サーニャ「星に願いを」 (24)




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ペリーヌ「貴女のことが好きですわ……エイラさん」の続きです。
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8月も半ばを過ぎた。
私は相変わらず終業式が終わってからも毎日、開放された学校に行き。
彼女が……サーニャちゃんが弾くピアノを聴いていた。
音楽室の外から、ドアにもたれ掛かりながら。

あれから私達は一度も顔を合わせなかった。
けれど、今日こそは。
私から声をかけることに決めていた。

だって、今日は……。





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ここ最近の彼女は毎朝10時ごろ登校し、ピアノを2時間弾いて、持ってきたお弁当を食べ、
それからまた2時間弾いて、帰宅するのが日課のようだった。

いつも、一人で。
私に出会う前のように、一人で。

しかし彼女はきっと私に気付いているだろう。
だから、一人なんかじゃなかった。



15時。
いつも彼女が帰る時間だ。ピアノが鳴り止む。椅子を引く音が聞こえた。

私はそっとドアから離れると、今回ばかりはわざと足音が聴こえるように廊下を歩いて昇降口に向かう。
入り口のドアに、そっと手紙を挟んで。

手紙にはただ一言、こう書いた。
「今日の夜20時、あの山の公園で待っています」

学校の門を出たのはそれから5分後。
校舎の最上階から視線を感じた。
私は気にする素振りも見せずに、そのまま歩き続ける。







私はこの作戦が失敗しても諦めるつもりも無かったし、けれど来る確信は少なからず持っていた。
だから、彼女が時間通りに現れたことに対して驚きはしなかった。

「こんばんは、サーニャちゃん」

「……こんばんは。エイラさん」

「来てくれてありがとう。まずは……誕生日おめでとう、サーニャちゃん」

「ありがとうございます、エイラさん……知っていたんですね。教えていないはずなのに」

「プラネタリウム見に行った時、聞いていたんだよ」

「そうだったんですか……覚えてくれていたんですね。本当にありがとうございます」

「うん……」

私は、あの日の夜を思い出す。
決心したんだ。
もう、止まれやしないんだから。
素直に、自分の気持ちをぶつけることにした。







「私、あれから考えたんだ。やっぱり、キミが好きだ。サーニャちゃん、付き合ってくれないか」

「どうして……どうして、ですか」

「……キミが、好きだからだ」

「……前にもお話したとおり、ダメなんです。貴女には悲しい思いをさせることになるんです」

「なんで分かるんだ? そんなの、分からないじゃないか」

「じゃあエイラさん、貴女は私と楽しくない時間を過ごせますか?」

「私は、サーニャちゃんと一緒にいて、つまらないと思ったことはない。一度も」







「そうでしょうか。私は、貴女の友達と、貴女が話しているところを学校でよく見ていました。
貴女はとても良い笑顔で楽しそうに笑い合っていました。
けれど。
私は、私と一緒にいて、あんなに笑う貴女を今まで見たことがないんです。
それは、私といてもあんまり楽しくないのかなって。
いいんです。
私、一緒にいても面白くないのは、分かっていますから。
貴女の笑顔を、私は咲かせることができないんです」

「それは……」

「無理をしないでください。だから、私といてもいつかこの関係は終わってしまいます。だから、」






「違う!!  確かにあんなに笑うことは無いかもしれない。
友達といるのは楽しいよ。話も合うし、そもそも同じ学年で同じクラスだから。

でもな、私は君といることが嬉しいんだ。
……君が好きだから。
友達と笑い合うのと、君と一緒にいられるというコトを秤にかけるなら、私は間違いなく君を取る」



「……っ」







「落ち着くんだ。サーニャちゃんといると。とても安心できて、いつでも楽しくて。
だから癒されるというのかな。もっと一緒にいたい、もっとキミのことを守ってあげたい。
そういう風に思うんだ。それは、友達といても感じない。
キミだけだ、そう思えるのは。

いつも会うたびにドキドキしてる。
サーニャちゃんのことを考えるだけで頭が真っ白になって、でも隣にいると、穏やかな時間を過ごせる。
言葉なんか要らないんだ。笑い合う必要なんて無い。
ココロで、通じ合いたいと思っているから」






「……エイラさん、貴女は私の、どこが好きなんですか?」

「そうだな……。その声も、仕草も、顔も、ピアノも、髪も、雰囲気も……全部だ」

「それは、良い風に捉えているだけだと思います。私は、そんなに良い子じゃありません……」

「キミがどう自分を評価しようと勝手だ。でも私は、少なくともそう思っているんだ」

「……」

「サーニャちゃんは、私のこと……嫌いか?」

「嫌いじゃ、ないです……」

「なら問題ないじゃないか。私はキミが好きで、キミは私を嫌いじゃないんだ」






「でも……趣味とか、合いませんよ?
貴女の好きなタロットも、エイラさんの他の趣味も全く知りません。
私はピアノや小説とか、そういったインドア派の人間ですから。
たぶん、付き合い続けるのは辛いだけだと思いますよ。
それに、性格も全く違う。貴女のように、明るくは、ないんですから……」

「……性格が違う人間だからって? それが……それがなんだって言うんだ。
私達は、生まれた場所も、育ちも、趣味も、クセも、全部違う。違って当然なんだ。
それなのに、共感できるところだけを知り合って。馴れ合って。
それでハイ、おしまい、だなんて。そういう関係は、私はイヤなんだ。
全部が違う人間だからこそ、お互いの知らない相手のことを理解したり、分かち合えたりするんじゃないか。
それが、人を好きになるってことなんじゃないか。
だから、私はイヤなんだ、そんな関係。
私は、もっと真剣にキミを知りたいんだ。

私のことを無理に分かろうとしてくれなくていい。
趣味もクセも、好きなことも。
理解しようとしてくれるだけで、いいんだ。
そうしたら、きっといつか分かり合える日が来ると思うんだ」



彼女は再び黙り込む。
彼女の背中越しに見える街の喧騒は聴こえない。
静寂が、訪れる。






「でも……でも!! 私は、貴女が友達といることにも耐えられないんですよ? ……弱い人、それが私なんです。

貴女が優しくしてくれるから、もっと貴女を知りたかった。
けれど知れば知るほど、あなたを好きになって。
けれど好きになればなるほど、あなたが欲しくなって。
けれど欲しくなればなるほど、あなた以外の人を許せなくなって。

……ね?

私、醜いですよね」

彼女は両手で顔を隠し、指の隙間から翠の綺麗な瞳で私を見つめる。
涙を、流しながら。

「いいや。そこまで想ってくれて私は嬉しいよ」






「ダメなんです……ダメ、ダメっ!
きっと、私はもっと貴女が欲しくなる。
それも、貴女が思っている以上に。

だからきっと私は貴女にもっと見てもらうために束縛すると思います。
けれど。
貴女は優しいから、それを許すはず。
でも。
それは、きっと貴女じゃない。
私の都合の良い、貴女。
それはやっぱり、貴女じゃない。

だから、ダメなんです。
貴女は、優しいから。
私には、優しすぎるから。
貴女は、変わってしまう。
私が、変えてしまう」



「……そうか」






「だから、ダメ……」

私は彼女が言い終わるのと同時に、その小さく細いカラダを抱き寄せる。強く、強く。

「……っ! は、離してください、離して……」

「変わったとしても、私はサーニャちゃんが好きなのは変わらないと思うんだ。
それに……そうやって変わっていくのは、成長したってことじゃないのかな。
キミが好きな私に、なれるのだとしたら。それはとっても嬉しいんだ。
きっとそれは私だけじゃない。キミも、少しずつ変わっていく……それが私のためなら、嬉しいな」

「……もう、優しくしないで……」

しかし、彼女は腕を解こうと暴れることも、逃げ出そうともしない。

「どうして? 好きな子に優しくするのは、当たり前だろ?」

彼女は私の胸で泣く。声も上げずに、たださめざめと。










◇◆



「私、ずっと月になりたかった。みんな、夜になると見てくれる。そんな月が、羨ましかった。
でも、あの時プラネタリウムを眺めていて気付いたんです。やっぱりあの人は一人ぼっちなんです。
遠くでたくさんの目に映っていても、隣には誰もいないんです。
……貴女は、私をずっと見ていてくれますか?」

「あぁ。飽きるまで、許してって言っても見守るよ。
サーニャちゃん、キミが月なら、私は太陽になろう。
寂しくないように、悲しくないように、一緒にいたいから、一緒にいる」

「……ふふっ、なんですか、それ。少し、おかしいです」

「ぅ……笑わないでくれないか。これでも格好良いことを言ったはずなんだぞ」











「そうだ、エイラさん。私、隣に一緒にいてくれる人ができたら、やってみたかったこと、たくさんあったんです」

「うん……聞きたいな」

「エイラさん……今度天体観測、しませんか?」

「あぁ、一緒にやろう。星の話をしてくれないか」

彼女は声を震わせ、

「……行きたかったお洋服屋さんがあったんです」

「あぁ、一緒に行こう。服を見立ててくれないか」

また目に涙を浮かべる

「今度、今度……私……」

「あぁ、全部!! サーニャちゃんがやりたかったこと、やろう。私と、一緒に」

「はいっ……」

私は、彼女を更に強く抱きしめる。
細いカラダを、私はココロまで包められたなら、とても嬉しいな。
そう、考えていた。






「あのさ、敬語はやめないか? 間に壁一枚隔ててるような、そんな気がするんだ」

「……えぇ、そうですね。じゃあやめますから、私のこと、サーニャって呼んでください」

「あぁ、分かったよ、サーニャ。私も、エイラって呼んでくれないか」

「はい、エイラさ……エイラ」

「学年が違うからいきなり敬語無しってのは難しいよな。徐々に慣れてくれればいいんだ」

「うん……エイラ」

彼女は一度私の名前を口にすると、私の頬に両手をあわせて顔に近づける。
彼女は私よりも頭一つ分背が低い。
だから必然的に、少し屈むことになる。






触れられた両手は、夏だというのにとてもひんやりとしていた。
少し伸ばせば唇に届きそうな距離。
しかし今の私にはその美しい唇に触れる勇気は無かった。

「……エイラ。
今日でもっと好きになった。
ここまで私に優しくしてくれた人は、いなかった。
私を気にかけて、こんなによくしてくれる人がいたなんて……。
もっと、もっと好きになる。
もっと、貴女を好きになってもいいですか?」

「あぁ、いいよ」

「私のこと、好きですか?」

「いいや。大好きだよ」













「なぁ、まだ時間、平気か?」

「うん……平気」

「ちょっとついてきてくれないか」

彼女は私の手をとると、行き先も告げずに歩き出す。

どこにいくんですか?と聞くと、予想通りの言葉が返ってきた。

それも、今まで見たことも無い、とびっきりの笑顔で。



ケーキが無いからアイス、一緒に食べに行こう。今ならまだ間に合うからさ。

―――チョコミント、好きだろ?






星に願いを おわり







テテテテンッ デデデンッ!           つづく






オワリナンダナ
読んでくれた方、ありがとうございました。

誕生日にあげる予定でしたが、旅行中で無理だったってはっきり分かるんですね。
次回はリクエストを書きたいと思います。

全く関係ないですが、ラブライブのSSも書いたので、暇つぶしにどうぞ
【R-18】凛「かよちんのアヘ顔ダブルピースが見たいにゃ~」
【R-18】凛「かよちんのアヘ顔ダブルピースが見たいにゃ~」 - SSまとめ速報
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某まとめサイト様、並びに各所でコメントくださる方、いつもありがとうございます。
それでは、また。

ストパン3期アルマデ戦線ヲ維持シツツ別命アルマデ書キ続ケルンダナ




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