菫「飲み会だと?」(332)

照「そう」

菫「飲み会ってお前、いつやるんだ」

照「今夜だけど」

菫「………」

照「菫?」

菫「照、お前なあ……そういうのはもっと早く言えよ!今もう夜じゃないか!」

照「そう。だから迎えに来た」

菫「はぁ……」

照「早く行こう。他にも迎えいく人がいるから」

菫「……どこでやるんだ?」

照「久の家」

菫「最悪だ……」

菫「それでお前も行くんだろ?飲むんだろ?」

照「飲む。限界を超えて飲む」キリッ

菫「……最悪の組み合わせだ。私は絶対行かないからな」

照「どうして?菫とはよく飲んでるじゃない」

菫「私だっていい加減懲りたんだよ……お前毎度どんな飲み方してのるかわかってるのか?」

照「何かおかしいかな」

菫「……異常なペースで缶を空けまくってものの十分で泥酔。帰りは前後不覚のお前を引っ張って帰らなきゃならないし、おまけにお前は気持悪いを連発してこっちを戦々恐々させる始末」

菫「この前は水が飲みたいと強引に部屋に入ってこようとしたお前を押し留めて水をくみに行ったはいいが、持って来たらお前は玄関前にぶちまけてるという大惨事……」

菫「あの時は泣きたくなったぞ、本気で」

照「酔ってたからね、しょうがないね」

菫「ふざけるな。もうあれ以来お前とは金輪際飲まないと決めた」

照「猛省してます」

菫(おまけに竹井も竹井で酔うと何をされるか……噂では酔った相手を送った先で必ず一晩泊まるとか)

菫「他に誰が来るんだ?」

照「えっと、怜と……」

菫(園城寺怜。一見病弱娘だが酒を飲めば中身は最早おっさん……仲間内ではセクハラが一番ひどい)

照「哩さんと」

菫(白水哩。実体験を含む猥談を語らせれば右に出る者はいないとされる……北部九州最強の変態)

照「霞さんと」

菫(石戸霞。酔った勢いで相手に迫るのを得意とする危険人物……酒に弱いといっているがそれすら怪しい)

菫(なんてメンツだ……ここまで魔物クラスが揃い踏みの飲み会はないぞ。間違いなく地獄絵図になる)

菫(せめて智葉か加治木、末原あたりがいてくれれば……)

照「あと、宥さん」

菫「………」

菫「は?」

照「参加するのは菫も入れて7人」

菫「待て」

照「どうかした?」

菫「参加するのは、誰だって?」

照「私と久と怜と哩さんと霞さんと宥さん、あと菫」

菫「なぜ宥が」

照「呼んだほうが面白いって言ってた」

菫「誰が」

照「久が」

菫「………」

照「久からの伝言だけど、『来ないなら宥を好きにしていいってことよね?』だって」

菫「あのっ……悪魔め!」

菫「………」

照「そんなに怒らなくても……」

菫「黙れ、お前も一枚噛んでるんだろ」

照「多少は」

菫「どうしてそういうことするんだ、お前らは。私を困らせて楽しいのか?」

照「……どうして菫が困るのかわからないんだけど」

菫「ぐっ……」

照「私は宥さんと菫を誘っただけ。菫に断られたらそれはそれでしょうがないと思ってたけど」

菫「は、初参加であのメンバーは厳しすぎる。誰か抑え役がいるだろ」

照「どうして菫がそんなこと気にするの?最初はあんなに嫌がってたのに」

菫「うるさい黙れっ。そ、それより宥との待ち合わせ時間はいいのか?」

照「そうだね。そろそろ着くし……菫、ちょっと連絡してそろそろ外に出てもらえるように伝えてよ」

菫「わ、私がか?」

照「?そうだけど」

菫「……メールでいいか?」

照「………」

菫「何だその目は……」

照「ああうん、もういい。メールでいいよ」

菫「おいやめろ、見放したような顔をするな!」

菫「……今出て来るそうだ」

照「そう……」

菫「………」

照「………」

菫「……何か言いたければ言えよ」

照「いいの?菫ってさ……」

菫「いや、やっぱりやめろ。おおよそわかるから言わなくていい」

照「わかってるんだ、菫でも」

菫「でもって何だ。……わかってるから口に出されると余計傷つくんだよ」

照「そういうとこが……」

菫「だからやめろ」

宥「おまたせっ、二人とも」

菫(助かった……)

照「………」

宥「迎えに来てもらったのに……ごめんね、待たせちゃって」

照「大丈夫、全然待ってないから。むしろ時間的にはちょっと早いくらい」

宥「そうなの?でも、外で待たせちゃったから寒くないかなあって」

菫「そんなことない。むしろ今日は蒸し暑いくらいじゃないか?」

宥「そ、そうだよね。私が寒がりなだけだよね」

菫「あ……い、いや」

照「……じゃあ行こう。怜とも合流するし、寄りたいところもあるから」

宥「う、うん。行こう、菫ちゃん」

菫「ああ……」

宥「照ちゃん、寄りたいところってどこなの?」

照「コンビニでお酒買う。ある程度は久の家にあると思うけどお好みで」

宥「そっか、みんなコンビニで買うんだね」

菫「宥は普段飲まないのか?」

宥「私、今日飲むのが初めてだから……」

照「初体験だね」

宥「うん、初体験」

菫「………」

照「菫?どうして睨んでくるの?」

菫「黙れ」

宥「酔っ払うってどんな感じなんだろう……ぽかぽかになるって聞いたから、ちょっと楽しみ」

菫「まあ、多少酔う程度ならいいが。あんまり飲みすぎるとひどい目に遭うからやめておいたほうがいい」

宥「そうなの?」

菫「ああ、実際悪酔いして自分どころか周りまで巻き込んだやつがいたよなあ照」

照「そうなんだ。それは大変だね」

菫「………」

宥「じゃあ私も気をつけて飲まないと……」

照「大丈夫、適量を守って飲んでればお酒はおいしいものだから」

菫「適量を守ってないやつがどの口で言う……」

菫「で、どこのコンビニにするんだ?もう何件か通り過ぎたが」

照「そこ。怜との待ち合わせ場所だから」

宥「時間はまだいいの?」

照「平気。入ろう」

いらっしゃいませー

照「お酒お酒」

菫「迷いないな……」

宥「寒い……」

菫「冷房……宥、一緒に外で待っているか?」

宥「ううん、大丈夫。このくらい我慢できるから」

菫「私の前では、我慢してもらいたくないな……」

宥「え?」

菫「い、いや何でもない」

宥「?」

照「ビールチューハイ、ハイボール」ガシャンガシャン

菫「お、おい照っ!入れすぎだ」

宥「照ちゃん、こんなにいっぱい買うの……?」

照「違うよ、みんなの分も買ってるの」ニッコリ

宥「そ、そうなんだ」

菫(営業スマイルの時点で嘘だな……)

菫「つまみはいいのか?」

照「久の家にあるんじゃない?私は塩だけでもいいけど」

菫「お前……大して強くないくせによく言えるな」

照「とにもかくにもお酒がないと」

菫(大学入ってから嗜好がお菓子→お酒にチェンジするとは……)

照「それより宥さんは?何か買ったの?」

宥「それが……冷たいお酒しか置いてなくて」

照「あ……」

菫「コンビニに普通熱燗とか見ないからな」

照「待ってて、久に準備できるか聞いてみる」

宥「そ、そこまでしてもらわなくてもいいよ」

照「大丈夫。ワンカップをレンジで温めるだけだから」

菫「……温かいドリンク買うだけじゃ駄目なのか」

照「何言ってるの菫、宥さんにもお酒の良さを知ってもらわないと」

菫「何を企んでる……」

照「人聞きの悪い」

照「準備しておくって。お酒も向こうにあるみたい」

宥「ごめんね」

菫「これで買うものはもうないか。とはいえお前の酒だけだが」

照「会計済ませるから二人は外で待ってて。怜がくるかも知れないから」

菫「わかった……宥、行こう」

宥「うん、じゃあ外で待ってるね。……あ」

菫「どうかしたのか?」

宥「ううん、これ……」

菫「?そのカクテルがどうかしたのか?」

宥「菫ちゃんと同じ名前だなあって」

『スミレリキュール』

菫「ああ、本当だな」

宥「ちょっと飲んでみたいかも……」

菫「!?」

菫(ど、どういう意図があったんだ今のは!?)

菫(私と同じ名前だから飲んでみたい?それは私を……いやいや何を考えてるんだ、特に深い意味はないに決まってるだろ)

宥「菫ちゃん、どうかしたの?買いたいものがあった?」

菫「い、いや平気だ。今行くから」

宥「?うん」

宥「はぁー、やっぱりお外はあったかい」

菫「冷房大丈夫だったか?」

宥「うん、前よりは寒がりじゃなくなったと思うから……」

宥「でもごめんね、菫ちゃん。気を使わせちゃって」

菫「謝られることじゃない。むしろ私のほうこそ、押し付けがましいこと言ってないか?」

宥「そ、そんなことないよ。菫ちゃんに心配してもらえて嬉しいから」

菫「なら、いいんだが……」

宥「……菫ちゃん?」

「おるでー、ヘタレがここにおるでー」

菫「!?」

宥「あ、怜ちゃん」

怜「おー、宥ちゃん。久しぶりー」

菫「園城寺……」

怜「すみれんもお久ー……どうしたん?そんな怖い顔して」

菫「その呼び方やめろ。あと、自分の胸に手を当てて考えてみろ」

怜「さっぱりわからんわぁー」

菫「……お前もこの飲み会に関与してるんだろう?」

怜「ウチはてるてるに呼ばれたから来ただけやで」

怜「当てこすりで物言われるのは堪忍やなあー」フラフラ

宥「だ、大丈夫怜ちゃん?ふらふらしてるけど」

怜「ごめんな宥ちゃん……今ちょっと調子よくないんや」ムニュ

宥「きゃあ!?」

菫「!?お、おいっ!」

怜「ああ~、宥ちゃんのおもち枕は最高やな」ムニムニ

宥「と、怜ちゃんダメだよぉ!」

菫「園城寺お前っ!宥から離れろ!」

怜「人肌が恋しいんや……別にすみれんでもええけど」ボフッ

宥「あ……」

菫「なっ、は、離れろ!」

怜「んー、こっちもこっちでええなあ。宥ちゃんは甘い匂いやけど、すみれんは清潔感ある匂いやなー」スンスン

宥「//////」カアァ

菫「ふ、ふざけるなよお前……!」

照「……何してるの?」

宥「あ、照ちゃん」

怜「おー、てるてるー」パッ

菫「た、助かった……」

照「おまたせ……何か楽しそうだったけど」

菫「楽しいわけあるかっ!園城寺、セクハラ行為はやめろと散々言ってるだろ」

怜「セクハラちゃうでー、スキンシップや」

怜「それに夜風に吹かれながら歩いてたら不安な気分になってしもーて、誰かに受け止めて欲しかったんや……」グスン

宥「怜ちゃん……」

菫「宥、騙されるなよ」

照「怜、ちょっとお酒の匂いがする」クンクン

怜「やん、嗅いじゃあかん」

菫「お前……これから飲むって言うのにもうすでに飲んできたのか」

怜「あー、さっきまでチーム大阪で飲んでたとこや。ウチだけ抜けてきたんやけど」

照「いいよねチーム大阪……おつまみのから揚げが美味しい」

怜「洋榎お手製やからなあ」

菫「つまり最初からセクハラモードというわけか……はぁ」

怜「セクハラちゃうでー、なあ宥ちゃん」ムニッ

宥「う、うん、そうだね」

菫「……とりあえず宥から離れろ」

照「じゃあ怜も来たし、久の家に行こうか」

宥「霞さんと哩さんはどうするの?」

照「哩さんはもういるって。霞さんは現地で合流するみたい」

怜「おー、あの二人もくるんか。それは楽しい事になりそうやな」

菫「……なあ、照。今日のところは中止にしないか?」

菫「正直、まだあいつらが参加することを思うと頭痛い……」

照「ダメ」

菫「せめて宥だけは帰せれないか……私は犠牲になってもいいから」

照「ダメ、宥さんあんなに楽しみにしてる」

宥「お酒っておいしいのかなあ?でも、酔っぱらうのは楽しそう」

怜「めっちゃ楽しいで。記憶がぶっ飛ぶくらいまで飲むのが最高や」

菫「………」

照「さ、行こう」

宥「ここが久さんのおうち……大きいところだね」

怜「なんか、両親の離婚が決まってそれでいいところに住めるとか言ってたなぁ」

宥「そんなことが……」

照「わりとあっけらかんとしてたけどね」

菫「まあ、あいつは図太いというか転んでもただでは起きないやつだからな」

「あら、それはほめられたのかしら?」

照「久」

久「こんばんわ、照……相変わらず大量に買い込んできたわね」

照「今夜の私の弾薬」

久「まあ残しても別にいいんだけど、吐かないでね?」

照「大丈夫大丈夫」

宥「久さん、今日はよろしくお願いします。私、初参加だけど……」

久「ええ、いらっしゃい宥。大丈夫よ、準備はできてるからあなたは遠慮しないで飲んでくれればいいわ」

久「それに宥が酔っても、そこで私を睨みつけてる人がちゃんと面倒見てくれるから」

菫「……何を企んでる」

久「いきなり酷い言われようね……そんな怖い顔される心当たりがないのだけど」

菫「とぼけるな、お前が首謀者だろう」

久「そうね、幹事をやらせてもらってるわ」

怜「そんで哩とかすみんはもう来てるんか?」

久「ええ、二人とも部屋に入ってるわ。私はお迎えに来たのよ」

怜「ほな、ちゃっちゃ上がらせてもらってええか?ウチ、久の家入るのは初めてや」

照「私も早く飲みたい」

久「どうぞどうぞ、宥も入って」

宥「うん、お邪魔します……菫ちゃんもいこ?」

菫「ああ、そうだな。もうここまで来たら逃げられないか……」

宥「どうかしたの?」

菫「宥……ここから先は女子の飲み会などと形容するのもおぞましい、別の何かだ」

菫「本当は君を巻き込みたくはなかった。だが、こうなってしまった以上仕方ない……私も覚悟を決めた」

菫「私が宥を守ってみせる」

宥「ええっ?」ドキッ



久「………」ニヤニヤ

菫(竹井……お前の好きにはさせない)

久(さぁーて、笑壷の会になりそうね)

「おおーっ、これ幻の『魔王』やないか」

「実家から取り寄せたのよ。今日は3本まとめて持ってきちゃったわ」

「あれ、誰か香水つけてる?フローラル系のフルーティ」

「確か姫子がつけとった。さっきまでまぐわってたところけん、そのせいか」

菫(ああ……もう部屋に入るのすらためらわれるな)

宥「まぐわ……何だろう?」

菫「聞いちゃいけない。あいつらの会話は全部聞き流さないと身がもたなくなる」

久「さ、二人とも中に入っちゃって。仕度はもうできてるから、後はもう飲むだけよ」

菫「………」

哩「おお、主役……こほん、とにかくこれで全員揃ったか」

菫「待て白水、今主役とかいったな。どういう意味だ」

宥「わあ……こんなにお酒があるんだ。お料理もいっぱい、すごい」

霞「遠慮しないで飲んでいいわよ。なんならこの焼酎開けちゃいましょうか?」

照「開けて開けて。魔王とか口に合いそうな気がする」

怜「かすみんの膝枕もええんやけど……おもちの迫力が圧巻過ぎるんや」

久「さっそく盛り上がってるわねえ。まだ始まってもいないのに」

菫「始まらなくていい……いっそこのまま終わってくれ」

照「何言ってるの菫、何事もお酒を飲まないと始まらないよ」

菫「お前もいい加減に懲りろよ」

哩「そいけん、今日は初参加の松実もおるばい。歓迎も込めて盛り上げんと」

宥「か、歓迎だなんてそんな私……」

照「うん、宥さんはお酒も初体験みたいだから」

霞「あら初体験、素敵な響きね」

哩「初体験は貴重ぞ」

怜「ほな盛り上げてやらんとなー、すみれん?」

菫「おい竹井、この家に弓矢は置いてないのか?こいつら全員撃ち抜きたい」

久「生憎そんな物騒なものはないわねえ」

久「じゃあ最初に乾杯しないとね」

霞「とりあえず何でしましょうか?期待してる人もいるからこれ開けてもいいけれど」

照「魔王、魔王」

哩「落ち着け照、乾杯が焼酎でよかと?」

照「問題ない」

久「でもそうすると、宥だけ熱燗になっちゃうんだけど……」

宥「あ、私は全然平気だから。お酒も初めてだし、みんなみたいに飲めないと思うの」

怜「まあこれから慣らしていくわけやしなあ」

菫「飲めなくてもいいんだけどな……」

怜「まだそんなこと言ってるんか」

久「了解了解。じゃあ開けちゃいましょうか、魔王」

霞「はーい」

照「……思ったより匂いがきつい」

哩「焼酎はこんなもんばい。お前は酒好きの癖に酒を知らなさ過ぎる」

怜「割らんでええんか?」

霞「九州っ子は生で飲むものよ」

久「はい、宥にはこれ」

宥「ありがとう久さん……わあ、あったか~い」

菫「……宥、大丈夫そうか?」

宥「うんっ。あったかくて、それに匂いも嗅いでるとクラクラしてきて体が暖まるの」

菫「そうか、ならいいんだが……」

菫(宥はあまり強いタイプには見えないな。飲み過ぎないように気をつけていれば照みたいにはならないだろうが……)

菫(さて、今から私がすべきことは……できるだけ酔わないように摂取を控えつつ、酔い始めたこいつらの凶行を全力で止める)

菫(そして最悪の場合は宥を連れて、ここを脱出する……!)

菫(失敗は許されない。もし逃げるのに失敗した場合、私も宥もただでは済まされないだろう……)

久「みんな手元にいきわたったみたいね」

久「それじゃあ、今回参加してくれた宥の初・飲酒を祝って」

久「かんぱーいっ」

照「………」ごっきゅごっきゅ

照「一本場」

菫「なっ……!?お、おい照、お前ペース速すぎるぞ!」

照「ここに缶の山を築く」カシュッ

照「続ける……私の肝臓が駄目になるまで」

菫「馬鹿っ!」

ごっきゅごっきゅごっきゅ

こうなる
http://i.imgur.com/xmWm0yp.jpg

哩「そいで姫子の×××に買ってきた×××と×××をぶち込んでみたけん、姫子こらえれんくてすぐ×××から×××してたとよ」

怜「はぁー、ハードすぎやろ。ウチ体弱いからそんなこと耐えられんわ」

哩「ばってん姫子喜びおって、私の×××にも×××したいとか言い出すけん、しょうがなしに私も×××されたと」

宥「????」

宥「えっと……×××って何なのかな」

菫「宥、聞かなくていい。あれは聞いちゃ駄目だ」

宥「え、でも……菫ちゃんは知ってるの?」

菫「しっ……知らない!私はそんなこと知りたくもなかった!」

宥「?そうなんだ、じゃあ私が聞いてきてあげるね」

菫「聞かなくていいんだ!本当は知ってるから!」

宥「じゃあ、教えてくれないかな」

菫「そ、それは……」

久「………」ニヤニヤ

菫(た、竹井いぃぃ!)

菫「……今、ここで話すようなことじゃないんだ。あんまり人に聞かれていい話じゃない」

宥「そうなの?」

菫「ああ、だからまた別の機会に話そう」

宥「うん、じゃあ後でこっそり教えてね」

菫「……ああ」

久「面白いものを見せてもらったわー」クスクス

菫「………」

久「そんなに睨まないでよ……はい、宥。おかわりの」

宥「あったか~い、ありがとう久さん」

久「いえいえどういたしまして。どう、お酒の味は?」

宥「ええっと……味はそんなにおいしくないけど」

宥「でも飲んだ後はすごく体がぽかぽか暖まってきて、なんだか幸せな気分なの」

久「そう、それは良かったわ。お酒って飲んでみるといいものでしょう?」

宥「うん、みんながお酒好きっていうのもわかるかも」

菫「まあ軽く酔うくらいならいいか……」

菫(いや、むしろ宥には記憶がなくなるほど飲んでもらってやり過ごすほうがマシな気がしてきた……)

菫(今日さえ乗り越えれれば、後は私が正しい飲み方と飲む相手を選ぶことの重要性を教えればいい)

菫(そのためにも私が酔いつぶれないよう、気をつけて飲まないとな)

霞「はい、菫ちゃんも飲みましょうね?」

菫「石戸……」

霞「空になってるから注いであげるわ、どうぞ」

菫「いや、私はそんなに飲むつもりは……」

霞「せっかく持ってきたから飲んでもらいたいの」ムニッ

菫「……おい、押し当てるな」

霞「あらごめんなさい。悪気はないのよ?」

菫「………」

霞「宥ちゃんにも飲んでもらいたいんだけど、ガードが固いのよねえ……」

菫「ついでだから聞いといてやる……お前ら揃いも揃って何するつもりだ?」

霞「ふんふむ、それは私達が何か企んでこの飲み会を開いたと思ってるの?」

菫「当然だろう。お前らが勝手に集まって飲むならまだしも、よりによってそこに宥を誘うのは……」

霞「半分正解、半分間違い」

菫「は?」

霞「確かに誘ったのはそれなりの意図があってのことだけど、私達は何もしない」

菫「何もしない?」

霞「何かあるとするなら、それはあなた達のほうね」

菫「何だと?どういう意味だ?」

霞「あらあら、少し喋りすぎちゃったわ。酔うとすぐ口が軽くなっちゃう」

菫「待て石戸、説明しろ」

霞「酔いすぎて眠くなってきたわ……肩、貸してくれるかしら?」

菫「よ、よせっ」

ごっきゅごっきゅごっきゅ

照「………」スッ

怜「お、どうしたんやてるてる。急に立ち上がって」

菫「まさか……」

照「久、トイレ貸して」

久「と、トイレ?もう限界きちゃったの?」

照「違う、全然平気。ただトイレ行きたくなっただけ」

久「はぁー……トイレなら廊下出て突き当たりを左よ」

照「ありがとう」フラフラ、ガタン

哩「大丈夫かあいつ」

菫「まだ歩けているから大丈夫だと思うが……」

怜「てるてる何本飲んだん?」

久「ごーろくなな……8本場か」

菫「八連荘間近だな」

霞「あら、宥ちゃんもだいぶ酔ってるみたいね」

菫「宥?」

宥「………」ポーッ

怜「顔まっかっかやな」

哩「目もとろんとしてるたい、姫子の×××顔を思い出すと」

菫「白水、頼むから黙れ」

久「じゃあ酔い覚ましに冷たいお水でも……」

菫「宥は冷たいものは駄目だ」

久「そうだったわね……じゃあベランダに出て夜風に当たればいいかしら」

菫「そうするかな。私が連れて行こう」

怜「おぉー、やるやないかすみれん」

菫「黙れ」

哩「私も姫子とベランダで×××したときは盛り上がったばい」

菫「やめろおおっ!」

霞「そんなにムキになることかしら?」

菫「ムキになってなどいない!お前らがいろいろおかしいんだよ!」

久「一緒に飲んでると慣れっこになっちゃうのよねえ」

菫「私は絶対慣れたくないな……」

菫「宥」

宥「………」ポーッ

菫「宥、大丈夫か?」

宥「……菫ちゃん?」

菫「ああ、立てるか。少し外に出よう」

宥「………」

菫「かなり酔ってるみたいだな、ここまで弱かったとは……」

ガバッ

菫「!?」

久「おやあ」

霞「あらあら……」

哩「怜、照を呼んでくるばい」

怜「ほな呼んでくるわー」



菫「なっ……ゆ、宥?」

宥「えへへ~、菫ちゃん♪」トローン

菫(い、一体どういう状況なんだこれは……)

菫(私が床に倒されて、その上に宥が覆いかぶさって……)

宥「♪」スリスリ

菫(宥に、頬ずりされている……)

久「菫にはちょっと飛ばしすぎかしらねえ」

霞「固まっちゃってるわね」

哩「?あれくらいいつもやってるとよ」

菫「ゆ、宥っ!」

宥「なーにぃ?」トロン

菫(か、完全に酔っぱらってる!さっきまであんなに大人しかったのに)

菫(それより……宥が酔うとこんな顔するなんて)

宥「菫ちゃんっ」ギュウ

菫「なっ」

宥「菫ちゃん、あったか~い……こうやってくっついてるだけで幸せだよぉ」スリスリ

菫「ちょっ、待て!離れてくれ宥!」

宥「だーめぇ、離さないもん」ギュー

菫「く、苦しい」

菫「宥、君は今酔ってるんだ!だからちょっと外へ冷ましにいこう、な?」

宥「酔ってないもん!」ギュウウ

怜「てるーてるー」ドンドンドン

怜「始まったで、久の計画通りに。今リビングで大変なことになっとる」

『………』

怜「てるてる?どうかしたん?」

『助けて……』

怜「はあ?」

『開かない……』

怜「……何言うてんの」

『トイレのドア、開かない』

怜「……それ、鍵しめたからちゃう?」

『鍵……?鍵って、どれだっけ……』

怜「何言うてんのや!てるてる、あんた酔ってるやろ!」

『酔ってない、大丈夫大丈夫』

菫「よ、酔ってないとか……酔ってるやつに限ってそう言うものなんだ」

菫「だからな、宥。ちょっと酔いを冷ませば冷静になれる」

宥「むぅー……」

哩「おお、菫が粘ってるぞ」

久「面倒くさいわねえ、さっさと受け入れちゃえばいいのに」

霞「宥ちゃんももっと攻めないと。お酒が足りなかったかしらね」

菫「お前らも見てないで止めろ!」

菫「まったくあいつら……宥を酔わせることが狙いだったのか?」

菫「宥、とりあえず離れて……ひっ!」

宥「………」サラサラ

菫「ゆ、宥……?」

宥「菫ちゃんの髪、とっても綺麗……」

宥「さらさらしてて、手触りも良くて、ずっと触っていたい……」

菫「宥……ひゃあ!」

宥「肌もすべすべしてて白くて、綺麗……それに怜ちゃんが言ってみたいに、いい匂いがする」スンスン

菫(まずいまずいまずい!この状況はやばいぞ!)

照「おまたせ」

怜「苦労したわ……」

哩「お前何やってた」

照「トイレのドアが開かなくて困ってた」

怜「ちゃうやろ、酔ってて鍵の開け方がわからんくなってたんや」

照「酔ってない」

久「人ん家のトイレで何やってたのよ……」

照「それより何かすごいことになってるね」

霞「もう後一押しって所ね」

菫「て、照っ!見てないで何とかしろ!」

照「……そうだよみんな、見てるだけじゃ駄目」

照「ムービーで撮っておかないと」

久「それもそうね」

菫「お前らあぁぁ!」

宥「もう……菫ちゃん逃げちゃだめっ」

菫「!?んーっ!んー!」

宥「えへへ、菫ちゃんをマフラーでくるんじゃった」

宥「こうすれば暖かいし、もう逃げられないよね?」

菫「んんーっ!」

久「今のマフラーの使い方はどう思いますか解説の宮永さん」

照「そうですね……こうして見ると宥さんにはヤンデレの素質があると思います」

霞「というと?」

照「菫への束縛と独占欲。自分のお気に入りであるマフラーを使ってるあたりがわかりやすいですね」

哩「私なら鎖ば使うっぞ」

怜「誰も聞いとらんで」

菫「ぷはっ、ゆ、宥」

宥「あ……」

菫「も、もうこんなことはやめよう。宥はこんなことしちゃいけないんだ」

宥「どうして……」

菫「これじゃあいつらの思う壺だ。あいつらは宥の酔っぱらったを見て楽しんでいるんだ」

宥「……嘘」

菫「え?」

宥「そんな嘘ついて。菫ちゃん本当は、私のこと好きじゃないんでしょ……?」

菫「なっ、何でそういうことになるんだ!」

宥「だって!菫ちゃんずっと、迷惑そうにしてたじゃない……」

菫「い、いきなりこんなことされれば戸惑うだろ」

宥「やっぱり嫌だってことだよね……」

菫「い、嫌というわけじゃなくてな……」

宥「ううん、もういいの。私なんか菫ちゃんに嫌われて当然だから……」グスッ

菫「!?宥、泣いてるのか……?」

照「今度は泣き上戸みたいだね」

久「盛り上がって参りました」

菫「竹井、本っ当に後で覚えてろよ!」

宥「寒がりだし、もう大学生なのに抜けてて、菫ちゃんやみんなに迷惑かけてばっかりだし」

宥「今日だってそうだよ……みんなと一緒の飲み会なのに私だけ温めてもらって、気を使わせちゃったり」

菫「宥……」

宥「菫ちゃんは優しいし、親切だし、しっかりしてて立派だし、とっても暖かい人だと思うの」

宥「だからみんなから好かれてて、みんなが一緒にいると楽しそうで、みんなの中心にいて……」

宥「私なんかと全然正反対だよ……」グスン

菫「宥、そんなことは……」

哩「照、菫ば優しいか?」

照「うん、頼めば借りてたDVDを返しに行ってくれるくらい優しい」

怜「優しすぎやろ。ウチのも頼みたいわ」

霞「そうねえ、確かに菫ちゃんと一緒にいるのは楽しいわね。いろんな意味で」

久「ああー、それは言えてるわね。ニヤニヤしちゃうというか」

菫「………」

菫(とりあえず後ろは無視しておく……今はな)

菫「……宥、泣かないでくれ」ギュッ

宥「す、菫ちゃん?」

菫「私は宥の言うような立派な人間ではないよ。宥は私を買いかぶりすぎてる」

菫「こうやって、好きな人が泣いてるのを見るだけで心乱れてるんだから……」

宥「え……?」

菫「私に無償の優しさや親切があるかどうかなんて知らない」

菫「だが、少なくとも私は君からありがとうという言葉や、私に向けられる笑顔が見たくてそうしてきたんだ……」

菫「私は暖かい人間ではない……いつも私の心を暖めてくれたのは宥、君なんだ」

菫「それに……さっき宥に抱きつかれるのは嫌かと聞かれたけど」

菫「嫌なわけじゃない。ただ酒の勢いでそうするんじゃなくて、きちんと気持ちを伝えあった上でそうなりたいんだ」

菫「だから今、宥に私の気持ちを伝える……」

菫「宥、私は君のことが……」



宥「………」スヤスヤ

菫「………」

久「はいお疲れ様でしたー」

霞「なかなか楽しめたわねえ」

怜「オチとしても完璧やな」

哩「そんじゃ飲みなおすとするけん。霞、まだ魔王はあるか?」

霞「まだ開けてないのがあったはずよ」

照「私も飲まないと。買ってきたやつまだあるし」カシュッ

怜「てるてるもまた飲むんか……さっきみたいのは御免やからな」

照「私のターンはまだまだ終わっていない」ごっきゅごっきゅ

久「はいはい菫、毛布かけるからどいて」

久「それともそのまま抱きしめてる?」

菫「……るな」

久「ん?」

菫「ふざけるな」

菫「結局お前らの目的は何だ」

菫「宥を酔わせて、こんな宥を見るために飲み会を開いたのか」

久「んー」

菫「答えろ」

久「正確ではないわねえ。酔ってもらうのはあなたと宥、どっちでもよかった」

久「ただ菫はガードが固かったから、仕方なく宥に狙いを絞っただけよ」

霞「言ったわよね?何かあるとすれば、それはあなた達だって」クスッ

菫「……どういうことだ」

怜「ニブチンやなー、すみれんは」

照「鈍感」ごっきゅごっきゅ

菫「鈍感だと?あとお前もう飲むのやめろ!」

久「なかなか自分の気持ちを伝えられなくてウジウジしてた二人がいたからねー」

久「ちょーっと手伝ってあげようかなって思っただけよ」

菫「なに?」

久「で、どうだったの?宥からあんな風に迫られて」

菫「なっ……」

久「どうだった?あんなくっさい愛の告白してみて?」

菫「だ、黙れ!」

哩「傑作ぞあれは。宥の寝オチも含めて」

霞「私もあんな情熱的なセリフで口説かれてみたいわ」

菫「黙れ黙れ!」

照「最後は普段の菫からすれば頑張ったほうだと思う」ごっきゅごっきゅ

怜「そうやな、普段はしょうもないほどヘタレやからな」

久「それもお酒の効果かしら」

菫「うるさい!」

照「菫もちょっと落ち着いて、飲もうよ」ごっきゅごっきゅ

菫「ふざけるなよ……お前らこうやって私をからかって楽しむのが目的だったのか!」

久「まあ楽しいのは楽しいけど、むしろ感謝して欲しいわね」

久「私達がお膳立てしたおかげで、心をさらけ出すことができたんだから」

哩「私らとしても大成功」

霞「私達は菫ちゃんをからかいたいんじゃなくて、手助けしてあげたいと思っていたのよ」

久「そうそう、菫を見守る会ね」

怜「てるてるが会長や」

照「………」

菫「……もういいわかった、これ以上お前らと会話する気は毛頭ない」

菫「とりあえずお前らには今日あったことを全部忘れてもらうようにする」

菫「私は酒の力は使わないぞ。物理的に、だ」

霞「あらあら、あんまり騒いだら宥ちゃんが起きちゃうわよ?」

菫「黙れ。これ以上お前らに笑いの種にされてたまるか」

菫「私だけじゃない、宥にまで迷惑がかかるからな」

久「それは無理よ、菫。あなたは私達に敵わないわ」ニヤリ

菫「何……?」

怜「ほい再生」カチッ

『いつも私の心を暖めてくれたのは宥、君なんだ』

菫「」

『好きな人が泣いてるのを見るだけで心乱れてるんだから』

菫「やめろ……」

『だから今、宥に私の気持ちを伝える』

菫「やめてくれ……」

『宥、私は君のことが……』

菫「やめろおおぉぉぉ!!!」

宥「………」スースー

菫「消せ!今すぐ!」

久「ちょっと無理な相談ね。これは菫への切り札に使えれそうだから」

久「映像と一緒に動画配信すれば人気出そうねえ」

菫「この悪魔め……!」

照「………」

哩「まあそう怒ることなか。ほれ、魔王。お前も飲むたい」

菫「ふざけるな!もうお前らと一緒に飲むつもりはない!今度誘われても絶対行かないからな!」

菫「私は帰る!」

怜「お、宥ちゃんはどうするんや?」

霞「そういえば、まだ寝たままだったわねえ。起こすのもかわいそうだし……」

菫「う……」

久「置いていってもいいわよ。もう夜も遅いし」

久「私達がちゃーんと面倒見てあげるわ」

菫「こ、こいつ……」

宥「………」スースー

菫「………」グイッ

宥「ううん……」

怜「おおーっ、やるなあすみれん」

哩「背負っていくがか。そのまま帰るのはきつうないか?」

菫「……このくらいなんともない」

久「格好いいわねえ、惚れちゃいそうだわ」

菫「竹井……覚えてろよ、お前。この屈辱は忘れんからな」

久「感謝される覚えはあっても恨まれる覚えはないわねえ」

怜「ほな道中気をつけてなー」

哩「ムラムラしたら物陰に入ればよか。我慢は体に毒ぞ」

霞「送り狼にならないようにね」

菫「お前ら全員呪われろ!」

バタン

久「どんな捨て台詞よ……」

哩「しかし初々しか。私もあげな時期もあったと思うと感慨深い」

怜「今は黒ずんでるんやな」

哩「?まだピンクのままぞ」

霞「いいわねえ、ああいうの。私もあんな恋をしてみたいわ」

久「そうね……久々に手を出したくなっちゃったじゃない」

怜「宥ちゃんはあかんで。久の頭が射抜かれるわ」

久「宥もいいけど、菫もね」

哩「そうなっと、マフラーで絞められるハメになるとよ」

久「そういえば宥はヤンデレっぽいとか言ってたわね……」

哩「ばってん久、こげな上手くいくとは思わなんだな」

久「んー、そうねえ。まあ私も正直宥があそこまで乱れるとは思ってなかったけど……」

久「でもまあ、普段から溜め込んでいたんだろうし、お酒でそれが緩まったってところでしょうね」

哩「性欲がか」

怜「自分基準にするのはあかんで」

久「菫のほうはどうしても警戒されるだろうし、でも菫が酔ってなくてよかったわ」

久「おかげで素面の状態であんな面白いセリフ聞けたんだから」クスクス

怜「全部計画通りなんか」

久「思いついたのは照なんだけどね」

霞「あら?そういえば、照ちゃん……」

照「………」

久「あー……」

哩「置いていかれたな」

久「まあ、しょうがないわね。いいわよ照、今日はうちに泊っていけば」

怜「私らもそのつもりやったしな」

霞「ちょっと不安ね。変なことされないかしら?」

久「さすがにこの面子に手を出す度胸はないわよ……」

哩「?どうした照、さっきからずっと喋らんで」

怜「そういえばお酒も進んどらんなあ」

照「……き」

久「?」



照「きもちわる、い……」

久「……へ?」

照「うう……」

久「ちょっ、ちょっと待って照。気持ち悪いって、やめてよね?」

久「ここ私の部屋なのよ?しかも借りたばっかりなんだけど」

怜「落ちつくんや久、てるてるトイレいくで。はよ立たんと」

照「むり……」

哩「今水持ってくるけん、何とかこらえろ!」

照「むり、むり、ギギギーってきそう……ギギギーって」

久「やめて、ギギギーはやめて!ここでするのはお願いだから!」

久「菫!お願い助けて、あなたの出番よ!」

怜「しっかりしいや久!もう帰ってもうたで!」

霞「袋あるでしょ!?するならその中へ……」

照「」

久怜哩霞「」

菫(竹井、お前は気づかなかったようだな……照が黙りこくってたらそれは崩壊の合図)

菫(対処が遅れれば大変なことになる。私が何回も経験してきたことだ……)

菫(ざまあみろ)

宥「うぅん……」

菫「宥……」

菫(まったく、お膳立てがどうこう言われたが……そんなわけあるか)

菫(宥は酔っていたんだ。どこまで本気だったのかわからないし、それに……)

菫(私の伝えたかったことも、明日になれば全て忘れているだろう……)

菫(結局……全ては変わらないままだ)

菫「はぁ……」

宥「……菫ちゃん?」

菫「宥?起きたのか?」

宥「菫ちゃん、ここは……え?ええっ?」

菫「こ、こら、暴れたら危ないぞ」

宥「だって、菫ちゃんにおんぶされて……」

菫「ああ、宥が寝ていたからあの場においていくのもアレだし、すまないがこうやって運ばせてもらっている」

宥「お、おろしてよぉ」

菫「い、嫌だったのか?」

宥「嫌じゃないけど……私、重いもん」

菫「そんなことない、背負ってみて思ってたよりずっと軽くて驚いた」

宥「うぅ……」

菫「それに目が覚めたといってもまだ酔いは残っているだろう」

菫「そんな状態で階段とか歩くのは危ないからな」

宥「私、そんなに酔っぱらってた?」

菫「……ああ」

菫(やっぱり、覚えていないか……)

宥「………」

菫「宥?」

宥「……っく、ぐすっ……」

菫「な……宥?また泣いているのか?」

宥「だって、だって……」

宥「こんな風に迷惑かけちゃって、また失敗しちゃって……」

宥「いつもそうだよ私は……菫ちゃんと一緒にお酒飲めるって、楽しみにしてたのに」

宥「だけど結局、菫ちゃんを困らせちゃって、迷惑をかけて……」

宥「どうして上手くいかないんだろ、どうして進歩しないんだろ、どうして……」

菫「……私は、迷惑だなんて思ってない」

宥「けど……」

菫「宥、私に気を使われるのは嫌か?」

宥「え……?」

菫「私に優しくされるのは嫌か?親切にされるのは嫌か?」

菫「嫌なら嫌と、はっきり言ってくれ」

宥「嫌、じゃないよ……嫌なわけないよ」

菫「私もだ。こうやって宥を背負っていて嫌だとは思っていない。迷惑だと思っていない」

菫「むしろ、今みたいに宥が自分を責めているほうが、つらい」

宥「!」

菫「私も宥も、いろいろ抱え込みすぎてるな」

菫「そういう意味では確かに今日は、そういうものを発散させるのにいい機会だったかもしれない」

菫「発散させるというか、お互いが抱え込んでいるものを知り合う機会か」

菫「私はさっき、宥が溜め込んでいた気持ちを知ったよ」

宥「え?」

菫「それは酒の場だったからなのかもしれないけど、それを聞いて私も宥に自分の気持ちを知ってもらいたかった」

宥「菫ちゃんの、気持ち……」

『だから今、宥に私の気持ちを伝える』

菫「もう一度聞いてくれるか?」

菫「今のままじゃ嫌なんだ。相手の気持ちを知らないままで、お互い傷つけてしまうことの繰り返しは」

菫「宥、私は君のことが……」

宥「言っちゃ駄目!」

菫「ゆ、宥?」

宥「言っちゃ駄目だよ……菫ちゃんの気持ちは、さっき聞いたから」

菫「覚えて、いるのか?」

宥「ううん……夢だと思ってた。でも本当だったんだね」

宥「菫ちゃんは、本当に私のこと……」

菫「………」

宥「言っちゃ駄目だよ。それは私がずるすぎるよ。菫ちゃんに頼りっきりで、菫ちゃんの言葉を待ってばっかりで」

宥「菫ちゃんの気持ちは伝わったから……今度はちゃんと私が伝える番」

菫「宥……」

宥「菫ちゃん、私ね……菫ちゃんのこと、大好きなんだよ」

菫「ああ……」

宥「好き、好きっ、本当に大好きなんだよぉ……」ギュウウ

菫「私も……」

菫「私も、宥のことが大好きだっ……」ポロポロ






久「……復讐しましょう」

照「賛成」ごっきゅごっきゅ

哩「飲んでっと掃除手伝え!」

カン

支援感謝です、本当に何を書けばよかったのかね
トイレに入ったら鍵が開けれなくて出られなくなった実話

>>128お大事にとしか・・・

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