勇者「狩人に魔法使いをNTRれたんだよ!」 まおう「えぇ!?」(1000)

まおう「……ってNTRれって何ですか?」

勇者「それを俺に説明させるのか」

まおう「あっいえ、それは私の勉強不足なので……」

勇者「まぁいい。しかしお前みたいなガキにも事情を知ってもらう必要がある。
    俺達がこうなった原因、その一端を担っているのだからな」

まおう「私の責任ですか?」

勇者「正確にはお前の親父だ。素直にその王座に座って俺の到着を待っていれば良かったものを……
    恐怖の大王が腹痛で死ぬのかよ! 原因は拾ったものを食ったと来た!」

まおう「それと勇者さまが困っている事に、何の関係が……?」

勇者「だから寝取られたつってるだろ。俺の恋人であったはずの魔法使い……
    故郷に帰ったら結婚しようと約束し、その為にずっと互いの純潔を守り続けていたのに!」

まおう「もしかして寝取られるって、睡眠不足って意味になるという事ですね」

勇者「ああそうかもな確かに寝られなくなったよ。
    俺達はパーティを組んで順調にここへ向かってきた。魔物は格段に強くなっていく。
    いつでも死ねるとは誰もが理解していたが、それがいつになるかは逆に誰も解らなかった。
    そんな緊張の連続があったせいか、俺と魔法使いは互いを想う仲になってたんだ」

まおう「そういうの本で読んだことあります。素敵で憧れますね」

勇者「……だがこの関係は、俺達の悲願が達成されると同時に崩れ去った」

まおう「勇者さまの悲願って……やっぱり魔王討伐ってことに?」

勇者「そうだ。しかしあのクソッタレは死んだ」

 カッ カッ カッ

神官「おやおや騒がしい」

まおう「あ、神官さん」

神官「おはようございますまおう様。勇者殿と何の話をされていたのですか」

勇者「何ナチュラルに登場してんだよジジイ」

神官「申し遅れました。私めは元魔王様の神官であり、現在はまおう様を補佐する者でございます」

まおう「神官さん。私にはどうも勇者さまの事情が理解しきれないので、手助けしてくれませんか」

神官「良いでしょう。ですがまおう様にはまだ教育上よろしくない話の様なので、私めが受け答えさせてもらいましょう」

勇者「そっちで話まとめんなコラ」

神官「しかしお仲間の姿が見当たりませんね……魔王様の支配力が消えたとはいえ、この辺の魔物は段違いに強かったはずでは」

勇者「俺の怒りがどれほどのものかと言う証明だ。
    俺の仲間たちは結局、国の圧力と生死の緊張、ないしは個人の勝手によって結束されていただけだった。
    魔王が死ねば空中分解する事など想像に難くないだろ」

まおう「そういうものなのですか……」

勇者「狩人は以前から魔法使いの体を狙っていたらしい。どさくさに紛れて人の処女を狩ったうえで、
    本来被害者である魔法使いは何て言ったと思う?」

神官「さしずめ『あんまり勇者がもったいぶらせるから、狩人に貰われちゃった』とかでしょう」

勇者「なっ……!」

神官「こんな老いぼれでもかつての魔王千年帝国でナンバー2だったのです。魔法など使っておりませぬぞ」

勇者「ああ……思い出しただけでも腹が立つ! 人と約束をしておいて! それを大事に守っていたらこの様だ!
   何が「乙女時間は短い」だよ! 「強引な方が良い」だよ! 俺が無理やり押し倒せばよかったのか!? ああ!?」

神官「勇者殿にも問題が無い訳ではないはずですが……まぁ気の毒ですね」

まおう「ええと……結局どういう事ですか神官さん」

神官「要するに、勇者殿は自分の恋人を他人に奪われたので、文句を言うためにこの城へと乗り込んで来た訳ですよ」

まおう「そうなのですか……! それは、その……なんというか、申し訳ありません……」

勇者「くく……謝られると余計に腹が立つと教えてあげた方が良いのかぁ……?」チャキッ

神官「そのようなネガティブな根性だから嫌われたのかと。無駄に勇者力が備わった真面目系クズですな」

勇者「貴様ぶっ殺s――がっ!?」

神官「魔王千年帝国のナンバー2……いえ、現状においては頂点の私めを1人で倒そうなど笑止」

勇者「くっ……もういい。俺の目的は魔王の死亡確認と、あんたの言う通り文句を言いに来ただけだ。
    目的は果たされた。だからもう帰る」

まおう「ま、待って下さい勇者さま!」

勇者「どうしたクソガキ」

まおう「その……これからどこへ」

勇者「俺を派遣した王国に帰って討伐報告。それからは知らん。気が晴れるまでどこぞ歩くだけだ」

まおう「それならその……わ、私を連れていってはくれませんか!」

 ぽく ぽく ぽく ちーん

勇者「……あー、何て言ったか聞こえなかった」

まおう「私を、一緒に、連れて行って、ください!」

勇者「……テメェ自分で言ってる意味分ってるのか」

勇者「……テメェ自分で言ってる意味分ってるのか」

神官「…………」

勇者「ジジイも何か言えよ! このガキとんでもないこと言ってるって翻訳しろっての!」

神官「まぁそれも良いかもしれませんね」

勇者「はぁ!?」

まおう「お願いします……」

勇者「いやいやお前はあの魔王直系の娘なんだろ? 俺に付いていくなんて、殺されに行くようなものだぞ」

神官「勇者殿は魔王崩御後に起きた世界の変化については知らないと」

勇者「手前の事でいっぱいいっぱいだってのに、全世界の変化なんか見てられるかよ!」

神官「この世界……いえ、おおよその世界には“バランス”と言うものがあります。
    しかし大昔、誰とも解らぬ者がそのバランスを壊してしまったのです」

まおう「そのおかげで魔法が生まれ、魔王が生まれ、勇者という対立が生まれました。お父様からよく聞かされた話です」

神官「かつての魔王様はその“世界のバランス”を占有して千年王国を建立され、大きな力を振るいました。
    それが解放されてしまった今、世界は非常に不安定な状態になっているのです」

勇者「何だか皮肉な話だな……巨大な悪が滅した先の方が不安定になるだなんて」

神官「世界規模のバランスと言うのは、元来そういうものです」

勇者「話は理解したが、それがどうしてガキを連れていくと言う話になるんだ」

神官「現状、まおう様は権力を引き継がれ王座に座っているだけです。
    見てわかる通り従来の魔王千年帝国を実効支配する能力はほぼ無きに等しい。
    そうなると小悪党や下剋上を狙う輩が出てくるのです」

勇者「そんなの……俺の知った事か」

まおう「…………」

神官「そんな現状ならばいっその事お強い方の元へと失脚された方が、まおう様の身は安全なのです。
    たとえ帝国そのものが崩壊しても、すぐ魔王様と台頭されるような実力者はいませんから」

勇者「……目の前にいるんだが」

神官「それはそれはとんでもない。この老いぼれ生まれてより2千年、そんな欲など当の昔に消え去りました。それに……」

勇者「それに?」

神官「まおう様は実質私の娘みたいなものです。今は帝国の名誉や栄光よりも、この子の命の方がずっと大切に思っているのですから」

勇者「ふん……テイのいい育児放棄だ。絶対にお断りだ。じゃあな」

まおう「まってくださいぃ!」
 とてとてとて

まおう「あっ」 ズシャー

勇者「無駄に装飾がかった服着てるから転ぶんだ」

まおう「はいぃ……すびば――」パァン!

まおう「痛っ!?」

勇者「いいかクソガキ。どんな箱入り状態で育てられたかは知らんが、今のが最小限の痛みだ。俺の張り手くらいで涙目になってどうする」

まおう「うぅ……」

勇者「炎で骨まで焦がされた事があるか? 毒を喰らって視界が反転したりする事があるか?
    お前の頭ほどもある爪で腸(はらわた)をえぐられた事はあるか? 外の世界はそういう恐ろしい事でいっぱいなんだ」

神官「…………」

勇者「それに俺も、今みたいに平気でお前を叩いたり殴ったりするかもな。置き去りにするかもしれん。
    昔は真面目系クズだったかもしれんが、今は真面目崩れのクズとでも言えばいい」

まおう「うっ……うっ……」

勇者「神官のジジイも見ただろ。こんな野郎のところに娘を送る事もない……そういう事だ。じゃあな」

 ガシッ!

勇者「!?」

まおう「……放しません!」

勇者「ちょ、お前」

まおう「はいと言うまで放しません!」

勇者「バッカ腕にしがみつくなコラ!」

まおう「うー! うぅー!」

まおう「うー! うぅー!」

神官「……勇者殿」

勇者「テメェも神妙な声出してないで何とかしろ!」

神官「私めからも……お願いします」

 神官は膝をついて頭を下げた。

勇者「は、はぁ……?」

神官「この城はもう長く持ちません。今まで辛うじて決壊しないよう魔力を保ってきましたが、魔王様に及ばぬ私めには重すぎる仕事です。
勇者殿がまおう様を連れて行って下されば、私は安心してこの地を捨てる事が出来ます。あなたの名誉も加えて大きくなるでしょう」

勇者「……もう、勝手にしろ。俺はガキの手なんか引っ張ったりしないからな。付いて来れないなら置いていく」

まおう「も……もちろんです!」

神官「まおう様……貴女も、勇者さまのおっしゃることは肝に銘じておかなければなりません」

まおう「はい、解ってます神官さん。でも大丈夫です。私が本物の痛みに遭う前に、
     それを実力で解らせようとしてくれたくらいに、勇者さまは優しいのですから」

勇者「バカ言うなクソガキ」

まおう「えへへ」

――荒野の国――

まおう「うわー! 広いですね!」

勇者「不毛の土地見て爛漫に喜ぶ奴初めて見たぞ。本当に城の外へ出たことないのか」

まおう「城の周りくらいは出させてもらいましたけど……それでも今まで100年の内に数回です」

勇者「見た目も頭もその程度で白寿越えかよ。これだから魔族は……」

まおう「えへへ、すみません勇者さま」

勇者「とりあえず街に入りたいが……その前にお前をどうにかしないとな」

まおう「なんです?」

勇者「自分で気づかないのか。飾りばっかりの魔王の格好だとすぐ命を狙われるだろ」

まおう「あ、そうですね。でも荷物なんてほとんど持ってきてないですし……」

勇者「下着くらいはあるだろ。替えが無いならそのままでいろ。服は俺の予備で十分だ。とっとと着ろ」

まおう「わかりましたぁ」ぬぎぬぎ

勇者「おい草葉の陰に隠れるとか言う考えはないのかよ!」

まおう「でもここ枯れ木しかありませんよ?」

勇者「俺が聞いてるのはそういう事じゃ……ったく、着替え終わったら言えよ」プイ

まおう「私、また失礼なこと言っちゃったのかな……」


まおう「着替え終わりましたぁ」

勇者「ああ、あとはフードをかぶせて……まぁこんなもんだろ。じゃあ行くぞ」

まおう「ああ待ってください勇者さま!」

勇者「その呼び名もやめろ! 勇者の連れなんてバレたら、最高か最低どっちかの待遇しか受けられないぞ」

まおう「私は勇者さまについていけるならどちらでも構いませんよ?」

勇者「……本当に馬鹿だなこのクソガキ……」

 荒野の国、その中心に踏み入る。

まおう「大きな壁ですね」

勇者「まだ魔王の城からそう離れていないからな。ここは付近の強力な魔物を遠ざける為に、
    退魔鉄筋を仕込んだ分厚い壁で囲われてる街だ。ちなみにお前に利くかどうかは知らん」

まおう「んー……たぶん大丈夫だと思いますよ」

勇者「魔物が不快感を覚えて近寄らないのはもちろん、ゲートに差し掛かると魔血を逆流させる呪いまでかかってるんだが」

まおう「勇者さまが何とかしてくれます!」

勇者「俺をどんな聖職者だと思ってんだ……」

 壁沿いを縫ってしばらく歩くと、小さく穴があけられたようなところにゲートがあった。

守衛「どのような用件で」

勇者「アイテムの補充と1晩の滞在だ。許可証はないが半券ならある。3日前のものだ」

守衛「なるほど……ま、いいでしょう。長期滞在する際には再度役所に申し出てください」

勇者「どうも」

まおう「…………」

守衛「…………ん」

 慣れた態度で交渉を押し切り街中へと入っていく。

勇者「大丈夫みたいだな」

まおう「はい、何故かは分かりませんが」

勇者「本当にあの魔王の娘なのか?」

まおう「もちろんですっ。このいげんで判りません?」

勇者「無い胸張るな」

まおう「中に入るにも理由が要るんですね」

勇者「この街では昔からの事だが、魔王が死んでからはどこの街でもそうなっている。
    あのジジイが言ってる事は何も間違っちゃいないんだ。
    魔王と言う存在は大きな災いであると同時に、強力な抑止力でもあったんだ。
    おかげで今は小さい力を寄せ集めた悪党が幅を利かせている。
    だからお役所や守衛たちは神経を尖らせ、さらに力のない民衆は余計に困窮している」

まおう「お父様も人間の役に立っていたのですね」

勇者「間違っちゃいないが正解とは言わない」

 門を抜けてしばらく歩く。砂嵐が壁を遮ってくれているおかげか、街中では風景や物がとても鮮明に見える気がした。

まおう「勇者さま勇者さま! これ何ですか!」

 まおうは市場の軒先へと一直線に走って行く。こんな時だけ無駄に早いのはやはり子供らしい。

勇者「この辺で栽培されるサボテンリンゴだな。食感は気持ち悪いが、水分補給になるし味も悪くない」

まおう「そうなのですか! あーむぐっ」

店主「おい嬢ちゃん! 勝手に食べちゃダメだよ」

勇者「だぁーすみません! コラちょっと来いバカ」

まおう「あぁー痛いですっ! 耳は引っ張らないで!」

勇者「付いていく以上は余計な事するなと念を押して言ったはずだぞおい」

まおう「はわわ……」

勇者「……」 ガスッ!

まおう「あがっ!?」

勇者「ガキは犬みたいなものと聞いた。身体で覚えなきゃ癖が付くらしいからな。金払ってくるからそこで大人しくしてろ」

まおう「は……はい……」

店主「へいまいど。しかし勇――あいや、あんたがこの街に戻ってきたと思ったら子連れになっちまってら。一体どういう事だい」

勇者「面倒くせぇ事情に巻き込まれてな」

店主「しかし勝手にサボンゴ食ったくらいで顔パンはねぇだろ顔パンは。こっちが申しわけなったぜ」

勇者「あんたには解りようがないかもしれんが、あれも任された立派な仕事だ。 教 育 ってやつさ」

店主「世界が突然おかしくなったって言うのに、あんたは順調に壊れていくねぇ……」

勇者「そう褒めるなよ」

まおう「あ、勇者さま。おかえりなさい」

勇者「黙って佇んでるかと思ったらケロっとした顔色で迎えやがって。何のつもりだ」

まおう「別に何でもありませんよ? これからどこに行くのですか?」

勇者「……まだ買い物だ。いろいろ細かく調達しなきゃならん。置いてくと後で探すのが面倒だ、仕方ないから付いてこい」

まおう「はいっ!」

 妙な感じだ。違和感じゃない。まおうは本当に犬のごとく付いて来る。
子供を殴ったりすればすぐにスネられ、拒絶されるものかと思ったのに。
 今の内なら1人歩きで城まで帰せる。そんな算段が絶望的に思えた。

 簡単に市場を縦断した後、戻りながら目のついた店に顔を出す。
必要なものを買い揃えながらゲートの方へと戻っていくと、ガキは湿気た鉱物店の前で立ち止まった。

まおう「はぁ……!」

勇者「なんだ、それが気になるのか」

まおう「はい……! この濁った白色がたまりません」

勇者「どうせ買うなら宝石とかにしろ。金ならあるし、油臭い石とか効果の知れない魔法物とかなら困る」

まおう「うー……」

勇者「……そんなにその石が良いのか」

まおう「はい……」

まおう「はい……」

鉱石店主「さっきから酷い言い様だねぇ。こっちも商売だからちゃんと調べてるよ。
      それは魔法石の素材だけど、見ての通り白成分が濁りすぎて使えなくてな。
      かと言って変な魔法が発動しても困るから元の力を完全に消してもらったんだ。
      どうだい、250ゴールドで手を打たないか」

勇者「ジャンクの更生品にしちゃ高いな……ま、外の魔物狩ればすぐだしいいか」

鉱石店主「ありゃりゃしたー」

まおう「ふふふーむふふー」

勇者「気持ち悪いから抑え笑いするな」

まおう「ゆーしゃさまとお揃いのプーレゼントー!!」

ガスッ

勇者「3歩あるけば何とやら、さしずめお前は鳥頭か。犬に鶏と来てさてはキメラの末裔か」

まおう「いぃぃ……私は魔王のまおうですよっ!」

勇者「呪いでその口封じるぞ」

まおう「」手で口を押える

勇者「……あほらし」

まおう「勇者さまも自分の分買いましたよね?」

勇者「こっそり2つ買ったのに見てたのかよ……冷静に考えてみれば、俺なんかに宝石が似合う訳ないし、パッとしない見た目が更に霞んで見える」

まおう「でも私は嬉しいです、ふふふ」

勇者「バカにしてんのか」

 必要なアイテムを買い揃えている内に、日はあっという間に暮れてしまった。揃って活気を上げていた店も軒を畳み、人通りも少なくなる。

まおう「そう言えばずっと気になっていたんですけど、寝る所はどこにあるのですか?」

勇者「あー、宿探さないとな」

まおう「やど……?」

勇者「そうかお前にはそういう概念もないのか」

まおう「……ああ! カタツムリの呪術の」

勇者「もう突っ込みたくないくらい違う」

まおう「要するに、自分の城がない場所に留まりたい時は、お金を払って城を借りるんですね」

勇者「言い方の問題だな。ホテルとかロッジとかいう看板があったらそれだ」

まおう「向こうに見えますよー!」


勇者「う……この宿は」

まおう「どうかしたのです?」

勇者「ここはダメだ。他を探す。ここはダメだ」

まおう「何で2回……」

勇者「ダメつったらダメなんだよ!!」

まおう「うひっ!? は、はい。ごめんなさい」

勇者「ここ一体は宿泊施設が並んでいるはずだ……別にここじゃなくても困る理由なんて――」

「ああ、すまねぇが今日は満室なんだ」
「1泊3万5000ゴールドでございます」
「今日はVIP待遇で他のお客さんを受けてないんだ」
「休館日だよ」

勇者「なんでほぼ全滅なんだよ!」げしっ

まおう「あ痛っ! そんな……私に言われても」

勇者「外でくるまってたら兵士にとっ掴まるし、何よりも寒すぎる……街の外でなんて自殺行為だし」

まおう「あぁやめてください! 髪の毛引っ張るの痛いんですぅぅぅ!!」

勇者「……しかたない。ここにするか」

宿主「はいいらっしゃい」

勇者「宿泊……」

宿主「おや勇者さんお久しぶり。お連れの方は1人だけでよろしいのですか?」

まおう「はいっ!」

勇者「てめぇは黙ってろ」ボコッ

まおう「うぅ……」

宿主「まぁ魔王も死んだことですしそう大所帯になる事ももうないでしょうね。
    部屋は空いてますのでどうぞ。料金据え置きでうちの一番良い部屋ですよ」

勇者「………………そりゃどうも」

まおう「?」

 決して新しくない宿。その2階の廊下をまっすぐ歩き、突き当りの扉を開く。

まおう「わぁー広い玄関ですぅ」

勇者「回りくどい説明は面倒だからハッキリ言うとこれで全部だ。帝国のスイートルームならともかく、民間の中等宿なんざこんなもんさ」

まおう「え、そうなのです?」

勇者「そうなのです。……はぁ、別にやる事はなにもねぇんだ。俺は水あびてくっからてめぇは1人で飯を見繕ってろ」

まおう「えー私1人で水浴びした事……」

勇者「……冗談じゃねえぞ」

勇者「……冗談じゃねえぞ」

 お風呂……と言う名の水浴び部屋。

まおう「お水、ちょっと温いですね」

勇者「魔王の城は温水シャワー完備だったかもしれんが、この辺の水は地熱で温められたぬるま湯がある。
    土地の恩恵が無きゃ冷や水で流す事になるんだぞ」

 素っ裸になったまおうを、ひっくり返した桶の上に座らせる。凹凸のない身体はまさに板とか棒とか言うにふさわしい。

勇者「(最初は躊躇ったが……これならどうもしない)」

まおう「あはは、勇者さまそこはくすぐったいですよぉ、きゃはは! ああもうっ!」

勇者「……なんか悪い事してるみたいだ」

まおう「綺麗にしてるんじゃないですか?」

勇者「いや……世間的に」

まおう「……?」

 濡れた長髪は拭くだけでも大変だった。魔法使いが要れば温風ですぐ乾かせたのに……。

勇者「よいしょっと……」

まおう「わー誰かと一緒のベッドで寝るって初めてですー! なんだかわくわくします」

勇者「そうかい。普通だったら、俺はベッドを譲ってソファに寝るのが流儀だが……それはアホらしい」

まおう「私はうれしいですよぉ」

勇者「…………」

 絶え間ない会話がやっと途切れ、しばらく静かに横になる。

まおう「ねえ勇者さま」

勇者「どうしたガキ」

まおう「なんで最初、この宿に泊まりたくないと言ったのです? 城主の方ともお知り合いみたいですし……なにか、あるのですか?」

勇者「あー……まぁ黙っているよりは知ってくれた方が良いかもな」

まおう「どおぞ」

まおう「どおぞ」

勇者「お前が城からここまで歩いてきた通り、この街は魔城に対する最前線の拠点だったんだ。
    魔王討伐のためにパーティを組んでいた俺たちは、城の前で力尽きない為に、レベル上げをしつつこの街に連泊してた。
    そろそろレベルも良い塩梅だし、魔王倒しに行こうかなっていた頃合いだった。
    奴が病気で死んだという報道が流れ、外の世界は明らかに変わっていた」

まおう「お父さんが死んでから、供給する魔力が変化してみんな混乱していましたね」

勇者「俺たちはそこで魔王の死を確信し、次いで自分たちの義務も終わった事を知った。
    最初の日こそ乾杯して朝まで飲んだが、その次の日からはみんな今後の自分を考え始めていたんだ」

まおう「えーと……今後の自分って、それからどうしようって事ですよね」

勇者「ああ。だが魔王討伐までは、自分が明日生きているなんて保証はなかった。
    考えない奴は本当に何も考えていなかった。だから、その飲み会を最後に全員が集まる事はもう1度もなかった」

まおう「そう、だったんですか……もしかしてそれが悲しくて、ここの宿へ泊るのをためらったんです?」

勇者「バカかクソガキ。飲み会や宴会に誘われなかっただけで死ぬなら、俺はもうどこにも行けない」

まおう「ち、違うんです?」

勇者「問題は3日目の夜だった。俺は恋人であったはずの魔法使いと話そうとした。魔王が死んだら、
    一緒に故郷へ帰って結婚するんだと。ずっと前から互いに約束していた。それが……なんで……」

まおう「魔法使いさん、まさか死……」

勇者「まさにこの部屋……このベッドで、狩人のアレを受け入れて善がっていた」

まおう「あ、あれ……? (何の事だろう)」

勇者「拍手みたいな音がしたんだ。それでドアを開けて覗いて見ると、魔法使いは自分の口を手でふさぎながら、少し声を漏らしていた。
 狩人が動きを止めたかと思うと、魔法使いは白い足をピンと張って痙攣した。何が起きたのかは考えるまでもない光景だったよ」

まおう「(やっぱり仲間討ち……!)」

勇者「しばらく2人抱き合ってから、狩人は自分のモノを引き抜いた。ドロッと何かが垂れているのがはっきり見えたよ。あいつは俺のより2倍は長かったな」

まおう「(勇者さまの剣より2倍も大きいなんて……魔法使いさん、そんな死に方って……)」

勇者「あそこまで見せられたらもう疑いようも問い質す必要もねぇ。それとなく約束の事を聞いてみたら……そこからはお前や神官に話した通りだ」

まおう「(やっぱり落ち込んでる……ここは私が、しっかり励ましてあげないと!)」

勇者「だからここに泊まるのは嫌だった。どうせ俺を通すならこの部屋になるだろうし。かといって善意を断れないし」

まおう「あの! 勇者さま!」

勇者「耳元で大声出すなガキ」

まおう「あの……私で良かったら……」

勇者「はぁ?」

まおう「代わりに私が出来る事なら何でもやります! どうかなんでも申し付けてください!」

どうかなんでも申し付けてください!」

勇者「お前、自分で何言ってるのか解ってんのか?」

まおう「もちろん! (今日の感謝も重ねて、今私が出来る何かを精いっぱいしてあげないと!)」

勇者「……ふふっ、じゃあその――あいや、やっぱりお前じゃ役不足だわ」

まおう「えー! どうしてです!」

勇者「あんなぁ! テメェにローブの上からでもはっきりと形の判るおっぱいを3年以上見せつけられて、
    かつそれにありつく約束をされたうえで、最後の最後にどんでん返しを喰らった俺の気持ちが解るとでも思ってんのか畜生ガァァ―――ッ!!」

まおう「わっ私はただ勇者さまを励まそうと思っただけであっ、だめ、鼻、はにゃちゅまみゅのひゃめてふだひゃい……」

勇者「……チッ。もう寝る」

まおう「えーもう寝るのです?」

勇者「審議拒否」

まおう「ぶぅー……」

 無理矢理寝込むような格好をしばらく見せていたら、あいつは静かになって寝息を立て始めた。

勇者「本当に面倒な奴だ……何でこんなことに」

 俺も疲れていない訳が無かった。緊張の糸の最後をほどくと、支えを失った人形のように眠りへ就いた。

 ガサ……カサ……

勇者「(ぁ……まおう……?)」

まおう「…………」

勇者「(ベッド抜け出して何処へ……トイレか)」

まおう「…………」とてとて  バタム

 扉の音がしてからしばらくもしない内に事は起きた。

まおう「……うぶぅぇっ!!」

勇者「ま、まおう!」

まおう「けほっ……かはっ……うぅー……うぅぅぅぅ……! くふっ……おええッ!!」

勇者「何やってんだクソガキ! 大丈夫か!?」

まおう「うぅー……うぅ……」

勇者「黒い血、魔族の血か……それを吐出するってことは……まさかお前」

まおう「げほっ、げほ……」

勇者「この街のゲートで、やっぱり対魔族の魔法が効いてたんじゃねえか! どうしてずっと……今まで我慢してたんだよ!」

まおう「だって……あんなところで……騒いだら、きっと勇者さまの……迷惑に……」

勇者「そんなの当たり前だろうが……だが、何故その事を俺に言わなかったんだ。
    耐えられるなら、こんなことになる前にそれなりの処置は出来たはずだ」

まおう「だってだって……こんな状態じゃ……すぐに城へ返されちゃうし……」

勇者「まおう……」

まおう「今日みたいな楽しい日……もうずっと味わえなくなるんだもん……」

勇者「……ドが付くアホガキめ」

 その時は俺の応急処置魔法と、ツボの刺激によって容体を安定させた。
そして宿主に用意してもらった牛乳とバターを混ぜて飲ませ、呼吸が安定してから蜂蜜を塗りたくったレモンを噛ませた。
 最後の方は意識を失うように寝てしまったが、しばらく様子を見ていると、眉間から力が抜けていくのがはっきり見えた。

勇者「これでやっと……ふぅぁーあ……」

 ここ数日の戦闘よりよっぽど疲れた。もうさすがに瞼の重さに耐え切れない。

勇者「……お休み」

 ……日の光が地平線から映し出される少し前……

宿主「ゆっ勇者さm! むぐぃぃ!!」

 突然扉を激しくたたく音で目を覚ました。

勇者「どうした!?」

宿主「――ッ!!」

勇者「布で口を塞がれてる……」

 何かの襲撃である事はすぐに理解した。しかしそれが誰によるものかは検討が付かなかった。

盗賊「ヘーイらぶらぶ事後のクソ野郎おはようございますどうも。ちょっと用事があって来ましたよ」

勇者「何者だ。答える気がないならとっとと用を済ませろ」

盗賊「そんな受け答え方は初めてだなぁ。まぁ仕事はとっとと終わらせたいけど、それだけじゃ味気ないんだよなぁ。
 だが俺はこの辺の盗賊じゃ天辺張ってんだ。自己紹介なんて真似は脅されたってしたくねぇ。お望みの通り仕事だけ済まさせてもらうぜ」

 咄嗟に盗賊の背後から出てきた影がベッドを取り囲む。俺は背を起したままで盗賊の顔を睨み続ける。

盗賊「怖くて動けないか? まぁいい。おめぇらとっととそこの少女を掻っ攫え。首領がお望みのブツはそいつだ」

その仲間「「エッヒヒヒヒ……」」

勇者「こいつをさらってどうやって逃げるつもりなんだ。クソ真面目にゲートから抜けたりしないよな」

盗賊「バカよぉ、そんな事しか出来ない奴にこの仕事はもっと出来ねえよ。俺たち全員、崖を飛び越えられる跳躍の術を持っている。この街の壁なんか余裕さ」

勇者「そうか」

盗賊「……かっ、その余裕が返ってムカつくな。まぁいい。腰抜けの付帯騎士なんぞ相手にしたって時間の無駄だ。日が昇る前にずらかっぞ」

まおう「……むぅ……」

盗賊の仲間「ヘヒヒヒヒイイ……」

勇者「…………」

俺「ヘヒヒヒヒイイ……」

お前ら「「エッヒヒヒヒ……」」

 荒野の街フィールド外  盗賊団の砦

まおう「あ……あ、ここは……」

首領「おおようやく目が覚めたか。日が高く昇っても起きないとはお母さんに叱られるぞ」

まおう「おかあ……さん……ってうわぁ! なんですこの縄は! あなたがた誰ですか!」

首領「ちょっと欲張りな大人たちさ。君に少し質問をさせてはくれないか」

まおう「な、何ですか……」

首領「君は……昨日崩壊した魔城の主、つまり魔王直系の娘、まおうではないのか?」

まおう「ええっ……」

首領「情報は掴み、ある程度の確信はあるのだが……何分俺達には判別する術がない。だから」

まおう「だ、だから……?」

首領「クライアントが欲しいのは印鑑だ。俺たちが欲しいのは金。だったら君には、象牙になってもらおうと言うのが私たちの考えだ」

まおう「何の事言ってるの……勇者さまはど――」

 ガッ ボコッ ビリッ

まおう「うあぁッ!?」

首領「さぁ認めろ。既に自白認知の方陣は完成している。あとは貴様がまおうであると認めれば、それが本当だろうが嘘だろうが、お前は自分をまおうと言う」

 ゲシッ ガスッ パァン

まおう「ひぃぃ……やめっ、痛――」

 ボフゥゥン

まおう「――――!!」

首領「おお……腹に私のストレートが入ってもまだ失神しない。体は小さいのにこの耐久力、やはりまおうで間違いないだろうな」

仲間「首領どの、失神させては自白認知の術が――」

 ザクッ

仲間「…………ッ!!」 どさっ

首領「俺の腹パンはガキのハラワタも潰せないとでも言うのかぁ……ええ……?
    それでもまだ生きてんだ。こいつはまおうに違いねぇ。自白も認知もあるか」

まおう「カッ……カク…………」プルプル

首領「あーあ。お前がトロいから野郎が1人死んじまっただろうが。しかしまあいい。
    これからクライアントのところまで連れて行くが……逃げ出そうとしたり暴れでもしたら、
    刺してくれと懇願する程の苦痛を味あわせてやるから覚悟しろよ」

まおう「……は……はぁぁ……!」

首領「よし野郎共。出発だ」

「…………」

首領「俺に返事しねえったどういう事だ糞共!!」

「熱心な仲間の寝言に期待するんだったな」

首領「だ、誰だてめぇ……!」

勇者「子守りのサービスを頼んだ覚えはないぜ」

首領「バカな、侵入者の報告なんて誰も」

勇者「ばれないようにやれば簡単だろ。俺も昔は、努力するつもりで全力で楽な方向へと転がろうとしていたけど……旅のおかげで、その方が面倒と知ってな」

首領「何をゴタゴタと……! うらぁぁッ!!」

勇者「――っ!」

首領「フンッ、フンッ! 糞がぁ……避けるので精一杯なのかぁ!? どうなんじゃ!!」

勇者「……言っておくが、確かに俺は普通の性癖ではない。魔法使いのおっぱいを頭に乗せて破魔の兜とかやってみたかったクチだ」

首領「頭大丈夫かこいつ……?」

勇者「だが、1つだけ断らせてもらう」

首領「死ねェェェ―――ッ!!」

勇者「俺はロリコンじゃないッ!!」

 ――……

首領「かっ………………ぁ……」

勇者「そいつで遊んでいいのは俺だけだ。そう任されたんだからな」

まおう「ゆう……し……さ……」

勇者「ほら無駄にしゃべんな。もしお前がまおうじゃなかったら、今頃イケナイものを垂れ流して死んでたところなんだぞ」

まおう「でも……私がまおうだったから…………ゆうしゃさま、助けに来てくれた……」

勇者「……勘違いするな」

 静まり返った砦の階段を、まおうをかかえながら下りる。そして地上の出口に差し掛かると――

盗賊「おい……クソ野郎……」

勇者「お、心配すんなぬすっと。お前に急所は当ててないし、
   親玉にはちょっと記憶が危なくなるツボを刺激しただけだ。誰も殺しちゃいねえ」

盗賊「俺が聞きたいのはそういう事じゃねえ……何でそんな実力があるのに、俺が襲撃した時に助けなかったんだよ……」

勇者「ちょうど、こいつをゲート通さずに外へ出す方法を考えあぐねていた所だったからな。
   質問してみたら都合良いから様子を見たのさ」

盗賊「しかし……俺たちがそいつをどこに連れていくかなんて誰も……いや、この砦の存在は、盗賊団以外知らないはずなのに……」

勇者「この濁った石ころ、意外に便利だぞ。共通の白魔法を掛けておくと、
   互いの位置や今見ている光景、距離にもよるが音も伝わる。良い買い物したぜ」

盗賊「…………そうか。で、俺たちをどうするつもりだ。連れをそんなにしちまったんだぞ、街の公安とかに通報しないのか?」

勇者「自惚れんな。いつまでも誰かが世話してくれると思うな。
    お前らを捕まえたところで何になる。それに事情聴取や捜査協力をしている暇もない」

盗賊「……ふっ、そうか」

勇者「そうだよ。せいぜい意識混濁のした首領に、お前は下っ端だとでも教え込ませてやれ」

 3時間後 荒野の中

勇者「もう1人で歩けるだろ」

まおう「えー、もっとこのままがいいです」

勇者「冗談言うな。いつまでも俺の手を塞ぐんじゃないこのクソガキ」

まおう「……うー、片方なら塞いでていいです?」

勇者「それはどういう――」

 隣に並んだ彼女は、左手をそっと俺の右手に重ねた。訊き返したのは他でもない。俺にそんな発想は無かったから。

勇者「……面倒な奴」

まおう「これからどうするんです?」

勇者「昨日街で買ったアイテムで転送魔方陣を作る」

まおう「ワープ魔法みたいなものですか?」

勇者「魔族はそう大して移動しないから戦闘の為にしか瞬間移動系の魔法を使わないらしいが……まあいい。
    これは長距離用の転送魔方陣。次の街まで一気に飛んで、
    またそこでアイテムを揃えて飛ぶのを繰り返して俺の国に戻る。それでも時間はかかるが、陸路を歩くよりは遥かに速い」

まおう「へぇー。確かに魔族は、その土地を守るために生きているようなものですから」

勇者「お前はもうちょっと自分の言葉を――」

 俺はいつもの調子で言うのをためらった。命のためとはいえ、家を失い、魔族の性(さが)に背き、
  こんな所まで付いて来るには、きっと今の笑顔を裏返しにしたような悲しみの上に、覚悟を重ねているかもしれない。

まおう「ねーねー勇者さま! 向こうにおっきな山があるよー!」

勇者「……いや、やっぱりアホらしい」

 1時間ほどかけて丁寧に方陣を作り、転送するための魔力を充填させる。

勇者「こんなもんだろう。これで一気に機械の国まで行けるはず……」

まおう「えと、勇者さま」

勇者「あ?」

まおう「このまま、手を繋いでいればいいです?」

勇者「……いいんじゃねーの。知らないけど」

 特に覚悟も決めることなく、術を開放する。

勇者「ん……」
まおう「ふわぁっ」

 ―――……

勇者「ここが機械の国か」

まおう「ねえ勇者さま勇者さま、またおっきな山があるんですけど」

勇者「あれは工場が積み重なって出来たy……あれ?」

 どう見ても荒野のままだ。

勇者「ありゃおかしいな……幻覚でも見てるのか」
ぎゅううう
まおう「痛いです痛いです! 私の頬つねって幻覚が醒めるんですかぁ!?」

勇者「おかしい……なんで転送出来ないんだ」

まおう「まだ痛いですぅ……」ヒリヒリ

勇者「…………」

 赤くなった頬を擦るまおうを見つめると、ふと心当たりに行き着いた。

勇者「お前……レベルいくつだ?」

まおう「え、レベルって何です?」

勇者「…………」

 転送魔法も万能じゃない。高レベル同士が1つの魔法陣で移動しようとすると、移動させる魔力がオーバーフローして安全のために転送を中止する。
 従来なら1人1人が魔法陣を作ればいいが、まおうはおそらく作れないだろうし、俺の目的としている国など知る由もないだろう。

勇者「……転送魔法で帰れなくなった」

まおう「じゃあどうするんです?」

勇者「歩いて……いや海洋を渡ったとしても……途方もない距離だな」

 しばらくの間を置いて

まおう「じゃあとりあえず、あの山の向こうまで行きましょう! 歩くなら、まず踏み出さなきゃです!」

勇者「あのなー……というか、単にお前あそこに行きたいだけだろ」

まおう「はい! 勇者さまと一緒に!」

勇者「お……」

 俺としたことが恥ずかしい。
 何故か言葉が出なくて、口を閉じたり開いたり。

まおう「さ、行きましょう!」



//This capter is "The endless wilderness".
//End of log.
//Automatic description macro "moppy" is sit down and stay awhile.
//Incidentally, this story still continues.

は?

※いつか投稿します。しばらくもしない内に。

おつ

一応自分でも保守するけど続き書く

――火山の国――

勇者「とんでもない悪路だな……」

まおう「ふぇぇ……」

勇者「お前の身体だって決して軽くはねぇんだぞ。歩けるようになったら言いな」

まおう「もー無理ですー!」

勇者「ったく……こっちから行きたいって言ったのはお前だろうが……」

まおう「他に道があったんですか?」

勇者「……いや、ねえけど。
   お前が知ってるかは分らんが、この火山は元々魔王軍の防衛ラインだったんだ。
   だから登山以外の道は、軍によって破壊されて今も修復されていない」

まおう「それだとみんな困るんじゃないです?」

勇者「それがそうでもない。山道さえ整備すれば、ここからいろんな方向へ物が運べる。だから、山頂の台地にこんな街が出来てるんだ」

 上り坂をもうひと踏ん張りして登りきると、木の看板の向こうに多くの人が行きかうのが見えた。

まおう「わぁ人間がいっぱいです!」

勇者「あんまりそういう言い方は止めろよ。疑いを掛けられた上に面倒なことになる」

まおう「はーい」

勇者「さてどうすっかな……今夜はここで止まるとして、また買い物で時間を潰すか」

まおう「勇者さま勇者さま! また何か買ってくれますか!」

勇者「ふっふっふ残念だがまおう。長期的にお前と付き合う事が確定した以上、俺の資金も無駄に使う事が出来なくなったんだよ」

まおう「ふぇー!!」

勇者「そういうこった。下手にねだっても今度はそう簡単に買ったりしないと覚えておけよ」

まおう「むぅ……」

まおう「わぁ人間がいっぱいです!」

勇者「あんまりそういう言い方は止めろよ。疑いを掛けられた上に面倒なことになる」

まおう「はーい」

勇者「さてどうすっかな……今夜はここで止まるとして、また買い物で時間を潰すか」

まおう「勇者さま勇者さま! また何か買ってくれますか!」

勇者「ふっふっふ残念だがまおう。長期的にお前と付き合う事が確定した以上、俺の資金も無駄に使う事が出来なくなったんだよ」

まおう「ふぇー!!」

勇者「そういうこった。下手にねだっても今度はそう簡単に買ったりしないと覚えておけよ」

まおう「むぅ……」

火山の国 マーケット

まおう「あ、あの商人さんブラッディホースに乗ってますー」

勇者「何ってんだそれは魔物……あれ、マジだ」

 確かにあの血色をした馬は、魔王が口にした名前の魔物だった。

勇者「しかしいくら魔王が死んだからって、こうも早く魔物調教が浸透するもんなのか?」

まおう「調教って、従わせるって事ですよね」

勇者「珍しく間違っていない」

まおう「じゃあ私も調教されたんですね」

勇者「もう人前で喋れなくするぞこのガキ」

まおう「えぇー何かまた変な事あ痛たたたたた」

勇者「いいから黙ってろ」
まおう「うぇぇ……」

勇者「しかし本当に大人しい魔物だらけだな……さすがに翼竜クラスはいないけど、番犬とか乗用の魔物ならごろごろ居やがる」

まおう「でもみんな喋ったりしないですね」

勇者「お前の側近は特に高レベルだったせいだ。普通の魔物は攻撃力とか、集団での戦闘力とかを高めるために、言語やコミュニケーション能力を元から取り除かれている種族が多い」

まおう「……それって、なんだか悲しいです」

勇者「……しょうがねえよ。俺だってここまで人間性が破たんしなきゃ、生きてられなかったんだからな」

まおう「苦労……されたんですね」

勇者「今さら理解されてもな……」

まおう「勇者さまは頑張りましたよ」

勇者「……そうか」

 マーケットの曲がり角

勇者「ここから先が大洋の国か……こっちだと南の方角にずれちまうけど、海路を前提にすれば結構な時間短縮になるし……」

まおう「こっちの看板には平野の国って書いてありますよ勇者さま」

勇者「あっちにいくならそれこそ馬が欲しいが、魔物が結構強いうえに休憩できる場所が無い……。あぁ、道は開かれてるのにどこへ行っても似たようなリスクってどういう事だよ」

まおう「でも勇者さまの力ならどこでも」

勇者「バカ野郎、お前しかいないならそこまで必死になるのもアホらしい。もう少し楽な方法を考えさせろ」

まおう「ゆ、勇者さま……?」

勇者「あーあ……おっぱいの生きがいもないし、旅行程度にここまで出て来たと思ったら、面倒な奴を連れて面倒な手段で帰らなきゃいけなくなるし……」

まおう「…………」

勇者「なんだよその目は」

まおう「な、何でもありません……」

勇者「何が悲しくてこんなつるp……」

 たゆんたゆんたゆん

勇者「な……なんじゃありゃ……!」

勇者「な……なんじゃありゃ……!」

まおう「あわわ勇者さま急に走り出して何処に行くんですか!」

勇者「そこのおっぱいが見えんのかちんちくりん!」

まおう「え、ええっ!?」

勇者「ヴぉーすげー……」

 露店の垂れ幕に隠れて、道を歩く一人の女性に目を光らせる。白いローブ系の布を纏っているが、明らかに胸部のふくらみを隠しきれていない。

勇者「やっぱり隠そうとして隠しきれてないのがポイントだよなぁ……踊り子みたいなあざといのは好かん」

まおう「むぅ……勇者さまはやっぱりああいうのが好きなのです?」

勇者「愚問も愚問。お前みたいなのには解らないだろうし理解出来ないだろうけどな」

まおう「ふん、でも勇者さまみたいな人、どーてーって言う事は知ってますよ」

勇者「は、はぁ!?」

まおう「神官様が教えてくれました。あたかも経験や知識や趣きがあるように語る人ほど、どーてーっていう肩書に属する人間だって」

勇者「あのクソ神官要らん事ばっかり教えやがって」

まおう「でもどうするのです? 声でも掛けます?」

勇者「バカか! そんなこと出来る訳ないだろ」

まおう「でも勇者さまはああいう女性とお近づきになりたいんでしょ?」

勇者「なんか今日のお前強気だな……いや確かにお前の言う通りだけど、なんというかかんというか……」

まおう「好きなんですか? 苦手なんですか?」

勇者「どっちもだよ! ったく、生意気に俺を問い質しやがって!」

まおう「私だって勇者さまに好きって言ってほしいんです! だから勇者さまの好みは知りたいんです!!」

勇者「えぇ……」

?「あ、あの、すみません」

勇者「あはい……ぃぃえ!?」

俺が振り返ると、そこには先ほどまで遠目に見ていた巨乳の女性が、手の触れる距離まで近づいていた。

?「あの、今おっしゃっていたこと本当ですか?」

勇者「なんの事を……」

?「誤魔化す気なのですね……ちょっとこっちに来てくださいな!」グイッ

勇者「ああおい!」

まおう「ああぁっ!! 勇者さま勝手に持って言っちゃダメぇ―――!」

 ―――……

勇者「それであのー……俺を喫茶店に押し込んで何の用でしょうか」

まおう「勇者さま言葉づかいが変……」

勇者「」 >太ももをつねる

まおう「」(痛い痛い痛い痛い!)

?「すみません……こういう時は路地裏に押し込んで胸ぐらをつかむのが正攻法って聞いたんですが」

勇者「そりゃカツアゲをする時じゃ……」

?「私にはそんなこと出来ないので、ここにお誘いしたまでです。本当にすみません」

まおう「お誘いじゃなくて勝手に引き込んできたんじゃ……ぃたい痛い痛い!」

勇者「」 >脇腹をつねる

勇者「」 >脇腹をつねる

エルフ「あ、自己紹介がまだでしたね。私はエルフって言います。よろしくお願いします」

勇者「俺は勇者。こっちは……俺の姪です」

エルフ「こちらは姪さんだったんですか。どうぞ、よろしくお願いします」

まおう「…………」

勇者「それで、エルフさんは俺に何の用で?」

エルフ「それが……失礼ながら、先ほどのあなた方の会話を盗み聞きさせてもらいました。あなたはその……やっぱり勇者なのですか?」

勇者「ゆ、勇者ですけど……そんな大したものでもなくてですね、へ、へへ……」

まおう「(目じりが垂れ下がってる……)」

エルフ「やっぱり! たずねておいて失礼ですが、大事なお願いを受けてはくれませんか」

勇者「ほう、お願いとな」

エルフ「それが……ここ最近、私狙われているんです」

勇者「どうしてまた」

エルフ「相手の見当は……よくついていません。ただ確実に私を追い回してくるんです」

勇者「一応聞いておきますが、あなたは人間ですか?」

エルフ「はえっ?」

勇者「いや、昨今は魔物と共存できる世界になりつつあるようですし。それに……さっきから変な魔力がこちらの方に流れてきていますから……」

エルフ「……やっぱり勇者さまには隠せませんね。そうです。私は人間ではありません。ここから遠く離れた場所、妖精の国に住んでいたエルフです」

まおう「こういう風に書かれると違和感ですね」

勇者「お前は何を言ってるんだ」

エルフ「事情を全てお話しする事は出来ませんが、私はかろうじてここまで逃れて来ました。
    それでももう山河に身を隠すには危険すぎて、人波の中へ埋もれる事を選んだのですが……」

勇者「それでも追手が来るのを感じるのか」

エルフ「はい……私、能力はエルフなので、そのあたりは敏感に察知できるんです」

勇者「へぇー……それで、限界を感じたから俺に助けを求めたという訳ですか」

エルフ「勇者さまならきっと……いえ、本当は少しだけ疑っていて、さっきまで正体を隠していましたね。
     本来なら誠意を示すべく最初から名乗るべきでしたが……それが出来ずごめんなさい」

勇者「いえいえ、お気になさらず。それで俺たちは何をすればいいのですか?」

まおう「……私と勇者さまの故郷に帰る旅が……」

勇者「シーッ、これは人助けだ」

まおう「人じゃないですし……ですし……」

エルフ「私の故郷は妖精の国です。そこに、どうにかして帰れればと」

勇者「あはっ、そうですかそうですか。それならちょうど良いです。俺達自分の国に帰る為にもっと遠いところへと行かなきゃいけないのですから」

まおう「ええっ!?」

エルフ「本当ですか! 嬉しいです……! まさかこの国でこんな出会いがあるなんて……本当に、本当に感激です、ありがとうございます!」

勇者「いぇへへ……こちらも得してますんで」

まおう「(声まで緩んできてる……んもう)」

エルフ「今夜はこちらで泊まられるのですか?」

勇者「そのつもり……だったけど、こっそり出るなら深夜に出た方が良いでしょう。
    ここは交易の場でもあるので閉門される事はあまりないですし、人通りは止まりません。
    そのかわり衛兵がずっと監視しているのですが……ここの警備員と接触するのに問題はありますか?」

エルフ「問題が無いわけじゃないですが、おそらく敵は一部なので、その場で判断すれば間に合うものだと思います」

勇者「よしじゃあ決まりだ。今から宿を取って休憩し、夜に妖精の国へ向けて出発だ」

まおう「……はーい」

 マーケットから程近い宿

勇者「俺は新しく必要になったアイテムを買いに行く。2人はこの部屋に居てくれ。姪、何かあったらお前がエルフさんを守るんだぞ」

まおう「えー私もついてく!」

勇者「わがまま言うな。じゃ後よろしく」バタム

まおう「…………」

エルフ「…………」

まおう「一体何のつもりですか?」
エルフ「えっ、私が……ですか?」

まおう「私、ちょっと人間以外に繋がりが多いので知ってますけど、妖精の国ってここからそこそこ離れていますよね。
     なんでここまで来れた人が、1人じゃ帰れなくなっているんですか」

エルフ「お2人の旅を邪魔してしまったのは……本当に心から申し訳ないと思っています。それにここから1人で国まで帰れない訳じゃありません」

まおう「じゃあどうして!」

エルフ「……ごめんなさい。これもはっきり言えませんが、私1人じゃ帰れないんです」

まおう「はっきり言わないばっかりでこっちがストレスたまるですよ! 本当はどうなるんですか」

エルフ「…………私は」

まおう「むむむ…………」

エルフ「私が…………殺されます」

 マーケットの中

勇者「ふんふふーふふー♪ あんな可愛い人に声を掛けられた上に頼られちゃうなんて、
   俺も隅におけねえな……一気にこの旅の楽しみが増えて来たぜ」

 両手に露店が並ぶ通りを鼻歌交じりに進む。

勇者「ここであの人と仲良くなれば、もう魔法使いの事でくよくよする事なんてなくなるぞ。ふっふふーんふーふふー……ふっ!?」

賢者「…………」

勇者「け、賢者! お前こんな所で何やってんだよ!」

賢者「あ、勇者じゃないですか」

 誰も近寄らないような路肩の店で亡霊のように座り込んでいたのは、間違いなく元俺のパーティメンバーである賢者だった。
 本当は20歳半ばの男であるはずなのに、整えていない髪と無精ひげのせいで非常にだらしなく見える。
 そんな見た目なので今さら間違えたりはしない。

賢者「あなたこそ何を」

勇者「まぁちょっと、色々用事が重なってだな……そうだ、こんな所で話すのもなんだ。昼飯は食ったか?」

賢者「いえ」

勇者「ベーグルの2,3個くらいは奢ってやるよ。ほらあの店に入ろうぜ」

 軽食店 店内

勇者「賢者は機械の国に帰ったんじゃなかったのか」

賢者「あそこには私の欲しいものはありませんし、余計に忙しくなるだけです。
    こっちの方へ逃げて来たと言うのが正しいかな。勇者さんこそ何故」

勇者「あぁ……勇者として、最後の仕事をこなすつもりだったんだが。でも本国へ帰るって予定は変わらないよ」

賢者「そうですか」

勇者「…………」

賢者「あむっ」

 賢者は俺のパーティに加わるのが1番遅かった。
旅も終盤という時に戦力補強のため雇ったのだ。しかし雇い金額が半端じゃなかっただけで、実際の戦力はほとんど無きに等しかった。
しかも魔王が死んだあと、別れ言葉も告げずパーティを最初に離れたのもこいつだ。

賢者「それにしても、どうして僕なんかに声を」

 そう。本当なら声を掛ける筋合いが無いどころか、闇討ちをしたっていいくらい――は言い過ぎだ。

勇者「賢者に聞きたい事があってだな」

 こいつは情報の取り扱いについては突き抜けていた。

勇者「魔王が死んでから世界は変わった。だが人々が望むような平和ではなく、
    余計に不安定な状況へと陥っている……という俺の見解は間違ってないよな」

賢者「……まぁそうでしょう。この世界には、私たち人類が測れるような終わりはありません。
    だから、今回解決したのは魔王の支配、という事だけです」

勇者「それと人間が魔物と一緒に暮らすようになりかけている事に関係はあるのか?」

賢者「関係も何も……魔物は魔王の手下だったわけです。
    その手下を、今度は人間が従えるようになっただけ。自然な事ですよ」

勇者「いや違うだろ。普通の犬とヘルハウンドを手なずけるのは訳が違う。
    水と油の関係なんてもんじゃねえ。それこそ魔学的に相容れない関係であるはずだ」

賢者「……魔学は敵を作りません。出来るとしたら、それを使う人間と魔族同士です。
   人間は魔王が占有していた世界のエネルギーを手にし始めています。
   そのパワーバランスがこちらに傾き始めたのが最近です。
   習慣的に魔物と関わるのはまだ禁忌とされていますが、
   この国の様に多種多様な事柄が動く場所では、既に魔物が市民権を獲得していると言えましょう」

勇者「だから荒野の国にはまだ魔物がいなかったのか」

賢者「あそこは退魔鉄筋の壁が厄介ですから文化も浸透しないでしょう。その兆候こそあるようですが」

 しばらくの沈黙。客の声以外は、2人の咀嚼する音しか聞こえない。

勇者「お前はこの先……どうなると思うんだ」

賢者「私は分類上賢者と呼ばれているだけで、あなたも知るとおり魔法も使えなければ予知も出来ません。
    ……ですが、今の様な状況はしばらく続くでしょう」

勇者「その先に有るものは」

賢者「……繰り返す歴史ですかね。結局魔王と呼ばれるものが現われるか、人を支配する強力な人が現われるか。
    如何せん私たちは個人の力が強いですから、話し合いによる世界の調停は無理でしょう」

勇者「……もし」

賢者「なんです」

勇者「もし……俺たちの身体は一刺しで動かなくなったり、魔法が使えなかったりしたら……賢者ならどうなったと思う」

賢者「荒目に見れば変わり映えしないでしょう。……ただもう少し、ほんの少しだけ、世界は安定しているように見えたかもしれません」

 再び宿

まおう「あ、勇者さまお帰りなさい」

エルフ「お帰りなさいませ。結構手のかかる買い物だったのですか?」

勇者「ま、まあな……それにちょっと、今後のために人の話を聞いていたみたいな」

まおう「まーた別の女の子について言ったりしてないですよね……」

勇者「してねーよ、ったく……そんなの俺の勝手だっての。姪もエルフさんも風呂に入ったの?」

まおう「はい、言われた通り2人で」

勇者「別にそこは指定してないが」

エルフ「きゃっ」

勇者「なに顔赤くしてるんですか」

 その日の晩

勇者「エルフさん、1つだけ確認する事があります。妖精の国はここからそこそこ離れてるから、
    中継のために渓谷の国に向かいます。異存ありますか?」

エルフ「私と一緒に国へ行ってくれるなら、何も。勇者さまの言う通りにするまでです」

勇者「ははっ……そこまで言われると逆に恐れ入っちゃうな。おい姪、準備できたか」

まおう「……いーですよー……」

勇者「お前なぁ、自分本位もいい加減にしろよ。元の身分が高かったくらいで」

エルフ「あの、やっぱりすみません……」

勇者「ああエルフさんは……姪、ちょっと来いよ」

まおう「やだ! べーっ!」

 タッタッタッ……

エルフ「怒らせてしまったんでしょうか……」

勇者「いつもの事です。もし帰ってこないようだったら置いていきましょう」

エルフ「姪っ子さんを置いていくんですか!?」

勇者「あ、いや、まぁ姪とは言ったけど……」

男「おい、ここを開けなさい!」ドンドン

勇者「――! エルフさん、ベッドの下に」

エルフ「え、ええ」

男2「突入ッ!!」

勇者「うぉいまだ待ってくれよ!」

 俺のツッコみもむなしくあっという間に部屋の中へ5,6人の兵士が入ってきた。
エルフは自分の身体を上手く隙間には冷めなかったらしく、諦めて兵士たちの前に姿をさらした。

勇者「このパターン見たことあるぞ」

騎士団長「君は何を言っているのかね? それより……これがまず強制捜査の礼状だ。不正な侵入でない事をまず知っておいていただきたい」

勇者「挨拶なしに人のプライベートルームに入り込んだ時点で不正も何もあるか」

騎士団長「国には国の正義があり、また法律があるのです。ここに居る以上はそれに従っていただきますよ」

勇者「……ま、言ってることは正しいか。それに話せない相手じゃないみたいだし」

エルフ「ゆ、勇者さま……」

勇者「(震える手で俺の体に触れてくるエルフかわいい! 振り返って抱きしめたい!)」

騎士団長「令状を読み上げましょう。
       3日前からこの街中で、未認可の種族が動き回っている痕跡が多数発見されました。
       我々はそれを検査しながらパトロールをしていたのですが、先ほどこの宿のあたりで強い反応を検知しましてね」


勇者「(エルフさん、俺が部屋を出たあとに外へ行きましたか?)」

エルフ「(勇者さまの命令は破ってません)」

 ……とすると、今さっき部屋を出ていったまおうの奴がヘマをしたか、痕跡だけ残して行ったのか。
もしくはエルフを目の敵にしてわざと……。

勇者「あのクソが……」

騎士団長「都合の悪そうな顔ですね。調べさせていただきます。抵抗は許しませんよ」

勇者「その前に1つだけ約束していただきたい」

騎士団長「何でしょう」

勇者「乱暴はするな」

騎士団長「名誉にかけて」

 ―――……

騎士団長「なんと……あなたはあの勇者様で有りましたか。これはとんだ失礼を」

勇者「いや良いよ。慣れてるし」

騎士団長・勇者「(……ただ問題は)」

兵士「……団長、反応がありました」

エルフ「…………」ぶるぶる

兵士2「この者は、ハーフエルフのようです」

勇者「なっ!?」

騎士団長「やはり妖精の国から指名手配が出ていたハーフエルフだったか。命令発効、即時逮捕だ」

エルフ「…………」

問2)「どんより」を使って短文を作りなさい。 答え:うどんよりそばが好きだ。

勇者「どういう事ですかエルフさん!」

エルフ「これは……やっぱり、あなたに最後まで嘘をついていた天罰かもしれません」

勇者「勝手に決めないでください! こうなったら俺がテメェらを片付けて――」ジャキッ

エルフ「ダメですッ! こうなった以上、私のせいで……あなた達の旅を……
     あの方の娘さんとの旅を、滅茶苦茶にはしたくありませんから……」

 まおうの事を、姪ではなく、あの方の娘――彼女はもう知っているのか。

勇者「待ってくれ団長」

騎士団長「勇者様、これは私達の仕事であり義務です。たとえ魔王を討ったとされるあなたの願いでも、この場では優先されませんよ」

勇者「俺が聞いているのはそういう事じゃない。なぜ逮捕するかだ。いいか、何 で 逮 捕 な ん だ ?」

騎士団長「……そうですか。引き渡し先は妖精の国となっていますが、執行元は異なります。それが私たちの雇い主。これ以上は契約に反します」

勇者「どうも……」

騎士団長「それでは失礼します」

 ヒンジの緩んだ扉が占められる寸前、エルフは一瞬だけこちらへ振り返った。

エルフ『勇者さま……』

 ふくよかな唇を動かし、そう呼んだ気がした。

 ―――……

勇者「さぁてと。あのクソッタレを呼び出すか」

 大きく息を吸い込んで、ペンダントとして首に掛けられた石に向かい叫ぶ。

勇者「クソまおう今どこに居やがんだゴラアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 ……返事が無い。

勇者「あのバカ一体どこに隠れて居やがるんだ」

 ドタドタドタドタ……!

騎士団長「勇者様ァ!?」バタン

勇者「お、おう。なんだよ」

問4)「まさか

騎士団長「あれ? ずっとここにいましたか?」

勇者「そうだが」

騎士団長「おかしい……あのハーフエルフを連行中に、突然近くから勇者様の声が聞こえたので、
       あなたの報復が来たのかと思ったんですが……」

勇者「全然本人が現われないからここまで来たっていう訳か。そりゃ出ないよな、ずっとここに居たし」

騎士団長「そうなります。もしかしたら勇者様を騙るような不届き者が……? いやとにかくすみません、お騒がせしました」

勇者「そりゃどうも」

 バタム

勇者「なるほどそういう事か……。
今は何故かエルフの手元に、まおうが持っているはずの石があるんだ。だから彼女の近くから俺の声が聞こえ、騎士団の奴らが慌てたと……」

 自然に口元が吊り上る。

勇者「……泳がせるか」

 深夜2時過ぎ。エルフの所在が一定の位置に止まったことを確認してから、他の兵士たちに感づかれないよう宿を出る。

勇者「東のふもとから動かないな……ここで待たされているのか、または勾留所があるか、どちらにせよまだ手の届く場所に居るのは確かだ」

だ手の届く場所に居るのは確かだ」

 久しぶりの単独行動がものすごく楽に思える。本当だったまおうを引き連れて、のこのこと潜入しなきゃいけないところだが……

勇者「この辺で防壁方陣を突破できる転送術が使えるのは俺くらいしかいないだろうな」

 街の門から出て少し降りた山肌のくぼみに立ち、呪文と消費アイテムを使って目標の場所へと飛んだ。

 ――ヴゥゥンッ!! ……ガッ

火山国公爵「ウェールカーム、元勇者殿。ブービートラップに引っかかる気分はどうだい」

勇者「クソッ! 身体が……動かねえ……! どういう事だこの野郎!」

火山国公爵「不法侵入者に言われる筋合いはないですねえ。例えあなたがあの勇者であったとしてもね。
 騎士団長から巡視の明細な報告を受けて感づいていたのだよ。この処置は、きっとあなたがハーフエルフを取り返しに来ると思ってね」

勇者「あのバカ騎士団長、正直に全部報告しやがったな……仕事真面目なのはいいがもうちょっと頭回らなかったのかよ」

火山国公爵「ほっほっほぉ、高い金を払って雇った甲斐があったものです。立派な忠誠心という商品を持っている雇われ騎士団は昨今ほとんど無くなってしまいましてねぇ」

勇者「そんな事情はどうでもいいんだ。なぜエルフさんを逮捕したんだ!」

火山国公爵「理由を聞かれる筋合いはありませぬが……ヌッフ、まぁ貴方はこれから溶岩投身の刑で死ぬので教えてあげましょう」

勇者「はぁ!? 俺が何したってんだ、方も糞もねえぞここは」

火山国公爵「手配犯を匿うことに罪が無いとでも思ったのですか。どこの田舎から出来たのでしょう。とても勇者であるとは信じがたいですね」

勇者「くっ……」
まずい、このブービートラップは俺の魔力をそのまま利用してやがる。こっちから飛んできたのを良い事に、俺が完全に不利な状態で固定されている。
 ここからの起死回生は……正直絶望的だ。

まおうちゃんの参考画像を・・・は・・やく

あ、保守していただければ手前で描きます

保守保守

はよう

あげげげ

はよ

火山国公爵「……と、その前に本人をここに呼びましょうか。おい、ハーフエルフをこちらへ」

使い「はっ」

 ガラガラゴロ

エルフ「……! ……っ!」

勇者「おい! 何も口を塞ぐこったねぇだろ! それに体までしっかり縛りやがって……!」

火山国公爵「通信手段を持っている可能性があったので、しょうがない処置と言えましょう」

 こいつ……恐ろしいほどに先見の明が鋭い。やはり普通の人間では無い。
騎士団の雇い主と言う事は、この国の元首かそれにほど近い位の野郎だ。
何となく名前で解るがそこは気にしない方が良いらしい。

火山国公爵「君はこいつがどうなるか気になると。フゥム、私がどうするのか気になると、フフン。
         私はね、君がなぜこの子を取り返そうと思ったのかが気になるのだよ」

勇者「回りくどい言い方だなオッサン……そりゃ、血で差別されて投獄された上に、
    どこかへ連行されそうになっている連れを放っておける訳ないだろうが!」

火山国公爵「仮に君を無罪放免としたら、どうする?」

勇者「門前でUターンした上でテメェのやけに開いた額に焼印いれてやる」

火山国公爵「なるほどなるほど……要するに、君はこの子の事が大切、ないしは好きだと言う事だ。
        まぁ気持ちは分かるよ? だが良い事を教えてやろう」

勇者「いちいち喋り方が気持ち悪いんだよ……」

火山国公爵「エルフは元々妖精の国を一生出ない、同時に他の血を受け入れない、正に血を交えない種族だ。
        それゆえ人間と交わり生まれてしまったハーフエルフは、自ずと人間の世界で生きるためにエルフの血を抑え込み、
        人間の特徴を出そうと遺伝子が活性化する……この男が見たら盲目に種付けしたくなるような容姿になるのはその為だよ。
        君もこの豊満な胸と、むちむちな下半身に惹かれたのではあるまいか」

勇者「だっ、なっ、なに言ってんだテメェ!」

火山国公爵「若いな小僧……それに経験もなさそうだ。私はそんな奴に屈辱を与えるのが大好きなのだ。
        もちろん経験のない女を貶めるのはもっと好きだ……売女や召使は好かん……
        奴らは全てを受け入れたり、身を守るために従順になっている。
        だが本意ではない相手に処女を奪われそうになっている様子は良いぞぉ……最高の表情をしている。
        この世の終わりを映すような目とは対照的に、体の示す反応に驚く口元……ふふふ、今夜も楽しめそうだ」

エルフ「んー! んーっ!!」

バサッ

火山国公爵「見えるか勇者――いや小僧。これが女の胸だ。おっと……こいつはやけにでかい乳輪だな。これを見るのは初めてか?」

 初めてじゃない。初めて見たのは、狩人人抱かれていた魔法使いの胸だった。

勇者「何考えてんだ俺は」

エルフ「ふぅー! ……ぅうぅっ……」

火山国公爵「そうだその涙だ。抑えようとして漏らす声も最高だぞ。ああ明日妖精の国へ引き渡すのはもったいない……
        抵抗しなくなるまで私の枕元に置きたいほどだ。素晴らしい……素晴らしいぞ君は……」

勇者「ふざっ……けるな……」

火山国公爵「おっと。君が魔力を多く放射すれば、動きを封じている方陣は自動的に強くなるぞ。
        ほらもう言葉も口に出来なくなってるではないか」

勇者「っか……ぐ……」

火山国公爵「ではまずこの肉厚な唇を頂こうか……フフ、その前にこの邪魔な棒を外さないとな」

エルフ「――っぷは、まおう様――――――ッ!!!」

火山国公爵「なっ、魔王だと……?」

 ボウッ

勇者「(この音は!)」

 ドォォォゥゥ―――ム

火山国公爵「んぐぁああああああッ!!」



 勾留所から2キロ離れた場所

まおう「勇者さまもエルフさんもどこに……もしかして本当に2人で国に……ふえぇ……」

 ピキーン

まおう「はっ、錬成した魔法石が起爆した! 場所は……近い――けど私が走るには遠い! 急がないと!」

 そして爆破された現場

火山国公爵「ヌゥゥ……畜生が……小型ではあったろうが、こんな威力を持つ魔法石を肌に持っていたとは……
        私をこんな目にせしめた罪……地獄の業火よりも熱く激しいぞ……!」

エルフ「勇者さま! 勇者さまぁッ!!」

勇者「エルフ! 縄がほどけてる、その隙に逃げろ! 畜生俺の術はまだ解けねえのか……!」

代わりに勇者掘られろ!

 そして爆破された現場

火山国公爵「ヌゥゥ……畜生が……小型ではあったろうが、こんな威力を持つ魔法石を肌に持っていたとは……
        私をこんな目にせしめた罪……地獄の業火よりも熱く激しいぞ……!」

エルフ「勇者さま! 勇者さまぁッ!!」

勇者「エルフ! 縄がほどけてる、その隙に逃げろ! 畜生俺の術はまだ解けねえのか……!」

エルフ「(そうだ、逃げないと! でも勇者さまが……でも私も……!)」

火山国公爵「グククク……! 縄をほどく手間が省けたよ……なんせ右腕が飛んでるからなぁ……!
        片腕じゃほどけない様な結び方だったからねェ!!」

エルフ「やだっ、来ないで! 来ないでえええ!!」

>>274
そんな展開望んでない

火山国公爵「腰が抜けちゃったのかい可愛い嬢ちゃん……フッヒヒフヘヒ……
        股に力が入ってないなぁ……これで穴もゆるゆるは勘弁してほしいぞ……!」

勇者「おいエルフ! こらァ! 早く逃げろって!!」

 完全に獣化してやがった。よく見れば右の膝も変な方向に曲がっている。
よく立っていられると思う程にだ。もう体を保つことを諦め、完全に最後のともしびを散らそうとしている獣になっていた。

エルフ「ほんっ……とに……! 腰が……!」

火山国公爵「恐怖で濡れるタイプか……ハハァ……アア……ンッ……ンンンッ!!!」

エルフ「―――――――――――ッ!!」

火山国公爵「……ッカ……ア……」

まおう「はぁ……はぁ……」

 黒一色の刃が、男の背中を貫いてた。その柄を持っていたまおうは、
大きく息を切らしながらも顔を硬直させていた。

勇者「……一緒だ」

 エルフの股からはドクドクと液体があふれていた。
血か、小便か、既に絶命した男の子種か。俺は効力を失った法人の上に座り込んだまま動けなかった。

あげ

エルフ「あっ……ああ……」

まおう「はぁ……はぁ……ぁぁ……」

 まおうは死んだ男を彼女の身体から退かすと、エルフは胎児の様な格好で丸くなった。

勇者「ああ…………」

まおう「勇者さま……大丈夫ですか……」

 その場に生きている全員が憔悴した顔色だった。

まおう「勇者さま……聞こえてますか」

 ドサァッ!

勇者「どこで何してやがった!! お前のせいでエルフは……エルフは……」

 まおうの胸ぐらを力加減無しに掴み声を上げる。
 こいつが勝手に外へ飛び出さなければ、エルフは男に貫かれる事はなかった。

ヒントおっぱい

えええ流石に犯されてませんよ、とか言うんじゃないの

まおう「あっ……ぐ…………」

勇者「お前……ずっとエルフを目の敵にしていたよな。エルフと一緒にいくって事は、
    お前が好き勝手したい旅の阻害になるとでも考えたんだろ……こいつさえ消えれば、また自分勝手に俺を使えると……!
    そんな事を考えて!!」

まおう「あ――あぐっ――……っぐ……」

エルフ「ゆう……しゃさま……まおう様が、窒息してしまいます……」

勇者「被害を受けたのはお前だぞ! 俺が代わりに殺してやるよ!!」

エルフ「目を覚ましてください勇者さま!!!」

 その一声で、俺の耳からすべての音が遠ざかった。
ずっと背後の方へと消え、やがて一点に主室してしまうように、しばらくは何も聞こえなかった。

おい



おい

スクリプトたん多すぎワロエナイ

まおう「っぐ……はぁ……ぅあ……」

勇者「だぁ……はぁ……」

エルフ「まおう様は何も悪くありません……私に、この魔法石を持たせてくれたのが何よりの証拠です」

勇者「それが……何の証拠に……」

エルフ「私がハーフエルフである事……それと、1人で妖精の国へ帰れば、
     異端者として捕えられ殺される事は、もう彼女に伝えてあるんです。
     だから危険が及ばないように、この魔法石を預けてくれたんです」

勇者「でも……まおうが勝手に外へ出ていったのは一体……」

エルフ「それは私にも……それに彼女も、深い事は考えていなかったはずです……」

まおう「…………」

勇者「だからって……どうして、こんな事に……」

エルフ「でも……勇者さま」

救済措置ワンチャン

勇者「あ……?」

エルフ「私、入れられてませんよ……?」

勇者「だってその血……それに精……」

エルフ「血は……この男の傷口から……あとこれは……どうでしょう、触れていないけど、出ちゃったものなのですかね……?」

勇者「は……はぁ……」

 全身からありとあらゆる力が抜けた。もう出来る事ならこのまま気絶しようと思ったその時――

なんで石が爆発したのか知らんが、まおうが意図的にやった訳じゃないみたいだし、エルフ犯されそうな危機を感じて爆発したんなら
それ以前にされてたなら既に爆発してないとおかしくね?

>>322 まあ気にすんなよ

まおう「うっ……うえぇ……」

勇者「ま、まおう……?」

まおう「私……そんなつもりじゃなかったのに……
    ただ勇者さまを取られるのが怖くて……ちょっとやきもち焼いただけなのに……」

勇者「はは……急になんだよ……」

まおう「いっ……いぐだだんでもひどずぎまずぅ……」

勇者「ああ……あぁぁ……その、なんだ……」

エルフ「勇者さま、ちゃんと言ってあげないと」

しかし読者は勇者とのHがなければ処女だろうと非少女だろうがあんまし関係ないと気付くのだった

>>332
記号論的解釈によるとお前は勇者の行為もしくは思考を理解できないから不安な状態になっていて
この不安を解消するために相手に問題がある相手が悪いという
極めて単純な理由で他者への理解を放棄している
お前は無能であったとしてももっと他者に歩み寄るべきだ
そうでないなら自分の思い込みのみしか肯定できずにこれでは何も発展性がない
日本の某文学者に言わせれば「バカ」な存在だよお前

勇者「そのー……ごめん、いくら何でもやりすぎた」

まおう「謝っても許してあげません!!」

勇者「はぁ? じゃあどうすりゃ……」ガバッ

まおう「うっ……うぁぁ―――っ!!」

 魔王は俺の懐へ身を投げるようにして飛び込んでくると、
そのまま1時間近く延々と泣き続けた末に、声が止まったと思ったら完璧に寝入ってしまった。

しぇんはよ

犯されて中だしされたのに入れられてないなんて嘘ついちゃうエルフちゃんマジ可愛い

>>336 そういう展開言っちゃうのか

 翌日の朝 勾留所からしばらく離れた川のほとり

勇者「はぁー……やっと血の匂い取れたぞ。久しぶりだと敏感なせいか本当に取れねえな……」

エルフ「まおう様ー、勇者さまー、朝ごはん出来ましたよー」

まおう「わ、これはなんです?」

エルフ「ここの川で獲れた魚と、米木の実の蒸し物です。はるか東方の和食スタイルに近いですね」

勇者「へー、この木の実って蒸せば中身食えるんだ。これは知らなかったなぁ」

まおう「もぐもごもぐもぐ……ぷはーおかわり!」

エルフ「あららもうおかわりですか? 米木の実はちょっと時間かかりますけど……」

まおう「待ってます!」

勇者「即答だなおい……と言う事で俺のも頼みます」

 朝日を浴びながらの食後、まおうは素っ裸で川の中に飛び込んでいる。流れは緩いから流される事はないだろう。

勇者「あの……さ、ちょっと聞きにくい事なんだけどいいかな?」

エルフ「なんですか?」

勇者「その…………本当に、あの野郎に入れられなかったんだよね」

エルフ「んー……そうですねぇ」

 エルフはしばらく考えるようなポーズを取りながら体を左右に揺らした。

勇者「どうなんだって」

エルフ「じゃあ……今晩、確かめてみます?」



//This capter is "The volcanic prison".
//End of log.
//Automatic description macro "moppy" is completed this chapter.
//This story still continues. Please wait.

――渓谷の国――

勇者「おー、ここも久しぶりだな」

エルフ「勇者さまは魔王討伐の時もこの谷へ?」

勇者「まぁ一番楽に魔城まで行こうとしたら、ここを経由するルートが良かったものだから」

まおう「えー、こっちは妖精の国行くための道じゃなかったのですー?」

勇者「静かにしてろまおう。目的がある以上ルートはいつでも変わるものだ」

まおう「もっともらしい言い方したってぇ……はぁあ、勇者さまは手も繋いでくれないしつまんない」

勇者「まるで俺が悪いみたいな言い方だな」

エルフ「良いじゃないですか、親子みたいで怪しまれないかもしれないですよ」

まおう「私そんなに子供じゃなぁいー!!」

エルフ「そうですか。じゃあ私は勇者さまと繋いじゃいますからねっ」

勇者「お、おいエルフ……ふふ……」

まおう「むがぁー! もう許さない背中を貸せー! 背中に食らいついてやるー!」

勇者「うぉい荷物背負ってんだから乗っかるのだけはやめろって! おい、頼むからうああっ!!」

エルフ「……キレーに後ろへ転びましたね」

衛兵「何やってるんですかあなたがた……」

 渓谷の谷 中心部

まおう「ここはどういうとこなの?」

勇者「うーん……ここは割と説明しにくい所なんだけどなぁ……
   渓谷ってな、自然のエネルギーに分が多くていろんな要素が安定しているんだよ。
   だから棲んでいるのも魔物と言うよりは動物扱いだし、国を治めるのは住人が作る小さな議会だけ。
   要するに自由な場所って事だ」

エルフ「確かにものすごく素子の力が安定しています。これだけ整っていると、多分勝手に魔法を使っても発動できないでしょうね」

まおう「そうなのです?」

勇者「加減の問題だ。魔力があまりに整っていたり荒んでいたりしたら、その法則を自分で操る事が出来なくなる。
   ここは自然の力で作用している訳だから、結果的にいろんなものが安定しているのさ」

そんな馬鹿な

まおう「じゃあ思いっきり走って転んでも――ばびゅーん!」ズシャー

勇者「さ、あのバカ放っておいて行こうか」

まおう「ああんツッコみだったんです本当です!」

勇者「お前は時々演技なのか本当なのか判らん」

まおう「褒められても困りますよぉ」

勇者「こいつここの木に縛り付けときましょうか」

まおう「いーやーでーすー! あっ、待って待って」

エルフ「あはは……」

 中心部の商業集落

勇者「さて例のごとく必要なアイテムを集めるわけですが」

エルフ「頼まれれば私が行きますよ」

まおう「えー私もお買いものいくのー!」

エルフ「じゃあ私は勇者さまと一緒にお宿を探しに」

まおう「うあー! さっきと言ってること違うじゃないですかー!
    そんな事になるなら今の内から無理やり私が連れていきまっすっ!」

勇者「そっか、悪いな。俺ちょっと行きたいところがあるし、せっかくだから任せるよ」

エルフ「任されましたー」

45分だけ寝る

386 はスクリプト


 集落内にあるとある喫茶店

勇者「ここも本当に懐かしいなぁ……そういえばここで、あいつと一緒に抹茶を飲みながら、ベランダの向こうから見える景色を眺めていたっけ」

店主「いらっしゃいませ」

勇者「うわ、何ひとつ変わってないメニュー」

店主「それでもう15年目ですよ」

勇者「ご苦労様です」

 陽光が洩れて照らす店内のカウンターに肘をかけ、冷たい抹茶が出てくるのを待つ。

女戦士「マスター、私にも抹茶を一つ。冷たい方でよろしくね」

店主「あいよ。ちょい待っててね」

勇者「…………」

女戦士「…………よっ」

勇者「……何か滑らかに登場しておいてそのままだから反応していいのか困ったぞ」

女戦士「久しぶりだっていうのに冷たいな勇者は」

勇者「俺がそんな対人スキル高くないの知った上でのあいさつだったろ今のは。ったく本当に……」

女戦士「昔のお前だったら笑顔で普通の返事をしているはずだったんだが」

勇者「そのくせ挨拶した相手の顔も覚えてないんだよなぁその不届きな勇者は」

女戦士「……ぷっ」

勇者「……へへっ」

 こいつは俺の元パーティメンバーである女戦士。体も性格もさっぱり爽快。
あっけらかんとした性格で、それが幸いしたのかパーティの中では一番仲の良かった相手だ。

女戦士「国に戻ったんじゃないのか?」

勇者「あー……その途中なんだけどな。女戦士は前からここに住むって言ってたもんな」

女戦士「あたしこんな性格だからよく勘違いされやすいんだけど、
     人と接するのってそんなに好きじゃないんだよね。だからここで住むのは楽で心地いいよ。
     それで、なんでまた勇者はここに?」

勇者「仲間を故郷に帰してやるっていう仕事が増えたからね。ちょっとここから妖精の国へ」

女戦士「妖精の国!? あそこはあたしらとは隔絶された世界なのに」

勇者「連れがそこの住人なんだよ」

女戦士「はーん。あんたみたいなクズが、魔王死亡後にここまで働いてるとは思わなかったよ」

勇者「あんまりクズクズいうな。昔を思い出すだろ」

 ―――……
 魔王の支配は長い間この世界に存在したが、
それが人間の世界に影響を及ぼし始めたのはたった10年前のことだ。
それまで領地をまったく出なかった魔王は突然、周辺の国々に侵攻をはじめ、すぐ世界を掌握できるほどの勢力を示した。

 そこで駆り出されたのが勇者たる者たちだった。
 なにも勇者は1人ではない。生まれつきなど、どうしようもない資格要素はあったが、俺の知る限り勇者候補は10人以上存在した。

 俺はそこそこ位の高い貴族の息子だった。貴族で言う人並みの教育を受け、
教練を受け、一応人並身に離れたのかなと思った頃合いに、突然勇者候補になってみたいかと言われた。



 俺はずいぶん迷った。
最初は俺の実力が買われたと思ったが、よく思えばその時点ではなんの取り得もないただの剣士だったのだ。
先生の言う事は良く聞くが、教えられたことはほとんど頭にない。真面目と言われるが、言われたこと以外は絶対にやらない。


 長い間、自分は真面目で良い子であると本気で思っていた。
 しかし現実は違う。
 みんなは短所を持っているけど、何かしら対になる長所を持っていた。

 俺は長所が何もなかった。ただ短所を見せない事だけがやけに上手かったのだ。

 もちろん、深く付き合うようになればボロが出るのは言うまでもない。

 これは不幸と言っていいのか。
 俺のボロは、正式に勇者として任命され、パーティを引き連れて国を出たあたりからだった。

勇者「こっちの村を通って……後は真っ直ぐ行けばいいだろう」

魔法使い「でもこの桟橋の向こうは、今のわたしたちじゃかなわない敵ばかりだよ?」

斧使い「ワシだけで行く分には構わんが、ここの小粒共は集団で現われるからなぁ。サポートに回るのはきついぜ?」

勇者「じ、じゃあもっと効率を踏まえて、このルートをたどる事に……」

狩人「それ効率って言うよりサボりじゃないのか? 安全地帯をマス目に沿うように進んだって、後々レベル不足で困窮するぞ」

勇者「別に良いでしょ……その時はそこで何とか」

魔法使い「危機感足りなさすぎ。自分たちの力量をもうちょっとわきまえた方が良いよ?」

勇者「う……うぅ……」

斧使い「今のメンバーなら1匹の強い敵を地道に相手するのが得策だ。危機に陥ったらワシが本気だしゃ事たりるだろ」

狩人「その前提なら、この森と森の間が良いかもしれませんね」

魔法使い「常に可視範囲を確保しながら進む必要がありそうね。森に踏み入ったらアウェイどころか罠にはまるようなものだわ」

勇者「じ、じゃあそれで」

 こんな状況下でも周りに合わせるのだけは無駄に上手かったのを苦い思い出として覚えている。
 剣術も人並みにあったから、敵にダメージを加える程度には働く事は出来た。
 ただそれだけだった。
 勇者と言う肩書に適う、望まれるべき裁量や技術、明晰で遠大な考えなどなかった、正確には抱こうともしなかった。

 旅は傍から見れば順調だった。実際にはムードを調律していた年長者の斧使いが負傷し、
パーティを脱退たあたりから、明らかに雰囲気は悪くなっていった。


勇者「…………」
狩人「聞いたか新型の弓の話、こういう風に――」
魔法使い「へぇ、でも腕が鈍っちゃいそうだね」
踊り子「はぁーあぁ、眠い」
シーフ「……ぁ……ぶ……うん」
召喚士「シルクロードか……なかなか良いな」


 まとまりなど一切なかった。
レベルが上がったおかげか、敵が現われたらわらわらと俺たちが集り、
片を付けたらまた隊列に戻る。次の目的地へ行くまで延々とその繰り返しだった。

>>1 エルフがどの時点まで処女なのですか

女戦士「契約期間は満了時までっと……満了するまでどのくらいかかるかな?」

勇者「魔王を倒すまでだから……短くはないかな」

 この状況を打開するための方策は、普通の人だったらまとまりを作り直したり、
自分以外に指揮権を譲るなど、いくらでも打つ手はあったはずだった。

 その時の俺が一番恐れていたのは、勇者の座を降りる事だった。

 名誉はどうでもいい。
 しかしどうしても、勇者として任命してくれた国の人に背く事が出来なかったのだ。
 そんなルールが俺にまとわりついて離れなかった。

女戦士「ほいじゃよろしく! 勇者さん!」

 予感はしなかった。まとまりのなさを補てんするため、人数増やしで雇ったこの女戦士が、俺たちに大きな影響を及ぼすことなど。

女戦士「あんたどうしようもないクズだねぇ。なんでこの情報教えてくれた村人の顔も思い出せないのさ」

魔法使い「ち、ちょっと女戦士さん」

女戦士「あのねぇ、そういう事ばっかりやってると無駄にまた移動したり、話したりする羽目になるんだよ」

狩人「まぁまぁそう言わなくても」

女戦士「だって面倒でしょ? やる事を考えて、必要な分だけこなす。当たり前の事よ」

勇者「うん……」

女戦士「あ、それいつも俺が考えている事、みたいな顔色してる。
     あんたのはベクトルが真逆なのよ。面倒事を避けようとしているのは私も同じなのに」

勇者「……うん」

女戦士「うんうん言ってちゃ分らないでしょ!」

 パシィッ!

魔法使い「…………」
狩人「…………」

 決して軽くない張り手を喰らわされた。

女戦士「ほら、目ぇ覚まし。あんたのクズ具合に付き合ってたら余計に面倒だよ」

 俺の性格はこれでも治らなかった。
 いや違う。これじゃ治るものも治らないんだ。

女戦士「次は怪鳥が相手かぁ……どうなるんだろう」

 とある山岳フィールドで、俺たちは魔王の力を強く受けた怪鳥を討伐する事になった。

怪鳥「キェェェ――――ゥ!!」

 両翼20メートル以上。怪鳥と言うよりは下手な翼竜よりも貫禄のある見た目だった。

狩人「セオリー通りには行かなさそうな規格だな……みんな臨機応変に行こうぜ」

魔法使い「大丈夫、すぐ焼き鳥にしてあげるわ」

踊り子「んっふぅ……たくましい身体、すぐにメロメロにしてあげるわ鳥さん」

 戦闘が始まった。すぐに前衛の俺と女戦士が出る。
そこで敵の動きを観察し、狩人が状況を伝え、全員がそれぞれの行動を起こす。
これは女戦士がパーティに加わってから、誰が言う事もなく決まったパターンだ。

勇者「せいっ!」

女戦士「おりゃああッ!!」

 高く飛びあがり、一気に翼を切り裂こうと剣を振るう。俺の切っ先は、少し掠めただけで空振りに終わる。

女戦士「うわわっ!?」

 隣へ振り返ると、女剣士は空中で反転しながら慌てていた。
後にそれは、切り裂こうとした翼があまりにも硬かったための反動と知る。

 ここで俺は撤退を提案したが、この時点で俺には、指揮権どころか作戦に口を出す権利もなかった。
もとからそんな行動的ではないのに、サボろう、ズルしようと思う時だけ無駄に言葉が早いからだ。
皆はそれをとうの昔に察している。

狩人「でりゃッ!!」

 狩人が思い切り引いた矢は、高性能の貫徹矢に毒を塗りたくったものだった。
それは見事に怪鳥の臓器辺りを貫き、奴は墜落した。

魔法使い「やった!」

 誰もが仕留めたと思った。それを確かめるため、パーティの全員が歩きながら怪鳥に近寄った。

怪鳥「ググ……ギギェ……!」

 まだ息があった。でも慌てる者はいない。とどめを刺せば何の問題もなかったから。

女戦士「ま、ここは勇者が一発決めちゃえば?」

勇者「そう言うなら、俺がやるけど……」

 言われたからには、やるしかなかった。
俺は剣術のスキルの内、最高威力のかつ最低命中率の技で怪鳥を葬った。

怪鳥「ギエェェェ――――!!!」

 ゾワァァァッ!!

勇者「なんだっ!?」

魔法使い「羽毛が一気に……!」

 ものすごい騒音を立てながら、首を無くした怪鳥はその場でのた打ち回った。
それからわずか5秒ほど経った後、狩人が突然声を上げた。

狩人「全員伏せろッ!!」

 次の瞬間、怪鳥の羽毛が全方位に向かって飛び散った。
それは真昼間にもかかわらず、視界のほとんどを黒く染める程の量。

羽毛じゃおかしいな羽だな

 狩人が叫んだとおりに、俺たちは背中を丸め、顔を伏せて地面に向き合った。
 騒音が辺りに鳴り響く。その最中、聞こえたのだ。

踊り子「アアァァ―――ッ!!」

 誰もが耳にしていた。感の良い奴はその時点で解っていたのかもしれない。
 踊り子の装備は非常に軽装だ。身体の8割以上は素肌を晒している。

勇者「…………」

魔法使い「……うぅ……うぇ……」

 その時まで見たどんな死に様よりも残酷だった。
踊り子は、全身に羽が突き刺さった状態で絶命していた。
俺たちの身体には刺さってないから、羽の勢いはそこまで強くなかったのだろう。
 だが彼女はこの有様だった。女性の肌なら尚の事仕方がない。

狩人「……この羽には、元から毒素が付着していたみたいだ。彼女はこれで死んでしまったのだろう」

勇者「…………」

 踊り子が、俺のパーティで出た初めての死者だった。

初めの方はよかったがだんだん穴が見えてきたと言うかだれてきた感じだな
まあこれからか

死んだお( :ω:)

 俺は変わったのだろうが。誰も答えてはくれないが、パーティのみんなが俺の命令に応えてくれるという変化はあった。

女戦士「あんた、カッコよくなったよ」

勇者「……そうか?」

女戦士「何だか下町の不良みたいな態度にはなっちゃったけどね」

勇者「褒められてる気がしないな……それは」

女戦士「私の印象が変わってるなら、あんたにずっと付いてきた仲間なんて革命的だろうな」

勇者「そう……なのか?」

女戦士「ああ。試しに聞けばいいじゃないか。お前の好きな魔法使いに」

 俺は自分の部屋に魔法使いを呼び出したその時、ようやく自分の人格が変化している事に気付いた。

魔法使い「どうしたの、勇者」

勇者「ああ……俺、城を出たときから変わったか?」

魔法使い「……それはね」

 ベッドの隣に座った魔法使いは、その手を俺の右手に重ねてきた。

魔法使い「解る? ……私、こんなに熱くなってる」

勇者「……ああ、俺が火傷しそうかも」

魔法使い「…………」

 差し出された唇に、俺は自然と吸い込まれた。

魔法使い「これで、勇者も一人前だね」

勇者「な、なぁ……魔法使い」

魔法使い「ダメだよ勇者。ここから先は、私たちの目標を達成してから。ね?」

こりゃ魔法使いは首がねじ切れて死ぬな

 ―――……

女戦士「あれからは怒涛の快進撃だったねぇ」

勇者「街を2,3個飛ばして進むのも余裕だったな」

女戦士「それであっという間に荒野の街に着いたと思ったら魔王が死んじゃうんだもん。
     最初の日こそみんなで喜んだけど、あとはもう凄いばらけ方だったね」

勇者「なぁ女戦士、ひとつ聞いていいか」

女戦士「なんだい勇者くん」

勇者「魔法使いと狩人の関係はいつからだったんだ?」

女戦士「んー、私オブラートに包む言い方なんてできないから、全部はっきり言うけど良い?」

勇者「……ああ、もちろん」

女戦士「どうだろう。私がパーティに加わる頃にはもう怪しい感じだったかな。
     単純な仲間じゃないような雰囲気。それが怪鳥戦の少し前あたりに明らかな変化があったから、
     もうあの時点で2人は深い仲だったんだろうね」

勇者「……ま、やっぱりそんな所か」

女戦士「まぁ狩人はセックス上手かったから」

勇者「……は?」

あらまあ

女戦士「あれ、あんたには話してなかったけ」

勇者「え……ごめん、言ってる意味が」

女戦士「狩人は踊り子とも召喚士とも関係持ってたよ。
     私は何と言うか……流されたと言うか、慰めと言うか、したのは2回だけだけど」

勇者「へ、へー(棒)」

どこへ向かいたいんだろう

女戦士「なんつーか、あいつはやっぱり職業柄なのかな? 言いくるめるのが上手くてさ」

勇者「いやそこまで聞いてないんだけど……」

女戦士「そうだ勇者、ちょっといいか?」

勇者「何?」

 しばらくして 集落のログハウス

まおう「それでね、こっちの服の方が安いって言われたから」

勇者「経済的余裕はもう無いんだ。それに急ぎの用事まで付いてる。我慢なさい」

まおう「別に欲しがったりしてないよ!」

勇者「言ってるようなもんじゃねえか……」

エルフ「勇者さま、服の修繕はこれで良いですか?」

勇者「おう、良い感じ良い感じ。エルフは将来良いお嫁さんに慣れるだろうな」

エルフ「え、えへへ……」

まおう「おさいほー出来るようになれば、勇者さまのお嫁さんになれるの!?」

勇者「おーまーえーはー……うるさい!」
 こちょこちょこちょこちょ
まおう「あhyはyhyひゃひゃひゃ! ひゃめへ!ひゃめれふらひゃっ――ぃぃひぁぁっ!!」

 くすぐり地獄3分の刑

けど正直言って、
この人数で旅してたら別段おかしくないよな

いやおかしいけど?

まおう「はぁ……はぁ……っんあ……」

勇者「もうこれで睡眠一直線だな」

エルフ「今日も1日中歩き回っていましたから、余計にそうかもしれませんね」

勇者「エルフも疲れただろ。結構な荷物頼んじゃって悪かったな」

エルフ「いいえ、勇者さまのお役にたてるなら何でも……その、何でもしていいんですよ?」

まおう「すぴー……」

勇者「あ、あはは……わりぃちょっと出てくるわ。いつ戻れるか解らないから、先に寝てていいぞ」

 バタム

エルフ「……もう、勇者さまは」

 女戦士の自宅

勇者「おーっす」

女戦士「や、いらっしゃい」

勇者「へぇ、意外と立派な家造ったじゃん」

女戦士「あの勇者様ご一行の一味って売りだしたら
     なかなか良い仕事が大量に舞い込んできてさ。2,3件済ませたらこの通りだよ」

勇者「じゃ、俺はこのソファでくつろいでも良い位の働きをしたわけだ」

女戦士「そういう事にしておいてやるよ」

主人公は


いややっぱいいや

勇者「ヒノキの良い香りだな……酒が飲みたくなる」

女戦士「そう言うと思ってワインを用意しておいた。なんならブランデーもあるが」

勇者「やるじゃん。でも明日も歩かなきゃいけないから、ブランデーはよしとこうかな」

女戦士「じゃあ用意するよ」

 とくとくとくとく

勇者「俺好みの甘さだ」

女戦士「これでもちゃんと、何を飲んでいたのかぐらいは見ていたからな」

勇者「変な女戦士だな」

勇者「急に何だよ。まだ1口しか飲んでないのに」

女戦士「あたしね、もうこんな事ないと思っていたの。
     またあんたと一緒に、何かを飲めるだなんてね」

勇者「飲みくらいはいくらでも付き合うのに」

女戦士「……そうだよな……」

 ガバッ

勇者「!?」

 互いに持っていたワイングラスを落としてしまう。
パリーンと言う音が室内に響いたと思った直後には、俺の顔の上に女戦士がいた。

勇者「お、おい……ワイン……」

女戦士「勇者……またちょっと痩せた?」

勇者「体重なんて気にしてないから、知らないけど」

女戦士「筋肉が付いたのかな……少しごつくなってる」

勇者「は、あは、何のつもりだよ」

女戦士「ここの連中はつまらないの。何でも1人で出来ちゃうの。
     薪割りから子守りまで、そんな出来た人ばっかりしかいないの」

勇者「……そりゃ、結構な事じゃねえか」

女戦士「あんたみたいなクズが居ないのよ……ここには。過ごしやすいけど、物足りない……」

 四つん這いの格好で俺を見下ろしていた彼女は、少し後ずさるようにして位置をずらした。

なんで処女いねーんだよwww

寒いよぉ早くぅ

>>554
まおう

言われてみればそうだな
エルフが処女で無かったならまおー以外処女いねーじゃん

勇者「なーにーやってんだよー……」

 下半身が寒い。あぁ、ズボン脱がされてるからか。
 女戦士、変な格好してるな。あぁ、全裸じゃねえか。
 思考の順番が狂う。

女戦士「ふふっ……こう、するんだっけか」

 何を思ったのか、女戦士は俺のナイフを頬張った。
舌で転がすのは確かに得も言われぬ感覚だったが、本来このプレイに期待するような快感がない。

女戦士「……おい、下手って……言うなよ……」

 そうなのか。いや、納得させられても困る。

元パーティービッチしかいねえ

女戦士「私の胸……そこそこ大きいとは自負してるんだよ。ほら触って」

 言われるがままに手を伸ばす。

女戦士「この辺の素直さが、昔のクズさを思い出させるね……もっと強くしてよ、クズ、ねえ」

勇者「っは……ぁあ……」

女戦士「ほら、胸で挟むのも気持ちいんだろクズ。クズらしく汚い精液飛ばしなよ、ほらほら」

勇者「うっ、うっ……」

この勇者強いのか弱いのかわからんな

 まさかM性癖があるなんて思ってなかった。俺に。

勇者「だぁ……はぁ……」

女戦士「どれだけ溜め込めばこんなに出るんだ。よいしょっと……」

 彼女はわざとらしく体位を変え、そして仰向けになったままだった俺を起す。

女戦士「ほら……ここまでしておいて無視はないよ」

勇者「…………」

 いろんな感情が交錯していた。魔法使いが好きだった。
 女戦士も、他の人に比べればずっと好きだった。でも全員狩人のモノになっていた。
 別に、目の前で俺を誘っている女に手を出さなくても、エルフにもっとアタックを駆ければ、別に経験できない訳じゃない。
 ……でも。

>>514
貴様・・・狩人だな!

勇者「……」ずいっ

女戦士「お、そう来なくっちゃ」

 とにかく負けたくなかった。何に負けたくなかったのかは知らない。けど――

勇者「――!」

 俺は進んだ。

女戦士「っく……はぁ、はぁ……」

勇者「お、女戦士……! これ、血……」

女戦士「久しぶりだから……とかじゃないよ……」

勇者「へ……?」

女戦士「あたしの初めて……今、奪われた……」

勇者「え、じゃあ狩人とってのは……」

女戦士「抜いてあげただけ……あと少し、手でしてもらったの。その時にパイズリとか覚えたの」

勇者「―――ッ!」

 俺にスイッチが入った。

あれぇ?

さぁ構わないからどんどん進めて

 ―――……

女戦士「……バカ」

勇者「…………何だよ」

女戦士「いくらなんでも激しすぎた」

勇者「お前が思わせぶりな事ばっかり言うからだ」

女戦士「……でも、うれしかった」

勇者「そうかい」

女戦士「狩人もそんな感じだった。し終わった後ね」

勇者「あいつの話はもうするなよ」

女戦士「ふふ、ばーか」

 翌日 林道への桟橋にて

勇者「2人とも、ここから先に青色の石で出来たオブジェクトがあるらしい。先にそこまで行っててくれ」

まおう「なんでー? 勇者さまはどうするんです?」

エルフ「そうですよ、一緒に行きましょう?」

勇者「そのーなんだ、ちょっとアレがコレで、警備上の問題が発覚したんだよ」

エルフ「わ、それは大変ですね。まおう様、勇者さまに迷惑をかけないよう先に行きましょ」

まおう「うえー、早く来てねー!」

勇者「おーう」

なんだ4Pか

女戦士「みんな行ったか」

勇者「あいつらが俺の引き連れてく仲間だよ」

女戦士「ふーん……右隣のガキんちょはともかく、左のバインバインは何?」

勇者「や、あれは、ああいうのらしくて……」

女戦士「ふーん。でも勇者はああいうのに手を出せないんだよね」

勇者「なっ! 畜生が、ナメんなよ」

女戦士「はいはいお見通し。どうせ今までも手を出してなかったんでしょ。異論は認めずー」

勇者「だー……もういいだろ、じゃあな」

女戦士「……うん、またね」

勇者「また――その、来るかもしれないけど、お前はずっとここに居るのか?」

女戦士「それは分からないなぁ。けど、あたしの気が変わっちゃう前に、迎えに来てほしいんだけどね」

勇者「……わがままな奴め」

多分馬召喚して貸してた

//This capter is "The encounter".
//End of log.
//Automatic description macro "moppy" is completed this chapter.
//This story still continues.

この速度なら終わりそう

>>606
moppy…?

>>613

  ─ = ニ ニ _三 三 ニ ニ   ハヽ/::::ヽ.ヘ===ァ
                       {::{/≧===≦V:/   
 ─ = ニ ニ _三 三 ニ ニ    >:´:::::::::::::::::::::::::`ヽ   いやっほー

             `  (⌒ 、_  γ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ  呼んだぁーー?
- - ── = ニ 三   `>  _//::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ハ 
   (⌒)ヽ     (⌒ -、./   | ll ! :::::::l::::::/|ハ::::::::∧::::i :::::::i    ズサー!

  ─ == ニ 三 ヽ:::::::     、ヾ|:::::::::|:::/`ト-:::::/ _,X:j:::/:::l'
 (⌒) .。; ゚ ,,     \      `''⌒)|V≧z !V z≦/::::/ '⌒)
(⌒・⌒ ・ = ニ 三 三` -、  、.:::::,,.r':::ト “   _   “ ノ:::/!_,,.r' 
 '';:. ,、,,・:・ 、、,,==ニニニニ` ー三- \ト ,_ し′_ ィ::/.....

一夫多妻かよw

――妖精の国――

勇者「多分アレしかねえだろうな……」

まおう「大きな樹ですねえ」

エルフ「そうです。あれがエルフの里、つまり妖精の国そのものです」

勇者「にしても大きすぎるだろ。直径100メートル以上は無いか」

エルフ「それでも足りないくらいですよ。中には2000人ほどのエルフが暮らしていますから、木の中はもちろん地下施設も存在します」

まおう「でもそういう事って、あまり話しちゃいけないんじゃないですか? お父さんにも言われました」

エルフ「確かにそうですけど……今から2人には、この国に入ってもらうのですから」

モッピー知ってるよ。エルフが処女だってこと。

勇者「え、でも妖精の国って人間の出入りは当たり前だけど、
    まおうみたいな魔族は結界ではじかれるようなレベルの警備じゃないのか?」

エルフ「たしかに外界に兵を派遣しなくても良いくらいに樹の周りには強力な魔法結界と、
     一般のエルフは理解出来ていないような強さを持つ物理結界があります。でも心配はいりません」

まおう「どうしてです」

エルフ「言い方の問題ですよ」

 妖精の国 外縁 第1物理結界線前

エルフ「こほん……エルフです、応えを」

謎の声「今さらどうしてあなたがここに……いえ、出頭した以上、どうなるかは解りますね」

エルフ「はい、私を逮捕してください」

勇者・まおう「ええっ!?」

謎の声「解りました……しかしその連れはどうしましょう。何の理由で連れて来たのですか」

エルフ「妖精裁判にて証人になっていただく方々です」

謎の声「そうですか……では、まとめて転送しましょう。その場で立ち止まっていてください」

勇者「おいこっちは話も聞かず了承するつもりないって……!」

エルフ「ごめんなさい勇者さま、騙すようなマネしてしまって」

まおう「うわぁ、なんだかすごいキレイ」

 ―――……

勇者「ったたた……結局どうなりやがった」

まおう「わー勇者さま勇者さま! 凄いです見てくださいです!」

勇者「んだようっさ……うわ、マジで何だこりゃ」

 まるで呼吸を感じさせないほど澄んだ空気。宙を舞う光の筋、
少し緑色掛かった吹き抜けの上には、葉っぱの間から太陽が顔を覗かせている。

まおう「あの、驚くのはいいのですけど私の腕をつまむのは止めてくれませんか、痛い痛いです」

勇者「すまん、気が動転するとついお前を」

まおう「それは何だかうれしくないです……」

エルフ「2人とも、ここが妖精の国です」

勇者「なんとなくイメージは着けていたが……これは予想をはるかに超えるレベルだな」

エルフ「はい。私のとっても、自慢の里です」

もうねる限界 つづきかくけどねる¥

>>643 あああ

だれか保守表

あげげげげ

しぇんあげ

>>686 これかいな
新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内

新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内

狩人「…?なんだよ処女じゃなくなっちまったのかよ」パンパン

狩人「勇者のヤツか?お前なんだかんだ言ってあいつの事好きだったもんなー」パンパン

狩人「……で?」パンパン

狩人「あいつのチンコと俺のチンコ、どっちがいいよ?」パンパン

戦士「んあぁっ!!狩人!狩人の方がすごいのぉっ!!」

狩人「ははっ。そーだろそーだろ」パンパン

戦士「あんっ!ああぁぁ゛っ!!もうダメなの!狩人のチンポ無しじゃ生きていけなぃぃぃ!!」

狩人「はいはい。じゃー中だしするから俺の子供しっかり孕んでくださいねー」パンパン

狩人「…?なんだよ処女じゃなくなっちまったのかよ」パンパン

狩人「勇者のヤツか?お前なんだかんだ言ってあいつの事好きだったもんなー」パンパン

狩人「……で?」パンパン

狩人「あいつのチンコと俺のチンコ、どっちがいいよ?」パンパン

ライアン「んあぁっ!!狩人!狩人の方がすごいのぉっ!!」

狩人「ははっ。そーだろそーだろ」パンパン

ライアン「あんっ!ああぁぁ゛っ!!もうダメなの!狩人のチンポ無しじゃ生きていけなぃぃぃ!!」

―――ちょっとしたあらすじ
妖精の国に辿りついた勇者とエルフとまおうは、なぜか裁判の証人として妖精の国内に召喚されてしまった
―――――――――――――――

 ―――……

勇者「ったたた……結局どうなりやがった」

まおう「わー勇者さま勇者さま! 凄いです見てくださいです!」

勇者「んだようっさ……うわ、マジで何だこりゃ」

 まるで呼吸を感じさせないほど澄んだ空気。宙を舞う光の筋、
少し緑色掛かった吹き抜けの上には、葉っぱの間から太陽が顔を覗かせている。

まおう「あの、驚くのはいいのですけど私の腕をつまむのは止めてくれませんか、痛い痛いです」

勇者「すまん、気が動転するとついお前を」

まおう「それは何だかうれしくないです……」

エルフ「2人とも、ここが妖精の国です」

勇者「なんとなくイメージは着けていたが……これは予想をはるかに超えるレベルだな」

エルフ「はい。私のとっても、自慢の里です」

?「どの口がそれを言うのかね」

エルフ「ぞ、族長!」

エルフ族長「これはお帰りと言うべきなのかね」

 エルフのすぐ後ろには、よぼよぼに枯れたおばあさんがローブを深くかぶった格好で歩み寄っていた。

エルフ「……さあ、私も判りかねます」

エルフ族長「まぁええじゃろ。ワシの忠告通り証人となる者を連れて来たようだからな」

勇者「エルフ、どういう事なんだこれは」

エルフ族長「こいつでは役不足じゃろう。それに人間と……そやつは魔族か。
        こんな2人が路肩に居ては混乱を招きかねんよ」

エルフ「すみません、ローブを深くかぶってついて来てください」

勇者「この程度で隠せるのか……?」タッタッ

エルフ「皆さん気づいています……けど、気付かないふりも出来ません。気分の問題です」

勇者「……本当に微妙な関係なんだな」

エルフ「人間で言う田舎の関係を……もっと厳密にしたものと思ってくだされば、差異は無いかと」

 エルフ族長の家

エルフ族長「なるほど。そちらが勇者で、こっちが魔王の実娘であると。
        では勇者はそちらの椅子に、魔族の方は立っていてなさい」

まおう「えぇー」

エルフ族長「ここではそのような決まりなのです。
        我々と魔族はほぼ対になっている種族。だからこのような決まり事も多いのです」

勇者「我慢しろよ」

まおう「勇者さまが言うなら……はぁい」

速さが足りない

勇者「それで、何で俺達がここに召喚されたと」

エルフ族長「この者についてきたと言う事は、既にハーフエルフであると言う事を知っているはずだ」

勇者「まぁ……それは知っていましたけど」

エルフ族長「まず外部の人間に分ってもらいたいのは、別にハーフエルフの存在そのものを認めていない、
        という訳ではないと言う事じゃ」

勇者「えっ、でもエルフは1人でここまで帰ってきたら殺されてしまうって……」

エルフ族長「我々も籠るだけなら良いが……その生活を続けるには、
       外の世界を知るために外交官となるハーフエルフを必要としている」

まおう「あの――」

エルフ族長「ワシの許可なく喋るでない」

まおう「……っふぁい……」

エルフ族長「そうでもしなければ時勢が判断できず、
       取り返しがつかない頃にこの国の終焉を迎える事態に陥るかもしれぬ。
       故にハーフエルフは必要な存在ともいえるのじゃ」

勇者「じゃあエルフをわざわざ殺すことないだろ」

エルフ族長「以前は半妖精騎士団なるものがあったんじゃが……ある事態が起きてな」

エルフ「…………」

エルフ族長「現在、世界各地に散らばっていたハーフエルフが狩られている。
        特に女性のハーフエルフは、こやつ以外もう存在を確認できないんじゃ」

勇者「狩られるって……あぁいやいや、とにかく危険な状況に陥っていると」

エルフ族長「そんな状況下で、ある諜報官のハーフエルフは、ここに帰ってきた末、このような報告をしてから絶命したんじゃ」

どういう理屈でハーフエルフが殺されるって言ったかって設定にするか見ものだな
とんでも理論はやめてね

 ……――魔王の死去により、世界のバランスは大きく崩壊した。
今魔力の素子は、我々の生活空間へ無秩序に流れ込んでくる。
今、この力を手にする為の戦争が……また始まろうとしている。
強き力を持つものが世界の理を調律する……新たな魔王の……――

勇者「つ、つまり?」

エルフ族長「要領を得ん奴じゃのう。つまりじゃな、今の世界はまさに無秩序、混乱状態なのじゃ。
       故に子悪党どもが魔王となるべく躍起になり、家の生活を守るような民衆がもっとひどい目に遭っている」

勇者「(そんな事……いつか賢者も言っていたな)」

エルフ族長「新たな魔王……と言うべきか、とにかく新世界を支配しようと画策する者は、
        あらゆる手立てで力を手に入れようとしたんじゃ。……そして今最も世界に溢れているのは魔王足る者ではない」

まおう「……?」

エルフ族長「兵器じゃよ」

勇者「兵器? って……単体で大量の殺戮能力を持つ道具って意味であってるよな」

エルフ「……ええ、今の世界の一部を見ればわかるとおり、魔王の様な単独で力を調律できる人材は、
     後にも先にも現われないと言われている。だからどうすれば良いか……という問いの先に、兵器が生まれました」

エルフ族長「その1つが、ハーフエルフ爆弾じゃ」

勇者「……え?」

エルフ族長「旧世代のハーフエルフは既に魔学的な解析が済まされていた、
        誰の手によるかは知らぬがな。そのせいで、人間に捉えられたハーフエルフは、
        手術によって体の仕組みを弄られ、それ単体が高性能な爆弾になるよう改造されたのじゃ」

エルフ「…………」ゾクゾクゾク

エルフ族長「爆弾の威力はそうそう足るものじゃったらしい。国ひとつは無理じゃったらしいが、
       それこそ村を吹き飛ばし、運河の為に岩板を破壊するくらいの威力はあったそうじゃ」

勇者「だ、だが! そんなものいくつも作れるわけないだろう? エルフ自体を爆発させるなんて」

エルフ族長「そう思うのは当たり前じゃ。だから、女性のハーフエルフを子作りの機械にして、
        大量に子供を産ませようと言う考えにつながるのも当たり前じゃ」

勇者「くっ……狂ってやがる……」

エルフ族長「そうじゃ……どんな魔王の所業よりも恐ろしい事じゃった。
       だから我々は、全世界のハーフエルフを再び里へ呼び戻させた……
       そして、既に解析されてしまった血を持つハーフエルフを、我々の手で絶滅させようと思ったんじゃ」

まおう「……そ、そんなのって!」

エルフ族長「仕方ないんじゃ……仕方なかったのじゃ。ボロボロになって帰ってきたハーフエルフを里に招き入れたら、突然の爆発……
        数百人のエルフが巻き込まれて死んだ。このワシも……見ての通り右足が消し飛んだ。デクの棒を代わりにするのはもう慣れたがな」

勇者「……だから、1人で帰郷しようとするハーフエルフは、可能性の排除として殺す以外に方法は無かったと。
   それとは別に、人間などの仲間を引き連れ裁判という扱いで逮捕すれば、ある意味証人たちを人質に取れるわけか」

エルフ族長「ハーフエルフ爆弾は完全に人間の手による兵器じゃ……
       当の人間がハーフエルフに付帯していれば、爆発するとは考えにくい。
       たとえ爆発したとしても、それは人間のせいとなり得るからのう」

たぶんおわんねえ。次の国で一応の大区切りはつくけど。

勇者「それで……このエルフを、ある程度信用のある……ないしは、
    ハーフエルフ爆弾の問題とは関係のない外界の人間に依頼し、逮捕しようと追い回していたのか」

エルフ族長「泳がせておいては何もかも手遅れとなってしまう……時間は限られていた」

エルフ「でも私は無為に死にたくはなかった。だからちゃんと里へ帰る策を練り、
     その上で帰郷し、こうして話し合うために勇者さまを頼った」

勇者「……なんか、すげえな」

エルフ「え?」

勇者「いやすげえよエルフ。そうやって、自分をどうすれば良いかって考えてること自体が」

エルフ「え、あ、あの……これは褒められてるのでしょうか……」かぁぁ

エルフ族長「とにかくこやつはすぐ裁判に掛けなきゃらなぬ。
        自ら里に帰ってきたと言う事はよっぽど爆弾にされている可能性はないが……それも形式的んな問題じゃ」

エルフ族長「とにかくこやつはすぐ裁判に掛けなきゃらなぬ。
       自ら里に帰ってきたと言う事はよっぽど爆弾にされている可能性はないが……それも形式的な問題じゃ。
       まずは3人とも自由に歩けるよう、ざっとではあるが調べてみるかのう」

 ―――……

勇者「よかったな、一応の外出許可はもらえて」

エルフ「あの方の診断だし、当の私も人間に手術された覚えなんて有りませんから」

まおう「ねー勇者さま、どこか行きたいよう」

勇者「そうだな……今日は色々落ち着かないからな。どこかで休むか」

まおう「やたー!」

 エルフの食堂

料理長「いらっしゃ……ぃ?」

エルフ「ど、どうも……」

料理長「え……エルフちゃん! エルフちゃんじゃないか! よくぞ無事で帰ってきた……!」

勇者「誰なのこのおじさんは」

料理長「ッタァと思ったら人間! しかもこの気配は……何の気配だろう」

勇者「(エルフ、何なんだこれ)」

エルフ「(私が昔お世話になっていたおじさん。人間の気配は知ってるけど、魔族の気配は知らないから何とかやり過ごそう)」

まおう「はじめましてっ! 私まおうです!」

「………………」

料理長「やー嬢ちゃん、まおうだなんて立派な事だね。でもね、みんなを無為に苦しめるような事はしちゃダメだぞ?」

勇者・エルフ「はぁ…………」

 話の分かるおじさんで良かった。
 エルフの食事時間とはずれているせいか、店内には他の客はいなかった。
俺たちはカウンターに最も近い丸テーブルに座り、おじさんの料理を待った。

料理長「はいよ、今は時期悪いせいかこんなものしか出せなくて済まないなー」

 出てきたのはパイ料理、クリームで和えたようなサラダ、じゅうじゅうと音を立てて焼かれている肉、そしてカリッとしてそうなパン。
 それらは全て……なぜか緑色をしている。

まおう「だ、大丈夫です……?」

勇者「ははっ、ハーフエルフが食えるんだ。俺が食べれない訳ないだろうし」

まおう「私はどうするんですかぁ!」

勇者「さぁ? 運が悪かったら溶けるんじゃないの」

まおう「ええええっ!?」

エルフ「大丈夫ですよ。ここで取れる食材はどうしても全部緑っぽくなっちゃうんです」

勇者「毛まで緑になっちゃいそうだな……むぐっ、でもおいしいからいっか」

まおう「あ、これジャガイモですよ、ばれーしょーの味がするです」

料理長「それは元々魔王の国あたりらでとれる食材なんだけどな。
     ハーフエルフの仲間がずっと昔に持ち込んでくれて、里で栽培できるようになったんだ。
     ばれーしょーってのはどこの呼び名なのかい?」

勇者「あっあは、何でもないですよー!」

まおう「痛い痛いです! 足踏まないでください!」

勇者「ほらどれだけこぼして食べるんだよ……スプーンの使い方がなっとらん」

まおう「こ、こぼしてなんかないもん!」

勇者「顔の周りにパイの具を付けてそんな事いってるようじゃ余計に間抜けだわ」

まおう「そうなのですっ!?」 ごしごしごし

勇者「バカ! 一応俺の服なんだからそれで拭うなっての……」

エルフ「……ふふふ」

勇者「どうかしたか?」

エルフ「いえ、平和だなって……」

勇者「何も俺だって、魔王を倒すために城を出た時からずっと緊張してたわけじゃないんだぜ? 
   実際の戦いとか、大規模な戦争は、傍から見るよりはるかに隙間の空いた様相だよ」

エルフ「そうなのですか?」

勇者「戦略的待機と言って3ヶ月も同じ街にとどまった事もあったな。
    実際それは実を結んだからよかったけど、逆だったら今頃俺は死んでいたかもしれん」

エルフ「やっぱり……みんな、儚いものなんですね」

勇者「だから平和なときは平和に楽しむ。それでいいのさ。
    人の言う平和ってのは、もう戦争の上にしか成り立たなくなってるからな」

エルフ「そう、ですよね……」

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 エルフの住まい

エルフ「もうずいぶん使ってなかったので、かなり汚いですが……」

勇者「いやー充分充分。新雪を布団にして「あったかーい……」とか言いながら寝てた頃もあったし。
    裸足で上がれる家ならどこでだって寝れるよ」

まおう「わぁ、棚にお花がいっぱい咲いてますよ!」

エルフ「本当に何もないですが、とりあえずくつろいでください。勇者さまは1人で休みたかったら、2階にある寝室を使ってください」

勇者「エルフはどうするんだ?」

エルフ「1階にも寝室はあるので、私とまおう様はこちらで休ませてもらいますよ」

勇者「エルフひとりの持家ってこんなに広いのか」

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 その日の夜

まおう「すぴー……」

勇者「こいつ最近寝るの早いな」

エルフ「疲れはたまっていたけど……だからと言って、今の時間を寝て過ごしたくないと思ってたのではないですかね」

勇者「なんだそれ」

エルフ「勇者さまも覚えありませんか? 寝るのも惜しい位、まおう様は毎日が楽しいと口にしてます」

勇者「確かにそんな時期もあった様な……なかったような。いろんな事ありすぎてそこまで覚えてないな」

エルフ「そうですか……」

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 妙な沈黙を挟んで

勇者「裁判、明日の昼なんだってな」

エルフ「ええ。裁判と言っても、最終的な調べをしてから生き残っても良い認定を交付されるだけですけど」

勇者「別に……有罪とかは無いんだよな」

エルフ「心配してくれているのですか」

勇者「ある事はあったしな……それに、俺はエルフの事ずっと見ていた訳じゃない。一緒に旅をするようになっても……まだ数えられる程度だ」

エルフ「……正直、私も安心しきっている訳ではないのですよ。だけど1つ違うのは……裁判の事じゃない」

勇者「え?」

エルフ「私自身の事と……この、この子の事とか……」

 時間が止まったような気がした。

勇者「このこってあれか! ナマコの卵巣!」

エルフ「卵巣……うん、そうね」

勇者「あ、あの、エルフさん?」

エルフ「私のお腹……見てくれる?」

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 いつもローブで隠れていた彼女のお腹は、不自然に膨らんでいた。
しかし、この程度なら多少太ったという言い訳が通じるレベルだった。

勇者「お、おう、別に変じゃないぞ」

エルフ「人間の子供って……だいたい着床から10ヶ月は掛かるらしいけど……
     エルフはね、生まれつき魔法の力を宿している妖精だから、着床から1ヶ月くらいで生まれちゃうの」

 勇者「はは……そんな、まだ子供の原型も出来てない時期じゃないのか」

エルフ「エルフの子供もハーフエルフの子供も、お母さんから生まれた時は手のひらに乗るくらいの妖精そのものなの。
    それが100年くらいの時を重ねて、やっと一人前に成長するの」

勇者「じゃあ、今エルフが……」

エルフ「そう。もう、生まれそうなの。それも……多分、火山の国で襲われそうになった、あいつの……」

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勇者「い、入れられてなかったんじゃないのか!?」

エルフ「入れられてないのは……本当。嘘はついていません。でもあの男が言った通り、
     ハーフエルフの身体は、わざと人間に近づこうと特徴を出す傾向にある。そして生殖能力も、人間よりはるかに高い。
     私の……その……ここに、子種が付着しただけで妊娠するのは……ハーフエルフ的に、不思議ではないって……」

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 この気持ちがショックだったのか、憎悪だったのか、はたまた憐みなのか、判断は出来なかった。

勇者「……どうすればいいんだ」

エルフ「はい……?」

勇者「そんな風に妊娠してしまったお前を、
    ずっと眺めていただけで何も出来なかった俺には、一体……何が出来るんだ……?」

エルフ「……して、くれますか」

勇者「エルフが、望むって言うのなら……」


エルフ「…………殺して、くれますか」

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 彼女の目が見開かれた。

エルフ「ふぅぅっ!?」

勇者「どうしたエルフ!」

エルフ「出る……! 生まれるぅぅ……!」

 女性についての知識は無駄にあったが、さすがに出産、それも妖精の出産なんて要領を得ているはずが無かった。
だが俺はその場の空気を読み取り、ローブをはぎ取った。
 そして痙攣している足を開かせ、小刻みに動くお腹をさすりながら、彼女に声を掛け続けた。

エルフ「ぅう……っくぅ……!!」

勇者「顔が出た! もうすぐ体も……小さいからそこまで苦しまなくていいはずだ、頑張れよ!」

エルフ「……ぐぅぅ……っぅあ……!」

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 近くにあった柔らかな布をとっさに取り、出てきた妖精を落とさないように受け止める。

エルフ「――っあ! ……はぁ……はぁ……」

勇者「臍の緒は無いんだな……とりあえず、温めておくしか……」

 エルフはぱくぱくと口を動かしていたが、もう喋れない程にエネルギーを使ってしまったらしい。

勇者「……エルフ……」

エルフ「勇者……さま……」

 数分と経たぬうちにエルフは息を整えた。まるでその言葉を口にするためかのように。

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エルフ「その子を……殺して……」

勇者「……はぁ!?」

エルフ「ダメなの……お腹をさするたび、蹴られるたびに、
     あいつの顔が浮かんでくる……そんなんじゃ、子供を育てる事なんてできないの……」

勇者「けど……だからと言って……」

エルフ「……私の身体は、もう子供を育てるための身体になってる……ほら、こう絞れば、お乳だって出る……
     だけど、その子は育てられない」

 苦し紛れの説得だった。

勇者「……でも、裁判でこんな身体になっているのに、子供がいないと言われたら、変に思われるんじゃないのか」

エルフ「……だったら、せめて勇者さまの……」

 おもむろに背を起したエルフは、力なく倒れ掛かるように俺を押し倒した。

エルフ「勇者さまの、モノで……」

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 彼女には自重を支え続ける力が無かったらしい。
俺を押し倒した後は、体をそのまま重ねてきた。
柔らかな胸が俺の鎖骨に当たり、ピンク色の乳首からは白濁とした液がだらしなく垂れていた。

 その様子を見て俺のナイフもギンギンに張っていた。
しかし首を少し左へ逸らせば、布にくるまれたままの妖精の子供が、保護の手を待つように細い呼吸をしている。
 それでもなお興奮し続ける自分に、最低の嫌悪感を抱いてしまう。

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 それでもなお興奮し続ける自分に、最低の嫌悪感を抱いてしまう。
最低だ、最低だ。そう呪文のように何度も聞かせながら、言葉に反する動きで下半身を動かし始めた。

エルフ「あっつぅ……あいつが、燃えて……溶けて……消えていくみたい……」

 今目の前に居る彼女が喜んでくれるなら、それも良しと思った。
ただもう一つだけ気がかりがあった。
その為に、俺は出産で受けたダメージに目をつむって腰を突き上げた。

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 ――事が終わると、エルフは本当に気絶するように眠りについた。
俺みたいなクズの種を、ありがたそうに自分の中へ押し込んだまま、手で蓋をして目をつむっている。
 自分の気持ちに何とか整理を付けたかったのだろう。この奇妙な格好がごく自然に見えた。
おかげで気持ちを落ち着けたまま、生まれた妖精を抱えて家の外へと出る事が出来た。


勇者「…………」

 すっかり暗くなった妖精の国。
しかし、各所で緑色の明りが亡霊のように揺らめいている。
歩く分には困らない灯り。家から続く細い上り坂を、少し急ぎ目に上って行く。


勇者「失礼、まだやっていますか」

料理長「おうどうした? もう営業はやってないぞ。エルフは外で夕食をとる習慣が無いからな」


勇者「その……先に言っておきますが、とんでもないお願いをしても良いですか」


料理長「……見せてみろ、それを」

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 翌日 妖精議会室 最高審議会裁判

裁判官「エルフ殿……確かにあなたの身体には人間の生命が宿っております。
     ですが母体の方が既に完成されている……これについて整合性のある回答を」

エルフ「2人目です。1人目は出産事故によって死んでしまいました」

裁判官「ふむ……いかが致そうか」

裁判官2「本件で取り扱われる部分の審議については既に白が下っております。
      これ以上の追及はまったくの別件としての取り扱いになるかと」

裁判官「そうであろうな。では、被告エルフを安全と確認し、以後妖精の国に居住する事を許可する。
      これについて異論のあるものは」

勇者・まおう「…………」

裁判官「……これにて閉廷を」

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 ―――……妖精の国 出入り口用ワープポータル

エルフ「勇者さま。この感謝を言葉で表すには、稚拙な私にはとても敵わないものがあります」

勇者「そんな挨拶は良いよ。俺も、こんな所へこれで嬉しかった。ありがとな」

まおう「うぅっ……ぬぅぇ……」

エルフ「ほらまおう様も泣かないの。女の子の涙はね、肝心な時に使ってこそだよ」

まおう「ふぇ……そなの……?」

勇者「お前なぁ……」

エルフ「冗談ですよ、半分」

勇者「どっちだよ!」

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エルフ「ふふっ……でも、こんなお話が出来るのはここまでですね」

まおう「何でエルフは付いてきちゃダメなの?」

エルフ「それはね……もう私の身体は、私だけのものじゃなくなっちゃったからなの」

まおう「それって……んぅ……?」

エルフ「良い子良い子……こうしてると、自分まで落ち着くのよね」

勇者「……大事に、してやってくれよな。こんな無責任な事しか言えないけど」

エルフ「いいえ、私が頼んだことですから……でもいつか、この里に戻ってきてほしいと私は願っています」

勇者「いつだろうかなぁ……それはさっぱりわかんねえや。でも絶対に忘れたりしないぜ」

エルフ「……えへ、当たり前ですよっ」

 彼女は笑いながら俺たちの背中を押した。その瞬間、体重が一瞬にして無くなるような感覚と共に、今まで目で見ていたエルフが遠ざかって行くのが見えた。

エルフ「……い……――さま……」



//This capter is "The Pardoned".
//End of log.
//Automatic description macro "moppy" is completed this chapter.

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//Next story is final capter in this thread.
//Please little wait.

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臭いと言われた ままれに訴状を送らんとな

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――星の国――

まおう「三陸沖っでー牡蠣漁りー♪」

勇者「なんだその歌は」

まおう「昨日吟遊詩人の人が教えてくれました」

勇者「本当に要らん事ばかり覚えるのは早いな」

まおう「私だって日々成長しているのです」むふん

勇者「久しぶりだなーこの倦怠感。こんな怠い日はお前のほっぺたでも摘ままないと」

まおう「ふん、ほっぺたガードですよ」

勇者「脇腹頂き」

まおう「あひゃひゃひゃああっ! ひまっちゃぁぁ!!」

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まおう「それにしてもずいぶん歩きましたね」

勇者「そろそろお前を弄るのも飽きてくる頃合いだ」

まおう「えー構ってくれなきゃやですよぅ」

勇者「知った事か……お、次の街が見えてきた」

まおう「今度はどこですか?」

勇者「星の国だな……だけど俺、この国は来たことないんだよなあ」

まおう「私の家まで回り道していたのです?」

勇者「あの時は、この辺の平原に棲む狼たちに絶対敵わなかったからなぁ。でも今じゃほら」

まおう「遠くで見ているだけですね」

勇者「魔王の支配力が無くなったせいでもあるだろうが……やっぱりこっちの道から行く方が早い」

最後の英語恥ずかしくないのか?
たまに日本語おかしいけど、英語もおかしいぞw

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 星の国 市街地

勇者「時刻は……もう8時か。それにしても全然活気が止まないな」

まおう「でもみんな眠そうです」

案内人「あらあら、観光の方々ですか?」

勇者「まあそんな所で」

案内人「この国は今から皆働きに出かけます。ちょうどいいタイミングに参りましたね」

勇者「うえっ、そうなのか?」

案内人「外部の人間からすれば昼夜逆転の生活と思われるかもしれないですが、
     ここでは当たり前なのでご了承を。
     観光客用のホテルなら4番街をまっすぐ行った突き当りにございますのでご利用ください」

勇者「こりゃどうも」

まおう「どうもどうも!」

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勇者「妙な国だな……こんな風に騒がれると全然眠くならないぞ」

まおう「かーいものっ! かーいものっ!」

勇者「はい“お”を付けなかった。お買いもの中止」

まおう「はぇー!? なんでですー!」

勇者「要は静かにしてろって事だ。仕事終わりの夜ならともかく、
    みんな今から働き始めるそうだ。なのにお前のキンキン声を耳にしたらどう思う」

まおう「むごっ!?」

勇者「こうやって黙らせたくなるんだよ」

まおう「はにゃに指入れられた……」

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勇者「またアイテムの買いだめか……その前に宿を確保して荷物を置いてこないと面倒だな」

まおう「痛いよぉ……」

勇者「無駄に高いHPが取り柄だろうが」

まおう「HPは減らすためのものじゃないです!」

勇者「そうかい。じゃあ回復するための飯もいらんな」

まおう「ああ待ってぇー!」

       ,-'"ヽ         ∩___∩
      /   i、  _,、    | ノ  金   ヽ
      { ノ    "'"  "'"'"/  (゚)   (゚) |
      /  無断転載 |    ( _●_)  ミ
      /          彡、   |∪|   ミ  _/\/\/\/|_
     i       アフィ   \  ヽノ  /   \          /
    /              `ー-ー'" }   < このスレ頂き!>

    i'    /、        工作     ,i   /          \
    い _/  `-、.,,     、_       i     ̄|/\/\/\/ ̄
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  (,,/     , '  _,,-'" i  ヾi__,,,...--t'"  ,|
       ,/ /     \  ヽ、   i  |
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    /'''7'''7     /'''7       / ̄ ̄ ̄/    / ̄ ̄ ̄ /
    / /i  |      / /      .. ̄ .フ ./.    / ./二/ /  . . ____
  _ノ / i  i__ . ノ /__,l ̄i   __/  (___   /__,--,  /    /____/
 /__,/  ゝ、__| /___,、__i  /___,.ノゝ_/    /___ノ            速報

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勇者「案内人は2番街って言ってたよな……お、あったあった。こっちをまっすぐ行けば……」

「イラッシャーイ」「ニイサンドウゾドウモ」

勇者「あれ……何だこの雰囲気、おかしいぞ。あの人は住宅が言って言ったはずなのに」

まおう「黒い人がいっぱいいますー」

呼び込み「お、そこのお父さん。今夜は一発楽しんで行かないかい?」

勇者「へ? あ、あの」

呼び込み「あぁお嬢さんですか。大丈夫ですよ、うちが管理する一般宿の方へ送っておきます。
       子供用の侍女が丁寧に相手してくれますよ」

勇者「いや俺は入るつもりなんて」

呼び込み「えいえい兄さん遠慮しちゃって。お、なかなかな宝石をお持ちで。
       さぞ名誉なことをされたのでしょうな。きっと中の嬢たちは興奮して集りますぞ」

勇者「えぇ……」

まおう「勇者さま……この人たち怖い……」

勇者「ちっ……どうすりゃ……」



魔法使い「あ、勇者」

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勇者「え、あんた誰」

魔法使い「ちょっと呼び込みさん待って。この人私の連れだから」

呼び込み「ああ、連れ出しの方でしたか。
       それは大変失礼な数々を……本当に申し訳ございません」

勇者「あ、はい……」

魔法使い「行きましょ」

まおう「……?」

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 2番街突き当りの軽食店

魔法使い「お腹減ってる? 減ってないならイブニングで十分だと思うけど」

勇者「え、あの」

魔法使い「意味伝わらなかった? 私の故郷だと喫茶店にモーニングってのがあってね、
      この街には名前は真逆だけど、同じような文化があるのよ」

まおう「わーっ! お腹すいたです!」

勇者「こいつは店に入ると膨れていようが空いていようが腹減ったって言うんです。
   そのイブニングとかいうのでいいです」

魔法使い「あらそう、じゃあイブニング3つで」

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 セットの注文にしてはあまりにも早くテーブルへと料理が届けられた。
オレンジ色の照明で光沢を映すフレンチトースト、粗練りされたピーナッツバター、
薄く切られた少量のアイスバインと、丁寧にむかれたゆで卵。後で運ばれてくる甘いミルクコーヒー。

勇者「ずずず…………」

まおう「はむまむはむ」

魔法使い「……もしかしてあんた、私が魔法使いって気付いてない?」

勇者「え? えーっと……あっ!?」

 本当に、本当に今ようやく気付いた。
 こいつあの魔法使いじゃねえか。

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勇者「え、あ、え?」

魔法使い「まぁ私もずいぶん変わったからねー。今ローブを被ってみると暑苦しくてしょうがないの」

 だからと言っておっぱい特盛のワイシャツは無いんじゃないかなと思ったりする。

魔法使い「しかし勇者は変わらないね。風俗の勧誘なんか無視すればいいのに。
      きっと押し切られて中に入ったら、下手なコースも選べずぼったくられてたね」

勇者「そうだったのか」

魔法使い「呼び込みに取り合っている内は絶対に放してくれないからね。みんな商売に必死なのよ」

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勇者「ずいぶん詳しいんだな……この界隈に」

魔法使い「あなた……まだ私の事は気付いてないんだ」

勇者「へ、お前魔法使いだろ?」

魔法使い「……ううん、気付いてないならいいの。それに私は本物の魔法使い。わかってる?」

まおう「お姉さん魔法使いなんだー」

魔法使い「勇者は子連れになったかー嫁さんはどこに居るの? もう離婚したの?」

勇者「勝手に話を変な方向にもっていかないでくれよ。別にそういう深いのじゃない。ちょっとした送りだ」

魔法使い「じゃあ子供を任されたって事ね……へえ、あなたがそんな事をね……」

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勇者「任された理由も大概おかしいけどな。雰囲気で解ってくれよ」

魔法使い「融通ならあなたよりは利くと自負してるわ。だからこの街でも生きていける」

勇者「にしても変わった街だな……昼夜が逆転してるなんて。そういう職業の人はいるだろうけど、
    街そのものが逆転させてるなんてのは聞いたことないぞ」

魔法使い「今は経済戦争が激しくなってきてね……この国は深夜だから働いてるっていうカラーを売り出して生き残りをかけているの。
       市場や流通……それに、夜に行きやすい風俗関係も発展。今じゃあなたが見た通りに、結構大きな街になってるでしょ?」

勇者「確かに……今まで魔王の城からずっと戻って来たけど、一番都会的な感じではあるな」

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まおう「ねーねー何の話してるのー?」

勇者「お前にはまだ早いお話だな」

魔法使い「大人のか・い・わ」

まおう「私も大人になりたいー!」

魔法使い「っ…………」

勇者「どうした魔法使い?」

魔法使い「……ごめん。何でもない。勇者は国に帰る為にここへ来たんだね」

勇者「それ以外何の目的が」

魔法使い「ここへ来るって言ったら、明らかにヤリ目的か、この辺でしか買えないものを買う商人か、
      内密な話し合いをする役人しかいないもの。ヤリ目的じゃないのはすぐ分かったけどね」

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勇者「別にそんな事のために……ただの中継だ」

魔法使い「あっれーまだ童貞? よかったら私がしてあげよっか。
      今日は久しぶりに会えた記念に、ホテル代もプレイ料金も取らないよ? なんならオプ」

 パシッ――

魔法使い「…………!」

勇者「お前、自分で何言ってるのか解ってんのか」

まおう「ふえ、あの……」

魔法使い「分ってるわよ……分ってるからここに居るんじゃない……」

勇者「まおう、行くぞ」

まおう「ゆ、勇者さま……?」

勇者「金だ。200ゴールドもあれば十分だろ」

魔法使い「……25、ゴールド」

勇者「……は?」

魔法使い「25、番、地……ゴールド、334……」

勇者「…………」

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 観光客用ホテルの前

まおう「あのお姉さん、何言ってたんですか?」

勇者「お前に教えてもしょうがないだろ」

まおう「えっと……勇者さまは、あんな風に叩いて良かったと思いますか?」

勇者「散々俺にぶたれてるお前が何を」

まおう「えっとですね……その、慣れてるとか、叩かれるのが好きとかじゃないですけど……
    あれは、本当に痛いような……なんというか……」

勇者「はっきり言えはっきり」

まおう「私もよく解んないですっ! もう!」

 そう言いつつ、手を握っていたまおうは俺の方へを身を寄せてきた。

子供「…………」

勇者「(何だろ……建物の影から……)」

子供「…………」ピュー

勇者「行っちゃった……」

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 ホテル内

受付「お客様のお部屋は108号室になります。明日の夕食サービスはいかがいたしましょう」

勇者「えーと夕食って事はつまり朝食って事だよな……じゃあ頂いてこうかな」

受付「かしこまりました。料金はお2人で650ゴールドになります」

勇者「意外と適当な値段で収まるものですね……はいどうぞ」

まおう「どおぞー!」

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勇者「広さも設備も段違いだな」

まおう「本物のお城みたいですね」

勇者「確かにここと比べたら、今までの宿があばら家に見えるか、こっちが城に思えるかだな」

まおう「お部屋も広―――あれ?」

勇者「鞘だけ長い短剣を買わされた気分だな」

 言い渡された番号の部屋は小さな四角の空間にベッドと申し訳程度の設備が置かれているだけのものだった。
料金を思い返せばむしろ納得がいった。

まおう「勇者さまと一緒ならどこでも良いですけど……やっぱり広い方が良いですぅ……」

勇者「生まれつきの環境からは逃れられないもんな。同情してやるよコラ」

まおう「あはっ、止めてくださいこちょこちょは! ああんもう勇者さまっ!」

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 ―――……

まおう「すぴー……」

勇者「こいつの脇に眠りの壺があるのかと思うくらいの効きようだな。胡散臭くすら思うぞ」

いつまでも付いて来ると鬱陶しいまおうを片付け、俺は軽い格好になってホテルの外へと出た。

勇者「多分……そういう事なのかな」

 25番、魔法使いが口にしていた言葉。
イブニングセットの値段だったつもりかもしれない。
けれども、その後に続く言葉が頭から離れなかった。

勇者「25番街……334って何だろう」

 ホテル街を左手にまっすぐ歩いて25番街へ向かう。
その途中にも、何度も子供に遭遇した。建物の影から飛び出す子、
じっと屋根から見つめてくる子、3人ほどでベンチに固まっている子。

勇者「今日は平日なのかな……?」

 どんなに人がいても、どんなに賑やかでも、
夜にこの道を歩くのはやはり不気味で仕方なかった。

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勇者「グリッド25の334って読めばいいのか。って言うと……」

 街からずいぶん離れているのはもうかなり前から自覚していた。
それでも今、自分の目の前にある光景はなかなか信じがたいものだった。

勇者「墓地……なのか?」

 墓地なら墓地だと受け入れられる。しかし目の前にあるのは、
半壊した十字架や崩れた斜面、ボロボロの砂道と、そこに立っている1人の女性。

魔法使い「や、勇者」

勇者「お前ずっとこんな所にいたのか」

魔法使い「じゃあどんなところだと思う、ここは?」

勇者「は……墓場じゃねえのか」

魔法使い「違うよ。死体置き場」

 彼女がおもむろにある方向を指差した。
俺は無意識にそちらへと視線を動かす。……すると

勇者「はっ……!」

 削れ落ちた斜面の下には大量の白骨が――置かれていると言うよりは、寄せて積まれているように見えた。

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魔法使い「ちゃんとした墓地は近くにあるよ。
      でもそこは霊園って言われてて、安全な森フィールドの中に造られているの」

勇者「……呼び出されたとは言わないけど、何で魔法使いは、ここで俺を待っていたんだ」

魔法使い「この文字……読める?」

 彼女の隣に立ち、ずっと眺めていたらしい墓標の名前を口にする。

勇者「かりゅ……うど……?」

 忘れようと思っていた男の顔が、名前を読んだだけで一瞬にして読みがってくる。

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勇者「死ん……だのか……? いつ、なんで……」

魔法使い「彼はね、あなたのパーティに加わる前からおかしかったのよ。
      本当はガラスの心で、人の顔色を見て、何かあったらネジが壊れたように謝る。そんな人格の持ち主だった」

勇者「嘘だろ……」

魔法使い「嘘じゃない。いつも勇者が見ているような狩人になるには……
   あの人――いえ、あの子を心から安心させればいい。それが愛撫なり、セックスなりだったの」

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勇者「ずっと奴の面倒を見ていたのか」

魔法使い「傭兵ギルドにいた時代からね。
    セックスさせる頻度はそこまで高くなかったから、別に私が困るなんて事はなかった。でも……」

勇者「どうしたんだ?」

魔法使い「いざ安心感が切れると、やっぱり壊れた。
      厳しい戦闘で、死んでしまった仲間の女賢者を見て勃起して、その場で彼女を抱えながらイッてた。
      似たような事がいつ起きるか解らなかったから、ずっと私が面倒見ていたの」

勇者「それから俺のパーティに……」

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魔法使い「希望的な観測だったけど、名誉やら使命やら、
      連続した死の恐怖に晒されてみれば、ショック療法的に狩人の人格は治ると思ってた。
      それが最初の内だけ効果があったものだから、私は調子に乗ってしまったのかもしれない」

勇者「まだ何かあったのか……?」

魔法使い「あの子は、旅の途中でこっそり薬を買い始めた。覚えてる?
      あの子がやたら張り切って宿の予約とか、買い出しに出始めた時期」

勇者「そういや中期ごろから……」

魔法使い「あそこでお金を少しずつ拝借して、たまったら街の怪しい商人と取引してたみたいなの」

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勇者「…………」

魔法使い「顛末にそこまで捻りはないよ。薬は当然、狩人の崩壊を加速させた。
      召喚士が襲われたのは、ずっと山岳地帯を歩いていたあの時期。薬が切れて、私が夜伽のタイミングを失った日、
      麻痺毒を盛ったうえで盛大に犯した。なんで私がこの話を知ってるかって? あっはは、狩人から自慢げに話されたからねえ」


 もう自分が何を聞いているのか分からなくなった。
直接関係はしてない。知らなければ無かったことと同じ。
それなのに、自分の過去が順々に否定されていくような、そんな苦しい思いが身を震わせる。

魔法使い「狩人は女戦士を犯したいって、口が開けば言うようになってた。
      でも私と召喚士は、何となくだけど彼女は汚してほしくなかった。
      だから馬鹿正直に、胸でしてあげるだけと女戦士に頼んでみたら、彼女はOKしちゃうの。
      1人でさせる訳にもいかないし、私と召喚士が監視している所で、狩人をヌかせた」

勇者「……だよ……何だよ……それ」

魔法使い「旅の中盤から終盤、何故あなただけが阻害されたような感じになったと思う?」

勇者「えっ?」

魔法使い「あなただけは、最後の砦になってほしかった」

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魔法使い「……あなただけは、最後の砦になってほしかった。
      日の元で生きれる心、クズと呼ばれるにふさわしい、人間らしい性格のあなたに」

勇者「じゃあ……俺との約束は何だったんだ。結婚しようだとか、初めてだとか……」

魔法使い「あなたはもう、幻想に近い存在だった。みんなパーティメンバーは狂ってた。
      女戦士は、要領の良い狂い方をしていたのかもしれない。私はそこまで器用じゃないから……じゃないから……」

勇者「だから、何だよ」

魔法使い「狩人みたいに、違う人格として、あなたに初めてをあげようと思った」

勇者「……はぁ?」

魔法使い「気持ちの問題だよ。でもね、私は本気だった。
       本気であなたに初めてをあげようと思った。
       魔王を倒したら、もう狩人の事なんか忘れて、あなたひと筋になって、ちゃんと国に帰って……」

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勇者「そんな……都合のいい話……っ!」

魔法使い「もう頼る人がいなかったのよッ!!!」

 夜に巣食う、カラスが音を立てて逃げてゆく。

魔法使い「だって分ってたでしょ……彼の戦闘力は尋常じゃなかった……だから代わりになる人はいない……
     でもね、女戦士は彼を殺そうって提案してきた。その話は結構進んだの。
     どこで、どう殺して、どういう風に処理して、あなたに報告するか」

 何で俺だけ……何で俺だけなんだ……!

魔法使い「私は真っ先に彼を殺す実行者になった。どうせなら私が始末をつける。
    そうすれば、そうすれば……何がとは考えなかったけど、何とかなると思っていた」

勇者「…………」

魔法使い「でもね……あなたが知ってる通り、狩人はずっと生きていた。
     魔王が死ぬまでも、あの荒野の国で飲み交わした夜も……ずっと生きていた」

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 あの晩……あの光景……生も死も、数えきれない程みて来た俺が、緊張で言葉も出なかった行為の前。

魔法使い「魔王討伐の任務は終わった……私たちは勇者一行と言う拘束から解き放たれた……
      あなたはパーティが空中分解したと思ってるかもしれない。

      でも実際はね、みんなあなたから逃げたの」



勇者「……俺に解るように言ってくれ」

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