ベルトルト「秘密と嘘と約束」(42)

激しい雨は扉や窓をドンドンと叩いた。

倉庫裏で傘をさした女性が不器用な笑顔を見せる。

ユミル「何やってんだよ、こんな所で」

ビショビショに濡れた私服が肌に当たって冷たい。

僕は恐る恐る段ボール箱を彼女に見せた。

ベルトルト「たまたま見つけたんだ」

段ボール箱の中を除いた彼女は内心驚いていたような表情を見せる。

__湿った空気の訓練所に、「ミャア」と鳴き声が聴こえた午後5時の出来事。

もしCPあるなら表記してくれると嬉しいな

>>2

一応ベルユミの予定ですがどこかで展開変えて違うCPになるかもしれません。

ユミル「放っておけよ、子猫なんか」

ユミルはそう言いながらも子猫を優しく撫でた。

子猫は気持ち良さそうに鳴く。

ベルトルト「でも……怪我してるんだ。
子猫が自分からわざわざ段ボール箱に入るとは思えないし、きっと飼い主が捨てたのかな」

その言葉を聞いてユミルは子猫の手足を見つめた。

右の前足はほんのり血に染まっていた。

ユミル「教官に見つかったら怒られるのに訓練兵が子猫なんか飼うと思うか?」

ベルトルト「……思わないね」

ユミルの発想で僕の考えはあっさりと否定された。

内緒で子猫を飼っているなんて、ヒドい場合は怒られるどころじゃ済まないだろう。

新しいベルユミか
もしかして>>1はあの最近完結したベルユミの作者さんか?

違っていたらスマナイ。
だけどもしあの作者さんの影響で他のユミル受けに感化されたのなら…

ユミル総受け書いたって良いんだぜ?
パンツまで脱ぐ準備は出来ている(バッ
ベルユミ書きは期待を裏切らないから待機してるぞ、頑張れ!

>>7

すみません、違いますね……。

皆さんの期待を裏切らないように頑張ります!

ユミル「訓練兵の誰かがこの子猫を見つけて、飼ってあげたいけど出来ないからせめての思いやりとして違う人に拾ってくれる事を願って段ボール箱の中に入れてあげたんだろう」

確かに、ユミルのその推理なら納得がいく。

ベルトルト「……その子猫、どうしようか?」

ユミルの腕の中に収まった子猫がウルウルした目で僕とユミルを交互に見る。

どうせユミルも見て見ぬ振りをしようとしているのは想定できた。

ユミル「……2人で飼おうじゃないか」

……え?

一瞬、聞き間違いかと思ったがどうやら僕の予想は外れたようだ。

ユミル「私もたまにはこういうのに癒されたいからな。
あ、勿論この事は内緒だ。
教官にチクったらただじゃおかない。
いつバレるかどうかのスリルもたまらないな」

その途端、僕達の会話が何となく理解できたのか、子猫の顔が急にパアッと明るくなったような気がした。

ユミル「あ、否定権はないからな。
段ボール箱の場所はもうちょっと茂みに置いた方が良いな……よっと」

そう言うと、ユミルは傘を地面に置き、子猫を片手で抱き締めたまま段ボール箱をもう片方の手で移動させた。

ベルトルト「傘ささないと濡れちゃうよ」

僕はユミルの傘を持ち、ユミルと子猫が濡れないように手伝った。

ユミル「私は別に良いんだよ。
それより自分の心配したらどうだ?」

ユミルの言葉に気付いた時にはもう遅かった。
髪も服も靴も完全に濡れている。
何故、自分の傘を持って来なかったのだろうと我ながらに呆れる。

その間にユミルは子猫と段ボール箱を移動させていた。

ユミル「さぁ、そろそろ夕食だし戻るか」

僕は寮に戻って着替えないと。

子猫に手を振って寮へ歩き出した。

ユミル「じゃあな、ノーク」

ユミルの1言で足の動きが止まる。

ベルトルト「ノークって……?」

ユミル「私が名付けた子猫の名前だ。
性別も分からないからどっちでも使えそうな名前にした。
由来はスノーフレークっていう私のお気に入りの花でな、意味は清純とか純粋とか……」

説明している途中で「清純」や「純粋」というワードがユミルの口から出てきた途端、吹きそうになったのを両手で口を塞いで誤魔化した。

成る程。
  ..   .
スノーフレークで「ノーク」か。

ユミル「じゃあ、今度こそ戻るか」

僕が返事をする前にユミルは傘を持って帰ってしまった。

びしょ濡れになった髪をかき上げ、寮の部屋に入る。

今が夕食の時間のせいか、部屋には誰も居ない。

僕はベッドに腰をかけて着替え始めた。

よく見ると、雨のせいかシャツが濡れて肌がうっすらと透けて見える。

……胸の辺りは見えなかったけど、ユミルのシャツも雨で透けて肌が見えてた。

頭を横切る記憶に我ながら赤面する。

何考えてるんだろう、僕。
別にそういうの見たい訳じゃないのに。

別に……大して意識なんかしてないのに。

着替えも終わり、ベッドから立ち上がって食堂へ向かう。

誰かに食べられてなきゃ良いけど。

食堂に入ると、思ったより人は少なくなかった。

幸いな事に、ちゃんと僕の分もある。

僕はライナーの隣に座った。

ライナー「遅かったな、散歩か?」

ベルトルト「う、うん……」

僕は一瞬答えに戸惑ったが、とりあえず話を合わせる。

ライナー「こんな雨の日にか?」

ベルトルト「そっちの方が落ち着くんだよ」

これはあながち嘘ではない。

元々散歩をしていて段ボール箱に入っていた子猫……いや、ノークを見つけた事から始まったのだから。

すでに食堂に居たユミルはいつも通りクリスタと一緒に夕食を仲良く食べていた。

ライナー「アイツがどうかしたのか?」

僕の視線に気付いたライナーが声をかける。

ベルトルト「いや……」

言っちゃ駄目だ。

僕とユミルは秘密の関係だから。

ライナーやアニにも言えない隠し事だから。

いつの間にライナーは夕食を食べ終わっていた。

ベルトルト「無理して待たなくて良いよ」

ライナー「おう、すまん……。
じゃあ、先に戻っとくな」

ライナーは小走りで食堂を出た。

気付けば食堂に居る人は5分の1にまで減っていた。

パンを食べ終え、誰にも見られていない事を確認し、スープの入った器を持ってこっそり食堂を出た。

ユミルとクリスタは少し前に食堂から出ていったが、今のユミルの居場所なら分かる気がする。

もう雨は降っていないが、灰色の雲で空は覆われていた。

倉庫裏でしゃがみこんで子猫に話しかける女性。

ベルトルト「……ユミル」

ふと名前を口にし、彼女は僕の方へ振り向いた。

ユミル「……どうした、ベルトルさん」

ユミルは思わず右手を隠した。

だけどもうバレバレだ。

ベルトルト「パンを残していたのはそういう事だったんだね」

その言葉を聞いたユミルは溜め息をした。

ユミル「はぁ……ノークにあげて何が悪いんだ。
そういうベルトルさんだって人の事言えないだろ?」

ユミルはそう言いながら僕が持っているスープの入った器を指す。

ベルトルト「でも……」

ユミル「何だ?
猫はパンを食べちゃいけないのか?
餌付けするのは駄目なのか?」

ユミルの言葉は氷の柱のように次々と僕に突き刺さる。

押し潰されそうな圧迫感の中、おずおずと声を出した。

ベルトルト「……ユミルだって、れっきとした女の子でしょ?」

ユミルは思わずノークを撫でていた手を止めた。

ユミル「だ、だからどうした」

急な言葉に焦ったのか、声はやや裏返っている。

顔は赤くはなっていないが、照れを隠しているかのようにそっぽ向く。

ベルトルト「女の子は体力つける為にもっと食べないと」

ユミル「わ、私は別に良いんだって」

ユミルはまた丁寧にパンを一口サイズにちぎってノークにあげる。

こうしてパンは4分の1にまで減っていた。

僕は更にパンをあげようとしたユミルの手首を思わず握った。

ユミル「な、何すんだよ……」

しばらく黙って見ていたが、急に行動する僕にユミルは驚いた表情を見せる。

照れたり、驚いたり……君はコロコロと顔が変わって面白いね。

なんて冗談を言ったら殴られそうなので心の中にしまった。

ベルトルト「ユミル、もうそこまでにしよう。
少しでも食べないと明日の訓練に困るよ」

僕はユミルの握っていたパンを持ってユミルの口に押し込んだ。

そうでもしないと食べてくれないと思ったからだ。

ユミル「ん、ぐ……」

ユミルはパンを飲み込もうと必死に口を動かす。

僕はノークの前にスープの入った器を置いた。

そこに顔を突っ込んで飲む姿が愛らしい。

ユミル「……私の事なんて気にしなくて良いのにな」

ユミルはそう呟きながら僕を眺めていた。

ベルトルト「ユミルは女の子だから余計気にしちゃうよ。
あ、もしかしてダイエット中だったとか?」

本当はしっかり食べてほしいけど、もしダイエット中だったらお気の毒だな。

ユミル「ベルトルさんは何回女の子って言えば気が済むんだ」

その質問に僕は答えるつもりはない。

だってどう返して良いのか分からないから。

代わりに苦笑いをするとユミルはうつ向いた。

ベルトルト「じゃあ……」

会話があまり続かない。

僕は帰る事にした。

ユミル「……待て」

ユミルの声が聞こえる。

その衝動で振り返ってしまった。

ちゃんと返事しなかった事、怒ってるのかな。

ベルトルト「な、何……?」

ユミル「……いや、やっぱり何でもない」

言いたい事を躊躇うのはよくある事だから仕方ない。

僕はユミルの言葉は無かった事にして寮へ足を運ぶ。

ユミルの言いたかった事ってなんだろう。

深くは考えない方が良いのかも知れない。

……今は。

部屋に戻ると、全員ベッドに腰掛けてダラダラと話していた。

全員、バスタオルや石鹸を抱えている。

ベルトルト「ごめん、僕もすぐ準備するから」

僕はなんとなく雰囲気を読み取り、急いでベッドの周りに置いてあるタオルや着替えの下着を手に取った。

入浴の準備物を適当に揃えると皆と一緒に部屋を出た。

エレン「そんなに急がなくても良かったのにな」

ベルトルト「いつも皆に迷惑かけてるんだし、僕だってたまには急ぐよ」

ふとエレンの発した言葉に返事を返す。

エレン「迷惑……?」

どうやらエレンには分からないらしい。

身近に迷惑をかけているのに。

ジャン「寝相の事か?」

僕とエレンの会話にジャンが身を乗り出す。

エレン「あぁ、アレか。
確かに寝相の悪さにはビックリしたな」

理解したのかエレンは相槌をうった。

寝相の事については僕も何となく理解している。

昔、ライナーやアニにも注意された。

だけど未だに最善策が見つからないのは不思議だ。

アルミンに相談しても悩まれるばかりだろう。

コニー「どうやったらあんな感じになるんだろうな」

コニーはそう言いながら笑い出す。

ベルトルト「あはは、ごめん……」

短所をイジられるのはあまり好きではないから僕はとりあえず苦笑いで流した。

*

ガラッ

脱衣所で下着を脱いでタオルや石鹸を持つと、エレンが勢い良くドアを開ける。
あまり広くはないが、目に映るのは一応温泉だ。

コニー「ひゃっはー!
俺の待ってた入浴時間だー!」

コニーは何も持たずにお風呂に入ろうとする。
それをライナーが阻止した。

ライナー「お湯を体にかけて、汚れを洗い流してから入るのが普通だろう」

コニー「ちぇー…」

コニーは渋々洗面器で適当にお湯をすくって体にかけてから、助走をつけてお風呂に飛び込んだ。
当然ながら、バシャッと高い水飛沫が上がる。
周りに居た人達は迷惑そうに顔をしかめた。

アルミン「コニー、急がなくてもお風呂は逃げないよ。
今度からは気を付けてね」

アルミンはそう言って苦笑いをした。
確かに時間の許す限り、お風呂は逃げない。

*

エレン「良いお湯だったな」

夜道は当たり前のように暗くなっており、エレンは伸びをした。
こんなに静かだと少し眠くなり、僕は思わず欠伸をする。

帰り際にノークの様子を見に行きたいが、朝食前と朝食後に遅れてライナー達に迷惑をかけたし、さすがにこれ以上怪しく思われては困る。

ユミルも「就寝前は私がノークを見に行くからベルトルさんは心配しなくて良い」と言っていたから、迷いの挙げ句ユミルに任せる事にした。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom