穏乃「灼さんって、好きな人いるのかなぁ?」憧「え?」(124)


阿知賀女子学院

麻雀部 部室

憧「・・・・・え?」

穏乃「・・だから、灼さんて好きな人いるのかなー?」

憧「・・・・・」

憧(今日のしず、なんか大人しいと思ってたけど・・・・二人きりになった途端この質問・・・・・)

穏乃「・・・・・ねえ」

憧(まさか・・灼さんに気がある?・・・いや、しずに限ってそれはないよね!しかも灼さんが相手なんてさー!)

穏乃「憧ー?聞いてるー?」

憧「え?うん、聞いてるよ?灼さんの好きな人でしょ?」

穏乃「そうそう」

憧「そんなの、晴絵に決まってるじゃん」

穏乃「・・・・・・え?」


憧「どしたの?」

穏乃「い、いや、なんで決まってるの?」

憧「灼さん、あたしたちと晴絵とで反応が全然違うし・・・」

穏乃「う・・・でもそんなのたまたまだよ!たまたま」

憧「あとさ、灼さんって制服ネクタイじゃん?そのネクタイって、晴絵のらしいよ」

穏乃「ど、どういう事?」

憧「晴絵が高校生の時、灼さんにあげたんだって」

穏乃「・・・・・な、なんで?」

憧「灼さんが晴絵のファンだったみたい」

穏乃「それ・・・本当の話?」

憧「うん。お姉ちゃんから聞いたから」

穏乃「・・・・・・」

憧「昔に貰ったネクタイを今でも持ってて、しかも付けてるなんて・・・ベタ惚れだよねー」

穏乃「・・・・・・」


憧「・・・・・しず?」

穏乃「そうなんだ・・・・」シュン

憧「・・・・え?」

穏乃「じゃあ・・・もうダメなのかな・・・」

憧(え?・・・・やだ・・・・もしかして・・・・・本当に・・・?)ドクン...

憧「あ、あの・・さ・・・」ブル..

憧「し、しずって・・・・・・・灼さんの事・・・」ドキドキドキ..

憧(・・・・・声が・・・震える・・・怖い・・・)

憧「す、好きなの?」

穏乃「・・・・・・・・うん」

憧「!!!ちょ、ちょっと待ってよ!!」

穏乃「え?憧?」

憧「どうして・・・どうして灼さんなの!?」ガシッ!

憧「普段そんなに仲良い訳じゃないのに!」ギリギリギリ..


穏乃「あ、憧・・・・いっ、痛いよ・・」

憧「・・・・あっ、ごめん・・」ハナシ

穏乃「・・・・・・」

憧「・・・・それで・・・どうして・・?」

穏乃「・・・インハイで負けた時、私・・・凄く落ち込んじゃって・・・」

憧「うん・・・・」

穏乃「その夜にさ、一人で散歩してたら灼さんとバッタリ会ってさ」

憧「・・・うん」

穏乃「落ち込んでる私を見て、灼さんが『穏乃は頑張ったよ。偉いね』って言ってくれたんだ」

憧「・・・・」

穏乃「私・・・そう言われた時に・・なんか・・・灼さんに抱きついて泣いちゃって・・・」

穏乃「そしたら・・・泣き止むまでずっと頭を撫でてくれたんだ・・・・周りの人から変な目で見られても・・・全然気にしないで、ずっと・・・」


穏乃「・・それから・・・灼さんの事ばっかり考えるようになっちゃって・・・」

憧(・・・・あたしだって・・・・・・色々したじゃん・・・ずっとしずの事を考えて・・・寝るまでずっとそばにいて・・・)

穏乃「この気持ちってなんだろう?って思ったけど・・・・お母さんに聞いたら、『恋じゃない?』って・・・」

憧「っ!」ズキッ!

穏乃「そう言われた瞬間、納得したんだ。私は灼さんが好きなんだって」

憧「・・・・・でも灼さんは晴絵が好きだよきっと」

穏乃「あ・・・・」シュン

憧「・・・・・・」

穏乃「で、でも!まだ付き合ってないでしょ!?」

憧「それは・・・まだだと思うけど・・・」

穏乃「じゃあさ!まだ私にもチャンスがあるって事だよね!?」

憧「・・・・・あったらどうなの?」

穏乃「灼さんに告白するよ!」

憧「!!」


穏乃「・・・でもいきなりは難しいから・・・憧!」

憧「何?」

穏乃「協力して!」

憧「・・・・・・え?」

穏乃「私が灼さんと付き合えるように、協力して!お願い!!」ガバッ!

憧「協力・・・・あたしが・・・・?」ムッ

憧(しずが・・・・灼さんと付き合えるように協力しろって?冗談言わないでよ・・・あたしがどれだけしずの事を好きか、全然気付いてくれてないの?)

穏乃「お願い!私には憧しかいないんだよ!」

憧「っ・・・」ピクッ!

穏乃「憧!お願い!」

憧(こんな風に頼まれたら・・・断れないよ・・・)

憧「・・・・・わかった」

穏乃「っ!ありがとう!!!」

憧(・・・・大丈夫だよね、いくらしずが迫ったって灼さんは晴絵が好きなんだし)


穏乃「じゃ、じゃあさ!早速ボウリング場に行こうよ!」

憧「え?でも部活・・・」

穏乃「今日は玄さんも宥さんも用事でいないから、部活は中止なんだ!」

憧「全然聞いてないけど?」

穏乃「・・・憧に相談に乗ってほしかったから黙ってた・・・ごめん!」

憧「・・・・なるほど」

穏乃「だから灼さんは実家の手伝いでボウリング場にいるんだ!」

憧「それで?行ってどうするの?」

穏乃「とりあえず、良いところを見せてアピールする!」

憧「ふーん」

穏乃「よし!じゃあ行こう!!」タタタ

憧「あ!ちょっと待ってよしずー!」タタ


ボウリング場 Sagimori Lanes

ガー

穏乃「あ・・・いた!」ニコー

憧(・・何よ、その嬉しそうな顔・・・)ムカ

穏乃「こ、こんにちはー!」スタスタ

灼「いらっしゃいませ・・・え?穏乃?・・・・と憧・・・・冷やかし?」

穏乃「ち、違いますよ~!」

灼「そう?」

穏乃「ねえ!そうだよね!憧!?」

憧「はいはい」

灼「?」


おばあちゃん「あら?高鴨さんと新子さんじゃないかい?」

穏乃「あ、どうもこんにちは!」ペコッ

憧「こんにちは」ペコッ

おばあちゃん「遊びに来てくれたのかい?」

穏乃「は、はい!」

憧「なんで緊張してんのよ?」

穏乃「だ、だって・・灼さんのおばあちゃんだし!」

憧「・・・・あそ」

おばあちゃん「灼も一緒に遊んできたらどうだい?」

灼「え?」

穏乃「!!」

憧(く・・・こいつ・・余計な事を・・・)


灼「いや、でも手伝いが」

おばあちゃん「私は大丈夫だから」

灼「それに二人で遊びに来たんだから、邪魔するのもなんか・・・」

穏乃「ああうあう~」アコー..

憧「・・・・」ハァー..

憧「いいじゃん、一緒に遊ぼうよ。せっかくのおばあちゃんの好意なんだし」

穏乃「そそ、そうですよ!一緒に遊びましょう!?」

灼「・・・・二人がそう言うなら・・・本当に大丈夫?」

おばあちゃん「もちろんだよ」


灼「じゃあ・・・いいかな?」

穏乃「はい!」

憧「うん」

穏乃「そ、それじゃあボウリングしましょう!」

灼「・・・・・」ピク

おばあちゃん「あら?外で遊ばなくていいのかい?」

穏乃「はい!元々ボウリングをしに来たので!」

おばあちゃん「そう・・・ありがとうね」ニコッ

穏乃「は、はい!」


憧「しず、あたし、灼さんの順ね」

穏乃「うん!じゃあ行くね!」

憧・灼「頑張れー」

穏乃「よおし・・・とりゃ!」ゴロゴロー!パカァン

憧「6本・・・まあまあね」

灼「上手」

穏乃(ここでいいスコアを出してアピールするか、灼さんに教えてもらって仲良くなるぞー!!)メラメラ

憧「っと、スペアならずか・・・」クルッ スタスタ

穏乃「投げる時なんですけど・・・」

灼「腕をこうやって・・・」

憧(なんか・・・楽しそうにお喋りしてるし・・・)ムカ


穏乃「あ、惜しかったね」

灼「上手」

憧「ん・・・まあね・・・次は灼さん」

灼「うん」カマエ

灼「・・・・」スタスタスタ..ビシュ!

穏乃「綺麗なフォーム・・・」

憧「確かに・・・」

ゴロゴロー..ガタン!ゴロロロ

灼「・・・・・」

憧「ガターね」ププ

穏乃「あ、灼さん次があります!!」モン!

灼「・・・うん」

灼「・・・・・っ」ビシュ!ゴロロー..ガタン!ゴロロロ

憧「またガター・・・」


穏乃「あうう・・・」

灼「・・・・・」スタスタ..スワリ

憧「・・・・・」ジー

灼「べ、別に・・・ボウリングが上手いとは言ってないし・・・・」

憧「でも実家がボウリング場なのに下手ってひどいよね」

灼「あ、憧だって実家は神社だけど、お祓い出来ないでしょ?」

憧「ぐっ・・・それは出来ないけどさ!でもボウリングなんて誰でも出来る事なんですけどー!」

灼「憧しかいない時にお祓いお願いされたらどうするの?無視する気?ボウリングは出来なくても迷惑かけないけど、お祓いは違う」

憧「お祓いしなきゃいけない状況より、ボウリングする状況の方が多いのに、こんだけ下手なんてダメっしょ!?同列に扱わないでよ!」

灼「まだ1フレームだけしか見てないのに下手って決めつけるの?」

憧「さっき下手って言った時に否定しなかったじゃん!自分で気付いてるくせに!」


穏乃「あうあう~・・喧嘩はやめようよ~」オロオロ

灼「あ・・」ハッ

憧「フォームが綺麗な分、ガター出すとみっともないってーの!」

灼「・・・・ごめん」

憧「え?」

灼「ちょっと言い過ぎた・・・ごめん」

憧「え・・・あ・・・え?」

灼「次は穏乃だね。頑張って」

穏乃「は、はい!」ヨーシ!

憧「あ・・・(しずの為に・・・?)」


穏乃「やったか?・・・ああー、1本残った~」クー

灼「惜しい」

憧(・・・・明らかにあたしが悪いのに・・・しずの為に自分から謝るって・・・)チラッ

灼「?」

憧「・・・・あたしの方こそ・・・ごめん」

灼「・・うん、おあいこだね」

憧「うん・・・」

憧(そうだよね・・・しずが灼さんを好きなのはあたしにとって凄く嫌。でも灼さんに当たるのは違うよね・・・)フゥ


穏乃「やった!勝った~!!」ワーイ

憧「届かなかったか~」チェー

灼「・・・・・・」

憧「あ・・・灼さんも頑張ったって!」

灼「でも・・・3ゲームやって平均が62だし・・・」

穏乃「でもでも!フォームは凄い綺麗でした!」

灼「そ、そうかな///」テレ

穏乃「あ・・・」

灼「な、なに?」

穏乃「いやー別に・・・(照れた顔が・・すっげー可愛い!!)」オオオ!

憧「って、もうこんな時間か」

灼「・・・本当。結構熱中してたから」


穏乃「あ・・・」

憧「そろそろ解散だね」

灼「そうだね」

穏乃「・・・今日は楽しかったです!」

灼「うん、私も。二人とも途中で割り込んでごめんね」

穏乃「全然!いつでも大歓迎ですよ!!」

憧「うん。・・・・また遊ぼ」

灼「そうだね、ありがとう」

穏乃「・・・・じゃあ、帰ります」

灼「うん、気を付けてね」

穏乃「はい!」

憧「は~い」


帰り道

穏乃「よおおおし!イメージアップ成功だ~!!」

憧「・・・どこが?」

穏乃「だって、灼さんが『上手だね』って!」

憧「でもその言葉に浮かれて、はしゃいでただけだったじゃん」

穏乃「お?」

憧「その時に投げ方を教えてあげたりとか、そういう風にして仲良くなっていけばいいのにさ」

穏乃「・・・・・・」


憧「どしたの?」

穏乃「やっぱ憧は凄いよ!そんな事考えつかなかった!頼りになるよ!!」グッ!

憧(余計な事言っちゃった・・・)

穏乃「おおおお!憧が味方ならなんとかなるかも!!燃えてきた~!」

憧「・・・・」ハァ

穏乃「よおおし!!あ、ここから走って帰るから!お先!!」ダダダダダー!

憧「え?しず・・・・行っちゃった」

憧「・・・・・何してんだろ・・・あたし・・・」ハァ


新子家

憧「ただいま~」

望「おかえり~」ニコニコ

憧「はぁ・・・」スワル

望「あれー?お疲れちゃーん?」アハ

憧「・・・どうしたの?機嫌いいけど」

望「あ、わかる~?わかっちゃう~?」

憧「そりゃわかるって。それで?何があった訳?」


望「ふふふ・・・・お姉ちゃんね、晴絵と付き合う事になったの~!」アハハ

憧「ふーん・・・・・・え!!?」

望「遂に!お姉ちゃんにも春が来たの!」

憧「・・・・・ど、どうして!?」

望「・・・・どうしてって・・・失礼ね。両想いだからに決まってるでしょ?」

憧「・・・・・」パクパク

望「驚くのも無理ないよねー!ずっと友達同士だったからね。でも、これからは・・・」フフフ

憧(・・・・・・・)


翌日

麻雀部部室

晴絵「・・・二人きりで話って何?」

憧「・・・・・・・・」

晴絵「・・・・まぁ、検討はつくけどさ」

憧「お姉ちゃんと付き合うって本当?」

晴絵「・・・・・本当よ」

憧「・・・・それって、お姉ちゃんが好きって事?」

晴絵「・・・・ねえ、それって言わなきゃいけないの?なんか恥ずかしいしさぁ」

憧「答えて」

晴絵「・・・・・好きだよ。私は望が好き」


憧「・・・灼さんは?」

晴絵「え?灼?・・・なんで灼が出てくるの?」

憧「それは・・・・(灼さんの気持ちに気付いてない?)」

晴絵「・・灼はきっと喜んでくれると思うけど」

憧「・・・・・・」

晴絵「・・・・お姉ちゃんが心配なのはわかるよ。でもさ、私は真剣に望が好きだから、絶対悲しませたりしない」

憧「・・・・晴絵・・・」

穏乃「あれ?灼さーん!部室入らないのー!?」ドアゴシ

憧・晴絵「!?」

灼「は、入るよ」ドアゴシ


ガチャ

灼「・・・・・」

憧「あ・・・・」

憧(今の話・・・聞かれてた・・・よね)

穏乃「・・・・・?」ン?

玄・宥「?」

晴絵「・・・始めようか」

穏乃・玄・宥「はい!よろしくお願いします!」

憧・灼「・・・・・」


玄「ロン!ドラ6で18000です!」ジャラッ

灼「・・・飛び」チャリ

玄「ロン!ドラ8で24000です」ジャラッ

灼「・・・・飛び」チャリ

玄「ローーン!!!ドラ12で48000です!」ジャラ

灼「・・・・・・」トビ

玄「お姉ちゃー!私無敵だよー!」ドラーン!

宥「玄ちゃん凄ーい」フルフル..

玄「私こそ!阿知賀の『どらどんどうろ』なのです!」フムン!

宥「玄ちゃんかっこいい」フルフル..

晴絵「・・・灼?調子悪いみたいだけど・・・」

灼「・・・・大丈夫」ジャラァ..

晴絵「そう・・・」

憧「・・・・・(灼さん・・・)」


晴絵「今日はここまで。解散!」

玄「お姉ちゃん!松実旅館に帰ろ!」

宥「うん」フルフル

灼「・・・お疲れ様でした」フラフラー

晴絵「ん?二人は残るの?」

憧「あ・・・・えと」

穏乃「残ります」

晴絵「じゃあ鍵よろしくね」スタスタ

穏乃「・・・・・」

憧「・・・・・」

穏乃「・・・・・灼さん、様子が変だった」

憧「うん・・・・」


穏乃「憧・・・理由知ってる?」

憧「・・・・・・・」

憧(・・・本当の事を言うしかないか・・・・嘘をついても晴絵に聞いたらすぐばれるし・・・・)

憧「・・晴絵があたしのお姉ちゃんと付き合う事になってさ」

穏乃「え・・・?」

憧「それを知ったから、灼さんは落ち込んでたんだよ」

穏乃「・・・・・・・」

憧「・・・・・・・」

穏乃「じゃあ・・・私にも望みが出てきたって事!?」

憧「・・・それは・・・・」

穏乃「だって!灼さんは赤土さんが好きだけど、赤土さんは憧のねーちゃんと付き合うんでしょ!だったら・・・」オオ!

憧「・・・・灼さんが失恋したのがそんなに嬉しいの?」

穏乃「う!そ、そういう訳じゃないけど・・・でも私にとってはチャンスっていうか・・・」


憧「・・・失恋してすぐ他の人と付き合う気になるかな?」

穏乃「で、でもさ、もう赤土さんとは付き合えないんだし、可能性はあるでしょ!?」

憧「・・・・・・・・」

穏乃「・・・・・・・」

憧「じゃあさ」

穏乃「うん」

憧「灼さんが・・・・例えば玄と付き合ったとする」

穏乃「う、うん・・・」

憧「この場合、しずは失恋したわけだよね」

穏乃「うん・・・」

憧「そこでさ・・・」

憧「あたしが、しずに告白したら・・・・しずはあたしと付き合う?」

穏乃「あ・・・・・」

憧「・・・・・・・」


穏乃「・・・・・付き合わない」

憧「っ!」ズキ

穏乃「そっか・・・そうだよね・・・・・気持ちの整理とか・・・・そういうのがあるもんね・・・」

憧「・・・・そういう事!まったく、しずは鈍いんだからー!」

穏乃「うう~、そんな涙出るほど笑わなくても・・・」

憧「え?・・・あ、だ・・だってしずが間抜けなんだもん」フキフキ..

穏乃「・・・・・・」

憧「?」

穏乃「でも、灼さんが好きな気持ちに変わりはないから・・・頑張るよ」

憧「・・・・そっか・・」


穏乃「だから・・・また協力お願いしていいかな・・・?」

憧「・・・・・うん、いいよ」

穏乃「ありがとう」ニコッ

憧「友達として・・・・当然だよ・・」ハハ..

憧(次の日から・・・しずと灼さんが二人でいる光景をよく見かけるようになった)

憧(休みには一緒に出掛けたりしているらしい。順調らしく、相談に来る事もなかった)

憧(しずと一緒にいる事で、灼さんも失恋のショックから、少しずつ立ち直ってきているみたい)

憧(あたしはというと、未だにしずへの想いを捨てきれず、かといって告白する事も出来ず・・・中途半端なまま、毎日を過ごしていた)


一ヶ月後

晴絵「お疲れ様でした!」

全員「お疲れ様でした!」

玄・宥「また明日~♪」バイバイ

憧「はーい」

穏乃「お疲れ様~」

灼「また明日」バイバイ

憧「・・・」フゥ

灼「穏乃、今日はどうする?」

穏乃「あ・・・えと、今日はちょっと・・・」チラッ

憧「?」


灼「あ・・・じゃあ私は先に帰るね」

穏乃「うん、お疲れ様でした」

灼「ん。じゃあ」

憧「お疲れ」

灼「うん」

バタン

憧「・・・・・・何?」

穏乃「えっと・・・・灼さんの事なんだけど」

憧「・・・ま、そうだと思ったけど。・・それで?」

穏乃「告白・・・・しようと思う」

憧「!!」

穏乃「ここ最近・・・結構いい感じでさ、もしかしたら・・・いけるんじゃないかって」

憧「で、でも!灼さんはずっと前から晴絵を好きだったんだし・・・まだ早いんじゃない?」


穏乃「けど!好きなのにこのままでいるのも辛いっていうか・・・」

憧「・・・・そんなの!あたしだって・・・っ!」

穏乃「え?」

憧「・・・・・なんでもない。告白してダメだったら・・・・あとが辛いよ?」

穏乃「わかってる・・・でも・・・」

憧「・・・・・告白するって決めたの?」

穏乃「・・・・うん」

憧「そっか・・・・・しずが決めたんなら・・・・・」

穏乃「・・・・・・」

憧「それで?決めたんだったらあたしに何を相談する訳?」


穏乃「その・・・・・告白のシミュレーションに付き合って欲しいんだ!」

憧「え?」

穏乃「は、初めての告白だから・・・・」

憧「・・・・・」

穏乃「お願い!憧!」

憧「・・・・・・しょうがないなぁ・・・いいよ」

穏乃「っ!ありがとー!」

憧「・・・・あたしが灼さんをやればいいのね?」

穏乃「うん!じゃあ・・・・いくよ!」

憧「うん」

穏乃「・・・・・・・」

憧「・・・・・・・」

穏乃「私は・・・・あなたが好きです・・・私と、付き合ってください!!」ペコッ!

憧「・・・・・・うん・・・・あたしも・・・しずが好きだよ」


穏乃「え?憧?」

憧「あ・・・ごめんごめん!灼さん役だったね!しっぱいしっぱい」ハハ..

穏乃「じゃあもう一回・・・・・・あなたが好きです!私と付き合ってください!」ペコッ!

憧(しずから告白される・・・・ずっと夢見てた光景だったけど・・・・こんな形なんて・・・・)グス..

穏乃「うーん、ちょっと弱いかも・・・もっと私の気持ちをストレートに伝えた方がいいかな・・・・ごめん、もう一回!」

憧「うん・・・」

穏乃「私、灼さんが好きです!もし・・・まだ赤土さんが好きだったら・・・赤土さんの代わりでもいいです!私と付き合ってください!!」ペコッ!

憧「・・・・・」グス

穏乃「・・・どうかな?」

憧「・・・最初のがいいと思う・・・しずらしく、ストレートで」

穏乃「そ、そう?憧がそう言うなら間違いないな」ウン!

憧「・・・・・」


穏乃「じゃあ・・・・行ってくる」

憧「え?・・・今から?」

穏乃「よし!」ダダダダ!

ガチャ パタン!

憧「・・・・・・」

憧「これで・・・・よかったのかな・・・・」

憧「・・・・しず・・・嬉しそうな顔してたし・・・いいんだよね、これで・・・」

憧(成功したら・・・・しずは灼さんと付き合う・・・・)ズキ

憧(しずに一番近い場所を・・・奪われちゃう・・・)

憧「!」ゾクッ!

憧「・・・・・・やだ・・・・・・・やだよ・・・」グスッ..

憧「しず・・・・っ!」ダッ!

憧「・・・っ!」タタタタタタッ!


憧「あ」タタタ

穏乃「・・・・・」トボトボ

憧「しず!」タタタ

穏乃「あ・・・・憧・・・」ッスン..

憧「・・・・・・・」

穏乃「フラれちゃった・・・・」

憧「・・・・・・・」

穏乃「・・・私たちは付き合わない方がいいって・・・・」ウゥッ...グズ..

憧「・・・・」

穏乃「うん・・・・うぅ・・・あこぉ・・・」

憧「大丈夫・・・あたしがずっとそばに」

穏乃「・・・・こんなに・・・灼さんが好きなのに・・・・」

憧「あ・・・・」ズキッ..


穏乃「どうしよう・・・・これから・・遊んだりとか・・・・出来なくなっちゃうのかなぁ・・・」グス..

憧「しず・・・」

憧(そっか・・・もう・・・しずに一番近いのは・・・あたしじゃないんだ・・・)

穏乃「うぅっ・・・・ぐす・・・」

憧「・・・・灼さん、どこ行ったかわかる?」

穏乃「え・・・・?・・・多分・・・家に帰ったと思う」

憧「そう・・・しずはちょっと待ってて」

穏乃「?」

憧「っ!」ダダッ!

穏乃「憧!?」


通学路 外れ

灼「・・・・・」

憧「・・・・・」ハァハァ...

灼「・・・・・」

憧「・・・・・」ハァ..

灼「・・・・・何か用事?」

憧「・・・しずの告白・・・断ったんだってね」

灼「・・・・・・」ピク

憧「・・・・まだ晴絵が好きだから?」

灼「・・・・・・」

憧「・・・・・答えて」

灼「・・・はるちゃんは・・・・・・憧のお姉さんと付き合って、幸せそうだから・・・もう・・・諦めた・・・」

憧「・・・・じゃあ、どうして?」


灼「・・・・・憧、穏乃の事・・好きでしょ?」

憧「!!」

灼「しかも、私が穏乃と出会う前から・・・」

憧「・・・・・」

灼「なのに、私が横から出てきて奪うなんて出来ないよ」

憧「・・・・・」

灼「私はまだ・・・・はるちゃんに向けてた感情を、完全には整理出来てない・・・その状態で穏乃を受け入れるのは、穏乃にも憧にも失礼だから」

憧「・・・・・・・・」

穏乃『私、灼さんが好きです!もし・・・まだ赤土さんが好きだったら・・・赤土さんの代わりでもいいです!私と付き合ってください!!』

憧「・・・しずは・・・・それでも・・・・付き合ってほしいと思ってるよ」

灼「・・・・・・憧はそれでいいの?」

憧「・・・っ!?」


灼「・・・・・・」

憧「・・・・けない」

灼「え?」

憧「いい訳ない!?あたしはしずが好き!ずっと前から!」

灼「・・・」

憧「途中で・・・別々の学校に行った時も、すっごい後悔した!悩んで・・・でも会いにいけなくて!」

憧「久しぶりにしずから電話があった時、冷静を装ってたけど、めちゃくちゃ嬉しかった!」

憧「熱血なとこも、抜けてるとこも、優しいとこも!大好き!!」

灼「・・・・・」


憧「・・・・だけど・・・・・しずは・・・・」

灼「?」

憧「灼さんの顔見ただけで・・・あたしといる時より・・・・すっごい笑顔になるんだ」

灼「・・・・・」

憧「あたしと大喧嘩した時より・・・灼さんが晴絵を好きだと知った時の方が・・・・悲しい顔するんだよ・・・」

灼「・・・・・」

憧「・・・あたしじゃ・・・・しずを幸せに出来ない」

灼「・・・・・」

憧「だからっ!・・・・もう・・・あたしは諦めたんだよ・・・」フ..

灼「・・・・・」


憧「・・・だからさ、灼さん・・」

灼「で、でも!まだ気持ちの整理が」

憧「・・・整理がつかないと付き合えない?」

灼「・・・・・う」

憧「それが本心?」

灼「そ、それは・・・・」

憧「・・・整理がつくまで、しずとは付き合いたくない?」

灼「・・・・・」ウゥ..

憧「・・・・・」ハァ

憧「あたしを鈍感な晴絵と一緒にしないでよ」

灼「え?」


憧「灼さんが、しずに惹かれてるなんて、見ればわかるよ」

灼「っ!」

憧「最近のしず、灼さん好き好きオーラが出まくってて超可愛いもんね」

灼「うう・・・」

憧「・・・・実際のトコ、どうなの?」

灼「そ、それは・・・」

憧「あたしは本音を喋った。逃げるのはずるいかんね」

灼「う・・・」

憧「・・・・・・」ジー


灼「・・・・こ、告白された時、嬉しかった・・・」

憧「ん、それで?」

灼「・・・・でも、憧が穏乃を好きだって知ってたから」

憧「うん」

灼「付き合ったら、麻雀部がバラバラになると思った」

灼「一番の新参者の私が・・・幼馴染のみんなの仲を壊すのが・・・嫌だった」

憧「・・・・」ハァー

憧「あんた、まだそんな事考えてたの?」

灼「・・・えっ?」

憧「あのね、一緒に全国目指すって決めた時点で、幼馴染とか関係なく、みんな仲間な訳!わかる?」

灼「えと・・・その・・・」

憧「それに、あたしはただビビッて告白出来なかっただけ!遠慮なんていらない!早い者勝ち!変な事考えんなってーの!」

灼「・・・・・」


憧「はぁー・・・思った事、全部話したらすっきりした・・・」フゥ

灼「・・・私も」

憧「・・・・・けどさ、今の話を聞くと・・・灼さんて、なんか危なっかしくて心配になるなぁ」

灼「あ、危なっかしい?」

憧「一人であれこれ考えちゃって、思考のループにはまるっていうか」

灼「そう、かな?」

憧「それに根暗っぽいし~」

灼「ちょ、ちょっと!」

憧「あはは!・・・だからさ、灼さんには・・しずが合ってると思う・・・」

灼「あ・・・」

憧「・・・落ち込んでる自分が馬鹿らしく思えるくらいに明るくて・・・」

憧「悩んで立ち止まってる時には・・・引っ張って助けてくれる・・・そんなしずがさ・・・」

灼「・・・・」


憧「・・・・超超鈍感なのが玉にきず、だけど」フフ

灼「うん・・・」

憧「・・・・・」

灼「・・・・・憧」

憧「うん?」

灼「ちょっと行ってくる」

憧「・・・しずは、この先の道で待ってるから」

灼「ありがとう!」

憧「・・・うん」


灼「っ!」タタタタタ!

憧「・・・・・」

憧(・・・・・感情に任せて、突っ走っちゃったけど・・・これでよかったのかな?)

憧(思った事をすぐに吐き出して・・・あたしはしずか!)フフ..

憧(・・・もし・・・今みたいに・・・インハイ前に・・・告白してたら・・・・しずは・・・)

憧「・・・なんて、考えても意味ないか」フゥ

憧「・・帰ろうっと」スタスタ


新子家

憧「ただいま」

望「おかえり~・・・・憧!?」

憧「な、なんなの?大声出して」

望「だって・・・泣いてるから」

憧「え・・・あ・・・本当だ」

望「何があったの?」

憧「別に何もないよ?」スタスタ

望「でも・・・」

憧「大丈夫大丈夫」スタスタ

憧(そっか・・・泣いてたか・・・失恋したし?当然?ってねー)アハハ

憧(でもなんか冷静なんだよね。あたし悟りを開いたのかなー、なんて)


憧の部屋

ガチャ

憧「ふう・・・」ベッド ニ スワル

プルルルル

憧「お、しず」ピッ

憧「もしも」

穏乃『憧ーーーーーー!!!!』キーン!

憧「ぅわっ!!」ハナシ!

穏乃『ありがとう!灼さんと付き合える事になったよ!憧のおかげだよー!!ありがとー!!!!』

憧「お、やったじゃん!ヒューヒュー♪」

穏乃『本当にありがとうー!!憧ー!!!』


憧「わかったわかった。あたしはちょっと眠いから、また後でね」

穏乃『うん!わかった!それじゃ!』

憧「はーい」ピッ

憧「・・・・・おめでと。しず」

憧「・・・・・・」

憧「あのしずに恋人ねー・・・」

憧「・・・・・・・」

憧「・・・・・・ぅっ・・」グス

憧「いやいや、おめでたいんだって。・・・ああ、これは嬉し泣きか~」ポロ..

憧「・・・・・・・・・っく・・・しず・・・」グシュ..

憧(吹っ切れたはずなのに・・・・どうしてこんなに・・・・)ウゥゥ..


翌朝

望「・・・・憧・・平気?学校休む?」

憧「え?大丈夫だよ」パクパク

憧母「でも・・・」

憧「メイクで誤魔化せるから」モグモグ

望「そう?・・・無理しちゃダメだよ?」

憧「はーい」

テレビ『・・座が一位です!』

憧「お、一位だ」

テレビ『今日は、あなたの運命の人がわかる日です!』

憧「へえー」

テレビ『ボーっと過ごして、見逃す事のないように!』

憧「そりゃ楽しみだ」モグモグ


放課後

麻雀部部室

晴絵「お疲れ様!」

全員「お疲れ様でした!」

玄・宥「それじゃ、また明日~」ガチャ バタン

穏乃「ねえねえ憧~」

憧「ん~?」

穏乃「灼さんって可愛いんだよ!今朝、家まで迎えに行ったら、寝癖がピョーンてなっててさー」ニコー

憧「それ、可愛い?」

穏乃「うん!寝癖に気付かないのがすっごい可愛い!!」

灼「ちょ、ちょっと穏乃!」

穏乃「わあ」


灼「ご、ごめんね」

憧「ふふ・・・気にしないでいいって」

灼「う、うん・・・」

穏乃「?あ、今から灼さんと一緒に帰るんだけど、憧もどう?」

憧「んー?あたしはパス。せっかくだから二人っきりでどうぞ」

穏乃「あう・・・///」

憧「あたしはちょっと残ってるから」

穏乃「そっか。じゃあ、また明日」

憧「うん」

灼「じゃあね」

憧「はーい」

ガチャ バタン


憧「・・・・・・」シーン..

憧「静かだなー・・・・・」

憧(・・・・・昨日ずっと泣いて、気持ちの整理はちょっとだけついたけど・・・)

憧(やっぱり・・・・寂しいな・・・・でも、しょうがないよね・・・)

憧(・・・・・あーあ・・・・・・これからどうしよう・・)

憧(しず以外の人を好きになれるのかな・・・・?)

憧「あ」

憧(そういえば、今朝の占いで、運命の人がわかるとか言ってたっけ)

憧(・・・・本当かな?)

憧(いやいや、そんな訳ないよね・・・・そう上手い事いくはず・・・)

ガチャ!

憧「!?」

??「・・・・・・」

憧「あ・・・・・・え?」


憧「・・・・・・・桜子?」

桜子「あ゙ご゙ぢ゙ゃ゙ん゙だ゙あ゙あ゙ぁ゙!!」タタタ

憧「どうしてここに・・・?」

桜子「あ゙ご゙ぢ゙ゃ゙ん゙だ゙あ゙っ・・・オエェ!!」

憧「ああ・・・ほらほら無理矢理ノドを絞るから・・・そのうち吐いちゃうぞ?」

桜子「だ゙っ゙で・゙・゙・゙お゙どな゙っ゙ぽ゙い゙ぼゔが゙あ゙ご゙ぢ゙ゃ゙ん゙に゙ずがれ゙る゙っ゙で・・・オエェエ!!」

憧「それでそんな風にしてたの?」

桜子「ぞゔ」

憧「そんな理由だったんだ・・・・・あ」

憧(もしかして・・・あたしの運命の相手って・・・桜子?)

桜子「゙゙゙゙」

憧「プッ!」

桜子「?゙」


憧「あははははははは!」

桜子「ど゙ぼ゙じ゙だ゙ど゙?」

憧「ごめんごめん!意外過ぎてなんかおっかしくて!」ヒー..

桜子「゙」゙

憧「ふう・・・それで?どうしてここに?」

桜子「あ゙ご゙ぢ゙ゃ゙ん゙・゙・゙・゙あ゙ざみ゙が゙げ゙だ゙ら゙、゙げ゙ん゙ぎ゙な゙ざ゙ぞ゙ゔだ゙っ゙だ゙が゙ら゙っ゙・・・ヴォエェ!」

憧「あ・・・」

憧(そっか・・・・)

憧「心配してくれたんだ・・・ありがとね」

桜子「ヴ゙ン゙!゙」


憧「あれ?・・・・桜子、インハイ前より背伸びた?」

桜子「ぢ゙ょ゙っ゙ど゙だ゙げ゙」

憧「最初に会った時は小さかったのにねー」

桜子「あ゙ご゙ぢ゙ゃ゙ん゙も゙!゙」

憧「あはは、そうだったねー・・・・あ」

憧「・・・・・・そうか」

桜子「?゙」

憧(時間が経てば・・・色々変化するんだ・・・身長も・・・人間関係も・・・)

憧(あたしとしずが別々の学校に行って・・・和が転校していったように)

憧(これからも・・・そうやって・・・変わっていくんだ・・・)

憧(でも・・・悪い事ばかりじゃない・・・阿知賀でみんな一緒に全国へ行って・・・・和と再会して・・・)

憧(・・・・今回の・・・失恋も・・・あとで振り返れば・・いい事だったって思えるのかな・・・?)


桜子「あ゙ご゙ぢ゙ゃ゙ん゙?゙」

憧「あ、ごめんごめん」

憧(今は・・・まだわかんないしけど・・・・でも・・・)

憧(いつかきっと・・・答えが出る気がする・・・)

憧(その時まで・・・・)グッ!

桜子「?゙」

憧「よおおし!!」

桜子「わ゙」ビグッ゙

憧「頑張るぞぉぉーーー!!」

桜子「お゙ー゙ー゙ー゙っ?オヴォエェエェエエエエエエ!!!!」ヴォロロロ!

憧「ぎゃー!」

【終わり】


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