エルサ「夜明け前の夢」【狼と香辛料】 (82)


+幕間+


ガラガラ…

ホロ「…」アグアグ

ノーラ「…」ボーッ

エーブ「…」グビ

ロレンス「…」

エーブ「…暇だな」

ノーラ「そうですか?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1365087723


エーブ「お前はそうでもないのか」

ノーラ「ええ。荷馬車での旅と言うのはあまり経験のないことですし…」

ノーラ「それに」チラ

ロレンス「?」

ノーラ「今は、隣にロレンスさんがいらっしゃいますから」

ロレンス「…ノーラさん」

ノーラ「…」ニコ

エーブ「…。あ、そ」グビ


ホロ「…」アグアグ

エーブ「お前はどうなんだ?」

ホロ「…」フン

ホロ「見ての通り暇ではありんせん」

ホロ「賢狼の尾が乱れておっては格好がつかぬからの。手入れが欠かせぬ」アグアグ

エーブ「ほお」


エーブ「なんだ…それは手入れだったのか

ホロ「む?」アグ

エーブ「てっきり口寂しいのかと」

ホロ「!? なあっ…」

ホロ「た、たわけ! なんてことをぬかしんす!」

エーブ「くくははは。冗談だよ」

ロレンス「…」ハア

ロレンス「エーブさん。暇だからと言ってホロをからかって遊ぶのはよしてください」

ホロ「の、のう。その、わっちを子ども扱いした言い方もよしてくりゃれ?」

エーブ「くく。悪い悪い」


スス…

エーブ「じゃあ仕方ない。お前をからかって遊ぼうかな」

ロレンス「…う…あ、あの…」

ノーラ「エ、エーブさん。近いです」グイグイ

エーブ「おや。お前をからかうつもりではなかったんだが」

ホロ「のうぬしよ。さっきの言葉は撤回してくりゃれー」グイ

グイグイ

ロレンス「…」

ロレンス「(俺は何をやってるんだろうか)」



このSSは
*ノーラ「羊飼いと行商人と、 狼」
ノーラ「羊飼いと行商人と、狼」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363691685/)

*エーブ「狼より愛を込めて」
エーブ「狼より愛を込めて」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1364872479/)
というSSの設定を引き継いでいます。


*現在の旅の仲間
{ ノーラ、ホロ、エーブ } … 次は?


+テレオ・エルサ編+


ロレンス「何か用かな」

エヴァン「あー、用と言うか何と言うか…」

エーブ「ふうん。ちんけな村だな。大した儲け話もなさそうだ…」ゴロ

ノーラ「の、のどかで、よい村のように見えますよ?」

ホロ「この村のどこにのどかさを感じたんじゃぬしは」モグモグ

ワイワイ

エヴァン「…行商人、だ、よな?」

ロレンス「実は俺も自信がない」


ロレンス「クラフト・ロレンス。一応…旅の行商人だ。よろしく」スッ

エヴァン「…」ポカン

エヴァン「あ、ああ! 俺は、ギヨーム・エヴァンだ!」

ガシ

ロレンス「うん。覚えておくよ」

ロレンス「(最近まともに同性と話せていないからな)」

ロレンス「(滞在中は貴重な話相手になってもらえるかもしれない)」

エヴァン「へへ」ブンブン

エーブ「…」グビ


エーブ「(こいつ粉挽きか。苦労しているようだな…)」

エーブ「(くく。このお人好しがどう出るか見物と行くか)」

ホロ「なにを一人で笑っておるんじゃ」モグモグ

エーブ「おっと失礼」ン、ン

ノーラ「(…この方、髪の毛や鼻にまで粉で白くて…何だか羊さんみたいだ
なぁ)」フフ…

ホロ「…」モグモグ

ホロ「わっちの周りには変な奴しかおらんのかや」モグモグ

エーブ「お前にだけは言われたくねえよ」


エヴァン「まあ自分で言うのも何だけど辺鄙な村だ。けれど…ゆっくりして行ってくれよ」

エヴァン「それとよかったらまた声をかけてくれ!」

ロレンス「ああ。そうするよ」

ロレンス「じゃあまた」

エヴァン「ああ!」ブンブン

ガラガラ…


エーブ「で、この村へは何をしに来たんだ?」

ロレンス「異教の神々の物語を収集するのに熱心な修道士がいらっしゃると聞き
及びましてね」

ロレンス「ここの司祭がその方のいらっしゃる修道院をご存知だそうです」

エーブ「それはそれは。見上げた聖職者だな」

ノーラ「…だ、大丈夫、なんでしょうか…」

エーブ「頭の回るやつなんだろう」

ロレンス「そのようですね」


ホロ「…」

ホロ「の、のう。ぬしよ、それはもしかして」

ロレンス「…ついでだついで。別にお前のためじゃないからな」

ホロ「…そうかや」//パタパタ

エーブ「(お、何だかいい感じだな。この二人)」

ノーラ「むぅー」

エーブ「…」

エーブ「(俺も他人事じゃないか)」







カンカン

…ガタ

エルサ「どなたですか」

ロレンス「突然申し訳ない。私は旅の行商人でロレンスと言います」

エルサ「…」ジッ

ロレンス「な、なにか」

エーブ「…」

ホロ「…」

ノーラ「こ、こんにちは」ペコ

エルサ「…」

ロレンス「…」ハハ…


エルサ「…えっと」

エルサ「何か告解にでも来られたのでしょうか」

ロレンス「ち、違います。道を尋ねに来たんです。探している修道院があるんです」

エルサ「はあ」

ロレンス「ディーエンドラン修道院」

エルサ「…」

エルサ「存じません」

ホロ「くふ」

スタ

ホロ「ぬしは嘘をついておるな」


エルサ「なっ…」

ロレンス「ホロ」

ホロ「ぬしさまも遊びで旅をしておるわけではありんせん?」

ホロ「あまりわっちのことに時間をかけさせるわけにもいかぬからの」

ロレンス「…そうか」

ホロ「…」ニコ

ホロ「さて小娘よ」

エルサ「…は」

ピコピコ


エルサ「…っ」

ザッ

ホロ「わっちの耳は嘘を見分ける。無論、それがどのような質の嘘であるかまでは知れぬが」

ホロ「わっちには下手な嘘はつかぬ方がよいと思いんす」ニコ

エーブ「ましてここは修道院だからな」

ノーラ「…」コクコク

フラ

エルサ「い、一体…あ、あなた方は、何者なんですか…」

ホロ「くふふ。なにもわっちは特別な何かではありんせん」

ロレンス「…」

ホロ「当たり前のように故郷に恋焦がれる普通の者でありんす」ニコ

エルサ「…」


ロレンス「つまり彼女の故郷の手掛かりを求めてここへ来たのです」

エルサ「…それが…ディーエンドラン修道院に行きたい理由、ですか」

ロレンス「ええ。それだけ、です」

ホロ「…」

エルサ「…」ハア

エルサ「わ、分かりました。ならばご案内します」

クル

ノーラ「?」

エルサ「ここがお探しの修道院です」


つづく


展開がマッハ

面白いけど、続きものなら同一スレに書いてくれた方が個人的に嬉しい
ちょっと過去の話を追うのが面倒なんだ

ミツケタゾ!


乙でござる!


>>19
「自称賢狼を軽くあしらった結果wwwwww」
「めっちゃ素直に力を貸してくれるようになったンゴwwwwww」なある種のチートモード。
当然、ノーラに先に出会ったことがホロに対するロレンスの態度の大前提になってます。

>>20
区切りがついたらスレタイが変わらないとエタるんだ。面倒をかけてすまない。

>>21
怖いわ。ありがとう。


もう少ししたら続きを投下して行きます。








ゴゴゴ…


ホロ「礼を言う」

タッ

ロレンス「おい。気をつけろよ」

エルサ「…」

ロレンス「…すいません。何だか強引なことをしてしまって」

エルサ「…」

エルサ「いえ。お気になさらず…」ギュ

エーブ「…」








エーブ「お前はこのあとどうするんだ?」

ロレンス「とりあえずは、…ホロの様子を見に行こうかと」

エーブ「あの狼が食事も取らずにだからな。俺でさえ気になる」

ロレンス「はは」

エーブ「…」

エーブ「さっきの話、覚えているか」


ロレンス「エンベルクとの関係のことですか?」

エーブ「ああ。この様子だと面倒が起こるのも時間の問題だろうぜ」

ロレンス「…ご忠告、ありがとうございます」

エーブ「忠告じゃない」

エーブ「これは相談だ。俺たちはいま旅の仲間だろう?」

ロレンス「…」

エーブ「ふふ」

ロレンス「…そうですね。ありがとうございます」

エーブ「いいえ」


ノーラ「…」

ノーラ「(何の話かな…難しくて、分かんないや)」

ノーラ「はあ…」

エーブ「おい」

ノーラ「は、はい?」

エーブ「俺たちは宿に戻るか。ここにいても仕方ない」

ノーラ「あ、は、はい。そうですね…」パタパタ


エーブ「…」

エーブ「まあ、変なところで気に病むことはないと思うぜ」

ノーラ「へ?」

エーブ「この村に来てから自分だけ仲間外れなのを気にしているんだろう」

ノーラ「…あ…」

ノーラ「そ、その…」

エーブ「分かり易いからな」

ノーラ「…ぅぅ」


ポン

エーブ「この手の話はお前の領分じゃないだろ。無理はするな」

エーブ「また旅の道中あいつの力になってやればいい」

ノーラ「…はい」

ノーラ「あ、ありがとうございます」

ノーラ「エーブさんは…お優しいんですね」

エーブ「…。くく」

ノーラ「? どうしました」

エーブ「いーえ。何でもない」

エーブ「(まさか優しいと言われる日が来るとは)」

エーブ「(案外俺も…牙が抜けつつあるのかもしれないな)」

エーブ「…ったく。誰のせいだか」ハア








コト…

ロレンス「お疲れ」

ホロ「くふ。ありがと」

ロレンス「パンももらって来たぞ。こぼさないようにな」

ズズ…

ホロ「…ん。おいし」

ホロ「…ふむ」モグモグ

ペラ

ロレンス「…」


ロレンス「…その、なんだ」

ロレンス「少しくらい休んだらどうだ。続きは任せてくれてもいい」

ホロ「ううん」フルフル

ホロ「気にせんでくりゃれ? ぬしこそ休むとよい」

ホロ「旅の道中わっちは寝ころんでおるだけじゃからの…」コク

ロレンス「尻尾の手入れが大変なんじゃなかったか」

ホロ「茶化すではありんせん」クス

ロレンス「あ、ああ。悪い悪い」


ホロ「…」

ホロ「ぬしは優しいの」

ロレンス「そうか?」

ホロ「…んむ。なんだか…不思議な気持ちになりんす」

ロレンス「…かつては豊作の神として崇められていたんだろう?」

ロレンス「優しくされることなんて、珍しくないと思うが」

ホロ「たわけ」

コテ


ホロ「…そういう…ことではありんせん」

ロレンス「…ホロ?」

ホロ「くふふ」

ホロ「さて。ではお言葉に甘えて…少しだけ眠ろうと思いんす」

ホロ「続き、読んでいてくりゃれ?」

ロレンス「あ、ああ。分かったよ」

ホロ「んむ」

ギュ

ホロ「…」

ロレンス「…」

ナデ








コツコツ…

ロレンス「…」

ホロ「…」

エルサ「…おや」

エルサ「(二人重なってお休みに…ふふ。微笑ましい)」

エルサ「…」

エルサ「…私とエヴァンも、…この人たちのように自由になれたら…」


ガンガン!!

ガン


エルサ「!」


タタッ

エルサ「(夜明け前に…誰だろう)」

ガタ

バンッ!

エルサ「きゃっ」

ノーラ「わ、とと…。す、すいません」ペコ

エルサ「ノーラさん?」

エーブ「二人はここでいいか」ハア、ハア

エルサ「え、ええ。今は下でお休みになっているところですが——」

エーブ「まずいことになった」



つづく







ロレンス「…はは…」

ロレンス「…ずいぶん…強行策に出たようですね。エンベルクは」ハア

エーブ「ああ。まったく、笑うしかない」

エーブ「だが俺たちがここにいることも含めて考えれば…悪い手ではないよな」

エルサ「そ、それはどういう…」

ロレンス「我々旅人は生贄にするには格好の存在です。嫌疑も向けやすい」


ホロ「で…どうするんじゃ?」

ロレンス「どうしような?」

エルサ「い、今すぐにでも村を出てください」

エーブ「ちょっと今からでは無理だろう」

ロレンス「…そうですね」

エルサ「無理でも何でも…!」

ガタッ

エルサ「っ…」

ロレンス「……。少し、考えさせてください」







コンコン


ロレンス「はい」

キィ…

ノーラ「…あの…」

ロレンス「ノーラさん。どうしました…も、何もないですね」ハハ

ノーラ「は、はい。…その、なにか用というわけではないのですが…」ゴニョ

ロレンス「…。では、私から、少し話をしてもよいですか?」ギシ

ノーラ「? は、はい。なんでしょう」


ロレンス「旅というのは、往々にしてこうした——揉め事からいかにすり抜けるかです。
      それは羊飼いをされていたあなたにも、分かって頂けると思います」

ノーラ「は、はい」

ロレンス「なので、私はあなたに頭を下げるわけにはいきません。今回の騒動に巻き込んでしまって申し訳ない、とは言わない」

ノーラ「…はい」



ロレンス「ですが」

ロレンス「そうではないところで、私はノーラさんに謝らないとなりません」

ノーラ「え?」

ロレンス「お二人が教会の戸を叩く前から、この村が遠からず騒動の場になることは分かっていました。
      本来、その時点で逃げ出すべきだったのです」

ロレンス「“ノーラさんと旅をする者としては”」

ノーラ「…」ニコ

ノーラ「だとしたら、やっぱり、謝らないでください」

ロレンス「…」

ノーラ「いまロレンスさんは、“私と”旅をしているわけではありませんから」

ノーラ「それに…わ、私は、そんなロレンスさんのことを、お慕いしています」

ロレンス「……っ。そ、うですか…」

ノーラ「…はい」


ロレンス「はは、まったく…」

ロレンス「…何年も行商人をして分かっていたはずなのに、困ったものです。
      欲張って高価な荷を抱えて旅をすると、それだけでいつ盗まれるかと怯えて疲弊するのに」

ノーラ「けれど、その分見返りも大きいのでしょう?」ニコ

ロレンス「……ええ。その通りです。…本当に、我ながら呆れるほど、行商人というやつは欲深い」

ノーラ「そうですね」

ノーラ「…はあ。どうしてこんなに、貪欲な方に惹かれてしまったのでしょうか」

ロレンス「う。す、すいません…」

ノーラ「ふふ。はい、少し、反省してください。今はこれだけで許しあげますから」メッ

ロレンス「…はい」

ノーラ「…えへへ」ニコ

お久し振り&短くてすいません。
また、余裕を見て投下します。


キィ…


エーブ「なにか妙案でも浮かんだか?」

ロレンス「残念ながら」

エーブ「…そうか」

ホロ「…」

ホロ「のう、ぬしよ」クイ

ロレンス「うん?」


ホロ「わっちは賢狼でありんす。元の姿に戻れば、ぬしらを抱えて逃げおおせることは造作ない」コソ

ロレンス「…その中にはエルサさんたちは含まれていないんだろう?」

ホロ「む」パチクリ

ホロ「…そ、そうじゃな。あの娘を入れて、四人かや。さすがのわっちでもその人数は…」ムゥ

ロレンス「エヴァンを忘れるなよ」

ホロ「……」ポカン

エーブ「くっく。部屋に篭ってどんな策を練っているのかと思えば」

ロレンス「…すいません」

エーブ「俺は構わないが?」チラ

ホロ「…っ、わ、わっちもじゃ!」

ホロ「……そもそも、そのようにお人好しが過ぎるぬしだかこそ、わっちらは今ここにおるのじゃからな」

ロレンス「…うん」


エーブ「(ただ…)」

ノーラ「…?」

ロレンス「…」

ギュ

エーブ「(願わくば、いつかこいつの横に立ちたいものだ)」

エーブ「…とりあえずは空いている方の手で我慢するか…」ハア

ロレンス「??」


ドンドン!!


エルサ「…あ、あの」

エルサ「村人の方々と、村長さんが、お見えに…」

ロレンス「…分かりました」ザッ

エーブ「ロレンス」

ロレンス「はい」

エーブ「…信じて、待っていてくれるかい」

ロレンス「…」

ロレンス「もちろんです」

エーブ「……はっ」

クル


パシッ


エーブ「よし。行くぞ賢狼」

ホロ「む? ど、どこへじゃ?」

エーブ「おい、なにをぼさっとしてる。お前も来いよ」

エルサ「? わ、私ですか?」


タタッ…


ロレンス「…我々も、表へ出ましょうか」

ノーラ「はい」


ガンガン!

  ガン、ガン!


ノーラ「…」

ロレンス「…怖いですか?」

ノーラ「…はい」

ロレンス「私もです」

ノーラ「…ふふっ。では、同じですね」

ロレンス「はい」

ギュゥ

ノーラ「私は、ロレンスさんを守ります」

ロレンス「では私はノーラさんを守ることにしましょう」

ノーラ「なら、怖くはありませんね」

ロレンス「ええ」

ロレンス「では、行きましょう」


ガタ… キィィ…







タタッ


ホロ「の、のう。どういうことか、きちんと説明してくりゃれ」

エーブ「どうもこうも、助けを呼びに行くのさ」

エルサ「ど、どこへですか?」

エーブ「レノスという町だ。そこへ行けば俺は教会の庇護を受けることができる。この騒動を治めることもできるはずだ」

ホロ「……。ふん。散々ばかにしておったくせに」

エーブ「同じ狼だろ?」

ホロ「こんなときだけ都合のいいことを言うではありんせん」ハア

エルサ「??」


エーブ「誰かが残らないといけなかった」

エーブ「(…だからこそ、ロレンスはあえて自分からこの手を掲げることはしなかったんだろう。俺はあいつに一杯食わされたわけだ)」

エルサ「…それは」

エーブ「はは。その分母にお前たちも含んでいるのだから、あいつの思考回路には恐れ入る」

ホロ「くふ。ロレンスが行商人に戻ることは、もはや叶わぬ夢かもしれぬ」

エーブ「かもな」

エルサ「…な、お、おかしいじゃないですか。なぜロレンスさんが残り私がこうして!」

エーブ「答えは単純だが難しい」

エルサ「…?」

エーブ「その問いには、「あいつはそう言うやつだ」としか答えようがないからだ」

エルサ「……」

ホロ「くふふふ。まったく難儀なことでありんす」

エーブ「ああ。あいつも、そして俺たちも、な」

ホロ「んむ」

エルサ「…あなたたちは、…なんという……」


ホロ「さて。怯えたりしたら、分かっておるな」

エーブ「狼は狼を見て怯えたりはしない」

エルサ「…は、はい」ゴクッ

ホロ「…」ポリ




ホロ『…くふふ』

エーブ「…。いい毛並みだ」

ホロ『ありがと』クックッ

エルサ「……」

ホロ『ほれ。早く乗りんす』

エルサ「あ、は、はい」

投下終了、レス感謝です。
ちょこちょことですが、近いうちに完結まで行けるよう頑張ります。












エルサ「…」コク


…コン コンコン


エルサ「…ん」

エルサ「…ふあ、…ぁふ」ポーッ

エルサ「……今のは…夢?」


コンコン


エルサ「あ、い、いけない」パタパタ…


ガコッ


エヴァン「おはよう、エルサ」ニッ

エルサ「エヴァン。ええ、おはよう」

エヴァン「パン持って来た。一緒に食べよう」

エルサ「うん」


エヴァン「…」

エルサ「どうかした?」

エヴァン「いやあ。ひどい寝ぐせだと思って」クス

エルサ「…っ」カア//

エヴァン「珍しいね。遅くまで起きてたんだ?」クシャ

エルサ「……うぅ。ま、まあ、…うん…」

エヴァン「そっか。お疲れさま」ワシワシ

エルサ「…も、もうちょっと優しく撫でられないの?」

エヴァン「ん、分かった」ナデナデ

エルサ「…ん…」


エヴァン「俺にできることがあれば言ってくれよ。エルサの力になりたいんだ」

エルサ「…う、うん。ありがとう」

エヴァン「ああ」ニッ

エヴァン「それに、この村は、まだまだ大変なところだもんな。今が踏ん張りどころだよな」ウン

エルサ「…」

エヴァン「うが、お腹空いた…なあ、早くご飯にしよう」

エルサ「…」

エヴァン「…ってエルサ? どうかした?」

エルサ「へ? あ、い、いえ。何でもないわ」コホン


エルサ「(…そうよね。テレオの村は今、かつてない危機にある)」

エルサ「(お父さまから受け継いだ物語に心を奪われ過ぎたかしら。
      …あのように円満な解決なんて、本当に——まるで夢物語…)」

エヴァン「えい」クシャ

エルサ「わぷ」

エルサ「も、もうっ。そんなにしつこく撫で回さないで…」

エヴァン「だって、なんだかいつものエルサじゃないみたいだからさ」

エヴァン「…なにか悲しい夢でも見たの?」

エルサ「…そう言うわけでは、ないけれど」

エヴァン「…そう。まあ、ほら。ご飯を食べなきゃ始まらないし! とりあえず食べよう!」

エルサ「…そうね」クス


ガサ

エルサ「……これは?」

エヴァン「うん? あ、それ、エルサも好きだろ?
      せっかくだし、パンと一緒に持って来たんだ」

エルサ「…」

エルサ「…ふふ」

エヴァン「?? 今日は何だか、本当に変だなー」

エルサ「…ごめんなさい。何でもないの。…ちょっと、ほっとしただけ」

ガサ…

エルサ「(私が見たのはほんの夜明け前の夢…
      けれどたしかに、彼らはこの村を救い、私に——とても大切なことを教えてくれた…)」


サクッ


エルサ「…」モグ

エルサ「おいし」







ダダッ ダッ


エーブ「賢狼を名乗るだけはある。何とか夜明け前にはテレオに戻れそうだな」

ホロ『くふ。ぬしに褒められるのは何だかこそばゆい』

エーブ「奇遇だな。俺も体の芯が何だか痒い。らしくないことはするもんじゃないな」

エルサ「…」ハア…

エルサ「あの、ホロさん」

ホロ『んむ』

エルサ「…一つ、聞いても…」

ホロ『…ふむ。何でも聞きんす』


エルサ「…あなたは、…あなたが。神なのでしょうか」

エーブ「…」

ホロ『ふむ』

ダッ

ホロ『たしかにそう呼ばれることもあった』

エルサ「で、では」

ホロ『わっちをどう捉えるかはぬし次第じゃ。しかしの』

ダダッ

ホロ『いまわっちは、ある男のせいでこうして必死に野を駆けておる。それも二人も背に乗せて』

エーブ「感謝の祈りでも捧げようか」

ホロ『たわけ』


ホロ『わっちが神ならぬしも相当神でありんす』

エルサ「え?」

ホロ『村のため、そして一人の男のために、必死になっておる姿は、わっちらと大差はありんせん』

エーブ「…」

ホロ『「勝手に勘定に入れるな」とは言わぬのじゃな』

エーブ「残念ながら、否定できないもので」

エーブ「…商人は、いつだって、なにに対してだって冷静なんだ。それがたとえ、自分のことであってもな」

ホロ『くふふ。ぬしは狼よりよほど狼らしいの』

エーブ「褒め言葉だと思っておくぜ」

ホロ『んむ。賢狼からの最大の賛辞でありんす。誇るとよい』


エルサ「…」

エーブ「まあ、そんなもんだろう。俺は神の教えに深くはないが」

ホロ『教会に足しげく通っておったのではなかったかや?』

エーブ「くく。信心がそうして分かり易く測れるのなら、こいつだってこんな風に悩んじゃいないだろうさ」

ホロ『んむ』

ホロ『…と、いうわけじゃ。あとは自分で答えを見つけんす』

エルサ「……は、い」


ダダッ


エルサ「…あの、見当違いな言葉かもしれませんが」

ホロ『ん?』

エルサ「この村に来てくれて、どうもありがとうございました」

ホロ『…』

エーブ「ははっ」

エルサ「いろいろと助けられました」

ホロ『礼なら、あとであのお人好しにたっぷりしてやってくりゃれ』

エーブ「まだ生きてればな」

ホロ『縁起でもないことを言うものではありんせん』クックッ


エーブ「さて。そろそろ夜明け…この夢からも覚めるべき頃合いだ」

ホロ『んむ。ついでにあの村にも目を覚ましてもらおうかの』

エルサ「…はい」

エーブ「これからが肝心だ。せいぜい、村の聖職者として再興に励むんだな」

エルサ「…」コク

ホロ『夜明け前の夢は、これで終い。あとは自分の足で前に進むのじゃな』

エルサ「はいっ」

投下終了。
ここまでで、とりあえずの本編終了です。
数日中にエピローグの投下予定、それでおしまいです。


+幕間+


ガラガラ…


ホロ「…」サクサク

エーブ「…」

エーブ「なあ、ホロ」

ホロ「にゃにかや?」モグ

エーブ「…悪い、飲み込んでからでいい」

ホロ「そうかや」モグモグ

サクサク…

ホロ「…」モグモグ

エーブ「…」


シャグシャグ

エーブ「…」

ホロ「…」モグモグ

エーブ「…」

エーブ「…」イラ

バシッ

ホロ「いたいっ!? な、なにをするんじゃ!」

エーブ「いつまで食ってんだお前」

ホロ「飲み込んでからでよいと言ったのはぬしではないかや!」

エーブ「誰もその皮袋まで勘定には入れてねえよ次々口に放り込みやがって!
    お前の食欲が収まるのを待っていたら日が暮れるんだよ!」

ホロ「なんじゃとー!」


ギャーギャー!


ロレンス「…」

ロレンス「(今日も今日とて騒がしい。しかし…)」

ロレンス「(今日は少し、その喧騒が遠くに感じる)」

ノーラ「…ロレンスさん、どうかなさいましたか?」サク

ロレンス「へ? あ、いえ…あの、あの二人、いつの間にかずいぶん仲良くなったなと…」ハハ

ノーラ「…そう言えば、そうかもしれませんね」サク

ロレンス「…」

ノーラ「…? あっ」

ノーラ「// あの、ロ、ロレンスさんも、どうですか?」スッ

ロレンス「へ。あ、いや、その」

ノーラ「えいっ」

パクッ

ロレンス「むぐ」


ロレンス「…」モグ

ノーラ「どうですか?」

ロレンス「…ええ。甘くて、おいしいです」

ノーラ「えへ」ニコ



エーブ「甘っ」

ホロ「?」サクサク

エーブ「…お前はのんきでいいな。ちっ、渋いぶどう酒でも飲んでなきゃ俺はやってられないぜ…」グビ

ホロ「?? なんだかとにかく、ばかにされたということだけは分かりんす」サクサク


ホロ「…ふう」ペロ

ホロ「それで? わっちになにか用だったかや」

エーブ「ああ、いや、別に。何でもないけど」

ホロ「…なんじゃと?」

エーブ「退屈だったからな。話相手にでもなってもらおうかと」

ホロ「……」

エーブ「なんだよ」

ホロ「ぬしこそ少しのんきなのではないかのー」

エーブ「ああ?」


パサッ

ホロ「くふ。わっちなんかの相手をしておる暇があったら、ロレンスの手でも追いかけておるとよい」

エーブ「…」

エーブ「残念ながら、俺は、みみっちい稼ぎじゃ満足できない性質でな」

ホロ「?」

エーブ「やっぱり空いてる方の手で我慢するなんてのは性に合わん」

スッ


ギュ

パサッ

ホロ「…」ポカン

エーブ「だったらこの方がいいかなと」

ホロ「…」

ホロ「…ふむ。うん。やはりこの馬車には、変り者しかおらんようじゃな」

エーブ「否定はできない」

ホロ「…くふふ」

エーブ「ははっ」







ガラガラ…


ノーラ「…くぅ」

ロレンス「…」ナデナデ

ロレンス「…そう言えば、やけに荷台の方が静かだが…」クル

ロレンス「おや」


エーブ「…」
ホロ「…」


ロレンス「……狼同士、気が合うのかな…」

ロレンス「…」

ロレンス「…さて。三人が起きないように、手綱を握り直すとしよう」

ロレンス「(…こんな風に、平穏な旅が続くといいな)」


ガラガラ…


+テレオ・エルサ編・完+

エルサ「夜明け前の夢」  おわり

以上 エルサ「夜明け前の夢」 でした。

長らくお待たせして申し訳なかったです。レスが大変嬉しかったです。
現行が他にもありますが、そちらも余裕を見て続きを投下したいと思います。

では、お付き合い頂き、ありがとうございました。

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