暦「ぶっちゃけ戦場ヶ原とやりたいです」(1000)

暦「昼となく夜となく」

暦「この際だから言いますが八九寺とはもうやりました」

暦「いっちゃなんですが妹達の処女はすでにもらいました」

暦「ちなみに神原に毎日くわえてもらっています」

暦「>>1

翼「……」

暦「なあ」

翼「うん、でね、英語なんだけど」

暦「あ、ああ」

翼「阿良々木くん、仮定法がまだわかってないの。過去と完了の時制を区別するんだよ」

暦「ふむ」

翼「過去っていうのは動作の結果だよね。阿良々木くんは今私の顔を見た」

暦「うん」

翼「対して完了は前提とかを表すことが多いかな。今日は既に学校は終わっていた。阿良々木くんは家に帰って、受験勉強をしていた」

暦「なるほどね。お前は何でも知ってるなぁ」

翼「何でもは知らないわよ。知ってることだけ」

暦(最初の発言はスルーか)

翼「それで、この構文のthatなんだけど」

暦「>>3

翼「……」

暦「パンツの中に頭をつっ」

翼「あー灰羽連盟? 私、安倍吉俊さん関連はlainのほうが好きだなー」

暦「ああ、あれこそ時代を先取りしたアニメだったよな」

翼「授業中にメールを打ってる描写とか、最新技術の俗っぽい使い方がすごかったよね」

暦「今でこそ当たり前の光景だけどなー」

翼「阿良々木くん、念のため釘を刺しておくけど、授業中の携帯電話の使用はダメだよ。試験のときなんか以ての他!」

暦「そういえば、大学受験でネットを使ったカンニングがあったよな」

翼「うーん、そうならないための試験監督がいるはずなんだけど。まさかこんな事態になるとは現場も予想だにしてなかったのかもしれないね」

暦「これこそ、ネットマナーを大切に! だな」

翼「そのとおり!」

暦(で、やっぱりスルーなんだな)

翼「ここのheとthe manが同一の人物を指してるのね。それで」

暦「>>7

翼「ここの空欄は、この二人の会話から察すれば過去完了が入るの」

暦「>>8!!」

翼「これで出来上がり。訳すと、『阿良々木、いい加減にしないとさすがの私もキレる』」

暦「……」

翼「どう、わかったかな、阿良々木?」

暦「はい。すみませんでした羽川さん」

翼「仕方ないなあ。疲れたみたいだし、少しきゅーけーい」

暦「あのさ、羽川」

翼「なあに? 阿良々木は勉強を教えてもらってる女の子にセクハラするのに飽き足らず、その女の子を呼び捨てにするのかな?」

暦「いいえー滅相もございません羽川様ーっ!」

翼「羽川様? そのへりくだった呼び方は遠回しな嫌味なのかな」

暦「羽川さん! いや、あの、僕もなんていうか、その……限界なんだ!」

翼「それで、戦場ヶ原さん、わたし、千石ちゃんを除くみんなに手を出しちゃったの?」

暦「いや、あれは羽川がスルーするから」

翼「羽川?」

暦「羽川さん!」

暦「これは僕のプライバシーに深く関わることだ。お前が僕の友達だと知っているからこそ、話そうと思う」

翼「真剣な話なのかな」

暦「真剣(マジ)な話だ」

翼「戦場ヶ原さん、のこと?」

暦「ああ」

翼「うーん……まあ、話を聞くだけ、ね」

暦「ありがとう、羽川……実は最近」

翼「……なに?」

暦「最近……性癖が変わってしまったんだ」

翼「……はぁ」

暦「戦場ヶ原とは今のところ清い関係を保っているんだ。理由は色々あるんだけど、二人とも了解している」

翼「まあ……なんとなーくそんな気はしてたけど」

暦「けど、最近の戦場ヶ原、いや、ガハラさん、あれだろ」

翼「ああ……」

暦「暴言がなくなった、虐待がなくなった、文房具を誤って使ったり僕を監禁したりしなくなった」

翼「なんというか、これまでの阿良々木くん、心中お察しします……」

暦「それと、前よりよく笑ってくれるようになった」

翼「そうだね。髪型変えたから表情が見えやすくなったっていうのもあるかな。口調なんかも前より抑揚がついてきたし」

暦「ああ、そしてガハラさんから二人きりで勉強を教えてもらうのを控えなきゃならないほど……僕にデ、デレッ……デレッ……ヘヘッ」

翼「阿良々木くん、阿良々木くん。顔がニヤけて口裂け女みたいになってる」

暦「おっと。お前には負担を増やして悪いと思ってる」

翼「今さらー」

暦「言うね」

翼「真剣(マジ)な話(キリッというのに今のところほぼノロケを聴かされている私の身にもなってくださいな」

暦「わかった。ここからが本題だ。この間ガハラさんの家にいたときのことなんだけど。僕はケータイコミックの真緒ちゃんを見るか見まいか考えあぐねていた」

翼「その情報は要るのかな……」

暦「けっこう真緒ちゃんの広告は扇情的で、ついつい目がいってしまうんだ。普段は」

翼「よくわからないけれど、エッチな漫画の広告を見てたってこと?」

暦「ああ。その時、ガハラさんはハガレン読んでた。最終巻な」

翼「二人とも特に何をするでもなくダラダラしてたわけだね。これが家デートってやつなのかな」

暦「ガハラさん、最近でこそミニスカくらいの丈だったりするけど、前は肌の露出は控えめだった。特に足は」

翼「ああ、戦場ヶ原さん、制服にもニーソックス合わせてるよね」

暦「以前の僕からしてみれば、ガハラさんの生のおみ足なんて、待望のものだった。僕がそれを盗み見してたら、気づいたのかガハラさんが言った」

ひたぎ『そろそろ秋物を出さないとね』

暦「ガハラさんがタイツとロングのスカートに着替え始めたんだ」

翼「それは目の前で?」

暦「貞操観念は高いけど、肉体賛美というか裸ん坊万歳みたいなところあるからな」

翼「確かに確かに。でも、彼女が目の前で着替えるのって、男の子的にどうなの? やっぱドキッとしたり?」

暦「それが……その時の僕は、何の感慨もわかなかったんだ」

暦「おかしいと思ったのはガハラさんが着替え終わってから。そこで初めて僕はガハラさんの肌に昂らない自分に気づいた」

暦「一瞬、ショックだった。もしかして僕はガハラさんを好きでなくなってしまったのではないかと。ガハラさんがこっちを向いて言った」

ひたぎ『どうかしら。去年はまだ阿良々木くん、私のオータムバージョン見ていないのだったわよね』

暦「その姿を見て……恥ずかしいんですが、その……フフ、『勃起』してしまいましてね」

翼「……」

暦「すごく不思議な感じだった。携帯の真緒ちゃんの半裸を見てもピンとこないのに、全身秋の服で身を包んだガハラさんを見ると異常に興奮した……」

翼「……」

ひたぎ『ノーコメント? それは私に見とれているのかその逆なのか』

暦「またガハラさんは別の服に着替えた(以前だったらノーコメントに対して僕に罰が下されていたであろうことを留意しとおいてほしい)」

ひたぎ『ショートパンツもあるのだけれど』

暦「タイツが、出ていたんだ」

暦「いや、もう本当自分でもよく耐えたと思うんだけど。もしかしたら僕はガハラさんを傷つけてしまっていたかもしれない」

暦「でも、タイツ、だよ? それも黒タイツ。なんだよ、あれ……あのイヤらしさは反則だろう……」

翼「あの、いいかな」

暦「ああ、なんだ」

翼「とりあえず阿良々木くんの異常さを見せつけられるのは初めてではないので、まあよしとしよう。でも、なに、着衣に萌えるっていうことなのかな」

暦「ずばりそうだろうな。今の僕はヤングチャンピオンのグラビアよりもZipperの表紙にグッとくる性癖になってしまったんだ。パンチラなんて糞食らえ。ファックヌード」

翼(そういえば、戦場ヶ原さんそんなこと言ってたような……)

翼「その、それについて戦場ヶ原さんとは話したの?」

暦「隠し事はなしって決まりがあるんだ。だから正直に言った。困ったガハラさんとか初めて見たわ」

翼「私も見たかった! って違う!」

暦「打開策として今は穴開きジーンズとか穿いてるな」

翼「ああ、折衷案を採ったんだね」

暦「穴に目を瞑ればどうということはないけどな」

翼「現実と向き合って!」

暦「ちなみに今羽川の制服にも萌えてる」

翼「私にも危険がっ!?」

暦「だけど、因ったのはここからなんだ」

翼「困った、ね。私の台詞だよ」

暦「僕はこの性癖の恐ろしさをちゃんと理解してなかった。着衣に萌えるってことは、常時興奮状態に置かれるということだったんだ。みんな服を着てる、服、服、服……」

暦「僕は、欲情し続けなければいけない体になってしまったんだッッ!!」

翼「な、なんだってー」

暦「まったく我ながら恐ろしくなるぜ。これがワイドスクリーンバロックってやつか」

翼「ベイリーに怒られるよ……」

翼「あーあ、なんか話だけ聞いて損した気分だよ」

暦「いや、実際苦しいんだぜ。外を歩けば裸の女が闊歩してるような感じだし。最初嬉しいけど疲れるんだ。あれだな、今の僕は則巻博士みたいなものだな」

翼「男の人の着衣には反応しないの?」

暦「は、なんで? するわけないじゃん気持ち悪い」

翼「なんて都合のいい……」

暦「それで、折り入って頼みがある」

翼「ここまで来て言われても嫌な予感しかしないんですが」

暦「僕と、一緒に風呂に入ってほしいんだ」

翼「……」

暦「ここ数日、心休まる時間も少ない。だからここは羽川と一緒に仲良くお風呂でトーク――」

翼「いやいやいやいや。待ってよ、話の展開がおかしいよ」

暦「僕は今女子の裸に欲情はしない。女子とも裸のつきあいができる。だから羽川と風呂に入る」

翼「なにその三段論法……戦場ヶ原さんと入ればいいじゃない」

暦「一度相談してみたんだけど、ガハラさん家に浴槽ないし、夜は親父さんと過ごすっていうし」

翼「その言い方は誤解を呼ぶからまずいよ。戦場ヶ原さんだけに」

暦「だから僕の家に遅くまでいたり、泊まりは気が引けるみたいだ」

翼「そういうとこしっかりしてるというか何というか」

暦「だから、羽川のいやらしい体を見てもなんともない今こそ、僕に力を貸してほしい」

翼「無茶苦茶だし、失礼にも程があるよ……」

暦「こうして今、羽川と話してる間も緊張してるんだ。バカみたいだよな。ちょっとでもいいから、羽川と前みたいに気楽に話したいと思ってたんだ……」

翼「阿良々木くん……」

翼「うー、うーむむむむ……やっぱダメ」

暦「羽川」

翼「阿良々木くんの気持ちは理解したけど、やっぱり私はまずいよ。それに、これは卑怯になっちゃう」

暦「そっか……正直、うんって言われても僕逆に逃げるかもしれないし」

翼「チキンだもんね」

暦「うるせえ。ははっ。しょーがねー、羽川の制服にハァハァして我慢するかぁ」

翼「他にできることがあれば、何でもしてあげたいけど」

暦「ん、そうか? じゃあ、簡単なやつだけお願いしようかな。これだけはいい?」

翼「どうぞどうぞ」

暦「えっと、羽川の眼球舐めさせ」

翼「阿良々木くんやっぱりお風呂一緒に入ろう、うん、そうしよう」

暦(先に僕が入浴。羽川は後からだ。しかし、眼球舐めのなにがそんなにダメなのだろう?)

暦(幸い両親も妹達もまだ帰宅していない。もうけっこうな時間なのだが。うん、いい案配だ)

暦「あー今日もしんどい一日だったぜ」

忍「妙な嗜好になってしまったものじゃな」

暦(僕の両足の間から忍がぬっと出てきた。風呂好きなのだ)

忍「お前様がヘタレのくせに変態というやっかいなサガなのは知ってるが、また輪をかけてやっかいになったのう」

暦「世の女子があんなにエロいとは」

忍「お前様の思考回路がどうなってるのかさっぱりわからんが、感情は伝わってしまうから難儀じゃい。儂も疲れたー」

暦(やっぱり、忍のフルヌードに盛ることはない。まあおかげで僕のロリコン疑惑は取り下げられるだろう。純粋に裸の幼女と湯に浸かっているだけだからな。乳首が見えようがアニメで絆創膏で誤魔化した部分が出てよえが犯罪性ゼロ)

翼「あ、阿良々木くん、はっ、入ってもいいかな」

暦「ああ。大丈夫だ」

暦(まるでラブコメだな。台詞といい。バスタオルを巻いた姿といい。羽川顔赤っ)

翼「あれっ!? 忍、ちゃん?」

忍「なんじゃ、儂がいると不満か、委員長」

翼「い、いえ、そんなこと、ないです。あの、入ってもいいですか」

忍「おー構わぬ構わぬ。お前様、ちょいつめて」

暦「押すなよ」

翼「し、失礼しまーす……」チャプン

暦「どうだー羽川ー」

翼「まあ、狭いよね」

暦「だなー」

忍「さながらとなりのトトロじゃな」

暦「あれも規制になるのかねえ」

翼「阿良々木くん、筋肉質になってきたね」

暦「お前は僕の妹か。いや、不死身とはいえ人間的基礎体力の必要は感じてたからな」

忍「春はもやしだったのう」

翼「あ、もやしって萌やしって書くって知ってた?」

暦「え、それマジだったの!? ガハラさんに前に聞いて造語だと思ってたのにっ」

忍「萌やしっ子か。西又葵イラストで発売するかもな」

翼「翌日完売しそうだね……」

忍「お前様、シャンプーやって」

暦「一人でできるでしょー忍ちゃん」

忍「儂がやると液が目に入るんじゃ」

暦「だから買ってきたじゃねえか、シャンプーハット。月火ちゃんに馬鹿にされながらな。火憐ちゃんは新しいプレイと勘違いするし」

翼「ん? プレイ?」

忍「儂は髪長いからハットがあるとかえってうまくできぬ。まったく、お前様は女子の苦労に無頓着じゃな。のう、委員長」

翼「そうですねえ」

暦「仕方ないなー」ザバッ

忍「うむ。では始めるがよい」

暦「ああ、ハットは着けるのね……」

翼(今、阿良々木くんの見てしまったんですが)

忍「今度あれじゃなー、あの寝台に横になってやるシャンプーをしてみたいのー」

暦「寝台?」

忍「人間の娘御が髪を切るところでやっとるじゃろ」

暦「ああ、美容院か。あれはベッドじゃなくてイスだ」

忍「ほう。それは座ってみたい。委員長、うぬもびよーいんに行くのか」

翼「そ、そっすね。こないだ行ったっすね……」

忍「四不象かうぬは」

暦「羽川真っ赤だなー、のぼせたんじゃないか?」

翼「あ、阿良々木くん、忍ちゃんとはいつも一緒にお風呂入ってるの?」

暦「いつもというか、こいつ僕の影にいるからな。どこでもいっしょ」

忍「儂はポケステか」

翼「阿良々木くんって手で体を洗う派?」

暦「いーや? 僕はスポンジ派」

翼「それじゃあ、湯にタオル持ち込んだり」

暦「しないね。それがどうかしたか?」

翼「あの、阿良々木くん、マルダシモロダシ、だから……湯気で隠れてるけど」

暦「あっ、そっか」

忍「いつものペースで入ってもしまったのう」

暦「で、でも見たわけじゃないんだろ?」

翼「さっきちょっと見えちゃったよ!」

暦「そうか、ちょっと、か……すまん」

忍「何をおぼこのようなことを」

翼「阿良々木くんのなんか被ってるのとか見たくなかったんですよ!」

暦「バッチリ見てるじゃねえか……」

暦「ほら、終わったぞ」

忍「最後の流す瞬間は万能のごとく思えるのだが、シャンプーハット」

暦「次、羽川体洗うだろ?」

翼「あ、う、うん。あ、けどどうしようかな」

暦「まあ僕のなんか被っているやつを見てしまったかもしれないけど、羽川のいやらしい体見ても今はなんともないから安心してくれ」

翼「説得力あるようなないような」

忍「ほれ、タオルがあっては体が洗えぬじゃろうが。さっさととらんか」

翼「ちょ、忍ちゃんっ!」バサッ

忍「バサ姐だけにな」

暦「へえ、羽川の乳首、そんな色と形だったのか。今は何とも感じないけど」

忍「おお、さすがバサ姐じゃ、あそこもバサ姐」

暦「異形の翼だな。まあ今は何とも感じないけど」

翼「あ……あ……」

翼「……」

忍「真っ赤から真っ白じゃ。うぬよ、またブラック化か?」

暦「灰色って感じだけどな」

忍「ジョーはのう、力石にどうしても贔屓してしまうのう」

暦「ゆーけー荒野ー」

忍「おいらーボクサー」

翼「二人とも……仲、いいね……」

忍「お前様、水鉄砲どうやるんじゃ」

暦「こうだよ、こう。ほら」ピュー

忍「うーむ、バードじゃ」

暦「ハードね」

翼「失礼します……」チャプ

忍「劇画オバQみたいな顔しおって。なにを呆けておる」

暦「まあ裸を見られたのが恥ずかしいんじゃね。よくわからんけど」

翼「なんていうか、逆にお風呂イベントみたいの想像してたのが私だってわかって、穴があったら入りたいです」

忍「漫画だったら絶対アニメ化するシーンじゃな」

暦「よかったな、漫画じゃなくて」

翼「うん、現実って厳しい、現実、現実現実現実げんじつつつつ……ブクブク」

忍「自殺はそれじゃあできんぞ。やるなら剃刀で切ったほうが速い」

暦「まあ、魔法少女になられても困るけど」

翼「いつも阿良々木くんに恥ずかしいことさせられるのが私なの……ブクブク」

翼「はぁー。もう、なんでお風呂入っちゃったんだろ」

暦「ところで、もうタオルで隠さないのか?」

翼「うっ!?」

忍「アシストのつもりはないが、あるじ様は本当にうぬの裸を見て何とも思っておりゃせん。そこは儂が保証しよう」

翼「それも複雑ですよ……私、むこう向いてるから」

忍「なんじゃ、信じられぬか」

翼「見られる側の気持ちの問題です」

忍「ふん、少しは柔らかくなったと思ったが。では、委員長、儂と位置を交代するがよい」

翼「な、なんで!?」

忍「うぬがそっち向くと狭くなるんじゃ。身体の大きさから言っても儂、うぬ、あるじ様の順だとすっぽり入るのじゃよ」

暦「てわけで位置を交代したけど」

忍「思いの外変な絵じゃな、これ。ボブスレーの練習か」

翼「ああ、クール・ランニング」

暦(自然に三人でコーナー想定して体を揺らしてみる)

翼「阿良々木くん、本当になんともないみたいね」

暦「ああ、そうだけど。なんだ?」

翼「いや、なんかわかっちゃったから」

忍「ノット・エレクト」

暦「は、エレクトーン? 僕には音楽の知識も技術もないぞ」

翼「阿良々木くんさー、私のおっぱい揉むなら今のうちかもよ」

暦「は? なんで羽川の胸を揉むんだ」

翼「いや、今なら性的な意味合いは薄いしなーと思って」

暦「別に揉みたいと思わないし。羽川がしてほしいなら別だけど」

忍「お前様、本当に着衣以外には賢者じゃな」

翼「じゃ、じゃあ私がもんでくださいって言ったら揉むの?」

暦「まあな」

翼「ふうん」

暦「告白しておくと、僕はさっきまで羽川の胸を揉みしだきたいと思っていた」

翼「あ、そうなんだ……」

暦「もっと言うと羽川の胸に着られていた制服を揉みしだきたかった」

翼「胸に着られていた!?」

暦「もうリボンが波打つ胸元しか見えない。これは恋だな」

翼「私の人格無視ですかっ!?」

暦「羽川の人格を無視しているわけじゃない。お前の胸は制服の素晴らしさを際立たせている」

翼「私の主体はおっぱいじゃないよっ!」

暦「セーラー服は脱がさない」

翼「選択肢っ!?」

翼「まあ……服に対する性的な見方に共感を覚えないわけじゃあないんだけれど。でも、普通服そのものというより、あの人が着てたんだなーとかそういう使用感に萌えるといいますか、匂いとかフェチっぽい部分に感じるのではないですか」

暦「いやいや、世は21世紀だぜ。僕は服に対する嗜好も脱構築してしかるべきだと思うね。もう僕はメイド服を見ただけで奉仕してもらった気分になる」

翼「動物化してるなぁ……」

暦「だって僕動物だし」

翼「開き直った!」

忍「というか吸血鬼じゃしな」

暦「もう、体とかいらないんじゃないかな。服だけで動き回れればいいのに。そうすれば似合う似合わないのセンス競争もなくなるだろ?」

翼「相対的に身体性がなくなっているけれど……」

暦「はやく意識のソフトウェア化とかさ、実現してほしいよ」

忍「イーガンじゃな」

翼「一体何の話をしてるんだか。阿良々木くんは心休まるトークが出来たんですか?」

暦「ああ。これも羽川の胸がいつもより魅力がないおかげだな」

翼「そうですか……なんか私は疲れたよ。お風呂にいるのに肩凝った」

忍「おっぱいのせいかの。儂は伸縮自在じゃから困ったことはないが」

翼「おっぱいのせいじゃありません。どうせ、魅力ないですから……」

暦「肩揉んでやるよ。これくらいは返さなきゃな。ん、羽川けっこう凝ってるなー。ストレス溜まってる?」

翼「はぁ、どうも……」

翼「あ~、もうちょっと、そこだと真下になっちゃうから」

暦「このへんか?」

翼「あーそうそう、あ、もう少し下……」

暦「初めてだからな、肩凝った羽川とか」

翼「あ、あ~……あっ、気持ちいいの抜けちゃった。もう少し右のとこ、覚えてね」

暦「難しいなー」

翼「もっとこすって、こすって!」

暦「おう」

翼「あっ……熱っ……」

翼「ふいー、我輩極楽」

暦「我輩? どういうキャラだよ。他にないか?」

翼「あー、もういいよ。今度私が阿良々木くんにやるよ」

暦「えー、いいよー」

翼「まあまあ遠慮せずに。それじゃあ、ちょっと向きを変えて。よいしょ」

暦「あー、羽川? どうして僕に跨がるんだ?」

翼「こうしたほうが楽になるんだよー」

暦「き、気のせいかな、なんか、逆に体がだるくなって……」

翼「気のせい、気のせい。にゃおん」

暦「じゃ、じゃあ羽川の髪が白くなってるのも気のせい、か?」

猫「ああ、それが湯気が仕事したってやつはだにゃあ。最近はお上がうるせーからよ」

暦「な、なあんだ……ははっ、僕、少しのぼせたみたいだ……」

翼「うーん、この場合死因は溺死かな?」

暦「ぶくぶくぶく……」

忍「いつまでじゃれておる。息ができないのは儂もなんじゃからな。ほれ、起きんか!」

暦「あっ!? うっ、ゲェ、ゲェッ! な、何が……」

猫「チッ、そのまま腹上死、いや、腹下死すればよかったんだが」

暦「ねっ、猫っ、てめぇっ!」

猫「おおっとー? 俺の、ご主人の腕を掴んでどうするつもりにゃあ。いいのかにゃ、そんにゃウカツなことをして」

暦「うぎああああああああああああ!!!」

猫「にゃ? エニャジードレインのことを忘れたか? お前はダメダメな上にアホアホだにゃ」

暦「な、なんで、こんな……」

猫「いやあ、それがわからないならお前はいよいよ人間失格だにゃ、人間、いや、スカタンとご主人のデータベースから出たにゃあ」

暦「は、羽川が……うっ」

猫「おい、スカタン。いい加減俺が出現する条件はわかってるだろう?」

暦「す、ストレス」

猫「そう、ストレス。しかし、最近のご主人、解消する方法を覚えてな。俺ともうまく折り合い、付き合いをしていたにゃあ」

猫「しっかしよぉ、今回はさすがの俺自身キレちまいそうだにゃ」

猫「よかったにゃあ、ご主人のイヤらしいおっぱいを眺めながら地獄行きだにゃ」

暦「は、羽川の、おっぱいは……」

猫「あ?」

暦「羽川のおっぱいは、イヤらしくなんかない!」

猫「よく言うにゃあ。俺はご主人の中にいるからわかるが、お前の視線の99割はおっぱいに注がれてるにゃあ」

暦「99割って100%越えてるじゃねえか!」

猫「俺は指の数以上は認識できないにゃあ。まあお前が変態だとは知ってるにゃ」

暦「くっ、しかし、今の僕にとって羽川は性的にまったく魅力がないっ!」

猫「ほう……私には魅力がないと」

暦「イヤらしさのかけらもないし、淫らであるわけがない!だから一緒に風呂にはいっ」

猫「エニャジードレイーーン」

暦「なんでええええあああああああ!!」

暦「がはっ……」

猫「スカタン、お前はやっぱり何にもわかっちゃいにゃいにゃ。せっかくご主人が風呂に入ってよ、おっぱい晒してるっていうのに。にゃける話じゃにゃいか」

忍「一応、忠告しておくが、それ以上はレッドゾーンじゃ。もう一度吸えばうぬの首から上が宙を舞うことになる」

猫「ふん。結局俺もご主人の意識だからにゃ。殺すつもりはないにゃ。まあ、それも人間の対応次第だがにゃあ」

忍「恐ろしい娘御じゃ」

猫「お前はあるじ様の手助けはしにゃいのかにゃ?」

忍「別に焼かれようが裂かれようが吸われようが、最後にこの儂の元におればよい」

猫「拳王みたいだにゃあ」

忍「結局、儂にはこやつよりも吸血鬼的にアドバンテージがあるからの。多少痛い目に会うのには忍ぶとするよ。我が名のように」

猫「おい、人間。あー、こいつ言葉も話せないにゃあ」

暦「……」

忍「まあ戯れもここまでかの」

猫「もういっちょ、エニャジードレインをしてやったらどうなるのかにゃ」

忍「それは挑発か?」

猫「言っておくが、今の俺は16~18号を吸収したセルみたいに完全体といえるモデルにチェンジしたにゃ」

忍「ほう?」

猫「やだなぁ、凄惨な笑みを浮かべないでよ、忍ちゃん。例えば、私が彼を吸収してあなたから切り離せるとしたらどうかな?」

忍「……」

猫「彼はあなたの呪縛から逃れ、永遠に私のモノになる」

忍「は」

忍「ははははは!「ははははは!「ははは!「はははははははは!「はははははは!「ははは――泥棒猫め」

忍「かわいそうじゃが、一方的な虐殺になってしまうかもしれん。動物虐待は今の儂の趣味じゃあないんじゃ」

猫「忍ちゃん、野性っていうのは失われていくものだよ。特に、一度家猫になっちゃった猫、とかにゃあ」

忍「かかかかっ。まったく。いや、まったく、まったく。うぬは、やはりいてはいけないのかもしれないのう」

猫「にゃおん。こんなにかわいい俺を虐めるなんて、鬼畜生だにゃあ」

忍「鬼畜生結構。儂は、吸血鬼。そして、怪異殺しの怪異じゃからな」

猫「阿良々木くんは私の手の内にあるのはわかってるかな」

忍「では、まずはその両腕をいただこう。次に、その忌々しい舌を引っこ抜いてやる」

猫「俺は猫舌だにゃ。いきなり突っ込まれたら驚いて咬み千切ってしまうかもしれないにゃ」

忍「――――殺してやるぞ、化猫」


月火「―――お兄ちゃーん? お風呂入ってるの?」

月火「もうっ、体臭はお風呂に入ればいいってものじゃ――」ガララ

猫「……」

月火「ないんだけど」

忍「……」

月火「……あれ? 間違えちゃった」ガララ

猫「今のは人間の妹か」

忍「た、たいへんじゃあ……わ、わ、早く片付けないと。な、何をボサッとしておる」

猫「ああ?」

忍「こ、この血塗れの風呂は儂がなんとかする。う、うぬは速くあるじ様を、あ、ダメじゃ、儂がここに手間取ってたらあるじ様を隠せない」

猫「にゃにを焦ってるにゃ」

月火「……」ガラッ

猫・忍「……」

月火「あ、やっぱりいる」ガララッ

忍「は、速く出ぬかっ! とにかくうぬが外に出て誤魔化せっ!」

猫「にゃんにゃんだ、一体……」

忍「よいか!? で、出来るだけ時間を稼ぐのじゃぞ!? でなければ儂ら全員消されるっ!」ガララッ

翼「誤魔化せって言われても……お、戻った」

月火「あれ? 羽川さんだ」

翼「……」

月火「おかしいなあ、どうして羽川さんがうちの脱衣所に?」

翼「月火ちゃん? な、なんかホッケーマスク被ってるけど月火ちゃん?……それとそのチェーンソーみたいなやつは……」

月火「ああ、これ? こないだ通販で買ったんだよ。イチキュッパで」

翼「へ、へえー、そうなんだー。それじゃあそっちは――」

『ブオオン! ブオンブオオオン!! ブオオオオオオッッ!!』

月火「羽川さん―――なぜ裸でうちの脱衣所にいるの? お兄ちゃんとお風呂にでも入ってたの?」

翼「う、ううんっ、ううんっ! 私一人だけ、だよ。阿良々木くんは部屋にいると思うけど」

月火「さっき見たらいなかったんだよ。靴はあるから家にはいるみたいだけど」

翼「あー、じゃあ、トイレとかは」

月火「今、火憐ちゃんが入ってる」

翼「そ、そう……」

月火「それより、羽川さん、白い髪のセクシーな女の人と、小さい金髪のかわいい女の子見なかったかな?」

翼「な、なあに、それ?」

月火「さっきお風呂で見たんだけど。知らない?」

翼「わ、私、ずーっとお風呂借りてたけど、それは見てないなぁ」

月火「うーむ。浴室は――」ガラッ

月火「わっ、なにこれ!? 湯気が!」

翼「すごい、ほとんど濃霧だ。何にも見えない」

月火「うちのお風呂はサウナ機能は付いてないんだけどなー」

翼(電気をオンオフしたり、濃霧の中に手を入れてみる月火ちゃん。これが忍ちゃんの能力?)

月火「とりあえず、このままじゃあ危ないから、窓を開けてくるよ」

翼「大丈夫?」

月火「へいきへいきー」スッ

翼「……」

月火「すげー。何にも見えないや」

月火「前後感覚がわかんなくなっちゃった」

翼「あ、そういうときは壁を探すといいよ。そのあと沿って歩けば」

月火「迷路を脱出するときの要領だね! さすが羽川さん。よーし、壁、壁……ぬーりーかーべー」

翼(突っ込んだほうがいいのかな)

月火「うひゃっ!? な、なんか踏んづけたっ! なになになに?」

翼「大丈夫?」

月火「オールライト。わっ、床がすべっ……ぎゃんっ! いたーい!」ブオオーン

翼「だ、大丈夫!?」

月火「おのれ、連邦……ぎゃあああああああ!?」ブシューッ

翼「月火ちゃん? 月火ちゃん!?」

月火「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいいいいいっっ!!」ブオオーン

月火「やだあ! なにこれっ、ものそっ、ひぃ、超痛いよおおお!」

翼「い、今そっちに行くから!」

月火「信じられない……最低だよぉ……これ、取れてる? これ取れてる? あ、あった」

翼「お、脅かさないでよ、もう」ホッ

月火「ごめんなさい、羽川さん。よいしょ、あ、壁だね」パンパン

月火「よっ、ここが浴槽……この辺かな? それ」ガララッ

月火「ふぅ。これで湯気が出ていく……お、晴れてきた晴れてきた」

月火「羽川さーん。あれ、羽川さん?」

翼「やっ、やったね月火ちゃん」ササッ

翼「どこかケガはある?」

月火「うーん、ない……みたいだよ」

翼「よかったー。月火ちゃん、すごい声で叫ぶものだから」

月火「いや、その謎の痛みもだけど、このお風呂のほうがミステリーみたいだよ」

翼「え? あっ……」

月火「浴室……血塗れなんだよ」

月火「壁だけじゃない、床も鏡も血が飛び散っている。そして、浴槽。もなや血のお風呂だよ」

翼(こっちまでは手がまわらなかったのか)

月火「羽川さん、さっきまで入浴してたんだよね?」

翼「う、うん」

月火「何か、いや、何があったかを教えてもらいたいけど。羽川さんはこの異常事態をどう説明してくれる?」

翼「いや、その……」

月火「これほど凄惨な有り様を見れば、『普通じゃないことがあった』ってまず考えるよね」

月火「浅薄な私の頭脳から言えば――これは殺人現場」

月火「凶器になりそうなものは……私のチェーンソーがあるけどこれは今持ってきたもの」

月火「そして、被害者はなく、もちろん加害者も見当たらない(今はまだ)」

月火「さしずめ、役者のいない舞台といったところ……エクセレントォ」

月火「羽川さん、あなたはここで誰かを殺し、後片付けの最中に私と出くわした!―――私はズバリ言った」

翼「……確かに。私がさっきまで阿良々木家のお風呂に入っていたのは事実。でもね、私は誰も殺したりしていない」

月火「ほう! ではこの現場をどう説明してくれますかな!?」

翼(――今この場は)

翼(私、月火ちゃん(血塗れだが転倒したせいと思われる)、血塗れの浴室、窓はさっきまで鍵がかかっていた)

翼(それからチェーンソー。これにも血が付着しているけど、これも月火ちゃん同様か)

翼(私が一人で出てきたところを月火ちゃんに目撃されている。被害者はいない(当然。あの二人はうまく逃げた)、となると)

翼(なにかしら理屈が通じない事態が起こったという場合以外(超常現象とか)、この場を説明する責任が私にある)

月火「さあ、さあ!」

翼「その前に。月火ちゃん、さっき痛いって大声で叫んでたよね。一応、全身見せてもらえるかな」

月火「いいよー」

翼(するりと浴衣を脱ぐ月火ちゃん。むう、全身真っ白。どこにもケガはない)

月火「どこもおかしいところないでしょ?」

翼「うん……(でもあれだけの悲鳴をあげるとなると、確実に身体に深いダメージがあったはずなんだけど)」

翼(仮に月火ちゃんがそのチェーンソーで誤って体を傷つけたとして、その時の大量出血ということならここの説明になるんだけどなぁ)

翼(でもそれが事実だとしても、この無傷の説明ができない……やだホラー?)

翼(ていうか、阿良々木くんの血だっていうのが本当のところだし)

月火「もうさー吐いちゃいな、羽川さん。ハイ・チャイナ!」

翼(う、ウザイ……)

翼「あの、月火ちゃん……実は私―――今日あの日なの」

月火「―――」

翼「ごめんなさい。他所様のお家で粗相を。でも急だったから」

月火「えっ―――ちょ、え、だっ、これ、え、大丈夫、なんですか?」

翼「うん」

月火「でも、人ひとり死んでそうなくらい出てますよ」

翼「私、思春期性大量失血症という病気で、興奮すると出血の量が増えるの。医学用語でフリキリと略されているわ」

月火「フリ……キリ?」

翼「だけど命に関わるものではないから、心配しないで。月火ちゃんこそ、さっきは大事にならなかったけど、気を付けてね」

月火「フリ……キリ……クリ……フリ……クリ。フリクリ?」

月火「フリ……クリ……クリ……」フラフラ

翼「ふぅ。情報量に圧倒されると自失するタイプでよかった。うわ、まだ私裸だった。服着よ」

~~~

翼「阿良々木くん? 入るよ」

暦「……」

翼「まだ、こっちものびてる……」

忍「あのちっこい妹御には誤魔化せたか」

翼「とりあえず、忍ちゃんがそんなに警戒してる理由はわかりました」

忍「恐ろしい……頭脳派を謳っておるが直情型なんじゃ、ジョジョキャラのように……あの体質も加えては儂にも歯が立たん」

翼「体質……さっき、月火ちゃんが窓を開けるまではその場にいましたよね。あの子に何かありませんでした?」

忍「あるもなにも、あるじ様につまづいて、自分の右足を切り落としていたわ」

翼「あの濃霧の中はやはり惨劇が!?」

忍「レザーフェイスみたいじゃった。まあ危うくアララギ・チェーンソー・マッサカーは避けられたがの」

翼「でも、月火ちゃんは無傷だったし。忍ちゃんが治療したんですか?」

忍「まあそう思っておいても支障はないが、しかしプライバシーに関わる問題じゃからな。おいそれと儂が話してやるわけにもいかん」

翼「そうですか」

忍「なんじゃ、その顔は」

翼「いえ、他意はないんです」

忍「あるじ様が妹御二人を気にかけるのも、あれを見ればわかるじゃろ。危なっかしくて、赤子のようじゃ」

忍「火の姉妹か。火は獣と魔を除け、家を照らす。また、その火を監督する者も昔からおる。風に飛ばされ消えぬようにな」

翼「それが、阿良々木くんだと?」

忍「儂はただ蘊蓄を垂れただけじゃ」

忍「案外、ラスボスはあの妹御かもしれんのう」

翼「え、まさか真のラスボスですか」

忍「ラスボスの定義にもよるがのう」

忍「ロックマンは毎回ワイリーがラスボスじゃったろ。たまに変装して『ワイリーはわたしが操っていたのだよ』と言うシリーズも中にはあったが、あれ、痛すぎじゃよな。もう悲哀の域といってもいいかもしれん」

忍「Xも、ほぼシグマが犯人じゃし。ラスボスとは金太郎飴なのじゃな。あの娘と妹御は同一人物なのかもしれん」

翼「まあ、属性は同じだし、同級生ですし」

忍「ラスボスに限らず四天王、あれも面倒くさい連中じゃよな。『ククク、あやつは我ら四天王の中でも最弱』って、うぬら三人で初めから組めばよかろうに」

翼「キャリアステップは士気を高めますし、組織にはああいうグループも必要なんじゃないでしょうか」

め、し

夜のオカ、ズ、はー、月火ち、ゃん、ですだ

忍「おい、委員長。さっき言っておったことは本当か」

翼「なにがですか?」

忍「こいつを吸収し、儂から切り離す、と言ったな。契約を部外者が破棄するなどありえぬこと。しかし、『例外は憑き物』じゃ」

翼「……」

忍「うぬこそ本来辞典にもまだ載らぬ新種。世が世なら儂に代わる怪異の王になっておったかもしれん。儂はその頭脳を評価している」

忍「委員長、まだこいつが口から手が出るほど欲しいか」

翼「さすがに口から手は出せないかな。にゃはは」

忍「醜い顔じゃな」

翼「にゃはははー。まあそう言うにゃよ。まだにゃれてないからにゃあ、ほら、『こういうことには時間がかかる』って……あれ、誰が言ったんだったかにゃ」

忍「白痴の振りを覚えたのか元からなのか。それとも猫を被っておるのかな。ブリッ子というわけか。それで男を虜にすると」

翼「にゃはは、おい、吸血鬼、わかってにゃいにゃあ。猫は気まぐれ。口から出任せにゃん」

忍「慣れていない、か。相変わらず汚い部分は他人任せのようだが?」

翼「あー、これにゃー。どうもこっちが出ちまっていかんにゃ。俺はもうほぼ混ざり合っているんだが」

忍「委員長は頭をボリボリ掻いたりしない」

翼「シーシー」

忍「歯グソをとったりしない」

翼「にゃはは―――阿良々木暦の吸収、できるよ」

忍「じゃろうな」

翼「俺は頭がいいからよー。新技を毎日編み出しているんだにゃ」

忍「それを聞いて決意が固まった。暴れ猫には拘束具が必要じゃ。人喰いなどせぬようにな」

翼「あ~、そういえば前にちょっと咬み千切ってやったっけにゃあ。あのあとちゃんと再生はできたかにゃん。ザ・ハンド、じゃあにゃいぜ」

忍「しかし、解せぬ。吸血鬼との契約、いや、今はあるじ様の従者が儂という複雑な回路になっておる。それを無視してうぬがモノにするなど、儂には正直その方法など見当もつかぬ」

翼「ニャーハハハ。同情するぜえ、吸血鬼。今の発言でお前が彼に依存しているのがよくわかる」

忍「なに?」

翼「500年、600年だったかな? まあどちらでもいいけど、その間にあなたが孤独であったろうことは想像に難くない。苦しかっただろうね。私もそうだったから、自覚したのは最近だけど、よくわかる」

翼「ある日、ロンリーヴァンパイアは一人の下僕を見つけたにゃん」

翼「うれしかっただろうね。なにせ、瀕死の自分を身を呈して助けてくれたんだもの」

翼「その日からは二人で吸血鬼。往くも地獄、引くも地獄。失楽園だにゃ。『けど、もう、にゃにも、怖くない』―――ニャハハハー!」

忍「……」

翼「私とあなたはよく似ている。そもそも、今の阿良々木くんの原因は私たち二人と言ってもいい」

翼「まあ、女作っちまったけどにゃあ」

翼「それはもういいけど。私は彼女も好きだから。でも、あなたは阿良々木くんといつまでも共にいるつもりでいる」

忍「……」

翼「もちろん、それは阿良々木くんがわかった上でそうしたこと。でもね、あなたたは『みんなが死んでしまったあと、二人仲良くやっていくつもり』なのかなぁ」

翼「初めから「そのつもりで「お釈迦様が孫悟空を手のひらで遊ばせるように「阿良々木くんはどうせ自分のものだと「そんなの許せない」

翼「私が―――阿良々木くんをとったって文句は言わせない」

翼「思うに、あなたの考える彼との関係っていうのは永遠とか持続性を含んでいるんだよね」

翼「まあ、吸血鬼はそれはそれは長生きだにゃ」

翼「さっき、ラスボスだとか、月火ちゃんだとか……ふむ、もしかして、そういうことなのかな?」

忍「……」

翼「なるほどね。それは確かにあなたの視点から見ればあの子はラスボスとして立ち上がってくる」

翼「けど、そんにゃマクロな視点であるがゆえに、俺が『どうやって阿良々木暦を手に入れるか』がわからにゃいわけなんだにゃあ」

翼「さて、ここで答え合わせにゃん。『私、羽川翼はどうやって阿良々木暦を吸収するでしょうか』クイズ、ウルトラ、ドレミファ」

翼「どーーーーーーーーーーーーーん!!!!」

忍「……」

翼「おやおや~、解答者全一人中〇人ですにゃ」

翼「それではサクサクっとファイナルアンサーにいくにゃあ」

翼「阿良々木くんを吸血鬼の因果から切り離す方法―――彼を吸収、つまり食べたあと、私が彼を出産することによってそれが果たされる」

忍「産む、じゃと」

翼「そうだにゃあ。やつをペロリと食べたあと、俺は妊娠に入るにゃあ」

翼「そして、十月十日間後、彼は以前とほぼ同一の遺伝子、つまり阿良々木暦くん本人が赤ん坊として産まれるの」

翼「一人でさびし~く生きてきたお前には到底浮かばないアイデアだにゃん。これが俺の新技、いわば『処女懐胎(スーパー・ノヴァ)』だにゃん!(ドヤッ」

忍「処女懐胎じゃと? 人間モドキの化物が聖母を名乗ると。笑わせてくれる。こいつは傑作じゃ」

翼「でも、あなたは私の戯言を笑って済ませられなくなる」

冷蔵庫にあるケーキ食べてくるにゃあ

翼「ほら、怖くなってきたでしょう」

忍「怖い? たわけ、儂が何を恐れると――」

翼「阿良々木くんがいない、これから」

翼「今まで余裕ぶっこいてたからにゃあ。最後は儂の元におればよい? お前は惨めに孤独に死ぬんだにゃ」

忍「孤独、に」

翼「お前もよー、弱肉強食の競争社会で生きてきたんだろう? そう簡単に伴侶が手に入ると思ったかにゃん」

忍「わ、儂は」

翼「吸血鬼の縁を断てば、もうあなたと出会うこともなくなる」

翼「そうだにゃあ、仮にまた瀕死のお前を見つけても、さすがに助けないかもしれないにゃあ」

翼「だって、怪異(たにん)が死ぬのは気分が悪い」

翼「けど、それを素通りするのが『普通』だろ」

忍「あ」

忍「あ、あ」

忍「あああああ「あああ「ああああああ「あああああああ「ああ「ああああああ」

翼「――帰ります」

翼「最後に、一個だけ訂正。阿良々木くんは産まれ直しても、きっとあなたを助けると思う」

翼「さっきのは悪意で言ったんだにゃ」

翼「ごめんなさい」

翼「それにしても、ストレスが溜まらないように逆に相手を傷つけるのって面白いにゃあ」

翼「誰だって、脆いもの」

翼「笑いが止まらないにゃ」

翼「あー、楽しかった」



忍「…」

忍「……」

忍「……………………………」

忍「…………―――「――――――「――――「――――」

暦「ん、今何時……あれ、僕なんでベッドに?」

忍「……」

暦「忍、羽川は? うわ、もうこんな時間かよ」

忍「……」

暦「なんか体がだるいぞ。僕さっきまでどうしてたっけ―――おい、どうした?」

忍「……」

暦(そんな力強く抱きつかれても)

暦「なんかあったのか?」

忍「……」

暦(トトロのメイちゃんかお前は)

暦(とりあえず、頭を撫でてやる)

忍「ミスタードーナツ食べたい」

暦「ああ? お前なぁ」

忍「ドーナツ食べたい……」

暦「……わかったよ。買いに行くからそんな顔すんなよ。お前らしくないぞ」

暦(お、影に引っ込んだ。なんだ、忍が落ち込んでいる?)

暦「なあ、のぶちゃん。話なら暦お兄ちゃんが聞いてやるぞ」

忍「ほっといてくれ、お前様。あんなこと言われたら、最強の儂もさすがに凹む」

暦「どうしたんだよー。ツイッターで叩かれたみたいな言い方してー」

忍「ミスド、よろしこ」

暦(むう。どうやら悪意ある第三者の発言で深く傷ついているようだ)

暦(とにかく、ミスタードーナツに向かうぞ)

月火「フリ……クリ……クリ……トリ……」

暦(なんだあれは。まるでlainに出てくるお姉ちゃんだ。若き川澄さんはあの演技にとてつもない情熱を持って挑んだそうだが)

暦(ウエダハジメ先生がこのシーンを漫画化してくれないだろうか。僕は講談社BOXでフリクリの再版が出て以来ファンなのだ)

暦「おーい、火憐ちゃん。僕、ちょっと出かけてくるからな」

火憐「なに!? ちょいと待て兄ちゃん!」

火憐「ここを我したくば倒してから通りにしろっ!」

暦「わざわざ駆け寄ってきて、ブリッジにそのセリフをキメなくていい! セリフも支離滅裂になってるし!」

火憐「?だんく行こどんゃち兄、でん」

暦「ブリッジしながら声まで逆回転しなくていい」

火憐「Go You Will Where?」

暦「英語に直すなっ!」

火憐「ところがどっこい、ちゃんと意味が通じるようになってるところがミソさ」

暦「一瞬同調しかけたが、まったくそんなことないからな。エスカレーターだからって甘く見てると、お前落第するぞ」

火憐「大丈夫、勉強は月火ちゃんに見てもらっている」

暦「それなら安心だー。って月火ちゃんは学年下じゃねえかっ!」

火憐「ミスタードーナツ? 兄ちゃん最近しょっちゅう行くのな」

暦「ん、ああ、まあ、ゴールデンチョコレートにハマってさ」

火憐「ゴールデンチョコレート……うぅ」

暦「なんだ、火憐ちゃん。は嫌いなのか?」

火憐「あたし、あれの見た目がダメなんだよ。あの小さくてブツブツしたのがドーナツにびっしりと」

暦「ゾクッとくるからやめろ」

火憐「けど、そのゾクッを感じたくてついつい買ってしまう」

暦「ミスタードーナツに失礼だろ!」

火憐「そして、草間彌生の美術書片手にブツブツを味わいながら食べる」

暦「ドMクールゥゥ!?」

火憐「自転車? ハッ、そんな道具に頼るなんてスターハンセン!この火憐様に乗っていったほうが速い、安い、危ないでお得だぜ」

暦「突っ込みどころは色々あるが、とりあえずスターハンセンはナンセンスと言いたかったのか?」

火憐「公道は法定速度を気持ち10キロオーバーで走るぜ。トロトロしてると追い抜くぜ」

暦「とうとう自動車級の脚力になってしまったか……」

暦(念のため。法定速度はきちんと守り安全運転を心がけましょう)

暦「とりあえず、運全安転でし願いおます」

火憐「運全安転? なるほど、バク転で行くか! さすが兄ちゃん、グレートだぜ」

暦「どうやって僕はお前についていくんだ?」

暦(これはフリが難しすぎたか)

暦(結局、火憐ちゃんに肩車。しかし男前な妹だ)

暦「なあ、妹よ」

火憐「なんだ兄者」

暦「仮定の話として聴いてほしいんだが、知り合いがある言葉でひどく傷ついていたら、お前どうする?」

火憐「ああ? なんだ兄ちゃんいじめられてんのか!?」

暦「気遣いはありがたいが、その飛躍は少し腹立つ」

火憐「言葉の暴力か。まああたしは経験あるしな」

暦「……はいはい、悪かったよ」

火憐「まあ、とりあえず自殺を考えるかな」

暦「いきなり!?」

火憐「人間、ふと死にたいなんてしょっちゅう考えるもんなんじゃねえの? 少なくともあたしは昔兄ちゃんにひどいこと言われたときまず自殺を考えた」

暦(うーん、意外と繊細。そういえば体育教師の鬱病にかかる確率って他の教師よりも高いって聞いたことあるな)

火憐「あたしは実ってのが好きだ。それは目に見えるもんだと思ってるけどさ、現実とか実行とか。けど人ってよ、思ってもみなかった言葉とか、目に見えないもんに簡単に捕らわれちまうんだよな」

火憐「『もうこの先お前は背が伸びない』とか『もうこの先お前は頭が良くならない』とかな」

暦「ひどいことを言うやつがいるもんだ」

火憐「そうだな。早く死ねばいいのに」

暦「なぁー。まったくだよ」

火憐「……そういう言葉が土星の輪っかみたいに、ぐるぐる頭の周りをまわるんだ」

暦(以下、劇団イヌカレー【希望】)

―もうこの先お前は背が伸びない。

火憐「あたしはチビだ。もっと大きくなりたいのに」

―もうこの先お前は頭が良くならない。

火憐「馬鹿はイヤ。馬鹿は馬鹿にされる。これまでも。これからも……?」


火憐「世の中なんて広いに決まってるのに、悪意のある言葉ってのは世間の声みたいに聴こえてくる」

―チビ、チビ、チビ。

火憐「チビって言わないで。チビはいけないの?」

―バカ、バカ、バカ。

火憐「バカって言わないで。バカはいけないの?」


火憐「否定、拒否、拒絶、迫害。頭の流れはこんなだな。で、自分はこの世にいない方がいいんじゃないかって――」

火憐「一回さ、扇風機で自殺を考えたんだ。頭突っ込めば粉々になるかなって」

暦「いつかは知らないが、そんな陰惨なことを考えてたのか……」

火憐「けど、結局失敗してさ」

暦「止めたのか。そりゃあ、怖いもんな」

火憐「いや、気づいたら舌で扇風機を止めてた」

暦「何の衝撃映像だよっ!」

火憐「マジで親がその映像テレビに送ったら賞金が出た」

暦「知らねえぞそれっ!?」

火憐「この間youtubeにあるか確認したら世界中から好評だったぜ」

暦「くそっ、僕の携帯のスペックじゃ映像がカタカタだっ!」

火憐「最初は親から報告されたんだ。扇風機止めがウケたって」

暦「パパとママもよくそんな映像撮ったな。あの人たちが」

火憐「なんでも兄ちゃんの入学式の映像を編集してる最中のことだったらしい。知らぬ間にカメラ回してたとさ」

火憐「ウケたって聞いたとき、あたしは怒ったんだ。『見せ物じゃねえ!』って」

暦「自殺未遂だもんぁ」

火憐「そしたら、兄ちゃんが『でも、お前すげーじゃん』って言ってくれたんだよな」

暦「……」

火憐「覚えてない?」

暦「い、いやあ、そんなこともあったような?」

火憐「まあいいよ。その一言があたしを死の淵から救ってくれたわけだ。結局、全部兄ちゃんに帰ってくるんだよなー」

暦「は?」

火憐「ま、とにかく。なんだっけ、兄ちゃん『死ね』とか机に書かれたんだっけ?」

暦「いや、だから僕じゃなくて……」

暦(と言いたいところだがSさんには似たようなことを散々された気がする。あれ、なんだろう、急に死にたくなってきた……)

火憐「兄ちゃん、言葉には言葉だ。落とされたなら上げろ。上げて伸ばせ!」

暦「うーん、誉めればいいということか?」

火憐「兄ちゃんサイコー!」

暦「ピンとこないなぁ」

火憐「濡れるッ!」

暦「あんまり妹に言ってほさくない」

火憐「ディモールト! ディモールト良いぞッ!」

暦「あれ、なんか体にビリビリくる……?」

火憐「兄の採った行動ッ、敬意を表するッ!」

暦「な、なあんか力湧いてきてるんじゃあねえかァ~~コレッッ!?」

火憐「良~~~~~しよしよしよしよしよしよしよし!!」

暦「うああ、おっ、うおっ、おおーッ!!」

火憐「これで明日から自殺願望もなんのそのだ。あたしが兄ちゃんの心ない一言から立ち直り、見事高身長と頭脳を得たように」

暦「頭脳はお前月火ちゃん任せじゃねえか。あと身長の話はするな」

火憐「ファイヤーシスターズソーセージを食べて、君も火憐ちゃんみたいになろう!(キリッ」

暦「公式グッズが出ていたのか……てか言いづらいよ、ファイヤーシスターズソーセージ。む、案外うまいな」

火憐「670円な」

暦「金取るのかよ! しかも高い!」

火憐「ちなみに原材料はお歳暮で届いたやつだぜ」

暦「原材料ってそのままだろうが! うまいはずだよ!」

就寝ッ!就寝ッ!

フロッキーシューって限定品だったのか

暦「ポン・デ・リング、黒糖、ショコラ、ダブルショコラ、抹茶チョコ、フレンチクルーラー、ハニー・ディップ、オールドファッション、ストロベリーリング、ツイスト」

暦(今が100円セールでよかった)

火憐「兄ちゃん、このラーメンみたいの食べたい」

暦「お前夕飯食べたんじゃないのか」

火憐「食べたよ。でもメニュー見てたら欲しくなった」

暦「ダメだダメだ。もう帰るの。買うのはテイクアウトだけだ」

火憐「た~べ~た~い~な~」

暦「普段太るからって甘いものと間食はしないじゃないか」

火憐「いやな、後でその分だけカロリー消費すれば問題はないって神原先生が言ってた。それに多少だらしない肉もあの人は好きだって」

暦(最近、連絡を取り合う仲になっているようだが。まさか桜の國に連れて行かれたりしてないだろうな。神原が戸籍上妹になったりしたら笑えない)

火憐「いやあ、さすがは兄ちゃん。あたしたちファイヤーシスターズの兄ちゃんだ。前から食ってみたかったんだよなー」

暦「そのラーメンはあくまでタクシー代だからな」

火憐「へっへっへっ。それじゃあいただくぜ」

暦(ただでさえ忍がミスドの味を占めて以来、出費が重なっているのに。これじゃあガハラさんとデートもできない)

暦(いや、今まで金がかかることを二人でしたことってないけど。最近、家に通うだけだな、そういや)

暦「はやく食べろよ」

暦(僕としては火憐とミスド店内で寛ぐことに抵抗があるのだ。詐欺師と遭遇したりしたらたまったものじゃない。こいつが貝木を見たらバトル展開に移行するのは目に見えている。この日和な田舎のドーナツ屋をストⅡのステージにされたらかなわない)

暦「おい、うまいのかそれ」

火憐「……なんか、思ったほどじゃなかった」

火憐「おかゆみてえ」

暦「ふーん、ちょっとくれよ」

火憐「やだ」

暦「僕が払ったんだぞ」

火憐「だって同じ箸を使ったら妊娠しちゃうだろ」

暦「小学生の知識かっ!」

火憐「兄ちゃんは大好きだがそこはまだ抵抗がある……」

暦「お前学校通ってるんだろうな?」

暦(それに『まだ』とはどういう意味だ。『いいよ』になる日がくるのか。いや、待て待て、僕ら兄妹は良識ある関係のはずだ)

暦(おい、火憐ちゃん、どうして瞳を濡らしている。その上目遣いはなんだ。顔が赤いのはエアコンの効きすぎか? 店内は冷房のはずなのに!)

暦「ふむ、人気ランキングはチョコ系と抹茶が占めているんだなー。オールドファッションはトップ10に入ってもよさそうだけど」

火憐「嘘ランキングじゃねえの」

暦「女性利用客が多いと考えるとまだ納得いくが。火憐ちゃん、女子的にどう?」

火憐「あたし的にカレーパンが入ってないのが納得いかねえな」

暦「お前に訊いたのは間違いだったみたいだな」

火憐「な、なんだとー!? カレーパンなめんな!」

暦「じゃあ、他にどういうのが入ってればいいんだよ?」

火憐「ハンバーグ入ってるやつとかだな!」

暦「統計でその他にカテゴライズされる意見だな」

火憐「その他っ!?」

暦「あ、携帯の電池切れそう」

火憐「いやいや、兄ちゃん。包茎、だっけ? そんな数字で計ったデータなんか当てにならんぜ」

暦「統計だよ!」

火憐「正確な情報だとかさー、そんなんで出てくるわけないじゃん。その他に追いやられたやつは兄ちゃんの仮定でいうと女子的にナシなんだろ。その他がかわいそうだ!」

暦「まあ、マイノリティの無視は見過ごせないな」

火憐「それじゃあ皮でつつんだやつとかさ、トップから外れたら価値がないと言われてるようだぜ」

暦「パイ系と言ってくれ、頼むから」

火憐「女子の間で『あ、皮被ってるんだ。私パスー』って会話が繰り広げられたら涙がでそうだぜ。あたしは好きだぜ、パイ」

暦「ありがとよ畜生! 統計なんかくそくらえだ!」

火憐「そうだぜ、きっとこのランキングは隠蔽工作がされているに違いない」

暦「そうだな、オールドファッションないし」

火憐「きっと一位から五位を除外して、六位から繰り上げしたランキングなんだ!」

暦「ああ、プルコギが一位ってのは首を傾げる」

火憐「恐ろしい世の中だ……ここは正義の使徒、火憐様がビシッとキメてやらなくちゃあな」

暦「じゃあ、一位から五位はなんなんだ?」

火憐「上からカレーパン、ハンバーグパイ、フランクパイ、エビグラタンだ!」

暦「ドーナツなのに……」

火憐「兄妹のよしみで五位にオールドファッションを入れておいてやるぜ」

暦(今、ミスタードーナツ人気ランキングが発表された)

暦(上からカレーパン、ハンバーグパイ、フランクパイ、エビグラタン、オールドファッションがトップ5である)

暦(消費者諸兄、今後もミスタードーナツをよろしく)

暦(さて、帰る前にトイレ)

暦「あ」

暦(うわあ、だから嫌だったんだよ。やっぱトイレは帰ってからに――)

貝木「お前か。どうした、なぜ踵を返す。用を足しに来たんじゃないのか」

暦(不吉な男――貝木泥舟だった)

貝木「家のトイレ以外は使う気にならない手合いか? しかし、便秘の死に様はそれは悲惨だぞ。話に聞いただけだが医者も執刀を避けたがるらしい」

暦「……小のほうだよ」

暦(仕方ない。さっさと済ませて出よう。下手に会話をして火憐が出しゃばる事態なんかは絶対避けたい)

暦(そして――トイレは今男二人になった)

暦「あんた、まだこの町に用があるのかよ」

貝木「当然だ。阿良々木、今ここにいることは俺の得になる。つまり金になる。でなければこんなくだらん田舎に駐屯するわけがない」

暦「よりによって、またミスタードーナツか」

貝木「先日、お前から頂いた財布にクーポンが入っていたからな。使わない手はない」

暦(こいつ、スタンド使いだったら絶対ハーヴェストだな)

貝木「お前は妹と同伴か」

暦「気づいてたのかよ」

貝木「全快したようだな。一度騙した相手は二度はさすがに難しい」

暦(小を終え、水道に向かう貝木。はやく帰ってくれないかな)

貝木「戦場ヶ原にはお前と妹の近親愛は黙っておいてやろう。代わりに金を出せ」

暦「近親愛じゃねえよ! ごくふつうの兄妹の外出だ!」

―『妊娠しちゃうだろ』、『兄ちゃんは大好きだがそこはまだ抵抗がある』

貝木「この音声を匿名で戦場ヶ原に送れば、お前達の関係も破滅かもしれないぞ」

暦「いつ録ったんだ!?」

貝木「お前らは全く気づかなかったようだが、俺は真後ろの席にいたんだぜ? 俺は仕事柄、常にICレコーダーを持ち歩いている」

暦「最近は声の加工だって楽にできるだろ。戦場ヶ原がどこの誰かもわからないやつが送ってきたもの、信じるわけあるか」

貝木「どうだろうな。日本は今でも嫁姑問題が大きなトピックだからな。離婚に発展する原因は夫の家族関係である場合も少なくない」

貝木「戦場ヶ原がお前と妹の関係を疑わない可能性がどこにある?」

暦(怖い。プライバシー無視の音声録音に意図的な抽出もそうだが、やっぱりこの男に脅されている)

暦(なにより、ガハラさんが怖い)

暦(現在のドロデレヶ原さんを考えれば、文字通りどんな事態になるか予測がつかないぞ)

暦「あんた、本当に血も涙もないんだな」

貝木「俺は血も通っているし、感動に涙を流す、普通の男だ。この間もしドラを読んで二時間は泣いていたぞ」

暦「あれで泣くのっ!?」

貝木「女子高生が野球部を自分の手駒にしていく様は圧巻だぞ」

暦(こいつ、ベストセラーとか読むんだな……)

貝木「それより、ほら、出すものがあるだろう」

暦「くっ、誰が出すかよ」

貝木「強情だな。俺には情などないが、相対的に言えばその点お前は付加価値がある。だから金になるのだ」

暦「相変わらず気が滅入る論法だな」

貝木「そうだな、お前ら兄妹がこのまま関係を進めればそれはそれで俺の金になる、か」

暦「だから違う――って、どういうことだ?」

貝木「世には近親愛の需要もある。この先、お前の妹が例えば扇情的な仕草をする機会があれば、枕カバーやマウスパッドの製品化も考えられるからな」

暦「製品化? 一体の何の話だ」

貝木「もしかしたらゲーム化の声もかかるかもしれん」

暦「何の話をしているんだ!?」

貝木「最近は懐妊エンドもちらほら聞く。お前の評価は下がるかもしれないな。なんなら、俺のルートを開発したっていい」

暦「いよいよ、わけがわからない!!」

貝木「ただし、俺のルートは再調整版のみ収録だ。コストパフォーマンスなぞ考えるわけない。どうだ、欲しいだろう? なら今のうちに投資しておけ」

暦「再三言うが、僕と火憐ちゃんは兄妹だ。家族だ。どこかのギャルゲーじゃあるまいし、関係するわけないだろ」

貝木「火憐ちゃん」

暦「あっ!」

貝木「俺の騙してきた人間は数知れないが、中には近親相姦の夫婦もいたよ。その夫はかつて全く血の繋がりのない婚約者を捨てた男だった。そいつはどうしたと思う?」

暦「今度は何だよ?」

貝木「ただの業績自慢だ。俺は捨てられた婚約者に依頼され、夫婦が多額の借金を背負うよう仕組んだ。二人は飛び降りて死んだ」

貝木「俺は報酬として婚約者の資産を残らず頂いた――向こうの好意でな。彼女も首を吊って死んだよ」

暦「その話をして……何が言いたいんだよ」

貝木「将来何が起こるかはわかったものではないということさ。お前たちには先というものがあるが、十分に破滅の可能性を孕んでいるのさ、阿良々木」

貝木「話が長すぎたな」

暦「あ、おいっ」

貝木「なんだ? 財布を出す気になったか?」

暦「出すか! そうじゃない、さっきの録音データをよこせ」

貝木「なんだ、そんなことか。そら」

暦(ひゅっ――と貝木がレコーダーを投げてよこした)

暦「……」

貝木「こんなものには価値はない。それより、お前の妹の呼び方がわかったが、金にするステップが浮かばん。しかし、ネタが増えただけでも儲けだとしておくか」

暦(えぇー……次はそのネタで揺すられるのかよ……)

貝木「俺に会っても話しかけるなよ。金をもらうときには会いに行ってやる」

暦「来るな」

暦(不吉な男、貝木泥舟は――――音もなくトイレから出ていった)

火憐「兄ちゃん! 遅いぞ! どんだけでっかいヤツだったんだよ!」

暦「……」

暦(貝木がよこしたレコーダー。何の価値もないと言っていたが……もしかして既にバックアップをとってあるから価値がない……?)

火憐「さあ、あたしに乗れ! 愛する兄ちゃんのためなら三脚にも飛脚にもなるのが火憐だぜ!」

暦「火憐ちゃん!!」

火憐「お、おう?」

暦「これからは外で『愛』とか『好き』とか不用意に言わないようにな!」

火憐「はぁ?」

暦「でないと、お金取られたりする世の中なんだ! 気をつけていただきたい! 火憐ちゃん!」

火憐「わからんけど……わかったよ。いや、わからんけど」

暦(『火憐ちゃん』も気をつけねば。よりによって貝木に聞かれてしまうとは……)

暦(で、帰宅。ちょっと火憐酔いした……あいつ、道路交通法て捕まるんじゃないのか)

暦「おい、忍。ミスタードーナツ買ってきたぞ。って、わかってるか」

暦(……出てこない)

暦「あー、ゴールデンチョコレートもらうぞー。いいのかなー」

暦(ひゅん、と忍のブレードが僕の顎から上を切断した)

暦「っ!?……っ!?……ッ!!」

暦(僕の明るくなった口内――下顎しか残ってない――から血のシャワーが吹き荒れる)

暦(さながら幽遊白書のグルメ、寄生獣、もしくは夢幻紳士外伝だ)

暦「ッ!!……ッ!!……ッ!!」

暦(冷静に描写してみたけど大惨事だろコレ! うわっ、僕の体グロッ! ていうか僕は一体どこからこの光景を見てるんだ!?)

暦(えーとえーと! 視点は低いから、僕の頭は床に落ちてるのか! あ、まだ僕のボディ動かせるじゃん! あれ、うまくいかないぞ!?」

暦(わー! ロボットダンスみたいになっちゃってる! すげえキモい! あ、忍!)

忍「……」

暦(はやく! 直して、治して……あ、何やってんだお前! 僕にドロップキックするな!)

暦(こら! 踏みつけるな! くそ、しっかり痛いじゃないか! あ、ボディプレス! 忍ー!!)

暦(なんか体感的には格ゲーみたいだけど! くっ、やられっぱなしだ! あ、僕のボディなにいじめられっ子みたいにうずくまってるんだ!? 僕のくせに、やり返せよ!)

暦(土下座始めやがったぞ僕!? 忍、いい加減にしろ! 僕がかわいそうじゃないか!)

暦(おい、僕のボディゴマスリ始めたぞ。なにヘーコラしてんだよ。僕の意向完全スルーですわ)

暦(ちょ、おい! どこ行く気だよ! 僕のボディーーー!!)

忍「やかましい。ギャーギャーと」

暦(……)

忍「お前様の声は儂に筒抜けじゃ。覚えておけ」

暦(……そんな)

暦(そんな怖い顔しなくてもいいじゃないっすかぁ……)

暦(あ、僕が帰ってきた。何しに行ったのかと思ったら、お茶汲みかよ……)

忍「うむ。ご苦労。ではいただくとするかの」

暦(香りからすると紅茶を淹れてきたらしいな)

暦(それにしても、紅茶を注ぎ方とかドーナツの取り分けとか、僕(ボディ)の仕草が妙に女性的なのが気になる。既に別の人格が発生しているかのようだ)

忍「うむ。美味。このツイストは初めてじゃな。どれ」

暦(僕の目の前で忍、僕(ボディ)のお茶会が開かれている。災禍のティータイムって感じだ)

忍「うぬにもやろう。ポン・デ・リングはよく食べておるから、今日はいらぬ」

暦(『えー、いいんですかー?』みたいな僕(ボディ)。あり得ない気前の良さの忍もだが、なんか僕は僕(ボディ)に腹が立つぞ)

暦(あーあー、上顎がないから噛めてないじゃん。リング丸飲みかよ。舌のくりんって動作が実に気色悪い)

暦(ん、こっちを見てる?)

暦(あ、あの野郎! なんだあのプギャー(笑)みたいな指!? ふざけてんのか手前ェ!)

快楽天買ってくる

暦(完全に自立稼働してやがる。もう、あれか、アラ/ラギなのか)

暦(なんか向こう二人だけでトーク始まったし……僕、いらないのかな)

忍「ったくよ、嫌な世の中じゃよな。出る杭は打たれる。気に入らないとす~ぐ叩くんじゃ。もぐもぐ」

暦(ボディ)「っ! っ!」

忍「中傷を言ってくるあやつら、本当に人間か? いいや、怪異の儂以上の鬼畜生じゃ。まるで慈悲の心など併せ持っておらん。もぐもぐ」

暦(ボディ)「~~~!」

忍「くそ、みんな死ねばいいんじゃ……ショコラ、おいしいな」

忍「儂が男の話をしてはいかん的なムード、あるよな。あれ、やめてくれんかの。儂じゃってハメ外したいんじゃ!」

暦(ボディ)「~~?」

忍「そうじゃな、あやつら幻想抱きすぎじゃ。儂は怪異じゃぞ、伝承が誤って伝わっておるかもしれないではないか」

暦(ボディ)「~~~ッッ!」

忍「うぬものう、大変じゃろ。アホなあるじ様を乗っけて毎日」

暦(ボディ)「ッ! ッッ!?」

忍「ありえねー。マジかそれは?」

暦(ボディ)「!!!!!!!!」

忍「儂ならさっさと捨てるのう、そんな男」

忍「てゆーか、聞いて聞いて。儂、あの草食系男子ってやつ、嫌いなんじゃ」

暦(ボディ)「~~~~~~~~」

忍「一人称が僕のやつおるじゃろ。あれがかなわん。あと、シスコンな。ちゃん付けで名前呼ぶとか寒気がする」

暦(ボディ)「ッッ!」

忍「そうか、うぬは喉があるのだったな。嫌じゃろうなぁ、その類のワードを発声するの」

暦(ボディ)「~~~」

忍「えええええええええ!!?」

忍「それは逆にぱないの(笑)!! ぷ、ぷぷ、あーはははははは!!」

暦(ボディ)「っ! っ! っ!」

暦(おい)

忍「この間さー、タクシー乗ったんじゃけどさー、マジありえなくてー」

暦(ボディ)「~~~?」

暦(おい、無視すんなよ! お願いだから!)

忍「ああ? なんかキモいのがおる」

暦(ボディ)「ーーー」

暦(なんで、僕は責められてるみたいなんですかね?)

忍「うっざいのー。お前様の声は隣で聴いているような音量なんじゃ。シッシッ」

暦(あのう、体を戻してもらえませんかね)

忍「どうする?」

暦(ボディ)「×」

忍「だそうじゃ。でさー」

暦(ちょっと待てよ!!)

忍「うるさいのう、ガールズトークの邪魔じゃ」

暦(ガールズトークだぁ? サバ読み吸血鬼とグルメみたいになってるグロテスクな僕の体でか。ガールズトーク(笑))

暦(ボディ)「……」

忍「あっ」

暦(え、なに?)

忍「ちょっとお前様ー、この子泣いちゃったじゃーん。女の子泣かせるとかサイテー」

暦(え、それ泣いてんの? というか僕のボディ、女子なの?)

忍「大丈夫ー?」

暦(ボディ)「……」

暦(なにこれ……)

よく考えたらこの間にも出血し続けてるんだよな?

スプラッタじゃね?
いやその前にアララギ君死なね?

忍「お前様さ、マジで何考えてんの? 信じらんないんですけど」

暦(僕もこの事態が信じらんないですが。いてっ! 蹴んなや!)

忍「謝んなさいよー」

暦(ボディ)「……」

暦(だいたいお前僕のボディだろ! なんでグループ内で一歩前に出れないおずおず系女子みたいになってんだよ!)

忍「ああん!?」

暦(痛っ! 忍っ! 踵はやめて踵は!)

忍「もうこいつ、マジで甲斐性ないのう。一回わからせてやらんと」

暦(ボディ)「……?」

忍「>>278止血はしてやった。茶を淹れに行かせたときスプラッタじゃあさすがにまずいからの」

暦(こいつ、さっき家族に見られたりしてないだろうな……)

忍「さて」

暦(物質想像スキル……ガムテープ?)

忍「……」ビリリリリリ

暦(し、忍さん、その凄惨な笑みは……)

忍「とりあえず鼻と目は塞いでおくか」ペタペタ

暦(!?)

忍「どうじゃー。暗いかー。じゃあそろそろ行くぞー」

暦(なに!? なんなの!? なにされるの僕!?)

忍「いくよ、若林くん!」

暦(僕はこの日――おそらくサッカーボールの友達になれる気がした)

忍「ドライブシュートォォォォ!!」

暦「!!??!?!?」

暦(僕は、宙を舞った)

暦(まず壁、それから天井に向かって跳ね、床に落下した)

暦(痛い)

暦(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いよこれ!!)

忍「よっ」

暦「!?」

暦(忍が僕を掴む。すごい力で。いやもう指食い込んでるな。ボーリングみたいだ)

忍「次はスラムダンクじゃ」

暦(そう言うと忍はドリブルを始めた。ボールは僕。痛い)

忍「オヤジ~いつまでドリブルやらせんだよ~」ダムダム

忍「うぬ! ゴール役をせよ!」

暦(ボディ)「!」

暦(見えないところで嫌な合図を送っていやがていうかもうすげえ痛いんだよっ!! 冷静に描写とかできねえんだよ痛え!!)

忍「ウッホー!」

暦(ボディ)「~~~~!!」

忍「すげえ!「出たー! キャプテンのゴリラダンク!」

暦(僕も痛いが一人でゴリと一年ベンチ役やるお前も痛いぜ忍っ!!)

暦(うえーん、痛いよ羽川ー!)

忍「フンフンフンフンフンフンフンフンフンフン」

暦(せっ、台詞から察するに、桜木の超絶ハンドリングかっ……うっ、、遠心力が、き、きもちわ)

忍「フンフンフンフンフンフンフンフンフンフン」

暦(し、しの……ひのぶ!)

忍「なんじゃー? 今千回を越えたぞ」

暦(た、頼むから、やめっ……しっ、死ぬっ)

忍「なんじゃ、だらしない」

暦(と、止まった……)

暦(どうやら、床に降ろしてくれたみたいだ)

忍「どーれ」ビリッ

暦(あっ! ちょ、ガムテープ優しく剥がして……)

忍「ぶっ。きゃはははは! お前様よ、充血して目玉が飛び出しておるぞ。ひどい顔色じゃなー」

暦(誰のせいだと思って……もういいだろ)

忍「いーや、まだまだ。こんなものでは……あれ、何でこんなことになったんだったかの?」

暦(もうやだぁ、こいつ! お前なんか死ねよポンコツ吸血鬼!)

暦(ボディ)「っ、っ」

忍「ああ、うぬを泣かせたからじゃったの。うん、お前様、さっさと謝っちまえ」

暦(うぅ……す、すいません、でした?)

忍「お前様、誠意って何かね」

暦(僕は絶対悪くないのに! こんなの間違ってる!)

暦(ボディ)「~~~、~、~~」

忍「うぬがよいなら儂は構わぬ。お前様、ボディからお許しが出たぞ。長年共にやってきただけはあるの、寛大じゃ」

暦(ああ……やっと、帰れるのか、我がボディに)

忍「うぬがまずはあるじ様を首に乗せよ。儂が接着してやる」

暦(そして――――)

『ガッシィィイイィーーーッッ!!』

暦(と効果音は鳴らなかったが、無事にパイルダー・オン)

忍「ん、あれ?」

暦(どうした)

忍「おっかしいの~。接続せん。このっ、このっ」バンバン

暦(痛っ! 叩くなよ! 僕は昔のテレビじゃないんだぞ!)

忍「……ダメじゃ、これは中がイカレとる」

暦(お、おい、まさか直らないなんてことないよな?)

忍「儂を誰だと思っている。お前様の脳をいじってやれば容易に直るわ」

暦(脳……?)

忍「また借りるぞ、頭。よっ」

暦(わっ、ととっ。丁寧に扱ってくれよな)

忍「道具は、『スゲイナスゴイデス!』っと……こんなものかの」

暦(スキルで創造したものはドライバー、ネジ、カッター……ノコギリ?)

忍「では始めようかの!」

忍「うぬ、ちょっと押さえておれ」

暦(ボディ)「……」スッ

暦(僕って、意外に力強いんだな……惚れそうだ)

忍「まずは蓋を開けねば。せーの」

暦(ん?)

「ギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコ」

暦(!? !? !?)

「ギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコ」

「ギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコ」

「ギコ、ギコ……ギコギコ…ギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコ」

暦(んひぃやあああああああああああああ!!!!)

忍「ちいと痛いかもしれんが、耐えよお前様ー」

「ギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコ」

暦(ひゃあああああああ!! ああっ、ああああああああ!!?)

忍「そうじゃ、気が紛れるように歌でも歌ってやろう。あーさやけーのー光の中に、立つ影は、ミラーマン、ミラーマン」

「ギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコ」

暦(はああああああ!! ばああっ、ぶじゅっ、ぎべべベベベベベベ!!)

忍「鏡の世界をとーりぬけー、今だ! キックを使え!」

「ギコギコギコッ!」

忍「たーたかえ僕らの、ミラーマーン……お、開いたぞ!」

暦(はぁ、ひっ、ねっ、ああ???)

忍「さーて、どうなってるのかの。んー」

暦(ま゛っ!? ぶごごごっ)

忍「どうやらーさっきので接続に必要な神経細胞がシェイクされてしまったようじゃ」

暦(だんっ、ぎ??)

忍「安心せい、すぐ治してやる。これくらい朝飯前じゃ」

暦(お、おっおっおおおお!?)

忍「……ヘブンズ・ドアみたいに書き込みしちゃおうかの。スタンドではないが、出来なくはないし」

暦(かっ……かっ……そ)

忍「た、例えば、あるじ様が、儂を、儂を……なーちゃってなんちゃってー!」グジュグジュ

暦(BJegv.ないbadtbmかしlJlhtp0mあかさ)


暦「後日――僕はあれほどの痛みと恐怖は生涯味わうことないだろう、と結論した」

すまないが午前に仕事があるから寝る

暦(処置終了――)

忍「うむ! まあ、こんなもんかの」

暦「……」

暦(机の上のマイミラーに写っているのは――)

暦(唇から僕の顔を一周して囲むように出来た傷、その線を境に真っ青な上半分、健康そうな下半分の二色に分かれた顔。眼は少し飛び出ている)

暦(フランケンシュタインみたいだ。いや、フランケンシュタインだって造形的にもっと様になっている)

忍「キメ顔とは言えんが、お前様は元からそんなもんじゃしな」

暦「知り合いに会ったら秘密組織(笑)に通報されそうになってるよ! これちゃんと元に戻るんだろうな!?」

暦(青春怪異譚からB級オカルトになってしまう!)

忍「じきに傷も消えて自然になるとは思うが……」

暦「確証がないような言い方するな……」

忍「心配なら儂の血を飲んでおくか? その方がなじむのが速いぞ、たぶん」

暦(そう言うと、忍は右の人差し指を「ぶちっ」と食い千切り、ぽたぽた血が流れ出る傷口を僕に差し出した)

忍「はい」

暦(……はいって言われても)

暦「じゃ、じゃあ」

暦(なんとなくひざまづいて、僕は忍の血を頂戴することにした。あんまり健康な絵とは言えないな)

暦「ちゅぱちゅぱ」

忍「……」

暦(ん、これ……ウマイな)

暦「なんか、味がするんだけど」

忍「あ、味?」

暦「こう、ほんのり甘くて、少しとろみがあって、ミルキーな味わいというか」

忍「ふ、ふうん……んっ」

暦(血って鉄分が入ってて、うまいわけないのだが(舌を噛んだときを思い出してほしい)、これは――)

忍「んっ、んっ……ふぅっ」

暦(マズくない! 決してマズくないぞ!! ああ、うまい! なんだか懐かしい味だ)

忍「うん~~~ッッ、やぁ……」

暦(赤ん坊のころ、ママのお乳を飲んだときの味かな)

忍「お、お前様っ……もう、もうっ」

暦「あ、すはん。ふいふいむひゅうになってひまった。ちゅぽん」

忍「あ……」

忍「ふぅー……ふぅー……」

暦「なんかお前息荒いな。今のもエナジードレイン的なものに該当するのか?」

忍「い、いや、これは儂の個人的なアレで……と、とにかくこれで数十分もすればすっかり元通りじゃ!」

暦「おう。サンキューな。よかったよー、忍ちゃん」

忍「え、えへへ……ぶい」

暦(顔を紅潮させ、はぁはぁ息をしながらVサインをする忍)

暦(すげえいい笑顔で)

暦(AVのフィニッシュ後の女優みたいだ)

暦(さっき僕(ボディ)が持ってきた食器類を片付けるためにダイニングへ行く)

暦「おっ」

暦(リビングで月火がテレビを見ていた。番組は『新本格魔法少女りすかちゃん』)

暦(複雑な経緯を話すと、元々、原作小説がアニメ化するはずであったのだが、上層部のいざこざからか、未だに果たされていない)

暦(そこで、メディアミックスで登場した、どこかの同人作家が描いているパロディ漫画をアニメ化したのが本作である)

暦(硬派な原作とは正反対に、軟派で、スラップスティックな部分に特化したエンターテイメントらしいアニメに仕上がっている)

暦(原作ファンである僕は当初、このあまりに商業主義じみた展開にヘドが出そうだったが、見てみると存外面白い)

暦(主人公のキズタカくん(CV.加藤英美里)とりすかちゃん(CV.花澤香菜)がかわいい。ハートキャッチプリキュアが終わってしまった今、この作品に僕は大いに期待している)

暦(監督は極彩色の映像表現に定評のある心房という人で――)

月火「お兄ちゃん」

月火「さっきさ、私、おばけみちゃったかもしれない」

暦「おばけ? シャワー浴びてたら体を誰かに触られたとか?」

暦(僕が言うのもあれだが、毎回シャワーを浴びていると視線を感じる。『見られてる』って思ったときは本当に見られてるらしいな)

月火「まさか。お兄ちゃんはさっきまで部屋にいたんでしょ」

暦「それはどういう意味だ」

月火「え? だって、姉妹がいる男の人って、その子がお風呂入ってる隙に、下着に好き放題しているんでしょ?」

暦「妹の下着なんかどうでもいいよ!」

月火「ほう? 私の純白ぱんちーがどうでもいいと? 『あふっ、ぬひっ、妹のおぱんちゅ、最高っ!』と嗅ぎたくなる衝動に駆られないと?」

暦「それはもう兄貴しまゃないっ! 犯罪者だっ!」

月火「しらばっくれないでよ! さっき新しいやつ穿いたらねちょねちょしてたんだからねっ!」

暦「体はタオルでよく拭けといつも言ってるだろう!」

月火「妊娠確実っ!」

暦「頭の病院に行ってこいっ!」

月火「閑話休題。で、おばけ、ですよ」

暦「おばけ、か(どうせ僕(ボディ)だろうな)」

月火「お風呂から出た後のことなの。体を拭いてたら、廊下の方から足音が聴こえたもんだから、『ああ、お兄ちゃんだな』ってそっちを見たのですよ」

暦「お前、何回か死んどけよ」

月火「何回も生き返ってやるよ。でね、廊下の方を見たの。そしたら――レインコートを被った人みたいのが、いたの」

暦「……」

月火「私、さすがにびっくりして、小さいけど悲鳴を出しちゃったの。そしたら――そいつが、こっちに振り返ったの」

暦「……」

月火「顔はフードですっかり隠れてたけど、ザクみたいに目がピカーンって光ってた。あと目立つ特徴は、左手に包帯を巻いてたみたいだった……」

暦「……」

月火「そいつ、しばらく私をジッと見てから、なぜか自分の顔を気を引き締めるみたいなぱんって叩いて――玄関から出て行ったの」

月火「ねえ、大丈夫かな、この家。お祓いとかしてもらったほうがいいんじゃないかな」

暦「それ以前に、まず家宅侵入の線はないのか。ていうか、ちょっとそこ動くなよ」

月火「目の前の私をおかずにするの?」

暦「ブラックジャックに頭診てもらえよお前!」

月火「今さらなんだけど、なんでお兄ちゃん不細工なBJ先生みたいになってるの?」

暦「本当に今さらだな! お前のスルー力にビックリだよ! いや、いいからそこ動くなよ!」

月火「はーい」

月火「速かったね」

暦「僕の下着が数点なくなっている」

月火「自分で使ってダメにしちゃったの? ナルシストもいいところなんだよ。お兄ちゃん、倒錯してるなぁ」

暦「何が悲しくて自分をネタにするんだよ! なんで僕は妹と自慰の話をしてるんだ!」

月火「バンバンジーってすごそうだよね。バンバン自慰」

暦「うるせえよ!」

月火「チンパンジーかも」

暦「ん?」

月火「チンコとパンツで自慰。お兄ちゃんだね」

暦「そこまでいくか!? お前みたいなやつがガールズトークで下ネタばっかり話すんだよ!!」

暦「お前も後でタンスを確認しておけ」

月火「さっきから、そのおばけを知ってるみたいな素振りだね」

暦「ああ、とんでもない変態に一人心当たりがある」

月火「お兄ちゃんの変態仲間?」

暦「僕をあの変態と一緒にするな!」

月火「でも、よかったよ。彼女が出来た今となっては順序が逆のような気もするけど。友達、出来たんだね。月火ちゃんは嬉しいよ」

暦「そんなこの全宇宙の母(マザー)のような慈愛の表情をするな。羽川知ってるだろ?」

月火「あの人は神様だから」

暦「……」

暦(そうかぁ、神様かぁ)

暦(月火が言うんじゃあ、そうなんだろうなぁ)

月火「あーっ!」

暦「なんだ?」

月火「『りすかちゃん』がもうEDになっちゃってる! もう、お兄ちゃんのせいで本編見逃しちゃったじゃん!」

暦(テレビは既にEDテーマ、『これからのまとめ』が流れていた。歌詞の内容が原作の今後の展開を詳細に述べているという、信じられない鬼畜電波ソングだ)

暦(当初、視聴者は誰もがこれを釣りだと思っていたが、刊行された原作はまさに歌詞の文字通りの展開であった。当然、多くの賛否両論を呼び、そのせいか原作小説は現在ストップしている)

暦「でもよ、HDに録画してるんだろ」

月火「アニメはリアルタイムにこそ真髄を見る」

暦「リアルタイム、ねえ。ハートキャッチプリキュアが終わってから、日曜日は遅おきになってしまった。別にスイートに文句があるわけじゃないんだけど」

月火「ふんっ、脱落者はただ堕落するのみよ」

暦(と、強面ボスキャラみたいなことを言う月火)

月火「私はちゃんと新シリーズも毎週欠かさず見てるし、BDという投資も忘れてないよっ!」

暦「テレビはともかく、BDは嘘だろ」

月火「……はい」

月火「いや、本当は買いたいんだよ? 家のHDも録り貯めでパンパンだし、昨今の厳しい状況を必死に耐えていいものを作っている製作陣にお金が入るようにしたいし」

月火「でもさ、私は中学生だし、持てるお金も少ないし、見てるアニメのグッズ全部を買うのはさすかに無理なんだよ……」

暦(本当に凹だ表情をする月火)

月火「今やってる某魔法少女アニメも、すごい面白いし、きっとBDも売れるよね。『りすかちゃん』はあれに対抗できる潜在能力を秘めたコンテンツなのに。最近、作画も演出も落ちてきてるんだよね……」

暦「スケジュールとお金の工面も大事だからなあ」

月火「私は『りすかちゃん』派に立つね! 打倒魔法少女○○○☆○○○!」

暦「おい、あまりこの場で迂闊な発言をするな。誤解されて、妙な事態になっても困る」

月火「やっちまえ心房ー! ○房なんかぶっ飛ばせー!」

暦「新○監督の耳に入ったら事じゃないか! もうよせっ、月火ちゃんっ!」

月火「アニメ化を果たすまでは死ねないのがりすかなのーっ!!」

暦(ここまで倒錯に盗作を重ねた問答を続けてきたが、もういい加減寝る時間だ。深夜アニメも終わったことだし)

暦「月火ちゃんもはやく寝ろよー」

月火「んー」

暦(やれやれ。僕は就寝した。と言いたいところだが、寝るには僕の部屋に戻る必要がある)

暦(神原のやつ、明日電話で問い詰めてやらんとな。まあ、多少渋るかもしれないが、どんな手段を使っても吐かせてやる。ついでに僕のパンツも)

暦(あー、ふかふかベッドが気持ちいいなー)

月火「おやすみー」

暦「おやすみー、ってなんでお前同じベッドに入るんだよ!!」

月火「妹が兄のベッドで寝てはいけないのカナ?」

暦「『兄のベッドで寝る』のは構わんが、『兄とベッドで寝る』のは構う」

月火「もー、お兄ちゃん、妹に何かするつもりなのカナ」

暦「お前のアホ毛が『マホ』って字に見えてきた。疲れてるな、僕。今日はなんかすごくすごくすごく長かったし」

月火「じゃあ、おやすみ~」

暦「いや、お前は部屋に帰れ」

月火「えー! なんでなんでー! 一緒に寝ーよーおーよー!」

暦「駄々こねてもダメ」

月火「ダ~ダ~」

暦「ダダになってもダメ」

月火「へえ、あんたも阿良々木っていうんだ」

暦「ナナになってもダメ」

月火「いや、あのね、本当、我ながら子供っぽいと思うんだけど。さっきのおばけ云々、実はマジびびってたんすよ」

暦「ふーん」

月火「心底どうでもよさそうっすね、兄上様……。あと、他にもちょっとモヤモヤしてて不安なんだよ」

暦「ふーん」

月火「もうっ! かわいい妹が恐怖に怯えてるんだよ!? 一緒に寝てくれたっていいじゃない!」

暦「基本的にこの家で一番怖いのはお前だと僕は思っている」

月火「じゃ、じゃあ、くち! くちでしてあげるからっ!」

暦「今火憐ちゃんより頭悪いことを口走ったな!? 参謀役の肩書きが泣くぞ!」

月火「お兄ちゃんの欲望を私の口に走らせてもいいからさー! お願いー!」

暦(馬鹿だ。妹達共に馬鹿なことが判明した。誰かにファイヤーシスターズ(笑)などと嘲笑されていないか心配になってきた)

暦「何なんだよ、不安って。その村上隆みたいな胸のことか?」

月火「誰がスーパーフラットだ。あと村上隆はド巨乳だよ」

暦「カニエ・ウェストも『お前の描くおっぱいは最高だ』と言ったらしいな。あまり洗練された人間の発言じゃあないな」

月火「カニエのおっぱいとかはどうでもいいの! 問題は私のおっぱいだよ!」

暦「え、そうなの?」

月火「お兄ちゃんに何度触られても変わんないし。あの都市伝説はやっぱりデマだね。もう今日から私はビッチになるよ! いくらでも揉むがいいさ!」

暦「それこそ、カニエに頼め。ほら、あの着ぐるみプレイとか楽しそうだぞ~」

月火「TAGRO先生が描いてたけど、あれ怖すぎだよ」

暦「カニエもさ、あれだけオタクアピールしてるんだし、『あの方』がそろそろスタンドで登場させないかな」

月火「やっぱりビジュアルは熊なのかな?」

暦「『大学中退(カレッジ・ドロップアウト)』ッッ!!」

月火「能力弱そう~」

暦「『遅延登録(レイト・レジストレーション)』ッッ!!」

月火「あまり戦闘向きじゃなさそうだね」

暦「これは編集が落とすかもなぁ……」

月火「まあまあ。強面だけど補助役のアバッキオもいるし、カニエもそうすればいいんじゃない? 本人のアルバムよりプロデュースしたアルバムの方がいいしさ」

暦「辛口だなー」

暦「話が断線した……じゃない、脱線した」

月火「むしろ拡張してたね」

暦「月火ちゃん、どうしてもここで寝たいのか?」

月火「イエス」

暦「おっぱい触りすぎるかもしれないぞ?」

月火「ウイ」

暦「火憐ちゃんと寝れば?」

月火「ナイン」

暦「じゃあ、火憐ちゃんも一緒に三人で寝るのはどうだ? それなら前にもやったろ?」

暦(火憐は誘えばホイホイ来るだろう)

月火「……」

暦(あれ、これはすぐに首を縦に振るかと思ったんだけどな)

月火「うーん……まあ、ここで手を打つべき、なのかな? うん、そんじゃあ、それでいいよ。ったく、お兄ちゃん、決断遅いよ」

暦「あ、はい。すみません」

月火「もー。もっときびきびするのっ。そんなんだから草食系男子とか多分に誤解を含むカテゴライズされちゃうんだよ」

暦「はぁ……」

暦(解せぬ……)

めしめしめしめしめしめしめしめしじめじめめしめしめしめし

暦(というわけで。阿良々木暦の長い一日がようやく終わろうとしている――)

火憐「この間さー、すげーリアルな夢見たんだ。あたしが部屋で寝てるとアダムスキー型のUFOが窓の外を飛んでるわけ。窓のすぐそこ、もう超至近距離、幼馴染みかてめーはってくらいの距離感だったんだけどさ」

火憐「そのUFOが未知との遭遇ばりに青白い光をぶわーってしてて、うおっ、まぶしっ! ってあたしは起き上がったのな」

火憐「でさ、『やべーUFOじゃん。あたし誘拐されちゃう』って思ったんだ。普通、思うだろ?」

火憐「けど、なーんもしてこないんだわ。窓一面にゴオオォォって現れては過ぎ、現れては過ぎ。そればっか繰り返すわけ」

火憐「あたし、その時は現実だと思ってたんだけどさ。部屋の景色はまったくいつも通りだったし」

火憐「んで、とにかく何もしてこねーのにしつこいくらい、いや、うんざりするほど自己アピールだけしてくるもんだからさ」

火憐「うっぜー!! 地球人と仲良くしたきゃネルフを通せー!!」

火憐「って言ったんだ」

火憐「次に目覚めたら、朝だった。バッチリパッチリやっぱり朝だった。これって、何か意味がある夢のかな?」

暦(――――すっげー、どうでもいい)

月火「うーん、今の火憐ちゃんの夢の話は、『本当に夢だったのか?』ってとこがポイントだよね」

暦「お前らー、頼むからはやく寝ろー」

暦(僕の右に火憐、左に月火で、兄妹三人川の字ならぬ文字通りすし詰め状態でベッドに横になっていた)

暦「もう電気消したんだぞー」

火憐「おいおい、夜はこれからだぜ、兄ちゃん」

月火「そうだよ、夜は長いよ、お兄ちゃん」

暦「修学旅行じゃないぞ馬鹿どもー」

暦(そう――修学旅行の消灯後のように妹(バカ)たちはハイテンションになっていた)

暦(おまけに深夜だから忍も影の中でザワザワしてるし。この選択は完全に失敗だった)

暦(どうでもいいけど――本当にどうでもいいけど――僕は修学旅行で深夜、友達と暴露大会に加わったことなど一度もない)

暦(睡眠に努めながら、名前も覚えてない男子が顔もわからない女子を毎晩使っているとか、そういう話を聞く羽目になっただけで良い思い出なんか一つもない)

火憐「でさ、月火ちゃん、『本当に夢だったのか?』とは」

月火「だから、火憐ちゃんがUFOを見たのは現実だったかもしれないって話だよ」

火憐「えー、そうかなー。あたしは夢だったと思うんだけど」

月火「だって、火憐ちゃん、初め現実だと思ってたって言ったじゃん。それに部屋もそっくりそのままだったんでしょ。これは夢だと判断するのは早計じゃないかな」

火憐「うーん、そう……だったのかなぁ。兄ちゃんはどう思う?」

暦「兄ちゃんは夢だと思う」

月火「夢がないね」

火憐「ん? 夢だと夢がないのか? あれ?」

月火「一転してメタ的な問題になってきたね。私は本当は保育器の中で夢を見続けている!」

暦「兄ちゃんはお前らバカだと思う」

火憐「そっ、そうなのか月火ちゃん!? え、あたし、夢?」

月火「そうだよ、マトリックスだよ、管理社会だよ」

暦「兄ちゃんはバクだと思う」

火憐「そういえば、マトリックスってカンフーしか覚えてないけど、なんか怖い話だったかもなー」

月火「本当はニューロマンサーが映画化されるはずだったらしいね。たまについに製作!とか聞くけどどうなったんだろ? ハリウッドエヴァも潰れちゃったし」

火憐「ハリウッドエヴァは見たくないな」

暦「いいじゃないか、破があったから」

火憐「おお、食いついてきた」

暦「序は僕、微妙だったんだけど、破で真希波が出てきて評価が一変したね。真希波最高。真希波万歳」

月火「お兄ちゃんが真希波好きなのは、羽川さんとダブるからでしょ」

暦「何?」

火憐「あー! メガネっ娘!」

月火「おまけに巨乳! あとニーソックスとか「にゃあ」って語尾とかああうぜー! 媚びてんじゃねえよ!」

暦「真希波ディスは聞き捨てならん! お前の好きなトウジとか降板じゃん!」

月火「かっちーん。トウジくんは旧劇よりも受けキャラとして特化してるんですー。ポッと出の萌えキャラ(笑)とは厚みが違うんですー」

暦「萌えキャラじゃない! 断じて萌えキャラじゃないぞ! ようやくエヴァにも愛らしい馬鹿キャラ(微笑)が登場したんだよ!」

月火「馬鹿キャラ(暗黒微笑)」

暦「犯すぞお前っ!!」

月火「『オカズぞお前っ!!』の間違いでしょ! あー気持ち悪い!」

火憐「あたし、本田雄作画見れればそれでいーや」

月火「ふー、エヴァはつい熱くなっちゃうね。語れば語るほど現実に帰れなくなりそうなんだよ」

暦「いや、だから真希波はー」

火憐「いや、もういいって、兄ちゃん。ぶっちゃけ引くわ」

暦「ぶっちゃけ真希波とやりたいです」

火憐「スレタイはっ!?」

暦「どこの誰が立てたかもわからんスレタイなんか知ったことか。僕は真希波と――」

火憐「うわぁ……。月火ちゃん、何かキツいの一発かましてやれ」

月火「帰れ!」

火憐「……あんまり、似てないな」

月火「ごめん……思いの外、似てなかったね」

月火「真面目な話さ、お兄ちゃんも、火憐ちゃんも、『あれ、今の現実?』みたいなときない?」

暦「真希波が夢に出たときは『やった! これ現実!』と思った。夢だったけど」

火憐「んー、兄ちゃんに負けたときかな」

暦「あ、そうなん?」

火憐「うん。あたしの中じゃでかいことだったんだぜ」

月火「私はお兄ちゃんにファーストキス奪われたときとか」

火憐「なに!? 月火ちゃんもか! あたしもだよ! 訂正訂正! あたしの『あれ? 今の現実?』第一位は兄ちゃんによるファーストキス強奪だっ!!」

月火「そこんとこ、あんたどうなんどす?」

暦「うるさい黙れ口を開くな小娘ども。この僕が何か悪いことでもしたというのか?」

月火「開き直った!?」

火憐「あたしよりチビのくせに小娘とはなんだ!?」

月火「火憐ちゃん、そこマジギレするとこ?」

月火「話を進めたいからお兄ちゃんの尋問は後回し。たまにさ、『うわっ、なにこれ超いてええーっ!』と思ったのに、何のケガもないときとかない?」

暦「……」

火憐「よくあるよくある。兄ちゃん見てるときとか」

暦「ファイヤーシスターズ(笑)に言われたくねえよ!」

火憐「あっ、この兄貴言ってはならんことを!」

月火「うるさーい。もう、火憐ちゃん、マジでお願いしますよ」

火憐「えぇー……うーん、蚊に刺されてるの見て気づいたら、かゆくなってくるとか。これは違うか?」

月火「それは蚊に刺されてかゆくなったから気づいたんじゃないかな。そういうことがあるのかもしれないけど」

暦「月火ちゃんが言いたいのはこういうことだろ。『重いドアに指を挟んだ。骨が折れたかと思ったけど、なんともなかった』」

月火「そう! それ、私が欲しかったジャスト答えだよ! お兄ちゃん、冴えてるゥ~」

火憐「むう」

暦「まあ、つまり勘違いだろ。火憐ちゃんなんか体頑丈だし、ストレッチもやるから筋肉が変に緊張して凝ったりすることもない。どちらかといえば体育会系以外の話だな、これは」

火憐「ん? もしかして誉められた? なんかわかんないけどいい気分だぜ!」

暦(フォローしてやったんだよ、アホ。話が微妙すぎるからな)

月火「ほら、無痛症ってあるじゃん。痛みの情報が脳に伝わらないから、本人が自分が受けてる身体的ダメージを自覚できないってやつ」

月火「あの症状の子供が飛び降り癖がついたりするんだって。痛いのがわかんないから、全身骨折するのにも関わらず、高い所から飛び降りちゃうらしいよ」

月火「これも、一種の勘違いだよね。自分がスーパーマンになったつもりで空を飛んでも――人間は重力に従って落下するだけ」

火憐「奈須きのこにそんな話あったなー」

暦「――それで? その話が何にどうつながるんだ?」

月火「ここまでが参考例、ここからは私の話――――小さいころ、高いところから落ちたことがあるの」

火憐「あー、あったあった! すげえ大怪我になったやつ。よかったなー、傷きれいに消えて」

月火「うーん、あれとはまた別に落下事故っちゃった――気がするんだよね」

火憐「ふーん、どれくらいから落ちたんだ?」

月火「十階くらいだったのかなー」

火憐「じゅ、十階!? さすがのあたしも無傷とはいかないぜそれは! えーっ、そんなことあったっけぇ?」

月火「誰にも言ったことないし、あれは火憐ちゃんじゃないけど夢だったんじゃないかと思ってるから」

暦「どういうことなんだ?」

月火「小学校には上がってた――のかな? 珍しく火憐ちゃんか友達と鬼ごっこでもしてたのか、外をうろうろしてたんだよ。私一人」

月火「気づいたら、知らないビルの屋上に来てて、まあ、子供って階段とか登るの好きでしょ、たぶん誰かを探しにきたんだね」

月火「最近は落下事故や自殺を防止するためにフェンスが設けられてる屋上多いけど、そこは塀の背がすごく低かったの」

月火「そこ、辺りじゃ一番大きいビルだったみたいで、もうそこから上は空しか見えないわけ。天気はちょっと覚えてない。でも、雨は降ってなかったはずだよ」

月火「しばらくぼーっとして、ふと下を覗いてみたくなったんだよね」

月火「本能的には怖いってわかるんだけどさ、好奇心がその時は勝っちゃったみたい」

月火「それで、低い塀のところまで行って、四つん這いになって下を覗いたの」

月火「見下ろした先は何もなくて――裸の空き地があるだけだった。土管はなかったけど、ドラえもんに出てくるみたいなやつ」

月火「そんなの見てもつまんないはずなのに、なあんかじーっと見てたんだよね」

月火「見てるうちに、何もない空き地にも、雑草や、大小の石ころや、砂の波打ちとかがあることに気づいたんだ。それから……」

月火「段々、空き地の真ん中に、ぐるぐる渦巻きみたいのが見えてきたんだよね。水桶の栓を抜くと渦ができるでしょ? あんな感じ。ゆっくりだけどね」

月火「その渦を見てると、体を支えてる腕が震え出したの」

月火「ちなみにそこの塀は、当時10歳にもならない私の膝より下までしかなかった。今考えたら危なすぎて笑っちゃうね」

月火「怖くなったよ。『はやく離れなきゃ、はやく離れなきゃ』って思って、その場を去ろうとした。でも、四つん這いの姿勢から動けず、ぶるぶる震えてるだけだった」

月火「そして、右腕を宙へ滑らせて――――落ちたよ」

暦「……」

火憐「……」

月火「――月火はしんでしまった。リプレイしますか?」

暦「教会にっ!! はやく教会に連れていくんだーっ!!」

火憐「うおおーっ!! 待ってろ月火ちゃーん!! すぐにふっかつのじゅもんをーっ!!」

月火「棺桶ないからって無印良品の衣装ケースに積めんなっ! ぎゃ、ちょっと、火憐ちゃん痛い痛い痛い!! 生きてます生きてます!! 月火ちゃん生きてます!!」

~~~

火憐「ほ、本当に大丈夫なのか……? な、なんか後遺症とか……」

月火「だから、この話は夢かもしれないんだってば。あんな高さから落ちてたら、私今お墓入っちゃってるよ」

暦「落ちたあとはあるのか?」

月火「んー、まあ、短いけど、一応。聞きたい?」

コーン風呂スト

快楽天はとろしおがよかたです

月火「気づいたら、空き地に倒れてた」

月火「はっとなって自分が落っこちたのを思い出した。自分がどこかケガしてないかすぐに確認したけど、服が汚れてるだけだった」

月火「ビルを見上げて、自分がいたあたりを探したんだけど、なんかさっきと違うんだよね。『塀が高くなってた』の」

月火「私はそこからダッシュで逃げた。実際は見た位置のせいだったんだろうけど、それにしたって不気味だった。なんていうのかな、触れちゃいけないところに触れちゃった感じ」

月火「家までずっと走って……お兄ちゃんが『おかえり』って言うの聞いたときは心底ホッとしたよ。もう恐怖で悪い妄想しまくりだったからさ。帰ったら家族が誰もいないとかね」

月火「その後は火憐ちゃんが帰ってきて、パパとママも帰ってきて、夕御飯食べて、お風呂入って、寝た。おしまい」

暦「……」

火憐「……」

月火「次の日があまりにもいつも通りだから、あれはやっぱり夢だったんだと思ったよ。夢にしては長すぎるしディテールがあるけど。悪夢っていうのが一番しっくりくるかな」

暦(僕は知っている。月火の話が夢ではなく、ましてや悪夢でもない、現実の出来事だと)

暦(10年近く前――いつの間にか外出し、帰ってきた月火を出迎えると、顔を真っ青にし、ただ口を開けているという有り様)

暦(夕食でも月火は一言も口をきかず、ただ黙々と食べた。何を聞いても答えず、加えて顔色もまだ悪いときたので、両親が病院に連れて行くか検討したほどだ)

暦(この『夜間に病院に連れて行くか否か』という緊急事態は、幼心に大きなインパクトとなり、今に至るに僕はこの時のことをよく覚えているのである)

火憐「へーっ、サイコホラーみてえ。あたしのUFOの夢の話とそっくりだな」

月火「火憐ちゃんのはSFでしょ。まあ、なんでこんなこと話したかっていうと、さっき心霊体験(?)をしたせいか、色々怖いこと考えちゃってさ」

火憐「あー、なんだっけ、プラシーボ効果?」

月火「ちょっと違うような」

暦「……」

暦(あー……夜の便所って寒い)

暦「忍」

忍「なんじゃ。小便の手伝いはせんぞ」

暦「違うよ。聞いてただろ、さっきの話。月火が言ってた――ビルと空き地。何かあると思うか?」

忍「お前様の妹御が言うなら真実なのじゃろうな」

暦「一体何なんだ? 北白蛇神社みたいなやつか」

忍「話を聞く限りではあそこと同じような溜まり場のようじゃが……いや、何か意図というか仕掛けのようなものを感じるの」

暦「罠、ってことか」

忍「落とし穴、いや、蟻地獄のようなものか。獲物を見つけたら穴まで誘い……底へ落とす」

暦「溜まり場がそれこそ月火の言う渦を巻いて、それに引き寄せられるのかな。それとも誰かが張った罠か?」

忍「いや、やはり怪異なのかもしれん。蟻地獄のような、な。妹御が言っておったじゃろ、『形が変わっていた』と。意思を持った何かがいるという証拠じゃ」

暦「どうにかしたほうがいいのかな」

忍「儂はあまり気が進まんがの。どうしてお前様はわざわざ面倒に首を突っ込む。10年前の話、そのうえ、どこにあるかもわからぬぞ」

暦「でも、あの神社だって長い間力場になってるんだ。まだどこかにあるかもしれないじゃないか」

忍「神社の話を照らし合わせれば、既にアロハ小僧が片付けた可能性だってある」

暦「お前にしては消極的だな」

忍「さっきの話――正直、儂は耳を塞ぎたくなった」

暦「えー。お前怪異の王とか言われてんだぞ。何を怖がるんだよ」

忍「王とて、恐怖はある。というより、生理的嫌悪感じゃな。なんか、イヤ」

暦「なんかイヤって……」

忍「今、わかったんじゃが黒沢清の映画みたいな感じがしてイヤなんじゃな。儂、あの監督苦手」

暦「とうとう邦画に手を出したか……てか、いつ見てるの?」

忍『とにかく、うかつに近づくと地雷を踏んでサヨウナラ、じゃぞ』


暦「小腹がすいた。なんか冷蔵庫ないかな」

月火「む」

暦「むってなんだ、むって」

月火「別に? いっぱい喋ったから喉渇いちゃった」

暦(水をごくごく飲む月火。きっとりすかちゃんみたいに水分補給が大事なのだろう)

暦「お、さけるチーズだ。これいただか」

暦(これ、楽しいよね。ふふ、ふ)

月火「ちょっとちょうだいよ」

暦「ノー」

月火「ひとつまみちょうだいよ」

暦「ノン」

月火「一橋東大よ」

暦「ナイn……あ? 今のはわからない」

暦(お互い、深夜に変なテンションになっているようだ)

暦「火憐ちゃんは?」

月火「もう寝ちゃった」

暦「ベッドを占領されてないといいが……」

月火「お兄ちゃん、私も一緒に寝ていいよね?」

暦「は? そう決まったんじゃないのか?」

月火「うんにゃ。確認しただけ。よこせよチーズ」

暦「アンアン!」

月火「チーズはそんな神さまみたいな声じゃない」

暦「よォ、オレっち、エディ・マーフィー!」

月火「キャラが把握出来てない」

暦「怖かろう、悔しかろう」

月火「普通に似てない」

暦「俺はここでチーズをさくことしかできない」

月火「私の加持さんを汚すな」

月火「さっきの話さ」

暦「んー?」

月火「本当は別に心霊体験とかどうでもよくて、私、なんか自分が怖くなっちゃった」

月火「本当はあの日、死んでたりして。だとしたら今見てるのは夢なのかな。10年って長い夢だなぁ」

暦「夢十夜じゃ足りないな」

月火「漱石はカプ多くて楽しいよねー」

暦「お兄ちゃんはあまり『こころ』をゲイ小説と読む話とかしたくない……」

月火「じゃあ、文学キャラで萌えるのは?」

暦「えー……そんなの別にいないけどさぁ」


暦「サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』に出てくるフィービーは萌えるよな。『ホールデン!』って抱きつくシーンとかたまんないし。お兄ちゃんが帰ってくるなり、すごいおしゃべりなのもかわいい」
「『何の映画見たでしょーか?』とかげっぷしてるとことか。『パパに殺されちゃうんだから』ってのもいいなー」
「でさ、家出するとなると、ついてくるって言うの。もう、これがほんっとかわいい――」

月火「キモすぎる」

月火「お兄ちゃん、フィーブはホールデンの妹だよ? え、やだやだ、もしかして私達のこともそういう目で見てるの?」

暦「リアルの妹とか興味ないし、僕、二次元のシスコンだから。もう『フィービー』の文字だけで萌える」

月火「それはもう二次元とかの問題じゃない」

暦「起きてくれ、フィービー」

月火「は?」

暦「そんなに大きな声を出すなよ。いま帰ったばかしさ」

月火「え、なんか始まってんの?」

暦「ああ、フィーブ。会いたかったよこのこの。もう会えないんじゃないかって気が気じゃなくって。もっと触らせて抱かせて舐めさせて」

月火「そんな台詞あった!? もしかして噂の春樹訳!?」

暦「あーねみー。そろそろ寝るぞ」

月火「お兄ちゃん」

暦「なに」

月火「私、ちゃんと生きてる? 幽霊とかじゃないよね? 実はサイボーグ、とかもないよね?」

暦「バーカ」

月火「えっ」

暦(実は死んでる、ってそれは僕の台詞だよ)

暦「お前は婆さんになるまで長生きして、家族に囲まれて死ぬんだよ。僕が保証してやる」

月火「婆さんって……プラチナむかつく」

暦「おら、寝るぞ。たれぱんだ」

月火「お兄ちゃん」

月火「ホールデンはフィービーに嘘はつかないんだよ」

月火「ちゃんと、最後にはそばにいてよね」

暦「……はいはい。任せとけって」


むり

                             \
                 _ .. -──- .._  ) 〉
                「」'´        `ヽノ            /     _ .. -──- .. _
           r‐(())/   `'´ |  `ヽ. \        〈 (   .ィ´         `ヽ.
         /:_::ノ ./    i.  |   、 丶 :.、__,      ヽ'´ /         `ヽ::. .ハ_
.        / ::ヽ._ノ .:/ 、/| il:  |\,. i   、:.__ノ        .′/  ,'  :|i   |i    ハ::( ())
       / <._,ノj/\|ノ|:  |/_ヽト、._..>         i :l   |i  :|i   || |l i ::l:: |_」l
        l /:.:/ { ハ| ━┳ ゛jノjノ'┳━ |r}′          | :|_」|_,ハ_,ハ__|l__l|_:|::  |
         | i: ::| ヽ_l xxx    ,   xxx jノ           | :::ハ ━┳`   ´┳━ l::.   |
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    O  |ノ :::::ノ .__ノ-‐'>r--r<ー-ゝ._ .ハ_        o| :/´  r─'-─‐‐-`ーr `ヽ:: |O
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.       ノ .//  / ,.イ: \ l<::ィ:i::>l / ,〈   〉:〉       / / |::::l'´\\  // |::::|. \ \
     /.:::〈〈   " /|::|:.  `|、ニハニ,|'   |::l}. "l::l       / /- l::::|′ \//   |::::|:.. 丶.._)
.    〈::〈 ̄ \__,ノ |::|"  ノ:::... i...::|   ゛|::||  |::|    〈_.ノ::::/|:::::>.  //    <:::::>  |:::::||
     ヽ:\       〉}  〈::::  | :l  ,/:/ヽ.__,ソ      ||:::: :/ .∨l:..//      j∨   |:::'/
.       ̄       〈〈   ヽ:. | ノ  〈::{           |ヽ:/  ..:::| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |:..   |::/


暦(次の日、学校が終わってから神原の家に向かった。アポを取ろうかと思ったが、あいつの時間の使い方はBL小説を読むなど、インドア率が高い)

暦(そして、案の定、神原は在宅だった)

駿河「やあやあ。これはこれは阿良々木先輩、我が家を訪ねてくれるとは、町内を走り回って大声で叫びたくなるほど嬉しいぞ」

駿河「私はこれから本日発売の新刊百合小説を買いに、書店に出かけようと思っていたのだが、阿良々木先輩が足を運んでくれたとなればこちらは後回しだ」

駿河「ちなみに、今日が何の日だか阿良々木先輩は覚えておられるかな? 3月3日、雛祭り。今日は全国的に女の子の日だ。だから、百合小説が発売される、というわけなのだ」

駿河「おっと、女の子の日、だからと言って日本中の女性陣が月のものであるわけではないぞ。私は今日は新しい勝負下着を着用している。色は赤だ」

駿河「しかし、阿良々木先輩が来るとは予想だにしていなかったが、うん、これは好都合。なんともいい塩梅だな」

駿河「さあ、阿良々木先輩の思いの丈を、私の真っ赤なパンツを通してぶつけてくるがいい!」

暦「挨拶が長いっ!」

暦「僕は今日、お前に訊きたいことがあって来た」

駿河「他の勝負下着の色か? 他は白、黒、紫――」

暦「勝負下着のヴァリエーションなんてどうでもいいんだよ! それ以前に、そんなものをお前が必要とする事態になってるなんて聞いてないぞ!?」

駿河「何を言っている。年頃の乙女は万端の準備を整え、毎日を過ごしている。これくらい当然だ」

暦「そ、そうなのか? うーむ、女子のコモンセンスを理解するのは至難だ」

暦(月火も下着にはこだわりがあったしなあ)

暦「そうか、神原、もし彼氏ができたら僕に紹介してくれよな」

駿河「ん? んんっ、んー、彼氏……男……とは限らないかも」

暦(と、僕の発言に弱冠の戸惑いを見せる神原。なんだろう、男じゃなかったらなんなのだろう)

駿河「しかし、酷なことを言ってくれる。私は阿良々木先輩のものだというのに」

暦「あまりそういうことを大っぴらに言うなよ。僕だって煩悩に揺れる男子高校生なんだからな」

駿河「だから私の赤い下着をぶち破って――」

暦「阿良々木先輩が注意してるのはそういうところなんです!」

駿河「女の子の日に、女性になるというのもロマンチックではないか」

暦「流れにロマンがねえよ」

駿河「遠慮することはないぞ。私は、今日は安全日、だからな。大船に乗るつもりで、私に乗るといい」

暦「僕の人生が沈没しちゃう!!」

駿河「沈没とは失礼だぞ。私は女の子だぞ。傷ついてしまうぞ」

暦「だからなんでそこまで僕に身を投げ出せるんだ?」

駿河「言っただろう。私は阿良々木先輩のものなのだと。ファラオにとっての奴隷、言うことには絶対服従、目の前には不変のピラミッド構造ができている」

暦「僕が天辺だってのか? それはヨイショしすぎじゃないか?」

暦(まあ、悪い気はしないけど)

駿河「何を仰る。私が言うからにはそうなのだ。まあ、微妙に戦場ヶ原先輩がその上にいるのだが」

暦「あ、ガハラさんは最上位なんだ……」

暦(なんか、犬とかが家庭内ヒエラルキーを見破ってるみたいな感じがする……)

暦「いい加減、目的を忘れてしまいそうだ」

駿河「ああ、何か訊きたいことがあるのだったな。すまない、玄関で長々と。中へあがってくれ」

暦(そのまま神原の部屋まで誘導されるぼく。途中、いくつか部屋の前を通ったが、神原の祖父母は――今日は見当たらない)

暦(少しほっとした。神原の、特にお祖母さんは決して悪い人ではないが、こいつと一緒にいると、どうもギャップの開きが大きくて)

駿河「さあ、どうぞ」

暦「……一昨日、片付けたのに」

暦(とっちらかった部屋だ。今日は多少足の踏み場が見えるだけましか)

暦「ん、デジカメか。そういえば買ったんだったな」

駿河「ああ。最近なかなかうまく撮れるようになってきたんだ。楽しい」

暦「ほー。多趣味なのには感服するぜ。そういや、お前もだいぶ髪が伸びたし、なんか流行りのカメラ女子って感じだ」

駿河「私はあまり、あのムーブメントは好きではないな。どうも安易にカメラ文化を消費しているような気がする」

暦「まあ、でも、サブカルみたいなもんだろ、あれは」

暦(僕もこれについて熱く語れるほどではない。せいぜい、鳴子ハナハルのカメラ女子が表紙の雑誌を持っているくらいだ)

駿河「私が一番リスペクトしているのは戦場カメラマンだ」

暦「ああ、今流行りの」

駿河「もちろん、今あちこちで引っ張りだこの彼に限らず、昔からの人達についても研究しているが、いや、頭が下がる思いだ」

暦「命懸けだしな」

駿河「ああ。真実をカメラに収めるために危険をいとわない、大変な仕事だ」

暦「実際、そういう仕事があるって考えると、この町なんか本当に平和だな」

駿河「だからこそ、尊い毎日だ。私はこれからこのかけがえのない日々をカメラで撮っていこうと思う」

暦(やっぱしっかりしてるところあるよなー。うんうん、ガンバル後輩を先輩は応援しています)

暦「今日散らかってるのも写真みたいだな」

駿河「ああ、阿良々木先輩が来るまで、撮り貯めたものを見ていた」

暦「へえー。どれどれ」

暦(……シャワーを浴びている、僕だ)

暦「おい、カメラ女子。この盗撮写真はなんだ」

駿河「ん、ああ、初めにそれを目につけたか。さすがは阿良々木先輩、御目が高い。それは一昨日撮ったものなのだが、私の最高傑作といっていい。特に阿良々木先輩のこのヒップが――」

暦「嬉しそうに説明すんなやっ! そうだよっ、今日これでお前ん家に来たんだよっ! 昨日の夜、不審人物の目撃情報があってなァ!」

駿河「私としたことがうかつだった……。ついつい、昨日は欲張ってしまい、逃げるタイミングに遅れた」

暦「おい、変態っ、いつからウチを被写体にしているか答えろっ!」

駿河「変態、か……ああっ、いいぞっ、気持ちいいっ! もっと言ってくれっ!」

暦「キモい!」

駿河「ふっふっ、いつから、と訊いたな。私がカメラを持てば何を最初に撮るかなど、容易に想像がつくだろう!私は夏以来、毎日がスペシャルだっ!」

暦「富野監督の言ってた通りだー! 馬鹿に技術を持たせちゃいけない!」

駿河「しかし、あれだな、阿良々木先輩も、お風呂場で『アレ』をするのだな」

暦「いやあああああああ!!」

駿河「さすがの私も、その場に居合わせた夜は心臓が潰れるかと思った。ふふ」

暦「今すぐっ、今すぐデータを消去しろっ!!」

駿河「ふざけるなっ!! 奇跡的にフィニッシュの撮影にも成功したのだぞ!? このようなお宝を消す愚か者がどこにいる!? いたらそいつは今すぐ私が撮り殺してやるっ!!」

暦「逆ギレかよっ!?」

駿河「しかし、昨晩は失態だった。目撃者を出してしまうとは」

暦「おい、まさか月火ちゃんの姿まで……」

駿河「月火ちゃん?――ああ! 阿良々木先輩のもう一人の妹君のことだな。月火ちゃん、月火ちゃんかぁ。かわいい名前だなぁ」

暦「し、しまった……」

暦(う、うかつッ! この変態にわざわざ情報を提供してしまうなんてッ)

駿河「そうかそうか。昨日の子猫ちゃんは月火ちゃんというのか。いやいや、火憐ちゃん同様、あちらもおいしそ……いや、いい被写体になってくれそうだったなぁ」

暦「火憐ちゃん、だと。ま、まさか火憐ちゃんは既に……。貴様っ、戦場カメラマンをリスペクトしているんじゃ、かけがえのない毎日をカメラに収めるんじゃなかったのか!?」

駿河「だからこうして、私は洗浄ハメラマンとして尊い毎日を撮っているのだ」

暦「洗浄ハメラマン!?」

駿河「将来的にはハメ撮りしたい。う~ん、ナイスですね~」

暦「村西とおるなんて若いやつはわかんないよっ!」

シャワー浴びてくるけど撮るなら今のうちですよ?

駿河「阿良々木先輩や妹ちゃんたちの姿をヨガる撮影できれば……もう、他に何もいらない」

暦「情感を込めて言うな! みゆきちボイスのせいでいい台詞みたいに聴こえちゃうじゃないか!」

駿河「あ、でも阿良々木先輩のパンツはやっぱりいる! ボクサーパンツとかも持っていたのだな! あの局部の辺りとか最高にイヤらしくて実にいいっ!」

暦「洗浄ハメラマンのうえに下着ドロだーっ!」

駿河「昨夜は使用済みを手に入れるため、室内に侵入せするという危険まで侵したが、阿良々木先輩に該当するパンツがなかった! お風呂は毎日入らなきゃ駄目じゃないかっ!」

暦「お前のために僕は風呂に入ってるんじゃねえよ!」

暦(ちなみに今朝ちゃんと入ったんだよ!)

暦「くそっ、この変態、変態すぎて勝てる気がしねえ……ッッ!」

駿河「キャラクターコメンタリーで口だけの変態と、あらぬ誤解を与えてしまったからな。これからの私は違うぞ。私は新星にして真性にして神聖の変態だっ!!」

暦「ならば! せめてこのカメラに収めたデータだけでも粉砕してやるーっ!」

駿河「ふぁはははッ! 無駄無駄、無駄無駄無駄! そこに収められたデータはすべてッ! 既にバックアップを取っているゥゥ!」

暦「絶望した! 残念すぎる後輩に絶望した!」

駿河「ハーッハッハッハッッッ!! 今頃、戦場ヶ原先輩もきっとお喜びになっているであろうッ!」

暦「せッ……戦場ヶ原ッ! だとォォォッッ!?」

駿河「戦場ヶ原先輩は言ったね! 阿良々木先輩の恥ずかしいところを撮ってこいと! パンツを盗ってもいいと……ベロベロなめてやるね! パンツをこのすばやい舌でなぁ」

駿河「へッへッへッ~ッ!」





もしもし打ちにくい

洗浄ハメラマンより、扇情ハメ愛人の方がいいとおもいましたまる

>>519
愛人(ラ•マン)か•••

暦「戦場ヶ原と言ったな! これは何もかもあいつの差し金なんだな!?」

駿河「ふんっ! 私を押さえつけてどうしようというのかな? 犯すのか! さあ、やれ! 私は口だけだったかもしれないが、これからは下の口だけの女になろうじゃあないか!!」

暦「ええい! 話にならん!」

駿河「きゃん!――ふ、ふふ、ふふふふっ! その調子だ、阿良々木先輩、私は乱暴なのが好きだ! ほら、はやく始めてくれ!」

暦「お前みたいな変態に誰が手を出すかっ! 僕はこれから黒幕を締め上げに行くんだっ!」

駿河「な……な、に……してくれないのか? ここまでしておいて、それはあんまりな仕打ちじゃないかっ!」

暦「知るかよっ! 何で僕が盛り上げたみたいな言い方なんだよっ!?」

駿河「私のいやらしい○○○に先輩の×××を入れてくださいっ! 私のいやらしい○○○に先輩の×××を入れてくださいっ! 私のいやらしい○○○に先輩の×××を入れてくださいっ!」

暦「離せーっ! 僕はガハラさんのところへ行くんだーーーーッッ!!!!」

駿河「あッ――――」

暦(僕は――神原の家を飛び出した)

駿河「私を見捨てたことッッ! 後悔させてやるぞーーーッッ!!」

あッー

暦(そして――――)

暦(戦場ヶ原宅で僕を待っていたのは――)

ひたぎ「いらっしゃい、阿良々木くん。待っていたわ。待ちに待っていたわ。さあ、はやく中へあがって」

ひたぎ「はぁ、とたんにこの部屋が阿良々木くんで満たされたわ。さっきまではそれはそれは殺風景、孤独で死にそうだったの私。今はうるおい100%、ぷるるん」

ひたぎ「もう安心ね。白馬の王子様、私のプリンスが来てくれたのだから。おっと、阿良々木くんは吸血鬼だったのよね」

ひたぎ「ねえ、吸血鬼と女の子の恋愛映画というのがあるらしいのだけれど、今度暇を見つけて観に行きましょうよ」

ひたぎ「いけない、まだお茶も出ていなかった。すぐに淹れてくるわね」

ひたぎ「受験勉強――阿良々木くん、最近は私が教えてあげなくても、自力で問題を解けるようになってきたわよね」

ひたぎ「ふふ、阿良々木くんは地頭がいいのだから、いずれ実力を発揮するのはわかっていたことよね」

ひたぎ「でも、うさぎみたいにぴょんぴょん跳ね回りたくなるくらい嬉しいわ。自慢の彼氏がいるって、なんて素敵なのかしら」

ひたぎ「あー、阿良々木くんのかっこよさについて考えていたら、なんだか落ち着かなくなってきた。ごめんなさいね、なんだかはしたないわね」

ひたぎ「でもね、私はいつだって、阿良々木くんのことを考えているの。考えて考えて考えて考えて考えて」

ひたぎ「考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて」

ひたぎ「考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて」

ひたぎ「考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて」

ひたぎ「考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて」

ひたぎ「考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて」

ひたぎ「考えて考えて考えて、熱が出そうなの。知恵熱ならぬ、阿良々木熱。アララギフィーバー。これ、新しい病気の発見じゃない? 恋、という病の」

ひたぎ「お待たせ。今、お茶がはいりました。まだ、とても熱いから気をつけてね。あ、私がふぅふぅして冷ましてあげましょうか?」

ひたぎ「え、いらない? そう……それは密かに心から残念だわ」

ひたぎ「ハガレンの映画始まったら、これも一緒に観に行きましょうね」

ひたぎ「正直、一から新シリーズを作り直したあの○○○という会社と及び関係各社には複雑な気持ちだけれど、ついつい見てしまっていたわ。ファン心理って怖いわね」

ひたぎ「あ、誤解しないでね。阿良々木くんとのデートに不躾なプランニングをしているんじゃあないの。ほら、阿良々木くんもハガレン好きでしょう」

ひたぎ「映画鑑賞後、どこかの喫茶店に入って、映画のあそこがよかったとか、ここが駄目だったとか、そんな会話をすることになるだろうと思うけど、私が楽しみなのはむしろそっち、阿良々木くんとのトークの方なの」

ひたぎ「阿良々木くん、ねえ、よかったら、手をつないでもいいかしら?」

ひたぎ「阿良々木くんと私、戦場ヶ原ひたぎの仲睦まじい間柄が被写体的に万人に伝わるというか――――

ひたぎ「もう二人がこれまでどんな苦楽を共にしてこれからベスト・カップル・オブ・ザ・ワールドになることが決定的にわかる――――

ひたぎ「世界が羨望の眼差しを向けるほどお似合いの二人になれると思うのだけれど、阿良々木くん、手をつないでも、いいかしら?」

ひたぎ「……今さらだけれど、少し、気恥ずかしいわ。でも、このまま時が止まればいいのに。ザ・ワールド――時よ、止まれ」

ひたぎ「最初にも言ったけど、今日は阿良々木くんが私の家に来るだろうと思って、とても楽しみにしていたのよ」

ひたぎ「クラスは同じだけれど、下校の時刻からこのかた、私は二人きりで阿良々木くんに会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」
ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくてにしのかな会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて」

ひたぎ「会いたくてたまらなかったの。阿良々木くんはどうだったのかしら? ぜひ聞かせてほしいわ」

暦「……」

ひたぎ「あら、どうしたの、阿良々木くん。私がわざわざ貴重な数レスを消費して、阿良々木くんへの愛を表現したというのに。猿までくらったのよ」

暦「……」

ひたぎ「けれど、3時直前でよかったわ。すぐに回復できたもの。ん、何だか呆けているわね」

暦「お前の新しいキャラに、僕はとてもついていけない……」

ひたぎ「あらあら。まったく、あらあらだわ。今日は人のネタを拝借したけれど、解禁されたら本編での私のドロデレはこんなものじゃすまないわよ」

暦「これ以上なのか」

ひたぎ「下手したら死人が出るわね」

暦「災害レベルなのか!?」

ひたぎ「まあ、なにはともあれ、公式でドロデレヶ原ひたぎの詳細がまだ語られていない以上、私が披露できるのはせいぜいこのくらい。これが私の精一杯よ」

暦「夏の思い出が冷めていくっ!」

ひたぎ「では、ここからは従来のキャラでいきましょうか。で、何か用? ゴミくん」

暦 「……」

暦(えー……)

暦(えー……としか言えねえ……)

ひたぎ「はやく要件を言いなさい。頭の悪い阿良々木くんと違って、私は忙しいのだから」

暦「その……神原に」

ひたぎ「きーこーえーなーいー。もっと大きな声ではっきりと言いなさいよ、グズ。ああ、ごめんなさい、クズの間違いだったわね。もっと大きな声ではっきりと言いなさいよ、このカス」

暦「なあ! 僕、お前に何かしたか!? だったらはっきり言ってくれ! 謝るから!」

ひたぎ「え? 元からこんな感じじゃない?」

暦「いいや、いいや! 少なくとも最近は僕への暴言は減少傾向にあったはずだっ!」

ひたぎ「思い出せないわね……」

暦「じゃあさっきまでのデレは何だったんだよ!?」

ひたぎ「読者サービス」

暦「愛がない!?」

ひたぎ「今月は読者全員大サービス。阿良々木くんへの罵詈雑言許可証が付録についてくるわ」

暦「陰湿すぎるだろその漫画雑誌!!」

ひたぎ「仕方ないわね。この私が阿良々木くんなんかのために、話の振りに乗ってあげるわ。まったく、それにしてもとんだ無茶振りね」

暦「なんでここまで言われなきゃならないんだろ……」

暦(ついさっきまでのドロデレはもう遠く彼方だ)

ひたぎ「そうね、生まれて此方、デレたことなんてないから、私」

暦「数少ない甘い記憶は捏造だったのか」

ひたぎ「ごらんなさい、この写メ。私と神原以外、誰が写ってる?」

暦(なんか妙に近い二人以外、誰も写ってない……)

ひたぎ「つまり、あなたはぼっちで、友達も恋人も全部夢だったのよ。あなたはゴーストハックされていたの」

暦「うわああああああああああああああッッ!!?」

暦(阿良々木暦――――死亡確認)

ひたぎ「ふうっ! いいリフレッシュになったわ。やっぱり、たまにデトックスして毒素を抜いておかないと、体に悪いものね」

暦「その毒素を誰が背負っているか、できたらでいいから心に留めておいてくれ……」

ひたぎ「安心なさい、これからは読者お待ちかねのラブタイム――恋バナタイムよ。先日、新しい彼氏とホテルに行ったときのことなのだけれど」

暦「もうやだぁ! 誰か僕を殺せよーっ! どうせ夢なんだろーっ!?」

ひたぎ「ところがどっこい、これが現実、現実」

暦「トータル・リコール社ーっ! はやく来てくれーっ! 追憶売るからーっ!」

初めて天才をみた・・・

ひたぎ「まあ、そろそろ、阿良々木くんの話を聞いてあげようかしら」

暦「もう、どうでもよくなってきた……」

ひたぎ「ちなみに、先日男とホテルに行ったのは本当よ」

暦「もっ、もう死んだほうがいいっ! どうせ神も死んでるんだ、吸血鬼が死ぬなんてわけないだろーっ!?」

ひたぎ「まあ、お父さんと行ったんだけどね。バイトしようと思って、出張仕事を手伝ってきたのよ」

暦(あー……)

暦(本当にあー……だ)

暦(これじゃあ化物語(上)に逆戻りだ……時間は不可逆なんじゃなかったのかよぉ……)

眠ってしまう速く続きを・・・!

ひたぎ「のろまな阿良々木くんのせいで、いつまで経っても話が進まないわ。大方、盗撮写真のことで来たんでしょ。はい、そうです、私が神原に命じてやらせましたけど、それが何か?」

暦「もう突っ込む余力がない……」

ひたぎ「まあ、阿良々木くんがへなちょこなのはB.C.時代から知っていたけど」

暦「……」

ひたぎ「神原に盗撮させたのはね、出張中、ホテルで寂しい夜のお供にちょっと欲しかったのよ」

暦「そこは突っ込むぞっ! 僕も読者から変態と呼ばれて久しいが、お前は僕以上の変態だよっ!!」

ひたぎ「都合のいい元気のよさね。どうして私のこういう話には突っ込めるのかしら」

暦「お前が突っ込ませてるんだろうがっ!」

ひたぎ「私自身に突っ込む度胸はないくせに」

暦「……」

俺「••••••」

俺「」

ひたぎ「知ってる? 世間では私、非処女認定されているのよ? いつか『今夜は私に優しくしなさい』と言ったばっかりに」

暦「……」

ひたぎ「あれだけ匂わせておきながら、私のあそこにはまだ膜が張っているだなんて、逆に期待に沿えなくて申し訳なくなってくるわよ」

暦「そういうのって、周りとかは関係ないだろ……」

ひたぎ「ええ、関係ないわよ。お互い裸になって、Bまではいったけれど、いざって時に阿良々木くんが使い物にならなくなったって、関係ないわよ」

暦「……」

ひたぎ「だいたい、私なんか一度、しかもアニメ含めてフルヌードになっているんだから。まったく、私って安い女よね」

暦「……」

ひたぎ「で、その安い女とつきあっている――いや、突き合っていない阿良々木くんとしては、このセックスレスについてどう考えているのかしら?」

暦「……」

続きだ!空気が重いから速く!頼む!

俺「」

包皮ガードなうえ中折れか•••

暦喋ってくれよ・・・

暦「僕だって……したいさ。でも、あの日から自信がなくって……」

ひたぎ「自信。自信ねえ……ところで、ここに阿良々木くん自身が写った写真があるのだけれど」

ひたぎ「きれいに撮れてるわね。あの子、写真家目指したほうがいいんじゃないかしら」

ひたぎ「それにしても、たいした量ね。これ、配管が詰まっちゃうんじゃない? それに話とは違って、自信が窺えそうなくらいそそり立っているわ」

ひたぎ「一応、言っておくと、私は向こうで阿良々木くんを毎晩使ったわ。写真がダメになっちゃうくらい。この阿良々木くんは一体誰を使っているのかしら」

暦「……ガハラさんです」

暦(本当は羽川だけど……)

ひたぎ「今の間が気になるわね。本当は羽川さんなんじゃない?」

暦「い、いい、いいやっ!? ちっちち、ちっ、違うに決まってるじゃあないか」

ひたぎ「告白すると、私は一回神原を使ったわ」

暦「お前らやっぱりそういう関係なのかよ!?」

ひたぎ「で、どうなの?」

暦「……羽川使いました。すいません」

ひたぎ「まあ、羽川さんの肉体は確かに、女である私から見ても魅力的であるわ。特におっぱい」

暦「あ、お前も羽川にそういう目線があるんだ」

ひたぎ「勘違いしないで。私は純粋に美、リスペクトの気持ちを持って羽川さんのおっぱいを見るの。阿良々木くんのようにリビドーから見たのとは訳が違うのよ」

暦(……なんか、エロマンガの下手な擁護みたいに聞こえる)

ひたぎ「まあ、あのおっぱいを使うのは仕方ないわね」

暦「あ、いや、使ったのは羽川の眼球」

ひたぎ「……はぁ?」

暦「目だよ、目玉」

ひたぎ「……」

暦(……そんなに変なのか? お前がそこまで叙述できないような顔するほどなのか?)

ガンズリかー

ひたぎ「……おほん! まあ、とにかく、おかずについてはある程度の自由を認めるわ」

暦(もしかして、僕の性癖って特殊なんだろうか……)

ひたぎ「最終的には、どうしたいのかってことよ」

暦「……」

ひたぎ「阿良々木くん、私はあなたの恋人で、あなたは私の恋人。ここの認識は共通してるわよね?」

暦「ああ」

ひたぎ「私は阿良々木くんと――ひとつになりたいわ。もう、覚悟はできているあなたはどう?」

暦(『あなた』――――以前、千石が謎の反応を見せた二人称。『お前』に対する『あなた』)

暦(ああ、千石、だからお前はあの時あんなに狼狽していたんだな――ごめんな、誤解させて)

暦「ガハラさん――――メイクラブしよう」

暦(ああ、やっと、やっと――――戦場ヶ原ひたぎは、にっこりと笑ってくれた)

ひたぎ「今日はお父さんは帰ってこないわ」

暦「そ、そうか」

ひたぎ「その気になれば……朝まででも」

暦「い、いや、ガハラさん。決意はしたんだが、まだ正直うまくできるかどうか、自信がない」

ひたぎ「そう」

暦「だ、だけど! 絶対うまくやるから!」

ひたぎ「そんなに焦らなくてもいいわよ、阿良々木くん。二人はもう互いのものねなのだから」

暦(自然に――まあ、何回かしているし――軽くキスをした)

ひたぎ「べろちゅーはあんなに積極的だったのにね」

暦「う」

ひたぎ「ふふ。阿良々木くん、新しい服を買ったからお披露目したいの。着替えてくるわね」

暦「あ、ああ」

暦(10分後――――)

ひたぎ「じゃじゃーん。秋の新作コーデ。ドヤ」

暦「……」

ひたぎ「どう、似合うかしら。このチェックのスカート、かわいいでしょう」

暦「あ……あ……」

暦(それはZipperに載っているような秋物コーデ――ではなく)

暦(一見して制服かと思うシルエット)

暦(頭にカチューシャ。長い髪は二つに結い、半袖のブラウスにはネクタイ)

暦(ガハラさんの言う通り、チェックのスカート。ニーソックスが足をすっかり包んでいる)

暦(そして――――そして、赤いフレームの、メガネ)

暦(オシャレではなく、コスプレ――真希波・マリ・イラストリアスのコスプレ、だった)

着衣

ひたぎ「風の噂で、誰かがエヴァ破の新キャラにえらくご執心と聞いてね。私もコスプレって興味あったし、お金稼いで買っちゃった」

暦「あ、あう……」

ひたぎ「メガネは専門店で作ったんだけど、それよりも衣装のほうがべらぼうに高くてびっくりしたわ」

暦「う、うう、ううう」

ひたぎ「あらあら……阿良々木くん、すっかりビーストモードって感じね」

暦「え……あっ!!」

ひたぎ「よいしょ」

暦「う!……あ……が、ガハラさん」

ひたぎ「ふんふん。君、面白い匂いするね」

暦「ひゃっ、ひゃいっ!?」

ひたぎ「……こんな台詞、だったかしら」

暦「ガハラさん、ガハラさん、ガハラさん……」

ひたぎ「うん、すっかり準備万端のようだわ。にゃ。じゃあ、楽しみましょう、私のわんこくん」

暦「アオオオオオンンンッッ!!」

おやすみ
わんこくん

扇情ハメ愛人のほうがセンスいいよな

火憐「遅いな、兄ちゃん」

月火「遅いね、お兄ちゃん」

火憐「帰りに車に轢かれたのかな? 保健室に寄ってるのかも」

月火「ねえ、火憐ちゃんは車に轢かれても絆創膏で済むの?」

火憐「わかんないけど、前ベスパが突撃してきた時は昇龍拳で返したぜ。いやあ、間に合わなかったらさすがにダメージだったぜ」

月火「本当の必殺技だね……」

火憐「暇だし、今のうちに、兄ちゃんの部屋でも漁るかー」

月火「そうだね、ガサ入れちゃおっかー」

火憐「邪魔するぜー、兄ちゃん。いねえけど」

月火「昨日ここで寝たし、あんまり新鮮味はないかもね」

火憐「だなー。エロ本がどこに隠してあるかなんてもう知ってるし。本棚に文庫本の代わりにしまっておいてやろうか」

月火「うーん、悪くないけど、最初にショック受けるだけで物足りないよ」

火憐「あーあ、つっまんねーのー。ったく、兄ちゃん、あたしらが退屈しないように配慮もしてくれないなんて、本当に使えない兄だな」

月火「ねー。まったく、役たたずには困ったもんだよ」

火憐「……エロ本はわかるけど、動画系は知らねえな、そういや」

月火「あ!」

火憐「ひひひひ。月火ちゃん、DVD、USBをチェックだ。あとCDーRもだぜ」

月火「あいあいさー!」

火憐「エロ本は机の裏にあるんだよなー。うーん、増えている。月火ちゃん、パソコンの中も見てくれ。まさかHDに入れておくような間抜けではないと思うけど、一応」

月火「やってるー。せっかくパパとママが買ってくれたのに、ほぼ使った形跡がないね。無駄なアプリケーションどっそりだよ」

火憐「電子メディアには積極的じゃあないからな、兄ちゃん。お、真希波表紙のヤングエース」

月火「エロ本と一緒に隠してあるところを見るにつけ、何に使っているのか瞭然だね」

火憐「……なんか、ペリペリする。手ェ洗ってくる」

月火「うん。ちゃんと石鹸使いなよー」

火憐「うえー。三回洗っちゃったぜ」

月火「火憐ちゃん! 火憐ちゃん!」

火憐「おー。見つかったの?」

月火「あった! 見つかった! パソコンの中の『お気に入り』フォルダに入ってたんだよ!」

火憐「間抜けだった!?」

月火「ほら、これこれ! 見てよこれ!」

火憐「いっぱいあるな……名前が全部、『☆』とか『☆☆☆』だ」

月火「使えたかどうかの評価じゃないかな?」

火憐「アホ……いや、無邪気というか。なんか、あたしらが悪いことしちゃった気がしてきたぞ……」

月火「これなんかもう『GOD』だよ……よかったんだね、お兄ちゃん……」

月火「ど、どうする……?」

火憐「どうするって……念のために内容を確認するか」

月火「すごくハードコアなやつだったら嫌だなぁ……昔、氏賀Y太見つけたときは絶縁を考えたからなぁ」

火憐「兄ちゃん、この間、テキサス・チェーンソーにケチつけてたし、趣味も変わってるかもよ」

月火「お兄ちゃんはトビー・フーパー原理主義だから、あんなの当てにならないよ」

火憐「『GOD』、か……言葉通りなら『神』ってことだけど」

月火「と、とりあえず、これ、いっとく?」

火憐「う、うん、じゃあ」

月火「……火憐ちゃん、開いてよ。ダブルクリックするだけだからさ」

火憐「へえっ!? や、ややややだよあたしっ! どんなブラクラかもわかんないのにっ! 月火ちゃんやってよっ!」

月火「か、火憐ちゃんはお姉ちゃんじゃないっ! 妹を庇って死んでよっ!」

火憐「開いたら死ぬん!? やだやだやだっ! 絶対開きたくないーっ!」

月火「ほら、マウス持ってェ……」グググ

火憐「なっ、なんてパワーッッ……いやああああああ!!」クリック

月火「……ん?」

火憐「~~~~~ッッ!! ッッ!!」

月火「火憐ちゃん、火憐ちゃん。目ェ開けなよ」

火憐「な、なに? どんな呪い映像? あ、いい、いい、説明しなくていいっ」

月火「なんか、実写版エヴァみたいの始まった」

火憐「へ?――ん~……あ、ミサト、さん?」

月火「破だね」

火憐「……はァァァ。びびったー。あたし、寿命縮んだわ。あぁ、ミサトさんが女神に見える」

月火「何なんだろ……あ、場面変わった。プロットぶっ飛ばしすぎだろ。これ、シンジかな」

火憐「お、真希波登場。ぶはっ、パラシュート降下バリバリ合成だぁ! ひゃはははははっ!」

月火「で、馬乗りになると……なんか、べろちゅー始まったんですけど」

『君、面白いね』

火憐「いやいや、面白いのはてめーとてめーの芝居だ」

月火「はいはいはいなんか始まりましたよっ!」

火憐「なんだこれなんだこれなんだこれ!?」

『それじゃあ、楽しもっか、エロスのわんこくん』

火憐「これは、まさか……」

月火「コスプレもの……?」

火憐「どうすんだよコレ……」

月火「と、とりあえず流しておこっか」

火憐「兄ちゃん、真希波とやりたいとか抜かしていたが、ヴァーチャルでは達していたのか……」

『き、君の名前は……はぁはぁ』

『ヴァギ波・マリ・イラストリアス、あはぁ~ん』

火憐「うるせえよっ! なんだよそれっ! センスの欠片もねえぞっ!」

月火「謝れっ! カラーに謝れっ!」

『ああっ……おっぱいやわらかい、ヴァギ波ィ』

火憐「あばばばばばばば!」

月火「このシンジ、お兄ちゃんに見えてきたんですけど。なにこのやりきれなさ」

月火「……もうさ、ネタでC級ビデオ借りてきたつもりにでもならないとさ、やってられないんだよ」

火憐「そうだな……ポテトチップス片手に随時内容にツッコミながらとかじゃねーと……って見るの止めればいいんじゃねえか?」

月火「せっかくお兄ちゃんを嵌めるために探し当てたのに、ここで引き下がったらくやしいのだわ」

火憐「逆にあたしらが嵌められたというわけか」

『どーお? ハメハメ気持ちいいっ? 気持ちいいっ? ああん!』

火憐「知るかよっ!」

月火「そ、その調子だよ、火憐ちゃん。ファ、ファイヤーシスターズのオーディオコメンタリー、はじまりはじまり~……」

火憐「か、火憐だぜぇ……」

月火「月火だよぉ……」

『ヴァギ波っ、おふっ、ヴァギ波っ!』

火憐「な、なに話したらいいんだ? 頭が真っ白だ。台本、台本ねえの?」

月火「西尾維新が必要だね……」

火憐「じゃ、じゃあ、エヴァ破の話するか。月火ちゃん、どう?」

月火「う、うん、いいよ。これ見ながらじゃあ、他に話題も浮かばないし。けど、あれだね、私達、アドリブきかないね……」

火憐「は、ははっ、だ、大丈夫だ、月火ちゃん、あたしらの声優さんは優秀だ」

月火「え、この世界、アニメだったの……?」

火憐「そ、そうだぜ、今は次回作を鋭意制作中なんだぜ……」

月火「でも、考えたら、昨夜、エヴァの話したよね」

火憐「なんでそれ言う! 話終わっちゃうだろ!」

月火「だ、だって」

火憐「考えろよ! 何かあるだろ! エヴァだよ!? 謎だらけじゃんっ!」

月火「だ、だめ……なんにもわかんないよぉ」

火憐「なんでそこで諦める! 諦めたら試合終了だ!」

月火「だって――トウジくんの話はしちゃったし、加持さん活躍しないし!なによっ、火憐ちゃんこそ人に頼ってばっかり、話題振らないじゃん!」

火憐「私は、ダメだ……なんにもねえ」

月火「シンジじゃないんだから……どうすんのよぉ」

『裏コード、ザ・ビースト!!』

月火憐「あんのっ!?」

火憐「ビーストモード――――って、全裸になっただけじゃん!」

月火「人間剥けば、皆獣ってことかな」

火憐「あと、ずっと騎乗位じゃねえか。いや、まあ、マリのイメージはわかるんだけどさ」

月火「でも、エヴァのベッドシーンってみんな女性上位なんだよね。あの加持さんですら下になってるんだから。案外、これのスタッフはわかっててやってるのかもよ」

火憐「そうなのか。あ、いや、待て、確か、補完シーンでミサトさん下になってた!」

月火「あー、そういえばそうだっけ。でも、あれは『どう、私、クソビッチじゃね?(チラッチラッ』って、第三者のシンジに見せるのが目的だからさ。いわゆる『まぐわい』とは違うよ」

火憐「いきなり話が難しくなって、よくわかんにゃい……」

『やっ、はあんっ、にゃ、わんこくっ、うああっ、ふあっ』

火憐「ようやく頭回り始めた。てか、兄ちゃん、これが評価『GOD』なんだな」

月火「うん、でも、だからって私には何もコメントできないけど」

火憐「な。『そうか……』って感じだよな」

月火「『……よくやったな』に続かないよね」

火憐「そりゃあ言えねえよ。やべー、中学生にしてゲンドウを理解してしまった」

月火「私達に補完は必要ないね。あれ、ひょっとして、エヴァもいらない?」

『ああっ、あああっ、ああーーーーーっ』

『はぁ……はぁ……ヴァ、ヴァギ波……』

『はぁ……うぐっ、ん、はぁ、はぁ……つ、都合のいいやつ』

『こーのおおーぞらーにー、つばさをひろげー、とんでーゆきたーいーよー』

火憐「とりあえず――――おめでとう」

月火「おめでとう」

火憐「いやー、終わった終わった。月火ちゃん、これはともかく、あたしはまたエヴァが見たくなったぜ」

月火「そうだね。補完はいらないけど、エヴァは私達に必要だね」

火憐「全巻借りに行くかー」

月火「ついでに新劇場版も借りようね。じゃあ、パソコンを消して――――あれ、まだ、終わってない?」

火憐「あ、アスカだ。眼帯してるけど」

月火「今度はこっち? もう、このアスカってどういうシチュだっつーの」

火憐「あ、シンジが眼帯、舐め始めた」

月火「あ、取っちゃった――え、あれ、え、え、嘘? え?」

火憐「入れ」

月火「た――――」

火憐「――――」

月火「――――」

火憐「――――」

月火「――――」

火憐「――――」

月火「――――」

火憐「――いやー、終わった終わった。月火ちゃん、これはともかく、あたしはまたエヴァが見たくなったぜ」

月火「そうだね。お兄ちゃんはいらないけど、エヴァは私達に必要だね」

火憐「全巻借りに行くかー」

月火「ついでに新劇場版も借りようね。じゃあ、パソコンを消しておくね」

――バキバキバキバキバキバキメキッッ!!

風呂は命の洗濯よ

暦「あのう……」

ひたぎ「……」

暦「あの、ガハラさん、もう一回、いいかな?」

ひたぎ「いやよ」

暦「いや、さっきのは違うんだ。今度はちゃんと――」

ひたぎ「ちゃんと? ちゃんと、今度こそは、ナットにネジを入れるように、私の眼窩に阿良々木くんの陰茎を差し込むつもりなのかしら」

暦「いや、だから」

ひたぎ「私も、それなりに修羅場をくぐり抜けてきたつもりだったけど、命の危険を直に感じたのは初めてだわ。よりによって、自分の彼氏にね」

暦「さっきのは、本当、気の迷いというか……」

ひたぎ「迷いなんてまったくなかったじゃない。完璧100%私の眼窩をロックオンしていたじゃない」

ひたぎ「頭をつかむものだから、ああ、いよいよ、これなのね、an・anで散々研究したあれを実践するときが来たのね――――と、思いきや」

ひたぎ「別の穴を目掛けて、腰を振ってくるなんてね。デビルマンの終盤と同じくらい予想外だったわ」

ひたぎ「ああ、阿良々木くんはデビルマンみたいなものだったわね。ごめんなさいね、ヒロインとして犠牲になれなくて」

ひたぎ「まったく、冗談ではないわ。いや、笑談、笑い話にもならないわ。一体どういう星の巡り合わせでこうなるのよ」

暦「……」

ひたぎ「黙っていないで、何とか言ったらどう? 私、ここまでコケにされたのは生まれて初めてだわ」

暦「我慢、できなくて……ガハラさんが中腰になって、上目遣いをするから、つい……」

ひたぎ「つい? 『いっけな~い、ついつい彼女の目玉潰しちまったゾ(テヘペロ』というくらい軽いノリで実行するつもりだったのかしら。岡田あーみんだって、そこまで気狂いではなかったわよ」

暦「あ、さすがはガハラさん。しっかりカバーしておられる。何を隠そう、僕もあー民で」

ひたぎ「何胡麻を擦っているのよ。ああ――――本当にああ、としか言えないわ。溜め息にしか私は口を使えない。他の用途を練っていたのに」

ひたぎ「この衣装も馬鹿馬鹿しくなってきたわ」

暦「あっ、脱いじゃうの……」

ひたぎ「だいたい、講談社の人間である私がなぜ角川のキャラに扮しなければいけないのよ」

暦「ああっ、ウィッグも取っちゃうの? ロングのガハラさん、久々だったのに……」

ひたぎ「今回ばかりはドン引きにドン引き、だわ。ドン・ビキってキャラがワンピースに出てきそうなくらいよ」

暦「ワンピースは集英社……」

ひたぎ「うるさいわねえ、阿良々木くん。阿良々木塵くん。もう、私にこういうのは見込みがないって思ってもらって構わないわ」

塵「だって……」

ひたぎ「だって? だってもかっぺもないわ。そういう特殊な嗜好は他で満たしてくれる? 上のレスで候補があがっていることだし。月火さんなんて、見物じゃない」

塵「お前はまだ月火ちゃんのことよく知らない設定だろ……」

ひたぎ「月火ちゃん。ああ、月火ちゃんですって。シスコンここに極まれり、だわ」

ひたぎ「もう、シリーズも中断して、角川でコミカライズしたらどうかしら。今まで散々甘い汁を吸ってきたでしょう?」

ひたぎ「幸いシスコンだし。『阿良々木さん家のアニキ』として、ヤングエースで描いてもらえばいいじゃない。ほら、貞本義行先生のエヴァも載っていることだし。その方がいいんじゃないかしら。よかったわね。これでお貞とお近づきになれるじゃない」

ひたぎ「きっと、本来の欲望の赴くままに、好き放題できると思うわ。火憐さんなんか大喜びするんじゃないかしら」

ひたぎ「大好きな兄貴に振り回されたり、少しエロいブラックコメディ。いいじゃない」

塵「ブラコンコメディだろ……」

ひたぎ「(無視)最後は近親相姦でもなんでも、好きにすればいいじゃない。ああ、私はお断りよ、そんな下劣な漫画に出演するのは。人間強度(笑)が下がるから」

ひたぎ「だいたい――――誰かに代替してほしくなるくらいうんざりするのは、この真希波某というキャラが眼鏡っ子なことよ。なんなの、私への当て付け?」

塵「いや、たまたま、綾波と式波よりかわいいなって……」

ひたぎ「はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ?」

ひたぎ「エヴァで一番かわいいのは冬月先生に決まっているじゃない!」

塵「かわいいって……」

ひたぎ「あなたもあのユイとかいうあばずれと同じ価値観なのかしら。誰がどう見たって、ブラチラを覗く冬月のほうがゲンドウの兆倍はかわいいじゃない!」

塵「そんなシーン、あったっけ……」

ひたぎ「まったく、また角川に近い話をしてしまったわ。まったくまったくまったくまったくまったくまったくまったくまったくま? ぼくはくま?」

ひたぎ「はっ! また関連ワードを呟いてしまった。トゥギャられてしまいそうなことをツイートしてしまった。私を――嵌めたわね?」

塵「いや、実際まだハメてないわけで……」

ひたぎ「(冷笑)まっ、素敵な冗談が出てきたわね。寒すぎて凍え死にそう。ま、来週の頭には捨てておいてあげるわ」

塵「すてっ、捨てるっ!? いやだっ、それだけは嫌だっ!!」

ひたぎ「だって捨ててくださいといわんばかりの名前じゃない」

塵「あれっ!? なにこの名前表記っ!?」

ひたぎ「この場合、萌えるゴミと萌えないゴミのどちらに出すべきかしら。あ、空きカン? 中身がスカスカの」

缶「捨てないでください! お願いします!!」

ひたぎ「……捨てないでほしいの?」

塵「はい。いくらでも頭を下げますゆえ……」

ひたぎ「あなたって、もう過ぎた日めくりカレンダーみたいなものなのよね。千切ってヤギにでもあげたいけど、やっぱり燃えるゴミなのかしら」

暦「ファ、ファイヤーシスターズの兄ですから」

ひたぎ「最近は焼却場も間に合わないみたいだわ。埋めてきてあげましょうか。苦しいわよー、土の中って」

暦「生き埋め!?」

ひたぎ「そうね、決行は冬まで待ちましょう。それまで、せいぜいモラトリアムを満喫するといいわ」

暦「冬……?」

ひたぎ「Xデーはクリスマスよ。これが本当の戦場のメリークリスマス」

暦(どうやら――――本当に、どうやら、死刑を宣告されたらしい)

ひたぎ『せいぜい、デヴィッド・ボウイを見て、生き埋めの際のキメ顔を研究なさいな。あ、ちなみに、彼は私のタイプど真ん中なの。いいわよね、イケてるジジイ、略してイケジジ』

暦(――と言って、戦場ヶ原は僕を家から追い出した)

暦(僕の命は――――クリスマスまで)

暦(恋人がサンタクロース、赤い血を流す、赤髭サンタクロースに彼女はなってくれるらしい。わあ、嬉しいな。僕は幸せものだな)

暦(……クリスマスに、ガハラさんとケーキ食べたりするのを妄想してる時期もあったんだけどな。はは、早いシーズンオフだ)

暦(今年は――戦場のメリークリスマス、か)

暦(僕は戦場のメリークリスマスってどんな映画だったかなんてまるで覚えていない。デヴィッド・ボウイの顔もわからない)

暦(帰りに借りてみるか……)

酒の勢いって怖いな…

暦(帰路の途中、TSUTAYAに寄った。あるかな、戦場のメリークリスマス)

暦(なかったら、ゾンビでも借りよう。今は破滅的な気分だから……)

暦「あれ――――火憐ちゃん、月火ちゃん」

火憐「……」

月火「……」

暦「偶然だなー。ちょうどよかったよ。僕のカード切れてるかもしれないからさ。一緒に出していい?」

火憐「……」

暦「ん、なんだ、お前達はまたぞろエヴァか。いい加減、現実に帰れよ。庵野監督もそう言ってただろー」

月火「……」

暦「いつまでも綾波(笑)だのアスカ(笑)だの。あ、新劇場版はいいぞ、真希波が出てるからな。ハッハッハッ」

暦「お前たちも、僕と一緒に大島渚を見ろ。あ、カヲル君の親戚じゃあないぞ。あれ、おい、もうレジに行くのか。僕はまだ――」

暦(すたすたとレジカウンターへ向かう妹達。なんだ、なんだよ、なんなんですかあ。反抗期ですかあ?)

暦(どいつもこいつも。そういう態度で僕が傷つかないとでも思ってるのかね? 傷物語の主人公だぞ)

暦(ああ、こんな日は家で『GOD』印の真希波を見るか。本命は後半のアスカだけどな。僕には数少ない有用な三次元だ)

暦(眼球を通した性行為は、快楽を高めるとものの本に書いてあるというのに。誰もこの素晴らしさを理解しようとしない)

暦(思考停止、いや、嗜好停止だな。視野の狭い連中だ。まあ、僕は目がないやつに目がないのだが。クククッ)

暦(帰宅。さーて、真希波、真希波っと。アスカ、アス)

暦「――――なにこれ」

暦(僕がパパとママからもらったノートPCが二重の極みでも喰らったみたいに、粉々になっている)

暦(中には今まで苦労して集めたネタ集が入っている。当然、僕の真希波や怪傑アスカも)

暦(外と同様、中身もパー――――『それとも空きカンかしら』)

暦「あ」

暦「あああ「ああああああ「あああああ「ああああああああああ「あああああああああああああああああ「あああああああ「ああああああああああああああ」

暦「――……」

暦「『やった』、のは――火憐ちゃんか? いや、月火ちゃんか」

『やります。僕が乗ります!』

火憐「いい顔だねえ」

月火「女性的な作画だよねえ」

暦「――――おい、お前達」

火憐「ここの『構いませんね』って耳に残るな」

月火「ためらいがあるってことだね」

暦「お前達、僕のノートPCが完全に沈黙しているのは、どういうことか教えてくれるか」

火憐「あたし、EDはこのヴァージョンが一番好き」

月火「そこは私も同意だね」

暦「『僕のノートPCが誰かがブッ壊したみたいに粉々になっているんだ』。お前達、知っているだろう」

火憐「OP飛ばせねー」

月火「かっこいいー」

暦「聴こえなかったのかな、お前達。では十分に近づくぞ」

『動いた!』

火憐「この期に及んでその台詞って、そうとうピンチってことだよね」

月火「ネルフスタッフ、もうこれだけで満足してそうだもん」

暦「馬の耳に念仏とはこのことか。文字通り、お前達は馬鹿というわけだ。いや、馬が二匹で馬々(ばば)かな?」

火憐「おい、さっきからうるせえぞ、チビ」

月火「さっきからうるさいよ、チビ」

暦「チビ。チビと言ったか。火憐ちゃんはともかく、月火ちゃん、チビと言ったか。チビはお前だ、このビッチ」

火憐「なあ、その口、消音とかついてねーの? 耳障りたわ」

暦「黙ってろ。今、矛先は月火ちゃんに向いているんだ。なあ、おい、姉貴にかばってもらって助かろうなんて思ってんじゃあないぜ」

月火「別に……」

暦「『僕のノートPCをブッ壊した』のは、お前、だな」

暦が崖に近づいていく…

暦「『アレ』を見たってことは、中身も知ってしまったんだろうが、なぜだ? なぜ壊す? 僕の真希波を、なぜ殺した」

火憐「無視無視。虫が飛んでるくれーに考えて。あんなの気にかけちゃあダメだぜ」

暦「『黙ってろ』と言っただろう。悪いのはその口か」

火憐「ああ? だったらなん」

暦「消音してやるよ」

火憐「ひぐっ!?」

暦「火憐ちゃん、今、お前の『舌』を掴んでいる……。毎晩のように磨いてやっているのは誰だ? 『この僕』だろうが。今までかけてやった情けを忘れやがってッ」

火憐「くぅ……うぅ……」

月火「や、やめてよ……」

暦「ああ、いいぞ、すぐにやめてやる。月火ちゃん、お前が自分の非を認めたらなァ」

月火「非って……」

暦「あー! ったくよォ! 世の中『強度』の低い人間ばっかで参っちゃうよなァァーッッ!!」

忍(おい、お前様。何をしておる)

暦(説教だよ)

忍(説教? 説教とは文字通り説いて教えることではないのか? 今、お前様に舌を掴まれたでっかい妹御は泣いておるぞ。とても説教には見えんがの)

暦「あー……じゃあ今からお説教ターイム。はい、悪いのは誰が月火ちゃんでしょーか? あれ?」

月火「お、お兄ちゃん……」

暦「あれェ? なんだっけなんだっけ……ああ、こうか、謝らなきゃいけないほど悪いのは、月火ちゃんだ。だよね?」

月火「お兄ちゃん、何言ってんの……さっきから変だよ……」

暦「変じゃあない。変態だ。そう、なんか、僕、今、変態してる気分なんだよなー」

忍(……なんじゃ。儂とあるじ様のペアリングが――切れている?)

暦「あー。あー。あー」

暦「あー。あー。あー。あー。あー。あー。あー。あー。あー。あー。あー。あー。あー。あー。あー。あー。あー。あー。あー」

暦「あー。あー。あー。あー。あー。あー。あー。あー。あー。あー。あー。あー。あー。あー。あー。あー。あー。あー。あー」








終了のお知らせ

暦「月火ちゃん、昨夜話した、萌える文学キャラの続き――――『変身』、ってあるよなァ? フランツ・カフカの。今、あんな気分なの、僕」

暦「ある日、虫になっちゃってたら、超キモいよなー。でも、介護してくれる『イモト』……じゃねえや、『妹』がいてくれたら、お兄ちゃんは超ハッピーだよなァ」

月火「は、は、はは……?」

暦「だからねっ! 月火ちゃんっ! お兄ちゃんはーっ! 月火ちゃんが今超欲しーわけーっ! これから毎日毎日毎日毎日毎日」

暦「毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日、僕の相手してほしいわけっ!」

暦「だあって、『月火ちゃんはそれができるんだから』さあッッ!!」

月火「なに、なんなの、お兄ちゃんの言ってること、ひとっつもわかんないんだけど……」

忍(どういうことじゃ、お前様、儂の力が使えんぞ!? 一体何をしておるっ!?)

暦(忍、のぶちゃんよー、お前、ちょっと『一人で』散歩行ってきてくれない?)

忍(なに――――!!?)

月火「あ、あれ、今度はなに……金髪の……」

忍「……なんなんじゃ。何がどうなっておるんじゃ。なぜ儂が『影の外』おる?」

暦「あ、そうそう、忍お前、今能力なーーーーーーにんも使えないから」

忍「ッ!?」

暦「いやァ、それにしても、忍、スキルいっぱい持ってんじゃん。特にエロ系。初めから出してよもう」

忍「おっ、お前様!!」

暦「四次元ポケット持ってるのはこんな気分なのかな? そーらーを自由に、とーびたーいーなー」

忍「……飛んで」

月火「る……」

暦「あ、これ、もういいや。ぽーい」

火憐「っ! がはっ、ゲッ、ゲェッ……」

暦「着地。面白いなー。忍、お前今までこんないいもん持ってたのかよー」

忍「お前様は――――『儂になった』、のか……?」

暦「てゆーか、『僕になった』。いやあ、いやあ……なじむなじむ。実に実に」

暦「ハレバレハレバレ。最高最高。まさに、『ハイ』ってヤツだァ!!!」

暦「さて、月火ちゃん」

月火「ひ」

暦「目をそらすな。ほらほら、お兄ちゃんの顔を見ろよ」

月火「やだ……やだやだ」

暦「むう。しゃねーな、それじゃ、このまま」

月火「あ」

暦「ぱっくんちょ」

火憐「……」

忍「……」

暦「あー。ほへんなー。ごくんっ。丸飲みってわけにいかなくてなー。いや、残さず食べるけども。あまり、いい絵じゃないなー。パクりになっちゃったじゃないかー」

暦「ま、いっか。○○○☆○○○三話だなんて、みんな気づかねーだろ」

火憐「あ……「ああああああああああああああああああああああああっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

ありゃりゃ木さん覚醒してる

暦「残りは一息ッ! んあ……む、じゃり、ばき、がき、じくじく、くちゃくちゃ。ごっくん。ふぅーっ! ごっそさん」

火憐「月火ちゃんが……月火ちゃんが……」

忍「喰いおった……あの妹御を」

暦「ああ、一応言っておくと死んだわけじゃないぜ。だから、ほら、魔人ブウがやったみたいなやつだから」

火憐「兄ちゃん、何してんだよ……月火ちゃん、食べちゃ、駄目じゃん……」

暦「じゃあ、『次は貴様だ』、なんてな」

火憐「は?」

暦「あぐっ!……んー、丸飲みって難しいな。また、残っちゃった。火憐ちゃん、背ェ高いし。後は吸い込むか」

忍「……」

暦「ずぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞ――――ごっくん」

忍「満腹か?」

暦「いや、別に食事じゃないし。まあ、まだこのへんは完全に怪異になれてないのかねえ」

忍「……儂は食わんのか」

暦「は? なんで? だって必要ないだろ。火憐ちゃんはまあ、一応、妹だし、多少プラスになるわな」

忍「プラス? さっきの魔人ブウに倣えば、元ネタである儂を食えばさらにパワーアップするかもしれんぞ?」

暦「いや、いいって……」

忍「なぜ心底嫌そうにする」

暦「お前、もう吸血鬼の絞りカスだったし、能力もほぼ僕に着せ替えたし。お前、もう本当にマスコットキャラでしかねーもん」

忍「……なるほどの」

暦「んじゃあ、まあ、どっか落ち着ける所を適当に見つけて、寝るわ」

忍「寝る、か――――次に目が覚めたらもう人はおらんかもしれんがの」

暦「『強度』のない人間はいらねーって、ガイアが俺に囁いている。じゃな、忍」

メモ書き見ると八九寺、千石とそれぞれ仲良くおしゃべりって書いてあるな
やっぱ100円缶チューハイ何本も調子に乗って買っちゃいかんわ
寝るわ

最後まで組み立ててないなら忍デレ√希望ペロペロ^ω^
ペロペロ^ω^ペロペロ^ω^ペロペロ^ω^ペロペロ^ω^ペロペロ^ω^ペロペロ^ω^ペロペロ^ω^
ペロペロ^ω^ペロペロ^ω^ペロペロ^ω^ペロペロ^ω^ペロペロ^ω^ペロペロ^ω^ペロペロ^ω^

翼「いってきます」

翼「――――忍ちゃん?」

忍「早い登校じゃのう。委員長」

翼「……何か、あったんですか?」

忍「悟ったような顔をしてからに。うぬは何でも知っておるから、儂に何があったかなど、わかっておるだろう」

翼「『忍ちゃんに何があったか』はとてもわかりません。『阿良々木くんに何かがあった』のはわかります」

忍「ちっ。自分を誤魔化さなくなってから、うぬ、嫌なやつになったの」

翼(だって、本当にわからないんだもの)

翼(忍ちゃんが――怪異の忍ちゃんの裸足が、汚れて擦りきれている理由なんて、私には見当がつかないんだもの)

翼(腹が減った――――と、人間みたいな……いや、そんなことないか? とにかく、忍ちゃんが朝食をご所望だったので、早朝営業をしているミスタードーナツに入った)

忍「うむ。む、うまい、むい、んむ」

翼「我州院達也の声真似しないで」

忍「おいら、ソフィーたちと一緒にいたいんだ」

翼「下手すると忍ちゃん、マジでカルシファーポジションだからね」

忍「笑ってる場合ですよ」

翼「忍ちゃん、本当にどこでそういう知識覚えてくるの? 忍野さんだって、その世代に見えなかったよ?」

忍「まあ、実際は笑ってる場合ではないがの。ああ……カフェオレが五臓六腑にしみるのー」

翼「カフェオレはそんな浸かるように飲むものじゃない……」

忍「すまんのう、朝飯奢ってもらって。あ、カフェオレおかわりしていい? タダみたいだから」

翼「どうぞ……」

翼「阿良々木くんが――――火憐ちゃん月火ちゃんにAV壊されて怪異化した?」

忍「まあ、そこまでの紆余曲折はあるが、ザックリ言うとそうじゃ」

翼「まさか……え、それは、あれ? 怒りのパワーで伝説の~になった的な解釈でいいんですか?」

忍「のう……あるじ様の心の狭さには、儂もビックリ仰天じゃ」

翼「しかも……『火憐ちゃん月火ちゃんを食べた』?」

忍「割に合わんよな……たかがAVで……」

翼「そんな……」

忍「女優ではなく、妹御たちをオカズにしてしまった、というわけなんじゃ……」

翼「今、阿良々木くんは……」

忍「どこか身を隠せる所で寝ておるはずじゃ。力を奮い、世界をどうこうしようとは言っておらんかった」

翼「まさに、AV破壊で引きこもりが悪化したニートのようだわ……」

忍「おまけに、儂のスキルをネコソギ持っていってな。いつでも好き放題じゃ。親のクレカじゃあないんじゃぞ、あやつめ」

翼「それで、忍ちゃんは阿良々木くんをどうやって元に戻すの?」

忍「……あの甲斐性なしは『儂の』力を全て手に入れたんじゃぞ。いわば、奴が怪異の王になったんじゃ。儂は今、ただの人間の小娘となんら変わらん」

翼「でも、何か策があるんでしょう? でなければ、忍ちゃんが私に『愚痴り』に来るはずがない」

忍「――だから、うぬと喋るのはイヤなんじゃ」

忍「問題は奴に対抗できる者がおらんということじゃ」

忍「説得に応じて、儂に力を返し、妹御たちを解放するならいいが、とても話を聞くようには見えんかったからの」

忍「ヶ原さん――人間がかなうわけがない。まあ、脅しくらいにはなるかもしれんが、キャラ的に」

忍「エロっ子――猿の手という武器はある。しかし、歯がたたんじゃろう」

忍「迷子は無論、ラスボスも……むしろ、中ボスになっているかもしれん」

翼「あぁ……」

忍「陰陽師共もいるが、あのアロハ小僧は連絡を取るのは不可能じゃし。一人、仕事にしそうな手合いがおるが、殺されるじゃろうな」

ケンタ、くう

忍「残るは、儂、うぬの二人だけとなる」

翼「私も一緒に殴り合いしろってことですか?」

忍「吸血鬼をなめるな。前に完全体になったと言ったな。本来的に、その力の差はまだ歴然じゃ。例えば、今のまま二人で奴とやりあえば、こちらが全滅なのは必至」

翼「……」

忍「『妹御たちを喰い、血を極く』し、さらに、『特典』までついておる。初めからそちらが狙いだったろうが、しかし、これで奴は死を乗り越えた」

忍「では、どうするか」

翼「万事休す、としか聴こえませんよ」

忍「もう一度、問おう――――うぬは、『吸収できる』、儂に言ったな?」

翼「……まあ。でも、実際にやるつもりはなかったですけど」

忍「ふん。儂に釘を挿したつもりだったか。ずいぶんと痛かったかなぞ。トラウマ女のせいでトラウマ確定じゃ」

翼(反撃がきたか)

忍「ああ、これから言うことを考えたら腹が立ってきた。ツイッターに呟いて、共感を得たいところじゃ。なんでこんなやつが儂のライフライナーなんじゃ」

翼「あの、やめませんか、そういうの」

忍「本っ当に、真実、うぬは最悪じゃ。最低にして最低にして深淵じゃ。じゃが、あえて儂はそこを覗き込もう」

忍「儂を――――喰らえ」

忍「儂をうぬが喰い、例の新技(笑)で儂を産み直せ。さすれば、奪われた儂の吸血鬼性も復活するかもしれん」

翼「馬鹿にしないでください。『処女懐胎(スーパー・ノヴァ)』ですよ、『処女懐胎(スーパー・ノヴァ)』。思い付いたとき、嬉しくてその場で『ミスター』踊っちゃったんですよ?」

忍「確かに名前は重要じゃが。それにしても、ひどいキャラ崩壊じゃな、逆にダンスが見たくなるぞ……次期アニメでやったらどうじゃ」

翼「でも、事務所と金の問題がありまして……」

忍「そうか……儂の味方は少ないし。お互い、辛いところじゃのう」

翼「それに、うまくいく確証はあるんですか? 今、普通の人間の女の子である忍ちゃんを食べて、産み直しても、普通の赤ちゃんになっちゃうかも」

忍「吸血鬼の性能は奪われたが、幸い、名前は残っておる。儂が『忍野忍』と名付けられて以来の歴史自体は、まだ記録として残っているのじゃ」

翼「うーん」

忍「それに、『処女懐胎(スーパー・ノヴァ)』……だったか。さっきのやりとりは別として、うまい名前をつけたものじゃ。こういうことは、ネーミングやタグが要じゃからな。うん、うまくいくような気がするぞ」

翼「十月十日かかる。長いですよ?」

忍「人間はな。儂を誰だと思っている? 怪異は、『いつのまにかそこにある』ものじゃ」

忍「ボーン・トゥ・ビー・ワイルド――生まれつくるからには、のろのろと、時間をかけるわけにはいかんからなぁ」

翼(と、忍ちゃんは――人間離れした、鉄血にして熱血にして冷血な、笑みを浮かべていた)

翼(さすがにミスタードーナツ店内で金髪幼女を食べるわけにいかない。女子トイレに場所を移した)

忍「ふむ。お化粧直し、というわけじゃな」

翼「忍ちゃん小さいとはいえ、個室に二人は狭い……」

忍「さあ、儂の体を貪るがいい」

翼「神原さんみたいなことを言わないでください……」

忍「儂、初めてだから……痛く、しないで、優しくして」

翼「どうして恥じらうっ!?」

忍「本当じゃな。あるじ様とのやり取りに慣れておるから、ついつい痴態を演じてしまった。しかし、どちらかといえば淑女じゃったろ?」

翼(これは挑発だ。わかっては――いや、わかってはいるんだけど……)

忍「ほう……白くなりおった。中は真っ黒みたいじゃが」

翼「声を出さないでくださいね。人が来るかもしれないから」

忍「その方が盛り上がるかもしれんのう。ん、どうじゃ、前戯に胸からにするか?」

翼「――――そのお皿みたいな胸を前菜にしてやる」

翼(私は、忍ちゃんの(私とは逆に)白い白い胸に、かじりついた)

――――がぶり。

忍「いっ――――ぐあああああああああああああああっっ!!!」

翼(絶叫する忍ちゃん。左の胸、肺、それから肋骨を何本かいただいた)

翼(元がどうであれ、今は普通の女の子だ。きっと、彼女は生まれて初めて『人間の痛み』を味わっているのだろう)

翼(次に、左手に歯を立てる)

忍「ああああああっっ!? ぎゃあああああああああああああああああああっっ!!」

翼(まあ、食べている格好ではあるが、実際ご飯を食べているような感覚はない。どちらかと言えば、『消す』といったところか)

翼(私が歯を入れ、顎を引く度に、忍ちゃんの体が消えていく。まるで、ソフトウェアで描いた絵を消しゴムで消していくように)

翼(そして、肉片と一緒に、忍ちゃんの情報が着実に私の体の中に蓄積されていくのだ)

忍「ああああああああっ! 痛いッッ、痛い痛い痛い痛いッッ!! 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いよォォォォ!!!」

忍「もういやだっっ!!! いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだっ!!!」

忍「痛いっっ!! こんなに痛いなんて聞いてないっっ!! もうやめるっ、もうやめるのォォ!!!」

翼「じゃあ、やめましょうか、忍ちゃん。こんな途中放棄じゃあとても人前に出せないけど。それに、阿良々木くんはどうするの」

忍「ううううっ、ううううううっ!!」

翼「じゃあ、今度は下ね」

忍「いやああああああああっっ!! 痛いっ、痛いよおっ、助けてあるじ様ァァァ!!」

翼「履き違えないで。あなた自身は勝手に一人で助かるしかないのよ。忍野さんの側で耳にたこができるほど聞いていたでしょう?」

忍「だってだってだってだってだってだってこんなのっ!!! こんなのっ!!!」

翼「割に合わない、とでも言うの。あなたがやってくれって言ったんじゃない。それに、あなたは何のためにこの痛みに耐えなければならないのか。『阿良々木くんをあなたが助けるため』でしょう」

忍「あるじ様ァ……なんで、なんで、捨てたのぉ……」

翼「あなたもお人好しだね。人ではないのに」

翼(もはや麻痺してしまったのか、忍ちゃんはもう声をあげることなく私に喰われた)

翼(そして、ようやく残りは彼女の頭部のみになった)

翼(赤い。血の涙を流して――絶望的な表情をしていた。春休み、みんなで不幸を分けあったときと同じように)

翼(不幸――しあわせ、でないこと)

翼(さっき漏らした彼女の本音――私の牙による痛みではなく、あれが血の涙の理由なのだろう)

翼(彼女のこの絶望が――希望として生まれ変わりますように)

翼(私は、忍野忍を、一つ残さず、食べた)

翼(――――何も、起こらない)

翼(既に三十分は経過しているが、私の体には何の変化もない)

翼(失敗、の二文字が頭を過る)

翼(そんな……そんなのってない。これじゃあ、何もかもが水の泡だ)

翼(今度は私が絶望する番になり、トイレを出て席に戻った)

翼(既にカップやトレイは取り下げられていた。数十分姿がなかったのだ、当然である)

翼(何もないテーブルの上に私は顔を突っ伏し、しばらくそのままだった)

翼(忍ちゃんがどうなったか――見当もつかない。胃ではないと思うが……人生にユーモアは必須だがこれは笑えない。ヴォネガット激怒するだろう)

翼「……何か、頼もうかな。あれ、なんだろう。みんなが私を見ているような」

翼(まるで、ついさっきまで女子トイレで少女を陵辱し、何食わぬ顔で店内に戻ってきた猟奇殺人犯を見ているような……あ、学校さぼっちゃった)

翼「他の人はともかく、戦場ヶ原さんは異変に気づくだろうなぁ」

翼(午前中だが、お客さんもぼちぼち増えてきたようだ。私は手前に三人並んだ列に続き、順番を待った)

翼(そして、レジの前に進んだとき――)

翼「すいません、ポン・デ・リン――――グッ!?」

翼(腹部に激痛、あり)

翼(スクールランブル……じゃない、スクランブル。私は口とお腹を押さえながら、再び女子トイレの個室に入った)

翼「な、なにこれ、痛たたたたたたたた……」

翼(こんな痛みは経験がない。下したのでも月のものでもない。規格外の激痛だ)

翼「おっ、お腹が、破裂しそう――ッ!」

翼(文字通り、『私のお腹が風船のごとく、今まさに膨らんでいる』)

翼「もしかして……に、にんしっ」

翼(刹那、言葉が途切れた)

翼(お腹がさらに膨らみ――『およそ、少女一人は入りそうなくらい大きくなった』のだ)

翼「や、やだ……ま、待っ」

翼(一瞬、お腹が二回りほども膨張し、収縮し、そして、中から『細い右腕が皮膚を突き破って、現れた』)

翼「――!?」

翼(手のひらが何かを探るような仕草をし、ぴたりと止まった)

翼「て、手が」

翼(そして、今度は『左腕が腹を破って出現』し、両の手で開いた穴の縁を掴むと、私を重力が襲った)

翼「いっ――――!!!」

翼(私のお腹から『少女』が勢いよく飛び出し、砲台のような形になった私は、お腹を満開の花弁のように開き、滝のような血をそこから吐き出した。死んでしまうかもしれない。そう思う私を裏付けるように、激痛を感じていた)

翼「……あ……あ……」

翼(『真っ赤に染まった少女』が、こちらに背を向けて立っていた)

翼(少女は――こちらにくるりと振り返り)

忍「は」

忍「は・は・は・は「は・は・は・は・は・は・は・は「は・は・は・は「は・は・は――」

忍「ハハハハハハハハハ!!!「ハハハハハハハハハ!!!「ハハハハハハハハハ「ハハハハハハハハハ!!!「!!!」「!!!!!!!!!」

翼(もはや、どう発声しているかもわからない。少女――忍野忍は、歓喜の声をあげていた)

忍「素晴らしいっ! 素晴らしい素晴らしいっっ!! 実にうぬは素晴らしいぞ、委員長っっ!!」

忍「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

翼「しのぶ……ちゃ……もど」

忍「おお!? おーおー! 済まない済まない! 扉を開けっ放しはいかんな!」

翼(忍ちゃんが私のお腹に手をかざすと、そのままの意味で、手品のように私の傷を塞いだ)

翼「お腹が……服も」

忍「血も足りんか。少し儂のをやろう」

翼(と、ごく自然に、忍ちゃんは自らの首を切り落とし、傷口から流れる大量の血液を私に浴びせる。首なし少女が覆い被さっているかたちになり、私は戦慄した」

忍「こんなものか? よーし、儂のボディ……あれ、うまく動かせん。確かにあるじ様が苦労していた通りじゃな。コントローラーが逆向きみたいじゃ。ンン~」

翼(床に落ちた頭部がなんでもないかのように喋り、細い肢体(死体?)がフラフラと歩き、危なげに頭を拾うと、それを元の位置にもどした)

忍「ん、が、ん、が。う。うむ、完璧じゃな」

翼「忍ちゃん、吸血鬼の力で私を……吸血鬼に戻れたの?」

忍「きゅーけつきー?」

翼(忍ちゃんが、げんなりした)

忍「なにそれ。今時流行らんぞ。儂、吸血鬼じゃないから。マルチタレントですから(笑)」

翼「確かに幅広い才能をお持ちのようだけど」

忍「未だに吸血鬼をやっている輩はプライドがないのかの。上昇志向が見受けられない」

翼「え、吸血鬼じゃあないなら、一体……」

忍「HEYHEYHEY! YOYOYO! ヨウ、同輩(ニガー)。うぬの能力はなんだったかな? YO!」

翼「……『処女懐胎(スーパー・ノヴァ)』、です」

忍「儂はその処女懐胎で産まれ直したのじゃぞ。もう、これ、神の化身に決まってるじゃん。YO!」

翼「は……?」

忍「なんじゃ、学校で習わなかったか? 何にも知らないのう、うぬは。聖母マリアが処女で産んだのはキリストじゃろう」

翼「……ユー、イエス?」

忍「イエスイエス」

翼「カミサマ?」

忍「ジーザスクライストスーパースター」

忍「『GOD』になるのも、なかなかいいもんじゃのう」

翼「そんな別のバイトでも新しく始めたみたいに軽く……じゃあ、さっきの治療は」

忍「え? ふつーにミラクルだけど? 日本語で奇跡」

翼「きっ、奇跡っ! ミラクルよりも言葉の響きに真実味がっっ……じゃない!」

忍「あー、暇つぶしに世界救ってこようかなー」

翼「あらゆる問題が解決っ!?」

忍「でも、あれなんじゃな。別に神になったからといって、慈愛の心が増すときないのな。金持ちの悪いやつがいっぱいいるのがなんとなくわかったわ」

翼「リテラシーは凡人レベルだっ!?」

忍「さて、では行くとするか」

翼「大丈夫なんだろうか、大丈夫なんだろうか……」

忍「『ぼくのかんがえたさいきょうはーれむ』で天狗に、いや、吸血鬼になっておるあのクソガキに、神となった儂が引導を渡してくれよう!」

~~~

翼「――って、阿良々木くんがどこにいるかわからないとか言うしっ!」

忍「おのれ、あやつ、どこに隠れおった」

翼「神様になったんじゃないんですか!?」

忍「それは神の力を越えておる」

翼「融通が利かないっ!?」

忍「取説とかないのかのう。まだ自分の潜在能力が未知数じゃ(キリッ」

翼「きっとあれなんだ!
中古品なんだ!」

忍「水の上を歩いたり、水をワインに変えたりはできるんじゃが、これ、前からできるんじゃよ。そのくせ、物質創造スキルはなんか制限されてるみたいだし。あれ、儂、前の方が強そうじゃね?」

翼「ポンコツだーっ! この神様ポンコツだーっ!」

忍「ネットカフェで情報収集?」

翼「今までの怪異なら、文献を図書館で調べたりすれば正体がわかったけれど、阿良々木くんはルーキー――新人王です。彼はまだ噂話程度の情報しかないはずなんです」

忍「高い年棒もらってるのかのう。儂なんて出来高制じゃったんじゃぞ」

翼「まだ前世紀の負の遺産とは呼べない、つまり今現在、阿良々木くんが怪異として活動している以上、書籍ではなく、ネットで話題になっているはずなんです」

儂「ん? なんか今馬鹿にされたか? あれ?」

翼「というわけなんです。わかりました、神様?」

忍「ん、おお、おお。わかっておる。ペットカフェか。くくく、あやつめ、ここで尻尾掴んでやるからな」

翼(……阿良々木くんも普段、ペット感覚で忍ちゃんに接していたのかもなぁ)

翼(真っ昼間に女子高生がネカフェに行くのは少々危険だ。まあ、補導はされないかもしれないけど、万全に期したい)

翼(なので、忍神様に着替えの服を作ってもらった)

翼「でも、なんでパジャマなんですか?」

忍「いや、なんかこうなった」

翼「どうなってるんですか、その神的スキル……本当に阿良々木くんに敵うんですか?これ、胸、キツイし……」

忍「どうも、神になってから逆に操られているような気分がするんじゃ。もしかしたら、さらに上位の神がいるのかもしれん……」

翼「うぅ、なぜ、ネカフェで我が家のような装いを……」

忍「誰も気にはせん。ほれ、ネカフェ難民の公衆便所になったつもりで堂々としていろ」

翼「それじゃあ、この中で大注目じゃないですかっ!」

翼(こそこそしてても、逆になんかいやらしいけど……って私何考えてるんだろ)

翼(各検索サイトのトップニュースにはなし)

翼(吸血鬼、と――グーグルでも出てくるのはウィキペディアか、映画情報くらいか)

忍「なー、ここ、ジュース好きなの飲んでよいのか?」

翼「そうですよ」

忍「すっげー」

翼(SNSでとか……ツイッターも注目ツイートはないなぁ)

忍「儂、もらってくるな、本当に何でもよいのだな」

翼「だから、そうですって」

忍「おおー……」

翼(……一応、Yahoo!知恵袋も見たけど、さすがに関係してそうなのはないか。まあ、今 微妙な扱いになっているし)

忍「ふぁっふぁっふぁっ。小坂理絵先生の『とんでもナイト』を見つけたぞ。名作じゃよな。いいところじゃなー、ここ」

翼「緊張感がない……」

忍「まあ、そう肩を張るな。カフェなんじゃし、気楽にいこうではないか」

翼「それじゃあ、神様っていうより、一休さんですよ……」

翼(阿良々木兄妹の運命がかかっているのに)

忍「ほれ、これでも飲んでデラックスせよ」

翼「忍ちゃん、リラックスです」

忍「儂とデラックス・リラックスを歌おうではないか」

翼「あの練マザファッカーも参加のっ!? ていうか、確実に伝わらないですよそれ!」

忍「では、ウルトラ・リラックスを歌おう」

翼「わーたしはウルトラ・リラッ……ハッ!?」

忍「前にお前は、『わたしはウルトラ・リラックス!』、と歌う」

翼「ワンテンポ遅れてますよっ!」

>>843
翼「それじゃあ今度は『阿良々木君 吸血鬼 完全体』っと」

忍「あのあるじ様の事じゃ、案外『120%』とか『最終形態』とかコアなワードの方が見つかったりせぬだろうか?」

翼「忍ちゃん早かったのね、ちゃんともらえた?」

忍「もらってきたぞ、儂はこの『コーラマヨ』じゃ」

翼「それ飲み物なの?」

忍「儂とてうぬの気持ちは分かるが、今は少々刺激がほしいのでな
  それからこっちがうぬの……」

翼「それ飲み物なの?」

忍「今のうぬの気持ちは分からんぞ、見れば分かろうカレーではないか」

翼「忍ちゃん、なんでそんなに余裕なんですか」

忍「うぬを労ってやろうというのじゃあないか」

翼「現在進行形で疲弊しているんですが」

忍「儂はうぬから産まれ直したから、うぬは儂にとって母のようなものだからのう。母が苦しむ姿は見たくないのじゃ。委員長、笑え笑え」

翼(なんと。まさかそんな認識だったなんて。これまでとは一転、彼女の全てが愛らしくなってくるではないか)

翼(こんな可愛い子が私の娘かー。聖母も悪くないかも)

忍「儂はそれは母思いじゃ。もはやマザコンの域といっていい」

翼「うぅ、あまりのラブリーさに鼻血が出そうっ!」

忍「実は、さっき誕生したときの高笑いも、『母母母母母母母!!』と笑っていたのじゃ」

翼「そうだったの!?」

忍「あ、七人の母ではないぞ。ボボボーボボーボボではない」

翼「読みの問題になったっ!?」

忍「さて(キリッ、何か情報は見つかったかの?」

翼「あ、自分だけ先にギャグパートから脱出を……今、ここを見ているんですが」

忍「エロサイトか」

翼「エロサイトじゃありません。まあ、何割かは正解かもしれないけど……2ちゃんねるっていうんです。ここはあまり手を出したくなかったけど」

忍「やはり、エロサイトではないか。あるじ様がよくここで『女神様』の画像を集めている」

翼「女神板でネタ収集してるんだ……阿良々木くんのあまり知りたくない一面を聞いてしまった……」

忍「? 皆名無しではないか。そのわりによく吠えるのう。ボスが言っておった『名無しのくせにWebでほざく連中』とはこやつらか」

翼「今のブルーハーブといい、さっきといい、忍ちゃん、ラップ好きなんだね。ここにはHIPHOP板も……っていけない! 脱線するところだった!」

忍「シンゴ02も好きじゃ」

翼「ま、まずはオカルト板!」

悟飯ーっ!

翼「吸血鬼、ヴァンパイアはなし……都市伝説系もハズレか」

忍「あまり、伸びておらんの」

翼「全盛期は過ぎたという声もありますからね」

「見えない落とし穴があった」
「受験生は2ch見てんじゃねえよゆとり」
「今時都市伝説ってセックスしかねえだろ」

翼「……」

「おい、これすごいぞ(画像)」

忍「ふむ」クリック

翼「あっ! 駄目ですようかつに開いちゃ!」

忍「なんじゃこれ」

翼「……袋を頭に被った……人?」

忍「つまらん」

翼「これ、開いちゃまずい画像だったんじゃ……気味悪いよ……」

忍「何をびびっておる。うぬも半分はこの手合いではないか」

翼「そうですけど……もう、オカ板やめよ」

『安価て泣きゲー作る』
『おまえらヒップホップを馬鹿にしすぎ』
『めちゃイケ実況』

忍「おー。ここは賑わっておるようじゃの。日本語がわからぬが」

翼「ジャーゴン、スラングの嵐ですからね」

『vip終わったな』
『妹食った兄貴だけど質問ある?』
『扇情ハメ愛人ってクソコテ来いよ』
『幽霊だけど質問ありますか?』
『友達のお兄ちゃんをゲットしたいです!><』

翼「はぁ。とりあえず幽霊開いてみよう」

忍「儂はこの兄貴が気になるんじゃが……」

翼「たぶん、嘘の近親相姦自慢ですよ」

忍「そうなのか?」

翼「嘘を嘘と見抜けないと、ネットは有効活用できません。変な釣り見て、時間を無駄にできないじゃないですか」

迷い牛「死因はスルーで」

「釣り乙」「まーたゆとりか」「なにコテつけてんの?」「おっぱいうp」「性別は?」

迷い牛「女です。うpは機材ないから無理ですね」

「解散」「なんで女はかまってちゃんなの?」「いくつで死んだの?」

迷い牛「歳は伏せますが小学生のときでした」

「幼女……だと」「お嬢ちゃん、かわいいね、乳首ダブルクリックしちゃうぞ^^」「幽霊ってどんな感じなん?」

迷い牛「ひたすら徘徊してます」

「牛だけにホルスタインwwってやかましいわww」
迷い牛「胸大きいですよ!」

「証拠うp」「貼られるべき画像が」「氏ね」「死んでるだろ」

「好きなアニメは?」

迷い牛「ブルーシード」

「おっさんか」「おっと画像を貼らない>>1ひとりが登場~~」
「ブルーシード見てたっていくつだよ」「なんだババアか」
>>1乙!感動した!」

迷い牛「私、井上さんはあれで覚えたんですよー」

「ジェリドこそ思考」「ニャンコ先生」
「いつ死んだの?」

迷い牛「すいません、時期はスルーで」

「バイファム見てた?」

迷い牛「お禿様関連はザブングルまでしか当時追ってませんでしたねー」

「イデオン劇場版ってエヴァよりすごかったん?」

迷い牛「興行的にはともかく、すごい衝撃でしたよ」

八九寺ってそんなババアだったのか……

っていうかバイファムは禿御大じゃねーよ!

「好きな漫画ある?」

迷い牛「百鬼夜行抄」

迷い牛「最近は萌え4コマとかラノベ好きです」

「最近いいのあった?」「来期は地雷臭しかしない……」

迷い牛「『ぱらいぞ』よかったですよ」

「わたし今戯言シリーズ読んでるの。面白いよねー」

迷い牛「いいよねー。みーまー」

「おまえ面白いなwwwww」
「どこが幽霊なの?」「実態はただのオタクだよ」「ニートか」

迷い牛「>>872監督はやってませんでしたね。原案?」

「知らない」
「禿!」「以下好きなアニメスレ」「以下好きなカニエスレ」「カニエはオワコン」
「屋上」「ラップ(笑)」
「以下好きなイカについて語ろうじゃなイカ」「イカちゃんちゅっちゅっ」

忍者「みんな元気だねー。何かいいことでもあったのかい」

迷い牛「ディラが死んでからはヒップホップ聴かないですねー」

「忍者さんじゃないっすか」「忍者キターーー」「忍者(笑)」

「クソコテはまじでvipの癌だな」「>>1もな」

迷い牛「私このコテ知りませんねー」

「恋愛相談してるやつじゃないの」「ヒント・オカ板」
「ああ、オカ板から出張ね。ご苦労さん」「ジューシー(笑)」
「おまえら忍者さんなめてっと式神使われるぞ」

忍者「使わないよ」

迷い牛「ああ、プロの方でしたか」

「この>>1幽霊なん?」

忍者「だと思うよ?」

迷い牛「幽霊です」

忍者「もうちょっと調べるから待って」

「怒らないでマジレスしてほしいんだけど(ry」

迷い牛「><」

「え、プロいるの?」
「このコテもただのかまってちゃんだよ。顔晒してた。ブス」「女なの?」
「こいつ最高に女」

迷い牛「オカ板見てないですねー」

「てか、どうやって2ch見てるの?」

迷い牛「説明が難しいんですけど公園に果樹園するんですだよ??」

「まじきち」「狂った?」
扇情ハメ愛人「(画像)」

「えろすぎわろた」「もっと」「麿呂AA」
「>>いいぞ!もっとくれ!」「誰だよガキ呼んだの」「まだいたのか」

迷い牛「見てて微笑ましいですよね」

「好きなタイプとかあんの?」

迷い牛「私と目の前で話せる男の人ですね」

「見えるやつに会ったりする?」

迷い牛「しょっちゅうですよ。この間パンツ脱がされました」

「なにそれうらやま」「通報」「何色?」「ブラばつけてるのかな(チラッ」
「うpしろよ」「くんかくんか」「ロリコンしかいねえな」「八九寺?」「jcとセクロスしたいです」

>>1のip検索できないんだが……」
「なにそれこわい」
「どういうこと?」「PCももしもしもない。マジ幽霊」「おいやめろ」

迷い牛「ああ、そうなっちゃうんですねー」

「鳥肌立った」「風呂入れなくなった」「一緒に入ろうぜ」
「マジかよ」「幽霊確定でおk?」

「おい、これすごいぞ(画像)」

「なにこれ」「ブラクラ注意」「グロか」
「何?怖くて開けない」

迷い牛「あー。前にオカ板で貼られまくったやつですね。見ちゃ駄目ですよ」

「え、俺見ちゃったんだけど」「袋被ってるとかってやつ?」「見たら死ぬぞー!」
「あれ笑えないよな…」「余裕でした」

忍者「おいw誰がブスやwしばくぞおどれw」

「単芝死ねよ」「クソコテしね」「誰か画像はれよ」

迷い牛「画像見ちゃった人いるんですけど」

忍者「あーこれねー一応塩まいとけ。あと出来れば坊主がいるところに避難を」

「本物かよ…」「怖い」

忍者「メアド書いて。後でなんとかするわ」

「出会い厨乙」「vipは僕らの時代だ」

忍者「出会い厨ちゃうわwあほんだらw」

「これが忍者さんのご尊顔です(画像)」

「いいじゃん」「ブスか」「昔の彼女に似てるな」「セクロスしてください」
「メアド書くわ」「え、マジなのこれ」「かわいい」
「筆下ろししてください」

迷い牛「写真ください」

忍者「急にスレに青色が増えたんだが」

迷い牛「思い出したんですけど、○○町の外れに空き地が隣にあるビルがあるんですが、ヤバげでした」

忍者「○○町? 北白蛇神社がある?」

「忍者さんとセックスしたい」「ぼくのあそこもヤバげです」
「影縫さんこんなところで何してはるんですか」

忍者「なんでウチの名前わかったん?」

「特定ktkr」「忍者さんは影縫さんらしいです」
「影縫さんセクロスしてください」

迷い牛「駄目ですよスルーしなきゃ…」

「馬鹿すぎワロタwwwwwww」
「馬鹿でもかわいいよ影縫さんちゅっちゅっ」

忍者「あ、やべ」

「まとめ作るわ」
「とりあえずさっきので抜くわ」「処女ですか?」
「なわけねーだろwwwwwwwwww」
「中古は生きる価値なし」

忍者「アホウw女に処女とか訊くなやwねーちゃん頭ファイヤーやでw」

「女アピールはいらない」「でも影縫さんは女でないと」
「男の娘なほうがいいだろ」「人外こそ至高」「ふしゅるるる」
「沙耶…」「ぶっちーツイッターやめるべき」

迷い牛「放送中にツイートするのは感心しませんよね。見ちゃうけど」

忍者「迷い牛はいつそのビル見たの?」

迷い牛「ついさっきですよ。逃げてきましたけど」

忍者「正解。あれ近づいたら死ぬから」

「うち近所なんだが…」
「詳細」「オカ板かここは」
「影縫さんの詳細」「中古だよ」

忍者「もうえーっちゅうねんw」

「誰かスネークよろ」「人身御供か…」
「影縫さんがレポしたらいいじゃん」「天才」「結婚してくれ」「影縫さんはもらっていきますね」
「迷い牛が指示して影縫さんがスネークしたら?」

迷い牛「スネークする流れなんですかね。私はいいですけど」

忍者「あほ。逃げてきたゆーたやんか」

「影縫さん京都?」「まとめに追加しとけ」
「京女とかマジ萌えるんだが」

忍者「なんかスレタイと関係あらへんな」

迷い牛「いいじゃないですか。vipだし」

忍者「わかたー。じゃあ行ってくるわ」

「安価しようぜ」

忍者「ええよ」

「影縫さんかっけー」

忍者「すまん、シャワーだけ先あびさして」

「うp」「IDつきでね」

忍者「するかいw」

「影縫さん単芝だけ残念な感じだな」「新参くせえ」

忍「さっきの画像、見たら死ぬらしいな……」

翼「ええ……」

忍「儂ら、死ぬのか……?」

翼「……このコテさんをスネークして、何とかしてもらいましょうか」

忍「え、嫌なんじゃけどそれ!? 儂はいわくつきの変なビルに行きたくない!」

翼「忍ちゃんこそ怖がってるじゃないですか……」

忍「あぁ、嫌じゃあ……きっと『回路』みたいにリアルブラクラとか見るはめになるんじゃあ……」

翼「吸血鬼、いや、神様がホラー映画にびびらないでくださいよ……」

影縫「あかん。やっぱ、電波が入らん。やっぱブラクラやわ、このビル」

余接「vipのみんなとはここでお別れだね、お姉ちゃん」

影縫「マジもん幽霊が立てたスレなんぞに気まぐれで参加したが、なかなか良スレやったねんけどなあ。みんなでワイワイやって」

余接「スレ主も一緒になってうpを請求していたね」

影縫「スレ主言うなや、余接。新参やー誤解されてまう。しかし、まあ、こっからはプロの仕事や。素人一見さんはお断りやで」

影縫「そう思うやろ――――鬼畜なお兄やん」

暦「……」

影縫「なんや、おどれ、モノホンの鬼畜になってるやん。旧ハートアンダーブレードちゃんもおらへんし。おどれがハートアンダーブレードっちゅー感じやわ」

暦「ああ、今の僕はただの鬼――怪異にしかすぎない」

影縫「ただの怪異? ほーほー。こちらさんのパワーバランス崩れそうやねんけど、それでただの怪異? 冗談きついわ」

余接「今のあなたは文字通り、『化物』だよ、鬼のお兄ちゃん」

暦「化物、ねえ……」

影縫「なあ、おどれの中に妹がおるみたいやけど、喰ったんか?」

暦「ああ」

影縫「ほーん。いよいよ、鬼畜――いや、ただの畜生やな」

影縫「さっき、vipで『妹食うたねんけど~』っちゅースレあったんや。あれ、やっぱおどれか?」

暦「ああ。僕も訊きたいんだけど、影縫さん、vipperだったんすか?」

影縫「普段ほとんどvip見ーひんなー。元々、オカ板住民やし。あれな、けっこう仕事が見つかるんや」

暦「なんか顔晒してましたけど」

影縫「……あれこそ黒歴史や……見慣れんコテに恋愛相談乗ってもろたばかりに……」

暦「あ、けっこう俗っぽいんですね」

影縫「なんか、思い出したら、死にたなってきた……」

余接「もう、いっそ2chで自演して仕事探せばいいんじゃないかな、お姉ちゃん」

影縫「ドアホ。なんでそんな真似せなあかんのや……」

暦「やっぱ不況ですか」

影縫「ちゅーか、不協やな。誰もウチに仕事の連絡くれへん……」

暦(まさかのぼっち疑惑が出たぞ。まあ、不死身専門のゴーストバスターズって響きが強面だしなあ)

影縫「親切にねーちゃんが教えてやるとな、2chで見たらあかん画像貼ってんの、あれ、貝木くんや」

暦「嫌なやつすぎるーっ!?」

影縫「ああやって、呪い感染させて、陰陽師に教えるねん。『いいカモ、おるで』ってな」

暦「それで引き受けちゃうの!? 八百長じゃん! 相撲協会もびっくりだ!」

影縫「いやいや、誓って言うねんけど、ウチはあれ引き受けたことないで。まあ、たまたま犠牲者見っけたら、助けて報酬もらうけどな」

暦「セコいっ!?」

影縫「やかましい! 働いたこともないガキがぁ!ウチらはニッチな産業なんやっ! あれいや、これいやゆーて、気づいたら死んでんねんでっ!?」

暦(う、それは耳が痛い。けど、陰陽師ってやっぱ大変なんだな……)

暦(考えたら、貝木は怪異とか信じてないから、呪われることもないのか。ここまでいくと利己主義もすごいな……)

影縫「なあ、畜生のお兄やん。なんなん、ここ? プロ的にトーシロの、しかもバケモンに訊くなんてあれやけど、それも一時の恥や」

暦「僕もくわしくは知らないですよ。ただ、誰もが避けたがるから、隠れ家にはもってこいでしたけど」

影縫「やろうな。一般人かてここの手前の道は通らんはずや。なんやアブいなぁ、って。さながら蟻地獄やな。ウチもこのビル入る瞬間、ちびってまうかと思たんやで?」

余接「下品だよ、お姉ちゃん」

影縫「冗談や。けどな、これ、本当に怖いとこや」

暦「影縫さんのお墨付きってことは、今の僕には最適なんでしょうね」

影縫「最適? アホ、こんなん町の外れにさえ、ぽつんとあってもろても困るんや」

影縫「だってこれ――――あの世に通じてるやん」

影縫「弘法も筆の誤り――って言うやんか。けどな、ど偉い人がこの世の図を作ったときに誤られたら困るんや。こないな隙間が出来てまうからな」

暦「どうりでホラー系の夢を見るわけだ」

影縫「夢? 今、おどれ夢ゆーたか? 夢、見るんか?」

暦「そりゃあ見ますよ。アンドロイドだって電気羊の夢を見るんですよ」

影縫「こいつは傑作や。『終わったやつ』にドリームを見せる脳があるなんてな」

影縫「念のため訊いとこか。なぜ――――自分の妹を喰った?」

暦「トゥルーエンドを迎えるために」

影縫「上等――――ウチな、ほにゃららエンドとかギャルゲー? とか大嫌いやねん。今のおどれの発言で、ウチのアンチマッチョな部分が刺激されたわ」

影縫「覚悟しいや。ねーちゃんが尻ィ、ペンペンしてやるで」

暦「影縫さんは、拳を鳴らし――斧乃木ちゃんが見せてくれなくなった、飛びきりのキメ顔でそう言った)

暦(2対1か……先にどっちか倒したほうがいいかな)

暦(影縫さんはつかつかと歩き、僕の正面まで来ると、馬鹿みたいに正直な右フックを繰り出した)

暦「……何、笑ってるんです。ガードされたのが笑い所ですか?」

影縫「は――畜生のお兄やん。今回は前回と違うで。ウチらはタッグや」

暦(刹那――背後に気配を感じた)

影縫「余接っ! ぶちかましたれっ!」

余接「――『例外のほうが多い規則』」

暦(僕の肩から上が斧乃木ちゃんに粉砕される。しかし、僕の体は当たり前のように元に戻る)

暦「――で、何なんですか?」

影縫「ええなぁ、今の。やっぱサンドバッグはイカれてもうたら使いものにならんさかい」

暦(影縫さんが、今度は左からストレート打ち出した)

影縫「ウチの一番嫌いなやつはなぁ、すぐにぶっ壊れてまう早漏やっ!」

暦「学校の先生みたいなビジュアルで――早漏とか言うなやっ!」

暦(僕の右腕の薙ぎは、あっさり受け止められる)

影縫「なに、人のキャラ決めつけてるねんっ!!」

暦(影縫さんが僕の股間から天辺までを蹴り上げ、僕は包丁で切ったみたいに二つに分断された)

影縫「おー。おどれみたいな使徒、見たことあるわ。こちとら、エヴァ世代やねん」

暦「じゃあ、これからどうなるかわかりますよね」

暦(僕は『それぞれ元に回復』し、僕は『二人』になった)

暦「これで「平等ですね」

影縫「おーおー。こりゃあ、余接と二人でライダーキックかまさんと、勝てんっちゅーフラグかいな」

あかん、ハイボールきくわぁ

>>926
ところでこのスレで完結できるのか?

>>928
想定の範囲外です
先は考えてるが、とちゅうの長さとかはフリースタイルやさかい

暦(とは言っても僕(は2 ON 2でやるつもりはない)

暦「当「然!」

暦(狙いは(影縫さんのほうだ!)

暦(僕らは一斉に影縫さんに飛びかかり(シンクロ・ライダーキックを繰り出す)

影縫「先にうちか。ま、そうやろ」

暦「でやあああああああ「あああああああああ!」

影縫「余接! ちょい『体借りる』で!」

暦(影縫さんは斧乃木ちゃんの足首(を両手で掴むと、ぐいっと持ち上げ――)

影縫「どらぁっ!」

暦(斧乃木ちゃんは『例外のほ(うが多い規則』を展開し)

暦(影縫さんはそのまま僕らを薙ぎ払うように、(斧乃木ちゃんを振り回した)

影縫「ダブルホームランや!」

暦「がっ「!?」

暦(僕らは天井を突き破り、(屋上まで吹き飛ばされた)

暦「やっぱ、無茶苦「茶だな、あの人……」

影縫「おるかー?」

暦(影縫さんと斧乃木ちゃんが階(段を昇って、屋上までやって来た)

暦(けど、あんな攻撃、漫画でしか見たことないぞ(ハーメルンとかネウロじゃないんだから)

暦(もしかして、斧乃木ちゃんの名(前ってそういうことなのか?)

影縫「期待外れのルーキーやな。ボールが止まって見えたわ」

余接「来期から二軍落ちだね、鬼のお兄ちゃん」

暦「あんたらが「掟やぶりなんだよ……」

余接「二つボールが投げられて、それを打ち返しちゃいけない掟があるのかな?」

影縫「かかっ、『例外のほうが多い規則』、や。にしても、おもろい喋りやな、おどれ」

暦「……」

影縫「なんやなんや、一人に戻るんか。珍しいもん、もっと見たかったわー」

影縫「ほれ、今はうち『働きマン』や、仕事はサクサク進めるで」

暦(と、影縫さんは文字通り一瞬で間合いを詰め、右の掌低を喰らわせた)

暦「ぶっ!」

影縫「おらおら、ねーやん、止まらんで」

暦(続け様に、左、右、左、右――と連続で掌低をぶち込んでくる。その度に僕の体に極太のレーザービームを当てたように穴が開いてしまう)

暦(相変わらず、冴えも変わらず、その威力。掌低が僕の体を削っていく。『ガオン!』という効果音がしそうだ。ほとんどザ・ハンド……ザ・ハンズじゃねえか)

暦(あれ、最強のスタンドだぞ、しかもこの人頭悪くないし!)

暦「んっ――にゃろう!」

暦(僕も拳を振るう。影縫さんのそれと激突し、血の火花が飛び散る。ちなみに影縫さんはどこにも傷はできていない)

影縫「けけ、これがあれか、『ラッシュの速さ比べ』かい」

暦(影縫さんのこぶしを振るスピードがさらに上がった)

影縫「おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらっ!」

暦「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ!」

暦(断っておくとやりあっている僕らは大真面目だ。まあ、正直往年の名シーンが体験できて嬉しくないと言えば嘘だけど。つい『無駄無駄ラッシュ』になってるし)

影縫「夢中やなぁ! 畜生のお兄やん! けど忘れんなや!」

暦(ふ――と、僕の背後に斧乃木ちゃんが立っていた)

暦「あっ――ずりっ!」

余接「『例外のほうが多い規則』」

暦(僕の腹が、持っていかれた)

暦(これは、ルールなし、例外のほうが多い戦いなのだ)

暦(僕は怪異になってその再生能力も底上げされていたし、月火を取り込んでほぼ完全に『死なない』)

暦(はずだが――――)

影縫「不死身を倒す方法知っとる? それはな、『再生せんうちに、跡形もなく消すこと』や!」

余接「僕らの攻撃があなたの処理スピードを上回ればウィン、ってことだよ」

暦「ぐっ!?」

暦(まだ、僕の復元の速さは一秒もかからない、が)

影縫「いつまで持つんやろな!?」

暦(前は影縫さん、後ろは斧乃木ちゃんからと板挟みに殴られ、僕のライフゲージがあったら既にゼロだろう。やっぱ格ゲーみたいな人達だ)

暦(ジョジョ三部ゲーのスタンドを利用したハメ、と言えば伝わるだろうか)

暦「ぐっ、がっ、がっ!」

影縫「おい、新人王! なんか治りがゆっくりになってきたなぁ! そろそろ、フィニッシュかい! じゃあ、ラストはカッコよくキメよか!」

暦(刹那、影縫さんは体を沈め――)

影縫「アッパアアァーカットッッ!」

暦「!」

暦(僕の頭部の2/3が消え、)

影縫「ほな、いくで!」

影縫「ボディボディボディボディボディボディアッパー!」

暦「ぐあっ! はっ!?」

影縫「ボディボディボディボディボディボディアッパー! ボディボディボディボディボディボディアッパー!」

暦(あれ、もしかして永久コンボ入っちゃった?)

影縫「ボディボディボディボディボディボディアッパー! ボディボディボディボディボディボディアッパー!」

影縫「ボディボディボディボディボディボディアッパー! ボディボディボディボディボディボディアッパー!」

暦(抜けられねえ! だから世紀またいでからのKOFは嫌いなんだよ!)

暦(斧乃木ちゃんは斧乃木ちゃんでチマチマしゃがみ弱Pしてるしっ!)

影縫「ヘリオン! ヘリオン! ヘリオン! ヘリオン! ヘリオン! ヘリオン!」

暦「ぐっ……ああっ」

暦(まずっ――消され)

影縫「ワン、ツー!――――これで、終いやっ!」

暦(し――)

暦(死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死)

影縫「アイタタ……って、別に痛ないけど。なんや、粒子も残らず消えてもうたなー。誰や、あいつドラフト指名したんは?」

余接「ボスキャラも倒したし、ストーリーは終了だね、お姉ちゃん」

影縫「せやな。あ、あれやで。『強キャラ使うてズルいやん』ってのはナシやで。それ、初心者の言い訳やわ」

余接「新人王だったけどね」

影縫「今まで応援ありがとうございました。西尾ミシンセンセの次回作に……あれ、ミシンやったっけ?」

余接「一体何の話をしているんだい? お姉ちゃん」

影縫「西尾、ニシン……微塵やったかな」

余接「微塵も残っていないけどね」

影縫「まあ、ええわ。ほなな。vipのみんなに報告でもしよかー」

余接「そうだね、お姉ちゃん」

影縫「こない、血の池にしてもうて、ひどい絵やなー」

余接「大量にも程があるね、とても一人分の出血には見えないよ」

影縫「血の池……」

余接「どうしたんだい、お姉ちゃん」

影縫「オーマイガーや。忘れとった。ここ、どないな場所か」

余接「?」

影縫「ここはあの世が近いさかい。生と死の境界が曖昧になっとるんやわ。ほれ、見てみい」

余接「……オーマイガー――僕はキメ顔でそう言った」

――ず……ず……

影縫「『血が這う』とこ、映画以外で初めて見たわ」

――ずずず……

――ずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずず……

影縫「……なあるほど」

――ずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずず

影縫「腐っても怪異の王、新ハートアンダーブレードは伊達やないっちゅうことか」

――ずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずず

影縫「余接、まだvipに報告は無理や。こっから敗者復活戦――いや、怪者復活戦やで」

――ずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずず……ず……ず……

影縫「ほうれ、おっかない兄やんのお出ましや」

余接「ワーオ――僕は開いた口が塞がらない」


暦「」

暦「…」

暦「……」

影縫「おはようさん。どや、お目覚めの気分は?」

暦「アー」

暦「サ イ コ ウ ! !」

暦「オ目々パッチリ! 気分モ快晴! マルデ元旦ノ朝ニ洗イ立テノパンツヲ穿イタミタイニサーッ! アレ、何カ声ガオカシイナ?」

影縫「クトゥルーの神サンがアフレコしたみたいやで」

暦「ア……アー、マイクチェック、マイクチぇっく。んんっ」

暦「えー狂乱の時代の幕開け拍手拍手拍手狂喜を学習ゥ!」

暦「僕様ちゃんをケチョンケチョンにしてくれたお姉さんに復讐! 逆襲するためにいざカムバックゥ!」

暦「鉄血にして熱血にして冷血な新生かまってちゃん、阿良々木暦くん、大復活でーすっ!」

暦「おまえら、僕に惚れるなよ?(キリッ」

暦「いやー、焦ったー、マジ焦ったわー。ちょっと今僕死んじゃってたわー。復活したけどー」

影縫「うっざ。復活して、キャラ変わったん?」

余接「元々こうじゃないかな、お姉ちゃん」

影縫「せやな。かまってちゃんって自覚してたんやな」

暦「それにしても、殺されたのが僕でよかったわー。他の人だったらストーリー終わっちゃうところだったわー」

影縫「スレも残り僅かやし、死んどったほうがよかったんちゃう?」

暦「ノー! ノーノー! 僕は死にましぇ~~ん!」

余接「これはひどい」

暦「斧乃木ちゃんに言われたくないなー、僕ー」

余接「腹立つ」

影縫「まあ、キメ顔とか覚える子に言われたないな」

余接「!?」

影縫「あ、すまん。これでもお姉ちゃん、キンチョーしてるんや」

暦「閑話休題。じゃ、スレも残ってないし、影縫さんと斧乃木ちゃんが死んで、バッドエンドね」

翼「スレに出てたビルって、ここ、ですね」

忍「あぁ……嫌じゃあ……ネカフェで漫画読んでいたい……」

翼「コテさんの報告は到着を最後に止まっちゃってるけど、まだいるのかな」

忍「そのスレも皆の『なぁ……スケベしようや……』の書き込みしかされなくなったしの」

翼「京都の方だったみたいですし」

忍「迷い牛も流れに乗っておったが……あやつは何なのじゃろうな」

翼「なんか話し振りに既視感があったんだよね。うーん」

翼「それにしても、明らかにこのビルだけ異様な空気ですね」

忍「なあ、やっぱ帰らんか? 呪いとか、儂らならたぶんなんとかなるじゃろ」

翼「今さらですか。神様なのに……あれ、屋上に誰かいる?」

忍「! か、帰るぞ! はやく、はやく!」

翼「大丈夫、きっとあれがコテの陰陽師さんですよ」

忍「え、え~……」

翼「何してるのかな?」

翼(と、その屋上の際に立つ(たぶんコテである)彼女を注視していると)

翼(ふらっと、『それが当たり前であるかのように』、宙に倒れこみ)

翼(――――落下した)

翼(どしゃっ――――という嫌な音がした)

忍「ひぃっ!」

翼「……」

忍「や、やっぱり『回路』じゃー! もう駄目じゃ、儂ら死ぬんじゃー!」

翼(落ちた『彼女』はピクリとも動かない。よく見ると、側にもう一人、『彼女』よりも体格の小さい、誰かが倒れていた)

忍「な、なんでうぬはそんなに冷静なんじゃ!? 儂らおしまいなんじゃぞ!」

翼「これは映画の話じゃありません。現実です……って、それでも……」

翼(怖い。私だって怖いのだ。しかし、『彼女達』が普通の人間ならば、急いで救急車を呼ぶ必要がある)

翼「とにかく、確認しないと」

翼「もしもし。聞こえますか?」

翼(あれだけ体に衝撃を受けたのだ。触れずに大きな声で生存確認をする)

翼「もしっ」

影縫「――ああー、痛」

翼「生きてる!」

翼(よかった。よし、携帯で救急車……忍ちゃん、なぜ私の影に隠れる(一般的な意味で)。真宵ちゃんか、あなたは)

影縫「あー……地面、地面やん。あかんわ、こりゃ。すまん、ねーやん、どっか何でもええから、地面以外のとこ運んでえや」

翼「地面? よくわかりませんが、地面じゃなければいいんですね?」

翼(私は忍ちゃんに簡易ベッドを作ってもらい(ディ・モールトッ!)、彼女をそこへ寝かせた。それにしても、この人鋼鉄みたいだな……)

影縫「あ? なんや、旧いほうか。主様の追っかけか? あのアイドル魔王、しゃれにならんわ。どうなってるん?」

忍「陰陽師か。その話し振りから察するに、ここにあやつがおるようじゃな」

翼(復活したか。え、二人はお知り合い?)

影縫「落とされたか。あのお兄やん、うちと相性最悪やわ。ぜーったい、ルートとかない」

影縫「余接……おるか。ねーやん、ちょいその子看たってえや」

翼「は、はい」

翼(これは……生きてるの?)

影縫「落ちたくらいじゃあ、死なんと思うが。ま、体はあるな、なんとかなるやろ」

忍「問おう」

影縫「なあ、旧いの。うち、病み上がりやさかい。しんどいのは遠慮してえな」

忍「うぬ、中古か?」

影縫「じゃかあしいっ!」

忍「ふん。これでもし中古ではなかったら、面白いのだがの。まとめに追加されるぞ」

影縫「……」

翼(え、何その意味あり気な沈黙)


――はーはっはっ、はーはっはっ!

ぶっちゃけ飯食いたい
次のことは、>>1000までの多数決は?
ちなみに我がもしもしでスレ立ては無理

次スレいってグダグダつづくのもどうかと思うからここで終わらせChina

暦「ぶっちゃけ戦場ヶ原と眼窩姦したいです」

これで

止まったみたいけど次が多いか
じゃあ立てられるやつが>>992のスレタイでってことでいいかな?

>>991
ヒロイン全員出したらおしまいの予定だた

1000ならうんこくう

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