ラミア「いらっしゃいませ」(996)

男(子供の頃から料理が好きで)

男(高じて料理系の専門学校出て)

男(見習いから頑張って3年……)

男(焼き物を任されるまでになって、さぁこれからだと思った矢先……)



────当店は12月31日をもって閉店いたしました。
    永らくのご愛顧、誠にありがとうございました────

男「新年早々、給料未払いで無職なう」

男「……ただいまー、おーい、女ー?」

ガチャッ

男「……?」シーン

男「……!!」ダダダダダダダッ!!!

────さよなら。

男「うそだろおい!」

男「って……ああっ!」



カラッポ...

男「買い揃えた包丁!マイセンの皿!ワインも!特注の中華鍋も!!スチーム調理器も!!」

男「あー……二人共用の生活費用口座の通帳!印鑑!……ない、よなそりゃあ」

男「……あは、あははははははっ!はははははははっ!!」

隣人『うるっせぇぞ!!』カベドンッ!!

…………

……

男「もしもし、おう、久しぶりー……なぁ、もしかして人手が足りないなんてこと……え、リストラ横行してる!?そりゃあ大変だな……」

男「もしもしー、お久しぶりです。はい、ところで先生、どこか求人のあるレストランがあったら紹介……枠はあっても卒業する生徒に充てる?ですよねー」

男「もしもし、レストラン○○ですか?私、男と申しまして、もし求人が……はい、左様でございますか、失礼いたしました」

ピッ

男「……やばい、今月の家賃すら危ないぞ」ドンヨリ

店員「……よっと。左右の傾きー……よしっ」ペタペタ

店員「求人ポスター貼ったよー」

店長「ありがとう。来るといいわねぇ」

店員「大丈夫。ばっちり”イケメン優遇”って書いたから」

店長「そこは”経験者優遇”じゃあないかしら、シーリス?」

店員「えー……じゃあさぁミア」

店員「”料理の下手くそなイケメン”か”料理うまいけどキモオタ”、選ぶならどっち?」

店長「そりゃあもちろん……”料理のできるイケメン”さん」

店員「そういうのはテレビの向こう側にしかいないってー」ケラケラ

店長「そうねぇ、厨房スタッフが実家帰っちゃって、軽食しか出せないものねぇ……私が厨房入れればいいんだけど」

店員「まぁ、仕方ないよー。あるもので頑張れミアちー!」

店長「シーリスは……?」

店員「だって私はバイトだもーん」ケラケラ

店長「来週には真白ちゃんも出られるっていうし、それまでは食事は軽食のみで頑張るしかないわね」

店員「……マシロンもなぁ、またいつぶっ倒れるかわかんないじゃん」

店長「じゃあシーリスが厨房入ってくれる?」

店員「営業停止になるよ?自分で言うのもなんだけど、この前味噌汁作っててボヤ出しかけたし」

店長「……厨房立ち入り禁止ね」ハァ

店員「料理とか厨房スタッフ以前に、お店は大丈夫なの?」

店員「今日だって朝はゲートボールのおばあちゃんたちと昼間のリーマン3組、それに今しがた帰った有閑マダムしか……」

店長「言わないで……お願い。これでも帳簿が赤にならないように色々苦労してるんだから」ハァ

店員「よっし、じゃあ私も一肌脱ごう!……へーい!イケメンかもーん!!」パチンッ

男(……街に出ては来たものの……アベノミクスなんて庶民にはどこ吹く風で求人はなし)

男(とりあえず、買った求人雑誌をどこか座って読める店は……)

男「っと……あれ?」

男「あんなところにサ店なんかあったっけ?」

カツコツカツコツ...

男「……カフェ『Heavenly Hug』……ヘブンリーハグ、と読めばいいのか?」

男「まぁホットコーヒーが飲めればそれでいいか」グギュルルル...

男「ついでにサンドイッチかなんかだな」ハァ

男(……おや)

────厨房スタッフ募集、全長140~200cmに限る、条件委細面接────
                            イケメン、優遇
男(……まぁ、話を聞くだけ聞いてみてもいいかもな)

男(よし)

ガチャ

カランコロンカランコロンカランコロン...





店員「本当に人が来た!?」

店長「あらあらまぁまぁ……」





男「あ、あの、開いてます?」

店長「はいもちろん……いらっしゃいませ」

店員「初めてのお客さんだねー、こちらどうぞー、外寒いっしょ、ほらコート脱ぐ脱ぐ。ご注文は?」

男「……ええと、ホットコーヒーと何か食事を」

店長「ごめんなさい、軽食しか出せないけどホットドッグとホットコーヒーのセットはいかがです?」

男「じゃあそれを」

店長「はぁい」ズリズリ

男(カウンター6席、4人がけテーブル5つ……にしては通路が広く取られてるな)

男(ウェイトレスの制服はシックなヴィクトリアンメイドか……に、しては片方はいささかフランクすぎるが)

男(……カウンターの向こうはパントリーだな)

男(厨房はその奥みたいだが、食事の受け渡し口が小さくて覗けない)

男(テーブルも床も磨かれてる。窓枠にも埃なし……耳障りにならない程度のBGM)

男(なるほどいい雰囲気の店だな……あとは味か)

店長「おまたせいたしました。ホットコーヒーとホットドッグのセットです」ニッコリ

男「どうも……そうだ、表の張り紙」

店員「もしかしておにーさん、料理できる!?」

男「多少なら」

店長「シーリスすごいわ!本当に呼べるなんて!」ギュ

店員「え!?いやいや偶然偶然!」

男「あのぅ、握ってる手を離してもらえないとカップも持てないのですが……」

店長「あら、あらあらあらごめんなさい……あ、これマスタードとケチャップ」コトン

男「ああ、どう……もっ?!」

店長「?」

男「……び?」

店長「び?」ニョロン

男「ひ、ひいっ?!蛇っ?!」

店長「あ、私らみ……」

男「へび、へへへへび……」ガクン

店員「や、やばくない!?」

店長「あら、気絶しちゃったみたい……でも脈も呼吸も安定してるし、奥の休憩スペースに寝かせておきましょうか」

男(子供の頃から料理が好きで)

男(高じて料理系の専門学校出て)

男(見習いから頑張ったけど現在無職)

男(料理の腕はある……ほうだと思う。色々な料理を見て食べて盗んで。自分のものにしてきたつもりだ)



男(趣味は料理と食べ歩き。特技は特にないが調理師免許と普通自動車免許は持っている)

男(短所は気が短く、口が悪いこと)

男(好きな動物は猫、好きな食べ物は鮭とば)



男(そして……嫌いな生き物は…………)



男(蛇)

ラミア喫茶か

支援ありがとうございます。
----

男「う……」

男「ここ、は……?」

男(……確か、入ったサ店で蛇が出て……)

男(情けないよなぁ……大の男が蛇見ただけで気絶するとか……)

男(とはいえ、こればかりは昔から変えられない……)

店員「おっ、気がついたかなー?」

男「……ああ、わざわざ運んでくれたんだな、ありがとう」

店員「きにしなーい。はいお水」

男「ああ……どうも」

店長「シーリス?お客さんは起きたの?」

店員「起きたー!」

店長「大丈夫ですか?」

男「失礼いたしました……あの、蛇が……」

店長「蛇?」

男(……カウンター越しだが、どう見ても人間の女性……だよな)

店員「ねぇねぇこれ!」ビシッ

男「ああ、さっきの貼り紙」

店員「今、うちの店厨房スタッフがいなくてトーストとサンドイッチしか作れないの」

店員「それも作れるのはあっちのミアだけ」

店員「だから、もし良かったらうちで働いてくれない?」

店長「し、シーリス!そんな急に……」

男「まぁ、無職なのは確かだし、レストランの求人が皆無で泣きそうだったところだから、渡りに船ではあるんだが……」

店員「でしょでしょ!ほら来たよ!料理できるイケメン来た!」

あの世界観の話か…
支援

多分ケンタウロスもいて、彼氏は背中に乗せるとかそういうのもあるに違いない

ミア・シーリス・マシロン…これって何かのキャラクターなの?
ラミアがミアなら、シーリスはバシリスク?

何にしても面白そう、支援

店員「だが?」

男「いや、和食か洋食か中華か、がっつりした食事なのか、軽食だけか、ドルチェか……メニューも見ないでは決められない」

男「ちなみに和食と中華は……そこらの主婦より手際よく作れるよ、くらいの腕だな」

店員「なら、なーんにも問題ないって。あ、これメニュー」ピラリ

男(ピラフ、オムライス、ポークチョップ、パスタ、ピザトースト……うん、街の喫茶店だが、なんでもありというわけではないか)

男(……それに……イングリッシュティーセット?スコーンやケーキか……)

店長「……ご無理に、とは言いません。先ほど寝ておられる間に手を見せていただきましたが、かなりの包丁ダコが出来ていますし」

店長「さぞかし多くの経験を積まれたかと思います。なにもこんなカフェでなくても、働き口はあるでしょうし」シュン

店員「ちょっとミア!そんなこと言ったら……」

男「……もし、面接して合格だというなら」



男「ここで働かせてもらえないだろうか」

店員「いいの!?」

男「言ったろ、渡りに船だって」

男(それに……なんだろうな。あの店長さんの困り顔を放っておけない気がする……)

店長「明日から、って訳にもいかないし、都合のいい日に面接と労働条件を決めるってことでいいかしら」

男「ええ、願ったり叶ったりです……履歴書と年金手帳と印鑑でも持ってくればいいですか?」

店長「そうねぇ……履歴書はいいから、エプロンかしら」

男「……まぁ、そうですね。分かりました」

店員「ミア?どういうこと?」

店長「秘密。日時だけど……」

男「そっちで決めてください。無職なので時間だけはありますから」

店長「じゃあ、明後日の午後2時でどうかしら」

男「分かりました。ああ、コーヒーご馳走さま。お代は……」

店長「シーリス」

店員「はいはーい、300円です!」

男「はいちょうど」

店員「ありがとうございましたー!あ、ドア開けるねー」カランコロン

男「ありがとう……その、向こうの……ミアさんだっけ?彼女に”もう気絶しないから、次からは普通に出てきて欲しい”って伝えてくれ」

店員「あはは、気づいてたんだ……おっけい伝えとく」

────2日後

男「お、おじゃまします」

店長「お待ちしておりました……本当に大丈夫、ですか?」

男「ええ、まぁ、前準備しておきましたから!」ダラダラダラ

店員「の、割にはすごい脂汗だねぇ」

男「お、おきにっ!なさらず……」

店長「じゃあ、試験を始めましょう」ニョロニョロ

店員「……面接じゃないの?」

店長「だって、履歴書には作った料理が美味しいかは書いてないんだもの」

男「そういう事、だ、です、ね……で、何を?」

店長「うちのメニューにあって、冷蔵庫に材料があって……そうね、この”オムライス”にしようかしら」

店長「ちなみにお値段は600円。サラダがつくから、それもよろしくね」ニョロン

男「分かっ……りました」

エート...ガタガタ...レイゾウコハ...




店員「ものの見事に視線がミアの上半身に限定してたねー」

店長「あれはあれで面白いのだけれど……」クネクネ

男「ふー……わかっちゃいても、ああも視界でニョロニョロされるとな……」

男(ま、厨房からは見えないから、まだなんとかなるか)

男(さてと……オムライスか……いや、”売値600円の”オムライスだな)

男(その辺、材料の選定も課題ってことか。あの……ミアさん、と言ったか……侮れないな)

男(冷蔵庫の中は……オムライスの材料は一通り揃ってるな)ガチャリ

男(冷や飯、卵、鶏肉、玉ねぎ、ケチャップ、サラダにはキャベツとトマト、それにきゅうり……)

男(ボウル、まな板、包丁、フライパン……いいフライパンだな、使い込まれてる)

店長「準備はいいかしら?」

男「ええ」

店員「じゃあオーダー通すよー」ニコニコ

男「おう!」

店員「オムライス3つ」

男「!!……まかせろ!!」



男「やってくれるぜあの姉ちゃん」ニヤリ

----

トントントントントン カチャカチャカチャカチャ

店員「いじわるしたのに、顔色ひとつ変えないね、つまんなぁい!」

店長「それだけ期待できる、ってことかしら。にしても、やっぱり厨房から音がするのはいいわねー」

店員「そういうもんかなー?まぁ、美味しいならそれでいいんだけど」

ボッ カタカタン シュワーッ カタンッ

男「おい!えーと……シーリス!サラダ先にあがるぞ、セットの準備は?」

店員「え!?え……と」

店長「あらあら、本当に期待できそう」

男「おまたせいたしました。オムライスです」

店長「あら、これじゃあチキンライスのオムレツのせみたいだけど?」

男「それはこれから……よっと」シュッ...トロリ

店員「おー!すごい半熟ふわとろオムライスになった!!」

男「材料は1人あたり170円ってところだ」

店長「後は味ね……いただきます」パチン

店員「いただきまーすっ!……う、う」

店員「うまーっ!!これ、チキンライスにも粗みじんにしたトマト入ってる!なにより半熟のオムレツが美味しい!」

店長「そうねぇ……時間も合格点、かしら……に、しても美味しいわ。本番も1人でいけそうかしら?」

男「本当なら助手が1人欲しいところだが」

店長「来週には、今休んでる子が戻ってくるからその子をつけるわ。メニューは少しずつ元に戻していきましょう」

店員「ごちそうさまー!ちなみに私は合格です」

店長「そうね。キャベツの千切りも、こんなにふわふわになのは初めて」

男「じゃあ……」

店長「もちろん合格です。あとは給料がおりあえば、採用ですね……っと、前の人はこれくらいで……」デンタクカタカタ

男(少々……いや、かなり少ないが……見た目、そこまで忙しそうでもないか)

男「十分。俺みたいなやつでよければ、よろしくおねがいします」ペコリ

店長「はい、では……よろしくおねがいしますね」ニョロン

男「!!!」

店長「この尻尾、けっこう自在でしょ?人の手と握手するくらい、朝飯前なんですよ?」クルンクルン

男「……」ゴクリ



男「よ、ろしく、お願いし、ます……」ニギッ

店長「はい、こちらこそ」ニコニコ

店長「じゃあ改めて自己紹介しましょうか。私はこのカフェ『ヘブンリーハグ』の店長をしておりますラミアの”ミア”と申します」

店長「改めて、これからよろしくおねがいします。店長なんて堅苦しい呼び方ではなくて、ミアと呼んでください」

店員「んで、私はシーリス。石動シーリス。よろしくねー男っち」

男「ミアさんとシーリスだな。男です。某レストランでロティシエールをしていました。よろしく」

男「……お願いしたいんだが、男っちはやめてくれ一応年上なんだから」

シーリス「えー」

ミア「シーリス?」

シーリス「分かった、分かりましたよーだ!」ブー

----

今日はここまでです。ありがとうございました。

>>13
ラミア喫茶ではありません。単に喫茶店の店長の下半身がヘビなだけです。

>>16
はい、あの世界の話です。これも気長にお付き合いいただければ幸いです

>>17
シーリスのネタがもうバレた……
3人ともオリジナルです。名前と下半身の情報だけ置いておきます。

ミア(ミア・V・ベールス):ラミア。下半身ヘビ
シーリス(石動シーリス):バシリスクと人の交雑種。下半身ヒト
真白(岩国真白):未登場。下半身ヒト

男(屋芝 誠三):下半身ヒト

ハーピーの人か
おかえりー!

>>29
もしもしからでURL貼れないが

ハーピー「おかえりー」

でスレ検索

今回もニヤニヤしながら待つ
ところで真白さん?の元ネタが地元だと思われる件

ニヤニヤしながら期待age

ところでV.verusは国内飼育に許可が必要な件について

皆さんなぜそんなに爬虫類や架空の生物に詳しいのか……
Wikipediaで仕入れた付け焼き刃の知識では太刀打ちできなくてつっこまれそうで怖いです。

過去作は>>31の通り、”ハーピー「おかえりー」”です。
見てなくても楽しめるものを、見てた人はにやりと出来るものを目指して頑張ります。

>>33
正解。Vipera Berus、ヨーロッパクサリヘビ、有毒の特定生物です。
背中の鎖模様が綺麗です

はよはよ
遅いと店員呼び出しベル連打するぞ

じゃあ>>39-42にあわせてナイフとフォークで食器の縁叩くわ

---

────21:50@カフェHeavenly Hug 店内

ミア「……ふぅ、レジ精算終了、数え違いなしっと」

シーリス「ミアちー、私もう上がるよー」

ミア「はーい、明日もよろしくねー」

シーリス「はいはーい!じゃあお疲れー……って、うわー、雨だよミアちー」

ミア「傘は持ってる?」

シーリス「折りたたみがあるから大丈夫。それじゃねー」

ミア「風邪ひいちゃだめよ?」

カランコロン...

ミア「……」

ミア「さてと、お風呂に入ってのんびり読書でも……」

ガタンッ

ミア「……今、裏口で何か音がしなかったかしら?」

ミア「……し、シーリス?」

ミア「シーリスよね?傘、やっぱりなかったの……?」

ミア「……ま、まさか……泥棒さんとか強盗さんとか……?」

ミア「……うぅぅ、フライパンやおたまで撃退できるかしら……」

ガタガタ

ミア「……こんな時……いてくれたら……」

ミア「ううん、私しかいないんだから、私がしっかり撃退しなきゃ……」

ガタガタ、ガチャンッ...

ミア「か、鍵が……あ、あ、ドアノブが……」

ギィッ

男「ミアさん申し訳な────」

ミア「えええいっ!!」ゴチンッ!!

男「────いっ……」

ミア「……あれ?」

男「……う」

ミア「き、気づかれましたか?」

男「……あ、頭が……」

ミア「そ、それはその……あれです!雨で濡れた裏口のタイルでつるりと滑ったんでしょう。倒れてましたよ」

男「そ、そうでした……っけ?……う、頭が……」

ミア「え、ええ、そうです!ほら、大きなたんこぶ!倒れていたのをここまで頑張って持ち上げたんですよ」

男「ここ?」

ミア「お店の2階。倉庫と居住スペースです。ずぶ濡れのままでは風邪をひきますから、とりあえずお風呂でも」

男「お、お風呂……?」

ミア「はい。福利厚生の一環です」

カポーン

男「広い風呂だなおい」ザブン

男(……福利厚生の一環?こんな、男が大の字に浮かんであまりある銭湯みたいな風呂がか?)

男「……」

男(『一緒におふろはいろーよ、男っちー。従業員同士のスキンシップ!』ポヨン)

男(『お背中流しますね、男さん。これも福利厚生の一環ですから』ムニ)

男(……いやいやいや)

男(いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや)ブンブン

男「……ない。うん、ないぞ、俺。いくら女性だらけの職場とはいえ、それはない」ドボンッ!!

男(心頭滅却心頭滅却……)ブクブク

ミア「男さん、いいですか?」

男「うわっ?!な、なんですかミアさん!?」

ミア「バスタオルと……サイズ合うかは分かりませんが、男物のジャージと肌着、置いておきますね」

男「あ、ありがとうございます……しかし、大きなお風呂ですね」

ミア「ああ、私サイズですから。下半身をよく温めないと、冬場は特に先の方の動きが鈍くって」

男「……ああ、なるほど」

ミア「シーリスと真白ちゃん……もう1人の子も。、よく入ってから帰ることがありますよ」

男「へーぇ……」

ミア「他に何か質問は?答えられる範囲なら。ただしプライベートなのはだめですよ?」

男「質問ではないんですがミアさんその……」

ミア「はい?」

男「そろそろ上がりたいのですが、脱衣所から出て行ってもらっても……」

ミア「あ!ご、ごめんなさい!」

────23:00@カフェHeavenly Hug 店内



ミア「まぁ、そのジャージお似合いですよ」

男「ありがとうございます。ところで……」

ミア「ところで、どうして雨に打たれてズブ濡れになって裏口に?出勤は明日からでは?」

男「え、ええ……そうなんですが……」

ミア「?」

男「……」ハァ

男「いや、色々と深い事情が……」

ミア「聞きます聞きます!ぜひとも聞かせてください!」フンスフンス

男「食いつきどころおかしいでしょそれ」

────同日夕刻@住宅街

男(新年早々ついてなかったが、なんとか帳尻は合ったみたいだな)

男(捨てる神あれば拾う神あり、か)

男(問題は、拾ってくれたのが蛇神様ってことだが……)

男「……ん?」

ウゥゥゥーッ!! キンキュウシャリョウガトオリマース!! ミチヲアケテクダサーイ!!

男「火事か。こっからでも煙上がってるのが見えるじゃん、けっこう大きい火事みたいだな」

男(……俺の家の方向だけど)

男「まさかなぁ」



ドイテーッ!!サガッテクダサーイ!!ショウボウシャガチカヅケマセン!!ドイテ!!

男「そのまさかかよ」

大家「あらー!男さん、無事だったかい!!」

男「おう、大家さん。外出してて助かったよ」

大家「……そりゃよかった。これで店子全員の所在が確認できたよ」

男「ああ、しっかし……すげぇな、自分の家とはいえ……よく燃えてる」

大家「もう危機一髪だったわ!火事だ火事だ!って喉が枯れちゃいそう。でも命あっての物種だからねぇ……」

大家「私も旦那の位牌だけは持ち出せてほっとしてるよ」

男「そうか……あ」

ダダダダッ!!

大家「ちょっと!男さん!?」

消防士1「危ないですから下がって!」

男「ちょっと!ちょっと部屋の中から本を取ってくるだけだから!」

消防士1「何言ってるんですか!燃えてるんですよ!?」

男「だから行くんだよ!!俺の命より大事なレシピノートが燃える!」

消防士1「ダメです!マンション全体を火が包んでるんだ!死ににいくようなものだぞ!」

男「あれは、あれにはなぁっ!俺の、俺の全てが……」

消防士2「放水、開始ーっ!!」ズバァァッ!

男「あ」

消防士2「……鎮火、確認!」

大家「こげくさいねぇ……さて、今晩の宿を考えなきゃ」

男「……」

大家「男さんも、ちゃんと宿探しておきなよ?若いからって野宿したら凍え死ぬからね!」

男「……はは」

男「ああ、ガキの頃からの15年分が……俺のレシピノートが……」

ポツ...ポツ...サァー

男「はは……ははは……ははははは!!ちくしょう……ついてねぇ……」

……

男「と、いう事がありまして……宿なし文無しで、なんとか明日からの職場まで辿り着いた次第です」

ミア「で、でも、ビジネスホテルに泊まるとか……」

男「そ、それが……実はお恥ずかしい話なんですが……」

ミア「?」

男「今月の生活費を入れた銀行の封筒は、家の中にあって……っていうか、あったので……」

ミア「クレジットカード……」

男「口座の中はすっからかんです。そもそも、同棲していた彼女に金から家電から全部持ち逃げされてどうしようもなかったんですが」

ミア「……じゃあ」

男「全財産は……これだけ」チャリンチャリン

ミア「482円……」

男「恥を忍んでお願いします!給料を前借りさせてくださいっ!!」

男「もちろん、働き出す前から寝言を言っている自覚はあります!でも……」ドゲザッ

ミア「……事情はわかりました」

男「じゃあ」

ミア「前借り……といっても服に宿に食事代に交通費。いくらあっても足りませんよ。なので、別の方法を提案します」

男「別の方法?」

ミア「この倉庫の片隅なら、お貸しできます。埃っぽいですが、衝立があって、眠ることくらいはできますよ」

男「……本当ですか!?」

ミア「でも、寝袋と毛布くらいしかないし、暖房だって……」

男「それで構いません……よかった……蛇神様は俺を見放してなかった……午年なのに」

ミア「蛇神様……?」

男「ああいえ、こっちの話です。ところでミアさん、終電は大丈夫なんですか?」

ミア「終電?関係ありませんよ?」

男「じゃあお近くに住んでいらっしゃる?」

ミア「お近く、っていうか、ここです。隣の部屋」

男「……」

男「……野宿できるところを探してきます」

ミア「なんでですか?やっぱり亜人がそばにいるのはイヤですか?」

男「そうじゃなくて!……せ、性別の話です。成人男性が、女性と同じ屋根の下はまずいでしょう」

ミア「ついこの前まで、同棲してたのに?」

男「そ、それは……恋人だからで、雇用主と従業員の関係とはまた異なります。それに……」チラリ

ミア「それに……?」

男「……いえ、なんでもありません」

ミア「女の一人暮らしでしょ?やっぱり防犯の意味でも、男の人がいると安心できるんです」

ミア「……無理に、とは言いません。それでも、これから雨の中へ出て行くよりかはマシだと思います」

ミア「それに、味は体調に左右されますから。とにかく今日はここに泊まって、明日の仕事に支障のないようにお願いします!……て、店長命令ですよ!」

男「……そこまでおっしゃられるのなら、今晩だけ」

ミア「…………はい。じゃあこれ、毛布と、寝袋と、寒いから湯たんぽもどうぞ」ポイポイ

男「本当に用意がいいですね……」

ミア「あ、眠る前にホットミルクはいかがです?緊張がほぐれて、よく眠れますよ?」

男(不思議な人だ……)ゴロリ

コンコン

ミア「おやすみなさい。マグは明日、下に持って行ってくれればいいので」ズリズリズリ...キィ、ガチャン

男「……よい夢を」

男(『女性の一人暮らしなので……』か)

男(用意された男物の寝間着や肌着)

男(同じデザインで色違いのハート柄がプリントされたマグ)

男(そして何より……水や食品を扱う仕事なのに、左手の薬指にリング)

男(聞くに聞けない事情があるんだろうなぁ……)

男(まさか美人局じゃあ……)

男(……やめだ、考えても答えは出ないし、さりとて事情を聞ける仲じゃあない)

男(そんなことより、まずは金の工面だな。サラ金には借りたくないが、さりとてダチも金の境遇はほとんど一緒だしなぁ……)

男「はぁ……」

zzz

キィ、ガチャン

ミア(……)

ミア(おかしいね、顔は全然似てないのに。でも、節くれた手や料理する時の雰囲気はあなたと一緒だった)

ミア(……『器用に尻尾が動くんだね』)

ミア(最初に会った時の第一声、それだったなぁ……あの合コン、思い出しちゃった)

ミア(……待ってても、いいよね)

ミア(いつか、ただいま、って言ってくれるよね)

ミア(……)キラリ

ミア(指輪の意味……男さんも気づいたんだろうなぁ……)

ミア(……待ってるから……だからただいま、って言ってね……あなた……)

ここまでです。
支援ありがとうございます。

誤爆した別SSの作者さん、本当に申し訳ない。

----

────翌05:50@カフェHeavenly Hug 2階

ミア(……)

ミア「う、ううう、ううううう……さむい」

ミア「さむいので今日の営業は休みにしてもよいのではないでしょうか……」

ミア「けつぎー……さんせー1、はんたい0、きけん0、よって……採決……むにゃ……」モゾ

pipipipipipipi...

ミア「う、ううう……」モゾモゾペシペシ

pipipipip

ミア「よし……シーリスがおこしにくるまで……にどね……」

ミア「さむいよぅ……」

pipipipipipipi...

男(……)

男「営業、朝7時からだったよな……」

男「……お、止まった」

男「けど、降りてくる気配はなし、か」

男「……まぁ仕方ない。分かる範囲で準備しておくか……」

ガチャガチャ...

シーリス「おひゃー……さむさむさむさむっ!!……ってアレ?男っちじゃん早くね?10時からラストじゃなかったっけ?」

男「おはよう。色々あって、ここの2階の倉庫に泊めてもらったんだ」

シーリス「いやっ!ふっけつー!ミアちーのたゆんたゆんおっぱいに挟まれて寝たのかこいつめ!」グニグニ

男「してねぇよ……つーか、準備なんか電気やテーブルセットくらいしか分からないから、早めに着替えて教えてくれ」

シーリス「んーと、とりあえずミルで豆挽いてくれる?配分は赤いラベルの缶が内蔵のコップで2杯、黄色いラベルの缶が同じく1杯、小さい茶筒の中の豆をスプーンで1杯」

男「分かった」

シーリス「そしたら朝ごはんにしようよ!私、マーマレードジャムねー!冷蔵庫の中ー!」

男「へいへいっと」

男(とはいえ、トーストだけじゃあなぁ……冷蔵庫の中は……っと)

男(ハム、卵、レタスにトマトか。ハムエッグとトースト、ちぎってサラダ。うん、十分健康的な食事だろ)

男(ちなみに冷凍庫は……冷凍したご飯、ベジタブルミックス、豚肉……なんだこれ?『ミア専用開けるな危険?』)

男(……いや、厨房担当たるもの、食材の位置は把握しておかなければならぬ。もし私物ならそれは2階の冷凍庫へ入れてもらおう)ガサゴソ

カパッ

男「……」

男「ひいっ?!」ガターン!!



シーリス「なんか男のものとは思えぬ絹を引き裂くような悲鳴が聞こえたような……」ゴソゴソ

シーリス「男っち、どうしたー?まさか飲食店には天敵なのにいつの間にか住み着いてるあいつが出た?」

男「」シロメ

シーリス「あーあー……朝一で気絶してるー、って、アレのフタ開けちゃったのか」

シーリス「だから『開けるな危険』って書いてあるのに」

男「……う」

シーリス「お、起きたなー」

男「シーリス!ね、ねねねねねねね」

シーリス「はいはい、みっともない声出さないのー。しゃあないじゃん。ミアちーは半分爬虫類だし」

シーリス「結構、蛇の性質が残ってる娘だからさー、冷凍ラットくらい許してあげてよ」

シーリス「これだってペット用のきちんとした奴だし。それに、どうしても欲しくなるのは満月の夜だけだって」

男「……み、みてない、見ちゃったけど見てないことにする……」ガクブル

シーリス「あーあー、涙目にならないのー。じゃあ、コーヒー淹れるから、トースト焼いて。私は2枚、ミアは1枚」

男「あと、ハムエッグとサラダも作る」

シーリス「んじゃ、よろしくー。ミアは半熟、私は黄身がっちがちで」

コポコポコポ...

男「挽いた豆をフィルターにセットして水を入れれば後は自動か」

シーリス「いくら半分趣味のお店とはいえ、サイホンでコーヒー淹れるわけにもいかないしょ。次、この鍋にお湯沸かしてくれない?」

男「了解っと……半分趣味なのか?」

シーリス「あ……私から聞いた、って言わないでね」

男「分かった。ほれ、目玉焼き両面しっかり焼き。ミアさんの分、焼いたら持って行ってもらうから、早めに食っちゃってくれ」

シーリス「えー……男っちが起こしにいってよ」

男「おま、俺は男で、向こうは女だ。それは問題があるだろ」

シーリス「今日だけおねがーい。仕事は簡単だけど右も左も分からない男っちにお願いするわけにいかないし。今日、ここで一番暇なのは?」

男「俺」

シーリス「んじゃ、一番新入りは?」

男「……俺」

シーリス「じゃあ、朝ごはんもってミアちーを起こしに行くのは?」

                 ・・
男「分かった分かった、俺がやるよ、先輩」

シーリス「いやーん、ミアちーいいなぁ、朝からベッドサイドで朝ごはんウィズイケメン目覚ましキッスつき」

男「しねぇよ!?入社当日に人妻女社長に手出す新入社員なんざいるわけないだろ!つーかイケメンじゃねぇって」

シーリス「いんや、男っちは鏡見てみ?そりゃ、ハリソン・フォード様やリチャード・ギア様みたいな超イケメンとはいえないけどさー」

男「おま、よりにもよって俺の比較対象にそこ持ってくるなよ」

シーリス「まぁまぁ、とにかく料理が出来てイケメンな男っちには彼女いないの?」

男「……そこは踏み込まんでくれ」

シーリス「え、まさか彼氏が!?」

男「そうじゃねぇって……はぁ、同棲してたし、ボーナスで婚約指輪買ってプロポーズしようと思ってた女に有り金全部持って行かれて逃げられたの」

シーリス「あっはは、なにそれウケる!」

男「……もういいだろ、目玉焼きとトーストとサラダと……ミアさん、いつもは何飲んでる?」

シーリス「グレープフルーツジュース。パントリーの冷蔵庫にあるから、出して持ってって。お盆もパントリーにあるから」

男「なぁ、まじで?俺訴えられたら証人になってくれる?」

シーリス「はいはい。ノック3回したら返事の有無にかかわらず突入ね」

男「マジかよ……あー、ウケる」

男「……」ハァ

コン、コン、コン

男「ミアさーん?」

コン、コン、コン

男「店長?さっきからアラームがスヌーズ機能で鳴ってるんですがそろそろ起きてください」

ドンドンドン!!

男「お店の営業、はじまりますよー!!」

男「……へんじがない。とりあえずノブ回して、鍵かかってるだろうから戻ろう、よしそうしよう」

カチャ、キィ...

男「開いたよ……」ハァ

男「失礼しまー……うわ、加湿器全開の結露まみれじゃねーか……」ムワッ

男「……とりあえず、朝飯はテーブルに……と」ガチャガチャ

男(あのベッドの盛り上がり……が、きっとミアさんなんだろう)

男(と、とっちらかった下着とか衣服には極力目を向けないようにして……)

男「ミアさん」

ミア「んー……」

男「店長、店長!起きてください朝ですよ!!」

pipipipipi

男「あーもうほら目覚まし……これもう意味無いでしょ、止めますよ?」

ミア「ふぬ……」ペシペシペシ...チョン

男「!!」

ミア「あー……シーリスぅ……?ごめーんあと5ふん……ちょっとたいおんかしてぇ……」

男「は?」

グイッ!!

男「うわぁぁっ!?」



シーリス「お、哀れな新入りが湯たんぽ代わりにされたかー」ケラケラ

ミア「ふにゃぁ……あったかぁい……」グルグルグル

男「ちょ、その蛇部分を巻き付けるのやめてくだ────!」ガクン

ミア「んー……ちょっとたいおんたかめー?いつもよりせっしょくめんせきも……おおき……い……」

男「」キゼツ

ミア「……」



ミア「きゃあああああああああああっ?!」



ミア「お、おとおおおとこさん?!シーリス!?なんで男さんがいるの?!え、痴漢!?でも気絶してるし……」

ミア「うわぁなんかパジャマはだけてるしノーブラだしこれだめですよね?!」

男「」キゼツ

ミア「と、とりあえず解放しないと……あと一応着替え中は目隠し……っと」クルン、ピタッ

ガサガサゴソゴソ...

────15分後

ミア「あ、改めまして、今日から男さんが厨房に入ってくれます。トースターを厨房へ移しますので、トーストやホットドッグをお願いします」

ミア「シーリスは接客、でもレジ打ち優先で。私は接客フォローとパントリーを」

シーリス「はいはーい、今日からよろしくね、男っち」

男「ああ、よろしく頼む。ミアさんも」

ミア「は、ははははいっ!そ、それではおみせあきゃまっ」

シーリス(噛んだ……)

男(噛んだ……)

ミア「あ、あけましょう!」



カランコロンカランコロン...






ラミア「いらっしゃいませ」




----
今日はここまで。
いつも支援ありがとうございます。

また週1か月2程度の更新になるかと思いますが、お付き合い願います

朝から2回も気絶する男はなんなんだw

酒場に割と致命的な誤爆した……
これが蛇神様のたたりか畜生……

そんなでもないよ
あの誘導でうっかりこのスレのURLでも貼ったならともかく
蛇神様のご加護だね

>>81
ありがとう
ところで少しだけ投下します

---

――――水曜日10:30@カフェHeavenly Hug 厨房

男「ない」

シーリス「何が?」

男「磨く鍋が」

シーリス「じゃあ……」

男「ナイフは研いだしシルバーも磨いた、冷蔵庫も冷凍庫も中身を出して古い物は整理したし、床も壁もピッカピカ」

ミア「つまり?」

男「暇だ」

ミア「じゃあ……はいこれ。塩の瓶のクリンナップお願いします」

男「……そうではなくて」

シーリス「なにー?」

男「客が少ない、ってこと」

シーリス「バイト代同じで仕事量少ないならよくなーい?」

ミア「経営者的にはよくないわよ、シーリス。でも男さん、今朝の常連さんはサンドイッチ美味しくなった、って」

ミア「この調子で胃袋掴んで、固定客ゲットしましょ!」フンス

男「……ゲートボール同好会のばあさんたちか。客席に呼び出されて何かと思えば、孫の婿に来てくれ、って話ばっかだったよ」

シーリス「あの人たち、曾孫の顔を見るのが悲願みたいなものだからねー。ちなみに私も30過ぎたお孫さんのお見合い写真押し付けられた」

男「はぁ……」

ミア「はーい、雑談そこまでー。手を動かしてくださいな。シーリス、ランチのシルバーは用意できてる?」

シーリス「あちゃ、やらなきゃ」

男「……っと、塩のクリンナップだったな……乾いた瓶はどこだ?」

……

客「美味しかった。味変わったけど、今のほうがいいよ」

ミア「ありがとうございます。スタッフに伝えておきますね」

シーリス「ピザトーストお待たせいたしましたー」

男「次、テーブル2番オムライスとポークピカタ出るぞ!ライス、スープ後で!」

ミア「はい、っとと」カチャカチャ

シーリス「ミアちーごめん!大丈夫?」

ミア「大丈夫。落ち着いてね、シーリス」

……

シーリス「ありがとうございましたー!」

ミア「はーい、これでランチおしまい、っと」

シーリス「今日は割とお客入ったね」

男「……あれで、か」

ミア「あれで、よ」

男「ま、俺は自分の料理で金が稼げれば文句はないけどな。ちなみに明日の定休日は別口のバイトを入れた」

シーリス「定休日くらい、休んだら?」

男「貧乏暇なしだ、仕方ない」

シーリス「体壊しても知らないよー……っていうか、わざと壊してミアちーの看病ねらいだな、ずる賢いやつ!」

男「自己管理くらいできる、馬鹿にしないでくれ」

…………

……

男「まだ3時か……暇は辛いな。やることがあるほうがまだ……」

ガチャ

男「……ん?」

??「あのぅ……」

男(ガキか、何しに来たんだ?……一応営業スマイルでいくか)

男「お嬢ちゃん、ここは裏口だからお店に用事があるなら表の入口から来てくれるかな?」

少女「え、えっと……あ、あの……あ、あなたは、だれ?」

男「誰、って……このカフェの厨房担当だけど」

少女「え?だって……あれ?厨房はモブ山さんじゃ……?」

男「え……だれそれ?」

男(……しかし、最近のガキは髪を真っ白けに染めて……親の顔がみたいぜ、全く)

男(肌も病的なくらい白いし、カラコン入れてるのか真っ赤だし……)

少女「あ、あなたはだ、誰ですか?ここはヘブンリーハグじゃあないんですか?け、けいさつよびますよ……?」グスッ

男「だぁぁぁぁっ!ちょっと待て!待て!何か誤解だろそれ!」

シーリス「どしたん男っちー……って、マシロン?」

少女「し、シーリスぅ!」ダキッ

シーリス「男っち、マシロン泣かせたらダメだよ。ホイップクリームでえっちくデコろうとした?」

男「誰がするか!」

男「……つまり、休んでたもう一人の従業員か」

少女「ま、ましろ……真子のまに白子の白で“真白”です」ペコリ

男「もうちょっとましな説明は……まぁいいか。男です。よろしく」スッ

真白「ひっ?!」ビクッ

男「……握手しようとしただけでビビられると、逆にこっちが泣きそうだ」

真白「ご、ごめんなさい……えっと……よろしく……お願いします……」

シーリス「でもさぁ、マシロン、金曜日からじゃなかった?」

真白「……あの、病院の診察早く終わって……ごめんなさい、迷惑ですよね……」

シーリス「なんでなんで?大歓迎だよーっ!」

真白「シーリス……あ、あり、がと……ちょっと苦しい……」

ミア「はーい、これで明後日からはヘブンリーハグは平常運転。改めて頑張りましょ」

ミア「真白は厨房の中確認して、発注するものは一覧出してくれる?」

真白「鍋……」

男「ん?置き場所変えてたか?」

真白「いえ、大丈夫……磨いたんですね……」

男「全部な」

真白「……」

男「どうした?」

真白「いえ……な、何も……ご、ごめんなさい」

男「謝るような事してないのに、謝るなよ。製菓が得意だって?」

真白「……は、はい……」

男「……俺、そんなに怖い?」

真白「いえ……男の人は全般的に苦手で……」

男「ああ確かに深窓の御令嬢、って感じはするかも」

真白「……あ、あの……ごめんなさい……実家はただの和菓子屋で……」

男「すぐに謝るなって」

真白「ご、ごめ……あ、その、すいません……」

男「言い方変えただけじゃねーか」

真白「う……」

男「……メニューにティーセットがあったけど、お茶請けは岩国さんが?」

真白「ま、ましろでいい、です」

男「……真白さんが作ってるのか?」

真白「は、はい……だめ、ですか?」

男「いんや、そんだけ華奢な腕でよく作るなって。俺の知ってるパティシエールはみんなある程度ゴツいんだ」

真白「……やっぱり、だめですか?私なんかが作るのはおこがましいでしょうか?」

男「だぁぁもう!そうじゃねぇって!すげぇな、ってこと」

男「今度、作ったら食わせてくれ。ついでに作り方教えてくれ。どうにも菓子は苦手なんだ」

真白「……は、はい」

真白「ミアさんこれ……リストです。それじゃあ明後日11時で。男さんも……足引っ張らないように頑張りますから」

シーリス「マシロン、外から見えない厨房でなんかされたら、しっかり抵抗して声上げなきゃだめだよ?」

男「しねぇよ!この前といい、お前はどうしても俺を犯罪者に仕立て上げたいみたいだな!」グイー

シーリス「いひゃいいひゃい!ほっへひゃひっひゃるひゃ!」

真白「……ぷっ、くすくす」

男「なんだよ……笑ったら可愛いじゃん」

真白「!?」ボンッ

真白「ひぇっ?!かっかかかかかわいくないです!」プシュー

シーリス「女たらしが出たぞー!」

ミア「最低ですね」

男「おいシーリス!そこまで言わなくてもいいじゃねーか!」

ミア「私も気をつけなきゃ」

男「ミアさんまで!?」

シーリス「ゲートボール同好会のおばあちゃんたちにも伝えておくねー」

男「まじでやめろ」

ここまで。

---
いつも支援ありがとうございます。

>>77
化け狸の血が混じってます。
そのせいかカチカチ山のごとく、乗った船(=以前勤めていた店)が泥船だったり家が火に包まれたりしてます
気絶するのは擬死する習性の遺伝子が発現してしまったため。たまたまのサイズは普通

屋島の禿狸
芝右衛門狸
證誠寺の狸
団三郎狸
から1文字ずつとって、屋芝誠三(ただし、今後も表記は”男”)

────翌日10時@街中のレストラン

男「ここ、か」

男友「おっす、急に呼び出して悪いな……追い回しがひとり、ノロウィルスでやられてな」

男「あっちゃぁ……」

男友「で、今日に限って貸し切りでウェディングが入ってててんてこまい」

男「ま、金がもらえるなら皿洗いだろうがウェイターだろうが何でもやるさ」

男友「はは、フロアは人いるから大丈夫。まあ、ぶっちゃけ野菜の下ごしらえと皿の上げ下げを頼みたい。払いも悪くてすまんが……」

男「いいよいいよ、その代わり料理の腕は間近で見せてもらうぜ、同期の出世頭さん?」

……

男「野菜、切り終わりましたっ!」

シェフA「次、こっち頼む!2cmサイズで、角落としてくれ」

男「はいっ!」

トントントントン...



シェフB「おぉい、鍋洗ってくれ!」

男「はい!」

男「……」ペロン

男「アメリケーヌソース……このコクとエビの甘味……エビのミソだな……なるほど……」

シェフC「おおい、これも頼む」ガチャン

男「っと……はぁい!」

ジャブジャブジャブ...

……

男友「皿下がったら、メインいくからなー!」

シェフA「おい臨時!ソース保温庫から出してくれ!」

男「はいっ!」カチャカチャ

シェフA「よし、貸してくれ……お前はカバー外して回れ」

男「うっす!」



シェフC「おい、皿たまってるぞー!」

男「すいません!今いきまーす!!」

男友「すまんな、こんなことまで……」

男「いいっていいって」

……

男友「おつかれ」

男「お疲れさん……ひっさびさに皿洗いまでやったよ……」

男友「……聞いたよ、店の話。ひでぇなぁ」

男「……もう済んだことさ。追いかける時間も金もないよ」

男友「おっと、忘れないうちに。これ、今日の日当」

男「ありがとう。本当に助かるよ」

男友「また頼むな」

男「次はスーシェフが休んだ時に呼んでくれ」

男友「バカ言え、ブッチャーかアントルメティエか……」

男「料理学校時代はよく、どっちが先に総料理長になるか、なんて言ってたけど……お前の圧勝だな」

男友「んなことはねーよ、料理長って言ったって、雇われさ」

男「俺みたいに、喫茶店のコックよりましだろ?」

男友「それじゃあ立場一緒だな」

男「全然同じじゃないだろ。昨日俺が一番多く作った料理はオムライスとカツサンドだ」

男友「美味そうじゃん」

男「……ありがと」

男友「……なぁ、もし……今の店に不満があったら……」

男「っとすまん、明日の仕込みがあるんだ……また、時間のある時に飲もう」

男友「ああ!」

男「じゃあな!!」

タッタッタッ...



男友「はは、スカウトしそこねちまったなぁ」

…………

……

男「ただいま」キィ

男(真っ暗な厨房は……やっぱ寂しいな……あいつの店には……厨房にたくさん人がいて、熱気があって、帰る時も余熱がまだ残ってた)

男(もう一度、あんな店で働きたいな……)

男「に、してもひでぇ言い訳だ。仕込むほどの料理は無いじゃないか」

男「……日当で早速買った酒でも飲んで寝るとしようか」

男「……」

男「ん?フロアに灯りが……」

ミア「……」スゥ...スゥ...

男「あーあ、客席に突っ伏して寝て、風邪ひいても知らねぇぞ」

男「大体何やって……ああ、帳簿か」

男「……」パラ

男「…………」パラ

男「ったく、俺に給料払う余裕なんかないじゃねーか」

男「……」ナデリ

ミア「……ん」

男「……っと」

ミア「……むにゃ」

男(上着でもかけておいてやるか)ファサ

男(ったく、ロハで飯作るなんてどうかしてる)

男「牛乳、小麦粉、たまねぎ人参じゃがいも、白ワインにバター」

男「ベーコンのかわりにソーセージ。あさりも欲しいが冷凍のシーフードミックスで我慢だな」

男「真白さん、すまん。生クリーム借りるぞ」

トントントン...

カチャカチャ...

クツクツクツ...

男「まだ寝てるよ……そんだけ疲れてるんだろうな……」

ミア「……」スゥ...

男「おーいミアさん、ここで寝たら……」

ミア「……かえって、くるよね?」

男「!!」

ミア「あなた……」ツゥ...

男「……なんつー寝言だよおい」

男「……」

男「夢の中くらい、幸せになればいいのに」

男「……」コトン

男「おやすみ、ミア」ナデリ

ミア「……」

ミア「……いけないねちゃっ……」パサ

ミア「上着……毛布も……」

『居眠り禁止。体を温めてから眠ること。男』

ミア「保温マグ……」カパ

ミア「クリームシチュー……じゃないのね、シーフードチャウダーかしら」

ミア「美味しい、あったかい……」パクッ

ミア「あち、ふぅふぅ」パクッ

ミア「ん、美味しい」

ミア「……上着……」

ミア「あの人に似てるけど、違う匂い」スンスン

ミア「……」

ミア「…………」ギュゥッ

ミア「て、何してるの私……も、もう一頑張りしなくちゃ」

――――翌朝@2階廊下

男「ふぁ……ぁぁぁっ!」ガチャ

ミア「んっ……んんんっ!」カチャ

男「……あ、おはようございます」

ミア「お、おはようございます……あ、毛布なしで寒くありませんでした?」

男「いや、別に……冷たいのは潜り込んだ瞬間だけっすから」

ミア「すごい……私なんか電気毛布に湯たんぽと加湿器併用じゃないと耐えられないのに……」

男「はは、まあ……あ、先に洗面台どうぞ」

ミア「ありがとうございます、あの……シーフードチャウダー、美味しかったです」

男「ありがとうございます。本当は殻付きアサリがあれば良かったんですが」

ミア「また、作ってくれますか?」

男「……頼まれればいつでも。事前に言ってくれれば、もっと美味しい物を」

ミア「じゃあまた、来週の定休日の夜食が、いいです」

男「太っても知りませんよ?バターに生クリームに牛乳白ワイン、けっこうカロリーが……」

ミア「でっ、デリカシーに欠けてます!」

男「っと、失礼しました」

ミア「……あ、あの、昨日寝言で何か言ってませんでした?」

男「……『待って私の特撰肉まん!』のことですか?それとも『麻婆豆腐定食ご飯大盛りとビール!』のことですか?」

ミア「な、わ、私そんなことを!?い、いつもそんなに食い意地はってるわけじゃないですからね!?」

男「冗談です」

ミア「も、もう!……じゃ、お先に洗面台使います。今日も一日頑張りましょうね、男さん」

男「……ええ」

めぞんいっk……いやなんでもない

支援ありがとうございます

>>110
書き始めてから「あっ」って思ったんです、目をつぶってください

投下……の前に、おまけ

────1月某日昼下がり@カフェHeavenly Hug店内、雑談中

男「そういえば、ミアさんはラミアですよね……その……体温は変温、それとも恒温?」

ミア「!!」

ミア「お、女の子にそんなこと聞くなんて最低です!」プンスカ

真白「……幻滅しました」

シーリス「セクハラだー……」

男「な、え、そうなの!?……っていうか女の”子”?」

ミア「男さん?」

男「はい、すいません」

シーリス「男っち、亜人と接しなれてないでしょー」

男「まぁ、な」

ミア「そ、その……ラミアも色々いて、その……」

シーリス「つまりね、耳貸して?」

男「ん」

シーリス「『今日体温何度?排卵期?』って聞いてるのと同じくらいセクハラだよー」ゴニョゴニョ

男「まじか」ボソッ

シーリス「マジもマジ。生活パターンどころか生殖方法まで変わるから。訴えられたら100%有罪」ボソボソ

男「……申し訳ありませんでした、クビにしないでください」

ミア「まぁ……知らずに言ったことですし、1回目ですから大目に見てあげます」

男「は、はぁ……温情措置に感謝します」

シーリス「まぁ、ミアちーは恒温性だから、冬場の朝が弱いのはただの冷え性なんだけどねー」

ミア「ちょっとシーリス!」

シーリス「だって毎朝起こすの面倒くさいんだもーん。たまには自分で起きてよ」

ミア「4月になったら考えるわ」

--- おまけここまで ---

────2月某日@カフェHeavenly Hug 厨房

シーリス「ボロネーゼ入るよー」

男「はいよー……真白さん、アスパラ切ってくれる?」

真白「……は、はい」ボソッ

男「真白さん?」

真白「は、はい、アスパラですよね、切ります……ご、ごめんなさい!」

男「……よろしく」

真白「……」ハァ

真白「あ、あの……男さん……」

男「いざすーすーめーやーキッチーン、と♪」ポフポフ

真白「お、男さん……あの、すいません……」

男「めざすーはー……ん?どうかしたか?」

真白「あ、いえ、その……なんでもない、です」

真白「きゅ、休憩もらいます、ね……」

男「え、なんだって?」

真白「あ、あの……休憩……」

男「え、ああ……ゆっくりどうぞ」

ミア「男さーん……こらえてくださいね」

男「まだ何も言ってませんが」イライラ

ミア「その声色で分かりますって」

男「むぅ……」

ミア「真白は、悪い子じゃないんです。ただちょっと……人見知りというか、恥ずかしがり屋というか……」

男「分かってます。努力します」

ミア「お願いしますね?」

真白「……あの、休憩、いただきました」

男「ほいよー。俺は少し出てくるから。何かあったら連絡してくれ」

真白「……は、はい」

男「……」

真白「あ、あの、今日は後でジャムを……」

男「んー?」

真白「すいません、なんでもないです……」

男「……?」

男「留守番、頼むな」

真白「はい……」

男「ただいまー……お、何してるんだ?」

真白「!!」ビクン

男「っと、すまん」

真白「いえ、その、ごめんなさい……あ、おかえりなさい……その……」

男「マーマレードか。何をすればいい?」

真白「え、えっと……伊予柑の皮を細切りにして、水にさらしてもらえますか?」

男「すまん、もう一度頼む」

真白「伊予柑の皮を、細切りに」

男「お安い御用で」

…………

……

────翌日、午前10時@カフェHeavenly Hug

ミア「男さん、これは?」

男「ランチ限定テイクアウトサンドイッチの試作品。少しでも売上貢献になるかと思って」

ミア「……」

男「サンドイッチ、コーヒー、お手拭き、ビニール袋。売値は500円」

シーリス「美味しそうじゃん」ヒョイ

シーリス「ん~……むぐっ……ん、美味しいー。マシロンもどぞー」

真白「……根菜サラダ、ですね……しゃきしゃきで美味しい、です」

男「ターゲットはOL。10時30分から作り始めて1時間で40食作る」

男「30食で元が取れる。利率は良くないが、客に店の名前を覚えてもらうことも……」

ミア「却下します」

男「にべもねぇか……理由は?」

ミア「1時間で作るといいましたが、10時半から11時。お客様はお昼の前の静かな時間を求めて来られます」

ミア「10時半からはBGMも小さめに、接客の声も落としてます。にもかかわらず、厨房でガチャガチャ音を立てるのですか?」

男「火も包丁も最低限。根菜は灰汁抜きがあるからメインの調理は前日だ」

ミア「同じメニューでは飽きられるでしょうね」

男「品は日替わりにする。ハムチーズ、卵、ネタはなんでもいい。なんたってサンドイッチだ」

ミア「……分かりました。調理して、パックに詰めて……どこで売ります?」

男「街頭にワゴンを出す形だ。コーヒーもウォーマーで温めて、カップもフタ付きのものを」

ミア「確かに。オフィス街は近いし、裏道にある店の前では売り切るのは難しいでしょう……」

ミア「で、誰が売り子を?」

男「真白さんだな」

ミア「却下します」

男「厨房は俺ひとりで回す」

ミア「……だめです。忙しくなればそれだけミスの危険も増えます。店舗が第一です」

男「……」

ミア「他にも、ワゴンの手配や金の出入り、撤収、もし事故や犯罪に巻き込まれたら、その時の対応や責任は?」

ミア「許可の問題や食中毒の危険性もあります。提案はありがたいですが、リスクが大きすぎます」

男「ミアさんが出てもらう、というのは?」

ミア「この姿で他人の好奇の視線を集めるのには慣れていますが……」ニョロン

男「いや、すまん。そういうつもりではないんだが」

ミア「どうしてもこのお店から離れたくない……理由がありますので」

男「……分かった、この案は諦める」

ミア「次が見つかったら教えてくださいね、期待してますから」

真白「……だめ、でしたね」

男「まあ仕方ないな。よし、昼の準備だ」

真白「私が……足手まといだから、ですよね」

男「んなことミアさんは言ってなかったろう」

真白「でも!……その……」シュン

男「……その?」

真白「私はあがり症で声も小さくて……ワゴン販売できないし」

真白「シーリスがワゴンしてる間、代わりにサービスできないし」

真白「結局、私は……」

男「……」ハァ

男「まず、シーリスや真白さんに相談してなかった。無理だって分かってたら出さなかったよ」

男「それに、作れば売れると思っていたのも見通しが甘かったな。つまり俺が悪い」

真白「でも……」

男「……多分、ミアさんも考えてた事なんだよ。無理だって分かってて、それでも俺に発言するチャンスをくれた」

真白「……でも」

男「でもはいいって。ほら、サラダ皿並べてくれ」

真白「は……はい……」

男「……」



男「聞こえねぇっ!」

男「皿を置く音、フライパンで炒める音、材料を切る音っ!」

真白「!!」

男「厨房の中は工事現場と一緒だ!指示が、フロアからのオーダーが!通ったかどうかの返事がないとなぁ……」

スゥゥ...



男「そこにいねぇのと同じなんだよぉっ!!」キィィン

真白「!!」ビクッ

男「おら、背筋伸ばせ猫背になるな」ポン

真白「!」

男「足は肩幅、手はへその下!」

真白「こ、こうで……」

男「違うもっと、こう!」グイッ

真白「ひゃっ?!」

男「ゆっくり大きく息を吸え、そしたら空気の塊を……下におろしていく」

真白「?……すぅぅ」

男「へその下拳一個分!ここに意識を集中しろ……いいか?」

真白「!」コクコク

男「よし吐き出せ!」

真白「はいっ」

男「だめだ!目をつぶるな!」

真白「はいっ!」

男「さっきよりいい。でもまだ届かねぇな……さっきのイヤな思いを全部丹田……へその下に押し込めろ」

ガシッ

真白「ひっ?!」

男「腰をひくな、背中に一本、棒を入れたつもりで立て」

男「声は前に出そうとするな、頭の上から山なりに声を出すつもりで……ほれっ!」ポンッ



真白「はいっ!!」

男「どうだ?ホール組」

シーリス「おっけいじゃなーい?」

ミア「ええ、これならちゃんとオーダー通ってること、分かります」

シーリス「マシロンは合格。でもね、男っち……その……」

ミア「ところで男さん、真白のどこを撫でたりしてるんです?」

真白「……」カァァッ

男「え?……あ」

シーリス「あ、もしもし警察ですか?痴漢です。人気のない店内で下腹部やお尻に手を伸ばして撫で回してます」

男「ま、まってくれ誤解だ!」

真白「……もうお嫁にいけない……」クスン

ミア「……減給2ヶ月」

男「弁明の機会をくれぇ!」

…………

……

男「本当にすいませんでした」ドゲザッ

真白「大丈夫です……これからもご指導、よ、よろしくお願いしますっ」

男「おう」

ミア「お客さんよ、ポークピカタランチとバーグランチ」

男「……聞こえたか、真白」



真白「はいっ!」

ここまでです。

この世界にはスライム娘はいるのかな?

支援ありがとうございます

>>134
いるのではないでしょうか。なんでもありの世界ですから。
頭にケガを負って動かせない人を包んで運んだり、酸で服をはがしたり
救急隊で活躍するスライム娘なんかがいてもいいかもしれません

でも頭によぎるのは、正気度判定に失敗して発狂する男と微笑むショゴスっ娘……

────数日後

真白「休憩もらいますね」

男「いってらっしゃい。オーブンを予熱しておけばいいんだっけ?」

真白「はい。あとホイップ用に氷水とボウルを用意しておいてください」

男「了解」

パタパタパタ...

男「オーブン予熱180度、っと」

男「あとはホイップクリーム用に電動ミキサーとボウル2つ……」

男「大きい方には氷水、小さいほうはよく水気をふきとって……と」

ミア「男さーん、洗い物お願いしまーす」

男「はいよー」

真白「……ふぅ」

真白「う……やっぱこの形は辛い……」

真白「と、とりあえず広い場所……2階の倉庫なら、誰もこない……ですよね……」

トントントン...ガチャ

真白「よ、い、しょ……」シュルリ

真白「……」

ググ

グググググ...

ミア「さっきのお客さん美味しそうに食べてましたよ」

男「やっぱこの、空っぽの皿が帰ってくるのは料理人冥利に尽きるってものですね」

ミア「ふふ、じゃあお皿おねがいしますね」

男「はいはいっと……あれ、洗剤切れてるな。ストックも……ないか」

男「ミアさん、上の倉庫から洗剤とってきます」

ミア「はーい」

男「……予熱は一旦切って、と」

トントントン...

男「たまねーぎ、目にしみてーも、なみーだこらえてー♪、と」

男「いためよーぉー、ミンチ、塩コショウ……に加えて風味にナツメグも入れたいところだな」

ガチャ

男「……」

白蛇「……」

男「……」

白蛇「……」シュルルルル...

男(倉庫兼寝床のドアを開けたら白い大蛇がいた)

男(何を言ってるか分から……な……)クラッ

バターン!!

白蛇「!!」

シーリス「男っちー、大きな音がしたけど大丈夫ー?」

男「」キゼツ

…………

……

男「う……」

真白「……男さん」ホッ

シーリス「やっほー、気絶キング。今回はなんで気絶したの?鷹が空飛んでたから、とかじゃないよね?」

男「……」

男「そうだ、蛇!」

シーリス「へ、蛇?」

男「そう、倉庫に真っ白くて赤い瞳の大蛇が!とぐろだけで俺が絞め殺されそうなほどの……」

シーリス「そ、それは……その……つ、疲れてるんじゃない?」

男「そ、そうだよな……」

ミア「3人ともー、遊んでないでお仕事してちょーだーい!」

真白「は、はーい」

シーリス「んじゃ、お仕事お仕事」

男「しまった、予熱やりなおさなきゃ」

トントントン...

シーリス「マシロン……大丈夫?」

真白「だ、大丈夫……」

シーリス「……気をつけなきゃ」

真白「ご、ごめんね……どうしても我慢できなくて……」

シーリス「言えばちゃんと見はったんだから、ね?」

真白「ごめんね、シーリス」

シーリス「まぁでも、男っちでよかったじゃん。変な夢を見たですましてくれそうで」

真白「そ……そう、だね」

シーリス「よっし!仕事仕事!!」

キテレツの歌とか懐かしいなwww

>>143
お料理行進曲もいいですが
メリーはただのトモダチとかスイミン不足もいい曲ですよ

過去作も読んだ
支援

>>146
ありがとうございます

---

────2月13日木曜午後3時 カフェHeavenly Hug 厨房

ミア「で」

シーリス「定休日の厨房に集まったけどさー」

真白「明日はバレンタインデー……チョコ作り、です」

シーリス「本命にあげるチョコにしては分量多くない?」

真白「え、あ、お、男さんにあげるのは家で、その、これはお店のサービスの一環で、つまり……」

ミア「お茶請けのお菓子を明日だけチョコに。初の試みね」

シーリス「ていうか、男っちに特別なチョコあげるんだー」

真白「え、あ、ちがくてそのっ!別に変な意味じゃなくていつもお世話になってるから……その……あう」

シーリス「本命とは言ったけどー、男っちの名前は出してないよねー」

真白「そっ、それは……」カァァ

ミア「青春ね」

シーリス「だねぇ」

シーリス「よし、マシロンからかうのはこれくらいにしてー、何すればいい?」

ミア「と言っても厨房は私サイズじゃないし……入れないことはないけど」

シーリス「私にいたっては長時間見つめてると電子レンジやミキサー破壊するからねぇ……」

真白「その辺りは考慮してます……その、ミアはトッピングのナッツを砕いてください」

真白「湯せんや型に流し込むのは私が」

シーリス「じゃあ私はー?」

真白「……邪魔にならない所でじっとしてて」

シーリス「うん、わかっ……え?」

真白「……冗談。出来たチョコを入れるケースを組み立ててくれる?」クス

シーリス「き、聞いたミアちー!?マシロンがジョークを!」

ミア「男さん効果はすごいわねー」

真白「ち、ちがっ……」ワタワタ


ミア「ナッツはこれくらいの大きさかしら?」

真白「好きなだけ砕いたらいいんじゃない……」ムスー

シーリス「マシロン、組み立てた小箱、どこに置く?」

真白「……自分で考えて」ムッスー

ミア「あらあら」

シーリス「拗ねちゃった……」

ミア「もう、シーリスがしつこくからかうから……」ゴニョゴニョ

シーリス「えー、私だけ?ミアちーだって……」ブツブツ

真白「……」

真白「……」ハァ

真白「ミア、ナッツは小さく……コーヒー豆の半分くらいの大きさで」

真白「シーリス……小箱は1列10個で、テーブル3番に並べていって」

ミア・シーリス「はぁい」

真白「湯せんの温度はよし。刻んだ製菓用チョコを入れたら……ヘラでしっかりかき混ぜて溶かして……」

ミア「ナッツ割ったわよ」

真白「じゃあ大体3等分して、1つください……」

真白「鍋に加えてよく混ぜて……」ギュッギュッ

シーリス「手伝うこと、ありそう?」

真白「んと……ラッピングのリボン切って……後で調整するから長めに、ね」

シーリス「まかせてー。電子部品がない道具使うのは得意だから」

カチャカチャ

真白「ふー……後はアルミカップに少しずつ入れて冷やして……」フゥ

ミア「やっておくから、休憩してきなさい」

真白「でも……」

ミア「家に帰って、まだチョコ作るんでしょ?それに昨日は買い出しもしてくれたし。大分疲れたでしょ。あとでシーリスに甘いもの持って行かせるから」

真白「……お言葉に甘えます……その、あの、すみませ……じゃ、なくて、ありがと。これ、お願いします」

ミア「さってと、冷えて固まる前に手早くやらなきゃ」

シーリス「マシロン、いい?」コン、コン

真白「うん……」グッタリ

シーリス「平気なの?」

真白「疲れ出ちゃっただけ。横になってれば……」

シーリス「もう……これ、ロシアンティー」

真白「ありがと……美味しい」

シーリス「最近頑張ってるのは分かるけど、飛ばすと後が辛いよー?」

真白「へいき……平気……今、私、頑張りたいの……」

シーリス「心配。年末年始も大丈夫、って結局大長編崩したし……」

真白「あれは……あれはね、頑張れ、って言われて頑張らなきゃ、って張り切りすぎたの」

真白「でも今は違うよ、頑張りたいの」

シーリス「ましろ……」

シーリス「男っちのこと……好き、なの?」

真白「さぁ……自分でも分からない。追いつきたい。追い越したい……そんな気持ち」

真白「男さん、すごいの。塩の量とか味とか、ピタッと決めちゃう」

真白「私が作ったおやつやケーキも、真似して、覚えて、自分のモノにしちゃう」

真白「くやしいの。新しいものを作って、真白はすごいな、って言われたい……生まれて初めて、そう思った」

シーリス「それは恋……なのかなぁ、憧れかも」

真白「自分でもわかんない……18年生きてきて初めてだもの」

シーリス「そか。分かったら教えてね」

真白「うん」

ミア「シーリス、手伝ってー」

シーリス「はぁーい!じゃ、ゆっくり休んでー」

真白「あ、シーリス……つまみ食い、1人2個までだからね」

シーリス「へいへい」

────2月14日朝@カフェHeavenly Hug 2F居室

ピピピピピ...

ミア「……う」ペシ

ミア「さむい……」ペシペシ

ピ

ミア「…………静か……」ヒョイ

ミア「まぁ……雪……」

ミア「……」モゾモゾ

ミア「今日は……臨時きゅうぎょ……」



男「んなわけない」ペチン

ミア「ひゃ、お、男さん……!?」

男「シーリスから電話があって、雪で電車止まって出勤できないんだそうだ」

ミア「……つまりお店を開けられない、ってこと……」ウトウト

男「ミアさんが開店準備をする、ってことですが」

ミア「……うー」

男「起きて、5分で準備して、下に降りてこないとブレーカー落とします」

ミア「……それは……死刑宣告ってこと……ですか……」

男「嫌なら降りてきてください。真白にも連絡してるが、なかなかつながらなくて困ってる」

ミア「……真白はー……私より、体調が気温に影響されるから……」

男「そうなのか?」

ミア「そうなの……だってー……」

男「だって?」

ミア「…………おっと、ぷらいばしーでした」

男「……よく分からんが、まぁいい。今の会話で1分10秒消費したから後3分48……47……」

ミア「え、タイマー止めてないんですか!?き、着替えるので外に出てってくださいっ!」

男「っと、失礼」

ミア「うー……今日は昼から営業でいいんじゃないでしょうか……」ニョロン

男「いいから、コーヒーはいつもの半分の量で挽いて今淹れてる。カップの準備を」

ミア「……室内の温度が15度……寒すぎてもう死ぬ……」

男「暖房入れたばっかりですから……それにしても、気温計なしによく分かりますね」

ミア「え、ああ……ピット器官のお陰ですね」

男「ピット?」

ミア「温度を色で見ることができる……サーモグラフィみたいな……」

男「へぇ……便利ですね」

ミア「わかった所で暖かくならないので……あまり……」

男「ああ、なるほど……俺は表の雪を掃いてきます」

ミア「はぁーい……」

男「柱に寄りかかってウトウトしないでほしいんですが」

男「すげ……轍の上がうっすら積もり始めてる」

男「……」ザッザッザッ

男「…………」ザッザッザッ

男「こんなもん、かな?」

男「焼け石に水か。まぁ、今日なんて開店休業だろうからいいかな」

男「っと、こんだけ雪がたまってると……」

ギュッギュッ

男「うん、小さくても立派な雪だるまだ」コトン

ミア「おとこさーん、寒さで冬眠してませんかー?」ガチャ

男「っと、ごめん……ほれ、プチ雪だるま」

ミア「あら可愛いけど……のっぺらぼうじゃかわいそうですね……ちょっと待っててください」

男「?」

ミア「はーい」

男「コーヒー豆と、紅茶のカップセット?」

ミア「まずは、安定させるのにカップの底に雪を入れてもらえます?」

男「ご自分で……」

ミア「冬眠するので無理」

男「……へいへいっと」モソモソ

男「こんなもんかな?」

ミア「で、カップの中に雪だるまを入れたら、ミルクピッチャーを逆さまにして帽子に。スプーンは肩にもたれかけさせて……」

男「なるほど。豆を目にしたら……」

ミア「はい、完成です。ほら、可愛くなった」

男「確かに。センスありますね」

ミア「ありがとうございます」

男「玄関脇に置いておきますね」

男「あー……寒かった。でも定期的に雪かきしないと、玄関前が雪だらけですね」

ミア「そうですねー……でも、開店休業みたいなものですから」

男「ははは、じゃあ朝ごはんでも作りますよ」

ミア「はい、おねがいしま……あら?手が真赤」

男「素手で雪なんか触るものじゃないですね」

ミア「もう、料理人の手は商売道具なんですから……」ギュ

男「!!」

ミア「はぁーっ……はぁーっ」ゴシゴシ

男「……」

ミア「はい、これで暖かくなりました?」

男「……いえ、もう少しかかりそうですね」

ミア「……じゃあ、もうちょっとだけ」

カランコロンカラン...

男「!!」

ミア「いらっしゃいませ、おはようございます」パッ

客♂「やー、寒くても会社は休めないし、辛いね」

ミア「コート、おかけくださいな。男さん、温かいおしぼりを」

男「あ、ああ」

客♂「表の雪だるま見たよ、かわいいね。後で写メ撮ってもいい?」

ミア「はい、もちろん」

客♂「アメリカンコーヒーとハムエッグセット、半熟で」

男「承知しました。アメリカンお願いします」

ミア「はーい」

男「……」ジュー

男(どういう意味だったんだろ、さっきのアレ)

男(……勘違いするな、勘違いするな。女同士のスキンシップの延長上だ)

男「ふぅ」タマゴカタテパカー

男「……」チラ

男(……暇なのは暇なんだろうけどさ)チラリ

男(男性客とあんなに親しげに雑談しなくたって……)

男「……って、何考えてるんだ俺は」

男「ハムエッグあがりまーす」チリリンチリリン

ミア「あ、はーい」

男「で、あの男性客以外客足ぱったり」

ミア「仕方ないですね、雪ですから」

男「結局、真白もシーリスも今日は休みか」

ミア「あ」

男「?」

ミア「……チョコ」

男「チョコ?」

ミア「あ、いや、その、今日はバレンタインデーじゃないですか。だから、お客様のお茶うけにチョコを」

ミア「昨日作ったんですが、すっかり忘れてました」

男「ま、明日でもいいんじゃないですか?」

ミア「そうですね……今のうちにパントリーの冷蔵庫に移してしまいましょ。厨房の冷蔵庫の一番上です」

男「これか……美味しそうですね」

ミア「だめですよ?」

男「分かってますって。この年にもなれば、もらった数で一喜一憂しませんから」

ミア「じゃあ、いらないんですか?チョコ」

男「それはそれ。甘いものは好きだし、バレンタインにチョコがもらえるとなれば嬉しい」

ミア「じゃあ……これどうぞ」

男「?」

ミア「バレンタインのチョコレート」

男「ありがとうございます……ウイスキーボンボンだ」

ミア「勤務中は食べちゃだめですよ?」

男「分かってますって……ありがとうございます」

ミア「どういたしまして」

男「……」

ミア「……」

男「……」

ミア「……その」

カランコロンカラン...

ミア「!!」

男「いらっしゃいm……真白?」

真白「こ、ここここ、こんにちは」ブルブル

ミア「真白!?今日は休みでいい、って言ったのに」

真白「でもその……その……」

ミア「とりあえず、私の部屋で休んでて。お風呂入れるから」

真白「だ、だいじょぶ、だいじょうぶですから」

男「大丈夫じゃないだろ。髪も服もびしょびしょじゃねーか」

ミア「とりあえず上でシャワー浴びてきなさい。服は洗濯しておくから」

真白「は、はい……お借りします」

…………

……

男「ったく、無理せず休めばいいのに」

真白「でも、その……今日は……今日だけだから」

男「?」

ミア「あー……あー」

男「ミアさんには何か心当たりが?」

ミア「いやー、ほら、私は……ま、真白の服洗濯してきますねー」スルスル

男「……?」

真白「男さん、その……」

真白「……」ゴクリ

男「どうした?言いたいことがあるなら言えって」

真白「……これ、バレンタインのチョコ……」

男「……ああ、なるほどな。ありがとう、開けてもいいか?」

真白「……上手く出来たかわからないけど……」コクン

男「……トリュフチョコか。いただきます」パクン

真白「変じゃない……ですか?」

男「旨い。ココアパウダーも甘すぎないし」

真白「前に、その……甘すぎるのは好きじゃない、って言ってたし……」

男「クリーミーだな。ナッツがアクセントになって、飽きがないのもいいな」

真白「……よかった」

男「ありがとな。大事に食べるよ」ポンポン

真白「……ありがとう、男さん……その、私、その……」

男「?」



真白「……す……す」

男「す?」

真白「……そ、その、これからも……お願いします……」

男「ん?おお、菓子作りはこれからも真白が先生だからな。よろしく頼む」ポムポム

真白「……は、はい」ニコ

ミア(隠れて見物してみたものの……)

ミア(なんて甘酸っぱい……)

ミア(でも、男さんにチョコを渡したのは私が最初だから……)



ズキ



ミア(だから悔しくなんてな……あれ?)

ミア(……)

ミア(ちがう……あの人と男さんは違う)ズキッ

ミア(待つんだから……帰ってくるんだから……)ズキッ

ミア(だから……)ズキッ



真白「ミア?」

ミア「はひゃ!?なんでもない……よ?」

真白「のぞいてた?」

ミア「の、覗いてなんかいないわよ?ただ……その、甘酸っぱい会話が聞こえてきたから、チラ見してただけで……」

真白「……」

ミア「ご、ごめん」

真白「平気。それより……大丈夫?」

ミア「な、何が?」

真白「泣きそうな顔……」

ミア「……平気よ、なんでもない」

真白「ん……」

ミア「さ、お仕事お仕事」

真白「お客さんは少ないけど、ね」

ミア「それは言わない約束でしょ」

……………………

………………

…………

……

────2月15日 早朝@カフェHeavenly Hug店内

シーリス「で、マシロンとミアちーから本命チョコをもらったと」

男「本命じゃないだろ」

シーリス「ミアちーはともかく、マシロンの手作りチョコがド本命じゃなくてなんのかと問い詰めたい感じだねー」

男「……はぁ。つーか手を動かせ」

シーリス「んで、どっち?」

男「どっち、とは?」

シーリス「分かってるくせにー、このこのー」ツンツン

男「どっちもねぇよ」

シーリス「え、つまり本命は私だった?いやーん」

男「頭にウジが沸いてないか?」

シーリス「ひどーい、そういうこというと、チョコあげないよ?」ヒラヒラ

男「だから、そういうので一喜一憂する年じゃないんだって」

シーリス「んじゃ、あーげない」

男「いや、もらえるなら欲しい」

シーリス「なにそれー、変なの。ほい」ポイッ

男「おま、放るな!」パシッ

シーリス「それ、手作りじゃないけど、一応高い奴だから、心して食べるように」

男「おう」

シーリス「さーて、ホワイトデーに期待。私エルメスの……」

男「3倍じゃすまんだろそれ!」

シーリス「ジョークジョーク。ミアちーが食べたという伝説のクラムチャウダーでいいよー」

男「んなもん、お返しじゃなくても作ってやるよ。まずは開店準備な」

シーリス「はいはいっと……で、真白にはなんて返答するのー?」

男「まだそれ引っ張るのか……しない、って。チョコもらって浮かれて勘違いの結果イタい奴扱いはごめんだ」

シーリス「つまり、過去にそういうことが!?」

男「……ノーコメント」ハァ

----

ここまで。遅筆にお付き合い、毎度ありがとうございます

>>152
誤:シーリス「心配。年末年始も大丈夫、って結局大長編崩したし……」
正:シーリス「心配。年末年始も大丈夫、って結局体調崩したし……」

全部携帯の予測変換が悪いんです

マシロン趣味で作者やってて体調不良により投稿祭り逃したのかと、そこまで読んだのに誤字かよ!!

>>181
ごめんなさい
ガラケーが諸悪の根源です

明日東京は雪……書かれていることと一致する
これが意味するところは一つ……


ラミアカフェは実在する!

>>183-186
まさか
『この作品はフィクションです。実在の個人・企業・団体とは一切関係がありません』を
書かなきゃいけない日が来るとは……

3月いっぱい、更新滞る予定
ちょっと貧乳ぼくっ娘デュラハンが部屋に押しかけてきて
「お嫁さんにして」
って強引にせまってくるので








なら良かったんだけど、実生活バタバタしてるので。
エタらないようにします

了解、保守しとく

首がない騎士なのに男か女かわかるまいよ…

支援

右手に首持つのがデフォのデュラハンがいたはず

ともあれお疲れ
戻ってきたらバジリスクルートはよう頼む

>>194
ありがとう、釣りロマンの人。
壁に向かって話してるSS、完結乙でした。読ませてもらいました

>>195
首がないなら、スカートめくって確かめればいい!!

>>196
そっちです

短いけど投下

────3月 早朝@石動家敷地内

シーリス(……)

シーリス「さん、にぃ、いち……」

ジリリr!!

シーリス「いよっし、今日も目覚まし時計に勝ったぞー!」

シーリス「って、むなしくなるだけかー」

コン、コン

シーリス「はーい、はいはーい」

女中「お嬢様、おはようございます。灯りをお持ちいたしました」

ガチャコ...コト...パタン

シーリス「……」

シーリス「ええと、洗顔してコンタクトしてメガネしなきゃ……」

シーリス「おはよー」

女中「改めまして、おはようございます。お召し物、あたためておきました」

シーリス「ありがと」

女中「本日のご予定ですが……」

シーリス「ああ、例の晩餐会?着替えは会場のホテルでいいよね?」

女中「はい、スイートを抑えてございます。バイトが終わる時分にお迎えにあがります」

シーリス「自分で移動できるし」

女中「その自立精神はご立派ですが……」

シーリス「はいはい、セキュリティセキュリティ」

女中「ご理解、痛みいります」

シーリス「じゃあ、行ってきます」

女中「いってらっしゃいませ」

シーリス(……)

シーリス(こう見えても私は、とんでもないセキュリティの中で暮らしている)

シーリス(背中の皮膚の下には小型のGPSが埋め込まれているし、常にSPがつかず離れず監視している)

シーリス(煩わしいと思っていた時期や、出し抜こうと躍起になったこともあったけど)

シーリス(今はまぁ……野良猫がそこらにいるだけだ、と思って無視している)

シーリス(……たまーに、バイト先の売上に貢献してくれるだけ、野良猫よりはマシか)

シーリス(なんでそんなに厳重に保護されているのか)

シーリス(イスルギエレクトロニクスの社長令嬢だから、それもある。それ以上に……)



シーリス「邪眼、か」

シーリス(20世紀に入って記録が取られはじめてからの発現人数、4人)

シーリス(生存している人数、私入れて2人。しかももう1人は90過ぎたおじいちゃんで、インドのど田舎に住んでいるらしい)

シーリス(文明社会にどっぷり漬かった邪眼持ちは私だけ)

シーリス(そりゃあ……セキュリティ厳しいわ……)

シーリス(視線で男を狂わせる……ただし物理的な意味で)

シーリス(そんな性質が発現したせいで、某国の諜報部に拉致されかけたり、狂信者に殺されかけたり)

シーリス(何かと面倒くさい人生を送っている)

シーリス(研究所で詳しく調べたところ、私の邪眼は『電子回路を狂わせる』らしい)

シーリス(見つめられると人が発狂してしまうのは、人間の脳も神経シナプスという電子回路で動いている、とみなすらしい)

シーリス(そうは言っても、”目で殺す(物理)”なんて物騒な人間を野放しにはできないので)

シーリス(今は邪眼の機能を封じる保護具をつけて生活している)

シーリス(つまりは伊達メガネと伊達コンタクトレンズだ)

シーリス(ただこれにも限界があって、漏れた邪眼の力だけでも、長時間一点を見つめていると電気製品に不調をきたすくらいはできる)

シーリス(この前も電子レンジがいきなり動かなくなって、ミアちーに怒られた)

シーリス(まぁ、イスルギの最新製品を無料でお配りしているので、イーブンだと思う)

シーリス「……ふぅ、とかなんとか考えてるうちに駅か」

シーリス(どうかICカードがきちんと読み取られますように)

Pi!!

シーリス(ほっ)



シーリス(もちろん、電車の中でも気をつけないといけない)

シーリス(普段は目線下げて本を読むことで、極力視界に電気製品を入れないようにしている)

シーリス(でも最近の電車のドアの上には液晶モニタがつけられていrて)

シーリス(面白そうな雑学やニュースを流しているので要注意……)

マモナクハッシャイタシマス、カケコミジョウシャー、ァオヤメクダサイ

シーリス「おっとっと」タタタタッ

男性客「……」シャカシャカシャカシャカ...

シーリス(で、挙句隣のおっさんがこれだよ……)

男性客「……」シャカシャカシャカシャカ...

シーリス(うるさいなー……チキンか!胡椒の粉かけて振ってるのか!?あーもう静かに本も読めないじゃん……)

シーリス(……)

シーリス(……ふ、イスルギ製品じゃないな、っていうか、リンゴマークのあの会社のスマホじゃん)

シーリス(……)スチャ

バチンッ!!

男性客「……あれ?」

シーリス(これでよし。次はイスルギ製のスマホを買うがいい、ふははははー)

シーリス(……ま、邪眼対策なんかしてないんだけどさ)

テクテクテク...

老人「あら、しーちゃん、おはよう」

シーリス「おばあちゃんおはよー!今日もゲートボール部のみんなとお店くる?」

老人「ええ、寄らせてもらうわ」

シーリス「じゃあ、美味しいコーヒー淹れちゃうねー」

…………

……

シーリス「……ふぃ、とーちゃく、っと」

シーリス「おっはよー!!」

男「よう、おはよーさん。相変わらずテンション高いなぁ……ふぁ……」

シーリス「あれー?寝不足?ミアちーと朝まで!?寝不足になるくらい!?きゃーふけつー」

男「ちがうし……つーか、よほど俺とミアさんをくっつけたいのかお前は……」

シーリス「いや、修羅場が見られて楽しそう」サムズアップ

男「ちょうやめてくれ……」

シーリス「なにしてたの?ほーら、言ってみてー」

男「新メニューの開発だよ。たまには考えないとな。創作能力ってのも料理人には必要なんだ」

シーリス「ちぇっ、普通すぎてつまんない、着替えてこよーっと」

男「ついでにミアさん起こしてきてくれ。湯は沸かしておくから」

シーリス「はいはーい」



シーリス「今日も1日、頑張りましょー!」

ここまで。
シーリスの話なかったな、と思って書いた

カポーン

男(……)

男(なんだこれ……)

ガハハハハ

男(ケンタウロスが文字通り馬並みのブツを晒して談笑していたり)

ゴッシゴッシゴッシ...

男(ヘカトンケイルが頭と体を同時に洗っていたり)

ワー キャー

男(洗い場をパンの子供が駆けまわる……)

男(どうしてこんなカオスな場所に俺はいるんだ……)









────3月中旬 定休日 21:00@カフェHeavenly Hug厨房

男「……」

コトン

ミア「男さん?」

男「ああ、ミアさん」

ミア「どうしたんです?フライパンばっかり3つも4つも並べて」

男「ああいえ……新しいメニューを考えてるんですが、これがなかなか」

ミア「無理しないでくださいね。ちなみに、どんなものを?」

男「季節感があって、ヘルシーで、見た目で食欲をそそって」

ミア「……え?」

男「調理に手間がかからず、値段も予算に収まって、もちろん美味しい」

男「そんな料理を出してよミアえもん」

ミア「だ、誰がミアえもんですか!」

ミア「……そんなに、店のためにって思いつめなくても」

男「もちろん、この店で出すための新メニューです。でもそれだけじゃなくて」

男「将来、自分の店を持った時には、否が応でも作らなきゃいけませんから。練習ですよ」

ミア「はぁ……」

男「大丈夫、明日の仕事には影響しないところで切り上げます」

ミア「そうですか」

男「なにか、用事があったんじゃないんですか?下まで降りてきて」

ミア「いえ、お風呂、先にもらいますね、って言おうと思って」

男「どうぞどうぞ。ゆっくりあったまってください」

ミア「本当に、根を詰めすぎないでくださいね」

男「ええ」

ミア「……」

男「まだ、なにか?」

ミア「……あの」

男「?」

ミア「私って、その、ふ、太いですか?腰回りとか……」

男「え?」

ミア「だって、ミアえもんって言うから……あのネコ型ロボットって、身長と体重と胴回りが同じサイズで……」

男「……ぷっ」

ミア「わ、笑わないでください深刻なんですから!」

男「まさか、ミロのヴィーナス、サモトラケのニケに勝るとも劣らぬ、ナイスバディです」

ミア「あ、ありがとうございます……」

男「……」ポリポリ

ミア「……」

ミア「あ、じゃあ、その!はい、お風呂入ってきますね」

男「どうぞどうぞ」

男「……風呂か」

男「いや、その前に新メニュー新メニュー」

男(ミアさんの湯あがり桃色肌のソルベ……じゃなくて)

男(やっぱ肉か?鶏肉を使えばヘルシーだけど……胸肉か……胸……)

男(ミアさんのけしからんサイズの胸に頭をうずめて……)

男(いや、ちがうから。ちがうからね)

男(……)

男「あーもうだめだ、ミアさんが風呂上がったら終わりにし」



ミア「お、おとこさーん……お風呂が……」

男「?」

男「見事に水ですね。自動湯沸かし器が壊れたのかな?」

ミア「ピット器官がなかったら即死でした……」グスン

男「そんなに?」

ミア「……直りそう、ですか?」

男「無理っぽいですね。電池が切れたくらいならいいけど、俺は料理人でガス屋じゃないんで」

ミア「知ってます」

男「明日、ガス屋を呼ぶしかないですね。近くに銭湯があればいいんですが」

ミア「ありますよ」

男「そうなんですか?知らなかった」

ミア「あーその、あまり男さん向けじゃないというか……」

男「……なんですその銭湯。女性専用の岩塩浴ができるスパなら知ってますけど」

ミア「いえ、そうじゃなくて……」

男「じゃあいいじゃないですか。案内してくださいよ」

ミア「じゃあ、準備しますね」

……

ミア「よい、しょっと」

男「何ですかこのやたら長い布は……一反木綿?」

ミア「に、乗って外出できれば楽チンですけどね」

男「偉い坊さんがつける、とんがった帽子みたいですけど」

ミア「もしかして、水冠や誌公帽子のことですかね?」

男「いや、俺もなんとなくイメージだけなので、名前までは……」

ミア「これは靴……のようなものです。この、トンガリコーン部分に尻尾の先を入れて」スポッ

ミア「後はお腹の下に敷いたら、こうやってマジックテープで留めていけば……」

ミア「じゃじゃーん!これで外をうねうね歩いてもお腹が汚れませーん」

男「おー……うまくできてますね」

ミア「さ、タオルと着替えも持ったし、出かけましょ」

男「へーい」

一週間って短いようで長いな
はよはよ

>>224
待たせてごめん
投下

男「……う、あ~~~っ!」グデー

男(大型の亜人が多いからか湯船が深いけど、肩までしっかり浸かれて悪くないな)

男(洗い場、電気風呂、水風呂、サウナ、壁には赤富士の絵……THE・銭湯って感じだけど……)



パン「それーっ!」ドボーン!!

ケンタウロス「こらーっ!!湯船で遊ぶなーっ!!」

パン「はーい」ケタケタケタ

ケンタウロス「悪いね兄ちゃん……隣失礼」ドブン



男(やっぱり混沌としてるな……)

ケンタウロス「……」ジーッ

男「……」

ケンタウロス「……」ジーッ

男「あ、あの、何か……?」

ケンタウロス「おう、ごめんな!いやぁ、見た目混ざってない奴って珍しいからな」

ヘカトンケイル「だめだよケンさん、怖がらせたら」チャポン

ケンタウロス「わりぃわりぃ」

ヘカトンケイル「でも、珍しいよね。なんでよりによってここに?近くに極々普通のスーパー銭湯あるでしょ」

男「あーいやその、職場の同僚に誘われて」

ケンタウロス「へーぇ。その人は何が混ざってるんだ?」

男「ああ、蛇……っていうかラミアなんだけど……」

パン「あの、おっぱい大きいおねーさんのこと?」

ケンタウロス「へぇ、やるじゃんお兄さん、彼女か?彼女なのか?」

男「いや、仕事の同僚ですって」

ケンタウロス「くーっ!若いっていいなぁ。同棲中の二人、風呂なし4畳のアパートで身を寄せあって……」

パン「どうせーてなーにー?」

ヘカトンケイル「パンくんはまだ知らなくてもいいの。っていうかケンさん、今時そんな貧乏生活しないでしょ」

男「そもそも同棲じゃな……いんですが」

ケンタウロス「いやいやいやいや、ただの同僚が銭湯にホモサピ連れてくるわけないじゃんよー」

パン「ほもー!」

男「性癖的にはノーマルだ!」

ケンタウロス「っていうかよー、ヘー坊、お前はいつになったら彼女ができるんだ?」

ヘカトンケイル「い、いつだっていいだろ!」

パン「ホモのおにいちゃん、ヘー兄ねぇ、この前も合コンでお持ち帰り失敗したんだよー!」

ヘカトンケイル「てめぇガキ!」

パン「にげろー!」キャッキャッ

ケンタウロス「風呂ではしゃぐなー!」

パン「おにいちゃんはー何がまざってるのー?」

男「俺か?俺は……調べたことないんだよな」

パン「せんみんしゅぎしゃ?」

ヘカトンケイル「どこでそういう言葉を覚えてくるんだお前は……」

パン「んー、ママがねー、たっくんのお父さんは”せんみんしゅぎしゃ”だから遊んじゃいけません!って!」

男「難しいんだなぁ」

ケンタウロス「ま、あんたは俺たちを変に意識しないでいてくれるみたいだし、仲良くしたいもんだ」

パン「いぇーい!なかよしいぇーい!」バシャァ

男「お前、親しき仲にも礼儀あり、ってことわざ覚えような」ポタポタ

ケンタウロス「すまん、あとでお尻ペンペンしとく」

男「よろしく頼む」

……

パン「きゅーじゅ、きゅーじゅいち、きゅーじゅにー……」

パン「きゅじゅさきゅじゅしきゅじゅごきゅじゅろくきゅじゅひちきゅじゅはちきゅじゅきゅひゃく!!」ザバー

ケンタウロス「最後まできちんと数えなさい」

パン「えー!」

ヘカトンケイル「ケンさんいいじゃないっすか」

ケンタウロス「しゃあねぇなぁ……んじゃな、兄ちゃん、お先に失礼」

男「へーい。またなー、パンくん。今度店にも遊びに来てくれー」

ケンタウロス「いいなぁ、俺もサ店でレイコのみて~よ」

ヘカトンケイル「今時アイスコーヒーのことレーコって呼ぶ馬、初めて見たよ」

ケンタウロス「いいだろ別に。ケンタウロスって大抵どこの店もはいれねーんだよなぁ」

ヘカトンケイル「俺は大丈夫だ」

ケンタウロス「けっ、けっ、いいもんねー。今度合コンで知り合ったおねーちゃん背中に乗せて遊びにいくから!」

ヘカトンケイル「大抵、昼間改めて見ると化粧が濃かったり微妙な法則」

ケンタウロス「うっせ」

チャプン

男「……ふぅ」

男(……案外、普通の人たち、なんだよな……)

男(いや、分かってたことか。ミアさんだって、そうだもんな)

男(ミアさんとシーリスと真白と……仲いいもんな)

男(むしろ怖いのは、俺があの3人にとって異物じゃないか、ってことだな)

男(……)

男(いやいやいやいや、考えてない、ハーレムなんて考えてないぞ俺)

男(美女3人に囲まれて混浴露天風呂とか一切考えてないから)

男「とりあえず考えても仕方ないから、泡風呂と電気風呂と」

男「へぇ、足湯に打たせ湯まであるのか……一通り試してみるか」

…………

……

ミア「男さんおまたせし……てないのかな?トイレかしら……」

ミア(普通、男の人が先に上がってるもんだと思うんだけど)

ミア(あの人はカラスの行水で、湯冷めしちゃうくらい長い間待っててもらってたな……)

ミア(やめよう)

ミア「あ、マッサージ椅子空いてる」

ミア「ふいー……えーと、コースは……『肩こり殲滅モード』っと」pi

ミア「あた、あたたた……」グィングィングィン...

ミア「あー……肩こりにきくぅ……」クテー

ミア「いだ、いぎっ!うにゃっ!?」ギチギチギチ...

ミア「うあ、そこピンポイントすぎっ?!」ガダダダ...

ミア「う、うそ、そんなところま、ひぃあぁぁぁ」ギュイーム

男「長湯してしまったなぁ……ミアさんおまt────」

男「!?」

ガダダダダ...

男(微細なもみ玉の動きにあわせてキャミソールに包まれた胸が……ぷるぷると……)

男(うん、周りの男性客の視線が釘付けすぎてこっちまで恥ずかしくなるな)

男(あーあー、恍惚の表情まで浮かべてもう……)

男「おじさん、コーヒー牛乳2つもらうよー」

番頭「はいよー、220円ね。瓶はデポジットで1本10円戻るから」

男「ん」チャリン

ミア「……はひー」ブルブルブル...

男「ミアさん」ピト

ミア「ひゃひっ?!」ドキンッ!!

男「おまたせしました」

ミア「あ、はひ、またされました」

男「とりあえずその、目の毒なので、上着着ましょうか」

ミア「ど、毒、ですか?」

男「少々ご自分のサイズというものを自覚していただきたい」ハァ

ミア「そ、そりゃ、下半身がお……長いので場所とることは自覚してます!」

男「……そっちじゃなくて」

ミア「え?」

男「いいから、服着る。はい、右から袖通して」

ミア「あ、ありがとうございます」

男「ボタンもきちんと留めてくださいね」

ミア「むぅ……上の方までなかなかとまらないんですよね……」

男「またそういう……」ボソ

ミア「え?」

男「いいえ何も」

男「これ、おごりです」

ミア「あ、コーヒー牛乳。ありがとうございます」

ミア「謎の飲み物ですよね。コーヒーでも牛乳でもなければカフェオレでもない」

男「コーヒー牛乳です」

ミア「……」ジー

男「どうしたんです、そんな瓶を見つめて……ああ、把握」

ミア「は、把握しないでください」

男「砂糖の塊飲んでるようなものですからね。でも気にするほどじゃないと思いますけど」

ミア「そ、そうじゃなくて……私の場合、栄養が胸に……服のサイズが……」

男「そういうものなんですか?」

ミア「そういうものなんですっ!でもまぁ、せっかくですので」キュポン

ミア「ええと、右手は腰に、瓶を持った左手の小指は立てて、今年の恵方をむいて一気飲み、ですよね」

男「混ざってる混ざってる」

番頭「まいどー」

男「ふぅ……遅くなってしまいましたね」

ミア「ええ。明日も早いし、帰りましょうか」

男「けっこういい気分転換になりました」

ミア「そうなんですか?」

男「新しいメニューが思いつかなくて煮詰まってましたから」

男「ありがとう、ミアえもん」

ミア「ま、またそういう事言う!減給しますよ!」

男「あいや本当に勘弁して下さい」

ミア「ふふ、冗談ですって……あら」

男「ん……おお、綺麗な月ですね。もやがかかって幻想的だ」

ミア「ですねぇ……少しだけ欠けていて」

男「こういう情景を歌った歌がありましたよね」

ミア「朧月夜、ですか?」

男「どんなでしたっけ?」

ミア「”菜の花畑に、入り日うすれ、見渡す山の端、霞深し……”」

男「そう、それそれ」

ミア「この歌……私が日本に来るきっかけになった歌なんですよ」

男「へぇ……なんでまた童謡で日本に?」

ミア「フランスに日本の合唱団が来てパリで公演したんです」

男「それを聞きに行って?」

ミア「いえ、その時はまだ小さかったし、TVのニュースで見ただけ」

ミア「でも……とても印象的で」

ミア「コレージュ……えっと、日本でいうところの中学校の選択クラスでは初級日本語とったり」

ミア「フランス語で日本語の童謡を歌ったCDを集めたりしました」

男「勉強家ですね」

ミア「日本語の教科書の数より、少女マンガのほうが多かったりしましたけど……」

男「ははは」

ミア「リセを出て……日本の大学に留学して、そして……」

男「……」

ミア「……一度はフランスで亜人向けの日本語講師なんかもしてたんですけどね」

ミア「結局、日本でしっぽに根が張っちゃって」

男「へーぇ……面白いことが聞けました。日本語がお上手な理由とか」

ミア「褒めても何も出ませんよ」

男「じゃあ、菜の花畑は見にいかれたんですか?」

ミア「それが……まだ。いつか行こう、って約束したんですけどね……」

男「どうし……て」

ミア(……)

男(その顔見れば、誰と約束したかなんて一発でわかる、か)

男「なかなか難しいですよね。菜の花を広く栽培していて、入り日ってことは夕方で」

男「春霞がかかるような地形で、かつ夕方月が昇ってくるってことは満月かそれに近いでしょ」

ミア「え、ええ……」

男「そりゃ、なかなかどうして合致した場所を探すだけでも難しいし、気象条件だってありますもんね」

ミア「そ……そう、ですよね。そうなんです。お店も離れなれないし、なかなか」

男「……」

ミア「……」

男「いつか、見に行きましょう」

ミア「え……えっと、ふ、二人きりで、ですか?」

男「シーリスと真白と4人で、のつもりだったんですが。二人きりがよければそれでも」

ミア「い、意地悪……」

男「失礼しました……あ」

ミア「?」

男「もう1回、歌ってもらってもいいですか?」

ミア「え、えっと……」

男「さん、はい」

ミア「え、ええっ!?……”菜の花畑に、入り日うすれ”……」

ミア「”見渡す山の端、霞深し……”」

男「”春風そよ吹く、空を見れば”」



「「夕月かかりて、におい淡し」」



男「いい声ですね」

ミア「あ、ありがとうございます。男さんだって、歌えるじゃないですか」

男「そういえば音楽の授業で歌ったの、思い出しました」

男「……ミアさん」

ミア「は、はい」

男「ありがとう」

ミア「え!?え!?な、なんですか急に!?」

男「いえ、ちょっと試してみたいことができたんです。ミアさんの歌のおかげです」

ミア「え、あ、はぁ……」

男「ちょっとスーパー寄って帰りますんで、先に帰って鍵しめちゃってください」

ミア「え?」

男「じゃあ!」スタスタ...

ミア「あ、男さん!?あーもう……もう……」

────翌日深夜@カフェHeavenly Hug厨房

男「バジルの代わりに菜の花、にんにくは少なめにして、オリーブオイル……っと」

男「フードプロセッサがあれば楽なんだけどなぁ……」

男「試作品だし、ここは和風にすり鉢で、っと」ゴォリゴォリ...

男「パスタは少し硬めに……や、まてよ?蕎麦使ってみるのも面白いか?今度試してみるか」

男「味は……ん、まぁよし。少ししょっぱ目だけど、昼時に出すからな」

男「パスタ、ペースト、ゆで汁を加えて……と」

男「最後にこれをおとせば……」ポトン

…………

……

ミア「新メニュー?」

男「と、いうよりかは季節限定メニュー、って感じですが」

シーリス「へー!男っち、味見していいの?」

男「お前らの分も作ってあるから後で感想教えてくれ。でもまずはミアさんに」コトン



男「名づけて”朧月夜のジェノベーゼ”」



ミア「……これが、思いついたこと、ですか?」

男「まぁ、ね。さ、食べてみてください」

ミア「深い緑のソースの上に温泉卵がのって……なるほど、あの歌の情景ですね」

シーリス「んまー!!このパスタを作ったのは、だれだぁっ!」

真白「し、シーリス、それ怒られるフラグだよ……」


真白「あ、あの、美味しいです。菜の花の苦味が卵でやわらかくなって、いいと思います。スリゴマも入れてます?」

男「よく分かったな。まぁ、青菜とゴマなんざ定番だが」

シーリス「すっごい美味しいよ!明日からまかない、全部これにしようよ男っち!」

男「うっせ、まかないにこんな手間かけられるか!」

真白「売れると思います……ね、ミア」

ミア「そうね。お昼時、いくつ作れそう?」

男「今は少量をすり鉢で潰して作ってるから難しいが、家庭用のフードプロセッサがあれば、20、30楽勝」

ミア「とりあえず、15食限定でどうかしら。真白も覚えてね」

真白「は、はいっ!頑張ります!」

ミア「フードプロセッサは買いましょう。それと」



ミア「ありがとう、男さん」

男「どういたしまして」

シーリス「あーやーしーいー」

男「な、何がだよ」

シーリス「ミアちーとなんかあったんでしょー。ほれほれ白状しようよ色男」

男「何もない、ってんだろ」

真白「……色男っていうより、好色一代男」

男「なぁんか言ったか真白?」グニー

真白「い、いっへひゃいひぇひゅ!」

ミア「……」

ミア「さてと、このメニューはしっかり売って、来客数アップ、固定客確保、売上アップを目指しましょ」

ミア「男さんは必要な材料とか書き出して、真白と買い出しお願いします」

ミア「シーリスはPOP作るの手伝って」



3人「「「はーい」」」


ミア「それじゃ、午後のお仕事も頑張りましょう!」ポン!!

ここまで

────3月下旬 15時@カフェHeavenly Hug厨房

真白「ふぁ……あ」ウトウト

男「眠そうだな。休憩してくるか?」

真白「へ、平気です。全然平気です」

男「ま、あったかい日に喫茶店でのんびりお茶するよりは、外で花見でもしたほうがいいわなぁ」

真白「そ、そんな事言っちゃだめですよ」

男「でもなぁ……珍しくお客さんいないんだよな」

真白「そう、ですね。普段なら1人くらいは……」

男「こうも暇だと、ぽかぽか陽気の中で散歩したくなるな」

真白「……」

真白「じゃ、じゃあ、今度の定休日……」

男「ん?」

真白「今度の定休日、どこか公園にでも行きませんか?サンドイッチか何か作って」

男「いいね。たまにはそういうのも」

真白「……じゃ、じゃあ……楽しみに、してます」

─────同日 18時@カフェHeavenly Hug裏口

シーリス「ほいじゃ、お疲れ様ー、お先ねー」

男「おう、おつかれ。明日遅番だっけ?」

シーリス「そだよー、ミアちーと二人っきり。『朝だよ、マイスイーティ』とか言いながら目覚めのキッスを!」

男「はいはい、お前はその才能で作品を発表したらいいと思う」

シーリス「そういう面倒なのはいいや。あ、そうそう男っち」

男「んー?」

シーリス「今度の休みさー、ちょっと買い物付き合ってくれない?お父様の誕生日プレゼントなんだけど、なかなか決まらなくて」

男「あーいや、それがだな……っていうかお父様、って」

シーリス「い、いいじゃん別に。それよりお願いね、男の人目線も欲しくって。そんじゃ!」タッタッタッ...

男「あーおい!……あー、行っちゃったよ……ダブルブッキングじゃねーか」

ミア「男さん、オーダーおねがいしまーす。カレー1、カレー大盛り1」

男「へーい」

────同日 22時@カフェHeavenly Hug厨房

男「うし、明日の下ごしらえ……おわりっと」

男「裏口の施錠よし、ガスの元栓よし、水周り……ん、よし」

ミア「おとこさーん」

男「はい、どうしました?」

ミア「いえ、大した用事じゃぁないんですけど」

男「?」

ミア「今度の休み、ワインとチーズの安売りがあって、その、荷物持ち、手伝っていただけませんか?」

男「こ、今度の休み……で、ですか?」

ミア「ええ。あ、もちろん他の用事があれば、そっち優先してくださいね」

男「あーその……」

prrrr...

ミア「あ、ごめんなさい……はい、カフェHeavenly Hugでございます」



男「……」

男「ふぅ」ゴロン

男「……」



真白『このサンドイッチ、頑張ったんですけどどうですか?』

シーリス『男っち、ありがとー、お父様も喜ぶよー♪』

ミア『男さん、このワインとチーズで晩酌しましょうか』



男「うわぁ……大変なことになっちゃったぞ……」

――――???

ミア「男さん」タユン

シーリス「男っちー」プリン

真白「お、男さん……」ペターン



男「……」

男「ど、どうしたんだ3人とも、その、なんでそんな丈の短い胸の強調されたメイド服……」

シーリス「こういうの好きでしょ?」

真白「……ちらちらお尻とか胸とか見てるの、知ってます」

ミア「今日は、好きなだけ見て触って……溶けあいましょ、4人で」

男「えっ、いや、その、まっ、待ってくれ」

ミア「誰がいちばん?」

シーリス「私だよねー」

真白「一番長い時間そばにいるのに……」

ミア「私のための料理じゃなかったんですか?」

男「あ、いや、その、待ってくれ俺は……」

真白「お・と・こ・さん」ストーン

シーリス「おとこっち♪」ポヨン



ミア「……あなた」

男「!!」

オトコサン...オトコサン...オトコサン...

おとこさん……男さん……

ミア「男さん!!」

男「わぁぁぁっ?!」

ミア「!!」

男「……ミア」ナデ

ミア「っ!?」ボフンッ!!

男「夢の続き……か」ギュゥゥ

ミア「な、な、何を急に?!わ、わわわ私には心に決めた……人が……」

男「それでもいい。夢の中だけなら……」ナデナデ

ミア「……そ、そんなこと……だめ……っていうか夢じゃないです!起きて!」

男「はは、ミアさんが俺より早く起きてるわけがない。つまり夢だ」

男「その証拠にほら、たわわに実った果実をもいでも……」モミモミ

ミア「……」

ミア「きゃぁぁぁっ!!!」

バチーン!!

男「!?!?!?」

ミア「さ、最っ低です!痛いですか?痛いですよね!目が覚めないならもう一発尻尾できついのかましましょうか!?」ガクンガクンガクン

男「」キゼツ

ミア「いいですか?確かにちょっといい雰囲気かな、って思うことも────って、あら?」

ミア「お、男さーん、起きてくださーい、開店時間ですよー」

ミア「準備しないと、ほら、寝坊ですけどー?」

ミア「……」

ミア「と、とりあえず寝かしておいて、お店開けなきゃ!」

ミア(……もう)

...カプッ

ミア「夢の中だけ、ですよ……」


男「……う」

男「なんだか耳たぶと両手に幸せな感触が……」

男「……あれ?なんでこんな頭がズキズキ……」

『07:19』

男「まずい遅刻だ」

男「ひ、ひげそり?洗顔?あーいや待て、先に着替えだ」

男「ええとコックコートコックコート!こっ……うわっ!ったった!」ガシャーン!!



ミア「……」ハァ

客「あらすごい音、でも珍しいわね、あなたじゃなくて彼が寝坊なんて」

ミア「たまにはいいんじゃないでしょうか」フン

客「昨日頑張りすぎたのかしら?」

ミア「からかうのはやめてくださいよもぅ……」

────水曜 お昼@カフェ Heavenly Hug厨房

男(しかし、トリプルブッキングの件はどうしようか……)

真白「~♪」トントントン...

男(言い出しづらいよなぁ。真白はおろか……)

シーリス「おーとこっちー!エッグサンド1、おねがーい!」

男「お、おう」

男(シーリスまで機嫌がよさそうだし……)

ミア「男さん、Aランチ2、限定パスタ1、都合サラダ3です」ムスッ

男(ミアさんだけはなぜか不機嫌だけど……)

男(いや、気のせいだ気のせい)

真白「お、男さん!フライパン!」

男「うわっ!っとと、焦げる焦げる!」プシュー

真白「大丈夫ですか?」

男「すまん、考え事してた」

ミア「男さん、“料理は”大丈夫ですか?」

男「……幸い、作り直すまではしなくていいです」

ミア「そうですか。これ、洗い物です、よろしく」ガチャン

男「……」

真白「……」

ミア「なにか?」ブスー

男「いえ、なにも……」

真白「な、何したんですか男さん……ミアを怒こらせるとか相当ですよ?」

男「それが……心当たりないんだが」

真白「着替えのぞいたとか、スカートめくったとか」

男「俺は小学生か」

真白「おっ、おっぱい揉んだとか」

男「……」

真白「心当たりありそうな顔してますけど……」

男「い、いやまぁ……夢の中で少し……」

真白「幻滅です」

男「男の悲しい性なんだ、大目に見てくれ」

真白「ま、まさか私やシーリスやゲートボール部のお婆様たちまで……不潔です!」

男「真白……お前最近シーリス化が激しいぞ」

男「あとさすがにあのばーちゃん達はねーよ」

真白「つまり、私やシーリスは……けだものっ!」

男「だから、大目に見てくれって」

真白「……」ジトー

男「……ほ、ほら、オーダー入ってるから、な」

真白「……本物のほうがいいと思いますけど?」

男「へ?えっ、な、何言って……」

真白「冗談ですよ」

真白(少なくとも今は……)フンス

男「ま、ましろ……さん?」

真白「ランチのつけあわせのグラッセとサラダ作りますね」

今日はここまでっす。
進みが遅くて申し訳ない

だいぶ遅い上に本筋関係なくて申し訳ないのですが、パンは個神名で種族名はサティロスだったかと

遅くなって申し訳ない
下手に季節ネタなんて狙うもんじゃないですね

>>269
どちらもギリシャ神話に出てくる半獣半人なので、同一視されることも多いようですね
パン(パーン)は山羊座の元になった(とも言われる)牧神、パンフルートというマイナーな楽器にもその名残が見られます
サテュロスはパンフルート(シュリンクス)のエピソードでパンと一緒に出てくる半獣半人のエロ妖精

という認識でやってます。
悪いのは適当に物語つくる昔のギリシャ人ですよ。まぁ古事記と日本書紀がある日本も人のこと言えないんですが

パンはかなり好色な神様らしく、下半身がぱおーんした彫刻があるんだとか……
年上喰い天然ショタ……あると思います

投下

---

────20:00@カフェ Heavenly Hug厨房

男「はい、デミハンバーグのセットサラダできたぞ」

シーリス「ほいほーい。ごめんね、早番で上がったのに」

男「ま、いいってことよ」

シーリス「んじゃ、その調子で明日のデートもよろしくね~♪」

男「あ、いや……ほら、その話は後でもいいだろ。サラダとシルバー、とっとと持ってけ」

シーリス「はいは~い♪」

真白「……男さん」

男「はいっ!?」

真白「……ソースの味、見てもらえますか?」

男「おう……ん、おっけ。手早くな」

真白「はい」

男(……しっかし……どう謝る……そりゃ、順番的には真白に付き合うのが道理だろうけど)

男(ミアさんの用事は日付が限定されてるし……)

男(シーリスも……シーリスはいいか)

男(さて、どうするべきか……)フゥ



男(……)

真白「男さん」

男「ん、おお、すまんすまん。ボーっとしてた」

真白「……本当に、大丈夫ですか?なんか顔も赤いですよ?」

男「いや、大丈夫だって。なんだっけ?」

真白「ハンバーグ、もう在庫なくなっちゃいます」

男「んー……作らなきゃだめだな。金曜の分はありそうか?」

真白「それくらいなら」

男「じゃあ、金曜の夜にでも作っておくよ」

真白「……あ、あのっ」

男「んー?」

真白「私もお手伝いしていいですか?」

男「って、金曜早番だろ?」

真白「でも……男さんの味、少しでも覚えたいから……」

男「おう。じゃあ少し残業頼むな」

真白「はいっ!」

男「ハンバーグかぁ、牛ひき肉と豚ひき肉をまぜて……」

男(”混ぜて”?)

男(……そうだよ、混ぜればいいんだ)

男(何も1対1で出かける必要なんかないじゃん)

男(ミアさんの特売ワインは荷物持ちが多いほうがいいだろうし)

男(シーリスのプレゼント選びだって、アドバイスは多角的になる)

男(同時に真白の”お出かけ”も達成できる。なんだ、これで丸く収まるじゃん)

男「そうだ真白……明日のことなんだけど」

真白「あ、はいっ!楽しみです!」

男「そ、そっか……その、どこに出かけるにしろ、よ────」



真白「二人でおでかけなんて、デートみたいです、ね……へへ、緊張します」



男「!?」ギックゥ!!

真白「電車で20分くらい行ったところに道具街があるんです。見て回りません?」

真白「それとも、明日晴れるみたいだし、公園でお花見します?」

真白「あ、あと、平日限定のスイーツビュッフェをやってるホテルがあって一度……って、男さん、すごい汗ですよ?」

男「あ、お、おう、どうせなら1日で全部やっちゃおうぜ」ダラダラダラダラ

真白「は、はいっ!バーンと豪勢に行きましょう!」

男「ほれ、そのためにもまずは残りの1時間頑張って仕事だ、な、な!」

真白「はぁ、多分今のハンバーグで料理出るの最後だと思いますけど……とりあえず使ったフライパン洗っちゃいますね」

…………

……

男(とりあえず2階に逃げ込んだものの……)

男「うわーい詰んだぞこれ」

ミア「男さん」コンコン

男「は、はいっ!」

ミア「あの……今朝のこと……ごめんなさい」

男「け、今朝のこと?」

ミア「お、覚えてないんですか……本当に……?」

男「あーいや、その、何か、しましたか?」

ミア「……しました。それもかなりイヤらしいことを」

男「えっ?!」

ミア「本っ当に覚えてないみたいですね」ハァ

男「ぐ、具体的に何を?」

ミア「し、知りませんっ!」

ミア「でもその……夢に出てきた、んですよね、私……」

男「あー……覚えてる夢の中には、いましたね」

ミア「……い、今は平成の世ですからね!」

男「な、なんですかいきなり」

ミア「わかんないならいいです」フンス

男「はぁ……」

ミア「あ、そうそう。明日の特売、お昼前に買い物終わらせて、お昼下がりに早速試飲しませんか?」

男「あーその……それ、なんですけど……」

ミア「なんですけど?」

男「いや、実は────あ」

真白「…………」



真白「嘘つき」

ミア「真白……嘘つきって、どういうこと?」

真白「……私と、出かける約束、したのに……した、のに……」ポロッ

男「!!」

ミア「男さん、どういうことですか?」

男「え、あ、いや、真白……ちょ、ちょっと待ってくれこれには理由が!」

シーリス「おーい男っち!いい加減明日のデートの集合場所と時間くらいは……って、あれ、どしたん?」



男(……万事休す、か)



真白「ま、まさかシーリスとも……」

シーリス「あ、あれ?私なんかマズった?」

ミア「あらあらまぁまぁ、とりあえず正座してください」

男「え、あ、だからその……」

ミア「正座」

男「Yes, Ma'am !!」

--- ここまで ---

お前らミアさんも争奪戦し……なくていいわ
倍率1倍なら俺が責任もって娶る

ところで「平成の世ですからね」ってどういうこと?

>>283
ミア「平安時代なら相手の夢に出てくるほど想ってます、って事なんだけど、そんなこと全然ないんだからねっ!」

ってことです。
わかりづらくてごめん

シーリス「しゅ・ら・ば!しゅ・ら・ば!」

男「お前もその一翼を担ってるだろうが」

ミア「そもそもの原因が何を言ってるんです?」

男「誠に申し訳ございません」ドゲザ

真白「男さんの土下座は……割と安いです……」

男「ひでぇ」

シーリス「酷いけど事実だよねー」

男「シーリスお前な……」

ミア「はーい皆さん静粛にー。裁判を始めます」カンカンカン

男「吊し上げの間違いじゃ……」

ミア「被告人は許可無く発言しない」

男「はい……」

ミア「そもそも、最初に約束したのは誰なんです?」

男「真白……さん、です」

ミア「次は?」

男「シーリス……」

ミア「そこできちんと断ればこんな事にはならなかったのでは?」

男「断ろうとはしたんですがその……それを告げる前に帰ってしまって」

ミア「私とは?」

男「あー……その、電話がですね……」

ミア「……」

真白「……」

シーリス「……」

男「……いや、悪いのは私です、はい。シーリスはともかく、ミアさんはその後も断るタイミングありました」

3人「「「ですよねー」」」

真白「……で、どうするんですか……男さん……」

男「あーいや、その……できれば4人で出かけるという事で手打ちに……もちろん最大限誠意ある対応を……」

ミア「は?」

シーリス「え?」

真白「……玉虫色」

男「本っ当に、申し訳ありませんでしたっ!勘弁してくださいっ!」グリグリグリグリ



パシャッ!!



男「……」

男「え?」

シーリス「おお、清々しいまでの土下座っぷりだねぇ」

ミア「どれどれ……あら、床を突き抜けんばかりですね」

真白「……ぷふっ」

シーリス「っていうかマシロン笑っちゃだめじゃ……くふ、あはは」

男「あ、あの……」

ミア「も、もういいかしら……ふふふ」

男「え、あれ、ちょっと……」

真白「ごめんなさい男さん……その、ドッキリ、なんです」

男「……ドッキリ!?」

シーリス「そ、誠意ある対応が取れるかどうか、ってテスト」

ミア「まぁ……結果は散々だったわけですが」

男「え……じゃ、じゃあ最初っから!?」

真白「……あ、あの、一応二人の事断ったら、ちゃんと遊びに行こうと……」

シーリス「はいはいマシロン、自分だけそうやって評価あげようとしないのー。けっこうノリノリだったじゃん」

真白「そ、それは……っ!その……」

ミア「ごめんなさい、男さん……でもその、うろたえっぷりが……ぷふっ」

男「……え、何!?俺もしかしてピエロ!?」

ミア「ピエロっていうか、たらしの本領発揮っていうか」ハァ

真白「でも、最後まで上手くいかない所が男さんっぽいかも」クスクス

シーリス「ま、一応トリプルブッキングしたことに対しては謝ってくれたし、よしにしましょうか」

男「……悩みに悩んだ俺の24時間を返してくれ!」

シーリス「またまたー、まんざらでもないでしょ」

男「本当に勘弁」

真白「……そのわりに私達のエッチな夢見てたみたいですけど」

シーリス「ふけつー」

男「お前な!美女と美少女2人が同じ職場にいて、そういう事考えない男がいたらそっちのほうがヤバ……あ」

ミア「び、美女!?」ボフン

真白「……美少女」カァッ

シーリス「ありゃ、私も入ってた」ケラケラ

3人「「「さすがは女たらし」」」

男「もうやめて」

シーリス「あーもう拗ねない拗ねない。ほら、じゃあたらしさんと私ら3人で花見しに行こうよ」

男「それもドッキリなんだろ!?」

シーリス「んなことないない。今週末は雨みたいだし。散っちゃう前に行こうよ」

真白「あ、あの、その……や、やったぁ、両手に花ですねっ!」

男「この状況で言われて嬉しいわけないだろ……」

シーリス「てなわけで、明日は10時に店の裏口集合」

男「……」

シーリス「男っちに拒否権はないよー」

男「わかった、俺はどうすればいい、昼飯作れと言われれば作るし、車を出せと言われれば出すぞ、レンタカーだが」

シーリス「あ、そういうのは全部こっちで手配するから、身ひとつで来てー」

男「どういうことだ?」

シーリス「まぁまぁいいからいいから。すべては明日のお楽しみ~」

────翌日11:15 山中

男「けっこう登ってきたなあ」

真白「私とミアは去年も来ましたけど、もうすぐですよ」

男「へぇ……」

キキッ

運転手「お待たせいたしました。申し訳ございませんが車はここまでで、後はお歩きください」

男「本格的だな。っていうか本当に手ぶらで大丈夫か?」

ミア「そりゃあもう、なんてったってシーリスですから」

男「それが一番不安だ……っていうかその本人は?」

運転手「お嬢様は上でお待ちです」

男「お、おじょうさま?」

ミア「行きましょ、行きましょ」

男「……」

男「……山の中だし、木が生い茂ってトンネルみたいだな。寒いくらいだ」

真白「ですね……きゃっ」

男「大丈夫か、足元気をつけろよ」

真白「……あ、ありがとうござ、大丈夫で……ひゃっ」ズルッ

男「だめじゃねーか。起きられるか?」

真白「は、はいっ」

男「うし、しっかり手握っとけ……いくぞ、いちにぃの、さんっ!」グイッ

真白「あっ、ありっ、が、ありがと……ございます……手、洗いませんからっ!」

男「いや、洗えよ……いくぞ」

真白(手!手つないでる!うわっ、わっ……)

ミア(……)ムッ

ミア「先に行ってますから”お二人で”後からどうぞ」

男「ふぅ……到着っと」

サァァァァァァ...

男「うわっ!すげぇ……見事な桜だなぁ」

??「お褒めにあずかり光栄です」

男「……えっと……」

シーリス「おはよー。この人は私の身の回りのお世話をしてくれてる女中だよ」

女中「女中と申します。お見知りおきを」

男「はぁ……えっと……」

女中「男様のお噂は聞き及んでおります。なんでも大層……」チラッ

真白「あ……っ」パッ

女中「複数の女性を手玉に取るのがお上手だそうで」

男「おいシーリス何吹き込んだ!」

シーリス「あははは、ほら、事実だしー」

女中「昨日の写真を見せていただきましたが、なかなか堂に入った土下座でございました」

男「もうやめて」

シーリス「ほらほら、今日はうちの桜を楽しんで。ご飯も用意してあるからさ」

男「うちの……さくら……?」

女中「男さまもミア様もお酒は嗜まれます?本日はロートシルトをご用意させていだきましたが」

ミア「え?」

男「おい今なんつった」

女中「1997年のロートシルトです」

ミア「……シャトー・ラフィット・ロートシルト?」

女中「はい。セラーが手狭になってまいりましたので。不要品を押し付けるようで申し訳ないのですが」

ミア「うちの売上5日分が……不要品……」クラッ

男「……っていうかシーリスは何者だよ」

シーリス「え?あれ、言ってなかったっけ?」

男「聞いてないぞ」

シーリス「男っちのスマホ、メーカーどこ?」

男「IIT」

シーリス「正式名称は?」

男「イスルギ・インフォメーション・テクノロジーズ」

シーリス「私のフルネームは?」

男「いするぎシーリス……」

シーリス「そ」

男「いっ、石動!?あの、イスルギグループの!?」

女中「はい、会長の一人娘でございます」

男「なんでバイトしてんだよ……言っちゃわるいが、儲かってもいない喫茶店だぞ」

シーリス「それはほら、社会勉強ってやつ。さ、お昼お昼!」

男「……もう、ただただすごいとしか」

ミア「ですよねぇ」

シーリス「はいはーい、男っちとミアちーにはシャンパン行った?私とマシロンは一応ジュースねー」

男「おう」

シーリス「じゃあ、ヘブンリーハグの懇親会兼男っち歓迎会の乾杯のご発声を……ましろん!」

男「つーかそういう会だったの今日?」

真白「ひぇ!?き、聞いてないよシーリス!そんないきなり……」

シーリス「今思いついたんだもの。はーい、スタンダップ!」

ミア「わー」パチパチパチ...

真白「え、えと、ほ、本日はお日柄もよく、その……えっと、私的には男さんが来てくれて、料理の幅とかレパートリーとか……」

真白「い、いろいろ充実して、これからみんなでお店を────」

ミア「乾杯!!」

真白「えっ、ええっ!?」

男「あーおい!まだ話が……」



ミア「んーっ!このシャンパンおいしーいっ!」

男「……」

真白「……」

シーリス「……」

ミア「んく……ぷはぁ。ああ、よく冷えたシャンパンと生ハム……至福……」

シーリス「だめだこりゃ」

男「あーもう、この駄蛇は放っておいて……」

男「真白、シーリス、これからもよろしく頼む」

シーリス「ういうい。頑張って目指せ2号店!」

真白「それはちょっと気が早いんじゃないかな……」

男「まぁ、まずは売上アップだな……ほれ、乾杯だ」

真白「……は、はい」

シーリス「よろしく~」

女中「仲も深まったところで、ローストビーフはいかがですか?温かいうちに」

ミア「そうそう。花より団子。このマリネも美味しい~」

真白「ミア、桜も見ようよ……」

ミア「オー、ニポンゴ、ムズーカシィ」

男「適当こくな」

ミア「分かってるわ真白。美味しいワイン、綺麗な桜、そして高価で美味しいワイン!」ウットリ



真白「……もういい」ハァ

保守ありがとう
なかなか来られなくて申し訳ない

ところで12時ころから少しだけ投下

男「……」モグモグ

真白「……」パクリ

女中「いかがでしょうか」

男「……」ゴクン

真白「……」モグモグモグ...

女中「あ、あのぅ」

男「……」

男「……旨い、としか言いようがない」

真白「美味しすぎて喉を通り過ぎるのがもったいないです」

女中「ありがとうございます」ホッ

男「噛むと溢れ出る肉汁、口の中でとろけて消える赤身……」

真白「火の通りも絶妙だし、香草の香りが口いっぱいに広がって……」

男「塩は岩塩じゃないな……藻塩?」

女中「沖縄の離島で作られている天然塩です」

真白「お店で食べるのと遜色ないかも……」

男「いや、前の店で出してたローストビーフより確実に美味しい」

女中「それは当然かと」

真白「……」ムッ

女中「失礼……男様の腕うんぬんではなく、材料費の話です」

女中「肉は完全放牧で育てられた仔牛の腿肉、ハーブは私が屋敷の菜園で育てた無農薬」

女中「塩や調味料、つけあわせの野菜までこだわって作りました」

女中「レストランで出したら1人前……」ゴニョゴニョゴニョ...

男・真白「……」



男・真白「「おかわり!」」


女中「今、口直しにケーキとコーヒーをご用意いたします」

男「……」

ミア「お肉もいいけどーおさけとちーずっ♪」

女中「はい。では少し趣向をかえて、アイスワインとゴルゴンゾーラチーズはいかがですか?」

ミア「ふへへへー」ジュルリ

男「ミアさん、よだれよだれ」

真白「み、見てください男さん!美味しそうなブラマンジェですよ!」



男「……けーっきょく誰も桜見てないな」

男「あれ、そういえばシーリスは?」

女中「お嬢様は中座されております。お客様が退屈なさらぬように、と言付かっております」

男「ふぅん……」

真白「ど、どこからスプーン入れたらいいと思います?なんか崩すのもったいなくて……」

男「どこからでもいいと思うけど……」

真白「はむっ……」パクッ

ミア「んー」ゴキュッ

真白・ミア「ひははへ~」ウットリ

女中「お気に召していただいたようですね。準備に手間をかけた甲斐があります」

真白「ブラマンジェもローストビーフも……こんなに美味しい料理をつくるなら、プロになれば……ていうかうちの店なんか軽く超えてる」

男「なんか、って言うな、なんか、って」

女中「いいえ真白様。男様や真白様と私の間には大きな溝があるのです」

女中「私がヘブンリーハグの厨房に立っても、真白様のようには動けません」

真白「……みぞ?」

男「まぁ、なぁ。訓練次第だと思うけど」

真白「……男さんは分かるんですか?」

男「真白はできてると思うけど」

真白「え?なんなんですか教えてください」

男「だーめ。自覚ないようじゃまだまだ」

女中「だ、そうですよ」くすくす

白「むー……ヒントください」

男「えー……アフタヌーンティを予約してる客に出すマフィンと、昼のオムライスの差、かな」

真白「余計分からないんですけど……」

男「じゃあまだ、昼の厨房任すわけにはいかないな」ポフポフ

ミア「……私はしってまーす」グデー

男「さすが」

真白「……ほんとに?」

ミア「一応、経営者ですから。それに接客にも通じる部分はあるしー」

真白「……そうなの?じゃあ、もったいぶらずに教えていよ」グビ

ミア「んふふ」

真白「な、なんですかその笑みは……」

ミア「教えてあーげないっ」

真白「い、いじわるですっ!」

ミア「ふふーん。それに私は真白が知らないことも知ってるもんねー」

真白「……なにそれずるい!たとえば?」

ミア「たとえばー……うーんとー……」













ミア「男さんの今日のパンツの色とか」



真白「えっ?!」

男「おい聞き捨てならんぞ」

ここまで

真白「……ミア、何色か答えて……ひっく」

ミア「えー……グレーのボクサーパンツ」

真白「本当ですか男さん」グビッ

男「あー……まぁ正解だけど」

真白「ぱ、パンツの色を確認しあうような仲なんですかっ!?」

男「しあってないだろ!つーか食いつき方がおかしいぞまし……」

真白「うー……女中さん!この葡萄ジュースおかわりください!」

女中「はい」コポコポ

男「おい!未成年に酒を飲ますな!」

真白「へーきです!これくらいへーきです!ミアには負けませんふ」

男「あーあ、1本あいてるし……これ以上は出さんでくださいよ、女中さん」

女中「かしこまりました。ミネラルウォーターをお持ちします」

男「そうしてくれ」ハァ

真白「で、男さん……なんれミアが男さんのパンツの色知ってるんですかっ!?」

男「あのな……昨日、乾燥機の中に置き忘れてたのを、ミアさんが届けてくれたんだ」

男「で、洗濯物の一番上に置いておいたのを今日着ただけだ」

真白「そうなんですか……」ゲフー

男「そうなんです。ほら、もういいだろ二人とも離れてくれ」グイー

ミア「えー」

真白「むー」

男「くっつくな、酒で体温上がってるから鬱陶しい」

ミア「まんざらでもないくせにー」ムニッ

真白「わたしもー!」ペトッ

女中「わー……男冥利に尽きますね」ピロリロリン

男「おいそこ、さらっと盗撮すんな!」

ミア「ふあ……お酒のんで、お腹いっぱいで……眠い……」

男「あーもう、寝るなら離れてくださいよ」

ミア「えー……いつもみたいに腕枕し・て」

真白「何してるんですか男さん!」

男「してないから!!」

ミア「ん……んふぅ……」ズルッ

男「あー……もう、肩によっかかって寝ないでほしいんですが」

真白「じゃあ突き放せばいいじゃないですか。なんでしないんですかー」ヒック

男「なんで、って無下にはできんだろ」

真白「……むーっ!」

男「なんだどうした、酒が入ったとは言え今日はやけにつっかかるな」

真白「だって……ミアに負けたくないから……」

男「……?」

男「あーその、ほら、もし間違ってたらすまんが……個人差もあるし、まだ真白には成長の余地があると思うぞ」

真白「どこ見てるんですかエッチ」

男「あれ、ちがうのか?」

真白「ちっ、違います!こんな脂肪の塊のあるなしでー」ムニムニ

ミア「うにゃ」

真白「人の価値はきまりませんよね、そーですよねおとこしゃん!」

男「おい答えにくい質問すんなよ……あーまぁそうだな。『貧乳は正義』って言う友人もいるな」

真白「おとこさんはどうなんですかっ!」

男「……黙秘。黙秘だ黙秘」

真白「答えてくださいっ!」

男「なんでそんなこだわるんだよ……」



真白「だって……」



真白「だって私……わたし……は……」

真白「おとこさん、わたし……」ギュ

男「真白……」

真白「わた、わたしっ……は……」





真白「はきそう」ウプ





男「おいまてここではよせ」

女中「と、とりあえずこのワインクーラーに」ザバー


~~ 大変お見苦しい光景のため、しばらくハーピーさんの鳴き声をお楽しみください ~~





ヒャンッ...ヤダモゥエッチ...ンッ...ヤッ、マダ、オヒサマデテルノニ...



アッ、モウ...アカチャンミタイ...ンッ...ヒャアッ?!?!



……………………

………………

…………

……

ミア「んむ……」スゥ...スゥ...

真白「あー……う゛う゛ぅ……あだま゛い゛た゛……」グデー



女中「……」

男「……」

女中「大惨事でしたね」

男「ああ、まったくだ……服が綺麗なままなのが奇跡だと思うよ」

女中「去年は真白様もミア様も大人しかったと思うのですが……やはり、男性がいらっしゃると違いますね」

男「……そういうもん?」

女中「はい。かくいう私も今日は白のレースにガーターベルトと、割合勝負パンツです」

男「そういうトリビアいらないから……お手洗い、お借りしますよ。小屋に入って右手すぐでしたよね」

女中「ええ」

女中(なんだかんだ言っても、昂ってしまったのですね……)

男「なんとなーく考えてること分かったから言っとくけど、普通にアルコール入ると近くなるだけだから」

ここまで

日付かわるころ投下予定age

ジャーゴボゴボゴボ...

男「ふぅ」

男(……)



――――わたし……は……



男(……)ポリポリ

男「……遠回りして戻るか」

────石動家所有の山内



シーリス「最近ね……ちょっとたらしだけど……かっこいい人が入ったよ」

シーリス「モブ山さんは実家の畑継ぐんだって。そのうち、無農薬野菜のレストラン建てるって息巻いてた」

シーリス「……ミアちーは相変わらず。まだ待ちたいみたい」

シーリス「ましろんはね……すごく変わった。恋をすると変わるってホントだね」

シーリス「まさか、目の前で恋の三角関係が見られるとは思ってもいなかったけど」

シーリス「私?私は……恋してもいいのかな……わかんないや……」

シーリス「……いつか、この人と結婚する、って報告に来られたら……素敵だと思う」

シーリス「じゃあ、ね。また来るよ、ママ」

シーリス「……ふぅ」

シーリス「さてさて、あの3人の恋の鞘当てはどうなってるかなー……ん?」

男「よう」

シーリス「男っちじゃん。何してんの?」

男「酔いさましの散歩……絡み酒が二人も潜んでて、とんだ騒ぎだったよ」

シーリス「やったね、休めるところいこっか展開だー」

男「だぁから、ない……って。ないよな?」

シーリス「私に聞かれてもなぁ」

男「そらそうだ。ところでシーリスは何してたんだ?」

シーリス「んー……まぁ、野暮用」

男「言えよ。いつもそうやって逃げるのは卑怯だぞ」

シーリス「ママに……近況報告」

男「そっか。俺も挨拶していいか?」

シーリス「へ?」

男「そりゃそうだろ。こんなすごい宴会も開いてくれた礼もしなきゃならん」

シーリス「あ、えーと……でも、そのほら……」

男「忙しいのか?世界を股に秒単位のスケジュールで飛び回ってるとか?」

シーリス「こち亀じゃないんだから……まあ、会えるっていうか……」

男「?」

シーリス「挨拶しても、お礼言っても、返事はないけど……それでもいいなら」

男(……)

男(最愛の妻にして最高の母、ここに眠る……か)

男「なるほど、返事はされないな」

シーリス「うん……」

男「なまんだぶなまんだぶ……」

男(…………)

男「ん、よし」

シーリス「普通、こういう洋式のお墓に手をあわせて南無阿弥陀佛はないでしょ。十字切るとかさぁ」

男「ほっとけ、形より心だ」

シーリス「そっか。ありがと」

男「シーリスのお母さんってことはまだ若いだろ。なんでまた」

シーリス「あ、えっとその……」

男「いや、すまんかった。言いたくなければ」

シーリス「私のせい。私が産まれたから」

シーリス「ねぇ男っち、邪眼、って知ってる?」

男「あれだろ?『う、俺の右目がうずく……奴らが来たか』みたいな」

シーリス「ちょっと違う、かな」

男「じゃああれか……『邪王炎殺黒龍波ぁ!!』みたいな」

シーリス「なにそれ」

男「知らなきゃいい。俺がガキの頃再放送してたアニメの技」

シーリス「ふぅん……って、話がずれた」

シーリス「ぶっちゃけ簡単に言うと、私は『邪眼』を持っていて、そのせいでママは死にました」

シーリス「病院のお医者さんも、看護婦さんも、パタパタ死にました」

シーリス「今はこの眼鏡とコンタクトで力を抑えこんでます」

男「さらっと言った割に内容が重いぞ」

シーリス「あはは……でも事実だからね」

シーリス「んっと、今、私がヘブンリーハグでバイトできてるのって、ミアや、女中や、色んな人のサポートのおかげで」

シーリス「これから男っちにも負担や迷惑かけると思う。だからごめん」

男「……」

シーリス「ごめんね、急に。でも改まって言う機会ってなかなかなくて……」

男「お前な……ちょっと頭かせ」

シーリス「え……?」

男「てい」ゴチン

シーリス「いたっ?!」

男「迷惑かかったらなんなんだよ。同じ店の仲間だろうが。フォローするし、フォローされる」

男「シーリスのおかげで助かったことだってある気にすんなよ」

シーリス「男っち……」

男「それとな。お母さんのお墓」

シーリス「ん?」

男「なんで酒飲む前に連れてこないんだよ。なにはともあれまず仏様だろうが」

シーリス「えっ、でも……いやじゃない?」

男「全然いやじゃないぞ」

シーリス「そっ、そっか……ごめん」

男「ん。分かりゃいいさ」ポムポム

シーリス「っ!」ボッ

男「ん?」

シーリス「こ、こういうことを自然体で出来るあたりが、たらしって言われる原因だと思う……」

男「たらしこんでないだろうが」

シーリス「今まさに現在進行形でたらしこまれそうなんだけどさー」

男「はいはい。ほら、戻って花見の続きだ。ミアさんと真白のひどい酔いっぷりをとくと見とけ」

シーリス「なにそれ。ってかましろんまで飲んだの?」

男「飲んだんだじゃない……呑まれたって言うんだあれは」

シーリス「なになに、なんで?!」

男「道すがら教えてやる……行くぞ」

シーリス「あ、まって」クルッ

シーリス(……ママ、こんな人だよ)

シーリス「うっし、行こうか男っちー」ギュ

男「なんでお前もくっつく?!離れろ」

シーリス「も?もって何どういうことよねぇねぇ!」ギューッ!!

…………

……

シーリス「わお」

女中「おかえりなさいませ、お嬢様。おや、男様もご一緒でしたか」

男「ああ。に、してもひどいありさまだなぁ」

女中「この程度であっけにとられていては、女子会の料理なんか運べませんよ?」

男「俺はシェフだから厨房から出ない」

シーリス「オーナーシェフになっても同じ事言えるかなー?」

女中「まあ、こんなに美味しい料理をつくるなんて……」

シーリス「噂のイケメンシェフは、どこだぁっ!のれんばっさぁ!ってなるよ」

男「お前それ激おこじゃねーか」

女中「カレーの定義とは何か、とか無理難題をつきつけるわけですね」

男「んなもん業務用のカレー缶に追加のスパイスとブーケガルニぶっこんでことこと煮込んだやつよ」

シーリス「それはうちの店だけっしょ」

男「缶を水で薄めて出すだけの店もあるんだ。それでよし、にしてもらいたいね」

男「……」グビ

女中「おかわりはいかがです?もしくは日本酒にかえますか?」

男「いや……混ぜると悪酔いするし、そろそろ限界だ。水……いや、お茶がいいな」

シーリス「さすが、呑んでも呑まれない男」

男「自分の限度を知らないこいつらが悪いんだ」ツンツン

女中「そのこいつらに左右から挟まれてデレッデレな写真が……こちらです」

男「やめてくれ」

シーリス「うわっ、鼻の下のばし世界大会があったら日本代表だー」

男「ひどい……」

シーリス「んでもさぁ、ぶっちゃけ誰?」

男「どっち、って聞かないあたり、他の可能性も考慮してくれるのか?」

シーリス「えっ?あ、ほら、女中とか私とかゲートボールのおばあちゃんとか?」

男「最後のはない」

先週の投稿の最後に「ここまで」と「今週末(6/28・6/29)来られないよー」と書いたつもりが書けてなかった



ミア「……ふあ」

男「お、こっちは起きたか?」

ミア「……なんじれふか?」

女中「そろそろ16時です」

ミア「にゃっ?!休憩しすぎて寝坊?!」ガタタッ

男「……」

シーリス「……」

女中「……」



ミア「あ、あれ?」

男「もう少しマシな寝ぼけ方があるだろうに」

シーリス「もしかして疲れやストレスたまってる?」

女中「だからお酒に逃げて……おいたわしい」

ミア「あ、あの、その……き、聞かなかったことにしてくださいぃ……」カァァ

男「ったく……起きたならそろそろお暇するぞ」

シーリス「えー!夜はこれからなのに?」

男「明日は定休日じゃないんだぞ。晩飯まで居座る気はない」

女中「では、おみやげにローストビーフを包みましょう。お嬢様と私だけでは食べきれません」

ミア「ありがとうございます」

男「……問題はこっちだな」

真白「……」グッタリ

シーリス「大丈夫、うちに泊めるよ。明日私もましろんも遅番だし」

ミア「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうわね」

シーリス「甘えるがいい!ふはははー」

ミア「今日は本当にありがとう」

男「美味しくいただきました」

シーリス「んじゃあ、また明日」スッ

男「なんだ、この手は?」

シーリス「んー?明日も頑張ろうぜー、のハイタッチ」

男「……」

シーリス「へーい、ミアちー!」

ミア「いえーい!」パチン

シーリス「へーい男っち!」

男「ほらよっ」

シーリス「よっと」スカッ

シーリス「スカってやんのーかっこわるー」

男「いい根性してんじゃねーか!」グニー

シーリス「?!」ドキッ

シーリス「いひゃいいひゃい!ひょーふ!ひょーふひゃっへ!」

男「反省してるか?」

シーリス「ひまひは」

男「ん」パッ

シーリス「いったぁ……」

男「ほら。もっかいハイタッチだ」

シーリス「へーい!」

男「ほいハズレー」スカッ

シーリス「んなっ?!」

男「けっけっけー。お返しだ」

シーリス「むっかー!私にもほっぺたグニグニさせろー」

男「断固としてNO!」

シーリス「いひゃいいひゃい!ひょーふ!ひょーふひゃっへ!」

男「反省してるか?」

シーリス「ひまひは」

男「ん」パッ

シーリス「いったぁ……」

男「ほら。もっかいハイタッチだ」

シーリス「へーい!」

男「ほいハズレー」スカッ

シーリス「んなっ?!」

男「けっけっけー。お返しだ」

シーリス「むっかー!私にもほっぺたグニグニさせろー」

男「断固としてNO!」

女中「楽しめましたか?」

ミア「ええ」

女中「……もうすぐ5年、ですね」

ミア「そうね」

女中「新しい幸せを見つけられたのですか?」

ミア「……」

女中「……忘れる事ができるのも、人の知恵だと思います」

ミア「まだ……無理みたい。そもそもラミアだし。蛇はねちっこいし」

女中「店の厨房に男性を入れた、と伺った時は吹っ切ったのかと思いましたが」

ミア「……吹っ切ったように見える?」

女中「……正直、無理をしているように見えます。あるいは……葛藤のまっただ中かと」

ミア「……」

女中「すべては、貴女次第ですミア様。私からああしろこうしろ、申すことはございません」



女中「ですが……後悔だけはないよう」

シーリス「こらまてぇっ!」

男「待てと言われて待つ奴がいるか!」

ミア「……男さん」

男「どうしかしましたか、ミアさん。そんなしかめっ面で」

シーリス「ぐ・に・ら・せ・ろー」グニー

ミア「いいえ何も。帰りましょうか」

男「……?」

女中「男様」

男「ひゃひ」

女中「ミア様をよろしくお願いします」

男「はひゃ……離せって。ああ。酔っぱらいの介抱の仕方も分かってるし、急性アル中の怖さも知ってるよ」

女中「……」

女中「……ま、今はそれで構いません」

…………

……

ミア「ふぁぁぁ……ただいまぁ……」ノビー

男「お疲れ様でした」

ミア「はひ。もうしばらくワインはいらないです」

男「そう言わず。定休日前日ならつきあいますよ」

ミア「……ろーとしると?」

男「んなバカな。チリワインとか」

ミア「ですよねー」

男「っと、晩ご飯どうします?」

ミア「うー……まだいらないけど、夜遅くお腹減りそう」

男「んじゃ、軽い夜食作っておきますよ。しじみの味噌汁とおにぎりとか」

ミア「あ、ありがとうございます」

男「風呂も洗ってお湯張っておきますから。ゆっくら休んでください」

ミア「ど、どうしたんですか?」

男「そりゃ、あんだけぐっすり眠りこける人を働かせるわけにはいかんでしょ。あと、お風呂は酒が抜けてからですよ」

ミア「はぁい……はふ……」

男「ほら、あくびの出ちゃうラミアはとっとと体休める」

ミア「お言葉に甘えまぁす……」



キィ...バタン...

----
ここまで。
やっとのことで花見篇おわりです

追記
次回の小エピソードはそんなに時間かからず投下できる
投下したい
投下できるのではないだろうか

投下しようという心意気だけは受け取って欲しい……

>>373
脱皮かな?

はよ

>>375
脱皮じゃないよ 脱衣だよ



はよ

――――真白さん、こんばんわ。

真白「はい、こんば……えっ?あ、あれ、ここは?」

――――メタ空間です。

真白「メタ……あー、つまり『こういう展開は義妹さんや幼馴染さん向きでは?』とか言ってもセーフ?」

――――ぎりぎりセーフです。

真白「じゃあ……今時キャラと作者の対談とかwくっさwww」プゲラ

――――キャラ崩壊は自重していただきたいんですが……

真白「仕方ないですね……こほん……は、はぁ……えっと、な、なんで私が……」

――――『はよ』とレスがある度にましろんが1枚脱ぎます。

真白「えっ?」

――――『はよ』とレスがある度にましろんが脱ぐ罰ゲームです。な、みんな!

374~381「「「「「「「「はよ」」」」」」」」

真白「えっ、ええっ!?このSSってR18でしたっけ?」

――――いやぁ、メイド服の構造がどうなってるか、知りたかったんだよなぁ。

真白「誤魔化さないでください!」

381「はよ」

真白「い、いやいやいやいや!お、男さんにも見せたことないのに……」

381「はよ」

真白「お断りします……っていうか、帰してください……」ぐすっ

――――男とのデートシーン。

真白「……え?」

――――真白さんと男のデートシーンを書きましょう。

真白「…………」

真白「わ、分かりましたよ1レス1枚ですね」

――――ちょろい(ご協力ありがとうございます)

真白「建前と本音が逆ですよ」

381「はよ」

真白「と、とはいえ恥ずかしいですね……」

381「はよはよ」

――――はよはよ。

真白「ああ、はいはい、じゃあまずは……ブリムで」スポ

――――ちっがーう!

真白「?!」

――――メイドさん記号たる頭飾りと靴下は最後まで外すな!

真白「は、はぁ……なぜ?」

――――男のロマンゆえ。

真白「そんなロマンは捨てたほうがいいです」

381「はよはよはよはよ」

――――ほら、しびれを切らして目が血走ってますよ。

真白「じゃあ、右のパンプスで」ヌギッ

381「はよーっ!」ダダダダダッ

真白「あっ……ああ、もっていかれてしまいました……」

380「はよ」

真白「当然、左のパンプスです」スポッ

380「はよぉ……」ハムッ、モグモグ

真白「美味しいんでしょうか」

――――さぁ?

379「はよ」

真白「はい、エプロン」シュル

379「はよ……はよ……」zzz

真白「あら、掴んだまま寝ちゃいました」

――――ライナスの毛布ならぬ、ましろんのエプロンだね。

真白「こんな謎空間に拉致られない程度のセキュリティがエプロンにあればよかったんですけど……」

――――はよ。

真白「……」

――――はよ。

真白「なんで作者まで参加してるんですか……」

――――いいからはよ。

真白「燃えるゴミに出すつもりだった脱皮殻ならありますけど?」

――――あの女優がついに脱いだ!ってアオリの週刊誌に『日焼け肌をペリペリしてる写真』が載ったら暴動起きるんですが。

真白「一理ありますね」

――――でしょ?だからデートシーンのためにもはよ。

真白「……」シュルン

――――いきなりおぱんちゅきt……きた?

真白「お腹冷やさないように、毛糸パンツ履いてるんです」

真白「いやならいいんですよ、無理にもらわなくても。はい、次のエロガッパはよー」

――――いやいやいやいや、もらいますよ。むしろ期間限定のレア物です。

真白「途端に低俗なものになった気がします」

377「はよ」

真白「っていうかこの人たちはどこから沸いてきたんですか」

――――分かりかねます。ところではよ。

377「はよ」

真白「うっ……もういいんじゃないですか?」

――――まだまだ控えてますよ。デートシーンに『まちました?』『いや、俺も今きたところ』な冒頭が不要なら別にそれでもいいですが。

真白「分かった、分かりました必要です!」

プチッ...プチッ...シュル

真白「はい、ワンピースです……」パサッ

377「はーよー!!」クンカクンカ

真白「ああっ?!くんかくんかしないでください!ああ……汚される……」モジモジ

真白「う、ううう……恥ずか死にそう……」

376「はよーぅ……」///

真白「え、白Yシャツの裾を抑えてもじもじしてると余計にエロい?そ、そんなこと言われても……」

376「はよぉぉぅ」

真白「いや、その……ごめんなさい、リボンタイです」シュルン

376「はよー」

真白「ご満足いただけますか、よかったで……ひゃ、ど、どこに巻き付けてるんですか!」

376「我が世の春がきたぁぁっ!」

真白「“は”と“よ”以外もしゃべれるんですね……っていうかそのユムシを早くしまってください!」

375「はよ」

真白「え゛っ?ブラ希望……ですか?」チラッ

――――『真白、その、俺は……』っと。 カタカタ

真白「よしきたこれであの駄胸蛇に勝つる!」スポーン!!

375「はよー……」ドンヨリ

真白「えっ、もっとノリと恥じらいが必要?難しいんですね……」

374「はよ!」

真白「はよはよ」

374「はよー」

真白「はよよ?」

374「よよはよーぅ」

真白「は……はよはー」///

――――ついに謎の言語をマスターしましたか。

真白「い、いやそれほどでも」

――――で、そのうっすらぽっちが見え隠れするYシャツを、はよ。

真白「うー……」パサッ

――――はよーっ!

374「はよーっ!」

真白「ああ、よかった……もういないみたいですね……」モジモジ

――――ちっ。あと1枚なのに。

真白「は、はやく解放してください……」

――――まあまあ、ここまで頑張ったましろんにスペシャルゲストを紹介しましょう。

真白「……い、いりません!それよりはやくこの謎空間から出してください!」

――――そんなこと言っていいのかな?

男「……」

真白「えっ?きゃっ!」ささっ

――――スペシャルゲストの男さんでーす

真白「な、なな、な……」

――――さあ、自由にしてどぞー。

真白「……」ゴクリ

真白「お、おとこさん……その」

男「ましろ……」

真白「そっ、わたしの、私の全部……見てほしい……」スッ



男「はよ」







真白「えっ?」

男「はよ」グイー

真白「ま、待ってゴムがのびちゃう!っていうかこの展開なに?!」

男B「はよ」ヴン

真白「分裂?!」

――――あ、言い忘れてたけど、1分で倍になるよ。

真白「なにそれバイバインより質悪いじゃないですか!あ、やだやめてっ!腕掴まないで!」

男「はよ」

男B「はよ」

男C・D「「はよ」」

真白「ひぃぃぃっ?!」

男x4『はよ』グイッ

真白「やだっ!こんなのやだっ!やぁぁぁぁっ!!」

…………はよ

……はよ

真白「ああああっ?!」ガバッ!

男「……起きたか?」

真白「ひゃっ!?」ササッ

男「あのな……たらしだなんだからかわれて、自分でも耐性ついたものの、さすがにそういう反応は傷つくわ。なんもしねぇ、っつの」

真白「あ、えーと……えっと、B~Iさんは?」

男「は?」

真白「あ、いえ、なんでもないです!……で、えっと……な、なんで男さんが休憩室に?」

男「……」

男「お前が休憩時間すぎても出てこないから、だろうがぁ!」グリグリグリ

真白「え?ひゃ、ごめんなさいごめんなさい」

男「ったく、起こしにくればウンウンうなされてるし……」

真白「そ、そうでしたか……」ホッ

男「……お ”はよ” う、真白」

真白「お……はよ、うございます、男さん……」

男「次は俺が休憩時間なんだが?」

真白「あ、ごめんなさい……あ、あれ?」

男「ん?」

真白「な、なんでもないです。ごめんなさい」タッタッタッ



真白「あれ?リボンタイどこにやったっけ……?」

ここまで。
勢いだけでやった。もうしない。

されどエロは捗る

――――4月下旬 16:00@カフェHeavenly Hug ホール



ミア「……」

真白「……」

シーリス「……」

男「……」



4人『暇』

ミア「ここはひとつ、男さんを呼び込んだシーリスの指パッチンで」

男「なんだそれ」

シーリス「ふっふー!まかせてミアちー!へーい!客単価の高いお客さんかもーん!」スカッ

真白「……」

男「……」

シーリス「ちょ、ちょっと失敗しただけじゃんその哀れんだ目つきをやめてー」

ミア「地道に呼び込みやろうかしら」

シーリス「もっかい、もっかいだけチャンスちょうだい!」

男「あほらしい……好きなだけバックヤードでやっとけ」

シーリス「絶対見返してやるっ!へーい!短時間で帰って客単価が高くてクレーム出ないお客さん、かもーんっ!」



────パチィィィンッ!!!

カランコロン...カランコロンカラン...



男「まじか!?」

ミア「ちょっと毎日鳴らしてもらおうかしら」

シーリス「ふっふーん!いらっしゃいませ!何名様です、か……あら?」

真白「あ……」



ハーピー「おひさしー、真白ちん!」



そんなわけで
元々投下するつもりだった鳥来襲編
とりあえずさわりだけ

>>410
ほんとだ
さわり、で調べたら文化庁のサイトに『話の要点』って書いてある。
『最初の部分』って意味でずっと使ってた
ありがとう

ちなみに
おさわり
で調べたら……ちょっと予定ができたので投下が遅くなる

真白「ハーピーさん!お久しぶりです!今日はどうして?」

ハーピー「あ、あれ……私の知ってる岩国真白じゃない気がする……」

真白「えっ、あ、そうですか?……ふ、普通です……」

ハーピー「そうそう、この感じ」

ミア「相変わらず頭すっからかんね、ハーピー」

ハーピー「や、相変わらず胸に贅肉蓄えてんね、ミア。元気だった?」

ミア「おかげさまで」

ハーピー「やっぽ、お嬢様」

シーリス「1年ぶり?」

ハーピー「ま、そんなとこかな……ほら、座って座って」

???「ママー」

ハーピー「ありゃ、ごめんごめん。この子、うちの娘。会うの初めてだよね。ほら、おねーさんたちに挨拶して」

ハピ娘「ハピです!4さいももぐみです!」

ミア「あら、おりこうさんね」

ハピ娘「うん!へへー」

ハーピー「全然人見知りしないでしょ。すーぐどっか走って行っちゃって大変なの」

ミア「でも、可愛い盛りじゃない。今日はどうしたの?」

ハーピー「近く寄ったから。あ、わたしアメリカン。この子は……」

ハピ娘「パンケーキ!あのね、3つかさねてね、アイスのってるの!」

ハーピー「ちょっ?!」

真白「かしこまりました。スペシャルパンケーキ特盛りですね」

ハピ娘「わぁい!」

ハーピー「晩ご飯食べられなくなっても知らないぞぉ。お父さんに怒られるぞぉ」

ハピ娘「たべるもん!」

ミア「その旦那さんは?」

ハーピー「今日はこっちの街で研修なの。で、終わり次第合流。晩ご飯は回るお寿司におじいちゃんと」

ミア「へぇ、相変わらず仲がいいわね」

ハピ娘「ラブラブだよ。いってきますのちゅーしてた」

ハーピー「よ、余計なこと言わないの」

男「ごほん」

ミア「あ、ごめんなさい。ハーピー、こちら男さん。年明けから入った厨房スタッフ」

ハーピー「あ、はじめましてー」

男「はじめまして……でもないかな?以前、バイク便の会社で働いてませんでした?」

ハーピー「そだよ。結婚して、旦那が転職したのきっかけに辞めちゃったけど」

男「道理で。以前は何度か飛んでるの見たけど、最近見ないなー、と」

ハーピー「あー……まあ、あそこも今や準大手だしね。チーフとかって肩書きついて机仕事も増えちゃってさ」

ミア「で、今は何してるの?」

ハーピー「房総でパラグライダーのインストラクターほか」

ミア「ほか?」

ハーピー「漁を手伝ったり、朝市に出す野菜引っこ抜いたり、ぎっくり腰の郵便局員のかわりに配達したり」

男「フリーダムな生き方だな……」

ミア「ほんと、定住して結婚して子どもまで出来たのが奇跡みたいなものね」

男「……ていうかどういうつながりなんだ?」

ミア「ええっと……はい、説明」

ハーピー「丸投げか……うちの親と真白ちんの親が知り合い。で、真白ちんのことは昔から知ってた」

ハーピー「ミアと私は同じSNOGの会員」

男「エスノッグ……?」

ミア「寒い・日本の冬を・おこたで乗り切る・ギリシャ神話の会」

ハーピー「年に一回、総会ではみんなおこたで鍋つつくよ」

男「なにそれ楽しそう」

シーリス「はーい、アメリカンコーヒーと、スペシャルパンケーキ特盛りのナイフとフォーク」カチャカチャ

ハピ娘「ハピの?」

シーリス「そうだよ。ハピちゃんいいなぁ、ホイップクリームにアイスに蜂蜜もかかってるパンケーキだよ」

ハピ娘「ママ!ハピのすごいよ!」

ハーピー「しーっ……ほかのお客さんの迷惑……にはならないか」

ミア「フランス人ばりのエスブリをありがとう」

ハーピー「ハピ、お絵かきしながら待ってようか」

ハピ娘「うん!」

真白「男さーん、ごめんなさい……手伝ってもらえますか?」

男「おう、すまん、今行く」

真白「小麦粉……砂糖……バター……牛乳……」

男「ホイップ立てとくぞ」

真白「はい、お願いします」

男「俺が作るから、話してきたらどうだ?」カチャチャチャチャ...

真白「大丈夫です……ん、ふるいふるい……あった」ゴトッ

男「親同士が知り合いなんだって?」ギュイーーーーム...

真白「はい。だから親戚のお姉さんみたいな人です」カシャカシャカシャ...

男「なんか、真白がハーピーさんの背中にくっついてる図が浮かぶな」

真白「そ、そんなには……ないとも言えないと言うか……」

男「ははは」

真白「あ、ホイップそれくらいで」

男「おう……しかし、いつ見ても綺麗な腕さばきだな。俺ではこうはできん。短時間でダマもないし」

真白「あ、あり、ありがとうございます」ポッ

……

真白「そろそろフライパンの温度いいかな……あ、アイスクリームディッシャーと蜂蜜、お湯で温めてくれますか?」

男「ん」

真白「ふっわふわーのパンケーキ~、カロリー満載でぶの素~♪っと」ジュウウウウ...

男「なんだそのひっでぇ歌詞は……ってあれ、ちっちゃくない?」

真白「はい。分量同じなら、小さくても段が多いほうがいいかな、って」

男「なるほどね。高さがあると見た目のインパクトでかいしな」

真白「はいっ」

……

ハーピー「わかるー。うちの旦那なんか、結露がー結露がー、ってさー」

ミア「やめられるわけないのにねー」



ハピ娘「おーはなーさんっ、うさーぎーさんっ♪」

シーリス「これは?」

ハピ娘「これはねー……なーんだ!」

シーリス「なぞなぞかぁ……んっとー……」

シーリス(肌色で、4本足で翼があるぞ……なんだこれ)

シーリス「わかった!ペガサス!」

ハピ娘「ぶっぶー!」

シーリス「じゃあ……スフィンクス」

ハピ娘「ちがーう」

シーリス「むずかしいなぁ……ヒントちょうだい」

ハピ娘「じゃあ……」グリグリカキカキ

ハピ娘「これはハピ!」

シーリス「この、お布団で寝てるの、ハピちゃん?」

シーリス(……)

シーリス(…………うわぁなんとなく分かっちゃったかも)

シーリス「う、うーんとぉ……」

ハピ娘「これはね、ハピ!お昼寝してるの。こっちはパパとママ。パパの上ですっぽんぽんのママがお馬さんごっ」

ハーピー「ちょっ?!ストップ、ストーップ!」

ハピ娘「むーっ!」

シーリス「……」

ミア「……」

ハーピー「これはペガサス!新種のハダイロペガサスですっ!」

……

真白「お待たせしました、スペシャルパンケーキです……けど、何かあったんですか?」

シーリス「いや、うん、ほら、なんていうかアレよ、うん、ペガサスがね」

ハーピー「ま、ま、いいからいいから」

真白「はぁ……はい、ハピちゃん」コト

ハピ娘「わぁ……ぜんぶハピの?」

真白「そうだよ、召し上がれ」

ハピ娘「いちにぃさん……しぃ、ご!」

ハーピー「よかったわね」

ハピ娘「あー……むっ!んー!ん~~~っ」バタバタ

真白「おいしい?よかった」

ハーピー「こら、いただきます、ってしなさい!美味しいならお姉ちゃんに『ありがとう』は?」

ハピ娘「あひはと!」

ハーピー「ほらもう、口の中空っぽにしてから喋りなさい」

---
ここまで
続きは夜にでも

誤字修正
>>417
×:やっぽ、お嬢様
○:やっほ、お嬢様

はぴ娘かわい

半濁点どころじゃなかった……

>>417の最後3行
---
ハーピー「やっほ、お嬢様。1年ぶり?」

シーリス「ま、そんなとこかな……ほら、座って座って」
---

と脳内修正してくださいぃぃぃ

――――厨房

パタパタパタ...

真白「も、もどりましたっ!」

男「良かったな、喜んでもらえて」

真白「あ、は、はい」

男「あーしまった。そのまま休憩に入れ、って言うべきだったな。悪かった」

真白「い、いえ……でも、片付けとか」

男「使った道具は洗い終えたよ。後は皿が下がってきたら」

真白「じゃあ、お言葉に甘えます」

男「あ、それと」

真白「?」

男「5段にする発想は良かったと思う」

真白「そ、そうですか?ハピちゃんが3段、って言った時、5段ならもっと喜ぶかな、って」

男「料理を商売にする奴にとって、その考え方は必要だと思う」

真白「お客さんが喜ぶ……顧客満足度、ってことですか?」

男「じゃあ、顧客満足度のために料理の材料を良くしたり、手順を大幅に変えてもいいのか?」

真白「それは……お客さんが喜んでも赤字になったら意味が無いんじゃ……」

男「だよな」

真白「あ……もしかして、お花見の時に言おうとした、女中さんと私たちの差って」

男「そういうこと。金と時間をかければ客が満足する物を作ることはできる」

男「限られた時間とお金と場所で、それをどこまで追求できるのか。追求すればいいのか」

真白「……」

男「俺だって答えが見つかったわけじゃないし、そもそも一定の答えがあるもんじゃないだろう」

男「でもまぁ、自分で実践できたんだ、合格だろ」

真白「ありがとうございます……そういえば、うちの父も似たようなこと、言っていた気がします」

男「へーぇ……和菓子職人だっけ?」

真白「はい……ふふ」

男「なんだよ」

真白「フライパンに向かってる時の真剣な顔、男さんと父でそっくりだなって」

男「老け顔ってことか?」

真白「え、あ、そうじゃなくって……その……か、かっこいい、ってことです……」

男「はいはい、お世辞はいいから……っとすまん、休憩してこい、って言いながら引き留めちまったな」

真白「……」ジー

男「どうした?」

真白「ご褒美、ほしいなぁ、って」

男「花丸ハンコでも押してやろうか」

真白「は、ハンコなら実印をくださいっ!」

男「借金の連帯保証人か?」

真白「い、いえっ、婚姻届ですっ!」







男「……」

男「……お前のジョークは分かりづらい」

真白「うっ……」

男「しゃあねぇな。ほれ、頭貸せ」ポフポフ

真白「っ!」ボムッ

男「……」ナデナデ

真白「……」カァァァ

男「はい、ご褒美おわり」

真白「はひっ、休憩もらいますっ」

真白「お、おま、た……おまたせしました」

ハーピー「大丈夫?顔真っ赤っ赤だよ?」

真白「はひ、大丈夫です。それに休憩もらいましたから」

ハーピー「んー……ま、いいけどさー。そうそう、パンケーキすごく美味しかった」

真白「ありがとうございます。ハーピーさんも母親業が板についてきましたね」

ハーピー「かなぁ……もう毎日手探りで飽きる暇がないよ」

真白「いいなぁ……」

ハーピー「ん、何、産卵の予定あり?」

真白「え?べ、別に……ないです」

ハーピー「でも卵産みたい相手はいるんだ」

真白「そっ、そそそそんなことないです!」

ハーピー(わかりやすい……)

ハーピー「でもなんか、あの人は信用できないなぁ」

真白「……」カチン

真白「男さんの事知らないのに、そんな風に悪く言わないでください」ムスッ

ハーピー「ふふーん、別に男くんだとは言ってないよー」

真白「でっ、ですよね分かってますたまたまわざとです」

ハーピー「にやにや」

ハーピー「でもさ、真白ちん。『命短し恋せよ乙女』っていうじゃん」

真白「……まぁ、そう、ですね」

ハーピー「恋愛の極意を教えてあげようか」

真白「は、はいっ、お願いします!」

ハーピー「押して押して押しまくる!」

真白「押してダメらら引いてみる、じゃないんですか?」

ハーピー「押しまくって地球1周分押しきったところを傍から見たら、引いたのと同じように見えると思う」

真白「……」

ハーピー「現に、旦那はそうやってとっ捕まえたわけだし?」

真白「さすが、地球1周分は押しまくった人の意見は説得力がちがいますね」

ハーピー「いやぁ、そこまで褒められると照れちゃうなぁ」

真白「半分呆れてるんですけどね……でも、はい、頑張って押しまくってみます」

カランコロンカランコロ...

シーリス「いらっしゃいませー」

????「や、半日ぶり」コトン

ハーピー「やぁ。研修お疲れ様」

ハピ娘「あ、パパだ!パパー!」ダダダダダッ

前作男「こらハピ、お店で走っちゃだめだめだろ」

ハピ娘「だってぇ……はやくパパにだっこしてもらいたかったんだもーん」

前作男改めハピ旦那「……」



ハピ旦那「んじゃあ仕方ないなぁ~。ほーら、おひげじょりじょりじょり~」デレデレデレ

ハピ娘「やぁだぁ!」キャッキャ



真白「聞いていた以上に親バカですね……式で会った時はもっとクールというか陰がある感じだったんですけど」

ハーピー「色々あったのよん。あとあれは親バカじゃなくて、バカ親」クス

ハピ旦那「いい子にしてたか?パパ、ハピと9時間16分も離れてて寂しかったよー」

ハピ娘「ハピも!あのねぇ、ハピ、パンケーキたべた!5!ごだんがさねだよ!」

ハピ旦那「あれ、お祖父ちゃんたちと晩ご飯食べるのに、そんなにおやつ食べていいのか?」

ハピ娘「でもいっこパパの分あるよ!はいっ、あーん」

ハピ旦那「あーーー……んっ!」

ハピ娘「おいしい?」

ハピ旦那「うん、おいしい!ハピの愛情がこもってるなぁ」デレー

真白「作ったの私ですけどね」ジトー

ミア「お久しぶり。足の調子はいかが?」

ハピ旦那「杖の生活にも慣れました。冬になると相変わらずひきつりますけど、この季節なら痛みもないです」

ミア「温泉の近くに引っ越したのがよかったみたいね」

シーリス「転職したんでしょ?学校の先生だっけ?」

ハピ旦那「そうです。毎日小学生のバイタリティに圧倒されてますよ」

シーリス「でも楽しそう」

ハピ旦那「そりゃあもう」

ハーピー「んじゃあ、そろそろ帰るよ。さっきからうちのお父さんの『まだか』メールがすごいし」

ミア「また寄ってね。旦那さんも一緒に」

ハーピー「またね、真白ちんもお嬢様も。それとミア、SNOGで。今年は私が幹事だから、漁師風の魚貝たっぷりチャンコね」

ミア「まだ半年先よ。でも楽しみにしてる……またね、ハピちゃん」

男「旦那さんも、今度はゆっくりしていってください」

ハピ旦那「そうですね、また2ヶ月後に研修なんで、その時はゆっくり寄らせてもらいます」

ハピ娘「ごちそうさまでした!」

シーリス「ばいばーい!」



カランコロン...

男「……そういえば、ハーピーと人のハーフなのに、あのハピちゃんは人だったな」

真白「ミックス、混ざってる人なんてそんなものですよ、男さん」

ミア「逆に、亜人が形態を維持しようと近親交配を繰り返して遺伝子が濃くなっちゃうのも問題になってますし」

真白「混ざってる人が隔世遺伝で急に羽が生えても、筋肉や骨が伴わなくて飛べなくて……なんてこともありますし」

男「二人共詳しいんだな」

ミア「えっ、そ、そりゃまぁ……私はラミアのコミュニティの中で育ったのでそういう教育もありましたから」

真白「右に同じ……です」

男「へーぇ。ミアさんはともかく真白もなのか」

真白「え、あ、はぁ、まぁ……その、うん、じょ、常識です常識!」

男「どうせ俺は常識知らずですよ」フン

シーリス「でもいいなぁ、可愛い子どもとかっこいい旦那さんかっこ高給取りかっことじ」

男「社長令嬢がよく言うぜ」

シーリス「昔の人は言いました。『それはそれ、これはこれ』」

男「左様で……」チラ

ミア「……」

男「で、その魔法の指パッチンの効果はおしまいか?」

シーリス「……1日1回みたいだね」パチンパチン

男「んじゃ、シルバー磨きでも始めるか。3人とも手伝ってくれよ」

真白「はいっ」

ミア「そうですね。お皿下げたらやっつけちゃいましょう」

シーリス「はーいはい」

男「はい、は1回って教わらなかったか?」デコピン

……

カチャカチャカチャカチャ

キュッキュッキュッキュ

シーリス「なぜ蟹を食べる時とシルバー磨きの最中は無言になるのか」

男「だまって手を動かせ」



真白(でも、黙って手だけ動かしてると……)

シーリス(余計なことばっかり思い浮かんじゃうんだよねー)

ミア(結婚、旦那さん、子ども……)

真白(……)

真白(夫婦ふたりで営む小じんまりしたケーキ屋さん……)

シーリス(……)

シーリス(大型犬が放し飼いできるような庭のある家……)

ミア(……)

ミア(式はやっぱりドレスかしら。それとも白無垢?確か亜人向けの婚礼用レンタル衣装が最近ニュースに……)



3人(……)ジー



男「な、なんだ3人とも……俺の顔になんかついてるか?」



3人「なんでもなーい」

---- ここまで。

↓おまけ

ハピ旦那「>>430さん、ハピの可愛さが分かるなんて素晴らしい」

ハピ旦那「見てこの写真、目元はハーピーさんそっくりなんだけど、耳と鼻が僕似なんだ!」デレー

ハピ旦那「ああそうそう、そんな>>430さんにはこのBD-BOXなんかどうかな?」

ハピ旦那「ハピが産まれてからハイハイ期、つかまり立ちから歩き出すまでを撮影した『ハピ、大地に立つ編』と」

ハピ旦那「ハピがはじめて『パパ』ってしゃべるまでを収めた号泣必至の『ハピ・天使編』」

ハピ旦那「ハピが幼稚園に初登園してギャン泣きするところから運動会やお遊戯会を記録した『めぐりあいハピ』編」

ハピ旦那「特別編集した72時間に加え、オーディオコメンタリ、祖父母や産科の先生のインタビューにハピの直筆サイン入りエコー写真もついて!」

ハピ旦那「なんと完全受注生産で79,800円!今だけ!ってあ、ちょっとハーピーさん襟首掴んだら痛いって!」

ハーピー「はいはい、帰るよー」ズルズルズル...

--- おまけ ここまで

当方としてはハピ娘タソは卵生だったようだけれど、そうなるとやっぱりお臍は無いのかどうか
そして見た目は人間とのことだけれど出産の際には胎生なのか卵生なのか、そこら辺が気になる所存であります

>>457
そこまで
詳しく
考えてない

けど、ヘソなしの胎生が一番しっくりくる


ところで、人間の胎児が入るサイズの卵なんて産んだらガバg……
なんでもない

どことは言わないけど真白は陰毛生えてなくて
ツルツルであってほしい

【問】>>461を証明せよ

【解】
定義より、ましろんは真白である
      ましろん = 真白   …(1)
また >>257のストーンより、ましろんはまな板である
      ましろん = まな板  …(2)
(1),(2)より、
      ましろん = 真白 = まな板
   ∴ ましろん = 白板  …(3)

一方 原義より、
      白板 = パイパン  …(4)
ここで Wikipediaより、
      >パイパンは、女性や男性の陰部に陰毛が全く、あるいはほとんど生えていないこと、
      >またはそのような女性や男性そのものを指す。  …(5)

(3),(4),(5)より、
      ましろん = 生えてない
が成り立つので、題意は成立する。 (証明終わり)

絵心がない自分がくやしい(ビクンビクン
あればジト目で「ドンビキです」とか言ってる真白描くのに……

とりあえず、今日中に投下告知

>>468
書けという事か?そう捉えていいのか?

>>469
ギアスR2の天子様しか浮かばんかったわ

>>470
本能の赴くままにすればいいと思う

>>471
あー……っぽいかも

――――4月27日 16:00@カフェHeavenly Hug ホール

ミア「男さん、お手すきならこれをドアに貼ってもらえませんか?」

男「はいよ……っと、なになに」



『4/29から5/6まで休みます 5/7より平常通り営業』


男「……」

ミア「あれ、誤字でもありました?」

男「……あの、俺には8連休と書いてあるように見えるんですが」

ミア「はい。何か問題でも?」

男「いや、カレンダー通りに働く人とかいるでしょ。まるっと休むなんてそんな……」

ミア「これだから日本人はワーカホリックって言われるんですよ」ヤレヤレ

男「むかつく外人のテンプレみたいに肩をすくめなくても」

ミア「みたいも何も外人なんですけど。真白は実家に帰るし、シーリスも家の用事で来られません。人が足らなくて」

ミア「やることはありますよ。休みを利用して大掃除や棚卸し。あと夏の制服を陰干ししたり。なにより……」

男「なにより?」

ミア「……たまには骨休めも必要じゃないですか。具体的にはちびりちびりワイン飲んだり」

男「……」ハァ

男「んじゃあ、俺は短期でバイト入れますよ。友から『手が空いてたら助けてくれ』って言われてますし」

ミア「ええ、かまいませんけど……ご実家に帰らなくてもいいんですか?」

男「帰りません」

……

男「真白は実家でゆっくりできるのか?」

真白「いいえ、ひたすらチマキ作ったり柏餅作ったりチマキ蒸したりチマキ売ったりまたチマキ作ったり……」ドンヨリ

真白「その合間に『んまー真白ちゃん大きくなって!おばちゃん、真白ちゃんがこ~~~んな時から知ってるのよ』とかいう遠い親戚の話し相手とか」

真白「私よりブラのカップが大きい従妹を筆頭に子どもの遊び相手とかが入ります」

男「あー……そりゃ大変だな。そういえば実家は和菓子屋だっけ」

真白「はい。あ、男さんバイトするんですよね?」

真白「男さんがお手伝いしてくれるって言うなら大歓迎ですよ」

真白「バイト代はもちろん、布団と食事も手配しますし、交通費も出させます」

男「えー……娘が男連れて帰ったら、いつの間にか紋付き袴で三三九度させられてそうで……」

真白「ちっ」ボソッ

男「なんか言ったかー?」

真白「いえー、いえいえ何でもないです」ハァ

シーリス「ちゅうもーん!」チンチンチンチン

男「1回鳴らせばわかるんだが……」

シーリス「いやー、いい雰囲気だったから邪魔してみたー」ニヤリ

真白「……」ムスッ

シーリス「あ、注文はピザトーストねー」

真白「はいはい、ピザトーストね!承りましたっ!」

男「……いや、俺が作るから真白は着替えてこい。もう勤務時間終わってる」

真白「えっ……あ、はい……」

男「真白」ポフ

真白「?!」

男「笑顔笑顔。むくれてたら、作っても美味しくできないぞ」

真白「はい……着替えてきます」

パタパタ...

男「……うん、ピザトーストだったな」ポリポリ

男(厚切りの食パンに……マーガリンとピザソース)ペッタペッタ

男(薄切りサラミ、輪切りピーマン、玉ねぎ、マッシュルームをのせて……)サササッ

男(チーズを振ったらトースターに入れて……と)ガチャン...ジジジジジッ

男(出来上がりの見た目はシンプル、でも、チーズをしっかり溶かすとトーストが焦げてしまう……)

男(そこで、いいところで取り出して、バーナーで上っ面を炙ってチーズに茶色の焦げ目をつけるんだが)

男(ガスくささが鼻につく気がするんだよなぁ)

男(それに、トッピングはこれでいいんだろうか……アンチョビ?ホタテ?パイナップルでハワイアンって手も……)

真白「……さん」

男(複雑だ……たかがピザトーストの中に宇宙がある……)

真白「男さん!焦げますよ!」

男「!!!」

真白「もう、何してるんですか」

男「すまん……よっと」トサッ

男「バーナー……こんな感じかな?」コォォォ...

男「ん、よし。シーリス、ピザトーでるぞ」

シーリス「はいはーい……お待たせしましたー。こちらシェフの特製いつものピザトーストになりまーす」

男(シェフの特製、必要だったか……?)

真白「ふふ、考え事してたんですか?」

男「ああ、助かったよ」

真白「きのこと鶏肉と刻みノリの和風ピザトーストはどうだろう、とか考えてたんじゃないですか?」

男「惜しい」

真白「ほんと、料理好きですね」クスクス

男「……」

真白「……」

男「で、暇……と。あのピザトースト以降料理が出やしない」

真白「残念ですね、腕が振るえなくて」

男「本当だよ……ランチは入るようになったが、昼過ぎや夕方ももう少し客がほしい」

真白「うーん……そうでしょうか」

男「そうだろ。人が余ってるんだから」



真白「じゃあなくて、うちにくるお客様から見た時にどう思うかってことです」

真白「裏通りにあるこの店って、なかなか入りづらいと思うんです」

真白「それが逆に静かに本を読んだり考え事したりできる、隠れ家みたいな雰囲気を出してると思います」

真白「だから、なんていうのかな……お客様は『自分だけが知ってる事に優越感を覚える』というか……」

真白「常連さんの連帯感もあったりして。いつも座る席が決まってて、他のお客様はそこを避けて座ったり」

真白「でもそこにグルメ雑誌を見た一見さんがたくさん来て、ざわついて、常連さんが離れて」

真白「一度だけ組まれた特集が古くなって一見さんもいなくなった時、そこには常連さんもいない店が残りますよ」

真白「だから、このままでいいんです」

男「……」

真白「だけじゃなくて、付録のクーポンや『テレビで見た』っていうと安くなるとか」

真白「そういうのって常連さんからしたら『軽んじられた』って思うんじゃ……あ、す、すいません無駄に熱く語ってしまって……」

男「いや、すごいな真白。俺なんか、『もっと料理の腕を振るいたい』としか思ってなかった」

真白「あー、半分は実体験で……好きだったお店が雑誌に紹介されていきなりすごい行列になっちゃって……」

男「あー……女性ってケーキとかパフェとか、紹介されると食いつくもんな」

真白「えっ?」

男「ん?違った?美容院とかセレクトショップ?」

真白「あーいえ、その……です」ボソッ

男「え?」

真白「いえ……ラーメン屋、でして……」ゴニョゴニョ

男「……」

真白「やっぱりドン引きですよね……女性ひとりでラーメンなんて」

男「……あ、いや、そうじゃなくて食うわりに栄養がむ……肉にならないんだなぁ、と」

真白「……なんか、必死に秘密を晒した私が馬鹿みたいです」ジトー

男(まずった……)

真白「それにセクハラです」

男「いや悪気があったわけじゃ……」

真白「余計に悪いです」

男「はい、申し訳ございません」

真白「……帰ります」

男「いや本当にごめんなさい」

真白「らーめん『あんた食い切れんの?』のチャーシューメン特盛りにキャベツと煮玉子トッピング食べて帰ります」

男「えぇぇ……」

真白「ニンニクいれますか?はい、マシマシですよ!ましろだけに!今の時間ならライスも無料ですし!」

男「食いすぎだろ」

真白「どーせ、食べてもおっぱいに栄養いきませんから!」プンスカ

男「あ、ちょ」

真白「失礼します!」バタン!!

男「……あーあ、やっちまった」

ミア「あのぉ」

男「……」

ミア「お客様もいますし、大声で『おっぱい』はやめましょ?」

男「言ったのは俺じゃない」

シーリス「おめでとう男っち!女たらしからセクハラ士にジョブチェンジだー」

男「今も昔も俺の職業は『シェフ』だ!」

ミア「大丈夫、副業は禁止してませんから」

男「そこじゃないでしょ……」

ミア「セクハラするかたわらシェフをしてもらってかまいませんよ」



男「……え」



ミア「?」

男「ああ、そうですか。はい……」

kokomade

なにこれ何年かぶりにキーボードがローマ字に戻せなくなって悪戦苦闘してるうちに……

touka

――――同日21時@カフェHeavenly Hug ホール



ミア「シーリス、表のシャッター下ろしてくれる?」

シーリス「んー」

ミア「男さん、洗い終わったお皿をいただけ……」

カチャン

ミア「あ、ありがとうございます、あ、ついでにミルクピッチャーとスプ……」

ジャララ...

ミア「……ど、どうも」

シーリス(あーやや、男っち凹んでるなー)

シーリス(でもミアったらなーんで男っちが凹んでるか分かってないな)

シーリス(んもー、仕方ないから慰めちゃおっかなー……でもその前に)

シーリス「掃き掃除始めちゃっていーい?」

ミア「うん、お願い」

シーリス「ねぇ、ミアちー」

ミア「はーいー」

シーリス「男っちに謝りなよ?」

ミア「えっ」

シーリス「男っちにさー『シェフが副業』なんて言ったらだめじゃん」

ミア「でも元々シーリスが」

シーリス「うん。だからこれから謝ってくる。ミアちーが謝りやすい雰囲気つくっとくから」

ミア「……」

シーリス「私の居ない所でいいから仲直りすること。そんなわけで、あとはレジ〆だけ。よっろしくー」

シーリス「やほー」

男「……」キュキュッ

シーリス「なんでホワイトボード?」

男『口を開くとセクハラ扱いされるので筆談でいい』コツコツ

シーリス「……」

シーリス「あー……ごめん、ね。私が余計な事言ったから。私ったら、いつも一言多くてさー」

シーリス「ミアちーもさ、ちょっと言い方間違えただけで、悪気はないんだと思うよ」

シーリス「いつまでも拗ねてないでさー」

男「……別に、拗ねてない」

シーリス「すねてるじゃん……まあまあ、たまった鬱憤、しゃべってすっきりしなよ。おねーさんの胸を貸してあげよう」

男「……」ジー

シーリス「そこで『真白以上ミア未満のな』とか言わなきゃ……あ、ごめんごめん」

男「……そんな事言うって思われてるんだな」

シーリス「ジョークだってば。ほら、話しなよ。凹んでないでさ」

男「どうやら……俺は自分の料理の腕で雇われてると思ってたが、ちがうみたいだな」

シーリス「料理の腕で雇われてるに決まってるじゃん。お客さんのご意見カード読んだ?美味しいって感想増えてるよ」

男「……そうだな。副業でやってるシェフの料理だけどな。あとそこ、水かかるぞ」ザバー

シーリス「うわっと……男っちが作った料理の素晴らしさは私も真白もミアも知ってる……ほい、ちょっと手ぇ出して」

男「ん?」

シーリス「すごい包丁ダコ。この手があってさ、美味しい料理ができるんだよね」ギュ

シーリス「男っちが作る料理ね、ちゃんと愛を感じるよ。食べる人の事、考えて想って作ってる」

シーリス「ミアも最初のオムライスからもそれを感じたから、男っちとを雇ったんだと思う」

シーリス「愛がないなら、真白だって懐かないよ」

男「シーリス……」

シーリス「ふへへ、柄にもないこと言っちゃったねー。あ、ふたりを呼び捨てにしたことも内緒。それと……」










          チュ









男「な、なななななな!?」

シーリス「はーい、女の子と同棲までしてた人がほっぺチューくらいで動揺しないの」

シーリス「一応、私の一言が原因だし、ごめんねのキス。それ以上の意味はないからー」

男「い、意味はないって言われてもだな……」

シーリス「ドキドキした?かわいいなぁ、もう」

シーリス「んじゃ、きちんとミアちーと仲直りする事、これ宿題でーす……上がる時間だし、お風呂借りるねー」

男「お、おまっ……」

シーリス「覗きたい?セクハラ士さん」

男「馬鹿言え。シェフはそんなことしねぇよ」

シーリス「へへ、だよねー」

ここまでー。


(アカン、この流れはましろん怒らせたこと忘れてるパータンだ)

>>503
っぶつ森

>>504
人外について知りたいのであれば
ttp://ja.wikipedia.org/wiki/幻想生物
↑なんだかんだ一番頼りになりますが募金はNO。もしくは、”幻想生物”や”幻獣”あたりで検索かけるとNEVARまとめが出る

書籍であれば新紀元社の『幻想動物事典』や『幻想世界の住人たち』あたりを
コンビニで売ってる雑学系のムックにもファンタジー系あり

人外”っ娘”について知りたい→クロビネガ(18禁なので自己責に……ふぅ)

まちがえた

みんなも募金してね!
ttp://ja.wikipedia.org/wiki/伝説の生物一覧

俺「見間違いか? >>506の耳からニュルって何か出てた様な……」ニュルッ

俺「うわっ…モガ…助け……」ズルズルズル

 「……」

http://uproda.2ch-library.com/806791m7N/lib806791.jpg

ジト目ましろん
5分クオリティーなんで許して下さい。
と言いますか、誰か描いて下さい。

>>510
保存シマシタ

>>511
ウェ!?( 0w0)
保存してくれて嬉しいです! 有り難うございます!

あーあ調子乗っちゃったよ
波風立てないための方便だろうに
ただでさえ再生厨イメージ厨は煙たがれるのに
未完成の線画なんか貼って何がしたいんだ
画像晒すにしても注釈言い訳で逃げ道残したら上達しないぞ
あとスレ大量落ちは鯖側の問題だからageなくていい

ましろん
ミアさん
お嬢様

誰が勝つのか?

>>512
ありがとナス

>>514
あんまり厳しく言ってもアレだで、ほどほどに

>>516
気になりますね

20時より投下予定

ザバーッ

シーリス(……)ブクブクブク...

シーリス(何してんだろ私……ってキスか。うん、キスした。ほっぺただけど)

シーリス(……勝ち目ないのはわかってるけどさー)

シーリス(あの巨大山脈と断崖絶壁を越えるのが難しいことも分かってるけどさー)

シーリス(気軽に話しかけられる女友達ポジション確保しちゃったけどさー)

シーリス(でも、参戦は自由だよねぇ)

シーリス(ふふっ、『邪眼に見られたら死ぬから』じゃなくて『シェフだから』だって)

シーリス(分かってて言ったんじゃ無くても嬉しいなぁ)


グラッ


シーリス「んにゃ?」

カタカタカタカタ...

シーリス「お、地震かぁ……ま、震度3って感じかな?」ノンビリ

男(火の元よし、水回りよし、消毒よし)

男(……さて、どうしたもんか)

男(仲直りったって、俺は悪くないし……悪くないよな。わるく……)

男(いや、悪いか。悪いな。人の身体的特徴を悪し様に言うのはいかん)

男(その点については謝る。向こうが謝るかは分からないが、俺は謝る)

男(第一、仲直りしてないと……)

男(シーリス『ひどーい!乙女の唇は安くないのにー、遊びだったのね!』)

男(ああ、うん。容易に想像できた。まずい、また『安い土下座ですね』とか言われる羽目になる……行かねば)

男「そろそろレジ〆も終わった頃かな……」コソッ

ミア(……仲直り、かぁ)

ミア(って、別に、悪いのはセクハラまがいな事を言った男さんで)

ミア(冗談を言ったシーリスで)

ミア(とどめをさしたのは……私か)

ミア(そっか、そうよね……男さんの手を見て、作ってくれた料理の味で決めたのに)

ミア(シェフは副業なんて言ったら……だめよね)

ミア(謝らなきゃ、うん)

ミア「そろそろ厨房のお掃除終わったかしら……?」コソッ



男・ミア「「あ」」バッタリ

男「厨房周り、終わりました」

ミア「お、お疲れ様です……こっちもレジ〆終わりました」

男「……」

ミア「……」



男・ミア(気まずい……)



男・ミア「あのっ!」


男「……」

ミア「……」

ミア「男さんからどうぞ……」

男「んじゃ。女性スタッフの多い職場で配慮が足りませんでした、今後は気をつけます」

ミア「あ、はい……あのっ、その……気をつけてください」

男「……はい、気をつけます」

ミア「……」

男「で、ミアさんの用件は?」

ミア「えっ、その……そのあの……その」

男「そのあのその?」

ミア「……昼間、ひどいこと言ってごめ」

グラッ

ミア「!?」

カタカタカタカタ...

ミア「ひゃっ?!」ギュ

男「おわっと……とと、地震か」

男(地震より胸!胸!)

ミア「Maman, s'il vous plait aider...」ギュゥゥ

男「……ま、震度3か、もしかしたら4か。こんだけ横揺れが長いと震源からも遠いし、平気ですよ」ナデナデ

グラグラグラ...

ミア「ひぅ……」

男「はいはい、大丈夫だから」ポフポフ

ミア「本当に?」

男「ほら、もう収まった」

ミア「……」グスッ

男「つーか何年日本に住んでるんです、地震なんて慣れたもんでしょ」

ミア「こっ、こわいものはこわいんです!」

男「よほど怖かったんですね。『ママー、たすけてー』なんて」

ミア「ふ、フランス語分かるんですか!?」

男「少しはね」

ミア「……」カァァ

男「ま、聞かなかった事にしておきます。で、言いかけた続きは?」

ミア「え、あ、ええと……」



ミア「ごめんなさい」



ミア「シェフが副業なんて言ってごめんなさい」

ミア「本心じゃないの、ただ……」

男「ただ?」

ミア(なんでだっけ……)

ミア(……)

ミア(ああ、そっか)

ミア「ヤキモチ……」

男「えっ?」

ミア「だって……真白やシーリスと話してるときはすごく楽しそうなんだもの」

ミア「なんか私だけ距離を感じて……つい意地悪なことを……」

男「や、やきもち?!ミアさんが?俺に!?」

ミア「だめですか?」

男「是非もないんですが……」

ミア「本当にごめんなさい……許してもらえますか?」

男「はい……その、もう少しだけこうしていてくれるなら」

ミア「!!」ビクンッ

男「あ、すいませんその調子にのっ……」

ミア「分かりました」ギュ

男「!!」




ミア(ふふ……ドキドキしてるの伝わってくる……)

男(愚息よ静まれ……そこに血流集めてる場合じゃないから……)



ミア(手、大きくて……抱きしめられて落ち着くなんて……)

男(胸……大きいよなぁ……もちもちふかふかだ……)



ミア(……やだ、耳たぶさわらないで……恥ずかしい……)

男(……尻尾、脚にからまってる……くすぐったいな……)



ミア(どうしよう……こんなの全然予想してない……)

男(うわー……顔赤くなってるのかわいい……)

ミア「……」

男「……」

男「あの……」

ミア「はっ、はい」

男「目、閉じてもらえますか?」グッ

ミア「えっ……あの……それってその……」

男「……」ドキドキドキ

ミア「……ん」ドキドキドキドキ









シーリス「ミアちー!地震大丈夫だったー?」



ミア「!!」

ミア「えっ、ええ……なんともなかったわ」ソソクサ

男「そ、そうだなんともなかったぞ」ヨソヨソ

シーリス「なーにー?なぁんか怪しい」ニヤニヤ

男「あーあーもういいから。あと、きちんと仲直りしたぞ。これでいいだろ?」

シーリス「ん、おっけいおっけい」

男「あとは真白か」ハァ

ミア「じゃあ特別に、真白が好きなレアチーズケーキの美味しい洋菓子店を教えますよ。ちょっとお高いですけど」

男「お、助かります!」

シーリス「ちなみに私はそこのお店のモンブランが好きー」

ミア「この時期だと、私は野苺のタルトです」



男「経費でおちません?」

ミア「残念ながら」

シーリス「んじゃあ二人ともー、ばーい」

男「気をつけて運転するように運転手に言っとけ」

シーリス「ほーいほいっと。後さー」

ミア「何?」

シーリス「男っちの明日の早番、腰痛で出られなかったら早めに電話してねー」ニシシシシ

ミア「!」ボフンッ

男「あ、あほかお前は!とっとと帰れ!」

シーリス「にひっ!んじゃーねー」



バタムッ...ブロロロロ...

シーリス(あぶないあぶない……階段の陰から見ててよかったー。あのままだったら流れでキスしてたよ)

シーリス(んま、あの二人の事だから、こう言っておけばなぁんも進展しないだろうし)

シーリス(仲直りはいいけど、いい雰囲気になられちゃ、ましてや進展されちゃあ困るのよねー、私的にも真白的にも)

ブロロロロ...

男「ミアs」

ミア「さってとー、明日1日頑張ればお休みですね」

男「え、あ、ああ……そう、ですね」

ミア「きょーりーかーんー。もっとこう、”適度に”縮めてくださいな」

男「そう……だな。早番だし、先に風呂借りるよ」

ミア「ごゆっくりどうぞ。ふふっ、銭湯はゆっくりだったのに、うちのお風呂じゃいつもカラスの行水なんだから」

男「けっこう長く浸かってるつもりなんですけ……なんだけど。っていうか風呂の中で本読んだりする女性が長すぎ」

ミア「そこはほらー、美容と健康のために」

男「寝酒と間食やめららいいのに……」

ミア「ひどーい」クスクス

…………

……

────翌日 11:00@カフェHeavenly Hug厨房 裏口



真白「お、おはようございます……」

男「おはようございます真白さん」

真白「どうしたんですか?いつもは『うーっす、着替えて手を消毒したらキャベツ切ってくんね?』とかそんな感じなのに」

男「え、ああ……その、昨日は大変失礼いたしました」

真白「え?……あー、ああ、なんだそんな事ですか。気にしてませんよ」

男「いや、本当にごめんなさい。ご機嫌伺いでケーキ買ってきてあるから、おやつに食べてくれ」

真白「その栄養は脇腹にしかいきませんけど」

男「……本当はまだ怒ってない?」

真白「本当に怒ってないです」クスクス

男「ふぁぁ」

真白「眠そうですね」

男「ん、ああ、ちょっと寝不足で……」

真白「本当に大丈夫ですか?いつもは『体調管理も立派な仕事だぞ』とか言うのに」

男「ん、まぁその……あれだ、ほら、休み前で気が抜けたんだ気をつける」

真白(怪しい……)

男(抱きしめた時の胸の感触とふわっと香った石けんと汗の混ざった匂いで捗ったとは言えない……)



ミア「ふぁぁ」

シーリス「どーしてシフトに入る直前まで寝てたミアちーが眠そうなのかなー?」

ミア「え、えっと……」

ミア(ドキドキしすぎてベッドの中でもぞもぞしてたら朝だったなんて言えない……)

シーリス「はっ、やっぱり夜通し……蛇のモニョモニョは長いって言うけど本当だったんだ!」

ミア「ちっ、ちがいます!違うから!本当に何もなかったの!」

シーリス「あせりすぎて逆に怪しいよミアちー」

--- ここまで

少量投下

────4月29日 深夜@カフェHeavenly Hug 2階倉庫



男「……」

コンコン

男「……」

コン、コン

男「……はい」

ミア「失礼しま……あ、あら、鍵が」ガチャガチャ

男「ごめん、ひどい顔だから……用件あるなら、このまま聞く」

ミア「えっ、だ、大丈夫なんですか?!」

男「大丈夫だから……考え事というか、まあ……」

ミア「バイト先でいじめられたとか?おい新入り皿洗っとけ的な」オロオロ

男「いや、それ別にいじめじゃいないから……本当に大丈夫」

ミア「ならいいんですが……何か相談があれば聞きますよ。それとお風呂、先にもらいましたから。ゆっくり浸かってください」

男「……はい」

男(相談ね……『もっと店に客を呼ぶにはどうしたらいいか?』あたりか?)

男(腕の感覚がないな。こんなに忙しかったの、いつぶりだろ)

男(……)



男友『お前、腕が錆びてないか?』

男友『昔はもっと動いたろ。最後の1時間は特にひどかった』

男友『これは、雇い主としとだけじゃなくて友達としても言うぞ』

男友『ぬるま湯の中じゃ、錆びるだけだぜ?』



男(腕が錆びた、か)

男(そんなことはない、って言えないのが辛いな)

男(今日一日で、いつもの何日分の鍋をふるったんだ)

男(この店はぬるま湯、か……)

男(そういえば、レシピノートもおざなりだな)

男(……真白には『作れよ』って言っておいてこのざまとは)

ポチポチポチ...


-----------------
to 岩国真白

夜遅くごめんな。レシピノート作ってるか?
-----------------


男(送信)ピ

男(……)

ヴッヴー!!

男(返信はやいなぁ……)パカッ

---------------
from 岩国真白

もちろん!師匠の教えですから!(≧∇≦)ノシ
今度お見せしますね!ドゾッ(>_<)っ本

あ、もちろん師匠って男さんの事です!
言っちゃった (*ノノ)ハズカシェー

今何してますか?電話できますか?バイトいかがでしたか?
明日はやること無いんで、遅くまで待ってます♪
(*'3')-☆Chu!!


>from 男
>
>夜遅くごめんな。レシピノート作ってるか?
--------------------

男(……)


------------------
to 岩国真白

なにそのテンション、軽く引くわ
とっとと寝ろ

おやすみ
------------------

男(……)


------------------
to 岩国真白

師匠は恥ずかしいので以後禁止
このメールに返信不要
------------------

男(っと)ポチ

男(真白にも負けてるのか……こりゃ本腰入れてリハビリだな)

男(でも今日はとりあえず……)

男(……)zzz



────同時刻@山口県某所

真白「……」

真白「文面は軽く引くわ、だけどこれ完全にガチドンビキじゃないですか……」

ここまで

────5月5日@街中のレストラン 厨房

ガシャァァン!!

男友「おいおいどうした……あ」

シェフB「あっちゃあ、今日のメインの材料が……」

シェフA「す、すいません……」

男友「お前な……すいませんで済むかよこれ目当てで予約してる人もいるんだぞ」

シェフA「あ、あの、手が滑って……」

男友「はぁ!?」

男「友、その辺にしとけよ。Aさんだってわざとやったわけじゃねぇだろ」

男「フロマネージャーさん呼んで、お客さんに事情説明してもらうしかないな」

男友「ああ」

男「仕入先の連絡先、教えてくれよ。在庫ないかとか、他の客に売るものをこっちに回してくれないか聞いてみる」

男友「おう」

男「Aさん、忙しくなっちゃいますけど、俺の分の下ごしらえ、お願いしてもいいですか?」

シェフA「は、はい……」

男友「で、格好良くその場はおさめたものの、無理なもんは無理か」

男「おう、無理だった!」

男友「しゃあねぇ。事情を話して、別のメニューで納得してもらった人だけご案内しろ」

フロマネ「分かりました」

男友「で、その代替メニューだけどさー、男、なんかいいのない?」

男「はぁ!?」

男友「一応ライバル視してる奴が今何作れるのか気になるじゃん。それに、今のお前ならいいの作れそうだし」

男「……フロマネさん、今日の予約リスト見せてくれますか?」

フロマネ「こちらですが……」

男「けっこう家族連れがいますね」

フロマネ「ええ」

男「……あー、なんとなく思いついた。友、付き合いのある水産の卸に連絡取ってくれね?」

男友「おう」

…………

……

男「試作品。鯛をカツレツ風に揚げ焼きにして、トマトソースかけてみた」

フロマネ「なるほど。これならコース料理の値段に収まりそうですね」

男友「味もいいな。コクがある。もっと淡白かと思ったが」

男「あとは、子どもウケするか、だが」

男友「あーわかる。魚ってやっぱり肉よりウケが悪いんだよなぁ」

フロマネ「その辺りはフロアメンバーの腕の見せ所ですね。あとは何かこう、アクセントがあれば」

男「あーじゃあ、これでどう?ニンジンを飾り切りして、こう兜の鍬形に見立てて……」

男友「いいね、これでいこう」

男「……」ホッ

フロマネ「子どもの日だから”めで鯛”に加えて五月人形の兜になぞらえましたね」

フロマネ「『花鯛のシチリア風ソテー ~端午の節句を祝って~』とでも題しますか」

男友「お前って昔っから、和の素材とか技術とか得意だよなぁ」

男「そりゃどうも。俺は早速下ごしらえに入らせてもらうわ」

男友「よろしく頼む」

────同日23時@街中のレストラン 更衣室

シェフA「今日は本当に、ありがとうございました」

男「困った時はお互い様でしょ。俺なんて、前日から煮込んだスープ鍋ひっくり返したことあるし」

シェフA「うわっ、それはキツい……それじゃ、これからもよろしくお願いします」

男「これからも、って今日でバイト終わりなんだけど」

シェフA「え、聞いてないんですか?」

男「何が?」

男友「おーい男、ちょっといいか?」

男「おう」

シェフA「じゃあチーフはこれからその話するのかな?とにかく、お先です」

男「ういっす。お疲れ様でした」

男友「わり、裏口まで来てくれ」

男「んー」スタスタスタ...

男「なんだ?こんなところで」

男友「今日はありがとな。本当に助かったよ」

男「いいっていいって。それより報酬で示せ」

男友「ははは!やっと昔のお前っぽくなったな」

男「そうか?で、用事はそれだけか?」

男友「んー、いや、その、1週間前のお前と今のお前じゃ大分違うな」

男「そうか。お前に『錆びてる』って言われてカチンときたから、色々頑張ったんだよ」

男友「そうか。それで……だな、言いたいことがあるんだ」

男「なんだよ、もったいぶって」



男友「お前が欲しい」



男「」

男友「俺はお前が欲しいんだ!」

────同時刻@街中



ガラガラガラ...

真白「……おばさんったらもぉ」

真白(なにが、『栄養とってんの?野菜持ってきなさい』よ、とってるってば!)ガラガラ...

真白(野菜マシマシにして)

真白(『うちで取れたお米だから』って、一昨年とれた古米の残りでしょうが)ゴロゴロ...

真白(第一私は無洗米派なんですっ)

真白「あああもうっ!……お・も・いーっ!」ゴロゴロ...

真白(野菜もお米もヘブンリーハグに置いていこっと。ミア、起きてるかなぁ)



??「俺はお前が欲しいんだ!」

真白「?!」

真白(うわぁ、すごい直球な告白……)

?「ちょっと待て、その言い方はいろいろまずい」

真白(この声……男さん?!)

男友「何がまずいんだよ!」

男「とりあえず声落とそう、もう夜も遅いし、なっ」

男友「……ああ、でも本気なんだぜ?」

真白(何!?なんで!?『ナスを大胆にまるごと使った料理』ってそういう……みたいな展開になってんの!?)コッソリ

男「まてまてまて、いつからだ?」

男友「お前が1月にバイトに来た時からずっと狙ってた」

男「!?」

真白「!?!?」

男「まて、俺はホモじゃない。悪いがお前の気持ちには答えられない、っていうかキモいから死ね」

男友「おい人を勝手に同性愛者にす……あ」

男友「すまん、誤解させる言い方だった。つーか俺妻帯者なの知ってるだろ」

男友「えーと、お前が”戦力として”ほしい。一緒に厨房に立ってくれ」

男「おいただのヘッドハンティングかよ!」

男友「早い話がそうだな。わりぃわりぃ」

男「つーか、今の店とも年末まで、って契約があるんだが」

男友「……オーナーは、一度面接して、その結果次第では先方のオーナーと直接話をしてもいい、ってさ」

男「買いかぶりすぎな気がする」

男友「今日のトラブルの対応も、その後の皿のアイデアも、俺の店には足りないと思ってる。だからお前が必要だ」

男「とにかく今すぐ決められる話じゃないんだ。じっくり考えさせろ」

男友「じっくり考えるのもいいが、タイミングってもんが……」

男「分かってる、分かってるよ。即答できない程度には、思い入れがあるんだよ」

男友「そうか……腰掛け程度に考えてたんだが、まぁそれなら仕方ないな」

男「いきなりメイン料理まかされて疲れてるんだ……またな」

男友「待ってる」

男「キモいキモい」

真白(……)

男「あれ、そんな所にしゃがみこんで何してんだ、真白」

真白「はぎゃあっ?!」ビックゥッ!!

男「猫が尻尾踏まれたみたいな声だしやがって……今、実家の帰りか?」

真白「ええ……そうです」

男「おつかれさん。もう遅いから送るぞ」

真白「えっ、あ、はい」

男「そのキャリーバッグの上の段ボール箱、持つから貸せ」

真白「重いですよ?」

男「は、鍛えてるんだこれくらい……」グッ

男「おもっ?!」

真白「米と野菜が食べきれないくらいありますから」

男「……ま、これくらい平気だし?」ヨロヨロ

真白「む、無理しないでくださいね」

男「……」テクテクテク...

真白「……」コロコロコロ...

男「さっき盗み聞きした話な」

真白「へ!?」

男「ミアとシーリスには、言うな」

真白「……バレてましたか」

男「……なんとなーく、聞いてたんだろうな、って思っただけ」

真白「辞めちゃうんですか?」

男「まだ決めてない」

真白「でも即答しない、ってことは」

男「迷ってるよ……作る料理の数はヘブンリーハグとは段違いだし」

男「人の数も多いから、互いに切磋琢磨できるし」

真白「ですよね……」

男「ただ、ヘブンリーハグがダメってわけじゃない」

真白「例えば?」

男「まず、雰囲気だな。友の店が悪いわけじゃないが、忙しい分殺伐としてる」

真白「それって、うちの店がぬるいってことじゃあ」

男「否定はできないけど。目尻を吊り上げて料理作っても、美味しくできない気がするんだよなぁ」

真白「同じ材料を、同じ作り方で作ったら、できるものは同じです。それが出来なきゃプロじゃないじゃないですか」

男「そうか?」

真白「そうです。私だって、その心づもりで厨房に立ってます」

男「この前、ハピちゃんに作ったパンケーキは、いつもと同じ材料で作っても違ったろ?」

真白「あ、あれは、そのぅ……」

男「あとはなぁ……男臭いんだよあの店、ホールに女の子はいるけど、そっちも気が強そうで」

真白「……むっ」

男「あー、あはは、他にもホールとキッチンの距離とかな。あの店じゃホールはホール、キッチンはキッチンだけど」

男「うちの店はさ、俺達もホールやらされたり、ミアがキッチン手伝ったり」

男「もちろん、カフェとレストランじゃ客層も作業も違うからどっちが上って言えないんだけど」

男「でも、いい店だ。どっちもね。だから……正直迷ってる」

真白「……」

男「頼む、だまっててくれ」

真白「分かりました。でも、何か口止め料が必要です」

男「またケーキでも買ってくるか」

真白「いえ……」



真白「今度の定休日、デートしてください」

男「またドッキリ?」

真白「失礼な、今度はガチです。ガチンコデートです」フンスフンス

男「その鼻息の荒さはおかしいだろ……いいよ。行きたいところとかあるか?」

真白「男さんに全部おまかせです。エスコートしてくださいね」

男「……了解」

真白「楽しみです」

男「だな」

真白「本当に?」

男「おう」

真白「心の底から?」

男「なんだそのつっかかり方は」

真白「男さんが気のない返事をするからです……」

真白「あ、そういえば今日までずーっとバイトしてたんですか?」

男「ああ。朝の9時から夜11時まで、毎日な」

男「後は焼けたレシピノートの作り直し。真白のメール見て、負けられねぇ、って思って」

真白「あのメールで?」

男「あの顔文字満載・テンション爆上げのメールで」

真白「……やっぱり、メールに顔文字とかイヤですか?」

男「なんで?ただその、いつもとのギャップにびっくりしただけだけど?」

真白「そ、そうですか……」

真白(シーリスなんかには、いつもあんな感じにメールしてるんだけどなぁ……)

男「ありがとな、師匠だなんて言ってくれて」

真白「リップサービスじゃないですよ?」

男「分かってる。だから一層俺も努力しなきゃな」

真白「いつか追いつきます」

男「その間に俺も前進するけどな」

真白「アキレスと亀のパラドクスですね」

真白「あ、私の部屋、ここです」

男「こりゃまたボ……幽霊でも出そうなアパートだな」

真白「古くてボロいから広くて安いんです。それにガスコンロが3個口」

男「それ、いいな」

真白「寄っていきますか?冷たいお茶でも……」

男「もう一人暮らしの女の子の部屋に入ったらいけない時間なの。帰って風呂入って寝る」

真白「えー」

男「部屋はどこだ?玄関までは持って行ってやる」

真白「あ、その野菜もお米も持って帰って店の厨房でお願いします。家にあると邪魔なんで」

男「お前な、仮にも食材扱う奴が邪魔とか言うな」

真白「う……でも、どのみち食べきれないんで店に持って行くつもりだったので」

男「しゃーないな」

男「それじゃ、おやすみ」

真白「あ、あの、男さん……」

男「ん?」

真白「あの、男さんがどんな選択をするのか、私には分かりません」

真白「でも絶対……絶対、後悔しないように、選んでくださいね」

男「分かった。必ずそうする。ありがとう」

真白「デート、すっごく楽しみです。気合入りまくりです」

男「そういう時って当日ドシャ降りだったりするんだよなぁ」

真白「そ、そういうこと言うと本当になるからやめてください!」

男「わりい。んじゃ、しっかり寝ろよ。明後日の早番、頼むな」

真白「はい、おやすみなさい……」

キィ、バタン...

真白「……」ドサッ

真白「男さんが……いなくなっちゃう……」

真白「そんなのやだよぅ……」

真白「もっといっぱい教えてほしいのに……知りたいのに……」

真白「そんなの……」グスッ...ヒグッ...



真白「……後悔しない」

真白「絶対……後悔しないようにしてくださいね」

真白「私も……絶対後悔しないために、頑張りますから……」

--- ここまで ---

次回、真白とデート編です

――――――――――――――――――
    ◇ お 詫 び ◇

>>556におきまして、メニュー表記の誤りがございました。

メイン料理
誤:『花鯛のシチリア風ソテー』
正:『花鯛のシチリア風カツレツ』

なお、アレルギー物質表示につきましては
誤りはございません。

メニュー表記の誤りでお客様を混乱させたこと、謹んでお詫び申し上げます。

店主敬白

―――――――――――――――――――



フロマネ「誠に申し訳ない。この道25年などと自惚れている場合ではありませんな」

男友「ほんと、お願いしますよ」

保守ありがとう

19時頃から投下
その前に風呂入って身を清めてくる

――――5月14日 10時50分@駅前広場ベンチ

男「よ、お待たせ」

真白「お、おはようございます」

男「11時待ち合わせだろ?俺も余裕見て来たつもりなんだが、一体何時から待ってるんだ?」

真白「わ、私も今来たところです!全然待ってないです!」

男「……だろうな。横に置いたアイスティの氷が全部溶けてるもんな」

真白「はうあ!?いやこれはそのっ、あのっ、あ」ガシャン

男「……」

真白「……」

男「本当に大丈夫か?」

真白「ばっちりですよ?ばっちりです!興奮しすぎて眠れないくらいばっちり!」

男「遠足前夜の小学生か!」

男「……ったく」

真白「す、すいません……」

男(見慣れた仕事着と違って淡い色のシャツにパステルカラーのロングスカートだと、良家のお嬢様みたいだな)

真白「な、なにか変ですか?」

男「変じゃない。その服似合ってる。上から下までセンスいいな、なんて思って」

真白「あ、ああああり、ありありありあり」ボフン

男「JOJOか」コツン

真白「……」

男「本当に似合ってると思うぞ。深窓の令嬢って感じ」

真白「でも、手は水仕事でかさかさだしタコだって……」

男「料理人の手だ仕方ない。俺なんかもっとひどいぞ、ほら」

真白「ほんとだすごい包丁ダコ……」ギュ

男「……」

真白「……」ギュッ

男「あの、真白さん?いつまで握ってるつもり?」

真白「……」

真白「このままでも、いいですか?ずっと離さないでいてもらえますか?」

男「……分かった。でもずっとは勘弁。トイレは?」

真白「つ、ついてきてください!」

男「捕まる捕まる」

男「では、参りましょうかお嬢様」

真白「……あ、はいっ」

男「……ちょっと商店街の中歩くぞ」

真白「はい。それにしてもいい天気ですね」

男「ああ。昨日の予報は曇りだったから少し心配してたんだ」

真白「……」

男「実家はどうだった?」

真白「えー、大変でしたよもう。しっちゃかめっちゃか」

男「その言い方で、どんだけ大変だったか分かるな。忙しかったのか?」

真白「そっちはいつもの事ですから。むしろいつもより次の動きが分かる、っていうか、親にも褒められました」

真白「店の厨房に立つ時間が増えたがら、かも」

男「そっか」

真白「はい」

真白「それより親戚のおじさんおばさんの『彼氏はできたのか?』攻勢がすごくて」

真白「お見合いのセッティングがその場で始まっちゃって」

男「相手はイケメンだった?」

真白「いや、写真じゃ普通だったんですけど」

真白「実物はガマガエルとカマキリを足しっぱなしにしたような顔の農家の三男で……」

男「……」

真白「慌てて逃げ出しました。最近の写真の修正機能ってすごいですね」

男「そりゃお疲れ様だ」

真白「……です。あ、ところでどこへ向かってるんですか今」

男「俺達にとても関係のあるところ」

真白「ウェディングプランナーのところですか?」

男「……」ハァ

真白「あ、いえ、冗談ですはい」

男「ほい、ここ。一つ目のスポット到着」

真白「神社ですか。神前式ですね!」

男「違うから。激しく違うから。火の神様が祀られてるんだ。火除けのご利益をもらいたくて、俺は毎年初詣はここにしてる」

真白「でも、年明け早々男さんのマンションは火事に……」

男「……うん」ドンヨリ

真白「あ、ご、ごめんなさい、なんていうかその、あれですあれ!しっかり文句言わないと!」

男「なんだその中途半端なフォロー」ククク

真白「だ、だって!」

男「わりぃわりぃ。そうだな。神様には懇切丁寧にガツンと言ってやらなきゃな」


真白「……あ!これ!見てください由来が書かれてますよ!」

男「どれどれ」

真白「へー、あ、やっぱり。祀ってるのはカグツチ様ですね」

男「ほむすびのおおかみ、って書かれてるぞ?」

真白「古事記だと火之迦具土命、日本書紀だと火産霊命とか火産霊大神って言うんです」

真白「イザナギ、イザナミの息子で、産まれて即父親に殺された割と物騒な神様です」

男「……」

真白「あ、あれ?変なこと言いました?」

男「いや、詳しいんだな、って」

真白「あう……ひ、ヒキません?」

男「なんで?パワースポット巡りとか女の子って好きだろ?……俺にはプラセボ効果にしか思えんけど」

真白「あはは……ま、とにかくお参りしましょう。あ、男さん参道の真ん中歩いちゃだめです!」

男「ほんっとに詳しいんだな……」

男「……」パン、パン

男(ヘブンリーハグのみんなが、厨房やパントリーで火傷しませんように……)

男(あと、今年は年始早々火事に見舞われたんで、もうちょっとご利益ください……)



真白(……火の神様、か)

真白(どうか、私の恋の火が消えませんように……)

男「……」

真白(……むしろ燃え上がりますように)ゴゴゴゴゴ...

男(やけに真剣だな……)

男「満足したか?」

真白「はい、お賽銭の限度いっぱいまでお願いしました」

男「5円玉じゃそもそも枠が小さいと思うけど」

真白「う……」

男「まぁ、火の神様だし熱意は伝わるんじゃないかな?」

真白「期待します」フンス

男「あーそだ、飯、何食べたい?」

真白「あっ、えーと……なn」

男「何でもいいはやめてくれなー」

真白「あう……お、男さんチョイスで」

男「言い方変えただけじゃねーか」

真白「急に言われても……」

男「じゃあ逆に何か気分じゃないものは?」

真白「家系ラーメンって気分じゃないです」キリッ

男「……」

真白「そっ、そんな残念な人を見る目つきはやめてください……」

男「せめて方向だけでも決めてくれ。何がたべたい?和、欧、中、米、東南アジア……」

真白「あ、エスニック系いいかもです」

男「真白、エスニックっていうのはなぁ、って講釈垂れても仕方ないか」

男「ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア……駅前にインドネシア料理があったな」

真白「インドネシア料理は食べたことないです」

男「んじゃそこだ」

男「あ、また駅前まで歩くけど大丈夫か?」

真白「平気ですよ。サンダルも踵低いやつ履いてきましたから」チラッ

男「……」ドキッ

真白「?」

男「ああいや、なんでもない」

男(わりと美脚だ……)ポリポリ

真白「さ、いきましょ」

男「ん、ああ」

真白「こっちの商店街は、うちの店のある側と違って栄えてるんですね」

男「色々工夫してるみたいだぜ?空き店舗を使ってギャラリー開いたり、イベントやったり」

真白「へーぇ……わっ、見てくださいあの秤!変わった形ですよ!」

男「前見て歩けー、よそ見してると危ないぞー」

真白「はーい」ギュ

男「くっつくなよ」

真白「だって危ないんでしょ?」

男「ったく……」



真白(あ、あれ?反応ゼロ?)

男(平常心平常心。胸がかすかに当たってる気がするけど平常心……)

男(話題変えよう……無言だと意識しすぎる)

男「そっ、そういえば、真白はなんでこの街に?」

真白「んー……」

男「あ、言いにくいなら別に」

真白「さっきの神社での、作法の話とすこーしだけ関係があるんですけど。お務めが終わったから、ですね」

男「おつとめ?」

真白「詳しく話すと『時は鎌倉、壇ノ浦の戦いに負けて落ちのびた平家の武士が……』とかになるんではしょりますけど」

真白「私、15歳になるまで神社でイキガミやってたんです」

男「……いきがみ?」

真白「生きてる神様。毎朝毎晩近所の神社に通っては祈祷されてました」

男「してました、じゃなくて?」

真白「白い昔風の服着て、目の前で神主さんが祝詞をもにょもにょと唱えてるのをお澄ましして座って見てるだけでした」

男「楽そう」

真白「それが、全然!小一時間ずっと座ってなきゃいけないし、鼻の頭が痒くても掻くわけにもいかないし……」

真白「一番辛かったのは、学校関連ですね。修学旅行も臨海学校も、泊まりの行事は参加できなくて……」

男「人見知りの口下手が出来上がりか」

真白「そ、その通りですけど辛辣に言いますね……」

男「あー、わりぃ」

男「なんでまたそんな難儀な役目を……って、伝統って奴か」

真白「そうですね。今は親戚の子がその役目をしてるんで、まあ……伝統っていうか慣習のほうがしっくりきます」

真白「で、この街に来た理由なんですけど。お務めが終わると街を出なきゃいけないんです」

真白「なんでも、神様が二人いると言霊とか霊力が分散してしまうらしくて。これも慣習……いや、迷信かな?」

真白「で、ハーピーさんを頼って出て来て、ミアを紹介してもらって」

真白「最初はホールだったんですけど、その……アレでして」

男「……アレか」

真白「は、はい、アレです」

男「アレなら仕方ないな」

真白「で、厨房メインに回してもらって……」

男「お茶請けのクッキーやケーキ担当か」

真白「地元にいた頃はクッキーすら作ったことなかったんですけどね」

男「そりゃ意外だな……神様扱いの前には霞むが」

真白「あははは……」

真白「男さんは?なんでシェフに?」

男「んーと……まぁ、いたって普通だよ」

真白「料理が好きだから?」

男「いや、好きか嫌いかで言ったら嫌いな部類だと思う」

真白「えっ?」

男「朝は早いし立ち仕事だし、下ごしらえに調理に後片付けで拘束時間長いし」

男「徒弟制度みたいな古臭い概念ははびこってるし」

真白「でも、続けてるんですね」

男「それだけの嫌なことと比べても、『美味しい』って笑顔で言ってもらえると嬉しいからな」

真白(私の笑顔、思い浮かべてほしいなぁ……)

真白(無理だって解ってるけど、でも……)ギュ

男「真白、ちょっと力みすぎて痛い」

男「料理の道を志したきっかけは……うちのくそ親父」

真白「く……」

男「すまん、うちの親父は銀座で割烹料理の店やっててだな。その姿が格好いいと思ってたんだ」

男「今じゃ、あんな男のどこがいいと思ったのか昔の俺を小一時間問い詰めたいけど」

真白「なんでですか……」

男「客を選んでぼったくって、雑誌やTVで紹介されて天狗になってるアホ親父だよ」

真白「そ、そんな事言わなくても……」

男「それで中学2年の1年間だけ、祖母ちゃんの家から学校通っててさ」

男「祖母ちゃんの誕生日に自分で釣ってきたメバルをさばいて煮付けにして食べさせたらさ」

男「シワだらけの顔くっしゃくしゃにして『ありがとねぇ』って言われてさ」

真白「……」

男「その時かな。親父みたいに天狗にならずに、食べた人が笑顔になる料理を作れる人間になろう、って思ったんだ」

真白「……なれます!男さんならきっと大丈夫です!なんならお手伝いしますよ、試食的な意味合いで」

真白「で、お父さんとは喧嘩しっぱなしだからGWも家に帰らず……」

男「はい、そうです」

真白「ずっと?銀座なんて店の最寄り駅から1時間かからないじゃないですか」

男「い・や・だ」

真白「男さんってたまーに子供っぽくて可愛い」

男「!?」

真白「本当ですよ」

男「年上をからかうんじゃない……あー、もう駅前か」

真白「ごまかした」

男「誤魔化してないっ!っと、確かこの辺りだったと……あ、あった」

真白「なんか普通の雑居ビルですけど……あ、ほんとだ、インドネシア料理『スンビラン』」

男「階段、急だから気をつけてな」

真白「は、はいっ」

--------
中途半端だけどここまで

乙乙
ところで、舞台は武蔵小杉か武蔵中原?

・銀座まで1時間
・武蔵中原の大戸神社はカグツチ祀ってる
・(前作から)中目黒乗り換えで越谷行ける街

合ってたらちょっと商店街しらみつぶしに喫茶店探しますわ……と思うじもてぃ

>>606
いやいやいやいや架空の街ですよそんな小杉がモデルなわけないじゃないですか
横浜だって東海道線で1時間もかけずに銀座まで出られるし
川崎にもカグツチ祀ってる神社はあるし
まさかそんな、なんで分かったのエスパーか

ただヘブンリーハグみたいな喫茶店は無いと思われる

チリンチリンチリン...

店員「スラマッシアン!」

真白「!?」

男「2人、テーブルで」

店員「ハーイ!こちらどぞー」

男「アパカバール?」

店員「バイバイサジャー」

真白「は?え?えっと?ドリンクが追加される合い言葉的な?」

男「いや、『お元気ですか?』みたいな挨拶だよ。さ、どうぞお嬢様」ガタタッ

真白「はひっ」ストン

男「ほい、メニュー」

真白「えっとぉ……う?何語ですかこれ……なし?なし?ごらん?」

男「ナシゴレン。ナシはごはん、ゴレンは炒める。つまりチャーハン」

真白「じゃ、ミーゴレンは……やきそば?」

男「筋がいいな。ミーは麺」

真白「一見さん殺しなお店……」

男「んなこたないよ。メニューの一番最後見てみな」

真白「えっと……『インドネシア語を勉強しよう!』『店員さんとインドネシア語で会話してみよう!』」

男「さ、どうぞ」

真白「えっと……ぷ、プルミシー」

男「いつもの声で」

真白「はう、う……プルミシー!」

店員「はいはい~」

真白「日本語使えるじゃないですか!」

男「さっき案内した時も使ってただろうが」

真白「えっと……これは?」

男「結局日本語か」

店員「ミーバソ、肉団子いりのラーメン」

真白「それいいですね。それ……えっと、ミーバソ……1は……さとぅ、ミーバソ、サトゥ!」

男「俺は……ナシゴレン・スペシャル」

真白「スペシャル?」

男「出てきてからのお楽しみだな。サテたべる?」

真白「サテ?」

店員「串に肉が刺さてるよー」

真白「ん~……男さんと半分こなら」

男「んじゃ、サテカンビンを……4本」

男「あとは……ビル、ディンギン、アダカ?」

真白「?」

店員「アダよ。アサヒかー?ローカルか?」

男「ローカルはビンタン?」

店員「そだよー」

男「んじゃビンタンサトゥ。あと、この子はマンゴージュース」

真白「アサヒと聞いて分かりましたよ……デートの最中真っ昼間からお酒ですか」

男「大人の特権。それに酔うほど飲むつもりはないからいいの」

真白「でもこのメニュー……不親切ですよね」

男「そうか?」

真白「だって……内容の説明も写真もないんじゃ闇鍋です」

男「客から見たらな。ホールに立った気分で考えてみ」

男「メニューを見て分からなくて、店員さんに尋ねる客と、注文しなれた客がいる」

真白「メニューの見方や、店員への接し方で、店に慣れているか分かる……?」

男「そういうこと。お店の人を頼ってほしくて、コミュニケーションとってほしくて、わざと不親切にしてある」

真白「……むむむむ」

男「ま、メニューに写真や解説全てを載せて『ここに全部書いてあるから分かるだろ?』ってのは必ずしも親切じゃない。ってこと」

真白「分かるような分からないような……」

店員「はいよーサテカンビンとお飲み物ー」カチャカチャ

男「あはははは。ほら、飲み物きたから乾杯しよう」

男「いただきます」

真白「いただきまーす」カプッ

真白「……ん!おいひい!」

男「ひさしぶりに食べたけど、やっぱ美味しいな」

真白「なんだろ、ピーナツソースに隠れてるけど臭みがある?」

男「まぁ、山羊肉だしな」

真白「やぎ?!」

男「そ。まずくないだろ?」

真白「むしろ美味しいです……あ、本当だ。カンビン=山羊って書いてある」

男「ほら、二本目もいっとけ」

真白「はふっ」モグモグモグ

男「……」

真白「あー……ん、むっ、なんれふか?」

男「やっぱ、食いっぷりのいい女の子は可愛いな、と」

真白「?!」

男「料理を美味しそうに食べる女の子ってさ、料理作る奴には鉄板でモテると思うよ」

真白「……」ポッ

男「まあ、串焼きに大口あけてかぶりついて、ぐいぐい串から引き抜くのがデートにふさわしいかは別として、だけど」

真白「!!」

店員「はいー、ミーバソとナシゴレンスペシャルー」

真白「……」ゴクリ

男「旨いよ。熱いうちがいい」

真白「は、はいっ」

男「これこれ。無理やりワンプレートにしました、みたいなレタスとトマトがまたいいんだよな」

真白「……」フー、フー...チュルン

男「……」パクン

真白「……」モグモグ

男「どう?」

真白「おいひいれふ。肉団子っていうか鶏つくねみたい」

男「そうか。よかった」

真白「そっちは美味しいですか?」

男「じゃあ、ちょっと交換しよう」

真白「は、はいっ、あ、黄身潰しちゃってもいいですか?」

男「どうぞどうぞ」

真白「んじゃあ、ぐさっとな」

男「んで、テーブルのサンバルをかけて」

真白「この毒々しいオレンジ色……もしかして」

男「辛いよ。苦手なら少しだけにしときな」

真白「あまり得意じゃないです。まずはサンバルなしで」モグモグ

男「肉団子がほろほろで旨い」

真白「へふほ……んく、ですよね。ナシゴレンは……いたって普通のべちゃっとしたチャーハンです」

男「それを言ったらおしまいだな」

真白「次は半熟の黄身とサンバルを一緒に……」パクンッ

真白「!!」

男「な、なぜか旨いんだよ。辛旨」ズルズル

真白「おいひいれふ」

男「はーい、交換タイム終了」

真白「ありがとうござ……あ」

男「あ、ごめんな、スプーン新しいのもらえばよかったな」

真白(……か、間接キスかぁ)

真白(まって、ここで狼狽えたらまたからかわれるかも)

真白「まぁ、いいですよ全然問題なしです」

男「ま、さすがにそんなんでドキドキする年じゃないか」

真白「いえいえいえ、超貴重な体験なんで、もうちょっとスプーンねぶってもいいですか!?」ガッシ

男「許可するとでも思ったか」グイッ

真白「ちなみに」

男「だめ」

真白「まだ何も言ってません」

男「だめ」

真白「でもこれも異文化体験の一環で」

男「だめ」

真白「泡だけです泡だけ」

男「だめ」

真白「じゃあ食べ物同様ドリンクも交換で」

男「絶対だめ」

真白「なんでですかー」

男「花見の時の惨劇を繰り返すつもりはない」

…………

……

真白「ごちそうさまでした」

男「ごちそうさまでした」

真白「あ、お会計」

男「こういう時、女の子は財布出すふりだけすればいいの」

真白「でも……せめて端数だします」

男「そっか、んじゃあ端数だけ。じゃあ店員さんを呼んでみよう」

真白「えっとぉ……み、ミン・タ・ボン!」

店員「はいはーい!」

店員「ありがとございましたー!」

真白「お、おいしかったです」ペコッ

店員「テリマカシー!またきてくださーい」

男「うまかった」

真白「しかまけ、ですね」

男「なにそれ?」

真白「あー、お父さんがよく『うまかった』って言うとお母さんが『馬が勝ったなら鹿が負けたわね』って」

男「なるほど……深いな」

真白「こ、言葉遊びですから真剣に考え込まないでください」

男「さて、次なんだけど」

真白「はいっ」

男「雑貨見るの好き?」

真白「ウィンドウショッピングは好きです」

男「んじゃ行こう。おもしろい店があるんだ」

真白「また歩きます?」

男「いや、電車で大きな街まで出る」

カタン、カタタタン、カタタタン...

真白「それでシーリスったら、味噌汁は味噌入れれば出来ると思ってたんですよ」

男「……」

真白「もう、聞いてますか?」

男「……ん、ああ、悪い」

真白「いいですか、今日は私とデートしてるんですから、集中です集中」

男「はいはい」ポフポフ

真白「……何考えてたか、分かりますよ」

男「ごめんな。デート中に気ぃ逸らして。ほら、次の駅だから降りる準備してくれ」

真白「誤魔化した」

男「そんな事ないって」スタッ

真白「……男さん、今朝の約束」

男「はいはい、ではお嬢様、お手を」

真白「よしなに」スッ

男「……」ギュ

真白「……ぷっ」

男「ははっ、なんだよ『よしなに』って」

真白「いいじゃないですか。男さんだっていいかっこしぃの癖に」

男「どこが?」

真白「普段の厨房とか?みじん切りの包丁の音をわざとリズミカルにしてみたり」

男「……」ギクッ

真白「味見した時、イタリア語で『ベネ』って言ってみたり」

男「……」ギクギクッ

真白「ちゃぁんと知ってますから」

男「よく見てる」

真白「そっ、それは……だって、その、師匠の味を盗むため、技は見て盗め、っていうか」

男「意外と古風だな。つーか聞かれたら答えてるだろ」

真白「そ、それでも、こう、男さんの説明って『がっ!』とか『びしっ!』とか擬音が多くて……」

男「申し訳ござーせんね」

…………

……

男「はい、到着」

真白「……こ、これは」

男「ぐっとくるだろ?」

真白「は、入っちゃってもいいんでしょうか」

男「ウィンドウショッピング好きなんだろ?ほれ」ガチャ

真白「お、おじゃましま……あ」

真白「うわっ、うわー……見てくださいこのおたま!ねこちゃんですよかわいー!」

真白「このカラトリーセットは全部海の生き物で!」

真白「このペッパーミルはペンギンですよ!ここにあるのってもしかして全部?」

男「お察しの通り、料理道具や食器」

男「……」

真白「はうっ、か、かわいい……」

真白「あ、でもこっちも……どっちも……」

男「どうした?」

真白「あ、このお皿、靴下履きの白猫柄とかぎしっぽのキジトラ柄、どっちがいいと思いますか?」

男「場合によりけりだな」

真白「たとえば?」

男「んっとだな……普段使いか客用か?」

男「何をそこに盛るか?」

男「後は、シンクや棚に収まりやすいか、持ち重りはどうか?とか」

真白「う、うーんと……」

真白(このお皿を、使う状況……)



真白『あ、おかえりなさい』

男『ただいまー。いい匂いだな、今日は何?』

真白『鮭とブロッコリーのクリームシチューです』

男『うまそう』

真白『腕によりをかけて作りましたから』

男『じゃなくて、こっち……美味しそうな子猫ちゃんだ』ギュ

真白『えっ、あ、そんな、もう……お料理中なんですからだめ、んっ……』

真白『待ってそこは……あっ』ガシャン

男『っとすまん』

真白『あー!お気に入りのお皿……』



真白(はうあ!?)ビクンッ!!

真白「……」

真白「陶器のお皿じゃ割れちゃいますよね……」

男「そりゃぞんざいに扱ったら割れるだろ」

真白「やめておきます」

男「今まで厨房で皿割ったことなんかないだろ」

真白「でも、よくよくお値段見るとお財布にも優しくなさそうだし……」

男「そんなもん?」

真白「そんなもんです。男さんは何か欲しいものないんですか?」

男「んー……俺は道具に関してはシンプルな奴を使いたいんだよ。壊れたりなくしたりしても同じものがすぐに手にはいるような奴がいい」

真白「そうですか……」

男「あー……欲しい道具がない、わけじゃない、んだが」

真白「どんなのですか?」

男「……あれ、あそこに立派な白木のケースに入れられて飾ってあるやつ」

真白「……」

真白「ゼロが……いささか多い気がします」

男「欲しいんだよダマスカス鋼のナイフセット……前に実演しててさぁ、こう、トマトすっぱぁ!って」

男「あれで野菜切ったら切れ味抜群で楽しいぞきっと」

男「筋張った肉もこう簡単に……ん?」

真白「ふふふ」

男「なんだよ」

真白「今の男さんの顔、おもちゃ屋さんのショーウィンドウにはりつく男の子の顔でしたよ」

男「う、い、いいだろ別に」

真白「いいですよ、私にその顔いっぱい見せてほしいです」

男「初回はサービス。次から有料」

真白「えー」

男「と、とにかくだな……あ、真白、ここにも猫デザインの道具があるぞ」

真白「今、話逸しましたね?」

男「別にー」

真白「むくれた顔もかわいいですよ」

男「年上をからかうな」ムスッ

真白「たった5、6年じゃないですか。すぐです、すぐ」

男「そうかぁ?」

真白「むー……あ、やっぱり遠いです。私が今の男さんの年齢の時、男さんは“三十路”ですもん」

男「あ、言ってはならぬ一言を……」

真白「ふふーん、こう見えても18ですから!」

男「13の間違いだろ。ちんちくりんだしつるぺったんだし」

真白「言ってはいけないこと言いましたね!セクハラですセクハラ!

店員「うぉっほん!」

男・真白「「す、すいません」」

真白「男さんのせいで怒られたじゃないですかー」

男「あー、悪かった……お、このブックウェイトなんかどうだ?。ほら、鍵しっぽ猫デザイン」

真白「また話をそらす……あ、ほんとだ、わ、わ、わ、かわいい……」

男「だろ?」

真白「うわー……ふわー……」

真白「きみはどこから来たニャンコですかにゃ?」

真白「ノルウェー……遠い異国の地からごくろうさまだニャ」

真白「いかがですかニャ?我が家でおくつろぎくださ、いニャ……」

男「……」

真白「……」

真白「こほん……買います、これ」キリッ

----
ここまで
しばらくこのペースっぽい

店主「まいどー」

真白「……けっこう痛い出費に」

男「……」

真白「まぁでも可愛いし使えるし。こういう、本を立てて広げて固定できるのって少ないんですよね」

男「ま、気に入ったならなりより。ところで俺のプランはここまで。どこか行きたいところはあるか?」

真白「んっと……」

男「特になきゃ、喫茶店とかケーキ屋でゆっくりでもいいぞ」

真白「あ、それいいですね」

男「とは言ったものの、チェーン店はなんかイヤだし、さりとてこの辺の店はよく知らないしなぁ」

真白「うーん……あ」

男「いい店知ってる?」

真白「ん、まあ個人経営で料理はイケてて店員も美人揃いなところは知ってます」

男「へぇ……」

真白「まず電車でうちの最寄駅まで行きます」

男「え、そんな近いところに?」

真白「で、商店街をまっすぐ行って途中で」

男「オチは読めた」

真白「まぁまぁ、ひとつ裏道に入ったところにある、小じんまりしたオムライスの美味しい……」
       ヘブンリーハグ
男「今日は そ の 店 定休日だろうが。勝手に商品使って怒られても知らないぞ」

真白「だ、大丈夫……だと思いますよ。福利厚生の一環、ってことで」

男「……まぁ、いいことにしておくか」



…………

……

男「真白はプライベートでも料理作るんだよな?」テクテク

真白「まぁ、普段は手抜きですけど」テクテク

男「例えばどんな?」

真白「もやしと豚コマの野菜炒めとか。じゃがいも抜きのカレーを寸胴鍋にいっぱい作ってジップロックで小分けにして冷凍したり」

男「ああ……なるほど」

真白「男さんは?定休日も料理作ってるんですよね?」

男「んー……まあ、なぁ。食べ歩きして、気に入った料理は再現してみたり」

真白「根っからの料理人ですね」

男「正直、趣味ですませたかったよ」

真白「謙遜謙遜」

男(……仕事じゃ、嫌な奴にも金を取るレベルのものを出さなきゃいけないから、なんて事は言わなくてもいいか)

男「好きな事を仕事にできる、ってのはいいことなのかもなぁ」

真白「ですです」

真白「あ、駅前着いちゃいましたね。ICカード……っと、と」

男「荷物持ってるから、落ち着いて取り出せ。後、手離さないと取り出しづらいだろ」

真白「あ、はい、ですよね……ありました」

男「俺は切符買うから待っててくれ」

真白「今時IC乗車券使ってない人いるんですね」

男「いいだろ別に……って、パスモはそんな柄だっけ?」

真白「これですか?へへー、自分で作っちゃいました」」

真白「猫のイラストをフリーの画像編集ソフトで加工してシールにプリントして、パスモの上にぺたっと」

男「すごいな。俺はパソコンはネット見るくらいしか使えないわ」

真白「そうなんですか?珍しい」

男「学生時代、バイトしてた居酒屋のハンディですらギリギリだった」

真白「携帯とかスマホとか」

男「携帯は不携帯。スマホはなにそれ美味しいの?状態」

真白「……うちのお母さんですらLINEやってるこのご時世に珍しいですね」

男「ほっといてくれ」

真白「男さんはLINEとかしないんですか?」

男「しないなぁ」

真白「なんで?」

男「無理して話すことがない」

真白「さみs……な、なんでもないれふー」ムニー

男「携帯だって、学生時代からだから結構古い型だぞ。アナログ放送が終わってワンセグ機能は既に砂嵐だ」

真白「……そこまで」

男「そうそう苦労したと思ったこともないし、欲しいとも思わねぇからなぁ」

真白「タブレットとか便利ですよ。自分の料理の写真を人に見せたりとか」

男「そうだなぁ……写真より、実際作って食べてもらった方が分かるし、そういうのは得意な奴にまかせる」

真白「うーん……あ、ホームに電車来ちゃいますよ!」パタパタパタ...

男「急ぐと転ぶぞー」タッタッタ...

真白「大丈夫ですよ、男さんとは違って10代ですから」フフン

男「言ったな……」ダダダダダッ!!

プシューッ

ムリナゴジョウシャー、オヤメクダサイー

男「……」ゼーゼー

真白「……」

男「なんだよ……」

真白「ムキになるところ、可愛いですよ」

男「だぁから、からかうな、って……はー、久々の全力ダッシュだわ」

真白「普段、料理人は体力勝負とか言ってるのに」

男「だよな。うん、でも使う筋肉違うから」

真白「そういうことにしておきます」クスクス

男「……そりゃどうも」

カタタタン、カタタタン...

真白「……」

男「……」

真白「何考えてるんですか?」

男「んー、今日は楽しかったな、って」

真白「嘘」

男「本当」

真白「分かりますよ……お店移るか、悩んでるんですよね」

男「え?あ、ああ……まぁ、な」

真白「それも嘘ですよね」

男「なんでそう思うんだよ」

真白「男さんが言ったんでしょ『食べた人の笑顔が見たい』って」

真白「なら、いっぱい料理をつくる店に行ったほうがいいじゃないですか」

男「……」

真白「……ごめんなさい、余計なこと、言いました」

男「いや、ありがとな。でも悩んでるのは本当よ。今の店、居心地いいし」

真白「ミアがいるからでしょ?」

男「真白もシーリスもいるしな」

真白「……またそういう”たらし”な発言する」

男「たらしこんでてない」

真白「……本当にそう思ってます?」

男「……実はちょっと、『これ、モテ期来てるんじゃね?』とか思ってる」

真白(そっか……ちょっとは脈あるのかな……)ジー

男「おいその『勘違い男はキモい』みたいな醒めた視線はやめろ」

真白「え、あ、そういう視線を送ったつもりはないんですが……職場恋愛もありだと思いますよ」

男「何その微妙なフォロー」

真白「微妙じゃないです」プンスカ

男「もし、店を変わる、って結論を出した時な」

真白「はい」

男「真白一人で厨房、切り盛りできるか?」

真白「無理です、って言ったら?」

男「血を吐くような特訓で無理やり仕立て上げる」

真白「それはちょっと……」

男「伝手で人が来られないかあたったり引き継ぎしたり、最大限『起つ鳥後を濁さず』でいけるように努めるけどな」

真白「……応援します、男さんのこと」

男「無理しなくていい。気を使わせてゴメンな」

真白「……」

男「ありがとな」ポフポフ

真白「……はい」グスッ

男「……」ポフポフ

オオリノオキャクサマ、サキニオトオシクダサイー

男「ほら、降りる駅は次だぞ」

真白「……」

男「ごめんな、せっかくのデートなのに」

真白「あ、いえ、平気です。大丈夫」

男「お詫びにサンドイッチ作ってやるよ。給仕まで全部やってやる」

真白「セットのコーヒーも」

男「ブラックで?」

真白「普段の私の飲み方、知ってるくせに。ミルク2杯お砂糖半分で」

男「まぁ俺と違ってまだ10代だから、あの苦味はわかんないだろうなぁー」

真白「むー。平気ですよ!ブラックもいけるけど、飲んだ上で私は甘い方が好きなんです!」

男「へーへー。そうやってムキになるところも可愛い」

真白「も、もう騙されませんからね」///

────駅前

男「……ありゃ、曇ってきたな」

真白「そうですね。わ、雲の動きすごい、一雨来ちゃうかも」

男「そうなる前にたどり着けるといいんだが」

真白(……)

男「ほら、店まで歩くぞー」

真白「あ、はいっ」ニュッ

男「……」スカッ

真白「あ、あれっ?」

男「顔見知りのいる商店街の中で手ぇつないだら、あらぬ誤解を受けるだろうが」

真白「えーっ?!」

男「ダーメ」

真白「むー」

真白「……」

男「たまには昼間歩くのもいいな」

真白「そうですねー。まぁ、基本私たちって店に引きこもりですからね」ニュッ

男「野菜や肉は配達してもらってるしな」スカッ

真白「ミアは商店街の自治会の会合で知り合いも多いんですけどね」ニュッ

男「言っとくが、俺だって商店街に知り合いいるかんな」サッ

真白「ぬー……」

男「だめったらだめ」

…………

……

男「……この路地、なんだよなぁ」

真白「どうかしました?」

男「5ヶ月前、この路地の先に喫茶店があるのを見つけたのがきっかけで、働き始めたんだよな、ってさ」

真白「ミアから聞きましたよ、初対面で気絶したとか、極力尻尾が視界に入らないようにしてたとか」

男「そこは忘れろ」

真白「えー」

男「……」

真白「ほらほら、裏口まわらないと……あれ?」ポツ

男「ん?……お」ポツ



...ポツ、ポツ、ポタタタッ

────ザァァァァッ!!



男・真白「「!!」」

男「うわっ!?」

真白「ひゃっ!?」

男「走れ!」

真白「は、はいっ、って、うわっ!?たったったひゃぁっ!?」ベシャッ!!

男「……」

真白「……」

男「近年稀に見る見事なコケっぷりだなおい」

真白「は、早くしないと濡れちゃいますよ男さん」

男「もうここまで濡れたら変わらないっての。立てるか?」

真白「た、立てますけど……その、むこう向いててくれませんか?」

男「もう手遅れだ、ブラ紐透けてんのは我慢しろ」

真白「前は紐だけじゃ済まないんですが……」

男「あーもうしゃぁねぇな」グイッ

真白「ひゃっ!?」

男「おら走るぞ!荷物落とすなよ!」

真白「え、あ、待ってせめてお姫様だっことかじゃないですか普通!?」

男「両手ふさがったら鍵開けられないだろうが!」ダッダッダッ!!

真白「だからってこんなお米担ぐみたいにしなくても……」

男「大丈夫、店に卸される米袋2個くらいだ」

真白「あれ1個30kgもあるんですよ!?そんなに太くないです!!」



────ザァァァァッ...

一旦ここまで

保守してくれたみなさんありがとう
お待たせして申し訳ない
やっと納得できる形になったわ

ガチャッ...キィ

男「ほい到着。電気つけ────」

真白「ま、待ってください今つけちゃだめです」

男「っと、じゃあ下ろすぞ」

真白「……は、はい」ストン

男「……?」

真白「あ、ありがとうございます」

男「とっとと2階でシャワー浴びてこい。服は洗濯機入れて回せ」

真白「男さんも浴びないと……」

男「一緒に浴びれるか」

真白「私はバッチこいです!」

男「いいから先に浴びてこい!!」

真白(……)

真白(うわぁ……せっかく下ろした服なのに泥まみれ)

真白(とりあえず泥だけ落として洗濯させてもらおう)

真白(はぁ……今日は失敗だらけだなぁ)

真白(……)

真白(ううん、まだリカバリーできる!)

真白(……できるかなぁ)

真白「っくち!」

真白「は、早くシャワー浴びなきゃ」

真白(『シャワー、先に浴びてこいよ』)

真白(はうあ!?もしかしてそういう事!?)

真白(……)ゴシゴシ

真白(……外は雨、二人きりの部屋)

真白(無言の二人、少しずつ距離が近くなって……)

真白(……)

真白(ないない。男さんに限ってはない。分かってる)

真白(っていうか今日なんて完全に料理人向けコースだし……)

真白(カグツチ様も、困った時の神頼みじゃ困るだろうし)

真白(……困った時の神頼み)

真白(つまりは私か。自分でなんとかしなさい、ってことか)

真白「……あ」



真白「やってみようかな、神頼み」

男「へっくしょい!」ブルル

男「着替えて体拭いただけじゃ風邪ひいちまうなこりゃ」

男(『バッチこいです!』)

男「……ったく。きてねぇっつの」

男「さて、サンドイッチとコーヒーだったな」

男(粉は昨日挽いた残り。密封して冷蔵庫に入れてあるからまだ大丈夫だろ)

男(それを2人で4杯飲むと考えて40グラム、お湯の量は多めに700cc)

男(フィルターセットしたら計量した粉を入れて、と)

男「次はサンドイッチか。レタスとハム、きゅうり、トマトに……お、チーズもある」テキパキ

男(パンにバター、水を切った野菜、チーズ、ハム、マヨネーズ、マスタード……最後にパン)

男(布巾に包んで重石をして……)

シュシュシュシュシュ...

男(沸いたな。コーヒーのお湯は、沸騰したら火を消して泡が消える程度が適温)カチン

…………

……

男「うし、完成。コーヒーは保温ポットに入れたし、サンドイッチは持ち帰り用のプラケースに入れたし」

男「ふぇっくし!……こりゃ本格的にやばいかな?早めにシャワー浴びよう」

男(……)

男(つーか、先にシャワー浴びてこいとか下手すりゃ土下座コースの発言だな)

男(……)

男(いやいやいや、犯罪、犯罪だぞ俺)

男(風呂あがりの真白→雷どーん!→『きゃっ!』→俺に抱きつく真白)



男(かーらーの、シーリスがカメラ構えて乱入→『はーい、オッケーでーす!』)

男(うん、ある。普通にある)

男(……)

男「へっくしょい!あー……くそ」

男「ま、ましろさーん……」コンコン

男「……返事なし、か。まだシャワー浴びてんのか?」

男(部屋に入ったら着替え中で『きゃー』とかな)

男「それっくらいは役得ということで」

男「おじゃましm……って俺の部屋か」カチャ











「ぎゃあああああああああああっ!?」

白蛇「……」

男「へ、へ、へ……」

白蛇「……」シュルル...

男「へび……」クラッ

白蛇「!!」

男「っと、と、と……」

白蛇「……」ホッ

男「あっ……待て、ちょっと待ってくれ……その……」



男「……真白、なんだな?」



白蛇「!!」

白蛇「♪」

男「ちょ、ちょっと待て急に這ってくるな……」

白蛇「……」シュン

男「ゆっくり来い」

白蛇「……」オズオズ

男「……」ナデナデ

白蛇「♪♪」

男「あー、巻き付くのはいいが、おい、口開けるなこえーよ!」

白蛇「……」

男「いつもの真白に戻れるのか?」

白蛇「……」コクコク

男「そろそろ限界だから頼む」



シュシュシュシュ...

真白「……」

男「……」

真白(……あ)

男「何で裸なんだよお前はーっ!!」

真白「だって蛇の時は服着ませんし!」ギューッ

男「離れろ!」

真白「今この状態で離れると色々見えちゃいますけど、見ますか?」

男「……あーもう」

男(つーかシャンプーと石けんの香りがやばい)

男(色々と柔らかい部分が当たってるし、息が耳をくすぐるし……)

真白「我慢、してません?いいんですよ?」

男「だーもう!何がいいかなんとなく分かるけどダメだっつの!」

男「おら!目閉じてるから離れて服着ろ!」

男「……」

シュル、シュル...

男(……音が艶かしい)

シュル...

男(……平常心、平常心)

真白「ふう、もういいですよ」

男「おう……って、なんで店の制服?」

真白「下着まで全部洗濯機の中なので」

男「そ、そうか」ゴクリ

真白「何かイヤらしいこと想像しませんでした?」

男「し、してませんしてません」

真白「むー、ま、そういう事にしておきます」

男「あー、まぁ、座ってくれ……よっこらせ」

真白「はい」ポフ

男「前にも一度、あったな」

真白「えっ?」

男「ほら、大蛇の姿の真白に会ったこと、あるだろ」

真白「あ、はい……」

男「どっちが本当の姿なんだ?」

真白「どっちも、ですよ。イメージとしてはリバーシブルの服が近い……かもです」

真白「蛇の面も人の面もあって自由に着替えられる」

男「なるほどね」

真白「普段は人の格好ですよ、蛇じゃおしゃれもできませんし」

男「ニンニクたっぷりの豚骨ラーメンも食えないしな」

真白「あう……」

男「あの時はごめんな」

真白「え?」

男「ほら、前の時はいきなり気絶しちゃったろ」

真白「あーいえ、いえいえ、全然問題ないです……それより、ですね」

男「おう」

真白「神頼み、したんです」

男「ん?」

真白「私、生き神ですから……」

真白「男さんが大蛇の私を見て、私って気づいてくれたら」



真白「言おう、って決めてたんです。だから、聞いて欲しい事があります」

男(きたか……)

真白「この5ヶ月、ずっと男さんを見てました」

真白「料理とか、指使いとか、仕草とか」

真白「あと、声とか、目線も、オリーブオイルと汗のしみついたコックスーツの匂いとか、真剣な顔も、笑顔も」

男(途中変なもん混じったな……)

真白「休みの日何してるかなとか、起きてるかなとか寝ちゃったかなとか」

真白「声が聞きたくて……胸が苦しくて息が止まりそうで」

真白「あの、だから、その……」

男「最後まで聞くから、ゆっくりでいい」

真白「は、はい……」


真白「あの、手……貸してください」

男「おう……う、っておい!」ムギュ

真白「ドキドキしてるの分かりますか?」ギュ

男「おう……」



真白「男さんのこと考えると、いつもこうなります」

真白「もっと近くで声を聞きたい、見ていたい、話したい、声を聞きたい、触りたい、触ってほしい、キスしたい、その先も」

男「……」



真白「好きなの、大好き。男さんの隣にいたい。いさせてください」

ここまで

男(……)

────でも、その……今日は……今日だけだから



────だって……ミアに負けたくないから……



────……なんか、必死に秘密を晒した私が馬鹿みたいです



男(……)

男「ありがとな、真白。俺のこと、好きって言ってくれて」ナデナデ

男「ドキドキしてるのも、全部伝わってる」





男「ただ、応えてあげられないんだ」

真白「……大丈夫、分かってます」

真白「わかって……ます……」ポロッ

真白「うあ……ひっ、ひうっ……うっく……」ポロポロポロポロ...

男「……ったく、お姉ちゃんな泣き方だな真白は」

男「泣き声こらえてしゃくりあげて、拳握りしめて涙我慢して……」

真白「だって……だって……」グズッ

男「こっちこい」グイッ

真白「あ」ギュ

真白「うああああああああああっ!!」

真白「ひうっ!あああああああ……」ギュウウウウッ

男「……」

真白「おどござんじゃなきゃ、ひっく、やな、のにぃぃ……」

男「ほんとごめんな」

真白「うああああああああ……うあああああああ……」

男「……」

真白「ひう、う、ひっぐ、ひっ……」

男「ごめん」

真白「や、です……ぜった、いっ……やだ……」

男「……真白は可愛いから、彼氏なんてすぐできるよ」

真白「じゃあ男さんがっ……かれしになってよぉ……」

男「困らせないでくれ、頼むから」

男「……」

真白「ううぅぅ……」グスッ

男「俺にとって真白はさ……妹みたいな存在で」

真白「い゛っ、いもう、と……」グスッ

男「3月にもデートに誘ってくれたよな。あの時は『ああ、たまにはいいかな』ぐらいにしか考えてなかった」

男「今日も『楽しめればいいな』って」

真白「……」

男「だからごめん。大事な存在だけど、恋愛の相手にはならない」

真白「これからも、だめ……?ずっと、ずっといもうと、なの?」

男「……」ポフポフ

真白「ずるい……」

男「ごめん」

男「後な……俺、好きな人がいるんだ」

真白「……」

男「その人を笑顔にしたい。その人の隣にいたい」

真白「……フラれちゃえばいいと思います」

男「ひでぇな」

真白「おあいこです」

男「そっか」

真白「あと、その人のおっぱいは垂れるだけですけど、私はこれから揉んでおっきくできますよ?」

男「いや、そこに惚れたわけじゃないから」

真白「そ、そうですか」

真白「……」

男「……」

真白「あーあ、フラれちゃいました。まぁ、半分気づいてましたけど」

男「ほんとごめん」

真白「もういいです。ミアとイチャイチャしててください」

男「あ、ああ……って」

真白「わかります。バレバレです。ずっと男さんの事見てたんですから」

男「……」

真白「……今日はありがとうございました。玉砕して、意外とスッキリです」

男「あー……なんて言っていいんだか」

真白「『やっぱり真白を愛してる』と」

男「意味が……いや、分かるけど言えるか」

真白「……残念です」チッ

男「さらっと舌打ちすんな聞こえてるぞ」

真白「じゃあ、タクシー呼んで帰ります。洗濯物もビニール袋にでも入れて持って帰りますから」

男「ああ」

真白「……男さん?」

男「フラれたことは多くても、フったのって初めてだったなぁ、と」

真白「どうですか、今の気分は?」

男「けっこう苦しいな。本当にごめん」

真白「もう、謝りすぎです」

男「う、おう……くしょんっ!」

真白「あ、シャワーまだですよね、早く浴びてください。もしよければいっ」

男「一人で入れる」

真白「むー」

…………

……

男「ふぅ」

真白「湯上がりの男さんも素敵です」

男「さんきゅ、って……そういうポイント上げいらないから」

真白「ひどーい。本心ですよ」

男「……そうか、すまん」

真白「5分くらい前に電話したんで、そろそろタクシー着くと思います」

男「んじゃ、下で待ってるか」

真白「そうですね」

男「雨、小降りになってよかったな」

真白「ですね……あ、来たみたいです」

男「これ、コーヒーとサンドイッチ。結局食べそこねたから持って帰りな」

真白「あ、ありがとうございます」

男「タクシーまでは傘差してやるから」

真白「初相合傘ですね」

男「最初で最後だ」

真白「ミアにフラれたら、いつでもどうぞ」

男「ひでぇ」



ガチャ

男「ほれ、待たせるなよ」

真白「あ、はい」パタパタパタ

真白(……あ)チラ



男「じゃあな。また明日」

真白「あの、15秒。15秒だけ私にください」

男「え?ああ……」

真白「だいすき」

チュ

男「!!」



────────────────ゥゥゥ...

ポンッ

男「だっ!?な?!えっ!?」

真白「宣戦布告です。それじゃ、今日はありがとうございました」

男「……」

バタンッ!!ブロロロロロ...

男「……え」

男「なっ……はぁ」



ミア「あら、男さん」

男「!!」ビックゥ!!

ミア「雨、小ぶりになってよかったですね」

男「え、あ、あああ、ああ、そうだな」

ミア「何か?」

男「い、いやいやいやいやいやいやなんでもない」ゴシゴシ

ミア「……」

男「っくしょんっ!!」

ミア「風邪ですか?気をつけてくださいね」

男「あ、ああ……そう、だな」

男(ふぅ、あぶねぇ……あんな所見られたら誤解どころの騒ぎじゃないな……)

────翌日 午後2時@カフェ"Heavenly Hug" 厨房

男「はー、これで皿洗いおしまいっと。真白、休憩先にいいぞ」

真白「ありがとうございます。それじゃ」

男(ふぅ、真白もいつも通りみたいだ)

真白「あの、男さん」

男「んー?」

真白「昨日、私の事を『妹だ』って言いましたよね」

男「え?あ、お、おう」

真白「でも、血はつながってないです」

男「……すまん、何が言いたいのかさっぱりだ」
   いもうと
真白「 義妹 なら、恋愛もバッチこいですから」

男「へ?」

真白「分からないなら、今はそれでいいです」

真白「先に休憩もらいまーす」パタパタパタ...

男「……」

シーリス「おとこーっち」

男「な、なんだよ」

シーリス「ましろんとなんかあった?」

男「なんかってなんだよ」

シーリス「……べっつにー」

男「何にもねぇよ」

シーリス「セクハラ、よくないよー?」

男「してねぇ、っつの」

男(……ギリギリな所だがな)

シーリス「ふぅん……」ニヤニヤ

男「何だよその顔は。早番なんだから、上がりの時間だろ?はやく帰れ帰れ」シッシッ

シーリス「冷たいなぁ。んじゃねー」パタパタパタ...

ミア「男さん?」

男「は、はいっ」

ミア「……」

男「な、なにか?」

ミア「職場恋愛もいいですが、あまり人前でき……キスとか、控えた方がいいかと」

男「?!?!」

ミア「真白にも言っておきますから」

男「ちょっと待ってちがう!」

ミア「はいはい。お仕事中はダメですから。そこの線引きさえしていただければ私は何も」

男「だから違うって!」

ミア「そういう否定の仕方は真白に悪いですよ。別に恥ずかしいことじゃないんだし」

男「だからちげぇよ!俺が好きなのは真白じゃなくてっ!」

ミア「……?」

男「…………あ、あー……その、とにかく。真白とは付き合っていない。ただの同僚」

ミア「……男さんは同僚とキスしちゃう軽い男、と」

男「その言い方もトゲありません?」

ミア「……別に」プイッ

男「あ」

男「……あーあ」

男(どんだけヘタレなんだ俺は……)

ここまで
デート編は一段落

したところで、ガムシロとミルク入りの作品はじめました
という宣伝

黒服「今宵は誰と一夜の愛を育みますか?」
黒服「今宵は誰と一夜の愛を育みますか?」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1412167790/)

男(……鴉天狗?)

男「あの、鴉天狗さんって、日本の方……?」

黒服「はい。東京産まれ高尾山育ち、新宿のカラスは大体友達Yeah、です」

男「なにその謎ラップ……」

黒服「ちょっとした亜人ジョークでございます」

男「……じゃあ、その、鴉天狗さんで」

黒服「はい。男様ならまぁ、大丈夫でしょう。お呼びします」

男「えっ!?何かあるんですか?」

黒服「いえいえいえいえ。ただ少々……彼女の趣味にドン引く方もおられますので」

男「ど、どん引く!?」

黒服「嫌がるキャストを無理矢理絶頂させた男様なら、問題ございません」サムズアップ

男「ちょ、ま、それはですね!」

黒服「そういう、多少痛いのが好きなキャストなので、心に留めておいてください」

男「!?」

……ごめん、見なかったことにして

────???



男「……」

ミア「どうしたんです男さん、7レス上を見上げて」

男「え、ああ、いや、羨ましいとかもげろとか、そんな事は全然ないんですよ!」

ミア「何ですか急に……何かあるんですか?」

男「わーっ!わーっ!何でもない、何でもないんで!ほら、店開ける準備しないと!!>>1の投下が始まりますよ!」

ミア「?」ズリズリ



男(畜生羨ましい……)ハァ

────6月初旬@カフェHeavenly Hug 厨房

シーリス(最近、店の中がぎくしゃくしてる)

シーリス(例えば……男っちとましろん)



男「ま、真白、その、だな……サラダのキャベツ切ってもらっていいか?」

真白「あ、は、はい」

男「た、頼むな」

真白「はい」

シーリス(ましろんとミアちー)



真白「ミア、次は?」

ミア「え、そ、そうね……お砂糖の詰め替えを」

真白「もう、終わった」

ミア「じゃあ、クロスの消毒……」

真白「今漬けてる」

ミア「あ、じゃあ……えっとぉ……」

真白「なきゃ、厨房の在庫整理してるね」プイッ

シーリス(そして、男っちとミアちー)



男「これ、5月の原料費と今月の見通し」

ミア「はい、確認させてもらいます」

男「……あの、さ」

ミア「まだ、なにか?」

男「いや、後で7月の限定メニューの試食を……」

ミア「真白のほうが、いい感想もらえるんじゃないですか?」

男「いい感想より、率直な意見のほうが欲しいんだけど」

ミア「……そうですか」

男「そうなんだけど……」

ミア「じゃあ、真白に率直な意見をもらったらいかがです?」



シーリス(これはつけ入る隙あるんじゃない?)ニヤリ

13:20@カフェHeavenly Hug 厨房



男「……」

真白「ひ、一段落ですね」ジャブジャブ

男「ん、おお……そうだなー」カチャカチャ

シーリス「はーい、これ最後のお皿。ふあー……お腹へったー」ダラリン

真白「そうだねー」

ミア「で、今日の賄いは何かなー、男っち?」

男「……たまには真白が作ってみるか?」

真白「わ、私ですか!?」

シーリス「おおっ!ましろん特製の!」



真白「え、っと……カレー、とか?」



3人「「「……」」」

真白「じょ、冗談ですよえっと……何かリクエストは……」

男「魚介系」

ミア「食物繊維」

シーリス「がっつり!」



真白「ラーメン」



男「却下」

ミア「じゃあ男さん、適当にお願いします」

真白「つ、作りますよ私だって厨房担当なんです!」

男「お、おう……」

真白「ほら、ミアとシーリスはシルバー拭いて!」

シーリス「はいはーい」

真白(男さんとミアが仲良さげなのはイヤだし)

真白(……男さんがいなくなっちゃったら、私がしっかりしなきゃいけないんだし!)フンス

真白「男さん、お湯を多めに沸かしてください。パスタを固めに茹でます」

男「はいよ」

真白「……んー……これとこれと……ん、これも」ゴトゴト

男(冷凍してある殻付きアサリにきゃべつともやし……スープパスタか)

真白「ミア、この冷蔵庫の中の白ワイン使うね」

ミア「えっ、ど、どれ?」

真白「んーと……真ん中ー」

ミア「あ、それは安いのだから使いきっても大丈夫よ」

男「アサリに使うならその右のワインだ」

真白「え、でもこれ高そう……」

男「厨房の冷蔵庫に私物を入れっぱなしにするほうが悪い」

真白「キャベツをざくざくっと一口大に。もやしと一緒に軽くゆでてください」

男「わかった。午後もあるから、にんにくは入れないほうが良さそうだな」

真白「はい。代わりに唐辛子を使います」



真白「オリーブオイルで唐辛子を炒めたら、アサリを入れて混ぜる」

真白「白ワインを入れてアルコールを飛ばして……水、コンソメ、蓋してっと……」



pipipipipi...

男「パスタが茹で上がったな」

真白「あ、味見します……あちっ、おっけいれふ」



真白「で、沸騰したスープのアク取りをしたら……」

真白「これっ!」ゴトン

男(トマトの水煮缶?)

シーリス「めっちゃいい匂いするんですけど……」

ミア「そうねぇ」



クキュルルル...

ミア「……」

シーリス「そ、育ち盛りなので大目に見て欲しいかも」



グゥゥゥゥ...

シーリス「……」

ミア「お、大人だってお腹は空くのよ」

…………

……

真白「お、おまたせしました」

シーリス「お、お、おおお……」

男「で、今日の賄いは?」



真白「えっと、トマトとあさりのスープパスタ、カタコイ野菜マシにんにく抜きです」



男(ラーメンか)

ミア(ラーメンじゃないんだから)

シーリス(ましろんそれじゃラーメンだよ……)

真白「ちゃんと魚介で野菜たっぷりでがっつり食べられる系で……」

ミア「あら美味しい」モグモグ

シーリス「……キャベツしんなりでうまー」モグモグ

男「トマトがアクセントだな」モグモグ

真白「……ってもう聞いてないし……いただきます」



3人「「「いただいてます!」」」

…………

……

シーリス「男っち♪」

男「おう」

シーリス「ちょっと……」クイックイッ

男「なんだよ一体。厨房でなら聞……」

シーリス「いいから!」グイッ

男「お、おいっ」



シーリス「あのさ、真白とミアとなんかあった?」

男「……よしんばあったとして、なんでシーリスに言わなきゃいかん」

シーリス「面白そうだから」サムズアップ

男「さて、仕事仕事」

シーリス「あーもう、冗談だって!つか真面目な話さ」

シーリス「店員同士がギクシャクしてんのはマズいっしょ。常連さんには、気づいてる人いるよ?」

男「……」

男「ミアからは避けられてる。理由は……正直分からん」

男「真白とは休みの日にデートした」

シーリス「にゃんと!?動いたかー……んでんで?」

男「……」

シーリス「んでんでんでんで!そこ、そこ重要!」

男「真白に聞け。もしくは真白から俺に直接、話してもいいって許可がでたら話す」

シーリス「えー、ぶぅぶぅ」

男「ほら、仕事だ、し・ご・と」デコピン

シーリス(さてさて、どちらから責め……いやいや、攻めようか)

シーリス(からかい甲斐があるのは真白だけど、怒らせると面倒だからなぁ)

シーリス(さりとて、ミアはのらりくらりと逃げられそうだし)

シーリス(……)

ミア「えっと、確かここに……あ、あったあった」ガサゴソ

シーリス「しゃあない。最初に出会った方、か。ミアちー!」

ミア「あらシーリス、休憩終わり?」

シーリス「それどころじゃない」

ミア「えっ?」

シーリス(直球じゃ逃げられるかなぁ……そうだ)

シーリス「男っちとましろんの事、知ってた?」

ミア「……二人が付き合ってること?」



シーリス(?!)

シーリス「そう!そうそうその話!」

ミア「隠しだてすることないわよね……私も直接言われたわけじゃないんだけど」

シーリス「あ、あれ、本人から聞いてないのに知ってるの?」

ミア「……あー、うん、ちょっと、その、キスしてるとこ見ちゃって」

シーリス「まじで!?で、店長ご感想は?」

ミア「……公私混同がなければそれでいいわ」フゥ

シーリス「えっ、でもさぁ……進展具合によっては、あの部屋でもにょもにょしたり、2階のシャワーでしゃわしゃわするわけでしょ?」

ミア「……そうね。その辺りは、もしひどいようなら注意するわ」

シーリス「店長としては分かった。で、ミアちー個人としてはいかがよ?」

ミア「いかが、って……そうねぇ……『リア充爆発しろ!』かしら」

シーリス「どこで覚えてくるのそういうスラング……」

ミア「ハーピー」

シーリス「あの人リア充じゃん!?」

ミア「そうね……ほら、仕事はあるわよ、とりあえずナプキン折って」ボフ

シーリス「へーい……」

────17:00@カフェHeavenly Hug 2F更衣室



シーリス「まっしろん♪」ダキッ!!

真白「わっ、シーリス!なに?!」

シーリス「んー、実況検分?」

真白「……ごめんさすがに意味わかんない」

シーリス「いや、男っちに揉まれて大きくなったという噂が……」

真白「な、ないないないっ!第一触られたっていうか手出したのは私だしそのっ……」

シーリス「へぇ?」モミモミ

真白「ごめん忘れて」

シーリス「くわしく!」モミモミッ

真白「っていうか胸揉みしだくのやめて……」

シーリス「よいではないかよいではないかぐへへ」モニュッ

真白「よくないよ!って本当にやめっ、んっ!」

シーリス「……」

真白「……」

シーリス「ミアちー!ミアちーっ!ましろんが、ましろんが大人の階段をーっ!」

真白「ち、ちがうの今のはっ!」

シーリス「ミーアーちーっ!」

真白「ストップストーップ!」グイッ

シーリス「きゃー、ましろん大胆」

真白「ちょっ、まってほんとにっ!」グイッ

フニョン

シーリス「いやーん……って、ましろん?」

真白(ちっぱい仲間かと思ったら意外とある……?!)ムニムニ...

シーリス「ま、真白さん?」

真白「う、裏切り者ーっ!」ガタタッ!!

シーリス「待った、まったまったまったーっ!?」ドスン

真白「私は毎朝必死に脇腹のお肉を詰めて詰めて詰めてるのにーっ!」ドッタンバッタン

男「お前らーっ!いい加減にしろお客さんが……」



真白「……」ウマノリ

シーリス「……」ヌゲカケ



男「い、いるからその、うん、ごめん」ソソクサ

真白「~~~っ?!」

シーリス「待って男っち誤解!誤解なのーっ!!」

ここまでー

トントントン...

男「ふぅ、やれやれ」

ミア「結局、あの子たちは何を騒いでいたの?」

男「え!?あー……うん、その、だな……」

ミア「……?」

男「まぁ、その、なんだ……思春期特有のあれやこれや、だ」

ミア「……で、なんで体温上がってるんですか?顔真っ赤だし」

男「え!?ほら、いいじゃん別に、ドタバタは収まったんだし」



ドタバタドタバタ...

真白「お、おおおおお疲れさまでした!!」

シーリス「男っち!絶対絶対思い出し禁止だからね!!」

ミア「へーぇ、うまく収まったみたいで」

男「そんな目で見ないで」

シーリス「おとこっち!ホントに忘れてよ!」

男「なんだよ、ったく……はいはい忘れた忘れた」

シーリス「じゃあ、ブラの色何色だった?」

男「だ、な、お、大人をからかうな!」

シーリス「えー……ヒント、いるー?」チラチラ

男「いるか!ったく、ほら、帰れ帰れ」シッシッ

シーリス「ひどーい。そんな言い方してー。乙女心は傷つきやすいのに」

男「あーはいはい、覚えてますよ、可愛らしいパステルピンクでしたー」

シーリス「にひひ。ちゃんと脳裏に焼き付けて今晩使ってね」ゴニョニョ

男「はぁ?!あ、アホかお前はとっとと帰れ!!」

シーリス「んじゃねー!ミアちー、明日早番、よっろしくー!」

ミア「ええ、大丈夫。もう日も長くなったし」

真白「シーリス、女中さん、待ってるよ」

シーリス「あ、うん、今いくー。んじゃ、おっつかれー!」バタン

…………

……

ミア「……」

男「……」

ミア「お、お客さんも帰っちゃったし、なんか急に暇になっちゃいましたね」

男「ん、ああ」



prrr...prrr...

男「……っと、電話だ。出てもいいかい?」

ミア「ええ、どうぞ」



────『男友』



ミア「どうぞ。オーダー入ったら呼びますね」

男「おう、裏口出た所にいる」

男「はいはい、男ですけどー」

男友『いよう、今いいか?』

男「よくねぇよ営業時間中だ」

男友『そりゃ悪いことをした。手短に言うが、例の件、考えてくれたか?』

男「ん、ああ……」

男友『迷うのはいいが、期限はあるぞ。こっちも、お前が断るならリストの次の面子にオファー出すからな』

男「ん、おお、すまん……いつまで待てそうだ?」

男友『社長にかけあってやるが……あと2週間、だな』

男「あと2週間……」

男友『ああ。色よい返事を待ってるぞ』

男「期待すんな」

男友『はははは。んじゃあ、またな。仕事中邪魔して悪かった』ブツッ



男「……」ハァ

短いけどここまで

────18:00 真白宅



真白「ただいまー……」ガチャ

真白「……迎えてくれるのは猫グッズのみ、かぁ」

真白「ぬぅ……ご飯つくるの面倒くさいぃ……店でサンドイッチでも作ってくるんだったかな」



ヴッヴー ヴッヴー



真白「と、っとと……はい、まし……ああ、お母さん」

真白「え?この前帰ったばっか……だから、いないって!」

真白「何、用事ないなら、バイトあがりで疲れてるから切るよ」

真白「え、また!?もうやめて!やめてって、邪魔だから!着払いで送り返すから!」

真白「じゃあね!帰る時は電話するから!うん……じゃあ、従妹ちゃんにも、お勤めご苦労様、って伝えて」pi

真白「なんでおばさんもお母さんも、見合い写真を送ってよこすんだか……」

真白「彼氏いるから!って言ってみたい……」ハァ

真白「……ばーかばーか男さんのばーか」ブツブツ



真白「に、しても……進路、かぁ……」ボフン

真白「このままヘブンリーハグにいて……いて、どうするんだろ」

真白「ほぼほぼ確実に男さんとミアのイチャコラを見せつけられ続けるわけで」

真白「……んー」

真白「……」ガサガサ



『ヘンゼル製菓専門学校 見学会のお知らせ』



真白「……」

────同時刻 石動邸



シーリス「お父様が?」

女中「はい。居間でお待ちです」

シーリス「珍しいなぁ、こんな時間に家に帰ってくるなんて。用件、聞いてる?」

女中「いえ……特には。たまにはお父様とゆっくりお話されてはいかがです?」

シーリス「そーだねー」

シーリス「お父様、お帰りなさい」

父「おお、久しぶり……と、言うことのないように、帰ってこなければならんのだろうが」

シーリス「株主総会の時期なのに、大丈夫なの?」

父「なぁに、シャンシャンでおしまいさ」

シーリス「一応私も株主だってこと、忘れないでねー」

父「おお、怖い怖い」ガッハッハ

シーリス「で、話って何?」

父「……その、だな……」ガサゴソ

シーリス「なにこれ、招待状?」

父「出なさい。紹介したい人がいる」

シーリス「……あー、新しい奥さん?」

父「違うよ。私が愛する妻はきみのお母さんただ一人だ」

シーリス「……そっか。じゃあ、誰?会社関係?また政府の研究機関?公安の課長さん?」

────深夜@カフェ Heavenly Hug 厨房

男(……)ザクザクザクザク

男(……)コネコネコネコネ

男(……)パタパタパタパタパタ

男「ふぅ、これでハンバーグの下ごしらえ終わり、と」

男「……」

男「さ、片付けたら一杯やって寝るかな……」ガチャガチャ

カタン

ミア「あら」

男「あれ、起こしちゃった?」

ミア「ううん、なんとなく……目がさえちゃって」

男「……寝酒に一杯やるけど?」

ミア「ご相伴にあずかろうかしら」

男「じゃあ軽くつまみでも作るよ」

>>774修正
シーリス「お父様、お帰りなさい」

父「おお、久しぶり……と、言うことのないように、帰ってこなければならんのだろうが」

シーリス「株主総会の時期なのに、大丈夫なの?」

父「なぁに、シャンシャンでおしまいさ」

シーリス「一応私も株主だってこと、忘れないでねー」

父「おお、怖い怖い」ガッハッハ

シーリス「で、話って何?」

父「……その、だな……」ガサゴソ

シーリス「なにこれ、招待状?」

父「出なさい。紹介したい人がいる」

シーリス「……あー、新しい奥さん?」

父「違うよ。私が愛する妻はきみのお母さんただ一人だ」

シーリス「……そっか。じゃあ、誰?会社関係?また政府の研究機関?公安の課長さん?」


父「実はな……」

────深夜@カフェ Heavenly Hug 厨房

男(……)ザクザクザクザク

男(……)コネコネコネコネ

男(……)パタパタパタパタパタ

男「ふぅ、これでハンバーグの下ごしらえ終わり、と」

男「……」

男「さ、片付けたら一杯やって寝るかな……」ガチャガチャ

カタン

ミア「あら」

男「あれ、起こしちゃった?」

ミア「ううん、なんとなく……目がさえちゃって」

男「……寝酒に一杯やるけど?」

ミア「ご相伴にあずかろうかしら」

男「じゃあ軽くつまみでも作るよ」

ミア「見てても、いいですか?」

男「料理してるところ?別にいいけど」ジャブジャブ

ミア「じゃあ、ここで」

男「……なんか、恥ずかしいな」ガサゴソ

ミア「変なの」クスクス

男「まぁ、うん……いんげんのごま和えと、作りおきしたキンピラでもいい?」

ミア「十分十分」



男「……」ザクザク

ミア「……」

男「……」グツグツグツ...

ミア「……」

男「あ、キンピラ、レンチンしてもらえる?」

ミア「はい」

…………

……

男「今日もお疲れ様でした」

ミア「はい、お疲れ様でした」

男「……」グイッ

ミア「いい飲みっぷりですこと。あ、そんな、注がせてください」トポトポ

男「あ、ああ……すいません」

ミア「日本酒派なんですね」

男「ん、ああ、まあ。っていうか」

ミア「はい?」

男「差し向かいで飲むのって、初めてじゃないか?」

ミア「そ、そうですか?……そう、ですね」クイッ

男「そう……だね」チビリ



男・ミア「「……」」

ミア「あ、キンピラもらいますね」グイッ

男「!!」

ミア「?」タユン

男(これが、巨乳限定秘技『おっぱい・オン・ザ・テーブル』……)ゴクリ

ミア「はむ、ん、美味しいです……男さん?」

男「え、ああ、そりゃよかった。もうちょっと辛いほうが酒のつまみにはいいんだろうけど」グビッ

ミア「それにしても」

男「?」

ミア「男さんが料理してる立ち姿って格好いいですね」

男「?!」ブフッ!!

男「げほっ、ごほっ、ごほっ、なんですかいきなり」

ミア「んー、今日見て再確認というか」

男「は?」

ミア「真白が男さんを好きになった理由」

男「……着地点そこ、っすか」

ミア「まぁほら、お付き合いしてる二人が休憩室や半分倉庫の男さんの部屋で、ね、ほら、その」ゴニョゴニョ

男「だからまず付き合ってないから」

ミア「じゃあなんで雨の中名残惜しそうにチューしてたんですか」

男「あれはいきなりされたの!合意の上じゃなくてだな……その……」

ミア「その辺くわしく!」フンス

男「あー……いや、付き合ってくれ、って言われたから、断ったら不意打ちでだな……」

ミア「えー……もったいない」

男「いい奴だってのは分かってるんだけどさー……」チラ

ミア「?」

男「なんでもない」チビリ

ミア「で、なんでフったんです?」

男「えー……」

ミア「色々教えてくださいよー」

男「酔ってる?」

ミア「酔ってないですよ。ただ、肴にするには絶品です」

男「ひでぇ」

ミア「さぁ、さぁさぁさぁ!」

男「その、だな……妹みたいなもんだから、付き合うとか考えてない、って」

ミア「それだけ?」

男「え、ああ、その……」

ミア「まだ何かあるんですか?」

男「ない!ないないない!」

ミア「お試しででも付き合ってみればよかったのに」

男「……」

男「同じ職場で付き合うのって苦手なんだよ……」

ミア「なんで?」

男「公私混同する」

ミア「ははーん、そういう経験ありと見た」

男「……黙秘」

ミア「えー!答えてください」

男「……」

ミア「店長命令!」

男「酔ってるだろ」

ミア「酔ってないです」グビ

男「……あぁ、まぁ、同じ厨房スタッフで付き合ったら」

男「最初はよかったんだけど、そのうち休みの日も作ってもらった料理に仕事中の目で見始めて」

男「……まぁ、長く続かなかったの。っていうか相手の才能に俺が嫉妬してダメになりました」グビ

ミア「ふぅん……でも、真白に嫉妬する男さんって想像つかないかも」

男「真白は才能あるよ。今まで独学だったから伸び悩んでた部分もあるんじゃないか?」

ミア「……」

男「だから……ってだけじゃないけど。まぁ、付き合うとかは考えてない。これでいい?」

ミア「はぁ……なるほど」

男「そういやあいつ、変なこと言ってたな」

ミア「?」

男「『宣戦布告』って」

ミア「!?」ビクッ

男「?」

ミア「は、はぁ……そ、そうですか……」ドキドキ

ミア「た、たぶん、フラれたってめげないぞ、的な奴じゃないですかね」

男「かな。あの積極性を別の方向にむけてほしいんだが正直」

ミア「あはは……」チビリ

男「で」

ミア「はい?」

男「ミアの番」

ミア「な、なにがですか?」

男「……いやだから、過去の恋愛談。俺だけしゃべらされるのは不公平」

ミア「あ、いや、別にそんな……特にたいしたものは……」

男「……」



男「その、左手の薬指に嵌ってる指輪の送り主の、こととか知りたいんだけど……」

ここまで

>>774-775は読み飛ばしてください

来てたー( ゚∀゚)
今回は早かったね、仕事納めした感じかな?おつでし

乙 贅沢過ぎるけど真白ルートも見たかったなぁ
>>1が会社立ち上げていつか亜人オンリーエロゲ出してくれ

>>788
仕事納めはあるけど仕事始めはないっていうか
今日から”に”のつく自由業っていうか……

>>789
(趣味を仕事にしたら)あかん

そんなわけで今年最後の投下

ミア「あ、え、えっと……」

男「……」

ミア「どうしても、ですか?」

男「まぁ、話すくらいなら舌噛んで死ぬレベルだって言うなら我慢しますけど」

ミア「そ、そこまでじゃないですけど……」

男「……」

ミア「えーっと……どこから話しましょうか」

男「お好きなように」

ミア「えーっと……『はじめに、神は天と地を』」

男「そこスキップで」

ミア「じょ、ジョークですよ」

ミア「えっと、私が日本に留学していた話は、しましたよね」

男「ええ」

ミア「その時からの付き合いで……」

ミア「私がフランスに戻ってからも、連絡はとっていて」

ミア「で、彼がフランスに旅行した時に再会して」

ミア「それからずっとその……恋人というか……まぁそのもにょもにょと」

男「で?」

ミア「彼は世界中を旅して、日本に戻った後は世界中の料理を出す店を開く!ってずっと意気込んでました」

ミア「まぁ、それに協力というか……」

ミア「日本においで、喫茶店を手伝ってほしい、って言われて」

男「ほいほいと」

ミア「ほ、ほいほいじゃないです、悩んで悩んだ結果ですっ!」

男「それは失敬」

ミア「日本に来て、一緒に暮らし始めて」

ミア「少しずつ……ほら、ゲートボールのおばあさんたちとか、お客さんも増えて」

男「……」

ミア「って、なんか視線がいやらしいんですけど」

男「お、男と一緒に暮らしてたとか言うから……」

ミア「な、え、わ、えっとまぁ、そう、なんですけど……」



ミア「と、とにかくですね!二人で、ここで、喫茶店をしていたんです」

男「は、はぁ」

ミア「お店を手伝い始めて半年くらい、かな……」

ミア「彼は、コーヒー豆の農場を見学するのにハワイへ行くことになって」

ミア「……その間、留守番頼むな、って」

ミア「帰ってきたら、二人だけでも式を挙げようって」

ミア「この指輪は……それまで、虫除けにつけておけって」

ミア「そう言われて、もう4年半……ううん、8月で5年」

男「……それは」

ミア「……ほんと、どこで道草してるのかしら」ポロ...



男「そういう事か」

ミア「……」

男「隣、行ってもいい?っていうか行くよ」

男「……ごめん、触る」ギュッ

ミア「……」

男「こんないい女ほっとくなんて、ひどい男だな」ポフポフ

ミア「……て」

ミア「だって……飛行機事故で……海岸沿いで、たくさん流れ着いたのに」グスッ

ミア「あの人はいなくて……だから、きっとどこかで生きていて」

ミア「きっと帰ってくるから、この店で、待っていよう、って……」ズズ

男「うん」ナデナデ

ミア「けど……」

男「けど?」



ミア「もう限界近くて、気持ちが、揺らいで……」

ミア「あなたが最初に店に入ってきた時……あの人が帰ってきた気がして」

ミア「……ぜんぜん似てないのに、なんでかな」

男「……」

ミア「雰囲気も違うのに、重ねちゃって……私……」

ミア「少しずつ、あなたに惹かれてるみたい、なの……」

ミア「ひどい、ね……ごめん……なんか、噴き出して、気持ちが……とまらなくて」

男「生きてればそういう事だってあるだろ」

男「俺は、見たこともない誰かの代わりでもいいよ」

男「ミアの隣にいられるなら、それでもいい」

ミア「それ、って……」

男「あー……うん、まぁ、なんていうか」

男「なんでこの人はこんなに寂しそうな顔をするんだろう、ってずっと謎で」

男「その謎が解決したから、今日はそれでいいことにする」

ミア「ごめん、ひどいこと……言い、ます……」

男「どうぞ」フゥ

ミア「もう少しだけ、待たせて……ほしい……」

ミア「だけど……男さんの心も、引き留めておきたいの……」

ミア「真白や、それ以外の娘に、渡したくない……」

男「自分で”それ”でもいいって言ったけど、実際キープ君でもいいですか、って言われるときついな」

ミア「う……ご、ごめん、なさい」

男「いいよ、待つ待つ。ただ、もう少しだけ、は困るかな」ナデナデ

ミア「……」

ミア「8月に、慰霊祭があるの。私は……去年までは、参加、しなかったんだけど……」

ミア「それに出る。出て、けじめ、つける……から」

男「分かった。待つ」

ミア「……ごめん、なさい」

男「ごめんなさい、より、ありがとう、のほうがうれしいかな」

ミア「ありがとう」ギュ

男「ん、うん」ギュ

ミア「どこかで、帰ってくるはずがない、って思っていて」

ミア「でもそれを認めたら……今までの自分を否定するみたいで」

ミア「ずっと踏ん切りがつかなくて……でも、少しだけ進めそう」

ミア「……ありがとう」

男「……」

ミア「……」

男「……あの、さ」

ミア「は、はい」

男「担保がほしい」

ミア「え?」

男「8月まで他の奴に目移りしないで待つから……担保がほしい」

ミア「え、えっと……それって……あ」ピクン

男「いい?」

ミア「……ダメじゃない、です」

男「じゃあ」

ミア「……ん、ふ、んっ……ん……」

男「……!」

ミア「~~~~っ!」

男「んーっ!!だ、ちょっと待て!なんでベロ入れた!?」

ミア「あ、その、久しぶりで、つい……」

男「!?」ボフンッ

ミア「あ、え、えっと、担保、足り、ました、か?」

男「これで足りなきゃ、後はもう手篭めにするしかないだろうが!」

ミア「て、てごっ?!」

男「あーもう、十分、十分もらった。うん、だから、お開きに、しよう、うん、明日もあるし」

ミア「お互い……眠れそうにないですね……」

男「ねぇそれわざと?!わざと言ってる!?」

ミア「え、あ……ひゃ?!ち、ちがいます別に深い意味はなくて!」

男「あー……まぁ、事実、眠れそうにないけどさぁ……」ポリポリ

男「分かった。どうせ眠れないなら俺のライバルのこと教えてくれ」

ミア「……じゃあ、男さんの昔の彼女のことも教えてください」

男「えー」

ミア「だめ、ですか?」

男「エピソードいっこずつ交代な」

ミア「はい」

…………

……

────翌朝@カフェ Heavenly Hug 裏口

真白「おはようございます……ん?」ガチャ

真白(お酒くさい?)

真白(……)



男「……」グゥグゥ

ミア「……」スゥスゥ



真白「ふ、不潔ですっ!!お、起きて!離れてくださいっ!!」

男「ん、うあ……あたまいた……のみすぎた……お、ましろか……」

真白「か?じゃないですよ……っていうか、その膝の上の物体、なんとかしてください」チョンチョン

男「んー?うおっ!」

ミア「……」スゥスゥ

男「あー……そのまま寝ちゃったんだっけ」

真白「そ、そのままっ!?」

男「ミア、起きてくれ、色々とまずい」

ミア「ん……んー……も、朝……ふぁぁ……」

男「……」

真白「……」

ミア「ひゃあ?!あ、な、何時!?え、えっと、その!?!?」ガタンガシャン!!

男「あーあーあー……とりあえず換気と片付けだな。悪いけど真白、ミア上に連れてって、着替えて開店準備頼む」

真白「後で懇切丁寧に教えてくださいよ、絶対ですよ!」

男「ん、あー……ま、気が向いたら。俺は酒瓶片付けたら仮眠するから……ふぁぁ」

真白「うー……」

…………

……

シーリス「おっはよー男っち、眠そうアンドお酒臭い」

男「シャワー浴びたんだがな……まだ酒臭い?」

真白「一晩中、ミアとふたりきりで楽しそーに晩酌してたんですよね、男さんっ!!」プンスカ

男「悪い、耳元で声出されると響くから勘弁して……」

シーリス「ほほーぅ、ぜひとも詳しく!当事者から詳しくっ!」

男「うっせぇ仕事だ仕事!シーリスはとっとと着替えて来い!」

シーリス「はーいはい」

真白「はーい!」ムスー



男(……)チラ

ミア「……」ニコ

男(……よかった。これくらいの会話なら目移りにならないらしい)ホッ








……………………

………………

…………

……

男(『いつ帰ってくるか分からない男より、俺を選べ』)

男(あの夜、そう言うべきだったのかもしれない)

男(でも、彼女の気持ちを知って……)

男(待つ、って決めてしまった)

男(へたれ、妥協、先送り……その結果が……)



真白「ミア、ミア!!しっかりして!ねぇミア!!」

シーリス「ど、どうしよう男っちミアちーが……」

ミア「……」グッタリ



男(────これだ)

ここまで
来年もよろしくお願いします

男が五代君にしか見えなくなってきた

>>813
>>110
>>112

────17:00@病院 病室



コンコン

真白「はい」

男「よう、ミアは?」

真白「まだ起きない……」

男「病状は?」

真白「CTの結果は、問題ないって。頭のたんこぶだけ。今日は入院して様子見だそうです」

男「……急に倒れた理由は?」

真白「それが、分からなくて……お医者さんが言うには、精神的なショックじゃないか、って」

真白「そういえばシーリスは?」

男「ああ……医療機器を止めるとまずいから、近寄らないってさ。起きたらミアに謝っておいてくれって」

真白「そっか……本当は、ずっとそばにいたいと思う」

男「分かってる。これ、着替えと保険証預かってきた。とりあえず入院の手続きしてくる」

真白「あ……はい、これ、手続きの用紙です」

男「起きたら、話聞いてやってくれ」

真白「あ、はい……あ」

男「救急車、付き添ってくれてありがとな」ナデナデ

真白「あ、いえ……レジ〆しなきゃいけない男さんと、フロアの片付けするシーリスと……その、消去法ですから」

男「んなこたねーよ。ごめんな、きつい役目負わせて」

真白「平気です。もっとつらいのはミア本人だから……」

男「ん。ああそうだ、会計行くついでに売店寄るけど、何飲む?」

真白「じゃあ、ウーロン茶で」

男「おっけ」



男「……」コツコツコツ...

男(病院なんて、いつ以来だ……?)

男(ああ、高校生の時、ばあちゃんを看取って以来か)

男(……)

事務員「では、こちらが領収書になります」

男「どうも」

男「さて、売店でお茶と……ん?」

女中「……」ペコリ

男「よう、女中さん。お嬢様のそばにいなくていいのか?」

女中「そのお嬢様が、ご自分の代わりに、と」

男「そっか。ついでだ。売店でなんか飲みものおごるよ」

女中「では、ロマネ・コ……」

男「ここ、病院な」

女中「場を和ませようかと」

男「お茶か、コーヒーか、水か……激熱!チリビーンズスープ9倍!なんてのもあるな」

女中「できればペリエを」

男「あんのかよそんなこじゃれた……あ、ある。すげぇ、病院すげぇ」

女中「いただきます」カシュッ

男「とりあえず今日は入院して様子見だそうだ」

女中「倒れた理由は?」

男「それがよく分からん……精神的なショックじゃないか、ってことだが」

女中「……心当たりが1つ」

男「え?」

女中「その前に、ミア様の……婚約者のことは?」

男「聞いてるよ。っていうか昨夜知った」

女中「……そうですか。この記事をごらんください」スッ

男「何……『ハワイの漁師、カメラ引き揚げ。5年前の飛行機事故の遺品か?』」

男「……」

    ヘブンリーハグ
女中「  お店  で掛けているラジオ局、いつも午後2時からニュースが始まりますよね」

男「ああ」

女中「局に問い合わせました。その時間のトップニュースは『これ』だそうです」

男「それをミアが聞いて……」

女中「かもしれない、というレベルですが。ちなみに記事の詳しい内容も」

男「えーと……中のデータカードの復元に成功。婚約者や家族にむけたメッセージ動画が映っていた、か」

男「……昨日聞いた話からすると、ミアの婚約者のカメラ……の可能性が高いってこと?」

女中「はい」

男「……外野が本人のいないところでアレコレ邪推しても仕方ない。とりあえずミアが起きるまで待ってみようや」



チーン



女中「病室は?」

男「521号室。ここ曲がって一番突き当たり」

ガシャァン!!!!

女中「……今、大きな音がしたところでしょうか」

男「のんびり言ってないで、看護士さん連れてきて!!」

男「どうした?!」

ミア「いやぁぁぁぁっ!!」

真白「ミア!ミアっ!待って落ち着いて!!」

ミア「いやぁっ!どいてっ!やだぁ……あの人がぁ……」

男「真白、下がれ、危ない」

真白「お、男さんっ、ミアが……」

ミア「……あー……ひっ、やだ、どこ、ねぇ、どこ、あなた!あなた!!」ガクガクガクガク

男「ミア、落ち着け、ミア!!」ギュッ

ミア「やめてっ!やだぁっ!!」ブンッ

男「!!」バキィッ!!



ドスン



男「い、ってぇ……」

看護士「だ、大丈夫ですかっ!」ガラッ

ミア「どいて!帰るの!あの人が、あの人がっ!待ってるの、帰らなきゃ……っ!」

看護士「ちょっと!ちょっと待ってくださいベールスさんっ!」

真白「ミア!ミア!落ち着いてっ!」

ミア「あの人がっ……あの人がいないのっ!どいて、帰るの!お店で待つんだから!」

女中「鎮静剤、はやく!」

看護士「あ、はいっ」

ミア「どいて!どいてよぉ!」プシュッ

ミア「帰るの!お店!留守番……るす……」

ミア「あの人の……あの、人の……帰る、ばしょ……」ズルッ



ドサッ

男「う、いってぇ……」

真白「男、さ……」

男「……ああ、平気平気。あー……尻尾の一撃は強烈だわ」

女中「……」

真白「……」

看護士「……」

男「な、なんだよ3人ともそんな顔して。なんかついてるか?つーかこぶになってないよな」ベチョ

女中「こぶ、っていうか……」

真白「あの、痛くないですか?」

男「なんだよ一体……」ベットリ

男「……うお、な、なんだこれ?!なんで手が血まみれ……て、うわ、服も血まみれじゃ……」



男「いたっ、い、いたたたたた」

看護士「と、とりあえず止血!ガーゼ使って!」

────18:00@病院廊下



男「……」ボロッ

真白「大丈夫ですか?」

男「どうやら、外れた点滴針が飛んで、額をスパっとやったみたいだな。ちなみに後頭部にもコブができた」

女中「あと数センチズレていたら失明していたかもしれませんね」

男「不幸中の幸いだな。まぁ、縫い跡が残ったら箔がつく、ぐらいでいいよ」

真白「……」

女中「……」

男「……しかし」

真白「?」

男「あんなに取り乱すなんてなぁ」

真白「……」

女中「次に目が覚めた時も暴れるようなら、抑制バンドの使用も考えるそうです」

真白「そんな……」

男「仕方ないかもな」

真白「男さん!」

男「俺が吹っ飛ばされるくらいならいいけどさ」

男「真白や女中さんが怪我したらさ、目が覚めたミアもイヤな思いするし。後は、点滴の針が折れて腕の中に残るかも」

男「そんなわけで、病院側の言い分も、ひどい話じゃないんだよ」

真白「……」

男「とりあえず俺が残るから。真白と女中さんは家に帰りな」

真白「一緒にいます」

男「だぁめ。子供は帰る時間」

真白「そうやって子ども扱いする……」ムスー

女中「真白様、帰りましょう。よろしければ夕食とベッドを用意いたしますので、お嬢様の部屋へおいでください」

男「そうしな。独りでいると色々ふさぎこむぞ」

真白「……うん」

女中「お嬢様も、状況を知りたいと思いますので」

真白「じゃあ……お邪魔します」

真白「それじゃあ男さん」

男「何かあったら連絡するよ」

女中「男様も、ご無理はなさらぬよう。ナースステーションに付き添い用のベッドはお願いしておきますので」

男「悪いね」

女中「……ご武運を」グッ

男「いくら俺でもそこまで非常識じゃないから、その卑猥なジェスチャーやめて」

真白「男さん、この人差し指と中指の間に親指通すポーズに何の意味が?」

男「知らなくていい、知らなくていいから!」

ここまで

どうでもいいが、玉プラグてなんかえろくね?
どちらかというともう片方のネタっぽいけど

>>834
ちょっと何言ってるかわからないです
投下

男「……入るぞ、ミア」コンコン

ミア「……」スゥスゥ

男「……」

男(見たこともない誰かさんよ……恨むぜ)

男(なんで今日なんだよ……昨日なら……それか、もっとずっと後なら……)

男(なら……どうなったんだろうな)

男(……)

男(きっついなぁ)

男(手、握るくらい……いいよな……)ギュ

ミア「……」ギュ

男「!」

ミア「あなた……もう……どこにもいかないよね……」スゥ...

男(……)



男「ああ、ずっと隣にいるからな」ヨシヨシ

ミア「よか、た……」zzz

男(どんな思いで、この4年間を過ごしてきたんだろうな)

男(店、続けるのかな)

男(隣にいてほしいのはこっちだよ……)ギュゥ

ミア「ん……」

男「ごめん、痛かったな……」ポンポン

男(……)

男(……)ウトウト

男(……)

男(……)zzz

ミア「……」

ミア「……あれ、ここ……」

ミア「……」ギュ

ミア「おとこ、さん……」

男「……」zzz

ミア「あ……あぁ……そっか……」

ミア「……」

ミア「…………」スルッ



男「……」zzz

男「……うおっ」カックン

男「……うあ、あー……あれ」



男「ミア?」

男「……」ペタ

男「まだあったかい……」

男「……」ゾクッ

男「まさか、ね」





男「あの、すいません……521号室のミ……ベールス、みませんでしたか?」

看護士A「え?見てないけど……お手洗いじゃ?」

男「あ、ですよね……変なこと聞いてすいません」

看護士B「あの、ラミアの人?なら、さっきエレベーターホールにいたけど。下の売店じゃないかしら」

男「あ、そっすか……すいませんね」

   ▼ ・・・・4・・・・・ △  ポーン

男「ちっ……タイミング悪いな階段でいくか」



男「う、んと……売店にはいないか。エレベーターから売店まですれ違わなかったし……」

男「すいません、今しがた、ラミアが来ませんでした?」

おばちゃん「いーえ。来たら気づくと思いますけど……」

男「ですよね……ありがとう」



男「……やな予感しかしねぇ」



   ▽ ・・・3・・・・・・ ▲



男「……あーもう!」

男「……階段か」

男(確か、8階建て……屋上はその上か)



男「あーくそ、いい運動だぜこりゃ」


ダダダダダダダッ!!

────屋上



ミア「……」ギシッ

ミア「……」カシャン



男「いた……はぁ……ハワイ……見えるか?」ゼーハー



ミア「!!……どうして」

男「……ちょ、ちょっと、たんま」ゼーハーゼーハー

ミア「……」

男「ふぅ……あー……年か?運動不足か……?」ゼーハー

男「どうして?起きたらベッドがもぬけの殻だったから探したんだぞ」

ミア「……」

男「別に、探さなくてもいいのに、って顔だな」

男「頼むから、どっかいくなよ」

ミア「……見えないですよ」

男「え?」

ミア「ハワイ。見えませんよ、ここからじゃ」

男「……」

ミア「だって、こっちは西ですもん」

男「あー……そっか」

ミア「……ありがとう、探しに来てくれて」

男「つーか、ここから飛び降りるかと思ってドキっとしたじゃねぇか……」

ミア「……」

ミア「……そう、思ってたんです、けどね。金網は高いし、警報機はあるしで、やめました」

男「頼むからやめてくれ」

ミア「……」

男「部屋、戻ろう」

ミア「……」コクン

男「つーか、頭打ったんだからおとなしくしてろ」ニギッ

ミア「……そうですよね」

男「おう」

ミア「……」

ミア「部屋、戻りましょうか」

男「そう言ってるだろ。ほら、エレベーター来たぞ」

ミア「……はい」

ミア「……迷惑かけて、ごめんなさい」

男「迷惑だなんて思ってないし」

男「女中さんから多少話は聞いたよ。まだ、婚約者のものだって、決まったわけじゃないんだろ」

ミア「……多分」

男「じゃあ、しっかり眠って体力回復して、店開けて、元気な姿で帰ってくるように祈ってろ」

ミア「……うん」

男「その上で、もし……その、昨日の話みたいに……」

ミア「……」

男「わりぃ、今は忘れろ。つーか忘れろ」

ミア「……うん」

看護士「ああ、ベールスさん。晩ご飯の時間ですよ」

ミア「すいません。ちょっと外の風に当たりに出ていたもので」

看護士「今日は風が強いでしょう、寒くなかったですか?」

ミア「え、ええ……大丈夫」

看護士「付き添いの方は……」

男「ああ、後で外に食べに行きますよ」

看護士「そうですか」カチャカチャ

看護士「どうぞ、ごゆっくり」



ミア「……」

男「……い、一応主菜はカレイの煮付け、か……?」

ミア「……いただきます」

ミア「……」モグモグモグ

ミア「……」モグモグモグモグ

男「味のほうは?」

ミア「冷めているし、薄いですよ……そもそも、食欲あまりなくて……」

男「それでも食っとけよ。消灯後に抜け出すとか、高校の修学旅行みたいなことすんなよ?」

ミア「……そう、ですよね」

ミア「……でもやっぱり、食欲わかないみたい」フゥ

男「……じゃ、一応味見、と」ヒョイパク

男「う……」モグモグモグ...ゴクン

男「味付けはともかく、この生臭さは食欲うせるな……」

男「……」

ミア「……ごちそうさま」

男「口直しにコーヒー買ってくるけど、いる?」

ミア「……いらない」

男「じゃあ、俺は自販機コーナー行ってくるけど……もう、どっかいかない、って約束してくれ」

ミア「……うん」

男「よし。指きりげんまん、うそついたら針千本のーます、ゆびきった、と」



男「……」チャリンチャリンチャリンチャリン

男「……」ピ

ガコン

男「……」カシュッ

男「……苦いなぁ」

男「ただいま」

ミア「……おかえりなさい」

男「……なぁ、歩きながら考えたんだけどさ」

男「明日、焼肉行かないか?」

男「旨いホルモン出す店があってさ」

男「フランスだと……ええと……そう、アンドゥイェット。一度食べたことあるけど美味かった」

男「でも日本の焼肉も旨いんだぜ」

男「飲み物どうしましょう。黒ホッピー氷抜き。これ一択。そりゃ、ミアはワインにしたいだろうけど、これは譲れないね」

男「”氷抜き”ね。ビールに氷入れる奴はいないだろ。それと一緒でホッピーに氷入れるのも邪道ってわけ」

男「で、肉が来る。2分待つ、これ重要ね。で。熱くなった鉄板にさ、シマチョウをトングで、どーんっ!脂がじゅわーっ!」

男「野菜?はっ、野菜盛り合わせなんざ素人のやる事で、俺はしいたけのみだね。肉から出た脂を吸わせて……」

男「こう、ふつふつとしいたけが汗をかいたあたりで……って、聞いてる?」

ミア「聞いてますよ……いいですね。4人で……」

男「……」

ミア「……ごめんなさい。横になります」

男「……分かった。おやすみ。邪魔なら……」

ミア「……どこかに、行かないで」

男「分かった」

ミア「……ごめん、なさい」

男「謝るようなこと、してないだろ」

ミア「……」

ミア「おやすみ、なさい」コロン

男「電気消しとくな」パチン

ミア「……ん」

…………

……

────翌日@病院入口



ミア「ありがとうございました」

看護士「何かあったら、いらしてください」

ミア「はい」

男「じゃあ……帰ろう」

ミア「……あ」

シーリス「ミアちーっ!」ダダダダッ

ミア「シーリス……」

シーリス「心配したよー……ほら、車用意しましたので、帰ろう帰ろう!」

男「リムジン……まじか」

シーリス「ミアの尻尾もらくらく収納なサイズを用意いたしましたっ!」

ミア「……ありがとう」

シーリス「元気出して、なんて言えないけどさ。ミアちーに怪我無くてよかったよー」ポフポフ

シーリス「男っちは前ねー」

男「へいへい」バダム

女中「シートベルトをお願いしますね」

男「って、女中さん運転できるの?」

女中「淑女のたしなみでございます」

男「……」

女中「なんですかその疑いの目は?小型トレーラ限定まで持ってますよ。これは石動家所有のキャンピングトレーラを引っ張るためです」

男「まじか」

女中「そんな事より男様……」

男「んー?」

女中「ゆうべはおたのしみでしたね」

男「言うと思った。楽しんでない。つーか……」チラ

女中「?」

男「まぁ、ちょっとミアの凹み具合がひどいというか……」

女中「何かあったので?」ブロロロ...

男「……屋上から飛び降りようとした」ボソッ



キキーッ!!



ミア「!?」

シーリス「ちょ、ちょっと女中!!」

女中「失礼しました……ね、猫が前を横切ったもので」

シーリス「安全うんてーんっ!」

女中「かしこまりました、お嬢様」

男「……」

女中「ま、マジでございまするか?」

男「舌が落ち着いてないぞ……どこまで本気か分からんが、屋上でボンヤリ下を見てたのは確か」

女中「……はぁ……」








────同時刻@カフェHeavenly Hug裏口

真白「……」ソワソワウロウロ、ソワソワウロウロ




…………

……

────20分後



キキッ

女中「到着いたしました」

ミア「……」



真白「ミアーっ!!」

ミア「……ましろ」

真白「……大丈夫?怪我なかった?すごく心配して……わたし……」グスッ

ミア「なかないで、真白……大丈夫。ありがとう。シーリスも……男さんも」

シーリス「何事もなくてよかったよー」

男「つーか俺の頭の怪我にも言及してほしいんだが!?」

真白「い、いたいのいたいの、とんでけー」

男「それで済むなら病院はいらねーな」

シーリス「じゃあ4人で一斉にしてあげよー」

女中「わ、私もですか?」

男「いや、つーか余計なことせんでもいい」

シーリス「ほーら、ミアも手、出してー……せーの」



ミア・真白・シーリス・女中『いたいのいたいの、とんでけーっ!』

男「……」

男「あー、あーあー、痛いのなおったなー」

シーリス「じゃあ、保険外治療なんで大体1万円に……」

男「とんだ民間治療だな畜生!!」

ミア「……」

ミア「……ふふっ」

シーリス「あーっ!やーっと笑った。うん、よかった。ミア……おかえり」

ミア「……」



ミア「ただいま」

ここまで

1年やった割に内容うすくてごめん
ハーピーが約3ヶ月だったの考えると間があきすぎてるわ

クッキー削除したので酉がちがったらごめん。
できた分だけ投下

…………

……

男(とはなったものの)

ミア「……」ボンヤリ

シーリス「……」ドキドキ

真白「……」オロオロ

女中「あの……この状況でお店開けて大丈夫でしょうか?」

男「とりあえず今日は店開けられないだろ。お前ら、ここにいても給料でないから帰れ」

真白「……あの状態のミアを放っておいて、ですか?」

男「……」

シーリス「完っ全に魂抜けちゃってるよ、あれ」

男「とはいえなぁ」

シーリス「なんかないの、男っち?」

男「……よし!」パチン

男「腹ごしらえな!今日のまかない何にする?」

ミア「……」

男「ミア」ポンポン

ミア「……え、あ、はい……」

男「飯。何が食べたい?」

ミア「……じゃあ、オムライス」

男「おっけ。腕によりをかけて作るからな」

ミア「たまには……」

男「んー?」

ミア「薄焼きのたまごに包まれてるのがいいな」

男「まかしとけ。真白、手伝え」

真白「え、あ、はい」

男「いわゆる”普通の”オムライスのコツは……タイミングだ」

男「チキンライスを作る。薄焼き卵をつくる。チキンライスをくるんで包む」

男「頭の中で完成までのタイムラインを意識して、ぴったり時間を合わせる」

真白「……無理です」

男「だよな。俺も正直苦手なんだよなぁ、薄焼き卵で包まれたオムライス」ハァ

真白「ええかっこしぃですね」

男「まったくだ。まぁ、2回までは失敗できるしな」

真白「……つまり、私と男さんの分ですね」

男「そういうこと。俺はチキンライスの材料を準備するから、真白は卵を溶いてくれ」

真白「は、はい」

男「えっと、玉ねぎ、鶏肉、ミックスベジタブル……ご飯、足りるかぁ?」

真白「あ、冷凍してあるのがありますよ」

男「ん、軽く解凍しておいてくれ」

真白「はいっ」

……

男「……あ」グチャ

真白「り、リカバリ効きます!こう……あ」グチャァ

男「はい、真白の昼飯これな」

真白「え、ええええー」



シーリス「たのしそー」

女中「お嬢様が包丁を持つのはおやめくださいね」

シーリス「えー。でも前に1回やっただけじゃん」

女中「その1回、正直怖かったです。冷や汗だばだばです。っていうかまず、卵を殻を混ぜずに割れますか?」

シーリス「無理。そういう道具ないの?全自動卵割り器とか」

女中「……そんなバカバカしいもの、あっても買いません

真白「……できました、ね」

男「運んでくれー」チンチン

シーリス「はいはーい」

男「ミアのはフランスの国旗が刺さってるやつな」

真白「一番マシにできたやつですからね」

男「余計なことは言わなくていい」



ミア「……」

男「熱いうちに食おうぜ。いただきまーす」

真白「いただきます」

シーリス「いっただっきまーーーすっ!」

女中「いただきます」

ミア「……」



4人『…………』

シーリス「ど、どーする男っち、ダダすべりだよ?」ボソボソ

男「うちのムードメーカーはお前だろ。特攻しろ」ボソボソ

シーリス「むりむりむり」

真白「あ、あの、ミア、私もね、作ったんだよ?うまくできたんだ」

真白「こっちのタイプのオムライスについては、私のほうが才能あるかもー、なんて」

ミア「……そう」

真白「あう」

男「あーもう……ケチャップとってくれ」

シーリス「ほい」

男「……」シャカシャカ

男「ミア、皿借りるぞ」ウニュゥ...



『ハヨクエ!』



男「ん」ゴトン

真白「じゃ、じゃあ男さんのは私が書いてあげますね」ヒョイ

シーリス「あ、ましろんずるい!私がー」パシッ

真白「私が先に言ったの!」グイー

シーリス「たまにはいーじゃーん!」グイー

真白「たまに、じゃないもん初めてだもん!」ギュゥゥ...

シーリス「いいじゃん私もかきたーい」ギューッ

男「お前らいい加減に……」



ビュルル



男「……しろよ?わりとマジで」ベットリ

真白「あ……」

シーリス「あーうん、ごめん、わりとマジで」

ミア「……ぷっ、ふふっ、もう、食べ物で遊んじゃだめよ」

男「あーもう、服シミになるじゃねーか。着替えてついでにシャワー浴びてくる」

シーリス「覗いていーい?」

男「いいわけねーだろ」

真白「お、押すなよ押すなよ的な……アレですか?」

男「お前ら……」ハァ

女中「と、いうか着替えたら服をお貸しください。シミ抜きも女中としてのたしなみのうちですので」

男「まじで?!助かるわ!これが普通の対応だからなお前ら!」

真白「うー」

シーリス「無理無理!その服真っ白にしていいならやるけどさー」

男「つーわけで着替えてくるけど、覗くなよ!絶対覗くなよ!フリじゃないからな!」

シーリス・真白「「はーい」」クスクス

男(不安だ……)



男「ふー、さっぱりした」

女中「男様、お脱ぎになった服は?」

男「本当にいいの?適当に洗えば落ちるから別に」

女中「やはり男性というか……早めに手立てすればきれいになりますので」

男「じゃあお言葉にあまえるよ」

ミア「男さん」

男「ん?」

ミア「美味しかったわ、ありがとう」

男「別に。今日、普通に店を開けてたら俺がまかない当番だった、ってだけだよ」

ミア「それでも、ね」

男「ったく、昼飯もオチオチ食えやし……なにこれ、なんで俺のオムライスにアメーバのマークが?」

真白「い、一応ハートなんですけど……」

シーリス「4人で4等分して書いたから!」

男「……ああそうかい、ありがたすぎて涙が出そう」

…………

……

真白「あの、男さん……」フキフキ

男「んー?」ゴシゴシ

真白「ミア、大丈夫でしょうか」フキフキ

男「……さぁ、な」ジャブジャブ

真白「……なんか、冷たいです」

男「そうか?こういうのはさ、他人ができることに限界があるんだよ」

男「落ち込んで、座り込んでもいいけどな」

男「最後に立ち上がるためには、自分の意志と力が必要なんだよ」

真白「……そういうもの、でしょうか」

男「もう少し大人になればわかる」

真白「すぐ子ども扱いする……」ブーブー

ピンポーン

男「あれ、今日って配達頼んでたっけ?」

真白「さぁ……コーヒー豆も野菜も、昨日届きましたけど」

男「じゃあ宅急便かな?」

真白「あ、私出ますから」

ピンポーン

真白「はーい」

男「……」

男「……よし、っと。これで皿洗いおしまい、っと」



真白「え?」

男「どうしたー?」



真白「あ、あの……航空会社の人が、ミアに会いたい……って」

ここまで

ドキドキが止まらないぜ

>>877
あやうくテクノブレイクでエタるとこだったじゃないか
なんてことを

あ、もちろん自分が立てたものではありません

男「俺が出る」

真白「は、はい」

男「ミアを見といてくれ。裏口に近づけるな」

真白「わ、わかりました」パタパタパタ...



男「えっと、航空会社の方ということですが、うちの店長に何かご用ですか?」

社員「はい。先日、ベールス様のご関係者の遺品と思われるカメラが発見されまして」

社員「急ぎ、ご確認いただきたく」

男「……」

男「あー、実は今、外出しておりまして。連絡先を教えていただければ、都合のいい時間をこちらから────」





ミア「その必要はありませんよ、男さん」

ミア「……」

男「あー……お、おかえり」

社員「ミア・ベールスさんですね」

ミア「はい。どうぞ、表から回ってください」



男「……」

ミア「……ありがとう、でも先送りしても、どうしようもないもの」

男「そうか。俺は2階にいるから、話が終わったら呼んでくれ」

ミア「一緒に……聞いてもらえないかしら。ひとりでは抱え込めそうにないわ」

男「分かった」

ミア「みんなも、ね」

コソコソ

真白「あの、ごめんなさい……私の顔みて、なんか分かっちゃったみたいで」

男「気にするな。ミアの言うことにも一理ある。来ちまったもんは仕方ないさ」

女中「ミア様……」

ミア「……来るべき時がきちゃったみたい」

ミア「でも、昨日みたいな衝撃はなくて……涙も出てこないわ」

ミア「本当ならお義母さまも一緒に、話を聞くべきなのでしょうけど」

女中「……もう、実の娘の顔も分からなくなってしまって1年近く経ちます」

女中「それに、死んだものとして扱ってきた私たちより、ミア様のほうが……お迎えすべきかと」

ミア「そう……じゃあせめて、隣で聞いてよ……ね」

女中「はい」

ミア「シーリス、シャッターを上げて、お客様をお迎えして」

シーリス「う、うん」

ミア「真白、冷たいコーヒーを人数分。男さんと女中はテーブルをくっつけてくれる?」

男「……ああ」

社員「……ええと」



ズラリ...



ミア「みな関係者です。お話を……聞かせてください」

社員「そうですか。では……先週、ハワイの漁師が網にかかったカメラを引き揚げました」

社員「無論カメラは水没していましたが、中のメモリーから一部のデータを引き出すことができました」

社員「その内容から、ベールス様のご婚約者様ではないかと思い、ご確認いただきたく、参上いたしました」

ミア「……」

社員「実物は、検分のためアメリカ国家運輸安全委員会が所持しています」

社員「本日お持ちしたのはカメラの外観写真と、メモリーのデータ……こちらです」

ミア「拝見、いたします」ペコリ

ミア「……」ペラリ

真白「……」

ミア「……」ペラリ

シーリス「……」

ミア「……」ペラリ

女中「……」

ミア「……持っていたカメラと似ています。確か、赤べこのストラップがついていたと思います」

男「……」

社員「引き揚げた時に、ストラップの類はついていなかった、と聞いています」

ミア「……メモリーのデータも、見せていただけますか?」

社員「こちらのタブレットの中に」スッ

ミア「……っ!」

男(……ミアと仲良く腕を組む男……ああ、これは店の前か)

ミア「……」ピッ

ミア「……」ピッ

男(後は、街中や空港の写真……)



ミア「……これは?」

社員「動画です。墜落する飛行機の中で撮られたもので……その、遺言ともとれるメッセージが残っています」

ミア「そう……これも、見たほうがいいのよね」

ミア「……」プルプル...

男「無理に見る必要はないだろ」

ミア「……ううん、見なきゃ……」

女中「ミア様……」

ガタガタガタガタ...

キャーーーッ!!

男性『どんどん高度が落ちてる。左のエンジンは2機とも火を噴いてる』

男性『助かったら消去するつもりで言っておくよ』

男性『親父、一緒に酒飲めなくてごめん!』

男性『母さん、体に気をつけて』

男性『妹、就職おめでとう』

男性『……ミア』



ミア「!!!!」



男性『もう留守番はしなくていい。愛しt────』



ブツッ

社員「復旧できたのはここまでです」

シーリス「……」

真白「……」グスッ

女中「……」フゥ

男「……」チラリ



ミア「……」



ミア「確かに……映っているのは、あの人、です」

社員「辛い想いをさせてしまい、申し訳ございません」

ミア「……いえ」

ミア「……よく、帰ってきたね」

ミア「おかえり……おかえりなさい……」

社員「では、私はこれで。このメモリーカードはお持ちください」

社員「……お悔やみ、申し上げます」

ミア「いえ、ありがとう。発見された漁師の方にも、お礼をお願いします」

社員「はい」ペコリ



カランコロンカラン...



シーリス「……」

男「おつかれ、よくがんばったな」ポフポフ

ミア「うん……明日の営業……どうするか考えさせて。開けるとしてもランチの営業からになると思う」

真白「分かったよ、ミア」

シーリス「私も、用事あるから帰るね。明日は……10時に来たらいいかな?」

ミア「そうね」

シーリス「それじゃあ、また明日。ミアちー、元気出して、なんて軽々しくいえないけどさ」

シーリス「ミアちーには笑顔が似合うよ。早くいつもの笑顔見せてほしい」

ミア「……うん」

シーリス「女中、帰ろう」パタパタ...

女中「はい」

真白「私も、帰りますね」

男「おう、お疲れ」

真白「片付け、中途半端になっちゃってすいません」

男「やっとくやっとく」

真白「じゃあ、ミア、その……うん、その……」

ミア「また明日ね、真白」

真白「うん。それじゃ」テクテク

男「……」

ミア「……」

男「いい男だな」

ミア「……うん」

男「俺に勝るとも劣らないいい男だ」

ミア「その自画自賛の根拠はどこにあるんでしょうか」ハァ

男「ひでぇ。少しでも場を和ませようとだな……」

ミア「……ありがとう。部屋に戻ります」

男「厨房にいるから、必要になったら呼んでくれ」

ミア「……ありがとう」



シュルルル...



男(さすがに、『男さんも負けてないですよ』とは言ってもらえねぇか)ハァ

ギィ、バタン



ミア「……」

ミア「……」ガサゴソ

ミア「……この写真は、大学のキャンパスでお花見した時の」パラリ

ミア「これは、二人で初めてデートした遊園地のマスコットと」パラリ

ミア「こっちは……フランスに戻る前にいった旅行で撮った……」パラ...

ミア「パリで再会した時の」

ミア「日本に来た時の」

ミア「お店を立ち上げた時の……あは、教授だ、髪の毛まだ黒い……なつかしいなぁ」



ミア「……全部、あなたが隣にいた時の思い出だね……」

ミア(これから……)

ミア(あの人との思い出を抱えて、生きていく)

ミア(男さんと一緒に……)

ミア(一緒、に……?)

ミア(男さんはずっと……あの人の影を追いかけて)

ミア(私は、あの人と男さんを比較しながら?)



ミア(……)ポフ

ミア(どうしたらいいんだろう……)

ミア(ねぇ、どうしたらいい?教えて……あなた……)



ミア(……)

ミア(ああ……)

────23:00@石動邸



コン、コン、ココン

女中「はい、開いてますよ」

シーリス「……いい?」

女中「ええ」

シーリス「……あの」

女中「何か?」

シーリス「胸を貸しにきたんだけど」

女中「え、キマシ展開ですか?」

シーリス「お互い見つめ合って愛してる、って言った瞬間神経焼ききれてもいいなら」

女中「ああそれは困りますね。で、胸を貸しに来た、とは?」

シーリス「あの、多分……泣けてないんじゃないかな、って」

シーリス「自分の気持ち押し殺して、偉いと思うけどさ……人生、それだけじゃ回らないじゃん」

女中「ですが……そんな、お嬢様に……使用人の立場でそのようなこと」

シーリス「えー……家族じゃん!」

女中「かぞく……」

シーリス「そう。雇い主の娘と使用人?そうかもだけどさー……私の事、お父様よりよく知ってるじゃん」

女中「……」

シーリス「だから、泣いてみない?すっきりして眠ろう、ね。よければ飲み物作るよー」

女中「いえ、お嬢様は台所に入ってはなりません」

シーリス「ひどい!」

女中「……ココアを2つ、作ってまいります」

シーリス「うん。隣で見てていい?」

女中「それくらいなら」

シーリス「……」フーフー

女中「……」チビリ

女中「兄のこと、話しましたっけ?」

シーリス「一応、素行調査くらいはするからねぇ」

女中「そうですよね」

シーリス「聞いてるから、話せばいいじゃん、色々とさ」

女中「色々と、ですか」

女中「……家の会社を継ぐのはいやだ、なんて飛び出してあっちこっち貧乏旅行して」

女中「もう待ってるこっちはハラハラして……」

シーリス「まんま『フーテンの寅さん』だねぇ」

女中「ああ、いいえて妙かもしれませんね……と、いうことは私はさくらでミア様はマドンナ役ですか」

シーリス「かもね」クスクス

女中「私、最初は……ミア様のこと、あまり好きではなかったんですよ」

女中「大事な兄を取られたみたいで……」

シーリス「意外。ブラコンだったんだねぇ」

女中「……でも、ミア様は私にも優しくしてくれて。一緒に服を買いに行ったりして」

女中「懐かしい思い出です」

シーリス「……」

女中「……『就職、おめでとう』か」

女中「なんで……私は、父は、母は……待つのをやめてしまったんでしょうね」ポロリ

シーリス「……おいで、女中」

女中「おじょうさま……」

シーリス「へい、かもかもー。胸を貸してあげるよー」

女中「……」ギュ

女中「諦めるんじゃなかった」

女中「だって戻ってくるなんて、そんなこと、絶対おきるわけないって……」グスッ

女中「でも待っていたら……信じていたら……」

女中「そしたら、もしかしたら……」

女中「私のところに、母のところに、帰ってきたかもしれないのに……」

シーリス「……」

女中「う、うう……うあ……ああ、あああ……」ボロボロボロボロ

シーリス「どっちも正しいよ」

女中「お゛じょうざま……」

シーリス「待ち続けたミアも、待つのをやめた女中も、両方正しい」

シーリス「女中はさ、お兄さんのこと、ミアよりも長くよく知ってる」

シーリス「だから、旅に出て、帰ってこない事も覚悟してたはず」

シーリス「仕方ない、って思って、自分たちのために気持ちを切り替えて……」

シーリス「なかなかできる事じゃない。そういう決断をできる人はさ、すごいと思うよ:

シーリス「もちろん、信じて待ち続けるミアちーもすごい。私にはできないなぁ」

女中「……」グスッ

シーリス「女中のお父さんのお墓参り行こうよ。報告してあげなきゃ」

女中「……はい。母にも……もう、分からないかもしれませんが」

シーリス「分かるよ、きっと分かる。だってお母さんだもん」

女中「お嬢様……ありがとうございます。もう、大丈夫です」

シーリス「ん……へへへ。いつも女中はお姉さんみたいだからさー、うん、にへへ」

女中「なんですか、もう……ほら、早く寝ないと。夜更かしは女の敵です」

シーリス「はーい。ねぇ、昔みたいにさ、寝るまで隣で手を握っててよ」

女中「仕方のない妹ですね。顔を洗ったら行きますから、先にベッドに戻ってるように」

シーリス「へへへー」

…………

……

────同時刻@カフェ Heavenly Hug2階



男「……」

コンコン

男「開いてるよ」

ミア「……失礼します」

男「どうした?腹減ったなら簡単に夜食作るけど」

ミア「いえ……そうではなくて。隣行っても、いいですか?」

男「ん。待って栞挟むから」

ミア「何を読んでいるんですか?」

男「んー、美味礼讃」

ミア「ああ、サヴァラン……面白いですか?」

男「哲学的だな。『味の宝石箱やー』とか『まいうー』しか言わない奴に読ませたい」

ミア「それはまたカテゴリ違うと思いますけど……」

ミア「失礼します」ペタン

男「どうした?」



ミア「……店を、閉めます」



男「……そっか。店をしめ……店を閉める!?!?」

ミア「そう。やっぱり……このまま店を続けていくには、色々な思い出がありすぎて」

男「……」

ミア「それにあの人も……もう留守番しなくていい、って」

男「で、店を閉めてどうするんだ?」

ミア「フランスに帰ろうかと。多分、また日本語講師として働こうかな、とか」

男「……」

ミア「あの約束……って、まだ2日前なのよね」

男「おう」

ミア「忘れて。お願い……」

男「そっか、分かった」

ミア「……ごめんなさい」

男「いいさ。店を潰す決心を、余裕のあるうちにできる店長ってのは大事だ」」

ミア「店長はあの人……私は留守番で」

男「知るかよ、俺の知らないところでした約束なんて」

男「少なくとも俺は、ミアを店長だと思ってやってきたし、多分周りの連中もそう思ってる」

ミア「……」

男「ミアがいるから、俺はこの店の厨房をやってきたんだ」

ミア「……ごめん、もう……続ける気力がないの」

男「仕方ないさ」

ミア「考えたの……今までのこと」

ミア「二人でやってきた時のこと。独りになってしまった時のこと」

ミア「シーリスが来て、真白が来て、男さんが来て……この半年のこと」

ミア「考えてみたの……これからの事」

ミア「あなたと二人で、お店を続けていく」

男「それじゃだめなのか?」

ミア「……私は多分、男さんにあの人の影を重ねずにはいられない」

ミア「一昨日の夜のことは嘘じゃない」

ミア「ケジメをつけて、あなたを選んで……でも、それは心の準備ができていることが前提で」

ミア「こんな風に結末が来ることは考えていなくて」

ミア「だから……ごめん。あの人の最期の言葉が……忘れられない」

男「……」

男「もう、決めたんだな。『店を閉めようか迷ってる』んじゃなくて、結論を言いにきたんだもんな」

ミア「……」

男「実は、引き抜きの話が来てるんだ」

ミア「分かるわ……男さんの作る料理は美味しいもの」

男「ミアが、俺をいらない、って言うなら俺は店を移る」

ミア「いらないとか、そんなつもりは……」

男「迷ってるなら『俺を選んでくれ』って言えたかもしれないけどさ」

男「決めたなら……仕方ないさ」

ミア「……本当に、ごめんなさい」

ミア「もうひとつ、今、店を閉める理由はあるの。でも……この理由は明日、みんなの前で話すわ」

ミア「こっちの理由は男さんにだけ、知っていてほしかったから」

男「……正直、そんな風に言われずにただクビにしてくれたほうがよかったんだが」

ミア「……」

ミア「担保、返してもらいますね」

男「え?」



チュ



ミア「ごめんなさい……本当に……」

男「謝りすぎ。もういいって。巡り合わせなんてこんなもんさ」

ミア「……じゃあ、おやすみなさい」

男「おう……」

男「……」ポチポチ


------------
From: 男
To: 男友

店を移る件、受ける。
面接など仔細後日相談。

よろしく。
------------




男「……」pi

男「ままならねぇなぁ」ドサッ



男(相手が死人じゃ、横恋慕もできやしねぇ……)ゴロリ

…………

……

ここまで

1000まで行かないつもりで書いてたはずが怪しくなってきた……

────翌日@10:00

真白「おはようございまーす」

シーリス「おっはよー」

男「はよーぅ」

シーリス「あれ、男っちまだ着替えてないの?」

男「ん、ああ……」

真白「ま、まさか一緒に更衣室使いたいとか!?」

シーリス「いやーん、でも仕方ないから見せてあげようかなー」

男「あーあー、そういうんじゃねーから」

ミア「二人とも、おはよう。着替える前にちょっとだけいいかしら」

真白「……?」

シーリス「はいはーい」

男「……」フゥ

ミア「……」

真白「?」

シーリス「どしたんミアちー?」

ミア「男さんも、そっち側で」

男「ん、おお」

ミア「あのね……」

ミア「今月で、店を閉めることにしたの」



シーリス「……」

真白「……」



シーリス「え、えええええっ!?」

真白「え、辞めちゃうんですか!?」

ミア「そう。『誠に勝手ながら、ヘブンリーハグは今月末をもって閉店とさせていただきます』ってこと」

シーリス「え、と……」

真白「なんでですか!!」

シーリス「やっぱり、あの動画?もうお店の留守番要らない、って言われたから?」

ミア「それも理由のひとつ、といえばひとつね」

ミア「でも、本当の理由はこっち」ドサッ

真白「お店の……帳簿?」

ミア「男さんは見たことあるわよね」

男「ん、ああ」

ミア「見てほしいのはここ、こことここ」

真白「えっと……」

シーリス「ぎりぎり、黒?」

ミア「5月はね。3月、4月は赤」

真白「……でも、まるっきり儲かってない、って感じじゃないですよね」

ミア「だから、辞めるの」

ミア「この店の土地と、建物。最近のこの辺りの相場が……これくらい。店の債務の残高がこれくらい」

ミア「あとは月末払いの商品の代金とか水光熱費」

ミア「今のタイミングなら、借金を全部返して、あなたたちのお給料プラスボーナスが出せるわ」

シーリス「……」

真白「そんな!これからもここで続けていけばいいじゃない!」

男「真白。聞きわけろ」

真白「だって!!」

シーリス「……わかった。仕方ないね」

真白「シーリスまで!!」

シーリス「ましろん。私たちは従業員。もっといえばバイト」

シーリス「店の経営者が、やめるって言ったんだ。私たちには覆せないよ」

真白「そんな!!」

シーリス「きつい言い方かもしれないけどさ」

シーリス「ましろんが、これからもこの店を続けていきたい、って言うんなら」

シーリス「ましろんがミアちーからお店を買い取るしかないんだよ……できる?」

真白「……それは……むり、だけど……」

シーリス「じゃ、後はお店を閉めるのに協力するかしないか、だね」

真白「……うう」

シーリス「男っちは?あまり驚いてないみたいだけど」

男「昨日の夜聞いたからな。それに……この店でなくても鍋を振るう場所はある」

真白「男さんまで!迷ってるって言ってたじゃないですか!」

男「それはこの店が続く前提の話だろ?」

真白「そんな……みんな……ひどい……ずるい……」

真白「私、いらないからって家を追い出されて……またここでも、いらないって言われたら……」

真白「私、どうしたらいいの……?」

シーリス「ましろん……」

男「真白……」

ミア「いらないんじゃないの。真白も、シーリスも、男さんも……私にとっては大事な人」

ミア「でも……それでもやっぱり……この店には思い出が多すぎるの」

ミア「いい思い出も、辛い思い出も。だから綺麗さっぱり、リセットするの」

真白「……ひぐっ、ううう」グスッ

シーリス「真白……」

男「自分の居場所は自分で作るしかねぇだろ」

男「いつまでも、他人が作った場所の片隅を借りてたって仕方ないんだ」

男「ミア、話は終わりか?」

ミア「……ええ」

男「ランチから開けるんだろ?俺はサラダの準備するからシーリスはフロアたのむ」ガタッ

シーリス「……りょーかーい」ガタッ

真白「……」

ミア「……」

真白「……着替えて、くる」

ミア「……ごめんね」

真白「謝るくらいなら……辞めるなんて言わないでよ……」

ミア「……ごめんなさい」

真白「……」ガタッ

ミア「……」フゥ

シーリス「まぁ、ましろんの気持ちも分からないでもないよー」

シーリス「ミア、後悔しない?」

ミア「昨日の夜、いやになるくらいしたから、もういいの」

シーリス「ん……掃除とかはやっとくからさ。豆とか野菜の取引停止の連絡とか、準備してよ」

ミア「そうね」

シーリス「後で女中にも来てもらって、手伝ってもらおうか?」

ミア「もし必要なら、ね」

男「……」トントントントントン...

真白「……おまたせ、しました」

男「……」

真白「……あの」

男「今日の日替わり、ポークソテーだから」

真白「あ、はい、玉ねぎ切ります」

男「いつもの半分作って様子見。出具合みて追加で下ごしらえするから忙しくなるかもな」

真白「……はい、がんばります」

男「……」

真白「あの、いいんですか」

男「何がだ?」

真白「ミアと……」

男「いい。昨日、全部終わった」

真白「……」

ミア「男さん」

男「おう」

ミア「11時から開けます。お昼が終わったら、厨房周りの在庫リスト、お願いしたいんですけど」

男「……分かった」

真白「……」

男「なんだ?」

真白「本当にいいんですか……その、男さんはミアを……」

男「終わった。いいんだ、縁がなかったんだろ」

真白「……」

真白「あの、だったら……」

男「手ぇ動かせ」

真白「はぁい」

────21:00@カフェHeavenly Hug

ミア「ええ、急な話で申し訳ありません」

客「ううん、いつでも日本に遊びにきなさいな」

ミア「ありがとうございました」ペコリ

男「……」

シーリス「はーい、掃除始めるよー」

男「シーリス、ありがとな」

シーリス「なにがー?」

男「いや、お前がいるおかげで沈まなくて済んでる」

シーリス「そう思うならデートしてよデート」

男「なんでそうなる」

シーリス「だって3月に、お父様の誕生日プレゼント買うの手伝ってくれるって言ったじゃん」

男「あー……あれはほら、あれだったろうが」

シーリス「もうすぐ、できなくなっちゃうからさー」

男「店がなくなったって、俺がいなくなるわけじゃねーんだ」

シーリス「え?ああ、うん、そうじゃなくて……」

男「つーか、今度の定休日は俺は部屋探しせにゃならんから忙しい」

シーリス「……そっか」

男「なんだ?」

シーリス「なんでもない。まー、まずは掃除してしまいましょー!男っちはシルバー洗ってよー」

男「へいへい……」



真白(……)ゴシゴシ

真白(自分の居場所は……自分で……)シュッシュッ

真白(……)

男「わるい、話しこんじまった。片付けどこまで進んでる?」

真白「火は落としましたよ」

男「おう。水回りはやるから、床掃除頼む」ウデマクリ

真白「はい……あの」

男「んー?」ジャブジャブ

真白「……後で、相談に乗ってほしいことが」

男「ああ、俺で解決できるかは知らないぞ」

真白「大丈夫だと思いますけど」

男「そうか」

真白「逆に私がなにかできる事はありませんか?」

男「ああ、そうだ、真白の住んでるアパート空いてる?」

真白「わ、私の部屋ですか!?」ボフンッ

男「ちっげーよ!!別の部屋だよ!!」

男「ほい、厨房片付け終わり、っと」

シーリス「こっちもおわりー」

真白「あの、男さん、さっきの話」

男「ん、おお」

シーリス「なになにー?ひみつのそうだんー?」

真白「私と男さんが同棲する話」

男「ちげーよ!」

シーリス「私も聞いていい?」

真白「いいよ。ミアも」

ミア「え、あ、はい」

真白「……これ」ドサッ

シーリス「……」

ミア「……」

男「製菓学校のパンフか」

真白「こっちは2年制。こっちは3年。経営が勉強できるところもあるし……色々、迷ってしまって」

シーリス「あ、ここ知ってる。CMもばんばん打ってるね」

ミア「ここなんかどうかしら。講師に有名パティシエールが来るみたいよ」

男「……」

真白「男さん?」

男「真白が作りたいケーキはどんなだ?誰に食べてもらいたい?」

真白「……え?」

男「学校なんてのはゴールじゃない。その先を見るこった」

男「ケーキひとつとっても、1つ100円から1000円以上するのまであるしな」

男「1つのケーキをたくさん作るビュッフェやウェディングケーキや、誕生日ケーキ」

男「ケーキ以外にもクッキー、マフィン、ドーナツ……何を作る?」

真白「……」

真白「私の……作りたい……」

真白「……」



────おねえちゃん、パンケーキおいしい!だいすき!



真白「あ……」

男「あるか?作りたいもの」

真白「美味しくて、食べたら、泣きそうな気分が吹き飛びそうなくらい美味しいの……作りたいです」

シーリス「抽象的」

男「じゃあ、自分の店ってことか」

真白「そうですね。少なくとも言われて作ったのじゃなくて、自分でメニューや飲み物を組み立てられるような」

男「そうなると……経営まで学べる料理学校で製菓コースがあるのは、ここか、ここだな」

ミア「こっちは私も聞いたことがあるわ。結構有名ね」

男「どっちも見学できるから、見てみるといい。後は俺の伝手たどって、卒業生から話聞けるように手配してみる」

真白「ありがとうございます」

男「大事な妹が自分の居場所作ろうとしてるんだ。協力してやるよ」ポフポフ

真白「……」カァァ

シーリス「あーっ、ましろんずるい!私もなでれーっ!」

男「ほれ」ゴシゴシ

シーリス「い、いたいいたいっ!」

男「ったく……話は終わりか?帰れ帰れ」

シーリス「あー、待って待って、ついでに私もほうこーく」

真白「?」

ミア「なに?」



シーリス「私、お見合いすることになったから」

男「?!?!」

シーリス「元々、ここでバイトするのも18歳になるまで、ってお父様との約束でさー」

シーリス「お見合い相手は、ヨーロッパの割と大手の会社の御曹司なんだけどさー」

男「つーかお前が17ってことにびっくりだよ俺は」

真白「私より年下だったの……?」

シーリス「あれ?知らなかった?」

シーリス「まぁ、そんなわけで……ミアがお店を閉める、って言い出さなくても、私は辞めるつもりでしたー」

ミア「え、ええ……と」

男「つーか政略結婚じゃねーの、それって」

シーリス「そうだよー」

真白「い、いいの?!」

シーリス「良いも悪いもないんだなー、私は他の人より色々便宜を図ってもらってるし、その対価ってこと」

真白「シーリス……」

シーリス「ほら、なんて言ったっけ?の、ノブなんちゃらマリアージュ?」
            ノブレス・オブリージュ
ミア「もしかして……『高貴な者の追う責任』のこと?」

シーリス「そうそれ」

ミア「あれは、貴族が無私の心を持って奉仕せよ、って意味でこの場合用法違うと思うけど……」

シーリス「まぁまぁ、そんなわけで言い方は悪いけど、これでよかったかなー、って」

ミア「そう……」

シーリス「あ、結婚式には男っちシェフ、ましろんパティシエールで指名するから、しっかり精進してよー」

男「へぇへぇ」

シーリス「あ、なにその生返事」

真白「っていうか、私、高級ホテルのシェフの料理を堪能するほうがいいんだけど……」

シーリス「ましろんまでひどい!」

ミア「ふふふっ……シーリスも真白も、男さんも……」

ミア「自分の道があるのね」

男「ああ」

ミア「よかった。最後の未練がふっきれそう」

真白「……ミア」

シーリス「じゃあ、最後の最後までがんばりましょーっ!」サッ

男「なんだこの手は」

シーリス「ほら、重ねて重ねて」

男「へいへい」サッ

ミア「はい」サッ

真白「うん」サッ



シーリス「じゃあ、ヘブンリーハグ、最後までがんばるぞーっ!」



男・ミア・真白「「「おーっ!!」」」

…………………………………………

……………………………………

………………………………

…………………………

……………………

………………

…………

……

────6月末@カフェ Heavenly Hug 2階倉庫



男「余った食品や洗剤は全部バザーに出してなくなっちまって」

男「がらんとしてるとさびしいな」

男(……)



prrrr...



男「おう、俺だけど」

男友『いよう、店、閉めるんだってな。それでうちの店に来る気になったか』

男「ああ、まぁそんな所だ」

男友『やっぱお前は料理してる姿が一番だ。間近で見られるとうれしいぜ』

男「そのホモっぽい発言やめろ」

男友『あっはっは!そういや面接なんだが、来週の木曜の午後2時からでも大丈夫か?』

男「ああ、それで問題ない。何か持っていくものはあるか?」

男友『そうだな、履歴書と年金手帳、印鑑か』

男「……分かった。じゃあな」

pi

男(……ふぅ)

男「……ん、この寝袋とも今日でお別れか」ギュッ

男「……」パンッ

男(すまん、婚約者さん。あんたの代わりにはなれそうにない)ナムナム



コンコン



男「はーい、開いてるよ」

ミア「……あの」

男「おう、片付けは終わりだ」

ミア「……」

男「鍵、返す」チャリ

ミア「あ、はい」

男「この半年……ありがとう」

ミア「いえ……お礼を言うのはこっちです」

男「……売れちゃうんだよな」

ミア「はい……思ったより高く売れてしまいました」

男「なんだよそれ。高く売れてよかったじゃないか」

ミア「そ、そうなんですけど……」

男「……」

ミア「あの……来週の木曜、夕方の便でフランスに帰ります」

男「……そうか」

ミア「だから、その……」




男「悪い。その日は新しい店の面接があるんだ」



ミア「……」

男「……」





ミア「さよなら、ですね、男さん」

男「ああ、さよなら、ミア」

────そして……



ミア「真白、学校がんばって」

真白「メールしてね」

ミア「ええ。また日本にも遊びにくるから、その時は絶対、真白のケーキ食べさせて」

真白「うん」

シーリス「ミアちー」

ミア「……EUの中なら移動も簡単だから、会いに来てね」

シーリス「気が早いよミアちー、まだ相手が気に入るか分からないんだからさ」

ミア「そっか、そうね」

シーリス「でも、ミアちーもだよ、目指せ玉の輿なんだからねー」

ミア「うん」

ハーピー「ミア、SNOG総会の時には戻っておいでよ」

ミア「……わかんない。でも向こうでコタツを広めるのは忘れないわ」

ハーピー「そうね」

ハピ娘「へびのおねーちゃん、またあえる?」

ミア「ええ。大きくなったら遊びにおいで、ハピちゃん」

ハーピー「そうだねー、可愛い子には旅をさせろ、って言うし」

ハピ旦那「えー、可愛いから蝶よ花よと育てるんだ旅なんかダメ!」

ハーピー「はいはい」

ミア「旦那さんも、あまり過保護はダメですよ」

ハーピー「もっと言ってやれー」

女中「今のうちに愛でておかないと、そのうち『私とお父さんの服を一緒に洗濯しないで』と言われる日が来ますよ」

ハピ旦那「そんな!?!?」

ミア「相変わらずの親バカね」

女中「ミア様……」

ミア「最後くらい、前みたいに呼んでよ」

女中「義姉さん……ごめんなさい……」

ミア「謝ることなんか、何もないわ。こちらこそ、ありがとう……元気で」

女中「ええ……義姉さんも」ギュッ

シーリス「タクシーきたよー」

真白「……」

女中「いいのですか?約1名足りないような……」

ミア「いいの。男さんとは……挨拶したから。それより女中、残務処理、まかせちゃってごめんね」

女中「それくらい、喜んでやりますよ」

ミア「……じゃあ。名残惜しいけど……みんな、ありがとう」



バタン、ブロロロ...

真白「いっちゃった、ね」

シーリス「……」

ハーピー「彼は、本当にいいのかな」

ハピ旦那「僕には男くんの気持ちも分かるけどね」

ハーピー「分かるから黙っててやれ、なんてさ、男のくだらない感傷なんだよねぇ」

シーリス「でも、いまさら……」

真白「……」



真白「あがこう」

シーリス「……ましろん」

真白「私、男さんに『後悔しないように』って言ったから……だから」

真白「私は、私が後悔しないために足掻くよ。行こう、シーリス」

ハーピー「じゃ、大人はフォローに回りましょ」

女中「はい」

────同時刻@街中のレストラン



社長「ふむ、経歴は意外と普通だねぇ。何かの賞取ったとか、有名シェフのところで修行したとかないかい?」

男「残念ながら」

社長「うぅん、新しい店の看板文句になるような華がほしいなぁ」

社長「それと、関わった店が2つとも閉店、か……」

男友「いや社長、こいつの腕は俺が保証しますよ。GWの時の騒動も、こいつがいたから収まったようなもんで」

社長「まぁ、君がそこまで言うなら、いいか」

社長「よろしく頼むよ、これ、契約書。よく読んで印鑑押してきて」

社長「悪いね。これからまた別の店のテコ入れ会議でさ。それじゃ」バタバタバタ...

男「ありがとうございました」

男友「感触いいじゃん」

男「あれで、か」

男友「俺の時もそうだったんだよ。忙しいのと金儲けが好きな人だから言い方がアレなだけさ」

店員「あ、あの、店長……」

男友「どうした?」

店員「外に、男さんを出してくれ、っていう女の子2人組が……どうしましょう」

男「白い髪のつるぺったんと、メガネかけたチャラい系お嬢様か?」

店員「ああ、まぁそんな感じでしたけど……」
  ・・・
男「前の店の店員だ。少し出てくる」

男友「おう、いってらー」



男「よう、お前らどうした?」

真白「どうしたじゃないです男さん!ミア、もう行っちゃいましたよ!」

男「知ってる。面接があるから、見送りにはいけない、って言ってあるから」

シーリス「それでいいの男っち!!」

男「仕方ないだろ」

真白「……男さん、私、後悔しないように、って言いましたよね」

男「ああ」

真白「後悔してませんか?これからもずっと、後悔しない、って誓えますか?」

男「……」

男「じゃあどうしろって言うんだ。俺はずっと、誰かの代わりになってすごせって?ミアが隣いるからそれでいいだろ、って?」

シーリス「そうじゃないじゃん男っち」

男「……」

シーリス「自分の気持ち、全部伝えることができた?」

シーリス「それでもミアが帰るなら仕方ないけどさ」

シーリス「どうせ男っちのことだから無駄にカッコつけて『仕方ないだろ』とか言ってない?」ファサ

男「つかその無駄にキザったらしく髪をかきあげるのは俺の真似か?」

シーリス「そ。似てる?」

真白「似てない」

シーリス「ありゃ」

男「済んだことだよ。俺は後悔しない。ミアにとっても……これで良かったんだ」

真白「それがおかしいんですよ男さん」

真白「ミアの事なんてどうでもいいじゃないですか」

真白「男さんの夢とか、想いとか、そういうのに対して嘘ついちゃ、だめじゃないですか!」

男「俺の夢……?」

真白「想像してみてください、自分の夢。男さんの夢は、どんな夢ですか?」

男(俺の夢……か)

真白「理想のお店、でもいいです」

男「理想の店、ね……そうだな」

男「キッチンの端っこからでもいいから、店の出口が見えるようなのがいいな」

男「俺の作った料理を食べて、悲しい奴や怒ってる奴はそれなりに、うれしい奴はもっと笑顔になって帰ってもらいたい」

男「それで……」



────よかった

────よかったですね、男さん。美味しかった、ですって。



男「!!!!」

シーリス「そんでー?」

男「そう、だな……俺の作った料理を……食べて……笑顔で帰る客を……ミアと二人で、見送りたい」

シーリス「やーっと本音でたね」

真白「じゃあ、どうするんですか。どうしたいんですか、男さん」

男「ああ……でも……もう……」

真白「いいから、言ってみてください」

男「ミアを……連れ戻しにいきたい。捕まえたい」



真白「……」スゥゥゥ



真白「声が小さい!!」

真白「もっと背筋のばして、おへその下に力入れて!」

男「真白……」

真白「いやな想いや悲しい気持ちは全部吐き出すつもりで!」

真白「そんな蚊の鳴くような声じゃ、ミアにだって届かないよ」

男「……そうだな」

男「俺は……ミアに会いたい。会って気持ちを全部伝えて、それでもだめなら……仕方ないさ」

真白「それで、いいと思います」

シーリス「でもさ、駅に今から行って間に合う?」

女中「いいえ……残念ながら」

シーリス「だよね……」ショボン

ハーピー「だから、空港先回りしようよー」

ハピ旦那「おや、ちょうどこんな所にタクシー代わりに車が」

男「みんな……」

男友「青春じゃねーかおいこら」

男「友……」

男友「うちの店、どうすんの?」

男「……」ガサゴソ

男「なあ、日替わりランチがAはカレーでBはハンバーグランチなんだが」

男友「はあ?」

男「どうする?」

男友「そりゃ、どっちかだろ」

男「俺は……ハンバーグカレーが食いたいんだ。だから悪いけどさ、この話はなかったことにしてくれ」ビリリッ

男友「そうかい。しゃーねぇな。社長になんて言っとく?」

男「経歴ばっかり見て、俺の腕を確かめようともしない奴の下で働く気はない、って言っとけよ!」

男友「はははは!分かった言っとく!」

男「すいません、お願いします」

ハピ旦那「いいよ、超特急でトバそう」

シーリス「あ、ちょっと待って男っち!」

男「どうした?」

シーリス「私も、後悔したくないからさっ!」ギュッ



チュッ



男「なっ、おま!?」

シーリス「石動シーリスは男っちが好きだったよ。でもこれで、私の初恋はおしまいっ」

男「シーリス……」

シーリス「だから、ミアを捕まえて。お願い」

シーリス「ハピパパさん、おねがいねーっ!」

ハピ旦那「おう!」

ブロロロロ...



真白「……行っちゃったね」

シーリス「うん」

真白「がんばったよ、シーリス」

シーリス「うん……」グスッ

真白「……泣いてもいいんじゃないかな」

シーリス「だめ……メガネ外したら、邪眼が……」

女中「お嬢様、ハンカチをどうぞ」

シーリス「ありがと……もう1つだけ、私ができることがあるの。賭けっちゃ、賭けだけどさ」

ハーピー「さて、私も一仕事するかなー。真白っち、うちの娘をお願いしてもいい?」

真白「いいですけど、ハーピーさんはどこへ……」



ハーピー「とりあえず、空へ」ニヒッ

カンカンカンカンカンカンカンカン...

シーリス「間に合うかな、えーと、各駅停車?それとも特急?」

真白「微妙にカーブしてて見えない……きた」

シーリス「お、おー、ミアの乗った特急じゃないみたいだね」



カンカンカン...



シーリス「行ったね。よっし、はじめよー」

ハピ娘「わー、電車はやーい!サラマンダーより、ずっとはやい!」キャッキャ

真白「ハピちゃん、それ言っちゃだめなやつね……ねぇ、シーリスもしかして」

シーリス「そりゃ、工具でこじあけたりしたら犯罪だけどさ」

シーリス「原因不明の故障だからね、あくまで」

シーリス「それより、人が来ないか見てて」

真白「う、うん」

シーリス(私の力……初めて、人のために使うよ)

シーリス(だからお母様おねがい……上手くいきますように)



シーリス(遮断機1つ、ごめんなさいっ!!)カッ!!



バヂッ!!



真白「あ、あれ、遮断機が下りてきた……」

シーリス「フェイルセーフだね。停電や故障時には自分の重さで下りる仕組みになってるんだよ」

シーリス「多分だけど、管理センターでも異常は把握してるんじゃないかな?でも成功、ってこと」

ポーン



車掌『ただいま、全列車に緊急停止の指示が出ております。乗客の皆様にはご迷惑をおかけしますが────』

ミア「……」

ミア「間に合うかな……」チラ

────同時刻@首都高



男「……」

ハピ旦那「音楽でもかけるかい?」

男「え?ええ、お願いします」

ハピ旦那「僕が特別に編集したやつだからね」

男「あ、ちょっと待ってそれって」



『パパー』『パパだーいすき』『パパごめんなさい』『パパ』『パーパ♪』『パパいっしょにおふろはいろー』



ハピ旦那「いいだろう?珠玉のマイドーターらぶりぃ台詞集特別編集版だ!」

男「は、はぁ……」ヒクヒク

ハピ旦那「おや、お気に召さないようだ」ポチ

男「……すんません」

ハピ旦那「……君は、ミアくんを幸せにできるかい?」

男「……さぁ、分かりませんよ」

ハピ旦那「僕もそうだったよ。ハーピーさんを幸せにできるだなんて、これっぽっちも思ってなかった」

男「……」

ハピ旦那「でもさ……自分が幸せになるためには、ハーピーさんが必要だったんだなぁ、と今になって思うよ」

ハピ旦那「君は、どうだい?」

男「そりゃまぁ、必要です……そんな自分の都合で、ミアの傷が癒えないうちに日本に居残らせていいんすかね」

ハピ旦那「知らないよ、そんなこと。選ぶのはあくまでミアくんだろうしね」

男「クールっすね」

ハピ旦那「そうかい?学校じゃ熱血先生で通ってるんだが」

prrrr...

ハピ旦那「おっと、噂をすればハーピーさんだ。出てくれるかい、運転中なんでね」

男「はい。ハンズフリーにしますね」

ハピ旦那「頼むよ」

pi

ハーピー『はぁいダーリン、元気?』

ハピ旦那「やぁ。もう解散したの?」

ハーピー『解散っていうか……ちなみに千葉のほうへ飛んでるんだけど、そっちは今どの辺り?』

ハピ旦那「今……そろそろ浦安だね」

ハーピー『んっと……どうも渋滞してるみたいなんだよねぇ』

ハピ旦那「下に回ったほうがいいかな……」

ハーピー『もうちょっと見て回って、5分後に電話しなおす』

ハピ旦那「ありがとうハーピーさん。愛してる」

ハーピー『ひゃっ?!何!?隣で男くんが聞いてるんでしょ!?』

ハピ旦那「それでも言わずにはいられないようなムズ痒い会話してたんだよ」

ハーピー『そ、そっか……まぁとにかく、うん、その……わたしも……』ゴニョゴニョ

ハピ旦那「え、なに、きこえなーい」

ハーピー『う、うーっ!もう知らないっ!』ブツッ



男「奥さんツンデレっすね」

ハピ旦那「だろ?また可愛いんだデレの部分が」

男「もうもげてくださいよ、割とマジで」

…………

……

男「……」ノロノロ

ハピ旦那「……」ノロノロ

男「見事に渋滞はまっちゃいましたね」

ハピ旦那「面目ない」

男「……」フゥ

男「いいっす。間に合わなかったらそれも……」

ハピ旦那「ダメだよ男くん。必ず間に合う。間に合わせる。そのために皆、協力してるんだ。君がそれを言っちゃいけないよ」

男「……うす」

ハピ旦那「とはいえ、滅入るよなあ……このノロノロ具合は」ブロロロ...

男「ですね」

ハピ旦那「……気分転換にハピの天使のような歌声の童謡集でもどう?」

男「……ほんと、親バカですね」

ハーピー『そうか、つかまっちゃったかー』

ハピ旦那「そうなんですよ。思ったより手前で渋滞に突っ込んでしまいまして」

ハーピー『あーでも、予備がそろそろ行くと思うから』

ハピ旦那「予備?」

ハーピー『そのまま、走行車線から列変わっちゃだめだよー』ブツッ

ハピ旦那「え、予備って……あ、切れた」



ブロロロロロロ...

??「いた!あれかっ!」



男「予備、ってなんなんすかね」

ハピ旦那「この渋滞じゃ、これ以上速くならんと思うけどなぁ」



キキッ!!ゴンッ!!ゴンゴンゴンッ!!

男「うわっ!!」

ハピ旦那「あー……なるほど。彼女か。窓開けるよ」

男「へ?!」

女中「何してるんですかこのウスラトンカチ!!せっかくお嬢様が時間稼ぎしてくれたって言うのに!」

男「え、女中、さん?」

女中「ほら早く!バイクで列すり抜けて、かっ飛ばしますよ!」

ハピ旦那「行ってきなよ。ミアくんによろしく」

男「は?え?!」

女中「メットして!ほら後ろにお乗りください!」

男「お、おお、おう」

女中「しっかり掴まってください」

男「こ、こう?」

女中「あーもう、チェリーじゃあるまいし!もっとくっつけて!これ、腰にまわしてください!」

男「え、ベルト?」

女中「……さ、久しぶりのツーリングを楽しみたいところだけど」ブロロロ...

男「あ、あの……」

女中「ビビって漏らすのだけは勘弁願いますね男様。一世一代の告白も台無しですので」

男「そう思うなら手加減しt────」ヴォンッ!!



男「ええええええええええっ!!!!」



ハピ旦那「おー、すっ飛んでったなぁ」

ハピ旦那「さ、それじゃ独りになったところで、ハピの童謡集を改めて、っと……」

男「うわっ、ひっ、ぶつかる!サイドミラーが!」ビュンッ!!

女中「あーあーあーあー死なないから安心してください」ォォォォンッ!!

男「死ぬ!死ぬから!今何キロ出てるの!?」ビュンッ!!ビュンッ!!

女中「……下2桁は80km/hですが?」

男「お願いだから百の位も言えよ!」

女中「……秘密のある女って、素敵だと思いません?」

男「思わねぇ!今この状況じゃ思わねぇ!!」

女中「っていうか、お嬢様の唇を奪ったあたりで既に万死に値してますので」

男「奪われたの俺な!ったくどいつもこいつも……」

女中「それでは私も……男様の唇、ミア様の目の前で味見させてください」

男「は?!」

女中「冗談です」クスクス

女中「ん、事故現場……あれですかね」

男「ほんとだ、車線規制が出てるな」

女中「見えません」

男「車線規制が!!出てるなぁ!!つか事故現場って言っただろ今ぁ!!」

女中「古い映画で『キャノンボール』ってのがありまして。ジャッキー・チェンも出ているのですが……」

男「おいまさか嘘」

女中「私、大好きでございます」ブォンッ!!



プァー!!プップーッ!!

警官「じゃあ君が脇見して……ん?」

モブA「うわっ!!」

モブB「ひいっ!!」

ブォンッ!!



警官「……とりあえず応援呼ぶか」

…………

……

女中「到着、でございます」

男「お……おう……」ゼーハー

女中「バイクを停めてきます」

男「あ、いや……そうかもしれないけど……ちょいタンマ……」

女中「……急いで戻って来ますので、手分けして探しましょう」

男「……電話したら、ダメなの?」

女中「え?」

男「今思ったんだけどさ……はぁ……ミアの携帯に電話してさ。さすがにまだつながるだろ」

女中「……」

女中「さ、私はバイクを停めてきます」

男「……とりあえず電話してみるか」

男「ほんと、最後までしまらないなぁ」

prrrr...prrrr...prrrr...

男「出てくれよ……」

ミア『……はい』

男「今、どこだ?」

ミア『今?空港のエレベーターに並んでます』

男「乗る飛行機は?」

ミア『え?エールフランスですけど……』

男「よし、そのカウンターの前で待ってろ」

pi



男「……本当だ。間に合いやがった……ははは」

男「……」

ミア「……男さん」

男「よう」

ミア「あ、あれ?面接は?あの、電車が遅れて、かなりチェックインがギリギリなんですけど……」

男「面接はもういいんだ、それより、3分、いや1分だけでいいから俺の話を聞いてくれ」

ミア「……」

男「俺の夢は、俺の料理を食った人が、笑顔になって帰っていくこと」

男「そのために、たくさんの料理を作りたいし、店も大きくしたい」

ミア「……」

男「でも、いつだって……隣にミアがいて、お客を見送った後、良かったね、って言ってくれなきゃ、意味がないって気づいた」
                         クニ
男「一緒に、新しい店をやってくれ。隣に居てくれ。母国に帰らないでくれ」



男「君が……好きなんだ」

ミア「……前の恋人が忘れられなくても、いいの?」

男「知るか。好きなだけ比較しろ。俺が努力してその男よりいい男になればいいんだ」

男「心にそいつがいたっていいじゃねぇか」

男「俺は隣で、ミアの心に居場所を作る。ミアの中のその男ごと……好きになる」

男「だから……」

ミア「……」



ミア「それでもやっぱり、帰らないと」

男「……」

男「そうか」

男「……そうか。なら、もう何も言わない。元気で」クル

ミア「あ、あれ?ちょ、ちょっと待ってください!」

男「え?」

ミア「その、男さんが……あ、新しい店、立ち上げるんですよね」

男「お、おう」

ミア「だ、だったら日本で仕事するのに、ビザの更新とかいるじゃないですか」

男「……つ、つまり?」

ミア「また、日本に帰ってきますよ」

男「辛い思い出とか、あるのに?」

ミア「今まで人生であった辛い思い出より、これからの人生で作るいい思い出の数が多ければ、差し引きプラス」

ミア「それでいいです」

男「そうなるように努力……いや、約束するよ」

ミア「ずっと隣にいます。だからずっと美味しい料理を作るって約束して」

男「……約束する」

ミア「他の女の子に目移りしない?」

男「決まってるだろ」

ミア「怪しいなぁ、男さんは女たらしなんだから」

男「……もしかして、担保必要?」

ミア「もちろん」スッ

男「……」





チュ

…………………………………………

……………………………………

………………………………

…………………………

……………………

………………

…………

……

────数ヵ月後@街中



少女「……聞いてましたか」

青年「え、あ、ごめん余所見してた」

少女「豚のくせに、私以外の女に目移りする余裕があるみたいですね……」ネクタイギュゥゥ...

青年「ぎ、ギブギブ絞まる絞まる!」

少女「……ったく」ブツブツ

青年「え、なに?やきもち?やきもちなのもしかして!」

少女「はぁ?寝言は畜舎の中だけでお願いしますね」

青年「ぶひぃっ!!」

少女「……で、どこに連れてってくれるんですか?」

青年「んー、最近できたカフェ。同僚の相談にのった時に入った店なんだけど」

少女「あの、この前飲み会でへべれけになって帰ってきた時に一緒にいた美人さんですか!?」ギュゥゥ...

青年「ほらやっぱりヤキモt……痛い痛いつま先ぐりぐりしないで!」

少女「……」ムッスー

青年「ほら、機嫌直してよ……その店、オムライスが絶品なんだ。それにレシピも教えてくれるって」

少女「私に、作れってことですか?」

青年「あー……そういうつもりで言ったわけじゃないけど、もし作ってくれるならうれしい」

少女「しっ、仕方ない、ですね……」ゴニョゴニョ

青年「ほんと義妹はデレると可愛いよなぁ」

少女「は?!で、デレてないです何言ってるんですか!」

青年「ほら、午後からコート見に行くんだろ?はやくお昼食べに行こうよ」

少女「……デザートにケーキ食べてもいいですか」

青年「え、リアルにぶt」

少女「……!」ツネッ

青年「ごめんジョークジョーク!」

少女「カフェ”Perche”……パーチェ?」

青年「ペルシュ。フランス語で止まり木、って意味みたいだね」

少女「ふぅん……ところで、エスコートしてくれるんですよね、ぶ・た・さん?」スッ

青年「はいはい」ギュ



カランコロンカランコロンカランコロン...



青年「すいません、2人なんですけどー」

少女「1人と1頭」

青年「面倒くさくなるから勘弁してよ」

???「こちらへどうぞ」





ラミア「いらっしゃいませ」                   終

おわり。
最後駆け足でごめん

乙!
1年ごしだったなおつかれ

もう片方のラミアも幸せにしたってくれ


ましろんとシーリスのその後が気がかりだけどバッドEDじゃなくてよかったよ
(義妹安価の時ヘブンズハグに行かせたかったって書いたがまさかこのスレで叶うとは)

スレまたがないように終盤レス控えてたけどちゃんと読んでたぜ
次作も、いつまででも待ってるます

>>982-986
ありがとう。特に>>983。あの書き込みからずっとこの形の最後を考えてた

酒飲んだいきおいでおまけ

真白、シーリスのその後は、いつか別すれ立てて書くつもり

────師走某日朝@カフェ Perche 2階

男「……ん」モゾ

ミア「しゃむい……」モゾ

男「おはよ」チュ

ミア「……ん、んっ……ん、んぅ……へへ、おはよぉ」

男「起きて。開店準備しないと」

ミア「あっ、ん……どこを準備して、やんっ」

男「する?」チュ

ミア「だめ……あ、昨日も、日付変わるまで……」

男「でも、物足りないし」ゴソゴソ

ミア「んもう……今日もランチからの営業?」

男「臨時休業でいいだろ?」



真白「よくなーいっ!!」バンッ!!

男「朝から元気だな……俺は寝不足なんだが」

真白「っていうか!起きてくださいっ!掛け布団ひっぺがしますからねっ!」

ミア「え、あ、ちょっとまって」

真白「問答無用!!」ガバッ!!

男「……」モッコリ

ミア「……」マッパ

真白「…………」



真白「☆♯■∀△×~~~っ!!」カァァァ

……

真白「うー……」カァ...

男「つーか、イチャイチャしてるところに割り込んだ真白が悪い」

ミア「……」ボフン

真白「っていうか、たまには交代してくださいよ」

男「俺とか?」

真白「ミアとですっ!」

ミア「だめっ!絶対だめっ!私のだもん!」ギュー

真白「いいじゃないですかケチー」グイー

男「つーか、料理学校に男なんざ山ほどいるだろ」

真白「男さん未満の人しかいません。なんかみんなガキっぽいか無駄に意識高い系で……」

男「ひでぇ」

ミア「男さんは私のだからだめ。冬の間は特にだめ」

男「それ、完全に湯たんぽ扱いだよね。毎日俺は、尻尾のヒンヤリ感に包まれてなかなか寝付けないんだけど」

真白「はいはい、ごちそうさまですっ!」

…………

……

真白「それじゃあ、私はこれで。学校いかなきゃ」

男「毎日悪いな」

真白「そう思うなら、私とデートしてくださいよ」

男「ミアが怖い」

真白「ぶー……でもいいです。ミアと男さんの笑顔が見られるのが一番ですから」

男「ありがとな。学校はどうよ?」

真白「楽しいですよ。友達もできましたし。男さんから教わった事が実習で出たりして、けっこう貯金の多さにびっくりです」

男「がんばんな」

真白「もちろん。目指せ男さんをギャフンと言わせる美味しいケーキです」

男「まけねぇよ」

真白「言いまいたね。負けた方おごりでデートでもいいですよ」

男「ばーか。どっちにしろお前の勝ちじゃねぇか」

真白「へへへ。それじゃ……いってきまーす!」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年08月01日 (金) 19:53:51   ID: NnwULs9a

全員手玉に取るのも悪くない

2 :  SS好きの774さん   2014年10月24日 (金) 01:57:37   ID: GU8Aq6bL

最高!続き見てぇーー!!

3 :  SS好きの774さん   2015年01月20日 (火) 01:00:20   ID: HT3hEWzr

完結かな
良いものだった

4 :  SS好きの774さん   2015年02月14日 (土) 00:09:49   ID: 4r-zbAwd

ずっと前に読んだSSの兄妹出てきて感動
とても楽しかった乙

5 :  SS好きの774さん   2015年02月18日 (水) 14:23:09   ID: kkktXEqY

途中泣いたわ…最高だった!

6 :  SS好きの774さん   2015年04月08日 (水) 04:40:45   ID: dEYePi0W

涙とまんねぇ

7 :  SS好きの774さん   2015年04月12日 (日) 06:01:36   ID: 66c2jNQs

はーピーのはなし好きだぜ笑

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください