ニノ「ジャファルに会いにいく」 (16)

レベッカ「本当に、行っちゃうんだね…」

ニノ「うん、もう決めたことだから」

リキア同盟フェレ領。

そのはずれの小村で、二人の若夫人が語らっている。

二人は村一番の大木のふもとにおり、その枝々には青々しい若葉が萌えていた。

緑の眩しい朝であった。

ジャファルってロリコンなん

レベッカ「そっか…寂しくなるよ」

ニノ「あたしもだよ…。ごめんね、レベッカにも、ウィルさんやダーツさんにもたくさんお世話になったのに、結局あたしは何も返せない」

レベッカ「そんなことないわよ。ニノがいてくれて、賑やかで楽しかったわ」

ニノ「レベッカ…」

レベッカ「それとね、ニノ。たまには顔を見せに戻ってきてね。親友と長く会えないのは辛いわ」

ニノ「もう…レベッカったら。わかってるよ、全部終わったら、ルウとレイと、ジャファルとここに帰ってくる!」

レベッカ「よろしい!」ニコッ

ニノ「ふふ、ちゃんとお手紙も書くから。心配しないで?」

レベッカ「ならいいのよ」

レベッカ「ところで…ルウとレイも連れていくの?まだ生まれたばかりなのに」

レベッカ「私で良ければ預かるよ?」

ニノ「流石にそこまで迷惑はかけられないよ」

しえん

ニノ「それに、このふたりにもジャファルに会ってほしいから」

レベッカ「愛しの彼を繋ぎ止めるためね?」

ニノ「そんな感じっ!」

レベッカ「まあニノったらずいぶん強かになったのね」

ニノ「これでも黒い牙のソーニャの娘だからねー!」

レベッカ「あら怖い!」

堪らずふたりは吹き出した。

二人の朗らかな笑い声は、燕と共に風に乗り、どこまでも吹き抜けるようだった。

ニノ「えへへ。やっぱりレベッカといるのは楽しいなあ」

ニノ「でもごめんね、レベッカ。あたしこれ以上ここにいたら決心が鈍っちゃう」

ニノ「だからもう…行くね?」

レベッカ「うん、気を付けて…」

ニノ「ありがとう…」

小さな背中が、さらに小さな影をふたつ連れてレベッカから遠ざかろうとした時、

レベッカ「待って!!」

レベッカ「ニノ…これ、持っていって?お弁当…作ったから。」

ニノ「レベッカ…」

レベッカ「木の実と、干し肉と、焼き菓子と…ニノの好きな物、たくさん入れておいたから」

ニノ「レベッカ、お母さんみたい」クスクス

茶化すニノに、今度はレベッカは真面目な表情で応じる。

レベッカ「ニノ、絶対に帰ってきてね。約束よ?」

ニノ「…うん。約束する」

ニノ「じゃあ、今度こそ行くね」

そう言うなり、ニノは何かを振り払うように歩き出した。

やがて十分な距離をあけてから振り返り、

ニノ「バイバイ!レベッカ!」

全力で手をふった。
あらん限りの声を絞り出した。
はずなのに、なぜだか声量が出ず、やけに湿った声になってしまった。

レベッカ「絶対に帰ってきなさいよーー!!」

応じる声もみっともない鼻声だったので、思わずニノは吹き出してしまう。

そしてその微笑みの中、

「大好きだよ、レベッカ」

呟いて、ニノは歩き出す。

旅路は長い…。

ベルン王国南部。

月のない暗い夜道を、いくつかのたいまつの火が揺れている。

そのたいまつの主、ベルン王国南方司令部に勤めているこの高級文官はその帰路にあった。

文官「まったく、近頃はすっかり日が短くなりおって。このわしが暴賊にでも襲われたらどうするというのだ。のう?」

ベルン兵「はっまことにその通りであります」

護衛についている数人の兵卒のうち一人が事務的に答える。

ジャファルは許さない

護衛にこれだけの兵をつけながら暴賊ごときに怯えるとは、護衛している自分達に失礼ではないのか。

大体、定時の内に自分の仕事も終えられない自らの無能が悪いのだ。

その分だけ帰りの遅れる自分達の身にもなってくれ。

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