エレン「俯 瞰 風 景」(19)
TYPE-MOONの作品「空の境界」と「進撃の巨人」のパロディです
私は原作を読んだことが無く、型月作品全般をほとんど読んでいないので、型月ファンの方などは私の文章表現に失望されると思いますが、素人なのでご容赦下さい。
セリフ、展開等は映画準拠です。
スマホ、即興、書きため無し、不定期更新。
ピン、ポーン・・・
彼女はもう、何時間待っていただろうか。一度は宅配便のお兄さんだった。その次は隣の部屋に住んでいるおばあさんが惣菜を分けてくれた。彼女は、訪問者に無難な対応をして帰していたが、心中は穏やかではなかった。
電話がかかってきてから三度目のチャイム。ドアの内から外を覗き込む。そこには、一人の男が、見慣れた黒いTシャツを着て、立っていた。
二度、瞬きを済ませ、軽く溜め息をついた後、
ミカサ「・・・空いてる」
彼女は言いながらドアを開けた。
エレン「こんばんは。相変わらず、気怠そうだな、ミカサ。」
言いながら、黒いTシャツの男───エレンは、持っていたコンビニの袋を差し出す。
エレン「はい、コレ。冷蔵庫」
ミカサ「・・・」
女は、遅刻を詫びないエレンに向かって睨むような視線を浴びせたが、結局、何も咎めず、部屋に入れた。
───バタン。
エレン「カギくらい掛けとかねぇと・・・全く、不用心なんだな」
靴を脱ぐために玄関に腰を下ろしたエレンは、早速注意する。
いつもの事だ。この男は。
エレン「前にも言っただろ?それからー」
ミカサ「勝手に入ってきて構わない」
ウンザリしたように、彼女───ミカサは、エレンの言葉に口を挟む。
ふぅ・・・と溜め息をつき、エレンは1Lしかない部屋の中央まで行き、そこに座りこんだ。
ミカサ「前にも言ったでしょ」
エレン「そういうわけにはいかねぇよ」
持っていた2つのビニール袋の一方をミカサに渡し、自分は一方の雑誌の入った袋の中身を開け始めた。
エレン「・・・今日は、ストロベリーにしてみたぜ」
そう言うと、ミカサの持っている方の袋を指差す。
ミカサは、その中身を確認した後、
ミカサ「・・・ハァ」
溜め息をついた。
エレン「あれ?溶けてるか?」
ミカサが袋の中から手にとったのは、巷で美味しいと評判の高級アイスクリームだった。
エレン「やっぱり保冷剤もらえば良かったかな」
見当違いな言葉をまくし立てるエレンに、もう一睨みを利かせる。
ミカサ「アイスは好きじゃない。」
エレンは、そうだったっけ?というような表情をして、言い返した。
エレン「でも、今日は暑かったし、さすがのミカサも、冷たいものが恋しいんじゃねぇかと思ってさ」
気づかいは嬉しいが、好みくらい聞け、という表情でエレンを見返したが、効果も無く、エレンはまた別のことを喋りだした。
エレン「定番かな、とも思ったんだけどさ、ミカサのイメージだと、他はちょっとな」
ミカサ「何が?」
何を語り出すのだろう、この男は。
エレン「ストロベリー。」
呆けているミカサに、エレンは続ける。
「ハーゲンダッツだよ。ほら、この前買ったやつは、食べなかっただろ?」
ミカサ「・・・苺が、私のイメージなの?」
少し恥ずかしそうに、ミカサは、俯きながら、その有名なロゴがプリントされた紙製のフタを凝視する。
エレンは、窓の方向を向いて言った。
エレン「革ジャンとかもさ。」
玄関の丁度向かいに位置する窓のカーテンレールに、深紅の革のジャケットが吊されていた。この蒸し暑い季節に似つかわしく無い代物だが、ミカサは、このジャケットを好み、年中使い回している。
出したアイスを袋に戻し、冷蔵庫の一番上の段に入れようと取っ手に手を伸ばした時、エレンは続けた。
エレン「それに、苺ってバラ科の植物なんだぜ」
すっと、ミカサは、エレンの方に視線を戻す。
エレン「意外だろ?苺はかわいいとか皆思ってるけど、バラなんだからさ。」
ミカサはもう一度、袋からアイスを取り出してみた。
赤く、小ぶりだが美味しそうな苺が2つ、並んでいた。
エレン「な?やっぱりミカサだろ?」
ミカサ「・・・食べない!」
ぶっきらぼうに言い放つと、言葉とは裏腹に、ミカサは、優しく冷蔵庫のドアを閉めた。
───パタン。
・
・
・
───少女は、街の明かりが、鈍く灯り始めるのを見下ろしていた。
父や母、それに友達──見知らぬ誰か、まだ見ぬ私の夫となる人まで、この街には住んでいるのだろうか。少しずつ、街はその全体を暗闇に染め、光が、住居の一つ一つの存在を主張する。
私は、何をしているのだろうか。
本当は、こんな所に来てはいけないはずなのに。
だが、光が街の端々まで灯るにつれ、少女はその考えを改めていった。
そこには、只、自分の理想とした時間、自分の理想とした空間が広がっていた。
勿論、若い少女は、この全能感に抗えるはずもなく、口元を緩めた。
そして、するすると、自らが降り立った建造物の端まで、その歩を進めた。
境│空
─・─
界│の
the garden
of
sinners
その蝶は蜻蛉の後を追った
主題歌
「oblivious」
作詞・作曲・編曲 梶浦由記
唄 Kalafina
蝶は湖畔に寄った
だが浮くことに耐えられなかった蝶は
飛んだ
湖畔には無数の水紋が表れた
少女は、その鮮血を撒き散らして死んだ。
「俯 瞰 風 景」
───もう、何時間寝ただろうか。彼女は寝返りを打つ。
ショートカットの綺麗な黒髪に、その黒と対象的に色白な肌。
顔のラインは細いながら、どことなく女性的な、柔和な雰囲気があらわれている。瞳は大き目だが、その全体的に可憐な印象に反して、獰猛な捕食者の如き、鋭い眼光を放っている。
まさに「見返らない美人」と言った所か。
この目で睨まれれば、大の男と言っても、物怖じせずにはいられないだろう。
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