A「空の旅、か」 (27)

飛行機//


A「無事に着くといいなぁー」

B「なんだ、藪から棒に」

A「なぁなぁ、Bはさ。今まで飛行機って乗ったことある?」

B「ないよ。今回が初めてだわ」

A「お前もかー。俺も」

B「で? 急にどうした?」

A「いやね、なんか言ってみたかっただけ」

B「なんじゃそりゃ」

A「実際さ、空に来てみて、どう感じた?」

B「どうって?」

A「こう、率直な感想」

B「んー……、どうとも、って、感じかな? 特になんとも」

A「そうかー」

B「お前は?」

A「俺もだわ。行く前は色々思ってたけどさ。今は大して何とも……」

B「そうか。Cはどうだ……、って、聞くまでもないか」



C「……っ……っ」ガタガタガタガタ




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A「あいつ、怖がりすぎだよな」

B「でもまぁ、俺も最初は怖かったからなぁ。仕方ないか」

A「先輩らは誰一人怖がらなかったというのに」

B「まぁ、全部聞いた話だけどな。話じゃあ先輩たちはみんな怖がらなかったって聞いたけど、
  実際、Cみたいな人もいたんだろうなぁ」

A「そうなの!?」

B「知らないよ。多分だよ多分。お前人の話を真に受けすぎ」

A「そっか……。そうだったのか」



B「まぁ、ここまでビビってたかは知らんけどよ……」

C「…………」ガタガタガタガタ

A「Cは臆病者だからなぁ」

B「そんなに怖いもんかねぇ」

A「おーい、Cよ。寝てたらマシになるぞ。寝ろ寝ろ」

C「ね、……、寝れないよ……」ガタガタ

B「はぁー。すいませーん、水ください」


「かしこまりましたー」


男2「にしてもお前さ、ちょっと落ち着けよ」

C「ぎ、逆に、なんで、お前らはそんな落ち着いてられるんだよ……」ガタガタ

A・B「はぁ?」


C「そ、空なんだぞ!?」ガタガタ

A「だから?」

C「も、もうここは空の上なんだぞ!?」ガタガタ

B「そうだな」

C「もう、……もう、空の上まで来ちゃったんだぞ!?」ガタガタ

A「お、おう」

C「飛行機にのって、空の上まで来ちゃったんだぞっ!? 怖いだろう!!」ガタガタ

B「さっきから何回同じこと言うんだよ。わーってるよそんなことは」

C「だったら! なんで。……なんで、そんな落ち着いてられるんだよ……。普通、怖いだろうがよ……」ガタガタ

A「なんで、って。……なぁ?」

B「別に、怖くないしなぁ」

C「お前ら、なんで……、――うぷっ!」


オロロロロロロ、ビシャビシャ


A「!? ちょ、お前なに吐いてるんだよ!」

B「飛行機に乗って、緊張しすぎでゲロとか……。お前メンタル弱いな……」

C「はーっ、はーっ、……ごめん」


「お、お待たせいたしました。お客様。大丈夫ですか!?」


B「あぁ、水。ほら、C。飲め」

C「あ……、ありがとう」ゴクゴク


「前方の座席に空きがございますので、もしご気分が悪くてどうしようもないようでしたら、
 横になれますが……、いかがいたしますか?」


C「え、えっと……」

A「そうしてもらえよ。……すみません。お願いします」



「畏まりました。ではそのようにいたしますので、少々お待ちくださいませ。
 お掃除の方もすぐに参ります」スタスタ


C「…………」

B「大丈夫かよ?」

C「あ、あぁ」

A「あ、そうだ。……あった、これこれ。もし吐きたくてどうしようも無くなったらこれ使えよな」

C「…………。あぁ、ありがとう」

B「お前の分は?」

A「まだ二つある」

B「用意いいなぁ、お前」

A「まあね」

「お待たせいたしました。お席の準備ができましたので……」

B「ありがとうございます。……おい」

C「あぁ。じゃあな……」ガタガタ

A「おう」

B「なに、向こうに着くころには元気になってるさ」

A「アメリカまではもうすぐだぞ!」

しばらくして、、、



A「ん? なんかざわざわしてるな」

B「あれだろ。昼食の時間だよ」

A「あぁ! 機内食ってやつか」

B「フィッシュ、オア、ビーフ? だな」

A「フィッシュ、オア、チキン? じゃなかったっけ?」

B「えー? そうだったか?」

A「ま、どっちにしろ。俺は魚派かな?」

B「俺もだなー。あっさりした魚が好きだわ」


「お待たせいたしました、お客様」


A「お、来た来た」

B「お姉さん。フィッシュで」

「申し訳ございません。『ビーフ、オア、チキン』でお願いいたします」


A「Oh……」

B「じ、じゃあチキンで……」

A「お、俺もそれで」


「畏まりました」


B「てか、Cの吐瀉物みたばっかりだから、なんか食欲わかねぇわ」

A「そうか?」モグモグ

B「お前は鈍感だなぁ……」

A「喰ってみろよ。美味くはないけど、不味くもないぞ」

B「せめて嘘でも『美味い』って言えよ」

A「いやぁ、そんなことで嘘ついてもじゃん?」

B「ったく。……、ほんとだ、美味くはないけど、不味くもない」

A「でしょー?」

B「なんていうか、栄養補給のために肉食べてます、って感じ」



A「そういや肉で思い出したけどさ。知ってるか? インドじゃあビーフは食べちゃいけないんだぜ?

B「へー、マジで? 宗教上の理由?」

A「そうそう」

B「マジかよー、じゃあ肉全然たべれないじゃん」

A「チキンorマトン? ってことだよな。厳しいよねー」

B「なー。インド人かわいそうに」

A「でもさ、チキンって美味しいよね」

B「分かる。これくらいあっさりヘルシーな方が好きだわ」

A「じゃあ、インド人も幸せだ」

B「よかったよかった」



B「……ふぅ、いい感じに腹いっぱいだ」

A「なぁなぁ」

B「何だよ」

A「現地に着いたら何する? ってかさ、まず向こうってさ、実際どんな感じだと思う?」

B「あーん? そうだなぁ、めっちゃいいとこらしいな」

A「本にはそう載ってたんだけどさぁ。実際に現地に行かないとわからないことってあるじゃん?」

B「まぁ、嘘は書いてないだろう。それじゃ詐欺だよ」

A「そうか詐欺か」

B「うん」


A「そっかー、じゃあいいとこなんだろうなー」

B「親父たちも楽しんでる」

A「そういや、お前の家族は向こうに住んでるんだっけ」

B「そ。親父とおふくろと、兄ちゃんと妹」

A「いいなぁー。俺なんて向こうについても一人きりだぜー?」

B「いや、まぁ、久々に家族に会えるのはいいんだけどさ。俺からすればお前の方が羨ましいよ」

A「なんで?」

B「だってさ。あの国の女はさ、めっちゃ美人なんだぜー? ヤリたい放題なんだぜー?」

A「おうよ! へっへっへ、今から楽しみだぜ」

B「だってのに、現地に家族がいたらさ、楽しめるもんも楽しめねーじゃねぇか! 気まずいだろが!」

A「俺に怒られても……」

B「知ってるよ。でも、羨ましいな、って話!」


A「まぁ、お前の親父も兄ちゃんも、エンジョイ性生活してるよ」

B「それはそれで気まずいわ!」

A「それにあれだよ! 向こうの国は女だけじゃなくてさ、酒も美味いそうじゃんか!」

B「あぁ。後、肉な。肉! あの国の肉はすげー美味いらしいぜ?」

A「さっきのチキンよりな」

B「勿論。100万倍美味いに決まってらぁ」

A「あぁー。もう、超楽しみだぁー」

B「まったくだぜ」



A「いやー、ほんと、早く、無事に着くといいなぁー……」





C「…………」ガタガタ


C「…………」ガタガタガタ


「お客様? 大丈夫でしょうか?」


C「あ……、は、はいっ……」ガタガタガタガタ


「もうすぐアメリカに到着いたしますので……」


C「! そ、そうですか……」ガタガタ



「はい。向こうはいいところですよ。医療も充実していますし。きっとすぐに治ります」ニコッ


C「あ、……」


「私の娘も身体が弱かったんですが、今では随分良くなりまして。
 最近は帰るたびに、あちこち連れてけー、って。うふふ」


C「あの、実は――!」


「? どうなされました?」


C「……っ!?」ハッ



C「…………」








C「…………」ガタガタ









C「…………」ガタガタガタ













C「…………」ガタガタガタガタガタガタ











「だ、大丈夫ですか!?」




C「……ぱり、」ガタガタガタガタ



「え?」



C「やっぱり……、俺には、無理だ」ガタガタガタガタ


「なにを――?」






C「うわああああああああああああああああ!!!!」



管制塔//


『こちらXXX便、高度安定。機器異常なし。予定時刻ちょうどに着陸します』


「こちらアメリカ○×国際空港。了解した。もう少しだ。気張ってくれ」


『XXX便。了解しました』


「あー、っと。そうだ。後もう一つ。今、こっちの空港には政府高官の乗ったジェットがあるからな。
 くれぐれも、着陸ミスのないように」

『ハハハ、これでもベテランです。この晴天で、そんなミスはしませんよ』

「ならいい。まぁ、よっぽど何か起きない限り、ぶつかることはない。安心してくれ」


『了解し――(パァン!)……なんだ!?』


「なんだ!? おい、どうした!?」

『分からない。キャビンの方から、じ、銃声が!』


「なんだと!?」

飛行機//




パァン!




A・B「!?」




「な、なんだなんだ!?」
          
        「きゃあああああああ!!」

「え!? 何今の音!?」
                  「銃声!?」

    「ハ、ハイジャックか!?」



 ざ わ ざ わ
  
          ど よ ど よ





「どうしたの!?」


「そ、それが――!」




「――さ、先ほど、具合が悪いと横になられたお客様が、け、拳銃で自殺をして……!」






A「…………」

B「…………」








A・B「はぁー……」





A「あーあ、あいつ吐きそうになっちゃったんだなぁ。限界だったのか」

B「Cのやつ……。もう少しだったのに……」

A「緊張に耐えきれなかったのかな?」

B「ま、おおかた、殺すのも死ぬのも怖かった、ってところだろう」

A「なのに自殺?」

B「先輩の話だとさ、そういう輩もよくいたらしいよ。任務を成し遂げず逃げ出す輩もいたらしい」

A「マジかよ。みんな勇敢に任務を遂行したって聞いたのに……」

B「だから言ったろ。お前は人の話を信じすぎだって」

A「そっか……」

B「ま、この距離なら問題ないだろう。よく我慢したよ。任務遂行だ。あいつの魂も救われるだろう」

A「あぁ、そうだな。極限状態で、助かりたい一心で、余計な情報を吐いて生き延びようとする前に、
  自分でけりをつけたんだ。Cはよくやったよな」






「自殺だって!」
 
         「なんだよそれ!?」

 「何が起こってんだよ」  


「わ、私! お連れの方にお伝えしてこないと!」



    ざ わ ざ わ
  
               ど よ ど よ





B「そういうことだ。……じゃ、準備はいいか?」

A「あぁ。空港が遠ざかる前に、さっさと行こう」

B「向こうに行ってもよろしく」

A「おう。向こうに行ったらがっつりハーレム楽しもうぜ」

B「あと、食べ放題飲み放題もな!」

A「よっしゃ、じゃあいくか!」

B「じゃあスイッチ握ってー……」




「お客様大変で……!? お、お客様、何を!?」



A「さーん」


B「にー」




A・B「「いーち!」」



「!? ふ、伏せ――!」








A・B「「いざ! 神の国へ!!」」







 その日、アメリカ合衆国にて、テロが発生した。死者・行方不明者多数。機内の生存者は0。
また、空港に墜落した結果、空港内にいた市民、そして政府高官を巻き込み、命を奪い去った。
政府の調査によると、機内で爆弾が爆発し、機体に大穴があき、バランスを保てなくなり墜落した、
というあらましであったということだ。

 なお、実行犯については、容疑者と思しき青年が3人。後の調べで、彼らは幼い頃から、とある宗教の
過激派のグループに教育を受けており、今回のテロは、そのリーダーの命令によるものだということが分かった。


 死の間際、撤退不可の空の上で、果たして彼らは何を思ったのだろうか? それを知るものは、誰もいない――。



                                                 END

では、以上でした~。

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