ホテルレムレース (13)

そのホテルを見つけたのは、歩き疲れてもう動く気力もない...そんなときだった。

とにかくどこか落ち着けるところが欲しかった俺は、ホテルの正面玄関で嬉々とした。

玄関に入り、ロビーに行くと小さな受付が正面にあった。

受付には向かって左側に男、右側に女がいた。

男「あ、お客さんだよ、ストラ。」

女「あら、本当ね、ウェスティス。」

男も女も、まだ働くような年なのだろうかというくらい若い。実年齢は知らない。見た目だけの判断だ。

ウェスティス「えーと、最初はなんて言うんだっけ。」

ストラ「あらあら、なんだったかしら...いけない、マーテルに怒られちゃうわ。」

ウェスティス「マーテルに怒られるのは嫌だな。」

ストラ「マーテルに怒られるのは嫌ね。」

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二人は、客である俺のことをほっぽらかして奇妙なやり取りを続けていた。

ウェスティス「今朝もマーテルに怒られたばかりさ。」

ストラ「カード当ては、もっと隠れてすべきだったかもしれないわね。」

ウェスティス「でも、ストラ。100枚とも全部違うカードだったじゃないか。」


「いい加減にしてくれ、俺は疲れてるんだ。チェックインの手続きをしてくれないか?」


奇怪な2人組のやりとりを突っ立ってみてる体力はもう俺にはない。

うんざりした俺は、受付のテーブルをコツコツとゆびで叩いて、イライラしていることを暗に示した。

ウェスティス「どうする?お客さん怒っちゃったよ。」

ストラ「どうしましょう。とにかくチェックインの手続きをしなきゃいけないわ。」

ウェスティス「うぅむ...そうだ。この紙に名前とか書いてもらってマーテルに渡せばいいんだ。」

ウェスティスという青年は、青っちろい顔を少しはにかませて俺に手続きの紙を手渡してきた。

ストラ「では、えぇと、紙の空欄を全て埋めてくださる?」

簡単な手続きを済ませた俺は、受付の二人に紙を渡した。

ウェスティス「次は何を聞くんだっけ?」

ストラ「何か数字を聞くんじゃなかったかしら。」

ウェスティス「あ、そういえば朝もそんな話を...」

俺は、客云々ではなくもう人としてダメな二人なんじゃないかと感じ始めていた。

誰かが話を本筋に戻してもすぐに別の話に変わって行ってしまう。しかもそれに脈絡がないと来た。

「宿泊の期間は未定だ!金はしばらく宿泊できる分を払う。」

ちくしょう。こいつらの無駄話を聞かされているうちに頭がくらくらきちまった。

「あぁ...くそ。部屋の鍵をくれ...」

なんだ、急に目眩がしてきた。

ウェスティス「あれ、大丈夫かこの人。」

ストラ「あらあら、大丈夫かしら。」

大丈夫じゃないお前らに心配される筋合いはないんだよクソッタレ!

なんなんだ、厄日じゃねぇか。

足から力が抜けて、尻餅をついてしまった。情けねぇ。

まだあの二人が何かくっちゃべってる気がする。

だが何を言ってるのかまでは聞き取れない。

視界が歪んで見えてきた...。

クソッタレ...なんてホテルだ....。



.........。

椅子に座っていた。

何で椅子に座っているのかは分からない。

こいつは多分夢なのだろう。

最近夢なんざ見てなかった気がするが。

俺の座っている椅子が置いてある部屋は、いや、部屋ってほどの広さでもない。

狭い空間に椅子だけ置かれているんだ。

強いて言うなら、正面にドアがある。それしかなさそうだ。

このまま動かないってのもつまらない。

夢と分かっているんだったら、何も怖がる必要はない。

俺は椅子から立ち上がって、歩いて行き、ドアの前に立った。

ドアノブに手をかけた。

そしてその手をひねり、ドアノブをまわす。

あとは力を少しばかりいれてこのドアを開けるだけだ。

しかしそれができない。

一体何が起きてるんだ。

開けることが出来ないんだ。

その時、なぜか俺は悪寒を感じた。

顔中に、小さな虫が張り付いたような、そんな胸くそ悪い気分になった。

俺はドアノブから急いで手を離した。

「お...マジかよ....ッ!!」

悪寒は消えた。

最悪な気分も多少はとれた。

だが、ドアノブに張り付いた俺の手首から下はそのままだ。

こんなあっけなく手がちぎれるもんなのか!?

くそっ、なんだ熱いぞ。やけに熱い。

ちぎれた方の腕を見たが血が出ているってわけじゃあない。

でもどうなってるか、それはわからないんだ。


熱い...。

人ってのは、コミックや子供向けのアニメのように悪夢を見たからって、上半身を急に起こして起きたりはしない。

今だったら、そいつを証明してやれる。

実際、俺がそうだから。

目だけはぱっちりと開いた。

そして襲ってきたのは、とても不快で...粘着質な...倦怠感だ。

元々、寝起きがいいってほどじゃないが、こんなに身体がムカムカしているのは、生まれて初めてかもしれない。

とにかく起き上がる努力はしないとな。

俺は、各部位ごとに力を戻して行って徐々に起きて行くという方法をとった。

腕、手、首、足

どんどん動かしていって、ある程度動くようになったら一気に起きる。

仕事柄、仮眠を取ることが多いせいで、飛び起きるときにこういうことをするのが癖になっていた。

各部位がよくほぐれてきた。

一気に上半身を起こした。


辺りを見渡してみたが、どうやらホテルの一室のようだ。

自分で歩いた記憶がないから、きっとあの二人が部屋まで運んできたんだろうな。

ベッドからおりた俺は、TVラックの上に置いてあった一切れの紙に気づいた。

『ウィル=アンダーソン様へ 302号室が貴方のお部屋となっております。朝食は、地下一階の会場となっておりますのでよろしくお願い致します。ホテルレムレース マーテル=トニトルス』

マーテル...トニトルス。

そういえば、昨日ロビーであの二人が名前を出してたな。ここのオーナーか?

しかし、昨日から身体を洗っていない。不快な気持ちだ。

俺は、着ていた衣類を脱いでシャワーに入った。

シャワーには例によって捻るところが二つあり、赤いシールが張ってあるところが湯が出るんだろう。

「うお、冷たっ!!」

お湯だと思って浴びたら水が出た。

ハナから水浴びだと思っていれば大したことはないだろうが、あったかい物が出ると思っていた身体には少々応える冷たさだった。

そうか。熱いお湯はしばらく待ってからじゃないと出ないのか。

俺は一度シャワーを止めてもう一度出した。

暫くしたら水もお湯に変わることだろう。

結果的に、シャワーから出てくる水が湯に変わることはなかった。

確かに、一泊分の料金は安そうだが....。

ホテルでシャワーがおかしいって、割と致命的な気がするのは俺だけなのだろうか。

まぁいい。とにかく身体を洗い流すことに関しては、一応済ませたということにしておくか。

俺は、バスタオルで身体を拭き終わると、俺と一緒に運び込まれたのであろう旅行用の鞄(ちなみに安物だ。合成皮だったかな。)を開け、中から下着や衣類を出した。

着替え終わると、俺がしばらく滞在するであろう部屋をぐるっと見渡した。

まぁ、一人が泊まるにしてはなかなかいい部屋だ。少しカビ臭いのが気になるが、これは慣れだろうな。

しっかし、暑いな。ここにはクーラーがないのか。

一応部屋の戸棚は開けてみたが、部屋の利用方法が書いた本と、ティッシュくらいしか置いてない。

あまりに暑いぞ。窓でも開けるか。

部屋の一番奥は、一面が窓になっていてスライド式になっている。

俺はカーテンを紐でくくり、窓を開けた。

期待通り、そよ風が俺の部屋に吹き込んできた。冷たいシャワーを浴びた後だと、なおさら気持ちよく感じるのは、怪我の功名とでも言うべきなのかな。

俺は部屋に備え付けてある時間を確認した。

8:25。

昨日は何も食べてない。腹が減ったな。

そういえば、朝食があるんだっけか。地下一階の会場か...。ん?待てよ?

俺は、このホテルの主であろうマーテル=トニトルスの書き置きをもう一度読んでみた。

あれ、この書き置きには会場は書かれてても時間が書かれてない。マーテルのミスだろうか。

大抵、ホテルの朝食は9時くらいに始まるイメージがある。

まぁ、それほど気にしなくても良いということなのだろうか。

マーテルの書き置きを机の上において、ベッドの端に腰掛けた。

9時くらいに行くとなるとしばらく時間もあるし、TVでもみるか。

ベッドの前に備え付けてあるTVのスイッチを入れた。

『....ハッハッハァァァァァァアァァァアア!!!ちびっ子の皆ぁ!!今日も元気に狂ってみようぜェェエエ!!!』

とてもさわやかな早朝にちびっ子が見るような番組ではないような気がする。

ごつい筋肉をして、パワードスーツみたいなハリボテを着込み、ピエロのようなペイントを顔に施した奴がTVの中でバイクに乗って暴れてる。

『悪い子は知ってるか!!?のコーナーだ!!今日はピッキングの技術~応用編~だ。好きな女の子、嫌いなクソ野郎、恥をかかせたいビッチまで用途は無限大だぁ!!


最近のTV業界は狂ってるんじゃないか。こんな番組、誰が好き好んで...

と、思った矢先だった。

隣の部屋から、ドタドタと走り回る音と、甲高い奇声が聞こえた。

俺も良くは聞き取れなかったが、多分

『いやっほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!ジェットさいこぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』

といった感じの内容が聞こえた。

ガキがこれ見て騒いでいるようにしか思えないな。朝っぱらからうるせぇな畜生。

昨日の受付も変だったし、このホテルはどうなってんだろう。

ウェスティス「このコインは、どっちが表なんだろう。」

ストラ「そのコインは、どっちが裏なんでしょうね。」

ウェスティス「見たこともないコインだよストラ。」

ストラ「どこの国のコインなんでしょう。」

ウェスティス「僕が思うに、こいつを100ぺん投げてみたら裏表が分かると思うんだ。」

ストラ「それはいい案かもしれないわね。やってみましょうか。」

ウェスティス「まずは一回目」

ストラ「あら、裏表のどちらかが出たわね。記録しておきましょう。」

ストラは、ブラックボードを持ち出してチョークで半分に分けて、そこに文字を書き込もうとした。

ウェスティス「裏表がわかっていないのにどうやって書くんだいストラ。」

ストラ「答えが分からないなら、自分で作ってしまえばいいんじゃないかしら。私は一回目を表とするわ。」

ウェスティス「へぇ、そいつはいいアイデアだ。じゃあ、2回目いくよ。」

ストラ「えぇ...あら、また表だわ。」

ウェスティス「じゃあ記録しておいてくれ。」

ストラ「わかったわ。ウェスティス。」

.....。

301号室 8:20分

女は、目を覚ました。

女「ん...寝てたのか...」

女はボサボサの赤毛をぽりぽり掻くと、ベッドからおりて何をするでもないが部屋をうろうろすると、窓際のソファに座った。

女「今何時だっけ...。」

8:21分

女「うわ...もうすぐ始まっちまうよ...なんだよ、この国でもあの糞アニメやってんのかよ...。」

新聞のTV欄をみて独り言をつぶやいている。

女「起こさなかったら...きづかねぇかな。」

床に寝ている銀髪の少年を見て女はそうつぶやいた。

少年「あひゃはは...ふひ...」

端正で、いかにも良いとこのぼっちゃんといった身なりをした少年だ。昨日から着替えてないのだろう。

女「気持ち悪ぃな、ファッキンボーイが...。」

テーブルの上においてあったタバコの箱を取ると、そこから二本取り出し口にくわえて火をつけた。

女「あー...頭おも...」

女は目をつぶった。

女(そういや、昨日の朝から悩まされてばっかりだ...。あのカウンターの双子か?なにかがクソうざかったし...。まだこっちにきて仕事の進展も少ないしなぁ....。あー、仕事やめたい...)

8:24分

女がぼんやり考え事にふけっているうちに、少年は目を覚ました。

少年「んぉ!!おい、クソビッチぃ!!今何時だぁ!!」

女「ケツの穴広げてやろうか、クソガキ。時間くらい自分で見ろや。」

少年「あぁああぁぁああぁん??俺は質問してんだよぉローゼ...。質問には答えるってのが道理だろうがよぉ」

女「テメー、数字も読めねぇのかよ。先に言えや。8:25分」

少年「『世紀末ヒロイズム ジャスティスジェット』始まっちまうじゃネェかぁ!!何でちょっと余裕もって起こさねぇんだよ!犯すぞ!!」

女「あたしを脱がすより、リモコンとってTVつけた方がいいんじゃねぇのかよ。粗チン野郎。」

女はタバコを灰皿に二本とも押し付けると、玄関の近くにあるクローゼットから着替えを取り出し、シャワールームに入っていった。

女「おい、シュヴァルツ。トイレのゴミ箱とか漁んじゃねぇぞ。」

少し腫れぼったい目を少年、シュヴァルツ=エーデルシュタインにむけてローゼ=ケーニギンは言った。

シュヴァルツ「お前の排泄物なんざ興味ねぇんだよクソアマ」

ローゼ「てめーは育ちが良いのか悪いのかわかんねぇよ。シャワー浴びるわ。」

ローゼが、シャワールームのドアを閉めるとシュヴァルツはいそいそとTVの電源をつけた。

『ハッハッハァァァァァァァァアァ!!.....』

シュヴァルツ「か....かっけぇ。かっこ良すぎるぜぇ!!ジェットォォォォ!!!クールすぎるっ!!ありえねぇ!!」




ローゼ(うっせぇな...シャワーから出たら死なない程度に殺してやろう...。)







痒い。

着替えるときまでずっと気がつかなかったのだが、左の二の腕に虫さされのような痕がある。

しかもとびきりでかい。これはしばらく治りそうにもないかな。くっそ、痒いな。

俺はシャツの袖を大きくまくって、そこをずっと掻いていた。

今何時だ...?

備え付けの時計には、9:03と表示されていた。そろそろ、朝食に行くか。

しかし、さっきまであれだけ五月蝿かった隣から声が消えたな。もう朝食の会場に向かったのだろうか。

まぁ、ホテルを出ればそこいらにも飲食店はある訳だから、ここで食事を出来なくてもさしずめ問題はないのだが。

ただ俺は、正直そういう郷土料理や、そういった国独特の食べ物を食べると腹を壊してしまう体質なもんだから、わざわざ手を付けようとは思わない。

そういや、東洋の国に行ったときもそんなことがあったな...。

腐った豆を、よくわからないマスタードと絡めて食べる、奇妙な料理だ。あれには、生物的に拒否反応を覚えた。

しかし、東洋人の勢いに押され食してしまい、それから三日三晩ホテルのトイレからほとんど出ることがなかったほどだ。

...とにかく腹はすっかり減ってしまっている。朝食を食べに行こう。

シャツの袖をおろし、鍵を持って外に出た。


シュヴァルツ「ローゼェ...僕腹減ったわぁ...。もう動けんぞぉこいつぁ...。」

ローゼ「ハッスルしすぎてんなよクソガキ。行くぞ。」

俺の隣の部屋...301号室から赤い髪の毛の不健康そうな女と、スーツを着た銀髪の少年(下はなぜか膝丈。ガキっぽいな)が出てきた。

女は、隈の出来た眠そうな目をこちらに向けてきた。

ローゼ「....」

なんだ、凄いにらんでくるぞこの女...。

ローゼ「兄ちゃん...隣の部屋か?」

「あぁ。そうだ。」

ローゼ「なんだ、その、あれだ。五月蝿かったか?」

「まぁ...そうだな。」

なんだ、この感じは。凄く殺気立っているようにも見えるし、ボサボサの長い髪の間から見える顔は少し申し訳なさそうな顔をしているようにも...みえる。

何より、この女。無駄に体つきがエロい。ホットパンツから覗く足はすらっと長く、良いケツをしている。

上半身も、黒いジャケットは胸の辺りまで開けられていてその下にはシャツなどを着ていない。ビキニかなにかを着用しているのだろう。

ジャケットと白い肌のコントラストを楽しんで...

シュヴァルツ「おい、ファッキンユーゲント(青年)。いつまでビッチの痴態拝んでんだよ。この乳俺んだぞ。」

少年がいつの間にか女の側により、その乳を両手で掴んだ。

ローゼ「おい、あたしの乳に全体重かけんな。取れちまうだろうが。」

女は少年に、少年に行うにしては過剰でありそうな重い肘打ちを叩き込んだ。

シュヴァルツ「おうっ!?」

少年は、勢いよく廊下に転がるとそのまま倒れ込んだ。

ローゼ「あー...つーことで、悪かったな。あたし等まだこの部屋にいつまで泊まるかわかんねーから、とりあえず、こいつの内蔵に免じて許してやってくれな。」

女は、少年を軽々持ち上げると肩にしょって歩き出した。

なんだったんだ、あの二人は....。

ん?また意味の分からない2人組が増えたんじゃないか?


厄介ごとにならなきゃいいがな...。

9:39分 地下一階朝食会場

シュヴァルツとローゼは、二人席に座りバイキング形式のところから取ってきた料理を食べていた。

ローゼ「おい、隣の部屋の男のテーブルにキレーなご夫人様がすわってんぜ。シュヴァルツ。」

シュヴァルツ「...」

ローゼ「あいつ、結構楽しそうだな。どこで引っ掛けてきた奴なんだろうなぁ?」

シュヴァルツ「....」

ローゼの問いかけには反応せず、フォークを持って俯いている。

皿には、たんまり食材がもられているがほとんど手を付けていない。

ローゼ「おい、食わねーのかよ。」

シュヴァルツ「おい...ローゼ。ここのホテルは人の食うもんを出さないってのか...?」

シュヴァルツは、なぜか輝きが失われているスクランブルエッグをフォークでつついている。

ローゼ「そうか?そんなに食えねぇってほどでもないと思うけど?」

シュヴァルツ「そりゃ、お前みたいなファッキンクレイジーの口にはちょうど合うかもしんネェけどさ。こちとら、ぼんぼんなんだよ。普通の料理人が普通の食材使って普通の調理器具ふるって普通の調味料をかけて普通の皿に盛りつけた料理なんて食えねぇ。」

ローゼ「ハッ!笑わせんなよクソガキ。こっから何にも食わずに生きてくってのか?なら中国に行ってみると良いさ。いい仙人になれるぜ。」

ローゼは、オーバーなリアクションで小馬鹿にしたような笑みを浮かべてそう言った。

シュヴァルツ「必要ねぇのさ、ローゼ。つまんねぇジョークだ。俺はお前にとって仙人よか神様みたいなもんだろ。」

シュヴァルツの一言で、ローゼは持っていたナイフをピタリと止めた。

ローゼ「そうさなぁ...確かにお前は神様かもしれねぇ。疫病のな。」

シュヴァルツ「ほんとセンスねぇな、ローゼよぉ。俺がいなけりゃ、ここまでくることだって出来なかったろうがよ。」

ローゼ「....この話は終わりだ。あたしは先に部屋に戻ってるぜ。」

ジャケットからタバコの箱を取り出し、例によって2本咥えて火をつけた。

ローゼ「食い終わったらまっすぐ部屋に戻ってこい。どっかぶらつきにでも行ってみろ。頭かち割ってやるぜ。」

シュヴァルツ「ん...。ご忠告どうも。」

きびすを返して、テーブルから離れて行くローゼにシュヴァルツが「おい」と声をかけた。

シュヴァルツ「俺からも一個忠告しといてやる。」

ローゼ「あ?」

シュヴァルツ「ここ...禁煙だ。」

シュヴァルツが指差す先には、NO SMOKINGと書かれた札が。

ローゼ「...ファック。」


ホットパンツから携帯灰皿を取り出すと、そこに二本とも押し込んだ。



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