勇者「ごめんみんな。死んでくれ。」(284)
勇者SSです。
スレ立ったらPCから書きます。
王「久方ぶりだな、勇者よ。そなたの妹が亡くなってから、旅に出たと聞いていたが・・・」
勇者「魔王が現れたと聞き、世界の危機を感じ舞い戻った次第です。」
王「よくぞ言ってくれた勇者よ。そなたこそ真の勇者だ。」
勇者「・・・いえ。」
王「伝説にはこうある。」
ー魔王現れしとき、また勇者も産まれ出でん。
深い闇と目映い光。
彼の者其を倒すとき、世界は一つとなり永劫の平穏が約束されん。
勇者「僕も、よく知っています。」
王「そうであったな。歳をとると話が長くなっていかん。
まずは酒場に行き、仲間を雇うがよい。契約にかかる費用は全て国が持つゆえ、腕利きの傭兵を連れていくとよかろう。
生憎、城の兵士なぞより余程実践経験が豊かだろうからの。」
勇者「お力添え、ありがとうございます。では、行って参ります。」
王様「まあ待て、折角の門出だというのにそんなに急ぐものではない。
・・・大臣、あれを。」
大臣「は。」
勇者「この宝剣は?」
王様「兵団長・・・亡くなったそなたの父上より、そなたがいつか旅に出るとき、渡すように頼まれていたのだ。」
勇者「父が・・・」
勇者は宝剣を鞘から抜こうとした!
勇者「・・・抜けない?」
王様「城の者が何人束になろうと抜けなかった剣だ。
しかし国の英雄とまで呼ばれたそなたの父の言葉だ。
何か訳があるのだろう。持っていきなさい。」
勇者「わかりました。確かに。」
王様「うむ。そなたの旅に必要な道具や貨幣も、全て酒場の女将に預けてある。
心して行けよ。道中、そなたに神の加護があらんことを。」
勇者「・・・ありがとうございます。王様。」
城下町、酒場
女将「いらっしゃい。あなたが勇者ね。初めまして。私がここを仕切る女将よ。」
勇者「はじめまして。」
女将「早速だけど、いま酒場に登録している腕利きの傭兵のリストを作っておいたわ。
目を通して、気に入ったら連れておゆき。」
勇者「申し訳ありませんが、僕は自分の目で確かめたいのです。自分の背中を預ける仲間ですから。」
女将「わかったわ。じゃあ、あなたのお眼鏡にかなう子はいるかしら?」
勇者「・・・(強い意思を秘めた瞳、傷の少ない盾。まだ実践経験は少なそうだけど、彼なら、きっと。)
・・・あそこに座っている若い戦士を。」
女将「え、いや確かにいい子だけど、彼より強い戦士は他にいるわよ?」
勇者「いいんです。それと・・・
(気丈に見えるけど、襟の大きいローブで表情を抑えている。
手にはめたグローブは所々焦げていて、炎系を得意としている、か)
・・・そこの魔法使いさん。」
女将「え、ええ・・・」
勇者「あとは・・・
(慈愛に満ちた目、そしてあの法衣は、水の加護が強く宿っている。もしかしたら・・・)
・・・あの女性を。」
女将「悪いけど勇者くん。あなたが選んだ子達は実践経験も豊かじゃなく、戦いを生き延びるしたたかさも持ち合わせてないわ。
いくらあなたが勇者でも、このパーティじゃ」
勇者「女将さん。」
女将「ひ、はいっ!」
勇者「僕は共に戦う仲間を選んでるんです。
それは強さよりも、確かな思いの方が重要なこともあります。僕は、彼らと旅をしたい。」
女将「わ、わかったわ。それじゃあ、戦士くん!魔法使いちゃん!僧侶ちゃん!勇者様からご指名よ!」
客達「おいおい・・・マジかよ・・・勇者様は死ににいくつもりか・・・世界の命運がかかっているというのに・・・」
戦士「ありがとうございます。勇者殿。必ずや、あなたの剣となります。」
魔法使い「よろしく。勇者さん。」
僧侶「私なんかでよろしいのですか?」
勇者「みんな、僕が選んだパーティだ。このパーティでダメだったら、それは僕がダメだったってことだ。
これから、命をかけてもらうこともあると思う。だけど、みんな強い気持ちがあってここにいると思うんだ。」
三人「・・・」
勇者「僕は君達の剣であり、盾になる。足りないところは補ってほしい。これから、どうかよろしく!」
三人「はいっ!」
女将「確かに、こうしてみればいいパーティかもしれないわね。それじゃあ、これ。」
パーティは城の標準兵装を装備した!
10000G手に入れた!
女将「それじゃあ、頑張ってね!」
一同「はい!」
パーティが去った後、酒場
女将「・・・(あの時の勇者くんの眼光・・・あれが勇者の持つ強い心なのかしら。
でも、それにしてはあまりに、冷たく・・・)
まあ、思い過ごしね!
みんな!今日はめでたい日だから、全部ツケでいいわよ!」
客達「ツケかよ!!」
女将「・・・(そうよね、きっと杞憂だわ。きっと・・・)」
城下町、入り口
戦士「では勇者殿、まずはどちらに?」
勇者「魔王の居場所はわからないけど、魔物は東の大陸から侵攻してくると聞いてる。
だから、まずは東の大陸で情報を集めるために、この大陸の東にある港に向かうつもりだよ。」
僧侶「私で本当に大丈夫なのでしょうか・・・」
魔法使い「あんたは昔から弱気ね。だからダメなのよ。」
戦士「二人は知り合いなのですか?」
僧侶「ええ、東の孤児」
魔法使い「ただの知り合いよ。深い繋がりはないわ。」
僧侶「魔法使いちゃん・・・」
勇者「僕たちももっとお互いに信頼し合えるようにならないとね。
それじゃあ旅立とう!」
城の東平原
戦士「たあっ!!」
戦士の攻撃!あばれうさぎに7のダメージ!
魔法使い「火球魔法!」
魔法使いは火の玉で攻撃!カラスこぞうに10のダメージ!
あばれうさぎの攻撃!
戦士「うわっ!」
戦士に7のダメージ!
僧侶「小回復陣・・・!」
戦士は体力が15回復した!
勇者「いいか、戦士くん。あばれうさぎはダメージを受けると攻撃力が上がる。
小さなダメージを別けて与えるより、集中して・・・」
勇者の攻撃!あばれうさぎに20のダメージ!あばれうさぎを倒した!
戦士「すごい・・・」
勇者「魔法使いさんの方は・・・どうやら大丈夫みたいだ。」
魔法使いは閃熱魔法を放った!
モンスターの群れを倒した!
戦士「勇者殿は、強いですね。」
勇者「いや、それは違うよ。僕は弱い。」
戦士「そんなこと!さっきだってあばれうさぎを一撃で!」
勇者「僕はね、弱いから工夫するんだ。だからどうしたら強い敵に勝てるかを考えてる。」
戦士「でも、自分にはない強さです。自分は馬鹿みたいに向かっていくことしか出来ませんから・・・」
勇者「・・・戦士くんは、それでいいと思うよ。それはきっと、僕にはない「勇気」だから。」
戦士「え・・・? でも、勇者殿は、「勇気ある者」なのでは?」
勇者「それはお伽噺の中だけ。僕はとても怖がりなんだ。
確かに、もっと強くなれば僕にしか使えない魔法や、僕にしか装備できない武器があるかもしれない。
でも、それだけなんだ。力は戦士くんに敵わない。魔力は魔法使いさんや僧侶ちゃんに敵わない。それが勇者なんだよ。」
戦士「・・・勇者殿がなんと言おうと、自分は勇者殿は勇気ある者だと思っています。」
勇者「はは・・・ありがとう。」
僧侶「勇者様は、なぜ私たちを選んだのでしょうか。」
魔法使い「さあ。わからないけど、でも勇者といれば魔王に近付ける。
それは私にとって何より重要なこと。
そのチャンスが巡ってきたんだから、私は何がなんでも魔王まで辿り着くわ。」
僧侶「魔法使いちゃん・・・やっぱり、まだ」
魔法使い「僧侶?」
僧侶「あ・・・うん、ごめんなさい。」
魔法使い「もう寝ましょう。明日中には、次の村へ着かないといけないんだから。」
僧侶「そうですね。少しでも足を引っ張らないようにしないと!」
西の大陸、東の村、村長宅
村長「どうかお願いします!このままでは、村の食料が無くなってしまいます!」
勇者「わかりました。僕達が洞窟へ行って、その魔物の群れを倒してきます。みんなも、いい?」
戦士「もちろんです。」
魔法使い「回り道だけど、仕方ないわね。」
僧侶「困ってる人々を助けるのが、神の僕たる私の仕事です。」
勇者「よし、ちょっと準備をしたら早速行こうか!」
村の北、毒の沼地に覆われた洞窟
勇者「みんな気を付けて。ブーツに村で買った油を塗るんだ。そうすればある程度毒をはね除けられる。」
僧侶「本当に勇者様は物知りなのですね。」
勇者「僕も、ただ聞きかじっただけなんだけどね。」
戦士「おおっ!すごい!泥を弾いてる!」バシャバシャバシャ
魔法使い「ちょっと!あんたは少し落ち着きなさい!」
勇者「はは。あれが彼のいいところだと思うよ。」
魔法使い「まったく・・・さ、油が切れないうちに先を急ぎましょうか。」
洞窟、中腹
戦士「かえんぎりいっ!」
どくどくフロッグに22のダメージ!
どくどくフロッグを倒した!
戦士「やっぱり剣を持ってれば魔法のイメージがしやすいな!」
魔法使い「あんたは単細胞なだけ。ほら!倒し損ない!」
戦士「おお!?」
腐りスライムの攻撃!戦士に2のダメージ!
魔法使い「言わんこっちゃない!火炎球魔法!」
腐りスライムに42のダメージ!腐りスライムを倒した!
僧侶「みなさんすごいですねえー。はい、小回復方陣。」
パーティの体力が回復した!
勇者「みんな、戦いに余裕が出てきたね。僕も頑張らないと。」
戦士「何を言ってるんですか。一人で三体も倒しておいて!」
魔法使い「本当に。息も切らさずに立て続けですものね。」
勇者「いや、あの魔物は一端距離を取ったあとに三体で群れをなしてチームプレイで迫る習性があるんだ。
それをやられる前に一匹目を倒せば、その瞬間にバランスが崩れるんだよ。」
戦士「はー・・・」
僧侶「凄いです!なんで勇者様はそんなに色んなことにお詳しいのですか!?」
魔法使い「確かに。ちょっと並の知識じゃないわね。」
勇者「大したことないよ。お・・・本を読むのが好きでさ、色んな冒険譚とか、図鑑とかよく読んでたんだ。」
僧侶「もし世が世なら、学者さんになれたかもしれないですね。」
勇者「・・・そうかも、しれないね。」
僧侶「あ・・・私失礼なことを・・・」
勇者「いや、こんな世界だからこそ、僕たちは早く魔王を倒さなきゃいけないんだね。」
魔法使い「・・・そうね。魔王を倒さなきゃ、何も、誰も救われない。」
戦士「そうですね。俺も、その気持ちは同じです。」
勇者「みんな。早く洞窟の主を倒して、おいしいものでも食べよう!」
一同「はい!」
洞窟最深部、魔物の群れの長の部屋
魔物「グルルルルル・・・」
勇者「みんな、静かに構えて。音に反応して飛びかかってくるよ。
僕と戦士くんで前衛、僧侶ちゃんは中衛で回復方陣を張って。
魔法使いさんは後衛から範囲魔法で弾幕を張って牽制。合図と同時に行くよ。
・・・3、2、1、いまっ!!」
魔法使い「火球礫魔法!」
しかし魔物は全弾をかわしていく!
勇者「これで動線が限定された!戦士くんは左を!僕は右から叩く!」
戦士「うおおおっ!しんくうぎりっ!!」
勇者「しっぷうづき!!」
二方向からの連携攻撃!
しかし魔物は大きく跳躍し、天井を蹴って方向転換した!
勇者「なっ!僧侶ちゃん危ない!」
魔法使い「くっ!閃熱放射魔法!」
熱の壁に体毛を焦がしながら魔物が突撃してくる!
僧侶「きゃあああっ!」
僧侶に56のダメージ!
魔法使い「うっ!」
魔法使いに32のダメージ!
戦士「このやろうっ!」
戦士の攻撃!魔物に30のダメージ!
魔物は距離を取った!
勇者「僧侶ちゃん!傷が深い・・・中回復陣!」
僧侶と魔法使いの体力が少しずつ回復していく!
勇者「戦士くん!一分だけ一人でなんとか持ちこたえてくれ!」
戦士「わかりました!やってみせます!」
魔物「くがあぁああっ!!」
洞窟最深部、パーティが戦闘を開始して一時間後
勇者「く・・・は・・・つよ、いな・・・」
戦士「これは・・・ちょっと、まずい、ですかね・・・」
僧侶「魔力がもう・・・残り少ないです・・・」
魔法使い「・・・」
僧侶「魔法使いちゃん!しっかり!」
魔法使い「・・・ぶつぶつ・・・聞こえてる、わよ・・・
勇者、少しだけ、あと少しでいいから時間を稼いで。そうしたら必ず、私があいつを倒すから。」
勇者「・・・それは、自己犠牲呪文じゃないよね?」
魔法使い「魔王倒すまで死ねないの・・・これから出すのはとっておきよ。」
勇者「わかった。僧侶ちゃん。」
僧侶「これが、最後です・・・小回復方陣!」
パーティの傷が少し回復した!
戦士「よし、いきますか。」
勇者「たのんだよ、魔法使いさん。いやああああっ!!」
戦士「うおおおおっ!!」
勇者と戦士の攻撃!勇者の剣が魔物の足を捕らえる!
魔物「ぎゃうっ!」
戦士の剣が魔物の脳天を捕らえる!
しかし魔物に寸前でかわされてしまった!
勇者「まずい!」
魔物の牙が魔法使いに向かう!
戦士「間に合わない!」
僧侶「水流射出魔法、極小!」
僧侶から放たれた水が針のように魔物の足に刺さる!
僧侶「魔力がほとんど無くても、水の出口さえ狭めれば貫通力は有ります!」
魔法使い「よくやったわ僧侶!みんな地面に臥せて!火炎爆発魔法っ!!」
爆風と炎が魔物を包む!
魔物「ぎゃおあおおおおっ!!」
魔物の長を倒した!
勇者「・・・僧侶ちゃん、よく思い付いたね・・・」
僧侶「勇者様が頭を使って戦うことを教えてくれたお陰です。」
戦士「にしても最後の魔法、すごかったな・・・」
魔法使い「お陰で、魔力は小火球魔法一回分しかないけどね・・・脱出魔法も唱えられないわ。」
勇者「ん?あれは・・・」
勇者は何かを見つけた!
なんと部屋の小さな横穴から小さな魔物が沢山飛び出してきた!
小さな魔物たちは魔物の長の亡骸に寄り添っている!
僧侶「もしかして魔物は、子供たちの餌を取りに村を・・・?」
勇者「この周りは毒の沼地だったから、恐らく食べるものが育たないんだろうね。」
戦士「で、でもこいつを倒さなきゃ村の人達だって!」
勇者「そうだね。仕方なかったんだと思うしかないよ。」
魔法使い「どいて。そのくらいの魔物なら、私の残りの魔力でも一掃できるから。」
僧侶「魔法使いちゃん・・・?」
戦士「おい!流石にそこまでは!」
魔法使い「この魔物も放っておけば成長して、また人間を襲うかもしれない。そうなる前に、やるのよ。」
勇者「・・・」
僧侶「魔法使いちゃん、あの時のことは・・・」
魔法使い「あんたは黙ってて!!どきなさい!!」
戦士「ちょっといい加減にし」
魔法使い「あんたにはわからないでしょうね!
自分の親を、村を、魔物に滅ぼされたこともないあんたに!」
僧侶「魔法使いちゃん!」
戦士「お前・・・」
魔法使い「・・・もういいわ。少し休んで、魔力が戻ったらこんな洞窟すぐに出るから。
・・・ちょっと一人にして頂戴。」
戦士「待てって」
勇者「戦士くん。」
戦士「勇者殿・・・」
勇者「少し一人にしてあげよう。もう魔物の長は倒したし、洞窟の魔物もほとんど倒した。一人でも大丈夫だよ。」
戦士「はい・・・」
僧侶「勇者様。」
勇者「なんだい?」
僧侶「ちょっとお話よろしいですか?」
僧侶「私と魔法使いちゃんは、孤児院で育ちました。
私はもう、物心ついた頃から院にいたので親の記憶はありませんが、魔法使いちゃんが院に来たのは8歳の時でした。
院長のシスターに聞いた話では、彼女の村は魔物に滅ぼされたそうです。」
勇者「それは、さっき魔法使いさんが言ってたことだね。」
僧侶「はい。私とは歳が近いこともあって話すようになったのですが、他の子とは全く打ち解けずに。
・・・14歳の祝福の儀の時に、「私は魔物を倒す力が欲しいの!僧侶になんかなりたくない!」と言って出ていってしまって。」
勇者「・・・」
僧侶「私も16になって修行のために旅をすることになり、1年前にあの酒場に登録しました。
その時4年ぶりに合った魔法使いちゃんは、昔よりもっと刺々しくなってて・・・
最近はそれも落ち着いてきていたんですけれど。」
勇者「・・・やっぱり、か。」
僧侶「え?」
勇者「いや、なんでもないよ。でも、家族を失うっていうのは、とても悲しいことだ。僕も、わかる。」
僧侶「勇者様も、まさか。」
勇者「ん・・・母は僕を産んですぐ亡くなって、父も僕が小さい頃魔物との戦いで亡くなって。
双子の妹がいたんだけど、もう、会えないところに行ってしまったんだ。」
僧侶「私ったらまた・・・」
勇者「・・・いいんだよ。僕もこうやって、踏ん切りがつかないでいるんだ。」
戦士「あ、勇者殿。僧侶は?」
勇者「魔法使いさんを探しにいったよ。戦士くんも、お疲れ様。」
戦士「・・・勇者殿。」
勇者「ん?」
戦士「自分は・・・俺は、弱いですね。さっきも寸前で、パーティを全滅させるところだった。」
勇者「きみは、思ってる程弱くないよ。」
戦士「でも・・・俺は、逃げたんです。あの時も・・・」
勇者「あの時?」
戦士「・・・小さな頃、俺は父と山に剣の修行に行ってました。
ある日いつも通りに修行場へ行くと、そこに今まではいなかった変なローブを着たやつがいたんです。」
勇者「ローブ姿・・・もしかして、魔族?」
戦士「たぶん、です。父は隣国で師団長を勤めていたこともあり、腕は確かでした。しかし、魔族はそんな父を圧倒していました。」
勇者「魔族は魔物よりも純粋な魔だからね。父君が勝てなくても、無理はない。」
戦士「父は、震えて見てるだけだった俺を逃がすために、魔族に特攻を仕掛けました。
自分はその隙に山を駆け降りましたが・・・父は二度と、帰ってきませんでした。」
勇者「それは、辛い話だね。」
戦士「勇者殿も、少し俺と同じ感じがします。自分の勘違いでなければ、ですが。」
勇者「僕は、妹がね。」
戦士「そうですか・・・こんな泣き言を言ってる場合じゃないですね。
もっと強くならないと、魔王なんかに勝てるわけないですよね!」
勇者「・・・うん、そうだね。」
戦士「よし、俺も魔法使い探しにいくか!勇者殿も行きましょう!」
勇者「そうだね、行こうか。」
勇者「・・・(やっぱり、僕の感覚は正しかったみたいだ。
彼らは、必ず強くなる。そうでないと、魔王は・・・)」
東の大陸への港町、船着き場
僧侶「村長さんも安心してくれてたみたいで良かったです。
これでしばらくはこの大陸も魔物の驚異からは遠ざかるでしょう。」
戦士「でも、自分の力の無さを実感したよ。・・・もっと、強くならないとだめだ。」
魔法使い「それはあるわね。私も、もっと強い魔法が使えないと・・・。」
勇者「そういえばこれから行く隣国は、戦士くんの故郷でもあったね。」
戦士「はい。でももう、何年も前の話です。今はどうなっているのかはわかりません。」
魔法使い「私も。」
僧侶「え?」
魔法使い「私がいた村も、東の大陸の南にあるわ。もっとも、正確には「あった」だけど。」
僧侶「そっかあ・・・。みんな、生まれた国があるんですよね。私は、どこで生まれたかも覚えていないので・・・」
勇者「僧侶ちゃんは、物心ついた頃から孤児院にいたんだっけ。」
僧侶「ええ。まだ2歳くらいだった私を森の中で見つけてくれたのが、シスターだったんです。だから私がどこで生まれたのか、誰も知らないんです。」
戦士「こんな時代だ。僧侶さんの親御さんは、戦乱に巻き込まれてなんとか僧侶さんだけを逃がしたのかもしれないな。」
僧侶「そうかもしれませんね。でも私は、どこかで両親が生きている気がするんです。だからいつか、両親を見つけるのが、私の旅の目的でもあるんです。」
勇者「どうやら東の大陸が、僕たちの一つのターニングポイントになりそうだね。
でもみんな気を付けて。東の大陸はこの大陸より魔王軍の勢力が及んでると聞いてる。
一層、気を引き締めていこう!」
隣国、王の間
隣王「よくぞ参った西の勇者たちよ!そなたらのことは西の国王より聞いておるぞ。
それに戦士。よくぞ戻った。父上もお喜びであろう。」
戦士「ありがたき御言葉。しかし私は今は勇者殿の剣。この国にはもう、」
隣王「わかっておる。たが、少しゆっくりしていくくらいは出来よう。ささやかながら歓迎の宴を開こう。
わしからそなたらに出来るせめてものねぎらいじゃ。」
戦士「ありがとうございます。勇者殿、よろしいですか?」
勇者「もちろんだよ。僕もこの大陸について色々と調べたい。
じゃあみんな、晩餐までは自由行動にしよう。」
隣国、防具屋
店主「おや、お嬢さん。あんたの着てるその法衣・・・ちょっと見せてくれないか?」
僧侶「え、あ、はい。どうぞ。」
店主「ふむ・・・これは見たことのない生地で出来ておる。しかも目に見えぬほど細かく織られている・・・お嬢さん、この法衣はどこで?」
僧侶「私がシスターに拾われた時に体に巻かれていた布を、シスターが法衣に仕立ててくれたんです。」
店主「そうかい、あんたはあの孤児院の出かい。その法衣は大切にした方がいい。必ずあんたを守ってくれるだろう。」
僧侶「はい!ありがとうございます!」
武器屋
戦士「ここも久しぶりだな。あいつは・・・」
友「よう!戦士じゃねえか!生きてたか!」
戦士「やっぱりいたか。親父さんは?」
友「親父は腰をやっちまってさ。今は俺が店主代理だ。」
戦士「そうか。いや、元気そうでなによりだよ。」
友「当たり前だろ。それよりお前・・・なんか、強くなったな。」
戦士「そうか?今でも勇者殿に助けられてばっかりだが。」
友「いやなんかこう、オーラっていうの?なんか親父さんが亡くなって国を飛び出した頃のお前とは違うよ。」
戦士「もしそう感じるなら、勇者殿のお陰かもしれないな。」
友「勇者のこと、尊敬してるんだな。」
戦士「当たり前だ。俺はあの人のためなら盾にもなってみせる。」
城、書庫
魔法使い「力倍増魔法、体硬化魔法・・・向こうの大陸に無かった魔法体系ね。これは力になりそうだわ。」
爺「若い子にしては勉強熱心じゃな。」
魔法使い「・・・何か。」
爺「お主、内なる炎を心に宿しておるな。ワシもその昔、お主のような心の持ち主に出会ったことがある。」
魔法使い「え?それは、どこで!?」
爺「すまんのう、昔のことであまり覚えておらんのだ。ただ、南の方から来たと聞いたのう。」
魔法使い「私の村・・・ありがとう、お爺さん。」
爺「どういたしましてじゃ。」
爺「はて・・・それにしても強い魔力を持っておったの。使いこなせてはおらんようじゃが・・・。」
城、夜のテラス
勇者「少し食べ過ぎたな・・・こんなことをしてる場合じゃないのにな。まだ僕も甘い。
・・・この宝剣の手掛かりも、まだ掴めてない。
・・・必死にならないと。僕自身の目的のためにも。」
魔法使い「・・・勇者?」
勇者「!・・・魔法使いさんか。どうしたの?みんなまだ騒いでるよ。」
魔法使い「・・・進路を南に取ってもいいかしら。」
勇者「南というと、君の村があった方かな。」
魔法使い「もう何も無いかもしれない。それでも、私はあそこに行かなきゃいけない気がするの。」
勇者「いいと思うよ。パーティのレベルアップにもなる。僕も、大陸全体を見ておきたい。」
魔法使い「ありがとう、勇者。」
えっと、読みにくいと言われているので改善したいのですが、どう改行すればいいでしょうか。
台詞ごとに改行すると「改行が多すぎます」とエラーが出てしまうので・・・
翌朝、城客間
勇者「みんな、これから南へ進路を向ける。僕たちはまだ弱い。その修行も兼ねてだ。」
戦士「確か南へは、山越えをしなくてはなりませんね。これはいい修行になりそうだ。」
僧侶「山、ですか・・・ちょっと体力的に不安です。」
勇者「いざとなれば僕や戦士くんが運ぶよ。だから頑張ろう、みんな。」
山道、中腹部
戦士「ばくざんけんっ!」
戦士が降り下ろした剣が岩を吹き飛ばし、魔物たちに岩が降り注ぐ!
どくろ魔道に68のダメージ!
人面ワニたちに59のダメージ!
僧侶「いきますよ・・・水流渦魔法!」
地面から沸き上がった水が渦を巻いて魔物たちを飲み込む!
どくろ魔道たちに48のダメージ!
どくろ魔道たちを倒した!
魔法使い「火炎烈風魔法!」
炎が嵐のように敵を焼き焦がす!
人面ワニたちに75のダメージ!
人面ワニたちを倒した!
勇者「本当にみんな強くなっていくな・・・さて、僕も。稲妻魔法!」
空から降り注ぐ稲妻が全てを焼き尽くす!
魔物全体に82のダメージ!
魔物の群れを倒した!
戦士「よし!今のはいい感触だった。この調子で・・・」
魔法使い「頼むからその技、こっちに向かないようにね。」
僧侶「でも皆さんすごいです!」
勇者「僧侶ちゃんも水を操るのが上手くなったね。回復だけじゃなく、攻撃にも厚みを出せそうだ。」
戦士「あ、見てください勇者殿!山道の終わりが見えましたよ!」
山奥の廃村
魔法使い「・・・」
戦士「これは・・」
僧侶「ひどい・・・」
勇者「ここが魔法使いさんの育った村、だよね?」
魔法使い「・・・ええ。確かにそう。廃屋の並びも、確かに私が知ってる村だわ・・・」
戦士「これを、魔王軍が?」
魔法使い「あの時・・・おびただしい数の魔物が前触れもなく村を攻めてきた。私の村は魔法使いが多かったから、なんとか前線を持ちこたえてた。けど・・・突然村の後方からも魔物たちが現れたの。眼
前の軍勢に目を奪われていた村の人たちは、陣を簡単に崩された。」
勇者「視界を奪って、後方の軍を気付かれずに村の後方に回す・・・見事な作戦だね・・・。」
魔法使い「お母さんが、家の地下にあった転移魔方陣を起動して、私を山の向こうへ飛ばしたの。
お父さんは家の前でずっと熱の障壁を張ってた。村が滅ぼされた話は後から孤児院で聞いたわ。
・・・ここよ。私の家。」
」の前に。はいらねえって言われてんだろ治せよハゲ
>>74
今更消せないだろう
戦士「家、か・・・」
魔法使い「どんな姿になっても、ここは私の家。・・・この瓦礫の下辺りが・・・確か・・・あった。地下室よ。」
僧侶「この床だけ強い結界が張られています・・・強くて、悲しい結界が。」
魔法使い「・・・お父さん、お母さん。私よ。帰ってきたわ。」
結界が効力を失っていく!
なんと勇者達は隠し階段を見つけた!
魔法使い「結界を強固なものにするにはね、領域をゼロにする必要があるの。それは両側から正反対の性質をぶつけることで生成できる。
父と母の男、女という反性質。
それを利用して私の両親は命を賭けて不可侵の障壁を作った・・・その障壁は、魔法施行者が産み出した中性、ゼロである子供、私によってのみ解くことが出来る。
そこまでして、私を逃がしてくれた・・」
僧侶「本当にすごい、ご両親だったのね・・・」
勇者「しかしここは、まだ魔法の気配が生きているみたいだ。どうやらこの奥には、まだ何かあるようだね。」
戦士「・・・あ、着いたみたいですよ。」
魔法使いの家、地下室
魔法使い「転移魔方陣が、生きてる・・・?」
勇者「これは・・・転移魔方陣の上に別の魔方陣が上書きされているようだ。でも、この陣は。」
僧侶「血で、書かれています・・・」
戦士「ひどい・・・」
魔法使い「・・・お母さん・・・。」
ー私の声が聞こえますか。私たちの可愛い娘。
魔法使い「え?お母さん?」
ーあなたがここへ来ることが無くてもいいと思っていました。あなたがこの村のことを忘れ、普通の人生を送ってくれればと。
ーしかし、あなたがここへ来たということは、世界があなたの力を必要としているのでしょう。
魔法使い「お母さん!わたし・・・わたし!」
魔法使い「モデルになる!」
ーごめんなさい。この陣に残された私の残留思念は、起動されれば数分で消えてしまう・・・。だから
私は、お母さんとお父さんは、あなたに辛い運命を背負わせなければならない・・・。
魔法使い「そんな!やっと・・・やっと戻ってこれたのに!嫌だよ!わたし・・・」
ーあなたにこの魔法を授けます。禁呪「紅竜炎天魔法」を。私達一族が紅き竜から授かりし天の炎を。
魔法使い「いらない!魔法なんていらないから!・・・行かないで・・・お願い・・・」
ー私達はあなたに何もしてあげられなかった。それどころか辛い運命を背負わせてしまった。ごめんなさい。本当に・・・ごめんなさい。
魔法使い「う・・・うぁ・・・」
ーさようなら。私の愛しい娘。
いつかまた、空で会えたら・・・
魔法使い「いやっ!!お母さん!!おかあさぁんっっっ!!!!
いやあああああぁっ!!!!!!」
魔方陣は、唸りを止めた・・・。
魔法使いの村、元広場
勇者「とりあえず今日はここで夜営しよう。魔法に長けた村だけあって、弱い魔物なら寄せ付けない結界もまだ生きてるし。」
戦士「あいつ、大丈夫かな・・・」
僧侶「地下室に籠ったきりですものね。でも・・・そっとしておいてあげましょう。」
勇者「とりあえず次の目的地を決めようか。大陸の南はあらかた回ったし、次は北へ進路を取ろうと思うんだけど、どうかな。」
僧侶「それでしたら、一度孤児院に寄っていただけますか?」
勇者「うん、通り道だし、いいと思うよ。僧侶ちゃんにとっては、大切な故郷だものね。」
僧侶「それもあるのですが・・・勇者様も、お聞きになられましたよね?魔法使いちゃんの禁呪の話を。」
勇者「炎竜の力を用いた魔法だったよね?」
僧侶「はい。・・・勇者様は、この世界の成り立ちはご存知ですか?」
勇者「まあ、一通りは。」
戦士「え?成り立ちってなんですか?」
僧侶「この世界は、無から生まれたと言われています。無は、ゼロ。そこから存在が生まれる、というのは神の御技を以てしても不可能です。故に、世界はこう出来たと考えられています。
ゼロからプラスを産むなら、マイナスが存在すると。プラスとマイナスが同じだけ存在すれば、元のゼロが成り立つと。」
戦士「ダメです。自分はこういうの無理です。さっぱりです。」
勇者「これは魔法の根元だから、戦士くんはわからなくても無理はないよ。・・・続けてくれるかな。」
僧侶「はい。それは例えば、太陽と月。空と大地。炎と水などです。そして、魔法使いちゃんの魔法に炎竜の禁呪があるなら、私の水の魔法体系にも水の禁呪があるはずなんです。」
勇者「確かに、理に敵ってるね。」
僧侶「私は気付いたときから水の魔法体系を心で覚えていました。もしかしたら・・・これは希望的観測もありますが、私のルーツに水が関わっているのではないかと考えています。そこで、シスターにお会いして何かご存知でないかと伺いたいのです。」
勇者「確かにそれが一番近道かもしれないね。パーティとしても強い魔法が使えるようになるのは力強いし、何より僧侶ちゃんの出生がわかるかもしれない。行こう、孤児院へ。」
僧侶「ありがとうございます。勇者様。」
翌朝、魔法使いの村入口
勇者「もういいのかい?」
魔法使い「ええ。家の地下に保存されていた蔵書で新しい魔法も覚えたし、もうここにいてもしょうがないもの。」
戦士「強いんだな、魔法使いは。」
魔法使い「・・・私は弱いわ。魔王を倒してお母さんやお父さんの無念を晴らしたいだけ。だから、強くならないといけないの。」
戦士「そうだな。なんとしても魔王を倒さなきゃな。」
勇者「・・・じゃあ、行こうか。」
魔法使い「待って。みんな、私の肩に掴まってくれる?」
僧侶「?何をするんですか?」
魔法使い「新しい魔法を試させて頂戴。・・・転移魔方陣!」
パーティの足元に魔方陣が浮かび、全員が姿を消した!
なんとパーティは隣国の城下町へとワープした!
城下町、入口
戦士「なんだこれ!?すごい魔法だな!」
魔法使い「まあ、行ったことのある場所にしか転移出来ないんだけどね。それじゃあ行きましょうか。」
僧侶「シスター元気かな・・・」
勇者「ここから北東の方角だったね。よし、出発しよう!」
孤児院、祈りの間
シスター「あらあら、懐かしい顔が二人も。お帰りなさい。あなた達の家へ。」
僧侶「シスター、お久し振りです。こちらが勇者様と、戦士さんです。」
勇者「初めまして。お二人からお話は伺っていました。二人の、母親のような存在だと。」
シスター「あらやだ。こんな大きい子二人の母親なんて歳じゃ・・・なくもないわね。それで、何かあってここまで来たのでしょう?」
僧侶「シスター、お伺いしたいことがあります。・・・私の出生についてです。」
シスター「ええ、いいですとも。元々、あなたの修行の旅が終われば渡す予定だったものもあります。
勇者さんたち、僧侶と二人にしてくださるかしら。客間にベッドがありますので、長旅の疲れを癒してくださいな。」
勇者「はい。お気遣いありがとうございます。」
元僧侶の部屋
僧侶「うわあ・・・懐かしい。あの頃のままですのね。」
シスター「それはあなた、修行の旅が終わったらあなたにはここのシスターになってもらう予定でいたもの。」
僧侶「ええ!?聞いてないです!」
シスター「あら、ご不満?」
僧侶「いえ、そんなことは・・・でも、私なんかが?」
シスター「あなたには人一倍優れた慈愛の心があります。あなたが小さい頃から育ててきた私が言うんですもの、間違いないわ。」
僧侶「そんな・・・面と向かって言われると恥ずかしいです。」
シスター「家族なのに恥ずかしがることないでしょう。」
僧侶「家族・・・ありがとうございます。本当に、シスターには感謝し切れません。」
シスター「その気持ちは、院の子達に返してあげて。・・・それで、あなたの出生の話なんだけど。私があなたを森で見つけた話はしたわよね?」
僧侶「はい。シスターに見つけてもらわなかったら、どうなっていたか。」
シスター「あの時、何かに誘われるように森の中へ誘われたの。そうしたら、不思議な布を纏った可愛らしい女の子が泣いているんですもの。」
僧侶「その布が、この法衣なんですよね。」
シスター「そうそう。何せ折り目もない柔らかいのに丈夫な布だから、苦労したわあ。それに、水の魔法が編み込まれているもの。特別な布だったのよ。」
僧侶「水の魔法・・・」
シスター「ここからは、まだあなたに伝えてなかった話。あなたが身に付けていたものは布だけじゃなかったの。さっき私の部屋から持ってきたんだけど・・・あなたに返すわ。」
僧侶「これは、ペンダント?」
シスター「そう。それも特別な魔法の刻まれた、ね。」
僧侶「知らなかった・・・これを、どうして?」
シスター「私も司祭の位を持つ身。水の魔法にはそれなりに詳しいつもりだわ。
その魔法は、ある場所を指し示すものなの。その場所がどこかはわからないけど。
でもその魔法は、ある程度の水の魔法体系を会得した人にしか反応しない。
これを幼いあなたに渡したら、絶対途中の過程をすっ飛ばして高位魔法ばっかり覚えるようになってたもの。
魔法体系というものは、低位から一つずつ積み重ねて理解をしないと、高位魔法を使っても暴発して、術者の身を滅ぼすわ。
あなたにそんな術者にはなってほしくなかった。だから修行が終わってから、と思っていたのよ。
今のあなたなら、きっとペンダントに刻まれた魔法を発動出来るわ。」
僧侶「そうだったのですか・・・でも、どうやって発動したらいいか。」
シスター「あなたの操れる最高位の魔法を唱えてご覧なさい。
大丈夫、どんな魔法てもそのペンダントが魔法言語に分解しちゃうから、効果は出ないわ。」
僧侶「わかりました。それじゃあ・・・水壁治癒陣!」
僧侶が唱えた魔法がペンダントへ吸い込まれてゆく!
なんとペンダントが強く輝きだした!
僧侶「光の筋が・・・道を指し示してる?」
シスター「水で防御壁を作りつつ、陣内の仲間を状態以上まで回復させる魔法・・・私が思っていたより、大きくなったのね。
行きなさい。そこにあなたの秘密が隠されているはず。」
僧侶「はい!シスター・・・本当に、ありがとうございます。」
シスター「でも、必ず戻ってきて。どんなあなたでも、ここはあなたの帰りを待ってるわ。」
僧侶「私には帰る場所がある・・・こんなに幸せなことはないですね。」
孤児院、蔵書庫
勇者「さすが神に仕える修道院。古の知識に関する本が沢山ある・・・」
・創造の本
「神は世界を作る際に、一振りの剣を作り出した。創世の剣、イクジスター。
これは無から正と負を産み出す剣である。
そして、創造の剣が生まれた代わりに、対極の剣もまた生まれた。
回帰の剣、ゼロブリンガー。これは存在を対極で打ち消し、零に戻す剣である。」
・調停者の物語
「神は産み出されたゼロブリンガーを、最も純粋な心を持つ者へと授けた。
限りなくゼロの心を持つもの。神はその性質を以て調停者と名付けた。
ゼロブリンガーは剣のみでは何の効果も産み出さない。
正、負、調停者のゼロの心。
この三つが反ろって初めて意味を持つ。
調停者はその身を以て、かつての二国間の大戦で双方の王の憎しみをゼロにした。
これによりゼロブリンガーは再び眠りにつき、次の調停者を長い時の中で待つこととなる。」
勇者「ゼロブリンガー、調停者か・・・。でもこれは、僕も知っていたことだ。
それに東と西の大陸が争っていたのはもう1000年も前だ。
それがどこにあるのか。
魔王にゼロブリンガーは通用するのか。
これが鍵になるか・・・。
しかし調停者、ゼロの心を持つ者・・・恐らく、僕は調停者にはなれない。
・・・やはり、そうするしかないか。」
孤児院、客間
魔法使い「勇者ったら書庫に閉じ籠りっきりね。」
戦士「あの人は勉強熱心だからな。だからこそ強いし、自分達は安心して勇者殿の指示に従える。」
魔法使い「確かにね。勇者がいなかったら全滅してた場面は何度もあった。頼りになるわ、本当に。」
戦士「なあ魔法使い。お前は、大丈夫なのか?」
魔法使い「私?」
戦士「よくわかんないけどさ、お前が会得した禁呪って、相当強いんだよな?」
魔法使い「そりゃあ、お母さんとお父さんの形見だもの。」
戦士「でも正があれば負もあるって僧侶に聞いたんだけど、それだけの威力がある魔法なら代償も大きいんじゃないのか?」
魔法使い「あら。筋肉馬鹿かと思ってたら意外と頭が回るのね。」
戦士「筋肉馬鹿・・・」
魔法使い「フルパワーで放ったら、私もただじゃ済まないでしょうね。でも私は炎のスペシャリスト。調節することくらいなんてことないわ。でも・・・」
戦士「でも?」
魔法使い「魔王がそんなこと言ってられない相手だったら、最大出力で放つことも考えないといけないわね。私の身がどうなろうと。」
戦士「お前の魔法で足りない分は、俺が剣で補えばいいんだ。あんまり抱え込むなよ。パーティだろ、俺達。」
魔法使い「ふーん。」
戦士「なんだよ。」
魔法使い「今の発言は魔法使いポイント5かな。」
戦士「なんだ魔法使いポイントって!?」
魔法使い「んー、今のところ勇者38、僧侶26、戦士5ってところかしら。」
戦士「今のポイントだけじゃねーか!」
魔法使い「ゼロよりましでしょ?」
戦士「その分マイナスが怖いな。・・・お前、少し柔らかくなったな。」
魔法使い「あんなこともあれば、多少は吹っ切れるわよ。本当はそんなに、根暗な感じじゃないもの。」
戦士「まあ、安心したよ。これなら大丈夫そうだ。」
僧侶「皆さん、終わりましたーってあれ、戦士さんと魔法使いちゃん二人だけですか?」
戦士「ん?え、ああ。」
魔法使い「まあ、世間話をね。」
僧侶「へーそーなんですかー」
僧侶はニヤニヤしている!
戦士「ば、あのなあ、勇者殿が書庫に籠っているから仕方なく・・・」
魔法使い「へえ、仕方なく。魔法使いポイントマイナスね。」
僧侶はさらにニヤニヤしている!
戦士「だからー!勇者殿が」
勇者「いや、すっかり遅くなちゃったよ。あ、みんな揃ってるんだ。
あれ。どうしたのみんな。」
戦士「なんでもないです!」
孤児院、入口
勇者「じゃあ、僧侶ちゃん。」
僧侶「はい。」
僧侶はペンダントを取り出した!
ペンダントは一筋の光を放っている!
勇者「この方角は、北だね。」
僧侶「でも、いいんですか?これは私の個人的な・・・」
勇者「前にも言った通りだよ。僕たちは魔王を倒す力も必要だ。それよりも、パーティのみんなの気持ちも大切にしたいんだ。」
僧侶「ありがとうございます・・・」
魔法使い「私も、いつか戻ってきていいのかな。この場所に。」
僧侶「シスターも言ってました。ここはみんなの家。いつでも帰ってきてって。」
戦士「自分もいつか城に帰れるかな・・・」
僧侶「帰れますとも。離ればなれになるのは、寂しいですけどね。」
勇者「帰る、か・・・」
戦士「どうかしましたか?」
勇者「いや、なんでもないよ。それじゃあ、光の方向へ。行こう!」
東の大陸、北の岬
勇者「ここ、なのかな。でも光が・・・」
魔法使い「海の中、に向かってるわね。」
戦士「え、潜るんですか!?自分、五分まで潜水できますよ!」
勇者「まあまあ。僧侶ちゃんのペンダントが、そんな無理難題を押し付けるはずがないよ。何かあるはずだ。」
ーペンダントを海に投げ入れなさい。
僧侶「え?誰か何か言いました?」
戦士「いや、誰も話してないよ。」
ーペンダントを、投げ入れるのです。
僧侶「この声は・・・わかりました。・・・えいっ!」
なんと、僧侶はペンダントを海に向かって投げた!
魔法使い「ちょっと!あんた何を・・・」
勇者「いや、見るんだ!」
海が渦を巻いてゆく・・・なんと、崖の下に氷の階段が現れた!
僧侶「これは・・・」
氷の階段
戦士「あの・・・これ、割れませんよね?」
魔法使い「あら。あなた意外と怖がりなのね。」
僧侶「大丈夫ですよ。そんな感じがします。」
勇者「うん。魔法で固定されているみたいだからね。」
戦士「うう・・・だって氷ですよ。割れるんですよ。落ちるんですよ。」
魔法使い「あんたねえ・・・」
僧侶「あ、でも終わりが見えてきました。」
勇者「ここは・・・遺跡なのか?」
海の古都、中央階段
魔法使い「きれい・・・水面が建物に反射してる・・・」
戦士「なんとも荘厳な・・・自分が足を踏み入れていい場所なんだろうか。」
勇者「でもここは・・・昨日今日無人になったわけじゃない。少なくとも、数十年は経ってるみたいだ・・・。」
僧侶「私の故郷では、ないのでしょうか・・・。」
ーいいえ。ここはあなたの故郷ですよ。お帰りなさい。我等が子よ。
僧侶「この声・・・誰なのですか?暖かい・・・とても暖かい声・・・」
ー我等は意識集合体・・・この都にかつて存在した民の心・・・
僧侶「教えてください!私は・・・私は何者なのですか!?」
ーおいでなさい。我等が子よ。祭礼の間へ。
都の奥で、扉が開く音がした!
勇者「確かに、聞こえた・・・」
魔法使い「僧侶、大丈夫?」
僧侶「ええ。私は大丈夫です。しっかりと、私の真実を見極めたいのです。」
海の古都、祭礼の間
ー改めて、ようこそいらっしゃいました。我等が子、そして勇者達。
我等はあなた方が来ること、長い間待っていました。
僧侶「長い間?それじゃあ、私は一体・・・」
ー話しましょう。真実を。
ー我等は水の民。水竜を奉る者達。
そして、幾年も、幾十年も昔に滅びた民族。あなたは、その最後の子。
我等が民は長い水底での隠遁により、子が出来なくなっていきました。
ーあなたが産まれたとき、我等が民は悟りました。この子が最後の子だと。
しかしここで、我等が民を閉ざすことは世界の損失。我等が民の長は時の流れを読み解き、魔王が出現する時期を知りました。
そしてその時に間に合うよう、あなたを時空相転移したのです。
僧侶「時空・・・それじゃあ私は・・・」
ー我等が子よ。あなたに課せられた使命はとても重い。
しかしあなたは、我等が希望。
我等が最後の光。
その光が一層輝けるよう、あなたにこの力を。
祭壇から魔法文字が浮かび上がり、僧侶へ向かって飛び込んでゆく!
ーこれであなたに水竜のルーンが刻まれました。
禁呪、蒼竜水天魔法・・・蒼竜のいななきと共に天から落ちる水流が全てを押し潰す魔法です。
あなたならきっと、使いこなせるでしょう。
僧侶「私が・・・禁呪を?」
ーそして我等は、その役目を果たし終えました。長い時を経て劣化した魂は、もう言の葉を紡ぐことは出来ないでしょう。
僧侶「私は、最後の希望・・・」
ーしかし忘れないでください。私達の魂は物言わぬともあなたと共にあると。
あなたは我等が子。我等が光。
そして・・・
私の、子・・・
僧侶「え・・・待って!あなたは・・・!」
突如足元に魔方陣が発生した!
その魔方陣は、高く高くパーティを運んでゆく!
僧侶「待って!まだー」
泡が割れたように海流が古都に流れ込む!
僧侶「待ってー!!」
パーティは北の岬に戻された!
北の岬
魔法使い「僧侶・・・」
僧侶「・・・大丈夫です。私にはやるべきことがある。帰る場所もある。それに、私の両親も目には見えないけれど側にいてくれる。だから、大丈夫。大丈夫です。」
戦士「僧侶さん・・・」
僧侶「あれ?なんで私泣いてるんだろ。大丈夫なのに。寂しくなんかないのに!」
勇者「・・・いいんだよ。僧侶ちゃん。」
僧侶「勇者様・・・ふえ・・・ふえぇ・・・うわああああん!!」
勇者「・・・誰かな。こんな負の気配を撒き散らしてるのは。」
?「おや、気付いていましたか。流石は勇者、正の塊ですね。」
戦士「誰だ!どこにいる!」
?「おや?あなたは・・・まあいいでしょう。それにしても。
滅ぼしたはずの火の一族に、息絶えたはずの水の一族・・・こまりましたねえ。困るんですよねえ。」
魔法使い「姿を見せなさい!」
?「威勢がいいのはいいことです。が、力が足りていないようです。」
魔法使い「後ろに!?」
魔族「初めまして。勇者とその一行。私は魔族。魔王様の忠実なる僕。」
勇者「魔族・・・魔物より純粋な負の力を持つ者か。」
戦士「お前・・・まさか。」
魔族「やはりあの時の子供でしたか。お父上は元気ですか?」
戦士「ふざけるな!!お前が・・・お前が父さんを!!」
魔族「あなたのお父上は些か邪魔だったもので。消させていただきましたよ。」
戦士「こんの・・・野郎っっっ!」
戦士は音速の剣圧を放った!しかしそこには誰もいない!
魔族「いきなりとは失礼ですね。」
勇者「近距離に転移した?詠唱も無しに・・・まずいよ戦士くん。体勢を立て直さないと。」
魔族「私とてここでやり合うつもりは毛頭ありません。ただのご挨拶ですよ。」
戦士「貴様・・・」
魔法使い「何が目的なの!?」
魔族「私は北の果て、凍える塔にてあなた方をお待ちしております。ああ、それときちんと賞品も用意してありますよ。
・・・創世の剣、イクジスターを、ね。」
勇者「イクジスター・・・」
魔族「では、待っていますよ。」
戦士「待て!ふざけるな!」
勇者「戦士くん・・・まずは一度隣国へ戻ろう。僧侶ちゃんも、一度休まないといけない。
魔法使いさん、頼む。」
魔法使い「・・・転移魔法陣!」
パーティは隣国城下町へと転移した!
隣国城、謁見の間
隣王「話はわかった。北の台地に向けて船を出せばいいんじゃな?」
勇者「はい。お願いできますでしょうか。」
隣王「西の王からも助成を受けておる。城を一つ建てられるくらいの、な。お主らに力を貸してやってくれとのことだそうじゃ。」
勇者「王様・・・」
隣王「どんな吹雪にも傾かない最高の船を作らせよう。腕利きの船乗りたちも用意する。わしらに出来るのは、それくらいじゃが。」
勇者「いいえ。本当にありがとうございます。」
隣王「全世界の敵、魔王討伐のためじゃ。それと、戦士よ。」
戦士「はっ!」
隣王「どうやら因縁の相手らしいの。我が国の宝物庫にある武器防具を持ってくといい。それとこれは、お主の父君からじゃ。」
隣王は一冊の本を戦士に渡した!
戦士「これは・・・?」
隣王「お主が困ったときに渡してほしいと頼まれておった物じゃ。師団長の記した剣術のイロハや奥義が記されておる。」
戦士「父さんが・・・ありがとうございます!」
隣王「さあ行くがよい勇者たちよ!世界に平和をもたらしてくれ!」
北の台地
魔法使い「え、ちょっと本当に無理。寒い!」
僧侶「そうですか?そんな震えるほどでは・・・」
魔法使い「あんたは水の一族だし水の法衣は着てるしそりゃ平気でしょうよ!みんな見てみなさいよ!って・・・」
戦士「毎朝乾風摩擦してるからな。」
魔法使い「そういう問題!?勇者は!」
勇者「常に平常心を持たないといざという時に冷静な判断がくだせないからね。」
魔法使い「だめ・・・ついていけないわ。」
僧侶「ほら、あそこですよ。塔が見えてきました!」
すみません、ちょっとお風呂入ってきます。
もし、もし読んでくださっている方がいたら、少しの間保守をお願いします。
すみません・・・。
凍える塔、中階層
魔法使い「火炎封縛魔法!」
炎が魔物を囲み込み、収束してゆく!
氷河男は溶けてなくなった!
魔法使い「大火炎球魔法、散!」
凝縮した質量を持つ炎が飛散する!
雪おおかみ達に134のダメージ!
魔法使い「やっぱり炎魔法の効果は抜群ね!しかも暖まるし!
あれーの寒さに強い僧侶ちゃんの水魔法はどうしたのかしら?」
僧侶「別にいいですよーだ。水障壁魔方陣!」
吹雪馬は口から凍てつく息を放った!
しかしパーティには届かない!
僧侶「それとこれも。体水活性魔方陣!」
パーティの体内の組織液が活性化した!パーティの体力が徐々に回復!
戦士「これなら少し張り切っても大丈夫だな。唸れ!風の叫びよ!」
戦士の剣からカマイタチが発生し魔物を切り刻む!
かちかちスライム達に68のダメージ!
戦士「そして、奥義!火竜閃!」
戦士の放った剣圧が炎を纏う!
風に巻き上げられた炎が竜巻となって魔物たちを焼き切り刻む!
魔物全体に173のダメージ!
戦士「城にあったこの風の剣・・・自分の技のレパートリーが増えそうだ!」
勇者「あとは奥にいる部隊長みたいなやつだけだね。それじゃあ、」
勇者は一瞬で氷岩魔人との間合いを詰めた!
勇者「閃光刃!」
勇者の剣が雷を纏い、光の速さで氷岩魔人を両断する!
氷岩魔人に287のダメージ!
魔物の群れを倒した!
戦士「な、なんですか今の速さは!」
勇者「え?ああ、僕は雷の魔法系統だからね。ここは世界で最も磁界が強いから、僕自身を電磁誘導で加速させて・・・」
戦士「ごめんなさい。もういいです。わかんないです。」
魔法使い「要するに場に応じた戦い方をしたってことよ。」
戦士「はー・・・すごいですね。流石は勇者殿!」
勇者「戦士くんの技もすごかったよ。あれはこの塔の魔物レベルでも一掃できる威力があるね。」
戦士「父の奥義書のお陰ですよ。周囲の環境を利用した技の威力上昇。さっきのは自分で風のフィールドを作ったんですけどね。」
勇者「さすが一国の師団長だね。でもそれを物に出来る戦士くんもすごいよ。」
戦士「でも父の奥義書の真髄はそこじゃなく、自らを空にし、どんな流れも自分の力とすること、だそうです。
自分を無にすることで、正も負も内包する・・・そうすれば負けることはない、と。」
勇者「なるほど・・・勉強になるよ。」
戦士「でも勇者殿も磁場を利用してたじゃないですか!自分はそんな戦い方考えたことも無かったです。」
勇者「ん・・・まあ、僕も聞きかじりだけどね。」
戦士「世の中にはすごい人が沢山いるんですね・・・。でも、そういう人を貶めるやつがいる。」
勇者「そうだね・・・最上階も近い。油断せずに行こう。」
凍える塔最上階、創世の間
魔族「おや、思ったより遅かったですねえ。怖くて逃げ出したのかと思いましたよ。」
戦士「お前は・・・俺が必ず倒す。」
魔族「ほう。あなたのお父上みたいに物言わぬ屍となりたい、と。」
戦士「貴様・・・」
勇者「戦士くん。わかりやすい挑発に乗るんじゃない。「無の心」、でしょ。」
戦士「はい・・・」
魔法使い「戯れ言はそこまで。悪いけど、先手は取らせてもらったわ。」
部屋の床に大きな魔方陣が浮かび上がる!
魔法使い「炎呪縛魔方陣!」
魔方陣から炎が上がり、魔族を包み込む!
魔族「これはこれは。」
魔法使い「この魔方陣は対象を内側から熱で燃やし尽くす魔法・・・あんたがお喋りしてる間に陣を引かせてもらったの。
ゆっくり灰になるといいわ。」
僧侶「すごい魔法使いちゃん!」
魔族「残念ながらお嬢さん、こうう魔法はボスには効かないのがセオリーでしてね・・・」
魔族から黒い霧が立ち込める!
魔族にかかっている効果が全て消えた!
魔法使い「なっ!?」
勇者「セオリー、か。なら勇者一行は中ボスに負けることはないっていうのもセオリーかな?」
魔族「口の減らない人間は・・・こうしてあげましょう!」
勇者「さあ、行くよみんな!」
魔族は鋭い爪を振り上げて襲いかかってきた!
勇者「僧侶ちゃん!水壁を!」
僧侶「わかりました!水障壁魔法!」
水の膜がパーティを覆う!
しかし魔族は爪で結界を切り裂いた!
勇者「戦士くん!風で受け止めるんだ!」
戦士「はい!唸れ、風の叫びよ!」
戦士の剣から風が巻き起こり、魔族を押し返す!
魔族「残念ながら、そんなそよ風は効かないんですよ。」
魔族は翼で風を起こした!
戦士の起こした風が押し返される!
戦士「くっ!」
勇者「戦士くん、僕の合図で風を止めるんだ。それと魔法使いさんは直後に床に向かって爆発魔法を。
・・・いまだ戦士くん!」
戦士の風が止んだ!
そして魔族の風がパーティに向かってくる!
直後爆音が鳴り響く!
魔族「おや、ちょっとやり過ぎましたか。」
勇者「どうやら頭は弱いようだね。」
魔族「なんですって?」
勇者は魔族の真上に飛んでいた!
勇者「閃光槌刃!」
稲妻を纏う一撃が魔族を切り裂く!
魔族「ちっ!」
魔族は素早くかわした!
しかし魔族に74のダメージ!
魔族「少しは、楽しめそうですね・・・」
勇者「悪いけど、君みたいな三下に構ってるほど暇じゃないんだよ。」
魔族「本当に口の減らない・・・」
魔法使い「・・・なんか勇者いつもと違くない?」
僧侶「確かに・・・でも、私だって倒したい気持ちは変わりません。」
戦士「勇者殿に続くぞ!」
凍える塔、創世の間
魔族「炎風よ!」
魔族の起こした熱風がパーティを包む!
魔法使い「炎で私に勝とうなんて・・・爆発起風魔法!」
パーティの前方で爆発が巻き起こり、熱風を跳ね返す!
戦士「その風もらった!尖氷刃!」
戦士の降り下ろした剣の周辺に尖った氷が無数に浮かび、風に巻き込まれ魔族に刺さる!
魔族「ぐあっ!」
魔族に169のダメージ!
魔族の羽に穴が空き、バランスを崩して地に落下する!
僧侶「海波召還!」
どこからともなく大量の海水が流れ込み、部屋を飲み込む!
魔族「馬鹿な、自滅でもする気ですか!?」
魔族に79のダメージ!
パーティは僧侶の結界により守られた!
勇者「轟け!空裂雷電魔法!」
部屋中に空間を裂くような雷が跳ね回る!
「ぎっ・・・!」
魔族に482のダメージ!
勇者「どうだい、濡れた体に雷は痺れるだろう。」
魔族「・・・あなた方も濡れてるのに、何故・・・」
僧侶「純水は電気をほとんど通さないんです。勇者様の魔法がどれだけ広範囲でも私はみんなを守ることが出来る。
だから勇者様は全力で勇者の魔法を使うことが出来るんです。」
勇者「さて、もうお仕舞いか。隠してる力があれば出した方がいいんじゃないかな。
それともやっぱり限界なのかい?」
魔族「舐め腐って・・・人間ごとき、この姿ののまで充分・・・だっ!」
魔族は頭上に黒く燃える球体を呼び出した!
魔族「灰も残らず消え失せろ!地獄炎召還!」
勇者「みんなっ!全力で耐えるんだっ!」
僧侶は厚い水の膜を張った!
魔法使いは黒い火球に爆発魔法を放った!
戦士は前陣に躍り出て盾を持ち仁王立ちをした!
勇者はパーティ全体に光の守護魔法をかけた!
勇者「くっ・・・!」
勇者に178のダメージ!
戦士「うおおぉおっ!」
戦士に243のダメージ!
魔法使い「あああっ!」
魔法使いに148のダメージ!
僧侶「きやあああっ!」
法衣が炎を和らげる!
僧侶に109のダメージ!
戦士「ぐ、ぅっ・・・」
魔族「まさか、持ちこたえたというのですか・・・?」
勇者「僧侶ちゃんっ!」
僧侶「は・・・いっ!回復魔方陣、大!!」
パーティの傷がかなり回復した!
勇者「そういうことだよ。僕たちの読み勝ちだ。」
魔族「ここまで、やるとは思いませんでしたよ・・・しかし私にも魔族としての矜持があります。
仕方ない・・・優雅でないから嫌いなのですが・・・本来の姿を出すしかないようです・・・」
なんと、魔族の姿が異様に変身してゆく!
魔族「よく・・・見とけよ糞○○野郎どもがぁっ!!」
魔族は真の姿をさらけ出した!
凍える塔、創世の間
戦闘開始から一時間
魔族「脆いなあ糞共が!てめぇらなんかハナっから俺の敵じゃねえんだよボケがぁ!!」
戦士「ぐぁ・・・」
戦士は腹を蹴りあげられた!
戦士に18のダメージ!
戦士は瀕死だ!
勇者「純魔族の力がこれほどとは・・・思わなかったよ・・・」
魔法使い「もう、魔力が・・・」
僧侶「私も・・・です・・・」
魔族「ひゃははは!もう壊滅状態か!弱いなぁおい!そろそろ死んどくかあぁん!?」
勇者「(少し見謝ってたか・・・まずいな。あとは戦士くんが・・・)」
戦士「(動きが速すぎて剣で追いきれない・・・当てられない・・・どうしたらいいんだ・・・)」
魔族「無様だなあ!くそみてぇな父親と同じ末路を辿らせてやろうかぁ!?」
戦士「親、父・・・(無の心・・・俺には無理だったのかな・・・)」
魔族「もう抵抗する力もないかあ?」
戦士「(・・・勇者殿の剣になるとか言って、盾にもなれずに死ぬのか・・・)」
魔族「なら死ねえぇえぇぇ!!」
魔族は鋭い爪を振りかぶった!
魔法使い「戦士!!」
戦士「(俺が剣なら・・・この爪を叩き切れたら・・・)そうか・・・わかったよ父さん!」
ミス!魔族の攻撃は当たらない!
しかし魔族は爪を切られ、84のダメージを受けた!
魔族「あぁん?なんだ?こりゃ・・・痛ぇじゃねえか。何をした、人間!」
戦士「お前は速い。しかし、お前の動きを一つだけ予測する方法がある。それは自分を狙ってきたときだ。かならず自分のいる場所にお前は来る。それだけはどれだけ速かろうと関係ない。
つまり自分は半身で避けて、元いた場所に剣を置いておけば、必ずお前に当たるんだ。」
勇者「父から受け継いだ宝剣が鳴動してる・・・?
やはり戦士くん、君は・・・」
魔族「ふざけんな!そんな論理で俺のスピードに敵うはずねーだろ!」
魔族は猛スピードで戦士に突っ込んできた!
ミス!
そして魔族は149のダメージ!
魔族「がっ・・・!」
戦士「もう無理だ。お前は俺に勝てない。」
魔族「だったら遠距離から丸焼きにしてやるよぉっ!」
魔族は炎と風を巻き起こした!
戦士「甘い!風よ叫べ!」
戦士の剣から風が巻き起こる!しかし戦士の放った風は左右に散っていった!
魔族「バカめ!そのまま焼け死ね!」
戦士「わざと左右に分けたんだよ・・・そうすればお前の風は真ん中に集まるからな!でぇやっ!」
戦士は全力で剣を縦に降り下ろした!
音速の刃が風と炎を巻き込んで魔族を切り裂く!
魔族に271のダメージ!
魔族「ぐ、ぐぅっ・・・ばか、な・・・」
勇者「戦士くん、よく、無の心に目覚めてくれたね。」
戦士「勇者殿・・・これが、無の心?」
勇者「そうだよ。どんな力も自分の力に代える、それこそが無の心なんだ。」
魔族「回復魔法・・・あ、ぐ・・・体力が・・・回復しない・・・?」
勇者「僕が無駄に君を挑発してたのは何でだと思う?君みたいなタイプは敵を圧倒してこそ意味を感じるんだ。だから挑発すればするほど、「手加減した状態で」勝ちに来る。
お陰で最大の技を前の形態で使ってくれたからね。
あれを今の形態で繰り出されたら、僕たちは全滅していた。
あれだけの魔力を消費したんだから、もう回復する余裕もないだろうね。」
魔族「はじめっから、てめえの手の上だったわけか・・・気に食わねえ・・・
こうなりゃこの搭ごとてめぇらを爆
勇者「最後にやけくそになった敵は、勇者には敵わないってね。」
勇者は加速して剣を一閃した!
魔族に147のダメージ!
魔物を倒した!
凍える塔、創世の間、地下空洞
勇者「構造的に不自然な空間があるとは思ってたけど・・・ ここが本当の創生の間なんだろうね。」
勇者は部屋の中心にある剣を引き抜いた!
勇者「これが、創世の剣イクジスター・・・」
僧侶「これが神話の・・・まさか本当にあるとは思いませんでした。」
魔法使い「本当にこれさえあれば何でも産み出せるの?」
勇者「あくまでゼロを正と負に分けるだけだよ。善人を産めば、悪人を産む。そう易々と効力を発揮していい剣じゃない。」
戦士「それは誰にでも扱えるものなんですか?」
勇者「試しに持ってみるかい?」
戦士「え?ちょ、うわっ!」
戦士は剣を地面に落としてしまった!
戦士「めちゃくちゃ重いですよこれ!」
魔法使い「勇者しか装備できないのかしら。」
勇者「たぶんそういう代物なんだろうね。これは僕が使うよ。魔王に挑むのに必要なものだから。」
戦士「剣士としてはちょっと残念ですね。」
勇者「その代わりこれを戦士くんに託すよ。」
勇者は宝剣を戦士に手渡した!
戦士「この剣は?・・・抜けない。」
勇者「僕が父から預かったものなんだ。でも、もしかしたら、それはは戦士くんに必要なものなのかもしれない。持っててくれるかい?」
戦士「そんな大切なものを・・・でも自分には抜けませんよ?」
勇者「まだ力を使う時じゃないんじゃないかな。たぶん、だけど。」
戦士「・・・わかりました。大切にします。」
僧侶「それで勇者様、魔王の居場所にはどうやって?」
勇者「それはこのイクジスターが導いてくれるよ。ちょっと宛があるから。
・・・とりあえず一度隣城へ戻ろう。魔法使いさん、お願い。」
魔法使い「休養も必要よね。・・・転移魔方陣!」
パーティは隣国へ転移した!
隣国城下町、宿屋
戦士「それで勇者殿、どうやって?」
勇者「みんなも西の大陸より東のこの大陸の方が魔王軍の進攻が激しいのは知ってるね。
だから、ここよりもっと東・・・大陸の最東端、断罪の崖と呼ばれる場所に魔王の居場所に関する何かがあるはずなんだ。
推測かもしれないけどね。」
魔法使い「でも、それが一番理に敵ってるわね。行きましょうか。」
勇者「・・・もしかしたら、戻ってこれないかもしれないよ。
命の危険は今まで以上になる。それでも、着いてきてくれる?」
戦士「今更何を・・・」
魔法使い「今までだって、ずっとそうだったじゃない。」
僧侶「私は・・・いえ、私たちは勇者様を信じてここまで来ました。
そして色々なことを知ることが出来ました。本当に、感謝しています。
世界を救う為だけじゃない、魔王を倒すという勇者様の責務を、私たち全員は共に果たしたいのです。
勇者様と共に。」
魔法使い「あら、私とか言っちゃってなんか意味深ねえ。」
僧侶「そ、そんなことはないです!私はただ・・・」
勇者「みんなありがとう。決心がついたよ。
明日朝、旅立とう。それまで準備を怠らないで欲しい。」
一同「はい!」
三日後、大陸最東端、断罪の崖
戦士「ここが断罪の崖・・・」
魔法使い「なんだか火の曜日の夜九時くらいに誰かが追い詰められて罪を自供しそうな場所ね。」
僧侶「なんですかそれ?」
勇者「僅かながら空間の揺らぎを感じる・・・(懐かしい気配も・・・)
ここだろうな。さて、みんな準備はいい?」
戦士「ここって、飛び降りるんですか!?」
勇者「そんなことしないよ。魔王がいる魔界は、負の世界なんだ。
神話で神様がこの世界を作ったとき、反対に出来たのが魔界。
この世界と魔界は対称の存在ながら、重なって存在しているんだ。」
戦士「???」
魔法使い「結界ってことかしら。」
勇者「流石魔法使いさん。その通りだよ。お互いに干渉しないよう、正と負の間にゼロを作って、不可侵のものにしている。
魔法使いさんの家にあったのと同じ原理だよ。
そして魔王は、その結界を膨大な魔力でゼロを破ってこちらに魔物を送り込んでいるんだ。
その通り道が、ここだよ。」
僧侶「でも勇者様、どうやってこちらから魔界に?」
勇者「そこでこのイクジスターを使う。ゼロを二方向の通り道に分けるんだ。
もちろんあちらからも通れるようになっちゃうから、人が通れるくらいの道しか開けないように調節する。
ただ、極力迅速に魔王を倒さないと危ないだろうね。」
戦士「よし・・・最終決戦か。」
勇者「うん。それじゃあ、開けるよ。
・・・創世の剣イクジスターよ、道を切り開け!」
勇者は剣を振りかざした!
すると目の前に亜空間が広がった!
勇者「よし、行くよ!」
パーティは亜空間に飛び込んだ!
亜空間、勇者の意識の中
ーお兄ちゃん!どこに行くの!?
ー俺はもう、自分を制御し切れない・・・完全に向こう側へ行く前に、自分を封印する。
ーやだよ!お兄ちゃんのいない世界なんて!
ーすまない。しかし、これが世界の為なんだ・・・わかってくれ。
ーそんな・・・私は一人になっちゃうの?お父さんもお母さんもいない・・・
こんなの、生きてる意味ないよ!
ーそんなことを言うな。お前は、世界に必要な存在。何故なら、お前はー
魔界、魔王城前
僧侶「勇者様!勇者様!!」
勇者「あ・・・ここは?」
僧侶「魔界です。亜空間を通ってここに着いたら、勇者様が気を失っていて・・・」
勇者「懐かしい、夢を見てたみたいだ・・・みんなは?」
戦士「お、気付きましたか勇者殿!」
魔法使い「もう、僧侶が大変だったのよ。「勇者様が~!」って。」
僧侶「いや、その・・・」
勇者「はは、ありがとう。僧侶ちゃん。僕はもう大丈夫だよ。
うん。それじゃあ、行こうか。正真正銘の最終決戦に!」
魔王城、中枢
戦士「無明刃!」
戦士が振った刃から無数の剣閃出現し、辺りを切り刻む!
大魔道たちに218のダメージ!
キマイラたちに196のダメージ!
魔法使い「灼熱の炎天魔法!」
灼熱の炎が敵を焼き尽くす!
悪鬼たちに237のダメージ!
キマイラたちに223のダメージ!
キマイラを倒した!
僧侶「氷葬魔法!」
空気中の水分が凝固し、敵を氷に閉じ込める!
メタルドラゴンたちの息の根を止めた!
勇者「雷破斬!」
勇者の放った剣圧が雷を纏い敵を両断する!
大魔道たちに267のダメージ!
鬼武者たちに279のダメージ!
魔物の群れを倒した!
魔王城、王の間大扉
僧侶「ついにここまで来ましたね・・・」
魔法使い「この先に、魔王が・・・」
戦士「異様なプレッシャーを感じる・・・強い。今まで会ったどんな魔物よりも。」
勇者「みんな、これを飲んで。」
勇者は天使の飲み薬を使った!
パーティの体力と魔力が完全に回復した!
魔法使い「すごい・・・力がみなぎってくる。」
僧侶「こんなすごい秘薬、どうして?」
勇者「母から譲り受けたものだよ。もしもの時に、と。」
戦士「これでフルパワーで魔王と戦えますね!」
勇者「うん、そうじゃないと魔王は倒せない・・・。みんな、準備はいい?」
一同「はい!」
勇者は扉を開けた!
勇者「(待っててね。僕が、必ず・・・)」
魔王の間
魔王「よくぞ来た。勇者とその仲間たちよ。
我が王の中の王、全ての生きとし生ける者の王。
魔王である!」
戦士「何が王だ!父さんや、罪もない人々を・・・よくも苦しめてくれたな!」
魔法使い「私の村を滅ぼした報い、今こそ受けるのよ!」
僧侶「あなたを倒すために私はこの時代に移された・・・今こそみんなの願いを叶える!」
勇者「さあ、もう言葉はいらない。全力で、僕たちがあなたを倒す!」
魔王「面白い・・・絶望こそ我が力。
死に行く者こそ美しい。
我が魔力の前で己の無力さを悔いながら・・・
我が腕の中で息絶えるがよい!」
魔王は氷河魔法を放った!
魔法使いは炎の障壁でパーティを守った!
魔法使いは炎熱大魔法を放った!
魔王は左手から凍てつく波動を放ち、無効化した!
魔王は鋭い爪を宣戦士に降り下ろした!
ミス!
魔王に128のダメージ!
僧侶は増強魔方陣を描いた!
パーティの力と体力が上がった!
勇者は落雷魔法大を唱えた!
魔王に219のダメージ!
魔王は灼熱の炎を吐いた!
パーティに163のダメージ!
僧侶は回復魔方陣を描いた!
パーティの体力が127回復!
魔王は白く輝く息を吐いた!
パーティに185のダメージ!
これは魔王即死パターン
戦士「くっ・・・ダメージを与えても全然怯まない・・・」
僧侶「回復が追い付きません!」
魔法使い「これは中々ハードね・・・」
勇者「心を気圧されたら負けだ!敗北は己の心にある!まだだ!」
勇者は魔王に斬りかかった!
パーティもそれに続く!
・・・
魔王の間
決戦開始から二時間
魔王「もう終わりかね?」
パーティは全員瀕死だ!
僧侶「こんな・・・こんなになの・・・?」
魔法使い「禁呪を唱える隙がない・・・」
戦士「ここまで・・・ここまで来たのに・・・!」
勇者「まだ・・・まだ策がある。みんな、僕に一度だけ賭けてくれ。
僕にも勇者にしか出来ない禁呪がある・・・それを使えば、一瞬だけどみんなの力が最大まで上がる。
そうしたら、魔法使いさん、僧侶ちゃんは禁呪を。
戦士くんは宝剣を持って魔王に突撃してくれないか?
これは危険な賭けだ。それでも・・・」
戦士「ここまで来たら、何にでも賭けますよ。」
魔法使い「勇者の策は外れたことがないわ。私も、賭ける。」
僧侶「私は勇者様を信じています・・・これからも、ずっと。」
勇者「みんな、ありがとう・・・
僕の命を賭して、必ず成功させる!行くよみんな!
禁呪、天生魔方陣!」
パーティの体力と魔力が全回復し、各ステータスが二倍になった!
勇者はその場に倒れた!
戦士「勇者殿の力、確かに受け取った!
おおおおおおっ!!!!」
戦士が宝剣を構えて魔王に突進する!
魔法使い「禁呪・・・紅竜炎天魔法!」
僧侶「禁呪・・・蒼竜水天魔法!」
二人の禁呪が、二色の竜を呼ぶ!
竜が引き起こす現象が魔王に・・・
いや、戦士の宝剣に流れ込む!
魔法使い「なに、これ!魔力が持っていかれる!」
僧侶「魔力が・・・力が、無くなって・・・」
戦士「宝剣が、輝く?」
宝剣が鞘から解き放たれ、透き通るような刀身が姿を現す!
戦士「こ、これは・・・」
魔王「まさか、ゼロブリンガーだと!?」
戦士「あ・・・力が・・・心が、吸い込まれる・・・!勇者・・・殿・・・っ!」
勇者「・・・この時をずっと、待ってたんだ。
ごめんみんな。死んでくれ。」
三人は力を失い、その場に倒れこんだ。
もう、生気は感じない。
ゼロブリンガーが持ち手を無くして床に転がり、カラン。と乾いた音を立てる。
勇者はそれを拾い、構えた。
勇者「お兄ちゃん・・・私だよ。」
えっ
ずっと、この時を待っていた。
お兄ちゃんが魔王に目覚めて、いなくなってからずっと。
性別を偽って。誰にも気付かれないように。
私達は双子。兄が魔王で、私が勇者。
王様は兄が勇者だと思っていたようだったけど。
これは呪い・・・そう、神が存在することによる原罪、反神の存在を消すために神が私達に宿した呪い。
神は反神を人間に封じ、また自らをも人間に封じた。
そうして目覚めた神の魂は勇者として、反神は魔王として長い間存在し続けた。
そして神の使いたる天使である母と、人間の間に生まれた私達兄妹に、その呪いは発症した。
私はお兄ちゃんを倒すための勇者として生まれた。
お兄ちゃんは世界を滅ぼす魔王として。
魔王の呪いに苦しんだお兄ちゃんは、結界を開いて魔界に自分を封印した。
魔王の呪いを断ちきるには、呪いをゼロにしなくちゃいけない。
そのためにはゼロブリンガーが必要だった。
ゼロブリンガーは正と負の強い力、そして調停者の無の心を犠牲にして力を発揮する。
戦士くん、魔法使いさん、僧侶ちゃんはそのために私が選んだパーティだった。
私の予測通り、三人は疑いもなく力をつけ、私を信じて力を使ってくれた。
そのためにずっと策を練って、魔物を倒して三人を信用させ、「勇者の策に力を出せば敵を倒せる」と思い込ませることが出来た。
そうして疑い無く放たれた力は、ゼロブリンガーを産み出してくれた。
勇者「私はゼロブリンガーで魔王をゼロにするんじゃない。
お兄ちゃんの魔王の呪いと私の勇者の呪いをゼロにする。
そうして、私達は普通の人間としてずっと暮らし続ける!
そのために今日まで頑張ってきた!」
勇者はゼロブリンガーを魔王に向けた!
勇者「お兄ちゃん・・・戻ろう、私達の世界へ・・・!」
勇者はゼロブリンガーを魔王に降り下ろした!
ーここは・・・
ーそうか、俺はもう、魔王として目覚めてしまったんだ。
ー懐かしい声がするな。妹・・・お前にも辛い思いをさせてしまった。
ーもう、これで終わるだろう。長い呪いも、俺の存在も。
ーああ、最後に会いたかったな。
妹「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
兄「あ・・・ここは・・・お前は・・・」
妹「私よ!わかる?もう、勇者と魔王じゃないの!私達、普通の人間になれたの!」
兄「そんな・・・まさか・・・そこに倒れてる人達は?」
妹「・・・」
兄「お前、ゼロブリンガーを使ったのか・・・微かだが、記憶がある・・・」
妹「お兄ちゃんと離れ離れになって辛かった!ずっと会いたかった!だから・・・!」
兄「そうか・・・しかし、なんということを・・・その人達はお前を信じてここまで来てくれたんだろう・・・」
妹「私はお兄ちゃんさえいれば、いいの・・・たった一人の、家族だもん・・・」
兄「俺の、せいだな・・・イクジスターを、持ってるか?」
妹「え、うん・・・でも、私にはもう勇者の力がないから・・・」
ゴルゴ「」パアン
兄「」ぐえっ
妹「」あんっ
兄「・・・ディバイダーよ、我が前へ。」
黒い剣が、突如兄の前に出現した!
妹「ディバイダー・・・?」
兄「俺が魔王だった時に、イクジスターを模造するために出来た失敗作だ。
ゼロを分割することはできないが、モノを分割することが出来る・・・これを!」
なんと、兄は自分の胸にディバイダーを刺した!
妹「お兄ちゃん!何を!」
兄「俺の魂を、そこにいる三人に分割して分け与える・・・
そうすれば元通りとはいかなくても、息を吹き返すことは出来る・・・」
妹「そんな!お兄ちゃんは!?」
兄「俺は三人の中で生き続ける・・・これが一番いいんだ。
関係のない人を巻き込んでしまった、俺の罪・・・」
妹「嫌だよお兄ちゃん!また、また一人になるの?もう嫌だよお・・・」
兄「お前にはここまで着いてきてくれた人達がいるだろう。一人じゃない。だから・・・」
兄の姿が薄く消えて行く!
妹「嫌だ!待ってよ!私は、こんな結末のために頑張ったんじゃ・・・」
ーさよなら。妹。ありがとう。ごめん。
妹「お兄ちゃあああああんっ!!!!」
魔王と呼ばれた存在は、その力の全てを使い、そして消え去った。
そして、世界に平和が訪れた。
西の国、謁見の間
王「よくやった勇者とその仲間たちよ!」
戦士「いや、その・・・」
魔法使い「気付いたら魔王が消えてて・・・」
僧侶「勇者様がきっと倒してくれたと思うんですけど、その・・・」
勇者「・・・」
僧侶「ご覧の状態で・・・」
魔法使い「なんとか転移魔方陣で戻ってきたんですけど、ね。」
王「ふむ・・・勇者も疲れておるのだろう。休ませてあげるとよい。
しかしそれでもめでたい!
今夜は国始まって以来、最大規模の宴を催そう!」
勇者「なんかごめん」
魔法使い「チッ」
僧侶「は?」
戦士「うっ・・・ハアハア」
全く読んでないんだけどこれ伏線あったの?
無いなら>>1-200まで技名叫んで○○のダメージ!+茶番で、
ラストで突然“オニーチャン!”だの“ディバイダーだ!”だのて…
おまえらよく堪えられるな
>>234
いちおー兄弟とか±とかあったけど・・・ねぇ
宴の裏で、城のテラス
勇者「・・・」
僧侶「勇者様。」
勇者「・・・」
僧侶「私は、薄々気がついてましたよ。」
勇者「・・・え?」
僧侶「これでも神に仕える身。伝承はしっかりと頭に入っています。ゼロブリンガーも、その起動方法も。」
勇者「そうだったんだ・・・。でも、なら何で?」
僧侶「勇者様がいたから、私は出生を知ることが出来ました。本当に感謝しています。
それに、例え私達の身が滅びても、魔王という存在が無くなれば、世界は救われますから。」
勇者「・・・そっか。」
僧侶「勇者様が女性だったのはショックでしたけどね。私、好きだったんですよ。」
勇者「それは・・・ごめん。」
僧侶「でも、どんな理由であれひた向きな勇者様が好きだったんだと思います。だから。」
勇者「・・・」
僧侶「きっと、みんなもそうです。そして、僅かながら暖かい存在が私達の中にいるのも感じます。」
勇者「お兄ちゃん・・・お兄ちゃんは、色んな話を沢山教えてくれた。
ものすごく勉強熱心で、私が旅の途中で魔物の倒し方を知ってたのも、全部お兄ちゃんが教えてくれたからなんだ。
今思えば、こうなることを見越して、私に倒させようとして・・・教えてくれてたのかもしれない、な。
でも・・・私は・・・そんなお兄ちゃんが大好きだった・・・。
魔王でも何でも良かった!
ただ、私の側にいてくれればそれで良かったのに!」
兄「「だからそう、落ち込むな。お前は一人じゃないと言ったはずだ。」」
勇者「え!?」
僧侶「・・・なんて、囁いているのが聞こえます。私は僧侶ですから。」
勇者「お兄ちゃん・・・うあっ・・・うわあああああんっ!!」
僧侶「願わくば、永久の安息を全ての生ける者へ。永劫の平安を、皆にお与えください・・・アーメン。」
何故魔王はイクジスターを作ろうとしたのか。
何故神はこの双子にかくも辛い運命を与えたのか。
何故母は人間と恋に落ちたのか。
この世界から、本当に呪いが消えたのか。
この世界の謎は、全て解き明かされた訳ではない。
それはまた、別の誰かが解き明かす物語かもしれない。
少なくとも、一人の少女の長い旅は終わった。
今はその傷を癒せるように。
永遠の祈りを。
Fin.
すみません。長々とご迷惑をお掛けしました。
以前書いたドラえもんのSSを読み返して、
「地の文が多すぎて2chでは読みづらかったかな」
と思って今回は会話文のみにしたつもりでしたが、改行のタイミングもわからず、多くの人に不快な思いをさせてしまいました。
お詫びします。
それでも読んで下さった方々、どうもありがとうございました。
それっぽく終わらせてどや顔する>>1
>今はその傷を癒せるように。
>永遠の祈りを。
>Fin.
なんて文学センスだ…くそっ、腹筋がもたねえ!
前にも勇者SS書いてなかったか?
>>261
昔書いたのは2年前くらいのドラえもんとドラクエ4のSSだけです。
ただ魔法の表記の仕方は他の方の勇者SSを読んでわかり易かったと思ったのをアレンジしました。
西の大陸、東の村、宿屋
勇者「あ、僕はいいからさ。みんなはお風呂入っておいでよ。」
戦士「男同士汗を流してこそ友情は育まれるんですよ!勇者殿!」
魔法使い「いや、なんか気持ち悪い・・・」
僧侶「じゃあすみません勇者様。私たちも先にお湯を使わせてもらいますわ。」
風呂、皆が上がった後で
勇者「ふう…。やっぱり気持ち良いや。
本当は僧侶ちゃんなんかとは一緒に入りたいんだけどな」
戦士「はっはっは!勇者殿!お背中を流しに来ましたよ!」
勇者「あsdfghjkl!!!!!!!!!」
戦士「そう恥ずかしがることもないでしょう!
おや、勇者殿。ずいぶんか細いですね。
特に胸の辺り、自分なんて大胸筋がほら!こんなに!」
勇者「……」
戦士「あれ?勇者殿どうしたのですか震え
勇者「落雷魔法一点集中!!!!!!」
戦士「くぇrちゅいおぱsdfghj!!!!!」
勇者「……そんなに、女らしくないのかな。僕……」
断罪の崖に向かう途中
魔法使い「あんた勇者のこと好きなんでしょ」
僧侶「……ええ。確かに好きですよ。」
魔法使い「告白したりしないの?」
僧侶「私はどちらかと言うと、見てるだけでもいいタイプなんです。
好きな人を木陰で見つめて、でも実はその人には好きな人がいて、人知れず涙を流すような……」
魔法使い「はぁ…」
僧侶「突如現れる美人な幼馴染!ああでもあんなに素敵な笑顔を見せて!」
魔法使い「おーい。僧侶さーん」
僧侶「ああ悲恋!届かぬ想い、重ならない二人!」
魔法使い「孤児院にはすっごい古い童話みたいな恋愛本しか無かったわね……
だからこうなっちゃったのかしら。今度色んな酒場に連れて行ってもう少し男を見せるか……」
てかvipでやるものじゃねぇよ
文字もまともに読めないアホばっかなんだからさ
エロいのと自分の好きなアニメSSだったらなんでもいんだからこいつ等は
>>282
僧侶「きゃあああっ!」
僧侶に56のダメージ!
魔法使い「うっ!」
魔法使いに32のダメージ!
戦士「このやろうっ!」
戦士の攻撃!魔物に30のダメージ!
魔物は距離を取った!
勇者「僧侶ちゃん!傷が深い・・・中回復陣!」
これがまともに読む文字なのかよ
このSSまとめへのコメント
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