杉崎「最悪のクロスオーバーじゃないッスか!」 (49)

昔某掲示板に投稿したものを一部修正したものです

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私立碧陽学園
此処は個性的な仲間が集まる不思議な学校。

まずまともな人間は一割にもみたないだろう。

それぞれのが仲間がにかしらの個性をもち、一つのクラスに集められようとも、その個性はぶれる事がない。

そして、不思議なことが常日頃から起こっているのだ。

例えば、昨日あったはずのものが今日には消失していたり、昨日まで居なかった人間が今日いきなりクラスの一員になっていたり。

ただ、その事には誰も気づくことはできない。

だから、これから伝えることは、誰もが創作だと認識するだろう。

だがこれは本当にあった事実だ。

揺るぐことのない事実なんだ。

しかし、誰もが忘れてしまえば、それは虚偽にすらならない。

無になるのだ。

だからこそ、僕は記そう。

誰もが忘れてしまおうとも、この出来事が無になってしまわぬように……



「おい、杉崎。ちょっといいか?」


いつもの2年B組のクラス風景。

つい先程まで現役アイドルにして自称学園1の美少女こと星野巡(これは芸名だが)と戯れていた杉崎鍵が机に突っ伏し体力の回復をはかっていると、横から声をかけられる。
「ん? なんだ。守か」


杉崎に声をかけたのは杉崎が机に突っ伏している原因となった人物の弟である守(本人の意思により苗字はふせる)だった。


「なんだとはなんだ! なんだとは!」

「あーはいはい」

「適当に片付けるな!」

彼の姉にいろいろとやられ、少しストレスがたまっていた杉崎はいつものように軽くからかってやろうと思い、守に向き合ったがそんな考えは一瞬で吹き飛んだ。


「なにかようか?」

「ようやく話をきく気になったか」

「ああ、そんな真剣な顔をされればな」


守の表情は杉崎が見たことないくらいに真面目だった。


「なんか、よくわからないんだが、ヤバい」

屋上へと場所を移して守が最初に言った言葉はそれだった。


「は?」


杉崎は自分でもどうかと思うほど気の抜けた声で守に返した。


「上手く言えないんだが、いろいろとおかしいんだよ!」


「……どんな感じだ?」

守がふざけているように思えない杉崎はとりあえず話を聞こうとした。


「こう、なんか、いつもはふわふわしてるんだけど、最近は妙に刺々しいっていうかさ……」


「うむ……」


しかし、守からの返答はどうにも抽象的でいまいち伝わらない。

杉崎は頭をかかえた。


「いつもの超能力か?」

杉崎が悩んだ末に守に問いかけたのは守の超能力についてだった。

守は超能力が使える。

未来予知、マインドリーティング、サイコメトリー、テレパシー、透視、等々。

しかし、守も人の子だ。
この超能力は効果というか、的中率というか、どうにもそういうものが「微妙」なのだ。


「それともまた違う感覚なんだよ。生物の本能に直接作用するような」


「とりあえず、守はなにがしたいんだ?」


このままでは埒が空かないとふんだ杉崎は単刀直入に守にたずねたのだった。


「ああ、そうだった。杉崎、これを持っておけ」

そう言って守が杉崎に手渡したものは小さな御守りのようなものだった。
数にして3個、紫の布の袋に紐が通してあり、ストラップのような形になっていた。


「これはなんだ?」


「俺があらゆる書物を3日3晩読み上げ作りあげた御守りだ。あらゆる干渉から持ち主から完全とはいかずとも守ってくれる」


杉崎は守から渡された御守りを握りしめ、守の顔を見る。

最近、寝不足気味に見えていたのは間違いではないことに気付き、その原因が自分のためだったことに杉崎は少し罪悪感が働いた。


「ありがとう、守。でもなんで3つもあるんだ?」

杉崎だけならば一つでいいのだ。

しかし、杉崎の手元にある御守りは3つ。

2つ多いのだ。


「残りの2つはお前が信用できて力を貸してくれて、かつ使えるやつに渡してくれ」


守はその問いに眠たそうに答えた。


「は?」

「なにが起こるかはわからない。だけど、確実に不幸なことで、中心にはお前がいる。だったら友達(ダチ)として出来る限りのことはしてやりてぇんだよ」

「守……」


杉崎は感謝と嬉しさでいっぱいだった。

しかし、内面に止めなんとか外にはださなかった。

出してしまえば、同時に涙も溢れてしまいそうだったのだ。


「俺は帰って寝るわ。姉貴にどやされるかもしれないが、いい加減に眠りたいからな」


そういって屋上から出ていこうとする守に杉崎は呼び掛けた。


「守!」


そして杉崎は自然な動きで御守りを一つ守にめがけて投げつけた。


「んあ? っと」


きれいな放物線を描き、御守りは守の手の中に収まった。


「お前が1個持っておいてくれ」


杉崎の気持ちは最初から決まっていた。


「さて、残りの一つだが……」


「や、やあ、杉崎くん! 奇遇だね!」


「……どうした中目黒」

これで杉崎が目の前の少年、中目黒善樹に教室以外で合うのは8回目だった。

一般生徒が放課後にとくに用もなくうろつくことはまずない。

と、なると杉崎と守とのやり取りを覗かれていたのだろう。


「いや、とくに用事ってほどでもないんだけどね……」

「そうか、じゃ、またな」

「ま、まって! 杉崎くん!」


三十六計逃げるにしかず、杉崎は足早にそこを後にしようとするが、中目黒に止められてしまう


「どうしたんだ? 中目黒」


「あ、あのね! 僕は杉崎くんのためならなんでもできるよ!」


「いきなりなんの告白だ!?」


「大丈夫、最初はキツいかもしれないけど、僕、頑張って受け止めるから!」


「お前はなんの話をしているんだ!?」


終始このようにペースを持っていかれた杉崎はいつの間にか御守りを中目黒に渡していたのだった。



「なんだ……これ……」

朝起きた杉崎は異変に気がついた。


「俺は……昨日ちゃんと着替えて寝たはずだ。なんで制服を着てるんだ? それに、どうも記憶がおかしい……」


杉崎は汗を吸ったシャツとワイシャツを脱ぎ記憶を整理する。


「俺はたしか昨日、守から御守りをもらって……いや、携帯を弄ってたか?」


どうにも記憶がおかしい。

杉崎は昨日、確かに守から御守りをうけとっている。

それは杉崎の手首に巻き付けてある御守りがありありと昨日の出来事が真実であると証明している。

だが、杉崎の頭には守と過ごしていたはずの時間と全く同じ時間に携帯を弄っていた記憶もあるのだ。


「……まさかな」


杉崎は変に思いながらも携帯をズボンのポケットから取り出し、使用履歴を調べた。


「嘘……だろ……?」


その携帯は杉崎が守と過ごしていたはずの時間に使用されていた。


「……なにがどうなっているんだ」

学校に登校した杉崎は、自分の教室である『2年C組』の席に座っていた。
おかしい。
絶対におかしい。

杉崎はそう思いながらも教室を出れずにいた。

というのも先ほど2年B組に行き追い出されたからだ。

本来ならば受け入れてくれる人たちからの拒絶ともとれる行為。

杉崎にはすこし堪えるものがあった。


「ずいぶんと暗い顔してるじゃないか、杉崎」


そんな杉崎に声をかけるものがいた。


「ま、守じゃないか! どうしてここにいるんだ!?」


その人物は守だった。


「ばっ、声がでかい! 声が!」


周りからの注目を浴びながらも、気にせず杉崎は守に問いかける。


「いったいなにがどうなっているんだ! ワケがわからん!」


「ああ、もう! すこし黙れって! またいつもの悪ふざけか?」


守がそう言うと、周りの人たちは「ああ、また杉崎が守をからかってるんだな」と口々に呟き、杉崎と守から視線を外した。

しかし、杉崎はさらに混乱した。


「お、おい! どういうことだ!?」


守までもが変わってしまっているのではないか、と杉崎は内心慌てていたのだ。


「場所を変えるぞ」


そんな杉崎に守は冷静に答えた。


「周りの環境が変わっている?」

屋上で守から話を聞いた杉崎は幾分か落ち着きを取り戻していた。


「僕も驚いたよ。教室に行ったら君の教室は隣だよって言われたんだもん」

全く危機感のない声で杉崎が来る前に守に呼ばれて屋上にいた中目黒が言う。

杉崎が幾分かとはいえ落ち着きを取り戻したのは中目黒による影響がでかいだろう。

中目黒は杉崎に心酔とはいかないまでも多大なる信頼をよせている。

中目黒に危機感がないのも、杉崎くんならなんとかできるはず! という考えから来ているものだろう。

このような人の前でだらしのない姿を見せるわけにはいかないと杉崎は気を引き締めたのだ。


「ああ、どうにもおかしい。俺たち三人は2年C組に元からいたことにされていて、俺たちには2年C組で過ごしているという記憶もある」


「それと同時に2年B組で過ごした記憶も変わらずにある、か?」


守が話そうとしていた内容を先に言うことができるほどまでに杉崎は落ち着きを取り戻していた。

「ああ、その通りだ。次になんで記憶が混ざっちまったかというと」


「あ、僕わかるよ! この御守りだよね?」


「……ああ、そうだ」


2回続けて先に台詞をとられた守は不機嫌そうに中目黒にかえした


「次にだが、どうにも今まで杉崎がいたポジションに別のやつがいるらしい」


「は? どういうことだ?」


守の言葉に杉崎はすっとんきょうな声をあげた。

「そのままの意味だよ。一般生徒Sに成り下がった杉崎くんとは別に一般生徒からユーモアあふれる変態生徒会副会長に成り上がったやつがいるんだよ」


「……なんか生徒会副会長の前にいらない前置詞ついてなかったか?」


「さて、なんのことかわかんねーな」


「守くん、なんで一般生徒Sなの?」


「いい質問だ善樹。それはね杉崎だからさ」


「「つまんない」」

二人からバッサリ切られた守は唸ったあとにこう続けた。


「さっきの話だが、変態生徒会副会長ってのはあながち間違いじゃないんだ」


杉崎と中目黒は守を見た。


「どういうことだ、コラ!」


自分がバカにされたと思った杉崎が守にふざけてつかみかかる。


「違う、違う! 杉崎じゃない。成り上がった方だ!」


「どんなひとなの?」


ジタバタと暴れる守に中目黒が問いかける。


「なんか、とにかく節操がないらしい。すこし親しくなると直ぐに体を求めるような感じのやつだ」


「なんだ、そいつは。明らかに俺のような主人公じゃないな」


「お前は主人公じゃないだろ」


「す、杉崎くんは僕の永遠の主人公だよ!」


「お前はなにをいってるんだ!?」


こんなことになってもこのようなやり取りができる三人は親友と呼ぶにふさわしいのだろう。


「そして、一番俺としては辛いのは、姉貴は多分もう毒牙にかかってる」

「巡がか!?」


「ああ……俺の頭に「私、ついに大人の女になったよ!」って言ってニマニマしてた気持ち悪い姉貴の記憶がある」


苦しげに告げる守。


「そんな……巡さんが……」


中目黒が呟く。


「そいつの名前はなんだ?」


杉崎が静かに守にたずねる。


「お前のポジションまで成り上がった奴の名前は……」


「そんな……巡さんが……」


中目黒が呟く。


「そいつの名前はなんだ?」


杉崎が静かに守にたずねる。

「お前のポジションまで成り上がった奴の名前は……」


「名前は?」


「伊藤 誠だ」


守は杉崎の目を見つめて答えたのだった。

リモコンで見たかな。なつい。


ひとまずここまでです。
読んでいただきありがとうございました。

乙です。
つか伊藤って誰?

school daysの主人公で父親ほどじゃないが最低のクズ

あわわ
これは………杉崎知ってるよな

とりあえず期待

これはアカンやつだ……

期待しているよ

そこでスレタイかwwwwww

NiceBoat

まことしねwww

頼むからちづるさんだけはやめてくれよ…

でも誠はとある√ではまともなあるんじゃなかったか。誠というか父親どうしようもない
人類最低の男でその血統はまじで狂ってるからな

ゴミ女に引っ掛かっただけで、かなりまとも
むしろアレなルートがネタ的に馬鹿受けして、調子に乗ったスタッフが悪のりして明後日の方向

だが正直生徒会メンバーがNTRれるとかかなり心にくるな……

パラレルと割り切ればいけるか?
いや時系列にもよるけど杉崎普通にまこと殺しそうだぞ……

最初月島さんかと予想したのは秘密

月島さん……うっ…頭が……

これは見覚えがある
前もここでギブアップしたな
ログ削除っと

「んー、どうやら前までの俺は周りと良好な関係は築けてなかったみたいだな」


杉崎は腕を組み神妙そうに言った。


「あくまで、俺も杉崎も善樹もいきなり見ず知らずの同姓同名に憑依したようなもんだからな」


「それでも前も僕たち三人が仲良しだったのは良かったよね!」


「ああ、一緒にいても怪しまれないから、その点は助かった」


いつものように屋上に集まった三人は現状を整理していた。

最初は混乱したものの、喚いても仕方ないという結論に至った三人は一先ず現実を受け止め、改善することにした。


「現段階、わかっていることは」

「俺たちに今のところ味方はいなくて」

「生徒会や2年B組のみんなと接触するのは難しいってことだね」


杉崎が言おうとしたことを先に守と中目黒が言う。

「そうだな。その通りだ」

杉崎は苦笑して答えた。

「なにはともあれ、伊藤誠に接触しないかぎりには始まらない」

杉崎はそういって立ち上がり教室をでていってから早10分。

守と中目黒は教室で杉崎の帰りを待っていた。


「杉崎のやつ遅くないか?」

「そうだね。時間がかかりすぎかも……」


二人にとって、杉崎の存在は大きく、二人の不安は拭えなかった。


「そういや、生徒会で発行していた小説、途中で止まってたな」

「伊藤くんが書くのがめんどくさいってやめちゃったみたいだね。みんな楽しみにしてたのに……」

「それに、生徒会の仕事が満足にされてないみたいだ」

「8割くらい杉崎くんが一人でやってたからね。毎日残って遅くまで書類を書いて……」

「伊藤はすぐに帰ってるらしい。生徒からの苦情も対処するのは紅葉先輩だけみたいだしな」

「……この学校って杉崎くんに支えられていたんだね」

「かもな……」


二人は深いため息をつき、机に突っ伏した。


「しつれいしまーす。伊藤誠くんいますかー」

自分のクラスのはずなのに堂々と入っていけないことに複雑な気持ちになりながらも杉崎は2年B組を訪れていた。


「ん? 伊藤になにかようか? 私は機嫌が悪いんだ」

杉崎の呼び掛けに応じたのは生徒会副会長、椎名深夏だった。


「深夏……?」


杉崎は狼狽えながら深夏を見た。

杉崎が狼狽えるのも仕方ない。

というのも、深夏はなれないファンデーションで隠してはいるが、目の下にくまができ、健康そのものだった肌はすこし荒れていた。


「ん? 私にあったことあるのか?」

「あ、ああ、いや?」

「答えになってないぞ?」

「……その、大丈夫?」
「なんでいきなり初対面のやつに心配されなきゃならないんだよ?」


二人がはなしていると、二人に誰かが近づいてきた。

「深夏、誰と話してるの?」


「……伊藤」


その人物は杉崎が会おうとしていた伊藤誠だった。

「ん? ああ、君は杉崎じゃないか」


伊藤は杉崎を視界にとらえると納得したようにうなずいた。


「俺を知ってるのか……?」


「当たり前だろ? お前の地位をもらったんだからさ」


「…………」


杉崎は伊藤を睨み付け深夏を見る。


「ああ、私は邪魔だな。向こうにいって寝てるよ」

深夏は伊藤からはなれられると内心ほっとし、この場から離れようとした。


「あ、み、深夏! 今日も待ってるから」


「……くそっ」


深夏は苦虫を噛み潰したような表情をして去っていった。


「……深夏になにをした」

「そうカリカリするなよ。お前じゃなにもできないだろ?」


「…………」


小馬鹿にするように言う伊藤を杉崎は殺しかねない目で睨み付ける。


「ひ、ひぃ! ば、場所! 場所を変えよう!」


伊藤は怯えながら杉崎に言った。

「で、お前はなんなんだ?」

杉崎は怒気を孕んだ声で伊藤に問いかける。


「そうカリカリするなよ。お前、幸せにするとか言っといて手をだしてなかっただろ」

「……お前まさか」

「いや、ガードが固いやつらでさ、なかなかヤれなかったよ」

「…………」

「でも一年の華奢なやつ、なんだっけ? 真冬だったかな? あいつはお前というか俺に惚れてたみたいだからさ、それを上手く使って深夏っひぃ!?」


伊藤が言い終わる前に杉崎の拳が伊藤の顔の横にある壁に打ち込まれていた。


「お、おい! マジになるなよ! だいたいお前」


「君、すこし黙れ」


杉崎はかつてないほどの怒りに震えていた。

それは大切な人を苦しめている伊藤に対する殺しかねない怒りとそれを未然に防げなかった自分に対する怒りだ。


「ふ、ふん。一生そこで泣いてるんだな、じゃあな、凪ぎ男!」


伊藤は自分の命の危機を察し捨て台詞を残して去っていった。


「拳が、痛てぇ……心が、痛てぇ……」


杉崎は消え入るような声でつぶやいた。

「思ったより酷いな……」

「可哀想だね……」


杉崎は教室に戻り、伊藤のことを二人に話した。
守は苦々しい表情を浮かべ、中目黒は瞳に涙を浮かべた。


「とにかく、深夏と話さないことには始まらない」

杉崎は二人をみて言う。

「そうだな。だけどそう簡単にはいかないだろう……」

「うーん……教室に行っても話はできなさそうだよね……」


二人は少し考えた後、答えた。


「そうなんだよなぁ……でも深夏は放課後に運動部の助っ人によくいってたから、しらみつぶしにあたってれば」


「ん? 深夏なら今日は私がマネージャーやってる野球部に助っ人を頼んでるよ?」


杉崎が言い終わる前に横から声がした。



「えーと、クラスの委員長……?」


杉崎は声をかけてきたクラスメイトの女子を見て言う。


「なんで疑問形?」


笑いながら委員長は杉崎を見て答える。


「いや、その……」


杉崎の記憶は彼女が委員長であると告げているが、杉崎にはどうにも他人の記憶のような気がしてならないのだ。


「まあ、いいわ。深夏に会いたいんでしょ? いつもお世話になってるし、会わせてあげようか?」
「ほ、ほんとうか!?」

委員長の言葉を聞き、杉崎は委員長の手をつかみ再び問いかけた。


「え、えぇ、いいわよ……?」


委員長は杉崎の様子をおかしく思いながらも承諾し自分の席に戻っていった。


「ところで守くん」

「ん? なんだ?」

「いつもお世話になってるしってどういうこと?」

「俺たちは雑用3トリオと、このクラスではよばれてる」

「えぇ!? 知らなかったよ……」

「まあ、善樹だもんな」
「どういうこと?」

「……はぁ」


守は深いため息をついた。

「よーし、マネージャー頑張るぞ!」

「いやいや、杉崎くん。試合が終わるまで待っててくれればいいんだよ?」


放課後、杉崎は委員長と一緒に野球部の練習試合に来ていた。

スコアボードの記録や、飲み物の補給などをしようとする杉崎に委員長は戸惑っていた。


「気にしないでくれ、これは俺がやりたいからやるだけだしね。それにマネージャーも委員長一人だけじゃ大変だろ? 今日しかできないけど手伝わせてほしい」


「そ、そう? 杉崎くんって優しいね……?」


彼女の知っている杉崎はこのような人物ではないはずなので、杉崎に戸惑いながらも彼女は杉崎の好意に甘えることにした。


「ははは、美少女には優しく、がモットーだからね。愛の伝道師こと杉崎鍵をよろしくお願いします!」


「え、えぇ!? 美少女だなんて……」


「あれ? ボケはスルー?」


顔を赤くして下を向く委員長に杉崎は思わず言う。

ツッコミが来ると思っていたため反動はでかく、なにやら恥ずかしくなり杉崎はそっぽを向いた。

「あ、あれ! 深夏じゃないかな!?」


なんとも言えない空気の中、委員長が遠くに見える人影を指差し叫んだ。

「お、おう! そうだな! あれば深夏だ! ちょっと行ってくる!」


杉崎もそれにつられ、なぜか叫ぶように言い、深夏の元へと向かった。


「おーい、深夏!」

「んあ? ってお前は今日、教室にきたやつじゃないか」


杉崎が深夏にかけより話しかけると、深夏はきょとんとして声を返した。

「ああ、実は話があるんだよ」


「話し? これから試合だし、それが終わったら行きたくもない場所にいかなきゃならないしな」


深夏は心底嫌そうに言うと、杉崎から目を反らした。


「まあ、そういう話は後にして、まずは試合を楽しんでほしい」

「は?」


杉崎の言葉にすっとんきょうな声をあげる深夏。

「何か一つに熱中してるときってさ、他のこととか一時的に忘れられて、メンタルのケアになるんだよ。俺もエロゲやってるときとかってそんな目で見ないで! とにかく試合を楽しんでくれ。これ、バットとグローブとユニホームね。それじゃ!」


「お、おい!」


一気にまくし立てるように言う杉崎に深夏は戸惑いなにもできなかった。
結果、深夏の手元には野球道具一式となんともいえない感情が残った


「あいつ……今日、初めて会った気がしないな……前の伊藤みたいな……伊藤は、変わっちゃったよな……」


深夏は遥か前方を走っていく杉崎を見ながら消え入るような声で呟いた。


カキーン!

心地よい金属音と共に相手投手の鍛え抜かれた右腕から放られた白球は青空へと消えていった。

今日目にする5回目の光景に杉崎はあきれながらもスコアブックに記録した。


5打数5安打5本塁打12打点

「相手チーム戦意喪失してるなあ……」


杉崎は目に光の宿らない相手チームの選手たちに哀れみの視線をおくると、満面の笑顔を浮かべながらダイヤをまわる深夏を見て微笑んだ。


「まだ、笑えるんだな。なら、希望はあるよな……?」


杉崎は誰に問いかけるわけでもなく呟き、スコアブックを書きながら、深夏と話すシミュレーションを始めるのだった。


「ほら、深夏。タオルだ」

試合が終わり、杉崎は深夏にタオルを渡す。


「おー、サンキュってやっぱりいらないわ」


深夏は杉崎からタオルを受け取り、汗を拭こうとしてやめた。


「ん? なんでだ? 汗かいたままだと気持ち悪いだろ?」

「それがいいって言う気持ち悪い変態がいるんだよ……」

「……そうか」


杉崎は深夏の言葉で察し、小さく呟いた。


「で、話ってなんなんだ?」

「ああ、これは確認になるんだが、深夏は伊藤になにかされてるんだろう?」

杉崎が深夏を見つめて言う。

その表情は真剣そのものだ。


「…………」

「無言は肯定とうけとるからな?」

「……勝手にしろ」


深夏は地面を見つめながら小さな声で答える。


「これは予想だが、深夏が伊藤の言いなりになってるのは、真冬ちゃんが関係してる。違うか?」
「ち、違う! 真冬は関係ない!」

「ありがとう深夏。それだけで十分だ」

「お、おい!」


グラウンドから出ていこうとする杉崎の肩を深夏が勢いよく掴み、振り返らせる。


「余計なことはするな! お願い……だから……」

「君は、なんでも一人で抱え込んで解決しようとする。それは立派なことなのかもしれない、でもそれは自分を永遠に傷つける。君は、辛いって言えばいいんだ。助けてくれって言わなきゃいけないんだ。じゃなきゃ、君は人知れず潰れてしまう」

泣きそうな声で訴えかける深夏を優しく抱きしめて囁くように言う。

「……て」

「聞こえないよ」

「助けて! もう嫌なんだ!」

「わかった。任せてくれ」

杉崎の決意は揺るぎようのないものへとなったのだった。

誠は(アニメだと)いやな屑だけど原作一部ルートではカッコイイとこもあるんだよな…

個人的には、本当に「[ピーーー]」と言われるべきなのは誠よりもまず父親の方だとおもうんだ。
あいつはガチで救いようのないクズの中のクズだからな…

「さて、深夏を助けると言ってから早2日。まともな成果をあげれてないわけだが……」

「いっそのこと伊藤の首をかっ切るのはどうだ?」

「守くん、それトラウマものの出来事だよね」


杉崎、守、中目黒の三人はいつものように会議を行っていた。


「うーん……現状はあまりよくはないな……」

「だけど動かないとはじまらないぞ?」


頭を抱える杉崎に守が声をかける。


「そうはいってもな……」

「俺も姉貴に毎日アタックしてる。伊藤はまずい」

「なんだ? ついに姉攻略に身を乗り出したのか?」

「違うわ! とにかく、なにもしなきゃ始まらねぇ。終わってからじゃ遅いんだよ」


真剣な眼差しで守が杉崎を見る。


「わかったよ。とりあえず真冬ちゃんに会って話してみるよ」





「僕って空気?」

中目黒が小さくつぶやいた。

放課後、杉崎は廊下で真冬をつかまえて話していた。

「えっと、どなた、でしょうか……? 先輩の方は生徒会の人しか知らなくて……」

「あ、ああ。ごめんね、俺は杉崎鍵。君は椎名真冬ちゃんでいいよね?」

戸惑う真冬に内心ショックを受けながらも表にはださず杉崎は優しく話しかけた。


「は、はい。えっと、なんでしょうか?」

「簡単な質問したいんだけど、真冬ちゃんって伊藤と付き合ってるの?」
「う、うぇ!? まままま、まさか! そんなわけないですよ! それに、一度きりでそれ以来あまり構ってくれなくなりました……って私はいったいなにを言って!?」


「落ち着いて、ありがとう。聞くまでもなかったみたいだね」


目を渦巻きにし、慌ててなにを言っているのかわからないであろう真冬をみて杉崎は壊れそうな微笑みを浮かべて真冬を宥めた。


「え、えと、杉崎……先輩……?」


「なにかな、真冬ちゃん」


「あんまり、無理をしないでください。いまにも壊れそうです」


真冬の言葉を聞き、目を丸くして驚いたあと杉崎は答えた。


「大丈夫。俺は、皆が大好きだから……」


「へ?」


頭にハテナマークを浮かべる真冬を残して杉崎はその場を離れた。

「……できれば入りたくないな」

杉崎は1年C組の扉の前にたっていた。

この世界では本になっていないからわからないかもしれないが、このクラスは真冬ちゃんが好きすぎて犯罪スレスレの行為すら行う危ないクラスだ。


「だからこそ、味方につけやすくて心強いのだけれど……」


胃に穴が開きそうな思いで深くため息をつくと、杉崎は扉を開け放った。

「たのもー!」


杉崎が大声を上げて教室に入ると中にいた人が全員杉崎をみた。


「んにゃ? 私たちの教室になにかようかにゃ?」

そんな杉崎に真っ先に声をかけたのは猫耳をつけたいかにも電波な女の子。

杉崎は胃が締め付けられるような感覚に陥ったのだった。

「疲れた……」


杉崎は満身創痍で歩いていた。

1年C組の面々になんとか協力は取り付けたものの、彼らたちは一癖も二癖もあり、簡単にはいかなかった。

とくに一際目立っていたのは皆にチートと呼ばれていた猫耳の女の子だ。
最終的にはなぜかクイズ大会になり、あの女の子は最初の一言を聞いただけで答えていた。

それでも正解するのだからどうしょうもない。


「何はともあれ一歩前進っと」


杉崎は笑みを浮かべて呟いた。

いつもの生徒会室。

いつもならば五人いるのだが、今日も二人しかいない。


「会長、そろそろ休憩しません?」

「伊藤はなんか不真面目になっちゃったよね」

「いやいや、これが普通ですよ。俺はやりたいようにやります」

「うぅ……」


会長こと桜野くりむは唸った。

今までは伊藤(正確には杉崎だが)が率先して仕事をしてくれていたため、休憩時間なども確保しやすく、ただ駄弁るだけの活動だったのだが、伊藤が働かなくなったため多大なしわ寄せが起こっていた。

故に、今まで通り過ごすことはできなく、仕事を消化しなければならなくなっている。


「(私たちは伊藤に全部任せて仕事をしなかったから、伊藤は呆れちゃったんだ……)」


この事について、くりむは責任を感じていた。

自分たちがちゃんと仕事に取り組んでいたら、こんなことにはならなかったのではないのか、と。

「会長」


「ふ、ふぇ!?」


そんなことをくりむが考えていると伊藤が唐突に声をあげた。


「な、なに?」


「会長……」


伊藤は笑いながらゆっくりとくりむに向かって歩き出した。

「会長……」


「い、伊藤……?」


ゆらゆらとに近づいてくる伊藤に対する恐怖がくりむの瞳に宿る。


「会長、もう我慢できません……会長っ!!」


「い、いやぁああ!?」

伊藤はくりむを勢いよく机に押し倒す。


「い、伊藤! やめて、やめて伊藤!」


「会長、会長、会長」


「や、やめっ……だ、誰かぁ……」


くりむは泣きながら助けを求めるがそれは伊藤を興奮させるだけだった。

「はぁ、はぁ、会長……切ないんです、会長……っ!」


「そんなの知らなっ、いっいやぁあああ!!」


伊藤は強引にくりむのワイシャツのボタンを引きちぎると、下着に手をかけた。


「あやまるから! 何かしたならあやまるから!」

「う、うるさい! だ、だまってヤられてればいいんだ!」


伊藤は手加減せずにくりむを殴り付ける。


「う、あっあぁ……」


くりむは小さく呻くと伊藤が『満足』するまで言葉を発しなかった。

今日はここまで

最近忙しくてなかなか更新出来ませんでした

乙乙
あくまでパラレルなんだよな?

そう思えばある程度は落ち着いて見れるけど……

こないな

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