男「二次元キャバクラ?」 (16)

ある日、俺は会社の友人といつものように酒を飲みに行った。
この友人を直接紹介するより、俺自身のことをまず話した方が、より彼に対しての導入がスムーズになると思う。

俺はいわゆる二次元好きだ。
三次元に興味がない訳ではないが、何か辛いことがあると、結局拠り所にしてしまうのが二次元。

ああああぁぁぁぁ! >>1 の家が!!!   〈     . ’      ’、   ′ ’   . ・
                           〈     、′・. ’   ;   ’、 ’、′‘ .・”
                          〈       ’、′・  ’、.・”;  ”  ’、
YYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY´     ’、′  ’、  (;;ノ;; (′‘ ・. ’、′”;

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彼女等は不平不満を言わないし、頭の中で保管さえすればいくらでも自分好みに姿を変えてくれる。
彼女等は何も言わない。
ただ、俺達のような誰からも相手にされないような男のために生まれてきて、いつかは忘れられて、また新しく別の彼女等が生まれる。

捨てられても、彼女等は何も言わないのだ。
そしてこちらがたまに思い出せば、いつでも昔と同じ笑顔を、同じように見せてくれる。

彼女等は、そういう存在なのだ。

長くなったが、そんな俺の友人だから、当然こいつもそんな奴。
お互い会社では上手いこと息を殺してはいるのだが、それは自分達の保身のためにな。 けどやはり数少ない共通の趣味を持つもの同士。
たまにこうして二人酒を飲みながら、アニメや漫画をつまみに酒を飲んでいるのだ。


「なあ、知ってるか?」

夕方の居酒屋は騒がしい。
いつもより多少頭頂部に響かせるような声で彼が俺に聞いてきた。

「何が」

知ってるか?の後は、別にどう答えたってその後の種が飛んでくるものだ。
別にそれを理論的に推測している訳ではないのだが、それまでの彼との関係もあり、雑な返事をして話の続きを諭す。
こういう、互いの空気が調和する感覚は、なんだか心地が良い。

「新しいキャバクラの話。なんでもな、自分の思い描いた女の子が相手してくれるらしいぞ」

「ふーん」

別に、そんな風俗店はいつか出来ると思っていた。コスプレや整形の進化はある程度打ち止めになった。
そうなると今度は別の何かが進化、変化するのがこの自然界というものだろう。

興味がない訳ではない。
……でもな。

「でも高いんだろう?そういう所はさ」

「いや、それがさ、初回キャンペーンで予約すれば二時間1000円なんだと!見ろよ、これ!」

「ふーん」

“あなたの嫁が、出来ました”
あなた好みの女性タイプ、パーツ細部を当店パソコンに打ち込んで頂くだけで、扉を開けるとそこにはその情報そのままの彼女があなたをお出迎え!
もちろん、あのアニメ、あの漫画のあんなキャラ、こんなキャラをそのままの再現することも……!?

「どういう仕組みになってるかはわからないけどさ、触ったりも出来るんだとさ。……それでな……」

「なんだよ」

「実はもう二人分予約してんだ!来週!土曜日!」

「……はぁ!?」

こいつは何を言っているんだ。
そもそも俺らは普通のキャバクラにも行ったことないってのに、いきなりこんな色物に踏み込むのか……

「一人で行くの不安なんだよ~!な!頼む!一緒に行こう!奢るからさ!」

「……」

(けど、ここに行けば本当にどんな二次元美少女でも作ることが出来るのか……)

興味がないと言えば嘘になる。
というか興味しかない。
突っぱねるような態度を取っているのは単に照れ隠しだ。
俺は彼のように、下心を他人に丸裸に出来る度胸はないのだ。

「……仕方ないなあ」

しょうがない、そこまで言うなら行ってやるよ。
そんな雰囲気を演出し、承諾する。

「よし!」

にやっと笑い、満足そうな声で返事をする。
こいつはきっと、そんな俺の性格を見透かしてここまで押しを強くしているんだろうな。

……ここまで俺を理解してくれるのがこんなパッとしない男友達ただ一人だっていうのが、ほんと、なんと情けないと、つくづく思う。

「こ、ここだな」

「お、おう」

次の土曜日。
約束通り俺達は新しくオープンしたキャバクラの前に来た。
見た目は普通メイド喫茶と変わらないように見える。
ていうかまんまだ。

ここで、俺好みの美少女を……
あらぬ妄想で昨日はよく眠れなかった。
……まあ、キャバクラであってソープとかではないからな。

「ああー!俺ドキドキしてきたよー!行くぞ!行くぞ早く!!」

「あ、おい!」

言うが早いか、彼は一足先に店の中へ入ってしまった。

「……」

俺も後を追って店の扉を開ける。
……中は思いのほか質素で、それぞれナンバーが書かれた扉が規則正しく並んでいた。

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