いーちゃん・阿良々木「ガチンコ野球対決?」 (452)

戯言シリーズのキャラ(人間含む)と物語シリーズのキャラ(刀含む)が野球をするSSです。

更新は激遅ですが、ご了承下さい。

SS都合なので、細かいことは大目に見といて下さい。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1344420024

いーちゃん「って、何これ?」

人識「俺に訊くんじゃねーよ」

暦「というより、あなた達誰ですか?」

七花「っていうか、ここはどこだ?」

人識「っていうか、何でお前は上半身裸なんだよ?」

七花「何だ、お前? 随分小さいな? とがめと同じくらいだ」

人識「誰だよとがめ!」

いーちゃん「落ち着けって。それより君たちも知らない人に呼ばれてここに来たの?」

暦「はい。何か凄く上品なブラジャーが世界的危機にあるって聞いて、全速力で駆け付けたんだけど……」

人識「どんな理由だよ」

いーちゃん「ぼくも似たような理由かな。崩子ちゃんがぼくの抱き枕になるのを止めようとしてるって聞いて急いで来たんだ」

人識「変態的理由っていう点しか共通してねーよ!」

七花「知らない人には付いて行っちゃダメだって、とがめが言ってたぞ」

人識「そういう、お前だってここに来てんじゃねーかよ」

七花「俺は暇だったから」

人識「そのとがめって奴の言いつけはどこ行った!?」

暦「そういう君はどうしてここに?」

人識「俺は付いていけば菓子をくれるって言われたから」

いーちゃん「子供かよ」


??『へっくしゅうぅいっ!』


い・人・暦・七「!!?」


鵜鷺『うぅ……。誰か私のことを噂でもしてるんですかね? 思いっきりくしゃみをしてしまいました』

玖渚『それはいいけど、鵜鷺ちゃん。マイク入ってるよ』

鵜鷺『え!? 嘘っ!? うわっ、本当だ! 思いっきりスイッチが入ってるじゃないですか!』

人識「何だよ、これ?」

暦「この件の黒幕だとしても、かなりグダグダじゃないか」

七花「すんごく大きなくしゃみだったな」

いーちゃん「あれ? この声どっかで聞いたことがあるような……」

鵜鷺『えー、おほんおほん! テステス。……音量さんもうちょっとエコー入れて下さい』

暦「どこのMCだよ」

人識「エコーなんかいらないだろ」

鵜鷺『さぁ、それでは始まりました! 第一回 戯言シリーズ&物語シリーズ 強いのはどいつだ? ガチンコ野球対決ーーーっ!』イエーーーイ!

いーちゃん「………」

人識「………」

暦「………」

七花「………」

鵜鷺『プロ野球では後半戦に入り、高校野球では甲子園開幕! まさに今、野球シーズンの到来です!』

暦「あぁ、そういえば今日が甲子園開幕の日か」

七花「てか、甲子園って何だ?」

鵜鷺『そのシーズンを前にして、私たちがすべきことは何か? それはただ一つ! Baseball! そう野球です!』

いーちゃん「鵜鷺ちゃんテンション高いな……」

人識「ていうか、また野球やんのかよ」

鵜鷺『今回は玖渚機関全面協力の元、戯言シリーズのキャラと物語シリーズのキャラを総動員し、野球対決をすることが決まりましたー!』


戦場ヶ原「何、ここ?」

一姫「あ、師匠! 何ですか、これ?」

伊織「あ、人識くん。また野球をやるって本当ですか?」

とがめ「七花ぁー! また私の命令なしに勝手にうろつきおって! 随分探すハメになったではないかぁー!」

出夢「何だ何だ? また野球やんのか?」

神原「何? 野球やるとは本当か? 阿良々木先輩!」

こなゆき「あーーーーーっ! 七花おにーちゃんだ! お久しぶりですね!

人識「うおっ! 何かぞろぞろ来たな」

いーちゃん「本当に野球やるんだ」

暦「僕野球やったことないんだけど」

七花「おー、とがめとこなゆき。こんなところにどうしたんだ?」

鵜鷺『それでは、これから大会の内容を説明させていただきます。ルールは通常の野球と同じルールで行ってもらいます。ただし能力の使用は禁止します』

暦「能力って何だよ……」

鵜鷺『大会方式は、A~Dチームに分かれてのトーナメント方式。そして見事優勝したチームには、どんな願い事も一つだけ叶うトロフィーを贈呈させていただきます!』

全員「おおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

鵜鷺『それでは皆さん。優勝を目指して頑張ってください!』


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チーム戯言


みいこ「何だ。また野球するのか?」

いーちゃん「ええ、どうやらそのようですね」

鈴無「そのようですね、じゃないだわよ! あんたそういう事は前から言うなりなんなりしなさいよ!」ガシッ

いーちゃん「す、すいません……」ミシミシ

出夢「まぁまぁ、いいじゃねーか。僕、このメンツで野球やるの好きだぜ」

一姫「姫ちゃんもですぅ!」

崩子「わたしも、少しだけ」

子荻「私も、これだけのメンツの監督をするのは楽しいです」

玉藻「あたしもすごく楽しみ」

鈴無「……そうだわね。アタシも正直楽しみではあるだわ」

みいこ「それなら、そろそろ離してやれ。いの字が危ないぞ」

鈴無「ああ、忘れてただわ」スッ

いーちゃん「ごほっ、ごほっ……わ、忘れないで下さいよ」

鈴無「全く。本当は正座をさせてたっぷり説教をしてあげたいとこなんだけど、今回は可愛い娘に免じて勘弁してあげるだわ。可愛い娘に感謝するだわね」

いーちゃん「は、はい。ありがとうね、皆」

出夢「いいっていいって。気にすんなよ、お兄さん」

人識「は? お前も『可愛い娘』に入ってたのか?」


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チーム化物


暦「というわけで、野球することになった」

真宵「ちょっと、腹巻きさん。何勝手に話を進めちゃってくれてるんですか?」

暦「この件については本当に申し訳ないと思ってるけど、その前に僕のことを、お腹に巻く簡単な編み物みたいに言うな。僕の名前は阿良々木だ」

真宵「失礼。噛みました」

暦「違う。わざとだ……」

真宵「噛みまみた」

暦「わざとじゃないっ!?」

真宵「ラミは下手?」

暦「お前何でラミレスを知ってるんだよ?」

戦場ヶ原「随分楽しそうね、阿良々木くん」

暦「」ビクッ

戦場ヶ原「あまりに楽しそうなものだから、嫉妬のあまりに阿良々木くんの肉を少しずつ剥ぐとこだったわ」

暦「恐ろしすぎるわ!」

神原「凌遅刑という中国の拷問の一種だな!」

暦「何でお前は、そんな拷問とかに詳しいんだよ!」

神原「さすがに私でも、この拷問は受けたくはないな」

暦「どんな拷問だって受けたいものなんかねーよ!」

火憐「兄ちゃん兄ちゃん。野球やるのはいいんだけどさ、人数足んなくねーか?」

暦「え?」

月火「うん。そうだね。私に火憐ちゃん。お兄ちゃんに戦場ヶ原さんに羽川さん。撫子ちゃん神原さん、あとそこの小さい女の子を入れても八人しかいないよ?」

暦「うわっ、本当だ」

羽川「いや、本当だって言う前に気付こうよ……」

撫子「どうするの、暦お兄ちゃん?」

暦「どうするって言われてもな……」

?「まったく、しょうがないのぉ~」


忍「儂が特別に協力してやるとするかの」スゥー

暦「忍!?」

忍「勘違いするなよ、お前様。お前様の為じゃなく、儂がしたくてするだけじゃからな。別にこの間読んだ『ラストイニング』に影響されて野球をしたくなったんではないからな?」

暦「本当にお前がしたくてするだけかい」

羽川「忍さんも一緒に出てくれ―――」

忍「儂をその名前で呼ぶでない。うぬらが儂の名を呼べば呼ぶほど、儂はこの名に縛られてしまう事になるんじゃからな」

羽川「あ、ごめんなさい……」

神原「しかし、それでは私達は何て呼べばよいのだろうか?」

火憐「確かに、名前を呼び合わずに試合するのは、ちぃっとばかし無理があるよな」

忍「適当に吸血鬼ちゃんって呼べばよい」

暦「ばっ、お前!」

月火(吸血鬼……?)

火憐「よろしくなー、吸血鬼ちゃん! あたしは阿良々木火憐。こざと偏に可能性の可、良い良い、それに若木の木。火を憐れむで、火憐」

忍「面倒だから、小娘とよいか?」

火憐「おう! 試合は任せておけ! ほれ、月火ちゃんも自己紹介しろよ」

月火「あ、うん。阿良々木月火、です……」

火憐「よろしくなー!」アハハハ

暦(火憐ちゃんが馬鹿で良かった……)ホッ


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チームフォックス


狐「ふむ。まさか、こんな形で再集するとは思わなかったな」

一里塚「本当ですね。わたくしとしても、またこのメンバーで野球をするとは思いませんでした」

軋識「俺としてはもうこりごりだっちゃよ」

伊織「そんな弱気でどうするんですか! 絶対今度こそ勝ちますよー。目指すは優勝です」

双識「そうだね、伊織ちゃん。やるからには勝つことに全力を尽くすよ」

曲識「この大会を機に、チーム戯言にリベンジをするのも悪くない」

高海「僕たちは全力で戯言を潰す」
深空「僕たちは全力で戯言を潰す」

高海「お前はやる気がないのか?」
深空「お前はやる気がないのか?」

高海「もしそうなら、まずはお前を全力で潰すぞ?」
深空「もしそうなら、まずはお前を全力で潰すぞ?」

軋識「あー、分かった分かった分かったっちゃよ。確かに前回負けで終わって、腹の居心地が悪かったとこだったからな。ここでそれを解消するのもいいっちゃね」

伊織「よぉーし、それでは全力で優勝を狙いますよう!」

高海「何故、貴様が仕切る? このチームのリーダーは狐さんだぞ」
深空「何故、貴様が仕切る? このチームのリーダーは狐さんだぞ」

狐「別に構わん。貴様たちで好きにやれ」

伊織「ほらほら、変なお面を被った人もそう言ってますし、いいじゃないですか」

高海「やっぱり貴様殺す!」
深空「やっぱり貴様殺す!」

伊織「絶対勝ちますよー。えいえいおーっ!」


「「「「「「「おーーーーーーーーーーーーーーっ!」」」」」」」


伊織「……あれ? 哀川さんは?」

伊織「あ、あの~。哀川さんがいないんですけど?」

双識「あれ? そう言えばそうだね」

軋識「お前、何か知ってるか?」

一里塚「いえ、わたくしは何も……」


ピンポンパンポーン!


哀川『あ! あ! あーーーーーーーーーーっ! おい、玖渚ちん。これマイク入ってるか?』

玖渚『入ってるってば。だからあまり僕様ちゃんの隣で大声出さないでよ』

伊織「あ、哀川さん!?」

軋識「何で、実況席にいるっちゃ?」

哀川『わりぃわりぃ。マイク入ってるんだったら大丈夫だな。おーい、元チームフォックスーっ! 今回解説役で出演することになったから、試合出れねーから。変わりは用意しといたから、後はよろしくなー』


ブチンッ!


伊織「………」

軋識「………」

一里塚「………」


「「「「「「「「「ええーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」」」」」」」」」


伊織「ちょ、ちょっと待って下さいよ。前回絶対的4番がいて負けちゃってるんですよ?」

絵本「か、変わりを用意したって言ってるけど、一体どんな人なのかな……?」

??「おーい、伊織さーーん!」

伊織「あれ? この声って……」

小鹿「久しぶり! 元気してた?」

伊織「小鹿くん! 来てくれたんですか?」

小鹿「うん、『人類最強』に頼まれたからね―――っていうのは嘘で、ただ個人的に伊織さんの為に来たんだ」

伊織「そうなんですか?」

小鹿「うん。ボクが好きな伊織さんの為に頑張りたい。それがボクが選んだ選択だよ」

伊織「小鹿くん……。逃げた方がいいですよ」

双識「私の目の前で私の妹に手を出そうとはいい度胸だね」ユラァー 

小鹿「」ダラダラ

双識「それじゃあ、零崎を始めようかーーーーーっ!」


ガシャーンッ!


軋識「おい、レン落ち着けっちゃ! トキ手を貸せ―――」

曲識「」ズーーーーーーーーンッ…

軋識「トキーーーッ!?」ガーンッ




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チーム刀


とがめ「ふむふむ。なるほど、大体の野球のルールは理解したぞ」

否定姫「わたしも大体は把握したわ。本当にくだらない。ただの球遊びじゃない」

鳳凰「おれも完璧だ」

七花「えーっと、とがめ。俺は今回どうすればいいんだ?」

とがめ「お前がすることは変わらんよ。いつも通りわたしの言う事を忠実にこなせばよい。それでこの大会優勝はわたし達のものだ」

七花「そ、そうか?」

とがめ「とはいえ、相手は得体のしれない恰好をした輩共だからな。今回ばかりは、一時休戦ということになりそうだな」

否定姫「本当に嫌だけど、この場合はしょうがないでしょうね」

鳳凰「おれは最後にトロフィーさえ手に入れば問題はない」

とがめ「ちょっと待て! 何故トロフィーの行方が貴様であることになっているのだ!? トロフィーはわたしが貰う」

否定姫「あら、それは聞き捨てならないわね。トロフィーはわたしが貰うわ」

とがめ「ふざけるな! トロフィーはわたしの物だ!」


ワー!ワー!ワー! ワタシノダー! ヒテイスルワ! マニワニングンノフッコウノタメ!


こなゆき「七花おにーちゃん、お久しぶりです!」

迷彩「こら、あまり暴れるんじゃないよ。……しかし、本当に久しぶりだね。虚刀流の坊や」

七花「おお! 迷彩も来てたのか!」

校倉「おれも来たぜ、虚刀流」ドシドシ

汽口「わたしも参加させて頂きます」ペコッ

銀閣「おれも来たぞ……」フラァ

七花「おおお、皆も! こんだけいればすげぇ心強いな!」アハハハ! 

七実「わたしも来たわよ、七花」

七花「………」ネェチャン…




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鵜鷺『えー、それでは各チームの代表者。トーナメントの抽選会を始めますので、グラウンド中央にお集まり下さい』


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子荻「それでは、行ってきます」

いーちゃん「行ってらっしゃい」

出夢「いいくじ引けよー」フリフリ

子荻「無茶言わないで下さい……」スタスタ

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羽川「えっと、わたしが代表でいいのかな?」

暦「当たり前じゃないか! むしろ羽川じゃないなら誰がやるんだって感じだ」

戦場ヶ原「屈辱的だけど、こればっかしは阿良々木くんと同意見ね」

暦「屈辱的って何だよ!」

戦場ヶ原「それより、私達の代表として行くんだから、もっと胸を張っていきなさい。その大きな胸は飾り?」

羽川「いや、飾りじゃないけど……。うん、そうだね。ドンと構えて行ってくる」スタスタ

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一里塚「それでは行ってきますね」

伊織「うな~。わたしが代表役をするはずでしたのに……」

軋識「俺は一里塚の女の方がいいと思うっちゃ」

曲識「僕もそう思う」

伊織「そんなぁ~」

双識「大丈夫だよ、伊織ちゃん。私の中では伊織ちゃんが一番だからさ!」

伊織「双識お兄様の中で一番でも意味ないですよう」

双識「」ズーン…

一里塚「えっと……それでは行ってきますね」スタスタ

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とがめ「それでは行ってくる」ニコニコ

否定姫「否定するわ。何故あの時にグーを……」

鳳凰「くっ。真庭の復興が……」

七花「んじゃあ、おれも……」スクッ

とがめ「馬鹿か貴様。代表者だけと言っておろう。貴様はここで待っていろ」

七花「え? でも、それじゃあとがめに何かあったらどうすんだよ?」

とがめ「対戦相手を決めるだけだ。そなたがいなくてもできるわ」

七花「でも……」

とがめ「お前は試合でちゃんと私の役に立ってくれるだけでいい。だから、わたしは大丈夫だ」

七花「とがめ……」

とがめ「それじゃあ、行ってくるよ」スタスタ



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グラウンド中央


子荻「………」デン

羽川「………」デン

一里塚「………」デン

とがめ「………」デン

鵜鷺『それでは、トーナメント抽選会を始めます』

子荻(この抽選会が持つ大きな意味合いは大きく分けて二つある)

羽川(一つはできるだけいいくじを引いて、楽なトーナメントを取ってくること)

とがめ(そして、もう一つは―――)

一里塚(各チームの代表者がどんな人かを観察すること)

鵜鷺『それでは、まずはチーム戯言。前へ出てきて下さい』

子荻「はい」

子荻(チームの代表者。つまり、その人はそのチームの顔役ということになる)

羽川(チームは個の集まりであると言っても、チーム単位で見ればそれは一つの集団)

とがめ(だからこそ、一つ一つの集まりには必ず特色が表れる)

一里塚(そして、その特色をもっとも表してるのが、そのチームの代表者)

子荻(つまり、その代表者を把握することは、そのチームを把握することに近い―――)

鵜鷺『チーム戯言は4番ですね』カキカキ

子荻「………」

羽川「………」

とがめ「………」

一里塚「………」


((((戦いはもう始まっている!))))



今日の更新はここまでです。

次回の更新は来週くらいを予定してます。

よかったら、次回も見てって下さい。

鵜鷺『それでは、このカードを前のトーナメント表に掛けてきて下さい』

子荻「分かりました」

羽川(凄いなー、萩原さん。こんな人前に……しかも一番手で前に出てるのに、全く物怖じてない)

子荻「」スタスタ スッ カチャッ

羽川(長くて綺麗な髪の毛。加えて、日本刀の先端みたいな魅惑的な雰囲気。あれで私と同じ年だって言うんだから信じられないよね)

羽川(確かあの人は監督専攻の人。随分頭の切れそうな人だけど、一体どんな采配を振る―――)ゾクッ!

羽川「」チラッ

とがめ「………」シーン

一里塚「………」シーン

羽川「………」

羽川(……そうだった。今見られてるのはあの人だけじゃないんだ)

とがめ「………」

一里塚「………」

羽川(まずいなー。一体何を見られたんだろ? 大したことじゃなければいいなー)

鵜鷺『それでは次、チーム化物の代表者。前へ出て下さい』

羽川「あ、はい」スタスタ


羽川「」スタスタ

とがめ(ふむ。しかし、ここにいる奴らは皆変わった格好をしてる奴が多いな)

鵜鷺『それでは、カードを引いて下さい』

羽川「はい」スッ

とがめ(あの女は、特に変わった格好をしてるな。何故肩の部分があんなに盛り上がった着物を着てるのだ?)

羽川「どうぞ」セイフク

鵜鷺『どうも。えーっと、チーム化物は2番ですね』カキカキ

とがめ(はっ。まさか、あの方の部分に武器を隠しておるのか?)

とがめ(だとしたら、あの女は忍びの者……)

鵜鷺『それでは、このカードを前のトーナメント表に掛けてきて下さい』

羽川「はい」スッ

とがめ(あの女、見た目によらず侮れんかもしれんな……)

羽川「」スタスタ

鵜鷺『はい、では次。チーム刀の代表者前へ出てきて下さい』

とがめ「ん? わたしか」スタスタ

一里塚(ふむ。中々いい感じに事が運んでくれてますね)

鵜鷺『それでは、カードを引いて下さい』

とがめ「言わなくとも分かっておるわ」スッ

一里塚(今のトーナメント表を見る限り、初戦で当たるのはチーム戯言かチーム化物)

子荻「………」

羽川「………」

一里塚(子荻さんは以前戦ったからそこまで注視しなくてもいいでしょう。問題なのはチーム化物の羽川さん)チラッ

羽川「………」シーン

一里塚(見た感じそこまで体力がよさそうには見えませんが、代表者として選ばれるくらいの人。恐らくチームから信頼されるような何かがあるのでしょう)

とがめ「ほれ、カードじゃ」スッ

鵜鷺『ありがとうございます。えーっと、チーム刀は3番です』カキカキ

一里塚「………」

羽川「………」

とがめ「なるほど。わたし達の初戦の相手はチーム戯言というわけか」チラッ

子荻「………」ドモ

とがめ「よろしくたのむぞ、小娘」フンッ

鵜鷺『それでは、トーナメント表も決まりましたので、各チームは試合に向けてアップをするなり、作戦を練るなり、何なりとしちゃってください』

鵜鷺『第一試合 チームフォックス対チーム化物の試合は11時を予定してますので、両チームは、その時間までにメンバー表を持ってグラウンドまで集まって下さい』


「「「「「「「「「はーーーい」」」」」」」」」




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チームフォックス


一里塚「ただいまです」

伊織「お帰りなさいです」

一里塚「初戦の対戦相手は見ての通り、学生さんのチームですね」

軋識「ということは、チーム戯言と当たるのは決勝ということになるっちゃね」

一里塚「そうなりますね」

曲識「しかし、向こうが勝つとは限らないがな」

伊織「わたしとしては、是非決勝戦で人識くんにリベンジをしたいですけどね!」

一里塚「それよりも先に、こちらが初戦を勝たなければ意味がないのですけれどね」

深空「相手はのんきなガキが集まったチーム。狐さんが率いる僕たちが負けるはずがないだろ」
高海「相手はのんきなガキが集まったチーム。狐さんが率いる僕たちが負けるはずがないだろ」

軋識「まぁ、確かに戦力的には俺達の方が断然上だと思うっちゃ。けど油断してると、足元をすくわれるなんてこともあり得るからな。初戦を全力で勝ちにいくっちゃ」

深空「ふん。言われなくても全力で勝ちにいくつもりだ。偉そうに指図するな、ロリコンが」
高海「ふん。言われなくても全力で勝ちにいくつもりだ。偉そうに指図するな、ロリコンが」

軋識「はぁ!? いや、ロリコンはトキであって、俺は違うっちゃよ!」

曲識「いや、僕もロリコンという訳ではないぞ」

深空「ロリコンであるかないかはともかく、貴様が変態であるのは変わらない」
高海「ロリコンであるかないかはともかく、貴様が変態であるのは変わらない」

軋識「誰が変態っちゃ」ガー

深空「近寄るな、変態がうつる」サッ
高海「近寄るな、変態がうつる」サッ

軋識「変態がうつるか!」

伊織「あの、軋識お兄様。わたしは別に、お兄様が変態でも気にしませんよ?」

軋識「いや、だから変態じゃないって言ってるっちゃ! レン。お前も何か言ってやってくれ!」

双識「うふふ。向こうのチームは女の子が一杯いるね。ロリ、ツンデレ、委員長、男っぽい子に妹キャラ。種類も豊富だし、これは対戦がとても楽しみだねっ」ウフフフフフ


「「「「「「「「へ、変態だーーーーーーーーーっ!」」」」」」」」ガビーン!




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チーム化物


羽川「ただいまー」スタスタ

戦場ヶ原「お疲れなさい、羽川さん。随分凝ってるみたいね、胸が。ここは一つ私が揉んで―――」

羽川「しないでいいから」

暦「だったら僕が……」バッ

羽川「しなくていいからっ!」

戦場ヶ原「そうよ、あなたは引っ込んでなさい。羽川さんの胸は私のモノなんだから、ゴミはゴミ箱に還りなさい」

暦「お前、彼氏に対して酷過ぎないか!?」

戦場ヶ原「やだ、阿良々木くん。こんな人前で彼氏だなんて、恥ずかしいわ」

暦「なっ!?」

戦場ヶ原「ほら、周りが奇異な目で見てるわよ」

八九寺「はぁ……」ヤレヤレ

神原「―妄想中―」ダラダラ

羽川「」ニコニコ

忍「」フンッ

火憐・月火「」(オ)ニイチャン…

暦「ど、どうしたんだ? 皆……」

忍「本当にお前様は鈍いのう」

暦「は? な、なぁ、千石も何か言ってやってくれ―――」

千石「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ

暦「せ、千石?」

千石「何かな、暦お兄ちゃん?」ゴゴゴッ

暦「いや、何か禍々しいオーラが見えてるような気が……」

千石「何言ってるのかな? お兄ちゃん。オーラだなんて、ハンターハンターじゃないんだから、発せられるはずないじゃん」

暦「だ、だよな……」

千石「そうだよ。別に練で増幅した念を堅で維持したまま、発を発してわけじゃないよ」

暦「お前、やたら詳しいな!?」

羽川「ねえ、そろそろ野球の作戦会議に移ってもいいかな?」


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チーム刀


とがめ「ただいま」スタスタ

七花「おかえり、とがめ」

とがめ「全く、ああいう探り合いの場はいるだけで、疲れるわ」

否定姫「何が疲れるよ。あんた全く自分を包み隠そうとしてなかったじゃない。あれじゃあ、こっちの手の内が丸見えでしょ」

とがめ「ふん。それこそがわたしの奇策なのだよ」

否定姫「はぁ?」

とがめ「ああいった場で、あえて自分をさらけ出す。向こうとすれば、まさかあそこで手の内を晒してるとは思わないからな」

否定姫「何よそれ。下手したら手の内をさらけ出すだけさらけ出しただけになるじゃないのよ」

とがめ「ふん。それ位の覚悟をせずに奇策など練れるか」

否定姫「いや奇策なのはいいけど、別にそんな無理をするような場面でもないでしょ! 勝手にわたしを巻きこまないでくれるかしら?」

とがめ「はっ。何を言ってるんだこの馬鹿は。このチームの司令塔がわたしになった時点で、貴様らがわたしに巻き込まれるのは必然の理というやつだ」

否定姫「否定するわ。確かにじゃんけんでこのチームの主は貴方になったけれど、それはわたしとあなたと鳳凰の間で会って他の人たちの意見は聞いていないわ」

とがめ「ふむ。それもそうだな。それでは一つ他の者たちの意見も聞いてみようか」

七花「おれはもちろんとがめの言うことを聞くぞ」

左右田「わたしは何があろうと姫様に就かせて頂きます」

迷彩「あたしは別に誰が頭をやろうが興味はないよ。あたしはこなゆきが虚刀流の坊やに会いたいって言うから保護者役として付いて来ただけだからね」

こなゆき「うちっちもどうでもいいですよ。それよりも皆で楽しく『やきゅう』ってやつをやりたいです」

校倉「おれは奇策師の方に乗らせてもらうぜ。やはりこのおれを指揮するのは、おれが惚れた女でねーとな」

七実「わたしは誰が頭をやろうと、従う気はないのでどうぞ勝手に決めて下さい」

汽口「あの、頭を決めるのはもちろん大切なことだと思うのですが、それよりも先に『やきゅう』というもののルールをお教え願えないでしょうか?」

銀閣「Zzz……Zzz……Zzz……」


とがめ・否定姫「………」


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チーム戯言


子荻「只今帰りました」スタスタ

人識「おー、おかえりー」

鈴無「中々立派に代表者をやってだわね、偉いだわ」

子荻「ありがとうございます」

萌太「それよりも、初戦の相手のことなんですが……」

子荻「はい。どうやら、あのイロモノの一団みたいですね」

鈴無「全く、初戦から面倒な相手と当たることになっただわね」

みいこ「そうか? 私は何か通じるものを感じたが?」

人識「何だよ、それ?」

みいこ「私にもよくは分らん」

出夢「まぁ、どんな奴が相手だろうがぶっ飛ばすことには変わらねーけどな」

いーちゃん「子荻ちゃん。子荻ちゃんから見て、相手の代表者は感じだった?」

子荻「そうですね。見た感じですと、態度は大きいということは何となくですけど分かりました。恐らく攻撃の際はイケイケで来るタイプの人ですね。しかし……」

いーちゃん「しかし?」

子荻「あの人は人の裏を突くのが上手いタイプだと思います」

いーちゃん「裏をかくんじゃなくて?」

子荻「ええ。文字通り、裏を突くですね。これは感覚的なモノなので説明がしにくいんですが、私が最も苦手なタイプです」

いーちゃん「そうなの?」

子荻「ええ、ああいう手合いは正直掴み所がなく、常識を非常識で塗り固めていくため策が全く通用しないことが多いんですよ」

子荻「ですから、初戦はいつも以上に慎重に進めていく必要が―――」

人識「んなこたぁ、どーだっていいんだよ!」

子荻「え?」

人識「相手が裏をかいて来ようが裏を突いて来ようが、俺らは真っ直ぐ前に突っ切っりゃいいんだよ」

出夢「そうだぜ、裏をかこうとするのは力がない奴のすることだからな。だったら、その策ごとを力でぶっ潰せばいいんだよ」

萌太「まぁ、何の考えも無しに行くのもどうかと思いますが、その考えには同意ですね」

みいこ「私もその考えには同意だ」

崩子「私も」

一姫「姫ちゃんも賛成ですー」

玉藻「ゆらぁ~~~」ノ

鈴無「所詮は試合なんてものは強い方が勝つってことだわ。難しく考えることなんてないわ」

子荻「………」

いーちゃん「……ということらしいけど、どうする? リーダー」

子荻「……そうですね。何が起きるかなんてその時その場面でしか分からない。でしたら、今ごちゃごちゃ考えたって仕方がありませんよね」

いーちゃん「うん」

子荻「それじゃあ、皆さん。今日も何が起きるか分かりませんが、一つよろしくお願いしますね!」


「「「「「「「「「おーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」」」」」」」」」


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鵜鷺『それでは、第一試合 チームフォックス対チーム化物の試合を開始したいと思います』

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一里塚「いいですか、ここからは戦争です。自分で考え、自分で動いてください。その自分で考えた行動は必ず試合で生きてきます」


「「「「「「「「………」」」」」」」」ザッ


一里塚「後戻りはできません! 全力で行きましょう!」


「「「「「「「「おーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」」」」」」」」ダッ


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阿良々木「ちょっと、ここで言うのも何なんだけどさ……昔の僕ってかなり塞ぎこんでて、一人でも生きていけるだなんておかしなことを考えてたんだよな」


「「「「「「「「………??」」」」」」」」


阿良々木「けど、皆と出会って、そんな僕も変わることが出来たと思ってる………今の僕は、昔の僕よりも断然いい場所に立っている。そう思ってるし、そう思いたい。だからこの大会で優勝して、そのことを証明したい―――」


「「「「「「「「………」」」」」」」」ザッ


阿良々木「すぅ………。『皆で』勝つぞーーーっ!」


「「「「「「「「おーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」」」」」」」」ダッ


審判「それではこれより、チームフォックス対チーム化物の試合を始めます! お互いに礼!」



「「「「「「「「「シャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーースッ!!」」」」」」」」」





一回戦 第一試合
 チームフォックス対チーム化物

チームフォックス        チーム化物
1番 遊撃 澪標深空       1番 中堅 神原駿河
2番 二塁 澪標高海       2番 投手 羽川翼
3番 投手 零崎双識       3番 三塁 戦場ヶ原ひたぎ
4番 捕手 零崎軋識       4番 捕手 阿良々木暦
5番 中堅 零崎曲識       5番 遊撃 阿良々木火憐
6番 三塁 一里塚木の実     6番 二塁 阿良々木月火
7番 一塁 花撒小鹿       7番 右翼 千石撫子
8番 右翼 無桐伊織       8番 左翼 八九寺真宵
9番 左翼 絵本園樹       9番 一塁 忍野忍

監督? 狐さん

今日の更新はここまでです。

次回の更新も来週くらいを予定してます。

よかったら、次回も見てって下さい。

投下します。

鵜鷺『されでは、第一試合 チームフォックス対チーム化物の試合をお送りさせて頂きたいと思います。今回の実況もマジういろうLOVEこと私嵯峨野鵜鷺が担当させて頂きます』

鵜鷺『そして、解説役には前回と引き続き死線の蒼こと、玖渚友さん。そして元チームフォックスの絶対的4番。死色の真紅でお馴染みの哀川潤さんにお越しいただきましたー! 本日はよろしくお願いします』

玖渚・哀川『よろしくー』

鵜鷺『さて、1回表 後攻のチーム化物の選手が守備に着いたのですが、哀川さ―――』

哀川『潤だ。あたしのことを名字で呼ぶな』

鵜鷺『……潤さんはこの試合のオーダー表を見てどう思いますか?』

潤『そうだな。チーム化物の奴らはよく知らねーけど、恐らく圧倒的にチームフォックスが有利なんじゃねーか?』

鵜鷺『そうなんですか?』

潤『ああ。あいつらはあのメンバーで一試合戦ったことがあるから、各々の勝手ってやつがある程度分かってるだろうからな』

鵜鷺『なるほどー』

潤『それ以前に、あたしが抜けたって言っても揃ってるメンツがかなりのもんだし、普通に優勝候補じゃねーか?』

鵜鷺『おお! 潤さんのお墨付きが出ました! これはかなりの期待ですね』

玖渚『でも前回は潤ちゃん込みで戦って、しかも途中小唄ちゃんを使ってるのにチーム戯言に負けちゃってるんだよね』


潤『………』

鵜鷺『あー、確かに……』

潤『ふっ。甘く見てもらっては困るぜ、くーたん』

玖渚『ん?』

潤『実はあの試合は負けた。けどな、あの試合の意味合いはただ勝てばいいってもんじゃなかったんだぜ?』

鵜鷺『え!? そうなんですか?』

潤『ああ。そもそもあの試合は、クソ親父が中日打線に不満を持ったから始まった試合なんだよ。つまり、あの試合はよりヒットを重ねた方が勝ちに等しいというわけなんだよ』

玖渚『いーちゃんチームが11本で潤ちゃんチームは7本で、いーちゃんチームの方が4本分ヒットが多いね』

潤『………』ズーン

鵜鷺『え、っと、とりあえず話を戻しまして……。玖渚さんは、この対戦についてどう思いますか?』

玖渚『そうだねー。何だかんだ言って、僕様ちゃんもチームフォックスが有利だと思うかな』

鵜鷺『そうなんですか?』

玖渚『うん。潤ちゃんが抜けて打撃力はかなり下がったと思うけど、それでも投・捕・中とセンターラインはしっかりしてるし、二遊間の二人は息が合ってて内野を抜くのも困難。ファーストも、潤ちゃんが一塁に付いてるだけってわけじゃなく、しっかりと守るだろうし、守備面では間違いなく4チームの中で一番だろうね』

鵜鷺『おお! これまた好評価ですね』

潤『チーム化物としては、いかに狐打線を抑えて、最少失点で切り抜けるかがカギになってくるだろうな』フッカツ

鵜鷺『なるほどー』


1回表
無死 ランナー無し
打者 澪標深空

審判「プレイボール!」

鵜鷺『さあ試合開始です。チーム化物先発のピッチャーは羽川翼さんです。一体どんなピッチングを見せてくれるのでしょうか?」

羽川「そんな、大したピッチングは期待しないで欲しいな。一応初心者なんだし……」

鵜鷺『1回表 チームフォックスの攻撃は、一番 ショート 深空さん』

深空「」スッ

阿良々木(うおっ、何か一番目から可愛い子が来た!)

羽川(阿良々木くん。もうちょっと試合に集中しようね)

阿良々木(分かってるよ。それじゃあ守りは手筈通り行こうぜ)

羽川(うん。それじゃあ行くよ)スッ

深空(アウトコース来いアウトコース来いアウトコース来いアウトコース来いアウトコース来い)グッ

ビシュッ! パァン!

審判「ストライーク!」

深空「……ちっ」

鵜鷺『羽川さん。初球から大胆にインコースから攻めていきました!』

潤『ほう』

鵜鷺『玖渚さん。羽川さんなんですが、ややサイドスロー気味の投球ですね』

玖渚『あれはサイドスローというよりも、スリークォーターって言うやつだね』

鵜鷺『スリークォーターですか?』

潤『まぁ、ようするにオーバースローとサイドスローの中間の投げ方のことだよ』

鵜鷺『かなり大雑把ですね……』

玖渚『スリークォーター。直訳で『3/4』。その文字通り身体の中心線に対して3/4の角度で投げる投法で、投げやすさを重視した投げ方のため、比較的コントロールが定まりやすい投法なんだよ』

鵜鷺『へー。そうなんですか』

潤『変化球も掛かりやすくて、球速も安定してるから、最近では割とメジャーな投法なんだよな』

玖渚『肩や肘の負担も少ないからね』

鵜鷺『へー』

阿良々木(初球全く反応しなかったな……)

深空「」ブンブンッ

阿良々木(打つ気がないわけじゃないみたいだし、何かやな感じだな……)

羽川「阿良々木君、ボール!」

阿良々木「あ、わりぃ」ビッ

羽川「ありがとう」パシッ

阿良々木(まぁ、僕がいくら配球を考えたって意味がないからな。ここは羽川に任せるか)

羽川「」スッ

ビシュッ! パァン!

審判「ボール!」

鵜鷺『またも内角にストレート! 今度は外れてカウントはワンエンドワンです!』

阿良々木「ナイスボール!」ビッ

羽川「ありがとう」パシッ

深空(二球続けてインコースか。ということは、もう一球内に来るか?)ブツブツ

深空(それなら、今度内に来たらカットして、次に来た外角を狙わせてもら―――)スッ

羽川「」スッ

深空「!?」スッ

ビシュッ! パァン!

審判「ストライーク!」

鵜鷺『次は外角にストレート! ストライクが入って、ツーエンドワン!』

阿良々木「オッケー! バッター手出してこないよ!」ビッ

深空(くっ……こいつ)ギロッ

羽川「こら、阿良々木君。そういうこと言わないの」パシッ

深空(くそ。これで次何が来るか分からなくなった。次に来るのは内か? それとも―――)スッ

羽川「」スッ

深空(なっ……)

ビシュッ!

ブンッ! パァン!

深空(……っげるのが……)

審判「ストライーク! バッターアウトッ!」

深空(……早すぎる、だろ……)ガクッ

羽川「ワンナウトーーーーッ!」


鵜鷺『空振り三振! ピッチャー羽川さん。先頭の深空さんを三振に切って取りました!』

深空「くそっ」

高海「どうした? そんなに速い球ではないだろ?」

深空「確かに速くはないが、その代わりにコントロールがいい。それと―――」

高海「それと?」

深空「ボールを貰ってから投球モーションに入るまでがかなり速い」

高海「そうか」

深空「あいつらのペースで打席に入るとかなり厄介だ。気をつけろ」

高海「ああ、分かった」

阿良々木(次のバッター、さっきの奴と凄く顔が似てるな。にしても……)

深空「―――」
高海「―――」

阿良々木(何かいいっ!)ドーン!

羽川(またくだらないこと考えてそうな顔してるなー)ハァ


1回表 TF 0‐0 TB
一死 ランナー無し
打者 澪標高海

鵜鷺『2番 セカンド 高海さん』

高海「」スッ

阿良々木「ども。さっきの人とかなり顔が似てるけど、妹さんか何か?」

高海「」シーン

阿良々木(無視っ!?)ガーン

高海(向こうのペースに合わせたらいけないとなると、初球から積極的に打っていくしかないな)スッ

羽川「」スッ

ビシュッ!

高海「っ!?」バッ

パァン!

審判「ボール!」

高海(あのアマッ! 今おもいっきりぶつけるつもりで……)

阿良々木「いいボール来てるぞ」ビッ

羽川「ありがとう」パシッ

高海(こいつら、謝る気サラサラないのか? ふざけやがって……)ギリッ

高海(絶対にぶっ飛ば―――)スッ

羽川「」スッ

高海「っ!?」

ビシュッ! パァン!

審判「ストライーク!」

高海(外角一杯っ……)


阿良々木「ナイスボール!」ビッ

羽川「うん」パシッ

高海(くそっ……)スッ

羽川「」スッ

ビシュッ! パァン!

審判「ットライク ツー!」

高海(全くおんなじ所に……)スタスタ

阿良々木(お、打席を外した)

高海(くそ、あっさり追い込まれた。これで際どいところは手を出さなくちゃならなくなった……)ブンブンッ

高海(今度はどこに来る? 内か、それともまた外か……?)ブンッ

高海(内なら、レフトとセンターの間を狙って打つ。外なら基本通りにセンター返し……)スタスタ ペコッ 

高海(この程度の球速なら問題なくできる―――)スッ

羽川「」スッ

ビシュッ!

高海「っ!?」

パァン!

高海(ど、ど真ん中っ……!?)

審判「ストライーク! バッターアウトッ!」



鵜鷺『三振ーーーっ! 二者連続! チーム化物のエース、チームフォックスの切り込み隊を三振で捻じ伏せましたーーっ!』

潤『やるじゃねーかよ、あの女』

玖渚『上手く相手の裏をかいてきてるね』

潤『まぁ、問題は次からだけどな』

高海「くそっ」スタスタ

双識「あはは。上手くやられちゃったね」

高海「うるさい!」

双識「実際に打席に立ってみてどうだった? 何かくせがあるとか?」

高海「いや、くせなど何一つない。むしろ教科書通りの投球フォームだ」

双識「そっか。じゃあ何であの程度の速度のまっすぐを打てなかったんだろうね?」

高海「ぐっ。そんなのは実際に打席に立って確かめてみろ!」

双識「そっか」

高海「とりあえず、コントロールはかなりいいぞ。あと投げるテンポがかなり速いから、あいつらのペースで投げさせないようにした方がいいぞ」

双識「そっか。分かったよ」ニコッ

鵜鷺『さぁ、最高の立ち上がりを果たした羽川さん。チームフォックスのクリーンナップを迎えます!』

今日の更新はここまでです。

次回の更新も来週くらいを予定してます。

よかったら、次回も見てって下さい。

てか、明日の決勝マジ楽しみ♪

投下開始します。

1回表 TF 0‐0 TB
二死 ランナー無し
打者 零崎双識

鵜鷺『3番 ピッチャー 双識さん』

双識「ははは。よろしくね」ペコリ

阿良々木(随分大きい人だな……)ペコリ

羽川(大きいというより、長いって感じかな)

双識(さぁて。それじゃあ一打席目はじっくりと観察させてもらおうかな)ウフフ

阿良々木(さて、この3番はピッチャーだけど、どうする? 無難に外角を責めるか?)

羽川(ううん。初球は内角で行く)

阿良々木(ピッチャー相手に内角って投げづらくないか?)

羽川(けど、この人かなりリーチが長いから、外角の球でも簡単に届くと思うよ)

阿良々木(なるほどな。だから逆に内角を攻めるってわけか)

羽川(そういうこと)

阿良々木(分かった。それならそれで行こうぜ)パンッ

双識「~~~♪」スッ

羽川「」スッ

ビシュッ!


キーーーーーーーーーーーンッ!

阿良々木・羽川「っ!?」



鵜鷺『打ったーーーーっ! 3番双識さん、初球から打って行った―! 打球はライト線に上がったーーっ!』

撫子「ううぅ……」タタタッ

羽川(初球から!?)バッ

阿良々木「ファールだ!」


ドッ!


審判「ファール!」

伊織「ああぁ、惜しかったです」

軋識「もうちょっとで長打コースだったっちゃね」

阿良々木(あいつ、いきなり初球から打ってきやがった……)

双識「ふふ~ん♪」

双識(さて、これで向こうが慎重になってくれればいいんだけどね)

双識(ボール球が増えれば、その分球数が増えて長く観察ができるからね)

羽川「………」

双識(さぁ、私に君のすべてを余すことなく見せてもらうよ)スッ

羽川「」スッ

ビシュッ!

双識(インコース!?)

軋識(しかも入ってるっちゃ)

双識(けど、打てる……)グッ

ギュンッ!

双識「っ!?」

ブンッ!

パァン!

審判「ストライーク!」


鵜鷺『二球目 空振りでストライク! 羽川さん、二球で双識さんを追い込みました!』

双識(ふぅ……。ここで変化球か。こりゃ参ったね)スッ

阿良々木「ナイスボール! 羽川!」ビッ

羽川「ありがとう」パシッ

双識(さっきのは多分スライダーかな? 振って行っちゃってたからちゃんと見れなかったな……)

双識(ふぅ、仕方ない。ここは観察はさておいて、塁に出ることに専念し……)スッ

羽川「」スッ

双識「!?」

ビシュッ!

双識「」ピタッ

パァン!

審判「ボール!」

鵜鷺『羽川さん 3球目をインハイのつり球で誘いますが、辛うじてバットは止まったー!』

阿良々木「いい球来てるぞ」ビッ

羽川「………」パシッ

双識(……ふぅ。全く、本当に投げるのが早いな。打席で考える暇もないよ)スッ

羽川「」スッ

ビシュッ!

キンッ!

審判「ファール!」

双識(けど、全く手が出ないという球でもない)

双識(それなら、くさい所はカットしていって。打てる球が来るまで我慢するかな―――)スッ

羽川「」スッ

ビシュッ!

双識(と、思ってるそばから甘口―――)グッ

ギュッ!

双識(なっ……!?)

軋識(シュートッ!?)

ガッ!

阿良々木「ショート!」

火憐「あいよー」パシッ シュッ

忍「」パンッ

審判「アウトー!」


鵜鷺『スリーアウトチェンジ! 羽川さん 1回表を三者凡退で抑えましたーっ!』

双識「ったぁ……。見事のやられたね」ジンジン

一里塚「最後のはシュートですか?」

双識「うん。打席で見ると、球速以上にキレてるよ」

軋識「内外に投げ分けられるコントロールに、スライダーとシュートっちゃか……」

曲識「これは予想以上に厄介そうだな」

伊織「そうですか? 球自体は遅いですし、そこまで深刻になる必要はないように思えますけど」

小鹿「いや、スライダーもシュートのキレも良かったし、打ち崩すのはかなり難しいと思うよ」

伊織「えー? でも球遅いですし……」

軋識「まぁ、これに関しては実際に打席に立って見れば分かるっちゃよ」

伊織「?」

一里塚「相手の投手考察はここまでです」パンパン

一里塚「相手の投手に気を取られて、点を取られてしまったなんて言ったら本末転倒ですからね。まずはこの裏をしっかり守ることが重要ですよ」

軋識「分かってるっちゃよ」

双識「向こうの女の子にいい格好ばかりさせるわけにはいかないからね」

一里塚「それでは、守りでも攻めて行きましょう」

「「「「「「「「おーーーっ!」」」」」」」」


1回裏 TF 0‐0
無死 ランナー無し
打者 神原駿河

鵜鷺『チーム化物の攻撃は、1番 センター 神原さん』

神原「うむ。よろしく頼む」ペコッ

軋識「どうもっちゃ」ペコッ

火憐「駿河さん、頑張ってくださーい!」

阿良々木「初球からどんどん打っていけよー」

神原「」スッ

軋識(この女左か……)

双識「………」

神原「………」

双識・神原「……はっ」ピーン

双識(この娘……)

神原(この人……)

双識・神原(できる!)

軋識「何がだっちゃ……」


鵜鷺『さて、双識さんの立ち上がり。初球は一体何で来るんでしょうか?』

羽川「神原さーん、初球から打って行こー」

阿良々木「打てるぞー!」

神原(さて、表を羽川先輩達がしっかりと抑えてくれたからな。ここは私が切り込み隊長として突破口を切り開―――)スッ


双識「―――かせないよ」スッ


パァンッ!


神原「………っ!?」

審判「ストライーク!」

神原(は、速い……)

鵜鷺『初球ストライク! 双識さんも負けじと初球から攻めていきます!』

軋識「オッケイ! ナイスボールだっちゃ!」ビッ

双識「あはは。ちょっと内に入っちゃってたけどね」パシッ

神原(向こうのピッチャーはサイドスローか……。私は左だから球自体はよく見えるが、しかし……)

軋識「」スッ

双識「」コクッ

ビシュッ!

ブンッ! パァンッ!

審判「ストライーク!」

神原(打てる気が……全くしない……)


パァンッ!

審判「ストライーク! バッターアウトッ!」

神原「くっ……」

軋識「ワンナウトー!」

双識「そうだね」

深空「分かっている、いちいち大声出すな変態」
高海「分かっている、いちいち大声出すな変態」

一里塚「あとツーアウト気を抜かないで下さいね」

小鹿「伊織さーん。あとツーアウトだってー!」

伊織「分かってますよー」

軋識「お前らちったぁ乗れよ!」

神原「うぐっ、すまない羽川先輩。先頭を出ることができなかった」

羽川「いや、いいって。気にしないで」

神原「こうなったら、責任を持って脱ぐしか―――」バッ

羽川「いやいや、脱がなくていいから! それよりも相手ピッチャーどうだった?」

神原「とにかく球がかなり速い。コントロールもそこまで悪くないし、簡単には長打は打たしてもらえないだろうな」

羽川「そっか」

神原「3球で終わってしまったから、これ以上の情報は引き出せなかった。本当にすまない」ペコッ

羽川「だから、そこまで深刻にならなくていいって。まだ1回なんだから落ち着いていこうよ」

神原「うむ、そうだな。では落ち着くためにも、ここは一脱ぎ―――」ヌギヌ・・・

羽川「しなくていいから!」

1回裏 TF 0-0 TB
一死 ランナー無し
打者 羽川翼

鵜鷺『2番 ピッチャー 羽川さん』

羽川「どうも」ペコッ

軋識「」ペコッ

羽川「」スッ

軋識(ピッチャーを2番に持ってくるとは、よっぽど選手層が薄いのか、それとも何か考えがあるのか……)チラッ

双識(この娘はチームのリーダーをやってる娘。甘く見ない方がいいと思うよ)ポタポタ

軋識(確かにそうだが、その前によだれを拭け)

双識(おっと、失礼。可愛い娘が連続して来るものだから、つい)フキフキ

軋識(つい、じゃねーっちゃ。初球、ちゃんと決めるっちゃよ―――)スッ

双識(アウトコースにストレート―――)コクッ

ビシュッ!

パァンッ!

審判「ストライーク!」

羽川(凄い。ボールが背中からかすめるように出てきた……)

軋識「」ビッ

双識「」パシッ

羽川(しかも、恐らくだけどこのバッテリー、まだ『奥の手』を隠してる・・・・・・)

軋識「」スッ

双識「」コクッ

ビシュッ!

パァン!

審判「ストライーク!」

羽川(と、なると今私がすべきことは一つ・・・…)

軋識「」スッ

双識「」コクッ

ビシュッ!

キンッ! 

審判「ファール!」

羽川(その『奥の手』を、早々に見させてもらおうかな)



軋識(手を出してこないと思って、入れていったストレートを打ってきたっちゃ……)

羽川「」スッ

双識(打つ気がないというよりも、ボールを見極めようとしてるってところかな)

軋識(なら、あえてその誘いに乗るわけにはいかないっちゃね―――)スッ

双識(インコースの高めに、ストレートを―――)コクッ

ビシュッ!

羽川「っ!?」バッ

パァン!

審判「ボール!」

羽川「………」

羽川(さっきよりも、より身体を掠めるようにボールが出てきた……)

双識「大丈夫かーい?」

羽川「」ペコッ

羽川(あの人の極端に長い手足が相まって、角度の付いた強力なコーナーワーク―――)

羽川(オーバースローと比べて、外のボールは遠く、内の球は近く感じる)

羽川(こういう相手には、ボール球に手を出さないのが必須条件なんだけど……)

軋識「」スッ

双識「」コクッ

ビシュッ!

羽川(遠い……)ピタッ

パァンッ!

審判「ストライーク! バッターアウッ!」

羽川(……厄介だなぁ~~)


1回裏 TF 0-0 TB
二死 ランナー無し
打者 戦場ヶ原ひたぎ

鵜鷺『3番 サード 戦場ヶ原さん』

戦場ヶ原「聞かなくても大体分かるけど、打席から見ての彼はどうだった?」

羽川「うん。言わなくても分かってるだろうけど、とても強いよ。それに多分相手はまだ『奥の手』を隠してるみたいだから、まずはその『奥の手』を引きずり出すのが先決かな」

戦場ヶ原「そう。随分とのんびりとした戦略ね」

羽川「ダメかな?」

戦場ヶ原「はぁ……。チームのリーダーが決めたことなんだから、ダメなはずないでしょ。たとえそれが愚策だとしても、最後まで愚直に付いて行ってあげるわ」

羽川「あはは。ありがとう」

戦場ヶ原「別に感謝される筋合いはないわ。勝つために必要な事だからするだけよ」

軋識(さて、かなりいい感じでツーアウトまで漕ぎ着けたっちゃね)

戦場ヶ原「よろしく」ペコッ

軋識「」ペコッ

軋識(さて、こっからクリーンナップなんだが……)チラッ

戦場ヶ原「………」

軋識(随分華奢な奴が3番に座ってるっちゃね。これなら長打の心配は必要ないっちゃか?)


出夢「ギャハハハハハハッ!」キィーーンッ!


軋識(……いや、見た目で判断するのはよくないっちゃね。どんな体格をしていようと、クリーンナップに座ってるのには変わりはないっちゃ。ここは慎重に―――)スッ

双識(アウトコースにストレート。ボール球で―――)コクッ

ビシュッ!

パァン!

審判「ボール!」

鵜鷺『初球ボール! 零崎バッテリー、ここは慎重に入っていきました!』

戦場ヶ原(ふぅん。予想以上に球の出所が見にくいわね)

軋識(全く反応しなかったちゃね、やはり心配のしすぎだっちゃか?)

双識(あまりバッターからは怖さは感じないけどね)

軋識(それなら、さっきよりも内にストレートを―――)スッ

双識「」コクッ

ビシュッ!

パァン!

審判「ストライーク!」

戦場ヶ原(さっきのコースがストライク……。随分遠く感じるわね)ブンッ!

軋識(手を出さないっちゃね。狙い球を絞ってるっちゃか?)

双識(変化球はまだ見してないよ)

軋識(なら、コースなんだが……。何か違う気がするっちゃね……)

双識(どうする? 内を待ってるなら、その内に変化球を投げれば打ち取れるよ?)

軋識「………」

戦場ヶ原(さて、随分向こうは慎重になってくれてるみたいね。なら、ちょっとでも打つそぶりでも見せれば、案外簡単に『奥の手』とやらが見られるかもしれないわね)クイッ

軋識「」スッ

双識「」コクッ

ビシュッ!

戦場ヶ原「っ!?」バッ

パァン!

審判「ストライーク!」

戦場ヶ原(ここでインコースのストレート……!?)


鵜鷺『3球目をインコースのストレートでストライク! カウントはツーストライクワンボールです』

阿良々木「ガハラさん、振ってけ―!」

火憐「振らなきゃ当たらないよ、ひたぎさん!」

戦場ヶ原(言わなくたって分かってるわよ。ただ打席で見ると、内が予想以上に近く感じる……)

戦場ヶ原(カウントは2-1。外に二球続けて、内に一球。次は内か、外か……)

軋識「」スッ

双識「」コクッ

ビシュッ!

戦場ヶ原(外っ……けど、これは……)グッ

ブンッ! パァン!

審判「ストライーク! バッターアウッ!」

鵜鷺『三者連続三振ーっ! 両者最高の立ち上がりを見せましたー!』


今日の更新はここまでです。

次回の更新も来週くらいを予定してます。

よかったら、次回も見てって下さい。

投下開始します。

2回表 TF 0‐0 TB
無死 ランナー無し
打者 零崎軋識

阿良々木「こっからはクリーンナップだけど、どうする? さっきと同じ感じで行くか?」

羽川「そうだね。決勝までのことを考えると、行けるとこまで行ってみたいのが本音かな」

阿良々木「それじゃあ―――」

羽川「けど、相手もかなりの実力者みたいだし、状況によっては使ってくかもしれないかな」

阿良々木「そっか」

羽川「阿良々木君には負担を掛ける感じになっちゃうけど、常に集中しといてね」

阿良々木「ああ。いつどんな時に来ても絶対に受け切ってみせるよ」

羽川「うん。それじゃあお願いね」

阿良々木「任せとけって」タッタッタッ

羽川「……頼りにしてるよ、ヒーローさん」ボソッ


鵜鷺『チームフォックス 2回表の攻撃は、4番 キャッチャー 軋識さん』

軋識「よろしくっちゃ」ペコッ

阿良々木「………」ペコッ

軋識「いやー。それにしても、あの女凄いっちゃね。初心者であそこまでの制球力って並みじゃないっちゃよ?」

阿良々木「………」

軋識「あそこまでコントロールがいいとキャッチャーとしてもリードのし甲斐があるってもんじゃないか?」

阿良々木「………」

軋識「……だんまりっちゃか。同じキャッチャーで4番同士。もう少し話しようぜ?」

軋識「まぁ、勝つのは俺たちだがな」

阿良々木「……そんなに喋ってていいんですか?」

軋識「ん?」

阿良々木「今、貴方が向かい合ってるのは僕でなくピッチャーですよ」

軋識「………」

阿良々木「確かに、配球を組み立ててるのはキャッチャーの仕事。ある意味守りで一番の要となってるのはキャッチャーであると言ってもいいかもしれません。けど―――」

阿良々木「バッターと直接向かい合ってるのはピッチャーなんですよ」

軋識「……そうだっちゃね。あくまで俺たちはその対決に細かく口を挟んでるにすぎないっちゃ」

阿良々木「ええ。僕らがいくら頑張ったところで、守りの本当の主役はピッチャーなんです」

阿良々木(そして、僕らのピッチャーは羽川なんだよ―――)

阿良々木「だからこそ、僕たちは絶対に負けません」



打者を三振に取ることを守備と思ってるような奴は三下って小唄さんがゆってた

軋識(ふん。どうやらこいつは余程ピッチャーに信頼を置いてるみたいっちゃね)

軋識(確かに、あのコントロールにスライダーとシュートの二枚看板。かなり厄介だっちゃ)

軋識(問題なのは初球。こいつ次第で、今後の組み立てが変わってくるっちゃ……)スッ

羽川「」スッ

ビシュッ!

ギュン! パァン!

審判「ストライーク!」

軋識(初球は外一杯にスライダーっちゃか……キツイっちゃね)

阿良々木「ナイスボール、羽川!」ビッ

羽川「」パシッ

軋識(初球が外ということは、もう一球外に来て、ラストは内って感じっちゃか?)

軋識(狙い球は絞って―――)スッ

羽川「」スッ

ビシュッ!

パァン!

審判「ボール!」

軋識(―――難しい球には手を出さない)

羽川「………」

軋識(この打席、4番らしく行かせてもらうっちゃよ)ズンッ!


ビシュッ!

ギュン! キンッ!

審判「ファール!」

鵜鷺『軋識さん。インコースのスライダー打ってをファール! いきなり追い込まれました!』

潤『いや、どうだろうな?』

鵜鷺『どういうことですか?』

玖渚『チーム化物の翼ちゃんの初球と2球目は明らかに打者の打ち気を逸らすものなんだよね』

潤『けど、相手バッターは内の変化球を思いっきり振っていった』

玖渚『追い込んではいるけど、バッテリーとしてはかなり嫌な感じだろうね』

軋識「」ズンッ!

羽川(内の変化球をフルスイングかぁ……)フゥ…
 
阿良々木(追い込んでることには変わりはないんだ。最初の手筈通り行こうぜ)パンッ!

羽川(そうだね。下手にここで慎重になったら、それこそ向こうの思うつぼだもんね)

阿良々木(ああ!)

阿良々木・羽川(外のシュートで仕留める!)

ビシュッ!

軋識「ふっ」ブンッ!

カキーンッ!

羽川「っ!?」

火憐「うおおおおっ!」バッ

ドッ!

鵜鷺『センター前ヒートッ! 4番の軋識さん。上手く外の変化球を捕えました!』



いいねえ

羽川「あちゃー。見事に狙われてたね」

阿良々木「くっそ。折角追い込んでたのに……」

神原「あまり気にするな。阿良々木先輩、羽川先輩」ビッ

戦場ヶ原「そうよ。ヒットなんてこれからもまだまだいっぱい打たれるんだから、いちいち気にしてたらキリがないわよ」

月火「といっても、今度からはそう簡単にヒットにさせてあげたりはしないんだけど。ね、火憐ちゃん」

火憐「おうよ! 今度は絶対に取る!」

羽川「うん。期待してるね」

忍「それよりも、お前様。ヒット打たれたことを悔しがって、委員長をほっとくとは情けがないぞ」

月火「そうだよ、お兄ちゃん。甲斐性なしだよ」

火憐「そうだぞ、兄ちゃん。みっともがないぞ」

戦場ヶ原「というよりも、存在価値がないわね」

阿良々木「言われ過ぎだろ……僕……」


2回表 TF 0‐0 TB
無死 ランナー一塁
打者 零崎曲識

鵜鷺『5番 センター 曲識さん』

曲識「」ペコッ

阿良々木「」ペコッ

伊織「続いて行きましょう! 曲識お兄様!」

小鹿「相手ピッチャービビってるよー!」

曲識(さて、アスが先頭で出てくれた。この流れを僕が台無しにするわけにはいかないな)

軋識(トキ。相手ピッチャーは確かにコントロールもいいし、変化球にもキレがある。けど打てないほどじゃないっちゃ)

軋識(狙い球をきっち―――)

羽川「」スッ

軋識「っ!?」バッ

羽川「」ビッ

忍「」パシッ

軋識「」ザザッ!

忍「」パンッ!

審判「セーフ!」

軋識(危なかったっちゃ……)

忍「ふん。命拾いしたな小僧」ビッ

羽川「」パシッ

軋識(あの女、牽制もかなり上手いっちゃね。塁に出ても、全く気を抜けないちゃ……)














羽川「………」

曲識「………」

軋識「………」

羽川「」スッ ビッ

軋識「」ザザッ

忍「」パン パシッ

審判「セーフ!」

絵本「む、向こうのピッチャー、随分軋識さんのこときにしてるね……」

一里塚「まぁ、ノーアウトのランナー。しかもこの試合初めて出したランナーですからね。やはり気にはなるでしょう」

小鹿「さっきので3球目。あれだけ牽制をされたら軋識さんも大変でしょうね」

一里塚「いえ、本当に大変なのは曲識さんでしょうね」

小鹿「え?」

一里塚(集中、切らさないで下さいよ)

曲識「」ジーッ

阿良々木(凄いな、この人。全然集中が切れる気配がない……)

羽川(まぁ、この程度で集中が切れるような人がクリーンナップに座ってる訳ないよね)

阿良々木(じゃあ、そろそろ行くか)スッ

羽川(そうだね―――)チラッ

軋識「」ピクッ

羽川「」スゥー

軋識・曲識「っ!?」

ビシュッ!

パァン!

審判「ストライーク!」

曲識(クイック投法……)

軋識(あの女、どんだけ武器を持ってるんっちゃ!)

羽川「………」

曲識(初球はアウトコースにストレートか。次は内か……それとも外か……)

羽川「………」

曲識(内に入ってくるのか……外へ逃げていくのか……)

羽川「」スゥー

ビシュッ!

曲識(内! しかし、外れてる―――)

ギュン!

曲識「っ!?」

パァン!

審判「ストライーク!」

鵜鷺『二球目 スライダーでストライク! 羽川さん、たった二球で曲識さんを追い込みました!』

火憐「おおっしゃあ! 追い込んだぞ、羽川さん!」

月火「けど焦りは禁物だよ、羽川さん」

羽川「うん。分かってるよ」

阿良々木「いい球来てるぞ、羽川! 自信もって行こうぜ!」ビッ

羽川「うん。ありがとう」パシッ

火憐「おっしゃあー! この調子でゲッツー狙っちゃおうぜ!」

月火「ダメだよ、火憐ちゃん。ここはきちんと確実にアウト取れるところで行かないと」

火憐「えー。それじゃあ流れを呼びこめないだろー」

月火「まだ序盤なんだから、そんな無理するような所じゃないよ」

火憐「えー」

羽川「火憐ちゃん、月火ちゃん。あまり大声でそういうやり取りしないでね……」

阿良々木「羽川ー、いいボールが来てるぞ。自身持てー!」

羽川「うん。分かったから。ありがとうね」

火憐「おっしゃー! ゲッツー取るぞ!」

月火「だから、無理はダメだよー」

羽川「だから、大声で―――」

阿良々木「羽川ー! いいボールが来てるぞー!!」

羽川「………」コノ、キョウダイハ…

ビシュッ!

カキッ!

ビシュッ!

キンッ!

羽川「」フゥ

ビシュッ!

ギュンッ!

曲識「」ピタッ

パァン!

審判「ボール!」

鵜鷺『6球目ボール! これでカウントは2‐2!』

潤『追い込んでから、外角のボール球に内の変化球・ストレートのボール球をファール。そして外のスライダーを見てボールだな』

玖渚『追い込まれてから、曲識ちゃんが見事に喰らい付いてってる感じだね』

潤『しっかし。あんだけ外内に散らばされたら、狙い球もくそもねーな』

阿良々木(くっそ。粘るなこいつ……)

羽川「………」

曲識(外、内、外、内、内、外か。それなら次は内か?)スッ

羽川「」スッ

ビシュッ!

曲識(外! しかし―――)

ギュッ!

曲識(シュート。内に入ってくる)

カキッ!

審判「ファール!」

鵜鷺『7球目もファール! 曲識さん粘ります!』


羽川(これはちょっと……)

潤『まずいな』

鵜鷺『え? まずいって、そのコーヒーがですか? ちゃんと潤さんの言うとおり、赤のジョー○アを用意したんですけど』

潤『いや、ちげーよ。コーヒーのことじゃねーよ』

鵜鷺『それじゃあ、一体何がまずいんですか?』

潤『あの女に決まってるだろ』

鵜鷺『あの女って、羽川さんのことですか?』

潤『ああ』

鵜鷺『確かに粘られてますけど、追い込んでますし、そこまでまずいという状況じゃなくないですか?』

玖渚『う~ん。案外そうでもないかもしれないよ』

鵜鷺『え?』

玖渚『確かに追い込んでるし、カウントは以前2‐2で余裕がある。けど―――』

鵜鷺『けど?』

玖渚『曲識ちゃんが予想以上に粘った結果。投げる球がなくなってきてるんだよ』

鵜鷺『投げる球がなくなってきてる?』

玖渚『うん。多分羽川ちゃんとしてはランナーを出来るだけ進ませないために、早い段階で打たせていきたかったんだと思うんだ』

潤『そのために、一球一球に長く間を取って相手を焦らつかせてた』

玖渚『けど、曲識ちゃんもさすがなもので。全然焦らず。追い込まれてから瞬時に切り替えて、ボール球を見極めながらカットし続けて―――』

潤『その結果、投げる球がなくなったって訳』

鵜鷺『いや、でもそんな簡単に全部のコースと変化球を見極められるはずが……』

玖渚『いや、でも。もう全部の変化球とコースを見られちゃってるからね』

鵜鷺『え?』




玖渚『初球がアウトコースに真っ直ぐ。2球目が内にスライダー。3球目が外へ逃げてくスライダー。4球目は内からボールになるシュート。5球目内のボール球に真っ直ぐ。6球目が外へのスライダー』

潤『そして、さっきの外から内に入ってくるシュート。もう全ての球筋を見られちまってるんだよ』

鵜鷺『本当ですね……』

玖渚『曲識ちゃんなら一度見た球筋はきちんと対応できるだろうからね。羽川ちゃんの球速じゃ三振を取るのは難しいし。まさに投げる球がないって訳』

潤『こうなったら真っ向から勝負にするっきゃーねんだけど……』

玖渚『羽川ちゃんの力じゃ曲識ちゃんを打ち取るのはまず無理だろうね』

鵜鷺『なるほど……』

潤『こうなったら、素直に歩かせるか。もしくは―――』

曲識(よし。これで向こうの球筋は全部見極められた)

曲識(あとは粘った末に、打てる球を選んでいくだけだ……)スッ

羽川「………ふぅ」チラッ

阿良々木「………」コクッ

ビシュッ!

軋識(真ん中。けどこれは―――)

ギュッ!

曲識(シュート。こっから内に入ってくる―――)グッ

ブンッ!

曲識(頂いた!)

ググッ!

軋識・曲識(沈んだっ!?)


潤『あいつが、まだ何個か隠してる牙を見せるかだな』


カキッ!

阿良々木「火憐ちゃん」

火憐「あいよ。月火ちゃん」パシッ シュッ

月火「分かってるって」パシッ シュッ

忍「ふん」パンッ

審判「アウトーーッ!」

>>66
ウチもその考えには同意です。さすがは小唄さんやわ。
ちなみに今回は小唄さん出ません。(マジで扱いづらい、あの人)
>>69
ありがとうです。こっからもいい作品に出来るように精進しますので応援のほどよろしくお願いします。

と、ここで今回の更新は終了です。

次回の更新は、気が向いたときにします。(不定期感MAXでごめんなさい)

かなりの亀更新ですけど、どうか気長にご覧ください。

あと、各打者の利き腕をとりあえずピックアップしてみました。出来るだけ原作に則って書いてみましたが、訂正が必要な所があったらお教え願います。(双識さんは漫画で片鋏を左で投げてましたが、前作で右投げ前提でやってたので、右投げとしてあります)


(投/打)
澪標深空   (右/右)     神原駿河    (左/左)
澪標高海   (右/右)     羽川翼     (右/右)
零崎双識   (右/左)     戦場ヶ原ひたぎ (右/右)
零崎軋識   (右/左)     阿良々木暦   (右/右)
零崎曲識   (右/右)     阿良々木火憐  (右/右)

一里塚木の実 (右/右)     阿良々木月火  (右/右)
花撒小鹿   (右/右)     千石撫子    (右/右)
無桐伊織   (右/右)     八九寺真宵   (右/右)
絵本園樹   (右/右)     忍野忍     (気分/気分)





鵜鷺『ゲッツー! ランナーはいなくなり、ツーアウトランナー無しです!』

曲識「くっ、最悪だ……」

軋識「気にするなっちゃ、トキ」

伊織「そうですよ。曲識お兄様。まだまだ試合は序盤です」

小鹿「そうそう。次の打席で取り返せば問題ないよ」

深空「全く。本当にダメダメだな。零崎一賊は」
高海「全く。本当にダメダメだな。零崎一賊は」

曲識「……すまない」

一里塚「あまりそういうこと言うものではありませんよ」ポカポカッ

深空「いたっ。何をする貴様!」
高海「いたっ。何をする貴様!」

一里塚「貴方達だって、最初の打席で凡退してるんですから、偉そうに言えるものではないでしょ」

深空「ぐっ……。次は必ず打つ!」
高海「ぐっ……。次は必ず打つ!」

一里塚「はいはい。……それより曲識さん。さっきの球はシュートですか?」

曲識「いや、途中までは確かに内に入り込んできたはいたが、さっきの球はそこからさらに沈んでいっていた」

伊織「沈む……ですか?」

一里塚「それって……」

曲識「ああ。間違いない。あいつはスライダー・シュートのピッチャーではない」


曲識「『シンカー使い』。あいつの本当の切り札はシンカーだ」


一里塚「………」

軋識「………」

双識「………」

伊織「………? あ、あの……」

審判「ネクスト! 早く来ないと遅延行為と判断するよ!」

一里塚「あ、はい! 今行きます」タタタッ

伊織「oh……」

軋識「ったく。まさかのシンカー使いだったっちゃか……」

双識「本当にね。というよりも本当にあの娘素人なのかな? シンカーをあそこまでの切れで、あそこまでコントロールできるなんて普通じゃないよ」

軋識「そんなの俺に言われたって知らんっちゃよ。まぁ、それでも向こうの切り札を早々に引き出せたのは大きいっちゃね」

双識「だね」

伊織「あ、あの……」

双識「何だい、伊織ちゃん?」

伊織「シンカーって一体何なんですか?」

双識「うふふ。いい質問だ。さすがは伊織ちゃんだね」

伊織「え? そうですか?」テレッ

軋識「いや、別に普通の質問だろ」

2回表 TF 0-0 TB
二死 ランナー無し
打者 一里塚木の実

鵜鷺『6番 サード 一里塚さん』

一里塚「よろしくお願いします」ペコリッ

阿良々木「ああ」ペコリッ

一里塚「」スッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

双識「シンカーって言うのは、シュートと同じ方向に曲がって、さらに沈んでいく球でね。基本的に右バッターにとってかなり打ちづらい球なんだよ」

伊織「えぇ!? 私右なんですけど……」

双識「うん。だから、伊織ちゃんも打席に立った時は気を付けて方がいいよ。何せ内に食い込んでくる球だから、デッドボールにもなりやすいからね」

伊織「え~。マジですかぁ~……?」

双識「マジだよ」

軋識「けど、あいつの投げたシンカーはシュートとそこまで球速的に変わらなかったっちゃよな?」

曲識「ああ。僕も正直途中までシュートと思って打ちに行ってた」

伊織「シンカーって本来遅い球なんですか?」

軋識「まぁ、そうだっちゃね」

双識「伊織ちゃん。私が投げてるカーブなんだけど、あれってどんな風に投げてるか知ってるかい?」

伊織「えっと。確かボールの縫い目に親指と中指を掛けて、人差し指は感覚的に使わない。投げる瞬間は指先からすっぽ抜くような感じで投げてるんでしたっけ?」

双識「そうだね。他にも手首は捻らなかったり、腕は強く振ったりとか色々あるんだけど、まぁ、今回は置いとくね」

伊織「はあ……」

双識「で、シンカーというのもこれに似ててね……」

伊織「似てるですか?」

双識「いや、似てると言っても握りとか投げ方とか、変化の仕方とか色々と違うんだけどね」

伊織「はあ……」

双識「中指と薬指の間にボールを挟み込むように握って、手首を内側に捻って、ボールにシュート回転を掛けながら、指の間から抜くように投げると……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ググッ!

一里塚「っ!?」

カキッ

阿良々木「羽川」

羽川「分かってるよ」パシッ シュッ

忍「」パシッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

双識「あんな感じで右打者の内角を食いこみながら落ちていくってわけ」


軋識「そして、抜くように投げてるから、自然と球速も遅くなるってことだっちゃ」

伊織「なるほどー」

双識「けど、球速はシュートとほとんど変わらない速度で投げてきてるんだよね」

軋識「恐らく、高速シンカーだっちゃね。全く本当に厄介な女だっちゃ」

小鹿「ねぇ、シンカーってそんなに打ちにくいものなの?」

双識「ん?」

軋識「何だ。随分威勢が良いっちゃね」

小鹿「いや、そういうわけじゃないんだけどさ。ボク、結構ゲームとかする方でさ」

軋識「ゲーム?」

小鹿「うん。その中でもパワプ○っていう野球ゲームがあるんだ」

伊織「ああ。知ってます知ってます。二頭身の人たちが野球をするゲームですよね?」

小鹿「そうそう。で、その中で結構シンカーを使うピッチャーとかいるんだけど、割と打てないこともないかなって……」

双識「なるほどね」

小鹿「いや、まぁ、現実とゲームとでは全然違うんだろうけど。実際問題どうなんだろうって思って……」

軋識「まぁ、確かに球自体は、全く打てないって言うほどのものじゃないっちゃ」

伊織「あ、そうなんですか?」

双識「基本芯に当たれば簡単に飛んでいくしね」

曲識「しかし、ただでさえシュート回転で打ちにくい上に、さらに沈んでいくんだから厄介なのには変わりはないんだがな」

双識「実際に打ち取られた人が言うと説得力あるね」ニコッ

曲識「………」


軋識「ただ、俺が思うに問題なのは人間の存在的意識の方にあると思ってるっちゃ」

小鹿「存在的意識?」

軋識「ああ。お前も戦闘は専門外と言っても、この世界の住人なら少なからず戦闘の心得はあるんだろ?」

小鹿「まぁ、少なからずは……」

軋識「大抵、敵との立ち回る時は相手の正面には立たないよな?」

小鹿「当たり前じゃないですか」

伊織「え? そうなんですか?」

双識「相手の正面に立つということは、相手の格好の的になるってことだからね」

伊織「へー」

軋識「それじゃあ、相手と相対するときはどのように立ち回る?」

小鹿「そりゃあ、相手の利き手の外側。右利きなら反時計回り、左利きなら時計回りに回ります」

軋識「何で、相手の利き手の外側に回る?」

小鹿「何でって利き手の内側に行ったら、モロに攻撃をもらっちゃうし」

軋識「外側なら安全っちゃか?」

小鹿「そりゃ、外側なら、相手が向きを変えるか、関節でも曲げないことには向かっては………あっ!」

軋識「そういうことだっちゃ。人は基本、相手の外側にいれば相手は手を出せないという考えがあるっちゃ」

小鹿「………」

双識「しかも、腕の振りとは逆の方向へと曲がってくる。頭では分かっていても、身体が反応しにくいってことさ」

伊織「なるほどー」

双識「まぁ、それでも心配は必要ないよ。所詮は慣れの問題だからね」

小鹿「いや、でも慣れる前に向こうに点を取られちゃったらどうするんさ?」

双識「あはは、小鹿くん。それは誰に向かって言ってるのかな?」

小鹿「」ゾクッ

双識・軋識「悪いけど、この試合。一点もくれてやるつもりはないよ(っちゃ)」

今回はここまでです。次回更新も気が向いた日にします。

おつ

小鹿って誰だっけ

人間試験の漫画版にしか出ない
説明役やった後は人識にバラされるチョイ役

>>87
あざーすっ!
>>88
>>89の言うとおりの人です。
もう少し掘り下げるなら(ネタバレ注意)、けん玉を武器にした個人経営の誘拐屋さん。最初は伊織ちゃんを誘拐しようとしてたけど、伊織ちゃんと話すうちにだんだんと惹かれていって、最終的には早蕨を敵に回してでも伊織ちゃんをお嫁さんにしようとした人です。
>>89
チョイ役言わないで! ウチ結構気に入ってる子なんだからさ。早蕨を前にしての伊織ちゃんへの口説き文句とかめっちゃ良かったし。

とまぁ、まさかまさかの二日連続の投下を開始します!



2回裏 TF 0-0 TB
無死 ランナー無し
打者 阿良々木暦

鵜鷺『2回の表 先頭のバッターは、4番 キャッチャー 暦さん』

阿良々木「」ペコリッ

軋識「」ペコリッ

軋識(さて、打たす気はないとは言ったが先頭が4番だからな。慎重に行くべきだっちゃ―――)スッ

双識(アウトコースのボール球にストレート―――)コクッ

ビシュッ! パァン!

審判「ボール」

軋識(……やけにしっかり見てきたっちゃね。狙い球じゃなかったちゃか?)

双識(もしくは、初球は見るって決めてたのかも知れないね)

軋識(なら、わざわざそれに乗ってやる必要はないっちゃが、さっきの見送り方はちょっと違う気がするっちゃね……)

双識(?)

軋識(何を考えてるっちゃ、こいつ?)

阿良々木「」ブツブツブツ



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

化物ベンチ

火憐「羽川さん、ナイスピッチ!」

月火「本当にナイスピッチだね、羽川さん」

羽川「ありがとう。火憐ちゃん、月火ちゃん。二人もナイスゲッツーだったよ。助かっちゃった」

火憐「えー? そんなことねぇって」テレテレ

羽川「いやー、そんなことあるよ。あそこでゲッツーが取れてなかったら、ランナーが残って状況がまた変わってきてただろうし」

火憐「えー? そうかなー?」テレテレテレ

月火「そうだよ。あのゲッツーは流れを変える超が付くナイスプレーだよ」

火憐「えー? やっぱりそうだったかー!」アハハハ

阿良々木「いや、ただの内野ゴロだし。ゲッツーに取れて当たり前だろ」

火憐「おらぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」ゴスッ

阿良々木「ごふぅ」

火憐「何か言ったか、兄ちゃん」

阿良々木「いえ、何も……」

八九寺「本当に阿良々木さんは、空気が読めてないですよねー」

阿良々木「せめて、そこではボケてくれ……」

羽川「それより、次の攻撃の作戦について話したいんだけど……」



羽川「えっと。もうみんな知ってると思うけど、相手ピッチャーは右投げのサイドスローだよね」

戦場ヶ原「ええ」

火憐「サイドスローって、あの横手投げのことか?」

阿良々木「他に何があるんだよ?」

火憐「いやー、ご飯で作ったパンケーキのことかと」

阿良々木「相手ピッチャーがライススコーンって意味が分からねーだろうが」

火憐「それじゃあ、ピンク色した不思議な生物が乗ってる星のことか?」

阿良々木「それはライドスターだろ。全然似てねーよ」

撫子「それに火憐ちゃん。ライドスターは星じゃなくて、星型のエアライドマシンだよ」

阿良々木「いや千石。似てないからって別に掘り下げなくてもいいんだぞ?」

撫子「?」

羽川「あの。そろそろ話戻してもいいかな?」


羽川「それで、相手のサイドスローはピッチャーの体格もあって、かなり球の出所が見づらく、角度の付いた球になってる。これはさっきバッターボックスに立った人なら分かるよね」

神原・戦場ヶ原「」コクッ

羽川「それで、最初の作戦とは変更。できるだけ相手の奥の手を引きずり出すことよりも、まずは相手の球筋を見極めることに専念して」

阿良々木「羽川。もう一回『たますじ』って所を復唱してくれ。今度はもうちょっと……」

戦場ヶ原「『球筋』がどうかしたのかしら、阿良々木君?」カチャ ホッチキス

阿良々木「いえ、何も……」

戦場ヶ原「あら、そう?」

羽川「えっと……。というわけで、基本甘い球以外は追い込まれるまでは手を出さないように。ボールには手を出さない。横はどこからどこまでがストライクゾーンかを意識して、低めには絶対に手を出さないようにね」

阿良々木「ああ。分かった」

火憐「要するにストライクゾーンに来た球だけを打てばいいんだろ」

月火「随分とのんびりとした作戦だけど、相手が相手だし、しょうがないよね」

羽川「特に阿良々木君と神原さん」

阿良々木「ん?」

神原「何か御用か?」

羽川「私はこの試合のキーマンとなるのは阿良々木君と神原さんだと思ってるんだ」

阿良々木・神原「え?」

羽川「相手は球の出所が見にくい、見慣れないサイドスローとはいえ、左の神原さんからなら球の軌道が見やすいし、阿良々木君の『眼』なら、きっと捉えられる」

阿良々木・神原「………」

羽川「二人には守備でも重要な所をお願いをしちゃてるし、色々と負担を掛けさせちゃってるけど、向こうから点を取る役目。二人にお願いしちゃってもいいかな?」

阿良々木・神原「………」

羽川「………」

阿良々木・神原「」スッ

羽川「………?」

阿良々木・神原「任せろ!」


ビシュッ!

キンッ!

審判「ファール!」

鵜鷺『6球目も打ってファール! 阿良々木君粘ります!』

阿良々木「ふぅ~~」

軋識(粘るっちゃね……。さすがは4番ってとこだっちゃ)

双識(どうする? 私としては別に使っても構わないんだけど)

軋識(そうだっちゃね。俺的には一巡目はストレート一本で乗り切れればベストなんだっちゃが……)

双識(といっても、今回は初戦と決勝で二試合投げるからね、決勝のことを考えると、できるだけ球数は節約しときたいんだけど)

軋識(ああ、そうだったっちゃ。今日は二試合あるんだったっちゃね。だったら出し惜しみしてる場合でもないっちゃね)チラッ

阿良々木「」

軋識(確実にスライダーでアウトを取るには、まず―――)スッ

双識(アウトコースにボール球のストレート―――)コクッ

ビシュッ!

阿良々木(ボール)チキッ

パァン!

審判「ボール!」

鵜鷺『ボールはわずかに外。これでツーストライクスリーボール。フルカウントです』

阿良々木(うしっ)

軋識(おしっ。準備完了っちゃ。それじゃあ行くぞ―――)スッ

双識「」コクッ

ビシュッ!

阿良々木(回転が違う? けど、これは入ってる―――)グッ

ギュンッ!

阿良々木(曲がった!?)

ブンッ! パァン!

審判「ストライーク! バッターアウトッ!」


すいません。色々と寝落ちったりなんだりで、かなりグダグダな更新になってしまいました。

とりあえず、今回の更新はここまでです。

次回の更新はやっぱり気まぐれで。



いいね

鵜鷺『三振ーー! 阿良々木君、必死に粘りましたが最後は変化球で三振です!』

羽川「」グッ

阿良々木「だぁー! やっぱ変化球だったか~。今思うと確かに羽川のスライダーと似たような回転だったな」スタスタ

軋識「?」

鵜鷺『双識さん、立ち上がりから四者連続の奪三振! 潤さん、双識さんの調子はかなりいいみたいですね』

潤『ん~? ああ、そうみたいだな』

鵜鷺『さて、チーム化物は双識さんを打ち崩すことが出来るのでしょうか?』

潤(なぁ、玖渚ちん。あの眼鏡の女、さっきガッツポーズをしたように見えたんだが、あたしの気のせいか?)ボソッ

玖渚(ん~ん。気のせいじゃないと思うよ。僕様ちゃんもそのように見えたし)

潤(けどよ、普通4番が三振したのにガッツポーズなんかするか?)

玖渚(だから、普通じゃないんでしょ。普通じゃないのが、今の試合の状況なのか、あの子がなのかは分んないけどさ)

潤(かー。何考えてるのか分んねー。あたしの一番苦手なタイプだわ……)

火憐「あははは。兄ちゃん情けねーな。あたしの前に立ってんだから、ちゃんと打ってもらわねーと、あたしがチャンスの場面で打てねーじゃん」

阿良々木「うるせーよ、でっかい方。初めて見る球で来たんだからしょうがねーだろ。つーか、仮にチャンスで回ったとしても簡単に打てるようなピッチャーじゃねーぞ」

火憐「はん。いいから兄ちゃんは見てろって。とびっきりでっけぇのをかっ飛ばしてやっから」

阿良々木「ったく。最後に向こうが投げてたのはスライダーだぞ。結構切れがあるから気を付けろよ」

火憐「へいへい。分かってるって」スタスタ

阿良々木「本当に大丈夫かよ、あの馬鹿……」



2回裏 TF 0-0 TB
一死 ランナー無し
打者 阿良々木火憐

鵜鷺『5番 ショート 火憐さん』

火憐「よろしくお願いしまーす!」ペコリッ

軋識「よろしくっちゃ」ペコッ

火憐「よっしゃー! でっけぇのぶっ放すぞーー!」ブンブンッ

軋識(随分単純そうな奴が来たっちゃね……。いや、演技って可能性もあるか?)

軋識「………」

火憐「おらおら、かかってこいやー!」

軋識「なぁ、お前好きな食べ物って何だ?」

火憐「は?」

軋識「だから、好きな食べ物は何だって訊いたっちゃ」

火憐「う~~ん。ハンバーグかな?」

軋識「ほー。何でだっちゃ?」

火憐「美味いから」

軋識「そうか……」

軋識(決まりだっちゃ)


軋識(こういう単純な奴は一見真っ直ぐが得意そうだが、それよりも、性格上前のバッターが打ち取られた球を狙う習性があるっちゃ)

軋識(しかも、さっきの会話を聞くに、恐らくこいつは4番の奴の妹だっちゃ。とすると、『兄貴の敵討ち』だとか、『兄貴が打てなかった球を打てば、あたしの方が凄い』とか考えてそうだっちゃね)

火憐(兄貴が打ち取られた球を打てば、あたしの方が凄いってところを兄ちゃんに見せつけることが出来る。しかも兄ちゃんの敵討ちにもなるし一石二鳥じゃん! あたしってもしかして天才?)キシシ

軋識(ってことは、こいつが狙ってるのはスライダーっちゃね。それなら―――)スッ

双識(インコースの高めに真っ直ぐ―――)コクッ

ビシュッ!

火憐(真っ直ぐ―――!)

月火(内に入ってるよ)

火憐(スライダーじゃないけど、いいや。行っちゃえ!)グッ

ガチィンッ!

軋識「レフト!」

絵本「」バックバック

絵本「ご、ごめんなさい……」パスッ

審判「アウト―!」


鵜鷺『火憐さん、大きい当たりでしたが結局レフトフライに終わりました!』

火憐「だぁー! くっそ~~」ガクッ

軋識(詰まりながらも、あそこまで飛ばすっちゃか……。見た目以上にパワーがあるっちゃね)

双識(変化球狙いでも、きっちり真っ直ぐに合わせてきたし、結構要注意人物かもしれないね)

阿良々木「だぁー、何初球から手出してんだよ、あの馬鹿!」

戦場ヶ原「あら、でも何処かのダメなお兄ちゃんと違って、あの娘は外野までボールを運んでるわよ?」

八九寺「確かに。どこかのダメな4番が三振して、嫌な流れでしたが、見事に妹さんが流れを変えてくれましたね」

阿良々木「ダメで悪かったな!」

神原「しかし、ダメな先輩でも止められなかった向こうの連続奪三振も途切れたし、結構いい感じになってきてるのは確かだな」

阿良々木「神原まで……」ズーン

千石「大丈夫だよ、暦お兄ちゃん」

阿良々木「千石……」ジーン

千石「撫子はいくらお兄ちゃんがダメダメでも全然気にしないよ」

阿良々木「そっか。全く励ましになってないぞ千石。あとガハラさん。その手に持ってるカッターは今すぐ仕舞ってくれ」

羽川(スライダーで意識が外に向いてるところに、火憐ちゃんが得意の真っ直ぐを内に入れてフライを打たした……。下手したら長打だってあるっていうのに、意外と度量があるなー。向こうのバッテリー)

双識「あーあー。折角の妹キャラだったのに、たった一球で終わりかー」

軋識「くだらないこと言ってないで、さっさと次も仕留めるっちゃよ」



2回裏 TF 0-0 TB
二死 ランナー無し
打者 阿良々木月火

鵜鷺『6番 セカンド 月火さん』

月火「よろしくー」

軋識「よろしくっちゃ」

月火「はあーあ。折角の打席なのに、何でこんなどうでもいいよな場面なのかなー?」ハァー

軋識(何だか次は一転、随分とやる気のなさそうな娘が来たっちゃね……)

月火「これも全部お兄ちゃんのせいだ。そうだ、そうに決まってる」ウンウン

軋識(こいつは明らかにパワーがなさそうだし、多少甘くても長打の心配はなさそうっちゃね。初球からバンバン入れてくか―――)スッ

双識(い、入れるっ!? 一体何をだい!?)

軋識(サイン交換で変態的なこと言ってるんじゃないっちゃ!)

双識(言ってるってツッコミも何かおかしいけどね)

軋識(うるせーよ!)

双識(まぁ、冗談はさておきインコースに真っ直ぐね)

軋識(ったく。クリーンナップを抜けたからって、あまり気を抜くんじゃないっちゃよ。まだ相手の好が気は終わってないんだからな)

双識(ああ。分かってる―――)スッ

月火「………」

ビシュッ!

月火「」スッ

双識・軋識(セーフティバント!?)

一里塚「」ダッ

小鹿(初球から!?) ダッ

月火「………」スッ

パァン!

審判「ストライーク!」

小鹿「って、やんないのかよ!」ガー!

一里塚「………」

月火(ふむふむ。なるほどねー)

軋識(何だ? 結構甘めの球だったのに、バントしてこなかったっちゃ。ただの揺さぶりか?)

月火(次は、こんなのはどうかな?)スッ

双識・軋識「………?」

鵜鷺『おーっと、6番月火さん、ランナーがいないのにバントの構えです。これは一体どういう意味でしょう?』

潤『かはは。あのガキ。見た目に反してかなり性格悪いぜ』

鵜鷺『え?』

玖渚『案外、油断してると危ないかもしれないよ。ぐっちゃん』ウフフ

軋識(マジで何だ? バントの構え……普通に考えればバスターだよな? けど、ツーアウトでランナーがいない場面でするか?)

月火「」ユラユラ

軋識(いや、この女にレンの球が打てるとは思わないっちゃ。だったら、ただの揺さぶりだ―――)スッ

双識「」コクッ

ビシュッ!

月火「」スッ

双識・軋識(バットを引いた―――)

一里塚「」グッ

小鹿(来るっ!?)ググッ

ブンッ! パァン!

審判「ストライーク!」

小鹿「ふぅ。やっと追い込んだね」

一里塚「……ふむ」

月火「♪~」

軋識(やっぱり、こいつは双識の球を打つのは無理だっちゃね。そうと分かって、向こうはどう出るっちゃ?)チラッ

月火「」スッ

軋識(またバントの構えっちゃか……随分徹底してるっちゃね)

双識(どうする?)

軋識(どうせ、打てないんだ。ここはさっさと片付けるぞ―――)スッ

双識(了解―――)コクッ

ビシュッ!

月火「」スッ

チッ パァン!

審判「ストライーク! バッターアウト!」

鵜鷺『三球三振! 双識さん、早くも5つ目の奪三振を取りました! スリーアウトチェンジです!』

――――――――――――――――――――――――――――

化物ベンチ

阿良々木「おい、ちっこい方。お前やる気あんのか?」

月火「」フーーン

阿良々木「お前な、これは遊びじゃねーんだよ。打席で散々ふざけやがって、何考えてるんだ?」

月火「あー! もううるさいな! お兄ちゃんが塁に出ないのが悪いんでしょ! ツーアウトでランナー無しとかやる気が出る訳ないじゃない!」

阿良々木「何でキレてんだよ。しかも理由がめっちゃ自己中じゃねーかよ。偉そうにキレる資格なんてねーよ」

月火「もう、うるさいうるさい! 4番のくせに三振しといて偉そうに指図しないでよね!」

阿良々木「ああっ?」

戦場ヶ原「落ちつきなさい。阿良々木君」

神原「そうだぞ、阿良々木先輩。ほら、次は守備だぞ。早くレガース付けないと。お手伝いするぞ」

阿良々木「……分かったよ」カチャカチャ

戦場ヶ原「ほら、月火さんも切り替えて。もし、守りに集中できなくてエラーしたらただじゃおかないわよ」

月火「うん。分かってるよ」スタスタ


羽川「」シュッ!

戦場ヶ原「」パンッ

阿良々木「悪い、ガハラさん。代わるよ」スタスタ

戦場ヶ原「別に謝らなくてもいいわよ。それよりも早く羽川さんの投球練習に付き合ってあげなさい。今は貴方が羽川さんの女房役なんだから」

阿良々木「その言い方だと、普段はお前が羽川の女房みたいだな」

戦場ヶ原「何言ってるの? 私は阿良々木君の女房でしょ?」

阿良々木「お、おう……」

戦場ヶ原「ただ、今回は特別に羽川さんに貸してあげてるんだから、しっかり羽川さんを支えてあげなさいよね」

阿良々木「……ああ。分かってる」

戦場ヶ原「あと、妹さんのこと。あまり厳しく言わないであげてくれるかしら?」

阿良々木「は?」

戦場ヶ原「あの子、阿良々木君が思ってる以上に色々と考えてるわよ」

阿良々木「………」

戦場ヶ原「さぁ、この回もしっかり守るわよ」

阿良々木「ああ」

戦場ヶ原(本当に、ウチのダーリンは素直じゃないわね。これじゃあ、どっちが本当のツンデレなんだか分からないわ……)タッタッタッ

阿良々木「おっしゃ、羽川。とりあえず3球な」

羽川「うん」

戦場ヶ原(何せ、レガースを付けるのも忘れて妹たちの打席に見入ってたんだから……素直じゃないわ)

羽川(……本当に、ウチのチームには素直じゃないのが一杯だよね)イイタイコトガアルナライエバイイノニ


布石!

>>99
ありがとう!
>>109
な、何のことでしょう?

といった感じで、今回の更新は終わりです。
最近仕事ばっかで全然野球やれてないからめっちゃ欲求不満気味。近くにバッティングセンターでもあればいいんだけど、全くない……。(敷地的に東京はバッティングセンターが少ないのかな?)
次回の更新は、やっぱり気が向いたときにします。よかったら見てって下さい。

3回裏 TF 0-0 TB
二死 ランナー無し
打者 忍野忍

ビシュッ!

パァン! 

審判「ストライーク! バッターアウト!」

忍「ふんっ」スタスタ

鵜鷺『三球三振! 忍さん、全く手が出ずに三振で終わりました! スリーアウトチェンジです!』

軋識(何だ、あの女? 全く打つ気がなかったな……)スタスタ

双識「何だか、戯言のあの娘を思い出すね」スタスタ

軋識「人の心を勝手に読むな。……ただ、さっきの女はあいつとは違う感じの見送り方だったっちゃ」

双識「?」

軋識「まるで、いつでも打てるが、気が向かないから打たないみたいな、そんな感じだっちゃ」

双識「……狙い球が違ってたってことかい?」

軋識「いや、そうじゃなく―――」

伊織「双識お兄様、ナイスピッチングです!」

双識「おおお! 伊織ちゃん、ありがとう! 伊織ちゃんもナイス守備だったよ!」

伊織「いえ、まだ一球も私のとこまでボールが飛んできてないですよ?」

双識「いやいや、伊織ちゃんがライトで守ってるってだけで最高の守備だよ!」

伊織「え? そ、そうですかぁ~」テレッ

双識「そうとも! イチローも裸足で逃げ出すくらいの好守備っぷりだったよ」

伊織「そうですか。いやー、実は自分もそう思ってたんですよねー」

双識「いよっ、チームフォックスの守備職人!」

伊織「ふふっ、任せてください。どんなボールが来ようと、しっかりと捕ってみせましょう!」

双識「わーー」パチパチ

一里塚「あの……。何ですか、あれ?」

軋識「気にするなっちゃ。ただのバカだ」スタスタ




4回表 TF 0-0 TB
無死 ランナー無し
打者 澪標深空

鵜鷺『潤さん。3回は両チームとも三者凡退で終わりましたね』

潤『まぁ、両方とも下位打線だしな。妥当っちゃあ妥当だろ』

玖渚『ただ、その3人のうち取られ方を見ると、互いのピッチャーの特徴が見てとれるよね』

潤『チーム化物のピッチャーは変化球をうまく使った打たせて取るピッチングに対して、チームフォックスのピッチャーはストレート中心の力で押していくピッチング。見事に正反対のスタイルだな』

鵜鷺『なるほどー。そこら辺の投げ合いにも注目ですね』

鵜鷺『それでは、4回表の攻撃に移ります。4回表、チームフォックスの攻撃は1番 ショート 深空さん』

深空「」ペコッ

阿良々木(さて、打順も二巡目に入ってきたし、より慎重に攻めないとな……)ペコッ

深空「」スッ

阿良々木(確か、こいつは一打席目は外角を狙ってきてた。最初の打席で苦手なコースを狙ってくるとは思えないから、恐らくこいつは、内角よりも外角の方が得意ってことだよな)

阿良々木(だったら、内角中心でカウントを作って、最後は外角のボール球を打たせるってところか?)

羽川「………」


ビシュッ!

深空(外角―――)グッ

ギュン!

深空(スライダーッ!?)

キンッ!

ドッ!

一塁審「ファール!」

深空(ちっ、流し過ぎたか……)

一里塚(外角好きの深空さんに対して、あえて外角の球を打たせてストライクを取りましたか……)

軋識(となると、次は内角でストライクを取って、最後も内角で打ち取るってところか?)

ビシュッ!

深空(また外角っ!?)

キィンッ!

鵜鷺『いったー! 大きな当たりー!』

スッ

一塁審「ファール!」

鵜鷺『ああー。しかし、ボールは切れてファールです』


深空(くそ。速球だった分振り遅れた……)

伊織「深空さん、いい当たりですよー!」

小鹿「いけるいけるー!」

一里塚(確かにいい当たりでしたが、さっきので決めれなかったのは痛いですね)

軋識(これで2-0。向こうとしてはストライクを投げる必要がないっちゃからね)

深空(外外と二球続いて、そろそろ内角に来るか……?)スッ

羽川「」スッ

ビシュッ!

軋識・一里塚(三球続けて外角っ!?)

深空(このっ、なめるなっ!)グッ

ググッ!

カキィ

阿良々木「羽川!」

羽川「分かってる」パシッ シュッ

忍「」パンッ

審判「アウトー!」

深空「くっそーー!」

4回表 TF 0-0 TB
一死 ランナー無し
打者 澪標高海

鵜鷺『2番 セカンド 高海さん』

高海「」ペコッ

阿良々木「」ペコッ

高海(深空は、得意な外角で追い込まれて、最後も外角の低めに外れたボール球を打たされた。ということは、僕に対しても初球から内角を投げてくる可能性もあるな……)スッ

羽川「」スッ

ビシュッ!

高海(外角っ……)

パァン!

審判「ストライーク!」

高海(ちっ、僕に対しても外角から入ってきたか……。ということは次は何で来る……?)スッ

羽川「」スッ

ビシュッ!

高海(また外角っ!?)グッ

ブンッ!

ググッ!

曲識(シンカー……!)

カキィン

阿良々木「ガハラさん!」

高海「ちぃ!」ダッ

戦場ヶ原「」パシッ シュッ!

忍「」パンッ!

審判「アウトー!」


4回表 TF 0-0 TB
二死 ランナー無し
打者 零崎双識

鵜鷺『高海さん、外角の変化球を打つもサードゴロに倒れました。羽川さん、この回たった5球でツーアウトを取りました』

潤『あいつらは好き嫌いがはっきりしてるからな』

玖渚『けど、ちょっと簡単にいきすぎたかな。これじゃあ、完璧にチーム化物に流れが行っちゃうよ?』

潤『チームフォックスとしては中盤戦に入るにあたって、塁に出ときたいだろうなー』

鵜鷺『なるほどー。その塁に出たい場面で迎えるは、3番 ピッチャー 双識さんです!』

双識「よろしくー」ペコッ

阿良々木「」ペコリッ

双識(さて、深空ちゃんと高海ちゃんと5球連続で外角で勝負してきてるけど、私に対しても外角で来るかな?)スッ

羽川「」スッ

ビシュッ!

双識(内角っ!)

ググッ!

軋識(シンカー!)

双識「」ピタッ!

パァン!

審判「ボール!」


鵜鷺『初球変化球を見て、ボールです!』

双識(やっぱり、私に対しては配球を変えてきたね。けど―――)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

萌太「チーム化物としては最悪ですね」

一姫「……? 何でですか?」

萌太「あのピッチャーが初球に決め球のシンカーを投げたのは、ファーストストライクを確実に取るためなんですよ」

萌太「けど、そのシンカーでストライクを取れなかったどころか、しっかりとシンカーの球筋を見られた」

子荻「しかも、5球続けて投げた外角からの裏をかく内角を投げたことで、より双識さんの裏をかくのが難しくなった」

萌太「こうなると、向こうとしてもストライクを取るのが難しくなります」

子荻「かといって、ストライクを投げないとカウントをどんどん悪くする」

萌太「仮に追い込んだとしても、決め球のシンカーを見られてるとなると、打ち取るのすら難しい」

子荻「ファーストストライクの入り方を間違えたために、その打席、常に苦しい状況で挑まなくなったという訳です」

一姫「……たった一球で、苦しい状況へ追い込まれてしまうことがあるってことですか……」

子荻「そういうことです」

萌太「だからこそ、投球においては初球の入り方が重要視されているんですよ」

伊織「なるほど」

子荻「さて、そういう状況下で相手のピッチャーはどう出るのでしょうか?」



一旦離脱。
出来るのなら、また夜頃に投下します。

双識「………」

阿良々木「………」

羽川「………」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

鵜鷺『化物バッテリー、随分悩んでるみたいですね』

玖渚『だろうね。チーム化物としては、次の球は絶対にストライクを取りたいだろうし』

潤『かと言って、簡単にストライクを投げれば痛打される。向こうバッテリーとしてはかなり難しい場面だな』

羽川「」スッ

双識(来る!)

ビシュッ!

ギュンッ! 

双識(スライダー)

パァン!

審判「ストライーク!」

阿良々木「ナイスボール、羽川!」シュッ

双識(インコース一杯にスライダーか……。これはさすがに厳しいや)

羽川「」パシッ

双識(内に二球。となると次は―――)スッ

羽川「」スッ

双識(なっ……! 今度は早い投球―――っ!)

ビシュッ!

ギュンッ!

双識「ぐっ……」ピタッ

パァン!

審判「ボール!」


双識(また、インコースにスライダー。しかも、今度はストライクからボールになる球……)

一里塚(投球モーションに入る速度を変えることで裏を突く発想は良かったですが、寸での所でバットを止めた双識さんの方が一枚上手でしたね。これでワンストライクツーボール。またボール先行になりました)

曲識(三球目―――)

軋識(バッティングカウントだっちゃよ)

神原(いつでも打たせてきて構わないぞ、羽川先輩―――)グッ

火憐(どんな球が来ても、ぜってぇ捕る!)グッ

月火(ツーアウトでランナー無し。これなら、後ろ気味に守ってても大丈夫―――)グッ

双識(さて、次は何で来る?)

羽川「」

双識「」

羽川「」スッ

ビシュッ!

キィンッ! パサッ

審判「ファール!」

鵜鷺『インコース高め! 双識さん、これをファールにしてツーストライクツーボール!』

火憐「よっしゃー! 追い込んだー!」

阿良々木「ナイスボール! 羽川!」

伊織「バット振れてますよー!」

軋識「タイミング合ってるっちゃ!」

双識「すぅ……」ブラッ

羽川「……ふぅ」パシッ

鵜鷺『息詰まるエース対決! 軍配はどちらに上がるのでしょうかっ?』


ビシュッ!

ギュッ! パァン!

審判「ボール!」

曲識(またインコース……)

一里塚(これで5球連続)

軋識(これは、少し徹底しすぎだっちゃね)

双識(これで、フルカウント。そろそろ外に来るかな?)

羽川「………」

双識(しかし、この娘のことだ。裏をかいて全球インコースということも考えられる……)

羽川「………」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

深空≪このっ、なめるなっ!≫グッ

ググッ! カキィ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

双識(インコースだろうと、アウトコースだろうと、この娘のコントロールなら必ずストライクを入れてくる)

羽川「………」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

高海(また外角っ!?)グッ

ブンッ! ググッ!

カキィン

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

双識(決め球は何だ? シンカー……? けど、あれは初球で球筋を確認してる。来たとしても当てることはできる)

羽川「………」

双識(………一体何で来る?)ジリッ

羽川「………」

双識「………」

羽川「」スッ

双識「………」グッ

ビシュッ!

双識(アウトコースッ!)

軋識(入ってるぞ、レン!)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ググッ!

軋識(シンカー!)

パァン!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


≪シンカー≫


ズパァン!

審判「ストライーク! バッターアウッ!」

鵜鷺『三振ーーっ! 最後はアウトコース一杯! 双識さん、手が出ませんでした!』

火憐「っしゃー! 羽川さん、ナイスピッチ!」

神原「最後のアウトロー一杯へのストレート。まさに圧巻だったぞ、羽川先輩!」

羽川「あはは。神原さん、それは言い過ぎだよ」

阿良々木「いやいや。マジで凄かったぞ、羽川。僕も受けてて鳥肌が立ったくらいだぜ」

羽川「そう言ってもらえると、私も嬉しいかな」

火憐「よっしゃー。この流れに乗って、次の攻撃ガンガン攻めていこうぜ!」

「「「「「「「おーーーーーーーーーーーーーーっ!」」」」」」」

双識「すぅ……はぁ~……」

双識(最後にシンカーが頭によぎってしまった……)

一里塚(一、二番に対し外角だけで攻めた配球と、初球にシンカーを見せたことによって、双識さんにアウトコースのシンカーで打ち取るイメージを意識付けられた……)

曲識(バッターに対してだけでなく、そのイニング通じて、どう相手を打ち取るかをイメージしてる)

一里塚(これは、私たちが思っている以上に強敵かもしれませんね……)

羽川「………」

双識(しかし、これで二打席連続で凡退か……。さすがにこれは情けないかなぁ……)

スッ

双識「ん?」

軋識「ほれ、いつまで気落ちしてるっちゃ? さっさと切り替えろ」

曲識「試合はまだ4回だ。終盤に向けて、今、打ち取られとくのも悪くはない」

伊織「それに、まだ0対0です。野球は点を取られなければ負けないですよ」

双識「………」

伊織「守備職人である私が後ろで守ってますから、双識お兄様は安心してピッチングに専念して下さいね」ニコッ

軋識「そう言って、無闇に飛びついて、ボールを後ろに逸らすんじゃないっちゃよ」

伊織「んっ……。そ、そんなことしませんよぅ」

曲識「まぁ、その時は僕が必ずカバーするから大丈夫だろう」

伊織「だから、逸らしませんってばぁ~」

軋識「どうだか?」

伊織「うな~~……」

双識「……うふふ。大丈夫だよ、伊織ちゃん。私はちゃんと期待してるからね」

伊織「はい! 期待しちゃってください!」

軋識「ったく。本当にレンは伊織には甘いっちゃね……」ハァ…

曲識「まぁ、それも悪くはない」

軋識「だな。それじゃあ、いっちょ気を取り直して行くっちゃか!」

双識「うふふ。そうだね」

伊織「はい。気合い万全です!」

曲識「ああ」


「「「「零崎開始っ!」」」」



というわけで、今回はここまでです。
次回は来週の土曜くらいに更新します。
というか、この試合と次の試合。決勝と、あと2試合あるんだよね……。巻きで行った方がいいかな?



明日はホームランだ!

4回裏 TF 0-0 TB
無死 ランナー無し
打者 神原駿河

鵜鷺『4回裏 チーム化物の攻撃は、1番 センター 神原さん』

神原「」ペコリッ

軋識「」ペコリッ

神原(さて、4回裏。未だにノーヒットというのはまずいな。ここは私が切り込み隊長として塁に出なければ……)

軋識「」スッ

双識「」コクッ

ビシュッ! パァン!

審判「ストライーク!」

神原(よく見える。右打ちには見にくいサイドスローも、左打ちからだと球の出所が丸見えだ)

神原(一打席目は球速に驚いてしまったが、しかしこの球速にも慣れてきた)

軋識「」スッ

双識「」コクッ

ビシュッ!

キンッ

審判「ファール!」

神原(真っ直ぐには何とか当てることが出来る……)

ビシュッ! パァン!

審判「ボール」

神原(しかし、問題は―――)

軋識「」スッ

双識「」コクッ

ビシュッ!

ギュンッ! ブンッ!

パァン!

審判「ストライーク! バッターアウッ!」

神原(これをどう打てと……?)ガクッ


鵜鷺『三振ー! 双識さん、この回も先頭バッターを三振に仕留めました!』

神原「すまない、羽川先輩。何とか塁に出たかったんだが……」

羽川「いや、あれを初見で打つのは難しいよ。しょうがないって」

神原「打席で見ると、予想以上の切れだぞ」

羽川「うん。だろうね。こっから見ても途中までスライダーって気付かなかったし」

神原「うむ」

羽川「それに、かなり曲がってるみたいだったしね。これは簡単には打てるものじゃないかもしんないね」

神原「では、どうすればいいのだ?」

羽川「う~ん……。とりあえず、打席に立ちながら考えてみるよ」

神原「羽川先輩、意外と暢気だな……」

羽川「焦ったってしょうがないしね」

神原「確かにそうだが……」

羽川「まぁ、焦らずゆっくり行こう」スタスタ


4回裏 TF 0-0 TB
一死 ランナー無し
打者 羽川翼

鵜鷺『2番 ピッチャー 羽川さん』

羽川「よろしくお願いします」ペコッ

軋識「」ペコッ

羽川「」スッ

軋識(さて、来たちゃね。このチーム一の要注意人物が……)

双識「………」

軋識(こいつをこれ以上調子づかせないためにも、ここで完璧に打ち取る必要があるっちゃね―――)スッ

双識「」コクッ

ビシュッ!

ギュンッ! パァン!

審判「ボール」

羽川(初球からスライダー……)


羽川(特に打ち気は見せてないんだけど、何か狙ってるのかな?)

軋識(さっきの入れて欲しかったっちゃね……。もしかして、さっきの打席のことをまだ気にしてるっちゃか?)ビッ

双識「………」パンッ スッ

軋識(……どうやら、そういう訳じゃないみたいだな。それなら問題はないちゃが、しかし、こっからどうするっちゃかね?)

羽川「………」

軋識(……打ち気はないっちゃね。そういやこいつ、前の打席追い込まれるまで手を出さなかったな。それなら―――)スッ

双識(真ん中に真っ直ぐ?)

軋識(大丈夫っちゃ。絶対に振ってこない)

双識(分かった。アスがそう言うなら、信じるとするよ―――)コクッ スッ

ビシュッ!

羽川(真ん中っ!?)グッ

パァン!

審判「ストライーク!」



阿良々木「羽川ー、打ち頃だぞー」

火憐「甘い球はどんどん振って行こうぜ、羽川さん」

羽川(やっちゃった~。まさか、ど真ん中に来るとは思わなかったなぁ……)

軋識「ナイスボール!」ビッ

双識「」パンッ

羽川(けど、さっき投げるまでにやたら間があった。もしかして、初球スライダーを外したのは何かを狙ってたわけじゃないのかな?)

軋識「………」

羽川(だとしたら、みすみすストライクをあげることはないよね……)グッ

軋識(やっぱり振ってこなかったっちゃね。出来ることなら、もう一球ストライクを入れていきたいが、さすがに向こうも今度は手を出して来るっちゃよね……)

羽川「」グッ

軋識(打ち気はある……。こいつのことだ、さっきの一球でストライクを取りに来てるのはバレてるはずっちゃ)

軋識(それなら、スライダーを振らすのがベストなんだが……。初球にスライダーを見せてるし、こいつが必ず振ってくるとは限らないっちゃ……)

羽川「」スラッ

軋識(………)スッ

双識(アウトコースにストレート―――)コクッ

軋識(こいつがこのチームで一番厄介な人物なのは間違いない。その相手に何度もウイニングショットを見せるわけにはいかないっちゃ。ここは力でごり押す!)

双識「」スッ

ビシュッ!

羽川(ストレート!)グッ


キィィン!



鵜鷺『打ったーー! しかし打球はライト方向へ上がってるー!』

羽川(ちょっと上がっちゃった……)ダッ

軋識「ライトー!」

伊織「うな~~!」ダダダッ

鵜鷺『が、しかし。打球は面白い所へ―――』

出夢「お、これは取れるか?」

人識「いや、これは落ちるわ」

伊織(絶対取ってみせます!)ダダダッ

人識「おいおい、無理すんなよ!」

軋識「無理だっちゃ! 身体で止めろ!」

伊織「うな~~~~~~~~~~~っ!」バッ

暦・火・日「抜けろーーーーーーーっ!」

ドッ!

鵜鷺『抜けたーーーっ! ライト前ヒーーーット!』

人識・軋識「やっぱなっ!」


暦・火・日「よっしゃあーーーーーーーっ!」

人識「あの馬鹿、何やってんだよ! 前の試合から何も学習してねーじゃねーか!」

羽川(二塁行ける!)ダッ!

鵜鷺『羽川さん、悠々と二塁を狙―――』

曲識「」フッ

八九寺「―――っ。羽川さんストップです!」

羽川「っ!」ピタッ

深空「」パァン!

鵜鷺『わせない! 狙わせません! センターの曲識さん、しっかりと伊織さんのカバーに入ってました!』

深空「ちっ。突っ込んでこいよ、糞アマ」

曲識「ふむ。一塁コーチャーの指示か。いい判断だな。悪くない」

羽川「危なかったー。ありがとうね、八九寺ちゃん」

八九寺「いえ、羽川さんもナイスバッティングです」

伊織「うな~~~~」ベター


>>127
ありがとうございます。ホームランは出ませんでしたが、やっとこチーム化物にボテンヒットが出ました。

というわけで、今回の更新はここまで。
次回更新はやっぱし気まぐれです。



4回裏 TF 0-0 TB
一死 ランナー一塁
打者 戦場ヶ原ひたぎ

鵜鷺『3番 サード 戦場ヶ原さん』

戦場ヶ原「」ペコッ

軋識「」ペコッ

鵜鷺『さて、チーム化物。チーム初のヒットが出てワンナウト一塁。どんな攻撃を仕掛けてくるんでしょうか?』

軋識(ったく。トキがカバー入ったから大事にならなくてすんだが、下手したらワンナウト得点圏でクリーンナップを迎えるとこだったっちゃ)

軋識(そういう意味では、こちらにもまだ流れがあると捉えていいかもしれないっちゃね)

戦場ヶ原(どうやら、あちらさんのライトはあまり物を考えずにプレーをするタイプみたいね)

戦場ヶ原(ワンナウトでランナー一塁。右方向を狙って一気に崩しに行けそうだけど、私では彼の球を外野まで運ぶのは難しいわね。だったら―――)スッ

双識・軋識「!?」

鵜鷺『おーっと。戦場ヶ原さん、早くもバントの構えです』

羽川「……へー」

阿良々木「ガハラさん……」

戦場ヶ原(ツーアウトでも、二塁にランナーがいればヒット一本で帰って来れるものね。それにダーリンなら、得点圏に羽川さんがいて奮起しないはずがない……)

戦場ヶ原(絶対に決める―――)ユラユラッ


軋識(ツーアウトにしてでも、得点圏にランナーを送るつもりか。余程4番に信頼を置いてるみたいだっちゃね)

軋識(けど―――)スッ

双識「」コクッ

ビシュッ!

戦場ヶ原「っ!?」バッ

パァン!

審判「ボール!」

火憐「あっぶねー。今、顔面スレスレだったぞ」

阿良々木「おい、どこ狙ってんだよ!」

軋識(狙いが分かってて、簡単にやらせる程お人好しじゃねーよ……)

戦場ヶ原「………」


パァン!

審判「ボール!」

鵜鷺『3球目外れてワンストライクツーボール。ボールが先行しています』

羽川(ワンツー。入れてくるとしたら次だよ、戦場ヶ原さん)

戦場ヶ原「………」

軋識(仕掛けてくるとしたら次だっちゃね……)スッ

一里塚「」グッ

小鹿「………」ゴクッ

双識「………」

戦場ヶ原「………」

双識「………」バッ ビッ

羽川「っ!?」バッ

小鹿「」パンッ パシッ

審判「セーフ!」

鵜鷺『双識さん、一球牽制を入れました』

玖渚『中々いいタイミングで牽制を入れてきたね』

羽川「ふぅ……」スクッ

小鹿(ま、まさかこのタイミングで来るとは思わなかった……)ドキドキ

軋識(これでランナーのスタートが遅れれば、例え転がっても二塁で指せる可能性が上がるっちゃ)

軋識(後は、いかにこいつにバントをさせないか。となると―――)スッ

双識(インローへのスライダー―――)コクッ

軋識(バントの構えがしづらいインロー。加えてスライダーならボールは転がらない。俺が捕れば余裕で二塁で刺せるっちゃ)

双識「」スッ

羽川「」ダッ

双識・軋識(走った!?)

戦場ヶ原「」スッ


コンッ!



鵜鷺『バント&ランだー!』

軋識「俺が行くっちゃ!」バッ

戦場ヶ原「」ダッ

軋識「」パシッ チラッ

羽川「」ザッ

軋識(大人しくしてろよ)ギロッ ビッ

小鹿「」パンッ

審判「アウトー!」

鵜鷺『送りバント成功! これでツーアウトランナー二塁』

軋識「ちっ」

一里塚(ワンツーからインコースにスライダーが来るのを読んで、急遽バント&ランに切り替えたという訳ですか)

子荻(下手したらフライになってゲッツーもあるかもしれないのに、完璧にスタートを切った度胸。場面によって作戦を変えてくの状況判断能力。あの選手は要注意ですね)

羽川「う~ん。さすがに三塁は無理だったかぁ」

戦場ヶ原(変化球だった分転がらなかったわね。羽川さんが走っといてくれなかったら完璧に失敗してたわ……)

戦場ヶ原「まぁ、それでもちゃんと繋いだんだから、これでちゃんと羽川さんを返さなかったら承知しないわよ。阿良々木君」

阿良々木「任せとけって。俺のためにチャンスを作ってくれたんだ。ここで返さなければ、男じゃねーよ」

戦場ヶ原「別に阿良々木君の為じゃないわよ? 私は早く点を取って羽川さんを楽にしてあげようと思っただけ。恥ずかしい感違いをしないでくれる?」

阿良々木「……確かに、あんだけ頑張ってんだから、そろそろ先制点を取って楽にしてやりたいな」

戦場ヶ原「そう思うんだったら、ちゃんと羽川さんを返してあげるのよ」

阿良々木「ああ。任せとけ」ザッ

鵜鷺『ツーアウトランナー二塁! この先制のチャンスの場面でチーム化物の4番を迎えます!』



4回裏 TF 0-0 TB
二死 ランナー二塁
打者 阿良々木暦

鵜鷺『4番 キャッチャー 暦さん』

阿良々木「お願いします」ペコッ

軋識「」ペコッ

軋識(全く面倒な場面で4番を迎えたっちゃね……)

軋識(けど、ここで4番を抑えれれば、向こうに与えられるダメージはかなりでかいっちゃ)

阿良々木「」スッ

軋識(こいつはストレートを散々粘った後にスライダーを空振ったっちゃ。なら―――)スッ

双識(アウトコースへストレート―――)コクッ

ビシュッ!

軋識(こいつの頭には三振したスライダーのイメージがこびり付いてるはずだっちゃ。空振りしたとこと同じコースへ投げれば間違いなく見送ってく―――)

阿良々木「んっ」


キィィンッ!





鵜鷺『打ったーーーーっ! 打球はライト方向頭上へーーーーっ!』

軋識(なっ! こいつ最初っからストレート一本に絞って―――っ!)

阿良々木(ストレートは前の打席散々見たからな、今度はしっかり捉えれた)ダッ

小鹿「伊織さん、バックーーーッ! 行ったぞーーっ!」

伊織「くぅ~~~っ」ダダダッ

曲識(ダメだ。追いつかない……)ザッ

羽川「」ダッ

鵜鷺『羽川さん、三塁を回ったーっ!』

軋識(くそっ。一点は仕方ないか……)

伊織「うっ……なぁーーーーーっ!」ダダダッ!

軋識「なっ、伊織っ!?」

鵜鷺『打球はフェンス際ーっ! 伊織さん、追いつくかーっ!?』

伊織(ううっ……怖いです。フェンスまであとどれ位ですか?)ダダダッ!

人識「ごちゃごちゃ考えてんじゃねーぞ」

伊織(このまま突っ込んだら、頭からフェンスに激突するかもしれないです……)ダダダッ!

人識「お前はボールに向かって突っ込むしか能がねーんだろ?」

伊織(凄く怖い………けど―――)



双識≪大丈夫だよ、伊織ちゃん。私はちゃんと期待してるからね≫



伊織(もう、わたしは逃げないっ!!)ダッ!



人識「最後まで突っ込めーーーーーーーーーーーーっ!」

伊織「うな~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!」






パシッ!






伊織「」ザザーーーーッ! ピタッ

曲識「伊織っ!」ダダッ

伊織「はぁ……はぁ……はぁ…………んぐっ……」

伊織「………はぁ~~~~~~~~」スッ ボール


審判「アウトーーーーーーーッ!」



鵜鷺『捕ったーーーーーーーっ! 伊織さん超ファインプレー! チーム化物に得点を許しません!』

軋識「よっしゃー! 伊織、よく捕ったっちゃ!」

双識「伊織ちゃん、ナイスプレー!」

伊織「え、えへへ~。そうですか?」テレッ

小鹿「超絶が付く位のファインプレーだって。フェンス際だったのによく突っ込んだね」

一里塚「伊織さんのおかげで相手の先制点を防いだんですからね。本当にナイスプレーですよ」

伊織「あははは~。いや~、守備職人であるわたしからしたら、あれ位は朝飯前ですよ。これからもどんどん任せてって下さい!」フンスッ

深空「ふん。先頭バッターの球を後ろに逸らしといてよく言うな」
高海「ふん。先頭バッターの球を後ろに逸らしといてよく言うな」

伊織「うぐっ……」ギクッ

深空「しかし危なかったな。もし、さっきの球も捕りそびれていたら、その左腕を引きちぎるとこだった」
高海「しかし危なかったな。もし、さっきの球も捕りそびれていたら、その左腕を引きちぎるとこだった」

伊織「怖っ!!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

阿良々木「嘘だろ……」

羽川「……やっぱり簡単じゃないね」

阿良々木「は、羽川……」

羽川「けど、結構いい当たりだったよね」

阿良々木「羽川、ごめん……。折角羽川と戦場ヶ原が作ってくれたチャンスだったのに……」

羽川「いや大丈夫だよ、阿良々木君。あれはどう見たって相手方のファインプレーだもん」

阿良々木「けど……」

羽川「ほら、そんな顔しないの」ムニッ

阿良々木「ふえっ……」

羽川「まだ試合は中盤なんだから、リベンジするチャンスはまだまだあるよ」

阿良々木「………」

羽川「それに、阿良々木君なら最後の最後にやってくれるって私は信じてるから」

阿良々木「………………」

阿良々木「……なぁ、羽か―――」

火憐「おーい、兄ちゃーん。早く帰って来いーっ!」

月火「お兄ちゃんはグローブだけじゃなく防具も付けなくちゃいけないんだから、とろとろしてる時間なんてないよー」

羽川「ほら、皆待ってるよ」

阿良々木「……ああ、そうだな。それじゃあいっちょ守りに行くとしますか!」タッ

羽川「うん」タッ




6回裏 TF 0-0 TB
二死 ランナー無し
打者 羽川翼

ギチィ

羽川「くっ……」ダッ

双識「」ダッ

軋識「ファースト!」

小鹿「オーライ♪」パシッ

双識「」スッ

小鹿「ほいっ」ポイッ

双識「」パシッ

審判「アウト―!」

鵜鷺『スリーアウトチェンジ! 双識さん、この回は三者凡退で締めました』

軋識「ナイスピッチ、レン」

双識「さすがに中盤のイニング全てでランナーを出させるわけにはいかないからね」

伊織「双識お兄様、ナイスピッチングですー!」

双識「あはは。ありがとう、伊織ちゃん!」

曲識「ナイスピッチだな、レン」

双識「ありがとう。トキも巨乳委員長のライナーを捕ってくれて助かったよ」

曲識「あれはお前の打球に相手が打ち取られたからだ。別に僕は何もしてないさ」

軋識「しかし、レンが相手の攻撃を抑えてくれてるのはいいが、次からは後半戦。そろそろ攻撃も何とかしないといけないっちゃね」

深空「問題ない。次の攻撃は僕たちからだからな。情けないクリーンナップに代わって僕たちが突破口を開いてやる」
高海「問題ない。次の攻撃は僕たちからだからな。情けないクリーンナップに代わって僕たちが突破口を開いてやる」

小鹿「といっても、二人ともこの試合ノーヒットのダメダメじゃん」

深空「あ? 殺されたいのか貴様」ギロッ
高海「あ? 殺されたいのか貴様」ギロッ

小鹿「わわっ、ストップストップ。僕は戦闘は専門外なんだから」

一里塚「はいはい。はしゃぐのは程々にして下さい」

深空「はしゃいでなんかいない!」
高海「はしゃいでなんかいない!」

一里塚「良いから静かにして下さい。いつまでたっても次の攻撃の指示が出来ないじゃないですか」

軋識「攻撃の指示って、何か策でもあるっちゃか?」

一里塚「まぁ、別のこれといった特別な策ではないんですけどね」

伊織「?」

一里塚「まずはあの面倒な変化球を封じてみましょうか」



7回表 TF 0-0 TB
無死 ランナー無し
打者 澪標深空

鵜鷺『7回表 チームフォックスの攻撃は、1番 ショート 深空さん』

深空「」ペコリッ

阿良々木「」ペコリッ

鵜鷺『さて、チームフォックス。打順は1番からという好打順。ここからで、先制の糸口を掴み取りたいところですね』

玖渚『5回の表はぐっちゃんとか曲識ちゃんとか良い当たりをしてたんだけど、バックの好守備で凡退で終わってるからね』

潤『つーか、チームフォックスは2回以降全くランナーが出てないからな。さすがにそろそろ焦りが出てきてんじゃねーか?』

鵜鷺『ですねー。ここは膠着した流れを変えるためにも先頭の深空さんは塁に出たいところですが、一体どう攻撃を仕掛けてくるのでしょうか?』

深空「」スッ

羽川「」スッ

ビシュッ!

阿良々木(外へのスライダー―――)スッ

パンッ!

審判「ボール」

軋識「なぁ、レン」

双識「何だい、アス」

軋識「前から思ってたっちゃが、あのバッテリー……」

双識「うん、そうだね。多分そうだと思うよ」

伊織「何がそう思うんですか?」

軋識「いや、あのバッテリーについてちょっと違和感が合ってな」

伊織「違和感ですか?」

軋識「ああ。お前も感じたと思うっちゃが、あのバッテリーがサインを決めてから投げるまでの速度が異様に速く感じないっちゃか?」

伊織「ああ、確かに。打席に入って構えたと同時に投げてきますもんね」

軋識「けど、いくら意思疎通が出来てると言っても、あれだけ変化球もあってコースに投げ分けられるのに、あれだけ速くサインを交換することなんて不可能なんだっちゃ」

伊織「……それじゃあ、一体どうやってあのバッテリーはサインを交換してるんですか?」

軋識「簡単だっちゃ。早くサイン交換するのが不可能なら、交換しなければいいんだっちゃ」

伊織「へ……?」

軋識「だから、あのバッテリーはサイン交換をしないでピッチングを行ってるんだっちゃ」



伊織「え、えーーーーーーっ! そんなことできるんですか?」

双識「いやいや、普通に無理だよ」

軋識「少なくとも俺たちはやらんし、やれないっちゃ」

伊織「あらかじめこの人にはこう投げるとか決めて投げてるんですかね?」

軋識「いや、それもないっちゃ」

双識「配球は、その時その時の状況に合わせて変えていくもんだからね」

軋識「だからこそ、キャッチャーは時の状況を正しく把握することが求められてるんだっちゃ」

伊織「それじゃあ、一体どうやってあのバッテリーは配球を組み立ててるんですか?」

軋識「配球を組み立ててるのはピッチャーの女の方だっちゃね」

双識「そして問題としてたのが、その配球をいかにキャッチャーへ伝えてるのかってことなんだけど……多分、ピッチャーはキャッチャーへ配球を全く伝えてないんだよね」

伊織「それじゃあ、キャッチャーは次何が来るか分からないじゃないですか」

双識「うん。分からないね」

伊織「いや、そんなあっさり……。分からないんじゃキャッチャーはどうやってボールを捕るって言うんですか?」

軋識「まぁ、冷静に考えて一つしかないっちゃよね」

羽川「」ビシュッ!

阿良々木「」チキッ

阿良々木(内へのシュート―――)スッ

ギュッ!

パァン!

審判「ストライーク!」

軋識「あのキャッチャー、反射神経一本で全ての球を捕ってるっちゃ」



鵜鷺『二球目変化球でストライクを取り、ワンストライクワンボールです』

阿良々木(ふぅ……。外へのスライダーの次は内へのシュートか。左右の幅が広くて凄く捕りにくかった……)

萌太(けど、これでバッターの中でのストライクゾーンが広がった。ちょっとしたボール球でもストライクを取れる可能性が高くなった)

深空「」スッ

羽川「」スッ

ビシュッ!

阿良々木(外へのスライダー。これは少し外れて―――)スッ

深空「」ザッ

阿良々木「!?」

キィン!

火憐「うおっ!」ザッ

戦場ヶ原「くっ」ザッ

ドッ!

鵜鷺『三遊間抜けた―! 打球はレフト前へ!』



深空「うしっ」グッ

伊織「深空さん、ナイスバッティングー!」

深空「当たり前だ、いちいち騒ぐな」

伊織「またまたー。こっそりガッツポーズなんかしてたくせに。素直じゃありませね―」

深空「が、ガッツポーズなんかしていないっ!」

伊織「照れなくてもいいんですよー。仲間なんですから嬉しい時は一緒に騒ぎましょう」

深空「ぐっ……」

阿良々木(外のストレートを三遊間へ引っ張っていった……)

羽川(別にストレートを狙ってた訳じゃないみたいだけど……何か嫌な感じだなぁ……)

鵜鷺『続くバッターは、2番 高海さん。チームフォックスの双子コンビ。一体どんな攻撃を仕掛けてくるのでしょうか?』


7回表 TF 0-0 TB
無死 ランナー一塁
打者 澪標高海

鵜鷺『2番 セカンド 高海さん』

高海「」スッ

羽川(普通に考えれば、ここはバントだよね)

阿良々木(そうなると、ワンナウト二塁でクリーンナップ)

羽川(4番の人と5番の人は五回の攻撃でいい当たりをしてたから、出来るだけ回したくないな……)

阿良々木(となると、バントをさせないためにもインコースを狙っていくべきなんだけど、このバッターは内角打ちなんだよな……)

羽川「………」スッ

ビシュッ!

阿良々木(インハイのストレート―――)スッ

キィィン!

戦場ヶ原「」バッ

ドッ!

審判「ファール!」

鵜鷺『ああっと。いい当たりでしたが、ファールです』

阿良々木(また、思いっきり引っ張っていった……)

小鹿「あの、変化球狙いじゃなかったんですか? 思いっきりストレートを打っていってるけど……」

一里塚「別にそんなこと言ってませんよ?」

小鹿「いや、でも、『まずはあの面倒な変化球を封じてみましょうか』とか言ってたじゃん」

一里塚「ですから、変化球を封じるからと言って、別に変化球を狙うように指示したわけじゃありませんよ」

小鹿「? つまりどういうこと?」

一里塚「変化球を狙うと言っても、あれだけ変化球が多いと的を絞りきれませんし、コーナーを突かれた変化球を打ってもファールにしかなりません」

小鹿「確かに、それでカウントを悪くして、最後はボール球を打たされるの繰り返しだもんね」

一里塚「変化した球を当てに行こうとすると、身体のバランスが崩れるからしっかりと打てませんからね」

小鹿「じゃあ、変化球狙いじゃないとすると、どうやってあの変化球を封じるんですか?」

一里塚「簡単なことです。変化する球を打とうとするのがいけないだったら、変化しない球を打てばいいんですよ」

小鹿「……真っ直ぐ狙いってこと?」

一里塚「違います。変化しない球。つまり―――」

ビシュッ!

阿良々木(内角へのシュート―――)スッ

高海「」キュッ

一里塚「―――変化球の『変化前の球』を打てばいいんですよ」

キィィン!

戦場ヶ原「くぅっ……!」バッ

ドッ!

鵜鷺『抜けたーーっ! 高海さん、内角の球を積極的に打っていきましたーっ!』


どうも久しぶりです。

一応、週一投下を目指してたんですが、全然うまくいかなくてすいません。

次回は必ず翌週中に投下しますので、どうか期待して待ってて下さい。

7回表 TF 0-0 TB
無死 ランナー一塁 二塁
打者 零崎双識

鵜鷺『さぁ、この試合初めてのピンチを迎えた羽川さん。その羽川さんを襲うのは3番 ピッチャー 双識さん!』

双識「」ザッ

阿良々木「た、タイム!」

審判「タイム!」

鵜鷺『ここでチーム化物、この試合初めてのタイムを取ります』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

戦場ヶ原「不愉快ね」

阿良々木「……ど、どうしたガハラさん?」

戦場ヶ原「向こうの1、2番揃って私の方に打ち返してきてるじゃない。まるで私の所が穴であるみたいに」

阿良々木「いや、別にそういうわけじゃないと思うぞ……」

火憐「けど、何か嫌な感じだなぁ」

月火「二人とも変化球を狙ってきてるよね。しかも、多少ボール球でも関係なく思いっきりフルスイングしてきてる」

戦場ヶ原「1番は外のスライダーを力づくで引っ張って三遊間。2番は内のシュートを狙って私の頭上へ―――2番の人のバッティングは上手いと思ったけど、1番のバッティングは正直違和感があるわね」

阿良々木「確かに。普通外へのスライダーが来たら、引き付けて右方向へ打ち返すのがセオリーだもんな」

月火「別に無理やり引っ張る必要がある場面って訳じゃないし、不思議っちゃ不思議だね」

戦場ヶ原「やっぱり、私を狙ってるということかしら」

阿良々木「いや、だからそんなことないって」

戦場ヶ原「慰めはいらないわ、阿良々木君。さぁ、思う気が済むまま『穴野郎』と罵りなさい!」

阿良々木「言えるか、そんな事!」


戦場ヶ原「と、冗談はさておき」

阿良々木「本当に冗談だったのか?」

戦場ヶ原「ノーアウト一塁二塁。打順はクリーンナップという最悪に近い状況だけれども、貴方達は気にする必要は全くないわよ」

阿良々木・羽川「?」

火憐「だって、今度からは絶対に抜けさせないもんな」

月火「さすがに何度もやられるのは癪に障るしね」

忍「そもそも儂の所はまだ一回も抜かれとらんからの」

戦場ヶ原「という訳だから、バックは私たちに任せて、貴方達はバッターとの勝負に集中しなさい」

阿良々木・羽川「………」

戦場ヶ原「この試合、絶対に勝つわよ」



審判「プレイ!」

双識「」スッ

羽川「」スッ

ビシュッ!

阿良々木「内へのスライダー―――」スッ

キィィンッ!

審判「ファール!」

阿良々木(また引っ張ってった……)

羽川(やっぱり……。ミートポイントを前に持ってきて、私の変化前の球を狙ってきてる……)

双識「」ザッ

阿良々木(羽川が言ってた通り、こいつらバッターボックスの前ギリギリに立ってる……)

ビシュッ!

キィン!

審判「ファール!」

羽川(けど、これだけ前のめりになってるなら逆に内の球をファールにさせて、ストライクを稼ぐことが出来る……)

羽川「」スッ

ビシュッ!

双識「」バッ

パァン!

審判「ボール!」

羽川(後は最後の仕留め方だけ……)






鵜鷺『3球目はインハイへのボール球で、ツーストライクワンボールです』

双識「ふぅ……」

軋識(3球連続でインコース……)

双識(そろそろ外に来るかな?)

羽川(次で決める―――)

双識「」スッ

羽川「」スッ

ビシュッ!

双識(外っ!)

阿良々木(シンカー―――)スッ

双識(けど、これは届くっ!)グッ

キィィン!




フワッ

鵜鷺『あーーーっと! 双識さん打ち上げてしまったーーっ!』

千石(前―――!)ダッ

月火(後ろ―――?)ダッ

忍(後ろか―――)ダッ

双識(しまった……)ダッ

深空「このヘボ野郎!」ピタッ
高海「このヘボ野郎!」ピタッ

鵜鷺『しかし、打球は面白い所に上がってる!』

千石(いける、かな―――?)ダダダッ

月火(これは、無理―――っ)ダダダッ

忍(ふん。この程度の打球余裕じゃ―――)ダダダダッ

鵜鷺『ああーーーっと。ファーストの忍さん、ものすごい速度で落下地点へ向かってます!』

阿良々木「声掛けてけよ、お前ら!」

月火「任せた!」

千石「い、いけ―――」

忍「儂が行く! どいてろ小娘!」ダダダッ

千石「」ビクッ ピタッ

忍「よし、頂きにゃあっ!」ビターン!

千石・月火「っ!」

深空・高海「!?」ダッ

ドッ!

鵜鷺『お、落ちたーーっ! 忍さん、まさかの転倒ーーっ!』

千石「」パシッ ビッ!

火憐「ナイス、千石ちゃん!」パシッ

審判「アウトーっ!」

鵜鷺『セカンドはアウト! しかしセカンドランナーはサードに向かい、ワンナウト一塁三塁に変わります』

阿良々木(しまった。いくら血を吸わせて僕の影から離れられると言っても、その距離には限りがあるんだった……)

忍「にゃあぁ………」グテ~

野球もんばっか書いてたから、ちょっと飽きてきた……。

ので、気晴らしに何かしら安価であまけを書こうと思います。

安価
>>167

観戦中の残り2チームの様子

【観戦中の残り2チームの様子 ~チーム戯言~】

萌太「―――というわけで、相手の意識が外に向かうからインコースで勝負しやすくなるんですよ」

鈴無「なるほどだわ」

萌太「特にスライダー投手の鈴無さんの場合―――」

一姫「萩原さん萩原さん! この球場の施設に美味しい食堂が設置されてるみたいですよ! 一緒に行きましょう!」

子荻「無理です」

一姫「即答!?」

子荻「私は今試合してるチームの観察で忙しいんです。連れてくなら玉藻を一緒に連れていって下さい」

玉藻「ゆらぁ~?」

一姫「えーーっ! 子荻さんも一緒に行きましょうよう。他の皆も一緒に来るみたいですよ?」

人識「腹が減ったら戦はできねーからなぁ」グ~

出夢「僕は人識が行くなら行くぜー」ギャハハハ!

子荻「いいから行ってきなさい」シッシッ

一姫「う~~。萌太さんとすず姉さんは行くですか?」

萌太「いや、僕も遠慮しとくよ。もう少し試合を見たいんだ」

鈴無「あたしも遠慮しとくだわ」

一姫「そうですか……」

崩子「あ、姫姉さま。みい姉さまも一緒に行くみたいですよ」スタスタ

萌太・鈴無「」ピクッ

一姫「あ、本当ですか。それじゃあ、皆で行きま―――」

萌太「やっぱり、何か急にお腹がすいたので僕も行きましょうかね」スッ

鈴無「あたしもそうするだわ」スッ

一姫「え? でも……」

萌太「あまり、試合前から根詰めるのも身体によくないですからね」ズイッ

鈴無「そうそう。試合前にある程度リラックスしとくのも、試合で勝つには大切なことだわ」ズイッ

一姫「そ、そうですか……。これで9人。萩原さん。本当に行かないんですかー?」

子荻「ですから、私はいいですから皆で行って来なさい」

一姫「分かりました……それじゃあ行ってきます」

子荻「はい、行ってらっしゃい」フリフリ

いーちゃん「え? 子荻ちゃん行かないの?」

子荻「!?」

一姫「らしいです。今試合してるチームの観察に忙しいらしいです」

いーちゃん「そっか。残念だけどしょうがないね」

子荻「―――さて観察も終わりましたし、何か食べに行くとしましょうか」

一姫「え?」

子荻「観察も終わりましたし、球場内にある食堂でご飯を食べに行きましょうか」

人識「何で二回言った?」

子荻「大事なことですからね。さぁ、ご飯を食べに行きましょうか!」ズイッ

いーちゃん「う、うん」

一姫「え~~?」

【観戦中の残り2チームの様子 ~チーム刀の場合~】

とがめ「ふむ、なるほど。あえて一つのアウトをやる代わりに自陣のチャンスを作りだすという手もあるのか。ただの球打ちかと思ったが、中々にして奥が深いな」

否定姫「戦術を見るのもいいけど、向こうのチームにいる戦力にも注目しなさいよ。あのチームフォックスって言うチームのボール投げてる人。かなりの手練れよ。打ち崩すのは容易じゃないわ」

とがめ「ふん。バカか貴様。手練れならこちらにも沢山揃っているではないか」

否定姫「バカはあんたでしょ。いくら手練れ揃いと言っても皆素人なのよ? そんな都合よく行くはずがないでしょ」

とがめ「貴様のバカさ加減に免じ、優しいわたしが懇切丁寧に教えてやろう。いいか? この野球というのはいかに相手よりも多く点を取れるかを競うものだ。ならば、いかに戦略を学び、投手とやらを打ち崩すかが肝心であろう!」

否定姫「あんたがバカなのは前々から分かってるから、これ以上自分がバカなのを証明しなくたっていいのよ? 素人がそんなにバカスカ打てるはずないでしょ。いい? 多くの点を取った方が勝つということは、逆に言えば、点さえ取せなければこちらが勝つということなのよ? だったら、相手チームを観察して、いかに相手を抑え込むかが肝心でしょうよ」

とがめ「何だ貴様。やる気かー?」グイッ

否定姫「何よ、やるの?」グイッ

七花「なぁ、とがめ。喧嘩してる場合じゃないだろ」

左右田「そうです姫様。今は仲間同士。お互いに協力して―――」

とがめ・否定姫「七花(あんた)は黙ってろ(なさい)!」

七花・左右田「………」

とがめ「貴様はそんなんだから、何度もわたしに蹴り落とされたのを忘れたのか?」アン?

否定姫「最終的にわたしに殺されといて偉そうな口叩かないでくれるかしら?」フンッ!

とがめ・否定姫「うぐーーーーーーーっ!」

七花「お前も大変だな……」

左右田「貴様もな……」

こなゆき「七花おにーちゃん! 何か向こうの方からいい匂いがするですよ!」

七花「いい匂い?」

迷彩「どうやらこの建物の奥に食べ物屋があるみたいだね」

七花「食べ物屋……」グー…

こなゆき「あはは! 七花おにーちゃんのお腹から虫の鳴き声が聞こえるです」アハハハ

七花「確かに朝から何も食べてないな……」

迷彩「それなら一緒に食べに行こうか?」

七花「けど、俺お金持ってねーぞ?」

迷彩「それ位なら出してやるさ」

七花「う~ん。それじゃあ行くか!」

こなゆき「わーい! ご飯ご飯!」

七花「お前も行くか?」

左右田「いや、わたしは遠慮しとく。いつ何時姫様を狙う人が表れるとも限らないからな」

七花「いや、このSSに限っては大丈夫だと思うぞ?」

左右田「何を言ってるのかさっぱり分からないな」

七花「まぁ、行かないなら無理には誘わねーけどな。お前らはどうする?」

七実・鳳凰・校倉「別にいいわ(遠慮しとこう)(俺は弁当があるから、いいわ)」

銀閣「Zzz……」

汽口「この木の棒は『ばっと』と言い、ボールを打つ時に使うもの……」ブツブツ

七花「それじゃあ、3人で行くか」

迷彩「ん? あたしも行かないわよ?」オカネハワタスケド

七花「………」

7回表 TF 0-0 TB
一死 一塁三塁
打者 零崎軋識

鵜鷺『4番 キャッチャー 軋識さん』

軋識「」ペコリッ

鵜鷺『軋識さんは一打席目にセンターへヒットを打ってますからね。ここは期待したいところですが……』

阿良々木「」スッ

鵜鷺『どうやら、ここは敬遠するようですね』

玖渚『まぁ、そうだろうねぇ』

潤『次が5番って言っても、後ろに行けばいくほど楽になるのには変わりねーからな』

鵜鷺『なるほどー』

パンッ

審判「ボール フォア」

軋識「」カランッ

鵜鷺『歩かせました。これでワンナウト満塁に変わります!』

軋識(舐められてるぞ、トキ……)スタスタ

双識(仇は、取ってくれるよね?)

伊織「頼みましたよ、曲識お兄様ー!」

曲識(ワンナウト満塁で、塁にはレンとアスか……)

鵜鷺『そして、迎えるはクリーンナップ最後の番人。零崎曲識さんです!』

曲識「実に悪くない場面だな」スッ


7回表 TF 0-0 TB
一死 満塁
打者 零崎曲識

鵜鷺『5番 センター 曲識さん』

曲識「」スッ

阿良々木(さて、もう逃げられないぜ羽川。どうする?)

羽川(この回、皆ミートポイントを前に置いて変化球を強振してきてる)

羽川(こういった時は、緩急の付いたシンカーを投げればかなりの確率で打ち取れる)

羽川(初球にシンカーを見せてから、インコースを打たせてカウントを稼いで、最後はシンカーを引っかけさせる―――)スッ

ビシュッ!

キィン!

戦場ヶ原「んっ―――」バッ

ドッ!

審判「ファール!」

羽川(よし、食い付いてきた!)

鵜鷺『曲識さん、初球を積極的に打ちに行くもファールです!』

羽川(次もインコースの際どい所に投げて―――)スッ

ビシュッ!

阿良々木(インローにスライダー―――)スッ

ギュンッ!

パァン!

審判「ストライク!」

羽川(見てきた―――?)

鵜鷺『二球目はインローにスライダー! これは厳しい所に決まりましたね』

玖渚『そうだね。スライダーも角度が付いてたし、振ったところで間違いなくファールになってただろうね』

阿良々木(よし、追い込んだ! 後は外角のシンカーを引っ掛けさせれば―――)

羽川「」スッ

ビシュッ!

阿良々木(インハイ―――っ!?)スッ

キィン

審判「ファール!」


鵜鷺『3球目はインハイへのストレート!』

阿良々木・曲識「ふぅ……」

曲識「?」チラッ

阿良々木(あっぶねー。まさかここでインハイに来るとは思わなかったぞ……)ダラダラ

曲識「………」

羽川(今度は振ってきた。さっき感じた違和感は気のせいかな?)

火憐「追い込んでるよ、羽川さん!」

月火「行ける行ける!」

伊織「タイミング合ってますよー!」

小鹿「打てる打てるー!」

羽川(そうだ。追い込んでるのはこっちなんだ。迷ってる場合じゃないよね……)

曲識「」スッ

羽川「」スッ

ビシュッ!

ググッ!

双識(外角へのシンカーッ!)

軋識(入ってるっちゃ!)

阿良々木(おし、頂いた!)スッ

曲識「」フッ





キィンッ!





阿良々木・羽川「!?」

ドッ!

鵜鷺『抜けたーーーーーーーーっ! 打球はライト前へーーーっ!』

深空「おしっ!」ダッ

双識「トキならやってくれると信じてたよ!」ダッ

軋識「ナイスバッティングだっちゃ!」ダッ

火憐「月火ちゃん!」

月火「分かってる!」

千石「」パシッ ビッ!

月火「」パシッ クルッ

深空「」タッ

鵜鷺『先制ーーー! 5番の一振りで、ついに試合が動いたーーーーーっ!』


今回はここまでー。

気晴らしに、安価書けて少しスッキリ。気に入ってくれたなら、次回からもやっていこうかと。

それでは、また来週。

7回表 TF 1-0 TB
一死 満塁
打者 一里塚木の実

鵜鷺『さぁ、なおもピンチは続いて、ワンナウト満塁! そのチャンスの場面で迎えるは6番 サード 一里塚さん』

一里塚「」スッ

羽川(何で、外角のシンカーを右方向へ? 積極的に打ちに来てたんじゃ……)

羽川(最初のボール球を引っ張ったのはわざとで、実は最初からシンカーを待っていた?)

羽川(ううん、それだったら3球目の内角には手が出なかったはず。………だったら、何で?)

審判「プレイ!」

羽川(……っ。そうだった。まだ私達のピンチは続いてるんだ……)

一里塚「」

羽川(えっと……。この人は確か、前の打席、スライダーを引っ掛けてて……、それで……)ハァハァ

阿良々木(どうした、羽川? 早く投げないと反則を取られちまうぞ)

羽川(だから、スライダーには手を出してこない……はずっ―――)スッ

一里塚(可哀想ですね。どんなにキツイ場面でも一人で投げるてる。そう、一人で……)


一里塚「貴方、そこに座ってる意味を全く果たせていませんよ」


阿良々木「っ!?」



キィィンッ!


鵜鷺『打ったーーーーーーーっ! 打球は三塁線を―――』


戦場ヶ原「誰が一人にさせているって?」

一里塚「!?」


戦場ヶ原「」パァン!


双識「っ!?」ピタッ バッ

戦場ヶ原「う、ぐあああああああっ!」バッ

パシッ



審判「アウトーーーーーーーーッ!」

鵜鷺『ゲッツーーーーーーッ! 三塁線抜けるかと思った打球を、戦場ヶ原さんが見事キャッチ! そして、飛び出していたランナーよりも先に三塁ベースにタッチ。絶体絶命のピンチを、見事ゲッツーで切り抜けました!』

火憐「しゃああああ! ゲッツーッ!」

月火「ナイスキャッチ、戦場ヶ原さん!」

忍「こればっかりは褒めてやる小娘! よくやった!」

神原「さすがは戦場ヶ原先輩だ! ナイスプレーだったぞ!」

千石「す、すごいジャンプだったと思います」

八九寺「いや~。このままズルズル打たれて負けて行くのかなと思いましたが、このプレーはかなり大きいですね。まだ流れは私たちにありますよ」

羽川「あ、ありがとう。戦場ヶ原さん」

阿良々木「ガハラさん、ナイスプ―――」

戦場ヶ原「ふんっ」ドスッ!

阿良々木「ごはぁっ!!」

羽川「阿良々木くん!?」

戦場ヶ原「ふん。ゴミが」

阿良々木「な、何すんだよ……」

戦場ヶ原「何って。ただ座ってるだけでキャッチャー気取りのゴミ虫を踏み潰しただけよ?」

阿良々木「ゴ、ゴミ虫って……」

戦場ヶ原「私、3回にちゃんと言ったわよね? しっかり羽川さんを支えてあげなさいって」

阿良々木「……ああ」

戦場ヶ原「なのに、何暢気にへらへらと座ってるわけ?」

阿良々木「別にへらへらとは……」

戦場ヶ原「キャッチャーボックスに座ってるだけでキャッチャーになりきってるつもりなら今すぐ出て行きなさい。正直目障りなだけだから」スタスタ

阿良々木「………」

羽川「せ、戦場ヶ原さん。いくらなんでも言い過ぎじゃ……」

戦場ヶ原「これくらいで音を上げてるようじゃ、私の彼氏なんか勤まらないわよ」

羽川「そ、そうなんだ……」

戦場ヶ原「それに阿良々木くんには悪いけど、この試合に勝つにはもっともっと阿良々木くんに頑張ってもらう困るのよ」

羽川「いや、でも阿良々木くんは十分に頑張ってるよ。反射神経一本で私のボールを取ってくれてるし、攻撃面だって4番で重要な場面を任されてるし……」

戦場ヶ原「それだったら向こうの4番の人もそうでしょ。足りないのよ、それだけじゃ……」

羽川「………」

戦場ヶ原「阿良々木くんが私たちと出会って、変わることができたことをいいと思わせるためにも、私は、この試合絶対に勝ちに行くつもりだから」

7回裏 TF 1-0 TB
無死 ランナー無し
打者 戦場ヶ原ひたぎ

鵜鷺『7回裏の攻撃は3番 サード 戦場ヶ原さん』

戦場ヶ原「」ペコッ

鵜鷺『点を取られた後の攻撃。チーム化物としてはどうしても先頭を出していきたい所ですね』

潤『もう7回だからな。このクリーンナップでランナーを出しとかねーと、もう二度とクリーンナップに打席が回って来ないかもしれねーぞ』

玖渚『お互いにそれが分かってるだろうから、このイニングが恐らく、この試合の結果を担うターニングポイントになるだろうね』

鵜鷺『さぁ、その重要な場面で守る側の双識さんは一体どんなピッチングを見せてくれるのでしょうか?』

双識(得点したと言っても、たった一点―――)

戦場ヶ原(先頭の私が出ることで充分に流れを変えられる範囲―――)

双識(ここで流れを確実にするためにも―――)

戦場ヶ原(ここで流れを変えるためにも―――)

双識・戦場ヶ原(絶対に仕留める(打つ)!!)


ギュンッ!

ブンッ! パァン!

審判「ストライーク!」

鵜鷺『初球スライダー! 戦場ヶ原さん、初球から振っていくも空振りです!』

双識「ふしっ」

戦場ヶ原「………」チッ

軋識(この女、スライダーと分かってて振っていったっちゃ……。打てると思ってるのか、何か策があるのか……)

戦場ヶ原「」スッ

軋識(どのみち、スライダーに狙いを絞ってるならやりようがあるっちゃ―――)スッ

双識「」コクッ

ビシュッ!

ギュンッ! パァン!

審判「ボール!」

戦場ヶ原(またスライダー……)

軋識「」スッ

双識「」コクッ

ビシュッ! 

羽川(ストレート―――!)

戦場ヶ原(入ってる―――)スッ

ギヂィ! パスッ

審判「ファール!」



鵜鷺『3球目ストレート! 双識さん、戦場ヶ原さんを追い込みました!』

火憐「タイミング合ってるよー、戦場ヶ原さん!」

月火「行ける行けるー!」

小鹿「ナイスボール!」

伊織「追い込みましたよう!」

戦場ヶ原(もう7回だって言うのに、こんな球を投げてくるって、あの人化物なんじゃないかしら……)ビリビリ

羽川(外、内、外、か……。もう一球外に来て、最後に内を付いてくるってとこかな……?)

軋識(おし、予定通り追い込んだっちゃ。あとは―――)スッ

双識(インコースへのスライダー―――)コクッ

双識「」スッ

軋識(向こうは外のボールに手を出して、意識が外に向いてるっちゃ。そして、一度外に向いた意識は簡単には変えられない―――)

ビシュッ! ギュンッ!

軋識(狙い球をミスミス見逃がして三振しろっ!)

戦場ヶ原「狙い球が来てるのに振らないはずがないでしょ?」スッ


キィィンッ!



軋識「っ!?」

戦場ヶ原「」ダッ

双識「っ!」バッ

ドッ!

鵜鷺『打ったーーっ! 打球は二遊間へーーーーっ!』

高海「ふっ」パシッ

戦場ヶ原「っ!」

鵜鷺『と、止めたーーっ! セカンド高海さん、二遊間を抜かせなーーーい!』

高海「」タタッ

戦場ヶ原(けど、あの体勢からじゃまともな送球はできない。私の足なら間に合う―――)

高海「」タッ ポイッ

深空「」パシッ

戦場ヶ原「!?」

深空「」ビッ

小鹿「」パンッ

戦場ヶ原「」ダンッ






審判「アウトーーーーッ!」



戦場ヶ原「くぅ……」ガクッ

高海「んっ」スッ

深空「しっ」スッ

パァン!

鵜鷺『アウトーーーーーーーーッ! 澪標姉妹の超絶プレーで、先頭の出塁を許しません!』

伊織「凄いです凄いですー!」

一里塚「ナイスプレーです、二人とも!」

火憐「マジかよ……」

月火「普通あれを止める……?」

鵜鷺『いや~。抜けると思った打球でしたが、見事に阻止しましたね』

玖渚『あのプレーはチーム化物にとってキツイだろうね。下手したら心が折れちゃうんじゃない?』

鵜鷺『やはり、それだけ大きいプレーですか』

潤『ただでさえ打っていくのが難しいピッチャーに加えてあの守備を見せられたら、もう打ち崩すイメージができねぇだろ』

鵜鷺『確かに、そうですね』

玖渚『これで後続が凡退するようなら、本当にこの試合が決まっちゃうだろうね』

軋識「ワンナウトーッ! 次もきっちり締めるぞっ!」

伊織・小鹿「おーーーっ!」

絵本「お、おう……」

曲識「うん。悪くない」

深空「偉そうに仕切るな」
高海「偉そうに仕切るな」

一里塚「油断しないで行ってくださいね」

双識「あはは。分かってるよ」

軋識「………」


7回裏 TF 1-0 TB
一死 ランナー無し
打者 阿良々木暦

鵜鷺『さぁ、このピンチの場面で迎えるはチーム化物の4番 キャッチャー 阿良々木さん』

阿良々木「」スッ

軋識(? 何の気迫も感じないっちゃ……?)

阿良々木「」ユラァ

軋識(少し不気味だが、打ち気がないなら都合がいいっちゃ。さっさとストライクを貰うっちゃ―――)スッ

双識(インローへの真っすぐ―――)コクッ

双識「」スッ

ビシュッ!

パァン!

審判「ストライーク!」

鵜鷺『初球ストライク! 玖渚さん、初球の真っすぐ、これはかなり厳しい所に決まりましたね』

玖渚『そうだね。あのコースにスピードも角度も付いた、良いボールだったね』

潤『あれだけのボールを投げ込まれたら、バッターとしたらかなり苦しいだろうな』

鵜鷺『さぁ、一体どのような対決になるんでしょうか?』


識(全く動かなかった……。こうなると都合がいいと言うよりも本格的に不気味だっちゃね……)

阿良々木「………」

軋識(……―――)スッ

双識(アウトローへの真っすぐ。これは外れてもいい、か―――)コクッ

双識「」スッ

ビシュッ!

パァン!

審判「ボール」

軋識(やっぱり微動だにしなかったっちゃね。ということは狙ってるのはスライダーっちゃか?)

阿良々木「」シーン

軋識(試してみるか―――)スッ


双識(外角へのスライダー―――)コクッ

双識「」スッ

ビシュッ! ギュンッ! 

パァン!

審判「ボール」

軋識(見てきた……? こいつは一体何を狙ってるっちゃ?)

阿良々木「」シーン

軋識(やはり気迫は感じない。まさか点を取られて戦意を喪失してるってわけじゃ……)

軋識(いや、さすがにそれはないだろう。じゃあ、一体何を狙ってるっちゃ?)

深空(どうした?)
高海(どうした?)

小鹿(そんなに悩む場面?)

軋識「」スッ

双識(インローにスライダー―――?)

軋識(打ち気がないなら絶対に手を出してこないっちゃ。彼に打ってきてもファールにしかならない。これで追い込めば、外で仕留めることができるっちゃ)

双識(なるほど、分かったよ)コクッ

双識「」スッ

ビシュッ!



ギュンッ!

阿良々木「んっ」スッ



キィィィィンッ!



双識・軋識(っ!?)

鵜鷺『打ったーーーっ! 大きな当たりーーっ!』

軋識(こいつ、前の女が打ち取られた球を狙って……)

曲識「くっ………」ダダダッ

絵本「う、嘘……」ダダダッ

鵜鷺『こ、これは―――』

ガシャンッ! フワッ……

絵本「っ………!?」ピタッ

鵜鷺『フェンス直撃ーーーっ! ボールはライト方向に跳ね返ったーーーっ!』

ゴロッ……

絵本「ううっ……」ダッ

阿良々木「」ダッ

鵜鷺『阿良々木くん、二塁を回ったーーっ!』

深空「何してる、早くしろ!」

絵本「ご、ごめんなさーいっ!」パシッ ビッ

深空「」パシッ クルッ ビッ

阿良々木「」ザザッ

一里塚「」パシッ パンッ







審判「セーーーーーーフッ!」







阿良々木「」グッ

鵜鷺『スリーベースヒーーーーット! ピンチをチャンスに変える、4番の一振りーーーーーーっ!』

火憐「う………」

月火「お………」

八九寺「ん………」



「「「「「「「「っうおっしゃあーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」



千石「こ、暦お兄ちゃん凄いっ!」

阿良々木「」グッ

八九寺「ナイスバッティングです! まらら木さん!」

阿良々木「おーーーいっ! 折角シリアスでカッコつけてるのに、とんでもない下ネタ入れて来てんじゃねーよ! 僕の名前は阿良々木だ!」

八九寺「失礼、噛みました」

阿良々木「いや、絶対にわざとだ」

八九寺「かみまみた」

阿良々木「わざとじゃない!?」

八九寺「噛み、マミった」

阿良々木「うおーーいっ! やめろーーーっ!」

ワーワー! マミマミーーー! ホム…? ホムホムーーーッ!

戦場ヶ原「………」

羽川「やっぱり、頼りになるわね」

戦場ヶ原「………まだまだよ。まだ点が入ったわけじゃない。こっちが負けてるのには変わりはないのよ」

羽川「うん。知ってるよ。けど、やっぱり私は、阿良々木くんは頼りになると思うな」

戦場ヶ原「……ふんっ」プイッ

火憐「はははっ。やっぱ兄ちゃんは頼りになるな!」

月火「そうだね。今回ばっかりは認めるしかないね」

火憐「このまま、兄ちゃんにばっかいいカッコをさせるわけにはいかねーよな、月火ちゃん」

月火「そうだね。このままお兄ちゃんばっかりが活躍してるなんて癪だもんね、火憐ちゃん」

鵜鷺『そしてワンナウト三塁で続くは、ランナーに出た阿良々木暦さんの妹コンビ―――』

火憐「らぁあああっ! 待ってろ兄ちゃん! ちゃんと返してやっからな!」ガー!

月火「お疲れ様、お兄ちゃん。おいしい所は私たちできっちりと頂くからね」ニコッ

鵜鷺『炎のファイヤーシスターズを迎えます!』


今回はここまでー。長らく待たせてしまって本当にすいません。

別にだれてたわけじゃなくて、以前書いていた日常を復活させるべく、これとは別に書き溜めをしてて、ちと更新が遅くなりつつあります。

さすがに二つのスレを同時に書いて行くのは難しいので、この野球が終わると同時に日常を投下できるように頑張って書き溜めてますので、応援の方をどうかよろしくお願いします。(ペコリ

次回更新はやっぱり気が向いた時にしますので、よかったら見てって下さい。ノシ


ジャスト一週間。

戯言を開始します。

7回裏 TF 1-0 TB
一死 ランナー三塁
打者 阿良々木火憐

鵜鷺『5番 ショート 火憐さん』

火憐「よろしくお願いします!」ペコリッ

軋識「」ペコッ

火憐「しゃらああああっ! 来いやぁあああっ!」ザッ

軋識(うるさいっちゃね。少しは静かにしろっちゃ)

火憐「」フンスッ

軋識(ちっ……。4番にスリーベースを打たれてのはまずかったな。一気に向こうが勢いづきやがった……)

一里塚(いいですか。この一点は絶対にあげてはいけない点ですよ)

軋識(そんなの分かってるっちゃよ。ここで点をやったら完璧に向こうに流れが行っちまう)

軋識(この場面。外野フライも許されない場面。徹底的に低めで行くっちゃよ―――)

双識(アウトローにストレート―――)コクッ

双識「」スッ

ビシュッ!

ギィィィィィィィンッ! バァァァァンッ!

一里塚「………え?」クルッ

審判「ふぁ、ファール!」

伊織「う、うわぁ……」

絵本(た、球が全然、見えなかった……)

火憐「だぁー! くっそ! ちょい早かったかぁーーー!」


鵜鷺『火憐さん、初球ファールになるも、ものすごい弾道でボールをライトファールグラウンドの壁に突き刺しました!』

軋識(あの低めの球をパワーだけで、あそこまで持っていくかよ。やっぱこいつのパワーは半端ないっちゃね……)

火憐「次はぶっ飛ばす!」ブンッ! ブンッ!

軋識(こいつに真っすぐで勝負するのはヤバいっちゃね。ここは―――)スッ

双識(同じコースにスライダー―――)コクッ

双識「」スッ

ビシュッ!

軋識(ストレートに合ってるといっても、これだけ入れ込んでいれば必ずボール球にも手を出してくる。それなら変化球でストライクを稼いで、最後に高めを投げれば必ず振ってくる―――)

ギュンッ!

火憐「―――だっらぁ!」スッ

キィィィンッ!

軋識「!?」


鵜鷺『打ったぁーーーーーっ! ボールはライト方向へーーーーーっ!』

伊織『う、うな~~~~っ!』

神原「おおっ!」ガタッ

戦場ヶ原「お、大きい……」

八九寺「阿良々木さん! 一応タッチアップの準備しといて下さい!」

阿良々木「分かってる!」スッ

鵜鷺『これは大きい! 入るか?』

軋識(いや、あのボールは打ってもファールにしかならないっちゃ!)

小鹿「切れろーーーーっ!」

火憐・月火「いっけぇええええええ!」




ドッ!



審判「ファーーーーールッ!」



鵜鷺『大きい当たりでしたが、惜しくもポールの外。ファールです』

火憐・月火「あああ………」ガクッ

伊織・小鹿「ふぅぅ………」ホッ

軋識(危なかったっちゃ。まさか、外のスライダーをあそこまで運ぶとは……)

火憐「かぁー。行ったかと思ったんだけどなぁ……」スタスタ

軋識(けど、予定通り追い込んだのには変わりはないっちゃ)

火憐「おっしゃー! 次こそぶっ飛ばす!」スッ

軋識(あとはインハイのボール球に投げ込めば、こいつは終わりだ―――)スッ

双識「」コクッ

双識「」スッ

ビシュッ!

火憐「」グッ

双識(喰い付いた―――っ!)

軋識(頂きだっちゃ―――っ!)

阿良々木(馬鹿野郎! それはボール球だ―――っ!)

月火(火憐ちゃん―――っ!)

火憐「んっ」ザァッ

軋識(上体を反らしたっ!?)

火憐「だ、らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!」グッ



キィィィィンッ!




鵜鷺『打ったーーーっ! 打球は三塁線!』

八九寺「バーーーーック!」

阿良々木「」スッ

一里塚「ぐぅ………」バッ


ドッ!


審判「ファール!」

火憐「だぁー! またかよー!」

双識「………」

軋識(この女、インハイのボール球を上体を反らすことで無理矢理合わせてきやがった……)

鵜鷺『いや~。火憐さん。追い込まれながらもしぶとく粘っていますね~』

潤『いや。どっちかというと、変態バッテリーの方が追い込まれてるんじゃねーか?』

鵜鷺『双識さん達がですか?』

玖渚『真っすぐにタイミングが合ってる上に、外のスライダーにもしっかり合わせて来てる』

玖渚『ぐっちゃんが上手い事ボール球を打たせてるけど、そのボール球をいい当たりばっかされてたら、バッテリーとしてはもうどこに投げればいいのか分からなくなるだろうね』

鵜鷺『なるほどー』


月火「火憐ちゃん。当たってるよー!」

八九寺「狙っちゃって構いませんよ!」

撫子「う、打てる! よ」

神原「強気で行け! 攻める気持ちを忘れるな!」

羽川「火憐ちゃんなら打てるよ!」

戦場ヶ原「思いっきり行きなさい!」

忍「暑っ……」


阿良々木「―――思いっきりぶっ飛ばしてけ!」


火憐「おおおっ!」グッ

軋識(ったく。本当にうるさいっちゃね。少しは静かに出来ないのか、こいつ等は?)

一里塚(追い込まれてるのに、この活気。やはりあの4番の一打がかなり大きいようですね)

双識(気をつけるべきはあのピッチャーの眼鏡っ娘だけかと思ってたけど。このチームで一番の中心人物はあの4番の少年みたいだね)

軋識(もっと慎重に攻めるべきだったと悔いるのは意味がない。かと言って、このムードの中で守りに入っては完璧に飲みこまれるっちゃ)

双識(じゃあ、どうする?)

軋識(黙らす―――)スッ

双識(……ふふっ。ああ、そうだね)コクッ

火憐「しゃあああっ! 来いっ!」

双識「」スッ

火憐(得点を取られた後の攻撃で、ワンナウト三塁で、ランナーが兄ちゃんで―――)

火憐(ここで打たなきゃ、クリーンナップに座ってる意味がねーだろ!)

ビシュッ!

火憐(絶対に―――)グッ

ボール「」ヒョロッ

阿良々木・羽川「!?」

火憐(―――う、)ガタッ

ブンッ!

火憐(―――つ……)


パンッ


審判「ストライーーーーークッ! バッターアウッ!」




阿良々木「なっ……?」

月火「チェンジ……アップ……?」

戦場ヶ原「いや、あれは……」

羽川「カーブ……?」

鵜鷺『三振ーーーーーーっ! 双識さんのもう一つの牙、スローカーブがここで炸裂しましたーーーーーーーっ!』

双識「ごめんね。ハサミは刃が二つあるんだよ」

軋識「そういうことだっちゃ」

火憐「………」ググッ

月火「火憐ちゃん……」

火憐「……ごめん、月火ちゃん。後は任せた」スッ

月火「……うん! 任せて!」

潤『かぁ~~。あの野郎どもいい性格してんな!』

玖渚『本当だよね。中々投げないなと思ってたけど、まさかここまで温存して来るとは思わなかったよ』

鵜鷺『確かにそうですねー。しかしチーム化物としたら、これは堪らないでしょうね』

玖渚『だね~。折角追い上げムードの所で、もう一つの決め球が出てきたんだからね。これはキツイよね』

潤『こりゃあ、勝負あったんじゃねーか?』


7回裏 TF 1-0 TB
二死 ランナー三塁
打者 阿良々木月火

鵜鷺『チャンスで5番火憐さんが倒れ、続くは6番 セカンド 月火さん』

月火「お願いします」ペコッ

軋識「」ペコッ

月火(さて、任せてとは言ったものの、一体どうやってあの変化球を攻略しよう?)

双識「ツーアウトだよー」

月火(ぶっちゃけ、私じゃあ、あのスローカーブを頭に入れたままあの投手を打ち崩すのは無理……)

月火(だからこそ、私は一本。真っすぐにだけ狙いを絞っていく!)グッ

軋識「………」スッ

双識「」コクッ

双識「」スッ

月火「」ググッ

ビシュッ!

ドロンッ! 

月火「!?」

ブンッ! パンッ

審判「ストライーク!」



鵜鷺『初球スローカーブ! バッター、タイミングが全然合っていません!』

月火(くっそ~~)グッ

軋識(やっぱし速球系に的を絞ってたっちゃね)

羽川(ランナーが三塁にいるこの場面で、初球からスローカーブを入れてくるなんて、凄い度胸……)

双識「………」

阿良々木(つーか、ランナーが三塁にいるのに、何でそんなに冷静でいられるんだよ? 一体何を考えてやがんだ?)

双識(今、一瞬着物の隙間からおっぱいが見えた気がする)ツー

軋識(何で鼻血出してんだ、あいつ?)

双識(こうしたら、パンツも見えるかな?)ソー

月火「」ゾクッ スッ

双識(あ~……)ガクリ

軋識(何してんだ、あいつ)

軋識「おい、レン! どうかしたっちゃか?」

双識「ん? いやいや、どうもしないよ」ソーー

月火「ちょ、タイムタイム!」ススー

軋識「お前は一体何をしてんだっ!」


鵜鷺『えー。何かハプニングがあったみたいですけど、無事再開です』

潤『つーか、もうあいつ退場でいいだろ』

玖渚『まぁまぁ。面白いからいいじゃん』

潤『まぁな。それよりも初球にスローカーブか。明らかに出し惜しみとか無しで来てるな』

玖渚『こうなってくると、化物側は狙い球が絞りにくくなってくるよね』

潤『だな』

鵜鷺『さぁ、試合再開です』

月火(初球にスローカーブってことは、明らかに私が速球系に狙いを絞ってるのがバレてるってことだよね)

軋識「まだピンチであることには変わらないっちゃ。気ぃ引き締めてけよ!」

双識「分かってるよ」パンツ…

軋識「いや、お前全然分かってないだろ!?」

月火(ふざけてる感じだけど、力は本物。間違いなくエース格)

月火(狙い球がバレてるなら、このまま速球系を狙ってたら相手の思う壺。なら狙い球を変える……?)

月火(いや、そんなことしても私じゃあ、あのスローカーブは打てない。ムリムリ……)

月火(ここは最初と同じ、ストレートに一本絞っていく!)グッ


軋識「………」スッ

双識「」コクッ

鵜鷺『第二球。双識さん、一体何を投げるんでしょうか?』

双識「」チラッ

阿良々木「おっと」スッ

双識「」スッ

月火「」グッ

ビシュッ!

ドロンッ ブンッ!

パンッ

審判「ストライーク!」

月火「くっ……」

鵜鷺『二球連続でスローカーブ! 月火さん、ボールを捉えられません!』

一里塚「ナイスボールです!」

伊織「追い込みましたよー!」

八九寺「バット振れてますよ!」

戦場ヶ原「どんどん振っていきなさい」

月火「すぅ……ふぅぅ……」スッ

双識(今度は見えなかった……)ガクッ


鵜鷺『カウントはツーストライク。双識さん、たった二球で追い込みました!』

月火(二球連続でスローカーブ……。もしかして最後までスローカーブで来る?)

軋識(さて、二球連続でスローカーブを空振ってるが、そろそろ狙い球を変えてくるっちゃかね?)

月火(どうしよう? 三振で終わるわけにはいかないし、かと言ってスローカーブを頭に入れながらだと私じゃあヒットを打つことは難しいし……)

軋識(どちらにせよ、最後はこいつで仕留めるぞ―――)スッ

双識(えー。ストレートかい?)ウーン…

軋識(何か問題でもあるっちゃか?)

双識(いや、ストレートじゃおっぱいが見えな―――)

軋識(おーしっ! さっさと仕留めるぞーーっ!)

双識(うふふっ。つれないねー。分かったよ、言う通りにするよ―――)コクッ

月火(悩むな。お兄ちゃんや火憐ちゃんみたいな確固たる決意を持つって決めたじゃん)

月火(だったら、絶対に私は最初の考えを貫き通す―――!)スッ

双識「」スッ

月火(真っすぐ来い真っすぐ来い真っすぐ来い真っすぐ来い真っすぐ来い真っすぐ来い真っすぐ来い真っすぐ来い―――っ!)

ビシュッ!

ビュンッ!

月火(来たっ! けど………)


パァンッ! ブンッ!


審判「ストライーク! バッターアウッ!」


鵜鷺『三振ーーーーーーーーーーっ! 双識さん、このピンチを三振で切って取りましたーーーーーーーっ!』

双識「」グッ

軋識「っしゃあーーーーーーっ!」ポイッ

月火「うあああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」ガンッ!

伊織「ナイスピッチです、双識お兄様!」

一里塚「よく踏ん張りました!」

深空「よくやった! 褒めてやる!」
高海「よくやった! 褒めてやる!」

双識「うふふ。ありがと」

月火(最後のボール今までのストレートと違って物凄く速かった・・・・・・、読み通りだったのに身体が追いつかなかった・・・・・・)

羽川(遅い球を見せることで、ストレートを球速以上に速く見せつけられたんだ・・・・・・)

戦場ヶ原(しかもストレート狙いを逆手にとって、あえてストレートを内角高めのボール球に投げてバットを振らせていた・・・・・・。配球の面でも明らかに読み負けてる・・・・・・)

八九寺(これは、まずいですね・・・・・・)

火憐(兄ちゃんが作ってくれたチャンスだったのに……)

月火(三振を取れるスライダーに、緩急がついたスローカーブ・・・・・・)

戦場ヶ原(外と内にしっかり投げ分けられるコントロールに、未だに球速が衰えないスタミナ・・・・・・)

羽川(配球もしっかり組み立てられていて、正直突くとこが見つからない・・・・・・)

神原(一点が・・・・・・遠い・・・・・・)

千石(本当に、この人から点を取ることが―――)

阿良々木「いや~。惜しかったな。次こそ点取れるんじゃないか?」

千石「え?」

戦場ヶ原・羽川「」

忍「何が惜しかったな、じゃ。貴様がもう少しリードを多く取ってピッチャーにプレッシャーを掛けなかったお前様の怠慢が原因じゃろが」

阿良々木「いや、そんな言い方はねーだろ。僕だって、ゴロだったらホームに突っ込む覚悟はしてんだぜ?」

忍「覚悟をするくらいなら誰でもできるわ。むしろホームスチールを決める位の勢いで塁におらんか」

阿良々木「いやいや、ホームスチールとか、さすがにそれは無理だろ!」

忍「いやいや、行けるって。お前様ならブリッジしながらでも行けるって」

阿良々木「ただのホラーだろ、それ!」

神原「あ、阿良々木先輩?」

阿良々木「あ、どした神原?」

神原「いや、阿良々木先輩のその前向きな姿勢は甚だ感服するばかりなのだが・・・・・・しかし、もう8回。クリーンナップでもってしても一点も取れなかったのに、まだ勝てると思いなのか?」

阿良々木「勝てるかどうかは分んねーけどさ、それでもさっきは3塁まで行ったんだぜ? もしかしたら、次で点を取れるかもしれねーじゃねーか」

神原「いや、しかし、それはクリーンナップだったからであってだな・・・・・・}

阿良々木「クリーンナップ『だけ』で、3塁のチャンスまで行ったんだからさ、今度はクリーンナップ以外の皆が協力してくれれば絶対点取れるだろ?」

神原「・・・……」

阿良々木「行けるって」ニカッ


今回はここまでー。

次回お楽しみに

8回裏 TF 1-0 TB
二死 ランナー無し
打者 忍野忍


パァンッ!

審判「ストライーク! バッターアウッ!」

鵜鷺『見逃し三振ーっ! 忍さん手が出ません!』

忍「かかっ。終盤に入って、なおこの球とは、中々大した男じゃな」スタスタ

軋識(またも手を出してこなかったっちゃ。全球しっかり見てきてたし、やはり不気味だっちゃね)

軋識(いや、次はトップに戻るし単純に球数を放らすために手を出すなとベンチから指示されてる可能性もあるか・・・・・)

軋識(どの道、次の回を抑えればこいつに回る前に試合は終了だっちゃ。心配する必要は―――)ジーッ

深空「おい、何ジロジロ見ている変態」
高海「おい、何ジロジロ見ている変態」

軋識「うおっ!? いつの間にいたっちゃ?」ビクッ

深空「いつの間にも何も、もうチェンジだろうが。ロリコンのしすぎで頭がおかしくなったか?」
高海「いつの間にも何も、もうチェンジだろうが。ロリコンのしすぎで頭がおかしくなったか?」

軋識「いや、別におかしくなってはいないっちゃよ。つか、ロリコンを動詞で使うなっちゃ。物凄くややこしいっちゃ」

深空「ロリコンである所は否定しないんだな、このロリコン麦わら変態野郎」
高海「ロリコンである所は否定しないんだな、このロリコン麦わら変態野郎」

軋識「ロリコンと変態の間に麦わらを付き足すんじゃねーよ! 何か麦わらまでもが悪口みたいになってるじゃないっちゃか!」

軋識「あと、ロリコンじゃないっちゃ!」

深空「否定する所があやしいな。まさか本当にロリコンなのか?」
高海「否定する所があやしいな。まさか本当にロリコンなのか?」

軋識「否定しても、結局ロリコン扱いになるんちゃか!?」


9回表 TF 1-0 TB
無死 ランナー無し
打者 澪標深空

鵜鷺『両投手が光る投手戦もついに最終回を迎えます! 追加点が欲しいチームフォックスの先頭はトップに戻り、1番 ショート 深空さん』

深空「」ザッ

伊織「深空さんなら打てますよー!」

軋識「甘い球見逃すなっちゃよ!」

深空(ふん。言われなくても分かっている)スッ

一里塚(この試合を絶対的に決定づけるには、やはりここで点を取っておきたい。その為には先頭にはどうしても塁に出て―――)

羽川「」スッ

ビシュッ! パァンッ!

一里塚「」

軋識「」

伊織「」

深空「………っ」


審判「ストラーク!」


鵜鷺『初球 アウトコース一杯にストレート! 最終回に来て一番のストレートが来ました!』

一里塚(ここに来ても全く球威衰えてない……)

軋識(それよりも、流し打ちが得意な深空相手に初球からアウトコースに攻めてきやがった)

一里塚(あの人、一体どんだけ強気なんですか?)

羽川「ふぅ~」パシッ


鵜鷺『初球アウトコースに決まり、ストライクを取った羽川さん。次は一体どのようなボールで攻めるのでしょう?』

羽川「………」

深空(くそっ。打ち頃だったのに、予想以上にキレてて手が出なかった……)

深空(けど、次来たら確実に打つ―――!)スッ

羽川「」スッ

ビシュッ!

深空(アウトコース来た―――けど、これは……)ピタッ

ギュンッ! パァン!

審判「ボール」

鵜鷺『二球目はスライダー! しかし深空さん見て、ボールです』

軋識「よく見たっちゃ!」

小鹿「ナイス選ー!」

深空「ふぅ……」

阿良々木(あれを見るかよ……)

深空(得意コースを見逃して、やっきになって振ってくると思ってたんだろうが、そう何度も同じ手を食―――)スッ

ビシュッ!

深空「っ!?」

ギチッ! パサァ

審判「ファール!」










鵜鷺『アウトコースから一転、インコースへの真っ直ぐ! 深空さん、付いて行くもファールでカウントワンボールツーストライク!』

深空「っつ~」ビリビリ

火憐「よおっしゃあ! 追い込んだよ羽川さん!」

月火「この調子で、先頭バッターをしっかり仕留めよう!」

一里塚(外の変化球を見て、一息ついた所にすかさずインハイへのストレート……)

軋識(不意を突くだけじゃなく、外の変化球から内の真っ直ぐを見せることで、狙い球を絞れなくしやがった)

深空(くっそ。これじゃあ、また向こうの思いどおりじゃないか……)

羽川「」パシッ

深空(どうする? また内に来るか? それとも外に―――?)

羽川「」スッ

深空(もうどうにでもなれ!)グッ!





キィィィィィィィィィィンッ!







フワッ


阿良々木「」

羽川「」

火憐「」

八九寺「」


神原「」タ、タ、タ…

神原「」ピタッ



ドッ!




高海「」

伊織「」

軋識「」

一里塚「」

深空「」グーーッ


鵜鷺『は………』

鵜鷺『入ったーーーーーーーーーーーーっ! ホームラーーーーーーーンッ!』



深空「っしゃあーーーーーーーーーーっ!」バッ





鵜鷺『インコースのシュートを見事レフト奥に叩きこんだー! アウトコース打ちが代名詞の深空さん。何とインコースの球を打ち破ったーーーっ!』

伊織「凄い凄い凄いです、深空さーん!」

双識「すっごい伸びたね」

軋識「かぁー、それは俺の仕事だろ」

曲識「しかし、それも悪くない」

高海「狙ったのか?」

深空「いや、何を打ったかさっぱり分からない」

高海「たまたま?」

深空「偶然」

高海「インコース打ちは僕の代名詞なんだが」

深空「それならこの打席、お前はアウトコースを打てばいい」

高海「無茶言うな」

深空「絶対に勝つぞ」スッ

高海「ああ」スッ

パンッ


鵜鷺『いやー、当たりはそこまで良くはなかったんですけど、随分とボールが伸びましたね』

潤『風は特になかったが、今回はそれが逆にボールの後押しになったのかもしれねーな』

鵜鷺『……無風だったからボールが伸びたってことですか?』

玖渚『というよりも、変に風に揺らされなかったからスタンドまでギリギリ届いたって感じかな』

鵜鷺『本当にフェンスギリギリでしたもんね』

玖渚『最終回、先頭バッターにホームラン。これはちょっと勝負が決まっちゃったんじゃないかな?』

羽川「………」

戦場ヶ原「………」

神原「………」

八九寺「………」

千石「………」



阿良々木「―――おーーーーーっし! 最終回! 先頭バッター、しっかり打ち取っていこうぜ!」

羽川「!?」

戦場ヶ原「?」

阿良々木「9回2点差だけど、この回凌げばまだ勝機あるぞっ!」

火憐「おーーーーーっ! この回点やらないためにも先頭絶対出さねーぞ!」

月火「先頭打ち取って、流れ掴んで行こう!」

軋識「……? あいつら何言ってんだ?」

伊織「先頭はさっき深空さんがホームランを打って……」

一里塚「………」

阿良々木「羽川っ!」

羽川「!? は、はい!」

阿良々木「―――2点差絶対にひっくり返してやっから、『先頭』打ち取っていこうぜ」ニカッ

羽川「………うんっ!」ニコッ


9回表 TF 2-0 TB
二死 満塁
打者 一里塚木の実

鵜鷺『9回表 ツーアウト満塁! カウントはワンストライクツーボール。バッティングカウントです!』

羽川「はぁ……はぁ……はぁ……」

双識「」ジャリッ

軋識「」グッ

曲識「」ザッ

羽川「はぁ……ふぅ………」スッ

一里塚「」グッ

羽川「んっ!」

ビシュッ!

ギュンッ!

一里塚(スライダー!?)

キィンッ! フワッ

鵜鷺『あーーっと、打ち上げてしまったーーーっ!』

羽川「阿良々木君!」

阿良々木「オーライ!」スッ

パスッ

審判「アウトーーッ! スリーアウトチェンジ!」

火憐・月火「っしゃあああああああああああああああああっ!」グッ

戦場ヶ原「ふぅ……」

神原「ナイスピッチ、羽川先輩!」タッタッタッ

羽川「………っ!」グッ


鵜鷺『スリーアウトチェンジ! 満塁のピンチを迎えるも追加点は阻止しましたーーーーっ!』

神原「ナイスピッチングだったぞ、羽川先輩。さすがは直江津高校のダルビッシュ! 数多の変化球で打者を翻弄しまくりだな!」

羽川「いや、私14種類も変化球持ってないから……」

戦場ヶ原「変化球の数はどうでもいいとして、本当によく踏ん張ってくれたわ、羽川さん。あれ以上点を取られていたら、本当に試合が決着付いてしまってもの」

神原「うむ。羽川先輩はウチの大エースだ。正直いまから野球部に入れば、甲子園も夢ではないのではないか?」

羽川「あ、ありがとう。けど、私なんかまだまだだよ……」

戦場ヶ原「いえいえ、謙遜しなくてもいいのよ羽川さん。作者の異様な脳内補正のせいで、明らかに高校生とは思えないくらいのピッチングを披露してるんだもの。甲子園なんて余裕のユウトピアよ」

羽川「余裕のユウトピアって何?」

戦場ヶ原「バサちゃん! ひたぎを甲子園に連れてって!」

羽川「いや、そんな思い出したかのようにタッチのネタを放り込まれても……。それに結局2点も取られ―――」

阿良々木「おーーーーーーーーーしっ! 何とかこの回0点で抑えたぞ!」

火憐・月火「おーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

羽川「……え、阿良々木君? それいつまで続けるの?」

阿良々木「点差は2点だけど、最終回0で抑えたこの流れで絶対に追いつくぞ!」

火憐・月火「おーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

阿良々木「イエスッ! ウィーーーーキャーーーーーーーンットゥ!」

火憐・月火「イエーーーーーーーッスッ! ユーーーキャントゥフラァーーーーーーーーーーーーーイッ!!」

八九寺「どっちもさり気に自己否定ますね……」

戦場ヶ原「全く、バカ丸出しね」

千石「バカな暦お兄ちゃんもかっこいい……///」

羽川「ハハッ。確かにバカ丸出しだねー」

阿良々木「アイム! トランスフォーメションジェントゥルメーーーーーーン!」

羽川「けど、ここから逆転するにはバカになるくらいじゃないとダメかもしれない」

戦場ヶ原「」フンッ

神原「」ニカッ

八九寺「」ヤレヤレ

千石「」コクッ

阿良々木「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」




「「「「「「「「「ウイニングアーアーーーーーーーーーーーーーーーーーーッス!」」」」」」」」」ガーーッ!






9回裏 TF 2-0 TB
無死 ランナー無し
打者 神原駿河

鵜鷺『さぁ、泣いても笑ってもこれでラストイニング! 追い付けるかチーム化物。それとも逃げ切るかチームフォックス。明暗を分けるこのイニングの先頭バッターは、1番 センター 神原さん!』

神原「っしゃああああああっ! 来ぉぉいっ!」ザッ

軋識(うるさいっちゃね。表にホームラン打たれてんだから、ちったぁ気落ちしやがれっちゃ)

双識(ラストイニングと言っても、点差は2点。とてもじゃないけど安全圏とは言えないよ)

軋識(分かってるっちゃよ。気を抜かしたりはしない。全力で残り3人潰して行くぞ)

双識(ああ)コクッ

神原「………」

双識「」スッ

ビシュッ!

神原「」スッ

双識・軋識「!?」

一里塚(セーフティバント!?)


コンッ




コロッ

神原「」ダッ

一里塚「くっ……」ダッ

双識「やばっ……」ダッ

コロコロ……

一里塚(これは、切れない……)ダッ

神原「」タタタッ

一里塚「」パシッ バッ

軋識「間に合わんっちゃ、投げるな!」

神原「」ダッ

一里塚「」スッ

鵜鷺『絶妙なセーフティバント! 9回裏 チーム化物初めてノーアウトのランナーが出ました!』

阿良々木「いいぞ、神原ーーっ!」

火憐「ナイスバント、神原さん!」

羽川(左バッターからするとスライダーは内側に切り込んでくる。内に入ってくるスライダーはゴロになりやすい上に、ゴロは右に向かいやすい)

羽川(本来は引っ張ってファールになるものだけど、今回はそれを利用してラインギリギリにボールを転がすなんて、本当に凄い人だね……)

一里塚(最初からスライダーに張っていたのにも驚きましたが、何よりもこの最終回、初球からセーフティを決める度胸にも感服するばかりですね)

神原「っしゃあーーーーーーーーーっ!」



皆様、明けきっておめでとうございます。

年末年始はやっぱり色々忙しくて中々更新できませんでした。すいません。

少なからずのお詫びということで、安価でおまけを書いてみようと思います。

安価
>>236

他のチームはどんな感じなんだ

【他チームのご様子 ~前回の続き~】

食堂


カランカランッ


店員「いらっしゃいませー」

人識「おお、結構広いじゃねーか」

出夢「どこに座る?」

人識「どーすっか? 結構な大人数だからな」

店員「何名様ですか?」

出夢「何名様だっけか?」

人識「結局全員来てんだよな。何人だ、欠陥製品?」

いーちゃん「自分で数えろよ。……えーっと、10名だね」

出夢「10名様でーす!」

店員「かしこまりました。お煙草は汚水になられますか?」

人識「誰か煙草吸うやついるかー?」

鈴無「あたしは吸うけど、女の子もいるし遠慮しとくだわ」

みい子「私も遠慮しとこう」

萌太「僕も吸うんですが、崩子もいるので出来れば禁煙席でお願いします」

崩子「」コクッ

子荻「まぁ、私たちも言うまでもないですね」

一姫「ですです」

玉藻「ゆらぁ~」

人識「俺たちも同じだから、禁煙席で頼むわ」

店員「かしこまりました。それではこちらへどうぞ」スタスタ

一姫「師匠師匠ー! 窓からの景色が凄いですよー!」グイーッ

いーちゃん「姫ちゃん、店の中では静かに」

子荻「確かに絶景ですね。と言いますか、この球場は山の中にあったんですね」

一姫「下のほうに大きな川があるですよ。ご飯食べ終わったら行きましょうよ!」

いーちゃん「姫ちゃん。忘れてるかもしれないけど、この後は試合だからね? 遊んでる場合じゃないよ?」

一姫「うー、別にいいじゃないですか。師匠はもう少しサービス精神というものを覚えるべきです」

いーちゃん「そういう姫ちゃんは、もう少し我慢というものを覚えるべきだよ」

一姫「ぶー」

人識「おーい、くっちゃべってねーで、さっさと来いよ」



席はこんな感じになりました



 │玉藻 子荻 一姫 鈴無 みい子
壁│
 │人識 出夢 いー 崩子 萌太


出夢・崩子・鈴無「やべっ、マジ天国……」

いーちゃん「何言ってんの?」

人識「いいから、さっさと飯にしようぜ。何食べっかな?」ペラッ

出夢「僕はステーキ!」

萌太「じゃあ、僕はとんかつでも頼むべきですかね?」

崩子「私はトマトサラダにチーズドリアで」

みい子「私は天ぷら蕎麦でも頼もうかな」

鈴無「じゃあ、あたしもそれでいいだわ」

子荻「私は回鍋肉を頂きますね」

一姫「姫ちゃんはスパゲッティが食べたいです!」

玉藻「………カレー、ナン―――」

いーちゃん「ぼくはミレリーゲ・アラ・ハンナ・コン・イ・ブロッコリ」

人識「呪文料理!? つか、ここ何料理屋なんだよ!?」

人識「俺はラーメンでいいか。おい、欠陥製品。店員呼んでくれや」

いーちゃん「だが断る」

人識「いや、断んなよっ!」

出夢「適当のそこにあるボタンを押せばいいだろ」ピンポーン

店員「はーい」スタスタ

出夢「オーダーなー」

店員「はい、かしこまりました」スッ

出夢「えっと、まず僕がステーキに人識がラーメン……他何だっけ?」

萌太「とんかつ定食が一つにトマトサラダとチーズドリアが一つ。天ぷら蕎麦が二つに……」

子荻「回鍋肉が一つに、玉藻がナンカレーに一姫がスパゲッティ。それで貴方がミレリーゲ・アラ・ハンナ・コン・イ・ブロッコリでしたっけ?」

いーちゃん「うん」

子荻「以上です」

店員「かしこまりました。ご注文を繰り返させてもらいます。ステーキがお一つにラーメンがお一つ。とんかつ定食が一つにトマトサラダとチーズドリアが一つ。天ぷら蕎麦が二つに回鍋肉が一つ。ナンカレー、スパゲッティにミレリーゲ・アラ・ハンナ・コン・イ・ブロッコリがお一つづつでよろしいでしょうか?」

出夢「モブのくせに台詞長ぇな……」

いーちゃん「いや、注文繰り返しただけだから」

萌太「あと、ドリンクバーも全員分お願いします」

店員「かしこましました。ドリンクバーは向こう入口のほうのございますので、どうぞご自由にお使いくださいませ」ペコッ

人識「誰がドリンク淹れに行く?」

萌太「適当にじゃんけんでいいんじゃないですか?」

いーちゃん「一人でこの人数分も運ぶのは大変だから、二人位にしといた方がよさそうだね」

子荻「そうですね。じゃんけんでビリ二人がを淹れに行くってことでいいじゃないですか?」

人識「だな」

出夢「賛成ー!」ギャハハハ!

いーちゃん「それじゃあ、じゃーん、けーん―――」


\ポンッ!/



いーちゃん・人識「マジかよ……」

出夢「ぎゃははは! それじゃあお二人さんよろしくなー!」ギャハハハ!

人識「くそっ、やっぱグーにしとくんだった……」

萌太「にしても凄いですね、まさか一発で綺麗に二人が揃うなんて……」

出夢「お前、じゃんけんの才能ないんじゃねーの?」

人識「うっせーよ! んだよ、じゃんけんの才能って! じゃんけんに才能なんてねーよ!」

いーちゃん「あんま店の中で騒ぐなって。それで、皆は何飲みたいの?」

出夢「僕はジンジャーエール」

萌太「僕はウーロン茶で」

崩子「私も同じものをお願いします」

みい子「私は厚めのお茶を頼む」

鈴無「あたしはコーヒーでも貰えるかしら」

子荻「私たちはオレンジジュースをお願いします」

一姫「お願いしまーす!」

玉藻「ゆらぁ~~」

人識「あいよー」スタスタ

いーちゃん「それじゃあ、行ってきます」スタスタ

ドリンクバー前


人識「さてと、誰がなんだったっけか?」

いーちゃん「え?」

人識「え?」

いーちゃん「」

人識「」

いーちゃん「お前が全部覚えといてくれたんじゃないのか?」

人識「え?」

いーちゃん「え?」

いーちゃん・人識「………」

人識「俺はてっきりお前が全部覚えといてくれてるかと思ってたんだが……」

いーちゃん「ぼくもてっきりお前が全部覚えてるのかと思ってたんだけど……」

いーちゃん・人識「………」

いーちゃん・人識「マジかぁ~~」ガクッ

??「おれ? そこのおにーちゃん達は―――」

いーちゃん・人識「うん(あん?)」

こなゆき「やっぱり、大きなお庭にいた変な格好したおにーちゃん達です!」

いーちゃん「あれ? そういう君は次の試合で対戦するチームにいた……」

人識「つーか、さっきさり気に変な格好って言わなかったか?」

こなゆき「うちっちは凍空こなゆきって言います。おにーちゃん達の名前は何て言うんですか?」

いーちゃん「あー、ごめん。ぼく基本名前を人に教えないことにしてるんだ」

こなゆき「そうなんですか? では何て呼べばいいでしょうか?」

いーちゃん「適当でいいよ」

こなゆき「そうですか。では適当におにーちゃんと言わせてもらいますね」

いーちゃん「うん。あと、こっちの人相の悪い奴は零崎人識って名前だから」

人識「おい、誰の人相が悪って?」

こなゆき「よろしくお願いしますね、人相の悪いおにーちゃん」

人識「お前も乗っかってんじゃねーよ! 普通に名前で呼べ!」

こなゆき「よろしくお願いしますね、人識おにーちゃん」

人識「……おう」

いーちゃん「ところで、こなゆきちゃんは一人でこんなところで何してるの?」

こなゆき「うちっちですか? うちっちは七花おにーちゃんと一緒にご飯を食べに来たですよ」

いーちゃん「七花おにーちゃん?」

七花「おーい、こなゆきー」

こなゆき「あ、噂をすれば七花おにーちゃんです。おーい、七花おにーちゃん。こっちですー!」ブンブンッ

七花「おお、いたいた。いきなりいなくなるからびっくりしたぞ」スタスタ

こなゆき「ごめんなさい。こっちの方からいい匂いがしたんでついふらっと寄ってみちゃったです」

七花「別にいいけどよ、あまり勝手にいなくならないでくれ。俺が迷子になったらとがめが心配す……って、そっちの二人は……」

人識「よぉ、先程ぶりだな」

七花「でっけぇ庭にいた、背の小さい奴と無表情の奴じゃないか」

人識「お前ら二人揃って、本当に失礼だな!?」


七花「何はともあれ、また会ったな」

いーちゃん「だね。」こんなところで何してるの?」

七花「いや、お腹が減ったから適当に食堂で飯でも食いに来ただけなんだけどさ……。なんか変な部屋が一杯あるだけで、食堂みたいのが全然ないんだよ」

いーちゃん「食堂って……、ここが食堂だよ?」

七花「本当か!?」

いーちゃん「う、うん……」

人識「どっからどう見ても、食堂そのものじゃねーかよ」

七花「いや、でも俺が知ってる食堂と何か違う感じだぞ?」

人識「お前、今まで一体どこで暮らしてたんだよ?」

七花「? とがめと会うまでは無人島で暮らしてたけど?」

いーちゃん「へー、そうなんだ」

人識「だから、誰だよとがめ!?」

こなゆき「うちっちは、七花おにーちゃんととがめおねーちゃんに会うまでは雪山の山頂で暮らしてました」

いーちゃん「へー、そうなんだ」

人識「お前は、もうちょっと興味を示してやれよ!」

いーちゃん「いや、そう言われても……」

こなゆき「あのー、おにーちゃん……」クイクイッ

いーちゃん「ん? 何? こなゆきちゃん」

こなゆき「折角なので、これから一緒にご飯を食べませんか?」

七花「お、それいいな。正直俺たちだけだと、どうやって飯を頼めばいいのか分からなかったとこだし」

人識「はぁ? 何でこれから戦う相手と一緒にご飯を食わねーといけねーんだよ?」

いーちゃん「確かにそうだよね。ぼくたちだけならまだしも、皆もいるし……」ウーン

こなゆき「駄目、ですか?」ウルウルッ

いーちゃん「まぁ、いいか」

人識「折れるの早っ!?」

一姫「うー、師匠遅いですねー」

子荻「まさかとは思いますけど、本当に問題に巻き込まれてるんじゃありませんよね?」

萌太「さすがにいー兄も、ドリンクを淹れに行くだけで問題の巻き込まれたりはしないと思いますよ」

崩子「本当にそう思ってますか、萌太?」

萌太「………」

鈴無「はぁ……。しょうがないだわね。少しあたしが様子を見てくるだわ」スクッ

みい子「ん。では私も一緒に行こうか?」

鈴無「いや、いいだわ。無駄に入れ違いなんか起きたら面倒だし」

みい子「そうか。では、任せてもいいか?」

鈴無「ええ、任せるだわ。この拳に誓って、必ず見つけてみ―――」

いーちゃん「ただいまー」スタスタ

一姫「あ、帰ってきましたー!」

鈴無「………随分遅かっただわね。一体どこで何をしていたのかしら?」

いーちゃん「いえ、ちょっとそこで……って、あれ? 何か怒ってます?」

鈴無「別の怒ってないだわよ。それで? そこで一体どうした?」

いーちゃん(やっぱ怒ってる?)

いーちゃん「ちょっとそこで知ってる人と会いまして」

子荻「知ってる人ですか?」

いーちゃん「うん。それで、一緒にご飯を食べることになったんだけど……いいかな?」

鈴無「はぁ………あんたは本当に、すぐに問題を抱えてくるだわね……」

いーちゃん「えっと……駄目、でしょうか?」

鈴無「もう、あんたのそういう所には慣れただわよ。好きにしなさい」

みい子「私も構わないぞ」

萌太「ぼくも気にしませんよ」

崩子「戯言使いのお兄ちゃんが決めたことなら反対はしません」

一姫「ご飯は皆で食べたほうがおいしいですからねー」

玉藻「ゆらぁ~」

子荻「私も、特に変わった方でないのなら大丈夫ですよ」

いーちゃん「そっか。ありがとうね、皆。おーい、いいってー」

七花・こなゆき「お邪魔しまーす」スタスタ

子荻「って、思いっきり敵チームの方じゃないですか!」

中途半端ですいませんが、今回はここまでです。

おまけにどんだけ時間とレスを使ってんだよって感じですが、次回は今週中に投下しておまけを終わらせようと思いますのでどうか見てってください。

いーちゃん・七花・こなゆき「え?」

子荻「え? じゃないですよ! 何正面切って敵陣に敵チームの方を招き入れてるんですか!」

いーちゃん「いや、何か困ってるみたいだったから……」

子荻「それでうちが困った状況になってるじゃないですか!」

こなゆき「あ、あの……やっぱり駄目でしたか……?」ウルウルッ

いーちゃん「い、いや~、そんなこと……」

子荻「駄目です」キッパリ

こなゆき「」ガーンッ

鈴無「まぁまぁ、別にいいんじゃないかしら?」

子荻「いえ、そういうわけには……」

鈴無「見た感じ偵察に来たとか内情を探りに来たという風には見えないし、それにこんな可愛い娘の誘いを断ったバチが当たるだわ」

出夢「後半は完璧に姉さんの私情だったな」

子荻「しかし、戦いの前に敵チームの方と仲良くすると、戦いの中でお互い人影響が……」

「「「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」」

子荻「いや、何で皆して『訳分かんない』みたいな顔してんですか!?」

人識「いや、勝負は勝負だろ? 何でここで仲良くすると影響があんだ?」

子荻「え? いや、だって……」

萌太「ようするに、戦う前に敵チームの方と親しくなると、その親しくなった人にだけ意識が行ってしまい、他の人への意識が緩慢になったり、いざという時に手を抜いてしまったりなどと悪影響を与えてしまいかねないということですよね」

子荻「そう! その通りです!」

崩子「その心配なら必要ないかと」

子荻「え?」

みい子「公私の区別くらいはしっかりと分けられる」

鈴無「勝負は勝負。いざ戦うことになったら例え仲のいい相手でも全力で開いてするだわ」

七花「おう。俺も戦うとなるなら手加減はしないぜ」

一姫「むしろ知り合いの方だからこそ、手加減なんてしませんよ」

玉藻「ゆらっ」

こなゆき「うちっちも相手になるなら全力で相手させてもらいます」

出夢「ぎゃははは! ということらしいけどよ、どうする、策士様?」

子荻「………」


いーちゃん「子荻ちゃん」

子荻「何ですか?」

いーちゃん「確かに、試合前に相手チームの人と仲良くするのは良いとは言えないかもしれない」

子荻「………」

いーちゃん「子荻ちゃんがチームのことを本気で気にしてくれてるのも分かるし、その為に心を鬼にして言ってくれてるのも分かるんだ」

いーちゃん「けど、ぼくは勝負に勝つこと以外にも大切なことがあると思うんだ」

人識「……おえっ………」

鈴無「分かる。分かるけど今は我慢するだわ……」プルプル

いーちゃん「試合が終わったらノーサイド。試合が終わってから仲良しって意味合いの言葉だけどさ、別に試合終了後に限る必要なんてないんじゃないかな」

いーちゃん「試合前に、試合中に、試合が決まる前から仲良くなってたっていいと思うんだ。そうすれば試合を通して相手のことをより知れて、より相手のことが好きになれると思うんだ」

みい子「うんうん」

崩子「」ブルブル

いーちゃん「ぼくさ、また野球をするってことになった時、正直またかよと思ったのと同時にまた皆と野球ができるんだなと思って」

いーちゃん「前の野球はかなりきつくて、皆にも迷惑をかけちゃたしかけられたりもして、やってる時はもう二度とやるもんかって思った。多分今日の野球もそうなると思う」

いーちゃん「けど、あの野球を通して皆がぼくの仲間で本当に良かったと再認識できた。だから今回の野球が決まった時は本当に嬉しかったんだ―――また、ぼくは皆のことを更に好きになれると思って、ね―――」

子荻「………っ!」

人識「うぼろろろろろろろろろろろろろろろろろろぉぉぉっ………」

出夢「ぎゃーーーっ! 人識の野郎が吐きやがったーーーーーっ!」

萌太「だ、大丈夫ですか!?」

崩子「だ、誰か雑巾を!」

人識「おえっ……うぉおえぇぇぇぇぇぇぇえっぇぇぇぇ………っ!」


出夢「ほれ水だ。しっかり飲めよ」スッ

人識「サンキュー……」スッ

一姫「大丈夫ですか?」

人識「あぁ。悪かったな。どうしても我慢できなかった……」

鈴無「気にすることないだわ。あんたが吐かなかったら、あたしがあいつをぶん殴ってただわ」

崩子「どんだけ拒否反応を示るしてるんですか……まぁ、気持ちはわかりますけど」

いーちゃん「どうかな、子荻ちゃん? ここはぼくに免じて許してもらえないかな?」

子荻「………」

いーちゃん「………」

子荻「……分かりました。貴方がそこまで言うなら特別に許可しましょう」

いーちゃん「本当っ!?」

子荻「ええ」

こなゆき「わーいっ! おねーちゃんありがとうございます!」

七花「ありがとなー」

いーちゃん「それじゃあ、さっそくご飯にしようか」


「「「「「「「「「「「「おーーーーーーーーーーーーっ!」」」」」」」」」」」」


店員「……すいません。他のお客様のご迷惑になるのでお静かにお願いします……」


とりあえず、おまけはこれにて終了。

18時くらいから本編を再開するんで、しばしお待ちください。

鵜鷺『さぁ、9回表 チーム化物の攻撃。先頭の神原さん、今日初めてのヒットで出塁を果たしました!』

八九寺「神原さん、ナイスバントです」

神原「うむ。八九寺ちゃんだったか? ありがとう」

八九寺「狙ってたんですか? 初球からのセーフティバント」

神原「ああ。私があのピッチャー相手に出塁するには、これしかないと思ったからな」

八九寺「なるほどー。いや~、しかし絶妙でしたね~。相手のサードの人、完璧に意表を突かれてましたよ」

神原「そうか。しかし、先輩たちに繋ぐことができて本当に良かった。ここで凡退してしまってたら、先輩たちに合わせる顔がないからな」

八九寺「安心してるところ申し訳ありませんが、神原さんにはまだまだ働いてもらいますよ。と言いますか、神原さんの仕事はこれからです」

神原「ああ、まだまだ私にはやるべきことがあるな―――」

神原「」スッ

双識「………」

神原「」ザッ


神原(―――塁上でバッテリーを掻きます!)



9回裏 TF 2-0 TB
無死 ランナー一塁
打者 羽川翼

鵜鷺『さぁ、望みを後ろに繋いで迎えるチーム化物の続くバッターは、2番 ピッチャー 羽川さん』

羽川「ふぅ……」

軋識(ちっ、出したくない先頭を出しちまったっちゃ)

神原「」ザッ

小鹿(リードが凄くでかい……)

軋識(点差は二点。ランナーは無視してもいいっちゃ。問題はこのバッター……)

羽川「」ペコッ

一里塚(この人を塁に出すのはいけません。連続の出塁によって流れが向こうに行く上に、塁にランナーが溜まった状態で4番を迎えてしまう)

軋識(そうさせないためにも、このバッターを絶対に仕留めるっちゃ)

羽川「………」


双識「」スッ ビッ

神原「」ザザッ

小鹿「」パシッ パンッ

審判「セーフ」

神原「ふぅ……」

軋識(これで、ちったぁ大人しくなるっちゃか?)

神原「すぅ……」ザッ

軋識(リードは変わらずっちゃか……)

双識(どうする?)

軋識(仕方がないっちゃ、走られたらその時はその時。ランナーは気にせず、お前はこのバッターを打ち取ることに集中するっちゃ)

双識(オッケイ。分かったよ)

軋識(さて問題となる、このバッターをどう打ち取るか)

羽川「」クイッ

軋識(脇が空いてる……外角狙い。セオリー通り右方向?)

軋識(しかし、この女はこんなにわかりやすくアクションを見せてたっちゃか?)

軋識(本当に狙ってるのか、それとも誘ってるのか……)

羽川「………」

軋識(一球様子見るか―――)スッ

双識「」コクッ

双識「」チラッ

神原「」グッ

双識「」スッ

ビシュッ!

パァン!

審判「ボール」

鵜鷺『初球アウトコースに真っ直ぐを外してきました』

羽川(真っ直ぐをアウトコースに……神原さんを警戒してるのかな? それとも……)

軋識(全く動きがなかった。やはり誘いだったっちゃ?)

羽川「………」

軋識(それなら、次は―――)スッ

双識(インコースにスライダー―――)

軋識(もし誘いだったとしても、さっきの外を見せてからインコースのスライダーにはついていくのは難しいっちゃ。しかも、これならば右打ちはできない。引っ掛ければゲッツーもあるっちゃ)

双識「」コクッ

ビシュッ!

ギュンッ! パァン!

審判「ストライーク!」


羽川(インコースにスライダー……。これは手を出せない……)

軋識(見てきたっちゃね。まぁ、手を出してきてたらランナーもろともアウトだったっちゃからね)

神原「ふぅ……」

神原(インコースへのスライダー……もう私のことは気にしていないのか?)

神原(ならば、次走ってもう一度バッテリーに私を意識付かせるべきか…………ん?)

羽川「」フルフル

神原「………」

神原(まだ走るな、か。本当にあの人は人の心でも読めるのか? 何でもお見通しではないか……)

神原(正直、私としては走って二塁にいた方が気が楽なのだが。羽川先輩がまだというのなら、一塁でバッテリーにプレッシャーを掛け続けるとしよう)ザッ

軋識(それにしても、あの女走って来なかったっちゃね。リードは取っているが、走る気はないっちゃか?)

軋識(正直俺としては走って二塁にいてくれた方がランナーを気にしすぎずに済んで楽なんだが……)

軋識(こいつの指示か、それともあいつが自分で考えてるのか。どっちにしても厄介だっちゃね)

双識(走るなら早めに走ってくれないかなぁ……)


鵜鷺『二球目はストライクでカウントはワンエンドワンです』

軋識(さて、何とかストライクは取れたっちゃね。問題は次、出来ればここでストライクは取っておきたいっちゃが、真っ直ぐもスライダーも見せてる)

軋識(二球とも見てきてるし、ボール球を放っても多分振らないよな。となると―――)スッ

双識(インコースへのカーブ―――?)

軋識(盗塁されても構わないっちゃ。点差は二点ある、たとえそいつが帰ってもまだ一点こっちが勝ってる。それに一点取られたからって崩れるお前じゃないっちゃろ?)

双識(うふふ。そうだね、じゃあランナーは気にせずにこのバッターを打ち取ることだけを考えるとしようか―――)ジッ

羽川「………」

双識「………」

一里塚(ノーアウト一塁。送りバントは恐らくないでしょうが、それに乗じてまたセーフティを決めてくる可能性はありますね。しかし、サインはインコースへのカーブ。引っ張ってくる可能性があるから、守備位置は中間しながらも、バント警戒は怠らない)ザッ

小鹿(バントはない。サインもインコースのカーブだし、特にこっちにくる心配もないかな)

双識「」スッ
  
神原「」スッ

ビシュッ!

羽川「」スッ

双識・軋識(バント!?)


一里塚「」ダッ

小鹿「っ!?」ダッ

神原「」ダッ

小鹿(っ!!?)クルッ

小鹿「は、走ったーーーっ!」

一里塚(構いませんっ!)

双識(インコースへのカーブならサード方向に転がす―――)ダッ

羽川「」スッ

軋識(ヘッドを立てた!?)

コンッ

双識・一里塚「っ!?」

軋識(ヘッドを立てて、ボールをファースト方向へ転がした!?)

羽川「」ダッ

フワッ

ドッ

小鹿(しまった。ランナーに気を取られてて……)ダッ

羽川「」タタタッ

小鹿「」タタタッ

羽川「      」ボソッ

小鹿「………っ!?」ブフッ

軋識「?」

小鹿「……っぷ……」パシッ

羽川「」タッ

審判「セーフ!」

鵜鷺『何と二者連続セーフティバントーーッ! チーム化物、この試合初めての連続安打でチャンスを作りましたー!』


鵜鷺『最終回 1番2番の連続出塁でノーアウト 一塁二塁。チーム化物にとって絶好のチャンスを演出をしました』

一里塚「タイム」

審判「タイム!」

鵜鷺『ここで、チームフォックスたまらずタイムを取りました』

小鹿「ごめん。ランナーの気を取られてスタートが遅れちゃった」

一里塚「いえ、過ぎてしまったことはしょうがないので、切り替えていきましょう」

軋識「それよりも、お前すれ違いざまに何か言われたっちゃか? 明らかにすれ違った瞬間動きが鈍ってたぞ?」

小鹿「いや、何か小声で『紅の野ブタ(食用)』とか言われて、ついツボに入っちゃって……」

双識「それって、守備妨害じゃないの?」

一里塚「大声を出したりするのは反則ですけど、すれ違いざまに何かを囁くのは基本反則扱いは受けません。審判にとって判定もしづらいですからね」

軋識「まぁ、それはいいちゃ。問題なのは同点のランナーが出しちまったことだろ」

深空「今度こそはバントはあるか?」

一里塚「確実にバントでしょうね。向こうの人たちはやたら4番の方を信頼してるみたいですし」

軋識「決めつけていいっちゃか? もしエンドランの可能性も……」

一里塚「バントです。9回裏 ノーアウト一塁二塁でする強襲は奇策でもなんでもなく、ただの無茶です」

高海「なら、このバントは絶対に防ぐ必要があるな」

一里塚「いいですか、1・3ならば5ですからね」

双識「うん」

小鹿「分かったよ」

一里塚「いいですか、このバントは絶対に阻止しますよ!」

「「「「「おーーーーーっ!」」」」」




9回裏 TF 2-0 TB
無死 ランナー一塁二塁
打者 戦場ヶ原ひたぎ

鵜鷺『3番 サード 戦場ヶ原さん』

戦場ヶ原「」スッ

軋識(ランナーは一塁と二塁。バッターは右で、二塁ランナーは足が速い)

軋識(正直、転がされたら三塁でアウトにするのは難しいちゃね……)

軋識(となると、このバントはフライにさせるか、最悪でもフェアゾーンに転がさせないようにする必要があるっちゃね)

戦場ヶ原「」スッ

鵜鷺『あーっと。戦場ヶ原さん、早くもバントの構えです!』

双識「………」

軋識(さて、何はともあれ、初球はここだ―――)スッ

双識(インハイへのストレート―――)コクッ

ビシュッ! 

パァン!

審判「ボール!」


戦場ヶ原(インハイへのストレート……)

軋識(インハイへのストレートに微動だにしないっちゃか……)

戦場ヶ原(バントをさせないためにインハイを見せたのなら、次は外に投げ、ストライクを稼いでからバントのしにくいインローがセオリーだけど……)

軋識「」ジャリ

戦場ヶ原(けど、さっきインハイにいまいち手ごたえを感じてる感じがないわね……。振りでも臆した様子を見せとくべきだったかしら……)

戦場ヶ原(何はともあれ狙うは外への真っ直ぐ。フライにしないためにもヘッドは下げない、三塁方向に転がしいけど、私には難しいから無理せず一塁方向へ。神原ならまずアウトにはならない。二塁も羽川さんの出だしならばアウトにするのも難しいはず……)

戦場ヶ原(手で当てにいってはいけない。あの男の球筋だと間違いなくファールになる。身体とバットの距離は常に一定に。バットと身体が一体であるかのイメージで。ボールを追いかけない。あくまでバットを球の軌道線上に置く感じで……)

双識「」スッ

戦場ヶ原「」グッ

ビシュッ!

戦場ヶ原(外っ!)グッ

ギュンッ!

戦場ヶ原(!?)

パァンッ!

審判「ストライーク!」

双識「あはっ♪」

戦場ヶ原「くっ」




鵜鷺『戦場ヶ原さん、二球目をバントに行くも空振りでストライク。カウントはワンエンドワン』

戦場ヶ原(やられた。次が外にくるという考えを逆手に取られるなんて………屈辱だわ……)

軋識(うしっ、読み通り。上手く相手のバントを空振らせることができたっちゃ)

軋識(これが決まれば、次は―――)スッ

双識「」コクッ

ビシュッ!

羽川(インローへの真っ直ぐ―――!)

戦場ヶ原「ぐっ……」

カキッ 

ゴロッ……

審判「ファール!」

軋識(追い込んだ―――)

戦場ヶ原(追い込まれた……)




戦場ヶ原(一体何してんのよ、私……。インローへの真っ直ぐなんて馬鹿でも読める単純なリードじゃないの……)

戦場ヶ原(これでカウントは2‐1。次バントを失敗したら、タダで相手にワンナウトをくれてしまうことになる……なら、ダメ元でもヒッティングに切り替え………)

羽川「戦場ヶ原さん!」

戦場ヶ原「っ!」

羽川「」スッスッスッ

戦場ヶ原(………バントの、サイン……)

羽川(戦場ヶ原さんなら出来るよ。絶対―――)ニコッ

戦場ヶ原「………」

戦場ヶ原「」コクッ スッ

軋識(バントの構えっちゃか……)

戦場ヶ原「すぅ……ふぅぅぅぅぅぅぅぅ………」

戦場ヶ原(本当に凄いわね、羽川さんは。確かに4回でのバントは成功したけど、あれは羽川さんがランナーだったらこそなのに、それなのに、よくそこまでこの私を信用できたものね……)

戦場ヶ原(いえ、むしろ本当の意味で羽川さんが信頼してるのは―――)チラッ

阿良々木「」

戦場ヶ原「……ふふっ」

軋識(笑ってる……?)

戦場ヶ原(阿良々木への信頼度なら私も負けないわよ。羽川さん)


鵜鷺『三球目のバントを失敗し、カウントはツーエンドワン。戦場ヶ原さん追い込まれていますが、依然とバントの構えを変えません』

戦場ヶ原「ふぅぅ……」

戦場ヶ原(いつだってそう。普段は頼りなくて、ニヒルな感じ風に装ってかっこつけながらも考えてることは子供じみてて、一匹オオカミ風に装いながらも誰かと話をするのが大好きで。変態で、馬鹿で、お人好しで、すぐに危ないことに首突っ込んで―――)

戦場ヶ原(いつも、私たちがピンチの時に助けに来てくれる―――)

軋識(最後までバントで来るというのなら、こちらとしても全力で潰させてもらうっちゃ……)スッ

双識「」コクッ

戦場ヶ原(この想い―――)

双識「」スッ

ビシュッ!

戦場ヶ原(あの人に―――)

ギュンッ!

羽川(インローへのスライダー―――っ!?)

阿良々木(戦場ヶ原っ!!)


戦場ヶ原(―――繋がれ―――)スゥッ


コンッ!  




ドッ!

軋識(一塁線―――っ!)

戦場ヶ原(上手くいった―――っ!)タッ

小鹿(ボールの勢いが死んでる!)ダダダッ!

神原(さすが戦場ヶ原先輩―――っ!)タッ

羽川(これなら、間に合―――)タッ

双識「」バッ

戦場ヶ原「っ!」

双識「」パシッ クルッ 

羽川「っ!?」

双識「」ビッ

羽川「」バッ!

深空「」パシッ

羽川「」ザザッ!




審判「アウトーーーーッ!」





鵜鷺『バント失敗ーーーっ! 二塁ランナーは三塁に行くも一塁ランナーフォースアウトーーッ!』

戦場ヶ原「………っ!」

軋識「レン、ナイスだっちゃ!」

伊織「ナイスプレーです! 双識お兄様!」

双識「あはっ。読み通りでよかったよ」

深空「送球がもう少し低ければ、ゲッツー取れた」

双識「あはは。ごめんごめん」

鵜鷺『チーム化物、最終回に同点のランナーを得点圏に進めませんでしたが、しかし、ワンナウト一塁三塁のチャンスの場面。迎えるバッターは、チームの大黒柱。前の打席でスリーベースを放ってる阿良々木暦君です!』

阿良々木「ふしっ!」スクッ


羽川「ごめん。スタート遅かったね。もう少し思い切ってスタート切ってれば、セーフ。戦場ヶ原さんだから、もしかしたら、一塁もセーフだったかもしれなかったのにね」

阿良々木「いや、あれはしょうがないだろ。どう見たって向こうのピッチャーのファインプレーだよ」

羽川「うん。そうだね……」

阿良々木「まぁ、後は僕らに任せとけ」

羽川「………」

阿良々木「………? どうした、羽川?」

羽川「……正直、プレッシャーを掛けるようなことは言いたくないんだけど、もうそんなこと言ってられる状況じゃないから、言わせてもらいタンことがあるんだ」

阿良々木「言わせてもらいたいこと……?」

羽川「うん」

阿良々木「何だよ? 羽川の言うことなら何だって聞くぜ?」

羽川「………阿良々木君」

阿良々木「うん?」

羽川「この打席で……阿良々木君のバットで決めて」

阿良々木「………」

羽川「一点返すだけじゃダメ。最低でも阿良々木君の打席で同点までにしないと、この試合は間違いなく負ける」

阿良々木「最低でも同点……」

羽川「正直、向こうの攻撃は1番からだから、ここで逆転までいけないと勝てる可能性は凄く低いんだけど……それでも、望みはまだ繋がる」

羽川「だから、阿良々木君。絶対に2点。取ってきて」



9回裏 TF 2-0 TB
一死 ランナー一塁三塁
打者 阿良々木暦

鵜鷺『さぁ、この絶体絶命のピンチを救うことができるのか? 4番 キャッチャー 阿良々木君』

阿良々木「っしゃあーーーーーーーーーーっ!」ザッ

鵜鷺『さて、玖渚さん。阿良々木君、意気込んで打席に入ってるんですけど、チームフォックスとしては勝負しないで、満塁策を取るなんてことも十分に考えられますよね?』

玖渚『うん。まぁ、考えられるって言えば、考えられるんだけど。多分ないんじゃないかな?』

鵜鷺『何でですか?』

玖渚『折角、双識ちゃんのファインプレーで得点圏に同点のランナーを進めさせなかったのに、それをむざむざ敬遠で進めちゃってたら、意味がないでしょ?』

鵜鷺『ああ、確かに……』

玖渚『長打さえ気を付けてれば、たとえ打たれてもまだ一点勝ってる状況だし。それに、ここでこの4番を叩ければ、その時点でもう試合は決まったも同然だからね』

鵜鷺『なるほどぉ』

潤『まぁ、つまりだ。ここが事実上の最後の一騎打ちってやつだ』



阿良々木・双識「「ふぅ…………」」




軋識「………」クイックイッ

絵本・曲識・伊織「」ザッ

鵜鷺『おおっと、これは外野が極端に後ろに下がりましたね』

潤『向こうが長打を狙ってるのに、わざわざ前進して守る必要なんかねーからな』

阿良々木「」

軋識(さて、これで向こうは長打狙いを諦めるか………それとも……)

阿良々木「」グッ

軋識(構わず長打狙いっちゃか。どうやら向こうも分かってるみたいっちゃね)

曲識「」グルグルッ

双識「」コキッコキッ

一里塚「」ザッ

羽川「」

戦場ヶ原「」ザッ

阿良々木「」グッ

軋識(ここで同点にさえされなければこっちの勝ちだっちゃ)

双識「」ザッ

戦場ヶ原「」バッ

鵜鷺『双識さん、ランナーを気にします』

玖渚『同点のランナーだからね、そう簡単に得点圏に進めるわけにはいかないよね』

双識(うーん。ここは大人しくしといてほしいんだけどな……)

戦場ヶ原「………すぅぅ」ザッ

鵜鷺『一塁ランナー 戦場ヶ原さん。あからさまに大きなリードを取り、塁上からピッチャーにプレッシャーをかけます!』

戦場ヶ原(……これで、少しでもピッチャーがこっちを気にしてくれれば……)

双識「」プイッ

戦場ヶ原「っ!」

双識「」ザッ

ビシュッ! パァンッ!

審判「ボール」

戦場ヶ原(全くのガン無s……っ!!)バッ

小鹿「」パンッ! パシッ

審判「セーフッ!」

鵜鷺『一塁セーフッ! キャッチャー 軋識さん。ランナーの虚をつく牽制でランナーに好き勝手はさせません!』

戦場ヶ原(危なかった。もう少し気づくのが遅かったら、確実に刺されてた……)フゥ…

軋識「ちっ」

小鹿(うわぁあああっ! マジビビったーーーっ。ここで来るなんて聞いてないよ……)ビッ

双識「小鹿君、ボール」スッ

小鹿「あ、はい」ビッ



鵜鷺『初球は真っ直ぐを外に外して、ボール。カウントは0-1です』

阿良々木「」グッ

軋識(さて、ランナーへの牽制はこれでいいっちゃね。問題は、次だっちゃ……)パンッ

軋識(まず初球を外の真っ直ぐを見せてる。なら―――)スッ

双識「」コクッ チラッ

戦場ヶ原「」ザッ

双識「」スッ

ビシュッ! パァンッ!

審判「ストライーク!」

羽川(アウトコースから一転、インコースへの真っ直ぐ……)

軋識(さすが、レンだっちゃね。この場面でもきっちりコーナーに投げ分けられてるっちゃ)ビッ

双識「うふふ♪」パシッ

軋識(これなら、もう一球インコースで追い込んで、外のスライダーで打ち取れるっちゃが……)チラッ

阿良々木「………」

軋識(こいつ、全く反応しなかったっちゃね……)

軋識(外の真っ直ぐにも、内の真っ直ぐにも反応しなかったってことは、普通に考えれば変化球狙いなんだが……。狙ってるなら狙ってるならに反応したふりして、その変化球を引き出そうとするもんなんだが……)

阿良々木「………」

軋識(……こいつ、何を狙ってるっちゃ?)


軋識(スライダー、もしくはカーブを狙ってるにしても、ここは内に一球変化球を投げ込まないと、外では打ち取れないっちゃ。腹括るっちゃよ―――)スッ

双識「………ふふっ」コクッ

鵜鷺『注目の三球目!』

双識「」ザッ

ビシュッ

ドロンッ

戦場ヶ原(―――カーブッ!?)

パンッ

審判「ストライーク!」

鵜鷺『カーブ入ってる! これでカウントはツーエンドワン! チームフォックス、ついに追い込みました!』


八九寺「阿良々木さん、振っていかないとヒットは出ませんよ!」

千石「が、頑張って、暦おにいちゃん!」

神原「阿良々木先輩、ファイトだ!」

火憐「兄ちゃん、後ろにはあたしがいっから、思い切っていけーーーっ!」

月火「お兄ちゃんなら、きっと打てるよ!」

羽川・戦場ヶ原(阿良々木くん……)

阿良々木「ふぅぅ……」

軋識「ナイスボールだっちゃ、レン!」ビッ

双識「あはっ。自分でもビックリするぐらい、どんぴしゃに決まったよ。女の子のランナーに挟まれてるおかげかな?」パシッ

軋識「いや、訳が分からんっちゃ……」

軋識(……結局、内の変化球にも反応しなかったっちゃね、こいつ……)

阿良々木「………」

軋識(最後まで、こいつの狙い球は分からなかったが、何を狙ってたにせよ、どの道次で終わりだっちゃ―――)スッ

双識「」コクッ



鵜鷺『ツーエンドワン。チームフォックス、ついに追い込みました!』

軋識(最後は外から外れていくスライダー。初球外のストレートを見せられてる分、この球には必ず手を出してくるっちゃ)

双識「」コクッ

双識「」ザッ

ビシュッ!

阿良々木(絶対に来る。今までの打席で一球も来なかったことがなかったんだ)

阿良々木(今まで、何球も羽川のボールを見てきたんだ、『ボールの回転はもう頭に入ってる』)

ギュンッ!

阿良々木(来たっ! ………けど、これは―――っ!!)グッ

軋識(釣れたっ!)

阿良々木「が、あああああああああああああああっ!!」パッ

カッ! 

ドッ!

双識「っ!」

軋識「っ!?」

審判「ファール!!」

鵜鷺『あ、当てたぁぁぁぁあっ! 阿良々木さん、ボールになるスライダーを振らされるもかろうじてファールにしました!』

玖渚『いやー、よく当てたね。空振りでもおかしくないボールだったよ』

潤『届かないと分かった途端、とっさに右手を放して何とかおっつけたな』

阿良々木「っはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」アブネー



鵜鷺『阿良々木さん、見事に食らいつきましたがカウントは依然ツーエンドワン。追い込まれています!』

玖渚『うーん。けど、ぐっちゃん達からしたら、さっきので決めたかっただろうね』

鵜鷺『え? そうなんですか?』

玖渚『明らかにぐっちゃんのさっきまでの配球は外の変化球を振らせるための配球だったからね』

玖渚『カウントにはまだ余裕があるけど、決め球で決めきれなかったのは精神的に結構来るからね』

潤『一から仕切り直すのか、さっきの決め球を軸に配球を組み直すのか? どっちにしても次に放るのは……』

双識・軋識(インコースへの真っ直ぐ―――)

軋識(ボール球で、打ってもファールにしかならない所に一球放って、最後はまた外の真っ直ぐで仕留めるっちゃ―――)

羽川(三振ができないこの場面。さっきの変化球を振らされてる分、思い切ったスイングができない―――)

軋識(外への真っ直ぐを見逃せば、こっちの思い通り。仮に打って来ても、長打にはならないっちゃ―――)スッ

双識「」コクッ ザッ

ビシュッ! パァンッ!

審判「ボール」

鵜鷺『一球外して、カウントはツーエンドツーです!』

双識「ん!」

軋識(うしっ!)


阿良々木(僕は、正直そこまで器用なタイプじゃない……)

阿良々木(この人と同じ、4番でキャッチャーって言うポジションについてはいるけど……、この人みたいに配給を自分で考えられないし、キャッチングもそこまで上手くない)

軋識「」ザッ

阿良々木(肩だってそんな強くないし、バッティングでもチャンスの場面で打てなかった……)

双識「」スッ

阿良々木(羽川みたいにピッチャーで相手を翻弄することもできないし、相手のピッチャーみたいに三振をズバズバ取ることもできない……)


阿良々木(―――なら、僕には一体何がある?)


阿良々木(何もない。精々、他の奴よりちっと目がいいくらいだ)


阿良々木(―――じゃあ、僕は皆に何をしてやれる?)


阿良々木(守備はザルで、チャンス○もない。なら、せめて―――)


ビシュッ!


羽川(外への真っ直ぐ―――っ!)

戦場ヶ原(阿良々木君―――っ!)



阿良々木(チームのピンチの場面で、逆境を跳ね返す一打を打ってみせる―――っ!!)





キィィィィィィィィィィンッ!!






鵜鷺『打ったーーーーーーーーーーーーーっ! これは大きいーーーーーー!』

双識「っ!」クルッ

軋識「ライトーーーーーーーーーーーッ!!」バッ

絵本「う、あ………」ダダダッ

戦場ヶ原「」ダッ!

高海(っ!? もうセカンドを切った!?)

小鹿(あの人、打つ前からスタートを切ってた! まだワンナウト一塁三塁の場面なのに!)

阿良々木「」ダッ!

絵本(と、取れる……?)ダダダッ!

曲識「無理だ! 追うな!」

絵本「え?」

ドガシャッ! フワッ!

鵜鷺『フェンス直撃ーーっ! ボールは大きく跳ね返るっ!』

絵本「……え? え?」ピタッ

フワッ

絵本「あ、あああああっ!」バッ



ドッ!

絵本「………かはっ」ドスッ

鵜鷺『あああっ! 跳ね返ったボールが無情にも絵本さんの頭上を超えたーーっ!』

曲識「くっ……」ダッ! パシッ!

神原「」タッ

鵜鷺『そして、フェンスにボールが当たったのを確認したサードランナーが今生還しました!』

戦場ヶ原「」ダッ

鵜鷺『そして、一塁ランナーも三塁を蹴ったーーーーーーーーーっ!』


曲識「深空っ!」ビシュ!

深空「」パシッ! クルッ!

戦場ヶ原「」ダダダッ!

軋識「バックホームーーーッ!」

深空「っらあっ!!」ビッ!

軋識「」パンッ!

戦場ヶ原「」ザァッ!

軋識「」ブンッ!

戦場ヶ原「ぐぅぅっ!」グルンッ!

軋識「っ!?」スカッ

戦場ヶ原「」パンッ!






審判「セーーーーーーーーーーーフッ!」








鵜鷺『同点ーーーーーーーーーーーーーっ! 4番バッターの一振りで試合を振り出しに戻しましたーーーっ!!』

火憐・月火「「っしゃあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」」

八九寺「ナイスランです、戦場ヶ原さん!」

千石「す、凄いですっ!」

神原「凄い走塁だったぞ、戦場ヶ原先輩! まさに平成に現れた忍者のようだ!」

戦場ヶ原「いくらなんでも言い過ぎだけど、ここは素直に受け取っとくことにしとくわ」

神原「あははっ!」スッ

戦場ヶ原「ふふっ」スッ


パンッ!



戦場ヶ原「っ」ズキッ!

神原「? どうかしたか?」

戦場ヶ原「……いえ、何もないわ」

神原「?」

鵜鷺『いやー。しかし、阿良々木くんのバッティングも良かったですが、一塁ランナーの走塁もナイスプレーでしたね』

玖渚『そうだねー。スタートも良かったけど、最後の走塁は本当に見事だったね』

潤『タイミング的にアウトだと分かった途端、身体をひねり、見事にタッチを躱したな』

鵜鷺『さぁ、まだ試合は終わっていません。ランナーは三塁まで進み、なお、ワンナウト三塁のチャンス! そして4番に続くは見た目に反したパワープレイヤー阿良々木火憐さんです!』

火憐「っらああああああああああああああっ!」ザッ


9回裏 TF 2-2 TB
一死 ランナー三塁
打者 阿良々木火憐

鵜鷺『犠牲フライでもサヨナラのこの場面、何ですが……』

軋識「」スッ

鵜鷺『どうやら敬遠のようですね』

火憐「こらぁーーーっ! 勝負しろよ、この卑怯者ーーーっ!!」ガーッ!

双識「」ビッ

軋識「」パンッ

審判「ボール」

火憐「ぐぅぅぅ……」グッ

双識「」ビッ

軋識「」パンッ

審判「ボール」

火憐「………」ググッ

双識「」ビッ

鵜鷺『ボールツー。さて、火憐さんを歩かせたらワンナウト一塁三塁。塁間は広くなりますけど、ゲッツーがある場面になります。この場合月火さんは何を気を付け打席に立たなければいけないでしょか?』

玖渚『うに~? んー、そうだねー。それよりもまずはぐっちゃん達が今のバッターに気を付けないといけないんじゃないかな?』

鵜鷺『え?』

火憐「っだっらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」バッ!

軋識「っ!?」

火憐「あああああああああああああっ!!」ブンッ!




鵜鷺『敬遠球を打ちに行ったーーーっ!』

カコッ

ドッ!

審判「フェア!」

火憐「っしゃあーーーーっ!」ドサッ

小鹿「あれを打ちに行くっ!?」ダッ

軋識「ファースト、バックホーム!」

小鹿「えっ!?」

阿良々木「」ダダダッ!

鵜鷺『サードランナー、ホームを狙うーー!』

高海「急げっ!」

深空「バックホームだっ!」

小鹿「うっそ……だろ……」ダダダッ!

双識「小鹿くんっ!」

一里塚「利き手で行ってください!」

小鹿「」パシッ パッ

阿良々木「」ザァッ!

軋識「」パシッ!





ドッ!







審判「セーーーーーーーーフッ!!」










ごめん。床屋行ってくる

鵜鷺『逆転ーーーーーーーーーーっ! チーム化物、劇的逆転サヨナラーーーーーっ!!』

神原・月火・八九寺・千石「「「っしゃあーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」」」ダッ!

羽川「凄い……。打ち合わせでもしてたのかな? まるで、敬遠球を打ってくるって分かってたみたいなスタートだったよ?」

戦場ヶ原「百パーセント、打ち合わせんかしてないでしょうね。あの二人がここまで先を読んでたとは思えないもの」

羽川「じゃあ、何で……?」

戦場ヶ原「羽川さんが分からないことを私が知ってるはずないでしょ?」

羽川「そんなこと……」

戦場ヶ原「どうしても、知りたいんだったら。単純に、『兄妹だから』ってことにしとけばいいんじゃないかしら?」

羽川「………そうだね」フフッ

火憐「兄ちゃん、ナイスラーーーーンッ!」バッ!

ドサッ!

阿良々木「ごふっ……。お、お前、息切れしてる奴……の上に、フ、フライング……ボディプレス、ましてんじゃ……ねーよ……」ゼェ…ゼェ…

火憐「にししし。細かいこと気にしてんじゃねーよ」ダキーッ

阿良々木「……ったく。つか、てめぇ、何…敬遠……球打ってんだよ……。あれ、僕が突っ込んでなかったら、普通にファーストゴロだったじゃねーか……」

火憐「きしっ。でも兄ちゃん、ちゃんと突っ込んできてくれたじゃねーか」

阿良々木「あのなぁ……」

火憐「ちゃーんと信じてたぜ、兄ちゃん!」ニカッ

阿良々木「………」

火憐「にしししっ」

阿良々木「はぁ……。そりゃ、どうも」ポンポン



鵜鷺『歓喜に沸くチーム化物に対し、未だに信じられないといった表情のチームフォックス。前回の試合と同様、下馬評を覆されての敗北となりました!』

軋識「………」スクッ

双識「………ふぅぅ……」

伊織「う、うな………?」

曲識「伊織、整列だ」

絵本「ぐすっ……ぐすっ……」

小鹿「………」

深空「」ガク
高海「」ゼン

一里塚「……ほら、突っ立っていないで、整列しましょう………最後まで、しっかりしてください」ポンッ




―――――――――――――――――――――――


審判「整列! 2対3でチーム化物の勝ち! 互いに礼!」





「「「「「「「「「したぁーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」






双識「やぁ、どうも」ニコッ

羽川「……どうも」ペコリッ

双識「凄く野球が上手だったけど、お嬢ちゃんは野球部に所属とかしてたのかな?」

羽川「いえ、体育の授業で何回かやった程度です」

双識「本当かい! 凄いじゃないか、それであそこまでのピッチングができるなんて! 私も運動神経には自信があるんだけど、初めての試合であそこまでの投球はとてもじゃないけどできなかったよ!」

羽川「あ、ありがとうございます……」ペコッ

双識「それでさ、折角ここで知り合ったのも何かの縁だし、メールアドレスとスリーサイズを―――」

ボゴッ!

双識「………」パタリッ

軋識「……迷惑かけてすまないっちゃ」

羽川「い、いえ……」

軋識「こいつのことはあまり気にせず、次の試合に臨んでくれっちゃ」スタスタ

羽川(……何か、阿良々木くんに似てる人だったなぁ……)


深空「おい、そこの双子」
高海「おい、そこの双子」

火憐「あん? 双子ってあたしたちのこと言ってんの?」

月火「私たちは姉妹ではあるけど、双子じゃないよ。火憐ちゃんの方が私より一つ年上だよ」

深空「そんなことはどうでもいい」
高海「そんなことはどうでもいい」

月火「間違っといてどうでもいいとか……」

火憐「つか、そのステレオ再生やめてくんね? 何か耳がおかしくなりそうだ」

深空「お前たちは僕たちに勝ったんだ、どうせ目指すなら、大会一の二遊間を目指せ。分かったか?」
高海「お前たちは僕たちに勝ったんだ、どうせ目指すなら、大会一の二遊間を目指せ。分かったか?」

火憐・月火「………」

深空「分かったか、と聞いてるんだ。返事くらいしろ」
高海「分かったか、と聞いてるんだ。返事くらいしろ」

火憐「んー。わりぃけど、それは聞けないな。な、月火ちゃん」

月火「うん。そうだね、火憐ちゃん」

深空「は? 何だと?」
高海「は? 何だと?」

火憐「だってよ、折角こうして月火ちゃんと一緒に野球をする機会があんだぜ?」

月火「普段、火憐ちゃんはお師匠さんにスポーツを全面的に禁じられてるもんね」

火憐「だからさ、どうせ目指すんなら大会一とかちっこいこと言ってねーでよ、もっとでっかく行こうぜ」

深空「でっかく……?」
高海「でっかく……?」

火憐・月火「目指すは世界一の二遊間だ(よ)!!」


今回はここまでです。次回からは、チーム戯言対チーム刀の試合をお送りします。

何か長いこと待たせてしまいまして、本当にすいませんでした。今更モンハンに激ハマリしてしまいまして、SS書いてる余裕がなく………本っ当にすいませんでした!

一応水曜日と土曜日が休みなので、基本そのどちらかの気が向いた日に更新します。

更新激遅ですが、どうぞこれからも応援よろしくお願いします。

鵜鷺『第二試合は今から30分後に開始しますので、各チームはアップをお願いします』

一姫「師匠ー、キャッチボールしましょう!」

いーちゃん「うん。いいよ」

崩子「あ、それでは私も―――」

萌太「崩子。まずは柔軟をしっかりとしなさい」ガシッ

崩子「あぁぁ……」

みい子「それでは、私たちもキャッチボールでもするか」

鈴無「そうだわね」

人識「離せよ、くっそ~~~っ!!」ジタバタ

出夢「ギャハハハハハッ!」ズリズリッ

玉藻「ゆらぁ~~~」ユラァァ

出夢「てめぇは来んなっ!」

七花「んーー。腹一杯になったら眠くなってきたな」

鳳凰「ほう、それはそれは。随分と余裕そうだな」

七花「ん?」

鳳凰「これから、我らはやきゅうという未知なるものに挑まかくてはならんというのに、随分とのんびりしているなと言ったのだよ」

七花「んー。まぁ、けど、何とかなるんじゃねーの?」

鳳凰「ふん。やはり貴様は間抜けなのか大物なのか図り損ねるな。まぁ、この度はかのとがめ嬢が指揮を執るというし、多少は期待させてもらうとするか」

左右田「不解(げせぬ)」

鳳凰「ん? 貴様はいつぞやの」

左右田「何故貴様がここにいる?」

鳳凰「我は最初からここにいたぞ? 貴様こそいつからそこにいた?」

左右田「不答(こたえず)。最初に質問したのは私だ。先に貴様が答えろ」

七花「いや、さっきお前、答えないって言ったじゃん。絶対答えても答える気ないだろ」

鳳凰「我は答えても良いが、今はその時ではないだろう。そうだな。それではこのやきゅうという戦で勝つことが出来れば教えてやらんこともない」

左右田「不快(ここちよからず)。貴様はこの戦を遊びとでも思っているのか?」

鳳凰「我にとっては、真庭忍軍以外のことは、全てどうでもいいのでな。余興と言われても間違いではない」

左右田「姫様はこの戦での勝ちを望んでいる。否が応でも全力で応えてもらうぞ」

鳳凰「ふむ。そういうのならば、それ相応のお願いの仕方というものがあるのではないか?」

左右田「」ギリッ

七花「おいおい、いい加減にしとけって。これから一緒に戦うってんだから、ちったぁ仲良くしろよ」

鳳凰「………ふむ。まぁ、ここは七花どのに免じ、共戦協定を組むことを認めてやるとしようか」

左右田「不愉快……ではあるが、仕方があるまい。私の一番優先すべきことは姫様の望みだからな」

鳳凰「それでは、よろしくな。『左右田右衛門左衛門』どの?」

左右田「ああ。よろしく。『真庭忍軍首領 真庭鳳凰』どの」



鵜鷺『それでは、各チームの代表者はスタメン表を提出して下さーい!』

子荻「よろしくお願いします」スッ

とがめ「ほれ、これでよいか?」スッ

鵜鷺『ふむふむ。ブフォッ! これは、奇抜なメンバー表と堅実なメンバー表と別れましたねww』

子荻(奇抜……?)

とがめ「」フフンッ

子荻(随分自信ありげな態度。間違いなく彼女のメンバー表のことでしょう。何を仕掛けてくるかは知りませんが、こちらはすべきことをするだけです)

鵜鷺『それでは、一塁側 チーム刀。三塁側 チーム戯言。ジャンケンで先攻後攻を決めてください』

とがめ「ふむ、ジャンケンか。なら私はグーを出すとするか」

子荻「そうですか。なら私はチョキを出すことにしますね」

とがめ「……ふむ」

子荻「………」

鵜鷺『それでは、ジャーン、ケーン……』

\ポンッ!/

とがめ「あーーーーーーーっ! くそーっ! まさかこの私が負けるなんてーーっ!」

否定姫「あーもー、うるさいわね。大声を出さないでくれる?」

とがめ「グーを出すと言って、本当にグーを出すと見せかけて、実はグーという最高の奇策をこうも簡単に打ち破るとは、あの娘なかなかやるぞ」

否定姫「奇策も何も、グーを出す以外の選択が出てないじゃないの……。まぁ、最初から期待はしてなかったけど、別に最初の作戦通り先攻をとれたんだからいいじゃない」

とがめ「ん……。まぁな」

迷彩「お嬢ちゃん達、お喋りもいいけど、そろそろ始まるみたいだよ?」

とがめ「ん、そうか? それでは皆準備はよいか?」

校倉「おう! 俺はいつでも大丈夫だぞ!」

白兵「右に同じく」

こなゆき「うちっちもいつでも行けますっ!」

七花「絶対勝つぜ、とがめ」

とがめ「うむ。では行くぞ……」

とがめ「絶対に勝つぞーーーーーーーーーーっ!」


「「「「「「「「「オーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」」」」」」」」」



















いーちゃん「皆で野球をするのはこれで二回目だね」

「「「「「「「「「………………」」」」」」」」」

いーちゃん「もうある程度、お互いのことを知っているだろうし、言うまでもないよね」

「「「「「「「「「………………」」」」」」」」」

いーちゃん「だから、ぼくとしては言うことも特にないんだ」

いーちゃん「けど、しいて何かを言うとするなら、一つ―――ぼくはまたこのチームで勝ちたい」

「「「「「「「「「………………」」」」」」」」」ザッ

いーちゃん「絶対に勝つぞーーーーーーーーーーっ!!」



「「「「「「「「「っしゃーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」」」」」」」」」











―――――――――――――――――――――――――――――――――――

審判「それではこれより、チーム戯言対チーム刀の試合を開始します。お互いに礼っ!」

「「「「「「「「「ッシャーーーーーーーーーッス!」」」」」」」」」




一回戦 第二試合
 チーム戯言対チーム刀

チーム戯言            チーム刀
1番 中堅 零崎人識       1番 遊撃 鑢七花
2番 捕手 石凪萌太       2番 中堅 左右田右衛門左衛門
3番 一塁 浅野みい子      3番 投手 真庭鳳凰
4番 三塁 匂宮出夢       4番 左翼 錆白兵
5番 投手 鈴無音々       5番 一塁 宇練銀閣
6番 二塁 西条玉藻       6番 右翼 凍空こなゆき
7番 遊撃 闇口崩子       7番 二塁 敦賀迷彩
8番 左翼 紫木一姫       8番 捕手 校倉必
9番 右翼 いーちゃん      9番 三塁 否定姫

監督 萩原子荻          サブ 鑢七実
                 監督 とがめ

夜頃にもう一回投下します。
 
休みが入れ替わって、今日休み明日出勤になりました。明日は投下できないのでご両所ください。


否定姫「って、ちょっと待ちなさいよ!」

とがめ「あまり大声は出すな。耳がキーンッってなるではないか」

否定姫「キーンでもコーンでも何でもいいわよ! それよりこれはどういうことよ!」

とがめ「ん? これとは、このメンバー表のことか?」

否定姫「それもそうだけど! それよりも、何でこの私が戦のメンバーに選ばれてるのかって聞いてんの!」

とがめ「しょうがないだろう。他にメンバーがいなかったのだから」

否定姫「いや、いるでしょ! そこに! 最強の人材が!」

七実「はい?」ズズッ

否定姫「って、何飲んでんのよ、あんた!」

七実「お茶ですが?」

否定姫「聞いてないわよ!」

七実「聞いたではありませんか」

否定姫「私が聞いてるのは、何で私が戦に出てるのに、あんたは後ろでゆっくりお茶をしばいてるのかってことなの!」

とがめ「だから、あまり大声を出すなと言っているだろう」

否定姫「大声出されたくないのなら、さっさと説明しなさいよ!」

とがめ「しょうがないだろう。七実は体力がないのだから、最後まで試合に出るのは無理なのだ」

七実「気が向いたときにフラッと代打で出るくらいでしたら構いませんが」ズズッ

否定姫「何その、草野球に助っ人で来た元プロ野球選手みたいな感じ?」

七花「おーい、俺どうすればいいんだ?」


鵜鷺『一回戦 第二試合目。チーム刀対チーム戯言。引き続き実況はどうしたって参考となる絵が見つからないこと嵯峨野鵜鷺。そして、解説は最強と最凶のコラボの哀川潤さんと玖渚友さんでお送りします』

潤・玖渚『よろしくー』

鵜鷺『さぁ、スレを立てて約八か月にして、ついに始まりました二回戦。一試合にどんだけの時間かけてんだよって思いますが、そんなことは気にせず、早速当たらない前予想をしていただきましょう!』

潤『当たらないとか言ってんじゃねーよ』

玖渚『それに当たるとか当たら二とか、僕様ちゃん、一回もどっちが勝つとか予想してないんだよ』

鵜鷺『まぁまぁ、細かいことは気にせず、お二人のこの勝負をどのように思いますか?』

玖渚『うにー。どう思うって言われても、僕様ちゃん達、チーム刀のこと知らないし何とも言えないよ』

潤『見た感じ、何人か強いそうな奴がいるけどな』

鵜鷺『そうなんですか?』

潤『ああ。けど一番やばそうな奴が試合に出てねーし。いまいち何考えてんのか分かんねーな』

鵜鷺『ヤバいって………一体どれ位ヤバいんですか?』

潤『正直、あたしとどっこいどっこいってレベルだな』

鵜鷺『ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!』

潤『それ以外にも、向こうの1,2,3番は多分出夢クラスだし、これは意外とチーム刀は粒が揃ってるんじゃねーの?』

鵜鷺『出夢さんクラスが3人……』

潤『まぁ、チーム戯言にはいーたんがいるし、どんな予想しても無駄だわな』カハハハッ!

鵜鷺『は、はぁ……。それでは始まります』





1回表 TK 0-0 TZ
無死 ランナー無し
打者 鑢七花

鵜鷺『さぁ、ついにプレーボールです。チーム刀の先頭を切るのは、一番 ショート 七花さん』

七花「おーし、行ってくるなー」

とがめ「うむ。最初からホームランを頼むぞ、七花!」

七花「ほーむらん? 何だそれ?」

とがめ「……お前はちゃんと私の話を聞いていたのか? 野球に関する情報は一通り話したつもりなのだが」

七花「あ、あははは~~」

とがめ「はぁ……。まぁいい。とりあえず、投げられた球をあの柵の向こうまで打ち返せばいいんだ」

七花「おー、そういうことなら任せとけっ!」スタスタ

否定姫「ちょっと、そこのロリ巨乳」

とがめ「何だ、そこのノッポビッチ」

否定姫「……このメンバー表のことなんだけど」

とがめ「何だ? まだメンバーに選ばれたことを言うつもりか?」

否定姫「いや、それもそうなんだけど。そうじゃなくって、この打順について言ってるのよ」

とがめ「?」

否定姫「さっきの試合の見て分かってると思うけど、普通は強い人を3,4,5番においてるじゃない。なのに、何ウチのビッグ3を堂々と先頭に並べちゃってるの? 馬鹿なの?」

とがめ「ふん。馬鹿は貴様だ。最初の試合がどうだろうと、一つ重大なことを貴様は見逃してるのではないか?」

否定姫「重大なこと?」

とがめ「うむ。それは打順の回り方だ」

否定姫「?」

とがめ「いいか? 点差がついてるかいないかで変わるが、基本野球というのは9回までだ」

否定姫「ふむ。それはちゃんと理解してるみたいね」

とがめ「その9回が終わった時、必ずしも全員が同じ数の打席を立てるとは限られていないのだよ。ということは強い奴を出来るだけ多くの打席が回る、1,2,3番に置けば、それだけ多くのチャンスを掴めるということなのだよ」

否定姫「ふーん……」

とがめ「どうした? 私の完璧な奇策に反論の声も出ないか?」

否定姫「うん、そうね。まぁ、あんたにしては少しは考えたんじゃないって思うわ」

とがめ「ふふふっ。そうだろうそうだろう。もっと崇め奉ってももよいのだぞ?」

否定姫「いや、奉らないけどね。たださぁ、一ついいかしら?」

とがめ「ん? 何だ?」

否定姫「七花くんって、バット振れるの?」

とがめ「………」

否定姫「………」

とがめ・否定姫「あ~~~~~……」ズーンッ…


七花「おっしゃあ、来ーい!」

萌太「よろしくお願いします」ペコッ

七花「お? おー、よろしくな」

鈴無(食堂でも思ったけど、本当に大きいだわね。あたしより大きいわよね?)

萌太(さて、子荻さんの情報では先頭の3人は出夢さんクラスと聞いてますからね。ここは慎重に……)

七花「おーし、初めっから全力で振っていくぞ~~」ブンブンッ!

萌太(これは天然でやってるんでしょうか? 何か持ち手も逆だし……)

萌太(まぁ、用心するに越したことはないですね。初球は―――)スッ

鈴無「」コクっ

ビシュッ!

七花「おっしゃーーっ! 頂きーーーーっ!」グッ!

ブォォォンッ!

パァンッ!

審判「す、ストライーク!」

出夢「」ヒューーッ♪

崩子(す、すごい、スイング……)

鈴無(風圧がここまで来たんじゃないの?)

いーちゃん(けど……)

萌太(バットとボールが30cm以上離れていましたが……)


七花「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

ブォォォンッ! パァンッ!

審判「ストライーク バッターアウッ!」

七花「あれ~~?」

萌太「ナイスボールです、鈴無さん!」ビッ

鈴無「ん。ありがとうだわ」パンッ

鵜鷺『鈴無さん、絶好の立ち上がり。先頭の七花さんを三球三振で切って取りました!』

玖渚『潤ちゃ~~ん。あれ本当に出夢ちゃんと同クラスなの? 何か途轍もなくヘッポコ臭がするんだけど?』

潤『う~ん。おっかしいな。確かにあいつが、今先発にいる中でもトップクラスで強い感じがしたんだけどな~』

鵜鷺『まぁ、何はともあれ、今日の鈴無さんはかなり調子がよさそうですね~。この調子で最後まで投げ抜いてほしいものです』




ストライーク バッターアウッ!

伊織「うわー、鈴無さん全開ですね~。先頭バッターを三球三振ですよ?」

双識「そうだね。本当に見た目に反して重そうなボールを放ってるね」

曲識「あの、上から落ちてくる球の感触は、今思い出しても凄かったな」

軋識「俺からすると、あのキャッチャーの配球の方が相変わらずって感じがするっちゃがね。ブンブン振ってくると分かった途端、一球もストライクにボールを放らせてないっちゃよ」

伊織「うな~~。もう一回……戦いたかったですね」

曲識「………」

軋識「ああ……」

双識「そうだね」

伊織「……うな~~っ! 何か辛気臭くなってしまいました! 気分を変えるために何か飲み物買ってきますね!」

双識「あ、じゃあ、私も一緒に行くよ」

伊織「え? いいですよ。ひとりで行けますって」

双識「いやいや、さすがに伊織ちゃんに4人分のジュースを持たせるわけにはいかないからね」

伊織「……何で私、皆の分のジュースを買うことが前提になってるんですか?」

双識「あはは。それじゃあ、行こうか、伊織ちゃん。私はオレンジジュースがいいな」

伊織「え、えぇ……」

曲識「……ほら、伊織。とりあえずこれで買ってこい」スッ ノグチ

伊織「あ、ありがとうございます」スッ

曲識「僕はコーヒーを、ブラックで」

軋識「俺はウーロン茶でいいっちゃ」

伊織「あ、はい。分かりました」

双識「伊織ちゃーん。どうしたの? 置いてくよ~?」

伊織「あ、ちょっと、待ってください~」スタタタッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

自販機前

双識「おや?」

伊織「おやおや?」

神原「ん?」

阿良々木「どうした、神原?」

神原「はははひへんはい。はへ」

阿良々木「いや、何言ってか全然分かんねーよ。とりあえず、その口にくわえ込んだコーラ取ってから喋れ……って、あれ?」

伊織「どうも」ペコリッ

阿良々木「あ、どうも」ペコリッ

伊織「えーと。もしかして、そちらもジュースの買い出しを頼まれた感じですか?」

阿良々木「うん。まぁ、そうかな。どちらかというと買い出しというよりパシリに近いけど……」

伊織「あー、そうなんですか」

阿良々木「そちらも、ってことは、君も同じなのかな?」

伊織「当たらずも遠しって感じですね」

阿良々木「それって、全然違うってことじゃん……」

伊織「あはははっ」

神原「はははひへんはいっ! はははひへんはいっ!」

阿良々木「うおっ、どうしたいきなり?」

神原「はははひへんはいっ! ははひほははひひほほほははひはひはひほっ!!」

阿良々木「いや、だから何言ってるか全然分かんねーって……」

神原「はっははら、ほっへふへ!」

阿良々木「あー、はいはい。分かったよ」スッ

神原「ぷはぁ……。やぁ、お嬢ちゃん。私は神原駿河だ。この方の性奴隷をしている!」

伊織「えぇっ!」←

双識「ほう」キランッ

阿良々木「口が解放された途端、何を口走ってんだ、てめぇは!」


伊織「あー、なるほど。お二人は同じ高校の先輩後輩なんですね」

伊織(それで、何で性奴隷って言葉が出てきたのかは分かりませんでしたが……)

阿良々木「そ。そうんだよ! だから、こいつが言うことはあまり真に受けないでくれ」

神原「むーーっ! むーーーーっ!!」ジタバタ!

双識「阿良々木君だっけ?」

阿良々木「はい?」

ガシッ!

双識「うん!」アクシュッ

阿良々木「うん?」

双識「」スタスタ

阿良々木「??」

伊織「それにしても、随分と買ってますね。明らかに20本以上は買い込んでますよね?」

阿良々木「ん? あー、うん。何か皆してさ―――」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

戦場ヶ原『私は、ドトールとスタバとジョージアのコーヒーがいいわ。飲まないけど』

八九寺『私は、オレンジジュースとレモンジュースといちご牛乳がいいです。飲みませんけど』

神原『私は、アクエリアスとポカリスエットとヴァームがいいな。飲むけど』

千石『わ、私は、コーラとジンジャーエールとファンタがいいな。飲みきれるか分からないけど……』

羽川『私は水でいいわ』

火憐『じゃあ、あたしは自販機にある飲み物全部飲んでやるよ!』

月火『私は飲まないけど、とりあえず、買えるだけ買ってきて』

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

阿良々木「って、飲まないなら、買い出し頼んでんじゃねーよ!」

伊織「あははは~」

阿良々木「とりあえず、荷物持ちとして神原を連れてきたんだけど、明らかに二人で20本とか無理だろ……」

伊織「あははは~。頑張ってください。あ、双識お兄様。曲識お兄様はコーヒーですよ。確か微糖だったです」

双識「あれ? 微糖だっけ?」

阿良々木「手伝う気更更ないっ!?」

ごめん。明日仕事だから、今回はここまでにさせていただきます。

次回は………いつだろうね? そんなに間は空けないつもりなんですが、何せゴールデンウィークに入るもんで、正直休みがないに等しいです。

2、3週間とは開けず、出来るだけ早く投下するように頑張りますので、出来れば次回以降も見てください。

伊織「も~。何ですか?」

阿良々木「いや、だってそこは、『あ、では何本かお持ちしましょうか?』って言って手伝ってくれるとこじゃないの?」

伊織「随分図々しい妄想ですね」

阿良々木「お願いします。手伝ってください!」ドゲザ

伊織「お断りします!」(AA略

阿良々木「……ふっ。僕の土下座を見て、全く心揺れなかったのは君が初めてだよ……」

伊織「何キャラですか……。といいますか、そんなしょっちゅう土下座なんかしてるんですか?」

阿良々木「うん。月一くらいかな?」

伊織「多っ!!」

阿良々木「まぁ、主に妹たちにしてるんだけどね」

伊織「どんな兄妹関係をしてるんですか……」

双識「まぁ、確かに妹に土下座をしたい気持ちは分かるけどね」

伊織「分かるんですか!?」

阿良々木「自分の妹に見下されてると思うと、何かこう、込み上げてくるものがありますよね」

双識「私としては、後頭部を踏まれてもいいかなって思うけどね」

伊織「私は絶対にしませんからね」

阿良々木「まぁ、冗談はここまでにして。この飲み物の山をどうやって運ぶかな?」

伊織「適当に洋服でも縛って、そこに入れればいいんじゃないですか?」

阿良々木「ああ、その手があったか」

神原「何だ? 脱げばいいのか!?」

阿良々木「いや、お前は脱がなくていいから」

神原「いやいや、阿良々木先輩の頼みであれば、いつでもどこでも私は脱ぐぞ」

阿良々木「頼むから脱ぐな」

神原「いやいやいや、そう遠慮せず、頼んでいただければ、どこでも―――」

阿良々木「何で、てめぇはそんなに脱ぎたがってんだよ!?」

伊織「それはそうと、阿良々木さん達は試合を見なくてもいいんですか? この試合の勝った方と戦うことになるんですよ?」

阿良々木「ああ、もちろん見るよ。けどほら、試合はまだ始まったばっかだし。そう簡単には試合は動かないだろ? だから、今のうちに飲み物を買っとこうと思ってね」

伊織「ああ、なるほど」

神原「伊織ちゃんも同じ理由で今飲み物を買いに来たのだろ?」

伊織「え? あ、あぁ……。ええ、はい。まぁ、そうですよ」

伊織(もしかして、双識お兄様たちが早めに飲み物を買いに行かせようとしてたのは、そういった理由があったんですかね?)チラッ

双識「あっはっはっ。いやぁ、全然そんなこと考えてなかったよ~」

伊織「ですよね~」

阿良々木「まぁ、とは言っても、あんまりここで時間つぶしてるわけにもいかないし、そろそろ行くとするか」ヌギッ

伊織「おお、まさかのサービス回ですか!?」

阿良々木「何がだよ? それに男のヌードを見たって誰も得しねーだろ」

神原「いやいや、十分私得だぞ」

阿良々木「お前は黙ってろ」

伊織「おおー。見た目に反して、中々筋肉質ですね~」

阿良々木「ん? ああ、まぁな」

伊織「何かポージング取ってくださいよ」

阿良々木「こうか?」スッ

伊織「おおー、いいですねー。今度はもうちょっと上腕二頭筋を見せつけるように」

阿良々木「専門的すぎて分かんねぇよ」

神原「おし、阿良々木先輩! そのまま下の方も脱いでみようか!」

阿良々木「脱がねーよ」


阿良々木「おし、これで全部だな」

伊織「では、私たちもそろそろ戻らないと、軋識お兄様たちが心配しますから、ここら辺でおいたましますね」

阿良々木「おお。そんじゃあ、また今度会ったときにでも、一緒にお茶にでも行こうぜ」

伊織「ええ、いいですね。では、これ私のメールアドレスなので、いつでもメール下さい」スッ

阿良々木「ん、分かった。じゃあ、すぐにでもメールするわ」スッ

神原「阿良々木先輩、浮気だ………。戦場ヶ原先輩に言いつけてやろ」

阿良々木「いや浮気って。ただメルアド聞いただけじゃん!」

伊織「神原さんも、よかったらまた今度一緒に遊びに行きましょうよ。私はいつでもいいですので」

神原「ああ! 私でよければ喜んで!」

阿良々木「現金すぎんだろ……」

伊織「それでは、また会いましょうね~」

神原「ああ、また今度一緒に遊びに行こうな!」

阿良々木「またな~」

伊織「ふふん~♪」

双識「随分とご機嫌だね、伊織ちゃん」

伊織「え~? そうですか?」

双識「うん。かなり嬉しそうな顔してるよ」

伊織「えへへ~。そうですか~」

双識「お友達、出来て良かったね」

伊織「はいっ!」

双識「それにしても、面白い人達だったね」

伊織「そうですね~。少し変態な所もありましたけど、凄く楽しい方たちでした」

双識「そうだね」

伊織「あ、軋識お兄様達です。飲み物買ってきましたよ~」タッタッタッ

軋識「………」

伊織「あれ? どうかしたんですか、軋識お兄様?」

双識「?」スタスタ

伊織「曲識お兄様、軋識お兄様どうしちゃったんですか?」

曲識「………」

伊織「………? 曲識お兄様もおかしくなってます」

双識「もしかして、飲み物を買ってくるのが遅くって拗ねちゃてるんじゃないかな?」

伊織「あ~~~。そういうことですか? いえ、違うんですよ、ちょっと自動販売機のところで、チーム化物の人たちと会いまして……」

軋識「いや、そうじゃないっちゃ……」

伊織「おお? やっと返事してくれました。それで、一体どうして固まってたんですか?」

軋識「……あれを見てみろ」

伊織「ん?」チラッ




迷彩「」タンッ


  チーム刀     チーム戯言
   6    -    0

  
 

鵜鷺『迷彩さんホームイーーーーーーンッ!! チーム刀更に追加点! 点差が6に広がります!』

子荻「」タイム

審判「タイム!」

子荻「」スッ

人識「」タッ

いーちゃん「」スタスタ

鵜鷺『あーっと! そしてここでピッチャー交代のようです! 鈴無さん、何と一回も持たずに降板です!』


伊織「!!?」


伊織「ちょ、これは一体どういうことですか!?」

軋識「どうもこうもないっちゃよ。あの一番を打ち取った後、後続に7連打を食らい、6失点。0回1/3で降板だっちゃ」

伊織「そんな、あの鈴無さんが……?」

双識「これは………正直信じがたい結果だね」

軋識「信じようが信じられまいが、現実はこの結果だっちゃ……」

伊織「そんな……」

曲識「まぁ、チーム刀の打力は勿論だが、今回のはチーム刀の奇襲の波に飲みこまれたって感じだったがな」

双識「奇襲の波?」

軋識「2番、3番、4番の連続セーフティバントに、5番のバスターという小技を連発したかと思ったら、6番の一発―――」

曲識「7番が四級で出た後、すかさず盗塁。そして、8番のタイムリー」

軋識「序盤でこれだけ仕掛けられるとは思ってなかったんだろうな。散々振り回されて全くなす術がなかったって感じだったっちゃ」

曲識「全くの未経験の分野に踏み込む場合、大抵のものは消極的になりやすいものなのだが、全くそういった素振りを見せなかった」

軋識「このチームの監督は、相当図太い神経を持ってるみたいだっちゃよ」


とがめ「」フフンッ




いーちゃん「大丈夫ですか? 鈴無さん、萌太君」

人識「随分と打ち込まれたな」

鈴無「………」

萌太「……すいません。全力を尽くしたんですが……」

いーちゃん「大丈夫。分かってるよ。とりあえずここは任せて。どこまでできるか分からないけど、何とかしてみるから」

人識「ったく。またお前とバッテリーを組むことになるとは思わなかったぜ」

子荻「雑談はいいから、貴方は早く防具を着てください」

人識「わぁーってるよ」

子荻「鈴無さんと萌太さんは、二人のポジションに入ってください。全開と同様センターは萌太さん、ライトに鈴無さんです」

萌太「はい」

鈴無「………」

いーちゃん「? 鈴無さん?」

鈴無「………嫌だわ……」

子荻「鈴無さん………?」

鈴無「こんな、皆に迷惑をかけたまま降りるだなんて私には出来ないだわ! まだ私は投げられる!」

子荻「鈴無さん……」

人識「……つってもなぁ」ボリボリ

鈴無「さっきは奇襲の連続に意表を突かれたけど、もうそんな手は食らわない。次からは一点もやらないだわ! だから―――」

いーちゃん「鈴無さん、交代です。さっさと降りてください」

鈴無「けど―――」

いーちゃん「今、鈴無さんがここにいても邪魔なだけです。さっさと降りてください」

鈴無「っ!!」

いーちゃん「例え次から一点もやらないピッチングをされても、この回に6失点して、持ってかれた流れは変わりはないんですよ。つまり、鈴無さんではこの負の流れは変えられない」

萌太「いー兄……」

人識「うわっ……言うなぁ、お前……」

子荻「………鈴無さん、ここは一旦彼に任せましょう。試合はまだ序盤ですし、鈴無さんにはクリーンナップでのバッティングもあります。ここはいったん下がって冷静になってください」

鈴無「………」グッ

いーちゃん「鈴無さん、貴方では流れは変えられませんが、ぼくならこの流れを変えることができます」

鈴無「………」

いーちゃん「後はぼくに任せてください」スッ

鈴無「………」

いーちゃん「………」

鈴無「………はぁ。本当に情けないだわね、あたし……」

いーちゃん「鈴無さん……」

鈴無「頼りない後援だけど、ここは任せるだわ。頼むだわよ」スッ

いーちゃん「はい!」




鵜鷺『さて、チーム戯言、ピッチャーとキャッチャーが代わります。キャッチャー萌太くんに代わりまして、センターの人識くんが入ります。そして、ピッチャー鈴無さんに代わりまして、ライトのいーちゃんさん』

潤『かははっ。また出てきたな、戯言のキテレツバッテリー』

玖渚『潤ちゃんは、前回このバッテリーにやられちゃったんだよね~』

潤『あれはヒットだったんだからやられてねーよ』

鵜鷺『1番 キャッチャー人識くん。2番 センター萌太くん。5番 ライト鈴無さん。9番 ピッチャーいーちゃんさんです』

人識「ったく、予想以上に早い出番だったな」

いーちゃん「だね。ぼくはてっきり、前回と同様に試合終盤での登板か、もしくは最後まで全く何の出番もなく終わるものかと思ってたんだけど」

人識「まぁ、現実はそう甘くねーってことか」

いーちゃん「そう言うことなんだろうね」

人識「まだ序盤と言っても、点差は6点。これ以上は点をやるわけにはいかねーよな」

いーちゃん「ああ」

人識「お前、さっき自分なら流れを変えられるって言ってたけど、何か考えでもあんのか?」

いーちゃん「いいや、全く何もないノープラン」

人識「はっ、だろうと思ってたよ」

いーちゃん「どうしようか?」

人識「まぁ、なるようになんだろ」

いーちゃん「無計画にも程があるだろ」

人識「お前に言われたくねぇーよ!」

いーちゃん「ま、所詮ぼく達に出来ることなんて限られてるし、悩むとこでもないよね」

人識「だな。どうなるか分かんねーけど、とりあえず―――」

いーちゃん「いっちょう気合を入れて―――」

いーちゃん・人識「殺して解して並べて揃えて晒しに行くか」ザッ




今回はここまでです。次回は次の土曜日あたりに投下しようかと思います。

ゴールデンウィーク辛かった……。朝5時半出勤。夜10時帰宅が6連勤って、何の拷問……? いや分かってたけど……。

とりあえず、地獄のゴールデンウィークを、無事乗り越えることができました。待たせてしまってすいません。次回から本格的にチーム刀対チーム戯言の試合を書いていくので、是非是非次回以降も見ていって下さい。



勝敗はもう決まってるの?

>>340
決まってません。それを事前に決めちゃうと、何となく読者にどっちが勝つかが読まれちゃう気がするので。

だから、最初から最後まで、その場で思いついた展開を繰り広げてます。(つまり、その時の気分で試合展開がガラッと変わります)

少し遅れましたが、戯言を開始します。

1回表 TK 6-0 TZ
一死 ランナー一塁
打者 否定姫

鵜鷺『さぁ、投球練習が終わり試合再開です。この回、ラストバッターまで回り、9番 サード 否定姫』

否定姫「はぁ~。めんど……」

人識(何か、やる気のなさそうな奴が来たな……。どうするよ?)

いーちゃん(どうするも何も、ぼくストライクゾーンに投げるだけで精一杯だし。とりあえず投げるしかないんじゃない?)

人識(だよな。まぁ、とりあえず来いや―――)スッ

いーちゃん「」スッ

ビッ!

否定姫「!?」

ドッ!

否定姫「がはっ!」セナカ HIT!

審判「デッドボール!」

人識「おおぉぉぉいっ!!」



鵜鷺『あーーっと、いーちゃんさん。第一球からいきなり、ボールを当ててしまいました!』

否定姫「痛い……ちょ、マジであり得ないんだけど……」スタスタ

いーちゃん「」ペコリッ

人識「お前第一球目からデッドボールはねーだろ!」

いーちゃん「いや、手が滑っちゃって……」

人識「手が滑っちゃってじゃねーよ! ストライクには投げられるって言ってたくせに何いきなり大暴騰してんだよ! 折角かっこつけてたのにかっこつかねーじゃねーか!」

いーちゃん「大丈夫。次からはちゃんと投げるから」

人識「本当に頼むぞ。これ以上点をやるわけにはいかねーんだからよ」

いーちゃん「ああ。分かってるよ」

人識「ったく、本当に頼むぞ」スタスタ

いーちゃん「ああ、任せて」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


審判「ボール フォア!」


人識「………」ズーン

1回表 TK 6-0 TZ
一死 満塁
打者 左右田右衛門左衛門


鵜鷺『二番 センター 左右田さん』

鵜鷺(ていうか、変な名前だな~)

左右田「」ザッ

左右田(不可解。何故、先の女の次に出てくるのがこの男なのだ?)

いーちゃん「?」

左右田(先の女は倒しはしたが、それはとがめ嬢の奇策があったからであって、実際にやりあえば、私でも打ち崩すのは難しい相手だったのに、何故そのような女の後釜がこの特に凄みを感じない男なのか?)

左右田(単純なる人手の不足か……それとも何かしらの力を隠し持っているのか……)

左右田(どちらにせよ、まず初めは見ていくか……)

いーちゃん「」スッ

ビッ!

ヒョロッ パンッ!

審判「ストライーク!」

鵜鷺『初球ストライク! いーちゃんさん。やっと初めてのストライクを取ることに成功しました!』

左右田(特に何があるというわけでもない。気にしすぎか?)

いーちゃん「」パシンッ

左右田(こいつがどんな隠し球を持っているか知らないが、ここは畳み掛けるときだ。また甘い球が来たら叩く!)グッ

いーちゃん「」スッ

ビッ!



ヒョロッ

左右田(来た)グッ

ユラァッ

左右田(揺れた!?)

左右田「ぐっ…」

カキィッ ドッ!

鵜鷺『あーーーーーーっと! サード正面に転がってしまった!』

否定姫「ちょ、マジで!?」タタタッ

人識「出夢! 5・4!」

出夢「ギャハハハッ! あいよ」パシッ ダムッ ビッ!

玉藻「ユラァ―――」パンッ

審判「アウトーーーーーーッ!」

鵜鷺『アウトーーーーーッ! ゲッツー成功! いーちゃんさん、四死球で満塁のピンチを迎えますが、ゲッツーでピンチを乗り越えました!!』

人識「っしゃあーーーーーーーーーっ!」

いーちゃん「ふぅ………。二球目にしてやっと曲がったよ……」

―――戯言ベンチ―――

一姫「師匠、ナイスピッチングです!」

崩子「……そうですか? 私は、9番、1番と四死球で出したときはもうだめかと思いましたが……」

一姫「細かいことは気にしちゃダメですよ、崩子ちゃん。内容はどうあれ、ピンチを乗り越えたんですから、ここは素直に喜ぶべきです!」

崩子「はぁ……」

萌太「いー兄、ありがとうございます。僕が不甲斐ないばかりに、試合をめちゃくちゃにしてしまいまして……」

いーちゃん「いや、大丈夫だって。まだ試合は序盤だし、とりあえず、一点ずつしっかりと返して行こう」

子荻「そうですよ。試合はまだ序盤。まだあわてるような時間ではありません。変に気負わず、いつも通りのプレーを心掛けてください。点差はありますが、私たちなら必ず取り返せます!」

「「「「「「「「「おーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」」」」」」」」」

子荻「そして、試合の流れを取り戻すためにも、先頭、大切ですからね。お願いしますよ、人識君?」

人識「おー、任せとけって」

出夢「ちゃんと、僕まで回せよー。そうすりゃきっちりと返してやっからよ」

人識「かははっ、今回ばかりは期待しといてやるよ」


1回裏 TK 6-0 TZ
無死 ランナー無し
打者 零崎人識

鵜鷺『さぁ、長い攻撃が終わり、一回裏チーム戯言の攻撃。一点でも多く返しときたいこの場面。先頭を切るのは、チーム戯言の切り込み隊長。1番 センター 零崎人識君』

人識「っしゃあーーーっ!!」ザッ

校倉「おっ、しょっぱならか小せぇ奴が来やがったな」

人識「あ?」

校倉「がははは! ちゃんと飯食ってるか? 食わねーと大きくなれねーぞ?」

人識「余計なお世話だっつーの。大きかろうが小さかろうが、強い奴が勝つんだよ」

校倉「がははは! だな、そして今回勝つのは俺たちだがな」

人識「はっ。言ってろ……」グッ

校倉「がははは! それじゃあ、いっちょ虫退治と行こうか!」

人識「」ピキピキッ


人識(とりあえず、この木偶は無視だ。問題は投手の方。クリーンナップに座りながら、投手もこなしてる。間違いなく、こいつは向こうのチームの中でも中心にいる奴なのは間違いない)

鳳凰「ふむ」

人識(だからこそ、出来るだけ多くの情報を引き出して、早めに攻略しときてぇ……)

鳳凰「」スッ

人識(どんな球を投げる―――?)

ビシュッ!

人識「っ!?」

ッパァァンッ!!

人識「」

鈴無「」

子荻「」

審判「ストライーークッ!」

鵜鷺『速球一閃ーーーーっ! 鳳凰さん、しっかりとファーストストライクを取ってきました!』


人識(速っ、ってかキレが半端ねぇ……。んだよ、さっきの速球は……)

校倉「がははは! 中々いい球放ってくるじゃねーか!」ビッ

鳳凰「ふむ。手裏剣とはやはり勝手が違うな。あまり思ったところに投げられない。まぁ、それは試合の中で調整していけばよいことか」パシッ

人識(コース自体は確かに甘かった、けど、手が出なかった。速球自体の質もそうだが、何か独特な間というか……何かやりにきぃな……)

鳳凰「」スッ

人識(トップはここだな。さっきと変わらねー)

鳳凰「」ザッ

ビシュッ! ッパァァンッ!

審判「ボール」

鳳凰「ふむ。やはり、まだ上手くコントロールができてないな」

人識(どこだ? どっかでズレやがる……)


人識(まぁいい、とりあえずこの打席は追い込まれるまで見ていくか)スッ

鳳凰「」スッ

ビシュッ! ッパァァンッ!

審判「ボール」

人識(やっぱ、トップの位置は変わらないよな……)

鳳凰「」スッ

ビシュッ! ッパァァンッ!

審判「ボール」

人識(ん?)

子荻「おや?」

鳳凰「」スッ

ビシュッ! ッパァァンッ!

審判「ボール フォア!」

人識「っしゃあ!」カランッ

鳳凰「………ふむ」

>>347 修正
>鵜鷺『さぁ、長い攻撃が終わり、一回裏チーム戯言の攻撃。一点でも多く返しときたいこの場面。先頭を切るのは、チーム戯言の切り込み隊長。1番 センター 零崎人識君』

ここ、センターじゃなくてキャッチャーでした。




1回裏 TK 6-0 TZ
無死 ランナー一塁
打者 石凪萌太

鵜鷺『おおっと! 鳳凰さん、ファーストストライクを取るも、その後が続かず結局歩かせてしまいました!』

人識「うしっ」スタスタ

出夢「おおっしゃあ、ひっきーナイス選!」

一姫「よく見たですーーっ!」

崩子「相手ピッチャー、コントロールが安定してませんよ」

出夢「おっしゃあ、次は死神だな! 続いてけよー!」

子荻「」スッ

萌太「」コクッ

鵜鷺『さぁ、続きますは、2番 センター 萌太くんです』

萌太「よろしくお願いします」ザッ



鳳凰「」スッ

ビシュッ! ッパァァンッ!

審判「ストライーク!」

萌太(初球はストライク。やはり、このピッチャーはコントロールが安定していませんね。それに、何か違和感みたいなものがある)

鳳凰「」パシッ

萌太(キレのある速球に、独特の間がある変則フォーム。これは確かに打っていくのはかなり厄介そうですね………しかし―――)スッ

鵜鷺『おーーっと。萌太さん、ここでバントの構えです』

校倉(送りバント?)

否定姫(揺さぶりかしら? それとも、何かしらの奇策を用意してるのか?)

銀閣(どちらにせよ、警戒をすべきだろうな……)ダル…

鳳凰「」スッ

ビシュッ! 



否定姫「」ダッ 

銀閣「」ダッ

萌太「」サッ

ッパァァンッ!

審判「ボール」


銀閣「」ピタッ

否定姫「何よ、もう。するならちゃんとしなさいよね!」ピタッ

萌太(今度はボール。荒れてるボールってバントしづらいんですよね~)

萌太(それに、ファーストとサードのチャージにも少し違和感がありましたね。あの間は多分、飛び出すタイミングがいまいち掴めてなく、スタートが遅れているのでしょうね。これなら、少し強めに転がしても大丈夫そうです)スッ

校倉(また、バントの構え……)

鳳凰「」スッ

ビシュッ!

萌太(今度は入ってる―――!)

コンッ! ドッ!

銀閣「」ダッ

人識「」タタタッ

校倉「……一塁!」

銀閣「ふっ」パシッ ビッ

迷彩「はいよっと」パシッ

審判「アウト!」

鵜鷺『送りバント成功! ワンナウト二塁に変わります!』

人識「っし」

萌太「よし」

今回はここまでです。やっぱ自分は戯言の方が書きやすい。

次回は来週の水曜か、土曜日くらいに更新しますので、是非次回以降も見ていって下さい。

鵜鷺『玖渚さん。点差は6点あるのに、あっさりと送りバントしてきましたね』

玖渚『まだ初回だからね~。とりあえず、一点ずつ返して行こうっていうベンチの意思をアピールしたんだろうね』

潤『まぁ、とは言ってもエースが降板しちまってるからな。出来るだけこの回、一点でも多く返しときてぇだろうな』

鵜鷺『なるほど~』

萌太「ふぅ」スタスタ

いーちゃん「萌太くん、ナイスバント」

萌太「いやぁ、一発で決められてよかったです」

崩子「まぁ、萌太の取り柄と言えば、バントくらいですからね。決めて当然です」

いーちゃん「崩子ちゃん、そんな言い方しなくても……」

萌太「あはは。いいんですよ。事実前の試合ではこれくらいしかできてないですからね」

子荻「それよりも、バッターボックスに立ってみてどうでした? 何か特徴みたいなものでもありましたか?」

萌太「そうですね。まずここから見てても分かるように、速球がかなり速いです」

一姫「確かにかなり速いですね。ミットもズバァンって凄い音がしてるです」

萌太「速さもそうですが、それよりもボールのキレもかなり凄いです。あれをコーナーに決められたら正直手が出ません」

子荻「なるほど……」

萌太「まぁ、速球に当たってはボールが荒れてるんで、際どいところは見逃して、甘い球さえ見逃さなければ問題はないんですが、ただ……」

いーちゃん「ただ?」

萌太「何というか、変なんですよね」

子荻「変? 何がですか?」

萌太「上手くは言えないんですが、何か変なんですよ。何というかタイミングが取り辛いというか、タイミングを狂わされるというか……とにかく合わせにくいんですよ」

子荻(タイミングが、合わせにくい……)


1回裏 TK 6-0 TZ
一死 ランナー二塁
打者 浅野みい子

鵜鷺『さぁ、そして、得点圏にランナーを置いたこの場面。一点でも多く返したいチーム戯言。が送り込むバッターは、チーム戯言の安打製造機。3番 ファースト 浅野みい子さんです!』

みい子「よろしく」ペコッ

校倉(今度は女か。ウチも言えたもんじゃないが、このチームは女の選手が多いな……。まぁ、俺はとがめ一筋だがな)

鳳凰「ふむ、やはり、この真ん丸の球は慣れにくいな……」

みい子「」ザッ

校倉(さて、どういった打撃をしてくるか知らんが、所詮女だ。力で押し込んでいこうぜ)スッ

鳳凰「」スッ

ビシュッ! ッパァァンッ!

審判「ボール」

みい子「………」

鵜鷺『鳳凰さん、初球ボール。中々ストライクが入りません』

鳳凰「」スッ

ビシュッ! ッパァァンッ!

審判「ボール」

みい子(萌が言っていたのはこの事か……。確かにタイミングが合ってないな……)

みい子(しかし、ストライクが入ってこないのならば、いくらいい球を放ろうが意味が―――)

ッパァァンッ!

みい子「………っ」

審判「ットラーーイクッ!」

人識「うおっ……」

崩子「いい球……」

鵜鷺『三球目ストライク! バッターみい子さん、手が出ません!』

みい子「ふぅ……」スッ

校倉(がははは。やっぱりこいついい球放るな。この女、全く手が出なかったぜ)

鳳凰「ふむ」

校倉(さっきの感じでいい。もう一球同じ所に投げて来い―――)スッ

鳳凰「」スッ

ビシュッ! 

みい子「んっ」スッ

ギィンッ! パサッ

審判「ファール」

鵜鷺『みい子さん、4球目を振っていきますが、ボールはバックネットに。これでツーストライクツーボール。追い込まれました!』

崩子「みい姉さん、タイミング合ってますよ!」

一姫「打てますーっ!」

みい子「」ザッザッ

鳳凰「」スッ

ビシュッ!

みい子「」ピタッ

ッパァァンッ!

審判「ボール」

いーちゃん「見えてますよ、みい子さん」

出夢「後ろには僕がいるからな、狙い球絞って行けよ!」

みい子「」ザッザッザッ

とがめ(やたら、地面を均してる……?)

校倉(ったく、こいついい球は放るくせに中々思ったところに投げ込んで来ねぇな……。もういい。さっきストライクを入れてきた所にもう一球放ってこい。力で押し込んでけ―――)スッ

鳳凰「」スッ

ビシュッ!

校倉(来た。ストライクだ。これで―――)

みい子「ふっ」スッ

キィィンッ!



否定姫「!?」

鵜鷺『三遊間抜けたーーーっ! サード一歩も動けないーーっ!』

錆「くっ……」パシッ

人識「」ダッ

鵜鷺『そして二塁ランナー、三塁を回ったーーっ!』

校倉「本塁!」

錆「」ビシュッ!

人識「」タタタッ

校倉(速い……っ!?)

人識「」ザァッ!

パンッ!

校倉「」パシッ

審判「セーーーフッ!」

鵜鷺『セーーーフッ! チーム戯言、みい子さんのタイムリーで早速一点を返してきました!』

人識「よぉぉしっ!!」グッ

一姫「みい子さん、ナイスバッティングですー!」

萌太「人識さんも、よく走りました!」

出夢「ギャハハハッ! ひっきーナイスランッ! 相変わらずすばしっこいじゃねーか」スッ

人識「だから、その呼び方はやめろっつてんだろ!」スッ

パンッ!


1回裏 TK 6-0 TZ
一死 ランナー一塁
打者 匂宮出夢

鵜鷺『一点返しながらも、ランナーは一塁。そして、ここで回ってくるのはチーム戯言の絶対的主砲。4番 サード 匂宮出夢君です!』

出夢「っしゃあああっ! 行くぞ、ゴラァ!」ザッ

校倉(ちぃ。一点返されちまったか。まぁ、まだ点差はあるし問題はねーだろ)

出夢「」スッ

校倉(次のバッターはこいつか。絶対的主砲とか言われてる割に随分と細身の奴だな)

出夢「」スラー

校倉(まぁいい。とりあえず投げて来い―――)スッ

鳳凰「」スッ

ビシュッ!

ブォォォォォンッ!

ッパァァンッ!

校倉「っ!?」

否定姫「!?」

七花「おおっ」

審判「ットライーク!」

鵜鷺『出夢さん、初球から積極的に振っていくも、空振り。ストライクです』


出夢「かぁ~~。惜しかった。もうちっとで特大ホームランだったのによぉ」ガー

校倉(何だ、こいつ……。一体どうしたらそんな細身から、あんなスイングができるんだよ……)

鳳凰「ふむ、これは凄いスイングだな」

人識「おらぁーっ! 特大アーチかましてくれんだろ! ちゃんと当てろよー」

一姫「いいスイングですよ! その調子でいきましょう!」

いーちゃん「一発頼むよ、出夢くん」

出夢「おっしゃあーーーっ! 任せとけっ!!」

校倉(こいつは、やべぇな……。これなら確かに絶対的主砲って呼ばれる理由が分かるな……)

とがめ(………これはマズイぞ。まさか、向こうにも七花レベルの奴がいるとは思わなかった)

とがめ(しかも、恐らくだが向こうの4番は七花以上のパワーがある。問題となるのはボールをバットに当てる技術がどれほどあるかなのだが、それが分からないうちは慎重に進めるべきだ)

とがめ(ここは、外れてもいいから、出来るだけ厳しいコースへ投げさせるべ―――)スッ

鳳凰「」スッ

とがめ「って、ちょっと待てーーーっ!」

ビシュッ!

子荻(入ってます!)

出夢「ギャハハハッ! いっただきーーーっ!」グッ



カキンッ



みい子「」

子荻「」

とがめ「」

鳳凰「」

出夢「………あれ?」

校倉「遊撃!」

七花「ほっ」パシッ

迷彩「虚当流の坊や」

七花「分かってるよ」ビッ

迷彩「」パシッ ビッ

銀閣「」パンッ!


審判「アウトーーーーーーッ!」


今回はここまでです。

次回は土曜日に更新しますので、是非是非次回以降も見て行ってください。

鵜鷺『ゲッツーーーーーッ! 鳳凰さん、この回一点取られるも後続をしっかりと抑えました!』

迷彩「練習通り出来たわね。いいトスだったわよ」

七花「お、そうか? 何か今まで持ったことのない球だったから、かなり違和感があったんだけど」

否定姫「ちょっと、あんた。もうちょっとその制球力何とかならないの? 全然ストライク入ってないじゃない!」

鳳凰「仕方がないだろう。今まで、このような球を投げたことがないのだ。かと言って、手を抜けば打たれてしまう」

否定姫「だからといっても、程があるでしょ。あんた、この試合で一体いくつの四球を出すつもりなの!?」

校倉「がははは。別にいいじゃねーか。何だかんだ言って、こいつが打たれたのは3番の一本だけだぜ?」

否定姫「その一本で一点取られてるのが問題なんでしょ! ヒット一本で一点とか、ホームラン打たれたと変わらないのよっ?」

鳳凰「なるほど。確かにそういった考えもあるか」

否定姫「あ・ん・た・ねぇ~~!」

とがめ「おい。あまり喧嘩するな。次攻撃なんだから、しっかりと切り替えろ」

否定姫「うるさいわね。ただ立ってるだけの役立たずに指図されたくないわよ」

とがめ「何だとー!」



2回表 TK 6-1 TZ
無死 ランナー無し
打者 真庭鳳凰

鵜鷺『裏をゲッツーで乗り越えた後の攻撃、チーム刀の攻撃は、3番 投手 鳳凰さん』

鳳凰「どうも」ザッ

人識「どうも」

鳳凰「ふむ、礼儀正しい子だ」

人識「誰が『子』だ。誰が」

鳳凰「我から見たら、まだまだ子さ。まぁ、狂々からしたら、我もまた子なのかもしれないがな」

人識「誰だよ、狂々」

鳳凰「我の身内だ。気にすることはない」

人識「はぁん」

鳳凰「さて、無駄話もここまでにして、そろそろ始めるとしようか」

人識「はっ」スッ

鳳凰「」スッ

鳳凰「………」

―――刀ベンチ―――

とがめ「大体、貴様はいつもだな―――」ワーワー

否定姫「あんたに言われたくないわよ! あんただって、昔―――」ギャーギャー

七花「お、おい、喧嘩はやめ―――」

とがめ・否定姫「七花(くん)は黙ってろ(て)!!」

七花「はい、すいません……」

ギャーギャーギャー! ワーワーワー!

七花「……おい。お前も何とかしろよ、あれ」

左右田「………」

七花「? おい、どうした?」

左右田「……いや、別に何でもない」

七花「?」

左右田(しっかりと見ていなかったから確信はないが、前の回私が詰まらされてあの球は確かに揺れていた。あれを狙って放っていたのならば、今後姫様の勝利に大きく立ちはだかる可能性がある)

いーちゃん「………」

左右田(それを阻止するためにも、なるべくあの球を見極めておく必要が―――)

キィーンッ!

ドッ!

鵜鷺『センター前ヒーット! 先頭の鳳凰さん、初球から積極的に振っていきました!』

左右田「………」


2回表 TK 6-0 TZ
無死 ランナー一塁
打者 錆白兵

鵜鷺『4番 レフト 錆さん』

錆「」スッ

人識(ちぃぃ。先頭出しちまった。どうするよ、確実に盗塁されんぞ)

いーちゃん(まぁ、その時はその時ってことで)

人識(本当に適当だな、お前……)

いーちゃん(しょうがないだろ。ぼく達じゃ牽制で刺すなんて無理なんだから)

人識(まぁな。……分かったよ。ほら、いくぞ―――)スッ

いーちゃん「」スッ

鳳凰「」タッ

ビッ!

ヒョロッ パンッ!

鳳凰「」ザァッ

鵜鷺『盗塁成功ーっ! 鳳凰さん、初球から走ってきました!』

人識「ちっ」

いーちゃん「ふー」

鵜鷺『盗塁成功で、ランナーは二塁へ。ノーアウト二塁に変わります』

鳳凰「」ザッ

いーちゃん「んー……」

人識「ちっ。おい、切り替えろよ」

いーちゃん「分かってるよ」

人識(つーか、あいつ足速ぇな。こりゃ、三盗もしてくるかもしんねぇぞ……)

人識(ったく、一点もやれねーってぇのに……。本当に傑作だわ―――)スッ

いーちゃん「」スッ

鳳凰「」タッ

崩子「! 走りました!」

人識「ちっ」ザッ

錆「」グッ

人識「っ!」

キィィィンッ!
 

パァァンッ! 

玉藻「―――ゆらっ」スッ

錆「!」

鳳凰「!?」

崩子「っ! 玉藻さん!」タッ

玉藻「ゆらぁ―――」ビッ

崩子「」パシッ

審判「アウト!」

鵜鷺『ゲッツーーーーーーーーッ! チーム刀、エンドランを仕掛けましたが、打球はセカンドライナー。ランナー戻れず、ゲッツーです!』

七花・こなゆき「あ~~~~……」

とがめ「コォラーーーッ! 錆、貴様は右方向に転がすこともできないのか! 合図でゴロを打てと言っただろ!」

錆「………無念」

とがめ「無念、じゃないわ! 貴様のせいで一気に走者がいなくなってしまったではないかーー!」

七花「ちょ、とがめ。少し落ち着けって……」

左右田「………」



2回表 TK 6-1 TZ
二死 ランナー無し
打者 宇練銀閣

カキィ……

銀閣「くっ……」

人識「ファースト!」

みい子「ああ」パシッ タンッ

審判「アウトーッ!」

鵜鷺『スリーアウト、チェンジ! いーちゃんさん、先頭バッターを出すも、この回三人で切って取りました!』

みい子「いの字、ナイスピッチング」

いーちゃん「ありがとうございます」

人識「ぶっちゃけ、たまたま上手く行っただけだけどな。少し間違ってたら、何点取られてたか分かんねーよ」

出夢「最終的、無失点で抑えたんだから細けぇこと気にしてんじゃねーよ」ギャハハハ!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

銀閣「ん……」

迷彩「ちょっと、どうしたの? 結構甘めだったように感じたが?」

銀閣「いや……。よく分からない……というのが、本音だ」

迷彩「? どういうことだい?」

銀閣「打つ直前までは確かに、完璧に、捉えたつもりだったんだが……実際に、打ちに行ったら……詰まらされていた……」

迷彩「何だい、それは? 何か、球が変化でもしていたのかい?」

銀閣「よく、見ていなかったから、よく分からない……」

とがめ「分からない分からないって、貴様はゆとりの新入社員か。結局何も分かってないじゃないか」

否定姫「ゆとり? 何よ、それ?」

とがめ「そこは気にするな。まぁいい。幸い点差は沢山あるからな。次の攻撃からは相手の球をしっかりと見て来い」

「「「「「「「「「へ~~~い」」」」」」」」」




2回裏 TK 6-1 TZ
無死 ランナー無し
打者 鈴無音々

鵜鷺『2回裏の攻撃は、5番 ライト 鈴無さん』

鈴無「」ザッ

校倉(さぁて、次は最初投手で出てた女だな。投手としては確かにかなり凄い奴だったが、打者としてはどうだ?)

鈴無(取られた点は自分で取り返す)

鳳凰「」スッ

鈴無(点を取られたのは自分の責任。その責任は自分で果たす。ずっとそういう風に思っていた。けど―――)


≪ぼくに任せてください≫


鈴無(頼りない。最高の仲間があたしの後ろにいる。だから、あたしは―――)

ビシュッ!

鈴無(その仲間を信じて、後ろに繋ぐ―――っ!)グッ


キィィィンッ!


ドッ!

鈴無「」ダッ

鵜鷺『打ったーーーっ! 打球は三遊間を―――』

七花「―――――っと!」パシンッ

鈴無「っ!」タタタッ

七花「っだらぁ!」ビッ!

鈴無「ああああああああああああっ!」ザァッ!

銀閣「」パシッ


審判「セーーーフッ!」

鵜鷺『セーーーフッ! ショート七花さん。三遊間を抜けるかと思われた打球を見事止めましたが、鈴無さんの気迫の走塁が一歩上回りましたーー!』

鈴無「……ふぅー」

いーちゃん「鈴無さん、まだ序盤なんですから、いきなりヘッスラしなくても……」

鈴無「何言ってるだわよ、前の回一点取り返したといっても、まだ点差は5点あるのよ。もっと貪欲に攻めなければ、追いつけないまま終わるだわよ」

いーちゃん「まぁ、確かにそうですけど……次からは下位打線ですし、返せるかどうか分からな―――」

鈴無「返してくれるだわよ」

いーちゃん「え?」

鈴無「あの娘たちは、多分あんたが思っている以上にしっかりしてるわよ」

いーちゃん「………?」


2回裏 TK 6-1 TZ
無死 ランナー一塁
打者 西条玉藻

鵜鷺『6番 セカンド 玉藻さん』

玉藻「ゆらぁ~~」フラァ

校倉(何か、随分とフラフラしてる奴が来たな……)

玉藻「」フラフラァ

校倉(前回の攻撃を考えてみると、ここでまたバントしてきそうな気がするが……)

校倉(まぁ、してきたとしても後続に打たさなければいいだけだからな。気にしねぇでいいだろ―――)スッ

鳳凰「」スッ

ビシュッ!

ッパァァンッ!

審判「ストライーク!」

玉藻「ゆらぁ―――りぃ―――」


ビシュッ! ッパァァンッ!

審判「ボール」

玉藻「ゆらぁ、ゆらゆら……」

鳳凰「」スッ

玉藻「」ピクッ

ビシュッ! ッパァァンッ!

審判「ボール」

校倉「……ちっ」

校倉(こいつ、本当にストライクが入らねぇな……)

玉藻「ゆらぁ~、ゆらゆら……」

校倉(あ? こいつ唄ってるのか?)

玉藻「ゆらゆら、ゆらぁ……」

校倉(訳分からない奴だな……)

鳳凰「」スッ

玉藻「ゆら、ゆらゆら……」

ビシュッ!

ガキンッ! ドッ……

審判「ファール」


鵜鷺『4球目ファール! これでツーストライクツーボール。追い込まれました!』

玉藻「ゆらゆらゆらゆら……ゆらゆら~~」

校倉(おし、やっと追い込んだな。おら、次でさっさと決めるぞ―――)スッ

鳳凰「」スッ

玉藻「ゆっらゆっら、ららら、ゆらゆら……」

ビシュッ!

玉藻「ゆらぁ、ゆらゆら……」

ガキンッ! ドッ

審判「ファール!」

鵜鷺『5球目ファール! 玉藻さん、必死に食らいつきます!』

鳳凰「」スッ

ビシュッ! ガキッ! ドッ

玉藻「ゆら―――」

ビシュッ! ガキンッ! ゴロッ……

玉藻「ゆらゆら―――」

ビシュッ! カンッ ドッ……

玉藻「ゆらゆらぁ―――」

鵜鷺『8球目もファール! 玉藻さん、必死に粘ります!』

人識「いいぞー、粘ってけーーっ!」

崩子「玉藻さん、ボール球も振ってしまってますよ!」

いーちゃん「何か、中々タイミングが合ってないみたいだね……」

子荻「萌太さん達が言っていた、変な間が玉藻のタイミングをずらしてるのかもしれませんね」

人識「あいつ、見た目によろず結構タイミングを気にする奴だからなぁ。あーいった奴はそうとうにやりにきぃのかもしんねーな」

玉藻「ゆらぁ~~……」




鳳凰「」スッ

ビシュッ!

玉藻「」ピタッ

ッパァァンッ!

審判「ボール」

鵜鷺『9球目ボール! これでフルカウントになりました!』

校倉「っちぃ……」

玉藻「ゆらぁ~~りぃ~~~」ユラァ~

鳳凰「ふむ……」

鵜鷺『玉藻さん、粘るに粘って、フルカウントまで持ち込みました!』

とがめ「ここで四球は絶対に出すなよ……」

否定姫「四球は本当にやめなさいよね……」

迷彩「虚刀流の坊や、ランナー走ってくることもしっかりと想定しときなさいよ」

七花「え? 走ってくるの?」

迷彩「かもしれないってこと。常にあらゆることを想定して、すぐに動けるようにしときなさいな」

七花「……御意」ザッ

校倉(どうせ、入るかどうかすら分からねぇんだ。もう何も考えず、思いっきり投げ込んで来い―――)スッ

鳳凰「」スッ

玉藻「ゆらぁぁ……あ―――」

ビシュッ!

子荻(入ってる!)

校倉(おっしゃあ、いいコースだ! これなら―――)

玉藻「―――り」スッ

校倉「っ!?」


キィィンッ!


迷彩「くっ……」

銀閣「………」

ドッ!

鵜鷺『一二塁間抜けたーーーーっ! ライト前ヒーーット!』

玉藻「ゆらぁ―――」

2回裏 TK 6-1 TZ
無死 ランナー一塁二塁
打者 闇口崩子

鵜鷺『さぁ、5番6番の連打で、ノーアウト一塁二塁のチャンス! ここで回ってくるのは守備に定評のある闇口崩子さんです』

崩子「何か、その紹介のされ方嫌なんですが……」

人識「っしゃあー! 続いてけよ崩子ちゃん!」

萌太「いいかい、インコースに来たらしっかりと腕を畳むんだよ。後、外角が届かないからって無理に踏み込んでいかないこと。無理は禁物だからね」

崩子「分かってますよ。萌太はいちいち心配しすぎなんですよ……」ブツブツ

校倉(お、次は更に小さい娘が来たな)

崩子「」スッ

校倉(しかも、結構可愛いじゃねーか。とがめ程ではないにしても、それぐらいは……)ブツブツ

崩子(……何か、変な悪寒が……)ゾクッ


崩子「」スッ

否定姫(ん。あの子が持ってるバット、さっきまでの奴たちのとは違って持ち手部分が大きい?)

とがめ(タイカップ型というバットだな。重心が身体寄りになるから、より鋭いスイングができるようになるそうだ)

否定姫(ふ~ん。どうやら頭使ってきてるみたいね。長打が無理と踏んで、短打を狙ってきてるってわけね)

崩子「………」

否定姫(ってことは、ここで送りバントはないっていうことなんじゃない?)

とがめ(決めつけはよしとけ。ただ、確かに送りバントの可能性は低いってことだろうな)

迷彩(送りバントの可能性が低いなら、真ん中に寄っといた方がいいかしら? でも、右打ちの可能性も高いし、ここは中間に立っとくべきね)

七花(だとしたら、俺はどうすればいいんだ?)

否定姫(一応引っぱってくることに注意して、近い塁と走者を常に確認。無理はしないけど、取れるならゲッツーも積極的に狙っていく―――)

崩子(相手の守備体系が纏まってませんね。キャッチャーの指示がちゃんと行き渡ってないんでしょうか?)

校倉(とがめみたいな、小さいのに露出が多い服を着ているのもいいが、この娘みたいに露出が少ないがフリフリしているのもいいな……)ブツブツ




鳳凰「」スッ

崩子「」スッ

否定姫「」ダッ

銀閣「」ダッ

崩子「」サッ

ッパァァンッ!

審判「ボール」

鵜鷺『5球目外れてボール! 7番崩子さん粘ります。これで6番、7番連続でフルカウントまで持ってきました!』

崩子「ほぅ……」

銀閣「………」

迷彩(ちっ。めんどくさいわね……)

七花「あれ、次は俺どうすればいいんだっけ?」

否定姫(思っていた以上に面倒な打者ね。一体どれだけ揺さぶりをかけてくれば気が済むのよ)

鳳凰「」スッ

ビシュッ!

崩子(入ってる!)

カキンッ! ゴロッ

鵜鷺『打ったーっ! 打球は一二塁間へ!』

迷彩「また、微妙な所に……」ダッ

迷彩「」パシッ チラッ

鈴無「」ザァッ

玉藻「ゆらぁ~」ザァッ

迷彩「ちっ」ビッ

銀閣「」パシッ

審判「アウト!」

鵜鷺『崩子さん粘りますが、残念ながらセカンドゴロ。しかしランナーは進み、ワンナウト二塁三塁。チャンスが拡大します!』

崩子「よしっ」

今回はここまでです。次回は水曜日に投下します。

校倉は何となく、刀語におけるロリコン枠に入ってる気がする。何となく……。


2回裏 TK 6-1 TZ
一死 ランナー二塁 三塁
打者 紫木一姫

鵜鷺『8番 レフト 一姫さん』

一姫「よろしくお願いします!」ペコッ

校倉「うむ、よろしく頼もう!!」

一姫「え、あ、はい……」ビクッ

鵜鷺『さぁ、一回に続いて、またもチャンスを作ることに成功したチーム戯言。この回は一体どのようにして点を取りに行くのでしょうか?』

子荻「」スッスッ

一姫「」コクッ

人識「んで、今回は一体どういった策を行使するつもりなんだ?」

出夢「結構点差付いちまってるからな、ここいらで、一気に点差を詰めるような作戦を頼むぜ」

子荻「そんなものあるはずないでしょう。今打席に立ってるのは一姫ですよ?」

出夢「あ~。確かになぁ……」

子荻「あの娘に出来ることは一つしかありません。まぁ、悩まない分即断で行動を指示することが出来るんですけどね」

一姫「」グッ





なんか違和感があって最初から読み返したけどチーム刀って汽口さんいませんでしたっけ?

鳳凰「」スッ

ビシュッ! パァァンッ!

審判「ボール」

一姫「………」

鳳凰(反応しないか……)

とがめ(何か狙っているぞ。気をつけろ)

否定姫(気を付けろって言われても、ここで注意すべきことと言ったらスクイズしかないじゃない)

迷彩(問題は、そのスクイズをいつやってくるか……)

否定姫(って言っても、こっちのピッチャーのコントロールがこんなに悪いと、探り合いなんて出来やしないし……)

とがめ(強攻は、気にしないで大丈夫だろう。初球に反応しなかった上に、見た感じ、そんなに打てるような印象がないからな)

否定姫(いつ仕掛ければいいのかも分からなくて、いつ仕掛ければいいのか分からないって、これってもう運任せじゃないの……?)




>>386
マ・ジ・だぁ~~~~!!

やっちまったよ、どうするよ? どうする?

う~ん。とりあえず、汽口さんは最初からいなかったという体で続けさせてもらいます。



鳳凰「」スッ

ビシュッ! ッパァァンッ!

審判「ストライク!」

鳳凰(またも、全く動きがなかったか)

否定姫(少しくらいは反応しなさいよ、全く情報が掴めないじゃないの……)

とがめ(スクイズはないのか? スクイズの合図が出ているのなら、少しくらいは反応してもよいのだが……)

子荻「………」

否定姫(見た感じ、サインは出ていないみたいだけど、念には念を入れてボール球を投げさせといた方がいいんじゃない?)

とがめ(いや、特に反応がないのなら、わざわざカウントを悪くする必要がないだろう。ここは入れていくべきだ)

否定姫(それで、次仕掛けてきたらどうするのよ?)

とがめ(それで点が入っても、点差はまだ4点ある。次の9番を仕留めれば、この回を最少失点で済む)

とがめ(逆にこの8番を歩かせてしまえば満塁だ。下手をすれば、一点では済まないぞ)

否定姫(確かにそうかもしれないけど……)

校倉(どちらにせよ、俺はとがめのサインを優先するぜ。入れろというなら次も入れていくが?)

否定姫(ちょ、待ちな―――)

とがめ(入れろ)

校倉(御意―――)スッ

鳳凰「」スッ

鈴無「」ダッ

否定姫(っ!)

とがめ(やってきた!?)

鵜鷺『三塁ランナー走ったーーーっ!』

鳳凰「……くっ」

ビシュッ!

鈴無(っ! 外された!?)

校倉(よしっ!)

とがめ(もらった!)

一姫「……やあっ!」バッ

校倉「っ!」

コンッ ドッ!

校倉「くそっ!」バッ

鈴無「」ザァッ!

パンッ

審判「セーーーーフッ!」

鵜鷺『スクイズ成功ーーーっ! チーム戯言、またもや一点を返して行きます!』

校倉「ちっ……」ビッ

銀閣「」パシッ

審判「アウトー!」

否定姫(サインは確かに出ていなかったのに……)

とがめ(最初のサイン時に、三球目にスクイズというサインを出していたのか……)

鈴無「ナイスバントだわ、姫」スッ

一姫「えへへ。おかえりなさいです~」スッ

パンッ!

2回裏 TK 6-2 TZ
二死 ランナー三塁
打者 いーちゃん

鵜鷺『さぁ、一点返しながらも、なおランナーは三塁のチャンス。ここで畳みかけられるか? 9番 ピッチャー いーちゃんさん』

いーちゃん「」ザッ

人識「さぁて、次は欠陥製品だな」

出夢「何だかんだで、僕らの打線の中で一番厄介なバッターだからな」

子荻「彼と対面したピッチャーは軒並みリズムを狂わされますからね。ここで彼が塁に出てくれれば、この回一気に畳み掛けることが出来ます」

出夢「ここは、兄さんの性質に期待するしかねーな」

いーちゃん「」グッ

鳳凰「」スッ

ビシュッ!

いーちゃん「っ!?」

ッパァァンッ!

審判「ストライーク!」

人識「なっ!?」

出夢「ストライクが入ってる!?」

いーちゃん「………」

鳳凰「ふむ……」


ッパァァンッ! 

審判「ストライーク! バッターアウッ!」

鵜鷺『三球三振ーーーっ! 鳳凰さん、三振でこのピンチを乗り越えました!』

いーちゃん「うーん。やられたな……」

人識「そういうのは、一回くらい振ってから言えや! 何でストライク入ってるのに、振らねーんだよ!」

いーちゃん「そんなこと言われても、あんな速球をピッタリコーナーに投げられて来たら手なんて出ないって」

人識「手くらい出んだろ! 入ってんだから、振らなきゃどうやったって当たんねーっつーの!」

出夢「まぁまぁ、ビールでも飲んでリラックスでもしなよ」

人識「そのネタ分かる奴どんだけいんだよ!」

子荻「はいはい、ふざけるのはそれまでにして、早く守備に付いてください」

人識「俺はふざけてるつもりなんか微塵もねーんだけど……」

子荻「何でもいいですから、折角一点取って流れがこちらに向きかけてるんですから。この回、絶対に死守してきてください」

出夢「あいよ」スタスタ

崩子「玉藻さん、サイン確認いいですか?」

玉藻「ゆら」コクッ

いーちゃん「ほら、お前もさっさと切り替えろ」スタスタ

人識「てめぇは切り替え早すぎんだろ」スタスタ



3回表 TK 6-2 TZ
二死 ランナー無し
打者 校倉必

ユラァ

校倉「」ジッ

パンッ

審判「ストライーク!」

校倉(他の奴が言っていたのはこれのことか……。確かに揺れて落ちてきやがるな)

人識「………」

鵜鷺『3球目、ストライク! これで、カウントはツーエンドワン。校倉さん追い込まれました!』

玖渚『うに~。どうやらチーム刀の皆はいーちゃんの球の特徴に気付いてきてるみたいだね』

鵜鷺『いーちゃんさんの球って言うと、シェイクボールのことですか?』

玖渚『うん。チーム刀の皆は野球は今回が初めてみたいだからね、いーちゃんが投げる揺れる球には相当驚いてるんじゃないかな?』

鵜鷺『正直、私も最初見たときは驚きましたからね。野球を知らないチーム刀にとっては、それ以上に奇妙に映ってるのかもしれないですね』

潤『それでも、この対処能力には大したもんだと思うぜ。恐らくいーたんの球に違和感を持ったのは前の回だろうけど、すぐさま次の回で、その球を研究しようとしてんだからよ』

玖渚『こうなってくると、音々ちゃんの戻し時もかなり重要になってくるだろうね』

鵜鷺『なるほど』

人識(ちっ。こいつら、明らかにこいつの球を見て来てやがる……。見られたからってどうこう出来るとは思わねーけど、あんましおおっぴらに見したいもんじゃねーよな……)

校倉「」グッ

人識(かといって、シェイク無しで抑えるのも無理だし。こうなったら、さっさと引っかけてもらうしかねーか―――)スッ

いーちゃん「」コクッ

ビッ! 

ヒョロッ………

人識(揺れねぇ……!?)

校倉「っん……」グッ


キィィィィンッ!


鵜鷺『打ったーーーっ! 打球はセンター方向へーーーっ!』

人識「センター!」

萌太「くっ………」タタタッ



パシッ!


審判「アウトーーーッ!」

鵜鷺『捕った捕ったーーーっ! いい当たりでしたが、センター萌太さん、何とかボールを掴み取りました!』

校倉「だぁぁ、くっそぉ……」

人識(さっき、あいつの球が変化しなかった……。一体、どうなってんだ?)



今回はここまでです。次回は気が向いたら更新します。

設定ミスでグダグダな感じになってしまってすいません。

というより、これ需要あるんですかね? 何かこのまま終わっても問題ないような

キィィンッ!

銀閣「くっ」

迷彩「ちっ」

ドッ!

鵜鷺『抜けたーーっ! みい子さん、初球から積極的に打っていきました!』

萌太「」ダッ

鵜鷺『そして、ファーストランナー二塁を蹴って、三塁に向かったーーっ!』

こなゆき「えっ! 三塁ですか!?」パシッ

迷彩「中継早くしな、こなゆき!」

七花「こなゆき、三塁だ!」

こなゆき「三塁なんですね? 分かりまし―――たぁ!」ビッ!

ビュンッ!

萌太「っ!」

みい子「!?」

鵜鷺『ライトからのレイザービーム! これは間に合うか!?』

否定姫「え? ちょ、待って!!」バッ

ヒューンッ

萌太「っ!」ダッ

鵜鷺『あーーっと、サード後逸ーーっ! そして、それを見たファーストランナーは一気に本塁まで―――』

一姫「スットプですー!」

萌太「」ピタッ

錆「」パシッ

鵜鷺『―――行けない! 行けません! レフトの錆さんがサードのカバーに入っていたー!』

錆「拙者にときめいてもらうでござる」

鵜鷺『しかし、ファーストランナーはサードまで行き、ランナーは一塁三塁。チーム戯言、またもやチャンスを迎えます!』

萌太「ふぅ……」

みい子「」ザッ

3回裏 TK 6-2 TZ
一死 ランナー一塁三塁
打者 匂宮出夢

鵜鷺『ランナー一塁三塁のチャンス。この場面で迎えますは、4番 サード 出夢さん』

出夢「っしゃあ、次こそは絶対に決めてやるぜ」ザッ

人識「次こそちゃんと打てよ!」

いーちゃん「まず一点ずつ返していこー」

出夢「うっしゃあぁ~~」ググッ

鳳凰「」スッ

ビシュッ! ッパァァンッ!

審判「ストライーク!」

鵜鷺『初球ストライク! 鳳凰さん、ピンチのこの場面で強気のピッチングを見せます!』

校倉「おおっし、いい球だぜ!」ビッ

鳳凰「うむ」パシッ

出夢(特にボール自体に何か変わったことがあるわけじゃないな。前の打席は単純に打ち損じただけか……?)

人識「積極的に振っていきーー!」

一姫「振らないと打てないですよー!」

出夢「分かってるつーの! いいから黙って見とけ!」

出夢(次ストライク入れてきたら、絶対に打つ―――!)

鳳凰「………」

鳳凰「」スッ

出夢「」グッ

ビシュッ!

出夢(―――行けるっ!)グッ

ギィンッ!

鵜鷺『打ったーーっ! しかし、ボールは一二塁間へ!』

銀閣「んっ」パシッ ビッ

七花「ほっ」パシッ ビッ

鳳凰「ふむ」パンッ

審判「アウトーーッ!」

鵜鷺『ゲッツーーーッ! チーム刀、3-6-1のゲッツーでこのピンチを切り抜けましたーーっ!』

出夢「……う、そだろ……」



とがめ「よーし、皆よくやったぞ! 金髪ビッチを除いて」

否定姫「何で、私だけ除いてんのよ! あと金髪ビッチとか言うな!」

とがめ「黙れ。ライトからの好送球をあっさりと後ろに逸らすような奴に構う暇などないわ」

否定姫「しょうがないでしょ! いきなり、遠方から白球がもの凄い勢いで来るんだから!」

七花「確かに、あれは凄い送球だったな」

迷彩「さすがこなゆきね」

こなゆき「えへへ。けど、アウトが取れなくて残念でした」

とがめ「あれは、そこの金髪碧眼ビッチのせいだから、気にする必要はない」

否定姫「ちょっと、マジで差別として訴えられるわよ!」

とがめ「まぁ、そんなことは置いといて。この回無失点で抑えられたのは大きかったな」

否定姫「国際的問題をそんなこととか言うな!」

左右田「姫様、落ち着いてください……」

否定姫「何よ、あんたもそのチビの方を持つ気?」

左右田「いえ、そういう訳では……」

迷彩「いくら点差があると言っても、さすがにこう連続して点を取られると向こうに流れが行ってしまうからね」

とがめ「その通り。点差があるといっても試合はまだ序盤だからな。まだまだ安全圏にいるとは言えない」

七花・校倉「」コクッ

とがめ「この試合必ず勝つためにも、まずは一点。確実に一点を取るためにも、あのピッチャーの攻略法をなるべく早くに見つけて来い!」

七花・校倉・こなゆき「「「おーーっ!」」」

4回表 TK 6-2 TZ
無死 ランナー無し
打者 否定姫

鵜鷺『9番 サード 否定姫』

否定姫「はぁ、よろしく……」ザッ

人識「」コクッ

否定姫「はぁ……。ったく、何で私があの奇策師の言うことを聞かなきゃいけないのよ……」ブツブツ

いーちゃん「」スッ

ビッ!

ヒョロッ

ユラァ パンッ

審判「ストライーク!」

否定姫(へー、本当に揺れて落ちてきてるわね……)

人識「」ビッ

いーちゃん「」パシッ

否定姫(不規則に変化する球。確かにどう変化するか分からないってんだから、打つのは相当難しいわよね……)

否定姫(とは言っても、所詮は人が投げたもの。何かしら特徴があるはず。絶対に見つけてやるわ)グッ

いーちゃん「」スッ

ビッ!
 
ヒョロッ パンッ!

審判「ストライーク!」

否定姫「なっ!」

人識「かははっ」

否定姫(こいつら、私が見てきてると分かった途端、まっすぐですぐにストライクを取ってきた……)

いーちゃん「………」

否定姫(まぁ、これだけ遅ければストライク入れてきてもカットすることはできるし、じっくりと見させてもらおうかしらね)スッ

いーちゃん「」スッ

ビッ!

ユラァ 

否定姫「っ!?」

カキィ

人識「ショート!」

崩子「」パシッ ビッ

みい子「」パンッ

審判「アウト!」

七花・こなゆき「あ~~」

否定姫「………」

否定姫(うっそ~、見てきてるって分かってるのにいきなり投げるの? じゃあ、何で二球目は真っ直ぐを投げてきてたのよ……)

いーちゃん「………」



ブンッ! ストライーク!

ブンッ! ストライーク!

ブンッ! ストライーク! バッターアウッ!

鵜鷺『三振ーーっ! 七花さん、思い切って振っていくも三球三振です!』

七花「あれ~? おっかしいな?」

否定姫「これ、あんたのせいだからね……」

とがめ「………」

人識「おっしゃあ、ナイスピッチ」

玉藻「ゆらぁ」

崩子「いい調子ですよ、お兄ちゃん」

みい子「その調子だ。が、決して調子には乗るな」

いーちゃん「はい、分かってますよ」

出夢「………」

人識「………? おい、出m―――」

鵜鷺『続きますは、2番 センター 左右田さん』

左右田「よろしく頼む」ザッ

人識「―――っと、おう。よろしくついでに、この打席凡退してくんねーか?」

左右田「不聞(きけず)。その願いは聞くことはできない」

人識「はっ。そうかいそうかい」

左右田「どうしてもというのなら、実力で私を打ち取って見せるんだな」スッ

人識「はいよ。そういうことなら、そうさせてもらうわ」ザッ

人識「………」チラッ

出夢「………」

人識「………」

4回表 TK 6-2 TZ
二死 ランナー無し
打者 左右田右衛門左衛門

人識(さて、こいつには真っ直ぐとかの誤魔化しは気かねーからな。惜しみなく全球ナックルでいくぞ―――)

いーちゃん「」コクッ

左右田(姫様の命令は、なるべく多く相手に揺れる球を投げさせ、且つ自分が出塁すること―――)

左右田(一回の攻撃の時は、球の存在を知らなかったから打ち損じてしまったが、今回は違う―――)

左右田(不規則な変化とは言っても、球自体は遅い。じっくりと球を見ていけば、どうってことはない)グッ

いーちゃん「」スッ

ビッ! ユラァ

パンッ!

審判「ボール」

左右田(外角低めは、内から外に外れていくような変化―――)

いーちゃん「」スッ

ビッ! ユラァ

パンッ!

審判「ストライーク!」

左右田(内角高めは、外から中に入ってくる変化―――)


ビッ! ユラァ

パンッ!

審判「ストライーク!」

鵜鷺『3球目ストライク! いーちゃんさん、今回も早々に相手を追い込んできました!』

いーちゃん「」パシッ

鵜鷺『いやぁ~、玖渚さん。いーちゃんさん、突然のリリーフ登板となりましたが、見事なピッチングを続けていますよね』

玖渚『そうだね。これは正直僕様ちゃんも驚いたよ』

潤『まぁ、相手が予想以上にいーたんのナックルに反応してるのが幸いてるって感じだけどな』

鵜鷺『けど、いーちゃんさんのナックルはかなり打ちにくい変化球なんじゃないですか?』

潤『そうでもねーよ。いくら不規則に変化するって言っても球自体は遅ぇんだから、じっくりと構えて、甘く入ってきた球を狙ってけばいいんだよ』

鵜鷺『はぁ、なるほど~』

玖渚『前回いーちゃんのボールにやられた潤ちゃんが言っても説得力ないよね~』ケラケラ

潤『やられてねぇつーの。あれは二塁セーフだったんだから内野安打でヒットだろ!』

鵜鷺『あわわわ、マイク付けたまま怒鳴らないでください』キーンッ

キィンッ! 

審判「ファール」

鵜鷺『左右田さん、5球目もカットして。カウントは依然ワンボールツーストライクです』

左右田(真ん中低めは、内から外に揺れながら落ちる。か……)

左右田(思っていたよりも、ストライクゾーンに入れてくるな。これは簡単にはこのボールを打たれないという自信の表れなのか?)

左右田(どうであれ、あと5、6球はカットしていくか……)グッ

いーちゃん「」スッ

ビッ!

左右田(内角高め。これは内に入ってくる―――)グッ

ユラァァ

左右田(っ!? 外に外れてくっ!?)

カキィ ゴロッ

鵜鷺『あーーっと、左右田さんサードに転がしてしまったー!』

左右田「くそっ!」ダッ

人識「サード!」

出夢「………はっ!」

いーちゃん「出夢くんっ!?」

出夢「っ!?」ガッ

ゴロッ

鵜鷺『サードこぼしたーーっ! 』

出夢「しまっ!」パシッ ビッ!

左右田「」ダンッ

みい子「」パシッ

審判「セーーフッ!」

鵜鷺『一塁セーフッ! サードのエラーでツーアウトからのランナーを出してしまいました!』

出夢「~~~っ!」


今回はここまでです。

次回も気が向いたら更新します。

鵜鷺『チーム戯言、簡単にツーアウトにするもサードのエラーで二番の左右田さんを出塁させてしまいました』

出夢「………っち」ガッ

人識「おい、あんま気にすんなよ!」

出夢「わぁってるよ!」

人識(本当にわかってるのかよ、あいつ……)

鳳凰「」ザッ

人識(って、今気にするとこはそこじゃねーよな)

いーちゃん(ランナーは出しちゃったけど、ツーアウトだし、次をしっかり抑えれば問題ない)

人識(とりあえずは、このバッターをしっかり抑える。出夢のことはそれからだな……)

左右田「………」

鳳凰「………ふむ」


4回表 TK 6-2 TZ
二死 ランナー一塁
打者 真庭鳳凰

左右田「」ザァァ

審判「セーフ!」

鵜鷺『セーフセーフ! 左右田さん初球から盗塁を仕掛けてきました! ツーアウトランナー二塁に変わります!』

人識「……ちっ」

いーちゃん「気にすんなって」

人識「分かってるっつーの」ビッ

左右田(やはり、俺のことは全く気にかけていないか)

とがめ(もう一回走らせてもいいが、ここまでバッターに集中してるとなると無駄にカウントを悪くするだけか)

とがめ(ランナーに無警戒。走ってることはもう織り込み済み、むしろ走られても構わないと思ってる)

とがめ「全く腹が据わってるというか何というか、大した奴らだな……」

とがめ(あいつの足だったら二塁だろうが三塁だろうがあまり関係ないか……。それなら―――)スッ

左右田「………」ザッ

鳳凰「………」キュッ

鵜鷺『4回表 ツーアウト二塁のピンチ。これ以上点をあげたくないチーム戯言。このピンチを切り抜けられるのでしょうか?』

左右田「」ザッ

いーちゃん「………」

人識(ランナーは捨ててんだ、気にせずこいつを打ち取ることだけを考えろよ……)

いーちゃん(分かってるって)ジッ

左右田「」

いーちゃん「…………」ザッ

左右田「」ダッ

崩子(走った!)

人識(勝手に走ってろ、その間にツーストライク目は頂くからよ)

ビッ! ユラァ

人識(よし、ツーストライク目頂きっ―――)

鳳凰「」グッ

キィィンッ!

人識「っ!?」

鵜鷺『鳳凰さん、二球目を打ってきたーっ! エンドランです!』

人識(打ってきたっ!?)

いーちゃん(けど、これは―――)

フワッ

鵜鷺『しかし、これは打ち上げてしまいました! ボールはサードとレフトの間へ―――』

出夢「」ダッ

一姫「」ダッ

鳳凰「くっ」ダッ

出夢(おしっ、これなら取れる!)ダダダッ

一姫(行ける、ですかね?)タタタッ

フワァァ

崩子(ボールが伸びてる?)

人識「おい、声掛けてけよ!」

出夢(伸びてる? けど行ける!)

一姫(伸びてきた。行けます!)

崩子「ちょ、声掛け合ってください!」

出夢(取れる!)

一姫(行けます!)

出夢・一姫「っ!!?」


どかっ!


 
ドッ!



鵜鷺『交錯ーーーっ! ボールは外野を転がるーーーっ!』

出夢「ってぇぇ……」

一姫「あが~~」

萌太「何してるんですか!」タタタッ

左右田「」タンッ

鵜鷺『そして、セカンドランナーはホームイン! 7点目が入ります!』

鳳凰「」ダッ

崩子「萌太! サード向かいました!」

萌太「くっ」パシッ ビッ!

鳳凰「」ザァッ

いーちゃん「」パシッ パンッ

審判「セーフ!」

鵜鷺『三塁セーフ! エラーの間にランナーは三塁まで行きました!』

みい子「ん~……」

子荻「………」

人識「ちっ……」

いーちゃん「………ふぅ」

鵜鷺『そして、一点入り7-2! 点差がまたも5に広がりました!』

潤『こりゃあ、かなりヤバいんじゃねーか?』

玖渚『折角一点づつ返してきた中で、またも点差が広がっちゃったわけだしね。しかも点の取られ方がエラーエラーとヒットを打たれずに取られちゃったて言うんだから、これはチーム戯言にとっては相当以上にダメージだろうね』

鵜鷺『4回途中で7点。これはかなり点を取られ過ぎって感じですよね?』

潤『まぁな。けどそれは、チーム戯言が悪いっていうよりも、チーム刀が相応に攻撃的なチームであるって言うのが大きな要因って感じだな』

鵜鷺『チーム刀が攻撃的なチームですか?』

潤『見てれば分かるだろ? ランナーが出た途端すかさず盗塁。ランナーを意識してないのにも関わらずエンドランを試みたり、ヒットで出れば一塁でも先の塁に行こうとする。常に次の塁を意識して攻撃してきてる』

玖渚『失敗した時のことなんかを気にしないで常に攻撃的な姿勢で攻めてきてる。これは確かに脅威だよね』

潤『問題となるのは、その勢いに飲まれて守備的になっちまわないかどうか、だな。すでに点差が付いちまってるんだ。ここで下手にこれ以上点はやれないとか言って守りに入っちまったら、この試合はもう終わりだな』

玖渚『そこら辺チーム戯言はどうしてくるだろうね?』



出夢「ってめぇぇぇ! さっきの僕のボールだろうが!」

一姫「でも、ボールは伸びてたですし無理に出夢さんが取りに行かないで、前で取れる姫ちゃんが取った方が確実でしたよ」

出夢「てめぇみたいな下手くそな奴に任せて何が確実だよ! 簡単なフライでも落としかねない奴がよ!」

一姫「なっ! 姫ちゃんだって一杯練習してフライくらいはちゃんと取れるようになってるですよ!」

出夢「どうだかな。下手くそがいくら頑張ったって下手くそだろうが! 落とさないかどうか心配でおちおち後ろも任せらんねーよ!」

一姫「下手くそ下手くそ言いますけどね、もとはと言えば出夢さんがエラーしなければこんなことにはならなかったんですよ!」

出夢「あぁぁんっ!!」

崩子「ふ、二人とも落ち着いてください」タッ

萌太「ここで喧嘩なんかしてる場合ではないでしょう」タタッ

人識(出夢の野郎、完璧に頭に血が上ってやがる……)

子荻(何とかして落ち着かせたいですけど、もうすでにタイムは2回使ってしまってる。ここで使う訳にはいかない……)

人識(仮にタイムをかけたとして、何て声掛ける? 下手に声掛けたら余計逆上しちまうだけだ)

子荻(しかたありませんけど、ここは―――)

いーちゃん「あ、すいません。タイム」

人識・子荻「へ?」

審判「ターイム!」

人識・子荻「はぁぁぁっ!?」


―――マウンド


人識「お前、何してくれてんだよ、おい!」ガシッ

いーちゃん「何って、タイム掛けただけだよ?」

人識「分かってんだよ、そんなこと位はよ! 問題は何でこのタイミングでタイムを掛けたのかってことだ!」

いーちゃん「いや、だって出夢くんが明らかに頭に血が上ってたから」

人識「確かにそうだけどよ、もう残り一回しかないタイムを使っちまったんだぞ!」

崩子「ちょ、そっちもそっちで何しているんですか!?」タタタッ

みい子「あまり喧嘩をするな。いけないことだぞ」タッタッタッ

崩子「人識さんも、とりあえず落ち着いてください」

人識「ちっ、分かってるとは思うけどな、下手の出夢に声掛けたら余計に逆上させるだけだかんな。そこんとこ、しっかりと考えんだぞ」ボソッ

いーちゃん「分かってるよ。出夢くん」

出夢「………あ?」スタスタ

いーちゃん「ドンマイ」ポンッ

一同「っ!!?」

出夢「………はぁ?」

いーちゃん「出夢くんのエラーで一点取られちゃったけど、気にしないでいいから。どうせ7点の内の一点だし、そんな気にする必要もないし」

いーちゃん「まぁ、バッティングの面でも少し調子がいいわけではないみたいだけど、まだ4回だし徐々に訂正していけばいいでしょ」

出夢「………」ポカーン

いーちゃん「と言っても、点差が点差だからこれ以上はエラーしないように……」

人識「うおーーいっ! てめぇ何考えてんだよ!」ガシッ

崩子「い、出夢さん、さっきのはですね、えーっと、その、あれ……」アワアワ

人識「しっかり考えろって言っただろうが! お前の脳みそは鶏以下なのか? 一歩も歩かずに物を忘れるのか? あっ?」

崩子「そう! これは、あれです! ざ、戯言です! お兄ちゃんは時折戯言を発しないと性器不全になるという病気が……」

いーちゃん「何それ、怖い……」

人識「馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが、ここまで馬鹿だとは思わなかったわ!」

崩子「ですから、さっきのお兄ちゃんの発言は……」

みい子「いの字、貴様は性器不全なのか?」

いーちゃん「違いますよ!?」

ワーワー! ギャーギャー! ダカラ、ソシテ、ドシタ!?

出夢「………ぷっ」

崩子「というわけで………へ?」

出夢「ギャハハハハハハハハッ!」



崩子「え?」

人識「は?」

出夢「ぷっ、くくくっ、かははっ!」

人識「お、おい。どうしたんだよ?」

出夢「ぎゃははっ。は、ははっ! いや、何でも、くくっ。ねーよ……ぎゃははははははっ!」

人識・崩子「………?」

みい子「ふふっ」

玉藻「ゆらぁぁ~~」

いーちゃん「……出夢くん。次からはちゃんと頼むよ」

出夢「くふふっ………はぁ~~。ああ、分かってるよ」

いーちゃん「」マガオ

出夢「ギャハハハッ!」

人識「……一体どうなってんだ?」

崩子「……私に聞かないでください」

出夢「ギャハハハハハハハハハハッ!」

4回表 TK 7-2 TZ
二死 ランナー三塁
打者 錆白兵

鵜鷺『バッター 4番 レフト 白兵さん』

錆「」ザッ

人識(ったく、あのバカ。結局訳の分からいまま最後のタイムアウトを使っちまったじゃねーか。もう取り返しは使えねーぞ……)

いーちゃん(いつまで根に持ってんだよ、お前……)

人識(もうどうしようもねーんだ。こっからは開き直って行くしかねーかんな―――)スッ

いーちゃん(ああ、分かってるって―――)スッ

錆「………」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チーム刀ベンチ

とがめ『おい、ちょっと待て』

錆『………』スタスタスタ

とがめ『おい、こら、ちょっと待てと言うのが聞こえんのか!?』

錆『……何だ一体?』ピタッ

とがめ『この私が直々に貴様にアドバイスをやろう』ドヤッ

錆『断らせてもらうでござる』スタスタ

とがめ『だから、ちょっと待たんか!』

錆『貴様の言うことを実行すると、最後にとんでもないどんでん返しが来る』

とがめ『とんでもないフラグを立てるな! いいから人の話を聞け』

錆『………何だ?』

とがめ『いいか、向こうの三塁手は先程のエラーで浮足立ってる』

錆『それくらい見ればわかる』

とがめ『恐らく、先程のタイムは投手に対してのものでなく三塁手によるものだろう』

錆『それも分かる。タイムを取ったことにより、明らかにあの三塁手の感じが変わってる』

とがめ『だからこそ、三塁手を狙え』

錆『は?』

とがめ『セーフティでも何でもいい。三塁を狙ってもう一点取ってこい』

錆『………』

とがめ『向こうの4番を潰して来い』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

錆「」サッ

人識(バント!?)

いーちゃん「」ビッ

出夢「」ダッ!

錆「」グッ

コンッ!

人識(プッシュバント!?)

出夢「っ!?」

ドッ!

出夢「」バッ

ドッ!

鵜鷺『サードの足元抜けたーーっ!』

とがめ「よしっ!」

錆(頂いた―――)

いーちゃん「」ザァッ パシッ!

錆「っ!?」

出夢「………ギャハ♪」

いーちゃん「」ビッ

みい子「」パンッ

審判「アウトーーッ!」

鵜鷺『ア、アウトーーーッ! サードの足元を抜けたと思われた打球でしたが、ピッチャーのいーちゃんさんがフォローに入ってました!』

出夢「ナイスカバーだぜ、兄さん」スッ

いーちゃん「出夢くんも、いいチャージだったよ」スッ

パンッ!

鵜鷺『チーム戯言、エラーエラーで一点を許すものの、見事に続くピンチを切り抜けました!』

4回裏 TK 7-2 TZ
無死 ランナー無し
打者 鈴無音々

キィィィィィィンッ!

鈴無「」

校倉「」

鳳凰「」


バンッ!


鵜鷺『は、入ったーーーーーっ! 先頭バッターの鈴無さん。甘めに入ってきた初球を見事レフトスタンド最奥に放り込みました!』

鈴無「っしゃあーーーーっ!」グッ

一姫「行きますよ?」

出夢「分かってるつーの。せーの、だかんな」

一姫「はい、せーの―――」

出夢・一姫「「ナイスバッチーーーーーーッ!!」」

人識「うわぁ、すっげぇ飛んで行ったぜ……」

いーちゃん「球場自体はそんなに広くないけど、もうちょっとで場外ってとこまで飛んで行ったからね」

人識「やっぱ、あの女ゴリラはやべぇな……」

いーちゃん「後で鈴無さんに伝えとくね」

人識「やめろや!」

鈴無「」タンッ

鵜鷺『そして、今ホームイン! 先程の一点を見事帳消しにしました!』

5回表 TK 7-3 TZ
一死 ランナー無し
打者 凍空こなゆき

キィン! ゴロッ

鵜鷺『こなゆきさん、2球目を打っていきましたが、ゴロです!』

こなゆき「あわわっ」ダッ

コロコロッ

崩子「くっ」タタタッ

鵜鷺『あーっと、しかし長打を警戒してた崩子さん、スタートが遅れてる!』

こなゆき「あわわわっ」タタタッ

崩子(間に合う―――?)タタタッ

出夢「僕に任せろっ!」

崩子「っ!?」ピタッ

出夢「」パシッ ビッ!

みい子「」パァンッ!

こなゆき「」タンッ

審判「アウトーーーッ!」

こなゆき「あわ~~」ガクッ

鵜鷺『アウトーッ! サード出夢さんの好フィールディングでこなゆきさんサードゴロで沈みました!』


5回表 TK 7-3 TZ
二死 ランナー無し
打者 敦賀迷彩

鵜鷺『6番 セカンド 迷彩さん』

迷彩「」ザッ

鵜鷺『玖渚さん。チーム戯言、たったの4球でツーアウトを取りましたが、ここに来て安定してきたと言っていいでしょうか?』

玖渚『う~ん、そうだねぇ。前の回も結局エラーでしかランナーを出してないわけだし。いーちゃんには珍しく安定をしてるって言ってもいいかもしれないね』

鵜鷺『なるほど~』

潤『まぁ、この場合注目すべき点はいーたんじゃなくて、匂宮の方だろうけどな』

鵜鷺『出夢さん、ですか?』

潤『ああ。前の回のタイムの時にどんなことを話されたか知んねーけど、あれを機に出夢が他のメンバーと連携が取れるようになってきてる』

鵜鷺『連携が取れるように……』

潤『前までは自分が取れればいい。自分が決めるって考えてたけど、この回から他の奴のことも考えられるようになってきてる。周りが見えるようになってんだよ』

鵜鷺『ほうほう』

潤『こうなってくると、チーム刀はめんどくさくなってきそうだな』

キィンッ!

迷彩「くっ」

鵜鷺『あーーっと、迷彩さん打ち上げたーっ! しかし、これは面白い所に飛んでいる!』

出夢「」タタタッ

一姫「」タタタッ

崩子「」タタタッ

迷彩(落ちろっ!)タタタッ

出夢(行ける、か―――?)タタタッ

一姫(無理です―――)ピタッ

崩子「オーライ!」タタタッ

出夢「っ!」ピタッ

崩子「」ザァッ パシッ

審判「アウトーッ!」

迷彩「く~~」ガクッ

鵜鷺『アウトーーーッ! 面白い当たりでしたが見事にショートがキャッチ! スリーアウトチェンジです!』


5回裏 TK 7-3 TZ
無死 ランナー無し
打者 零崎人識

鵜鷺『5回裏の攻撃は1番 キャッチャー人識くんからの攻撃です』

人識「っしゃあ!」ザッ

校倉(相変わらず、気合だけはいいな。つっても、こいつの足の速さはかなり厄介だからな。塁には出したくないぞ)

人識「かははっ!」ユラァユラァ

校倉(? あのゆらゆら女の真似事か?)

人識(あのピッチャーは、やたら玉藻に四球が多いからな。前の回も玉藻に四球を出してたし、何かしらやりにくい理由があるはず―――)

人識(この回も点を……最低でも一点を取るためにも必ず出塁する!)ユラァユラァ

鳳凰「………」

鳳凰「」スッ

ビシュッ! ッパァン!

審判「ボール」

人識「っし」ニヤッ

校倉「………」

鵜鷺『二球目もボール! 鳳凰さん、またもボールカウントが先行しています』

鳳凰「」スッ

ビシュッ! ッパァン!

審判「ストライーク!」

人識「……ふーん」ユラァユラァ

鳳凰「」スッ

ビシュッ!

人識「っ!」

キンッ!

審判「ファール!」

鵜鷺『4球目ファール! 鳳凰さん、ツーボールから一気にツーストライクを取っていきました。カウントはツーツー。人識くん追い込まれました!』

人識「ちっ……」


鳳凰「」スッ

ビシュッ!

人識「くっ」

キンッ

審判「ファール!」

鵜鷺『5球目もファール! 人識くん粘ります!』

人識「ふぅ……」ユラァユラァ

鳳凰「」スッ

ビシュッ! ッパァン!

審判「ボール」

鵜鷺『6球目ボール! フルカウントになりました!』

鳳凰「………」

人識「うしっ……」

鳳凰「」スッ

ビシュッ!

人識「っ!?」ピタッ

ッパァン! 

審判「ボール フォア!」

人識「っしゃあ!」カランッ

校倉「……ちっ」

鳳凰「………」

子荻「………」



5回裏 TK 7-3 TZ
無死 ランナー無し
打者 石凪萌太

鵜鷺『先頭バッターをフォアボールで出し、ノーアウト一塁。ここで向かえますは、2番 センター 萌太さん』

萌太「」ズッ

人識「」ザッ

否定姫(早くもバントの構え―――)ザッ

迷彩(いい加減飽きてきたね―――)ザッ

鳳凰「」スッ

ビシュッ! 

萌太「」スッ

ッパァン!

審判「ストライーク!」

萌太(入ってる―――)

崩子「入ってますよ、萌太!」

一姫「追い込まれる前にさっさと決めちゃってください」

萌太(分かってますよ。次入れてきたら必ず決めます)スッ

鳳凰「」スッ

ビシュッ! 

萌太(入ってる―――!)

コンッ!

ゴロッ

否定姫「もう、しっかりと決めてんじゃないわよ」タタタッ

人識「」ザァッ

校倉「ファースト!」

否定姫「分かったわ、よっ!」パシッ ビッ

銀閣「」パンッ

審判「アウトーーット!」

鵜鷺『送りバント成功! ワンナウト二塁に変わります!』

萌太(ふぅ………。まさか、二球連続で入ってくるなんて……)タタタッ


5回裏 TK 7-3 TZ
一死 ランナー二塁
打者 浅野みい子

鵜鷺『3番 ファースト みい子さん』

みい子「」ザッ

校倉(さて、次はこの女か……。こいつはすで2本も打ってるからな。気を引き締めていかねーと)スッ

みい子「」ザァッ

否定姫(浅野みい子。右投げの左打ちの選手。スイングはコンパクトで長打よりも単打で繋ぐバッティングが見受けられるわね)

否定姫(ただし、鳳凰のスピードボールにも振り遅れないスイングスピードから来る打球の速度は正直見てから動いてちゃ取れない。……最悪この女は歩かせても構わないわね)

鳳凰「」スッ

ビシュッ!

ッパァン!

審判「ストライーク!」

みい子「……ふむ」


鵜鷺『初球ストライク! 外角一杯の球、みい子さん手が出ません!』

校倉「っしゃあ、いいコースだぜ!」

鳳凰「ふむ」

みい子(……どうやら萌太の言ったことは本当なのかもしれないな)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

みい子「萌、ナイスバント」

萌太「ありがとうございます」

みい子「では、私ももらったチャンスをしっかりと決めに行くとするか……」ザッ

萌太「あ、みい子さん」

みい子「ん? どうした?」

萌太「いえ、あの何というか、もしかしたらただの気のせいかもしれないんですが……」

みい子「? 気のせいでも何でもいい。何かしら感じたのなら言ってくれ。何かしらのヒントになるかもしれない」

萌太「……はい。あの、本当にただの気のせいなのかもしれないんですが……」

萌太「向こうのピッチャーなんですが、少しづつですがストライクが入るようになってきてます」

みい子「ストライクが……?」

萌太「はい。実は前に回からうっすらと感じていたんですが、カウントがボール先行からストライク先行になってきてるんですよ」

萌太「まだ完璧にストライクとボールの投げ分けはできてないみたいですが、序盤みたいに四球をバンバン出てこないと思います」

みい子「そうか」

萌太「まだ気がするって段階なので、軽い戯言だと思って流してもらって構いませんのでみい子さんはみい子さんのバッティングをしていってください」

みい子「ああ、分かったよ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

みい子(萌は自信無さげに言ってたが、萌の『感じ』は昔からよく当たるからな。もしかしたら、向こうのピッチャーも投球に慣れてきたのかもしれないな……)

鳳凰「」スッ

みい子(確かに、序盤みたいに四球を出してきてくれないとなると、今後かなり厄介かもしれない―――)

ビシュッ!

みい子(が―――)グッ

カキィィィンッ!

鳳凰「!?」

みい子「ストライクなら打ちやすいな」



迷彩「!」

銀閣「!」

ドッ!

鵜鷺『抜けたーーっ! 打球はライト前へ!』

人識「よしっ!」ダッ

みい子「んっ」ダッ

こなゆき「あわわわっ」タタタッ

人識(一気に本塁まで―――)ダッ

鵜鷺『セカンドランナー三塁を回ったーーっ!』

こなゆき「あわわっ」パシッ

こなゆき「―――ふっ」

人識(行け―――)

いーちゃん「ストップーーーッ!!」バターン!

人識「!!?」ピタッ

こなゆき「っあぁあああ!!」ビシュッ!

校倉「」ッパァァンッ!!

人識「!!?」ザッ

鵜鷺『レイザービームーーーッ! ライトからの超返球が、マウンドをぶった切りました!』

鵜鷺『しかし、本塁に帰ろうとした二塁ランナー。サードコーチャーの決死のストップで、何とか本塁での刺殺を免れました!』

人識「助かったけど、いきなり目の前で転がんじゃねーよ。ビックリしただろうが……」

いーちゃん「だって、ああでもしないとお前気づかないだろ」


5回裏 TK 7-3 TZ
一死 ランナー一塁三塁
打者 匂宮出夢

鵜鷺『ワンナウト一塁三塁。追加点のこのチャンスで迎えますは、4番 サード 出夢さん』

出夢「」ザッ

鵜鷺『前の回では好守備を見せていましたが、バッティングでも活躍を見せてくれるのでしょうか?』

出夢「」グッ

とがめ(先の回の守備を見ると、どうやら向こうの4番は立ち直りかけてるように見える。が、こいつが鳳凰に合っていないのには変わりはない)

とがめ(状況はワンナウト一塁三塁。ピンチではあるが、ゴロを転がさせればゲッツーを取れる。ここは出来るだけゲッツーの取りやすい陣形で構え、こいつを打ち取る―――)スッ スッ

七花・迷彩「………」ザッ

人識(ショートとセカンドが中心に寄った……)

みい子(ゲッツー体制……)

いーちゃん(サードも少し、ベースから離れ気味に構えてる。これなら―――)

子荻(………)


ッパァン!

審判「ストライーク!」

鵜鷺『初球ストライク! このピンチの場面で初球からファーストストライクを取ってきました!』

出夢「ふぅ……」

いーちゃん(ピッチャーもサードランナーをあまり意識していない。今なら仕掛けられるんじゃ……)

みい子(ここで一点取れれば、7対4、―――3点差。一気に相手の背中を捉えられる位置に付くことができる……)

いーちゃん(とても安全策と言う訳でもないけど、今日の出夢くんの調子を見ると確実性は、ある……)

ッパァン!

審判「ボール」

鵜鷺『二球目は少し外れ、カウントはワンエンドワン』

いーちゃん(向こうのピッチャーは完璧にバッターに集中してる。サードもベースに対する意識が薄いから、スタートも切りやすい)

みい子(ゲッツー体制は塁間が空く分、意外とカバーの入りが難しい。例え強めに転がしてしまっても、人の字と私の動き次第ではゲッツーは免れる可能性がある……)

ッパァン!

審判「ボール」

いーちゃん(1-2―――。子荻ちゃん、どうするの?)

人識「」

みい子「」

出夢「」



子荻「………」スッ


出夢「………」グッ

人識「」ザッ

みい子「」ザッ

いーちゃん「………ふぅ」

七花(………空気が変わった?)

迷彩(ここで重要となるのは間違いなくあたしの動き。ヒッティングによる動きはもちろん。バントも勿論頭に入れとかなくてはいけない)

迷彩(二塁へのカバーと一塁へのカバー。二塁に入るなら、一塁への送球をしっかりと意識しながら入る。もし送球が遅れればゲッツーを取れず、相手に点を与えてしまうことになる。逆に一塁に入る時は、ゲッツー体制によって一塁が遠いから一塁にカバーに入る場合は出来るだけ全力で一塁に向かう。ここでカバーに入りきれなかったということは絶対にしてはいけない―――)グッ

否定姫(カウントが1-2。もし相手が仕掛けてくるとしたらここね。ヒッティングかバントか………)グッ

銀閣「………」グッ

出夢「………ふぅぅ」グッ

鳳凰「………」スッ

ビシュッ!



カキィッ!




ドッ!

迷彩・七花(ヒッティングッ!)

校倉(ボールはっ!)

フワッ

否定姫(バウンドしてファーストの前に)

銀閣(バウンドが少し高い。これでは少しゲッツーを取るのは―――)タタタッ

人識「」ダッ!

否定姫「っ!? サードランナー走ったーーっ!」

銀閣(っ!? 何だ? サードランナーがホームに走ってるのか? ファーストゴロだぞ?)タタタッ

人識「」タタタタッ

校倉(速いっ!)「ホーム急げーーっ!」

銀閣「くっ!」パシッ ビッ!

人識「」

校倉「」ズゥゥンッ!

いーちゃん(デカい。けど―――)

校倉「」パシッ

人識「」ザンッ パンッ!

校倉「はっ―――!?」

審判「セーフッ!」

校倉(―――っやすぎんだろ、こいつっ!!)

迷彩「ファースト!」

校倉「くっ」ビッ!

出夢「」ダンッ!

迷彩「」パンッ!


審判「セーーーフッ!」


出夢「っしゃああああああああっ!!」



鵜鷺『一点追加ーーーっ! 一塁ゴロのボールでしたが、人識くんの高速スライディングで見事キャッチャーのブロックを搔い潜りました!』

鵜鷺『これで7対4。三点差! しかも、一塁セーフでワンナウト一塁二塁。チーム戯言、チーム刀の背中を捕え出したーーっ!』

鈴無「ナイスランだわ! よく走っただわよっ!」ガシガシッ

人識「っだぁ~~。乱暴に頭撫で繰り回すなっーの! 髪型が乱れるだろ!」

一姫「でも、本当に速かったですよ! さすがチーム戯言のイカ天ですっ!」

人識「それを言うなら韋駄天だろ! 何で俺天ぷらになってんだよ!」

萌太「5回途中で三点差。これは行けますよ!」

人識「あったりまえだっつーの! むしろここで一気に逆転しちまおうぜ!」


「「「「「おーーーーーーーっ!」」」」」


出夢「おーい、打点をあげた僕を忘れてんじゃねーよ!」

玉藻「ゆらぁ………ないす、ばってぃんぐ……」

出夢「ありがとよ! ちくしょう!」


ッパァン!

審判「ストライーク! バッターアウッ! チェンジ!」

玉藻「ゆらぁ……」

鵜鷺『三振ーーっ! 玉藻さん、ランナーを返すことが出来ませんでした。しかし、この回も一点を返し、三点差まで点差を縮めてきました!』

一姫「ドンマイです、西条さん」

玉藻「ゆらぁ」

人識「くっそ~。逆転までは行かなかったな」

鈴無「悪かっただわ。あそこであたしが打ってれば、もう一点取れたのに」

崩子「いえ、当たりは良かったですし、あれは向こうのショートを褒めるべきかと」

鈴無「ありがとうだわ」ナデナデ

子荻「逆転までいけなかったのは残念ですけど、確実に相手の背中を捕えています。だからこそ、ここで離されないためにも、この回、しっかりと守ってきてくださいね」

出夢「分かってるよ」

一姫「絶対に諦めません!」

子荻「いーさん達も頼みましたよ」

人識「あいよ」

いーちゃん「出来るだけ頑張るよ」


6回表 TK 7-4 TZ
二死 ランナー無し
打者 否定姫

ユラァ

パンッ

審判「ボール」

鵜鷺『3球目ボール。これでカウントはワンエンドツー。この打者もまたボールが先行しています』

人識「いつも通りでいいからな」ビッ

いーちゃん「ああ、分かってるよ」

人識(前の回から思ってたが、こいつ段々とコントロールが乱れてきたな)

人識(最初からコントロールがいい方でもないけど。少なくともストライクとボールの投げ分けはできてたんだけど……)

いーちゃん「ふぅ……」ロージンヒロイ

人識(さすがに準備もなしに6回も投げ続けてんだ、疲れてないわけないよな……)

人識(つっても、ここでこいつを下げるわけ仁もいかねーし、頑張ってもらうしかねーよな―――)スッ

いーちゃん「」コクッ

ビッ!

ヒョロッ……

人識(変化しない―――っ!?)

否定姫「ちょ、マジ……?」グッ

キィンッ

人識「ショート!」

崩子「」パシッ ビッ!

みい子「」パンッ!

審判「アウトーーッ!」

鵜鷺『スリーアウトチェンジ! いーちゃんさん、この回も三人で仕留め6回を0点で抑えました!』

否定姫「くっ……」

人識(また、ボールが変化しなかった……)

いーちゃん「………」

6回裏 TK 7-4 TZ
無死 ランナー無し
打者 闇口崩子

ッパァン!

審判「ストライク!」

崩子「………」

鵜鷺『3球目ストライクが入り、ツーストライクワンボール』

崩子(萌太の言っていた通り、コントロールが定まってきてるようですね……)

鳳凰「」スッ

崩子(けど―――)

ビシュッ!

カキンッ ドッ!

崩子(ストレート一本。確かにキレはいいですけど、もう6回。さすがに見慣れてきました)

鳳凰「」

崩子(厳しい球はカットしていき、甘い球が来たらそれを叩かしてもらいます)スッ

鳳凰「」スッ

崩子「」グッ

ビシュッ!

崩子(入ってる―――)グッ

ストンッ!

崩子「っ!?」

校倉「うおっ!?」

ブンッ!

ドッ! ドスッ!

校倉「いってぇ……」パシッ ポンッ

審判「アウトーーッ!」


鵜鷺『三振ーーーーーっ! 先頭バッターの崩子さん三振で倒れました!』

崩子(……スライダー? フォーク? けど、あの球速は……)

鵜鷺『玖渚さん、さっきの鳳凰さんが投げたボールなんですけど、何だか縦に落ちたように見えたんですが』

玖渚『そうだね~。多分、あれはフォークボールだと思うよ』

鵜鷺『フォークボール、ですか?』

玖渚『うん。……いや、あれはフォークボールというよりもどちらかと言うとあれだね―――SFF(スプリットフィンガード・ファストボール)』

鵜鷺『スピリット、指ガード……え? 何ですか?』

玖渚『スプリットフィンガード・ファストボールね。よくスプリットとか高速フォークと呼ばれてるボールなんだけど、まぁ、要するに速く落ちてくるフォークボールだと思ってくれればいいよ』

鵜鷺『はぁ……。あの、ではフォークボールとは違うんですか?』

玖渚『違くないって言えば嘘だし、違うと言っても違うような感じかな』

鵜鷺『ん? え?』

玖渚『結構そこら辺の基準って曖昧でねぇ。よく投げてからミットに届くまでに約10回転するものをフォーク、約20回転するものをSFFとか言われてるけど、そんなの実際に野球やってて分かるはずないよね』

鵜鷺『まぁ、そうですね』

玖渚『まぁ、途中まで真っ直ぐと見分けが付かないくらいの速度が出てて、尚且つ変化もそこそこって感じだったし、SFFでいいんじゃないかな?』

鵜鷺『スピリットフィンガー・ファストボール……』

玖渚『スプリットフィンガード・ファストボールね。今思うとフォームに不自然さがあったし、コントロールも甘々だったから完璧な感じではないんだろうけど、一体鳳凰ちゃんはどこでこんなものを覚えたのかな? 確か鳳凰ちゃんって初心者でしょ?』

潤『ん? あ、あたしに聞いてんのか?』

玖渚『当たり前でしょ。鵜鷺ちゃんなんかに聞いたって答えなんて帰ってこないってわかってるんだからさ』

鵜鷺『いや、確かにそうですけど……』

潤『あー、わりぃわりぃ。実は分かっててわざと聞いてるのかと思ってよ』

玖渚『どういうこと?』

潤『いや、だって簡単じゃねーかよ。単純に身近にお手本があって、それを真似した。それだけじゃねーか。ただの物真似だよ物真似』

玖渚『物真似…………あ、あー。そういうことね』

鵜鷺『え? どういうことですか?』

玖渚『鵜鷺ちゃん。鵜鷺ちゃんはフォークの握り方は知ってるよね?』

鵜鷺『え? まぁ、はい。それくらいでしたら。こう、ボールを人差し指と中指で挟み込むように握るんですよね?』

玖渚『そうそう。んで、実はSFFもそれと同じ握り方なんだよね』

鵜鷺『そうなんですか?』

玖渚『親指の位置や、手首の返し方とか他にもいろいろあるけど、まぁ、ほぼ一緒と考えていいよ』

鵜鷺『へー』

玖渚『そして、ここでおさらい。いーちゃんが投げてるシェイクボールの握り方は覚えてる?』

鵜鷺『えーっと、確か人差し指と中指をボールに深く差し込んで……って、あ!』

玖渚『うん、気づいたみたいだね。そういうこと、いーちゃんが投げてるシェイクと鳳凰ちゃんが投げてるSFFって、基本同じ握りをしてるんだよ』

鵜鷺『つまり、これは鳳凰さんがいーちゃんさんのシェイクボールを真似て投げようとしたら、偶然SFFを投げてしまったってことですか?』

玖渚『うん。つまりそういうことだね』

鵜鷺『えー? でも、変化球ってそんな簡単に投げられるものなんですか?』

玖渚『うーん、こればっかりは鳳凰ちゃんにそういった才能があったって言うしかないんじゃないかな?』

鵜鷺『才能、ですか?』

玖渚『うん。まぁ、この場合の才能は野球の才能なのか、物真似の才能なのか。一体どっちの才能なんだろうね~』クスクス

鵜鷺『はぁ……』

6回裏 TK 7-4 TZ
二死 ランナー無し
打者 いーちゃん

ッパァン!

審判「ストライーク! バッターアウッ! チェンジ!」

いーちゃん「」スタスタ

鵜鷺『三者連続三振! 鳳凰さん、この回を三人でぴしゃりと抑えました!』

七花「おー、ナイスピッチじゃん」

鳳凰「ふん。貴様に評価されたところでどうということはないが。ここは素直に受け取っておくとしよう」

迷彩「何だかめんどくさい言い回しだね。素直にありがとうって言ったらどうだい?」

鳳凰「ありがたいとは全く思っていないのだよ。それよりも、私としては、そろそろ虚刀流にも打撃の面でも活躍のほどを見てみたいものなのだが」

七花「おー、次は俺からの打順だからな。次こそは絶対に打ってみせるぜ」

鳳凰「………まぁ、期待しないで待っているとするよ」

七花「おー、期待しないで……って、あれ?」

とがめ「おい、七花。馬鹿をやってないでこっちに来んか」

七花「お? 何だ、とがめ?」

とがめ「次は貴様からの打順だろうが」

七花「知ってるぜ。待ってろよ、とがめ。次こそは絶対にほーむらんというものを打ってやるからな」

とがめ「いや、もうホームランはいい」

七花「え? いいってどういうことだよ?」

とがめ「貴様のいつ当たるか分からない大振りを待っているほどの余裕もなくなってきたからな。そろそろ貴様にも働いてもらうぞ」

七花「?」

とがめ「貴様でも塁に出れる方法を思いついた」

七花「塁に出る方法って、何か策でもあるのか?」

とがめ「策などはない」

七花「は? じゃあ何があるんだよ?」

とがめ「そんなの、決まっておるだろ―――」




とがめ「奇策だよ」





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