ほむら「絶対にあなたを潰す」キュゥべえ「絶対にボクはキミを殺す」 (261)

前回の 杏子「魔法少女戦争か」渚「そりゃいい暇潰しだね」の続きです。

このスレは上記に登場するQBを操作する者が出ます。





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頭が痛い。

気が付くと、キュゥべえはパソコンに向き合って座っていた。

辺を見渡すと、ダンボールなどが山積みになっている。


そんな事より、ボクは何をしていたんだ?

真っ白い髪の毛を手で掻き、鏡を見ると、灼眼に目元にクマが出来た自分の姿が映っていた
ヨレヨレの白衣でネクタイも緩んでいる。


身嗜みなんて気にした事が無いので、放っておいた。

それにしても、ボクは…何をしていたんだ…?

突然、目の前に白い猫の様な動物が現れた。


QB「やぁ、どうかしたかい?」

自分の代わりに、魔法少女候補達とコミュニケーションをとる生物だ、この生物の事をキュゥべえはQBと
名付けているが、魔法少女達の前ではキュゥべえと名乗るように指示を出している。


QB「吉報を持ってきたよ」


キュゥべえ「吉報?」


QB「まどかを魔法少女にする事に成功したよ」


その言葉を聞くと、キュゥべえは飛び上がり、パソコンに飛びついた。

契約履歴に確かに『鹿目まどか』の名前があった。


キュゥべえ「や、やった…!」

キュゥべえは喜びに満ち溢れていた。

少し手間取ると思ったが、難なくクリアした。

キュゥべえは達成感の余韻に浸り、椅子に腰を下ろした。

後は、まどかを絶望させればいい。これで一生分の薬が手に入る。

後日、まどかは巴マミと合流して共に戦う事になっていた。

そして上条恭介の腕を直す為に、さやかも早めに魔法少女になっていた。


これでいい、これで全ては計算通りだ。あまりにも思い通りに行くから思わず笑みが溢れる。

準備は全て整った、後はワルプルギスの夜が来ればいい。


キュゥべえはダンボールの中からブラックコーヒーを取り出した。


そして、さらに後日。


まどか達の学校に転校生が来るという、名前は暁美ほむらというらしい。

オドオドした感じで、いかにも、どんくさそうだった。


しかし、キュゥべえは、ほむらの事なぞ見向きもしなかった。まったく興味が無かったからだ

まぁ機会があったら魔法少女にしてやるか。

すると突然、ほむらがまどかに近付いて来た。


ほむら「鹿目さん!私も魔法少女になったよ!」


教室がザワついた、それもそうだろう。いきなり『魔法少女』という単語を出したのだから
まどかは顔を赤くしていた。


教室から笑い声が聞こえてきた。


しかし、キュゥべえは全く違う反応をしていた。

困惑というより動揺していた、予測不能な事態が起きたからだ、まどかとほむらの接触は
キュゥべえも予測してなかったからだ、そもそも、キュゥべえは、ほむらと契約した覚えが無い。

突然の事態に、キュゥべえは混乱した。

————————————


あれから、ほむらに関して調べ回った。

しかし、魔法少女候補として、挙げられているものも、キュゥべえが保留として置いておいた
『イレギュラー』の分類に分けられていた。


本当は魔法少女では無く、ただそういう年頃だから魔法少女だと名乗っているだけかもしれない。

そうであって欲しいと、願ったが、その願いは早めに破られる。


ほむらは本当に魔法少女だった、しかも時間操作魔法だという、一番、厄介な魔法だ
もしも、ほむらが障害になった時、粛清する時は骨が折れるかもしれない。


いや、出来れば障害にならないで欲しい。

しかし、その願いも直ぐに破られる。


ほむら『信じられないかもしれないけど。みんなキュゥべえに騙されているのよ!』


このセリフを聞いた途端に、キュゥべえは鳥肌が立った。

全て、何もかも崩れる気がした。


このダメガネが、何で、そんな事を言うんだ。


これはマズイ、とQBを使って話しに割り込もうとした。

しかし、ラジコンを使おうとする前に次々と、ほむらは魔法少女の秘密をバラしていく。

このダメガネをこれほど殴りたいと思った事は無い。


キュゥべえは話に入る隙を見逃してしまい、さらに焦った、しかし。



さやか『あのさぁ…キュウべえがそんな嘘ついて、一体何の得があるわけ?私達に妙な事吹き込んで

仲間割れでもさせたいの?」』


さやかはほむらに冷たく反論した。



さやか『まさかあんた、ホントはあの杏子とか言う奴とグルなんじゃないでしょうね?』


キュゥべえはパソコン越しに、さやかに感謝する。

コイツはただの、お菓子のオマケ程度にしか思ってなかったが、コイツの頭の悪さと勘の悪さの御陰で
助かった。ここでコイツが何も言わなかったら、本当にどうしようも無い口先だけの低能雑魚だった。




さやか『はぁ…どっちにしろ私この子とチーム組むの反対だわ。まどかやマミさんは飛び道具だから平気だろうけど

いきなり目の前で爆発とか、ちょっと勘弁して欲しいんだよね。何度巻き込まれそうになった事か』


爆発に巻き込まれて粉々になるさやかを思い浮かべると、キュゥべえは鼻で笑った。

そうなると、結構ウケるんじゃないか?とQBを使って言おうと思ったが、空気を読んで止めた。

マミ『暁美さんって爆弾以外で何か武器無いの?』


元のゴルフクラブにすれば、爆発の恐れは無くなるが…まぁ、無難な所で言うと


キュゥべえは、壁に飾ってあるポンプ式の散弾銃を見る。

まぁ、銃もいいが、使い方が下手だと味方に当たる。

そろそろ、さやかは必要無いだろう。ワルプルギスの夜も近付いて来た。


居たって邪魔なだけだ、回復要員だから早めに潰しておかなくては
そう思ったキュゥべえは携帯を取り出した。

キュゥべえの同僚、志筑仁美を使って、さやかを絶望させようとした。



絶望させる事に成功した、仁美は気が進まない様な感じだったが、どうやらやってくれたらしい。


まどか『目を覚まして!さやかちゃん!』


魔女化した、さやかは暴れに暴れる、次の瞬間、さやかの魔女は大爆発した。

木っ端微塵になった。どうやら、ほむらが何かをしたのだろう。

結界が崩れると、巴マミが取り乱して杏子を撃ち殺し、ほむらを拘束した。

何だコイツ、とうとう頭がおかしくなったか?意味不明な状況にキュゥべえは眉をひそめる。

巴マミは、ほむらも撃ち殺そうとするが、まどかに殺され、ほむらは一命を取り留めた。


まぁ、まどかだけでも死なずに良かった。

そしてとうとう、ワルプルギスの夜が来る。

壮絶な戦いの末、ワルプルギスの夜と相打ちという形になって、まどかもほむらも力を使い果たした。


非常につまらない終わり方になったが、これで二人分のエントロピーが摂取出来る。

キュゥべえは荷物をまとめ始めた。



すると、パソコンから銃声が聞こえた。

——————————


キュゥべえ「え?」


いつの間にか自分は椅子に座っていた、しかもパソコンを見ると月日が巻き戻っていた。

おかしい、さっき、まどかもほむらも絶望して魔女化したハズだ、そんなバカな。


キュゥべえは外に飛び出した。久々に外に出たので太陽の光のせいで目が痛くなりはじめた。

街はいつもと変わらない様子だった、なんだコレは、まるで魔術じゃないか。
壊滅した街は完全に元に戻っていた、これはおかしい、何故こんな事に。


キュゥべえは考えた、すると、ほむらの魔法を思い出した。


そうか、時間を巻き戻す事も出来るのか。
ならいいだろう、ほむら、キミの無力さを思い知らせて絶望させてやる。

 




何度も巻き戻すつもりなら、何回も潰せばいい。


それから、キュゥべえは、ほむらの思惑を崩し続けた。

時間を巻き戻しては、潰しの繰り返しだったもう、流れ作業に近い。


いろんな方法を使うが、やはり中学生程度の頭脳じゃ、こんな物か…。


しかし、キュゥべえは不思議に思った。

何故、自分は時間を戻されても記憶はそのままなのだろう、と。


ここで時間軸が歪んだ。

次の時間軸でキュゥべえも想像がつかない現象が起きる。

ほむら「また、ここに戻って来たのね……」

最近、病室を見る度にため息が出る。

あれが夢でいいのにと思うのも、何回目だろう…。



夜、ほむらはまどかの家に向かった。
地形も位置も完全に覚えていて、スムーズに行けた。

まどかの家の前で、例の忌々しい生物、QBが居た。

不意打ちをかけようと、ナイフを持って後ろからゆっくり近寄る。


QB?「暁美さん、随分と速かったわね」


バレた?いや、そんな事より、どうして私の事を知っているのよ。


QB?「ここに居れば、あなたに会えると思ってたわ」


暗くてよく見えなかったが、このQBの体の至るところに銀色のネジが埋め込まれ
右前足が機械になっていた。


いつもと違う感じなので、余計に、ほむらは警戒する。


ほむら「………まどかは魔法少女にはさせないわよ」


ほむら「お前の思惑は完全に潰す」


QB?「是非、そうして」

意外な返答に眉をひそめる。

それに、このQBの声はいつもの声じゃない、女の声だ。


ほむら「……そうしてって、お前達の目的は———」


QB?「それは違うわ、『達』ではなくて『彼』よ。複数系では無いわ」


余計にほむらは混乱してるのを、機械のQBは感じとった。


QB?「……この個体は、彼が処分した物を改造した物さ、オートモードの装置は壊れてしまってるから、自我は保てない

けど…」


このQBの口振りで分かった、どうやら真の黒幕がいるらしい。

口振りからして、このQBが言っている『彼』こそが真の黒幕なのだろう。


そしてこの生き物は、その黒幕の操り人形に過ぎないって事も分かった。

QB「誰だい……?」


いつものあの声が、後ろから聞こえた。


振り返ると、あの例の生物が立っていた、今から、まどかと契約しに行くつもりだったのだろう。


QB?「……キュゥべえ」


ボソッと、ほむらの陰に隠れた機械のQBが言う。


QB「その声は……まさか…ッ!?」


少し、QBが動揺したかの様に見えたが、ほむらは気のせいという事に
してしまった。


QB?「私は…私は……暁美さんを全力でバックアップするわ」


ワナワナと体を震わせながら、機械のQBは淡々と喋る。

QB「……どうしてだい?宇宙の危機がかかってるって言うのに」


QB?「このやり方は誰も救われない、それは、貴方がよく知ってるじゃない…!」


QB?「貴方は自分には何も失う物なんて無いと思ってるかもしれない…!」


QB?「だけど!あの時、貴方が地球に来る前に言った『あの言葉』を聞いて…私は…!っっっ!」


感極まっているらしく、声が上手く出せなかった、泣いてる様な声も聞こえる。

機械のQBはしばし、喋らなかった、QBの方は大人しく機械のQBの話しを聞いていた。


QB?「————私は……貴方を助けたいのよ」


QB?「お願い……もう『死ぬのは救いだ』なんて言わないで……」


完全に泣いている、ほむらは思わず心配になってきた。急に発狂しないかと心配したのだ。


QB?「でも、もう貴方は、簡単には、や、止め、無い、から、私は、貴方を、止める、絶対に」

涙声混じりに喋ってるので、何を言っているのか聞き取りにくかった。

コイツとQBは一体、なんなんだ?


そんな事を考えていると、QBは黙って後ろを振り返った。


QB「そうかいそうかい、分かった、それじゃあ、キミはボクの敵だ」


QB「でも無駄だね、キミ如きが戦力になったぐらいじゃ無駄なんだよ」


捨て台詞を吐き、白い体は闇の奥へと消えていった。

その後、結局、この機械のQBは家に連れ帰る事にした。

コイツだけは信用出来る気がした、コイツにはアイツに対抗出来る術がある気がした。


ほむら「……ところで、あなたの事は何と呼べばいいのかしら?」


RB「RBでいいわ、ちなみにこの名前は私が本星で呼ばれていたコードネーム」


先程の涙が嘘のように正常な声に戻っている。


ほむら「そう……RB、アイツについてはどれだけ知ってるの?」


RB「彼と私は同僚よ?同じ職場で働いた者同士」


RB「彼の半生の殆どは分かるわ」


だったら居場所も知ってて欲しかった、とほむらは心の中で呟く。

RB「まぁ…彼の半生なんて聞いてもツマラナイでしょ?そろそろ本題に移りましょう」

それもそうだ、とほむらは頷く。時は金なり、一刻を争う。


ほむら「それじゃあ…この後、アイツは何をしてくるか分かる?」


RB「彼なら……まず、佐倉杏子に会いに行くわ」


ほむら「佐倉杏子?」

意外な名前に、思わず聞き返してしまった。

RBは何かを考える様に、頭を傾けた。


RB「私と貴方が出会った事で、早めに終わらせようとしてるのよ」


RB「もちろん、自分からは動かない……だから、佐倉杏子」


RB「その次は巴マミに会いに行って、見滝原から離れさせたと同時に佐倉杏子を入れるのでしょう」


RB「そして美樹さやかを襲わせ、鹿目まどかを魔法少女になる様に契約させる……」


RB「あ、そうそう、彼に完全に勝つには美樹さやかを魔法少女にさせない事ね」


それが難しいのよ、とほむらは重く息を吐きながら呟いた。

RB「大丈夫、まず最初は巴マミを見滝原から出さない事よ」


ほむら「どうやって出す気かしら?」


RB「魔女を使うかも」


RB「彼は魔女を誘導して、巴マミを見滝原から出す……」


RB「いや、それか、遠隔操作でソウルジェムに何かしら細工をするかもしれないわ」


ほむら「とりあえず、巴マミを出さなきゃいいのよね?」


RB「そう、それをクリアするのよ」

さて、どうしたものか。

巴マミはそう簡単に見滝原からは出ないと思うが、まぁ、あのしたたかなヤツの事だ
どうにかして巴マミを見滝原から出すつもりだ。

魔女を私が倒すっていう手を使えばいいけど、いつ、佐倉杏子が来るのであれば
さやかもまどかも身が危ない。

そうすれば、さやかも魔法少女になりまどかもついでに魔法少女になりかねない
もしそうなれば、ヤツの掌で踊る事になる。

どうすればいいのだ、と考えると、タモリを思い浮かべた、この状況ならタモリはどうするのだろう
この状況を切り抜ける為にタモリはどう行動…何でタモリなんだ。

自分のボケに自分で心の中でツッコむ。

RB「暁美さん……」


心配そうにRBはこちらを見ていた。仕方がない、ここは巴マミにコンタクトを
とるしかないわね。

なんとか巴マミを見滝原から出さない様にしなくては。


巴マミと会う事を決心した、ほむらは明日に備えて準備し始める。

RBとか名前的にどっかのスレを思い出すな

明日になり、学校に向かった。
転校初日なのに、ゆっくり出来ない事がつくづく悔しい、しかし、そんな呑気な
事を言ってられない。


肩にRBが乗っている、機械なのに案外重力を感じない、恐らく宇宙の技術とやらで
軽量化してるんだろう。


RB「学校にも警戒した方がいいわ、どこに彼の罠があるか分からないから」

RB「学校の人物にも警戒した方がいいわ、彼の仲間も何人か送り込まれているから」


耳元で、ほむらの警戒心を戻す様な事を言う。

彼女には悪気は無いのかもしれないが、そういう事は行動を起こす前に行って欲しい。

とゆうか、彼女は付いてくるのか?


ほむら「ねぇ……?」


RBの様子がおかしい、いきなり何も喋らなくなった。
どうしたのだろう?、と思ってるとRBは急にほむらの肩から降りて
どこかに走り出した。

まどか「ごめーん、待たせて……」


さやか「まどか遅い…と、言いたい所だけどもっと遅い人が——」


仁美「私ならここですわ」


さやかの後ろに笑顔で立っていたのは、仁美だった。


さやか「どわぁ!?び、びっくりしたー!」


まどか「珍しいね、仁美ちゃんが遅れるなんて」


仁美「昨日、お稽古が長引いたせいで寝坊したのですわ…ふぁ〜あ…」


仁美は大きくあくびをした。


さやか「大変だなー、こりゃ昼寝しか無いか?」


仁美「うふふ、遠慮しておきますわ、さやかさんの二の舞だけは勘弁ですから」


さやか「ど、どう言う意味だよそれー!?」


あははは、と笑い声が響く。

ずっとこんな事が続けばいいのに、とまどかは心の中で思っていた。
まどかはフッと仁美のカバンに目をやると、イヤホンが飛び出していた。

まどか「仁美ちゃん、音楽プレイヤー……持って来てるの?」

すかさず、まどかは仁美に質問した。
一瞬、仁美は真顔になった。

しかし、すぐにいつもの笑顔に戻った。

さやかがコチラに気付いてない事を確認すると、仁美はまどかに向き直った。


仁美「うふふ…この事は内緒ですわよ」

人差し指を突き立てて、小声で言う。

その様子をさやかが目撃して、何してるのー?と声をかけてきた。

そういや仁美がRBだったな

仁美「プレーヤー」


まどか「へ?」


仁美「プレーヤーですわよ」


そうだったか、とまどかはげっそりとした。

音楽プレーヤーとプレイヤー。プレーヤーとプレイヤーを間違えるなんて
イギリスとガーナを間違える様な物だ。


さやか「?」

———————————

早乙女「それじゃあ自己紹介いってみよー」


ほむら「暁美ほむらです、よろしく」


これを言うのはもう何回目だろうか、もう忘れた。

そしてまた同じ質問をされてしまい、適当に答えて、用事があると言って教室から逃げ出た。


運動場に出て、辺を見渡す。草むらからRBがヒョコリと顔を出した。


RB「どうやら潜入出来たようね」


機械音混じりで喋りかけてきた。


ほむら「潜入って…ただ転校してきただけなんだけど」


RB「次は体育だったわね…何をしに来たの?」


ほむら「……あなた、何者?」


RB「私は貴方に協力する者、それ以上でもそれ以下でもないわ」


言い逃れの様に聞こえたが、休み時間の時に現れたという事は、学校の関係者かも。

授業が始まる。


走高跳びで、まどかと仁美はベリーロールで飛び、さやかは調子に乗ってハサミ飛びをして
足をつったらしく、のたうち回っていた。


ほむらは、どんどん飛んで学校で新記録達成までした。


RB「やるね」


ほむら「それ程でも無いわ」


そういうと、ほむらは髪の毛を掻き上げた。

RBはマットの近くで座っていたが、さやかが無茶な飛び方をした為、マットから飛び出して、RBが下敷きになった。

助けに行こうと思ったが、まどかと仁美が、さやかの元に駆けつけて来た。
RBはそそくさと、マットの近くから離れていった。

なにこれ^^;

ほむら「大丈夫?」


RB「油断してた」


ほむら「気を付けなさいよ」


RB「あぁ…もう…」

RB「……暁美さん」


さっき困った様な声を漏らしてたが、すぐに真面目な声になった。
この臨機応変さは、見習いたい。


RB「巴マミを見滝原から出されるのは、何時かまでは分からないわ」


RB「私は、巴マミを常にマークしておくわ」


RB「何か、巴マミに動きがあったらすぐにテレパシーで連絡するわ」


今、テレパシーで話してくれないものか、とほむらは、クラスメイト達に
囲まれながら心の中で呟く。

RBは、巴マミの元に走り出した。

—————————

「ここはこう解いて———」


RB『た、たたたたた大変よ!と、巴マミが動いたわわわわ!!!』


いきなりテレパシーで、凄く慌てた声でRBが話し掛けて来た
そのせいで、ビクッ!と驚いて体が跳ねる。

先生や周りのみんなから怪訝な目で見てきたので、ほむらは顔を伏せた。
時と場所を考えろこのポンコツが、とテレパシーで返そうと思ったが、そんな事を
言ってる場合じゃない。


ほむら『分かった、すぐに行くわ』

保健室に行きたい、大丈夫、場所は分かってます。と先生に言うと
廊下を走って校庭に出る。


ほむら『やっぱり魔女を使って誘導してるの?』


RB『違うわ!これは、魔女の気配じゃない。リーズ破よ!』


RB『巴マミのソウルジェムにリーズ破を遠隔操作して魔女の反応と偽装してるのよ!』


RB『あぁ、もう終わりだわ、貴方を止める事は出来ないのね』


RB『私は彼に勝てないのよ!やはり天才と凡人の差は大きいわ!』


RB『ごめんなさい暁美さん!これからサラダ油だけで生活するわ!』


RB『いや、サラダ油なんて生温いわね、灯油!灯油を飲んで生活するわ!』


RB『いや、そんな事したら灯油に失礼———』


そのリーズ破はなんなのか、と聞きたいところだが、いきなり自虐のマシンガントークを
言い始めて、話に入る隙が無い。


それに、まだ終わった訳じゃない。事前に止められなくても、今からでも止められる。

念仏の様なRBの自虐を聞きながら、ほむらは校庭に出ると
巴マミの後ろ姿があった、急いでマミの下に走った。


ほむら「巴マミ……さん!」


マミ「?」

やはり魔女の気配を感じとっていたらしい、このまま歩いて見滝原から
出すつもりなのか?

何とか言ってマミを見滝原に出ない様に言わなきゃ。

言葉を探していると、横から白い影が横切った


RB「ダメよ巴さん!貴方は騙されている!」


RBはマミに飛びついて、力ずくで止めようとしている。


マミ「あら?どうしたのキュゥべえ?……あら?声どうしたの?」


声変わり?とマミは言うが、ほむらはそんな訳無いだろうとツッコミたく
なった。

RBの体中にあるネジと右前足を見て、眉をひそめた。


マミ「ど、どうしたのキュゥべえ!?足が…!」


RB「貴方は彼に騙されてるのよ!それは彼の罠なのよ!」


RB「お願い、見滝原から出ないで!佐倉さんが来るから!」


マミも何かを言おうとしたが、RBのマシンガントークに飲み込まれてしまう。


RB「お願い!お願いしますわ!」


RB「出るなっつてるなりよ!」


RB「佐倉杏子が来るアルよー!」


RB「土下座するから出ちゃダメけろ!」


キャラ崩壊しながら、マミを止めようとするRB。
今分かった事は、RBがテンパったら面白いという事だ。

マミ「お、落ち着いて、ね?キュゥべえ?」


マミ「とりあえず話しを聞かせて?佐倉さんが何っ———」


QB「マミ」


マミの背後からQBがやってきた。
一瞬、無言になったが、すぐに口を開いた。


QB「ダメじゃないか、こんな所で油を売ってちゃ」


QB「魔女に逃げられちゃうよ?」


マミ「あ、あれ?キュゥべえが二人…?」


QB「それはキュゥべえじゃないよ」


マミ「キュゥべえじゃない?」


QB「ボク達と同じ種族の生き物さ、多分、地球で迷子になったのだろう」


そうだったのね、と言ってマミはRBを持ち上げて地面に下ろす。


マミ「ごめんなさいね?早くしないと魔女に逃げられちゃうから」


RB「あ、じゃあ!私もついて行くよ!」

それもそうねと言いかけたが、すかさずQBが止める。


QB「……止めておいた方がいいよ、ボク達の種族の中には悪意を持つ者と善意を持つ者が居るから」


ひょっとしたらそいつは悪意を持つ種族かもしれないよ、と
遠まわしに言ってる様な気がした。


マミは一瞬、RBから後ずさった。
これはマズイと思って、ほむらもRBに加勢する。


ほむら「その悪意のある種族って……あなたの事じゃないの?」


QB「………」


マミの敵意をQBに促す様なセリフで、RBは危険分子では無い事を認知
してもらおうとした。

マミ「貴方……キュゥべえ達が見えるって事は……」


今はその話をしてる場合じゃないと思い、マミに話しかける。


ほむら「巴さん、それ、本当に魔女の気配かしら?」


マミ「魔女の気配も何も…これはどう見たって……」


ほむら「例えば、誰かが遠隔操作して……」


QB「無駄だよ、魔女の気配以外、認知出来ない様になってるんだよソウルジェムってのは」


そうQBは得意気に言うと、地面に力無く倒れていたRBがムクリと
起き上がった。


RB「いいえ……魔女の気配だけじゃないわ…!」

RB「放射式電波装置、通称リーズ破」


RB「ソウルジェムが正常に作動するか、私達が作った実験用装置よ」


RB「それを持ってる貴方なら……可能じゃないのかしら?」


さっきのテンパり様が嘘の様に、いつもの声に戻った。


QB「………」


QBは押し黙った、これは肯定したのも同じ事だ。

マミもどんどん、QBに向ける目が変わっていってた。


RB「他のみんなも持ってるなんて言わせないわよ、あの装置は実験だけの為に作った物だから

一機しかないハズよ」

RB「貴方はあの装置を作動させて、巴さんを誘導して見滝原の外に出す」


RB「そして、巴さん不在の隙に……魔法少女を見滝原に侵入させる」


マミの過去を考慮したのだろうか、RBは敢えて杏子の名前を出さなかった。
スラスラと喋っていくと、QBは何も言わなくなった。


QB「………」


マミ「……どうゆう事かしら」


さっきまで静かに聞いていたマミが、QBにいつもより低い口調で尋ねる。

QB「……そうかい」


QB「これは予想外だったね」


QB「ごめんねマミ」


謝るQBの声はまったく誠意がこもってなかった。
しかし、何故だろう。このQBの声を聞くだけで背筋が寒くなる。


QB「いや、本当にこんな事をしたくなかったんだ」


QB「ごめんね、本当にごめんね」


QB「許してマミ」


何だコイツは、何をしようと———

フッRBを見ると、RBは小刻みに震えていた。

憎しみ、呪い、怒り、恐怖…人間の負の感情がこもった様な喋り方だった。

表には出ていないが、ほむらやRBにはそんな風に聞こえる。


いつもと変わりない声だが、何故か殺意があった。

この理解不能なプレッシャーのせいで、ほむらの額から汗が滲んできた。

QBは謝り終わると、それじゃあと言って帰った。

RBはQBが帰ったのを見図ると、マミにまた飛びついた。


RB「こここ、今夜は暁美さんの家に泊まったらどうかな巴さん!?ねぇ巴さん!?その方がいいわよ!ねぇ!?」


いきなり飛びついてマミに、ほむらの家に泊まる様に焦って勧めている。


でもそうした方がいいような気がする、もしかしたら、さっきのでマミは『障害』の分類
に入ってしまったのかもしれない。

—————————


マミ「ごめんなさいね、暁美さん」


ほむら「いえ、お構いなく」


三時間も及ぶ交渉の末、なんとかマミをほむらの家に招き入れる事に
成功した。


RB「よし、持って来たわよ!」


何やらRBはウォータークーラーの様な物を持ってきた。


マミ「あら?何かしらそれ?」


RB「彼の操るQBだけを侵入させない装置よ、これで彼の監視は阻止できる!」


自慢気にポンッと、そのウォータークーラーみたいな物を叩く。

意地悪そうに、「あなたも侵入出来なくなればいいのに」と言うと、「え…あ…そんな…」と
寂しそうな声を出したので、すぐに謝る。

RB「とにかく、これを作動させれば彼は入り込めない!」

そう言って、装置を作動させると、装置は緑色にランプが光った。


マミ「これでいいの?」


RB「うん、これで何とかなるさ」

RBは装置を作動させると、今度は黒いコードの様な物を口に加えた。


RB「こうする事で、この装置の充電は切れる心配は無い」


ほむら「そう……」


マミ「ねぇ、貴方もキュゥべえなの?」


RB「いや…そうか、巴さんにはまだ言ってなかったわね」


RBはQBを操る者の人物や個体のシステムについて語った
キュゥべえとRBは同僚という事も。


マミ「そう…ってあのキュゥべえの事をRBは『彼』って言ってたわね?」


RB「え?そうだけど?」


そう言うと、突然、マミの顔は真っ赤っかになった。



マミ「ってことは異性!?そんな!カメラの存在とか知らずに一緒に風呂に入ってたわよ!?

きっといやらしい目で見てたのね!?」


RB「え?彼が?巴さんを…?あは、あはは……」


失笑するRBにムッとするマミ。

RB「いやいや…彼はどちらかと言うと、そういうのには乏しいのよね」


RB「『女性の体を見たら興奮する理由がボクには分からない』って言うぐらいだし」


なんだそうか、と安心する。
と、同時に馬鹿にされている気分にもなる。

RB「……魔法少女が来る様子は無いわ」

RB「どうやら彼の思惑は崩せたようね」


ホッとした、ここで佐倉杏子まで来ればややこしくなる
計画の根本を崩す事によって杏子の早めの見滝原襲来は避けれたようだ。


しかしこれで安心出来ない、今度は最大の難関とでも言っていい、美樹さやかの
魔法少女阻止だ、さやかはどうやっても願いを叶えるだろう。


さやかが魔法少女になれば、まどかが魔法少女になるキッカケになりうるかも
しれない。

マミが風呂に入ってる間に、作戦をRBと考える。


RB「……問題は美樹さん、彼女さえ魔法少女にしなければ確実に彼を炙り出せる」


ほむら「それが難しいのよ、すぐに上条恭介の腕を直す為に契約して、志筑仁美に取られるし……」


RB「……もしそうなった場合は、私がなんとかしよう、志筑仁美の行動を止める」


そうして欲しいと、ほむらは言う。
志筑仁美もさり気なく、ほむらの邪魔をしてる、あの女は他の時間軸でも美樹さやかを
絶望させるキッカケ率が多いからだ。

たまに、キュゥべえとグルじゃないのか?と疑う事もある。


RB「まぁ魔法少女にさせないのが、理想的かしら」


ほむら「そうね……明日、上条恭介の様子でも見に行きましょうか」


RB「下調べね、分かったわ…私も行く」


ほむら「でも、まどかや美樹さやかは……」


RB「彼女に任せればいい」


そう言ってRBはマミが居る浴室を指した。

———————


遅い。
何故かRBが来る時間が遅い。

病院の前で待っていると、目の前から美樹さやかの魔女化の『キッカケ』が
やって来た。


仁美「あら?貴方は、暁美さん?」


ほむら「志筑……さん…」


仁美「こんな所で何をしてますの?病院に入るなら入るですの」


ほむら「あ、ちょっ——」


腕を引っ張られ、ほむらは病院の中に入っていった。
まぁいいか、RBは後で来るだろう。

ほむら「あの、その…か、上条さんの病室って……」


何で上条の事を知ってるんだと返されるかと思ったが、仁美は気付かず
病室の場所を丁寧に教えた。


仁美「——ここに居ますわ、それじゃあ私はこれで」


仁美は上条の部屋とは別の方向へ向かった、あそこは確か
病院の医者達の更衣室だったハズ。

ほむらは上条の病室を恐る恐る開けると、上条が居た。
何の反応も無かったので、近付くと眠っていた。


さて、どうしようか。今、美樹さやかは巴マミとまどかと共に見滝原を
パトロールしているハズだ。

マミは完全にキュゥべえを悪だと認知してるから、絶対に、美樹さやかもまどかも
契約させないだろう。

その後、ここに美樹さやかが来る前に上条恭介の腕が治れば
いいんだけど……。


ハァとため息をつくと、マスクと帽子を被った白衣の医者と入れ替わる様に
ほむらは部屋から出た。


ほむら「問題は美樹さやかね……どうやったら魔法少女にならずに済むのかしら……」

RB『暁美さん』


RBのテレパシーが来た。
何をしてたんだ、あなたは。


RB「美樹さん…もう魔法少女になる必要は無くなったわ」


いきなりの発表で、ほむらは唖然とした。


ほむら『どうゆう事?』


RB『病院に潜入して、上条恭介に私が調合した薬を飲ませたのよ』


ほむら「いつの間に……」


RB『でも、治るのは腕だけ……足の方を治す薬の調合は本星に帰ってまでしなくてはならない』


RB『足の方は、自力で治ってもらうしか無いわね』


冷たそうな発言をしているが、上条の事を信頼している様だった。

ほむら『足を治す様に願いを叶えるんじゃ……』


RB『でも、足を治すには結構、難しい調合をしなきゃならない』


RB『素材だってそう、地球のじゃ無理よ』


RB『地球の素材だけで足も治す薬なんて……そんなの彼しか出来ないわ』


彼というのはモチロン、キュゥべえの事だろう。
そしてお決まりの自虐が始まった。

嵐の様な自虐が過ぎると、ほむらは隙を逃さずマミ達の居場所を
聞いた。


すぐ近くだったので、早めに合流する事が出来た。


ほむら「巴さん、ありがとう」


マミ「いいのよ」


まどか「暁美さんも……魔法少女だったの?」


さやか「ねぇ、そいつ、キュゥべえじゃないの?マミさんが話していた」


RB「私は……」


ほむら「彼女はRBよ」


適当にRBはまたキュゥべえは危険な人物だという事をまどかとさやかに言い
例え、人の役に立ちたいからと言って態々、自分が危険な道に進む必要は無い、と
淡々とRBはまどかとさやかに言った。


RB「——彼は言ったわ『無謀な正義が命取りになる』って」

そう、彼が、ごめんなさい。そう言うとRBは顔を伏せた。

自虐が始まるかと思ったが、押し黙ったままだった。


何だか空気が重苦しくなった気がした。

———————


RBとほむらはまどかとさやかが契約していない事を確認すると、ほむらとRBは家に
帰る事にした。


マミは、RB…操作している方のRBがキュゥべえの襲撃が無いか、マンション付近を監視するらしい。

あっちこっち行ったりしてるから過労死するんじゃないか、と思った。

ほむら「あなたは遠隔操作されてるの?」QB「そ、そうだよ」これを参考にして書いてるの?それともパクり?

——————————


ほむら「さて、家に帰ってきたし……今度はどう来るか予想しないと」


RB「そうね……でも、殆ど止められた様な物よ」


ほむら「え…でも、美樹さやかが……」


RB「腕は薬で治したけど、足を治す様に願うかも知れないけど……」


RB「もう彼はその手は使えないわ」


ほむら「どうして?」


RB「私が、彼をを裏切ったからよ」

>>66

同一人物なんです。

言わなくてスミマセン。

ほむら「え?」


RB「……とにかく、美樹さんは大丈夫」


RB「そうだ」


ほむら「どうしたの?」


何かを思いついた様にRBはハッとした。


RB「……いや、でも」


ほむら「どうしたの?」


RB「……もう一人、もう一人、この地域に彼の同僚が居るの」


RB「調査だけで来てるらしいけど、彼女が彼とコンタクトを取る前に仲間にしましよう」

なぜ続編を投げた楽しみにしていたのに…

気持ち悪い

RBは無線を取り出して、机の上に置いた。
そんな物、どこから持ってきたんだ。


無線をイジってると、電子音が聞こえてきた。

そして電子音はピタリと止まる。


『……RB?』


とても鋭い女の声が聞こえた。


『何の用だ?というか…お前から連絡するとは珍しいな』

>>70

続編ですよ。

—————————


キュゥべえは焦ってた。

RBの動きがここまで対応が早いとは。


マミのマンションに行って、襲撃を掛けようとしたが
どうせ、RBが監視してるのだろう。

ほむらとRBが仲間になった以上、いつものやり方では駄目だ
もっと抜本的な方法をしなくては。

RB「——お願い、MD。力を貸して」


MD『……分かった、だけど、その喋り方やめろ』


MDと呼ばれた者はなんなくと協力してくれた。
このMDと呼ばれる人物が何者かは分からないが、信用しても大丈夫だろう。


MD『それよりも、お前は、今どこに——うおっ!?』


無線の奥から凄まじい雑音が聞こえ、金属音が聞こえてた。

夜のビルの屋上、雨も降り始めていた。

その屋上の上には、刀を持つ白衣の女と剣を持つ黒いレインコートを着た少女が
立っていた。

金色のショートヘアーをしたMDは、レインコートのフードの中を覗き込もうとすると
剣を振り上げられる。

MDは上手くガードして、黒いレインコートの少女を蹴り飛ばした。


MD「誰だお前は!?」


「私は……」


MD「……?」


「私は……誰だ…?」

黒いレインコートの少女は飛び上がり、MDに向かって突進してきた。


MDは少女の手に持っていた剣を弾き飛ばすが、もう一本の剣を取り出して
首を突き刺そうとした。


MDは後ろにバックステップしてよける、雨が降ってるから動きにくいし
それに革靴だから動きにくい。


何だコイツ…コイツは何者だ…!?

「私は誰だぁ!」


コッチが聞きたい。そう思いながら、刀であきなの剣を全て上手くガードしていた。


「教えろ…!私は…!私は…!」


MD「落ち着け!」


今にも飛びかかってきそうなので、刀を構えて警戒する。

————————————


RB「どうした!?MD!?」


『私は——誰—だ』


MDでは無い誰かの声が聞こえた。

ほむらこの声は分からない、だけど、何か聞き覚えがあった。


ほむら「ウグッ…!?」


いきなり頭痛が始まる、頭の中から声が聞こえる。


『ゼロからやり直して、どんな気分?』


『ようやく最初の一人に会えたね、さぁ、会いに行くんだ』

頭痛が治まると、ほむらの体は自然と外に出ていた。


気が付くと、ビルの屋上に来ていた。


そこに、白衣の女と黒いレインコートの少女が居た。


MD「お前は……」


MDはほむらを見て、鋭い目を大きく開いた。

レインコートの少女は頭を抑えながら、フラフラとした足取りで
MDの方向に向かっていた。


MD「止めろ!」


手でレインコートの少女を突き倒すと、仰向けに倒れる。

ほむらがレインコートの少女の顔を見ると、驚愕した。


ほむら「美樹…さやか……?」

「私は…誰だ…誰なんだ…」


確かに、さやかに似ているが、少し顔つきが違う。
フードが取れると、さやかと同じ髪飾りをしていた。


「誰なんだ……」


黒いレインコートの少女は気を失い倒れた、MDとの戦闘に疲れ果てたのだろうか。


MD「……そいつ、記憶が無いみたいだ」


後ろからMDが声をかけてきた。

RB「ちょっと…待って…!」


階段を駆け上がり、RBが遅れてやってきた。


RB「ん…?誰だい?その子——」


RBが少女に近付こうとした瞬間、RBの目は青色に光った。


RB『ようやく美樹あきなを見つけれたね、キミから消した記憶を思い出さしてあげるよ☆』


RB『無事に暁美ちゃんと合流出来たから、あきなちゃんの記憶を元に戻してあげなくちゃね☆』


違う声でRBが喋り出したので、何者か聞こうとした瞬間
ほむらは再び頭痛がした。


あきな「!?」


あきなも何かを感じて飛び起きた。


あきな「……そうだ、アタシは…ロブスターと戦っていたんだ」


MD「……オイ、とうとう頭おかしくなったかコイツ?」

それだけ聞いたらモチロン、そうなるだろう。

だけど、ほむらは知っている。


ほむらの頭の中から巨大なロブスターが見滝原に現れた映像が流れる。
この美樹あきなという人物は謎のままだが。


あきな「……そうか、あの後、確か…地割れが起きて…」


あきな「気が付いたら、路上で寝てたんだ……」


全てを思い出した様だ、だけど、ほむらはまだ全ての記憶を思い出した訳ではないが。
まだ何かモヤモヤが残っている。

RB「あれ…?通信が回復した?」


RBは起き上がり、いつもの紅い目に変わった。


RB「おかしいな……何があったんだ……?」

MD「おい、立てるか?」


すかさず、MDはあきなに手を差し伸べる。


あきな「……誰だ、アンタは」


MD「私は……MDだ」

あきな「……アタシは美樹あきなだ、よろしく」


手を掴み、あきなは起き上がった。


あきな「すまない、アンタには迷惑をかけた」


申し訳なさそうに、あきなは謝罪する。
しかし、その鉄仮面の様な表情は緩む事は無かった。

それはあきなだけでは無い、MDも同様。


RB「MD、彼を止める為に本当に力を貸してくれるの?」


MD「当たり前だ、私達は同じ『本部』の人間だろうが」


MD「今のQBは私も見てられない…薬中で、全てを壊す人格破綻者になっている」


MD「RB、アイツを止める為にも私も力を貸そう」

あきな「待ってくれ」


あきなが手を挙げた。


あきな「何の事か良く分からんが…手を貸してやろう」


あきな「アタシは一応、魔法少女なんだ、戦力になると思う」


RB「そう…!ありがとう、あきなさん!あれ?美樹さんにソックリね…」


今更か、と、ほむらは思った。

————————————


キュゥべえ「………」


キュゥべえ「……そう、分かった」


キュゥべえ(MDまで仲間についたか、それと魔法少女一人……)


キュゥべえ(マミさえ居なくなれば、杏子を入れてこの状況をかき回す事が出来るのに)


キュゥべえ(……『本部』に連絡してみるか)

キュゥべえはデスクに散らばった紙を押しどけて
パソコンを引っ張り出した。


手馴れた手つきで、キーボードを打ち、ヘッドホンのコードとプラグを差した。


キュゥべえ「………」

—————————

MD「……今更だが、これは『本部』自体に逆らう事になるかもしれないんだぞ」


RB「怖気付いたの?」


MD「そんな訳は無い、ただ——」


MD「——地球に被害が出るかもしれないぞ」


RB「そうなる前に、彼を止めなくては」

RBは足を止めた。


RB「………」


ほむら「どうしたの?」


RB「この先から敵が来る」


一斉に皆、辺を警戒し始めた。


あきな「誰だ?敵って」


MD「案外速かったな、さすが『本部』の軍だ」


RB「既に連絡をされてたか……」


MD「RB、お前は暁美ほむらと一緒に先に帰っていろ…美樹あきな、お前は…分かってるよな」


後ろに付いて、あきなはOKサインを出す。
RBとほむらは別の道を通って出た。


MD「魔法は使い過ぎるなよ」


あきな「心得てる、安心しろ」


MD「……来た、行くぞ…3、2、1……今だ!」

合図と共に、MDは角を反転して曲がり、驚いたヘルメットを被った兵士の首をはねた。

辺は鮮血で真っ赤になる、突然の襲来に驚いもう一人の兵士は剣を取り出して、MDに立ち向かうが
アッサリと斬り倒される。


さっきの合図は何なんだ、と、思いながらあきなはヌッとMDの背後から出る。

剣を持って襲って来た二人の兵士は、共同で斬る。


MD「下がれ、これ以上私達と戦えば死体の回収に手間取るぞ」

「MD博士……本当に裏切る気ですか?」


MD「裏切りじゃない、同僚の暴走を止めるだけだ」


あきな「それが裏切りなんじゃないか?」


MD「……かもな」


ニヤリと笑うと、MDは刀を再び構える。


MD「美樹あきな、コイツらは殺しても構わない、薬品だけで作られたインスタントソルジャーだ」


MD「訓練用の人形で私を倒そうなんて、舐められたものだな」

RBとほむらは脱兎の如く走っていた。


ほむら「あの人、ただの研究員じゃないの!?」


RB「ただの研究員じゃないよ、一応、軍の殲滅部隊に入ってたのよ」


RB「もう少し殲滅部隊に居たら気が狂ってたかも——」


「居たぞ!逃すな!」


ほむら「クッ!」


時間を止めて、兵士達の動きを止める。


ほむら「さ、行くわよ」


RB「………」


そうか、操作してる方も動けないのか。

すぐに気付いて、ほむらはRBを抱えて走り抜ける。

—————————


その頃、MDとあきなは殺戮を続けていた。

ドンドン来る兵士を斬っても斬っても、まったく終わりが見えない。


MDの白衣は完全に朱色に染まっていた。

こんな沢山の死体をみたら、どうなるだろうな、と、あきなは死体の山を見た。


MD「ボーッとしてる場合じゃないぞ!そら!」


兵士の両腕両足を切り落とし、最終的には頭部を足で粉々に砕いた。
よくあんなエグイ戦い方するな、とあきなは関心しながら戦った。

そろそろイベントムービーが始まってもおかしく無いのに、一項に終わりが見えない。

兵士の死体の山が次々と築かれていく。


あきな「クソッ!」


埒があかないから、二刀流にして兵士達を斬り殺していく。
返り血が大量にかかり、こんな状態では街中をウロウロ出来ない。


後々の事が心配になりながらも、二人の兵士を相手にする。
二人の兵士の両腕を斬り落とし、両手にある剣を二人の兵士の腹部に突き刺す。


引き抜くと、噴水の様に血が出た。


それにしても、この兵士、斬り落としやす過ぎるぞ。

もう何人斬ったか分からない、この無双はどこまで続くんだ。

MDが兵士の上半身を切り落とすと、刀を鞘に収めた。


MD「そろそろ引き上げるぞ!」


そう言うと、MDは走り出した。


ソウルジェムを見ると、真っ黒だった。

ヒヤヒヤしながら、グリーフシードを当てて、ソウルジェムの穢れを取った。

MD「……ん?」


MDは足を止める、あきなは何だとMDの陰から覗くと
右腕がショットガンになった白衣の女が立っていた。


MD「お前は……!」


「フフ…逃がしませんよ?MD」

今回はここまでです。

いつか前の、ほむら「あなたが遠隔操作されてるぐらい知ってるわ」を中断してしまって申し訳ありません。

あまりにもトンデモない展開になってしまって、思わず投げ出してしまいました。


この時間軸は、別スレの「あなたは遠隔操作されているの?」とは違う時間軸だと言う事を

ご了承下さい。


勝手な事をして、申し訳ありませんでした。

これからも応援してくれたら幸いです。

MD「HL!?どうして刑務所の所長のお前がここに居るんだ!?」


HL「QBからの指示ですよー、彼の命令は逆らえませーん」


嘘つけと言いたかった。
さしずめ、MDを殺せるチャンスだから来たんだろう。

MDとHLは前々から仲が悪かった。

腕を切り落とせば確実に絡んで来ないと思ったが逆効果だった
それ以来、ずっとしつこく絡んで来たりネチネチ何か気に障る事を言ったりしてくる。


でも、HLとQBは無関係とは言えない、HLも魔法少女計画に関わった一人だ。

MD「美樹あきな…これは我々の問題だから一人で片付ける」


あきな「いいのか?」


MD「あぁ……」


悪いな、とそう言い残すと、あきなはその場所から離れた。


HL「フーフッフッフッフッ……二人っきりですよー」


MD「…………」


HL「死ね!MD!」

その言葉と共にショットガンをMDに狙いを定め、発砲した。

瞬時に横に避けて、避けれたと思ったが、頬をかすめた。


HL「散弾銃ですよ、そう簡単によけれませんよー!?」


再びショットガンをコチラに向ける、発砲する前に、近くにあった車を刀で突き刺し
HLに向かって投げた。


数回転した車は宙に舞いながらHLに向かって飛んでいく、HLは迅速に横に避けて
車を回避した。


その瞬間に、MDはHLの目の前まで近付いていた。

MDは持っていた刀を水平に薙ぎ払うが、HLは慌てて後ろに下がり避ける。
少しだけHLの茶色髪が斬れた。


ふぅと汗を拭うHLは、先程投げたられた車を見つけた。


HL「あんな事をして大丈夫なんですか?」


MD「大丈夫と思えば大丈夫だ」


そう言い返したMDは刀を振り上げ、再びHLに目掛けて斬りつける。

しかし、ショットガンで難なく防がれる。思わずMDは舌打ちした。

その後は攻防が続く。

ショットガンと刀がぶつかり合い、火花が飛び散ってる。

金属音が不規則に鳴り響き、HLはキックでMDの腹部を蹴る。

完全に入ったMDは顔を歪め、後ろに下げられ、そのスキを見逃さなかった
HLはショットガンをMDに向けた。


HL「スラッグ弾だ!」


さっきまでの穏やかな顔は、勝利を確信した顔になり、ショットガンを
MDに向ける。


発砲する直前に、左手に鞘を持って、鞘でショットガンを殴った。

全く違う方向に発砲してしまい、HLは目を見開く。


体が大きく横に向いて、スキだらけになり、MDは刀を縦に振り上げ
一気に振り下ろした。


HLの左腕は吹っ飛び、鮮血が吹き出した。

トドメと言わんばかりに、HLに右目を斬り、顔中血塗れになった。

HL「なぁ…!?ぐぅ…!?」


MD「HL、お前と私じゃ根本的に違う」


MD「出直して来い、その時は確実に殺してやる」


HL「ぬぐぅ……!この借りは必ず返してやる…!」


そう言ってHLは闇の中へと消えていった。

所詮、アイツは『本部』の社長の妹という事で成り上がったヤツだ
アイツには戦闘能力が無いと言っていいほど弱い。


まぁ左腕も斬り落してやったら、もう逆らう気も起きないだろう。

——————————


キュゥべえ「そうか…HLが…」


HLがやられたらしい。

どうやら左腕と右目を斬られて逃げたらしい。HLは昔から
ムカツクやつだったから、ザマァみろ。


まぁ、アイツがMDに勝てるなんて思ってなんか無いけどな。


キュゥべえ「……杏子があちらの勢力につかれる前に潰しておいた方がいいか」


しかし、今現在、この地球に来てるのはHLの部隊だけだ。
その当のHLは重傷だ。


重傷じゃなくても杏子なら余裕で一蹴されると思うが。


仕方が無い、こんな時の為に作っておいたアレを使うか。

『本部』の研究部が封印していた技術を。

—————————

杏子はコンビニから弁当を万引きしていた。

裏路地に逃げ込み、なにくわぬ顔で弁当を食べ始めた。


杏子「あーあ、弁当盗るならレンジ使ってりゃ良かったかなー」


そんな事をいいながら、弁当の唐揚げを食べる。


杏子「ん?」


裏路地の奧に何やら緑色に光っていた、その光は二つある。

どんどんその光は杏子に近付いて来た、杏子は怪訝な目をして光を
見つめる。


「何をしてるの?」

その光は少女の目だった。

少女は緑色に光る目で、杏子を見下ろしていた。


杏子「誰だよ」


あすみ「神名あすみ」


杏子「…で?そのあすみが何の用?」


あすみ「別に?たださー、魔法を使って万引きするとか最低じゃないのかなーって」


杏子「…ウッゼェ」

あすみと名乗る少女を改めて見ると、何か不自然な感じがした
まったく色彩が無い様に見える。


まぁそんな事どうでもいいか。

杏子は弁当を食べ始めよう、箸を伸ばそうとすると、突然、弁当が飛び上がり
米やらなんやらが地面に散らばる。


あすみが杏子の弁当を蹴り上げたのだ。


杏子「テッメェ……!」

杏子「食いもん粗末にすんじゃねぇ!!!」


怒声と共に魔法少女に変身して勢い良く槍で、あすみを斬る。


しかし、手応えは無かった。
避けられたでは無く、当たら無かった。


杏子は目を疑った。


あすみの体は斜めに切断されていたが、すぐに修復した。

どういう事だよオイ…?


あすみ「酷いな…不意打ちかますとか本当に魔法少女?」


あすみ「でも嫌いじゃないよ、そう言うの」


ニヤリと不気味に笑うあすみは、魔法少女に変身した。

突然、杏子の横腹に激痛が走り、横に数バウンドして飛んだ。


あすみ「あーあー、大丈夫ー?」


あすみの手にはモーニングスターがあった。

あすみ「痛かった?ごめんね?今度は極力痛くしないから」


ニヤニヤと笑いながら、あすみは杏子に言った。

杏子は立ち上がり、槍を構えて突進した。


あすみから数メートルの所で槍を分解して、鎖状にして
攻撃を仕掛けた。


杏子(これならどうだ!?)


あすみの表情は一項に変わる気配が無い、ただ棒立ちして防御体制も何も取らなかった。
確実に当てれたと思った杏子は、鎖状にした槍をあすみに攻撃する。


——が。


それでも当たらなかった。


連続で攻撃しても、あすみの体は細切れになるが直ぐに体は修復してしまう。


あすみの猛攻が始まった。


完全にスキだらけになった杏子はモーニングスターが数回当たり

その後に繰り出されたあすみの鋭い蹴りが杏子の腹を捉える。


数メートル吹っ飛ばされ、杏子はさっき食べた弁当の唐揚げとかが吐きそうだったが
何とか堪えた。


あすみ「アハハハハッ!凄い!凄いよキュゥべえ!この力ッ!」


あすみ「退屈な戦いがこんなに楽しくなるなんてっ!!!」


笑いながらあすみはモーニングスターを杏子に向かって振る。

瞬時に杏子はよけ、地面に大穴が空いた。

何だコイツ!?コイツ、不死身か!?


混乱する杏子に追い打ちをかける様に、あすみは突進してきた
しかも真っ直ぐでは無く、壁を駆けて来た。

ゾッとした杏子は思わず槍を、あすみに投げた。

しかし、あすみの体は霧状になり、杏子の背後を取ると元の体に戻り
杏子の背中目掛けモーニングスターを振りかぶった。


杏子「ごッッ……!?」


数メートルまで飛ばされた杏子は、強く壁にぶつかって、壁に大きなヒビが入った。

杏子「クソッ…!どうなってんだ!?お前の体!」


あすみ「簡単に答える訳無いじゃん!バカじゃないの!?」


杏子「誰がバカだぁあ!」


杏子は槍を構えて、あすみの元に駆けようとしたが、突然、あすみの上半身が
目の前まで来た。


あすみ「やっほー」


杏子「うおっ!?」


モーニングスターを振り上げたのを見切り、杏子は体を後ろに大きく反らして
ギリギリ避けれ事に成功した。

杏子「幽霊かテメェ!?」


あすみ「半分正解で半分不正解!」


笑いが止まらないあすみは、切り離した下半身と合体し、モーニングスターを
再び構えた。


杏子「ッ!」


瞬時にガード体制を取ろうとしたが、槍を持っている右腕が動かなくなった

あすみの左腕が杏子の右腕を固定してたのだ。


杏子「なッ…!?」

モーニングスターの勢いに、杏子は地面に叩き付けられてしまう。


杏子「クソッ!チャラチャラ踊ってんじゃねぇぞ!」


後転して起き上がり、杏子はガムシャラに槍を連続で、あすみに突き刺した。


あすみ「無駄無駄、そんなモンじゃ私を倒せないよ」


余裕の表情を見せるあすみ、杏子はそれでも斬り続ける。

あすみ「だーかーらー、無駄だってーの!」


再び鋭い蹴りが繰り出されるが、杏子は後ろにバックステップして
避けた。


しかし、避ける事をあすみは想定していた。
笑を浮かべたあすみは右手を前に出した。


杏子「ごぉっ……!?」


突然、頭の中に昔の事がフラッシュバックする。


あすみ「スキあり!」


今度は足を振り上げ、杏子の顎を狙うが何とか避ける事が出来た。

杏子は完全に息が上がり、とてつもない吐き気と恐怖が杏子を襲う。

杏子「クッ……!」

ソウルジェムは限界に来てる。
早く逃げないと、ソウルジェムがもたない。


そう思った杏子は退避する事にして、壁を蹴り上に上っていく。

しかし、あすみは逃がさなかった。

杏子の両足はあすみの両腕に掴まり、猛スピードで地面に叩きつけられる。


あすみ「まだだよ、まだ終わらせないよ」


杏子「化け物めッ……!」

あすみ「お互い様でしょ?」


笑う。

あすみは笑う。

もはや、あすみの笑いは杏子にとっては恐怖になっていた。


駄目だ、コイツは完全に殺す気だ。

コイツは何も効かない。


そう思考していると、再びあすみが突進して猛攻を始める。

今度こそ上手く防御出来たが——


———モーニングスターが槍をすり抜けた。


モーニングスターは強く、杏子の胸部に突き刺さる
死んだと思ったが、ギリギリセーフだった。

ソウルジェムより下の位置に当たったのだ。


あすみ「殺させないよ、簡単に終わらせないよ」

杏子(コイツ…甚振るだけ甚振って殺すつもりか…!?)


背筋に寒い物を感じた杏子は勢い良く起き上がった。


あすみ「!」


あすみに突進した。

あすみはモーニングスターを構えて、突進してきた杏子を飛ばそうとしてた。

もう終わりにするつもりらしい。


あすみ「サヨナラ勝ち」


先程よりも勢いのある威力を持ったモーニングスターが閃光となって
壁や地面を削ぐ。

土煙が舞い上がり、さすがに死んだと思ったが

土煙が晴れると、杏子の姿は無かった。


あすみは辺を見渡す、しかし居ない。

後ろを見るとポツポツと血の後が裏路地の闇の奧に続いていた。


どうやらすり抜ける事を利用して、あすみの攻撃を避けも防御もせずに
あすみに向かって普通に『突進』したのだろう。


ハァとため息をつくあすみは、煙になりその場から離れた。

>>118

後ろを見るとポツポツと血の後が裏路地の闇の奧に続いていた。

『血の跡』でした、ごめんなさい。

—————————

「はい、はい…いや、それが——あ」


あすみ「もしもしー?キュゥべえー?」


あすみは無線をHLの兵士からひったくり、キュゥべえに無線をかけていた。


キュゥべえ『どうだった?』


あすみ「逃がした」


キュゥべえ『そう、か。まぁ、急いで仕留めなくてもいい』


キュゥべえ『その代わり、佐倉杏子は絶対に見滝原に行かさないでくれ』


あすみ「大丈夫だって、私の力があれば、あんなのすぐ見つけてサクッと殺せるって」


あすみ「キュゥべえが作った『ファントム』もあるし」


キュゥべえ『そう、分かった。それじゃあ引き続き佐倉杏子の抹殺を任せるよ』


あすみ「了解ー」

今、あすみは喜びに満ち溢れていた

キュゥべえと名乗る青年から「力を貸して欲しい」と言われて
興味本位でついて行くと、不思議な力を与えられて、暴れ回る事が出来るからだ。

杏子の前に、ウォーミングアップで別の魔法少女を相手にした、あの魔法少女の
マヌケな顔を思い出すと吹き出しそうになる。


この『ファントム』と呼ばれるシステムがあれば私は無敵だ。

ファントム

『本部』直系の研究部達が作った最新兵器。

マイクロチップの様な物を体内に入れれば発動する事が出来る。


本来は透明になるだけの兵器だったのだが、手を加えて
あらゆる攻撃を無効化させるだけでは無く、体の一部を分離させたり
霧状になって移動したりする事が出来る様になった。


完全無敵。
絶対に死ぬことは無い。


だが、どれだけ完全な物を作ったところで、それが科学である限り
弱点とは見つかるものだ。

杏子「あぁ…チクショウ……」


杏子は裏路地をさまよっていた。

何とか気を落ち着かせて、グリーフシードを使い、ソウルジェムの穢れを
取った。


杏子「アイツにまた見つかるとマズイな……不本意だが、見滝原に……」


杏子「いいや、駄目だ!自分だけでも、この状況を回避しねーと…」


杏子「他の地区に逃げるっていう手もあるけど……見滝原とここ以外地形が分かんねーし……」


ブツブツと考えながら杏子は教会跡に向かっていた。

すると、後ろから足音が聞こえた。
背筋が一瞬にして凍りつく。

恐る恐る、後ろを振り向くと。


あの緑色の目を持ち、薄い色彩をした少女が不気味に笑を浮かべながら
立っていた。


手にはモーニングスター。




あすみ「みーつけた☆」

杏子「は、早過ぎんだろ…!」


あすみ「んー?まぁね……自分の力で見つけた訳じゃないけどさ」


杏子「そ、そう言えばテメェ、キュゥべえがどうこう……ッ!?」


横に閃光が横切る。

迅速に身を大きく反らして杏子は、あすみの不意打ちを避けた。


あすみ「……喋り過ぎたかな?」


杏子(あっぶねぇぇ…!)

あすみ「今度こそ確実に殺して…いや、絶望を与えてあげるよ」


杏子(コイツの魔法は全て曲者だ…!こんなのとまともに戦ってたら命がいくつあっても足りねぇ!)


杏子「バカか!大人しく戦ってやると思ってんのかよ!」

そう言って杏子は逃走を試みるが、霧状になったあすみに
回り込まれてしまった。


杏子「あ……」


あすみ「大人しく逃すと思った?」


モーニングスターを振って杏子を攻撃するが、杏子はモーニングスターに当たった途端に
消えた。


あすみ「!?」


当たった手応えが無かったので、あすみは不審に感じた。


あすみ「幻覚、か」

杏子「はぁ…はぁ…!ここまで来れば大丈夫だろ…」


工事現場まで逃げ込んだ杏子は、ポケットの中からロッキーを取り出した。


杏子「チッ…一本しかねぇのか———」


ロッキーを加えた瞬間、鉄の壁が水平に裂けた。

慌てた杏子はまた身を反らして避けた。いい加減腰が痛い。



あすみ「逃がさないよ!」


杏子「チッ…!やるしかねぇか!」

もちろん正面切って戦う訳じゃない、ちゃんと工夫をかねて戦う。


あすみ「そらぁ!」


モーニングスターを激しく回転させ、杏子に投げつける
直撃したが、杏子は消えた。


あすみ「また幻覚か!?」


杏子「残像だ!」


真上には魔法少女に変身した杏子が槍を構え、あすみを突き刺した。

あすみは串刺しになったが、例のごとく効いて無い。


杏子「チッ!やっぱり効かねぇか」


あすみ「無駄無駄!何をやろうが私には勝てない!」


あすみ「与えてやる…!絶望を!絶望!圧倒的な絶望を!」

あすみ「苦しくなんか無い!」


モーニングスターを勢い良く振る。

その場にあった物は全て竜巻に巻き込まれたかの様に飛んでいく。


杏子「これならどうだ!?ロッソファンタズマ!」


分身した杏子は一斉に、あすみに駆ける。


あすみ「小細工を…!」


モーニングスターを振り回し、杏子の分身の半分を撃退した。
しかし、本物の杏子の槍が突き刺さる。


あすみ「効かないんだって…!」


モーニングスターを振り、杏子に当たる。


杏子「うおっ!」


杏子「チッ…ウッゼェ…ウゼェ魔法だ」


あすみ「もういい、殺してやる!」


右手を前に出した。

マズイと感じた杏子は攻撃に入る。
あすみの右手を攻撃した、当たらないだろう、と思った



しかし。



槍の先があすみの右手に刺さり、鮮血が吹き出る。


あすみ「なッ…!?」


杏子「?!」

あすみ「え?は?ど、どういう事?『ファントム』はどうなったの?」


混乱しているあすみ、杏子はチャンスだと思い、槍を振り上げ、あすみに突き刺す。


あすみ「ごはぁっ!?」


背中から鮮血が吹き出る、杏子は容赦の無い攻撃が続く。

今しか無い、絶対に気を落ち着かせるな、何で攻撃が当たったのかは
後で考えればいい。


だから今は攻撃する事だけを考えろ。


あすみ「ごはぁ…!ぬ、ぅあ…あああああああぁあああああ!!!!」


大声と共に、あすみはモーニングスターを振り上げて、杏子の攻撃を止めて
今度はあすみの猛攻が始まった。


嵐の様な攻撃を全てガードしていると、槍の下がヒビは入り、槍は真っ二つになる。

無防備になった杏子に目掛けてモーニングスターを全霊を込めて振った。

あすみ「勝った!サヨナラ勝——」


杏子「いいや」


杏子が1オクターブ下がった声であすみの言葉を遮る。



杏子「逆転負けだよ!テメェは!」


あすみ「!?」



真っ二つになった刃が付いてる方の槍を掴み、その槍を思いっきりあすみの首元を突き刺した。
突き刺すと、あすみの首元から大量の血が吹き出た。


あすみ「ごばぁぁぁ……」

あすみ「や、やめて!」


杏子「うっせぇボケェ!」


槍を引き抜き、杏子は右手で鋭いアッパーカットを繰り出した。
あすみの体は宙を舞い、地面にバウンドした。




あすみ「ゲホッ!ゴホッ…!」


QB「……負けちゃったね、あすみ」


あすみ「キュ…キュゥべえ…?」

あすみ「ねぇ…!キュゥべえ…!ファントムは…?どうしてファントムは起動しなかったの!?」


QB「バカだなぁ、あすみは」


QB「魔法を使おうとするからだよ、ファントムは魔法を使うと、ファントム自体無効化するんだ」


あすみ「そんなの…!聞いてない…!」


QB「だって、聞かれなかったから」


あすみ「そんな……!」


QB「まぁ何にせよ、マスターの思惑は崩れた」


QB「さよなら、あすみ」


あすみ「ま、待って……」

あすみ「そ、そんな……」


あすみ「いつもこうだ…私はいつもこんな末路を遂げる……」


あすみ「どうして…どうして…私は……」


杏子「つーかさ」


杏子「そんな性格だから見限られたんじゃねぇの?」


あすみ「お前に何が…!」


杏子「分かるとも、なんとなくな」


あすみ「!? グリーフシードを…?どうして…!?」


杏子「理由なんてねーよ、ただの気まぐれ。勘違いすんなよ」


杏子「あ、そうだ、まだ残ってたかな……?おっ、あったあった……」


あすみ「?」


杏子「へへ……食うかい?」

非常に残念な結果になった。

あすみがヘマをやらかした、しかも早い。


禁手のファントムまで破られたとなると、次はどうするか。

多分、あすみはボクの事を杏子にペラペラ喋っているのだろう

これは『本部』が立ち上がらなきゃならないんじゃないのかな?いやマジで。


さやかの魔法少女にするキッカケのハズの上条恭介は腕が何故か治ってるし、足がまだ治って無い
らしいから、足を治す様に願いを叶える気かもしれないが、恐らくRB達に契約するなと釘を刺されて
いるのだろう。


仕方が無い……こうなったら、どうしても契約しなくてはならない状況を
作り上げるしかない。

明日の朝。


ほむらは目覚めると、朝飯のパンを焼き始めた。


RB「おはようございます、暁美さん」


ほむら「あら?起きてたの?」


RB「えぇ…まぁ、ふぁ〜あ…」


ほむら「ねぇ、今日はキュゥべえはどうするつもりかしら」


RB「う〜ん…完全に計画は玉砕に成功した様なものだし、もう大丈夫じゃないのかしら」


ほむら「だといいんだけど」


RB「このスキに佐倉さんを仲間にすること出来ないかしら?」


ほむら「巴マミが何か言いそうだけど」


RB「あう」

中学校の近くに美樹あきなが立っていた。


あきな「………」


しばらくすると、遠方から賑やかな声が聞こえた。


さやか「それでさー、本当に困ってるんだよねー」


まどか「何もそこまでしなくてもねー」


あきなは身を隠して、まどか達が学校に入っていくのを見届ける。


あきな「………異常なし、か」

仁美「………」


さやか「仁美ー?おーい」


仁美「は、はい!?」


さやか「どうしたの?」


仁美「い、いえ……」


さやか「悩み事があるなら早めにいいなよ」


さやか「あたし達、友達でしょ?」


仁美「………」


まどか「?」


一瞬、仁美の顔が暗くなった。


仁美「えぇ、そうですわね」


仁美は笑うが、不審に感じたまどかは無理矢理作った笑顔にしか見えない。
何かある、何かを隠してる。

——————————————————————

まどか「ねぇ、さやかちゃん」


さやか「んー?」


まどか「仁美ちゃん、何か隠してなかった?」


さやか「そう?」


まどか「そうだよ、だって———」


『はーいはいはーい、緊急放送ー緊急放送』


突然、学校中に放送が響き、クラスがざわつく。


『RB、居るんだろ?出てこい』


『出てこなかったら、ここに居る人間全員———』


と、そこで突然放送が途切れる。

「殺す!!!」


学校中に銃声が響きわたる。

突然の事で、クラス中はパニックに陥る。


教室のガラスが次々と割れていく音も聞こえる。



ほむら「!?」


まどか「な、何!?」


仁美「………!」


「RBー、RBー、居るんなら出てこいー」

廊下には歌舞伎役者の様な着物を着た女と、武装した兵士が居た。


「早く出て来ないと、どうなるか分かってるのか?」


ほむら『RB!RB!』


RB『KL…!Despair研究部の研究員まで来るなんて…!』


ほむら『今どこに居るの!?早く隠れなさい!』


RB『…………!』

RB『……暁美さん、鹿目さんと美樹さんお願いするわ』


ほむら『え…?』


RB『彼女達は、私の大切な友達。絶対に守って』


RB『私は彼の出す指示に従って、二人に近付いた』


RB『この二人を魔法少女にする為に、私は友達のフリをしていたけど』


RB『二人と居ると、自分は何をやってるのか分からなくなった』


RB『もう、普通の友達になっていた。本星の私の友達と言えば彼とMDぐらいだった』


RB『この地球と言う星で、友達が増えた事に私は喜んでたんだ…!』


RB『だけど、一人の友人と戦う事になった以上……私はもう引き返せない』


ほむら『な、何を…言ってるの…?』


RB『暁美さん……私は……』








まどか「仁美ちゃん…?何…それ…?」

仁美の手には刀を持っていた。

カバンの中から、白衣を取り出し羽織った。


仁美「暁美さん、後の事はお願いしますわ」


ほむら「志筑さん…!?あなたが……」


仁美「その間に私が食い止めますの!校門の外に見張りをしていた、あきなさんが居ますわ!」


仁美「早く皆さんを一階に!」


「RBぃ!そこに居たのか!」


廊下からガラスを突き破り、KLが乱入してきた。


ほむら「早く逃げるわよ!」


まどか「ま、待って!まだ仁美ちゃんが——」


さやか「仁美!何してんのよ!?早く——」


まどかとさやかは人波に流されていった。

仁美「……二年振りですわね、KL」


KL「私がここに来たと言うことは分かってるな」


仁美「………彼の指示、ですわね?」


KL「その通り、分かってるじゃないか」


不気味に舌を出して笑うKLに対して、仁美は真顔だった。


仁美「私は、私は彼を止めますの。彼を救えるなら、私は社長にも刃も向けますわ」



KL「ハハ…な・る・ほ・ど・ね」


KL「お前の戦闘能力はMDといい勝負だと聞く」


KL「その実力を見せて貰おうか」


長い刀を取り出したKLは、その刀の矛先を仁美に向けた。

あきな「何だ?」

突然の銃声に驚いて学校の方向を見る。

不審に思ったあきなは、無線でMDに連絡した。


MD『何だ?』


あきな「さっき学校で銃声があった、様子を見てくる」


MD『銃声?まさか……』


MD『……分かった、私も学校になるべく早く行く、その代わり……』


あきな「?」


MD『気を付けろよ、ひょっとしたら、『本部』の連中が襲撃に来たのかもしれない』


あきな「……何なんだ?その『本部』ってのは」


MD『正式名は『DESPAIR社』っていう会社だ』


MD『科学者達が紛争地域に行って争いに加担するんだ』


あきな「……解せないな、何で魔法少女システム何かを戦争屋のヤツらが?」


MD『……分からん、そもそもQBは特殊なんだ。戦い専門じゃなくて『兵器製造』が主だからな』


MD『それだけじゃない、兵士達のメンタルケアや隕石によって壊滅した街の復興作業……』


あきな「非戦闘員って事か」


MD『そうでも無い、アイツに銃を持たせたら鬼に金棒だぞ?』


MD『まぁ昔の話しだけどな…今はまともに銃なんて持てないだろうな。そんな事より

のんびりと話をしてるヒマじゃないんだろ?』


あきな「……そうだな」

玄関付近まで走ると、生徒達が蟻の如く出てきた。

あきなはまどか達を探すが、あまりにも人が多い為、見つけにくかった
もしかしたら、まだ中に居るかもしれないと思い、あきなは別の入口
から入ろうとした。


ほむら「あきな」


あきな「ほむら…!無事だったか」


まどか「暁美さん、この人は?」


ほむら「ほむらでいいわ、私の協力者」


さやか「そうかそうか!ということは、あんたも魔法少女って事か!」


さやか「初めまして、あたしは美樹さやかって———」


さやかは目を丸くして、あきなの顔を凝視した。
まるで鏡を見てる様な気分なのだろう。


まどか「さ、さやかちゃんにソックリだ……!」


さやか「あ、あたし、こんなに目付き悪く無いよ!」


本人を目の前にしてそれを言うか。

あきな「美樹あきなだ、よろしく」


まどか「名字まで!?」


さやか「も、もしかして、あたしの、ク、クローン人間か何かで?」


ほむら「美樹さやかのクローンを作るヤツなんてこの世にどこにも居ないわよ」


ほむら「そんな事したら金をドブに捨てる様な物よ」


さやか「な、何だと!」


あきな「この世には、同じ顔の人間は三人は居ると言われている」


さやか「だからって名字まで……」


あきな「偶然の一致なんだろう」


さやか「あぁ、そっかー」


納得するさやか。なんとか誤魔化す事に成功した様だ。

MD「この学校か…!」


MD「マズイな…ひょっとしたら、RBが…!」


急いで学校の正面玄関から入り、階段を使って上がった。

渡り廊下を差し掛かると、突然背中に衝撃が走った。

誰かにタックルされた様だ。


MDは後ろを振り返ると、金剛力士像な形相をした
早乙女先生が立っていた。


早乙女「この悪魔共め!」


早乙女「こうなったら私直々ブチのめしてやる!」


MD「ま、待て!誤解だ、私は——」

全てを言う前に早乙女先生の鋭い右アッパーが繰り出される。
そのスピードは、並みの人間ではかわす事は出来無かっただろう。


何とか避けれたが、続いて左フックが飛んでくる。
このスピードも常人の物では無かった。


左フックをガードすると、早乙女先生の蹴りがMDの腹に突き刺さる。
想像以上の激痛にMDは顔を歪め、数メートル飛んだ。

数バウンドしたところで、体制を取り戻したが、脳が揺れてまともに
立てなかった。


何だコイツ、化け物の皮を被った教師か?

フラついた足取りの状態のMDに早乙女先生は、猛スピードで走って来た。


MD「クソッ!」

MDは刀を抜いて、早乙女先生に向けるが、拳で刀は砕かれた。


MD「馬鹿な!?これ、そう簡単に壊れる代物じゃ———」


再び強烈なタックルを喰らい、再び数メートル飛んで、壁に衝突した。

まずい、RBと出会う前にここで殺されるかもしれない。

早乙女「殺してやる…!この悪魔が…!」


早乙女「私が居る限り、生徒達には指一本も触れさせんぞ…!」


頼むからその力を私にでは無く、本当の襲撃者に使ってくれないか。


そんな事を願ってる内に、早乙女先生は再びタックルをする姿勢をとった
今度アレを喰らえば、タダでは済まない。

ある意味モンスターティーチャーの早乙女先生。

意外な早乙女先生の強さに度肝を抜かれたMDは混乱していた。


MD「待て!襲撃者は別の所に居る!」


MD「私はここの生徒の友人だ!」


早乙女「信じるかそんなもの!見慣れないヤツの時点でお前は敵だ!」


予想の範囲内の答えだった。
もう駄目だ、こんな理不尽な力を持った教師に殺されるのか。


死を悟ったMDは戦意喪失した。
早乙女先生が再び強烈なタックルをしかけた時に途中で足を止めた。


MD「……?」


早乙女「……MD?」

早乙女?「MD?MDじゃないか!?」


MD「お前は?」


HT「私だよ!HT!『本部』の上位組織の…!」


MD「HT…?HTってあのHTか!?ホログラム部門の…!」


HT「あぁ、昔はね。今は人工皮膚部門だ」


MD「何でお前がここに?何か金になる様な事でも?」


HT「訳が分からないんだよ!」


MD「は?」


HT「KLの野郎!いきなり銃を乱射しやがって…!ここに私も居る事を知ってるクセに…!」


MD「……で?何でお前はそんな格好なんだ?」


HT「潜入だよ、ここの教師に変装したんだ。本物は二日酔いで寝てる」

HT「うぐっ…!」


MD「どうした?」


HT「な、なんか…頭が…!」


————————————


ほむら「おおおおおおおおお!!!まどかぁああああああああああああああ!!!」ガバッ!

HT「うわぁ!」ドサッ!

ほむら「まどかに変装したのは運のつきね…この際偽物でもいいわ!」 ハァハァ…

HT「ちょっと待っ———」

ほむら「喰らえぇええええええええええええええええええ!!!!」

HT「うわぁああああああああああああああ!!!!」

HT「アッ————————————————!!!!」

—————————————



HT「うわぁああああああああああああああああ!!!!!??!?」


MD「だ、大丈夫か?」


HT「な、何だ今のは…!?」

HT「クソッ…!あの変な薬を飲んだせいか…」


MD「変な薬?」


HT「ここに来る前に、私は風邪薬の実験体にされたんだよ」


HT「変な味がしたんだ……」

頭を抑えながら、HTはその場を立ち去った。


MD「まったく…人騒がせな奴だ」


MD「……どうやら、私も裏切った事までは知られて無いみたいだな」


MD「さっさとRBを探しに行くか」

校門の前では、警察が来るまでほむら達が待機していた。


ほむら(そう言えば、巴マミは…?)


さやか「あんたって強いの?」スグニシニソウダナコイツ


あきな「自分では分からない」オマエガナー


まどか「それにしても本当にソックリだねー」サヤカチャンニハサマレテワタシハシアワセモノダヨー


ほむら「そろそろ警察が来る頃なんだけど……」コウシテナラベテミルトグロテスクダワ

——————————


廊下に金属音が響く。

辺には血が所々に飛び散っている。


体を斬り裂かれている兵士達が、仁美とKLの足元に転がっていた。

仁美には返り血が着いていた。その返り血が何とも言えない恐怖を演出していた。


仁美「私はRB…『本部』の吸血鬼」


仁美「私に出会った者は確実に血を見る……」


血が付着した刀を指で拭き取り、その血を不気味に笑みを浮かべ
ながら舐めた。


この仁美を見れば、常人なら恐怖をするがKLは逆に喜んだ。
期待通りの反応をしてくれたからだ。


KL「そーだよな、お前はこんな所で温々と日常を過ごしてるヤツじゃねぇよな」


KL「それでこそRB!私が認めた正真正銘のマジキチ!」


馬鹿にしてる様に聞こえるが、マジキチやキチガイはKLにとっては
褒め言葉だと認識している。

————————————


キュゥべえ「……そろそろ、RBとKLが戦ってる時間帯か」


キュゥべえ「BR、こちらQB」


BR『QB?どうした?』


キュゥべえ「HLと替わってくれないか?」


BR『HLと?分かった』


HL『はいはい何です?』


キュゥべえ「HL、済まないんだけど。キミは今から中学校に向かってくれないかい?」


HL『……そう言うと思って、兵を引き連れて既に居るんですよね』


キュゥべえ「仕事が早くて助かるよ」


キュゥべえ「あ、あと大量生産装置をコッチに転送して来てくれない?」


HL『大量生産装置?あんなの何に使うんですか?』


キュゥべえ「いいから早く」

—————————————


マミ「……何が起きてるの?」


まだ学校に残っていたマミは廊下を歩いていた。
物静かな雰囲気が不気味だった。


すると、後ろから足音が聞こえる。


HL「あれれー?まだ残ってましたかー?」


後ろを振り向くと、温和そうな表情をした女、HLが立っていた。

その平和主義者そうな顔とは逆に右腕にはショットガンが付けられ
左腕にはチェンソーの刃の様な物が付けられていた。


マミ「白衣?貴方、何者?」


HL「私は通りすがりの捕食者という所ですかねー」

HL「私達はあなた達の魔法少女システムを作った研究員」


HL「ここで殺すのはとても勿体ない事なんですけどねー」


マミ「魔法少女システム…?」


HL「魔法少女なのにシステムを知らないんですかー?あぁ、そっか。キュゥべえから何も知らされて無いんですね」


HL「このシステムはとても斬新な物だった。唯一、宇宙を救える方法」


HL「絶望から希望へ変えた後は一気に絶望に引き落とす事によって………」


HL「魔法少女は私達の『利益』となる」


マミ「……!?何を言って——」


HL「………ソウルジェムを開発したのは、私達の上層部研究員達」


HL「まぁ、よくあんなエグイ事が思いつく物ですねー」


HL「体と魂を切り離すなんて」


マミ「体と、魂を…切り……離す?」

HL「そう、つまり体は飾りでソウルジェムが本体」


HL「体は死体も同然って事ですよー」


マミ「……!」


HL「でも結構いいじゃないですか?」


HL「『ゾンビ』が『人間』を助けても」


MD「巴マミ!」


後ろから声が聞こえてきて、振り向くと
MDが走って来た。


MD「そいつの言葉に耳を貸すな!」


マミ「あ、貴方は…!?」


MD「RBの仲間だ……」


HL「あー…惜しいですねー。もう少しで成功する所だったのにー」


ソウルジェムは黒く染まっていた。


マミ「な、何これ…?魔法も何も使って無いのに」


HL「ほーんとーに何も聞かされて無いんですねー……それは——」


MD「黙れ!」

はぁ、とため息をつきHLは首を振る。


HL「何ですか?MD、あなただってこの計画に関与してたじゃないですか」


MD「それは……!」


HL「あなたも私達と同じ、命を弄ぶ悪魔なんですよ」


MD「…………!」


何も反論出来なかったMDに対して、マミは不安な眼差しを向ける。
HLは余裕そうに笑う、その笑いがMDの思考をかき回す。


HL「今更遅いんですよ、早めにソウルジェムが魔女を産む事ぐらい言っとけばよかったんですよ」


マミ「………!」


MD「……!巴マミ!早く逃げろ!」


そう指示するが、マミは完全に同様していた
顔が青ざめていた。
体が硬直していて動く気配も無い。


HL「だけど、それだけじゃないんですよ」


追い打ちをかける様にHLは続ける。


HL「そもそも『地球では』エネルギーの回収は行なってい無い」


MD「……止めろ!黙れ!」


MDの抗議も完全に無視してHLは淡々とマミに話す。


HL「つまり、今、私達がやっているのは———」


HL「単なる実験です」

HL「本来なら、大人数の研究員達を惑星中に派遣させて大規模な契約を行う」


HL「だけど、地球では彼…QBを含めて三人程度」


HL「今、地球でやってるのは『新』魔法少女システムの実験」


HL「どれだけ多くのエネルギーを採取出来るかの実験です」


HL「———どうです?」


HL「散々、正義の為に戦ってきた事がバカらしくなる気分は?」


含み笑いを浮かべてHLは言う。

マミは落胆した、ソウルジェムを見るとみるみると黒くなっていく。


MD「マズイ!」

MDは白衣のポケットからブリキの鍵の様な物を取り出し、マミのソウルジェムに
突き刺した。


HL「強制魔女化後退鍵……ソウルジェムの状態に関係無く穢れを取る道具」


HL「本当に存在してたんですねー、資料でしか見たこと無かったですよ」


MD「……RBが作った物だ」


MD「これの改良版が出来れば、永久的にソウルジェムが穢れる事は無い……」


HL「………ほう?」


HL「三年前に中止された禁断魔法少女システムみたいな感じになるって事ですねー?」


MD「……あれとは違う、あれはただ絶望しか呼び込まないシステムだ」


HL「それもそうですねー」

そしてマミは気を失い、前に倒れかけたが、MDが支え
背中に背負う。


MD「HL…今度会う時は必ずその首を取ってやる」


HL「……ふぅん?」


HL「そんな勿体ぶらずに、今取りませんか?」


MD「……お前、左腕どうしたんだ?」


HL「パワーアップしたんですよー」


MD「……メシ食う時とかどうする気だよ」


HL「…………」


HL「…………ど、どうするんでしょう?」


HLは顔を青ざめて、額から大量の汗が溢れ出た。

悩んでいる内にMDはこっそりその場を離れた。

すると、突然天井が突き破れて仁美が降ってきた。


仁美「あ、MD」


MD「大丈夫か!?」


仁美「大丈夫、ですわ」


MD「お、お前、その血はどうしたんだ!?」


仁美「大丈夫、返り血ですわ。あら?巴さん?」


MD「あ、そうだ、ここから先はHLが居る…KLは?」


仁美「逃がしてしまいましたの、でも今はここでヤツらと争ってる場合じゃ無いですわ」


MD「非常階段がある、そこから逃げよう」

「音がしたぞ!」


「コッチだ!」


向こう側から複数の足音が聞こえてくる。

MDと仁美は大慌てで非常階段を降りた。


何とか敵から振り切れたようだった。

MD「……!?」


仁美「どうかしましたの?」


MD「……魔女の気配だ」


MD「しかも、この近くに居る」

ほむら達は魔女の結界の中に居た。



さやか「こ、ここは……!?」


ほむら「魔女の結界…!こんな時に…!」


QB「やぁ、四人共」


空間の中央にチョコンとQBが座っていた。


QB「どうやら、強引な方法じゃないと二人は契約しないと思ってね」


ほむら「何をする気!?」


QB「上」


上を見上げると、黒い魔法少女が鉤爪を突き出して襲って来た。


あきな「ッ!」


見切ったあきなは、その魔法少女の攻撃を止める。


ほむら「あれは……!呉キリカ…!」


QB「今からキミは彼女『達』と戦ってもらう」


物陰からゾロゾロと呉キリカが現れて、さやかとまどかは混乱し
ほむらとあきなは二人を守る様に立った。



QB「今、戦力になるの二人ぐらいだね」



QB「さて、キミ達に問う」



QB「キミ達はこの———」

              
QB「約3443不可説不可説転785不可説不可説56474不可説転7889不可説67766不可量転

7657不可量985不可思転784985不可思33242不可称転 8984不可称6764342不可数転

3213不可数334無等転7736無等57983無辺転61231無辺9803無量転80149無量

3203阿僧祇転9874阿僧祇10983至2824趣631僧祇7132鉢頭摩2887青蓮華3212阿畔多

2130無我23102出生4444無尽9892演説10943烏波跋多65332毘迦摩6221鉢ら麼陀

8921駄麼羅3123者麼羅2103迷ら普563娑婆羅7123摩ら羅1189那婆羅673毘婆羅210訶婆婆

54023羯羅波672薜魯婆67145醯魯耶76512阿怛羅421摩伽婆6889迦麼羅7863阿野娑

66543娑母羅2109摩睹羅678853契魯陀6787謎魯陀793娑ら荼2456謎羅8843睥羅

924細羅51480計羅2349泥羅580歩羅6偈羅 328諦羅834薜羅329翳羅85尸婆麼怛羅

643鉢羅麼怛羅2べい麼怛羅8762奚麼怛羅8那麼怛羅673伽麼怛羅7勃麼怛羅589阿麼怛羅

9903極量46不動137離きょう慢849調伏870摩魯摩32えらい陀569懺慕陀8734摩魯陀

645訶魯那98達ら歩陀999奚魯伽45訶理三210訶理蒲8一動56訶理婆742泥羅婆353最妙

7899高出78周広58伺察340奚婆羅694毘睹羅544三末耶6763顛倒5214異路3568一持

674毘きゃ擔36毘薄底37毘婆訶3128毘素陀94毘盛伽983毘贍婆1345毘薩羅456僧羯邏摩

47毘伽婆392毘ら伽5435弥伽婆859阿婆�85禰摩983普摩75界分860多婆羅

895阿婆羅47摩婆羅352最勝335阿伽羅365矜羯羅7頻波羅65那由他7382阿ゆ多

743倶胝566洛叉4790無量大数59不可思議351那由他244阿僧祇56恒河沙

689極48載52正3452澗109溝807穰536秭78垓24京6574兆75849億3905万967千

7百9十体の呉キリカを倒せるかな?」




あきな「………」


ほむら「……は?」

トンデモ無い数字を語られた四人は目が点になった。


さやか「さ、さんまん……」


まどかは立ち眩し、さやかは混乱した。


あきな「………これは、死ぬな」


ほむら「………!」

さやか「あ、あわ、あわわ」


まどか「こ、これはきっと悪い夢だよね?」


あきな「…悪い夢であって欲しいな、なんだって——」


あきな「——約3443不可説不可説転785不可説不可説56474不可説転7889不可説67766不可量転

7657不可量985不可思転784985不可思33242不可称転 8984不可称6764342不可数転

3213不可数334無等転7736無等57983無辺転61231無辺9803無量転80149無量

3203阿僧祇転9874阿僧祇10983至2824趣631僧祇7132鉢頭摩2887青蓮華3212阿畔多

2130無我23102出生4444無尽9892演説10943烏波跋多65332毘迦摩6221鉢ら麼陀

8921駄麼羅3123者麼羅2103迷ら普563娑婆羅7123摩ら羅1189那婆羅673毘婆羅210訶婆婆

54023羯羅波672薜魯婆67145醯魯耶76512阿怛羅421摩伽婆6889迦麼羅7863阿野娑

66543娑母羅2109摩睹羅678853契魯陀6787謎魯陀793娑ら荼2456謎羅8843睥羅

924細羅51480計羅2349泥羅580歩羅6偈羅 328諦羅834薜羅329翳羅85尸婆麼怛羅

643鉢羅麼怛羅2べい麼怛羅8762奚麼怛羅8那麼怛羅673伽麼怛羅7勃麼怛羅589阿麼怛羅

9903極量46不動137離きょう慢849調伏870摩魯摩32えらい陀569懺慕陀8734摩魯陀

645訶魯那98達ら歩陀999奚魯伽45訶理三210訶理蒲8一動56訶理婆742泥羅婆353最妙

7899高出78周広58伺察340奚婆羅694毘睹羅544三末耶6763顛倒5214異路3568一持

674毘きゃ擔36毘薄底37毘婆訶3128毘素陀94毘盛伽983毘贍婆1345毘薩羅456僧羯邏摩

47毘伽婆392毘ら伽5435弥伽婆859阿婆�85禰摩983普摩75界分860多婆羅

895阿婆羅47摩婆羅352最勝335阿伽羅365矜羯羅7頻波羅65那由他7382阿ゆ多

743倶胝566洛叉4790無量大数59不可思議351那由他244阿僧祇56恒河沙

689極48載52正3452澗109溝807穰536秭78垓24京6574兆75849億3905万967千

7百9十体も居るもんな」


さやか「よく覚えてられるな!」

ほむら「例え、約3443不可説不可説転785不可説不可説56474不可説転7889不可説67766不可量転

7657不可量985不可思転784985不可思33242不可称転 8984不可称6764342不可数転

3213不可数334無等転7736無等57983無辺転61231無辺9803無量転80149無量

3203阿僧祇転9874阿僧祇10983至2824趣631僧祇7132鉢頭摩2887青蓮華3212阿畔多

2130無我23102出生4444無尽9892演説10943烏波跋多65332毘迦摩6221鉢ら麼陀

8921駄麼羅3123者麼羅2103迷ら普563娑婆羅7123摩ら羅1189那婆羅673毘婆羅210訶婆婆

54023羯羅波672薜魯婆67145醯魯耶76512阿怛羅421摩伽婆6889迦麼羅7863阿野娑

66543娑母羅2109摩睹羅678853契魯陀6787謎魯陀793娑ら荼2456謎羅8843睥羅

924細羅51480計羅2349泥羅580歩羅6偈羅 328諦羅834薜羅329翳羅85尸婆麼怛羅

643鉢羅麼怛羅2べい麼怛羅8762奚麼怛羅8那麼怛羅673伽麼怛羅7勃麼怛羅589阿麼怛羅

9903極量46不動137離きょう慢849調伏870摩魯摩32えらい陀569懺慕陀8734摩魯陀

645訶魯那98達ら歩陀999奚魯伽45訶理三210訶理蒲8一動56訶理婆742泥羅婆353最妙

7899高出78周広58伺察340奚婆羅694毘睹羅544三末耶6763顛倒5214異路3568一持

674毘きゃ擔36毘薄底37毘婆訶3128毘素陀94毘盛伽983毘贍婆1345毘薩羅456僧羯邏摩

47毘伽婆392毘ら伽5435弥伽婆859阿婆�85禰摩983普摩75界分860多婆羅

895阿婆羅47摩婆羅352最勝335阿伽羅365矜羯羅7頻波羅65那由他7382阿ゆ多

743倶胝566洛叉4790無量大数59不可思議351那由他244阿僧祇56恒河沙

689極48載52正3452澗109溝807穰536秭78垓24京6574兆75849億3905万967千

7百9十体の呉キリカでも私のやることは変わらないわ」


さやか「あんたもか!?」

まどか「に、逃げようよ!ほむらちゃん!あきなちゃん!だって——」


まどか「約3443不可説不可説転785不可説不可説56474不可説転7889不可説67766不可量転

7657不可量985不可思転784985不可思33242不可称転 8984不可称6764342不可数転

3213不可数334無等転7736無等57983無辺転61231無辺9803無量転80149無量

3203阿僧祇転9874阿僧祇10983至2824趣631僧祇7132鉢頭摩2887青蓮華3212阿畔多

2130無我23102出生4444無尽9892演説10943烏波跋多65332毘迦摩6221鉢ら麼陀

8921駄麼羅3123者麼羅2103迷ら普563娑婆羅7123摩ら羅1189那婆羅673毘婆羅210訶婆婆

54023羯羅波672薜魯婆67145醯魯耶76512阿怛羅421摩伽婆6889迦麼羅7863阿野娑

66543娑母羅2109摩睹羅678853契魯陀6787謎魯陀793娑ら荼2456謎羅8843睥羅

924細羅51480計羅2349泥羅580歩羅6偈羅 328諦羅834薜羅329翳羅85尸婆麼怛羅

643鉢羅麼怛羅2べい麼怛羅8762奚麼怛羅8那麼怛羅673伽麼怛羅7勃麼怛羅589阿麼怛羅

9903極量46不動137離きょう慢849調伏870摩魯摩32えらい陀569懺慕陀8734摩魯陀

645訶魯那98達ら歩陀999奚魯伽45訶理三210訶理蒲8一動56訶理婆742泥羅婆353最妙

7899高出78周広58伺察340奚婆羅694毘睹羅544三末耶6763顛倒5214異路3568一持

674毘きゃ擔36毘薄底37毘婆訶3128毘素陀94毘盛伽983毘贍婆1345毘薩羅456僧羯邏摩

47毘伽婆392毘ら伽5435弥伽婆859阿婆�85禰摩983普摩75界分860多婆羅

895阿婆羅47摩婆羅352最勝335阿伽羅365矜羯羅7頻波羅65那由他7382阿ゆ多

743倶胝566洛叉4790無量大数59不可思議351那由他244阿僧祇56恒河沙

689極48載52正3452澗109溝807穰536秭78垓24京6574兆75849億3905万967千

7百9十体も居るんだよ!?」


さやか「えっ!?何!?覚えてなきゃ駄目なヤツなの!?」

ほむら「…………」


ほむらは深呼吸し、QBを見つめ直す。


ほむら「インキュベーター……もし私がこの約3443不可説不可説転以下略体の呉キリカを倒したら——」


ほむら「私達の目の前に現れる事を約束してくれるかしら?」


QB「……いいだろう」


いつもと同じ口調では無くなった。
声はQBの声だが、黒幕の物だという事に気付いた。


QB「キミが生きて帰れたら出てきてあげるよ」


QB「……だが、まずこの人数の呉キリカに勝てる訳が無いよ」


QB「ここがキミの墓場だ!散るがいい!暁美ほむらぁ!!!」


そのキュゥべえの声と共に回りに居た呉キリカが一斉に、ほむら達に
駆けて来た。

近くまで来る前に、ほむらは盾からロケットランチャーを取り出し
キリカの軍勢に発射した。


爆発と共に、キリカ達はバラバラになる。

やはり力は劣っているのか。


ほむらの後ろでは、あきなが戦っていた

次々と押し寄せて来るキリカを斬り刻んで、鮮血が飛び交う。


あきな「!」


上からのキリカ達が鉤爪を構えて攻撃してくる、一人一人の技を全て華麗に避け
ながら、剣で斬り倒していく。


しかし、不意を取られて、懐に入り込まれてしまった。


するとあきなの頬に銃弾が掠め、キリカの顔に風穴が空き、数メートル飛んで倒れた。

振り返ると大口径銃を持ったほむらが居た。


ほむら「気を付けなさい」


あきな「あぁ……」


気を取り直し、次々と来るキリカを対応する。

—————————


倒しても倒しても現れるキリカにほむらとあきなは疲れが出始めた。


もう何人倒したか覚えていない、まずグリーフシードが保つかどうか分からない。

二人が疲労困憊してる隙にQBは、ほむらとあきなの間に入り、まどかとさやかの前に座る。


まどか「もう止めてよキュゥべえ…!あんな事してたら…二人共死んじゃうよ…!」


QB「……キミ達が加われば、この状況を打開出来るかもね」


まどか「えっ……?」


さやか「で、でも…あたし達は……」



QB「ならここで二人を見捨てるのかい?」


困った感じに、さやかは腕を組んで悩む。

すると、隣にいたまどかが一歩前に出る。


まどか「私…!契約するよ!キュゥべえ!」


さやか「まどか!?」


まどか「だって!このままじゃ二人共死んじゃうかもしれないんだよ!?」


さやか「そ、そうだけど……!」


言葉が上手く出なかった。


QB「……分かった、まどか、キミの願いは何だい?」


まどか「私の願いは———」

全てを言い切る前に、QBの頭部に剣が突き刺さり
QBは血塗れになり絶命する。


あきな「『無謀な正義は命取りになる』ってRBのヤツが言ってたじゃねぇか」


あきな「そもそも、お前らが加わったぐらいで戦力になる訳無いだろ、大人しくそこで見てろ」


まどか「見てられないよ!」


突然、まどかの目から涙が溢れだしていた。


あきな「アンタ……」


まどか「ほむらちゃんや…あきなちゃんは…強いかもしれない…だけど……死んじゃうかもしてないんだよ?」


まどか「私…そんなの嫌だよ…!」


まったく、何なんだ、このお人好しは。ほぼ初対面だぞ?
相変わらずだ、未来も過去もこの人はブレないな。


あきな「鹿目まどか、アタシを見ろ」


まどかの両肩を掴んで、自分の前に引き寄せる。

まどかの顔は涙でグチャグチャになっていた。


あきな「アタシと暁美ほむらを信用してくれ」


あきな「必ず、絶対に帰って来る」


まどか「……!」


あきな「死なないよ、アタシ達はそう簡単に死ぬ訳にはいかないんだよ」


あきな「まだ、やり残した事、山程あるしな!ゲームとか!」


初めて、あきなはまどかに笑顔を見せる。
あの鉄仮面の様な無愛想な表情を作ってたとは思えない程、明るい顔だった。


まどかは不思議な安心感に包まれていた。

この二人は絶対に生き残れる。

こわ

ほむら「悪いわね……」


あきな「…約束した以上、守らないとな」


ほむら「フッ…そうね」


後ろから奇襲をしてきた三体のキリカを、あきなは剣を振り
同時に真っ二つにした。


あきな「やってやるさ……!」

QB「なんて事をするんだ、勿体ないじゃないか」


あきな「………」


QB「美樹あきな、キミの力は未知数だけど、通常の魔法少女じゃこの人数には勝てないよ」


QB「例え二人でも———」


「『勝つのは数じゃない、気持ちの問題だ』貴方はそういいましたわよね」


仁美「私はしっかりとその言葉を覚えてますわ」


さやか「仁美!?」


QB「………」



MD「……調べてみたが、この結界は人工結界だ」


MD「その呉キリカも人工で作られた物が、この結界のどこかに大量生産装置がある」


仁美「大量生産装置……やはり……」

キリカの山の中に、機械の様な物が置いてあった。


ほむら「………あれね」


時間停止して、瞬時にその機械に近付きゴルフクラブで叩き壊す。


時間が再び動き出すと、辺の呉キリカが装置の中に掃除機に吸い込まれるホコリの
様に引きずり込まれ、最終的には全てのキリカが居なくなった。


さやか「やった!」


QB「……させないよ」


機械から電子音が聞こえ、赤色のランプが点灯した。

すると、再び機械は動き出した。


ほむら「何…!?」


MD「馬鹿な…遠隔操作だと!?大量生産装置にはそんな物ついてないハズ……」


QB「こんな事もあろうかと、付けておいたんだよね」


ほむらは咄嗟に身構えた。


しかし、機械から出てきたのは手の平サイズのキリカしか出てこなかった。

大量に出てきた手の平サイズのキリカが次々と出てくる。


MD「サイズ調整が壊れたんだ……」

仁美「……人口結界はもう終わりですわ」


仁美「逃げますわよ!こちらに抜け道がありますの!」


みんな仁美が向かう方向に一斉に走った。


QB「………」

出た場所は、独特の臭いが充満する体育館の裏倉庫だった。


MD「………さて」


MD「アイツがまた何かしてくるかもしれない、私は戻る」


そう言うとMDは倉庫の中から出て行くのを見届けると

さやかとまどかの視線は仁美に行った。



さやか「仁美…アンタは一体……」


仁美「……」

仁美「わた、しは……」


言葉が上手く出なかった。

それもそうだろう、この二人を魔法少女にした挙句
魔女化させようという恐ろしい計画に加担してたからだ。


自分の友人を裏切り、愛していた人を奪い取り化け物呼ばわりして絶望させる。

そんな彼の計画を実行しようとしてたんだ、今更、彼を裏切った所で、自分の友人を死体も
同然にしようと考えていた事には変わりはない。


一人の友人を間接的に殺す事でもう一人の友人を魔法少女にさせ、最終的には
地球滅亡させる。


純粋な願いを全てを破壊する力を齎そうという作戦に私は加担していたんだ。


もう気付かれてるかもしれないけど、全てを語るのが恐い。

全てを語れば何もかも終わる様な気がする。

今までの友人関係が崩れる気がして仕方が無い。


顔が青ざめるていのを気付いたさやかは、察した様に
仁美の肩に腕を乗せた。


さやか「ま、何でもいいけどねー。仁美は仁美だもん」


さやか「あんたが何者でも、あたし達の友達でしょ?そうだよね?」


まどか「うん、もちろんだよ!」


仁美「……貴方達って人は」

薄く笑う仁美。

安堵した様にふぅと息をつく。


さやか「間違ってる事に気付いて、あんたはQBを裏切ったんだよね?」


さやか「それだけでも大したモンだよ」


仁美「そこまで……じゃあ私がRBだという事も?」


さやか「え?」

まさかそこまで気づかなかったのか?
さやかは笑って誤魔化した。


そんな中、あきなは倉庫から出ていこうとしていた。


あきな「……とにかく、魔法少女というのは甘い物じゃない」


あきな「お前達が何も危険に身を案じる必要はない」


あきな「そもそも、なったところで足でまといだからな」


そう言い捨てると、あきなは出て行った。


さやか「何だよアイツ、感じ悪いな!」


さやか「親の顔が見てみたいよまったく!」


さやか「どうせロクな親じゃないんだろうな!あんなヒネくれた性格にする様な育て方するんだし!」


まどか「い、言い過ぎだよ、さやかちゃん」

まどか「私はそんな悪い人には思えないよ?さっきだって守ってくれたし」


さやか「そう、だけど……」


仁美「まぁ、悪い人では無いですわ。上手く言葉に出せないだけですわよ」


さやか「そうかな…?」

———————


夜道を通るあきな。

明日の事をとかを考えながら、歩いていた。


すると、目の前に白衣を着た灼眼の青年が道を立ち阻む。



キュゥべえ「………やぁ、美樹あきな。先程の活躍は中々だったよ」


手に何やら金色の拳銃の様な物を持っていた。
この様子からして、QBを操ってた者だと分かる。



あきな「お前が……黒幕……」


キュゥべえ「突然だが美樹あきな、キミは幼児化してもらう」


あきな「………へ、へんた——」


キュゥべえ「勘違いしないでくれるかな?ただ戦力を削らせて貰うだけだよ」


キュゥべえ「強さも何もかも未知数のキミはボクにとっては脅威だ」


キュゥべえ「もちろんボクが簡単にキミを殺せる訳が無い、だから、簡単に戦力を削ぐ方法がこれ、さ」


不意に向けられた銃は、あきなを捉えた。

避けようとしたが、反応に遅れて、抵抗も出来ずに被弾してしまう。

—————————————


目が覚めると、外に居た。すでに真っ暗の夜。

何故、道端で寝ていたのか思い出せない。


それよりも、母が居ない事に疑問を抱いた。


あきな「ここどこ……?お母たま……?」


何故か自分は黒色の合羽を着ていた、いつもの可愛らしい黄色のヤツじゃなくて
違和感を覚えた。


しかし、そんな事よりも孤独感と恐怖が込み上げて来る。


あきな「うぅ……」


次第に、目から涙が溢れ出る。


あきな「お母たまぁ……お父たまぁ……」


泣きながらあきなは夜の街中で、父と母を探した。

溢れる涙を手で拭いながら、歩いていると、突然、雨が降り出した。


その雨により、あきなはさらに不安が募る。

合羽を着ているから大丈夫だが、合羽に当たる雨の音がさらに
不安を掻き立てる。


もしかして自分は二度と帰れないんじゃないだろうか?そんな事を不意に
考えてしまい、あきなは大泣きした。


あきな「わあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!おがぁだまぁ!おどうだまぁ!」


泣きながら雨の中を走り抜けようとする、しかし、案の定コケてしまい
全身がビショビショになった。


床にうつ伏せになったまま、あきなはしばらく動こうとしなかった。

いつもの性格では無く、ただ純粋な少女の性格となってしまった。

その上、記憶が5歳前の事しか覚えていない。


一度、母と行った時にデパートで迷子になって以来、外に出かける時は
手をしっかりと繋いで出る事を心掛けていたのだが。


気が付いたら外で、しかも夜中。

自分は母に捨てられたんじゃないか?という事も考えるが、即座に否定した。

しかし、今自分は孤独だと言う事には変わりはない。


あきなは手で顔を拭って、立ち上がろうとすると、前から誰かが来る気配がする。

驚いたあきなは、物陰に慌てて身を隠す。


危険な人物かどうかも分からないのに、孤独感のせいで警戒心が
強くなっていた。


ポリバケツの隣で耳を塞ぎしゃがみこんでジッとした。


辺は真っ暗なので、遠目で見ればゴミ袋に見える。
黒い合羽が良いカムフラージュを施していた。



マミ「もう、今日はかなり手間取ったわね」


さやか「案外、強かったですもんね、あの魔女」


まどか「あのマミさんが苦戦してたから、ヒヤヒヤしましたよ」


マミ「………」


さやか「どうかしました?」


マミ「私、今日学校行ったっけ?」


まどか「え?」


マミ「う〜ん…どうしても思い出せないのよ……」

三人はあきなが隠れている近くを通りかかろうとする。

耳を塞いでいる為、あきなは三人の声が聞き取れない。

三人に助けを求めればいいのに、何故かあきなは警戒してしまい
隠れるのを止めようとしない。


三人が、あきなが隠れている隣に差し掛かると、突然、辺りが光
雷鳴が響く。


あきな「いやぁっ!」


驚きのあまり声を出してしまった事に気付いて、あきなは口を慌てて塞ぐが
もう既に遅い。


まどか「……さっき、この裏路地から声聞こえなかった?」


さやか「え?」

まどか「聞こえたよ!さっき、子供の声が……!」


マミ「何かしら?」


さやか「ちょっと見に行きましょう」


来る。

コッチに来る。

とてつもない恐怖に包まれたあきなは咄嗟に立ち上がり、三人が居るのと
別の方向に走り出した。


まどか「あ!待って——」


あきなは後ろを振り向かず、ただ逃げる事だけを専念した。
捕まるとどうなるか、そんな事が頭を巡る。

あきな「!」


しかし、ものの数メートルの所で転んだ。


あきな「わぁああああん!!!いだいよぉぉおおお!!!」


後ろから慌てて、三人が駆け寄る。


まどか「ちょっ…ちょっと!?大丈夫!?」


マミ「よしよし、大丈夫よ大丈夫よ」


頭を撫でて優しく声をかける。

そのマミの行為で少し、あきなの警戒心は解かれる。


さやか「何で突然逃げたのさー?別にとって食う訳じゃ———」


さやかはしゃがみこんで傘に入れると、どこか見覚えのある顔をしていたので
怪訝な目を向けた。


さやか「あれ…?この黒い合羽といい…その顔といい……あんた、もしか——」


全てを言い終わる前に、あきなはさやかに飛びついた。


あきな「怖かったよぉぉぉ…お母たまぁぁぁぁ……もう、ヒック…どこにも行かないでぇ……」


さやか「え!?えっ!?いや、ちょっと…!」


マミ「あらあら、美樹さんの事をお母さんと勘違いしてるのね?」


さやか「こんな若いお母さんが居ませんよ!お姉さんならまだしも!」

あきな「どこに行って…ヒック…!アタシが…!」


さやか「あ、あのねぇ?あたしは、あんたのお母さんじゃ———」


母では無いという事を言おうとすると、あきなは再び目からポロポロと
涙が流れ出す。


あきな「野菜もこーんふれーくもちゃんと食べるからぁ…!何でも言うこと聞くからぁ…!」


まどか「さやかちゃん……」


さやか「あ、あたしが悪いのかよー!?」


さやか「てゆうか!コイツ、美樹あきなじゃないか!?ホラ!」


そう言ってさやかは、まどかとマミに見せる。


マミ「あらホント、よく見たらそうね」


まどか「本当だ……どうしちゃったんだろう?」

マミ「とにかく、今はこの子をどうするか、考えるのは明日にしましょ」


まどか「わ、私のところでいいかな!?」


マミ「いいえ、鹿目さんはご両親が居るわ…説明するのがややこしいでしょ?」


まどか「で、でも……」


マミ「こうなってしまっては、仕方がない私がその子を預かる事にするわ」


そう言ってマミは、あきなに手を伸ばすが、一項にさやかから手を離そうと
しない。


さやか「ちょ…ちょっと」


マミ「あらあら……私より美樹さんがいいの?」


あきな「……お母たまがいい」


さやか「だからお母さんじゃ———ムグゥ!?」


言い切る前に、まどかとマミに口を塞がれた。

あきな「お母たま…もうどこにも行かないで…良い子にするから…」


うるうるとした瞳で、さやかを見上げる。

その時、さやかの頭の中にフラッシュバックの様に記憶が蘇る。


あきな『無謀な正義は命取りになるってRBのヤツが言ってたじゃねぇか』


あきな『そもそも、お前らが加わったぐらいで戦力になる訳無いだろ、大人しくそこで見てろ』


あきな『……とにかく、魔法少女というのは甘い物じゃない』


あきな『お前達が何も危険に身を案じる必要はない』


あきな『そもそも、なったところで足でまといだからな』


思い出したのは、かつてのあきなの姿だった。

何故、子供になったのかはさておき、どうしてこんな純粋な性格から
あんな性格になったのだろうか。


そんな事を思ってると、さやかは変な感情が襲った。

あの上から目線だった、あきながこうやって甘える様に抱きついている。


そのギャップがなんとも——


まどか「さやかちゃん……」

まどか「え?あの、さやかちゃん…本当に…あきなちゃんを連れていくつもり?」


さやか「ま、まぁ流れ的に……」


まどか「た、多分、さやかちゃん一人じゃ世話大変かもしれないよ?だから私、さやかちゃんの家に泊まらせて?」


まどか「大丈夫大丈夫、明日休みだし、学校休みだから大丈夫だって」


さやか「あ、あたしは構わないけど、まどかの両親は——」


まどか「もう連絡した、大丈夫だって」


いつの間に。
まどかの無駄の無い迅速な対応に圧倒されてしまった。


まどか「そうと決まればGO!だよGO!」


さやか「あ、ちょ、まどか、待っ——」


マミ「………」


マミ「………さて、帰ろうかしら」

QB「……上手くいった様だね」


キュゥべえ「………」


QB「キミの狙い通り、美樹あきなは幼児化して戦力をゴッソリと削れた」


QB「だけど解せないね」


QB「どうして幼少期に戻した美樹あきなを殺さなかったんだい?」


キュゥべえ「……あくまでも戦力を削ぐ為の作戦だよこれは」


QB「……そうかい」


QB「美樹あきなのソウルジェムに『聖水鍵』を刺したりしたから、てっきり……」


キュゥべえ「ここで美樹あきなが脱落してもらったら困る、まずはこの状況を利用しないと」

————————————


ほむら「………」


RB『無事に帰れた様ですわね』


ほむら「あなたも、家に帰れたの?」


RB『えぇ、なんとか無事に』


ほむら「……これ、完全に機械化してない?」


RB『不具合があったものでして……』


ほむら「それにしても、あなたが志筑さんという事には驚いわ」


RB『隠しててごめんなさいですの』


ほむら「……あの後、アイツは結局出てこなかった」


RB『所詮口約束ですわ、そう簡単に姿は見せませんわ』


ほむら「そうね……」

——————————————————


さやか「………」


あきな「?」


さやか「はぁ…あんたが足でまといになってどうすんのよ」


あきなに聞こえない様に囁く感じで呟いた。


とりあえず、あきなの泥にまみれた体を洗いたいのだが
さっき帰ってきたばっかりなので、風呂を作り始めている所
である。


まどか「どうしてこんな事になっちゃったんだろうね?」


さやか「とりあえず、仁美に連絡するか」

まどか「あれ?」


さやか「どうかした?」


まどか「あきなちゃんのソウルジェムに綺麗な鍵みたいな物が刺さってる」


金色で小さな色鮮やかな宝石が点々と装飾された鍵が、ソウルジェムに
刺さっていた。


ソウルジェムの色は奧まで透き通って見える程、綺麗だ。

まどかは鍵を抜こうとしたが、後ろからさやかが
止めておいた方がいい、と手をつかむ。


さやか「それにしても、マミさんのヤツよりも綺麗だな」


さやか「これぐらいの歳だと綺麗になるのかな?」


さやか「……あ、お風呂出来たみたい」


まどか「私があきなちゃんとお風呂に入るよ!」


返答のヒマも無く、まどかは、ブリキの人形で遊んでいるあきなを
風呂場に連れ込んだ。

脱衣所でまどかは手っ取り早くあきなの服を脱がした。

ズボンの中から学生手帳が出てきた。


まどかはその学生手帳を拾い上げ、あきなが風呂に入ってる事を
確認すると、思わず手帳を開いてしまった。


まどか「え……?」


裏側を見ると元の姿のあきなの写真だった、しかも見たことがある
制服を着ていた。


その写真の隣に書かれている文字がある。


見滝原中学2年○組 美樹あきな。



同じ学年で同じ学校、しかも住所を見るとここから近くだった。


転校生かと思ったが、そんな情報は一切なかったし見かけもしなかった。


まどかは手帳を最初から読み始めた。

予定表のところには可愛らしい絵が書かれている。

文字の所は所々に×印が付けられて訂正されている。


訂正したのはあきなだろう、しかし絵とかを書いたのは
誰だろう?


一応、財布も調べてみた。

調べるだけでいいから大丈夫と、自分に言い聞かせて
あきなの財布を開く。


そこそこ金が入っている、カードも三四枚入っている。


すると、写真が出てきた。

男性の写真一枚と女性の写真一枚、どこか見覚えがあるので凝視しようとするが
これぐらいにしておこう、と写真を元の場所に入れて
手帳も財布も元の場所に戻し、さっさと衣服を脱いで風呂に
入った。

仁美『そうですか、あきなさんが……』


さやか「うん…そうなんだよ……」


仁美『戦力がゴッソリ削られましたわね……』


さやか「ねぇ、アイツって……何なの?」


さやか「あたしに似てるし、小っちゃくなったら、顔を見るなり「お母さん」って……」


さやか「偶然とは——」


仁美『私も詳しくは分かりませんの、一時は記憶喪失になってた様ですが……』


仁美『その後、思い出した様でしたから彼女に聞ければ……いいんですけど、ね』

さやか「それに、アイツがそう簡単に答えるとは限らないしねー」


仁美『ふふ…それもそうですわね……それと、さっき話した『鍵』の事ですが』


さやか「あぁ」


仁美『それ、あきなさんが元に戻るまで取らないで下さい』


さやか「え?あ、う、うん、分かった」


そう答えると受話器を元の位置に戻した。

風呂場から、まどかとあきなの話し声が聞こえてくる。

まどか「ねぇ、あきなちゃん」


あきな「何ー?」


まどか「この髪飾りどうしたの?」


あきな「お母たまから貰った!」


まどか「お母たま…?ウェヒヒ!」


まどか「あきなちゃんて、お母さんの事好きなの?」


あきな「しゅき!」

まどか「それじゃあ…その……あきなちゃんのお母さんの名前知ってる?」


あきな「お母たま?」


あきな「お母たまは、美樹さやかって言うの」


その言葉を発すと同時に、外からさやかのむせる声が聞こえる。


まどか「へ、へー!そうなんだー、ティヒヒ……」

さっさと髪を洗い、体も洗って風呂を出る。


タオルで綺麗にあきなの体を拭いていると、服はどうしようと
さやかに相談して、さやかのお古を着させておくことにした。


まどか「あれ…?あきなちゃん…寝てる?」


さやか「疲れてたのかな……そんな事より……」


まどかは抱えているあきなをベットに寝かし、さやかの
前に座り込む。


さやか「あれ…どういう事かな…?」


さやかの言う「あれ」とは大体予想がついた。

あきなが言った母親の名前、美樹さやかという名前の事だ。


まどか「同姓同名にしては、偶然過ぎるよね……」


さやか「うん、だから、あたしは気が付いたんだよ、アイツ…ひょっとして未来人じゃないのかって」


まどか「まさかそんな…」


さやか「でも、それ以外……まぁ確信は無いけどさ…」


あっと思いつたまどかは、脱衣所に戻り、あきなの財布の中から
一枚の写真を取り出し、さやかの所に持っていく。


まどか「ほんの一瞬しか見てなかったけど、これ……さやかちゃんだよね?」

さやかは驚愕した。

髪は伸びて、かなり大人びているが、どこからどう見ても自分だった。

思わず目を擦ってしまうさやかの様子を見て、やっぱり、とまどかが
呟く。


さやか「こ、これ…見ちゃヤバイやつだった…?」


まどか「まだ、もう一枚あるんだよ」


ビクッと体が跳ねる。さやかはかなり動揺してる事が分かる。


さやか「な、何?」


まどかが差し出した写真に恐る恐る見る。


さやか「こ、この人は……?」


男性の写真だった。

フォーマルなタキシードを着て、パーティに出席している様子だった。
撮られた場所は外国だろう。


まどか「……知ってる人?」


さやか「知ってるも何も…この人はコンビニの店長……」


さやか「いや、まさか、あたしが、そんな……」


何やら焦っている。
コンビニの店長では無いだろうが、結構、身近な人物なのだろう。

さやか「これ、恭介だよ……」


さやかは頭を抱え、顔を伏せる。


さやか「な、何であたしの写真と恭介の写真をコイツが持ってるのよ…!」


完全に混乱してしまったさやかは、地面に転がり回った。


まどか「他人のそら似かも知れないよ?」


さやか「えー…でもー…」


さやかは耳まで真っ赤になりながら、まどかを見つめた。

RB『やりましたわ!ついにあきなさんが何者か分かる物が見つけましたわ!』


突然、窓の間からRBが入って来た事に二人は驚いた。


さやか「ど、どうしたの仁美?完全に機械化してるじゃんこれ」


RB『あぁ、それには色々ありまして…そんな事よりありましたよ!』


さやか「あったって…何が?」


RB『あきなさんの持ち物の中にあったカセットテープを復元する事が出来ましたわ』


さやか「カセットテープ…?」


RB『とりあえず、これを聞いて下さい』


電子音と同時に、RBから雑音が聞こえて来た。

『そろそろ、みんなが来る頃じゃない?』


序盤から、女性の声が聞こえて来た。

この声を聞くと、さやかはビクッとした。


『そうだね、久々にみんなが来るから楽しみだ』


今度は男性の声、この声も聞き覚えがある様な気がする。


『………そうだね』


雑音か何か良く分からない小さな声が聞こえる。


まどか「あきなちゃんだ……」


『こんなに一杯、料理を作る事になるなんて……あたし初めてかも』


『大丈夫だって、僕も手伝うから。あきなも手伝うだろ?』


あきな『え、あ…う、うん……』


『とりあえず、あきなは野菜切ってて、あたしは——』


女性の声が遠ざかる。

『——まぁ、こんなものかな』


女性の声が再び戻って来た。


『そう言えば……あの子も来るのかな?』


『あの子?』


『ホラ……中学の時の…アホ毛が生えた……』


『あぁ……渚の事?』


『渚は来ない…一生来ないよ……』


『どうして?』


『渚は……去年の夏、自殺してる』


『そう…か……そりゃ、残念だったね…』

しばらく沈黙が続いた。


その沈黙を破ったのは、皿が割れる音だった。


『わぁ!?』


『大丈夫かい!?さやか…あ!誰か来たみたい』


『恭介!私が皿片付けるから出て!あきな!チリトリを——』


ブツッという音と共に、再生は終わった。


まどか「い、今さっき———」


さやかの方を見ると、さやかは小刻みに震えており、汗が滝の様に出ていた。


さやか「そ、そんなまさか、いや、まさか……」

RB『私の同僚が拾った壊れたカセットテープを復元したら、この会話が聞こえてきて……』


RB『つまり、結論から言うと、あきなさんはさやかさんと——』


さやか「待って!言わないで!それを言ったら死ぬかもしれないから!」

まどか「それにしても……」


まどか「渚って…誰の事かな……?」


さやか「……さぁ?」


RB『……とにかく、私はこれで失礼しますの』


RB『何かあったら、連絡を下さいな』


さやか「分かった」

————————————


キュゥべえは早歩きで研究所の廊下を歩いていた。

美樹あきなはもう戦力にならないだろう、今度はこそ、暁美ほむらやRBの
狙いは打ち砕かれる。


早くしないと、『本部』のうるさい上司共が騒ぎ出す。

本来なら、このぐらいの日には、ほむらは孤立無援状態になるハズだったのだが
予測出来なかった仲間の裏切りにより、計画は空中分解した。


まったく、何でザマだ。

QB「やぁ」


キュゥべえ「………何?」


QB「いや、佐倉杏子が見滝原に来る情報が入ったから、一応、伝えておこうと思って」


ため息が出た。

これにより、確実に本来の計画は崩れ去る。


佐倉杏子は、神名あすみから話を聞いたから、巴マミと同盟を組むつもりなのだろう。


もし、そうなれば、自分の身も危うい。

そして、今。

予想通り、杏子はマミを訪ねていた。

————————————————————


杏子「よォ」


マミ「……何しにきたのかしら?佐倉さん」


出会い頭に敵意を杏子に向けるマミ。

しかし、杏子は気にせず話を続ける。


杏子「オイオイ、アタシは別に争いに来た訳じゃねぇんだよ」


マミ「え?」


杏子「同盟、組まないか?」


マミ「……どういう風の吹き回しかしら」


意外な言葉を口にした杏子にマミは眉をひそめる。

杏子「……キュゥべえの事はもう知ってるか?」


マミ「! えぇ…まさか、佐倉さん……」


杏子「あぁ……アタシは、そのキュゥべえに命を狙われてたんだよ」


マミ「どうして?」


杏子「良く分からないけどよ。キュゥべえが雇った魔法少女曰く、アタシをアンタに会えない様に

しようとしてたらしいんだ」


マミ「……まさか、計画に支障が出るから、とか」


ポツリと、マミは呟く。

杏子には聞こえなかったらしく、困った様な顔をして腕を組んでいる。


マミ「まぁ、良かったわ。丁度戦力が欲しかったのよ」

——————————————


杏子「久し振りだな、マミの部屋」


マミ「ちょっと待ってて、お茶を持ってくるわ」


そう言い残し、マミはキッチンに向かった。

杏子は昔、マミと一緒に戦った思い出なんかを思い出しながら
部屋を見渡してた。


マミ「きゃあ!」


杏子「!? どうした!?」


突然、マミの悲鳴が聞こえたので驚いた杏子は急いで
キッチンに向かう。


マミ「………!」


マミは後退りしながら、何かと距離を取っている。

マミの視線の方向を見ると、白い生物が居た。


QB「酷いなぁ、そんなに驚かなくてもいいじゃないか」

QBは平然とした顔で座っていた。


杏子は驚きより、怒りが吹き出て乱暴にQBを掴み上げた。


杏子「テメェ…!どのツラ下げてアタシの前に立ってんだ!?あァ!?」


フーフーと、息をしながら杏子はQBを睨みつける。

しかし、そんな状況でもQBは動じない。

QB「どうしたんだい?そんなに怒って」


杏子「どうしたって…お前はアタシを殺そうとしただろうが!」


白々しいQBに対して怒りが頂点に達し、杏子のこめかみに
青筋が入る。

隣の人の迷惑になる程、杏子は怒声を発した。



杏子「この悪魔…!人の心を弄ぶ悪魔が!」


QB「ちょっと待ってくれ、ボクに怒りをぶつけるのは、お門違いじゃないのかな?」


QB「その怒りは、本来ならボクの上司に向ける怒りだ」


杏子「ウルセェ!連帯責任だ——この野郎!」


怒りのあまり、自分でも意味不明な事を言ってる事に気付いた杏子は
顔が赤くなった。


QBはやれやれ、と言って軽く首を振る。

QB「どうやら、その様子だと神名あすみから秘密を聞いた様だね」


杏子は何も答えず無言のままQBを睨みつけるだけだった。


QB「真の魔法少女の秘密を彼女に教えるべきじゃなかったね」


マミ「出ていってよ……!」


後ろから震える様な声が聞こえた。
振り向くと、涙を浮かべたマミが立っていた。


マミ「出ていって!貴方の顔なんか、二度と見たくない!」

マミは噛み付く様にQBに向かって叫ぶ。
昔は、あんなに仲が良かったのに、今では敵意を剥き出しにして
見るだけでも怒りを覚える程になっている。


マミ「貴方達の思い通りにはさせないわ!鹿目さんも美樹さんも、貴方達の実験道具にはさせない!」


QB「……ハハ」


QB「そうかい……それが、キミの望みなんだね?マミ」


マミ「……!?」


突然、QBの声が変わった。少年と青年の中間の様な声だ。
その声にマミは凍りつき、杏子は大きく目を見開いた。


QB「キミのケーキはとても美味しかったんだけどなぁ……とても残念だ」


QB「キミと一緒に過ごした楽しい日々は、決して忘れないよ」


QB「杏子、キミとの思い出もね」


その声に感情が込められて無かった。出された台本を適当に読み上げてる
様な声だった。
それが不気味に感じ、杏子の掌から汗が滲んだ。

QBはスルリと杏子の手から抜け出し、床に着地した。


QB「それじゃあ…これからキミ達とボクは敵同士だ…杏子、明日にでも、ほむら達と会うといいよ」


QB「さようなら、マミ、杏子」


QBはそう言い残すと闇の奧に消えていった。
ただ話しただけなのに、何故か追い詰められてる感覚に陥てた。

あのプレッシャー、只者では無い事は素人でも分かる。


マミと杏子は恐ろしい怪物を敵に回した様な気分がした。

——————————————————

明日。

日曜なので、マミは杏子をほむら達に合わせる為に
マミは、ほむらの家を訪ねた。

インターホンを押すと、数秒後にほむらが出てきた。


マミ「こんにちは、暁美さん」


ほむら「もうみんな集まってるわ、上がって」


ほむらはドアを大きく開けて、マミと杏子を先に入らせてから
ドアを閉める。

部屋を開けると、まどかやさやか、仁美やMDが待っていた。


さやか「あ、マミさ——誰?その人?」

さやかのその人というのは、直ぐに分かった。
マミの後ろに居る杏子の事だろう。


杏子「……アタシは、佐倉杏子ってんだ。よろしくな」

マミ「彼女も、私達に協力してくれる人よ」

さやか「へー、そうなんですか」


マミ「それより……」

さやか「?」

マミ「あの子はどうしたの?」

さやか「あの子…?あぁ、仁美……RBの研究所に居ます」

さやか「出来る限りの処置はしてるみたいですが……」


さやかは仁美に目を向けると、仁美は軽く首を振った。


さやか「……まだ、戦える程の力は無い様です」

杏子「ところで、アンタら二人も魔法少女?」

まどか「いや、私達は……」

さやか「キュゥべえに狙われてたって言うか……」

杏子「フーン……じゃあ、まだ魔法少女じゃねぇって事か」


杏子は感心して頷く。

しばらくすると、ほむらが出てきた。


ほむら「……もう分かってると思うけど、私達の敵はあくまでもキュゥべえ。それだけは忘れないで」

ほむら「それと、キュゥべえに協力する者も」

ほむら「絶対に、彼のバックの人物を突き止めようと言う馬鹿な真似は止めて」

マミ「……そうね」

ほむら「だからと言って、一人だけでキュゥべえを見つける真似も避けて」

ほむら「魔法の力があると言っても、キュゥべえが何の対抗策も無いとは限らないわ」

ほむら「それから……」

今度は資料の様な物を出した。
絵には何か不気味な物体が空を飛んでいる絵が描かれている。


ほむら「ワルプルギスの夜の事もあるわ」

マミ「ワルプルギスの夜……!?」

MD「……アイツが用意した鹿目まどかを契約させる最後の切り札だな」

小声でポツリと、隣に居た仁美に囁く。

仁美「えぇ……ワルプルギスの夜が来る前に、彼を止めるのが理想ですわね」

と、MDに囁き返す。


杏子「つーかさ、アイツらは?」

ほむら「彼女達は私達の協力者よ。今回のキュゥべえの思惑を打ち砕くには重要な人達よ」


簡単に仁美達は味方だと言うことを説明しながら、ほむらはワルプルギスの夜に
関する資料を取り出した。

——————————————————

「また来たのか?」

「嫌ぁ」

キュゥべえの研究所では、研究員達が右往左往していた。
大量の紙束が次々とFAXの中から出てくる。

総勢(キュゥべえを除く)152人体制で、魔法少女システムの実験記録を『本部』の
研究員達に報告する為の記録用紙を提出するのに何枚も出さなきゃならない。
一応、自分もやっているが、大半は部下に押しつけている。

魔法少女の一部が、自分の存在を勘づかれた事はまだ報告していないし
する気がしない。したところで、『本部』のお偉いさんのカミナリが落ちるだけだ。

そんな事を思いながら、渡り廊下の窓越しに慌てる研究員達の様子を見下ろしている。

キュゥべえ「………アイツらはどうしようかな」


もう、キュゥべえの足元には火の手が迫っている。一刻の猶予も無い。

そろそろ行動を起こさないと、あの凶暴な少女達の手によって殺される事に
なってしまう。

しかし、自分の正体がバレた事は、これで初めてでは無い。
名前は忘れたが、一瞬で自分の裏の顔を見抜かれ、最終的には
自分の姿を、ある魔法少女の前に出してしまったのだ。

モチロン、粛清はしたが、あの時は全て終わったかと思った。


「QB、考え事ですかー?」


後ろから声がした。
振り返ると、ニヤニヤした顔でコチラを見ているHL(馬鹿)が立っていた。


キュゥべえ「いや、別に……どうかしたのかい?」


出来ればこの馬鹿とは関わりたく無かったが、仕方無く、口を聞いてやる事にした。

HL「魔法少女粛清の件は私に任せて下さいなー」

キュゥべえ「はぁ……」


キュゥべえは苦笑いした。
7歳児にすら劣りそうなコイツが、暁美ほむら達を倒す気か?
まぁ、いい。そんなに死にたかったら死にに行かせてやる。


キュゥべえ「そうかい、それじゃあ頼んだよ」

期待はしないけどな、と心の中で呟く。


HL「そうですか!それじゃ、遠慮なく」


HLは早歩きで、渡り廊下を去った。

無くなった両腕の代わりに凶器を付けるアホの子だが
まぁ、そこそこの時間稼ぎにはなるだろうな。

死んだら色々と厄介だし、馬鹿が死んだら『本部』には連絡しないでおこう
何を言われるか分からないし。

とにかく、ワルプルギスの夜が来るまでに、まどかを魔法少女にしなくては
そうすれば、大量の薬が手に入る。

まどかレベルの人物が絶望すれば、『本部』も文句無しの希少なデーターを
手に入れる事も出来る。


キュゥべえは白衣のポケットの中からプラスチックのケースを取り出して
注射器を取り出した。

——————————————————


ほむら「……と、言う事よ」


ワルプルギスの夜の説明を終わると、ほむらは「何か質問は?」と
杏子とマミを見つめると、二人は軽く頷いた。

まどかとさやかは何を言ってるのかチンプンカンプンだった。


杏子「よりにもよって、そんなバケモンが来るとはね……」

マミ「それよりも彼……キュゥべえよ。ワルプルギスの夜の騒動に便乗して何かをするかもしれないわ」

ほむら「そうならない為にも、早急にキュゥべえを捕まえる事よ」

杏子「捕まえるなんて生温いぜ!いっその事、殺———」

全てを言いかけたが、ほむらが「そんな解決法だとアイツと一緒になるわよ?」と言いうと
杏子は大人しく口を閉じた。

ほむら「理想なのは、『殺す』では無く『潰す』よ」

杏子「同じじゃねぇか」

ふてくされた顔で杏子は、ほむらにいちゃもんを付ける。


ほむら「物理的意味では無いわ、アイツの計画とかそういうのをよ」

マミ「そうね……殺すだけじゃ、本当に解決したとはならないものね……」

感心した様に、マミは頷く。

さやか「あの〜……」


申し訳無さそうな顔をしながら、さやかは、ほむら達の会話に入った。


さやか「その時、あたし達はどうすればいいんでしょうか…?」

まどか「三人だけで、そんな危険な所には行かせられないよ!私も……!」

ほむら「結構よ。あなた達は大人しく避難所で待機する事」

さやか「……そうですかい」


何を言っても無駄だと言うことを悟ったさやかは、大人しく引き下がる事にして
黙ってほむらの言うことを聞いた方が得策だと感じた。

まどかは、何かを言いかけたが、渋々と引き下がった。

杏子「キュゥべえのヤローが捕まってない場合の事は考えてなくていいのか?」

ほむら「一応、それも必要ね。考えて損は無いわ」

マミ「……もし、そうなってたら。あの二人だけ避難所には置いていけないわね」

ほむら「……だとすると、誰か一人…あぁ、でも。ワルプルギスの夜に対抗出来る戦力が……」

杏子「アイツらは使えないのか?」

杏子は口にたい焼きをくわえながら、仁美達の方に指を指す。
仁美達は何やら話している様だった。

ほむら「彼女らは無理よ、キュゥべえの捜索をやって貰わないと……」

杏子「じゃあどうすんだよ?」

そう杏子が問うと、ほむらは再び唸り声を上げた。


ほむら「やっぱり、キュゥべえの話はまともに聞かない様に注意を……あぁ、駄目…」

頭をフル回転させていると、仁美が割って入って来た。


仁美「それじゃあ、あきなさんは?」

ほむら「美樹あきなを…?」

仁美「えぇ…もうすぐで元の姿に戻せると思います。さすがの彼でも、コチラ既に数人の研究員達がついている事には

気が付かなかった様ですわね」

ほむら「い、いや……出来れば、美樹あきなは、ワルプルギスの夜討伐に付き合って貰いたい。出来る限り

戦力は上げておかないと…」


MD「それじゃあ、私が見張っててやろうか?」

さっきまで全く動かなかったMDが言葉を発した。


MD「捜索は仲間達に任せればいいだろ、鹿目まどかや美樹さやかの見張りは、私でいい」

ほむら「……そう、悪いわね」

MD「気にするな」

このやりとりは、非魔法少女のまどかとさやかにも聞こえていたが
さやかは深い眠りについており、まどかは何か考え事をしているらしく
殆ど、聞いて無かった。


家の外から強い雨が外壁に滴る音が響き、外から猫の泣き声が聞こえた。

ワルプルギスの夜が来るまで、後十一日。
生きるか死ぬかのカウントダウンは既に始まっている。

チクタクと部屋の時計が部屋中に響く。

制限時間は264時間、その間に、全ての悪の根源であるキュゥべえを捕まえる事が出来るか
それとも、返り討ちに遭い、最悪の魔女が来る前に殺されるか。

今、それが始まろうとしてると感じたほむらは固唾を飲んだ。

——————————————————————————————

キュゥべえは、腕時計を確認すると、薄く笑い。
携帯を取り出した。

キュゥべえは携帯電話を耳に当てながら
自室の壁に飾ってあった、ポンプ式のショットガンを持ち出した。

このショットガンは5歳児でも扱える程に反動を抑えている様に改造を
施している。

本当はこのショットガンは自衛の為に作ってたヤツなのだが、まぁ、所詮兵器は
人を殺す道具だから、別に人を殺す為に使ったって構わないだろう。

ショットガンに弾を込めていると、電話がようやく出た。


『はい、もしもし。どちら様ですか?』

キュゥべえ「もしもし。私、見滝原警察署の佐藤って者です、鹿目まどかちゃんいらっしゃいますか?」

『え…?あ、は、ハイ…ちょっと、待って下さい……』


電話の男は動揺したのか、戸惑った様だった。
暫くすると、お目当ての人物が電話を出た。

まどか『……で、電話、代わりました…鹿目、まどかです…けど…』

緊張した様にガクガクと声を震わせながら喋ってる様に聞こえる。
しばらく、無言になってやった。


まどか『あ、あの……』


戸惑うまどかの声を聞くのはとても可笑しかったが
そろそろ、喋ってやるか。


キュゥべえ「あぁ、キミが鹿目まどかちゃん?あのね、キミのお友達の、美樹さやかちゃんがね……」

まどか「えっ!?さ、さやかちゃん、どうかしたんですか……!?」


まどかの声が心配からか、声が裏返る。


キュゥべえ「とにかく、署まで来てくれないかな?その時にちゃんと説明するよ」

キュゥべえ「署の場所は知ってるよね?」

———————————————


キュゥべえは、まどかが来るのを待っていた。
恐らく、一人で来るだろう。
でも…もしも、親が付いてきたらどうしようか。


そんな事を考えていると、まどかがやって来た。しかも一人。
いかにも慌てて飛び出して来た感がある服装だった。

しかし、一人なら好都合だ。
キュゥべえはハンカチを握り締めて、まどかが通り過ぎるのを見図っていた。

すると、まどかの隣に黒い車がやって来て、車の中から白衣の者が三人出てきて、まどかを
後部座席に押し込んだ。

予想外の事態に、キュゥべえは慌てた。

助手席を見ると、見覚えのある人物が居た。HLだ。

この馬鹿、何をする気だ。鹿目まどかには手を出すなって、忠告してたのに。
今すぐ、この場で撃ち殺してやろうと思ったが、まどかを怖がらせない為にショットガン
は置いてきてしまった。

あーこう考えてる内に、黒い車は発進させた。

キュゥべえは慌てて、携帯を取り出して。素早くHLの携帯につなげる。
3コールで出て「はい?もしもし?」と、惚けた声が聞こえた。

キュゥべえ「HL!何をやってるんだ!鹿目まどかには———」

HL『QB、いいですかー?あなたの契約の仕方には強引性が無いんですよー』

HL『手っ取り早く、鹿目まどかを魔法少女にさせますからー、手柄は私が貰いまーす』


この阿保、トンチンカンが。誘拐なんかしたら、余計に魔法少女になんかならないだろうが
脅しを使えば、まどかは契約するかもしれないが……。

気に食わない、この馬鹿にまどかを契約させるのは何より気に食わない。


まどか『た、助けて——』

『うるせぇ!黙れ!』

携帯の奧で、まどかが泣き叫ぶ声と後部座席のHLの部下が怒鳴る声が聞こえる
乾いた音も聞こえた、まどかを殴ったのだろう。


まどか『痛い!止め——』

『止めて欲しかったら黙ってろガキ!』


再び乾いた音が響く。
さっきから歯軋りの音が聞こえたが、その音の元は自分の歯からだと
気付いた。


キュゥべえ『………分かった、それじゃあ、鹿目まどかは任せる』

HL『はーい』


そう言ってキュゥべえは電話を切る。

頭の悪いネズミは早急に捕食者に食われなくてはならないな。

————————————

次の日。

学校の昼休みを利用して、ほむら達は屋上に集結していた。
杏子も何とか屋上まで辿り着く事に成功していた。
仁美もそこに居た、MDはキュゥべえを捜索中らしい。

マミとさやかも遅れてやって来た、しかし、誰かが抜けてる事は
学校に来た時から気付いていた。


ほむら「……まどかは、どうしたのかしら?」

さやか「さぁ……無断欠席なんて珍しいね」

マミ「どうしたのかしらね?」

仁美「まさか…もう既に彼の手に……」


ゾクッと身震いがした、まさか先手を取られていたとは。
よりにもよって、まどかを誘拐するなんて。


「That's right!鹿目まどかは誘拐されたのだ!」


後ろから突然、甲高い声が響いた。
振り返ると、仮面ライダーのお面を被った、白髪の白衣の人物が
腕組みをしながら立っていた。


仁美「あ、あの…どなたですか…?」

PD「私は単なるプレデター…。PDと名乗っておこう!」


さやか「えーっと、で?そのPDさんが何の用で?」

PD「It is a good question!私はQBの邪悪なPlanningが気に食わなく、昨日ヤツに

Treasonしてやったのだ!フハハハハハハハ!!!」


さやか「こ、コイツのノリについて行けない…!」


さやかは、PDの異様な空気に圧倒され、一歩後ろに下がってしまう。

仁美「つ、つまり……PDさんはQBの計画が気に入らなかったので、昨日、QBに反抗したって事ですね?」

PD「そうだ!」

仁美「それで、私達に強力する…とか…?」

PD「お前達の存在は、ついYesterdayの事だ……一人では、ヤツを倒せないからFellowが必要だ!」

PD「同じく、QBを倒そうとする者同士、頑張ろうではないか!」

PD「ファーハッハッハッハッハッ!!!!」


PDは再び高らかに笑う。
マミや杏子は完全にドン引きしていて、顔が引きつっている。

ほむらは、仁美に囁く。


ほむら「信用出来るの?この変人」

仁美「さぁ…『本部』なんて変人ぞろいですし…でも、嘘をついてる様には見えませんわ…」

どっからどう見ても、ただのアホにしか見えないが、一応、警戒はしておく。


ほむら「ねぇ、確か、まどかが誘拐されたって言ったわよね」

ほむら「それって…もしかして、キュゥ——」

PD「No!それがQBじゃないんだよなー!」

ほむら「え?」

PD「鹿目まどかを拐ったのは、HLだ!」

仁美「HLですって!?」

ほむら「知ってるの?」

仁美「そう……でも、HLだとすると……」

ゴクリと、固唾を飲み込む。
仁美は焦っていた様だった。


仁美「まどかさんの命が危ないかも……」

————————————————————

目が覚めると、何故か自分はベットの上で寝ていた。
辺を見ると、長机が数個置かれており、その上には紙が散乱されて
ある。

どこだここ?


『そこは、RBの隠れ家だね☆』


突然、頭の中に声が聞こえた。
聞き覚えのある声だ。


あきな『ゼロか…』


ゼロ。

アタシを未来から過去に送り届けた全知全能神。
そもそもアタシが過去に来た目的は、鹿目タツヤのサポートで
その次は、美樹さやかを倒す事が目的だった。

だけど、結局負け……いや、負けて無い。あれは、佐倉杏子が入り込んだ
から負けたんだ。

負けたのは負けたが、アレは負けた事にはならない。一対ニだったから。


それにしても、この暇神。今まで何をしていたんだ?
てゆうか、何で姿を現さないんだ?

ゼロ『それにしても、覚えて無いの?』

あきな『……白衣の男…アイツになにかされてから以降の記憶が無い』

ゼロ『そっか……』

あきな『ところで……小早川渚は?』

ゼロ『アハハ☆渚ちゃんは暫くの間はここに現れないよ☆』

あきな『どうして?』

ゼロ『………☆』

あきな『秘密か……』

ゼロ『アハハ☆ごめんね☆』

ゼロ『ねぇ、もしさ、未来の子達が来たらすっごく面白い事になるんだろうねぇ?』

あきな『止めろ暇神』

ゼロ『遅い、もうしちゃった☆』

あきな『何だと!?』

ゼロ『アハハ☆宗介君に会えるから良かったじゃん☆』

あきな『そう言う問題じゃあ…!』

ゼロ『ククク……仲間は多い方がいいでしょ?』

あきな『そりゃそうだが、アイツらは一般人で魔法少女はアタシだけだぞ?』

あきな『戦力もクソも無いぞ』

ゼロ『でも、宗介…佐倉宗介クンが居るじゃないか。あのMSを素手で潰してしまいそうなオーラがある彼!』


確かにそうかもしれないが…
それ以外は本当に戦力にならないんだぞ、足でまといのヤツらだけだぞ。

コイツ、本当はこの状況をかき回したいだけだろ。


ゼロ『まぁそんな訳で、じゃあーねー☆』

あきな『オイ、待——』

あきな「……チッ!」


あの暇神の考えてる事は全然分からない。
こんな事をして、どうする気だ。

仕方が無い。
こんな所でグズグズしてたって仕方が無い。


あきなは手っ取り早く、黒いレインコートを羽織って
建物から出た。


あきな「………」

あきな「ボーッとしてる場合じゃないな、早く未来から来たヤツらを見つけなくては」

あきな「ややこしい事になる前にな」

何といってもまず探すのは、佐倉宗介だ。
アイツは野放しには出来ない。

野放しにしていたら本当にややこしい事になる。
そう思ったあきなは、とりあえず佐倉宗介を探し始めた。

「オーイッ!」

あきな「?」

杏子「アンタ、確か……さやかだよな?学校じゃなかったのかよ?」

何だ、母親の方か。
まさかこんなホームレスが自衛隊の男と……。


杏子「……ん?違うな…さやかはもっとこう……」

あきな「人違いだよ、アタシは美樹あきな」

杏子「あきな…?あぁ、アンタが美樹あきな?何かほむらが言ってたな、アンタも魔法少女だって?」


何だ、知ってたのか。

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