山田奈緒子「エスパーユッコ!お前のやったことは全てお見通しだ!」 (153)

TRICKとモバマスのクロスです。ドラマか何かと思ってください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1390279070

???

男「はぁ、はぁ……。ここまで来れば大丈夫か?」

男「クソッ! どういうことだ……あんな奴、聞いたことがないぞ!」

男「ちょ、超能力を使うなんて……」

??「逃しませんっ!」

男「ひっ!! エ、エエエ……」

??「アー、アー。ドーモハガjrサン、エスパーユッコです」

男「エ、エスパーユッコ……」

エスパーユッコ「ハイクを詠んでください、カイシャクしてあげますっ」

男「あ、ああ無念 俺の出番は もうないよ」

エスパーユッコ「サイキック……バンブー!! むんっ!!」

男「サヨナラ……!!」

ナレーション『アイドル――偶像の概念は古来より受け継がれているものだ。歌や踊り、演劇といった娯楽は本来神に捧げるとして生まれたものだと言われている』

ナレ『文化により違いはあれど、神とはすなわち自然、人間の小さな力では成すすべもない圧倒的な相手と交信するための手段として、歌や踊りは発展していった』

ナレ『それは時に、歌い舞う人間そのものが神や自然そのものに重なって見えることも有ったと言う。そう言った意味では、邪馬台国の女王卑弥呼は日本原初のアイドル、と呼ぶにふさわしいかもしれない』

ナレ『魏志倭人伝によると、彼女は戦乱に明け暮れた倭国を鬼道と呼ばれる呪術を以てクニを統治したと記されている。卑弥呼という名は、外国から呼ばれた時の名で、日本にはそのような名前の人物は存在しておらずその正体に関する議論は止まることがない』

ナレ『卑弥呼とは日の巫女。同じく日に仕える巫女の異名を持つアマテラスが有力とも言われているが、結論は未だ出ていない』

日本科学技術大学

益川、小柴、湯川、利根川、晶葉「……」ポーン


上田「シンデレラガールズプロダクションプロデューサーの……茂場さん?」

P「はい、モバといいます。実は私……先生の大ファンなんです! どんとこい超常現象シリーズから最新作の上田次郎の人生の勝利者たちまで全冊事務所のアイドルたちにも勧めています」

上田「ほう。それは嬉しい限りですね」

P「アイドルのみんなも次の人にも読んでもらいたい、とすぐにブックオフに持って行きました。これで先生のご本が次の誰かに伝わっていくんですね」

上田「ええ。私の著作は全国で2000部売れた大ベストセラーですから。ってアイドル?」

P「はい。CGプロダクション、と言うのは新気鋭の芸能事務所で……少しテレビお借りしますね」

オーネガイーシンデレラー

上田「彼女たちが? 私もテレビで何度か拝見させていただきましたが、まさか貴方が仕掛け人だったとは。感服いたします」

P「いえ。私なんて大したものじゃないですよ。彼女たちの才能があってこそです」

上田「しかしその才能を活かすのもまた才能です。私はね、一目見れば相手がどんな才能を持っているかピタリと当てることができるんですよ。茂場さんはズバリ、アイドルをプロデュースする才能に満ち溢れています」

P「上田先生にそう言っていただけると、感動です!」

上田「ええ。貴方の手にかかれば、どんな女の子でもシンデレラになることができるでしょう。ただ……大飯食らいで強欲で、仕事に就いたかと思えばすぐにクビになり家賃も満足に払えず、漢字すらまともに読めない極度な貧乳な女性だけは止めておいた方が良い。いくら仲間由紀恵に似ていると思っても、貴方の人生を無茶苦茶にする迷惑な存在には変わりありませんからね」

P「ず、随分と具体的ですね……」

上田「下らない女の話はその辺にして、本題へと移りましょうか。優秀なあなたのことだ、感想を言いに来ただけでは無いでしょう」

P「はい。上田先生はこの世の中に超常現象など存在しない、すべて科学の力で解明できると言っておられました」

上田「勿論です。私のIQ240の頭脳を以てすれば、この世の中で解けない謎はないでしょう」

P「そう言っていただけて安心いたしました。その、お願いというのは……とあるサイキッカーを先生に倒して頂きたいんです」

上田「……サイキッカー、ですか」

P「はい。実は近いうちに我社のアイドルたちの営業で福井県にある鵜月島村(うづきしまむら)と言う村を訪れることになっているんです」

上田「卯月、島村?」

P「鳥の鵜に月島で鵜月島村です。鵜月島村は蟹鍋や温泉で知られている海と山に囲まれた小さな村でして、今は村長選挙に向けてちょぴりギスギスしていますが……その村に滞在する企画が立っていたんです」

P「しかし……最近その村に超能力者を名乗る少女が訪れました」


上田「それがサイキッカー」

P「はい。通称、エスパーユッコ。本名は堀裕子、と言うみたいなんですが村人たちはエスパーユッコと呼んでいます。これが、その写真です」

http://i.imgur.com/aSuF778.jpg

上田「見た所、まだ高校生のように見えますが?」

P「はい。見た目はポニーテールの可愛らしい女の子なんです。ですが彼女は、強力な超能力を持っている、と聞いています」

P「透視してみせたり、モノを消してみせたり。そして極めつけには……人を有り得ない方法で殺害したのです」

上田「……」

P「上田さん?」

上田「……はっ! 失礼、ただいま宇宙からの交信が来ていたもので」

P「? えーと……殺されたのは村長候補で現職の芳賀村長の息子でして」

上田「ハガー村長?」

P「その……信じがたいのですが、20mも有る竹の上で首を吊って死んでいた、とのことです」

上田「ハッハッハ、ちょっと待ってくださいよ。20mですよ? 私も高身長だという自負はありますが、それでも189mですよ?」

P「cmの間違いじゃ……」

上田「ウェットに富んだジョークです。まあなんにせよ、2mも有る人間がそういないのに、その10倍の高さの竹で首を吊るなんて無茶ですよ。そもそも竹はツルツルしていて、首を吊るにも適していません」

P「ええ。だからこそ、サイキックのせいじゃないかって村人たちは言っているんです」

上田「ふん。バカバカしい、そんなことあるわけがない。何らかのトリックを使った、それ以外に考えられません」

P「はい、私もそう思います。ですから上田先生にエスパーユッコのインチキを暴いて欲しいんです。このままだと、アイドル達にも危害が及ぶかもしれません。私は彼女たちを守りたいんです」

上田「なるほど、しかしそれならば仕事自体をキャンセルすればいいのでは?」

P「いえ……、厄介なことに局のお偉いさんがエスパーユッコに目をつけたらしく盛大にやろうとしているようなんです。ですからキャンセルした場合、莫大な賠償金を背負うことになります」

P「お願いします!! 数多のインチキ超能力者たちを倒してきた上田先生以外に頼れる相手がいないんです!! どうか、彼女のインチキを認めさせて罪を償わせて欲しいんです!」

上田「しかしですね、生憎その日私は海の向こうにて講演をしたいなぁと思っている日で……」

P「何故、ベストを尽くさないのか」

上田「!!」

P「アイドルたちが壁にぶち当たったとき、私は常にそう言い聞かせます。何故、ベストを尽くさないのか。何故、ベストを尽くさないのか」

P「……こう言うのもなんですが、我社のアイドルは注目を集めています。彼女たちと共演することで、上田先生のお言葉ももっと世間に広く知られると思いますよ?」

P「何故、ベストを尽くさないのか! 何故、ベストを尽くさないのか!!」

上田「何故! ベストを尽くさないのか!!」

P&上田「Why don’t you do your best!?」

上田「ベストおおおおおお!!!」バリバリ

P「上田さん!!」

上田「分かりました。この天才科学者上田次郎の名にかけて、エスパーユッコのインチキ、暴いてみせましょう」

P「あ、ありがとうございます!!」

上田「ハッハッハッハッハ!!」

花屋敷


山田(私の名は山田奈緒子、今をときめく超売れっ子の天才美人マジシャンだ。日本を代表する偉大なマジシャンだった父、山田剛三に憧れて私は育った)

山田(そんな父の影響を幼い頃から受けて来た、だからそんじょそこらの人気成功型のマジシャンとはモノが違う。今日だってドバイの大富豪にマジックを見せたその足でこのステージに立っている)

山田「バンサン・ケツマ、バンサン・ケツマ……オーレッ!」

山田(当然、客席はほらこの通り……)

照喜名「ひゅーひゅー」

山田「……」

山田(まあ、こんな日もある。今日は一年に一度の調子が悪い日だ)

長野 書道教室

『ラストステージよろしくー、ねっ』
『負けない愛だって、この胸に必ずあるよ』
『どこに行ったダウンとローズ』

里美「文字には不思議な力があります」

山田(これが母の山田里美。長野の実家で子供たちを相手に書道教室を開いている)

里美「さぁ、どんどん書け! 書けえぇぇぇ!!」

山田(母が書く文字には何故か不思議な力があると評判で、様々な職種の人々があやかろうと頼ってくる。最近はまた新たな商売を始めたらしい)

里美「山田里見の願いが叶う文字、コンプガチャ! 6枚揃えるとなんと! 願いが叶うこと間違いなし!!」

客達「おおー!!」

ビジネスパートナー「今ならお得なセットもありますよ!! このチャンスをお見逃しなく!!」

里美「さぁ、どんどんガチャを回せえぇぇ!!」

山田(……また阿漕な商売を)

山田(後、母の出番はもうない)

マネージャー「ねえ、貴女。貴女はダメね、世界レベルじゃない。クビよ」

山田「え、ええ! それは困ります! って私のどこが世界レベルじゃないって言うんですか? 天才マジシャンの娘で、今日も今日とて海外公演から帰ってきて……」

マネージャー「その全てよ。感性も見た目通り貧相で、刺激もスリルもない。心が踊りきらないわ。あの子を見なさい」

山田「えっ?」

しょうじょ「このいわー、うかぶぅー」

観客A「うおおおおおおお!!」
観客B「FOOOOO!!!」
観客C「ペイズリィイイイイイイイ!!」

山田「ペイズリー! ……生きていたのか」

マネージャー「ああ、あれこそが世界レベル! そう、心まで……ダンサブル!! 私も負けてられない、受けて立つわ!!」

山田「だ、ダンサブル? 魔法学校の校長か?」

山田(そして今日も、仕事をクビになる)

山田「……」

道行く親子「アハハハハハハ!!」

電柱

山田「あだっ! ラスベガスは遠のくばかり……」

ハル「あははは!」

ジャーミー「モウ、ハルサンッタラ」

サッカー少女「オレもハルなんだから紛らわしいしいって」

ハル「ハルちゃんも言うようになったわねー!」

山田「うげっ、何か増えてるし。……見つからないようにそーっと、そーっと……」

山田「えーとロックナンバーは……ってアルファベット増えてないか!? とりあえず、33310(スリスリスリット)……じゃなくて、105I(トウゴウアイ)……」

ロック『せーかーい』

山田「おお! まさかの正解! よし、これで入れ……あれ?」

山田「ドアが開かな……って何か固まって……接着剤!? しかも甘い匂いがするし! ドーナツ?」

ジャーミー「ヤマダー! ヤマダー!!」

山田「ヤバッ! どこかに隠れないと……」

「You、おいYou!」

山田「えっ? 上田!?」

上田「こっちだ、来い!」

次郎人形『ナゼベストヲツクサナイノカ』

山田「来いってどこに!」

上田「良いから! カニと温泉満喫ツアーだ!!」

山田「カ、カニ……温泉……って待て上田。本当にカニと温泉だけ、なんだな?」

上田「おいおい。俺を疑っているのか? 家賃も払えない君がお腹を空かせているだろうな、と気を利かせてやって来たんだぞ? まあ、これを逃すと君は二度とカニを食べることが出来ないだろう。カニは美味しいぞ? 感想文を今度送っておこう」

ジャーミー「ヤマダー!! ヤチンハラエー!」

次郎人形『ナゼ』

山田「ああ、分かりましたよ! その代わりカニ、死ぬほどおごってくれ!」

http://youtu.be/re42_2xYDQ8

タマゴ「」

山田奈緒子:仲間由紀恵

上田次郎:阿部寛

矢部謙三:生瀬勝久


堀裕子


北条加蓮

安斎都

片桐早苗


山田里美:野際陽子



タマゴ「」ガチャガチャ

タマゴ「フェイフェイダヨー」パカッ

TRICK×THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 

VSサイキック・シンデレラ

福井県 鵜月島村

看板『頑張ります! 鵜月島村村長選挙』
看板『←帰り道 ブラジル→』
看板『紅い温泉さくまままままままま湯』

次郎号(ドアが外れる)ガコン

山田「雪だー!! 上田、雪が降っているぞ!!」

上田「Youは子供か。冬なんだ、雪だって降るに決まっている」

山田「カニだ! 上田、早くカニを食わせてくれ!」

上田「車に入っているサワガニの缶詰でも食べてろ」

山田「サワガニって食べれるのか……?」

P「上田先生!! お待ちしていました!」

上田「ええ。頼まれたからには、無碍にできませんからね、私が来たらもう大丈夫です! サイキッカーのインチキ、見事暴いてみせましょう!」

山田「サイキッカー? おい、それはどう言う」

P「おや? こちらの方は?」

上田「ああ、彼女はね。私の666番目の助手で追っかけです。気にしないでください」

山田「縁起悪いなっ。って上田誤魔化すな、サイキッカーって」

P「ふむふむ……」

山田「? 私の顔になにか付いていますか? まぁ、天才美人マジシャンですので、視線を集めるのも無理はないですね。私、クレヨンパトラの生まれ変わりですから」

上田「それを言うならクレオパトラだ。茂場さん、こいつは放っておいて……」

P「助手さん! アイドルになりませんか!?」

山田「へ?」

上田「……はい?」

P「アイドルですよ! 実は私、芸能事務所でプロデューサーをしていまして、常に有望な女の子をスカウトしているんです!」

山田「お、女の子……」

P「失礼ですが助手さん、ご年齢は……」

上田「こいつはね、30飛んで4」

山田「17歳です。ピッチピチでナウでヤングな17歳です」

上田「おいおい」

山田「キャハッ☆」

P「キャラクター性も抜群! オマケにひんに……スレンダーでその手の人たちからは受けるはず!」

上田「茂場さん、少しお疲れじゃないですか? よりによってこの女をスカウトしようだなんて。正気の沙汰じゃないですよ」

山田「アイドルって、儲かるのか?」

P「努力次第ですけど、噂によると某有名双子アイドルの収入は……」

山田「――!!」

上田「まぁ私はその倍の収入を得ていますけどね。2000部本が売れたものだから、印税がガッポガッポで……」

山田「私は……超高級なマジシャンで、本来はテレビに出るようなチンケな仕事はしない主義なんですが、実は昔からアイドルに興味がありまして、どうしてもと言うならこの山田奈緒子、契約金1億円からで……」

??「茂場さんまたスカウトしてる。困惑してるじゃんか」

P「はっ! すみません……私の悪い癖で、つい女性を見るとスカウトしたくなる衝動に駆られまして……」

山田「あれ?」

P「さっきの話、冗談ってことでお願いします!!」

山田「えっ、あっ、ちょ!!」

上田「ほら見ろ。17歳設定は無理があるじゃないか」

山田「わ、私は実年齢より若く見えるんだからな!」

??「あのー」

上田「うん? はっ!」

加蓮「私、アイドルの北条加蓮って言います。生で上田先生を見れて光栄です! 私、幼い頃は病気がちで何度も入院していたんですけど……その時にこの本に出会えました! 何故、ベストを尽くさないのか。この言葉に何度救われたことか……」

上田「ええ。貴女のような可愛らしい女の子の命を救えたとなると、私も鼻が高いです」

加蓮「そのっ、色々とお話を聞かせてください! 後、サインももらえたら……」

上田「構いませんよ。私のサインはただ貰うだけじゃなくて、その後他の誰かにも渡したくなると評判でね、ヤフオクで10円という超リーズナブルな値段で取引されているんですよ」

山田「配送料の方が高いじゃないか!」

P「加蓮もあんまりはしゃぐなよ? また体調、万全じゃないんだろ?」

加蓮「茂場さん、心配しすぎだって。ほら、私は元気だから。何なら雪合戦する?」

P「……まぁ、それだけ元気があれば大丈夫かな。病院まで20分ぐらい車を走らせないといけないし」

上田「大丈夫ですよ。その時は私が責任をもって、加蓮さんを病院までお送りいたしましょう」

加蓮「それは頼もしいですね! でも、大丈夫ですよ。最近は安定していますから」

上田「そうですか? ですが何かあれば、いや何もなくても私を頼ってください。私は加蓮さんの唯一の味方ですから」

山田「ドライブしたいだけだろ!」

??「うー、さぶっ」

山田「ところで……あの如何にも2時間ドラマで殺されますよーって感じの帽子は?」

P「ああ、あの人は芸能ライターの渋澤さんです」

加蓮「……まっ、悪趣味なゴシップライターって言ったほうがいいけどね」

山田「その記者がどうして同行しているんですか?」

P「何でも鵜月島村には湯治でよく行かれるそうで。今回は仕事じゃなくて完全にプライベートなようです。最近はエスパーユッコの記事も書いているそうで」

加蓮「ならこっちとスケジュール合わせるなって話だと思わない?」

山田「ゴシップライター、か。って忘れるところだった、上田。説明しろ、そのエスパーユキホとか言うやつのことを」

上田「エスパーユッコだ。自称超能力者とか言う、少しお茶目な女の子だよ」

山田「ほらやっぱり! どうりで話がうまく行き過ぎていると思ったんだ。帰るぞ、上田」

上田「カニが食べれなくなるぞ? まぁオマール海老とザリガニの区別もつかないようなYouは、別に食べなくても大丈夫」

山田「ああ! わかったわかった!」

山田(車を走らせること更に数分。私たちは鵜月島村に有るモーテル武井荘へと到着した)

百獣の王 武井荘

山田(至るところに武井壮の写真が飾られている)

P「十種競技ですか」

上田「あだっ!」

山田「上田さん、良く頭ぶつけますね」

上田「世界は私にとってミニマムすぎる、それだけだ」

??「――!」

支配人「そ、そういわれますて困るのね……」

上田「随分と騒がしいようですね」

山田「誰ですか? あの上田さんレベルに背の高い大男は」

P「ああ、あの人は元市会議員の富良具建夫さん。村長候補の一人です」

富良具建夫:村長候補

山田「? 村長候補なのに、モーテルに泊まっている? 家ないんですか」

P「実は先日、富良具邸が謎の不審火によって全焼したんです」

上田「まさかそれもエスパーユッコの仕業だと?」

P「ええ。彼女はそう言っているようですが……」

富良具「くそっ! 家さえ燃えなければこんなボロモーテルに泊まる必要もないのに!! あだっ! この村は俺には小さすぎる! 選挙が終わったら取り潰してやる!!」ティン

山田「旗が立ったぞ」

加蓮「なんだか感じ悪いね」

P「村長選挙でピリピリしているのに、追い討ちをかけるように放火事件。荒れるのも無理もない」

上田「村長候補、と言いますと他にもいるってことですよね」

P「ええ。今年の選挙は、3人の候補者が立候補をしているんです。現村長の芳賀嗣朝(はがしちょう)村長」

山田「市長か村長かどっちですか」

P「対抗馬に村一番の資産家でリゾート温泉を経営している土是辛彦(つちこれからひこ)さん、そして先ほどの富良具建夫(ふらぐたてお)さん」

?「むむむ、村長選挙に謎の放火……これは事件の匂いがしますね!」

上田「全くだ。何事もなければいいが……ってうわっ!」

山田「上田さん、何驚いているんですか。この子、見た目はホームズな子供ですよ」

P「ああ、彼女はうちの事務所の新人アイドルの」

都「名探偵の安斎都です!」

P「おいおい。探偵である前にアイドルなんだぞ?」

都「逆ですよ! 都はアイドルである前に、探偵なんです! むむっ、これは……」

山田「どうかしましたか? 私のことを見て……」

都「私の推理が正しければ……貧乳です!!」

上田「ほう、彼女はなかなか見所がありそうだ。私の385番目の助手に任命しよう。667番目のYouは今後彼女に従い給え」

山田「茂場プロデューサー! どういう教育をしているんだ!」

P「都、それは推理でもなんでもないぞ。見たら分かること……」

山田「この村には敵しかいないのか……」

加蓮「茂場さんも大概失礼だと思うよ」

P「失礼。それと、モーテルの部屋割りですが……」

上田「この私の部屋に一緒にいる山田、というのは山田優のことですよね?」

P「いえ、助手さんの方ですけど。何分急に押しかけてこられたので、部屋を取れなくて」

山田「上田。いくら私が超絶美人だからって、襲うようなことをするなよ」

上田「馬鹿を言え。寧ろこっちは君の寝相の悪さに迷惑しているんだ。全く、同じ山田で沖縄の血が流れているのにどうしてこうも違うんだ」

P「とりあえず荷物を置きに行きましょう。それからエスパーユッコと対決です。エスパーユッコはこの先にある竹林
、渋谷林(しぶやりん)抜けた先にある小屋に陣取っています」

山田「渋谷凛……」

上田「渋谷・林だ」

P「怪しい術で村人たちを惑わして、一部の村人は江戸時代この村にいたという、未海閔亭鵜砂閔(ミミミンテイウサミン)と呼ばれた呪術師の生まれ変わりじゃないかって行っているぐらいです」

山田「ミミミミンテイウサミミン?」

上田「ミが2つ多いぞ」

都「呪術師ですか。コレは謎が謎を呼びますね」

上田「馬鹿げています。どうせ当時もつまらない手品か何かを使って、村人たちをだまくらかしていたに違いない」

支配人「ですが……呪術師には奇妙な話があるのね」

上田「うわぁ! 急に入ってこないで頂きたい。危うく、宇宙との交信が始まってしまうところでした」

山田「お前はウサミン星と交流していろ」

支配人「呪術師、鵜砂閔は……年を取らなかったのね」

都「なんと!」

加蓮「不老不死ってやつですか?」

支配人「そうなのね。鵜砂閔は歌や踊りをして雨を降らしたり、時には病を直したりと伝承は残っているのね。でもその中でも驚くべきことは、何十年もの間だ鵜砂閔は年をとることがなかった、若々しい姿を保っていたというのね」

山田「まぁ、私も14年前から殆ど老けていませんけどね」

上田「私もだ。寧ろ渋みがましたと思うよ」

支配人「鵜砂閔は当時この村を支配していた強欲な地主たちを呪術で裁いていったと言われているのね。またある時は山賊たちを追い払い、村人たちから崇められるようになっていたのね」

支配人「ただ、不老であって不死では無かったのね。ある日村人が小屋の中で息絶えた鵜砂閔を発見したのね。その時の鵜砂閔は、これまでの分歳をとったかのように一気に老けていたと言われているのね」

P「その呪術師が本当にいたかは別として、エスパーユッコの力を本物だと認めるわけにはいきません。どこかに必ず、種があるはずですから」

支配人「……どうさね? エスパーユッコは、本物なのね。私も、その力に驚かされてばかりなのね」

山田「……」

武井荘 202号室

上田「いいか、このラインよりこっちには来るな。これは不可侵条約だ、良いな」

山田「上田さんこそ。私のスペース少し食いすぎじゃないですか?」

上田「俺は体が大きいのだ。その分広く取るのも必定だ」

山田「立って寝たらいいじゃないですか。場所も取りませんよ?」

上田「そうだ。俺に触れることがかなわずひとり寂しい夜を過ごす君のために、とっておきのプレゼントをやろう」

山田「カネか?」

上田「ちょっと待っていろ。次郎号からとってくる。絶対にテープを狭めるなよ、絶対だぞ!」

山田「……そう言われたら、余計したくなるじゃないですか。んしょんにゃ……」

上田「おい」

山田「上田! 帰ってくるの、早かったな」

上田「ほら、プレゼントだ。等身大次郎人形、これを抱き枕に眠ってもイイんだぞ」

山田「いりませんよ。無駄にリアルだし、しかも若干上田さんよりも大きく見えるんですけど」

上田「スケールの大きな人間だからな。自然と人形も大きくなる」

P「上田先生! そろそろエスパーユッコとの対決に行きますよ」

上田「コホン! それなんですけど、実は対決の際にお守りにしている緑色の猫のぬいぐるみを実家に忘れてきまして、それがないと私は力を出せないんですよ」

山田「逃げるのかよ」

P「ああ、それなら安心してください。事務所のアイドルに、緑色の猫のぬいぐるみを持っている子がいますから」

ぴにゃこら太『』

上田「……準備が良いですね」

渋谷林

山田「鬱陶しいぐらいに竹が生い茂ってますね」

都「パンダとかいそうじゃないですか?」

山田「パンダ鍋っておいしいのか?」

P「流石に日本に野生のパンダはいないかと」

上田「この一体は竹の名産地でな、竹人形が有名なんだそうだ。さらにエジソンが電気を発見した時の扇子に使われていた竹も、この林から取られたものだともっぱらの評判だ」

P「あれ、京都じゃなかったでしたっけ?」

上田「……ちょっとしたジョークですよ」

加蓮「結構距離があるね」

P「大丈夫か? しんどくなったらいつでも言ってくれよ?」

加蓮「もう、本当に心配性だなぁ。私は元気だから、他の子たちにも気をつかってあげたら?」

サイキック山小屋

上田「あれがエスパーユッコの小屋……」

取り巻きA「上田先生ですね」

上田「! なぜ私のことを! ああ、そうでしたか。貴方も私の著作の読者でしたか」

取り巻きB「エスパーユッコは貴方方の到着を予知していました。上田さん、茂場さん、山田さん。そしてアイドルの皆様方、どうぞ中へ。エスパーユッコがお待ちしています」

山田「私まで予知していた?」

上田「ふ、ふん。どうせ私たちを取り巻きが監視していて、連絡したんだろう」

山田「まぁ、そうでしょうね」

取り巻きB「サイキック粗茶です、お飲みください」

上田「どうも」

山田「毒とか入っていないよな?」

取り巻きB「ええ、勿論。私共は貴方たちには危害を加えませんので」

山田(貴方たちには? これ、普通の烏龍茶じゃないか)

取り巻きA「アー、アー。それではお待たせいたしました。エスパーユッコ……入場です!! 皆さんお手を拝借! サイキック、ミュージックスタート!!」

http://youtu.be/tSAq1mrFUPI

村人「テレポーテーション!」

裕子「心の翼がっ」

村人「テレポーテーション!」

裕子「今時間(トキ)を飛ぶっ」

裕子「私だけが私の恋をAh未確認~♪」

村人「テレポーテーション!」

裕子「ぼええええええ!!」

上田「エスパー魔美っ」

山田「音痴だし……」

P「上田さん、彼女が」

裕子「名乗る程では……ユッコです!」

山田「名乗るのかよ!」

裕子「先生、あなたのご活躍は私もよく知っています! 凡ゆるインチキ霊能力者たちを科学の力でたちどころに解決、まさに現代のフーディンと言っても言い過ぎじゃない!」

上田「ええ。私にはね、インチキがわかってしまうんですよ。たちどころにね」

山田「フーディーニの間違いじゃ……」

裕子「フーディーニの生まれ変わりです」

上田「気にしないでください。コイツはね、揚げ足取りしかできないような女ですから」

裕子「ですが……この私のサイキックぱわーは訳が違います。テレポーテーションとか言って走ったりもしませんし、スプーンだってこの通りマッガーレ」

村人「おおっ!!」

山田「あんなの、私でもできる手品じゃないですか」

裕子「まぁ、今のはホンのサイキック小手調べ。それではここで、私のサイキックぱわーをお見せいたしましょう。ここに可愛らしいシロクマのぬいぐるみ、アントニオがあります」

アホ毛のアイドル「プロデューサーに似てる?」

P「……そうか?」

裕子「このぬいぐるみを消して差し上げましょう! この箱は、入ったものを綺麗さっぱり消してしまうサイキックボックスです。この中にクマさんを入れて……」

山田「……」

裕子「念じます。……消えーろー、消えーろー……みなさんご一緒に!」

村人『消えーろー……、消えーろー……』
村人『もどーれ、もどーれ……もとにもどーれ』

裕子「サイキック……リライト!! 消してええええ! りらいとしべええええ!!」

裕子「さぁ、これでアントニオは消えました。箱を開けると……ご覧のとおり!」

上田「!! ア、アントニオが消えた!!」

都「そんな!?」

加蓮「箱は空っぽ……?」

P「う、上田先生!!」

上田「ばんなそかな! アントニオはどこに消えたんだ?」

裕子「サイキックパワーにて遠くへ飛ばされました。私がその気になれば……家の中にいても消し去ることができるのです!」

村人「Uh……サイキックー!!」

山田「ちょっと待ってください! その蓋の裏、厚みが変わっていませんか?」

取り巻きA「何を?」

山田「やっぱり、薄くなっている。みなさん、これはサイキックでもなんでもない、シンプルな手品です。練習すれば誰だってできます」

裕子「ふーん?」

上田「ええ、その通りですよ。ですがここは目立ちたそうな助手に花を持たせてあげるとしましょう。山田、出番だぞ?」

山田「分かっていないだろ、お前」

山田「……まず、仕掛けがあったのは蓋とアンドレイです」

上田「アントニオだぞ」

山田「どっちでもいいだろ! とにかくクマのぬいぐるみの中からワタをあらかじめ抜いていて、その代わりにバネを仕込んでいたんです」

山田「そして蓋にも仕掛けがあり二重蓋にして留め具か何かを外すことで、落ちる仕掛けになっているはずです」

山田「そうすることで蓋の重みでぬいぐるみは潰されます。これが」

上田「ぬいぐるみ消失のトリックだ。私の助手にも見抜けることができるような、実にチープなトリックだ」

取り巻きB「そんなの言いがかりじゃないか!」

取り巻きA「胸の薄い人間は心まで薄いのか!?」

山田「な、なんでそこまでいわれにゃならんのだ」

裕子「まあまあ、落ち着いて落ち着いて。サイキック一休みです。では、こう言うのはどうでしょう。ここにどこにでもある茶封筒とそれよりも大きめの白封筒があります」

裕子「山田さん、インチキはどこにもありません。心ゆくまでお確かめあれ!」

上田「見た所普通の封筒だな」

山田「ええ。何も細工はされていないようですね」

裕子「では……山田さん。あなたのお悩みをこのカミに書いてください。勿論ペンにもカミにも細工はありませんよ」

山田「これもよくある短冊ですね」

上田「ペンも普通の油性ペンだ」

山田「――。書きました」

裕子「ではそのカミを誰にも見られないように茶封筒に入れて、さらにそれを白封筒に入れてください」

山田「光に当てても、見えないか」

裕子「ではその中身を透視してみせましょう。サイキック……望遠鏡!!」

山田「ただの筒じゃないか!」

裕子「いいえ、コレは覗いたものの中を丸裸にする奇跡の望遠鏡です。ふむふむ……山田さんのお悩みは……!」

村人「お悩みは!」

裕子「……あの、字が汚くて読めないんですけど」

P「ぶっ!!」

上田「……おい、You」

山田「し、失礼ですね! 私は書道家の娘で最近は履歴書代筆サービスを始めちゃおうかなーって考えているのに……」

裕子「えーと、なんとか解読出来ました! コホン、気を取り直して。それでは発表いたしましょう!」

山田「……」

裕子「私は貧乳で困っています!!」

上田「!」

P「!」

都「!」

加蓮「!」

村人「クッ」

裕子「オープンthe封筒!」

『私は貧乳で困っています』

P「本当に……字が汚い」

山田「そこかよ!」

上田「14年経っても考えることは一緒なのか」

山田「し、仕方ないだろ! その封筒貸してください! アルコールを塗って中を見たはずです!」

上田「いや、アルコールの匂いも何もない。濡れてもいないし、封筒には細工が一切されていない」

P「じゃ、じゃあ本当に透視した、んですか?」

裕子「当然ですとも! この望遠鏡で読みましたからね! さてと。私の力を楽しんで頂いた所で……本日のメーンイベント! サイキック……入場!!」

取り巻き「アイアイサー!」

富良具「どういうことだ! 強引に拉致してきて!」

土是「ひっ! ワシをどうするつもりだ!!」

渋澤「おいおい。俺は何もしちゃいねえぞ?」

芳賀「……」

上田「村長候補達に……」

山田「ゴシック記者!」

上田「ゴシックだ!」

上田「ゴシップだ!」

裕子「アー、アー。コホンッ。先日の芳賀村長の息子さんが竹で首をつって死んでいた事件。あれは私のサイキックによるものです」

上田「無茶だ! あんな高いところ、人がどうにかできる高さじゃない!」

裕子「だからこそのサイキックなのです。そうですね、上田先生は私との対決を望んでいるみたいなので、1つサイキックの真骨頂をお見せいたしましょう。まずは貴方!!」

土是「!!」

裕子「サイキック……バンブー!! 芳賀jrと同じように、竹で首をつって死ぬ。それが貴方の運命です」

土是「な、何をバカな……」

裕子「それと! 同じように殺すのじゃ芸がない、ここは1つ奇跡をお見せいたしましょう」

裕子「ネバセイネバネバセイネバ……ンリ・ヤブシ!」

裕子「竹というものはそう、緑色です。ですが私がサイキックパワーを使ったことで、土是さんが首を吊る竹は蒼色になりました!」

山田「いや、竹は普通青いだろ」

裕子「ノンノン。緑色ではなく、完璧な蒼です。まぁ、見てもらえれば分かります」

土是「ふ、ふざけるな!! ワシは死なんぞ!」

裕子「いやー、死にますよ? そう、未来は絶対なのです! テクマクマヤコンテクマクマヤコン……ぽにーてーるゆらしながらかぜのなかきみがはしるぼくがはしる……」

上田「どうした、山田」

山田「いや……竹って青色じゃないですか。それを青色にするって何を言っているんですかね、エスパーユッコは」

上田「……まぁ、そうだな」

武井荘

支配人「この村名物の鍋なのね」

山田「見ろ、上田。カニだ、カニ! 本物だ……うう、涙が出そうだ」

P「鵜月島村ではこの『いつきま鍋』が人気だそうです。カニと山の幸が混ざって、最高のハーモニーを作るとか。よく似たものに『かおりま鍋』というのも有るみたいです」

加蓮「ふぅ、鍋は温まるね」

都「むむっ、これは……ちくわぶですね!!」

渋澤「……」

上田「渋澤記者は食べないんですか?」

渋澤「あんな事言われたら腹も減らねえよ。俺はパスだ、あんたらで食っててくれ」

山田「じゃあカニもらうぞ! いいのか? カニだぞ? 美味しいらしいぞ?」

渋澤「お好きにどうぞ」

山田「あっ、そうだ。持ってきたタッパーに入れないと……」

上田「みっともないぞ、流石に」

都「でもあの封筒を透視ってどうやったんでしょうか? 謎が残ります」

山田「あれ、封筒には細工をされていなかった。となると怪しいのは……」

上田「ああ、あれはだな。科学をかじっていれば分かる簡単な仕組みなんだ」

山田「ええ? 上田さん分かったんですか?」

加蓮「本当ですか? ぜひ聞かせてください!」

上田「案外知られていないことだが、封筒を通り抜けてくる光は俺たちの目に届いているんだ。だが封筒に反射する光が強すぎて、中は透けて見えない」

上田「あのサイキック望遠鏡とやらは、単なる黒いカミでできた筒だ。黒色は光を遮るからな、それで覗くことで中の文字が見えるという寸法さ。実際にやってみればわかる、実に初歩的なサイエンスだ。小学生ぐらいしか騙せないようなね。あまりにシンプルすぎて、誰も気づかなかったのでしょう」

加蓮「凄い……さすが先生だね」

P「ええ、納得できました。やはり彼女はサイキッカーではなく」

上田「サイエンスをかじっただけの、ただのインチキ女子高生ですよ」

山田「じゃあ何であの時言わなかったんですか」

上田「……インスピレーションが沸かなかったんだ」

加蓮「ところで、土是さんって人はどうしたの?」

P「小屋を出てから自分の家に閉じこもっているみたいだ。ああ言ったけど、家から一歩も出なければ竹で首を吊ることもないしな」

上田「まぁ、懸命な判断でしょう」

都「でも本当に死んでいたら……捜査しないといけませんね」

P「そういうのは警察の仕事だぞ? でもまぁ、何もなければ良いんですが……」

山田「うんー! 高まるー!! 締めは餃子を食べたいんですけどありますか?」

支配人「勿論、スーパーで買ってきたのね」

山田(こうして、鵜月島村の一夜は更けていった)

翌日

山田「ううん……坂本龍馬が斎藤一だったなんて! ぐかー!」

上田(結局眠れず素数を数え続けていた)

P「た、たたた大変です!」

上田「茂場さん、どうしたんですか。血相を変えて」

P「つ、つつつ土是さんが!! ユッコの予言通りに!!」

都「! 事件が起きたのですか!?」

上田「!!!」

山田「んにゃー!! もう少しで頂上だ! 頑張れイモト!!」

P「えーと、山田さん?」

上田「おい、起きろ! 大変なことになったぞ!!」

山田「ふがっ! えっ?」

渋谷林

土是「」

山田「土是さん!! 本当に竹の上で首を吊るなんて」

芳賀「あ、あれはワシの息子と同じ死に方……!!」

渋澤「おいおい、マジかよ……」

P「本当に竹が蒼色に……!」

上田「」

P「上田先生、これは一体どうなって……」

上田「」

P「先生?」

山田「気絶したか」

都「」

P「……気絶するためだけに着いてきたのか?」

村人「エスパーユッコのサイキックじゃああああ!!」

山田(竹の長さは上田10人分ぐらいか? 周囲には足場になりそうなものはない)

上田「失礼、少しの間瞑想していたところだったんだ。気絶していたわけじゃない」

P「は、はぁ……」

都「」

P「都を部屋に戻してきます。何かありましたらいくらでも頼ってくださいね」

上田「見た所俺が10人分の高さだな。俺が10人いれば、それこそノーベル賞全部門受賞できるな」

山田「つまり20mぐらいと」

上田「しかし見事な蒼色だ。これもサイキックパワーによるものなのか?」

裕子「勿論です! サイキックパワーを持ってすれば、筍も一晩で竹になりますよ!」

ブブゼラ持った取り巻き「ぶおおおおおお!!」

山田「うるさ!」

上田「か、体が透けていく……こともなかったな」

山田「エスパーユッコ!」

裕子「上田先生の先祖は天狗だと聞きましたが……どうですか? 登ってみます?」

上田「いや、今日は調子が悪い、遠慮しておきましょう」

富良具「つ、土是を殺したのはお前か!?」

裕子「イーグザクトリー! このエスパーユッコの極上のサイキックで、土是さんを竹の上まで持ち上げたんですよ。村長の息子さんと同じように。……上田先生、受けてみますか?」

上田「わ、私は止めておいた方がいい。全国2000人のファンが泣くんでね。その代わり、ファンが1人だけの彼女を生贄に」

山田「押し付けようとするな!」

裕子「サイキックジョークですよ。言ったじゃないですか、私は貴方たちに危害を加えないと」

裕子「まぁその分……村長候補達と渋澤記者には、死を与えたいと思いますけどねっ」

山田「!!」

上田「!!」

富良具「!!」
渋澤「!!」
芳賀「!!」

裕子「そうだ! 折角なので、失血大サービス!」

上田「それだと死ぬだろ」

山田「プッ、エスパーユッコって残念なんですね。それを言うなら失策大サービス……」

上田「出血大サービスだ! ってよくよく考えたら出血しても死ぬじゃないか」

裕子「コホン! BLOOD-CHABANはさておき……バツを与える順番を教えましょう! サイキックネタばらし!!」

上田「バツを与える順番だと?」

裕子「ええ。彼らは罪を背負っている、当然罰せられるべきです。しかし……この国の司法は頼りにならない。だから、私が直々に手を下すのです!」

取り巻き「サイキック処刑!!」

裕子「テンキュー! それじゃあ発表します! フラグ、シブサワ、ハガ!」

取り巻き「フ・シ・ハ! フシハフ・シ・ハ!」

上田「フシハコンボか!」

裕子「今言った順番で、サイキック処刑が行われます。どこに逃げようとしても無駄です。私は必ずサイキックで皆様に死を与えますので。それでは良き終末を、アデュー!」

ブブゼラ取り巻き「ぶおおおおおお!!」

裕子「瞬間移動! ヘイ、神輿!」

取り巻き「えっほえっほえっほ!」

裕子「ぼえええええ♪」

富良具「ふ、ふざけるな! 村長になるため戻ってきたらこんな目にあうなんて! こんな所にいてたまるか! 俺は部屋にこもる!!」ティン

山田「あっ、旗が立った」

上田「なんのことだ?」

芳賀「ふん、バカバカしい。超能力なんて有ってたまるか。次にやつを見たら猟銃ブチ込んでやる」

渋澤「カリカリしてるねぇ。まぁ俺も似たようなものだが……ひとっ風呂浴びて来るか」

上田「……」

山田「上田、怖いのか?」

上田「ハッハッハ。何を言う、私が恐れを抱くだと? 生まれてこのかた、怖いと思ったものは自分の才能だけだぞ?」

山田「あっ、上田さんの足元に毒蛇が!!」

上田「のわっ!」

山田「いるわけないじゃないですか。冬ですよ? 雪滅茶苦茶降っているんですよ?」

上田「まぁ、分かっていたが君がこう言うリアクションを望んでいるだろうと瞬時に理解して……」

矢部「おお! 上田センセ、奇遇ですね!」

秋葉「山田さん! またですか?」

山田「矢部! 秋葉! どうしてお前たちがここに!!」

矢部「そりゃわしらかて刑事やぞ? これからさくままままままま湯って所ににゅうよ……潜入捜査しに」

秋葉「まがひとつ足りないです」

??「何言っちゃってるのよ。殺人捜査でしょうが。その帽子投げるわよ?」

矢部「投げれませんー。これジカに生えてるやつですー」

秋葉「早苗さん、萌えー! 萌え、萌え!!」

早苗「どこ見て言ってるのよ! 絞めるわよ?」

秋葉「ありがとうございます!!」

上田「どなたですか? この……我侭ボディの持ち主は」

矢部「ああ、コイツうちの部下です」

早苗「片桐早苗よ、よろしくーねっ!」

山田「ギャグセンスが古いな」

上田「Youにだけは言われたくないセリフだな、それ」

早苗「本当は別件で訪れていたんだけど、殺人事件が起きたと聞いてね」

矢部「ほなさっさと終わらせて温泉入ろうや。遺体どこよ」

山田「ああ、遺体なら……上です」

矢部「上!? ワシの上にはなーんもないよ?」

秋葉「いや、矢部さん。あんなたかーい所に首吊り死体が……」

矢部「うわっ!」ズラッ

早苗「バランスバランス!!」

矢部「どないすんねん。遺体を運ぼうにもあれじゃ無理や。つーかどうやったらあんな高い所で首吊れるねん。つーかなんやこの蒼々とした色は。竹って普通緑色やろ」

上田「ええ。後一歩までわかっているんですが、何分情報が足りなくて」

山田「一歩も進んでいないだろ!」

早苗「足場になるようなところはなさそうね」

秋葉「オマケに竹だから、登ろうにもツルツルして滑りますね、これ。矢部さんの頭み」

矢部「じゃかましいわい!」

秋葉「うぼぁ! ありがとうございます!」

山田「上田、出番だ。竹を切れ」

上田「切る? 竹を? どうやって」

山田「そんなの、どこかから斧でも借りてきたらいいだろ。ほら、切る! リーアップ!」

矢部「!!」

上田「それを言うならハリーアップだ!」

矢部「!! あれ、効かんねん……」

※個人差があります

上田「ふんぬー!! ベストー!!」

早苗「わっ! 今更だけど、遺体も無事じゃないわよねこのやり方」

山田「本当にやるとは。正直引いたぞ上田」

秋葉「あれ? この人土是辛彦じゃないですか!」

矢部「なんや、有名人かいや」

秋葉「映画監督……じゃなくて、村長選挙の候補者ですよ。ほら、ここに来る途中に有った看板の」

矢部「よう憶えとるな」

山田「でもどうして彼は家を出てしまったんでしょうか」

上田「恐らく立ち小便をしたかったんだろうな」

山田「家にトイレぐらいあるだろ。上田さんに聞いた私が馬鹿……あれ? ジャケットに何か入っていますね、メモ?」

『14年前の忘れ物は竹林の中に』

上田「14年前の忘れ物?」

山田「意味深な一文ですね。14年前、何があったんでしょうか」

上田「俺たちが初めて会ったのも14年前だ。タイムマシンがあるならあの頃に戻って貧乳とは関わるなと言いたいぐらいだね」

山田「むっ、それはこっちも同じです。上田さんに出会わなかったら、今頃私はラスベガスでツアーをしていた頃なのに」

矢部「そうか、分かったで!」ティン!

秋葉「わかったって何がですか?」

矢部「どうやって竹で吊ったかに決まっとるやろアホ! ええか、これはなヘリコプターをつこたんや」

早苗「ヘリコプター?」

矢部「そうや。スカイダイビングの要領でヘリコプターに乗った害者を突き落として……」

山田「上田さん、一旦村に戻りましょう」

上田「ああ、そうだな」

武井荘

P「上田先生! 何か分かりましたか?」

上田「ええ色々とね。ですが後一歩が足りないんです。情報が少なすぎます」

加蓮「やっぱりあれはサイキックなのかも……。ケホッ」

上田「いいえ、それはありえません。加蓮さん、あなたの不安私が取り除いてみせましょう」

山田「この男は全く……そう言えば。先ほどこんなメモ用紙を見つけたんです」

P「? 14年前の忘れ物? なんのことでしょう?」

都「14年前……思い出しました!」

P「へ? いつの間に復活したの?」

都「名探偵に眠りの時間はありません! 確か独自のルート(wiki)で調べた情報によると……これです。佐伯(サイキ)村長一家心中事件です」

山田「心中事件?」

都「はい。詳しいことは村の人たちの方が知っていると思いますけど……」

支配人「当時の村長、佐伯村長は村人たちからも慕われていた人格者だったのね」

支配人「村人たちの声に真摯に耳を傾けて、それはもう素晴らしい尊重だったのね」

支配人「だけど14年前の冬、村長が奥さんと村長の親父さんお袋さんを殺害して、自分でその命を絶った」

支配人「警察の捜査で、村長は大量の麻薬を所持していたことが明らかになったのね。麻薬による禁断症状が原因だとその時は言われてたのね」

山田「それが14年前……」

支配人「それと、村長には2人の子供がいたんのね。佐伯壱香ちゃんと佐伯楠緒君。仲の良い姉弟で、今も生きていればお姉ちゃんは30歳、弟くんはアンタと同じぐらいの年齢なのね」

P「ってことは、24歳ですね。当時10歳ですか」

支配人「特にお姉ちゃんの壱香ちゃんは、可愛らしくてアイドルになりたいって言っていた。でも、歌は下手だったのね。事件前、地元のローカル番組のオーディションを受けたけど、歌唱審査で落ちたのね。良い所まで行ったんだけどね」

山田「さっきの事件にはその2人の名前が出てきませんでしたが?」

支配人「2人は見つかっていないのね。行方不明のまま、だから生きているかも死んでいるかも分からないのね」

山田「14年前の心中事件と、土是さんは何か関わっているのでしょうか?」

上田「恐らくな。しかしそれとエスパーユッコはどういう関係があるんだ?」

山田「さぁ、そこまでは……」

P「何はともあれ、次の犠牲者と予言された富良具さんをどうにか守らないと。エスパーユッコがどう攻めてくるか分かりませんからね」

加蓮「! それならさ、交代ゴウタイで見張りとかは? 時間を決めてドアの前に立ってエスパーユッコが来ないように見張るの。ケホッ、ケホッ」

上田「加蓮さん、大丈夫ですか?」

加蓮「すみません、ちょっと咳き込んじゃって……」

P「確かに、それが一番かもしれません。来たら来たでとっ捕まえたら良いでしょうし」

上田「分かりました。では、交代ゴウタイで見張りましょう」

見張り順

山田→上田→茂場→上田→加蓮→上田→都→上田→山田以下ループ

山田「よし、これで良いな」

上田「待て、なぜ俺が四回以上も見張らないといけないのか」

山田「上田さんいざとなったら戦えるじゃないですか。私たち非力な女の子ですし。私とか私とか私とか」

上田「誰が非力な女の子だ、今年の誕生日迎えて四捨五入すれば40になるだろ!」

山田「死者誤乳?」

1山田、2上田

山田「……頑張れ、金さん! もうすぐで金メダルだ!」

上田「You、何をしている」

山田「くわっぱ!」

上田「寝ていたな」

山田「寝てませんよ! 心の目で見ていたんです」

上田「まあ良い。俺はハナから君を戦力だと見ていないからな。ここに居られたら見張りの邪魔だ、行った行った。さて、俺は新作のプロットでも考えておくかあ……」

山田「むっ、一人が寂しくなっても知りませんよーだ」

茂場「山田さん! 異変はありませんでしたか?」

山田「ええ。富良具さんも一言も話しませんでしたし」

茂場「寝ているんでしょうかね?」

3茂場、4上田

上田「茂場さん、交代の時間です」

P「あ、ああ。そうでしたね。上田先生、お願いします」

上田「ええ。しかし富良具さん、寝ているのか? さっきから一言も話していないが……。富良具さー」

加蓮「上田先生!!」

上田「おわっ! 加蓮さん、どうしたんですか。貴女の見張りはまだ先のはずでは」

加蓮「今はやることもなくて……。それで上田先生のお話を聞きたいなって思って」

上田「私の話を聞きたい、それは殊勝な心がけです。ではまずは14年前の母の泉という団体でビッグマザーと呼ばれた人物との戦いから……」

山田「上田さん、暇していないかな。おちょくって遊んで……」

加蓮「――!」

上田「――!!」

山田「若い子にデレデレしちゃって……心配した私がバカみたいじゃないですか」

5加蓮、6上田

上田「加蓮さん、飲み物を持って……」

加蓮「……ぐすっ」

上田「加蓮さん! 何があったんですか!? このハンカチで涙を拭いてください」

ハンカチ『なぜベストを尽くさないのか』

加蓮「けほっ、上田さん、ありがとうございます……ぐすっ」

上田「まさかエスパーユッコが現れたんじゃ……」

加蓮「違います! その……見張りの間咳が止まらなくなって……、そうしたら富良具さんに煩いって怒鳴られちゃって。ケホッ」

上田「分かりました加蓮さん。今から富良具を殴りに行きます。貴女のような女性を驚かせるなんてあってはいけないことです! 私は通信教育で空手をマスターしています、安心してください」

加蓮「ま、待ってください。何も殴りに行こうだなんて! 私が悪いんですから……」

上田「しかしですね……」

加蓮「だい、じょうぶですか……ら」バタン

上田「か、加蓮さん!!」

P「加蓮、大丈夫か!!」

加蓮「Pさん……ゴメンネ、少しムチャが祟ったみたい」

P「熱が少しある……。クソッ、薬が切れていたか。すみません、加蓮を病院に連れて行きます」

上田「病院までは車で20分でしたか。私が送ります。」

P「いえ、これは私の仕事ですから。加蓮歩けるか?」

上田「いやしかしココは私が……」

山田「上田、みっともないぞ」

加蓮「う、うん。少し肩、借りるね……」

都「こっちは私たちに任せてください!」

上田「分かりました。加蓮さんの留守を私たちが守りましょう」

山田「……」

上田「どうした、この腐敗した世界に落とされた事を後悔しているのか」

山田「いえ、エスパーユッコはどうやってあの高い竹で首吊り死体を結んだんでしょう」

上田「流石にあの高さを登るのは無理だ。となると考えられるものは……」

山田「あれ?」

上田「どうした山田、武井壮の十種競技の写真なんか見て……」

山田「前から気になっていたんですけど、この棒高っ跳びーの棒ってどうなっているんですか? 折れたりしないんですか?」

上田「なぜ小さなつを付ける。その棒、ポールと言うんだがガラス繊維強化プラスチックや炭素繊維強化プラスチックで出来ていて、弾力性に長けているんだ。昔は木や竹でしていたみたいだが……まぁ、Youに言っても馬の耳に念仏だろうがな。斯く言う私も陸上選手として……」

山田「ちょっと待て上田、棒高跳びの棒は竹だったのか!?」

上田「そういう時代もあったってだけだ。事実竹は良くしなるからな。かぐや姫の話をイメージしてもらえればわかるが、竹の中は空洞だ。そのため軽くてしなやかで折れにくい」

山田「大雪、竹……そうかわかったぞ! でかしたぞ上田!」

上田「まさか分かったのか!」

山田「はい。さっき上田さんが言ってくれたとおりです。竹は弾力性に優れてしなやか、竹の葉に雪が積もればその重みで竹は曲がるはずです」

山田「そうなれば先端にロープをつけることも蒼く塗りたくる事も容易いはず。芳賀jrも土是さんも、この性質を利用して殺されたんです」

上田「! なんだ、漸くYouもわかってきたみたいだな。まぁ、私は最初から分かっていたが」

山田「だったら最初にそう言えよ! よし行くぞ上田、エスパーユッコを今度こそギャフンと言わせて……」

都「ギャフン!!」

山田「! 今の声、都ちゃんの声です!」

上田「彼女は見張り中だぞ! まさかエスパーユッコが来たのか!?」

都「う、上田先生! エスパーユッコが!!」

上田「どこから来た!」

裕子「いや、普通にエントランスから来ましたケド」

上田「普通だな」

山田「エスパーユッコ! お前のインチキは全て暴いたぞ! お前のやったことは……全てまるっとエブリシングおみと」

裕子「スットーップ!! サイキックお口チャックマン!」

山田「最後まで言わせろ!!」

裕子「まぁ、あのサイキックバンブーは科学や手品の種で解けるかもしれませんが……今回はそうもいきませんよ?」

裕子「今この部屋、富良具さんがわかりやすーいフラグを立てて篭っています。鍵、閉まっていますし」ガチャガチャ

裕子「なので、壁越しに富良具さんをサイキック処刑しようと思います!」

山田「!」

上田「!!」

裕子「行きますよ……コレカアサンデスコレカアサンデスコレカアサンデスシマムラウヅキガンバリマス……」

裕子「サイキック……ザンネック!!」

取り巻き「スタンダッ↑トゥーザ→ビクトリー↓!!」

裕子「ぼええええええ!!!」

裕子「ふぅ、うっとり……。さて、これで中にいる富良具さんの首は胴体から離れました。確認したらどうですか? でもまぁ、鍵閉まっていますけどね」

都「ダメです、鍵がかかっています!」

上田「クソッ! こうなったら突き破るしか」

山田「待て、私は弁償したくない! 支配人さんから鍵を借りてくる!」

裕子「フフフフ……」

上田「富良具さん!!」バキィ!

山田「鍵あるんだから普通に開けろよ!」

都「! せ、先生……あれ……キュー」

山田(ドアをこじ開けた私たちの目の前には、椅子にくくりつけられた富良具さんだったものの胴体と、首がコロコロと転がっていた――)

山田(甘い匂い? この匂い、どこかで……)

良具「」
富「」コロコロ

上田「」バタン

山田「上田!? ああ、使えないやつだ!」

裕子「あらま、ゆで卵が落ちている。勿体無い勿体無い」

山田「ゆで卵! じゃなくてこれもお前がやったのか」

裕子「それは勿論。でも、中には入っていませんよ? なにせ皆さんが見張りをしていましたし、入る隙なんてありません。私は部屋に入ることなく、サイキック処刑を行いました!!」

山田「くっ……」

裕子「どうですか? これも……タネがあると言うつもり?」

山田「そうに決まって……」

裕子「ビシィ!!」

山田「!」

裕子「あんまり聞き分けが悪いと……貴女をサイキックミイラにしちゃおうかしら?」

山田「ミイラ? うっ、頭が……」

渋澤「なんの騒ぎ……うわぁ!!」

裕子「ドーモ、シブサワサン。エスパーユッコです」

渋澤「ドーモ、エスパーユッコサン。シブサワです」

山田「お前たち、ニンジャだったのか」

裕子「いやー、こちらから探す手間は省けたわね。渋澤さん、次のサイキック処刑は貴方ですが」

渋澤「ケッ、俺はお前のことを知らないし、処刑される筋合いもない……」

裕子「さぁ、私にはなくても他の人には有るかもしれませんよ? 心当たり、有りませんか?」

渋澤「何を……」

裕子「アー、なんにせよ。死の運命からは逃れられません。そうだ! 折角ですし、予言して差し上げましょう!! うらーないで、オ・モ・テ・ナ・シ!!」

山田「パクリじゃないか」

渋澤「な、何を……」

裕子「いつ死ぬの? 今で……てっ、ありゃ? これは弱りましたね。サイキック大弱りです」

渋澤「じぇじぇ?」

裕子「残念ながら貴方に関しては私が直接手を下すまでもないみたい。渋澤さんは近いうちに心臓麻痺で死にます。後私は大成します、それは間違いない」

山田「!!」

渋澤「……心臓麻痺、だと? この生まれてこのかた風邪も引いたことのない俺が? 馬鹿げている」

裕子「信じるも信じないも、貴方次第よ。ほなサイナラ! サイキック関西弁!」

渋澤「けっ! 気分良いもんじゃねぇ、ひとっ風呂浴びてくるか」

山田「……」

上田「エスパーユッコは逃げ帰ったようだな。俺の放つ覇気が強すぎたんだろうな、やられてばかりと思うなよ、倍返しだ! ざまあみろ!」

山田「気絶していた奴が何を偉そうに。それよりも上田さん……なぜ死体は椅子にくくりつけられた状態なんでしょうか? それに、椅子の足になにかついて……接着剤?」

山田「接着剤といえば、私の家の鍵穴にも塗られていたんです。いったい誰があんなイタズラを」

上田「ああ、それなら俺だ」

山田「上田さん!! 何してくれたんですか!」

上田「大家さんに相談されてね、何をしても居座り続けるっていうものだから、1つ科学の結晶を貸してやったんだ。それが接着剤、シイナノリだ」

山田「シイナノリ? 接着剤なのに、ノリなんですか?」

上田「まぁそれはノリで決まったんだ。なんと言ったかな、天才発明家を名乗る少女と科技大で協力して作った新製品だ」

上田「少量でも効果は絶大でな、乾いてくっついてしまうと、ゾウが引っ張っても剥がれないという代物なんだ。Youも石膏をその貧相な胸につけたらどうだ?」

山田「余計なお世話だ!」

上田「それとだな。どういう原理なのかはよく分かっていないが、その接着剤はドーナツのような匂いが……」

山田「ドーナツ? そうか、この椅子そのシイナノリコがついているんです」

上田「コは余計だ。……どうやらそのようだな。椅子を完全に固定した上で、念入りに体を巻いた。だが、どうして?」

山田「ん? 何でしょう、壁に穴があいていますね。大きくはないですけど、細い糸なら通りそうですね。これはこの部屋の鍵ですかね? 遺体の近くに落ちています」

都「刑事さん、こっちです!!」

矢部「嬢ちゃんそんな慌てんでも遺体は消えへ……うわぁ! グッロ!! グッロ!」

秋葉「マミってるーーー!!!」

早苗「首チョンパって気分いい光景じゃないわね……流石にキツいかも」

矢部「な、なんや。これ、お前がやったんか」

山田「どうしてそうなる! これもエスパーユッコが何らかのトリックを使ったに……」

矢部「でも誰もこの部屋に入ってないんやろ? どうしたらこうなるねん。首が落ちるなんて」

山田「お前も頭に似たようなものをつけているだろ」

矢部「な、何言うねん。これはなキャストオフ出来んのや、わしの体の一部やねん」

早苗「斜め上からスパッと切られてるわね。体もまだ暖かいし、本当についさっきやられたみたい凶器になりそうなものは……どこにもないわ」

矢部「ん? よう見たら壁に小さな穴があいとるな。それで寒いんやな、この部屋は」

秋葉「窓の外は駐車場ですね。流石にここから飛び降りたらバレますよね」

矢部「そうか分かったで!」

秋葉「本当ですか矢部さん!」

都「私もわかりましたよ! 名探偵安斎都、真実を見つけました!」

早苗「一応聞いてあげるけど、どうやったのよ?」

都&矢部『犯人は小人で、その穴から出て行ったんです(んや)!!』

山田「さすがに無理があるだろ!」

早苗「そんな所だろうと思ったけどね」

上田「それに、この大きさじゃ本当に細いものしか入りませんよ」

山田「あの車、茂場さん達帰ってきたのか? ん? 車になにか付いて……」

P「た、たたた大変です!!」

上田「どうしたんですか茂場さん、血相を変えて」

加蓮「きゃあ! あ、あれ……」

上田「加蓮さん、見ないほうがいい。さぁ、私の後ろに! 抱きついて!!」

山田「そこまでしなくていいだろ。茂場さん、一体何が?」

P「さっきここに戻ってきたら、エスパーユッコがやって来て!! 渋澤さんは温泉で死ぬって言ってきたんです!」

矢部「温泉?」

早苗「そう言えばこの村って、温泉でも有名なのよね。事件がなければお姉さんゆっくり浸かりたかったけど」

矢部「お姉さん? そないな歳でも……」

早苗「何か言った?」

矢部「い、いえ……なんでもないです、はい」

秋葉「温泉ってここですね。さくまままままままま湯」

矢部「よし! 今すぐそのさくままままままままま湯に行くで!」

秋葉「まが1つ多いですよ」

矢部「そんなもん気にするなやちっちゃいのう! よし、行くぞあきばはらんど、片桐!」

秋葉「もぎゃ! ありがとうございます!!」

上田「もしかしたらエスパーユッコが何かしでかすかもしれない。行くぞ、山田」

山田「あっ、ちょ! タオルとってきまーす!!」

P「……そっちを優先ですか?」

加蓮「私たちも行こうよ」

P「加蓮、無茶するなよ?」

加蓮「……うん大丈夫だよ」

前半終了。続きは夜に書きます。基本的に出てくるトリックは何処かしらで見たこと有るようなものをアレンジしているので、ガバガバでもお気に入りなさらず笑ってくれたら幸いです

乙でーす。

どうでもいいかもしれんが、あの封筒のマジックって山田がやったこと無かったでしたっけ

>>74
あれ、そうだったっけ?如何せん深夜の再放送がビッグマザーと玄奘の奴しか見れなかったから、記憶があやふやだったり。

後半投下して行きます

さくまままままままま湯

男湯

上田「……何か?」

P「い、いえ……」

矢部「た、大したもんですな……」

秋葉「ご、ご立派様?」

上田「コレは……威嚇用の混紡です。リフティングも出来ますよ」

P「で、ですよね……。そう、ですよね。あれ、泣きたくなってきた……。見せられるものじゃないんで、タオルつけときます……」

渋澤「! なんだ、あんたらか。てっきりエスパーユッコが来やがるかと」

P「渋澤さん! ……風呂でも帽子被ったままなんですね」

渋澤「バカやろう、お前これは俺の……アイアンメイデンだよ」

上田「アイデンティティでは?」

P「でも良かった……。渋澤さんが無事で」

渋澤「健康も健康だよ。あの時は流石に驚いたが、流石に心臓麻痺だなんてトリックでどうにかなるもんじゃない。第一村で敵の多い村長らならともかく、俺はただの常連客だぞ?」

上田「敵が多い?」

渋澤「まー見ての通り、村長候補達は3人とも強欲な連中でな。殺された村長の息子も、色々やらかしてたもので30過ぎてもろくな仕事についていなかったようだし、村人たちからはヘイトを集めていたみたいだ」

渋澤「放っておいたら誰も投票しないんじゃないかってレベルの惨状だ。そんな中、エスパーユッコが現れた」

渋澤「奴はいくつもの奇跡を起こし、村人たちから崇められるようになっていった。未海閔亭鵜砂閔の話は聞いたことあるか? 時を超えて、奴は伝説の呪術師と同じことをしている。生まれ変わりだ、って思うのも無理ないわな」

渋澤「これも伝承だが、この温泉を掘り当てたのも鵜砂閔らしい。そこから派生してか、ここの湯に浸かると歳を取らなくなるなんて言われてるよ。まぁ、迷信だけどな」

矢部「……ぐぅ」

秋葉「ううん……綾瀬さんはいいぞぉ、心が豊かになる……」

P「姉ちゃん……すぅ」

渋澤「……凹むぞ、俺」

上田「分かりますよ渋澤さん。私の講義もね、最近まで眠りに来る生徒ばかりでしたから」

P「はっ! すみません、温泉が気持ちよすぎてつい」

矢部「まああれやろ? ミウサギとかいうのが生き返ったって騒いどんやろ」

上田「近いようで遠いですよ」

秋葉「ん?」

まま湯

渋澤「ああ、それはさくまままままままま湯名物の飲み湯だよ。この温泉は増毛や豊乳の効果があるらしくてな」

矢部「ほんまか! あっ、いや……念のためやで? フサフサのわしかて心配にはなるよ」

渋澤「浸かるよりも、飲んだ方が効果あるんだとさ」

矢部「……ゴクリ」

矢部「おい、あきばはらんど。お前先ママの湯飲め」

秋葉「ええ? 僕別に増毛に興味ない」

矢部「増毛ちゃうわボケ! 肩こっとるからこれ飲んで治すんや。まずいかもせんやろ?」

秋葉「もう、人使いが荒いなぁ。……ゴキュゴキュ。ん? 美味しいけど、何だろうこの味」

矢部「美味いんかい! それじゃわしも……おお、いけるやないけ。心なしか生えてくるようや」

P「それじゃ俺も一口……」

渋澤「さて、俺も一杯飲もうかね……」

上田「では折角なので私も……。どこかで飲んだ味? 気のせいか?」

渋澤「ん? ごほっごほっ! ごほっ!!」

矢部「なんや? 咳き込んで」

渋澤「あがっ……」

上田「し、渋澤さん!!」

渋澤「がはっ! な、何で……」

P「だ、大丈夫ですか!? 渋澤さん!
渋澤さん!」

矢部「そ、そない揺らさんでも! 帽子が落ちる!」

女湯 煙多めでお送りします

山田「はーっ! ビバノンノン!! いい湯だなっ」

加蓮「ふぅ……」

都「加蓮さん、お湯に使って大丈夫なんですか?」

加蓮「お医者様に診てもらったら、ただの疲れだろうってさ。もう、茂場さんも心配性なんだから……」

早苗「あー、あの子ね。結構いい面構えしているわよねー」

山田「加蓮ちゃん、惚れてるのか?」

加蓮「ええ!? や、山田さんいきなり変なこと言わないでくださいよ……。茂場さんは皆のプロデューサーだし……」

山田「またまたぁ、顔赤くなってるよ? あー、若いなぁ、青春だなぁ」

都「そうでしたか……これはメモしておかないと!」

加蓮「しなくて良いからっ。でもそう言う山田さんも」

山田「うん?」

加蓮「上田先生のこと、満更じゃないですよね?」

山田「上田のこと? そ、そんなの役に立たない木偶の棒にしか思ってませんよ。いつも私の都合を無視して霊能力者との対決に連れて行くし、あいつに会わなかったら今頃私はラスベガスで人気ナンバーワンの天才巨乳マジシャンになっていたはず……」

加蓮「またまた。私には分かりますよ? 何せ心が読めますから」

山田「えっ?」

加蓮「……なんちゃって」

早苗「まあラスベガスとか巨乳は流石に無理じゃない?」

山田「むっ、失敬な! 女は30超えてからですよ、って早苗さんがどうなっているか私は知りたいですよ」

早苗「えー? でも肩こるわよ?」

山田「私だって一度は肩をこってみたい……」

上田「渋澤さん!!」

P「だ、大丈夫ですか!?」

加蓮「男湯が騒がしいね」

山田「!! まさか……っ!」

裕子「ええ、そのまさかですよ? あー、いい湯ですねぇ、山田さん、さいきっく晩酌しましょうか?」

山田「エスパーユッコ!!」

裕子「ふぅ……この温泉の効能は増毛、豊乳、肩こりヤンデレ……あと美声とか美声とかさいきっく美声とか身に付きますよ、多分!」

裕子「でも……心にやましいことがある人は、渋澤さんみたいになるわ!!」

山田「上田! 何があった!?」

上田「山田か! 渋澤さんが飲み湯を飲んだとたん苦しみだして……」

P「渋澤さん!」

矢部「アカン。もう心臓止まってもうた、ご臨終や」

裕子「ねっ」

山田「そんなっ!」

早苗「嘘でしょ!? 温泉ぐらいゆっくりつからせなさいよ!」

都「わ、私も行くってのぼせちゃいました……」

加蓮「都ちゃん!」

裕子「温泉エコーでぼえええええ!! っぷ、私ものぼせたわ……さいきっく湯あたり。ブクブクブク……」

山田「上田! しぶさわさ!?」

早苗「……服きなさいよ!」

上田「服着ろってここ、男湯だぞ?」

P「渋澤さん、渋澤さん!!」

矢部「そんな体揺らしても生き返ったりせえへ……」

渋澤「」ズラッ

P「し、渋澤さん……」

上田「帽子の下……そういうことだったのか」

矢部「お、おみそれいたしましたぁ!!」

それから着替えて

山田「上田さん。飲み湯を飲んで死んだって言っていましたけど」

上田「ああ。渋澤さんが苦しみだしたのは、そこの『まま湯』を飲んでからだ。だが……飲んだのは渋澤さんだけじゃない、男湯にいた俺たち全員がそれを飲んでいるし、俺は渋澤さんの後に飲んだ」

山田「上田さんたち、生きているじゃないですか」

上田「ああ。俺はそう簡単に死ぬ男じゃないが、どういうことだ? 何故渋澤さんだけ……」

山田「コレが飲み湯ですよね……」

上田「ああ、増毛肩こりヤンデレ豊乳に効く、っておいYou! まさか飲むつもりじゃ」

山田「上田さんや矢部が生きているぐらいですから、私も死なないでしょう。多分ズズッ」

上田「ああ! 死んでも枕には出てこないでくれ! 井戸の中から出てこないで……」

山田「あっ、これ美味い。水筒持ってくればよかった」

上田「意地汚いやつめ!」

山田「でも……何でしょう。この味、覚えがあるような」

上田「Youもか。となると、君のような貧乏貧相貧乳な女でも飲むことが出来る、安っぽい何かと同じということだろう」

上田「山田、これからどうするつもりだ」

山田「もう一度……富良具さんの事件を調べてみようと思います。あの小さな穴、必ず意味があるはずなんです」

上田「そうだな。俺もそう思っていたところだが、君に花を持たせてやったんだ」

山田「本当かよ」

富良具の部屋

上田「この穴から駐車場が見えるな」

山田「駐車場ですか。しかし……何のためここまでしたんでしょうか? もしサイキックパワーがあるのなら、わざわざ椅子を固定して体をくくる必要なんてないのに」

上田「被害者がそういう趣味だったのかもしれないぞ? 縛られることに快感を覚える人間もいるからな」

山田「そう言えば……私たち見張りをするって言っても、誰も被害者の姿を見ていませんし、声も聞いていませんね」

上田「いやっ、加蓮さんが聞いたみたいだ。咳き込んでいるところを怒鳴られた、と」

山田「だとすると妙ですよね。怒鳴る元気が有るなら、助けを求めることが出来たはずです」

上田「一瞬のうちに丸められたんじゃないのか? 超スピードを持ってすれば不可能ではない。俺のように鍛えた人間ならな」

山田「その超がまず無理ですって。そうだ」

上田「どうかしたか?」

山田「穴の向こうは駐車場です。なにか残っているかもしれません」

駐車場

山田「上田ー、キビキビ動けー!」

上田「Youも手伝え! うー、寒い!」

山田「雪を手でかいていたら、私の小さな手がかじかむじゃないですか。手先の繊細さを求められるマジシャンとして致命的です」

上田「致命的にファンのいないマジシャンの間違いだろ! ん? これは……」

山田「上田、なにか見つけたのか?」

上田「これは釣り糸だな。こいつはな、見た目は細いがマグロのように重い魚を釣る時にも使われるぐらい強度もある。最近は蜘蛛の糸の強さも着目され……」

山田「うんちくは別にいいです。釣り糸がどうしてここに?」

上田「車を走らせれば海があるからな。釣りの客がポイ捨てして行ったんだろう」

山田「釣り糸と壁の穴……いや、もしかしたら! 上田さん、あの気持ち悪いぐらいに完成度の高い人形借りれますか?」

上田「ほう、ついにモテなさすぎて私の人形に手を出すように……」

山田「違います。もしかしたら、トリックが分かったかもしれません!」

上田「奇遇だな。私もだ」

山田「じゃあ上田さんが説明してください」

上田「おいおい。そういうのは助手である君の仕事だろうが。それに君の数少ない出番を譲ってやろうって言っているんだぞ?」

山田「分かってないだろ!」

山田「まずこの等身大上田人形を椅子に座らせて体をロープで巻きます」

上田「おおぅっ! そう強く縛らなくても良いじゃないか!」

山田「……次にこの釣り糸を人形の首に巻きます」

上田「お、おいYou。どうするつもりだ、首を絞めるなんてこと……」

山田「そしてこの釣り糸を穴から外に垂らすんです。恐らく窓から手を伸ばして糸の先端に石でもまいて取りやすくしたはずです」

山田「そしてその糸を車にくくる。すみません、おねがいしまーす!」

支配人「? この糸を車にくくればいいのね?」

山田「最後はその状態で車を走らせる。すると糸は引っ張られて……」

上田人形「」ポトッ

上田「じ、じろううううううう!!!」

山田「細い糸で絞め上げられた首は落ちるってわけです。斜めに斬れていたのも、こういうことでしょう」

山田「仕掛けは私たちがここに戻る前までに準備されていたのでしょう。何らかの理由で富良具さんの部屋に入り彼を気絶させ縛り、仕掛けを作った」

山田「あとは車に括って動かせばさっきの仕掛けが発動するってわけです。エスパーユッコは車が動くタイミングを見計らってここに来たんでしょうね」

上田「なんだ、やれば出来るじゃないか。俺も君と同じ意見だ。いや、君が俺と同じ意見と言うべきか? だがそうなると……加蓮さんが聞いた声はどうなる? 彼女は声を聞いたんだぞ?」

山田「……それはテープを流したんじゃないでしょうか。富良具さんはカリカリしていましたから、怒鳴り声の音源は簡単に手に入ると思います。加蓮ちゃんは風邪気味でしたし、咳き込んだ時に流すんです」

上田「なるほど、そうすればその瞬間彼は無事だったと錯覚させることができる」

山田「いや、もしくは……」

上田「? じゃあ渋澤さんはどう説明する? 彼だけ死ぬなんて、偶然だというのか?」

山田「それはまだ……」

都「上田先生!! エスパーユッコが降りて来ました!!」

裕子「アー、アー……ぼええええ!」

山田「相変わらず音痴だな。私の方がまだ上手いぞ。恋のダウンロードっ2人パレードっ」

上田「茂場さん、一体何が?」

P「それは分かりませんが……」

裕子「アー、コホン! 村長さんはいませんかー? っていませんね」

山田「そう言えば、村長は土是さんの事件以来顔を出しませんね」

加蓮「引き篭ってるんじゃないですか?」

裕子「ハガー嗣朝って名前負けしてますよね! まあ自分の部屋にこもってブルブル震える気持ちもよーく分かります! なので、いっそ楽にしてあげましょう!」

山田「!!」

裕子「なんでも村長の部屋には厳重なロックがされていて、吉田沙保里でも通り抜けることができないとか」

支配人「村長の家に入るには、指紋と網膜の認証が必要なのね。それを通れるのは、村長とjrと前村長の家族のみなのね」

山田「随分近代的だな」

上田「前村長の家族?」

支配人「ああ、前村長と今の村長は親戚関係で、同じ家を間借りしていたのね。だけど村長親子が留守にしているあいだに、心中事件が起きた。その家を未だに使用したままだから、家族の指紋と網膜があれば、入ることはできるのね。もっとも、今はみんなこの世にいないけど」

裕子「そう、その究極のセキュリティということです! で・す・が! 私はそのセキュリティをサイキック開錠して、最後のサイキック処刑を下したいと思います!」

上田「セキュリティを抜けるだと?」

裕子「はいっ。折角なので時間指定もしておきましょう! 最後にして最強のサイキック処刑は今夜0時、お見逃しなく!」


矢部「ちょっと待った! 悪いけど今の殺害予告聞き逃すわけにいかへん、犯罪予告罪で逮捕や」

裕子「ってあり?」

秋葉「矢部さん、そんな法律ありませんよ! 脅迫罪です! 後業務妨害とか!」

矢部「なんでもええやろ! 最近はネットで○○殺すとか書いただけで逮捕される時代や、生まれる時代が悪かったな。ほれ、両手出して」

裕子「はっ! さいきっく風おこし! 破ぁ!!」フーフー

矢部「なんや、そのかめはめ波のポーズは。何も起き」ファサー

矢部「ってなんや? 頭がえらい寒いけど」

秋葉「矢部さん! 頭頭!」

矢部「ってわぁ!! わしの帽子があああ!!」

裕子「それじゃあまた後ほど! サイキック瞬間移動! ヘイ肩車!」

取り巻き「うすっ!」

早苗「待ちなさい!」

裕子「さいきっく……煙玉!! ボンッ!」

早苗「ケホッ、ケホッ……。うー、目に染みる」

裕子「またケホッ、なゴホッ! とっつぁーん! ケホッ! 目が痛い~」

山田「あの肩車、早すぎるだろ!」

上田「あれは相当鍛えていないと出来ない技だ。あの取り巻き、出来るな」

山田「今夜0時……上田さん、こうなったら全員で見張っておきましょう」

上田「ああ、それがいいだろうな」

都「私も手伝いますよ! 張り込みは探偵の必須スキルです!」

P「私は村長にここから逃げるよう言って来ます」

加蓮「じゃあ私は……事務所のみんなと夜食を作るね。みんなお腹空かせるだろうし、あのカニ鍋でいいかな?」

P「ああ、それなら食材を買っておいたから。それを使ってくれ」

夜11時30分 村長邸前

秋葉「茂場さん! どうでしたか?」

P「村長に逃げるように言ったんですけど、逃げるどころか頑固に居座ってしまって」

上田「そうですか……。こうなったら、意地でもエスパーユッコを止めないと」

矢部「あれか? ここで逃げたら票が逃げる思とんか」

早苗「逃げても票数は変わらないでしょうにね」

山田「ん? この匂いは……」

都「みきわた鍋です!」

P「いつきま鍋、ね。なんだそのブラックな闇鍋は」

秋葉「でもこのセキュリティはそう簡単に破れないと思いますけど」

P「だと良いんですが……」

加蓮「アイドルのみんなで作ってきたよ! これを食べて温まってくださいね、先生!」

上田「ありがたい、加蓮さんの愛情がひしひしと伝わってきますよ」

早苗「お酒! お酒はない!?」

P「あはは……騒ぎたい気持ちはわかりますが、程ほどにお願いしますね」

矢部「うまっ! 温まるわ……」

秋葉「熱っ!」

上田「どうした、山田。食べないのか?」

山田「いえ、最初にこれを食べたときのことを思い返していたんです。あの時渋澤さんは鍋を食べませんでしたね」

上田「ああ、彼の分も君が食べたんじゃないか」

山田「もしかしたら、渋澤さんカニが嫌いだったんじゃないかって思って」

上田「カニが嫌い? まぁアレルギー持ちなら迷惑な話だろうが」

山田「カニアカデミー……ズズズ」

上田「アレルギーだ。カニの殿堂でも決める気か?」

山田「!! この味……そういう事か!」

上田「山田、何か分かったのか!?」

山田「あのままま湯の味に覚えがあるって言いましたけど、思い出しましたよ。この鍋の味です」

上田「まが1つ多いぞ。ズズズ……確かに似ているが。! まさかあの飲み湯の中……に」バタン

山田「お、おい上田! 寝る、な……」

矢部「くかー、くかー」

早苗「ううん……もう飲めない……」

秋葉「ピュアハート……ふがっ」

都「ずぅ……ホームズせんせぇ……」

山田「くっ、やられ……た……無乳……」

加蓮「……」

P「んん……姉ちゃんそこはダメぇ……」

加蓮「ごめんね、茂場さん……すぅ……」

夜0時

裕子「どーもー、サイキック寝起きドッキリでーす。これから村長をサイキック処刑しに行きまーす」

加蓮「……すぅ」

P「……加蓮……足踏まないで……ぐぅ」

山田「卑弥呼は貧乳……クレヨンパトラも貧乳私は巨乳……うひょひょひょひょ……」

裕子「しっかし……こんな所で寝たら風邪引いちゃうわね。さっさと終わらせて起こしてあげようかしら?」

裕子「さてと、最後のサイキック処刑……行くわ、アントニオ!! ユッコボンバイエ! ユッコボンバイエ!」

裕子「サイキック……解錠!」ピピピ

セコム『承認しました』

裕子「ユッコ、行きまーす」

芳賀「い、いくらトリックを使って奴らを殺したとしても、この家だけは安全だ……。もう開けることができる人間はいないのだからな」

裕子「ここにいるぞ!!」

芳賀「な、なぜ……! ど、どどどうやって……き、貴様は何者だ!!」

裕子「名乗る程では……ユッコです! えへっ!」

芳賀「ま、まさか貴様……あの時の……いや、有り得ない」

裕子「メイドの土産に教えてあげるけど、有り得ないってことがそもそも有り得ないのよ?」

芳賀「く、来るな……!」

裕子「うーん、ダイナマイトに括ろうかなって思ったけど、こんな小物には勿体無いわね。それでは……サラバ!!」

芳賀「ば、ばんなそかなーー!!」ズシャ

裕子「ふぅ……終わっちゃった」

上田「はっ!」

山田「うぅん……レイナサマぁ、パンの耳を食べるのはやめて……」

上田「おい起きろ!!」

山田「んにゃ! あ、あれ? 私寝て……」

上田「恐らくいつきま鍋に睡眠薬を入れられていたのだろう。くそ、卑劣な真似を!」

山田「! 村長は!!」

裕子「ぼええええええ!! みんなおきなさーい! サイキックブブゼラ!」ブオオオオ!!

山田「う、煩っ!」

裕子「ハイ注目! 村長は約束通り、0時きっかしに処刑したわ! 勿論、そのドアから正々堂々入ってね!」

P「うっ、まさかねてしまうなんて……」

上田「あのセキュリティをだと? そうだ、裏口とかはないのか!?」

裕子「なんなら監視カメラを見たらどうですか? ちゃーんと入口から入っていますよ」

上田「ハッタリだ! 確認すればすぐ分かることを……」

秋葉「監視カメラの映像、ハッキングできました!」

早苗「準備がいいわね! 0時前の映像は……」

矢部「なんや、普通に入口から入っとるやんけ」

上田「ばんなそかな! ど、どういうことだ山田! 彼女はどうやってあのセキュリティを……」

山田「……もしかしたら」

上田「え?」

山田「秋葉! そのパソコンで、14年前の地元のテレビ局のオーディション番組を検索しろ!」

秋葉「ええ? 14年前ですか? そんな古い番組の情報なんて残っているかな?」

山田「当時のデータが残っていたら……」

秋葉「ああ、これです! 地元の新聞の写真ですけどオーディション合格者は……まぁ、懐かしい名前」

上田「! ちょっと待て! この写真の子……」

山田「ええ、そういうことです。正直言って、信じがたいですが……それならばこの解錠トリックも説明がつくんです」

山田「みなさん!! 大変長らくお待たせ致しました!! エスパーユッコの起こしてきたのは奇跡でも呪術でも何でもありません! ただの殺人です!」

山田「20mの竹での首吊り死体、あれは雪の重みでしなった竹にロープを巻いて雪が溶けて竹が元に戻ることで成立しました」

山田「次に武井荘での首斬り殺人。あれは駐車場側の壁に穴を開けてそこから通した細い釣り糸を首に巻き、車にくくって動かすことで自然と首を切り落とすという仕掛けでした」

都「で、でもあの時部屋は密室でした! 鍵はマスターキーを借りて上田先生が蹴倒しましたけど」

山田「恐らく犯人は仕掛けを用意したあと、部屋の鍵を閉めて出たんです。そしてあらかじめ決められた場所に鍵を隠し、モーテルに来たエスパーユッコがそれを拾ったんです」

山田「私たちが死体に気を取られているあいだに鍵を置き、同時に車で引っ張られてちぎれた釣り糸を回収したんです」

都「まさか私たちの目の前で行われていたとは!」

山田「そして温泉での渋澤さんの事件。渋澤さんは飲み湯を飲んで死んだわけじゃないんです。渋澤さんは甲殻類アレルギーだったんです。だからカニ鍋を食べようとしなかった」

山田「犯人は彼の弱点を知っていて、あの飲み湯にカニエキスが入れたんです。もしかしたらカニをそのまま入れて出汁を取っていたのかもしれませんね。いつきま鍋と同じ味がしたのは、蟹の味がしたからです。おかげで美味しくいただけましたが」

矢部「じゃ、じゃあ何で心臓麻痺を起こしたんや!」

上田「苦しんでいたのは甲殻類アレルギーによるものだとすると、心臓麻痺を起こすよう何かを注射されたのかもしれません。例えば、空気とか。十分死に至ります。以前似たようなトリックの事を著作に書きましたが、まさか悪用されるとは……!」

上田「現場には注射器は落ちていませんでした。となると、持ち帰ったのでしょう。タオルに巻いて隠すなどして。そしてあの時、それが可能だったのはいの一番に駆け寄った……」

上田「茂場さん。あなたです」

P「!!」

都「プ、プロデューサーが!? う、嘘ですよね?」

山田「茂場さんが犯人だとすると、首斬りのトリックもやりやすくなります。なにせ自分で車を運転するわけですからね。しかし、仕掛けを回収しきれなかった。釣り糸が、雪の中に残っていました」

上田「茂場さんは最初からユッコの仲間だったって事です。竹のトリックは難しいものではないですが、女性ひとりの力では難しい。彼も協力したはずです」

P「……」

山田「そして最後の解錠。見張りをしていた私たちが眠ってしまったのも、茂場さんの仕業でしょう。鍋には彼が買ってきた食材が使われました。調味料に睡眠薬を混ぜることも可能なはずです」

P「……」

山田「私たちが眠ったあと、エスパーゆっこは堂々と正面から来ます。セキュリティは指紋と網膜による認証が必要です。そしてそれを通すことが出来るのは、現村長親子と心中事件で亡くなった前村長一家」

山田「しかしエスパーユッコは、それをさも当たり前のようにスルーしました。何故か? 至って簡単です。ただ……常識が通用しない真実でしたが」

山田「エスパーユッコ、堀裕子は……14年前に行方不明になったままの佐伯壱香ちゃんその人です!!」

上田「!」

都「ええ!?」

裕子「……」

支配人「ちょ、ちょっと待つのね! 確かにエスパーユッコぐらいの年齢の時に、壱香ちゃんと楠緒くんは行方不明になったのね。でも……14年前の話なのね! エスパーユッコが壱香ちゃんなら、あの日から一切成長していないってことなのね!」

早苗「いくらなんでも成長しない人間はいないわよ! ま、まぁ胸とかは個人差があると思うけど……」

山田「そこは今はいいだろ!」

山田「正直、私も俄かに信じることができませんでした。ですがセキュリティを正面から突破したことと、14年前のオーディションの写真と髪型は違えど瓜二つなこと」

山田「指紋を調べれば分かるはずです。彼女が、佐伯壱香だということは」

山田「佐伯壱香、茂場プロデューサー……」

裕子「ふふっ」

P「……」

山田「お前たちのやったことは……」

山田「全てまるっとさいきっくお見通しだ!!」

山田「だ!」

山田「だ!!」

山田「だ!!!」

山田「……ようやく言えた」

支配人「そ、そんなのありえないのね……」

矢部「エスパーユッコ、指紋を調べさせてもらうで」

裕子「ふふっ、ふふふ……」

裕子「あはははははははははははははは!!! サイキック大当たりーーーーー!!!」

裕子「そっかぁ、バレちゃったのね。正解よ、私の本当の名前は……佐伯壱香。14年前に行方不明になった村長の娘よ」

P「そして俺は……まぁ何となくお察しのとおりです。茂場っていうのは拾ってくれた人の苗字で、本名は佐伯楠緒。俺たちは……姉弟です」

都「そ、そんな……。でもどうして歳を取らないんですか? 不老不死だなんて……」

裕子「上田先生なら、心当たりがあるんじゃないかしら?」

上田「……不死は別として、歳を取らなくなる病気は実在するんだ。正確には老けなくなる、と言った方が良いが……ハイランダー症候群と呼ばれる奇病でな」

山田「ハイランカー?」

上田「ハイランダー! 見た目は小学生でも実年齢は35歳だったり、不確定だがある一定の歳から老化が止まると言われている」

上田「この病気の厄介なところは……世界的にも非常に稀な病気で解決策も見つかっていない。日本での発症例は……今のところ0だ。だから認知度も低い」

上田「実態すらはっきりしていない、まさに現代の奇病だ。そうか鵜砂閔が一切歳を取らなかったと言う伝承も、もしかしたらこのことだったのかもしれない。現代でもまだ謎の多い病だ、当時の人たちからすれば老けることのなかった鵜砂閔はまさに呪術師と言ってもよかったかもしれない」

裕子「先生のおっしゃった通りです。原因は分かりませんけど、私は16歳のあの日から一切成長しなくなったの。あの時は小さかった楠緒君も、今はこんなに大きくなって。なんだか変な感じです」

裕子「あの日……世間じゃお父さんが麻薬の禁断症状で発狂して心中を起こしたなんて言われてけど、そんなの嘘っぱち。私達が処刑した4人に殺されたのよ」

裕子「そしてそのきっかけを作ったのが……芳賀の無能息子。奴は麻薬を所持していたの。それを知ったお父さんは彼に止めるように言ったわ。だけど……逆に殺された」

裕子「芳賀は息子の罪を隠すために心中事件をでっちあげて、土是も富良具に母さんとお爺ちゃんとお婆ちゃんも殺させた! あまつさえお父さんにすべての罪を擦り付けて!! 2人が金と権力を得るようになったのは、14年前から。本当に、分かりやすいぐらいだったわ」

裕子「当然私と楠緒くんにも魔の手は迫った。だけど運良く私たちは逃げきれて、たまたま近くを通った猟師に助けられた。その人が……茂場さんよ」

P「事情を知った茂場さんは俺たちを匿ってくれました。本当の子供のように可愛がってくれて、俺たちを育ててくれた」

P「茂場さんには感謝しています。だけど……俺たちは奴らを許せなかった」

裕子「あれから14年……村長選挙に例の3人が出ることを知った私たちは、計画を練ったわ。私の顔を見た村のみんなの顔ときたら……それは傑作だったわ。流石に、一切歳を取らなくなった本人だとは思わなかったみたいだけど」

裕子「それと。堀裕子ってのは……直感で付けた偽名。言うなればサイキック芸名ね」

上田「じゃあ何故! 渋澤さんも殺したんだ! 彼は心中事件に関わっていないはずだ!」

P「渋澤は悪意のこもった記事をでっち上げてアイドルを破滅させる……悪魔のような男だった。そして奴のターゲットは……加蓮でした」

加蓮「……」

P「奴は加蓮を苦しめるため、ありもしない事実をいくつも作り上げた。加蓮だけじゃない、この業界には奴の毒牙にかかったアイドルは大勢いるんです。その中には……輝く才能を持った子もいたはずです」

P「だから殺したんです。業界を代表して、奴にバツを与えたんですよ」

裕子「そういう事。だから彼にも消えてもらったの。1人殺したところで、何人殺しても結果は同じですから。私はすでに、畜生以下の存在なんです」

P「面白おかしく書けば読者は喜ぶ。でもね、それで破滅させられたアイドルの未来はどうなるんですか!? 俺は加蓮の、アイドルたちの未来を奪いたくなかった。だからアイツを葬ったんです。芸能事務所の人たちは口に出さなくても、俺のことを英雄だなんて思ってくれるはずですよ」

山田「……人を殺して英雄で有ってたまるか!」

P「英雄ですよ。俺は業界に蔓延るガンを、姉ちゃんはこの村の膿を取り除いただけなんですから。まぁ、英雄と呼ばれたかったらもっと殺すべきなんでしょうけど。アイドル業界には、不要なものが多すぎる。膿は全て取り除かなきゃいけないんですよ。まぁ、俺も似たようなものですけど」

矢部「お前……ふざけたこと言っとんちゃうぞ! どんなにいけすかん悪い奴でもな、殺してまえばそいつ以下の存在になるんや! お前は英雄なんかやない! ただのクズ野郎や!! 2人とも……殺人で逮捕や」

都「プロデューサーさん……」

P「みんなをトップアイドルに導いてやるって言ったけど……あれ、守れそうにないな。ちひろさんと社長に謝らないと。刑事さん、行きましょう。どんな罪も、受ける覚悟はありますから」

裕子「ふふっ……!! がはっ!」ツー

P「姉ちゃん!!」

山田「! エスパーユッコ!!」

上田「まさか、毒を……」

裕子「違いますよ。どうやら、私はとっくの昔に死んでいたみたいです。だから復讐を終えた今、生きる理由も何もない……かはっ!」

裕子「私は老けませんでした……でも、死なないわけじゃない。私は死期を悟っていたのかもしれませんね」

P「姉ちゃん……しっかりしろ姉ちゃん!!」

裕子「楠緒くん。貴方は罪を償って……待っている皆がいるんだからっ! で、でも……最後に願おうかな」

裕子「次生まれ変わったときは……人を笑顔にするサイキックが欲しいな……その時は楠緒くんが……シンデレラにして、ね?」

P「姉ちゃあああああん!!」

上田「……」

山田「……」

山田(エスパーユッコ、佐伯壱香は死んだ。これまでの魔法が溶けたかのように、一気に歳をとって)

上田「……茂場さん」

P「なんでしょうか、上田さん。自分の本に書かれたトリックを使われて……怒ってますよね」

上田「どうして……私を呼んだんだ? 私たちさえいなければ……、この事件は解決しなかったかもしれない……」

P「知って欲しかったんです」

上田「え?」

P「姉ちゃんのように……常識が通用しない、科学でもどうしようもできないような存在がいるってことを、知って欲しかったんです」

上田「……」

P「もし今日の事を書く日が来たら……姉ちゃんのこと、可愛く書いてあげてくださいね」

矢部「おい、行くぞ」

P「それでは上田さん……さようなら」

村人「テレポーテーション! テレポーテーション!!」

加蓮「……」

山田「加蓮ちゃん」

加蓮「山田さん。どうかしましたか? 少し、一人にして欲しい……」

山田「もしかして貴女は……最初から茂場さんとユッコが姉弟で共犯だったことに気付いていたんじゃないかしら?」

加蓮「どうして、そう思うんですか?」

山田「まず富良具さんんに怒鳴られた、って言っていたけど現場には音声を再生するものなんて一つもなかった。本当は、演技をしていたんじゃないかな? 茂場さんが仕掛けを作っていたことに私たちが気付かないように」

山田「その後貴女は倒れて病院へと車に乗っていった。あれも茂場さんに車を運転させる怪しまれない口実を作るためだった」

山田「最後に……睡眠薬入りの鍋を作ったのは加蓮ちゃん。本当は、気づいていたんじゃないの? 睡眠薬が入っていることに」

加蓮「もし、そうだとしても……証拠はありませんよ?」

山田「そう。だからこれは可能性の話。プロデューサーが人を殺してまで守ろうとしたアイドルの真実は……闇の中」

加蓮「守ろうとしたもの、か。私にそんな価値、ないのにね……。でも山田さん、1つだけ教えておいてあげます」

山田「?」

加蓮「私はプロデューサーから何も聞かされていませんし、エスパーユッコとコンタクトもとっていません。ただ……茂場さんの心を読んだんです」

山田「え?」

加蓮「あり得ないことがあり得ない。何事にも例外はあるってことです。何せ私、心が読めるサイキックですから……なんちゃって」

山田「!」

加蓮「それじゃあ山田さん。上田さんに伝えておいてください。最新作、心からお待ちしていますって」

山田「……いや有り得ない」

上田「何がだ?」

山田「きっとどこかにタネがあるはずだ」

上田「すまないが、話が読めな……」

山田「北条加蓮! お前のやったことは……いつかまるっとお見通しにしてやる!!」

上田「そうだ! 加蓮さんは……」

山田「やめとけ。お前で適う相手じゃないぞ、それよりもカニだ! カニを食べさせてくれ!」

上田「全く、食い意地の張ったやつだ」

山田「今日は死ぬほど食べたい気分なんです。上田さん、奢ってください」

上田「仕方ない。料金は家賃にツケておいて貰うからな」

山田「あっ、卑怯だぞ上田!」

上田「第一カニは散々食べただろ!」

山田「次いつ食べられるか分からないじゃないですか。今のうちに溜め込むんです」

上田「Youはハムスターか。さて、帰るぞ次郎号」

次郎号『』

上田「すごいだろう、声で動くようになったんだぞ!」

山田「……どうなっているんだ?」

上田「最新の技術が濃縮されているからな」

山田「ところで最近私見えるようになったんです」

上田「何がだ?」

山田「一鷹二富士三茄子! 一鷹二富士三茄子!! ラッキィ池田、ラッキィ池田!」

山田「舞九台村(マイクタイソン)、舞九台村!」

上田「……次もあるのか?」

おしまい

??「アー、アー。私は超能力者デース」

?「あのっ! ちょっと良いかな?」

??「はい、なんでしょうか! まさか私のテレパシーが届いた!?」

?「? なんのことだ? まあいいや、実はさ俺こういうものなんだけど……」

?「アイドルに、興味ない?」

fin

以上で終わりです。思っていた以上にレスがあって嬉しい半面期待が大きかったり。読んでくれた方、ありがとうございました。

リーガルハイクロスで痛い前書き書いてた人?

たくさんのレス頂きありがとうございます。

>>152
765プロリーガルハイの作者とは違います

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