佳の家


佳「いてて… あちこち筋肉痛で痛いよ…」

佳妹「お姉ちゃん、大丈夫？」

佳「あぁ、あたしは大丈夫だよ」

佳「昨日動き過ぎて疲れている上に筋肉痛がキツいだけだから」

佳妹「良かった… お姉ちゃんが大きな病気に掛かったと思ったよ」

佳「心配かけてゴメン…」

佳「こんなダメなお姉ちゃんでゴメンな…」

佳妹「いいよお姉ちゃん、謝らなくても。私、そんなお姉ちゃんが大好きだから」

佳妹「下から何か持って来るね」

佳「あぁ、すまないな…」

学校


千穂「ライブって誰のライブを見に行ったの？」

唯「岡野さんが疲れて倒れるなんて相当激しい音楽をやっているライブだろうな」

ゆずこ「それって、ロック？ パンク？ メタル？」

ふみ「確かパンクバンドのライブだと言ってたよ」

ゆずこ「パンクかぁ…」

縁「これは相当激しそうだよね〜」

唯「何というバンドのライブに行ったのですか？」

ふみ「う〜ん、確か」



「「ダストフランクシックス」と言ってたよ」

ゆずこ「ダストフランクシックス？」

千穂「何それ？聞いた事がない」

縁「何か凄い食べ物の名前みたいだね〜」

ゆずこ「分かる、分かる、形はフランクフルトみたいなんだけど、凄い辛みが効いているような」

縁「6本セットで600円で売られていそうだね」

ゆずこ「そんでもって奥沢と下北沢と高円寺と新宿と大塚と新木場でしか売られてないという」

唯「どんだけ販売場所が限定されているんだよ！全部都内じゃないか！」

唯「だいたい、食べ物の話じゃないだろ！今はバンドの話をしている所だよ」

ゆずこ「でも、岡野さんってスノボやるほど体力があるはずじゃ」

ふみ「いや、本当はあまり体力が無いよ。体も少し弱いし」

唯「そういえは、スノボに行った後風邪引いていたと言ってたな」

ふみ「見栄っ張りで意地っ張りだからね。佳は」

佳の家


佳「ハックション！」

佳「やべぇ〜、体調が悪化して来たのかな…」

佳「しかし、昨日は凄かったな」

佳「開演した途端、みんなで「セッチュ フリ〜 なんたらかんたら」と一斉に歌い出すし」

佳「それと同時にあたしの上を大勢の人が転がって行くし」

佳「隣にいた客はあたしや近くにいた客にアタックして来るし」

佳「途中から近くにいた客たちが輪を作ってぐるぐる回り出すし」

佳「こんな光景、初めて見たよ」

佳「確か「START」だったかな、サビになった途端、歌っている人が「スターーーー」と歌い始めた途端、次々と人が降って来たし」

佳「あいつも「トライマイラック トライマイラック」と歌いながらあたしの体を使って何度も飛び込みやがったし」

佳「その後も「ワールドイッツビューティフル」と言いながら手を叩いたり」

佳「「レインボー レインボー」」と歌いながらあたしと隣の人と肩を組んで輪になって踊ったし」

佳「「ドントストップ ビリービイング」と歌いながら泣いていたし」

佳「最後は「ウ〜ウ〜 ウウウ〜 ウウウ〜」と凄い笑顔で歌っていたし」

佳「あいつのあんな楽しすぎる表情を見たの、初めてだよ」

佳「いや、周りにいた客、みんな凄いいい顔していた」

佳「まるで笑顔で溢れた楽園に来たみたいだった」

佳「そういうあたしは色々衝撃を受けて、今こんな状態だけどな」

佳「「明日、学校や仕事に支障を与えるほどにしてやるぜ」とメンバーが喋っていたけど」

佳「まさにそのような状態になってしまったな…」

佳「何か眠くなって来たから少し寝よう…」

佳「…」

ゆずこ「おーい、みんなで踊ろうぜ！」

縁「わ〜い！」

佳「ちょっと待って！あたしもそっちに…」


ドンッ


佳「いたっ！」

佳「何これ？誰がこんな所に透明な壁みたいな物を置いたんだよ！向こうに行けないじゃん」

ゆずこ「じゃあ、始めるよ」

佳「ちょっと待って、まだあたしが…」


ジャーン ジャーン ジャーン ジャーン


佳「お、おい…」

千穂「櫟井さん、一緒に踊りましょ」

唯「うん、いいよ」

佳「あぁぁ… 相川が櫟井に取られてく…」

ゆずこ「ふみちゃん、私たちと一緒に踊ろう」

縁「ふみちゃんも一緒に踊りましょ」

ふみ「うん、いいよ」

佳「あぁぁ、長谷川まで…」

佳「みんな輪を組んで楽しそうに踊っている…」

ALL(佳以外)「レインボー レインボー インザスカイ！」

佳「あぁぁ…」

ALL(佳以外)「ラ・ララ･ラララ…」

佳「あぁぁ…」

佳「お願い！あたしも混ぜてよ！」ﾄﾞﾝﾄﾞﾝ

佳「あたしもみんなと一緒に踊りたいんだよ…」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

佳「あたしもみんなと一緒に居たいんだよ…」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

佳「だからあたしを一人にしないで…」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

佳「はっ」ｶﾞﾊﾞｯ


チュッ


佳「えっ」

ふみ「佳…」

ふみ「佳が私の頬にキスを…」

佳「おい、何でお前の顔がそこにあるんだよ」

ふみ「佳の寝顔をじっくりと観察したかったから」

佳「そんな物観察するな！」

ふみ「こんな佳でも寝顔はまるで天使みたいだった」

佳「う、うるせぇ///」

千穂「岡ちー、大丈夫？」

佳「おっ、相川か。大丈夫だよ。疲れと筋肉痛があるくらいだよ」

千穂「野々原さんたちも心配していたわよ」

佳「野々原たちも？」

千穂「うん、岡ちーが来ていない事にかなり心配していたみたい」

佳「そうか… 野々原たちにも心配を掛けてしまったな」

千穂「ところでさっき、かなりうなされていたけど、一体どうしたの？」

佳「…」

佳「…離れないでくれ…」

千穂「！」

ふみ「！」

佳「お願いだ… あたしから離れないでくれ…」

千穂「ど、どうしたの？」

佳「岡野と長谷川が離れてしまったらあたしはダメになってしまう…」ﾎﾟﾛｯ

佳「口が悪い上にこんな性格だけど、あたしから離れないでくれ…」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

佳「頼む…」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

佳「あたしを一人にしないで…」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

千穂「岡ちー…」

千穂「大丈夫だよ。私は岡ちーから離れないよ」

千穂「だって岡ちーは」


「私の大切な友達だから」

ふみ「私も佳から離れないよ」

ふみ「だって佳は」


「私の大切なオモチャだから」

佳「はっ、何だよ、「私の大切なオモチャ」って」

ふみ「それくらい大切な存在という事だよ」

ふみ「私も佳がいないとダメになってしまうよ」

千穂「私も岡ちーがいないと楽しくないよ」

ふみ「だから」


「私たちはずっと佳から離れないよ」

佳「…」

ふみ「佳、泣いてる？」

佳「な、な、泣いてなんかないよ！」

ふみ「(ほんと、意地っ張りだな、佳は)」

千穂「(明らかに泣いていたのがバレバレなのに)」

千穂「じゃあ、そろそろ帰るね」

佳「帰りに見舞いに来てくれてありがとな」

ふみ「佳、体弱いんだから激しく動き過ぎるなよ」

佳「う、うるせぇ！」

ふみ「あと、昨日のライブ、相当楽しかったみたいだね」

佳「な、何で分かるんだよ」

ふみ「だって、ダストフランクシックスのツアーTシャツを着て寝ていたから」

佳「！」

千穂「何かライブに行った夢とかを見ていそうだね」

ふみ「ツアーTシャツとかグッズ沢山買っていそうだね」

佳「は、早く帰れよ！夜遅いんだから」

二人が帰った後



「私たちはずっと佳から離れないよ」



佳「まさか二人同時に言って来るなんて…」

佳「////」

佳「これじゃ明日から相川と長谷川がまともに見れなくなりそうだよ…///」

佳「でも、ありがとう」



「あたしも相川と長谷川から絶対に離れないよ」

千穂の家


千穂「こ、こ、告白しちゃった///」

千穂「前から岡ちーの事は好きだったけど、まさか告白しちゃうなんて…」

千穂「あーーー///」

「ひょっとしたらまともに見れなくなったり、喋れなくなったりするかもしれないけど、岡ちー、すきだよ」


「岡ちーを一人にはしないよ」

ふみの家


ふみ「…」

ふみ「事故とは言え、佳からキスを貰っちゃった…」

ふみ「佳のキスの味…」

ふみ「////」

ふみ「(何だろう、この気持ち…)」

ふみ「(こんなの初めて感じた…)」

ふみ「(これがキスの魔法なのか…)」

ふみ「佳…」

「キスを貰った以上、絶対に佳から離れないからね」


「だって佳は私の大切なオモチャだから」


「私の大切な人だからね」


おしまい