千早「春香と暮らしたい」 (110)

千早「律子、ちょっといいかしら」

律子「どうしたの?」

千早「引越しの件なのだけど」

律子「ああ、それね。親御さんはどうだって?」

千早「どうもなにもないわ。必要な書類だけ回してくれればいい、と」

律子「……そう」

千早「まあ分かりきっていたことだけれど。あの人達にとって私はどうでもいいのよ」

律子「……よさそうな物件をピックアップしておいたわ」バサ

律子「その中から選びなさい。都合がつけばすぐにでも内見に行きましょう」

千早「ありがとう」

千早「……」パラパラ

千早「ねえ律子。このリストは1Kまでしかないのかしら」

律子「あら、もっと広い方がいいの?」

千早「そうね、出来れば2LDKくらい」

律子「探せるには探せるけど高くつくわよ。大体そんな広くてどうするの」

千早「でも二人で暮らすには最低でも1LDKは必要だと思うの」

律子「二人? 千早の他に誰が住むっていうのよ」

千早「春香」

律子「え?」

千早「春香と暮らしたい」

律子「」

律子「もっかい言って」

千早「春香と暮らしたい」

律子「……聞き間違いじゃなかったか」

千早「駄目かしら」

律子「悪いけど今その判定が出来るほど落ち着けてない」

千早「落ち着いて律子。深呼吸よ」

律子「こいつめ」

律子「どうしてそんな話になっているのよ」

千早「春香は家が遠いでしょう?」

律子「片道二時間って言ってたわね」

千早「そこに引越しをしようとしている私がいる」

律子「なるほど丁度いい!……とはならないわよ?」

千早「あと、一つ屋根の下、って凄くいい響きだと思うの」

律子「おい」

千早「引越しと一緒に家具も揃えなければね」

律子「え、まあ、うん」

千早「カーテンの色は……やっぱりピンクかしら」

律子「細かいわね。しかも意外なチョイス」

千早「そうかしら? ベストだと思うけれど」

律子「千早は服にしたって寒色系が多いじゃない」

千早「私じゃなくて春香の好みよ」

律子「ですよねー」

律子「もしや春香も既にそのつもりなの?」

千早「いえ、これから提案するわ」

律子「相手の都合も考えずにルームシェア計画してるんじゃないわよ」

千早「ルームシェアじゃないわ」

律子「じゃあ何だって言うの」

千早「同棲よ」

律子「」

千早「律子、想像してみて」

千早「仕事を終えて帰宅すると……」

千早「キッチンの方からトントンという包丁の音が聞こえてくるの」

千早「のぞいてみるとエプロン姿の春香が立っていてね」

千早「そしてあの太陽のような笑顔で言うのよ」

千早「おかえりなさい、って」

律子「……」

千早「素晴らしいと思わない?」

律子(思ってしまった……)

律子「って、いやいや。春香だって仕事があるでしょう」

千早「その時は私が頑張るわ」グッ

律子「……」


千早『おかえりなさい』ニコッ


律子(ほう……)

律子「いやいやいやいや」ブンブン

千早「どうしたの? ヘッドバンギングなら縦方向よ」

律子「落ち着け私。迎える側がどっちかとかじゃなくて、そもそもルームシェアそのも

千早「同棲」

律子「……同棲そのものを問題視するべきよ」

千早「駄目なの?」

律子「現状ではあまりいい顔は出来ないわ」

千早「律子、笑顔よ。アイドルにとって笑顔は大切なものよ」

律子「表情の話じゃないわよ。っていうか千早に言われたくない」

千早「どうして駄目なの? こんなにも切望しているのに」

律子「その切望具合が不純だから問題なのよ」

千早「不純だなんて失礼ね」

律子「不純ではないと申すか」

千早「私は春香と暮らしたいだけよ」

律子「具体的にどうぞ」

千早「一つ屋根の下で幸せな家庭を

律子「家庭とか言っちゃってる時点でアウト」

千早「そんな。私は春香と病める時も健やかなる時も互いに支えあって

律子「その文言もアウトね」

千早「どうしてよ」

律子「どうしてもよ」

千早「納得のいく説明を頼むわ」

律子「不純だから」

千早「不純だなんて失礼ね」

律子「ループとかさせないからね?」

千早「二人いればなにかあった時も対応しやすいでしょう」

律子「それはまあ」

千早「女子とはいえ一人より二人の方が防犯上も安心なはずよ」

律子「それもまあ」

千早「私の家賃補助と春香の交通費が集約されて経理的にも優しいと思うわ」

律子「急に正論並べないでよ。私が間違ってる気がしてきたじゃない」

律子「……分かったわ。そこまで言うなら春香の意見を聞きましょう」

千早「勿論よ」

律子「春香が賛成しなかったらこの話は終わり。いいわね?」

千早「それで構わないわ」

春香「おはようございまーす」ガチャ

律子「流石のご都合主義ね」

律子「春香、ちょっと来て」

春香「はーい。なんですか」

千早「私、家を出ようと思っていて、部屋を探しているところなのだけれど」

春香「そうなんだ」

律子「そうしたら千早が春香と一緒に暮らしたいとか言いだしてね」

春香「えっ? 千早ちゃんと私が?」

千早「実家から事務所に来るの大変でしょう? どうかしら」

春香「うーん……」

千早「……」

律子「……」

春香「……」

春香「……」

春香「……///」

春香「私もそれに賛成です」

律子「おい今何考えた」

千早「律子、これで文句はないわね?」

律子「やっぱり許されざる行為な気がしてきたわ」

千早「そんな。アイドルに二言はないんじゃなかったの?」

律子「言ったことも聞いたこともないわよそんな格言」

春香「……///」

律子「春香はまた一人でトリップしない」

千早「とにかく春香も異存はないようだし。この方向で行きましょう」

春香「うん! えへへ、今から楽しみだね」

千早「2LDKがいいと思うのだけれど。春香と私で一部屋ずつ」

春香「えっとね、お部屋は一緒がいいな」

千早「あらそう?」

春香「その……」ナイショバナシ

千早「!」

千早「律子、1LDKで探してちょうだい///」

律子「おい今何吹き込まれた」

律子「というわけで押し切られる形であの二人の同棲を許すことに」

小鳥「憎いッ……! 居合わせられなかった運命が憎いッ……!」

律子「とにかくその関係の書類がその封筒の中身です。処理お願いしますね」

小鳥「はーい。グスン。……ピヨホオォッ!?」

律子「ど、どうしたんですか奇声を発して」

小鳥「りりり律子さんはこれ見なかったんですか?」

律子「私は確認してないですね」

小鳥「春香ちゃんの分なんですけど」ガサ


氏名:如月春香


律子「おい天海コラァ!!」




はるちは おわり

貴音「もし、律子」

律子「はいはい?」

貴音「こんぴゅうたぁというものを使いたいのですが」

律子「えーと、パソコンでいいの?」

貴音「それはいんたぁねっとには繋がりますか?」

律子「使えるけど……。貴音がネット? 珍しいわね」

貴音「部屋を探すのにいんたぁねっとが便利だと聞き及びまして」

律子「引っ越すの?」

貴音「ええ、やむを得ず」

律子「何がどうしたのよ」

貴音「管理会社が言うには耐震強度というものが足りなかったらしく……」

律子「おい今まで何処住んでた」

貴音「そういうわけで新しく住居を探さねばならぬ次第でして」

律子「分かったわ。なんなら手伝う?」

貴音「なんと……。ならばお願いしても宜しいでしょうか」

律子「お安いご用よ」

貴音「生憎とこんぴゅうたぁの操作には不慣れでして」

律子「らくらくホン使ってるくらいだものねえ……」

律子「場所はやっぱり事務所にアクセスしやすい方が良い?」

貴音「そうですね。やはり拠点への移動は楽な方が」

律子「家賃は……まあ貴音の稼ぎなら割と気にしなくていいかしら」

貴音「折角なので少しくらい贅沢をしてもいいかもしれません」

律子「間取りは?」

貴音「居間の他に三部屋ほどあると僥倖です」

律子「嫌な予感がする」

律子「ねえねえ貴音?」

貴音「どうしました?」

律子「貴音は一人暮らしよね?」

貴音「ええ、現在は」

律子「……現在は?」

貴音「これを期に響と同居をしようかと」

律子「」

貴音「響の家族もいるので部屋は多い方が良いかと存じます」

律子「部屋数のことはいいからとりあえず同居について聞かせて」

貴音「引越しと重ねれば色々と手間が省けると思いまして」

律子「タイミングの問題じゃなくて理由ね」

貴音「……?」キョトン

律子「何で分からないの? みたいな顔をするな」

貴音「理由と言われましても……」

律子「あのね。家族でもない人との同居ってそれなりの理由があるものなのよ」

貴音「ふむ……。一理あります」

律子「一理どころか真理だわよ」

貴音「よいでしょう。この機に律子に響の魅力を教えて差し上げましょう」

律子「同居の方の理由を教えて頂きたいのだけれど」

貴音「……?」キョトン

律子「だーかーらー」

貴音「……響ですよ?」

律子「響だからなんだっていうのよ」

貴音「一緒に暮らしたいでしょう?」

律子「短絡的ってレベルじゃないわよ」

貴音「……?」キョトン

律子「それはもう飽きた」

貴音「律子は考えたことがないというのですか!?」ダンッ

律子 ビクッ

貴音「帰宅したら響がいるという生活を!!」

律子「考えたことないわ」

貴音「律子ともあろう者が……嘆かわしい!!」

律子「あれ? なんで私怒られてるの?」

貴音「そう……。あれは私が響の家にお邪魔した時でした」

律子「急に回想入った」

貴音「呼び鈴を鳴らすと『おー! 今開けるー!』という声が扉の向こうより聞こえて参りました」

律子「下手くそな声真似は省略していいのよ?」

貴音「足音ののち、がちゃりと扉が開くと……」

貴音「『貴音ぇー! 待ってたぞ!』と満面の笑みで迎えてくれる響がそこにいたのです」

律子「似てねえ……」

貴音「その時、私は気づきました」

貴音「響と暮らすべきだと」

律子「なんだと」

貴音「以降、私は今か今かと機を待ち望んでいた次第でございます」

律子「結局理由が分からない……」

貴音「さて本題の方へと。響の魅力についてですが

律子「本題は部屋探しでしょうが」

貴音「おっと。これは私としたことが」

律子「早めに気づいて欲しかったわね」

貴音「ともかく居間の他に三部屋で探したいのです」

律子「まだ同居は認めてないわよ?」

貴音「面妖な」

律子「私が言いたいくらいよ」

律子「響には言ってるの? 言ってないの?」

貴音「まだ伝えておりません」

律子「どいつもこいつも相手の了承も得ずにルームシェアを企てるのは何故だ」

貴音「響の喜ぶ顔が見たく……。さぷらいず、というものです」

律子「同居の無心で相手が喜ぶと思っているのか」

響「はいさーい!」ガチャ

貴音「響! よいところに参りました」

律子「またこの流れか」

響「おー貴音。律子と何を話してるんだ?」

貴音「新居についてです」

響「貴音引っ越すのか?」

貴音「ええ、やんごとなき事情がありまして」

響「そっかー。何か手伝えることがあれば言ってよね!」

貴音「では一緒に住んで頂けますか?」

響「」

律子「ですよねー」

響「え? 一緒に?」

貴音「そうです。よい機会だと思うのです」

響「な、何言ってるんだ貴音?」

貴音「響……?」

律子「そうよ響、言ってやりなさい」

響「自分の都合も考えてほしいぞ! 自分の家族の引越しって大変なんだからね!」

律子「」

貴音「そうですね……少々独りよがりだったかもしれません」

響「そういうことはちゃんと早めに言ってよね」

貴音「申し訳ございません。実はさぷらいずというものをやってみたかったのです」

響「そ、そうだったのか……。ごめん貴音! 自分も貴音の気持ちを考えてなかったぞ」

貴音「よいのです。大事なことはちゃんと話し合うべきだったのです」

響「大丈夫だぞ! ああ言ったけど、今の部屋に越した時にお世話になった業者さんにお願いすればなんとかなるさー」

貴音「ならば安心ですね」

律子「私の心は何も安らいでいないわよ?」

小鳥「それで押し切られたと」

律子「この事務所はどうなってるんでしょうね」

小鳥「私が聞きたいですよ!」

律子「ですよねえ」

小鳥「なんで私がいない時ばっかり……ううっ、えぐっ……」

律子「本気で嗚咽している……!」




ひびたか おわり

眠いので終わります
お疲れさまでした

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