ほむら「闇の書……?」(423)

マミ「2人とも、お疲れ様。と言っても、今日もパトロールしかしてないけどね」

まどか「いえ、お疲れ様です!」

さやか「けどなんか最近、魔女も使い魔も全然出てこないですね。せっかくの魔法少女体験コースなのにー」

マミ「そうね……。でも魔女が出ないのは平和で良いことなんだから、喜ばなくっちゃ。
   それじゃ、今日はもう解散で良いわね?また明日ね」

まどか「はい、さよならマミさん!」

さやか「また明日もお願いしますねー!」

2人と別れ、1人帰路につく。

最近は前に比べて明らかに町が平和になってる。
理由は分からないけど、美樹さんの言ってた通り魔女どころか使い魔もあまり現れていない。
それはとても良いことだし、グリーフシードも必要最低限は確保できてるから、何も問題はない。

鹿目さんと美樹さんに魔法少女の戦いを見せてあげられないのはちょっとだけ残念だけど……。
でも、できればこのままずっと、平和が続いてくれれば……。

  「見つけた、魔力反応。……封鎖領域、展開」

  「Gefangnis der Magie(魔力封鎖)」

マミ「ッ!?」

この感じ……結界……!?
いや、違う!
よく似てるけど、私の知ってる結界とは違う……!
使い魔の結界でも、魔女の結界でもない。
これは、一体……え?

何かが、飛んで……鉄球!?

マミ「くっ……!」

危ない、なんとか避けられ……

ヴィータ「テートリヒ・シュラァアアアク!!」

マミ「なっ……!?」

ヴィータ「……ちっ!避けやがった!」

マミ「いきなり襲い掛かって来るなんて……小さいのにずいぶん好戦的なのね」

それにしてもあの子、ずっと空を飛んでる。
空中であんなに速い動きが出来るなんて……それがあの子の魔法の特性……?
それとも……

アイゼン「Schwalbefliegen(シュワルベ・フリーゲン)」

マミ「!」

やっぱりさっきの鉄球、あの子の魔法で……!

ヴィータ「だぁりゃあああ!!」

マミ「……!考える時間はくれないみたいね!」

でもこの程度の球速なら!
マスケット銃を召喚、狙いを定めて……

ヴィータ「っ……!」

マミ「撃ち落してしまえば良いだけのこと、よね?」

マミ「今度はこっちの番!」

今度はさっきよりもたくさんの銃を召喚して……。
可哀想だけど、相手も魔法少女。
手加減なんて、するわけにはいかない!

ヴィータ「!あのデバイス……。あのタイプの魔力弾、速さはあるけど……。
     狙いをつけられなきゃ、意味ねーだろ!高速機動でかわすぞ、アイゼン!」

アイゼン「Jawohl(了解)」

マミ「……!」

速い……!
あのスピードで、しかも空中を飛び回られたら……!

……それなら!

ヴィータ「ぅうおりゃぁああああ!」

マミ「……レガーレ・ヴァスタアリア!」

ヴィータ「なっ!ば、バインド!?いつの間に……!」

マミ「悔しいけれど、あなたの動きにはとても付いていけないもの。
  だから近付いてくる時を狙って、拘束魔法を仕掛けておいたの」

ヴィータ「……っのやろ……!」

マミ「今なら許してあげるわ。大人しくこの町から出て行って。
  それと、出来ればもう縄張り争いなんて真似はやめて欲しいな」

ヴィータ「あぁ?縄張り争い?何言ってんだよてめぇ」

マミ「え……ッ!?」

ほんの一瞬困惑したその時。
私の拘束魔法が、突然切れ……いや、斬られた!?

マミ「そんな……!」

シグナム「はぁああ!!」

マミ「あぐぅ!?」

シグナム「……どうしたヴィータ、油断でもしたか」

ヴィータ「うっせぇよ!こっから逆転するトコだったんだよ!」

シグナム「そうか、それはすまなかったな」

ヴィータ「っていうか、あいつ大丈夫なのかよ?思い切り叩っ斬ってたけど」

シグナム「案ずるな、手加減はした。死にはしていないはずさ。もっとも、意識は……」

マミ「くっ……!」

ヴィータ「意識は……なんだって?」

シグナム「……驚いたな。確かに直撃したと思ったのだが。それも無傷とは」

マミ「まさか……2人組だったなんてね……」

さすがに分が悪すぎる。
それに、治療に魔力を使いすぎた。
このまま戦いが長引けば、すぐにソウルジェムが濁って魔法が使えなく……。

シグナム「見たところ、奴は空戦魔導師ではなさそうだ。
     あのデバイスの魔力弾は、速度はあるが操作性は無い。
     高速機動を続けて距離を保って戦えば……」

ヴィータ「わかってるっての!さっきのはちょっとミスっただけだ!」

シグナム「分かっているなら良いんだ。では……」

マミ「っ……!」

彼女たちが構え、私も構えた……次の瞬間。

ほむら「動かないで」

シグナム「!?」

ヴィータ「……!こいつ、いつの間に!?」

マミ「あ、暁美さん!?」

ヴィータ「こんなに近付かれるまでまったく気付かねぇなんて……!」

シグナム「転送魔法……違うな。それならそれなりの魔力反応があって良いはずだ。こいつの魔法は……」

ほむら「このところ魔女や使い魔の出没頻度が低いと思ったら……あなたたちが狩ってたのね。
    目的は何?この縄張りが欲しいと言うのなら、できるだけ穏便に済ませたいのだけど」

シグナム「答える義理はないな。我らの邪魔をするというのなら……容赦はせん!」

ほむら「っ!」

 カチッ

ほむら「……突然攻撃してくるなんてね」

マミ「あ、暁美さん……」

ヴィータ「おい!あいつら、一瞬であんなとこに……!」

シグナム「……短距離瞬間移動、ショートジャンプか?
     だとすれば、いつどこから攻撃されるか分からん。ヴィータ、全方位からの攻撃に備えろ」

ヴィータ「いちいち指図すんじゃねぇよ!アイゼン!」

アイゼン「 Panzerhindernis」

シグナム「レヴァンティン」

レヴァンティン「Panzergeist!」

ほむら「あまり気は乗らないけど……仕方ないわね」

時間を止めて、両手両脚を一度に撃ち抜いて動きを止める。
魔法少女なら死にもしないし、出来ればそれで戦意喪失してくれれば良いんだけど……。

 カチッ

ほむら「…………」

抵抗できない魔法少女に攻撃するのは気が引けるけど……。
でも、これで終わり。
2人の両手両脚、全8発。
すべて命中させた。

それを確認し、止めた時間を再び動かす。
……が。

ほむら「……えっ!?」

シグナム「死角からの攻撃、やはりそう来たか。それに、この攻撃……瞬間移動ではないな」

ヴィータ「こいつまさか、時間を……」

マミ「えっ、何?今、何が……!?」

ほむら「そんな……」

確かに全弾命中したはずなのに……全て弾かれた!?

シグナム「すまないな。確かにお前の魔法は強力だ。
     しかし……その程度の攻撃で貫けるほど、ベルカの装甲は薄くはない」

ヴィータ「おい、シグナム。もう良いだろ?少し時間を食いすぎだ」

シグナム「あぁ。未知の魔法だったものでな、少し興味が湧いた……悪い癖だ。
     だが、そろそろ終わらせることにしよう」

ほむら「っ……!」

シグナム「レヴァンティン、カートリッジロード」

レヴァンティン「Explosion!」

ヴィータ「行くぞ、アイゼン!」

アイゼン「Raketenform」

シグナム「紫電……一閃!!」

ほむら「っ……うあぁあああッ!?」

ヴィータ「ラケーテンハンマぁああああ!!」

マミ「きゃぁあああああッ!!」

ほむら「っ……く、はっ……」

マミ「ぁ……ぅ……」

シグナム「……気を失ったようだな」

ヴィータ「ったく、手間取らせやがって」

闇の書「…………」

シグナム「あぁ、来てくれたのか。今呼ぼうとしたところだ。それでは、始めよう」

闇の書「Sammlung(蒐集)」

ほむら「あっ……ぐっ……ぁああッ……!」

マミ「ぅあ……ぁああ……!」

闇の書が光を放ち、ほむらとマミのリンカーコアが姿を現す。
……が、それはシグナムたちがいつも見ているものとは少し違っていた。

ヴィータ「おい、シグナム……。なんかこいつらのリンカーコア、変じゃねーか?」

シグナム「……これは、リンカーコアなのか……?」

そのリンカーコアは、一見すると宝石のような形をし、そして、実体があった。

そして蒐集がしばらく進んだ、その時。
シグナムとヴィータは同時に異変に気付く。

ほむら「……はっ……はっ……は…………は…………」

マミ「……は…………は…………」

シグナム「!?待て、様子がおかしい!」

ヴィータ「嘘だろ……!?こいつら、死にかけてる!!やばい!闇の書、蒐集を止めろ!!」

闇の書「Jawohl(了解)」

ほむら「は…………は…………」

ヴィータ「ッ……」

シグナム「まずい、このままでは……!」

シグナム『シャマル!聞こえるか!?』

シャマル『シグナム?どうしたの、そんなに慌てて……』

シグナム『緊急事態だ、すぐに来てくれ!ザフィーラは一緒か?』

ザフィーラ『別行動だ。こちらは交戦中だが、どうする。私も行くか?』

シグナム『あぁ、すまない。頼む』

ザフィーラ『心得た』

ヴィータ「くそっ……!どうなってんだよ、これ……!」




シャマル「っ……これは……!クラールヴィント、回復を!」

クラールヴィント「Ja(はい)」

ほむら「はっ……はっ……はぁ……はぁ……」

マミ「……すぅ……すぅ……」

シャマル「これで、危険なレベルは脱したはず……。
     それよりシグナム、ヴィータちゃん!どういうこと!?」

ザフィーラ「2人とも手加減が出来ない実力ではないはずだろう。
      それとも、それほどまでに手強い相手だったか」

ヴィータ「ちげーよ!手加減はしたって!」

シャマル「じゃあどうして……!」

シグナム「突然だった。蒐集を始めてしばらく経つと、急に……。
     原因は不明だが、この子らのリンカーコアの形状に関係しているかも知れん」

シャマル「リンカーコアの……?」

シグナム「これを見てくれ」

シャマル「……宝石……?」

ザフィーラ「!これは……」

ヴィータ「ザフィーラ、何か知ってんのか!?」

ザフィーラ「先程交戦していた相手も、これと同じものを持っていた。この2人と同年代ほどの少女だ」

シャマル「えっ!?ザフィーラ、それ本当!?」

ザフィーラ「この宝石、デバイスだとばかり思っていたが……違うらしいな」

シグナム「あぁ。どうやらこれが、この子らのリンカーコアらしい」

シャマル「そんな、実体化してるリンカーコアなんて……」

シグナム「不可解な点はもう一つ。この子らの魔力量と、蒐集で埋まった頁数がどう見ても釣り合わない。
     2人の様子から見て……蒐集によって、魔力だけでなく生命力まで奪ったとしか考えられん」

ヴィータ「こんなの、初めてだ。リンカーコアを奪ったら死んじまうなんて……」

ザフィーラ「これからは蒐集対象を慎重に選ぶ必要が出てきたか」

シャマル「そうね……。人殺しなんてしたら、はやてちゃんが……。っ!」

シグナム「どうした、シャマル」

シャマル「いけない、局の魔導師が近付いてきてる。数が多い……それに、あの子たちも」

ヴィータ「ちっ!またあいつらか!」

シグナム「ちょうど良い。この2人は管理局に任せよう。では、引き上げるぞ。
     主も我らの帰りを心待ちにしておられるはずだ」



なのは「こちら、高町なのは!現場に着きました!」

フェイト「でも、反応が……」

エイミィ『うん……また、逃げられちゃったみたい』

クロノ『だが、被害者が近くに居るはずだ。見付け次第、保護を頼む』

なのは「了解!」

ほむら「ん……。ここは……?」

目が覚めると、知らない場所に居た。
見た感じは、病室か何かに見えるけれど……。
ここは一体……

ふと視線を横にやると、そこには、

マミ「暁美さん、気が付いた?」

ほむら「……巴マミ……。一体、何が……」

マミ「ごめんなさい。私もさっき目が覚めたばかりで……」

ほむら「……そう」

マミ「あの……暁美さん?」

ほむら「何かしら」

マミ「えっと……さっきは、助けてくれてありがとう」

ほむら「……別に、お礼なんて。結局2人とも、やられてしまったのだし」

マミ「ううん、それでも私、嬉しかった。暁美さんのことずっと、敵だって思ってたから……」

ほむら「そう……誤解が解けたのなら良かったわ」

マミ「ごめんね、私……」

と、その時。
部屋のドアが開いた。

リンディ「おはよう、2人とも。気分はどう?」




リンディ「そう……あなたたちはこれを”ソウルジェム”と呼んでるのね」
    魔力の源で、魔力を使うと穢れが溜まり、魔法が使えなくなる……。
    これで“ソウルジェム”についての説明は全部?」

マミ「はい、全部だと思います」

ほむら「…………」

リンディ「…………。そう、わかったわ。ありがとう」

マミ「あ、いえ……」

リンディ「それじゃ、これからはちょっと別々にお話を聞いても良いかしら?」
    
ほむら「え……?」

リンディ「あぁ、安心して。別に尋問しようだとか、そういうことじゃないわ。
     ちょっとした世間話でもするつもりで、ね?」




リンディ「暁美、ほむらさん?」

ほむら「……はい」

リンディ「実を言うとね、あなたに一番お話を聞きたかったの。
    ただ、お友達が居ると話し辛いことがありそうだったから、
    別々にさせてもらったんだけど……。ごめんなさいね」

ほむら「いえ、気にしないでください。……それで、訊きたいことというのは?」

リンディ「……ソウルジェムのことについて。
    さっきマミさんが教えてくれたこと以外にも、あなたは何か知っているんじゃない?」

ほむら「…………」

リンディ「教えては、もらえないかしら?」

ほむら「……わかりました。私の知っていることを全て話します」

リンディ「ありがとう、助かるわ」




ほむら「……これが私の知る全てです」

リンディ「……魔法少女システム……。事態は思ったより深刻ね。マミさんはこの事は?」

ほむら「知らないはずです。と言うより、このことを知っている魔法少女は多分……私だけ」

リンディ「……でしょうね。こんなことを知って平静で居られる子なんて、そうは居ないでしょう。クロノ?」

クロノ『はい、艦長』

ほむら「!」

リンディ「今のほむらさんの話、至急調査を進められる?」

クロノ『はい、今すぐ依頼します』

リンディ「ありがとう、ごめんなさいね。ただでさえ忙しいのに。ユーノくんにも謝っておいてね」

クロノ『はい。では失礼します』

ほむら「……調査?」

リンディ「えぇ。私の考えが正しければ、これはあなたたちだけの問題じゃない。
     私たち時空管理局にとっても、大きな問題になるはずだから」




クロノ「……というわけだ。頼めるか?」

ユーノ『正直闇の書だけでかなり手一杯なんだけど……まぁ頑張ってはみるよ。
    それで?何を調べれば良いんだ?』

クロノ「すまない、助かる。第97管理外世界、特に地球の歴史と、“インキュベーター”についてだ」

ユーノ『また地球か……どうしてあそこばっかり巻き込まれるのかな。わかった、調べておくよ。
   闇の書の方も並行して調べるから、何か分かったらこっちから連絡する』

クロノ「あぁ、よろしく頼む」

エイミィ「いやー、ユーノくんには本当いつも助けてもらってばっかりだねー」

クロノ「なんだかんだで働いてくれているしな。まぁ、助かってるのは事実だ」

エイミィ「もう、素直にお礼言えば良いのに」

クロノ「そんなことより、なのはとフェイトはどうした?」

エイミィ「あぁ、あの子たちなら、巴マミちゃんのお話聞いた直後に飛んで行っちゃったよ。
     なんでも、見滝原市の近くにもう1人魔法少女が居るとかで、保護したいんだって」

クロノ「……艦長の許可は取ってあるんだろうな?無茶をしなければ良いんだが……」




杏子「うりゃあ!」

魔女「ギャア!」

杏子「へん!遅い遅い!そんじゃそろそろ終わりにするよ!」

魔女「オオオオオオオオオ!」

杏子「これでも、食らいやが……」

迫り来る魔女に、杏子がトドメの一撃を食らわせようとした、次の瞬間。
眩いほどの光が彼女の眼前に広がった。

杏子「なっ……!?」

魔女「ギャァアアアアアアア……!」

杏子「今の、砲撃……!?しかも、ハンパな威力じゃねぇ。下手すりゃマミ以上の……」

なのは「良かったぁ、大丈夫でしたか?」

なのは「あ、グリーフシードってこれかな?レイジングハート、お願い」

レイジングハート「Sealing(封印)」

なのは「これで良し、っと」

杏子「おい、てめぇ!何やってんだ!」

なのは「あ、ごめんなさい……。私、高町なのはって言います」

杏子「あん?」

なのは「えっと……佐倉、杏子さん、ですよね?」

杏子「なっ……なんであたしの名を……」

なのは「その、ちょっとお話、聞かせてくれませんか?」

杏子「待ちなよ。あんた、人の獲物横取りしといて何言っちゃってるわけさ」

なのは「えっ?」

杏子「あんたはまだガキみたいだから、ルールが分かってないようなら教えてやる。
   まずはさっきの魔女のグリーフシードをよこしな」

なのは「えっと、でもこれは……」

杏子「何よ、渡せないっての?」

なのは「その……はい」

杏子「ふん……なら仕方ないね。力ずくで渡してもらうよ!」

なのは「ふぇえ!?な、なんでそうなるの!?」

杏子「もともとそれはあたしのもんだろうが!返しやがれ!」

なのは「わっ……!」

レイジングハート「Flier fin」

杏子「っ!こいつ、空を……!」

なのは「ヴィータちゃんと言い、最近突然襲い掛かられることが多いなぁ……」

杏子「ちっ!この程度の距離で……逃げた気になってんじゃねぇよ!」

なのは「っ!槍の形が……!」

杏子「だぁりゃああ!!」

レイジングハート「Protection」

なのは「くっ……!」

杏子「くそっ、防ぎやがった!だが、なんだ今の壁みたいなの……!」

なのは「話を、聞いてください!!」

レイジングハート「Accel Shooter」

なのは「シューーート!!」

杏子「っ……!」

魔法の弾、しかもなんて数だ……!
いや、慌てるな。
数は多いが、マミの弾に比べりゃまだまだ遅い……!

杏子「くっ!」

なのは「!避けられた……!」

レイジングハート「Master」

なのは「うん、わかってる!」

杏子「へん、この程度のスピード……えっ!?」

マジかよ、追って来やがった!?
この弾、自由に動かせんのか……!

話を聞いてシュートキター

杏子「ッ……なめんじゃねぇええ!!」

周りから一斉に飛んでくる魔法の弾を、槍で全部、弾き落とす。

杏子「どうだ!あんなもん、どうってこと……。っ!?」

なのは「バインド、成功……!」

嘘だろ……拘束魔法!?
しかも発動の速さが尋常じゃねぇ……こいつ、一体……!

杏子「……くそっ」

昨日と言い今日と言い、わけわかんねぇことばっか起こるよな、ほんと。

なのは「ディバイーン……」

フェイト「なのは!待って!」

杏子「ッ!?」

なのは「フェイトちゃん!」

フェイト「もう十分だよ、なのは」

なのは「でも、バインドなんてすぐに……」

フェイト「ううん、よく見て。多分あの子たちは……魔法少女は、バインドが解けないんだ」

杏子「ぐっ、この……!くそッ!」

なのは「あ、ほんとだ……。ごめんね、ありがとうフェイトちゃん。わたし、またやりすぎちゃうトコだった」

フェイト「なのはは時々一生懸命すぎるからね。気を付けなきゃダメだよ?」

なのは「にゃはは……面目ない」

フェイト「でも……そこがなのはの良いところでもあるんだけど」

なのは「フェイトちゃん……」

杏子「おいっ!イチャついてないでさっさとこいつを解け!」

なのは「え、っと……」

杏子「安心しなって……もう暴れたりなんかしないからさ。
   あんたみたいなのを2人も相手にするなんてこっちだってごめんだ」

なのは「は、はい、わかりました。それじゃ……」

そう言ってなのはが手をかざすと、杏子の手足を拘束していたバインドはすぐに解けた。

杏子「……っと。はぁ……ったく。しかしあんたたち一体何者だい?
   あたしの知ってる魔法少女とは、なんかずいぶん違うんだけど」

フェイト「わたしたちは、自分のことを“魔導師”と呼んでいます」

杏子「魔導師?やけに大仰な名前じゃんか。ま、あれだけ強けりゃ文句も言えないけどさ……。
   それで、魔法のタイプが全然違ったことと、呼び名の違いってのは何か関係あるわけ?」

なのは「えと、その辺りのことも含めて詳しくお話ししたいので、ちょっとご同行願えますか?」

杏子「ん……あぁ、わかったよ」

なのは「それにしても、思ったより怖い人じゃなくてちょっと安心しました」

杏子「?どういうことだよ」

フェイト「とても好戦的な人だと聞いていたので……正直、ムリヤリ連行することになるかと」

杏子「ふん……。あたしは勝ち目のない戦いはしない主義なんでね。
   あそこで一時退却って手もあったんだが、
   それよりあんた達に付いていった方が得策だと思ったからさ。
   っつーか、誰にあたしのこと聞いたんだよ……まさか、巴マミか?」

なのは「えっ、どうして分かったんですか?」

杏子「あたしのこと知ってるのなんて、マミの奴くらいだよ。ったく、余計なことばっか言いやがって」




なのは「着きました。これがアースラです」

杏子「今度は瞬間移動かよ……。もう大して驚きもしないけどさ」

フェイト「でも長距離の転送魔法はそんなに簡単なことじゃないんですよ?
     個人で発動しようと思ったら儀式と詠唱にもそれなりに……」

杏子「あーわかったわかった!ただでさえ、ここまで着く間に次元世界だとかなんとか
   色々聞かされて頭痛ぇんだ。これ以上あんまりたくさん聞かされたら混乱しちまうっての」

フェイト「ご、ごめんなさい……」

なのは「えっと、この部屋の中にみんな居るはずです」

杏子「ん……うわ、マジだよ」

マミ「佐倉さん……!良かった、無事だったのね!」

杏子「あー、うん。まぁ、おかげさまでね」

マミ「私たちが襲われたんだから、もしかしたら佐倉さんも……って心配してたのよ?」

杏子「あぁ、ここに来るまでに大体話は聞いたよ。
   多分……あたしもそいつらの仲間に会ってるぜ。あんたが襲われたのと同じくらいの時間だと思う」

マミ「えっ?そ、そうなの!?」

杏子「あぁ。初めは狼の姿をした魔女かと思ったが、言葉も話すし、しかも人間に変身しやがった。
   決着がつく前に、そいつの方がどっか行っちまったけどさ」

ほむら「…………」

杏子「ところでさ、マミ。さっきから気になってたんだが、そいつは?
   見たところ、あたしら側っぽいんだけど?」

ほむら「……初めまして」

リンディ「その辺りも含めて、色々お話しないとね。
     なのはさん、フェイトさん、お疲れ様。2人とも、しばらく休んでて?」

フェイト「あ、はい。わかりました。行こう、なのは」

なのは「うん。それじゃ、失礼します」

リンディ「……さてと、何から説明しようかしら……」




リンディ「……と、こんな感じの説明で、大丈夫かしら。ちょっと情報量が多いかも知れないけど……」

ほむら「守護騎士、ヴォルケンリッター……」

マミ「それに闇の書……どれもこれも、聞いたことのない話ばかりね」

杏子「あー……頭痛くなってきた……」

リンディ「守護騎士の行動範囲から考えて、闇の書の主はそう遠くないところに居るのは確実なんだけど……」

クロノ「どうにも掴めないというのが現状だ。それに、まだ闇の書に関しても情報が少なすぎる」

杏子「んじゃーあれか。今わかってんのは、
   ページ蒐集のためにそいつらが魔女を狩って、あたしたちを襲いやがったってことくらいか」

リンディ「そうなるわね。闇の書が完成すればどうなるのか……それもまだ調査中」

ほむら「…………」

クロノ「それで、これからのことなんだが……管理局の立場的には、あまり民間人を巻き込むわけにはいかない。
    この件は僕たちに任せて、君たちにはまた今まで通りの生活に戻って欲しいというのが本音だ」

マミ「えっ……でも……」

クロノ「……けど、実はそうも言ってられなくなった。君たち魔法少女と、僕たち魔導師の違い……。
    まだ予想の域を出ないんだが、これはきっと管理局にとってもかなり重要なことになる。
    そういうわけで、あくまで闇の書関連とは別件として、君たちには協力を依頼したい。
    魔法少女のメカニズムの解明に、協力してはくれないか?」

ほむら「……!」

管理局の人間には、魔法少女について私の知る全てを話した。
祈りと契約、肉体と魂の分離、魔女化と感情エネルギー、インキュベーターの目的……。
その上でのこの提案……。
彼らなら、魔法少女システムの現状そのものに何か大きな変化をもたらすことができるかも知れない。
……賭ける価値はあるかも知れないわね。

ほむら「わかったわ。出来る限り協力しましょう」

マミ「暁美さん……。なら、私も協力させてください」

クロノ「そうか、助かるよ。……君は?」

杏子「……確かにあんたたちとの違いには興味あるが……。
   あたしたちはあんたたちと違ってグリーフシードがないとどうにもならないんだ。
   協力に時間割いてる間にソウルジェムが濁ってきちまうよ」

リンディ「そのことなら心配しないで。グリーフシードの回収はこちらでやらせてもらうわ。
     ソウルジェムの穢れは、そのグリーフシードを使ってちょうだい」

マミ「……!そこまでしてくれるなんて……!」

杏子「ふーん……そういうことならまぁ良いか。
   わかった、協力するよ。さっきも言った通り、あたしも興味あるしね」

学校

女生徒「えっ、巴さん?巴さんなら今日は欠席だけど……」

さやか「あ、そうでしたか……」

まどか「わかりました……ありがとうございます」

さやか「うーん、マミさんが居ないとなると、今日の魔法少女体験コースはお休みだね」

まどか「そうだね……大丈夫かなぁ……」

さやか「あっそうだ。今日の放課後、マミさんの家にお見舞いに行ってみようよ!ケーキか何か持ってさ」

まどか「あ、うん!マミさん、喜んでくれるかな?」




マミ宅

 ピーンポーン

まどか「……出ないね」

さやか「居ないのかなぁ?ノックしてもしもーし……。マミさーん?居ませんかー?マーミさーん」

まどか「さ、さやかちゃん、近所迷惑だよ。それに、もしかしたら体調悪くて寝てるのかもしれないし……」

さやか「あ、そっか……。うーん、大丈夫かなぁ」

QB「マミのことが心配なのかい?」

まどか「あれ、キュゥべえ!マミさんと一緒じゃなかったの?」

さやか「学校にも居なかったし、てっきりマミさんのとこに居たのかと……」

QB「それがね、実は今、少し厄介なことになってるんだ」

まどか「え……?」

QB「マミが昨日の夜から姿を消してるんだよ。今日1日中探してみたけれど、魔力反応すら見当たらない」

さやか「う、うそっ!?なんで……!」

QB「それだけじゃない。今日、君たちのクラスメイトにも1人、欠席者が居たんじゃないかな?」

まどか「もしかして……ほむらちゃん!?」

さやか「でも、転校生の欠席とマミさんの失踪になんの関係が……まさか転校生も?」

QB「うん。マミだけじゃない、暁美ほむらもまったく行方が掴めないんだ」

さやか「もしかして……転校生の奴が、マミさんを……!」

まどか「さ、さやかちゃん……それは流石に……」

さやか「だって、あいつマミさんの敵なんでしょ!?転校生がきっと……」

ほむら「私がどうかしたのかしら」

まどか「っ!?ほ、ほむらちゃん!?」

さやか「っ……転校生!あんた、マミさんをどこに……!」

マミ「あら?鹿目さんに美樹さん……どうしたの?そんなに大きな声を出して……」

さやか「ま、マミさん!?」

まどか「よ、良かったぁ……2人とも無事だったんですね!」

QB「でも、どうして2人が一緒に居るんだい?君たちは敵対していたはずだろう?」

マミ「まぁ、最初はね。でも今はもう違うわ。私がこの子のこと誤解してたみたい」

ほむら「そういうこと。出来ればあなたの誤解もついでに解ければ良いんだけど、美樹さん?」

さやか「うっ……。じゃ、じゃあ何?
    あんたは、別にマミさんの敵でもないし、どうにかしようとも思ってないと……」

ほむら「えぇ」

さやか「……わ、悪かったよ。ごめん……」

ほむら「気にしないで。誤解させるような態度を取っていた私も悪かったのだし」

QB「それで、マミにほむら。君たちは今までどこに居たんだい?ずいぶん探したんだけどな」

マミ「えっとね、ちょっと厄介な魔女が居て、2人でその魔女と戦ってたの」

ほむら「結界の中に居たから見付からないのも無理はないわ」

まどか「そ、そんなに長い間!?」

さやか「2人とも、平気なの……?」

マミ「えぇ、大丈夫よ。見ての通り!」

ほむら「無駄に時間をかけてしまったというだけ。心配しなくても平気よ」

まどか「そ、そうなんだ。だったら、良いんだけど……」

QB「…………」

マミ「あ、それから……鹿目さん、美樹さん。
  魔法少女体験のことなんだけど……やっぱり、やめにしようと思うの」

さやか「えっ……!」

まどか「その……どうして……?」

マミ「ほら、今回みたいに、1日中魔女の結界で戦い続けるっていうことになったりしたら……」

まどか「あ……」

マミ「だから……ごめんね。契約のことは、また自分たちで、よく考えてね?」

さやか「は……はい。わかりました……」

マミ「それじゃ、今日はもう遅いから、2人とも帰った方が良いわ。
  私のことを心配して来てくれてたのよね?ありがとう」

まどか「あ、いえ。それじゃ、マミさん……」

さやか「今まで魔女退治に付き合わせてくれて……ありがとうございました」

マミ「……また今度、魔女退治とは関係なく、お茶会でも開きましょうね。それじゃ、またね」




八神家

ヴィータ「はやて、ただいまー!」

はやて「おかえり、ヴィータ。あ、今日はみんな一緒か?」

シグナム「申し訳ありません、主はやて。遅くなりました」

シャマル「ごめんなさぁい、はやてちゃん!」

はやて「えぇよそんな、気にせんとって?それより、ちょうど今ご飯の支度できたとこや。
    みんなお腹空いてるやろ?はよ手ー洗ってうがいして、みんなで食べよ!」

ヴィータ「うん!わかった!」

はやて「それじゃ、手を合わせて。いただきます」

ヴィータ「いっただっきまーす!」

シグナム「こらヴィータ。いつも言っているだろう。もう少し落ち着いて食え」

ヴィータ「うっせーな!こんな美味しいご飯、落ち着いてなんて食えるわけねーだろ!」

シャマル「もう、ヴィータちゃんってば。ごめんなさいね、はやてちゃん」

はやて「あはは、えーよ。ヴィータはいっつも美味しそうに食べてくれるから作り甲斐があるなぁ」

ヴィータ「えへへー」

はやて「あ、そやそや。今日はみんなに言わなあかんことがあるんやった!」

ヴィータ「?何、どうしたの?」

はやて「いや、それがな?さっき石田先生から電話があって、今週末からちょっとの間、病院が移るんやって。
    難しいことはあたしにはよぉ分からへんけど、検査のために入院も必要やとか」

シャマル「えっ!?入院って……」

はやて「あ、心配せんでえぇよ!別の治療法を検討するためにちょっとの間入院するだけみたいやし。
    ほんで、詳しいことは明日また直接病院で教えてくれるんやって」

シグナム「そう、ですか。石田先生の仰ることなら間違いはないのでしょうが……やはり少し……」

ヴィータ「はやて、大丈夫……?」

はやて「あはは、もう、みんな心配性やね。平気やよ!」

翌日

まどか「あ、おはよう、ほむらちゃん」

さやか「お、おはよう!えっと……ほむら」

ほむら「おはよう」

さやか「き、今日も良い天気だねー!調子はどお!?」

ほむら「?別に、いつも通りよ。と言うか、曇っててあまり良い天気とは言えないと思うけど」

さやか「あ、あはは!そっか!そうだよねー、ごめんごめん!」

ほむら「……?」

まどか「えっとね、ほむらちゃん。さやかちゃん、今までほむらちゃんのこと誤解してたからって、
    仲良くなろうとして一生懸命なの。だからちょっとこんな感じになっちゃってて……」

さやか「ま、まどかー!そういうことココで言っちゃう!?余計恥ずかしいでしょうが!」

ほむら「……そうだ、美樹さん。ちょっとお願いがあるんだけど、聞いてもらえるかしら」

さやか「へっ?お……おう!なんでも言ってくれたまえー!」

ほむら「今日の放課後、私も上条くんのお見舞いに付き添っても良い?転校生として、挨拶しておきたくて」

さやか「あ、そっか。まだ恭介と会ったことないんだもんね。良いよ、それじゃみんなで行こう!」

ほむら「ありがとう」

……今回はこの子とそれなりに友好な関係を築けそうね。
これで契約を止められる可能性が少しでも上がると良いのだけど。

病院

ほむら「――よろしくね、上条くん」

恭介「うん、よろしく、暁美さん。それにしても、転校生が来たなんて知らなかったなぁ。
   さやかも教えてくれれば良かったのに」

まどか「へっ?さやかちゃん、言ってなかったんだ」

さやか「あ、いやー、まぁ、ね。あはははは!」

ほむら「ところで上条くん、怪我の具合はどう?」

恭介「うん、今日はちょっと調子が良いみたいなんだ。まぁ、治るにはもうちょっとかかりそうだけどね」

ほむら「……そう」

さやか「早く治して、また一緒に学校行こう!せっかくこんな美人の転校生も居るんだしさ!」

恭介「あはは、そうだね。早く学校でみんなに会いたいよ」

……見たところ、上条恭介の精神状態は悪くない。
この様子なら、もう少しは大丈夫か。

数日後

さやか「ん~!今日も学校終わり!さて、帰りますか!」

まどか「ほむらちゃーん、帰ろー!」

ほむら「あ……ごめんなさい、今日はちょっと」

仁美「あら?何か御用事ですの?」

ほむら「えぇ、家の用事が」

さやか「む、そっか。用事ってんなら仕方ないね」

まどか「だね……。それじゃ、また明日ね、ほむらちゃん!」

ほむら「えぇ、また明日」




マミ「あ、暁美さん!待ってたわ」

杏子「よぉ」

ほむら「遅くなってごめんなさい。……それで、どうしたの?」

クロノ「突然集まってもらって済まないな。魔法少女のメカニズムの件だ。
   君たちの魔力運用のプロセスを調べるためにデータが必要なんだが、協力してもらえるか?」

杏子「データねぇ。それは良いが、何すりゃ良いの?」

クロノ「君たちの戦闘での魔法の使い方をデータとして回収させてもらいたい……つまり、模擬戦だ」

ほむら「模擬戦……」

杏子「へぇ、面白そうじゃん。それで、相手は誰だよ?あたしら同士でやれば良いのか?」

クロノ「そのことなんだが、君たちに決めてもらっても良いか?」

マミ「私たちに……?」

クロノ「本当なら、僕たち魔導師と比較しながらデータを集めたほうが……
    つまり、魔導師を相手に模擬戦を行った方が効率が良いと言えば良いんだが。
    しかし、あまりに実力差がありすぎると効率云々の問題より、そもそも模擬戦になるかどうかが……」

杏子「ちょっと待ちなよ……。つまり何?
   魔導師相手だとあたしらが弱すぎて話にならないから、どうするかこっちで選べっての?」

クロノ「言い方は悪いが……まぁ、その可能性を懸念してのことだ」

杏子「うぜぇ……超むかつく!良いよ、やってやろうじゃん!話にならないかどうか、確かめてみろってんだ!」

マミ「そうね、さすがに今のはちょーっと傷付いちゃったかな」

ほむら「私は別に……だけど、選ぶなら効率の良い方を選びたいわね」

クロノ「そうか、なら決まりだな」

クロノ「なのは、フェイト!準備は良いか?」

なのは『じ、準備は良いんだけど……非常に戦いづらいと言いますか……』

フェイト『クロノ、言い方がきついよ……。な、なんであんなに怒らせちゃうの』

クロノ「ん、そうだったか?まぁ、君たちなら負けることはないだろう。だが目的はあくまでデータ収集だ。
   勝ち負けよりも、彼女たちの力を引き出すことに重点を置いて戦ってくれ」

フェイト『もう、他人事だと思って……』

なのは『と、とにかく頑張ろう、フェイトちゃん!』

クロノ「そういうわけだ。君たち魔法少女には、なのはとフェイトの2人を相手にしてもらう。依存はないな」

ほむら「えぇ、問題ないわ」

杏子「っしゃあ!やってやろうじゃん!あん時のリベンジだ!」

マミ「ベテラン魔法少女として、あんまり格好悪いとこ、見せられないものね!」




レイジングハート「Shooting Mode」

杏子「まずい!マミ、砲撃来るぞ!」

マミ「任せて!」

なのは「ディバイーン……バスターーーー!!」

マミ「ティロ・フィナーレ!!」

なのは「っ……ディバイン・バスターが、相殺された……!」

マミ「そんな、ティロ・フィナーレが効かないなんて……!」

杏子「マミ、後ろ!」

フェイト「はぁあああッ!!」

マミ「しまっ……」

ほむら「……!」

 カチッ

フェイト「!また、消え……!」

バルディッシュ「Protection」

フェイト「っ!やっぱり来た、死角からの攻撃……!」

ほむら「……!また、あのバリア……」

マミ「あ、ありがとう、暁美さん」

杏子「おい、どうする!あいつらの防御、相当固いぞ……!」

なのは「フェイトちゃん、大丈夫!?」

フェイト「うん。……時間を止めての回避と、攻撃。
    攻撃の方はあらかじめ死角に注意してれば防げるけど……厄介だね」




エイミィ「クロノくん、どう?」

クロノ「正直、驚いたよ。魔力の基本構造から言って戦力は魔導師側がかなり上のはずなんだが、
    思ったよりずっと良い勝負になってる。だけど……」

杏子「く、っそ……!」

マミ「攻撃が、全然通用しない……!」

ほむらたち魔法少女よりも、なのはたちは圧倒的に多くの魔法を使える。
近接系魔法から中・長距離魔法を使え、強固な防御魔法もあれば、バインドもあり、空戦の技術もある。
魔法少女側の攻撃はほとんど通用していないけど、対して魔導師側はそういうわけじゃない。

それに、魔法少女が不利な理由はもう1つ……。

クロノ「ここまで、だな」

エイミィ「……だね」

クロノ『5人とも、そこまでだ!これで模擬戦を終了する!』

フェイト「えっ?でも、まだ勝負は……」

杏子「なんでだよ!まだあたしたちは負けちゃいねぇぞ!」

なのは「く、クロノくん!最後までやらせてもらえないかな……?」

クロノ『僕だってそうしたいのはやまやまだ。お互いまだ余力はあるだろうが……
   ソウルジェムの方はそうも行かないだろう?』

マミ「っ……!」

杏子「な、なんてことねぇよ!このくらいならまだ……!」

クロノ『このまま続けても、魔法少女の君たちだけ一方的にパフォーマンスが落ちていくだけだ。
    それに、万が一にでもソウルジェムを濁りきらせるわけにはいかないしね』

ほむら「……そうね。彼の言う通り。残念だけど、ここで終わりにしましょう」

なのは「その……ありがとうございました。3人とも、すごく強かったです!」

杏子「あん?なんだよ、あんたに言われても全然そうは思えないっつーの。結局、手も足も出なかったしさ」

フェイト「いえ、そんなことありません。私たちの方がずっと有利なはずなのに……。
    かなり危なかった場面も何度もありました。きっと、すごく経験を積んでるんですね」

マミ「ふふっ、ありがとう。素直に褒め言葉として受け取っておくわね」

ほむら「それで、データは取れたの?」

クロノ「あぁ、予想以上に良い戦いをしてくれたおかげで、十分な量のデータが集まった。
    協力感謝する。これで、魔法少女のメカニズムの解明もずいぶん進むはずだ」

ほむら「そう、良かった」

杏子「あのさ、どーでも良いことなんだけど、ちょっと訊いて良いかい?」

なのは「はい?なんでしょう」

杏子「あんたら魔導師ってさ……みんな技名とか普通に叫んじゃうわけ?」

ほむら「……言われてみればさっきの模擬戦、巴さんがまったく違和感なかったわね」

マミ「あの……それって、普段は違和感だらけってこと?」

ほむら「えぇ、まぁ……」

マミ「もう……どうしてみんな分かってくれないのかしら」

マミ「ちなみに高町さんたちはどうして技名を叫ぶの?もしかして、叫ばないと魔法が使えないとか」

なのは「いえ、そんなことはないんですけど……。言われてみればどうしてだろ?」

フェイト「その方がカッコイイから……かな?リニスも、勢いは大事だって言ってたし」

マミ「まぁ……!ほら、ね!佐倉さん!
  この子達はちゃんと分かってくれてるわ!やっぱり気分は大事だものね!」

杏子「おいフェイト、この馬鹿……!
   余計なこと言うなっての!マミのやつが調子乗っちゃうじゃんか!」

フェイト「えっ?あ、ご、ごめんなさい……?」




仁美「ではお2人とも、失礼しますわ」

まどか「うん。じゃあね、仁美ちゃん」

さやか「お稽古がんばってくれたまえー」

まどか「……それじゃ、行こっか。今日もお見舞いだよね?」

さやか「うん、悪いね。付き合わせちゃってさ」

まどか「良いよ良いよ。さ、行こっ。上条くん、きっとさやかちゃんのこと待ってるよ!」

さやか「なっ、何変なこと言ってんのよ、もう!」

まどか「えへへ……ん?」

さやか「?何、どうかした?」

まどか「さやかちゃん、あの人たち、どうしたのかな……?」

さやか「へっ?……あー、ほんとだ。キョロキョロして……迷子か何かかな」

まどか「だったら、声かけてみようよ!もしかしたら案内できるかもしれないし」

さやか「ん、そうだね。行ってみよう」

はやて「あかん……完全に迷子や。
    やっぱりお言葉に甘えて車でお迎えに来てもらった方が良かったかもなぁ」

シグナム「すみません、我々がついていながら……」

シャマル「はやてちゃん、大丈夫ですか?お日様に当たりすぎてない?」

はやて「うん、それは全然平気や。それより、みんなの方こそ平気か?歩き疲れてへん?」

ヴィータ「全然へーき!はやてが居るもん!」

はやて「あはは、ありがとうなー。でも実際問題、どないしよか。病院かタクシーにでも電話して……」

さやか「あのー、どうかしたんですか?」

まどか「その……何か、お手伝いできませんか?」

はやて「あ、すみません。ちょっと道に迷ってもーて……。えっと、総合病院を探してるんですけど……」

さやか「あ、やっぱり!車椅子でキョロキョロしてるからそうだと思ったんだよ」

まどか「わたしたち、これから病院に行くところだったんです。良かったら案内しましょうか?」

はやて「わ、ほんまですか!ありがとうございます!」

シャマル「良かったぁ、ありがとうございます」

シグナム「すみません、助かります」

はやて「ほら、ヴィータもお礼言わな」

ヴィータ「あ、ありがとうございます!」

さやか「あはは、どういたしまして。それじゃ、行きますか!」




さやか「いやー、はやては偉いなぁ。その歳で読書好きとは」

はやて「そんなことあらへんよ。暇やからたくさん読むってだけや?」

さやか「いやいや、あたしなんか暇があっても寝るかマンガ読むかくらいで……」

まどか「ヴィータちゃん、わたしアメ持ってるんだ。食べる?」

ヴィータ「うん!食べる!」

まどか「えへへ。はい、どうぞ」

ヴィータ「ありがと、なのは!」

まどか「どういたしまして!あ、良かったらはやてちゃんもどうぞ」

はやて「えぇの?ほんなら、いただこか。ありがとうな、まどかちゃん」




さやか「はい、着きましたっと」

はやて「ほんまありがとうな、2人とも」

シグナム「すみません、車椅子まで押してもらって」

まどか「いえっ、良いんですそんな、気にしないでください」

シャマル「本当に、助かりました」

さやか「それじゃ、はやて。明日からお見舞い行くね!しばらくはこっちに居るんでしょ?」

はやて「わ、ほんまか?嬉しいなぁ。楽しみに待っとるよ!
    ……ほなあたしたち、そろそろ行かな。
    迷子のおかげで、お医者さん随分待たせてもーとるし。2人とも、またなー」

まどか「うん、じゃあね!」

はやて「いやぁ、まさかこんなところでお友達ができるなんて予想外や。
    さやかちゃんもまどかちゃんも年上やのに、
    あたしとヴィータに気ー遣わせへんようにしてくれたし。
    あはは、なんや、逆にこっちが気ー遣わせたみたいやね」

シャマル「2人とも、明るくて優しそうな良い子でしたね」

シグナム「主が良いご友人に恵まれて何よりです」

ヴィータ「2人とも、また会えるんだよね?」

はやて「そやねー。お見舞い来てくれる言うてたし、守護騎士のみんなも来てくれるんなら、
    慣れへん病院でもあんまり退屈せずに済みそうや。実はその辺、ちょっと心配してたんやけどな。
    それより今は……みんなのご飯の方が心配や」

シグナム「うっ……それは、まぁ、頑張ります」

シャマル「大丈夫、任せてください!張り切っちゃいますから!」

ヴィータ「やめろ、お前は張り切るなシャマル」

翌日、放課後

さやか「ほーむらっ。今日は用事あったりしない?」

まどか「一緒に病院行けるかな?」

ほむら「えぇ、大丈夫だけど」

まどか「ほんと?良かったぁ」

ほむら「……?」

さやか「実はさ、昨日知り合った子と仲良くなっちゃって。今その子、恭介と同じ病院に入院してるんだよ」

まどか「だからね、せっかくだからほむらちゃんも一緒に仲良くなりたいなって」

昨日、知り合った子……?

ほむら「……その子、名前は?」

さやか「八神はやてって言うんだけどね。あれ、もしかして知ってたりする?」

ほむら「いえ……聞いたことのない名前よ」

そう、初めて聞く名前だ。
今までの時間軸に、そんな人物は居なかった。

この時間軸の他のイレギュラーに比べれば些細なことだけど……。
やっぱり少し気になるわね。

ほむら「……じゃあ私も、その子に会ってみても良いかしら」

帰り道

さやか「そんじゃ、恭介のお見舞いに行った後、はやてに会いに行く。この流れでおっけーだよね?」

ほむら「えぇ、大丈夫」

まどか「もうすぐ病院だね!えへへ、なんだか楽しみになってきちゃった」

さやか「ははっ、そこまでテンション上がっちゃう?」

まどか「だって……あれ?ねぇさやかちゃん、アレってもしかして……」

さやか「ん……?おぉ!シグナムさんたちだ!」

シャマル「あら?まぁ、2人ともこんにちは……ッ!?」

ほむら「……!」

ヴィータ「なっ……!あの時の……むぐっ」

シグナム「やめろ、ヴィータ。こんなところで騒ぐな」

ヴィータ『っ……でも……!』

ほむら「どうして……あなたたちが」

シャマル『!良かった、まだはやてちゃんのことは知らないみたい』

シグナム『あぁ、そのようだな。しかし、このまま会話が続けばいずれ……』

ほむら「……ちょっと良いかしら」

シグナム「!……なんだ」

ほむら「あなたたちに話があるの。今、大丈夫?」

ヴィータ「……てめぇ、何考えて……」

シグナム「わかった、良いだろう」

シャマル「えっ!?し、シグナム……?」

シグナム「だが、話すのは私だけだ。お前たちは先に行っていろ」

ヴィータ「……あぁ、わかった。頼んだぞ、シグナム」

ほむら「ごめんなさい、鹿目さん、美樹さん。今日は、あの子のお見舞いには2人だけで行ってあげて。
    新しいお友達に会えないのはちょっと残念だけど、また今度にするわ。それじゃ」

まどか「あっ、行っちゃった……」

さやか「あのー……ほむらと何か?なんて言うか、妙に険悪そうだったような……」

シャマル「そ、そう?別に険悪だとかそんなことはないですよ!
     ……それより、あの子、ほむらちゃんは、はやてちゃんのこと知ってるの?」

まどか「あ、いえ。今日紹介しようと思ってたんです。
    だから、シャマルさんたちとも会ったことないと思ってたんですけど……」

ヴィータ「……そっか」

まどか「……?」

シャマル「……さ、みんな。早くはやてちゃんのお見舞いに行きましょう!待たせちゃったら悪いですからね!」




ほむら「……あなたたちのことは、時空管理局から聞いてるわ」

シグナム「そうか。では話というのは……闇の書の蒐集を止めるよう説得でもするつもりか」

ほむら「いいえ、そのつもりはないわ。むしろ、その逆と言って良い」

シグナム「何……?」

ほむら「……ワルプルギスの夜という言葉を、聞いたことがある?」

シグナム「知らんな。この世界の言葉か?」

ほむら「あなたたちがここ最近狩ってる化け物……あれを私たちは魔女と呼んでる。
    そして、ワルプルギスの夜はその魔女の中でも史上最強と呼ばれているもの。
    文字通り、桁が違うと言って良い。そいつがもうすぐ、この町にやってくる」

シグナム「……そうか。それがどうした」

ほむら「単刀直入に言うわ。あなたたちに、ワルプルギスの夜を倒すのを手伝って欲しいの」

シグナム「…………」

ほむら「私の目的はワルプルギスの夜を倒すこと。あなたたちの目的は、魔力を蒐集すること。
    ワルプルギスの夜の膨大な魔力を蒐集できれば、ページも随分埋まると思うのだけど。
    利害関係は一致する。そうでしょう?」

シグナム「……確かにな。そうかも知れん」

ほむら「良かった。それなら……」

シグナム「だが、それはできん」

ほむら「……どうして?」

シグナム「管理局の目的は、闇の書を完成させないことにある。お前のその頼みは、彼らの目的と矛盾している。
     我らがワルプルギスの夜とやらを倒すことを、局の連中は許さない」

ほむら「……確かに私たちは時空管理局と協力関係にある。
    でも、それは闇の書とは無関係。むしろ、関わるなとすら言われているわ」

シグナム「それでも、局の連中にとっては我らとお前とが接触することは好ましくないはずだ。
     まして、ワルプルギスの夜の魔力を蒐集し闇の書を完成させるなど、もっての他だろう」

ほむら「…………」

シグナム「それに、お前が管理局の回し者である可能性も否定できんしな」

ほむら「!違う、私はそんな……」

シグナム「わかってるさ。最後のは何も本気でそう思っているわけじゃない。
     だが、とにかく我らは協力できん。諦めろ」

ほむら「…………」

シグナム「お前には強力な味方が居るだろう。管理局には我らと比べても遜色ない魔導師も何人か居る。
     局の協力があれば、目的を果たすのには十分なはずだ。
     お前はお前で、為すべきことを為せ。我らもまた、為すべきことがある」

ほむら「あいつを倒すために、可能な限りの戦力を集めたかったけれど……。
    わかったわ。ごめんなさい、変なお願いをして」

シグナム「いや、こちらこそすまんな。……話は済んだか。私はもう行くぞ」

ほむら「えぇ」

シグナム「……もう二度と、戦いの場で会わないことを願っている。その時は恐らくまた、敵同士だ」




シグナム「すみません、遅れました」

はやて「あ、シグナム!なんや、まどかちゃんとさやかちゃんのお友達と話してたんやて?」

シグナム「えぇ、まぁ」

はやて「あー、楽しみやぁ。その子にもはよ会いたいなぁ。
    それからな、恭介くんって言う男の子も居るんやて!さやかちゃんの未来の旦那さんや」

さやか「ぅえっ!?ちょ、ちょっとはやて!あんた何言ってんの!?」

はやて「へっ?ちゃうかった?さやかちゃんの話しぶりから、てっきりそうやとばっかり……」

さやか「ちっ、違うに決まってんでしょぉお?そんなわけないじゃーん!あははははは!」

まどか「さやかちゃん……」




シャマル「それで、あの子の話って何だったの?」

シグナム「あぁ……我らに、協力を要請するものだった」

ザフィーラ「……話が読めんな。どういうことだ」

シグナム「ワルプルギスの夜という、かなり大型の蒐集対象を倒すのに協力して欲しいと。
     あの子の目的は、それを倒すことにあるらしい」

シャマル「それで、返事は?」

シグナム「もちろん断ったさ。あの子らが管理局と関わっている以上、
     そのワルプルギスの夜の討伐にも局の連中が絡んでくるはずだ。そんな状況下で共闘などあり得ん」

ヴィータ「だな。あたしらはあたしらで、今まで通り蒐集を続けるだけだ」

シャマル「とにかく……これからはお見舞いにも細心の注意を払わなきゃ。
     今日は運が良かったけど、もしはやてちゃんの病院で会いでもしたら……」

シグナム「あぁ。そういう意味では、今日のあの子との出会いは幸運だったかも知れんな」




はやて「……うーん、みんな帰ってもーたら、なんや一気に……」

大勢で来てくれると賑やかで楽しいんやけど、その分ひとりの時間が余計寂しなるような……。

はやて「治療やお薬は平気やけど、退屈なのはどうにもならへんなー……」

  「やぁ。こんにちは」

はやて「えっ……?」

  「八神はやてだね。今、ちょっと良いかな」

こ……声?
でも、今病室には、誰も居らへんはず……!

はやて「だ、誰?どこに居るん……?」

  「ここだよ、ここ」

はやて「!ぬ、ぬいぐるみ……?」

QB「ぬいぐるみなんかじゃないよ」

はやて「ぬ、ぬいぐるみが喋ってる!」

QB「だからぬいぐるみじゃないってば」

はやて「え、えと……あなた、誰……?」

QB「初めまして、僕の名前はキュゥべえ!」

はやて「キュゥ、べえ……えっと、あなたも、闇の書関係の何か……?」

QB「?違うよ、僕はそんなものとは関係ない。僕、君にお願いがあってきたんだ」

はやて「お願い……?」

QB「そうだよ、八神はやて。僕と契約して……魔法少女になって欲しいんだ!」




はやて「えっと、つまり、なんでも願いを叶えてもらえる代わりに、
    魔法少女になって悪い魔女から人々を守る役割を果たさなあかん……そういうこと?」

QB「そうだね。理解が早くて助かるよ」

はやて「願い事って、ほんまにどんなことでも叶うん?たとえば、あたしの脚を治してください、とかでも……?」

QB「もちろんさ。その程度、造作もないことだよ」

はやて「わ……!ほんまか!?普通の人と同じように動くようになるん!?」

QB「うん、間違いなくね。君がそう願うのなら、君の体は健康そのものになるだろう」

はやて「魔法少女になって、人様の役に立つ言うんも、悪くないし……」

QB「どうだい、心は決まったかい?」

はやて「うん、キュゥべえ!あたし決めた!あたし、魔法少女に………………」

QB「……はやて?」

はやて「……すぅ……すぅ……」

QB「……眠ってる。突然睡眠状態に陥るなんて、わけがわからないよ。
  参ったな……。しばらく起きそうにもないし、また今度出直すとしよう」

はやて「ん……あれ、あたし……?」

管制人格「……お久し振りです、我が主」

はやて「あなた……あ、そや、思い出した!確か前にも、ここで会うたことある!」

管制人格「覚えて、おいででしたか」

はやて「うん……でも、なんで忘れたんやろ」

管制人格「仕方ありません。このまどろみから目覚めれば、あなたはここでの記憶をほぼ失くしてしまいます」

はやて「あー……前も確か、そんなん言われたような……。
    いやいや、今はそんなことより。あたしはさっきまでキュゥべえと話してたはずや。
   やのに……もしかして、あなたが?なんで?」

管制人格「……申し訳ありません、我が主」

はやて「あ、ううん!別に怒ってるんちゃうんよ!ただちょっと、気になっただけや。何か理由があるんやろ?」

管制人格「……主とあの者との契約を止めるためです。あの契約には何か、おかしな物を感じます」

はやて「おかしなもの……?」

管制人格「上手くは言えませんが……。どうか我が主、あの者との契約は、よくお考えになってください。
       私に言えるのはここまでです。あとは、主の判断にすべてお任せします」

はやて「うーん……なんや、よう分からへんけど、なんとなく分かった。
    とりあえず、もうちょい色々考えてみるな」

管制人格「ありがとうございます。……突然、私の独断でこのようなご無礼を働いてしまい……。
       しかし、これも主を思うが故。どうか、ご理解くださるよう……」

はやて「ん、ありがとうな。わざわざあたしのために……」

管制人格「では、我が主。
      どうか……あなたの記憶に少しでも私の言葉が残っていることを……」

……主は、目を覚まされたようだ。
とっさに主を夢の中へと引き込んで、契約を阻止してしまったが……。
正直、私にはどうするのが正しいのか判断できない。

このままだと私はいずれ、私自身の呪いであの優しい主を殺してしまう。
闇の書が完成しようがしまいが、この運命は変えられない。

ならばいっそ……あの者との契約に頼ってしまった方が良いのではないだろうか。
得体の知れない契約ではあるが、このままでは我が主の死は免れない。
しかし、あの者と契約すれば……もしかすると、主が生き残る道が標されるかも知れない。

たとえその道の先に待つのが過酷な運命であっても、わずかながら主の生が伸びるのであれば。
束の間の安らぎを得られるのであれば……その道にすがる他ないのかも知れない。

ああ……どうか、我が主に幸福な人生を。

数日後、病院

さやか「やっほー、はやて」

まどか「こんにちは、はやてちゃん」

はやて「あ、2人ともいらっしゃ……い?」

ほむら「……こんにちは」

はやて「あ……!もしかして、暁美ほむらさんですか?」

ほむら「2人から話は聞いてるみたいね。初めまして、八神はやてさん」

さやか「いやー、ようやくお互いを紹介できたよ」

まどか「なんか最近ほむらちゃん忙しいみたいで、なかなか都合合わなくて大変だったんだよね」

はやて「えっと、暁美さんは……」

さやか「はやてー?ほむら一応あたしたちと同級生なんだし、そんなに畏まらなくても良いんじゃない?」

はやて「あ、うん……そやけど一応、初対面の年上の人には敬語が礼儀やし……。それに、とっても大人っぽい方やし」

ほむら「そう、ありがとう。でも、私は特に口調は気にしないから。好きなように話してくれて良いわ」

さやか「それにしても、やっぱりはやてしっかりしてるよね。まだ小学生だってのにそんな礼儀にまで気を遣えるなんてさ。
    時々、あたしやまどかの方が年下なんじゃないかって思っちゃうくらいよ」

まどか「えっ?わ、わたしも?」

さやか「やっぱあれ?読書量の違い?」

はやて「あはは、なんやあんまり褒められたらちょっと恥ずかしいなぁ」

まどか「その本なんて、すごく分厚いもんね。わたしなんか、最初のページで断念しちゃいそう」

そう言ったまどかの視線を、私も追う。
ベッドの向こう側のテーブルの上には、確かに分厚い本があった。

……なんだろう。
この本、何か見覚えがある。
確か、写真か何かでつい最近見たはずだ。
どこかで、最近……。

ほむら「ッ……!」

はやて「あれ?この本、確かシグナムたちが持って行ったはずやけど……忘れて行ったんやろか」

ほむら「っ……今、その人たちはどこへ……!?」

はやて「うーん、シグナムは多分、剣道の道場かなぁ。
    ヴィータはゲートボールのおじいちゃんおばあちゃんに遊んでもろうとるんやない?
    なんや最近みんな、出かけることが多なって……」

ほむら「……!」

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら「……ごめんなさい。大切な用を思い出したわ」

さやか「へっ?な、何よまた急に……」

ほむら「ごめんなさい。それじゃ、さようなら」

はやて「あっ……行ってもうた」

さやか「もー、何なのよあいつ。せっかくはやてと会えたってのにさ」

はやて「まぁまぁ、なんや焦ってたみたいやし、きっとよっぽど大切な用事やったんよ」

病院の外

ほむら『……クロノ。聞こえるかしら』

クロノ『ほむら!ちょうど良かった、今君にも連絡を取ろうと思っていたところだ』

ほむら『え……?』

クロノ『突然ですまないが、今からこちらに来てくれないか?大切な話がある』

ほむら『……えぇ、わかったわ』




はやて「ところで2人とも、今日は上条くんのお見舞いには行かへんかったん?
    いっつもよりここに来る時間、ちょお早いような気がしたんやけど」

さやか「え……っと、うん、まぁ……ね」

はやて「あ……ごめんな。聞いたらあかんことやったか……?」

さやか「あ、ううん。大丈夫。今あいつ……ちょっと精神的に参っちゃってるみたいだからさ。
    だから、なんていうか、行きづらくて……それだけだよ。だからさ、気にしないで」

まどか「さやかちゃん……」

はやて「……もし良かったら、今から会ってみてもえぇか?」

さやか「えっ……?」

はやて「ほら、あたしもその……足、動かへんやろ?そやから、ちょっと放っておけへん言うか……。
    上条くんとお話して、ちょっとでも元気づけられたらなぁ、って……」

さやか「はやて……ありがとう。わかったよ、今から会いに行ってみよう。
    前々から、ずっと会いたいって言ってたんだしね!」




さやか「……き、恭介?入るよ……?」

まどか「こんにちは……」

恭介「…………」

はやて「あの……こんにちは」

恭介「……君は……あぁ、八神さんだね」

はやて「あ、はい。そうです。八神、はやてです」

恭介「……それで?何しに来たんだい?」

はやて「その……ちょっとお話、しませんか?ずっと前から、上条くんとお話したいなーって思てて……」

恭介「…………」

さやか「え、えっと、恭介……」

恭介「…………八神さんはさ。足が動かないんだよね?」

はやて「あ……はい、そうです」

恭介「一体いつから、足が動かないんだい?」

はやて「あたしは……物心付いた時には、もう……。それからずっと、車椅子生活です」

恭介「…………。辛いとか、苦しいとか、思ったことは?」

はやて「やっぱり、治療やお薬は、ちょっぴり大変です。それに家族も居らへんしで、やっぱり生活も大変でした。
    何年か前から、ほとんど一人暮らしみたいなもんです」

まどか「え、そ、そうだったの?でも、シグナムさんたちは……」

はやて「あ、あの子らがウチに来たのはほんまに最近で……家族が増えた時は、ほんまに嬉しくて。
    車椅子生活なのは変わらへんけど、でも、今はすごく楽しいです。
    あったかい家族に囲まれて、みんなで笑って過ごせて。
    足はまだまだ動かへんけど、それでもあたしは、
    支えてくれるみんなが居てくれる今の生活が、一番幸せやって、そう思ってます」

恭介「……!」

さやか「あ、あのさ、恭介。ほら、はやてはこんなに……。だからさ、恭介も」

恭介「……八神さんは僕とは違うよ」

はやて「え……」

恭介「君は、スポーツをやったことがあるかい?
   その足で自由に外を走り回ったことや、何かの大会で賞をとったりだとか、そういう経験はあるかい?」

はやて「……あたしは……」

さやか「ちょっと、恭介……!」

恭介「ないんだろう?物心付いた時からずっとそんな状態だったんだから。
   でも、僕は違う。僕は、事故に遭うまではずっとヴァイオリンを弾いてた。
   この左手で弦を押さえて、出したい音を自由に出せる感触が、まだ頭に残ってる……。
   忘れられないんだ……!自由に指を動かせていたあの感覚を、忘れられないんだ……!
   足を動かしたことのない君とは違う!僕は、人生で一番大切だったものを失ったんだ!
   君にはこの気持ちはわからない!僕と君とは、根本的に違うんだよ!!」

さやか「ッ……!」

はやて「……ごめんなさい。何も知らへんと勝手なこと言うて」

さやか「はやて……!」

はやて「さやかちゃん、まどかちゃん、あたし、病室戻ってるな。……さよなら、上条くん」

まどか「あっ……待って、はやてちゃん!」

恭介「…………」

さやか「恭介……!今のは……酷すぎるよ……!」

さやかはそう言い残し、鹿目さんと八神さんを追いかけていった。
僕は病室に、1人残される。

恭介「……わかってるよ、さやか。わかってるんだ……」

僕は、最低な人間だ。
あんな小さな子が、あんなに強い心を持っているのを見て……僕は、すごく恥ずかしくなった。
家族の温かさ、支えてくれる人の温かさ。
僕が今まで気付かなかったことに、あんな小さな子が気付いてる。

それに気付いた瞬間、自分の小ささと弱さと愚かさに気付いた。
けど、そんなことを認めたくなくて。
それを認めたら、前さやかに酷いことを言った自分を、絶対に許せなくなるから。
さやかに酷いことを言った自分を、正当化したくて。

そして僕は、心にもない暴言を、あの強い子に叩き付けた。
僕は……最低の人間だ。

  「だったらもう、死んだ方が良いよね」

死んだ方が、良いかな……。

  「そう、死んじゃえば良いんだよ」




クロノ「すまないな、突然呼び出したりして」

ほむら「気にしないで」

フェイト「魔法少女のみんなまで呼び出すってことは……また模擬戦?」

杏子「へへっ!だったら今度こそ決着つけてやろうじゃん!」

クロノ「残念だがそうじゃない。もっと深刻な話だ」

マミ「もっと、深刻……?」

リンディ「実はね、闇の書について調べるうちに大変なことが分かったの」

なのは「えっ?でも闇の書事件は……」

杏子「あたしたちには関わって欲しくないって言ってなかったっけ?」

リンディ「それがね、そうも言ってられなくなったのよ……」

マミ「……何があったんですか?」

クロノ「それを今から説明してもらう。エイミィ、通信は?」

エイミィ「おっけー、もう繋がってるよ!ぽちっとな」

ユーノ『っ、と。ごめんみんな、わざわざ集まってもらって。
   えっと……あなたたちが例の魔法少女ですね、初めまして。ユーノ・スクライアです』

クロノ「それじゃあ急かしてすまないが、早速説明を頼む」

ユーノ『うん。今まで闇の書について調べて、分かっていなかったこと……
    闇の書が完成すれば何が起こるのかが、ようやく分かったんだ』




ユーノ『……この説明で、大体理解してもらえたかな』

ほむら「……そんな……」

闇の書が完成すれば、主は死ぬ……?
だったら、八神はやて、あの子も……。

杏子「でもさ、それって自業自得じゃないの?
   でっかい力を欲しがって、その結果が自滅だろ?同情する必要なんてないっしょ」

ほむら「違うわ」

杏子「……?何だよ急に」

ほむら「あの子は、何も知らない。力なんて、欲しがってない」

クロノ「ほむら……君は何か知ってるのか?」

ほむら「えぇ……。ついさっき、闇の書の主を見つけたの」

さっさと上条殺せ
こいつ死ねば丸く収まるわ

クロノ「なっ……!詳しく聞かせてくれ!」

ほむら「今の闇の書の主は、八神はやてという小学生の女の子よ。たぶん、高町さんたちと同じくらい。
    その子は今、病院に入院してるのだけど、病室にデータで見せてもらった闇の書と同じものがあったわ。
    それに、守護騎士の名前もはっきりと口にした。
    でも……あの子は、今守護騎士たちが何をしているのかを知らない」

フェイト「確かに守護騎士たちも、主は自分たちがやっていることについては何も知らないって、そう言ってました。
    主を救うために、自分たちが勝手にやってることだって……」

杏子「救うため……?でも闇の書完成させちまったら、主は死んじまうんだろ?」

マミ「もしかして、あの人たちは闇の書を完成させればどうなるか、何も知らないって言うこと……?」

ユーノ『多分……。そもそも、主を殺して転生を繰り返すこの状態事態、闇の書のプログラムの異常だから……
   プログラムの一部である彼らが何も覚えていなくても不思議じゃないと思う』

ほむら「ごめんなさい……私が、もっと早く気付いていれば……。
    気付くきっかけはいくらでもあったはずなのに……」

クロノ「いや、仕方ないさ……。ただでさえ、僕たちへの協力とワルプルギスの夜とのことで手一杯だったんだ。
    そんなことにまで気を回してる余裕なんてなかったはずだ。
    それに、闇の書事件に関わるなと言ったのは僕たちの方だからな……」

なのは「と、とにかく、早くシグナムさんたちに教えてあげないと!」

リンディ「そうね……今までの被害の大きさから考えて、もういつ闇の書が完成してもおかしくない。
     事態は一刻を争うわ。みんな、手分けして守護騎士たちを探して!」

マミ「あの、私たちは……?」

クロノ「すまない。勝手を言ってるのは承知なんだが、君たちにも協力して欲しい。
   マミと杏子は、ほむらの言ってた病院の周辺の捜索を頼む。
   それから……ほむら。八神はやてと面識のある君には、直接彼女に会って話をしてもらいたい」

ほむら「えぇ、わかったわ」

マミ「それじゃ、行くわよ佐倉さん!」

杏子「本当は見返りのない協力なんてゴメンだけど……まぁ管理局には色々借りがあるしね」

クロノ「すまないな、助かるよ」




はやてを病室まで送って……お互い、何も言えないで。
そのまま、まどかと2人で病院を出る。

さやか「……それじゃ、帰ろっか」

まどか「うん……そうだね」

その時、まどかがふと気付いた。

まどか「……?さやかちゃん、アレ、どうしたんだろ」

さやか「……人だかり……何かあったのかな」

見に行ってみようか、とそう言いかけたその時。

看護士1「おい、こっちだ!早く!」

看護士2「は、はい!」

……担架を持って、あんなに急いで。
そっか、きっとあの人だかりには急患の患者さんが……。

野次馬1「お、おい……あれ、本当に生きてんのか……?」

野次馬2「多分……。ちょっと、動いてたし……」

野次馬3「でも、あれじゃあもう……」

野次馬4「あれってさ……やっぱ、自殺……だよね」

まどか「え……何、なんなの……?」

さやか「分かんない……分かんないけど……」

看護士1「乗せたか!?運ぶぞ、急げ!」

患者を乗せたらしい担架を、看護士さんたちが運ぶ。
看護士さんたちは、あたしたちの横を通り……担架に乗ってる人が、はっきりと見えた。

さやか「……え?」

まどか「ッ……嘘……!」

さやか「き……恭介ぇえええッ!?」

このまま死んでくれ
下手に生きられると邪魔だからな

さやか「うそ、やだ、なんで、恭介、恭介ぇえ!!」

看護士1「っ!?君は、この子の知り合いか!?」

さやか「なんで、恭介が、恭介が……!?」

看護士2「ごめん!気持ちは分かるけど、今は離れていて!」

まどか「さ、さやかちゃん……!」

さやか「待って、恭介、恭介ぇ……!」

そんな、どうして、こんな……。
さっきまで、ついさっきまで病室に居たはずなのに……どうして……!

QB「間違いない、これは魔女の仕業だよ」

まどか「キ、キュゥべえ!」

QB「上条恭介の首を見たかい?魔女の口づけがあったよ。
  彼は魔女に魅入られてしまって、そして飛び降り自殺に及んでしまったんだ。
  もしかすると、直前の言動も魔女の呪いに影響されたものかも知れないね」

さやか「そんな……!恭介は、どうなるの!?助かるの!?」

QB「はっきり言って……もう、彼は助からない。
   木や生け垣がクッションになったみたいだけど、それでも相当な高さから落ちたんだ。
   即死を免れただけに過ぎないだろうね。上条恭介の命は、もうほぼ尽きかけている」

さやか契約しなければ死なせてやれるな
どうせクズ青は契約するんだけど

さやか「う……そ……」

まどか「も、もうダメなの!?助けられないの……!?」

QB「僕にはどうしようもないよ。でも……君たちは違う」

さやか「え……」

QB「どんな不可能も可能にする力が、君たちには備わっているだろう?」

さやか「……それって……」

QB「僕なら今すぐにでも、君たちの望みを叶えてあげられるよ」

さやか「…………恭介を、助けて」

まどか「っ……!」

さやか「恭介の怪我を治して!元通りの、元気な体にして!」

QB「それが君の願いだね。良いだろう、契約は成立だ。君の願いはエントロピーを凌駕した」

まどか「さやか、ちゃん……」

さやか「……まどか、ごめん。先に帰ってて」

まどか「え……?」

さやか「魔女、倒してくる。恭介をあんな目に遭わせた魔女を……あたしは、絶対に許さない」

QB「まだ近くに居るはずだよ。探せばすぐ見付かるだろう」

さやか「わかった、行こう」

まどか「あっ、さやかちゃん……!」



さやか「……この結界だね」

QB「うん、間違いないよ」

さやか「…………」

QB「緊張してるかい?」

さやか「まぁ、流石にね。でも、そんなこと言ってられないよ。
   こいつは、恭介を殺そうとしたんだ。絶対に倒してやる……!」

ホント馬鹿

QB「張り切るのは構わないけど、冷静にならないと駄目だよ?君が死んでしまったら元も子もないからね」

さやか「分かってるって!負けたりなんか、するもんか!」

QB「それはそうと、もうすぐ最深部……っ!」

さやか「キュゥべえ?」

QB「……どうやら、先客が居るみたいだね」

さやか「え……?」

QB「魔女とは違う魔力反応がいくつかある。魔女と戦ってるんだ」

さやか「うそっ!?で、でもさっきまで……」

QB「そう、確かについさっきまでそんな反応はなかった。突然現れたんだよ」

さやか「……!そんなことって……!」

QB「とにかく急ごう。正体を確かめる必要がある」

QB「この扉の先だ。準備は良いかい?」

さやか「う、うん……!」

確かに、すごい魔力だ。
契約したばかりのあたしでも強さが分かるなんて、一体どれほどの……。
……なんて考えてる暇はない……!

あたしは覚悟を決めて、扉を開く。
そして、目に飛び込んで来た光景は……。

ヴィータ「だぁりゃああああ!!」

魔女「ギャァアアアアア……!」

シャマル「……終わった、わね」

シグナム「まさか病院の近くに現れるとはな」

ヴィータ「良かった、はやてが巻き込まれる前で……」

さやか「え……?な、なんで……」

QB「あれは……」

シャマル「ッ!?さ、さやかちゃん!?」

シグナム「馬鹿な、その姿まさか……」

シャマル「それに、使い魔まで……!」

ヴィータ「……さや、か……て、てめぇッ……!」

さやか「あ、えーっと……」

ヴィータ「ふざけんな……!あたしたちを騙してたのか!?」

さやか「え……な、何」

ヴィータ「あたしたちを騙して、はやてに近付いて、何するつもりだった!?まどかもてめぇらの仲間かよ!?」

さやか「ちょ、ちょっと待っ……」

ヴィータ「はやてには手出しさせねぇ……!アイゼン!」

アイゼン「Explosion」

シグナム「!待て、ヴィータ!」

ヴィータ「テートリヒ・シュラァアアアアク!!」

さやか「ッ!?」

ヴィータは突然、武器を持ってすごい速さで迫ってきた。
そのスピードに、動揺してるあたしは反応できるはずもない。
ヴィータが思い切り振りかぶった武器は、あたしのわき腹に直撃して……。

さやか「がッ……ぁ、ぐ、かッ……!?」

ヴィータ「はぁ、はぁ、はぁ……!」

さやか「ゲホっ、ゲホ!ひゅー……ひゅー……ゴボっ……!」

シグナム「ッ……ヴィータ、やりすぎだ!」

シャマル「ひ、酷い怪我……!待って、今治療を……」

シャマルさん、そんな馬鹿治療しなくてもいいよ

さやか「か、はぁ……はぁ……なんで……?どうして、こんなこと……」

シャマル「!傷が……!」

シグナム「回復魔法……!それも、かなりレベルの高い……」

ヴィータ「てめぇ、やっぱり……!許さねぇ……ぶっ潰す……!」

シグナム「ヴィータ!落ち着けと言ってるだろう!お前はこの子を殺すつもりなのか!」

ヴィータ「ッ……じゃあどうすんだよ!?はやてのことがバレちまったんだぞ!このままじゃ、はやてが……!」

さやか「え、な、何……?はやてが、どうし……」

ほむら「みんな、待って……!」

さやか「ほ、ほむら!?」

ヴィータ「ッ……!」

シグナム「……もう戦いの場で会いたくないと、そう言ったはずだが」

ほむら「私は、戦いに来たんじゃないわ……話をしに来たの」

シグナム「話なら、もう終わったはずだ」

ほむら「いいえ、今度は違う話。あなたたち、今すぐに闇の書の蒐集をやめなさい……!」

シグナム「……結局それか。局の連中に何を言われたのかは知らんが、我らはもう、止まることはできん。
     お前たちがどう罵ろうと、我が主を救う手立ては、これしかないのだ!」

ほむら「違う、あなたたちは間違っている……!あれを完成させてしまうと、八神はやては……」

そこまで言った次の瞬間、緑色の光線が私と美樹さやかの体を縛り付けた。

さやか「えっ……!?」

ほむら「っ……!」

シャマル「どちらにしろ、もうおしまい。はやてちゃんの存在は管理局に知られてしまってるはずよ。
     シグナム、ヴィータちゃん。はやてちゃんを連れて、早くここから逃げましょう」

ほむら「ま、待って……!」

シャマル「それじゃ、さようなら……」

動けない私たちに背を向け、守護騎士たちはその場から立ち去ろうとする。
ダメ、このままじゃ、あの子が……!

マミ「待ちなさい!」

シャマル「っ……増援……!?」

杏子「魔力反応があるから来てみりゃ……どういう状況よ?」

ほむら「……見ての通りよ」

さやか「マ、マミさん……!……と、誰?」

杏子「自己紹介は後回し、っと!」

杏子がそう言って槍を振ると、私たちを拘束していた光線は切れ、消滅した。

さやか「わっ……あ、ありがとう」

杏子「へへ、慣れれば意外と簡単なもんだね。特訓の成果出てるじゃん。
   っていうかほむら、あんたも拘束魔法解けるようにはなってるはずだろ?」

ほむら「武器で破壊するのと自力で解くのとはわけが違うわ。自力で解くのには時間が……」

ヴィータ「だぁりゃああああああ!!」

ほむら「!」

 カチッ

で、最後は

シグナム「私たちが間違っていたのか…」

ほむら「わかればいいのよ」

的に和解しちゃうんだろ。展開読みやすすぎ

ヴィータ「っ……くそ、また……!」

ほむら「…………」

さやか「へっ?ちょ、ちょっと、何がどうなって……」

シグナム「時間停止……厄介だな。シャマル!私とヴィータが時間を稼ぐ!その間にお前は主と共に長距離転送をする準備を!」

シャマル「え、えぇ!わかったわ!」

シグナム「……悪く思うな。我らの邪魔をするのであれば、斬って伏せるのみだ!」

杏子「へん!上等じゃん!悪いが、こっちだって負ける気はさらさらないよ!」

マミ「本当は大人しく話を聞いてくれるのが一番だったんだけど……仕方ないわね」

杏子「おい、そこのヒヨっこ!あんたはそこで大人しくしてな!」

さやか「えっ?ち、ちょっと!?何この柵みたいなやつ……!」

ほむら「あなたは契約したばかりでしょう?そのことについても色々言いたいことはあるけど……
    それは後回し。とにかく、今はその中に居なさい」

マミ「ごめんね、美樹さん。でも、本当に危険だから……」

さやか「ま、マミさんまで……」

杏子「よっし!んじゃ、やってやろうじゃん!」




杏子「ぅおりゃああああ!!」

シグナム「!あの槍型デバイス、変形を……レヴァンティン!」

レヴァンティン「Schlangeform!」

杏子「ッ!あたしと同じ……いや、長さはあたしより……!」

シグナム「シュランゲバイセン!!」

杏子「ッ……!」

マミ「佐倉さん!!」

杏子「……っぶね!へっ、どうやら速さと器用さはあたしの方が上らしいな!」

シグナム「……あれをかわすか。確かに、熟練しているな」

マミ「佐倉さん、良かった……」

ヴィータ「余所見……してんじゃねぇ!!」

マミ「っ!」

ほむら「……!」

 カチッ

ヴィータ「ッ……あぁああくそ!うぜぇんだよさっきから!!」

ほむら「……あなたを助けるのはこれで何度目かしらね、巴さん。
    他人のことを心配する余裕はないはずよ。目の前の相手に集中して。
    実力はまだあっちの方がずっと上なんだから」

マミ「えぇ、ごめんなさい……ありがとう」

ヴィータ「時間ばっか止めてちょこまか逃げ回りやがって!てめぇら本当に……」

シャマル「シグナム、ヴィータちゃん!準備できたわ!すぐにはやてちゃんを連れて行ける!」

ほむら「っ……!」

シグナム「ヴィータ、行くぞ!」

ヴィータ「ちっ……!咆えろ、グラーフアイゼン!」

杏子「!なんだ、何を……」

マミ「まさか……!」

アイゼン「Eisengeheul」

杏子「ぅわッ!?」

ほむら「くっ……!」

しまった……閃光に、爆音……!
この隙に逃げられ……

シャマル「行くわよ!長距離転そ……」

なのは「ディバイン……バスターーーーーっ!!」

シャマル「ッ……!?」

またうっぜえのが出てきたな

なのはさん…

杏子「この技……!間に合ったか!」

マミ「高町さん!テスタロッサさん!」

ほむら「良かった……」

フェイト「なんとか、長距離転送は阻止できたけど……」

レイジングハート「It’s a direct hit.(直撃ですね)」

なのは「ちょと、やりすぎた……?」

レイジングハート「Don’t worry.(いいんじゃないでしょうか)」

さやか「……あの子たち……!」

フェイト「今の一撃で、決まってくれたら良いんだけど」

守護騎士たちが居た場所を覆っていた粉塵が消える。
すると……。

なのは「……やっぱり、もう少し頑張らなきゃ、だね」

ザフィーラ「……状況はあまり良くないようだな」

杏子「あいつ……!あの砲撃を防いだのかよ!?」

シャマル「ごめんね……。ありがとう、ザフィーラ」

シグナム「どうやら……時間稼ぎをしていたのは、あちらも同じだったようだな」

ヴィータ「通りで逃げ回ってばっかだったわけだ……あいつら……!」

なのは「ヴィータちゃん!シグナムさん!聞いてください!」

フェイト「闇の書を完成させてしまったら、闇の書の主は……!」

ヴィータ「邪魔、すんなよ……」

なのは「ヴィータちゃん……!」

ヴィータ「あとちょっとなんだ……あとちょっとで、はやてを助けられるんだ……。
     これまで、あんなに頑張ってきたんだ……あとちょっとなんだよ……。
     またはやてと一緒に、笑って暮らせるんだよ……!」

なのは「だから、話を……」

ヴィータ「邪魔……すんじゃねぇええええッ!!」

なのは「っ……!」

ヴィータが武器を構え、なのはに攻撃しようとした、その時。
2人の間の空間に突如現れたものは……

闇の書「…………」




さやか「……何よ、これ……」

もう、わけわかんない。
シグナムさんたちが、ほむらやマミさんと戦ってて……。
それに、闇の書だとか、はやてがどうだとか……。
何が、どうなって……。

QB「やれやれ、とんでもないことになってるね」

さやか「キュゥべえ、これ何なの!?何が起こってるの!?」

QB「残念だけど、僕にも分からないんだよ。闇の書だとか、守護騎士だとか、初めて聞く言葉ばかりだ。
  有史以前から君たちと共存してきた僕たちにも知らない言葉があるなんて……。
  もしかしたら、彼女たちはこの世界の住人じゃないのかも知れないね」

さやか「えっ!?な、なにそれ、どういうこと!?」

QB「残念だけど、詳しく説明してる暇はないみたいだ。ご覧よ、状況はかなり切迫してるようだ」

さやか「え……」

シャマル「闇の書!?どうして……!」

さやか「あれが、闇の書……?」

その場に居た全員が、突然現れた本……闇の書に動揺する。
そしてその一瞬に、

杏子「なっ!?こ、拘束魔法!?」

ほむら「っ……しかも、これは……!」

さやか「……!?」

ほむらたちだけじゃない、シグナムさんたちにも……全員に、拘束魔法!?

ヴィータ「なっ……んだよこれ!どうなって……!」

ザフィーラ「ぐっ……これは、闇の書の防衛プログラムが……!」

さやか「な、何が……え……?」

闇の書「…………」

闇の書が、光って、あれは……魔方陣?
何を……ッ!?

はやて「っ……はぁ、はぁ……な、なに……何なん……?」

シャマル「は、はやてちゃん!?」

ヴィータ「はやて!」

ザフィーラ「闇の書、何をするつもりだ……!」

はやて「え……みんな……え……?なんや……これ……」

闇の書「Ich beenden abheben.(間もなく完成します)」

シグナム「……まさか……!」

はやて「なに……え、完成って……そんなん……」

闇の書「Sammlung(蒐集)」

シグナム「ぐっ……あぁああああああッ!!!」

はやて「ッ……!?」

はやて「何、待って!?みんな、なんで、やめ、やめてぇ!!」

なのは「そんな、これって……!」

フェイト「闇の書の最後のページを、守護騎士たちの魔力で……!」

杏子「嘘だろ!?そんなのアリかよ!」

マミ「でも、そんなことしたら……!」

さやか「嘘……シ、シグナムさんたちの体が……!」

ほむら「そんな……!体が、消えていく……!?」

はやて「うそ!?やめてぇ!!完成とか、そんなんえぇ!!
    やめて!!お願い!待って!!やめてぇえええええ!!」

……ほむらたち全員がバインドを解いた時には、もう遅かった。
みんな完全に消え去り、そして、はやては絶望に打ちひしがれ……。

なのは「はやてちゃん!」

フェイト「はやて……!」

はやて「ぁっ……ぅ……ッ……」

闇の書「Guten Morgen, Meister. (おはようございます、マイスター)」

はやて「……ぅ……ぅあぁああぁぁぁああああぁああッ!!!!」

聞いたことのない、はやての叫び。
次の瞬間、はやてと闇の書は真っ黒な光に包み込まれた。

そして、光が消え去り、中から姿を現したのは……。

管制人格「また……全てが終わってしまった……」

マミ「あれは……!?」

杏子「ッ……あいつ、姿が……!」

管制人格「我は闇の書……。我が力の全ては……主の願いの、そのままに」

闇の書「Diabolic emission」

なのは「っ!」

フェイト「空間攻撃……!?」

ほむら「佐倉さん!あの子の結界を解いて!!」

杏子「お、おう!なんか、やばそうだ……!」

闇の書「Guten Morgen」

アスカ「グーテンモーゲン!」

QB「おっと……まずい。ここから離れた方が良さそうだ」

さやか「えっ!?ち、ちょっとキュゥべえ!?」

QB「さやか、君も早く逃げた方が良い。そこは危険だからね」

さやか「いや、あたしはこの柵で……」

杏子「悪いね、閉じ込めちゃっててさ!」

さやか「!あ、あんた……」

マミ「美樹さん、急いで!早くここから……」

管制人格「デアボリック・エミッション」

ほむら「……!」

 カチッ

管制人格「…………逃げたか」

CV小林沙苗は酷い目に遭うジンクス




ほむら「はぁっ……はぁっ……!」

さやか「えっ……!?いつの間に、こんなとこに……ほ、ほむら!?」

なのは「ごめんなさい、私たちまで……!」

フェイト「っ!ソウルジェムが……!」

マミ「魔力を使いすぎてる……佐倉さん、グリーフシードは!?」

杏子「あ、あぁ!ほら!」

ほむら「…………ありがとう、助かったわ。でもまさか、あなたが他人にグリーフシードを分け与えるなんてね」

杏子「まぁ……助けてくれたんだしね。借りを作りっぱなしは嫌だからさ」

さやか「あの、さ。ちょっと確認したいんだけど……あんたたち、なのはとフェイト、だよね?」

なのは「えっ……?」

フェイト「どうして、私たちのこと……」

さやか「はやてにさ、写真見せてもらったんだよ。今度友達みんなでお見舞いに行く予定だったんでしょ?」

なのは「あ、そう言えばさやかって……美樹、さやかさん!名前は、すずかちゃんから聞いてました!」

フェイト「はやてに、中学生の友達が出来た、って。……まさか、こんな風に会うことになるなんて……」

さやか「うん……だよね。それでその、できれば状況を説明して欲しいんだけど……」

フェイト「あ、はい。えっと……」



さやか「な、なるほど……って、正直まだよく理解は出来てないんだけどさ。
    とりあえず、なのはとフェイトと、杏子は初めましてってことで……。それで、はやてを助けるにはどうすれば……」

なのは「それが、まだ……」

フェイト「今クロノとユーノ、それにアルフが解決方法を探してくれてるところなんだけど……」

マミ「つまり、今のところは打つ手なし……ね」

と、その時。
また、あの感覚が辺りに広がった。

ほむら「っ……結界……!」

杏子「ちっ……!あいつはやる気満々みたいじゃん」

マミ「来た……!」

管制人格「…………」

杏子「よぉ……。あんた、はやてっつったか?なんであたしたちとやる気なわけさ?」

管制人格「我は闇の書……我が主は、我が内の中で深い眠りについておられる……。
      主は度重なる不幸に、嫌なことが全て夢であったならと、そう望まれた。
      私は、主の望みを叶えるため……全てを無に帰すのみ」

さやか「度重なる……まさか……」

なのは「闇の書さん!お願いです、はやてちゃんを出してあげてください!
    あなたも本当は、はやてちゃんに生きていて欲しいはずです!」

管制人格「……お前も、その名で呼ぶのだな」

なのは「……!」

管制人格「私には、望みなどない……。あるとすれば……主の望みを叶えることが、私の望みだ」

闇の書「Blutiger Dolch」

管制人格「刃以て、血に染めよ……。穿て、ブラッディー・ダガー」

杏子「ッ……うわっ!?」

杏子「っぶね……!」

マミ「くっ……!ずいぶんいきなりなのね……!」

ほむら「みんな、無事……!?」

さやか「ちょ、ちょっと当たったけど、なんとか……」

管制人格「……滅びの光を」

マミ「何……?光が、一箇所に集まっていく……?」

フェイト「……まさか……」

なのは「スターライト・ブレイカー……!?」

杏子「お、おい。あれって確か、なのはの……」

フェイト「みんな、急いでここから離れてください!十分に距離を取って!
    大変かも知れないけど、ほむらさんは魔法少女の3人をお願いします!」

ほむら「……!えぇ、わかったわ」

 カチッ

なのは「フェイトちゃん、そんなに離れなくても……」

フェイト「至近で食らったら、防御の上からでも落とされる。距離を取らないと……」

バルディッシュ「Sir, there are noncombatants on the right at three hundred yards.
       (右方向300ヤード、一般人が居ます)」

フェイト「ッ……!?」

なのは「そんな……!結界内に取り残された……!?」

フェイト「大変だ、すぐに見付けてあげないと……!」

バルディッシュ「Distance:forty,thirty,twenty...」

フェイト「この辺のはず……居た……!」



まどか「何、ここ……?魔女の結界、じゃないよね……?」

なのは「すみませーん!危ないですから、そこでじっとしててください!」

まどか「!もしかして、魔法少女……え?」

フェイト「もうすぐ、すごく大きな衝撃が来ますから、私の後ろに……」

まどか「なのはちゃんと、フェイトちゃん……?」

なのは「えっ……!?」

フェイト「もしかして……鹿目まどかさん!?」

まどか「あ、うん!えっと、もしかしてあなたたちも……」

管制人格「スターライト・ブレイカー」

フェイト「ッ!なのは!」

なのは「……!ごめんなさい!そのことはまた後で!そこから動かないでください!」

バルディッシュ「Defenser plus」

なのは「レイジングハート!お願い!」

レイジングハート「Wide area protection」

なのは「来たっ……!!」

まどか「きゃっ!?」

フェイト「くっ……!」

なのは「……な、なんとか、防いぎきった……もう、大丈夫です」

まどか「あ、ありがとう……えと、今のって、魔女の攻撃……?」

なのは「えと……まどかさん、あなたは……魔法少女なんですか?」

まどか「あ、ううん。わたしはまだ契約してなくて……。まだ願い事は考え中なんだ」

フェイト「……良かった」

まどか「へっ?」

杏子「おい、なのは、フェイト!大丈夫か……って、なんだよそいつ」

さやか「なっ……ま、まどか!?」

マミ「鹿目さん……!大丈夫?怪我はない?」

まどか「あ、はい、大丈夫です……」

ほむら「でも、どうしてここに……!」

なのは「その、まどかさん結界内に取り残されちゃったみたいで……」

フェイト「エイミィ!聞こえる!?結界の中に一般人が居るんだ、早く安全な場所に!」

エイミィ『うそ!?よりによってこんな時に……!』

なのは「えっ……こ、こんな時って……?」

エイミィ『結界と外と中の干渉が、うまくいってないの……!今はこうして会話するくらいならなんとかできてるけど、
    なんだか、内外の境目で魔力が渦巻いてるみたいで……
    とにかく、問題が解決し次第すぐに安全な距離まで運ぶから、ごめん!それまでそっち……』

フェイト「エイミィ……?エイミィ!?そんな……会話まで……!」

マミ「とにかく、ここは危険よ!なんとかして、安全な場所まで鹿目さんを避難させないと……!」

ほむら「……大丈夫、それなら私が……。まだ魔力は」

残ってる。
そう言おうとした、次の瞬間。

ほむら「ッ……な、これは……!?」

突然、地面から触手のようなもの現れ……私たちの体を拘束した。

なのは「きゃあっ!?」

さやか「うわっ!?な、何よこれ!?」

杏子「くそっ……あいつだ!」

まどか「やっ、やだっ!離してぇ!」

管制人格「……一般人か……」

ほむら「っ……!やめて!この子には手を出さないで!」

管制人格「主は、この世のすべてを悪い夢であって欲しいと願った。
      たとえ魔法の使えぬ少女であっても……例外ではない」

さやか「この……ふざけるな!そんなこと、はやてが本当に望んでるわけない!!」

なのは「あなただって、本当はこんなことしたくないはずだよ!
    なんとも思ってないんだったら……泣いたりなんかしないもん!」

管制人格「これは、主の涙。私には、感情などない。私は……ただの道具だ」

フェイト「っ……バリアジャケット、パージ!」

バルディッシュ「Sonic form」

マミ「!触手が!」

杏子「っと!わりぃ、助かったよフェイト」

ほむら「鹿目さん、大丈夫!?」

まどか「う、うん。ありがとう、ほむらちゃ……きゃあ!?」

マミ「な、なに!?地震……!?」

管制人格「……早いな。もう崩壊が始まったか」

エイミィ『……える!?みんな!聞こえる!?』

なのは「エイミィさん!?」

フェイト「良かった、通信が……」

エイミィ『みんな聞いて!大変なの!結界の外に、大きな魔力反応が……!』

ほむら「魔力、反応……?」

エイミィ『ほむらちゃんに聞いてたのよりずっと早い!これは、この、魔力反応は……!』

ほむら「ッ!?まさか……!」





結界外

  「雷雲がとんでもない勢いで分裂と回転を起こしています!
  明らかにスーパーセルの前兆です!ただちに避難指示の発令を!」

杏子「マジかよ……!」

マミ「でも、暁美さんが言ってた日にちは……」

ほむら「そう、まだ先のはず……早すぎる……!」

エイミィ『これがきっと、通信の不調と関係してるんだよ!
     解放された闇の書の魔力が、ワルプルギスの夜の魔力に作用して、
     その影響で本来の日時よりずっと早いタイミングで……。
     しかも、データよりもずっと強力な魔力を持ってるの!』

なのは「な、なんとか、ならないんですか!?」

エイミィ『クロノくんとユーノくん、それにアルフには飛んでもらえるようにはなってるよ!
    でも、正直3人だけじゃどうなるか……!』

ほむら「そんな……」

管制人格「……外のことなど、気にする必要はない。お前たちは……ここで永遠に眠れ」

ほむら「なっ……!?」

しまった……!
ワルプルギスの夜に気を取られた隙に、闇の書の管制人格が、私たちのすぐ側に……。
時間を……!

管制人格「契約した少女たちよ……お前たちにも、闇があるだろう?」

マミ「えっ……」

杏子「な、嘘だろ……!」

ほむら「体が……!」

管制人格「3人とも……我が内で、永遠に眠れ。幸せな夢を見続けて……」

フェイト「この……!」

なのは「っ!フェイトちゃん!」

管制人格「……そうか。闇を抱えているのは、お前もだったな」

フェイト「あっ……あぁあ……!」

闇の書「Absorption.(吸収)」

さやか「うそ……でしょ……」

まどか「そ、そん、な……みんな、き、消え、ちゃった……」

エイミィ『ッ……!4人とも、バイタル確認……!みんなまだ死んでない!』

管制人格「そう、死んではいない……だが、生きてもいない。
      我が主も、あの子らも……覚めることない眠りの内に、終わりなき夢を見る。
      生と死の、狭間の夢……それは永遠だ」

なのは「……永遠なんて、ないよ。変わっていかなきゃいけないんだ。わたしも……あなたも!」

さやか「で、でもなのは……どうすれば……」

なのは「わかんない、わかんないけど……諦めるなんて、絶対にできない……。
    それに、泣いてる子を黙って見てるなんて、できません……!」

さやか「……!」

管制人格「……お前たちも、そろそろ眠れ」

なのは「いつかは眠るよ……でもそれは、今じゃない!」




ほむら「ん……あ、れ?私……」

マミ「あら、起きた?暁美さん」

ほむら「……巴、さん……?」

さやか「はは、何よほむらー?もしかして寝ぼけちゃってるわけ?」

杏子「あんまり昼寝ばっかしてると、さやかみたいになっちまうぞー」

さやか「杏子ー!?それどういう意味よー!?」

ほむら「……これは……」

まどか「あはは、本当に寝ぼけちゃってるみたいだね、ほむらちゃん。珍しいなー」

ほむら「……!鹿目さん……!」

まどか「へっ?」

マミ「あら……もしかして、昔の夢でも見てたの?“鹿目さん”だなんて」

ほむら「え……?」

まどか「えへへ、なんだか懐かしいなぁ。“まどか”って呼んでくれるまで、すごく時間かかったっけ」

杏子「ははっ、そういや昔は“鹿目さん鹿目さん”ってまどかの後を付いてくばっかりだったよな」

さやか「それがいつの間にか随分変わっちゃったもんよ。イメチェンまでしちゃって。
    今じゃあまどかを守るナイト様だもんね。もう仁美のうるさいことうるさいこと!」

ほむら「……私が、まどかを守る……?」

まどか「も、もうさやかちゃんってば!でも……ほむらちゃんに守ってもらえた時、すっごく嬉しかった。
    それは本当だよ?……え、えへへ。やっぱり改めて言うとちょっと恥ずかしいなぁ」

まどかを……私が守ったの……?
私は、まどかを守る私に……守られる私じゃなくて、守る私に……。
私の祈りが、願いが……叶った……?




モモ「あ、おねーちゃんやっとおきたー!」

杏子「え……?も、モモ……?な、んだこれ……夢、か……?」

モモ「?ねー、おねーちゃん、わたしおなかすいたー」

杏子「あ……ダメだよ、そんな我侭言っちゃ……。ウチにはそんな……」

モモ「はやくー。あさごはんたべよー。もうまってるよー」

杏子「え……待ってる……?まさか……!」

杏子父「……おー、やっと起きたか杏子。今日はずいぶんと寝坊したなぁ」

杏子母「ふふっ、今日はモモの方が早起きだったのよねー。
     お姉ちゃんも起こしてきてくれたし、何かご褒美あげちゃおうかな」

モモ「わーい!もも、ケーキがいいー!いちごがのった、さんかくのやつー!」

杏子父「はっはっは!なんだ、ショートケーキで良いのか。モモは謙虚だなー」

モモ「けんきょ?よくわかんないけど、しょーとけーきがいいー!」

杏子母「はいはい、それじゃあ今日買ってきてあげますからねー」

杏子「……父さん、母さん……」

杏子父「おや……どうした杏子、早く座りなさい」

杏子「あ、うん……え、この朝ご飯……こんなに、たくさん……!」

杏子母「あら、そう……?別に、いつも通りだと思うけど……」

杏子「いつも通り……?ひ、昼ご飯も、晩ご飯も、このくらい……!?」

杏子父「……?どうした杏子。ははっ、もしかしてウチが貧乏になった夢でも見たのか?」

……夢……?
いや、おかしいだろ……違う、あれは夢なんかじゃない、夢なもんか……。
夢は、こっちだ……こっちのはずだ……。

でも……でも、これって……!




杏子「マミさん、ねぇ、マミさんってば!」

マミ「……あれ……佐倉、さん……?」

杏子「やっと起きた!もー、せっかく約束してたのに、家に来たらマミさん寝てるんだもん」

マミ「私……え、あれ……?えっと……佐倉さん、よね?」

杏子「マミさん……寝ぼけるってこういうことを言うんだね。モモ以外で初めて見たよ。
   これはおじさんとおばさんに報告だね!へへっ!」

マミ「え……?」

マミ父「お、マミ、起きたのか。確かに約束の時間にはまだ少し早いけど、お友達が来る前に昼寝っていうのはちょっとなぁ」

マミ母「そうよぉ、杏子ちゃんみたいに早く来られちゃうと恥ずかしいとこ見られちゃうでしょ?」

マミ「お父さん、お母さん……!?」

そ、そうだ、今日の日付は……!

……過ぎてる。
あの、事故の日を、過ぎてる……!

マミ母「あ、ほら、みんな来たみたいよ」

マミ「みんな……?」

さやか「こんにちはー、マミさん!」

ほむら「おじゃまします」

まどか「こんにちは!あれ、杏子ちゃんもう来てたの?」

杏子「まぁねー。どうせウチに居たってすることないしさ」

さやか「とか言ってー。早くマミさんに会いたかっただけじゃないのー?」

杏子「ばっ……ち、違うよ!そんなわけないじゃん!何言ってんだ馬鹿!」

マミ「えっと……みんな、魔女退治は……」

さやか「……へっ?」

まどか「魔女、退治……?」

ほむら「巴さん、あなた……」

杏子「どんな夢見てたのマミさん……」

マミ「えっ……あ、あら?え?」

ソウルジェムが、ない……。
……お父さんとお母さんが居て、お友達もたくさん居て、それに……魔女と戦わなくても良くって。
そうか、これって……。

私がずっと、欲しくて欲しくてたまらなかった生活なんだ……。
何度も、何度も、夢に見た時間だ……!




はやて「……すぅ……すぅ……」

管制人格「…………」

主は、よく眠っておられる。
覚醒前の哀しみが余程、深かったのか……。
きっとこのまま、目を覚まされることはないだろう。
そしてそのまま、永遠に……。

じきに私の意識もなくなる。
そうなれば、主のこの安らかな寝顔も、見ることは叶わなくなる。
だからせめて今は、この幸せそうな顔を目に焼き付けよう。

そう、主は今、幸せなのだ。
だから、私も今、幸せのはずだ……。

……どうか我が主に……幸せを……。




なのは「きゃぁあああああああッ!?」

さやか「な……なのはぁ!」

なのは「あ、ぅ……ご、めんね、さやか、ちゃ……」

さやか「しゃ、喋らないで!今、今治すから!」

管制人格「やめておけ。もう、限界だ。これ以上あがくな」

さやか「っ……ソウルジェムが……ま、まだ!まだ、いける……!」

なのは「ありが、とう……もう、大丈夫。元気に、なったから……」

さやか「なのは……!」

エイミィ『なのはちゃん、あんまり無茶しないで!さやかちゃんも!このままじゃ……!』

なのは「もう少しだけ……やらせてください……。レイジングハート……」

レイジングハート「All ri...ght,my...master」

なのは「……ごめんね。もう少し、頑張ろう……!」

まどか「酷いよ……こんなの、あんまりだよ……!」

みんな消えちゃって……さやかちゃんも、なのはちゃんも、あんなにボロボロになって……。
これじゃ、このままじゃ、みんな……。

QB「運命を変えたいかい、まどか」

まどか「キュゥべえ……!」

QB「君は確か、八神はやてとも友達だったよね?それに、彼女が親戚と呼ぶ者たちとも」

まどか「はやてちゃんと……ヴィータちゃんたち……?」

QB「今あそこでなのはと戦っている人物。あれははやてなんだよ。まぁ、正確に言えば少し違うんだけど」

まどか「ど、どういう、こと……!?」

QB「知りたいかい?僕の知っている限りで良いなら、教えてあげられるよ」




まどか「……そんな……!」

QB「わかったかい?つまりこのままだと守護騎士たちは消えたままだし、はやてにも永遠に会うことはできなくなる。
  なのはやさやかは間違いなく命を落とすだろうし、
  マミ、ほむら、杏子、フェイトも永遠に闇の書の中で眠り続けることになるだろうね」

まどか「そ……そんなのって……!」

QB「でも、君なら運命を変えられるよ。そのための力が、君は備わっているんだ」

まどか「……本当なの……?わたしが契約すれば……みんなを助けられるの……?」

QB「もちろんさ。君の祈りは間違いなく遂げられる」

まどか「……私は、私の願いは……!この事件で、闇の書事件で悲しんでる人たちを、助けたい!
   みんなで、また楽しく、笑って過ごしたい!」

QB「良いだろう。契約は成立だ。君の祈りはエントロピーを凌駕した」

エイミィ『……!この反応、まさか……!』

管制人格「……これは……この、光は……!」

なのは「な、なに……?」

突如淡い光に覆われた管制人格。
そして、戸惑う管制人格は次に、痛みにも似た感覚を覚える。

管制人格「ぅく……ぁ、ぅああっ……!」

悶える管制人格の胸部から、何かドス黒い、異様にうごめく塊が現れた。

管制人格「ぁ……ぁああああああああ!!」

さやか「えっ……!?か、体から何か……!?」

エイミィ『あれは……闇の書の、防衛プログラム!?』

その、不気味な生き物にも見える魔力の塊は、再び強い光に覆われ、そして……

防衛プログラム「グ……ギャァアアアアアアアアアアアア……!」

エイミィ『うそ……!防衛プログラム、完全消滅!?』

管制人格「はぁ……はぁ……まさか、そんなことが……!」




管制人格「信じられない……こんなことが、起こり得るのか……!」

はやて「……防御プログラムが、無くなったんやね」

管制人格「我が主!目を……!」

はやて「うん……ごめんな。一番大変な時に、夢の中なんかに居って」

管制人格「いえ……私のしたことです。
      それに、哀しみが深ければ深いほど、眠りも深くなります……仕方ありません」

はやて「……ほんまにな、幸せな夢を見てたんよ。
    夢の中ではあたしは歩けて、守護騎士のみんなも一緒で……それに、あなたも一緒やった」

はやて「そこではな、あなたは闇の書とかそんな名前やない……あたしがずっとずっと考えてた名前やったんよ。
    いつかな、あなたに名前をあげようと思って、ずっと考えててん。新しい、ちゃんとした名前を」

管制人格「新しい、名前……」

はやて「あたしは管理者やから、名前を贈ること、できるやろ?せっかくやから、ここで贈ってもえぇか?」

管制人格「……!」

はやて「強く支える者、幸運の追い風、祝福のエール……リインフォース。
    これが今日から、あなたの名前や。それでえぇか?」

管制人格「……はい、もちろんです。我が主……!」



QB「なるほどね……まどか、君の祈りは事件の元凶となった闇の書のプログラムの一部を完全に破壊したみたいだ。
  それも、元凶とは関係のない正常な部分を全て残してね」

リインフォース「……すまなかったな、お前たち」

なのは「え……?」

リインフォース「防御プログラムは完全に消滅した……。
        お前たちと戦う理由は、もはやない。今、主との融合を解こう」

さやか「ほ、本当!?」

なのは「……!闇の書さん!」

強い光がリインフォースを包み込み、そして……

はやて「……もう闇の書なんて名前やあらへんよ。この子の名前は、リインフォースや!」

さやか「はやて!」

はやて「ほんま、ごめんな……。ウチの子たちが色々迷惑かけてもうて」

リインフォース「それから……あの4人の体も、解放してやらなければ」

そう言って、リインフォースが夜天の書に手をかざそうとした、その瞬間。

フェイト「ッ……」

なのは「フェイトちゃん!」

リインフォース「驚いた……自力で夢の世界から脱出したのか」

フェイト「……アリシアと、バルディッシュのおかげです。それより、あなたは……」

リインフォース「あぁ、私も、長く暗い夢から目覚めた。お前たちには、本当に迷惑をかけた。
        ……では、残りの3人も解放してやろう」

リインフォースが手をかざすと、ほむら、マミ、杏子の3人が姿を現した。
……しかし。

ほむら「すぅ……すぅ……」

まどか「ね……眠ってる……?あ、あの、これって……?」

リインフォース「……まさか、そんなはずは……」

さやか「ね、ねぇ!3人とも目を覚まして!ねぇってば!」

杏子「…………」

マミ「…………」

はやて「そんな……!リインフォース、もう夢は見せてへんはずやろ!?」

リインフォース「はい、我が主……。本来であれば、既に3人とも目を覚ましているはずです。
        この子たちがまだ夢を見続けているのだとすると、何か別の理由が……」

まどか「な、なんで、どうして……?」

QB「きっと、まどかの祈りが原因だろうね」

まどか「え……?」

はやて「!あなたは……!」

さやか「ど、どういうことよ!?まどかの祈りが……って、どうして……!」

QB「まどかの祈りは、あくまでも“悲しんでいる人”を救うことだろう?
  と言うことは、夢を見せられた人間がその夢を受け入れることで、
  悲しみから解放されたのなら……目を覚まさないのは当然だよね」

まどか「……うそ……そんな、ことって……」

QB「気に病むことはないよ、まどか。
  だって彼女たちは確かに救われたじゃないか。君の祈りのおかげでね」

まどか「ッ……!」

フェイト「インキュベーター……!それ以上余計なことを言わないで!」

ワルプルギスとかなのは一人で余裕な気がする

さやか「インキュ、ベーター……?」

QB「へぇ……君は時空管理局の人間だね?
  君たちは、一体どこまで僕のことを知っているんだい?」

なのは「……私たちは、あなたの正体も目的も……全部、知ってるよ」

QB「そこまで知ってるのなら、僕が今から何を言おうとしてるのかも分かるんじゃないかな?」

なのは「そう、だね。あなたの目的は、1つだもん」

QB「八神はやての、夜天の書の管理者としての力も及ばない。
   ということは、もう君たちに打つ手はないわけだ。
   ほむらも、マミも、杏子も、もう目を覚ますことはない。……奇跡でも、起きない限りはね」

QB「でも、僕ならその奇跡を起こしてあげられるよ?はやて、なのは、フェイト。君たちにはその資格がありそうだ」

リインフォース「っ……お前は……!」

QB「だから僕と契約して、魔法少女に……」

ほむら「その必要はないわ」

QB「っ……まさか……!」

まどか「ほ……ほむらちゃん!」

リインフォース「……!お前も、現実で生きることを望んだのか……!」

ほむら「……えぇ」

QB「……やるじゃないか、暁美ほむら。でも、マミや杏子も同じように行くかな?
  彼女たちの抱える過去は、君たちが思っているよりもずっと重いはずだからね」

ほむら「私たちを……あまり見くびらないことね」

マミ「っ……!戻、った……みたいね」

杏子「……へへっ……ちょっと、遅くなっちまったな」

QB「……!」

さやか「マミさん!杏子!」

まどか「良かったぁ……!3人とも、ほんとに……良かったよぉ……!」

はやて「すごい……!もしかして、ほんまに奇跡が……!」

ほむら「それは少し違うわ。私たちは全員、自分の意志でここへ帰ってきた」

マミ「そうね、これは奇跡なんかじゃないわ」

杏子「そう簡単に奇跡が起こせりゃ苦労しないっつーの!こいつは、あたしたちの実力だよ」

リインフォース「全員が夢から脱出するとは……お前たちは、強いのだな」

QB「やれやれ……上手くいかないものだね。
  でも、まどかとの契約は結べたから良しとしようかな。それだけでも十分な収穫だ」

ほむら「…………」

QB「残念だったね、ほむら。君はまどかに契約させないよう躍起になっていたようだけど、
  少し目を覚ますのが遅かったみたいだ」

まどか「その……ごめん、ほむらちゃん。わたし……」

ほむら「良いの、気にしないで。私は、まだ諦めない。
    まどかが契約したからと言って……諦めるわけにはいかない。
    ……夢の中で、あなたとそう約束したから」

まどか「夢の中の……わたしと……?」

リインフォース「私の見せる夢は……ある意味では、現実だ。人物の人格は対象の記憶をもとに忠実に再現されている。
       鹿目まどか、夢の中のお前の言葉は……紛れもない、お前自身の言葉だ」

ほむら「えぇ。だから私は……絶対にあなたの思い通りにはさせない。インキュベーター!」

QB「……やれやれ」

ほむら「とにかく、もう済んだことを言っても仕方ないわ。問題は……今後、どうするかよ」

なのは「そうだ!ワルプルギスの夜……!」

はやて「わるぷ……?なんなん、それ?」

リインフォース「結界の外で、巨大な魔力の塊が形を成し、暴れまわっているようです。
        どうやら、私の魔力に影響され、もともと強大だったその力が更に増しているらしく……」

エイミィ『そういうこと!今、クロノくんたちがなんとか動きを止めてくれてるけど、いつまでもつか分からない!
     ちょっと大変かも知れないけど、動ける子は増援をお願い!』

はやて「……!わかりました!そやったら、ちょっと待ってください!」

さやか「はやて?何を……」

はやて「……管理者権限、発動。守護騎士システム、破損修復」

フェイト「守護騎士システム……もしかして!」

はやて「……おいで、私の騎士たち」

はやての足元に魔方陣が現れる。
そして強い光が放たれ……

ほむら「……!」

まどか「ヴィータちゃん!」

さやか「すごい!みんな、復活しちゃったよ……!」

シグナム「……すみません。主はやて」

シャマル「はやてちゃん……私たち……」

はやて「ん……色々、大変やったね。ごめんな、気付いてあげられへんで」

ヴィータ「はやて……」

はやて「やらなあかんことはこれからたくさんあるけど。今はとりあえず……お帰り、みんな」

ヴィータ「は……はやてぇえええ!!ぅわぁああん!わああああああん!!」

はやて「……落ち着いたか?」

ヴィータ「ぐすっ……う、うん……」

はやて「さて……早速やけど、これからみんな仕事や。管理局の人の、お手伝いをせなあかん」

エイミィ『守護騎士のみんなが手伝ってくれるんだったら、すごく助かるよ!それじゃあ、早速現地に飛んでもらえるかな!』

はやて「はい、了解です!」



エイミィ『クロノくん、ユーノくん、アルフ!こっちの状況は無事に終了したよ!
    みんなすぐにそっちに向かえるから、あともう少しだけ、頑張って!』

クロノ「そうか、わかった……!だが、なるべく早く頼む!」

ユーノ「正直、ちょっときつくなってきた……!」

アルフ「くそっ!なんなんだよこいつ!これじゃまるで、どんどん魔力が増えていってるみたいじゃないか……!」

エイミィ『わ、わかった!出来るだけ急ぐね!』




ワルプルギス「アハハハハハハ!ウフフフ、アハハハハ、アハハハハハハハハハ!」

クロノ「アルフ!危ない!」

アルフ「うわっ、とぉ!?まったく……!ずっと無限書庫で雑用やらされてたと思ったら、
    いきなりこんなハードな仕事なんて参っちゃうよ、ほんとにさ!」

ユーノ「だから、ごめんって……調べることが多すぎて少しでも人手が欲しかったんだよ」

アルフ「あたしはフェイトの使い魔なのに……」

クロノ「口喧嘩をしている暇があったら、少しでも多くバインドをかけてくれ!」

アルフ「わかってるよ!でも……!」

ユーノ「回転が、止まらない……!」

ワルプルギス「アハハ、ウフ、ウフフフフ!アハハハ、アハハハハハハハハ!」



QB「驚いたな……ワルプルギスの夜の魔力があそこまで増大するなんて。
  まどかが契約すればあの魔女を倒すなんて1人でも造作もないと思っていたけれど、
  これは、思った以上に苦労しそうだね。僕はここから見届けさせてもらうことにするよ。
  君たちの戦いの、その結末を」

なのは「クロノくん、ユーノくん、アルフさん!」

クロノ「!ようやく来てくれたか!」

フェイト「ごめん、遅くなった!」

アルフ「フェイトぉ!」

ユーノ「!君は、闇の書の……!」

リインフォース「あぁ、管制人格だ。此度は本当に迷惑をかけた」

シグナム「その償いと言ってはなんだが……我らにも、微力ながら手伝わせて欲しい」

はやて「お願いします、手伝わせてください!」

クロノ「君が夜天の主、八神はやてだな。命が助かって、本当に良かった。
    色々と思うところはあるだろうが……今はあまり話をしてる時間はない」

ほむら「あれは……!ワルプルギスの夜の、傾きが……!」

クロノ「君も気付いたか……。人形の位置が、逆さではなく、正位置に戻ろうとしているんだ」

まどか「えっ……それって、どうなるの……?」

杏子「あいつは……人形の位置が上に来たらやばいんだ」

マミ「伝承によると、そうなった時は文明が1つ滅びるとも言われてるわ……!」

さやか「ぶ、文明が1つって……!それじゃ、今のワルプルギスの夜だったら……」

フェイト「被害は、町1つなんかじゃ収まらない……」

なのは「……絶対にやっつけなきゃ、ダメだよね」

はやて「リインフォース、準備しよか」

リインフォース「はい、我が主。では……」

はやて「ユニゾン……イン!!」

はやて「ふぅ……良かった、上手くいったみたいやね」

リインフォース『はい、融合状態、問題ありません』

はやて「あ、そや!シャマル、お願いできるか?」

シャマル「はい、みんなの回復ですね?クラールヴィント、本領発揮よ」

クラールヴィント「Ja.(はい)」

シャマル「静かなる風よ、癒しの恵みを運んで……」

なのは「わっ……!あ、ありがとうございます!」

杏子「すげぇ……マミも回復魔法は得意だが、それ以上だ……!」

シャマル「湖の騎士シャマル、癒しと補助が本領です。さやかちゃんには負けませんからねっ」

さやか「へっ?い、いや、そんなあたしなんて……」

クロノ「そうだ、美樹さやか、だったな。これを使ってくれ」

さやか「へっ?これ、グリーフシード?でも、良いの……?」

クロノ「さっきの戦闘、なのはの補助でかなり魔力を消費していたはずだ。
   僕たちはそれを使う必要はないから、遠慮はしないで良い。それから、君たちもだ。
   1人に数個ずつはあるから持っておくと良い」

ほむら「……!ありがとう、本当に、助かるわ」

クロノ「早速だが、今からワルプルギスの夜を倒す作戦を説明したい。ユーノ、アルフ!もう少し時間を稼げるか?」

ユーノ「が、がんばってはみるけど……」

アルフ「2人じゃ結構しんどいかもね……!」

ザフィーラ「ならば私も加勢しよう」

アルフ「あんた……!助かるよ、ありがとう!」

ザフィーラ「構わん」

ユーノ「良かった、3人ならなんとかなりそうだ。でもクロノ、できるだけ手早く頼むよ!」

クロノ「あぁ、わかった……それじゃ、説明するからみんな聞いてくれ。
    内容を簡潔に言い表すと、いわゆる波状攻撃だ。
    クロスレンジ、ミドルレンジ、ロングレンジに分けて、複数の方向から同時に攻撃、それを順に繰り返す。
    それで確実に動きを止めつつダメージを蓄積させられるはずだ。
    実に個人の能力頼みになってしまって申し訳ないんだが……」

まどか「え、えっと……く、クロス……ミドル……?」

マミ「鹿目さんの武器は弓矢?だったら、中・長距離魔法、つまりミドルレンジかロングレンジね」

まどか「あ、は、はい!わかりました!」

クロノ「それぞれ、得意分野があるはずだ。特に最後のロングレンジは大火力の砲撃を一斉に浴びせるのが一番効果的なんだが……。
    その辺りも考慮しつつ、配置を決定しよう」

クロノ「……よし、決まりだな」

杏子「へへっ……なんかテンション上がってきちまったよ」

マミ「佐倉さん?緊張しないのは良いけど、相手はあのワルプルギスの夜なんだから油断しちゃ駄目よ?」

ほむら「まどか……あんまり、無茶をしないでね。
    例えば、すぐに魔力がなくなるようなそんな攻撃は、絶対に……」

まどか「ほむらちゃん……。うん、分かった。ありがとう、気を付けるね!」

ワルプルギス「アハハハ、ウフフフフ、アハハハハハハハハ!」

ユーノ「!クロノ!もう限界だ!」

アルフ「バインドじゃあ、あいつはもう止まらないよ!」

クロノ「っ……わかった、ご苦労だった!
   君たちはシャマル、ザフィーラ、さやかと一緒に補助に回ってくれ!」

ユーノ「了解!」

クロノ「それじゃあみんな、準備は良いな……!はやて、リインフォース!結界を頼む!」

はやて「はい!封鎖領域……」

リインフォース『展開……!』

夜天の書「Gefangnis der Magie.(魔力封鎖)」

はやてとリインフォースが展開した結界が、周囲を包み込む。
それとほぼ同時に、ワルプルギスの夜の人形部分が正位置になり……膨大な魔力の波動が広がった。

ワルプルギス「アハハハハハ!ウフフフフフフ、アハハハハハハハ、ウフ、アハ、アハハハハハハハハハハハ!!」

ほむら「初めて見る……これが、ワルプルギスの夜の本気……!」

クロノ「ギリギリ間に合ったか……では作戦を始める!第一陣、行ってくれ!」

フェイト「了解!第一陣、クロスレンジ、行きます!!」

杏子「へっ、まさか決着の前に共闘することになるとはね!ちゃんとタイミング合わせなよ!」

フェイト「そっちこそ、お願いします……バルディッシュ!」

バルディッシュ「Zamber form」

杏子「っしゃあ!行くぞ!……はぁああ!」

杏子は槍を地面に突き刺し、魔力を込める。
すると、ワルプルギスの夜の直下の地面が盛り上がり……そこから巨大な槍が突き出した。

杏子「今だ、フェイト!」

フェイト「はい!打ち抜け……雷神!」

バルディッシュ「Jet Zamber」

杏子「食らいやがれぇえええ!!」

ワルプルギス「ッ……アハハハ……アハハ、アハハハハハ!」

杏子「っしゃあ!直撃!」

さやか「ふ、2人とも武器おっきくなりすぎでしょ。ほんとに近接魔法かよ……」

シャマル「とにかく、動きは上手く止められた……!次!シグナムと、ほむらちゃん!」

シグナム「……結局、当初のお前の言う通り共闘することになったな」

ほむら「えぇ。戦いの場だけど……敵としてでなくなったわね」

シグナム「……そうだな。暁美ほむら、お前には色々と言いたいこともあるが……」

ほむら「すべて終わってから、ね」

シグナム「あぁ。……では、行くぞ!」

レヴァンティン「Bogenform!」

シグナム「駆けよ……隼!」

レヴァンティン「Sturmfalken!」

シグナム「今だ!」

ほむら「えぇ……!」

シュトゥルムファルケンが放たれると同時に、ほむらは時を止める。
そして……。

ほむら「私の火力の全てを、この一瞬に注ぎ込む。今度こそ……決着をつけてやる!」

ロケットランチャー、バズーカ砲、迫撃砲、さらに対艦ミサイル……。
その全てを、ほむらは時間を止めている間に使いきった。

アルフ「うわっ!?な、なんて爆風だよ……!」

ユーノ「すごい……!」

ワルプルギス「……ッ……アハ……ウフフ……アハハハハハ!」

シャマル「次!まどかちゃんと、ヴィータちゃん!ミドルレンジ、第2弾!」

ヴィータ「まどか、頑張ろう!」

まどか「うん!ほむらちゃんに言われた通り、あんまり無茶はしないように……。
    ヴィータちゃんが、一緒に戦ってくれる子がたくさん居るんだから!」

ヴィータ「よしっ!行くぞ、アイゼン!」

アイゼン「Gigantform」

ヴィータ「轟天、爆砕!ギガント……シュラァアアアアアアク!!」

まどか「!つ……貫いて!シューティングスターーーーー!!」

真横から無数に注がれる光の矢。
そして大爆発が起こり、ほぼ同時に真上からの激しい衝撃がワルプルギスの夜を襲う。

ワルプルギス「……ッ……ア、ハ……ウフフ……アハハハ……!」

エイミィ『なんなの……!これだけやっても笑い続けてるなんて……!』

クロノ「いや、間違いなくダメージは蓄積されている!もう一押しだ!……行くぞ、デュランダル」

デュランダル「OK,Boss」

クロノ「悠久なる凍土、凍て付く棺の内にて、永遠の眠りを与えよ……」

ワルプルギス「ア……ハ、ハ…………」

クロノ「凍て付け!!」

デュランダル「Eternal Coffin」

ワルプルギス「ッ……………………」

クロノ「今だ!最終波、ロングレンジ!高火力砲撃!」

マミ「えぇ!特訓の成果、見せてあげるわ!行くわよ!高町さん、テスタロッサさん、八神さん!」

なのは「はい!全力全開、スターライトぉ……!」

フェイト「雷光一閃、プラズマザンバー……!」

はやて「響け、終焉の笛!ラグナロク……!」

マミ「裁け、断罪の砲撃!ボンバルダメント……!」



   「ブレイカーーーーーーーー!!!!」



轟音と、眩いほどの閃光。
その光に包まれて、ワルプルギスの夜は……

ワルプルギス「……アハ……ハ……………………」

完全に、その姿を消した。

いけいけ

エイミィ『ワルプルギスの夜……完全消滅!魔力反応、再生反応、共にありません!』

なのは「……良かった……!」

ほむら「やった、の……?ワルプルギスの夜を……本当に、倒したの……?」

シグナム「……あぁ、間違いない。良かったな、暁美ほむら」

ほむら「そうだ、まどか、まどかは……!」

まどか「やったぁー!わたしたち、ワルプルギスの夜倒したんだ!やったよ、ヴィータちゃん!」

ヴィータ「ちょっ、やめ、まどか!く、苦しいよ……!」

ほむら「魔女に、なってない……!良かった……まどか……まどかぁ……!」

シャマル「あら……うふふっ。なんだか最初と、ちょっと印象が違うわね」

シグナム「年齢の割に大人びているとは思っていたが……気を張っていただけだったか。
     一体どれほどの強い思いを抱えて来たのだろうな」

さやか「うーん……あたし結局役に立たないままワルプルギスの夜倒しちゃったなぁ」

リインフォース「そんなことはない……お前には、本当に助けられた」

さやか「へっ?」

リインフォース「先の、私と高町なのはとの戦闘……。
        お前が居なければ恐らく私は、あの子を殺していただろう。
        私が主はやての未来を血で汚さずに済んだのは、お前のおかげだ」

はやて「うん……そやね。あたしからも、お礼言わせてな。リインフォースの手を汚さんように守ってくれて」

なのは「助けてくれて本当にありがとうございました、さやかさん!」

フェイト「あ、私からもお礼、言わせてください……。なのはを助けてくれて……」

さやか「ちょ、ちょっとちょっと!な、なんか照れるなぁ……。とりあえず、どういたしまして……」

杏子「……あのさ、マミ。ちょっと良いか?最後のはなんだありゃ」

マミ「“ボンバルダメント”のこと?ふふっ、実はね……
  ティロ・フィナーレよりも強い攻撃を考えてて、これだけはとっておきだって決めてたの。
  イタリア語で“砲撃”っていう意味なのよ?」

杏子「いや、百歩譲ってまだそれは良い。まどかの奴も何か言ってたしね……。
   問題はその前だよ。“裁け”なんたら……とか言ってなかったか?」

マミ「あれは……だって、流れ的に何か言った方が良いかなって」

杏子「そ、即興かよ……」

マミ「でも、みんなに合わせた即興だからイタリア語と英語が混ざってちょっと不恰好だったわね。
  何かちゃんとした名前を考えなくっちゃ。
  やっぱりティロ・フィナーレと合わせてボンバルダメント・フィナーレとか……」

杏子「どういうことだおい……こいつ、拍車がかかってるじゃねえか……!」

エイミィ『ま、とにかく……現場のみんな、お疲れさまでした!
    早めの段階でワルプルギスの夜は結界内に閉じ込めたから被害が大きくならなくて良かったよ。
    この後事後処理とか色々あるんだけど、とりあえず今はアースラに戻って、一休みして言って!』

ニュース『突如発生した、異常発達した巨大な雷雲は、今度は突然姿を消しました。
     再発生する予兆はないとのことですが、付近の住人の方々は警戒を続け、屋外に出ることのないよう、お願いします』

エイミィ「……だってさ!」

さやか「いやー、でも良かったよほんと。見滝原がめちゃくちゃになったりしないで」

エイミィ「あ、そう言えば……まどかちゃんとさやかちゃんは、お家の人が心配してるんじゃない?
    連絡したりしなくても大丈夫?」

まどか「あっ……!ほ、ほんとだ!ママもパパも、きっと心配してるよ!」

さやか「やばっ……すみません!お電話お借りしても良いですか!?」

エイミィ「あははっ!うん、良いよ。どうぞ」




クロノ「ところで、少し確認があるんだが……リインフォース、だったか。
    防衛プログラムの完全消滅以外に、何か変わったことはあるか?」

リインフォース「それが、信じがたいことに……どうやら防衛プログラムが消滅しただけでなく、
        歪められた基礎構造まで修復されているようだ。」

シャマル「えっ!それって……!」

リンフォース「あぁ。呪われた闇の書は、今や完全に本来の夜天の魔導書としての姿を取り戻した」

シグナム「つまり、今後あのようなプログラムを再び生み出してしまうようなこともない、と」

リインフォース「その通りだ。これもみな……あの子のおかげだ。
        あの者との契約は、本当に奇跡を起こすのだな……」

杏子「……奇跡、ねぇ」

マミ「佐倉さん……」

ほむら「…………」

リンディ「その奇跡を起こす契約なんだけど……今ここで説明できることはしておいた方が良いかもね」

クロノ「艦長!」

ほむら「説明、できること……?」

まどか「はぁ……久し振りに、ママに怒られちゃった」

さやか「あはは、まぁあたしはしょっちゅうだけどさ……でも流石に今回はちょっと怖かったなぁ」

リンディ「お電話は終わった?ちょうど良かったわ。それじゃあ、みんなこっちに来てくれる?」

ほむら「……行きましょう、まどか」

まどか「?うん……」

クロノ「しかし艦長、本当に……?」

リンディ「えぇ。さすがに全部包み隠さず、とは行かないけど」

クロノ「…………。わかりました。お任せします」

皆はリンディに連れられ、ある部屋に入る。
その部屋に入り、真っ先に目に飛び込んできたのは、大きな1つのガラスケース。
そして、その中に浮くようにして入っていたのは……。

QB「その様子だと、本当にワルプルギスの夜を倒してしまったようだね。君たちには驚かされてばかりだ」

マミ「き、キュゥべえ!?」

まどか「えっ!?ど、どうしてキュゥべえが……!」

リンディ「あなたたちとの戦いを遠巻きに見ていたから、ちょっと同行してもらったの。
     それで調査の結果とも合わせて色々とお話して……
     その内容についてあなたたちにも話しておこうと思って」

マミ「え……?何、を……」

ほむら「……私が知っている以上のことが、何か……?」

QB「リンディ、本当に話すのかい?僕としては今の段階ではその必要性を感じないんだけど……」

リンディ「そのことについてはもう散々話し合ったはずでしょう?」

QB「やれやれ、わかったよ」

リンディ「特にほむらさん以外の魔法少女には、ちょっとだけ衝撃的な話になるかも知れないけど……。
    でも、あなたたちには知っていてもらいたい……いえ、知らなければならないことだから。
    できれば今ここで話しておきたいんだけど……気持ちの整理は大丈夫?」

杏子「……ふん。そこまで言われてまた今度なんて、気になってしょうがないじゃん。今話しなよ」

さやか「確かに……ちょっと、怖いけどさ」

マミ「キュゥべえが、こんなことになってるんですもの……」

まどか「お、お願いします、話してください……」

リンディ「……あなたたちは、ソウルジェムが黒く濁りきったらどうなるか、考えたことはある?」

ほむら「……!」

まどか「えっと……魔法が使えなくなるんじゃ……?」

リンディ「それも間違いじゃないわ。でもね、もっと、大変なことが起こるの。
     ソウルジェムにはね、あなたたちの魔力だけじゃない……生命力まで込められているのよ」

さやか「……生命、力……?」

杏子「……ちょっと待ちなよ。ってことはまさか、ソウルジェムが濁りきっちまったら……」

リンディ「えぇ。私たちも実際に見たわけじゃないけど……。
     現に、ソウルジェムを蒐集されたほむらさんとマミさんは、命を失いかけたわ」

シグナム「…………」

まどか「そんな……!」

リンディ「そして、それこそが“キュゥべえ”の狙いなの」

マミ「……え……そ、それって、どういう……?」

クロノ「黒く濁りきった瞬間、ソウルジェムは膨大な量のエネルギーを生み出すんだ。それを回収することが目的なんだよ」

マミ「き、キュゥべえ!それ、本当!?」

QB「訂正するほど間違ってはいないね」

まどか「で、でも、なんでそんなこと……」

クロノ「そのエネルギーを使って、宇宙の寿命を延ばすためだ」

杏子「は、はぁ……!?なんだよ、それ……」

クロノ「理解しがたいのは分かるが、事実だよ。
   少しきつい言い方をすると……君たちの命を利用して、宇宙の命に代えているということだ」

マミ「そ、そんな、ことって……」

さやか「な、何よ、それ……それじゃまるであたしたち、宇宙の餌みたいじゃない……!」

QB「それはちょっと言いすぎじゃないかな。
   少なくとも、君たちの家畜の扱い方よりはずっと良心的だと思うよ?」

杏子「ふざけんな……!それじゃ、てめぇはあたしたちの敵だったってのか!?」

QB「勘違いしないで欲しいんだけど、僕は何も君たち人類に悪意を持ってるわけじゃないんだ」

リンディ「その通り……“キュゥべえ”は、そこにはっきりとした意思を持ってはいるけど、
    人類に対して敵意や悪意を持ってるわけじゃない。それどころか、感情がないのよ。
    エネルギーを回収して、宇宙の寿命を延ばす。……そうプログラムされてるだけだから」

ほむら「プログラム……まさか!?」

クロノ「リンカーコアと生命エネルギーを奪い、その対価に、どんな不可能な奇跡も起こす。
   さらにそのエネルギーを利用して宇宙の寿命を延ばす。
   ……ロストロギア“インキュベーター”。
   意思を持ったロストロギア、それが君たちの知ってる“キュゥべえ”の正体だ」

ほむら「ッ……!」

マミ「ロストロギアって……リインフォースさんと同じ……!」

リンフォース「そうか……この者は、ロストロギアだったか。通りで……」

はやて「それでリインフォース、何か感じ取れたんやね……」

ヴィータ「確かに……ロストロギアが意思を持つってのもあり得ない話じゃないな」

シグナム「あぁ。現に我らもプログラムされたものとは言え、はっきりとした人格がある」

さやか「なっ……なんでそんなこと、今まで黙ってたのよ!」

QB「別に隠してたわけじゃないさ。僕たちだって知らなかったんだよ。
  確かに、普通の生命体とは違うという自覚がなかったわけじゃないけどね」

クロノ「しかしまさか……ロストロギアが独自に文明を築き上げているなんて、正直信じられなかった。
    自らの分身を無限に生成する能力があってこそ可能だったのかも知れないな」

QB「……それで、君たち管理局は僕たちインキュベーターをどうするつもりだい?」

クロノ「本来ならロストロギアは封印した上、局で厳重に保管・管理すべきなんだが……。
    君たちがこの宇宙の寿命を延ばしてきたということは事実だ。
    1つの次元世界の寿命を延ばす、その1点についてだけなら十分な価値があると言っても良い」

ほむら「ッ……!?でもこいつは……!」

クロノ「分かってる。かと言って、現時点でこいつが危険な物であることには変わりない。
   問題は、そのエネルギー源だ。人の命を犠牲にするなんてそう簡単に許容できることじゃないからね」

QB「やれやれ……やっぱりそういう思考になるんだね。
  宇宙の寿命に比べたら些細な問題じゃないか。わけがわからないよ」

ヴィータ「おい、あいつなんかむかつくんだけど……」

シャマル「ダメよ。落ち着いて、ヴィータちゃん」

リンディ「そこで、インキュベーター。あなたにお話があるの」

QB「話?」

リンディ「えぇ。私たち時空管理局と……契約しましょう?」

ほむら「……!?」

杏子「おい、あんた何言って……」

QB「それは、僕たちの言う契約とはもちろん別のものだよね?どういう内容の契約だい?」

リンディ「さすが、話が早いわ。まず、私たちからの要求は……魔法少女システムを破棄すること」

マミ「……!それってつまり……!」

QB「もう契約を結ぶな、そう言うのかい?
  そんなことを要求してくるなんて、当然それに見合う対価はあるんだよね?」

リンディ「えぇ。魔法少女のソウルジェムから得られるエネルギーよりも、
    もっと効率の良いエネルギーを開発・発見して、あなたたちに提供するわ。
    エントロピーを覆すエネルギー源をね」

QB「……もしそれが実現するなら、確かに魅力的だね。
  でもそんなエネルギー源が本当に存在し得るのかい?」

リンディ「局で保管してるロストロギア……そこをあたればまず間違いなく見付かるでしょうね。
    まぁ、使用許可を得るのと、実用可能にするために少し時間はかかるでしょうけど」

QB「……へぇ。まぁ多少の時間なら待ってあげられるとは思うよ。良いだろう。契約は成立だ」

ほむら「っ!本当に!?本当に、もう契約はしないの……!?」

QB「より効率の良いエネルギー源が見付かれば、魔法少女システムにこだわる理由はないからね。
  もっとも、本当にそんなものが見付かればの話だ。
  しばらくは様子を見るけど、望み薄だと判断したらまた契約を始めるよ。それはわかってほしいな」

リンディ「えぇ、もちろん。すぐに準備するから、安心して待っててちょうだい」

QB「そうかい、頼もしいね。僕としても実現することを祈ってるよ」

リンディ「と、いうわけで……クロノ執務官。私は今から本局へ向かいます。
     色々と忙しくなるだろうから、闇の書事件の事後処理なんかは、任せちゃっても良いかしら」

クロノ「はい、艦長!!」

リンディ「あ、そうそう。言い忘れてたわ、魔法少女のみなさん?」

まどか「えっ?あ、はいっ」

リンディ「さっきの話を聞いてショックだったと思うけど……。どうか、気を落とさないで。
    ユーノくんとアルフがずっと調べてくれてたおかげで、
    グリーフシードが無くてもソウルジェムから穢れを取り除く方法が分かりそうなの」

マミ「っ!ほ、本当ですか!?」

さやか「それじゃあ、死んじゃう心配もなくなるってこと……?」

まどか「よ……良かったぁ……!」

リンディ「それと、ソウルジェムに結合させられた生命エネルギーを、元ある形に戻す方法……。
    つまり、私たちと同じような“魔導師”になる方法も、これから全力で探させてもらうわ。
    一度奇跡を起こしてしまった以上、完全に元通りの一般人に戻すのは無理でしょうけど……」

杏子「マジかよ!じゃあ、ソウルジェムの穢れも気にせずに戦えて、ちょっと休めば魔力も元通りってことか!?」

クロノ「先に言っておくが、こっちはまだ可能かどうかは分からない。だからあんまり期待しないように。
   まぁ、もし本当にそうなれば良いのに、くらいの気持ちでいてくれ」

ほむら「……すごい」

リンディ『それから、魔女になった子の魂を、元に戻す方法も。特にこっちの方を最優先して探させてもらうわ』

ほむら『ッ……!そ、そんなことが可能なの……!?』

リンディ『絶対に出来る、って言ってあげられないのが残念なんだけど……。
     でも、きっとなんとかしてみせるわ。だから、あなたも、絶望なんかしないでね』

ほむら『っ……!はい、大丈夫です。ありがとう、ございます……!』

まどか「……ほむらちゃん?」

ほむら「え……」

さやか「何、ほむらあんた泣いてんの?」

ほむら「っ……いいえ、気のせいよ。泣いてなんかいないわ」

クロノ「まったく……期待しすぎるなと言っておいたはずなんだがな」

ほむら「……期待とは、少し違うわ」

そう、これは……希望。
まどか、本当に……あなたの、言う通りだった。

  『……あのね。もし、外のわたしが契約してても、諦めないで欲しいな、って。
  だって……まだまだ希望が、たくさんあるはずだから。
  きっと、外の世界でも……こんな風にみんなで楽しく笑って暮らせる日がくるよ。
  ……じゃあね、ほむらちゃん。ほむらちゃんと笑い合える時を、待ってるから』



    おしまい

タイムリミットまでにギリギリ終わらせられたわ
付き合ってくれた人ありがとう、お疲れ

出かけるまで適当に後日談書いてく

八神家

はやて「みんな、いらっしゃーい!」

なのは「おじゃましまーっす!」

マミ「まぁ……外もだったけど、中もとっても素敵ね」

ヴィータ「いらっしゃい、まどか、さやか!」

まどか「あ、こんにちは、ヴィータちゃん!」

さやか「相変わらず元気だねぇ!」

杏子「元気さならあんたも負けてないと思うけどねー」

さやか「それ絶対バカにしてるでしょ!」

フェイト「ふ、2人ともケンカしないで……」

シャマル「うふふっ。とっても賑やかね」

ほむら「ごめんなさい、騒がしくして……」

シグナム「何、気にするな。主も楽しんでおられるようだしな」

リインフォース「あぁ。お前たちが居ると、我が主の笑顔も一段と輝きを増すようだ」

ほむら「そう……良かった」

はやて「さぁ!みんな揃ったところで、さっそくご飯にしよか!
    今日はいつにも増して腕によりをかけて作ったんよ!」

杏子「おぉー!待ってました!」

ヴィータ「早く食べようよ、はやてー!」

マミ「こら、佐倉さん?まだ手を洗ってないわよ?」

シグナム「ヴィータ、お前もだ。早く洗って来い」

杏子&ヴィータ「わ、わかったよ……」

はやて「ほな、手を合わせて……」

杏子「いっただっきまーす!ん~!うめぇ~!」

ヴィータ「どうだ、美味いだろ~!はやての料理はギガウマだからな!」

さやか「あはは、なんであんたが自慢げなのよ!」

まどか「でも、マミさんの紅茶とケーキだって、とっても美味しいんだよ!」

マミ「か、鹿目さんも張り合わなくても……」

はやて「わ、そうなん?マミさんの手作りケーキ、めちゃ楽しみや!
    あたしは料理は一通りできるけど、お菓子作りはあんまりやったことあらへんしなぁ」

マミ「ふふっ、もし良かったら教えようか?」

はやて「わー、ほんまですか!?ありがとうございます!」

シャマル「あ、だったら私もついでに教えてもらっちゃおうかな!」

シグナム「いや、お前はやめておけ、シャマル」

ほむら「正直、あまり良いイメージが湧かないわね……」

シャマル「そ、そんなぁ、ほむらちゃんまで~……」

杏子「ごちそうさま、っと。よっし!次はマミのケーキだな!」

マミ「はいはい、今準備するからちょっと待っててねー……。どうぞ、色々あるから好きなのを取ってください」

ヴィータ「あ、ウサギ……!あたし、これが良い!」

なのは「あはは、ヴィータちゃんほんとにウサギさんが大好きなんだね」

ヴィータ「なっ……ふ、ふん!良いだろ、別に!なのはには関係ねーよ!」

さやか「はは、相変わらずなのはには厳しいなぁ。あ、そんじゃあたしこれにしよっと」

まどか「あの、ね。ヴィータちゃん。できれば、なのはちゃんにも素直になってくれたら、嬉しいな、って……」

ヴィータ「うっ……ま、まどかがそう言うなら、考えてみる」

ほむら「まだ道のりは長そうね……。素直になるのも難しいけれど、頑張ってね」

フェイト「ほむらさんも、昔は……?」

ほむら「私は……別に。そんなことはないわ。私は昔から素直よ」

シグナム「……とてもそうは思えんがな」

カミーユとか草加雅人のまどかクロス書いた人?

マミ「リインフォースさんも、どうぞ」

リインフォース「私の分まで用意してくれていたのか……ありがたく頂こう」

はやて「これでもう全員取ったかー?ほな、マミさんの手作りケーキ、いただこか!」

ヴィータ「いっただっきまーす!……うわっ!ギガウマじゃんこれ!」

杏子「な、ギガウマっしょ?」

なのは「すごい!ウチの、翠屋のケーキと比べても全然負けてないです!」

マミ「まぁ。喫茶店のケーキに負けてないなんて、とっても嬉しいわ、ありがとう」

はやて「ん~!ほんまにギガウマやね~!」

リインフォース「……まさか、こんな日が来るとは、思ってもみなかった」

ほむら「諦めずに、頑張り続けたら……こういう結果も得られるものよ」

リインフォース「あぁ……そうだな。ただ全員で食卓を囲み、話し、笑う。
        主が、楽しそうに笑っておられる。それだけだが……私は、幸せだ」

ほむら「……えぇ。私も」



ザフィーラ(私の分のケーキは無いのか)

  おしまい

>>413
違うお


時間来たからおしまい
付き合ってくれた人ありがとう、お疲れ

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom