしれない……。このトンカツ、しその葉を混ぜてるだろ? これ、母さんに似た味でさ……」

「……またマザコン話」

「……すんません。でも本当に味が似ててびっくりした……」

「鴨志田君のお母さん、どんな人なんですか? そこまで言われると、逆に気になってしまいます」

「……亡くなったよ、病気で。交通事故とかそんなんじゃない。……ただの脳腫瘍だ」

「ごめんなさい……、少し私が迂闊だったかもしれません」

「いいんだ。……で、母さんはいつも俺に、強くなりなさいって言ってくれたもんだから、強さに憧れたってのも事実でさ——」

母が亡くなったのは、俺が小学生の頃だった。既に中学を控えた当時の俺は、まだどちらかと言えば女の子に近い男の子だったのかもしれない。
遊びといっても、女子に混ざって遊んでいたりもした。男子と遊ぶことは少なく、女みたいだから来るなとか、よく言われたものだった。

そうして男に女みたいだと言われ、しょげて家に戻れば、母は俺を軽くとはいえ叱り、そして頭を撫でてくれる。
「もっと強くなりなさい。そのままだと、本当に女の子みたいになってしまうわよ」と、母は俺を諭すように頭を撫でるのだ。
嫌いじゃなかったその時間は、もう戻っては来ない。母を失い、それだけ母に頼り、想いを寄せていた俺は……中学で不良を目指すことになる。

つい、長話になってしまった。自分が幼い頃から、そして今に至るまでと、母中心に話を続けてしまっていた。
気付けば一時間も儚を付き合わせてしまったようだ。そして話を聞いていた儚は……>>832

絵本の製作にとりかかる

つい、長話になってしまった。自分が幼い頃から、そして今に至るまでと、母中心に話を続けてしまっていた。
気付けば一時間も儚を付き合わせてしまったようだ。そして話を聞いていた儚は……絵本の製作にとりかかる。要するに暇だったらしい。
そう思っていた。そして酷いもんだとその絵本の内容を覗き込んで、そこで動きが止まってしまう。

「それ……俺のさっき話してた……たった一時間でそこまで描いたのか?」

「まだ色鉛筆でざっと仕上げただけです。……これ、今度、オファーが来た出版社に持ち込んでみます」

「ちょっと待てよ、いくらなんでもそれ……恥ずかしいんだが」

「良いじゃないですか、マザコンらしくって。……嫌いじゃないですよ、その話」

何より驚いたのが、儚の絵だった。それまでとは全く出来が違い、子供以下の落書きでは無くなっている。
プロまでとも言い難いのかもしれないが、ふわふわとした丸い雰囲気が漂うその絵本、その中で、俺の幼少と、その彼女のイメージの母がそこに居た。
そして、その母がまた俺の母親そっくりだったからこそ驚いた。こいつ、やれば出来るんじゃないか。なのに……何故、落書きを量産していたのだろう。

「ふぅ……良いの描けたって思ったら、ちょっと疲れちゃいました。……マザコンさん、ありがとう」

「いえいえ、どう致しまして。……で、お前、本気でこの寮に住まうつもりなのか?」

「そのつもりです。駄目ですか? ……私が居ないと、あの姉に玩具にされる人生ですよ?」

「そ、それも困るな……。已む無しか」

「そうです、已む無しです」

珍しくとも言うべきなのだろうか、そこで儚は笑顔を見せるのだった。普段、そうして笑顔を見せることは今まで見たことが無かった。
そのせいだろうか、自分でもまた妙な事をしていたのだ。彼女に掌を差し出していたのである。
儚は首を傾げてその俺の掌を眺めていた。途端恥ずかしくなった俺は、もう片方の手で頭を掻きながら言う。

「転寮するんだろ? なら……よろしくって意味だ……。同じ寮の仲間、そして……友達として」

「友達……ですか」

「だから、その……その妙な敬語もやめろ。少なくとも友達なんだから、俺には必要ないだろ……?」

また茶化されるんじゃないかと、内心冷や冷やとしていたものだった。しかし、掌が温もりに包まれ、はっとする。
彼女の握ってくれた手は、ちょっと湿っぽくて、それでも思ったよりも温かくて、それはまるで——。


———— つづきます

すいません、ついノリで、というか思いつきで完全に女体化させちゃいました。
それもこれも、マムシ化がいけないのです。アレのせいで息子さんがお亡くなりに。

お陰で男らしいことをすれば男に、なんてモノに意味は無くなりました。まぁそれはそれとして。

今日もお付き合いありがとうございましたー。


【05/25 (土) 01:09時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

05/25 (土)
  21:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 少女と絵本と宇宙人、時々エロ本 第四話『その生徒会長、期末試験に現れる』

ついでにべっちょり。

暑い!!暑くて死ぬ!!死んじゃう!!

五月で冷房入れる事になるとは思いませんでした。これは厳しい……。
そんな感じで具合は良くなったんですが、バテ気味ですふえぇ。

ではもう暫くお待ち下さい……。

あ、いつもの紹介はカットでお願いします。

〜〜〜 『少女と絵本と宇宙人、時々エロ本』 第四話 〜〜〜

真夏にやって来る長期休暇を迎える前に、学生諸君は味わう事になろうそのイベント。
大体の者が断末魔を発し、慌てて対策に取り組むことになるであろうそれは、普通の学生ならではの通例行事。
ポイントは普通の学生ならではと言うところである。生憎俺は、最早普通の学生を遥か遠くへ置いてきてしまっている。

「おーい、儚、塩取ってくれ」

「……期末試験を翌日に控えて、漫画を読みながら普通に朝食とか、ちょっと凄い……」

「だろう? それにしても、やっぱ儚の飯はおふくろの味がするわー、かぁー美味いわー!」

「褒めてくれるのは嬉しいんだけど……マザコンはそろそろ卒業しよう?」

「と言われましても、むぐむぐ、実際おふくろの味ですし、むぐむぐ」

「食べながら話すのは行儀が悪いよ?」

朝から漫画を読み、思い出したかのようにトーストやスクランブルエッグ、そしてサラダと手を付けていき、
その姿に儚は呆れながらも食事を進めていた。そんな朝食時もやはり、姉の長谷川夢の姿は無い。
二人だけの朝食に夕食。一人と比べれば随分マシなのだが、正直に言えば俺は彼女の事を、何故か意識し始めていた。

なんとなく漫画を見ているフリをして、儚を眺めていた。
背も女子の中では低く、それでいてやっぱり幼い顔立ち。かといえど、酷く幼児的ではなく、妙なバランスが取れている。
素材としてはかなり上物なのだ。そんな少女と俺は、半年前から友達という関係すら乗り越えられず、だらだらと日々を送っていた。

そもそも、友達になるという概念すら、これまでの俺と彼女に無かったのが、あの姉の登場によって齎される。
あの自称宇宙人である長谷川姉のお陰で、長谷川妹と距離がまた縮まったことになるのだが……。

「……どうかしたの?」

視線に気付いた彼女はきょとんとして俺を見た。途端何故か恥ずかしくなった俺は、>>838

通りかかったサキュバスに八つ当たりをした(性的な

視線に気付いた彼女はきょとんとして俺を見た。途端何故か恥ずかしくなった俺は、通りかかったサキュバスに八つ当たりをした。
その巨大な乳を両手で鷲掴み。本当にけしからんサキュバスであると、それを強く掴んでは上下させた。

「んっ……もう、乱暴なのね」

「仕方が無かった。俺には逃げ場が必要だった。だからこうしたまで!」

「そうなの、でも……そんな貴女も、嫌いじゃないわ」

「……鴨志田君、姉を使ってそういう破廉恥行為は禁止!」

「あら、儚ったら……ヤキモチ?」

「ヤキモチって、そもそも鴨志田君は女の子だし、ヤキモチ焼く意味がわかんないもん」

「でも、元は男だし……もしかすると、ある日突然男に戻るかもしれないのよ?」

「そ、それは……。でも、今は女の子、だし……?」

俺と儚が、長谷川夢の登場によって距離を縮めたように、俺と言う存在が夢と儚の距離を縮めているのだろうか。
彼女が転寮してまだ二日程度なのに、姉妹の仲は一見してそこまで悪いようには見えなくなっていた。
ただ、俺と言う存在を姉が上手く利用し、妹がそれに乗る羽目となっているようにも思えるのだが。

そうして、何気にそのマシュマロのような柔らかさを誇る長谷川姉の胸を悔しくも堪能していると、彼女からこんな事を言われてしまう。

「それより、鴨志田君。……貴女、成績悪いそうじゃない」

「そりゃまぁ、俺って男の中の男だし? 勉強とか男らしくねぇし!?」

「でも、今の貴女は女の子よね。乳首で自慰行為を行うそんな人に、男らしさは必要かしら?」

「貴様……何が言いたいッ!!」

「私もね、鴨志田君にちょっとしたお礼がしたいのよ」

つまり、彼女は俺の勉強を見てくれると言い出すのだ。しかし、簡単にそんな甘い汁を吸って良いものなのだろうか……>>842

断る

つまり、彼女は俺の勉強を見てくれると言い出すのだ。しかし、簡単にそんな甘い汁を吸って良いものなのだろうか……。
いや、やはりこの宇宙人の思考はおかしいのだ。そんな毒電波を受けてしまっては、只でさえギリギリ赤点な点数が、ゼロになってしまうだろう。

「悪いが断る。これ以上馬鹿になりたくないんでね」

「随分な言い草ね。私が授業中当てられても、さらっと問題を解いてる姿を見ていないの?」

「最後に必ずby宇宙人とか付けなければ最高かもな」

「あれは必要よ。宇宙仲間は常時募集中なの」

ダメだ、やはりコイツと話していては頭が腐ってしまう。何故毎回強引に宇宙に繋げようとするのか。
そして毎回自分は宇宙人だと引っ張り出してくるのか。本当にそれさえ無ければ、最高のサキュバスちゃんなのだが……。

鞄を持ち、寮を出て朝っぱらから馬鹿みたいな暑さを誇る天気の中、学校に向けて路上を歩く。
隣に相変わらず宇宙話を持ち出してくる夢に、そしてやや距離を置いて、この人たち関係ありませんと言えるポジションを取る儚。
夢は変人だし、儚はまだ掴み所が無い部分もあるのだが、どちらにしても、今の生活は思ったより楽しいものなのかもしれない。……これさえなければ、だ。

「……うげっ! こ、これはまた……!!」

「ラブレターね。やはり男子から?」

「名前は載ってないんだ。というか、下駄箱にこんなの突っ込む奴の気がしれん……」

「ねぇ鴨志田君、そのラブレターの主には会いに行ったの?」

「ないない、恐ろしくて行けるかっつーの。それに相手は男だ、俺はホモじゃねぇ!!」

「でも今の貴女、女よ?」

「…………最悪だ」

日和見萌、そして志藤猛が俺は実は女であり、男装して学校に通っていたという事実が開成学園に広まり、
生徒達は一斉に俺を見る目を変えたのだ。今ではラブレターを貰うほど俺の株は上昇中なのだそうで……。

「きゃー!! 鴨志田君よ!! あ、こっちみてる!! かわいい!!」

「やべぇ、アレが女だったなんて……いや、女かもしれんとは思っていたけど! そう分かると途端胸がきゅんきゅんすんぜ!!」

そんな噂に振り回される俺は、教室内ではクラスメイトに囲まれ、>>844される毎日である。

胴上げ

そんな噂に振り回される俺は、教室内ではクラスメイトに囲まれ、胴上げされる毎日である。

「鴨志田が来たぞ! 皆、準備はいいか!?」

「おっけー、任せといて。アタシがしっかり抱えてあげる!!」

「ちょっとまって、鴨志田君のお尻は……私のものだから!!」

「おい待て、ガチレズ勢は黙ってろ! 俺が、この俺がアイツの、彼女の尻を……うっへへへ!!」

何かがおかしい。何故毎朝登校して顔を見せた途端、俺の周りをこいつらは囲むのか。
そして何故俺を抱え、胴上げを繰り返すのか。今日もまた、天井が近くなったり遠くなったりとする光景を眺めるのだ。

だがこの胴上げ、実はお尻を触ろうとする輩が数人おり、気がつけば毎回臀部に手を伸ばしてくる為、
いつしか自分の手でお尻をガード、そうして胴上げされる日が続くのである。
こんな訳の分からない日々は一体何時まで続くのか、次第にげんなりとしてしまっていた俺は、珍しくその日は朝のホームルームを受けていた。

そうして、我が担任の中年のつるっぱげは言う。

「うぇぇ〜、おっほん。……実はワタクシ、長年痔でありまして、入院をする決意を致しましてハイ。
 痔ってね、痛いんですよね。ほんともう、なんて言うかこの世の絶望を味わう的な痛さでねハイ」

「せんせー、その間担任は誰がなるんですかー?」

「うぇぇ〜、実はこれね、既に決まっておるんですよハイ。では、柏田さん、入ってきてくださいねハイ」

明日が期末試験だというのに、どんなタイミングで担任が変わるんだと、またまたげんなりしつつも頬杖をついていた。
しかし、入ってきたそれが、小学生レベルにしか見えず、頬杖から机に顔が落下してしまうのであった。

「うぇぇ〜、紹介します。我が娘の柏田 つみきなのですよハイ」

「コホン……パパがどうしてもって言うので、わざわざこちらにやって来ました柏田つみきです。
 え、何故パパと苗字が違うのかって? パパとママは離婚しているからです。ハイ」

その小学生はそうして呆然となったクラスを背伸びして見渡している。俺もまた、何だコレとその小学生を見ていると、
隣に座っていたバカ宇宙人がこんな事をぽつりと漏らすのだ。

「これは……>>848ね」

天才児

「これは……天才児ね」

「いや……実は○ナンでしたとかちょっとなぁ」

「コホン、では皆、一人ずつ私に自己紹介をして欲しいのです。えー、じゃあ右の列の席の人から。ハイ」

「しかもアレ、喋り方がハゲそっくりじゃないか……?」

「まさに親子ね。父の痔の治療の為にこうして駆けつけてくれる娘って、少し感動的だわ」

「……そうか?」

クラスメイトの自己紹介を強引にやらされる中、俺と夢がそうして無駄話を進めていると、
とうとう先に夢がこの柏田つみきに自己紹介を行う時がやって来た。

当初、彼女が転入してきた際は、俺を用いて酷いことを言ったものであったが、今回はどうだろう。
また恐ろしいことを言われるのではないかと、心の備えを行っていると……。

「じゃあ、次! ……銀髪? 髪、染めているのです?」

「いいえ、地毛です。名前は長谷川夢。以上です」

彼女はこの柏田つみきに興味を示さなかったのか、やけにあっさりと紹介を終えて着席してしまうのだった。
お陰で俺の出番が思ったよりも早まり、立たされる事となる。

「……そ、じゃあ次、そこのショタっぽい……男? 女?」

「お、俺は男だ!! ……すんません、訳あって男という事にしてくれませんか?」

「ふぅむ? パパ、何なのこのクラス、銀髪に……男女? 意味が分からないわ」

「うぇぇ〜、おっほん、愉快なクラスに仕上がったと思わないかい、つみき」

「そうかな? でもパパがそう言うのなら……うん、いいんだけど」

この新担任、元担任のつるっぱげの娘、案外ファザコンなのかもしれない。
立たされたままそう思っていると、再び柏田つみきが俺に歩み寄り、頭の上から爪先まで、じぃっと眺めて言った。>>850と。

あなた先日捕まえてペットにしたマムシと似たような匂いがするわね

この新担任、元担任のつるっぱげの娘、案外ファザコンなのかもしれない。
立たされたままそう思っていると、再び柏田つみきが俺に歩み寄り、頭の上から爪先まで、じぃっと眺めて言った。
「あなた先日捕まえてペットにしたマムシと似たような匂いがするわね」と。

それを何処で捕まえたのかと尋ねれば、学校であるらしい。我が息子は生きていらっしゃった。
これは天恵か、或いは俺の悪運の強さなのか、まだ希望は残っている。イチモツ様が戻り、ご立派になられるチャンスがまだあるのだ。

「おい、柏田つみきとか言ったな!!」

「ひぅっ! な、何ですか突然!」

「そのマムシ、俺に寄越せ!!」

「へ? な……何故? ほわい?」

「俺にはそのマムシが必要だからだぁぁぁ!!!」

隣で、長谷川夢が舌打ちしてつまらなそうな顔をしているのにも関わらず、俺はこのロリィな教師の手を取り、振り回す。
どうしても必要だとそうしてせがんだのだが、突然ぷいと、顔を逸らされてしまうのだ。

「わ……わたしの事を、名前でしかも呼び捨てだなんて! 信じられない!!」

「お怒りはごもっともかもしれんし、よく分からんが、今はそんなのどうでも良いんだ! 俺にはそのマムシが必要なんだ!!」

「……そもそも、マムシをどうするつもり?」

「……股間に、取り付けます」

俺が素直にそんな台詞をロリィな教師に教えてやると、>>852

「死んだらどうするの?」と返された

俺が素直にそんな台詞をロリィな教師に教えてやると、「死んだらどうするの?」と返された。
大丈夫だ俺は死なない、それに、俺の息子であったマムシが、俺に噛み付く筈がない。
ではその自信はどこから来るのかと言われた辺りで言葉を詰まらせた。まさか、俺のペニスがマムシとなって消えちゃった、なんて言えるだろうか。

「……まぁいい、分かりました。放課後、生活指導室に来て下さい」

「な、なんで生活指導室?」

「あそこにマムシのまーたんを飼っているからです」

「まーたんて……俺の息子がまーたんて……」

その日は、期末試験を翌日に控え、授業も主に復習やポイントのおさらいと言った形式で進んでいき、
そして何時もよりも若干早めに終わる事になった為、皆、早めの帰宅を迎えることになった。

私立開成学園、この学園だけで生徒数三千以上も居るマンモス校は、授業は単位制である。
要するに、受けたい授業を選び、進級に必要単位を揃えてしまえばそれで構わない。
だが、属するクラスだけは、基本的に学園側に決められる。そうして、その中で友人を作ったりして、
一緒に様々な授業を受けたりするスタイルが良く見受けられた。

そう、この学園は何だかんだで自由が過ぎるのである。こうしてふらふらとした人生を歩む俺ですら、二年に上がれたのだから。

「えー、失礼しゃーっす」

生活指導室、そこへ訪れてみると、そこには既にロリィな担任に、オマケの眼鏡も一緒であった。
二人とも椅子に座り、コーヒーを啜っていたらしい。香りが室内に漂う中、俺はマムシのまーたんを見せてくれと頼み込む。

だが、この眼鏡、実際には違えど俺が夢とイチャラブをしていた出来事を持ち出し、あの日結局生活指導室に顔を見せなかった事を
未だに覚えていたらしい。突然眼鏡をくいっと持ち上げ、説教を始めるのだ。

「鴨志田君、いいえ、問題児! ……鴨志田さんと呼ぶべきなのかしら?」

「どっちでもいいっすから、マムシのまーたんをですね……」

「それよりも、先にお話があります! 呼び出しをしたのにも関わらず、ココへ来なかった理由を一行で!!」

「それじゃあ……面倒くさかったから?」

俺がまたまた素直で正直な理由を述べると、この眼鏡の教師、坂上麻衣は……>>856