P「雪歩のなつき度が最大になった」(532)


雪歩「プロデューサー♪」

P「……」

雪歩「プロデューサー?」

P「……どうした、雪歩?」

雪歩「な、なんでもないですぅ。呼んでみただけ……」

P「そ、そっか」

雪歩「はい、そうなんです……えへへ」

何このスレ・・・・・・・?

             /ヽ       /ヽ
            / ヽ      / ヽ
  ______ /U ヽ___/  ヽ

  | ____ /   U    :::::::::::U:\

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  | |       | ├―-┤ U.....:::::::::::::::::::/
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  \ \  \___      ::::::

        ゴガギーン
             ドッカン
         m    ドッカン
  =====) ))         ☆
      ∧_∧ | |         /          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     (   )| |_____    ∧_∧   <  おらっ!出てこい >>1
     「 ⌒ ̄ |   |    ||   (´Д` )    \___________

     |   /  ̄   |    |/    「    \
     |   | |    |    ||    ||   /\\
     |    | |    |    |  へ//|  |  | |
     |    | |    ロ|ロ   |/,へ \|  |  | |
     | ∧ | |    |    |/  \  / ( )

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    / /  / / |    |    ||      | |
   / / / / =-----=--------     | |




P「……」カタカタ

雪歩「~♪」ギュッ

P「……あの、雪歩さん」

雪歩「なんですか? あ、もしかして喉が乾きました? だったら私、お茶淹れてきますぅ!」

P「あ、いやそうじゃないんだけど……ちょっと暑いかなーって」

雪歩「え?」

P「ほら、冷房が効いてるとはいえ、765プロも節電だからそんなにキンキンにできないし……そうひっつかれるとさ」

雪歩「……そ、そうですよね。ごごごめんなさいぃ……」

P「あ、いや、わかってくれたならいいんだ! だからそんな悲しそうな顔は……」

雪歩「……」スック

見ててやるからどんどん書けよ 


P(雪歩が無言で俺の膝上から立ち上がって、数分後……)


雪歩「……あの、プロデューサー」スッ

P「お、おお。これは……お茶?」

雪歩「はい、水出し煎茶ですぅ。冷たくて美味しいですよ」

P「ああ、わざわざすまないな。ありがたく飲ませてもらうよ」

雪歩「……」

P「ごく、ごく……」

雪歩「……美味しいですか?」

P「ん、ああ、とっても美味いよ。この季節はこういうのもいいな」

雪歩「えへへ……良かったぁ。プロデューサーが喜んでくれたなら、私も嬉しいですぅ」

P(目が笑ってない)

もちろんエロ展開はあるんだろうな?

   〃∩ ∧_∧
   ⊂⌒(  ・ω・)  まだかよ<<1

     `ヽ_っ⌒/⌒c
        ⌒ ⌒


雪歩「……プロデューサー?」

P「どうした?」

雪歩「おかわり、いりますか? いりますよね、私、もう一杯淹れて……」

P「待て待て! お茶はもう大丈夫だから……それよりさ」

雪歩「は、はいぃ……」

P「さっきからちょっと様子が変だぞ。なんというか……落ち込んでるというか」

雪歩「……」

P「……言いたいことがあるなら、はっきり言ってごらん」

雪歩「あ、あの……私、迷惑かけてばっかりだから……、ちょっとでも、プロデューサーの為になれたらって、それで……」

P「迷惑? そんなの、全然かけられた記憶はないが……」


雪歩「だ、だって……お仕事はいつもダメダメだし、イヤなことはイヤって言っちゃうし……」

P「……」

雪歩「相変わらず男の人は苦手だし、犬がいるだけで泣いちゃうし……うう」

P「そんなの、全然問題じゃないぞ。俺がフォローしてやればいいだけの話だからな」

雪歩「そ、それに!」

P「……それに?」

雪歩「さ、さっきだって……プロデューサーに……、あ、暑苦しくて邪魔だからどけ、って……ぐすっ」

P「ちょちょちょっと! そんな風には言ってないだろう!?」

雪歩「うぇえ……、たしかに今のは言い過ぎましたぁ……ごめんなさいぃ……えぐっ」ポロポロ

P「ああ、もう……また泣き出して……」

保守


P(雪歩は、泣き虫だ)


P「……ほら、こっちおいで」

雪歩「うぅえ……こほ、こほっ……」

P「……」

雪歩「……近づいても、いいんですかぁ?」


P(いろんな悲しいことがあって、雪歩が泣いてしまうたびに、俺はそのフォローをしてきた)

P(もちろん、泣き虫なところを含めて雪歩だ。それをカバーして有り余るくらいの魅力が彼女にあるのは、俺が一番良く知っている)


P「もちろんだよ。俺もさっきは言いすぎた、すまなかったな」

雪歩「……そ、それじゃあ……」


P(だが……)

  /⌒ヽ
 く/・〝 ⌒ヽ  だがなんだよ?
  | 3 (∪ ̄]
 く、・〟 (∩ ̄]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

どうせスケベでチンコを咥え込んで話さないとか言うんだろ! 
あのエロ同人誌みたいに!


雪歩「……えへへ……♪」チョコン

P「ん、さっきくらい密着しなくてもいいのか?」

雪歩「いいんです。またプロデューサーに暑い思いをさせるわけには、いきませんから」

雪歩「こうやって隣に座っていられるだけで、私は幸せですぅ」

P「……雪歩はいい子だな」

雪歩「えへへ……あ、でも、一回だけ……あの、その」

P「なんだ?」

雪歩「ええっと……ぎゅっ、ってしてもらえたらな、って……」

P「……」

雪歩「……あの……」

P「……」ナデナデ

雪歩「……あ……」

P「……すまないな」ポンポン

雪歩「えへへ……、そうです、よね。大丈夫です、私。だから……謝らないでください」

>>25おちけつ

  ∧_∧
 ( ´∀`) 
 /,   つ  
(_(_, )

  しし'


雪歩「プロデューサーの近くにいると、とっても良い匂いがしますね……」

P「そうか?」

雪歩「はい。落ち着くし、なんだか自分の部屋にいるみたいですぅ」

P「……」

カタカタ…

雪歩「……私が隣にいて、お仕事、邪魔にならないですか?」

P「大丈夫だよ、雪歩は何も気にしなくていい」

雪歩「よかったぁ……えへへ、じゃあ、もうちょっとだけ……こうして……」ススッ

P「眠いのか?」

雪歩「……はい、眠いんです。だから、こうして、頭をプロデューサーの肩に乗っけちゃうのも……仕方ないんですぅ」

P「そうか……それなら、仕方ないな」

雪歩「そうです、仕方ありません……」

気が済むまでかけよ 最後までおさんがつきあってやるよ

せやな


雪歩「……すぅ、すぅ……」

P(本当に寝てしまった)

P「……」

カタカタ…

P「……熱いな」


P(雪歩が、俺になつくようになって、数ヶ月が経った)

P(彼女がメンタル面で弱いところがあるのは、自己紹介のときからわかっていたことだ)

P(だから俺は、雪歩が気兼ねなくアイドル活動を行えるように、出来るだけ彼女のことをフォローしてきた)

P(その結果が、これだ)


雪歩「……ぷろりゅーさー……むにゃむにゃ」

P「……」


P(プロデューサーとアイドルとの間に信頼関係が成り立つのは必要なことだし、大切なことだが……)

P(正直、俺は……困惑している)

なかなかキュンとくるな


ガチャ

律子「ただいま戻りましたー、おつかれさまでーっす!」

P「……り、律子! しー、しー……!」

律子「あら、お疲れ様です、プロデューサー……と、やっぱり雪歩もいましたね」

P「ああ……寝てるから、静かにしてやってくれよ」

雪歩「……すぅ、すぅ……」

律子「はいはい。プロデューサー殿は、いつでも雪歩にトクベツ優しいですからね~」ニヤニヤ

P「……律子が思っているようなことは、何もないよ」

律子「ホントにそうかしら~? ……なーんて、冗談ですよ」

P「……」


P(他意はない、他意はないが……)

P(律子にそういう勘違いされるのは、なんとなく……避けたい)

P(……何度も言うように、他意はない、んだけど……)

             /)
           ///)

          /,.=゙''"/
   /     i f ,.r='"-‐'つ____   こまけぇこたぁいいんだよ!!
  /      /   _,.-‐'~/⌒  ⌒\
    /   ,i   ,二ニ⊃( ●). (●)\
   /    ノ    il゙フ::::::⌒(__人__)⌒::::: \
      ,イ「ト、  ,!,!|     |r┬-|     |

     / iトヾヽ_/ィ"\      `ー'´     /


律子「ま、雪歩がどう思ってるかっていうのは、一目瞭然ですけどね」

P「……どうって?」

律子「そりゃ、プロデューサーのことをす……って! い、言わせないでよ、恥ずかしい」

P「……それだって、ありえないよ」

律子「え?」

P「雪歩は……俺が、何も怖いことをしないってことがわかってるから、なついてるだけだ」

律子「あなたそれ……本気で?」

P「……ああ。そういう男性は、雪歩にとって珍しい存在だったんだろう。だから、こうなってるのさ」

雪歩「……」


律子「……はぁ」

P「な、なんでため息をつくんだ?」

律子「あ、いえ……鈍感だ鈍感だ、って思ってたけど、まさかここまで……」ブツブツ

P(ブツブツ言ってて何を言ってるのかわからないが、なんだかいつもの律子じゃない……怒ってるのか?)

律子「おっほん! まあ、なんでもいいですけれど……それ、雪歩の前で言わないでくださいね?」

P「そ、それくらいさすがに、わかってるさ」

律子「ホントーにわかってるのか怪しいもんね……今は雪歩が寝てて、ラッキーでしたよ、本当に」

雪歩「……」


律子「……本当に、幸せそうな顔してるわ」

P「そうなのか? 肩に乗っかってるから、俺の位置からじゃよく顔が見えないけど」

律子「ええ……」

雪歩「……」

律子「……アイドルとプロデューサーは、恋愛関係になっちゃいけないんですか?」

P「……当たり前だろう」

雪歩「……!」

P「マスコミのネタになるようなこと、わざわざプロデューサーがするなんて……普通に考えたら、そうだろう」

律子「……そ、それなら……」

P「ん、それなら?」

律子「……いえ、なんでもないです!」


P「律子? どうした、なんか顔が……」

律子「あーもう、なんでもないですって!」

P「そうは言ってもな……風邪でも引いてたら大変だぞ」

律子「そんなんじゃないですってば……えっと、こ、これ、今度の慰安旅行候補のパンフですから、目を通しておいてくださいね!」

ドサッ

P「うわ、こんなに……はりきってるな、音無さん」

律子「この夏こそ~! って燃えてましたよ。んと……それじゃあ私は、竜宮小町を迎えに行くんで、これで……」

P「ああ、行ってらっしゃい」

律子「い、行ってきます……」

ガチャ…バタン

逝っちゃったよ・・・


ミーン ミンミン……


P「……」

P(季節は夏。誰もいない事務所に、俺と雪歩のふたりっきり)

雪歩「……」

P(雪歩は寝ていて、俺は書類仕事を行っている。音無さんは……どこに行ったんだ?)

P(そんなことすら、俺は、何も知らなかった)


P(俺がここに来てから、もう随分が経つけれど)

P(色んな人と出会い、たくさんのことを学んできたつもりだったけれど)

P(それでも、プロデューサー業以外のことは何も知らない、わからない。俺はそんな、ただの一人の平凡な男だった)


ミーン ミンミン……

       _,..-――-:..、    ⌒⌒
     /.:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::.\      ^^
    / .::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::..ヽ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  :::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::

   :::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::
     :::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::     ∧.P,∧
      ::::::::::::::::::::::::::::       ( ::;;;;;;;;:)
        ::::::::::::        /⌒`'''''''''''^ヽ
               /⌒ヾ/ / .,;;;;;;:/.:;|

-―'――ー'''‐'ー'''―‐'―''''\,./ / .::;;;;;;:/‐'| :;|'''ー'-''――'`'
 ,, ''''  `、 `´'、、,   '''_ソ / `:;;::::ノ,,, | :;| '''  、、,
    ,,,   ''  ,,   ''''' ξ_ノ丶ー'ー< ,ゝ__> '''''  ,,,,
 ,,     ,,,,     ''' ,   ::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::  ,,
            ,,,,,,,     :::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;:::::::::      ''
,, '''''''      ,,,,       ,,    :::::::::::::;;;;;;;;::::::


P(このとき雪歩が、本当はどんな表情をしていたのかも、知らなかった)

P(このとき律子が、扉の向こうでペタリと座り込んでいたということも、ずっと後になるまで知らなかった)

P(このとき、俺が……)


P「……」

雪歩「……」


P(本当はどんな気持ちでいたのかも、俺自身のことなのに、俺はわかっていなかったのだ)


ミーン ミンミン……

P「暑いな……暑くて、熱い」

雪歩「……」

P「……雪歩、俺は……」


P(夏は始まったばかりで……、俺たちはみんな、揃いも揃って、ただの子どもだった)

休憩するお

朝か


『プロデューサー』

『プロデューサーのこと、私は……』


『どうして……私じゃダメなんですか……』

『どうして、あなたじゃなくちゃ、ダメなんでしょう……』


『――なのに、どうして……』

『――になってくれる人だけを、――になれたら……いいのに』


??「――サーさん、プロデューサーさん! ほら、起きてくださーい!」

P「ん、ああ……、すまない、寝ちゃってたか……」

春香「えへへ、ほら、着きましたよ! 荷物持って、早く行きましょうっ!」

P「わかったわかった……だから、そんな大きな声を出さないでくれ」

春香「なーに言ってるんですか! みんな待ってますから、ほら早く早くっ」

P「……ああ」


P(なんだか、懐かしい夢を見た気がする。あれは、いつのことだっただろう?)


ザザア…… ザザーン……

春香「うわあ……! プロデューサーさんっ、海ですよ、海っ!」

P「海だなあ。でも、春香は海くらい、撮影で何度も来てるだろ?」

春香「むー……プロデューサーさん、わかってないです。お仕事で来るのと、今みたいなのは、違うんですよーだ」

P「……そういうもんか」

春香「はい、そういうもんです♪ それじゃ私も、着替えてきますね!」

P「ああ。日焼け止め、忘れるなよー」

春香「はーい♪」


P(俺たちは、今海に来ている。慰安旅行ってやつだ)

P(残念ながら、去年と違って仕事量も増えてきているので、全員参加というわけにはいかなかったが……)

P(それでも、女の子たちの多くは、なんとか時間を作って参加してくれた)

     えっと・・・・
  || ̄ Λ_Λ
  ||_(Д`; ) 
  \⊂´   )
    (  ┳'


雪歩「う、うぅ……は、恥ずかしいよぉ……」

P「……大丈夫か、雪歩」

雪歩「あ、プロデューサー! ああ……やっと来てくれましたぁ」

P「遅くなってごめんな。それより……人混みは、まだ苦手か?」

雪歩「は、はい……去年の海よりは人も少ないけど、それでも……」

P「……何かあったら、真っ先に大声を出すんだぞ。俺はここでみんなを見てるから、すぐ駆けつけてやる」

雪歩「……わかりました。それなら、安心ですぅ」

ユーキピョーン! ハーヤークー!

P「ほら、真美たちも呼んでるから、行っておいで」

雪歩「はい♪」

たったった……


雪歩「……あ」

クルリ

P「ん、どうした?」

雪歩「えっと……その……う、うぅ」

P「……?」

雪歩「……! ……!」クルクル

P(雪歩が、目を><みたいな形にして、くるくる回っている……なんだ? 何かの儀式か?)

雪歩「あ、あの……み、みず……、ミズギ……」

P(……ああ、そういうことか)


P「……よく似合ってるよ、雪歩。今ビーチで一番かわいいのは、間違いなく雪歩だな」

雪歩「! ……えへへ……、い、行ってきますぅ!」


P「さて、と……」

春香「……」

P「きゃっ! は、春香!? お、脅かすなよ……」

春香「きゃってなんですか、きゃって……それより、プロデューサーさん?」

P「うん、なんだ?」

春香「ビーチで一番かわいいのは、誰なんですか~?」

P「……聞いてたのか」

春香「聞こえちゃいました。それで……」

P「春香もかわいいよ、もちろん」

春香「そ、そそそういうこと言って欲しいわけじゃなくてですね……もうっ」


春香「……ああもう、私も、行ってきますねっ!」

P「あ、ああ……」

P(春香、なんだか様子がいつもと違うような……)


たったった……

春香「……本当に、雪歩の気持ち、わかってないんだから……」ブツブツ

P「おーい、春香ー!」

春香「なーんですかーっ!」

P「そんなに勢いよく走ると……」

春香「え? なんですかーっ、聞こえ……ののわああっ!」

どんがらがっしゃーん!

なんとか持ち直したな


P「ああ、言わんこっちゃない……大丈夫かあー?」タタタ

春香「あいたたたぁ……だ、大丈夫ですからっ! 一人で立てま……って」

P「ほら、手を貸してやるから……」スッ

春香「……」

ギュッ スタ

P「怪我はないか?」

春香「は、はい、平気です……慣れてますから、それに、砂浜だし……」

P「そうか、それならいいんだけど……」

春香「プロデューサーさん……来るの、早過ぎます」

P「そこに文句を言われるとは思わなかったな……」

春香「……そうやって、誰にでも優しいから……だから……」ボソボソ


真美「はるるーん! 兄ちゃーんっ!」ダキッ

春香「わぷっ」

真美「んっふっふ~♪ あんまり遅いから迎えにきちゃったっ! ……あれ、はるるん?」

春香「な、なに?」

真美「なんか、怒ってるっぽい? なんかあったの? だいじょぶ~?」

春香「なな、なんでもないよ! じゃあ、行こっか!」

真美「うん! 兄ちゃんも~」グイグイ

P「俺は監督役だから、遊ばなくてもいいよ。真美たちだけで遊んでおいで」

真美「えー! そんなのつまんなーい! ぶーぶー!」

春香「……いいよ、真美。プロデューサーさんなんかほっといて行こっ」

真美「え……、まあ、はるるんがそう言うなら……」

P「……」


ザザア…… ザザーン……

春香「……」クルリ

P「? 春香、こっちを振り返って、何か……」

春香「……――サーさんの……」


ザザアアァーン!!

春香「      !!!」

真美「!?」


P「……」

P(春香が、恐らく俺に対して叫んだ言葉は……、波の音に流されて、消えてしまった)

P(春香の隣にいた真美の驚いた顔と、叫んだあとにバランスを崩して転んでしまった春香の姿を見ながら)

P(俺は、何をするでもなく、ただなんとなく……、その場に立ち尽くしていた)

!?


―――
――


真美「ふい~……ちかれたちかれた。でもめっちゃ楽しかったねっ!」

春香「そうだね、もう今夜はぐっすり眠れそう……はふ」

雪歩「うう、今から日焼けの痛みが怖いよぉ……」

P「みんなー、もうしばらくしたら食事だからな。部屋に荷物置いて、準備しておいで」

みんな「はーい」


P(海でひとしきり楽しんだあと、俺たちは今夜止まる旅館へとやってきた)

P(……もうそろそろ、着くかな)

ブロロロロ……

P「お、噂をすれば……」


律子「えっと、ごめんなさい。今日予約していた、ええ、765プロダクション……」

P「……律子」

律子「ああ、プロデューサー! 遅れてすみません、少しくらい、海にも顔出せると思ったんですけど」

P「まあ、仕方ないさ。竜宮小町のみんなは……」

律子「あはは……あそこに」


伊織「……」ムスー

あずさ「伊織ちゃん、どうしたの~? なんだか怖い顔してるわよ」

亜美「んっふっふ~。海で遊べなかったから、いおりんご機嫌ナナメなんだよ、あずさお姉ちゃん」

あずさ「まあ……ふふっ」

伊織「だ、だぁれがそんなことでご機嫌ナナメですって!? わ、私はただ、旅館がボロ臭かったから、それで……」

あずさ「伊織ちゃん、そんなこと言っちゃだめよ? とっても素敵なところじゃない」

伊織「う……ま、まぁ、よく見たらまあまあの旅館だけど……あーもうっ」

>>91の訂正
×止まる
○泊まる

               ∩_
              〈〈〈 ヽ
      ____   〈⊃  }

     /⌒  ⌒\   |   |
   / へ    へ\  !   !
  / :::::⌒(__人__)⌒:::::\|   l
  |     |r┬-|       |  / 半年ROMってろ
  \     ` ー'´     //
  / __        /
  (___)      /



あずさ「あ、プロデューサーさん。お疲れ様ですー」ペコリ

P「お疲れ様です、あずささん。……伊織がなんだか機嫌悪いみたいですね」

あずさ「ええ……お仕事してる間はとっても元気で、すぐにでも終わらせちゃおうって顔をしていたんですけれど……」

亜美「車が渋滞になっちゃったんだから、しょうがないっしょ? いおりん、元気出しなよ~」

伊織「むっかー! 揃いも揃って、それじゃあ私が、海で遊ぶのをすっごい楽しみにしてたみたいじゃないのよっ!」

亜美「え、違うの?」

伊織「違うわよっ! この宇宙一の天才美少女アイドル水瀬伊織ちゃんが、そんなことで浮き足立つ……」

やよい「ああーっ! 伊織ちゃーんっ!」トコトコ

伊織「……わけないけど……」

やよい「やっと来れたんだねーっ! 海すっごいすっごい楽しかったけど、伊織ちゃんがいなくて寂しかったよーっ」

伊織「……そ、そう?」

やよい「うんっ! えっとね、波がザザーンってなって、私流されちゃいそうになって、それでそれで……」

伊織「……ふぅーん、へぇー……」ニヤニヤ

P「……」


P(……まあ、伊織のことはやよいがなんとかしてくれるだろう。それより……)

P「亜美、伊織、あずささん、お疲れ様。仕事が重なってたのに、よく来てくれたな」

亜美「兄ちゃーん、ひとり忘れてなーい?」

P「え? ……ああ、そうだな」

律子「……?」

P「律子も、本当にお疲れ。昨日もあんまり寝てないのに、そのまま運転手してきてくれたんだろ?」

律子「えっ、どうしてそれを……」

P「目の下のクマを見ればわかるよ。また栄養ドリンクで誤魔化したんだろうが……もう十代でもないんだからな」

律子「あはは……なんでもお見通しですね」

P「あんまり頑張りすぎるなよ。お前だって女の子なんだから……今回の旅行だって、無理して参加しなくても」

律子「今回のは、みんながどうしても来たいって言うから……まあでも、肝に銘じます、はい」

亜美「律っちゅあ~ん、お顔がユルユルだよ~?」

律子「こ、こら亜美っ! またテキトーなこと言って……!」

次の時代に、新しい風を吹き込んでいい?
結構有名な製作所なんだが

>>109
全力でいけ

雪歩と朝ごはんを食べてきます

>>1乙 さらばだ

一応wwwww保守っとくぞ>>1wwww


P「……というわけで、これからも皆には、ファンの方たちに笑顔を届けるべく、日々精進を重ねてもらうために……」

小鳥「プロデューサーさん、あの、話もその辺にしてもらって……」

P「え?」

みんな「……」グゥー

P「ああ、すみません! 社長の長話の癖がうつっちゃったかな」

小鳥「社長が聞いたら悲しみますよ~」

P「あはは……まあ、それはともかく!」


P「一泊二日と、短い期間ではあるけど、残りも十分に楽しみ、そして疲れを癒してくれ。それじゃあ……、かんぱーい!」

みんな「かんぱーい!!!!」

                          ,. -‐==、、

             ,. ===、、 o   ○o.  i       :::ト、
           _,/      `ヾ´´`ヽ、 ゚ .l       :::ト、\
           //      .::::/  :::::!===l      :::|ス. ',
             /./       .::::/   ::::l    |  __ ..... _::::|} ヽ l-、
.           ,ィク ,'..__    .::::/    ::::l    :l '´    `)'`ヽ ヾ;\
       /::{゙ ヽ、 ``丶、;/‐‐- 、::::l     `'::┬‐--<_   } ./;:::::\
     /::::::::!   ,>---‐'゙ー- ...__)イ ,. -‐‐-、ト、   |l::ヽ /;';';';';::::\
.     /|::::::;';';'\/} (ヽ、  _/|   (´    _,.ィ!::ヽ.  ヾー'´;';';';';';';';';:: /ヽ、
   / ,ノ:::;';';';';';';';';'/  /ヽ、二ニ-イ   ヾT ¨´ ,/;';';::`、. \';';';';';';';';';';〈::...
. /  i::;';';';';';';';';';'/ ,イ.:::::::::::::::::: !    ヽ`ー‐'";';';';';';';ヽ   \';';';';';';';';';!:::::


P「ふぅ……」

雪歩「ぷ、プロデューサー!」

P「ああ、雪歩。日焼けは大丈夫か?」

雪歩「はい、このあとお風呂に入るのがちょっと怖いですけど……えへへ」

雪歩「そ、それより! あの……」

P「どうした?」

雪歩「お隣に……、座ってもいいですか?」

P「……」チラ

雪歩「す、すすすすみません! わ、私なんかがプロデューサーの隣でご飯なんて……」

P「あ、いや……、もちろんいいぞ、遠慮しないでくれ」

雪歩「ほっ……良かったぁ」


P(今、俺は誰の顔をうかがったんだろう?)


雪歩「プロデューサー、グラスを……」

P「ああ、すまないな」スッ

雪歩「……」

トットットット……

P「っとと……ありがとう、雪歩はビールを注ぐのがうまいな」

雪歩「えへへ……、お父さんとか、うちに来るお弟子さんたちに、よくこうしてお酌をしていますから」

P「そ、そうか」

P(雪歩の家のこと、俺はあんまりよく知らないんだよな……お弟子さんってなんなんだ)


雪歩「でも、身内の人以外に、こうしてお酌をしたのは初めてですぅ。うまくいって良かったぁ」

P「……」

雪歩「私、取り得もなんにもなくて……、プロデューサーには、これくらいしか出来ませんけど……」

グイッ

P「ごく、ごく……ぷはぁ」

雪歩「あ……そんな、一気に飲んだら……」

P「……雪歩が注いでくれた酒が、あんまり美味くてな。もう一回、おかわりしてもいいか?」

雪歩「! は、はい、喜んで!」

トットット……

P「……」

雪歩「……プロデューサー?」

P「なんだ?」

雪歩「いつも……お疲れ様です。それと……」


雪歩「いつも、こんな私に優しくしてくれて……、とても、とっても感謝しています」

P「……気にするな。俺は……雪歩の“プロデューサー”なんだから」

雪歩「……」

トットット……

雪歩「……はい」


P「……」モグモグ

雪歩「……」モッモッ

P(なんだか、気まずくなってしまった……さっきから何も会話もなく、ただ黙々と食べているだけだ)

P(……俺は、雪歩のプロデューサーだ。それ以外、なんて言えば良かったんだよ……)

P「……」チラ

雪歩「! ……も、もぐもぐ……」

P(目を合わせようとしたら、この調子だしな……やっぱり、雪歩はまだ、あのときの――

小鳥「ぷーろでゅーさーしゃーん! うへへへへっ!」

P・雪歩「!?」

小鳥「いーつまで雪歩ちゃんとイチャついてるんでしゅかーっ! 私も仲間に入れてよぉ~」

P「ちょ、ちょっと音無さん……もう酔ってるんですか」

小鳥「酔ってないですよ! あたしを酔わせたら大したもんですよっ! むふふ」


小鳥「だいたいぷろでゅーさーさんはぁ……ひっく。いつもいつも、雪歩ちゃんばーっかりトクベツ扱いしてぇ」

P「そんなことないですって……」

雪歩「あわわわ……こ、小鳥さん、大丈夫ですか?」

小鳥「だーじょぶ! だーじょぶだから、雪歩ちゃん、あーしにもお酒ちょうだい?」

雪歩「は、はいぃ……。ど、どうぞ……」

トクトクトク

小鳥「んー♪ ありがと、雪歩ちゃん♪ ……っぷっはあ! 美味しい!」

P「音無さん、無理しないでください……もう二十代でもないんで――

小鳥「年齢のことは言うなあっ! ばかあ!」

P「す、すみません」

小鳥「まったく……ん、あれれ? なんか、世界が回って……」

雪歩「あわわわわ……小鳥さんの顔が、真っ白ですぅ」


小鳥「……」ダラダラ

スック フラフラ

P「だ、大丈夫ですか? うまく立ててないですけど……」

小鳥「ふふ、大丈夫ですよ、プロデューサーさん。でも私、ちょっと、お手洗いに行ってきますね」

P「は、はい……お気をつけて」

小鳥「やだ、プロデューサーさんったら。ちょっとそこまでの距離なのに、気をつけるも何もないですよ♪ それじゃあ」

テクテク……

テクテクテクてくてくてkおろろろろろろ


「うぎゃー! ピヨコが歩きながら吐いたーっ!」

「だ、大丈夫ですかっ、小鳥さん……うわあ……」

「は、春香……そんな露骨に引いたら、可哀相よ……でも、うわあ……」


P「……」

雪歩「……」


P「……ちょっと、行ってくる。旅館の人に雑巾借りてこないとな」

雪歩「は、はい」

P「雪歩はみんなを連れて、部屋に戻っていてくれ。もう食事どころでもなさそうだしな」

雪歩「わかりましたぁ……あの、プロデューサー」

P「……なんだ?」

雪歩「……いつも、お疲れ様ですぅ……」

P「フフ、それはさっきも聞いたよ。それじゃあ、チャオ☆」


小鳥「ごべんなざい……生まれてきてごべんなざい……おろろろ」ポロポロ

P「音無さん、泣きながら……そんなに辛かったんですね」フキフキ

響「ピヨコ、だいじょぶかー? ほら、出すならこのビニール袋の中だぞ」

P「響、悪いな、手伝ってもらっちゃって」

響「このくらい、なんくるないさー。酔った大人を介抱するのは、ちっちゃい頃から島でやってきたからね!」

P「そうなのか……えらいな、響」

響「うん! えへへ……もっと褒めてくれてもいーよ!」

P「響はえらいよ、世界一良い子だ」

響「そ、そんなに褒められると、ちょっとくすぐったいぞ……」


プシュー

P「……よし、消毒用のアルコールも撒いたし、こんなもんかな」

響「ビニール袋が重いね……この中に、」

P「それ以上言うな……その袋は俺が捨ててくるから、響も風呂、入っておいで」

響「はーい。ほら、ピヨコ、いい加減起きるさー」ペチペチ

小鳥「むにゃむにゃ……」

P「もうこの際ほっとくか」

響「だ、ダメだよ! 旅館の人に迷惑かかっちゃうでしょ! ピヨコは自分がおぶっていくから」


P「いや、おぶっていくなら、それこそ俺が……」

響「このくらいへーきへーき! 自分、ダンスやってるから、これくらい運ぶのなんてへっちゃらさー!」

P「でも……」

響「それともプロデューサーは、女の子の部屋を覗いちゃう、変態プロデューサーなの?」

P「い、いや、そんなことは決して……」

響「プロデューサーだって、疲れちゃってるでしょ? ここは自分に任せといてよっ!」

P「……悪いな」

響「えへへ……なんくるないさー」


響「……あ、プロデューサー」

P「どうした?」

響「あの……雪歩のことなんだけど……」

P「……雪歩が、どうしたって?」

響「……ううん、やっぱなんでもない! じゃーね!」トタタタ

小鳥「おふっ、えふっ……、ひ、響ちゃん、もうちょっと優しく……」ガクガク

P「……」


P(アイドルたちは、みんな……何を知っているんだろう)

P(もしかして……何も知らないのは、俺だけなのかもしれないな)

少し休憩します


―――
――


ガララッ

響「ふう……、やっとお風呂に入れるぞ……」

貴音「響、お疲れ様です」

響「あ、貴音ー! お待たせっ! 自分が来るまで待っててもらっちゃって、ごめんね」

貴音「ふふっ、構いませんよ。それにこの通り……一緒に待っている者もいましたから」

美希「むにゃむにゃ……」

響「美希……たしか、海でもずっと寝てたような」

貴音「それより、小鳥嬢の具合は……」

響「なんか、ごめんなさい、ごめんなさいってずっと呟いてたけど……まあ、なんくるないさー。ピヨコだからねっ」


カポーン

響「良~い湯だぁなぁ~バババン♪」

美希「良い湯なの~バババン♪」

貴音「その、ばばばん、とは……どのような意味なのでしょう?」

響「え? ……知ってる、美希?」

美希「ミキもわかんないの。でも、なんかとっても良い気分になるコトバだって思うな!」

貴音「特に意味が知られていなくても、このように皆の心に浸透している言葉なのですね……面妖な」

響「うう、貴音は固く考えすぎだぞ……」

美希「ミキ、なんだかお腹減っちゃったの。小鳥がおろろしちゃって、あんまり食べられなかったからかな」グウウ

響「美希は自由すぎっ!」

貴音「はて、そう言われてみると、私も……」グウウ

響「貴音はいっぱい食べてたでしょ……」


雪歩「うう、やっぱり日焼けが痛いですぅ~……」

真「大丈夫、雪歩? もうそろそろあがろっか? ボクも一緒に行くからさ」

雪歩「うん……、ごめんね、真ちゃん」

真「へへっ、気にしないでよ! それじゃ、ボクたちはお先にあがるから! 響たちはゆっくりしていってね!」

響「うん!」

貴音「ばばばん♪」ヒラヒラ

美希「バババン♪」フリフリ

ガラララ……バタン


美希「みんな行っちゃったね。てことは今から、このお風呂はミキたちだけの独占なの!」スイー

貴音「美希、他に人がいないとはいえ、浴場で泳ぐのははしたないですよ」

美希「え~」スイスイ

響「そ、そうだぞ! (ちょっと泳ごうとしてたなんて言えないぞ……)」

美希「ぶー、わかったの……」


カポーン

美希「…………zzz」

貴音「喝っ」ペチン

美希「あふう! えっ、なんで? なんで叩かれたの?」

貴音「響がそのように……美希を起こせ、と」

美希「むー……」ジロ

響「ええっ!? う、嘘でしょっ、貴音がそんなこと言うなんてっ!」

貴音「ふふ……私、ジョークは嫌いではないのです」

美希「どっちでもいいの! じゃあなんか、ミキが眠くならないようなハナシ、してよ!」


貴音「美希が眠くならないような話……ですか。それはなんとも、難しいお題ですね」

貴音「果たして、そのようなものが地上に存在するのでしょうか……」

美希「それどーいう意味?」

響「……」

美希「……響? どーしたの、さっきから黙っちゃって……」

響「……あ、あのさ、ふたりとも」

貴音「どうしたのですか?」

響「ふたりは、その……」

美希「うんうん」


響「恋とか、したことある?」


美希「恋? カレシってこと?」

響「うん……」

貴音「響……あなたは、まさか……」

響「あ、いや違う違うっ! 自分は別に、誰かを好きになったとかじゃないぞっ!」

貴音「そうですか」ホッ

響(なんでほっとしたんだろう?)

美希「ミキはー……うーん、まだよくわかんないってカンジ」

響「そうなの? なんか意外さー。美希ならモテモテっぽいし」

美希「そりゃ、毎日いろんな人から告白されるけど……みーんな同じ顔したカンジで、イマイチなんだもん」

貴音「毎日……」

響「やっぱりすごいな……」

美希「あ、でも」


美希「プロデューサーは、ちょっといいかなーって思ってたよ」


響「!」

貴音「……それは、何故ですか?」

美希「えーっとね、ミキのためになんでもしてくれるし、優しいし、ミキのこと大切だって言ってくれたんだもん」

美希「顔はちょっと、物足りないけどね! あは☆」

響「思ってた、ってことは……今は違うのか?」

美希「うん。だってだって、他の人のカレシを好きになるなんて、さすがのミキでもしないよ」

響「まあ、たしかに……って……」

響「えええええええええ!!!?」


響「ぷ、プロデューサーが、誰かの彼氏っ!?」

貴音「なんと……美希、それは真ですか?」

美希「真クンじゃないよっ! いくらプロデューサーでも、真クンは譲らないのっ!」

貴音「あ、いえそうではなく……ああ、もどかしい!」


響「そ、それってやっぱり……」

響(やっぱり、雪歩とプロデューサーのこと? やっぱり、あのふたりは出来てたのかー!?)

貴音「……美希、その話に、根拠はあるのですか?」ズイ

美希「な、なんか貴音がいつもより食いついてくるの……こういう話、案外スキなんだね」

貴音「そのようなことは、今はいいのです! そ、それで……」

美希「コンキョって言うか……プロデューサーが事務所で、好きだ、って言ってるの聞いちゃったんだもん」

響(事務所でっ!? そ、そんなところでまで……うぎゃー! や、やっぱり変態プロデューサーだぞっ!)

貴音「……ということは、プロデューサーと恋仲になっている者は、この事務所に?」

美希「そーだよ!」


響「……ねえ美希、それって、やっぱり……ゆき――

美希「律子なの」

響「……え?」

美希「あ、間違っちゃった。律子さん、ね! ……でも、今は居ないからいっか」キョロキョロ

貴音「なんと……それは、真ですか……」

美希「だーかーらー、真クンじゃないの! プロデューサーの彼女は……」

響「……」


美希「律子だよっ! この耳で聞いたから、間違いないのっ!」

眠たくなってきちゃった
15時まで寝る。申し訳ない

保守

っほ

帰ってくるかな・・・

すみません今目覚めました
再開したいと思います

信じてた


― 高校生部屋 ―

雪歩「――ってことがあったの。だから私は、プロデューサーのこと……」

千早「……そう」

春香「……」

真「……」

雪歩「春香ちゃんと真ちゃんには、前に言ってたんだけど……良い機会だから、今日一緒の部屋で寝る皆にも言っておこう、って思って」

千早「……辛かったわね、萩原さん」

雪歩「う、ううん! 辛いなんて、そんなことないよ! 私いま、とっても幸せだし」

春香「雪歩……」

真「……あとで、響にも言うのかい?」

雪歩「うん。お風呂から上がってきたら、言おうと思う」


響「……」トボトボ

『プロデューサーの彼女は、律子だよっ! この耳で聞いたから、間違いないのっ!』

響「大変なこと聞いちゃったぞ……うう、今日一緒の部屋で寝る雪歩の前で、自分はどんな顔して……」

響「雪歩がプロデューサーのこと好き、ってのは、きっと見てる皆が知ってると思うし」

響「うぎゃー! それなのに、自分、ちゃんと笑っていられるのかーっ!?」

なんくるくるくる……

響「……」ピタ

響「でも、いつまでも悩んでも仕方ないよね! ポジティブ、ポジティブ!」

響「よーっし、行くさー!」

ガチャ


響「は……はいさーい! みんな、お待たせ! 今あがったよ!」

雪歩「あ、響ちゃん!」タタッ

響「ゆ、ゆきぽじゃないかっ。げげ元気だった?」

雪歩「? う、うん……私は元気だよ、えへへ」

響「えへへ……」

響(今自分、自然に笑っていられてるかな? ぶっちゃけ自信ないぞ)

雪歩「あのね、響ちゃん。ちょっと聞いて欲しいことがあるんだけど……」

響「な、なにかしら?」

真(かしら?)

千早(我那覇さん、様子がいつもと違う……?)

春香(かわいいなあ響ちゃん)


雪歩「あ、あのね……わ、私……」

響「……」ゴクリ


雪歩「プロデューサーのことが、好きなんだ」

響「……!」

雪歩「それで……アイドル辞めて、プロデューサーの彼女になるんですぅ!」

響「」


「えええええええええええええ!!!!?」


雪歩「ひぅっ! な、なんでみんなまでビックリするのぉ……」

真「あ、いや、その……雪歩? 色々説明はしょりすぎじゃないかな?」

春香「そそそうだよ! ちゃんと一から説明しないと、響ちゃんに誤解されちゃ……」

雪歩「え? で、でも……」

響「う、うぅ……」ジワァ

雪歩「……響ちゃん?」

響「じ、じぶっ、もうなんか、全然よくわかんないし……! ううっ……」

千早「我那覇さん、落ち着いて……」

響「う……うわああああああん!!」タッタッタ


真「響っ!? お、追いかけなきゃ!」

千早「待って、私が追うわ」

春香「でも、千早ちゃん……みんなで行ったほうが」

千早「……正直なところ、私もこんな話をいきなり聞かされて、少し混乱しているの。だから……、ね?」

雪歩「ち、千早ちゃん……ごめんね」

千早「ううん、謝ることないわ、萩原さん……事情をうまく飲み込めてないことは確かだけれど」

千早「私は、あなたのことを応援しているから。恋の形は人それぞれだし、私はそういうのも、嫌いじゃないわ」

真「……よし、じゃあここは、千早に任せよう」

千早「ええ。すぐ見つけて帰ってくるから、待ってて」


ガチャ……バタン

千早「……」

千早「……はあ」

千早(ああ言ってしまった手前、もう後には引けないわね……私はもう、何も知らない顔して中立に立ってなんかいられない)

千早(律子……あなたは今、どんな気持ちでいるのかしら)

千早「……まあ、なんでも、いいですけれど」

千早「あ、いやなんでもよくはないわね。この口癖こそ、よくないわ……」

千早(とにかく、我那覇さんを探しにいかなくちゃ。まずは……)

タッタッタ……


― 中学生部屋 ―

ガチャ……

千早「……」ソロリソロリ


千早(まずは、ここよね。うん)


亜美・真美「……zzz……」

やよい「……すぅ、すぅ……」

千早「」

千早(か、かわっ! たた高槻さんの寝顔可愛いっ)

やよい「ううん……えへへ、ちはやしゃーん……」

千早「ヒュー……」

伊織「ちょっとちはや! やよいにちょっかい出すんじゃ……むにゃむにゃ」

千早(隣で仲良さそうに水瀬さんが寝ているのが気になるところだけど……これは眼福だわ)

千早(カメラで撮っておこう。このときの為に、必死に使い方を教わったんだから)パシャパシャ


千早「……ふう。残念ながら、ここには我那覇さんはいないみたいね」

千早「違う場所を探しに――

ゾクリ

千早「!?」

千早(なに? 何か……いる?)

千早(高槻さんと、亜美、真美、水瀬さんは……寝ているわね。それじゃあ、この気配は……?)


??「……」タタタ

千早「……逃げた? ま、待ちなさい!」


千早「……いない」

千早(ドアを開けて、すぐ廊下を見渡したけれど、誰もいなかった……忍者か何かだったのかしら?)

千早(……そもそも、みんな寝ているのに、鍵がかかっていないことがおかしかったのよ)


千早「……」チラ

千早(本当は、この高槻さんの部屋の前で一晩中警備をしていたいところだけど……今は、やることがあるわね)

千早(第三者が入ってくる、という可能性があるとわかれば……今の人影も、そうそうここには来れないでしょうし)

千早(防犯用にビデオカメラもセットしたし、きっと大丈夫)


千早「……我那覇さんを、探しにいきましょう」


― 大人部屋 ―

あずさ「……響ちゃん、落ち着いた?」サスサス

響「うん……ごめんね、あずささん」

律子「一体何があったのよ? ……本当に、不審者とか、ひどいことされた、とかじゃないんでしょうね?」

響「う、ち、違うぞ! でも……」

響(貴音に助けを求めてこの部屋に来たはいいけど、律子がここにいるってことすっかり忘れてたさー……)

響「……ごめん、今は……、言えない」

律子「……そう。まぁ、あなたの身に何かあった、ってんじゃないなら……話したくなったときに話せばいいわ」


小鳥「スピー……ぴよぴよ」ギュー

美希「ううん……お酒……お酒はダメ……むにゃむにゃ」

響「……ところで、なんで美希がここにいるの? 貴音はいないし……」

律子「貴音は……よくわからないけど、輝く月(ヒタイ)を見てくる、とかなんとか」

あずさ「美希ちゃんは、私に会いに来てくれたのよ~。なんでも、『デコちゃんとケンカしたの』、ですって」

律子「それで、あずささんに助けを求めてやってきた、ってわけね。美希はあずささんだけはお姉さん扱いしてるから」

響「そーなんだ。……美希が寝てるのはいつものことだけど……なーんか顔が赤くなってる気が」

あずさ「あ、あら、そう~?」

響「……律子?」ジロリ

律子「わ、私は悪くないわよ? 美希が勝手に冷蔵庫あけて……」


コンコン

あずさ「は~い」トコトコ

千早『夜遅くにすみません、千早です。そこに、我那覇さんはいますか?』

あずさ「あら……ふふっ、ちょうどいいところに来たわね、千早ちゃん。いるわよ~」

ガチャ

あずさ「せっかくだから、入っていらっしゃいよ」

千早「あ、いえ……我那覇さんを連れ戻せれば、十分ですから」

千早(ここには律子もいるものね……あんまり長居はできないわ)

響「千早ぁ……」

千早「……我那覇さん、帰りましょう?」

響「…………」フルフル

千早「困った子ね……」

度々すみません、少し席を外します。17時には再開します


千早「我那覇さん……」

響「い、イヤだぞっ! 今自分が雪歩のとこ行っても、きっと……余計なこと言っちゃう……」

律子「……」ピク

律子(雪歩……? 雪歩が、響に何か言ったってわけ?)

千早「……それは私も同じよ、我那覇さん」

響「え?」

千早「私も……半ば、あの部屋から逃げてきた、ってところがあるから」

響「……そーなの?」

千早「ええ。だから、一緒にあの件について考えましょう? そうね……散歩でもしながら」

響「…………それなら、わかった」


あずさ「もう、大丈夫みたいね」

響「……うん」ゴシゴシ

響「迷惑かけて、ごめんなさい」ペコリ

あずさ「うふふ、いいのよ。響ちゃん、あんまり自分のこと話さないところあるから……頼りにしてくれて、嬉しかったわ」

響「そっ、そんなこと……あるかも。前にプロデューサーにも言われたぞ……」

あずさ「……プロデューサーさん、ね」チラ

律子「……う」チラリ

千早「それじゃあ、私たちはこれで……失礼しました」

響「じゃあね、律子、あずささん! 色々ありがとっ!」

ガチャ……バタン


あずさ「……行っちゃったわね」

律子「さ、さあて……それじゃ私たちも、そろそろ寝ますか~」

あずさ「ふふっ、何を言ってるの、律子さん? 夜はこれからよ~」

律子「あ、あずささん……目が怖いですよ」

あずさ「聞きたいことは、たくさんあるんですからね?」

律子「……聞きたいことって、なんですか?」

あずさ「それはもちろん、さっき美希ちゃんが言ってたことです」


『……ってことがあって、でこちゃんったらヒドイでしょ!?』

『あ、それとさっきお風呂で、響と貴音にあのこと言っちゃったんだ』

『プロデューサーと律子……さん、が付き合ってる、ってコト。ごめんなさいなの、あは☆』


律子「はあ……この子は、まったく……」

あずさ「ふふ、ふふふ♪ さあさあ、話してみてください♪」

律子「……チューハイ、一本もらいますね」

あずさ「お酒、弱いんじゃなかった?」

律子「アルコールが入ってないと、こんな話してられませんから」プシュ

あずさ「ふふ……お若いのね。それじゃあ、改めまして……」

「「かんぱーい」」


律子「……」グビグビ

あずさ「律子さん、良い飲みっぷり~! ふふ、ふふふ!」

律子「……ぷはあ! さ、最初に言っておきますけどね、あずささんっ!」

あずさ「なあに~? ……こく、こく……」

律子「……」

あずさ「……」ゴクゴク

律子「私とプロデューサーは……付き合っては、いません」

あずさ「……そうなの?」

律子「ええ……」


律子「今は」

これ確かハルヒバージョンないっけ?
キョン「長門のなつき度が最大になった」みたいな
もしやその時の>>1

>>291
すまん、別人です。そのSSの名前も初めて聞いた……もろかぶった死にたい


ザザア…… ザザーン……

千早「……夜の海というのは、不思議ね」

響「え? どういうこと?」

千早「なんだか、吸い込まれそうにならない? 底が見えなくて、恐ろしいんだけど……なんだか目が離せなくなる」

響「……もしかして、怖い話? じ、自分、そういうの苦手だぞ」

千早「ふふっ、違うわよ……そういうの平気かと思っていたけれど、そうでもないのね」

響「う……自分はやっぱり、太陽の光をいっぱい浴びてる海のほうが、好きさー」

千早「故郷の海を思い出す?」

響「うん。島の海は、もっとすごいぞ! 悩みなんてぜーんぶ吸い込んでくれるくらい、おっきいんだから!」

千早「そう……一度、見てみたいわね」


響「えへへ……千早だけじゃなくて、いつか……みんなにも見てもらいたいな」

千早「みんなって……765プロのみんな?」

響「うん! だって、765プロのみんなは……こっちに来てから、出来た……大切な……」

千早「……」

響「……う、うぅ……ペット達はいたけど、自分……本当は、寂しくて……!」ジワ

千早「我那覇さん……無理しないで」

響「それで、ここにいるみんなは……本当に大好きで、毎日が楽しくて……、千早もそう思うでしょっ!?」

千早「……そうね。765プロのみんなは……家族のような存在」

響「そうだよっ、それなのにっ! 誰かひとりでもいなくなるなんて、自分……イヤだぞ……!」


響「雪歩ぉ……!」ポロポロ


千早「……座りましょうか」

響「う、うん……うぇぇえ……えぐっ」

ポスン

千早「……」

響「う、うう……ずびびっ」

千早「泣きたいだけ、泣けばいいわ。私は、ずっとここにいるから」

響「ご、ごべんね、ぢはやぁ……」

千早「……」

響「う……うわあああああん!!」


千早(……泣くことなら、たやすいけれど……、悲しみには、流されない)

千早(未来を信じて、昨日を振り返らない。ひとりじゃない、どんなときだって……)

千早(それを教えてくれた、大切な仲間のために……今度は、私があなたのそばにいる)


―――
――


響「……ずびっ」

千早「落ち着いた?」

響「うん……なんか今日、自分、泣いてばっかりだねっ。えへへ……ご、ごめんね」

千早「いいのよ、気にしないで……それより」

響「……雪歩の話?」

千早「ええ。あの話し方では、誤解させてしまうのも無理はないけれど……、我那覇さんは、ひとつ勘違いをしているわ」

響「……勘違い?」

千早「そうよ。萩原さんは……アイドルを辞めたりしない」

響「うえっ、そうなのっ!?」

みてるぞ


響「うあうあ~、自分、なんかすっごい恥ずかしいぞ……!」

千早「仕方ないわよ、あの説明じゃあ」

響「……じゃ、じゃあなんで、雪歩はあんなこと言ったんだろ?」

千早「……きっと、彼女にとってはそれが理想の形だったから、ね」

響「理想?」

千早「トップアイドルになって、アイドルを引退して……プロデューサーと結ばれること」

千早「かいつまんで言ってしまえば、それが萩原さんの、一番の望みなのよ」

響「え……トップアイドルになったからって、そんな、すぐに引退なんて……」

響「それに、それじゃあ、結局いつか……雪歩はいなくなっちゃうんじゃないのっ!?」

千早「……」


千早「……いいえ、それでも彼女はアイドルを辞めたりしない」

千早「何か大変な事情でもない限り……まあとにかく、少なくとも今回の件は、それに関係しないわ」

響「千早……何を言ってるんだ?」

千早「……これは、当人たち以外には、私しか知らないことだけど」

響「……」

千早「プロデューサーも、萩原さんも……、それに、律子も。私がこれを知っている、ということは把握していないはず」

響「……律子?」

千早「……そう、律子」


千早「律子とプロデューサーは、元恋人同士だったのよ」

響「……え、元……?」

千早「そう……そして、萩原さんは……、それを知っていながら、プロデューサーに今も思いを寄せている」

響「……」

千早「その思いを、告白したときに……プロデューサーと律子の関係を建前に、拒絶されたにも関わらず、ね」


―――
――


律子「……そう、今は……付き合っていないんです」

あずさ「……」

律子「そもそもその、『付き合ってた』っていうのも、偽物で……私は、ちょっとあのとき、勘違いしてしまっていたんです」

あずさ「勘違い?」

律子「ええ……。最初は、プロデューサーから、こんな相談を受けたのがきっかけでした」


『雪歩に、好意を寄せられてしまっている』


あずさ「……」

律子「それで、私は……、その相談を聞いてるうちに、その……」

ツー……

律子「あ、あれ? お、おかしいな、別にもう、気にしてもいないのに……」

あずさ「律子さん……」


律子「……あの人が言うには、こうでした」


『雪歩に、好意を寄せられているけど……それは、本物じゃない』

『雪歩にとって、俺は……何も怖いことをしない、珍しい男性だから、勘違いしてしまっているんだ』

『思春期特有の、年上の男性に憧れる、ってやつだよ。本当に好き、というわけでは……きっとない』


あずさ「まぁ……プロデューサーさん、ヒドイですね」

律子「ふふ、本当……そうですよね。でも……私も、人のこと言えないかも」

あずさ「……それは、どういう?」

律子「雪歩の本当の気持ちはとりあえず置いておいて、その相談をネタに……、プロデューサーと親睦を深めていたんですから」


―――

千早「そう、あれは……今から大体、半年前のこと」

―――

律子「半年前の、あの日……」

―――

雪歩「私は……プロデューサーに、この気持ちを告白したんだ」

少し休憩します


― 半年と少し前、たるき亭 ―

P「とうとう、雪歩のなつき度が、最大になった……」

律子「……いきなりなに言ってるんですか? ついに頭が……」

P「まあ聞いてくれよ、律子……。俺、もう、どうしたらいいか……」

律子「はいはい、聞くわよ~。ふふっ、いつもは頼りになるプロデューサー殿がこうなってるなんて、レアですからね!」

P「ははは……なんだかんだで、律子はちゃんと相談に乗ってくれるんだよな」

律子「……そりゃ、そうですよ、私は……」

P「ん?」

律子「……私はいつだって、あなたの味方ですから」


P「……と、その前に……すみません、生おかわりくださーい」

ハイヨロコンデー!

律子「ここ最近で、随分強くなりましたね」

P「まあ、律子と頻繁に飲むようになったからな。律子は、おかわり頼まなくていいのか?」

律子「私はまだ、お酒飲める年齢になって間もないですから……そんなに強くもないんですよ」

P「そうか……ああ、すみません、ビールこっちです」

律子「……やっぱり、アルコールが入ってた方が色んなこと話しやすいですか? 私にはまだ、よくわかんないけど」

P「うん、まあそうだな……それに、自分に言い訳も出来る」

律子「言い訳?」

P「そう、言い訳だ。酒に酔った自分は、いつもの自分とは違う……そう思えば、色々とスムーズに話すことができる」

律子「……そういうもんですか」

P「そういうもんです。それじゃあ、改めて……」

「「かんぱい」」

カラン……


律子「それで……、何があったの?」

P「ああ、それが……少し前に、雪歩から、こんなメールが来てさ」


……………………
From:萩原雪歩
Title:お話が…

雪歩ですぅ。
あの、プロデューサー…、
私、プロデューサーに、
伝えたいことがあるんです。

大事なことだから、メールとか、
電話じゃなくて…、
直接、伝えさせてください。

来週の××日の、17時に…、
事務所で待っています。

雪歩より
……………………


律子(これ完全に告白フラグじゃないですかー! やだー!)

P「なあ、これを見て、どう思う?」

律子「あ、いや、その……、雪歩はメールでも、『ですぅ』って言うんだなーって」

P「ああ、そこな。かわいいだろ?」

律子「そうですね……って、違います! そういうことじゃなくて……」

P「……ああ」

律子「……どうするんですか?」

P「俺が予想するようなことが起きたら、そのときは勿論……、断るよ」

律子「……」


律子「……絶対?」

P「当然だ。プロデューサーとアイドルが恋人同士になるなんて……そんなこと、あってはいけない」

律子「そうですか……」

律子(私いま、ちょっとホッとしてる……自分のこういうところが、どうしてもスキになれないわ)

律子「……でも、それじゃあもう、自分の中で答えは出てるんじゃないですか?」

P「う……ま、まあ、そうなんだけど……」

律子「はっきりしない人ね~。そんなんだから、八方美人だ、って言われるんですよ」

P「えっ、俺そんな風に言われてるのか!?」

律子「あ。……おっほん! まあ、それは置いといて……」

P「……」

律子「私に……どうしてほしいんです?」


P「前から言ってるように……雪歩の気持ちは、きっと本物じゃない」

律子「……思春期特有の勘違い、だって?」

P「そうだ。でも、だからこそ……思春期だからこそ、乱暴に扱ってはいけない問題なんだ」

律子「……」

P「心に跡が残らないように、出来るだけ傷つけず……、それでいて、ちゃんと諦められるような」

P「そんな振り方って、なんかないか?」

律子「あなたってホントーに最低ですね」

P「えっ!?」

律子「本当……どうしようもないです」

律子(あなたも……、そして、私も)


律子「……ひとつ、良いアイデアがあります」

P「おお、なんだかんだ言って律子は優しいな。それで、それは……、どんな?」

律子「……それは……仕方がない、って思わせることです」

P「仕方がない?」

律子「『プロデューサーは、雪歩と付き合いたくない』じゃなくて……」

律子「『プロデューサーは、雪歩と付き合えない』って、思わせるんですよ。立場とかの言い訳はしないで」

P「立場で説得するのは……無駄なのか?」

律子「無駄かどうかはわからないけど……恋する十代の女の子が、それくらいで納得するとも思えません」

P「……具体的には、何をどう言ったら、いいんだ?」

律子「……」


律子「あなたに、恋人がいることにするんです」

P「……恋人?」

律子「そう、恋人……それなら、雪歩だって諦めざるを得ないでしょう?」

P「だが、そんな嘘を付いても、すぐにバレてしまうんじゃないか?」

律子「……そうですね」

P「詳しく聞かれたときに、ちゃんと答えられる自信ないぞ……」

律子「だったら……、私が……」


律子「私が、あなたの恋人のフリをします」

律子「恋人について聞かれたら、プロデューサーは、私のことを答えればいいんです」

律子「なんなら……私もその日、あなたと一緒に、雪歩の前で……、説明してもいい」


― 告白の日、16時半、765プロ前 ―

P「……」

律子「……いよいよですね」

P「あ、ああ……律子、本当にいいのか?」

律子「いいですいいです。これから先のことを考えたら、ちょっと悪者役になるくらい、どうってことないですから」

P「それじゃあ……行くぞ。打ち合わせ通りに……」

律子「はい。私は、すぐ近くで待機しています」

P「……」

ガチャ……バタン

律子「……」


律子「行ったわね……」

律子(私、何やってるんだろう。馬鹿みたい……本当)

律子(恋人のフリ……そんなの、私に出来るわけないじゃない。まともな恋愛経験もないのよ?)


律子「今頃……、雪歩はプロデューサーに、思いを伝えているのかしら」

律子(雪歩、あなたは凄いわ。私なんかと違って……、ちゃんと自分から、頑張ろうとしている)

律子(本当に……初めてここに来たときから、いっぱいいっぱい、成長したのね……それに比べて、私は……)


律子「いつも受け身で、その上……、こんなことまで考えちゃってる」

律子(たとえウソでも、ほんのひと時でもいい)

律子(あの人の、恋人になれることを……心のどこかで、望んでいる)


ピピピピピ!

…………………………
着信:プロデューサー
…………………………

律子「……」

律子「プロデューサーったら、やっぱり私を頼りにしてきたわね」

律子(とにかくちゃんと自分で説得して、どうしようもなくなったら……、私を呼ぶ、ってことになっていた)

律子「……仕方ないから、行ってやりますか!」

律子(こんなダメダメで、情けない私でも……、あなたは、必要としてくれるみたいだから)

律子(あなたが必要としてくれるなら、私は……魔法をかけられたお姫さまみたいに、どんな役でもこなしてみせる)


ガチャ

律子「……おまたせ」

P「……」

雪歩「う、ぅう……りっ、律子さん……、ぐすっ」

律子「どうしたのよ、雪歩? そんなに泣いちゃって。ほら、このハンカチで……」

バチンッ

律子「……っ……!」

P「おい、雪歩っ!?」

律子「いいんです、プロデューサー……手を軽くはたかれただけですから、抑えて」

雪歩「ご、ごごごめんなさい……! でも、今は……、近くに来ないでぇ……!」

夜ご飯を食べてきます

保守すみません、再開します


雪歩「う、うぅう゛うう……! ひっぐ、えぐっ……!」

律子「……雪歩、プロデューサーから、何を聞いたの?」

雪歩「い、言わせるなんて、ヒドイでずぅ! ずびっ……わ、わかってる゛、くぜにぃっ!!」

律子「……」チラ

P「……ああ、全部言ったよ」

律子「そうですか……。それでも雪歩は、それが納得できなかった、ってわけね」

雪歩「な゛、なっどくなんで、出来るわけ、ありまぜぇんっ!」

律子「……そう。そう、よね……」


律子「でも、現に私は、こうしてここに来たのよ。……それでも、納得できない?」

雪歩「そっ、それは……」

P「雪歩……」

雪歩「しょ……証拠を……、みぜでくださいっ!」

律子「……証拠?」

律子(えっ、どうしよう……キスとかしろ、なーんて言われたら……うわ、うわわ)

雪歩「ぷ、プロデューサーが……、律子さんのこと、本当に好きで、付き合ってるなら……!」

律子「……」ゴクリ


雪歩「ぎゅーってして、『大好きだよ律子』って、言えるはずでずぅっ!」ポロポロ


律子「……え?」

律子(な、なーんだ……そんなことでいいんだ)

律子「そ、それくらい、大したことないわよ! ね、ねえ、プロデューサー殿?」

P「あ、ああ! それくらい、なんてことないなっ! もっとすごいことだって出来るぞ!」ソワソワ

律子(何ソワソワしてるんですかっ! ていうか余計なこと言わないでくださいっ!)

P(す、すまん……つい)ソワソワ

雪歩「う、ぅうううぅう……!」ジー


P「……わかった。そこまで言うなら、やってやろうじゃないか」

律子「え、ええ……やってみせるわ」


P「律子……」

律子「……」

ガシッ

律子「ひゃうっ」

律子(や、やだ、変な声出ちゃった……肩をつかまれただけなのに)

P「……」

律子(あ……プロデューサーが、近づいてくる……うあわわわ)

ギュッ……

律子「……! はっ、はあ……!」

律子(い、息がうまく出来ないっ……! 心臓が、爆発しそうなくらい、高鳴って……!)

律子(今私、どんな顔してるの? 怖い……怖い怖いこわいっ! で、でも……!)


P「律子……俺は、律子のことが……!」

律子「……!!」


律子(でも……! こんなに、こんなに……幸せな気持ち……、今まで、なったことない……!)


P「大好きだ」

律子「……!!!」


雪歩「……う、ぅうううぅ!」ダッ

P「ゆ、雪歩!? どこに……!」


律子「ぁぅ……」

フニャフニャ……ペタン

P「って、おい、律子まで……大丈夫かっ!?」

律子「す……すみません……。なんか、腰抜けちゃって……あはは」

律子(やっぱり、私には……恋人のフリなんて、無理だったのかも……)

律子(演技だ、って……わかってるのに。まだ心臓が……)


P「……とにかく、雪歩を追おう」

律子「はい……で、でも……、プロデューサー、先に行っててください」

P「……」

律子「ちょっとまだ、ビックリしちゃってて……、立てそうにありませんから」

P「……わかった。見つけたら、すぐ連絡するよ」

ガチャ……バタン

律子「……ぁ、あああ……!」

律子(死にたい……! な、なんて情けないの、私……!)


律子「うあうあ~! やだーもうー!」ゴロゴロゴロ

美希「何がヤ、なの?」

律子「うあああああっ!? み、美希っ!?」

美希「そう、ミキなの! ……床でゴロゴロしてたら、せっかくのスーツが台無しだよ?」

律子「い、いつから……ていうかちょっと、今の私の姿は見ないでえ……!」

美希「律子……さん、がそう言うなら、見ないけど……」

美希「あ、ちなみにミキは最初っからいたよ? 半分ソファでお昼寝しちゃってたけど」

律子「最初っから……そ、そう……」

律子(まずいわね……ミキに、なんて説明したら……)

美希「……律子さんと、プロデューサー……付き合ってたんだね」

律子「う……」


律子「やっぱり、そこ聞いちゃってたか……」

美希「バッチリなの! それで、ミキね……ちょっとショック、だったかも」

律子「え?」

美希「プロデューサー、ミキ的には、結構イイ線行ってたから……うん、これは、シツレンと言ってもいいかも」

律子(美希……この子も、やっぱり……)

律子「……あのね、ちょっと聞いてくれる? 私たちは、本当は……」

美希「あー! ノロケ話なんて、ミキ聞きたくないって思うな!」

律子「そ、そうじゃなくて……あ、ちょっと美希! 待ちなさいっ!」

美希「なあにー? ミキはこれから、失恋記念に友達呼んでカラオケ行くんだからっ!」

律子「記念って……わ、私のことはともかく! 雪歩のことは、絶対に他言無用だからね?」

美希「? 雪歩が、何かしたの?」

律子「え?」

律子(半分寝てた、って言ってたし……雪歩の告白は、聞いていなかったのかしら?)

美希「うーん……よくわかんないけど、とにかくわかったの! それじゃあね、バイバーイ!」タタタ


律子「……」

律子「…………」

律子「…………はあ。よっし!」パチン

律子(私も、いい加減に雪歩を追いかけましょう。いつまでもここにいても始まらないわ)

ガチャ……バタン




千早「……忘れ物を取りに、事務所に戻ってみたら……」

千早「……とんでもないことを、聞いてしまったわ……」

千早「萩原さん……、律子……」

千早「……無粋なことだけど、こんなこと聞かされたら……興味がわいてきちゃうじゃない」ワクテカ


千早「……少し状況を整理してみようかしら」

千早「ドアの向こうから聞き耳立ててただけだから、細かいニュアンスは把握できていないけれど……」

千早「つまり、こういうことね。ホワイトボードに書き出してみましょう」キュッキュ


・萩原さんは、プロデューサーのことが好きヽ(*゚д゚)ノ
・しかし、プロデューサーと律子は付き合っていた
・萩原さんは今日告白したけれど、それを理由に、振られてしまった(´・ω・`)
・高槻さんかわいいζ*'ヮ')ζ


千早「そして……これは私しか知らない情報。萩原さんが逃げた先、そこは……この雑居ビルの屋上」

千早「追いかけましょう。そして……ことの顛末を見届けないと」


千早「待っててね、萩原さん……!」

ガチャ……バタン




ガチャ!

春香「ただいま戻りましたー! ……って、あれ?」

真「誰もいない? でも鍵もかかってなかったし……無用心だなあ、まったく」

春香「うーん……あ、でも、荷物は置いてあるから、そのうち帰ってくるかもよ?」

真「それじゃあ、ボクたちで留守番してよっか」

春香「そうだね。……って、あれ、なんだろ、このホワイトボードの落書き……」

真「え? なになに……萩原さんは……?」

春香・真「「……」」

「「ええええええええ!!?」」


― 雑居ビル屋上 ―

ガチャ

律子「……いたわね」

雪歩「……」

P「……」


律子(あのあと、すぐにプロデューサーから連絡が来た。雪歩は屋上にいるようだ、って)

律子(……どうして、すぐに居場所がわかったのかしら? ……まあいいわ)

律子(ここには……今度こそ本当に、私と雪歩と、プロデューサーしかいない)

律子(金髪の眠り姫はいないんだから……ここで、はっきり決着をつけないと)


千早「……」コソコソ


律子「……雪歩」

雪歩「!」ビクッ

律子「少しは……落ち着けた?」

雪歩「……はい。ごめんなさい、律子さん……私、ヒドイこと……」

律子「いいのよ、気にしないで……私こそ、これまで黙っていて、ごめんなさい」

雪歩「……」

P「……雪歩、ちゃんと納得、してくれたか?」

雪歩「……う、うう……や、やっぱり……! 納得出来ませぇん!」

P「……!?」


P「ゆ、雪歩? おい、さっきと……」

雪歩「だ、だって! プロデューサー、最初に言いましたっ!」

雪歩「『雪歩はアイドルで、俺はプロデューサーだから、付き合えないんだよ』、って!」

雪歩「それで私が、『じゃあアイドルなんて辞めますぅ!』って言って……それでようやく、律子さんの名前を出しましたっ!」

雪歩「それってなんか、おかしいですぅ! 本当に本当に、律子さんが大好きなら、真っ先に律子さんのこと言うはずじゃないですかっ!?」

律子「……」

律子(やっぱり……最初はそう言ったのね。この人は……まったく)

P「……」

雪歩「でも……い、今は……、ぐすっ」

雪歩「どんな風に思っても、結局……プロデューサーの恋人になることは出来ない、ってことは……わかりました」

雪歩「だ、だから……、せめて……」


雪歩「……私が、アイドルじゃなかったら……どう思っていたのか……」

雪歩「それだけ……、教えてください」

P「……雪歩、それは……」

律子「……」

P「……答えることは、出来ない」

雪歩「……! う、ううぅう……!」

P「だが、雪歩、聞いてくれ。俺は……アイドルとしてデビューする前の雪歩を見て、こう思ったんだ」

P「この子は、弱気なところもあるが……、決して曲げない芯の強い部分を持っている、って」

P「俺が支えてやれば、きっと、いや間違いなく、トップアイドルになれる……そんな魅力を持った女の子だって」

律子「プロデューサー……」

律子(そんなこと言ったら、この子はまた……)


P「もう雪歩を、アイドルじゃない、普通の女の子として見ることは難しい」

P「だから……アイドルじゃない雪歩に対して俺が言えることは、これくらいしかないんだ」

雪歩「……」

P「……これじゃ、ダメか?」

雪歩「いえ……十分、ですぅ……えへへ」

P「……」


雪歩「……私、頑張ります。頑張って、トップアイドルになって……引退して。そのときまた、告白します」

律子「ちょ、あんた……引退なんて、そんな軽々しく……」

雪歩「私たちをトップアイドルにすることが、プロデューサーの夢ですから……そのあとのことは、私の勝手ですぅ!」

律子「……ったく、これだから十代女子は……」

雪歩「だから、その日まで……」


雪歩「さようなら、プロデューサー」


P「……行ったか」

律子「……そうですね。最後は、あんなに笑顔で……」

P「すまなかったな、律子。こんな役回りをさせてしまって」

律子「何度も言わせないでください。いいんですよ、私は……いつだって、あなたの味方ですから」

P「……ありがとう」

律子「ま、それじゃあこんなところで……私もお役御免かしら?」

P「あ、ああ、そうだな……」

律子「……ところで、プロデューサー? もし仮に、あの子が本当にトップアイドルになって、引退するって言ったらどうするの?」

P「……辞めさせないよ。というか、辞めることは出来ないはずだ」

律子「……できない?」


P「ああ……。トップアイドルは、そんなに簡単になれるものじゃない」

P「本当にこの仕事が大好きで、ファンに笑顔を届けることを生き甲斐にしているような子でないと、それは難しい」

律子「……そうね」

P「仮にトップアイドルになったとして、そのときには……辞めたい、なんて思えないほど、この仕事に夢中になっているはずだ」

律子「逆に、それくらい夢中になる気持ちを持っている子じゃないと、トップアイドルになることも出来ない」

律子「だから、雪歩の言うことも実現ならず、ってとこ?」

P「そうだな」

律子「……そんなの、本当かしら」

P「ま、まあ……本当に雪歩の言うようなときが来たら、そのときは……」

律子「もう協力なんてしませんからね?」

P「えっ!?」


律子「私、今回のことで思ったんです。私には、恋人のフリなんて、出来ないって」

P「……それは、どうして?」

律子「……だって、私は……」


バク…… バク……


律子「……私は……、あなたに抱きしめられただけで、腰が抜けちゃう……そんな弱い女だから」

律子(……あれ? 私、何を言おうとして……)


律子(体が、熱い)


律子「私は……わたし、は……!」

律子「ろくに恋愛経験もなくて、恋人のフリをこなせるほど、器用でもなくて……!」


律子(熱に浮かされてるみたいに、頭がぼーっとする)


律子「その上……! 私は、こんなにも……!」


律子(涙が……悲しくもないのに……止まらない……)

ポロポロ……


律子「あなたのことが……、好きだから……」

律子「だからもう……恋人のフリ、なんて、したくないのよ! バカッ!!」


―――
――


律子「……ということがあってぇ! 私は、プロデューサーに告白することになっちゃったんですよぉお~! えぐっ、えぐ」

あずさ「り、律子さん? ちょっと、飲みすぎじゃない?」

律子「ええい、まだまだ飲み足りませんっ! もう一杯……!」

あずさ「もうっ……ほとほどにしないと、めっ、ですよ~?」

律子「あずさしゃんのイジワル~……」

あずさ「……それで、プロデューサーさんから、オーケーの返事をもらえたのね?」

律子「ずびっ、はい……なんかよくわかんないけど……、うへへ」

あずさ「……」

律子「でもぉ……結局すぐ、別れることになっちゃったんですけどねっ! うわあああああん!!!」

あずさ「あらあら……」


―――
――


千早「……というのが、この件についての一部始終よ」

響「……」プルプル

千早「……我那覇さん?」

響「うう……律子、ちばたんさー……えぐっ、じ、自分、でーじ感動したぞっ!」

千早「えっ」

響「あ、ごめん……ちょっと地元の言葉が……」

千早「ああ、いえ、別にいいんだけど……」

千早「とにかく、プロデューサーは最初律子に恋人のフリをさせて……つまり建前を使って、萩原さんを振った、というわけね」

響「それで……プロデューサーの言うとおりなら、雪歩はアイドルを辞めることはない、ってこと?」

千早「そうよ」

千早(……まあ、私の見たことが、全て真実だとは限らないけれど)


響「……でもでも、それっておかしくないかー?」

千早「え? おかしい?」

響「うん。だってそれなら……雪歩が今、プロデューサーになついてる意味がわからないぞ」

千早「……なついてる? 今?」

響「だってどう見てもそうじゃん! べたべたしてる空気がするもん!」

千早「私には……そうは見えないけれど」

響「えー? まぁ自分も、直接くっついてるの見たことはないけど……なんとなく、そんな感じしない?」

千早「……」

千早(我那覇さんは以前、とある女装アイドルの正体を一目で見破ったことがある、って言っていたわね……)

千早(彼女の感性は、馬鹿に出来ないところがある……それなら、本当に今も、萩原さんはプロデューサーになついてる?)


響「自分、雪歩にプロデューサーのことが好きって言われたとき、ビックリしたんだ」

響「ドキドキした、ってのもあるけど……どうしてわざわざ、今更そんなこと言うんだろう、って思った」

響「だって、そんなこと、765プロのみんなは全員知ってたことじゃないの? 空気を見ればすぐわかるじゃん」

千早「……765プロで、それが話題になったこと、あったかしら?」

響「ないけど……だって、それは当たり前すぎるから」

千早「……萩原さんが言うには、この件について知っているのは……」

千早「なぜか事情を断片的に知っていた、春香と真……そして、プロデューサーと律子。それに私と……」

響「あと、美希もかな?」

千早「……」


千早(何か、おかしい)

千早(……私が見たことは、やっぱり真実じゃない? 誰かひとり……もしくは、複数人が、ウソを付いている?)

 『さようなら、プロデューサー』

千早「……萩原さん? あなたは……」


―――
――


P「……」

貴音「……」

P「やあ、貴音」

貴音「ご機嫌よう、あなた様」

P「……今夜は、月が綺麗だな」

貴音「ええ、真に……きっと、あなた様と見ているからでしょうね」

P「冗談はよしてくれ……目が笑ってないぞ」

貴音「ふふっ、プロデューサーこそ……それに私、ジョークは嫌いではないのです」


P「何か、聞きたいことがあって、ここに来たんだろう?」

貴音「……大したことではありません。けれど、とても大切なことです」

P「貴音の言うことは、難しくてよくわからないな……」

貴音「ふふっ、本当に、ただ雑談をしに来ただけですよ? 月を見ながら、過去に華を咲かせましょう」

P「……」

貴音「あなた様は、真に素晴らしいプロデューサーですね。賞賛に値します」

P「……いきなり、何を言うんだよ」

貴音「あれほど気弱で、ねがてぃぶ思考であった萩原雪歩を、あれほどの役者に仕立てあげたのですから」

P「……」

貴音「……本当に、大したことではないけれど……種明かしの時間ですよ、あなた様」


貴音「あなたは本当に、萩原雪歩に告白されたのですか?」


P「……貴音、お前はどこまで知ってるんだ?」

貴音「私は何も知りません。ですからこうして、あなた様にたずねて参ったのです」

P「……告白は、されたよ。間違いなく……」

貴音「して、どのような?」

P「それは……」


『プロデューサー……』

『プロデューサーのこと、私は……』

『好きなんです……本当に、心の底から』


『だから……わかっているんです』

『プロデューサーが本当に心から好きなのは、律子さん、だって』


『えへへ……プロデューサー、ビックリした顔してますぅ』

『なんでそれを、って顔してます……でも、私にはわかるんです』


『……どうして、私じゃダメなんですか……』

『どうして……律子さん、なんですかぁ……!』


P「……雪歩は……俺が、『律子が恋人なんだ』と、ウソを付く前に……、これを言ったんだ」

貴音「そのようですね」

P「なんだよ……やっぱり知っているんじゃないか」

貴音「ええ。私は、萩原雪歩に、この件について聞かされていましたから」

P「……それは、知らなかったな」

貴音「雪歩は……私のことを、特別に慕ってくれているようです。ですから私も、雪歩の為に成すべきことをしたいのです」

P「……」

貴音「先ほど、美希から聞きました。あなた様が律子と恋仲になっている、と」

P「……それはきっと、美希の勘違いだろう。たぶん、あのときのことが漏れたのさ」

貴音「そうかもしれないし、そうでないのかもしれません。私は、この目で確認をしたいだけなのです」

貴音「あなた様は、今……律子嬢のことをどう思っておられるのですか?」


P「俺は……」


P「……」

P「今でも、変わらない。たとえ、別れてしまったあとでも……」

P「別れることは、あのときのふたりにとって最良だったから……そう無理矢理、納得して……」

P「でも、本当は……納得なんか、出来ていない」


P「俺は今でも、律子が好きだ」

P「律子のことだけが、好きなんだ……」


― 半年前、告白の日、17時 ―

雪歩「はあ、はぁ……けほ、こほ」

P「雪歩……、お前……」

雪歩「ど、どうなんですかぁ……私の言う通り、プロデューサーは、律子さんのこと……!」

P「……」


P「雪歩の言う通りだ。俺は……律子に惚れている」

雪歩「……!」ジワア


P「……本当は、律子に……ウソの恋人役をやらせるはず、だったんだ」

雪歩「……わ、私を、諦めさせるために、ですか?」

P「ああ……」


P「律子からこの申し出があったとき、俺は、心のどこかで喜ぶのと同時に、悲しくもなった」

雪歩「……悲しく?」

P「きっと、たとえひと時でも、ウソだとしても……律子と恋人同士になれたら、俺は最高の気分になれると思う」

P「でも間違いなく、それが終わったとき、俺は……今までにないくらい、心に大きな穴が空いたようになってしまう」

雪歩「……そ、そんなにまで……、律子さんのこと……」

P「……だからすまない、雪歩。俺は……律子のことがこんなにも好きだから、お前とは付き合えないんだ」


雪歩「……えへへ」

P「ゆ、雪歩? なんで、笑って……」

雪歩「今、聞いちゃいました。『律子のことが好きだから、雪歩とは付き合えない』……って」

P「それが……どうしたって言うんだ」

雪歩「ということは……律子さんのことが好きじゃなくなれば、私にもチャンスがある、ってことですよね?」

P「……それとこれとは別問題だろう。そもそも俺はプロデューサーで、雪歩は俺の担当アイドルで……」

雪歩「そんな台詞は聞き飽きましたぁっ!」

P「雪歩、お前……どうしたんだよ、様子がおかしいぞ」

雪歩「おかしくもなりますっ! だってこんなに、私はあなたのことが……、好きだからっ!!」


雪歩「……私、わかります」

P「……」

雪歩「このままプロデューサーと律子さんが、今付き合っても……きっと、すぐに別れちゃう、って」

P「どうして、そんなこと……」

雪歩「恋する乙女の勘ですぅ! ……そしたら、そのときは……私のことを、もっと見てくれますか?」

P「……仮定の話が多すぎて、付いていけないが……そんなこと、その時になってみないとわからない」

雪歩「……見てくれるかもしれないし、見てくれないかもしれない、ってことですか?」

P「まあ……そんなところだ」

雪歩「えへへ……それなら、今の私の立場より、ずっとずっと幸せですね♪」

P「……」

雪歩「だって今は……残念だけど、プロデューサーは律子さんに夢中みたいだから。それに比べたら……幸せです」


雪歩「だから、今は……、協力します」

P「……協力?」

雪歩「はい。今から……、律子さんを呼んでください。近くにいるんですよね?」

P「あ、ああ。いるにはいるが……」

雪歩「私が演技して、うまく二人をくっつけてみせます」

P「……」

雪歩「そして私の乙女の勘どおり、プロデューサーと律子さんが恋人になって、そして別れたら……私の大勝利ですぅ!」

P「は、ははは……もう、意味がわからない」

雪歩「意味なんて、考える必要もないんです。だって、恋ってそういうものだから」

P「そもそも……雪歩に、そんな演技が出来るのか?」

雪歩「出来ます! 台本なくても、バッチリですぅ! だって……」


雪歩「私をここまでの舞台女優に育ててくれたのは、他でもない、プロデューサーですから」


―――
――


P(そして、俺は雪歩の演技に付き合い、実際に……律子と付き合うことができた)

P(しかし、雪歩の言ったとおりに、すぐに別れてしまい……それから、今のような状況になってしまったんだ)

P(雪歩が、人の見ていないところで……必要以上に、なついてくるようになった)


P「聞きたいことは……これだけか?」

貴音「ええ。ありがとうございます、あなた様」

P「……」

貴音「プロデューサーが、未だに律子嬢のことを想っているというのは、雪P派の私としては悲しいことです」

貴音「ですが……事態は着実に、萩原雪歩の言う通りになってきているようですね」

P「……そんなこと、まだわからないだろう」


貴音「これから先、あなた様の逆転大勝利があると?」

P「ないとも言い切れない……俺と律子が、また寄りを戻すかもしれないし」

貴音「ふふっ、確かに、その通りですね。ですが……」

貴音「……プロデューサーも、律子嬢も……あなた達は優しすぎます。ですからきっと……それは難しいでしょう」

P「……」

貴音「互いを思いやるが故に、繰り返すことを恐れて、踏み出すことが出来ない。違いますか?」

P「……知らないさ、そんなこと。だって俺は……俺たちは、まだまだ子どもだから」


P(その後……貴音は銀色の髪をふわふわと棚引かせて、この部屋を去っていった)

P(そしてひとり残された俺は、律子と別れた、あの日のことを思い出そうとしていた)

P「……」

P(だけど、思い出せない。きっとそれは、本当に大した原因ではなかったから)

P(ただ少しだけ、すれ違いが重なっただけだ。よくあることで、わざわざ語るまでもない)


『私たち、もう……別れた方がいいのかもしれないわね』


P(こう言い放った律子の、少し疲れた顔だけが……俺の記憶に残る全てだった)


コンコン

P「……はい」


『プロデューサー? えへへ……雪歩ですぅ』


P「……どうしたんだ?」


『寝る前に、怖い話を聞いちゃって……なんだか眠れないから、少しお話、してくれませんか?』


P「……」


P「……」


『プロデューサー……このドアをあけてください』


P(俺は、このドアを開けるのか? 雪歩を俺の場所に連れてくることが、本当に正しいのか?)


P(季節は夏。俺たちは揃いも揃って、ただの子どもだった)

P(何が正しいか、何が間違ってるか、そんなこと……誰もわかっては、いなかったんだ)


ガチャ



おわり

お、おわりです。二部もないよ

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