少年「世界はあと一週間で滅ぶ」 (74)


それは突然の出来事だった

いきなり自分の脳に直接情報が流されてきたのだ

最初は訳がわからなかったが、時が経つにつれて自然と理解した

いや理解させられたような気がした

「勇者が魔王と共に死に、世界はあと七日間で滅ぶ」

多分全世界の全人類にその情報が流されたのだと思う

僕は第一に思った

(で?)


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1387075719


今、僕は牢屋の中にいる

物心ついた時からここにいる気がする

たしか僕が鬼だからとかそんな理由だったと思う

なんか死ぬのが怖くて今まで牢獄の中でグダグダ生きてたので、まぁ世界が滅ぶならそれはそれでいいんじゃないだろうか

どうでもいい

だが警備員はそうでもないようだ

警備員「あ…はは…ははははは」

涙を流しながら呆然としている

この人はこの世界に未練があるんだろうな

なんか可哀想だし声をかけてあげよう


少年「あ、あの?」

警備員「っ!?」

驚いたようにこっちを見てきた

少年「あっえーっと」

警備員「…」

や、やめろ!なんだか何とも言えないような目でこっちをみるな!

少年「ど、ドンマイ!」ビシッ

これが僕に言える最大の励ましだった


警備員「…」

警備員は何も言わなかった

そして

警備員「…」ヒョイッ

チャリーン

そしてなぜかこっちに牢屋の鍵を投げてきた

少年「えぇー地球が滅ぶからって仕事ぶん投げちゃっていいんですか?」

この警備員、気でも狂ったのか

警備員「…勝手にしろ」ボソッ

そう呟くと下を向いてフラフラとでていってしまった


わーどうするよ、これ千載一遇のチャンスじゃね?

まぁ外に出れるなら出てみてもいいけど・・・ってか出てみたいけど

あの人世界が滅ぶからって投げやりになりすぎ

僕外に出ちゃうよ?いいの?

鍵を拾い自問自答を繰り返す

うーん出るべきか出ないべきか

少年「っまどうせあと一週間で世界終わるし、ちょっと外の世界でもみてみるか」


ということで外にでてみました

少年「うーん空気がおいしいな」

太陽がある

空が青い

鉄格子が無い

ただそれだけでなんて

なんて清々しいのだろう

世界崩壊万々歳だな

僕が外の世界に感動していると後ろからなんだか物騒な声が聞こえて来ました


兵士A「この際だからはっきりいってやる、俺はずっとお前を殺したかった」

兵士B「あぁ俺もだ。ここお前と門番してる時ほど俺が苦痛な時間はなかったね!!」

お互い剣を抜き相手に突きつける

兵士A「どうせ世界は滅ぶんだお前を殺してやる!!」

兵士B「やれるもんならやってみろぶっ殺してやる!!」

外の世界って物騒だな

それとも世界が滅ぶからってみんなとち狂ってんのかなぁ

後ろから聞こえる肉を切り裂く音、悲鳴などを無視して、僕はそこらを探検してみることにした


そこら辺をブラブラしてると、なんだかカッコいい十字架が屋根の上にたっているオシャレな建物の前にきた

わーカッコいいなー入っちゃってもいいかな

恐る恐る中をのぞくと

修道女「おぉ!!神よ!!何故私達を見捨ててしまったのですか!!」

なんだか悲痛な叫びが聞こえた

あれか、世界が終わるからか


しばらく見ているとおっさんが現れた

神父「神なんていねぇんだよ!!!」バァン

いきなり机をぶっこわしだした

修道女「なにするんですか!!神父様!!」

神父「この世界はどうせ終わるんだ!!こんなもん!!」ガシャーン

修道女「大丈夫ですよ!!神がきっと」

神父「いいか修道女!!神なんていないんだ!!神なんて人の作り出した妄想でしかないんだよ!!」

修道女「なんてことを言うのですあなたは!!それでも神父ですか!!!」


うわーヒートアップしてるよ

なんか怖いな人間って

てか外の世界ってこれが日常茶飯事なの?

やれやれ全く怖いとこに来ちまったぜと思いながらどこか行こうとすると

ガシッ

腕を捕まれた

「ま、まってください」


腕を掴んでいたのは、いつの間にか隣にいた僕くらいの年の少女だった

あそこで争ってる女性と同じ服を着ていて、今にも泣き出しそうな顔で僕の腕をつかんでいた

シスター(少女)「一人に、しないでください」

少年「…」

やばいどうしよ、なにか声かけてあげないと

めっちゃこの子泣きそうじゃん

多分なかで争ってる二人が原因なんだろうなぁ

うーん

少年「ど、ドンマイ!」ビシッ

結局、僕に言える最大の励ましはこれだった


シスター「…」

やめろ!そんな目こっちをみるな!!

少年「ご、ごめん」

シスター「…」

えーなにこの状況、辛いんですけど

可愛い女の子に腕にしがみつかれるのは僕としては嬉しいのだけど

なんだか辛そうな顔をみるとこっちまで辛くなってしまうような

どうしたものか

続けて

気になる


途端に二人の怒号が止んだ

血の匂いが漂ってくる

おそらくどちらかがどちらかを殺したのだろう

人間ってなんでこうも愚かなのだろうか

対立するとすぐに殺しあう

知能があるのにも関わらず

何故それを使おうとしない


少女の方をみる

怒号がやんだのでどうしたのだろうと中を見ようとする

気づいてないのか

このまま彼女に悲惨な風景を見せるのは気が引けるな

よしっ僕が一肌脱いでやろう

少年「ぼ、僕とデートしませんか?」

シスター「っ!?///」

あっ真っ赤になった可愛い

とか言ってる場合じゃないんだけどな


シスター「わ、私はまだ幼いけど神に仕えるシスターさんだから!!」

シスター「そういうのは駄目!!」

少年「ちょっ声が大きい」

神父「シスターだぁ!?」

やっば…見つかっちゃったっぽい

神父「シィィイスタァァアそこにいるんですかねぇええ!?」

なんだこの人はさっきと雰囲気違うぞ

って狂って人殺してんだから当然っちゃ当然だわなー


シスター「ひっ!?し、神父様!?」

さすがにこの子でもここまで殺気剥き出しだったら感じるものがあるんだろうな

少年「と、とりあえず逃げる?」

シスター「ひっ」ガクガクブルブル

シスターの少女は固まっていた

うん逃げとくか

少女の手をとる

少年「逃げるよ!?」

返事も聞かず走り出す

あー子供の脚力で逃げきれるかなぁ


神父「まちなさぁぁああいシィィイスタァァアァアアアアアア!!!!」

右手には斧、左手には首をぶら下げて襲いかかってくる

ひーこえーちょっとしたホラー漫画ですね

シスター「ひぃいっ!?神父様こ、怖い」

少年「だったらもっと速く走らないと!!追い付かれちゃうよ!!」

シスター「はっはいぃぃい!!」

正気にもどったのか戻ってないのか少しだけスピードが上がった


だがしかし

まぁぶっちゃけ大人には勝てませんよねぇ

神父「シィイスタァァア?なぁああにやってるんですかねぇ?それでも神に仕える者なのですかぁああ?」

シスター「い、いえこれはその」

神父「黙れクソガキ!!」

シスター「ひぃっ」

やっばいなぁ…まぁこの子だけでも逃がしとこう

少年「ここは僕がなんとかするからシスターさんはとりあえず逃げて?」

シスター「し、しかし」

少年「大丈夫、僕強いし」


神父「なぁにカッコつけてんだガキがぁああああ」

左手にもった首をこちらに向かって投げてきた

少年「うわぁキモい」スッ

僕は華麗に避けるが

シスターさんのほうに飛んでいった

シスター「きゃああ!?修道女さん!?ど、どうして!!!」

シスター「い、いや」

シスター「いやぁあああああぁぁああああああああああ」

やばいなシスターさんもこれじゃ狂っちゃう

とりあえずあの神父様とやらをなんとかしよう


神父「うひゃひゃひゃもう逃げられないみたいですねぇ?」

ニタニタと笑いながら迫ってくる

少年「ねぇ神父様だっけ?一つ質問いい?」

神父「なんでぇぇすかぁ!?」

うわぁこの人目もイッてるよ

少年「ここで僕達を逃がすのと、死ぬのならどっちがいい?」

神父「うひゃひゃひゃ笑わせてくれますね、私がお前達を逃がすとでも?」ニィ

あぁもうこの人本当に駄目だ


少年「シスターさん、少し目瞑ってて?」

シスター「どうして…どうしてこんな」

聞こえてるのかな?

っまいいか

さてお食事でもしましょうかね

少年「神父様」

神父「なんですか?最初に死ぬのはあなたですか?」

少年「いただきます」

両手をあわせてお辞儀する


神父「はぁ?」

グシャ

神父様の心臓をえぐり取る

神父「えっ?」バタン

いやぁ人生最後の言葉が「えっ?」なんてちょっと可哀想だなぁ

モグモグモグモグ

少年「こんな人でも心臓は美味しいなぁ」ゲップ

でも心臓以外のところは全部不味そうだし食べないであげたんですから感謝してくださいね

両手をあわせる

少年「ご馳走さまでした」

食べ物に感謝の気持ちを込めなくてはいけませんからね

どんなクズでも

少年「さてと」

シスターさんの方を見る

シスター「も、もういやだ」

まぁ予想通り見られていたわけで

シスターさんは涙を流しながら、化け物を見るかのような目でこちらを見ている

まぁ化け物なんですが

複雑ですね、助けようとしていた子に怖がられるなんて

でもこのままだと彼女は死んじゃいますね

それは避けたい

菴輔□縺薙l


少年「ねぇシスターさん」

シスター「ひっよらないでください!!」ガクガクブルブル

あぁ傷つくな

少年「ご、ごめんねなるべく近づかないから話だけでも聞いてほしい」

シスター「な、なんですか」

少年「今「どうせ世界があと7日間で終るし、もうこのまま死んだっていいや」って思ってるでしょ?」

シスターさんはうつむく

少年「まぁ当然だよね、こんな事になっちゃったらさ」

少年「でも、実際には滅ばなかったらどうするの?このまま絶望したまま死んでいいの?」

なーにいってんだ僕は

さっきまで死んでもいいとか思ってたくせに

少年「君の人生はまだこれからなのに」

でも僕はシスターさんともうちょっとお話していたいから

ちょっとだけ心にも無いことを言っている


少年「ねぇシスターさん」

シスター「ひっよらないでください!!」ガクガクブルブル

あぁ傷つくな

少年「ご、ごめんねなるべく近づかないから話だけでも聞いてほしい」

シスター「な、なんですか」

少年「今「どうせ世界があと7日間で終るし、もうこのまま死んだっていいや」って思ってるでしょ?」

シスターさんはうつむく

少年「まぁ当然だよね、こんな事になっちゃったらさ」

少年「でも、実際には滅ばなかったらどうするの?このまま絶望したまま死んでいいの?」

なーにいってんだ僕は

さっきまで死んでもいいとか思ってたくせに

少年「君の人生はまだこれからなのに」

でも僕はシスターさんともうちょっとお話していたいから

ちょっとだけ心にも無いことを言っている


シスター「で、も」

シスター「でも!!もう神父様も修道女さんも死んじゃいましたよ!!神様なんて信じられないですよ!!こんな世界になっちゃってもう何を信じればいいかわんないよ!!」

泣き叫ぶ

少年「この世で信じられるのは金と…」

何故か知らんが落ちている拳銃を拾う

少年「コイツだけ」

って牢屋にはいってるとき隣にいたビレッタお姉さん(自称)がいってたっけなぁ

シスター「…」

蔑む目線が痛い

少年「ごめんなさい冗談です」

シスター「よくあなたはこんな状況でふざけられますね!!化け物だからですか!?」

化け物だけどさ…

僕だって好きで化け物やってるわけじゃない


少年「いや、ちょっと落ち着いて欲しくて」

シスター「落ち着けるわけないじゃなですか!!」

シスター「神父様と修道女さん…あんなに優しかったのに…」

シスター「あと一週間で世界が滅ぶからってどうして殺しあってるんですか!!」

シスター「もうわけわかんない…わけわかんないよおおおおお!!!!!」

なにやってるんだろう僕は

そう思った

どうせ一週間で世界は滅ぶんだったら

この子が今死んだって一週間後死んだって関係ないじゃないか

拳銃をシスターさんほうに投げる


シスター「っ!?」

少年「あげるよ」

シスター「意味がわかりません!!さっきからあなたなんなんですか!!」

シスター「助けようとしてくれたり!!神父様殺して心臓食べたり!!急に拳銃渡してきたり!!もうわけわかんないよ!!」

そうね、わかんないだろうな

僕だってわからないもん

少年「いや、なんだろうなぁ」

少年「初めて同年代の子供を見て…多分友達が欲しかったのかもしれない」

少年「だからなんだかんだ助けようとしたけど」

空を見上げる

少年「どうせ世界は滅ぶんだろう」

あぁこんなに空は綺麗なのに


少年「さっき「滅ばなかったらどうする?」とかいったけどね」

少年「君が苦しくて死にたいなら」

少年「僕に止める資格なんてないから」

シスターさんは拳銃を手にすると

震えながら自分の頭に銃口突きつける

止める事なんてできない

ただ見届けるしかない

でも…僕は

少年「もし君が、少しでも友達になってくれる気があるなら」

少年「銃をおいてこっちにきて握手して欲しいな」

少年「きっと一週間だけは君を危険から守るから」

少年「どうかな?」

手を差し伸べる


少女には彼の笑顔がとても痛々しい笑顔に見えた

手に入らないものに必死に手を伸ばしているよな差し出された手

きっと彼もわかっているんだろう

私は弱いから

シスター「ごめんね」

その手はとることは出来ないよ

バンッ

銃声が鳴り響く

今日はここまでです

乙!


僕は結局彼女を救うことは出来なかった

ははっ…そうだよね僕は化け物だ

こんな奴と一緒にいたいなんて誰も思わないだろう

僕は彼女に背を向けて歩き出す

何を期待していたんだよ

もう何も期待しないって決めてたのに

誰にも愛されない化け物は人知れず涙を流しました


日がくれるまでただフラフラとさまよっていた

すると他のものより断然大きな建物が建っていました

なんだかこの場所がこの街の国の中心だと言わんばかりの堂々さだ

昔、聞いたことある

多分ここが城だな

王様の住む場所

王様…

僕をあそこに閉じ込めた奴

一目みてやるか

僕は人の居ない門を堂々とくぐってやった



なんていったけどさ

迷子になりました

…いや広すぎだろ

なんだここってか扉ありすぎだろ

適当に開けまくってもいいけど

そんなことしたら厄介なことになるな

とか言っても

もう出口すらわからないもんな

「あの?」


少年「っ!?」ビクッ

メイド「どうかなさいましたか?」

やばいバレてしまいました

仕方ない、ここは

少年「い、いえ大丈夫です!ご心配なく!!」

そう言って全力で走って逃げた

少年「はぁはぁ…」

さらに迷子になってしまいました


もうここが何処だかわからない

最初からわからないけれど

たくさんの花に囲まれた謎の場所

僕は倒れこむ

夜の空が見える

薄暗い闇の中に宝石のようにちりばめらたように輝く星

宝石よりも綺麗だろう

だけど少し

寂しいな

昼間にあった少女の事を思いだしてしまった

人は死ぬと星になるという

誰かがそう言っていた

彼女もちゃんと星になれたのだろうか


・・・

どのくらい空を見上げていただろう

人の気配がして我に帰る

こちらに向かって来ている

さっきの人か?

物陰に隠れて息をひそめる

不法侵入がばれちゃったかな?

いやもうばれてるじゃないか

なに言ってんだ僕は


足音が近づいて来ている

こっちに向かってくる人物を探す

タンッ…タンッ

見えてきた

金色の髪なびかせ優雅に歩いてくる小さな少女

あまりにも美しく可愛らしい彼女に

僕は一瞬にして心を奪われてしまった

一目惚れって奴かな

胸がドキドキする


彼女は中央においてあるベンチに座ると

何かを考えているような顔になる

謎の花園で佇む美少女

幻想的である

彼女の周り不思議なオーラが漂っている気がした

突然糸が切れたかのように考える顔止め

振り向きこっちを見てきた

そして目と目があう

え?目と目があってる?

姫「迷子の子猫さん、出ていらっしゃい」ニコッ

彼女は優しく微笑む


えっ僕に言ってるの?

彼女はまっすぐこちら見ている

ばれてしまっているのなら仕方ないか

隠れる事を止め、大人しく草むらから出てきた

姫「あら随分と珍しい子猫出てきたみたいね」

クスクスと無邪気笑う

姫「あなた、お名前は?」

名前…か

なんだろうな僕の名前は

ずっと閉じ込められてたし

名前なんてわからない

でも、呼ばれるときはいつも

『鬼』って言われてたような気がする

多分、鬼なのかな?


姫「…無視?」

少年「えっあいや、その」

少年「なんていうか、自分の名前はなんだろうなって思ったんで」

姫「記憶喪失?」

少年「記憶はありますよ、ただ自分の名前なんて気にしたことなかったから」

姫「言っている事がわからないのだけれど」

少年「多分『鬼』じゃない?」

姫「それって名前?」

少年「どうだろう?」

どうも話が噛み合っていない気がする


姫「ふふっ、変わってるのねあなた」

少年「そう?」

姫「ええ、とっても面白いわ」

少年「えぇっとありがとう?」

姫「どういたしまして」ニコッ

彼女は微笑む

なんだろうとっても穏やかだ

昼間のシスターさんを救えたら

こんな風に穏やかに会話できたのかな

そう考えると

胸が苦しい

更新のペースが遅いですが大目に見ていただけると助かります

ファンタジーな世紀末

大好きだ


姫「ところであなたは何故こんなところに?」

少年「王様を見にきたんだ」

姫「お父様?」

この言葉から察するに

彼女は王様の娘、つまりお姫様ということだ

まぁなんとなくそんな感じがしたし

特に驚くことはなかった

少年「多分そうだよ」

姫「生憎、今はちょっと取り込み中よ」

少年「そっかー」

じゃあ別にいっか

そんな重要な用事でもないし


少年「それじゃあ、もう行こうかな」

姫「お家に帰るのね、送って行きましょうか?」

少年「え?家?無いよそんなの」

姫「?」

少年「ずっと牢獄で暮らしてたからね、あそこが家かって言われても家とはいえないよ」

そういうと彼女の目の色が変わった

姫「それってどういう…」


また誰かが入ってきた

腰にサーベルをぶら下げた、金色の髪の顔の整った少年

だが表情は険しく、僕の方を睨んでくる

恐らく彼女の弟、王子様ってことかな

王子「姉さん早くそいつから離れて!!」

姫「大丈夫よ、彼は心配いらないわ」

王子「わからないの!?そいつから流れる禍々しい魔力が!!きっと世界を終わらせるために来た魔物だ!!」

姫「魔力が高くたって、使う人が使い方を間違えないのなら問題ないわ」

王子「でも使う奴が…彼のような魔物なら」

そういうとサーベルを抜く


姫「止めなさい王子、剣をしまって」

王子「それは無理だよ姉さん、そいつはヤバすぎる」

もう一度僕は睨まれる

姫「怒るわよ?」

王子「怒られたって構わない…家族を救えないで何が長男だ!!」

少年「あのー僕はあなた達に危害を加えるつもりはないので」

王子「じゃあ何故ここに来た!」

少年「王様に会うため?」

王子「父を殺しに来たか!!!」

話が噛み合っていない気がする

いや、でも強ち間違ってるとも言えないな

王様とかひょっとしたら殺しそうだし


王子「貴様に父は殺させない!!覚悟しろ!!」

飛びかかってくる

あぁ面倒だ

王子様はサーベルを突き出し僕の喉仏狙っている

痛いのは嫌だから

殺すか

カアァァンッ

金属同士の弾く音が聞こえる

予想外にも刃は僕に届くことなく

姫がいつの間にか持っていた剣で王子のサーベルを弾いていた

姫「やめて…」

彼女は悲しそうな顔でこちら見てくる

少年「…」

何も言うことができなか

った


王子「姉さん!!なんでそいつの危険性がわからないの!!こんな状況になってから城に不法侵入していて、尚且つそんな禍々しい魔力を持っているってことはもう僕たちに危害を加える気満々だって事だよ!!」

姫「私が安全だって言ってるの、口答えしてると泣かすわよ」

王子「姉さんのわからず屋!!!」

今日、どれだけの争いを見てきただろう

なぜそんなに無意味に命を奪い合うのだろう

彼らには知能があるはずなのに

僕は・・・


姫の手をとる

姫「えっ?」

引き寄せて首を締め、刃物を首に押し当てる

王子「姉さんっ!!」

姫「うぐっ」

少年「なぁ王子様、こいつの命が欲しかったら王の所に案内しろ」

なるべく低い声で脅す

王子「貴様ぁあ!!」

少年「この城は広くてねぇーちょうど案内役が欲しかったんだ」

サーベルを持つ手震える

姫「ちょっあなた!!うぐっ!!」

少年「黙ってろ小娘」

睡眠魔法をかける

姫「だめ…そんな…」グテッ

王子「姉さんっ!!」

欲しかったら×
惜しかったら


少年「案内してくれるな?」

王子「わかった!!わかったから姉さんを離してくれ!!」

少年「ありがとう…君が無事に父上の所に届けられたら返してやるよ。とりあえず武器を捨てろ」

王子「くそっ!!」

サーベルを床に叩きつけ

唇を噛み締める

王子「・・・こっちだ」

王子は諦めたようで案内をはじめる

少年「なるべく早くしてくれよぉ?姫様がどうなるかひっひっひ」

舌で姫の頬を舐めるふりをする

王子「ぐっ!!」

僕を睨み付ける

だが直ぐに黙って歩きだす

賢明な少年だな

だけどちょっと騙されやすい


ひたすら扉の多い廊下を歩く

数分間歩いた

どこがどこだかこの王子はわかっているのだろうか

僕なら絶対に覚えきれない

わざと迷いやすくしてあるのだろう

そうすれば侵入者は勝手に迷ってくれるよな

僕みたいに

数十分歩いた

まだ着かないのか?

同じような風景をずっと眺めてると時間感覚が狂ってくる

だが

一際豪勢な扉があらわれた


王子「ここだ…」

やっと着いた

少年「ありがとう、王子様」

王子「約束だ姉さんを返せ!!」

少年「約束ぅ?うひゃひゃひゃわかったよ約束だ姫返してやるよ」

少年「だが俺が王様をぶち殺すのにテメェが入ってきたら邪魔なんでよぉ?お姫様に毒を盛っといたぜ」

王子「っ!?」

少年「毒消しはさっきの場所放り投げてきたぜ、優しいな俺ってよぉ」

王子「絶対に殺す!!!」

少年「そんなことしてていいのかぁ?大事なお姉さんが死んじゃうぞ?」

王子「くそぉぉおお!!」

泣きながら走っていく

まぁ嘘なんだけどね


いやぁ悪者には牢獄でとことん出会ったからね

上手く真似出来たと思う

でも疲れたな

出来るならこんなこともうしたくないな

王子様と姫様には悪いことをしてしまった

ごめんなさい

心の中で謝る

姫「悪いと思うなら、やらないで欲しいのだけど?」


そうだね…本当にごめんなさい

って

少年「うわっ!!」

何故か起きてる!?ってか心を読まれてる!?

姫「まったく」パンパン

起き上がりながらスカートを叩く

あれぇ睡眠魔法かけたのに

姫「あんな出力のない魔法じゃ数分で起きるわよ」

少年「あ、あのごめんなさい」

姫「全くよ、ちょっ苦しかったじゃない」

少年「うっ」グサリ

姫「それに、あまり弟をいじめないでくれる?」

少年「うぐっ」グサリグサリ

姫「ちなみに下手だったわ、悪役のふり」

少年「ぐはっ!!」グサリグサリグサリ

姫「眠ってる女の子の頬を舐めようとするなんて最低ね変態さん」finish!


あまりの精神攻撃に僕の精神的HPはゴリゴリ削られ

膝をつく

駄目だ彼女、完全に怒ってらっしゃる

なにか許してもらえる方法は

はっ!?

そうたしかあれは昔黒髪族という窃盗団のリーダーのスミスさんに教えてもらった

土下座だ

少年「すみませんでした!許してください!」

土下座をされたものは相手を許したくなってしまうらしい

ふっふっふこの勝負もらった

姫「嫌よ、許さないわ」

膨れっ面でそっぽを向かれた

少年「」ガーン

なん…だと

駄目ですスミスさん、土下座は最強の術じゃないそうです


姫「罪にはそれ相応の罰が必要だと思わない?」

少年「おっしゃる通りです」

姫「それに被害者である私があなたの罰を決めてもいいと思わない?」

少年「そうですね!決めてもいいと思います!」

姫「それじゃ、私があなたに罰を下します」

うわぁ…なんだろう肉体労働系ならまだ楽だけどまた牢屋とかにいくのはやだな

姫はそっと右手を差し出してきた

そして

姫「私と友達になりなさい」

と無邪気に微笑むのだった


それは僕が昼間に差し出した手と同じ手

だけどまったく違うもの

僕の手は血に染まった絶望的な手で

彼女のは全てを包み込むような優しい手だった

彼女の手ならばあの少女も救えたかもしれない

もし助けたのが彼女ならば

僕じゃなければ

後悔と絶望と喜びと希望が混ざり合う

やっと友達が出来そうなのに

僕は・・・僕は

ただ涙を流すのだった

今日はここまで

おつ

続きが気になる話
乙乙

気になるぜ

はい

もう終わり?

復活

はい

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