フィアンマ『安価で人生をやり直したい』 (746)



・右方のフィアンマさんが死んじゃったお話

・メインは右方……

・時間軸不明、旧約一巻以前

・安価によるキャラ崩壊(設定改変含)注意


※注意※
人物安価はとあるキャラorスレで誕生したキャラorモブでお願いします
エログロ描写が入る可能性があります。
小ネタを単発で投下するかもしれません。
どうしても捌けない場合等、>>1の判断で安価下。
コンマ安価は苦悶と迷いの果てに。
連投、連続取得はご自由に。


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心地良い夢だった。
過去の知己と顔を合わせて話す、というもの。
自分が魔術師になる前の知り合いも居た。
その面々は皆死んでいる訳なのだが、夢の中とは自由なものである。

沢山、話をした。

これまで努力してきたこと。
これから努力していこうと思うこと。

一緒にしたかったこと。
一緒にしてきたこと。

数こそそんなに多くはないが、フィアンマの知り合いはそれなりに密度の濃い関係だった。
幼い頃に少し世話になった人なんかもいたり、して。
褒められたり、叱られたりした。


そうして、別れの時間はやってきて。
夢の中だというのに、時間の感覚だけは明白だった。
寂しいという気持ちを抑えきれずに、手を伸ばす。
彼らは少しだけ悩んだ表情を浮かべ、自分の手を払う。
明確な拒絶というよりは、曖昧な遠ざけ。

まだ早いよ、とでも言うかのような。

別に、早くなんてないと、彼自身はそう思う。
そもそも、死ぬことに早いも遅いのないのだ。
ただ、いつ死ぬか、それだけの違いに過ぎない。
死ぬことで努力を放棄出来るなら、それだって悪くない。





『待っ―――――』

急に息が詰まって、暗転。


目が覚めた。
眠る前の寒さはなかった。
冬なので、毛布を二枚追加したのが良かったのかもしれない。

『………』

まだ眠いような気がする。
ふらふらと起き上がり、壁に手をつこうと思った。


するっ


そんな効果音がついてしまいそうな程に軽く。
つこうと思った手は壁をすり抜けた。
思わずバランスを崩し、床に膝をついて倒れこむ。
情けないが致し方ない。

『朝からツイてないな……』

珍しいことだ、と思いつつ。
脚力だけで立ち上がる。


鏡を見ると、いつもと変わりない自分が居た。
少し疲れていたから、妙な感覚を覚えたのだろうか。
何らかの術式を用いているのならともかく、普通、腕が壁をすり抜けるなんてありえない。

『透明人間でもあるまいし……』

独り言を呟いて顔を洗う。
何だか水の冷たさを感じない。
もしかしたら熱があるのかもしれないな、と思った。
人は体調を崩した時、かえって感覚を失うという。

『ひとまず書類だけでも片付けるか』

軽口を叩くように自分を奮い立たせる。
ある程度の疲れがないと眠れない。
ワーカーホリックではないが、寝つきが悪いのである。




ペンが持てない。
なぜか指がすかっ、すかっ、とすり抜けて握れない。
試しにと別のペンにも触れてみようとしたが、ダメだった。


調子が出ない。
呪いをかけられただろうか。
しかし、自分が防げない程の呪術術式をかけられる人員など非常に限られる。
そして、その限られた面々は自分に呪いなどかけない。

『幻覚の類か…?』

魔道書を読めば、『毒』はついてまわる。
より正確に言えば汚染である。
自分は『聖なる右』があるので、大丈夫だと思ったのだが。

『そう簡単にもいかないか……』

おかしいな、と首を傾げる。
外に出て少し歩き、てくてくと歩く。
時刻は既に8の数字を指している、つまりは夜だった。


途中、人にぶつかりそうになり――――――




すかっ



やっぱり、すり抜けた。
今度こそ、フィアンマは現実を直視する他無くなる。

要するに。
つまり。
だから。
これは。
もしかして。





(俺様、もしかして死んでる……?)


周囲を見回してみる。
誰かに声をかけてみれば、或いはわかるかもしれない。
気のせいかもしれない。精神の病の類かも。

『少し話を聞いて欲しいのだが』

声をかけてみる。
相手は、こちらを振り返った。







振り返ってくれた相手は?>>+2

【口調捜してました…時間かかった】


「え……ぼ、ぼく? ぼくに話しかけて…?」
『如何にも。……ん? 認識されるということはやはり俺様の考え過ぎか…?』

振り返った少年の名は、鋼盾掬彦。
科学サイドの長たる学園都市の中でも純粋な最弱―――無能力者(レベル0)。
彼は無能力者故の規制の緩さを利用して、『外』へ出てきた。
イタリアにやってきた理由は、祖父母がこちらへ住居を構えているからである。
皮肉にも、超能力<チカラ>は無く、霊感<チカラ>があったが故の、邂逅。

とはいえ。

本物の幽霊を見たのは初めてな鋼盾少年。
その目元には涙が溜まり、ちょっぴり肥えた体はぶるぶると震えている。
人見知りなのだろうか、日本人かな、とフィアンマは思考し。

『一つ、頼みがある』
「え、何ですか…?」

おどおどとしているが、鋼盾は心根の優しい少年である。
心根が真っ直ぐだからこそ、コンプレックスを抱え込んでしまう人格を持っている。
頼られると『嫌です』と言いづらいのは日本人の特性。
彼はフィアンマに言われるまま、おろおろと手を出した。

すかっ

触ってみようとしたが、すり抜けた。
ふう、と緩やかにため息をつくフィアンマに対し、鋼盾は本格的に震えを悪化させる。

「あ、……あああああうわああああ!!?」
『本当に死んでいたようだな…』
「その反応はおかしい! です…よ?」

思わずタメ口を使いかけるが、咄嗟にですます口調を付け加える鋼盾。
実に日本人的な少年である。

『しかし、俺様の姿が見える相手に出会えたのは幸運だった。
 これも俺様の体質がなせる……いや、この状態に体は関係ないな……』
「そ、それじゃあぼくはこれで、」

逃げようとする鋼盾。
フィアンマは一瞬にして彼に近づくと、軽く息を吹きかけた。
幽霊特有のひんやりキンキンに冷えた吐息である。
ビクゥ!! と固まる哀れな鋼盾に対し、フィアンマはこう言った。

『俺様を見捨てたら祟るが、どうする?』
「勘弁してください! ぼくはまだ死にたくないんだあ!!」
『では交換条件だ。呑んでもらおう』
「条件……?」
>>20

体を少し貸してくれるか?


『身体を少し貸してくれるか?』
「え゛っ」

鋼盾掬彦は無能力者だ。
その点でいえば、学園都市において価値はさほどない。
しかし、それでも五体満足な人間の体である。
貸してー、いいよー、なんて気軽さでは貸せない。
まして、会ってすぐの幽霊(?)に対してなど、とんでもない。

ぶんぶんぶんぶんぶんぶん。

全速力で首を横に振り、鋼盾は後ずさる。
祟られるのは嫌だが、身体を乗っ取られるなんてもっと嫌だ。
それはつまり、精神的な死を意味するのだから。

「す、少しってどの位…ですか?」

だが、一応譲歩の姿勢を見せてみる。
心理学の本に『一度は受け入れてみせろ』なんて書いてあったような気がした。
うーん、と目の前の青年は考えてみせて。

>>25

一日ほどだ、お前の命に危害を加えることはしない


『一日ほどだ、お前の命に危害を加えることはしない』
「……祟るとかおっしゃってましたけど…」
『多少の謝礼もやろう』
「………」
『安心しろ。魂の扱いに関してはちょっとしたプロだ。
 ああ、死体を扱うことを専門にする奴らに比べれば多少は劣るが…』
「ちょっと何を言ってるのかわからないんですけど…」
『身辺整理もしないままに死んでしまってな。あんまりにもあんまりだろう?』

同情を誘うようなフィアンマの言葉運びに、鋼盾は少し黙り込む。

ここで、一日位自分の身体を貸してあげたって、損は無いんじゃないか?

謝礼は無しだとしても。
今まで、自分は生きてきて誰かの為に何かをしてきた覚えはない。
放任どころか放置をする親の下に産まれ、学園都市へ捨てられて。
能力も何一つ開花せず、目覚しい才能も無く。
そんな自分が唯一持っていた『霊感』で、誰かを助けられるのなら。
それはとっても良いことなのではないか、と思う。

そんな少年は騙されやすいタイプである。

フィアンマの視線に根負けし、鋼盾はこくりと頷いた。

「ただ、祖父母に挨拶はさせてください」
『わかった』





――――数時間後。

頭の中にある術式を総動員して、どうにか鋼盾に乗り移ったフィアンマである。
少年には不釣り合いな威圧感が放たれているが、気にしない。

「……さて。身辺整理といっても、大したことはないしな…。
 プロジェクト=ベツレヘムは俺様が居なければ勝手に潰えてしまうだろうし…残念だが。
 となると、最期のお別れというヤツが最適かな? 誰に会いに行くべきか………」






誰に会いに行く?>>+2


「大聖堂から離れてまだ一時間も経過していない。
 まだ死体は見つかっていないだろうし……行くか」

仕事仲間の中でも、真っ先に思い浮かんだのは、一人の女性。
自分が生きて世界を救えば、準じて救われたであろう、一人の。



鋼盾(フィアンマ)は、無事聖ピエトロ大聖堂へと戻って来た。
素人の体でも魔力は練れるものである。
命に関わるようなことはしない、と嘘をついてしまった気がする。

そうして。

歩き進んだ先に、彼女は立っていた。
満天の星空を眺め、ゆっくりとコーヒーを飲んでいる。
実に彼女らしい自然の楽しみ方だ。

「ヴェント」

呼ぶ。
振り返る。




――――当然といえば当然なのだが、ヴェントの表情が歪んだ。


「どうやって入ったクソガキ。……というより、何で私のコトを知ってるワケ?」

困った。
何と説明すれば納得してもらえるだろうか。
体質が違うので、『聖なる右』で証明することは出来ない。


>>37

↑+お前今日はピアスしてないのか?


「舌を引き裂いて悪かった」
「……はぁ?」

この際なので夢の中の話でも構わず謝罪しておく。
多分、あれは正夢になっただろうから。自分が生きていれば。
少年とは思えない雰囲気に、ヴェントは僅かにたじろぐ。
手元の武器を手繰ねるように、彼女の殺気は消えない。

「…お前、今日はピアスをしていないのか?」
「する必要もが無けりゃしない。当然のコトよ」

きっぱりと言い、ヴェントは空を見上げる。
女の勘と賞賛されるべきか、彼女はポツリと言った。

「……フィアンマ…だったり、する?」
「……そうだよ」
「…なにそれ。その辺のガキ捕まえて操ってんの?」
「いいや」
「………」
「諸事情でこういう方法を使わないとお前と会話を出来ないと思ってな」
「いつも私と会話なんざロクにしないだろ。馴れ合うタイプでもないだろうに」
「そうだな。今となっては後悔していることばかりだ」
「………嫌にしんみりしやがって。右席やめるー、とかバカげたコト言い出すワケ? なら、喜んで送り出してあげる」

カップの中身を飲み干して、彼女はテーブルにカップを置く。
フィアンマは軽く壁に寄りかかり、彼女の様子を眺めた。
ややあって、言葉を口にする。

>>41

加速下

【今日はここまで 明日の夜再開しますので雑談ご自由に】


「死後の世界を信じるか?」

フィアンマの問いかけに、ヴェントは唇を噛み締める。
当然だ、とでも吐き捨てるかのように。

「私の弟は、きっと神の国に招かれる」

それで幸せになるに決まってる、と言った。
神の国、十字教における死後の世界観。
間違っていたよ、とはフィアンマは告げなかった。
希望を持っていれば、人はどんな形でも生きていける。
わざわざヴェントに真実を語って聞かせて失望させる必要なんて、どこにもない。

「…それが何? 知り合いでも死んだ?」
「……そう、…だな。そんな感じかもしれん」
「曖昧すぎ。会話する気ないだろ」
「あるさ。今日を逃せば、もう二度と会話出来なくなるかもしれないしな」

フィアンマの発言に、ヴェントは考えを巡らせて。
そして、真実に限りなく近い推論を元に、言葉を返した。

「後追いなんて、他国の文化でもやるつもり?」
「………」

後追いではなく、正しく自分が死んでいるのだけれど。

それを直接口にするのは憚られて、フィアンマは苦い笑みを浮かべる。

「それも悪くはないな。俺様が死んだからといって即解体となる程、『右席』は軟弱ではないはずだし」
「……本気で言ってる?」
「何だ。俺様が死んで、何か不都合でも? その内…まあ、二百年もすれば新しい『右方』は決まるよ」
>>46

乙。

てっきり、心残りを解消したフィアンマさんはお礼にと鋼盾くんの負け犬人生を明るくする事を約束→鋼盾くんがピンチになった時フィアンマさんが憑依する事で聖なる右や頭脳、運動神経、軽快なトーク術が使え。ウハウハハッピーライフを送る事に→いわゆる[たぬき]とのび太的な関係になる……

と思ってました

>>49 シ×ー○ンキン○の香りがしました】


「…それもそうね」

引き止めても、きっと意味はない。

ヴェントはそう考え、首を横に振る。
そして、彼女は明るく笑ってみせた。
いつも敵に向ける嘲笑とは、色の違う笑顔。
それが、本来の彼女の笑みだったのかもしれない。

「死体は何処に置くつもり? 葬式位してあげるわ」
「『奥』のベッドの上にしようと思っているよ」
「老衰みたいにジジ臭い死に方ね」
「もう少し考えて死ぬべきだったか」
「どうせならもっと面白く死ぬべきだったとは思うケド?」

これで、彼女はきっと自分の死体をどうにかしてくれるだろう。
たとえこの時間を夢だと感じても、彼女は気にする性格だろうから。

「用事はここまでだ」
「そ。…おやすみ」
「おやすみ」

挨拶をしたのは、或いは初めてだったかもしれない。


思いつつ、フィアンマは大聖堂を出て行く。






身辺整理は、思った以上に早く終わってしまった。
二つの魂を一つの肉体に長い時間入れておくと、稀に誤作動を起こすことがある。
鋼盾掬彦が強い精神力を持っているとも思えなかったので、フィアンマは抜けてやることにした。
夜中の公園、噴水前にて自我を取り戻した少年は、へなへなと崩れ落ちる。

「体中が痛いんですが…」
『すまない。お前が学園都市製ということを忘れて魔力を練ってしまった』
「命に関わることはしないって……うう…」
『すまなかったよ、手違いだ、手違い。………それでは、世話になったな。
 謝礼は…そうだな。俺様が幸運を祈ってやろう。じきに宝くじの一つでも当たる』
「あなたはこれからどうするんですか?」
>>53

さぁて。できれば、しばらくはお前に憑いて回りたい。

俺様を認識できる人間が他にいるかわからんしな


『さぁて。出来れば、今夜はお前に憑いて回りたい。
 俺様を認識出来る人間が他にいるかわからんしな。
 誰にも認識してもらえない孤独を味わう時間は、もう少し後でいい』
「え」
『何だ。俺様は……そう、生前…幸運を司る神のようなものだったんだぞ?』
「………」
『その目つきをやめろ』

びくつきながらも。
鋼盾はこくりと頷き、疲れた身体を引きずってホームステイ先の祖父母の家へ向かう。
この公園からは大して遠くない。
一晩ゆっくり、ゆっくりと眠ればだいぶ元気になれるはずだ。

「他に見える人が居ると良い…ですね」
『どうかな。霊感など、あると言い張る連中が大半だ』
「ところで、ものを食べることは出来るんですか? お供えとかよく聞きますけど」
『いや、食べ物をすり抜ける。目で楽しむ程度ならば出来るがね』
「感覚は…」
『無いな。暑いも寒いも、空腹も眠気も。…本能に基づくものは無い』
「ぼくも死んだらそんな風になるのかな……」
『俺様のように魂のレベルが高ければなれるだろう』
「魂のレベル!?」
『冗談だよ。未練があればなるんじゃないか?』
「……あるんですか?」
『無い……つもりではいるのだが…やりたいことも無いしなぁ…』




そんな訳で、宣言通りフィアンマは一晩鋼盾と過ごし。
人との会話を楽しんだ後、別の場所へ向かうことにした。
仕事が無い以上、イタリアに居る必要もない。
自分の未練もわからないのだ、どこか別の国にでも行ってみたい。
しかし、ロシアには幽霊狩り専門の魔術結社がうようよと居る。
となれば、比較的幽霊に穏便(?)なイメージのあるイギリスにでも向かうと良いだろう。

実に合理的な判断を下したフィアンマが行ったのは。
イギリスへ向かう飛行機に乗る客にとり憑くことだった。





誰にとり憑く?>>+2


目についたのは、染めたらしき金髪。
フィアンマは少年に近づくと、ぽん、と肩に手を置く。
とり憑くのに際し、余計な作業は必要ない。
身体を乗っ取るならともかく、憑いていく分には。

『やはり気づかんか……』

予想はできていたが、と内心残念に思うフィアンマ。
肩に彼の手を置かれ…もといすり抜けた上に取り憑かれた少年の名は、土御門元春という。
その苗字からも読み取れるように、陰陽師の子孫であり、プロの陰陽師(兼魔術師)だったりする。
ついでに言えば義妹を守る為、魔術と科学両サイドの窓口として働く暗部中の暗部に存在する男。
持っている能力はレベル0の『身体再生』。
陰陽の才を投げ打って得たのがそれなのだから、彼は本当に報われない。

そして。

そんな多重スパイは、いつになく冷や汗をかいていた。
否応なしに身体は震えそうになる。これは、悪寒だ。

(幽霊…妖怪…? いや、そんなチャチなレベルじゃないな…)

いうなれば、妖精や天使といったものに近い…と判断出来る。
"昼日中"から"意思を持って"存在している霊だ。
何者かが呼び出してしまった悪魔の類かもしれない。

何はともあれ。

とんでもないものに憑かれてしまった。
『気』を操るプロであるが故、なまじ素人のように無視出来ない。
このまま飛行機に搭乗して、事故が起きると困る。

「……何が望みだ」
>>63

何、そう気負わなくても構わんよ。何もする気はない。

とりあえず搭乗したらどうだ?もうすぐ出発してしまうぞ?


『何、そう気負わなくても構わんよ。何もする気はない』
「………」

土御門の敵意に、フィアンマは薄く笑む。
別に、何かを望んでいる訳ではないのだ。本当に。
何も望んでいないのに此処に遺っているから、困っている。

『とりあえず、搭乗したらどうだ? もうすぐ出発してしまうぞ?』
「只の霊じゃないだろう」
『そうかもしれないな。大したことではない』

魔術の知識をこれでもかと所持したまま幽霊になった。
なるほど、天使にも匹敵する存在だと言えよう。
警戒されるのも無理はない。恐らく、この少年は魔術師だろう。





本当に仕方がなく、といった様子で、土御門は飛行機に乗り込んだ。
警戒していたフライト中、問題は何一つなく。
むしろ、何かと良いことがあった。幸運な限りである。
疫病神と真逆の存在であるフィアンマに憑かれているため、当然といえば当然なのだが。

『イギリスには何をしに?』
「関係ないだろう」
『袖擦り合うもナントカ、日本の言葉ではなかったか?』
>>67

擦り会うも何も、触れられないだろう


「擦り会うも何も、触れられないだろう」
『細かいことは良いんだ』
「……仕事の所用だよ」
『その年齢で、か。日本人にしては珍しいな』
「学生も兼ねているがな」

シリアスモードで色々と心配する土御門をよそに。
フィアンマは窓の外をのんびりと眺めることにした。
ふわふわとした雲が間近にある。

『………』

死んでからの不満をいうとすれば、眠気を感じないことだろうか。
退屈だと思っても、眠ることを許されないというのは苦痛である。




無事到着。
軽く眠っていた土御門を起こし、フィアンマは飛行機から降りた(土御門に憑いていった)。
幸運にも快晴である。

「もう俺に憑いている必要もないはずだ」

しっしっ、と追い払うような仕草をする土御門。
傷つきはしないものの、フィアンマはつまらなそうにため息をつく。

『一つ頼みごとがある。それを叶えてくれたらお前からは離れるとしよう』
「頼みごとだと?」
『俺様が次に憑けそうな―――俺様を認識出来る人間を紹介してくれ。一人位居ないか?』
「居ることには居るが……」
『フライト中何度かラッキーな目にあっただろう。恩恵はやったはずだ』
「わかった、此処に呼び出してやるから……俺からは離れるんだぜい?」

フィアンマの態度と様子に(相手の素性を知らないこともあり)土御門はそう答え。
やがて携帯で誰かに電話をかけた。
文字通り、呪いの電話である。






やって来たのは誰?>>+2

【イタリア→イギリス フライト時間:2~5時間】


ローラ「年下の男からデートに誘われたるなんて、嬉しけりね…!?」

フィアンマ『!?』

フィアンマ(あの男、逃げたと思えばそういうことか。…どういう繋がりだ)

ローラ「こんなに堂々とすっぽかされたるの!?」

フィアンマ『…イギリス清教の最大主教か』

ローラ「んん? ……これは」

フィアンマ(俺様を知っているのか?)

ローラ「ええと……」

フィアンマ『……』

ローラ「>>77

見たことあるけど誰だか思い出せないわね、右方の名前を言いなさい


ローラ「見たことはありたるのだけれど、誰だかは思い出せなきし。右方の名前を言いなさい」

フィアンマ『わかって言っているだろう』

ローラ「ふふふ。ちょっとしたお茶目たりけるのよ? それにしても」

フィアンマ『……』

ローラ「随分と影が薄く……」

フィアンマ『イギリス清教の程度が知れるな』

ローラ「イギリス清教の悪口は言い足りても、私の悪口は言いてはならぬわ!」

フィアンマ『逆だ』

ローラ「状況的に鑑みれば、土御門元春が私に怨霊退治を求めた…というところなりけるの?」

フィアンマ『俺様が怨霊に見えるのか?』

ローラ「半分程見えたるかしら」

フィアンマ『……』

ローラ「だから冗談だと言うておるのに。ローマ正教は頭が硬くて嫌になりけるの」

フィアンマ『他を当たるとしよう。紹介してもらったというのに残念だ』

ローラ「>>81

こんな冗談も返せないから世界を変えようとしたことが失敗したのよ。
真剣にお話しましょうか、あなたは今どうしたいか。暇だから協力してあげるわ面白そうだし

【今日はここまでで。雑談ご自由に】


ローラ「まーまー。デートをすっぽかされた哀れな乙女を慰めて欲しいのだけれど?」

フィアンマ『……』

ローラ「ちょっと、散歩位付き合いなさい?」

フィアンマ『……おと、……おとめ………』ブフッ

ローラ「失礼過ぎたるわよ!?」

フィアンマ『そもそもその口調は何なんだ』

ローラ「ああ、これなりけるの? 土御門から習った日本語たるわ」

フィアンマ『見事に間違っているのだが』

ローラ「……やはり間違いけるのね……」

フィアンマ『……それと、やはり乙女と自称するのは冗談でもやめた方が良い。俺様が二度死ぬ』

ローラ「斯様な事ばかり言うていると祓いけるわよ!?」

フィアンマ『聖水で昇天するとは思えんが』






ローラ「やはり紅茶は我が国が一番ね」

フィアンマ『…これから先、当分日本語を話すのはやめた方が良いと思うぞ』

ローラ「………騙されたりたわ…」

フィアンマ『……死んだ以上、さっさとこの世界から離れたいのだが、うまくいかんな。未練などないつもりなのだがね』

ローラ「>>85

安価ちが…

安価なら

ふむ。逆にそれが原因では?『何も残せないまま死んでしまった』…が未練だとか。

(時間軸的に世界救うのまだ失敗も成功もしてないので安価下にしました…)


(うとうとしていたらこんな時間だった 明日の夜やります
 オレフィアかいたり何でもしますから許してください!)


ローラ「ふむ。逆に、それが原因では?」

フィアンマ『…ほう?』

ローラ「『何も遺せないまま死んでしまった』…が、未練だとか」

フィアンマ『……なるほど、なるほど』

ローラ「我々は旧教の聖職者。伴侶は無く、神に仕える事が本分」

フィアンマ『当然、子は遺せない。弟子のようなものも…俺様には不可能だしな。経歴上』

ローラ「そこで考えたことがある」

フィアンマ『何だ。英語ならばまともな最大主教さん?』

ローラ「恋人を作ることが最善でしょう」

フィアンマ『……俺様は幽霊なのだが? 相手が哀れだろう』

ローラ「>>92

↑+私なら幽霊でも嬉しいことよ


ローラ「ほら、あなたも知っての通り、世界は広い」

フィアンマ『………』

フィアンマ(確かに世の中には多種多様な人間が居るが)

ローラ「世の中には"それでもいい"、っていう特殊な人がいるものよ?」

フィアンマ『……』

ローラ「少なくとも私なら、本気で愛せる相手が出来ること---幽霊でも、嬉しいことよ」

フィアンマ『お前から好かれる人間はいてもお前を好く相手は居ないだろうな』

ローラ「ぐ……」

フィアンマ『…まあ、参考程度にはさせてもらうさ』

ローラ「羊飼いとて、神の視点で見ればまた一頭の子羊。さまよえる内に答えは出てくるわ」

フィアンマ『……だと、良いのだが』





フィアンマ『"困ったらいつでも頼るがよろしけり"…頼りたくはないな』

フィアンマ『暫くはイギリスをぶらついてみるか…ッ!?』ゴチン

フィアンマ『……結界?』

シルビア「…ん? 今何かぶつかった?」キョロ

フィアンマ『結界の練習…か? 見た様子だと"メイドすなわち下女"のようだが…』

フィアンマ(そう幸運が続くとは思えないが、顔の前で手を振ってみるか。反応があると良いが)フリフリ

シルビア「>>95

何だ赤いの私の目の前で何をしている?


シルビア「何だ、赤いの。私の目の前で何をしている?」ムスッ

フィアンマ『ふむ。本当に今日はラッキーデイだな』

シルビア「手をどけろ、手を。危ないだろ!」

フィアンマ『ああ、すまんすまん。……姫付きのメイドか?』

シルビア「…の、研修修了済みのフリー。戻るかどうか悩んでる」

フィアンマ『研修を終えたのならば仕えるのが真っ当だと思うが。何を悩む必要がある?』

シルビア「……ん? …あんた、生きてる人じゃないね」

フィアンマ『指摘が遅くないか』

シルビア「うわ、半透明。幽霊なんて見たの、何年ぶりかな」

フィアンマ『そう首を傾げる程歳をとっているようには見えないがね』

シルビア「女は見た目通りの年齢じゃないモンだよ」

フィアンマ『宮殿ならすぐそこだ。仕事が嫌ではないのなら真面目に就け』

シルビア「>>98

↑+ロクな死に方してないから幽霊になってるんじゃないのか?


シルビア「何で私の生き方にケチつけられなきゃなんないのよ。理由があんの。言わないけどな」ハァ

フィアンマ『魔術師など皆我が強い、自分が正しいと思っている人間ばかりだろう。ケチ位つけるさ』

シルビア「…で?」

フィアンマ『ん?』

シルビア「説教幽霊さんは生前、ちゃんと働いてたわけ?」

フィアンマ『ああ。働き過ぎて死んだ』

フィアンマ(多分)

シルビア「げ。…ロクな死に方してないから幽霊になってるんじゃないのか?」

フィアンマ『ロクな死に方、というと愛する者を守って特攻か老衰かの二択に絞られる訳だが。
      いや、何。本心から昇天したいとは思っているのだが、なかなかうまくいかなくてな』

シルビア「はあ。未練は?」

フィアンマ『特に無い』

シルビア「そ。悪いね、何もしてやれなくて。結界は作れるけど、幽霊の扱いは出来ないから」

フィアンマ『期待はしていなかった。ちなみに現在は恋人募集中でうろついている』

シルビア「幽霊なのに?」

フィアンマ『俺様もそう思うのだが、アドバイスを素直に受け入れた以上恋人を作らねばならん。
      人類にこだわりは無いから、天使でも良いのだが……今の俺様には魔術が扱えん』

シルビア「まあ、幽霊だからね。生命力はそりゃ無いだろう」

フィアンマ『しばらく憑いても良いか。退屈なんだよ』

シルビア「>>101

ああ私もちょうど話し相手が欲しかった所だ、お前が取り憑きたいなら好きにしな


シルビア「ああ、私もちょうど話し相手が欲しかったところだ。お前が取り憑きたいなら好きにしな」

フィアンマ『そうか』

シルビア「よく喋るタイプで良かったよ。無言の悪霊なんて恐ろしすぎるからね」

フィアンマ『……やはり俺様は悪霊に見えるのか……』

シルビア「…微妙なところ」

フィアンマ『なら良いが…』

シルビア「もうちょっとばかし目が笑えばね」

フィアンマ『世界の深淵を覗き込み過ぎた結果だ。気にするな』

シルビア「へえ。生前は政治家か何か? その割にゃ、顔見たことないけど」

フィアンマ『似たような職業かな。単なる魔術師だよ』

シルビア「ふうん。…そういえば幽霊って物は食べられるのか?」

フィアンマ『揃いも揃って、そこはそんなに気になるところなのか。残念ながらすり抜ける』

シルビア「じゃあ墓の前に菓子置いたりするのは生者のワガママか…」

フィアンマ『そういうことになるな。死んだ知り合いでも?』

シルビア「>>104

まあそんなもんだ…


「……。…まあ、そんなもんだ…」

シルビアの反応に。
それが『迷う理由』なのだろうか、とフィアンマは思った。
言い切る様子や諦めの様子は見られない。
ということは、相手は寝たきりや意識不明者なのかもしれない。
なるほど、自分が大切に思う相手がそういう状態ならば仕えることは迷うだろう。
メイドとして仕えれば、自由な時間は極端に減るのだから。

「………」

慰める言葉を、フィアンマは持たない。
これまで誰かを慰めてきたことなどなかったから。

「……湿っぽい話して悪かったね。じゃ、行きますか」
『…ん?』

てっきり何か用事があるのかと思いきや、そんなことはなかったらしい。
気分を切り替えて明るく言い放つシルビアに、フィアンマは小首を傾げた。

『何処かへ旅行か?』
>>106

違うわよ少し気になる男に顔を出すだけ


「違うわよ。少し、気になる男に顔を出すだけ」
『ふむ』

シルビアが行く先に、フィアンマは同行する。
逆らったり、アドバイスをする謂れもない。
なので、彼はこくりと頷いて理解を示し、彼女についていった。



辿りついたのは病院。
消毒液臭いのだろうが、フィアンマは感じ取ることが出来ない。
病院の個室。向こう側に、生気は感じられない。

「……入るよ」

こん、こん、こん。

丁寧なノックの後にそう宣言して、中へ入る。
白い、いかにも清潔そうなベッドに横たわるのは一人の。






横たわっている相手は?>>+2

ここでまさかのテッラ

だったら吹いた安価↓

>>111 フィアンマは二度急性心不全で死ぬ】


一人の、青年だった。

金の髪に、白い肌。

元は穏やかな顔立ちだったのだろうか、すっかりやつれている。
その腕には何本もの針が刺さっており、点滴がなされていた。
顔色は酷く悪い。いつ死んでもおかしくはない雰囲気だ。
彼が呼吸をする静かな音だけが、寂しい病室を満たしている。

「すー………」
「……」

シルビアは彼に近づき、毛布をかけ直す。
元々乱れてなどいなかった毛布だが、少しでも何かしたかったのだろう。

「………」

シルビアは俯き、何も言わない。
先程までの、或いは普段の、豪胆な雰囲気や明るさはすっかりなりを潜めている。
フィアンマもまた、何を言うでもなくシルビアから視線を外した。

『………』

近づいてみた。
男を観察してみる。
さっぱりわからないが、外傷がないことはわかる。
病気か、はたまた事故で頭を打ったのか。

「………」
『…聞いても良いか』
「何を」
『この男が何故こうなったのか』
「知ってどうすんの」
『俺様はこれでも魔術師だ。術式は扱えないが、経歴を知れば知識が役に立つかもしれないだろう』
「……」
『…強制はしないが』
「……>>114

魔神になり損ねたの



「……魔神になり損ねたの」
『………』

魔神。
魔術師が目指すものの一つで、金字塔だ。
魔術を全て使い、世の中の理を全て捻じ曲げられる存在。
神上とはまた別の、神様の領域へ足を踏み入れた魔術師のことだ。

それになり損ねた。

ということは、誰かに奪われたのか。
その際の攻撃を防いだ結果がこれなのか。
色々と考えてはみるものの、フィアンマはそう簡単に答えを見つけられない。

「その日から目覚めない」
『……』
「…手のつけようがないだろ。諦めてるよ」

ため息を飲み込み、シルビアはカーテンを開ける。
射し込む昼の日差しは眩しいのに、男はピクリともしない。

『魔道書の汚染による発狂形態の一つか。
 …それとも、扱う力の特殊性に巻き込まれたか?』
>>117

前者よ子どもたちを救うために魔神になるって張り切った結果がこの有り様だから全く馬鹿らしいわ


「前者よ」
『……』
「子供達を救うために魔神になるって張り切った結果がこの有様だから、まったく、馬鹿らしいわ」
『子供?』
「……コイツ、お人好しでね。子供だとか、子猫だとか、見捨てられないんだよ」

そして、その全てを救おうとした。
魔神になろうとして、魔道書を読みふけった。
汚染に耐え、我慢を重ね、ずっと無理をしてきた。

その結果が、脳疲労と、昏睡。

何十年もかけて『汚染』を抜かなければ、きっと彼は目覚めない。

「……解決出来ないだろ」
『……生前ならば出来ただろうとは思うのだが』

自分の『聖なる右』は、『汚染』に対する『治癒』にも効果を発揮する。
もしも生きていれば、目の前の男一人位なら、救えたかもしれない。

「……そう」
『………』

シルビアの体では、『聖なる右』を行使することは出来ない。

『……もう一つの方法としては、この男に乗り移って魂から汚染を払うことだが』
「ヘタをすればあんたが消えるでしょうに」

魔道書は、魂までをも汚染する。
だが逆に言えば、その汚染を魔術で抜き出すことも出来る。
そのためには魔力、その元となる生命力が必要となる。
故に、仮にフィアンマがオッレルスの身体を借りて魔力を練れば、汚染は払えるかもしれない。
魔神の領域に踏み込んだ体であれば、『聖なる右』の効果の一つを縮小化した治癒程度の術式なら扱えるかもしれない。
しかし、どんなことにもデメリットというものはつきまとう。
オッレルスを昏倒させた汚染の影響をフィアンマも同様に受ければ、精神が肉体に依存しないフィアンマの魂はオッレルスの生命力に寄与される。
それは、魂単位での消滅、『死』に他ならない。多重人格者の人格統合治療後のようなものだ。
ミイラ取りがミイラに、といったようなものである。安全性は保障されない。
『世界を救える程の力』が肉体に依存しているのか、体に依存しているのか、フィアンマにはわからない。

「そこまでしてもらう義理はない」
>>120

>>118 ×体に依存 ○魂に依存】


『だが、そこまでしてはいけない理由もない』
「…、…」

シルビアには、フィアンマが何と言ったのか一瞬わからなかった。
理由なんて、きっと無いのだろうけれど。
策略や恩を売ろうなんて発想も無いだろう。

目を覚まさない男―――オッレルスと、理由は同じなのかもしれない。

放っておけないから救う。
そういうものなのだろうか。

実際には、シルビアが思う程、フィアンマはお人好しではない。
だからといって、極悪人でもなかった。彼は彼なりに考えてものを言っている。

『今すぐ…いや、少し経って、俺様の未練が見当たらなければ』

そう前置きをして、頷かせやすくした上で。

『やっても構わんぞ』
「……お人好しばっかりか」
『そういう訳ではない。………それに』

眩しい日差しを見やり。
フィアンマは、少し息を吸い込んだ。

『―――――人生をやり直したい』

未練はない。
死んだことは受け入れている。
その上で自分の人生を客観的に考えてみた。

誰かの笑顔を作ったことのない人生だった。
誰かを救ったことなどない人生だった。

『ただ、それだけだよ。突き詰めれば、俺様の為だ』

そう、ただの自己満足に過ぎない。
シルビアを哀れんでの自己犠牲でも、男を哀れんでの自己犠牲でもないのだから。

「……なら、お願いする。……もし、未練がみつからなかったら…コイツを、助けて」
『わかった』




病室にシルビアを残し、フィアンマは病院から出た。
とりあえず、未練があるかどうかの確認程度はしたいところだ。

『………恐らく失敗するだろうしな』

ぽん、と肩を叩かれた。
後ろからだ。自分に触れられる人がいるとは驚きだった。

『……誰だ』
>>123

ウィリアム


「ウィリアム=オルウェル―――後方のアックアである」
『!?』

振り返ってみる。
本当に、自分のよく見知った後方のアックアである。
特に仕事ではないのか、まとっている雰囲気は仕事中のそれと比較して格段に穏やかだった。

『……よく俺様に触れられるな?』
「『聖母の慈悲』が、死者に触れることの出来ないという"制約"を無効にしたのであろうな」
『なるほど、なるほど。納得だ』
「貴様の葬儀が行われた」
『…そうか』
「……」
『……』
「……」
『……葬儀一切をヴェントに任せてしまったのだが、他の面々の様子はどうだ。
 俺様の葬儀を行ったところで、何か変化があるとは思えないが』
>>128

ないわけではない。仮にも右方、それも実質上トップともなれば。

泣き、何故死んだと嘆く者もいれば私の時代かと勘違いする者も…


「無い訳ではない。仮にも右方、それも実質上のトップともなれば」
『ふむ』
「泣き、何故死んだと嘆く者も居れば…私の時代か、と勘違いする者も…」
『前者は意外だが、後者は論外だな。後者に関してはお前が対処すれば問題あるまい』
「確かにそうではあるが、……影響は、決して小さくないのである」
『……ま、歴史の流れを見る限り、それは一時の荒波だ。すぐ終わる』
「………」

自分の死に、あまりにも寛容で肯定的なフィアンマに、アックアは眉を潜める。
生前と、何かが変わった。そんな気が、した。

「貴様は、生者としての生活に未練はないのであるか」
『あるように見えるのか? 見えるというのならお前は疲れているよ』

小さく笑って。
フィアンマは緩やかに息を吐き出す。
生きていた時よりも、ずっと穏やかに。何に追われることもなく。

『…俺様は、何だかんだいってお前を信用している…いや、していたよ。
 右席や、勘違いをする不埒な者についての対処は任せた。俺様の死に嘆く者を慰めるのはハイレベルな要求だろうしな』
「ローマ教皇が涙を流していたのである」
『ああ、教皇さんは情に篤いからなぁ。俺様の本性も知らないで』
「……」
『…話はそれだけか?』
>>133

私は第三王女と付き合うことになったのである


「実を言うと、英国の第三王女と交際する運びとなったのである」
『ほう』
「……詫びを入れるべきだと考えた次第である」
『せめて今の騒動が終わってから辞めてくれ』
「善処はする」

なるほど、だから話しかけてきたのか、とフィアンマは頷く。
しかし、そう立て続けに不幸(?)があるとローマ正教が揺らぐ。
微妙な心痛に言葉を返すフィアンマに背を向け。
後方のアックアは、ぽつりと呟くように言った。

「もしも貴様がその身のまま、大聖堂に居たとして。
 …誰も責めず、むしろ皆従うはずである」
『選択肢の一つ、とでも言うつもりか?』
「………」

男は去っていった。
フィアンマはアックアの背中を見つめ、呟きを漏らした。

『……もう遅い』

ローマ正教のために尽くすより、ずっと良いことを、見つけてしまったから。





公園へやって来た。
意外に動物というのは霊が見えるらしい。
具体的に言うと野良猫が寄ってきた。

「にゃー」
『野良か』

何もないところに身を寄せる猫は、さぞかし不気味だろう。

『………』

猫を撫でる。
すり抜けるし、感覚はなかったが、それでも満足だっら。

『……俺様が死んで、嘆いた者がいる、か』

いるはずがないと、思っていた。
そう思いたかったのかもしれない。

『……そんなことに、………死んでから気づくなんて。…不幸なヤツだ。俺様も』






足音がした。
猫から視線を外し、顔を上げる。




公園に来た人物>>+2


「………はあ」

公園に入ってきたのは、黒髪の少女だった。
左右非対称の服を着ているのは、魔術的に意味を持たせるためか。
こと、此処イギリスは魔術の国である。昔から、ずっと。
三歩歩けば魔術師に会うので、彼女が魔術師でも驚かない。

辺りは暗くなり始めていた。
彼女は、疲れた様子でベンチへと腰掛ける。
フィアンマは彼女の分のスペースをあけてやり、猫を撫でた。
猫はごろごろと喉を鳴らしている。

「……インデックス…」

どうやら、彼女には霊感がないようだった。
彼女の名は、神裂火織。
元天草式十字凄教の女教皇であり、現在はイギリス清教『必要悪の教会』に所属している。

禁書目録。

そう呟いた。
確かあちらも少女だったな、とフィアンマは思う。
霊感が無い以上、何をしてあげられる訳でもないのだが。

「こんなところに居たのか」

公園へ入ってきたのは、赤髪の少年だった。
フィアンマと違って染めているのか、鮮烈な赤い髪を長く伸ばしている。
ピアスやらシルバーリングやらゴテゴテとした装飾。不良神父に見えた。
彼は神裂を見つけ、声をかける。
神裂は顔を上げることなく、深く俯き。

「……私達のやっていることは、本当に正しいのでしょうか」
「……今更何を」
「あの子の記憶を消すのは、もう何度目になりますか。
 もう、……もう、いやです。わたし、は……」

泣きそうな表情で、神裂は僅かに震えた。

対して、少年―――ステイルは、呆れた顔をする。

「そうはいっても、あの子の命を守る為だ」
「ですが、……」

『………』

もしかしたら介入出来るかもしれない。

考え、フィアンマはステイルを見つめてみる。
反応を示せば、見えていることになる。

>>139

【今日はここまで。雑談ご自由に】


「…何だい? 僕の顔に何かついているかい?」

神裂は顔を上げていない。
つまり、フィアンマの視線に反応していることになる。
居心地が悪いのか、少年は口ごもりがちに。

「これだけは言っておくが、このバーコードはついているんじゃなくて、つけているんだ。
 だからピッとやっても……だから何なんだい、とても居心地が悪くなるからやめてくれないかな」
「…ステイル?」

神裂としては、首を傾げるしかない。
ステイルが何もないところへ向かって話しかけているのだから。
対して、フィアンマは笑みを浮かべる。良かった。成功だ。

『禁書目録の抱える問題を解決する手段についての知識を持っているといったら、どうする?』
「……何を…」

ステイルは、眉を潜める。
神裂は隣を見るが、そこにいるのは機嫌が良さそうな猫だけだ。
猫に向かって話しかけているということだろうか、それはそれでおかしい。

『成功は保障出来ないがね』
「……不確定な方法は試さないと決めていてね」

ステイルは苦悶の末、そう告げた。
そして、神裂の手を引いて公園を出て行った。
無理やり引き止めても良かった、が。

(俺様の出る幕ではないな)

唐突に、冷静な自分が顔を出す。
多分、きっと。
自分ではない誰かは、禁書目録を救うだろう。
自分は不釣り合いだ。そして、今の体では禁書目録を救うための『聖なる右』を使えない。

『只の人間…にも劣るな』

呟く。
立ち上がり、病院へと戻る。
未練はない。覚悟は決まった。





『入るぞ』

ノックは出来ない。
なので、ドアをすり抜けて病室へ。

そこにはシルビアと眠ったままのオッレルスがいるはずだが―――――






病室の中はどうなっている>>+2


病室の中。
見舞い客用の簡素なパイプ椅子に腰掛けたまま、シルビアは眠っていた。
軽く壁に寄りかかり、緩やかな深呼吸を繰り返す。

「ん……」

ぼそぼそと、何事かをつぶやいている。
寝言だろうか、とフィアンマは思う。

「ゆる、……」

よく聞こえない。
ただ、その声音は何かを悔いているように聞こえた。
フィアンマはシルビアからオッレルスへと視線を移す。
やってしまうのなら、決心がついている内に。早い方がいい。
そして、シルビアにわざわざ『これからやる』と宣言する気にもなれなかった。
仮に失敗したとしても、オッレルスには何の変化もないのだから。
ただ、自分がこの世界から本当にはじき出されるだけだ。消滅という形で。

『……始めてしまうか』

うん、と頷いて。
鋼盾掬彦の時と違い、手足の身体制御権は要らない為、特に何かを行うでもなく。
フィアンマはただ黙って、中へ入り込むことにした。





時に、人の精神の内面とは闇である。
良心のあるなしに関わらず、そんなものだ。

『……見つからん』

入ったはいいものの。
オッレルスの魂を見つけるのは大変だ。
認識夢の中で誰か一人を探す、ということなのだから。
あちらから来てくれれば僥倖、といったところか・。

『……君は?』
『ん、』

呼びかけられ、そちらを視た。
実際の肉体よりは幾分か健康そうな青年の姿が、そこにある。
やはり魂の形は存在している肉の器に左右されやすいんだな、とフィアンマは納得して。

『お前を救いに来た。名乗りは必要か? 聞いたところで驚かせてしまうだけなのだがね』
>>147

いや遠い所から参った客人の名前を聞かないのは失礼にあたる、教えてくれないか?


『いや、遠い所から参った客人の名前を聞かないのは失礼にあたるからね。教えてくれないか?』

どうやら夢だと思っているらしい。
夢の中の仮想人物だと考えられていても、特に不利益はない。
ただ、事実は教えておこうか、とフィアンマは思った。

『その微妙な傲慢さは魔神に至りかけたからか。それは別に良いが。
 …俺様は、ローマ正教"神の右席"の右方のフィアンマ。それ以上にはあっても、それ以下にはない』
『………』

どうして俺の夢に"右方のフィアンマ"が出てくるんだろう。

口にこそしていないものの、そんなことを言いたげな顔をしていた。

『お前が昏睡状態にあることは認識しているか』
『え』
『…していなかったか』

状況説明から入らなければならないだろうか、と少し面倒に思う。
魔神になり損ねた程なのだ、頭の回転が遅いとは思わないが。

『魔神へ至るべく知識を蓄え続けた結果、お前の脳は魔道書の毒に汚染された。
 その結果として、長らく昏睡状態だ。本来ならばローマ正教としては捕縛すべきだが、俺様はもう死人だから見逃す。
 ここへ来た理由は、……シルビア伝いにお前の姿を見た俺様の自己満足だ。
 説明はこれで充分だな。わからない点があれば聞いても構わん。……まさか、起きたくないなどと言いはしないだろう?』
>>150

眠ったままのオッレルスを見下ろす魔神オティヌスがいる
シルビアがいない


『出来ることなら、今すぐにでも起きたいさ』
『そうか』
『殺したい相手も居ることだしね』
『……なに?』

フィアンマの言葉を信じることにしたらしいオッレルスは、そう望んだ上で。
笑みすら含んだ声音で、そんなことを言った。
夢の中だと思っているのだ、嘘はつけない。いや、つかない。

『君が言ったように、私は魔神になり損ねた。
 それは、昏睡状態に陥った為だけじゃない。
 その座を奪われたのが一番の原因だよ。唯一の機会と、方法を』
『……お前は憎悪だけで目を覚ましたいのか。シルビアのために、ではなく?』

ほんの少し黙って。
オッレルスは思考を巡らせた後に。

>>155

シルビアの為と言う事は最も大きな理由だ。しかしもし君が同じ目に遭ったとしたら君は相手に報復をせずに済むかい?


『シルビアの為、ということは最も大きな理由だ』

その発言に、フィアンマは少し安堵する。
その答えだけで、自分がやろうとしていることは間違っていないと思えた。

『しかし、もし君が同じ目に遭ったとしたら――――君は、相手に報復をせずに済むかい?』
『俺様がお前の立場なら、我慢する』
『何のために』
『大切な人間のために』
『……』
『もっとも、俺様とお前では所持しているものがだいぶ違う。
 比べ物にならない以上、理解者にはなってやれないがね』
『………』
『綺麗事をいうのは基本的に好かないが、……報復で誰かを殺した手でもう一度シルビアを抱けるのか』
『生憎そういう関係ではない。…それに、復讐なら仕方がないと思うよ』

分かり合えないな、とフィアンマは思う。
別に理解しあう必要だってないだろう。

『…さて。お前を起こすためにお前の体を借りる必要があるのだが、借り受けても良いか』
>>158

ああ任せたよ


『ああ、任せたよ』

同意を得なければ、基本的には相手の体で魔力は練れない。
フィアンマはオッレルスとの対話をやめ、意識表層へ移行する。


目を開けて見上げた天井は白い。
のろのろと起き上がり、鏡を見やった。
身体を借りたのだから当然だが、その容姿はオッレルスのものだ。

「………」

シルビアは、未だ眠っている。
どろどろと流れ込んでくる記憶は、オッレルスのものだろう。
あまり覚えてしまっても悪いかな、と思う。プライバシーの問題だ。

「…っ、」

頭痛がした。
手早く作業を済ませて脱出しなければ、自分が消滅する。
別に自殺がしたい訳ではないので、急いで治癒の術式を履行した。
神様の奇跡を借りれば、『汚染』などすぐに抜ける。

「……、………」




――――ふと。


魔が差した、とでも言えば良いのか。
『汚染』が抜けていく感覚に目を閉じながら、湧き出した考えに震える。

このまま。

オッレルスのフリをして生きていけば、人生をやり直せるのではないか。
口調をオッレルスのものにしてしまえば、仕草などは肉体に左右されていく。
癖だって、シルビアからそれとなく聞き出せば問題ない。

「……」

嗚呼。
それは、何て、なんて―――――悪いこと<快楽>なんだ。

やり残したことが、今更になって頭に浮かぶ。
流れ込んでくるエピソード記憶をきちんと学習すれば、彼の人生になりかわれる。
汚染が完全に抜ければオッレルスは意思を見せてくるかもしれないが、そんなものは精神科の病院にでも行けば殺せる。


自分の死に嘆いた人がいた。
自分の死を喜んだ人がいた。

生への渇望を後押しするには充分な情報だった。




>>160-166のコンマ二桁(以下、悪堕ち右方がお送りします:2014/01/19(日) 13:50:02.XX←ココ)に一つでもゾロ目があれば考え直す、無ければ肉体乗っ取り

ほい

【結果:肉体乗っ取り】


「………」

青年が、彼らしからぬ笑みを浮かべた。
そうだ、自分はこの口でシルビアに言っていたじゃないか。

『人生をやり直したい』

そう、はっきりと。
そして、彼女に約束したのは、オッレルスを目覚めさせることだ。
なら、『中身』なんてどうでもいいはずだ。
人が見ているのは外殻なのであって、中身など後からいくらでも調整出来る。
極端な話、シルビアはオッレルスが記憶喪失になったとしても傍に居るだろう。
だとすれば、『中身』が自分にすり替わっていても、傍に居ようと考えるはずだ。

「………そうだ。俺様は、そもそも善人なんかじゃない」

自己満足で救った。
後は自分の手柄にしてしまっても問題ない。

「……ん…」

シルビアが、目を覚ました。
そして、自分の姿を見て目を見開く。

「目、覚まし…ッ! そうだ、あの赤いヤツはどこに…?」
「赤いヤツ?」
「ああ、あんたは知らないんだったか…。失敗…? 
 いや、でも目を覚ましてるってことは、此処に居ないだけか……」

どうやらシルビアは、自分がオッレルスを目覚めさせた後に何処かへ消えたと思っているらしい。

勘違いしているのなら、そのままでいい。
どのみち、『右方のフィアンマ』ともう一度出会う必要などないのだろうし。

「医者に言ってくる、」

シルビアは立ち上がり、慌てて病室を出て行く。
フィアンマは鏡を見ながら、自分<魔神になり損ねた男>に対して、宣言する。

「俺様を信用したのが運の尽きだったな?」

『汚染』が抜けたからか、オッレルスの人格が言葉を返してきた。
自分がこの肉の器に在留する以上、彼は表に出てこられない。

>>169

残念だ至極残念ではある。
ただ冷静に考えれば彼女より自分の報復しか考えてなかった事の報いなんだろうな

ちょっと私用を済ませてきます
1530には戻ります


『残念だ。至極残念ではある』

怒りを堪えている声音ではない。
嘆いてるようにも思えない。
淡々とした物言いに、フィアンマは眉を寄せる。

『ただ――――冷静に考えれば、彼女より、自分の報復しか考えていなかった事の』
「……、…」
『報い、なんだろうな』

独白。

それで、完結してしまうのか。
拍子抜けして、かえって歯痒くて、フィアンマは言葉を紡ぐ。

「お前はそれで良いのか。見ず知らずの男に人生を奪われて?」
『だから、仕方がないと思っているよ。貰い事故のようなものさ』
「……、…」
『俺の人生を、あげるよ。俺の記憶が君に流れているように、君の記憶も俺に流れてきている。
 君に同情した、と言えば聞こえは良いかな。……俺の肉体が死を迎える前に君が満足したなら、その時は解放してくれ』

どこまでお人好しなのだ、とフィアンマは思った。

「お前の全ては俺様のものだ。返さない」
『ああ、残念だが、俺には抗う術がない』


それきり、返答はなかった。
シルビアは医者を連れて戻って来た。
しばらく診断を受け、検査を受けて。

一週間後、『オッレルス』は退院した。



「掃除はしておいたよ。汚くはないだろ」
「ああ、ありがとう」
「暫くは消化の良いものを作るから」
「ん」

シルビアは、疑っていない。

「少し出かけてくるよ。リハビリも兼ねてね」
「そ。無理すんじゃないよ」

フィアンマは、外へ出た。
日差しが眩しい。寒暖を感じる。

生きている。

久しい感覚だった。

(俺様は―――もとい、この男は世界中から追われている、か)

逃げおおせる、隠れ潜む技術は所有している。
それを駆使すれば、厄介な人物には捕まらないだろう。





フィアンマはどうする?>>+2


「……買い物でもするか」

久しぶりに物に触れられるのだから、楽しまなければ。
早く満足して、オッレルスから離れて……いや、その必要はない。
緩く首を横に振って、フィアンマは歩き出す。
だいぶ弱っている男の体は少々不自由だったが、霊体よりは便利だ。



「………」

やって来たのは服屋である。
沢山の衣服が並んでいる。

「……背格好が近い分、悩まないな」

呟きつつ、ネクタイに触れる。
真っ赤なネクタイだった。とても目立つ。

「………」

少し、考えてみる。
自分の容姿はともかく、オッレルスには似合わないだろう。
ネクタイを元の位置へ戻し、スーツを眺めた。

『買うなら出来るだけ安いものにした方が良いと思うよ』

独り言の形式でオッレルスが言葉を口にする。
これでは気が狂っているようだ、と思いつつ、フィアンマは独り言の形式で返す。

「…高価なものを購入すると何か問題でも?」
>>177

子どもたちに申し訳ないし、何よりシルビアが似合うものを選んでくれるから


『子供達に申し訳ないし、何より』
「何より?」
『シルビアが似合うものを選んでくれるからね』
「なるほど」

助ける前から子供を助ける事は確定しているのだろうか。

他人ありきの話し方は、お人好し故だろうな、とフィアンマは思う。
思ったままが伝わるので、言うも思うも変わりないのだが。



衣服を買うのをやめ、食料品売り場へやってきた。
色とりどりのお菓子が並んでいる。

「…お前は幼少期、屋敷で菓子を嗜んでいたようだな」
『まあ、そうだね。随分と昔のことだけど』
「よく食べていたのは……これか」

オッレルスの記憶は、既にフィアンマの記憶でもある。
フィアンマは自分のことのように思いだしながら、お菓子に手を伸ばす。
今すぐには食べられないだろうが、そのうち食べられるかもしれない。



手が重なった。



ほっそりとした少女の手だった。
ちら、と見やると、そこにはふんわりとした金髪の少女が僅かに驚愕の表情を浮かべている。

(魔神オティヌス、)

フィアンマは、どう反応するか迷った。
記憶こそ共有しているものの、意識は違うので、オティヌスを憎んではいないのだ。
ただ、『内側』のオッレルスがどう考えているかはわからない。

「……」

動揺し、沈黙するフィアンマに対し。
オティヌスは僅かに首をかしげ。

>>180

どうやって蘇ったか興味深いな


「どうやって蘇ったか、興味深いな」
「お前には関係のないことだ」

フィアンマは一度手を引き、『オッレルス』として敵意を見せる。
あまりにも急に人間関係を変化させるというのも妙だからだ。
ちなみに、記憶は共有していても同じ感情を所有する訳ではない。
それは、同じ感動映画を見て泣く人と怒る人が居ることの違い。

にぃ

オティヌスは、ゆっくりと笑みを浮かべた。
非常に悪い顔だ。ラスボスオーラが出ている。
こんなに悪い顔をするのはローマ正教の某大司教位じゃないか、とフィアンマは思った。

「メイドは健在か」
「答える必要はない」
「寂しい男だな。世間話に位付き合ってくれよ」
「世間話をするような仲だとでも?」
「同類には違いない」
「……何かしたのか」
「さて、どう思う?」
「答えろ」
>>183

魔神になりたがっていた人間がいたから魔神が「親切」にもその方法を教えて実践させただけだ


「魔神になりたがっていた人間が居たから、魔神が『親切』にもその方法を教えて―――実践させただけだ」
「………」
「ああそうそう。魔神になりたがっている理由は、涙が出るようなものだったなあ。
 大切な人が目を覚ましてからどうもおかしい。自分が元に戻してあげたい、ただそれだけ。
 結界しか専門で学んでいないから、これから色々と学ぶのも難しい。魔神の力の一片でもあれば―――なんて言っていたっけな」
「……まさか」
「ん? その『まさか』だよ同類。流石に理解が早いな」

様子の変化を気づかれていたのはフィアンマの落ち度だ。
だが、そこに漬け込んだのはオティヌスである。

「多分、今ならまだギリギリ間に合うんじゃないか? 
 汚染で死んじまってるかもしれないが…駆けつけてみる価値位はあるさ」
「……お前は、そんなにオ――――私が憎いのか」

一歩下がり、転移魔術の下準備を指先で行いながら、フィアンマはそう問いかけた。
オティヌスはほんの少し考え。

>>186

↑+身勝手に魔神になろうとした自身の報いを受けろ


「私にとっては―――私の味方をしない者、皆敵だ」

静かに答え。
オティヌスは、うっすらと笑む。
奇妙な程に、優しい笑みを浮かべてみせる。

「身勝手に魔神になろうとした自身の報いを受けろ」
「……報いなら、もう受けているさ」

それはオッレルスとしてなのか、フィアンマとしての言葉なのか。

『彼』はオティヌスに背を向け、転移する。
移動する先は、アパートメントに他ならない。




フィアンマが辿りついた時。
シルビアは床に倒れたまま、ぼんやりとした表情を浮かべていた。

「シルビア、」
「……ん…」

反応がある。まだ生きている。
フィアンマは床に膝をつき、シルビアと視線を合わせた。

「おか、えり、」
「……どうしてこんなことを。オティヌスに頼ればロクな結果にならないことくらい、君は理解していたはずだ」
>>189

↑+こうして来てくれたんだ、それは私の思い違いだったようだな。信用してなかった私が大馬鹿だったよ、すまない……


「どこ、か。…遠いところ、へ…行って、……しまうような気が、したから…」

引き止めたかった。
方法がわからなかった。
元より、不器用な女だ。

どうしたらいいか、なんて。

思いつかなかった。
だから、悪魔の囁きであろうと、乗るべきだと感じた。
だけれど、オティヌスが教えた方法は、『聖人』の根幹を崩すものだった。

彼女は、笑っている。

こんな状況でも。
オッレルスを苦しませまいと、辛抱をして。

「こうして…来てくれたんだ、それは私の思い違いだったようだな」

ひんやりとした手が、男の頬を撫でた。
咄嗟に握るが、きっともう、どんな術式を使ったって、彼女は助からない。

「信用してなかった私が大馬鹿だったよ、すまない……」
「……シルビア。…謝罪するのは、俺の方だ」

涙腺を制御出来ない。出来る訳がない。
ぼろぼろと涙が伝って、彼女の服を濡らしていた。

「―――――ごめん」




力が抜けた。
魂の重さは何グラム、だなんて話があるが、本当かもしれない。
あまりにもあっさりとしていて、呆気なくて、なにも、何もできなかっ、た。

「…………」

何も、言葉が出てこない。

「………俺様のせいか。俺様の、罪の結果か」
>>193

…俺かお前かは分からん。俺の事はいい彼女を助けてくれないか?

【一旦中断。そのうち…九時頃?戻ります】


『…俺か、お前かはわからない。…俺のことはいい』

ただ呆然と、オッレルスの口から言葉が溢れていく。
屍という現実を前に、フィアンマは呆然としていた。
ただ、オッレルスの懇願だけが部屋に響いている。

『彼女を助けてくれないか?』
「…どうやって?」
『君なら、そういった方法の持ち合わせの一つや二つあるだろう。右方のフィアンマ』
「……あったら、ここでこうしていると思うのか」
『…ある、んだろう? 無いと、困る』
「……俺様だって、そんな技術があったら行っている」
『君は世界を救える程の力を持っていたじゃないか! シルビア一人くらい、』
「だから!!  ……だから、…それでも、人一人の命を救うことなんて、出来ない」

ここに、フィアンマの体があったとしても救えなかっただろう。
『神の子』に等しい力なんて、なかった。不完全だった。

両手が、意思を持って跳ね上がる。

涙を流したまま、オッレルスはフィアンマの首を。
つまりは、自分の首を絞めた。

『君のせいだ』
「ああ、そうだな。間接的な原因は俺様だろう」
『ここまで俺の人生を滅茶苦茶にして、気は済んだのか』
「ッぐ、」
『彼女一人救えないなら、君の力は何のためにある!』

役立たず、と言われた気がした。
首を絞められ、あるいは絞めながら、フィアンマは唇を噛む。

死ぬ訳にはいかない。

死ぬなら、オティヌスを殺してからだ。
自分にも、オティヌスを憎む理由が出来た。

『―――元々、この肉体は俺のものだ。なら、お前を殺して私も死ぬことにしよう。それで解決だ』
>>196

まずはオティヌスを倒してからだ。オティヌスが亡くなったらお前の言う通りに従ってやる


「まずは、オティヌスを倒してからだ」
『………ッ、』

ぐ、と。
絞める力が強まり、まともに呼吸出来なくなる。
思えば伝わる。言葉に割く時間を、考える時間へ変えた。

「オティヌス、が…亡く、…なったら、…お前の言う通りに、従ってやる」

今はその時じゃない、と主張した。
オッレルスは左の目でシルビアを認識し、唇を噛んだ。
首を絞めるのをやめ、フィアンマはげほげほと数度咳き込む。

『……殺せないさ』
「…お前は、殺すと言っていたじゃないか」
『ああ。……だが、実際には不可能だろう。無限の可能性を持っていても、相手は純粋な魔神だ。
 人間ごときが束になったところで敵うはずがない。多少押し返すことはできても、殺すことなんて、』
「………俺様に心当たりがある。…が、この容姿では門前払いか…」

ローラ=スチュアート。
説得して、結果、オティヌスを邪魔だと思えば、彼女は容赦なく排除するだろう。

「………オティヌスには、弱点のようなものはないのか。因縁の相手だろう。
 俺様の覚え落としたお前の記憶に、残っていないか」
>>203

弱点、弱点……強いていうならば、彼女は一度心を許すとその人を心底無条件に信頼するところかな。

腹を見せてくれれば、あるいは寝首をかけるかもしれない


『弱点、弱点……強いていうならば、彼女は一度心を許すとその人を心底無条件に信頼するところ…かな』
「…なるほど」
『腹を見せてくれれば、或いは寝首をかけるかもしれない』

となれば。
シルビアに対して思い入れが少なかった分、抱く憎悪も控えめな自分がそうするべきか。

「…そうだな。俺様が出るとしよう」
『…君が?』
「ああ。…魔神ともなれば霊感の一つや二つ、あるはずだ」
『……、…』

少し早いけれど。
オッレルスを解放することにした。

「俺様は結局、死人だ。俺様のせいでシルビアが殺された。お前の体に留まる権利はない」

告げて、抜け出した。
ふら、と揺れた彼の身体は、そのまま尻餅をつく。
オッレルスを見下ろし、フィアンマは静かに言った。

『たとえ俺様がオティヌスに情を移していても、構わず殺してくれ』
「フィアン、」
『そして、俺様のことも消してくれ。罪滅ぼしだ』





フィアンマは再び、先程買い物にいった場所へと戻って来た。
オティヌスはのんきにお菓子を眺めている。
どこか満足そうなのは、オッレルスを不幸に出来た確信を持っているからだろう。

『………魔神オティヌス』
「……」

呼びかけてみる。
オティヌスは振り返り、そして、フィアンマを確認するなり固まった。

「…ゆ」
『……』
「…幽霊…か?」
『……いかにも』

まるで態度が違う。

「ゆ、……ゆゆ」
『…お前に用がある』
>>206

イヤーーー!!幽霊イヤーーー!!悪霊たいさーーーん!!エロエロエッサイムー!


オティヌス「イヤーーー!! 幽霊イヤーーー!! 悪霊たいさーーーん!! エロエロエッサイムー!」ブンブン

フィアンマ『騒ぐな』

フィアンマ(何だ、随分と感触が違う…)

オティヌス「よ、用とは何だ。私は幽霊に憑かれる覚えなどない!!」

フィアンマ(死者など身近なはずだが…)

オティヌス「う……ううう」ブルブル

フィアンマ『そう怯えるな。別に悪い内容ではない』

オティヌス「…なに?」

フィアンマ『実は生前友人が居なくてだな』

オティヌス「……」

フィアンマ『お前に友人になって欲しいのだが、ダメだろうか』

オティヌス「……」イヤイヤ

フィアンマ『……祟られても良いのか?』

オティヌス「>>210

たたたたたた祟りぃぃ…………うーんブクブク


オティヌス「たたたたたた祟りぃぃ…………うーん」ブクブク トサッ

フィアンマ『!?』

フィアンマ(たお…れた…? 魔神が、この程度のことで…)

オティヌス「おばけなんてないさ、おばけなんて嘘さ…」

フィアンマ『…寝言でさえそれか』



――――公園


オティヌス「…取り乱した」

フィアンマ『……』

オティヌス「…祟られる、のは困る」

フィアンマ『では俺様の条件を呑むことだ』

オティヌス「致し方ない…」ブルブル

フィアンマ『……』

オティヌス「……私にも……しな」

フィアンマ『…聞こえなかったが』

オティヌス「私にも友達が居ないと告げたんだ」

フィアンマ『……』

オティヌス「……」ショボン

フィアンマ『……俺様がお前の友人、…味方になってやる』

オティヌス「…なにを」

フィアンマ『俺様は幽霊だ。生者と違って悪意をもたない』

オティヌス「>>213


オティヌス「嘘をつけ! さっき祟るって言っただろう! 悪意充分じゃないか!」

フィアンマ『バレたか』

オティヌス「くっ…!」

フィアンマ『……俺様の要求を呑んでくれれば真逆に転じるぞ?』

オティヌス「…どういうことだ」

フィアンマ『守護霊になってやろうじゃないか』

オティヌス「守護霊…」

フィアンマ『悪霊は追い払うし、祟りも跳ね返す。加えて、俺様を守護霊にしておくと幸運になれる』

オティヌス「……悪質な宗教商法の手口だ」

フィアンマ『そう言うな。試しにそこの自動販売機で何か飲み物を購入すると良い』




オティヌス「……大当たりだった…私の無限の可能性が正に傾いたのか…」

フィアンマ『そういうことだ。メリットについてはご理解いただけたかな?』

オティヌス「>>217

いいだろう、しばらく共にいるといい
(よし、ついに私にも友達ができた!)


オティヌス「いいだろう、しばらく共にいるといい」フフン

オティヌス(よし、ついに私にも友達ができた! 友達いない歴=年齢を卒業という訳だ)

フィアンマ『………』

フィアンマ(案外あっさりだった…が、もう少し取り入るとしよう)

オティヌス「…ところで」

フィアンマ『何だ』

オティヌス「デメリットは何だ」

フィアンマ『そうだな…』

オティヌス「……祟る以外で、だ」ブルブル

フィアンマ『…男運が下がる…か? いや、むしろ逆か…』

オティヌス「>>220

えーどうせなら女の子にモテたい


オティヌス「えー、どうせなら女の子にモテたい」

フィアンマ『俺様が頑張ればモテる』

オティヌス「何…だと?」

フィアンマ『本当だ』

フィアンマ(そんな効果はない)

オティヌス「……まあいい、ひとまずあれを買うか」

フィアンマ『…あれ?』

オティヌス「供え物だ。お前の墓は何処だ」

フィアンマ『わからん』

オティヌス「……浮遊霊なのか?」

フィアンマ『精霊と呼んでくれ。恐らくそんな感じの幽霊だ』

オティヌス「なるほど。………友達とは何をするものなんだろうな」

フィアンマ『……>>224

そういえば俺様も友人居なかったズーン(オティヌスの肩が重くなる)


フィアンマ『……そういえば俺様もガチで友人居なかった。わからん』ズーン

オティヌス「急に重くなった、やめろ、離れろ、痛い痛い」

フィアンマ『すまない』

オティヌス「……」フゥ

フィアンマ『…食事だとか、そんなものではないのか』

オティヌス「食べられるのか」

フィアンマ『触れることすら出来ん』

オティヌス「……」

フィアンマ『……同じところに宿泊すること、はどうだ』

オティヌス「シュウガクリョコーウというものか」

フィアンマ『個人単位である以上何とも言えないが』

オティヌス「良いだろう。私の現在宿泊しているホテルで良いな」





――――ホテルの一室


オティヌス「物には一切触れられない、か」

フィアンマ『死んだ時からな』

オティヌス「……」

フィアンマ『…魔神の力でどうにかならんものか』

オティヌス「>>227

ゴーストって映画で触ることは出来てたから頑張れば出来るのでは?


オティヌス「『ゴースト』という映画では触れることは出来ていた」

フィアンマ『……それで?』

オティヌス「頑張れば出来るのでは?」

フィアンマ『俺様が頑張っていないとでも?』

オティヌス「意識の集中のさせ方の問題かもしれないだろう」

フィアンマ『………』ウーン スカッ

オティヌス「……」

フィアンマ『……』スカッ シュカッ

オティヌス「…私が悪かった」

フィアンマ『これまでは時折人の肉体を使って物に触ってきたが…』

オティヌス「なるほど……」

フィアンマ『なかなか不便だ。空腹や寒さ、暑さは感じないのだが』

オティヌス「私が代わりにやることにしよう」

フィアンマ『そうだな』

オティヌス「………」

フィアンマ『……趣味はないのか。ずっと無言もキツいものがある』

オティヌス「>>230


脳内友達と1日中会話………ズズーン


オティヌス「脳内友達と1日中会話………」ズズーン

フィアンマ『……』

オティヌス「一人でトランプをしたこともある…」

フィアンマ『……』

オティヌス「"三人も友達が来たからお菓子をつまみつつ"という設定で1500ピースジグゾーパズル…」

フィアンマ『……』

オティヌス「……」ジワジワ

フィアンマ『……寂しいと思ったことはないのか』

オティヌス「あるに決まっている、…だが」

フィアンマ『…だが?』

オティヌス「誰も信用出来ない。唯一私を理解出来そうな同類でさえ、私を拒絶した」

フィアンマ『それは自分に原因があると考えたことはないのか』

オティヌス「>>233

唯一という言葉の意味が分かるか?
自分に原因があるかどうかは知らん

【今日はここまで】


オティヌス「唯一という言葉の意味が分かるか?」

フィアンマ『勿論』

オティヌス「自分に原因があるかどうかは知らん」ムスッ

フィアンマ『多少の反省はすべきだと思うが』

オティヌス「…何にせよ、あれは私を理解しようとなどしないだろう」

フィアンマ『……』

オティヌス「………」グスッ

フィアンマ『…理解されたかったのか?』

オティヌス「……」

フィアンマ『…オッレルスに?』

オティヌス「……」

フィアンマ『………』

オティヌス「……>>236

友人になれるかと思ったんだ…
候補はもう1人黒髪のツンツン頭の幻想殺しがいるがおそらく無理だろうし…


「……友人になれるかと、思ったんだ…」

だた、その期待は裏切られた。
彼は魔神になって、自分から離れていこうとした。
それが許せなかった。もう少し、近くにいて欲しかった。
だから奪った。そして崩れて、全てが壊れた。

「候補は…もう1人、黒髪のツンツン頭の『幻想殺し』が居るが恐らく無理だろうし…」
『幻想殺しだと?』
「知らなかったか、幻想殺しは」
『いや、よく知っているよ。そして『あれ』は俺様の理解者だ』

フィアンマの言葉に、オティヌスは眉を潜める。
何でもない、と言葉を濁し、フィアンマは窓を見やった。

「……お前は、私の理解者にはなれない…か」
『やってみなければわからんだろう。…少なくとも、オッレルスのことは理解しているが』
「…出来損ないを?」
『ちょっとした縁で、な』
>>240

いいなぁ…ウジウジ


「いいなぁ……」

うじうじといじけた、落ち込んだ様子を見せ。
彼女は膝を抱えると、ベッドに寝転がる。
フィアンマは暫くそんな彼女を観察してみた。
やがて彼女はのそっと起き上がり。

それから。

ちょっぴり熱意の満ちあふれた瞳でフィアンマを見上げた。
魔神らしさともいえる威圧感は、なりを潜めている。

『…何だ』
「オッレルスとお前は何をして理解したんだ」
『……聞きたいのか?』
「私も同じようにすれば理解されるかもしれないだろう」
『……』
「………」
『…>>243

月並みだがそれなりの親交を深める事をしたからだな、彼女のこととかな


『…月並みだが、それなりの親交を深める事をしたからだな』
「…ふむ」
『彼女のこととか、な』

真実は口にしない。
口にする必要もなかった。
フィアンマはただ、オティヌスと親しくなっていればいい。
彼女の隙を引き出していれば、いつかオッレルスは殺しに来る。
その時に手助けをするのが、自分の罪滅ぼしだからだ。

「…つまり一人の女を共有したということか」
『……似たようなもの、か…?』
「XXとかそういうことか…ほう」
『……おい?』
「XXX…? そんな、…いやだが、…XXXXX……」

放送禁止用語を連発しながら、オティヌスは小さく震えた。
少しフィアンマから距離を取ると、警戒した様子で言う。

「お前は人の女でも見境なく犯すのか…?」
>>246

人の女?いや、オッレルスはそういった間柄ではないと言っていたが?

【今日はここまで】

『人の女? いや、オッレルスはそういった間柄ではないと言っていたが?』
「……セフレ…というもの、なのか…」

犯すというのは罪だろうか、とフィアンマは首を傾げる。
オティヌスは勢い良くばふっとベッドへ倒れた。
うとうととしながら、静かに目を閉じる。
近くに幽霊が居るだなんて、寝覚めは悪そうだけれど。

「……なあ」
『…ん?』
「お前は、生前どんな魔術師だったんだ」

オティヌスの質問に、フィアンマは少し悩む。
彼女は、眠そうな顔をしていた。

「……お前はどう思うんだ」
>>249

変わり者だった


近頃百合もいいなと思い始め。
今日は更新お休みします。


(酉変えた意味なかっ   わたしです  安価下)



とかく暇である。
二時間は我慢したが、これ以上やることがない。
何しろ、ものに触れられない。
やけ食いをしようにも食べ物にも触れられないのだ。
シャワーでも浴びて気分転換しようにも、そもそも体がない。

なので。

フィアンマは目の前の少女でちょっぴり暇を潰すことにした。
死んでから命知らずになった感じのある彼である。

『………』

もふっ。

もし彼が生者であれば、オティヌスの髪の毛でそんな音がしただろう。
ぎゅう、と抱きしめ(もとい"スカッ"とすり抜け)ながら。
フィアンマは腕でもってオティヌスの首元を締めてみる。
ぐいぐいと締め上げるが、彼女は目を覚まさない。

「う…」
『…?』
「…>>260

シルビア、目論見は上手く行ったか…?


「…シルビア、…目論見、は…上手く行った、か…?」

寝言だった。
彼女はシルビアに魔神の力の一端を得る方法を教え。
そうして、遠まわしに彼女を殺した。
死ぬであろうことを想像して笑っていたはずだ。

にも関わらず。

オティヌスは、心配そうにそうぼやいた。
『聖人』の構成を崩すような、シルビアに死を与える術式を教えたというのに。

『……』

ふと。
フィアンマは気がつく。
元来『聖人』である人間は、魔神の力は得られないのかもしれない。

だとしたら。

これはただの、行き違いなのではないのだろうか。
オティヌスには彼女なりの最善を祈る心があって。
オッレルスは絶対にそれを信じない。

『………』

わからない。

『……もしもそれが本当なら』

オッレルスは、勘違いしている。
シルビアがああなった結果を、オティヌスが知らないだけかもしれない。





数時間後。
魔神の少女は目を覚ました。

「…どうした」
『…シルビアという名前を呟いていた』
「私がか」
『ああ。……もし彼女が死んだとしたら、お前はどう思う』
>>263

↑+私なら治せる

【今日はここまで】


「例えだとしても、気分のいい話ではないな」

まだ眠そうに目元を擦り、オティヌスは言う。
フィアンマしかいないのだから、嘘をつく理由など一つもない。

「まぁ、悲しいと思ったり、泣くとは思う、が…」

くぁあ、とあくびを漏らし。
彼女はのんびりと伸びをした。
ふわふわの金髪が、ベッドに広がっている。

「私なら治せる」

致命傷でも。

「『無限の可能性』故に失敗するかもしれないが」

それでも救おうとする位はする、と彼女は言う。
自分のせいならば尚更、とも。

『……』
「…それで? どうかしたのか」
『…いや。…オッレルスから憎まれている自覚はあるか』
>>266

↑+シルビアとは仲良くなりたかったのだがなあ


「本当に申し訳なかった、私の頭が回らなかったせいだ」

オティヌスは全面的に自らの非を認め。
その上で、静かに本心を語った。

「彼女を殺すつもりは無かった、ただ」
「……」
「ただ、……オッレルスを助けさせるための術を、教えただけだ…」

その結果、『負』に傾いてシルビアを死なせたとしか言い様がない。

「私はただ、」
「わかった」

オッレルスの返答に、オティヌスは安堵しかける。

が。

彼は表情を変えずに『北欧王座』を振るった。
オティヌスも力を振るい、攻撃を中和する。

「なら、お前を殺して『死者の軍勢』にしよう。その上でシルビアを治療させる。
 もしも本当に申し訳ないと思うのなら、私に殺されても構わないはずだ。そうだろう?」
『オッレルス、その理屈は』
「おかしい? そうかな。君が俺の肉体を奪った時の屁理屈よりはマシだと思うよ」
『………』
「……君だってシルビアを大切に思ったじゃないか。オティヌスのことを、同じように憎んでくれただろう』
>>279

シルビアがこういう事を望んでいるとは思えないのだがな、せっかく蘇生してシルビアの答えを聞けるのだから聞いてからでも十分だろう


『シルビアがこういう事を望んでいるとは思えないのだがな。
 せっかくだ。蘇生して、シルビアの答えを聞けるのだから、聞いてからでも十分だろう』

遅くはないはずだ、とフィアンマは言う。
オッレルスは少し考え込んだ様子だった。

『死者を穢すなというのなら、お前も死者の想いを穢すべきじゃない』
「………」

冷や汗が流れる。
交渉が決裂した場合、戦うのは自分ではないのだから。

「……、…」

しばらくして。
彼は、折れた、といったジェスチャーで返答をする。
それきり、死線を逸らして言葉を返さなくなった。





シルビアを蘇生し、真意を聞き。
当然、彼女が『オティヌスを殺して欲しい』というはずもなく。
金輪際顔を見せるな、というオッレルスに従い、オティヌスとフィアンマは外へ出た。

「……ぐす」
『……泣いているのか?』
>>282


「助けたかった、だけだったんだ」

頼られた。
助けたくなった。

人間としては、まっとうな感情だったはずだ。

「何の悪意だって、なかった」

オッレルスに対して刺々しい言い方しか出来ないのは、今でも理解されない辛さ故だった。
シルビアの成功を考えた自分の笑みは、ともすれば邪悪に見えたのかもしれない。

そうだったとしても。

自分は。

「ただ、事態が良い方向へ向かうならと、思ったんだ」

それだけで良かったのに。

結果的には元の状態へ戻った。
シルビアが抱えているらしい状況も解決している。
それにしても、無力感が胸を支配していた。
溢れてくる涙が悔しさからきているのかどうかすら、わからない。

「私は、……」
『………元を辿れば、半分は俺様のせいだ。お前一人で背負うことはない』
>>285

うるさい!お前の慰めなんていらない!

お前だって、私を最初から裏切っていたくせに!

友になる、と言った……くせに…!


「うるさい! お前の慰めなんていらない!」

思い出すのは、事の全容。
結局、オッレルスの発言は嘘なんかじゃなかった。
フィアンマは、オティヌスの警戒心を解くために。
もっと悪く言えば、仲良くなって裏切るために近づいたのだ。

「お前だって、私を最初から裏切っていたくせに!」
『……』

反論は出来ない。
用意出来るだけの論理が無い。
事実、騙そうとしていたのだから。途中までは。
端正な顔立ちを歪め、ぼろぼろと涙を流し、オティヌスはフィアンマを睨みつける。

「友になる、と言った……くせに…!」

絞り出したような声だった。
華奢な身体は、怒りと失意と、悲哀に震えている。

『……、…』
「裏切りもの、」
『……なら、その手で消せば良いだろう』

寝る前に言っていたはずだ。

冷淡に指摘され、オティヌスはびくりとする。
悲しさや怒りで胸がいっぱいなら、元凶を消せばいい。その通りだ。

『そんなに裏切られた事が辛いのなら、俺様を消せばいい。
 高い授業料だったと割り切ればいいさ。お前に近づく人間は全員裏切ろうと考えているヤツだと思えばいい』

言い訳も謝罪も、きっと彼女には届かない。
そう理解しているから、彼はそう申し出た。

『お前の手で消されるなら本望だ。やりたいことは全てやった。
 結果的にこういう結果になってしまったが、友人というものを体験することも出来た。
 消せばいい。その手で殺せば良いだろう。どちらにせよ、俺様の謝罪では気は済まないだろう?』
>>288

[ピーーー]か なら殺してやる ただし性的にな


「殺すか」

望むのなら、とばかりに彼女は言った。

「なら、殺してやる」

涙を拭い、深呼吸する。
少し目元が赤いが、深呼吸して呼吸を整えた。

「ただし」
『…ん?』

やや満足そうに、フィアンマはその瞬間を待っていた。
しかし、オティヌスはというと、彼を手招く。
このまま歩いていくと、やがて居住地のホテルに到着する訳だが。

「性的にな!」
『幽霊相手にそれは不可能だと思うのだが』
「…ふんっ」

……遠まわしに、『許してやる』と言っているらしい。
彼女はぼそりと、風に乗せるように呟く。

「………今回限りだからな」





そんな訳で、二人はホテルへと戻って来た。

「空腹だ…」
『…たまには何か作ってはどうだ。その様子ではいつまでも恋人が出来んぞ』
>>292

恋人 そんなものいなくても人は生きていけるさ
子孫を作るなら錬金術でも使えばいい それはともかくルームサ-ビスを頼むか


「恋人? そんなもの、いなくても人は生きていけるさ」

友達を持つ者の余裕、のつもりらしい。
ふん、と彼女は鼻を鳴らして。

「子孫を作るなら、錬金術でも使えばいい。それはともかく、ルームサービスを頼むか」

ベッドに横たわったまま、彼女はそう言う。
好きにしろ、とフィアンマは返した。
別に冷たく接している訳ではなく、彼は食事が出来ないからだ。

「…専用デンワーが遠いな」
『面倒臭がっていないできちんと起き上がれ』
「………身体は人体じゃなくてもいけるのか?」
『何だ、唐突に』
「いや何、お前に肉体があればコールしてもらえるだろう」
『そんな理由か。…大丈夫じゃないか? とはいえ、あまりにも人体とかけ離れていると困るが』
「ふむ」
『何だ、何か作ってくれるのか?』
>>295

人造人間ホムンクルスを作ってやる

【一旦中断】


オティヌス「人造人間<ホムンクルス>を作ってやる」

フィアンマ『……』

オティヌス「……どうした? 嬉しくないのか?」

フィアンマ『…出来るのか?』

オティヌス「私は魔神だぞ?」

フィアンマ『……』

オティヌス「……多分。負に傾かなければ…」

フィアンマ『……俺様には何も出来ないが、一人で大丈夫か』

オティヌス「子供扱いをするな。出来るとも」


オティヌス「ルームサービスで腹も満たしたことだし、始めるか」

フィアンマ『そうだな』ガンバレー





オティヌス「壊れた……」

オティヌス「あっ死んだ」

オティヌス「これ死……あっ」

フィアンマ『………』

オティヌス「……」フルフル

フィアンマ『……諦めた方が良いんじゃないか?』

オティヌス「>>298

お前の魂さえ定着させれば良いのだから外側の器だけ作ってみることにしよう


オティヌス「お前の魂さえ定着させれば良いのだから、外側の器だけ作ってみることにしよう」

フィアンマ『内臓などを撤廃するということか』

オティヌス「そういうことだな。…血液は必要か?」

フィアンマ『欲を言えば欲しいがね』

オティヌス「善処しよう」




フィアンマ『……』

オティヌス「ふむ。今度はなかなか悪くない」

フィアンマ『…時に、オティヌス』

オティヌス「何だ」

フィアンマ『何か余計な機能を付けた体にはしていないだろうな?』

オティヌス「>>301

オティヌス(>>303

↑+強いて言うなら鎧の中身は女の子にしたくらいだ

肉体を常人の10倍強化したから車に跳ねられても車が凹むだけで無傷で済むはず!


オティヌス「何を言う。この厳つい鎧騎士の何処にそんなギミックが仕込めるというんだ」フフン

フィアンマ『……』

オティヌス「ああ。強いて言うなら、鎧の中身は女の子にしたくらいだ。
      安心しろ。まな板赤髪セミロング、大体はお前の容姿だよ」

フィアンマ『……』

オティヌス(肉体を常人の10倍に強化したから車に撥ねられても車が凹むだけで、本人は無傷で済むはず!)

フィアンマ『……』

オティヌス(死が怖いだろうからな。友人思いの私、さすがだな……)フフフ

フィアンマ『却下だ』

オティヌス「なに?」

フィアンマ『そもそも鎧騎士にした意味がわからん。十三騎士団ではあるまいし。
      ついでに言及すると何故性別をそのままにしない。俺様が男だと理解しているだろう』

オティヌス「……近頃の魔法少女アニメでは鎧騎士且つ中身が女の子で強いキャラが人気だと聞いたぞ。
      世の中のニーズに合わせて製作したというのに、何が不満なのかさっぱりわからないな」

フィアンマ『……一番の問題は性別だろう』

オティヌス「この体なら排泄の心配はないから、気まずいことは…入浴時位か」

フィアンマ『……』

オティヌス「そんなに女の子は不満か」プンスコ

フィアンマ『>>306

いや悪くは無かったが俺様はそれほど男らしくなかったか…


フィアンマ『いや、悪くは無かったが…俺様はそれほど男らしくなかったか…』ズーン

オティヌス「痛たたたたた」

フィアンマ(一応父性を司る神の如き者担当だったのだが……)

オティヌス「……なら良いじゃないか。安心しろ、鎧は着脱式だ」

フィアンマ『…ほう?』

オティヌス「面倒な知り合いにバレそうになったら装備すればいい」

フィアンマ『……』

オティヌス「頑丈な体にしておいたから、死を恐れる必要もない」ウンウン

フィアンマ『……致し方ない、か』




フィアンマ「…………」

オティヌス「そう落ち込むな。せっかく私が精密に調整した可愛い顔が台無しだろう?」

フィアンマ「……これが神罰なんだな。文字通り…」

オティヌス(声も可愛らしい。申し分ないな)ウン

フィアンマ「……まあ、女の肉体の方がお前も話をし易いんだろう?」

オティヌス「どちらでも変わらないが…まあいいか。せっかくからだが手に入ったんだ、何が食べたい?」

フィアンマ「>>309

スープ系だな。水分があるものがいい。


フィアンマ「スープ系だな。水分があるものがいい」

オティヌス「わかった」



オティヌス「当たり障りのないコーンスープにしたが、問題なかったか」

フィアンマ「問題ない」ズズズ

オティヌス「……」

フィアンマ「……」

オティヌス「…ああ、食べたものは身体の中で生命力の段階をすっ飛ばして魔力になる。
      色は十字教の赤だ。問題ないだろう?」

フィアンマ「ああ」

オティヌス「……」

フィアンマ「……何だ。見つめられると食べ辛いのだが」

オティヌス「>>313

人と一緒に食べるのは初めてだから…


オティヌス「人と一緒に食べるのは初めてだから…」

フィアンマ「…俺様は幽霊だったからな。ついさっきまで」

オティヌス「お前が食べていない内は黙々と食事をしていたが、一緒に食事をしているのなら話をするべきだろう?」

フィアンマ「話題がないな」

オティヌス「…今日の天気…か」

フィアンマ「……くもり」

オティヌス「……」

フィアンマ「……」

オティヌス「……お前の昔話、なんてものはないのか」

フィアンマ「俺様の?」

オティヌス「叶えたい願いの話、だとか」

フィアンマ「……」ウーン

オティヌス「……」

フィアンマ「>>317

俺様の理想の平和な世界を作ろうとしていたな。今は貴様がまともにすることが俺様の願いだ


フィアンマ「俺様の理想の平和な世界を作ろうとしていたな」

オティヌス「平和な世界?」

フィアンマ「ああ。今は貴様がまともにすること、が俺様の願いだ」シンミリ

オティヌス「私はまともだ」ムスッ

フィアンマ「……」

オティヌス「……」

フィアンマ「……」

オティヌス「…まともだ」プルプル

フィアンマ「お前に友人や恋人が出来れば昇天出来そうだ」ウン

オティヌス「昇天…だと?」

フィアンマ「何だ。既に一度死んだ以上、いつか消えるのは当然のことだろう?」

オティヌス「>>320

↑+何のためにその身体を作ったと思っている


「やだ」

魔神としてではなく。
単純に、一人の少女としての発言だった。
幼い駄々っ子のように頬をふくらませんばかりに、彼女は言う。

「だったら、私は他の友人なんていらない」
「オティヌス、」
「何のためにその身体を作ったと思っている」

簡単には壊れない。

二度死んだら、消えてしまいそうで。
だからこそ、オティヌスは丁寧に素体を作った。

たった一人の友人に、消えて欲しくないから。

どうしてわからないのだろう、とオティヌスは眉を寄せる。

「お前は私の傍に居れば良い。私もお前の傍に居る」
「………」
「…………」
「……友人にしては束縛が過ぎるな」
>>323

↑+初めての友達だから嬉しかったのだが…


オティヌス「その、嫌か?」ションボリ

フィアンマ「……」

オティヌス「初めての友達だから、嬉しかったのだが…」ウジウジ

フィアンマ「嫌ではないが。…思っているよりもマイナス思考だな」

オティヌス「対人関係だけだ」フン

フィアンマ「誇るべきことではないな」





――――翌日



オティヌス「くしゅっ」

フィアンマ「…風邪か?」

オティヌス「いや、それはなへくちぅ」

フィアンマ「……」

オティヌス「……」

フィアンマ「…金を寄越せ。必要なものを買ってきてやる」

オティヌス「>>326

水か何か飲み物を買ってきてくれると助かる……本当に済まない


オティヌス「水か…何か、飲み物を買ってきてくれると助かる……」

フィアンマ「水と…水分補給に適したものを購入してくるか。後はゼリー類だな」

オティヌス「本当にすまない」

フィアンマ「気にするな。…友達、だろう?」

オティヌス「……」カアッ







フィアンマ「外に出たのは良いが、コンビニエンスストアの類は…」キョロ

フィアンマ「……」テクテク

フィアンマ「……道に迷ったか」ヤレヤレ

>>330「道案内しましょうか?」

神裂


神裂「よろしければ、道案内をしましょうか?」オズ

フィアンマ「お前は…」

フィアンマ(禁書目録がどうこう、と言っていたが…そうか、こっちの女は俺様が見えなかった方か)

神裂「? 私のことをどこかで?」

フィアンマ「ああ、…知り合いに似ていただけだよ」

神裂「そうでしたか」

フィアンマ「近くにコンビニエンスストア、ないし、スーパーマーケットがあるかどうか知りたいのだが」

神裂「それでしたらこちらですね」テクテク




神裂「この先を真っ直ぐに進めば大型のスーパーマーケットがありますから…」

フィアンマ「……」

神裂「…あの、私の顔に何か…?」

フィアンマ「>>333

こんな所で日本人に道案内を受けるとは思わなかったからな。しかも美しいな…

【今日はここまで】


フィアンマ「こんな所で、日本人に道案内を受けるとは思わなかったからな」ウン

神裂「そうでしたか。仕事でこちらの方へ来てまして…確かに珍しいでしょうね…」フム

フィアンマ「しかも美しいな…」シミジミ

神裂「う、美しい…?」

フィアンマ「いや何、初めて見た時から凛として美しい少女だと思っていたよ」

神裂「ッ!?」カアッ

フィアンマ「髪から肌の色まで、日本美人という概念が服を着て歩いているのだろうなと感じた」

神裂「え、そ、その……」モジ

フィアンマ「俺様はここまで綺麗で、且つ愛らしさを備えた日本人を見たことがなかった」

神裂「ッ、じょ、女性同士でそこまで褒められるととてもこそばゆいですね…」

フィアンマ「>>336

素直に謙遜する所も奥ゆかしさを感じるな。おれさ…私も学びたいものだ


フィアンマ「素直に謙遜する所も奥ゆかしさを感じるな。おれさ…私も学びたいものだ」ウンウン

神裂「お、恐れ入ります…」テレテレ

フィアンマ「…と、ここか」

神裂「はい。支払いなどは…」

フィアンマ「ああ、その辺りは問題ない。単純に地理に詳しくなかっただけだ」

神裂「そうでしたか…では私はこれで」ホッ

フィアンマ「また会うかもしれんな。二度あることは、と言うし」

神裂「?」




――――スーパー


フィアンマ「……」ウロウロ

フィアンマ(水分、消化の良い食べ物…)ガコガコ

フィアンマ「…頑丈と豪腕は違うな。やはり女の細腕に数キロのものは重いか」ズッシリ

>>340(知り合い)「持とうか?」


ローラ「良ければ持ちたるわよ?」

フィアンマ「それは助か………」

ローラ「久しく会いたるわね。随分と可憐な姿になっ」

フィアンマ「」ガシャコン

ローラ「鎧!? 何ゆえ鎧騎士になりたるの!?」

フィアンマ『どなたかちょっと存じ上げないな』

ローラ「くっ…完全に面倒な知り合い扱いしたるのね、善意の申し出だったのに!
    どのような技量を用いてかは知らぬけれど、肉の器を得られて良けりね」ウン

フィアンマ『………』

ローラ「ひとまずその悪目立ちしすぎる鎧を脱ぎて?」

フィアンマ「……よく俺様がわかったな」

ローラ「性別が変わりても、魂は変わらぬものよ」

フィアンマ「……そうかい。…知り合いが風邪を引いたのだが、滋養のある食べ物を知らないか?」

ローラ「滋養…ふむ。>>343

イギリス人の私としては鰻がオススメよ。病人に食べさせて良いかは知らぬけど


ローラ「滋養…ふむ。イギリス人の私としては、鰻がオススメよ」

フィアンマ「ウナギか」

ローラ「病人に食べさせて良いかは知らぬけど」

フィアンマ「…様子を見て与えるか…情報提供感謝する」

ローラ「力になれたるのなら良かったわ」ニコ

フィアンマ「……」

ローラ「私の顔に何かつきたるの?」キョトン

フィアンマ「いや、…というよりも、何故お前がこんな場所に居るんだ」

ローラ「勿論おやつを買いに」フフン

フィアンマ「お前の部下は苦労するな」





――――ホテル


フィアンマ「戻ったが、調子はどうだ」

オティヌス「>>346

喉が渇いた…。頭痛はだいぶ落ち着いたが身体のだるさが酷いな…


オティヌス「喉が渇いた…」

フィアンマ「そうか」

オティヌス「頭痛はだいぶ落ち着いた、が……身体のだるさが酷いな…」

フィアンマ「熱は…微熱程度か。汗をかいて治す他あるまい」

オティヌス「ん…」

フィアンマ「ストローを吸う程度は出来るか?」

オティヌス「みず、か…」チュー

フィアンマ「…食欲はどうだ」

オティヌス「無いな……」

フィアンマ「暫く眠れ」

オティヌス「……情けないな、私は」

フィアンマ「>>349

魔神とて敵わぬものがあると知れて俺様は嬉しいぞ、人間味があるように感じられてな


フィアンマ「魔神とて敵わぬものがあるとしれて、俺様は嬉しいぞ」

オティヌス「ぐ……」

フィアンマ「人間味があるように感じられてな」

オティヌス「……」

フィアンマ「まあ、直近まで幽霊だった俺様が人間味どうこうと言っても説得力がないが」

オティヌス「…そんなことはない」モゴ

フィアンマ「……着替えは一人で出来るか?」

オティヌス「問題ない…」モソモソ

フィアンマ「……」ウトウト

オティヌス「…眠いのか」キガエオワリ

フィアンマ「そういう訳では、」ウトウト

オティヌス「>>352

良ければ添い寝するか?


オティヌス「…良ければ、添い寝するか?」

フィアンマ「添い寝?」

オティヌス「風邪が感染るかもしれないが…眠りやすくなるだろう」

フィアンマ「……」

フィアンマ(お前がそうされたいだけじゃないのか?)

オティヌス「……」ソワ

フィアンマ「…そうするか」

オティヌス「スペースを空けてやろう」モゾ

フィアンマ「……」ゴロン

オティヌス「……」

フィアンマ「……」

オティヌス「……」

フィアンマ「…もし風邪が感染したら看病してもらおうじゃないか?」

オティヌス「>>354

踏み台

【対象安価間違えた……てへぺろしておこう…】


オティヌス「それ位やってやるさ。魔神に看病してもらえる人間なんて、お前しかいないぞ?」フフ

フィアンマ「お前にここまで近づいた人間も、俺様位だろうな…」ウトウト

オティヌス「…そうだな」コクン

フィアンマ「……」スヤア





オティヌス「ん……」パチ

フィアンマ「……」スヤ

オティヌス「……だいぶ良くなったな。汗をかいたからか」フー

フィアンマ「……」ピト

オティヌス「…くっつくな」

フィアンマ「ん……」スヤスヤ

オティヌス「……」






オティヌスはどうする?>>+2


身体は汗でベタついていて、ひどく不愉快だ。
だが、くっついてきているフィアンマを引きはがす程ではない。
起こしてしまうのも忍びなくて、オティヌスは暫し沈黙し。
再三悩んだ後、目の前のフィアンマを抱きしめてやることにした。

柔らかみはない。

そういう風に作ったのだから当然だ。
逆に言えば、余計なモノもないのだが。

「……」

妙な気恥かしさに、オティヌスは視線をさまよわせる。
相手は友人で、やましいことなど何もないはずだ。
体が火照っているのも、きっと熱がちょっぴり残っているからなんだろう。

「……、…」

昔から、同性の体にしか情欲を感じたことはない。
考えてはいけない、とオティヌスは思った。

友達、友人だ。

ここで余計な事をして嫌われたらいやだ。

「………」






オティヌスはどうする?>>+2


「……手を握る程度なら」

問題ないだろう、と呟いて。
ついでに自分へも言い聞かせて、手を握る。
細い指先を絡ませ、静かに目を瞑った。

相手は元男だ。
悪い気はしないだろう。

そう思いながら、眠ろうと努力する。
ドキドキとしているのは、きっと熱のせいだ。

「………ん」

そうこうしている間に、フィアンマが目を覚ましたらしい。
オティヌスは穏やかに呼吸し、寝たフリをする。
魔神の嘘を見抜けるのは(基本的に)魔神だけだ。

「……?」

首を傾げるような雰囲気の後、きゅ、きゅ、と数度手を握られた。
もう片方の手のひらが、額に触れる。ひんやりと冷たい。

「多少は下がったか……」
「……」
「…起こしたか?」
「いや、…今起きただけだ」

誤魔化して、オティヌスは手を離す。
フィアンマはのそのそと起き上がり、乱れた髪を指先で直しつつ。

「ゼリーやプリンは食べられそうか? それとも、鰻が良いか?」
>>365

ゼリーで良い、鰻は食べたらまだお腹を下しそうだ

【今日はここまで。  何かオティフィア♀にさせたいことってありますか】




オティヌス「ゼリーで良い、鰻は、食べたらまだお腹を下しそうだ」ウン

フィアンマ「用意してやるから座っていろ」

オティヌス「……」ストン

フィアンマ「……葡萄で良いか」

オティヌス「ああ」



オティヌス「……」モグモグ

フィアンマ「……」

オティヌス「……ところで」

フィアンマ「んー?」

オティヌス「何故鰻を買ってきたんだ? 風邪に効くのか?」

フィアンマ「滋養に良いと知り合いから聞いてな」

オティヌス「そうか」

フィアンマ「そうだよ」

オティヌス「………知り合いが居たのか? 私以外に友人が?」

フィアンマ「あれを友人とは呼びたくないな」

オティヌス「…そうか」ムグ

フィアンマ「……」

オティヌス「…なかなか美味い」

フィアンマ「なら良い」

オティヌス「…ちなみにゼリーを作ることは出来るのか?」

フィアンマ「>>368

あまり自発的には作ろうとはしないが不可能ではない

【ご意見ありがとうございます! フィアンマちゃんと気安く仲良くなって腕ぶった切られるトールくんか…】



フィアンマ「あまり自発的には作ろうとはしないが、不可能ではない」コク

オティヌス「今度作ってくれないか」モグ

フィアンマ「ゼリーを?」

オティヌス「そうだ」

フィアンマ「それは構わないが…」




フィアンマ「三日程休養してすっかり良くなったな」

オティヌス「お前の献身の結果だな」ウンウン

フィアンマ「献身という程尽くしてもいないのだが」

オティヌス「そうか? ……」ムシャムシャ

フィアンマ「…それで、要望した通りの鰻ニコゴリーはどうなんだ。ゼリーの一種だが」

オティヌス「>>375

オティヌス(>>377

とても味が濃いが旨いな。私はこの味付けが好きだぞ

私よりこいつは料理が上手いのではないか?


オティヌス「とても味が濃いが、旨いな。私はこの味付けが好きだぞ」モグモグ

オティヌス(私より、こいつは料理が上手いのではないか? 
      『無限の可能性』による成功例と比較しても…)ムグ

フィアンマ「微調整を繰り返した甲斐はあったようだな。
      本来は日本人の嗜好上、旨味と多少の塩味だけで良いようだが、お前は日本人ではない。
      その分、味を濃くする必要があった」

オティヌス「私に合わせた訳か」フム

フィアンマ「料理の基本は食べる人間の味覚に合わせることではないのか?
      料理が一番美味しくなるのは愛情、などという比喩表現があるが、つまりはそういうことだ」

オティヌス「……愛情」

フィアンマ「……どうかしたか」

オティヌス「気にするな」

オティヌス(愛情……愛情か)エヘヘ





オティヌス「海に行きたい」

フィアンマ「何だ、唐突に」

オティヌス「そろそろ暑くなってきただろう?」

フィアンマ「確かに季節は七月だが」

オティヌス「………」

フィアンマ「……泳げるのか?」

オティヌス「>>380

……泳げなくても生活はできる


オティヌス「……泳げなくても生活はできる」

フィアンマ「……」

オティヌス「…お、泳げずとも海は楽しいだろう」

フィアンマ「…砂の城を作る、とかだろう?」

オティヌス「ちが、………わないが」

フィアンマ「……行くのは構わないがね」

オティヌス「ならば最初から同意すれば良いものを」




―――――ショッピングモール・水着売り場


フィアンマ「……居辛い場所だ」

オティヌス「今のお前はどこからどう見ても可憐で華奢で胸元が残念な美少女だ。問題はない」

フィアンマ「最後の方の言葉は余計だったと思うが、…まあ、慣れていかねばなるまい。
      元の俺様は書類上も、実際の肉体も死亡してしまったのだからな」ウン

オティヌス「私が水着を選んでやろう」フフン

フィアンマ「………」

オティヌス「少し待て」ガサゴソ

フィアンマ「…妙なデザインは選ぶなよ」

オティヌス「これ(>>383)なんてどうだ」

赤のビキニ


「これなんてどうだ」

彼女が提示したのは、赤いビキニである。
オティヌスの趣味なのか、だいぶ露出度が高い。
上はそうでもないのだが、パンツ部が特に際どかった。
これを着用してしゃがんだ場合、色々と見られてはいけない場所が見えそうな程度には。
紐部分はリボンになっており、片結びをして止めるタイプらしい。

「…却下だ。そもそもこの胸がない肉体にビキニタイプが合うと思っているのか?」
「やはり胸はつけるべきだったか」
「そういうことで文句をつけている訳ではない」
「赤だぞ?」
「色が赤なら何でも受け入れると思っているのか?」

そもそも、『右方のフィアンマ』でなくなった以上、赤にこだわる必要もない。
頭髪は赤だが、別に好きで染めている訳ではないのだから。
元の容姿からして、彼の赤髪は地毛に他ならない。

「仕方がない、ならもう少しきわどくないものにしてやろう」
「…際どいという自覚があって選んだのか、お前は」

フィアンマの視線から逃れるように、オティヌスは水着を選ぶ。

「……楽しいな。友達と買い物をするのは」

そんな言葉を、ぽつりと呟いた。
同意すると共に、やっぱりフィアンマには言わざるを得ないことがある。

「その紐のようなビキニを速やかに手放せ」
「文句の多いヤツだ。…私の水着はお前が選べ」

選んでくれ、といったイントネーション。
フィアンマは少し悩み、周囲の棚を眺め。

「……あれ(>>386)はどうだ」

黒のスリリングショット


「……あれはどうだ」
「あれ?」

オティヌスは振り返り、フィアンマが指差した先を見る。
マネキンに着せられているそれは、黒い水着だった。
そして、大事なところ以外をまったく隠す気のない……。

「……あれか」

隠せる場所は、乳頭、秘部、尻穴位のものである。
身体のラインがくっきり出るどころではない。
一応滑り止めのような作りは内部にあるようだが、滑ればあっという間に全裸。

「泳がないのであればああいったものでも問題はないと思うが」

意趣返し。
フィアンマの意図は明らかにそれだったのだが。

「悪くないな」
「!?」

オティヌスはそう評して、サイズを見る。
自分の身長やスリーサイズに合致しているものがあったらしく、満足げに手にとった。

「……本当にそれにするつもりか」
「他ならぬお前が選んだものだろうに。私自身も気に入った」

真なる強者に、余計な装備は不要。

……とでも言いたいのだろうか。
それにしても防御力が低すぎる。

「では向かうとしよう。まだ午前中だ、昼には到着する」

オティヌスはマイペースにそう言って、さっさと会計を済ませるのだった。





という訳で、海である。
そこそこに混み合っているが、二人はよく目立っていた。
おもに目立っているのはオティヌスの方だが。

「……お前に羞恥心はないのか?」

フィアンマの問いかけに。
オティヌスはフィアンマの姿を眺めて自分のセンスに満足しつつ。

>>389

↑私らしくてな。別に裸ではあるまいし構わん


「最高ではないか」

彼女は胸を張ってそう答えた。

「私らしくて、な。別に裸ではあるまいし、構わん」

魔神は魔神にしか理解出来ない。
とはいえ、今の彼女に関してはオッレルスも理解を投げ出すだろう。
どこからそんなに自信がみなぎっているのか、彼女はどこか誇らしげである。
確かにスタイルは良いのだが、自覚があってのことだろうか。

「…あの辺りで作るか」

言うなり、オティヌスはフィアンマの手を引いて砂浜を歩く。
ほんのり人気の少ない砂浜で、城を作り始める。

「今まで、人生で一度しか完成したことがない」
「波に流されるのか?」
「或いは、私が手違いで壊してしまうか」

細い指で砂をかき集め、海水で固める。
トンネルを作って下地を築き、徐々に城らしき形を描いていく。
彼女が動く度に、黒い二本線で隠された果実が揺れる。
別に劣情を覚えはしないが、気まずさにフィアンマは視線を逸らした。

「……どうした」
「……色々と失敗しただけだ」
「?」
「お前が気にかける必要はない。…日焼けは気にしなくて良いのか?」
>>392

確かに肌が赤くなって痛めるのは嫌だし、オイルを塗ってもらえるか?
小麦色の私が見たいのならば塗らなくても良いが

【一旦中断。 がちゆりになってもんだいはないです】


「確かに肌が赤くなって痛めるのは嫌だし、オイルを塗ってもらえるか?」

そういえば、といったように。
彼女は懐から小さめの瓶を取り出した。
日焼け止めのオイルタイプらしい、それらしき文句が瓶表面に躍っている。

「小麦色の私が見たいのならば塗らなくても良いが」
「お前の肌が何色だろうが気にはならないが」
「気にならないのか……」

残念そうに項垂れながら、オティヌスは瓶を差し出す。
幸いにも、城はまだほとんど作られていない。
仮にオイルを塗布している最中に崩れても、ショックは大きくないだろう。

「背中から塗った方が良さそうだな」

フィアンマの発言に、オティヌスはうつ伏せに横になった。

「…っん」

手のひらに広げたオイルが存外冷たかった為か、背後からそんな声が聞こえた。
オティヌスは両腕に顔を埋め、何も考えないようにする。

ぬるついた手が、背中に触れた。

オティヌスの口から、自然と熱っぽい息が漏れる。
気持ちがいい。不慣れなのか、手つきがおぼつかないのがかえって愛しい。

「ぁ、」

喘ぎ声のようなものが漏れて、オティヌスは唇を噛み締める。
色々と発露しそうな気持ちを抑え込んで、彼女は明るく言った。

「私が終わったらお前にも塗ってやろう」
>>395

それはもちろんお前にやってもらうとして背中だけで良いのか?
前の方は自分で出来るだろう?


「それは勿論お前にやってもらうとして、背中だけで良いのか?」

オイルを伸ばし延ばし、きめ細やかな白い肌に塗っていきながら、フィアンマは首を傾げる。

「前の方は自分で出来るだろう?」

オティヌスはわずかに思考して。
それから、邪念が僅かに思いやりに打ち勝った。

「いや、前も塗ってくれないか」

私もするから、と彼女は言った。
そう言われては仕方がないので、まずは背中にきちんと塗る。
それからフィアンマは、オティヌスへ仰向けになるように言った。

オイルを再び手のひらへ垂らす。

たっぷりとオイルで手を濡らし、それから、オティヌスの腹部に触れる。
肩をマッサージするように、続いて腕、首筋、鎖骨。

「……どうした?」

急かすように、オティヌスはフィアンマを見上げる。
見上げた先の赤髪無乳美少女はというと、僅かに顔を赤くして。

「……やはり自分でやった方がやりやすいんじゃないか?」
>>398

傍から見たら女同士なのだから恥ずかしがるな。私は素直にしてもらえて嬉しいのだ続けてくれ


「傍から見たら女同士なのだから恥ずかしがるな」
「…人目を気にしている訳ではない」
「…私は素直に、…してもらえて嬉しいのだから、…続けてくれ」

戸惑いがちな手が、やがて胸に触れた。
むにゅもみ、という感触と共に、オイルが塗られる。
オイルが全体に塗られた事を確認し次第、手は腹部へ。
普通なら肉体が変化しようと元が男なら嬉しいシチュエーションである。
で、あるのだが、残念ながらフィアンマは元聖職者である。
どちらかというと、下心よりも申し訳なさや気まずさ、罪悪感が打ち勝つ。

「…後は脚か」

下腹部を伝い、手が秘部に触れかけ、太ももへ移る。
身じろぎ、持て余す熱を砂浜へ逃がしながら、オティヌスは空を仰いだ。

「……綺麗な脚だな。芸術品のようだ」

そんな感想を口にしながら、フィアンマはオティヌスの脚にオイルを塗る。
丁寧に丁寧に、言葉通り芸術品の手入れをするような、下卑のげの字もない塗り方だ。

「これで終わりだ」

そう告げて、フィアンマはオティヌスから離れようとする。
オティヌスは彼女の手首を掴み、ぐい、と引っ張った。
オティヌスの作ったフィアンマの肉体は頑丈だが、あくまでも身体能力は十人並み。
とさ、という軽い音を立て、少女の身体はオティヌスの隣に倒れ込んだ。

「塗ってやる約束だろう?」

オティヌスは笑みを浮かべ、瓶を手にする。

「……多少日焼けをしても問題はない」
「そうつれないことを言うなよ」

さらりと言葉を流し、オティヌスはオイルで手を濡らす。







オティヌスは何処から塗ることにする?>>+2


「くすぐったいかもしれないが、暴れるなよ」

オイルに濡れた手で、フィアンマの腹部へ触れる。
膨らんでも、骨が浮いている訳でも、筋肉が浮き出た腹でもない。
ただ平らなだけの、いかにも少女らしい腹部。

「……」

こそばゆかったのか、彼女の指先が砂を引っ掻いた。
何も言わないので、オティヌスは気にせずに手を伸ばす。
腹を撫でるように塗りつけ、へそに触れる。

「っ、」

臍穴は、人の身体の中でも敏感な場所の一つである。
ゾクゾクと背筋に走る感覚が気持ち悪いのか、フィアンマはゆるゆると首を横に振った。
痛い訳ではないからか、声を出すことに抵抗があるらしい。






次は何処に塗る?>>+2


瞳が潤んでいるように見える。
何となく征服欲が満たされているような気分になって、オティヌスは目を細めた。

腹部を撫でた手を、そのまま肩へ。
腕や肩をマッサージするようにオイルをすり込む。
ちょっぴりくすぐったい程度の刺激なのか、彼女はくすくすと笑う。

「………、…」

肩から下がり、胸へ。
あまりにも平らなそれは、多分、男のものと大してかわりはない。
とはいえ、綺麗に作った覚えのある肉体だ。触れていて心地良い。

(私が製作した肉の器だ)

人形に興奮するような寂しい趣味はない。
だが、自分の手の動きの反応を示す彼女は愛おしく思える。
それは、魂という『中身』の問題なのか、単純に自分の性的嗜好の問題なのか。

「……ッ、」

手のひらが、突起を押しつぶすようにオイルを塗りつける。
こそばゆさ程度では済まなかったのか、彼女は顔を横へ背ける。

「……こちらを向け」
「向く必要はないだろう」
>>407

私はお前の顔を見るのが好きなのだフィアンマ


「私はお前の顔を見るのが好きなんだ、フィアンマ」

だから。

オティヌスは指先で、フィアンマの顎に触れる。
その上で自分の方へ向かせ、薄く微笑んだ。

「……最高傑作だからか?」
「いや、そうではない」

多分。

きっと、自分は。
もしかすると、彼女のことを――――。

「仲良いねー、二人共。もしかして女の子二人だけ?
 こんな人気のないところに居るなんて危ないよー?」

オティヌスは、無言でそちらを見やった。





声をかけてきた男性二人組>>+2


土御門「仲良いにゃー、お二人さん。もしかして女の子だけだったりするんだぜい?
    こんな人気のないところに居るなんて危なすぎるぜよー?」

建宮「もう少し岩場の外に出た方が良いのよな?」ウン

オティヌス「……」スッ

フィアンマ(親切心…か?)ムクリ

土御門「……はっ、お前はッ」

フィアンマ「……おっと」

フィアンマ(空港で憑いたことのある相手だな。今更姿を隠しても…)

建宮「ん? お前さん、赤い方のお嬢さんとお知り合いか?」

オティヌス「……私のフィアンマと知り合いだと…? それに、こ、こくは、……を、邪魔しやがって」ワナワナ

フィアンマ「………何を怒っているんだ?」

オティヌス「>>413

↑い、いや、何でもない!


オティヌス「私がお前に好きだと言おうとしたのをそこのグラサンとクワガタに邪魔されたからだ!!」カッ

建宮「何だこの得体の知れないちかr」ドサッ

土御門「これはどうi」バタッ

オティヌス「…はー……はー…」

フィアンマ「……」

フィアンマ(魔神の領域に踏み込んだ者の振るう説明の出来ない力か)

オティヌス「い、いや、何でもない!」アセアセ

フィアンマ「…ん?」

オティヌス「い、今のは言葉の綾であって、……っ。……ふん。
      魔神に楯突こうとは良い度胸だった。このまま殺しても良いが、悪目立ちする訳にもいかない」

フィアンマ「……?」

オティヌス「…空腹だ。食事をしに行こう」

フィアンマ「…手を引っ張らずとも自力で歩ける」テクテク




――――海近くのレストラン


オティヌス「…思うにお前は露出が低い方が似合うらしい」

フィアンマ「元の職業から考えればそうだろうな」

オティヌス「普段着に着替え終わると疲れが押し寄せるものだな」フー

フィアンマ(俺様としてはあちらの方が疲れるが)

オティヌス「そういえば」

フィアンマ「んー?」

オティヌス「…お前は暑がりと寒がり、どちらなんだ?」

オティヌス(私が施した頑丈加工以外の肉体部は元のフィアンマに左右されるからな)

フィアンマ「>>417

俺様は寒がりだな、寒いと動きにくくて部屋に引き籠っていたしな


フィアンマ「俺様は寒がりだな、寒いと動きにくくて部屋に引き籠っていたし」ウン

オティヌス「夏の方が元気、と考えて問題ないか?」

フィアンマ「そういうことになる」モグ

オティヌス「ふむ」

フィアンマ「お前はどちらなんだ」

オティヌス「私も同様に寒がりだ。冬は辛い」

フィアンマ「暖炉の前から動かないタイプか?」

オティヌス「マシュマロを炙りつつ動かない」ウン






オティヌス「よく食べた」フー

フィアンマ「精々平皿三枚分程度だろう」

オティヌス「普段はあまり食べていないからか、相対的判断だ」

フィアンマ「なるほど」

オティヌス「…この後はどうするか」

フィアンマ「一度ホテルに戻って水着を置いてくるのは当然として」

オティヌス「あそこに行くか」

フィアンマ「?」

オティヌス「>>420

CDショップだ


オティヌス「CDショップだ」

フィアンマ「シーディー……ああ、科学サイドの」

オティヌス「ひとまずはホテルに戻ってからだな」






――――とあるCDショップ


オティヌス「どれでも試聴が出来るのか。親切な店だ」ウン

フィアンマ「………」キョロ

オティヌス(時折一人でこういった店には来ていたが…コイツは経験が無いのか)フム

フィアンマ「………」キョロキョロ

オティヌス(……道に迷った猫のようだ)ホンワカ

フィアンマ「…お前はどんなジャンルの曲が好きなんだ」

オティヌス「私か。>>423

>>422


オティヌス「ジャズっぽいのだな」ウン

フィアンマ「ジャズか」

オティヌス「お気に入りのCDは……」カツ、コツ

フィアンマ「……」テクテク

オティヌス「…『ジャコ・パストリアスの肖像』」ガサゴソ

フィアンマ「……」

オティヌス「この片側を耳に入れるんだ。浅く」

フィアンマ「…イヤフォンというものだったか」

オティヌス「そうだ」コク

フィアンマ「……」スポッ

オティヌス「…」カチカチ

フィアンマ「……良い音だ」

オティヌス「ベーシストにとってのバイブルだ。私は目指したことなどないが」

フィアンマ「……」

オティヌス「……」

オティヌス(…距離が、近い。息が、かかるくらいの距離だ)

フィアンマ「……」

オティヌス(やはり私は、……)

フィアンマ「…試聴は十分が限度だったな」ハッ

オティヌス「…そうだった。……お前の好きな曲のジャンルは何なんだ?」

フィアンマ「俺様か? >>426


フィアンマ「俺様か? クラシックに決まっているだろう」

オティヌス「そんな気はしていたよ。特に好きな曲は?」

フィアンマ「……」

オティヌス「……?」

フィアンマ「以前は神に捧げる類のものが好きだったのだが…」

オティヌス「今は違うのか」

フィアンマ「今は鎮魂歌だな」

オティヌス「…なるほど」

フィアンマ「ん……これか」

オティヌス「男声合唱か」

フィアンマ「身近だったからな。…これをどうすればいいんだ?」

オティヌス「中身を取り出して、こう……」




オティヌス「フィアンマ」

フィアンマ「ん?」

オティヌス「神の国になど行くなよ」

フィアンマ「約束は出来ないな」

オティヌス「私が頼んでいるというのに?」

フィアンマ「俺様は既に死んだ身だ。いつ逝くかは自分では決められん」

オティヌス「>>430

そこは嘘でも私のために死ぬ気はないというべきじゃないか


オティヌス「…そこは嘘でも私のために死ぬ気は無いと言うべきじゃないか?」

フィアンマ「……出来ない約束をする程不誠実にはなれんよ」

オティヌス「………」

フィアンマ「……」

オティヌス「…もし神の国へ行くようなことがあれば無理やり連れ戻してやる」

フィアンマ「無限の可能性さえ制御すれば、或いは出来ないこともないだろうな」ウン




――――ホテル


オティヌス「一日通してみるとなかなか楽しかったな」

フィアンマ「そうだな」

オティヌス「夕飯はどうするか……」

フィアンマ「……ふと思ったのだが」

オティヌス「何だ」

フィアンマ「もう少し友人を増やした方が良い」

オティヌス「…私はお前が居れば、」

フィアンマ「友人とは束縛しあわないものだ。それに、友人が増えればお前の人生ももう少し楽しくなる」

オティヌス「……、…」

フィアンマ「……」

オティヌス「…私だけでは満足しないのか」

フィアンマ「>>433

俺がかつて失敗したのは狭い単一の宗教に凝り固まったからだ それと同じでも大切な友人と思ってくれるのはいいが一人の友人以外要らないのはただの依存だ 俺一人と接して楽しくなれたんだから他と接すればもっと楽しいぞ

それにいわゆるひきこもりと同じじゃないのか


「俺様がかつて人生を失敗したのは、狭い単一の宗教に凝り固まったからだ」
「……」
「それと同じで、大切な友人と思ってくれるのは良いが、一人の友人以外要らない、というのは…。
 …それは、依存で失敗してしまう脆い世界だ。そう長く、幸福というものは続かないように世界は出来ている」

相手を想うからこそ、手厳しい意見が出てくる。
ただ甘やかすということを、フィアンマは知らない。
そして、今のやり方の方が正しいと確信している。
嫌なことから目を背けても、進歩はしない。

「俺様一人と接して楽しくなれたのだから、他と接すればもっと楽しいぞ」

理論上はそうなるはずだ、とフィアンマは言う。
オティヌスは沈黙したまま、静かに俯いた。

「それに、今の状態では…所謂"ひきこもり"と同じじゃないのか」

別に真の理解者にならなくたって、友人にはなれる。
むしろ、世の中に溢れている友情の大半は無理解の上に成り立っていたりもする。
自分以外に理解者は必要ないというのならそれでもいい、けれど、友人はまた別問題だ。

「遊び友達だけでも問題はない」
「………どうすれば集まる」

意見を変えたのか、オティヌスはぽつりとそう呟いた。
フィアンマは少しだけ考え込み。

「……魔術結社でも作ればどうだ」
「魔術結社…」
「実態はどうであっても構わない。ただ、魔術師の方がお前は仲良くなり易いんじゃないか?」
「……」

そうかもしれない、とオティヌスは思う。

「…という訳で人を集めるとしよう」
「どうやって、だ?」
>>438

食峰操祈というのが人の心を操れるらしい 洗脳はともかく勧誘に彼女の能力を利用しないか

【一旦中断】


「食蜂操祈、というのが人の心を操れるらしい」
「ふむ」
「洗脳はともかく、勧誘に彼女の能力を利用しないか」
「それは構わないが、学園都市製か?」
「ああ。…前の職業柄、科学サイドには少々知識がある。
 ……肝心の交渉材料は会話していく中で見つければ良い。俺様とお前には宗教防壁がある、操られる心配はない」

そんな訳で、食蜂を利用することが決まった。
学園都市に潜入するのは、大して難しいことではない。
一流の魔術師ともなれば、当然のことのように出来る。

「今までに食べた量が多すぎたな。余剰魔力で焼け野原が出来そうだ…」
「…もう少し制御しろ」
「善処するさ」

決めたらすぐに動く二人である。
オティヌスはフィアンマの手を引き、学園都市に入った。
周囲の生徒を眺め、普遍的な制服を作成して歩き進む。
オティヌスが即席で作った防御霊装だが、見目は単純な女子学生の制服である。

「よく似合っているな。セーラー服が」
「赤というのは目立ちそうだがね」
「安心しろ、低能力者の集まる某お嬢様校在籍者に見える」

自分の仕事具合に満足そうに頷き、オティヌスは進む。
手を引かれるまま、急ぐでもなくフィアンマも歩いた。

「くっそ、何で補習連絡メールがバグって…! 不幸だああああああ!!」

少年の叫び声だった。
通学途中なのか、彼は必死に走っている。
ツンツン頭の黒髪、平凡そうな少年。

彼は不幸にも、転がっていた小石で転け。

利き手である右手を咄嗟に出し、その手は――――








『幻想殺し』接触判定(=服が弾ける)>>+2のコンマ一桁(以下、美青年にかわりまして美少女がお送りします :2014/01/29(水) 18:50:52.9X←ココ)


0~3 フィアンマ

4~9 オティヌス

【判定:6 = オティヌス】


オティヌスに、軽く触れた。
たったそれだけだったが、幻想をぶち壊す力が働く。
オティヌスがまとっているのは、制服風の霊装。

パキィン

ガラスが割れるような、甲高い音と共に。
オティヌスの服は一瞬にしてビリビリに破けた。

下着の類は身につけているものの。

昼日中、街中で服がはじけ飛ぶというのはかなりの衝撃だ。
少年はすっ転び、のろのろと起き上がり、硬直する。

「………」

オティヌスは、無言だった。
まるで、嵐の前の静けさのようだ。

「……私の裸は、フィアンマにしか見せないと決めていた」

下着姿の彼女の手が、ぶるりと震える。






フィアンマはどうする?>>+2


このままでは死者が出る。
フィアンマは焦って少年の方を見やる。

『幻想殺し』。

他ならぬ上条当麻である。
で、あるならば。

「オティヌス」
「何だ」

視線だけで人を殺せるのなら、今の一睨みで何千人かは死んだだろう。
あくまでも冷静に、フィアンマは事実だけを口にする。

「あの男の右手は『幻想殺し』という、異能にまつわるものを壊す手だ。
 お前の服を壊したのは無意識レベルの問題であって、わざとではない」
「………」

幻想殺し、というものはオティヌスも知っている。
ツンツン頭の少年が所有しているということも。
この少年こそが幻想殺しを持っているということは知らなかったが。

「ひとまずは気を治めてもらえないか」

どうして自分のことを知っているのだろう、と上条は不可解そうな表情を浮かべている。
オティヌスは一度だけ首を振り、一瞬にして黒い制服風の霊装を身に纏う。
ついでに『認識』を狂わせる術式を使用したのか、こちらを向いていた人々が方方の目的地へと歩き出す。
微妙に起き上がった状態でいる上条に右手を差し出し(莫大な魔力と彼の右手で相殺した場合服を消すには至らない)。

「服代を支払ってもらえるだろうか」
「そ、それは勿論…何で壊しちまったかはさっぱりだけど…ごめん。
 ……ええと、どうして俺の右手について知ってるんだ? 俺無能力者だし、全然有名じゃないだろ」

フィアンマの手をとり、上条は立ち上がる。
彼の問いかけに、彼女は少し悩んで。

>>451

お前は勘違いをしている。少なくとも他者の力を打ち消す自分の右手の異常性は
分かっているはずだ。それなのに無能力者と卑下するのは悲劇的な自分に酔っているとも思われるぞ?
特にこの町ではな


「お前は勘違いをしている。少なくとも、他社の力を打ち消す自分の右手の異常性は分かっているはずだ」
「ッ、」

厳しい言い方だった。
きつい言い方でもある。

上条当麻は、視線をさまよわせる。
自分の右手が他者を不幸にしてしまうことを、経験上知っている。

「それなのに無能力者と卑下するのは、悲劇的な自分に酔っているとも思われるぞ?」

上条をじっと見つめ。

「特に、この街ではな」
「……判定が『無能力者』なだけで、俺だって理解してるよ。
 この右手が異常なことくらい」

上条は、ゆっくりと息を吐きだした。
思い出したように、力ない笑みを浮かべてみせる。

「本当にごめんな。俺の右手が触れちゃったところ、もし肌にあったらよく洗っておいてくれ。
 弁償なんだけど、いくら位で足りるものなんだ? あんまりお金はないんだけど……」
「…オティヌス」
>>455

上条当麻か 確か上条刀夜という人物が経済界にいるが息子か 親に頼んで払ってもらえ服の弁償だけではなく精神的な苦痛を含めてな

といいたいがいちまんえんで勘弁してやる


オティヌス「上条当麻、か」

上条「」ビクッ

オティヌス「確か、上条刀夜という人物が経済界に居るが…息子か?」

上条「う」

オティヌス「親に頼んで払ってもらえ。服の弁償だけではなく、精神的な苦痛を含めてな」

上条「う、うぐ…そ、それは…」

オティヌス「といいたいが、いちまんえんで勘弁してやる」

上条「…へ? 一万円?」

オティヌス「それ位なら払えるだろう」

上条「勿論」ガサゴソ スッ

オティヌス(あまりここで時間をロスしてもメリットがない)

上条「本当にすみませんでした」ペコ

オティヌス「神は寛容だ。許してやろう」フフン

フィアンマ「実際には中途半端な位置だが」

オティヌス「くっ…」





オティヌス「すっかり時間を潰してしまった」

フィアンマ「そうだな」

オティヌス「ショクホウミサキとやらはどうやって探すつもりだ。
      まさか、しらみつぶしに歩き回る、などと言い出しはしないだろう」

フィアンマ「>>459

そんなこと言わないわよ
じゃない言わない勿論どこにいるかはわかってる


フィアンマ「そんなこと言わないわよ」

オティヌス「!」

フィアンマ「じゃない言わない」ブンブン

オティヌス(肉体につられるものなのか?)

フィアンマ「勿論、何処に居るかはわかっている。…今さっき捜したしな」

オティヌス「仕事が早いな」

フィアンマ「待ち合わせ場所も既に設定した。向かうとしよう」




――――とある豪奢なカフェ(『学舎の園』内)


食蜂「先程ぶりねぇ。何とお呼びすべきかしらぁ?」

フィアンマ「指示代名詞で構わん」

食蜂「そう。依頼内容はぁ…えーと。…指定する条件の人間が…そちらの魔女コスの人に近づくようにすれば良いの?」

フィアンマ「そういうことになる」

食蜂「ふぅん。…交換条件を出させてもらうけどぉ」

フィアンマ「出来ることは大体するつもりだが」

食蜂「じゃあ…>>464

私と上条さんの距離が近づくように手伝ってほしいわね☆


食蜂「じゃあ…私と、上条さんの距離が近づくように手伝って欲しいわね☆」キラッ

フィアンマ「上条当麻か?」

食蜂「もちろん。悪い条件じゃないはず」

フィアンマ「異能を使わずに正攻法でいくしかないのなら、手助けしようがないだろう」

食蜂「こう、引き立て役とか…」

フィアンマ「平凡な女ならともかく、美人に引き立てが必要か?}

食蜂「調子力が狂うわぁ。う~ん……」

フィアンマ「…ひとまずデートのセッティング程度ならしてやろう」

食蜂「そういう発想が欲しかったよねぇ」ニヘラ





オティヌス「それで、どうするつもりだ」

フィアンマ「ん? 俺様が再度近づくさ。先ほどの非礼な言葉の数々を謝罪して励ます。
      それで信用をある程度得た後、食蜂操祈とのデートを正面から依頼すれば良い」

オティヌス「>>467

それは正しい考えだな。ただ私が思うにあの男は相当の鈍感だぞ


オティヌス「それは正しい考えだな。ただ、私が思うにあの男は相当の鈍感だぞ」

フィアンマ「構わんよ。俺様が愛されたい訳ではないのだから」

オティヌス(少し気は進まないが致し方ない……)

フィアンマ「お前は何処かで休んでいろ。暫く時間がかかるかもしれん」

オティヌス「ああ」





上条「結局補習は遅れちまったなあ……」ハー

上条「すっかり夕方だ…あっ、タイムサービス…!」

美琴「ちょっと」

上条「だめだー、こっちも間に合わねえよう…不幸だぁ…」

美琴「…ちょろっとー」

上条「仕方ない、今日は家にあるもので何とかしますk「無視すんなやコラァアアアア!!」うわっ」キュイーン

美琴「はー…はー…」

上条「い…いきなり何すんだよ!」

美琴「アンタが私を無視するからでしょうが!」

上条「たまたま聞こえなかったんだって…くっそー、不幸だ…」

美琴「今日こそ決着つけてもらうわよ」

上条「うぐ…またその話かよ…」

フィアンマ(声をかけ辛い…)






フィアンマはどうする?>>+2

【今日はここまで 泥沼キマシタワー…?】


上条「だああもう! 勝負なんかしねえっての!!」

美琴「何でよ!?」

フィアンマ「すまないが」

上条・美琴「「?!」」

フィアンマ「少し用がある」

美琴「え、ええと…あなたは?」

上条「あんたはさっきnもぐむ」

フィアンマ「…ん」チュ

美琴(ほ、ほっぺたにキスしたーーーー!!!??? お、往来で!?)

フィアンマ「…こういう訳だ。失礼する」グイ

上条「へ、えと、あの、俺、え、あっ、」ズルズル





――――スーパーマーケット内


上条「……」ドキドキドキ

上条(お、女の子から、か、顔にキスなんて初めてされた…不幸じゃない…!)

フィアンマ「…すまなかったな」

上条「えっ、いや、むしろありがとうございますというか!!」ビク

フィアンマ「……先程は失礼なことを言った。ついキツい言い方になってしまったな。
      その、あそこまで言うつもりはなく、……俺様も似たような体質をもっているもので、熱が入ってしまった。
      本当に申し訳ないと、心から思っている。許してくれないか…?」

上条「>>477

>>476
ってぁぁー!タイムセール!


上条「いやいや、アレは俺が悪かったんだからゆるすもなにも」アタフタ

フィアンマ「そうか」

上条「…って。あぁあー! タイムセール!」

フィアンマ「…たいむせーる?」

上条「ぎ、ギリギリ間に合うかも?! よし!!」ダッ

フィアンマ「…時間を限定して品物を安く販売することで客を呼び込む商法か」フムフム





上条「くっ……」ガクリ

フィアンマ「目当てのものは取れなかったのか」

上条「鉄壁のガードでした…貴重な卵……」シクシク

フィアンマ「…卵ならここにあるが」

上条「いや、普通のじゃ高くて…」

フィアンマ「そのセール品とやらの方だ。とはいえ、二パックが限界だったが」

上条「!」ガタッ

フィアンマ「欲しかったものがこれなら、持っていけば良い」

上条「い、いつとったんだ? 全然見えなかったぞ…」

フィアンマ「>>480

普通に取っただけだが俺様は影が薄いのか?

【前条さんならバレても問題はなさそうな…知ってたらこわい】


フィアンマ「……普通に取っただけだが、俺様は影が薄いのか?」キョトン

上条「いや、そんなことはないと思うけど。むしろ存在感すごいし」

フィアンマ「そうか。まあ、何はともあれこれはお前にやろう」

上条「…いいのか?」

フィアンマ「ん? たかが卵だろう」

上条「自炊派なら必須だろ。一パックは嬉しいけど、二パックもらうのは流石に申し訳ないしさ」

フィアンマ「普段は不幸と不運に見舞われて得られないものなんだろう? 素直に受け取っておけ」

上条「それはそうだけど…うーん…」

フィアンマ「どうしても気が治まらんのなら、卵料理を作ってくれないか?」

上条「そうだな! あ、でも俺の手料理なんかで良いのか? そんなに美味しいものは作れないけど…」

フィアンマ「手作り料理を食べた記憶があまり無い。故に、比較対象は存在しない」ウン





――――上条家


上条「狭い家ですけどどーぞ、っと」

フィアンマ「…お邪魔します、で良いのかな?」

上条(……女の子と家に二人きり…青ピ辺りが知ったらぶん殴られそうだな…)

フィアンマ「好きな女性のタイプを聞いても良いか」

上条「!!? それは、まあ…」ドキドキ

フィアンマ「……」

上条「>>485

りょうのかんりにんでできれば優しいお姉さん 包容力のある 後は金髪ばくにゅうなか


上条「寮の管理人さんで、出来れば優しいお姉さん」

フィアンマ「ふむ」メモメモ

上条「包容力のあるタイプかな。後は…金髪爆にゅ……」

フィアンマ「…ばく?」メモメモ

上条「いいいや何でもないです! これはあくまでタイプであって、必ずしも合致しなければダメという訳じゃ」

フィアンマ(寮の運営管理担当…ということはマネジメント・経済関係にコネと知識を持つ女か。
      加えて、金髪。食蜂操祈であれば問題ないだろう。バクナントカはわからんが…胸のサイズが爆発的に大きいということか?)

上条(何で黙ってるんだ…も、もしかして怒ってる…?)

フィアンマ(経済関係の勉強…常盤台中学程ともなれば最低限は嗜んでいるだろう。
      金髪は言うまでもなく、胸のサイズも申し分はなさそうだ。ネックは優しさか…)

上条「……」

フィアンマ(好きな男には優しくなるだろう。どんな女でも、恐らく)ウンウン

上条(何を納得して…俺もしかしてフラグ折っ)

フィアンマ「回答感謝する。…で、卵料理は希望を出しても良いのか?」

上条「もちろん」

フィアンマ「ならオムレツで頼む」

上条「ああ、ちょっと待っててくれ」テクテク





―――――ホテル


オティヌス「フィアンマの現在地は…わからないな。ということは、幻想殺しのすぐ近くか」

オティヌス(猥褻な目に遭っていたらと思うだけで、腸が煮えくり返る……)イライラ








オティヌスはどうする?>>+2


オティヌス(やはり単独行動なんて許可するべきではなかった…)イライラ

オティヌス「…探しに行くとしよう」ウン

オティヌス(変装は……適当にするか)イソイソ





―――――上条家


上条「はいどうぞ、召し上がれ」

フィアンマ「主よ、あなた様の恵みに感謝すると共に」

上条「……十字教徒、なのか?」

フィアンマ「ん? …ああ、元…といったところかな」

上条「へー。学園都市じゃ珍しいな」

フィアンマ「『外』から留学しに来たんだ」

上条「なるほど」ヘー

フィアンマ「それで、頼みごとがあるのだが」パク

上条「頼みごと?」

フィアンマ「悪くない味だ。…友人と喧嘩をしてしまってな」モグモグ

上条「友人…っていうと、今日俺が脱がしちゃった…あの子か?」

フィアンマ「そうだよ。それで、寮に帰り辛い状況にあるのだが」

上条「そっか、大変だな……喧嘩した後は気まずいもんな」

フィアンマ「一晩泊めてくれないか?」モグモグ

上条「ぶふっ」

フィアンマ「…何だ。…何か問題でも?」

上条「>>497

いえ、特にはキリッ


上条「いえ、特には」キリッ

上条(別に! 別にやましいことなんてこれっぽっちも考えてませんよ上条さんは!!!!)

フィアンマ(やはり男相手の方が気心が知れる…気がするな。…オッレルスとの時もそうだったが)

上条「手早く掃除しちゃうから、ベッドの方に寝てくれよ」

フィアンマ「…フトゥン、なるものでも俺様は構わんが」

上条「寝心地悪いだろうから」

フィアンマ「壁に寄りかかっても眠れる。気にするな」

上条「いや、気にしない訳にも…。…女の子を布団で寝かせるって何か罪悪感が…」

フィアンマ「そういえばそうだったな」

上条「?」

フィアンマ「こちらの話だ。…ん、美味かった。またいつか食べられる機会があると良いと思う程度には」ケフ

上条「それは良かった、お粗末さま。…仲直り出来ると良いな」

フィアンマ「ああ。……一晩頭を冷やせば、許してくれるよ」

上条「……」

フィアンマ「…ああそうだ。今、恋人の類や、好きな相手は居るのか? 有無だけで良い」

上条「直球過ぎるだろ?! ……う…」

フィアンマ「…重要なことだ。…首を縦か横に振ってくれるだけでいい」

上条「>>504

じゃあ首を横にふっとくよ


上条「じゃあ、首を横に振っとくよ」フルフル

フィアンマ「………」ジー

上条「…な、何だよ?」ビク

フィアンマ「…押しに弱いタイプか」フム

上条「どうしてそれを…」

フィアンマ「観察眼だ。能力の類ではない。…という訳で風呂場を借りるぞ」

上条「ちょっと待ってくれ、風呂掃除してから…ッ」ズルッ

フィアンマ「何も無い場所で転けるとは、正に不運だな…」シンミリ

上条「痛てて…たまにあるんだよなこういう…の…」

フィアンマ「…ところで、胸から手を離してもらえないだろうか。居心地が悪いのだが」

上条「>>509

↑+申し訳ない!


上条「わ、わるい! いや、悪気はなかったんだ! ごめん!」

フィアンマ「……」

上条「申し訳ない!」ペコーッ

フィアンマ「…謝罪は結構だ。手を引いてくれ」

上条「!」バッ

フィアンマ「……そう気を遣うことはない。そもそも、俺様が身勝手で宿泊させてもらっている立場なんだしな」ヤレヤレ

上条(…マジで怒ってない……?)

フィアンマ(食蜂操祈は既成事実辺りを作ってしまえばいけそうだな。…十字教徒らしからぬ考え過ぎるか)ウッカリ

上条(こんなことされてキレないのって母さん位だよな…)

フィアンマ「二十分程で出る」テクテク バタン

上条(俺の不運に関してもよく知ってたし、似たような体質って言ってたし…。
   好きなタイプをやたらと聞いてきたり、好きな相手の有無…)

上条「……ハッ」

上条(もしかして>>513

誰かに頼まれて俺の意中の相手を探ってるとか?

【今日はここまで】



上条(もしかして誰かに頼まれて俺の意中の相手を探ってる…とか?)

上条(探偵的な…何だっけ、ツツモタセ…みたいなそういうヤツか)

上条(何の意図があって…?)





オティヌス「…道に迷ったか」チッ

オティヌス(フィアンマはどこだ……)

オティヌス(……さみしい)

オティヌス(やはり他の友人など要らない、私にはフィアンマが居れば…)ウロウロ




フィアンマ「…どうした、考え込んで」ホカホカ

上条「その…言いにくいんだけど」

フィアンマ「ん?」

上条「もしかして、お前、探偵的なアレなのか…?」

フィアンマ「そういう訳ではないが」

上条「ならどうして俺のタイプとかそんなに知りたがるんだよ? 会ったばかりだろ?」

フィアンマ(人間不信か。その右手を持っていれば当然だな)

フィアンマ「>>516

一期一会という言葉がこの国ではあるそうだな。せっかくであったのだから親交をより深めたいと思ったのだが


フィアンマ「一期一会、という言葉が、この国ではあるそうだな」

上条「……」

フィアンマ「せっかく出会ったのだから、親交をより深めたいと思ったのだが」

上条「……」

フィアンマ「詮索されているような気持ちにさせてしまったのであれば申し訳ない限りだ。
      日本人は男にしろ女にしろ、謙虚で内気な者が多いことを忘れていた。すまない」

上条「何か……疑って、ごめんな。本当ごめん」シュン

フィアンマ「疑いがかかるような事をした俺様にも非がある」ウン

上条「…良いヤツだよな」

フィアンマ「…それは初めて言われたな」

上条「へ? そうなのか? 俺が今まで出会った、親を除く生きてる人間の中じゃ最も優しいけど」

フィアンマ「>>519

そう言われることは悪い気分はしないな。私の身の上話になるが私の友人は友達を作るのが下手なのだがどう思う?


フィアンマ「そう言われることは…悪い気はしないな」ニコ

上条(素直だな…)ホノボノ

フィアンマ「…おれさ、…私の身の上話になるのだが」

上条「? ああ」

上条(日本語間違えて覚えちゃったんだろうし、一人称なんか気にしなくてもいいのにな)

フィアンマ「私の友人は友達を作るのが下手なのだが、どう思う?」

上条「あー…話しかけにいけない、とか?」

フィアンマ「そういうことではないな。……そういうことなのか?」ウーン

上条「人が苦手なら仕方ないんじゃないか? それに、友達って偶然なるものだしさ」

フィアンマ「……俺様もそうは思う。……思いはするが」

上条「何だよ?」

フィアンマ「たった一人の友人に全て依存してしまうのは、流石に問題だろう。
      家族も居らず、最近知り合った友人に精神の均衡を傾け過ぎるというのは…」

上条「んー……」

フィアンマ「友人はあくまでも友人だ。それ以上には踏み込めない。
      だからこそ、彼女は友人を増やすべきだと思うのだが、微妙に同意を得られなくてな」

上条「>>522

>>521

俺で良かったら友達になろうか?


上条「俺も疫病神だとか、色々言われてきたから…今の高校でバカやってくれる友達が居て良かったと思う。 
   そういう意味では、その人と同じかもしれない。数じゃなくて、質っていうか……難しいな。
   俺でよかったら、友達になろうか? 友達の友達、の方が、友達にはなりやすいだろうしさ」

フィアンマ「…ん?」

上条「…ん?」

フィアンマ「…お前は俺様の友人なのか?」

上条「一緒に居て、話して、御飯食べて、完璧に友達だろ。もう既に」

フィアンマ「……」

上条「……もしかしてさっきの話の子って昼間の…だと、ちょっとあっちにとっては辛いかもな」シンミリ

フィアンマ「……友達、か」

上条「?」

フィアンマ「…もしお前が良いなら、そうしてやってくれ。俺様にばかり依存しては、ヤツが可哀想だ」

上条「……でもまあ、女の子同士の友情ってベッタリだよなー。手を繋いで歩いたりさ」

フィアンマ「……そうだな」ウン

上条「……あ。…勝手に友達扱いされて不愉快だったか?」アセアセ

フィアンマ「もしもそうならもっと嫌な顔をしているよ。…ついでにもう一つ」

上条「ん?」

フィアンマ「俺様の知り合いに、自分から声をかけるのが苦手な者が居る。
      二人きりで誰かと遊んだことが無いから、一度経験したいと言っていた。
      もし良ければ、そちらとも会ってもらえないか?
      ちなみに、お前と同年代程度の少女だ。……友達として、お願い事を聞いてくれると嬉しいのだが」オズオズ

上条「>>525

もちろん良いともさ
友達の友達は俺の友達


上条「もちろん良いともさ」ウン

フィアンマ「そうか」

上条「友達の友達は、俺の友達。…これ、一回言ってみたかったんだよな」

フィアンマ「似合わんな」

フィアンマ(……依頼は達成した以上、もう関わることはないだろう)

上条「予定とかって聞いてあるのか?」

フィアンマ「ああ。今週の日曜日の…」

上条「日曜日朝十時ー…」メモメモ




――――警備員事務所


黄泉川「学生がこんな真夜中に外出はダメじゃんよ」メッ

オティヌス「……ふん」

オティヌス(術式を使ってすり抜けても良かったが、失敗した場合目も当てられないからな…。
      …フィアンマも馬鹿ではない。少なくとも暖かい場所にはいるはずだ…)

黄泉川「名前は何ていうじゃん?」

オティヌス「隻眼の魔法少女☆マジカルオーディン」

黄泉川「まともに答えるじゃんよ!」クワッ

オティヌス「……警備員か。慈善事業とは気分が良いものか?」

黄泉川「む、……気分が良いというか、…これは生きがいみたいなものじゃんよ。
    悪ガキをとっちめて叱る。……大人のやるべきことじゃん?」

オティヌス「……私の周囲にそんなものはなかったな。大人は異質なものに怯えるだけの存在だ」ツン

黄泉川「>>528

まあ、それも一側面じゃんよ!大人ってのはもう性格だったり、価値観だったり変えられないから
どうしても自分の考えが及ばないものには怖気を感じちまう。それでも理解するよう働くのも大人の役目だけどな


黄泉川「まあ、それも"一側面"じゃんよ! 大人ってのは…もう、性格だったり、価値観だったり、変えられないから。
    どうしても、自分の考えが及ばないものには怖気を感じちまう。
    それでも、理解するよう働くのも…大人の役目だけどな。理想通りには、なかなかいかないものじゃん?」

オティヌス「………」

黄泉川「大人になると、自分の中の常識を崩すのが難しくなる。馬鹿馬鹿しいプライドじゃん」シンミリ

オティヌス「…そうか」

黄泉川「…それで、どこの学区に住んでるじゃん?」メモメモ

オティヌス「指サック」

黄泉川「だからまともに答えなきゃダメじゃんよ!?」




――――上条家


上条「じゃあ、おやすみ」

フィアンマ「ああ、おやすみ」

上条「……」

フィアンマ「……」

上条・フィアンマ((寝れない))

上条「……」

フィアンマ「……」

上条「…まだ起きてる、か?」

フィアンマ「…起きてるが」

上条「…あのさ。…俺に体質が似てるって、言ってただろ?
   興味本位で聞いちゃいけないのかもしれないけど…どんな体質なんだ?」

フィアンマ「>>531

君と逆


フィアンマ「君と逆、と言えば伝わるか」

上条「逆?」

フィアンマ「運が、な」

上条「……羨ましいな」

フィアンマ「良いことばかりでもないな、事故に遭えば一人だけ助かる。
      自分が得をする度に、誰かが損をして泣いている。…楽しくはない」

上条「…極端なんだな、本当に」

フィアンマ「似ていると言っただろう」

上条「そうだな。…そっくりだ」

フィアンマ「……」

上条「……ありがとう、言ってくれて」

フィアンマ「友人の質問に答えるのは礼儀だろう」

上条「はは、そっか。律儀なんだな。……幸運か」

フィアンマ「……或いは、お前と足し引きすれば常人のそれになるかもしれないな」

上条「そう、だなぁ……」ハァ





―――――朝


上条「ん…」

上条(寝てた…のか)グシグシ






フィアンマはどうしている?>>+2


フィアンマ「……」ウトウト グイー

上条「た、太極拳!?」

フィアンマ「…目が覚めたのか。あまりにも退屈だったから日課を行っていたのだが」

上条「日課なの?! もうツッコミきれねえよ!!」

フィアンマ「さて。世話になったな」

上条「…あ。そっか、今日だけだもんな」

フィアンマ「日曜日の約束は、きっと守ってやってくれ」

上条「もちろん。…留学だったよな? どの辺りの学区に住んでるんだ?」

フィアンマ「ああ、『外』向けのところだ」

上条「そっか。じゃあ、今度遊びに行くよ」

フィアンマ「そうだな。待っている」

フィアンマ(――――存在しない、が)

フィアンマ「また後で遊びに来る。…そうだ、日曜日に会ってもらう知り合いの連絡先だが」ハイ

上条「携帯に入れとく」メモウケトリ





―――――とあるファーストフード店


オティヌス「……結局術式で眠らせて『外』に出てきてしまった。最初からああすべきだったな」

オティヌス「それにしても…フィアンマは……どこ、に…」ウトウト

オティヌス「う………」スヤァ




――――街中


フィアンマ「上条当麻から離れ、早一時間。……オティヌスが反応しないな」キョトン

フィアンマ(俺様の通信術式に不備があるとは思えんし…)ウーン



―――――ファーストフード店


トール(何だかんだいって、日本に来てもこういうところ入っちまうモンだよなあ…)

オティヌス「……」スヤスヤ

トール「お、ここ空いて……あん?」ストン

オティヌス「ふぃ………にゃ…」スヤア

トール(『神隠し』の応用で隠れて席陣取って寝てた訳か。つー事は魔術師だな)







トールはどうする?>>+2


トール(何の材料も、置き霊装も無しに『神隠し』を使いこなすヤツは稀っちゃ稀だ。
    普通は、見ればすぐに気づいちまう程度のモンだしな。となると、結構な知識持ちか)フム

オティヌス「うぅ…」スヤ

トール(…なるほど、悪くねえ。俺の『敵』にゃ良い感じかもな)ニヤ

オティヌス「さみ、………」クゥクゥ

トール「……おーい」

オティヌス「む……」

トール「起きろ起きろ、昼間だぞー」

オティヌス「……」ムクリ

トール「うおっ」

オティヌス「……私の眠りを妨げるとは良い度胸だ」

トール「なあ、お前"同業者"だろ? 勝負しようぜ、勝負」

オティヌス「………」

トール「どのみち、起こした俺には腹立ってるだろ?」モグ

オティヌス「…>>541

寝込みを襲った状態で私が本来の実力を出せない時に戦いたいのか?
本気で相手してやるから別の日にしろ


オティヌス「…寝込みを襲った状態で、私が本来の実力を出せない時に戦いたいのか?」

トール(魔術師が寝起き弱くて大丈夫なのかよ)

オティヌス「…本気で相手してやるから、別の日にしろ」

トール「別の日? 仕方ねえな…ま、ベストコンディションじゃねえと楽しくないしな」

オティヌス「……」ウトウト

トール「で、別の日ってのは?」

オティヌス「…私のさがしものが、見つかったら…良いだろう」

トール「探し物、ね。宝の類か? それとも霊装?」

オティヌス「…半分は霊装であり、私にとってはかけがえのない宝であり…」ウツラウツラ

トール「……何か謎かけみてえだな」

オティヌス「ん……、……」ピク

フィアンマ『…ようやく繋がったか?』

オティヌス(遅かったな。おかげで妙なものに絡まれた)

フィアンマ『俺様は何度も通信をしたが…まあいい。条件は成立した。
      食蜂操祈は既に依頼をこなし、お前と友好関係を築けそうな人員を近づけたはずだ』

オティヌス(……この男がか…)

フィアンマ『……何だ。口説かれでも?』

オティヌス(>>545

↑+今の私はかなりお前の力を必要としているのだが


オティヌス(ある意味では、だな。お前はいまどこにいるんだ?)

フィアンマ『まだ学園都市内だよ。これから出る』

オティヌス(そうか…。…今の私は、かなりお前の力の必要としているのだが)

フィアンマ『早急に戻るとしよう』

オティヌス(ああ」

トール「………」

オティヌス「……何だ」

トール「いやー? 誰かと話し中に割り込むのは礼儀がなってねえだろ?」

オティヌス(…読んでいたか)





フィアンマ「……それで、コイツか」

オティヌス「ああ。…勝負しろと喧しい」

トール(どっかで見たような…)ウーン

フィアンマ「>>549

いいんじゃないか?それなりに使えそうだし。

何、ちょっとボコボコにして上手にやさしーくプライドをへしおってあげれば…

【今日はここまで。お疲れ様でした   ……あっちもやらないと…】


フィアンマ「良いんじゃないか? それなりに使えそうだし」

オティヌス「…」

フィアンマ「何、ちょっとボコボコにして上手に、やさしーくプライドをへし折ってあげれば…」

オティヌス「…やれば…?」

フィアンマ「きっとお前を高みに存在する友人だと思うさ」

オティヌス「……ふむ」

トール「…もういいかー?」

フィアンマ「ああ。ひとまず表に出よう。人気の無い場所の方が良いだろう?」

トール「まあな。民間人を巻き込む趣味はねえし」




―――――人気の無い広場


フィアンマ「公園として機能していた廃墟だ。好きに暴れて問題ない」  

オティヌス「『人払い』を敷いたのか。早いな」

フィアンマ「当然だ」

トール「それじゃ、始めるか」

オティヌス「そうだな」





オティヌスはどうする?>>+2

トールはどうする?>>+4


「…どこからでも、好きなタイミングで来い。私に楯突いたことを後悔させてやる」
「なら、先攻はもらっておくとするか」

そういえば名乗っていなかったな、とトールは思う。
魔法名位なら口にしても良いのかもしれない。

「――――さて」

高速であやとりをするような。
腕に触れればひどい火傷をする温度の飴細工を操るような。

そんな雰囲気を持って、トールは仕掛ける。
彼が懐からばら蒔いた霊装が、『波』の記号をもってオティヌスを襲う。

「……」

一方。
オティヌスはというと、微動だにしない。
彼女が行ったのは、『説明の出来ない力』で自身を守ること。
加えて、地面の数箇所に"踏むと盛大にずっこける"程度の地雷を仕掛けただけだ。

「『其は野を耕す炎の鍬』」

詠唱と共に、爆発の波がオティヌスを襲った。
煙幕で彼女の視覚が奪われたその一瞬に、トールは距離を詰める。
ただ、加減を間違えていたらしく、彼のすぐ後ろで霊装が暴発する。

「ッ、」

倒れこみそうになり、一歩踏み出して耐えた。
が、運の悪いことに彼の踏んだ場所は、例の『ズッコケ地雷』であった。
彼の身体は子供が遊ぶ輪ゴムのように跳ね、勢い良く地面へと倒れこむ。
オティヌスはくだらないと言わんばかりに鼻を鳴らした。

「なかなかやるじゃねえか」

好戦的に、あくまでも愉快げに舌打ちするトール。
実際には彼自身の自爆とお笑い芸人が喜びそうな地雷の相乗効果に過ぎない。

「まだやるつもりか」
「当然だろ」
>>558

アバダケタブラ

【ツッコミ…いや…補填…なのかな? 死んでしまうやないか(確信)ということか…】


「『悪性はその性質を持って愚かなる弱者に死を与える』」


シンプルな詠唱だった。
発音としては、アバダ=ケタブラ。
知識を煮詰めて初めて行使される、呪いと死を願う心の集大成。
本来は呪術師が扱うものだが、オティヌスはもはや単なる魔術師にはとどまらない。
悪魔崇拝にも近しい、十字教とは真逆に存在するモノを宗教防壁として用いる呪い。

本来であれば、それは誰にも防げない。

オティヌスにその詠唱をさせた時点で、トールの死は確定してしまったようなものだった。

しかし。

「『主はその右手に因りて人の子を救う』」

フィアンマが介入した。
本来勝負事に他者が干渉するのは無礼なことだ。
しかしながら、友人にするための戦闘で確実に殺す為の呪術を使っても仕方がない。
悪性の反対は善性であり、悪魔の対照は天使である。
オティヌスの呪術に対抗する形で行われた詠唱は、オティヌスの呪術からトールを守った。

「……オティヌス。ひとまず聞いておくが、俺様に怒られたいのか?」
>>564

すまない、ついカッとしてしまった…


「すまない、ついカッとしてしまった…」
「……」
「と、年下の子供相手にポーカーをしていて、ついストレートフラッシュを出してしまったようなものだろう?」
「…………」

"俺様の努力や交渉を水泡に帰すつもりか"

そう言わんばかりの冷えた視線に、オティヌスは割と本気で怯えていた。
今のところ、オティヌスには本当に彼女しか友人が居ないのだ。
再三口にしているように、オティヌスはフィアンマが居れば良いと思っている。
自分に非が無ければ迷いなくフィアンマを殺してでも連れ戻すのがオティヌスという少女だ。
しかし、自分の行為にフィアンマが呆れて離れていった場合は、絶望が少女を支配する。
無表情ながらも内心オロオロとしつつ、オティヌスは弁解した。

「それに、本気の呪術ではなく、」
「俺様の詠唱で反撃しなければまず確実に当たっていたが?  
 必要量の魔力を練成していたことくらい、この距離なら察知出来ている」

嫌われるかもしれない。

そんな考えが、オティヌスの口を噤ませた。

(何か…あれだな。恐妻家みてえな…)

トールはオティヌスとフィアンマの様子を眺めつつそう判断した。
それでいて、オティヌスがちょっぴり可哀想に見えた。

「……すまないな。俺様とやりあうのはどうだ」

許しを与えるでもなく、ふい、とそっぽを向き。
フィアンマはトールの方を見、そう声をかける。

>>568

わかった
あんたには本気で行かしてもらう

【身体的に、現在フィアンマちゃんは第三の腕は使えません。聖なる右なら或いは使える…かも?】


「わかった」

手加減をされるというのは少々癪だが、そもそもオティヌスは自分の『敵』としてはちょっと的外れだった。
自分が戦いたいのは、『戦う意思』と『目的』を持っていて、なおかつ『強い』敵だ。
ただ強いだけではダメだし、死に急ぐ弱者と戦うのは嫌だ。
それに、何らかの理由で全力を出せない様相のオティヌスより、こちらの少女の方が全力で来るかもしれない。
となれば、自分も全力で行くべきか。

「あんたには本気で行かしてもらう」

宣言に対し、フィアンマはにっこりと笑みを浮かべた。
オティヌスよりも前に出て、ゆっくりと呼吸する。

「生かさず殺さず、手のひらで転がして遊んでやろう」
「そいつは楽しみだ。…死なないでくれよ? 後味よくねえからな」
「フィアンマ、」
「そもそもお前は体質上戦闘に向いていない。自衛して、そこに居てくれ」

オティヌスをその言葉で制し、下がらせ。
フィアンマは体内に存在する魔力の出力具合を調整する。
食べ物を摂取した時点で『赤』色がついた魔力なので、使える魔術のジャンルは限られる。
しかしながら、『赤』は彼女が得意とする色だ。炎のエキスパートなのだから。

「『雷神』は、もう必要ねえな」

青く、透き通った瞳がフィアンマを捉える。

直後。

一面が焼き尽くされる白い爆発が、あった。
オティヌスは当然防いだが、フィアンマは……。

「……意外だな。今ので焼死体が出来たんじゃねえかと不安だったが」
「俺様は炎のエキスパートだぞ? 少なくとも、どんな手段を使われようが焼死体にはならんよ」

フィアンマの足元には、特殊な記号のようなものがある。
『全能』トールの起こした爆発によって、草の無い地面へ一瞬にして描いたらしい。
焦げ付いた記号。ペンキやインクと違って、落ちることはない。





『全能』トールはどうする?>>+2


フィアンマはどうする?>>+4


一瞬の沈黙と、間合いの再計測。
その直後、大爆発が起きた。
爆発させることしか能がないのか、とフィアンマは目を細め。

しかし、目的の違いに気がついた。

酸素がない。
呼吸が、ままならない。

「――――、」

息を止めたまま、トールが間合いを一気に詰める。
得体の知れない彼の左手が、自分の近くへ振り下ろされようとする。

「……、…」

足元の記号を用い、『天使の力』を呼び出す。
自分の魔力は、『呼び水』程度の量で良い。
かつて『神の右席』時代に扱っていた術式の、その一端。

足元から、葡萄酒が溢れた。
『聖なる右』の奇跡の一つ。
それは、ひどくアルコール濃度の高いものだ。

右手を振る。

アルコール分が燃え、気化し、ようやく回復されてきた酸素を喰い尽くす。
そのあたたかなオレンジ色の炎は、真っ直ぐにトールへと射出されている。

「は、」

火柱を回避し、トールの拳がフィアンマの腹部へ差し込まれる。
ぐぐ、という衝撃と、鈍い痛み。

「……残念だが、」

空気の成分が、徐々に元に戻る。
自身の腹部にめり込んだ怪力の手を握り、フィアンマはうっすらと笑む。

「俺様の今の身体は特別製なものでな」

常人の十倍を誇る耐久力。
身につけた霊装の調和によって怪力を得ているトールの拳を受けながら、彼女は血液の一滴すら吐かない。

天使の力を集約する。

天上より引かれる弓矢に、トールは眉根を寄せる。
このまま腕を掴まれたままでは、矢を穿たれて重傷と敗北は必至。

「…降参するか? ……トール」

扱う術式と霊装から彼の名を看破し、フィアンマはそう問いかけた。
ギリギリと、限界いっぱいまで、天使の弓矢は引かれている。

>>578

ああ残念だが俺の負けみたいだな

【一旦中断】


「……ああ。残念だが、俺の負けみたいだな」

弓矢が放たれる。
物質ではない『天使の力』のみで創造された弓は、地面に突き刺さって爆発した。
負けを認めた相手を、更に攻撃する趣味はフィアンマにはない。
遠方の爆発は、何の被害も出さずに空へ雲を打ち上げた。

勝敗は決定した。

満足そうに、全能のトールは笑みを浮かべる。

「強いな」
「これでも弱くなってしまった方だ」
「いつか越えたくなる」
「期待しよう。…勝者より、一つお願いがある」
「あん?」
「あちらに居る少女と、友人になってくれ。それだけでいい」
「お願いされるようなことじゃねえな。…って、さっき怒ってなかったか?」
>>582

彼女は力があるがまだ精神的に幼いのだ


フィアンマ「彼女は力があるが、まだ精神的に幼いのだよ」

トール「…ふーん」

フィアンマ「誰かが叱ってやらねばならんだろう」

トール「…しっかし、すげえ落ち込んでるぜ?」

フィアンマ「……」チラッ

オティヌス「……」グスン

フィアンマ「……後でフォローする」

トール「頑張れよ。……んで」

フィアンマ「ん?」

トール「お前らの求めてる友人ってのは、どんな像だよ?」

フィアンマ「……ひとまず、一緒に生活することか? …性別の関係上居づらいかもしれないが」

トール「あー……」

フィアンマ「…まあ、何だ。俺様は昨年まで男だったし、その辺りはそんなに気にするな」

トール「>>586


トール「いや気になるわ」ツッコミ

フィアンマ「そうか?」

トール「…男だった……あぁ、ニューハー…」

フィアンマ「えい」ドッ

トール「ごッ、がァアアアアアアアアア!!!??」

フィアンマ「…手が滑ったようだ」

トール「く、くそ…600メートルは吹っ飛んだぞ……」ヨロヨロ

フィアンマ「少し事情が込み入っているのだが、聞いてもらっても問題ないか」

トール「なあ、それ、俺が指摘する前に語ることじゃ…」ゲホゲホ




トール「はー、なるほど。幽霊ね」

フィアンマ「この身体は借り物だ」

トール「道理で頑丈な訳だ」

オティヌス「………」

トール「あ、そうだそうだ。ちょいと妙な出会い方になっちまったが、これからよろしく」スッ

オティヌス「……何だこの手は」

トール「何って、親愛の握手?」

オティヌス「>>589


オティヌス「そうか」シブシブ

トール「よろしく」

オティヌス「ああ。…ちなみに」

トール「あん?」

オティヌス「私はレズだ。…お前とは何があろうと友人を越えはしない」

トール「安心しろ。俺は恋人とか欲しくねえ主義だから」

オティヌス「時に」

トール「?」

オティヌス「……フィアンマを私から奪ってみろ。友人関係なく殺す」ヒソヒソ

トール「あー、それもないから大丈夫大丈夫」ゼッタイ

オティヌス「……」

トール「…っていうかさあ」

オティヌス「…何だ」

トール「コクらねえの?」

オティヌス「ぐっ」

トール「あれ、事情知っても良いって言う男は世の中に割と居るモンだし」

オティヌス「>>592

告白したら、友達じゃなくなっちゃうじゃないか


オティヌス「告白したら、友達じゃなくなっちゃうじゃないか」ポツリ

トール「……そりゃそうだ」

オティヌス「踏み出さなければ、進むことはない。進んでしまえば、いつか行き止まりがくる」

トール「そういうもんかね」

オティヌス「そうだ。……問題はない」

フィアンマ「……何の話だ?」

トール「いや、何でも。これからの予定とか決まってんのか?」

オティヌス「特には決めていなかったように思うが」

トール「そっか」

フィアンマ「何か用でも?」

トール「>>595


トール「いや近くまできたし、こっちのダチに会いにでも行こうかなと」

フィアンマ「そうか。好きにすると良い」

トール「通信仕掛けてくれていいからさ。何かを強制するつもりはねえんだろ?」

フィアンマ「同居にしても、強制をするつもりはないな」

トール「ん、ひとまず行ってくる」






オティヌス「……どこも怪我は無いのか」

フィアンマ「特にはないな。あったとしても治療すればすぐに治る」

オティヌス「……」

フィアンマ「…強大な力や殺意はみだりに振るうものではない」

オティヌス「…すまなかった」

フィアンマ「わかってくれたのならそれで良い。トールとは後で連絡を取るとして、何かやりたいことはないのか?」

オティヌス「>>598

お前とどこかに遊びにいきたい

【今日はここまで。お疲れ様でした】


オティヌス「お前とどこかに遊びにいきたい」

フィアンマ「いつも通りだな」

オティヌス「友人が増えたからといって優先順位が変化するというものではない。
      ここから近くに遊園地があったような気がするが、そこはどうだ」

フィアンマ「構わないが」




――――とある遊園地


オティヌス「混み合っているな」ウン

フィアンマ「……遊園地、か」

オティヌス「…嫌な思い出でもあるのか?」

フィアンマ「>>601

俺様は無い

【二日ないし三日に一回はきます…】


フィアンマ「俺様は無い」

オティヌス「…」

フィアンマ「知り合いに少し。…が、今はもう関わることもない」

オティヌス「…そうか」

フィアンマ「…どれから乗るか」

オティヌス「遊園地へ来たのは久々だ。ひどく迷う」ウン

フィアンマ「…誰かと来たのか?」

オティヌス「さて」

オティヌス(…やきもちか?)ドキドキ

フィアンマ「……」

オティヌス「>>605

ジェットコースターに乗るか


オティヌス「ジェットコースターに乗るか」

フィアンマ「……」

オティヌス「…何だ。怖いのか?」ニヤニヤ

フィアンマ「…怖い訳がないだろう」

オティヌス「つまらないな」

フィアンマ「………」ブルブル

オティヌス「」キュン




――――乗り場


フィアンマ「死刑台は遠いな」

オティヌス「妙な表現をするな。怖くはないのだろう?」

フィアンマ「……」

オティヌス「……もし怖いというのなら取りやめても良い」ニヤニヤ

フィアンマ「>>608

俺様が怖っているとでも思うか?ブルブル


フィアンマ「俺様が怖がっているとでも思うか?」ブルブル

オティヌス(ものすごく震えているが)

フィアンマ「たかが絶叫アトラクションだ」フン

オティヌス「良いだろう。その驕りがどこまで保てるか確かめてやろう」




係員「はーい、ではベルトの確認をしますね! はい、はいはい、オッケーでーす! 
   それでは暴走超特急機関車の旅! いってらっしゃあーーーい!!」

フィアンマ「……高所は好きだよ」

オティヌス「ああ、景色が良いからな」

フィアンマ「そう、高所は好きなんだ」

オティヌス「今聞いたばかりだが。…昇り時は多少の緊張があるな」ガコガコ

フィアンマ「」

オティヌス「…おい、どうし…死んでる…」

フィアンマ「」フルフル







オティヌスはどうする?>>+2


オティヌス(まあいい。一人で散々楽しんできたのだから、問題はない)

オティヌス「楽しいな、っわ」ガクン

フィアンマ「ぐ、……」

オティヌス「ん、」チラ

フィアンマ「……て、」

オティヌス「…手?」

フィアンマ「…手、を」

オティヌス「手を、何だ?」グルングルン

フィアンマ「……握っ、て、くれないか、」キュ

オティヌス「……、ふ」

フィアンマ「………」ジワ

オティヌス「>>614

握ってやるから泣くな。男なんだろ?

【今日はここまで】


オティヌス「握ってやるから泣くな。男なんだろ?」キュ

フィアンマ「もうどっちでもいい…どうせ俺様死んでるから……」

オティヌス「……コメントし辛い」ギュ





――――ベンチ


オティヌス「パンフレットの但し書き通り、良い速度だった」ウンウン

フィアンマ「……」

オティヌス「……」

オティヌス(余程怖かったのか先程から手を離さないな)テレ

フィアンマ「……」

オティヌス「…大丈夫か?」

フィアンマ「…>>617

涙が出てきたくらいにはな…

【お、お久しぶりです…】


フィアンマ「…涙が出てきたくらいにはな…」

オティヌス「……」ポンポン

フィアンマ「…だが、」

オティヌス「何だ」

フィアンマ「…悪くは無かった」

オティヌス「…」

オティヌス(…手か?)




オティヌス「ここは…」

フィアンマ「射的場だ。弾はスポンジだが」

オティヌス「腕に覚えがあるのか?」

フィアンマ「無い。…が、今まで外れたことは一度も無い。お前はどうだ」

オティヌス「>>620

当たった事がないな?ドヤァ


オティヌス「当たった事がないな?」ドヤァ

フィアンマ「そこは得意げな顔をするところではないだろう」

オティヌス「『負』に傾きやすいからな。下手な鉄砲数撃てば外れる」

フィアンマ「なるほど」

オティヌス「そもそもあまりやったこともないが」

フィアンマ「そうか」カチャカチャ

オティヌス「…こうか」スチャッ

フィアンマ「…拳銃持ちをするな」ペタ

オティヌス「…、」

オティヌス(顔同士の距離が近い、)

フィアンマ「…思っていた以上に今一度感じるが、指が細いな。引き金は引けるのか?」

オティヌス「>>624

多分…プルプル


「多分…」

ぷるぷると身を震わせながら、オティヌスは頷いた。
どう見ても引けそうにない。
というよりも、スポンジ弾入りの銃が重いのかもしれない。
オティヌスの手の上から手のひらを重ねる形で一緒に持ち、狙いを定める。

今まで一度も外れたことはない。

運良く跳弾し、必ず目当てのものに当たるから。

「…俺様と一緒なら、今回は当たるかもしれないな?」
「……、…」

震えが止まる。
薄く笑みを浮かべ、オティヌスは深呼吸した。

「……、ん」

息を止めて引き金を引く。
弾が射出され、壁に当たり、何度か跳ね、勢い良く的の中心へと当たった。
これでも当たりは当たりである。いつも通りの跳弾。

「当たったな」
「…初めてだ」
「良かったじゃないか」
「……」
「…どうかしたか?」
>>627

嬉しいニパー
お前のおかげだ


オティヌス「嬉しい」ニパー

フィアンマ「、」

オティヌス「お前のおかげだ」ニコ

フィアンマ「……」

オティヌス「…? 具合でも悪いのか?」

フィアンマ「…いや」

フィアンマ(一定以上に踏み込んだところで、俺様は何もしてやれないしな)

オティヌス「もう一発やるか」ソワソワ

フィアンマ「ああ。恐らくまた当たるだろう」





オティヌス「全弾当たったな」ホクホク

フィアンマ「ああ」

オティヌス「…先程から私の目を見ないが」

フィアンマ「気のせいだろう」

オティヌス「…何か気に障ったか」ム

フィアンマ「>>631

お前を見ていると照れてしまう

【今日はここまで  次はエタらないように…オティレルスレ…いや流れに便乗するの良くないし既にオティヌスの人居ますね】



フィアンマ「お前を見ていると照れてしまう」ウン

オティヌス「……」モゴ

フィアンマ「不機嫌という訳ではない」

オティヌス「…そうか」

フィアンマ「……」

オティヌス「…観覧車にでも乗るか」

フィアンマ「そうだな。人も居ないことだし」




――――観覧車


オティヌス「高いな」

フィアンマ「高所恐怖症か?」

オティヌス「もしそうなら提案しないさ。……良い景色だ」

フィアンマ「……」

オティヌス「……フィアンマ」

フィアンマ「…ん?」

オティヌス「>>634

今日はすごい楽しかったぞニッコリ
お前と遊べて私は満足している

【お、おひさ、し、ぶりで、】



オティヌス「今日はすごい楽しかったぞ」ニッコリ

フィアンマ「…そうか」

オティヌス「お前と遊べて、私は満足している」フー

フィアンマ「それは、良いことだが」

オティヌス「お前は楽しくなかったのか?」

フィアンマ「いや、楽しかったとも」

オティヌス「……」

フィアンマ「……」

オティヌス「…お前は」

フィアンマ「…?」

オティヌス「…同性愛についてどう思う」

フィアンマ「>>637

【今日はここまで。最近更新できず申し訳ないです…】


「非生産的だが…お前の性癖については、知らん。俺様を巻き込まなければ何だっていい」
「…、」
「それが、どうかしたのか」

二人きりのゴンドラは、ゆっくりと上昇する。
間もなく天辺へと到達するだろう。
緩やかな時間は、オティヌスにとっての拷問だった。

「……オティヌス」
「……進もうとすれば、死は免れないということか」

ぽつり。
呟きの意図が測りかね、フィアンマは眉を潜める。

「これはあくまでも仮定の話だ」
「……?」
「私が、お前を好いているとしたら。
 …友情程度ではなく、肉欲や情欲の沸き起こる程の、"そういう"感情を抱いていたら、どうする?」
「……」
「…あくまでも仮定。夢物語のようなものだ」
>>641

かそくした

【想像していた以上に皆様が優しかったのでちょっと好きにやってみます】


考えてみたものの、結果は出なかった。
人間の気持ちは、その本人にしかわからない。
結局のところ、そういうことだった。
フィアンマはオティヌスの理解者ではない。
否、オティヌスと同じ経験をしていないのだから"なれない"というべきか。

「……、」

地上に戻って来た。
フィアンマは一歩踏み出して外へ出、ひとまずオティヌスを探してみる。
とはいえ、すぐに追いかけなかった以上、その姿は見当たらない。
通信術式を仕掛けてみるが、遮断されてばかりで、応答してくれない。

「……」

喧嘩というには、あまりにもアンフェアだった。





(私は愚かだ)

自分にそう心中で言いながら、オティヌスは遊園地より離れた場所で、行くあてもなく歩いていた。

(どうして、)

心のどこかで。
友人になってくれた彼女なら、あの雰囲気なら、受け入れてくれるような気がした。
実際には、これが現状だ。どうしようもない。もう、どうにもならない。


苦しい。

踏み出せばこうなってしまうのではないか、とわかっておきながら。
自分はその先に進みたくて、一歩進んでしまった。
十字教の原初の男女のように、罪はこの身を灼く。

「…私、が」

結果をそのまま受け入れるのは嫌だった。
彼女のせいにしてしまうのはもっと嫌だった。
運や世界、常識のせいにしてしまうのも良くないと感じた。

「魔神、だから……」



――――無限の可能性。

それが『負』に傾いてしまっただけのこと、とオティヌスは自分に言い聞かせる。

「……なら整えれば良い」

呟く。
夕暮れの中、空を見上げる少女に、少年が声をかけた。

「あれ、あいつは?」

振り返る。
雷神トールだった。

長い長い金の髪を揺らし、彼は首を傾げる。
フィアンマと一緒に居ないオティヌスに違和感を覚えているようだった。

「ちょっとしたお別れだ。私に目的が出来たからな」
「目的?」
「今の私は諸事情で不完全でな」
「?」
「…そうか、言い忘れていたな。……私は魔神だ。魔神、オティヌス」

わずか、トールが目を瞬く。

「そして、無限の可能性に縛られる中途半端な魔術師だ。
 どんな事柄にも成功と失敗が半々でついて回る」
「厄介だな」
「そうだ。…私は今日より、それを克服することにした」
「へえ。あいつはそれが気に入らなかった…って感じか」
「……巻き込むつもりはない。……雷神トール。お前に手伝って欲しい」
「可能性の克服?」
「ああ、そうだ。…その過程、道道において敵が現れるだろう。
 私の目的に敵対する程の強大な敵が。悪い条件ではないはずだが、どうだ」





>>+2のコンマ一桁が『7』以外でトール承諾

【結果:『5』 承諾    今日はここまで】


「戦闘請負ってことか。悪くはねえな」

同行する、とトールは笑みを浮かべた。
彼が嫌いなものは弱い者いじめ程度で、それ以外は戦闘出来れば何だっていいのだ。
オティヌスは満足そうに笑み、彼に背を向ける。

「他にも数人人手が必要だ。行くぞ」
「おう」








ホテルに戻ったが、オティヌスは居なかった。
どこを探しても、連絡をしようとしても。
嫌われたか、或いは呆れられたか。
見解の相違が生まれた時点で、オティヌスとっての自分の価値はなくなったのだろう。
傷つくことはなく。むしろ、彼女が独りでに離れられたことをうっすらと喜び。


……やっぱり少し寂しくて。


「………」

天井を見上げた。
金に関しては賭けをすれば得られるので問題ない。

「……」

ごろん。

ベッドの上で転がり、目を閉じる。
不意に、手元に熱を感じた。
文字が描かれる方式の通信術式だった。

「……誰だ。名乗りやノックも無しに通信を仕掛けてくるというのは少々無遠慮が過ぎるんじゃないか?」
>>666

あら。おじゃまだったかしら?
魔神は近くにおらぬようだけれど大丈夫なのかしらフィアンマ?


『あら。お邪魔だったかしら?』

存外に丁寧な物言い。
もしかするとうすら笑いくらいは浮かべているかもしれない。
その声音は、紛れもなくイギリス清教の最大主教であった。

『魔神は近くにおらぬようだけれど、大丈夫なのかしら? フィアンマ?』
「全てお見通しで気分が良いのかもしれないが、個人の状況を勝手に口にするのはやめてもらおうか」
『おっと、これは失礼』
「…で、本題は何だ」
『貴方と共に居た魔神の所在やこれからの行動…も気になりたるけれど。
 まずは先んじて、頼みごとがありたるのよ』
「頼みごと?」

厄介事の雰囲気に、フィアンマはつまらなそうな返事をする。

「俺様を利用したいのなら、俺様が利用したいと思うような条件を提示することだ」
『では、"あれ"の一時使用権限辺りで手を打たせてもらいけるわ』

"あれ"。
イギリス清教の最大主教がそのような指示代名詞を使用する、ということは。

「……『禁書目録』か?」
『ええ』
「…そんなものを俺様に与えてまで頼みたいこととは何だ」
『引き受けたるのね?』
「考えてやる。少なくとも、話を聞いて判断する程度には好条件だったというだけだよ。
 それで、頼みたいこととは何だ」
>>669

あの魔神をイギリス清教の清教派に引き入れて欲しいのよ。他の派閥と少し厄介な争いが有るのだからその助っ人にね


『あの魔神を、イギリスの"清教派"に引き入れて欲しいのよ。
 他の派閥と少し厄介な争いが有るの。だから、その助っ人にね』
「切り札だろう」
『ふふ。交渉用のカードは持っておけばおく程、有利なものよ』

よくわかっているでしょう。

囁くような最大主教の声に、フィアンマはゆっくりと息を吐き出す。
依頼内容はそんなに難しいものではに。だけれど。

「俺様は、あの少女との連絡手段を喪った」
『一方的に遮断されたりているのかしら』
「そういうことだよ。……期間を定めないのなら受け入れても良いがね」
『勿論。高質なカードを取得するには、それなりの時間がかかるもの』
「…そうか。では受けてやる」
『感謝したるわ』
「……そもそも、もう会えるとは思えんが」
『そう? あなたの二つの目で探すことは不可能でも、…四○億の瞳でなら、或いは見つかるのではなくて?』

くすくす、という笑い声が聞こえた。
ローマ正教に戻ればいい、ということだった。

「不可能だよ」
『貴方が生きていると知れば、枢機卿共も喜びたるでしょうに』
「……」

アックアの言葉を思い返し、沈黙する。
自分が死んだと聞き、嘆いた者、或いは喜んだ者。

「……俺様が戻ったところで、何も変わらない」
>>672

そう……ならば新しい場所を私が作ってあげるわ。魔神と二人でイギリスに来なさい

【再安価しても良いですかね】

【こう、会話の流れ的にね…  再安価 >>678

お好きなようにどうぞー


『世の中は思うより、簡単で単純な事も多いことよ、フィアンマ』
「……」

腑に落ちない表情を浮かべるフィアンマに対し、彼女は続ける。

『そこで身を引くことも懸命だけれども、』

慎ましさは、十字教徒の美徳だ。

『元居た場所に顔を出しに帰るだけでも、面白いと思うわよ』

フィアンマの政治的手腕はずば抜けていた。
フィアンマが居なくなると同時、ローマ正教の隙はひどく増えていた。
漬け込まれたり、奪われたものもいくつかある。
ローラはそれを知っていて、だが、何もしなかった。
というよりも、イギリス清教のトップである彼女が干渉してしまうのはおかしい。
バランスの崩壊は、やがて争いを生む。好意だろうが悪意だろうが、発露した原因に関わりなく。

『このまま時代が進めば、遠からず争いが起きたるわ』
「……大袈裟なヤツだ」
『冗談や嘘の類ではないわ』

手段に破壊や圧迫というものが含まれていたとしても、フィアンマのやり方や指示の結果は平和を生んでいた。
それは彼女が望むタイミング外で戦争が起きると困るから、であったのだが、ローラは知らない。

「今の体では『神の右席』には戻れん」
『努力していないだけでしょう? そもそも、貴方の所有する"力"は失われない。戻れないということはない』
「……」

事実だ。
くしゃ、と赤い髪を掻き、フィアンマは起き上がる。

「……まあいい。俺様も、あの魔神を探さねばならんしな」


通信を終え、聖ピエトロ大聖堂へと戻ってきたはいいものの。
後方のアックア、もといウィリアム=オルウェルは既にイギリスに戻っている。
前方のヴェントは所用で出ているらしい。左方のテッラもまた同様に

そのため、大聖堂に居たのはローマ教皇だけだった。

ひょこ、と顔を覗かせたはいいものの。
フィアンマは何となく入り辛くて、暫し立ち往生していた。
見目が華奢な少女になっただけで、彼女が元右方のフィアンマであるということは、わかる人間にはわかる。
にも関わらず、むしろだからこそ、フィアンマは声をかけられないでいた。

「……」

自分は一度死亡した。
既に葬儀なども済ませている。
だというのに、やっぱり戻りたいなんて、虫が良すぎるのでは。

「……、」

疲れた様子のローマ教皇の後ろ姿を眺め。
フィアンマは踵を返し、立ち去ろうとした。

「……唖然。貴方は死亡したはずでは」

向かいからの声。
見上げると、そこには緑髪の青年が立っていた。

「……お前は、…アウレオルス=イザードか。…お前こそ、ローマ正教から離反すると決意していたのではなかったか?」
>>684

当然。それを忘れてはいない、ただ忘れ物をとりに来ただけだ。


「当然。それを忘れてはいない」

凛とした表情で、彼はそう言った。
三年程前に、フィアンマはアウレオルスから一つ相談を受けたことがある。
とある少女を、大切な生徒を、残酷な運命から救いたい、と。
対して、フィアンマは今この瞬間と同じ表情を浮かべる彼にこう回答した。

『ローマ正教で得られるものを全て得て、それから離反しろ』と。

アウレオルスが救いたい大切な生徒が誰か、はわかっていた。
フィアンマに対し、ローラが提示した条件である『あれ』。
即ち、イギリス清教の禁書目録。
一年に一度記憶を消されて全てゼロに戻る、孤独で愛らしい少女。

「ただ、忘れ物をとりに来ただけだ」
「そうか。俺様が見逃している内にとってくることだ」
「毅然、…私が取りにきたものは三つ。
 一つは、彼女を救うために必要な写本。
 一つは、私が長年使用してきた万年筆」

ローマ教皇は既に奥の部屋へ入っている。
警備の僧兵達は眠そうだ。
ここで離反の話をしていても、誰一人聞いていない。

「もう一つが、私の夢を決して否定しなかった理解者だ」
「そんな人間が居たのか。離反者が増えるな」

とはいえ、自分はもはや右方のフィアンマではない。
元々見逃してやるつもりだったし、引き止める必要も感じられない。
良かったな、と笑う彼女に対し、アウレオルスは告げた。

「自然、他ならぬ貴方だ」
「……ん?」
「本来は、貴方の痕跡の残る形見を一つ失敬するつもりだった。
 しかし、…貴方は生きている。今、こうして目の前に居る」

夢を否定せず、むしろ応援したのは、自分には何もなかったから。
要するに、自分の理想の投影だ。それだけに過ぎない。

「……誰に向かって誘いをかけているのか、わかっているのか? 
 俺様は確かに今現在、ローマ正教の頂点には君臨していないが」
>>687

当然。他の信者は誰もそうは思っていない。だがそれでも私にとってはローマの一番上は貴方だと思っている


「当然。他の信者は、誰もそうは思っていない」

そもそも『神の右席』は秘密組織であり、ローマ正教の中でも非常に限られた者しか知らない。
仮に知っていたとして、『右方のフィアンマ』の名実共に知る者は更に僅か。

「だがそれでも、私にとっては…ローマ正教の一番上位にある者は、貴方だと思っている」
「思っているにも関わらず、その俺様を連れ出すのか?」
「……愚然、私には…理解者が必要だ」

ある程度以上の高みに至ろうとする者は、理解者を求めようとするものなのか。
オティヌスといい、アウレオルスといい。

自分には当てはまらないけれど、とフィアンマは首を傾げ。

「事実としては所属の無い以上ついていくのは良いが、条件がある」
「自然。如何なる内容か」
「お前のすることに、俺様は責任を負わない。生死を共にするとは思わないことだ。
 加えて、お前の術式が完成した暁には、俺様の目的にも協力してもらう」
「当然、その程度ならば容易い」

そもそも、フィアンマがここへやってきたのはローマ正教を救う為ではない。
厳密には、オティヌスを見つけることだ。



『忘れ物』を全て回収し。
真夜中の道を、二人は歩いていた。

「……『吸血鬼』でも利用してあの少女の寿命を伸ばそうと考えているのなら、失敗するぞ」

唐突なフィアンマのアドバイスに、アウレオルスは眉を顰める。

「憮然。『カインの末裔』は半永久的に生きて尚記憶を喪わない。
 精神が崩壊を起こすことも、記憶に圧迫されて死することも。
 にも関わらず何故失敗すると、」
「あの少女が記憶に殺されるのは、そういう術式を組まれているから、だ。
 それと、救ったところでお前はあの少女に永遠に忘れられたままだぞ。それでも良いのか」
>>690

唖然。とは言わぬ、それでようやく彼女が普通の生活を送れるようになったならばそこがスタートラインなのだからな。彼女との記憶はそれから作れば良い


「唖然。……とは言わぬ」
「ほう」
「それでようやく彼女が普通の生活を送れるようになったならば」

救いに意味はあるのだ。

「そこが、スタートラインなのだからな。
 彼女との記憶は、それから作ればいい」

かつて過ごした温かい時間に意味などなかった、などと言うつもりはない。
けれど、再生出来なくたって、新しく作っていくことは出来る。
後ろを振り返ることをやめて前に進んでいけるのは、人間の権利だ。
手遅れだなんてことはない。

また。

『先生』と柔らかな笑顔で呼んでもらえる日がくれば、報われる。
少なくとも、過去そうして自分を慕ってくれたたった一人の少女が地獄から抜け出したら、それでいい。

「……そうか」

後ろを振り返り、下を向いて階段を作る生き方をしてきたフィアンマに、その気持ちはわからない。
だが、賛同してやることは出来る。
だから、否定の言葉はかけなかった。

「自然、彼女に仕掛けられている術式…並大抵の努力では解除できまい。
 理論、詠唱は全て完成している。後は人員を集めるだけだ」
「何をするつもりだ?」
「当然、『黄金練成(アルス=マグナ)』だ」

フィアンマは、アウレオルスの宣言を恐れなかった。
全て紡ぐには何千年もかかるでろう詠唱を全て終えたその時、『黄金練成』というものは力を持つ。
神様にすら至る術式。世界を、想像したままに変化させるもの。
魔術師としてでなく、錬金術師としての頂点に至った者が手に入れられるもの。

「詠唱には何千年もかかるだろう。呪文同士をぶつけて相乗効果の加速を狙っても、最低三百年。
 何処で人手を集めるつもりだ。何も知らない市街地の人間でも駆り立てるつもりか?」
>>693


「否然。そうだな、ホムンクルスとゴーレムを混ぜた人形を用いようかと思っている。
 これならば倫理的にも、魔力のライン的にも問題はあるまい」

生きた霊装を造る、というシンプルな結論。

「自然、詠唱のみをさせて自壊させる」
「そうか。……怖くはないのか」
「? 疑然、何が怖いと…」
「神の身に至り、想像した事柄全てがそのまま現実になってしまうことが」
「ふむ」

アウレオルスは、少しだけ考えて。
それなら、緩やかな笑みを浮かべた。

「確然。貴方が隣に居れば、不安を覚えることなどありはしない」
「……そうか」

理解者が居れば安定出来る。
その感覚は理解出来ないが、しかし、フィアンマは笑みを返した。




隠れ家として選ばれたのは、元廃墟の内装を整えた小さな家だった。
一応、と人払いと探知妨害の術式を仕掛け、アウレオルスは土を混ぜる。
所定の材料を正しく計測し、テキパキと混ぜていく。
彼の計画が上手く行けば、インデックスは救われる。
フィアンマの望みも、ローラ=スチュアートの頼みも。

「……俺様は何もしなくていいのか。退屈は好かんのだがね」
>>696

一緒に詠唱や魔翌力の補給を頼んでも良いか?かなり体力を使うのでしてもらえるとありがたい


「必然、材料が揃い次第、一緒に詠唱や魔力の補給を頼んでも良いか?
 かなり体力を使うので、協力してもらえるとありがたい」
「俺様の魔力は諸事情で色付きだが構わないか」
「当然、四大属性の範疇であれば問題なし」

『火』の属性がついたものでも良いらしい。
頷き、フィアンマは手渡された紙を見た。
内容は詠唱の序文であり、三分弱のスピーチ文量があった。
大した量ではない。残りは造った霊装にやらせれば良いのだから。

「……では食事でもして待つことにしよう」

生命力を持たぬフィアンマは、物を食べて即時魔力変換するしかない。
支援のしすぎて倒れてしまっては元も子もないので、補給する必要があった。





むしゃむしゃ。

一時間後、焼きたてのクッキー(作った)を食べながら、フィアンマはアウレオルスの様子を眺めていた。
かつて隠秘記録官であった頃からそうであったように、彼は寝食を忘れて作業する。
ふぁ、と小さく欠伸を零し、フィアンマは指先で瞼を擦る。

「当然、完了だ」

一息つき、アウレオルスは水を飲む。
フィアンマからクッキーを受け取り、二枚程食べ。
五分程度休憩したアウレオルスは、フィアンマを見やる。

「断然、始めるとしよう」
「もう少し休憩した方が良いと思うが」
「毅然、問題はない」

相槌を打ち、フィアンマはクッキーを咥えたまま右手を振るった。
敷かれたラインに沿って魔力が流れ、人形が完成する。
詠唱内容を暗記させ、自分達の詠唱が終わると同時に詠唱を引き継ぐよう指示をすれば、準備は完了する。




>>698->>704のコンマ二桁に一つでもゾロ目があれば失敗

ほい

いけるかな

【結果:ゾロ目なし、成功】


「素は青、神の加護にて示されし色」
「祖は楽園にて果実を齧りし原初の人間」
『且は神より与えられし恵みが一つ―――』

世界の全てをくまなく語り終える、呪文。
その全てを唱え切った時、一週間が経過していた。
しかし、もはやアウレオルスにとって疲労などなかった。
彼が『疲労がなくなる』と想像しただけで、疲労など消し飛ぶのだから。

「…当然。成功だ」

必ず成功する神様の領域に君臨した青年は満足そうに笑んだ。
言葉を紡ぎ、禁書目録を自らの下へと召喚する。
少女は眠った状態であり、アウレオルスはフィアンマを振り返る。

「疑然、術式の起点は何処にある?」
「首だ」

アウレオルスは向き直り、深呼吸する。
ようやく、やっと、インデックスという一人の少女を救ってやれるのだ。

「『消えよ』」

たった一言。
ただそれだけで、インデックスの体内に備え付けられていた『首輪』が、消えた。
というよりも、彼女の精神を守る為だけの機構以外は、全て。

「う、んん…?」
「『目覚めよ』」

あっさりと、しかし、そのために長い時間をかけて。
ずっと地獄の底に居た少女は、救われたのだ。

「…あなたは?」
「…毅然。私の名は、アウレオルス=イザードという」
「アウレオルスだね、覚えたんだよ」

インデックスが自分のしたことに害意がないことを、黄金錬成で知らせる。
インデックスは、柔らかい笑みを浮かべて。

「何だか体が軽いかも」
「悠然、それは良い」
「ところで、そこでクッキーを食べている人は誰なの?」

アウレオルスの背後、欠けた魔力が顕著であったため、フィアンマはクッキーをかじっていた。

「確然、我が理解者だ」
「大切な人なんだね。…それにしても、すごいことをしたね」

インデックスは、困った顔でアウレオルスを見上げ。

「あなたのしたことで、私は外部からの制御機能を喪った。
 ……このままだと、世界中から追われて処刑されてしまうかも」
「間然、些細な問題な。我が『黄金錬成』の前に敵はなし」
「アウレオルス=イザード。俺様の願いを叶えろ」
「当然だ」

想像する。
オティヌスが、フィアンマの隣へ現れることを。





>>707-713のコンマ二桁に一つでもゾロ目があれば成功

キツイわ

【結果:ゾロ目なし、失敗】


「……?」

アウレオルスの『黄金練成』。
しかし、その力をもってして、オティヌスを召喚することは出来なかった。
不可解そうな表情を浮かべるアウレオルスに、フィアンマは苦く笑って。

「…まあ、本物の神とでは拮抗してしまうだろう」

所詮は錬金術だ。
色々と理論をすっ飛ばしているように見えても、力は力。
神様の領域に居る人間が、人間上がりの神様と争っても拮抗は必至。
仕方のないことだ、とフィアンマはアウレオルスを責めることなく労いの言葉をかけ。

「俺様が居ると、何かと不便だろう。禁書目録」
「うん? 何かな?」
「その男を理解し、支えてやってくれないか」
「……うん。…約束するんだよ」
「憮然、話がちが、」
「俺様が居なくても大丈夫だよ、お前は」

夢を叶えたアウレオルスに、もはや付き合う義理はない。
理解者としての立場をインデックスに預け、フィアンマは出て行った。





オティヌスを呼び出せないことが、こんなにも失望する出来事だとは思わなかった。
それだけ、もしかすると自分はオティヌスを信じていたのかもしれない。
恋しいと思う程度には。ローラの依頼抜きで、会いたいと思う程度には。

「……ん」

裏路地。
地面に腰を下ろし、壁にもたれかかって膝を抱える。
外は雪が降っているので、ひどく寒い。
だが、アウレオルスのところへ戻るつもりはなかった。
幸せな二人は、幸せな二人で完結するべきだから、だ。

「……は」

息を吐き出す。
この身体は、通常の人体よりはるかに頑丈だ。
オティヌスが、そう造ってくれたのだから。





「……い。…マジで死んでんのか…」

三時間程眠っていたようだった。
眠りを妨げられ、フィアンマは眉を寄せる。

「脈はあるっぽいし…まあいいか」

背負われる感覚。


「………ん」

目を覚ます。
ベッドの中に横たわっていたようだった。
もこもことした毛布の感触が、心地良い。
ぐし、と目元を擦り、フィアンマは横を見る。

「…ん。お、目ぇ覚めた?」

如何にも軽薄そうな男がひらひらと手を振っている。

「……名を名乗り、俺様を連れてきた理由を答えろ。
 内容によってはこの場で殺すことも厭わん」
「いくら何でも物騒過ぎだろ。名前…通称で良いなら、ウートガルザロキ」
「……目的の方は」
「特には。ちょいとセンチメンタルな気持ちになって保護しました。そんな感じ」

肩を竦め、彼は近づいてくる。
フィアンマは起き上がってベッドに座り、首をコキコキと鳴らした。

「あのままじゃ凍死するかと思って」
「この体はそんなにヤワに出来ていない。心配の必要などなかった」
「人間の感情っていうのは必要不必要で出てくるモンじゃないし」
「ある程度顔見知りならば、まだ納得も出来る。
 俺様とお前は初対面のはずだろう。見捨てるのが普通だ」
「………覚えてない?」
「何を、だ。…俺様と会ったことがあるとでも?」
「………、…」
「……ウートガルザロキ?」
>>718

えーなんだよ、覚えてねぇのかよー?

まいっけどさぁ。つかなんであんな所でお昼寝なんかしてたんだ?

【ウーフィアが書きたいなっておもいました   一旦中断で】


「えーなんだよ、覚えてねぇのかよー?」

暗い表情一つ浮かべず、彼はおどけたように笑った。
フィアンマが言葉を紡ぐ前に、場をとりなすように、彼は言葉をかける。

「ま、いっけどさぁ。つか、何であんな所でお昼寝なんかしてたんだ?」
「…特に理由はなかったな」
「えーうそうそー、失恋とかー? そういうベタなドラマじゃないの?」
「……」
「おう、ストップストップ。ガチ切れはなしにしようぜ」

ベッドのシーツが破られそうになり、男は慌てて訂正した。
へらへらとした笑顔も、言葉も、着ているスーツも、何もかもが軽薄そうだ。

「ああ、そうだ。飯食う?」
「そうだな。…少し空腹だ」
「んじゃ、用意しますか」

彼はフィアンマから離れ、冷蔵庫の中身を適当に皿へ並べた。
自炊をしていないのか、キッチンは非常に綺麗だった。

「……っくしゅ」

唐突にくしゃみが出た。
風邪を引いたようだ。
雪降る日の路地裏―――それだけ寒い場所で眠れば、無理もない。

「そういや、家とかあんの? 送るけど」
「無いな。…失ったというべきか」
「ああ、そういう…」
「…不名誉な事柄によってではない。……俺様は一度死亡している」
「死亡? 幽霊ってことか」
「元、だ。…今は作られた肉体を使用して、こうして生きている」
「へー。そりゃすげえ。小説一本でも書けそうだ」

食事が出された。
やわらかそうなパンや高級そうなジャム、ホットミルク。
ホットミルクからは、ふんわりと甘い蜂蜜の匂いが漂っている。

「一杯につき大さじ3。で合ってる?」

フィアンマが幼い頃、好んだホットミルクの分量だ。
けれど、覚えていない。しかし、やはりこの男は知り合いのようだ。

「合っている。……っくしゅ、」
「あー、風邪か。生憎薬とかそーいうのはねえんだけど」
「放っておいても死にはしない。……ああそうだ」
「ん?」
「魔神オティヌス、を知っているか」

パンにジャムを塗り、フィアンマは問いかける。

>>721

ああ知っている。ついこの間トールと共にいたのを見たぞ

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