あずさ「思紬」 (20)



今日は歌番組の収録に加え生放送のラジオ出演、更には事務所でミーティングと忙しい一日でした。
朝から動き回って家に帰る頃にはすっかり遅い時間。
竜宮小町が売れるのは嬉しいしいい事なんだけれど、こう毎日毎日忙しいのも少し考えものね…。
…いけないいけない、私はユニットで最年長なんだからこんなこと考えちゃいけないわ。

なんて考えているといつの間にかもう家です。

律子「それじゃああずささん、お疲れ様です。」

あずさ「いつも送ってもらっちゃってすみません、律子さん。」

律子「いえ、迷子になられる事を考えたらこの方がベストです。」

耳が痛いわね…。


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律子「じょ、冗談ですよあずささん。そんなに落ち込まないでください!」

あずさ「もう、律子さんったら…。」

律子「ふふっ。それじゃああずささん、また明日。」

走り出した律子さんの車を見送りマンションの自室へ歩を進めます。
流石に自宅前から迷子になるなんて事は……何度かありましたけど、今日は大丈夫でした!

あずさ「ただいまぁ~。」


扉を開き中に入ると何やら良い匂いがします。
リビングへ行き、上着を脱いで荷物を置いてキッチンに行くと。

春香「おかえりなさい、あずささん!今シチューを作ってるんですけど、もうちょっとで出来るから座って待っててくださいね!」

実は私、春香ちゃんとルームシェアしています。
実家から2時間かけて通うのは大変なので私から提案しました。
過去に千早ちゃんと暮らした事もあるし、ご両親も成人している私ならと許可してくれました。
でも本当は――――――


春香「あずささん?あのー、あずささーん!」

あずさ「…っあ、シ、シチューね!うん、ありがとう春香ちゃん。とっても美味しそうな匂いだわ。」

春香「もうすぐ出来ますからね。」

あずさ「楽しみだわ~。」

春香「えへへ。さ~て、それじゃあシチュー仕上げちゃいますね!」

そう言ってお鍋の方に向き返る春香ちゃん。
可愛いエプロンがよく似合っています。
鼻歌交じりに料理をする春香ちゃんを見ていると、何だか少し悪戯したくなってきちゃいます。


あずさ「ふふふ、春香ちゃ~ん。」

春香「ひゃあ!」

後ろから抱きつくと変な声を上げました。

春香「あ、あずささん!?あ、危ないですよぉ~。」

あずさ「うふふ、癒されるわぁ。ふ~。」

春香「ひょわぁ!み、耳に息を吹きかけないでください~!」

わたわたと慌てる春香ちゃんの姿はとっても可愛いわね。


あずさ「ふ~。」

春香「ちょっと、あずささ…んっ」

あずさ「ふ~。」

春香「やっ…こしょば…んぁっ」

あずさ「あむっ」

春香「ひぁぁ!み、耳…だめぇ…。あずささん…噛まないで…くぁ…。」

どうやら春香ちゃんは耳が弱いようね。
…うふふ。


あずさ「可愛いわ、春香ちゃん。」

春香「ど、どうしちゃったんですかあずささん…!」

  「今日なんか…変…というか…んっ。」

あずさ「そうかしら?」

春香「そ、そうですよ。いつもの…んっ…あずささんならこんな…こと…。」

あずさ「…私はずっと、こういう事、したかったのよ。」

春香「…え?」


あずさ「だからこそ2人暮らしを提案したんだし。」

春香「…そんな。」

あずさ「春香ちゃんを、独り占めしたかったから…。」

春香「あずささん……。」

…あ~あ、言っちゃった。
本当は言うつもりなんて無かったんだけれど。
だって、女の子同士でなんて本来おかしいでしょう?


春香「…あの、あずささん。」

あずさ「何かしら?」

春香「手、離してもらってもいいですか?」

やっぱり、そうなるわよね…。
仕方のない事じゃない。
本当の事を打ち明けたらこうなるって、分かっていたのに。

あずさ「ごめんなさいね、春香ちゃん。」

手を離して、詫びる。
背を向けていた春香ちゃんがこちらに向き直りました。
俯いていて表情は読み取れません。


春香「あずささん…。」

いつもの明るい春香ちゃんとは違う声色に少しだけ身体が強張る。
次の瞬間、私は自分の身に起きた事をすぐには理解できなかった。

あずさ「…え?」

俯いていた春香ちゃんが私に抱きついてきたのだ。

あずさ「春香…ちゃん?」

春香「好きです。」


あずさ「え?」

春香「私もあずささんの事、好きです。」

  「だから、一緒に暮らそうって言われた時、本当に嬉しかったんですよ。」

これってつまり、そういう事よね?

あずさ「あの、えっと…。」

春香「もう!あずささん!」

あずさ「は、はい!んっ…!?」

唇、奪われちゃいました…。


春香「ぷぁ…。これで、わかります…よね?」

あずさ「は、はい…。」

その時私は生まれて初めて自分の耳が赤くなっていく音を聞きました。

春香「あずささんは、してくれないんですか…?」

あずさ「えぇ!?」

春香「私も、結構恥ずかしかったんですよ…?」

よく見ると頭のリボンに負けないくらい顔が赤く染まっていました。


あずさ「春香ちゃん…。んっ」

春香「んっ…。」

シチューがことこと煮える音だけが聞こえるキッチンで、その柔らかい体を抱き、私から唇を重ねる。

そして、春香ちゃんは後ろ手でコンロのスイッチを切った。



おわり

終わりです。
特に弁明することはありませんが某所で見かけた人気カップリング早見表であずはるがなかったので書きました。
それだけです、はい。
タイトルはただのダジャレです。

特に何も考えずに書いたのでよくわからんものになりましたが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
それではお目汚し失礼いたしました。

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