『スマイルプリキュア レインボー!』 Part 3 (1000)

~ ごあいさつ ~

こちらは、『スマイルプリキュア!』の第2期を想定した自作のストーリーを SS形式で展開していくスレとなっています。
投稿の作法や文体などに至らない点がありましたら、随時ご指摘いただけますと幸いです。

作品の主なルールは下記の通りです。


・地の文無し(基本的にセリフと擬音のみ)

・内容はあくまで『プリキュア』シリーズっぽく作成します
 キャラ崩壊や、シリーズを著しく逸脱する内容 (エロとか残酷描写とか) はありません

・設定は基本的に原作『スマイルプリキュア!』を踏襲します
 ※意図的に崩す場合は注釈を入れます

・本作では原作終了後、中学3年生となったみゆき達を描いていきます
 新しい設定・キャラ・敵を盛り込んだ完全オリジナルストーリーとなります

・毎週日曜 AM 8:30 更新予定
 (本家『プリキュア』と同じ時間)


本シリーズの過去スレはこちら

・Part 1(第1話 ~ 第11話)
 『スマイルプリキュア!』第2期を SS で作るスレ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1360385907/)

・Part 2(第12話 ~ 第20話)
 『スマイルプリキュア レインボー!』 Part 2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1366529393/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1373151336

『スマイルプリキュア レインボー!』

このあとすぐ!

※作者からのおわび

 前回の投稿後、次回予告に誤りがあったことがわかったため、
 今回の内容は予告と大分違うものに変更しました。タイトルも予告時のものと変わっています。
 スミマセンです。。

 それでは、本編をどうぞ。

~ 七色ヶ丘市 商店街 本屋 "BooZoo" ~

みゆき「んっふふー、ど・れ・に・し・よ・う・か・なー?」

やよい「どう、みゆきちゃん。買いたい絵本、決まった?」

みゆき「まだ悩み中ー。だって、どれも面白そうなんだもーん!」

なお「まだ悩んでたの!? あたし達が自分たちの本買う前からだから……、もう 10分くらい経つよ?」

あかね「ほんま、みゆきの絵本好きは筋金入りやなぁ」


みゆき「うーん……、……決めたっ! これにしよーっと!」


タタタタッ…


はるか「みゆきちゃん、すっごく楽しそう。ホントに絵本が好きなんだね」

れいか「はい。お部屋にも驚くくらいたくさんの絵本があるくらいで」

はるか「そっか……。夢中になれることがある、っていうのはいいことだよね」

れいか「そうですね。私もそう思います」

みゆき「すみませーん、これくださーいっ!」

"BooZoo" 店長「おっ、みゆきちゃん、毎度! また絵本かい? 好きだねぇ、ホントに」

みゆき「はいっ!」

"BooZoo" 店長「んー、いい笑顔だ。本好きの子を見ると、おじさん嬉しくなっちゃうよ。じゃ、840円ね」

みゆき「はーい」


ジャラッ


"BooZoo" 店長「はい、これ本ね。落とさないようにね」

みゆき「ありがとうございます!」


ガサッ


みゆき「……あれ? 店長さん、本に紙が挟まってますよ? これって……チラシ?」

"BooZoo" 店長「ああ、それ。最近入ったチラシでね。本好きのお客さんに配ってるんだ」

みゆき「えーっと、なになに? …… "七色ヶ丘市立図書館 主催、朗読コンクール" ……」

"BooZoo" 店長「"町のみんなにもっと本に触れてもらおう" ってことで、図書館が企画したみたいなんだよね。ウチにもチラシ置いてくれ、って頼まれちゃってさ」

"BooZoo" 店長「ところで、みゆきちゃん。下のところ、見てごらん」

みゆき「えっ? チラシの下、ですか?」


みゆき「…… "自作の物語での参加も OK" ……」


"BooZoo" 店長「みゆきちゃん、前に "絵本書き始めた" って言ってなかったっけ? どうだい? ここはいっちょ、みゆきちゃんの作品を町の人に聞いてもらったら」

みゆき「えっ……、わたしの作った絵本……ですか……?」

"BooZoo" 店長「もしいい作品だったら、図書館にも置いてもらえるみたいだよ」

みゆき「…………」

あかね「ああ、それええやん! 腕試しには絶好のチャンスなんちゃう?」

みゆき「わっ!? あ、あかねちゃん、みんな! ……今の話、聞いてたの?」

やよい「うん! みゆきちゃん、やってみようよ! やっぱり、作品を作ったら誰かに見てもらわないと!」

なお「もしみゆきちゃんが出場するならあたしも見に行くよ!」

みゆき「あ……、え、えーっと、その……」

はるか「絵本大好きなみゆきちゃんの描いた作品なら、きっとステキなお話なんだろうな。私も読んでみたいよ!」

れいか「どうでしょう、みゆきさん。ぜひ出てみては?」

みゆき「あ、うーん……」


みゆき「…………」

みゆき「……じゃ、じゃあ、やってみちゃおう、かな……?」

あかね「よっしゃ! そうこな! せやったらうちらみんなで応援すんで! なっ?」

やよい・なお・れいか・はるか「うんっ!」


みゆき「あ、ありがとー、みんな……」

みゆき「…………」


みゆき(わたしの絵本をみんなの前で読む、かぁ……)


みゆき(……タイヘンなことになっちゃったなぁ……)




スマイルプリキュア レインボー!

第21話「踏み出そう! みゆき、はじめの一歩!」



~ 解散後 星空家 みゆき自室 ~

バフッ


みゆき「……はぁー……」

キャンディ「みゆき、どうしたクル? ベッドに倒れてため息なんて、みゆきらしくないクル」

みゆき「そう、だよね……。わかってるんだけど……」

キャンディ「……もしかして、さっきの絵本の話クル?」

みゆき「うん……。だってさ、これ、見てよ……」S


ガラッ


バサバサッ


みゆき「この引き出しにしまってある、わたしの絵本。いくつかあるけどぜーんぶ書きかけ……。まだ、一つも完成させたことないんだよね……」

みゆき「こんなんじゃ、朗読コンクールになんて、とても出られないよ……」

キャンディ「クルぅ……」

みゆき「……絵本って、書いてみるとすっごく難しいんだ」

みゆき「せっかく書き始めても、"これ、本当に面白いのかな?"、"うまく書けてるのかな?" って不安になってきちゃって……、いっつも最後まで書けないで終わっちゃう……」


みゆき「いつだったか、みんなに "絵本作家にならないの?" って聞かれた時も、そんなだから "趣味でやってるだけ" だなんてごまかしちゃった……。"やってもうまくいかないから" って、言えなかった……」

みゆき「わたしに、自信が……なかったから……」


キャンディ「みゆき……」

キャンディ「……キャンディ、今のみゆき、なんだかイヤクル」

みゆき「……キャンディ?」


キャンディ「みゆきは、いっつもスマイルでみんなを元気づけてくれるクル! この間、キャンディが "レインボーパレット" のことで悩んでた時だってそうだったクル!」

キャンディ「みゆきは、明るくて、楽しくて……、みゆきは、みゆきは……!」

キャンディ「……とにかく、今のままのみゆきはみゆきらしくないクル! スマイルはどうしたクル!? どこかに忘れてきちゃったクル!?」

キャンディ「キャンディは、みゆきにもっと笑って、元気にガンバってほしいクル!」


みゆき「……スマイルかぁ……。うん、そうだよね……。……こう、かな?」ニコッ…

キャンディ「違うクル! そんな元気のないスマイル、みゆきのスマイルじゃないクル! こうクル!」ニコッ

みゆき「こ、こうかな……」ニコッ…

キャンディ「全然ダメクル! ……ホントにどうしちゃったクル、みゆき……」

みゆき「…………」

育代(みゆき母)「みゆきぃーっ、いるーっ!? ちょっと手伝ってほしいんだけどー!?」

みゆき「あ、お母さん呼んでる。ゴメンね、キャンディ。ちょっと行ってくるね」

キャンディ「あ、みゆき――」


バタンッ


キャンディ「…………」


キャンディ(……このままじゃダメクル。みゆきには、もっとスマイルでいてほしいクル)

キャンディ(でも、キャンディだけじゃ、みゆきを元気にできないかもしれないクル……。どうしたらいいクル……?)

キャンディ(……悩んでる場合じゃないクル! みゆきのために、キャンディは、キャンディにできることをやるクル!)


ガラッ ピヨーンッ

~ 数十分後 ~

ガチャッ


みゆき「ゴメン、お待たせ、キャンディ――、あれ? キャンディ? どこ?」

みゆき「……あ、窓開いてる……! 一人でどこか行っちゃったの!? タイヘン、探しに行かなきゃ――」ダッ


キラッ


みゆき(あ、鏡……)


みゆき(……ホントだ。キャンディの言う通り、わたし、全然笑えてない……。スマイルでいないと、ハッピーが逃げちゃうのに……)

みゆき(……でも、やりたいことをやろうとすると、自分にできないこと、足りないものがたくさんあるってわかって、どうしても不安になっちゃう……。くじけちゃう……)

みゆき(みんなはこんな気持ちに負けないで、自分のやりたいことを見つけて、ガンバっていける強い気持ちを持てたんだよね。スゴイなぁ……)

みゆき(……わたしは……)

みゆき(…………)


みゆき(……夢を目指すって、やりたいことをやるって、難しいなぁ……)

~ 1時間後 七色ヶ丘市 商店街 ~

タタタタタッ


みゆき「はぁっ、はぁっ、……もう、キャンディ、全然見つからないよ……! どこ行っちゃったの……!?」


スタスタスタ


はるか「……あれ? みゆきちゃん! どうしたの、そんなに慌てて」

みゆき「あ、はるかさん! タイヘンなんです、キャンディがどこかに行っちゃって――」

はるか「……だってさ。だから言ったじゃない、"勝手に出てきたらみゆきちゃん心配しちゃうよ" って」


ヒョコッ


キャンディ「……クルぅ」

みゆき「あ、キャンディ! どこ行ってたの!? 心配したんだから……!」ギュッ

キャンディ「ゴメンクル……」


はるか「キャンディちゃん、一人で私の家に来てね。みゆきちゃん心配すると思って連れてきたんだ」

みゆき「ありがとうございます!」

はるか「……ところでみゆきちゃん。朗読コンクールの準備、進んでる?」

みゆき「……!」ビクッ


みゆき「……は、はい。それは、まぁー、そのー、ぼちぼちー、なんて……」

はるか「…………そっか」

はるか「……みゆきちゃん、これからふしぎ図書館に行こうよ! みゆきちゃんに見てもらいたいものがあるんだ」

みゆき「え? いいですけど……。見てもらいたいもの……? わたしに、ですか? なんだろ……」

はるか「それは行ってみてのお楽しみ! さ、Let's go!」グイッ

みゆき「わっ、腕引っ張らないでくださいよ、はるかさぁーん!」

~ ふしぎ図書館 ~

パァッ…!


みゆき「っと。……着きましたけど、はるかさん、わたしに見せたいものって――」


パンッ! パパンッ! パンッ!


みゆき「うひゃっ!? な、なに!? ク、クラッカー!?」


あかね・やよい・なお・れいか「いらっしゃーいっ!」


みゆき「…………??」


みゆき「……み、みんな、何してるの? "いらっしゃい" って、何?」

はるか「……実はね、みんな、キャンディちゃんから聞いたんだ。"みゆきちゃんが絵本が書けなくて悩んでる" って」

みゆき「え……!? ……そうなの、キャンディ?」

キャンディ「…………(コクン)」

はるか「キャンディちゃん、みんなの家を回ったみたいだよ。それで、みんなに同じことを頼んだみたい」


はるか「"みゆきちゃんを元気な笑顔にしてあげてほしい" って」

みゆき「……!」


はるか「それ聞いた私達は、早速準備を始めたんだ。ここの飾りつけやら、お菓子やお茶の準備やら、大急ぎでね」

はるか「名づけて、"みゆきちゃんガンバれパーティー"!」

れいか「すみませんでした、みゆきさん。みゆきさんがそんな悩みを抱えているとは知らず、私達ばかりコンクールのことではしゃいでしまって……」

なお「でも、みゆきちゃんも水臭いよ。悩んでるんだったら相談してくれたっていいのに!」

やよい「そうだよ! だって、わたし達、いっつもみゆきちゃんの笑顔には元気にしてもらってるんだもん」

あかね「そやで、みゆき。せやから、みゆきが落ち込んどったら、いつだって元気にしたるわ」


みゆき「……みんな……」

はるか「……ねえ、みゆきちゃんはどうしたい?」

みゆき「えっ……?」

はるか「みゆきちゃんはどのくらい、絵本を書いてみたい気持ちがあるのかな」


はるか「私達はみゆきちゃんにガンバってほしくて、元気になってもらいたくってこのパーティーを用意したけど……」

はるか「もしみゆきちゃんが大してコンクールに出たくないんだったら、ムリにすすめたくはないんだ。イヤイヤやってもしょうがないからね」


はるか「……でももし、みゆきちゃんにやりたい気持ちがあるんだけど、うまくいってないんだったら……私達は全力で応援したい」

はるか「やりたいことが何かの理由でもしできなくなったりしたら、その時はきっと……、やらなかったことを後悔しちゃうから」


はるか「だから、聞いておきたいんだ。みゆきちゃんの気持ち」

はるか「みゆきちゃんが、本当に絵本を書きたいのかどうか」


みゆき「…………」

みゆき「……ありがとう、みんな。わたし、みんなのおかげで、大切なことを思い出せたよ」

あかね「大切なこと?」

みゆき「うん。どうしてわたしは絵本を書きたいのか、っていう気持ち」

みゆき「わたし、今、すごくハッピーな気持ちなんだ」

みゆき「わたしの笑顔のために町中走り回ってくれるキャンディがいてくれて」

みゆき「わたしのために、こんなにたくさんの飾りつけとか、お菓子とか用意してくれる、みんながいてくれて」

みゆき「みんなの優しさがくれたその嬉しさで、わたしの心が今、すっごくあったかいの……!」


みゆき「……わたし、自分が感じたハッピーな気持ちを他の人にも伝えて、みんなにハッピーになってほしかった。だから絵本を書き始めたんだ」

みゆき「書いてみるとうまくいかなかったり、失敗ばっかりで不安になっちゃって、そのことを忘れかけてたけど……」

みゆき「みんながまたわたしの心にハッピーをくれたから……、絵本を書きたかった本当の気持ちを思い出せたよ……!」

みゆき「……だからわたし、やってみたい! うまくいくかわからないけど、精一杯やってみたい!」

みゆき「だって、わたしが自分で決めたことだから!」


5人「…………」ニコッ

あかね「……みゆきの気持ち、ようわかったで」


あかね「ほんならまずは景気づけや! パーッとおいしいもん食べて、いっぱいはしゃいで、スマイルチャージや!」

あかね「ほんで、ええお話書いてや! 楽しみにしてんで!」

みゆき「うんっ!」

ワイワイワイ


ウルルン「(バクバクバク) ……うめぇーウル! あかね、オコノミヤキおかわりウル!」

あかね「あんた食いすぎやで……。これ、みゆきを応援するパーティなんやで? わかっとる?」

ウルルン「もちろんだウル! でも、応援する方が元気なかったら、みゆきだって元気になれねえウル? だから食べるウル!」

あかね「ほんまかいな……。そんなことゆーて、自分が食べたいだけちゃうやろな?」

オニニン「(バクバクバク) そんなことないオニ! それより早くおかわりくれオニ!」

やよい「もう、オニニンまで……。みゆきちゃんの分、残しておいてよね」


みゆき「あははっ、みんな食いしん坊だなぁー!」


スタスタスタ


なお「どう、みゆきちゃん、楽しんでる?」

みゆき「あ、なおちゃんにれいかちゃん! うん! お菓子もおいしいし、みんな楽しそうで、ウルトラハッピーだよ!」

れいか「そうですか。喜んでもらえてよかったです!」

なお「……ところでみゆきちゃん。絵本書くの、うまくいってないってことだったけど、それってホントなの?」

みゆき「あ、うん……。わたし、絵本を読むのは大好きだけど、自分で書いてみて、とっても難しいんだなぁ、ってことがよくわかったよ……」

みゆき「絵本を書くにはまだまだ色んなことが足りないなぁって思うばっかりで……」


れいか「……私はそうは思いませんよ、みゆきさん」

みゆき「えっ?」

れいか「憶えていますか、みゆきさん。私が初めてプリキュアになった時、生徒会の絵本の読み聞かせ会を手伝ってもらった時のこと」

みゆき「もちろん憶えてるよ! みんなで紙のお人形さん作ったりしたんだよね!」

れいか「はい」


れいか「私達生徒会の人数が揃わなくて困っていた時、真っ先に助けようとしてくださったのは、みゆきさんでしたね」

れいか「その後出していただいたアイデアも、目をみはるものばかりでした。おかげで、とても素敵な読み聞かせ会になりました」

れいか「そんな風にいいアイデアを出せたのは、みゆきさんがとても素晴らしい才能を持っていたからだと思います」

みゆき「さ、才能? そ、そんなの、わたしにあるのかなぁ……。絵だって、お話だって、あんまりうまくないと、自分では思うんだけど……」

れいか「いいえ。私の思うみゆきさんの才能というのは、技術のことではありません」


れいか「"誰かを楽しませたい" と思う強い気持ちのことです」

みゆき「……!」


れいか「その気持ち自体がみゆきさんの才能だと、私は思います。ですから、もっと自信を持ってもいいと思いますよ」ニコッ

みゆき「……れいかちゃん……!」

なお「……才能、っていうなら、あたし、みゆきちゃんはお話作りも上手だと思うんだよね。自分で言うよりずーっと」

みゆき「な、なおちゃんまで……」


なお「あのさ、みゆきちゃん。この間、あたし達の姿が入れ替わっちゃった時のこと、憶えてる?」

みゆき「あ、うん。わたしがなおちゃんの姿に、なおちゃんがあかねちゃんの姿になっちゃった時のことだよね?」

なお「そうそう! あの時、みゆきちゃん、絵本のお話をつなげて自分で新しいお話作っちゃったんだってね。マジョリンから聞いたよ」

マジョリン「そうマジョ! あの時のみゆき、すごかったマジョ!」

なお「あれ以来、うちの子達から "同じ読み方をしてくれ" って何度もせがまれちゃってさー、タイヘンだよ。だって、あたしにはそんな読み方できないもん」


なお「あたしにはできないことが、みゆきちゃんにはできる。これって、立派な才能なんじゃないのかな?」

みゆき「……なおちゃん……!」

れいか「だからみゆきさん」

なお「自信を持って!」


なお「みゆきちゃんならきっとできる!」
れいか「みゆきさんならきっとできます!」


ポップ「ふふっ、二人とも、キレイにハモったでござるな」

なお「あ、あはは……、ちょっと恥ずかしいね」

れいか「私となおの気持ちが同じだったからでしょう」


なお「とにかく、やってみてよ! みゆきちゃん!」

れいか「そうですよ。みゆきさんなら、きっと素敵なお話が作れるはずです!」


みゆき「なおちゃん……、れいかちゃん……! ありがとう!」

なお・れいか「(ニコッ)」

みゆき(……うれしいな。なおちゃんも、れいかちゃんも、みんなも……、わたしのこと、こんなに一生懸命に応援してくれてる)

みゆき(いつでもそばにいて、私を元気づけてくれる……。すごくハッピーなことだよね、これって)


みゆき(…………そうだ。絵本のお話、この気持ちを伝えられるようなものにすれば……!)

みゆき「これだぁっ!」

なお「わっ!? な、なに、みゆきちゃん、急に大声出して?」

みゆき「わたし……絵本のお話、思いついちゃった!」

れいか「! 本当ですか!?」

みゆき「うんっ! 励ましてくれたみんなのおかげだよ! ほんとにありがとう! さっそく書いてみる!」

やよい「あ、みゆきちゃん! それなら、わたしが漫画に使ってる道具、貸してあげるよ! 持ってくるから、ちょっと待ってて!」

みゆき「ホントに!? ありがとう、やよいちゃん!」


あかね「……にしし、忙しくなってきよったな。ほんならうちも――」

はるか「え? あかねちゃんも何かみゆきちゃんを手伝ってあげるの?」

あかね「…………一生懸命、応援しますわ!」

はるか「あ、やよいちゃんみたいに特別何か手伝うわけじゃないんだ、はは」

なお「ま、あたし達は絵もお話も書けないし、それくらいしかできないもんね。お手伝いはやよいちゃんに任せて、あたし達は見守ろう」

れいか「ええ、そうね」

ペタ ペタ ペタ


やよい「あ、みゆきちゃん。このトラさんだけど、普通の色じゃなくて、ピンク色とかにしてみたらいいんじゃないかな?」

みゆき「えっ、どうして? トラといえば黄色でしょ?」

やよい「そうなんだけど、普通と違う色にした方が、ふしぎな感じがよく出るんじゃないかな、って思って。どうかなぁ?」

みゆき「あ……、言われてみるとそうかも……。やってみるね!」


ペタ ペタ ペタ


みゆき「……ホントだ、こっちの方がいいかも! なんだかカワイイし!」

やよい「うん! みゆきちゃんのお話にもよく合ってると思うよ」

みゆき「そうだね! さっすがやよいちゃん、ありがとう!」

やよい「…………」


やよい「……みゆきちゃん。お礼を言われるようなこと、わたし、何もしてないよ」

みゆき「え? 今すっごくいいアドバイスしてくれたのに……」

やよい「だって、わたしが今みゆきちゃんをお手伝いしてるのは、わたしからみゆきちゃんへお礼をしてるからなんだもん」

やよい「みゆきちゃん、憶えてる? みゆきちゃんが転校したばっかりの頃、わたしがポスター描くのを応援してくれたこと」

みゆき「うん。あかねちゃんと一緒に応援したんだよね」

やよい「……あの時のわたし、"わたしにはムリだ" ってやる前からあきらめて……。なんにもしようとしなかった」

やよい「そんな時、みゆきちゃんとあかねちゃんが、わたしのことを励ましてくれたから……ガンバってみよう、って気になれたんだ」


みゆき「……今思うと、えらそうなこと言っちゃったよね」

みゆき「自分で絵本を書こうとして、初めてわかったよ。あの時、やよいちゃんが何でやりたがらなかったのか」

みゆき「自分で何かを作るってすごくタイヘンだから、うまくいかなかったらどうしよう、って不安になっちゃう……。今なら、その気持ちがよくわかるよ」

みゆき「そんなやよいちゃんの気持ちも知らないで、わたし、ただ "ガンバって" だなんて気軽に言っちゃって……」


やよい「……でも、そのおかげで今のわたしがあるんだよ、みゆきちゃん」

みゆき「……え?」

やよい「みゆきちゃんが応援してくれたから、あの時ポスターを描けた」

やよい「みゆきちゃんが応援してくれたから、引っ込み思案のわたしでも "誰かに自分の作ったものを見てもらいたい" って思えるようになれた」

やよい「みゆきちゃんが応援してくれたから、わたしは今、"漫画家になりたい" っていう自分の夢に向かってガンバれてる」


やよい「今のわたしがあるのは、全部、みゆきちゃんや、応援してくれたみんなのおかげなんだよ」


やよい「だから、もしみゆきちゃんが前のわたしと同じように不安になって困ってるなら、今度はわたしが力になってあげたいの」

やよい「それが、わたしを今のわたしにしてくれたみゆきちゃんへのお礼になると思って……」

みゆき「……やよいちゃん……!」


やよい「絵のことならわたしに任せて! うまくいかないことがあるなら手伝うから! ガンバってみゆきちゃんだけの絵本、完成させよう!?」

みゆき「……うんっ! ありがとう、やよいちゃんっ!」

~ 数日後 ふしぎ図書館 ~

みゆき「……できたぁっ!」

やよい「やったね、みゆきちゃん!」


タタタタタッ


あかね「えっ、ほんま!? できたん!?」

はるか「どんなお話になったの!?」

なお「見せてよ、みゆきちゃん!」


みゆき「……ちょっと恥ずかしいけど……、……はい」


あかね「どれどれ、どんななんやろ。楽しみやなぁ!」

5人「…………」ペラッ


5人「…………」ペラッ


みゆき「…………」ドキドキ


5人「…………」パタン


みゆき「……読み終わったの? ……どう、だった……?」

あかね「……みゆき、このお話って……」

みゆき「うん。わたしのハッピーな気持ちを伝えられるような話にしたくって、みんなが励ましてくれた時の気持ちを元にして書いてみたんだ」

はるか「なるほど……、だからかぁ……。……読んでて、なんだか幸せな気持ちになったよ」

みゆき「……! ホントですか……!?」

れいか「ええ。とても素敵なお話でした」

なお「みゆきちゃんらしい、あったかいお話だと思うよ!」

やよい「こんな優しいお話、わたしはちょっと描けないかも……。みゆきちゃんだから書けたお話だよ!」

みゆき「みんな……!」

みゆき「わたし、今まで絵本を完成させたことなかったんだけど……、今日初めて完成させられた……! ……すごくうれしい……! 応援してくれたみんなのおかげだよ……!」

やよい「よかったね、みゆきちゃん……!」


あかね「よっしゃ! せやったら、コンクールの応募しに行かなな! うちが付き合うたるから、いっしょに行こか!」

みゆき「うんっ!」

~ 七色ヶ丘市 河川敷 ~

スタスタスタ


あかね「それにしても、よかったな、みゆき。ちゃんと絵本完成できて」

みゆき「うん。……でも……」

あかね「ん、なんや? まだなんか心配ごとあるん?」

みゆき「このお話、みんなはホメてくれたけど、コンクールでは大勢の人の前で読まないといけないんだよね……。ちょっと……緊張しちゃうなぁ、なんて……、あはは」

あかね「…………」


あかね「……なぁ、みゆき。ちょっと寄り道していかへん?」

みゆき「え? いいけど、どこに行くの?」

あかね「うちの大切な場所や」

~ 七色ヶ丘市 河川敷 高架下 ~

あかね「着いたで、ここや」

みゆき「……ここって……」

あかね「そや。うちがよくバレーのアタックを練習しとった場所や」

みゆき「ここが、あかねちゃんの大切な場所なの? わたし、初めて聞いたよ」

あかね「……みゆき。みゆきがうちのこと、何回はげましてくれたか、って、憶えとる?」

みゆき「えっ……? そ、そんなに何回もはげましたかな……?」

あかね「うちは憶えとんで」

あかね「みゆきが転校してきたばっかりの頃、バレー部のエースアタッカーを目指しとったうちのために、ここで一緒に特訓してくれた」

あかね「"うまくいかないのが悔しくて、うちが泣いとる" ってカン違いして……、"笑ってないとハッピーが逃げちゃうよ!" ってはげましてくれたな」


あかね「うちが父ちゃんのお好み焼きの味が出せへん、って悩んどった時もそうや」

あかね「"うちの気持ちがこもっとるからおいしいんだ" って言うてくれて……、そのおかげで、大切な隠し味に気づけたんや」


あかね「ブライアンとのお別れの時もやな」

あかね「別れがツラくなるのがイヤでブライアンと会わんようにしとったうちに、"なんだかうちらしくない" って背中押してくれた」


あかね「いつだったかのバレーの試合の時も、みんなしてうちの応援のためにマスコット作ってくれたな」

あかね「あれ、みゆきが "作ろ" って言い出してくれたんやろ? ……めっちゃ嬉しかった。今でもうちの大切な宝物や」

あかね「それだけやない。まだまだあんで」


あかね「デスペアランドが初めてやってきた時、みゆきしかプリキュアになれへんで……。力になれんくて落ちこんどるうちを逆にはげましてくれた」

あかね「"変身できなくたって、笑いあって元気をくれる仲間"。あの言葉、忘れられんわ」


あかね「お好み焼き修行のためにバレー辞めるの辞めんので悩んどった時もや」

あかね「"力になれないかもしれんけど、精一杯応援したい" って言うてくれた。みゆきの一生懸命さが、うちが答えを出すためのヒントをくれたんやで」

あかね「……ほんで、この間のバレーボール最後の大会の時や」


あかね「最後、っちゅーことで不安になっとるうちをここではげましてくれた」

あかね「試合中も、誰よりも大きな声で、うちのこと、応援してくれた」

あかね「……最後の試合が終わってもーた時も……、うちと一緒に、泣いてくれた。自分のことみたいに」

あかね「嬉しかったわ……。悲しいはずやのに嬉しくて……。うちの、大切な思い出や」

あかね「……こんなにあんねんで。みゆきがうちをはげましてくれたこと」

あかね「ここに来ると思い出すんや。その思い出一つ一つ。みゆきの笑顔と一緒に」


あかね「みんなそれぞれみゆきのことはげましとったようやけど、うちかてみんなと気持ちは同じや」

あかね「"自分に笑顔をくれるみゆきやから、みゆきに笑顔でいてもらいたい" って」


みゆき「……あかねちゃん……」

あかね「失敗したってええやん! 思いっきりやってみよ! もし失敗して、恥ずかしかったり、悔しかったりしたら、思いっきり泣いたらええ!」

あかね「そん時は、うちもいっしょに泣いたる。怖いことなんてなんもあらへんで!」

あかね「不安なんてスマイルでやっつけたったらええ! そのための元気が足りんのやったら、うちらがいつでも何とかすんで! みゆきが、うちらにしてくれたみたいに」

あかね「せやから、自分のやりたいこと、怖がっとらんで精一杯やってみようや! なっ?」


みゆき「…………うんっ!」ニコッ


あかね「……ええスマイルやで。これならきっと大丈夫や! さ、張り切っていくで、みゆき!」

みゆき「うん!」

みゆき(……きっと、きっと大丈夫。だって、みんながこんなにわたしのこと、元気づけてくれるんだもん)

みゆき(わたしはわたしのやれることを、精一杯やってみよう)


みゆき(わたしのやりたいこと……、目指したい、未来のために……!)

~ ギャラリー・D ~

シアンナ「…………」ガサッ

セルリア「……シアンナ……それ……何……? ……手紙……?」

シアンナ「国王陛下からよ。"プリキュアの持つ夢の絵の具も手に入れられていない"、"濁った心の絵の具の収集も遅い" ということで、かなりご立腹のようね」

セルリア「……仕事……してないわけじゃ……ないのに……!」

シアンナ「でも、結果が出なければ何も意味がないわ。……そう、結果が出なければ……」


スタスタスタ…


セルリア「…………シアンナ……?」


セルリア(……シアンナ……、……やっぱり……元気……ない……。……どうしたの……?)

~ ギャラリー・D シアンナ自室 ~

シアンナ「…………」


シアンナ(……私の使命は、"夢の絵の具の入手" と "濁った心の絵の具の収集")

シアンナ(それだけ。私には、それだけしかない。使命を果たすことが、私がいる意味)


シアンナ(……では、それができなければ、私は……?)

シアンナ("期限" もすぐそこまで迫っている。それまでに使命を果たせなければ、私は……)


シアンナ(……でもまだ……、まだチャンスはある……!)

シアンナ(プリキュアに勝てさえすれば、私は使命を果たすことができる……!)

シアンナ(……やるしかない)

シアンナ(今の私に出せる最高の力で、プリキュア達を倒す……!)


シアンナ(そして私は使命を果たしてみせる……、必ず……!)

~ 朗読コンクール当日 七色ヶ丘市立図書館 多目的ホール 観客席 ~

ワイワイワイ


はるか「……結構お客さん入ってるね」

やよい「そうですね……、みゆきちゃん、大丈夫かなぁ……。緊張したりしないかな……」

あかね「……きっと大丈夫や、みゆきなら」

なお「そうだね。絵本のお話もよかったし、みゆきちゃんも自信ありそうだったし」

れいか「私達は信じて見守りましょう」

司会の図書館職員「――はい、ありがとうございました。三丁目にお住まいの長月さん、とても素敵な朗読でしたね」

司会の図書館職員「では次は、七色ヶ丘中学校 3年生、星空 みゆきさんの朗読です。なんと、自作の絵本による参加ということです。楽しみですね」


やよい「来たっ、みゆきちゃんの番だよ……!」

あかね「うん」


あかね(ガンバれ、みゆき)

~ 七色ヶ丘市立図書館 多目的ホール 舞台袖 ~

みゆき「…………」


キャンディ「……みゆき、だいじょうぶクル? キンチョウ、してないクル?」

みゆき「……うん。だいじょうぶだよ、キャンディ」

みゆき「キャンディやみんなが元気づけてくれたから……、わたし、もう怖くない」

みゆき「わたしは、わたしのやりたいことを、精一杯やるよ!」ニコッ

キャンディ「……クルぅ! みゆき、すごくいいスマイルクル! それでこそみゆきクル! ガンバるクル!」

みゆき「うん! ありがとう、キャンディ!」

司会の図書館職員「それでは、星空 みゆきさん、お願いします」

みゆき「はいっ!」


タッ

~ 七色ヶ丘市立図書館 多目的ホール ステージ ~

スタスタスタ


みゆき「……七色ヶ丘中学校 3年生、星空 みゆきです。今日は、わたしが自分で作った絵本を読みたいと思います。よろしくお願いします」ペコッ


パチパチパチパチ


はるか「…………」

れいか「…………」

なお「…………」

やよい「…………」

あかね「…………」


みゆき「…………」

ペラッ


みゆき「……題名:『おくびょうなトラさん』」

みゆき「"あるところに、ちょっとふしぎなどうぶつえんがありました"」

みゆき「"そこでは、どうぶつたちがことばをはなし、みんながなかよくくらしているのです"」


みゆき「"そこに、いっとうのおおきなトラさんがいました"」

みゆき「"トラさんはとってもつよくて、どうぶつたちのにんきものでした"」

みゆき「"ですが、そんなトラさんにはあるなやみがありました。きょうもひとりでなやんでいます"」

みゆき「"「だいすきなしいくいんのおねえさんのたんじょうび、どうやっておいわいしようかな」"」

みゆき「"そう、トラさんはふだんはとってもゆうかんなのに、だいすきなしいくいんさんのまえだときんちょうしてしまうのです"」

みゆき「"「しいくいんさんによろこんでもらいたいけど、きらわれちゃったらどうしよう」"」

みゆき「"トラさんはどんどんふあんになってしまい、なにもできません。おりのなかでためいきばかりついていました"」

みゆき「"そんなトラさんのところに、サルやまのおサルさんがやってきました"」

みゆき「"「トラさん、どうしたの。げんきないね」"」

みゆき「"トラさんはこたえます。「しいくいんのおねえさんのおたんじょうびをおいわいしたいんだけど、どうしたらいいのかわからないんだ。きらわれちゃうかもしれないのがこわいんだよ」"」

みゆき「"いつもとちがっておくびょうなトラさんがしんぱいになったおサルさんは、おおきなこえでいいました"」

みゆき「"「トラさん、ちょっとまっててね! ぼくがトラさんをげんきにしてあげるよ!」"」

みゆき「"そういうと、おサルさんはどこかへはしっていきました"」

みゆき「"しばらくすると、トラさんのおりのまえに、たくさんのどうぶつたちがあつまりました。とてもたくさんなので、トラさんもビックリ"」

みゆき「"おサルさんはいいます。「みて、トラさん! トラさんをげんきにするために、こんなにたくさんのどうぶつたちがあつまってくれたよ!」"」


みゆき「"どうぶつたちのなかから、コアラのおかあさんがでてきました"」

みゆき「"「トラさん、うちのこがきからおちたとき、たすけてくれてありがとうございました」"」


みゆき「"つぎにでてきたのは、トラさんよりももっとおおきなゾウさんです"」

みゆき「"「ぼくがともだちとケンカしたとき、ぼくたちよりちいさいのに、ケンカをとめてくれてありがとう。おかげでともだちともなかなおりできたよ」"」


みゆき「"パンダさんもでてきました"」

みゆき「"「ぼくがびょうきになったとき、しいくいんさんをよんでくれてありがとう。すっかりげんきになったよ」"」

みゆき「"つぎつぎにおれいをいわれてビックリするトラさん。そんなトラさんにおサルさんはいいました"」

みゆき「"「みんな、トラさんにたすけてもらったんだよ。だからトラさんにげんきになってほしくてきてくれたんだ」"」

みゆき「"「こんなにたくさんのみんなをたすけてくれるやさしいトラさんのおいわいなら、きっとしいくいんさんもよろこんでくれるよ」"」

みゆき「"「だからトラさん、ゆうきをだして! しいくいんさんをおいわいしようよ! きっとうまくいくよ!」"」


みゆき「"どうぶつたちのおうえんで、トラさんはみるみるゆうきがわいてきました"」

みゆき「"「みんな、ありがとう! ぼく、しいくいんさんをおいわいするよ! しいくいんさんのことだいすきだから、よろこんでほしいんだ!」"」

みゆき「"トラさんはゆうきをだしておりをとびだし、しいくいんさんのところにいきました"」

みゆき「"「し、しいくいんさん! おたんじょうび、おめでとうございます!」。トラさん、ゆうきをだして、しいくいんさんにおはなをプレゼントしました"」

みゆき「"しいくいんさん、トラさんのきゅうなおいわいにビックリ。めがまんまるになったまま、うごきません"」


みゆき「"トラさん、プレゼントをうけとってもらえるかドキドキです。ついてきたどうぶつたちもドキドキです"」

みゆき「"やがて、しいくいんさんはいいました。「ありがとう、トラさん。とってもうれしいわ!」"」

みゆき「"しいくいんさんはトラさんのおはなをやさしくうけとると、えがおをみせてくれました"」

みゆき「"そのえがおがおはなよりもとってもきれいでまぶしくて。そのえがおをみせてくれたことがうれしくて。トラさんはかんげきしてないてしまいました。ないたトラさんにしいくいんさんはまたビックリ"」

みゆき「"そこにおサルさんがきていいました。「トラさん、うれしいのにないてたらもったいないよ! わらおう!」"」

みゆき「"トラさん、まわりをみると、おうえんしてくれたどうぶつたちはニコニコえがお。おサルさんもニコニコえがお。しいくいんのおねえさんもニコニコえがお"」

みゆき「"トラさんだけしくしくないているのがおかしくなってきて、トラさんもおもわずニコニコえがおになりました"」

みゆき「"「ゆうきをだしてよかったなあ。おうえんしてくれるみんながいてくれてよかったなあ」"」

みゆき「"ニコニコえがおのトラさんはニコニコえがおのみんなにかこまれて、どうぶつえんはウルトラハッピーになりました"」


みゆき「"めでたしめでたし"」


パタンッ


みゆき「…………」

パチ パチパチ


パチパチパチパチパチパチパチパチ!


みゆき「……!」


みゆき(……みんな、拍手、してくれてる……? うまくできたのかな……)

みゆき(……あ、観客席のあの女の子、すごく楽しそう……。わたしの絵本、おもしろかったのかな……?)


パチパチパチパチパチパチパチパチ!


みゆき「…………」

みゆき(……良かった)


みゆき(不安に負けないで、勇気を出して……)


みゆき(不安に負けそうなわたしを、はげましてくれるみんながいて……!)


みゆき(最後までちゃんとやれて、良かった!!)


みゆき「……ありがとうございました!!」ペコッ


パチパチパチパチパチパチパチパチ!

~ 七色ヶ丘市立図書館 多目的ホール 舞台袖 ~

みゆき「……ふう」

キャンディ「みゆき、おつかれさまクル」

みゆき「あ、キャンディ。うん、もうヘトヘトだよぉ……。キンチョウして、すっごく疲れちゃった……」

みゆき「……キャンディ、ありがとうね」

キャンディ「クル?」

みゆき「キャンディがわたしのことを元気づけるためにみんなに頼んでくれたから、なんとか最後までやりきれたよ」

みゆき「本当にありがとう、キャンディ!」ニコッ

キャンディ「……キャンディは、みゆきのスマイルが見たかっただけクル。よかったクル、みゆき!」

みゆき「うんっ!」

タタタタタタッ


あかね「みゆきぃーっ!」

みゆき「あかねちゃん! みんな!」


あかね「みゆきの朗読、めっちゃよかったで!」

やよい「うんっ! わたし、なんだか感動しちゃった……!」

なお「ガンバったかいがあったね!」

れいか「とても素晴らしかったですよ、みゆきさん!」

はるか「うん、すっごくよかった。みゆきちゃん、おめでとう! あの拍手はみゆきちゃんだけのものだよ!」

みゆき「!」


みゆき(……わたしだけの……拍手……)

パァッ…


5人「!」

みゆき「あ……、わたしの体、光ってる!?」

あかね「出るで! キャンディ、"レインボーパレット" や!」

キャンディ「わかったクルぅ!」パカッ


ポンッ


みゆき「……わたしから出た光の玉」


ヒューーーーン ポチョンッ


キラキラキラ


みゆき「赤い絵の具……。これが、これがわたしの、…… "未来に向かう大切な気持ち"」


なお「このタイミングで "夢の絵の具" が出た、ってことは、みゆきちゃんの夢は決まりだね」

みゆき「……うん。わたし……、絵本作家になりたい」

やよい「やっぱり! 応援するよ、みゆきちゃん!」

みゆき「ありがとう、やよいちゃん!」

あかね「……せやけど、ちょーっとふしぎなことがあんねん」

れいか「ふしぎなこと? なんですか、あかねさん」


あかね「前、ハッピーが光った時あったやろ? あの、ちょっと元気ない 1年生の……えーっと……木下さんやっけ、あの子がバカにされた時」

あかね「あれって、うちらの "未来に向かう気持ち" がパワーになってるんよな?」

あかね「みゆきは一回そのパワー出しとって、絵本を書きたいっちゅう、自分のやりたいこともちゃんとあった」

あかね「なのになんで今になって "夢の絵の具" 出たんかなぁ、思てな。もっと早よ出てもよかったんちゃう?」

れいか「……確かに。言われてみるとふしぎですね」

みゆき「……わたし、そのわけ、今なら何となくわかるよ」


みゆき「"夢の絵の具" を出すには、わたしには足りないものがあったんだと思う」

やよい「足りないもの……?」

みゆき「うん。それはね――」


ピクン


キャンディ「……クル……!?」

みゆき「? どうしたの、キャンディ……、あ、もしかして……!」

キャンディ「クル! きっとデスペアランドクル! 近くにいるクル!」

あかね「また来たんか! しょーこりもないやっちゃな!」

みゆき「近く、っていうことは図書館の外かな……!? 行こう、みんな!」

5人「うん!」

~ 七色ヶ丘市立図書館 前 ~

シアンナ「…………」


ザッ


みゆき「シアンナ!」

シアンナ「……来たわね、プリキュア。待っていたわ」


みゆき「図書館の中じゃ、まだコンクールが続いてる……。本を読むのを、みんなが楽しく聞いてる……! 絶対に、ジャマさせないっ!」

みゆき「みんな、行くよ!」

5人「うんっ!」

妖精達「デコル・チェーンジ!」

パチンッ!

レディ!

6人「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー! ゴーゴー! レッツゴー!!


ハッピー「キラキラ輝く、未来の光! キュアハッピー!!」

サニー「太陽サンサン、熱血パワー! キュアサニー!!」

ピース「ぴかぴかぴかりん♪ じゃん・けん・ポン!(グー) キュアピース!!」

マーチ「勇気リンリン、直球勝負! キュアマーチ!!」

ビューティ「しんしんと降り積もる、清き心。キュアビューティ!!」

ノーブル「さらさら流れる気高きせせらぎ! キュアノーブル!!」


6人「6つの光が導く未来!」

6人「輝け! スマイルプリキュア!!」

ハッピー「さぁ、アキラメーナを出しなよ! どんなのだって、わたし達が絶対やっつけてみせる!」

サニー「おっ、今日のハッピー、燃えとんなぁ! 頼もしいで!」

シアンナ「…………」


ノーブル「……? 何だろう、今日のあの人、なんだか様子がおかしくない? ボーッと立ったまま何もしない……」

ビューティ「何かの作戦でしょうか……?」


シアンナ「(スッ)」


ピース「あ、絵の具出したよ! 青い絵の具!」

マーチ「色つき……、ってことは、またあの新しいアキラメーナ!?」


シアンナ「夢の青 "イージアンブルー"……」グッ


グジャァッ!


6人「!?」

ビューティ「絵の具を……チューブごと握りつぶした……!?」

ノーブル「いつもだったらチューブからちゃんと出すのに……!?」


シアンナ「……混ざり合え。私自身から出る闇の絵の具と……!」


ビャァァッ バチバチバチッ

バチィッ!


シアンナ「完成……。闇の絵の具・"絶望の青" ……!」

シアンナ「闇の絵の具よ! 闇の絵筆よ! キャンバスに絶望を描き出せ!」


シュババババッ


シアンナ「…………」

ハッピー「あ、あれ? 描くだけ? いつもだったらアキラメーナがキャンバスから出てくるのに……」


シアンナ「……ふっ!」ズボッ


6人「!?」


ピース「キャンバスの中に……!」

サニー「手を突っ込みよった……!」

ズブズブズブ


ビューティ「それだけではありません!」

マーチ「体ごと、キャンバスに入っていく……!?」


スポッ


ノーブル「……完全に、キャンバスに入りきった……」


シアンナ『実体を持ってキャンバスから現れよ、アキラメーナ!』


ズボッ ズドォォォンッ


アキラメーナ(絵本型)「……ア……ガァ……、ガァァァァァァッ!!」


ビューティ「……なんて凶暴そうなアキラメーナ……!」

マーチ「シアンナの姿もない……。同化した、ってことなの……!?」

ノーブル「明らかにいつものヤツと違う! これって一体……!?」

ウルルン(デコル)「……自分が生み出した怪物と同化……。まるで、"ハイパーアカンベェ" ウル……!」

サニー「"ハイパーアカンベェ" っちゅーたら、あれ? あんたらがバッドエンド王国だった時に使っとった、黒い鼻のアカンベェ?」

オニニン(デコル)「そうオニ。……デスペアランドのアイツ……、今日は本気オニ……!」

ピース「本気? なんでわかるの?」

マジョリン(デコル)「あのアキラメーナがどうだかは知らないけど……、"ハイパーアカンベェ" はもの凄いパワーを出せる代わりに自分の力を削る、とっても危険なモノだったマジョ……!」

マーチ「……! そうだったんだ……」

ビューティ「では、あの方は自分の力を削って戦おうとしている、ということでしょうか?」

ウルルン(デコル)「……多分な」


ノーブル「……それ、本当みたいだね」


アキラメーナ(絵本型)「ガハァァァ……ッ!!」


ノーブル「(ピリピリ) ……っ、気迫がいつもと全然違う……! アブないヤツだって肌でわかるよ……!」

シアンナ『待たせたわね、プリキュア』

ポップ(デコル)「デスペアランドの者の声でござる!」

ビューティ「あのアキラメーナの中から聞こえる……?」


シアンナ『最初に言っておくわ。このアキラメーナはデスペア空間を使わない。その分の力を全てパワーにしてあるから』

シアンナ『さらに、私の力もこのアキラメーナに与えている。だから、今までのものとは比べ物にならないほど強いと思ってちょうだい』

シアンナ『これが……今の私に出せる最高の力……! ……行くわよ、プリキュア』


ビュンッ


ハッピー「……え?」

サニー「いなくなってもーた……。あのでっかいアキラメーナが、あっちゅー間に――」


ドガッ! ドゴォォォォンッ!


サニー「う……ぁ……っ」

ハッピー「……サニー? え?」

ノーブル「サニーが殴り飛ばされた……!? いつの間に……。見えなかった……!」

シアンナ『言ったでしょう、"今までのものとは比べ物にならない" と。油断はしないことね。気を抜いていると――』


ドガッ!


ピース「きゃぁぁっ!?」


ドゴォォォォンッ!


ハッピー「ピースっ!?」


シアンナ『――こうなるわ』


マーチ「……速すぎる! 捉えられないよ!」

ノーブル「それだけじゃなくてパワーもすごい……! 本当に今までとは全然違う……! どうすれば……」

ビューティ「……私にいい考えがあります」

ハッピー「ビューティ? 何する気?」


ビューティ「プリキュア! ビューティ・ブリザァァードッ!!」


バキバキバキバキッ


マーチ「周りの地面を凍らせた?」

ビューティ「これならいくら素早くても、滑ってしまって地面を歩けないはずです」


シアンナ『……なるほど、考えたわね。……でも、攻撃できないわけではないわ』


バッ


ハッピー「アキラメーナがジャンプしたよ!」

ビューティ「そう、それしかないはずです。地面が歩けないなら、空中から襲い掛かるしかありませんね」

ノーブル「……! なるほど、さっすがビューティ。襲ってくる方向がわかれば、カンタンに対応できる!」


シアンナ『……!? 誘い出したということ……!?』


ノーブル「相手は上から来る! 行くよ、ハッピー、マーチ!」

ハッピー・マーチ「はいっ!」

ハッピー「プリキュア! ハッピー・シャワーァァッ!!」

マーチ「プリキュア! マーチ・シュートォォッ!!」

ノーブル「プリキュア! ノーブル・ストリィィームッ!!」


ドドドォォォォォォォォンッ!!


ハッピー「やったぁっ!」

アキラメーナ(絵本型)「ガ……ガァァァァァァッ!!」


バシィィィン!


マーチ「!? は、弾かれた!?」

シアンナ『残念ながらその程度の攻撃では倒せないわ』

ノーブル「……っ! なら、空中で迎え撃つっ!」バッ

アキラメーナ(絵本型)「ガァァァッ!!」ブンッ

ノーブル(このパンチを受け流して……)


パシッ スルッ


ガシッ


ノーブル「つかんだ! このまま投げる!」

シアンナ『そうはさせないわ』


スルッ


ノーブル「!? 投げが……外された!?」

シアンナ『キュアノーブル。あなたのその技 "アイキドー"、研究させてもらったわ。私が直接操るこのアキラメーナには通用しない』

ノーブル「そんな……!」


ドガッ!


ノーブル「うあぁぁっ!?」


ドゴォォォォンッ!


ビューティ「ノーブルも殴り飛ばされた……!」

マーチ「ビューティ、気をつけて! そのまま襲ってくるよ!」

シアンナ『周りの地面を凍らせる。いい作戦だとほめたいけれど、あなたたちの逃げ場を無くしただけだったわね』

アキラメーナ(絵本型)「ガァァァッ!!」ブンッ


キャンディ(デコル)「ハッピー! パンチが来るクル!」

ハッピー「! ……ダメ、よけられない……っ!」

マーチ「……! ハッピーっ!」バッ


ドンッ


ハッピー「……え? マーチ、わたしを押して……?」

マーチ「(ニコッ)」


アキラメーナ(絵本型)「ガァァァァァァァッ!!」ブンッ


ドガァァァァァンッ!


マーチ「うわぁぁぁぁっ!?」
ビューティ「きゃぁぁぁぁっ!?」


ハッピー「マーチっ! ビューティっ!」

キャンディ(デコル)「マーチ……、ハッピーを押し出して……助けてくれたクル……?」

シアンナ『はぁっ……、はぁっ……』

シアンナ(さすがに……、負担が大きいわ……。力が、抜けていく……)

シアンナ(……でも、これで 5人……! 残るは……)


シアンナ『さぁ、後はキュアハッピー、あなただけよ』

ハッピー「……みんな……」

あかね(回想)『自分のやりたいこと、怖がっとらんで精一杯やってみようや!』

ハッピー「……サニー……」


やよい(回想)『不安になって困ってるなら、今度はわたしが力になってあげたいの』

ハッピー「……ピース……」


なお(回想)『みゆきちゃんならきっとできる!』

ハッピー「……マーチ……」


れいか(回想)『みゆきさんならきっとできます!』

ハッピー「……ビューティ……」


はるか(回想)『うまくいってないんだったら……私達は全力で応援したい』

ハッピー「……ノーブル……」


ハッピー「…………」


シアンナ『……動かなくなったわね。観念したのかしら』

シアンナ『それがいいわ。この力の前では何もできはしない。大人しく諦めなさい』


ハッピー「…………イヤだ」

シアンナ『……何?』

ハッピー「わたしは、絶対にあきらめない。あきらめたくない。あきらめないことの大切さを、みんなが教えてくれたから」


ハッピー「その大好きなみんなが危ないのに、あきらめるなんて絶対イヤ」


ハッピー「……わたしは、みんなといっしょに歩いていきたい。この先もずっと。ハッピーにしたり、ハッピーにしてもらったりしながら」


ハッピー「だから……だから……!」


ハッピー「みんなはわたしが! 絶対に守ってみせるっ!!」


バァァァァァァァッ!!


シアンナ『……!? キュアハッピーの体が……桃色に輝いて……!?』

シアンナ『……そうか、これがビリーズやセルリアの言っていた、プリキュアの新しい力……』

ハッピー「…………」キッ


シアンナ『その力、今の私にどこまで通用するかしら』

ザッ ザッ ザッ

ハッピー「…………」


ドスン ドスン ドスン

シアンナ『…………』


キャンディ(デコル)「二人とも、お互いに近づいて……」


ザッ


ハッピー「…………」
シアンナ『…………』

キャンディ(デコル)「もう、手をのばせばとどきそうクル……!」


シアンナ『……勝負!!』

ハッピー「だぁぁぁぁぁぁっ!!」ブンッ


ドガァァァッ!


シアンナ(……!? ……キュアハッピーのパンチ……、防いだのにこのパワー……! なるほど、並のアキラメーナでは歯が立たないわけだわ)

シアンナ(でも……、今の私なら、遅れはとっていない!)


シアンナ『はぁぁぁぁぁぁっ!!』ブンッ


ドガァァァッ!


ハッピー「うっ……!?」

キャンディ(デコル)「クル……!? 光ったプリキュアと互角クル……!?」

ハッピー「っ……! ……ま……だまだぁぁっ!」


ズガァァッ! ドガァァッ! バキィッ!


ハッピー「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

シアンナ『おぉぉぉぉぉぉっ!!』


ドガァッ! ガァァァンッ! ドォォォンッ!

ガラッ


サニー「ピース……、だいじょぶか? ガレキ、どけたで」

ピース「ありがとう、サニー……」


ドガァッ! ガァァァンッ! ドォォォンッ!


ピース「ハッピーとアキラメーナ……、すごい戦い……」

サニー「うちらもハッピー助けられたらええんやけど……、あの光る力、ホイホイ出るもんやないみたいやな。さっきっから試してるんやけど、全然出えへん……」

ピース「ハッピーに任せるしか、ないのかな……」

サニー「……せやな。くやしいけど、今のうちらじゃ足手まといや。そうするしかあらへんな……」


サニー(頼むで、ハッピー……、きばってや……!)

ガシィィッ!


シアンナ『打撃力では互角でも、単に押し合う力ならどうかしら……!? こうして組み合えば……、体の大きい方が有利のはず!』グググッ

ハッピー「うっ……くぅっ……!?」


ズッ… ズズッ…


キャンディ(デコル)「ハッピー……! 少しずつ、押されてるクルぅっ!」


ズズッ…


シアンナ『このまま押しつぶされなさい! キュアハッピー!!』

ハッピー「…………っ!」

ハッピー「……そういえば、わたし、コンクールに出ることになった時も、こうして押しつぶされそうになってたっけ……」

キャンディ(デコル)「……ハッピー……?」

シアンナ『……? 何を言っているの?』

ハッピー「わたし、不安に押しつぶされそうになってた……。うまくできるかわからなくって、怖くて……。何度も "やめようかな" って思った……」

ハッピー「……キャンディ、さっき、あかねちゃんが聞いたよね。"どうして今までわたしから "夢の絵の具" が出なかったのか" って」

キャンディ(デコル)「クル……?」

ハッピー「それはわたしに足りないものがあったからだと思うの」

シアンナ『さっきから何の話を――』

ハッピー「わたしに足りなかったもの……それは……っ!」グッ


ハッピー「未来に向かって、一歩を踏み出す勇気!!」


ダンッ!


シアンナ(うっ……、踏み込まれた……!? お、押されているの……!?)

ハッピー「何かをやろうとすれば、うまくいくかどうか不安になる! 怖くなっちゃう!」


ダンッ!


ハッピー「でも、本当にそれがやりたいことなら! 怖くったってやらなきゃ……、前に進まなきゃいけないんだ!」


ダンッ!


ハッピー「その先にきっと……、キラキラ輝く未来が待ってるからっ!!」


ダンッ!


シアンナ(どんどん押される……! 何、このパワーは……!?)

ハッピー「だからわたしは、立ち止まっていたくない……!」


ハッピー「前に向かって、少しでも、ほんの少しづつでも……、進むんだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


パァッ…!


シアンナ(キュアハッピーの手が……光って……!)


ハッピー「プリキュアァァッ! ハッピー・シャワーァァァッ!!」


ドバァァァァァァァッ!!


シアンナ『う……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?』


ズドォォォォォォォォンッ!!


キャンディ(デコル)「……やったクル……! アキラメーナをふきとばしたクルぅっ!」

ハッピー「はぁっ……! はぁっ……! はぁっ……!」シュウゥゥゥ…

キャンディ(デコル)「ハッピー……、光が消えていくクル……」

ハッピー「……ガンバりすぎちゃった、かな……? 力、全部使い果たしちゃったみたい……」


シアンナ『……そう。では、これ以上の反撃は無いということね』

ハッピー・キャンディ「!!?」


アキラメーナ(絵本型)「アキラメーナァァァ……!」

ハッピー「……まだ、動けるの……!? わたし、全部の力を出し切ったのに……!」

シアンナ『残念ね。それでも、私を倒すには足りなかった』

ハッピー「……そんな……!」


ハッピー(……もう、力が入らない……)

ハッピー(……どうしよう、どうしたら……!?)

ザッ


サニー「……なんや? まーたヘコんどるんか? しゃーないなぁ、ハッピーは」

ハッピー「……サニー……!」


ピース「だいじょうぶだよ、ハッピー。言ったよね、"うまくいかない時は手伝う" って」

マーチ「そうだよ、ハッピー。一人じゃムリでも、あたし達みんなが力を合わせれば、きっとできる!」

ビューティ「だから、立ち上がってください、ハッピー。何度でも」

ノーブル「もし立てないようなら、私達が支えるからさ。ね?」

ハッピー「……みんな……!」


シアンナ『……まだ動けたのね』

シアンナ『でも、立ち上がって、それでどうするの? あなた達の力が及ばないことはさっき証明したでしょう?』

シアンナ『"未来に向かう勇気" がどうとか言っていたけれど……、そんなものでは私を倒せない。所詮、その程度の力にしかならない』

シアンナ『あなた達の "未来" は、今ここで消える。無駄なことはやめて、諦めることね』


6人「…………!」

キャンディ(デコル)「…………」

キャンディ(デコル)(……みんなの未来が……なくなるクル……?)

キャンディ(デコル)(やよい……、なお……、れいか……、あかね……、……みゆき……)

キャンディ(デコル)(……みんな……、みんなガンバって、自分の行きたい未来を見つけたのに……、その未来をなくすなんて……!)

キャンディ(デコル)(……そんなの……そんなの……!)


キャンディ(デコル)「そんなのぜったい、ゆるさないクルぅぅぅぅっ!!」


パァァァッ!


ポンッ


キャンディ「…………」

ハッピー「えっ!? キャ、キャンディが目の前に出てきた!? ……あ、あれ? でもわたしの変身はとけてない……。な、何が起こってるの!?」

ビューティ「これは一体……!? ポップさん、何かご存知ないですか!?」

ポップ(デコル)「せ、拙者にもわからないでござる……! キャンディの力……、心だけが外に出たのでござろうか……!?」

パカッ


シアンナ『……あれは……、"レインボーパレット" ……!』


キラキラキラキラ


サニー「開いた "レインボーパレット" の中の "夢の絵の具" が……、キャンディに流れてくで……!」

ピース「キャンディ……、何かしようとしてるの……!?」

キャンディ「……キャンディの体を通して、"夢の絵の具" の力をみんなに渡すクル」

ハッピー「それって……、前にやよいちゃんの "夢の絵の具" を使って、電気のパワーを出した時みたいに……?」

キャンディ「そうクル」


マーチ「……でも、あの時確か、たった 1回で疲れて動けなくなっちゃったんだよね……?」

ノーブル「今ある "夢の絵の具" は 5色……。あの時の 5回分、ってことになるんじゃあ……。そんなことして大丈夫なの……!?」

キャンディ「……キャンディにもわからないクル」

ハッピー「じゃあやめてよ! キャンディに危ないことなんて、してほしくないよ!」

キャンディ「それでも……やらなくちゃいけないクル!!」

ハッピー「……! キャンディ……?」

キャンディ「ハッピーが……、みんなが教えてくれたクル。"やりたいことがあるなら、怖くっても前に進まなきゃいけない" って」

キャンディ「キャンディのやりたいこと……、それは、みんなの夢を守ることクル」

キャンディ「だからキャンディもガンバるクル。キャンディにできることがあるなら……!」

キャンディ「キャンディも、せいいっぱいやるクルぅぅっ!!」


バァァァァァッ!!


シアンナ『……!? あの白い妖精の光が……強くなっていく……!?』


キャンディ「プリキュアのみんなに、未来に進む力を!!」バシュゥゥゥッ!


ブワァァッ!


ノーブル「……キャンディちゃんから出た5つの光が……、私以外のみんなの体に入っていく……!」


キャンディ「みんな、今クル! その力を合わせるクル! そうすれば……きっと前に進めるクル!」

ハッピー「…………」


ハッピー「……やってみよう、みんな!」

サニー・ピース・マーチ・ビューティ「うんっ!」

5人「5つの夢を、今こそ一つに!!」


バァァァァァッ!!


シアンナ『プリキュアから出る 5つの光が……混ざり合っていく……!?』

バッ!


5人「未来へ届け! 希望の架け橋!!」


5人「プリキュア!! レインボー・アーチっ!!!」


ブワァァァァァァァァッ!!!


シアンナ『プリキュアのかざした手の平から……、5色の光が……!! ひ、光に、飲み込まれる……!!』

シアンナ『うっ、うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?』


5人「ハッピー……エンド!!」


ドガァァァァァァァァァン!!


アキラメーナ(絵本型)「アガァァァァァ……」シュワァァァァ…

5人「…………」


ハッピー「……やった……!」

5人「やったぁぁぁーっ!!」


ペロー(デコル)「……すごいペロ……! あの強いアキラメーナを一発でやっつけちゃったペロ……!」

ノーブル「うん……! みんな、すごいよ……!」

ノーブル「……これが…… "未来に進む気持ち" の強さ……!」

シュバッ

ドサッ


シアンナ「はぁっ……、はぁっ……!」

ノーブル「……! シアンナ……。無事だったの……!?」


シアンナ(な、何とか、アキラメーナから脱出できたおかげで……あの光を浴びずに済んだ……)


シアンナ(……けれど……、また……失敗した……! 使命を……果たせなかった……!)

シアンナ(私の力は……、プリキュア達の "未来に進む気持ち" の力には……かなわないというの……!?)

シアンナ(それなら……それなら……っ!)


シアンナ「―――― (ボソッ)」

ノーブル(……!? 今、あの人……)


シアンナ「……くっ……!」シュバッ

ノーブル「…………」

みゆき「そうだ、キャンディ! あんなにいっぱい力使って……、だいじょうぶなの!?」

キャンディ「…………」クテッ

あかね「キャ、キャンディ……、返事せえへんで……!?」

やよい「キャンディ! キャンディ、起きてよ!」


ムクッ


キャンディ「ん……、みんな、どうしたクル?」

なお「…………あれ? キャンディ、なんか平気そうなんだけど……」

れいか「キャンディ、体は大丈夫? どこかおかしなところはない?」

キャンディ「んー……、だいじょうぶみたいクル! ほらっ、こんなに元気クル!」ピョンッ ピョンッ


みゆき「……よ……」

5人「……よかったぁー……!」ヘナヘナ


ポップ「驚いたでござる……! どうやら、キャンディのロイヤルクイーンとしての力は、拙者達が思う以上に成長しているようでござるな」

キャンディ「そうクル! この間はつかれちゃったけど、今日はぜんぜん平気クル!」

あかね「はは……、心配してソンしたわ……」

やよい「……でも、すごかったね、さっきの力!」

なお「うん! あたし達と、キャンディと、妖精のみんなと……」

れいか「みんなの力が合わさったから出た力ですね」

みゆき「キャンディ、ありがとう! おかげで助かったよ!」

キャンディ「クルぅ! これからもきっと、この力でプリキュアのみんなのやくに立てるクル! キャンディにドーンとまかせるクル!」

みゆき「うんっ! よろしくね、キャンディ!」


ワイワイワイ


ペロー「クイーン様、ホントにすごかったペロ! はるかさん、ぼく達もお祝いにいくペロ!」

はるか「あ、うん。そうだね」

はるか(…………)

はるか(あの時、シアンナが言った言葉……。私には確かに聞こえた……)


シアンナ(回想)『…… "未来" が無い者は……どうしたらいいというの……!?』


はるか(…… "未来が無い" って、どういうことだろう……)

はるか(なんだか、気になるな……)


ペロー「はるかさん、早く早くペロ!」

はるか「……あっ、ゴメンゴメン! 今行くよ!」

~ 七色ヶ丘市立図書館 多目的ホール 観客席 ~

司会の図書館職員「――以上を持ちまして、表彰式を終わります。皆様、参加してくださった方々に、盛大な拍手をお願いします!」


パチパチパチパチパチパチ!


あかね「……みゆき、賞もらえへんかったな……」

やよい「あ、あの、みゆきちゃん……、元気出して! 次ガンバればきっと――」

みゆき「…………」ニコニコ

はるか「……みゆきちゃん、なんだか嬉しそうだね。賞もらえなかったのに……。どうして?」


みゆき「……笑ってたんだぁ」

なお「えっ? 笑ってた? 誰が?」

みゆき「観客席の小さい女の子、わたしのお話を聞いて笑ってくれたんだ。それが、うれしくって……!」

みゆき「なんであの子が笑ってくれたのか、わたしにはわからないけど……」

みゆき「でも、わたしのお話でハッピーになってくれたのかな、って思ったら……、わたしもすごくハッピーになれたんだ」

みゆき「わたしにとっては……、あの子のスマイルが最高の賞だよ!」


あかね「みゆき……」

みゆき「わたし、ガンバって絵本作家になりたい」

みゆき「わたしの絵本を読んでくれた人がハッピーになってくれて……、その人が感じたハッピーを別の人に伝えてハッピーにしてあげて……」

みゆき「そんな風にしてたくさんの人がハッピーになってくれたら、それがわたしのウルトラハッピーなんだ!」


みゆき「……そんな風に思えるようになったのも、最初の一歩を踏み出す勇気、最後までガンバる勇気をくれた、みんなのおかげだよ」

みゆき「もう何回言ったかわかんないけど……本当に、ありがとう!」


5人「…………」ニコッ


あかね「……みゆき。もしみゆきが困っとったら、またうちらみんなで助けるで。忘れんといてや」

みゆき「うんっ! これからもよろしくね、みんな!」ニコッ





つづく

次回予告

みゆき「わたしの "夢の絵の具" も出て、今のところ残っているのははるかさんの絵の具だけ!」

みゆき「でも、はるかさん、"夢の絵の具が出せないかもしれない" って落ち込んでた……。ついに陸上のオリンピック選手に選ばれたのに……どうして……?」

みゆき「はるかさん、何か夢について秘密にしていることがあるのかな……?」


みゆき「次回、『スマイルプリキュア レインボー!』 "はるかの夢! 本当の "気高い心"!"」


みゆき「みんな笑顔でウルトラハッピー!」

今回はここまでです!
お読みいただいた方、ありがとうございました。


なお、第20話までにいただいたレスに関するお返事タイムは Part2 の方でさせていただきます。
書き込みはこれからになりますので、レスしていただいた方は後でそちらも見てみてください!


よかったら次回もまたよろしくお願いします!


第1話 ~ 第11話 『スマイルプリキュア!』第2期を SS で作るスレ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1360385907/)
第12話 ~ 第20話 『スマイルプリキュア レインボー!』 Part 2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1366529393/)

第21話 >>4 から

乙でした ↑の人はちゃんと本編・映画のことを思い出していたのに、今回は本を書くのに苦戦する話って事で、

はるか「何が言いたいか分からない。みゆきちゃんがこの物語で何を訴えたいのかわからない」

っていう「海賊ハリケーン」的な展開を想像してしまったが、全然違う展開だった……。スマイルにはナッツみたいなツンデレいないしね。
はるかは他の年上キャラのゆり、キュアエース(年上か年下か分からん)に比べて甘くて優しい感じだし。
今回の話作るときに、原作や映画の絵本に関する所とか参考にしたり、「海賊ハリケーン」と中身が被らない(被らねぇよ!)ように気を付けたりした?

『スマイルプリキュア レインボー!』

このあとすぐ!

~ 放課後 七色ヶ丘中学校 校門 ~

みゆき「んんーっ、今日も学校終わったぁー! ね、これからどこか行かない? 遊ぼうよ!」

あかね「せやなぁ。んー……、毎度毎度ふしぎ図書館、っちゅーのも芸があらへんし……。たまには駅前でも行かへん?」

なお「あっ、いいね! そういえば、新しいシュークリーム屋さんが出来たんだ! そこがおいしいんだって。行ってみようよ!」

やよい「もう、なおちゃんったら食べることばっかりー」

なお「そ、そんなことないよ!」


みゆき・あかね・やよい「あはははっ!」


れいか「……すみません。私は用事がありますので、みなさんだけで楽しんできてください」

みゆき「えっ? れいかちゃん行けないの? 用事って何?」

れいか「はるかお姉さんの学校に行くんです。昨日、家庭教師に来ていただいた時に忘れ物をされていったので、それを届けようかと」

あかね「……そういえば、うちらってはるかさんがどんな学校通っとるのか全然知らへんな」

れいか「"私立 イリス学園"。ここ、七色ヶ丘市でも有数の進学校です。校舎もきれいで、とても素敵な学校ですよ」

みゆき「ふぅーん……」


みゆき「……ねえ、れいかちゃん。わたし達も一緒に行ってもいいかな?」

れいか「……えっ?」

~ 私立 イリス学園 ~

れいか「――と、いうわけで、みなさんも一緒に来てしまいました……。すみません、急に大勢で押しかけてしまって……」

はるか「なるほど、そういうこと」


みゆき「すごぉーい……! 七色ヶ丘中学校より全然大きい……!」

あかね「グラウンドもめっちゃひろいやん……! 七中のバレーコートいくつ入るんやろ……」

やよい「それに、生徒のお兄さん、お姉さんたちも、何だか大人っぽーい……!」

なお「"世界が違う" ってカンジだね……!」


はるか「……でも、みんななんだか楽しそう。ねえ、みんな、せっかくだから校舎の中を案内しようか?」

みゆき「えっ!? いいんですか!?」

れいか「でも、はるかお姉さん、ご迷惑では……?」

はるか「ああ、いいっていいって。みんなが喜んでくれるなら私もうれしいしね」

やよい「ありがとうございます! よろしくお願いします!」

はるか「うん、任せて!」

れいか「あ、はるかお姉さん。忘れてしまうといけないので、先に忘れ物をお返ししておきます」スッ

はるか「……! 私の音楽プレーヤー……!? これ、忘れてったの……!?」

れいか「はい。高価なものですので、お困りかと思って持って来ました。どうぞ」

はるか「あ、ありがとう、助かったよ……」

はるか「……ところで、中……、聞いた?」

れいか「えっ? このプレーヤーの音楽を再生してみたかどうか、ということですか?」

れいか「していませんよ。私はこういった機械にはうといですし……、失礼かと思いまして」

はるか「…… (ホッ) ……そう、ならいいんだ。持ってきてくれてありがとう」


はるか「さ、みんな、学校の中を案内するよ! 出発しよう!」

みゆき・あかね・やよい・なお「おーっ!」


れいか「…………?」


れいか(プレーヤーを受け取った時のはるかお姉さん、様子が少しおかしかった……? 聞かれたくない音楽でも入っていたのかしら……)

~ イリス学園 図書室 ~

はるか「まず、ここが図書室」


みゆき「うわぁーっ、大きい! 本がいっぱい! 絵本もあるのかなぁ!?」

イリス学園 生徒達「(ジロッ)」

みゆき「あ……、図書室ではお静かに、ですね……。スミマセン……」


あかね「図書室、っちゅーより図書館って感じやな……」

やよい「広すぎて迷子になっちゃいそう……」

はるかの級友・沖田「あっ、藍沢さん。ちょうどいいところに」

はるか「沖田さん。どうかしたの?」

はるかの級友・沖田「期末テストの勉強をしてたんだけど、数学でわからないところがあって……、前みたいに教えてくれないかな?」

はるか「あ、なんだ、そんなこと? 大丈夫、任せて!」

はるか「……と、言いたいところだけど、ゴメンね。今ちょっとこの子達に学校を案内してるところなんだ。明日でよければ付き合うよ」

はるかの級友・沖田「それで十分だよ! ありがとう、藍沢さん!」


なお「……へぇー、はるかさん、れいかの家庭教師だけじゃなく、学校でもお友達に勉強教えたりしてるんだ」

れいか「はるかさんは成績も優秀で面倒見がいいから、頼られているのよ」

あかね「お、なんやれいか。珍しく自慢げやないの」

れいか「えっ……!? そ、そんなこと……(///)」

みゆき「はるかさんはれいかちゃんの憧れだもんねー」ニヤニヤ

やよい「照れなくたっていいのにー」ニヤニヤ

れいか「もう、みゆきさんっ、やよいさんっ!」

~ イリス学園 校舎 廊下 ~

タタタタタッ


イリス学園 生徒会の男子「おっ、藍沢! ちょっと頼みたいことあるんだけど、いいか?」

はるか「いいけど、どうかしたの?」

イリス学園 生徒会の男子「いやー、実は文化祭の出し物がうまく決まんなくってさ。アイデア出してくんない?」

はるか「ああー……、ゴメン! 明日……も勉強会があるからダメか。明後日でもいい?」

イリス学園 生徒会の男子「ああ、全然OK! 急ぐ話でもないしよ。気が向いたら生徒会まで来てくれよ!」

はるか「大丈夫、絶対行くよ!」


みゆき「ホント、引っ張りダコだね、はるかさん……」

やよい「いっつもこんな感じなの、ペロー?」

ペロー「そうペロ! はるかさんはみんなの人気者ペロ!」

あかね「せやったら、みんなのお手伝いして、れいかの家庭教師もやって、プリキュアもやって……。タイヘンやなぁ……、考えただけで目が回りそうや……」

ペロー「それが全部できちゃうのが、はるかさんのすごいところペロ!」エッヘン

ウルルン「……なーんでお前がイバってるウル」

ペロー「はるかさんはぼくの自慢のパートナーだからペロ!」

~ イリス学園 陸上競技場 ~

はるか「それでここが陸上部が練習してる競技場だよ」

みゆき「ここもおっきーい……!」

なお「そういえば、はるかさん陸上競技の選手でしたね。やっぱりここで練習してるんですか?」

はるか「え? ……ああ、まぁ、時々ね」


タタタタタッ


陸上部監督・太田「藍沢! 良かった、やっと見つけた!」

はるか「あ……、太田先生……」


あかね「なんやなんや? また頼みごとかいな」

れいか「……と、いうわけでもなさそうですね。あの先生の方、なんだか嬉しそうですが……」

陸上部監督・太田「藍沢、決まったんだよ!」

はるか「な、何がですか?」

陸上部監督・太田「次の陸上選手権大会で好成績を収めれば……、正式にオリンピック代表として選ばれるんだ!」


5人「えっ!?」

はるか「……私が……オリンピックに……?」

陸上部監督・太田「そうさ! 留学中、アメリカの大会でいい成績を収めたことが評価されたんだ!」

陸上部監督・太田「君だったら選手権大会で優勝も夢じゃない! そうすれば……世界へ羽ばたけるんだ!」

はるか「……世界へ……」

みゆき「す……すごいです、はるかさんっ! オリンピック! オリンピックですよ!」

あかね「うわー、なんやえらいことになってもーた……! 店のお客さんにも自慢できんで! "センパイがオリンピック選手です" って!」

なお「二人とも、まだ気が早いよ。出られる、って決まったわけじゃ……」

やよい「でっ、でもでもっ! 大会優勝も夢じゃないって! スゴイよ、スゴイっ!」

れいか「はるかお姉さん……! おめでとうございますっ! あとは、夢に向かって頑張るだけですね!」


はるか「……夢に向かって……」


はるか「…………」

はるか「……わかりました。私、やります。精一杯頑張って……オリンピックを目指します!」

陸上部監督・太田「よく言ってくれた、藍沢! 期待してるぞ!」

みゆき「はるかさんっ、わたし達も精一杯応援します! ガンバってくださいっ!」


はるか「……ありがとう、みんな」

はるか(…………)

はるか(みんな……、みんな、とっても喜んでくれてる)


はるか(……そうだ……これでいいんだ)


はるか(これで、いいんだ)




スマイルプリキュア レインボー!

第22話「はるかの秘密! 本当の "気高い心"!」



~ 藍沢家 居間 ~

はるか「ただいまー」

清美(はるか母)「おかえり、はるか!」

はるか「……って、うわっ、今日のお夕飯すごいね! どうしたの?」

清美「陸上部の太田先生からお電話があってね。聞いたわよ、はるか、あなた、オリンピックに出られるかもしれないんですって?」

はるか「……知ってたんだ」

清美「それを聞いたらいてもたってもいられなくなっちゃってね、張り切っちゃったわ」

清美「今日はお父さんも早く帰るみたいだから、前祝いということでぱーっとやりましょう!」

はるか「……ありがとう……」


清美「さ、早く着替えてらっしゃい。一人じゃ並べるのタイヘンだから手伝って」

はるか「うん、わかった……」

はるか・清美・はじめ(はるか父)「いただきまーす」


はじめ「いやあ、驚いた……。まさか我が子がオリンピックに出場できるかもしれないとは」

清美「本当ね、あなた。小さい頃からできる子だとは思っていたけど、ここまでだったなんて……。私も鼻が高いわ」

はるか「…………」モグモグ


はじめ「もしオリンピックに出たなら、ぜひウチの会社の CM にも出てもらいたいな!」

はじめ「製薬会社 "SATSUKI" の新製品、効果バツグンの湿布薬! 身につけるのは我が娘、はるか! 夢が膨らむな!」

はるか「…… "SATSUKI" って大会社じゃない。いくらなんでもそこまではムリだよ」

はじめ「いや、そんなことはない。お前ならきっとやれるさ! 自分を信じろ!」

はるか「……うん」

清美「それにしても……、中学生で海外留学、成績優秀で運動神経もバツグン。その上、国を代表するスポーツ選手だなんて……」

清美「絵に描いたように幸せな人生ね。うらやましいくらいだわ」

はるか「……そう、かな」

清美「ええ、そうよ。おまけに我が娘ながらキレイだし。きっと将来は素敵な男性と出会って、幸せいっぱいの家庭を築けるわ」

はじめ「む……、それに関しては父さん、ちょっと賛成しかねるな……」

清美「あら、なあに、お父さん、妬いてるの? ダメじゃない、娘の幸せを願ってあげなくちゃ」

はじめ「わかっちゃいるがなぁ……」

はるか「大丈夫だよ、お父さん。そんなすぐにお嫁に行ったりしないからさ」

はじめ「……そ、そうだよな! はるかは、まだまだお父さんの娘でいてくれるよな!」

清美「まったく、急に元気になっちゃって……。しょうがないわねぇ」


はじめ・清美「あはははははっ!」

清美「……はるか、頑張ってね。私達はあなたの幸せが何より大事なんだから」

はじめ「そうだぞ。自分の幸せは、自分で掴み取るんだ。そのためなら父さんも母さんも、精一杯応援するぞ」


はるか「うん。ありがとう、お父さん、お母さん」

~ 藍沢家 はるか自室 ~

バタン


はるか「……ふう」

ペロー「はるかさん、お帰りなさいペロ!」

はるか「ただいま、ペロー君」


ギシッ


はるか「……さ、明日の予習、やっちゃおうかな」

ペロー「ご飯食べたばっかりなのに、机に向かって……、休まないで勉強するペロ?」

はるか「うん。"勉強教えて" って友達の沖田さんに頼まれちゃったからね。ちゃんと教えられるように、しっかり勉強しとかないと」

ペロー「……はるかさんは、本当にすごいペロ……」

ペロー「……はるかさん、おひざの上に乗ってもいいペロ?」

はるか「え、また? ……いいよ、おいで、ペロー君」

ペロー「ありがとうペロ!」


ピョン


はるか「ペロー君、私のひざの上で丸まるの、好きだよね」

ペロー「はるかさんといっしょにいられるのがうれしいからペロ」


ペロー「はるかさんはキレイで、優しくて、みんなに頼られて、何でもできて……」

ペロー「そんなはるかさんのパートナーでいられるのが、ホントにうれしいペロ」

ペロー「はるかさん、大好きペロ」

はるか「ペロー君……」

はるか(……"キレイ" で、"優しく" て、"みんなに頼られ" て、"何でもできる" ……、"そんな私が大好き" ……か)

はるか(そうだよね。みんなが好きな "私" は、そうなんだよね)

はるか(……そんな "私" にもっとなれるよう、頑張らなくっちゃ)


はるか(……みんなのためにも)

~ 2時間後 ~

はるか「……んんーっ、とりあえず、予習はこのくらいでいいかな。さて、そろそろ寝よ――」

ペロー「……くぅ……くぅ……」

はるか「――あぁー……。ペロー君、またひざの上で寝ちゃった……。こうなっちゃうと、起こすのかわいそうで動けないんだよね……」

ペロー「……くぅ……くぅ……」

はるか「……ま、いいか。気持ち良さそうだし、しばらくこのままにしといてあげよ」

はるか「……でも、ヒマになっちゃったな……。どうしよっか――」

はるか「……あ」


はるか「……れいかちゃんに返してもらった、音楽プレーヤー……」


はるか「…………」

はるか「……ちょっとくらいなら、いいか、な」


はるか「イヤホン耳につけて、スタート、っと」ピッ

音楽プレーヤー「――――」

はるか「…………」


音楽プレーヤー「――――」

はるか「…………」


音楽プレーヤー「――――」

はるか「…………ぷっ」


音楽プレーヤー「――――」

はるか「……ふふっ、ふふふっ……!」


音楽プレーヤー「――――」

はるか「……あはっ、あはははっ……!」

はるか(……やっぱりいいなぁ……)

はるか(……でも、こうしてたまに聞くくらいで十分。それで十分、私は幸せ)


はるか(……それに、私にはやらなくちゃいけないことがいっぱいあるし)

はるか(陸上の練習に、家庭教師に、自分の勉強に、プリキュアに……。時間なんて、全然ないもんね)

はるか(だから、これでいいんだ)


はるか(みんなに喜んでもらうことが、私の幸せなんだ……)

~ デスペアランド 王宮 玉座の間 ~

デスペア国王「シアンナよ。なぜ、お前を呼びつけたか、わかっているだろうな」

シアンナ「……はっ……」

デスペア国王「……お前達 3人もいながら、いつまでかかっている。いつになったら私の目的は達成されるのだ?」

シアンナ「……申し訳ありません、国王陛下……。あのプリキュアという者達、予想以上に手ごわく……」

大臣「そのプリキュアを倒すために授けた、私特性の "心の絵の具" もあまり役に立てられていないようですね」

大臣「いただいている報告によると、残された絵の具はあと一つ……。それでプリキュア達を仕留められなければ、どうされるおつもりで?」

シアンナ「…………」

シアンナ「陛下。一つだけお聞きしたいことがあります」

デスペア国王「なんだ?」

シアンナ「陛下がお望みの "夢の絵の具" ですが、7色全て揃わずともよろしいでしょうか?」

デスペア国王「……どういうことだ? 質問の意図がつかめないが」


シアンナ「この間、私は見たのです。"レインボーパレット" にある "夢の絵の具" が、以前見た時より増えて 5色になっていたところを」

シアンナ「その間、プリキュア達が一人ひとり、強力な力に目覚めていることから、私は推測しました。"夢の絵の具" は、プリキュアから産み出されるのではないかと」

シアンナ「そして、プリキュア達は "夢の絵の具" の力を利用して強力になっているのではないかと」


シアンナ「…… "夢の絵の具" はプリキュアを倒さなければ手に入らない」

シアンナ「しかし、"夢の絵の具" はプリキュアに力を与えてしまう。つまり――」

デスペア国王「プリキュア達を倒すには、 力の源である "夢の絵の具" を産み出させるのを阻止しなければならない、と」

シアンナ「その通りでございます」

シアンナ「幸い、彼女達が手にいれた "夢の絵の具" は 5色。……これだけでも、十分に強力な力を発揮していましたが」

シアンナ「しかし、私の推測が正しければ、6人いるプリキュア達の中で一人だけ、まだ "夢の絵の具" を産み出していない者がいるはずです」

シアンナ「その者を、"夢の絵の具" を産み出す前に全力で叩けば、少なくともプリキュア達をこれ以上強力にすることは避けられます」

デスペア国王「"夢の絵の具" を手に入れるために、残りの色をあきらめよ、と言うのだな?」

シアンナ「はい」

デスペア国王「ふむ……」

デスペア国王「……よかろう。もらった報告によれば、"夢の絵の具" は一つでもかなりのエネルギーを持っているようだ」

デスペア国王「本来であれば 7色全てあるのが望ましいが、手に入らなければ仕方の無い話」

デスペア国王「未だ現れていない他の絵の具を諦めよう。その代わり、現在ある残り 5色の "夢の絵の具" は確実に手に入れるのだ」

シアンナ「……ありがとうございます。このシアンナ、必ずやご期待に応えてみせます」

デスペア国王「うむ」

デスペア国王「……だがしかし、忘れるなシアンナよ。お前達にはもう "時間" は残されていない」

デスペア国王「お前達は我が目的の達成を使命とし、それを果たすためのみに存在している」


デスペア国王「使命が果たされなければ、お前達はいる意味が無いのだ」

シアンナ「……!!」


デスペア国王「よいな、シアンナ。その事を忘れず、他の二人ともども任務に励め。失敗は許さん」

シアンナ「……承知しております、国王陛下」

デスペア国王「では行け。我が目的の成就のために」

シアンナ「はっ!」シュバッ

~ ギャラリー・D ~

ガチャッ


シアンナ「…………」ツカツカツカ

セルリア「……お帰り……シアン…………どうしたの……? ……怖い顔……して……」

シアンナ「"心の絵の具"、最後の一個、使わせてもらうわ」ガシッ

シアンナ「これを使って、今度こそプリキュアを……討つ!」


ガチャッ バタンッ


セルリア「……出て……行っちゃった……」


セルリア(……どう……したの……シアンナ……? ……何だか……つらそう……)

~ ギャラリー・D 前 ~

ザッ


ビリーズ「……いやぁー、ようやく着いたぜ、我が寝床! よっ、お前も久しぶりだな、"D"!」

ギャラリー・D「アガ」

ビリーズ「"お元気そうで何よりですが、ご主人様の許可がないと入れられませんよ" って……、お前、しばらくぶりなのにそりゃねーだろ」

ギャラリー・D「アガ」

ビリーズ「"ご命令ですので" って、そればっかりだな……。ったく、融通利かねえところはご主人様にそっくりだぜ」

ガチャッ


ビリーズ「おっ、ウワサをすれば、そのご主人様の登場だ! よっ、シアンナ、久しぶりだな! 戻ってきてやったぜ!」

シアンナ「…………」ツカツカツカ

ビリーズ「……って、おいおい、無視して行こうとするなよ! いや、行ってもいいけどよ、その前にオレを中に入れるようにしてくれよ。もういいだろ? この通り、反省もいっぱいしたしよぉ」

ギャラリー・D「アガ……」

ビリーズ「"そのようには見えませんが……" だぁ? 余計なこと言うんじゃねえよ、"D"!」

シアンナ「……好きにしたらいいわ。"D"、入れてやりなさい」

ビリーズ「……! おい、聞いただろ "D"、早くドア開けやがれ! ひゃっほーう! 久しぶりにあったかいベッドで寝られるぜぇ!」

ビリーズ「ったく、なんだよ。しばらく見ないうちに、融通利くようになったじゃねえの、シアンナさんよ!」

シアンナ「あなたの相手をするのが面倒だからよ。中に入っていいから、私に話しかけないでちょうだい」


スタスタスタ


ビリーズ「……行っちまった」


ビリーズ「……それにしても、なんだ……? なーんか思いつめた感じだったなぁ……。何か知ってるか、"D"?」

ギャラリー・D「アガ……」

ビリーズ「"存じません" か……。……何かあったのか?」

ビリーズ「……ま、いっか! さぁーって、久しぶりのベッド、ベッド!」


バタンッ

ガツンッ!


セルリア「……シアンナ……っ!」

ビリーズ「~~~~~~っ……!」

セルリア「……? ……お前……何で……いるの……? ……それに……何してるの……うずくまって……」

ビリーズ「先に謝れよ……! お前が勢いよくドア開けるから、ぶつかっちまったじゃねえか……!」

セルリア「……どうでも……いい……。……それより……シアンナは……!?」

ビリーズ「シアンナ? アイツなら今どこかへ出かけたぞ。プリキュアやっつけに行くんじゃねーの?」

セルリア「……そう……」


ビリーズ「? なんだぁ? お前も元気ねーのかよ。いや、お前はいっつも元気ねーけどよ、いつにもまして暗いじゃねーか」

セルリア「…………心配……で……」

ビリーズ「心配……、って、シアンナが? お前、人の心配なんかすんの? へぇーっ」

セルリア「……っ! ……お前には……関係ない……!」ガンッ!

ビリーズ「っ!? だ、だから足を踏むなよ……! 痛えんだよ……!」

ビリーズ「……でも……へへっ……」

セルリア「……何……ニヤついてるの……?」

ビリーズ「いや……。なんかこのノリも久しぶりだな、って思ってよ。そう思ったらつい、な」

セルリア「……そのニヤつき顔……、……気持ち……悪い……」


ビリーズ「……うん、そのノリもいつも通りだけどよ、そうも本気で言われるとちょっとヘコむな……」

~ 七色ヶ丘市 道路 ~

スタスタスタ


シアンナ「…………」


デスペア国王(回想)『使命が果たされなければ、お前達はいる意味が無いのだ』


シアンナ(……わかっている。私には、"使命を果たすこと"、それしかない)

シアンナ(……それ以外には……何もない)


シアンナ(だから、私は必ず使命を果たす。私が、私であるために)

~ イリス学園 陸上競技場 ~

タタタタタッ


陸上部監督・太田「いいぞ、藍沢! そこで跳べ!」

はるか「はっ!」バッ


スルッ ドサッ


みゆき・あかね・やよい・なお「おぉーっ!」


やよい「はるかさん、すごい……! すっごい跳んだよ!」

なお「はるかさんの専門って走り高跳びだったんだね。初めて知ったよ」

みゆき「そういえば、初めて会った時、飛んでっちゃった風船をすごいジャンプでキャッチしてたね!」

あかね「陸上競技で鍛えてたからできたんやなぁ」


れいか「はい、はるかお姉さん、タオルです。どうぞ」

はるか「ありがと、れいかちゃん。……何だか悪いね。あれから毎日応援に来てもらっちゃって」

れいか「いえ! はるかお姉さんが頑張っているのを見ると、私達も嬉しいですから!」

はるか「ん……、そっか。……じゃあ、もっと頑張らないとね!」

ザワザワザワ


みゆき「ん? 何かな、あっちの方が騒がしいみたいだけど……」


ズカズカズカ


TVディレクター「ああ、いたいた! 陸上競技・ウワサの新星、"藍沢 はるか"! ほら、見てみろよ。言っただろ、"ルックスもバツグンだ" って」

TV AD「ホ、ホントですね……! ヘタなアイドルよりずっとカワイイんじゃないですか? イケますよ、コレ!」

TVディレクター「だろ!?」


やよい「な、なんだろ、あの人達……」

なお「テレビの取材、かなぁ……? はるかさんの話してる、ってことは、はるかさん目当て?」

あかね「そういや、初めて会った時にも新聞の記者さんかなんかに追われとったっけ……。テレビに出られるなんて、やっぱ注目されとるんやなぁ……!」

陸上部監督・太田「ちょっとあなた達、困りますよ! 藍沢の取材は、"練習の邪魔になるし、他の選手達も落ち着かないから" ってお断りしているはずです! お引取りください!」

TVディレクター「ああ、スミマセンね、先生。そう興奮しないで。メイワクはかけませんから」


TVディレクター「ただ、許可ならこちらの学校からいただいてますよ。ほら」ペラッ

陸上部監督・太田「"取材許可証" ……!?」

TVディレクター「お時間は取らせませんって。他の選手のメイワクになってしまうなら、むしろ、サッと撮って、サッと終わらせてしまった方がいいんじゃないですかね」

陸上部監督・太田「……しかし……」


ザワザワザワ


陸上部員A「……なんだか、テレビがいると思うと固くなっちゃう……」

陸上部員B「うん……。練習に集中できないね……」


はるか「…………」

はるか「太田先生、大丈夫です。私、取材受けます」

陸上部監督・太田「藍沢……! いいのか……?」

はるか「はい。大丈夫です、任せてください」


TVディレクター「おっ、いいねいいねー、そのノリの良さ! それじゃあ、よろしく頼むよ!」

はるか「……でも、できれば早く終わらせてください。他の子達も困ってますから」

TVディレクター「もちろん! さ、みんな、撮影の準備だ!」

~ 撮影中 ~

TVレポーター「今日は七色ヶ丘市の私立 イリス学園にお邪魔して、女子陸上競技・期待の星、藍沢 はるか選手にお話を伺いたいと思います! 藍沢選手、よろしくお願いします」

はるか「はい、よろしくお願いします」


TVレポーター「ではまず、陸上競技はいつから始めたのか、聞かせてもらえますか?」

はるか「中学3年から高校1年の間、アメリカに留学していたんですが、その時に友人に助っ人を頼まれまして。その時からですね」

TVレポーター「えっ、ということは、中学3年生の時に始めたばかり、ということですか!?」

はるか「はい」

TVレポーター「これは驚きですね! スポーツは小さい頃から努力している方が大勢います。藍沢選手は海外で好成績を残したそうなんですが、そんな短い期間で結果を出してしまったんですね。才能を感じてしまいます!」

はるか「ありがとうございます」

TVレポーター「では次の質問ですが、尊敬する方はどなたでしょうか?」

はるか「父と母、祖父、顧問の太田先生、それに、友人達です」

TVレポーター「周りの皆様ということですね」

はるか「はい。みんな、私を支えてくれる大切な人達ですので」

TVレポーター「素晴らしいお言葉ですね! 周りの方々の期待を胸に、日々頑張っていらっしゃるんですね」

はるか「はい」

みゆき「…………」

あかね「ん? どした、みゆき? はるかさん見て心配そうな顔して」

みゆき「うん……、気のせいかもしれないんだけど……」


みゆき「なんだかはるかさん、あんまり楽しそうじゃないな、って……」

れいか「言われてみれば……」

なお「緊張してるんじゃない? いくらはるかさんだってテレビに映るっていったらさ」

みゆき「そう、かな……。だといいけど……」

TVレポーター「――藍沢選手、今日はありがとうございました! 私も藍沢選手のこと、応援させていただきますね!」

はるか「ありがとうございます」


TVレポーター「では、最後に一言、意気込みをお願いします!」

はるか「はい。……精一杯――」

はるか「…………」


TVディレクター「……ん? おい、どうしたんだ? 固まっちゃったぞ?」

TVレポーター「……? あの、藍沢選手? どうかしましたか?」

はるか「…………」

はるか("精一杯、がんばります")


はるか("がんばります" って言えばいいだけなのに……その一言が出ない……)

はるか(だって……、だって……)

はるか("がんばります" って言ったら……、がんばらなきゃいけない……!)


はるか(周りの人だけじゃない……。日本中の人たちから期待されて……、私の未来が決まっちゃう……! 今度こそ、完全に……!)

はるあ(もう、後戻りできなくなっちゃう……!)

はるか(…… "みんなの喜ぶことが、私の幸せ" 。だから、それでいいんだ)


はるか(それでいい。それでいいんだ)


はるか(…………それでいい……はずなのに……っ!)

はるか「……ごめんなさいっ!!」ダッ


TVレポーター「えっ!? 藍沢選手!? どこに行くんですか!? 藍沢選手!」


TVディレクター「……な、なんだ? おい、藍沢選手、走ってどっか行っちゃったぞ!? どうなってんだよ!?」

TV AD「し、知りませんよ!」

TVディレクター「知りません、じゃないよ! 追いかけろよ! 番組止まっちゃうだろーが!」

TV AD「陸上選手に走って追いつけませんよ!」


TVレポーター「…………え、えー、と、言うわけで、以上、藍沢 はるか選手のインタビューでした」

TVレポーター「……一応締めておきましたが、使えますかね?」

TVディレクター「肝心の意気込みがもらえないんじゃ番組として使えないよ……。どうなってるんだ、全く……!」

5人「…………」ポカーン


あかね「ど、どないしてもーたんや、はるかさん? れいか、なんか知らへん?」

れいか「い、いえ、私にも何が何だか……」

なお「と、とにかく追いかけようよ! はるかさん、様子変だったよ!」

やよい「で、でもどうやって? どこに行ったかわからないんじゃ……!」


キャンディ「みんな、心配ないクル!」ヒョコッ

みゆき「キャンディ! はるかさんの場所、わかるの!?」

キャンディ「はるかの場所はわからないけど、一緒にいるペローの場所ならなんとなくわかるクル!」

あかね「おおっ、やるやん、キャンディ! さすがロイヤルクイーン様やで!」

れいか「では、早く追いかけましょう! はるかお姉さんが心配です!」

なお「そうだね!」

~ 七色ヶ丘市民館 前 ~

タタタタタタタッ


はるか「はぁっ……、はぁっ……、はぁっ……」


はるか(……逃げて、きちゃった……)

はるか(みんなのために頑張ろう、って誓ったのに……。期待されてるんだから、頑張らなきゃいけないのに……)


はるか(……そういえば、ここって……、七色ヶ丘市民館……?)

はるか(足が、勝手にこっちに向いちゃったのかな……)

はるか(…………)


はるか(……私、まだ……あきらめられないの……?)

ポンッ


ペロー「はるかさん、どうしちゃったペロ……? なんだか様子がヘンペロ!」

はるか「あ、ペロー君……。そっか、練習中もデコルになってもらってたんだっけ……。大丈夫、なんでもないよ」

ペロー「なんでもないならそんなツラそうな顔しないペロ!」

はるか「……そんなこと、ないよ。本当に大丈夫だって」

ペロー「はるかさん……!」

タタタタタタッ


れいか「はるかお姉さぁーんっ!」

はるか「! れいかちゃん、みんな……! どうしてここに……?」

なお「TV のインタビューの時、はるかさんの様子がおかしかったから追っかけてきたんです!」

やよい「どうしちゃったんですか、はるかさん……! さっきのはるかさん、まるで……逃げだしちゃったみたいでした……」

あかね「はるかさん、もしかしたら、なんか悩んでることあるんとちゃいますか?」

みゆき「もし良かったら教えてください! わたし達で力になれるなら、なんでもしますから!」


はるか「…………」

はるか「……ゴメン、みんな」

なお「……あたし達にも、言えないことなんですか? はるかさんのこと、すごく心配している、れいかやペローにも……?」


れいか「…………」

ペロー「…………」


はるか「…………ゴメン」

はるか「……それに、私がみんなに謝らなくっちゃいけないのは、それだけじゃないんだ……」

れいか「悩みを教えていただけない、ということ以外に、ですか?」

はるか「うん……」

なお「それって……?」

はるか「…………」


はるか「…… "夢の絵の具"、もう、揃わないかもしれない……」


みゆき「……えっ? それって、どういう――」

ザッ


シアンナ「……いいことを聞いたわ。それは好都合ね」

6人「!?」


やよい「デスペアランドの人!」

あかね「毎度毎度タイミング悪いなぁ! 今、大事な話しとんねん!」

シアンナ「何の話か知らないけれど、おそらくもう必要ないわ。なぜなら……あなた達は今日で倒されるからよ」

なお「いっつもそんなこと言って! そうはさせないよ! 変身しよう、みんな!」

みゆき・あかね・やよい・れいか「うんっ!」

はるか「……わかった!」

妖精達「デコル・チェーンジ!」

パチンッ!

レディ!

6人「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー! ゴーゴー! レッツゴー!!


ハッピー「キラキラ輝く、未来の光! キュアハッピー!!」

サニー「太陽サンサン、熱血パワー! キュアサニー!!」

ピース「ぴかぴかぴかりん♪ じゃん・けん・ポン!(グー) キュアピース!!」

マーチ「勇気リンリン、直球勝負! キュアマーチ!!」

ビューティ「しんしんと降り積もる、清き心。キュアビューティ!!」

ノーブル「さらさら流れる気高きせせらぎ! キュアノーブル!!」


6人「6つの光が導く未来!」

6人「輝け! スマイルプリキュア!!」

シアンナ「……こちらも行くわよ」


シアンナ「神秘の青 "バミューダ"! 闇の絵の具と混ざり合え!」


ビャァァッ バチバチバチッ

バチィッ!


シアンナ「完成、闇の絵の具・"暴露の青"!」


シアンナ「闇の絵の具よ! 闇の絵筆よ! キャンバスに絶望を描き出せ!」


シュババババッ


シアンナ「実体を持ってキャンバスから現れよ、アキラメーナ!」


ズズズズズズ…


アキラメーナ(噴水型)「アキラメーナァッ!」


ハッピー「今日はアキラメーナと合体しないの!?」

ピース「でも、普通でもないよ! 色つきだから、デスペア空間を使うんじゃないかな……!」

ビューティ「注意していきましょう! ……大丈夫ですか、ノーブル?」

ノーブル「……うん。心配させてゴメン。戦いはちゃんとやるよ!」

シアンナ「……さすがに警戒しているわね。態勢を崩す必要があるかしら。アキラメーナ! 攻撃して、プリキュアにスキを作りなさい!」

アキラメーナ(噴水型)「アキラメーナァッ!」


ブシャァァァァァッ!


ハッピー「み、水鉄砲!? わっ!」バッ


ドガァッ!


サニー「なっ、なんちゅうパワーや……! コンクリートが削れてもーたで……!?」

ハッピー「よ、避けてなかったら危なかったぁ……!」

シアンナ「アキラメーナ! 休まず攻撃しなさい!」

アキラメーナ(噴水型)「アガァッ!」


ブシャァァァァァッ! ブシャァァァァァッ! ブシャァァァァァッ!

ドガァッ! ドガァッ! ドガァッ!


ピース「ひゃぁっ!?」

マーチ「くっ……! すごい連続攻撃……!」

ビューティ「このままでは防戦一方です……! 何とか、反撃の糸口を――」

シアンナ「(ニヤッ) キュアビューティ! 考えることで動きが鈍くなったわね、スキだらけよ! アキラメーナ、キュアビューティを狙いなさい!」

アキラメーナ(噴水型)「アガァッ!」ブシャァァァァァッ!

マーチ「水鉄砲がビューティに! 危ないっ!」

ビューティ「はっ! しまっ――」


ノーブル「プリキュア! ノーブル・ストリィィームッ!!」


ドバァァァァッ!


シアンナ「キュアノーブル……! 水で水を受け止めた……!?」

ノーブル「大丈夫、ビューティ!?」

ビューティ「ノーブル……! はい! ありがとうございますっ!」

ノーブル「私は水の戦士! 水の力なら負けないっ! はぁぁぁぁぁぁっ!」


ドバァァァァァァァッ!


アキラメーナ(噴水型)「ア、アガッ……!?」

シアンナ「アキラメーナの水鉄砲が、押し返される……!?」

ノーブル「このまま押し切るっ!」

シアンナ「ならば……! アキラメーナ! その水を受けなさい!」

アキラメーナ(噴水型)「アキラメーナ!」


バシャァァァンッ!


ノーブル「えっ!?」

ハッピー「ノーブル・ストリームが……、噴水の水に受け止められちゃった!?」

サニー「こないだ、うちが戦ったホットプレートのアキラメーナの時といっしょや……! あん時も、うちの炎が受け止められて、その熱で攻撃されてもーた……!」

マーチ「……ってことは……!」


シアンナ「キュアノーブルの水も加えて倍返しよ。受けなさい!」

アキラメーナ(噴水型)「アキラメーナ!」ブシャァァァァァッ!


ノーブル「ダ、ダメ……、反撃が、間に合わない……っ!?」


ドバァァァァァァァンッ!


6人「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

ノーブル「うっ……」

ハッピー「……くぅ……!」


シアンナ「全員、いい具合にダメージを受けたようね。チャンスよ、アキラメーナ。プリキュア達をデスペア空間に吸い込みなさい」

アキラメーナ(噴水型)「アキラメーナァッ!」


バァァァァァァッ!


ピース「噴水の水面から……黒い光が……!」

ビューティ「いけません……、このままでは……!」

ノーブル「す、吸い込まれる……っ!」


6人「うわぁぁぁぁぁー……」スゥッ

~ "暴露" のデスペア空間 ~

ノーブル「うっ……。……みんな、無事……!?」

サニー「な、なんとか……」


シアンナ「そんな心配はいらないわ。言ったでしょう、これからすぐに全員無事ではなくなるんだから」

ハッピー「シアンナ!」

シアンナ「さぁ、この "暴露" のデスペア空間の恐ろしさ、思い知るといいわ」


ブワッ


マーチ「あれは……! シアンナの前にキャンバスが現れた……!?」

シアンナ「ここ、"暴露" のデスペア空間では、全ての秘密が暴きだされ、このキャンバスに浮かび上がる。誰も、何も隠し事はできないわ」

サニー「なっ、なんやて……!? っちゅーことは、ナイショにしとったことも全部バレてまう、ってことかいな……!?」


ブゥゥゥン…


シアンナ「その通りよ、キュアサニー。今浮かび上がったこの情報のようにね。出ているわよ、あなたの知られたくない秘密」

サニー「うぃっ!?」

シアンナ「読み上げてあげるわ」


シアンナ「"なおのおやつを気付かないうちにこっそり食べた"」


サニー「!! あ、当たっとる……!?」

マーチ「サニー! やっぱりあの時あたしのおやつ食べたんだ! ちょっと少ないからおかしいな、と思ったんだよ!」

サニー「ゆーとる場合ちゃうやろ! ほんまにうちの秘密、バレてもーたんやで!? なんちゅーえげつない能力や……!」

ハッピー「……言うほど大した秘密じゃないよね」

シアンナ「そう思うなら、キュアハッピー。あなたの秘密も暴いてあげるわ」

ハッピー「えっ!? わたしの!?」


ブゥゥゥン…


シアンナ「"小学4年生の時におねしょをしたことがある"」


ハッピー「!!?」

5人「……えっ……」ジーーッ…

ハッピー「……そ、そんな目で見ないで……」

シアンナ「……"おねしょ"? "おねしょ" とは何かしら……」ゴソゴソ


ペラペラペラ


ピース「な、なんか本を読み出したよ?」

ビューティ「あれは……百科事典のようですね」

ノーブル「もしかして、違う世界の人だから、わからないことを調べるために持ち歩いてるのかな……」

サニー「……マメやなぁ」


シアンナ「……なるほど、"夜間の睡眠中、意識に関係なく排尿をしてしまうこと" ね。この世界では恥とされているのね」


サニー「……ハッピー、それほんまなん?」

ハッピー「……だって……、怖いテレビ見ておトイレ行けなくなっちゃったんだもーん! うわぁーっ、知られたくなかったのにぃーっ!」

マーチ「うん、あたし達も知りたくなかったよ……。なんか、ゴメン……」

シアンナ「……さて、この空間の力も試せたことだし、本題に入らせてもらうわ」

ビューティ「……本題……!?」


シアンナ「あなた達の持つ "夢の絵の具"。それはどのようにして発生するものなのかしら」


ブゥゥゥン…


シアンナ「……なるほど。プリキュアであるあなた達の心がすでに "夢の絵の具" となっていて、"未来へ向かう強い気持ち" が高まった時に発生する……。そういうことだったのね」

6人「!?」

シアンナ「"夢の絵の具" はプリキュアが産み出すもの。私の推測は当たっていたようね」

ノーブル「そんなことまで……!」

シアンナ「今、"夢の絵の具" は 5色あるはず。でもプリキュアは 6人いる。まだ "夢の絵の具" を出していないのは誰?」


ブゥゥゥン…


シアンナ「……キュアノーブル、あなたね」

ノーブル「……!」

シアンナ「では、キュアノーブルの "夢の絵の具" の発生を防ぐには、あなたの "未来への気持ち" を潰せばいいことになるわね」

ハッピー「ノーブルの "未来への気持ち" ……、夢を、潰す……?」

ビューティ「なぜそんなことをするのです……!? あなた方も "夢の絵の具" を集めるのが目的だったのではないのですか?」

ピース「そうだよ! ノーブルの夢がなくなっちゃったら、"夢の絵の具" が取れなくなっちゃうよ!?」

シアンナ「それは、"夢の絵の具" があなた達に力を与えているからよ」

シアンナ「確かに、私の使命は "夢の絵の具" を手に入れること」

シアンナ「でも、"夢の絵の具" を発生させるたびにあなた達の力は強力になっていく。それでは、"夢の絵の具" は奪えない」

シアンナ「だからせめて、これ以上あなた達が強力になるのを防ぐため、残りの "夢の絵の具" の発生を止める」

シアンナ「そのために、キュアノーブル。あなたの "未来に向かう気持ち" とやらを全力で潰させてもらうわ」


シアンナ「……でも、そのためには、あなたの望む "未来" がどんなものか、知る必要があるわね」

ノーブル「!!? ……まさか……!」

シアンナ「ええ、その通りよ。あなたの望み、暴かせてもらうわ。この "暴露" の能力でね」


ノーブル「……!!」

ノーブル「……やめて……」


ノーブル「お願い、やめて!! 言わないで!! 誰にも……誰にも知られたくないの!!」

5人「!?」

ビューティ「ノ、ノーブル……?」


シアンナ「……態度が急に変わったわね。顔が青いわよ。それほどの秘密なのかしら」

ノーブル「やめて……お願いだから……!」


シアンナ「……私はあなたの希望を潰すためにいるのよ? そんな願い、聞くと思う? 遠慮などしないわ」

ノーブル「……!!」

シアンナ「さぁ、キュアノーブルの望む未来は何?」


ブゥゥゥン…


シアンナ「……? これは……、何かしら。聞いたことがないわ。特殊な職業のようね……」ペラペラペラ


ハッピー「また百科事典見てる……」

マーチ「もう答えは出てるんだよね? ちょっと見ただけじゃわからないようなことなの……?」

シアンナ「……なるほど、こういう職業もあるのね。大体理解できたわ」


ノーブル「……やめて……!」


シアンナ「キュアノーブルの望む未来、それは……」


ノーブル「お願い、やめてぇぇぇぇっ!!」

シアンナ「"落語家"」


5人「えっ……?」


ノーブル「……っ!!」

ハッピー「……な、なんで? ノーブルの夢って、陸上選手だったんじゃ……」

マーチ「……そういえば、この間、家出した女の子のゆうちゃんを喜ばせる時、ノーブル、落語やってたけど……」

ビューティ「ノーブル……、そう、だったんですか……」


ノーブル「……知られたく……なかった……!!」ガクッ


ビューティ「……では、私がお返ししたあの音楽プレーヤーに録音されていたのは……」

ノーブル「……落語だよ。時々聞いて……楽しんでた……」

サニー「……せ、せやけど、何で隠すんです? 別にええやないですか、落語やっても」

ピース「そ、そうですよ。ちょっとビックリしたけど、別に何をやっても自由なんじゃ……」


ノーブル「……そんな自由、私にはないんだよ……」

ハッピー「えっ……?」

ノーブル「だって、"落語家になりたい私" なんて……誰も期待してない……、望んでないんだから……!!」


ノーブル「おかしいでしょ? アメリカに留学した優等生で、オリンピック候補になってる私が、"私の夢は落語家です" だなんて」

ノーブル「……私、落語が大好きなんだ」


ノーブル「小学生の高学年になった頃、おじい様に初めて落語に連れていてもらった時……、私、感動した。"話をするだけで、たくさんの人を笑顔にできる。そんな人がいるんだ"、って」

ノーブル「私自身、落語がとっても面白くって……。それからすっかり好きになっていったんだ」

ノーブル「それで、私思ったんだ。"あんな風に、大勢の人を喜ばせるような人になりたい" って」

ノーブル「その、私が初めて落語を聴いた場所が、外の "七色ヶ丘市民館" だったんだ……」


ペロー(デコル)「そうだったペロ……。だから、はるかさんはここに来たペロ……」

ノーブル「……でも、私が落語家を目指すには、遅すぎた……」


ノーブル「私は、小さい頃から勉強やスポーツ、色んなことを頑張ってきた。同級生の相談にも、よく乗ったりしてた。私が頑張ると、周りの人に喜んでもらえたから……」

ノーブル「でも、そうしているうちにどんどん周囲の期待は膨らんでいって……」

ノーブル「気付けば私は、"勉強もスポーツも出来て頼れる優等生" って思われるようになっていった」

ノーブル「実は一度、お母さんに相談したことがあるんだ。"落語家になりたい" って。その時、なんて言われたと思う?」

ノーブル「"そんなことより、次のテストに向けて勉強を頑張りなさい" って言われた……」

ノーブル「その時、わかったんだ。"ああ、私は周りの人から望まれたこと以外はしちゃいけないんだ" って」


ノーブル「海外留学もそう。"期待されてる立派な私" になるために行ったの」

ノーブル「陸上競技もそう。アメリカにいる時、期待されたからやったらいい結果が出ちゃって……。それから、"とても優秀なスポーツ選手" っていう新しい "期待" が増えた」

ノーブル「そのうち、オリンピックに出られる、なんて話になっちゃって。周りからの期待は一層高まった」

ノーブル「だから私はその期待に応えるため、オリンピック目指して頑張ることを決めた」


ノーブル「"落語家の夢" を……諦めたんだ」

ノーブル「……その事を話してたら、みんなきっと応援してくれたよね」

ノーブル「でも、いいんだ。どうせ私には "みんなの期待に応える未来" しかないんだから。応援してもらってもつらいだけ。だから知られたくなかったんだ……」


ノーブル「そんな私にとって、みんなはまぶしかった……。夢に向かって真っ直ぐ進んでいけるみんなが、うらやましかった……」

ノーブル「だから、みんなが困っている時は、精一杯応援したかったし、協力もしてあげたかった」

ノーブル「夢を諦めた私みたいには……、なってほしくなかったから……」


5人「…………」

シアンナ「……どうやら、私が手を下すまでもなかったようね」

シアンナ「キュアノーブル。あなたの希望はすでに潰れていた。自分で潰していた」


シアンナ「納得がいったわ。あなたと初めて会った時、あなたから吸い出した心の色は黒く、濁っていた」

シアンナ「それは、今自分が言った理由で未来を諦めていたからだったのね」

ノーブル「……その通りだよ……」

シアンナ「……私は、あなたと初めて会った時、あなたのことを高く評価していた。ただの人間でありながら、私を見事に出し抜いたのだから」

シアンナ「プリキュアになってからも、強敵だと思っていた。だから、あなたに対抗するため、あなたの技を学んだりもした」

シアンナ「でも、それは全てカン違いだったようね。本当のあなたは弱く、ちっぽけで、取るに足らない存在だった」

シアンナ「自分に負けているようなあなたには、そんな強さはなかった」

ノーブル「…………」

シアンナ「キュアノーブル。noble(ノーブル)。その言葉は、あなた達の世界で "気高さ" を意味する言葉」

シアンナ「"気高さ" ……。あなたにはそんなものはない。周りの意見に逆らえず、自分で自分の望む未来を潰してしまうようなあなたには」

シアンナ「……望む未来を選ぶこともできるはずなのに……、それを自ら手放すあなたには……っ!」ギリッ


シアンナ「……あなたは "夢の絵の具" を産み出せない。産み出せるはずがない」

シアンナ「あなたは……、周りに操られるだけの、ただの人形なのだから……!」


ノーブル「…………」

ビューティ「……そんなことはありません」

ノーブル「……ビューティ……?」


ビューティ「……シアンナ。そういえば、以前あなたには言ったかと思いますが、その時、ノーブルは聞いていなかったんでしたね」

ビューティ「だから……、私はもう一度、今度はノーブルに聞こえるように言います」


ビューティ「ノーブル。私達があなたに求めているのは、その秀でた能力でも、優れた成果でもありません」


ビューティ「私達が求めているのは……、常に私達のことを思ってくれている、その優しい心なのです。……はるかお姉さん」


ノーブル「……!」

ビューティ「はるかお姉さんは憶えていないかも知れませんが、以前、私がデスペアランドとの戦いで危険になった時、心を吸われて動けないにもかかわらず、必死に私を助けてくれました」

ビューティ「私が風邪を引いた時も、懸命に看病してくれましたね」

ビューティ「私が、自分の夢……、"道" を見つけられないで悩んでいた時も、とても親身になって相談に乗ってくれました」

ビューティ「先ほど、"夢を諦めた自分のようになってほしくないから、応援した" とおっしゃっていましたが、本当にそれだけですか? ……私は、違うと思います」


ビューティ「はるかお姉さんは、いつだって私達の手を優しく引いてくれる。背中を、そっと押してくれる」

ビューティ「いつだって、自分がつらい時だって、私達を喜ばせたいと気遣ってくれるその心は、私の目にはとても "気高く"、輝いて見えます」

ビューティ「そんなはるかお姉さんだから、私は憧れているんです……。……大好きなんです……!」

ビューティ「はるかお姉さんが何を目指そうと関係ありません! 私は、はるかお姉さんが "はるかお姉さん" だから大好きなんです!」

ビューティ「だから、はるかお姉さん。取り戻してください」

ビューティ「自分にとって大切なことは何かを真っ直ぐ見つめられる、本当の "気高い心" を!」


ノーブル「……ビューティ……!」

サニー「……ビューティの言う通りや」


サニー「はるかさんは周りの期待に応えるためだけに留学したり、英語を話せるようになったのかもしれんけど……」

サニー「そのおかげで、うちが自分では考えもしなかった、新しい可能性を見つけることができました」

サニー「それは、うちの役に立ちたいって思ってくれた、その優しい心のおかげやと思ってます」


サニー「せやから、うちらははるかさんが何になろうと、ガッカリなんてしたりしませんわ!」

サニー「だって、はるかさんの優しい心は変わらへんのですから!」


ノーブル「……サニー……!」

ピース「わたしも、はるかさんにお礼言わなくちゃいけないです……」


ピース「わたしが漫画家デビューができなくて落ち込んでた時、一生懸命励ましてくれたのがはるかさんでした」

ピース「あの時励ましてもらってなかったら、私……漫画家の夢を諦めていたかもしれません」


ピース「だからはるかさんも、やりたいことがあるなら……夢があるなら、諦めないでください!」

ピース「はるかさんにはそんな……、力強いセンパイでいてほしいから!」


ノーブル「……ピース……!」

マーチ「あたしもれいかといっしょで、小さい頃からはるかさんのことを見てきました」


マーチ「はるかさんは昔っから、なにかあるとあたしとれいかの前に立ってくれましたよね、守ってくれましたよね」

マーチ「その背中はとても大きくて……。カッコよくて……」

マーチ「あたし、その背中から "おねえちゃん" としてたくさんのことを教わりました」


マーチ「もし人のためでも、自分の気持ちから逃げるような……そんなところは見たくないです!」

マーチ「いつまでもカッコいい、あたし達の "お姉さん" でいてください!」


ノーブル「……マーチ……!」

ペロー(デコル)「はるかさん……、はるかさんが、そんな風に悩んでたなんて、ちっとも気付かなかったペロ……」

ペロー(デコル)「ぼくにはむずかしいことはよくわからないけど……、これだけはわかるペロ」


ペロー(デコル)「ぼくは、はるかさんの笑顔が大好きペロ! みんなといる時みたいに、楽しそうに笑ってるはるかさんが大好きペロ!」

ペロー(デコル)「ムリヤリ作った笑顔じゃなくて、ホントに楽しそうなはるかさんの笑顔が見たいペロ!」


はるか「……ペロー君……!」

ハッピー「わたし、はるかさんがテレビの取材を受けてる時、少し気になってました。"楽しくなさそうだなぁ" って」

ハッピー「はるかさんは "みんなの期待に応えるしかできない" って言ってましたけど、ホントにそう思ってるんですか……?」

ハッピー「……もしかしたら、まだ諦められないんじゃないですか? はるかさん自身の、本当の夢」


ノーブル「……!!」


ハッピー「はるかさん、この間わたしに "どれだけ絵本を書きたい気持ちがあるか" って聞いてくれましたよね」

ハッピー「わたしにも同じことを、はるかさんに聞かせてください」

ハッピー「はるかさんは、本当はどうしたいんですか?」


ノーブル「…………」

ノーブル「……私、ずっと自分に言い聞かせてきた。"これでいいんだ" って」

ノーブル「みんなの期待に応えるために落語家の夢を諦めることになるけど、"これでいいんだ" って、納得しようとしてた」


ノーブル「…………」


ノーブル「……でも……っ!」

ノーブル「よくない! やっぱりよくないよ!!」


ノーブル「本当は、"これでいいんだ" って思うたびにつらかった! 苦しかった!」


ノーブル「私、諦めたくない! 本当は落語をやりたい! だって私、落語が大好きだから! もう、自分に嘘はつきたくない!!」


ノーブル「私だって本当は……、本当は……!」


ノーブル「みんなみたいに、自分の気持ちに胸を張って、未来に向かって進んでいきたいんだ!!」

バァァァァッ!


ノーブル「……!!」


シアンナ「キュアノーブルから……藍色の光が……!? "夢の絵の具" の力が、目覚めてしまったというの……!?」

シアンナ「なぜ……!? "未来に向かう気持ち" がその力の源であるなら……、未来を諦めていたキュアノーブルからその力が出るはずはないのに……!?」

ノーブル「……やっぱり私、諦めきれてなかったみたい」

ノーブル「他の誰が何て言おうと、私の "未来に向かう大切な気持ち" はこれなんだ……」


ノーブル「シアンナ……。あなたはそんなつもりなかっただろうけど、私にとても大切なことを教えてくれた」

ノーブル「自分の気持ちに嘘をつかないで、真っ直ぐ向き合う。それが、本当の "気高さ" なんだって」

ノーブル「だから私は……」


ノーブル「自分の夢に誇りを持って、堂々と生きたいっ!!」

バァァァァァァァァァッ!!


シアンナ「くっ……、光が……どんどん強くなって……!」


ビシィッ! バキバキッ!


シアンナ「……デスペア空間が……砕ける……!?」


バリィィィィィィン!!

~ 七色ヶ丘市民館 前 ~

シアンナ「…………」

シアンナ「……元のところに……戻った……」


シアンナ「……また……また負けるの……? 私は……、またプリキュアに勝てないの……?」

シアンナ「ここで……ここで負けたら……私は……私は……っ!」


デスペア国王(回想)『使命が果たされなければ、お前達はいる意味が無いのだ』


シアンナ「……っ!!」


シアンナ(……イヤだ……)

シアンナ(自分のいる意味はなんだったのか……それがわからないままだなんて……)


シアンナ「そんなのはイヤだ!!」

シアンナ「アキラメーナ! プリキュア達を倒しなさい! なんとしてでも!!」

アキラメーナ(噴水型)「アキラメーナァッ!!」


ドスンッ ドスンッ ドスンッ


ハッピー「アキラメーナがこっちに向かってくるよ!」

ビューティ「みなさん、気をつけ――」


スッ


ノーブル「大丈夫、任せて」

ビューティ「ノーブル……」

ノーブル「……私、今まで、"誰かのために何かをしなきゃ" ってずっと思ってた。だからすぐ "任せて" って言っちゃってた」


ノーブル「でも、今は違う。私は、私の "未来に向かう気持ち" がどれだけ強いのか、確かめたい。だから、ここは私に任せてほしいんだ」

ノーブル「誰のためでもない、自分のために」


ハッピー「……ノーブル……!」

ビューティ「……わかりました、お任せします。ノーブルの本当の "強さ"、見せてください!」

ノーブル「うんっ!」

シアンナ「……一人で戦うつもり……!? でも、あなたの水の力は通用しないことはさっき証明したはず! あなたには何も出来ない!」

ノーブル「…………」スッ


マーチ「ノーブル、濡れた手を構えた……!」


ノーブル「"ノーブル・スプラッシュ"!」シュバッ


ドドドドドンッ!


アキラメーナ(噴水型)「ア、アガァッ!?」グラッ

シアンナ「手に滴る水滴を弾丸のように飛ばした……!? アキラメーナではなく、地面に向かって……!」

ピース「アキラメーナ、バランスが崩れてよろよろしてるよ!」


ノーブル「……今だ!」

ノーブル「"ノーブル・ミスト"!」


ブワァァァァァッ…


シアンナ「……霧……!? キュアノーブルの手から……大量の霧が……!」

サニー「わっ、すごい霧や……、何も見えへん……!」

ドガァッ!


アキラメーナ(噴水型)「ア、アガッ!?」


ドガァッ! ドガッ! ドガァッ!


アキラメーナ(噴水型)「アガッ!? アガァァッ!?」


シアンナ「霧に紛れて攻撃を仕掛けている……!? キュアノーブル……、こんなことができたの……!?」


ノーブル「……私、わかってなかった。私の持つ水の力の "本当の意味"」

ノーブル「水は、どんな形にでも姿を変えられる。決まった形なんてない。……そしてそれは、心も同じ」

ノーブル「"こうでなきゃいけない"、"ああでなきゃいけない" なんて、自分の心を決まった形に押さえつける必要なんてなかったんだ」

ノーブル「もっと自由に……、柔らかく……、心の形を変えていいんだ。水のように」

ノーブル「"変幻自在"。それが、私の水の、心の、本当の力!」


ノーブル「私の心の形は……私が自分で決めるっ!!」


シアンナ「!!」


シアンナ(自分の心を……自分で決める……?)

シアンナ(…………)

シアンナ「……何をごちゃごちゃと! アキラメーナ! いくら霧でも水は水! さっきと同じように吸い取ってしまいなさい!」

アキラメーナ(噴水型)「アキラメーナァッ!」シュウゥゥゥゥゥッ…

ハッピー「霧が晴れてく……。噴水に向かって吸い込まれてるんだ!」


ノーブル「"ノーブル・ウィップ"!」


ビュルルルッ バシィッ


アキラメーナ(噴水型)「アガッ!?」

ノーブル「捕まえた!」

シアンナ「今度は……水のムチ……!? アキラメーナの足が縛られた……!」

ノーブル「言ったでしょ!? "どんな形にでもなる" って! ふっ!」グィッ

アキラメーナ(噴水型)「ア、アガッ!?」


ノーブル「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」

アキラメーナ(噴水型)「ア、アガガガッ!?」


グルン グルン グルン グルン


マーチ「水のムチでアキラメーナを引っ張って、そのまま回し始めた!」


ノーブル「だぁぁぁぁぁぁぁっ!」ブンッ

アキラメーナ(噴水型)「アガァァァッ!?」


シアンナ「アキラメーナを……上空に放り投げた……!?」

ノーブル「決めるよ! ペロー君、もう少しだけ力を貸して!」

ペロー(デコル)「だ、大丈夫ペロ! 任せるペロ!」

ノーブル「……それ、私のマネ?」

ペロー(デコル)「へへへ、ペロ」

ノーブル「ふふふっ、そっか。……頼もしいね」


ノーブル「行くよっ、ペロー君!!」

ペロー(デコル)「はいペロ!!」


バッ


ハッピー「上に投げたアキラメーナを追って、ノーブルも跳んだ!」

ビューティ「…………」グッ


ビューティ「ノーブルーっ! がんばってーっ!!」

マーチ「!? ビュ、ビューティ!?」

サニー「め、珍しなぁ、一人でそんな大声出して……!」


ノーブル「(ニコッ)」

ノーブル「はっ!」ガシッ

アキラメーナ(噴水型)「ア、アガァッ!?」


シアンナ「アキラメーナが空中でつかまれた……!」

シアンナ「あれは確か……、"ブドー" の一つ、"ジュードー" の技……"イッポンゼオイ"……!」


ノーブル「プリキュア! ノーブル・ストリィーム……・フォォォールッ!!」


ドバァァァァァァァッ!!


マーチ「すごい量の水と一緒に、アキラメーナを地面にたたきつけた!」

サニー「まるで滝やで!」


アキラメーナ(噴水型)「アガァァァァァ……」シュワァァァァ…


ハッピー「……や……やったぁぁぁっ! アキラメーナ、やっつけたぁ!」

ピース「ノーブル……すごい……!」

ビューティ「あれが、キュアノーブルの……、はるかお姉さんの、本当の力なんですね……!」

シアンナ「……負けた……」

シアンナ「…… "心の絵の具" 最後の一つを使っても……勝てなかった……」


シアンナ「……私は……使命を果たせなかった……」

シアンナ「私は……何にもなれなかった……」シュバッ


ノーブル「……シアンナ……?」


ノーブル(この前のハッピーとの戦いの時もそうだったけど……、あの人、何かおかしい……。思いつめてる感じがする……)

ノーブル(……何か、事情があるのかな……)

~ イリス学園 陸上競技場 ~

タタタタタタッ


はるか「はぁっ、はぁっ、すみません、太田先生! 遅くなりました!」

陸上部監督・太田「藍沢! 急にどこかへ行ったから心配したぞ!」


TVディレクター「あれ? あれあれ!? 藍沢選手、戻ってきたじゃないの! ラッキー!」

あかね「あ、テレビ屋のおっちゃんや。まだおったんや」

TVレポーター「藍沢選手! さっきのインタビュー、最後の意気込みがもらえなくて困ってたんです! 一言だけでもお願いします!」

はるか「えっ……」


はるか「……はい、わかりました」

TVレポーター「ありがとうございます! では、カメラに向かってお願いします!」

はるか「…………」

はるか「私、陸上競技辞めます。オリンピックにも出ません」

陸上部監督・太田「!!?」
陸上部員達「!!?」
TV関係者「!!?」


陸上部監督・太田「あ、藍沢……? 君、何を……?」

TVディレクター「な……、何それぇ!? どういうこと!!?」

はるか「私、他にやりたいことがあるんです。本当は、陸上競技じゃなくてそれをやりたいんです」

TVディレクター「……って言ったって、キミねぇ……。みんな、キミには期待してるんだよ? その気持ちはどうなるの? さっきはキミだって、"周りの期待に応えたい" って言ってたじゃないの」

はるか「……っ」ズキッ


はるか(……胸が痛い。この人の言う通りだ。私は、みんなのことを裏切ろうとしてる……)


はるか(…………でも……、それでも……!)

はるか「……それでも……」

はるか「それでも私は、自分のやりたいことをやりたいんです!」

はるか「勝手なことを言っているのは承知しています。それが、皆さんの期待を裏切ることだってことも……」

はるか「でも私は、もう自分の気持ちに嘘をつけません! つきたくないんです!」


はるか「だから……、ごめんなさい!!」ペコッ


全員「…………」

陸上部監督・太田「……藍沢。君の好きにしたらいい」

はるか「……! お、太田先生……」

TVディレクター「はい!? 先生も何言っちゃってるの!? この子は日本の期待の星なんですよ!?」

陸上部監督・太田「今の藍沢からは、これまでにない熱意を感じるんです。競技をやっている時より、ずっと強い熱意を」


陸上部監督・太田「ディレクターさん。あなたの言う通り、藍沢は多くの人の期待を背負っている」

陸上部監督・太田「それを跳ね除ける、ということにどれほどの勇気が必要だと思いますか? ……私には想像もつかない」

陸上部監督・太田「藍沢が何をしたいのかはわからないけれど……、きっとそれは、藍沢にとってそれほど大事なことなんでしょう」

陸上部監督・太田「それを止めることは私には出来ません。私は陸上部の監督である前に教師なんです。生徒の未来を決めるのは生徒自身……、藍沢自身なんですから」


陸上部監督・太田「だから藍沢。君は、君のやりたいことを精一杯やるといい。後のことは私が何とかするよ」


はるか「太田先生……っ! ……ありがとうございます!」ペコッ

TVディレクター「……はぁーあ。何だかよくわかんないけど、無駄足だったみたいだな。……しょうがない、ほらみんな、撤収撤収!」


陸上部監督・太田「さぁ、こちらも練習だ! イリス学園女子陸上部は藍沢だけじゃないってところを見せてやろう!」

陸上部員達「はいっ!」


ゾロゾロゾロゾロ…


はるか「…………」ポツン

れいか「……はるかお姉さん。皆さんいなくなって、一人になってしまいましたね……」

はるか「……うん。……でも……少し、いい気持ち」


はるか「……私、周りの人達は、"期待している私" 以外になることを許してくれないと思ってた」

はるか「でも、それは私が勝手に決め付けてただけだったんだ。ちゃんと話せばわかってくれる人もいた。太田先生みたいに」

はるか「ちゃんと話すこと。それが、私にとっての未来に向かう、はじめの一歩だったんだ」

はるか「……だから、誰に期待されなくてもいい。私は、ちゃんと一歩を踏み出せたから」


はるか「誰にも気にされない、たった一人の私」

はるか「ここが私の、本当のスタートラインなんだ」

パァッ…


みゆき「! はるかさん、光ってるよ!」

なお「キャンディ、"レインボーパレット" 出して!」

キャンディ「わかったクルぅ!」パカッ


ポンッ


やよい「出たよ! はるかさんの光の玉!」


ヒューーーーン ポチョンッ


キラキラキラ


ポップ「藍色の "夢の絵の具"……! これでついに 6色の絵の具が揃ったでござる! 残るはあと 1色だけでござるよ!」


はるか「藍色の絵の具。これがわたしの本当の気持ち。本当の夢……」

はるか「もう失くさない。見失わない。私自身の大切な気持ち」


はるか「私は、私の気持ちに胸を張って未来に向かうよ」


はるか「私だけの、たどり着きたい未来に向かって」





つづく

次回予告

みゆき「デスペアランドの人達が決闘を申し込んできたの! "最後の勝負"、そう言ってた」

みゆき「"最後" ってどういうことなんだろう……。あの人達にも、何か事情があるのかな……」

みゆき「……でも、ここで負けたら、わたし達だけじゃない、わたし達の大切な人達の未来もなくなっちゃう! それだけは絶対にさせない!」


みゆき「次回、『スマイルプリキュア レインボー!』 "激突! ゆずれない気持ち!"」


みゆき「みんな笑顔でウルトラハッピー!」

今回はここまでです!
お読みいただいた方、ありがとうございました。

よかったら次回もまたよろしくお願いします!


第1話 ~ 第11話 『スマイルプリキュア!』第2期を SS で作るスレ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1360385907/)
第12話 ~ 第20話 『スマイルプリキュア レインボー!』 Part 2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1366529393/)

第21話 >>4 から
第22話 >>125 から

前回までのレスに対するお返事タイムです!


> 乙くださったみなさま

ありがとうございます!
よければ今後ともよろしくお願いします!



> 122さん

> "「海賊ハリケーン」的な展開" について

なんか自然と展開が被りませんでした。
同じ "夢" がテーマでも、フォーカスを当てているところが違うからだと思います。

この辺、詳しく話してしまうとネタバレになってしまいそうなので、今回はここまでで。。
あと 3ヶ月くらいしたらその辺の話もできるかなぁ、と思います。



> 123さん

> 「さび(み?)しんぼのおおかみ」について

仰るとおり、知りませんでした! スミマセンでした!

"あかねちゃんを応援する話(ショー2作目?)" と、
"オバケと友達になる話(ミュージカル?)" は知ってたんですが。。
そんな話があったんですね。。キレイにそこだけ抜けていたようです。。
教えていただき、ありがとうございます!

……でも、知ってたら 21話書けなかったかもしれないですねー。。"かぶっちゃう" ってことで。
結果オーライだったかもしれません。

話はかぶっちゃったかもしれませんが、大目に見てやっていただければ、と思います。



以上です!
またよろしくお願いしますー。

乙でした
プリキュアが周りからの期待と自分のやりたいことの間で迷う→悪の幹部が「余計な」揺さぶりをかけてプリキュアを倒そうとする→決心の付いたプリキュアにボコられる
シアンナさん完全に43話(れいかが留学する話)のジョーカーと同じ失敗してるじゃないか! ちゃんと先輩の負け方は研究しておこう

はるかはオリキャラだからいくらでも安全そうなのはあるのに(歌手・パティシエ等)、落語家はかなり意外だった。
ただ、子供がそもそも「落語」が何かわかるか怪しいし、なおの迷子の話の時に一回出てきただけで「落語」自体が何なのか説明とかなかったから
なんか「落語」についての説明を入れた方がよかったかもね。子供がこの話を見たとき、キュアノーブルがなりたいものが何なのかちょっとイメージしづらい?
>>1が子供向けに書いてないなら別に大丈夫なんだけど。

『スマイルプリキュア レインボー!』

このあとすぐ!

~ ふしぎ図書館 ~

れいか「みなさん、今日は商店街でも人気のたい焼きを買って参りました。一緒に食べましょう!」

みゆき「うわぁーい! たい焼きたい焼きー! れいかちゃん、ありがとーっ!」

なお「それじゃ、お先にー」ヒョイッ パクッ

あかね「……なお、今二匹いっぺんに食べへんかった?」

なお「そーお? 気のせいじゃない?」モグモグ

やよい「わたしも見たよ! なおちゃんズルい!」


れいか「まあまあ、みなさん、落ち着いて。こんなこともあろうかと人数分より少し多めに買ってあります。まだまだありますよ」

なお「さっすがれいか! 気が利くぅ!」

あかね「なおはちょっとは反省せーや!」


5人「あはははははっ!」

はるか「…………」


みゆき「はるかさん? たい焼き食べないんですか? おいしいですよ?」

れいか「先ほどから何か考え込んでいるようですが……、どうかしましたか?」

はるか「……ん、ああ、ちょっとね」

なお「……? なんだろう……」モグモグ


あかね「(そろーっ…) ……よっしゃ、もろたっ!」ヒョイッ パクッ

なお「あっ!? あたしの食べかけのたい焼き食べちゃった!? あんこいっぱいの頭とっておいたのにぃ……。……あかね!」

あかね「にししっ、さっきのお返しやー!」

なお「こら、待てーっ!」

あかね「待てと言われて待つやつおるかーい!」


ダダダダダダッ


はるか「…………」


はるか「……あかねちゃんとなおちゃん、仲いいね」

れいか「そうですね。よくぶつかることもありますが、それがあの二人なりの友情なんです」

はるか「……ぶつかり合う先にある友情、か。そういうのもあるんだね」

シアンナ(回想)『…… "未来" が無い者は……どうしたらいいというの……!?』


シアンナ(回想)『私は……何にもなれなかった……』


はるか「…………」


はるか(デスペアランドのシアンナ。あの人のことがすごく気になる……。みんなを困らせる悪い人のはずなのに……)

はるか(……でもあの人……、なんか、とてもツラそうだった……)

はるか(……何か、事情があるのかな。もし、そうだとしたら……)


はるか(何とかして、あげられないかな)




スマイルプリキュア レインボー!

第23話「激突! ゆずれない気持ち!」



はるか「……ねぇ、みんな。聞いてほしいことがあるんだけど」

みゆき「聞いてほしいこと……? なんですか?」

れいか「それはもしかして、はるかお姉さんの考え事と、何か関係が……?」

はるか「うん」


はるか「……私、シアンナのことについて考えてたんだ」

やよい「シアンナ? デスペアランドの、ですか?」

はるか「うん」

あかね「なんでまた……。あのおっかないお姉ちゃんのことで、何か気になることでもあるんですか?」

はるか「……実はね、私、聞いたんだ」

はるか「この前、ハッピーが光る力を使って、アキラメーナと合体したシアンナと戦った時、負けてうなだれた時、小さくこうつぶやいたんだ」

はるか「"未来が無い者は……どうしたらいいというの……!?" って」

はるか「その時のシアンナの顔、真っ青で……。なんだか、とってもツラそうだった……」

はるか「それ以来気になってるんだ、シアンナのこと……」


れいか「はるかお姉さんは、あの方のことが心配、なのでしょうか。」

はるか「……そういうことになるのかな。ヘン、だよね。敵同士なのに……」

はるか「……でも……、なんだかほっとけなくて……」


みゆき「…………」

みゆき「……そんなことないと思いますよ。仲が悪くったって、相手のこと、心配になることだってあると思います」

みゆき「だって、わたし達にも、おんなじようなことがあったから……」

はるか「……それってもしかして、ウルルン君達のこと?」

みゆき「はい」


ウルルン「……そういや、はるかにはまだ、おれ達のことちゃんと話してなかったウル」

ウルルン「おれ達、元バッドエンド王国の幹部は、元々メルヘンランドの妖精だったウル」

オニニン「でも、物語の悪役だったおれ様達は、いっつも周りから怖がられて、キラわれて……」

マジョリン「そのツラさを利用されて、バッドエンド王国にされてしまったんだマジョ」


ウルルン「でも、プリキュアにジャマされて失敗を繰り返すうち、おれ達はどんどん後がなくなっていったウル」

オニニン「おれ様達の監視役だった "ジョーカー" には "昔のツラかった頃に戻りたいのか" ってさんざん脅かされて……」

マジョリン「"どうしてあたし達がこんな目に" "どうしてこんなツラい思いをしないといけないのか" ……そんな風に思うたびに、あたし達の中の憎しみが抑えられなくなっていったマジョ」

ウルルン「そこを助けてくれたのがプリキュア――みゆき達だったウル」

オニニン「"悪役のあなた達がガンバってくれるから、お話が楽しいんだ"、"だからあなた達が大好きなんだ" って言ってくれて……」

マジョリン「その言葉にどんどんあたし達の憎しみが薄れていって……」

ウルルン「それで、ようやく元に……今のこの姿に戻れたんだウル」


はるか「……そうだったんだ」

あかね「……そう考えると、もしかしたらデスペアランドの連中にも、なんか事情があるのかもしれへんな」

やよい「そうだね……。何か理由があって、ムリヤリ悪いことをさせられてたりするのかも」

れいか「もしそうだとしたら……」

なお「うん。きっかけさえあれば……」


みゆき「……あの人達とも仲良くできるかも」

はるか「……! ……仲良く…?」


はるか「…………」

はるか「……みんな、私、あの人達と話がしてみたい。戦うばっかりじゃなくて、ちゃんと気持ちを確かめてみたい」

はるか「それでもし、あの人達が何かツラい思いをしてるなら、何とかしてあげたいんだ」

はるか「あの人達が悪い人だっていうのはわかってる。ムチャなこと言ってるっていうのもわかってる」

はるか「……でも、それだって、ちゃんと話してみないとわからないと思うんだ」


はるか「だから私、やってみたい。もし戦わなくて済むなら……、笑い合えるかもしれないなら……、その可能性をあきらめたくない」

はるか「私の勝手なお願いなんだけど……、みんな、力を貸してくれないかな」


5人「…………」

あかね「……そんなムチャでもないと思いますよ。それ」

はるか「えっ?」

あかね「やって、ほらっ、こうしてうまくいった例がここにおるわけですし!」ヒョイッ

ウルルン「おい、あかね! だっこするんじゃねえウル! 子ども扱いされてるみたいで恥ずかしいウル!」

あかね「あははっ、まぁまぁ、ええやないの!」


やよい「そうですよ、やってみましょう! できるなら、絶対その方がいいですもん! ねっ、オニニン!」

オニニン「そうオニ! 今のおれ様達みたいになれるかもしれないオニ!」


なお「まあ、誰かさんみたいにヘソ曲がりは変わらなかったりするかもしれないですけど」

マジョリン「なお、誰かさんって誰マジョ!」


れいか「はるかお姉さんの願いは私達の願いでもあります。私達も、みんなの平和のために、力を尽くします」

ポップ「拙者も喜んで力を貸すでござるよ!」


みゆき「やってみましょう、はるかさん! きっとあの人達とも分かり合って、笑顔で話せるようになりますよ!」

キャンディ「そうクル! みんなをスマイルにしてこその "スマイルプリキュア" クルぅ!」


はるか「みんな……! ……ありがとう……!」


みゆき「それじゃ、早速あの人達を探しに行こうっ! みんな笑顔でウルトラハッピーになるために!」

~ 七色ヶ丘市 空き地 ~

みゆき「――とは言ったものの……」

やよい「アテ、全然ないよね……。どうしよっか……」

れいか「弱ってしまいましたね……」

あかね「あっちもいつやったかゆーとったけども、いてほしくない時は呼ばんでも来るのに、いてほしい時はおらへんもんやなぁ……」


はるか「あ、そうだ。ねぇ、マジョリンちゃん。前、ペロー君を探してくれた時のあの水晶玉……、名前なんだっけ? あれ、使えないかな?」

マジョリン「"サガシモノサガ~ス" マジョ?」

なお「ああ、あれは――」

~ 回想 緑川家 ~

こうた(なお弟・三男)(回想)『あ、ボール。あははっ、あそぼっ、それーっ!』


パリーン


こうた(回想)『……カベにぶつけてももどってこない……。つまんなーい』

なお(回想)『ちょっと何、今の音!? ……あ、水晶玉割れてる! こうた、大丈夫!? ケガしてない!?』

こうた(回想)『うん。だいじょーぶ』

なお「――と、いうわけで壊れちゃって、もうないんですよねー……」

マジョリン「あたしの大発明……。思い出したらまた落ち込んできたマジョ……」

はるか「そっか……、じゃあしょうがないね」


みゆき「……あ! そういえばキャンディ、いつもあの人達が来る時教えてくれるよね? 逆にこっちから居場所を探せないかな?」

あかね「おお、それや! みゆき、グッドアイデアやで!」

やよい「できる? キャンディ」

キャンディ「やってみるクル!」


キャンディ「……んんんんん……!」

キャンディ「……むむむむむむ……!」

キャンディ「……んぃぃぃぃぃぃぃ……!」


6人「(ゴクリ)」

キャンディ「! あっちクル! あっちの方からいつもとおんなじ感じがするクル!」

なお「えっ!? わかったの!? ホントに!?」

れいか「すごいわ、キャンディ!」

ポップ「うぅむ……、これはおどろきでござる……。キャンディの成長、目を見張るばかりでござるな」

みゆき「キャンディ、お手柄! 早速行ってみよう!」

~ ギャラリー・D シアンナ自室前 ~

ビリーズ「んぁーっ、よく寝たぜ。やっぱベッドはいいなぁ……、って」


セルリア「…………」


ビリーズ「……お前、ずっとそうしてたのかよ。シアンナの部屋の前で、膝抱えて」

セルリア「…………」

ビリーズ「……で、シアンナもこの間帰ってきたきり部屋にこもって出てこねぇ、と。あれから全く出てきてねーの?」

セルリア「…………」コクン

ビリーズ「……何やってんだか」


ビリーズ「ま、好きにすりゃいーんじゃねーの? 部屋にこもろうが、膝抱えようがよ。オレ、ちょっとアトリエにでも行ってくら」

セルリア「……どこへでも……行け……」

ビリーズ「へいへい、そーするわ。んじゃな」


スタスタスタ

~ ギャラリー・D アトリエ ~

ガラーン…


ビリーズ「…………」

ビリーズ(……ここも、最近使ってねーんだな。描きかけの絵ばっかだ)

ビリーズ(まぁ、元々絵描きなんて正体隠すためにやってたもんだしな。もう "期限" も近いし、んなことやってる場合じゃねーよな、そりゃ)


ビリーズ(……けど……)


セルリア(回想)『……もっと速く……描け……! ……まだ 3枚しか……描けてない……! ……目標の……10枚まで……、……あと 7枚も……ある……!』

シアンナ(回想)『まったく、描くのが遅いわね、あなたは。セルリアならもう終わっているわ』

ビリーズ(回想)『うるせー! 文句言うならお前らがやりゃいーだろーが!』


ビリーズ「…………」

ビリーズ「……チッ。せっかく帰ってきたっつーのによぉ……」


ビリーズ「……なんか、つまんねーな……」

~ ギャラリー・D シアンナ自室前 ~

セルリア「…………」

セルリア(……シアンナ……)


シアンナ(回想)『セルリア。ギャラリーの仕事ができなくても、あなたは本来の仕事ができる。だから、それでいいのよ』


シアンナ(回想)『あなたの絵、結構売れてるのよ。暇があったら描いておいてくれるかしら』


シアンナ(回想)『あなたなら、この "心の絵の具" も有効に使いこなせるわ。頼むわね』


セルリア「…………」


セルリア(……シアンナが……私を……ほめてくれると……楽しい……)


セルリア(……でも……)

~ 数日前 ギャラリー・D ~

ガチャッ


シアンナ(回想)『…………』ゲッソリ

セルリア(回想)『……おかえり……シアンナ……。……!? ……どうしたの……その顔……!? ……真っ青……!』

シアンナ(回想)『…………』


フラフラ


セルリア(回想)『……あ……シアン――』


バタンッ

セルリア「…………」

セルリア(……あれから……シアンナは……部屋から……出てこない……)


シアンナ(回想)『…………』ゲッソリ


セルリア「……っ……!」


セルリア(……シアンナが……苦しいと……私も……苦しい……! ……どうして……!?)

セルリア(……どうにか……したい……。……この……苦しいのを……どうにか……!)


セルリア(…………私は……どうしたら……いいの……?)

~ ギャラリー・D シアンナ自室 ~

シアンナ「…………」


シアンナ(……私は……使命を果たせなかった……)

シアンナ(今の持てる全力を尽くしても……、大臣からもらった秘策 "新しい闇の絵の具" を全て使っても……)


デスペア国王(回想)『使命が果たされなければ、お前達はいる意味が無いのだ』


シアンナ「…………」


シアンナ(……使命の果たせない私には……いる意味はなかったの……?)

シアンナ(……私は……何のために……いたの……?)

シアンナ(…………いいえ、まだよ。まだ、終わっていない。プリキュアに勝てば、全て問題はない……!)

シアンナ(そうすれば……、私は、"デスペアランドの戦士・シアンナ" になれる……!)

シアンナ(使命を……果たせさえすれば……!)


シアンナ(……もうためらってなどいられない)

シアンナ(国王陛下から禁じられていた、正真正銘の "最後の手段"。あれを使ってでも……)


シアンナ(必ずプリキュアを倒す!!)

ギャラリー・D『アガ』

シアンナ「……どうしたの、"D"? "侵入者あり" ……?」

ギャラリー・D『アガ』

シアンナ「"数は6人。いずれも少女" って……、……まさか……プリキュア……!?」


シアンナ(……向こうから来てくれるとは……手間が省けたわ……!)

~ ギャラリー・D シアンナ自室前 ~

ガチャッ


セルリア「! ……シアンナ……! ……もう……大丈夫……なの……?」

シアンナ「セルリア? あなたこそそんなところで何をしているの? ……まぁ、いいわ。ギャラリー・D に侵入者よ。プリキュアのようね」

セルリア「……!? ……プリキュア……!? ……どうして……ここが……!?」

シアンナ「わからないわ。けれど、ここが知られたからにはそのままにはしておけない。私がこれから迎え撃つ」


スタスタスタ…


セルリア「……待って……シアンナ……! ……私も……行く……!」

~ ギャラリー・D ショールーム ~

みゆき「お、おじゃましまーす……。誰かいませんかー?」


シーーーン…


あかね「誰もおらへんな……」

れいか「外には "closed" ……、"閉店" とありましたものね」

はるか「キャンディちゃん、ホントにここで合ってるの? 見たところ、ただの絵を売るお店みたいだけど……」

キャンディ「間違いないクル! 3人ともここにいるのがわかるクル!」

やよい「うーん……。でも、それにしては静か――」


ノソノソ


ビリーズ「あぁ? お客さん? 今、店閉まってんだよね。悪ぃけど帰ってくんね?」


6人「あ」

ビリーズ「ん?」

ビリーズ「……げっ、プリキュア!? な、なんでここに!? アジトがバレたのか!?」

みゆき「ほんとにいたっ!」

あかね「しかも "アジト" やって!」

れいか「どうやら、本当にここが彼らの本拠地のようですね……!」

ビリーズ「あ、やべ、口が滑った。知らなかったのかよ……!? 言わなきゃよかった……!」


スタスタスタ


シアンナ「問題ないわ。どの道、彼女達がそれを知ってここから出ることはないのだから」

はるか「……シアンナ……!」

シアンナ「ようこそプリキュア、"ギャラリー・D" へ。歓迎するわ」

シアンナ「どうやってここを知ったのか、どうしてここに来たのか、いずれもわからないけれど、どうでもいいわ」

シアンナ「近いうちに私の方から仕掛けるつもりだったから。……最後の勝負をね」


はるか「……!?」


はるか(…… "最後" ? 最後、ってどういうこと? ウルルン君達が言ってたみたいに、あの人達ももう後がないの……!?)

はるか(やっぱり何かあるんだ……!)


シアンナ「あなた達もそのつもりで来たんでしょう? 受けてもらうわ」

シアンナ「どちらかが倒れるまで戦う……、決闘を!」


パチンッ!


グニャァァァァ…


なお「なに!? シアンナが指を鳴らしたら……」

れいか「周りの景色がゆがみ始めました!」

みゆき「うわっ、なんだか気持ち悪い……!」

~ ギャラリー・D内 荒野の異空間 ~

6人「…………」


あかね「な、なんやこれ……。今の今まで店の中におったのに……」

やよい「岩だらけ……。他には何にもなくなっちゃった……」

はるか「もしかして、またあの "デスペア空間" ってところに入れられたの……!?」


シアンナ「ここはデスペア空間ではないわ。何もない、ただの荒野」


シアンナ「あなた達が店だと思っていたのは、私が作ったアキラメーナ "ギャラリー・D"」

シアンナ「彼は体内の空間を自在に操ることができる。そうして作られた空間よ。デスペア空間と違って影響を及ぼすことはないわ。ここなら、思う存分戦える」


シアンナ「さぁ、プリキュアになりなさい。そして、始めましょう。私達の、最後の戦いを」

ビリーズ「…………あー、えっと……、なんか知らないうちに "最後の戦い" 始まったんだけど……。オレも含まれてんの、これ?」

セルリア「……イヤなら……帰れ……」

ビリーズ「帰ろうにも帰れねーだろ、これじゃあよ……!」


ビリーズ「……ったく、しゃーねえな。付き合ってやんよ」

セルリア「……頼んで……ない……」

ビリーズ「ああ、もう、うるせえな! やるっつってんだからいーだろーが!」

はるか「……ちょっと待って! 今日は私達、戦いにきたわけじゃないの!」

シアンナ「…………何を言っているの? じゃあ、何をしに来たと?」

はるか「…………」


はるか「……あなた達と、話をしに」

シアンナ「……!? 話……?」

はるか「うん」

はるか「私、前にあなたが言ってた言葉がずっと気になってたんだ。"未来が無い者はどうすればいい" っていう、あなたの言葉」

シアンナ「……!! 聞こえて……いたの……」

ビリーズ「……んなこと言ったのか、お前?」

シアンナ「…………」


れいか「その時、とてもツラそうだったと聞きました……。なぜなのでしょうか?」

シアンナ「……それを知ってどうするの?」

なお「あたし達、思ったんだ。もしかしたら、あなた達には自分じゃどうにもならない事情があるんじゃないか、って」

やよい「もしそうなら、わたし達……、あなた達のために何かしてあげられないかな」

シアンナ「!!?」


シアンナ「……あなた達が……私達のために……!?」

シアンナ「正気なの……!? 私達は敵同士なのよ……!?」

あかね「……うちらかて、スキであんたらと戦っとるわけやないんや。あんたらが人を苦しめるようなことするから、しゃーなくやっとるだけなんや」

みゆき「でも、もしあなた達が仕方なくそれをやってるんだとしたら……、それをやってることでツラいことがあるなら……、わたし達は何とかしてあげたいの」

みゆき「そうすれば、もうお互いに傷つけあわなくってすむ。そうなれれば……、ウルトラハッピーだと思うんだ」


はるか「……私達はあなた達のことを何も知らない。だから、話してくれないかな、あなた達のこと」

はるか「あなた達のことがわかれば、私達が何か手伝えることが、力になれることがあるかもしれない」

はるか「お互いにツラい思いをするだけなんて……、傷つけあうなんて……、できるなら、そんなこと、もう終わりにしたいんだ」


はるか「どうかな、シアンナ……?」


シアンナ「……プリキュア……」

シアンナ「…………」ゴソゴソ


はるか「……? シアンナ、懐に手を入れて……何か出した?」

みゆき「あれって……筆?」


シアンナ「…………ふっ!!」シュバッ


ズバァァァンッ!!


6人「!?」


やよい「シアンナが筆を振ったら……」

なお「先から飛び出した絵の具が……」

あかね「目の前の地面を切り裂いてもーた……!」

れいか「まるで……鋭い刃……!」


シアンナ「……今のは警告よ」

シアンナ「何を言うかと思えば……。"私達の力になりたい"? 笑わせないで」

シアンナ「私はあなた達を倒し、"夢の絵の具" を手に入れるのが使命。それが私がここにいる理由。それ以外に今やるべきことはないわ」

シアンナ「それに、例え私達のことを知ったところで、あなた達にはどうにもできない。できるわけがない。私達には戦う他ないのよ」


シアンナ「さぁ、早くプリキュアになりなさい。私は、全力のあなた達を倒して勝ちたいの」

シアンナ「それでもまだくだらない事を言い続けるようなら、その時は……」


シアンナ「遠慮なく、斬る」


はるか「……シアンナ……っ!」

れいか「……はるかお姉さん……、今のままでは、私達の言葉は届かないようです……!」

なお「仕方ないけど、ここは……」

はるか「…………わかってる。私達にだって、みんなの笑顔を守るっていう使命がある。ただやられるわけには……いかない……!」


やよい「……結局、こうなっちゃうの……!?」

あかね「せやけど……、やらな……!」

みゆき「うん……!」


みゆき「みんな、変身しよう!」

5人「うんっ!」

妖精達「デコル・チェーンジ!」

パチンッ!

レディ!

6人「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー! ゴーゴー! レッツゴー!!


ハッピー「キラキラ輝く、未来の光! キュアハッピー!!」

サニー「太陽サンサン、熱血パワー! キュアサニー!!」

ピース「ぴかぴかぴかりん♪ じゃん・けん・ポン!(パー) キュアピース!!」

マーチ「勇気リンリン、直球勝負! キュアマーチ!!」

ビューティ「しんしんと降り積もる、清き心。キュアビューティ!!」

ノーブル「さらさら流れる気高きせせらぎ! キュアノーブル!!」


6人「6つの光が導く未来!」

6人「輝け! スマイルプリキュア!!」


シアンナ「……それでいいのよ」

シアンナ「……行くわよ。プリキュア……覚悟っ!!」シュバッ

ハッピー「! また筆の攻撃!?」

ノーブル「ハッピー、危ないっ!」ガバッ


ズバンッ!


ハッピー「うわ……! 岩が真っ二つ……!?」

ノーブル「大丈夫、ハッピー?」

ハッピー「は、はい、ありがとうございます!」


シアンナ「……外した。キュアノーブル……、キュアハッピーをかばったわね」

シアンナ「まあいいわ。二人まとめて相手をしてあげる」

ザワザワザワザワ…!


ビューティ「……! あれは……セルリアの髪が動いて……!」

セルリア「……キュアビューティ……。……お前は……何度も……何度も……私の……ジャマをした……!」

セルリア「……お前は……私が……倒す……!!」

ポップ(デコル)「すさまじい執念を感じるでござる……! そういえば、彼女とは初めて会った時以来の因縁の相手でござったな……!」

ビューティ「……本意ではありませんが、やむを得ません。キュアビューティ、お相手します」


セルリア「…………」ニヤッ


ピース「……!? ビューティ、後ろ!」

ビューティ「後ろ……? はっ!?」


ビシュッ!

バッ!


ビューティ「背後から髪の毛が……いつの間に……!? 何とかかわせましたが……、危うく捕まるところでした……!」

セルリア「……惜しい……。……もう……少しだったのに……」

ポップ(デコル)「ビューティ殿、見るでござる! いつの間にか、髪の毛が地中を伝って、ビューティ殿の後ろに出ていたでござる!」

ビューティ「注意を前に引き付けてのだまし討ち……!? 卑怯な……!」

セルリア「……なんとでも……言え……! ……私は……勝たなければ……ならないんだ……!」


ビューティ「ありがとうございました、ピース。声をかけてくれていなければどうなっていたか……」

ピース「ビューティにはいっつも助けてもらってるもん、お返しだよ」


ピース「ビューティ、わたしも手伝うよ。二人なら、きっとだいじょうぶ!」

ビューティ「ええ、そうですね。よろしくお願いします!」

ビリーズ「……なんか、うまい具合に 1 対 2 っぽくなったな」

ビリーズ「そうすっと、オレの相手はお前らか、余り者ーズ」


サニー「余り者ってゆーなや!」
マーチ「余り者っていうな!」


ビリーズ「ったく、こうなっちまったからにはオレも本気出さなきゃいけねーみてーだな……!」

ビリーズ「言っとくが、本気出したオレはスゴいぜ!? ビビって腰抜かすんじゃねーぞ!」


サニー「……今までぼけーっとしとったあんたにすごまれてもなぁ」

マーチ「なーんか緊張感に欠けるよね」


ビリーズ「……なんだとこの……! クッソ……、のんびりしやがって……! オレの恐ろしさ、今すぐ見せてやるぜ!」

ビリーズ「もっとも……、目で追えねーかもしれねーけどなぁ!」ビシュッ


サニー「……ん? いつの間にか消え――」

マーチ「サニー、危ないっ!」

サニー「へっ?」


ガシィッ!


ビリーズ「ほー! キュアマーチ! 本気のオレに追いついてケリ受け止めるたぁ、やるじゃねーか!」

サニー「な、なんや!? いつの間に後ろに!」

マーチ「速い……っ! 追いつくのが精一杯だった……!」

サニー「……っこの! サニー・パンチっ!」バッ

ビリーズ「へっ!」ビシュッ

サニー「……!? また消え―ー」


ズザァァァァッ


ビリーズ「遅ぇ遅ぇ。パンチ届くまでに一眠りできそうだな、こりゃ。ふわぁーあ」

サニー「い、いつの間にあんなとこまで離れて……!」


マーチ「……サニー、あいつ強いよ……! バカにしてたら……やられちゃう!」

サニー「そう……みたいやな。ここは力を合わせんで!」

マーチ「うんっ!」

~ ハッピー・ノーブル vs シアンナ ~

ハッピー「たぁぁぁぁぁっ!」ブンッ ブンッ

シアンナ「…………」スッ スッ

ハッピー「! パ、パンチが……当たらないっ……!?」


シアンナ「ふっ!」ブンッ


ドカァッ


ハッピー「うっ……、すごいキック……! 受け止めたのに、手がしびれ――」

シアンナ「体制が崩れたわね。そのチャンス、もらうわ」スッ

キャンディ(デコル)「ハッピー危ないクル! 筆を構えてるクル!」

ハッピー「えっ!?」


バッ


ノーブル「させないっ!」ガシッ

シアンナ「キュアノーブル……! いつの間にここまで近づいて……」

ノーブル「腕を取った! このまま投げ――」


スルッ


ノーブル「!? また抜けられた……!?」

シアンナ「言ったでしょう、キュアノーブル。あなたの技は私には通じない」

シアンナ「はっ!」


ドガァッ!


ノーブル「うっ!?」

キャンディ(デコル)「! パンチでノーブルが吹き飛ばされたクル!」

ハッピー「ノーブルっ!」バッ


ガシッ


ハッピー「大丈夫ですか!?」

ノーブル「あ、う、うん……。受け止めてくれてありがとう、ハッピー。すごいパンチだったけど、ちゃんと防御したから――」

シアンナ「二人、まとまったわね」ニヤリ


シアンナ「仲良く……斬れなさいっ!!」シュバッ

ハッピー・ノーブル「!!?」


ズバンッ!!

ハッピー・ノーブル「…………」

シアンナ「……間一髪のところでしゃがんでよけた……。さすがにしぶといわね」


ハッピー「……あ、危なかったぁ……。髪の毛の先、ちょっと切れちゃった……!」

ノーブル「あはは、やったね、ハッピー……。今月、美容室行かなくて済むよ……」


シアンナ「……減らず口を……」

シアンナ「……ところでキュアハッピー。あなた、この間の光る力は出さないの?」

ハッピー「えっ?」

シアンナ「キュアノーブル、あなたもよ。変幻自在の水の力はどうしたの?」

ノーブル「…………」

シアンナ「……まさかとは思うけれど、あなた達……」


シアンナ「手加減、してるのかしら」

ノーブル「……!」ギクリ

ハッピー「ノ、ノーブル……、そうなんですか? わたしは、あの光る力がうまく出ないだけで、ずっと精一杯でしたけど……」

ノーブル「…………」

シアンナ「……さっきの "傷つけたくない" って話、本気みたいね。あなたは、私を気遣って戦っている……」


シアンナ「(ギリッ) ……バカにしてるの……!? 私は本気であなたたちを倒そうとしているのよ……!? よくも手が抜けたものね……!」

ノーブル「……でも……私は……」

ハッピー「……ノーブル……」


シアンナ「…………」

シアンナ「……まぁ、それならいいわ。そのまま大人しくしていればいい。……ただし」


バッ


ハッピー「!? こっちに向かってくる!」

シアンナ「はぁっ!」


ドガァッ!


ハッピー「うあぁぁぁっ!?」

ノーブル「ハッピー!」

ペロー(デコル)「ハッピーがパンチで吹き飛ばされちゃったペロ!」


シアンナ「キュアノーブル。あなたは私をバカにした報いに、大切なものを失うことになる」サッ

キャンディ(デコル)「ハッピー! 筆の攻撃が来るクル! 逃げるクル!」

ハッピー「うぅ……っ!」

キャンディ(デコル)「ハッピー……、動けないクル……!? ハッピー!」


シアンナ「さようなら、キュアハッピー。恨むなら、本気で戦おうとしなかったキュアノーブルを恨みなさい」

ハッピー「……っ!?」

ビュルルルッ! ビシィッ!


シアンナ「……! これは……、水のムチ……。腕を止められた……?」

ノーブル「…………」ギシギシッ

ハッピー「ノー……ブル……!」


ノーブル「……私の気持ちは……まだ変わってない。あなたがツラいなら助けてあげたいし、傷つけたくない……」

ノーブル「でも……! そのためにハッピーを失うわけにはいかないっ! 私の……大切な友達を!!」


ノーブル「……それに、あなたと真剣にぶつからないと、私の気持ちもきっと届かない……!」

ノーブル「……だから……、イヤだけど……、すごくイヤだけど……!」


ノーブル「シアンナ。あなたと本気で戦う」


シアンナ「…………やっとその気になったようね」

ノーブル「ハッピー、立てる!?」

ハッピー「はい……っ!」グググッ

ノーブル「私……、シアンナと話がしたい……。でも、そのためには私達の力を見せないとダメみたい……」

ノーブル「お願い……、力を貸して!」

ハッピー「……もちろんです!」


シアンナ(……二人とも、目つきが変わった……。ここからが本番、というわけね)

シアンナ「なら……、私も本気で応じるのみ!」

ノーブル「……シアンナ……、悪いけど、一気に決める!」

ノーブル「"ノーブル・ミスト"!」


ブワァァァァァッ…


シアンナ「これは……あの時の霧の技……! 周りが……見えなくなる……!」


モウモウモウ


シアンナ(……完全に視界を奪われた……!)


シアンナ(……どこから……?)チラッ


シアンナ(……どこから攻撃してくる……!?)チラッ

ユラッ…


シアンナ(……! 霧の中に影が見えた! 筆を当てるチャンス!)

シアンナ「そこねっ!!」シュバッ


ズバァァァンッ!!


シアンナ「斬った……! 手応えあり……!」


バシャァァンッ…


シアンナ「!? 違う……、これはプリキュアじゃない……。……水……!?」


スッ


ノーブル「"ノーブル・ミラージュ"。水で作った私の分身。オトリだよ」

シアンナ(……!!? キュアノーブル……、いつの間に懐にもぐり込んだの……!?)


シュッ ガッ


シアンナ(まずい、組まれた……! これは……"イッポンゼオイ" の型……。手をほどかないと、投げられる……)


ガシッ


シアンナ(……ダメ……、逃げるのが……間に合わない……っ!)


ノーブル「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」ブンッ


ドガァァァァァンッ!!


シアンナ「……ぁっ……!!?」

ノーブル「……技だけじゃなく、受身の練習もしとくんだったね、シアンナ」

ノーブル「ハッピー! 今だよっ!」

ハッピー「はいっ!」バッ


シアンナ(……霧の中から……キュアハッピーが飛び出した……!?)


ハッピー「プリキュア! ハッピー……っ!」


シアンナ(全身を強打して……身動きが取れない……。……かわせない……っ!)


ハッピー「シャワァァァーーーッ!!」


バァァァァァァァッ!


シアンナ「うっ、うあぁぁぁぁぁっ!!?」


ドォォォォォォォォンッ!

~ サニー・マーチ vs ビリーズ ~

サニー「はぁっ……、はぁっ……! 速すぎて……、全然攻撃が当たらへん……!」

マーチ「はぁっ……、はぁっ……! あたしも……、追いつくだけで……、精一杯……!」

ビリーズ「はぁっ……、はぁっ……! ……ほら、だから……言ったろーが……! "本気出したらすげえ" ってよ……!」


サニー「って、有利なあんたがなんでヘバっとんねん」

ビリーズ「速く動くと疲れるんだよ! だから長引かせてねーで、さっさとやられろ! 疲れんのイヤなんだよ!」

マーチ「大声で言うこと……?」

ビリーズ「……それにしても、キュアマーチはともかく、キュアサニー! お前、全っ然役に立ってねーなぁ!?」

サニー「!?」

ビリーズ「ま、パワーはすげえかも知んねえよ? けど、当たんなきゃ意味ねーよなぁ?」


ビリーズ「ハッキリ言って、お荷物だな、お前」

サニー「……っ……!」

サニー「……アイツの言う通りや……。さっきから、一個も当たってへんもん……。うち、足引っ張っとんな……」

マーチ「サニー……!? 何言って……」

ビリーズ「わかってんじゃねーか! キュアマーチ、キュアサニーなんてほっといて、お前一人で戦った方がまだマシなんじゃねーの!?」

サニー「……せやな……。マーチ、うちじゃ役に立てへん……。マーチだけでもきばってや……」ガクッ

マーチ「……サニー……」


ビリーズ(おっ? キュアサニー、やけに大人しいじゃねーか。ラッキー、"挑発してやる気なくさせる作戦" 成功か? これで一人減ってラクできるぜ!)


ビリーズ「わかってんなら、役立たずはあっちいったいった。さ、キュアマーチ。これでオレと一対一の勝負を――」


マーチ「…………黙れっ!! サニーは……サニーは役立たずなんかじゃないっ!!」

ビリーズ「あん?」

マーチ「あんたは知らないんだ……! サニーがどれだけ周りに元気をくれてるか……!」

マーチ「結果なんて出なくったって、いっつも元気で……あたし達を明るくしてくれる……! あたし達を、楽しい気持ちにさせてくれる……! だから……役立たずなんかじゃない……!」

マーチ「そんな……そんなあたしの……大切な友達を……、よくも……バカにしたな……っ!!」


マーチ「絶対に、許さないっ!!」


サニー「……マーチ……!」


マーチ「サニーもサニーだよ! あんだけ言われて悔しくないの!? いつもはもっとあきらめが悪いでしょ!?」

サニー「……!!」

マーチ「立ってよ! 立って、サニーのホントのすごさ、見せてやろう!」


サニー「…………」

サニー「……せやな。うちとしたことが、弱気になってもーたわ。こない簡単にあきらめるなんて……うちらしく……なかったな……!」グググッ

サニー「うちは……太陽サンサンのキュアサニーや……! どんな時だって……真っ赤っかに燃えたるわ!!」バッ

マーチ「サニー……!」

ビリーズ「げ……、立ちやがった……。結局二人相手にすんのか……」


サニー「マーチ、おおきにな。立ち直れたの、マーチのおかげやで」

マーチ「……あたしは、ちょっと背中押しただけだよ。サニーなら一人でも立ち上がれた」

マーチ「あたし達二人で、あいつをギャフンと言わせてやろう!」

サニー「うんっ!」

ビリーズ「……立ち上がったのはいいけどよ、キュアサニーが役に立たねえのは変わらねーぜ? どーすんだよ」

サニー「…………」


サニー(小声)「マーチ、うちに考えがある。うちが合図したらジャンプしてや」

マーチ(小声)「えっ? ……うん、わかった」

サニー「すぅー……。はぁーっ……」

ビリーズ「……? 何やってんだ、あいつ。深呼吸?」

サニー「……!」グッ


サニー「マーチ、今や!」

マーチ「うんっ!」バッ

ビリーズ「あん!? キュアマーチが……高くジャンプした……!?」

サニー「あんたが "役に立たない" 言うたうちのパワー! ほんまにそうかどうか、よく見ときや!」


サニー「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


ドガンッ!!


ビリーズ「? キュアサニーが、地面を殴って……」


ビシッ! ビシビシビシッ!

ズガァァァァァァン!!


ビリーズ「!? じ、じ、地面が割れたぁっ!? マ、マジかよ!!?」

サニー「どんなもんや!」

ガラガラガラッ!


ビリーズ「あ、足元が崩れて……身動きが取れねぇっ……!?」


バッ


マーチ「これでもう、速く走れないね!」

ビリーズ「げっ、キュアマーチ! く、空中から、まっすぐこっちに降ってきやがる!?」

マーチ「マーチ・急降下……キィーーーック!!」


ドガァァァァッ!


ビリーズ「ぐあっ……!?」

マーチ「今だよ、サニー!」

サニー「よっしゃぁっ!」ダッ


ビリーズ(……! キュアサニー……崩れた地面の上を、器用に渡って……こっちに向かってきやがる……!)

ビリーズ(よけてーが……、ダメージのせいで動けねぇっ……!)


サニー「(グッ) ……あんたがバカにしたうちのパワー……受けてみぃっ!!」


サニー「サニー・スペシャル・パァァーーンチッ!!」


ドゴォォォォッ!!


ビリーズ「がっ……、あぁぁぁぁぁっ!?」

~ ピース・ビューティ vs セルリア ~

ギュルルルッ


ビューティ「こっ、これはっ……!?」

ピース「わっ!? かっ、髪の毛が……体に絡み付いて……!?」

セルリア「……手間を……取らせて……。……ようやく……捕まえた……。……そのまま……締め上げる……!」


ギュシィィィィッ!


ピース「あっ……かはっ……!」

ビューティ「うっ……くっ……、すごい……力……!」


ギュゥゥゥゥッ!

セルリア「……苦しいか……? ……でも……シアンナは……もっと……苦しかった……!」


セルリア「……何が…… "助けたい" ……だ……! ……それを言われた……私達が……シアンナが……どれほど……苦しいか……!」

セルリア「……お前達と……私達は……違うんだ……! ……私達の……ことなんて……お前達には……絶対に……わからない……!」

セルリア「……何もしなくても……明日が来る……お前達には……っ!!」


ビューティ「……!? な、何を……!?」


ギュゥゥゥゥッ!


ピース「うぁっ……!」

ビューティ「うぅっ……!」


セルリア「……罰だ……。……これは……シアンナを……軽い気持ちで……苦しめた……罰だ……!」

セルリア「……苦しめ……、……苦しめ……、……苦しめ……!!」


ビューティ(……いけない……、このままでは……締め上げられて気を失ってしまいそう……!)

ピース「……ビュー……ティ……」

ビューティ「……! ピー……ス……?」


ピース「わた……し……、……なんとか……しようと……思ったん……だけど……、……これしか……思い……つかなかった……」

ピース「ビューティも……ツライかも……しれないけど……、……いい……かな……?」

ビューティ「ピース……? 何……を……? ……はっ……」


ビューティ「……わかり……ました……。私……なら、だいじょうぶ……ですっ……! 思い切り……やって……ください……!」

ピース「ビューティ……! ありが……とう……!」


セルリア「……? ……何を……ごちゃごちゃ……言ってるの……?」

ピース「……んっ……、んんんんっ……!」


ゴロゴロゴロ…


セルリア「……!? ……これは……ギャラリー・D の……中なのに……雲が……!?」


ピース「……プリキュア……! ピース………サン……ダァァァーッ……!!」


カッ ピシャァァァンッ!


セルリア「……!? ……キュアピースに落ちた……雷が……髪を……伝って……!?」


バリバリバリバリッ!


セルリア「うっ……あぁぁぁぁっ……!!?」バリバリッ

ピース「くっ、ぅぅぅぅっ!」バリバリッ

ビューティ「うっ……くぅっ……!」バリバリッ


ユルッ


ピース「……やった……! 髪の毛が……ゆるんだ……!」

ビューティ「……今です……! ……はぁっ!」


ズバッ! ズバッ!


セルリア「……!? ……キュアビューティ……氷の剣で……髪を……斬った……!?」


ビューティ「ありがとう、ございます、ピース……。おかげで、脱出できました……!」

ピース「えへへ……どういたしまして……!」ピース

ビューティ「……セルリア。あなた方がどんな苦しみを持っているのか、私にはわかりません。……ですが、これだけは言えます」

ピース「苦しさってね……、大切な人と、分け合うことができるんだよ……!」


セルリア「……!? ……わけ……あう……?」


ビューティ「先ほどの髪による締め上げ、とても苦しいものでしたが……ピースと一緒だから、耐えられました」

ピース「わたしも……。ビューティがそばにいてくれたから、雷を出せるくらいガンバれた」


ビューティ「嬉しいことは 2倍に」

ピース「苦しいことは半分にしてくれる」


ビューティ「それが、友達です!」


セルリア「……とも……だち……」


ピース「わたし達とあなた達も……そう、なれないかな……?」

ビューティ「そうすれば……あなた達の苦しみも、私達が減らしてあげられるかもしれません」


セルリア「…………!(ギリッ) ……まだ……言うか……!!」

ザワザワザワザワッ


セルリア「……いらない……! ……私達は……お前達なんて……いらない……っ!!」

セルリア「……消えろ……! 消えろぉぉぉぉっ!!」


ドバァァァァァッ!!


ポップ(デコル)「髪が集まって……まるで巨大なムチのようでござる!」

オニニン(デコル)「叩きつけるつもりオニ!」


ビューティ「……やむを得ません」

ビューティ「はぁぁっ!」


バキバキバキッ

ドガァァァァッ!


セルリア「……!? 氷の柱を……作って……、……髪の束を……受け止めた……!?」

ビューティ「今です、ピース!」

ピース「うんっ! やぁぁぁっ!」バリバリバリッ!

セルリア「……! ……また……髪を……雷が……伝って……!」


バリバリバリバリッ!


セルリア「……うっ……あぁぁぁぁっ……!?」


ダッ


セルリア「……! ……二人とも……こちらへ……向かってくる……!?」


ビューティ「……このようなことはしたくありませんが……!」

ピース「ごめんね……!」


ピース・ビューティ「プリキュア! サンダー・ブリザァァードッ!!」


ドバァァァァァァッ!


セルリア「…………っ!!?」

ドドドォォォォンッ!!


シアンナ「うっ……く……!」

ビリーズ「……うっ、クッソ、マジ痛ぇ……! ……って、なんだよ……。お前らも、やられちまったのか……?」

セルリア「……う……うるさい……!」


ビリーズ「……いやぁ、しかしよ、強がってはみたものの、やっぱキツイよなぁ……。そもそも数で負けてんじゃねーか……。勝て、っつー方がムリな話だぜ」

ビリーズ「ここじゃあ逃げようにも逃げらんねーし……。……どうするよ……?」


シアンナ「…………」

ザッ


ノーブル「……もう、やめにしようよ」

シアンナ「……! キュアノーブル……、あなたまだ……!」

ノーブル「私達は全力で戦った。そして、立ってるのは私達。勝負はついたでしょ」

ノーブル「さっきも言ったけど……イヤなんだ。相手があなた達でも、苦しんだり、ツラそうにしてるところを見るのは……」


ビリーズ「……けっ、本気でぶん殴っといて、よく言うぜ」

サニー「そうでもせんと、あんたら話聞いてくれんかったやろ」


ハッピー「……せめて、あなた達のこと、教えてもらえないかな」

ハッピー「わたし達、あなた達のことがわかりたい。どうして、ツラそうなのか。苦しそうなのか」

シアンナ「…………」

シアンナ「……先に、こちらから聞かせて」

シアンナ「どうして、あなた達は私達のことをそれほど気にかけるの? 私達の存在は、あなた達にとって不都合なはず。いない方がいいんじゃないかしら?」


ノーブル「……あなた達が、ツラそうだから」

シアンナ「それはさっき聞いたわ。なぜ辛そうだと気になるの? それが聞きたいの」

ノーブル「……それは……」


ノーブル「あなた達に、ツラいと感じる "心" があるから」


シアンナ「……!? "心" ……?」

ノーブル「だって、そうでしょ? "心" がなかったら、悩んだり、苦しんだりなんてしない。ツラい思いなんてしない」

ノーブル「どうして苦しいのかはわからないけど……、そう感じるのは、"心" があるからだよ」

ノーブル「あなた達に、私達と同じ "心" があるなら、私達と何も変わらない」


ノーブル「……仲良くだって、できるんじゃないか、って、思ったんだ」

サニー「あんたらかて、嬉しい時は笑うやろ? 苦しい時は悩むやろ? 特にビリーズ。あんた、何度か大笑いしとるところ、見とるで」

ビリーズ「…………」


ピース「笑ったり、苦しんだり、怒ったり……。わたし達とおんなじだよね」

マーチ「そう思ったら……、あたし達、戦いたくなんてなくなったんだ」

ビューティ「どうか、私達の世界の人々を苦しめるのは、やめていただけないでしょうか」

ノーブル「それができれば、お互いにツラい想いをしなくても済むんじゃないかな……」


ハッピー「もし、そのためにどうにもならないことがあるなら、わたし達が力になるよ」

ハッピー「それで、できたら……」


ハッピー「あなた達と一緒に、笑い合いたいな」ニコッ


シアンナ・ビリーズ・セルリア「……!!」


シアンナ「笑い……合う……?」

ビリーズ「オレ達が……?」

セルリア「……お前達……と……?」


ハッピー「うん」

シアンナ「……ムリね。そんなこと、できるわけがない」

ノーブル「どうして……!? あなた達は……一体何を抱えてるの? それを教えてよ」

ノーブル「どんなに困難なことだって……、私達とあなた達、力を合わせれば、いつかきっと何とかなるよ!」

シアンナ「……いつか……きっと……?」

ノーブル「うん。いつか、きっと」


シアンナ「…………」

シアンナ「…………ふっ……」


シアンナ「……ふふふっ、ふふふふっ……!」


シアンナ「あははははははっ!!」


5人「!?」

ノーブル「……シアンナ……?」

シアンナ「……ビリーズ……、……セルリア……。……"あれ" をやるわ。"最後の手段" よ」


ビリーズ「!!」
セルリア「!!」


ビリーズ「……ま、ここまで来たら、それしかねーか」

セルリア「……シアンナ……。……もしかして……ずっと悩んでたのは……その事で……?」

シアンナ「……ええ」


シアンナ「"最後の手段" を使えば……、私は、私でなくなる……」

シアンナ「それでも……それでも私は……! "役立たず" のままで終わりたくない!!」


セルリア「……シアンナ……!」


ビューティ「……何の話をしているんでしょうか……? "最後の手段" とは、一体……?」

ノーブル「わからない……。わからないけど……、何か、イヤな予感がする……!」

シアンナ「……ビリーズ、セルリア。後のことは任せるわ」

ビリーズ「……お前、自分一人だけでやるつもりかよ?」

シアンナ「当然でしょう。相変わらず馬鹿ね。私達には、"夢の絵の具" の入手の他に、"濁った心の絵の具" の採取という目的もあるのよ? 全員 "最後の手段" を使ったら、誰がその使命を果たすの?」

シアンナ「残った時間は短いかもしれないけれど……、あなた達は残りなさい。……ここは、私一人でやる」

セルリア「……シアンナ……そんな……!」

ビリーズ「…………」

ビリーズ「いーや、オレもやるね。お前が何て言ってもな」

シアンナ「ビリーズ……!? 人の話を聞いてなかったの……!?」

ビリーズ「それでも、お前と一緒にやりたいって思っちまったんだよ。だからそーする」

シアンナ「どうして……!?」

ビリーズ「……オレもわかんね。ただ、やりたいからやる。それだけだ。理由なんてうまく説明できねーよ」


ビリーズ「だってオレ、バカだからよ」

シアンナ「……ビリーズ……」

セルリア「…………私も……やる……!」

シアンナ「セルリア……!? あなたまで……! あなたならわかってくれると思ったのに……」

セルリア「……イヤだ……! シアンナ一人……行かせたりしない……!」


セルリア「……私は……いつでも……シアンナと一緒にいる……!」

シアンナ「セルリア、こんな時に駄々こねて……。……相変わらずわからない子ね」

シアンナ「……二人とも、本気なのね?」

ビリーズ「ヤボったいヤツだな、お前は。何度も聞くなよ」

セルリア「…………」コクン


シアンナ「……そう。…………好きにしなさい」


シアンナ「……国王陛下!! 私達に、"最後の手段" の使用許可を!!」

~ デスペアランド 王宮 玉座の間 ~

デスペア国王「良かろう。思う存分戦え」


デスペア国王「キャンバスよ、行け。我がしもべ、"闇の描き手" 達の下へ」


シュバババッ

~ ギャラリー・D内 荒野の異空間 ~

ガンッ!

ガンッ!

ガンッ!


ハッピー「キャンバスが 3枚……、あの人達の前にそれぞれ 1枚ずつ落ちてきた……!?」

サニー「な、何や? 今からキャンバスって……、ごっついアキラメーナでも出す気なんかな……?」


ピース「……あれ? でも、あのキャンバス、もう何か描いてあるよ……?」

マーチ「ホントだ。あれって……人の顔?」

ビューティ「……あれは……、あの人達の……絵……!?」


ビューティ「セルリアのキャンバスにはセルリアが……」

サニー「ビリーズのキャンバスにはビリーズが……」

ノーブル「シアンナのキャンバスにはシアンナが描いてある……。……これって……まさか……!」


シアンナ「……その通りよ」

シアンナ「私達は、デスペア国王陛下の手によって産み出された "闇の描き手" と呼ばれる存在。私達は……」


シアンナ「そう、アキラメーナなのよ」


6人「!!?」

ノーブル「シアンナ達が……アキラメーナ……!?」


シアンナ「ただし、ただのアキラメーナではないわ」

シアンナ「人間から心を吸い取る能力を無くした代わりに、アキラメーナを産み出す能力と、力と、意思を授けられた」

シアンナ「それが私達」

シアンナ「……キュアノーブル。私達が何を抱えているのか、知りたがっていたわね。……いいわ、教えてあげる」

シアンナ「私達が出すアキラメーナはあなた達にすぐに浄化されてしまうから知らなかったでしょうけど……」


シアンナ「アキラメーナには "存在期限" があるのよ。作者の力量にもよるけれど、もって半年ほどの、ね」

シアンナ「それを過ぎると、自然に消滅する。アキラメーナとは、それまでの間、主のために働く。ただそれだけの存在なのよ」

ノーブル「…………ちょっと待って。アキラメーナには存在できる "期限" がある……って?」

ノーブル「あなた達は……アキラメーナなんだよね? ……ということは……つまり……。……え……?」


シアンナ「…………」


シアンナ「私達は "期限" を迎えて……じきに消える。どこからも、消えてなくなるのよ」

シアンナ「……これでわかったでしょう? 私達が抱えているものがなんなのか」

シアンナ「……私達には、"未来" なんて最初からなかったのよ」


6人「…………」

シアンナ「……わかってもらえたかしら? そんな私達を "助けたい" なんていうあなた達が、いかに愚かだったか」

シアンナ「できもしないことを能天気に言われて……、私がどれほど腹を立てたか……!!」


シアンナ「……キュアノーブル。あなた、さっき言ったわね。"いつかきっと何とかなる" と」

シアンナ「"いつかきっと"? "いつか"?」


シアンナ「……その "いつか" は……私達には無いのよ……!!」

シアンナ「……私達はもうすぐ "期限" を迎えて消える。それはいいわ。私達アキラメーナには、消滅することの恐怖なんて存在していない」

シアンナ「でも……、自分が何も果たせず……、何者だったかもわからず……消えていく……。それだけは……耐えられない!!」


シアンナ「……だからこうして、"最後の手段" を使わせてもらうわ」

シアンナ「私達の残り少ない "未来" と引き換えにしてでも……あなた達を倒すために!!」

シアンナ「私が…… "使命を果たした私" となるために!!」


シアンナ「……行くわよ、二人とも」

ビリーズ・セルリア「(コクン)」

ビリーズ「闇の絵の具よ!!」


セルリア「……闇の絵筆よ……!!」


シアンナ「絶望をさらに黒く塗りつぶし、真なる闇を描き出せ!!」


シュババババッ


ノーブル「自分たちの描かれたキャンバスに……さらに絵を描いていく……!?」


ピース「セルリアのキャンバスは……黒いオオカミ……!?」

マーチ「ビリーズのキャンバスは……黒い馬……!」

ハッピー「シアンナのキャンバスは……腕のある黒い蛇……!」

ドックン


シアンナ「……うっ……!」


メキメキメキ


ビリーズ「うっ、ぐうぅぅぅぅぅ……!?」

セルリア「おっ、おぉぉぉぉぉぉぉっ……!!」


ハッピー「3人の姿が……ドンドン変わって……大きくなっていく……!?」

セルリア・獣態(狼)「グルルルァァァァッ!!」


ビリーズ・獣態(馬)「ブルルルルゥゥッ!!」


シアンナ・獣態(蛇)「シャアァァァァァァッ!!」


ノーブル「絵の通りに……姿が……変わった……!」


シアンナ・獣態(蛇)「……待たせたな。これが私達の "最後の手段"。その名も、"オーバードロウ"」

ビューティ「オーバー……ドロウ……?」

シアンナ・獣態(蛇)「私達、"闇の描き手" は、一度だけ、キャンバスに "上描き" することで、望む通りの力と姿を得ることができる。それが "オーバードロウ"」

シアンナ・獣態(蛇)「ただし、一度上描きしてしまえば……、……もう二度と元の姿には戻れない……!」

シアンナ・獣態(蛇)「しかし、構わない。お前達を倒せさえすれば、それで……!!」


ハッピー「……もう……戻れない……? そんな……そんなことって……!」

ノーブル「シアンナ……あなた達は……そうすることしかできなかったの……!?」


ノーブル「私達は……こうなるしかなかったの……!?」

シアンナ・獣態(蛇)「さあ、行くぞプリキュア」


シアンナ・獣態(蛇)「ここからが、本当の "最後の戦い" の始まりだ……!!」





つづく

次回予告

みゆき「デスペアランドの人達には "未来" がなかった……。苦しんでた理由は、それだったんだ……」

みゆき「未来……。わたし達は、たどり着きたい未来があるから、前に向かって進んでいける。……なのに、それがないなんて悲しすぎるよ……!」

みゆき「何とか……何とかしてあげたい……! だってわたし達は、笑顔を守る伝説の戦士、"スマイルプリキュア" なんだから!!」


みゆき「次回、『スマイルプリキュア レインボー!』 "掴み取れ! それぞれの未来!"」


みゆき「みんな笑顔でウルトラハッピー!」

今回はここまでです!
お読みいただいた方、ありがとうございました。

よかったら次回もまたよろしくお願いします!


第1話 ~ 第11話 『スマイルプリキュア!』第2期を SS で作るスレ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1360385907/)
第12話 ~ 第20話 『スマイルプリキュア レインボー!』 Part 2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1366529393/)

第21話 >>4 から
第22話 >>125 から
第23話 >>247 から

22話までにいただいたレスにお返事させていただきます!


> ボーズさん

いつもありがとうございます!
22話を書くに当たって落語の DVD を何本か見ましたが、面白いものですね。
時間があったら寄席にも行ってみたいなぁ。。



> 243さん

> アンパンマン乙

ですよねー。。

これ、意識して書いたわけじゃなかったんです。なんか自然にこんな流れになって。
後で見返したら、"あ、アンパンマンだコレ。。" って気付きました。
深いですよねー、あの歌。子供向けとは思えない。。



> 244さん

> そしてはるかさんはいつか人工衛星に放置される蟹になりませんように……

……蟹? 蟹ってなんですかね。。
宇宙と蟹っていうと、星座の黄金戦士しか出てこない。。
あんな風にヘボい扱いにならないように、ってことでしょうか。。……違うか。

> 245さん

> "落語家" について

あえて普通の人があまりならなさそうなところをチョイスしました。

"一般の基準" では誰もがうらやむような能力があるのに、ホントは全然違うことをやりたい。
"やりたいこと" と "できること" が違ってて悩む。そんなキャラにしたかったんですね。
ハイスペックなのが逆に自分を縛って仇になってる、というイメージです。

なので、あまりメジャーでなく(と、言ったら失礼ですが)、かつ笑いを取る職業、
ということで "落語" を選びました。


ただ、"落語家という職業がが子どもに理解できるだろうか" というご意見はごもっともですね。
描写不足は否めませんでした。。反省。。

今度この手の話を書くときは気をつけたいと思います!



お返事は以上です! ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします!

それではまた来週ー。

乙でした

ビリーズ「そうすっと、オレの相手はお前らか、余り者ーズ」
サニー「余り者ってゆーなや!」
マーチ「余り者っていうな!」
この二人だと「余り者」がシャレにならない(女児人気的な意味で)ww色的に仕方ないんだろうけど

>>247 なおはとうとう「食欲」>「筋が通ってないよ!」になってしまったか……
>>1はなおの曲がったことが嫌いな部分は重視してないのかな? ズルイって言われちゃってるし

『スマイルプリキュア レインボー!』

このあとすぐ!

~ 前回までのあらすじ ~

みゆき(ナレーション)『わたし達と戦う度にツラそうに苦しんでいたデスペアランドのシアンナ』

みゆき(ナレーション)『そのことを気にしていたはるかさんに誘われ、わたし達プリキュアはデスペアランドの人達と話をするため、隠れ家に向かいました』

みゆき(ナレーション)『ですが、デスペアランドの人達はわたし達の話をちっとも聞いてくれず、戦うことになってしまいます』

みゆき(ナレーション)『みんなガンバって、何とか話ができるようになりましたが、デスペアランドの人達から聞かされたのは、わたし達が考えもしなかった、とてもツラいことでした……』


みゆき(ナレーション)『デスペアランドの人達は "デスペア国王" という人に作られたアキラメーナで、長い間いられないあの人達はもうじき消えてしまうのです……』


みゆき(ナレーション)『そんなデスペアランドの人達は、せめてわたし達を倒そうと、自分の体を大きな怪物に変身させてしまいました』

みゆき(ナレーション)『そして、デスペアランドの人達に "未来" がないことを知ってショックを受けるわたし達に、襲いかかってきたのです……』

~ ギャラリー・D内 荒野の異空間 ~

シアンナ・獣態(蛇)「シャァァァァァッ!!」ブンッ

ノーブル「蛇のしっぽが向かってくる……!」


ドガァァァァァンッ!


6人「うあぁぁぁぁぁっ!?」


ビューティ「大きい上に……速いです……!」

サニー「こ……こんなん受け止められへんで……!」

ガカッ


ビリーズ・獣態(馬)「ブルルル……ッ!!」

ピース「こっ、こっちからも来たよ……!」


ビリーズ・獣態(馬)「ヒヒィーーンッ!!」


ドガッ! ドガガッ! ドガガガッ!


マーチ「な、なんて速い踏みつけ……!」

ハッピー「ふっ、防ぎきれない……っ!」


ドガガガッ! ドガガガッ! ドガガガッ!

ドガガガッ! ドガガガッ! ドガガガッ!


6人「……ぅぁっ……!」

ノーブル「……う……。……み、みんな……、大丈夫……?」

サニー「な、なんとか……」

ビューティ「で、ですが……、攻撃がすさまじすぎます……。このままでは……!」


ザッ


セルリア・獣態(狼)「ガルルルルッ……!」


シュババババババッ!


マーチ「セ、セルリアの体中の毛が……、いっせいに伸びて……」

ピース「ム、ムチみたいに襲ってくる……!」

セルリア・獣態(狼)「ガァァァッ!!」


ビシュシュシュシュッ!

ドドドドドドォォォンッ!


6人「うあぁぁぁぁぁぁっ!」

ハッピー「うっ……く……」

ノーブル「う……うぅっ……」


セルリア・獣態(狼)「私達の体を強く変える最後の手段・"オーバードロウ"」

ビリーズ・獣態(馬)「今のオレ達はさっきまでとは比べ物にならない」

シアンナ・獣態(蛇)「これで私達はもう元に戻れない……」

シアンナ・獣態(蛇)「この姿ではアキラメーナを産み出すこともできない。もう、私達に残されているのはプリキュア、お前達を倒すことのみ」


シアンナ・獣態(蛇)「さあ立て、プリキュア。決着をつけよう」




スマイルプリキュア レインボー!

第24話「掴み取れ! それぞれの未来!」


ビリーズ・獣態(馬)「ブルルルゥゥッ!!」ズガァァァッ!

ハッピー「う、後ろ足で、岩を蹴り飛ばして……!」

マーチ「い、岩が飛んでくる……!」


ドガァァァァァァァンッ!


サニー「……うぁっ……!」

ビューティ「……くっ……うぅ……」

マジョリン(デコル)「マーチ! まだやれるマジョ!? 立つマジョ!」

マーチ「……そうしたいのは……やまやまだけど……」


オニニン(デコル)「ピース! ピースっ! しっかりするオニ!」

ピース「……う、うん……。……体は……何とか動く……けど……」


ペロー(デコル)「ノーブル! ガンバるペローっ!」

ノーブル「わかってる……、わかってるよ、ペロー君……」

ノーブル「……でも……!」


シアンナ(回想)『……私達には、"未来" なんて最初からなかったのよ』


ハッピー「……あんなこと聞いちゃったら……もう……戦えないよ……」

キャンディ(デコル)「ハッピー……!」

サニー「……うちらには……夢がある……。たどり着きたい、未来がある……」

マーチ「だから……、前に向かって……真っ直ぐに進んでいける……」


ビューティ「……ですが、その "道" が……見つからないのではなく……、最初からなかったら……?」

ピース「それって……、どんなにツラいことなんだろう……」


ノーブル「私達は……、自分で考えて……目指す未来に向かって行こうって決めた……。そのためなら、どんな時でもあきらめない、って……」

ハッピー「今……、ここでガンバらなきゃ……わたし達の未来は終わっちゃう……。せっかく見つけた……わたし達の行きたい未来……、あきらめたくない……!」

ハッピー「……でも……」


ハッピー「そのために……、あの人達を傷つけても……いいのかな……」

ハッピー「未来がなくて苦しんでるあの人達を……もっと苦しめても……いいのかな……」


ハッピー「わたし……、わたし……、どうしたらいいのか……わからないよ……!」

シアンナ・獣態(蛇)「……ならば、もう何もするな……!」ブンッ

ノーブル「……! またしっぽが……!」


ドガァァァァンッ!


シアンナ・獣態(蛇)「お前達はなんだ……! 未来がない私を哀れんでいるのか……!? バカにするな……!」ブンッ


ズガァァァァンッ!


シアンナ・獣態(蛇)「未来に向かう気持ち……? 希望……? それが何だというんだ……!」ブンッ


ドガァァァァンッ!


シアンナ・獣態(蛇)「そんなものを力にして戦うお前達より、私の方が強い……! 現に、お前達は私の前に何もできないだろう……!?」ブンッ


ズガァァァァンッ!


シアンナ・獣態(蛇)「……だから、そんなくだらないもの……私はいらない……! お前達に助けてもらいたくなどない……!」ブンッ


ドガァァァァンッ!


シアンナ・獣態(蛇)「未来など……未来など……っ!」


シアンナ・獣態(蛇)「私には必要ない!!」ブンッ


ドッガァァァァァァンッ!!


6人「うあぁぁぁぁぁぁっ……!!」


シアンナ・獣態(蛇)「はぁっ……、はぁっ……、はぁっ……!」

シアンナ・獣態(蛇)「……私は……デスペアランドの戦士・シアンナだ……! それ以外の……何者でもないんだ……!」


シアンナ・獣態(蛇)「……それで……いいんだ……!」


ノーブル「…………!」


ノーブル(シアンナ……、なんて苦しそうな顔してるの……!?)

ノーブル(あなた……、あなた、やっぱり……!)

シアンナ・獣態(蛇)「……これで最後だ。全ての力を込めた拳でお前達を倒す」グッ

シアンナ・獣態(蛇)「そして私は "夢の絵の具" を手に入れ、主であるデスペア国王陛下のお役に立ち……、……消える」

シアンナ・獣態(蛇)「それで終わりだ。何もかも」


グゥゥゥッ…!


ビューティ「シアンナから……とても強い気迫を感じます……!」

サニー「あかん……、今、あんなパンチもろたら……!」


シアンナ・獣態(蛇)「さらばだ、プリキュア」ブンッ

5人「…………っ!」


ズガァァァァァァァンッ!!

5人「…………」

ピース「…………あ、あれ……? 何とも……ない……? どうして――」


ノーブル「くっ……うぅぅぅぅぅっ……!!」ググググッ


5人「ノーブル……!!?」

シアンナ・獣態(蛇)「受け止めたのか……、今の拳を……!? どこにそんな力が……!」


ノーブル「まだ……、まだ倒れるわけには……いかない……っ!」

ノーブル「シアンナ……、あなたの……本当の気持ちを聞くまでは……っ!」


シアンナ・獣態(蛇)「……何を……言っている……?」

ノーブル「……あなた、さっき言ったよね……、"それでいいんだ" って……」

ノーブル「"デスペアランドの戦士・シアンナ。それでいいんだ" って……!」

ノーブル「それって、あなたの本当の気持ちなの……!?」


ノーブル「それって……、自分に言い聞かせてるだけなんじゃないの……!? 本当の気持ちは……そうじゃないのに!」


シアンナ・獣態(蛇)「……!!? ……な、何を……わかったようなことを……!」


ノーブル「……わかるよ。だって、私もそうだったから……」

ノーブル「私もずっと、自分のやりたいことがやれないでいた……」

ノーブル「私には目指したい未来があるのに、それを選べば、私に期待しているみんなを裏切ってしまう……。そう思って、何もできないでいた……」

ノーブル「その度にずっと、自分に言い聞かせてきたんだ……。"これでいいんだ" って……」

ノーブル「そうやって、自分を納得させようとしてた……。自分の本当の気持ちに、ウソをついてきた……」


ノーブル「……似てるんだ、その時の私と、今のあなたが」


ノーブル「だから、"未来なんていらない"、"自分はデスペアランドの戦士以外の何者でもない"、そう言って、自分を納得させようとしているように……私には聞こえるんだ……」

ノーブル「もし……もし、そうなんだとしたら……!」

ノーブル「本当はあなたも……、あなた達も……、"未来" が欲しいんじゃないの……!?」


シアンナ・ビリーズ・セルリア「!!」


シアンナ・獣態(蛇)「……私達が……未来を……?」


シアンナ・獣態(蛇)「…………」

スミマセン、、

途中ですが、ちょっと仕事でのっぴきならない事態になってるっぽいので、
ここで一時中断します。。

無事解決し次第再開したいと思います。

スミマセン、、丸半日遅れました!
『スマイルプリキュア レインボー!』再開します!

シアンナ・獣態(蛇)「……何度も言わせるな……!」


シアンナ・獣態(蛇)「私達はもうすぐ消えてなくなる! 未来なんてないんだ! 例え、私達が未来を望んだとしても、手に入れることなんてできない!!」

シアンナ・獣態(蛇)「さっきも言っただろう……! 希望など持っても、むなしいだけ……。そんなもの……、何の役にも立たないんだ!!」

ハッピー「…………なら、いっしょに探そうよ……。あなた達が未来を手に入れる方法……」ググッ…

ノーブル「ハッピー……!」


サニー「……まだ、ちょっとでも時間はあるんやろ……? せやったら、"希望が意味ない" なんて、そんなことないんとちゃうか……?」ググッ…

ピース「そうだよ……。だってわたし達は、今まで希望を捨てなかったから……、ツラくったって何とかできてきた……! 今だって、何か……、何かできることがあるかもしれないよ……!」ググッ…

マーチ「もし、あんた達が、本当に未来が欲しいんなら……、あたし達もできる限り手伝うよ……!」ググッ…

ビューティ「だから、頑張ってみませんか……? 最後の、最後まで……!」ググッ…

ノーブル「……みんな……」

シアンナ・獣態(蛇)「……全員……立ち上がった……? つい先ほどまで……戦う意思を失っていたのに……!」


ハッピー「……わたし達は今、戦わなきゃいけないってわかったから。だから立てるの」

ハッピー「でも、戦うのはあなた達とじゃない……。わたし達は、あなた達を苦しめてる、そのツラい気持ちと戦わなきゃいけないんだ……!」

ハッピー「だって……、だって、わたし達は……!」


ハッピー「"みんな" の笑顔を守る伝説の戦士・プリキュアなんだから!!」

ハッピー「あなた達がツラい思いをしてるなら……、あなた達もことも助けたいの!!」


シアンナ・獣態(蛇)「…………」

ビリーズ・獣態(馬)「…………」

セルリア・獣態(狼)「…………」

シアンナ・獣態(蛇)「……黙れ……!」

シアンナ・獣態(蛇)「……黙れ……、……黙れ……、黙れぇぇっ!!」


シアンナ・獣態(蛇)「"未来を手に入れる"!? ありもしない希望など見せるな!」

シアンナ・獣態(蛇)「私達はアキラメーナなんだ! 消えるしかない存在なんだ!」

シアンナ・獣態(蛇)「それが "未来を手に入れる" など……、そんなこと、できるはずがないんだ!!」


ノーブル「そう言ってるうちはなんにもできないよ!」

ノーブル「"できるはずない" って思ってたら……、そう思って何もしなかったら……! できることもできないよ!!」

シアンナ・獣態(蛇)「……!!?」

ハッピー「……あなた達の苦しさは、私達にはわからない。"もうすぐ消えちゃう" なんて、どんなに苦しいか、わかりっこない」

ハッピー「でも……、どんなに怖くても……、勇気を出して、はじめの一歩を踏み出さなきゃ……、何も始まらない!」

ハッピー「だから、やってみようよ。もしあなた達が望むんだったら、やってみようよ!」


ハッピー「あきらめないで、やってみようよ!!」


シアンナ・ビリーズ・セルリア「…………」


キャンディ(デコル)「ハッピー……みんな……」

キャンディ(デコル)「…………」

キャンディ(デコル)(……みんなだって、不安なはずクル……)

キャンディ(デコル)(何ができるかわからないのに……、うまくいくかわからないのに……、せいいっぱい勇気を出してあの人達を元気づけようとしてるクル……)


キャンディ(デコル)(……キャンディも、何かしなきゃ……)

キャンディ(デコル)(プリキュアのみんながあんなにガンバってるから……キャンディもガンバらなきゃダメクル……!)


キャンディ(デコル)(キャンディは、ロイヤルクイーンなんだから!!)

パァァァッ!


ハッピー「えっ!? わ、わたしのスマイルパクトが光って……!?」


ポンッ


キャンディ「…………」


サニー「ま、またキャンディだけ外に出よった!」

ピース「これって……、わたし達が力を合わせて、シアンナと合体したアキラメーナをやっつけた時と同じ……?」

キャンディ「デスペアランドのみんな、聞いてほしいことがあるクル」


キャンディ「キャンディは、メルヘンランドの女王・ロイヤルクイーンクル」


シアンナ・ビリーズ・セルリア「!!」


セルリア・獣態(狼)「……メルヘンランド……。……確か、プリキュア達の力が産まれた国……。……その世界の……女王……?」

ビリーズ・獣態(馬)「あのちっこいのが……?」

シアンナ・獣態(蛇)「……そうか。私の前で何度か見せた、"夢の絵の具" を操る力……。あれは、その女王としての力だったのか……」


キャンディ「ロイヤルクイーンには、"心の絵の具" を元にして、命を作る力があるクル」

キャンディ「その力を使えば……、デスペアランドのみんなに、新しい命を作ってあげられるかもしれないクル」


全員「!!?」


ハッピー「……そんなこと、できるの?」

キャンディ「できるはずクル。キャンディは、ロイヤルクイーンなんだクル」

キャンディ「……みんな、みんなツラい気持ちクル。デスペアランドのみんなも……、ガンバって応援しようとしてるプリキュアのみんなも……」

キャンディ「こんな時に、キャンディがガンバらないでどうするクル……!? ツラくてもガンバってるみんなを助けないでどうするクル……!?」

キャンディ「キャンディは、おとぎ話の国、メルヘンランドの女王・ロイヤルクイーンクル! みんなをハッピーにするのがお仕事クル!」


キャンディ「だからキャンディはやるクル! みんなをハッピーにするために、ガンバるクルぅっ!!」

ハッピー「キャンディ……!」


ポップ(デコル)「…………」


ポップ(デコル)(キャンディ……、いつの間にかそこまで、自分だけで考えられるようになったのでござるな)

ポップ(デコル)(まだ小さいのにロイヤルクイーンなどという大役を背負わされ、懸命に頑張りつつも不安を抱えていたお主が、そこまで……)


ポップ(デコル)(……大きくなったでござるな、キャンディ)

キャンディ「……でも、そのためには、ここにいるみんなの力がいるクル」

ピース「みんなの、力?」


キャンディ「キャンディのロイヤルクイーンの力」

キャンディ「"夢の絵の具" の力」

キャンディ「プリキュアのみんなの強い願いの気持ち」

キャンディ「まずこれがないとダメクル」

キャンディ「その力を全部集めるには――」


ノーブル「……!(ハッ) "プリキュア・レインボー・アーチ"……!」

マーチ「この間あたし達が、自分達の "夢の絵の具" の力を合わせて出した、あの技……?」

キャンディ「そうクル。それをぶつけて、デスペアランドのみんなの悪い気持ち……あきらめる気持ちを吹き飛ばすクル」

ビューティ「今はあの時の 5色に加えて、ノーブルの絵の具も加わって 6色に増えています……! 今なら、さらにすごい力が出せるかもしれません……!」


キャンディ「……それと、あと一つ。ぜったいに必要なものがあるクル」

ハッピー「絶対に、必要なもの……?」

サニー「うちらの力以外になんかあんの?」

キャンディ「……それは……」


キャンディ「デスペアランドのみんな自身の、"未来に向かう強い気持ち" クル」


シアンナ・獣態(蛇)「……私達の……気持ち……?」

キャンディ「そうクル」

キャンディ「みんなの命を産み出すためには、ほかの人がお願いするだけじゃダメクル。みんなが、自分で自分のことをしっかり決めないとダメクル」

キャンディ「だから、みんなも "自分のやりたいこと" をちゃんと考えるクル」

キャンディ「その強い気持ちが、みんなの新しい命を産み出すクル!」


ビリーズ・獣態(馬)「……オレ達の……」

セルリア・獣態(狼)「……やりたいこと……」

シアンナ・獣態(蛇)「…………」

シアンナ・獣態(蛇)「…………本当に、できるのか……? そんなことが……」

セルリア・獣態(狼)「……シアンナ……!?」

ビリーズ・獣態(馬)「……お前、信じるのか?」

シアンナ・獣態(蛇)「…………」


ノーブル「……私には、"絶対にできる" とは言い切れない」

サニー「せやけどいっこだけ、絶対に間違いないことがある」

ピース「……やらなかったら、行きたい "未来" にはたどり着けない、ってこと」

ビューティ「道なき "道" をゆく。さぞ不安だろうと思います……」

マーチ「でも、勇気を出して、前に進んでみようよ!」

ハッピー「わたし達と、いっしょに!」

ノーブル「だから、考えてみて」


ノーブル「あなた達のやりたいことは、何?」


シアンナ・獣態(蛇)「…………」

ビリーズ・獣態(馬)「…………」

セルリア・獣態(狼)「…………」

ビリーズ(…… "オレのやりたいこと"、かぁ。あーんま考えたことなかったなぁ……。"今が楽しけりゃいーや" って、そればっかでよ……)

ビリーズ(でももし、なんか一個だけやりたいことがあるとすんなら……)


ビリーズ(…………)


ビリーズ(……やっぱ、今考えてる、コレなんだろな)

セルリア(…………)

セルリア(…… "私のやりたいこと" ……)

セルリア(…………もう……、決まってる……)


セルリア(……それは――)

シアンナ(…… "私のやりたいこと" ……)


シアンナ(…… "私のやりたいこと" ……?)


シアンナ(私は、今まで使命を果たすことしか考えていなかった……。そうすることしかできないと思っていたから……)

シアンナ(それ以外のことは、考えもしなかった……)

シアンナ(……わからない……)

シアンナ(……私は…… "私" のことがわからない……!)

シアンナ(私は……、私は……!)


シアンナ(私は一体、何がしたいの?)

シアンナ・獣態(蛇)「……うっ……!? ぐっ、ぐぅぅっ……!」


ブワァァァァッ…!


ノーブル「シアンナっ……!?」

ハッピー「シアンナの体から……黒いもやみたいなのが出てる……!?」


キャンディ「あれはきっと……バッドエナジークル!」

ウルルン(デコル)「バッドエナジーっつーと……!」

オニニン(デコル)「おれ様達がバッドエンド王国だった時に集めてた、悪い心のエネルギーオニ!?」

マジョリン(デコル)「そんなもんがどうして……!?」

キャンディ「きっと、不安なんだクル……! 未来が見えなくて、苦しんでるクル……!」

キャンディ「その気持ちがどんどん強くなったから、バッドエナジーになって体の外に出ちゃったクル!」

ブワァァァァァッ…!


ビリーズ・獣態(馬)「……!? な、なんだこりゃ……! シアンナの黒いもやが、オレ達にまとわりついてくる……!?」

セルリア・獣態(狼)「……飲み込まれて……いく……!」


マーチ「ビリーズ!」

ビューティ「セルリア……!」

ピース「ど、どうしてあの二人まで……!?」


ウルルン(デコル)「そうか……、あいつらが使っていた "闇の絵の具" は、おれ達がバッドエンド王国時代に使ってたもんと同じ……」

ポップ(デコル)「ということは……、彼女達は先ほどの "オーバードロウ" によって、バッドエナジーで自分達を塗りつぶしてしまったから……!」

ペロー(デコル)「だから、そのエネルギー同士が引き合ってるペロ……!?」


ビリーズ・セルリア「うっ、うぁぁぁっ……!?」


ハッピー「……不安が……広がっていく……!」

シアンナ・獣態(蛇)「……ぐっ、ぐぉぉぉぉぉっ!!」


シアンナ・獣態(蛇)「……私達はアキラメーナ……! 消えるしかない存在……! そんな私達に……、希望など、ありはしない! 未来など、来はしない!」

シアンナ・獣態(蛇)「何を……何をしようと……、ムダなんだぁぁぁっ!!」


ビリーズ・獣態(馬)「が……がぁぁぁぁぁぁっ!!」

セルリア・獣態(狼)「……うあぁぁぁぁぁぁっ……!!」


ブワァァァァッ!

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!


ビューティ「……な、なんて強いバッドエナジー……!」

マーチ「地面まで揺れて……、まるで、震えてるみたい……!」

ピース「見てるわたし達まで不安になりそう……!」

キャンディ「デスペアランドのみんなの心が……、不安な黒い気持ちに塗りつぶされていくクル……!」


ノーブル「……そんなこと、させない……っ!」

ノーブル「……さっき、シアンナは迷ってた……。新しい命が……、"未来" が手に入るかもしれない、って聞いた時……、どうしたらいいか、迷ってた……!」

ノーブル「っていうことは……、シアンナ達にも "何とかしたい" って気持ちがやっぱりあるんだよ……!」

ノーブル「自分だけでどうにもできなくて苦しんでるなら……、ツラいなら……!」


ノーブル「……助けてあげたい! あの人達を、苦しみから救ってあげたい!」

5人「……………」


サニー「……ほんなら、やることは一つやな」

ハッピー「……うん」

ハッピー「わたし達は、ツラいこともあったりしたけど、みんなそれぞれ、自分の大切な "未来に向かう気持ち" ……、夢を見つけられたよね」


ハッピー「夢があれば、それだけで心に勇気が湧いてくる。ガンバろう、前に進もう、って思えてくる。力がわいてくる。夢って、とってもいいものなんだ、ってわかった」


ハッピー「……だから、あの人達にも、自分達の夢を持ってほしい。あきらめない気持ちに負けない、強い力をくれる夢を」


ハッピー「そうすれば、きっと笑顔になれるから! わたし達とも笑い合えて、ウルトラハッピーになれるから!」


ハッピー「そのために、わたし達にできることがあるなら……、やらなきゃ! 戦わなきゃ!」


ハッピー「わたし達の "未来に向かう気持ち" で、あの人達の不安を……、やっつけるんだ!!」


カッ! バァァァァァァッ!!


キャンディ「プリキュアのみんなが……光りだしたクル!」

ポップ(デコル)「これは…… "夢の絵の具" の力……!」

シアンナ・獣態(蛇)「ガァァァァァァァッ!!」


ノーブル「苦しそうに暴れてる……! 早く、何とかしてあげなきゃ!」

ビューティ「そのためには、私達全員の力を合わせた "プリキュア・レインボー・アーチ" を浴びせなければ……!」

マーチ「でも、ああも暴れられたら当てられないよ……!」

ピース「まず、みんなの動きを止めなきゃ……!」

サニー「……しゃあないけど、力づくでも止めるしかあらへんな」

ハッピー「……また、傷つけあうことになっちゃうけど……!」


ハッピー「やろう、みんな! わたし達の、あの人達の、それぞれの未来のために!!」

5人「うんっ!!」

ビリーズ・獣態(馬)「ブルルルルッ!!」


ドカカッ! ドカカッ! ドカカッ!


ウルルン(デコル)「サニー! ビリーズが突っ込んで来るウル!」

サニー「平気や! 今のうちなら……こんくらい、止めたるわ!!」


ガァンッ! ズザァァァァァッ…!


ビリーズ・獣態(馬)「……止められた……!?」

サニー「へへっ、どんなもんや!」

ビリーズ・獣態(馬)「さっきまで手も足も出なかったくせに……なんでだよ……!?」

サニー「……うちはな、みんなの笑顔を見るのが好きや。みんなの笑顔見とると、心ん中がぽかぽかしてくる。それが楽しゅーてしかたないんや」

サニー「そんな気持ちに、みんなもなってもらいたい。せやから、うちがみんなに笑うための元気をあげたいんや。みんなの心も、ぽかぽかになってもらいたいんや」

サニー「うちはなりたい。いつでもあったかく照らしてくれる……、お日さんみたいに!!」


サニー「うちの周りでみんなが笑うてくれる未来……。考えただけでサイコーや」

サニー「その未来に行こ、思うだけで、どんどん力がわいてくる! あんたの不安やって受け止められる!」

サニー「その力で、あんたのそのくらーい心も明るく照らしたるわ!」


サニー「あんたが笑えへんのやったら、うちが代わりに笑たる。せやから、あんたもガンバって笑てみ」

サニー「そしたらきっと、力がわいてくんで!」ニカッ


ビリーズ・獣態(馬)「……笑えば、力がわいてくる……?」

バッ!


ピース「そうだよ! みんなで笑い合うことって、とってもステキなことなんだよ!」


ビリーズ・獣態(馬)「キュアピース……!? 後ろから飛びかかってきやがった……!」

ビリーズ・獣態(馬)「……チッ、ジャマなんだよ!!」


ブンッ


オニニン(デコル)「ピース! 馬のしっぽが!」

ピース「えっ? きゃっ!?」ドカァッ


ズザァァァァッ


オニニン(デコル)「ピース、うまく着地できたオニ!」

サニー「ピース、だいじょぶか!?」

ピース「うん! これくらい、へっちゃらだよ!」


ビリーズ・獣態(馬)「……全然きいてねぇ……!?」

ピース「……わたし、決めたの。自分のやりたいことがあるなら、絶対あきらめないで、最後までガンバろう、って」

ピース「弱虫で、泣き虫で、ちょっとツラいことがあると、すぐあきらめちゃってたわたしだけど……、みんなのおかげで少しずつ強くなれた」

ピース「あきらめないで、ちょっとずつでもガンバれば、ちゃんとうれしいことがあるんだ、ってわかった! ガンバるから、気持ちよく笑えるんだ、ってわかった!」

ピース「わたしは、そんなガンバることの大切さを、みんなにも知ってもらいたい! もちろん、あなた達にも!」


ピース「今はすごくツラいかもしれないけど、不安かもしれないけど……! 負けないで、ガンバってみようよ!」

ピース「そのために自分でどうにもできないことがあるなら、わたし達も手伝うから!」


ピース「ガンバれば……、あきらめなければ……、きっと楽しく笑えるよ!」ニコッ


ビリーズ・獣態(馬)「……!」

セルリア・獣態(狼)「ガルルルルァァッ!!」


ビシュシュシュシュッ!


ビューティ「はぁぁぁぁぁっ!」


ズバババババッ!


セルリア・獣態(狼)「……!? ……私の毛が……氷の剣で全て……切り払われた……!?」

ビューティ「……乱暴で、直線的で、あなたの怒りをそのまま叩きつけるかのような攻撃……。この攻撃からは、あなたの苦しみが伝わってくるようです」

ビューティ「……私も、かつては苦しみの中にいました」

ビューティ「自分が本当は何をしたいのかわからず……、悩み……、迷い……、苦しんでいました」


ビューティ「……ですが、そんな私を苦しみから救い出してくれる方々がいました」


ビューティ「私のことを想い頑張ってくれる……、そして、つらい時には共に泣いてくれる友達がいました」

ビューティ「立ち止まり、前に進めなくなった私の手を取り、優しく導いてくれる方々がいました」

ビューティ「その方々のおかげで、ようやく見つけたのです。私だけの "道" を」

ビューティ「私は、自分のように、迷い、苦しむ人の助けになりたい。それは、あなた方でも同じです」

ビューティ「もし苦しんでいるのであれば……私達に、その手を取らせてはもらえませんか? 共に歩めば……、きっと苦しみも少なくなるはずです」

ビューティ「手を取り合って、一緒に "道" を歩んで……」


ビューティ「一緒に、笑い合いませんか?」ニコッ


セルリア・獣態(狼)「…………また……その話か……!」

セルリア・獣態(狼)「いらない、と言っただろう!」


ブワァァァァァッ!


ポップ(デコル)「これは……、セルリアの全身の毛が逆立って……針のように!」

セルリア・獣態(狼)「ガァァァァァァッ!!」


シュバババババババババババッ!!


ポップ(デコル)「針のような毛が一斉に飛んできたでござる! ビューティ殿っ!」

ビューティ「……っ! 数が、多すぎます……!」

セルリア・獣態(狼)「……払えるものなら……払ってみろ……!!」


シュバッ


ビューティ「えっ……!?」

セルリア・獣態(狼)「……!? ……キュアビューティが……消えた……!?」


ドカカカカカカカカカカッ!


セルリア・獣態(狼)「……毛の針が……外れた……!」


ズザァァァァッ!


マーチ「ふぅっ! 危機一髪だったね、ビューティ!」

ビューティ「マーチ……!」

セルリア・獣態(狼)「……キュアマーチ……! ……キュアビューティを抱えて……避けていたのか……!」

セルリア・獣態(狼)「……邪魔を……するなぁぁぁっ!!」


シュバババババババババババッ!!


ポップ(デコル)「また毛針攻撃でござる!」

マーチ「大丈夫。ビューティ、しっかりつかまってて」

ビューティ「……ええ!」


シュバッ シュバッ シュバッ


セルリア・獣態(狼)「……キュアマーチの動きが……速すぎる……! ……当たらない……!」

セルリア・獣態(狼)「……なぜ……、……なぜ、邪魔をする……!? ……自分の身を……危険にさらしてまで……!?」


マーチ「なんで? そんなの当たり前だよ。だってビューティは、あたしの大切な友達だもん」

マーチ「あたしは、小さい頃からずっといっしょに育ってきたビューティが好き。だから守りたいって思うんだ」

マーチ「ビューティだけじゃない。ハッピーも、サニーも、ピースも、ノーブルも、妖精のみんなも」

マーチ「そして……、あたしのかけがえのない家族のみんな……、その家族を支えてくれる、この町の人達……、みんなが大好き」

マーチ「その大切な人達、みんなの笑顔が大好き」


マーチ「……みんなの笑顔を思い浮かべると、あたしの中に力がわいてくる。勇気が湧いてくる」

マーチ「その力で、あたしはみんなを守りたい。苦しくったって、ツラくったって、構わない」

マーチ「それがあたしの、一番やりたいことだから」


マーチ「……セルリア。あなたにはいないの? そういう人。自分にとって、"大切だな" って思えるような人」

マーチ「きっとその人のためなら、不安だって吹き飛ばせるよ」


セルリア・獣態(狼)「……!! ……大切な……人……」


セルリア・獣態(狼)「……私は……」

シアンナ・獣態(蛇)「シャァァァァァッ!!」ブンッ

ノーブル「…………」スッ


スルッ

ドガァァァァァンッ!!


シアンナ・獣態(蛇)「……!? 拳が……いなされた……!?」

ノーブル「あなたのその黒い力、すごい勢いで吹き出てる……。不安……なんだね、とっても」

ノーブル「……でも……、でもっ……!」


ノーブル「シアンナ! 自分の中の不安と戦って! ツラいかもしれないけど、そうしないと何も変わらないよ!」

ノーブル「もしあなたに、ちょっとでも "未来に向かう大切な気持ち" があるなら、それを強く持って!」

シアンナ・獣態(蛇)「そんなもの、そんなものはない! 私はアキラメーナなんだ! それ以外の何者でもないんだ!!」

ノーブル「シアンナ……っ!」


ハッピー「……そんなことないっ!!」

ノーブル「ハッピー……!」

ハッピー「今まではそうだったかもしれない。でも、キャンディも言ってたよね!? わたし達といっしょにガンバれば、変われるんだよ!」

ハッピー「あなたは、アキラメーナじゃない自分になれるんだよ!!」


ハッピー「だから……、だから、あなたもガンバって! それで、みんないっしょに笑おうよ!」


ハッピー「みんなでいっしょに、ウルトラハッピーになろうよ!!」


シアンナ・獣態(蛇)「…………」

シアンナ・獣態(蛇)「……私……、……私は……!」

ブワァァァァァッ…!


シアンナ・獣態(蛇)「……ぐっ……!? ぐぅぅぅぅぅっ!!」


キャンディ「ハッピー! シアンナがどんどんバッドエナジーに飲み込まれていくクル! このままだと……、もうどうにもできなくなっちゃうかもしれないクルぅ!」

ハッピー・ノーブル「!!」


ノーブル「……できれば、"レインボー・アーチ" を使う前に、"未来に向かう気持ち" を気付かせてあげたかった……!」

ハッピー「でも……、でも、もう時間が……ない……!?」


シアンナ・獣態(蛇)「グォォォォォォォォッ!!」


ノーブル「…………」

ノーブル「……ハッピー、"レインボー・アーチ"、やろう」

ハッピー「えっ……!? でも……!」

ノーブル「うん……。シアンナ自身が "未来に向かう気持ち" に気付いてない今、"レインボー・アーチ" を使ったらどうなるか、わからない……」


ノーブル「でも、信じよう。シアンナ達なら、きっと自分で何とかできるって」

ノーブル「このまま黙って未来がなくなるのを見てるより、その方がきっといい……!」

ノーブル「私達は、私達にできることをやろう! あきらめないで、精一杯!」


ハッピー「…………わかりました!!」

ハッピー「みんな! "レインボー・アーチ"、行くよ!」

ノーブル「そのために、ちょっとでいいから、デスペアランドの人達の動きを止めて!」


サニー・ピース・マーチ・ビューティ「はいっ!!」

サニー「んんんんんっ……!」


ググググッ


ビリーズ・獣態(馬)「も、持ち上げやがった……!? このデカイ体を……!?」


サニー「行くで……、トスやぁぁぁっ!」


ドンッ!


ウルルン(デコル)「ナイスだサニー! うまいこと空中に放りあげたウル!」

サニー「ピース、今やぁっ!」

ピース「うんっ!」


ピース「プリキュア! (ドォォォン!) ピース・サンダー……ハリケェェーンッ!!」


ズドォォォォォォォォンッ!!


ビリーズ・獣態(馬)「ぐっ……あぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

ビューティ「プリキュア! ビューティ・ブリザァァードッ!!」


バキバキバキバキッ!


セルリア・獣態(狼)「……!? ……毛が……凍り付いて……動かない……!?」

ビューティ「マーチ!」

マーチ「オッケー、ビューティ!」


ダダダダダダッ


セルリア・獣態(狼)「……キュアマーチ……、走って……近づいてくる……!?」

マーチ「……ちょっと痛いかもしれないけど……、ゴメンっ!」


マーチ「プリキュアッ! マーチ・シュートォッ・インパクトォォッ!!」


ズドォォォォォォォォンッ!!


セルリア・獣態(狼)「…………が……はっ……!!?」

ハッピー「ノーブル! わたしが先に動きを止めます! その後はお願いします!」

ノーブル「わかった! 任せるよ、ハッピー!」


シアンナ・獣態(蛇)「ガァァァァァァァッ!!」


キャンディ「ハッピー! シアンナが襲ってくるクル!」

ハッピー「だいじょうぶ! わたしにいい考えがあるの!」


バッ!


キャンディ「わっ、シアンナの顔の前に飛び出して……あ、危ないクルぅ! 食べられちゃうクルぅ!」

ハッピー「だいじょうぶだってば! 見てて!」


ハッピー「プリキュア! ハッピー……」

ハッピー「フラァァァッシュ!!」


カァァァッ!!


シアンナ・獣態(蛇)「!!? グ、グゥゥゥゥッ!?」

ノーブル「光で目をくらませた……!?」

ハッピー「ノーブル、今ですっ!」

ノーブル「うんっ、ありがとう!」


ガシッ


ノーブル「目がくらんで動けない今なら……、投げ技も通じるはず!」

ノーブル「プリキュア! ノーブル・ストリィーム……・フォォォールッ!!」


ドバァァァァァァァッ!!


シアンナ・獣態(蛇)「ガッ……ガァァァァッ!!?」

ドドドォォォォォォンッ!!


シアンナ・獣態(蛇)「……ガ……ァァ……」

ビリーズ・獣態(馬)「……ぐぅぅっ……」

セルリア・獣態(狼)「……う……あ……」


ノーブル「デスペアランドのみんなが一か所に集まった!」

ハッピー「みんな、今だよっ!」

サニー・ピース・マーチ・ビューティ・キャンディ「うんっ!!」

パカッ

キラキラキラキラ


キャンディ「"夢の絵の具" よ……、プリキュアのみんなに、未来に進む力を!!」


ブワァァッ!


6人「6つの夢を、今こそ一つに!!」


ハッピー(……私達の……願いを込めて……!)


6人「未来へ届け! 希望の架け橋!!」


6人「プリキュア!! レインボー・アーチっ!!!」


ブワァァァァァァァァッ!!


シアンナ・ビリーズ・セルリア「うぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


キャンディ「やったクル! "レインボー・アーチ" の光がデスペアランドのみんなに当たったクル! これで、みんなに新しい命が産まれるはずクル!」

ノーブル「あとは……シアンナ達次第……!」

ハッピー「お願い……うまくいって……っ!!」

~ 光の流れの中 ~

シアンナ「……これは……、いつか受けた……、"夢の絵の具" の力……」

ビリーズ「あのちっこいロイヤルクイーンが言ってたな……。"この力で、オレ達に新しい命を授けられる、って"」

セルリア「……本当に……、そんなことが……?」


シュワァァァァッ…


シアンナ「……!? これは……体が……消えていく……!? 浄化……されているの……?」

ビリーズ「なっ……!? な、なんでお前だけ……!? オレとセルリアは何ともねーぞ!?」

セルリア「…………もしかして……シアンナには……足りないの……? ……ロイヤルクイーンや……プリキュア達が……言っていた……」

シアンナ「…… "未来に向かう気持ち" ……」

シアンナ「……そう。でも、それならそれでいいわ。元々無いはずの未来。やはり、私には無理だったのよ」

ビリーズ「!? お前……何言って……!」


シアンナ「ビリーズ……。セルリア……。平気ということは、あなた達にはあるのね。"未来に向かう気持ち"」

シアンナ「私はここまでのようだわ。あなた達だけでも行きなさい。……未来へ」

セルリア「……シアンナ……っ! …………やだ……、そんなの……やだっ……! ……シアンナも……一緒に……!」

シアンナ「駄々をこねないの。あなた達には資格があった。私にはなかった。……それだけのことよ」


シアンナ「……じゃあね、二人とも。…………さようなら」スッ

セルリア「シアンナぁっ!! 目を開けてぇっ!!」

ビリーズ「…………」

シアンナ(…………)


シアンナ(……静かだわ……)


シアンナ(自分の作ったアキラメーナは何度も消えていったけれど、私自身が消えるのは初めてね)


シアンナ(消える時というのは……、こんな感じなのね……)

シアンナ(…………)


シアンナ(…………未来……か……)


シアンナ(……私だけの……未来……)


シアンナ(…………少しだけ……ほんの少しだけ……)


シアンナ(……見てみたかった……かな……)

シアンナ(…………)

シアンナ(…………)

シアンナ(…………?)


シアンナ(……おかしいわ。まだ、体の感覚がある……。私は、浄化されて消えているのではないの? 一体どうして……?)


シアンナ(手は……動く……。脚も……動く)

シアンナ(目も……開けられる……)パチッ

ドバァァァァァァッ!!


ビリーズ「ぐっ、ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

セルリア「くっ……うぅっ……!!」


シアンナ「…………あなた達……、何を……しているの……? 自分の体で、光の流れを……せき止めている……?」

シアンナ「……私には……光が当たっていない……。だから、浄化が止まっていた……の……?」


シュワァァァァッ…


シアンナ「……! あなた達、浄化されているじゃない……! 光の流れに……逆らっているから……!?」

シアンナ「何をしているの!? 今すぐやめなさい! なんでそんなことを――」

ビリーズ「うるせえ! お前が勝手にあきらめちまってるからだろーが! 人の気も知らねーでよ!!」

シアンナ「……!? 何を、言ってるの……!?」

ビリーズ「……今のオレ達見て、わかんねーのかよ……! ……ったく、いつもオレのこと馬鹿馬鹿言ってるくせに……、どっちがバカだよ……!」

セルリア「……私達に…… "未来に向かう気持ち" があるなら……!」

ビリーズ「それはなぁ……!」


ビリーズ「お前達と一緒にいることなんだよ!!」
セルリア「あなたと一緒にいることなの!!」


シアンナ「!!」


シアンナ「……どうして……? どうして、そんなことが……あなた達の強い想いになるの……?」

ビリーズ「……オレはよぉ、"今が楽しけりゃいーや" と思ってやってきた」

ビリーズ「だってそうだろ? オレ達には "未来" がねーんだ。じゃあ、"今" が楽しくなきゃしょうがねーじゃねーか」

ビリーズ「めんどくせーのとか、タイクツなのとか、ガンバるとか、ゴメンだったね」

ビリーズ「だからよ、正直お前らと組むことになった時はサイアクだったぜ。シアンナはガミガミうるせーしよ、セルリアは態度悪ぃーしよ」


ビリーズ「……けどよ、オレ、アイツら――プリキュアの連中見てて思ったんだよな。"集まってると、にぎやかで楽しそーだな" って」

ビリーズ「そん時、お前らのこと思い出してよ、気付いたんだよな」


ビリーズ「"そーいや、オレも一人じゃなかった" って」

ビリーズ「お前らとはなんかモメたりよ……、バカにされたり色々したけどよ……」


ビリーズ「一緒に絵描いたりしてよ……、絵の具集めで大騒ぎしたりしてよ……」


ビリーズ「……その、……なんだ……」


サニー(回想)『みんながおってくれば、うちはもっともっと元気になれるんや』


ビリーズ「…………」

ビリーズ「……結構……楽しかった」


ビリーズ「何だかんだでよ! 結構、楽しかったんだよ! お前らといてよ!!」


シアンナ「……!!」

ビリーズ「だから、さっき "未来があったら何がしたいか" って聞かれた時、思ったんだよ」

ビリーズ「"またお前らと絵でも描きに行きてーな" って」


シアンナ「それが……あなたの "未来に向かう気持ち" ……?」

ビリーズ「そうだよ。悪ぃかよ」

ビリーズ「……でも、お前がいなくなったらそれ、できねーじゃねーか!」

ビリーズ「いつもはムカつくくらい冷静で前向きなクセによ、どーしてこういう時だけさっさとあきらめちまうんだよ!?」

ビリーズ「ツマんねーんだよ! お前がそんなだとよ!!」

ビリーズ「もっとビシッとしろよ! いつものお前らしくよぉ!!」


シアンナ「……私……らしく……」

セルリア「……そうだよ……シアンナ……!」

セルリア「……私の知ってる……シアンナは……、……いつだって……カッコ良くて……頼りになった……」

セルリア「……それなのに……ここのところの……シアンナは……元気がなくて……落ち込んでて……」

セルリア「……ずっと……ずっと……、……言えなかったけど……!」


セルリア「そんなシアンナ、私やだよ!」


シアンナ「……セルリア……」

セルリア「シアンナは、仕事のこととか、絵のこととかで、私のことをほめてくれた。認めてくれた」

セルリア「私、それがうれしかった」

セルリア「だから、シアンナがツラい時は……、私が……」


セルリア「…………」


ピース(回想)『苦しさってね……、大切な人と、分け合うことができるんだよ……!』

マーチ(回想)『……セルリア。あなたにはいないの? そういう人。自分にとって、"大切だな" って思えるような人』


セルリア「……私が……!」


セルリア「私が、シアンナの助けになりたい。シアンナと苦しみを分け合いたい」

セルリア「それで、シアンナが元気でいられるなら」

セルリア「だから、シアンナとはずっと……ずっと、一緒にいたかった」

セルリア「シアンナは、私にとって、大切な人だから」

セルリア「それが、私の "未来に向かう気持ち"」


シアンナ「……セルリア……あなた、そんなことを……」

シュワァァァァッ…


ビリーズ「ぐあっ……!?」

セルリア「うっ、く……!?」

シアンナ「二人とも……浄化が進んでいる……! どきなさい! 今ならまだ間に合――」


ビリーズ「だから! わからねーヤツだな! それでお前が消えたら意味ねーんだよ!」

セルリア「……そうだよ……! ……シアンナのいない未来なんて……私……いらない……!」


ビリーズ「お前に "未来に向かう気持ち" がねーんなら……」

セルリア「それを考える時間を私達が作る」


ビリーズ「お前の "未来" のために」
セルリア「あなたの "未来" のために」


シアンナ「…………」

ビリーズ「だからよ、シアンナ、ちゃんと考えて……掴めよ、お前だけの "未来"」シュワァァァァ…


セルリア「頑張って、シアンナ。あなたなら、大丈夫」シュワァァァァ…


シアンナ「……二人とも……消えていく……」

シアンナ「…………待って……。……行かないで……」

シアンナ「……私……知らなかった……。……自分のことばかりで……あなた達の……そんな気持ち……」

シアンナ「……もう少しだけ……話を……、……あなた達と……話を……!!」


ビリーズ「(ニカッ)」

セルリア「(ニコッ)」


シュワァァァァッ…!


シアンナ「……ビリーズ!! セルリアァァッ!!」

~ ギャラリー・D内 荒野の異空間 ~

ドバァァァァァァァァァンッ!!


6人「はぁっ……、はぁっ……、はぁっ……!」

ハッピー「……どう……なったの……?」


サニー「……! 見てみぃ、あれ! シアンナがおんで!」


シアンナ・獣態(蛇)「…………」


ピース「ホントだ! うまく……いったのかな……?」

マーチ「……あれ? でも、おかしくない? ……ビリーズとセルリアは……?」

ビューティ「そういえば、姿が見当たりませんが……、どうしたのでしょうか……」


シアンナ・獣態(蛇)「…………ビリーズと……セルリアは……」

シアンナ・獣態(蛇)「あの二人は、消えたわ。あなた達の光に浄化されて」


6人「!!?」


ハッピー「……そんな……」

サニー「うまく……、いかへんかったんか……?」


シアンナ・獣態(蛇)「……あの二人には、"未来に向かう気持ち" が足りなかったのよ」

シアンナ・獣態(蛇)「だから、消えたの」


ノーブル「……不安な気持ちから、抜け出せなかったのかな……」


シアンナ・獣態(蛇)「…………違う」

シアンナ・獣態(蛇)「本当に "未来に向かう気持ち" が足りなかったのは、この私……」

シアンナ・獣態(蛇)「私は、あなた達の光で浄化され、消えかかっていた……」

シアンナ・獣態(蛇)「あの二人は、そんな私のために自分を盾にした。光で、私が消えないように」

シアンナ・獣態(蛇)「あの二人に "未来に向かう気持ち" がなかったわけじゃない。あの二人は、自分達が未来に行きたいと思っていなかった……」


シアンナ・獣態(蛇)「私を……未来に行かそうとしていたから……!!」


6人「……!!」


ハッピー「……かばってくれた、ってこと……?」

ノーブル「あの二人が……あなたを……」

シアンナ・獣態(蛇)「……私は、自分に与えられた少ない時間でずっと考えていたわ。"私は、何者なのか" って」

シアンナ・獣態(蛇)「"デスペアランドの戦士"、"アキラメーナ・闇の描き手"。それ以外には考えていなかった」

シアンナ・獣態(蛇)「……でも今……、一人になって……、ようやくわかった……!」


シアンナ・獣態(蛇)「私は……、"ビリーズとセルリアの仲間" だったのよ……! 少なくとも、あの二人にとっては……!!」


ノーブル「……シアンナ……」

シアンナ・獣態(蛇)「あの二人は光の中で私に言ったわ。"自分の未来のことをしっかり考えろ" と」

シアンナ・獣態(蛇)「だから、考えているの。"ビリーズとセルリアの仲間" でなくなった今、"私は何になりたいのか"」

シアンナ・獣態(蛇)「"デスペアランドの戦士"、"アキラメーナ・闇の描き手"。……それ以外に、なりたいものがあるのかを」


ノーブル「……答えは出そう?」


シアンナ・獣態(蛇)「…………わからない。今の私には」

シアンナ・獣態(蛇)「……でも、はっきりと言えることがあるわ」

シアンナ・獣態(蛇)「今の私は、そのことについてもっと、もっと考えたい」

シアンナ・獣態(蛇)「"私は何になりたいのか" 。そのことについて考える時間が、もっと欲しい」


ノーブル「……! それじゃあ……!」

シアンナ・獣態(蛇)「……ええ」


シアンナ・獣態(蛇)「私は、未来が欲しい。私が、私のなりたい "私" になるために」

シアンナ・獣態(蛇)「……そのために時間をくれた、ビリーズとセルリアのためにも」


6人「…………」

6人「……やっ……」


6人「やったぁぁーっ!!」


シアンナ・獣態(蛇)「え……?」キョトン

ビューティ「やりましたね、みなさん! 彼女の方から "未来が欲しい" と言ってくれました!」

サニー「せやな! ガンバったかいがあるっちゅーもんや!」

ピース「これで、あの人とも仲良くなれるかも!」

マーチ「ビリーズとセルリアのことは、残念だけど……!」

ハッピー「ウルトラハッピーな未来に向かって、一歩前進だよ! ……よかったですね、ノーブル!」

ノーブル「うん……! 本当に……、本当によかった……!」


シアンナ・獣態(蛇)「…………」


シアンナ(……おかしな子達。まるで、自分のことのように喜んで……)

シアンナ(……でも……)


ビリーズ(回想)『プリキュアの連中見てて思ったんだよな。"集まってると、にぎやかで楽しそーだな" って』


シアンナ(……ビリーズ。あなたの言ったこと、今ならわかる気がするわ……)

ハッピー「さぁーって、それじゃ、みんな! "レインボー・アーチ"、もう一回やろうっ!」

5人「え……?」

ハッピー「……あれ? どうしたの、元気ないね」


サニー「ちょ、ちょっとカンベンやで……。光る力と "レインボー・アーチ"、いっぺんに使って、もうクタクタや……」

ハッピー「そう? わたしはそんなでもないけど」

マーチ「ハッピーはクイーンのキャンディと一緒だからまだ力残ってるかもしれないけど……」

ピース「ほら、見てハッピー……」パカッ


オニニン(デコル)「ふへー……、疲れたオニ……」


ハッピー「あ……、パクトの中のオニニン、ヘロヘロだぁ……」

ビューティ「私達も、妖精の皆さんも、大分力を使ってしまって……、少し、休憩が必要みたいです……」

ハッピー「そっかぁ……。じゃあ、しょうがないね……」


ノーブル「……そういうわけだから、シアンナ。悪いけど、ちょっと休ませてくれるかな?」


シアンナ・獣態(蛇)「……構わないわ。そもそも、私からお願いしているのだから、何か言えた義理はないわ。あなた達の好きに――」

ドックン


シアンナ・獣態(蛇)「……うっ……!?」


ハッピー「……え? 何?」


シアンナ・獣態(蛇)「……うっ……うぁぁぁぁぁぁっ……!?」


ブワァァァァァッ!


6人「!!?」


ビューティ「シアンナの体から、またバッドエナジーが!?」

サニー「な、なんでや!? もう不安は吹っ飛んだんとちゃうんかい!?」


シアンナ・獣態(蛇)「……"オーバードロウ" の……、作用だわ……!」

シアンナ・獣態(蛇)「"オーバードロウ" は……、私達を完全に闇の絵の具の力に染めてしまう……! 体も……意識も……!」

シアンナ・獣態(蛇)「さっきは……その侵食が……私の不安で……加速していただけ……! 放っておいても……侵食は進み……やがて……」


シアンナ・獣態(蛇)「私は……完全に私でなくなる……!」


ハッピー「……! みんなっ! 早く、シアンナに "レインボー・アーチ" をやらなきゃ!」

サニー「そ、そんなこと言うたかて……!」

ピース「ごめん……ハッピー……! 体が……思うように……動かないの……!」

ハッピー「……そんな……!」

シアンナ・獣態(蛇)「もう……間に合わないわ……! 私の意識も……闇に染まる……っ!」

ハッピー「まだ……、まだあきらめないで! わたし達が何とかするからっ!!」

シアンナ・獣態(蛇)「そうしたい……、そうしたいけれど……! ……意識が……もうもたない……!」


シアンナ・獣態(蛇)「……ビリーズ……セルリア……」

シアンナ・獣態(蛇)「あなた達が……、せっかく時間をくれたのに……、"未来" ……、掴めなかった……」

シアンナ・獣態(蛇)「……ごめん……なさい……」


ブワァァァァァッ!


ノーブル「バッドエナジーが……さらに強く……! シアンナ……!!」

シアンナ・獣態(蛇)「…………グッ……グゥゥゥゥッ……!」

シアンナ・獣態(蛇)「ガァァァァァァァァッ!!」


6人「…………」


マーチ「……間に……あわなかった……?」

サニー「完全に……怪物になってもーたんか……!?」

ビューティ「……あと……あともう少しだったのに……!」

シアンナ・獣態(蛇)「グゥゥゥゥッ……!」ズルッ ズルッ


ピース「こ、こっちに来るよ……!」

サニー「あかん……! このままやと、シアンナだけやなく、うちらまでやられてまう……!」

マーチ「けど……、もう、体が……動かないよ……!」

ビューティ「どうすれば……どうすれば……!?」

ノーブル「ここまで来て……! 何も……何もできないの……!?」


ハッピー「…………」

ハッピー「……気合だ……」

サニー「……? ハッピー?」


ハッピー「気合だ……!」


ハッピー「気合だ……、気合だ……!」


ハッピー「気合だ、気合だ、気合だ、気合だっ……!」


ハッピー「気合だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


ハッピー「プリキュア! ハッピー・シャワーァァッ!!」


ドォォォォォォォォンッ!!


ハッピー「はぁっ……! はぁっ……!」


シアンナ・獣態(蛇)「……ガァ……?」

サニー「……! あかんわ……、全然効いてへん……!」

ピース「ハッピー……? どうして、ハッピーシャワーを……?」


ハッピー「……わたしにも、わかんない」

ハッピー「……今、何をしなきゃいけないのか……。どうしたら、うまくいくのか……わかんない」

ハッピー「でも……、でも何かやらなきゃ!!」

ハッピー「だって……、だって、もうそこまで来てるんだもん!!」

ハッピー「シアンナと笑い合える未来が、すぐそこまで来てるんだもん!!」

ハッピー「わたしは……、わたしは……、あきらめたくない……っ!!」


ハッピー「そんなウルトラハッピーな未来を! 絶対にあきらめたくないの!!」


6人「……!!」


ハッピー「だから、気合を……! 少しでも多く、気合を込めなきゃ……! わたしにできる……精一杯のことをやらなきゃ……!」

ハッピー「みんなで笑い合える……、キラキラ輝く、未来のために!!」


ハッピー「んっ……、んんんんんっ……!」


パァァァッ…


サニー「……ハッピー……!」

サニー(ハッピー、まだ……、まだあきらめてへん……! 何とかしようと、必死にガンバっとる……)

サニー(……今、うちは何をせなあかん……? ガンバっとるハッピーのために……何を……?)


サニー(……そんなん……決まっとるわ……!)


シアンナ・獣態(蛇)「ガァァァァァァァァッ!!」グアッ


ピース「! シアンナがハッピーに噛み付こうとしてる!」

マーチ「危ない……、ハッピー……っ!」

ハッピー「……っ!」

ダッ


サニー「……ウルルン。あと一発。あと一発だけでええ……。うちに……うちに、力を!!」

ウルルン(デコル)「ありったけ出してやるウル! サニー、思いっきりやれぇっ!!」


バァァァァァァッ!!


バッ


サニー「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


サニー「プリキュアッ!! サニー・ファイアー・バァァァーニングッ!!!」


ズドォォォォォォォォンッ!!


シアンナ・獣態(蛇)「ガァッ……!?」グラッ


サニー「……うっ……はぁっ……」シュウウッ…

ウルルン(デコル)「……光、消えちまったウル……。……すまん、サニー……、これでめいっぱいウル……!」

サニー「十分や……! おおきに、ウルルン……!」


ハッピー「……サニー……!? 助けて、くれた……!?」

サニー「当たり前やろ……!」

サニー「誰か一人でもあきらめてへんのやったら、うちらがあきらめるわけにいかへんわ……! 笑顔になれる未来を信じて……、みんないっしょに、前に進まな……!」


サニー「それがチームや……! それが友達や……! それが仲間や……! それがうちらや……!」


サニー「それが……! それが……!」


サニー「それが! "スマイルプリキュア" やぁっ!!」


ピース・マーチ・ビューティ・ノーブル「!!」

ノーブル「……そうだ……。私達は、そうなんだ……!」

ノーブル「みんなの笑顔のために戦う、"スマイルプリキュア" なんだ……っ!」

ノーブル「シアンナのためにも……、こんなところで……寝てる場合じゃない……!!」グググッ


ノーブル「お願い、ペロー君……! あと、あと一回分だけ、力を貸して……!」

ペロー(デコル)「大丈夫ペロ……! ノーブル、ガンバるペロ……!!」


ノーブル「プリキュア! ノーブル・ストリィィームッ!!」


ブワァァァァッ! ドバァァァァンッ!


ザァァァァァァァァッ!


ビューティ「ノーブル……、ノーブル・ストリームを空中で弾けさせて、雨を降らせた……?」

ノーブル「……ゴメン……、私にできるのは……ここまでみたい……」

ノーブル「あとは……お願いね……、ビューティ……」フラッ


ドサッ


ビューティ「ノーブルっ……! ……わかりました!」

ビューティ「……マーチ、立てる……?」グググッ

マーチ「うん……何とか……!」グググッ

ビューティ「ノーブルの残してくれたこの雨……。これを活かすには、マーチの力が必要なの……」

ビューティ「お願い、力を貸して……!」

マーチ「もちろんだよ、ビューティ……!」


ザッ


ビューティ「行くわよ、マーチ!!」

マーチ「うんっ、ビューティ!!」

ビューティ「私の吹雪を!!」

マーチ「あたしの風で、強くする!!」


バッ


マーチ・ビューティ「プリキュア!! スノーストォォームッ!!!」


ドバァァァァァァァッ!!


シアンナ・獣態(蛇)「ガァァァァァッ……!?」


ポップ(デコル)「なんという猛吹雪……! しかし、光る力のない今、シアンナに効くのでござろうか……!?」

ビューティ「確かに……、この技だけでは……今のあの方にはあまり効果がないかもしれません……」

ビューティ「でも……!」


バキバキバキバキッ!


シアンナ・獣態(蛇)「ガァッ!? ガァァァッ……!」


マジョリン(デコル)「シアンナの体が凍っていく……! 効いたマジョ!?」

ビューティ「ノーブルの振らせてくれた、雨のおかげです……! 濡れた体は、普段よりずっと凍りやすくなります……!」


ビューティ「……そして……!」


ピース「(ダダダダダダッ)」


ビューティ「体を伝う水は……、とても電気を通しやすくなります……!」

ピース「……もう、カミナリを撃つ力は……残ってない……! こうやって、動くのでせいいっぱい……!」

ピース「だから、シアンナといっしょに、わたしにカミナリを落とすしかない……!」

ピース「オニニン、お願い……! 最後までガンバれる力をちょうだい……!」

オニニン(デコル)「で、でもピース……! そんなことして平気オニ……!? ピースももう限界なのに……!」

ピース「……だいじょうぶだよ」ニコッ


ピース「痛くったって……、怖くったって……、やらなきゃいけない時があるから……!」

ピース「みんなガンバってるんだもん……! わたしだって……ガンバるんだ……!!」

オニニン(デコル)「……わかったオニ。おれ様の力、全部出すオニ! ガンバるオニ! ピース!!」

ピース「うん……! ありがとう……!」

ガシッ


オニニン(デコル)「シアンナに組み付いたオニ! ピース、今オニ!!」

ピース「うんっ!!」


ピース「プリキュア! ピース・サンダーァァッ!!」


ズドォォォォォォォォンッ!!


バリバリバリバリッ!!


シアンナ・獣態(蛇)「ガァァァァァァァァァッ!?」

ピース「……うっ……くぅぅぅぅぅっ……!!」


シュウウウウウ…


シアンナ・獣態(蛇)「……ガ……アァ……」フラッ

ピース「…………」フラッ


ドサッ


オニニン(デコル)「ピース! だいじょうぶオニ!?」

ピース「……なんとか……だいじょうぶ……」

シアンナ・獣態(蛇)「……グ……ァ……」


オニニン(デコル)「でも、ガンバったオニ、ピース。シアンナ、大分弱らせることができたみたいオニ!」

ピース「うん……。……あとは……」


マーチ「あとは……ハッピー……!」


ビューティ「ハッピー……!」


ノーブル「……ハッピー……!」


サニー「今や、ハッピィィィーっ!!」


ハッピー「キャンディィィィィっ!! お願い!! わたしに力を貸してぇぇぇぇぇっ!!」

キャンディ「クルぅぅぅぅぅぅぅっ!!」


バァァァァァァッ!!

ポップ(デコル)「……これは……! キャンディを通して……、全ての "夢の絵の具" の力が、ハッピー殿一人に流れていくでござる……!」

ポップ(デコル)「絵の具の光が混ざり合って……、ハッピー殿の放つ桃色の光が……どんどん薄くなっていく……!」


ポップ(デコル)「あれは……白い光……!?」


ハッピー「プリキュア!! ハッピーシャワー……!!」

ハッピー「シャイニングゥゥゥゥっ!!!」


ドバァァァァァァァァァッ!!!


シアンナ・獣態(蛇)「……ガ……! ガァァァァァァァッ!!?」


ハッピー「いっけぇぇぇぇぇぇっ!! シアンナから、闇の力を……吹き飛ばせぇぇぇぇぇっ!!!」


ズドォォォォォォォォォォォンッ!!!

~ 光の中 ~

シアンナ「…………」


シアンナ「……これは……? 私の意識は……闇の絵の具に黒く染められたはず……」

シアンナ「どうしてまだ……意識が残っているの……?」


パァァァッ…!


シアンナ「……! 私の体が……光っている……?」

シアンナ「これは……、緑の光と……藍色の光……。私の体に……まとわりついて……」


シアンナ「…………あなた達なの……?」

~ ギャラリー・D内 荒野の異空間 ~

ハッピー「……はぁっ……、……はぁっ……、……もう……動けない……。……全部……出し切っちゃった……」ヘタッ

キャンディ「シアンナは……どうなったクル……?」


ビューティ「……! ノーブル! みなさん! あれを見てください……!」

ノーブル「……あ……ああっ……!」

シアンナ「…………」


ノーブル「シアンナ……っ!」

シアンナ「……私……、元の姿に……戻った……の……?」


ポップ(デコル)「……奇跡が、起きたでござる……!」

ポップ(デコル)「ハッピー殿の光が、闇の絵の具を完全に浄化し、そして……!」

ポップ(デコル)「キャンディの力……! "夢の絵の具" の力……! プリキュアの皆の衆の願い……! シアンナ殿の願いが……!」


ポップ(デコル)「シアンナ殿に、新しい命を与えたのでござる!!」


シアンナ「……私の……新しい、命……?」


ノーブル「そうだよ、シアンナ! やったんだよ! シアンナは、生まれ変わったんだよ!!」

ノーブル「誰のものでもない、あなただけの "未来" を掴んだんだよっ!!」


シアンナ「私だけの……未来……!」

ピース「……それじゃあ、今度こそ……!」

マーチ「うん……! 今度こそ……!」

サニー「やったんやな、うちら……!」

ビューティ「ええ……、やりました……!」

ハッピー「わたし達……勝ったんだ……!」


ハッピー「シアンナを苦しめてた、悪い心に勝ったんだぁっ!!」


6人「やったぁぁぁぁぁっ!!」


ノーブル「よかった……よかったね、シアンナ……!」

シアンナ「……まだ少し、実感が湧かないわ……」

ウルルン(デコル)「それにしても、最後のハッピー、すごい力だったウル」

オニニン(デコル)「ホントオニ。一人で "レインボー・アーチ" みたいな力を出してたオニ」

ペロー(デコル)「きっと、クイーン様と、ハッピーさんのお力のおかげペロ!」

マジョリン(デコル)「でも、スゴすぎて、バッドエナジーごとシアンナが消えてしまうかと思ったマジョ。よく無事だったマジョ」


シアンナ「……私、守られていたのかもしれないわ」

ノーブル「守られていた? ……誰に?」


シアンナ「……闇の絵の具に塗りつぶされて……、私の意識は消えてしまったはずだった」

シアンナ「でも、キュアハッピーの出した光に闇の絵の具が全て浄化された時、私の意識はこうして残った」

シアンナ「その時、私見たの」

シアンナ「私を守るように覆っていた、緑色と、藍色の光を」


ハッピー「それって……」

パァッ…!

ポンッ


マーチ「シアンナの体から、光の玉が出た……!」

ピース「緑色と、藍色の二つの玉……!」

サニー「もしかして…… "夢の絵の具" かいな……!?」


キャンディ「……違うクル。それは、"心の絵の具" クル」

ハッピー「キャンディ……? わかるの?」

キャンディ「わかるクル。シアンナを守ってくれた、その二つの光は……」


キャンディ「ビリーズとセルリア、二人の心の絵の具クル」

6人「……えっ……!?」


シアンナ「……やっぱり、そうだったのね……」

シアンナ「私をかばった時、二人は "心の絵の具" に姿を変えていたんだわ」

シアンナ「そして、闇の絵の具の侵食から、私を守り続けてくれていた……!」


ノーブル「……じゃあ、やっぱりあったんだね。あなた達にも」

ノーブル「お互いを思いやる、優しい "心" が」

シアンナ「…………そのようね」

ヒューーーン…

ヒューーーン…


ピース「あっ……、光の玉、飛んでっちゃう……!」

ビューティ「どこへ行くのでしょうか……?」


ポップ(デコル)「おそらく、ピクチャーランドでござろう。"心の絵の具" が自然に行き着く先は、そこしかないでござるから」

ポップ(デコル)「ピクチャーランドが今どのような状態かはわからないでござるが……、もし無事にたどり着けたなら……」

ポップ(デコル)「ピクチャーランドで生まれ変わって、また別の形で、あの二人に会えることもあるかもしれないでござるな……」


シアンナ「……そう」

シアンナ(……あなた達は、私にかけがえのない、大切なものをくれた。私だけの "未来" を)

シアンナ(こんな私のことを仲間だと思ってくれたあなた達のことは……、絶対に忘れない)


シアンナ(もし、また会えたなら、その時は……面と向かってこの言葉を言わせて)

シアンナ(ビリーズ……)

シアンナ(セルリア……)


シアンナ(…………ありがとう)

~ デスペアランド 王宮 玉座の間 ~

大臣「……国王陛下。シアンナ様以下 2名、"闇の描き手" 達ですが……、全員敗れた模様です」

デスペア国王「……そうか……」


デスペア国王「……結局、奴らは何もできずじまいだったのだな。"夢の絵の具" の入手も、適量の濁った "心の絵の具" の採取も」

大臣「そのようで……」

デスペア国王「…………役立たずが」

デスペア国王「(チラッ)」


デスペア国王(今、製作中である次の "闇の描き手" も、まだ完成までに少しかかる……)

デスペア国王(だが、"夢の絵の具" の入手は一刻も早く済ませたい……。一刻も早く……)


デスペア国王「……仕方あるまい」

デスペア国王「大臣、"扉のキャンバス" の用意をせよ」

大臣「なんと……!? あれをお使いになるのですか……? ということは……」

デスペア国王「そうだ」


デスペア国王「私自らが、プリキュアの相手をする」





つづく

次回予告

みゆき「ようやくデスペアランドのシアンナと仲良くなれて、ウルトラハッピーなわたし達!」

みゆき「でも、喜んでるうちに、いつの間にかふしぎな力でデスペアランドに連れてこられちゃった!」

みゆき「そこで、デスペアランドで一番偉い、"デスペア国王" っていう人が待ってるみたい……。どんな人なんだろう……!?」


みゆき「次回、『スマイルプリキュア レインボー!』 "デスペアランドとデスペア国王のひみつ!"」


みゆき「みんな笑顔でウルトラハッピー!」

今回はここまでです!
お読みいただいた方、ありがとうございました。


あと、次回についてちょっとお知らせです。

ちょっとスケジュールがパツンパツンで、
来週までにあげられるかどうかが結構厳しい状況です。。

なので、来週はお休みさせていただくか、
もしくはプリキュアタイム(日曜 朝 8:30 ~) より遅れてのアップになりそうです。

申し訳ないですが、ご了承ください。。


それでは、よかったら次回もまたよろしくお願いします!


第1話 ~ 第11話 『スマイルプリキュア!』第2期を SS で作るスレ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1360385907/)
第12話 ~ 第20話 『スマイルプリキュア レインボー!』 Part 2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1366529393/)

第21話 >>4 から
第22話 >>125 から
第23話 >>247 から
第24話 >>350 から

『スマイルプリキュア レインボー!』

このあとすぐ!


……といきたかったですが、やっぱり間に合いませんでした!
スミマセン。。

今25話作成中なので、今日中のどこかであげられるかと思います。

また後ほどよろしくお願いします!

25話できました!
が、、見直しとかしてからあげたいので、スミマセンが今週はお休みとさせてください。。

代わりといってはなんですが、来週25, 26話の二本立てとさせていただければと思います!

よろしければ、来週またお願いします!

代わりといってはなんですが、お返事を返させていただきます。


> 472さん

なんか、、ありがとうございます。
ビリーズのやつ、こんなに気に入ってもらえて、、果報者だなぁ。。


> 蟹ってのは去年の30分前のキャラのことっすね。落語家の蟹座でした。

ああ、フォーゼでしたか!
そういえばあれも12星座でしたっけ。未見なのでわかりませんでした。。
実は元ネタわからなくって結構もやもやしてました。ありがとうございます!

> ボーズさん

前レスしていただいた読者参加企画の件です。

7人目は、、残念ながら役割が決まってるので変えることは難しそうですが、幹部だったら出せるかもしれません。
扱いは保障できませんが。。

ボーズさん以外の方でも、"こんなん考えた!" みたいなアイデアありましたら、
ぜひ挙げてみてください!
シリーズに出てきたりするかも。。?


> 7/28ドキプリ、六花の回

あれ、すごい良かったですね。

自分の夢を見つめなおす六花の成長
イーラとのフラグ立て
ラケルのカワイさ大爆発
エースの名脇役っぷり

あれだけネタ突っ込んでキレイに一本の筋に通すのは素晴らしいと思います。。
さすがプロ、、まさに職人芸。
個人的には、『ドキドキ!』でぶっちぎりに好きな回です。

内容が似たのはたまたまですねー。


> ガタケットの件

8月末のガタケット129 に行けそうです!
前、お知り合いがいるとお聞きしましたが、129には参加されますか?

せっかくなのでのぞかせてもらいたいと思います!
もしよかったらサークル名など教えてください。

お返事は以上です。

今週はスミマセンした。。
来週は豪華(?)2本立て! よろしくお願いします!

『スマイルプリキュア レインボー!』

このあとすぐ!

~ 七色ヶ丘市 商店街 ~

スタスタスタ


みゆき「ふーんふふーん♪ お買い物ー、お買い物ー♪ 今日はカレーだ、らんららーん♪」


はるか「おーい、みゆきちゃーんっ!」

みゆき「ん? この声……」

はるか「やっぱりみゆきちゃんだ! ハイ!」

みゆき「あ、はるかさん! と……」

シアンナ「こんにちは」

みゆき「シアンナ! ……さん。こ、こんにちは。えへへ……」


キャンディ「みゆき、なんだかスマイルがカタいクル。もっとニコッって笑うクル」

みゆき「で、でもぉ……、なんだか、つい緊張しちゃって……」

シアンナ「……そうね。ついこの間まで戦っていたんだものね。無理もないわ」

みゆき「あ、でで、でも、すぐ慣れると思いますから! 大丈夫ですよ!」

みゆき「ところで、今日は二人でお出かけしてたんですね。何してたんですか?」

はるか「ああ、シアンナが町を良く見て回りたいって言うから、その案内をしてたんだ」

シアンナ「私はあなた達のおかげで未来を手に入れられたけれど、まだ何がしたいかがよくわかっていないから。この町の人達を見れば、その参考になるかと思って」

シアンナ「……それで、できればこの町の人達の役に立ちたいと思っているわ。今まで迷惑をかけてきた、そのお詫びとして」


みゆき「へえー、そのためにわざわざ町を回ってるんですか? なんというか……すごくマジメですねー……」

はるか「そうなんだよねー、もう、マジメすぎるくらい。もう少しいいかげんでもいいと思うんだけどね」

シアンナ「何を言っているの、はるか。私は当然のことをしているだけよ」

はるか「ふふっ、そうだね。それがシアンナだもんね」

みゆき「……!」

みゆき「シアンナさん……、今、"はるか" って呼びました?」

シアンナ「え? ……ああ、そうね。それがどうかしたの?」

みゆき「……そっかぁ。ふふっ、そっかぁ……!」ニコニコ

はるか「なに、どうしたの、みゆきちゃん? ニコニコしちゃって」

みゆき「えへへ……。"キュアノーブル" じゃなくて、"はるか" って呼ぶくらい二人が仲良くなったんだなぁ、って思ったら、なんだか嬉しくなっちゃって……」

はるか・シアンナ「…………」


シアンナ「……そうね。あれからもはるかは良くしてくれるし、とても穏やかに過ごせているわ。こんな気持ちになるのは初めて……」

はるか「今まで戦ってばっかりだったもんね。ムリもないよ」


はるか「でも、これからはきっとうまくやっていけると思う。だって、私達には "未来" があるんだから」

はるか「いくらでも笑い合ったりできるよ」ニコッ

シアンナ「ええ、そうね。これからもよろしく頼むわ、はるか、……みゆき」

みゆき「……! はいっ!」

シアンナ「……ところで、さっきから気になっていたんだけれど、あれは何かしら? 小さい家のようなものがたくさん並んでいるけれど……」

はるか「あれ? ああ、あれは "屋台" っていってね。料理を出したり、色んな遊びをさせてくれる、小さいお店のことだよ」


みゆき「……あっ、そうだ! もうすぐ夏祭りだぁっ!」

はるか「そっか、もうそんな季節なんだね。留学してたから、日本の夏祭りなんて久しぶりだなぁ」

キャンディ「みゆき! そうしたら、またあのキレイなハナビが見られるクル!?」

みゆき「うんっ、そうだよ、キャンディ! またみんな誘って見に行こうか! 楽しみだねー!」

みゆき「……そうだ! シアンナさんもいっしょに行きましょうよ、夏祭り!」

はるか「みゆきちゃん、グッドアイデア! ね、そうしよ、シアンナ!」

シアンナ「マツリ、というのがよくわからないけれど……、要するに遊ぶことなのかしら?」

はるか「うん! とっても楽しいんだ! 金魚すくいしたり、わたがし食べたり……。当日になったらじっくり教えてあげるから! ね、一緒に行こうよ!」

シアンナ「わかったわ。楽しみにしてる」

はるか「約束だよ!」

シアンナ「ええ。約束するわ」


みゆき「…………」ニコニコ

みゆき(……悪いことをしてたシアンナさんともこうやって仲良くなれて、笑い合えて……、ホントにハッピー)


みゆき(まだデスペアランドがなくなったわけじゃないけど、他の人たちとも、こうやってみんなで笑い会えるようになったら、いいなぁ……。そしたらきっと、ウルトラハッピーだよね)


みゆき(そのためにも、もっと……、もっとガンバらなくっちゃ!)

~ デスペアランド 王宮 玉座の間 ~

デスペア国王「行け、"扉のキャンバス" 達よ。プリキュアの下へ」


シュバババババッ

~ 七色ヶ丘市 商店街 ~

ガンッ!


はるか「わっ!? えっ、何……? 何か落ちてきた……!?」

みゆき「これって……、キャンバス? 扉の絵が描いてあるけど……」


シアンナ「……!? これは……、"扉のキャンバス"……!」

シアンナ「と、いうことは……、まさか……!」

シアンナ「二人とも! そのキャンバスから離れて!」

はるか「え? どうしたの、シアンナ。そんなに慌てて……」


ガチャッ ギギギギギ…


みゆき「えっ!? 絵の中の扉が……開いた……!?」


パァァッ…!


はるか「と、扉の中が光って……」

みゆき「す、吸い込まれる……!?」

みゆき・はるか「わぁぁぁぁぁぁぁっ――」シュウウウウウウ…


シアンナ「はるか! みゆき! ……遅かった……! 私も追わないと……!」バッ


シュウウウウウウ…


バタンッ

~ ??????? ~

みゆき「――――う……、ここは……? わたし、どうしたんだっけ……」


あかね「あ、みゆき! みんな、みゆきも起きたで!」

やよい「みゆきちゃん! だいじょうぶ!?」

みゆき「あれ……、あかねちゃん……、みんな……? なんでここに……?」

なお「外を散歩してたら、急に目の前に扉の描いてあるキャンバスが落ちてきて……」

れいか「その扉の中に吸い込まれて……。気付いたらここにいたんです」

みゆき「わたし達と同じ……。そっか、みんなもおんなじことになってたんだね」


みゆき「……っていうか、ここ……、どこ?」


みゆき「……ボロボロの建物がたくさん……、町、なのかな……」

みゆき「遠くにお城も見える……。まるでおとぎ話の世界みたいだけど……、空が真っ黒……。なんだか、イヤな感じ……」

シアンナ「…………」

はるか「シアンナ……? どうしたの、怖い顔して……」

シアンナ「あなた達は初めて来るから、知らなくても無理はないわね。けれど、私には見慣れた場所……」

みゆき「え……? それじゃあ、ここって……!」


シアンナ「……そう。ここが、私達が産まれた、絶望の国」


シアンナ「デスペアランドよ」




スマイルプリキュア レインボー!

第25話「デスペアランドとデスペア国王のひみつ!」


~ デスペアランド 城下町 ~

れいか「ここが、シアンナさん達がいた国、デスペアランド……」

あかね「せやけど、何で急にみんな揃ってこんなとこにおんの? うち、何が起こったかまだようわかってへんのやけど……」

シアンナ「ええ、それはおそらく――」


デスペア国王の声『ようこそ、プリキュア。我が絶望の国・デスペアランドへ』


やよい「わっ!? な、なに……!? 辺りに声が響き渡ってる……?」

なお「体の中に重く響いて……、気持ちまで重くなりそうな声……!」


デスペア国王の声『私はデスペア国王。お前達が相手をしてきた "闇の描き手" 達の主だ』

はるか「"闇の描き手" って、シアンナ達のこと……? それじゃあ、この人が……」

みゆき「デスペアランドで一番エラい人、ってことなの……!?」

デスペア国王の声『お前達は、私の用意した世界を越える道具 "扉のキャンバス" によって、この世界に呼び出された』

デスペア国王の声『元の世界に帰る方法はただ一つ。来た時と同じように、私の持つ "扉のキャンバス" を使うしかない』

デスペア国王の声『帰りたくば、私の下に来るがいい、プリキュア達よ。遠くに城が見えるだろう。私はそこで待っている』


シーーーン…


やよい「……静かに、なったね」

あかね「なんやねん! 勝手に呼びつけといて "自分とこまで来い" やなんて。勝手なやっちゃで!」

れいか「ですが、あの方の言う通り、帰るためには一度お会いしなくてはならないようですね……」

なお「どういうつもりかわからないけど、戦わないといけないのかな……」

はるか「みんな、とりあえず変身しとこう。ここが本当にデスペアランドなら、いつ、どこから、何が襲ってくるかわからない……!」

なお「そうですね……。変身しておけば、何か起きても何とかできそうですね」

みゆき「わかりました! キャンディ、妖精のみんな、行くよっ!」


キャンディ「わかったクルぅ!」

ウルルン「よっしゃ、任せとけウル!」

オニニン「気を引きしめていくオニ!」

マジョリン「ちゃっちゃと変身するマジョ!」

ペロー「ぼくもガンバるペロ!」


ポップ「…………」


れいか「さあ、ポップさん、行きますよ!」

ポップ「……あのお城……、見覚えが……。……いや、そんな……まさか……」ブツブツ

れいか「……ポップさん? どうかしましたか?」

ポップ「……あ、ああ、すまんでござるれいか殿! なんでもないでござるよ!」

れいか「では、変身しましょう!」

ポップ「心得たでござる!」

妖精達「デコル・チェーンジ!」

パチンッ!

レディ!

6人「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー! ゴーゴー! レッツゴー!!


ハッピー「キラキラ輝く、未来の光! キュアハッピー!!」

サニー「太陽サンサン、熱血パワー! キュアサニー!!」

ピース「ぴかぴかぴかりん♪ じゃん・けん・ポン!(チョキ) キュアピース!!」

マーチ「勇気リンリン、直球勝負! キュアマーチ!!」

ビューティ「しんしんと降り積もる、清き心。キュアビューティ!!」

ノーブル「さらさら流れる気高きせせらぎ! キュアノーブル!!」


6人「6つの光が導く未来!」

6人「輝け! スマイルプリキュア!!」


ノーブル「それじゃあ、行こう、みんな。くれぐれも慎重にね」

5人「はい!」

~ デスペアランド 王宮 地下牢獄 ~

少女の声『……お父様。この国に、突然光り輝く力が現れました……』

威厳のある老人の声『なんと……、まことか? それはもしや……伝説の戦士・プリキュア……!?』

少女の声『おそらく……』


少女の声『ですがお父様……、その光が 6つしかありません……。本当は 7つあるはずでは……?』

威厳のある老人の声『6つだと……? では、まだ全ての光が揃っていないというのか……!』

威厳のある老人の声『"7つの色が一つになる時、全ての闇を払う光とならん"。この言い伝えが本当であれば、今はまだ、この国を覆う闇を払うことはできん……!』

威厳のある老人の声『……やむを得まい』


威厳のある老人の声『私はこれから、自らにかけた封印を解く。プリキュア達は全ての世界の最後の希望。なんとしてでも守らねばならん』

威厳のある老人の声『心して聞け。これからお前に使命を与える。厳しい試練になると思うが、それができるのはお前しかおらん』

威厳のある老人の声『私としても心苦しいが……、わかってくれ』

少女の声『……はい。わたくしも、お父様の血を引く身。やってみせますわ』

威厳のある老人の声『……すまぬ……』

~ デスペアランド 城下町 ~

スタスタスタ…


サニー「それにしても……、この町、どこもかしこも見事にボロボロやなぁ……。こんなんで人住めんのかいな……」

ノーブル「そういえば……。シアンナ、デスペアランドに人って住んでるの? そんな感じしないけど……」

シアンナ「私はアキラメーナとして産まれてまだ半年も経ってないけれど……、その間、この町に人がいたのを見たことがないわ」

ビューティ「そうですか……。家はあるのだから、どなたか住んでいてもよさそうなものですが……」


ピース「もしかして……、オバケの町だったりしてぇ……!」

マーチ「ちょ、ちょっと! やめてよ、ピース……!」

ハッピー「ああーっ、聞きたくない聞きたくないっ!」

サニー「にししっ。相変わらずオバケニガテやなぁ、二人とも」

スタスタスタ


ピース「大分お城も近くなってきたね」

ノーブル「そうだね……。……って、うわっ、何あれ……!」

ビューティ「どうかしましたか、ノーブル?」

ノーブル「お城の横、見てよ……! すごい大きな穴が開いてる……!」

マーチ「うわっ、ホントだ……! 隕石でも落ちたみたい……!」


ハッピー「シアンナさん、あの穴、なんなのかってわかりますか?」

シアンナ「そういえば……気にしたことなかったわ。特に何かあるところではなかったから」

サニー「ここで産まれたシアンナさんでも、わからんこと結構あるんですなぁ」

シアンナ「そうね。私は所詮、国王陛下に産み出された道具にすぎなかったから。仕事に必要な情報以外は与えられていなかったの」

サニー「あ……! すんません、前のこと、言うつもりじゃ……」

シアンナ「いいのよ、気にしないで。今の私はもう違うんだから」

ポップ(デコル)「……あの穴、涸れた泉ではござらんか……?」

ビューティ「泉、ですか?」


ハッピー「あ、そう言われてみれば、穴の真ん中に向かって橋みたいなのが伸びてるね」

マーチ「確かに、水を張ったらキレイなスポットになりそうだね」

サニー「ほえー、ポップ、さすがやなぁ。よう見とるで」

ポップ(デコル)「いや……、それほどでもないでござる……」


ポップ(デコル)(……もしあれが泉ならば……、ここは……)

~ デスペアランド 王宮 門の前 ~

ノーブル「着いた……。ここに、"絶望の王" がいるんだね……」


ピース「それにしても……、この門、おっきいね……! どうやって開けるんだろ?」

ハッピー「決まってるよ! こういう時はね、こう言うんだよ!」


ハッピー「開けぇー……、ゴマっ!」


サニー「……って、おとぎ話やないんやから、そんなんで――」


ゴゴゴゴゴゴゴゴッ…


サニー「開くんかい!」

ハッピー「ほらね、言ったとおりでしょ!?」

大臣「ふふ……、にぎやかな事ですね。開けたのは私ですよ」

ビューティ「……! 門の中に人が……!」

マーチ「っていうか……、人……? 全身ローブで覆われてて、顔も見えない……」


シアンナ「大臣……」

大臣「お久しぶりですね、シアンナ様。てっきりすでに消えたものかと思っていましたが……。お元気なようで何よりです。くくく……」


デスペア国王の声『その者は私の補佐をしている "大臣" だ。城内はその者に案内させよう。後をついてくるがいい』


大臣「――と、いうことですので、デスペア国王陛下の下までご案内させていただきます。どうぞこちらへ」


スタスタスタ…


ノーブル「……あからさまにアヤしいけど……、ついて行くしかないみたい」

ビューティ「はい。気をつけていきましょう……」

~ デスペアランド 王宮 廊下 ~

スタスタスタ


ノーブル「それにしても……、ずいぶんキレイなお城だね……」

ハッピー「そうですね……。まるで、シンデレラに出てくるお城みたい……」

ビューティ「"絶望の国" というくらいですから、もっとおどろおどろしい場所を想像していましたが……」

サニー「ほんなら、もっとコワーイ方がよかった? ガイコツあるとか!」

マーチ「サニー! やめてってば!」


ポップ(デコル)(この気品にあふれた装飾……。立派なお城そのものでござる……)


ポップ(デコル)(やはり……、やはりここは……! この国は……!)

~ デスペアランド 王宮 玉座の間 前 ~

大臣「到着いたしました。この向こうが玉座の間でございます」


ビューティ「玉座の間……、王様の座る椅子がある部屋ですね……」

マーチ「……と、いうことは……」

ハッピー「この向こうに、この国で一番エラい王様がいるの……?」


大臣「それでは扉を開きます。皆様、中へお入りください」


ギギギギギッ…


6人「…………」ゴクリ

~ デスペアランド 王宮 玉座の間 ~

マーチ「……広い……」

ビューティ「遠目に玉座と思われる椅子が見えますが……」

ハッピー「あのイスもすごくおっきい……。巨人さんが座るイスみたい……」

サニー「せやけど……、その王サマっちゅーのはどこにおるん? 見当たらへんけど……」


ピース「……あ、みんな、あそこ! イスの上に誰か立ってる!」

ノーブル「遠くてよく見えないけど……、私達と同じくらいの大きさの人みたいだね」

シアンナ「……あの方が、デスペア国王よ」

6人「えっ!?」

ハッピー「あの人が……!?」

バッ

スタッ


ビューティ「椅子から飛び降りて……」


スタスタスタ


マーチ「こっちに向かってくる……!」

ザッ


デスペア国王「こうして会うのは初めてだな、伝説の戦士・プリキュア。私が、デスペアランドの主――」


デスペア国王「デスペア国王だ」


ポップ(デコル)(!!?)


6人「…………」


ピース「……な、なんだぁ。"絶望の王" なんていうからどんな人かと思ったら……」

サニー「うちらとあんまり変わらん、普通の兄ちゃんやんか……」

ノーブル「年格好は、私より少し上……、大学生くらい……?」

カタカタ カタカタ


ビューティ「……? 私のスマイルパクトが震えている……? ポップさん、どうかしましたか?」

ポップ(デコル)「……そんな……、あの方が……デスペア国王……? これは一体……!?」ブルブル

ビューティ「ポップさん……!? ポップさん!」

ハッピー「え……? ポップがどうかしたの、ビューティ?」

ビューティ「あのデスペア国王という方を見てから、ポップさんの震えが止まらないんです! どうしたんですか、ポップさんっ!?」


デスペア国王「……そうか。お前達プリキュアは、メルヘンランドの者の力を借りている。ということは、メルヘンランドの者も共にいるのだな」

デスペア国王「メルヘンランドの者であれば、私のことを知っていても不思議はないか……」


ウルルン(デコル)「なんだアイツ……、何言ってやがるウル……!?」

ポップ(デコル)「……ここに来るまでの間。拙者は何度も、どこかで見たことのある光景を目にしてきたでござる」


ポップ(デコル)「かつては活気に満ちていたであろう、ボロボロの町並み……。あそこにはかつて、絵に関わる妖精達が平和に暮らしていたのでござろう……」

ポップ(デコル)「城のそばにあった、巨大な泉の跡……。あれは "絵の具の泉" ……。リアルランドから送られた "心の絵の具" が溜まる泉。おそらくは、その成れの果て……」

ポップ(デコル)「そして、この城……、あの巨大な椅子……。ロイヤルクイーン様同様に大きな体を持っておられた、ピクチャーランド国王・テンペラ様がいらっしゃったはず……」


シアンナ「……? その妖精はさっきから何を……?」

ノーブル「……ちょ、ちょっと待って、ポップ君。その口ぶりだと、まるで……、まるでここが……!」


ポップ(デコル)「……間違いないでござる。拙者も書物でしか知らなかったでござるが、ここは……、ここは……!」


ポップ(デコル)「ここは! ピクチャーランドそのものなのでござる!!」

6人「!!?」


ビューティ「ここが……」

ハッピー「ピクチャーランド……!?」

ピース「っていうことは……」

マーチ「"デスペアランド" は "ピクチャーランド" だった、ってこと……!?」

ポップ(デコル)「……そうでござる」


サニー「……せやけど、なんでそんな……! ピクチャーランドがデスペアランドに取られてもーた、っちゅーことなん!?」

ポップ(デコル)「……おそらく……違うでござる……」

ポップ(デコル)「……なぜなら、ここに……あのお方がいるのでござるから!」

ビューティ「"あのお方" というのは……、デスペア国王のことですか……?」

ポップ(デコル)「……そうでござる……!」

ポップ(デコル)「荒れ果てたピクチャーランドを見て、なんとも思わないのでござるか……!?」


ポップ(デコル)「リアルランドの人々を苦しめて、なんとも思わないのでござるか……!?」


ポップ(デコル)「なぜ、"デスペア国王" などと名乗っておられるのですか……!? 平和を愛していたと伝え聞く、あなたのようなお方が……!」


デスペア国王「…………」


ポップ(デコル)「お答えくだされ、デスペア国王!! ……いや――」

ポップ(デコル)「ピクチャーランド王子・フレスコ殿!!」


6人「…………え……?」

ピース「あの人が……、わたし達の世界の人達を苦しめてる、一番悪い人が……」

ハッピー「ピクチャーランドの……王子様……?」

ビューティ「間違い……ないのですか……、ポップさん……?」

ポップ(デコル)「メルヘンランドに秘蔵されていた、ピクチャーランドについての書物の肖像画と同じお顔……。間違いないでござる……!」


ノーブル「……シアンナ。シアンナはこの事、知ってたの……!?」

シアンナ「いえ……。私も、ここはデスペアランドという国だとばかり……!」


ポップ(デコル)「フレスコ王子、お答えくだされ! なぜ、人々を苦しめるようなことをするのでござるか!? なぜ、ピクチャーランドがこのようなことになったのでござるか!?」


ポップ(デコル)「……そういえば、ピンチになりながらもメルヘンランドに報せを送ってくださった、あなたのお父上……、国王・テンペラ様はどうされたのでござるか……!?」

ポップ(デコル)「あなたの妹君、マティエール王女はどうされたのでござるか……!?」


ポップ(デコル)「フレスコ王子っ!!」


デスペア国王「…………」

デスペア国王「……私がお前達プリキュアをここに呼び寄せたのは、そのような話をするためではない」


ブワァァァァッッ…!


ハッピー「……! 王子様の体から……黒いもやがふき出してる……!」

ビューティ「あれは……、バッドエナジー……!?」

ノーブル「この間、シアンナ達と戦った時と同じ……!?」

シアンナ「みんな、気をつけて……! デスペア国王のバッドエナジーは、私達とは比べ物にならないくらい強いわ……!」


デスペア国王「私がお前達を呼んだのは、我が部下達ができなかったことを成すため。すなわち……」

デスペア国王「お前たちの持つ "夢の絵の具"。それを私自ら奪うためだ……!」


サニー「……っちゅーことは……、戦わなあかんの……!?」

マーチ「メルヘンランドと仲のいいはずの、ピクチャーランドの王子様と……!?」

ビューティ「先ほどのポップさんの質問に答えてください、王子様! なぜ、私達は戦わなければならないのですか!?」

ピース「そうだよ! どうして、"夢の絵の具" を取ろうとするの!?」

ハッピー「なんにもわからないうちから傷つけあうなんて……、したくないよ!」


デスペア国王「…………」

デスペア国王「ならば、そのまま何もしないでいるがいい」


フッ


マーチ「……えっ? 王子様が……消えた……?」


トッ


デスペア国王「それならば、私も無駄なく "夢の絵の具" が奪える」

マーチ「!? ……後ろ……!? いつの間に――」

デスペア国王「(バッ)」


ドンッ!


マーチ「……ぁっ!?」


ドガァァァァァンッ!


ビューティ「マーチっ!?」


サニー「……何が……起こったんや……?」

ピース「王子様が……、急に消えて、いつの間にかマーチの後ろに立ってた……」

ハッピー「そのマーチに、王子様が手をかざしたと思ったら、触ってもいないのにマーチが吹き飛ばされちゃった……!」

シアンナ「手から、直接衝撃を放ったというの……!?」

サニー「……このっ……! ようもマーチをっ!」バッ

ビューティ「! サニー、無闇にいってはいけませんっ! その方は危険ですっ!」

サニー「関係あるかい! 友達あんなにされて……黙ってられへんわ!!」


サニー「サニー・パァァァンチッ!」ブンッ


パシッ


サニー「!? ……うちのパンチが、受け止められた……。……片手で……!?」

デスペア国王「…………」

ウルルン(デコル)「おい……、どうしたウル、サニー!? もっと本気出すウル!」

サニー「……本気や……、うちは、本気でやっとる……! せやのに……っ!」


グググググッ


デスペア国王「…………」

サニー「ビクともせえへん……!?」

ウルルン(デコル)「サニーの本気のパンチ受け止めて……涼しい顔してるウル……!?」


デスペア国王「(スッ)」

サニー「あかんっ……! 手が、うちの方向いて……」


ドンッ!


サニー「うあぁぁぁぁぁっ!?」


ドガァァァァァンッ!


ハッピー「……そんな……サニーまで……!」

ピース「吹き飛ばされちゃった……!」

ビューティ「マーチより足が速くて……、サニーより力が強いなんて……!」

ノーブル「みんな、その人から離れて! 止まってたら危ないっ!」


タッ


デスペア国王「もう遅い」

ノーブル「!?」

ノーブル(いつの間に、目の前に……!?)

デスペア国王「(スッ)」


ドンッ!

ドガァァァァァンッ!


ノーブル「……う……あっ……!」

ハッピー「ノーブルっ!」

ビューティ「ハッピー、ピース! ここは協力しましょう! 一人ひとりでは太刀打ちできませんっ!」

ピース「う、うんっ!」

ハッピー「わ、わかった!」


ダダダッ


ハッピー・ピース・ビューティ「はぁぁぁぁぁぁっ!」


バッ! バババババッ!

サッ サッ サッ


ビューティ「……!? 3人でこれだけ攻撃しているのに……」

ピース「ちっとも当たらない……っ!?」

ハッピー「そんな……!」

デスペア国王「(スッ)」


ドンッ!


ピース「わぁぁぁぁっ!?」

ハッピー「ピースっ!?」


ドンッ!


ビューティ「きゃぁぁぁっ!?」

ハッピー「ビューティっ!」


デスペア国王「人を気にする余裕があるのか?」スッ

ハッピー「あっ……!?」


ドンッ!


ハッピー「うあぁぁぁぁぁっ!?」


ドガァァァァァァンッ!

ハッピー「……う……うぅっ……」

サニー「……うぁっ……」

ピース「……うぅ……」

マーチ「……くっ……」

ビューティ「……はぁっ……はぁっ……」

ノーブル「……う……」


オニニン(デコル)「そんな……プリキュア達が……」

マジョリン(デコル)「あっという間に……!」

ペロー(デコル)「やられちゃったペロ……!?」

シアンナ「……初めて見る……。これがデスペア国王の力……! これほどなの……!?」


キャンディ(デコル)「みんな! しっかりするクルぅっ!」

ハッピー「……だいじょうぶだよ、キャンディ……!」グググッ…

サニー「せやで……! うちらは今まで、どんなピンチかて……」グググッ…

ピース「がんばって、乗り越えてきたんだもん……!」グググッ…

マーチ「このくらいで、へこたれるもんか……!」グググッ…

ビューティ「この体が……動く限り……!」グググッ…

ノーブル「私達は、立ち上がる……っ!」グググッ…


デスペア国王「……まだ立つか」

ハッピー「まだ何もわからないのに……、あきらめたくなんてないっ……!」

ハッピー「……王子様。わたし達は、あなたのお父さん……ピクチャーランドの国王様から "夢の絵の具" と、それを入れる "レインボーパレット" を預かったんです」

ハッピー「"リアルランドとメルヘンランドを、闇の力から守ってほしい" って」


ハッピー「それなのに、どうしてピクチャーランドの王子様であるあなたが、その闇の力を使って "夢の絵の具" を奪おうとするんですか……!?」

ハッピー「どうしてわたし達の世界の人々を苦しめるんですか……!?」

ハッピー「それがわからないうちは……、"夢の絵の具" は渡せません!」


ハッピー「わたし達は "夢の絵の具" を……、わたし達の "未来に向かう気持ち" を守ります!」


デスペア国王「…………」


デスペア国王「……元より理解してもらうつもりもない。私は "夢の絵の具" が手に入ればそれでいいのだ」

デスペア国王「渡せない、と言うのなら……、力づくで奪うのみ……!」


ザッ ザッ


ピース「……近づいて……来るよ……!」

大臣「…………くっ……!」

大臣「くっくくくく……! くふふふふふっ!」


6人「……?」

マーチ「なに、あの人……。急に笑い出して……?」

デスペア国王「……なんだ、大臣、気がそがれる……! 私の邪魔をするな……!」

大臣「くくくっ……、いえ、申し訳ありません、国王陛下。先ほど、キュアハッピーの言った "どうして自分達を苦しめるのか" という言葉がおかしくて、つい……」

ハッピー「え……? な、何がおかしいの……?」

大臣「おかしいですとも」

大臣「国王陛下が "夢の絵の具" を手に入れようとされているのも」

大臣「国王陛下が闇の絵の具の力をお使いになっているのも」

大臣「リアルランドの人々から心を奪っているのも、全て」


大臣「あなた方、リアルランドの人々のせいなのですから!」

6人「……!!?」


ハッピー「……ど、どういう……こと……?」

サニー「王子様があんなんなってもーたのは……、うちらの世界の人達のせい、っちゅーこと……!?」


大臣「その通りでございます」

デスペア国王「……大臣、余計なことを言うな……!」

大臣「良いではありませんか。あなた様が、リアルランドの人間達のせいでずいぶん心を痛めておられることは、この大臣、よく存じております」

大臣「なればこそ、彼女達はリアルランドの者として知るべきなのではありませんか?」

大臣「自分達が、どれほどピクチャーランドを苦しめてきたかを」

デスペア国王「…………」


ピース「……わたし達が、ピクチャーランドを苦しめた……?」

マーチ「どういうこと……!?」

ビューティ「わかりません……。一体何を……!?」

デスペア国王「……お前達は知っているか。"ピクチャーランド" という世界がどのようにして成り立っているか」

ハッピー「え……?」

ノーブル「確か……、私達リアルランドの人の楽しい気持ちや嬉しい気持ちが "心の絵の具" になって、この世界のエネルギーになっているんだよね」

デスペア国王「そうだ」


デスペア国王「それを踏まえて、この城に来るまでに見た町並みを思い出せ」

サニー「……ボロボロ、やったな……」

ビューティ「ですが、それは闇の絵の具の力によるものではないのですか……?」

ポップ(デコル)「そうでござる! ピクチャー国王・テンペラ様からいただいた手紙には、"ピクチャーランドは闇の絵の具に飲み込まれた" とあったでござる!」

ポップ(デコル)「闇の絵の具の力がピクチャーランドを襲い、荒らしたのではないのでござるか!?」


デスペア国王「……それは違う」


デスペア国王「荒れ果て、誰もいない町。あれは、闇の絵の具の力によるものではない」

デスペア国王「元々そうだったのだ。元々、民は動けず、そのせいで建物は荒れていったのだ」

ポップ(デコル)「……なんと……!? ……しかし、なぜ……」

デスペア国王「…… "絵の具の泉" が涸れ始めたからだ」

ハッピー「"絵の具の泉" って……、来る時お城の近くにあった、大きな穴のこと……?」

デスペア国王「本来、リアルランドから来る "心の絵の具" は、あの "絵の具の泉" にたまっていく」

デスペア国王「ピクチャーランドの民はその絵の具からエネルギーをもらい、生活しているのだ」


デスペア国王「……だが近年、泉に湧く絵の具の量が急速に減り始めた」

デスペア国王「そのおかげで、泉からエネルギーを得ることができなくなった民達は力を失い……、やがて、動かなくなっていった……!」

デスペア国王「今では、この国に動くことのできる民はほとんどいない……! 多くの者が力を失い、眠りについてしまっている……!」

デスペア国王「そのために、ピクチャーランドは闇の絵の具の力に覆われる前に、すでに弱り果てていたのだ……!」


デスペア国王「……プリキュア達よ。このことが何を意味するのかわかるか……!?」

デスペア国王「"心の絵の具" がピクチャーランドに届かなくなった意味。それは……」


デスペア国王「お前達、リアルランドの多くの者達が夢や希望を失い始めたからだ!!」


6人「……え……!?」

デスペア国王「……私は、この城からお前達の世界のことを見てきた」

デスペア国王「夢や希望を抱かず、その場限りの楽しみを繰り返す。そんな者達が大勢いた」

デスペア国王「それでは、"心の絵の具" にエネルギーは宿らない。明日には忘れてしまう、そのような楽しみや喜びではな」


デスペア国王「……実際に採取した、リアルランドの者達の "心の絵の具" を見た際は落胆を隠せなかった……」

デスペア国王「見るも無残な、醜くくすんだ色でしかなかったのだからな……!」


シアンナ「……そういうことだったのね」

シアンナ「私が初めて、濁った "心の絵の具" を収めた時、国王は怒りを露わにしていた」


デスペア国王(回想)『……何と醜い色だ……! 本当にこんなものしか採れなかったのか?』


シアンナ「それは、本当に "心の絵の具" にエネルギーがないことがわかったから……!」

デスペア国王「その通りだ」


デスペア国王「……私は、その状況を変えたかった……」

デスペア国王「次々と国民が眠りにつき、急速に活気を失っていくピクチャーランドを……、なんとかしたかった」

デスペア国王「……どんな手を使ってでも……!」

デスペア国王「そんな時だ。私は、闇の絵の具と出会った」


デスペア国王「怒り、憎しみ、悲しみ、不安……。そんなマイナスの感情の集まってできたもの」

デスペア国王「夢や希望……、そういったプラスのエネルギーを持つ "夢の絵の具" とは正反対の力を持つもの」

デスペア国王「ピクチャーランドを衰えさせた感情の集まり……。本来であれば見たくもないものであったが……、私は、力が欲しかった」

デスペア国王「ピクチャーランドを変えることのできる力が」


デスペア国王「そこで私は思いついたのだ」

デスペア国王「"夢の絵の具" と "闇の絵の具"。この二つの強大な力を組み合わせれば、ピクチャーランドを救うことができるのではないか、と」

ノーブル「……ちょ、ちょっと待って。それじゃあ王子様、あなたは、ピクチャーランドを救うために "夢の絵の具" が欲しい、っていうことなの……?」

デスペア国王「そうだ。この国を救うために必要だからだ」

サニー「せやったら、最初っからそう言ってくれればええやないですか! そんなんやったら、うちらかていくらでも力貸しますわ!」

ビューティ「そうです! 私達が争う必要も、私達の世界の人々を苦しめる必要もないはず! 互いに手を取り合い、共に歩むこともできるのではないですか!?」


大臣「くっ……、くはははははははっ!」


ピース「……!? あの人、また笑って……!」

デスペア国王「……大臣……!」

大臣「度々申し訳ありません。くくく……。ですが、プリキュア達の言うことがどうにもおかしくて……!」


大臣「"力を貸す"? "手を取り合い、共に歩む"?」

大臣「国王陛下がされようとしていることを知っても、同じことが言えますでしょうか?」


ポップ(デコル)「フレスコ王子がやろうとしていること……?」

デスペア国王「……私は、"夢の絵の具" を使って、お前達リアルランドの人間達に、希望のエネルギーを与えようとしている」

デスペア国王「"夢の絵の具" をほんの少しずつ心に宿らせるのだ」

デスペア国王「そうすれば、人間達の心は活気付き、質の良い "心の絵の具" を産む」

デスペア国王「それによって、心の絵の具のエネルギーが安定して送られてくれば、ピクチャーランドは元の姿を取り戻すはずだ」

デスペア国王「そのために、"夢の絵の具" が必要なのだ」


6人「…………」


サニー「……ようわからんけども、それってええことなんとちゃうの……?」

ハッピー「そうだね……。"夢の絵の具" の力で、みんなの心が元気になる、ってことだよね……」

ノーブル「そんな風に使うなら、私達はいくらでも――」


デスペア国王「だが、それをやるために、邪魔な物が一つある。それは……」


デスペア国王「人間達が元々持っている "心" だ」


ハッピー「…………え?」

デスペア国王「お前達、リアルランドの人間の心は弱い」

デスペア国王「ちょっとしたことですぐに不安や恐怖などのマイナスな感情に染まってしまう」

デスペア国王「お前達もリアルアンドの者ならば、覚えがあるのではないか?」


デスペア国王「精一杯頑張ってもうまくいかず、悲しみに暮れ」

ピース「…………」

サニー「…………」


デスペア国王「先の見えない不安に心を曇らせ」

ビューティ「…………」


デスペア国王「どうにもならない現実に日々苦しめられ」

ノーブル「…………」


デスペア国王「そうして、やがては少しづつ前に進む気持ちを失っていく。そういったことが、お前たちにもあったのではないか?」

マーチ「…………」

ハッピー「…………」


デスペア国王「そのような弱い心は邪魔なのだ。それでは、せっかく "夢の絵の具" の力を与えても、すぐに心を濁らせてしまうだろう」


デスペア国王「……だが、最初から "夢の絵の具" の力のみを持つ心しかなければどうだ?」

デスペア国王「それであれば、心がマイナスな感情で濁ることもない。常に良い心の絵の具を産み出すことだろう」

デスペア国王「だから私は、リアルランドの人間達の心を一度消すことにした」

デスペア国王「そして、"夢の絵の具" によって作り変えるのだ。希望しか抱かない、より良い "心" に」


6人「…………」


マーチ「……何それ……。あたしたちの……、みんなの……心を消す……?」

ピース「わたし達の心が……弱いから……?」

ハッピー「……そんなことしたら……、わたし達の世界のみんなは……どうなっちゃうの……?」


デスペア国王「今持っている感情も、記憶も、全てが一度失われ、消える」

6人「!!」


デスペア国王「そのために必要になるのが "闇の絵の具" の力なのだ」


ビューティ「そのようなことを、どうやって……」

ドックン


6人「!?」


サニー「な、なんや、今の音……!?」

ノーブル「心臓の音、みたいだったけど……」


シアンナ「……この音は……、以前にも聞いたことがあるわ……」

ノーブル「知ってるの、シアンナ……!?」

シアンナ「ええ」


シアンナ「私達は、"夢の絵の具" を奪うこと以外に、あなた達リアルランドの人々の濁った心を集めることも命じられていたの」

シアンナ「詳しいことは教えてもらえなかったけれど……、その目的が確か……、濁った心を使って作った闇の絵の具による "怪物" の育成」

シアンナ「この音は、その怪物の鼓動の音だと聞かされたわ」

ノーブル「"怪物" ……?」

デスペア国王「そう。その "怪物" こそが、リアルランドの人間達の心を消すためのもの」

デスペア国王「"リアルランド中の全ての人間の心を食う" という能力を持った、最大最強のアキラメーナ」


デスペア国王「その名も "デスペア"。全てのマイナスの感情を集めてできた、究極の怪物だ」


ポップ(デコル)「心を食べる怪物……、"デスペア" ……!」


ウルルン(デコル)「しかも、マイナスの感情が集まってできた怪物って……」

オニニン(デコル)「それじゃあ、まるで……!」

マジョリン(デコル)「バッドエンド王国の "皇帝ピエーロ" だマジョ……!」

キャンディ(デコル)「あんなすごいのが……、また産まれるクル……!?」


デスペア国王「私はそのために、あえて闇の絵の具の力を手にした」

デスペア国王「"デスペア" を作り、操るために、闇の絵の具の力が必要だったからだ」

シアンナ「……私達は、そのために濁った心の絵の具を集めていたのですね」

デスペア国王「そうだ」


デスペア国王「今、"デスペア" は着々と成長を続けている。いずれはこの世界を飛び出し、リアルランドへと向かうだろう」

デスペア国王「お前達、リアルランドの人間の、弱く、もろい心を食い尽くすために」


6人「…………」


大臣「……さすがに青ざめておいでですね、プリキュアの皆様」

大臣「おわかりいただけましたでしょうか。先ほど私の言った、"手を取り合うことなどできるのか" という言葉の意味が」

大臣「闇の絵の具によって産まれた怪物 "デスペア" が皆様の世界の人々が今持つ心を食いつくし」

大臣「空っぽになった心を "夢の絵の具" で染め上げる」

大臣「そして、あなた方リアルランドの人々は、希望しか持たない、新しい人類として生まれ変わるのです!」

大臣「ピクチャーランドを、元の活気ある国に戻せるだけの "心の絵の具" を産み出すために!」


ハッピー「……そんな……そんなことって……!」

ピース「人の心が……、全部消されちゃうなんて……」

サニー「いくら希望にあふれてたって……、そんなんもう、その人がいなくなってまうのと同じやないか……!」


大臣「……どうです? これでもまだ、"手を取り合って共に歩もう" と言えますか? キュアビューティ?」

ビューティ「…………」

ノーブル「……そんな……、そんな方法しかないの……!? ピクチャーランドを救うために、そんな方法しかなかったの!?」

ノーブル「そんなことしなくったって……、もっと……、もっと他に方法があるはずだよ!」


デスペア国王「……その方法とはなんだ?」

ノーブル「えっ……」

デスペア国王「ピクチャーランドを元に戻すために、リアルランドの人間の心を常に希望で満たす。そんな方法が他にあるのか? 言ってみろ」

ノーブル「……そ、それは……」


デスペア国王「……それがお前達自身でできないから、ピクチャーランドが衰えたのだ!!」


ゴォォォォォォォォッ!!


ピース「王子様の体から……、黒い光が吹き出して……!」

ビューティ「……なんて強いバッドエナジー……!」


デスペア国王「……私は、お前達リアルランドの人間達が憎い」

デスペア国王「すぐにマイナスの感情に負け、心のエネルギーも保てない、弱い心しか持たないお前達が憎い……!」

デスペア国王「なぜだ……。なぜ、そんな者達のために、我が国の民が苦しまなければならないのだ……!」

デスペア国王「心の絵の具が少なくなり……、民達は次々に動けなくなっていった……」

デスペア国王「そんな民達を見ているしかなかった私の気持ちが、お前達にわかるか!?」

デスペア国王「このような "絶望" に満ちた国を……、私はピクチャーランドとは呼びたくなかった……!」


デスペア国王「だから、この国の名前を改めたのだ! 絶望の国、"デスペアランド" と!」


デスペア国王「……私は、この国を救うためならどんなことでもする……。それを邪魔する者は、何者であっても許さん……!」

デスペア国王「リアルランドの人間達をかばい、私を止めようとした我が父、テンペラであろうと……!」

デスペア国王「お前達、伝説の戦士・プリキュアであろうとも!!」

デスペア国王「それが私……、この国を治める者、"デスペア国王" の務めなのだ!!」


ゴォォォォォォォォッ!!


ポップ(デコル)「なんという凄まじい憎しみのエネルギー……! フレスコ王子の国を想う心が、そのまま、リアルランドの人々への憎しみになってしまったのでござるか……!」

ビューティ「それが全て、私達のせいだというのですか……? 心を強く保てない、私達のせいだと……」


ハッピー「……そんなこと……ないよ……っ!」

ハッピー「私達が、夢や希望を持てない弱い心しかない、だなんて……、そんなことないっ!」

サニー「ハッピー……!」

ハッピー「だってわたし達は……、自分達で "未来に向かう気持ち" を見つけてきた……!」

ハッピー「その気持ちの力のおかげで、ムリだったはずのシアンナさんを助けることだってできた……!」

ハッピー「あきらめなければ未来へ進める強い心の力が、わたし達にはあるはずだよ!」


ハッピー「だから、わたし達の世界の人達の心を消させたりなんか、絶対させない!」

ハッピー「そんなことをしなくったって、わたし達は心のエネルギーを生み出していける!」

ハッピー「そのことを……王子様にわかってもらうんだぁっ!!」


バァァァァァァァァッ!!


大臣「……これは……、キュアハッピーの体が輝いて……?」


シアンナ「私達を救ってくれた、"夢の絵の具" の……光の力……!」

サニー「……うちらの心の強さを見てもらう、か。……せやな!」

ピース「わたし達、どんな時でも負けないで、ガンバってきたもんね……!」

マーチ「守りたいもののためにも……、ここで負けるわけにはいかないっ……!」

ビューティ「私達プリキュアは、心を力にする戦士……。であれば……!」

ノーブル「王子様を止めてみせる! 私達の心の強さを見せるんだ!」


バァァァァァァァァッ!!


シアンナ「みんな、輝き始めた……!」

シアンナ「……そう、彼女達にはこの強い心の力がある……! "未来に向かう気持ち" …… "希望" が!」

シアンナ「それがあればきっと、デスペア国王も止められる!」

ハッピー「みんな、"レインボー・アーチ" をやろう!」

ハッピー「この間のシアンナさん達の時みたいに、王子様のバッドエナジーを……、わたし達への憎しみの心を吹き飛ばそう!!」

5人「うんっ!!」


ハッピー「キャンディ、お願い!」


ポンッ


キャンディ「わかったクルぅ!」

パカッ

キラキラキラキラ


キャンディ「"夢の絵の具" よ……、プリキュアのみんなに、未来に進む力を!!」


ブワァァッ!


6人「6つの夢を、今こそ一つに!!」


6人「未来へ届け! 希望の架け橋!!」


6人「プリキュア!! レインボー・アーチっ!!!」


ブワァァァァァァァァッ!!


大臣「おお……、すさまじい光の力が、プリキュア達の手から放たれた……! 国王陛下……!」

デスペア国王「…………」

デスペア国王「おぉぉぉぉぉっ!!」


ドバァァァッ!!


マーチ「! 光が……受け止められた……!?」

ハッピー「まだだよ! わたし達は……もっと、輝けるっ!!」


6人「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


ブワァァァァァァァァッ!!


デスペア国王「……!!」

大臣「さらに光が強く……!」


デスペア国王「……これが……これが、"夢の絵の具" の力……!!」


デスペア国王「これが……、リアルランドの者達の……、"未来に向かう希望の力" ……っ!!」

デスペア国王「…………やはりこの程度か……!!」


グシャァッ!!


ハッピー「…………えっ?」


マーチ「……"レインボー・アーチ" が……、あたし達の、心の光が……」

サニー「握りつぶされて……、一瞬で……消えてもた……」

シアンナ「そんな……! "オーバードロウ" を使ってパワーアップした私達 3人でさえ……、あの光は止められなかったのに……!」


ノーブル「はぁっ……はぁっ……、そんな……!」

ビューティ「私達の……全ての力が……、こんなに簡単に……消されてしまうなんて……!」

ピース「今ので……もう、力が……!」ガクッ

デスペア国王「(ザッ)」

ハッピー「(ビクッ)」


ザッ ザッ ザッ


ハッピー「……こっちに……近づいてくる……!」


ブルッ


キャンディ(デコル)「……!? ハッピー、ふるえてるクル……!?」

ハッピー「えっ……!? な、なんで……!?」ブルブル


デスペア国王「……それが、お前達の心の弱さだ」

サニー「心の……弱さ……」


デスペア国王「自分達の全ての力をぶつけ、それでもなお傷一つ負わない私を見て、無意識のうちにこう思ったのだろう」

デスペア国王「"もう無理だ"、"できるわけがない" と」

ピース「そ、そんなこと……」


デスペア国王「"そんなことない" と言い切れるか? ならばなぜ震える? 先ほどまでの威勢はどうした?」

マーチ「……! こ、これは……!」ブルブル


デスペア国王「自分でもわかるはずだ。心を塗りつぶしていく黒い感情……。この場から逃げ出したいほどの "不安"、"恐怖" ……」

デスペア国王「それらが、どうしようもなく湧き上がってくるのが」

ビューティ「…………」


デスペア国王「所詮、お前達の心の強さなど、その程度なのだ」

デスペア国王「どれほど強くなった気でいようが、どれほどの困難を乗り越えてこようが、ただ一度、大きな壁にぶつかればたやすく弱ってしまう」

デスペア国王「それが、お前達の限界なのだ」

ノーブル「……くっ……」

シアンナ「……みんな、しっかりするのよ! この間の、私達との戦いを思い出して!」


ノーブル「……! シアンナ……」


シアンナ「あなた達は、全ての力を出した後も、暴れる私を抑えて、救ってくれた! そんなあなた達なら、まだ立ち上がれる力があるはず!」

シアンナ「どんな時でも、立ち向かっていけば奇跡は起きる! それをあなた達は証明してくれた!」


シアンナ「だから立って! あきらめないで!!」


ハッピー「……シアンナさん……」

ハッピー「……ぐっ……ぐぅぅぅっ……!!」グググッ

キャンディ(デコル)「ハッピー……、立てるクル……!?」

ハッピー「ツラいけど……、立たなきゃ……! ここで立たなきゃ……、わたし達だけじゃない……、わたし達の世界のみんなの心がなくなっちゃう……!」

ハッピー「だからわたしは……、わたしは……、絶対に――」


ガシッ


ハッピー「!!」

デスペア国王「どうした? 立ち上がるのではないのか? 私は、お前の肩を掴んだだけだ。振り払って立って見せるがいい」

ハッピー「…………」ブルブル

キャンディ(デコル)「ハッピー……、どうしたクル……? ガンバるクルぅっ!!」

ハッピー「……わかってる……、わかってるよ、キャンディ……」


ハッピー「……でも……でも……」


ハッピー「体が……動かないの……!」

パァッ…


みゆき「…………え……?」


あかね「な、なんでや……!? 変身が……!」


やよい「解け……ちゃった……!?」


なお「そ、そんな……、どうして……!?」


れいか「私達が……、力を使い果たしてしまったから……!?」


デスペア国王「違う。そうではないことは、自分自身がよくわかっているはずだ」


デスペア国王「お前達プリキュアは、"心を力に変える"、そう言ったな」

デスペア国王「そのお前達が力を失った、ということは、答えは一つしかあるまい」


はるか「……それって……」

デスペア国王「お前達は諦めたのだ。私という障害に屈し、心の力を失ったのだ」


6人「……!?」


シアンナ「……プリキュア達が……、みんなが……あきらめた……?」

キャンディ「そんな……! みんな、しっかりするクルぅ!」

ウルルン「おい、あかね! 何やってるウル! こんなとこでヘコたれるお前じゃねーウル!?」

あかね「…………」


オニニン「やよい! いつものガンバりはどうしたオニ!?」

やよい「…………」


マジョリン「"勇気の戦士" がおびえてどうするマジョ!? 立つマジョ、なお!」

なお「…………」


ポップ「れいか殿……! せっかく見つけたれいか殿だけの "道" 、失ってもいいでござるか!?」

れいか「…………」


ペロー「はるかさん、はるかさんっ! はるかさんはもう強くなったペロ!? 自分とちゃんと向き合えるようになったペロ!? こんなところで負けないでペローっ!」

はるか「…………」


キャンディ「みゆき……! スマイルクル……! いつものスマイルを取り戻すクル……! みゆきぃぃーっ!!」

みゆき「…………」


デスペア国王「何も応えられない、か。……ここまでだな」

デスペア国王「それでは、お前達にとどめをさし、"夢の絵の具" をいただくとしよう」

デスペア国王「……さらばだ。伝説の戦士・プリキュア」


スッ


シアンナ「国王の手が……みんなに向かって……!」


6人「…………」


シアンナ「み……、みんなぁぁぁーっ!!」

威厳のある老人の声『そこまでだ! これ以上、プリキュアに危害を加えることは私が許さん!!』


シアンナ「!? ……何……? 声が、部屋中に響き渡って……」


デスペア国王「……この声……、まさか……!」


バァァァァァァッ…!


キャンディ「ありは……何クル……? 光った……大きなおじいちゃんが出てきたクル……!」

ポップ「あの巨体……。全身を包む輝く光……。間違いないでござる……。あのお方は……!」


デスペア国王「ピクチャー国王・テンペラ……!」


テンペラ王「むんっ!」


バァァァァァッ!


デスペア国王「ぐぅっ……!?」


ドガァァァァァァンッ!


シアンナ「テンペラ王が手から放った光が……、デスペア国王を吹き飛ばした……!?」

ポップ「さすが世界の王……! とてつもない力でござる……!」

テンペラ王「誰か、ここにメルヘンランドの者はおるか」

ポップ「はっ! 拙者、ロイヤルクイーン様に代わり、メルヘンランドを一時預からせていただいている者、ポップでござる!」

ポップ「あなた様からのお報せを受け取って以来、その身を案じ申しておりました……! ご無事で何より……!」

テンペラ王「そうか……、あの手紙を受け取ってくれた者か。感謝する」


テンペラ王「……ところで、プリキュア達の様子はどうだ? 無事なのであろうか?」

ポップ「……それが……」


6人「…………」


ポップ「幸い大きなケガはないものの、フレスコ王子の強大な力を前に、心を弱らせてしまい……!」

キャンディ「みんな、プリキュアになれなくなっちゃったクルぅっ!」

テンペラ王「……なんとむごいことを……! やはり、7つの光が揃わないままでは、あやつを止めることはできなんだか……!」

テンペラ王「人をこれほどまでに苦しめて……。このようなことが許されると思うのか……! この……バカ息子が……!」


デスペア国王「……愚かだと……? 私のことを、愚かというのか……!」

デスペア国王「愚かなのはどちらだ! テンペラ!!」


ゴォォォォォォォォッ!!


テンペラ王「むぅっ……!? なんと巨大なバッドエナジー……!」

デスペア国王「……私は……、倒れゆくピクチャーランドの民のため、あなたに何度も相談した……」

デスペア国王「"リアルランドの者達の心に手を出してでも、我が民達を救うべきでないか" と」

デスペア国王「それに対し、あなたは "リアルアンドの者達を信じよ。いずれは強い心を取り戻してくれる"、そうとしか言わなかった……」


デスペア国王「だが……、そこにいるプリキュア達を見よ! 私の力に屈し、心を弱らせ、絶望しきった者達を! このような弱き者達をどうやって信じよというのか!?」

デスペア国王「もはや、このような者達に頼ることなどできん……! 私が、リアルランドの者達の心を作り変える以外に、ピクチャーランドを救う方法はない!」

デスペア国王「それを邪魔するというのなら……、我が父であろうとも容赦はしない!!」


ゴォォォォォォォォッ!!


テンペラ王「この力……、フレスコの憎しみは……これほどまでに強く……!」


テンペラ王「……仕方あるまい」

テンペラ王「"マティエール" よ、聞こえるか」

マティエールと呼ばれた少女の声『はい、聞こえておりますわ、お父様』

テンペラ王「フレスコは私が抑えるが、あやつの力は予想以上に強大になっていた……。私では止められないかも知れぬ……」


テンペラ王「だからマティエールよ。先ほど申し付けた通りに頼む」

マティエールの声『……お父様……』

テンペラ王「幼きお前にはさぞつらいと思うが……、お前が希望を守るのだ」

マティエールの声『……わかりました。わたくしもピクチャーランドの王女としての務めを果たします』

テンペラ王「……頼むぞ、我が娘よ」

バッ


シアンナ「テンペラ王の懐から、何か飛び出した……。あれは……幼い少女……!?」


タタタタタッ


シアンナ「こちらに走ってくる……」


マティエール「プリキュアのみなさま、お初にお目にかかります! わたくし、ピクチャーランドの王女・マティエールと申します!」

マティエール「恐ろしい目にあい、ツラい想いをされていることかと思いますが……、落ち込んでいる時間はありません! 一刻も早く、こちらから脱出を!」


ガンッ!


シアンナ「それは…… "扉のキャンバス"!」

マティエール「これを使えば、リアルランドに帰ることができます! さぁ、お早く!」


6人「…………」


マティエール「……!? みなさま、どうなされたのですか!? 早く、脱出を!」

シアンナ「……まだ、動けないでいるの……!?」

デスペア国王「マティエール……。それに、あれは "扉のキャンバス" ……! プリキュア達を逃がすつもりか……!」

デスペア国王「我が念願の "夢の絵の具" がそこにあるのだ……! 逃がさん!!」


バッ


テンペラ王「ここは通さんぞ、バカ息子よ!」

デスペア国王「……テンペラ……っ!」

テンペラ王「我が身を盾にしても、世界の希望・プリキュアを守る! 私がいる限り、やすやすと思い通りにはならないと思え!」

デスペア国王「……おのれ……!!」

デスペア国王「……大臣! 何をしている! お前がやつらを仕留めるのだ!」

大臣「かしこまりました」


大臣「……ただ、念のためお聞きしたいのですが、それは "このローブをまとったままで" ということで、ということでしょうか?」

デスペア国王「やつらはもう満足に動けん。そのままでも問題なかろう……!」

デスペア国王「それより早く行け! 絶対に逃すな!」

大臣「……はい、国王陛下」


大臣(小声)「……やれやれ、人使いの荒いことで」ボソッ


バッ

シアンナ「……何をしているの、立ちなさい!!」


6人「……!」


シアンナ「あなた達は、"未来" を諦めていた私に言ったわね。"怖くても、一歩を踏み出さないと始まらない" と」

シアンナ「あなた達にとって、今がその時でしょう!? 苦しい目にあったからといって立ち止まっては……、あなた達の "未来" もなくなってしまうのよ!?」

シアンナ「だから立って! 立つのよ! 立って、"未来" に向かうの! あなた達ならそれができるはずよ!」


シアンナ「あなた達は……、私を救ってくれたあなた達は……! そんなに弱くない!!」


はるか「……シアンナ……」

スタッ


大臣「そうは参りません」

シアンナ「……! 大臣……!」

大臣「国王陛下の命で "夢の絵の具"、いただきに参りました」


大臣「先ほど、キュアハッピーと共にいるロイヤルクイーンが、"夢の絵の具" が入ったアイテム "レインボーパレット" を出したのを見ました。あなたが持っているはずですね?」

大臣「さぁ、出していただきましょうか……、"夢の絵の具" を!」

みゆき「……!」ビクッ

キャンディ「クル……!」


マティエール(プリキュアのみなさま……、力の失った今のままでは危険ですわ……!)

マティエール(どうしよう……、どうすれば……!?)


シアンナ「…………」

ザッ


シアンナ「そこまでよ、大臣」

大臣「……何のつもりですか、シアンナ様? 私の前に立ちふさがるとは」

シアンナ「みんなには指一本触れさせないわ」

大臣「何をするかと思えば……。あなたはここ、デスペアランドで、国王陛下にお作りいただいた者でしょう?」

大臣「そのご恩を忘れ、国王陛下の邪魔をするというのですか?」

シアンナ「…………」


シアンナ「私は "シアンナ" よ。ただのシアンナ。アキラメーナだった……、"未来" のない私はもういない」

シアンナ「だから私は、その "未来" をくれた彼女達を全力で守る」


みゆき「……シアンナ……さん……」

大臣「…………」


大臣「まったく、呆れたものですね……」

大臣「"言うことを聞かない道具"。これ以上無意味なものがこの世にあるでしょうか……!?」


大臣「……いいでしょう。でしたら、もう何も言いません」

大臣「消えなさい! あなたの後ろのプリキュア達と共に!」


カッ!


ポップ「あの大臣という者の手から黒い光が!」


シアンナ「……はぁぁぁぁぁぁっ!!」バッ


ドバァァァァァッ!


マティエール「あの方が……、筆を盾に黒い光を受け止めた……!」

大臣「ほう、バリアーですか! さすがは元 "闇の描き手"、なかなかやりますね!」

シアンナ「……みんな、早く行きなさい。その "扉のキャンバス" から、あなた達の世界に逃げるのよ」


やよい「えっ……!?」

れいか「で、ですが……」

なお「あなたは……どうするの……?」


シアンナ「私は、あなた達が無事に逃げ切るまで、ここで大臣を食い止めるわ」


はるか「シアンナ……!」

大臣「くっ、くくくくくっ! いやぁ、大変ご立派ですねぇ、シアンナ様! 自分を犠牲にしてまで、プリキュアの皆さんを逃がすおつもりですか!?」

シアンナ「…………」

みゆき「……えっ……? 犠牲って……、どういうこと……?」


大臣「シアンナ様には、前ほどの力は残っていないのですよ! 以前のあなたであれば、私の攻撃くらいはじき返せたはず!」

大臣「今は懸命にこらえていますが……、このバリアーもいつまでもつやら!」

大臣「いいんですか、プリキュアの皆さん!? このまま、シアンナ様を一人残して帰ってしまって!」


大臣「このままではシアンナ様……、消えてなくなってしまいますよ?」


6人「……!!」


シアンナ「……みんな、惑わされないで。私は大丈夫。だから早く――」


ガクッ


シアンナ「……っ!?」

大臣「ほおら、無理をするから、脚が崩れてきていますよ? くくくくっ!」


はるか「…………」

はるか「……そんな……」

はるか「ダメだよ……、そんなこと……」

はるか「シアンナは……、せっかく "未来" を手に入れたのに……。せっかくこれから……楽しいこと……いっぱいできると思ったのに……!」

はるか「消えちゃうなんて、そんなのダメだよ!! 私もいっしょに――」


シアンナ「早く行きなさい! 今のあなたに何ができるの!!?」


はるか「……!?」ビクッ


シアンナ「……聞いて、はるか。……みゆき、あかね、やよい、なお、れいか」

シアンナ「私は……、私達、"闇の描き手" は、あなた達に出会えて、変われたのよ」


シアンナ「ビリーズは、あなた達から共にいることの楽しさを学んだ」


シアンナ「セルリアは、あなた達から苦しみを分け合うことを学んだ」


シアンナ「そして私は……、あの二人から "未来" を目指すことを学んだ」


シアンナ「全部、全部あなた達のおかげなのよ。私達自身ですらあきらめていたことを、あなた達があきらめず、より良い未来へ進む力をもっていたおかげ」


シアンナ「そう。あなた達にはその力があるのよ」


シアンナ「だから、決してあきらめないで。みんなの未来を守ることを。あなた達ならきっとできる」

シアンナ「そのあなた達の未来、私に守らせて」


シアンナ「私に未来をくれた、大切なあなた達の "未来" を守る。それが、私がやっと見つけた、私の "未来に向かう気持ち"、私の "やりたいこと"、私の "夢"」


シアンナ「お願い。初めてできた私の夢、叶えさせて」


はるか「…………」

はるか「……でも……、こんなの……こんなのないよ……!」


はるか「……約束……したのに……!」


はるか「"夏祭り、一緒に行こうね" って……約束したのに……っ!!」


れいか「はるかお姉さん……」


シアンナ「…………」

シアンナ「……はるか、あなたらしくないわね。私は "未来" を諦めたわけじゃないわ」

はるか「…………え?」

シアンナ「あなた達を無事に守れたら、私も必ず後を追うわ」


シアンナ「私は、こんなところで終わる気はないのよ。だってまだまだ、私だけの "未来" を楽しみたいもの」

シアンナ「……あかね。あなた、オコノミヤキという食べ物を作るのが上手なのよね。今度、食べさせてもらえるかしら?」

あかね「…………ええです! めっちゃ元気でるとびっきりおいしいお好み焼き、作りますわ!」


シアンナ「……やよい。あなたは絵を描くのがとても上手なのね。よければ、一緒に絵を描きにどこかへ行きましょう」

やよい「…………はいっ! シアンナさんなら、きっとステキな絵がかけますよ!」


シアンナ「……なお。"サッカー" という体を動かすことが得意みたいね。教えてもらえる?」

なお「…………もちろんです! あたしの兄弟たちも連れてきますから……、みんなでサッカーしましょう!」


シアンナ「……れいか。あなたはとても物知りなのね。リアルランドではわからないことも多いから、色んなことを教えてちょうだい」

れいか「…………はい! 任せてください! 私にできることがあれば、精一杯お役に立ちます!」


シアンナ「……みゆき。あなたは私を助けるため、最後まで頑張ってくれたわね。あなたならきっと、どんな未来にでも行ける。その強い心、忘れないで」

みゆき「…………はい! ……そうだ、未来といえば……、わたし、絵本作家になりたいんです! 今度、わたしの絵本、読んでもらえませんか!?」

シアンナ「エホン……、絵のついた物語だったかしら。……ええ、いいわ。楽しみにしてる」

シアンナ「…………はるか」

はるか「…………」


シアンナ「私達を一番気にかけてくれたのが、あなただったわね、はるか」

シアンナ「あなたとは、これからもずっと、もっと色んなことを一緒にしたい。色んなことを話したい」


シアンナ「だから……」

シアンナ「いつかきっと、また会いましょう」ニコッ


はるか「……! ……いつか……きっと……?」


シアンナ「ええ。いつか、きっと」


はるか「…………」

はるか「…………みんな、行こう。私達は……進まなきゃ……!」

みゆき「はい……! シアンナさんの気持ち……、ムダにしません……!」

シアンナ「……ありがとう、みんな」


はるか「王女様、お待たせしました。"扉のキャンバス" を開いてください!」

マティエール「……わかりました!」


マティエール「開きなさい、"扉のキャンバス"! 私達を、リアルランドへと導くのです!」


ガチャッ ギギギギギ…


マティエール「さあ、みなさま! 絵の中に飛び込んでください! お早く!」

大臣「……チッ……! "扉のキャンバス" が開いてしまった……!? ……行かせませんよ!!」

大臣「シアンナ様! もう遊びはおしまいです! さっさと消えなさい!!」


バァァァァァァッ!!


シアンナ「……っ!! 黒い光が……さらに強く……っ!?」


シアンナ「……でも……っ!」

シアンナ「……負けない……、あきらめない……っ!」


シアンナ「私は……、私は……っ!」


シアンナ「絶対に! みんなの未来を守ってみせる!!」


ドガァァァァァァァァンッ!!

大臣「はぁっ……、はぁっ……、まったく、いらない手間をとらせてくれますね……!」


モウモウ…


大臣「爆発で起きた煙でよく見えませんが……、さて、どうなったでしょうか……」


ガラーーーン…


大臣「……これは……、誰もいない……? あるのは……砕け散ったキャンバスの破片だけ……」


ヒューーーン…


大臣「む……? あの光の玉は……、青い心の絵の具……? どこかへ飛んでいく……」

テンペラ王「むぉぉぉっ……!?」


ドガァァァァンッ!


大臣「……これは……テンペラ王……! 吹き飛ばされてきた、と、いうことは……」

デスペア国王「私の勝ちだ。テンペラにはもう、戦う力は残っていない」

大臣「おお……! さすがは国王陛下……!」


デスペア国王「……それより大臣。プリキュアは……、"夢の絵の具" はどうした?」

大臣「……それが……」

デスペア国王「……逃がしたのか……!!?」

デスペア国王「私は "デスペア" に闇の絵の具の力を送るため、ここを動けん……」

デスペア国王「"扉のキャンバス" とて、世界を越えるほどの力を持つ貴重なアイテム……。プリキュア全員を呼び寄せるほどの数はもうない……」

デスペア国王「もうこのような機会はないというのに……!!」

大臣「……申し訳ございません」


デスペア国王「……まあいい。先ほど戦ってみて、取るに足らない相手だということはわかった」

デスペア国王「あれならば、"夢の絵の具" を奪うのは、新しく作る "闇の描き手" に任せても問題あるまい」

大臣「ところで国王陛下。テンペラ王はいかがいたしましょう?」

デスペア国王「また牢獄に放り込んでおけ。ただし、今度は自ら封印などさせないよう、闇の絵の具で力を奪った上でな」

大臣「かしこまりました」


テンペラ王「…………」

テンペラ王(……私の力ではフレスコを止めることはできなかったか……。あやつのバッドエナジーの力……、これほどとは……)

テンペラ王(やはり、世界を救うことができるのはプリキュア……、そなた達しかおらぬ……)


テンペラ王(頼んだぞ、プリキュア……。そして、マティエール……。全ての世界の希望となってくれ……!)

~ 七色ヶ丘市 3丁目の空き地 ~

パァッ…!


6人「…………」


れいか「ここは……、確か三丁目の空き地……」

なお「ということは、あたし達……」

やよい「帰ってきたんだ……、わたし達の町に……!」

みゆき「…………」

あかね「……みゆき? 暗い顔して……、だいじょぶか?」

みゆき「あ、うん……、だいじょうぶだよ、あかねちゃん。……ただ……」

あかね「ただ?」


みゆき「……シアンナさん、どうなったかな、って思って……」


あかね・やよい・なお・れいか「…………」

はるか「……私は、大丈夫だと思うな」

みゆき「……え?」


はるか「だってさ、シアンナ、別れ際に、"いつかきっと、また会いましょう" って言ったんだよ? "いつかきっと" って」

はるか「…… "いつかなんてない" って言ってた、あのシアンナが」

はるか「それってさ、シアンナはあきらめてないってことじゃない? "未来" を信じることを」


はるか「だから、私もあきらめないよ。シアンナとまた会うことを」

はるか「……王子様――デスペア国王はすごく強かった……。今の私達じゃどうにもならないくらいに」

はるか「でも、このままあの人を放っておいたら、この世界の人達の心がなくなっちゃう」

はるか「そしたら、シアンナが帰ってくるところもなくなっちゃうよ」


はるか「だから、どんなに苦しくたって、私はもう負けない。あきらめない。私は絶対、この世界を守るんだ」

はるか「シアンナを笑顔で迎えるために」


5人「…………」

れいか「……そうですね。つらく険しい "道" かもしれませんが、あきらめるわけにはいきませんね」


なお「うん。あたし達それぞれの大切な人を守るために、怖くても、勇気を持って立ち向かわなきゃいけないんだ」


やよい「……わたし、シアンナさんに大切なことを思い出させてもらった気がする。あきらめないでガンバる、ってこと」


あかね「お先真っ暗やけど……、そんな時やからこそ、元気にやってかなあかんな!」


みゆき「うんっ! みんなと一緒なら、きっとできるよ! 今度は、王子様にもわたし達の気持ちの強さ、わかってもらおう!」


みゆき「だから……」


みゆき「苦しい時こそ笑っていこう!」ニコッ

あかね・やよい・なお・れいか・はるか「うんっ!」ニコッ

みゆき(シアンナさん、ありがとうございました。くじけそうなわたし達を助けてくれて)


みゆき(わたし達、なんとかガンバっていきます。苦しくっても、みんなで力を合わせて)


みゆき(だから……、また会いましょう)


みゆき(いつか、きっと)





つづく

次回予告

みゆき「すごく強かったデスペア国王……。何とかしなきゃいけないけど、わたし達に何ができるんだろう……」

みゆき「けど、落ち込んでなんていられない! この世界のみんなのために、わたし達の大切なもののために、ガンバらなくっちゃ!」

みゆき「だから、こんな時こそ笑うんだ! 今日は夏祭り! 思いっきり遊ぶぞーっ!」


みゆき「次回、『スマイルプリキュア レインボー!』 "笑顔のために! 夏祭りの誓い!"」


みゆき「みんな笑顔でウルトラハッピー!」

お読みいただいた方、ありがとうございました!


スミマセン、、今回はここまでです。

本来であれば、予告どおり 25, 26話同時アップする予定でしたが、
昨日・今日と仕事が入ってしまい、26話が半分くらいしかできてないのです。。\(^o^)/アップムリオワタ

26話は来週のアップとさせてもらいたいと思います。


それでは、よかったら次回もまたよろしくお願いします!


第1話 ~ 第11話 『スマイルプリキュア!』第2期を SS で作るスレ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1360385907/)
第12話 ~ 第20話 『スマイルプリキュア レインボー!』 Part 2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1366529393/)

第21話 >>4 から
第22話 >>125 から
第23話 >>247 から
第24話 >>350 から
第25話 >>486 から

それではお返事タイムです。


> ボーズさん

おお、、そうでしたか。。
お知り合いの漫画家さんを紹介していたけるのかと思いましたが、、こちらの早合点だったようです
完全にこちらのカン違いなので、お気になさらず

せっかくなのでガタケットにはいってみようと思います!
新潟行くの初めてなのでお会いできるかはかなりキビしそうですが、
もしお会いできたらよろしくお願いします!


> 483さん

> シアンナ(蛇)のビジュアルって>>1の中ではどうなってるか教えてほしい。

ホントに "腕がついた蛇" のイメージなんですが、伝わりづらかったですかね。。
どう説明したらいいだろ。。

この間『バトルスピリッツ ソードアイズ』に出てきた
"白蛇帝 アルデウス・ヴァイパー" から羽と剣とって、色を黒くしたらイメージどおりですかね。
もっとメジャーなキャラいそうですが、パッと浮かばなかった。。

わかりづらかったらスミマセン。。



以上になります。
ではまた来週!

乙でした

今回の話は原作の「スマイルプリキュア!」に対する否定・反論に感じられた(否定しても話が面白いからいいと思うけど)
>>533のデスペア国王の「その場限りの楽しみを繰り返す」っていうのが完全にスマイルプリキュアのことを指していると思った
(ストーリー全体を通しての話の繋がりとかをほとんどなくして、「1話(その場)限りの楽しみを繰り返す」ってのがスマイルの特徴だと私は思うので)

この作品の敵組織の「悲しみ等のネガティブな要素を一切否定する」っていう考え方も、ピエーロが言う本当の悲しみを理解せずに打ち破ったアニメのみゆき達に似てる気がするし…
(やろうと思えば、悲しいことやバッドエンドも必要(バッドエンドな絵本もあるし)っていう和解エンドもできたのにしなかった(悪役が必要ってのはあった気がする))

これって作者である>>1が「レインボー!はこういうテーマにしよう」って狙ったの? それとも私が考えすぎ?
できれば答えてくれると嬉しいです

『スマイルプリキュア レインボー!』

このあとすぐ!

~ ふしぎ図書館 ~

マティエール「改めまして、自己紹介させていただきます」

マティエール「わたくし、ピクチャーランド王女・マティエールと申します。どうぞよろしくお願いいたします」ペコリ


あかね「あ、これはどーも、ごていねいに」ペコリ

れいか「お姿は私達よりも年下――中学1年生ほどなのに、とても気品にあふれた振る舞いですね……」

やよい「ホントに "お姫様" ってカンジ……」

なお「な、なんかていねいすぎて、こっちまでかしこまっちゃうな……」

みゆき「こちらこそよろしくね! 王女様!」

はるか「……みゆきちゃんはいつも通りだね」

マティエール「それでは、早速ですが本題に入らせていただきます」

マティエール「……デスペア国王を止めるため、これから何をしないといけないのか」


6人「……!」ブルッ


キャンディ「……みんな、ふるえてるクル……」

ポップ「仕方ないでござる……。フレスコ王子――デスペア国王にあれほどの力を見せられてしまっては……」


みゆき「……だいじょうぶだよ、キャンディ、ポップ」

みゆき「確かに、デスペア国王の力はすごかったし……、コワかったよ……」

みゆき「でも……、それでも、ガンバっていかなきゃ……! デスペア国王の好きにさせたら、わたし達の世界の人達がタイヘンなことになっちゃう……!」


れいか「そうですね……。デスペア国王は、ピクチャーランドのエネルギーを産む私達リアルランドの人々の心を、希望しか持たないように作り変えようとしています」

なお「でも、そのために、すぐ弱っちゃうあたし達の今の心を全部消そうとしてる……。そんなことしたら、みんながみんなでなくなっちゃうよ……!」

やよい「……確かに、わたし達はすぐ不安になったり、怖がったり、落ち込んだりしちゃうかもしれないけど……!」

あかね「それでも、みんなの心には、ちゃんとガンバっていける強さがあるはずなんや……!」

はるか「それを証明するためにも、私達はもっともっと心を強く持って、デスペア国王にわかってもらうんだ。"心を作り変える必要なんかない" って」


みゆき「だから、ツラくってもガンバっていくんだ……! みんなの笑顔を守るために……!」


マティエール「……不安な気持ちに立ち向かう、そのお姿。今のみなさまからでも、そのお心の強さは十分に伝わってきます。そのお心こそ、きっと強い希望の光になることでしょう」

マティエール「……わたくしも、精一杯務めを果たしたいと思います」

マティエール「伝説の戦士・プリキュアのみなさまと力を合わせ、リアルランド・メルヘンランド・ピクチャーランドに平和を取り戻すという使命を」


マティエール「全てお話しいたします。これまでに何があったのか。そして、これからどうするべきかを」




スマイルプリキュア レインボー!

第26話「笑顔のために! 夏祭りの誓い!」



マティエール「……わたくし達の国、ピクチャーランドは、お兄様――今はデスペア国王となってしまったフレスコ王子の言う通り、弱り果てておりました」

マティエール「みなさまもお聞きになったとおり、リアルランドから良い心の絵の具が届かなくなりつつあったためです」

マティエール「それはやはり、リアルランドのみなさまが夢や希望を持ちづらくなってしまったからかもしれません……」


はるか「……何かをあきらめることで心の絵の具が濁ってしまうなら、そういう人は結構いるかもしれないね……。……私も、そうだったし」

マティエール「思えば、そういった事情があったからこそ、先の大事件が起こったのかもしれないですね……」

ポップ「それは……、バッドエンド王国との戦いのことでござるな」

ウルルン「そういやぁ、バッドエンド王国や皇帝ピエーロは人間達のマイナスの感情でできてたウル」

マジョリン「そもそもそんな国ができてしまったのも、人間達がバッドエナジーを出しやすくなってたからかもしれないマジョ……」


マティエール「リアルランドの人々のプラスの感情のエネルギーは、心の絵の具としてピクチャーランドに取り込まれます。ですが、マイナスの感情のエネルギーはピクチャーランドには入れません」

マティエール「そういったエネルギーが溜まってバッドエンド王国ができてしまったのでしょう……」

マティエール「わたくし達のエネルギーの源である心の絵の具が少なくなり、国民のみなさまは徐々に動けなくなっていきました」

マティエール「そのことには、お兄様だけでなく、国王であるお父様も、そしてわたくし自身も、心を痛めておりました……」


マティエール「親しい方々が次々に眠りについてしまうことがつらく、悲しんでおりましたが、そんな時は、お父様が決まってこう励ましてくれました」

マティエール「"リアルランドの人々を信じるのだ、マティエールよ。今にきっと、強い心を取り戻してくれる" と」

マティエール「わたくしもその言葉を信じ、リアルランドのみなさまを信じることにいたしました」


マティエール「……ですが、お兄様はお父様のその言葉を聞き入れることができませんでした」

マティエール「元々お兄様はとても国を愛するお方で、国民のみなさまからもとても慕われておりました」

マティエール「そんなお兄様は、常日頃からわたくしにこう言っていたものです」


マティエール「"私はこの国を守る、立派なピクチャーランド国王になるんだ" と……」


マティエール「……そのピクチャーランドへの愛が、逆にお兄様をゆがめてしまったのでしょう……」

マティエール「"他の世界の人々を犠牲にしてでもピクチャーランドを守る" という最悪の方法を選んでしまったのです」


マティエール「そのきっかけとなったのが "闇の絵の具" でした。みなさまもご存知でしょう、マイナスの感情エネルギー――バッドエナジーの塊です」

マティエール「あれは、ちょうど半年ほど前……、ピクチャーランドを守ってくださっていた、先代ロイヤルクイーン様のお力が消えてしまったすぐ後だったでしょうか……」

マティエール「どうやってか闇の絵の具を手にしたお兄様は、その力を使ってピクチャーランドを救うべく、リアルランドの人々の心を作り変えることをお父様に提案し始めたのです」

マティエール「もちろん、お父様は断固として反対いたしました。わたくしも同じです。いくら自分の国が危ないからといって、他の世界の人々を苦しめてよいはずがありませんから」

マティエール「国民のみなさまも、自分達が動けなくなるのも構わず、わたくし達の意見に賛成してくれていました」

マティエール「そんなことが続いたある日、ガマンできなくなったお兄様は、国を救うため、ついにお父様に戦いを挑んでしまったのです……」

マティエール「あの時の、怒りと苦しみに満ちたお兄様の顔……、今でも忘れられません……」

マティエール「それはもう、国を愛する優しい "フレスコ王子" の顔ではなく、国の絶望を背負う "デスペア国王" の顔でした」


マティエール「お兄様の強大な力に危険を感じたお父様は、"夢の絵の具" を守ることを第一に考え、ピクチャーランド 3つの秘宝のうちの 2つをメルヘンランドにお送りしました」

マティエール「そして、お父様しか知らない秘宝の秘密を守るため……、また、わたくしの身を守るため……。お父様はわたくしを抱いて、みずからに強力な封印をかけたのです」


ポップ「……なるほど。それがあの時メルヘンランドに届いた手紙なのでござるな」

はるか「それじゃあ、その時送った 2つの秘宝っていうのが、"夢の絵の具" を納める "レインボーパレット" と……」

れいか「藍色と紫色の "夢の絵の具" を使った "プリキュアの絵本" のページだったのですね」

マティエール「その通りですわ」


マティエール「ですが、お兄様を止められるお父様が動けなくなったことで、ピクチャーランドは闇に包まれてしまいました……」

マティエール「そうして、みなさまが見たあの "デスペアランド" が誕生したのです」

マティエール「……以上が、これまでのいきさつになります」


やよい「……ポップの言ってたとおり、今までわたし達の世界を襲ってた "デスペアランド" は、ピクチャーランドそのものだったんだね……」

なお「デスペアランドなんていう国は、最初っからなかったんだ……」

あかね「……ん? ちょお待って。王女様、さっき、"ピクチャーランド 3つの秘宝" って言わんかった?」

あかね「けど、最初にうちらんとこに送られてきたのは、"レインボーパレット" と、残りの "夢の絵の具" の 2つだけやな? ……っちゅーことは……」

キャンディ「……! ピクチャーランドの秘宝は、もう 1個あるクル……!?」

マティエール「はい。そのことについてもこれからお話させていただきます」

マティエール「その最後の秘宝こそが、わたくし達に残された希望の一つなのですから」


マティエール「……お兄さ――デスペア国王の力はとても強大です。それはみなさまもよくご存知かと思います」

マティエール「ですが、希望はあります。あのデスペア国王にも対抗できる希望が」

ポップ「それは一体……」

マティエール「まず一つは、"プリキュアが 7人全員揃うこと" です」

やよい「あっ……! それってつまり……!」

みゆき「最後の一人……、"紫のプリキュア" を見つけるってことだよね!?」

マティエール「はい、その通りです」


マティエール「ピクチャーランドには、"夢の絵の具" についてこのような伝説があります」


マティエール「"七つの色が一つになる時、全ての闇を払う光とならん"」


ポップ「うむ。拙者が見つけたメルヘンランドの書物にも、その言い伝えが残ってござった」

ポップ「その "光" がどのようなものを意味するのかはわからないでござるが、大きな希望であることに間違いはないでござろう」

はるか「じゃあ、まずは私に続く最後の一人、7人目のプリキュアを見つけないといけないね」

れいか「あ……、ですが、プリキュアに変身するために力を貸してくれる妖精さんは、もういないのではなかったでしょうか……」

ポップ「うむ、そうでござる……。そこが今のところの一番の悩みでござるな……」

マティエール「そうだったのですね……。それで、まだ 6人しかおられなかったと」

みゆき「そうなんだ……。どうしたらいいかなぁ……」

マティエール「……大きな課題になってしまいましたね……」

ポップ「今、メルヘンランドでもパートナーとなる妖精を探してもらっているところでござる。根気よく探していくしかないでござるな」

マティエール「それでは、ひとまず最後のプリキュアは置いておいて、もう一つの希望のお話をいたしましょう」

みゆき「もう一つの希望?」

マティエール「はい。先ほど、あかね様がおっしゃった、ピクチャーランドの秘宝についてです」

マティエール「お父様からお預かりした、最後の秘宝……。それが、こちらです」


コトッ


やよい「これって……筆?」

みゆき「わぁー、きれい……! 柄についてる七つの色の宝石がキラキラ光ってる……!」

なお「まさに "お宝" って感じだね……!」


マティエール「これこそ、"夢の絵の具"・"レインボーパレット" に続く、ピクチャーランド 3つ目の秘宝」

マティエール「希望の絵筆・"ホープブラッシュ" です」


れいか「希望の絵筆……」

はるか「"ホープブラッシュ"……」


マティエール「"夢の絵の具" のもつ強力なエネルギー。その真の力を完全に解放することができるのはこの筆のみ、と、お父様はおっしゃっていました」

マティエール「そのため、これだけはデスペア国王の手に渡してはならない、と、お父様がわたくしと自分ごと封印していたのです」

マティエール「"夢の絵の具" と "ホープブラッシュ" を使うことによって産まれる真の力、それは……」


マティエール「"描いた願いを実現させる" というものです」


全員「えっ!?」


なお「そ、そんなことできるの……!?」

あかね「それってつまり……、どんな願いもかなえられる、っちゅーこと……!?」

はるか「それがホントなら……、確かにすごいね……!」


マティエール「おっしゃる通り、この力はあまりに強大なものです。そのため、この事はピクチャーランドの王であるお父様と、メルヘンランドの女王であるロイヤルクイーン様しか知りませんでした」

マティエール「そもそも、ピクチャーランドの秘宝自体が、国王しか知りえないほど重要なものだったのです」

マティエール「わたくしも、封印されている間にお父様に聞かされるまで、秘宝の存在を知りませんでした。それは、デスペア国王も同じだったはずです」


はるか「……そっか。だから、シアンナ達も最初は "夢の絵の具" のこと知らなかったんだ。デスペア国王が "夢の絵の具" について知ってれば、どこにあるかもわかってたはずだもんね」

やよい「……あっ! ちょっと待って!」

れいか「どうしたんですか、やよいさん?」

やよい「もし、"夢の絵の具" とその筆で願いがかなえられるなら、"みんな平和になりますように" ってお願いしたらいいんじゃないかな!?」

みゆき「あっ、それだよ! やよいちゃんあったまいいーっ!」

やよい「えへへ……」


マティエール「……それが……、そう簡単にはいかないのです……」

れいか「そうなのですか?」

マティエール「"夢の絵の具" と "ホープブラッシュ" を使って願いをかなえる方法は二つあります」


マティエール「一つ目は、お父様・お兄様・そしてわたくし、ピクチャーランド王家の三人が願いを一つにして描くことだそうです」

みゆき「……あっ……、それじゃあ……」

マティエール「……はい。今はお兄様がいないため、この方法は不可能です……」


マティエール「二つ目は、メルヘンランドの方の力と、リアルランドの方の強い想いを合わせることです」

ポップ「と、いうことは、つまり拙者達メルヘンランドの妖精の力と……」

れいか「私達リアルランドの人の強い気持ちを組み合わせる、ということですね」

マティエール「その通りです。そこに、ピクチャーランドの力である "夢の絵の具" が加わり、3つの世界の力が合わさってとても強い力を生み出すのです」

マティエール「この間、デスペアランドにみなさまが来られた時、とても強いお力を感じました」

マティエール「あれは、この "ホープブラッシュ" を使わずに "夢の絵の具" の力を解放していたのではありませんか?」


なお「それってもしかして、あたし達が何回か使ったあの "光る力" のことかな?」

れいか「たぶんそうね。王女様の言う通り、私達の強い気持ちと妖精のみなさんの力が合わさって、"夢の絵の具" の力を引き出していたんじゃないかしら」

あかね「あ。せやけど、今までそれができとったんやから、今のうちらならもう願いかなえられるんとちゃうか!?」

みゆき「そうかも! せっかくだから試してみようよ!」

あかね「王女様。この筆、ちょっと借りてもええ?」

マティエール「はい、もちろんです。でしたら、描くのはこちらのキャンバスをお使いください」


シュバッ


なお「わっ!? 何もないところからキャンバスが出てきた!?」

マティエール「わたくし達ピクチャーランド王家のものは、絵に関することであればある程度自在にできる能力があります。今後もこういったことがありましたらお任せください」

あかね「ほえーっ、便利やなぁ……。っちゅーわけで、やよい、ほれ。なんか描いてみ」

やよい「えっ!? わ、わたしがやるの?」

れいか「私達の中で一番絵がうまいのはやよいさんですからね。ふさわしいかと思います」

はるか「この筆と自分の "夢の絵の具" を使って、何か描いてごらんよ」

やよい「は、はい、やってみます!」


やよい「えーっと……、わたし達の強い気持ちと、妖精さんの力を合わせるんだっけ……。それじゃあ、オニニン、一緒にやってみよ?」

オニニン「がってん承知だオニ!」

やよい「…………」ペタペタ

オニニン「むむむむ……」

全員「…………」ゴクリ


やよい「……できた!」

マティエール「お上手ですね……! ですが、この絵はなんでございますか?」

やよい「あ、これはね、わたしの描いてる漫画のキャラクターで、"ミラクルピース" っていうの」

やよい「ミラクルピースは平和のヒロインだから、"ここから出てきてみんなを平和にしてくれたらいいな" って思いながら描いたんだ」

はるか「……それで、結果は?」


シーーーーーーン…


全員「…………」


ポップ「……何も起こらないでござるな」

ウルルン「おい、オニニン! お前、ちゃんと気合込めたウル!?」

マジョリン「やる気足りないんじゃないマジョ?」

オニニン「おれ様はちゃんとやったオニ! じゃあ、お前らもやってみたらいいオニ!」

なお「はいはい、みんな、ケンカしないの」


みゆき「なんでかなぁ……? 王女様、わかる?」

マティエール「……いえ、わたくしも、お父様に先ほどの方法を聞いただけでしたから……。わたくしにもこれ以上はわかりません……」

やよい「わたしの気持ちが足りなかったのかなぁ……」

あかね「せやけど、あの "光る力" かてそうポンポン出るもんやなかったし。そう気にせんでもええんやない?」

やよい「うん……。ありがと、あかねちゃん……」

はるか「……けど、せっかく新しい希望が見えてきたと思ったのに……」

れいか「7人目のプリキュアの見つけ方も、この "ホープブラッシュ" の使い方も、まだよくわかりませんね……」

なお「結局振り出しに戻っちゃったかぁ……」


やよい「……わたし達、これからどうしたらいいのかなぁ……」

あかね「せやなぁ……。早よ何とかせんとあかんし……。せめて、今なんかやれることがあればええんやけどなぁ……」

みゆき「そうだよねぇ……」


6人「うーーーーん……」


マティエール「……申し訳ございません。わたくしが、もっとみなさまのお役に立てれば……」

みゆき「そんな! 気にしないでよ! わたし達をガンバって助けてくれたんだもん! それだけで十分だよ!」

マティエール「そう言っていただけると、少し気が楽になりますわ……。ありがとうございます、みゆき様」

みゆき(……とは言ったものの……、ホントにどうしよう……)

みゆき(みんな、どうしていいかわからなくって、不安になっちゃってる……。……わたしだって……)


みゆき(……でも、どうにかしてガンバらなきゃ。わたし達を助けてくれたシアンナさんのためにも)

みゆき(何とかみんなで明るい気持ちになって、前に進みたいな……)


みゆき(…………そうだ!)

みゆき「ねえ、みんな! 夏祭り行こうよ! 今、ちょうどやってるよね!?」

全員「……え?」


あかね「みゆきぃー……、いきなり何言い出すん? 世界中の人みんながアブないんやで? どうしたらええか考えなあかん、っちゅーこんな時に、夏祭りやなんて――」

みゆき「こんな時だからこそ、だよ! あかねちゃん!」

みゆき「今はまだ、どうしたらいいかわからないけど……、そのことを考えてるだけじゃ、どんどん不安になってっちゃうよ!」


みゆき「はるかさんだって、前に言ってましたよね! "ツラい時はじっとしててもしょうがない" って!」

はるか「……うん、言ったね」

みゆき「だからせめて、みんなで騒いで、楽しく遊んで、気持ちだけでも明るくしようよ! 笑顔でいようよ! そしたら、なんだかうまく行く気がするんだ!」


全員「…………」

れいか「……そうですね。確かにこうしていても始まりませんね」

なお「デスペア国王にコテンパンに負けちゃったり、シアンナさんと離れたり……」

やよい「色々タイヘンなことがあったけど……」

あかね「前に進むためにも、うちらが元気でおらんとあかんな! "こんな時こそ" な!」

みゆき「うんっ、そうだよ! 不安なんかに負けないように、明るくいこうっ!」


あかね・やよい・なお・れいか「おーっ!」


はるか「…………」


はるか(……シアンナ。あなたの言う通り、みゆきちゃんにはふしぎな力があるみたい。みんなを前に進む元気を……笑顔をくれる、そんな力が)

はるか(私も、できる限り頑張ってみるよ)

みゆき「ねえ、王女様も一緒に夏祭り行かない?」

マティエール「わたくしも……ですか?」

みゆき「うんっ! みんなで行った方がきっと楽しいよ!」

マティエール「…………」


マティエール「……ですが……、わたくしには全ての世界を救うための使命があります……」

マティエール「今も苦しんでいらっしゃるお父様や国民のみなさま……、それに……お兄様を差し置いて、わたくしだけ楽しむわけには……」

ポップ「王女様……」

れいか「……王女様。お父様と離れ、お兄様と争うことになってしまい、とてもおつらいことと思います。私にも兄がいるので、お気持ち、少しだけわかります……」

れいか「ですが、気負ってばかりでは心も疲れてしまいます。まずは楽しむことをで心を軽くし、それから事に当たってもよろしいのではないでしょうか?」

あかね「せやで! さっきみゆきもゆーとったやろ? 何するにも元気がないとあかん、って!」

やよい「それに、外に行けばもしかしたら、これからどうしたらいいかのヒントも見つかるかもしれないよ! じっとしてるなんてもったいないよ!」

なお「七色ヶ丘の夏祭りはスゴくにぎやかなんだから! きっと王女様の気持ちも明るくしてくれるよ! あたしが保障する!」

みゆき「だから、ね? 行ってみようよ、王女様!」


マティエール「…………」


マティエール「……わかりました。希望の戦士であるみなさまがそうおっしゃるのであれば、わたくしもお供させていただきますわ」

みゆき「……! やったぁっ! そうこなくっちゃ!」

あかね「うわぁ、なんや楽しゅーなってきたな!」

やよい「うんっ!」

はるか「それじゃ、さっそくみんなで夏祭りに行く準備しようか! 私、家に行って浴衣に着替えてくるね!」

あかね「あっ、うちもそうしよ! 去年買うてもろたばっかのがあるし!」

はるか「王女様はうちにおいでよ。私が昔着てた浴衣がまだあるはずだから、それを貸してあげる!」

マティエール「ありがとうございます、はるか様!」


れいか「ではみなさん一度おうちに帰って準備をしましょう。その後、夕方にお祭り会場に集合、ということでよろしいですか?」

全員「はーいっ!」

みゆき「それじゃあみんな、また後でね!」

全員「うんっ!」

~ デスペアランド 王宮 玉座の間 ~

デスペア国王「――以上が、お前の使命だ、新たな "闇の描き手" よ。わかったか」

紫色の髪の少女画家「だいじょーぶ! ちゃーんと憶えたよ! その "プリキュア" ってやつらから "夢の絵の具" ってのを取ってくればいいんでしょ?」

大臣「それと、闇の絵の具を作るために、人間達の濁った心の絵の具を集めることもお忘れなきよう」

紫色の髪の少女画家「おっけー、おっけー! ちゃんとやるから任せといて!」

デスペア国王・大臣「…………」


デスペア国王「……では行け、リアルランドへ。そして、お前の使命を果たすのだ」

紫色の髪の少女画家「はーい! 行ってきまーす!」シュバッ


デスペア国王・大臣「…………」


大臣「……新しい "闇の描き手" 、完成したのはよいですが、どうも使命感に欠ける気がしますね……。あの者、ちゃんとこなせるのでございましょうか……」

デスペア国王「……私の闇の絵の具を扱う技術も上達している。実力は前の 3人よりも高いはずだ。問題はないだろう」

大臣「……それに、背格好といい、心なしか少し、マティエール王女に似ていたような気もしますな。この間、久々にお姿を見て、懐かしまれたのでしょうか?」

デスペア国王「……私がピクチャーランドの王女に対して情を抱いたとでも言いたいのか?」

デスペア国王「見くびるな……! 口が過ぎるぞ、大臣……!」ギロッ

大臣「……これは申し訳ありませんでした」


デスペア国王「では、リアルランドでの使命は奴に任せ、私はここで、いつも通り "デスペア" の育成を行う。大臣、お前は闇の絵の具の精製を急ぐのだ」

大臣「かしこまりました」

大臣(……国王陛下は "問題ない" とおっしゃいましたが……、やはりあの者ではきちんとできるのか不安なところがありますねぇ……)

大臣("夢の絵の具" はもちろんですが、しっかり濁った心の絵の具の方も集めてもらわないと。闇の絵の具はどうしても必要ですからね。国王陛下にとっても、……私にとっても)


大臣(……ここは、違う手を打っておいた方が良いかもしれませんね……!)

~ 七色ヶ丘神社 夏祭り会場 ~

みゆき「みんなーっ、お待たせーっ!」

あかね「おっ、みゆき来たな! これで全員集合やな!」


みゆき「わぁっ、王女様、浴衣とっても似合うね! かわいいーっ!」

はるか「私が昔着てた浴衣だよ。ちょうどサイズが合うのがあってよかった」

マティエール「このようなお召し物は初めてで……。おかしくありませんでしょうか?」

やよい「ううん! キレイな金髪に浴衣姿ですごくいいよ! 漫画のキャラクターにできそうなくらい!」

マティエール「そ、そうですか? ありがとうございます」


れいか「はるかお姉さんも、すらりとした長身に藍色に染められた浴衣がよくお似合いで……、素敵です……!」

はるか「……え?」

あかね「ほんまやな! さすがれいかのいとこだけあって、和服姿がよう似合うで!」

はるか「……そ、そうかな? ありがとう」

あかね「れいかも、もうちょっとしたらこんな風に美人さんになんで、きっと!」

れいか「え……!? あ、あかねさん、からかわないでください!」

あかね「にししっ。照れんでもええやないの!」


はるか「…………」


はるか(……和服姿、か)


れいか「……? はるかお姉さん? どうかしましたか? 何か考え事でも?」

はるか「……あ、ううん。ゴメン、なんでもないよ。ちょっとぼーっとしてただけ」

れいか「そうですか……? それならいいのですが……」

ワイワイワイ


マティエール「……それにしても、人がたくさんいらっしゃいますね……! 小さいお店もたくさん……。あれはなんですか?」

なお「ああ、あれはね、"屋台" っていって、おいしいものを食べさせてくれたり、色んな遊びをさせてくれるんだよ」

マティエール「そうなのですか。それはどういう――」

あかね「説明するより見た方が早いで! えーっと、こういうの、なんていうんやったっけ……。新聞は……、発見に……鹿?」

れいか「"百聞は一見にしかず"。物事について百回聞くよりも、一度見た方がより理解できる、ということわざですね」

あかね「ああ、そうそう、それや! ま、とりあえず行ってみよ! ほれ!」グイッ

マティエール「あ、あかね様! あまり強く手を引かないでくださいませ!」


タタタタタッ…


なお「まったく、あかねは強引だなぁ」

れいか「ですが、ああして明るくしようと努めてくださるのがあかねさんのいいところだと思います。では、私達も参りましょうか、はるかお姉さん」

はるか「…………」

れいか「……はるかお姉さん? 大丈夫ですか?」

はるか「……あ、うん。ゴメン、またぼーっとしてたみたい。なんでもないよ! さ、行こうか!」

れいか「……はい」


れいか(……はるかお姉さん、なんだか様子が変……。何かあったのでしょうか……)

~ 七色ヶ丘神社 夏祭り会場 ヨーヨー釣り屋台 ~

マティエール「あ。あれはなんでございますか? いろんな色の丸いものが水に浮かんでいて、とってもキレイ……」

みゆき「ああ、あれはね、ヨーヨー釣りっていうんだよ!

あかね「あそこに浮いとる水の入った風船をヒモで釣るんや! おもろいで!」

マティエール「よーよー、ですか?」

みゆき「さっそくやってみよう! おじさーん! ヨーヨー釣りやらせてくださーいっ!」

ヨーヨー釣り屋「元気いいねぇ、おじょうちゃん! 一回 100円だよ!」

みゆき「それじゃあ、王女様の分はわたしが……(ゴソゴソ) 、はい、二人分お願いします!」

あかね「うちもやんで! おっちゃん、三人分や!」

ヨーヨー釣り屋「はいよ! じゃあ、これ釣り用のヒモ三つね。ガンバってね!」

みゆき「それじゃ、王女様。わたしがお手本見せるから、おんなじようにやってみて!」

マティエール「はい! よろしくお願いいたしますわ」

みゆき「水の中にあるヨーヨーの先の輪ゴムを、このヒモの先の釣り針に引っ掛けて……」


ポチャッ


みゆき「そーっと、そーっと……、持ち上げて……」

マティエール「…………」ゴクリ


みゆき「たぁぁぁっ!」


バチャッ!


みゆき「……よしっ、やったぁ! 取れ――」


ブチッ ボチャンッ


みゆき「あ」

マティエール「ヒモ、切れてしまいましたね……」

みゆき「な、なんでー!? もうちょっとだったのにぃ!」


あかね「あはははっ! みゆきぃー、残念やったなぁ!」

みゆき「……はっぷっぷー」

あかね「ヨーヨー釣りはコツがあんねんで。みゆきも王女様もよう見とき! うちが手本見せたる!」

あかね「あんな、ヨーヨー釣りのヒモはな、ながーく水につけとるとふやけて切れてまうねん。せやから、こうやってあんまり水につけずにサッと……!」


スッ


あかね「……今やっ!」


バチャッ!


あかね「よっしゃぁっ、取れたで――」


ブチッ ボチャンッ


あかね「あ」

マティエール「……また切れてしまいましたね……」

あかね「えー、なんでやー? 濡らさんように気ぃつけたのにー……」

ヨーヨー釣り屋「途中までは良かったんだけどねぇ。勢いよく引っ張りすぎちゃったね」

あかね「それでもあかんの? んー、くやしいわー……!」

ウルルン「ウルッフッフッフ! 口ほどにもねぇウル、あかね!」

あかね(小声)「うっさいわ! ぬいぐるみのフリする、ってことで連れてきとるんやから、大人しくしとき!」

あかね「ま、まぁ、でもこんな感じや。お手本にはならんかったけども……」

みゆき「とりあえず、王女様もやってみなよ!」

マティエール「は、はい! やってみます!」


マティエール「…………」ソーッ


ポチャッ


マティエール「……ヒモを水につけすぎず、ゆっくりと引き上げれば……」


スーッ… パチャッ


マティエール「……あっ、つ、釣れました?」

みゆき「おぉっ! やったぁっ! 取れたよ、王女様!」

マティエール「これでよかったのでしょうか?」

ヨーヨー釣り屋「大成功だよ、おめでとう! ヨーヨー、持っていきな!」

マティエール「こちら、いただけるのでしょうか?」

ヨーヨー釣り屋「もちろん! 落とさないように気をつけてね!」

マティエール「は、はい! ありがとうございます!」

みゆき「それじゃあ、この輪ゴムのところを指にかけて……、前に押し出すようにしてみて」

マティエール「こう、ですか」ビヨーン


パチュンッ


マティエール「きゃっ、勝手に戻ってきましたわ……!」

あかね「それでええんや! そんな感じで、何回も行ったりきたりして、遊ぶおもちゃやねん!」

マティエール「こんな感じでしょうか」


パチュンッ パチュンッ パチュンッ


マティエール「わぁ……!」

みゆき「そうそう、そんな感じ! じょうずじょうず!」


マティエール「……なんだか、自分で取ったもので遊ぶというのは、より面白く感じるものですね」

みゆき「そうだね! ガンバった分だけ楽しくなれるんだと思うよ!」

あかね「王女様がガンバったおかげや! 良かったな!」

マティエール「はいっ! みゆき様、あかね様のおかげです! ありがとうございます!」

~ 七色ヶ丘神社 夏祭り会場 かた抜き屋台 ~

やよい「じゃあ王女様! 次はここで遊ぼうよ!」

マティエール「こちらはなんでございますか?」

やよい「これはね、"かた抜き" っていって、ちっちゃいお菓子の板から決まった形を針でくり抜く遊びなんだ」

マティエール「なるほど……。やっている方を見ると、板ごと割れてしまったりして、キレイにくり抜くのは難しそうですね」

やよい「うん。でも、うまくいけば景品がもらえたりするんだよ! やってみようよ!」

マティエール「はい! ごいっしょさせていただきますわ」

やよい「よぉーし! がんばっちゃうんだから!」

オニニン(小声)「やよい、がんばるオニ! 漫画で鍛えた器用さを見せる時オニ!」

やよい(小声)「任せて、オニニン!」


カリ… カリ… カリ…


やよい「あのね、王女様。焦るとすぐ割れちゃうから、少しずつ、少しずつ針で削っていかなきゃ――」

マティエール「できましたわ!」

やよい・オニニン「えっ!?」


パキッ


オニニン「や、やよい! やよいの板、割れちゃったオニ!」

やよい「あーっ! ホントだ! ビックリして針刺しちゃったんだぁ……!」


マティエール「店主の方、これでよろしいのでしょうか?」

かた抜き屋「あ、ああ、カンペキだよ……。おめでとう……」

やよい「ホントにすごい……。キレイに取れてる」


やよい「でも、どうやったの、王女様? 初めてなのに、こんなに上手なんて……」

かた抜き屋「おじさんからも頼むよ。あんな早わざ、見たことねぇ……。タダでいいから、もう一回やってみせてくんねぇか?」

マティエール「あ、はい。わたくしでよければ」

マティエール「それでは、始めますね」


カカカカカカカカッ!


マティエール「はい、できました」

やよい「も、もう!? 驚くヒマもなかった……」

オニニン「手元が見えなかったオニ……」

マティエール「わたくし、彫刻も少々たしなんでおりまして。そのおかげだと思いますわ」

やよい「さ、さすが絵の国の王女様……。すごい……」

~ 七色ヶ丘神社 夏祭り会場 ~

なお「どう、王女様。祭り、楽しんでる?」

マティエール「わたくし、リアルランドのお祭りは初めてでございますが、色々な遊びがありまして楽しいです!」

なお「そう、喜んでもらえたならよかった!」


なお「でもね、王女様。祭りといえば忘れちゃいけないのが……、食べ物屋台!」

マティエール「食べ物、ですか?」

なお「うん! おいしいものがいっぱいあるんだ。いくつか買ってきたから、見せてあげるよ!」

なお「まずはこれ! ソース焼きそば!」

みゆき「わぁ! いいにおい~……! おなか空いてきちゃった!」


なお「次はこれ! お好み焼き!」

あかね「あ、それ、うちの父ちゃんが出しとる屋台やないの?」

なお「うん! おいしそうだったから、買ってきちゃった!」


なお「定番! わたあめ!」

やよい「あーっ、"太陽マン" のふくろだ! なおちゃん、いいなぁー!」

なお「……ホントはカワイイキャラクターが良かったんだけど、これしかなくて……。ほしかったら後であげるよ」


なお「暑い夏にはピッタリ! かき氷!」

れいか「去年、海の家で一緒に作ったことを思い出すわね、なお」

なお「うん! あの時は楽しかったね!」


なお「ボリューム満点! アメリカンドッグ!」

はるか「なんだか懐かしいな。アメリカに留学してた時よく食べたよ」


なお「歯ごたえバツグン! イカ焼き!」

みゆき「……なおちゃん? まだあるの?」

なお「甘くておいしい! チョコバナナ!」


なお「はじけるしょうゆの香り! 焼きもろこし!」


なお「甘酸っぱさがたまらない! りんごアメ!」


なお「焼きたてジューシー! 焼き鳥!」


なお「生クリームが最高! クレープ!」


なお「お祭りに咲く一本の花! アメ細工!」

なお「外はカリカリ、中はトローリ! たこ焼き!」


なお「ふしぎな食感! のびるアイス!」


なお「何個でもいけちゃう! 大判焼き!」


なお「パリパリの皮からあふれる肉汁! フランクフルト!」


なお「会場に香る甘いにおい! ベビーカステラ!」


なお「夏バテでもだいじょうぶ! きゅうり――」


あかね「まだあるんかい! どんだけ食べんねん!?」


マジョリン「……なお、さっきからずっと食べっぱなしマジョ……。見てて胸ヤケしてくるマジョ……」

なお「もったいないなぁ、どれもおいしいのに」モグモグ

あかね「……あきれてものも言えへん」

なお「王女様、どれか食べたいもの、ある? 分けてあげるよ」

マティエール「よろしいのですか? ……でも、なお様のものでしたら悪いのでは……」

なお「遠慮しないで! どれでも好きなの選んでいいよ!」

マティエール「あ……、そうしましたら……、その、小さくてかわいらしい、丸いものをいただけますでしょうか……?」

なお「あ、ベビーカステラ? いいよ! はい、どうぞ!」

マティエール「……ありがとうございます!」パクッ

マティエール「(モグモグ)」

なお「どう? おいしい?」


マティエール「……はい! 甘くて、やわらかくて……! リアルランドにはこのようなおいしいものがあるのですね!」パァッ

なお「うん! 他のもとってもおいしいよ! 食べてみて! みんなもどう?」

やよい「あ……、わたしは、いいかな……」

みゆき「うん……。見てるだけでおなかいっぱい……」

なお「そっか、残念……。じゃあ、王女様、一緒に食べよう!」

マティエール「はい、なお様!」


ワイワイワイ

はるか「…………」


スタスタスタ…


ポップ「……む? れいか殿、はるか殿が一人でどこかに行くようでござる」

れいか「え……? ……本当ですね」

ポップ「どうかしたのでござろうか?」

れいか「……とりあえず、ついて行ってみます」

~ 七色ヶ丘神社 夏祭り会場の外れ ~

はるか「…………」

ペロー「……はるかさん、なんだか元気ないみたいペロ……。だいじょうぶペロ?」

はるか「あ、うん。大丈夫だよ。ゴメンね、ペロー君。心配かけちゃって」

ペロー「ぼくはいいですけど……、もしかして、はるかさん――」


スタスタスタ


れいか「――シアンナさんのことを、考えていらしたのでしょうか」

はるか「れいかちゃん……」

れいか「お祭りに来てからはるかお姉さんの様子が少しおかしかったので、気になっていたんですが……」

はるか「……やっぱり、顔に出ちゃってたかな」


はるか「れいかちゃんの言う通りだよ。私、夏祭りに来てから、ずっとシアンナのことを考えてた」

はるか「この間、デスペアランドに無理やりつれてこられる前、シアンナと約束してたんだ。"夏祭り、一緒にいこうね" って」

れいか「別れ際、そのようなことをおっしゃってましたね……」


はるか「私、シアンナとはまた会えるって信じてる。そのためなら、できるだけ頑張るつもりだよ」

はるか「……でも、約束してた夏祭りに来たら、どうしても気になっちゃったんだ」

はるか「シアンナが今、一緒にいないことが」

れいか「…………」


はるか「"シアンナはキレイだから、浴衣もきっと似合っただろうな" とか」

はるか「"でも、ラムネのビンの開け方がわからなくって、服ビショビショにしちゃうかもしれないな" とか」

はるか「…… "それがおかしくて、楽しく笑い合えてたかもしれないな" とか、そんなことばっかり考えちゃって……」

はるか「そういう未来もあっただろうな、って思うと、今そうなってないのがすごく残念で……」


はるか「それで、少しだけさみしくなっちゃった……かな」

れいか「はるかお姉さん……」

れいか「……夏祭りは、来年もありますよ」

はるか「……え?」

れいか「来年も、再来年も、その次の年も、そのまた次の年も、七色ヶ丘の夏祭りはずっと続いていくはずです」

れいか「そのどこかで、きっとシアンナさんと一緒に楽しむこともできるはずです」


れいか「……そんな未来になるように、頑張りましょう、はるかお姉さん」

はるか「れいかちゃん……」


はるか「……そうだね。私達が頑張らないと。くじけてるヒマなんてないよね」

はるか「私達には、行きたい未来があるんだから」

れいか「はい!」

はるか「……ありがとう、れいかちゃん。元気出たよ」

はるか「本当は私が励まさないといけないのに……、これじゃあ、どっちがお姉さんだかわからないね」

れいか「いえ、そんな……。私はただ、はるかお姉さんに元気になってほしくて……」


はるか「よぉっし! それじゃあ、もっと元気になるために、今日はいっぱい遊ぼうか! 行こ、れいかちゃん!」

れいか「はいっ!」

はるか(……れいかちゃんといい、王女様やみんなを励まそうとしたみゆきちゃんといい……)

はるか(みんな、成長してるんだね。他の人を元気にできるくらいに)


はるか(こうやって、少しずつ大きくなっていくのかな、みんな)

~ 七色ヶ丘神社 夏祭り会場 ~

あかね「いやー、ぎょーさん遊んだなぁ! 遊びつかれてもーたわ!」

やよい「それにしても……、さっきの金魚すくいはすごかったね……」

みゆき「そうだねー。屋台行ったら、まさかれいかちゃんが断られちゃうなんて」

れいか「……去年、取りすぎてしまったせいかもしれません……」

なお「それで、代わりにはるかさんがやったら意外なことに全然取れなくって。ムキになって 20回くらいやってやっと取れたのが――」


ヒラヒラ


マティエール「わぁ……、とってもキレイ……!」


あかね「あの王女様が持っとる一匹だけ、っちゅう」

はるか「……みっともないところをお見せしました……」

れいか「そういえば、はるかお姉さんはおじい様に教えていただいても、金魚すくいだけはうまくいきませんでしたね……」

みゆき「ま、まぁ、一匹だけでも取れたんだから! よかったね、王女様!」

マティエール「はい! ありがとうございます、はるか様」

はるか「……どういたしまして……」

なお「あはは、疲れきってますね……」

野太い男性の声「ああー、そこのお嬢ちゃん達! どいたどいた!」


ダダダダダッ


なお「わっ、す、すみませ――って、あれ?」

野太い男性の声「ん?」


なお「あ……! 日向(ひゅうが) のおじさん!」

日向と呼ばれた男「おお! 誰かと思ったら、源ちゃんとこのなおちゃんじゃねえか! 大きくなったねえ!」

なお「はい! お久しぶりです!」


みゆき「なおちゃん、お知り合い?」

なお「うん。あたしのお父ちゃんの友達で、花火職人の日向のおじさん。小さいころによく遊んでもらったんだ」

あかね「花火! っちゅーことは……」

花火職人・日向「おうよ! これからやる花火大会の準備中なんだ! みんなも良かったら見てってくれよな!」

やよい「はい、もちろんですっ!」

マティエール「あの……、すみません。ハナビ、というのはなんでしょうか?」

花火職人・日向「おっ、そこの子は花火初めてかい? 外国の人っぽいもんな」


キャンディ「ハナビ、っていうのは、ひゅーっ、って飛んでいって、どーんっ、って、お空に大きな花が咲くクル! とってもキレイクル!」

マティエール「ひゅー、どーん、で花が咲く、でございますか?」

花火職人・日向「おお、そうそう、そんな感じよ! ……ところで、今、その白いぬいぐるみがしゃべらなかったか?」

みゆき「き、気のせいクル! わたし、腹話術が得意なんですクル!」

花火職人・日向「ふぅーん」


みゆき(小声)「……ダメだよ、キャンディ! 今しゃべっちゃ!」

キャンディ(小声)「でも、キャンディも王女様にハナビのキレイさを教えてあげたかったクル」

みゆき(小声)「うーん、そういうことなら……。でも、あんまり目立っちゃダメだよ」

キャンディ(小声)「わかったクルぅ!」

れいか「それにしても、大変お忙しそうですね。もしよろしければ、何かお手伝いいたしましょうか?」

なお「ああ、それいいかも! いつも日向のおじさんの花火には楽しませてもらってるし、お礼もこめて、ってことで!」


花火職人・日向「……ありがてぇけど、いらねぇや。この日のためにオレ達は 1年かけて準備してきてんだ。最後まで自分の手でやりてぇんだよ」

みゆき「えっ、1年!? 花火って準備にそんなに時間がかかるんですか?」

花火職人・日向「おうとも。冬になったらもう作り始めなきゃいけねぇし、作ってる間もずっと、打ち上げの構成とかで他の職人連中とも相談したりしなきゃなんねぇ」

花火職人・日向「花火大会は、オレ達職人にとって、1年間の集大成なんだよ。キッチリ自分でやりきるのが筋ってもんだ」

花火職人・日向「だから、ここはオレ達にまかせてくんな」


れいか「……すみません、余計なお世話でしたようですね」

はるか「そうだね……。一生懸命取り組んでる仕事のジャマになっちゃったかな……」

花火職人・日向「いや、こっちこそせっかく手伝ってくれるってのを断っちまってすまねぇな」

花火職人・日向「ただ、もしオレ達のためになんかしてくれるっつーんなら、この後の花火を見て喜んでくんな。そいつが、オレ達にとって一番のお礼ってなもんよ!」

なお「……わかりました! 花火、楽しみにしてます。ガンバってください!」

花火職人・日向「おうっ、あんがとよ!」

マティエール「……わたくしは、そのハナビというものは存じ上げないのですが……、あの方が、とても熱心でいらっしゃるのはわかりました」

みゆき「そうだね。だから、打ち上げ花火はあんなにキレイなのかもしれないね」

マティエール「本当にそんなにキレイなのですか……!?」

みゆき「そりゃあ、もう! きっとビックリするよ、王女様!」

マティエール「わぁ……! ……はい! 楽しみにしています!」

紫色の髪の少女画家「――へぇーっ、いいこと聞いちゃった。そんなにキレイなんだぁ。じゃあ、それもあたしのものにしちゃおっかなー」モグモグ


全員「…………え?」


あかね「……この子、いつからここにおったん? 誰かの知り合い?」

やよい「わたしは知らない子だけど……」

なお「……あっ! あたしのチョコバナナ! 何で勝手に食べてるの!?」

紫色の髪の少女画家「え? これ落ちてたんじゃないの? 他にもいろいろ落ちてるじゃん」モグモグ

なお「落ちてたんじゃなくて、置いてあったの! 全部袋に入ってたでしょ!? 後で食べようと思ってたんだよ!」

紫色の髪の少女画家「あっそ。……ま、誰のでも関係ないけどねー。あたし、欲しいものは何でも自分のものにしちゃうから」

紫色の髪の少女画家「そう、何でも、ね。例えば――」


紫色の髪の少女画家「お姉さんたちの持ってる "夢の絵の具" とかも、ね」ニヤッ


全員「!!?」


れいか「どうしてそのことを……!?」

はるか「この子、まさか……!」


紫色の髪の少女画家「それじゃ、始めよっかな! その "ハナビ" も、"夢の絵の具" も、みんなまとめてゲットだ!」

紫色の髪の少女画家「闇の絵の具よ! 闇の絵筆よ! キャンバスに絶望を描き出せ!」


シュババババッ


紫色の髪の少女画家「実体を持ってキャンバスから現れよ、アキラメーナ!」


ズズズズズズ…


アキラメーナ(花火筒型)「アキラメーナァッ!」


みゆき「アキラメーナを出したよ! っていうことは、やっぱり……!」

はるか「シアンナ達と同じ……、新しい "闇の描き手" ……!」


ウィスタリア「そう! あたしの名前は "ウィスタリア"! デスペア国王サマに産み出された "闇の描き手"!」

ウィスタリア「さ、アキラメーナ! ハデにお仕事、行ってみよーっ!」

アキラメーナ(花火筒型)「アキラメーナァッ!」


ズワァァァァァァッ…!


祭り客A「うっ……、ち、力が……抜ける……」

祭り客B「立って……られない……」

屋台の主人A「な、なんだこりゃ……」


バタバタ バタバタバタバタッ


やよい「……! お祭りのお客さんも、屋台の人も、みんな倒れちゃった……!」

あかね「祭り中の人達みんなから心を吸い取っとるんか……!?」

れいか「すごい力……! シアンナさん達でも、ここまで広くは心を吸えなかったはず……!」


ウィスタリア「ああ、それって、"前の人達" のこと? なんかねー、あたしって、その人達よりスゴイみたいよ? よくわかんないけど」

なお「あの 3人より強い、ってこと……!?」

祭り客A「うぅ……」

祭り客B「あぁ……」


マティエール「……ひどい……! これが、お兄様が――デスペア国王が、今までリアルランドの方々にしてきたことなのですか……!?」

みゆき「……うん。デスペアランドは、こうやって人の心を集めてるんだ」

マティエール「そんな……!」


マティエール「……わたくしには、お父様やお兄様のような強い力はありませんから、あの方々をお助けすることができません……!」

マティエール「……ですから、お願いします、プリキュアのみなさま! このようなこと、どうかお止めください!」

みゆき「もちろんっ! いくよ、みんな! 王女様はどこかに隠れてて!」

5人「うんっ!」

マティエール「わかりました。よろしくお願いいたします!」

妖精達「デコル・チェーンジ!」

パチンッ!

レディ!

6人「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー! ゴーゴー! レッツゴー!!


ハッピー「キラキラ輝く、未来の光! キュアハッピー!!」

サニー「太陽サンサン、熱血パワー! キュアサニー!!」

ピース「ぴかぴかぴかりん♪ じゃん・けん・ポン!(グー) キュアピース!!」

マーチ「勇気リンリン、直球勝負! キュアマーチ!!」

ビューティ「しんしんと降り積もる、清き心。キュアビューティ!!」

ノーブル「さらさら流れる気高きせせらぎ! キュアノーブル!!」


6人「6つの光が導く未来!」

6人「輝け! スマイルプリキュア!!」

ウィスタリア「おっ、出た出た! あれが "プリキュア" かぁー! あいつらさえやっつければ、ぜーんぶおっけーってことだよね!」

ウィスタリア「アキラメーナ! やっちゃえっ!」

アキラメーナ(花火筒型)「アキラメーナァッ!」ガチャッ


ビューティ「……? 筒の穴がこちらを向いて……」

ピース「……あ……! もしかして……!」


アキラメーナ(花火筒型)「アガァッ!」ボンッ!


ヒュルルルルルーッ…


パシッ


ハッピー「……なんか、玉が飛んできたからキャッチしちゃったけど、これって……」

サニー「花火やろ、それ! ほっといたらバクハツすんで!?」

ハッピー「うぇっ!? あ、あぶないっ! はい、サニー!」ポイッ


パシッ


サニー「つ、つい受け取ってもーた……! なんでうちに回すんや!?」

ハッピー「あ、ご、ごめん、つい……」

ハッピー「そ、それより、バクハツしちゃうよ! 早く何とかしないと!」

サニー「せ、せや! ほい、マーチ!」ポイッ


パシッ


マーチ「な、なんであたし!?」

サニー「いや、近かったから……」

マーチ「あ、あわわ……! ピ、ピース、お願い!」ポイッ


パシッ


ピース「ええっ!? 渡されても、ど、どうにもできないよぉ!」

ビューティ「ピース、私が何とかします! その花火の玉をこちらに!」

ピース「う、うんっ! ビューティ!」ポイッ


パシッ


ポップ(デコル)「ど、どうするつもりでござるか、ビューティ殿!? このままではバクハツしてしまうでござる!」

ビューティ「大丈夫です、ポップさん! ……はぁぁぁぁっ!」


ビキビキビキビキッ!


ハッピー「おおっ! ビューティの氷で凍らせちゃった!」

ビューティ「……ふぅ。これで、爆発はしないでしょう」

マーチ「さすがビューティ!」


ウィスタリア「……つまんなーい! それがバクハツするのがキレイなんじゃないの!?」

ビューティ「花火は人を傷つけるためにあるものではありませんっ!」

ウィスタリア「知らないもーん! あたしはキレイなのが見たいの!」

ウィスタリア「アキラメーナ! どんどん行っちゃえ!」

アキラメーナ(花火筒型)「アキラメーナァッ!」ガチャッ


ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ!


ヒュルルルルルルルルルー…


ノーブル「うわっ、いっぱい飛んできた!?」

サニー「せやったら逆に、こっちに届く前に全部バクハツさせたるわ!」


サニー「プリキュア! サニー・ファイヤーァァッ!!」


ドドドドカァァァァンッ!


マーチ「うまいっ! 火をつけて全部バクハツさせたんだね!」

サニー「へへっ、たまやーっ、てなもんや!」


パラパラパラパラ…


ウィスタリア「おお……、確かにキレイ……!」

ウィスタリア「……って、それじゃダメじゃん! プリキュアに当てないと!」

ウィスタリア「アキラメーナ! プリキュアの近くまで行って撃って! それなら当たるでしょ!」

アキラメーナ(花火筒型)「アキラメーナ!」バッ

ハッピー「み、見かけによらず速い!?」

アキラメーナ(花火筒型)「アキラメーナァッ!」ガチャッ

ハッピー「わ……!」

サニー「ハッピー、危ないっ!」

アキラメーナ(花火筒型)「アキラメーナァッ!」ボンッ!


ドカァァァァンッ!


ハッピー「わぁぁぁっ!?」

ピース「ハッピーっ!」


ウィスタリア「おっ、やった! いい感じ! 続けて行こう!」

アキラメーナ(花火筒型)「アキラメーナ!」


ドタッ ドタッ ドタッ ドタッ


アキラメーナ(花火筒型)「アガッ! アガッ! アガッ! アガッ!」ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ!


ビューティ「走り回りながら花火を撃ち出してきます!」

サニー「これじゃあ、花火の玉も散らばって、狙いが絞れへん……!」


ドカァァァァンッ! ドカァァァァンッ! ドカァァァァンッ! ドカァァァァンッ!


全員「わぁぁぁぁぁぁっ!?」

ハッピー「うっ……」

サニー「あ、あかん……、結構キツイわ……!」

ビューティ「た、確かに、手ごわいですね……!」

ウィスタリア「ふふーん、手も足も出ないみたいだねー」


ウィスタリア「ま、でもこんなもんかな? 王サマも言ってたしね、"プリキュアは大したことない" って」

マーチ「な、なんだって……!?」

ウィスタリア「"弱い心しか持たないリアルランドの人間だから、プリキュアは弱いんだ" ってさ」

ウィスタリア「だってさー、ほら、これ見てよ」


チャポン チャポン


ピース「あれって……、心の絵の具を入れるボトル……?」

ノーブル「中の絵の具……、すごく、濁ってる……!?」


ウィスタリア「王サマが言ってたんだけど、心の絵の具って、もっとこう……、自分でガンバったりできる心の強さがないと光らないんだってさ」

ウィスタリア「けど、リアルランドの人間の心は弱いから、すぐに不安になったり、あきらめたりして濁っちゃうんだって」

ウィスタリア「プリキュアもそうだから、すぐにやっつけられる、って王サマ言ってたよ」

ウィスタリア「ここの人間達、みんな、なんだかとっても楽しそうだけどさぁ、それって今だけなんじゃないのー?」

マティエール(……!)

ウィスタリア「だって、こんなに心が濁ってるんだもん。みんな、なんかあきらめたり、ツラい気持ちでいるってことなんじゃない?」

ウィスタリア「おいしかったり、キレイだったりしてもその時が楽しいだけで、心は強くなったりしないんじゃあ、結局あんまり意味ないよねー」


ウィスタリア「こんな風に楽しく騒いだりしてもさー、ムダなんじゃないの?」


マティエール「…………」


マティエール(……あの者の、言う通りかもしれません……)


マティエール(少しくらい楽しい思いをしたって、心の中から不安がなくなるわけじゃない……)

マティエール(……わたくしだって、お祭りでせっかく楽しんでも、"世界を救う" っていう使命をどうしていいかわからなくって、不安な気持ちがあるのは変わらない……)


マティエール(どれほど楽しい思いをしても……、つらい気持ちを消すほどの強い気持ちは得られないのでしょうか……?)

ハッピー「……そんなことないっ……!」

マティエール「……!」


ハッピー「……確かに、楽しい思いをしても、不安な心が消えたりするわけじゃないよ……」

ハッピー「宿題だって、勉強だって、お仕事だってやらなきゃいけない……。みんな、きっと不安だったり、イヤなことがあったりすると思う……」

ハッピー「……わたし達だって、デスペアランドを止めるためにどうしたらいいのかわからなくって、すごく不安な気持ちがあるよ……」


ハッピー「でも! だからって、楽しい気持ちになることがムダだなんて、そんなこと絶対ない!」

ハッピー「このお祭りだって、みんなが楽しい気持ちになれるように、すごくたくさんの人がガンバってるはずだよ……!」


ハッピー「お祭りを準備する人……、屋台の人……、さっきの花火のおじさんだって……!」

ハッピー「みんなみんな、わたし達を楽しませてくれようと、とってもガンバってる……! そんな人達はきっと、強い気持ちを持ってる!」


ハッピー「だから、その心の絵の具にも、ほんのちょっとだけ、キラキラした光が混ざってるんだよ!」


ウィスタリア「え?」ジーーーーッ


キラ… キラ…


ウィスタリア「あ、ホントだ。よーーーく見ると、ほんのちょっとだけ光る絵の具が混ざってる」

ハッピー「そんな人たちがくれる楽しさはその時だけのものかもしれないけど……、絶対ムダなんかじゃない……!」

ハッピー「わたし達にどんなにツラいことがあったって……、苦しいことがあったって……! それに立ち向かう力をくれる……!」


ハッピー「楽しさや笑顔は! わたし達が明日に向かうための力になるよ!!」


マティエール「……! ……ハッピー様……!」

サニー「……せやで。ハッピーの言う通りや。おいしいもんは人を元気にしてくれる」

ピース「遊んだり、笑ったりすることは、わたし達にガンバろう、って力をくれる……!」

マーチ「どんなに大きな問題があったって……!」

ビューティ「その力があれば乗り越えられるはずです……!」

ノーブル「だから、私達は笑うんだ……! 明日へ……、未来へ向かうために!」


ハッピー「みんな、やろう! "笑顔はきっと力になる" ってことを見せよう!」

5人「うんっ!」

ウィスタリア「……なんか盛り上がってるけど、結局勝てなかったら意味ないじゃん! アキラメーナ、やっちゃえ!」

アキラメーナ(花火筒型)「アキラメーナァッ!」


ドタッ ドタッ ドタッ ドタッ


マジョリン(デコル)「あのアキラメーナ、また走り出したマジョ! 花火が飛んで来るマジョ!」

マーチ「そうはさせないっ! まずは動きを止める!」


ダダダダダッ!


マーチ「マーチ・スライディングっ!」ズザァァァァッ!


ガッ!


アキラメーナ(花火筒型)「アガッ!?」


ドタァァァァァンッ!


ウィスタリア「あっ!? アキラメーナ、転んじゃった!?」

サニー「さっすがサッカー部キャプテン! ナイススライディングや!」

ノーブル「今だっ!」

ノーブル「プリキュア! ノーブル・ストリィィームッ!!」


ドォォォォォォォォンッ!!


アキラメーナ(花火筒型)「ア……ガァァァッ!」

ノーブル「……! やっぱり、一発じゃやっつけられないか……!」

ウィスタリア「ムリムリ! あたしのアキラメーナ、強いんだから! そんな水鉄砲、効かないよーだ! やっちゃえ、アキラメーナ!」

アキラメーナ(花火筒型)「アキラメーナァッ!」ボンッ!

ペロー(デコル)「ペロ!? また花火を出してきたペロ!? 危ないペロ、ノーブル!」

ノーブル「……大丈夫。さっきのノーブル・ストリーム、効いてないわけじゃないよ」


トンッ コロコロコロ…


ウィスタリア「……あれ? あの玉、さっきみたいにどーん、ってならない……」

アキラメーナ(花火筒型)「アガ……!?」


ノーブル「残念! 水でしけっちゃったから、もう爆発はしないよ!」

ビューティ「なるほど……! さすがノーブル!」

タタタタタタッ


ビューティ「ピース、行きましょう!」

ピース「うんっ、任せて!」


ピース・ビューティ「ダブル・プリキュアキーーックっ!」


ドガァァッ!


アキラメーナ(花火筒型)「アガァッ!?」


バッ


サニー「うちらもいくで、ハッピー!」

ハッピー「うんっ、サニー!」


ハッピー・サニー「ダブル・プリキュアパァーーンチっ!」


ドガァァッ!


アキラメーナ(花火筒型)「ガァァァァッ!?」ドタァァァァンッ

ウィスタリア「あーっ!? また倒されちゃった!?」


ハッピー「チャンス! みんな、今だよ!」

5人「うんっ!」

ハッピー「キャンディ、お願いっ!」


ポンッ


キャンディ「わかったクル!」

パカッ

キラキラキラキラ


キャンディ「"夢の絵の具" よ……、プリキュアのみんなに、未来に進む力を!!」


ブワァァッ!


6人「6つの夢を、今こそ一つに!!」


6人「未来へ届け! 希望の架け橋!!」


6人「プリキュア!! レインボー・アーチっ!!!」


ブワァァァァァァァァッ!!


アキラメーナ(花火筒型)「アガァァァァッ!?」


6人「ハッピー……エンド!!」


ドガァァァァァァァァァン!!


アキラメーナ(花火筒型)「アガァァァァァ……」シュワァァァァ…

ウィスタリア「うそ……、やられちゃったの……!?」

ハッピー「……ウィスタリア、だったっけ。帰ってデスペア国王さんに言っといて」


ハッピー「"わたし達リアルランドの人達は、絶対に不安や絶望になんて負けない" って!」


ウィスタリア「くぅぅぅっ……! ちょっとうまくいったからっていい気にならないでよね! まだ戦いは始まったばっかりなんだから!」

ウィスタリア「次はこうはいかないからね! "夢の絵の具"、絶対あたしのものにするんだから! 憶えてなさいよっ!」シュバッ


ピース「…………ふう、よかったぁ、帰ってくれた……」

マーチ「"前の 3人より強い" っていうだけあって、ちょっとしんどかったね……」

ノーブル「……でも、みんなで力を合わせたらなんとかなったよ」

ビューティ「はい! これからも、こうやって少しずつ、困難を乗り越えていければいいですね」

サニー「せやな! そのためにも……」

ハッピー「うんっ! お祭りの続き、楽しんじゃおう!」


全員「おーっ!」

~ 七色ヶ丘神社 夏祭り会場 花火観覧場 ~

ザワザワザワ


マティエール「……すごい人だかりですね……! それに、みなさま空を見上げて……。何が始まるんでしょうか……」

みゆき「王女様、よく見てて! これからホントの花火が始まるよ!」

あかね「おっ、きたで!」


ボッ ヒュルルルルルルー…


ドォォォォォォォンッ! パラパラパラ…


マティエール「……わぁ……!」

キャンディ「どうクル、王女様。これがハナビクル。とってもキレイクル?」

マティエール「はい……! ひゅー、どーん、で空に花が咲きました……! なんて美しいんでしょう……!」

はるか「…………」

れいか「……? はるかお姉さん? どうしたんですか、下を見て。……もしかして、また元気がなくなってしまったのでしょうか……?」

はるか「あ、ううん、違うんだ。ただ――」

れいか「ただ?」


はるか「――上も花火でキレイだけど、下もキレイだな、って思って」

やよい「……下?」チラリ


男の子「お父さん! 花火、すごいキレイだね!」

男の子の父親「ああ! よーく見とけよ! 1年に 1回しか見られないんだからな!」

男の子「うんっ!」ニコニコ


若い女性「キレイ……。来てよかったね」

若い男性「うん。あ、ほら、また上がったよ!」

若い女性「わぁっ……!」


全員「…………」


あかね「……ほんまや。みんな、笑顔でいっぱいで、とってもキレイやな……!」

なお「うん。日向のおじさん達、花火職人さん達のおかげだね」

みゆき「わたし達は、この笑顔を守るためにガンバっていかないといけないんだね」

れいか「そうですね……」


マティエール「…………」


マティエール「……みなさま、わたくし、改めてわかりました。やはり、デスペア国王のやろうとしていることは間違っています」

みゆき「……王女様?」

マティエール「……実はわたくし、先ほど、あのウィスタリアという者の言うことに不安を覚えてしまいました……」

やよい「"その場だけ楽しくったってしょうがない" っていう?」

マティエール「……はい」


マティエール「……わたくし、恥ずかしながら、"世界を救う" という大役を負わされ、その方法もわからず、正直途方に暮れておりました……」

マティエール「その不安な気持ちはお祭りで楽しんでも消えることはなく、わたくしの心の中にずっとありました」

マティエール「それでは、あの者の言う通り、その場だけ楽しい思いをしてもムダなだけなのではないか、と……」

マティエール「ですが、その後のみゆき様のお言葉、プリキュアのみなさまのご活躍、そして、今のこの周りの人々の笑顔を見て、ハッキリとわかりました。楽しい気持ちは、未来に向かって進むための力になる、と」

マティエール「そして、先ほどのハナビ職人様のように、みなさまの楽しみのために一生懸命ガンバっておられる方がいる、ということも」


ドォォォォォォォンッ! パラパラパラ…

ドォォォォォォォンッ! パラパラパラ…


マティエール「あの、たった一度で終わってしまうハナビのために、職人様は 1年もかけて準備する、とのことでした」

マティエール「1年に 1回しかない、今日、この日のみなさまの笑顔のためだけに」

マティエール「そのようなことができるお方の心が弱いとは、わたくしにはどうしても思えません」

マティエール「確かに、デスペア国王の言う通り、リアルランドの方々の心はすぐに弱ってしまうことがあるのかもしれません……」

マティエール「ですが、みなさまやハナビ職人様のような方がおられる限り、楽しい気持ちを力に変えて、きっと強い心を持つことができると思います」

マティエール「そんな希望を秘めた人々の大切な心を消す、など、絶対にさせてはならないのです……!」


マティエール「わたくしも及ばずながら、全ての世界に平和を取り戻すために精一杯ガンバります」

マティエール「ですからみなさま、お願いいたします。わたくしに、どうかそのお力をお貸しください!」ペコリ


全員「…………」

みゆき「……顔を上げてよ、王女様」

マティエール「みゆき様……」


あかね「せやで! 別にそんな改まって頼まれんでも、うちらはうちらで一生懸命やるわ!」

やよい「だって、わたし達にはそれぞれ、行きたい未来があるんだもん!」

なお「あたし達だけじゃない。みんなの夢を守るためにも、戦わなきゃいけないんだ」

れいか「どんなに大きな困難が、私達の "道" の先にあったとしても……」

はるか「みんな笑顔で力を合わせれば、きっと乗り越えていけるよ!」


みゆき「だから、こちらこそよろしくね、王女様! ……ううん、マティエールちゃん!」


マティエール「……! みゆき様、わたくしの名前を……」

みゆき「これから一緒にガンバっていくんだから、"王女様" っていうのもヘンかな、と思って……。ダメかな……?」

マティエール「……いいえ。改めてみなさまのお仲間にさせていただいたようで……とてもうれしいです!」


マティエール「ですが、それでしたら "マティ" とお呼びください。平和な時はお父様にも、……お兄様にも、そう呼ばれていましたから」

みゆき「そっかぁ……! じゃあ、マティちゃんだね!」

みゆき「これから、力を合わせてガンバっていこうね、マティちゃん!」ニコッ


マティ「はいっ! みなさま、よろしくお願いいたしますわ!」ニコッ





つづく

次回予告

みゆき「デスペアランドの人達と戦ったり、新しいプリキュアを探したり、宿題やったりで、気がついたらもう夏休みが終わっちゃいそう! せっかくだから、何かして遊びたいな……」

みゆき「……そうだ、海へ行こう! 新しい水着も買ったし、思いっきり遊んで、ステキな夏の思い出、作るんだっ!」

みゆき「でも、そんなわたし達の前に、またあのウィスタリアって子が出てきたの! もう、どいてよぉ! わたし達は海に行くんだからぁっ!」


みゆき「次回、『スマイルプリキュア レインボー!』 "目指せ、夏のパラダイス! プリキュア達の海水浴!?"」


みゆき「みんな笑顔でウルトラハッピー!」

今回はここまでです!
お読みいただいた方、ありがとうございました。

それでは、よかったら次回もまたよろしくお願いします!


第1話 ~ 第11話 『スマイルプリキュア!』第2期を SS で作るスレ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1360385907/)
第12話 ~ 第20話 『スマイルプリキュア レインボー!』 Part 2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1366529393/)

第21話 >>4 から
第22話 >>125 から
第23話 >>247 から
第24話 >>350 から
第25話 >>486 から
第26話 >>601 から

ここからはお返事タイムとさせていただきます!



> ボーズさん

新敵幹部のアイデア、ありがとうございます!
残念ながら、今回で枠一つ埋まってしまいましたが、他の枠だったら入れられるかもしれません。

本作の幹部は一応全員基本的に人間態なので、あからさまな怪物設定は使えないかもしれないですが、
超獣化後や、キャラクター性であれば取り入れられるかもしれません。
参考にさせていただきます!

特にグリフォン……。これはイケますね……。イケるかな……?
作業量が足りれば出せるかも。。


あ、あと、私信で申し訳ないですが、ガタケットいけなくなりました。。私の分も楽しんできてください。
仕事や。。全部仕事が悪いんや。。

> 597さん

> プリキュアで中盤に、敵の組織に同情するような設定がある事が分かるのって今までにはなかった?

そうだと思います。

"別世界のキャラが操られる" だと、まんま "あのプリキュアシリーズ" の "あの人"(ネタバレなので一応伏せます)になっちゃうので、
"あくまで自分の意思でやってる" というところで差別化を図っています。
なので、そんな感じになりました。


> マゼンタはどうにもできそうだけど、イエローでいい名前が思いつかない…イエヤスとか?

イエヤスwww
ツボりましたwww その発想はなかった……!

そういえば、プリキュアの敵幹部であからさまな日本人名がついたキャラっていませんね。
(『フレッシュ』の東西南北の偽名は除く)

ちょうど黄色だけ決まってなかったんですよね。。……使っちゃおうかな?w

ちなみに、シアンナ・ビリーズ・セルリアの名前の元ネタはご指摘の通り "色" です。
今回登場した新幹部 "ウィスタリア" も色の名前です。紫の一つで、"藤色" だそうです。

> 599さん

> 今回の話は原作の「スマイルプリキュア!」に対する否定・反論に感じられた

スミマセン、、正直そこまで考えてませんでした。。
おっしゃる "スマイルの特徴" に関してはその通りだと思います。

ただ、こちらに対する答えは 26話の内容である程度出せたかな、と思います。
こういう方向に持っていきたいがための 25話でしたので、
私自身としては、原作『スマイルプリキュア!』を否定する気はないのです。。
不快に思われたならスミマセン。。


デスペア国王のキャラクター性や、作品のテーマに関しては、、
スミマセン、何を言ってもネタばらしになりそうなので、この辺りでご勘弁を。。

今後をお楽しみに! ということで一つよろしくお願いいたします。



以上です!
それでは、また来週もよろしくお願いします!

今日は『ドキドキ!』やってないのでタイミングがとりづらい。。

『スマイルプリキュア レインボー!』

このあとすぐ!

~ 8/15 七色ヶ丘市 公園 ~

キャンディ「"夢の絵の具" よ……、プリキュアのみんなに、未来に進む力を!!」


ブワァァッ!


6人「6つの夢を、今こそ一つに!!」


6人「未来へ届け! 希望の架け橋!!」


6人「プリキュア!! レインボー・アーチっ!!!」


ブワァァァァァァァァッ!!


アキラメーナ(シーソー型)「アガァァァァッ!?」


6人「ハッピー……エンド!!」


ドガァァァァァァァァァン!!


アキラメーナ(シーソー型)「アガァァァァァ……」シュワァァァァ…


ウィスタリア「ま、またやられちゃった……! お、憶えてなさいよ! 次は絶対にギッタンギッタンにしてやるんだから!」シュバッ


6人「やったぁーっ!」


マーチ「今日も大勝利だったね!」

ノーブル「うん! ハッピーとサニーがシーソーの両側で延々と打ち上げられた時はどうなることかと思ったけどね……」

ハッピー「面目ない……」

サニー「ま、まだ気持ち悪いわ……。うぷっ……」

ピース「だ、大丈夫、二人とも? 少し休んでく?」

ハッピー「あ、ありがとう、ピースぅ……」

~ ふしぎ図書館 ~

マティ「みなさま、お疲れ様でした!」

みゆき「うん……。うぇー、疲れたぁー……」グデー

あかね「ほんまやなぁ……。外はあっついし……、なーんもする気起きんわ……」グデー

マティ「お待ちください。今、冷たいお飲み物をお出ししますね」

あかね「おおきにな、マティー……」


れいか「……お二人がこの調子では、今日の宿題勉強会はお休みにした方が良さそうですね……」

はるか「そうだね。また明日にしようか」


なお「うっ……、ま、また夏休みの宿題かぁー……」

みゆき「や、やっぱりやらないとダメ……ですか?」

はるか「もちろんだよ! れいかちゃんから聞いたよ? 去年、れいかちゃん以外のみんなは宿題全然やってなくって、補習授業になっちゃったんでしょ? それがイヤなら頑張らないと」

はるか「大丈夫だよ! 毎日ちょっとずつやれば絶対終わるから! 私も手伝ってあげるからさ、頑張ろう?」

れいか「私も、自分の分が終わったらみなさんのお手伝いをしますから」

やよい「れいかちゃんとはるかさんに教えてもらえるなら頼もしい……けど……」

なお「こうも毎日毎日宿題宿題だとね……」

あかね「おまけに、あのウィスタリアって子もちょくちょく悪さしてきよるし……」

みゆき「宿題、プリキュア、宿題、プリキュア、で、全然遊べてないよー……。せっかくの夏休みなのにぃー……。はっぷっぷー……」

はるか「宿題全部終わればパーッと遊べるから! その日目指して頑張ろう、みんな!」

みゆき・あかね・やよい・なお「はぁーい……」

~ 8/30 ふしぎ図書館 ~

みゆき「――できましたー! どうですか、はるかさん!?」

はるか「うん、今見るからちょっと待って!」


はるか「…………」ペラッ

みゆき「…………」ゴクリ


はるか「……うん、大丈夫だね! 答えも全部あってる! バッチリだよ、みゆきちゃん!」

みゆき「わぁ……! やったぁーっ!」


あかね「最後のみゆきが全部終わった、っちゅーことは……!」

やよい「うんっ! これでようやく……!」

なお「夏休みの宿題、全員終わりだね!」

れいか「皆さん、お疲れ様でした!」


キャンディ「みゆき! これでやっと遊びに行けるクル!?」

みゆき「うんっ! もうなーんにも気にしないでめいっぱい遊べるよ! うれしいね、キャンディ!」

キャンディ「クルぅっ!」

れいか「あ、みゆきさん……、水を差すようで申し訳ないのですが……」

みゆき「なに、れいかちゃん?」

れいか「今日は 8月30日なんです……。つまり……」


れいか「……夏休みは明日でおしまいなのです……」

みゆき「…………え?」

みゆき「え? え? だ、だって、夏休み、一ヶ月よりたくさんあったんだよ? それが明日で終わりだなんて、そんな……」


やよい「でも、宿題やって……」

なお「プリキュアとして町のみんなを守って……」

あかね「おまけに新しいプリキュア探しもやっとったからなぁ……。こっちは全然収穫なかったけども」

はるか「それで、いつの間にか夏休みが過ぎちゃってたみたいだね……」


みゆき「そ、そんなぁ……」ガクッ

マティ「だ、大丈夫ですか、みゆき様……!?」

ウルルン「バッドエナジーが出そうなくらい落ち込んでるウル」

みゆき「……海だ……」

マティ「……? みゆき様?」


みゆき「海だぁーっ! みんな、海に行こうよっ!」

あかね「わっ、な、なんやねん、みゆき! 急に大声出して!」

なお「海、って、海水浴?」

みゆき「うんっ! 夏といえば海! 海に行こう、海! せっかくの夏休みなんだよ!? それなのに、遊んだ思い出が夏祭りだけだなんてさみしすぎるよ!」

やよい「ま、まぁ……」

れいか「確かにそう、ですね……」

はるか「海か……。気分転換にはいいかもね」

はるか「今は大変な時だけど、新しいプリキュアも、最後の秘宝・"ホープブラッシュ" の使い方もわからないまま……。あんまり根つめすぎても参っちゃうよ」

はるか「たまには、息抜きしてもいいんじゃないかな。どう、マティちゃん?」

マティ「わたくしはみなさまにお頼りしているだけですので……、わたくしから何か言うことはいたしませんわ」


マティ「この間、ナツマツリで教えていただいたように、楽しむことがみなさまのお力になるなら、わたくしはそれを信じるだけです」

みゆき「ありがとうぅー……、マティちゃん……!」

マティ「いえ……。みなさまも日々危険な戦いに身を投じ、大変なことと思います。ぜひ、この機会に心の疲れをいやしてくださいませ!」

みゆき「うんっ!」

みゆき「じゃあ早速、明日のために水着を買いに行こうよ!」

あかね「おっ、それええなぁ! 今年はオシャレも得意なはるかさんもおるし! かわええの、探してもらおかな!」

はるか「大丈夫、任せて! とびっきりステキなコーディネートしてあげる!」

やよい「うわぁー、楽しみぃ! よろしくお願いしますっ!」


みゆき「それじゃあみんな、カワイイ水着を買いに出発だぁーっ!」

全員「おぉーっ!」

~ 深夜 星空家 みゆき自室 ~

キャンディ「……すぅー……すぅー……」

みゆき「……すぅー……すぅー……」


みゆき(んふふふー……、明日はみんなで海水浴……)

みゆき(カワイイ水着着て……、めいっぱいはしゃいで……)

みゆき(スイカ割りとかぁ……、ビーチバレーとかぁ……、砂でお城作ったりとかぁ……、したいなぁ……)


みゆき(ステキな日に……、なるといいなぁ……)




スマイルプリキュア レインボー!

第27話「目指せ、夏のパラダイス! プリキュア達の海水浴!?」



~ 七色ヶ丘町駅 ホーム ~

みゆき「電車っ、電車っ、早く来ないかなぁーっ?」ワクワク

なお「みゆきちゃん、はしゃいでるね。さっきっから顔がにやけっぱなしだよ?」

みゆき「だぁってぇー! もう昨日から楽しみで楽しみで、眠れなかったくらいだもーん!」

みゆき「海が! わたしを呼んでいる! 気がするっ!」

やよい「みゆきちゃん、目が輝いてる……」

れいか「ずっと宿題とプリキュアばかりでしたから、その反動かもしれないですね」


マティ「わたくしもなんだかワクワクしてまいりました! "ウミ" というのは水がとってもたくさんあるのですよね!? どんなものか楽しみです!」

はるか「ピクチャーランドには海ってないんだね。すごく広くてビックリするよ! 楽しみにしててね!」

マティ「はいっ!」

みゆき「……あ、そうだっ!」ゴソゴソ

あかね「ん? どしたん、みゆき? バッグごそごそして」

みゆき「じゃーんっ! デジタルカメラー!」

なお「あ、それもしかして、去年の修学旅行に持ってきてたやつ?」

みゆき「うんっ! 今日、いーっぱい写真撮ろうと思って、持ってきたんだぁ!」


みゆき「と、いうわけで、さっそく一枚撮るよ!」

あかね「ええ? まだいつもの町の中やで? 気ぃ早いんちゃう?」

みゆき「いいのいいの! 行くよーっ! はい、チーズ!」

5人「(ニコッ)」


パシャッ!


みゆき「……うん、キレイに撮れた! よぉーし、これからどんどん撮るぞーっ!」


はるか「ホントにはしゃいでるなぁ、みゆきちゃん」

れいか「ですが、あんなに明るいみゆきさんを見ていると、なんだかこちらまで楽しくなってきますね」

はるか「うん、そうだね」

ピンポーン


駅ホームのアナウンス『2番線に電車が参ります。危ないですので、白線の内側にお下がりください』


みゆき「来たぁーっ! これに乗れば、海まですぐだよ!」ピョンピョン

あかね「いよいよやな! うちまでウキウキしてきたで!」

キャンディ「……クル……!?」ピクッ


キャンディ「……みゆき! タイヘンクル!」


ピタッ


みゆき「…………何が?」

キャンディ「イヤなカンジがするクル!」

みゆき「イヤなカンジ……って、まさか……」

ウィスタリア「そのまさかだよ!」


ガァァァァッ! キキィィィィッ!


なお「電車来たけど、これって……!」


アキラメーナ(電車型・10両編成)「アキラメーナァッ!」


あかね「! これ、電車ちゃう! アキラメーナや!」


駅の客達「……うぅ……あぁ……」


はるか「……! いつの間にか、周りの人達も心吸われてる……!」


ガチャッ


れいか「電車の運転席の扉が開いて中から人が……!」

やよい「あの子、……ウィスタリアって子だよ!」

ウィスタリア「やっほー、プリキュアのみんなー! 今日こそ "夢の絵の具" をもらっちゃうからね! 覚悟しなさい!」


キャンディ「やっぱりデスペアランドが来てたクル!」

みゆき「…………! ……なんで……、なんでこんな時に……!」

みゆき「今日は……、今日こそは……、海で遊べると思ったのにぃぃ……!」プルプル

みゆき「……みんな、変身しようっ! すぐやっつけなきゃ!」クワッ

あかね「あ、う、うん。せやな」

なお「……みゆきちゃん、なんだかいつもと違う理由で気合入ってるような気がするけど……」

れいか「ですが、放っておけないのも確かです! 行きましょう!」

はるか「うんっ!」

妖精達「デコル・チェーンジ!」

パチンッ!

レディ!

6人「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー! ゴーゴー! レッツゴー!!


ハッピー「キラキラ輝く、未来の光! キュアハッピー!!」

サニー「太陽サンサン、熱血パワー! キュアサニー!!」

ピース「ぴかぴかぴかりん♪ じゃん・けん・ポン!(パー) キュアピース!!」

マーチ「勇気リンリン、直球勝負! キュアマーチ!!」

ビューティ「しんしんと降り積もる、清き心。キュアビューティ!!」

ノーブル「さらさら流れる気高きせせらぎ! キュアノーブル!!」


6人「6つの光が導く未来!」

6人「輝け! スマイルプリキュア!!」

ウィスタリア「出たね、プリキュア! 今日こそは――」


バッ


ハッピー「だぁぁぁぁぁぁっ! ハッピー・パァァァーンチッ!」


ドガァァッ!


アキラメーナ(電車型・10両編成)「アガァァッ!?」ドタァァァンッ

ウィスタリア「あっ、横倒しになっちゃった!? パンチ一発で!?」


サニー「うわぁ……、今日のハッピー、エラい気合入っとんなぁ……」

ノーブル「ハッピー、海に行くの、楽しみにしてたもんねー……」

ハッピー「ハッピー・キィーーーックッ!」


ドガァァッ!


アキラメーナ(電車型・10両編成)「アガァァッ!?」ドガシャァァァンッ

ウィスタリア「うぅ……、なんで……? なんかいつも以上にボコボコじゃない……!」


ウィスタリア「……でも、このアキラメーナには、実はスゴいヒミツがあるんだから!」

ピース「ヒミツ……?」

ビューティ「何かするつもりでしょうか……!? みなさん、気をつけて!」

ウィスタリア「聞いて驚きなさいよ! このアキラメーナは、10個の車両が合体して、人の形に変形することができるの!」

ピース「!? が、合体!? 変形っ!?」キラキラ

ウィスタリア「そうだよ! そしたらすごーく強くなって、あんたたちなんかコテンパンなんだからね!」


ウィスタリア「さあ、アキラメーナ! その力、見せてやって! "絶望合体" よ!!」

アキラメーナ(電車型・10両編成)「アキラ――」


ハッピー「ハッピー・体当たりぃぃぃっ!」バッ


ドガァァァァッ!


アキラメーナ(電車型・10両編成)「アガァァァッ!?」グワッシャァァァンッ!

ウィスタリア「ちょっ、ちょっと! 何すんのよ!? 合体前に攻撃するなんてズルい――」


ハッピー「……ジャマしないで……!」ギロッ

ウィスタリア「(ビクッ) うっ……、何、この気迫……!?」

ハッピー「……今日は夏休み最後の日……。わたし達は、絶対海に行くんだから……!」


ハッピー「海でみんなといっぱい遊んで、いっぱい楽しい思い出を作るの……!」


ハッピー「そのジャマは……誰にもさせないっ!!」


カッ! バァァァァァッ!!


ウィスタリア「うわっ!? な、何!? プリキュアが、ピンク色に光って……!?」

ノーブル「!? あれって……、"夢の絵の具" の "光る力" ……!?」

マティ「あれが……、プリキュアのみなさまとメルヘンランドの妖精のみなさまが産み出す力……!」


ハッピー「プリキュア!! ハッピーシャワー……!! シャイニングゥゥゥゥっ!!!」


ドバァァァァァァァァァッ!!!


ズドォォォォォォォォォォォンッ!!!


アキラメーナ(電車型・10両編成)「アガァァァァァ……」シュワァァァァ…


マーチ「ハッピーすごい……! 一人でやっつけちゃった……!」

サニー「それで "光る力" 出るって……、どんだけ海行きたいんや……」

ウィスタリア「…………」

ウィスタリア「あ、あたしの "絶望合体" が……。せっかくガンバって描いたのにぃぃぃ……!」

ウィスタリア「お、憶えてなさいよ! 次こそはぜーったいにギッタンギッタンにしてやるんだから!」シュバッ


ビューティ「手ごわそうでしたが、ハッピーの頑張りのおかげで素早く追い払うことができましたね!」

ピース「でも、"絶望合体" ……、ちょっと見てみたかったかも……」シュン

ノーブル「あはは。ピース、ホントにそういうの好きなんだね」

みゆき「さぁーって! 無事みんなの平和も守ったことだし! 気を取り直して海に――」


ピンポンパンポーン


駅内アナウンス『駅構内のお客様にお伝えします。たった今、七色ヶ丘駅にて、お客様が次々に倒れるという事件が発生いたしました』

駅内アナウンス『原因究明のための調査を行いますので、列車の運行はしばらく休止させていただきます。大変ご迷惑をおかけいたしますが、ご協力をよろしくお願いいたします』


みゆき「…………へ?」


やよい「……電車、止まっちゃったの?」

はるか「まあ、あれだけたくさんの人が一度に倒れたらね……。知らない人が見たら、何かの事件か事故にしか見えないだろうし……」

れいか「みなさまの安全を守るために電車を一時停止するのは、仕方のないことですね……」

なお「でも、それじゃあ……」

あかね「海には……、行かれへんな……」

みゆき「……!? ……そ、そんなぁぁぁ……。せっかく頑張ったのに……」ガクッ

キャンディ「みゆき! しっかりするクルぅ!」

オニニン「すごい落ち込みようだオニ。なんだかバッドエナジーが見える気がするオニ」

みゆき「……でも、なんとかならないかなぁ……。すっごく楽しみにしてたし……、できれば海に行きたいよ……」

やよい「って言っても……。ここから海までだと、歩いていくにはちょっと遠すぎるし……」

なお「タクシー、ってわけにもいかないしね……。お金かかりすぎるよ……」

れいか「……ですが、わたしも気持ちはみゆきさんと同じです。何か、別の方法で海に行くことはできないでしょうか?」

あかね「うーん……、別の方法なぁ……」

はるか「……あ、そうだ。ねえ、れいかちゃん、なおちゃん、"あれ"、使えないかな? 私、しばらく海外留学してたから、まだ動いてるかわからないんだけど」

れいか「"あれ"、ですか……?」

はるか「ほら、昔、私達みんなでよく海に行った時に使ってた、あの」

なお「あたし達が昔、って……、……あ!」

れいか「はるかお姉さん、わかりました! "あれ" ですね!」

はるか「そうそう、"あれ"!」


なお・れいか・はるか「"七電"!」

やよい「あ、そうだぁ! "七電" があった!」

みゆき・あかね・マティ「……ナナデン……?」

~ 七色ヶ丘電鉄線 七色ヶ丘駅 ~

みゆき「わぁー……! これが?」

れいか「はい。"七色ヶ丘電鉄線"、通称 "七電(ななでん)"。50年以上前から運行を続けている歴史ある鉄道で、七色ヶ丘市内から海――七色ヶ丘海岸までを結んでいます」

れいか「先ほどの路線の方が海までは早く着けるのですが、それでもこちらを選ぶ方もいるほど愛されている路線です」

なお「れいか、よく憶えてるね……。あたし、しばらく使ってなかったから忘れちゃってたよ」

やよい「わたしも昔、ママとこれで海に行ったことあるんだよ! ここに住んでる人は一回は乗ったことあるんじゃないかな?」

あかね「へぇー……、こんなんあったんや……。こっち引っ越してきて結構経つけど、気付かんかったわぁ……」


はるか「どうかな、みゆきちゃん。これなら、ちょっと時間かかるけど海まで行けるよ!」

みゆき「ウルトラオッケーです、はるかさん! ありがとうございますっ!」

マティ「……れいか様。先ほど、"こちらの方が時間がかかるのにこちらを選ぶ方もいる" とおっしゃいましたが、それはどういうことでしょうか?」

れいか「それは……、ふふ、乗ればわかると思います。ねぇ、なお?」

なお「そうだね。きっと楽しいと思うよ!」

マティ「楽しい、ですか……」


プァァァーッ ガタン ガタン


あかね「お、電車来たで! なんや、ちょっと小っこくてカワイイかんじやな!」

やよい「だよね! 七電はね、デザインが昔風で、少し小さめなのがまたいいんだよねー!」

なお「やよいちゃん、電車とかも好きなの?」

やよい「うん! たまにスケッチとかしたりするよ! 色んな電車があって、かっこよかったりカワイかったりするから!」

なお「カッコイイ……? カワイイ……? 電車が? ……あはは、ちょっとあたしにはわからない……かな」


みゆき「さぁーて、それじゃみんな! 七電で海までレッツゴーだよ!」

全員「おーっ!」

~ 七色ヶ丘電鉄線 七色ヶ丘駅 物陰 ~

ヒョコッ


ウィスタリア「……気になって追っかけてきたけど、プリキュア、さっきっからなにはしゃいでるんだろ……」

ウィスタリア「"ウミ" がどうとかって言ってたっけ……。"ウミ" って何かな……?」

ウィスタリア「……でも……」


ハッピー(回想)『そのジャマは……誰にもさせないっ!!』カッ! バァァァァァッ!!


ウィスタリア「……あんなにしてまで欲しい物なんだから、きっとスゴくいいものだよね……!」


ウィスタリア「にひっ、決めた! その "ウミ"、あたしのものにしちゃお!」

ウィスタリア「プリキュアから横取りしちゃえば、あたしもうれしい、プリキュアもくやしい。一石二鳥じゃない!」

ウィスタリア「それで気持ちが落ち込んだところで一気に "夢の絵の具" を奪えば……! わお、一石三鳥! カンペキだよ!」


ウィスタリア「よぉーし、そうと決まったら早速準備しなきゃ! 覚悟してなさいよ、プリキュア!」

~ 七色ヶ丘電鉄線 車両内 ~

ガタンゴトン ガタンゴトン


マティ「……なお様やれいか様のおっしゃっていたこと、わかりましたわ……!」

あかね「せやな……! 確かに動きはゆっくりやけど、これはええわ……!」

みゆき「うん……!」


みゆき「窓から見える景色が、すっごくキレイ……!」


はるか「七電は海沿いを走る路線なんだけど、山のそばも一緒に通るんだよね。だから、海の青と山の緑、両方一緒に見ることができるんだ」

はるか「観光用としても人気が高くって、他のところからわざわざ乗りに来る人もいるみたいだよ」

みゆき「へぇー……! でも、こんなにキレイな景色が見られるなら納得かも……!」


やよい「うーん、久しぶりに乗ったけど、やっぱりいいなぁ……」

れいか「ええ……。優しい潮風と木々のさざめきが心を落ち着かせてくれます……」

なお「それに、この電車のゆっくりさがまたいいよね。ゆったりした気持ちにさせてくれるよ。普段の電車じゃ味わえない感覚だよね」

あかね「せやなぁ。なんか、こうのーんびりしとると、"旅行" ってカンジするわぁ……」

マティ「……あれが、海……! 本当に水ばかり……! とっても広いんですのね!」

れいか「それはもう。私達の住むこの世界、リアルランドの 7割は海だそうですから」

マティ「そんなに大きいのですか!? とても……すごいですね……!」


あかね「……うちらはもう "海が広い" なんて当たり前になってもーとるけど、よう考えると確かにすごい話やな」

なお「そうだね。あたし達って、実はそんなすごいところで暮らしてるんだよね」

はるか「だからこそ、頑張ってこのキレイな世界と、そこに住む人達を守らなくっちゃね」

やよい「はいっ!」


みゆき「七電……、乗ってよかったかも……!」

みゆき「よぉっし、どんどん撮ろっと!」


パシャッ! パシャッ!


やよい「あ、みゆきちゃん、またデジカメ撮ってる」

あかね「まぁ、こんなええ景色やもんな。撮らなきゃソンっちゅーもんやで」


はるか「ねえ、みゆきちゃん。みゆきちゃんが撮ってばっかりだと、みゆきちゃん自身が写らないよね? よかったら、私が撮ってあげよっか?」

みゆき「え!? いいんですか!」

はるか「もちろん! せっかくみゆきちゃんの思い出を残すんだから、みゆきちゃんがいないとね!」

みゆき「ありがとうございます、はるかさん!」

はるか「さーて、それじゃ、窓から見える海をバックに撮ろうか。笑って笑ってー」

みゆき「(ニコッ)」

はるか「はい、チー――」


あかね「うりゃっ!」ガバッ

みゆき「わっ!? あ、あかねちゃん!? な、なに、急に抱きついて――」


やよい「えいっ!」ガバッ

みゆき「や、やよいちゃんも!?」


なお「それっ!」ガバッ

れいか「では、私も!」ガバッ

みゆき「なおちゃん! れいかちゃん!」


キャンディ「キャンディもいっしょクルぅっ!」ガバッ

みゆき「キャンディまで!」


はるか「……なんだか、いつの間にか集合写真みたいになっちゃったね」

みゆき「あはは、そうみたいです……」


みゆき「ねぇ、マティちゃんもおいでよ!」

マティ「えっ……? わたくしも、ですか?」

みゆき「うんっ! みんないっしょの方がいい写真になるよ! ねっ?」

マティ「は、はい! それでは、ごいっしょさせていただきます!」

はるか「それじゃ撮るよ! チーズ!」

全員「(ニコッ)」


パシャッ!


はるか「……うん、みんないい笑顔だね! いい写真が撮れたよ!」

みゆき「ありがとうございます!」


れいか「ですが、それですとはるかお姉さんが入れませんね。私が代わりますから、今度ははるかお姉さんが入ってください」

はるか「え、いいの?」

れいか「はい、任せてください!」

はるか「……じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな。よろしくね、れいかちゃん!」

れいか「はいっ!」

なお「いやー、写真、いっぱい撮れたね!」

やよい「よかったね、みゆきちゃん!」

みゆき「うんっ! どれも良く撮れて…………あれ?」

れいか「どうかしましたか、みゆきさん?」

はるか「写真、何かマズかった?」

みゆき「あ、いえ、写真じゃなくて、窓の外の海。カッコイイ船がいるなぁ、って」

やよい「どれどれ? ……あ、ホントだぁっ!」

はるか「クルーザーっていう、色んな設備がついた豪華なボートみたいだね。誰かが夏のレジャーで乗ってるのかな?」

あかね「ああ、ええなぁ……! あんなん乗って海の上走るのも楽しそうや!」


みゆき「呼んだら聞こえるかな? おぉーい、クルーザーさぁーんっ!」

れいか「みゆきさん……、いくらなんでもこう離れていては声は届かないのでは……」

なお「……あれっ? でも、そんなことないみたいだよ?」

れいか「えっ?」


クルッ

バババババババッ


みゆき「あっ、こっち向いて近づいて来るよ! 声届いたのかなぁ!? おぉーい!」

やよい「七電と並んで走ってくれるのかな!? どんな人が乗ってるんだろう!?」

バババババババッ


あかね「……ん? な、なぁ、なんかちょっとヘンやない? ずっと真っ直ぐ向かってくんで?」

れいか「た、確かに……。このままだと、海沿いの壁にぶつかってしまいますね……!」

はるか「ホントにおかしいね……! なんだろう、何かあったのかな……!?」


バババババババッ


なお「わっ、あ、危ない! ぶつか――」


バシャァァァァンッ!


全員「!? と、跳んだ!?」


ドスゥゥゥゥンッ!


全員「…………」


みゆき「……えっと、何がどうなったの……?」

やよい「あのクルーザーが海の方からこの七電に向かって真っ直ぐ近づいてきたと思ったら……」

れいか「海面から跳び上がって、そのまま海沿いの壁を跳び越えて……」

はるか「反対側の線路に着地しちゃった……」

なお「……さ、最近の船って、スゴいんだね……」

あかね「な、なに言うとんねん、あれがフツーの船のわけあるかい……! ほれ、見てみぃ!」


ドスンッ ドスンッ ドスンッ ドスンッ


全員「あ、脚が生えて走ってるー!?」

みゆき「な、七電を追ってきてるの!? 近づいてくる!」

ウィスタリア「やっほー、プリキュアのみんな! さっきはよくもやってくれたよね! お返ししに来たよ!」


やよい「! あの船の上にいるのって……!」

みゆき「デスペアランド!」

あかね「っちゅーことは、やっぱあの船、アキラメーナか!」

アキラメーナ(クルーザー型)「アキラメーナァッ!」ドスンッ ドスンッ


ウィスタリア「何だか知らないけど、あんた達、"ウミ" ってお宝が欲しいんでしょ!? それ、あたしがもらうから!」

ウィスタリア「そんで、あんた達の前で見せびらかしてやるんだー! めいっぱい悔しがらせてやる!」


なお「……? 海がお宝? 何言ってるんだろ、あの子……」

れいか「さあ……」

みゆき「なんだかよくわかんないけど、何とかしなきゃ! みんな、行くよ!」

全員「うんっ!」


(中略)


6人「6つの光が導く未来!」

6人「輝け! スマイルプリキュア!!」


ハッピー「さっきと違うアキラメーナだって、またやっつけちゃうんだから!」

ウィスタリア「ふふーん? あたしばっかりに気を取られててもいいのかなー? 早く何とかしないと危ないんじゃないの?」

ハッピー「えっ? それってどういう――」


ガダンッ! ガタガタッ!


ハッピー「うわっ!? な、七電が揺れてる!?」

ビューティ「い、一体何が!?」

ノーブル「あ! みんな、運転席! 運転手さんが!」


七電運転手「…………」グッタリ


サニー「あかん……! 心吸われて動けへんのかいな……!?」

マーチ「運転手さんが運転できないんじゃあ……、事故になっちゃう!」

ビューティ「幸い、私達の他に乗客の方はいませんが、このままでは運転手さんが……!」

ピース「ど、どうしよう……!? どうにかしないと……!」

サニー「……マーチ、うち連れて、七電の前まで行けへん?」

マーチ「えっ? できると思うけど……、なんで……!?」

サニー「うちが七電を押し返して止めたる。せやから、他のみんなはアキラメーナ、頼むわ」

全員「…………」


ハッピー「ちょ、ちょっと待って! いくらなんでも、サニー一人じゃ危ないんじゃ――」

サニー「……海、行くんやろ?」

ハッピー「……えっ?」

サニー「ハッピーは、どーーーしても海、行きたんやろ?」

ハッピー「う、うん……」

サニー「せやったら、こんなところで足踏みしとる場合やないやろ」


サニー「うちに任しとき! うちが、絶対無事に七電止めたるわ!」

サニー「ほんでこのまま、みんなで海行こ! なっ?」ニッ

ハッピー「サニー……!」

ハッピー「……わかった。お願いね、サニー!」

サニー「よし来た! ほんなら、頼むで、マーチ!」

マーチ「うんっ! 他のみんなも、アキラメーナ、よろしくね!」

ビューティ「わかったわ! マーチも気をつけて!」

マーチ「ありがと、ビューティ! じゃあ、行ってくる!」


バッ


ハッピー「じゃあ、私達はあのアキラメーナをやっつけよう!」

ピース・ビューティ・ノーブル「うんっ!」

ハッピー「マティちゃんはここで待ってて! 揺れるかもしれないから、気をつけてね!」

マティ「はい! みなさま、お気をつけて!」


ババババッ

~ 七色ヶ丘電鉄線 車両上 ~

タッ タッ タッ タッ


ウィスタリア「出てきたね、プリキュア! けどいいの? 電車、そのままにしておいて!」

ハッピー「大丈夫だよ。サニーとマーチが "止めてくれる" って言ったんだもん。そのうち――」


ガンッ! ガガガァァァァッ!


ピース「わっ! は、始まった? け、結構ゆれるね……!」

ビューティ「ええ。でも、そのうち――」


ガァァァァッ… シュウゥゥゥゥゥ…


ノーブル「……電車、止まったね!」

ウィスタリア「……えっ? ウソ、もう止まっちゃったの……!?」

ババッ


サニー「よっと!」

マーチ「ほっ!」


ハッピー「サニー、マーチ! 電車、止めてくれたんだね! ありがとう!」

マーチ「ま、ざっとこんなもんだよ!」

サニー「にししっ、言ったやろ? "任しとき" って!」

ハッピー「うんっ!」

サニー「……さぁーて、6人揃ったことやし、一気に決めたろかい!」


ウィスタリア「ろ、6人になったからっていい気にならないでよね! 戦いはこれから――」


ハッピー「キャンディ、お願い!」

キャンディ「わかったクルぅっ!」ポンッ


ウィスタリア「わっ、あ、あの白い妖精が出たってことは……、まさか……!」

キャンディ「"夢の絵の具" よ……、プリキュアのみんなに、未来に進む力を!!」


ブワァァッ!


6人「6つの夢を、今こそ一つに!!」


6人「未来へ届け! 希望の架け橋!!」


6人「プリキュア!! レインボー・アーチっ!!!」


ブワァァァァァァァァッ!!


アキラメーナ(クルーザー型)「アガァァァァッ!?」


6人「ハッピー……エンド!!」


ドガァァァァァァァァァン!!


アキラメーナ(クルーザー型)「アガァァァァァ……」シュワァァァァ…

ウィスタリア「わぁぁっ、やっぱりぃぃっ!? プリキュア、憶えてなさいよぉーっ……」


ヒューーン… ボチャンッ


ピース「あ……、あの子、爆発に巻き込まれて海に落ちちゃった……。だいじょうぶかな……」

マーチ「だいじょうぶじゃない? いつもみたいに シュバッ って消えたりすれば、どうにかなるよ」

ハッピー「あきらめてくれたかな? もう、今日は来ないといいなぁ……」

サニー「せやなぁ……」

~ 七色ヶ丘湾 沖 ~

バシャッ


ウィスタリア「ぷはっ! な、何この水、しょっぱい! ぺっ、ぺっ」


ウィスタリア「それにしても、もうアタマきた……! こうなったら意地でもプリキュアを追っかけてやる!」

ウィスタリア「そんでもって、絶対に "ウミ" を先にゲットして、ギャフンと言わせてやるんだから!」

ウィスタリア「あたしが欲しいものは、何だってあたしのものなんだからね! 見てなさいよ、プリキュア!」

~ 七色ヶ丘電鉄線 線路上 ~

みゆき「――えっ……!? それじゃあ、もう七電動かないんですか……!?」

七電運転手「そうみたいです……。どうも、車輪周りが故障しちゃったみたいで……。今、修理を呼んだんですが、それまではしばらく動けないですね……。申し訳ありません」

みゆき「そ、そんなぁ……、またぁ……?」ガクッ

キャンディ(小声)「みゆき、しっかりするクル! みゆきぃーっ!」

マジョリン(小声)「みゆき、もうホントにバッドエナジー出してるんじゃないマジョ?」


あかね「……もしかして、うちらのせい?」

なお「力でムリヤリ止めたからおかしくなっちゃったのかな……」

れいか「ですが、ああしなければもっとひどいことになっていたはずです。あまり気に病まない方がいいかと……」

あかね「……せやな。おおきに、れいか」

はるか「それにしても、どうしようか……。このまま線路をたどっていったら、海まで着くのにどれくらいかかるかな……」

やよい「そうですね……。でも、電車動かないんじゃ、行くしか……」

あかね「このあっつい中、歩いていくん? ……しゃーないなぁ……」


七電運転手「……あ、お客さん達、海に行きたいんですか? それなら、丁度いい行き方がありますよ」

みゆき「えっ? 行き方、ですか?」

七電運転手「はい。この線路を終点側に沿っていくと、次の駅 "虹ヶ原駅" に着きます。その "虹ヶ原駅" のすぐ近くに、"虹ヶ原ハイキングコース" っていう山道があるんですよ」

七電運転手「"虹ヶ原ハイキングコース" は山を越えて七色ヶ丘海岸の近くまで通じてましてね。このまま線路を歩くより、ずいぶん近道ができますよ」

みゆき「ほ、ホントですかっ!?」

マティ「やりましたね、みゆき様!」

れいか「私も知りませんでした……。まさに "不幸中の幸い" ですね」


みゆき「ありがとうございます、運転手さん! わたし達、そこに行ってみます!」

七電運転手「いえいえ。力になれて良かったです。ハイキングコース自体もとてもいいところなので、楽しんでください」

みゆき「はいっ!」

~ 虹ヶ原ハイキングコース ~

スタスタスタスタ


みゆき「ここがその "虹ヶ原ハイキングコース"?」

あかね「ひゃー、ええなぁ、ここ! めっちゃ涼しいわぁ!」

なお「ホントだね! 木がたくさん生えてて木陰が多いからかな? さっきまでの暑さがウソみたい!」


やよい「こんなところあったんだね……。わたし、ずっとこの町で暮らしてるけど、全然知らなかったよ」

はるか「私もだよ。偶然だけど、いいところ、見つけちゃったね!」

れいか「はい。涼やかな風……、優しい木漏れ日……、蝉しぐれ……。夏の風流が感じられて、とても良いところですね」


みゆき「ここを進んでいけば、海に着くんだよね?」

はるか「この案内図によるとそうみたいだね。もう少しだよ、みゆきちゃん!」

みゆき「はいっ! もうちょっとだよ、みんな! ガンバって進もうっ!」

全員「おーっ!」

グーーーッ…


マティ「……今の音はなんでしょう? ぐーっ、と聞こえましたが……」

れいか「どなたかのお腹が鳴ったのでしょうか?」

マティ「"お腹が鳴る"?」

あかね「ああ、ピクチャーランドの人はそういうことないんかな。うちらの世界の人は、お腹が空くと "ぐーっ" って勝手に鳴んねん」

マティ「まぁ、そうなのですか! ふしぎですね……」


やよい「でも、誰のおなかの音かな?」

あかね「誰か、っちゅーたら、そりゃあ……」チラリ

あかね・やよい・れいか・はるか「(ジーーーーーッ…)」


なお「…………え?」


なお「……違う違う! あ、あたしじゃないよ!?」

あかね「隠さんでもええって。誰だってお腹空いたら鳴るやろ。食いしん坊のなおならなおさらや」

なお「だから違うって!」

みゆき「……ごめん、今の音、わたし……」

やよい「へ? みゆきちゃん?」

はるか「そっか……。みゆきちゃんだけ、今日 2回も戦ってるんだもんね。その分お腹空いちゃったのかな」

みゆき「そうみたいです……、えへへ……」


あかね「なーんや、みゆきやったんかー。早よゆーてくれればよかったのになぁ」

なお「……あかね、あたしになんか言うことないの……?」

あかね「う……、ご、ゴメンな、なお。つい……」

なお「全くもう! 食べ物のことになるとすぐあたしのせいになるんだから!」

マジョリン「いっつもバクバク食べてるんだから、しょうがないマジョ」ボソッ

なお「なんか言った!?」

マジョリン「知らないマジョー」


全員「あはははははっ!」


はるか「案内図見ると、ちょっと行ったところに休憩所があるみたいだよ。少し早いけど、そこでお昼にしようか」

全員「はーいっ!」

~ 虹ヶ原ハイキングコース 休憩所 ~

みゆき「うわぁーっ! すごい見晴らし!」

はるか「本当だね……! 山々に加えて、遠くに私達の町も見えるよ!」

やよい「いい景色……。スケッチブック持ってくればよかったなぁ……」

なお「うぅーん……、この景色を見ながら食事なんて……、サイコーっ!」モグモグ

あかね「なお、もうおにぎり食っとる!」

マジョリン「言ったそばからこれマジョ……。やれやれマジョ」


みゆき「そうだ、写真写真っと!」パシャッ! パシャッ!

あかね「みゆき、もうすっかりカメラマンやな」

れいか「さて、私達の他には人もいなさそうですし、ここでなら妖精のみなさんも出てきても大丈夫そうですね」

あかね「せやな! みんな、せっかくやから出てき! いっしょにご飯食べよ!」

れいか「こんなこともあろうかと、妖精のみなさんの分もお弁当をこしらえてきました。さあ、どうぞ」


キャンディ「わぁ……! さっすがれいかクルぅ! いっただきまーすクル!」パクッ

ウルルン「ガツガツガツ…、こりゃうめえウル……! ガツガツガツ…」

オニニン「お前食べすぎだオニ! そんなに食べたらなくなっちゃうオニ!」

ペロー「ぼくにもちょうだいペロー! おなかすいたペロ!」

ウルルン「へへーんだ! 早い者勝ちウル!」


ポップ「皆の衆、みっともないでござるよ! マティエール王女も見ておられるというのに……」

マティ「お気になさらず、ポップ様。みなさまが楽しそうなところを見ていると、こちらまで楽しくなってきますわ」

ポップ「さ、左様でございますか……。そう言っていただけるとありがたいのですが……、お恥ずかしい限りでござる……」

みゆき「ポップも苦労してるんだねー。メルヘンランドの偉い人だもんねー」

やよい「でもホントだったら、みんなをまとめるのはロイヤルクイーン様のキャンディがやらなきゃいけないんじゃないの?」

キャンディ「キャンディは、まだ修行中だからいいクル。こういうのは、おにいちゃんに任せるクル」モグモグ

ポップ「お主がそんなことではいかんでござる! やよい殿の言う通り、お主はいずれメルヘンランドを治める者、自覚を持って行動しなければいけないのでござるよ」

なお「ま、まぁまぁ、ポップ。せっかくのバカンスなんだから、今日くらいはいいじゃない」

ポップ「む……、そ、それもそうでござるな」

キャンディ「このうさぎさんりんご、おいしいクル! マティにもあげるクル!」

マティ「よろしいのですか? ロイヤルクイーン様自らいただけるなんて……、光栄ですわ!」

キャンディ「キャンディのことは、キャンディでいいクル! その方がおともだちらしいクル!」

マティ「お友達、ですか?」

キャンディ「クル! キャンディと、マティは、おともだちクル!」

マティ「……わかりました! それでは、いただきますわ、キャンディ!」

キャンディ「どうぞクル!」


ポップ「…………」


ポップ("夢の絵の具" を引き出せる能力。シアンナ殿達との戦いの時に見せた勇気)

ポップ(それに何より、ああして他の者と仲良くなれる度量)

ポップ(厳しいことを言ったものの、キャンディはロイヤルクイーンとして着実に成長しているでござるな)

ポップ(この先が……、キャンディの未来が、楽しみでござる)


みゆき「……ん? あーっ! キャンディ、わたしのうさぎさんりんご、食べちゃった!? 取っておいたのにぃ!」

キャンディ「え!? そ、そうだったクル? ゴメンクル……」

みゆき「もうっ! はっぷっぷー!」


ポップ(……でも、もう少し注意力は必要なようでござるな……)

みゆき「――さぁーて、お腹もいっぱいになったし、そろそろ出発しない?」

れいか「私達は大丈夫ですが……、みゆきさん、もうお体は大丈夫ですか?」

みゆき「あー……、うんっ! だいじょうぶだよ! お弁当食べて元気いっぱい!」

あかね「そか。ほんなら行こか!」

なお「そうだね! 海までもう少し! 張り切っていこうっ!」


全員「おーっ!」

~ 虹ヶ原ハイキングコース ~

スタスタスタスタ


あかね「……ん?」

やよい「どうかした、あかねちゃん?」

あかね「いや……、なんか、この先の向こうの方が、ミョーにキラキラしとるように見えるんやけど……。気のせいかな?」

みゆき「あ、確かに、言われてみればそんなカンジするね。なんだろ?」

なお「行ってみればわかるよ! ちょっと見てくるね!」


タタタタタッ…


れいか「あ、なお! ……行ってしまいました」

はるか「ふふっ、なおちゃんのああいうところ、昔っから変わらないね。思い立ったらすぐ行動、ってね」

タタタタタタッ


みゆき「あ、なおちゃん戻ってきた。どうだった?」

なお「……すごかった……」

やよい「すごい、って……何が?」

なお「行けばわかるよ! みんな、早く行こう! ホントにすごいんだよ!」

あかね「なんやなんや、えらい慌てて」

れいか「なおがそう言うなら、少し早めに歩いてみましょうか」

はるか「うん、そうだね。行ってみようか」

~ 虹ヶ原ハイキングコース ひまわり畑 ~

なお「ほら、見てこれ! すごいでしょ!?」

全員「…………」ポカーン…


マティ「た、確かにこれは……」

れいか「一瞬、言葉を失ってしまいました……」

やよい「……ホントにすごい……!」


みゆき「辺り一面、ぜーんぶひまわりだぁ……!」


はるか「……あ、そういえば、案内図に "ひまわり畑" って書いてあった気がする……」

あかね「そうなんです?」

はるか「うん。……けど、まさかここまですごいなんて……!」

れいか「本当ですね……! ひまわりの黄色が鮮やかで、まぶしいくらいです……!」

みゆき「さっき、キラキラして見えたのはこれだったんだ……!」

みゆき「ねぇ、みんな! また写真撮ろうよ! 今度は、妖精のみんなもいっしょに!」

やよい「そうだね! こんなすごい景色、写しておかないなんてもったいないもんね!」

はるか「ここなら人もいないし、妖精のみんながいても大丈夫だしね!」


あかね「……あ、せやけど、誰が撮るん? 撮った人写らへんやん」

れいか「そうですね……。どうしましょうか……」


マジョリン「そんな時は、あたしの出番マジョ!」

なお「マジョリンが? 何かするの?」

マジョリン「まぁ、見てるマジョ!」


マジョリン「むむむむ……、……カァーッ!」


ポンッ


みゆき「わっ! マジョリンが増えた!?」

マジョリンA「分身魔法、成功マジョ!」

マジョリンB「これであたしが写真を撮れば、みんな写れるマジョ!」

なお「そういえば、マジョリーナだった時にも分身してたっけ。何十人くらいに」

マジョリンA「あんなにいっぱいはもうムリだけど、2人くらいだったら何とかなるマジョ!」

はるか「へぇー……、すごいね、マジョリンちゃん!」

マジョリンB「そうマジョ? もっとホメるマジョ!」

マジョリンB「それじゃ、みんな並ぶマジョ! 妖精のみんなはちっちゃくて入らないから、抱っこしてもらうマジョ!」

みゆき「よいしょっと」


マジョリンB「ああ、やよい! ちょっと端に行きすぎマジョ! もっと真ん中に寄るマジョ!」

やよい「う、うん。こうかな?」

マジョリンB「バッチリマジョ!」


マジョリンB「さぁーて、それじゃ撮るマジョ!」

マジョリンA「あたし、しっかりやるマジョ! ピンボケしたりしたら承知しないマジョ!」

マジョリンB「誰に向かって言ってるマジョ!? 言われるまでもないマジョ!」


あかね「自分で自分とケンカしとる……。器用やなぁ……」

なお「器用、っていうか、なんていうか……」

マジョリンB「じゃあ、行くマジョ! はい、チーズ!」

全員「(ニコッ)」


パシャッ!

マジョリンB「どうマジョ、みゆき?」

みゆき「……うん、バッチリだよ! すっごくいい写真が撮れたね! ありがとう、マジョリン!」

マジョリンA「どういたしましてマジョ!」

マジョリンB「なんであんたが言うマジョ!? 撮ったのはあたしマジョ!」

マジョリンA「あたしもあたしなんだから、別にいいマジョ!?」

なお「はいはい。騒がしいから、そろそろ元に戻って」

マジョリンA「……そうするマジョ」


ポンッ

みゆき「…………」ニコニコ

やよい「みゆきちゃん、デジカメ見てニコニコして、うれしそうだね」

あかね「でもわかるわ。ほんま、ええ写真やもんな」

みゆき「うん。キレイなひまわり畑に、それに負けないくらいキレイなみんなの笑顔」


みゆき「この写真、きっとわたしの宝物になると思うよ」

あかね「……そか。よかったな、みゆき!」

みゆき「うんっ!」

ウィスタリア「宝物!? じゃあ、それもまとめてあたしがもらっちゃおうかな!」


はるか「! この声、もしかして……!」


ザッ


ウィスタリア「やっと追いついた! プリキュア! 今度こそギッタンギッタンにするんだから!」

なお「またあんた!? もう、こりないなぁっ!」

ウィスタリア「今日はとことんやるって決めたんだもん! 覚悟してよね!」

ウィスタリア「闇の絵の具よ! 闇の絵筆よ! キャンバスに絶望を描き出せ!」


シュババババッ


ウィスタリア「実体を持ってキャンバスから現れよ、アキラメーナ!」


ズズズズズズ…


アキラメーナ(ひまわり型)「アキラメーナァッ!」


あかね「ったく、ほんましつっこいなぁ!」

みゆき「でも、海まであと少し……! こんなところで負けてられないっ!」


みゆき「みんな、変身しよう!」

5人「うんっ!」


(中略)


6人「輝け! スマイルプリキュア!!」

ウィスタリア「今度という今度は負けないよ! 行け、アキラメーナ!」

アキラメーナ(ひまわり型)「アキラメーナァッ!」


ボボボボボッ!


ピース「! ひまわりの花のところから何か飛んできたよ!」

ビューティ「あれは……、種です!」

ノーブル「数が多い……! 避けきれない……っ!」


ドドドドドォォォォンッ!


6人「わぁぁぁっ!?」


ウィスタリア「いいカンジ、いいカンジ! どんどんやっちゃえ、アキラメーナ!」

アキラメーナ(ひまわり型)「アキラメーナァッ!」


ボボボボボッ!

ドドドドドォォォォンッ!


6人「うわぁぁぁぁぁっ!」

サニー「うっ……、な、なんや……。普段ならもうちょいなんとかなりそうなのに……」

マーチ「体が……重い……!」


ウィスタリア「そりゃそうでしょ。だって、今日はもう何回かあたしと戦ってるじゃん。疲れてるんじゃないの?」

ウィスタリア「特に、そっちのピンクのはね」ニヤッ


ハッピー「……うぅ……っ」

キャンディ(デコル)「ハッピー! だいじょうぶクル!? しっかりするクルぅっ!」

ピース「ハッピー! 動けないの……!?」

ビューティ「やはりまだ疲れが残っていたのでしょうか……!?」


ウィスタリア「でも、手加減なんてしないもんね! こっちだって散々負けてるんだから! 行け、アキラメーナ!」

アキラメーナ(ひまわり型)「アキラメーナァッ!」


ボボボボボッ!

ドドドドドォォォォンッ!


6人「うわぁぁぁぁぁっ!」

マティ「みなさまっ!」

マーチ「うっ……くぅ……!」

ビューティ「うぁ……っ!」


ウィスタリア「あれぇー? よく見たら、他のも結構ボロボロじゃん! これ、イケるよね! 今度こそ、あたしの勝ちだよ! "夢の絵の具" はイタダキだね!」

ウィスタリア「"夢の絵の具" だけじゃない! "ウミ" も! この "ヒマワリ" とかいうのも! さっきピンクのが持ってたちっちゃい箱も!」

ウィスタリア「あんた達の大事なものは、ぜーんぶあたしがもらってあげるよ! あははははっ!」

ハッピー「……渡さない……! 絶対……っ!」グググッ


ウィスタリア「ん? なに、まだ立てるの? ピンクのあんたは一番疲れてるはずなのに。もうあきらめて全部あたしに渡しなさいよ」

ハッピー「渡せるわけ……、ないよ……! "夢の絵の具" も……、この、デジカメも……!」

ウィスタリア「…… "夢の絵の具" はわかるんだけどさぁ、そのちっちゃい箱はなんでそんなに大事なの? その箱自体は別にいっぱいあるんでしょ? じゃあ大したことないじゃん」

ハッピー「大したことあるよ……! このデジカメは、世界に一つしかない、大切なものなんだもん……っ!」

ハッピー「だって……、だって、この中に入ってる写真は……!」

ハッピー「わたしの、中学生最後の夏休みの、大切な思い出なんだもんっ!!」


5人「!!」

サニー(……そっか……。だから、やったんやな)


ピース(ハッピーが、あんなに海に行きたがってたのも……)


マーチ(色んなところで、たくさん写真を撮ってたのも……)


ビューティ(私達と過ごす、中学生最後の思い出を作るために……!)


ノーブル(だから、あの子を追い払ってた時も、あんなに一生懸命だったんだ……!)

ハッピー「だから……、だから……っ! わたしは、絶対に負けたくないっ!」


ハッピー「みんなと楽しい思い出、もっともっと作るんだからぁっ!!」


カッ! バァァァァァッ!!


ポップ(デコル)「また "光る力" でござる!」

ビューティ「今日 2回目……!? 大丈夫なのでしょうか……!」

ウィスタリア「……思い出? なぁーんだ。その箱、そんなものしか入ってないんだ。じゃあいーらないっと。"夢の絵の具" だけもらお」

ウィスタリア「アキラメーナ! やっちゃえっ!」

アキラメーナ(ひまわり型)「アキラメーナァッ!」


ボボボボボッ!


ノーブル「またひまわりの種が……!」

サニー「ハッピーっ!」


ハッピー「絶対負けない……! 絶対……!」

ハッピー「思い出……、友達……、笑顔……」

ハッピー「わたしは、わたしの大切なものを、守るんだぁっ!」


ハッピー「プリキュアァァッ! ハッピー・シャワーァァァッ!!」


ドバァァァァァァァッ!!


ウィスタリア「えっ!? 飛ばした種が全部光の中に消えて――」


ズドォォォォォォォォンッ!!


アキラメーナ(ひまわり型)「アガァァァッ!?」


バラバラバラッ


ウィスタリア「あーっ! 花にくっついてた種も全部吹き飛ばされちゃった!?」

ハッピー「はぁっ……、はぁっ……!」シュウゥゥゥゥ…

キャンディ(デコル)「光が消えてくクル……! ハッピー、だいじょうぶクル……!?」

ハッピー「うんっ……! あと、もう一息……!」


ガクッ


ハッピー「……あっ……?」

キャンディ(デコル)「ハッピー! 倒れちゃうクル!」


ガシッ


サニー「……だいじょぶか、ハッピー」

ハッピー「……サニー……、みんな……。支えてくれたの……?」

ピース「あんなにハッピーがガンバってるところ見たら、じっとしてなんていられないよ!」

マーチ「うん! この戦いも、海までの道も、あともう少し!」

ビューティ「みんなで力を合わせて、最後までガンバりましょう!」

ノーブル「それで、夏休みのステキな思い出、作ろう! ね?」


ハッピー「みんな……! ありがとう……!」


ハッピー「……キャンディ、お願い!」


ポンッ


キャンディ「任せるクルぅっ!」

キャンディ「"夢の絵の具" よ……、プリキュアのみんなに、未来に進む力を!!」


ブワァァッ!


6人「6つの夢を、今こそ一つに!!」


6人「未来へ届け! 希望の架け橋!!」


6人「プリキュア!! レインボー・アーチっ!!!」


ブワァァァァァァァァッ!!


アキラメーナ(ひまわり型)「アガァァァァッ!?」


6人「ハッピー……エンド!!」


ドガァァァァァァァァァン!!


ウィスタリア「ま、また負けちゃったぁっ! あと少しだったのにぃぃっ! 憶えてなさいよぉぉーっ……」


ヒューーン…


ピース「……また飛んでっちゃった」

マーチ「あんなに飛んでったら、さすがにもう戻ってこられないよね」

ノーブル「多分ね。これでもう大丈夫だよ、ハッピー!」


ハッピー「え、えへへ……、よかったぁ……。これで……やっと……海に……行ける……ね――」フラッ


バタッ


ビューティ「ハッピー!? 大丈夫ですか!?」

サニー「倒れてもーた……! しっかりし、ハッピー! ハッピーぃーっ!」

~ 七色ヶ丘海岸 浜辺 ~

ヒュー---ン ズボッ!


ウィスタリア「モガッ!? モガ、モゴモゴ……!(ジタバタ) ……ぶはっ! ぺっ、ぺっ、頭から砂に突っ込んだせいで、砂が口に入っちゃった……!」

ウィスタリア「もぉーっ! プリキュアぁーっ! なんで勝てないのぉー!? 今度こそギッタンギッタンに――」


タタタタタタッ


海の家の老婆「ちょっと、大丈夫かい、おじょうちゃん!?」

ウィスタリア「ん? あんた誰?」

海の家の老婆「あたしは、そこで海の家をやってる者だよ。それより、ケガはないかい?」

ウィスタリア「あたしはこんくらいじゃケガなんてしない…………、……今、何て言ったの?」

海の家の老婆「え? あたしは海の家をやってる者だ、って――」

ウィスタリア「"ウミ"!? "ウミ" がここにあるの!? すっごいお宝なんでしょ!? ねえ、どこにあるの!? あたしはそれが欲しくて来たの!」

海の家の老婆「海がお宝? 何言ってるんだい? やっぱり、さっき頭でも打ったのかねぇ……」

ウィスタリア「いいから、早く教えてよ! "ウミ" はどこ!?」

海の家の老婆「……ホントに海知らないのかい? 珍しいねぇ……」

海の家の老婆「どこにある、も何も、ほれ、目の前にあるじゃないか」


ザザーン…


ウィスタリア「……? 水しかないけど……。そうじゃなくて、"ウミ" を――」

海の家の老婆「いや、だからね。たくさん水があるあの場所のことを海っていうんだよ」

ウィスタリア「…………へ?」


ザザーン…


ウィスタリア「…………」

ウィスタリア「……あの水ぜーんぶが……、"ウミ" ……?」

海の家の老婆「そうだよ」


ウィスタリア「……な、なにそれぇー……。あんな大きいの、あたしのものにするなんてムリだよぉ……」ヘナヘナ…

海の家の老婆「何言ってんだい。海は誰のものでもないよ。みんなのものさ」

ウィスタリア「……ガンバってソンした……」

ウィスタリア「"ウミ" といい、思い出といい……。プリキュアは、なんであんなものを欲しがってたんだろ……。ワケわかんない……」

ウィスタリア「……もういいや。あたしも疲れたし……、帰ろ……」シュバッ


海の家の老婆「……!? 消えちゃった……!? な、なんだったのかねぇ、あの子……」

海の家の老婆「もしかして……、海の妖怪とかだったり……!? ひぇー、くわばらくわばら……」

~ ????????? ~

みゆき「――――ん……」

なお「あ、みゆきちゃん、大丈夫!?」

みゆき「……なおちゃん……?」

なお「よかった……! みんなぁーっ! みゆきちゃん、目、覚ましたよ!」


ドタドタドタッ


あかね「ほんまか!? みゆき、だいじょぶか!?」

みゆき「……あかねちゃん……、みんな……。……わたし、どうしたんだろ……」

やよい「みゆきちゃんね、さっきのひまわりのアキラメーナやっつけた後、疲れちゃってそのまま倒れちゃったんだよ」

はるか「その後、ずーっと寝てたんだから。心配したよ……!」

れいか「本当に……。でも、無事でよかったです……!」

みゆき「あ、そうなんだ……」

みゆき「……ところで、ここ、どこ?」

あかね「ここは、去年うちらがお好み焼き屋出しとった海の家、"ココナッツ" や。ワケ話して、しばらくみゆきを休ましてもろてたんやで」

みゆき「そっかぁ……、海の家…………、……海!?」


ガバッ


みゆき「じゃあ、ここ海なの!? ちゃんと着いたの!?」

なお「う、うん、海には着いたけど……、みゆきちゃん、急に起き上がらないほうがいいよ。まだ疲れてるだろうし」

みゆき「だいじょーぶだよっ! やっと海に着いたんだもん、じっとしてなんてられないよ! 海見てくるね!」ダッ

れいか「あ、みゆきさんっ! まだ安静に――」


タタタタタタッ…


やよい「行っちゃった……」

マティ「大丈夫でしょうか……。また倒れたりしないかどうか、心配ですが……」

はるか「まぁ、あんなに元気に走れるなら大丈夫だとは思うけど……、一応、追っかけよっか」

れいか「そうですね」


はるか「……それより、外出たらガッカリするだろうね、みゆきちゃん」

あかね「そうですなぁ……」

タタタタタッ


みゆき(海! 海! 海ぃっ!)

みゆき(水着! 海水浴! スイカ割り! ビーチバレー! 砂遊び! 何からやろうかなぁっ! ワクワクが止まらないよぉ!)


みゆき「よぉーし、めいっぱい遊ぶぞぉーっ……」


トップリ


みゆき「…………夕日?」

タタタタタタッ


やよい「みゆきちゃーん! 急に走ったら危ないよぉ! まだ寝てた方が……」

みゆき「そ、それよりやよいちゃん。……今、何時?」

やよい「え? ……18:42 だけど……」

みゆき「……!!? も、もうほとんど夜……!?」


ガクッ


みゆき「せっかく海に着いたのに、もう夜だなんて……。これじゃあ遊べないよ……」ガックリ


タタタタタッ


あかね「あー……、やっぱり落ち込んどるわ……」

なお「あんなに海に来るの、楽しみにしてたしね……。ムリもないか……」

れいか「あ、あの……、みゆきさん……。元気を出してください……」


みゆき「って言ったってぇ……。あんなにガンバったのに……」

みゆき「せっかくカワイイ水着も買ったのに……、電車が止まっちゃって行けなくなっちゃってさ……」


みゆき「仕方ないから七電乗ったら、今度は七電も故障しちゃって……」


みゆき「その後、ハイキングコースに行って……、……休憩所でみんなでお弁当食べて……」


みゆき「ひまわり畑に着いて、みんなで写真撮って……」


みゆき「…………」


あかね「……? みゆき? どないしたん、急に黙ってもーて……」

はるか「やっぱり、海で遊べないのがよっぽどショックだったのかな……」

みゆき「……ねぇ、わたしのデジカメってどこにあるかわかる?」

れいか「デジタルカメラ、ですか? でしたら、私が持っていますけれど」

みゆき「ちょっと貸してもらっていい?」

れいか「あ、はい、もちろんです。どうぞ」

みゆき「ありがと、れいかちゃん」

ピッ


みゆき(これは、出発の時、駅で撮った写真)


ピッ


みゆき(これは、七電に乗った時、みんなで景色といっしょに撮った写真)


ピッ


みゆき(これは、見晴らしのいいハイキングコースの休憩所で、みんなでお弁当食べたときの写真)


ピッ


みゆき(これは、とってもキレイなひまわり畑で、みんなで撮った集合写真)


みゆき(…………)


みゆき「……なぁんだ。別に、海で遊べなくてもよかったんだ」

みゆき「わたしの欲しかった "ステキな夏の思い出" は、もう作れてたんだ」

みゆき「電車が動かなくなったおかげで、とってもキレイな景色が見られる、七電っていう電車に乗れた」


みゆき「七電が故障しちゃったおかげで、虹ヶ丘ハイキングコースに行けて、すごいいい眺めの中でお弁当をおいしく食べられた」


みゆき「ハイキングコースに行けたおかげで、ビックリするくらいキレイなひまわり畑も見つけられた」


みゆき「……それを、みんなでいっしょに体験できた」


みゆき「海では遊べなかったけど……、今日のいろんな体験自体が、わたしにとっての "ステキな夏の思い出" だったんだ」


あかね「みゆき……」

やよい「……みゆきちゃんの言う通りかも」

なお「色々あったけど、そのおかげで普段できない体験ができたよね」

れいか「寄り道もまた "道" ……。普段と違う道だからこそ、思わぬ発見がたくさんありましたね」

はるか「うん。大変だったけど、忘れられない夏になったよ」


みゆき「そんな夏をみんなと過ごせて、わたし、ホントに幸せだと思う」

みゆき「みんな、ありがとう!」ニコッ


全員「…………」

あかね「……なにゆーとんねん! そんなん、こっちかて "ありがとう" や! みゆきがおったから、楽しい夏休みになったんやで!」

あかね「ほんま、おおきにな!」ニコッ


みゆき「……うんっ!」

みゆき(色んな新しくて、楽しいことがたくさんあふれてて)

みゆき(わたしがいて、みんながいて、いっしょに笑い合えて)

みゆき(そんな毎日が、とっても楽しくて、幸せで)


みゆき(色々タイヘンなことはあるけど……、こんな風に楽しく毎日を過ごしていければ、きっとたどり着ける気がするよ)


みゆき(わたし達それぞれが行きたい、わたし達だけの未来へ)





つづく

次回予告

みゆき「今日からいよいよ新学期! クラスのみんなとも会えて、ウルトラハッピー!」

みゆき「またいつもの学校が始まる、と思ったら、えぇっ!? マティちゃんが七色ヶ丘中学校に転校してきちゃった! "わたし達の生活のことをもっと良く知りたい" んだって!」

みゆき「……でも、マティちゃん、時々真剣な顔してる……。それだけじゃなくて、何か他にしたいことがあるのかな……? それって、なんなんだろう……」


みゆき「次回、『スマイルプリキュア レインボー!』 "転校生マティ! 王女様の華麗な学園生活!"」


みゆき「みんな笑顔でウルトラハッピー!」

今回はここまでです!
お読みいただいた方、ありがとうございました。

それでは、よかったら次回もまたよろしくお願いします!


第1話 ~ 第11話 『スマイルプリキュア!』第2期を SS で作るスレ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1360385907/)
第12話 ~ 第20話 『スマイルプリキュア レインボー!』 Part 2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1366529393/)

第21話 >>4 から
第22話 >>125 から
第23話 >>247 から
第24話 >>350 から
第25話 >>486 から
第26話 >>601 から
第27話 >>697 から

お返事タイム、参ります!


> ボーズさん
いつもご愛読ありがとうございます!
ガタケットは、、自分としてもとても残念ですが、楽しんでらしてください!
自分はテレビ放送された ASNS でも見てます。。



> 694さん
プリキュア、5つの掟・その1!
『プリキュアは水着姿を見せてはならない!』

仰るとおり、この掟を破るとキビしい罰が下されます。

グッズの造型がヘンになったり、
パワーアップがなかなかできなかったり、
せっかくパワーアップしても、一人だけ材質が違ったりするようになります。
※よくわからない方は "mktn" で検索してみてください


と、いうわけで、27話、お読みいただいたならわかると思いますがこういう話で、
最初っから水着姿を出す気はありませんでした。
水着期待されてた方、スミマセン。

……でも、文字だけしかないのに水着シーン見たいもんですかね? どうなんでしょ。

> 695さん

> ウィスタリアがレジーナ(デレる前)に似てる気がする。

スミマセン、、ここはそっとしておいてやってください。。

設定はシリーズ始める前からできてたので、ストーリーの都合上変えるに変えられず。。
初めてレジーナ見た時は「ホゲーッ! 似たようなのが出てきたぁーっ! チクショー!」と思ったものです。。

ただ、同じキャラにはならないはず(と、思います)なんで、しばらく見守ってやってください。



> そういえばスマイルプリキュア レインボー!の着ぐるみショーの脚本はないのかな(チラッチラッ

これは。。
何か書くのはいいのですが、結局文字しかないのでやること変わらないような気がします。。

子ども向けな、超マイルドな短編がご希望、ということですかね。


ただ、また別の話になりますが、もしかしたら番外編をやるかもしれません。……作業量が足りれば。。
"本編じゃできないけど、番外編ならやってみたい" というアイデアがありまして。

あまり期待せずにお待ちください。



お返事タイムは以上です!
それでは、また来週!



NS1見て思ったんだけど、もしドキドキじゃなくてこのレインボー!が放送されたら、
NS2でグレルとエンエンにやられてプリキュア全滅するよねwwノーブルは時期的に加入してないし

>>786 本当は「劇場版 スマイルプリキュアレインボー!」を見てみたかったりするんだけど、
作業量的に大変かな(約3話分)? って思った。でも全話終わった後なら大丈夫だったりする?

『スマイルプリキュア レインボー!』

このあとすぐ!

~ 七色ヶ丘中学校 通学路 ~

みゆき「ふふふーん♪ ふふふふーん♪」

キャンディ「みゆき、なんだか楽しそうクル?」

みゆき「そりゃそうだよー! だって、今日から新学期なんだもーん! クラスのみんなともまた会えるからうれしいよー!」

キャンディ「勉強もしなきゃいけないのにクル?」

みゆき「…………」


みゆき「……みんな、夏休みどんな風に過ごしたのかなー!? 色んなお話聞こーっと!」

キャンディ「ごまかしたクル」

スタスタ


クラスメイト・尾ノ後 きよみ「星空さん、おはよー!」

みゆき「わっ!? キャ、キャンディ、かばんに隠れて!」

キャンディ「クル!」スポッ


みゆき「お、おはよう、尾ノ後さん! ……あれ? なんだかずいぶん焼けたね! 夏休みの間、どこか行ってたの?」

クラスメイト・尾ノ後「うん! まゆとひろこと一緒にプールとか海にいっぱい行ったんだ! おかげですっかり焼けちゃった!」

みゆき「へぇー、そうなんだ! 楽しい夏休みだったんだね!」

クラスメイト・尾ノ後「星空さんも、後でどんな夏休みだったか聞かせてね! それじゃ!」

みゆき「うん! また後でね!」


タタタタタ…

スタスタ


クラスメイト・豊島 ひでかず「おっす、星空!」

みゆき「あ、豊島くん、おはよう! ギター持って、またバンドの練習?」

クラスメイト・豊島「おう! ホントは夏休みにもっと練習したかったんだけどさ、なかなかバンド練習できる場所ってないんだよな。学校の音楽室なら練習できるから、新学期が待ち遠しかったぜ!」

みゆき「そっかぁ……! 豊島くん、ガンバってるんだね!」

クラスメイト・豊島「へへっ、まあな! 星空、よかったら今度、練習聞きに来てくれよ。生ライブ、やってやるからよ」

みゆき「うんっ! 絶対行くよ!」

クラスメイト・豊島「約束だぜ! んじゃ、教室でな!」


タタタタタ…


みゆき(……みんな、楽しく夏休み過ごせたんだね。よかった)

みゆき(今はデスペアランドの人たちが襲ってきたりしてタイヘンだけど、こんな日がずーっと続くように、ガンバらなくっちゃ!)

スタスタ


マティ「おはようございます、みゆき様!」

みゆき「あ、マティちゃん、おはよう! ……あれ? それ七色ヶ丘中学校の制服? 似合ってるね!」

マティ「はい! はるか様が昔着ていたものをいただきました! それではすみませんが、急ぎますので失礼させていただきますわ」ペコリ

みゆき「うん! またね!」


タタタタタ…


みゆき「…………」

みゆき「……ええ!? ちょ、ちょっと待って!? なんでマティちゃんがうちの学校の制服来て、学校に入っていくの!? キャ、キャンディ、何か知ってる!?」

キャンディ(小声)「キャ、キャンディもわからないクルぅ……」

みゆき「だ、だよね。何にも聞いてないもんね……」


みゆき「ど、どうなってるのぉー……?」ポカーン…

~ 七色ヶ丘中学校 1-3教室 ~

1-3担任教師「――えー、と、いうわけで、本日からこのクラスに転入することになった "絵原(えはら) マティエール" さんだ。みんな、仲良くするように」

マティ「絵原 マティエールと申します! みなさま、よろしくお願いいたしますわ!」ペコリ


1-3 女子生徒A「うわー、髪、真っ金金のサラサラ……。超キレイー……」

1-3 男子生徒A「どこか、外国の子かなぁ……」


1-3担任教師「では、絵原さんの席は……、あぁ、木下さんの隣が空いてるな。あそこに座りなさい」

マティ「わかりました!」


スタスタスタ ガタッ


マティ「木下様とおっしゃるのですね。お隣同士、よろしくお願いいたしますわ」

1-3 女子生徒・木下「あ……、う、うん。よろしく……お願いします……」

マティ(プリキュアのみなさまと同じ、七色ヶ丘中学校への転入はうまくいきましたわ。こうして入れたからには、がんばらなくては)


マティ(わたくしの、やるべきことをやるために)




スマイルプリキュア レインボー!

第28話「転校生マティ! 王女様の華麗な学園生活!?」



~ 昼休み 中庭 ベンチ ~

やよい「みゆきちゃんの言ってたとおりだ……。ホントにマティちゃんがうちの学校に来てる……」

みゆき「ね? 言ったとおりでしょ?」

マティ「申し訳ありません……。ないしょにしてしまっていたおかげでみなさまを驚かせてしまったようですね」

なお「いや、まぁ、別にいいんだけどさ……。ただ、ビックリはしたよ……」

れいか「ええ……。唐突でしたから……」

あかね「……で、これはどーゆーことなんか、説明してもらえんか、マティ?」

マティ「はい。……あれは、一週間くらい前でしたでしょうか」

~ 一週間前 ふしぎ図書館 ~

はるか(回想)『え? 学校に行ってみたい?』

マティ(回想)『はい。わたくしも、プリキュアのみなさまと同じ生活を体験してみたくて……。なんとかなりませんでしょうか?』

はるか(回想)『うーん……。マティちゃんはこっちの世界の人じゃないし、普通だったらムリだけど……』


はるか(回想)『七中には留学のこととかでお世話になった先生もいるし、なんとかならないか、相談してみるよ。そしたらうまくいくかも』

マティ(回想)『! 本当でございますか!?』

はるか(回想)『うん、多分ね。ただ、制服はどうしようもないから、私のお古を貸してあげる。それでガマンしてね』

マティ(回想)『はい! ありがとうございます、はるか様!』

~ 現在 中庭 ベンチ ~

マティ「――と、いうわけで、はるか様の手助けもあって、無事こちらの学校に入ることができたというわけです」

みゆき「じゃあ、マティちゃんはこっちの世界の学校に来てみたかったから転入してきた、ってことなの?」

マティ「はい。その通りでございます」

あかね「へぇー……。わざわざ自分から学校に来たい、なんて、変わっとるなぁ……。勉強とかもせなあかんのやで?」

マティ「こちらの世界のことを学べるのであれば、とってもうれしいですわ! 楽しみです!」

ポップ「さすが王女様、とても勉強熱心でござる。キャンディも、プリキュアの皆の衆も、見習わなければならんでござるな」

みゆき・あかね・やよい・なお・キャンディ「……はぁーい……」


マティ「それでは、今後はみなさまといっしょにこちらの学校に通わせていただきます! よろしくお願いいたしますわ!」

みゆき「あ、うん! こちらこそよろしくね、マティちゃん!」

みゆき(ナレーション)『と、いうわけで、わたし達とおんなじ学校に通うことになったマティちゃん。学校でもいっしょにいられてウルトラハッピー!』


みゆき(ナレーション)『――そう思ってたんだけど、マティちゃんにあんなに困らされることになるなんて、その時のわたし達は考えてもなかったのでした……』

~ 七色ヶ丘中学校 図書室 ~

ガラッ


みゆき「さぁーて、今日はどの本にしよっかなぁー?」

あかね「みゆき、また絵本借りるん?」

みゆき「うん! わたしも、もっともっといいお話が書けるようになりたいもん。いろんなお話を読まないとね」

あかね「そっか……。みゆき、ガンバっとるんやな」


あかね「よし! ほんならうちもなんか本探したる! ええ本あったら持ってくるわ!」

みゆき「ありがとう、あかねちゃん!」

ボソボソ…


ウルルン「……ん? おい、あかね、みゆき、なんか奥の方から声がするウル」

あかね「え? そうなん? うちわからんけども」


アハハ… ウフフ…


みゆき「あ、でもたしかに話し声みたいなのが聞こえるね。誰かいるのかな?」

あかね「まぁ、図書室やから別に誰がおってもふしぎやないけども」


ウフフ… アハハハ…


キャンディ「でも、なんだかいっぱいいるみたいクル」

みゆき「そうだね。この奥、そんなに広くないはずなんだけど……」

あかね「そうなんか。それは確かにヘンやな。行ってみよか」

みゆき「うん」


スタスタスタ


みゆき・あかね「…………えぇ!?」

『青い鳥』のチルチル「――そんな風に、ぼくと妹のミチルはたくさんいろんな冒険をしたんだよ」

マティ「すばらしいお話でしたわ……! わたくし、お話を聞いているだけでドキドキしてしまいました!」

『一寸法師』の一寸法師「せっしゃのお話だってすごいぞ! なんてったって、鬼のおなかの中に入ってやっつけてしまうんだからな!」

『赤ずきん』の赤ずきん「わたしだって、オオカミさんに食べられちゃったりしちゃうんだから!」

マティ「みなさま、とてもタイヘンな目にあわれているのですね……! ぜひ、もっと聞かせてくださいませ!」


ワイワイ アハハ ウフフ


あかね「……な、何やこれ……。絵本のキャラクターが本から外に出て、マティと話しとる……!?」

マティ「あ、みゆき様! あかね様! ごきげんよう!」

あかね「ご、ごきげんよう……、って、ちゃうわ! マティ、これどないしたん!? なんで絵本のキャラクターが机の上におるんや!?」

ウルルン「まるでメルヘンランドみたいウル……」

マティ「わたくし、ロイヤルクイーン様のようにはいきませんが、ほんの短い間だけなら絵に力を与えて、こうして外に出すことができるのです」

マティ「その力で、絵本のみなさまにお話をしていただいていたのです。とても楽しいですわ!」

キャンディ「マティ、すごいクル……。こんなことできるクル……」


みゆき「…………」ポカーン…

あかね(小声)「みゆき、ビックリするのはわかるけども、ぼーっとしとる場合ちゃうで……! マティにバシっと言うてやらな!」

みゆき「……あ、う、うん! そうだよね! バシっと言わなきゃ!」


ツカツカツカ


みゆき「マティちゃん!」

マティ「? なんでございますか、みゆき様?」

バッ


みゆき「お願い! この『ピーターパン』の絵も外に出して! わたし、一度でいいからピーターパンとお話してみたかったのっ!」キラキラ

あかね「(ズコッ)」


あかね「……ちゃうやろ! そんなことバシっと言うてどないすんねん!」

あかね「マティ、そんなことしたらあかんて! 誰かに見つかったらどないするん!? 大騒ぎになってまうで!?」

マティ「え……。そうなのですか……?」

あかね「そやで! こっちの世界じゃ、絵が出てきて動いたりせえへんの! ほら、ええからその子ら早よしまい!」

みゆき「えー、しまっちゃうの? こんな楽しいのにもったいないよー」

あかね「なんでみゆきが文句言うんや! マティが普通の人やない、ってわかってもーたらどないするん!? マティはこっちの世界のいろんなことがわからへんのやから、うちらが止めんとあかんやろ!」

みゆき「あ……、う、うん、そうだよね。……と、いうわけだからマティちゃん、残念だけど、その絵を元に戻して――」


スタスタ


図書委員の男子生徒「……あのー、さっきから何を騒いでるんです? ここは図書室ですよ。お静かに」

みゆき・あかね「わーっ!」

みゆき「あ、あのね! これはね、なんでもないの!」

あかね「せやで! 机の上にはなーんもあらへんで!」

図書委員の男子生徒「……ですから、お静かに。それに、机の上ってなんです? 本しかないのにどうして隠すんですか?」

みゆき「え? マ、マティちゃん?」

マティ「(コクコク)」

みゆき(マティちゃん、うなずいてる……。絵本のキャラクターもいない。もう元に戻してくれたんだ)


みゆき「あ、ううん、だから、ホントになんでもないの! うるさくしてゴメンね」

図書委員の男子生徒「……そうですか。今はたまたま誰もいないからよかったですが、気をつけてくださいね。ここはみんなの場所なんですから」

あかね「う、うん。わかったわ」

図書委員の男子生徒「お願いしますよ。それでは」


スタスタスタ…


みゆき「…………はぁーっ……、よかった、行ってくれた……」

あかね「何とか見られんですんだみたいやな……」

あかね「……っちゅーわけや。マティ、わかったか? うちらだけの前でならともかく、もう他のところで今みたいなことしたらあかんで?」

マティ「わかりました……。ご迷惑をおかけいたしました」ペコリ

みゆき「謝らなくってもいいよ! 別に悪いことしたわけじゃないんだし」


マティ「……ですが、先に、やってはいけないことだとわかってよかったですわ」

マティ「実は、これをクラスメイトのみなさま方の前でやろうかと思っていたのです。今やっていたのは、そのための練習でしたの」

みゆき・あかね「えっ!?」

マティ「わたくし、早くクラスのみなさまと仲良くなりたくて……。だから、これをやればみなさまに喜んでいただけるかと思ったのです」


あかね「そ、それはほんまによかったわ……。間一髪やったな……」

みゆき「マ、マティちゃん。みんなと仲よくなるのはステキなことだけど、もっと他の方法でやろうね」

マティ「はい、わかりました!」

マティ(……ですが、はるか様に聞いたお話だと――)


はるか(回想)『学校に行ったら、多くの人と仲よくなりたい? それなら、自分の得意なことをみんなに見せたらいいよ。そうすれば、みんなに興味を持ってもらえるかも』


マティ(――と、いうことでしたが……。絵を動かすのはダメなのですね……。他に、わたくしにできる、得意なことといえば……)

マティ(……そうですわ!)

マティ「みゆき様、あかね様! それでしたら、絵を描いてみなさまにお見せする、というのはいかがでしょうか? それもやってはいけませんか?」

みゆき「あ、なるほど! マティちゃん、絵の国の王女さまだから、絵も上手なんだよね、きっと」

あかね「うん、それやったらだいじょうぶやな! とびっきりウマい絵を描いたら、きっとみんなもマティのことを好きになってくれるで!」

マティ「本当でございますか!? では、それでやってみたいと思います! ありがとうございます!」

みゆき「うん! ガンバってね、マティちゃん! お友達、いっぱいできるといいね!」

マティ「はいっ!」

~ 放課後 七色ヶ丘中学校 漫画研究部室 ~

やよい「(カリカリカリ)」

漫研部員 2年女子・稲上「わぁ……! 部長、また絵うまくなったんじゃないですか?」

漫研部員 3年男子・成島「うん、やっぱりプロの漫画家を目指しているだけあるね。すごく上手だよ」

漫研部員 3年女子・美川「ほんと、すごいね、黄瀬さん。わたしも見習ってガンバらないと」

やよい「えへへ、そうかな……? なんだかテレちゃうけど……、ありがとう」

漫研部員 1年男子・河村「……あ、"絵がうまい" といえば、今日、うちのクラスにとっても絵が上手な子が転入してきたんですよ」

漫研部員 3年男子・成島「そうなのかい?」

漫研部員 1年男子・河村「はい! 成島センパイみたいに似顔絵がとっても上手なんですが……、絵を描く速さがとにかくすごいんですよ!」

漫研部員 1年男子・河村「こう……、バババッ、ってちょっと筆を振るっただけでできちゃうんです!」

やよい「…………え?」

漫研部員 2年女子・稲上「えぇー? そんなことできるの? いくらなんでもムリなんじゃない?」

漫研部員 1年男子・河村「ホントなんですって! センパイ達も見たらビックリしますよ! もう、1年の間じゃその子のウワサでもちきりなんですから!」


やよい「…………」

オニニン(小声)「……やよい、それってもしかして……」

やよい「うん……」

やよい「ね、ねぇ、河村くん。その子ってどこにいるか、わかる?」

漫研部員 1年男子・河村「え? ……ああ、多分まだ中庭にいるんじゃないでしょうか。放課後になってからもずっと似顔絵描いてましたから」

やよい「な、中庭だね! ありがとう! ちょっと気になるから見てくるね!」


タタタタタ…


漫研部員 2年女子・稲上「……部長、出て行っちゃいましたね。そんなに気になったんでしょうか」

漫研部員 3年女子・美川「そうかなぁ……? なんだか焦ってたように見えたけど……」

~ 七色ヶ丘中学校 中庭 ~

シュババババッ


マティ「はい、できましたわ! どうぞ」

1年女子生徒A「ホントにすごいね、絵原さん! 手が速すぎて、どうやって描いてるのか全然わかんないくらい!」


1年女子生徒B「ね? スゴいでしょ!? "1年にすごく絵がうまい子がいる" ってウワサ、ホントだったね!」

1年男子生徒B「うん、確かにすごいね……。人間ワザとは思えないよ……」


ザワザワ ワイワイ


やよい「……やっぱり! マティちゃんだ……!」

やよい「マ、マティちゃんっ!」

マティ「あ、やよい様! ごきげんよう」

やよい「あ、ご、ごきげんよう……、じゃなくて! どうしてこんなところで絵なんて描いてるの……?」

マティ「わたくし、早くみなさまと仲良くなりたくて。そのことでプリキュアのみなさまにご相談したら、わたくしの得意な "絵描き" を披露したらいいんじゃないか、とアドバイスをいただいたんです」

やよい「だ、だからってこれはちょっとやりすぎじゃあ……。マティちゃんの横、絵が山積みだよ……」

オニニン(小声)「100枚くらいはありそうだオニ……」

マティ「はい! みなさんにとっても気に入っていただけたようで、多くの方々からお願いされたので描いていたら、いつの間にかこんなにたくさんになってしまいました!」

やよい「…………」


やよい「マ、マティちゃん。とりあえず、別のところ行こっか」

マティ「え? あの、お誘いはありがたいのですが、まだ似顔絵を描くと約束した方々が残って――」

やよい「ちょっとだけだから! ほら、行こっ!」グイグイ

マティ「や、やよい様!? お、押さないでくださいませ!」

~ 七色ヶ丘中学校 校舎裏 ~

やよい「もう、マティちゃんったら……。あんなに速く絵を描けるのはスゴいけど、目立ちすぎちゃうよ……」

オニニン「そうオニ。普通の人じゃないってわかっちゃったら大さわぎになっちゃうオニ」

マティ「そうですか……。みゆき様とあかね様には、"絵を描くくらいだったらやってもだいじょうぶ" と言われたのですが……」シュン

やよい「え? そうなの?」

マティ「はい……」

やよい(……あの二人も、マティちゃんがあんなに速く、たくさん絵を描くとは思ってなかったんだろうなぁ……)


マティ「みゆき様とあかね様にはご相談したのですが、わたくし、早くこの学校のみなさまと仲良くなりたくて……」

マティ「それで、みなさまが喜ぶことをしたらいいかと思っていたのです……」

やよい「だから似顔絵を描いてたの?」

マティ「そのとおりでございます……」

やよい「そうだったんだ……」

やよい「……あのね、マティちゃん。上手な絵を描くのはとってもいいことだと思うよ」

やよい「でもね、マティちゃん、ちょっと絵を描くのが速すぎるみたい。普通の人はあんなに速く描けないから、もうちょっとゆっくり描くといいんじゃないかな」

マティ「ゆっくり、ですか……」

やよい「うん。そうしたら、みんなマティちゃんのこと、普通の女の子として好きになってくれると思うよ!」

マティ「……! 本当でしょうか!?」

やよい「うん!」

マティ「わかりました! わたくし、ガンバってゆっくり描いてみますわ!」

やよい「わたしも、絵を描くところしばらく見ててあげるよ! どのくらいの速さで描いたらいいか、教えてあげるね!」

マティ「ありがとうございます、やよい様! よろしくお願いいたしますわ!」

~ 七色ヶ丘中学校 中庭 ~

ペタ… ペタ… ペタ…


1年女子生徒C「……ねえ、まだ? すごく速く似顔絵を描いてくれる、っていうウワサ聞いてきたんだけど、結構時間かかるね」

やよい「あ……、み、みんな見間違えたんじゃないかなぁ? ずっとこれくらいだったと思うよ?」

1年女子生徒C「そうなんですか? ……まぁ、"5秒で似顔絵描く" なんてやっぱりムリですよねー。わかりました、もう少し待ってます」

マティ「ありがとうございます。申し訳ありませんが、もう少しお待ちくださいませ」ペタペタ


やよい(5秒……。さすがに速すぎるよ……。そんなウワサが広がってたんだ……)

マティ「……できましたわ! いかがでしょうか?」

1年女子生徒C「へぇー、すっごい上手! まるで写真みたーい! これ、もらってもいいの?」

マティ「もちろんです! お近づきのしるしに差し上げますわ!」

1年女子生徒C「パパやママに見せたらビックリするだろうなぁ……! ありがとう、大事にするね!」


スタスタスタ…


マティ「……よかったですわ。とっても喜んでいただけたようです」

やよい「ねっ? これならマティちゃんが普通の人じゃないってわからないように、お友達を作れるよ」

マティ「はい! わたくし、ガンバってみます!」

やよい「うん! 応援してるね! それじゃ、わたしは部活に戻るよ」

マティ「ありがとうございました、やよい様!」

マティ(プリキュアのみなさまに助けていただいたおかげで、学校の方々とも仲よくなれそうですわ)

マティ(こうして、いろんな方と仲よくなっていけば、そのうち――)


スタスタスタ


美術部員 1年女子A「あのー……、絵がとっても上手な転校生って、あなた?」

美術部員 1年女子B「ちょっとお願いしたいことがあるんだけど、いいかな?」

マティ「はい、なんでございましょう?」

~ 七色ヶ丘中学校 廊下 ~

れいか「ごめんなさいね、なお。急に手伝ってもらってしまって」

なお「いいっていいって! こんなにたくさんの本、れいか一人で運ぶのタイヘンでしょ? 任せといてよ! 力仕事なら家事で慣れてるからさ!」

れいか「助かるわ。生徒会に必要な本なんだけれど、急に人手が足りなくなってしまって……。どうしようかと思っていたの」

なお「水臭いなぁ。あたしとれいかの仲じゃない! 言ってくれればそれくらい手伝うよ」

れいか「……ありがとう、なお」


タタタタタ


2年男子生徒B「か、会長! タイヘンです!」

れいか「どうしたのですか、そんなに慌てて……。何かあったのでしょうか」

2年男子生徒B「と、とにかく来てください! 校舎の壁がタイヘンなことに!」

なお「な、なんかただ事じゃなさそうだね……。いったん本置いてそっち行ってみようか」

れいか「ええ……」

~ 七色ヶ丘中学校 校舎脇 ~

なお・れいか「…………」ポカーン…


なお「こ、これは……」

れいか「校舎の壁に、たくさんのお花の絵が……!」

2年男子生徒B「ぼ、ぼくがたまたま通りかかったらこんなことになっていて……、どうしたらいいのかわからなかったから、会長に相談しようと……」

れいか「た、確かにこれは大変なことになっていますね……」


スタスタスタ


美術部員 1年女子A「……わっ!? な、何これ!? 壁に花の絵!? いつの間に……!?」

美術部員 1年女子B「ちょ、ちょっと! どうなってるの、これ!?」

美術部員 1年女子A「わ、わたしもわかんないよ……! ちょっと離れてただけなのに、なんでこんな……」

美術部員 1年女子B「……そういえば、あの転校生の子は? あの子なら何か知ってるんじゃないの?」

美術部員 1年女子A「あ……、いないみたい……。どこ行ったんだろ……」キョロキョロ


なお(小声)「……ねぇ、れいか。あの子達の言ってる "転校生の子" って、もしかして……」

れいか(小声)「……ええ。多分、マティさんだわ……」


れいか「すみません。私、生徒会長の青木 れいかと申します。お二人は、この絵についてなにかご存知なのでしょうか? 知っていることがあったら教えてもらえませんでしょうか」

美術部員 1年女子A「せ、生徒会長さん!? は、はい……、わかりました……」

美術部員 1年女子B「と、言っても、わたし達にも何がなんだかわからないんですけど……。さっきまでのことを話します」

美術部員 1年女子A「わたし達、美術部の活動で、今度の文化祭のために校舎の飾り付けについて考えていたんです」

美術部員 1年女子B「ただ、どうしてもいいアイデアが出なくって……。それで、ウワサになってたとっても絵が上手な転校生の子に相談しに行ったんです」

れいか「その転校生というのは、とてもきれいな金色の髪をした 1年生の方では?」

美術部員 1年女子A「あ、そうです!」

なお「やっぱり、マティちゃんだ……!」


美術部員 1年女子A「わたし達はここを飾り付ける担当だったんですけど、その子に飾り付けのデザインを相談したんです」

美術部員 1年女子B「でもその時、飾り付けのアイデアを描くスケッチブックを忘れて……、部室に取りに戻って……」

美術部員 1年女子A「それで、今戻ってきたら、こんなことに……」


れいか「そうですか……」

スタスタスタ


マティ「あら、お探しいたしましたわ! ご相談されていた飾りつけをわたくしなりにしてみたのですが、このような感じでいかがでしょう?」

美術部員 1年女子B「あ、転校生! 戻ってきた! これ、あなたがやったの!?」

マティ「はい! とても華やかになったと思います!」

美術部員 1年女子A「あ、あのね、た、確かにキレイだけど、校舎に直接描いたらダメだよ……! このスケッチブックにアイデアを描いてもらうだけでよかったのに……!」

マティ「……え……。そ、そうだったのですか……?」

美術部員 1年女子B「ど、どうしよう、これ……。先生に見つかったら怒られちゃうよ……!」


ザワザワザワ…


マティ「…………」

マティ(人の見ていないところなら早く描いてもだいじょうぶかと思い、つい張り切ってしまいましたが、これは……)


マティ(小声)「あの……、なお様、れいか様……、もしかして、わたくし、よくないことをしてしまったのでしょうか……」

なお(小声)「うん、結構ね……。どうしよう、れいか……」

れいか(小声)「マティさんは色々わからないことも多いでしょうから、やってしまったものは仕方がないわ……。私達で何とかしましょう……!」

なお(小声)「それしかないかぁ……」

れいか「み、みなさん、落ち着いて! こちらのことは私達に任せてください!」

美術部員 1年女子A「え……、いいんですか……?」

美術部員 1年女子B「で、でも、その子にお願いしたのはわたし達だし……。わたし達も何かしないと……」

なお「実はその子、あたし達の友達なんだ! だから、その子とあたし達でどうにかするから! みんなは気にしないで大丈夫だよ!」

美術部員 1年女子A「……わかりました。じゃあ、よろしくお願いします」


スタスタスタ…


れいか「…………ふう。とりあえず、みなさん行ってくれたわね」

なお「そうだね。……で、この絵だけど……、どうにかして消すしかないね……」

れいか「ええ……」

なお「あたし達だけじゃムリそうだから、他のみんなも呼んでくるよ」

れいか「そうね……。申し訳ないけど、手伝ってもらいましょう。お願いね、なお」

なお「うん」

~ ふしぎ図書館 ~

みゆき・あかね・やよい・なお・れいか「…………」グデーン

はるか「そっか、そんなことがあったんだ……。大変だったね、みんな。おつかれさま」


あかね「ほ、ほんま疲れましたわ……」

なお「その後、みんなでガンバって、マティちゃんの描いた絵の後始末……」

みゆき「なかなか消えなくって……。ぞうきんこすった腕がもうパンパンです……」

はるか「ゴメンね、みんな。マティちゃんの転入の手伝いしたの、私なのに、一緒にお掃除できなくて」

れいか「いえ……。はるかお姉さんは何も悪くありませんから……、どうかお気になさらず……」


マティ「……もうしわけありません、みなさま……。わたくしのせいでご迷惑をおかけしてばっかりで……」

マティ「わたくし、学校には行かない方がよかったのかもしれません……」

やよい「マティちゃん……」

あかね「…………んで? マティ、結局友達できたん?」

マティ「え……?」

あかね「マティが色んなことやっとったのは、友達作るためやったんやろ? それはどやったん?」

マティ「あ、その……、えっと……」


マティ「……似顔絵を描いた方には、とても喜んでもらえました」

なお「うんうん、それで?」

マティ「似顔絵を描いてさしあげた方の中に、とても絵に興味のある方がいて……。今度、いっしょに絵についてお話したい、と言ってくださいました」

やよい「そうなんだ……! 他には?」

マティ「壁に絵を描いてしまった時のお二人にも、あの後とても気にかけていただいて……。その方々ともたくさんお話できました」

れいか「……では、色々な方と仲よくなることができたのですね」

マティ「はい……」

みゆき「そっかぁ……!」

みゆき「じゃあ、マティちゃん、学校に行ってよかったね!」ニコッ

マティ「……! みゆき様……」


あかね「みゆきの言う通りやな。色んな子と仲良うなれたんなら、大成功やん!」

やよい「そうだよ! 学校行かなきゃよかった、なんて、そんなこと絶対ないよ!」

なお「そのために力になれたんなら、このくらいのことへっちゃらへっちゃら! また何かあったら、いつでも相談してよ!」

れいか「そうですよ、マティさん。失敗のことにしても、マティさんはまだこちらの世界にきたばかりですから、いろんなことがよくわからなくても仕方ありません。少しずつ、学んでいきましょう」

マティ「みなさま……! はい! ありがとうございますっ!」


はるか「…………」

はるか「……ねえ、マティちゃん。みんな、マティちゃんのためにこんなに一生懸命になってくれてるよ」

はるか「"学校に行きたい" って私に相談してくれた時に聞いた "あの事"、もうみんなに話しちゃってもいいんじゃないかな? きっと協力してくれるよ」

マティ「はるか様……。……そうですわね」

みゆき「……? "あの事"? 何の話?」

マティ「……ないしょにしていまして申し訳ありません。実は、わたくしが "みなさまの学校に通いたい" と言い出したのには、本当の理由があるのです」

なお「本当の理由……?」

マティ「はい。それは……」


マティ「わたくし自身が、最後のプリキュアとなってくれる方を探すためなのです」

やよい「! 最後の、プリキュア……!」

れいか「それは、虹の 7色のうち、残った最後の一つ、紫のプリキュアのことですね」

マティ「そのとおりですわ。そのために、以前お預かりしたこちらを持ち歩いていたのです」


コトッ


みゆき「それ……、7人目のプリキュアのためにキャンディが作ってくれた、スマイルパクト……」

あかね「そか。夏休みの間に作って、マティに持っててもらったんやったっけな」

マティ「わたくしがリアルランドに来てから、もうじき一月が経とうとしています」

マティ「それなのに、最後のプリキュアも見つけられず、わたくしの持つ秘宝 "ホープブラッシュ" の使い方もわからないまま……」

マティ「せっかくみなさまとごいっしょさせていただいているのに、いつまでたってもみなさまのお力になれず……。そのことを、悩ましく思っておりました」

マティ「だから、最後のプリキュアとなれる方を見つけることで、せめてみなさまのお役に立とう、と、そう考えたのです」


みゆき「じゃあ、もしかして学校のみんなと仲良くなりたい、っていうのも……」

マティ「はい。多くの方とお知り合いになれれば、その分プリキュアになれる方も見つけやすいかと思いまして……」

あかね「せやけど、それやったら最初に言うてくれてもよかったやん。プリキュア探さなあかんのはうちらかておんなじなんやし」

マティ「それは……」


はるか「……マティちゃん、みんなにこれ以上頑張らせたくなかったんだって」

はるか「夏休み、プリキュアに、宿題に、新しいプリキュア探しに、と、みんな大変だったでしょ?」

はるか「マティちゃん、そばでそれをずっと見てたから……。だから、自分が頑張って、みんなを少しでも手伝いたかったんだってさ」

れいか「そうだったのですね……」

みゆき「……わかった! じゃあ、明日からわたし達が、マティちゃんにお友達がたくさんできるよう、お手伝いするよ!」

なお「そうだね! 今日みたいに、マティちゃんのこと、あたし達でサポートしよう!」

れいか「ですから、あまりお一人で悩まないでください。私達がついていますから」

あかね「せやせや。ムリせんでええねんで? 誰かが困ってたら誰かが助ける、それがチームワークっちゅーもんやで」

やよい「みんなで力を合わせてガンバっていこ! ねっ?」


マティ「みなさま……! ありがとうございます! よろしくお願いいたしますわ!」ペコリ

みゆき「うんっ!」

~ デスペアランド 王宮 玉座の間 ~

ウィスタリア「あのー、王サマ? お話ってなんですか? あたし、そろそろ仕事に行こうかなー、っと思ってたんですけど……」

デスペア国王「その仕事についてだ、ウィスタリアよ」


デスペア国王「お前は一体何度リアルランドに行ってきた。答えよ」

ウィスタリア「え? えーっと……、結構行ってるはずだから……、6回か 7回くらいだと思います」

デスペア国王「……それだけ行ってきて、できた闇の絵の具がたったこれだけなのか」


チョピ… チョピ…


ウィスタリア「えっ……!? それ、あたしがとってきた心の絵の具で作った闇の絵の具、ですか……!? ウソ、少なすぎ……!」

デスペア国王「そうだな。私もそう思っていたところだ」

ウィスタリア「で、でも、いくらなんでも少なすぎますって! もっと心の絵の具は集めてたはずなのに――」

デスペア国王「言い訳はいい……!」ギロッ

ウィスタリア「(ビクッ)」


デスペア国王「ウィスタリアよ。お前は、以前私が作った 3人の "闇の描き手" より強い力を持っているはずだ」

デスペア国王「それなのに、プリキュアからは "夢の絵の具" を奪えず、心の絵の具も集められず……。一体、どうなっている?」

ウィスタリア「…………」

スタスタスタ


大臣「失礼ながら、デスペア国王。闇の絵の具の材料である濁った心の絵の具の集まりが悪いのは、"闇の描き手" のみなさまに能力が若干足りないからかと思われます」

デスペア国王「……私の作り方が悪い、というのか?」

大臣「いえいえ、滅相もございません」

大臣「ただ、前のお三方――シアンナ様、ビリーズ様、セルリア様もそうでしたが、みなさま、人間達から心の絵の具を吸い取る量が少なすぎるのではないでしょうか?」

大臣「だって、そうではありませんか。みなさま、心を吸い取る、と言っても、影響がない程度の少ない量しか取っていません。それでは、闇の絵の具の量も少なくなるのも仕方のないことです」

デスペア国王「……何が言いたいのだ、大臣」

大臣「(ニヤリ)」


大臣「もっと心を大量に奪ってしまえばいいのですよ。それこそ、その人間が立ち直れなくなるほどに」

大臣「今日は、そのための者達を連れてまいりました。……さあ、来なさい」


ザッ


橙髪の偉丈夫画家「…………」

黄色髪の老人画家「…………」


デスペア国王「その者達は?」

大臣「私が独自に作り出した "闇の描き手" でございます。さあ、国王陛下に自己紹介を」


橙髪の偉丈夫画家「オレの名は "オーレン"」

黄色髪の老人画家「ワシの名前は "イエロワ" と申しますじゃ」


大臣「この者達であれば、今までよりもさらに多くの心の絵の具を奪うことができるでしょう」

大臣「人間達から、大量の心を奪うことによって、ね。くくく……!」

デスペア国王「ふむ……」

デスペア国王「……よかろう。その者達をリアルランドに行かせよ。その働き、見せてもらうぞ」

大臣「ありがたき幸せ。では二人とも、行きなさい。国王陛下とデスペアランドのために」


オーレン「わかった」

イエロワ「ご期待くだされ。ふぇっふぇっふぇ……」


シュバッ

ウィスタリア「……あのー、あたしはどうすれば……」

デスペア国王「お前は今回何もしなくていい。休んででもいるがいい」

ウィスタリア「え……! で、でも、あたしだって――」

デスペア国王「何もするな、と言ったのだ。二度は言わせるな……!」ギロッ

ウィスタリア「……! ……わかりました……」


ウィスタリア(……何よ、あいつら……、後から来て、人のやること持ってっちゃってさ……!)

ウィスタリア(あたしだって、本気出したらプリキュアくらいイチコロなのに……! つまんないの……!)


ウィスタリア(……でも、闇の絵の具があれっぽっちなの、ちょっと気になるな……。もっと多くてもいいはずなのに……。なんでだろ……?)

~ 翌日 七色ヶ丘中学校 1-3教室 ~

1-3担任教師「さて、それでは今日の日直は絵原さんにやってもらおうか」

マティ「ニッチョク、ですか? わかりました!」

1-3担任教師「うん、いい返事だ。何かわからないことがあったら、他の人に聞くといい。よろしく頼むよ」

マティ「はい!」


マティ(みなさまと仲よくなるためにも、お役に立たなければ! ガンバりますわ!)

~ 1時限目 七色ヶ丘中学校 1-3教室 ~

1年 女性英語教師「さ、授業を始めましょう」


シーーーーン…


1年 女性英語教師「……? 日直の人? 号令をしてください」

マティ「……あ、ニッチョク! わたくしですね! はいっ!」ガタッ


マティ(……と、立ち上がったはいいものの……、何をしたらいいのでしょう……。先に聞いておけばよかったですわ……!)

マティ(号令、ということは、何かを言うのでしょうか……? でも、何を言えば……!?)

1-3 女子生徒・木下(小声)「……絵原さん、日直の号令は "起立" って言ってみんなを立たせて、"礼" でおじぎさせるんだよ」ボソッ

マティ(小声)「……! わ、わかりました!」


マティ「起立!」


ガタガタガタッ


マティ「礼!」


ペコリ


1-3 女子生徒・木下(小声)「終わったら、"着席" って言うの」


マティ「着席!」


ガタガタガタッ


マティ(……できましたわ……! わたくしも、ちゃんとニッチョクの仕事できました!)

1年 女性英語教師「……え、と、日直の人? いつまで立っているのかしら」

マティ「……え?」

1-3 女子生徒・木下(小声)「お、終わったら、自分も座るんだよ、絵原さん……!」

マティ「あ、そ、そうなのですか? す、すみませんっ、すぐ座りますわ!」ガタッ

1年 女性英語教師「よろしい。では、改めて授業を始めましょう」


マティ(も、もう少しでしたのに……。中々カンペキにとはいきませんわ……)

マティ(……でも……!)チラッ


1-3 女子生徒・木下「…………」


マティ(あの方のおかげで助かりましたわ……! 後でお礼を言わなければ……)

~ 1, 2時限目の間休み 七色ヶ丘中学校 1-3教室 ~

マティ「あの、木下様、でしたでしょうか。先ほどはありがとうございました! おかげで助かりましたわ!」

1-3 女子生徒・木下「えっ……。……そ、そんな、お礼言われるようなこと、してないよ。誰でも知ってることだし……」

マティ「ですが、わたくしは色々とわからないことも多くて……。本当に助かりました!」

1-3 女子生徒・木下「あ……、うん……」


マティ「……ところで、木下様? もしよろしければ、お昼休み、わたくしとごいっしょしませんか?」

マティ「さっきのニッチョクのことといい、色々な事をご存知のようですから、できればお話を聞かせていただきたいのです!」

1-3 女子生徒・木下「えっ……!? ……で、でも、わたしなんか、大して役に立たないよ……。もっと他の、頭のいい人の方がいいんじゃないかな……」

マティ「そんなことありませんわ! わたくしは、わたくしを助けてくださった、木下様がいいのです! お願いいたします!」ペコリ

1-3 女子生徒・木下「……わ、わかったよ……。わたしでよければ……」

マティ「……! ありがとうございます! それでは、またお昼に」

1-3 女子生徒・木下「う、うん……」

~ 昼休み 七色ヶ丘中学校 中庭 ~

モグモグ


やよい「マティちゃん、うまくやれてるかなぁ……」

なお「心配? 友達作りを手伝う、とは言ったけど、いっつもいっしょにいられるわけじゃないもんね」

やよい「うん、ちょっと……」

れいか「大丈夫ですよ。マティさんの頑張りなら、きっとすぐにできると思います」

みゆき「そうだね! こうしてる間にも、誰かともう仲よくなってたりして……って、あれ?」

あかね「ん? どしたん、みゆき?」

みゆき「あそこにいるのって、マティちゃんじゃない?」

やよい「ホントだ! でも、誰かといっしょだね。誰だろ?」

なお「ここからじゃわかんないね。行ってみようか」

れいか「ええ」

スタスタスタ


みゆき「マティちゃーん!」

マティ「あ、みなさま! おそろいですのね!」

木下「えっ……。絵原さんの知り合い――あっ……!」

みゆき「えっ? あっ!?」


みゆき「木下さん!?」
木下「星空センパイ……!? みなさん……!」


あかね「あ……! この子確か、前にみゆきが助けた 1年の子やな!」

やよい「そうだよ、木下さんだよ! わたしも、みゆきちゃんといっしょに何回かお昼食べたことあるよ!」


マティ「え……? みなさま、木下様とお知り合いだったのですか?」

なお「マティちゃんこそ! いつの間に木下さんと仲良くなったの?」

マティ「実は、わたくしがニッチョクなどのことで困っている時に助けていただきまして。そのお礼もかねて、こうしてお昼をごいっしょさせていただいているのです」

れいか「私達のお知り合いとマティさんが仲良くなるなんて……。ふしぎな縁ですね」

みゆき「うん……!」

みゆき「……ねえ、木下さん!」

木下「は、はい……! な、なんでしょうか……」

みゆき「前、"あんまり笑ったりできない" ってわたしに教えてくれたよね。どう? それから、うまく笑えるようになった?」

木下「え? ……いえ、まだ、別に……」

みゆき「そうなんだ……」


みゆき「そしたら、マティちゃんと友達になったらどうかな!?」

木下「え……!? わ、わたしが、ですか……?」

みゆき「うんっ! 実はね、マティちゃん、友達を探してるの。この町に来たばっかりだから、色んな人と仲良くなりたいんだって」

みゆき「それに、前に言ったよね。友達がいれば、きっと笑顔になれるよ、って」

木下「あ……」


みゆき(回想)『大好きな友達がいてくれるから、わたしは笑顔でいられるの!』


木下「……そういえば」

みゆき「もしマティちゃんと友達になれれば、きっと木下さんにとってもいいことだと思うんだ! どうかな?」

木下「わたしと、絵原さんが……」

木下「……でも、絵原さんはどうなのかな……。わたしなんかと、友達に……だなんて……」

マティ「とんでもありませんわ! わたくし、ぜひ木下様とお友達になりたく思います! だって木下さんには、わたくしを助けていただいた優しさがありますもの!」

木下「……絵原さん……」

みゆき「マティちゃんもこう言ってるし! ね、木下さん!」

木下「…………」


木下「……わたしは――」

キャンディ(デコル)「……! みゆき! イヤな感じがするクル!」

木下「……え? 今、誰か、何か言いました……?」

みゆき「え!? あ、ううん!? な、なんでもないよ! 空耳だよ多分!」


みゆき(小声)「キャ、キャンディ!? ダ、ダメだよ急に大きな声出したら……!」

キャンディ(デコル)「それどころじゃないクル! 今までよりずーっと、イヤな感じクル……!」

みゆき(小声)「ずっとイヤな感じ……? それって……」


ザッ


オーレン「強い力を感じるな。これが "夢の絵の具" の力か」

イエロワ「そのようじゃのう。と、いうことは、あそこにいるのが伝説の戦士・プリキュアというやつじゃな」


5人「!!」


みゆき「なに、あの人達……!?」

キャンディ「みゆき! あの人達クル! すごくイヤな感じがするクル!」

なお「じゃ、じゃあ……デスペアランドなの!?」

あかね「なんで学校なんかにおんねん!?」

れいか「"夢の絵の具" の力を感じる、と言っていました。ということは、私達を狙ってここまで……!?」

イエロワ「はじめまして、プリキュア。ワシはデスペアランドの "闇の描き手"、イエロワという者じゃ」

オーレン「…………」

イエロワ「……ほれ、名乗らんか」

オーレン「これから倒す相手に名乗って何の意味がある」

イエロワ「だからこそじゃよ。自分を倒す相手の名前も知らんのじゃフビンじゃろう?」

オーレン「……オレの名はオーレンだ」

イエロワ「まったく、ぶっきらぼうなヤツじゃわい……」


あかね「なんや知らんけど、"倒すのなんの" って、もう勝った気でおるんか……!?」

なお「すごい自信……!」

オーレン「どちらがやる? オレはどちらでも構わないが」

イエロワ「ふむ……。では、お主がやるがよい。今日は初顔合わせ。まずは小手調べといこうかのう」

オーレン「わかった」


オーレン「闇の絵の具よ! 闇の絵筆よ! キャンバスに絶望を描き出せ!」


シュババババッ


オーレン「実体を持ってキャンバスから現れよ、アキラメーナ!」


ズズズズズズ…


アキラメーナ(弁当箱型)「アキラメーナァッ!」


やよい「アキラメーナが出てきた!」

オニニン(デコル)「学校でやる気かオニ!?」

オーレン「さあ、ここからがオレ達の本領発揮だ。アキラメーナ。近くにいる人間の心を吸い尽くせ」

アキラメーナ(弁当箱型)「アキラメーナァッ!」


ドワァァァッ!


マティ「これは……! 木下様、危ないっ!」バッ

木下「えっ……?」


男子生徒「――――」バタッ

女子生徒「――――」バタッ


ウルルン(デコル)「おい、なんだこりゃ!? 周りの人間達があっという間に倒れちまったウル!?」

あかね「うめき声も出してへん……! 全く動かんで……!? どないなっとんのや……!」

みゆき「……木下さん……! そうだ、木下さんは!? だいじょうぶ!?」


ブゥゥゥゥゥン…


マティ「……だいじょうぶです、みゆき様。木下様はわたくしがお守りしていますわ」

ポップ(デコル)「おお、秘宝の絵筆 "ホープブラッシュ" を盾にバリアーを張ったのでござるか……!」

マティ「以前、シアンナという方がやっていたことをまねてみました……! この中なら、木下様は心を吸われずにすみます」

マティ「ですがみなさま、お急ぎください! あのアキラメーナ、人の心をめいっぱい吸うほどの力を持っているようです!」

やよい「えっ!? そ、それじゃあ、倒れちゃったあの人達は……!?」

マティ「おそらく大量に心を吸われ……、非常に危険な状態だと思われます! ですから、お早めにやっつけてしまってくださいませ!」

なお「大変だ……! 急がなきゃ!」

みゆき「うん……! で、でも――」


木下「……何これ……。弁当箱のおばけ……? 心を吸い取る……? 絵原さんも、なにしてるの……? なにが起きてるの……!?」


みゆき「――木下さんが見てる前でプリキュアになったら、わたし達のことバレちゃう……!」

あかね「せやけど、言うてる場合でもないやろ! マティの言う通りやったら、早よなんとかせな……! みんな、やんで!」

れいか「仕方ありませんね……!」

みゆき「……うん、わかった!」

妖精達「デコル・チェーンジ!」

パチンッ!

レディ!

5人「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー! ゴーゴー! レッツゴー!!


ハッピー「キラキラ輝く、未来の光! キュアハッピー!!」

サニー「太陽サンサン、熱血パワー! キュアサニー!!」

ピース「ぴかぴかぴかりん♪ じゃん・けん・ポン!(グー) キュアピース!!」

マーチ「勇気リンリン、直球勝負! キュアマーチ!!」

ビューティ「しんしんと降り積もる、清き心。キュアビューティ!!」


5人「5つの光が導く未来!」

5人「輝け! スマイルプリキュア!!」

ハッピー「今日はノーブルいないから、わたし達だけでなんとかしなきゃ!」

マティ「ご安心ください! 今、連絡用のキャンバスをはるか様の下にお送りしました! すぐに駆けつけてくれるはずです!」

サニー「そんなこともできるんやな! さっすが絵の国の王女様、頼りになんで!」

ビューティ「ではそれまで、何とか持ちこたえましょう!」

マーチ「うんっ!」


木下「……星空センパイ達が……変わった……? 何これ……、どうなってるの……!?」

マティ「木下様、さぞ驚かれていると思いますが、だいじょうぶですわ。あの方々は、人々の笑顔を守る伝説の戦士・プリキュアなのです」

木下「で、伝説の……戦士……? プリ……キュア……?」

マティ「はい。きっと、あの怪物もすぐにやっつけてくださいます。ですから、安心してじっとしていてくださいませ」

木下「……う、うん……」

オーレン「あれがプリキュアか。今までてこずらされてきたようだな。その力、見せてもらおうか」

アキラメーナ(弁当箱型)「アキラメーナァッ!」ジャキッ


ピース「あのアキラメーナ、おハシを両手に一本ずつ持ったよ!?」


アキラメーナ(弁当箱型)「アガァッ! アガッ! アガッ!」


シュバッ! シュバッ! シュババッ!


ハッピー「わっ!? おハシを振り回してきた!?」

ビューティ「まるで二本の剣のよう……!」

サニー「コラぁっ! ゴハン食べるもんでなんちゅーことしとんのや! 行儀悪いやろが!」

マーチ「そこ突っ込むの……? 確かにそうだけどさ……」

ピース「さすがおうちが食べ物屋さんなだけあるね……」

アキラメーナ(弁当箱型)「アガァッ!」ブンッ!

サニー「こんなもん……、うちが止めたるわっ!」


ガシィッ!

ザザザザッ!


サニー「うっく……! け、結構力強いな……! せやけど、止めたで……!」


イエロワ「ほう、なかなかやるもんじゃのう。じゃが、もう一本はどうする?」

アキラメーナ(弁当箱型)「アガァッ!」グワッ


ピース「サニー危ないっ! もう一本のおハシが来るよ!」

マーチ「やらせないっ! その前に止めるっ!」ダダダダッ


バッ


マーチ「マーチ・キィィックッ!」ドガァッ!

ハッピー「ナイス、マーチ! 振り下ろす前に止めたね!」

マーチ「今だよ、みんなっ!」

ビューティ「わかったわ! 正面から……、行きますっ!」バッ


ハッピー・ピース・ビューテイ「はぁぁぁぁっ!」


オーレン「なるほど。二人が両手を封じ、その間に三人が正面から攻撃。いいコンビネーションだ」

オーレン「しかし、詰めが甘いな」

アキラメーナ(弁当箱型)「アキラメーナァッ!」パカッ


ハッピー「えっ!? 何あれ!? お弁当箱のフタが開いたよ!」


アキラメーナ(弁当箱型)「アガガガガァッ!」ドンッ! ドドドドンッ!


ビューティ「これは……!? おかずがまるで弾のように飛んで来ます……!」


ドドドドドカァァァァンッ!


ハッピー・ピース・ビューティ「わぁぁぁぁっ!?」

サニー「ハッピーっ! ピースっ!」

マーチ「ビューティっ!」


オーレン「オレンジと緑。よそ見をしているヒマはないぞ」

アキラメーナ(弁当箱型)「アキラメーナァッ!」ブンッ! ブンッ!


サニー「しもた……! ハシで打たれてまう……!」


ドカッ! ドカァッ!


サニー・マーチ「うわぁぁぁっ!」

マティ「みなさまっ!」


マジョリン(デコル)「こ、このアキラメーナ、強いマジョ……!」

ポップ(デコル)「うむ……! キャンディが "いつもよりイヤな感じがする" と言っていただけのことはあるでござる……!」

イエロワ「……ふーむ。大臣様も警戒しておられた伝説の戦士・プリキュア。どんなものかと思うたが……、それほどでもなさそうじゃのう」

オーレン「ああ。このまま倒して "夢の絵の具" を奪ってしまうか。思ったより楽な仕事だったな」

アキラメーナ(弁当箱型)「アキラメーナァ……!」ズンッ ズンッ


5人「うっ……、くぅ……!」


マティ「みなさま……!」


マティ(なんということでしょう、みなさま、大ピンチですわ……!)

マティ(せめて、せめてノーブル様がいれば……! はるか様はまだ来られないのでしょうか……!?)


マティ(…………くやしい……! くやしいですわ……!)

マティ(みなさま、あんなにガンバっておられるのに……! わたくしは、ピクチャーランドの王女なのに……! こうして見ているだけしかできないなんて……!)

マティ(やっぱりわたくしは、みなさまのお役には立てないの……!?)

マティ(…………わたくしに、もっと力があれば……)


マティ(国王であるお父様のような……。王子であるお兄様のような……)


マティ(伝説の戦士である皆様のような力があれば……!)


マティ(わたくしが! みなさまをお守りできるのに!!)

カッ! バァァァァッ!!


オーレン「ん……!? 何だこの光は?」

イエロワ「ほう……。あれは確か、ピクチャーランドの王女……! 何かしたのかのう……?」


ハッピー「あ、あれって……! マティちゃんの持ってるスマイルパクトが光ってる……!?」

サニー「っちゅーことは、まさか……!?」

ピース「マティちゃんが…… 7人目のプリキュアなの……!?」


マティ「わたくしの想いに……パクトが応えてくれた……!?」

マティ「わたくしが……変身……できるのでしょうか……!? プリキュアに……!」

マティ「で、でも……!」


パカッ


マティ「パクトに収めるキュアデコルがありません……!」

マティ「この光……、わたくしの力があればプリキュアになれそうですが……、キュアデコルを持たないわたくしでは、プリキュアにはなれない……!」

マティ「ど、どうしましょう……! どうすれば……!?」


木下「うっ……、す、すごい光……! 絵原さん、何してるの……? まぶしくて何も見えないよ……!」

マティ「……!!」


マティ「…………」


マティ「……木下様、お願いがあります」

木下「えっ……? な、何……?」

マティ「わたくしといっしょに、プリキュアになっていただけませんでしょうか?」


木下「…………え?」


木下「……プ、プリキュア、って、あの、星空センパイ達みたいな……?」

マティ「はい」

マティ「わたくしの願いから出たこの光……。プリキュアになるための力となるはずです」

マティ「……ですが、このスマイルパクトにキュアデコルを収めないと、プリキュアにはなれません……」

マティ「ですから、わたくし自身がデコルとなり、他のどなたかに変身していただくしかないのです……!」


マティ「そして今、それができるのは木下様、あなただけなのです!」


木下「…………」


木下「な、何言ってるの、絵原さん……」

木下「プリキュアとか、デコルとか……、何言ってるのか全然わかんないよ……!」

木下「それに、わたしがあんな風に変わるなんて……! そんなこと、できっこないよ……!」

木下「だってわたし、ただの女の子なんだよ……!? ムリに決まってるよ……!」


マティ「木下様……」

マティ「……デコル・チェンジ!」


パァッ…!


木下「えっ……!? え、絵原さんが、光って……!」


ポンッ


木下「!!? え、絵原さんが……、筆の形のア、アクセサリみたいになっちゃった……!!?」

マティ(デコル)「……見よう見まねですが、メルヘンランドの妖精様達のようにできましたわ……!」

マティ(デコル)「木下様! 詳しいお話は後でいたします! わたくしを、このパクトの中心にはめて叫んでください!」


マティ(デコル)「"プリキュア! スマイルチャージ!!" と!」


木下「…………」

ハッピー「マティちゃん、自分をデコルにして、木下さんに変身してもらうつもりなんだ……!」

ビューティ「ですが……、木下さん、完全に放心状態です……!」

サニー「そらそやろ……! うちらと違て自分からプリキュアになるわけやないんや……! ワケわからんくなるのもムリないで……!」


マティ(デコル)「木下様! お願いします! 今、みなさまをお救いできるのは、木下様だけなのです! プリキュアになってくださいませ!」

マティ(デコル)「木下様っ!」


木下「…………」

イエロワ「……なにやら色々やっておるようじゃが、特にどうにもならんようじゃな」

オーレン「そうだな。強い光が出た時は何かと思ったが、こけおどしだったようだ。このままプリキュアを倒して終わりにするとしよう」

イエロワ「んむ、それがよかろう」

オーレン「アキラメーナ、とどめだ」


アキラメーナ(弁当箱型)「アキラメーナァ……!」パカッ


マーチ「ま、またお弁当箱のフタが開いた……!」

ピース「おかずが飛んでくるよ……!」

ノーブル「――プリキュア! ノーブル・ストリィィームッ!!」


ドォォォォォォォォンッ!!


アキラメーナ(弁当箱型)「アガァッ……!?」ドタァァァン


オーレン「何だ? アキラメーナが倒れたぞ」

イエロワ「どこからか水の流れが飛んできよったようじゃ」


ザッ


ノーブル「はぁっ、はぁっ、みんな、お待たせ! マティちゃんからの知らせ、ちゃんと届いたよ!」

5人「ノーブルっ!」

ノーブル「で、でも……、はぁっ……、さすがに、イリス学園から七中まで……全力疾走は……、ツラかった……」

ビューティ「お、おつかれさまです、ノーブル……」


ペロー(デコル)「ノーブル、急ぐペロ! 早くやっつけないと、お昼休み終わっちゃうペロ! 先生に怒られちゃうペロ!」

ノーブル「わ、わかってる、わかってるよ、ペロー君。……あーあ、帰りもまた全力疾走か……」


ノーブル「……まぁ、それはともかく、みんな、倒れてる今がチャンスだよ! 一気に決めよう!」

5人「はいっ!」

ハッピー「キャンディ、お願いっ!」


ポンッ


キャンディ「任せるクル!」

パカッ

キラキラキラキラ


キャンディ「"夢の絵の具" よ……、プリキュアのみんなに、未来に進む力を!!」


ブワァァッ!


6人「6つの夢を、今こそ一つに!!」


6人「未来へ届け! 希望の架け橋!!」


6人「プリキュア!! レインボー・アーチっ!!!」


ブワァァァァァァァァッ!!


アキラメーナ(弁当箱型)「アガァァァァッ!?」


6人「ハッピー……エンド!!」


ドガァァァァァァァァァン!!


アキラメーナ(弁当箱型)「アガァァァァァ……」シュワァァァァ…

オーレン「む……。オレのアキラメーナがやられたか……」

イエロワ「ふむふむ、これが "夢の絵の具" の力か……。確かに大したもんじゃわい。じゃが……」


タポン タポン


オーレン「これだけ心の絵の具が取れれば、ひとまずは十分だろう」

イエロワ「そうじゃな。あのプリキュア達は今度またじっくり相手してやるとして、今日のところは帰ろうかのう」

オーレン「ああ」


オーレン「では、さらばだプリキュア」シュバッ

イエロワ「また会おうぞ。ふぇっふぇっふぇ……」シュバッ


ハッピー「よかった……、帰ってくれた……」

ノーブル「……ところで、なんなの、あの人達。見慣れない感じだったけど……」

マーチ「新しい "闇の描き手" みたいです。強くって……、ノーブルが来るまではずいぶん苦戦しました……」

ノーブル「そうなんだ……。夏休みに戦ったウィスタリアって子と、あの 2人と……。これでまた、襲ってくる人が 3人になったわけだね……」

ポンッ


マティ「……こうしてはいられませんわ! 急がなくては……!」

ハッピー「マティちゃん? どうしたの、そんなに慌てて? デスペアランドの人達はもう行っちゃったよ?」

マティ「心を吸われた方々を助けなければ! 今までと違って多く吸われてしまっているので、大変危険なのです!」

サニー「あ……! そういえば、さっきそんなこと言うとったな……!」


マティ「……っ!」パァァァァッ…

男子生徒「――う……」


ピース「マティちゃんの手から出た光に当たって、倒れた人の顔色がどんどんよくなってく……!」

マティ「わたくしの持つ力を分け与え、心を元の量に戻します」

マーチ「ホントに色々できるんだね……! さすが王女様……」

~ 数分後 ~

マティ「……ふう、終わりましたわ。これでひとまず、心を吸われた方々も安心かと思います」

はるか「こんなになるまで心を吸うなんて……。今度の人達は、シアンナ達とは明らかに違うみたいだね。何ていうか……容赦がない、って感じ」

れいか「はい……。危険な方々のようですね……」


あかね「まぁ、それはそれとして……、問題はあっちやな」


木下「…………」


やよい「木下さん、まだぼーっとしてる……」

なお「そりゃあ、あれだけいっぺんにいろんなこと見ちゃったらね……」


マティ「木下様……。怖い目にあわれて、さぞつらかったかと思います」

マティ「ですが、もうだいじょうぶです! 怖い方々はプリキュアのみなさまが追い払ってくださいましたから!」

木下「プリキュア……。星空センパイ達が……、伝説の戦士……」

みゆき「うん、そうなんだ……。隠しててゴメンね」

あかね「悪いんやけど、今日見たことはナイショにしといてもらえへん? あんまり知られとうないんや」

木下「……わかりました……」

マティ「……さて、それでは騒ぎも収まったことですし、またお話の続きを――」

木下「……ごめんなさい、絵原さん……。わたし、やっぱり、絵原さんとはつきあえないよ……」

マティ「えっ……」


木下「絵原さんだけじゃなくて……、……星空センパイ達とも……」

みゆき「木下さん……?」

木下「だって、みなさんとおつきあいしてたら、またあんなコワい目にあうかもしれないんですよね……」

木下「わたし、みなさんみたいに強くないから……、コワい思いするの、イヤだから……!」


木下「だから…………、ごめんなさい……!」ダッ

みゆき「あっ、待って、木下さん!」


タタタタタタ…


みゆき「行っちゃった……」

あかね「……まぁ、しゃーないな。そりゃ、誰かてあんなコワい目にあうのはイヤやわ」

なお「マティちゃんはあの子にプリキュアになってもらうつもりだったみたいだけど、やめておいた方があの子のためかもね……」

やよい「お友達になるのも……、あきらめた方がいいのかも……」

れいか「そうですね……。残念ですが、木下さんの言う通り、お友達になったらまた危ない目に合わせてしまうかもしれませんし……」


マティ「……そう、ですね……。わかりました……」

みゆき「……マティちゃん……」


みゆき(マティちゃん、ガッカリしてる……。わたしもだよ……)

みゆき(せっかくマティちゃんにも、木下さんにも、友達ができてウルトラハッピーになれると思ってたのに……)

みゆき(それに、プリキュアの方もイヤな感じになってきちゃった……)


みゆき(マティちゃんの力があればプリキュアに変身できそうなことがわかって、ちょっとだけ前に進んだと思う)

みゆき(……けど、結局プリキュアになってくれる子はまだ見つからないまんま……)

みゆき(それに、とってもアブない人達まで新しく出てきて……。ますますタイヘンになってきちゃったみたい……)


みゆき(……わたし達、これからどうしたらいいんだろう……)





つづく

次回予告

みゆき「デスペアランドの新しい人達も次々出てきて、ますますタイヘンになってきたわたし達」

みゆき「その上、またあのウィスタリアって子が来て襲ってきたの! わたし達も追い詰められちゃって大ピンチ!」

みゆき「でもその時、駆けつけてくれた一人の女の子! あ、あれってもしかして……、7人目のプリキュア!?」


みゆき「次回、『スマイルプリキュア レインボー!』 "友達のために! 紫の戦士、誕生!"」


みゆき「みんな笑顔でウルトラハッピー!」

今回はここまでです!
お読みいただいた方、ありがとうございました。


ちょっと今回レス使いすぎたので、もしかしたら 29話入りきらないかもしれません。

ちゃんと数えて、ムリそうだったら次スレ立てます。
こちらの方にもリンク貼るので、もしそうなったらそちらからお願いします!


それでは、よかったら次回もまたよろしくお願いします!


第1話 ~ 第11話 『スマイルプリキュア!』第2期を SS で作るスレ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1360385907/)
第12話 ~ 第20話 『スマイルプリキュア レインボー!』 Part 2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1366529393/)

第21話 >>4 から
第22話 >>125 から
第23話 >>247 から
第24話 >>350 から
第25話 >>486 から
第26話 >>601 から
第27話 >>697 から
第28話 >>791 から

お返事タイム行きます!



> スマイルさん

ありがとうございます! めっちゃ励みになります!
よかったら、今後もよろしくお願いします。



> ボーズさん

いつもどうもです!

海釣りするプリキュア……、渋い……。
れいかさんは普通にできそうですが、あかねちゃん辺りがじれて投げ出しそうですねw

> 789さん

> レインボー!が放送されたら、 NS2でグレルとエンエンにやられてプリキュア全滅するよねww

ホントですねw

"NS2 の敵は大したことない" とか思ってましたが、『ドキドキ!』いなきゃ終わってたんだ。。
そう考えると恐ろしい敵でしたね。


> 『劇場版 スマイルプリキュアレインボー!』について

ぶっちゃけ、この間お伝えした "番外編" というのがまさにそれです。
10/27(日) に 2本立てでお送りできればいいなぁ、と思ってます。

作業量については、、ガンバります。。



お返事は以上です!
それでは、また来週!

『スマイルプリキュア レインボー!』

このあとすぐ!


……と、いきたいのですが、スミマセン、、
私用のため、今日のアップは時間を遅らせていただきたいと思います。

おそらく夕方前後になるかと思いますので、また後ほど、よろしくお願いします!

まっことスミマセン。。

帰宅してからアップするつもりが、
読み返したら内容がよくなくて、手直しする羽目に。。

ちょっと今日中の完成は難しそうなので、
29話のアップは出来次第とさせてください。。

先週は空けてしまい、スミマセンでした!
今日はちゃんとお送りいたします!


『スマイルプリキュア レインボー!』

このあとすぐ!

~ 朝 七色ヶ丘中学校 通学路 ~

スタスタ


1-3 女子生徒・木下 ゆかり「…………」


木下(回想)『……ごめんなさい、絵原さん……。わたし、やっぱり、絵原さんとはつきあえないよ……』

木下(回想)『だって、みなさんとおつきあいしてたら、またあんなコワい目にあうかもしれないんですよね……』

木下(回想)『わたし、みなさんみたいに強くないから……、コワい思いするの、イヤだから……!』

木下(回想)『だから…………、ごめんなさい……!』


木下(……言い過ぎ……ちゃったかな……)


木下(星空センパイ、"絵原さんが友達をほしがってる" って言ってた……。絵原さん、この町に来たばっかりだから、さみしいのかもしれない……)

木下(それなのに、わたし、あんなこと言って、逃げちゃって……)


木下(……でも……)

~ 昨日の回想 ~

ドドドドドカァァァァンッ!


ハッピー・ピース・ビューティ(回想)『わぁぁぁぁっ!?』

アキラメーナ(弁当箱型)(回想)『アキラメーナァッ!』

木下「……!」ブルッ


木下(あんなオバケ、見たことなかった……。すごく、コワかった……!)

木下(絵原さんと仲よくしてたら、またあんなコワい目にあっちゃうかもしれない……!)

木下(わたしは、星空センパイ達みたいに強くなんてないから……)


木下(……やっぱりわたし、絵原さんとはいっしょにはいられない……)


木下(友達になんて……、なれないよ……)

~ 七色ヶ丘中学校 1-3教室 ~

ガラッ


マティ「みなさま、おはようございます!」

1-3 女子生徒A「おはよー、絵原さん!」

1-3 男子生徒A「おはよう!」


マティ(みなさま、明るくごあいさつを返してくださいます。共に学ぶ方々がステキな方ばかりでよかったですわ!)

マティ(……本当は、木下様とも仲良くできればいいのですが……)


木下「…………」ガラッ

マティ「あ、木下様……! おはようございます」

木下「(ビクッ) ……絵原、さん……」

マティ「あの、木下様、昨日のことですが――」

木下「……っ!」ダッ

マティ「あ、木下様……!」


タタタタタッ…


マティ(……木下様……。わたくしを見たとたんに青ざめてしまって……)

マティ(それに、まるで、わたくしから逃げるように席についてしまいました……)


マティ(……ムリもありませんわ。あのようなコワい目にあい、わたくしも、普通ではないとわかってしまったのですから……)


マティ(やっぱり、わたくしは木下様とは仲よくできないのでしょうか……)

1-3 女子生徒B「…………」スタスタ

1-3 女子生徒C「…………」スタスタ


木下「…………」ポツン


マティ(……あら……? おかしいですわ。木下さん、席に座ってらっしゃるのに、そばを通ってもどなたもごあいさつされません……)

マティ(わたくしの時は明るくごあいさつしてくださいましたのに……。なぜでしょうか……)


マティ「あの、すみません。なぜみなさま、木下様には朝のごあいさつをなさらないのでしょうか?」

1-3 女子生徒A「え? ……ああ、木下さん、来てたんだ。気付かなかった」

マティ「気付かれたのでしたら、ごあいさつはされないのですか?」

1-3 女子生徒A「わたしが? 木下さんに? なんで?」

マティ「なぜ、と申されましても……。朝は元気にごあいさつするものなのでは?」

1-3 女子生徒A「えー……。でも、わたし別に木下さんと仲よくないし……」

マティ「そ、そうなのですか? 同じクラスの方なのに?」

1-3 女子生徒A「同じクラスだって、仲のいい悪いはあるよ。特にあの子は、仲のいい子、いないんじゃないかな。いっつもひとりだし」

マティ「……!? 仲のいい方が……いない……?」


キーン コーン カーン コーン


1-3 女子生徒A「あ、チャイム鳴ったよ! ホームルーム始まっちゃう! 絵原さん、席に着いた方がいいよ」

マティ「……わかりました……」

1-3 担任教師「さて、ホームルームを始めるぞ。日直の人、号令してくれ」

1-3 男子生徒B「起立! 礼!」


マティ「…………」チラリ


木下「…………」ポツン


マティ(……木下様には、仲のいい方がおられない……?)

マティ(と、いうことは、木下様はずっとおひとりなのでしょうか……? 周りには、こんなにたくさん人がいるのに……)

マティ(……木下様は、それでよろしいのでしょうか……)

マティ(さみしくは、ないのでしょうか……)

マティ(もしそうであれば……)


マティ(わたくしだけでも、何とかしてあげることはできないのでしょうか……!?)




スマイルプリキュア レインボー!

第29話「友達のために! 紫の戦士、誕生!」



~ 放課後 七色ヶ丘中学校 1-3教室 ~

1-3 女子生徒・後藤 りか「あーあ、今日、そうじ当番かー。めんどくさいなー」

1-3 女子生徒・宮田 さなえ「あ! ね、ね、りか! 今日、あの子いるじゃん! そうじ、やらなくってもいいんじゃない?」


木下「…………」


1-3 女子生徒・後藤 りか「ホントだ! ラッキー!」


スタスタ


1-3 女子生徒・後藤 りか「ねぇ、木下さん、ちょっといいかな?」

木下「(ビクッ) ……! ……な、なに……?」

1-3 女子生徒・宮田 さなえ「実はさー、あたし達、これからすっごい大事な用事があるんだよねー。悪いんだけど、そうじ、一人でやってくれない?」

木下「え……? そ、そうなんだ……。でも、大事な用事ってなに――」

1-3 女子生徒・後藤 りか「それ聞いてどうすんの? あたし達が大事、って言ったら大事なの。で、やるの? やらないの?」

木下「…………やるよ」

1-3 女子生徒・宮田 さなえ「そうこなくっちゃ! さっすが木下さん、頼りになるぅ!」

1-3 女子生徒・後藤 りか「じゃ、後よろしくねー!」


1-3 女子生徒・後藤 りか「いやー、時間空いたね。どうしよっか? カラオケでも行く?」

1-3 女子生徒・宮田 さなえ「ちょっとぉ、あんまり大声で言わないでよ。一応 "大事な用事" ってことになってるんだからさー」

1-3 女子生徒・後藤 りか「遊ぶのだって大事なんだからいいじゃん! おっけーおっけー!」


アハハハ スタスタスタ…


木下「…………」


木下(……別にいいよ、いつものことだもん)

木下(そうじしよう……)

~ 七色ヶ丘中学校 1-3教室前廊下 ~

ガラッ


木下「……! 絵原さん……」

マティ「あ、木下様……。おそうじですか? わたくしは、教室に忘れ物を取りに来たのですが……」

木下「……そう……」


マティ「あら……? おそうじ、お一人でやられているのですか? 確か、おそうじは何人かでいっしょにやるはずでは……。他の方はどうされたのです?」

木下「大事な用事がある、って帰っちゃった……」

マティ「まぁ……! では、その方々の代わりにお一人で? それはタイヘンですわね……」

マティ「……あの、お手伝い、いたしましょうか?」

木下「え……?」

マティ「お一人ではタイヘンかと思います。わたくしもおそうじ、お手伝いいたしますわ」

木下「……いいよ。わたしの仕事だもん。わたしひとりでやるよ……」

マティ「そうおっしゃらず。ふたりでやった方が早く済みますわ! ですから、わたくしも――」

木下「いいってば!」

マティ「……!」


木下「……昨日、言ったよね。"絵原さんとは仲よくできない" って……」

木下「絵原さんといっしょにいると……、また危ない目にあいそうでイヤなの……!」

木下「わたしのことはいいから……、もう、ほっといてよ……!」


マティ「……木下様……」


マティ「……出すぎたまねをしてしまい、申し訳ありませんでした……。それでは、ごきげんよう……」ペコリ


スタスタスタ…


木下「…………」

木下(……わたし、また言いすぎちゃったかな……。絵原さん、ちょっと悲しそうだった……)

木下(絵原さんは、わたしを手伝おうとしてくれただけなのに……)


木下(……でも、間違ったことは言ってないよね……)

木下(わたし、なんにもできないただの女の子だもん……。絵原さんといっしょにいてまたあんな目にあったら、今度はどうなるかわからないもん……!)


木下(だから、絵原さんとはいっしょにいない方がいいんだ……)

~ 七色ヶ丘中学校 廊下 ~

スタスタスタ


マティ(木下様、わたくしとはいっしょにいたくないんですのね……。あれほど強くイヤがられてしまうなんて……)


マティ(……でも、やっぱりおひとりでおそうじするのはタイヘンですわよね……)

マティ(なんとかして、木下様を助けてあげられればよいのですが……)


スタスタスタ


1-3 男子生徒・片桐「――でさー、その映画、ホントに面白いんだよ。この後ウチ来いよ。貸してやるからさ」

1-3 男子生徒・内藤「おっ、いいの? やりぃっ!」


マティ(あ……、向こうから歩いてくる方々は、同じクラスの……)

マティ(……そうですわ! よいことを思いつきました!)

マティ「あの、片桐様! 内藤様! 少しよろしいでしょうか?」


1-3 男子生徒・片桐「あ、転校生の……絵原さん、だっけ」

1-3 男子生徒・内藤「なに? おれらになんか用?」


マティ「はいっ! 折り入ってお願いさせていただきたいことがあるのです!」


マティ「今、教室では、事情があって木下様がおひとりでそうじをされているのです」

マティ「よかったら、木下様をお手伝いしていただけないでしょうか?」


片桐・内藤「…………」


1-3 男子生徒・片桐「……ごめん、おれ達、これから用があるからさ」

1-3 男子生徒・内藤「今日はそうじ当番じゃないし……。悪いけど、パスさせてもらうわ」


マティ「……え……?」


マティ「木下様が困っておいでなのです。そこを何とか、お願いできませんでしょうか……!」

1-3 男子生徒・片桐「って、言われてもなぁ……」

1-3 男子生徒・内藤「うん……。おれ達、別に木下と仲よくないし……」

マティ「同じ教室の仲間ではありませんか……! どうしてもダメなのでしょうか……?」

1-3 男子生徒・片桐「……そこまで言うならさ、絵原さんが手伝ってあげたらいいんじゃないの?」

マティ「わ、わたくしは、その……。事情があって、木下様とはいっしょにいられなくて……。ですから、おふたりに代わりにやっていただけたら、と……」

1-3 男子生徒・内藤「事情? 事情ってなに?」

マティ「そ、それは……、……すみません、言えないのです……」

1-3 男子生徒・片桐「言えない事情のために、代わりにそうじしろ、って? それはちょっとなぁ。悪いけど、他の人に頼んでよ」

1-3 男子生徒・内藤「じゃあ、そういうわけで。また明日ね、絵原さん」

マティ「あ……! お待ちください、片桐様、内藤様!」


スタスタスタ…


マティ「……行ってしまわれました……」

1-3 女子生徒A(回想)『あの子は、仲のいい子、いないんじゃないかな。いっつもひとりだし』


マティ(……あの方の言ったとおりなのでしょうか……。木下様を助けてくれる方はいないのでしょうか……)

マティ(もしそうだとしたら……、木下様は本当に、これまでずっとおひとりでおられたということになります……)

マティ(苦しい時も……、悲しい時も……、ずっと……)


マティ(そんな……、そんなつらいことがあっていいのでしょうか……!)

マティ(……わたくし、もう一度木下様とお話がしたい……!)

マティ(日直の仕事がわからなくて困っていたわたくしを助けてくださった木下様を、今度はわたくしがお助けしたい……!)


マティ(わたくし、決めましたわ! 例え木下様にキラわれようと、何とかしてお助けします!)

マティ(木下様には、元気なお顔でいてほしいから……!)

~ 翌日 朝 七色ヶ丘中学校 1-3教室 ~

木下「…………」ガラッ

マティ「おはようございます、木下様!」

木下「わっ!? え、絵原さん……。……なにか用……?」

マティ「この間のように、お昼をごいっしょさせていただけませんか? お話したいことがあるのです!」

木下「な、何言ってるの……、イヤだよ……! その時いっしょにいたから、危ない目にあったんじゃない……!」

マティ「そこを何とか! お願いいたします!」

木下「イヤだってば……! もう話しかけないでよ……!」ダッ

マティ「あっ、木下様!」


木下(……昨日 "ほっといて" って言ったのに……。絵原さん、どういうつもりなんだろう……)

~ 放課後 七色ヶ丘中学校 廊下 ~

マティ「木下様っ!」

木下「(ギクッ) ……ま、また……!?」

マティ「はいっ! いっしょに下校いたしませんか? ぜひお話を――」

木下「もう、いい加減にして……! ついてこないで……!」


スタスタスタ…


マティ「あっ、お待ちください、木下様!」ダッ

木下(……!? 絵原さん、走って近づいてくる……!? な、なんで……!? イヤだ、って言ってるのに……!)

木下(に、逃げなきゃ……!)ダッ


マティ「お待ちになってーっ! 木下様ぁーっ!」タタタタタッ

木下「はぁっ、はぁっ……!」タタタタタッ


木下(もう……、なんなの、絵原さんって……!? どうしてわたしにつきまとうの……!?)

~ 七色ヶ丘市 道路A ~

マティ「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

マティ(木下様、見失ってしまいましたわ……)


マティ(やっぱり、避けられてしまっていますわ……。何とかして、木下様が元気になるお手伝いができればいいのですけれど……)

マティ(でも、あれほどイヤがられてしまっては、どうしたらいいか……)


マティ(……プリキュアのみなさまにご相談してみましょう)

~ 七色ヶ丘市 道路B ~

木下「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

木下(や、やっと絵原さんから離れられた……! ふだん運動しないから、疲れちゃった……)


木下(どうして……? どうして、絵原さんはあんなにわたしに構うの……?)

木下(コワい目にあうのがイヤだって言ってるのに……! もう、絵原さんといっしょにいたくない、って言ってるのに……!)


木下(そっとしておいて……くれないかな……)

~ 夕方 ふしぎ図書館 ~

マティ「――と、いうわけです、みなさま。わたくし、どうにかして木下様をお助けしたいのです」

マティ「何とかなりませんでしょうか……! ぜひお知恵をお貸しください!」ペコリ


なお「……そっか。木下さん、クラスじゃそんな感じだったんだ……」

あかね「ひとりぼっちかぁ……、そらつらいなぁ……。何とかしたい、っちゅーマティの気持ち、わかるで」

やよい「うん……。わたしも、あんまり人と話すの得意じゃないから……、みんながいなかったら、木下さんみたいになってたかも……」


れいか「……ですが、非常に難しい問題ですね……」

はるか「そうだね……。クラスに気にかけてくれる人が誰もいなくて、一人だけ心配してるマティちゃんのことも避けちゃってるんじゃ……。厳しいね……」

マティ「……そう、ですか……」


みゆき「…………」

みゆき「……ホントに、ホントになんとかならないかな……!」

みゆき「わたし達で、木下さんを元気してあげること、何かないかな……!?」ギュッ

あかね「……? みゆき?」

はるか「ど、どうしたの、みゆきちゃん、服のすそにぎりしめて……。木下さんって子のこと、そんなに心配なの?」

みゆき「……はい……」

みゆき「クラスでひとりぼっちの木下さんが、なんだか……、昔のわたしみたいに思えちゃって……」

マティ「昔の、みゆき様……?」


やよい「……あ! そうだった、みゆきちゃんって、小さい頃、確か……」

みゆき「うん……。やよいちゃん達には、話したこと、あったよね」

はるか「え……? 何かあったの……?」

みゆき「……わたし、小さい頃とっても人見知りで、なかなか、友達ができなかったんです……」

みゆき「だから、毎日絵本を読んだり、おばあちゃんとだけ話したりして過ごしてた時がありました……」


はるか「そう、だったんだ……。今のみゆきちゃんからはちょっと信じられないな……」

マティ「はい……。みゆき様はいつも元気で、明るくて……。とても楽しい方だと思っておりましたから……」

みゆき「……わたしがそうなれたのは、友達がいたからだと思う」

みゆき「勇気を出して声をかけたら仲よくしてくれた、小さいころの友達」

みゆき「小学校でも知り合った、たくさんの友達」

みゆき「今の学校にいっしょに通ってる友達」

みゆき「それに……、今、ここにいるみんな」


みゆき「たくさんの友達がいるから……、わたしは笑っていられるんだと思うんだ」


みゆき「だから、木下さんが本当にひとりぼっちなら、絶対に何とかしてあげたい……!」

みゆき「前に木下さんにも言ったけど、友達がいてくれるおかげで、楽しく笑えると思うから……」


みゆき「木下さんにも、楽しく笑ってほしいと思うから……!」


なお「みゆきちゃん……」

れいか「……みゆきさん、マティさんのお気持ち、とてもよくわかりました。確かに、木下さんが笑顔になれるなら、とても素晴らしいことと思います。……ですが……」

あかね「そのために友達作る、っちゅーても、うちらはコワがられてもうてるし……」

はるか「何より、木下さんって子自身にその気がないんじゃね……。結局、ムリさせちゃうことになると思うよ」

みゆき「……そうですよね……」


なお「ちょっと、時間を置いた方がいいかもしれないね。今はまだ、木下さんもショックだと思うから……。もう少ししたら、また違う気持ちになってくれるかもしれないよ」

やよい「そうだね。今は、それくらいしかできないかも……」


みゆき「……うん……」

マティ「わかりました……。そういたしますわ……」

~ 夕方 木下家 ~

木下「……ただいま……」ガチャッ


シーーーーーン…


木下「…………」


木下(誰もいない……。また、お父さんもお母さんも、お仕事かな……)

木下(……あ、テーブルの上に書置きがある)


ペラッ


書置き『ゆかりへ。 今日もお父さんとお母さんは帰りが遅くなりそうです。冷蔵庫の中にカレーライスがあるので、夕飯はそれを温めて食べてください。 母より』

木下(……やっぱり……)


クゥゥゥ…


木下(……おなか、すいたな。さっき、いっぱい走ったからかな)

木下(ちょっと早いけど、ごはんにしよう)

木下(カレーをレンジに入れて、あっためて……)


ピッ ウィィィィィ…


木下「…………」


チーン!


木下(できた。食べよう)


木下「……いただきます……」ボソッ


シーーーーーン…


木下「…………」モグモグ


木下(……わたしの家って、こんなに静かだったかな……)

マティ『木下様!』


木下(!? 絵原さん!? 今、絵原さんの声が……)キョロキョロ


シーーーーン…


木下(…………気のせい、か……。そうだよね、こんなところにまで、絵原さんがいるわけないもんね)

木下(……でも、なんで絵原さんの声なんか聞こえた気がしたんだろう……)

木下(絵原さん、ずっと大きな声で話してたから……。耳に残ってるのかな)


マティ(回想)『木下様!』

マティ(回想)『木下様っ!』


木下「…………」


木下(……だから、かな)

木下(こんなに、家が静かに感じるのは……)


木下(なんだか……、家が広く感じるのは……)


パクッ モグモグ… モグモグ…

~ デスペアランド 王宮 玉座の間 ~

大臣「デスペア国王様、いかがでしょう。私の用意した者達が集めた心で作った闇の絵の具は」

デスペア国王「ふむ……」


タポン タポン


デスペア国王「十分な量だ。自信があっただけのことはあるな、大臣よ」

大臣「おほめに預かり光栄にございます、国王陛下」

オーレン「オレ達にかかれば、この程度は当然だ」

イエロワ「お望みとあらば、さらに多くの濁った心の絵の具を集めましょうぞ。ふぇっふぇっふぇ……」

デスペア国王「うむ。このまま、リアルランドの者達の心の絵の具を集め続けよ。期待しているぞ」

大臣「はっ。かしこまりました、国王陛下。それでは、失礼いたします」


スタスタスタ…


ウィスタリア「…………」ポツーン

デスペア国王「……どうした、ウィスタリアよ。私はこれから闇の絵の具を "デスペア" に与えるため、集中せねばならん」

デスペア国王「そこにいては邪魔だ。出て行け」

ウィスタリア「……わかりました」


スタスタスタ… バタンッ

~ デスペアランド 王宮 玉座の間 前 ~

ウィスタリア「…………!」プルプル


ウィスタリア「あぁー、もうっ! ムシャクシャする! 何でアイツらばっかりホメられて、あたしはこんな扱いされないといけないのよ!」

ウィスタリア「"期待しているぞ" だって! 何よ、あたしにはそんなこと言わないくせに!」

ウィスタリア「あたしだって、あたしだって、アイツらには負けてないんだからっ!」


ウィスタリア「はぁっ、はぁっ……、あったま来るなぁ、もう……!」

ウィスタリア「……プリキュアだ。あいつらが全部悪いんだ……!」

ウィスタリア「あいつらさえやっつければ、……あたしだって……!」


ウィスタリア「……もう、命令なんて知ったこっちゃない。あたしはあたしで仕事する……!」

ウィスタリア「"夢の絵の具" も、濁った心の絵の具も、あたしがぜーんぶ取ってくるんだから!」

ウィスタリア「見てなさいよ、プリキュア!」

~ 翌朝 七色ヶ丘中学校 1-3教室 ~

木下「…………」ガラッ

マティ「あ、木下様。おはようございます」

木下「わっ……! え、絵原さん……!?」


木下(も、もしかして、また話しかけてくるのかな……?)


マティ「…………」スタスタスタ…

木下(……あ、あれ? 昨日みたいに寄ってこない……。あきらめて、くれたのかな……)

~ 昼休み 七色ヶ丘中学校 1-3教室 ~

マティ「…………」ガタッ


スタスタスタ…


木下「…………」


木下(絵原さん、どこか行っちゃった……。もう、お昼誘ってこないんだ……)

木下(……そっか……)


モヤッ


木下(……あれ……? なんだろう、この気持ち……。なんだか、胸がモヤモヤする……。絵原さんがつきまとわなくなってうれしいはずなのに)

木下(なんだか……、イヤなカンジ……)


木下(どうして……?)

~ 七色ヶ丘中学校 中庭 ~

木下「…………」スタスタスタ

木下(またここでお昼でも食べよう――)


みゆき「はい、マティちゃん。わたしの卵焼き、あげるよ。おいしいよ!」

マティ「ありがとうございます、みゆき様!」


木下(……! 絵原さん……。それに、星空センパイ達……)

木下(ど、どうしよう……! ここにいたら見つかっちゃう……。見つかったら、また声かけられちゃう……!)


木下(そ、そうだ……。あの木の影に隠れよう……)サササッ

木下「…………」ソーッ


マティ「(モグモグ) ……みゆき様! このタマゴヤキ、というもの、とってもおいしゅうございますわ!」

みゆき「でしょでしょー! お母さんの卵焼きはね、すっごくおいしいんだよ!」

あかね「みゆきの母ちゃん、料理ウマいもんなぁ!」

みゆき「うんっ! ねえ、マティちゃん、よかったら、もう一個どう?」

マティ「いいのですか!? はいっ、いただきます!」


ワイワイワイ


木下(絵原さん、センパイ達に囲まれて、楽しそう……)


木下(……そっか。絵原さんには、センパイ達がいるんだもんね。"プリキュア" とかっていう仲間なんだもんね)

木下(だから、わたしに声をかけなくなったのかな……。センパイ達がいたら、別に、わたしといっしょにいなくてもいいもんね……)


木下(さみしく、ないもんね……)

やよい「それでね! 昨日の『ロボッター』がすっごく面白かったの! ロボッターがやられそうになった時、新しい "グレートロボッター" が助けに来てくれて――、って、みゆきちゃん、聞いてる?」

みゆき「…………」

なお「……? みゆきちゃん、どうしたの? 急に静かになって」

れいか「庭の樹の方をじっと見つめているようですが……、何かあるのでしょうか?」


みゆき「……あそこの木の影にいるの、木下さんじゃないかな……?」

マティ「え……? ……あ、確かに……!」

あかね「ほんまや! なんやろ、こっち見とんのかな?」

みゆき「……わたし、ちょっと行ってくる!」ダッ

マティ「わたくしも行きますわ!」ダッ

あかね「あ、ちょっ……、みゆき!? マティ!?」

タタタタタッ


みゆき「おーいっ、木下さーんっ!」

木下「!」ビクッ


タタタタタッ…


マティ「あっ、木下様、行ってしまいますわ! お待ちください、木下様っ!」


タタタタタッ…


みゆき「……行っちゃった……」

マティ「木下様、ここで何をされていたんでしょうか……」

みゆき「わかんない……。でも……」


みゆき(……もしかしたら、木下さん……)

~ 七色ヶ丘中学校 校舎裏 ~

タタタタタッ


木下「はぁっ……、はぁっ……、はぁっ……」

木下(こ、ここまで来ればだいじょうぶかな……。よかった……、つかまらなくって……)


木下(……でも……)


モヤッ


木下(……まただ……)

木下(絵原さんや、星空センパイ達が楽しそうにしてるところを思い出すと、なんだか胸がモヤモヤする……)


木下(なんなんだろう、この気持ち……)

~ 放課後 七色ヶ丘中学校 校門 ~

スタスタスタ


木下(学校も終わったし……、家に帰ろう……)


みゆき「木下さん!」

木下「わっ!? ほ、星空センパイ……!? な、なんの、用ですか……?」

みゆき「わたし、木下さんともう一度お話がしたくて、ここで待ってたんだ」

木下「え……。わたしを、ですか……?」


みゆき「……木下さんが、わたしのことも、マティちゃんのことも、コワがってるのは知ってるよ。でも、どうしても木下さんに聞きたいことがあって」

みゆき「お願い。一回だけでいいの。お話、させてくれないかな?」

木下「…………」


木下(……どうしよう……。同じクラスの絵原さんはともかく、センパイの頼みは断りづらいな……)

木下(それに、星空センパイの目、すっごく真剣……。まっすぐ、わたしを見てる……)


木下(…………)

木下「……わかりました……。一回、だけなら……」

みゆき「……!(パァッ) ホント!? ありがとう、木下さんっ!」ニコッ


みゆき「ここだと他の人のジャマになっちゃうから、どこか別のところに行こっか。公園でもいい?」

木下「はい、どこでも……」

みゆき「よぉーし、それじゃあ、行こっ、木下さん!」

木下「はい……」


木下(星空センパイ、わたしと話ができる、ってだけで、あんなにうれしそうにして……)


みゆき(回想)『木下さんにも笑顔になってもらえたら、わたしにとってはそれだけでハッピーなことなんだ!』


木下(前に言ってたみたいに、わたしを……、笑顔にしたいから……?)

木下(それだけのために……?)

スタスタスタ…


マティ(……あら? 前を歩いているのは……、木下様と、みゆき様……? おふたりでどちらへ……)


マティ(気になりますわ……。後をついていってみましょう)


スタスタスタ

~ 七色ヶ丘市 公園 ~

木下「……あの、それで、お話ってなんでしょう」

みゆき「うん。そのことなんだけど……」


みゆき「木下さん、今日のお昼、わたし達のこと木に隠れて見てたよね? なんでかな?」

木下「え……。あの、それは……」


木下「……この間、言ったとおりです……。わたし、普通じゃないみなさんといっしょにいるのが、コワくて……。だから、隠れてたんです……」

みゆき「でも、ホントにそれだけだったら、どこか他のところ行っちゃってたんじゃないかな? 見てるだけでも、危なかったかもしれないよ?」

木下「……それは……」


みゆき「……ねえ、木下さん。これはわたしの勝手な想像で、間違ってるかもしれないんだけど……」

みゆき「木下さん、もしかしたら、"マティちゃんやわたし達と、いっしょにいたい" って、思ってくれてるんじゃないのかな?」

木下「!? ……わたしが……!?」

みゆき「プリキュアやデスペアランド――っていうのは、あのコワい人たちやオバケのことなんだけど、そういうことに巻き込まれるのがイヤ、ってだけだったりしない?」

木下「…………」


みゆき「もしそうなら、わたし達はいいから、マティちゃんとだけでも仲よくしてあげてほしいな」

木下「絵原さんと、ですか……?」

みゆき「うん」

みゆき「マティちゃん、木下さんのこと、すごく心配してた。"クラスで他の人と仲よくできないのがツラそうだ"、って」

みゆき「だから、"なんとかして元気にしてあげられないか"、って、すごく心配してたよ」

木下「……! 絵原さんが……!?」


マティ(回想)『木下様!』

マティ(回想)『木下様っ!』


木下(じゃあ、絵原さんが何度もわたしにつきまとってきたのは……)

木下(わたしを、元気にするため、だったの……?)

みゆき「……木下さんの言うみたいに、マティちゃんといたら、いろんなコワい目にあっちゃうかもしれない」

みゆき「でも、その時はわたし達プリキュアが何とかするよ! 絶対に、木下さんのことを守ってみせる!」

みゆき「だから、ふたりには仲よくしててほしいんだ! ふたりでハッピーになってほしいんだ!」

みゆき「マティちゃん、とってもいい子だよ! マティちゃんと友達になれたら、きっとハッピーに、笑顔になれるよ!」

木下「星空センパイ……」


木下「……どうしてそこまでして、わたしのことを……」

みゆき「前にも言ったよね。木下さんには、笑顔でいてほしいんだ! そうしたら、わたしもハッピーになれるから!」

みゆき「もちろん、マティちゃんにも。……本当は、マティちゃんも今、とってもツラいことになってるんだけど……、だからこそ、笑顔でいてほしいんだ」


みゆき「わたしは、みんな笑顔でウルトラハッピーになってほしいの!」


木下「…………」

キャンディ「(ピクッ) クル……!? みゆき! イヤなカンジがするクル! デスペアランドクル!」

木下「えっ!? ぬ、ぬいぐるみが……、しゃ、しゃべった……!?」

みゆき「キャ、キャンディ! 木下さんの前でしゃべっちゃ……、って、もういいのかな。プリキュアだ、って知ってるんだし」


みゆき「それより、どこにいるの、キャンディ!? 急いで行かなきゃ!」

キャンディ「すぐ近くクル! こっちに近づいてくるクルぅ!」


ザッ


ウィスタリア「そのとーり!」


みゆき「……! あなたは確か……、デスペアランドのウィスタリア!」

木下「え……!? ……あんな、小さい子も……、悪い人……なの……?」

ウィスタリア「ちょっと! "小さい" とか言わないでよね! 見た目は似たようなカンジでも、あんたなんかとはぜんっぜん違うんだから!」

ウィスタリア「今すぐ思い知らせてあげるよ! アキラメーナ!」

アキラメーナ(風車型)「アキラメーナァ……!」ズシンッ ズシンッ


みゆき「あれって……、公園にある風車……!? 危ない……! このままじゃ、木下さんが心を吸われちゃう……!」


みゆき「逃げて、木下さんっ!」

木下「え……!?」

ウィスタリア「もう遅いよ! アキラメーナ、やっちゃえ!」

アキラメーナ(風車型)「アキラメーナァッ!」


ズワァァァァァァッ…!


木下「……っ!?」

バッ


マティ「木下様っ! 危ないっ!」

マティ「はぁぁぁぁっ!」


ブゥゥゥゥゥン…!


木下さん「! 絵原さん……!? どうしてここに……!?」

マティ「木下様とみゆき様をたまたまお見かけしまして、ついてきたのです! 間に合ってよかったですわ!」


ウィスタリア「え!? ちょっと、何それ!? そっちの子の心が吸えない!?」

マティ「わたくしの張ったバリアーの中なら、心が吸われるのを防ぐことができますわ!」

マティ「木下様は、絶対に危ない目にはあわせませんっ!」

木下「絵原さん……」

ポチョン ポチョン


ウィスタリア(公園にいる他の人間の分かな。濁った心の絵の具は結構ボトルに溜まってきてるけど……)

ウィスタリア(オーレンとイエロワ、だっけ……。アイツらが持ってきた時は、もっと量が多かった気がする……。これじゃ足りない……)

ウィスタリア(やっぱり大臣の言う通り、あたしは心を吸う量が少ないからダメなの……?)


ウィスタリア(……だから何よ。それだったら、もっと多くの人間から吸い取ればいいだけの話じゃん!)

ウィスタリア(あたしだって……、あたしだって、できるんだから!)


ウィスタリア「アキラメーナ! あのバリアーとかいうの何とかして! あの子からも心の絵の具を吸い取るの!」

アキラメーナ(風車型)「アキラメーナァッ!」ズシンッ ズシンッ


みゆき「そんなことさせないっ! 行くよ、キャンディ!」

キャンディ「わかったクルぅ!」


みゆき「マティちゃん! あのアキラメーナはわたしが何とかするから、その間にみんなを呼んでくれる!?」

マティ「わかりました! お願いします、みゆき様!」

キャンディ「デコル・チェーンジ! クル!」

パチンッ!

レディ!

みゆき「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー!

ゴーゴー! レッツゴー、ハッピー!!


ハッピー「キラキラ輝く、未来の光! キュアハッピー!!」


木下「……! 星空センパイ、また変わった……!」

マティ「伝説の戦士・プリキュア、キュアハッピーですわ!」

木下「キュア……ハッピー……」

ウィスタリア「プリキュア、またあたしのジャマする気!? なら、今度こそやっつけてやる! アキラメーナ!」

アキラメーナ(風車型)「アキラメーナァッ!」


ブワァァァァァッ!


ハッピー「わっ!? す、すごい風……っ! 風車が、風を出してるの……!? 気を抜いたら、と、飛んでっちゃうぅぅ……っ!」

キャンディ「ふんばるクル、ハッピー!」

ハッピー「だ、だいじょうぶだよ、キャンディ……! だって、わたしの後ろには木下さんがいるんだもんっ……!」

ハッピー「なんとか、こらえてみせるよ……!」


木下「……!」


みゆき(回想)『わたし達プリキュアが何とかするよ! 絶対に、木下さんのことを守ってみせる!』


木下(……星空センパイ……、ホントに……わたしのことを……)

マティ「ハッピー様がガンバってくださっている今のうちに……!」


マティ「"手紙のキャンバス" よ! プリキュアのみなさまの下へ!」


シュババババッ!


マティ「ハッピー様! みなさまにご連絡をお送りしました! すぐに来てくださるはずですから、それまでご辛抱くださいませ!」

ハッピー「マティちゃん、ありがとう……! なんとか、ガンバってみる……!」

ウィスタリア「ったく、しぶといなぁ! でも……」

アキラメーナ(風車型)「アキラメーナァ……!」ズシンッ ズシンッ

ハッピー「……! アキラメーナが……、近づいてくる……!?」


ウィスタリア「そんなんじゃ、身動き取れないよね! 今だよ、アキラメーナ! ぶっ飛ばしちゃえ!」

アキラメーナ(風車型)「アキラメーナァッ!」ブンッ

ハッピー「パ、パンチが……! 避けられない……っ!」


ドカァァァァァッ!


ハッピー「わぁぁぁぁぁっ!?」ドサァッ


マティ「ハッピー様っ!」

木下「星空……センパイ……!」


ウィスタリア「さぁーて、ジャマ者はいなくなったことだし……、そっちの子からも心の絵の具をもらおうかなー」

アキラメーナ(風車型)「アキラメーナァ……!」ズシンッ ズシンッ

木下「絵原さん……、こっちに、オバケが来るよ……!」

マティ「だいじょうぶです、木下様。絶対に、わたくしのそばを離れないでください」

ウィスタリア「まずはそのバリアーとかいうのを壊しちゃえ、アキラメーナ!」

アキラメーナ(風車型)「アキラメーナァッ!」ブンッ

木下「も、もうダメ……!」


ガンッ!


木下「……あれ……? なんともない……」

マティ「…………」ブゥゥゥゥゥン…!


ウィスタリア「え、壊れないの……!? ム、ムっカぁーっ……! それなら! アキラメーナ、壊れるまで何回でも叩いて!」

アキラメーナ(風車型)「アキラメーナァッ!」ブンッ ブンッ ブンッ


ガンッ! ガンッ! ガンッ!


マティ「……っ!」

ウィスタリア「もう、何で!? 何で壊れないのよーっ! ハラ立つなぁ!」

マティ「このバリアーが壊れたら……、木下様が危険な目にあってしまいます……!」

マティ「壊すわけには、参りませんっ!」


木下「絵原さん……」

ダダダダダッ


ハッピー「ハッピー・キィィィックっ!」バッ


ドガァァァッ!


アキラメーナ(風車型)「アガァッ!?」ドタァァンッ

ウィスタリア「あっ、アキラメーナ、倒されちゃった!? ピンク、あんたまだ動けたの!?」

ハッピー「はぁっ、はぁっ、マティちゃんと木下さんが危ないのに……、倒れてなんていられないよ! ふたりとも、だいじょうぶ!?」

マティ「はいっ! ありがとうございます、ハッピー様!」


木下「…………」


木下「……どうして、なんですか……」

マティ「え?」

木下「絵原さんも、星空センパイも……、どうして、わたしの……、わたしなんかのために、あんなコワいオバケに立ち向かえるんですか……?」

木下「星空センパイは、わたしのことを笑顔にしたいから、って言ってました……」

木下「絵原さんも、わたしのことが心配だからなんとかしようとしてくれてる、って、星空センパイから聞いたよ……」

木下「でも、たったそれだけで……、ほとんど関係ない、ふたりのために何かしたわけでもないわたしのために……、そんなにボロボロになって……、危ない目にあって……」


木下「……コワく、ないんですか……? ツラくは、ないんですか……?」


ハッピー・マティ「…………」

マティ「……木下様。木下様は、わたしのことをお助けしてくれたではありませんか」

木下「え……? わたし、何かしたっけ……」

マティ「はい。わたくしが日直で何をするか困っている時、助けてくださいました」

マティ「だから、わたくしも木下様のことをお助けしたいと思うのです」

木下「そんなことで……? そんなの、誰にだってできることなのに……」

マティ「でも、それをやってくれたのは、他でもない、木下様でした」

マティ「自分からわたくしのことを助けてくださったのは、プリキュアのみなさま以外では、木下様が初めてでした」


マティ「……それが、本当にうれしかったのです」

マティ「たとえ、やったことが誰にでもできるようなことでも、それをしてくれた木下様の優しさが、うれしかった」

マティ「だからわたくしは、木下様のことが好きになったのです!」ニコッ

木下「……!?」

木下「……わたしが……好き……?」

マティ「はいっ!」


マティ「好きな人を守りたい。そのためなら、コワくてもツラくても、ガンバりますわ!」


木下「…………」

ハッピー「わたしも、同じ気持ちだよ」


ハッピー「わたしの知ってる木下さんは、いっつも元気がなくって……、どこか、悲しそうで、苦しそうで……」

ハッピー「わたしは、そんな木下さんを元気にしてあげることができなくって……、それが、ツラくって……」


ハッピー「でも、今は、こんなに木下さんのことを好きでいてくれるマティちゃんがいる」

ハッピー「だから、ふたりがハッピーになれるなら……、わたしは、せいいっぱいガンバりたいの!」

ハッピー「ガンバって……、ふたりを、守ってみせるっ!」


木下「……星空センパイ……」

ウィスタリア「……なんかゴチャゴチャやってるみたいだけど、終わってからにしてくれる!?」

ウィスタリア「ま、終わっちゃったらもう話し合いもできないけどねー! アキラメーナ!」

アキラメーナ(風車型)「アキラメーナァッ!」ドスンッ ドスンッ


キャンディ(デコル)「ハッピー! また来るクル!」

ハッピー「うんっ!」


ダッ


ハッピー「ハッピー・パァァァーンチっ!」ブンッ

ウィスタリア「アキラメーナ! ガードして!」

アキラメーナ(風車型)「アキラメーナァッ!」


バシッ!


ハッピー「パンチが……、止められちゃった……!?」

ウィスタリア「いつも 6人でどうにかしてるのに、たった一人じゃねー。こんなもんじゃない?」

ウィスタリア「反撃だよ、アキラメーナ!」

アキラメーナ(風車型)「アキラメーナァッ!」ブンッ

ハッピー「わっ、またパンチが……!」


ドカァァァァァッ!


ハッピー「わぁぁぁぁっ!?」ドサァァッ

マティ「ハッピー様っ! だいじょうぶですか!?」

ハッピー「うっ、く……!」


ウィスタリア「おおっ、丁度いいところに飛んだねー、そこのふたりの前だなんて! これなら、3人いっぺんにやっつけられるね!」

ウィスタリア「やっちゃえ、アキラメーナ!」

アキラメーナ(風車型)「アキラメーナァ……!」ドスンッ ドスンッ


木下「……オバケが……来る……!」

ハッピー「うっ、まだ……まだ……!」グググッ…

木下(……星空センパイ……。まだ起き上がろうとしてる……)


マティ「はぁっ……、はぁっ……!」ブゥゥゥゥゥン…!

木下(……絵原さん、息が荒くなってる……。これ、疲れるんだ……!)


木下(このままだと、どうなるの……?)

木下(このまま何も変わらなかったら、ふたりは……どうなるの……?)


木下(…………いなく、なっちゃうの……?)


木下(そんなこと……、そんなこと……、本当にあるの……?)

木下(今、わたしの目の前にいるふたりがいなくなるなんて……、そんなこと……!)

ガタッ ガタガタガタッ


木下(……!? か、体が……震える……!?)

木下(絵原さんと、星空センパイがいなくなる……。そう考えたら……)


木下(コワくて、コワくて、たまらない……!)ガタガタ

木下(……わたしの、本当にコワいことって、なんだろう……)


木下(自分が傷つくこと……? 危ない目にあうこと……?)


木下(……違う。きっと違うよ)

木下(わたしが、本当にコワいのは……、本当にコワいことは……!)


木下(わたしのことを好きでいてくれる人が、いなくなること……!!)


木下(そんなの……、そんなの……っ!!)

木下「……ダメぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


カッ! バァァァァッ!!


ウィスタリア「っ!? な、なに、この光っ……!? ふたりが、光ってる……!?」

アキラメーナ(風車型)「ア……アガァッ!?」ヨロヨロ

ウィスタリア「アキラメーナ……!? まぶしくて、動けないの……!? 何あれ、なんなの……!? あの……」


ウィスタリア「あの、紫の光……!」


マティ「……そう、だったのですね、木下様。やはり、あなたが……」

ボォォォッ…


木下「……! 絵原さん……、体が……、紫色に光ってる……!」

マティ「……光っているのは、わたくしではありませんわ、木下様」スッ

木下「これって確か……、"プリキュア" っていうのに変身するための……」

マティ「スマイルパクトというものです。紫色に輝いているのはこれです」


マティ「木下様。あなたは先ほど、"ダメ" と叫ばれました。なぜ、そうされたのでしょうか」

木下「……わたしのために、こんなにガンバってくれるふたりがいなくなる、って思ったら……、すごくコワくなって……」

木下「"わたしが、なんとかしなきゃ" って夢中で思って、つい……」

マティ「……その木下様の、強く、優しいお気持ちに、パクトが応えてくれたのでしょう」


マティ「今の木下様なら、きっとなれるはずです」

マティ「伝説の戦士・プリキュアに」

木下「わたしが…… "プリキュア" に……?」


マティ「……ですが、ムリにとは申しません。おっしゃっていた通り、あのようなおそろしい方たちと戦うのは、コワいでしょうから……」

マティ「決めるのは木下様、あなた自身です」

木下「…………」


木下「……わたし、やってみる」

木下「……わたし、得意なことなんてない……。今までだって、人にほめられたことなんてなかった……」

木下「このままプリキュアになっても、何もできないかもしれない……」

木下「……でも……!」


木下「このまま、絵原さんと星空センパイがヒドい目にあうのは、それは……、それは、イヤだから……!」

木下「だから、もし何かわたしにできることが、ほんのちょっとでもあるなら……!」


木下「わたし、やってみたい」


マティ「……わかりました!」

マティ「デコル・チェンジ!」ポンッ

木下「わっ……!? え、絵原さん、またアクセサリになっちゃった……!?」

マティ(デコル)「わたくしをパクトの中央にはめて、叫んでください。"プリキュア・スマイルチャージ" と」

マティ(デコル)「それで、木下様はプリキュアになることができますわ!」


木下「……うん。やってみる……!」

パチンッ!

レディ!

木下「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー!

ゴーゴー! レッツゴー、ヴェール!!


キュアヴェール「そよそよさざめく、優しい木陰。キュアヴェール!!」

ハッピー「キュア……ヴェール……! 木下さんが……、プリキュアになっちゃった……!」

キャンディ(デコル)「7人目……! 紫色のプリキュアクル……!」


ウィスタリア「キュアヴェール……!? 新しい、プリキュア……!?」


ヴェール「……わたし……、変わった……?」

マティ(デコル)「はいっ! やりましたわ、木下様! 木下様は今、伝説の戦士・プリキュアになったのです!」

ヴェール「わたしが……! ホントに……プリキュアになっちゃった……!」

マティ(デコル)「あのアキラメーナは、変身の光がまぶしくて動けないようです! 今ですわ、ヴェール様! ドカンとやってしまってくださいませ!」

ヴェール「えっ……!? ド、ドカン、って……、どうしたらいいのかな……?」

マティ(デコル)「プリキュアになったのなら、すごいパワーが宿っているはずですわ! パンチしてください!」

ヴェール「パ、パンチ、って……、たたくの?」

マティ(デコル)「はい! グーで! 思いっきりです!」

ヴェール「ひ、人なんてたたいたことないけど……! や、やってみるよ……!」


ダッ


ヴェール「やぁぁぁぁっ……!」タタタタタッ


ウィスタリア「アキラメーナ! あの新しいプリキュアが来るよ!」

アキラメーナ(風車型)「アガッ!?」


ハッピー「行けぇっ、ヴェールっ!」

ヴェール「えぇいっ!」ブンッ


ペチッ


ヴェール「っ!? ……痛ぁっ……!」


ハッピー・キャンディ(デコル)・マティ(デコル)・ウィスタリア「…………え?」

アキラメーナ(風車型)「…………アガ?」


ハッピー「……ヴェールのパンチ、アキラメーナにぜんぜん効いてないの?」

キャンディ(デコル)「それより、たたいたヴェールの方が痛がってるクル……」


マティ(デコル)「え……? え……!? ど、どうしてなのでしょう……!? 他の方のようにドカンとならないのですか……!?」

ヴェール「そ、そんなこと言われても……! 手が痛いよ……」


ウィスタリア「…………」

ウィスタリア「……もしかして、あの子……」


ウィスタリア「すっごく弱いの?」

ウィスタリア「……ビックリしてソンした……! なんだ、大したことないじゃん!」

ウィスタリア「アキラメーナ! あんなできそこないのプリキュア、踏み潰しちゃえ!」

アキラメーナ(風車型)「アキラメーナァッ!」ドスンッ ドスンッ


マティ(デコル)「ヴェール様! 来ますわ!」

ヴェール「わっ……!? ど、どうしよう、絵原さん……!?」

マティ(デコル)「な、何かできないのでしょうか!?」

ヴェール「な、何かって言われても……!」


アキラメーナ(風車型)「アキラメーナァッ!」ブンッ!


ヴェール「き、来たっ……!」


ヴェール(そうだ……、わたしがどうにかしなきゃ……!)

ヴェール(今、ここにいるのはわたしだけじゃないんだもん……! すぐ近くに、星空センパイも、絵原さんもいっしょにいるんだから……!)


ヴェール(何とか……何とかしなきゃ……っ!)

ヴェール「……わぁぁぁっ! "ヴェール・カーテン"っ!」バッ


パキィィィィンッ!


ヴェール「……わっ! とっさに手を前に出したら、め、目の前に何か出た……!」

ハッピー「大きい……葉っぱの盾……!?」


ガキィィィィンッ!


アキラメーナ(風車型)「アガァッ!?」

ウィスタリア「ア、アキラメーナが止められた!? ちょ、ちょっとどうしたのよ! そんな葉っぱくらい、突き破っちゃいなさいよ!」

アキラメーナ(風車型)「アガァァァッ!」ブンッ ブンッ ブンッ


ガキィィィィンッ! ガキィィィィンッ! ガキィィィィンッ!


ヴェール「んんんんん……っ!」


ハッピー「あんなに大きいアキラメーナのパンチを受け止めてる……! すごい……、すごいよ、ヴェール……!」

ハッピー「……よぉっし……! わたしも、負けてられない……っ!」グググッ

ダッ


ハッピー「ハッピー・パァァーンチッ!」ブンッ


ドガァァァァァッ!


アキラメーナ(風車型)「アガァァァァッ!?」ドガァァァァァンッ!

ウィスタリア「あぁっ、アキラメーナがピンクにぶっ飛ばされちゃった!?」


ヴェール「……すごいパンチ……! あんなに飛んでっちゃった……!」

ハッピー「ホ、ホントはみんな、これくらいはできるはずなんだけどねー……」

ヴェール「すみません……」シュン…


ハッピー「……でも、すごかったよ、葉っぱの盾。"ヴェール・カーテン" だっけ」

ハッピー「ヴェールの力は、誰かを守るための、優しい力なんだね」


ハッピー「守ってくれて、ありがとう!」ニコッ

ヴェール「星空――、……ハッピーセンパイ……!」

ダダダダダッ!


サニー「ハッピー! 無事か!? 遅なってスマン!」

ハッピー「サニー! みんなっ!」


ピース「ん……? ……あぁぁぁっ! し、知らない、プリキュアがいるよ!?」

ノーブル「ホントだね! 紫色のプリキュアだ……!」

ヴェール「あ、あの、始めまして……! ……じゃ、ないのかな……? よ、よくわからないけど、わたし、キュアヴェール……って、いうみたいです……。よ、よろしく、お願いします……」ペコリ


ハッピー「このキュアヴェールはね、木下さんなんだよ!」

ビューティ「えっ!? 本当ですか!?」

ハッピー「うんっ! マティちゃんとふたりで、プリキュアになったんだ!」

マーチ「そうなんだ……! じゃあ、木下さんとマティちゃん、仲よくなれたんだね! よかった!」

ヴェール「……! わたしと、絵原さんが……、仲よく……?」

ハッピー「そっか……! そういうことになるよね……!」


ハッピー「だって、木下さんも、マティちゃんも、お互いのことを心配して、守りたいって思ったから、プリキュアになれたんだもん!」

ハッピー「ふたりはもう、リッパな友達だよ!」


ヴェール「……友達……」

サニー「……さぁーて、ほんなら、キュアヴェールの誕生祝いや! いっちょ、ハデにやったろか!」

ハッピー「うんっ! みんな、レインボー・アーチ、行くよっ! ヴェールは後ろで見てて!」

ヴェール「はい、わかりました……! ガンバってください、センパイ!」


ピース「…………(ジーン)。センパイ、だって……! なんだかいい響き……!」

マーチ「漫画研究部の部長さんが何言ってるの。……でも、センパイとして、カッコイイところ見せないとね!」

ビューティ「ええ! みっともないところは見せられませんね!」

ノーブル「こっちは準備いいよ! ハッピー、やろう!」

ハッピー「はいっ! キャンディ、お願い!」


ポンッ


キャンディ「任せるクルぅっ!」


ウィスタリア「あ……! ヤバっ、このパターンは……!」

パカッ

キラキラキラキラ


キャンディ「"夢の絵の具" よ……、プリキュアのみんなに、未来に進む力を!!」


ブワァァッ!


6人「6つの夢を、今こそ一つに!!」


6人「未来へ届け! 希望の架け橋!!」


6人「プリキュア!! レインボー・アーチっ!!!」


ブワァァァァァァァァッ!!


アキラメーナ(風車型)「アガァァァァッ!?」


6人「ハッピー……エンド!!」


ドガァァァァァァァァァン!!


アキラメーナ(風車型)「アガァァァァァ……」シュワァァァァ…


ウィスタリア「あぁーっ、やっぱりぃ! またやられちゃった……!」

ウィスタリア「と、とりあえず心の絵の具は取れたからいいけど……! 新しいプリキュアまで出てくるなんて……!」


ウィスタリア「プリキュア、おぼえてなさいよ! 今度こそギッタンギッタンにしてやるんだからねっ!」シュバッ


サニー「あの子、毎回おんなじようなこと言うとるような気がすんなぁ……」

ヴェール「すごい……! あのおっきいオバケをあっという間にやっつけちゃった……!」

マティ(デコル)「これが、プリキュアのみなさまの "未来に向かう気持ち" の力ですわ」

ヴェール「"未来に向かう気持ち" ……」


ヴェール「……わたしにも、あるのかな……? その気持ち……」

マティ(デコル)「プリキュアになれたのですもの。きっとありますわ。ヴェール様だけのステキな気持ちが」

ヴェール「……うん……。そう、だと、いいね……」

~ 戦闘後 ~

はるか「……ついに、だね」

ポップ「うむ、ついに、でござる」

みゆき「うんっ! ついに、ついに……!」


みゆき「7人のプリキュアが揃ったぁーっ!」

あかね「いよっ、めでたいっ! マティと木下さんも仲ようなれたようやし! バンバンザイの一件落着やな!」


れいか「……ですが、喜ぶのはまだ早いのではないでしょうか」

やよい「え? どうして?」

なお「だってまだ、木下さんがプリキュアをやるって決めたわけじゃないからさ」

みゆき「あ、そっか……。"コワい思いはしたくない" って言ってたもんね……」


マティ「木下様……、いかがでしょう……?」

木下「…………」


はるか「……まぁ、色々あってびっくりしてるだろうし、ゆっくり考えたらいいと思うよ。私達は、無理強いをする気はないからさ」

マティ「そうですわ、木下様。木下様のことですもの。ご自分で考えて、ご自分でお決めになってくださいませ」

木下「……うん」

~ 戦闘後 ~

はるか「……ついに、だね」

ポップ「うむ、ついに、でござる」

みゆき「うんっ! ついに、ついに……!」


みゆき「7人のプリキュアが揃ったぁーっ!」

あかね「いよっ、めでたいっ! マティと木下さんも仲ようなれたようやし! バンバンザイの一件落着やな!」


れいか「……ですが、喜ぶのはまだ早いのではないでしょうか」

やよい「え? どうして?」

なお「だってまだ、木下さんがプリキュアをやるって決めたわけじゃないからさ」

みゆき「あ、そっか……。"コワい思いはしたくない" って言ってたもんね……」


マティ「木下様……、いかがでしょう……?」

木下「…………」


はるか「……まぁ、色々あってびっくりしてるだろうし、ゆっくり考えたらいいと思うよ。私達は、無理強いをする気はないからさ」

マティ「そうですわ、木下様。木下様のことですもの。ご自分で考えて、ご自分でお決めになってくださいませ」

木下「……うん」

クゥゥゥ…


木下「あっ……」

マティ「木下様、今、おなかの音が……」

みゆき「おなか、すいちゃったんだね。しょうがないよ、あんなすごいことがあった後だもん」

木下「…………(///)」カァッ…


木下「……わたし、そろそろ帰ります。おうちで夕ごはん食べなきゃ……」

なお「そうだね! ハラが減っては戦はできぬ、っていうもんね!」

あかね「戦はもう終わったけどなー」


全員「あははははっ!」


木下「それでは、失礼します……」ペコリ


みゆき「……あっ! ちょっと待って、木下さん!」

木下「……はい? なんでしょうか……?」

みゆき「木下さんのおうちって、確かお父さんもお母さんも働いてて、木下さんひとりなんじゃなかったっけ?」

木下「そうですけど……、それが何か……?」

みゆき「そっかぁ……」


みゆき「……ねぇ、みんな! いいこと考えたんだけど、こういうのはどうかな!? もちろん、木下さんがよければ、だけど!」


全員「えっ?」

~ 夜 木下家 ~

ガチャッ


真理恵(ゆかり母)「ただいまー。ごめんね、ゆかり、また遅くなっ――」


あかね「ほいっ、できたでー! あかねちゃん特製、スペシャルお好み焼きや!」

はるか「うぅーん、いつもながらいいにおい! いただきまーす!」

やよい「おいしーい! やっぱり、あかねちゃんのお好み焼きは最高だよ!」

あかね「にししっ、まいどおおきにー!」


れいか「こちらの準備もできました。簡単ではありますが、お惣菜を作ってみました」

なお「あたしとれいかの協力メニューだよ! さ、食べて食べて!」

マティ「まぁ……! こちらもおいしそうですわ!」

みゆき「いただきまーす! ぱくっ。……おーいしーいっ! さっすがなおちゃんとれいかちゃん!」


ワイワイワイワイ


真理恵「…………」ポカーン

真理恵「…………え、ええーっと……。し、知らない子達が……いっぱい……?」


木下「あ、お母さん……。おかえりなさい……」

真理恵「た、ただいま、……って、ゆかり、これはどういうことなの? この子達は……?」

木下「あ……、えーっと……。それが、その……」

みゆき「木下さんのお母さんですか? はじめまして、わたし、星空 みゆきっていいます。すみません、勝手におじゃまして……。わたしがやろう、って言い出したんです」

真理恵「あ、これはどうもごていねいに……。でも、どうしてこんなことを?」

みゆき「……木下さん、言ってたんです。いつもおうちではひとりで過ごしてる、って」

みゆき「そしたら、ごはんもきっとひとりだろうから、それは、さみしそうだなぁ、って思って……」


みゆき「だから、みんなでごはんを食べよう! って言ったんです。ひとりで食べるより、みんなでいっしょに食べた方が、きっとおいしいから」

真理恵「じゃあ、ゆかりのためにわざわざ?」

みゆき「はい! ……迷惑だったらごめんなさい……」

真理恵「…………」


真理恵「……ゆかり、ごめんなさいね。私とお父さんが働いてばかりいるから、ゆかりに寂しい思いをさせてしまって……」

木下「お母さん……」

真理恵「でも、よかったわ。ゆかりのために集まってくれる、こんなすてきなお友達がたくさんいるのね……」

木下「友達……」


ワイワイワイワイ


木下「…………うん……!」


タタタタタッ


マティ「木下様! あかね様の作ったお好み焼き、とてもおいしいですわ! いっしょに食べましょう!」

みゆき「あっ、わたしも食べるーっ! 木下さんも、きっと気に入ると思うよ! 行こっ!」ギュッ

木下「セ……センパイ……! 急に手、引っ張らないで……!」


木下「…………」


木下(……星空センパイの手、あったかい……)

木下(こんな風に人の手をにぎるのって、いつ以来だろう……)

ワイワイワイワイ


木下(……すごいにぎやか……。一人でいる時と、ぜんぜん違う……)


木下(こんなにたくさん、わたしの周りに人がいてくれる……)

木下(誰かに "ありがとう" って言ってもらえた……)

木下(部屋にわたしひとりじゃない……。それがとっても……あったかい……)


木下(それが、わたしがプリキュアになったからだとしたら……)

木下(……わたしは……)

木下「……あの、みなさん……!」

みゆき「ん? 何?」

木下「……わたし……、その……あの……」

マティ「どうかされましたか、木下様?」

木下「…………」


木下「……わたし、プリキュアやってみようと思います」

あかね「! ほんまか!?」

木下「はい……」


木下「うまくできるかわからないですけど……、わたしにもできることがあるなら……、わたし、やってみようかと、思います……」

木下「いい、でしょうか……?」


全員「……!」パァッ

やよい「もちろん! 大歓迎だよっ!」

なお「心強い仲間が増えたね!」

れいか「ええ! ですが、もし怖くなったらいつでも言ってください。力になります!」

はるか「うん! みんなで一緒に力を合わせて、頑張っていこう!」


木下「……! ……はい……!」

みゆき「それじゃあ、これからもよろしくね! 木下さんっ!」

マティ「ガンバりましょう、木下様っ!」


木下「はい……! こ、こちらこそ……、よ、よろしく、お願いしますっ……!」





つづく

次回予告

みゆき「新しいプリキュア "キュアヴェール" こと、木下 ゆかりちゃんも加わって、ついに 7人そろった私達!」

みゆき「でも、いっしょにガンバっていくには、チームワークが大事だよね。そのためには、みんながもっと仲よくならないと!」

みゆき「そうだ、みんなでいっしょに遊園地に遊びに行こう! めいっぱい遊んで、もっともーっと仲よくなるんだ!」


みゆき「次回、『スマイルプリキュア レインボー!』 "7人のプリキュア! 遊園地で大はしゃぎ!"」


みゆき「みんな笑顔でウルトラハッピー!」

今回はここまでです!
お読みいただいた方、ありがとうございました。


先週はスミマセンでした。。
内容を修正していたら筋が変わってしまい、ほぼ全部書き直すハメに。。


その代わり、といってはなんですが、現在 30話を作成中で、今日中には完成できると思います!

なので、明日のプリキュアタイム(AM 8:30 ~) にまたアップできれば、と考えています。
よろしくお願いします!


また、今回でスレを使い切ってしまったので、次回からは新スレを立てます。

こちらにも次パートへのリンクを張りますので、
よろしければ、引き続きよろしくお願いします!


第1話 ~ 第11話 『スマイルプリキュア!』第2期を SS で作るスレ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1360385907/)
第12話 ~ 第20話 『スマイルプリキュア レインボー!』 Part 2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1366529393/)

第21話 >>4 から
第22話 >>125 から
第23話 >>247 から
第24話 >>350 から
第25話 >>486 から
第26話 >>601 から
第27話 >>697 から
第28話 >>791 から
第29話 >>887 から

それでは、今さらで恐縮ですが、
28話までにいただいたレスにお返事を返させていただきます。


> 879 ボーズさん

いつもありがとうございます!

いただいたご意見、見させてもらいました。はるかの昔の話、ですか。。

できなくはないと思うんですが、
はるかは 22話の時点まで、ずっとやりたいことがやれない悩みを抱え続けているキャラなんですよね。。
なので、昔の話をやると、その悩みが解消しないまま終わることになってしまい。。
ぶっちゃけ、やっても面白くないんじゃないかなー、と。。

そういった事情があるので、昔の話はやれなさそうです。スミマセン。。


ただ、後日談だったらできるかもしれないですね! ストーリーが全部終わった後にでも。
需要があったらやってもいいかもしれません。



> 乙くださったみなさま

ありがとうございます!
励みにしてハリキっていきます!



> プレゼさん

なんと、お誕生日なのですね。ご期待お寄せくださり、ありがとうございます。
プレゼントとしてお届けできるよう、頑張ります!

> 882さん

> ノーブルは移動に不思議図書館を使おうよ!(先週の海回の時もそうだけど)

こちらですが、『レインボー!』では一応、
妖精全員の力がないと本棚ワープが使えない設定になってるんですね。(『レインボー!』20話:イギリス回参照)
だから、28話のはるかは走らざるを得なかった、と。

ちょっと説明足らずでしたが、
妖精一人では "元いた場所 ← → ふしぎ図書館" の往復が限界だ、と思ってください。


……だって、本棚ワープ、便利すぎてジャマなんですもの。。


『レインボー!』27話:海回は、たどり着くまでの過程が大事でして。
寄り道したら素敵な発見があって、いい思い出になった、という展開で、そこにドラマや面白さがあるという話
……にしたつもりです。

なので、パッとお手軽にいける本棚ワープは使わないようにした、というのと、
そういったことが今後もあるかと思って、事前に制限をかけてたんです。


と、いうことで、"本棚ワープは基本使えない"、ということで以降もお願いします!



> スマイルさん

返事書いている途中にレスいただきましたので、ここで返させていただきます!

応援いただき、ありがとうございます! ホントうれしいです!
引き続き、ご愛読よろしくお願いいたします!



お返事は以上になります!
それでは、また次スレでお会いしましょう!

『スマイルプリキュア レインボー!』新スレ立てました!
リンクを貼っておきますので、よろしくお願いします。


・『スマイルプリキュア レインボー!』 Part 4
 『スマイルプリキュア レインボー!』 Part 4 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1379287447/)

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