静葉「秋が来ない・・・」 (20)

穣子「気を落とさないでよお姉ちゃん、ちょっと今年は遅れてるだけだよ」

静葉「いや、違うわ!これは異変よ!誰かが秋を集めてるに決まっているわ!」

穣子「考えすぎじゃ・・・」

???「やっと見つけたわ。観念してもらうわ!」

静葉「誰?」

霊夢「秋を一人占めしてるのはあんたたちでしょ。とっとと返しなさい」

穣子「誤解よ!こっちだって秋が来なくて困ってるんだから」

霊夢「そんなこといって、どうせ秋が過ぎるのが惜しいからひっそり秋を集めているんでしょうが」

静葉「私たちは関係ないわ。異変であることには変わりないと思うけど」

霊夢「問答無用よ。話してわからないなら実力行使するまで」

穣子「ちょっ・・・」

霊夢「どうやらあんたたちは関係ないようね。時間の無駄だったわ」

静葉「ひどい・・・」

霊夢「大体あんたたちは幻想郷の秋を司ってるんじゃなかったの?」

穣子「さすがに秋の到来は管轄外よ」

静葉「紅葉に豊作が秋の主成分でしょ?今年は気候が伴ってないだけで」

霊夢「ちょっと期待はずれね。じゃあ私はこの異変解決しに行くからあんたたちも秋の神に恥じないことしときなさいよ」

穣子「秋の神に恥じないこと、か・・・」

静葉「とはいっても葉を色づかせたとしてもこの暑さじゃ風情も減ったくれもないわね」

穣子「収穫の時期でもないから収穫祭もできないし」

静葉「・・・とりあえず人里でも行ってみる?」

~人里~

村人A「この暑さはいつまでつづくんかね」

村人B「暦の上ではもう秋だろ。けれど一向に涼しくならねぇ」


穣子「やっぱり村のみんなも秋が来なくて困ってるね」

静葉「私たちに秋そのものを操る力があればなぁ」

穣子「そうだ、私たちで秋を集めようよ。そうしたら村の一角だけでも秋が来るかも」

静葉「どこか心当たりはあるの?」

穣子「これから探すのよ」

穣子「とは言ったものの手がかりがないわね・・・」

静葉「もうどこにも秋が残ってないんじゃないの?」

穣子「そういえば人里には物知りな歴史家がいるっていう話を聞いたわ」

静葉「何処にいるの?」

静葉「人里の寺子屋よ」

~寺子屋~

慧音「なるほど、一応形としては秋を司る神だから秋を探して回っていると」

穣子「形として、は余計よ」

静葉「何か手がかりはないの?」

慧音「ある時に春が来ない年があってな。その時は冥界の亡霊が春を集めていたそうだ」

穣子「じゃあ、またその亡霊が秋を?」

慧音「今回もそうなのかは分からない。だが、ここのところその亡霊の従者が怪しい動きをしているということは知り合いから聞いたことがある」

静葉「その亡霊は冥界にいるのね?」

慧音「ああ。だけど冥界は遠いぞ?」

穣子「秋を取り戻すためだもの、覚悟はできてるわ。行き方を教えてくれるかしら」

~白玉楼~

静葉「ここが例のお屋敷ね」

穣子「すごく長い道のりだったわ・・・」

静葉「それにしてもやけに静かね」

穣子「とりあえず中に入るわよ」

静葉「おかしいわね、勝手に入れば亡霊の従者が飛んでくるって話だけど」

穣子「留守なのかしら?」

静葉「・・・あれは?」

静葉「あなたがここの従者?なんかボロボロだけど」

妖夢「あなたたちは・・・?」

穣子「私たちは秋を取り戻しに来た者よ」

妖夢「あぁ、それなら先に博霊の巫女が秋を取り戻しにやってきたわよ」

静葉「流石博霊の巫女・・・早いわね」

穣子「で、あんたの主人はどこにいるの?」

妖夢「幽々子様でしたら今頃博霊の巫女と戦っているところでしょう。」

静葉「あっちの方から音がするわ。行ってみましょう」

霊夢「ふぅ、ようやく決着がついた。まったくこんなくだらない異変を起こして」

幽々子「だって、おいしい秋の味覚を独り占めしたかったんですもの」

霊夢「秋の味覚を・・・独り占め?」

幽々子「まさか今度はあなたが秋を独り占めするんじゃないでしょうね」

霊夢「ええ。私が勝ったんだもの好きにしていいはずよ」

幽々子「博霊の巫女が聞いてあきれるわ」

霊夢「ちょっとの間借りるだけよ」

静葉「・・・話はきかせてもらったわ」

霊夢「あんたたち、よくもこんな辺鄙なとこまで来たわね。少しは秋の神様らしく振舞っていたのかいら?」

幽々子「あらあら、この子たちが秋の神様?なかなかかわいらしいこと」

穣子「今度はあんたが秋を独り占めしようっていうのね?」

霊夢「だったらどうするつもり?」

静葉「決まってるじゃない。力づくで返してもらうわ」

霊夢「なかなかの度胸ね。いいわよ、二人まとめてかかってきなさい」

~数刻後、人里~

村人A「なぁ、なんかさっきから急に涼しくなったんじゃないか?」

村人B「ん、そういえば・・・」

村人C「おい、あそこの木を見てみろ!紅葉だ!」

村人B「本当だ・・・あっ、こっちの畑には稲穂が」

村人A「一気に秋が来るとは不思議なことがあるもんだ」

村人C「まさか、秋の神様のおかげなんじゃ・・・」

村人B「皆の信仰が実ったんだな。これからはより一層大事にすることにしよう」




静葉「皆の前に出ていかなくていいの?」

穣子「いいのよ。私は秋を喜んで感じてくれる人がいるだけで十分だよ」

静葉「・・・それもそうね」

――白玉楼での秋神の姉妹と博麗の巫女の戦いは凄まじい物だった。
  特に秋神の姉妹には幻想郷の秋を司っているというプライドがある分引くわけにはいかなかった。
  長きにわたる戦いの末、秋神の姉妹はついに秋を巡る戦いに勝利という形で決着をつけた。
  その時の博麗の巫女には残念な素振りは見えず、むしろ満足そうな表情をしていた。
  この一連の騒動の後、秋神の姉妹に対する里の人間の信仰はより厚いものとなった。
  秋を巡る異変は偶然か、あるいは博麗の巫女と亡霊が結託して秋神の姉妹を試したものだったのか――
  なんにせよはっきりわかることは、幻想郷の秋を司るに最もふさわしい者は秋神の姉妹に他ならないということだ。



おわり

  
  

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