男「今日も疲れたな」ガチャ ドア「おかえり」 男「」(426)

男「きっと疲れが最高潮に達しているんだ、そうに違いない」

ドア「ただいまも言わないとは無愛想なご主人だ」

男「寝よう」

ドア「……」

バタン

男「暗いな」カチッ

スイッチ「あん///」

男「」

男「だめだ、本格的にやばい」

男「病院に電話しよう…」スッ

携帯「へいご主人! 何番におかけのつもりで?」

男「」ボトッ

携帯「おぎゃぁ!」

男「もう寝よう… 俺そろそろ死ぬのかな…」ゴソッ

ベッド「ご主人様、また体重が減られたのでは?」

男「」ドサッ

男「いてて…」

ベッド「だっ、大丈夫ですか!?」アワアワ

男「勘弁してくれ…」

男「きっとこれは夢なんだ 明晰夢なんだ」

男「試しに他の物に話しかけてみるか」

男「おい冷蔵庫、元気か?」

冷蔵庫「最近、腹の中が物足りない気がするでごわす」

男「」

冷蔵庫「あるとすればビール2本くらいのものでごわす」

冷蔵庫「もっと栄養のあるもの、例えば新鮮な野菜なんかを…」ペチャクチャ

男「」

男「諦めよう、夢ならしょうがない」

男「寝る前にテレビでも見るかな」ポチッ

リモコン「6番入りまーす!」

男「もう慣れたわ…」ガクッ スヤスヤ

チュンチュン

男「ん」ガバッ

男「ありゃ、もう朝か」

ガヤガヤ

男「んあ、テレビつけっぱだった」ポチッ

男「……」

男「リモコンが喋るなんて所詮夢だったか」

テレビ「過労死するっちゅーねん! 何時間つけとんねん!」

男「」

男「夢じゃなかった…だと…?」

男「これはひどい」

男「予約してないけど、病院行かなきゃ…」ガチャ

ドア「行ってらっしゃい、ご主人!」

男「あはは…」バタン

ドア「また無視ですかい ま、気をつけて!」

男「あはははははは」ダッ

病院

医者「仕事のしすぎですね ストレスから来る幻聴ですね」

男「はぁ…」

医者「まぁ症状は軽いように思えますし、しばらく様子を見ましょう」

男「(重症に決まってるだろこのやぶ医者!)」

男「結局なんの解決にも繋がらなかった…」

男「ただいまー」ガチャ

ドア「おかえり、ご主人」

男「おう…」バタン

ドア「おっ」

携帯「やいご主人! おいらを忘れるたぁいい度胸してんじゃないの!」

男「うるせーな! たまたま忘れただけだろ! 折るぞ!」

携帯「」ガクガク

男「バイブ? メールかな?」ヒョイ

携帯「」ガクガク

男「メール来てないじゃん なんだ?」

携帯「」ガクガクガクガク

男「もしかしてこいつが震えてるだけ?」

携帯「ヤメテクレー」ガクガク

男「は?」

携帯「オラントイテー オラントイテー」ガクガクガクガク

男「(なんか可愛く思えてきたんだけど)」

男「折ってほしくないか」

携帯「モチロン」ガクガクガクガク

男「だったらその震えるのをやめろ うざい」

携帯「」ピタ

冷蔵庫「ご主人、その辺にしといてやってくれでごわす」

男「見てたのか」

冷蔵庫「全て」

男「コンセント抜くぞ」

冷蔵庫「」ガクガクガクガクガクガクガクガクガク

男「やめてなんか地響きが」

隣人「なんだこの地響きはァ! われこらァ!」バンバン

男「ほっ、ほら! コンセント抜いたりしないから震えるのをやめてくれ!」

冷蔵庫「」ピタ

男「くそ、このままやり過ごすか…?」

隣人「入るぞわれェ!」バンバン

男「やばい鍵かけてない」オワタ

ドア「ガチャリ」

隣人「なんじゃ鍵かけとるんかァ! 開けろわれェ!」

男「えっ」

ドア「アケマセンゾ」

隣人「われェ! 開けろォ!」ガンガン

男「ドア…」

隣人「蹴破るぞォ! オルァ!」ドカッ バキッ

ドア「サスガニイタイ イタイイタイ」

男「どっ、どうしよう…」

警察「ちょっとそこのあんた」トン

隣人「えっ」

男「(キター!)」

警察「あなたの部屋の隣人さんから通報がありました」

隣人「えっ ちょっ ハァ?」オドオド

男「(隣人の隣人キター!)」

警察「ものすごい怒号と騒音が聞こえて、これ以上耐えられないとか」

隣人「は? 知らんし 騒音とか知らんし 知らんし」

警察「詳しい話は下で聞きますから」グイッ

男「ふぅ… 嵐は過ぎ去ったか」

冷蔵庫「ごめんなさいでごわす」シュン

男「気にすんなって」

携帯「元はと言えば、おいらが調子にのるから…」

男「お前も気にすんな」

携帯「でもでもおいらは…」

男「それ以上言うと折る」

携帯「」

男「てかなんでお前ら喋るの?」

テレビ「わいが知るか」

リモコン「気づいた時には…なぁ?」

ベッド「それが当たり前だったかのように…ねぇ?」

ドア「死にそう」

男「生きてたのか」

ドア「なんとか」

ドア「少しへこんだけども」

男「まじでか 直してやるよ」

ドア「いえ、ご主人をお守りした勲章として残して頂きたい」

男「ドア…」

男「でもなんか家のドアがへこんでるって不格好だな」

男「俺の家がしょぼく見えそうだな マンションだけど」

ドア「そうですか…」

男「まぁそう落ち込むな、しばらくは残すから 直す気力も技術もないし」

数日後

男「隣人に会ったらどうしよう… なんか怖いな」

携帯「あれから全然見ませんな」

ドア「引越し業者が隣人の部屋に来ていましたぞ」

男「まじでか これでまた平和だな」

ベッド「そうですね! では明日も早いので、おやすみなさいませ」

男「うん、おやすみ」カチッ

スイッチ「あん///」

チュンチュン

男「さて仕事行くかな」ガチャ

ドア「お気を付けて」

男「分かった 俺の家、しっかり守っといてくれよ」バタン

ドア「お安い御用です それが私の仕事ですので」

ドア「今日はなんだか雲行きが怪しいですぞ、傘をお持ちに…」

ドア「もう行かれてしまったか 慌ただしいご主人だ」

会社

男「喉かわいたな…」

女「お茶ですよ」コト

男「あれ、頼んでないけど…」

女「そろそろ喉がかわいてらっしゃると思って… すみません」シュン

男「あ、いやいや びっくりしただけだから ありがとう」ゴクッ

女「いえいえ! 仕事に戻りますね!」タタタ…

男「…おいしい」

ザー

ドア「(雨が降ってきた…)」

ドア「(傘をお持ちでないご主人はどうなさるおつもりか…)」

ドア「(? 人が来たぞ)」

ドア「(ご主人はご留守ですよっと)」

元隣人「……」

仲間A「兄貴、いいんですかい?」

元隣人「なにがじゃ」

仲間B「いや、本当に荒らしちゃっていいんですかい?」

元隣人「いいに決まっとるじゃろがわれェ!」

元隣人「あの時警察にいろいろ聞かれてたせいで、『魔女っ娘ミルたん』見逃したんだぞこらァ」

仲間AB「(アホだ)」

元隣人「おらァ! いるんだろニートォ!」ドンドン

仲間A「開けろこらァ!」ドンドン

仲間B「おrrrrrァ!」ドンドン

ドア「(こいつら…)」

元隣人「さっさと出てこいこらァ!」バキッ ドカッ

ドア「(くっ…)」

仲間A「これ、中の人いないんじゃないんすか?」

元隣人「うーむ… わしに恐れをなして逃げたかボケェ」

仲間B「(ねーよ)」

元隣人「しょうがない、蹴破るか」

仲間A「えーっ、そりゃマズいっすよぉ!」

仲間B「そうっすよ!」

元隣人「ここまできたら引き下がれんのじゃァ…」

仲間AB「(さようならシャバ)」

元隣人「んじゃせーのでこのドアぶっ壊すからなァ」フンス

仲間A「へい…」

仲間B「んじゃやりましょう」

元隣人「そうだなァ せーのォ!」

ドゴッ

ドア「(ぐふっ…!)」

仲間A「あきませんねぇ…」

元隣人「えェーい、もっかいじゃァ!」

数分後

元隣人「なんで壊れんのじゃァ…!」ハァハァ

ドア「(もう限界…)」

携帯「ドアさん頑張って! まじ頑張って!」

冷蔵庫「わしらはただ見てることしか出来ないでごわすか…」

テレビ「こらあかんでぇ…」

元隣人「気合入れんかいお前らァ!」

仲間A「て言われても…」ハァハァ

仲間B「早く蹴破るか逃げるかしないと、また通報されますよ…」

元隣人「しゃーない、これが最後じゃァ!」

仲間A「はい…」

仲間B「それじゃやりましょう」

元隣人「せーのォ!」

ズドン

ドア「」

元隣人「壊れたぞおらァ!」

仲間A「よっしゃ!」

仲間B「蝶番が壊れてる… すごい勢いだったんだな」

元隣人「入るぞお前らァ」

仲間AB「へーい」

ドカドカ

ドア「」

携帯「あわわ…」

元隣人「わりと綺麗な部屋じゃのォ」

仲間A「荒らしがいがありますね!」

仲間B「ではまず 男にしては可愛らしい趣味のこのベッドから」

ビリィッ

テレビ「(ベッドのシーツが!)」

ベッド「(ひぎぃっ!)」

会社

男「そんじゃそろそろあがります」

おつかれさまでーす

女「男さん、今お帰りですか?」

男「うん」

女「実は私もなんですよ! もしよろしければ一緒に帰りませんか?」

男「なんで?」

女「なんでって…」オロオロ

女「えーと、えーと…」キョロキョロ

男「?」

女「(あ、男さん雨降ってるのに傘持ってない… これだ!)」

女「男さん、傘持ってないですよね? 私は持ってるので、それでですね…」
オドオド

男「あ、本当だ 俺傘持ってないね」

女「だから風邪ひかないように…」

男「なるほどね、それじゃ一緒に帰ろうか」

女「はい!」ニコッ

男「それじゃ、この辺で大丈夫だから」

女「あ、そうなんですか! ではお気をつけて…」タタタッ

男「あっ 待って」

女「はい?」ピタ

男「ありがとね また明日」クルッ

女「……」パァァ

男「結局ずぶ濡れになっちゃった」

男「ただいまー… !?」

ドア「」

男「ちょ えっ 何があった」

男「へ、部屋が…!」

携帯「ご主人! 隣人だった奴が仲間連れて部屋を…」

男「なんだと… みんな無事か!?」

リモコン「そ、それが…」

男「?」

冷蔵庫「ドアだけじゃなくて、ベッドが…」

男「ひどいことに… 大丈夫か?」

ベッド「私は大丈夫です… それよりドアさんが…」

テレビ「さっきから何も喋ってないんや…」

男「嘘だろ… ドア! しっかりしてくれ!」

ドア「」

男「ちくしょう… 奴ら…」

女「男さん… どうしたんですか? この部屋…」

男「女ちゃん!? どうしてここに…?」

女「いえ、あの後やっぱり心配になってついてきちゃって… そしたら男さんの部屋がこんなに…」

男「と、とりあえず今見たことは二人だけの秘密だ! 大事にはしたくない/・」

女「は、はい!(二人だけの、秘密…)」

女「と、とりあえずドア直しましょうよ! このままだと寒いですよ」

男「そうだね なんか今夜は冷えるし」

女「早速業者さんに電話入れますね!」

男「待て」ガシッ

女「ふぇっ?」キョトン

男「たった今、『二人だけの秘密』と言ったでしょう」

女「そっ、そうでした!」アワアワ

男「いいから携帯しまって」

女「すみません…」

男「そうやってすぐ謝るなって」

女「数秒前に男さんに言われたことも守れないなんて…」

男「だーかーらー ほんと、そういうとこあいつに似てるなぁ」

女「あいつ?」

男「」ギクッ

女「あいつって誰ですか?」

男「気にするな、俺の友達にお前みたいにすぐ謝る奴がいるんだよ」

女「そうですか… で、ドアは誰が直すんですか?」

男「俺が直すに決まってんだろ」

女「直せるんですか!?」

男「普通じゃない?」

女「いえいえ凄いですよ!」キラキラ

男「そんなに目を輝かせくなくても…」

女「私にできることって無いですかね?」

男「無いよ てか帰ってくれ」

女「えっ…」

男「別に女ちゃんのことが嫌いだとか、そういう意味じゃないんだよ」

男「ただこんなことがあったし、夜も遅いから早く帰った方がいいってこと」

女「男さん…」

男「だからばいばい」

女「…帰れません」

男「え?」

女「私だって、男さんが心配で帰れませんよ!」

男「女ちゃん…」

女「だから泊めてくれますか?」

男「待て」ガシッ

女「なんですか?」オドオド

男「なんですかじゃない あとオドオドするのやめれ」

男「さっき言ったこと、もう一回言ってくれないかな? ちょっと聞き間違えた恐れがあるから」

女「泊めてください」

男「」

女「いいですか…?」

男「いやいや若い男女が一つ屋根の下どうたらこうたら」

女「でも、男さんのことが…」グスッ

男「わーっ 分かったから泣かないでくれ!」

女「分かったってことは泊めてくれんですね!」

男「あ」

女「それじゃ私は何をすればいいでしょうか!」ルンルン

男「…破れたシーツ直しといてくれる?」

女「喜んで!」タタッ

携帯「」ニヤニヤ

男「折るぞ」ボソッ

携帯「」ビク

女「うわ、シーツがひどいことに…」

女「今直してあげるからね!」ササッ

男「女ちゃん、ベッドに話しかけてるし…」

男「結構イタい子なのかな」

男「…俺じゃん」

男「(てかもしこいつらが喋ることが女ちゃんにバレたら…!)」

サッ

冷蔵庫「」

ササッ

テレビ「」

サササッ

リモコン「」

男「(少しは空気読めるんだな…)」ホッ

携帯「」ガクガクガク

男「おい」

女「? なんですか?」

男「いっ、いや… お風呂入ってきたらどうかな」

女「あっ そうですね! ではお借りします」タタッ

男「……」ガシッ

携帯「オラントイテー」ガクガク

男「お前皆空気読んで黙ってたろ 何一人だけガクブルしてんだ」

携帯「どうしてもご主人に伝えたいことが…」

男「伝えたいこと?」

携帯「はい、実は…」

男「この映像…」

携帯「実はおいらがこっそり撮ってたんですよ あいつらが部屋荒しをしているのを…」

男「携帯…」

男「お前こんなことできたんだな やるじゃん」

携帯「だしょ?」ビシ

男「折る」

携帯「」ビク

男「折らないから」

携帯「」ホッ

男「んじゃこの動画を警察に突き出せば全て解決するな」

携帯「そこが問題なんですわ」

男「は?」

男「なんでよ」

携帯「いやだってこの映像は誰が撮ったの? ってなるでしょう」

男「あ」

携帯「そこでおいらに考えがあるんですわ」

男「なんだ?」

携帯「ご主人が連れ込んだ女ちゃんに…」

男「連れ込んでねぇわ折るぞ」

携帯「オラントイテー」ガクガク

男「んで女ちゃんに?」

携帯「撮ったことにさせれば…」

男「馬鹿か」

携帯「え?」

男「すると女ちゃんはこの部屋で撮ってたことになるだろ?」

携帯「はい」

男「女は撮ってる間何してたのってなるじゃん」

携帯「あ」

冷蔵庫「揃いも揃って馬鹿ばっかでごわすな、ははは」

男「おい、こんせんt…なんでもない」

男「(今地響きとか洒落にならん…)」

男「まぁ奴らもこれですっきりしたんじゃないか? もうここに来ることも無いだろう」

リモコン「だといいですけどねぇ」

男「とりあえず、今はドアを直すことが先決だ」

女「いいお湯でしたー」

男「」ビクッ

女「男さんも、お風呂が暖かいうちに入ってくださいよ!」

男「あ、あぁ… そうだね」

男「ドアもうすぐで直るし、その後にするよ」

女「そうですか… では私は引き続き、シーツを直しますね!」チクチク

男「よろしく」

男「(危ない危ない…)」

数分後

男「よし、ドア修復完了」

女「凄い! 本当に直しちゃった!」

男「本当にって… 信じてなかったのか」

女「あ、いや! そんなつもりじゃ…」

男「(こいつ面白い)」

男「冗談だよ、そんじゃ俺風呂入ってくるからさ」

女「は、はい」

チャポーン

男「危ない危ない、バレるところだった…」

男「女ちゃんって、その… 可愛いところあるんだよな…」

男「結構気が利くし… お茶の時とか、傘とか、その後のことも心配してくれたり…」

男「なんでここまでしてくれるんだろ まさか俺のこと…」

男「ねーよ」ザバッ

男「あがった」

女「はやっ! 男の風呂は早いですねぇ」

男「悪かったな」

女「やっ、そんなつもりじゃ…」

男「分かってるって んで、シーツどう?」

女「あ、完了してますよ!」

男「凄いじゃん、かなり綺麗にできてるよ」

女「えへへ… ありがとうございます」ニコッ

男「」ドキッ

男「あー… えっと もう寝ようか?」

女「あ、そうですね…」

男「それじゃベッド使って 俺床で寝るから」

女「えぇっ、そんな、悪いですよ!」

男「ベッド直してくれたお礼だと思ってさ」

女「で、でもっ」

男「いいから」

女「悪いですし…」

男「いいから」

女「でも…」

男「いいから」

女「はい…」

男「おやすみ」

女「おやすみなさい…」

チュンチュン

男「おはよう」

女「おはようございます…むにゃむにゃ」

男「起きろ」

女「あと40分…」

男「会社遅刻するから」

女「せめてあと1時間…」

男「延びてるし チューしちゃうぞ」

女「どうぞ」

男「待て」

男「冗談はこのくらいにして、そろそろ起きないか」

女「そうですね…」ムクッ

男「朝ごはん食べて、出勤しよ」

女「私が作りますよ!」フンス

男「ごめん冷蔵庫に何も無いんだわ」

女「えー」

男「近くのコンビニに行こうよ」

女「しょうがないですねー…」

携帯「」ガクガクガクガク

男「」

女「?」

男「けっ、携帯が! ちょっと先に外出てて!」

女「わかりました」スッ

男「…お前何してんの?」

携帯「いやっ 今日こそはおいらを連れてってほしいなーって」

男「あぁ、いつも忘れがちだったもんな 今日は連れてってやるから」

携帯「キター!」

冷蔵庫「いいなぁでごわす」

テレビ「ええなぁ…」

ドア「ご主人とお話するのもお久しぶりですね」

男「とか言ってもほんの何時間じゃんか」

ドア「ふふっ そうですね」

ドア「…女さんが待っておられますよ」

男「そうだな」

ドア「早く行かれた方がいいのでは?」

男「おう」

男「ドア…」

ドア「?」

男「気を付けてな」

ドア「ご主人こそ」

ドア「この家を ご主人をお守りするのが私の役目」

ドア「その使命を、私はこれまで忘れたことなどございませぬ」

男「ドア… お前」

ドア「ですから、安心して行ってらっしゃいませ」

ドア「次にまた奴らが来ても、撃退してみせますよ」

男「分かった… それじゃ」

ドア「行ってらっしゃい!」

ガチャリ バタン

男「お待たせ」

女「遅いですよぉ」ブー

男「ごめんごめん お腹すいたでしょ?」

女「当たり前ですー」

男「お詫びに今日はおごってあげるから」

女「やった!」

携帯「ご主人、結局おいら忘れてる…」シュン

テレビ「ざまぁ」

冷蔵庫「ざまぁ」

リモコン「ざまぁ」

元隣人「あのニート、ドア新しくしてやがるゥ!」

仲間A「壊しがいがありますね!」

仲間B「さっそく壊しましょう」

ドア「(また来よった…!)」

元隣人「さてこの前みたいにやるかァ!」

仲間AB「おーっす!」

ドゴッ

ドア「(今度は耐えてみせるんだ…)」

元隣人「おるァ! 壊れろォ!」バキッ

女「あれとー、あとこれとそれもいいなぁ!」

男「女ちゃんは結構食べる方なんだね」

女「んなっ エネルギーを蓄えるためですよ!」

男「はいはい そういうことにしといてやるよ」

女「本当なんですから!」

ウィーン

女「結構迷ったから、時間たっちゃいました… 会社間に合いますかね…」

男「大丈夫でしょ 待ってて、今時間を…」スッ

男「あれ」

女「?」

男「あちゃー 携帯忘れてたわ」

男「本当に遅刻したらやばいし、先に会社行っててよ」

女「あ、はい!」

男「んじゃまた会社でね」ダッ

隣人「おらァ!」

ドガッ

ドア「(ぐおおおおお!)」

仲間A「おらっ! おらっ! …ん?」

仲間B「何してる、手を休めるな… がっ」

男「お前ら何してんだ…?」

元隣人「見て分からんかいィ! ドア壊しとんじゃいィ!」

男「へぇ… ドアを」

元隣人「…えェ?」

男「お前ら、人の家のドアを本人の目の前で壊そうするとはいい度胸してんな」

元隣人「えっ 知らんし ドアとか 知らんし」

男「言い逃れできる状況かよ 仲間まで連れちゃって」

男「現行犯だな さすがに警察呼ぶわ」スッ

男「…! 携帯が無いんだった…!」

元隣人「すきありィ!」バキィッ

男「あぐっ!」ドサァ

男「いてぇ…」

元隣人「おらァ! うぜーんだよォ! お前のせいでなァ! ミルたんがなァ!」ドカッ

男「知らねぇよ…」

バキッ

ドア「(ご主人!)」

男「やばい死ぬ」

女「男さん! 大丈夫ですか!?」

男「女ちゃん!?」

男「なんでここに…! あっ 危ない!」

元隣人「女は引き下がってろおらァ!」

バキッ 

ドサッ

男「あ」

元隣人「いてえェ…」

警官「君達、大丈夫かね!?」

元隣人「なんだてめェこらァ!」

警官「警察だ 元隣人、お前を逮捕する」

元隣人「ハァ!? なんの罪でだよこらァ!」

警官「何言ってんだこいつ」ガチャリ

男「女ちゃん…大丈夫?」

女「男さんこそ! すっごい怪我してるじゃないですか!」

男「大丈夫、口ん中切ったり膝すったりしてるだけだから」

女「大した怪我はないんですね、よかった…」

男「それよりなんで警官と一緒に…?」

女「男さんが家に戻った後に、なんか嫌な予感がして…」

男「またついてきたのか」

女「すみません… やっぱこういうのってストーカー行為ですよね… 気持ち悪いですよね…」

男「確かにストーカーだな それはいいことじゃないかもしれない」

女「ですよね…」

男「でもね、女ちゃんにストーカー癖がなければ、俺死んじゃってたかもしんない」

女「男さん…」

男「でも大事にしたくないって言ったのに、なんで警察呼んでるの?」

女「最初男さんがボコられてるの見て、助けなきゃって思ったんですけど…」

女「私なんかじゃ絶対無理って思って… それで…」

女「結局約束破っちゃいましたね… すみません」

男「またそうやってすぐ謝る」

男「別に怒ってなんかないよ」

女「…え?」

男「女ちゃんがしたことは全部正しいんだよ」

女「えぇ!?」

男「だって女ちゃんがストーカーでチキンじゃなければ、俺死んじゃってたからね」

女「えへへ…」

男「褒めてないぞ?」

女「えぇ~…」

男「嘘 ありがと」ニコッ

女「男さん…」パァァ

男「とりあえず、病院行くから会社休むわ」

女「さっきはなんともないって…」

男「それも嘘 実は左腕が半端じゃなく痛い」

女「だったら私もお休みします!」

男「えっ」

女「男さんのことが心配で仕事に集中できそうにないんです!」

男「馬鹿、そんな理由で休むな」

女「でも…」

男「いいから仕事行け 俺の心配なんていいから」

女「分かりました… でもずっと心配してますからね? それじゃお大事に…」タタッ

ドア「少し冷たすぎやしませんか?」

男「俺なんかのせいで女に会社休まれても困るしな」

ドア「ご主人…」

男「そんなことより大丈夫か?」

ドア「もちろん ご主人が帰ってくるまで、お家をお守りするつもりでしたから」

男「間に合って良かった」

ドア「全くです」

数週間後

男「さて帰るか」

女「男さん、今日もご飯作りに行きますね!」

男「ご飯って言ったって、君は炒飯しか作れないだろう」

女「ふっふっふ、今日は別のメニューに挑戦しようと思いましてね」ルンルン

男「やめて家が燃える」

男家

男「結局上がらせてしまった…」

女「楽しみにしててくださいね♪」

男「ふぅ… 疲れた…」

携帯「ご主人、ご主人」ボソ

男「あ? なんだよ、今喋んなよ」ボソ

携帯「まぁまぁ」ボソ

男「まぁまぁ じゃねーんだよ…」ボソ

携帯「それはいいとして、いつ告白するんですか?」ボソ

男「ハァ!?」

女「」ビクッ

女「どうしたんですか…?」

男「い、いやなんでもないよ」

男「いきなり何を言い出すんだお前は!」ボソ

女「男さん、家にいるときひとり言が多い気がします」
携帯「いえいえ… ご主人は完璧に女ちゃんのこと好きですよね?」ボソ

男「意味分からんし…」ボソ

女「最近疲れてるんじゃないんですか? もし良かったら相談乗りますけど」
携帯「好きなら早く告白すればいいじゃないですかー ご主人ならイケますよ」

男「……」

女「って、こんな私じゃ相談相手にもならないですよね…」
携帯「さっさと想いを告げちゃいましょうよ!」

女「でも男さんさえ良ければ、いくらでも相談に」:
携帯「こーくはく! こーくはく!」ボソッ

男「あーもう うっさいなぁ!」

女「!」
携帯「!」

男「いい加減に黙っててくれないか! イライラしてるんだよ!」

携帯「ご主人…」

女「男さん、私… すみません!」ダッ

男「えっ!? 女ちゃん!?」

携帯「あー 逃げられたー」

男「こいつ…」

男「なんで女ちゃんが出て行ったんだよ…」

リモコン「女さん、ずっとご主人に話かけてましたぜ」

冷蔵庫「ご主人は携帯との会話で気付かなかったでごわすが…」

男「そんな…」キッ

携帯「すみません…」シュン

テレビ「小物のくせに調子に乗るからや」

携帯「あ?」

テレビ「なんやこら」

携帯「お前なんて持ち運びもしてもらえない、粗大ゴミになるだけのボンクラじゃねーか!」

テレビ「あぁ!? 多機能だかなんだか知らんが所詮テレビには勝てんショボ携帯のくせになぁ!」

冷蔵庫「二人ともやめるでごわす! 醜い争いでごわす!」

携帯&テレビ「一番醜いのはお前だよ四角デブ!」

冷蔵庫「なっ も、もう怒ったでごわすー!」

ワイワイガヤガヤ

男「うるせーっ!」

携帯「」
テレビ「」
冷蔵庫「」


男「お前ら道具の分際で人間みたいに喧嘩してんじゃねぇ! もう喋るな! うんざりだ!」

携帯「ご主人…」

男「黙れ折るぞ」

携帯「オラントイt 男「黙れ」

ベッド「ご主人、あなた疲れてるのよ…」

男「黙れって言ってんだろ それ以上喋ったら全員捨てるぞ」

全員「!」

ドア「で、ですがご主人」

男「俺の言ったことが聞こえなかったか?」

ドア「もう黙ります ですがこれだけは言わせてください」

男「あ?」

ドア「女さんを追いかけてあげてください」

男「は?」

ドア「女さんはきっと、ご主人のことをお待ちです」

男「何言ってんだよ…」

ドア「今行けばまだ間に合う気がします」

男「黙れ」

ドア「ですからご主人!」

男「黙れって!」

ドア「…分かりました」

ドア「私どもがご主人に対して喋ることは、今後一切しません」

ドア「どうか、女さんとお幸せに…」

男「ふん」

男「……」

男「……」

男「……」

男「……行けばいいんだろ」ガチャリ

男「行ってきます」バタン

男「チッ、本当に何も喋らないつもりかよ」

男「根比べのつもりなんだろうがな、負けるのはお前たちだからな! じゃあな!」ダダッ

女「男さんに嫌われた…」トボトボ

女「今まで頑張ってきたのになぁ…」シュン

キキーッ

女「あ、車」

ドンッ

女「痛い これがくるまにひかれたイタミ」

男「ばか、轢かれてねぇよ」

女「あ、男さん… 男さん!?」

女「なんでこんなところに?」

男「それはこっちのセリフだ! なんで道路の真ん中をふらふらと…」

女「だって… だって… 私、男さんに嫌われたと思って… うえぇ…」グスッ

男「なに言ってんだ… あきれるわ」

女「…?」グスッ

女「だって、男さんは私が嫌いで、だから私が話しかけても怒っちゃって…」

男「俺は確かに女ちゃんの言う通り、疲れてたのかもな」

女「えっ」

男「だからさっきのことについては謝る すまなかった」

女「男さん…」

男「あのとき、最後らへん何言ってるか聞こえてなかったからさ、もう一回言ってくれないかな」

女「えーと… 私で良ければ相談にって」

男「そうだったのか… んじゃ早速だけど、相談聞いてくれるかな」

女「…はい!」

女「どんな相談ですか? 私なんでも聞いちゃいますよー」

男「そうだなぁ… 俺今好きな人いるんだけどさ、どうしたらその気持ち伝えられるかな?」

女「えっ…」ガーン

女「男さん好きな人いるんですか…?」

男「そうだよ なに? いちゃ悪いのか?」

女「いえ、そういうわけでは…」

女「ちなみにどんな人なんですか…?」

男「えー、そうだなぁ」

男「その人はね、同じ会社の人なんだよね」

女「そうなんですか… 確かに可愛い人いっぱいいますよね」

男「そんでね、よく気が利くんだよこれが」

男「喉かわいたなーって思ったら いつの間にかお茶準備してんだよ 頼んでないのに」

男「傘持ってなかったらさ、自分の傘に入れるって言って、
  身長俺より低いくせに頑張って背伸びしてみたり…」

男「あと、なんか知らないけど今俺の目の前で、泣いちゃってたりとかしてんの」

女「え…」

男「俺、炒飯しか作れない不器用さんだけど可愛い女ちゃんの事が微妙に好き」

女「微妙なんですか…」シュン

男「嘘 大好き 付き合って」

女「…………」

女「えぇーっ!?」

男「どう? 驚いたでしょ?」

女「…う、嘘です! 大好きってのが嘘です!」

男「嘘じゃない」

女「だってだって! 男さんは私のこと嫌いだもん…」

ギュッ

女「!」

男「嫌いだったらこんなことできない」

男「俺人見知りだから」

女「男さん…」

女「それなんか違う」

女「あ、この辺まででいいです」

男「え、もうちょっと送るよ?」

女「無理、手を繋ぎながら歩くなんて、恥ずかしくてこれ以上は…」

男「あらそう んじゃ気をつけてね」クルッ

女「…あの、男さん!」

男「何?」

女「改めて、よろしくお願いします!」

男「うん おやすみ」

男「ただいまー」ガチャリ

男「俺、ドアの言うとおり女ちゃん追いかけて良かった」バタン

男「じゃなきゃ今頃女ちゃんと付き合うなんて無理だったよ」

男「ありがとうな、ドア」

男「…それでもだんまりかよ」

男「いいぜ、根気比べなら俺が勝つからな」

男「携帯があまりにも告白告白いうからぶっちゃけちまったじゃねーか」

男「でもそのおかげでこうして俺はリア充となったわけだけど」

男「…お前もずっと黙ってるつもりなの?」

男「ははは、対戦相手多いなぁ」

男「テレビ番組でも見るかな」ポチッ

男「リモコンが何も言わないとは… お前もこの勝負参加してるの?」

男「そろそろ寂しいですよー テレビさーん」

男「…いつものエセ関西弁は?」

男「もういいわ、いつか喋るんだろお前ら」

男「今日のところは寝といてやるよ」カチッ

男「……? 喘ぎ声が聞こえないんだけど」

男「ったく… みんなして… ベッドさん、おやすみ」

男「……嘘だろ……」スヤスヤ

数年後

男「女ちゃんと結婚することになって、マイホームも建ったっていうのに」

男「お前らまだだんまり決め込むの?」

男「ねぇねぇ ねぇ」

男「…明日にはここから引っ越すからな」

男「さよならもなしとか、正直キツイからな」

業者「準備終わりましたー」

男「あ、どうも 先降りといてください」

業者「分かりましたー」

男「…お前とも今日でお別れだな、ドア」

男「結局お前は喋ることなかったのに、俺は毎日ドアに話しかけてたっけ」

男「この勝負俺の負けだわ お前って、そういうところ強いよな 意思が強いっていうか」

男「なんていうかいいドアだった うん、他にはいないよお前みたいな奴」

男「じゃーな」タッタッタッ

さらに数年後

男「すっかり帰りが遅くなったな…」

男「女は子供と旅行に行ってるから、俺一人か」

男「久しぶりの一人飯か 寂しいもんだなぁ」


男「しかし今日も疲れたな」ガチャ

おかえり

男「」

男「あぁ、ただいま」バタン

懐かしくて やけにダンディな声が聞こえた気がした


お わ り

>>1です

こんな即興駄SSに最後まで付き合ってくださった方々、どうもありがとう

なんか似たような話があったようで…すみません
意識をしてはいなかったのですが

質問等スルーしてしまったことも謝りたいと思います
こう言ってしまっては言い訳にしか聞こえないんですが、なんせ即興だったもんで…

本当にありがとうございました

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年07月19日 (土) 19:15:17   ID: XVSZzooM

泣いたでごわす…

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