【はがない】小鷹「兄ちゃんって言ってくれよ……」 (20)

「僕は友達が少ない」のSSで先週位に一度スレ立てして、修正・加筆しました。

小鳩・マリア・小鷹・ケイトが主に出て来ます。
あまり笑える感じにはなっていませんが、もし良かったら見て行って下さい。

では宜しくお願いします。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1363542503

天馬「隼人には引き続き連絡を続ける。君は自分の事だけ考えていればいい」

小鷹「……ありがとうございます」

天馬「無理はするんじゃないぞ。やはりここに居た方が……」

小鷹「いえ、小鳩が待っていますので」

天馬「……そうだな」

ステ「小鷹様、車の用意が出来ました」

小鷹「すみません、ありがとうございます」

天馬「…………」

ステ「では、こちらです」


 ——このまま彼を返してしまって良いものか、
 わからないまま彼が車に乗り込んでいく姿を見ていた。


「小鳩と一緒に居てあげたいんです」


 しばらくは家に居て構わない、と諭す私に彼はそう言った。
 彼の気持ちが分からないとは言わない。
 ただこれ以上隼人から託された子供達に何か有ったら私は——


星奈「……パパ、小鷹は?」

天馬「帰ったよ、今さっきな」

星奈「そう……」

天馬「星奈、小鷹君を助けてやってくれ。お前も辛いだろうが……」

星奈「うん、分かってるわ……私は大丈夫」

星奈「でも小鷹は……」




 小鳩が交通事故に遭った。5日前の事だ。
 「……ご、ごめ……ごめんなさ……い」
 飼い犬を助けようと子供は道路に飛び出したそうだ。
 「お詫びのしようも……有りません……なぜあの時もう少し——」
 運転手は子供を避けるためとっさにハンドルを切った。
 でもそこには小鳩がいて……

 運転手は泣きながら地面に頭をこすりつけ、飛び出した子供も両親と泣きながら俺に謝っていた。
 何度も何度も

 俺は怒る事が出来なかった。
 誰も悪くない、などと思った訳ではない。
 

 ——小鳩にはもう会う事も話すことも出来ない


 その現実があまりにも大きすぎて……彼らを責める事など浮かびすらしなかった。
 彼らを責めれば、小鳩を死んだ現実を受け止めなければならない。
 
 俺にはまだその覚悟が出来なかった。






 葬式などは全て天馬さんが取り仕切ってくれ、名ばかりの喪主である俺は挨拶もろくにせず
 ただ小鳩の傍で泣き崩れていた。
 
 ただ考えるのは小鳩との思い出と後悔。

 ——もっと小鳩の行きたい所に連れてってやれば良かった
 ——もっと小鳩の好きな物を食べさせてやれば良かった
 ——もっと小鳩の言う事に付き合ってやれば良かった
 ——もっと……もっと……

 全てもう叶わない。
 思い出の中の小鳩が笑う度、俺は泣いた。







 ピリリ、ピリリ

小鷹「…………」

 ピリリ、ピリリ

ステ「……小鷹様、お電話のようです」

小鷹「……はい………」

小鷹「ケイト? ……もしもし」

ケイ「お兄ちゃん! ごめんね……大変な時にいきなり」

小鷹「あぁ……いや……どうしたんだ?」

ケイ「マリアが! マリアがいなくなったの!」

小鷹「マリアが? 何かあったのか?」

ケイ「……小鳩ちゃんの事で……あいつすごく落ち込んでて」

小鷹「……それで?」

ケイ「小鳩ちゃんに……会いたい……って」

小鷹「……」

ケイ「……私悲しいけど、小鳩ちゃんとは……」

小鷹「…………」

ケイ「……もう……会えない……んだって」


 ——電話の向こうでも鼻をすする音がする 


ケイ「そしたらあいつ「じゃあわたしがあいにいく!」って」

小鷹「会いにって……まさか」

ケイ「もしかしたら、お兄ちゃんの所かと思ったんだけど……お兄ちゃんお願い! マリアを——」

小鷹「ケイト! 俺は思い当たる所を探す! お前は学校周辺を探してくれ!」

ケイ「……グス、ぁ、ありがとうお兄ちゃん!」

小鷹「ステラさん!」

ステ「了解致しました、小鷹様」







 それから俺たちはマリアが行きそうな所をしらみつぶしに探した。
 隣人部の皆にも声を掛け、部室や学園内、近くのお店、通学路…………
 それでもマリアは見つからなかった。

小鷹「くそっ、あと探す所といったら」

ケイ「……お兄ちゃんの家」

 マリアは家の合鍵がどこに有るか知っている。
 前に来た時、俺か小鳩が居なくても入れる様にと合鍵の隠し場所を教えておいたのだ。

 もしかしたら小鳩の傍で——

小鷹「マリア、馬鹿な事すんじゃねぇぞ!」

 玄関のドアを開く。マリアのブーツがそこには有った。
 やはりマリアはここだ。
 さっきまで帰るのが少し怖かったが、今はそんな場合じゃない。

小鷹「マリアァァーー!」
ケイ「マリア! 出て来なさい! マリア!」
 
 リビングには見当たらない。

小鷹「マリア!」
ケイ「マリア!どこにいるの!」

 嫌な予感が頭を過ぎる。
 まさか……そんな……。

 1階には誰もいない様だった。
 2階に上がろうとした、その時……

 座敷に有る小鳩が入っているはずの小さな箱が開いているのが見えた。

 全身の血が一瞬跳ね上がった気がした。
 熱いような寒いような感情が全身を包む。
 ただ見えてはいなくても顔が紅潮していくのが自分でも分かる。
 
 俺の小鳩を
 俺だけの小鳩を
 小鳩……小鳩……小鳩……

 怒りに身を任せ、階段を一気に駆け上り、小鳩の部屋のドアを殴りつけるように開ける。
 雨戸の閉じきった暗い部屋、赤いロウソクの灯りに照らされて泣いているマリアがいた。
 振り向いたその真っ白な腕から、赤い血を流して

小鷹「マリ……」

 パシイィィー!
 マリアの血を見て一瞬動転した俺より先にケイトの平手打ちが飛ぶ。 

ケイ「バカマリアァー!!あんたなにしたかわかってんのか!!」

マリ「わ、わたじは……」
 
 パシイィィー!
 口を開いたマリアにもう一度平手打ちが飛ぶ。
 一瞬の沈黙の後、姉妹は泣き崩れた。 

 俺はケイトが強い態度に出たおかげか、幾分か冷静になれたのだと思う。 
 もしケイトがぶたなかったら、多分俺はマリアに酷いことを言ってしまったと思う。 

小鷹「マリア、ここで何をしてたんだ?」

マリ「……うんこきゅうけつきを……」

小鷹「うん」

マリ「うんこきゅうけつきを生き返らせようとしてたのだ……」

小鷹「生き返らす?」

マリ「だって! だって! あいつ言ってたのだ! 「私は大いなる闇の末裔、私にかかれば死者だろうが
   怪物だろうが召喚する事が出来るのだ」って!」

マリ「だからあいつがもってた本を探したのだ……そしたら生き返らす方法が載ってて……」

マリ「でも生贄が必要だって……」

小鷹「だからその腕……」

マリ「すごく痛かったのだ……怖かったのだ……でもうんこきゅうけつきも、痛かっただろうから我慢したのだ……」

ケイ「マリア……」

マリ「わたしはしすたーだからあいつがきゅうけつきで悪い奴でも、助けてあげるのだ……」

マリ「代わりの命が必要って書いてあったから、私のをはんぶんこしようと思ったのだ……」

マリ「おにいちゃんもあいつが帰って来てほし——」

小鷹「マリア!」


 マリアを力いっぱい抱きしめる。


小鷹「こ、こばどは……もう……て、天国に行っ……だから……ぼ、ぼどってこれないんだ」


 涙声で声がうわずってしまう
 言葉にしてしまった 
 現実を受け止めてしまった
 小鳩は死んだと

マリ「で、でもおにいちゃんこの本には!」

 
 マリアも内心分かっていたのだろう。 
 こんな事をしても小鳩は帰ってこないと、天才児のマリアに分からない筈がない。

 でも頭が感情に追いつかなかったのだろう。 
 悲しくて……悲しくて……何かせずにはいられなかった。

 
小鷹「…………」  

マリ「もう……うんこきゅうけつき……小鳩と……会えないのか?」

小鷹「…………ぁあ、そうだ……ごめんなマリア」

マリ「おにいちゃんと三人で……もうあそべなぃ……ウウウゥゥゥワワァーーーーー」

 
 涙が止まらない 
 あの時あんなに泣いたのに 

 医者に別れを伝えられた時も
 棺に入る小鳩を見た時も
 焼かれて骨になった時も

 あんなに泣いたのに 
 涙が止まらない





 マリアはずっと俺とケイトに抱かれながら泣いていた。
 「いやだ」「もう一度だけ話したい」「まだ話して無い事が有る」
 泣きながら訴えるマリアは俺の心の中そのものだ。
 俺はあの日以来泣くしかなかった。こうしてマリアの様に心をぶつける場所が、
 届かない想いを声に出す相手が居なかった。
 こうしてマリアの想いを聞いていると、言えなかった自分の気持ちを代弁してくれている様で
 少し心のつかえが取れていく様だった。


 小鳩もう一度会いたかったよ……兄ちゃんは
 話したい事山ほど有ったんだぜ……?
 マリアと喧嘩しながら三人で……
 ————。
 

ケイ「……おにいちゃん、ごめん私マリアを怒れないよ。代わりに私がいくらでも謝るから……」

小鷹「……バカ野郎、小鳩の親友をいじめたら……俺が小鳩に怒られちまうよ……」

マリ「おにいちゃん……おにいちゃん……」

ケイ「——おにいちゃん、今日は本当にごめんなさい。また改めてお詫びしに来るから……」

小鷹「いや、いいんだ。それよりマリアの腕、早く病院連れてってやってくれ」

ケイ「ありがとう、でもやっとおにいちゃんらしい顔に戻ってきたみたいだよ?」

小鷹「うるさい」

 泣きつかれて眠るマリアをタクシーに乗せ、ケイトは行ってしまった。

 俺は一人きりになってしまった家に戻る。
 なぜだろう?
 なぜかあんなに泣いた葬式と、今は少し違う。そんな気がした。
 俺はうらやましい。 
 小鳩とマリアが。

 さっきのマリアの行動は大人が見たら、ばかげた子供じみた行動なのかもしれない。 
 でも俺は小鳩をうらやましいと思ってしまった。
 俺が死んだ時、あそこまで泣いて行動してくれるような人がいるだろうか?
 居るかもしれないし、いないかもしれない。それはわからないけども
 今の俺には自信が無い。
 逆に周りで誰かが死んだとしてあそこまでの行動が出来るだろうか?
 隣人部だったらどうだろう?
 夜空が、星奈が、理科が、幸村が……
 わからない。
 ただそんな事を考えるより、もっとやらなくてはならない事があるはずだ。
 大切な人を失う悲しみ、それはいつ訪れようと悲しいはずだ。
 だったら俺は…… 


小鷹「汝、隣人を愛せよってか……」



あとちょっとでラストなんですが、修正がここまでしか終わらなかったので
また明日にでも修正出来次第、載せたいと思います。

一回見てくれた人が居れば、「大して変わってネーヨ」と言われるかもしれません。
すみません。
前回は人物名を間違えるという決定的な間違いしたものですから。。。
一応html化?ってのを依頼してから新しく立てたのですが、間違ってたら教えて下さい。

ここまで見て頂いてまぁまぁと思って頂いたら、続きも見て貰えると嬉しいです!
それでは。。。

ありがとう

続き行きます



2日後、学校に戻った俺はいつもの2倍、いや5倍以上の注目を浴びる事になった。 
小鳩の件も有るが、多分原因はこの頭だ。 

あの日俺はすぐに髪を黒く染めた。 
今まで俺は「母さんとの繋がりを失くしたくない」という思いが有った。
それはもちろん今も変わらない。

 
でもこれからは俺の心だけで留める事にする。 
それよりも楽しく毎日を過ごす俺の姿を母さんや小鳩に見せてやりたい。

小鳩なんかは「あんちゃん!」と言って怒るかもしれないが、あいつだけ
友達に恵まれてるなんて、兄弟でずるいだろ? 

隣人部にもすぐに顔を出した。 
夜空は「髪の毛ごときでリア充になれるとでも思っているのか!」と言い
星奈は「ようやく私の下僕らしくなったじゃない!」と言っていたが、後で理科が
2人とも泣いて喜んでいたと教えてくれた。
やっぱり良い奴らだ。

小鷹「小鳩、あんちゃんは頑張るからな……」





 あの日から四十九日後——。



マリ「なぁおにいちゃん、きょうはなんのひだ?」

小鷹「死んだ人が天国に行く日……だったかな?」

ケイ「マリア今日はお前おとなしくしてなよ!」

マリ「う〜わかってるのだ!クソババア」

ケイ「な、ん、だ、っ、て〜」

マリ「ぎゃーいたいのだ!やめろクソババァ!」

小鷹「やれやれ……まぁこれがこの姉妹の日常か」

幸村「兄貴、客人が来られました」

小鷹「おっ悪いな、幸村。受付みたいな事やらせちゃって」

幸村「兄貴のお役に立てて、光栄の極みにございます」

小鷹「(……これもいつもどおりということか)」

幸村「……兄貴、差し出がましいようで申し訳ありませんが——」

小鷹「何だ?」

幸村「今来られた方々は……」

小鷹「あぁ、分かってる」






ドラ「……私にこんな席を設けて頂き申し訳ございません」

両親「何度お詫びを申し上げても足りない事は重々承知した上で、再度お詫びに上がりました」

小鷹「皆さん、出席して頂いてありがとうございます」

ド両「……いえ」

小鷹「少し話をさせて下さい」

小鷹「……みなさん、あの日から俺は毎日が辛かったです なぜ小鳩が……なぜ俺の妹なんだと」

ド両「…………本当に申し訳」

小鷹「いや、すみません。違うんです、そうじゃないんです」

小鷹「俺は正直今も小鳩に会いたくてたまらない あいつの為においしいご飯を作って待っててやりたい、とか色々考えてしまう。」

小鷹「でも辛いのは俺だけじゃない、みなさんにも大切な人がいる」

小鷹「だから今日でみなさんを大切な人の所にお返しします。」

小鷹「小鳩はやさしい妹でした。だからみなさんを苦しめるような事はしないし、させたくない」

小鷹「だから今日で終わりにしましょう」

小鷹「今日からまたやり直しましょう」

ドラ「……うぅぅ……ありがとうございます……ありがとうございます……ありがとうございます……」

両親「本当に……本当に……申し訳ありませんでした……うううぁぁぁーーー」





マリ「みんな何をしているのだ?」

夜空「小鷹の妹を弔っているのだ」

マリ「弔う?」

夜空「お前は天才じゃなかったのか?」

マリ「うるさい!うんこよぞら そんな知識は必要無いのだ!」

星奈「小鳩ちゃんが天国行ける様に皆でお祈りしてたのよ」

マリ「てんごくへ?てんしみたいだな」

星奈「そうよ、小鳩ちゃんは天使なのよ」

マリ「そうか天使か……」

マリ「天使になったんなら……」

マリ「きょうからはトモダチだな」


おわり

あぁ最後まで書ききれて良かった……。
初めて書いたので、修正含めて完結させれた事が嬉しい。

今度はもうちょっと笑えそうなのを書こう。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年04月20日 (水) 00:27:33   ID: xo-z6jQe

ガチで泣けた・・・

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