佐天「未経験の娘を下半身で物事を考える淫乱にする能力かぁ」 (52)


「おっす、何してんのあんた?」

上条当麻が公園のベンチに座り、ぐでーっといった感じで伸びていると聞き慣れた声で呼び掛けられた。

「……疲れたから休憩してんだよ、上条さんにはまだ夏休みが来ないんでねー」

「ふーん?」

さして興味無さげな返事をしつつ、声を掛けた少女…御坂美琴は上条の伸びているベンチに腰を掛けた。

「お前こそ何してんだよ受験生、今は大事な時期なんだから勉強しなさいベンキョー」

「大丈夫よ?私基本的に何処受けようとまず落ちないから」

「……………あっそう」

さすがは名門常盤台中学のエリート様ですねー?と若干嫌味っぽく返しておく、こいつならホントに何処だろうと余裕なんだろう、自分で話を降っておいてあれだがさも当然のように言われるとちょっとムカつく。
こちとらギリッギリの進級で更には今年も留年の危機が早くも付きまとっているのだ。
卑屈っぽいがなんか馬鹿にされてる気になってしまうのも仕方ない。と、思う。

「うーん、勉強ねぇ…私が教えてあげよっか?」

「……………」

本来なら教えてせんぱーい(はぁと///)とか言うべきである筈の年下の受験生が言うに事欠いて教えてやんよぶぁか(見下した眼)とか言ってやがる。

なので上条当麻はこの言葉を吐き捨てるのだ。

「お前に教わる事な無い!!馬鹿にすんなよ御坂さんよぉ!?あぁん!?」

知り合いの元スキルアウト伝授の啖呵を切りつつ(但しそいつはパシリに定評がある)美琴の提案を拒絶する。不幸な少年こと上条当麻…彼にだってちょっとはプライドがある。

「進級…ヤバいって言ってなかったっけ?私あんたの高校レベルの問題ならほぼ覚えてるわよ?休み明けのペーパーテストでヤマはるぐらいは余裕だし」

「……………………マジで?」

「マジよ、試してみる?」

「…ご指導の程宜しくお願い致します美琴先生」

プライドで進級は出来ません。
思考を慣性ドリフトで180度反転させて上条当麻は年下の女の子に頭を下げた。


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場所は代わり、現在地は上条当麻の住まう男子寮。
上条当麻はさっそく教えを請おうと御坂美琴と共に自らの部屋に帰宅していた。先ほどから既に2時間程経過している。

「………あんた、ホントに年上?」

呆れた顔をした御坂がテーブルに頬杖を付きながら言った。

「…こんなの常盤台では一年生で習う所よ?」

お前が頭良すぎるんだよこんちくしょう。
…という言葉を飲み込み、上条は代わりに「すんません…」とぼそりと呟く。そして正直ちょっと涙目になっている。

「……まったくもう、こりゃみっちり叩き込まないと駄目ね、あんた補習終わっても夏休み返上で勉強ね?暇だから私もとことん付き合ってあげる」

ニヤリど口を曲げ意地悪そうに言う御坂。

上条はなんだってー!?だの勘弁してください!?だの不幸だー!?だの叫ぶが御坂美琴は容赦しない。

「あんたの為に忙しい時期真っ最中、受験生の美琴さんがあんたの助けになってやろうって言ってんのよ?なんか不満でもあるのかなー?」

上条はぐぬぬという感じに呻きながら、御坂の言い分はとても悔しいが正論なので何も言えない。

「…不幸だ」

「何言ってんの、将来的に考えればラッキーでしょ」

「………ぐぅ……」

上条は本気で泣きたくなった。

「そういやあのシスターさんはどうしたの?」

上条が御坂美琴先生に解けと強要された問題集とにらめっこしていると、件の先生がぼそりと呟いた。

「…インデックスなら今ホテルにでも居るんじゃないかな、あいつの知り合いが今学園都市に来てるから一緒に居る筈だ」

「…ふーん」

しばし沈黙。

「……………」

「……………」

更に沈黙。

「…………」

「…………」

インデックスが居ない事がどうかしたのかと気にはなるが、別にそれがどうかしたのか。

……まあ、こっちは問題集に集中してるし手持ちぶさたで暇なのだろうと思い。特に気にしない事にした。

しかし。

「じゃあさ、今日は帰って来ないの?」

…なんで?

御坂にインデックスが帰って来ない事が何か関係あるのかなー、と疑問に思うが一応素直に答える上条当麻。

「…多分泊まりだな、行く時朝ばいきんぐってやつも堪能するかも!!とか言ってたし」

「………そっか…ふぅん…」

「…………」

「…………」

また沈黙。

上条は御坂が何を言いたいのか分からない。

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「………なあ、これどうやるんだ?」

「ああこれ?これはこっちを先に計算して……それから……」

「あーなるほど、そういう事か」

「こっちの問題の応用ってだけだから一度解ければ解るでしょ」

「…だな、サンキュー」

「ハイハイ、頑張んなさい」

「…………」

「…………」

「……そういえば、さ…」

「…んー?」

「…………」

「…なんだよ?」

「…二人っきりだね」

「ぶふぉぉっっ!?!?」


いきなりなにいってんだこいつ。

上条当麻はいきなり過ぎる御坂の発言に思わず吹き出した。

「…………」

「…………」

またしても沈黙。

…御坂さん?先程の発言の意味はなんなんでせう?
と、聞き出したい…どういうつもりでそんな事言ったんだこいつは、からかってんのか?

「……………」

だが、聞き出そうのもなんか聞いて良い雰囲気じゃないような気がする。

御坂美琴は身体ごと明後日の方向を向いて俯いている。

「…………」

「…………」

沈黙。とにもかくにも沈黙。

「…………」

「…………」

気まずい。

なんか妙な空気になってすごく気まずい。

上条はこういう時の女の子とのコミュニケーションの取り方なんて知らないので、とりあえず困って自らのツンツン頭をガシガシと掻いてうんうん唸るぐらいしか出来なかった。

「………うーん…」

実際にガシガシ頭を掻いていると、御坂がいきなり立ち上がった。

「………喉渇いた、何か飲み物ある?」

上条に背中を向けたまま要件を告げる。

なんとなく身体が強張ってる気がするが何故とかどうとかはもちろん上条当麻には解る訳もなく、とりあえず、「冷蔵庫に麦茶があるぞ」…と、聞かれた事にだけ答えた。

「…………あ、ありがと…貰うわね?」

「ああ、どうぞどうぞ」

ギクシャクした動きでキッチンへと向かう御坂。

(…なんか変だなあいつ…)

しつこいようだが上条当麻には何がなんだかまったく分からない。


「…………」

グラスに麦茶を注いで、御坂は上条の居る部屋へと戻ってきた。

「………あの、御坂?座んないのか?」

何故か上条の目の前で棒立ちする御坂。
麦茶入りのグラスを握りしめてプルプル震えている。

「…………」

「…………おーい御坂さん?」

「…………」

「…おいってば、どうしたんだよ?」

「………」

「………………御坂さーん?」

「……す、座るわよ…もちろん座るわよ」

なにやら覚悟を決めたような目付きをしながらようやく反応する。

そして座る。

グラスをテーブルに置いて、上条とテーブルの間に隙間を作るようにテーブルをずらして、上条の膝の上に。

「………っ…」

「…なにしてんのおまえ」

「…べ、べべべべつに良いでしょ」

上条は今起きている状況に理解が追い付いて居ない。

とりあえず太ももに柔らかい感触があるのとなんか良い匂いがするくらいしか感想が出てこなかった。

ちょっと抜ける

いいわすれたがガチエロR-18のほのぼのしてるのは冒頭のみ鬱シリアスになる予定

佐天さんスレだが佐天さん大好きな奴は読まない事を推奨する。

上条さんが建設したフラグを肉体的に強制徴収させるとだけ言っておく。

言っとかんと非難が凄そうだしやっぱり先に言っておくわ

「…………」

「…………」

膝の上でプルプル震えている御坂は、とりあえず退くつもりは無いらしくただ無言でそこに居座っている。

「…なあ御坂、頼むから退いてくれよ」

「………やだ」

短く、ただ一言のみの拒否。

上条からすればこの御坂の行動に何の意味があるのかなんてまったく分からない。

ただ、こういう事は不味いんじゃないのか?という思いだけが時間の経過と共に強くなって行く。

「……御坂」

「やだ」

「…まだ何も言ってないだろ」

「どうせ退けでしょ?いや」

「………………」


「……何したいのかさっぱりわからないけどさ、いつまでも座られててもな」

「……………っ……」

上条の言葉にピクリと反応する御坂。先程まであった身体の震えも止まる。
そして、目の前…テーブルに置いた麦茶のグラスを手に取り、一気に飲み干す。

「……ぷはっ……………………やっぱりあんたはわかんないんだ、ここまでしてもさ」

空になったグラスを強く握りしめたまま御坂は呟く。

先程までと声のトーンが違う。

囁くような声なのに、よく通る…冷静な声。

「…………御坂?」

その場から動かずに、上条の方へと向き直る御坂。

「それともさ、こんな事くらいじゃなんとも思わない?私としてはかなり勇気が必要だったんだけど」

「っ!?ちょ…近い顔近すぎ!?」

至近距離で見つめ合う体制になり、上条はようやく慌てふためく、呼吸をすればその息が感じられる程近い。

「…………へぇ………あんた、私にもそういう反応するんだ?」

上条に御坂美琴の言葉を聞く余裕は無い。いきなり振り向いて、これ以上近づくと触れあってしまいそうな程の距離に、御坂美琴の顔があるのだ。
心臓が跳ね上がるような感覚を感じる。
顔の表面が焼けるように熱く、息苦しい。
喉が詰まり。声もまともに出せない。

それを見て御坂美琴は少し嬉しそうに、僅かに微笑む。

「っ!?な、ちょ…!?」


どうにか離れようともがくが上手く身体が動かず…仰向けの状態になる事しか出来なかった。

…御坂美琴を、上に乗せるような状態で。


「…………あんたってさ、やっぱり鈍感」

「………!?」

テーブルに空のグラスを戻し、御坂は言う。

「多分さ、どうして私がこんな事するか……わかってないんでしょ?」

上条に跨がるような体制で、御坂は言う。

「きっと他の子にもこんな感じなのよねきっと、あんたそういう奴だし」

上条の両頬に手を添えて、御坂は言う。

「………これ以上の事したら、あんたは…上条当麻はわかってくれる?」

赤みを帯びた頬と潤んだ瞳、震えるような声色で御坂は上条に言葉を紡ぐ。

「……みさ……んっ!?」

上条の放とうとした言葉は、御坂美琴の唇によって妨げられた。

震えて、強張った唇。

訳が分からないままに、何一つ理解出来ないままに、上条当麻は御坂美琴と口付けをしていた。

「…っ…!?」

「………ん……っ……!」

御坂の唇…それが自分の唇に触れている。

キスをされている。

どうして?

何故?

唇と唇が触れるだけの、簡単なキスだ。

だが、あの御坂美琴とのキス、だ。

いきなりどうして?

…理由は?

そんな疑問符ばかりが付いた言葉が頭を過る。

「…………っ…!!」

…駄目だ。

これは間違っている。

上条当麻は、未だに触れあっている唇を離させる為に御坂美琴の身体を掴み、引き剥がす。

…瞬間、御坂美琴に触れたら右手が何かを砕く音が響いた。


「…………!? 今…」

「…ぁ……」

確かに聞いた。自身の右手に宿る…幻想殺し、それが何か異能の力を砕く音を。

(………御坂に何かしらの影響を与えていた?一体どんな…)

何者かの能力なのか、それとも…魔術サイドからのものなのかは分からない。ただ…御坂美琴に影響を与えていた、それだけは分かる。

「………御坂良く聞いてくれ、お前に何か異能の力が働いてた」

「…………」

「…お前が何かおかしいのは多分その影響だ、だから……」

「……………」

説明しようと身体を起こす。御坂の肩に手を置き、諭すように。

……だが。


「…………御坂? 聞いてるのかよ?」

「…………」

無言。

御坂美琴は上条の言葉に、ただ涙だけで応える。

「……泣くって事は…やっぱり自分の意思でこんな事したって訳じゃないんだな?」

御坂美琴は何かの影響を受けおかしくなっていた。
そして、今は幻想殺しによりその異能の力から解放されている。上条当麻はそう考える。

「御坂…誰かに能力を使われたとか、怪しい奴と接触したとかなかったか?」

上条当麻の思考回路はこうだ。
御坂の意思に反するような行動を取らせた…この異能の力の使い手は許す事が出来ない。
放置したらどのような影響があるのか、どこまで危険なのかは分からない。だが、それでも御坂美琴という少女を侮辱したような力だったのだ止めない訳にはいかない。

「御坂、こんなこと…お前の意思じゃないんだろ?分かる事だけで良い、教えてくれ」

「…………………………」

御坂美琴は上条を睨み付けるよう見据える。

「あんたなんにもわかってない」

恨みがましく、苛立つように、その瞳を濡らしながら。

「………わかってないって…どういう事だ?」

「ここまでして、そんな反応?せめてさ…はっきりと拒絶してよ…」

どういう事なのか本当に分からない。この御坂の反応、先程までと大差ないように思える…右手…幻想殺しを触れさせているにも関わらず、だ。

「能力とかそんなの知らない、私は自分がそうしたいから、あんたとこういう事したいって思ったからキス…したのよ………」

「………え…」

御坂の言葉に上条はますます訳が分からなくなる。

自分の意思?

俺と?

御坂が?

冗談…を言っているようには見えない、御坂の表情は真剣そのものだ。

「……………」

……なら、先程の幻想殺しが何かを砕く音は一体なんだったのか?

「………どういう事だよ…ホント」


肩に乗せられた手を、御坂は掴み…自らの胸元で抱き締める。

「………御坂?」

掴まれ、抱かれた右手から伝わる鼓動と熱が、上条に息を飲ませる。

震える唇から漏れる吐息が、はっきりと聞こえてくる。

涙で滲む瞳、何かを訴えかけるような眼差し。

「……………………御坂…」

御坂は言った。

自分の意思だと。

「……………本当に…関係ないのか?」

もし、そうなら…信じられないがそれしか考えられない。

「…御坂…それって、つまり…」


…………

…だとしたら?

自分の行き着いた答えが正解で、それに対しての自分の答えは?

………………

上条当麻は、御坂美琴になんて答えれば良い?


…………………

「………御坂…お前は……」


「…………もう良いわよ、言わないで」

しかし、上条が二の句を告げる前に制止が入る。

抱き締められていた右手が自由にされる。

「…………その先は…ちょっと聞きたくないから」


「………でも御坂…!!」

俯き、掠れた声が響く。

「……あんたの顔見れば判る、そんな…辛そうな顔してたら判る」

瞳を濡らしていた涙が溢れ、流れ落ちた粒が彼女の太股に滲む。

「…あんたは…私の事好きじゃない…!!」



「っ!!そんな事っ…!!」

御坂の言葉に憤る上条、彼はそんな風になど微塵も思っていない。

「…そんな事無い?なら、どんな風に?」

「……っ………」

御坂の問いかけに言葉を詰まらせる。

上条当麻には御坂が望んでいるであろう答えは、応える事が出来ない。

地の文てなんか睡魔がおそってくる。

ごめんねる、今日疲れてんねん


「………御坂」

声を掛ける。

だが、その先はなんと言えば良い?

どうすれば目の前の少女を傷付けずに済む?

どうすれば自分自身が納得出来る言葉を語る事が出来る?

「…………っ…」

上条当麻には解らない。

「………」

「………」

エアコンの作動音、ベランダの向こう…遠くから聞こえてくるセミの鳴き声。

傾きかけた太陽からの日差しが、ガラス越しに背中と首筋をジリジリと焦がしていく。

「………」

「………」

何も言えない。

何も言って来ない。

向き合い、見つめ合うだけで何も出来ない。

捕まれた右手に汗が滲む。

熱い、自分の体温なのか、それとも御坂美琴の体温なのか。

「………」

「………もう、いいや、ゴメン」

ふいに、握り締められた手を解放された。

「やっぱりさ、思った通りだったわ…ゴメン変な事言って」

妙に張りつめたような声で御坂は言う。

「よくわかんないけどなんだかね…その、どうしても確めたくなっちゃって」

立ち上がり、自分の鞄に手を掛ける。

「………ホントゴメン、だから、気にしないで」

上条に背を向けて、部屋から出ようとする。

それを…

「……っ…御坂…!!」

上条は、御坂美琴の手を取り、引き止めた。

何故引き止めた?

(………このまま行かせられない…そう思ったからだ…!!)

何故そう思った?

(……泣いてるから、俺が泣かしたからだ)

何故?

「………………っ……!!」

「……どうして、引き止めたりすんのよ…バカ」

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