モバP「ひねくれた君の名前」 (22)

P「中高生をメインに相手にするアイドルプロデューサーとして」

P「スカウトで声をかけた子の名前が読めない、なんてことではやはり恥ずかしい。そこで」

P「今時の難読ネーム読解検定試験の勉強を始めることにした」

P「では早速」

『奈智須』

P「」

P「『なちす』しかない……あ、正解」

P「幸先よく読めて嬉しいけど心の中ではドン引きです……」

P「次だ次」

『天使』

P「……『てんし』? いやそれじゃ普通か……普通って言葉を何よりも屈辱に感じる人たちがつける名前だからな……」

P「『騎士』って書いて『ないと』のノリで……『えんじぇる』! どや!」

『がぶりえる』

P「そのてがあったかー。あーもー無理。性別も不明じゃん」

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フンフンフフフン…フンフフンフヒッ…フフフンフフンフンフヒフフン……

P「おやこのメロディーは」

??「フンフンフフフンフヒフヒフフン」ゴソゴソ

P「ぼっちのこー星輝子ー♪」
 
輝子「フヒャッ!?」

P「こら。デスクの下に潜んで何してんだ」

輝子「フ、フヒッ…み、見つかった……」ゴソゴソ

P「テーマソングの鼻歌を鼻ずさんだのが運のツキだったな」

輝子「き、気分がのっちゃって、思わず……フヒ」ゴソゴソ

P「で、俺の外出用革靴にキノコ押しつけて何してる」

輝子「フフ…Pの革靴いつもいい感じに、む、蒸らされてる……きっといい苗床になる、はず…フヒヒ」ゴソゴソ

P「俺の身につけるもんの中で一番高いよそいき革靴なんだ。そんなところに友達を増やすのはやめてくれ」

輝子「た、高い?」

P「ああ。高いんだ」

輝子「……こ、国産松茸、何グラム買える?」

P「え? えーそうだな……750くらい?(国産松茸のグラム単価なんて知らねえよ)」

輝子「フッヒャ! こ、高級……」キラキラ

P「そ、そう。高級なんだ一応(一体いくらってことになったんだろうか……)」

輝子「……このフクザツな臭いも、松茸750グラムの価値…フヒ」スンスン

P「臭いについては触れてくれるな。ずーっと履いてんだから」

P「……そういえば」

輝子「……?」

P「輝子は初対面からあまりにキャラがあれだったから気にもしなかったけど」

輝子「あ、あれって……? ぼっちなこと以外、と、特に際立った個性なんてないよ…フヒヒ」

P「いやいや。指摘するのもバカらしいわ」

輝子「フヒ……」

P「それは置いといて。輝子ってなんで『しょうこ』なんだ?」

輝子「……P? それは、あ、あれ? 『ああキノコ。貴方はどうしてキノコなの?』的な問いかけ?」

P「違う。全然違う」

輝子「違う……? フ、フヒッ、全然わからない…」

P「キノコの力借りたらわかるかも? ほれ」ポイ

輝子「フヒ」

輝子「ヒャッハーーーーーーーーー!! ブルシーーーーーーーーーーーッッットゥッ!!!」クワッ!

P「余計に対話不可能か……」

輝子「フ、フヒヒわかった気がする……親友の言いたいこと」

P「心で通じ合ったか……」

輝子「『輝』って文字には『ショウ』って読み方……ない。そゆこと、だよね……?」

P「ほんとに通じてる! キノコの力は偉大なり」ナムナム

輝子「わ、私も…漢字と読みの関係は…よくわかってない…」キノコイジイジ

P「あら」

輝子「あまり気にしたことも…ないし」キノコナデナデ

P「そうか……輝子は自分の名前好きじゃないのか?」

輝子「……? 好きか…嫌いか?」

P「ちょっと前にな、お前と名前の読みが一文字違うだけの子が言っててな。「自分の名前が平凡で少し悲しい」って」

輝子「へいぼん…」

P「輝子は漢字と読みの関係で言えばちょっと変わってるけど、字面と読み方自体は普通だろう?」

輝子「フフ…そう…ぼっちなこと以外、私はことごとく普通で…平凡フヒ」キノコペチペチ

輝子「でも別に、平凡で嫌だと思ったことは…ないよ」

輝子「お隣さんみたいなの…か、かわいい名前だとは思う…けど」

P「お隣さん……?」

隣人M「ひぃ」ビク

P「……」

隣人M「ひ、引き合いに出さないでほしいんですけど……もっとかわいい名前の人いっぱいいますけど……」カクレカクレ

P「ヤツめ……いつからいたんだよ……」

輝子「フフ…もうすっかり…お、お友達フヒ」

P「そうか、よかったなぼっちじゃなくなって。じゃあ輝子は自分の名前好きなんだ」

輝子「好き、とか嫌いとか…考えたことない…。嫌じゃない、けど」

P「そうなのか」

輝子「し、親友のPは…どう…?」

P「うん?」

輝子「…さっきのPの話…き、聞こえてた…。『騎士』で『ないと』、『天使』で…る、るしふぇる?」

P「いや『がぶりえる』。余計ひどくなってるからそれ。堕天使だし」

輝子「フフ間違えた…その『がぶりえる』とかみたいな…そういうのと同じ系統だと…思う?」

P「あー……」

輝子「フ、フヒヒ……だからどうってことは…ないけどね…」

P「確かに、字と読みがかい離してるって意味じゃあ、人によってはそっち寄りと取る可能性もあるかもだけど……」

輝子「フハハハハハハハハ! アァァァァスホォォォォォォォォォォルッ!!」クワッ!

P「ひぃ!」ビク

輝子「フ、フフヒヒ…なんでもない…続けて」

P「で、でも字面はまっとうだし、読みも奇をてらったものでもないし」

P「親御さんがどうしても「しょうこ」って読みの名前をつけたかったのか、そのへんの事情は俺にはわからんけど」

P「一見平凡だけど少し捻りを利かせた感じ、素敵だと思うな。俺は好きだよ」

輝子「そ、そう…フ、フフ」キノコイジイジ

P「輝子の名前にはいいところが2つあるんだ」

輝子「2つ…」

P「ひとつはもちろん『子』って字だ。輝子、『子』のつく名前は古臭いと思うか?」

輝子「ま、まあ…ちょっと、思う」

P「そうか……あのな、『子』って文字には『一から了まで』つまり『はじめから終わりまで』って意味があるんだ」

輝子「ほ、ほう…」

P「だから『輝子』って名前には」

P「『生まれた瞬間から、そして臨終の瞬間まで輝き続けてほしい。輝きのある生涯を送ってほしい』」

P「そういう意味が込められていることになるんだよ」

輝子「…!」

P「親御さんがそういう意図で付けたのかはわからないけど、そういう意味づけができる名前なんだ」

輝子「輝く…ヤコウタケの…ように?」

P「そ、そうだ。ヤコウタケのようにだ(後でググろうヤコウタケ)」

輝子「フ、フフ…わ、悪くない、ね…フヒヒ」

輝子「も、もうひとつは…」キラキラ

P「苗字との関連性だな」

輝子「苗字…」

P「うん。『星』が『輝く』って読めるだろう?」

輝子「う、うん…」

P「苗字と名前の一体感っていうのかな。そういうのってやりたくてもなかなかできないもんだよ」

P「例えば、あくまで例えば『森久保』とかだと、一体感のある名前って付けにくいだろ」

隣人M「ほ、ほっといてほしいんですけど……いぢめなら間に合ってますけど……」

輝子「な、なるほど…フヒヒ…Pはやっぱり、面白いこと考える…」

輝子「でもやっぱり…どうして『しょうこ』なのかは謎…フフフ」

P「確かにな。親御さんに聞けばわかるだろうけど……」

輝子「フ、フヒ…いい…謎は謎のまま…たぶんうちの親、『輝』の正しい読み方…知らなかっただけだと思う」

P「挨拶に行った時は、お前のご両親とは思えないほどきちんとした人たちだったぞ。教養もありそうな」

輝子「フ、フフ…P騙されてる…必死で取りつくろっただけ…うちの親、ほんとは私以上に…ちゃらんぽらんフヒヒッ」

P「マジか……」

輝子「でも…『輝』は『キ』って読むから…」

P「お、おう。そうだな」

輝子「真ん中に『の』を補えば…あらフシギ。『キノコ』のできあがり…フヒヒ」キノコナデナデ

P「お、おう……そうだな……」

輝子「うちの親、ちゃらんぽらんだけど…先見の明はあるみたい…フヒ、フヒヒ」

P「ありすぎだろう。自分の娘がキノコを無二の親友にするなんて誰が思うよ」

輝子「今までそう思ってきたけど…フフフ…Pのおかげで…少し意味が増えた、かな」

P「……そうか」

輝子「フフ…ヤコウタケのように…輝いて生きる…ヤコウタケのように…フヒッ、フヒヒ」

壁--------------------------------------壁

??「……」チラッ

??「……Pさん」ギリッ

??「なんでしょう……何か気に入りません」

??「一度、軽く論破してあげたほうがいいかもしれませんね」

フフ、おしまい。最後のは蛇足フヒヒ

やはりPの言う通り
姓である「星」と関連のある「輝」っていう字を使いたかったんだけど
「輝る」という響きは流石に古くさいので
訓の発音が同じ「照る」の音読み「ショウ」を「輝」に当てたって説はどうだろう

星が「輝く」とは言うけど、星が「照る」とも「輝る」ともあまり言わないだろうし
なにより「ショウ」という音の響きから連想される「星の輝き」は遥か宇宙の彼方からでも地球に届いて、人の眼と心を奪わずには置かない、鋭くて力強い光だと、少なくとも俺はおもうね
名は体を表すとは言うけど本当に美しい名前だよ

まあ『胞子 キノコ』→『ほし きこ』が由来なんだろうけどね

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