俺「五千年前の精子の化石?」 女医「そう」 (8)

俺「それが一体俺に何の関係があるって言うんですか?」

女医「それがね、その化石とあなたのDNAが99.9998%一致したのよ」

俺「ええっ!? ほ、ホントですか! 信じられない……」

女医「けれど事実よ、どういうわけかはこれから調べないとわからないけれど」

俺「でも……俺のDNAなんてどこから手に入れたんですか? 俺は提供した覚えはないんですが…」

女医「あなたの父親が、一度DNA検査をしたみたいね、あなたの顔があんまりにも美形だったから、疑いを持ったそう」

俺「父ちゃん…あんなに優しくしてくれたのに…そんなことを思ってたなんて、ひどいぜ……」

女医「検査結果は不一致、要はあなたは父親の子供ではなかったみたいね」

俺「ええ!? そ、そんな……」

女医「あなたの父親は、奥さんを問い詰めたそうよ、誰の子供なんだって」

女医「けれど彼女はあなたの父親以外の男性との肉体関係を頑として認めなかった」

俺「……じゃあ一体、僕の父親は誰なんですか?」

女医「それがね、後日あなたの母親もDNA検査を受けたらしいわ、そして結果は不一致だったみたい」

俺「じゃ、じゃあ母ちゃんも僕の母親じゃないってことですか……?」

女医「そうね、けれどあなたが母親のお腹から出てきたのは間違いない、他の子と入れ替わった可能性もどうやらないそうよ」

女医「あなたは……一体なんなの?」

俺「し、知りませんよ! 俺だって……」

女医「けれどあなたのご両親の証言を全て信じるなら、あなたは”処女受胎”によって生まれた人間ということになる」

俺「……そんな、ありえませんよ」

女医「いいえ、あなたは…イエス・キリストの生まれ変わりなのよ、それで五千年前の精子にも説明がつく」

俺「あなたそれでも学者なんですか!言ってる事がめちゃくちゃだ!」

女医「事実の前にはあらゆる学説も価値がないのよ、俺くん」

女医「あなたは五千年前にも生まれて、そしていつの日かオナニーをして、それが樹皮について、琥珀の中に閉じ込められた」

女医「あなたはそうして何回も生まれ変わりを繰り返している存在なのよ」

俺「そ、そんな……俺がメシアだったなんて……」
――
その日から俺の生活は一変した

マスコミが俺の家に毎日のように取材に押しかけた

騒ぎを聞きつけた女が俺の精子を求めて出待ちをするようになった

俺は家の外にも出るに出られず、押し寄せた女の中から適当な女を見繕って体を重ねる日々を過ごしていた……

幼馴染「うう……俺くん大変なことになっちゃったけど、大丈夫かなぁ……」

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