高坂桐乃「……溶けてしまいそう」 (11)
「ねえ、兄貴」
「なんだよ」
私、高坂桐乃には兄がひとり居る。
名前は高坂京介。歳は3つ年上だ。
小さい頃、私は兄貴に憧れていた。
「私のこと、まだ好き?」
「は、はあ?」
憧れと恋心の違いを私は知らぬまま、実の兄である京介に恋愛感情を抱いていた私は、結局のところ兄離れが出来ていなかったのだろうと今ならばわかる。京介は狼狽えながら。
「そりゃ……妹としては好きだけどよ」
「キモ」
「キモくねえ!」
今はこうして妹として好きだと言って貰えることが嬉しい。ついつい憎まれ口を叩いて兄が憤る様を見るのも楽しい。甘えたくなる。
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「兄貴は妹のことが大好きだもんね」
「わ、悪いかよ」
「んー悪くはないけどー」
「けど、なんだよ?」
促してくる兄貴に甘えて私は本音を零した。
「私は『あたし』みたいな妹が居たら困る」
妹モノのゲームは全般的に大好きだけど自分に似た妹が居ると私は複雑な気持ちになる。
それがなんだか今ならわかる。自己嫌悪だ。
「兄妹って、難しいよね」
「なんだよ、それ」
なんか目を合わせていられなくて逸らした。
「なんだろね」
あんまりベタベタしすぎてもおかしいし、あんまりよそよそしすぎてもやはりおかしい。
適度な距離感とひとことで言ってもそれは一概に言えるものではなく、兄妹の数分だけ、様々な接し方があるのだと思う。だからさ。
「兄貴にとっては、あたしが最高なんだよ」
「まあ、否定はしねえよ」
「そんで私にとっては兄貴が最高ってわけ」
「桐乃……」
何その意外そうな顔。たまにはいいじゃん。
「そもそも『あたし』は京介以外の兄貴なんて考えられない。『あたし』の兄貴は京介だけ」
「俺だってそうだよ」
「はい、嘘」
「う、嘘じゃねーし!?」
京介は嘘が下手だ。その証拠を提示しよう。
「あの黒いのに兄さんって呼ばせてた」
「うぐっ……あ、あれは黒猫が勝手に……」
「あやせもお兄さんって呼んでるし」
「それはお前の兄貴って意味だろうが!」
意味なんて知らない。京介はずるい兄貴だ。
「ま、『あたし』もいろんな妹ゲーで可愛い子にお兄ちゃんって呼ばせてるからいいケドさ」
「……さいですか」
「嫉妬しないわけ?」
「俺はお前の『妹』じゃないからな」
それは道理だ。悔しいな。兄貴はずるいな。
「兄貴はいいよね」
「なにが?」
「『あたし』という妹が居てさ」
「自分で言うなよ……」
苦笑しながらも京介は納得したように頷き。
「たしかに、そうだな……俺は幸せ者だな」
そう言って嬉しそうに笑う京介に見惚れて。
「……溶けてしまいそう」
恋に落ちる音は幻聴だと『私』は知ってる。
「は?」
「ち、違うし。私は、『あたし』じゃない」
もうあの頃とは違うと言い張る『妹』に。
「お前はいつまで経っても俺の『妹』だよ」
「っ……」
息が、詰まる。思わず心臓を手で押さえた。
嬉しい。嬉しくて死んでしまいそうだった。
今すぐ抱きしめて欲しいケド、欲しくない。
私はもう、憧れない。恋に恋なんてしない。
兄と妹。それは近くて遠い関係性。だけど。
「兄妹だから、そんなの当たり前だろう?」
「……だね」
それは期間限定の恋人よりロマンチックだ。
「京介……」
「どうした、桐乃?」
口から出た声は自分でも驚くほど不安げで。
「私……もう、『あたし』じゃないのに……」
「お前はお前だろう」
「いつまでも、ガキのままじゃないのに……」
時間は止まらない。それでも京介は甘やかす。
「いつまでもお前は俺の妹だ」
俯く私の頭を優しく撫でる兄貴。泣きそう。
「桐乃」
「ぐすっ……な、泣いてないし」
「まだ何も言ってねえよ」
うるさいバカ兄貴。これ以上優しくすんな。
「あの時よりもお前は大人になった。でも俺はまだあの時のままだ。妹のことが大好きで、キモい兄貴のままだ。そんな兄ちゃんだけど、兄ちゃんだから、だからさ……桐乃」
距離感を測りながら、兄貴は妹の私に諭す。
「兄ちゃんの前では『妹』でいいんだぜ?」
「兄貴……」
言われて気づく。『私』は、強がっていた。
「はあ……ほんと、兄貴ってひどいよね」
「え? な、なんか気に触ったか?」
思わず恨み言が漏れる。兄貴はひどい兄だ。
「あんた、また妹から惚れられたいわけ?」
本当に何度間違えたら気が済むのか。私も。
「俺は、死ぬまで桐乃の兄ちゃんだからな」
「……だからなんだっての?」
「だから死ぬまで、大好きな兄貴で居たい」
痛い。痛すぎる。でも、そんな兄貴だから。
「兄貴のそういうとこ、憧れる」
「まあ……普段はダメ兄貴だけどな」
兄貴は頑張ることをやめた。妹に憧れられるヒーローで居ることを諦めた。それでもたまにこうして元に戻る。あたしの兄貴だから。
「さてと。じゃあ、そろそろ……」
「桐乃」
「ん? どったの?」
「お前はかわいいよ。俺の最高の『妹』だ」
「……あんがと」
危篤な兄だ。しかし、価値観は人それぞれ。
「だから、頼む!」
「だめ」
「そこをどうにか! この通り!!」
まるで童貞の兄が妹に筆下ろしを頼むかのように懇願する様は憐れで惨め。私は訊ねる。
「あんたは私にどうして欲しいの?」
「頼むから……」
震える京介の後頭部を上から見つめて、背中の上に乗った私は、ごくりと生唾を飲んだ。
「兄ちゃんにおしっこかけるのだけは……」
「だめ」
ちょろりん氏っ!
「フハッ!」
ああ……私のおしっこで京介が溶けてゆく。
「あんたは一生『あたし』の兄貴だからね」
ちょろろろろろろろろろろろろろろろんっ!
「フハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
ふぅ。すっきりした。私は本当に幸せ者だ。
「うーん! 妹のマーキング最っ高ぉーっ!」
「ねえ、京介。確認なんだケド……」
「なんだ兄ちゃん賢者タイム真っ最中だぞ」
「知るかっての。あんたは私のなに?」
「兄ちゃんは、桐乃の兄貴で便器だぞ」
「ふんっ…………わかればいいっての」
よしよしと調教済みの兄貴の頭を撫でる私はやっぱり自分が嫌いで、こんな妹は可愛くないって思うけど、兄貴ならこう思うだろう。
【俺の妹がこんなに最高なわけがない。】
FIN
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最高で最低な兄妹で草
>>9
最低だからこそ最高。最高だからこそ最低
甘いだけのバニラにソルトを垂らすように
コントラストと捉えて頂ければ有難いです
お読みくださりありがとうございました!
>>10
こういうの好きだし原作読んだの数年前だからなんか懐かしい気持ちになりました
とても面白かった、乙!
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