侑「ポケットモンスター虹ヶ咲!」 Part3 (282)


■ChapterΔ001 『伝説のポケモン』 【SIDE Yu】





──ウルトラスペースでの戦いから、早くも半年が経とうとしていた。

私と歩夢は、


侑「ふぁぁ……」

歩夢「侑ちゃん、眠そうだね? また、遅くまでバトル大会のビデオ見てたんでしょ?」

侑「ちょっとだけ……」
 「ブイ…」

リナ『昨日は4時まで見てた。すごい夜更かし』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

侑「……り、リナちゃん……!」

歩夢「もう……侑ちゃんったら……」


ゆったりとした日々を過ごしていた。

今日も歩夢から、ベランダ越しに寝不足を指摘されている。


侑「あはは……何もないと思うと……つい……」

歩夢「前の旅が終わってから、ちょっとだらけ過ぎだよ?」

リナ『また旅に出る?』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「うーん……って言ってもなぁ……」


私たちはあの戦いの後も、何度か旅をしているけど……ここ1ヶ月くらいはセキレイシティでのんびりしている。


侑「オトノキ地方の、どこを見て回ろうか……」

リナ『確かに、この半年で割と行きつくしたかもしれない……』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

歩夢「結構な頻度でいろんなところ行ってたもんね……」

侑「うん……」


もちろん、旅に出たら出たで楽しいし、毎回新しい発見もあるけど……初めて旅に出たときに比べれば、目新しさというものはやはり減っている。


侑「なんかすっごくときめいちゃうような何か……ないかなぁ……」


なんて、ぼやいていたその時だった。


 「──なら、良いお話がありますよ!」

侑「え?」


空から声が降ってきて、上を見上げると──エアームドの背に乗って降りてくる少女の姿。


侑・歩夢「「せつ菜ちゃん!?」」

せつ菜「お久しぶりです! 侑さん! 歩夢さん! リナさん!」

リナ『せつ菜さん、久しぶり!』 || > ◡ < ||

 「ブイ♪」「シャボ」

せつ菜「イーブイとサスケさんもお久しぶりです♪」


せつ菜ちゃんはニッコリ笑いながら、私たちの前に止まる。


侑「急にどうしたの!?」

歩夢「良いお話って……?」

せつ菜「ああ、そうでした! 私、今からある場所に向かおうと思っているんですが、せっかくなので侑さんと歩夢さんもお誘いしようと思いまして!」

侑「ある場所……?」
 「ブイ?」

リナ『どこなの?』 || ╹ᇫ╹ ||

せつ菜「それは移動しながら、お話しします! 旅の準備をしてください!」

侑「わ、わかった……!」


私はバタバタと部屋へ戻っていく。


侑「って、あれ……!? ボールベルトどこ置いたっけ……!?」

リナ『だらけていた弊害が……』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||
 「ブイ…」

侑「あ、歩夢~!! 手伝って~!!」

歩夢「もう侑ちゃんったら♪ 今そっち行くから~」

せつ菜「ちゃんと待っていますので、焦らず準備してください♪」


私は歩夢に手伝ってもらいながら、慌ただしく旅立ちの準備を始めるのだった。





    🎹    🎹    🎹





侑・歩夢「「──伝説のポケモンを探しに行く?」」

せつ菜「はい!」


南方面に向かって空を飛びながら、せつ菜ちゃんが私たちに話し始める。


せつ菜「半年前の戦い以降、この地方には何度かウルトラホールが開いたことがあったのは聞いていますよね?」

侑「うん。特に事件直後は、結構頻繁に開いてたんだよね」

リナ『私たちが行ったり来たりしてたからね。その影響でホール自体が少し開きやすくなってた』 || ╹ᇫ╹ ||


その影響で、事件収束直後もジムリーダーたちは町の護衛に大忙しだったし……私たちも何度か、ウルトラビーストの撃退に駆り出された記憶がある。


歩夢「でも、最近は落ち着いてきたんだよね……?」

せつ菜「はい。今では通常の頻度まで戻ったと伺っています」

侑「それと……伝説のポケモンを探しに行くことが関係してるの?」

せつ菜「はい! 実は、そのウルトラホールから……ファイヤーが飛び出してきたという噂があるんです!」

侑「ファイヤー? ……ファイヤーってあの……?」
 「ブイ?」

リナ『ファイヤー かえんポケモン 高さ:2.0m 重さ:60.0kg
   夜空 さえも 赤く するほど 激しく 燃え上がる 翼で
   羽ばたく 伝説の 鳥ポケモン。 昔から 火の鳥伝説として
   知られる。 姿を 見せると 春が 訪れると 言われている。』

せつ菜「はい! そのファイヤーです!」

侑「ど、どういうこと……?」


てっきりウルトラホールから飛び出すポケモンは、ウルトラビーストしかいないんだと勝手に思っていたから、まさに寝耳に水な話だった。


せつ菜「私も気になって……この間、彼方さんにお会いしたときに聞いてみたんですが、ウルトラスペースの中には、この世界で言う伝説のポケモンと呼ばれる存在が生息している世界もあるそうなんです!」

侑「そうなの!?」


思わずリナちゃんを見ると、


リナ『うん、あるよ。私たちはウルトラスペースゼロって呼んでた』 || ╹ᇫ╹ ||


そんな回答が返ってきた。


リナ『ウルトラスペースから何かの拍子にそういうポケモンたちが流れ込んでくる可能性は十分ある。そもそも、今鞠莉博士の手元にいるディアルガやパルキアも、ウルトラスペースから来たって博士は考えてたし』 || ╹ᇫ╹ ||

せつ菜「その話を聞いて、ますます信憑性が増してきました!! やっぱりファイヤーはいたんですね!!」

リナ『頻繁にホールが開く環境になってたから、起こり得ると思う』 || ╹ ◡ ╹ ||

せつ菜「というわけで……!! 侑さん歩夢さんと一緒に、伝説のポケモンを探しに行きたいなと思いまして、お声を掛けさせていただきました!!」

侑「なにそれ! めちゃくちゃ楽しそう……! なんか、ときめいてきちゃった……!」
 「イブィ♪」

歩夢「確かに……珍しいポケモンに会えるなら、私も会ってみたいかも♪」

せつ菜「はい! お二人ならきっとそう言ってくれると思っていました! そして今から向かうのは、あそこです!!」


そう言ってせつ菜ちゃんは前方にある──大きな樹を指差す。

それは──オトノキ地方の中心に聳える大樹……。


侑「音ノ木……!」

歩夢「だから南に向かってたんだね」

せつ菜「はい!! なんでも最近、音ノ木の周辺ではポケモンの唸り声のようなものが聞こえることがあるそうなんです!!」

侑「それって……龍の咆哮……?」

せつ菜「という説も考えましたが……今はメテノの季節ではありません」

歩夢「じゃあ、その鳴き声は……」

せつ菜「はい!! 伝説のポケモンのものである可能性は十分にあると思います!!」

侑「あそこに伝説のポケモンが……!」


そう考えたら急にワクワクしてきた。


せつ菜「私たちで伝説のポケモンをこの目で確かめましょう!! そして、可能であれば戦って捕獲もしてみたいです!!」

侑「うん!! 行こう!! 音ノ木の頂上へ!! ウォーグル、お願い!!」
 「ウォーーーッ!!!!」

侑「歩夢! 振り落とされないようにね!」

歩夢「う、うん! わかった!」

せつ菜「エアームドも、行きますよ!!」
 「ムドーーーーッ!!!!」


私たちは音ノ木の頂上を目指します。




    🎹    🎹    🎹





少しずつ高度を上げながら、頂上を目指す途中、


リナ『そういえばせつ菜さん。あの事件の後3ヶ月くらいは、ずっとローズに居たんだよね?』 || ╹ᇫ╹ ||


リナちゃんが思い出したかのように訊ねる。


せつ菜「はい! ペナルティで社会奉仕活動をしていたので! 毎日ゴミ拾いをして、ポケモンバトル施設で子供たちにポケモンバトルを教えたり……あと、ローズジムに代理で入った梨子さんのお手伝いと……とにかくいろいろしていました!」

侑「その後は、いつもどおり地方を巡って修行してたの?」

せつ菜「はい! お陰でポケモンたちもまた一回り強くなりましたよ!」

侑「じゃあ……! 強くなったポケモンたちと一緒に、チャンピオンの座を懸けて、またポケモンリーグに行くんだよね! そのときは呼んで!! 絶対に応援に行くから!!」


せつ菜ちゃんと千歌さんの戦いがまた見れると思ったら、それだけでときめいてきてしまう。

どんな予定があっても、応援に行きたい気持ちだったけど──


せつ菜「あ、え、えっと……はい! ありがとうございます!」


せつ菜ちゃんは少し歯切れが悪そうだった。


歩夢「せつ菜ちゃん?」

侑「どうかしたの……?」

せつ菜「あ、えっと、その……。……実は、今の私が千歌さんと戦っていいのか……少し迷っていまして……」

侑「え!? な、なんで!?」

せつ菜「私は……自分が図鑑所有者に選ばれなかったことが悔しくて、それをバネに頑張ってきたつもりでした……。……ですが、今の私は最初のポケモンもポケモン図鑑も持っています……」

侑「それは……そうかもしれないけど……」

せつ菜「前にも話しましたが……この地方の歴代チャンピオンは皆、ポケモン図鑑所有者です。……私はその歴史を塗り替えるつもりで戦っていましたが……こうして図鑑を頂いて……逆に目的を見失ってしまったと言いますか……」

侑「せつ菜ちゃん……」

せつ菜「もちろん、千歌さんと戦うのが嫌なわけではありません。ですが、こんな気持ちのままチャンピオンの座を懸けて戦うのは、どうなのかなと……」

侑「…………そっか」


せつ菜ちゃんはせつ菜ちゃんなりに……自分がどうありたいのかを考えている途中なのかもしれない。


せつ菜「あはは、すみません……応援してくださっているのに、なんか変な感じになっちゃいましたね……」

侑「う、うぅん! 私も変なこと言っちゃってごめんね……! でも、どんな形であっても私はせつ菜ちゃんのこと応援してるから!!」

歩夢「私もせつ菜ちゃんがせつ菜ちゃんのペースで、なりたい自分を目指せれば、きっとそれが一番いいことだと思うよ♪」

せつ菜「侑さん……歩夢さん……。……ありがとうございます!」


そんな話をしながら私たちは、間もなく──音ノ木の頂上へとたどり着こうとしていた。




    🎹    🎹    🎹





──大樹・音ノ木は雲まで届くほど大きな樹で、幹の太さはもちろん、葉も一枚一枚がとんでもない大きさをしている。

そして、頑丈で分厚く……人が乗っても問題がないくらいだ。

手を広げたように伸びている巨大な葉の上はほぼ平らで、安定した足場のようになっていた。


侑「……よっと」
 「ブイ」


私は掴まっていたウォーグルの脚から、音ノ木の葉っぱの上に飛び降りる。


せつ菜「ここが……大樹の頂上……」


せつ菜ちゃんもエアームドから飛び降り、辺りを見回している。

そして最後に、大樹の上に降り立ったウォーグルが、歩夢が降りやすいように身を屈める。


歩夢「ありがとう、ウォーグル♪」
 「ウォーグ♪」


ウォーグルにお礼を言い、頭を撫でながら、歩夢も大樹へと降り立つ。


歩夢「すごく広いね……」

せつ菜「そうですね……グラウンドくらいの広さはありますね……」

リナ『運動するには、風が強いけどね……』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

侑「標高が高いだけあるね……」
 「ブイ…」


ビュウビュウと強い風が吹く中……ふと──


侑「あれ……?」

歩夢「? どうかしたの?」

侑「……あれ……人じゃない……?」

せつ菜「え?」


私が指差した先には──二人の女の子がいた。

一人は薄桃色のロングヘアーを両側で結んでいる女の子。

もう一人はプラチナブロンドのショートヘアの女の子。

二人とも私たちに背を向けて、立ち尽くしている。


侑「こんなところで何してるんだろう……?」

リナ『それを言ったら、私たちも同じ』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

侑「まあ……確かに……」

せつ菜「は……まさか……! あの方たちも、伝説のポケモンの鳴き声を聞きつけて……!?」

歩夢「確かにせつ菜ちゃんが気付いたんだったら、他の人が気付いて同じことしててもおかしくないもんね」

せつ菜「はい! こうしてはいられません!! あのーーーーっ!!! すみませーーーーーんっ!!!!」


せつ菜ちゃんが声を張り上げながら走り出す。


ロングヘアーの子「什么?」


ロングヘアーの子はせつ菜ちゃんの声に振り返る。


ショートヘアの子「何、ランジュ……助っ人でも呼んでたわけ?」

ランジュ「呼んでないわよ。貴方たち誰かしら?」


ランジュと呼ばれた女の子は、腕を組みながら私たちに問いかけてくる。


せつ菜「私はユウキ・せつ菜です! そして、こちらは侑さんと歩夢さん!」

侑「初めまして、侑です」

歩夢「あ、歩夢って言います……」


私たちが名乗ると、


ランジュ「初次见面。私はランジュ。ショウ・ランジュよ。そして、この子はミア・テイラー」

ミア「……」


自分と隣に居たショートヘアの女の子を紹介してくれる。


せつ菜「ミア・テイラー……?」

侑「……あれ、テイラーって……どこかで……」

歩夢「……?」


私とせつ菜ちゃんは、ショートヘアの女の子──ミアちゃんの名前が気になったけど……。


ランジュ「それはそうと、貴方たち……ここにいると危ないわよ」

侑「え?」


ランジュちゃんがそう言った直後──ゴォォォォッという音と共に、音ノ木の頂上一帯に急に強風が吹き荒れ始めた。


歩夢「き、きゃぁ!?」

侑「歩夢!?」


バランスを崩して転びそうになった歩夢を咄嗟に支える。


歩夢「あ、ありがとう、侑ちゃん……」

侑「怪我してない?」

歩夢「うん……」

せつ菜「な、なんですか……! この強風……!」


立っているのも困難なほどの強風が、絶えず吹き付けてくる。


侑「とりあえず……固まろう……! 吹き飛ばされちゃう……!」
 「ブ、ブイ…!!」

せつ菜「は、はい……!」

歩夢「サスケ、吹き飛ばされないようにね……!」
 「シャボ」


3人で身を低くしながら手を繋ぐ。


ランジュ「だから言ったのに……」

せつ菜「い、一体何が起こっているんですか……!?」

ランジュ「……烈空坐──龍神様のお出ましよ」

侑「龍神……様……?」


吹き荒れる風の中──


 「──キリュリリュリシイィィィィィィ!!!」

侑「え!?」

せつ菜「なっ……!?」

歩夢「な、なに……!?」


そのポケモンは突然現れた。

緑色の巨大な体躯の──龍のようなポケモン。


 「…キリュリリュリシイィィィィィィ!!!」


そのポケモンは現れると同時に、大きな鳴き声を轟かせながら、私たちを睨みつけてくる。


リナ『レックウザ……!?』 || ? ᆷ ! ||

侑「レックウザって言うの……!? あのポケモン……!!」

せつ菜「まさか、本当に伝説のポケモンがいたということですか……!!!」


せつ菜ちゃんは心なしか嬉しそうだけど──歩夢は、


歩夢「……っ……!」


カタカタと身を震わせていた。


侑「あ、歩夢……? 大丈夫……?」

歩夢「あ、あのポケモン……ものすごく怒ってる……」

せつ菜「怒ってる……? 何にですか……?」

歩夢「……わ、わからないけど……とにかく、ものすごく怒ってるのはわかるの……」

ミア「そりゃま……寝覚めで機嫌が悪いんだろうね」


ミアちゃんが肩を竦めながらそんなことを言う。

寝覚めって……?


ミア「それよりランジュ……さっさとしてくれよ。このままじゃ、ボクたちまで吹き飛ばされかねない」

ランジュ「わかってるわよ。……レックウザ!!」

 「…キリュリリュリシイィィィィィィ!!!」

ランジュ「貴方──ランジュのモノになりなさい」


そう言いながら、ランジュちゃんは──ポケットから紫色のボールを取り出した。


侑「あ、あれって……!?」

せつ菜「マスターボール……!?」


ランジュちゃんはそれを振りかぶって──


ランジュ「はぁ……!!」


レックウザに向かって投擲した。

──が、


 「…キリュリリュリシイィィィィィィ!!!!!!!」


レックウザが一際大きな鳴き声を上げると同時に、周囲に強烈な風が発生し、


ランジュ「きゃぁ……!?」


マスターボールを風で弾き飛ばした。


ランジュ「ちょっとぉ……!! 絶対に捕まえられるボールだって聞いてたんだけど……!!」

 「…キリュリリュリシイィィィィィィ!!!!!!!」


直後、レックウザは大きく身をしならせながら飛翔し──風を纏いながら、猛スピードでこっちに向かって突っ込んできた。


リナ『“ガリョウテンセイ”!? 逃げて!?』 || ? ᆷ ! ||


リナちゃんが叫ぶ。

だけど、強風でまともに身動きが取れない中、突っ込んでくるレックウザに対して、私たちは逃げる余裕すらない。

そのとき、


せつ菜「ウーラオスッ!!!!!」
 「──ラオスッ!!!!!」

侑「……!」


せつ菜ちゃんが手持ちを出しながら、私たちの前に立つ──


せつ菜「“あんこくきょうだ”!!」
 「ラオスッ!!!!!!」

 「…キリュリリュリシイィィィィィィ!!!!!!!」


気合いの掛け声と共に前に踏み出し──突っ込んでくるレックウザに向かって、ウーラオスが正拳突きを叩き付ける。

ウーラオスの強烈な拳によって、レックウザの攻撃の軌道を上に逸らすことには成功したが──


侑「わぁっ……!!?」
 「ブイッ…!!!?」

歩夢「きゃぁっ!!!?」
 「シャボ…!!」

せつ菜「くっ……!!?」
 「ラオスッ…!!!」


弾ける風のエネルギーによって、私たちは音ノ木の上から吹き飛ばされる。

強烈な風によって宙に放り出された瞬間、


侑「ウォーグル!!」
 「──ウォーーーーッ!!!!」

せつ菜「エアームド!!」
 「──ムドーーーッ!!!!」


私とせつ菜ちゃんは、ウォーグルとエアームドをボールから出し、それぞれのポケモンの脚を掴む。

それと同時に──


歩夢「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!?」


歩夢の悲鳴を聞き、すぐにそっちに顔を向ける。


侑「歩夢ッ!!!」


──歩夢は空を飛ぶ手段がほぼないに等しい。

私よりも遠くに飛ばされていた歩夢が空中でくるくる回りながら、落下しているのが見え、


 「ウォーーーーッ!!!!!」


ウォーグルが飛び出す。

落下する歩夢に向かって、ウォーグルで急降下しながら接近する。


侑「歩夢ーーーーーッ!!!」


大きな声をあげながら、歩夢に手を伸ばす。


歩夢「侑ちゃぁぁーーーーんっ!!!!」


歩夢も手を伸ばし、伸ばしたお互いの手は──すんでのところで届かずに空を掻く。


歩夢「ぁ……」

侑「ッ……!!! 歩夢ーーーーーーッ!!!!!」
 「ウォーーーーグッ!!!!!」


ウォーグルはスピードを上げながら、降下するが──重力にしたがって落ちていく歩夢のスピードはそれを上回っていて、どんどん引き離されていく。

高い高い大樹の上にいたはずなのに、猛スピードで落ちる歩夢の背後に──地面が見えてきた。


侑「歩夢ッ!!! 歩夢ーーーーーーッ!!!!!」


このままじゃ歩夢が地面に激突しちゃう……!!

なのに──歩夢との距離はどんどん離れていく。

そのときだった。音ノ木の大きな葉の上から、


 「──ピィーーーー!!!!」

歩夢「!? ピィ!!?」


1匹の小さなポケモンが飛び出してきて、歩夢に飛び付いた。

直後、歩夢の身体が光に包まれて──そのポケモンごと、消えてしまった。


侑「……な……!?」

リナ『き、消えちゃった!?』 || ? ᆷ ! ||


私とリナちゃんはその光景に驚きの声をあげる。


せつ菜「侑さーーーーんッ!!!!!」
 「ムドーーーッ!!!!!」


そこにせつ菜ちゃんも追い付いてくる。


侑「せつ菜ちゃん……!! どうしよう、歩夢が……!!」

せつ菜「見ていました……! ピィが飛び付いてきたと思ったら、歩夢さんの身体が光に包まれて……!」

侑「あ、歩夢に何かあったら……ど、どうしよう……は、早く探さないと……!」

せつ菜「落ち着いてください侑さん……! 姿が消えたということは、少なくとも落下はしていないということです!」

侑「じ、じゃあ、どこに……」

せつ菜「リナさん、確か図鑑にはサーチ機能がありましたよね……?」

リナ『もうやってる。……だけど、歩夢さんの図鑑がサーチできない』 ||;◐ ◡ ◐ ||

侑「ど、どういうこと……?」

リナ『……少なくとも、私がサーチできる範囲内に……歩夢さんの図鑑が存在しない……』 ||;◐ ◡ ◐ ||

せつ菜「サーチ範囲内って……具体的に、どれくらいの範囲なんですか……?」

リナ『……オトノキ地方全域くらいはカバーしてる』 ||;◐ ◡ ◐ ||

侑「え……」


じゃあ、歩夢は……。


侑「歩夢は……どこに行ったの……?」





    🔔    🔔    🔔





ミア「……ランジュ。あいつら、落ちちゃったよ。どうすんの」

ランジュ「……ここまで自力で来られるトレーナーだったら、自分たちでどうにか出来るでしょ」

ミア「まあ……別にボクは構わないけど。……それよりも」


ミアは肩を竦めながら、


 「…キリュリリュリシイィィィィィィ!!!!!!!」

ミア「そいつ……さっさとどうにかしてよ」


風を纏い、唸りながらこちらを睨みつけてくるレックウザをどうにかしろと言ってくる。


ランジュ「わかってるわ。レックウザ」

 「…キリュリリュリシイィィィィィィ!!!!!!!」

ランジュ「ランジュがここに来たのは、貴方と交渉するために来たの」


そう言いながら、ポケットから──翠色に輝く珠を取り出す。


ランジュ「今、貴方はオトノキ地方に封じられてる自分の力を取り戻したいんじゃないかしら? それをランジュが代わりに集めてきてあげる」

 「…キリュリリュリシイィィィィィィ!!!」

ランジュ「ただ、その代わり、その力を集めてきたら──ランジュと戦いなさい」

 「…リュリシイィィィィィィ…!!!」

ランジュ「そして、全ての力を取り戻した貴方を倒したときは……ランジュに従いなさい」

 「…キリュリリュリシイィ」


レックウザはしばらくランジュの手にある宝珠を真っすぐ見つめていたけど──


 「…キリュリリュリシイィィィィィィ」


程なくすると、高度を上げながら背を向けて、北の方へと飛び去って行った。


ミア「……あれ、ホントにわかってんの?」

ランジュ「大丈夫よ。栞子の言っていたとおりなら、レックウザは人の言葉を理解する知能はあるはずだし……少しでも早く力を取り戻したいレックウザにとっては、悪い話じゃないはずだからね」


恐らく飛んでいった先は、自分の力を取り戻しながら、休息の出来る場所だろう。

そして、ランジュの手元にある宝珠はレックウザのエネルギーに当てられたのか──何かに反応するように、光を脈打たせていた。


ミア「……それが、龍脈ってやつに反応してるの?」

ランジュ「ええ。そんなに大急ぎでやる必要はないけど、のんびりもしてられないわ。行くわよ、ミア」

ミア「命令しないでくれないかな……。ボクは自分の目的のために力を貸してるだけだよ」

ランジュ「大丈夫よ。すぐに証明してあげるわ──ランジュがミアの育てたポケモンを使って……最強のトレーナーになってあげる」





    🎹    🎹    🎹





ひとまず……私たちは地上に降りてきた。


侑「歩夢……」

せつ菜「リナさん、歩夢さんは本当に今この地方に居ないんでしょうか……?」

リナ『少なくとも……私の観測上ではそうとしか言えない……。図鑑が故障したって可能性ももちろんあるけど……歩夢さんが消えた瞬間に図鑑の反応も消えたから、壊れたよりかは私がサーチできる範囲の外に行っちゃったって考えた方がいいと思う』 || 𝅝• _ • ||

侑「とにかく……探さなきゃ……」


私は歩き出す。


せつ菜「侑さん、落ち着いてください……」

リナ『心配なのはわかるけど……どこにいるのか見当もつかないまま探しても……』 || 𝅝• _ • ||

侑「そうだけど……じっとなんかしてられないよ……」

せつ菜「侑さん、歩夢さんもあの戦いを乗り越えたトレーナーの一人なんです。これくらいのことでどうにかなったりしません」

侑「せつ菜ちゃん……」

せつ菜「それに……侑さんが一番歩夢さんのことを信じてあげないといけませんよ。大切な幼馴染なんでしょう?」

侑「…………」


せつ菜ちゃんの言葉を聞いて、私は一度大きく息を吸って……深く吐く。

焦った頭に酸素が取り込まれて、少しだけ気分が落ち着いてくる。


侑「……ごめん、せつ菜ちゃんの言うとおりだ……私が歩夢のこと信じてあげないでどうするんだ……」

せつ菜「もちろん心配するなとは言いません。ですが、心配しすぎて焦ってはいけませんから」

侑「……うん」


とりあえず……今は落ち着いて、歩夢がどこに行っちゃったのかを考えないと……。

それを考え始めようとしたまさにそのとき、


 「──さっきの子は、朧月の洞って場所に飛ばされただけだよ」


音ノ木の方から、そんな声が聞こえてきた。


侑「え?」


その声のする方へ振り返ると──そこには赤いメッシュの入った黒髪ロングの女性が、音ノ木の根本に立っていた。


侑「あなたは……?」

薫子「ああ、アタシは薫子って言うんだけどさ」

リナ『その服……もしかして、リーグの職員?』 || ╹ᇫ╹ ||

せつ菜「あ……確かに、リーグ職員の方はそういう制服でしたね」


確かに言われてみれば彼女が着ている服は、どこかの組織の規定服のようなデザインをしていた。

かなり着崩しているせいで、言われないとわからないけど……。


薫子「うん、そうだよ。アタシはリーグの職員。実はここの監視を担当してるんだよね」

せつ菜「監視……? 音ノ木のということですか……?」

薫子「まあ、そんな感じ」

侑「あの……それで、さっき言ってた朧月の洞って言うのは……?」

薫子「あー……なんていうか、説明が難しいんだけどね。世界の狭間にある結界の中……みたいな場所かな」

侑「歩夢は……そこに居るんですか?」

薫子「うん、そうだよ」

リナ『どうして貴方はそんなこと知ってるの?』 || ╹ᇫ╹ ||

薫子「ちょっと事情があってね……妹がそこに住んでるんだよ。栞子って言うんだけどさ」


なんだか、よくわからないけど……。


侑「とりあえず……歩夢は無事……ってことでいいんですか……?」

薫子「うん、恐らく無事だよ。少なくとも地面に激突してるってことはない」

侑「そうなんだ……なら、よかった……」


歩夢はひとまず無事と考えていいと聞いて、少しだけ安心する。

もちろん、実際に顔を見ないと完全に安心することは出来ないけど……。


薫子「あーところでさ、君たちって、この間のDiverDiva事件を解決したトレーナーたちだよね?」

侑「え……どうしてそのことを……?」

薫子「こんな身なりでもリーグ職員だからね。一応、いろいろ知ってるんだよ。……んでさ、そんな君たちの実力を見込んでちょっとお願いしたいことがあるんだけど……」

せつ菜「お願い……ですか……?」


──リーグ職員の人が、私たちに何をお願いするんだろう……と思ったけど、


薫子「……君たちにはレックウザを止めて……妹の──栞子を救ってやって欲しいんだ」


薫子さんが口にしたのは──そんな内容だった。




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【大樹 音ノ木】
 口================== 口

  ||.  |○         o             /||
  ||.  |⊂⊃                 _回/  ||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||.○⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回●|     |        :  ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  .||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  .||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  .||
  ||.       /.         回 .|     回  ||
  ||.    _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||. /              o回/         ||
 口==================口



 主人公 侑
 手持ち イーブイ♀ Lv.82 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
      ウォーグル♂ Lv.79 特性:まけんき 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
      ライボルト♂ Lv.80 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
      ニャスパー♀ Lv.77 特性:マイペース 性格:きまぐれ 個性:しんぼうづよい
      ドラパルト♂ Lv.78 特性:クリアボディ 性格:のんき 個性:ぬけめがない
      フィオネ Lv.74 特性:うるおいボディ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:270匹 捕まえた数:12匹

 主人公 せつ菜
 手持ち ウーラオス♂ Lv.79 特性:ふかしのこぶし 性格:ようき 個性:こうきしんがつよい
      ウインディ♂ Lv.87 特性:せいぎのこころ 性格:いじっぱり 個性:たべるのがだいすき
      スターミー Lv.83 特性:しぜんかいふく 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      ゲンガー♀ Lv.85 特性:のろわれボディ 性格:むじゃき 個性:イタズラがすき
      エアームド♀ Lv.81 特性:くだけるよろい 性格:しんちょう 個性:うたれづよい
      ドサイドン♀ Lv.84 特性:ハードロック 性格:ゆうかん 個性:あばれることがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:195匹 捕まえた数:51匹


 侑と せつ菜は
 レポートに しっかり かきのこした!


...To be continued.





 ■Intermission🎀



先ほどまで、猛スピードで音ノ木から落下していた私は──


歩夢「……ここって……」
 「シャボ」


気付けば……洞窟のようなところに居た。

いや、ここは……前にも訪れたことがある……。


歩夢「……朧月の洞……」

 「ピィ…」


気付けば私の足元にはピィが居て、ぴょこぴょこと跳ねながら鳴き声をあげる。


歩夢「また、あなたが助けてくれたんだね……ありがとう」
 「ピィ…」


ピィは一鳴きすると、ぴょこぴょこと奥の部屋へと歩いて行く。


歩夢「……付いてこいってことかな……?」


私がピィの後を追っていくと──


 「ピィ…」

歩夢「……え?」


ピィが心配そうに見つめる先に──


栞子「…………っ…………ぅ…………」


栞子ちゃんが倒れていた。


歩夢「栞子ちゃん……!!?」


私はすぐさま栞子ちゃんに駆け寄り、抱き起こす。


歩夢「栞子ちゃん!? 大丈夫!?」

栞子「……あな、たは…………あゆ、む……さん…………?」


栞子ちゃんは薄っすらと目を開けて、ぼんやりと私の名前を呼ぶ。

抱き起こした栞子ちゃんの身体は……すごく熱かった。


歩夢「栞子ちゃん、酷い熱……!」

栞子「…………あゆむ、さん…………」


栞子ちゃんが弱々しく私の袖を掴む。


栞子「…………わた……し…………ラン、ジュを……とめ……ない、と……」

歩夢「え……ランジュちゃん……?」

栞子「…………で、ない……と…………オトノキ……地方……が…………。…………」


その言葉を最後に──栞子ちゃんの腕が力を失って、落ちる。


歩夢「栞子ちゃん!?」

栞子「………………ぅぅ……」


栞子ちゃんは高熱だけでなく、呼吸が浅く、顔色も真っ青を通り越して蒼白だった。


歩夢「このままじゃ危ない……!! サスケ! 手伝って!」
 「シャボッ」


私はサスケに協力してもらいながら、栞子ちゃんを背負い、


歩夢「ピィ!! 外に案内して……!! すぐにでも病院に連れて行かないと……!!」
 「ピィ…!!」


ピィと一緒に、外の世界に戻るために──朧月の洞の中を走り出した。


………………
…………
……
🎀


■ChapterΔ002 『翡翠の巫女』 【SIDE Yu】





私たちは……あの後、音ノ木の大きな根っこに腰掛け、歩夢を待っていた。


侑「……ここに居れば、歩夢は戻ってくるんだよね……?」

せつ菜「薫子さんは、そう言っていましたね」

リナ『少なくとも、サーチはずっと続けてるから。サーチ範囲内に歩夢さんの反応があったら、すぐに知らせるよ』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「うん、お願いね。リナちゃん」


まさにそのときだった──突然目の前に、先ほど歩夢が消えた時と同じ光が発生する。


侑「……! これって……!」

リナ『! 歩夢さんの図鑑の反応! 目の前から!』 || ╹ᇫ╹ ||


リナちゃんの言葉と共に──


歩夢「──外……出られた……! ここは……音ノ木の根本……?」


歩夢が飛び出してきた。


侑「歩夢……!!」
 「ブイ!!」

せつ菜「歩夢さん!!」

歩夢「! 侑ちゃん! せつ菜ちゃん!」


私たちは歩夢に駆け寄る。その際──歩夢の背中に、女の子が背負われていることに気付く。

しかも、その子は──


女の子「………………ぅ、ぅ…………」


脂汗を掻き、顔面蒼白で、苦しそうに呻き声をあげている。


侑「そ、その子、大丈夫……!?」

歩夢「そうだ……! この子、すごい高熱で……今すぐにでも病院に連れて行かないと……!」

せつ菜「ここからだとセキレイの病院が近いはずです……! すぐにでも移動して──」

女の子「…………病院、は……やめて……くだ、さい…………」

歩夢「栞子ちゃん……!?」


歩夢に栞子と呼ばれたその子は苦しそうな息遣いのまま、


栞子「……私たち……翡翠の一族は…………表、舞台に……立っては……いけない…………病院は、困り、ます…………」

歩夢「でも……! 栞子ちゃん、すごい熱が出てて……!」

栞子「……ですが……病院は……ダメ……です……」


頑なに病院に行くことを拒否する。


栞子「……お願い……します……」

歩夢「でも……」


歩夢は酷く困った表情をする。


せつ菜「……病院に行かないにしても、どこか休める場所に行く必要があります」

侑「……そうだね」

歩夢「でも……仮に私の家に連れて行っても……こんな苦しそうな子見たら、お母さんたちがお医者さんを呼んじゃうよ……」

せつ菜「それは……確かに……」

侑「病院に連絡されずに……事情を理解してくれそうな、落ち着ける場所なんて……」


私たちは困ってしまうが、


リナ『なら、セキレイに良い場所がある』 || ╹ᇫ╹ ||


それに答えたのはリナちゃんだった。


歩夢「本当……!?」

リナ『今連絡を入れちゃうから、みんな移動の準備をして!』 || ╹ ◡ ╹ ||

侑「わかった……!」

せつ菜「栞子さんはエアームドの背中に固定して運びましょう。紐を出します」
 「ムドーー!!!」

歩夢「私、一緒に乗る……!」

せつ菜「はい、落ちないように見てあげてください!」

侑「それじゃせつ菜ちゃんはウォーグルの背中に乗って……!」
 「ウォーーグ!!」

せつ菜「はい! よろしくお願いします!」


エアームドが身を屈め、3人掛かりでその背に栞子ちゃんを寝かせ──せつ菜ちゃんが用意してくれた毛布と紐で身体を固定する。


栞子「…………あゆ、む……さん…………」

歩夢「少し苦しいかもしれないけど……我慢してね……」

栞子「………………は、い…………」


歩夢が栞子ちゃんと一緒にエアームドの背に乗る。


せつ菜「エアームド! 任せますよ!」

 「ムドーーッ!!」
歩夢「エアームド……お願いね」

侑「私たちも行こう……!」

せつ菜「はい!」


私たちは大急ぎでセキレイへと飛び立つのだった。




    🎹    🎹    🎹





善子「──それで、私の研究所に来たってことね」


ヨハネ博士はそう言って肩を竦める。


せつ菜「すみません……押しかけてしまって……」

善子「大丈夫よ、ワケアリなんでしょ? それに貴方たちは私のリトルデーモンなんだから」

侑「ありがとうございます、ヨハネ博士……!」

善子「苦しゅうない」


ヨハネ博士は、ベッドに寝かされた栞子ちゃんに目を向ける。


栞子「………………すぅ…………すぅ…………」

歩夢「……よかった……やっと、落ち着いてきたみたい……」


栞子ちゃんはベッドに寝かされ、氷嚢を頭に乗せたまま、穏やかな寝息を立てていた。


善子「歩夢、しばらく看病してあげて」

歩夢「はい」

せつ菜「とりあえず……人が大勢居るとゆっくり休めないでしょうし……」

善子「そうね。私たちは一旦下の研究室に行きましょう」

侑「わかりました。……歩夢、後はお願いね」

歩夢「うん、任せて」


私たちは部屋を後にし、1階の研究室まで移動する。


善子「んで……何があったの?」

侑「えっと……」


私たちはとりあえず、起こったことをありのままに説明し始める。

音ノ木の頂上に伝説のポケモンを探しに行ったこと。

そうしたら、先客──ランジュちゃんたちが居たこと。

レックウザが現れて、吹き飛ばされ……落下する歩夢がピィと一緒に消えてしまったこと。

その後、現れた薫子さんという女性に、歩夢の無事を聞かされ……それと同時に頼み事をされたこと。

そして、薫子さんの言うとおり歩夢が戻ってきたと思ったら……ぐったりとした栞子ちゃんを背負っていた……。


善子「……情報量が多いわね」

せつ菜「あはは……確かに……」

善子「んで、その薫子って人から何を頼まれたの?」

侑「えっと……」


私たちは薫子さんとの会話を反芻しながら、話し始める──


──────
────
──


侑「妹を……救って欲しい……?」

リナ『リーグ職員なら、リーグ主導で解決した方がいいんじゃない?』 || ╹ᇫ╹ ||

薫子「なんというか、そういうわけにもいかないというかさ……」


薫子さんはリナちゃんの言葉に頭を掻く。


せつ菜「どういうことですか……?」

薫子「実はアタシは……翡翠の民って呼ばれてる一族の末裔なんだ」

侑「翡翠の……民……?」

薫子「翡翠の民は、このオトノキ地方に棲んでる、怒れる龍神様を鎮めるために存在してるんだ」

せつ菜「怒れる龍神……? ……この地方に伝わる龍神伝説のことですか……?」

薫子「それそれ」

侑「でも……あれって、あくまで伝説で……」

薫子「火のないところに煙は立たないって言うでしょ? 龍神は実際に居るんだよ。そして、君たちはまさに今、その龍神を目の当たりにしてたじゃない」

侑「え?」


まさか、それって……。


侑「レックウザ……?」

薫子「そういうこと」

せつ菜「待ってください。龍神様は私たちを見守ってくれているんじゃないんですか? 確か伝説ではそういう内容だったような……」

薫子「……まあ、最初は守ってくれてたんだけどね……。……ちょっといろいろ事情が変わっちゃってさ。今は人間に対して、あんまり友好的じゃなくてね……」


そういえば、歩夢もレックウザは怒っているって言っていたっけ……。


薫子「んで、その怒りを鎮める役割を担っていたのが翡翠の民であり……その中でも、一番近くで龍神様のお世話をしていたのが、翡翠の巫女──アタシの妹の栞子ってわけ」

リナ『さっき、レックウザを止めて欲しいって言ってたけど……止めなくちゃいけないような状態ってこと?』 || ╹ᇫ╹ ||

薫子「本当は栞子がずっと怒りを抑えてたんだけどね……ちょっと事情が変わっちゃってさ」

侑「事情が変わった?」

薫子「上で、女の子に会わなかった? 薄桃色の髪した子」

侑「あ、はい。会いました。ランジュちゃんですよね?」

薫子「あの子がね……なんか、レックウザの封印を解いちゃったみたいでさ」

侑「え……!?」

せつ菜「ランジュさんが怒れる龍神様を解き放ってしまったということですか……!? それって、まずいんじゃ……」

薫子「そうなんだよ……結構まずいんだよねー」


薫子さんの雰囲気のせいか、全然危機感が伝わってこないけど……。

確かにあんなパワーを持ったポケモンが怒り狂ったまま解き放たれてしまったんだとしたら……相当まずい事態な気がする。


薫子「ただ……翡翠の民とリーグ協会はちょっと折り合いが悪くてねー……」

侑「折り合いが悪い……? 薫子さんってリーグの人なんですよね……?」

薫子「ま、表向きにはね」

侑「表向きには……?」


私はその物言いに首を傾げてしまうが、


せつ菜「……まさか……!! 薫子さんは、翡翠の民を守るために、リーグに潜入しているという展開ですか!!?」


せつ菜ちゃんが目を輝かせながら言う。いや、さすがにそんなことは……。


薫子「簡単に言うとそんな感じかな」

せつ菜「やはりですか……!!」

侑「え、ホントにそうなの……!?」

せつ菜「つまり翡翠の民としては、自分たちの失態でレックウザが解き放たれてしまったということが、リーグに露見する前に解決したいということですね!!」

薫子「おー、理解が早くて助かるよ」

リナ『折り合いが悪いって言うのは具体的にどういうことなの?』 || ╹ᇫ╹ ||

薫子「説明すると長くなっちゃうから省くけど……翡翠の民はあくまで龍神様と共存する方針で、リーグは地方を守るために討伐しようとしてたって感じかな。まあ、正確に言うとリーグの前身組織の考えなんだけどね。大昔に考えの違いで対立してたってわけ」

リナ『それは今も続いてると……』 || ╹ᇫ╹ ||

薫子「今となってはリーグ上層部しか知らないことだけどね。ただ、意志としては生きてる。翡翠の民は龍神様を守る代わりに、それによって問題が起こった際には責任を取るって取り決めを大昔にリーグとしちゃってるってわけ。……だから、リーグ側が事態を解決しても、翡翠の民──特に翡翠の巫女は責任を取らされることになる。……それは避けたいんだ」

侑「救って欲しいって言うのは、そういうことか……」

せつ菜「だから、対立が発生する前に、私たちに解決して欲しいということですね!」

薫子「身勝手なお願いだってことはわかってる。リーグ側のスタンスも理解してる……でも、翡翠の民も、妹も……大事だからさ」

せつ菜「妹さんを想って単身敵組織に乗り込み、守ろうとする姿……感動しました!! 是非、お手伝いさせてください!!」


せつ菜ちゃんが目を輝かせながら、薫子さんの手を両手で捧げ持ちながら言う。


リナ『せつ菜さんが完全に雰囲気に呑まれてる……』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

侑「あはは……」


確かにせつ菜ちゃんはこういう展開好きそうだけど……。


リナ『侑さんはどうする……?』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「……もし、私たちで解決出来るなら、変に対立が起こる前にどうにかしてあげたい気はするかな……」

リナ『いいの?』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「歩夢が飛ばされたのは翡翠の巫女の──栞子ちゃんが住んでる場所なんでしょ? だったら、歩夢を助けてもらった恩もあるわけだし……」

リナ『それは確かに』 || ╹ ◡ ╹ ||

侑「それにリーグの方針では最悪討伐になっちゃうわけだから……それなら、もっと友好的な解決を探したいなって思って」

リナ『わかった。そういうことなら、私は侑さんに協力する』 || > ◡ < ||


もちろん、どちらかにつくという話ではなく……あくまで無用な争いが起こらないように手を貸すだけだけど。


薫子「ありがとう。そう言ってもらえてホッとしてるよ……。それじゃ、アタシはリーグ内に情報が回らないように止めておくから」

せつ菜「はい!! 後のことは私たちにお任せください!! 必ず解決して見せます!!」

薫子「お願いね。朧月の洞に飛ばされた子は……恐らく戻ってくるときは入った場所の近くに出るはずだから、ここに居れば大丈夫なはずだよ」


──
────
──────


せつ菜「──ということで、薫子さんのお願いを聞くことになりました!」

善子「あんたたち、安請け合いしたわね……」

侑「やっぱり……よくなかったですか……?」


ポケモンリーグは、この地方の治安を維持している組織でもある。

私たちの行動はある意味、治安を守る組織の意思に反した行動と取れなくもない……。

ただ、ヨハネ博士は、


善子「貴方たちが自分たちの意思で決めたのなら、私からは特に言うことはないわ。結果として、人とポケモンを守るための選択なわけだしね」


そんな風に言う。


せつ菜「はい! 博士ならそう言ってくださると思っていました!」

善子「ただ、やるからにはちゃんとやり遂げなさい。わかった?」

侑「はい!」

せつ菜「お任せください!!」

善子「よろしい。そうなると、あの翡翠の巫女の子……栞子にも事情を聞かないといけないだろうから、あの子の容態が落ち着くまではここに泊まって行きなさい。上の部屋は自由に使っていいから」

侑「ありがとうございます」

せつ菜「お世話になります!」


こうして私たちは、レックウザを止めることになったのだった。





    🎹    🎹    🎹





侑「歩夢、入るよ」
 「ブイ」

歩夢「あ、侑ちゃん」


歩夢が栞子ちゃんを看病している部屋に入る。


侑「栞子ちゃん……どう?」


そう訊ねながら、栞子ちゃんを見ると──


栞子「…………すぅ…………すぅ…………」


穏やかな寝息を立てながら眠っている。顔色も随分よくなってきた気がする。


歩夢「大分落ち着いたよ。熱も下がってきたし……ヨハネ博士のくれた薬が効いたんだと思う」

侑「そっか……よかった」


安堵の息を漏らしながら、改めて眠っている栞子ちゃんを観察する。


栞子「…………すぅ…………すぅ…………」


歳は……私たちと同じか、少し下くらいかな……。

枕元には、


 「ピィ…」


ピィが一緒に眠っている。


侑「この子が翡翠の巫女……」

歩夢「え……? 侑ちゃん、なんでそのこと……」

侑「歩夢……そのことについて、ちょっと聞いて欲しい話があるんだ」

歩夢「聞いて欲しいこと……?」





    🎹    🎹    🎹





歩夢「……そんなことになってたんだ……」


私は歩夢を部屋の外へ呼び、先ほどヨハネ博士にしたのと、同じ内容を説明した。


侑「それで……私とせつ菜ちゃんは薫子さんに協力することにしたんだけど……」

歩夢「もちろん、私も協力するよ。栞子ちゃんのこと……放っておけないし」


まだ部屋の中では栞子ちゃんが眠っているからか、声のボリュームを抑え気味にしながら、歩夢が協力の意思を伝えてくれる。


侑「わかった。それじゃ、せつ菜ちゃんにもそう伝えておくね」

歩夢「うん、お願いね。私はもう少し栞子ちゃんのこと見てるから……」

侑「了解。あ……栞子ちゃんの容態がよくなるまで、ここに泊まっていいってヨハネ博士が言ってたから」

歩夢「あ、そうなんだね。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな……」

侑「うん。それじゃ、また後で様子見に来るね」

歩夢「はーい♪」





    🎹    🎹    🎹





部屋を後にし──再び1階に戻ると、


善子「そういえば菜々、最近ポケモンリーグに行ってないって聞いたわよ」

せつ菜「あ、えっと……はい」


せつ菜ちゃんとヨハネ博士の会話が聞こえてきた。


善子「千歌が、貴方が来ないって連絡を寄越してきてね……今まで、それなりの頻度で挑戦しに来てたから、突然来なくなって心配してるみたいよ」

せつ菜「…………」

善子「千歌も、自分が全力で戦える相手が出来て嬉しいんだと思うわ。また行ってあげたら?」

せつ菜「あの……そのことなんですけど」

善子「ん?」

せつ菜「私……もう、チャンピオンを目指すのは止めようと思うんです……」

善子「どうして?」

せつ菜「それは……。……その……」


せつ菜ちゃんはヨハネ博士に訊ねられて歯切れが悪くなる。……確かに最初のポケモンと図鑑を貰ったからなんて、ヨハネ博士本人には言いづらいだろう……。

だけど、ヨハネ博士はそんなせつ菜ちゃんの様子を見て、


善子「……はぁ……」


溜め息を吐いた。


善子「……貴方が今、何考えてるか当ててあげるわ」

せつ菜「え?」

善子「今の自分がチャンピオンになっても、結局図鑑を持った選ばれたトレーナーだから……今までのような、普通のトレーナーでも、チャンピオンになれるんだって証明にならない。そう思ってるんでしょ」

せつ菜「ど、どうしてそれを……」

善子「貴方はわかりやすいからよ」

せつ菜「……。……あの、そういうことなので……私はもうチャンピオンを目指すのは……」

善子「……菜々」


ヨハネ博士が名前を呼び、


せつ菜「……なんですか?」


せつ菜ちゃんが顔を上げるのと同時に──


善子「てい!」

せつ菜「いた!?」


頭にチョップした。


善子「菜々。貴方は……図鑑を貰っただけでチャンピオンになったつもりなの?」

せつ菜「え……?」

善子「確かにこの地方の歴代チャンピオンは皆ポケモン図鑑所有者だったかもしれない。でも、図鑑所有者が全員チャンピオンになったわけじゃない。それなら私だってとっくにこの地方のチャンピオンよ」

せつ菜「それは……」

善子「目的に掲げていたものがなくなって戸惑うのは理解出来る。でも、貴方がポケモンバトルをしていたのは、図鑑を持っていなかったからなの?」

せつ菜「……違います。……ポケモンバトルが……好きだからです……」

善子「でしょ? それにチャンピオンになったトレーナーは、最初のポケモンと図鑑を貰ったから、チャンピオンになったんじゃない。……誰よりも、ポケモンのことを信頼して、強くなることにひたむきに向き合って努力し続けた結果なの。それは貴方が一番よくわかってるでしょう?」

せつ菜「……はい」

善子「本当にチャンピオン──最強のトレーナーになることに興味がなくなったのなら、私は何も言わないわ。だけど、図鑑を貰ったことが理由だって言うなら……そんなものチャンピオンになってから考えなさい。まだ、貴方は一度も千歌に勝ててない。今でもチャレンジャーなんだから」

せつ菜「……はい」

善子「……あと個人的なわがままを言うなら……」

せつ菜「……?」

善子「私も……自分のもとから旅立ったトレーナーがチャンピオンになる姿を見てみたい……」

せつ菜「ヨハネ博士……」

善子「もし、目的を見失ってどうすればいいのかわからなくなっちゃったなら……私の夢を一緒に叶えることを目的にして欲しいわ。菜々がチャンピオンマントを背負う姿を……私に見せて」

せつ菜「……博士……。……わかりました、いつか必ず……博士にチャンピオンマントをお見せします。……私、この地方の……チャンピオンになります……!」

善子「ん、よろしい。……それでこそ、私が見つけ出した最高のリトルデーモン・菜々よ……。……頑張りなさい」

せつ菜「……はい!」


影から二人のやり取りを見ていた私を見てリナちゃんが、


リナ『侑さん、入らないの?』 || ╹ ◡ ╹ ||


そう訊ねてくる。


侑「邪魔しない方がいいかなって」


ヨハネ博士が、図鑑を渡したトレーナーたちに優劣を付けているわけじゃないけど……それでもせつ菜ちゃん──菜々ちゃんとの絆は少し特別なものだろうから。


リナ『……そうだね』 || ╹ ◡ ╹ ||

侑「ちょっと散歩でもしてこよっか」

リナ『うん』 || ╹ ◡ ╹ ||


少しの間、セキレイの街を散歩することにしたのであった。





    🎹    🎹    🎹





──翌日。


歩夢「……うん! 熱も下がってる!」

栞子「……すみません、ご迷惑をお掛けしてしまって……」


栞子ちゃんの容態はすっかり安定していた。


栞子「皆さんも……助けてくださって、ありがとうございます……」


栞子ちゃんはベッドの上で、三つ指をつきながらお礼を言う。


せつ菜「お気になさらないでください! 困ったときはお互い様です!」

侑「栞子ちゃんが元気になったなら、それで大丈夫だよ♪」

栞子「ありがとうございます……」


栞子ちゃんは重ねてお礼を言ってから、


栞子「改めまして……私は栞子──ミフネ・栞子と申します……。この子は家族のピィです」
 「ピィ」


そう自己紹介をする。


侑「私は侑。タカサキ・侑。この子は相棒のイーブイ」
 「ブイ♪」

せつ菜「ユウキ・せつ菜です!」

リナ『リナだよ。侑さんのポケモン図鑑』 || ╹ ◡ ╹ ||

栞子「侑さんとイーブイさん、せつ菜さんにリナさんですね。よろしくお願いします」


栞子ちゃんは私たちの顔を順番に見たあと、また恭しく頭を下げる。

すごく礼儀正しい子みたいだ。


歩夢「それで……何があったのか、聞いてもいい?」

栞子「……えっと、その前に……翡翠の巫女について説明させてください。……私は翡翠の民と言われる一族で──」


翡翠の民と翡翠の巫女について説明を始める栞子ちゃんを見て、せつ菜ちゃんが耳打ちしてくる。


せつ菜「……あの……本当に薫子さんのこと……言わなくていいんでしょうか……」

侑「……薫子さんが言わないで欲しいって言うんだから、とりあえず言わない方がいい……んだと思う」


──実は、薫子さんに会ったことは、栞子ちゃんには伝えないで欲しいと言われている。


薫子『栞子はアタシが今ポケモンリーグにいることを知らないんだよね。あの子真面目でね……きっとその話聞いたら、ショック受けちゃうだろうから、可能であれば栞子には言わないでくれると助かるかな……。もちろん、説明しなくちゃいけない状況になったら君たちの判断で言ってもらっても構わないから、アタシがそんなこと言ってた程度に捉えておいてくれると助かるよ』


とのことだった。

なので、可能な限り薫子さんに会ったことは黙っておくことにしている。


栞子「──……私は、龍神様にお仕えする巫女をしていました……」

歩夢「その龍神様が……私たちが音ノ木の頂上で見た、レックウザだったんだよね……?」

栞子「……はい」

歩夢「レックウザ……すごく怒ってたけど……」

栞子「……すみません」

歩夢「あ、ご、ごめんね、責めてるんじゃなくて……。どうして、怒ってたのかなって……」

栞子「それは……私が封印を強めて、閉じ込めていたからなんです……」

侑「閉じ込めていた……?」

せつ菜「翡翠の巫女は龍神様のお世話をする存在なのではないんですか?」

栞子「本来はそうなのですが……。……龍神様は地方に何かしらの異変が起こると、地方のポケモンたちを守るために外に出て行かれてしまうことがあるんです……」

リナ『それって、何か問題があるの?』 || ╹ᇫ╹ ||

栞子「はい……。……龍神様はポケモンは守りますが……基本的に人間を守る気はないんです」

歩夢「え……?」


歩夢が困惑した声をあげた。

いや、困惑したのは歩夢だけじゃない……私たちもだ。


侑「昔聞いたお伽噺とかだと……龍神様は、この地方を見守ってくれてるって聞いてたから……てっきり、私たち人間も見守ってくれてるんだと思ってたんだけど……」

せつ菜「私もそういう理解をしていました。……違うんですか……?」

栞子「それを話すには……少しオトノキ地方の歴史に触れないと説明が難しいのですが……。長くなってしまうので……」

歩夢「……わかった。とりあえず、龍神様はポケモンを守るけど、人のことは守ってくれないから、解き放つと大変って理解しておけばいい?」

栞子「はい、概ねその理解で合っています。私たち翡翠の民は、そういうときに龍神様の怒りが世界に向かないように鎮めるのが役割なんです……。……そして、どうしても鎮めきれない場合……翡翠の巫女は儀式によって、龍神様の力を一時的に封印するんです」

リナ『一時的にってどれくらい?』 || ╹ᇫ╹ ||

栞子「龍神様が落ち着かれるまでです……。……3年前は私の巫女としての力が未熟だったため、外に出て行かれてしまったんですが……今回はどうにか、抑えていたんです」

歩夢「ま、待って……! 落ち着くまでずっと抑えてたって……事件が起こったのは、もう半年も前だよ……?」

栞子「……はい。ですから、半年間……抑え続けていました」

歩夢「栞子ちゃん一人で……!? 半年間も……!? そんなことしたら、倒れちゃって当然だよ……!」

栞子「……ですが、それが翡翠の巫女の役割なんです……」


その封印の儀式というのが、具体的にどういうものなのかわからないけど……それでも、半年間ずっと怒れる龍神様を抑え続けていたのは、栞子ちゃんにとって相当な負担だったに違いない。

どうりで、あんなに疲弊しきっていたわけだ。

むしろ、事情を聞いてからだと……1日眠っただけで、ここまで快復出来たことの方が驚きかもしれない……。


せつ菜「……あれ? でも、栞子さんは龍神様を抑えられていたんですよね……? でも、龍神様は……?」

栞子「はい……。……封印の儀式を継続している最中に、幼馴染が──ランジュが現れて、儀式を中断させられてしまったんです……」


それは薫子さんに聞いた話とも合致する。問題は……。


侑「どうしてランジュちゃんはそんなことを……?」

せつ菜「私たち、ランジュさんには音ノ木の頂上でお会いしているんですが……」

栞子「そうだったんですね……。……ですが、私にも理由がわからなくて……」

歩夢「ランジュちゃんは何か言ってなかったの……?」

栞子「……すみません……龍神様が解き放たれたときの衝撃で……私は気を失ってしまったので……」


つまり、ランジュちゃんの目的は栞子ちゃんにもわからないらしい。

ただ……。


侑「ランジュちゃん……レックウザに向かって、ボールを投げてたよね」

せつ菜「はい。失敗していましたが……」

栞子「捕獲しようとしていたということですか……? ですが、今の状態では捕獲は難しいと思います……」

歩夢「どういうこと?」

栞子「今の龍神様は……力の大半を封印されている状態のまま解き放たれています。モンスターボールはポケモンが持っている固有のエネルギーに反応して、機能すると伺ったことがあるのですが……」


栞子ちゃんの言葉を聞いて、私たちの視線がリナちゃんに集中する。


リナ『うん。モンスターボールは確かにそういう方法で、ポケモンを判別してる』 || ╹ᇫ╹ ||

栞子「ですので、今の不完全な状態の龍神様は、逆にポケモンとは認識されづらくなっているはずです……」

侑「なるほど……」

せつ菜「だから、マスターボールでも捕獲出来なかったんですね……」


しかし、それはそれとして……。


侑「ランジュちゃんはなんで、レックウザを捕獲しようとしてるんだろう……?」

栞子「それは……私にもよくわかりません……」

せつ菜「とりあえず……それは本人を探して聞くしかなさそうですね」

歩夢「でも、今どこにいるんだろう……」


私たちは歩夢の救出に手一杯で、あの後ランジュちゃんがどこに行ったのかは全くわかっていない。

だけど、


栞子「……もし、ランジュが龍神様を捕獲しようとしているなら……龍神様の封印を完全に解こうとするはずです。恐らく、オトノキ地方にある龍脈に向かったんだと思います」


栞子ちゃんには心当たりがあるようだ。


歩夢「龍脈って……?」

栞子「翡翠の巫女は、龍神様の膨大なエネルギーを封じるために儀式によって、龍神様の力を音ノ木を介して大地に流すんです。大地に流れ出した龍神様のエネルギーは龍脈というエネルギースポットに自然と集まっていきます。ですので、各地の龍脈を訪れて龍神様のエネルギーを回収して、お返しすれば……恐らく龍神様の封印を完全に解くことが出来ると思います」

侑「じゃあ、その龍脈の場所に行けば……!」

栞子「ただ……龍脈は一定の場所に定まっているわけではなくて……時代によって移り変わってしまうので、見つけるには王都にある宝珠が必要なはずなんです」

侑「王都……?」


王都なんて呼ばれてる場所……オトノキ地方にあったっけ……?

いや、そもそも王様がいないし……。


せつ菜「……もしかして、ダリアシティのことですか?」

侑「え? ダリア?」

せつ菜「はい。ダリアは遥か昔、オトノキ地方を統治していた王族が住んでいたと言われている場所なので……」

栞子「せつ菜さんの言うとおり、今はダリアシティがある場所ですね。……そこに宝珠が保管されているはずなんですが……」

歩夢「じゃあ、ランジュちゃんはそこからその宝珠を持って行っちゃったってこと……?」

栞子「わかりません……。……ですが、実際に行って確認をした方がいいかもしれません」

リナ『なら、行き先は決まったね』 || ╹ ◡ ╹ ||

侑「うん。とにかく、一旦ダリアシティに行ってみよう」
 「イブイ♪」


私たちはかつての王都こと──ダリアシティに向かうことになった。





    🎹    🎹    🎹





侑「それじゃ、ヨハネ博士! 行ってきます!」
 「ブイ♪」

善子「行ってらっしゃい。何かあったら、連絡しなさい」

せつ菜「ありがとうございます!!」

栞子「ご迷惑をおかけしました……」

善子「栞子、貴方も何かあったら言いなさい。寝床くらいなら、いつでも貸せるから」

栞子「はい……! ありがとうございます……!」


ヨハネ博士に見送られながら、私たちはダリアに向かうために、ポケモンたちを出す。


侑「ウォーグル!」
 「──ウォーーッ!!!」

せつ菜「エアームド!」
 「──ムドーッ!!」

せつ菜「歩夢さんは侑さんと一緒にウォーグルに乗ると思うので……栞子さんはエアームドに一緒に乗っていただけると……」

栞子「あ、いえ……! 私も飛べるポケモンは持っているので……! 出てきてください!」


そう言いながら、栞子ちゃんがボールを放ると──


 「ウォーーー…」


ボールからウォーグルが飛び出す。


侑「栞子ちゃんもウォーグル持ってたの……!? ……って、あれ……? なんかちょっと見た目が違うような……」


栞子ちゃんの出したウォーグルは、私のウォーグルと違って、白と灰色の羽を持ち、冠羽も紫色で特徴的な目のような模様が浮かんでいる。

さらに、私のウォーグルに比べると体も一回り大きい気がする。


リナ『ヒスイウォーグル……』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「ヒスイウォーグル……?」

リナ『ウォーグル(ヒスイのすがた) おたけびポケモン 高さ:1.7m 重さ:43.4kg
   敵を 見つけると 鬼気迫る 大きな 雄叫びを 上げ
   大きな体を 使って 狩りを 行う。 湖の 水に 向かって
   衝撃波を 放ち 水面に 浮かんできた 獲物を 捕まえる。』

リナ『すごく珍しいリージョンフォルム』 || ╹ᇫ╹ ||

歩夢「久しぶりだね、ウォーグル」
 「ウォー」


歩夢は顔見知りなのか、ウォーグルの頭を撫でている。


歩夢「そういえば、栞子ちゃん……ダリアの場所はわかる?」

栞子「え、えっと……大まかに西側ということくらいなら……」

歩夢「それなら、私が一緒に乗って案内するよ♪」

栞子「は、はい! そうして頂けると助かります!」

歩夢「侑ちゃん、私、今回は栞子ちゃんのウォーグルに一緒に乗せてもらうことにするけど……いい?」

侑「え? う、うん、構わないけど……」

歩夢「うん! それじゃ、ウォーグル。お願いね♪」
 「ウォーグ…」


歩夢が身を屈めたヒスイウォーグルの背に乗り、


栞子「歩夢さん、後ろから失礼します。……落とされないように、気を付けてくださいね」

歩夢「はーい♪」


栞子ちゃんがそのすぐ後ろに座る。

私のウォーグルよりも一回り体が大きいから、背中に二人乗せても大丈夫なようだ。


栞子「ウォーグル、飛んでください!」
 「ウォーーーグ」


栞子ちゃんの指示と共に、ヒスイウォーグルが飛翔する。


せつ菜「それでは侑さん! 私たちも参りましょう!」

侑「うん、そうだね!」

 「ウォーーグッ!!!!」「ムドーーーッ!!!」


私たちもポケモンたちの力で空へと飛び立ち、ダリアシティへ向けて飛び立つのだった。




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【セキレイシティ】
 口================== 口

  ||.  |○         o             /||
  ||.  |⊂⊃                 _回/  ||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||.○⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ ●__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :  ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  .||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  .||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  .||
  ||.       /.         回 .|     回  ||
  ||.    _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||. /              o回/         ||
 口==================口



 主人公 侑
 手持ち イーブイ♀ Lv.82 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
      ウォーグル♂ Lv.79 特性:まけんき 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
      ライボルト♂ Lv.80 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
      ニャスパー♀ Lv.77 特性:マイペース 性格:きまぐれ 個性:しんぼうづよい
      ドラパルト♂ Lv.78 特性:クリアボディ 性格:のんき 個性:ぬけめがない
      フィオネ Lv.74 特性:うるおいボディ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:270匹 捕まえた数:12匹

 主人公 歩夢
 手持ち エースバーン♂ Lv.68 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
      アーボ♂ Lv.69 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
      マホイップ♀ Lv.65 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
      トドゼルガ♀ Lv.64 特性:あついしぼう 性格:さみしがり 個性:ものおとにびんかん
      フラージェス♀ Lv.64 特性:フラワーベール 性格:おっとり 個性:すこしおちょうしもの
      ウツロイド Lv.73 特性:ビーストブースト 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 3個 図鑑 見つけた数:249匹 捕まえた数:24匹

 主人公 せつ菜
 手持ち ウーラオス♂ Lv.79 特性:ふかしのこぶし 性格:ようき 個性:こうきしんがつよい
      ウインディ♂ Lv.87 特性:せいぎのこころ 性格:いじっぱり 個性:たべるのがだいすき
      スターミー Lv.83 特性:しぜんかいふく 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      ゲンガー♀ Lv.85 特性:のろわれボディ 性格:むじゃき 個性:イタズラがすき
      エアームド♀ Lv.81 特性:くだけるよろい 性格:しんちょう 個性:うたれづよい
      ドサイドン♀ Lv.84 特性:ハードロック 性格:ゆうかん 個性:あばれることがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:195匹 捕まえた数:51匹

 主人公 栞子
 手持ち ピィ♀ Lv.11 特性:メロメロボディ 性格:やんちゃ 個性:かけっこがすき
      ウォーグル♂ Lv.71 特性:ちからずく 性格:れいせい 個性:かんがえごとがおおい
      ウインディ♀ Lv.70 特性:もらいび 性格:さみしがり 個性:のんびりするのがすき
      ゾロアーク♂ Lv.68 特性:イリュージョン 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      イダイトウ♀ Lv.68 特性:てきおうりょく 性格:さみしがり 個性:にげるのがはやい
      マルマイン Lv.68 特性:ぼうおん 性格:きまぐれ 個性:すこしおちょうしもの
 バッジ 0個 図鑑 未所持


 侑と 歩夢と せつ菜と 栞子は
 レポートに しっかり かきのこした!


...To be continued.





■ChapterΔ003 『オトノキ地方』 【SIDE Yu】





空を飛んで数十分ほど。

ダリアシティの大時計塔が見えてくる。


侑「ウォーグル、降りるよ」
 「ウォーグ!!」


私が高度を落とすと、それに合わせてせつ菜ちゃんと栞子ちゃんも一緒に降下を始める。


侑「到着っと……ここまで、ありがとう。戻って、ウォーグル」
 「ウォーグ──」


ウォーグルをボールに戻しながら、ダリアのポケモンセンターの前に降り立つ。


せつ菜「ここに王家の秘宝が眠っているんですね!! なんだか、宝探しみたいでワクワクしてきました!!」

リナ『微妙に大袈裟になってる……』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

歩夢「あはは……。……それで、栞子ちゃん。どこに行けばいい?」


歩夢がそう訊ねるけど、


栞子「え、えっと……」


栞子ちゃんはダリアの街をキョロキョロと見回しながら、狼狽えている様子だった。


歩夢「栞子ちゃん……?」

栞子「あ、あの……ここがダリアシティ……なんですよね?」

歩夢「え? う、うん」

栞子「その……私が昔写真で見たものとは全然様相が違うと言いますか……」


そう言いながら、栞子ちゃんがバッグから写真を1枚取り出す。

それをみんなで覗き込むと──それは白黒の写真だった。


侑「こ、これ……もしかしてダリアの写真……?」
 「ブイ?」

栞子「はい……。……これが旧王都の今の姿だと……」

せつ菜「……100年以上前の写真な気がしますね」

歩夢「そういえば……歴史の教科書で見たことあるかも」

リナ『カメラが一般普及し始めたくらいに資料として撮られた街並みの風景だね。私のデータベースにもあるよ』 || ╹ᇫ╹ ||

栞子「そ、そうなのですか……!? すみません……これがそんなに古い写真だったなんて……。……私、小さい頃から翡翠の民の里と、朧月の洞以外の場所はほとんど見たことがなくて……」

歩夢「うぅん、大丈夫だよ♪ どこに宝珠が保管されてるかは聞いてる?」

栞子「詳しくはわかりませんが……ダリア王家と翡翠の民が地方を守るために預けた宝珠ですので、王家の名残のある場所にあるはずです。ダリア王宮はどこでしょうか?」

せつ菜「だ、ダリア王宮ですか……!?」


せつ菜ちゃんが眉をハの字にしながら声をあげる。


栞子「は、はい……どうかされたんですか……?」

歩夢「えっと……ダリア王宮は、100年前にあった地震で修復不可能なくらいの損傷を受けて……安全のことも考えて解体されたの……」

栞子「え……!?」


そういえば、そんな話を歴史の授業で聞いたような、聞かなかったような……。


せつ菜「確かに建築物には多少当時の様式が使われている場所もあるそうですが……ダリア、セキレイ、ローズの3都市は近年で大きく姿を変えた都市と言われています」

侑「確かに栞子ちゃんの写真だと……全然街並みが違うもんね」
 「ブイ」

栞子「そ、そんな……それじゃ、宝珠がどこにあるか……」

せつ菜「……困りましたね」

栞子「すみません……」

歩夢「うぅん、大丈夫だよ♪ この街のどこかにはあるんだよね?」

栞子「お、恐らくは……」

歩夢「じゃあ、みんなで一緒に探せばきっと見つかるよ♪」

栞子「はい……」


というわけで、私たちがダリアシティで宝珠探しを始めようとした──そのとき。

──pipipipipipipi!!!


歩夢「きゃっ!?」
 「シャボ…」


歩夢のポケットから大きな音が鳴り始める。

この音って……。


侑「図鑑の共鳴音……!?」

歩夢「う、うん……!」


私たちがキョロキョロと周囲を見回していると──


 「──侑せんぱーい!! 歩夢せんぱーい!!」


元気な声をあげながら、女の子がこっちに向かって駆け寄ってきているところだった。

その子はもちろん──


かすみ「リナ子とせつ菜先輩まで!! お久しぶりですぅ~~~!!」


かすみちゃんが嬉しそうに私に抱き着いてくる。


侑「おとと……!」

かすみ「侑せんぱ~い!! 会いたかったですぅ~!!」

侑「うん……! 久しぶり、かすみちゃん! 元気だった?」

かすみ「はい! かすみん、元気満タンです~!」


子犬だったら、千切れんばかりに尻尾を振っていそうなテンションで、かすみちゃんがにこにこ笑う。

そして、その後ろから遅れて、


しずく「皆さーん!!」

歩夢「しずくちゃん!」


しずくちゃんが駆けてくる。


しずく「こんなところでお会いできるなんて……!」

かすみ「うんうん!! 図鑑の共鳴音が鳴り始めたときはびっくりしちゃいました……!」

せつ菜「すごい偶然ですね……!! まさか、こんな形で5人揃うなんて……!」

しずく「はい! 私たち、今さっきダリアに着いたところなんですが……」

侑「ダリアに何か用事があったの?」

かすみ「今流行りの限定スイーツを買いに来たんですよ~! これです! ダリアコットンアイス!」


そう言いながら、かすみちゃんがお菓子の箱を見せてくれる。


せつ菜「あ! もしかして、最近雑誌とかでも特集が組まれているやつですか!?」

歩夢「それ私も気になってたんだ……! アイスなのにわたあめみたいにふわふわだって評判のやつだよね!」

かすみ「そうですそうです! あのあのあの! 多めに買ったので、もしよかったら侑先輩たちも一緒にどうですか!?」

侑「いいの!?」


私たちは再会を喜びながら、思わずいつものような賑やかな雰囲気になる。

そんな中、


栞子「え、えっと……」


栞子ちゃんは突然のことに面食らって、動揺していた。


歩夢「あ、ご、ごめんね栞子ちゃん」

栞子「いえ……お知り合いの方たちなんですね?」

侑「うん! 私たちと同じように、ヨハネ博士から図鑑をもらった仲間のかすみちゃんとしずくちゃんだよ!」


私が栞子ちゃんに二人を紹介する。


しずく「初めまして、しずくと言います」

かすみ「あ、かすみんは~超絶プリティーポケモントレーナーのかすみんですぅ~♪」

栞子「初めまして、栞子と申します」


しずくちゃんと栞子ちゃんが恭しく頭を下げて挨拶しあう中、


かすみ「ふんふん……歳は同じくらいっぽい?」


かすみちゃんが栞子ちゃんをジロジロと観察し始める。


しずく「かすみさん……初対面で失礼だよ」

栞子「い、いえ……私は大丈夫なので……」

かすみ「栞子……じゃあ、しお子だね! よろしくね、しお子!」

栞子「しお子……?」

しずく「また勝手に変なあだ名付けて……。栞子さん、嫌だったら嫌って言って大丈夫だからね?」

栞子「い、いえ、大丈夫です」


栞子ちゃんはかすみちゃんの勢いにやや気圧され気味になっていた。


かすみ「っと……それよりもコットンアイスが溶けちゃう前に早く食べちゃいましょ~!」

せつ菜「そうですね! ポケモンセンターのレストスペースをお借りしましょう!」


そう言いながら、かすみちゃんとせつ菜ちゃんがポケモンセンターに駆けていく。


しずく「……なんか、すみません。急にお誘いしちゃいましたけど……お時間大丈夫でしたか?」


言われてみれば、時間にすごく余裕があるわけじゃないけど……。


侑「そうだ……! せっかくだし、しずくちゃんたちにも手伝ってもらえないかな……?」

しずく「え?」





    🎹    🎹    🎹





侑「──というわけで、私たちは今ランジュちゃんって子を追いかけてるところなんだ」

しずく「……そんなことになっていたんですね」


ポケモンセンターのレストスペースで、かすみちゃんとしずくちゃんに、今起こっている事態の説明をする。

もちろん、栞子ちゃんの前なので、薫子さんの話は伏せているけど……。


かすみ「はぁ~~~♡ コットンアイス絶品すぎますぅ~~~♡」

しずく「かすみさん……話聞いてた?」

かすみ「聞いてた聞いてた。要はそのランジュ先輩って人を止めればいいんでしょ?」

しずく「わかってるならいいけど……」

栞子「あ、あの……よ、よろしいんですか……? 今出会ったばかりなのに、手伝っていただくなんて……」

かすみ「でも、しお子困ってるんでしょ? なら、かすみんがどうにかしてあげる! かすみん凄腕トレーナーだから!」

しずく「千歌さんには負けちゃったけどね」

かすみ「ちょっと、しず子ぉ!! 余計なこと言わないでよ! 四天王には勝てたから、次の挑戦でかすみんがチャンピオンになるんだから!」

栞子「ありがとうございます……」


ペコリと頭を下げる栞子ちゃん。


かすみ「それよりも! しお子、アイス食べないと!! 溶けちゃうよ!」

栞子「え、あ、はい」


栞子ちゃんは手に持ったカップを見つめながら──


栞子「あ、あの……そのまま食べればいいんですよね……?」


そう言って首を傾げる。


かすみ「? うん」

栞子「わ、わかりました。いただきます……!」


そう言って、スプーンでコットンアイスを掬って口に運び──


栞子「……!」


目をぱぁぁぁっと輝かせる。


栞子「冷たくて甘くておいしいです……! 外では、こんな食べ物があるんですね……!」

かすみ「え? もしかして、アイス……食べたことなかったの?」

栞子「はい……!」


栞子ちゃんはおいしそうにアイスをぱくぱくと食べ、


栞子「あ……もう、なくなっちゃいました……」


そう言ってしゅんとする。


かすみ「……そんなにおいしかったんなら、もう1個食べる?」

栞子「え……!? で、ですが……それは悪いです……」

かすみ「かすみん1個は食べたし、アイスもおいしそうに食べてくれる人に食べて欲しいと思うから♪ はい!」


かすみちゃんはそう言いながら、栞子ちゃんの前にアイスのカップをポンと置く。

栞子ちゃんは戸惑っていたけど、


歩夢「ふふ♪ よかったね、栞子ちゃん♪」

栞子「……は、はい……///」


歩夢がニコニコしながら頭をポンポンと撫でると、少し照れ臭そうに、アイスを食べ始めた。


栞子「……私、こんなことをしていて、いいのでしょうか……」

せつ菜「何を為すにしても、英気を養うのは必要ですよ! おいしいものを食べると、元気になりますから!」

栞子「それは……そうかもしれません」

歩夢「ただ、宝珠がどこにあるのか、考えながらがいいかもね」

栞子「はい……ただ、どこにあるのか……」

せつ菜「王家の所有していた建造物が残っていれば良かったのですが……」


確かに王宮が残っていないなら、そこに保管されていたものは他に移動しているはずだ。

私たちはこれからそれに頭を悩ませる必要があるわけだけど……。


しずく「王家に関係している場所なら、ありますよ」


その疑問に答えたのはしずくちゃんだった。


栞子「ほ、本当ですか……!?」

しずく「はい。ダリアの大時計塔はダリア王家がダリアのシンボルとして作ったと言われています」

せつ菜「え……!? ダリア王家が滅んだのって数百年以上前ですよね……!? その時代からあったんですか……!?」

しずく「ダリアの大時計塔は現在でもどうやって作ったかは謎とされています。所謂オーパーツの一つですね。ですが、今でも寸分違わぬ精度で時を刻み続けています。ですので、ダリア王家はかなり高度な技術を持っていたとされているんです」

かすみ「じゃあ、時計塔に宝珠があるってこと?」

しずく「それはわからないけど……図書館の倉庫とかにしまってあったりするのかな……」

かすみ「でもそれってちょっと不用心じゃない~?」


そこでふと──ダリアの大時計塔には不思議な空間があったことを思い出す。

そんなことを考えていると、ちょうどせつ菜ちゃんと目が合う。


せつ菜「なら……あそこしかないんじゃないでしょうか」

侑「……うん!」

歩夢「……そっか! 確かにあそこなら……!」

かすみ・しずく「「あそこ……?」」


次の目的地が決まった。


侑「とにかく、ダリアの大時計塔に行ってみよう!」

栞子「は、はい! わかりました……!」





    🎹    🎹    🎹





──ダリア大時計塔。

私たちは時計塔内の図書館に入ると、そのまま最上階を目指す。


かすみ「どんどん上に行ってますけど……どこ行くつもりですか~?」

せつ菜「? ……かすみさんも、ジムバッジは8つ持っているんですよね?」

かすみ「え? はい。持ってますけど……?」

せつ菜「??」

かすみ「???」


せつ菜ちゃんとかすみちゃんの間でハテナが飛び交っている。

確かにダリアジムを攻略していれば、どこに行こうかわかりそうなものだけど……?


しずく「あ、もしかして……そういうことかな……」

侑「しずくちゃん?」

しずく「かすみさん……実はダリアのジム戦は無理言って、にこさんと戦っているので……。……確か、本来だと別の課題があったんですよね……? だから、私たちはそれが何か知らなくて……」

せつ菜「そ、そんな裏技が……!?」

かすみ「ちょっとぉ……! なんか、かすみんがずるしたみたいじゃん!」

侑「あはは……一応図書館だから静かにしようね……」


上の方の管理はポケモンがしているから、叱られるってこともないんだけど……。


歩夢「栞子ちゃん大丈夫? 疲れてない?」

栞子「はい。問題ありません。ありがとうございます、歩夢さん」

歩夢「病み上がりだから、無理しちゃダメだよ?」

栞子「お気遣い感謝します。辛いときは言いますので……」

歩夢「うん、約束だよ♪」

栞子「はい」


6人で図書館の最上階にたどり着く。

最上階は今日も人気がなく、静まり返っている。


侑「確か、こっちだよね」

せつ菜「はい!」


オトノキの史書コーナーに足を運び、背表紙の色が浮いている本『叡智の試しの至る場所』というタイトルの本を押し込むと──

──ガコン! という音が鳴る。


かすみ「ぴゃぁ!? な、なんですか……!?」


そして、上から降りてくる折り畳み式の階段。


栞子「隠し階段……」

しずく「こんなところに……」

侑「この上だよ」


私はみんなを引き連れて、上の階へとのぼっていく──





    🎹    🎹    🎹





私たちが上の階にたどり着くと、


花丸「──チャレンジャー……じゃないね。侑ちゃんたち、久しぶりだね」


花丸さんは読んでいた本をパタンと閉じて、こちらに目を向ける。


侑「お久しぶりです!」

せつ菜「こうしてここを訪れるのは本当に久しぶりな気がします!!」

かすみ「あ、あれ……? マル子先輩……? どゆこと……?」

花丸「ここはダリアジムだよ。マルはジムリーダー。確かかすみちゃんは、にこさんとジム戦したんだったよね」

しずく「……ダリアジムはバトルの実力だけではなくて、それ以外の知恵も試すと言っていたのはそういうことだったんですね……」

かすみ「……どゆこと……?」

しずく「えっと……だから実はダリアジムは謎解きの要素があって……」


飲み込みの早いしずくちゃんが、かすみちゃんに説明する中、


栞子「あ、あの……!」


栞子ちゃんが前に出る。


花丸「こんにちは。貴方は?」

栞子「私、栞子と申します。……こちらにダリア王家が保管していた宝珠があるのではないかと思い、伺いました」


栞子ちゃんのその言葉を聞いて、


花丸「もしかして……翡翠の民の子ずら?」


花丸さんはそう返す。


栞子「……! 翡翠の民をご存じなのですか!? 私は翡翠の巫女です……!」

花丸「なるほど。やっと、役割を果たすときが来たってことだね」


そう言いながら、花丸さんは本を置きながら、立ち上がる。


侑「役割を果たす……? どういうことですか……?」

花丸「こっちに来てくれるかな」


そう言いながら、花丸さんは壁際の方へと歩いて行き……壁中に敷き詰められている本棚の中の本を1冊押し込むと──下の階で見たのと同じように、ガコンと音がする。

直後、ゴゴゴと音を立てながら、本棚が横にスライドしていく。


せつ菜「隠し部屋の中にさらに隠し通路が……!?」

花丸「栞子ちゃんが探しているものは、この先にあるよ」

栞子「本当ですか……!」


花丸さんに言われたとおり、隠し通路の中へと歩いて行くと……その中には小さな部屋があった。


歩夢「あの……花丸さん。ここは一体……?」

花丸「ここは大時計の時計盤の裏側だよ。そして……ダリア王室の隠し宝物庫だった場所ずら」

しずく「隠し宝物庫……」

せつ菜「花丸さん、先ほど役割を果たすときが来たと仰っていましたよね? 一体、貴方は……?」

花丸「えっと、なんて言えばいいのかな……? マルは門番みたいなものなのかな?」

侑「門番……?」

花丸「マルは、ダリア大学に入学したあと、ずっとここの図書館で働きながら研究をしてたんだけど……ある日、史書の整理をしてるときに、この部屋の存在に気付いたんだ。そして、ここにある本を読んで驚いた。大昔にあった大戦時のことが書かれた本が大量に見つかった。……そこには焚書されたと思われたものもたくさん」

かすみ「ふんしょ……?」

しずく「言論統制や検閲のために、本を焼却することだよ」

せつ菜「つまり……隠された歴史がここにある……ということですか……?」

花丸「そういうこと。その中には……翡翠の民と翡翠の巫女の話も出てきてた」

栞子「それでは……」

花丸「ここには、オトノキ地方にかつて栄えたダリア王家と、翡翠の民たちの歴史と……失われたディアンシー伝説、龍神伝説の真実が記されているずら」

侑「伝説の……真実……?」

花丸「実際に、見て確かめてみるといいよ。マルは外で待ってるから」


そう言って花丸さんは、小部屋から出て行こうとする。


栞子「あ、あの……花丸さん、貴方はどうしてここを守っていたんですか……?」

花丸「んー……たぶん、これが外に漏れると、情報が検閲されちゃうんじゃないかって思ったからかな。ジムリーダーになって、ここをポケモンジムに改修したら、誰も手を出せないと思って、ここにジムを構えたんだ。だから、ここの部屋の存在はマル以外のリーグの人間は誰も知らないよ」

侑「そういう……理由だったんだ……」


花丸さんは随分手の込んだジムリーダーだと思ったけど……本当はそういう理由があったんだ……。


花丸「あ、でも、ジムリーダーとしての責任はちゃんと果たしてるよ? トレーナーたちの知恵を試すジムが必要だと思ったのも本当だし!」

栞子「どうしてそこまでして……」


栞子ちゃんは埃一つ被っていない手入れの行き届いた古書を見ながら呟く。

それに対して花丸さんは、


花丸「いつかその本に記されたことを求めてやってくる人がいると思ったからかな。……本は誰かに伝えるためにあるもので、それが失われるのが嫌だったから」

栞子「花丸さん……」

花丸「だから、その本たちがちゃんと必要としている人たちに届いたみたいで安心ずら♪ ちゃんと読んであげてね」


そう残して、花丸さんは小部屋から出て行くのであった。





    🎹    🎹    🎹





隠し部屋の中にはたくさんの本が所狭しと詰め込まれていた。

私たちはそれを1冊ずつ手に取って中を確認する。


かすみ「……ねーねー」

しずく「何?」

かすみ「かすみんたち……宝珠を探しに来たんでしょ? 本読んでる場合なの?」

栞子「恐らく……今、宝珠がどこに行ったのかも記されていると思います。それに……ここに記されていることは、私たち翡翠の民でも知らなかったようなことが記されています……。……今、全て読むのは不可能かもしれませんが、ある程度目を通しておいて損はありません」

かすみ「しお子は真面目だなぁ……」

せつ菜「……いえ、栞子さんの話を聞いていて思ったのですが……私たちの歴史は思った以上に、誰かの意思によって都合のいい形に事実を塗り替えられている気がします。私たちも、この地方で何があったのか……知るべきなのかもしれません」

栞子「……そうですね。龍神様を追う以上……皆さんも龍神様と、この地方にあったことを……知っておいた方がいいのかもしれません」


栞子ちゃんはそう言って私たちの顔を順に見回す。


栞子「過去に、この地方で何があったのか……龍神様と人間の間に何があったのか……翡翠の民がどうして龍神様との間を取り持っていたのか……それをお話しします」


そう前置いて、栞子ちゃんはオトノキ地方の歴史を話し始めるのだった。





    🎹    🎹    🎹





栞子「この地方はディアンシー様が各地に輝きをもたらしたことから始まった輝きの地方と言われています」

せつ菜「もともとは今で言うところのローズシティ以南がオトノキ地方だったんですよね? ウテナは最近出来た人工都市ですし、ヒナギクとクロユリは元は独立した集落だったと聞いたことがあります」

歩夢「オトノキ地方で特に古い町って言うと……アキハラ、ウラノホシ、コメコ、ダリアだったかな……。セキレイとかローズが発展したのは結構最近だったって聞いたことあるかも」

栞子「はい。そして、その地方の中で人々はディアンシー様に貰った輝きを糧に発展していきます。ディアンシー様の光は人々やポケモンの心を勇気付け、そのエネルギーによって、地方の中心には雲よりも高い……大きな大きな樹が時間を掛けて成長していきました」

侑「それが音ノ木だよね」

栞子「そうですね。……そして、音ノ木の頂上には、いつしか龍神様が住みつくようになりました」

かすみ「龍神様って、もともとこの地方に居たポケモンじゃないんだ」

栞子「はい。龍神様はもともと成層圏に生息しているので……標高の高い音ノ木は龍神様にとって、居心地がよかったのでしょう。そんな神様たちのもとで……音ノ木を中心とした輝きの地方は、オトノキ地方と呼ばれるようになります」

歩夢「そこまでは、ディアンシー伝説でもあったよね」

栞子「そして、このオトノキ地方を統治していた方たちが、後にダリア王家となります。そして、地方全体が一つの共同体として纏まりを見せ始めた時期に……事件が起きます」

しずく「ディアンシーを巡って……戦争が起こった」

栞子「そのとおりです。ディアンシー様の光は、今で言うヒナギクの辺りには届いていませんでした。さらにヒナギク以北……グレイブマウンテンの向こうには大きな国があったそうです」


栞子ちゃんは本のページを捲りながら言う。


栞子「非常に肥沃な土地だったそうです……。……そのため、発展していて武力にも秀でた国……。……そんな大きな隣国が、まだ国が発足して間もないダリアの国を襲いました」

かすみ「待って待って、しつもーん!」

しずく「もう……話の腰を折っちゃ、めっだよ?」

栞子「いえ、大丈夫ですよ。わからないことには、適宜答えていった方が理解も深まると思います。なんですか?」

かすみ「その隣国って、グレイブマウンテンの向こう側だったんだよね?」

栞子「はい。正確には戦時中に独立集落として存在していたヒナギクも飲み込んで、グレイブマウンテンの南側まで拡大することになるんですが……」

かすみ「でも、グレイブマウンテンの向こう側ってめっちゃ寒いって聞いたよ?」

せつ菜「言われてみれば……。……決して肥沃な土地ではないですね。点々と集落が存在するだけで、人が生きていくにはあまりにも厳しい場所だと言われています」

栞子「それについては……オトノキ戦争の話をする必要がありますね。北の大国がディアンシー様を奪うためにダリア国に侵略を始めました。カーテンクリフやクリスタルケイヴのような自然の城壁があったため、侵略は一筋縄では行きませんでしたが……それでも、相手は大国……ダリア国は窮地に立たされます。ですが、そのとき……龍神様がお怒りになられました。そして、ディアンシーを奪おうと武力を持って押し寄せる隣国を……圧倒的な力で滅ぼしました」

侑「滅ぼした……?」

栞子「はい。それは本当に圧倒的な力だったらしく……気候が変わってしまうほどだったそうです……」

せつ菜「……肥沃な土地が、氷に閉ざされてしまうような気候変動すら引き起こせる力だった……ということですね」

リナ『レックウザは気候を司るポケモンとも言われてる。本気を出したら、そうなるのも無理ないかも』 || ╹ᇫ╹ ||

栞子「龍神様の圧倒的な力によって敵を退けたダリア国では、まさに英雄である龍神様を讃えるようになります」

せつ菜「それがこの地方の龍神伝説の始まりということですね」

栞子「はい。当時はまだ、ポケモンのこともよくわからず、人々にとって畏怖の対象でしかなかったポケモンたちでしたが……龍神様に国の窮地を救われた人々は……龍神様を崇め奉るようになります」

しずく「それが……翡翠の民──栞子さんのご先祖様ってことだね」

栞子「そのとおりです。そして、翡翠の民たちが龍神様への信仰を始めたのと同時期に、ダリアを統治する王が生まれました。ダリアは龍神様の加護を受けたこの地で……大きく発展していきます。……その後、100年程は安定していたと言われています。……が、それも永遠には続きませんでした」

かすみ「何が起こったの?」

栞子「……人々がポケモンと共に力を合わせて生きるようになりました」

侑「え……? それの何が問題なの……?」

栞子「それだけなら問題ではなかった……ですが、人々はポケモンを武力として使うようになったんです」

せつ菜「その言い方だと……ポケモンバトルというほど、規律のあるものではなかったんでしょうね」

栞子「はい……。……力を持った集落が、ディアンシー様の力の恩恵をより多く求めて……地方内の各地で争いが起きたんです。ダリア王家はそれを諫めようと東奔西走したそうですが……広いオトノキ地方を管理しきることは出来ず……人にもポケモンにも……多くの犠牲が出ました。……特にポケモンの犠牲は多かったそうです」

歩夢「……酷い……。……人が始めた戦争なのに……ポケモンを代わりに戦わせてたってこと……?」

栞子「……はい。……そして、その人々の行為は、龍神様の怒りを買いました」

かすみ「え、それってオトノキ地方が滅ぼされちゃうじゃん!?」

栞子「……実際その直前まで行ったそうです。各地を龍神様が攻撃し、争いをする余裕もなくなりました。……気候がおかしくならなかったのは……龍神様が、この地方を気に入られていたからこその慈悲だったと言われています。私たち翡翠の民は、龍神様の怒りを鎮めるために、人身御供として、一生を龍神様のお世話に費やす存在である翡翠の巫女を龍神様のお傍に置き、龍神様と共に……朧月の洞という結界の中から、この地方を俯瞰して見る立場となりました」

歩夢「じゃあ、栞子ちゃんは……」

栞子「……はい。私は本来であれば、死ぬまで龍神様にお仕えするだけの人生のはずでした……」

歩夢「……そう、なんだ……」

栞子「……話を戻します。龍神様は地方のポケモンたちを守るという名目で、多くの人間の命を奪いました。……その結果、龍神様を討伐する考えを持った人間たちが現れました」


そこでなんとなくピンとくる。

恐らくそれが……薫子さんの言っていたリーグの前身組織を形成することになる人たちということだろう。


栞子「ですが、龍神様をやっとの想いで鎮めたというのに……そんな人たちが現れたら、次こそ、この地方は滅ぼされかねない。そう思った翡翠の民は……ダリア王家に彼らを抑えることを求めたんです」

しずく「……話が見えてきました。だから、ダリア王家によって、焚書が行われたんですね」

かすみ「へ? どゆこと……?」

しずく「龍神様が地方を救った英雄譚だけ残し、オトノキ地方の人たちの命を奪ったという事実をなかったことにして……龍神信仰への反発を抑えようとしたんだよ」

栞子「はい……。……実際それは今のオトノキ地方を見れば成功したと言えます。……まさか、こんな形で焚書を逃れた書物が王家の遺した地にあるとは思いませんでしたが……」

せつ菜「確かにそれは妙ですよね……王家からしたら、自分たちで管理していたとはいえ、こんな事実が手元に残っていることは都合が悪いはずなのに……」

歩夢「……怖かったんじゃないかな」

侑「怖かった……?」

歩夢「……王家の人たちは……龍神様が落ち着いてくれても……何かの拍子に滅ぼされちゃうんじゃないかって……だから、こういうことがあったことを完全に忘れちゃうのが……怖かったのかなって……」

侑「……」

栞子「……こればかりは、この書物を遺した人にしかわかりません……。……歩夢さんの言うとおり、畏れだったのかもしれませんし……花丸さんのように書物や歴史は残されるべきと考えた人がいたのか……それはもう今となっては誰にもわからない。……わかるのは、誰かがこれをいつか誰かが知るために遺した……それだけです」


栞子ちゃんはそう言いながら、手に持った本を撫でる。


栞子「龍神様はその後も……地方内のポケモンの命が、人間の手によって脅かされそうになると、度々ポケモンたちを救う為に……人を滅ぼそうとしました。時に私たち翡翠の民が、命を懸けて怒りを鎮めたり……時に勇敢なトレーナーが力を示し、龍神様を抑え込んだこともあったと聞きます。ですが……今回、こんなことになってしまいました……」


こんなこと──つまり、ランジュちゃんがレックウザを解き放ってしまったことを指しているのだろう。


侑「……ランジュちゃんはどうして、レックウザを解き放ったりしたんだろう……」

栞子「わかりません……」

かすみ「あのあの、そもそも今回この騒動を起こしてるランジュ先輩と……ミア、先輩? って何者なんですか?」

栞子「ランジュは私の幼馴染なんです……。翡翠の民は基本的に隠れ里に住んでいるんですが……翡翠の巫女は幼少期に巫女修行としてポケモンと共に異国の山に籠もるんです。……そのとき、同じ師のもとで修業をしていたのがランジュでした。彼女は当時からポケモンの扱いに長けていて……一緒にいたのは1年ほどでしたが……私はランジュと一緒にいろいろな経験をしました……」

歩夢「……大切な、お友達だったんだね」

栞子「……はい。……だから、ランジュがどうして急にこんなことをしたのかが、理解出来なくて……」

せつ菜「ランジュさんは翡翠の巫女のことを知っていたんですか……?」

栞子「……一度だけ、ランジュには話したことがあったんです。……無闇矢鱈に話すものではないとはわかっていましたが……修行が終わって、お互いの故郷へ帰る日に……。……きっと、ランジュには私のことを忘れて欲しくなかったんだと思います……」

侑「栞子ちゃん……」

栞子「でもまさか……それが、こんな事態を招くことになるなんて……。……すみません……」

歩夢「栞子ちゃんのせいじゃないよ……そんなに気に病まないで」


歩夢はそう言って、栞子ちゃんの頭を撫でる。


栞子「歩夢さん……。……ありがとうございます……」

歩夢「とにかく、どうしてこんなことをしたのか……それはランジュちゃんに直接聞かないとだね」

栞子「はい……。……ですが、もう一人……ランジュに協力しているという……ミアさんについては、私は何も知らなくて……」


栞子ちゃんはそう言って目を伏せるけど、


せつ菜「いえ、ミアさんのことなら、知っていますよ。ミア・テイラーさん」

しずく「え……? テイラーってまさかあの……?」


せつ菜ちゃんとしずくちゃんの反応を見て、私もほぼ確信する。


侑「やっぱり……あの有名なテイラー一家だよね」

せつ菜「はい」


せつ菜ちゃんは私の言葉に首を縦に振る。


かすみ「え? なんですか? 有名人なんですか?」

歩夢「わ、私も知らない……」

侑「テイラーって……外国で有名なポケモントレーナーの一家があるんだよ」

しずく「世界でも有数のトレーナー一家で……私も詳しいわけではないので、ミア・テイラーさんについてはわかりませんが……テイラー夫人はポケモンミュージカル女優としても有名な方なので、私は映像で何度も見たことがあります……!」

侑「テイラー家は家族全員がいろんな世界の大会で結果を残してるくらいすごいトレーナーなんだ。私はオトノキ地方のリーグばっかり見てるから……そんなにバトルそのものを見たことはないんだけど……」

せつ菜「……ミアさんはそんなバトル一家の中でも、ポケモンブリーダーとして名を馳せている方なんです。……各地のポケモンのバトル施設において、ポケモンの貸し出しというものがありますが、その半分ほどがミアさんが育てたポケモンとまで言われるくらいポケモン育成に長けた人と言われています」

侑「ミアちゃんはブリーダーなんだ……」

せつ菜「はい。しかも、年齢はまだ14歳……」

かすみ「14歳!? 年下じゃないですか!! 先輩なんて呼んで損した!」

しずく「そういう基準なの……?」

かすみ「それにしても、なんでそんなすごいのがランジュ先輩に手を貸してるんですかね?」

栞子「それも、わかりません……」

侑「やっぱり、なんにせよランジュちゃんたちに会って話してみるしかないね……」

栞子「はい……」

かすみ「んじゃ、そのために宝珠探さないと! どっかに書いてないの?」

栞子「それなら、こちらの書物に記述がありました」

かすみ「あったの!? 見せて!!」

栞子「はい、こちらです」


そう言いながら、栞子ちゃんが開いたページをみんなで覗き込む。


侑「これって……地図……?」

栞子「はい。ダリアシティの真下にある地下壕に隠し宝物庫があるそうです。これはそこの地図です」

しずく「ダリアの真下にある地下壕ってことは……」

かすみ「叡智のゴミ捨て場じゃん!?」

しずく「また行くことになるとはね……あはは」

かすみ「……まあ、行くとわかったら、ちゃっちゃと行ってちゃっちゃと帰ってきましょう!!」

侑「そうだね。それじゃ、次はダリアの地下だ……!」


私たちは次の目的地を目指す。





    🎹    🎹    🎹






──叡智のゴミ捨て場は6番道路から入ることが出来た。

ゴミ捨て場というだけあって……入るためのドアを開けた瞬間、酷い臭気が漂ってきた。


歩夢「…………ぅ…………」

侑「歩夢、大丈夫……?」

歩夢「……うん……大丈夫……」

リナ『歩夢さんは人より五感が鋭いから……ちょっと臭いがきついかもね』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「辛いなら、外で待っててもいいよ……?」

歩夢「大丈夫……行こう」

栞子「歩夢さん……無理なさらないでくださいね」

歩夢「うん、ありがとう……」


歩夢に気を配りながら、ゴミ捨て場に入ると──もぞもぞと何かが動いているのが目に入る。


せつ菜「ポケモンでしょうか……?」

しずく「ここには大量のヤブクロンが生息しているんです……」

かすみ「あーもう!! 邪魔邪魔!! ダストダス、行くよー!!」
 「──ダストダァス!!!!」

 「ヤブゥー!!!?」「ヤブクー!!!?」


かすみちゃんのダストダスが大きな腕を振り回して、ヤブクロンたちを蹴散らしながら、突き進んでいく。


かすみ「今までいじめられた分、100倍にして見返してやりましょう……ニシシ……」
 「ダストダァァァス!!!!!」

歩夢「なんか……楽しそう……」

せつ菜「かすみさん、頼もしいですね!!」


私たちは奥へと進んでいきます。





    🎹    🎹    🎹





リナ『さっきの地図通りなら、場所はこの辺りだと思う』 || ╹ᇫ╹ ||


リナちゃんのガイドに従いながら、該当の場所に到着したけど、


かすみ「何もないよ……?」


確かに、周囲はゴミ袋が積まれているだけの空間だ。


しずく「まあ、さすがに……宝物庫をそのまま置いているとも思えないので……」

せつ菜「となると……床下でしょうか」

侑「わかった。イーブイ、“きらきらストーム”」
 「ブイッ」


イーブイがフェアリータイプの風を吹かせる。

“きらきらストーム”は周囲の毒気も中和できるから、これなら歩夢も苦しくないだろうしね。

“きらきらストーム”によって、足元の塵やゴミを吹き飛ばすと──その下から、取っ手らしきものが出てくる。


せつ菜「ビンゴですね!」

かすみ「ダストダス! 引っ張って!」
 「ダストダァッ!!!」


その取っ手をダストダスが思いっきり引っ張ると──鉄板が持ち上がり、そこに階段が現れる。


侑「きっとこの先にありそうだね……! 行こう!」

栞子「はい!」


みんなでゆっくりと階段を降りていくと──小さな空間の中に高そうな壺や、絵画が飾られている小さな部屋があった。


しずく「まさしく……と言った感じですね」

かすみ「ねぇ見て見てー!! 王冠!! これ本物かな~!? かすみん、初めて見ました~!!」

しずく「持ってっちゃダメだからね……?」


ぴょんぴょんと飛び跳ねながら王冠を眺めるかすみちゃんを傍目に、私たちは宝物庫を奥へと進んでいく。

すると──奥に小さいけれど、まさしくな宝箱があった。


歩夢「栞子ちゃん」

栞子「……はい」


栞子ちゃんがその箱を開けると──中に翠色に輝く珠が納まっていた。


栞子「これが……“もえぎいろのたま”……」

かすみ「わ、きれーっ!」

侑「この珠なら龍脈からエネルギーを集められるんだよね……?」

栞子「はい、そうなんですが……」


栞子ちゃんは少し困った表情をする。


せつ菜「……これがここにあるということは、ランジュさんはどうやって龍脈のエネルギーを集めるつもりなんでしょうか……?」


そう、私たちはランジュちゃんがこの“もえぎいろのたま”を持ち出している可能性を考えて、珠を探していたわけだけど……この宝珠は結局この場にあったわけで……ランジュちゃんはここに来ているわけじゃないらしい。


かすみ「とにもかくにも、それは必要なんでしょ? とりあえず、それ持ってさっさと外に出ない?」

栞子「……そうですね」


栞子ちゃんがかすみちゃんの言葉に頷きながら、珠を手に取ると──パァァァァと輝き出す。


かすみ「わ、光った……!?」

栞子「この珠は龍脈に近付けば近付くほど強い光を発します。ですので、この珠を持ったまま珠が強く光る場所を探せば、龍脈を見付けることが出来ると思います」

せつ菜「となると次は……」

栞子「はい……。もしランジュも龍脈を探しているなら……これの反応従って、私たちも龍脈の在り処を目指しましょう。きっと、そうすればランジュの行き先にかち合うはずです……!」


私たちは“もえぎいろのたま”の光を頼りに、ランジュちゃんを追って、龍脈探しへと進むのであった。




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【叡智のゴミ捨て場】
 口================== 口

  ||.  |○         o             /||
  ||.  |⊂⊃                 _回/  ||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||.○⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回●    . |_回o |     |        :  ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  .||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  .||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  .||
  ||.       /.         回 .|     回  ||
  ||.    _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||. /              o回/         ||
 口==================口



 主人公 侑
 手持ち イーブイ♀ Lv.82 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
      ウォーグル♂ Lv.79 特性:まけんき 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
      ライボルト♂ Lv.80 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
      ニャスパー♀ Lv.77 特性:マイペース 性格:きまぐれ 個性:しんぼうづよい
      ドラパルト♂ Lv.78 特性:クリアボディ 性格:のんき 個性:ぬけめがない
      フィオネ Lv.74 特性:うるおいボディ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:270匹 捕まえた数:12匹

 主人公 歩夢
 手持ち エースバーン♂ Lv.68 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
      アーボ♂ Lv.69 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
      マホイップ♀ Lv.65 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
      トドゼルガ♀ Lv.64 特性:あついしぼう 性格:さみしがり 個性:ものおとにびんかん
      フラージェス♀ Lv.64 特性:フラワーベール 性格:おっとり 個性:すこしおちょうしもの
      ウツロイド Lv.73 特性:ビーストブースト 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 3個 図鑑 見つけた数:249匹 捕まえた数:24匹

 主人公 かすみ
 手持ち ジュカイン♂ Lv.84 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
      ゾロアーク♀ Lv.77 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
      マッスグマ♀ Lv.75 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
      サニゴーン♀ Lv.75 特性:ほろびのボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
      ダストダス♀✨ Lv.74 特性:あくしゅう 性格:がんばりや 個性:たべるのがだいすき
      ブリムオン♀ Lv.75 特性:きけんよち 性格:ゆうかん 個性:ちょっとおこりっぽい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:294匹 捕まえた数:15匹

 主人公 しずく
 手持ち インテレオン♂ Lv.68 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
      バリコオル♂ Lv.68 特性:バリアフリー 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      アーマーガア♀ Lv.68 特性:ミラーアーマー 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ロズレイド♂ Lv.68 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
      サーナイト♀ Lv.68 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ツンベアー♂ Lv.68 特性:すいすい 性格:おくびょう 個性:ものをよくちらかす
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:276匹 捕まえた数:23匹

 主人公 せつ菜
 手持ち ウーラオス♂ Lv.79 特性:ふかしのこぶし 性格:ようき 個性:こうきしんがつよい
      ウインディ♂ Lv.87 特性:せいぎのこころ 性格:いじっぱり 個性:たべるのがだいすき
      スターミー Lv.83 特性:しぜんかいふく 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      ゲンガー♀ Lv.85 特性:のろわれボディ 性格:むじゃき 個性:イタズラがすき
      エアームド♀ Lv.81 特性:くだけるよろい 性格:しんちょう 個性:うたれづよい
      ドサイドン♀ Lv.84 特性:ハードロック 性格:ゆうかん 個性:あばれることがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:197匹 捕まえた数:51匹

 主人公 栞子
 手持ち ピィ♀ Lv.11 特性:メロメロボディ 性格:やんちゃ 個性:かけっこがすき
      ウォーグル♂ Lv.71 特性:ちからずく 性格:れいせい 個性:かんがえごとがおおい
      ウインディ♀ Lv.70 特性:もらいび 性格:さみしがり 個性:のんびりするのがすき
      ゾロアーク♂ Lv.68 特性:イリュージョン 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      イダイトウ♀ Lv.68 特性:てきおうりょく 性格:さみしがり 個性:にげるのがはやい
      マルマイン Lv.68 特性:ぼうおん 性格:きまぐれ 個性:すこしおちょうしもの
 バッジ 0個 図鑑 未所持


 侑と 歩夢と かすみと しずくと せつ菜と 栞子は
 レポートに しっかり かきのこした!


...To be continued.




 ■Intermission🔔



ランジュ「──やっとこの宝珠の反応の仕組みがわかってきたわ! ジジーロン! あっちよ!」
 「ジーロン…」


ランジュはジジーロンの背に乗りながら、目的の方向を指差す。


ミア「Finally? 随分時間が掛かったじゃないか」

ランジュ「仕方ないでしょ、使ったことないんだから」

ミア「ま、別にいいけど……。……んで、どうすんの?」

ランジュ「この宝珠は龍脈に近付けば近付くほど、光が強くなるみたいよ! そして、光がより強くなるのは──あっちよ!」


ランジュは、南の方を指差す。


ミア「There is ... a forest?」

ランジュ「ええ、コメコの森って言うそうよ!」

ミア「ふーん……」


ランジュたちは龍脈を目指して移動を始めたのだった──


………………
…………
……
🔔


■ChapterΔ004 『決戦の森』 【SIDE Yu】





──叡智のゴミ捨て場から出た私たちは、


栞子「反応が強くなっているのは……恐らく東方向です」

せつ菜「では、東に向かって移動しましょう! エアームド、出番ですよ!」
 「──ムドー!!」

栞子「ウォーグル、出てきてください」
 「──ウォーグ…」

侑「ウォーグル、お願いね」
 「──ウォー!!」

しずく「出てきて、アーマーガア!」
 「──ガァァァ!!!」


それぞれ飛行用のポケモンをボールから出す。


侑「それじゃ、歩夢」

栞子「歩夢さん」

歩夢「うん♪ また、お願いね、ウォーグル♪」
 「ウォーグ…」


歩夢は私が声を掛けるよりも早く、栞子ちゃんに手を引かれて、ヒスイウォーグルの背中に乗る。


侑「あれ……また、そっちに乗るんだ」

歩夢「うん、栞子ちゃん……この地方のこと、あんまりわからないみたいだから……私が見ててあげた方がいいかなって」

侑「確かに……。……それじゃ、お願いね、歩夢!」

歩夢「うん♪」

栞子「すみません……ご迷惑をおかけしてしまって……」

歩夢「気にしないで♪」

栞子「ありがとうございます。……ウォーグル、飛んでください」
 「ウォー…」


──バサッバサッと音を立てながら、ウォーグルが飛び立つ。


侑「…………」
 「ブイ…?」

せつ菜「侑さん? どうかされたんですか?」

侑「え? あ、いや……いっつも歩夢と一緒に空を飛んでたからかな……歩夢と一緒にいるのに、一人で飛ぶのにちょっと違和感があるというか……」

せつ菜「寂しいのでしたら、私のエアームドに一緒に乗ってもいいですよ! 二人くらいなら楽勝で飛べますから!」

侑「あはは、そんな大袈裟な話じゃないって♪」

せつ菜「そうですか? なら、私たちも急ぎましょう!」

侑「うん、そうだね!」


かすみ「……ねぇ、しず子……あれ、大丈夫なの……?」

しずく「……うーん……」

リナ『……まあ、たまにはいい薬だと思う』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

しずく「……それもそうかもね」

かすみ「困った人たちですね……」


侑「リナちゃん、もう飛ぶよー? 腕にくっついててー?」


リナ『はーい』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||


かすみちゃんたちと話していたリナちゃんが、私の腕に装着される。


侑「かすみちゃんたちと何話してたの?」

リナ『世の中には、自分の気持ちにもなかなか気付けない人がいて大変だなってお話』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

侑「……? そうなんだ……?」

リナ『うん』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

侑「まあ、いいや……! のんびりしてると栞子ちゃんたちを見失っちゃう……!」
 「ウォーーッ!!!!」

せつ菜「そうですね! 行きましょう!」
 「ムドーーー!!!!」

しずく「かすみさん、ちゃんと乗った?」

かすみ「おっけー!」

しずく「了解。アーマーガア、飛んでください!」
 「ガァーー!!!」


私たちは栞子ちゃんを追いかけて、空の移動を始める。





    🎹    🎹    🎹





歩夢「……少しずつ、光が強くなってるね」

栞子「はい。恐らく、順調に龍脈に近付いているんだと思います」

せつ菜「この方向ですと……先にあるのは──」

侑「コメコの森……」


私たちの飛ぶ先には──コメコの森が広がっていた。


しずく「森の上からだと、木が邪魔で降りられませんね……」

リナ『一旦降りて地上を移動した方がいいかも』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「そうだね……。みんな、一旦地上に降りよう」

栞子「わかりました。ウォーグル」
 「ウォー」


全員で森の入り口へと降り立つ。


かすみ「ホントに光が強くなってるね」

栞子「はい。恐らく、この森の中に龍脈があるんだと思います……行きましょう」

歩夢「うん!」


栞子ちゃんの手に持った宝珠の光を頼りに、私たちはコメコの森の中へと入っていく──




    🎹    🎹    🎹





コメコの森に入ると、栞子ちゃんの持っている宝珠はより強く輝きを増していく。

そして、その光に導かれるようにたどり着いたそこは──いつの日か、エマさんが教えてくれた苔むした岩のある場所だった。


栞子「恐らく……ここが、龍脈の地です」


そう言う栞子ちゃんの手に乗せられた“もえぎいろのたま”は、眩く光を放っていた。

そして、私たちが到着するのとほぼ同時に──


ランジュ「あら……?」


私たちが来たのとは逆側から、ランジュちゃんとミアちゃんが現れた。


栞子「ランジュ……! やっと見つけましたよ……!」

ランジュ「栞子……追ってきたの?」


そんなランジュちゃんの手の上には──栞子ちゃんの持っている“もえぎいろのたま”とよく似た宝珠が光を放っていた。


栞子「ランジュ……それは……!?」

ランジュ「ああ、これ? ランジュが作った“みどりいろのたま”よ!」

栞子「“みどりいろのたま”……!? 作ったとは、どういうことですか……!?」

ランジュ「言ったとおりの意味よ。オリジナルの珠が見つからなかったから、この珠を作る研究だけを行う研究所を設立して、作らせたの。世界中から、優秀な研究者を雇ったんだから! それでも、オリジナルよりは龍脈探知の能力が弱いみたいだけど……」


そう言いながら、ランジュちゃんが栞子ちゃんの持っている宝珠と自分の宝珠を見比べる。

確かに、ランジュちゃんの持っている宝珠は栞子ちゃんのものに比べて、少し輝きが弱かった。


ランジュ「作るのに苦労して……これ1個完成させるのに3年も掛かっちゃったけど……ただ、これでも龍脈からエネルギーを集めるのには問題ないわ!」

栞子「そこまでして……貴方は何をしようとしているのですか……?」

ランジュ「もちろん、レックウザを捕まえるつもりよ」

栞子「……やめてください。龍神様をこれ以上、刺激しないでください……」

ランジュ「大丈夫よ、栞子。ランジュがちゃんと捕まえて従えてあげるから! レックウザが暴れ出すことはもうなくなるのよ!」

栞子「そういう話をしているのではありません……!! ランジュ、お願いですから、もうこんなことはやめてください……!」

ランジュ「栞子、全部ランジュに任せておけば無問題ラ! 安心しなさい!」

栞子「ランジュ……!」


栞子ちゃんは必死にランジュちゃんを説得しようとするけど──


かすみ「まるで聞いてませんね……」

歩夢「ランジュちゃん……! 龍神様の力は危ないの……!」

ランジュ「あら、貴方無事だったのね、よかったわ♪ でも、そんなことを言われてもランジュはやめないわ。ランジュがレックウザを捕まえて従える。これは既に決定事項なの!」

ミア「ランジュに何言っても無駄だよ。ランジュの強引さは、度を越えてるから」

栞子「ランジュ……」


ランジュちゃんはまるで聞く耳を持たない。


歩夢「侑ちゃん……どうしよう……」

侑「……。……ねぇ、ランジュちゃん」

ランジュ「何かしら?」

侑「……もし、私たちがレックウザを捕まえるって言ったら、どうする?」

ランジュ「……なんですって?」

歩夢「ゆ、侑ちゃん……?」


歩夢が困惑した声をあげる。私はそんな歩夢に、目配せする。私に任せて、と。


ランジュ「ダメよ、レックウザは私が捕まえるって、もう決まってるんだから!」

侑「でも、レックウザは野生のポケモンだよね? 野生のポケモンなら、誰にでも捕まえる権利があるはずだよ」

ランジュ「それは……確かに、そうかもしれないけど……。でも、ランジュが捕まえるって決めてるの! 貴方たちが捕まえるのはダメよ!」

侑「でも、私たちも龍脈のエネルギーを集める手段を持ってる。早い物勝ちなのは構わないけど、ランジュちゃんに私たちを止める権利もないはずだよ」

しずく「──なるほど……」


しずくちゃんは私の意図にいち早く気付いたらしい。


しずく「もし早い物勝ちなんだとしたら……オリジナルの“もえぎいろのたま”を持っている私たちが、先にレックウザにたどり着くことになりそうですね、侑先輩♪」

侑「うん」

ランジュ「ちょっと待って!! それは困るわ……!! それこそ平等じゃないじゃない……!!」

侑「だから、こうしない? レックウザを捕まえるのは──より強いトレーナーが相応しいと思う」

ランジュ「……貴方たちがランジュよりも、優秀なトレーナーだって言いたいの?」

侑「それを決めようって話。私たちと戦って、強い方がレックウザに挑戦する権利を得る。どうかな」

ランジュ「……いいわ。その話乗ってあげる」

ミア「ランジュ、いいのかい?」

ランジュ「どうせ私が勝つわ。全員相手してあげるから、まとめて掛かってきなさい」


ランジュちゃんは自信満々に言うけど、


せつ菜「さ、さすがにそれは出来ません……! 戦うなら一人ずつにしましょう!」


せつ菜ちゃんが困ったように声をあげる。


かすみ「ちょ……せっかく全員で戦えそうなのに……!」

しずく「かすみさん、ポケモンバトルで強い方を決めるならフェアに行かないと、めっだよ?」


しずくちゃんの言葉を聞いて、今度はミアちゃんが口を開く。


ミア「フェアって言うけど……まさかランジュと5人がそれぞれ戦って、そのうち1人でも勝ったらランジュの負け、なんて言うんじゃないよね」

ランジュ「別にランジュはそれでもいいんだけど?」

ミア「いや、ダメだ。ボクの育てたポケモンを使う以上、そのルールは認められない」


確かにミアちゃんの言うとおり、私たち全員が順番に戦って1回でも勝てば、こちらの勝ちなんてルールだとランジュちゃんが不利になりすぎる。


侑「こっちには5人のトレーナーが居るから、1人1戦ずつ……全部で5戦のうち、3勝した方が勝ちって言うのはどうかな」

ミア「……いいだろう。ただ、使用ポケモンは3匹でいいかな? ランジュはボクが育てたポケモンを使うんだけど、ボクのポケモンは基本的に3vs3のルール用にチューンされてるんだ。6vs6用のポケモンだと準備に少し時間が掛かるんだけど……」


確かにバトル施設用のポケモンは3vs3を想定されていることが多い。今回はあくまで試合として申し込んでいる。

それに……ランジュちゃんは1人で戦う以上、使用ポケモンは被らせたくないだろうし、毎回6匹を選ぶのはさすがに負担も大きいからこその提案だろう。


侑「わかった。じゃあ、お互い使用ポケモンは3匹で」

ミア「あと同じ種類のポケモンの使用と、道具の使用はなし。持ち物はありだけど、同じ持ち物を持たせるのは禁止。ポケモンの交換は自由。これでいいかい?」

侑「うん、それで大丈夫」

ランジュ「それじゃ、誰が最初の相手かしら?」

侑「それは、ちょっと相談してもいいかな……?」

ランジュ「ええ、構わないわ。誰が出てきてもランジュが勝つだけだから!」

侑「うん、ありがとう、ランジュちゃん」


私はランジュちゃんにお礼を言って、みんなと共に作戦会議を始めた。





    🎹    🎹    🎹





侑「……ごめんね、勝手に決めちゃって」

せつ菜「いえ、素晴らしい機転だったと思います!」

歩夢「あのままだと、絶対に何も聞いてくれそうになかったもんね……」

侑「しずくちゃんも……フォローありがとう。助かったよ」

しずく「いえ、お力になれたようでなによりです」


私たちはレックウザを捕獲するつもりはないけど……ランジュちゃんに諦めてもらうにはこれしかなかった。


栞子「すみません……皆さんにまたご迷惑を……」

かすみ「もう、そういうのはいいの! とにかく、しお子は解決することだけ考えてれば!」

栞子「は、はい……! ありがとうございます……かすみさん」

かすみ「とりあえず、勝てばいいんだよね! あの人に!」

しずく「そうだね……私たち図鑑所有者5人で、3勝……」


しずくちゃんの言葉に対して、


かすみ「5人で3勝って言いますけど……もちろん、3勝するためのメンバーは決まってます!」


かすみちゃんがそう答える。


かすみ「かすみんと侑先輩とせつ菜先輩で、さっさと3勝して終わりにしましょう!」

せつ菜「確かに、この5人の中でバトルが得意なのは、私、侑さん、かすみさんですからね!」

リナ『じゃあ、まず誰が戦う?』 || ╹ᇫ╹ ||


リナちゃんの問いに、


かすみ「まずは、かすみんが1勝もぎ取ってきますよ!」


かすみちゃんが名乗り出た。


侑「わかった! かすみちゃん、お願いね!」

栞子「かすみさん……よろしくお願いします……!」

かすみ「はい! まあ、軽く勝ってきますよ!」

せつ菜「ポケモンに持たせる道具は私が持っているものをお貸しします!」

かすみ「ありがとうございます! せつ菜先輩!」


かすみちゃんはせつ菜ちゃんからアイテムを受け取り、バトルの準備を始める──





    👑    👑    👑





ランジュ「最初の相手は貴方ね?」

かすみ「かすみんは貴方じゃないです! かすみんです!」

しずく「えっと……この子はかすみさんって言います。申し遅れましたが、私はしずくと言います」

ランジュ「かすみとしずくね。……私が倒すことになる子たちの名前。覚えておくわ」

かすみ「……ムッカ……! めっちゃ失礼ですねこの人……! いつまで、その余裕が続きますかね!」


かすみん、ボールを構えます。


ミア「ランジュ、今回のポケモン」

ランジュ「ありがとう、ミア」


ランジュ先輩はミア子からボールが3つ収められたケースを受け取り、こちらに向き直ります。


ランジュ「始めても良いかしら?」

かすみ「ええ、いつでもかかってきやがれです!!」

ランジュ「それじゃ、始めましょうか。露一手给你们看看」


2つのボールが放たれ……かすみん率いる図鑑所有者チームの先鋒戦、開始です!!





    👑    👑    👑





かすみ「行きますよ、ブリムオン!!」
 「──リムオンッ!!!」

ランジュ「ハッサム。行くわよ」
 「──ハッサムッ!!!」


かすみんの1番手はブリムオン、ランジュ先輩の1番手はハッサムです……!


ランジュ「“バレットパンチ”!!」
 「ハッサムッ!!!」


ハッサムが目にも止まらぬスピードで飛び出してきますが──


かすみ「“サイコキネシス”!!」
 「リムオン!!!」

 「ハッサムッ…!!」


ブリムオンは周囲にサイコパワーを展開して、押し返す。


ランジュ「へぇ……!」


侑「先制技の“バレットパンチ”を防いだ……!」


かすみ「防御することだけを考えて展開すれば、狙いを定める必要がない分、速く展開出来ます!」


これも果南先輩に教わった戦法の一つ。

相手が高速の一撃を使ってくるとわかっている場合は、あらかじめ自分の周囲に強引に技を展開しておけば、防げるという寸法です!

名付けて力任せ防御! (もちろん、果南先輩命名ですよ?)


ランジュ「面白いことするじゃない!」

かすみ「どんどん行きますよ!! “マジカルフレイム”!!」
 「リムオンッ!!!!」


ブリムオンの周囲に出現した紫色の炎がハッサムに向かって飛んでいきます。


ランジュ「“しんくうは”!!」
 「ハッサムッ!!!」


ハッサムはそれを“しんくうは”で的確に撃ち落として行く。


かすみ「むむ……当たれば弱点なのに……!」

ランジュ「少しは楽しめそうな相手で安心したわ!」


そう言いながら、ランジュ先輩が耳に掛かった髪をかき上げると──そこには小さな宝石のようなものが。

あれって……!


かすみ「“キーストーン”……!」

ランジュ「ハッサム! メガシンカ!!」
 「ハッサムッ!!!」


ハッサムが光に包まれ──巨大なハサミを持ったメガハッサムへと姿を変える。


かすみ「め、メガシンカしても弱点は変わらないもん!」
 「リムオンッ!!!」


ブリムオンの周囲に再び“マジカルフレイム”が出現します。

ですが、メガハッサムはそれが飛び出すよりも前に突撃してきて──


ランジュ「“とんぼがえり”!!」
 「ハッサム!!!!」

 「リムオン…!!!」


ブリムオンに体当たりを食らわせながら、衝突の反動を使ってノックバックする。


かすみ「逃がしません!!」
 「リムオンッ!!!」


体勢を崩しながらもブリムオンは“マジカルフレイム”を発射しますが、


ランジュ「ロトム! 受け止めなさい!」
 「──ロトー!!」


“とんぼがえり”でボールに戻ったメガハッサムの代わりに、洗濯機の姿をしたロトムが、“マジカルフレイム”を真正面から受け止める。


しずく「かすみさん!! ウォッシュロトムにはみずタイプがあるから、ほのお技の効果が薄いよ!!」


かすみ「わかってる!! “サイコショック”!!」
 「リムオンッ!!!」


ブリムオンは今度はロトムの周囲にサイコキューブを出現させるけど──


 「ロトト!!!」


ロトムは急に電撃を纏って飛び出し──その勢いを乗せたまま電撃を放ってくる。


ランジュ「“ボルトチェンジ”!!」
 「ロトト!!!!」

 「リムオンッ…!!!」


ロトムは電撃の塊をブリムオンにぶつかた後、ボールに戻っていく。


かすみ「また交換技……!?」


そして、ロトムの代わりに──


 「ハッサムッ!!!」


再び飛び出してきたメガハッサムが“サイコショック”を代わりに受け止める。

もちろん、はがねタイプのメガハッサムにはエスパータイプの“サイコショック”は効果が薄い。


ランジュ「全然効いてないわよ!」

かすみ「ぐ、ぐぬぬ……」


せつ菜「“とんぼがえり”と“ボルトチェンジ”を使って攻撃しながら、自分の苦手なタイプの攻撃を交換先が受け止める……よく考えられています」


かすみ「せつ菜先輩、何感心してるんですかぁーーー!?」


せつ菜「あ、すみません……つい……」


ランジュ「ふふ、オーディエンスもランジュの華麗なバトルに魅了されてるみたいね♪」

かすみ「なら、どっちにも通りやすいタイプで攻撃するだけです!! ブリムオン、“ぶんまわす”!!」
 「リムオンッ!!!!」


ブリムオンが頭に付いている触手を“ぶんまわす”。


ランジュ「ハッサム! こっちも“ぶんまわす”よ!」
 「ハッサム!!!」


伸びてくるブリムオンの触手を、メガハッサムのハサミが弾き返す。

距離を置いて牽制しながら──


かすみ「“シャドーボール”!!」
 「リムオン!!」


ハッサムにもロトムにも通る“シャドーボール”を発射する。


ランジュ「“バレットパンチ”!!」
 「ハッサムッ…!!!」


ランジュ先輩は、影の球を弾丸のような拳で相殺しようとしますが──“ぶんまわす”の相殺をした直後で判断が少し遅れたようです。

“シャドーボール”を散らし切ることが出来ず、影の球がハッサムのハサミを飲み込むように包み込んだあと、爆発して、


 「サムッ…!!!」


ハッサムにダメージを与える。


かすみ「よし、いいよ! ブリムオン!」


手応えありです……!


しずく「……っ……!」


しず子が息を飲む声が後ろから聞こえてくる。


かすみ「ふふ……どうですか、かすみんの華麗な作戦でオーディエンスを魅了し返してやりましたよ!」


しずく「……かすみさんが……っ……複雑なタイプ相性を理解してる……っ……」


かすみ「何に感動してんの、しず子ぉーーー!!!?」


かすみんのオーディエンスは失礼な人しか居ないんですか!?


ランジュ「確かにあくタイプやゴーストタイプなら、ハッサムにもロトムにも通るけど……」
 「ハッサムッ!!!!」

ランジュ「それじゃ、威力が足りないわ!」
 「ハッサムッ!!!」


ハッサムが再び突っ込んでくる。

また、“とんぼがえり”……! でもやってくることがわかるなら──


かすみ「サイコショック!!」
 「リムオンッ!!!」


最初からロトムに向かって使う技を準備しておくだけ……!!

だけど、メガハッサムが使ってきたのは──


ランジュ「“アイアンヘッド”!!」
 「ハッサムッ!!!」

 「リムオンッ…!!?」
かすみ「“とんぼがえり”じゃない!?」


アイアンヘッドに吹っ飛ばされるブリムオン。

一方メガハッサムは、遅れて襲い掛かってくる、“サイコショック”を難なく耐える。


ランジュ「そんな単調な攻撃しないわ!」

かすみ「く……」
 「リ、リムオン…ッ」

ランジュ「あら……? 弱点の攻撃なのに耐えたのね……。……“リリバのみ”ね」


“リリバのみ”ははがねタイプの攻撃を1回だけ半減する“きのみ”です。

持たせておいてよかった……。


ランジュ「でも、“リリバのみ”が使えるのは一回きり。もう次はないわよ!」
 「ハッサムッ!!!!」


ハッサムが突っ込んでくる。


かすみ「力任せ防御ですぅ~!」
 「リムオンッ!!!」


突っ込んでくるメガハッサムをサイコパワーで無理やり押し返す。

今回は“とんぼがえり”だったらしく、メガハッサムがボールに戻り、


 「──ロトト」


再びロトムが飛び出してくる。


ランジュ「ふふ、その防御、確かにすごいけど……連発出来ないのかしら?」

かすみ「……ギクッ」

ランジュ「やっぱり図星みたいね」


確かに、この力任せ防御は、文字通り力任せにサイコパワーを解放する分、かなり無駄も多い。

防御範囲は広いけど……連発すると、すぐにブリムオンがバテちゃうという欠点があります。


かすみ「でも、かすみん考えましたよ!! そもそも、こっちの攻撃が遅いのが原因なんです!! 上さえ取っちゃえば、関係ありません! “トリックルーム”!!」
 「リムオンッ!!」


周囲の空間が歪み始める。


かすみ「こうすれば素早さは逆転です!! ブリムオン──」


逆転した素早さで、攻撃に転じようとした──そのとき、


ランジュ「“ハイドロポンプ”!!」
 「ロトーーーーッ!!!!!」

 「リムオンッ…!!!?」
かすみ「……!?」


ブリムオンが強烈な水流によって、吹っ飛ばされた。


かすみ「ぶ、ブリムオン……!!」


かすみんは吹っ飛ばされたブリムオンに駆け寄りますが──


 「リ、リム…オン…」


ハッサムの攻撃によって、体力を削られていたこともあって……耐えきれずに戦闘不能になってしまいました。


かすみ「そ、そんな……」

ランジュ「確かに、対抗策としては間違ってないけど……“トリックルーム”は展開するのには隙がある。その間に大技を撃ち込ませて貰ったわ。少し判断が遅かったわね」

かすみ「……ぐぬぬ……」


かすみんはブリムオンをボールに戻しながら立ち上がります。


かすみ「相手はウォッシュロトム……それなら、とにかく相性がいいので速攻片を付けますよ!! ジュカイン!!」
 「──カインッ!!!!」


かすみんは2匹目にエースのジュカインを投入します。

でも、


せつ菜「かすみさんっ!? 今、ジュカインはまずいです!!?」


後ろから、せつ菜先輩の声が響く。


かすみ「へ?」


しずく「かすみさん!! まだ、“トリックルーム”中……!!」


かすみ「…………しまった……!?」


“トリックルーム”の中では遅いポケモンほど速く、速いポケモンほど遅くなる。

そして、ジュカインは──とびきり速い、高速アタッカー。


ランジュ「ここでミスなんて、勝つ気あるのかしら? ロトム!! “ボルトチェンジ”!!」
 「ロトトトトッ!!!!」

 「カインッ…!!!」


ジュカインが“ボルトチェンジ”を受け、そして代わりに出てきたハッサムがボールから飛び出す──

それと同時に──かすみんは思わずニヤッと笑ってしまった。


かすみ「ミスなんて……──してるわけないじゃないですか~♪」


直後、攻撃を食らったジュカインの姿がブレる。


ランジュ「……なっ!?」

かすみ「“かえんほうしゃ”!!」
 「──ゾロ、アーーーーークッ!!!!!!」

 「ハッサムッ…!!!?」


ジュカインもとい──ゾロアークが噴き出した“かえんほうしゃ”が交代先のメガハッサムに直撃した。


ランジュ「ジュカインじゃなくて、ゾロアーク……!? く……!! ハッサム……!!」
 「ハッ…サムッ!!!!」


とびきり苦手な炎の中から、ハッサムが気合いで飛び出してくる。

──もちろん、それも想定済み。

この技の切りどころは──ここです……!!


ランジュ「“バレットパンチ”!!」
 「ハッサムッ!!!」

かすみ「“みきり”!!」
 「ゾロアークッ!!!!」


ゾロアークがハッサムの拳を、掠めるように回避し、


かすみ「“ナイトバースト”!!」
 「ゾロアーーークッ!!!!」

 「ハッサムッ…!!!?」


メガハッサムにトドメの一撃を食らわせたのでした。

“かえんほうしゃ”を受けた直後に、ダメ押しの“ナイトバースト”を食らったメガハッサムは──


 「ハッ…サムッ…」


さすがに耐えきれずに崩れ落ちたのでした。


ランジュ「う、嘘でしょ……」

かすみ「いやぁ~良い顔になったじゃないですか!」

ランジュ「……ちょっと驚いただけよ」


そう言いながらランジュ先輩は、


 「──ロトト!!!」


再びロトムを繰り出す。


ランジュ「まだ、“トリックルーム”は継続中よ……!」


確かにロトムの方がゾロアークより遅いポケモンなので、このままだと、ロトムの方が“トリックルーム”の中では速く動けることになりますが──


かすみ「ん~、でもでも~、そのゾロアークはどこに行っちゃったんでしょうかね~?」

ランジュ「え……?」


ランジュ先輩はかすみんの言葉にハッとする。

気付けばゾロアークがフィールド上から姿を消していた。


ランジュ「ゾロアークはどこ……!?」
 「ロ、ロト…」

かすみ「正解は~……森の中でーす♪」

 「──ゾロアークッ!!!!」


ゾロアークがロトムの横にある木の陰から勢いよく飛び出す。


ランジュ「!?」
 「ロトッ!!!?」

かすみ「“はいよるいちげき”!!」

 「ゾロアーーークッ!!!!」

 「ロトトッ…!!!」


猛スピードでロトムの背後を取ったゾロアークが鋭い爪で切り付ける。

ロトムは怯みながら、ゾロアークから離れる。


かすみ「タフですね~……」


よく見たらロトムは“オボンのみ”を食べて回復を試みていた。

どうりでタフなわけです。


ランジュ「なんでそんなに速いの……!? “トリックルーム”はまだ続いてるはずなのに……!?」

かすみ「自分で使うのに、“トリックルーム”の生かし方をわかってないわけないじゃないですか~♪」


逃げるロトムを、


 「ゾロアーークッ!!!!」


ゾロアークが、猛スピードで追いかける。


かすみ「“ナイトバースト”!!」

 「ゾロアーークッ!!!!」

ランジュ「“じゅうでん”!!」

 「ロトトッ!!!」


ロトムは咄嗟に“じゅうでん”し、自分の特防を高めて、“ナイトバースト”を受け止めますが、


かすみ「“うっぷんばらし”!!」

 「ゾロアーーークッ!!!!!」

 「ロトッ…!!!」


今度は“うっぷんばらし”を叩き付ける。

“うっぷんばらし”は直前に能力を上げた相手への威力が倍増する技です!!

ですが、ロトムはかなりタフで──


 「ロ、ロトト…!!!」


満身創痍ながら、どうにか耐えて逃げ出す。

それと同時に──周囲の歪んだ空間が元に戻る。

“トリックルーム”の時間が終わったらしい。それと同時に、ゾロアークの動きが遅くなる。


かすみ「おっとと……それじゃ、“こうそくいどう”!!」

 「ゾロアーークッ!!!!」


遅くなった素早さをフォローするように、“こうそくいどう”で素早さを上げて、再びロトムを猛追し始める。


ランジュ「ロトム!! “ほうでん”!!」
 「ロトト!!!」


追いかけるゾロアークに対して、範囲攻撃の“ほうでん”で牽制してきますが──さっき食らわせた“はいよるいちげき”の効果で特攻が下がっていることもあり、ゾロアークの勢いを止めるに至らない。


ランジュ「く……!!」

かすみ「さぁ、決めますよ……!!
 「アーーークッ!!!!」


ゾロアークがロトムに向かって飛び掛かり、


かすみ「“ナイトバースト”!!」
 「ゾロ、アーーーークッ!!!!」

 「ロトーーーーッ…!!!?」


ロトムに暗黒の衝撃波を直撃させる。

度重なる攻撃によって、


 「ロ、ロト、ト…」


ロトムは力尽きて墜落したのでした。


ランジュ「……ロトム、戻りなさい」


ランジュ先輩はロトムをボールに戻しながら、悔しそうにする。


ランジュ「……貴方のゾロア―ク……妙に遅かった。……“ルームサービス”ね」

かすみ「そーゆーことです!」


かすみんはえっへんと胸を張ります。

“ルームサービス”は“トリックルーム”の中に入ると発動して、自分の素早さを下げてくれる道具です。

“トリックルーム”の中で素早さが下がるということは……つまり、“トリックルーム”の中で速くなるということ。

欠点としては、“トリックルーム”が切れたあとも素早さが下がりっぱなしだってことなんですけどね……。


ランジュ「……あの“トリックルーム”の中で間違えてジュカインを出したように言ったのも演技……。……騙されたわ」

かすみ「ふふん♪ どんなもんですか~♪」


かすみん、果南先輩に稽古を付けてもらって、パワーファイトが出来るようになりましたけど、やっぱり一番得意なのは化かし合いなんですよね~♪

さぁ、これでランジュ先輩の手持ちは残り1匹です……!





    🎹    🎹    🎹





せつ菜「かすみさん……すごいです……! 一瞬で劣勢を覆してしまいました……!」

しずく「かすみさんの戦い方は心臓に悪いです……」


確かに危なっかしい戦い方に見えるけど……かすみちゃんは劣勢の中でも諦めないどころか、逆転の展開を作り出せる。

半年前に比べて、その戦い方にさらに磨きが掛かっている気がする。


侑「なにはともあれ、これでランジュちゃんのポケモンはあと1匹……!」


そんな中、ミアちゃんが、


ミア「……ランジュ。何苦戦してるんだよ」


ランジュちゃんに向かって文句を口にする。


ランジュ「ちょっと油断したわ」

ミア「……まさか、負けるなんて言わないよね」

ランジュ「まさか。それこそありえないわ」


そう言って、ランジュちゃんは3匹目のボールをフィールドに向かって放り投げた──





    👑    👑    👑





かすみ「さぁ、この調子で勝ち切るよ! ゾロアーク!」
 「ゾロアーークッ!!!」


さぁ、ランジュ先輩の3匹目は……!


 「──ラティ…」

かすみ「……ん……」


見たことがないポケモンだった。

青と白のボディで長い首と滑空出来そうな大きな翼が特徴のポケモン。

ただ、他のみんなはあのポケモンが何か知っていたようだった。


しずく「ラティ……オス……?」

侑「う、うそ……」

せつ菜「ラティオス……!? 伝説の……ポケモン……!?」


かすみ「え? 伝説のポケモン……!?」


かすみんは図鑑を開いて確認する。

 『ラティオス むげんポケモン 高さ:2.0m 重さ:60.0kg
  見た ものや 考えた イメージを 相手に 映像として
  見せる 能力を 持つ。 腕を 折り畳むと 空気抵抗が
  減って ジェット機 よりも 速く 空を 飛ぶことが出来る。』


ランジュ「そうよ。半年前からこの地方に現れ始めた、伝説のポケモンの1匹よ!」

かすみ「で、伝説だかなんだか知りませんけど……! かすみんたち、ウルトラビーストも倒したことあるんですからね!! 行くよ、ゾロアーク!!」
 「ゾロアーークッ!!!」


かすみんの指示で、ゾロアークが飛び出します。

ですが──


 「ラティ…!!!」


ラティオスは、まさに目にも止まらぬスピードで飛び出し、飛び掛かるゾロアークを避けながら、空に飛び立っていきます。


かすみ「逃がしちゃだめ!! “スピードスター”!!」

 「ゾロアーーークッ!!!!」


空に逃げるラティオスに向かって、星型のエネルギー弾を発射する。


ランジュ「“ラスターパージ”!!」

 「ラティッ!!!!」


ですが、ラティオスが眩い光を放つと、その光に飲み込まれるようにして、“スピードスター”は掻き消えてしまう。

そして、空にいるラティオスの口に──ドラゴンのエネルギーが集束を始める。


かすみ「や、やば……!?」

ランジュ「“りゅうのはどう”!!」

 「ラーーーティィッ!!!!!」


空から猛スピードで“りゅうのはどう”が降ってくる。

避ける余裕もなく──


 「ゾロアーーークッ…!!!!」


ゾロアークに攻撃が直撃した。


かすみ「ゾロアーク……!?」

 「ゾロ…アーーク…」


連戦のダメージもあったせいか、ゾロアークは一撃で戦闘不能になってしまった。


かすみ「も、戻って……!」

 「ゾロ、アーク…──」

ランジュ「さぁ、これでイーブンね」


かすみんは3匹目のボールに手を掛ける。

ただ、3匹目はゾロアークが“イリュージョン”をしていた時点で、確定しています。


かすみ「行くよ、ジュカイン!」
 「──カインッ!!」

かすみ「メガシンカ!!」


“メガブレスレット”を光らせ、ジュカインをメガシンカさせる。


 「カァァインッ!!!!」


まずは地面に叩き落とす……!!


かすみ「ジュカイン!!」
 「カインッ!!!」


ジュカインは周囲の木を猛スピードで登り──木のてっぺんから、ラティオスに向かって踏み切る。

飛び掛かってくるジュカインに向かって、


ランジュ「ラティオス!! “りゅうのはどう”!!」

 「ラーーティィッ!!!!」


先ほどと同じ技の“りゅうのはどう”。


かすみ「ならこっちも“りゅうのはどう”です!!」

 「カァーーーインッ!!!!!」


ジュカインも口から“りゅうのはどう”を発射し、空中でお互いのドラゴンエネルギーが衝突する。

お互いのエネルギーが空中で爆ぜ、空気を震わせる中──


 「カァインッ!!!!」


ジュカインは空中で身を捩って、尻尾をラティオスに向け──


かすみ「“リーフストーム”!!」

 「カインッ!!!!」


“リーフストーム”を纏ったしっぽミサイルを発射する。

爆発する“りゅうのはどう”が目くらましになったのか──


 「ラティッ…!!!」


しっぽミサイルがラティオスに直撃し、体勢を崩させる。

さらに畳みかける……!!

ジュカインはさらに身を捻り──


かすみ「“ソーラーブレード”!!」

 「カァインッ!!!!」


特大の陽光剣を横薙ぎに振るう。


ランジュ「ラティオス!! “サイコキネシス”!!」

 「ラティィッ!!!!」


だけど、ラティオスはサイコパワーで力場を発生させ、無理やり“ソーラーブレード”を押し止める。


ランジュ「“れいとうビーム”!!」

 「ラァァーーーティィィィッ!!!!!」

かすみ「い……っ!? それはヤバイです!? ジュカインっ!!」

 「カインッ…!!!」


ジュカインは“ソーラーブレード”を解除し、背中にある空気の詰まったタネを爆発させて、空中で無理やり軌道を変えて、“れいとうビーム”を回避する。

外れた“れいとうビーム”は森の木に当たって、一気に凍り付かせていく。


栞子「ら、ランジュ……!! 自然を傷つけてはいけません!!」


ランジュ「ええ!? バトル中に無茶言わないでよ!?」

かすみ「大丈夫だよ、しお子!!」

 「カインッ!!!」


着地したジュカインが、背中のタネを凍り付いた木に投げつけると──メキメキと音を立て、表面の氷を割り砕きながら急成長を始める。

そして、その木はそのまま空中のラティオスを絡め取る。


 「ラティ…!!!?」

ランジュ「な……!?」

かすみ「さぁ、捕まえましたよ……!! ジュカイン!!」
 「カインッ!!!!」


ジュカインが集束“ソーラーブレード”を作り出す。

ランジュ先輩はそれが大技だと一瞬で判断したのか──


ランジュ「ラティオス!! “りゅうせいぐん”!!」

 「ラティッ…!!!」


ラティオスが“りゅうせいぐん”を降らせ、自身を絡め取っている木を流星で破壊し始める。

ジュカインはその間に、再び木を駆け上がり──集束“ソーラーブレード”で流星を斬り裂きながら、ラティオスへと迫る。

あと、少しで届く……!! そんな距離に迫ったところで、


 「ラティッ…!!!」


拘束から逃れたラティオスが、ジェット機のようなスピードで飛び出し、ジュカインの攻撃をギリギリのところで回避する。


かすみ「逃がさない……!! “スケイルショット”!!」

 「カァインッ!!!!」


ジュカインが全身から鱗を発射する。


ランジュ「“ラスターパージ”!!」

 「ラティッ!!!!」


逃げるラティオスに迫っていく鱗が、“ラスターパージ”で蹴散らされる。


かすみ「逃がさないって言ってんでしょ!!」

 「カァインッ!!!!」


ジュカインが森の樹上から、特大の“ソーラーブレード”を縦薙ぎに振るう。


 「ラティッ…!!!?」


──やっと捉えた……!!

“ソーラーブレード”によって、森に墜落するラティオス。

今すぐ追撃をと思い、地上に降りてきたジュカインと一緒に走りだろうとした瞬間──


 「ラティッ!!!!」

 「カインッ…!!!?」


ラティオスは低空飛行で森の木々を掻い潜りながら、ジュカインに突撃してきた。


 「カインッ…!!!」


突き飛ばされながらも、ジュカインは受け身を取るけど──


ランジュ「“ドラゴンクロー”!!」

 「ラティッ!!!」


ラティオスはそこに畳みかけるように、竜の爪で引き裂こうとしてくる。


かすみ「“リーフブレード”!!」
 「カインッ!!!」


──ギィンッ!! 硬い物がぶつかり合う音が森の中に響き渡る。


 「カインッ…!!!」
 「ラティッ…!!!」


2匹の斬撃が鍔迫り合う中、


 「ラティッ!!!」


ラティオスが、口を開く。


ランジュ「“りゅうのいぶき”!!」
 「ラーーーティィィッ!!!」

 「カァインッ…!!!?」
かすみ「ジュカイン!?」


顔に“りゅうのいぶき”を直撃させられ、体勢を崩したジュカインは“ドラゴンクロー”に弾かれるようにして、地面を転がる。


ランジュ「“サイコキネシス”!!」
 「ラーーーティィィッ!!!」


そして、そこに畳みかけるようにサイコパワーが衝撃波となって、ジュカインに襲い掛かってくる。が、


かすみ「集束ッ!!!」
 「カインッ!!!!」


ジュカインは受け身を取って立ち上がり、すぐさま集束“ソーラーブレード”を構える。


かすみ「諦めなければッ!! 斬れないものなんてないッ!!!!」
 「カインッ!!!!!」


ジュカインは、“サイコキネシス”を──真っ向から斬り裂いた。


ランジュ「嘘……!?」
 「ラティ…!!!?」


まさか、“サイコキネシス”という実態のないものを、斬り裂かれて無効化されると思っていなかったであろうランジュ先輩とラティオスは、驚きの表情を見せる。


かすみ「そのまま、斬り裂けぇッ……!!」
 「カインッ!!!!」


ジュカインが集束“ソーラーブレード”を構えて、ラティオスに斬りかかる。


ランジュ「ラティオス!! 加速しなさい!!」
 「ラティ…!!!」


ラティオスは逃げるどころか、ジュカインに向かって急加速し──


 「ラティッ!!!」


ジュカインの太刀筋を掠めるように、身を逸らしながら、横を通り過ぎる。

が──


 「ラティッ…!!」


ラティオスが苦悶の表情を浮かべながら墜落し、地面を滑る。

ジュカインの太刀を躱しきれなかったらしく──翼に斬り傷が入っていた。


ランジュ「ラティオス……!」
 「ラ、ラティ…!!」


翼に斬撃を受けたラティオスはもうさっきみたいに自由に飛べない。


かすみ「これで……終わりです!!」
 「カインッ!!!!」


ジュカインがラティオスに最後の一太刀を振り下そうとした──瞬間。


 「カ、インッ…!!!」
かすみ「……え……!?」


ジュカインの体を──上から何かが押しつぶした。


 「カ、カイ…ン…」


それが決定打となり──ジュカインはその場で倒れてしまったのだった。


かすみ「え、な、なに……?」

ミア「……未来に攻撃してたみたいだね」


ミア子の言葉で、なんとなく何をされたのかを理解した。


かすみ「“みらい……よち”……」


ランジュ先輩は、逃げ回っていたように見えて……ラティオスに攻撃を設置させていたということだ。


かすみ「……あと……ちょっとだったのに……」


私は、思わず膝をついてしまった。

……そのとき、


ランジュ「……かすみーっ!!」

かすみ「わひゃぁっ!!?」


ランジュ先輩が抱き着いてきた。


かすみ「え、なに!? なんですか!?」


意味が解らず、目をぱちくりとさせてしまう。


ランジュ「かすみ、すごかったわ!! このランジュがこんなにギリギリの戦いを強いられるなんて思わなかった!! すっごく楽しいバトルだったわ!!」

かすみ「え……は、はぁ……」


ランジュ先輩は目をキラキラと輝かせながら、最初の態度が嘘のように、かすみんのことを賞賛していた。


ランジュ「ねぇ、またバトルしましょう! かすみとなら、また楽しいバトルが出来ると思うわ!」

かすみ「え、えっと……は、はい……?」


──ランジュ先輩は心の底から、またかすみんとバトルがしたいと言っていた。

なんというか……あまりに天真爛漫というか、無垢というか、その素直な言葉は……嘘というものを全く感じさせないものだったんです。


かすみ「……あ、あの……ランジュ先輩……そろそろ離してください。……かすみんたち、敵同士なんですから……」

ランジュ「あら、ランジュはもう敵とは思ってないんだけど……こんなに楽しいバトルが出来るなら、ランジュはかすみとお友達になりたいわ!」

かすみ「…………」


なんか調子狂いますねぇ……。


かすみ「とにかく……離してください……」

ランジュ「もう……仕方ないわねぇ……」


やっとの思いでランジュ先輩を引き剥がすのと同時に、かすみんたちのもとに──


しずく「かすみさん……!!」


しず子たちが駆け寄ってくる。


せつ菜「かすみさん! ナイスファイトでした!」

侑「うん! すっごく熱いバトルだったよ! すっごくときめいちゃった!」

かすみ「でも……負けちゃいました……」

歩夢「大丈夫だよ、かすみちゃんの頑張り……ちゃんと伝わったから!」

かすみ「皆さん……」

栞子「かすみさん……全力で戦ってくれて、ありがとうございました」

かすみ「うぅん……ごめん。負けちゃって……」

栞子「いえ……そんな……気に病まれないでください」


かすみん、勝ちをもぎ取ってくるって言ったのに……さすがにちょっと凹みます……。


ミア「何はともあれ、まずはランジュの1勝だ。異論はないね」

かすみ「……認めたくはありませんけど……。……かすみんの負けです……」

ランジュ「それじゃ、次は誰が相手してくれるのかしら?」

ミア「あれだけのバトルの後に連戦するつもりか? 今日はここまでだ」

ランジュ「ええ? なんでよ? ランジュ、まだ戦えるわよ?」

ミア「ベストコンディションで戦えた方が、ランジュも楽しいだろ?」

ランジュ「……それもそうかもしれないわね」


ランジュ先輩はミア子の言葉に納得して頷く。


ミア「というわけで、次の試合は後日でいいかい?」

侑「わかった」

せつ菜「では、次の試合の場所と日取りは……」

ミア「なら次の龍脈の地にお互いがたどり着いたタイミングでどうだい? どうせ、お互い龍脈を巡る必要があるんだし」

侑「……わかった。みんなもそれでいいかな?」


侑先輩の確認に、全員が頷く。


ミア「それじゃ、また後日。龍脈の地で第二試合ってことで」

ランジュ「次のバトルも楽しみにしてるわ!」


そう残して、二人は森をホシゾラシティ方面へと歩いて行ってしまうのでした……。





    👑    👑    👑





せつ菜「そういえば龍脈の地というのは複数あるんですよね? 私たちとランジュさんたちで、別々の場所に行ってしまったりしないんですか?」


せつ菜先輩の疑問に、


栞子「いえ……龍脈には順番があるので、ここの龍脈エネルギーを集めきった宝珠は次の龍脈を指し示すはずです」


しお子がそう答える。


かすみ「それじゃ、とりあえず次の龍脈を探しますか……?」

侑「いや……さすがに今日はもう休んだ方がいいかな。かすみちゃんもあのバトルの後に探索はきついだろうし」

歩夢「それじゃ、今日はコメコに泊まろっか」

リナ『それがいいかもしれないね』 || ╹ ◡ ╹ ||

せつ菜「私、ひとっ走り行って、宿がないか探してきますね!!」


言うが早いか、せつ菜先輩はコメコシティに向かって走り出してしまった。


侑「あ、せつ菜ちゃ……行っちゃった」

歩夢「私たちも行こっか」

かすみ「そうですねー……」


みんなでぞろぞろと移動しようとした、そのとき、


しずく「あ、ちょっと待ってください」


しず子が声をあげる。


かすみ「どしたの? しず子」

しずく「えっと……私とかすみさんは、少し用事があるので、先に行ってもらってもいいですか?」

かすみ「え?」


用事……? そんなのあったっけ……?


侑「構わないけど……暗くなる前には、コメコに来るんだよ? 夜の森は危ないから……」

しずく「はい、心得ています」

栞子「それでは……お先に失礼します」

歩夢「二人とも、また後でね」


皆さんは、かすみんたちを残して、コメコに向かって行ってしまった。


かすみ「……んで、用事って何? なんかコメコの森でやることなんてあったっけ?」


かすみんが小首を傾げながら訊ねると──急にしず子に抱きしめられた。


かすみ「し、しず子……?」

しずく「……もう、大丈夫だよ」

かすみ「いや、だから、何が……」

しずく「私しか居ないから」

かすみ「……ぇ……」

しずく「ホントは……泣くほど悔しいのに、我慢してることくらい……わかってるから」

かすみ「………………ぁ」


しず子にそう言われた途端──意識して考えないようにしていた感情が、どんどん胸の奥底から溢れ出してきて、


かすみ「…………ぅ…………ぐす…………」


ポロポロポロポロと涙が零れ出す。


かすみ「…………かす、みん…………っ…………ホントは……勝たなきゃ……いけなかったのに……っ…………ひっく…………っ…………」

しずく「…………うん」

かすみ「…………みんなのため、に……勝たなきゃ…………いけなかったのに……っ……」


大事な初戦だったはずなのに……。


かすみ「…………わた、し……まけ、ちゃった……っ……」

しずく「…………でも、かっこよかったよ……」

かすみ「…………かた、なきゃ……っ、だめだったのに……っ」

しずく「…………よしよし…………大丈夫だよ…………」

かすみ「…………わた、し…………まだ、よわ、くって……っ」

しずく「そんなことないよ……かすみさんは強い……私が保証する」

かすみ「…………ぅ……ぇぐ……っ……ぃっぐ……っ……」

しずく「……よしよし……」

かすみ「…………ぅぇぇぇぇぇ……っ……」


静かな静かなコメコの森に……かすみんの泣く声が、静かに響くのだった──





    🎹    🎹    🎹





コメコシティに着くと、


せつ菜「皆さーん!!」


せつ菜ちゃんがこちらに駆けてきた。


せつ菜「ちょうど3人部屋が2部屋だけ残っていました! 運がよかったです!」

リナ『ギリギリだったね。コメコは宿が少ないから……』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||


そういえば、前も宿探しには困ったことがあったっけ……。


侑「ありがとう、せつ菜ちゃん」
 「ブイ♪」

せつ菜「いえ! どういたしまして!」


とりあえず、宿は確保出来た……。

そんな中──


栞子「…………」


栞子ちゃんがしきりに周囲をキョロキョロと見ていることに気付く。


歩夢「栞子ちゃん? どうかしたの?」

栞子「あ、いえ……。……この町には随分ポケモンが多いなと思いまして……」

せつ菜「確かに、コメコは町中にいるポケモンがすごく多いところかもしれません」

侑「この町は、ポケモンと一緒に生活してる町だからね」
 「イブィ」

栞子「ポケモンと一緒に……ポケモントレーナーがたくさんいるということですか?」

歩夢「うぅん、そうじゃなくて……ポケモンと一緒に農業をしながら毎日暮らしてるんだよ」

栞子「い、今でもですか……?」

歩夢「うん、そうだよ。町の北側に行くと、大きな農業地帯と牧場があって、そこだともっと多くのポケモンが人と協力して毎日頑張ってるんだよ♪」

栞子「ほ、本当ですか……?」


栞子ちゃんは目を丸くする。


栞子「……今の時代は……人と関わるほとんどのポケモンが、モンスターボールに入って、人に従っているんだと思っていました……」

歩夢「そんなことないよ? 私の家も、一緒に住んでる子たちは常にボールの外に居たし……」

せつ菜「人とポケモンは、お互いこの地方に生きる仲間ですからね。私の住んでいるローズシティみたいに、ポケモンが街中に居ない方がむしろ特殊なくらいです」

リナ『コメコはローズとは真逆かもね。この町は何百年も前から、ポケモンと共に生きてきて、その形が今も続いてる町だから』 || ╹ ◡ ╹ ||

栞子「そう……なのですね……」


栞子ちゃんはそう言いながら、町中を歩いているドロバンコを目で追いかけている。


歩夢「……気になるなら、今からコメコ牧場に行ってみる?」

栞子「え、い、いいのですか……!?」

歩夢「うん♪ コメコ牧場は私も好きだから、栞子ちゃんにも知って欲しいなって♪」

せつ菜「確かに、見られるときに見ておくのはいいことだと思いますよ」

侑「そうだね。せっかく、朧月の洞の外に居るんだし……この機会に、この地方のいろんなものに触れてみるのもいいかもしれないね」

栞子「……はい。あの……よ、よろしくお願いします……歩夢さん……!」

歩夢「うん♪ それじゃ私、栞子ちゃんと牧場まで行ってくるね!」

せつ菜「それでは私は夕食の準備をして待っていますね!!」

歩夢「……みんなでコメコ牧場まで行こっか♪ 牧場の搾りたての“モーモーミルク”を使ったメニュー、エマさんにたくさん教えてもらったんだ♪ 私がみんなに作ってあげるね♪」

せつ菜「え……? 急にどうされたんですか……?」

リナ『今、しずくちゃんにメッセージ送っておいた。コメコ牧場集合って』 ||;◐ ◡ ◐ ||

歩夢「うん、ありがとうリナちゃん♪ それじゃ、せつ菜ちゃん、コメコ牧場に行こっか♪」

せつ菜「歩夢さん……? どうして、私の腕を引っ張るんですか……?」


歩夢がせつ菜ちゃんをぐいぐいと引っ張りながら、コメコ牧場の方へと歩いて行く。


リナ『……危うく死人を出すところだった……』 ||;◐ ◡ ◐ ||

侑「……? 歩夢、どうかしたのかな……?」

リナ『知らない方がいいこともある』 ||;◐ ◡ ◐ ||

侑「……?」

栞子「え、えっと……それでは、私たちも参りましょうか」

侑「……まあ、うん。そうだね」


私たちは、社会見学がてら……コメコ牧場へと向かうのであった。


せつ菜「は……! 歩夢さん!! 私今、“モーモーミルク”を使ったとびっきりのメニューを思いつきましたよ!!」

歩夢「うん♪ 私が見てるから、絶対に、一緒に作ろうね♪」




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【コメコシティ】
 口================== 口

  ||.  |○         o             /||
  ||.  |⊂⊃                 _回/  ||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||.○⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :  ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  .||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  .||
  ||.  |___●○__.回_  _|‥‥‥:  .||
  ||.       /.         回 .|     回  ||
  ||.    _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||. /              o回/         ||
 口==================口



 主人公 侑
 手持ち イーブイ♀ Lv.82 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
      ウォーグル♂ Lv.79 特性:まけんき 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
      ライボルト♂ Lv.80 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
      ニャスパー♀ Lv.77 特性:マイペース 性格:きまぐれ 個性:しんぼうづよい
      ドラパルト♂ Lv.78 特性:クリアボディ 性格:のんき 個性:ぬけめがない
      フィオネ Lv.74 特性:うるおいボディ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:271匹 捕まえた数:12匹

 主人公 歩夢
 手持ち エースバーン♂ Lv.68 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
      アーボ♂ Lv.69 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
      マホイップ♀ Lv.65 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
      トドゼルガ♀ Lv.64 特性:あついしぼう 性格:さみしがり 個性:ものおとにびんかん
      フラージェス♀ Lv.64 特性:フラワーベール 性格:おっとり 個性:すこしおちょうしもの
      ウツロイド Lv.73 特性:ビーストブースト 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 3個 図鑑 見つけた数:250匹 捕まえた数:24匹

 主人公 かすみ
 手持ち ジュカイン♂ Lv.84 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
      ゾロアーク♀ Lv.78 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
      マッスグマ♀ Lv.75 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
      サニゴーン♀ Lv.75 特性:ほろびのボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
      ダストダス♀✨ Lv.74 特性:あくしゅう 性格:がんばりや 個性:たべるのがだいすき
      ブリムオン♀ Lv.76 特性:きけんよち 性格:ゆうかん 個性:ちょっとおこりっぽい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:295匹 捕まえた数:15匹

 主人公 しずく
 手持ち インテレオン♂ Lv.68 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
      バリコオル♂ Lv.68 特性:バリアフリー 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      アーマーガア♀ Lv.68 特性:ミラーアーマー 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ロズレイド♂ Lv.68 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
      サーナイト♀ Lv.68 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ツンベアー♂ Lv.68 特性:すいすい 性格:おくびょう 個性:ものをよくちらかす
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:276匹 捕まえた数:23匹

 主人公 せつ菜
 手持ち ウーラオス♂ Lv.79 特性:ふかしのこぶし 性格:ようき 個性:こうきしんがつよい
      ウインディ♂ Lv.87 特性:せいぎのこころ 性格:いじっぱり 個性:たべるのがだいすき
      スターミー Lv.83 特性:しぜんかいふく 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      ゲンガー♀ Lv.85 特性:のろわれボディ 性格:むじゃき 個性:イタズラがすき
      エアームド♀ Lv.81 特性:くだけるよろい 性格:しんちょう 個性:うたれづよい
      ドサイドン♀ Lv.84 特性:ハードロック 性格:ゆうかん 個性:あばれることがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:198匹 捕まえた数:51匹

 主人公 栞子
 手持ち ピィ♀ Lv.11 特性:メロメロボディ 性格:やんちゃ 個性:かけっこがすき
      ウォーグル♂ Lv.71 特性:ちからずく 性格:れいせい 個性:かんがえごとがおおい
      ウインディ♀ Lv.70 特性:もらいび 性格:さみしがり 個性:のんびりするのがすき
      ゾロアーク♂ Lv.68 特性:イリュージョン 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      イダイトウ♀ Lv.68 特性:てきおうりょく 性格:さみしがり 個性:にげるのがはやい
      マルマイン Lv.68 特性:ぼうおん 性格:きまぐれ 個性:すこしおちょうしもの
 バッジ 0個 図鑑 未所持


 侑と 歩夢と かすみと しずくと せつ菜と 栞子は
 レポートに しっかり かきのこした!


...To be continued.




■ChapterΔ005 『漣の戦場』 【SIDE Yu】





──翌日。


歩夢「栞子ちゃん。方向は……やっぱり、東?」

栞子「はい……。……“もえぎいろのたま”の反応は……まだ東方面ですね……」


コメコの森で龍脈のエネルギーを吸収した“もえぎいろのたま”は、コメコの森よりもさらに東に反応を示していた。

今はすでにホシゾラシティを飛び越えて、スタービーチまで来ている。


しずく「となると……行き先はフソウ島でしょうか」

せつ菜「そうですね……。スタービーチより東となると、フソウ島くらいしかありませんから」

リナ『海の底という説を除けばそうなるね』 || ╹ᇫ╹ ||

かすみ「リナ子……怖いこと言わないでよ」

侑「それじゃ、とりあえずフソウタウンを目指そうか」
 「ブイ」

歩夢「そうだね」


私たちは目的地をフソウタウンに設定して、次の龍脈に向かいます──





    🎹    🎹    🎹





──フソウの港に降り立つ。

するとすぐに出店が見えてくる。


栞子「なんだかすごく人が多いですね。今日はお祭りがあるのでしょうか?」


行き交う人々とポケモンを見て、栞子ちゃんがそんな風に言う。


せつ菜「いえ、フソウはいつもこんな感じですよ」

栞子「え?」

かすみ「フソウは毎日お祭りみたいな町ですからね~」

しずく「毎日ポケモンコンテストの大会が開催されていて、観光地としてとても有名な場所なんです。今日は大きな大会がないから、控えめなくらいで……」

栞子「こ、これで控えめなんですか……!?」


栞子ちゃんがコメコのとき同様、目を丸くする。


歩夢「ふふ♪ せっかくだから、一緒に屋台回ってみる?」

栞子「い、いえ……! そんなことをしている場合ではありません! 早く龍脈を見つけないと……」


と言いながら、栞子ちゃんの視線はバニプッチアイスの屋台に惹かれている。


かすみ「しお子、バニプッチアイス気になるの?」

栞子「え? い、いえ、その……。……コットンアイスとどう違うのかなと思っただけで……」

かすみ「屋台は気になったら、とりあえず買って食べるのが一番いいんだよ! 行こう♪」

栞子「え、えぇ!?」

かすみ「おじさ~ん♪ バニプッチアイスくださ~い♪」


かすみちゃんが栞子ちゃんの手を引いて、駆け出して行く。


歩夢「私も栞子ちゃんとかすみちゃんのこと、ちょっと見てくるね」

侑「うん、お願いね、歩夢」

歩夢「はーい♪」

 「ブイブイ」
侑「え、イーブイも行きたいの?」

歩夢「ふふ♪ それじゃ、イーブイも一緒に行こっか♪ おいで♪」
 「イブイ♪」


イーブイは私の頭からピョンと跳ねて、歩夢の胸に飛び込む。


侑「ごめん、歩夢。イーブイもお願いね」

歩夢「うん、任せて♪」
 「ブイ♪」


歩夢はイーブイを抱きかかえながら、栞子ちゃんとかすみちゃんの後を追って、賑やかな出店通りへと歩いて行く。

その背中を見送りながら、しずくちゃんが口を開く。


しずく「よかったんですか? 栞子さんの言うとおり、龍脈探しをした方がいい気もしますけど……」

侑「まあ、場所はこの島で十中八九間違いないだろうし……龍脈を見つけても、ランジュちゃんたちが来るまでは何も出来ないしね……。向こうがもうたどり着いてる可能性もあるけど……」

せつ菜「確かに昨日の様子を見る限り、バトルで決着をつけることには前向きでしたしね。こちらがよほど待たせない限り、約束を反故にされることもない気はします」

しずく「それは確かに……」

侑「それに……かすみちゃんに気晴らしをさせてあげたいというか……」

しずく「……あはは……さすがに気付きますよね……」


かすみちゃんは昨日の負けが相当堪えたみたいだった。

もちろん、本人は隠しているつもりだろうけど……やっぱり、いつもよりも声に張りがないと言うか……。


侑「せっかく、お祭りの町に来たわけだしね」

しずく「お気遣い、ありがとうございます……侑先輩」

侑「うぅん、私もかすみちゃんには元気で居て欲しいし……それに、栞子ちゃんもこの町に興味を惹かれてたし、ちょうどいいかなって」


歩夢なら、二人を見守るのには最適だろうしね。


リナ『なら、私たちは待ってる間に、次の戦いのことを話しておいた方がいいかもね』 || ╹ᇫ╹ ||

せつ菜「そうですね。次は誰が戦いましょうか」

しずく「あの、それなんですが……次は私に戦わせて貰えませんか……!」


しずくちゃんが自ら、次の戦いに名乗りをあげる。


しずく「私……かすみさんの仇を討ちたい……」

侑「しずくちゃん……」


確かに……しずくちゃんはかすみちゃんのこと、すごく心配していたし……もしここでしずくちゃんが勝てば、かすみちゃんも勇気付けられるかもしれない。

だけど、


リナ『でも、ここで負けたら私たちは追い詰められることになる』 || ╹ᇫ╹ ||


リナちゃんはあまり積極的でない様子。


しずく「それは……」

リナ『むしろ、感情的に決めない方がいいと思う。ランジュさんは強いし……それに、しずくちゃんは冷静なときの方が強い』 || ╹ᇫ╹ ||

しずく「リナさん……。……確かに、私……今は少し頭に血が上っているのかもしれません……」

せつ菜「そうですね……可能なら、戦うのはベストコンディションで臨める時の方が良いかもしれません」

しずく「そう……かもしれませんね……。……今の気持ちのまま戦っても……自分らしい戦いは出来ないかも……」

せつ菜「しずくさんは自分のステージさえ作り出せれば、本当にお強いですから! 自分の力を100%発揮出来るタイミングなら、ランジュさんにも劣らないはずですよ!」

しずく「……せつ菜さん……。ありがとうございます……わかりました、今回は見送らせてもらいます」

侑「わかった。それじゃ……どうしようか……」


私か、歩夢か、せつ菜ちゃんということになるけど……。


リナ『初戦を落としてる以上、2戦目を落とすと追い詰められる。精神的にも、ここは確実に白星が欲しいところだと思う』 || ╹ᇫ╹ ||

しずく「確かに、そうですね……。この後の試合のプレッシャーも考えて……」

侑「確実に勝ちを取りに行くとなると……」


全員の視線が──せつ菜ちゃんに集中する。


せつ菜「……なるほど。……そう言うことならば、期待にはお応えしなければいけませんね!」


せつ菜ちゃんが頷きながら、拳をぐっと胸の前で握る。


せつ菜「不肖、ユウキ・せつ菜……皆さんのために必ず勝利してみせます!!」


五番勝負──次鋒はせつ菜ちゃんが戦うことに決定した。





    🎀    🎀    🎀





栞子「バニプッチアイス……冷たくて甘くておいしいです……」

かすみ「しお子、コットンアイス食べたときと同じこと言ってる……」

栞子「す、すみません……こういうときの感想があまり思いつかなくて……。……ですが、こちらのアイスはふわふわしていないんですね」

かすみ「あれはアイスとわたあめが合体したやつみたいな感じだからね~」

栞子「わたあめ……?」

かすみ「え、しお子、わたあめも知らないの!?」

栞子「す、すみません……」

かすみ「もう、仕方ないなぁ~、お祭りマスターのかすみんが、しお子にお祭り屋台の極意を教えちゃうんだから!」

栞子「よ、よろしくお願いします!」


かすみちゃんが栞子ちゃんの手を引っ張りながら、あちこちの屋台を見て回っている。

私はそれを後ろから見守りながら、イーブイと一緒にゆっくりと追いかける。


歩夢「ふふ♪」
 「ブイ?」

歩夢「二人とも楽しそうだなって思って♪」
 「ブイ♪」


特にかすみちゃんはすごく落ち込んでいたから心配だったけど……いい気晴らしになっているみたいで安心する。


栞子「歩夢さん……! このふわふわ、すごく甘くておいしいです……!」

歩夢「ふふ♪ よかったね、栞子ちゃん♪」

栞子「はい!」

かすみ「しお子ったら、どれでも喜んでくれるから、かすみんも教え甲斐があります~♪」

栞子「昨日歩夢さんが作ってくれた、ふれんちとーすとと、ぐらたんもおいしかったですし……外の世界にはいろんな食べ物があるんですね……!」

かすみ「そうだよ~? そして、屋台もまだまだ続きます……! コンプリート目指して頑張るよ!」

栞子「はい!」

歩夢「あはは……食べすぎないようにね」


張り切るかすみちゃんに苦笑しながら、出店通りを歩いていると、


 「シャボ…」


サスケが屋台から漂ってくる良い匂いに反応して、目を覚ます。


歩夢「サスケ、おはよう。何か食べたいの?」
 「シャボ…」

歩夢「えっと……それじゃあ……」


キョロキョロと屋台を見回して──


歩夢「あっ、あれならよさそう」


ポケモン用のベビーカステラの屋台を見付ける。


歩夢「すみません、ベビーカステラ……えっと、とりあえず6袋ください」

屋台のおばさん「はいよー」


大雑把に買って、みんなで分けようかな。

余っても、サスケが全部食べるだろうし。

購入したミニカステラを受け取ると、


 「シャボ!!」
歩夢「あっ、こら、サスケ……!」


サスケは貰った紙袋の一つに頭を突っ込んでカステラを食べ始める。


歩夢「もう……サスケったら……食いしん坊なんだから……」

屋台のおばさん「ははっ、元気のいいアーボだねぇ!」


屋台の人に笑われてしまう。

もう恥ずかしいなぁ……。


 「ブイ…」

歩夢「イーブイも食べたいよね。はい♪」


袋からベビーカステラを一つ摘まんで、イーブイにあげる。


 「ブイ♪」


すると、イーブイは嬉しそうにベビーカステラを食べ始める。


歩夢「おいしい?」
 「ブイ♪」

歩夢「ふふ♪ よかった♪」


ポケモンたちにおやつをあげていると、


栞子「歩夢さん……それは……?」


栞子ちゃんが不思議そうな顔をしながら訊ねてくる。


歩夢「これはね、ポケモン用のお菓子なんだよ」

栞子「ポケモン用の……お菓子……?」

歩夢「そうだ、栞子ちゃんのポケモンにもあげてみたらどうかな♪ はい♪」


そう言いながら、ベビーカステラの入った紙袋を一つ手渡す。


栞子「いいんですか?」

歩夢「うん♪」

栞子「えっと……それじゃ、ピィ」
 「──ピィ」


栞子ちゃんがピィをボールから出し、足元に飛び出してきたピィの前にしゃがみこむ。


栞子「ピィ、ポケモン用のお菓子だそうです」
 「ピィ?」


ピィはベビーカステラを受け取って小首を傾げるけど──それを口に運ぶと、


 「ピィ♪」


ご機嫌になる。


栞子「おいしいですか?」
 「ピィ♪」

歩夢「ふふ♪」

かすみ「かすみんもポケモンたちのおやつ買おうっかなぁ……」

歩夢「かすみちゃんの分もあるよ♪ はい♪」

かすみ「わ、いいんですか!? さっすが歩夢先輩~♪ ちょっとあっちのベンチでポケモンたちにあげてきますね~!」

歩夢「うん」


さすがに屋台通りで大きなポケモンは出せないからか、かすみちゃんはベンチがある近くの広場へと走っていく。


栞子「……これ、ポケモン専用なんですか……?」

歩夢「んー……人が食べても問題ないけど、味が薄いから、あんまりおいしくないかも」


試しに一つ食べてみるけど──


歩夢「……うん、やっぱり、あんまり味がしない気がする」

栞子「わ、私も食べてみます……」


そう言いながら、ベビーカステラを口に運んだ栞子ちゃんは、


栞子「…………確かに、味がしません……」


そう言って顔を顰める。


歩夢「ふふ、でしょ?」

栞子「じゃあ……本当にポケモンのためだけに作られたおやつなんですね……」
 「ピィ♪」


栞子ちゃんはおいしそうにベビーカステラを食べるピィを見ながら言う。


歩夢「栞子ちゃん?」

栞子「……人は……こんなにもポケモンのことを、大切にしているんですね……」

歩夢「そうだね……。人もポケモンも、この地方で……一緒に生きる仲間同士だもん」

栞子「一緒に生きる……仲間……」


栞子ちゃんは私の言葉を反芻するように言う。


栞子「…………」

歩夢「人とポケモンがこうして仲良くしてるの……意外だった?」

栞子「…………はい……。……本音を言うと……そう思っています」

歩夢「……そっか」

栞子「私……ずっと、イメージでしか、外の人を見ていなかったのかもしれません……」


栞子ちゃんは、生まれてからほとんどの時間を朧月の洞で過ごしていた。

だから、自分の中にあったイメージと現実のギャップで混乱しているのかもしれない。

……でも、だからこそかな……。


歩夢「栞子ちゃん」

栞子「……なんでしょうか」

歩夢「今は大変なことになっちゃってるけど……きっと、良い機会なんだと思う」

栞子「良い機会……」

歩夢「栞子ちゃんの目で……この地方でみんながどう暮らしてるか、確認してみたらどうかな」


知らない世界をちゃんと知るのはきっといいことだと思うから。


栞子「……はい」


栞子ちゃんは私の言葉に頷く。


栞子「自分の目で……しっかり、確認しないと……。この地方の……人と……ポケモンを……」


まるで自分に言い聞かせるように、そう言葉にするのでした。




    🎹    🎹    🎹





──フソウのコンテスト会場をすぐ傍に臨む中央公園のベンチで待っていると、


歩夢「侑ちゃーん!」
 「イブイ♪」

侑「あっ、歩夢~! こっちこっち~!」


歩夢たちが私たちを見つけ、手を振りながら駆け寄ってくる。


かすみ「先輩たち、ここに居たんですね~!」

侑「うん。3人とも出店回りは楽しめた?」

栞子「はい……! かすみさんにいろいろ教えてもらいました!」

かすみ「聞いてくださいよ~……侑せんぱ~い……せっかくかすみんが『トサキントすくい』のお手本を見せようと思ったら、歩夢先輩が全部すくっちゃって……」

栞子「あれは、すくうというより……トサキントたちに群がられていたというか……」

歩夢「私……近くにいただけなんだけど……」
 「ブイ」

侑「あはは……歩夢、昔にもそんなことあったよね……」

歩夢「あ……もしかして、6番道路での花火大会のときのこと? 懐かしいなぁ……そのとき私、たくさんのトサキントにびっくりして泣いちゃって、侑ちゃんが泣き止むまでずっと手を繋いでてくれたんだよね♪」

侑「あったあった……」


あのときからすでに、歩夢のポケモンに好かれる体質は片鱗を見せていたということだ……。


かすみ「んで……しず子はまたヨウカン食べてるんだ。来るたびに食べてるよね」

しずく「だって、好きなんだもん。この絶妙な甘さと舌触り……いつか、シンオウに行ったら本場のを食べてみたいなぁ……」


しずくちゃんはそう言いながら、ベンチに座ってさっき買ってきた“もりのヨウカン”を食べている。


かすみ「……ん、確かにおいしけどさ~……毎回同じのばっかで飽きないの?」

しずく「全然飽きないよ。はい、かすみさん、あ~ん♪」

かすみ「あーん。……もぐもぐ……おいひぃ~♪」

しずく「でしょ♪」

リナ『3秒前と言ってることが変わってる』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

侑「あはは……」

栞子「それはそうと……せつ菜さんは、先ほどから何をされているんですか?」


栞子ちゃんがベンチから離れた場所で、立ったまま胸に手を当て、目を瞑っているせつ菜ちゃんを見て言う。


せつ菜「…………すぅー…………。…………ふぅー…………」


せつ菜ちゃんは、目を瞑ったまま、何度も深呼吸を繰り返していた。


侑「精神統一だってさ」

かすみ「精神統一?」

しずく「あれをすると、集中出来るそうなんです。大事な戦いの前にはいつもああしているそうですよ」

歩夢「大事な戦い……それじゃ……」

侑「うん。次の試合はせつ菜ちゃんにお願いしようってことになったんだ」

せつ菜「──……そう言うわけです」


せつ菜ちゃんが目を開けて、私たちのいるベンチへと歩いてくる。


侑「あ、ごめん……邪魔しちゃったかな?」

せつ菜「いえ、これくらいにしておこうと思っていたときに、ちょうど私の話をしているのが聞こえてきただけですよ。準備は整いました」


そう言うせつ菜ちゃんの表情は──普段の天真爛漫な雰囲気から一変、鋭さを感じさせる雰囲気を纏っている気がした。

バトルモードということかもしれない。


栞子「それでは、龍脈の場所へ移動しましょう」

侑「そうだね」

せつ菜「よろしくお願いします、栞子さん」


私たちは龍脈の場所へと移動を開始する。





    🎹    🎹    🎹





フソウ島は、北側に港があり、そこから南に進んでいくと、ちょうど島の中央にポケモンコンテストのフソウ会場がある。

フソウ会場からさらに南に行くと、ホテルが立ち並ぶ宿泊施設の密集地があり──さらに、その南には……。


かすみ「海です~~~!!」


かすみちゃんが目の前に広がる砂浜をご機嫌になって走り出す。


しずく「かすみさーん! 走ると危ないよー!」

かすみ「大丈夫大丈夫~……わぁっ……!?」

しずく「言わんこっちゃない……」


早速、砂浜に足を取られて転ぶかすみちゃんを見て、しずくちゃんが肩を竦めながら、かすみちゃんの方へと駆けて行く。

私たちがやってきのは──フソウビーチと言われるフソウ島の南にある大きな砂浜だ。


歩夢「龍脈はこっちなんだよね?」

栞子「はい」


栞子ちゃんは“もえぎいろのたま”の輝きを見ながら頷く。


せつ菜「とりあえず、反応にしたがって進んでみましょうか」

侑「そうだね」


私たちは砂浜沿いに島の南東方面へと進んでいく。


かすみ「……どこまで行くの」

栞子「わかりません……」

かすみ「まさか、本当に海の底じゃないですよね……」

侑「さすがにそれは困るね……」


まあ、海の底で戦うことはないだろうから、バトル自体は近くの海岸ですることになるとは思うけど……。


しずく「そういえば……フソウビーチには、パワースポットがあった気がします」

せつ菜「パワースポットですか……?」

しずく「はい。ビーチの東端に、漣の洞窟という海から入れる洞窟があるんです」

歩夢「あ、私も聞いたことある! 青の洞窟だよね!」

しずく「はい!」

かすみ「青の洞窟……?」

リナ『石灰質の白い海底と、太陽光の影響で、海が青く輝いて見えるっていう海食洞のことだね』 || ╹ᇫ╹ ||

かすみ「へー……? なんか青いってこと?」

リナ『まあ、だいたいそれでいいよ』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||


確かにこのまま進んでいくと、ビーチの東端にたどり着きそうだ。


しずく「そこの奥に、青く光る岩があると……」

侑「そこがパワースポットになってるってことだね」

しずく「もちろん、パワースポットがイコールで龍脈なのかはわかりませんが……」

栞子「とりあえず、反応に従って進んでみましょう」

歩夢「そうだね」


私たちはフソウビーチを進んでいく。





    🎹    🎹    🎹





しずくちゃんの言うとおり、ビーチを進んでいくと、洞窟が見えてきた。


栞子「反応は……洞窟の方ですね」

かすみ「洞窟の入り口、完全に水に浸かってますね……」

せつ菜「“なみのり”で行く必要がありますね。スターミー、出てきてください」
 「──フゥ」

歩夢「トドゼルガ、お願い」
 「──ゼルガ…」

栞子「イダイトウ、出番ですよ」
 「──ダイトウ…!」


3人がみずポケモンをボールから出す。


かすみ「イダイトウ……? 見たことないポケモン……」

しずく「……私も、知らないポケモンです」

歩夢「その子もヒスイのポケモンなの?」

栞子「はい、ヒスイのバスラオが進化した姿なんです」

せつ菜「バスラオに進化した姿があったんですか……!?」

リナ『かつて、しろすじのバスラオって種類がいたと言われてる。そのバスラオはイダイトウに進化してた』 || ╹ᇫ╹ ||

リナ『イダイトウ おおうおポケモン 高さ:3.0m 重さ:110.0kg
   生まれ育った 川に 遡上するときに 志半ばに 散っていった
   仲間達の 魂が 憑りつき 進化した 姿。 憑りついた 魂から
   推進力を 得て 泳ぎ 河川に おいて 敵なしと 言われる。』

栞子「ヒスイ地方ではこのポケモンの力を借りて、海を渡ったそうですよ」

侑「確かに、この大きさなら、一度にたくさんの人を運べそうだね……!」
 「ブイ」

かすみ「あ、えっとー……かすみんたち、みずタイプのポケモンを持っていないのでー……」

栞子「はい、一緒に乗ってください」

しずく「すみません、お世話になります」

歩夢「侑ちゃんはトドゼルガに乗ってね♪」

侑「うん。お願いね、歩夢」
 「イブイ」


私はフィオネは持っているけど……フィオネは私が上に乗って泳げるほど体が大きくないし、ここはありがたく歩夢を頼ろう。


せつ菜「それでは皆さん、行きましょう」
 「フゥ」


スターミーの上にサーフィンのように立つせつ菜ちゃんが先導する形で、洞窟を奥へと進んでいく。

洞窟の中に入ると──どうして青の洞窟と言われているのかがすぐわかった。

洞窟内の海面は、まさに青く輝いていて、青い世界の中を泳いでいるような、そんな世界が広がっていた。


かすみ「……きれい……」

侑「……すごい……」


その美しさに思わず圧倒されてしまう。


リナ『入り口からの太陽光の差し込み方、海底の色、水の透明度とか、いろんな条件が重なるとこうなるって言われてる』 || ╹ ◡ ╹ ||

しずく「これは……パワースポットと呼ばれるのも頷けますね……」

栞子「はい……すごく、幻想的な光景です……」

歩夢「なんだか……こんなに綺麗だと、目的を忘れちゃいそう……」

せつ菜「ですね……」


青の世界を進んでいくと──洞窟内に上がれる陸が見えてくる。


侑「栞子ちゃん、宝珠の反応は?」

栞子「……奥に進むほど、強くなっています」

侑「わかった、このまま進もう」


私たちは陸に上がり、洞窟を奥へ進んでいくと──開けた空間に出る。

そしてその奥に──薄ぼんやりと青く光る大岩が鎮座していた。


かすみ「しず子……! あの岩光ってるよ!」

しずく「本当にありました……」


それと同時に──栞子ちゃんの手に持たれた宝珠が強く光る。


栞子「……“もえぎいろのたま”が……より強く反応しています。……ここが龍脈です」

せつ菜「まさに、ビンゴでしたね……!」

侑「ランジュちゃんたちは……」


辺りを見回してみるけど、特に人影はなかった。

恐らく、まだたどり着いていないのだろう。


せつ菜「となると、ここでしばらく待つことになりそうですね」

侑「そうだね」

かすみ「それにしても……あれ、なんで光ってるんですかね」

リナ『詳しい理由はわからないけど……“みずのいし”によく似た反応がある。自然エネルギーが蓄えられてるのかもしれない』 || ╹ᇫ╹ ||

歩夢「太陽の花畑のサンフラワーみたいな感じなのかな?」

リナ『恐らくは』 || ╹ ◡ ╹ ||


不思議な空間だった。

閉鎖的な空間ではあるけど……圧迫感はあまり感じないというか。

これも自然エネルギーが満ちているからなのかな……?


歩夢「なんだか……落ち着くね」

侑「……うん」


リラックスした気分になっていると──


ランジュ「──あーー! ランジュよりも早く着いてるじゃない!!」


ランジュちゃんの声が洞窟内で反響する。


栞子「ランジュ……」

ランジュ「もう! ミアがもたもたしてるからよ!」

ミア「はいはい……」


ランジュちゃんは遅れてきたのが悔しかったのか、ミアちゃんに向かってふくれっ面になる。

ミアちゃんは慣れっこなのか、適当に流しているけど……。


ランジュ「……まあ、いいわ。それじゃ、さっさと二戦目、始めましょうか。今度は誰が相手してくれるのかしら!」


そう言うランジュちゃんの前に、


せつ菜「……今回は私です!」


せつ菜ちゃんが歩み出る。


ランジュ「せつ菜、貴方ね!」

せつ菜「はい! 正々堂々、お互い良い勝負にしましょう!」

ランジュ「望むところよ! ミア!」

ミア「ん。これが今回のポケモン」


前回同様、ミアちゃんがランジュちゃんにボールが3個入ったケースを手渡す。


栞子「せつ菜さん……よろしくお願いします」

せつ菜「お任せください! それでは、始めましょう……!」

ランジュ「ええ!」


二人のトレーナーが同時にボールを放って──五番勝負の次鋒戦が始まった。





    🎙    🎙    🎙





せつ菜「行きますよ!! ウインディ!!」
 「──ワォンッ!!!」


私は1番手に相棒のウインディを繰り出す。

対するランジュさんは──


ランジュ「行くわよ、バシャーモ!」
 「──バシャーーーモッ!!!」


バシャーモを繰り出してくる。それと同時に、耳に掛かった髪をかき上げ──


ランジュ「メガシンカ!!」


輝きと共に、バシャーモの頭部のツノが1本に、冠羽が立派に成長し、腕から噴き出す炎もさらに立派になり棚引いている。

バシャーモがメガシンカした姿──メガバシャーモだ。


 「バ、シャァモッ!!!!」


メガバシャーモに進化すると同時に、強靭な脚力を使って飛び出し──


 「バシャァモッ!!!!」


ウインディの側頭部を蹴り飛ばす。

──が、


 「ワォン…」


ウインディは微動だにしていなかった。


ランジュ「咦!?」

せつ菜「それじゃあ、威力が足りていませんよ……!! “ずつき”!!」
 「ワォンッ!!!!」

 「バシャモッ…!!!」


メガバシャーモを“ずつき”で追い払う。

ただそれ自体は大したダメージではなく、吹っ飛ばされたメガバシャーモは受け身を取ってすぐに起き上がり、片足を上げて特有の構えを取る。


ランジュ「……驚いたわ、“アイアンヘッド”にそんな使い方があったなんて……」

せつ菜「気付かれましたか……! さすがですね……!」


そう、ウインディは攻撃が当たる瞬間だけ、頭部を“アイアンヘッド”で硬質化して、攻撃を防いだ。


ランジュ「でも、そんな小細工いつまで続くかしらね……!!」
 「バ、シャァモッ!!!!」


再び飛び出してくるメガバシャーモ。

恐らく次は──


せつ菜「飛び込んでくるように見せかけて」

 「バシャッ…!!!」

せつ菜「ウインディの目の前で“フェイント”をしかけて、横から攻撃──」


私はトントンとステップを踏みながら、ウインディの左側に歩を運び──ウインディの目の前で、“フェイント”を掛けるメガバシャーモの重心が左に揺れたのを一瞬で判断し、


せつ菜「左!! “ねっぷう”!!」
 「ワォンッ!!!!」

 「シャモッ…!!?」


メガバシャーモに触れられる前に、ウインディの左側に放った“ねっぷう”で押し返す。


ランジュ「読まれてる……!? バシャーモ……!!」

 「バシャッ…!!!」


メガバシャーモは後退りながらも、脚力をバネにし──“かそく”しながら、飛び掛かってくる。

だが、


せつ菜「“じゃれつく”!!」
 「ワォンッ!!!」

 「シャーーモッ…!!!?」


飛び掛かってくるメガバシャーモに向かって前足を振り上げ、巻き込むようにして叩き落とす。

前脚で押さえつけたバシャーモに向かって──


せつ菜「そのまま、“サイコファング”!!」
 「ワォンッ!!!!」


牙を立てようとするが、


ランジュ「“けたぐり”!!」
 「バシャモッ!!!!」


ランジュさんは咄嗟の判断で、“けたぐり”を指示──メガバシャーモは押さえ付けられながらも、脚を伸ばして、ウインディの後ろ足を薙ぎ払う。


 「ワォンッ…!!?」


急な足払いを受けて、ウインディの体が傾いた瞬間、


 「バシャッ!!!」


メガバシャーモは自分を押さえ付けていたウインディの前足から逃れ、そのまま全身のバネを使って跳ね起きの要領で跳び上がり──身を捻って、


ランジュ「“ブレイズキック”!!

 「バシャァァモッ!!!!」


燃える蹴撃をウインディの側頭部に向かって放ってくるが──


 「ワォンッ!!!」


ウインディは体勢を崩しながらも、再び蹴りを“アイアンヘッド”によって硬質化した頭部で受け止め──


 「ワォンッ!!!」

 「バシャッ…!!!」


そのまま頭を振り下ろし、メガバシャーモを吹っ飛ばす。

メガバシャーモはまたしても、受け身を取りながら、ウインディから距離を取る。


せつ菜「無理な体勢から攻撃しても、通りませんよ!」


体重を乗せられない蹴りなんて怖くもなんともない。


ランジュ「みたいね……!」
 「シャモッ!!!!」


さらに“かそく”したメガバシャーモは、姿が一瞬で掻き消える。

次は恐らく──


せつ菜「ウインディ!!」
 「ワォンッ!!!!」


ウインディが勢いよく、後頭部を引くように頭を上に向けると──ウインディの顎下スレスレをメガバシャーモの振り上げた足で振り抜かれる。


ランジュ「……!」

せつ菜「顎……狙いますよね……!」


“アイアンヘッド”で硬くできるのは頭頂や側頭──つまり頭の上の部分。

さすがに顎まではカバーしきれない。

なら次は顎を狙うはず。私の読みどおりランジュさんはしっかりと顎を狙ってきてくれたお陰で、回避に成功する。


ランジュ「バシャーモ!! 一旦距離を取りなさい!」

 「シャモッ…!!!」


バシャーモは反撃を食らう前に飛び退いて、ウインディから距離を取る。


ランジュ「……悉く読まれてるわね」


ランジュさんは優秀なトレーナーだ。

それは、かすみさんとの戦いを見ていただけで十分わかった。

咄嗟の判断もさることながら、技の選択や狙いが合理的な戦い方をしている。

言うなれば、戦い方の精度が高すぎるせいで、逆に読みやすいとでも言うのだろうか。

ただ……。


ランジュ「バシャーモ……!!」
 「シャモッ!!!!」


メガバシャーモは今度こそ、目にも止まらぬスピードで動き出す。

“かそく”によって、どんどん速くなり続け、もう目で捉えるのは不可能に近い。


せつ菜「……さすがに時間を掛け過ぎましたね……!」


もともと相手がとんでもなく速い相手だというのはわかっていたので、最初から反撃重視の戦い方を選んでいましたが、反撃から技を決めようとしても、それをいなす技術も一流だったため、決定打を決め切る前に、“かそく”しきってしまった。

なら── 一旦仕切り直し……!!


 「シャァーモッ!!!!」


メガバシャーモがウインディに飛び掛かってくる瞬間に合わせて──


せつ菜「“ほえる”!!」
 「ワォォォンッ!!!!!!!」

 「シャモッ…!!!?」


大声で吠え掛ける。それと同時に、メガバシャーモが無理やりボールに戻され──代わりのポケモンが飛び出した。


 「──ヴァァァァッ!!!!!」


ボールから出てきたのは、バチバチと電撃の音を立てながら羽ばたく、鳥ポケモンの姿。


せつ菜「……! サンダー……!!」


でんげきポケモン、サンダーの姿。


ランジュ「……2匹目、引き摺りだされちゃったわね……!」

せつ菜「やはりラティオス以外にも捕まえていたんですね……! こんなところで、伝説のポケモンと戦えるなんて……光栄です!! 行きますよ、ウインディ!!」
 「ワォンッ!!!!」


バトルは次のステージへ。

対するは伝説のポケモン、サンダー……!


ランジュ「サンダー! 10まんボルト!!」
 「ヴァァァーーーッ!!!!!」

せつ菜「“しんそく”!!」
 「ワォンッ!!!」


ウインディの姿が掻き消え──先ほどまでウインディが居た場所に電撃が迸る。

電撃攻撃を掻い潜ったウインディは一瞬でサンダーに肉薄し──


ランジュ「“ほうでん”!!」
 「ヴァァァァーーッ!!!!」

 「ワォンッ…!!!」


──たが、全方位の電撃によって、止められてしまう。

“しんそく”は確かに読んで字のごとく神速の一撃だが、全方位に電撃を放たれると、そもそも近付くのが難しくなってしまう。


せつ菜「“かえんほうしゃ”!!」

 「ワォンッ!!!!」


ウインディが火炎を噴き出すが、


ランジュ「サンダー! “みきり”よ!」
 「ヴァァァ」


サンダーは攻撃を見切って、ひょいと炎を回避し、


ランジュ「“10まんボルト”!!」
 「ヴァァァァーーーッ!!!!!」


再び電撃を放ってくる。


せつ菜「ウインディ!! 走って!!」
 「ワォンッ!!!」


狙い撃ちされないように、“こうそくいどう”で走り回りながら、どうにか落ちてくる電撃を回避するけど──そもそも、でんきタイプの攻撃というのはいなすのが難しい。

回避もずっとは続けられないし、早く策を講じて、倒してしまわないと……!!

そう思った矢先──ぴちょ。

顔に冷たいものが落ちてきた。

ハッとして、顔を上げると──洞窟内に雨雲が発生していた。


せつ菜「“あまごい”……!? いつの間に……!?」

ランジュ「“打雷”!! “かみなり”よ!!」
 「ヴァァァァーーーッ!!!!!」


頭上の雨雲が光った瞬間、


せつ菜「“だいもんじ”!!」

 「ワォォォンッ!!!!」


真上に向かって、“だいもんじ”を発射する。

“かみなり”は“だいもんじ”に直撃し、爆ぜるようにして周囲に稲妻を爆ぜ散らせながら──爆発した。


 「ワァオンッ…!!!」

せつ菜「くっ……!!」


だが、爆炎の中を貫くように、


 「ワォンッ…!!!!?」


一筋の“かみなり”がウインディを直撃する。


せつ菜「ウインディ……!!?」


ウインディはよろけこそしたものの、


 「ワ、ワォンッ…!!!」


足を踏ん張り持ちこたえる。

よかった……倒れてない。


ランジュ「この雨の中で、よくほのお技で“かみなり”の威力と撃ち合えたわね」


ランジュさんの言うとおり、雨が降っているせいで、ほのお技は威力が半減してしまう。


ランジュ「でも、相殺出来てやっとじゃ、こっちが優勢よ!! “かみなり”!!」
 「ヴァァァァーーーッ!!!!!」


再びの落雷。だけど──ピシャァァァンッ!!! と音を立てながら、“かみなり”はウインディとは全く関係のない場所に落ちる。


ランジュ「……!?」

せつ菜「雨が降って不利になるなら……晴らせばいいだけです」

ランジュ「“にほんばれ”……!」


洞窟内なせいで、日差しこそ照ってくることはないが、“にほんばれ”を使えば雨雲を掻き消すことは可能だ。

雨雲がなくなれば、“かみなり”の命中精度は激減する。


ランジュ「サンダー! “あまごい”!」
 「ヴァーー」

せつ菜「ウインディ! “にほんばれ”!」
 「ワォンッ!!!」


雨が降り始めたかと思えば、その雨雲がすぐに払われる。


ランジュ「天気の取り合いをしようって言うのね……! いいわ……! “10まんボルト”!!」
 「ヴァァァァーーー!!!!」

せつ菜「ウインディ!!」
 「ワォンッ!!!」


ウインディが私の指示で、口の中に炎を溜め、


せつ菜「“かえんほうしゃ”!!」
 「ワォンッ!!!!!」


火球にして、発射する。

空中で、“10まんボルト”に直撃し、電撃を爆ぜ散らせながら、火炎弾が爆発する中──再び雨粒が振り始める。


せつ菜「“にほんばれ”!!」
 「ワォンッ!!!」


すぐさま、雨雲をかき消した直後、また洞窟内に“かみなり”が落ちる。

一瞬でも雨雲を維持させたら、必中の“かみなり”にやられる……!


ランジュ「サンダー!! “でんげきは”!!」
 「ヴァァァァ!!!!」

 「ワォンッ…!!!」
せつ菜「くっ……!!」


超高速の電撃攻撃が、防御を許さない。

速度を重視した攻撃である分、威力は大したことがないのが救いだが、その隙にもまた雨が降り出し、それを“にほんばれ”で無効化する。


ランジュ「ジリ貧なんじゃないかしら!! “10まんボルト”!!」
 「ヴァァァァーーー!!!!!」

せつ菜「“かえんほうしゃ”!!」
 「ワァァァォンッ!!!!」


またしても、火球を発射し、“10まんボルト”を相殺する。


ランジュ「感電しないように、わざわざ火球にしたり、工夫はすごいと思うわ! でも、手数が足りてない!」

せつ菜「っ……!」


ランジュさんの言うとおり、サンダーの速さと火力に翻弄されて、防御で手一杯になり、攻撃をうまく通せるチャンスがない。

炎は通電性が高いため、感電しないように、防御策を通常の“かえんほうしゃ”ではなく、火球状にしているのは防御の手段としてうまく行っているが、これはあくまで防御のための技。

攻撃に転じるには、どこかで無茶を通さないといけない。

問題はどこで通すかだ。

だが──先に仕掛けてきたのはランジュさんだった。


せつ菜「……!?」


急に何かに引き寄せられるような感覚がして、身体が前のめりになる。

ハッとしたときには──目の前に風の渦が成長を始めていた。


せつ菜「まさか、“ぼうふう”……!?」


“ぼうふう”も“にほんばれ”状態では命中精度が下がる技だが──


 「ワォンッ…!!!」


風に引き寄せられ、ウインディの足が止まる。

それと同時に、


リナ『わぁぁぁ!!?』 || ? ᆷ ! ||

侑「り、リナちゃん!? 腕にくっついてて!?」
 「ブ、ブィィィ…!!!」

かすみ「と、飛ばされちゃいますぅぅ!!?」

しずく「かすみさん、頑張って……!!」

歩夢「栞子ちゃん! 私から離れないで……!」

栞子「は、はい……!」


背後から聞こえる、かすみさんたちの悲鳴。

気付けば洞窟内全体に強風が吹き荒れ始めていた──攻撃範囲が広すぎる……!


せつ菜「これじゃ……“にほんばれ”で命中が下がっても関係ない……!」

ランジュ「それだけじゃないわ」


直後──ポツポツと雨が降り始める。


せつ菜「ウインディ!! “にほんばれ”を!!」


私は“にほんばれ”を指示するが──


 「ワ、ワォン…」

せつ菜「ウインディ……!? どうしたの……!?」


“にほんばれ”が発動しない。


ランジュ「持久戦で、サンダーに勝とうとしたのが間違いだったわね! PP切れよ!」

せつ菜「PP……しまった、“プレッシャー”……!?」


戦ったことがないポケモンだったから完全に失念していた。

サンダーの特性は“プレッシャー”。相手の技のパワーポイントを多く削る特性。

つまり──


ランジュ「もう……“にほんばれ”は使えないわ! “かみなり”!!」
 「ヴァァァァァーーー!!!!!!」

せつ菜「“だいもんじ”!!!」
 「ワォォォォォンッ!!!!!!」


再び、“かみなり”を相殺するための“だいもんじ”を真上に放つ。

稲光が洞窟内に迸り、ウインディや私のすぐよこを走り抜けていく。


ランジュ「再一次! “かみなり”!!」
 「ヴァァァァァァ!!!!!」

せつ菜「“だいもんじ”ッ!!!」
 「ワォォォォォンッ!!!!!」


空中で衝突し、ほのおとでんきのエネルギーが爆ぜ散る。

すでに相手の狙いはわかっている。防御を強いて、こちらのパワーポイントを削ってきている。

わかってはいるけど──防御を止めたら直撃だ。

もう仕掛けるなら──ここしかない……!!


せつ菜「ウインディ!! “しんそく”!!」
 「ワォォォンッ!!!!!」


ウインディが地を蹴って飛び出す。

この大雨の中、“かみなり”は必中だ。

なら──“かみなり”に撃たれるよりも早く、攻撃を決めるしかない。


 「ワォォンッ!!!!」


ウインディが目にも止まらぬスピードで、サンダーに肉薄し、前足を伸ばした瞬間──


ランジュ「“放电”!」
 「ヴァァァァァッ!!!!」

 「ワォンッ…!!!?」


サンダーが全方位に放たれる電撃で、ウインディの攻撃を阻止した。


せつ菜「……!? “ほうでん”……!?」

ランジュ「貴方が仕掛けるなら──ここよね、せつ菜」


完全に読まれた。

飛び掛かりを阻止され、無防備になったウインディに向かって──


ランジュ「“打雷”!!」
 「ヴァァァァァァ…!!!!」


“かみなり”がウインディに向かって、真っすぐ降り注いだ。


せつ菜「ウインディ……!!」

 「ワ、ワォ…ン…」


“かみなり”の直撃によって黒焦げになったウインディの体が揺れ、倒れ──


 「ワォンッ…!!!!」


──なかった。


ランジュ「真的假的!? 嘘でしょ……!? 直撃したのよ……!?」

せつ菜「まだ、倒れませんよ……私の自慢の相棒ですから……!!」

 「ワォォォォンッ!!!!!!」

ランジュ「やるじゃない……!! でも、これで本当に終わりよ!!」
 「ヴァァァァァーーーーッ!!!!!」


再度、ウインディの直上に落ちてくる、“かみなり”。

迸る稲光は──ウインディに当たる直前に弾かれるようにして、地面に突き刺さる。


ランジュ「な……!」

せつ菜「温まってきましたね……ウインディ!!」
 「ワォォォォォーーーーンッ!!!!!!」


ウインディの“とおぼえ”が洞窟内に響き渡る。

気付けばウインディの周囲には陽炎が揺らめき、大量の熱量によって、空気がボッボッと燃えて、踊るように周囲を舞っている。


せつ菜「炎熱のエネルギーで“かみなり”を弾き飛ばしました……」

ランジュ「……嘘みたいだけど……ホントみたいね」


当たり前の話だが、ほのおポケモンは炎熱によって活性化する。

そしてその炎熱の源は──戦って使う自分自身のほのお技だ。ほのお技を使えば使うほど、自身の体温を上昇させる。

冷たい雨が降りしきる洞窟内だが──準備は整った。


 「ワォォォォォォーーーーーンッ!!!!!!」


ウインディが雄叫びをあげると同時に、一気に熱波を解放し──周囲の雨を一気に蒸発させていく。


ランジュ「サンダー……!! “みきり”!!」
 「ヴァァァァァッ…!!!!」


大技の予兆を察し、ランジュさんが回避の択を切ってくるが──ここまで温まったウインディには、もはや関係ない。


せつ菜「ウインディィィ!!! “だいふんげき”!!!!」
 「ワォォォォォォォォォーーーーーンッ!!!!!!!!!」


ウインディを中心に──激しい炎が、フィールド全体を焼き尽くさんばかりに膨張する。


 「ヴァァァァァァ…!!!?」
ランジュ「サンダー……!?」


“みきり”も関係ない。

炎熱に焼かれ、苦悶の鳴き声をあげるサンダーを、


 「ワォンッ!!!!!!」

 「ヴァァァッ!!!?」


炎を纏って暴れまわりながら、ウインディが飛び掛かり、地面に叩き落とす。

そして、そのまま──ゴォォォォッ!!!! と激しい音と共に、爆炎によって、至近距離からサンダーを焼き尽くした。

燃え盛る炎が、晴れる頃には──


 「ヴ、ヴァ、ァ……」


サンダーは黒焦げになって、戦闘不能になっていた。


ランジュ「く……! 戻りなさい、サンダー!」

せつ菜「やりました……! ウインディ!」


サンダー撃破……! 喜びと共に小さくガッツポーズをした直後、


 「ワ、ォォン…」


ウインディもフィールドに崩れ落ちた。


せつ菜「ウインディ……!?」

ランジュ「……相討ちみたいね」

せつ菜「……そうですね……。戻って、ウインディ」
 「……ワォォン──」


ウインディをボールに戻す。


せつ菜「ありがとう、ウインディ。ゆっくり休んで」


限界ギリギリの体力の中、全力の炎でサンダーを倒してくれた相棒に労いの言葉を掛ける。


ランジュ「……まさか、サンダーを1匹で突破されると思わなかったわ」

せつ菜「私も、自慢の相棒を1:1交換で持って行かれるとは思いませんでした。お互い様ですよ」

ランジュ「ふふ、言うじゃない」


これでお互い残りポケモンは2匹ずつ。

両者共倒れで仕切り直しだ。

そのとき、後ろから声が聞こえてきた──


かすみ「あ、あちち、熱いですぅ!!?」

侑「かすみちゃん、じっとしてて!? 今消火するから!?」
 「フィオーーーッ!!!」

かすみ「うぴゃぁぁぁ!!?」

歩夢「だ、大丈夫……かすみちゃん……?」

かすみ「助かったけど……ずぶ濡れですぅ……」


気付けば、背後では大騒ぎになっていた。


せつ菜「……あー……えっと、かすみさん、すみません……」


しずく「せつ菜さん! お気になさらず! 私たちは無事なので、引き続き全力で戦ってください!」

かすみ「かすみん、全然無事じゃないんだけど!?」

侑「あはは……」

リナ『問題ないから、せつ菜さんはバトルに集中して』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||


せつ菜「わ、わかりました!」


さすがに背後に気を遣いながら戦って勝てる相手ではない。

申し訳ないけど、そこは各々で対処してもらうことにしよう……。


ランジュ「さぁ、次よ!!」

せつ菜「……はい!!」


お互いの次のポケモンがフィールドへと繰り出された。





    🎙    🎙    🎙





せつ菜「行きますよ、ゲンガー!!」
 「──ゲンガァーーー!!!」

ランジュ「ナットレイ、出てきなさい!」
 「──…ナット」


こちらはゲンガー、ランジュさんはナットレイ。

これでランジュさんの手持ちは3匹目まで割れたことになる。


せつ菜「ゲンガー! メガシンカ!!」


私は“メガバングル”を構え、ゲンガーをメガシンカさせる。


 「ゲンガァァァァァ!!!!!!」

せつ菜「ゲンガー! “おにび”!!」
 「ゲンガァーー!!!!」

 「…ナット」


まずは“おにび”でナットレイを“やけど”状態にする。

対するナットレイは、


ランジュ「“やどりぎのタネ”!」
 「…ナット」

 「ゲンガ…!!」


“やどりぎのタネ”を発射し、ゲンガーに植え付ける。

お互いまずは補助技の応酬から始まる。


せつ菜「“たたりめ”!!」
 「ゲンガァーーー!!!!!」


呪いの力で攻撃をするが──


 「…ナット…」


ナットレイは微動だにしない。


せつ菜「……く……硬い……!」


ナットレイは受けに特化したポケモン。その硬さはポケモンの中でも随一な上に──ナットレイは攻撃を受ける合間に“たべのこし”を食べながら攻撃を受け止めている。

完全に受けの姿勢──なら、


せつ菜「ゲンガー、“ふしょくガス”!」
 「ゲンガァーーー!!!!」


ゲンガーが吐き出した、腐食性のガスによって、ナットレイの食べていた“たべのこし”が溶解を始める。

“ふしょくガス”は相手の持ち物を使えない状態にする技だ。

耐久型のポケモンにとって、回復ソースは生命線になる。

これは相手にとって痛手になると思ったが──


ランジュ「ナットレイ、“つるぎのまい”よ!!」
 「…ナット」


ランジュさんが作戦をスイッチする判断も速かった。


せつ菜「攻撃態勢……!? ゲンガー! “たたりめ”!!」
 「ゲンガァーーー!!!!」


相手が攻撃へ舵を切ってきたと判断し、すぐさま倒しきる姿勢に入るが──


 「…ナット」


“たべのこし”がなくなった程度では、ナットレイの頑丈な防御を崩しきれず、


ランジュ「“パワーウィップ”!!」
 「ナット…」


3本の触手を伸ばしながら叩き付けてくる。


 「ゲンガッ…!!!」
せつ菜「く……速い……!」


本体は緩慢な動きなのに、攻撃は俊敏で、回避が間に合わない、それどころか──叩き付けてきた触手の先にあるトゲをゲンガーの周囲の地面に突き刺し、


ランジュ「“ジャイロボール”!!」
 「ナット…」


触手を巻き取るようにして、猛スピードで転がりながら、突っ込んでくる。


せつ菜「……ゲンガー……!! 避けてください……!!」
 「ゲンガ…!!!」


真っ向から猛スピードで突っ込んでくるナットレイ。

それに対してランジュさんは、


ランジュ「──避けられないわけ、ないわよね?」


そう、私に向かって言ってきた。それと同時に、


 「…ナット」


ナットレイがゲンガーの目の前で──急カーブした。


ランジュ「口で避けるように指示しながら──本当は“みちづれ”を狙ってることくらい、気付いてるわ!」

せつ菜「……っ!?」


黒いオーラを纏うゲンガーの目の前を横切ったナットレイは“みちづれ”を回避し、“みちづれ”の効果が切れると同時に、地面に突き刺した触手を引き抜きながら──それを“ぶんまわす”。


 「ゲンガッ…!!!!」
せつ菜「ゲンガー!?」


まるでモーニングスターのように振り回される触手がゲンガーを突き飛ばし、


ランジュ「さぁ、トドメよ!!」

 「…ナット」


今度こそ、方向転換をし“ジャイロボール”で突っ込んでくる、ナットレイ。


せつ菜「ゲンガー……!!」


このタイミングなら、ギリギリ間に合う……!!


 「ゲンガッ…!!!」


ゲンガーが再びぼわっと“みちづれ”の黒いオーラを身に纏う。


ランジュ「だから……読めてるわ!」

 「…ナット」


ナットレイが今度はゲンガーの目の前で飛び跳ねた。


せつ菜「……っ……!」

ランジュ「まあ、もうそうするしかないものね」


飛び跳ねたナットレイは攻撃タイミングを僅かにずらし、ゲンガーに向かって落ちてくる。


ランジュ「“アイアンヘッド”!!」

 「…ナット」

 「ゲンガッ…!!!!」


ナットレイの鋼鉄の体をぶつけられたゲンガーは、


 「ゲン…ガァ…」


その場に倒れ、戦闘不能になってしまった。


せつ菜「ゲンガー……戻って……!」
 「ゲンガ…──」


まずい……。……ペースを崩された。

もっと相手の防御と攻撃の切り替えに素早く対応しなければいけなかったのに……。

思わず唇を噛み締めたそのとき、


侑「せつ菜ちゃーん!! 頑張ってー!!!」

かすみ「相手もダメージ蓄積してますよー!! まだ行けますー!!」


後ろから聞こえてくる応援を聞いて、私は頭を振る。

──反省は後だ。今はバトルに集中。


ランジュ「さぁ、これで貴方の残りは1匹ね」

せつ菜「……はい。ですが……負けません……!!」


私はボールをフィールドに向かって、投げ込んだ。





    🎙    🎙    🎙





せつ菜「ウーラオス!! 行きますよ!!」
 「──ラオスッ!!!!」


最後の1匹、ウーラオスをフィールドに繰り出す。

そして、相手が動き出す前に──


せつ菜「“ばくれつパンチ”!!」
 「ラオスッ!!!!!」

 「ナット…!!!!」


動きの鈍いナットレイに、超威力の拳を叩き付ける。


 「ナット…」
ランジュ「戻りなさい、ナットレイ」


3匹目の繰り出しと共に、あっけなくナットレイを倒されたという割に、ランジュさんは淡泊な表情でナットレイをボールに戻す。

ナットレイはかすみさんの言うとおり、削りダメージを十分に受けていたし、恐らくここで倒されるのは想定内なのだろう。


ランジュ「バシャーモ!! 決めるわよ!!」
 「──バシャーーーモッ!!!!」


メガバシャーモが再びフィールドに躍り出る。

さぁ、泣いても笑ってもこれが最後のマッチアップだ……!


ランジュ「バシャーモ、“ブレイズキック”!」

せつ菜「ウーラオスッ!! “あんこくきょうだ”ッ!!」


メガバシャーモの燃える蹴撃と──ウーラオスの闇を纏った“ふかしのこぶし”がぶつかり合う。


 「ラオスッ!!!!」

 「シャモッ…!!!」


威力では──こちらが優勢……!!!

振りかぶった足を弾かれ、バランスを崩したところに畳みかける。


せつ菜「“インファイト”!!」
 「ラオスッ!!!!」

ランジュ「こっちも“インファイト”よ!!」
 「シャーーモッ!!!!」


両手両足を使った乱打に対し、メガバシャーモもすぐに体勢を立て直しながら対抗してくる。

振り上げてきた脚に対して腕を上げて防ぎ、顔に飛んでくる拳に対しては首を曲げて躱し、腹部に刺してくる拳を手の平で受け止める。

肉薄し、一進一退の格闘戦が繰り広げられる中、


ランジュ「バシャーモ!!」
 「バシャァーッ!!!!」

せつ菜「ウーラオス!! 引いて!!」
 「ラオスッ!!!!」


── 一瞬の判断。メガバシャーモが口を開いた瞬間、ウーラオスは後ろに飛び退き、


 「シャーーモッ!!!!」


メガバシャーモの口から噴き出される“かえんほうしゃ”を、身を捻って回避する。


ランジュ「そこよ!! “ブレイズキック”!!」
 「シャーーーモッ!!!!」


身を捻って体勢の悪いところに追い打ちの燃える蹴撃。

だが、


せつ菜「“あくのはどう”!!」
 「ラオスッ!!!」

 「シャモッ…!!!」


ここで接近は許さない。“あくのはどう”で怯ませながら、ステップを踏み、


せつ菜「そこです!! “あんこくきょうだ”!!」


拳を構えて──今度は逆にメガバシャーモの隙に、強烈な拳を突き出す。


 「ラオスッ!!!」


この位置関係──もう回避は間に合わない……!!

ウーラオスの拳がメガバシャーモの顔面を捉えた──と思った瞬間、メガバシャーモの上半身が掻き消える。


せつ菜「な……!?」


──掻き消えた……違う……!?

メガバシャーモは、その場で上体を後ろに逸らし、ブリッジのような状態から、


ランジュ「“ブレイズキック”!!」
 「シャーーーモッ!!!」

 「ラオスッ…!!?」


サマーソルトでもするかのように、ウーラオスの顎を炎を纏った脚で蹴り上げる。

ウーラオスの体がそれで浮き上が──


 「ラオスッ!!!!!」


──りそうになった瞬間、ウーラオスは震脚し、堪えながら、


せつ菜「“かわらわり”!!」
 「ラオスッ!!!!」

 「シャーーモッ…!!!?」


体を戻す勢いを乗せたチョップをメガバシャーモに叩き付ける。


 「シャモッ…!!!」


メガバシャーモの体が跳ね、そこに向かって──


せつ菜「“メガトンキック”!!」
 「ラオスッ!!!!!」


蹴りを繰り出す。

が、


 「シャーーーモッ!!!!」


メガバシャーモは体勢を崩しているはずなのに、飛んでくるウーラオスの蹴撃を、自分の脚で上からはたくようにして叩き落とし──さらに、叩き落とした反動を使って、身を捻りながら、


 「シャーーーモッ!!!!」

 「ラオスッ…!!!?」


ウーラオスの顔面に蹴りを叩きこんでくる。


せつ菜「く……!? あの体勢から“にどげり”!?」


二撃目の蹴りを直撃させ、ウーラオスが怯んだ隙に着地したメガバシャーモは、


 「シャーーーモッ!!!!!」


“かそく”したスピードで、掻き消える。

次の瞬間──


 「シャーーーモッ!!!!」


ウーラオスの左側に脚を引きながら現れるメガバシャーモ。


せつ菜「“みきり”!!」
 「ラオスッ!!!」


ウーラオスは腕を上げ、ギリギリでメガバシャーモの蹴りをガードし、


せつ菜「“いわくだき”!!」
 「ラオスッ!!!!」

 「シャモッ…!!!」


ガードしたのとは逆の拳をメガバシャーモに叩きこむ。


 「シャモォッ!!!」


“いわくだき”は決して威力の高い技ではないので、メガバシャーモは受け身を取ってすぐに立ち上がり、構えを取ってくる。


せつ菜「はぁ……はぁ……」


息もつかせぬ攻防とはまさにと言った戦いに、気付けば肩で息をしていることに気付く。

そしてそれは──ランジュさんも同じだったようだ。


ランジュ「はぁ……! はぁ……! やるじゃない、せつ菜……!」

せつ菜「ランジュさんこそ……!」
 「ラオスッ…!!!」


ウーラオスが拳を引き、黒いオーラを纏う。


 「シャーーモッ!!!!」


メガバシャーモの脚に炎が灯る。

この激しい攻防──恐らく次で決着がつく。


 「ラオスッ!!!!!」

 「シャーーーモッ!!!!」


2匹が同時に地を蹴って飛び出した。


せつ菜「“あんこくきょうだ”ッ!!!!」

ランジュ「“ブレイズキック”!!」

 「ラオスッ!!!!」

 「シャァァァァーーモッ!!!!!」


ウーラオスの闇の拳と、メガバシャーモの炎の脚が──ぶつかり合う。

お互いの攻撃がぶつかり合った瞬間、あくのエネルギーとほのおのエネルギーが爆ぜ散りながら、迫り合いを始める。


せつ菜「いっけぇぇぇぇ!!!! ウーラオスッ!!!!」

ランジュ「バシャーモ!!! 決め切りなさい!!!」

 「ラオーーースッ!!!!!!」

 「シャァーーーーモッ!!!!!!」


2匹の雄叫びと共に、2種類のエネルギーが膨れ上がり──

周囲に衝撃波を発生させる。


せつ菜「くっ……!!」

ランジュ「きゃぁ……!!」


衝撃波は強風となり、トレーナーの私たちは腕で顔を覆う。

衝撃が止んだとき、そこには──


 「ラオォォス…!!!」

 「シャァァァモ…!!!」


満身創痍の2匹の姿。


せつ菜「ウーラオス……!!」
 「ラォォォスッ!!!!!」


ウーラオスがメガバシャーモよりも先に脚を踏み出した──が、


 「ラオ…」


直後、ウーラオスの体がぐらりと揺れて──

地に伏せったのだった。


せつ菜「…………ウーラオス」

ランジュ「……ウーラオスが持ってた持ち物……“いのちのたま”よね」


──“いのちのたま”。自分の体力を攻撃のエネルギーに変換する持ち物だ。

例え相手がメガシンカポケモンだったとしても、渡り合えるようにと持たせたものだったが……。


ランジュ「……パワーは完全に互角だったわ」

せつ菜「……“いのちのたま”で失った分の体力が……明暗を分けたようですね……。……ウーラオスお疲れ様、戻ってください」
 「…ラオ、ス…──」


私はウーラオスをボールに戻しながら、ランジュさんの方へと歩を進める。


せつ菜「ランジュさん」

ランジュ「せつ菜」


お互い真正面で向き合い、手を振り上げ──


せつ菜「いいバトルでした!! ありがとうございます!!!」

ランジュ「该说的是我! 楽しい試合だったわ!!」


お互いの健闘を称え合い、固く握手を交わしたのだった。


せつ菜「ですが、次は私が勝ちますよ!!」

ランジュ「望むところよ。まあ、何度やっても勝つのはランジュだけどね!」


お互いが健闘を称え合い、次の試合に対する意気込みを交わし合っていると──


ミア「次の試合は置いておいて……。とりあえず、これでランジュの2勝だ」


と言いながら、ミアさんが私たちのもとにやってくる。


せつ菜「2勝……? ……あ……!!」


熱い勝負に胸を躍らせていて、完全に忘れてしまっていた。

私が敗北したということは──私たちは五番勝負で、早くも追い詰められたことを意味していた。





    🎹    🎹    🎹





侑「せつ菜ちゃん、お疲れ様!」
 「ブイ♪」

せつ菜「……すみません……。……あれだけのことを言ったのに……負けてしまいました……」

侑「うぅん、全力で戦った結果だから、仕方ないよ」

せつ菜「侑さん……」


私がせつ菜ちゃんを労っていると──


かすみ「いやいや、そんなこと言ってる場合ですか!? かすみんたち追い詰められちゃいましたよ!?」


かすみちゃんが青い顔をしながら言う。


せつ菜「す、すみません……」

しずく「こら、かすみさん!! そんな言い方したら、めっだよ!!」

リナ『そもそも、かすみちゃんも負けてる』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

かすみ「ちょ、リナ子ぉ!!」

栞子「お、落ち着いてください、かすみさん……!」

かすみ「で、でもぉ……」

侑「勝負には時の運もあるからさ……」

せつ菜「そう言っていただけると……助かります……」

侑「うん、あんまり気にしすぎないで」

せつ菜「はい……!」


かすみちゃんの言いたいこともわかるけどね。


侑「とりあえず、今日はもう休もう」
 「ブイ」

歩夢「そうだね……せつ菜ちゃんも疲れてると思うし」

せつ菜「いえ、私はまだまだ行けますよ!」

しずく「そう言いながら、膝が笑ってますよ、せつ菜さん」

せつ菜「え? お、おかしいですね……」

栞子「あれだけの戦いの後なんです……ご無理はなさらないでください」

かすみ「はぁ……仕方ないですねぇ……かすみんがひとっ走り行ってきて、ホテルを予約してきますよ!」


そう言って、かすみちゃんが駆け出して行く。


しずく「え、あ、ちょっとかすみさん! ……行っちゃった。かすみさん、泳げるポケモンいないのに、どうやってここから出るんだろう……」

栞子「そ、そうでした……! かすみさんが溺れてしまいます!?」

しずく「いや……たぶん、海の前で手をこまねいてるだけだと思うけど……」

歩夢「とりあえず、外に出よっか」

侑「そうだね……」

リナ『ちなみにネット予約出来たから、部屋は今確保した』 || ╹ᇫ╹ ||

せつ菜「おぉ!! さすがですね、リナさん!!」

リナ『海の見えるリゾートホテルだよ♪』 || > ◡ < ||

歩夢「あ、ちょっと楽しみかも♪」

しずく「フソウのリゾートホテルでバカンス……いいですね……♪」

侑「せつ菜ちゃん、行こうか」

せつ菜「はい!」


私たちはフソウのホテルを目指して、漣の洞窟を後にする。

五番勝負にて、今後の試合で全勝しなければいけなくなったという、課題を背負いながら──




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【漣の洞窟】
 口================== 口

  ||.  |○         o             /||
  ||.  |⊂⊃                 _回/  ||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||.○⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :  ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  .||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  .||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  .||
  ||.       /.         回 .|     ●  ||
  ||.    _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||. /              o回/         ||
 口==================口



 主人公 侑
 手持ち イーブイ♀ Lv.82 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
      ウォーグル♂ Lv.79 特性:まけんき 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
      ライボルト♂ Lv.80 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
      ニャスパー♀ Lv.77 特性:マイペース 性格:きまぐれ 個性:しんぼうづよい
      ドラパルト♂ Lv.78 特性:クリアボディ 性格:のんき 個性:ぬけめがない
      フィオネ Lv.74 特性:うるおいボディ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:275匹 捕まえた数:12匹

 主人公 歩夢
 手持ち エースバーン♂ Lv.68 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
      アーボ♂ Lv.69 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
      マホイップ♀ Lv.65 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
      トドゼルガ♀ Lv.64 特性:あついしぼう 性格:さみしがり 個性:ものおとにびんかん
      フラージェス♀ Lv.64 特性:フラワーベール 性格:おっとり 個性:すこしおちょうしもの
      ウツロイド Lv.73 特性:ビーストブースト 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 3個 図鑑 見つけた数:254匹 捕まえた数:24匹

 主人公 かすみ
 手持ち ジュカイン♂ Lv.84 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
      ゾロアーク♀ Lv.78 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
      マッスグマ♀ Lv.75 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
      サニゴーン♀ Lv.75 特性:ほろびのボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
      ダストダス♀✨ Lv.74 特性:あくしゅう 性格:がんばりや 個性:たべるのがだいすき
      ブリムオン♀ Lv.76 特性:きけんよち 性格:ゆうかん 個性:ちょっとおこりっぽい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:298匹 捕まえた数:15匹

 主人公 しずく
 手持ち インテレオン♂ Lv.68 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
      バリコオル♂ Lv.68 特性:バリアフリー 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      アーマーガア♀ Lv.68 特性:ミラーアーマー 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ロズレイド♂ Lv.68 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
      サーナイト♀ Lv.68 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ツンベアー♂ Lv.68 特性:すいすい 性格:おくびょう 個性:ものをよくちらかす
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:279匹 捕まえた数:23匹

 主人公 せつ菜
 手持ち ウーラオス♂ Lv.79 特性:ふかしのこぶし 性格:ようき 個性:こうきしんがつよい
      ウインディ♂ Lv.87 特性:せいぎのこころ 性格:いじっぱり 個性:たべるのがだいすき
      スターミー Lv.83 特性:しぜんかいふく 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      ゲンガー♀ Lv.85 特性:のろわれボディ 性格:むじゃき 個性:イタズラがすき
      エアームド♀ Lv.81 特性:くだけるよろい 性格:しんちょう 個性:うたれづよい
      ドサイドン♀ Lv.84 特性:ハードロック 性格:ゆうかん 個性:あばれることがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:202匹 捕まえた数:51匹

 主人公 栞子
 手持ち ピィ♀ Lv.11 特性:メロメロボディ 性格:やんちゃ 個性:かけっこがすき
      ウォーグル♂ Lv.71 特性:ちからずく 性格:れいせい 個性:かんがえごとがおおい
      ウインディ♀ Lv.70 特性:もらいび 性格:さみしがり 個性:のんびりするのがすき
      ゾロアーク♂ Lv.68 特性:イリュージョン 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      イダイトウ♀ Lv.68 特性:てきおうりょく 性格:さみしがり 個性:にげるのがはやい
      マルマイン Lv.68 特性:ぼうおん 性格:きまぐれ 個性:すこしおちょうしもの
 バッジ 0個 図鑑 未所持


 侑と 歩夢と かすみと しずくと せつ菜と 栞子は
 レポートに しっかり かきのこした!


...To be continued.




■ChapterΔ006 『雪山の争闘』 【SIDE Yu】





かすみ「ねーしお子~……まだ飛ぶの~……?」

栞子「はい……反応はずっと、北西方面なので……」


──フソウで一晩を過ごした私たちは、今は北西に向かって飛行中。

そろそろカーテンクリフ上空に差し掛かろうという頃合だ。


歩夢「この方向だと……」

侑「グレイブマウンテンかな……」
 「ブイ」

栞子「恐らくは……」

しずく「となると……一度ヒナギクで降りる感じでしょうか」

せつ菜「そうですね。補給無しで山に入るのは危ないでしょうし」

侑「それじゃ、一旦ヒナギクを目指そう」


私たちはヒナギクへと進路を定める。


栞子「……ヒナギクシティ……」

歩夢「? 栞子ちゃん……?」

栞子「いえ……なんでもありません」

歩夢「そう……?」





    🎹    🎹    🎹





──ヒナギクシティへ到着し、降り立った途端、


かすみ「へっくちっ!!」


かすみちゃんが可愛くくしゃみをする。


しずく「かすみさん、大丈夫……!?」

かすみ「う、うん……。……でも、寒すぎますぅ……」


確かにかすみちゃんの言うとおり、ヒナギクシティは凍えるほど寒かった。

今も雪がパラついているし……。


かすみ「前来たときはこんなに寒くなかったのにぃ……」

しずく「前って言っても、もう半年前だからね……」

リナ『あの時期だと、だいたい初夏くらいだったからね。そろそろ冬になるから、さすがに寒くて当然』 || ╹ᇫ╹ ||


全員耐寒用のコートを羽織ってはいるものの……それでも、寒いものは寒い。


せつ菜「一度装備を整えた方がいいかもしれませんね」

歩夢「うん……グレイブマウンテンに入るなら尚更だよね。栞子ちゃん、反応ってやっぱりグレイブマウンテンの方からなのかな?」


歩夢が問いかけるけど──


栞子「……」


栞子ちゃんは雪がパラつく町の中で、行き交う人々をボーっと眺めていた。


歩夢「栞子ちゃん?」

栞子「え……? あ、す、すみません、なんでしょうか」

歩夢「龍脈の反応は、どっちにあるのかなって……」

栞子「あ、龍脈ですね……!」


栞子ちゃんは手に持った“もえぎいろのたま”を見つめる。

ぱぁぁぁと輝く宝玉は、栞子ちゃんがグレイブマウンテンの方に向けてかざすと、少しだけ光が強くなる。


栞子「……北方面ですね」

侑「となると……やっぱり、グレイブマウンテンかな」

せつ菜「ですね!」

かすみ「それはわかったので、とりあえずどこか入りましょうよぉ~……かすみん、寒くて凍えそうですぅ~……」

侑「じゃあ、まずはポケモンセンターかな。ポケモンたちも山に入る前に休ませたいし」

歩夢「そうだね」

かすみ「早く温かいエネココアが飲みたいですぅ~!!!」


そう言って、かすみちゃんが一人駆け出す。


しずく「あ、ちょっとかすみさん……行っちゃった……」

せつ菜「よほど寒さが辛かったのかもしれませんね」

しずく「すみません……協調性がなくて……」

リナ『走ると身体もあったまるし、ちょうどいいんじゃない』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

侑「私たちも急ごうか」


暖かい場所に行きたいのは、私たちも同じだからね。

かすみちゃんを追って、みんなでポケモンセンターを目指して歩き始める。

そんな中、


栞子「…………」


栞子ちゃんはまた町の様子を見て、ボーっとしていた。


歩夢「栞子ちゃん?」

栞子「え、あ、はい、すみません……! 移動するんですよね!」

歩夢「大丈夫……? もしかして、どこか具合悪い……?」


歩夢が心配そうに訊ねる。


栞子「い、いえ……! その……ちょっと、町の様子を見て、驚いてしまって……」

歩夢「驚く……?」

栞子「はい……この町──」


栞子ちゃんが話そうとしたところで、


かすみ「──もうーーーー!!! 皆さんも早く来てくださいーーーー!!!」


かすみちゃんが声を張り上げて、ポケモンセンターの前でぴょんぴょんしていた。


侑「とりあえず、移動しよう」

歩夢「あ、うん、そうだね! 栞子ちゃん、行こ♪」

栞子「は、はい!」


歩夢が栞子ちゃんの手を握って、歩き出す。

歩夢に手を引かれて歩く間も、


栞子「……ここが……ヒナギクシティ……なんですね……」


栞子ちゃんはヒナギクの町をぼんやりと見つめながら、そう呟いていた。





    🎹    🎹    🎹





かすみ「はふぅ~……。生き返るぅ~……」


みんなで温かい飲み物を飲みながら一息吐く。


せつ菜「ポケモンたちもみんな預けてきました!」


ポケモンたちを預けるために、センターのポケモン預け口まで行っていたせつ菜ちゃんも戻ってきて合流する。


侑「ありがとう、せつ菜ちゃん。ごめんね、全員分お願いしちゃって……」

せつ菜「いえ! お気になさらないでください! 6人分バラバラに預けるとジョーイさんも大変だと思うので!」

歩夢「ふふ、ありがとうせつ菜ちゃん♪ これ、せつ菜ちゃんの分のエネココアだよ♪」

せつ菜「頼んでおいてくれたんですね! ありがとうございます!」


せつ菜ちゃんも席に着き、今後の話をしたいところだけど──その前に、


歩夢「それで、栞子ちゃん。驚いたって言うのは……」


さっき、栞子ちゃんが言いかけたことの続きが先かな。


栞子「あ、はい……。……その……ヒナギクは、龍神様のお怒りの余波を受けて……雪に閉ざされてしまった町と聞いていたので……」

かすみ「? 今も見たとおり雪に閉ざされてるじゃん……?」

栞子「ですが……行き交う人々には、活気が感じられました……」

しずく「確かに……特有の活気はあるかも……」

リナ『この町は、活気の性質が濃すぎるところあるけどね』 ||;◐ ◡ ◐ ||


確かにこの寒さなのに、窓の外を見ると、いかにもなオカルトガールやサイキッカーが出歩いている。


せつ菜「この町にいる方たちは、皆熱い気持ちを持っていますからね!! 私も以前、町ゆく人にお話を伺ったことがあります! 言い知れぬ力を感じると言っていました!」

栞子「言い知れぬ力……!? まさか、この町の方たちは龍脈を感じ取る力のようなものがあるのですか……!?」

せつ菜「はい!! 龍脈ではありませんが、彼女たちは『私たちには見えている……』と、仰っていました!!」

栞子「す、すごいです……! やはり、この町にいる方たちは、特別なんですね……!」

かすみ「しお子~……間に受けちゃダメだよ~……」

栞子「え?」


栞子ちゃんがきょとんとする。


かすみ「せつ菜先輩もしお子に変なこと教えないでくださいよ! 説明がめんどくさいんですから!」


まあ、確かに……栞子ちゃんには、この町の人たちを説明するのは難しいというか……。

栞子ちゃんは特別な力を持った翡翠の巫女だから、尚更……。


せつ菜「変なこと……? 私、何かおかしなことを言ったでしょうか……? この町の方たちには不思議な力があるんじゃないんですか?」

かすみ「……マジですか」

歩夢「せつ菜ちゃん……! 変な人に勧誘とかされても、絶対付いて行っちゃダメだよ……!」

せつ菜「……? わかりました……?」


せつ菜ちゃんはせつ菜ちゃんで心配かも……。


しずく「えっと……それで、栞子さんはこの町の活気が気になったの?」

栞子「あ、はい!」


しずくちゃんがズレてしまった話を戻す。


栞子「正直なことを言うと……龍神様の力の被害を最も受けた場所と言っても過言ではないので……ここに来るのは少し気が引けていたんです……。でも……いざ実際に町を見ていたら、思った以上に活気のある町になっていて、驚いてしまって……」

歩夢「そういうことだったんだね……」

せつ菜「この町は確かに他の町に比べると、少し厳しい環境かもしれませんが……それでも、ここにいる方たちはしっかりと生活していますからね」

しずく「ヒナギクはいろんな人たちが、ポケモンと力を合わせて開拓した町と言われています」

リナ『近年で最も発展した町なんて言われることもあるね』 || ╹ᇫ╹ ||

栞子「そうなんですね……」

かすみ「確かにすごいですよね~。かすみん、こんな寒い場所に頑張って住もうなんてなかなか思えませんもん……」

せつ菜「確かにそう考えると、この町からは人やポケモンの逞しさを感じますね……」

歩夢「ふふ♪ 人とポケモンが力を合わせれば、案外住めない場所なんてないのかもしれないね♪」

栞子「人とポケモンが……力を合わせれば……。……そう、ですね……。……そうなのかもしれません」


栞子ちゃんはそう言ってから、しばらくの間、ボーっと……窓の外から見える、雪の積もったヒナギクの町を眺めていたのだった。




    🎹    🎹    🎹





──あの後、私たちはポケモンたちを預けている間に、雪山に入るための装備を整え、


かすみ「……あっつ……。……脱ぎたい……」

しずく「これから寒い場所に行くためでしょ……」

せつ菜「これなら、寒さは問題なさそうですね!」


これで、山に入るための準備は万端だ。


歩夢「ねぇ侑ちゃん……この帽子、もこもこで可愛かったから買っちゃったんだけど……どうかな……?」

侑「うん! すっごく可愛いよね、その帽子! 私も最初に見たとき歩夢が被ったら絶対似合いそうって思ってたよ!」
 「ブイ♪」

歩夢「えへへ……♪ ありがとう♪ 嬉しい♪」

せつ菜「食糧も十分に持ちましたし、これでグレイブマウンテンへ行けますね!」

リナ『それはそうと……決めておかなくちゃいけないことがある』 || ╹ᇫ╹ ||

かすみ「決めておかなくちゃいけないこと?」

侑「……次に誰が戦うかだよね」

リナ『うん』 || ╹ ◡ ╹ ||


私たちはここまで2戦2敗。

あと1敗したら、それで負けが確定してしまう。


歩夢「これ以上負けちゃったら……ランジュちゃんを止められなくなっちゃう……」

侑「どちらにしろ、ここから求められるのは全戦全勝だけど……」

歩夢「わ、私も勝たなきゃってことだよね……」

せつ菜「すみません……私が負けてしまったばっかりに……」

歩夢「あ、うぅん! せつ菜ちゃんが悪いんじゃないよ……!」

リナ『とにかく、侑さん、歩夢さん、しずくちゃんの3人で全部勝つためには……その場その場でコンディションや、フィールドの環境に一番噛み合った人が戦うのがいいと思う』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「環境に噛み合った人……」


確かにこれから向かうのはグレイブマウンテン──つまり、雪山だ。

そういう場所で戦うなら……。


侑「……私は雪山で戦った経験がある」
 「ブイ」


理亞さんとの戦闘の経験がある。


リナ『確かに雪山なら、ライボルトで電気を集束したりも出来るから、侑さんは相性がいいかもしれない』 || ╹ ◡ ╹ ||

侑「じゃあ、次の試合は──」


──私と言おうとした、そのとき、


しずく「あの……! 次の試合は私に戦わせてくれませんか!」


しずくちゃんが名乗りを上げた。


かすみ「しず子……?」

しずく「グレイブマウンテンとのフィールド相性と言うなら……私もあそこで捕まえたツンベアーを持っています。それに侑先輩は残りの3人の中では確実に1番強い……。……なら、私と歩夢さんどちらも勝算が見込めない場をお任せしたいです」

リナ『……それは確かに』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「わかった。そういうことなら……しずくちゃん、お願いできる?」


私の問いに、


しずく「はい! お任せください!」


しずくちゃんは力強く頷くのだった。





    🎹    🎹    🎹





──さて、“そらをとぶ”でグレイブマウンテンに入って数十分。


栞子「この辺りですね。ウォーグル」
 「ウォーグ…」


全員で雪に覆われた山へと降下していく。

場所としては中腹くらいだろうか。

私たちが降り立った場所には──氷で覆われた岩が鎮座していた。

触ると自分まで凍りそうな冷気を放っている不思議な岩だった。


リナ『この岩から、“こおりのいし”に似たエネルギーを感知出来る』 || ╹ᇫ╹ ||

しずく「ここで間違いなさそうですね」

栞子「はい。“もえぎいろのたま”も龍脈のエネルギーを吸収し始めています」

せつ菜「となると……後はランジュさんたちが来るのを待つだけですね」


とりあえず前回同様、先に到着出来たので、あとはここで準備をしながら待つだけだ。


かすみ「…………」

歩夢「かすみちゃん?」

しずく「……やけに大人しいね、かすみさん」


そこでふと、かすみちゃんがやたら大人しいことに気付く。


かすみ「……むしろ、皆さん怖くないんですか……」

栞子「恐い……とは……?」

かすみ「冬の雪山ですよ……かすみん知ってますよ、おっきな声とか出すと、雪崩が起こって大変なことになるんです……。……前回も雪崩で大変なことになったし……」

しずく「あれはフリージオが起こした“ゆきなだれ”だし……。……かすみさん、映画の見過ぎだよ?」

かすみ「え、しず子がそれ言う……?」

歩夢「映画でよく見る、大声で雪崩が起こるのはフィクションだから大丈夫だよ」

かすみ「へ? そうなんですか……?」

せつ菜「人の声くらいのエネルギーでは、さすがに雪崩を発生させることは難しいですからね」

かすみ「……でも、せつ菜先輩の大声なら、雪崩くらい起こせそう」

せつ菜「……確かに、私は声が大きいとよく言われます。……そう言われると、もしかしたら、出来るんじゃないかって気がしてきました……!!」


せつ菜ちゃんはスゥーーーっと思いっきり息を吸い込み、


せつ菜「私はーーーチャンピ──……もがっ!」


大声を張り上げようとしたので、栞子ちゃん以外が一斉にせつ菜ちゃんの口を塞ぐ。


せつ菜「……むー。……むー」

侑「ご、ごめん……。せつ菜ちゃんなら、本当に雪崩起こしかねないと思って……」

しずく「……わ、私も……ありえないってわかっているのに、せつ菜さんならやってしまいそうだと……」

かすみ「き、肝が冷えましたよ……勘弁してください……」

歩夢「人の声くらいじゃ起こらない……。起こらない……よね……?」


逆の意味で、せつ菜ちゃんへの信頼感がすごい私たちだった。


せつ菜「わかりました。雪崩チャレンジはまた今度にします!」

かすみ「一生やらないでくださいっ!!」

侑「あはは……」


思わず苦笑してしまう。本当にそのうち、声で雪崩を起こすのに成功しそう……。


侑「とりあえず……ランジュちゃんたちが来るまでどうしようっか」

せつ菜「じっとしていると身体が冷えてしまいそうですね……」

かすみ「あ、なら、かまくらでも作りますか? かすみん結構得意なんですよ~♪」

栞子「かまくら……? なんですか、それは……?」

かすみ「え、しお子、かまくらも知らないの!? ……仕方ないなぁ~……かすみんが雪遊びのなんたるかを教えてあげますよ~」

栞子「は、はい! お願いします!」

歩夢「それじゃ、私は雪うさぎ作ろうかな……♪」


みんながかまくら作りの話をし始める中、


しずく「……すみません。私……少し、席を外しますね」


しずくちゃんは、私たちに背を向けて歩き出す。


かすみ「しず子……? どこ行くの……?」

しずく「……ちょっと、試合の前に、気持ちを落ち着けたいなって……そんなに離れた場所に行くわけじゃないから、心配しないで」


そう残して──しずくちゃんは、行ってしまった。


かすみ「しず子……やっぱり、緊張してるのかな」

せつ菜「……そうですね。ランジュさんが強敵だと言うことは、しずくさんも理解しているでしょうし……負けられないというプレッシャーもありますから……」

かすみ「……かすみんたちが勝ってれば……」

せつ菜「……今更言っても仕方ありません。今はしずくさんを信じましょう」

かすみ「はい……」





    💧    💧    💧





しずく「…………」


目を瞑って──ゆっくりと呼吸する。

雪山の冷たい空気が肺に入ってきて痛いくらいだけど……お陰で頭も一緒に冷やされて冷静になれる気がした。


しずく「…………大丈夫」


自分に言い聞かせるように言葉にする。


しずく「私が……かすみさんの分まで……頑張るんだ」


プレッシャーはある。

私は積極的にバトル──特に試合形式のものはしてこなかった故に、不安もある。

だけど……私も、ここまで旅をしてきた、図鑑所有者の一人なんだ。


しずく「……大丈夫……」


もう一度自分に言い聞かせながら目を瞑る。

でも──ドックン、ドックンと、心の臓が音を立てていた。


しずく「……大丈夫……」


もう一度、自分に言い聞かせるように言った──そのとき、


歩夢「──……大丈夫だよ」

せつ菜「──しずくさんなら、大丈夫です」


いつの間にか私の隣に居た歩夢さんとせつ菜さんが、私の手を握りながら言う。


しずく「歩夢さん……せつ菜さん……」


目を開けると──二人が優しく私の手を握りながら、私を真っすぐ見つめていた。


せつ菜「前にも言いましたが……しずくさんは、自分のステージを作り出せれば、ランジュさんにも劣らない実力を持っています。自信を持ってください!」

しずく「せつ菜さん……」

せつ菜「自分で言うのもあれかもしれませんが……しずくさんは、私に一杯食わせたんですよ? あのときの力を出せば、きっと勝てますから!」

しずく「……はい」


せつ菜さんの言葉に頷く。


歩夢「しずくちゃんは、私の大切なもの……全部守ってくれた……。……しずくちゃんも怖かったはずなのに……全部全部守ってくれたから……。……しずくちゃんの勇気と芯の強さがあれば、誰にも負けないって信じてるよ」

しずく「歩夢さん……」


あのとき、ウルトラディープシーで共に過ごした二人からの激励の言葉に、


しずく「……はい。……はい……!」


私は力強く頷いた。

気付けば──ドクン、ドクン、と激しく主張していた心の臓は、少しずつ落ち着きを取り戻していた。


しずく「歩夢さん、せつ菜さん」

歩夢「ふふ、なぁに?」

せつ菜「なんですか?」


微笑みながら訊き返してくる二人に、


しずく「勝ってきます」


そう伝える。


歩夢「うん♪」
せつ菜「はい♪」


頼もしい二人の言葉に応えられるように、私は覚悟を決めたのだった。





    💧    💧    💧





あれから、小一時間ほど経った頃に──ランジュさんたちは現れた。


ランジュ「また、先に着けなかった……」

ミア「それより……ボク寒いんだけど……」


二人とも、ちゃんと防寒装備はしてきているけど、ミアちゃんは寒そうに腕をさすっている。


かすみ「ふっふっふ……特別にかすみん特製かまくらの中に入れてあげてもいいですよ~?」

ミア「Huh? そんな雪で作ったものの中に入っても、余計寒いだけだろ……」

かすみ「騙されたと思って入ってみるといいですよ!」

ミア「……はぁ……なんなんだよもう……」


そう言いながらも、ミアさんはかまくらの中に足を運ぶ。


ミア「……確かに暖かい」

栞子「はい! 私も入ってみて驚きました! 雪で出来ているのに、不思議です!」

ランジュ「ちょっとミア! ポケモン渡してからにしてよ!」

ミア「そうだった……」


ミアさんはかまくらから出て、ランジュさんにボールの入ったケースを渡し──そそくさとかまくらに戻っていく。

結構気に入ったのかもしれない。


かすみ「ふんふん! しお子もミア子も素直でよろしい!」

ミア「ミア子……? 勝手に変なあだ名付けるなよ」

かすみ「えーでも、年下なんでしょー? ミア子がちょうどいいって!」

ミア「なんなのこいつ……」

歩夢「ケンカしちゃダメだよ? 仲良くね♪」

ミア「いや、一応ボク敵陣営なんだけど……。……ま、いいけどさ……」


さて、オーディエンスたちの準備は良さそうだ。

私はランジュさんの前に歩み出る。


ランジュ「今回は貴方なのね。しずくだったかしら」

しずく「はい。よろしくお願います」


ランジュさんにペコリと頭を下げる。


ランジュ「ええ、かすみやせつ菜みたいな、楽しい勝負が出来ること……期待してるわ」

しずく「ご希望に応えられるよう、全力で戦わせてもらいます」


両者、ボールを構え──フィールドに向かって投げ放つ。

さぁ、中堅戦──開演です……!!





    💧    💧    💧





しずく「ツンベアー! お願い!」
 「──ベァァッ!!!」


私の1番手は、ここグレイブマウンテンの環境で育ったツンベアーだ。

一方、ランジュさんは、


ランジュ「行くわよ、グライオン!」
 「──グライ!!!」


グライオンだ。

グライオンはじめん・ひこうタイプのポケモン。こおりタイプは大の苦手なはずだ。1番手は出し勝ってる……!

しかも今回ツンベアーには少しでもパワーを高めるために、“いのちのたま”を持たせている。

グライオンを一気に突破して、数的有利が取れれば……!


しずく「ツンベアー! “つららおとし”!!」
 「ベァァッ!!!!」


ツンベアーがこおりのエネルギーをグライオンの頭上に飛ばし、そこからつららが生成されて降り注ぐ。

一方、ランジュさんは、


ランジュ「グライオン、“まもる”!」
 「グライ!!」


まずは様子見の防御技。

グライオンが頭上にハサミを掲げながら、つららを弾いて防御する。

それと同時に──グライオンが首に提げていた紫色の球が鈍く光る。

あの持ち物は──


しずく「……! “どくどくだま”……!」


持っているポケモンを“もうどく”状態にするアイテムだ。

そして恐らく、あのグライオンの特性は“ポイズンヒール”。

本来ダメージ受けるはずの“どく”状態で、逆にHPが回復していく特性だ。

相手は受け特化のグライオン……!

受けの姿勢を作らせちゃダメだ……!


しずく「“つららおとし”!!」
 「ベァァァッ!!!!」


“まもる”は連続では使えないはず……!

今度こそ攻撃を直撃させようと同じ攻撃を狙うが──つららが落ちるよりも早く、


ランジュ「“とんぼがえり”!!」
 「グライッ!!!」

 「ベァァ…!!!」


グライオンがツンベアーに突撃し、その反動を利用してボールに戻っていく。

そして代わりに出てきた──


 「──…ヤドラーン」


ヤドランに向かって、つららが降り注ぐ。

だけど──ヤドランはみず・エスパータイプ。

こおりタイプは効果がいまひとつでダメージが少なく、顔色一つ変えていない。

さらに──


ランジュ「ヤドラン! メガシンカよ!」
 「ドラーン」


ヤドランが光に包まれ──尻尾に噛みついているシェルダーが巨大化し、ヤドランの全身を覆うサイズになる。

メガヤドランは極端なほどに防御が向上するメガシンカだ。

要塞とも言える防御力に手を焼くトレーナーも多いが──対策はある。


しずく「“ぜったいれいど”!!」
 「ベァァァーーーッ!!!!!」


それは一撃必殺だ。

一撃必殺は、命中に難はあるが──防御主体のポケモンに対しては撃つ回数が確保できるため、防御崩しの手段として用いられる。

広がる冷気が、メガヤドランに向かって飛んでいくが──冷気はメガヤドランを外して、見当外れの場所を凍てつかせる。

冷気が強力過ぎる故に、相手を捉えるのが苦手な技だ。ここは割り切って回数を稼ぐしかない。


しずく「もう一度……!」


再び、“ぜったいれいど”を撃とうとしたそのとき──


ランジュ「“定身法”!」
 「ドラーン」


メガヤドランの目がカッと光り──


 「ベァ…!!」


同時に“ぜったいれいど”が不発する。

これは──


しずく「くっ……“かなしばり”ですか……!?」


“かなしばり”で“ぜったいれいど”を封じられた。

相手も受け崩しを理解して対策を打ってくる。

さらに、


ランジュ「“ねっとう”よ!」
 「ドラーーン」

 「ベァァッ…!!!?」
しずく「ツンベアー……!?」


技が不発し、動揺したところに、メガヤドランが噴き出した“ねっとう”が襲い掛かる。

しかも──


 「ベ、ベァァ…」
しずく「一発で“やけど”……!」

ランジュ「あら、運が悪いわね、しずく」

しずく「くっ……戻って、ツンベアー!」


一旦ツンベアーを戻す。何もメガヤドラン対策は一撃必殺だけじゃない……!


しずく「お願い、サーナイト!」
 「──サナ」


サーナイトを繰り出すと同時に──襟元に着けたメガブローチが光り輝く。


しずく「メガシンカ!!」


サーナイトの体が光に包まれ──


 「サナッ!!!」


メガサーナイトへとメガシンカする。


しずく「“10まんボルト”!!」
 「サナッ!!!」


サーナイトが電撃を放つ。

メガヤドランは防御こそ高いものの、特殊耐久は並程度だ。

しかし──


ランジュ「“まもる”!」
 「ドラーン」


メガヤドランはシェルダーの中に籠もって、電撃を受け流す。


しずく「また“まもる”……!」


いや、焦るな、私……! “まもる”は連発出来ないんだ……!


しずく「もう一度、“10まんボルト”!!」
 「サーーーナァッ!!!!」


再び、電撃を放つサーナイト。

一方ランジュさんは、


ランジュ「戻りなさい」
 「ドラン──」


メガヤドランを控えに戻し──


ランジュ「行きなさい!! ラッキー!」
 「──ラッキー」


代わりに出てきたラッキーが“10まんボルト”を受け止める。

ラッキーは特殊耐久が極端に高いポケモンとして知られている。そのため、“10まんボルト”のダメージをほとんど受けていない。


しずく「今度は、特殊耐久のポケモン……!」


さっきから攻撃はしているはずなのに、うまく通らない。

いや、苛立っちゃダメだ……! 耐久ポケモンを倒すためには一つ一つ丁寧に崩して行かないと……!

特殊耐久が高いなら──


しずく「“サイコショック”!!」
 「サナッ!!!」


“サイコショック”は特殊技でありながら、特殊防御力では防ぐことの出来ないトリッキーな技だ。

これなら、特殊耐久が極端に高いラッキー相手でも有効にダメージを通していけるはず……!

動きの緩慢なラッキーは技を避ける素振りも見せず──


 「ラキッ…!!!!」


“サイコショック”によって発生したサイコキューブがラッキーに降り注ぐ。


しずく「やった……!」


有効にダメージを与えることに成功した。

だが、直後に──サーナイトの方に向かって、タマゴが飛んできた。


しずく「……!?」


──“タマゴばくだん”……!?


しずく「“スピードスター”!!」
 「サナッ!!!!」


直撃する前に、空中で撃ち落とそうと、星型のエネルギー弾で迎撃する。

“スピードスター”に撃ち抜かれた“タマゴばくだん”は、空中で爆散し、攻撃を防げたと思ったのも束の間──

爆散したタマゴの中から──大量の紫色の液体がサーナイトに向かって、降り注いできた。


 「サナッ…!!?」
しずく「な……!?」


その毒液を頭から浴びたサーナイトは膝を突く。

まさか、今の技は“タマゴばくだん”じゃなくて──


しずく「“どくどく”……!?」


“もうどく”にされてしまった。これじゃ、相手は攻撃を防いでいるだけで、サーナイトも、すでに“やけど”状態になっているツンベアーも倒れてしまう。


しずく「く……! サーナイト!! “サイコショック”!!」
 「サナッ…!!!」


とにかく早く相手を倒さないと、時間がない……!!

再び、ラッキーの周囲にサイコキューブが出現するが──


ランジュ「戻りなさい、ラッキー!」
 「ラキ──」

しずく「また交換……!?」

ランジュ「グライオン!!」
 「──グライ…!!!」


ラッキーの代わりに飛び出してきたグライオンが、“サイコショック”を受け止める。

グライオンも防御力の高さがウリのポケモン。半面、特防には自信がないはず……!


しずく「“サイコキネシス”!!」
 「サナッ!!!」

ランジュ「“まもる”!」
 「グライ!!」

しずく「ま、また……!」


焦るな。苛立っちゃダメだ。そういう戦術なんだ……!


しずく「戻って! サーナイト!!」
 「サナ…──」


時間稼ぎに付き合って、“もうどく”で消耗させられる方がまずい。


しずく「“インテレオン”!!」
 「──インテ」


私は3匹目、インテレオンを繰り出す。

今回は“ピントレンズ”を持たせて、急所狙いに特化している。耐久重視のランジュさん相手には決して悪くない相性のポケモン。

ただ、ランジュさんは交代の隙を突いて──


ランジュ「“みがわり”!」
 「グライ!!」


グライオンが体力を使って、攻撃を肩代わりする“みがわり”を自らの目の前に作り出す。

防御戦術なら、“まもる”と“みがわり”を使った時間稼ぎは有名な戦術だ。

さすがに向こうがここまで徹底的にやってくるなら、私にだって対応策を打つことくらい出来る……!


しずく「“つららばり”!!」
 「インテッ!!!!」


インテレオンが指先から、氷の針を連続で発射する。

発射された、つららは──“みがわり”を1発目で消滅させ、


 「グライッ…!!?」


その背後にいたグライオンに2発、3発と命中する。

4発目、5発目もグライオンを捉えたかと思ったが、


 「グライッ…!!!」


グライオンは身を捻って、ギリギリ最後の“つららばり”を回避し──


 「グライッ!!!!」


そのまま、インテレオンに向かって突っ込んでくる。


しずく「突撃してきた……!? “ねらいうち”!!」
 「インテッ!!!!」


インテレオンが飛び掛かってくる、グライオンに向かって、指先の銃口を構え──水銃を撃ち放った。


 「グライ…ッ」


水銃はしっかりと、グライオンを撃ち抜き、グライオンが崩れ落ちる──が、


 「インテ…!!!」


崩れ落ちながらも──グライオンの尻尾の針が、インテレオンの腹部に突き刺さっていた。


しずく「インテレオン……!」
 「インテ…!!」


大ダメージこそ受けていないようだが──インテレオンの顔色が悪い。

ここまでのランジュさんの戦い方からしても、もう何をされたか理解するのは容易だった。


しずく「“どくどく”……」


インテレオンも“もうどく”状態にされた。


ランジュ「さぁ、ラッキー、出てきなさい」
 「──ラッキー」


ラッキーによる時間稼ぎをするつもりだ。


しずく「戻って、インテレオン……!」
 「インテ…──」

しずく「ツンベアー……!」
 「ベァァ…!!!」


否応がなく、交換を強いられている状況の中、私の交換の隙を突いて、


ランジュ「“タマゴうみ”!」
 「ラッキー♪」


ラッキーが自身の生んだ栄養満点のタマゴで体力を回復する。

でもラッキーの防御力は低いんだ……!


しずく「“ばかぢから”!!」
 「ベァァァ!!!!」


ツンベアーがラッキーに近付いて拳を振り下ろすが──


ランジュ「戻りなさい!」


ランジュさんは再びラッキーを交換──


 「──ドラーン」


代わりに出てきたメガヤドランが、ツンベアーの拳を硬いシェルダーの鎧で受け止める。


しずく「“ぜったいれいど”!!」
 「ベァーーーーッ!!!!!」


起死回生の一撃必殺は──またしても明後日の方向に飛んでいく。

そして、技を外した隙を突いて──


ランジュ「“サイコキネシス”!!」
 「ドラーーン」

 「ベァァ…!!!」


メガシンカによって強化されたサイコパワーで、ツンベアーを吹き飛ばす。


 「…ベァ…」


吹き飛ばされ、地面に叩き付けられ、さらに蓄積した“やけど”のダメージと、“いのちのたま”によって削れた自傷ダメージが重なり、崩れ落ちるツンベアー。


ランジュ「ふふ、さっきからツイてないわね」

しずく「……」


こちらの“ぜったいれいど”は2回とも外れ、1回の“ねっとう”で“やけど”状態にさせられた。

“つららばり”は5発中3発しか当たらないし、“ピントレンズ”を持っているのに、急所へのヒットもなし。

確かに、運が悪い。

だけど……それは結局試合の結果には関係ないし、負けたときの言い訳には出来ない。


しずく「インテレオン……!!」
 「──インテ…!!」


インテレオンをボールから繰り出し、


しずく「“あくのはどう”!!」
 「インテ…!!!」


メガヤドランに相性の良いあく技で攻撃をする。


ランジュ「ヤドラン、“ドわすれ”よ!」
 「ヤァン…?」


しかし、ランジュさんは“ドわすれ”で特防を上げることによって、時間稼ぎをしてくる。

その間にも、


 「インテ……ッ」


インテレオンの体力は“もうどく”によって、どんどん削られていく。

早く……倒さないと……!!


 「インテ…!!!」


インテレオンが指の先に影の球を集束させながら、“ピントレンズ”を使って狙いを定める。


しずく「“シャドーボール”!!」
 「インテッ!!!」


インテレオンの指先から発射された“シャドーボール”は──


 「ヤァンッ…!!!?」


見事にシェルダーの鎧を避け、メガヤドランの頭部に直撃する。


 「…ド、ラン…」


急所に当たった。さすがにこれにはメガヤドランも堪らずダウンする。


しずく「これで……残り2対1……!!」


数の上では有利を取っている。

だが──


ランジュ「でも、ランジュの最後のポケモンは──ラッキーよ」
 「──ラッキー!!」


そう、ラッキーだ。


しずく「“ねらいうち”!!」
 「インテ…!!!」

 「ラッキー…!!?」


“ピントレンズ”と急所に当たりやすい技の“ねらいうち”でラッキーの急所を撃ち抜き、吹き飛ばすが──


 「…ラッキー!!」


ラッキーはすぐに起き上がる。

急所に当たっても全然ダメージになっていない……!


しずく「特殊防御が高すぎる……!」


恐らくラッキーが持っている持ち物は“しんかのきせき”。

まだ進化を残しているポケモンの防御と特防を著しく上昇させるアイテムだ。


ランジュ「それだけじゃないわ。ラッキー、“タマゴうみ”よ!」
 「ラッキー♪」


ラッキーは再び栄養満点のタマゴを産み、自らの体力を回復してしまう。

必死に急所を狙ってダメージの蓄積を狙うが──ラッキーの回復の方が速く……。

そして最終的には──


 「イン、テ…」


“もうどく”のダメージの蓄積によって、インテレオンが崩れ落ちる。


しずく「……っ……。……戻って、インテレオン」
 「インテ…──」


インテレオンをボールに戻し──最後のポケモンのボールに手を掛ける。

手を掛けたところで──自分の手が、震えていることに気付いた。


しずく「…………っ」

ランジュ「さあ、早く最後のポケモンを出しなさい。……まあ、降参してもいいけど。もう、ほぼ詰みみたいな状態だし」


──降参。ランジュさんの口からそんな言葉が出てくる。


しずく「……しません」

ランジュ「じゃあ、早く出して」

しずく「……サーナイトッ!!!」
 「──サナ…!!!」


“もうどく”状態のメガサーナイトがボールから飛び出す。


しずく「サーナイト!! “サイコショック”!!」
 「サナ…!!!」

 「ラッキ…!!!」


“サイコショック”によって、有効的なダメージは与えられるけど──


ランジュ「“タマゴうみ”」
 「ラッキー♪」

しずく「……くっ……」

ランジュ「もう無理よ。ラッキーの回復は十分追い付いてる」


そう──多少は削れているかもしれないけど……ラッキーの体力を削り切る前に……サーナイトが“もうどく”で倒れる。


ランジュ「それとも──4.17%に賭ける?」


──4.17%

これは……一般的に、ポケモンの技が偶然急所を捉える確率と言われている。

確かに今、急所に当たりさえすれば……倒しきることが出来る。

でも……それを今狙うというには、あまりに絶望的な確率。

世の中には、狙って相手の急所を捉えることが出来る特別なトレーナーがいるらしいが……私にはそんな芸当は出来ない。

もしここに立っているのが歩夢さんだったら、それが出来たのかもしれない。

侑さんだったら多彩な技で潜り抜け打開をし、かすみさんだったら奇抜な発想で逆転をし、せつ菜さんだったらそもそも相手の思うように防御戦術を展開すらさせていなかったかもしれない。

でも──今の私には、ランジュさんの戦法を崩す術が……ない。


しずく「…………っ」


唇を噛む。


 「サナ…ッ!!!」


今もサーナイトは必死に“サイコショック”を続けているのに──私にはもう何も出来ないの……? 何も出来ることはないの……?

このままじゃ、本当に、何も出来ずに敗北を待つだけ。

なんで私は──……こんなに弱いんだ。

みんなのために勝つって意気込んで、この場に立っているのに。戦っているのに。


かすみ「しず子ぉぉーー!! 頑張れーーーっ!!」

せつ菜「しずくさん!! まだ終わってませんよーーー!!」

侑「しずくちゃーん! 諦めないでー!!!」


かすみさん、せつ菜さん、侑さんが応援を飛ばしてくれる。


歩夢「…………っ……!」

栞子「……しずくさん……」


歩夢さんは祈るようにして、栞子さんは不安そうに、固唾を飲んで見守っている。

──そうだ。


しずく「……私は……負けるわけにいかない」


今、私が負けたら……全部終わりなんだ。

そのとき、ふと──あることを思い出した……。

半年前の……戦いのときのことを──



──────
────
──



──侑先輩と歩夢さんがウルトラスペースに飛び込んでから、3日ほど経ったときだ。


 「──フェロ…」

しずく「はぁ……! はぁ……!」


やっとの思いで、こちらの世界に現れたフェローチェを撃退した私たち。


彼方「ふぅ……。……しずくちゃん、一旦休憩しておいで~」

しずく「いえ……! まだ、戦えます……!」

彼方「ダーメ、疲れが見えてるよ。後方で休憩しなさーい」

かすみ「しず子! こっちはかすみんたちがどうにかするから!」

せつ菜「はい! 休憩するのは大事ですから!」

しずく「……わかりました。……よろしくお願いします」


連日連戦が続いていたため、全員で交代で休憩を取りながらウルトラビーストと戦っている状態だった。

後方へ下がると──


姫乃「しずくさん、どうされましたか」

遥「もしかして、お怪我を……」

しずく「いえ、休憩をいただいたところです」

遥「そういうことでしたら、ポケモン預かりますね! 回復させておきます!」

エマ「食事も作ってあるから、今持ってくるね! あっちのテントで待ってて!」

しずく「はい、ありがとうございます」


後方で炊事をしているエマさんと、ポケモンと私たちトレーナーの怪我の治療を行っている遥さん。そして、そんな二人を護衛している姫乃さんに出迎えられる。

とりあえず、軽く食事を取ってから、仮眠しようかな……。

そう思って、簡易テントの中に入ると──


果林「あら……しずくちゃん」


すでに休憩している果林さんが居た。


しずく「果林さん……」

果林「突っ立ってないで、座ったら?」

しずく「あ……はい」


促され、少し離れた場所に腰を下ろす。

しばらくすると──


エマ「はい! しずくちゃん、どうぞ♪」


エマさんがゴーゴートを支えにしながら、シチューを持ってきてくれる。


しずく「ありがとうございます。エマさん」

エマ「どういたしまして♪ それじゃ、ゆっくり休んでね♪」


そう残して、エマさんは再びゴーゴートと一緒に持ち場に戻っていく。


しずく「…………」

果林「食べないの?」

しずく「……食べます」

果林「そう」


果林さんと一言二言交わして、シチューを食べ始める。

疲れた身体に、シチューの温かさが沁みる。

ただ──正直、果林さんと二人きりというのは気まずさがあった。

何せ……歩夢さんを助けるためとはいえ、私は果林さんを騙していたわけで……。

今は利害の一致から味方ではあるものの……きっと果林さんも私のことはよく思っていないだろうし……。

チラチラと果林さんの様子を伺いながら、シチューをいただく。


果林「もう……何? さっきからチラチラ見て……」

しずく「あ……い、いえ……! なんでもありません……」


完全にバレていた……。

気まずくて目を逸らすと──


果林「……それにしても、しずくちゃん……本当に克服しちゃったのね」


果林さんは突然、感心したように言う。


しずく「克服……?」

果林「フェローチェのこと。さっき、戦ってたんでしょ?」

しずく「……えっと……はい」

果林「貴方の目は……今でもちゃんと、フェローチェの毒に侵された人特有の目をしてるのにね」

しずく「そう……なんですか……?」

果林「ええ。長年フェローチェを使ってきた私が言うんだから間違いないわ。毒の因子は身体の中にまだあるのに……精神力で抑えつけてる。これってとんでもないことなのよ?」

しずく「……は、はい……。……えっと……はい」


盛大に気まずい。特にフェローチェの話は……。


果林「もう、そんなに緊張しなくていいじゃない。今は味方なんだし……私、これでもしずくちゃんのことは結構認めてるのよ?」

しずく「認めてるって……」

果林「貴方には、悪のカリスマがあるわ」

しずく「悪のカリスマ……」


なんだそれはと眉を顰めてしまう。


果林「ええ。目的の為なら、他者を騙すことも厭わないところとかね」

しずく「……嬉しくありません」

果林「そう? ごめんなさい」


謝りながらも、果林さんはくすくすと笑う。


果林「ただね、それはしずくちゃんの強みだと思うわ」

しずく「強み……ですか……?」

果林「普通、人って……誰かに嘘を吐いたり、ズルいことをするときに、どうしても遠慮しちゃうと言うか……ストッパーが掛かっちゃうものなのよ」

しずく「……私も人を騙すときは、良心を痛めていますよ?」

果林「そうかもね。でも……それでも、大切な人たちを助けるためなら、その良心の痛みに耐えられるんでしょ?」

しずく「それは……そうですけど……」

果林「それはね、きっと貴方の仲間たちには出来ないことよ。侑も、歩夢も、かすみちゃんも、せつ菜も……みんな素直過ぎるのよ。自分に嘘が吐けない良い子たち」

しずく「…………」

果林「だから……しずくちゃん。貴方のズルさが必要なときは、その力でみんなを守ってあげるといいんじゃないかしら」

しずく「そんなことが起こらないのが、一番いいと思います……」

果林「そうね。また悪い人が、お友達を利用するために連れ去っちゃったりしたら嫌だものね」

しずく「……ホントですよ」


ウルトラディープシーでの日々は……歩夢さんを助けるためとはいえ、すごく精神を消耗した。

出来ることなら、もうあんなことは起こらないで欲しい……。

もし起こったら……また同じことをするでしょうけど……。


果林「ただ、そんなことをしちゃう悪~いお姉さんから、アドバイスよ」

しずく「……」

果林「その信念は、きっとしずくちゃんの強さを支える重要な要素になる。だから、もし転びそうになったら、自分の強さはそこにあることを思い出してみて」

しずく「…………一応、覚えておきます」

果林「ふふ、よろしい♪ まあ何せ、この私をあそこまでコケにしたんだもの……簡単に忘れられちゃ困るわ」

しずく「果林さん……意地悪で言ってますよね」

果林「ふふ、どうかしらね?」


果林さんはイタズラな笑顔を浮かべながら、くすくすと笑うのだった。


──
────
──────



せつ菜さんは言っていた。

──『……しずくさんは、自分のステージを作り出せれば、ランジュさんにも劣らない実力を持っています。自信を持ってください!』──

ステージか……私のステージ──


 「サナ…ッ」


“もうどく”に苦しむサーナイトを見て──思った。

“こんなこと”をしたら……恐らく、相手を怒らせるだろう。

だけど──


栞子「…………」


ここで負けたら、栞子さんの願いはどうなる。


かすみ「しず子ーーー!!」

せつ菜「しずくさーーーん!!」

侑「しずくちゃーーーんっ!!」

歩夢「…………しずくちゃん……!」


私にこの場を託してくれた仲間たちの想いはどうなる。

このまま、何も出来ずに負けるくらいなら──私は少し……悪い子になってでも、最後まで足掻こう。

そう思って──胸いっぱいに息を吸い込んだ。

山の上の方に顔を向け──


ランジュ「什么?」

しずく「──あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!!!!!!!!!!!!!!!」


全身全霊の──大声を発した。




    👑    👑    👑





──しず子が急に、山に向かってとんでもない大声を張り上げ始めて、かすみんたちは目を丸くする。


かすみ「し、しず子……!? ど、どうしちゃったの……!?」

せつ菜「す、すごい……声量です……っ!」

ミア「Too loud...」


あのせつ菜先輩さえも、耳を塞いで表情を歪めている。

実際、しず子の声の大きさはとんでもなくて、その声だけで山自体がビリビリと振動しているような気さえしてくる。


侑「え、演劇部が本気で声出すと……こんなすごいの……!?」

歩夢「で、でも、しずくちゃん……何してるの……!?」

栞子「わ、わかりません……!」


とんでもない叫び声の中──かすみんはふと思い出す。


かすみ「……もしかして……雪崩……?」

侑「え……?」

かすみ「しず子……大声で雪崩を起こそうとしてるんじゃ……!?」

せつ菜「まさか……それで、逆転を手繰り寄せようと……!?」

ミア「What?! Is she serious?!」

かすみ「しず子……」


しず子の叫び声は、かすみんたちが話している間もずっと続いている。


しずく「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!!!!!!!!!!!!!!!」





    💧    💧    💧





しずく「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

ランジュ「も、もう、一体なんなのよ……!?」


とにかく叫ぶ。力の限り。

喉の強さと声量には自信がある。

だけど──さすがにこんな無茶な声の出し方をするのは初めてだ。

冷たい外気と酸欠のせいか、すでに頭が痛い。

喉も──今にも潰れてしまいそうだ。

だけど──私は叫ぶ。

私が叫び続ける中でも──


 「サナ…ッ!!!」

 「ラッキー♪」


“サイコショック”を撃つサーナイトと、それを“タマゴうみ”で回復するラッキーの姿。

もう──逆転の一手はこれしか残ってない。

だから──私は叫び続ける。


しずく「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛──ぁ……あ゛あ゛、あ゛……!!!!」


声が掠れる。


しずく「……っ゛……あ゛あ゛あ゛ぁ゛……げほっ、ごほっ……!!」


喉の痛みで、咳き込む。


しずく「ぁ゛、あ゛あ゛……ぁ゛……」


掠れるような声が、出る。……喉が……痛い……。頭も……。


かすみ「──しず子!! もういい!! やめてっ……!!」


かすみさんが、叫ぶ声が聞こえた。


しずく「あ゛……あ゛ぁ゛……っ……げほっ、ごほっ……!! ごほっ、げほっ……!!」


激しく咳き込んで、思わず膝を突く。


ランジュ「……興が醒めたわ。何がしたいの、貴方……」


ランジュさんが冷たい目を向けてくる。


しずく「……はぁ…………はぁ…………」

ランジュ「……憐れね。……かすみやせつ菜と違って……貴方とのバトルは……楽しくないわ」

しずく「……49.4%」

ランジュ「……?」

しずく「“サイコショック”をパワーポイント限界ギリギリまで使ったときに……1回以上急所に当たる確率です……」

ランジュ「……だから、何?」

しずく「……私と、ランジュさん……どっちの運がいいか……約2分の1です……!!」

ランジュ「……何を言い出すかと思ったら……。その前に貴方のサーナイトは“もうどく”で倒れるわ」

 「サナ…ッ」

ランジュ「今もそんなに苦しそうじゃない……」


そう言っている間にも、弾丸のように出現してはラッキーに襲い掛かる“サイコショック”。

そして、その度にラッキーは“タマゴうみ”で回復する。

1回──2回──3回──


ランジュ「……そろそろ、終わりね」


4回──5回──6回──


ランジュ「……え……?」


ランジュさんの顔色が、変わった。


ランジュ「なんで……!? なんで、倒れないの……!?」

しずく「……倒れませんよ」


倒れるわけがない。


しずく「私のサーナイトは──“もうどく”状態じゃありませんから」
 「サナ」

ランジュ「什么!?」


私がやっていたのは、決して分の悪い賭けじゃない。

確率約50%の五分五分の賭け……!!


しずく「サーナイト!! “サイコショック”!!」
 「サナッ!!!!」


通算16回目──パワーポイントギリギリ、最後の“サイコショック”が、


 「ラッキッ…!!!?」


ラッキーの急所を捉え──


 「ラ…キィー…」


ラッキーは、その一撃を受け──雪の上に倒れ込むのだった。


しずく「…………急所に当たりました。……ランジュさん──運が、悪かったですね」

ランジュ「……嘘……?」


ランジュさんが、信じられないものを見るような顔をしながら、その場にへたり込む。


ミア「ランジュが……負けた……!? 嘘だろ……!?」

かすみ「……え……何……どゆこと……?」

侑「しずくちゃんが……勝った……の……?」

せつ菜「え、っと……何が……起こったんですか……」


そして、オーディエンスたちも事態が飲み込めていないようだった。


かすみ「え、だって雪崩、起こってませんよ……!? 雪崩起こして、一発逆転狙ってたんじゃ……!?」

しずく「けほっけほっ……。……もう、かすみさん……けほっ……。……人の声じゃ……雪崩は起こせないって……言ったでしょ……」

かすみ「え、じゃあ……さっきの大声は……」

ランジュ「そ、そうよ……!! 確かにサーナイトには、ラッキーが“どくどく”を当てたはずよ!!」

しずく「……そうですね……。……けほっけほっ」


私が咳き込みながら、ランジュさんの言葉に頷いていると──


リナ『確かにメガサーナイトはラッキーからの“どくどく”で“もうどく”状態になった』 || ╹ᇫ╹ ||


リナさんが飛んでくる。


ランジュ「じゃあ、なんで倒れてないのよ!」

リナ『それは簡単。回復したから』 || ╹ᇫ╹ ||

ミア「What?! “どくけし”でも使ったって言うのか!?」

リナ『違う』 || ╹ᇫ╹ ||

しずく「サーナイト……“いやしのすず”」
 「サナ~♪」


私が指示をすると──サーナイトが周囲に心地の良い鐘の音を響かせる。


ランジュ「……まさ……か……」

しずく「……そうですよ……。……私が叫んだのは──“いやしのすず”の音をランジュさんに気付かれないように、掻き消すためです……」

ランジュ「じ、じゃあ……メガサーナイトが苦しそうにしてたのは……」

しずく「もちろん……演技ですよ」
 「サナ」

しずく「私のポケモンたちは……ポケモン演劇の稽古を旅の合間に行っています。……“もうどく”で苦しむ演技なんて、簡単ですよ」

ランジュ「………………」


ランジュさんは、それを聞いて項垂れる。

だけど──


ミア「……そんなの反則だろ!!」


ミアさんが怒鳴り込んでくる。


ミア「トレーナーが“いやしのすず”の音を大声で掻き消して、相手にバレないようにしただって!? そんなの聞いたことないし、トレーナーがポケモンバトルに介入するのは反則だろ!!」

ランジュ「……ミア、いいわ。……ランジュの負けよ」

ミア「いいわけないだろ!! こんなのポケモンバトルの判定としておかしい!!」

ランジュ「いいからっ!!」

ミア「……!」


ミアさんの言葉に、強い語気でランジュさんが言葉を返す。


ランジュ「……負けは負けよ」

ミア「……」


ランジュさんはゆっくりと立ち上がって──


ランジュ「……これで……2勝1敗……。……次の龍脈の地で……待ってるわ」


そう残し、ランジュさんは踵を返して、


ランジュ「ジジーロン……飛んで」
 「──ジーロン」


ボールから出したジジーロンの背に飛び乗る。


ミア「あ、おい!! ランジュ……!!」


ミアさんはそれを追うようにジジーロンの背に飛び乗り──二人はグレイブマウンテンを去っていったのだった。

どうにか──勝てた。……安心した瞬間──


しずく「…………げほっ!! ごほっ!!」


喉の違和感から、激しく咳き込み、その場に蹲る。


かすみ「しず子……!?」


かすみさんが駆け寄ってくる。


しずく「ごほっ、げほっ……!! がはっ……!!!」


激しい咳と共に吐き出された唾液が──グレイブマウンテンの雪を赤く染めた。


しずく「あ、あれ……」

かすみ「……!? 血!? しず子、血吐いてる……!?」


気付けば、呼吸も苦しい。喉が痛くて、うまく息が出来ない。


しずく「げほっ……ごほっ……」

歩夢「しずくちゃん、落ち着いて……! 深く、ゆっくり息をして……!」


駆け寄ってきた歩夢さんが、私の背中をさすりながら言う。


しずく「……はぁ…………はぁ…………すぅー…………はぁー…………」

歩夢「そう、ゆっくり……ゆっくりね……。吸うよりも、吐くことを意識して……苦しくないよ……」

かすみ「しず子……」

せつ菜「しずくさん……」


かすみさんとせつ菜さんが私の手を握る。


侑「しずくちゃん……よく頑張ったね。ありがとう」

しずく「侑……先輩……けほっ……けほっ……」


侑先輩は──優しく、私の頭を撫でる。


栞子「しずくさん……ありがとうございます……。……こんなになるまで……」


そして、栞子さんが青い顔をしながら言う。


しずく「うぅん……だい、じょうぶ……けほっ……」

侑「とにかく、この寒さと乾燥だと喉にも良くないよね……一旦移動しよう」

かすみ「はい! しず子、アーマーガア出せる……?」

せつ菜「私は毛布を準備しますね……! 出来れば寝かせて運んであげた方がいいでしょうし……!」

しずく「そこまで、して……いただかなくても……けほっけほっ……ごほっ……!!」

かすみ「いいから……!」

しずく「う、うん……」




    🎹    🎹    🎹





──ツシマ研究所。


善子「しばらく安静にしてなさい。声帯から出血してる。どんな無茶な発声したらそうなるのよ……。悪化するとポリープになるわよ。そうなったら困るでしょ。極力喋らないように」

しずく「────」


ヨハネ博士の言葉に、しずくちゃんが無言で頷く。


かすみ「あ、あの……しず子……大丈夫……なんですよね……?」

善子「ええ。大声の出し過ぎで、声帯が一時的に損傷してるだけ。安静にしてればすぐによくなるわ」

かすみ「よかった……」

侑「とりあえず……しずくちゃんはここで安静にしてた方がいいかな……」

せつ菜「そうですね……。無理をして悪化させてもよくないでしょうし」

しずく「────」


私たちの言葉にしずくちゃんが両手を顔の前で合わせて、「ごめんなさい」の意を示してくる。


かすみ「その間、かすみんが看病します……!」

善子「まあ、おかしいのは喉だけだから、あんまり大袈裟に考えなくてもいいけどね。部屋は自由に使っていいから、しっかり休みなさい」

かすみ「ありがとうございます……ヨハ子博士……」

善子「気にしなくていいわよ。あと、ヨハ子じゃなくてヨハネだからね」


そう言い残して、ヨハネ博士は部屋を出て行った。


侑「それじゃ……次の場所へは、4人で行こうか」
 「ブイ」

歩夢「栞子ちゃん、反応はどっち方面?」

栞子「えっと……東です。……それに反応も近い」

せつ菜「ここから東にあるパワースポットらしき場所となると……」

歩夢「……太陽の花畑……!」

リナ『だね。それで、次は誰が戦う?』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「私か歩夢だけど……」


果たしてどちらが先に行くべきかだけど──


歩夢「……私が戦う」


予想外にも、歩夢が自分から名乗り出た。

歩夢はあんまり積極的にバトルに臨むタイプではないから、ちょっと意外だった。


歩夢「太陽の花畑なら……私が一番知ってるし……。……それに大将を任せるなら侑ちゃんの方がいいと思う」

リナ『まあ、そうかもね。大一番は侑さんの方が向いてる』 || ╹ ◡ ╹ ||


確かに……大将戦は一番プレッシャーが掛かる場所だろうしね。

歩夢よりもバトル慣れしている私の方がいいのは、そうなのかもしれない。


侑「それじゃ歩夢、お願いね!」

歩夢「うん! 頑張るね!」


しずくちゃんの頑張りによって、どうにかグレイブマウンテンでの中堅戦に勝利し──私たちはこれで3戦1勝2敗。首の皮一枚繋がった。

さあ次は、太陽の花畑で歩夢の副将戦だ──




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【セキレイシティ】
 口================== 口

  ||.  |○         o             /||
  ||.  |⊂⊃                 _回/  ||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||.○⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ ●__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :  ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  .||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  .||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  .||
  ||.       /.         回 .|     回  ||
  ||.    _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||. /              o回/         ||
 口==================口



 主人公 侑
 手持ち イーブイ♀ Lv.82 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
      ウォーグル♂ Lv.79 特性:まけんき 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
      ライボルト♂ Lv.80 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
      ニャスパー♀ Lv.77 特性:マイペース 性格:きまぐれ 個性:しんぼうづよい
      ドラパルト♂ Lv.78 特性:クリアボディ 性格:のんき 個性:ぬけめがない
      フィオネ Lv.74 特性:うるおいボディ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:278匹 捕まえた数:12匹

 主人公 歩夢
 手持ち エースバーン♂ Lv.68 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
      アーボ♂ Lv.69 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
      マホイップ♀ Lv.65 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
      トドゼルガ♀ Lv.64 特性:あついしぼう 性格:さみしがり 個性:ものおとにびんかん
      フラージェス♀ Lv.64 特性:フラワーベール 性格:おっとり 個性:すこしおちょうしもの
      ウツロイド Lv.73 特性:ビーストブースト 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 3個 図鑑 見つけた数:257匹 捕まえた数:24匹

 主人公 かすみ
 手持ち ジュカイン♂ Lv.84 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
      ゾロアーク♀ Lv.78 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
      マッスグマ♀ Lv.75 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
      サニゴーン♀ Lv.75 特性:ほろびのボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
      ダストダス♀✨ Lv.74 特性:あくしゅう 性格:がんばりや 個性:たべるのがだいすき
      ブリムオン♀ Lv.76 特性:きけんよち 性格:ゆうかん 個性:ちょっとおこりっぽい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:301匹 捕まえた数:15匹

 主人公 しずく
 手持ち インテレオン♂ Lv.69 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
      バリコオル♂ Lv.68 特性:バリアフリー 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      アーマーガア♀ Lv.68 特性:ミラーアーマー 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ロズレイド♂ Lv.68 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
      サーナイト♀ Lv.69 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ツンベアー♂ Lv.69 特性:すいすい 性格:おくびょう 個性:ものをよくちらかす
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:282匹 捕まえた数:23匹

 主人公 せつ菜
 手持ち ウーラオス♂ Lv.79 特性:ふかしのこぶし 性格:ようき 個性:こうきしんがつよい
      ウインディ♂ Lv.87 特性:せいぎのこころ 性格:いじっぱり 個性:たべるのがだいすき
      スターミー Lv.83 特性:しぜんかいふく 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      ゲンガー♀ Lv.85 特性:のろわれボディ 性格:むじゃき 個性:イタズラがすき
      エアームド♀ Lv.81 特性:くだけるよろい 性格:しんちょう 個性:うたれづよい
      ドサイドン♀ Lv.84 特性:ハードロック 性格:ゆうかん 個性:あばれることがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:205匹 捕まえた数:51匹

 主人公 栞子
 手持ち ピィ♀ Lv.11 特性:メロメロボディ 性格:やんちゃ 個性:かけっこがすき
      ウォーグル♂ Lv.71 特性:ちからずく 性格:れいせい 個性:かんがえごとがおおい
      ウインディ♀ Lv.70 特性:もらいび 性格:さみしがり 個性:のんびりするのがすき
      ゾロアーク♂ Lv.68 特性:イリュージョン 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      イダイトウ♀ Lv.68 特性:てきおうりょく 性格:さみしがり 個性:にげるのがはやい
      マルマイン Lv.68 特性:ぼうおん 性格:きまぐれ 個性:すこしおちょうしもの
 バッジ 0個 図鑑 未所持


 侑と 歩夢と かすみと しずくと せつ菜と 栞子は
 レポートに しっかり かきのこした!


...To be continued.




 ■Intermission🔔



ミア「おい、ランジュ……!」


ジジーロンで飛行する中、ミアが声を荒げながら、ランジュの肩を掴む。


ランジュ「……何?」

ミア「何? じゃないだろ……! どうして、負けを認めたんだ……!」

ランジュ「……だから言ったでしょ。負けは負けよ」

ミア「あの戦いは相手の反則負けでもおかしくなかった。ランジュの目的はレックウザなんだろ? なら、判定勝ちして、レックウザを捕獲する権利を得るべきだったんじゃないか?」

ランジュ「……それじゃ、ダメなのよ」

ミア「Why?」

ランジュ「相手がちょっとズルをした程度でそれに文句を言ってるようじゃ……足りないの」

ミア「……足りない?」

ランジュ「ランジュは──圧倒的な力で、レックウザを従えないといけないんだから……」

ミア「……」


ミアはランジュの言葉を聞いて、少しの間、黙っていたけど──


ミア「なら……これ以上負けるようなことになるなよ? ボクの育てたポケモンを使ってるんだ……ランジュには、ボクのブリーダーとしての腕を証明してもらわないと困るんだ」

ランジュ「わかってる。……次は、絶対に負けないわ」


ランジュは、“みどりいろのたま”を握りしめて──次の龍脈の地を目指すのだった。


………………
…………
……
🔔


■ChapterΔ007 『合戦の花畑』 【SIDE Ayumu】





──ポケモンバトルというものが、別段嫌いなわけではなかった。

ただ、どうしても画面の向こうで起こっている事というか……自分がその場に立つというのをなかなか想像出来なかった。

侑ちゃんと旅をして、失敗して、挫折して、諦めそうになって……。でも、大切な人たちを守るためには……蹲って、怖がって泣いているだけじゃダメだって、そんな当たり前のことに気付いて──私は戦うことを選んだ。

ただ……そうは言っても、私は必要に駆られないのであれば、可能な限り戦わない方がいいと思っている。

だから、あの旅にひと段落付いた後は、実は一度もポケモンバトルらしいバトルをした覚えがなかった。

もちろん、野生のポケモンと戦うことくらいはあったけど……。

だから、今回の私たちのチームでの五番勝負も、出来ることなら私の番が回ってくる前に終わって欲しい──無意識の内に、そんな甘いことを考えていたと思う。

ただ……しずくちゃんの戦っている姿を見て、考えが変わった。

あんなにボロボロになるまで戦ってくれたしずくちゃんを見て、私は出来れば戦いたくないなんて……思えるわけない。


歩夢「しずくちゃんの繋いでくれたバトンを──私が侑ちゃんに繋ぐんだ……」


私はそう独り言ちながら──太陽の花畑へ向かう。





    🎀    🎀    🎀





──グレイブマウンテンでの戦いを終え、ツシマ研究所で一晩過ごした私たちはその翌日、太陽の花畑へと訪れていた。

栞子ちゃんの持っている“もえぎいろのたま”は当然のように、大輪華・サンフラワーの方へ反応を示し……そこには既に、


ランジュ「……来たわね」


ランジュちゃんたちが待っていた。


ランジュ「……次にランジュの相手をするのは……どっち?」


ランジュちゃんが私と侑ちゃんを順に見る。

なんだか……ランジュちゃんはすごくピリピリしていた。

しずくちゃんに負けたのは本当に予想外だったみたいだから……ある意味、当然なのかもしれない。


歩夢「私だよ」

ランジュ「……歩夢、貴方ね」


私は一人、前に歩み出て、ランジュちゃんと相対する。


栞子「歩夢さん……! 頑張ってください……!」

せつ菜「歩夢さん、ファイトです!!」

侑「歩夢……! お願いね!」

リナ『歩夢さん、ファイトー!!』 || > ◡ < ||


みんなの応援を受けながら、


歩夢「うん、任せて!」


力強く頷く。


ランジュ「……勝つつもりなのね」

歩夢「うん。負けないよ」


私の言葉を聞くと、ランジュちゃんはスッと目を細める。


ミア「ランジュ、今回のポケモン」

ランジュ「ええ」


ランジュちゃんが例の如く3匹のポケモンをミアちゃんから受け取り──ランジュちゃんがボールを構える。

そのとき、なんとなくだけど──ランジュちゃんが構えているボールに入っているポケモンが……じめんタイプな気がした。


ランジュ「さぁ、始めるわよ……!!」


お互いのボールが花畑のフィールドの中に、放たれた──





    🎀    🎀    🎀





ランジュ「行きなさい、カバルドン!!」
 「──バルドン…」


ランジュちゃんの1匹目、カバルドンがボールから飛び出すと同時に“すなおこし”で“すなあらし”が発生する。

やっぱり、じめんタイプだった……!

対して私が繰り出したのは──


歩夢「お願い、トドゼルガ!」
 「──ゼルガァ…!!!」


トドゼルガだ。

相性は有利……!


歩夢「“ハイドロポンプ”!」
 「ゼルガァーー!!!!」


トドゼルガが先に動いて、強烈な水流でカバルドンを攻撃する。


 「バルドン…」


カバルドンは攻撃を受けながら、


ランジュ「“ステルスロック”!」
 「バルドン…」


カバルドンが全身の穴から、鋭い岩を噴き出し、それが周囲に漂い始める。さらに“オボンのみ”を食べて体力の回復をしているのが見える。

そして“オボンのみ”を食べ終わった直後──カバルドンが口を開けて息を吸い込むのが見えた。

──あの子……“あくび”しそう……。


歩夢「“アンコール”!」
 「ゼルガ」


トドゼルガが上半身を持ち上げ、パチパチと手を打ち鳴らし始める。

すると、


 「バルド…」


カバルドンは再び“ステルスロック”を発射し始める。

“アンコール”は相手の直前にした行動を繰り返させる技。


歩夢「ほ……。……“あくび”されたら、眠っちゃうところだったね」
 「ゼルガ」

ランジュ「……読まれてる……。戻りなさい、カバルドン」
 「バルドン──」


ランジュちゃんがカバルドンをボールに戻し、次のボールを手に持つ。


歩夢「…………」


その瞬間、肌がピリピリとし、毛が逆立つような感覚がした。

でんきタイプ……とは違う。威圧的な存在感を持つタイプ──ドラゴンタイプな気がする。


ランジュ「カイリュー!!」
 「──リューー!!!」

歩夢「“れいとうビーム”!!」
 「ゼルガァ!!!」

ランジュ「な……!?」
 「リュゥ…!!」

歩夢「やった! やっぱり、ドラゴンタイプだった……!」


カイリューは苦手な“れいとうビーム”を受けて、苦しそうに呻き声をあげる。


ランジュ「よ、読まれてる……!? なんで……!?」





    🎹    🎹    🎹





せつ菜「歩夢さん……すごいです……! 悉く読みが当たっています……!」

リナ『読みというか……たぶん、勘……』 ||;◐ ◡ ◐ ||


リナちゃんの言うとおり、歩夢の場合は戦術的な読みというよりは……たぶん、勘だと思う。

歩夢のポケモンに対する第六感とも言える勘は、あの戦いが終わった後も、日に日に強くなっている気はしていたけど……。


侑「私たちには真似出来ない戦い方かも……」

栞子「すごいです、歩夢さん……! ランジュに対して、優勢を取っています……!」

リナ『ただ──歩夢さんの能力は、弱点もある』 ||;◐ ◡ ◐ ||

せつ菜「弱点……ですか?」

侑「歩夢がわかるのは……あくまでポケモンのことだけだから……」


歩夢は無意識に自分の勘に頼りがちだから……そこが戦うときの弱点になることがある。

特に今回のルールでは──





    🎀    🎀    🎀





ランジュ「“ばかぢから”!!」
 「リューーーッ!!!!」

 「ゼルガァ…!!!?」
歩夢「きゃぁっ!!?」


トドゼルガの攻撃を受けた途端、カイリューの攻撃力が著しく上昇し、トドゼルガを一撃で吹き飛ばす。


歩夢「き、急に攻撃力が上がった……!? な、なんで……?」
 「ゼ、ゼルガァ…」

歩夢「戻って、トドゼルガ……!」


私は焦ってトドゼルガをボールに戻す。


ランジュ「貴方……あれだけ読みを通していたのに、“じゃくてんほけん”のこと、知らないの……?」

歩夢「“じゃくてん……ほけん”……?」


私が首を傾げると──


侑「歩夢ー!! 弱点の技を受けたときに、自分の攻撃能力を上げる持ち物のことだよー!」


と、後ろから侑ちゃんが教えてくれる。


歩夢「そ、そういうのもあるんだ……」


持ち物のことはよくわからなかったから、トドゼルガにはあの子が好きな“フィラのみ”を持たせていたけど……一撃で倒されちゃったから、食べる暇もなかった。


せつ菜「歩夢さん! 焦らないでください! ちゃんと相手に十分な削りは入れられていますよ!」


せつ菜ちゃんの言葉に頷き、私は一度息を吸って心を落ち着ける。

トドゼルガは倒されちゃったけど……まだ全然挽回出来る。


歩夢「……よし! 行くよ、フラージェス!」
 「──ラージェス」


フラージェスがボールから飛び出すのと同時に、周囲を漂っていた鋭い岩がフラージェスに向かって突き刺さりそうになるけど──気付けば、フラージェスに向かって飛んでくる岩との間に、たくさんの花びらが浮遊し、纏わりつくようにして、岩の動きを止めていた。


ランジュ「……!」

歩夢「ここはこの子が生まれ育ったお花のフィールドだから……ここのお花はフラージェスの味方」
 「ラージェス」


フラージェスは花を操って戦うポケモン。

私がここ太陽の花畑での戦いを選んだ理由は、フラージェスの力を最大限に発揮出来るからだ。

お花たちの力を少しでも発揮できるように、持ち物も“きせきのタネ”を選んだ。“きせきのタネ”はくさタイプの技の威力を上げるアイテムだと、侑ちゃんが教えてくれた。


ランジュ「面白い戦い方するじゃない……! カイリュー! “アイアンテール”!!」
 「リューーーッ!!!」


カイリューが、フェアリータイプのフラージェスが苦手なはがねタイプの技で攻撃してくるけど──

ザァァァッと、大量の花びらたちが集まってきて、


 「リューーーッ!!!!」


振り下ろされる、鋼鉄の尻尾を、ボフンッと音を立てながら受け止める。


ランジュ「……く……花の量が多すぎる……」


ここは一面見渡す限り花しかない。花たちはフラージェスを守ってくれるから、本来は苦手だけど、物理攻撃に偏っているはがねタイプも怖くない。

もちろん、ランジュちゃんもそれはすぐに判断したようで──


ランジュ「なら、焼き払うだけよ!! カイリュー!! “かえんほうしゃ”!!」
 「リューーーッ!!!」

歩夢「! いけない! フラージェス!」
 「ラージェスッ!!!」


カイリューがお花たちに向かって、口から炎を吐き出した瞬間──お花たちはザァァァッと道を開けるようにその場から離れ、代わりにフラージェスが、“かえんほうしゃ”に向かって突っ込んでいく。


ランジュ「什么!?」

歩夢「“ひかりのかべ”!」
 「ラージェスッ!!!」


特殊攻撃を弱める障壁を展開し、炎を散らして防御する。

フラージェスとお花は共生関係にある。お花はフラージェスを守ってくれるし、フラージェスもお花を守る。

フラージェスが攻撃を防ぐと同時に──四方八方に散ったお花はカイリューの上下左右から回り込むように迂回し、


歩夢「“はなふぶき”!!」
 「ラーージェスッ」

 「カイ、リューー…!!!」


カイリューに向かって突撃していく。

ドラゴンタイプとひこうタイプを持つカイリューにはそこまで効果的な威力は出ないものの、その物量でカイリューの動きを鈍らせる。


ランジュ「く……“ぼうふう”!!」
 「リューーーッ!!!!」

 「ラージェス…!!」
歩夢「きゃ……!?」


だけど、カイリューは翼を振るって“ぼうふう”を起こし、周囲の花を吹き飛ばす。

吹き飛ばされたお花は、すぐにUターンしてカイリューに向かっていくけど──巻き起こされる強風によって、一定距離までしか近付けない。


歩夢「なら……! “にほんばれ”!」
 「ラージェス」


フラージェスが“すなあらし”をかき消すように天気を晴らし──同時に光の集束を始める。

ここ太陽の花畑は──いつでも太陽のエネルギーに満ちている場所だから、


歩夢「“ソーラービーム”!!」
 「ラーージェスッ!!!!!」


強力な“ソーラービーム”は、カイリューの“ぼうふう”を突き破って、


 「リュゥゥーーーッ!!!」


カイリューのお腹に直撃し、“ぼうふう”を中断させる。

風による妨害を受けなくなったお花たちは、再びカイリューに向かって押し寄せる。

四方八方から押し寄せるお花たちがカイリューを捉えようとした瞬間──


ランジュ「カイリュー!! “しんそく”!!」
 「リューーッ!!!」


お花たちの切れ目を、カイリューが弾丸のように飛び出してきた。


歩夢「……!?」


咄嗟のことに対応しきれず──目にも止まらぬ勢いで、カイリューがフラージェスを突き飛ばす。


 「ラーージェスッ…!!!?」


さらに突き飛ばされたフラージェスに向かって──


ランジュ「“ギガインパクト”!!」
 「リューーーーッ!!!!!」


追撃の大技。この位置じゃ、もうお花たちの防御も間に合わない。

猛スピードで突っ込んでくるカイリューに向かって、


歩夢「……っ……! “マジカルシャイン”!!」
 「ラーーージェスッ!!!!」


フラージェスが激しく閃光する。


 「リュゥゥゥゥッ…!!!!」


フェアリータイプの閃光。カイリューには効果は抜群だけど──


 「リュゥゥゥゥゥッ!!!!!!」


カイリューはその光を突き抜け、


 「リュゥゥゥゥゥッ!!!!!」
 「ラーージェスッ…!!!!」


フラージェスにぶつかるのと同時に──“ギガインパクト”のエネルギーが大爆発を起こした。


歩夢「フラージェス……!!」
 「──ラー…ジェス…」


爆炎の中から、フラージェスが吹き飛ばされてきて──花畑の上に力なく落下する。

だけど──


 「リュゥ…!!!」


“ギガインパクト”の反動で動けなくなったカイリューに向かって──仇を撃つように、お花たちが押し寄せ、


 「リュウ…ッ!!!」


カイリューを押しつぶした。

ここまでの戦闘でのダメージの蓄積に加えて、激しい“はなふぶき”に曝されたカイリューは、


 「リュウ…」


戦闘不能になり──フラージェス同様、花畑の上に落下したのだった。


歩夢「フラージェス……! 戻って……!」
 「ラージェス…──」

ランジュ「カイリュー、お疲れ様」
 「リュゥ…──」


お互いポケモンをボールに戻す。

──相討ちだ。

だけど……。


ランジュ「まさか、“じゃくてんほけん”で能力を上げたカイリューを倒されるとは思わなかったけど……これで2対1ね」

歩夢「……」


追いつめられてしまった。

やっぱり……私じゃ……勝てないのかな……。

思わず弱気になってしまうけど──


侑「歩夢ーー!! 頑張れーー!!」

栞子「歩夢さん!! 頑張ってください……!!」

せつ菜「歩夢さんっ! まだ全然、逆転のチャンスはありますよっ!」


背中に3人の応援の言葉を受けて、私はふるふると頭を振る。

弱気になっちゃダメ……! 侑ちゃんにバトンを繋ぐって、決めたんだから……!

最後まで諦めない……!


歩夢「……行くよ!! エースバーン!!」
 「──バーースッ!!!!」

ランジュ「最後はエースバーンね。それじゃ、出てきなさい──ルカリオ!!」
 「──グゥォッ!!!!」


ランジュちゃんの最後のポケモンは、はどうポケモン、ルカリオ。

ルカリオがフィールドに繰り出されると同時に──


歩夢「……?」


──変な感じがした。

どう変かが説明出来ない……ただ、変な感じがしたとしか。


歩夢「…………? 今の……何……?」


違和感の正体がわからず、思わずキョロキョロしてしまう。そんな私を見て、


ランジュ「? ……どうかしたの? 何か問題があったのかしら?」


ランジュちゃんがアクシデントと思ったのか、そう訊ねてくる。


歩夢「あ……いや……大丈夫……!」

ランジュ「そう? じゃあ、続けるわよ!」

歩夢「うん、ごめんね!」


変な感じは続いているけど……バトルを中断するほどじゃないと判断して、ランジュちゃんの言葉に頷く。


ランジュ「それじゃ、行くわよ! メガシンカ!!」
 「グゥォ…!!」

歩夢「……! やっぱり、メガシンカ……!」


眩い光に包まれ──ルカリオがメガルカリオへと姿を変える。

その瞬間──つま先から頭のてっぺんまでを、何かが走り抜けた。


歩夢「……ッ……!?」


身体がビクッと緊張し、全身の毛が一瞬で逆立つ。

気付けば、心臓がドクンドクンと脈打っていることに気付く。

──なに……? これ……?

酷い違和感が全身を襲ってくる。だけど──


ランジュ「ルカリオ!! “はどうだん”!!」
 「グゥォッ!!!!!」


大丈夫と言った手前、ランジュちゃんは待ってなんかくれない。

頭をぶんぶん振って、変な感覚を極力気にしないようにしながら、エースバーンに指示を出す。


歩夢「“かえんボール”!!」
 「バーーースッ!!!!」


エースバーンが拾い上げた小石を発火させながら、火球として蹴り飛ばす。

“かえんボール”と“はどうだん”が空中でぶつかり合い、爆発してエネルギーを散らせる。

その間も──


歩夢「……っ」


違和感は大きなっていく。

具体的に何がおかしいのかがわからないのが、酷く気持ち悪い。

でも、


歩夢「戦いに……集中、しなきゃ……」


この戦いは……負けるわけにいかないんだから……。


 「バーースッ…!!?」
歩夢「……!?」


エースバーンの鳴き声でハッとなって顔を上げる。

すると、エースバーンは仰向けで、メガルカリオが作り出した骨の形をした波導の塊で、押さえつけらているところだった。


ランジュ「そのまま決めなさい!! “ボーンラッシュ”!!」
 「グゥォッ!!!!」


メガルカリオが、倒れているエースバーンに、骨による追撃を食らわせようと、振りかぶった瞬間、


歩夢「“ローキック”……!!」
 「バーーースッ!!!」


エースバーンがメガルカリオに脚を引っかけて転ばせようとするが、


 「グゥオッ…!!!」


メガルカリオは咄嗟に、骨を杖のように突いて、転ばないように堪え──


ランジュ「“メガトンキック”!!」
 「グゥォッ!!!!!」

 「バァーースッ…!!!?」


咄嗟に攻撃手段を変えて、エースバーンを蹴り飛ばす。


歩夢「エースバーン……!?」
 「バ、バーースッ…!!」


エースバーンは受け身を取ってすぐに起き上がるけど──このままじゃ、いけない……。

指示に集中したいのに──全身を走る違和感で、集中出来ない。

そのとき──


侑「──歩夢ーーー!! 頑張れーーー!!」


侑ちゃんの声が──響いた。

それは本当に文字通り──頭の中に、直接、ぐわんぐわんと響いていた。

聞こえ方がおかしかった。

でも──止まっちゃ……ダメ……。

負けたくない……。みんなのために──負けたくない……!

そう、強く、思った、瞬間──世界の色が、変わった。





    🎀    🎀    🎀





世界が青白く光っていた。


ランジュ「ルーカーリーオー、“イーンーファーイートー”!」


何故か、ランジュちゃんがゆっくり喋っている。

そして──


 「グーゥーォーッ」


メガルカリオがどこに攻撃しようとしているのかが──何故か、理解出来た。

ゆっくりと肉薄してきたメガルカリオが、エースバーンに向かって、両手両足を使った乱打を仕掛けてくる。

けど──


 「バース」


頭で、メガルカリオが攻撃しようとしている場所を思い描くと──エースバーンはそれをヒョイヒョイと回避する。


ランジュ「什ー么ー……!?」


そして、頭の中で──今のタイミングなら、“ブレイズキック”が出来そう……と思うと、


 「バーースッ」


エースバーンがメガルカリオの下段蹴りを小ジャンプで回避しながら身を捻り──“ブレイズキック”をメガルカリオの頭部に叩きこむ。


 「グーゥーォーッ…!!!?」


メガルカリオはゆっくり吹き飛びながらも、受け身を取って起き上がる。


ランジュ「きゅーうーにーつーよーくーなーっーたー……!?」


何が起きているんだろう。

私がおかしくなったのか、周りがおかしくなったのか、わからない。

何もわからないけど──何故だか……今の私は、負ける気がしなかった。





    🎹    🎹    🎹





侑「な、なにが起こってるの……?」
 「ブイ…」

せつ菜「わ、わかりません……」


歩夢の様子が目に見えておかしかった。

だらんと両腕が下がり、なんだか脱力しながら立っている様子だ。

そして、全くエースバーンに指示を出さなくなってしまった。

……なのに、エースバーンの動きが急に良くなり──いや、良くなったなんてレベルじゃない。メガルカリオの至近距離からの猛ラッシュを全て躱して、反撃をするという神業をして見せた。

何かわからないけど……何かが、起こっている。


侑「そ、そうだ! リナちゃんなら、何が起こってるかわかるんじゃ……!」


そう思ってリナちゃんに訊ねるも──


リナ『……ごめん。全くわからない……』 ||;◐ ◡ ◐ ||


リナちゃんですら何が起きているか理解出来ていなかった。

でも、そんな中、


栞子「……歩夢さんが……波導に同調している……?」


栞子ちゃんがそんなことを呟いた。


侑「波導に……同調……? どういうこと……?」

栞子「……歩夢さんは、ポケモンに対する感応性が異常に強い人です……。……もしかしたら──メガルカリオが持つ強い波導のエネルギーに中てられているんじゃ……」

せつ菜「……えっと……?」


せつ菜ちゃんは栞子ちゃんの説明に首を傾げるけど──私は歩夢をずっと見てきたからか、なんとなく……感覚的にだけど……わかるような気がした。


侑「……ルカリオの波導を読み取る力に、歩夢が影響されちゃってる……ってこと?」

栞子「はい……恐らくは」

リナ『つまり……ルカリオが波導から読み取ってる情報を、歩夢さんが読み取ってる……』 || ╹ᇫ╹ ||

栞子「波導によって読み取れる情報は……普通の五感情報とは一線を画すものです……。今の歩夢さんには、世界がスローモーションに見えていて……それを第三者が見れば、さながら未来予知のように見えてもおかしくありません」

せつ菜「で、ですが……それを歩夢さんが出来たとしても、エースバーンまで相手の攻撃を予知しているのはおかしくないですか……?」

栞子「……稀に強い信頼で結ばれた人とポケモンは、言葉を交わさなくても、お互いの考えていることがわかると言います……歩夢さんもエースバーンも一種の過集中状態なのかもしれません。波導を介して繋がっているというのもあるのかもしれませんが……」

せつ菜「……ゾーンのようなものですか。……私もバトルの最中に極限まで集中すると、最低限の指示でポケモンに意図が伝わるという経験はしたことがありますが……」

リナ『それのさらにすごい版かもしれない』 || ╹ᇫ╹ ||

せつ菜「つまり……ピンチに秘めたる力が覚醒したということですよね……!! すごいです、歩夢さん!!」


せつ菜ちゃんはそう言って目を輝かせる。

でも、栞子ちゃんはせっかく形勢が逆転しそうなのに、浮かない顔をしていた。


侑「栞子ちゃん……?」

栞子「……確かに、今の状況はバトルを好転させ得るものかもしれません。……ですが……人には本来読み取れない情報を読み取り続けるのは……歩夢さんに大きな負担が掛かるはずです」

侑「……」


ただ、バトル中である以上、私たちには手出しが出来ない。


侑「歩夢……」
 「イブィ…」





    🎀    🎀    🎀





ランジュ「“はーどー──」


“はどうだん”が来るのがわかった時点で──


 「バーース」


エースバーンが“かえんボール”を蹴り出す。

ゆっくりと飛ぶ火球は──ちょうどメガルカリオが“はどうだん”の集束を始めたところに突き刺さり、


 「グーゥーォーッ…!!!」


メガルカリオを吹っ飛ばした。

さらに、もう一発──


 「バーースッ」


エースバーンが“かえんボール”を用意する。

吹き飛ばされながらも、受け身を取って立ち上がるメガルカリオ。

そのメガルカリオの体には──波導が巡っているのがわかる。

そしてのその全身を巡る波導にも、強い部分と弱い部分がある。

手足や頭、お腹にはたくさんの波導が集中している反面──他の部位の波導は弱い。

そこが、メガルカリオの急所。

何故だか確信が持てた。


 「バーーースッ!!!」


エースバーンが蹴り出した火球は──


 「グーゥー…ォー…」


メガルカリオの急所──みぞおちの辺りに、突き刺さり……メガルカリオは花畑の上を転がりながら、戦闘不能になった。





    🔔    🔔    🔔





──何が起きているのか理解出来なかった。

さっきまで、こっちが優勢だったはずなのに、気付けば圧倒されていた。


ランジュ「何よ……なんなのよ……これ……」


一方で、歩夢は──


歩夢「…………」


さっきから、ぼんやりと脱力した状態で立ち尽くしているだけ。

まるでポケモンに指示も出していないのに、エースバーンが未来予知でもしているかのような動きで、ルカリオを圧倒してしまった。


ランジュ「……ルカリオ……戻って……」


だけど、まだこっちにだって勝機はある。

カバルドンなら、ほのおタイプのエースバーンと、相性は悪くない。


ランジュ「負けるもんですか……!!」


ランジュは、最後の手持ちを繰り出す──




    🎀    🎀    🎀





──カバルドンが出てきた。


 「バールードーンー…」


“じしん”をしてきそうだなと思った。


 「バース」


直後、エースバーンが“とびはねる”で攻撃を回避する。


ランジュ「…………!」


ランジュちゃんが驚いた顔をした。

気付けば、地面が揺れていた。

だけど、私は揺れる地面の動きが何故だか理解出来て、全然転ぶ気がしなかった。

まるで、大地に杭のように刺さっているかのように、地面の揺れに合わせて自分もゆらゆら揺れるだけ。


 「バーースッ!!!」


“とびはねる”で宙に浮いたエースバーンは──予め拾っておいた小石に炎を宿しながら、“かえんボール”として、真下にいるカバルドンに向かって蹴り出す。


 「バールードーンー…」


カバルドンの眉間に、“かえんボール”が直撃し、よろけさせる。

そして──落下の速度を乗せた、エースバーンが、


 「バーーースッ!!!!」


“とびひざげり”をカバルドンの脳天に炸裂させたのだった。


 「バールー……ドーンー……」


ゆっくりと崩れ落ちるカバルドン。


ランジュ「………………」


ランジュちゃんは何故だか絶句していた。

──あ。そっか。

気付けば……ランジュちゃんのポケモンは、みんな戦闘不能になっていた。

私……勝ったんだ。

なんだか頭がふわふわとしていて、実感が湧かないけど……ちゃんと勝てたことに安堵した──途端、


歩夢「………………ッ……!?」


周囲の環境音が爆音のように大きくなって聞こえてきた。

私の頭の中に、風の音が、花が揺れる音が、あちこちにいるポケモンたちの鳴き声が、ありとあらゆる周りの音が、無理やり頭の中に詰め込まれるような感覚と共に──私は目の前が真っ白になった。




    🎹    🎹    🎹





──戦いが終わると同時に、


侑「……あゆ、む……?」


歩夢は──パタリと花畑の上に倒れてしまった。


侑「……歩夢ッ!?」
 「ブイ…!!!」


私は血の気が引いて、考えるよりも先に走り出していた。

歩夢に駆け寄り、歩夢を抱き起こす。


侑「歩夢しっかりして!! 歩夢!!」
 「イブィ!!!」

歩夢「………………」
 「シャボ…」


声を掛けても目を覚まさない。バトルの間、ずっと大人しかったサスケも、心配にそうに歩夢の頬をチロチロと舐めている。


侑「歩夢……!! 歩夢ッ……!!」

せつ菜「侑さん……! 落ち着いてください……!」


気付けば、せつ菜ちゃんも追い付いてきて、歩夢を抱きかかえる私のすぐ傍にしゃがみこみ、歩夢の首筋に手を当てる。


栞子「侑さん……! せつ菜さん……! 歩夢さんは……!」

せつ菜「……脈は正常だと思います」

リナ『バイタルもひととおりチェックした。……たぶん、気を失ってるだけ』 || ╹ᇫ╹ ||


リナちゃんとせつ菜ちゃんの言葉を聞いて──


侑「……よかった……」


力が抜けてしまう。

一方で、


ランジュ「何よ……一体、何がどうなってるのよ……」


ランジュちゃんが信じられないものを見るような目で、歩夢を見ていた。


ランジュ「ランジュ……負けたの……?」

栞子「……はい。ランジュ……今回は貴方の負けです」

ランジュ「…………」

ミア「Oh my gosh...」

ランジュ「…………ッ」


ランジュちゃんは悔しそうに、拳を握りしめていたけど──


ランジュ「…………2勝……2敗……。……でも……最後には、絶対にランジュが……勝つんだから……」


絞り出すようにそう言い、踵を返して、太陽の花畑から去っていったのだった……。





    🎹    🎹    🎹





──ツシマ研究所。その一室。


侑「……歩夢……」
 「ブイ…」

歩夢「…………」
 「シャボ…」


もうすっかり日も落ちて……。

薄暗い部屋の中でベッドに横になっている歩夢は……静かに胸が上下しているので、眠っているだけなのはわかるけど……。


善子「……ひととおり診たけど……身体に異常はない。今はたぶん疲れて眠ってるだけだから、明日になったら目を覚ますと思うわ」

侑「…………」

善子「心配なのはわかるから、やめろとは言わないけど……ほどほどにね。侑が倒れたら、一番悲しむのは歩夢なんだから」

侑「はい……」


ヨハネ博士はそう残して部屋を出て行く。


歩夢「…………」

侑「歩夢……」


何気なく、歩夢の手を握ると──無意識だろうけど、弱い力で握り返してくる。


侑「歩夢のお陰で2勝2敗だよ。ありがとう」

歩夢「…………ゅ、ぅ…………ちゃ…………」

侑「…………歩夢?」

歩夢「…………すぅ…………すぅ…………」

侑「……うん。……今はゆっくり、休んでね……」


私は眠る歩夢の髪を、優しく撫でつけるのだった……。





    🎙    🎙    🎙





せつ菜「──あ、ヨハネ博士……!」

善子「菜々……」


私は歩夢さんが休んでいる部屋から出てきた博士に声を掛ける。


せつ菜「あの……歩夢さんは……」

善子「今は疲れて眠ってるだけよ。すぐよくなるわ」

せつ菜「よかった……」


リナさんのチェックでも、問題はないと言っていたけど……ある程度、医学の心得のあるヨハネ博士に言ってもらえると、安心感が増す。


善子「なんなら……中に入って顔でも見てきたら?」

せつ菜「いえ……今は侑さんと二人にしてあげた方がいいかなと思って……」

善子「ん……そっか」


きっと一番心配しているのは侑さんでしょうし……。

あまり部屋の前でうるさくしてもいけないので、ヨハネ博士と一緒に1階へと向かう。


せつ菜「あの……ヨハネ博士」

善子「なに?」

せつ菜「歩夢さんの力というのは……一体なんなんでしょうか……?」


彼女がポケモンに対して特別な力を持っていることは、なんとなく知っていたけど……今日改めて、その力のすごさを目の当たりにしてしまったというか……。


善子「……何と一言で言うのは少し難しいけど……。……私は超共感性やシナスタジアの一種だとは思ってる」

せつ菜「シナスタジア……共感覚でしたっけ」

善子「ええ。歩夢には、ポケモンが発する鳴き声やエネルギーを、別の感覚に変換して見たり、聞いたりすることが出来るんだと思うわ」

せつ菜「本当に……そんなことが出来るものなんですか?」

善子「実際のところは本人にしかわからないけど……。ただ、歴史上にポケモンと意思疎通を図ることが出来た人間は数多く存在してる。それこそ、栞子のような人とポケモンとの仲介役を担う巫女は、そういう力を有してると言われてる」

せつ菜「……なるほど」


だから、栞子さんは歩夢さんの身に起こっていることに、いち早く気付いたのかもしれない。

ヨハネ博士と話しながら1階へ降りてくると──


かすみ「あ、せつ菜先輩……! ヨハ子博士……! 歩夢先輩は……!」


かすみさんがパタパタと駆けよってくる。


せつ菜「今は疲れて眠っているだけだそうですよ」

かすみ「ほ……よかったですぅ……」


安心するかすみさんの後ろで、しずくさんが──『気を失った歩夢さんを見たときは、肝が冷えました……』と筆談で伝えてくる。

しずくさんは喉の調子が戻りつつあるようですが、今は極力喉を休めるために筆談で会話をしているそうです。


リナ『しずくちゃんもリナちゃんボードを使ってるみたいだね』 || > ◡ < ||


──『じゃあ、しずちゃんボードだね♪』

なんておどけている辺り、しずくさんの方は順調に回復しているようだ。

とりあえず……。


せつ菜「これで2勝2敗……しずくさんと歩夢さんが、私たちの負けを取り返してくれました」

かすみ「はい……! あとは侑先輩が勝つだけです!」


序盤から大ピンチだった五番勝負は、どうにかイーブンまで巻き返し──最終戦まで、もつれ込むことになった。

あとは最後に残った侑さんの試合。侑さんは大一番での勝負強さがある。

最後を任せるに相応しいと思います。

そのとき、


栞子「……あの、皆さん……。……お願いがあるんです」


先ほどまで、黙って座っていた栞子さんが、口を開く。


せつ菜「栞子さん? なんでしょうか」

栞子「……最終戦のことなんですが……」

かすみ「最終戦は侑先輩に任せておけば大丈夫だよ! 侑先輩、すっごく強いから!」

栞子「いえ……最終戦は……私に戦わせてくれませんか」

かすみ「……へ?」


なんと栞子さんは──最後の戦いを自分にやらせて欲しいと、口にするのだった。




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【セキレイシティ】
 口================== 口

  ||.  |○         o             /||
  ||.  |⊂⊃                 _回/  ||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||.○⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ ●__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :  ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  .||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  .||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  .||
  ||.       /.         回 .|     回  ||
  ||.    _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||. /              o回/         ||
 口==================口



 主人公 侑
 手持ち イーブイ♀ Lv.82 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
      ウォーグル♂ Lv.79 特性:まけんき 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
      ライボルト♂ Lv.80 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
      ニャスパー♀ Lv.77 特性:マイペース 性格:きまぐれ 個性:しんぼうづよい
      ドラパルト♂ Lv.78 特性:クリアボディ 性格:のんき 個性:ぬけめがない
      フィオネ Lv.74 特性:うるおいボディ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:281匹 捕まえた数:12匹

 主人公 歩夢
 手持ち エースバーン♂ Lv.69 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
      アーボ♂ Lv.69 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
      マホイップ♀ Lv.65 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
      トドゼルガ♀ Lv.65 特性:あついしぼう 性格:さみしがり 個性:ものおとにびんかん
      フラージェス♀ Lv.65 特性:フラワーベール 性格:おっとり 個性:すこしおちょうしもの
      ウツロイド Lv.73 特性:ビーストブースト 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 3個 図鑑 見つけた数:260匹 捕まえた数:24匹

 主人公 かすみ
 手持ち ジュカイン♂ Lv.84 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
      ゾロアーク♀ Lv.78 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
      マッスグマ♀ Lv.75 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
      サニゴーン♀ Lv.75 特性:ほろびのボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
      ダストダス♀✨ Lv.74 特性:あくしゅう 性格:がんばりや 個性:たべるのがだいすき
      ブリムオン♀ Lv.76 特性:きけんよち 性格:ゆうかん 個性:ちょっとおこりっぽい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:301匹 捕まえた数:15匹

 主人公 しずく
 手持ち インテレオン♂ Lv.69 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
      バリコオル♂ Lv.68 特性:バリアフリー 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      アーマーガア♀ Lv.68 特性:ミラーアーマー 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ロズレイド♂ Lv.68 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
      サーナイト♀ Lv.69 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ツンベアー♂ Lv.69 特性:すいすい 性格:おくびょう 個性:ものをよくちらかす
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:282匹 捕まえた数:23匹

 主人公 せつ菜
 手持ち ウーラオス♂ Lv.79 特性:ふかしのこぶし 性格:ようき 個性:こうきしんがつよい
      ウインディ♂ Lv.87 特性:せいぎのこころ 性格:いじっぱり 個性:たべるのがだいすき
      スターミー Lv.83 特性:しぜんかいふく 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      ゲンガー♀ Lv.85 特性:のろわれボディ 性格:むじゃき 個性:イタズラがすき
      エアームド♀ Lv.81 特性:くだけるよろい 性格:しんちょう 個性:うたれづよい
      ドサイドン♀ Lv.84 特性:ハードロック 性格:ゆうかん 個性:あばれることがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:208匹 捕まえた数:51匹

 主人公 栞子
 手持ち ピィ♀ Lv.11 特性:メロメロボディ 性格:やんちゃ 個性:かけっこがすき
      ウォーグル♂ Lv.71 特性:ちからずく 性格:れいせい 個性:かんがえごとがおおい
      ウインディ♀ Lv.70 特性:もらいび 性格:さみしがり 個性:のんびりするのがすき
      ゾロアーク♂ Lv.68 特性:イリュージョン 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      イダイトウ♀ Lv.68 特性:てきおうりょく 性格:さみしがり 個性:にげるのがはやい
      マルマイン Lv.68 特性:ぼうおん 性格:きまぐれ 個性:すこしおちょうしもの
 バッジ 0個 図鑑 未所持


 侑と 歩夢と かすみと しずくと せつ菜と 栞子は
 レポートに しっかり かきのこした!


...To be continued.




 ■Intermission🔔



ランジュ「……次の反応は……北西……。……しかも、そんなに離れてないわね……」


北西を見ると──高い丘が見える。

何度か“そらをとぶ”で移動しているときに、高い丘の上に湖があるのを見た覚えがある。

恐らく次の龍脈はあそこなのだろう。


ミア「……ランジュ」

ランジュ「……何かしら」

ミア「……2連敗だぞ。わかってるのか?」

ランジュ「…………わかってる」

ミア「……まさか、これ以上負けるなんてこと……ないよな?」


ミアが苛立ちを隠さずに言葉をぶつけてくる。


ランジュ「……ありえないわ」


しずくも歩夢も……ポケモンバトルの常識とは逸脱した戦い方だったから、油断してしまったけど……もう負けるつもりなんてない。


ミア「なら、結果で示してくれよ」

ランジュ「ええ、わかってるわ」


こんなところで……負けるわけにはいかない。

そうじゃないと──栞子のこと……救ってあげられないから……。


………………
…………
……
🔔


■ChapterΔ008 『最終戦』 【SIDE Yu】





──近くで人の気配がする。


侑「…………ん……ぅ…………」


ゆっくりと目を開けると──


歩夢「……あ……ごめんね、起こしちゃった……?」

侑「……歩夢……」


歩夢が、ずり落ちそうになっていた毛布を、私に掛けようとしているところだった。


侑「………………歩夢……っ!?」

歩夢「きゃっ!?」


私は今しがた寝ていたソファから跳ね起き、歩夢の両肩に手を置く。


侑「歩夢、平気なの……!? 痛いところとかない……!?」

歩夢「うん、大丈夫だよ」


歩夢はそう言いながら、いつもの笑顔でニコっと笑う。

私が騒がしかったのか──


 「…ブイ…?」


ソファで一緒に寝ていたイーブイも目を覚まし、


 「…ブイ!!!」


歩夢が起きているのを見ると、イーブイは歩夢に向かって飛び付いた。


歩夢「ふふ、イーブイ、おはよう♪」
 「ブイ♪」

侑「ホントに元気そうで、安心した……」


今の様子を見る限り、本当にいつもどおりの歩夢だ。心配そうに歩夢の枕元で見守っていたサスケも、今はいつもどおり歩夢の首に掛かりながら、眠っている。

ただ、歩夢はイーブイを撫でながら、少し不安そうな顔になって、


歩夢「えっと……その……私、気付いたらここで寝てたんだけど……ランジュちゃんとのバトルはどうなったの……?」


そう訊ねてくる。


侑「もしかして、覚えてないの……?」

歩夢「ランジュちゃんとバトルしてたら……ルカリオが出てきて、その子がメガシンカして……。……そこくらいから、記憶が曖昧で……」

侑「…………」


やっぱり、栞子ちゃんの言うとおり、あの状態は歩夢に強い負荷を掛けていたのかもしれない……。


歩夢「侑ちゃん……?」

侑「えっとね……ルカリオの波導が逆に流れ込んで来ちゃって、オーバーヒートしちゃった……って言うのかな……」

歩夢「オーバー……ヒート……」


歩夢は私の言葉に少し難しそうな顔をしていたけど、


歩夢「……そっか……あれは……オーバーヒート……」


自分の中の朧気な記憶と、私の説明を照らし合わせて、納得出来たのか、最終的に呟きながら小さく頷いていた。

そして、


歩夢「……それじゃ……私……負けちゃったんだね……」


そう言いながら、シュンとする。


侑「違うよ」

歩夢「え?」

侑「試合は……歩夢の勝ちだよ」

歩夢「え……」


歩夢は驚いたように目を見開く。


歩夢「ホント……?」

侑「うん。夢中だったから覚えてないかもしれないけど……歩夢がランジュちゃんのポケモンを倒しきって、副将戦は歩夢が勝ったんだよ」

歩夢「そ、そっか……」


歩夢は身に覚えのない勝利に戸惑っている様子だったけど、


侑「歩夢……ありがとう」


私がお礼を言いながら、歩夢をぎゅっと抱きしめると、


歩夢「侑ちゃん……は、恥ずかしいよ……。……でも、みんなの役に立てたなら……嬉しい……えへへ……」


そう言ってはにかむのだった。

しばらく、ぎゅーっとしていると──くぅぅぅ~……と可愛らしい音が聞こえてくる。


歩夢「……///」


歩夢のお腹の音だった。


侑「そういえば……昨日から何も食べてないんだもんね。朝ごはんにしよっか」

歩夢「うん……///」


歩夢の手を引いて、部屋から出ようとしたそのとき──コンコン。控えめにドアがノックされる。

そして、ドアの向こうから、


栞子『……侑さん、今大丈夫でしょうか……?』


栞子ちゃんの声が聞こえてきた。


歩夢「栞子ちゃん……?」


歩夢がドアを開けると、


栞子「……! 歩夢さん、目を覚まされたんですね……! よかった……」


栞子ちゃんは歩夢の姿を見て、ホッと安堵の息を漏らす。


歩夢「心配掛けちゃってごめんね……」

栞子「いえ……ご無事なら何よりです」

侑「それで……どうかしたの?」

栞子「あ、はい。……実は、侑さんにご相談がありまして……」

侑「相談……?」





    🎹    🎹    🎹





侑「──最終戦を栞子ちゃんが……?」

栞子「……はい」


栞子ちゃんから打診されたのは──ランジュちゃんとの五番勝負、その最終戦を自分に戦わせてくれないかというお願いだった。


栞子「最後になって……こんなことをお願いするのは不躾だというのは理解していますが……」

侑「それは構わないけど……どうして急に……?」


ここまで見てきた感じだと……栞子ちゃんは積極的にバトルをしたがる性格ではないし、純粋に疑問だった。


栞子「……皆さんの戦う姿を見ていて……思ったんです。……見ず知らずの私のために……皆さん、あんなに必死に戦ってくれて……。……歩夢さんやしずくさんに至っては、倒れるまで……。……それなのに、私だけが何もしないで見ているだけでいいのかと……」

歩夢「そんなに気負わなくてもいいんだよ……! せつ菜ちゃんも言ってたけど、困ったときはお互い様だよ! 栞子ちゃんは今までずっと一人で地方を守ってくれてたんだし……!」

栞子「いえ……元はと言えば……私とランジュの問題なんです……。本来は、私がランジュを止めなくてはいけなかったのに……」


栞子ちゃんなりに……戦う私たちを見て、ずっと責任を感じていたのかもしれない。


栞子「それに……皆さんの戦う姿を見ていて……私も勇気を貰ったんです。勝てないなんて最初から決めつけず、最後まで諦めずに戦う……私もそんな強さが欲しいと……」

歩夢「栞子ちゃん……」

侑「……わかった。そういうことなら、最終戦──大将は栞子ちゃんにお願いしていい?」

栞子「……! はい!」


栞子ちゃんは私の言葉を聞くと、パァァっと表情が明るくなる。


栞子「それでは、皆さんにもそう報告してきます……!」

侑「うん、お願いね」


栞子ちゃんは一度恭しく私に頭を下げたあと、部屋を出て、下の階へと下りていく。


歩夢「侑ちゃん……いいの?」


歩夢の問い。恐らく、栞子ちゃんはそこまでバトル慣れしていなさそうだし……私が戦った方が勝率は高いと思う。

そういう意味での、「いいの?」という問い。


侑「栞子ちゃんも言ってたけど……根本的には栞子ちゃんとランジュちゃんの問題だし……それに私たちが首を突っ込んでるだけだからさ。栞子ちゃんが自分で解決したいって言うんなら、その方がいいと思って」

歩夢「……確かに、そうかも……」

侑「きっと、栞子ちゃんも悩んで決めたことだと思うし……。……それなら、私は栞子ちゃんの選択を信じてあげたいなって」

歩夢「侑ちゃん……。……わかった。侑ちゃんがそう言うなら、私も賛成」

侑「ありがと、歩夢♪」





    👑    👑    👑





かすみ「むむむー……」

リナ『かすみちゃん、どうしたの?』 || ╹ᇫ╹ ||


難しい顔をして唸ってるかすみん(まあ、そんな顔をしててもかすみんはとびきりキュートなんですけど)を見て、リナ子が話しかけてくる。


かすみ「最終戦……ホントにしお子に任せちゃっていいのかなって……」

リナ『侑さんがいいって言った以上、その判断に従うべきだと思う』 || ╹ᇫ╹ ||

かすみ「それは……そうだけど……」

しずく「……」


かすみんの隣に座っていたしず子が、筆談用のノートにペンを走らせる。

──『かすみさんも反対しなかったでしょ?』


かすみ「そ、そうだけどぉ……」


確かにかすみんも、しお子が自分で戦いたいって言ってるのに、ダメ! なんて言いたくないけど……。


かすみ「ただ……いろいろ考えちゃって……」

リナ『いろいろって?』 || ╹ᇫ╹ ||

かすみ「……ランジュ先輩……強いから、しお子よりもきっと侑先輩の方が勝てる可能性は高いだろうし……。それに……」


言いながら、しず子に視線を向ける。


しずく「?」

かすみ「……しず子がこんなになるまで頑張ったのに……この判断で負けちゃったら……」

しずく「……」


しず子は椅子から立ち上がって──かすみんの頭をナデナデし始める。


しずく「……私、たちの……戦いを見て……栞子さんが、勇気を出せたなら……私は……それで、いいの……けほ……」

かすみ「しず子……」


掠れた声でしず子は言う。

やっぱりまだ喋りづらかったのか、再び筆談ノートを手に取って──『それに、私はちょっと声が枯れちゃっただけだから、そんなに大袈裟なことじゃないよ』──なんてことを書く。

続けて──『あとは栞子さんを信じてあげよう?』……と。


かすみ「……うん」


もちろん、かすみんもいじわるしたくてこんなことを言ってるわけじゃない。


かすみ「……わかった。しず子がそう言うなら、かすみんも全力でしお子のこと応援する」

しずく「♪」


かすみんの言葉を聞いて、しず子はニッコリと笑うのだった。





    🎙    🎙    🎙





善子「それにしても意外だったわ」


研究のお手伝いで、飼育されているポケモンたちに餌をあげていると、博士は私に向かって急にそんなことを言う。


せつ菜「意外? なんのことですか?」

善子「菜々は、勝負には拘るタイプだと思ったから」

せつ菜「……ああ、その話ですか」

善子「即決で栞子が戦うことに賛成したから、ちょっと意外だった」

せつ菜「……そうですね。前の私だったら……きっと難色を示していたと思います」


前の私だったら……確実に勝てる人選を優先したと思う。

私は勝つことでしか自分を証明出来ないと思い込んでいたし……例え草試合でも、とにかく勝つことを意識していた。


せつ菜「ただ……あのとき、千歌さんと全力でぶつかりあって……気付いたんです。本当に大事なことは、勝ち負けだけじゃないのかなって……」


もちろん、勝負である以上、勝利出来るに越したことはない。

だけど……じゃあ、勝てればなんでもいいというわけじゃない。


せつ菜「その戦いに……どう臨んだかとか、それで何を得られるのかとか……。そういうことの方が大事なのかなって……。……栞子さんとランジュさんは幼馴染だと言っていました。きっと、二人がちゃんとぶつかり合うことには、意味があると思うんです」

善子「……なるほどね」


ヨハネ博士はうんうんと頷きながら、私の頭をポンポンと撫でる。


善子「成長したわね。菜々」

せつ菜「えへへ……ヨハネ博士に褒められると、嬉しいです」

善子「これで、菜々が自分の試合で勝ってれば、もっとかっこよかったんだけどね」

せつ菜「え、あ、いや……それは、その……」

善子「ふふ、冗談よ」

せつ菜「い、いじわるなこと言わないでください……」

善子「ふふ、ごめんなさい」


ヨハネ博士はクスクスと笑う。


善子「ただ……栞子が負けたときはどうするの? 五番勝負はレックウザの捕獲の権利を賭けてるんでしょ?」

せつ菜「そのときはそのときです! また何か別の解決策を考えます! だから今は、栞子さんが全力で戦えるよう、応援するのみです!」

善子「……ふふ、愚問だったわね。じゃあ、全力で栞子のこと、サポートしなくちゃね」

せつ菜「はい! お任せください!」


こうして私たちの大将戦は──栞子さんに託されることとなった。





    🎹    🎹    🎹





──セキレイシティを発ってから、数十分ほど。

すぐに次の龍脈の地が見えてきた。


侑「見えてきたね──クリスタルレイク」
 「ブイ」

歩夢「栞子ちゃん、反応は?」

栞子「はい。確実に強くなっています」

せつ菜「間違いなさそうですね! 降りましょう!」

かすみ「アーマーガア、降りてくれる?」
 「ガァーー」


全員でクリスタルレイクへと降り立つ。


栞子「反応は……強くなっているんですが……」

歩夢「方向はあってそうだけど……」


確かに“もえぎいろのたま”はクリスタルレイクに近付くほど強くなるけど……今まで見た龍脈での反応に比べると少し弱く感じる。

となると……。


せつ菜「あとは……高さでしょうか」


──『なら、クリスタルケイヴではないでしょうか』と、しずくちゃん。


侑「うん。水晶の大水槽だと思う」

歩夢「となると……下に降りないとだね」


歩夢がキョロキョロと辺りを見回すと──


歩夢「あっ、あそこに縦穴があるよ!」


すぐにイワークが作ったであろう、大きな穴を見付ける。


リナ『ちょっとエコーロケーションしてくるね』 || ╹ ◡ ╹ ||


リナちゃんがそう言って穴に向かって浮遊し始めると、


 「──ウニャァ~」


ボールからニャスパーが飛び出して、リナちゃんの背面に引っ付いて一緒に飛んでいく。

恐らくニャスパーの“チャームボイス”を使ってエコーロケーションを行う為だろう。

リナちゃんたちが縦穴に向かっていくのを見ながら、かすみちゃんが口を開く。


かすみ「それにしても歩夢先輩……すぐに見つけちゃいましたね」

歩夢「前に侑ちゃんが、この辺りの縦穴に落ちちゃったことがあって……」

侑「あはは……あったね……そんなこと……」


クリスタルケイヴまで繋がる縦穴はかなり長かったし、下にキノコがなかったら、私も無事では済まなかったと思う……。

そんな話をしていると、


リナ『うん。ここからなら、大水晶のある部屋に繋がってると思う』 || > ◡ < ||
 「ウニャァ~」


リナちゃんたちから、報告が入る。


せつ菜「それでは、降りてみましょう! ウーラオス!」
 「──ラオス!!」

かすみ「ジュカイン!」
 「──カインッ」

歩夢「ウツロイド、お願い」
 「──ジェルルップ…」

侑「ドラパルト、出てきて」
 「──パルト」


大きな縦穴と言っても、羽ばたいて降りるのは危ないので、身のこなしの軽いポケモンや、ゆっくり下降の出来るポケモンたちを出す。


せつ菜「かすみさん、お先にどうぞ!」

かすみ「それじゃ、お言葉に甘えて……しず子、乗って」
 「カイン」

しずく「……」


しずくちゃんがコクリと頷きながら、二人でジュカインの尻尾に腰かけ、ジュカインが壁伝いに穴を降りていく。

その後に続くように、せつ菜ちゃんが、ウーラオスの肩に乗り、


せつ菜「ウーラオス、お願いします」
 「ラオス」


壁伝いに降りていく。


侑「栞子ちゃんはドラパルトに一緒に乗ってね」

栞子「はい。お願いします」

歩夢「それじゃ、先に行くね」

侑「うん」

歩夢「ウツロイド、ゆっくり降りるよ」
 「──ジェルルップ」


歩夢がウツロイドを頭の上に乗せ──落下傘のようにゆっくりと下降を始める。

最後に私と栞子ちゃんがドラパルトの頭の上に乗って、ゆっくりと縦穴を降りていく──




    🎹    🎹    🎹





滞りなく、縦穴の底にたどり着くと、例の如く白く光るキノコがたくさん敷き詰められていた。


侑「ネマシュたちは、イワークが作った穴を巣にするんだね」

かすみ「綺麗……ほわほわ……」

リナ『かすみちゃん、あんまり見てると眠くなっちゃうよ』 || ╹ᇫ╹ ||

せつ菜「周囲にネマシュもいますね」


せつ菜ちゃんの言うとおり、


 「ネマシュ…」「マシュ…」


ネマシュが洞窟の陰からこちらを見つめている。

前回は落ちたのが夜だったからネマシュたちは出払っていたけど、今はまだ日中だから洞窟内にいるのだろう。


侑「ライボルト、“エレキフィールド”」
 「──ライボ!!」


ボールからライボルトを出して、“エレキフィールド”を展開させる。

“エレキフィールド”の中でなら、眠ることがなくなるから、これで眠ってネマシュたちに襲われる心配もなくなる。


かすみ「なんか、ピリピリしてて、目が冴えてきました……!」


効果てき面のようだ。

ネマシュたちも眠らないのがわかってからは、横を通ってもじーっと見ているだけで、攻撃してくるような素振りはなかった。

そのまま、通路を進んでいくと──水晶の大水槽の大部屋に辿りつく。


栞子「……これは……。……すごいです……」


この光景は何度見ても圧倒される。……透明な水晶の先で、湖に差し込んできた太陽光がプリズムのように反射してキラキラと光っている光景は、神秘的で息を飲んでしまう。

そして、その七色の光の下に、


ランジュ「……遅かったわね」

ミア「……」


ランジュちゃんたちが居た。


ランジュ「さぁ、侑……白黒付けましょう」


私に向かって、そう促してくるけど──


栞子「いえ、ランジュ……。……今回戦うのは、私です」


栞子ちゃんが前に歩み出る。


ランジュ「……え? ……ち、ちょっと待って……! 栞子、貴方は五番勝負のメンバーじゃないはずよ!」

栞子「はい。ですので、無理を言って代わってもらいました」

ランジュ「か、代わってもらったって……き、聞いてないわ! そんなこと……!」

栞子「確かに言ってないので……聞いてないとは思いますが……。……ですが、そもそも“もえぎいろのたま”を持っているのは私です。私が戦うメンバーになることに問題はないと思います」

ランジュ「でも、栞子……! 貴方は修行中、ランジュに一度だって勝ったことなんてなかったじゃない!」

栞子「それはむしろ、ランジュにとっては都合のいいことなのではないですか? それとも──私に負けるのが怖いんですか?」

ランジュ「な……! そんなわけないでしょ!! いいわ、この際相手が栞子でも、侑でも、どっちでも……!」

栞子「ありがとうございます」


栞子ちゃんは、ランジュちゃんの扱いがわかっているのか、説得して、フィールドに立つ。


ミア「ランジュ。ポケモン」

ランジュ「谢谢」


ランジュちゃんがミアちゃんからポケモンを受け取り、二人がフィールドで相対する。

そんな中で、栞子ちゃんは、


栞子「皆さん」


こちらを振り返り、私たち全員に順番に目配せをして、


栞子「頑張りますので……見ていてください!」


覚悟の言葉を口にした。


侑「うん! 頑張って、栞子ちゃん!」

せつ菜「栞子さんの気持ち、ランジュさんにぶつけてあげてください!」

──『栞子さん、応援してるね!』

かすみ「しお子! 任せたからね!」

リナ『栞子ちゃん、ファイト!!』 || > ◡ < ||

歩夢「栞子ちゃん、思いっきり戦って!」

栞子「はい!」


栞子ちゃんは私たちの言葉に頷き──フィールドに向き直り、


ランジュ「始めるわよ……!」

栞子「はい……!」


二人のトレーナーが、ボールを、放った──




    🔖    🔖    🔖





栞子「ウインディ! お願いします!」
 「──ワォン」


私は灰色の体毛を身に纏った、ヒスイのすがたのウインディを繰り出す。

通常のウインディとは違って、体毛に火成岩の成分が含まれており、加えて岩で出来たツノを持っている、ほのお・いわタイプの姿です。

さらに頭には“ちからのハチマキ”を巻いて攻撃力を強化している。

対するランジュが繰り出したのは、


ランジュ「ギルガルド、行きなさい!」
 「──ガルド」


剣と盾の体に霊魂を宿したおうけんポケモン、ギルガルド。


栞子「ウインディ!! “かえんぐるま”!!」
 「ワォンッ」


ウインディが先制で炎を身に纏って、ギルガルドへ突進する。

──ガィンッ!! ウインディの硬い体毛と、ギルガルドの金属質の盾がぶつかり合い、硬い音を立てながら、弾き返される。

ノックバックしたウインディに、


ランジュ「“せいなるつるぎ”!!」
 「ガルド…!!!」

 「ワォンッ…!!!」


盾を除け、“ブレードフォルム”にチェンジした、ギルガルドの刃がウインディを斬り裂く。


栞子「怯まないでください……! “かえんほうしゃ”!!」
 「ワォンッ…!!」


ウインディはすぐさま口に炎を宿し、ギルガルドに向かって放射する。

ですが、


ランジュ「“キングシールド”!!」
 「ガルド」


再び、“シールドフォルム”に戻ったギルガルドは、自身の大きな盾で“かえんほうしゃ”を防いでしまう。


栞子「“キングシールド”には隙が出来ます……! もう一度!!」
 「ワォーンッ…!!!!」


連続で“かえんほうしゃ”による攻撃。隙の出来たギルガルドに今度こそ直撃させられたと思ったが、


ランジュ「戻りなさい、ギルガルド!!」
 「ガルド──」


ランジュは、冷静にギルガルドを控えに戻し、次のポケモンのボールを放る。

飛び出して、ギルガルドの代わりに“かえんほうしゃ”を受け止めるのは──


ランジュ「行きなさい、マリルリ!」
 「──マリ」


みずうさぎポケモン、マリルリ。

“かえんほうしゃ”を真っ向から受け止めるマリルリの体に──みずのエネルギーが纏われるのが見えた。


ランジュ「“アクア──」

栞子「……! 戻ってください、ウインディ!」
 「ワォン──」


ランジュが攻撃の指示を出し切る前に、咄嗟にウインディをボールに戻し、次のポケモンのボールを投げ込む。


ランジュ「──ジェット”!!」

栞子「マルマイン!!」
 「──マインッ!!」


そして、代わりに飛び出してきたのは、ヒスイの姿のマルマイン。

通常のマルマインと違い、木目調のボディはでんきタイプだけでなく、くさタイプも有し、みずタイプの“アクアジェット”を半減して受け止める。

受け止めると同時に、


栞子「“10まんボルト”!!」
 「マインッ!!!」

 「マリッ…!!!?」


電撃による反撃でマリルリを痺れさせる。効果は抜群ではあるものの──マリルリが身に纏っている“とつげきチョッキ”のせいで、ダメージは思ったように通っていない。

しかし、だとしても相性は圧倒的にこちらが有利。


ランジュ「……く……」


直後、


ランジュ「戻りなさい、マリルリ!」

栞子「戻ってください、マルマイン!」

ランジュ「……!?」


二人同時にポケモンをボールに戻し、


 「──ワォン…!!」

 「──サザンドーラッ…!!!」


ウインディとサザンドラがフィールドに繰り出される。


栞子「ランジュはバトルの基本がよく出来ていると、お師匠様もよく褒めていましたね」

ランジュ「……」


ランジュなら、絶対に交換をしてくると思ったからこそ、私もポケモンを交換した。

ただ……何度もうまく行くわけじゃない。ちゃんと、読みを通した一回一回の機会を大切にしないと……!


ランジュ「サザンドラ、“りゅうのはどう”!!」
 「サザンーーラッ!!!!」

栞子「“いわなだれ”!!」
 「ワォン…!!」


ウインディが目の前に、岩石を大量に落とし、壁を作って“りゅうのはどう”を防御する。

それによって、砕かれた岩の壁の向こうから──


 「サンドーーラッ!!!」

栞子「……!?」


サザンドラが突っ込んできていた。


ランジュ「“とんぼがえり”!!」
 「サザンッ!!!」

 「ワゥッ…!!」


ダメージは小さいが、再び交換を許し、“とんぼがえり”の効果でボールに戻ったサザンドラの代わりに、


 「──マリッ」


再びマリルリが飛び出し、ウインディに向かって飛び掛かってくる。


ランジュ「“じゃれつく”!!」
 「マリ~♪」


そのまま、じゃれついてくるマリルリ。フェアリータイプの攻撃はウインディには効果いまひとつです。

ダメージを半減にして攻撃を受け、そのまま、


栞子「“かみなりのキバ”!!」
 「ワォン…!!!」


電撃を纏ったキバで噛みついて攻撃する。


 「マリリッ…!!」
ランジュ「今度は交換してない……!」


ランジュが次の行動に移る前に、


栞子「交代です……!」
 「ワオンッ──」

 「──マインッ!!!」


再び、飛び出すマルマインが、


 「マリッ…!!!」


マリルリのみずエネルギーを纏った突進──“たきのぼり”を受け止める。


ランジュ「また、読まれた……!?」

栞子「マルマイン!! “クロロブラスト”!!」
 「マインッ!!!」


マルマインがボールの体の真下部分を相手に向けると同時に──緑色のエネルギー砲が一気に放出される。


 「マリ…!!!?」


至近距離で極太のくさタイプのレーザーが直撃すると同時に、大爆発を起こし、強烈な光を伴うエネルギーの奔流が止む頃には──


 「マ、マリ…」


弱点タイプの攻撃なこともあって、マリルリが戦闘不能になって目を回していた。

“クロロブラスト”は自分にも大きな反動ダメージがある分、とても強力な技です。

さらに今回マルマインに持たせた道具はくさタイプの攻撃力を上げる“きせきのタネ”──“とつげきチョッキ”があっても、どうやらその威力には耐えきれなかったようです。


栞子「……やりました……! マルマイン!」
 「マインッ」

ランジュ「……っ」

ミア「……おい、ランジュ」

ランジュ「……大丈夫よ、黙って見てなさい」

ミア「……」


ランジュは今にも文句を言いたげなミアさんを言葉で制しながら、次の手持ちをフィールドに出す──





    🎹    🎹    🎹





かすみ「しお子すごい……!」

歩夢「うん……! ランジュちゃんを圧倒してる……!」

せつ菜「ランジュさんのトレーナーとしての癖を理解していますね……同門だからでしょうか」


確かに読み勝ちが、試合の流れをいい方向に持って行っている。

──『栞子さん……すごくよく相手を見ながら戦っていますね』としずくちゃん。

ある意味、ランジュちゃんにとっては、栞子ちゃんこそ厄介な相手なのかもしれない。


かすみ「この勝負……勝てますよ……!」

侑「うん……!」

歩夢「栞子ちゃーん! 頑張ってー!!」





    🔖    🔖    🔖





背中に声援を受けながら、


 「──ガルド」


再び場に現れるギルガルドと相対する。

ギルガルドには、くさタイプでは効果が薄い。なら……!


栞子「“10まんボルト”!!」
 「マインッ!!!」


電撃による攻撃。


 「ガルド…」


ギルガルドは、それを“シールドフォルム”で受け止めながら──不思議な動きを始める。

盾の後ろで、自身の刀身を振るような──


栞子「……!?」


攻撃技をしてくると思っていたので、一瞬何をしているのかで困惑してしまったけど──すぐに思い至る。


栞子「……しまった……!? “つるぎのまい”……!?」


あえてマルマインの攻撃を受け止め──その隙に“つるぎのまい”で自身の攻撃力を上げていたんだと気付いたときには、もうすでに遅く、


ランジュ「“かげうち”!!」
 「ガルドッ」

 「マインッ…!!!?」
栞子「……っ! マルマイン……!!」


上昇した攻撃による、高速の一撃がマルマインに直撃し、


 「マ、マイン…」


“クロロブラスト”による自分へのダメージもあったマルマインは、戦闘不能になってしまった。


栞子「も、戻ってください……!」
 「マイン…──」

ランジュ「やっぱり、読みと言っても完璧じゃないわね」

栞子「……く……」


そう言う間にも、


 「ガルド…」


ギルガルドは“たべのこし”で自身の体力を回復しながら待っている。

早く次のポケモンを出さないと……!


栞子「お願いします! ゾロアーク!」
 「ゾロアーーク…」


私は3匹目──ヒスイのすがたのゾロアークを繰り出す。

あくタイプである本来のゾロアークと違って、ヒスイのすがたはノーマル・ゴーストタイプ。

このタイプなら、攻撃力が強化された“かげうち”で一方的にやられることは防げる。

さらに、こちらのゴーストタイプの技を“のろいのおふだ”で強化している。


栞子「“シャドーボール”!!」
 「ゾロアーーク…!!」

ランジュ「“キングシールド”!」
 「ガルド」


当然の如く、ギルガルドは“シールドフォルム”に戻って攻撃を受け止める。

でも、ギルガルドの戦い方を考えれば、ここまではわかり切っていること。

勝負はここから……!


 「ゾロアーーーク…」


ゾロアークから紫色の呪いのオーラが溢れ出す。


栞子「“うらみつらみ”!」
 「ゾロアーーークッ…」


そのオーラは、ギルガルドを包み込み、


 「ガルド…!!!」


ダメージを与えながら──身の毛もよだつ呪いのエネルギーが相手を“しもやけ”状態にする技です。


ランジュ「確かに強力な技だとは思う……だけどね」


“シールドフォルム”で攻撃を耐え、“バトルスイッチ”で“ブレードフォルム”へと姿を変えながら、


ランジュ「“アイアンヘッド”!!」
 「ガルド!!!!」


剣の切っ先をこちらに向けて、突き刺すように、ゾロアークへと突撃をしてくる。


栞子「ゾロアーク!!」
 「ゾロアーークッ…」


ゾロアークは、後ろに飛びながら、攻撃を回避しようとするが──

しつこく追い回してくるギルガルドから、逃げ切れず、


 「ゾロアーークッ…!!」


重い剣の体をぶつけられ、地面を転がり、たったの一撃で戦闘不能になってしまった。


栞子「ゾロアーク……!」
 「ゾ、ゾロアーク……」

ランジュ「防御が低いゾロアークじゃ、撃ち合いきれなかったわね」

栞子「戻ってください……ゾロアーク……」


ゾロアークをボールに戻す。

あっという間に追い詰められて……残るは、ウインディだけ……。


ランジュ「……栞子、もうやめましょう。貴方じゃ私には勝てない」

栞子「……まだ……勝負はついてません……!」

ランジュ「無理よ。栞子は、私には勝てない……。……ねぇ、侑」


ランジュは急に、私の後ろにいる侑さんに声を掛ける。


侑「ん……なにかな」

ランジュ「この勝負……無効試合にしない? 栞子は本来戦う予定じゃなかったし……そもそもバトルが得意じゃない。ランジュが勝って当然よ……これで勝っても、嬉しくないわ。だから、この試合はなかったことに──」

栞子「……ダメです……!」


私はランジュの言葉を遮るように声をあげる。


ランジュ「……栞子。貴方は戦わなくていいの」

栞子「……どうして……ランジュがそれを決めるんですか……!」


私はギュッとボールを握り込む。

自分が弱いことは……自分が一番わかっている。

自分にバトルの才能がないことだって……わかっています。

でも──


栞子「……私は……ずっと後ろで皆さんの戦いを見てきました」


私には、かすみさんのように、意表を突く奇抜な戦い方は出来ません。

せつ菜さんのように、裏打ちされた自信と、確かな実力で、盤石な戦いを展開することは出来ません。

しずくさんのように、誰にも予想出来ないような舞台を自身の力で作り出すことも……。

歩夢さんのように、信じられないような力で圧倒することも出来ない……。


栞子「私は……皆さんのように、上手に戦うことは出来ません……だけど──」


私は真っすぐランジュに視線をぶつける。


栞子「諦めないで最後まで戦うことは……私にだって出来ます……!」

ランジュ「…………」

栞子「ランジュが勝手に、私の可能性を決めないでください……!!」


私は──ボールを投げる。


 「──ワォンッ!!!!」

栞子「ウインディ!! “かえんほうしゃ”!!」
 「ワォンッ!!!」


ウインディが炎を噴き出すが──それより早く、


ランジュ「“かげうち”!!」
 「ガルド!!!」

 「ワオンッ…!!」


ウインディの足元から影が立ち上り、ウインディを攻撃する。

でも、ギルガルドも“かえんほうしゃ”に飲み込まれ──


 「…ガル、ド…」


ここまでの蓄積ダメージもあって、やっと崩れ落ちる。


栞子「これで……1対1です……!」

ランジュ「……体力の削れたウインディで、サザンドラに勝てると思ってるの?」

栞子「まだ、勝負はついてません……!」

ランジュ「……侑、もう決着はついてるようなものよ。ここで試合を無効に出来るのは、貴方たちにとっても悪い話じゃないと思うんだけど」

栞子「ランジュ……!! どうして、そこまでして試合をなかったことにしたがるんですか……!?」

ランジュ「……そんなの……栞子と、これ以上戦いたくないからに決まってるじゃない……」

栞子「どうしてですか!? 私が弱いからですか!?」

ランジュ「そうよ。栞子は弱い」

栞子「……っ!」


真っ向から、弱いと言われ、言葉に詰まる。


ランジュ「だから、強い人に守ってもらえばいいの。栞子が戦う必要なんて最初からないのよ」

栞子「……どうして──どうして、ランジュはいつも……私の話を聞いてくれないんですかっ……! 龍神様のことだって……解放したら大変なことになってしまうと何度も言ったのに……!!」

ランジュ「……話を聞いてくれないのは……栞子だって同じじゃない」

栞子「……え」


ランジュが──酷く寂しそうに、言った。


ランジュ「サザンドラ、出てきなさい」
 「──サザンドーラ…!!!」

ランジュ「……そんなに続けたいなら……わからせてあげる。栞子は自分で戦う必要なんかないって……」

栞子「…………」

ランジュ「それで……もう戦わなくなるんだったら……。栞子に戦いなんて向いてないって……ちゃんと、わからせてあげるから……」


ランジュが一体、何を考えているのか……私には理解出来なかった。

ですが、戦いは最後の局面へと移っていく……。





    🔖    🔖    🔖





ランジュ「“サザンドラ”! “あくのはどう”!!」
 「サザンドーーラッ!!!!」

栞子「“いわなだれ”!!」
 「ワォンッ!!!!」


再び前方に岩を降らせ、壁を作って攻撃を防ぐ。

だけど、


ランジュ「“りゅうのはどう”!!」
 「サザンドーーラッ!!!!」


ランジュは立て続けに攻撃をし、岩石の壁を吹き飛ばす。


栞子「っ……! ウインディ、走ってください……!」
 「ワォンッ…!!!」


狙いを付けられないように、ウインディが走り回り始める。


ランジュ「逃がさないわ……! サザンドラ!!」
 「サザンドーーラッ!!!!」


ランジュの指示と共に、サザンドラの3つの口に、光が集束され──


ランジュ「“ラスターカノン”!!」
 「サザンドーーーラッ!!!!」


光が一閃し、


 「ワォンッ…!!!!」
栞子「ウインディ……!!」


ウインディを撃ち抜く。


ランジュ「……無理よ。栞子じゃ……私には勝てない」

栞子「ま、まだです……!!」
 「ワォ、ンッ…!!!」


ウインディはよろけながらも立ち上がる。


ランジュ「逃げるので精一杯じゃない……」
 「サザンドーーラッ…!!!」


サザンドラの3つの口にそれぞれ──ほのお、でんき、こおりのエネルギーが集束され始める。


ランジュ「“トライアタック”!!」
 「サザン、ドーーーラッ!!!!」


発射される3種のエネルギーの複合技に向かって、


栞子「“だいもんじ”!!」
 「ワーーォォーーーンッ!!!!!」


大の字に広がる、業火で迎え撃つ。

空中でエネルギーがぶつかり合い、


栞子「きゃぁ……!」


弾ける衝撃が、私のところまで伝わってきて、尻餅をつく。


歩夢「栞子ちゃん……!」

栞子「へ、平気です……!」


でも、私はすぐに立ち上がる。

まだ……まだ終わってない……!


栞子「“ストーンエッジ”!!」
 「ワォンッ!!!」


ウインディが前足で地面を打ち鳴らすと──サザンドラの真横にあった、洞窟の壁から鋭利な岩が突き出てくる。

しかし、


 「サザンドーラッ」


サザンドラはアクロバット飛行のような身のこなしで、その岩を躱しながら、


ランジュ「“りゅうのはどう”!!」
 「サザンドーーーラッ!!!!!」


ドラゴンエネルギーを発射する。


 「ワォンッ……!!?」


直撃。


栞子「ウインディ……!!」

ランジュ「勝負……あったわね」


よろけるウインディ。

体がゆっくりと傾き、崩れ落ちそうになったが──


 「ワォンッ…!!!」
栞子「ウインディ……!」

ランジュ「……!」


ウインディは持ちこたえ、


 「ワォーーーンッ!!!!!」


“かえんほうしゃ”でサザンドラに反撃する。


 「サザンッ…!!!」


猛烈な火炎で押し返しながら、再びウインディが走り始める。


栞子「まだ……まだです……!」


歩夢「栞子ちゃーん! 頑張ってー!!」

せつ菜「栞子さん!! まだチャンスはありますよ!!」

かすみ「しお子ーー!! 諦めちゃダメだよーーー!!」


栞子「はい……!!」


私は皆さんの声援に頷く。


ランジュ「……何よ。……私の言葉は……聞いてくれないのに……なんで……」

栞子「ランジュ……! 私は何を言われても、途中で諦めたりしません……!」

ランジュ「…………サザンドラ……“ドラゴンダイブ”」
 「サザンドーーーラッ!!!!」


急にサザンドラが──猛スピードで、ウインディに向かって落下してきた。


 「ワォンッ…!!?」
栞子「ウインディ……!?」


急なことに全く対応出来ず、ウインディはサザンドラにのしかかられるように組みつかれ──


ランジュ「“りゅうのはどう”」
 「サザンドーーーラッ!!!!」


至近距離で“りゅうのはどう”が炸裂する。


ランジュ「……だから言ったでしょ……栞子は私には勝てない」

 「ワ、ォォォン…!!!」
栞子「まだ……まだですっ!!!」

 「サザンッ…!!!?」
ランジュ「な……!?」


ウインディはボロボロになりながらも、サザンドラの真ん中の首に噛みつき、抵抗を続ける。


ランジュ「しつこい……!!」
 「サザンッ…!!!!」


しかし、サザンドラの首は3つある。両サイドの首から“りゅうのいぶき”を噴き付けられる。

でも、それでも──


 「ワ、ォォォォンッ!!!!!」


ウインディは倒れなかった。


ランジュ「なんで……なんでよ……。……もう、体力……限界でしょ……」

栞子「ウインディ!! “だいふんげき”!!」
 「ワォォォォンッ!!!!!」


ウインディは全身から炎熱を噴き出しながら、暴れはじめる。


ランジュ「……なんでよ」

栞子「ランジュッ!! 私は、最後まで諦めません……!!」
 「ワォォォォンッ!!!!!」

 「サザン、ドーーラッ…!!!!」


ウインディは逆にサザンドラを組み伏せ、何度も何度も炎熱を叩き付ける。

しかし、サザンドラもただ無抵抗にやられているわけではなく、何度も3つの首から、“りゅうのはどう”や“りゅうのいぶき”を発射し、ウインディを攻撃している。


栞子「あとちょっと……あとちょっとで……!!」

ランジュ「……なんなのよ」

 「ワォォォォンッ!!!!!!」


ウインディが雄叫びと共に──大きく息を吸い込む。


ランジュ「……これでやっと──栞子が……戦わなくてよくなると……思ったのに……」

栞子「ウインディ!!! “だいもんじ”!!!」
 「ワォォォォンッ!!!!!」


ウインディが最後の大技をサザンドラ目掛けて放った──が……。

ボフッ……。ウインディの口からは、小さな炎が出ただけで──


 「ワ…ォン…」


ウインディは静かに崩れ落ちたのだった。


栞子「あ……」

ランジュ「……」


ウインディは……ついに力尽きて、戦闘不能になっていた。


栞子「ウインディ……!」


私はウインディの傍に駆け寄る。


 「ワ、ォン…」
栞子「ウインディ……」


ボロボロになったウインディの顔に身を寄せると──


 「ワォン…」


ウインディは弱々しく鳴きながら、私の頬をペロりと舐めた。


栞子「ありがとうございます……ウインディ。……よく頑張りましたね……」
 「ワ、ォン…」


私はウインディを労ってから、ボールに戻す。

そしてそこに、


歩夢「栞子ちゃん……!」

かすみ「しお子ー……!!」


皆さんが駆け寄ってくる。


栞子「……すみません……。……負けて……しまいました……」


私はそう口にしながら、シュンとしてしまう。けど、


歩夢「うぅん……栞子ちゃん、すごく頑張ってたの……ちゃんと見てたよ」

栞子「歩夢さん……」

かすみ「うんうん! ナイスファイトだったと思うよ! 特に最後、すごかった!」

栞子「かすみさん……」

せつ菜「そうですよ。結果は負けてしまったかもしれませんが……得られるものはあったはずです」

栞子「せつ菜さん……」

侑「誰も栞子ちゃんのこと、責めたりしないから……そんな顔しないで?」

栞子「侑さん……」

しずく「……栞子さん……けほ……かっこ、よかったよ……けほけほ……」

栞子「しずくさん……」


負けてしまった。

自分から名乗り出て、戦うと言ったのに。

大事な大将戦で負けてしまったのに……。

皆さんが励ましてくれる言葉が、温かかった……。


ミア「……とりあえず、これでランジュの3勝2敗だ。……レックウザを捕まえる権利はランジュが得る。それで問題ないね?」

栞子「……はい」


これに関してはそういう約束である以上、反故にすることは出来ない。

ですが──


ランジュ「…………もう、いいわ」


ランジュは急に、目を伏せたまま、そう言った。


ミア「What?」

ランジュ「……もう……いい……」

ミア「何がだよ」

ランジュ「…………レックウザ……もう、いい……」

ミア「……はぁ? おい、何言ってるんだ、ランジュ」

ランジュ「…………栞子に……こんな苦戦してるようじゃ……ダメなのよ……」


ランジュは絞り出すように言いながら──手から、“みどりいろのたま”を地面に放る。


栞子「……ランジュ……?」

ランジュ「ランジュは……圧倒的に強くなくちゃいけないのに……」


そう言って、ランジュは踵を返す。


ミア「おい、ランジュ!!」

ランジュ「……ミア、もう付いてこなくていいわ」

ミア「はぁ!?」

ランジュ「……もう……やめにしたから……」

ミア「ふざけんなよっ!! おい、待てって……!! ランジュ!!」


ミアさんが大声で怒鳴りながら、ランジュを制止しますが──ランジュは振り返ることなく、クリスタルケイヴから去っていってしまったのでした……。





    🎹    🎹    🎹





ミア「なんだよ……一体なんなんだよ……!! わけわかんないよ……!!」


憤慨するミアちゃんを見ながら、私たちも呆然としていた。


かすみ「えっと……とりあえず……解決……しました……?」

せつ菜「……そ、そう……なんですかね……?」

侑「……確かに、ランジュちゃんがレックウザを諦めてくれたなら……目的は達成された……けど……」


あまりに急な展開に、全員が反応に困っていた。

そんな中、


ミア「…………っ」


ミアちゃんは拳を握りしめて、肩を震わせていた。


ミア「……なん……だよ……。……ランジュが、ボクの育てたポケモンで……最強を証明するって……言ったんじゃないか……」


ミアちゃんは悔しそうに、呟く。

ミアちゃんは最初は憤慨していたけど、だんだんと表情が曇っていき──


ミア「…………ボクの育てたポケモンが……悪かったのか……?」


自分を責めるようなことを口にし始めた。


ミア「ボクの育てたポケモンが……弱いから……ランジュが、満足の行く結果を……出せなかったんじゃ……」


自分を卑下するように言うミアちゃんに向かって、


リナ『そんなことないと思う』 || ╹ᇫ╹ ||


リナちゃんが答える。


ミア「…………なんだよ。同情か?」

リナ『そうじゃない。ミアちゃんの育てたポケモンは、攻撃、防御、素早さ、技や細かい調整も、全部完璧だった。だから、そんなに自分を卑下しなくてもいい』 || ╹ ◡ ╹ ||

ミア「……お前に何がわかるんだよ」

リナ『わかる。私はポケモン図鑑だから。ミアちゃんの育てたポケモンがどれだけ強かったのかは、数値を見れば一目瞭然』 || ╹ ◡ ╹ ||

ミア「じゃあ……なんで、ランジュはいなくなったんだよ!!!」

リナ『それはわからない。でも、ミアちゃんが自分を責める必要は全くない。自信を持っていい』 || ╹ ◡ ╹ ||

ミア「……っ!! お前なんかに何がわかるんだよっ!!! ただの機械の癖に……!!」


ミアちゃんが振るった手が、近くを飛んでいたリナちゃんのボディを弾く。


リナ『わわ……!?』 || ? ᆷ ! ||

侑「リナちゃん……!?」

ミア「あ……っ」


ミアちゃんもさすがに手が出てしまったことに、動揺を見せるが──


ミア「まだ……何も証明、出来てないのに……っ……」


唇を噛み締めて、その場から走り去ってしまった。


かすみ「もう……なんなんですか、あれ」

侑「リナちゃん、平気?」

リナ『平気……。……私、もしかして無神経なこと、言っちゃったかな……』 || 𝅝• _ • ||

せつ菜「そんなことは、ないと思いますけど……」

かすみ「うまく行かなくって、ムキーってなっちゃってただけでしょ。別にリナ子が気にするようなことじゃないって」

リナ『うん……』 || 𝅝• _ • ||

侑「…………」

歩夢「とりあえず……私たちも外に出る……?」


歩夢の言葉にしずくちゃんが頷きながら、『それがいいかもしれません』と筆談する。


栞子「…………」

歩夢「栞子ちゃん……大丈夫……?」

栞子「え……あ、はい……」


栞子ちゃんも、あまりに急なことだったため、頭が追い付いていない様子だった。


せつ菜「とりあえず……今後どうするかは研究所に戻って話しましょうか」

侑「そうだね……一旦、セキレイに戻ろう」


全員で頷き合い、私たちはクリスタルケイヴを後にする。

五番勝負は……惜しくも負けてしまったけど……期せずして、事態は……解決……したのかな……?




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【クリスタルケイヴ】
 口================== 口

  ||.  |○         o             /||
  ||.  |⊂⊃                 _回/  ||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
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 口==================口



 主人公 侑
 手持ち イーブイ♀ Lv.82 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
      ウォーグル♂ Lv.79 特性:まけんき 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
      ライボルト♂ Lv.80 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
      ニャスパー♀ Lv.77 特性:マイペース 性格:きまぐれ 個性:しんぼうづよい
      ドラパルト♂ Lv.78 特性:クリアボディ 性格:のんき 個性:ぬけめがない
      フィオネ Lv.74 特性:うるおいボディ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:284匹 捕まえた数:12匹

 主人公 歩夢
 手持ち エースバーン♂ Lv.69 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
      アーボ♂ Lv.69 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
      マホイップ♀ Lv.65 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
      トドゼルガ♀ Lv.65 特性:あついしぼう 性格:さみしがり 個性:ものおとにびんかん
      フラージェス♀ Lv.65 特性:フラワーベール 性格:おっとり 個性:すこしおちょうしもの
      ウツロイド Lv.73 特性:ビーストブースト 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 3個 図鑑 見つけた数:263匹 捕まえた数:24匹

 主人公 かすみ
 手持ち ジュカイン♂ Lv.84 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
      ゾロアーク♀ Lv.78 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
      マッスグマ♀ Lv.75 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
      サニゴーン♀ Lv.75 特性:ほろびのボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
      ダストダス♀✨ Lv.74 特性:あくしゅう 性格:がんばりや 個性:たべるのがだいすき
      ブリムオン♀ Lv.76 特性:きけんよち 性格:ゆうかん 個性:ちょっとおこりっぽい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:304匹 捕まえた数:15匹

 主人公 しずく
 手持ち インテレオン♂ Lv.69 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
      バリコオル♂ Lv.68 特性:バリアフリー 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      アーマーガア♀ Lv.68 特性:ミラーアーマー 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ロズレイド♂ Lv.68 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
      サーナイト♀ Lv.69 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ツンベアー♂ Lv.69 特性:すいすい 性格:おくびょう 個性:ものをよくちらかす
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:285匹 捕まえた数:23匹

 主人公 せつ菜
 手持ち ウーラオス♂ Lv.79 特性:ふかしのこぶし 性格:ようき 個性:こうきしんがつよい
      ウインディ♂ Lv.87 特性:せいぎのこころ 性格:いじっぱり 個性:たべるのがだいすき
      スターミー Lv.83 特性:しぜんかいふく 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      ゲンガー♀ Lv.85 特性:のろわれボディ 性格:むじゃき 個性:イタズラがすき
      エアームド♀ Lv.81 特性:くだけるよろい 性格:しんちょう 個性:うたれづよい
      ドサイドン♀ Lv.84 特性:ハードロック 性格:ゆうかん 個性:あばれることがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:211匹 捕まえた数:51匹

 主人公 栞子
 手持ち ピィ♀ Lv.11 特性:メロメロボディ 性格:やんちゃ 個性:かけっこがすき
      ウォーグル♂ Lv.71 特性:ちからずく 性格:れいせい 個性:かんがえごとがおおい
      ウインディ♀ Lv.71 特性:もらいび 性格:さみしがり 個性:のんびりするのがすき
      ゾロアーク♂ Lv.69 特性:イリュージョン 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      イダイトウ♀ Lv.68 特性:てきおうりょく 性格:さみしがり 個性:にげるのがはやい
      マルマイン Lv.69 特性:ぼうおん 性格:きまぐれ 個性:すこしおちょうしもの
 バッジ 0個 図鑑 未所持


 侑と 歩夢と かすみと しずくと せつ菜と 栞子は
 レポートに しっかり かきのこした!


...To be continued.




■ChapterΔ009 『ミア・テイラー』 【SIDE Yu】





クリスタルケイヴでの試合を終えて、ツシマ研究所に戻ってきた私たち。


せつ菜「とりあえず……これから、どうしましょうか」

侑「レックウザを封印しに行く……のかな……?」
 「ブイ?」

栞子「そうですね……。ランジュがこれ以上、龍神様に関わる気がないのなら……そうなると思います」

かすみ「でもでも……あのランジュ先輩が、こんな簡単に諦めるんですかね……?」


確かに、なかなか話を聞いてくれなかったランジュちゃんが、突然レックウザ捕獲の挑戦権を放棄してしまったのは、今でも信じられないけど……。


栞子「ですが……宝珠はここにあります」


栞子ちゃんは今まで使っていた“もえぎいろのたま”とは別に、ランジュちゃんが捨ててしまった“みどりいろのたま”も持っていた。


栞子「宝珠がなければ……結局、龍神様に龍脈のエネルギーをお返し出来ませんし……エネルギーを返さないと捕獲も出来ません」

歩夢「そもそも、そのために龍脈のエネルギーを集めて回ってたんだもんね……」


ランジュちゃんが宝珠を捨ててしまったと言うことは、本当にレックウザを捕獲する気を失くしたのと同義だ。


かすみ「まあ、ランジュ先輩が何考えてるかはわかりませんけど……とりあえず、解決したってことでいいんじゃないですか?」


かすみちゃんはあっけらかんと言うけど、それに対してしずくちゃんが──『それでいいのかな……』と心配そうに返す。


かすみ「でも、これで後はレックウザをもう一度しお子が封印すればいいんでしょ?」


──『それはそうかもしれないけど……』としずくちゃん。


せつ菜「ところで……レックウザは今どこにいるんでしょうか?」

栞子「それはわかりませんが……恐らく、まだ私たちの行っていない龍脈の地にいると思われます」

歩夢「龍神様も龍脈の地を目指してたの……?」

栞子「龍神様も龍脈からエネルギーを吸収することは出来るので……本来は自分の持っていたエネルギーですし。ただ、宝珠ほど効率がいいわけではないので……」

せつ菜「つまり……いつまでも放っておくと、龍脈のエネルギーを集めきって、完全復活してしまうということですね」

栞子「そういうことになります。恐らく、宝珠で集めた龍脈とは逆順で巡っていると思うので、このまま反応を追っていけば、龍神様とはどこかで鉢合わせることになると思います」

せつ菜「私たちの目的は捕獲ではありませんでしたが……レックウザを見付けるためには、どちらにしろ龍脈を巡る必要があったということですね」

かすみ「じゃあ、次の龍脈を目指しましょう! しお子、次の龍脈は──」


かすみちゃんがそう言いかけたところに、


善子「……余裕が出来たなら、一旦休んだ方がいいんじゃない? 貴方たち、ここ数日ずっと動きっぱなしでしょ?」


とヨハネ博士から一言。


かすみ「えー、でも善は急げって言うじゃないですか~」

善子「準備を整えなさいって話よ。これから、そのレックウザと対面するんでしょ? 何事もなく、はいわかりましたって、また封印されてくれると思うの?」

かすみ「う……それは、確かに……」

善子「特に、歩夢としずくは一旦ゆっくり休みなさい。じっとしてろとは言わないけど、万全な状態じゃないんだから。リフレッシュも兼ねて1日くらい休息を取りなさい」

歩夢「は、はい」


ヨハネ博士の言葉に──『お気遣い感謝します』としずくちゃんが頭を下げる。


侑「それじゃ……明日1日は自由行動にしよっか」

栞子「自由行動……ですか……?」

歩夢「やっぱり……早く龍神様のところに行きたい?」

栞子「い、いえ……そういうわけではなくて……。……自由行動と言われても、一体何をすればいいのかと……」

かすみ「そういうことなら~、セキレイデパートでお買い物しようよ~! しお子に似合うアクセサリー、かすみんが選んであげる!」

栞子「あ、アクセサリーですか……?」

歩夢「それ楽しそう♪ 私も付いて行っていい?」

かすみ「もちろんです~! 歩夢先輩も一緒に行きましょ~!」


かすみちゃんたちがお買い物の予定を立てて盛り上がる中──


リナ『ねぇ、侑さん』 || ╹ᇫ╹ ||


リナちゃんが話しかけてくる。


侑「ん? なにかな?」

リナ『ちょっと……お願いがあるんだけど……』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「お願い?」

リナ『うん……連れて行って欲しい場所があるんだ』 || ╹ᇫ╹ ||


リナちゃんからお願い事なんて珍しいなと思いながら、私はリナちゃんの話に耳を傾ける──





    🎹    🎹    🎹





──翌日。私がリナちゃんにお願いされて来た場所は……。


鞠莉「──Mia Taylor?」

リナ『うん。博士なら知ってるんじゃないかと思って』 || ╹ᇫ╹ ||


オハラ研究所──鞠莉博士のところだった。

リナちゃん曰く、鞠莉博士はお嬢様だから、人脈が広く、もしかしたら私たちが知らないようなことも知っているんじゃないかとのこと。


鞠莉「確か……あのテイラー家の次女よね」

リナ『うん』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「そもそも、テイラー家ってどんなお家なんですか?」


私たちが知っていることと言えば、有名なポケモントレーナーの一家ということくらいだ。

あくまで、有名人だから知っている程度の知識でしかない。


鞠莉「確か、当主は過去にいくつかの地方のリーグ大会で優勝経験をしている人だったと思うわ。奥様は、バトルの腕もさることながら、ポケモンミュージカルの女優としても有名ね。あと、長女は今でもトップクラスのトレーナーとして、世界中のリーグで活躍していたはずよ」

侑「本当にバトル一家なんだ……」

リナ『家族はみんなトレーナー……なのに、なんでミアちゃんだけブリーダーなんだろう……?』 || ╹ _ ╹ ||

鞠莉「本人が公の場で、その理由に言及したことはないけど……。ただ、何年か前に話題にはなったのよね」

侑「話題……ですか……?」

鞠莉「バトル一家の末っ子であるミア・テイラーの公式デビュー戦で……彼女は不戦敗だったのよ」

侑「不戦敗……? どういうことですか……?」

鞠莉「時間になっても、バトルフィールドに現れなかったのよ。それ以降、彼女の名前がバトルの世界で挙がったことはないみたい」


バトルの場に現れなかった……?


侑「どうして、そんなことが……」

鞠莉「本当の理由はわからないけど……。……テイラーの名前が重かったんじゃないかとは言われてるわね」

リナ『重かった……』 || ╹ᇫ╹ ||

鞠莉「彼女が初めての公式戦に臨んだのは、8歳のとき。ご両親はもちろん、すでにそのときにはお姉さんもバトルで名を上げていて……全世界が、これからバトルの世界にやってくる超新星に期待をしていたそうよ」

侑「でも、結局ミアちゃんは……現れなかった……」

鞠莉「……そして、数年後にブリーダーとして名を上げ始めた。わたしが知ってるのはこれくらいかしら……。参考になった?」

リナ『うん、ありがとう、博士』 || ╹ ◡ ╹ ||

鞠莉「それなら、よかったわ」





    🎹    🎹    🎹





──研究所を後にして……。


リナ『ねぇ、侑さん』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「なに?」
 「ブイ?」

リナ『もう一つ……お願い、していい?』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「いいよ。なにかな?」

リナ『……私と一緒に、ミアちゃんを探して欲しい』 || ╹ᇫ╹ ||


リナちゃんはそんなお願い事を口にする。


リナ『私……ミアちゃんの気持ち、わかる気がするんだ……』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「ミアちゃんの……気持ち?」

リナ『私も……お父さんとお母さんの研究を完成させなきゃって……すごくプレッシャーに感じてたことがあるから……。ミアちゃんも、そういうプレッシャーに苦しんでるんじゃないかなって……』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「…………そう、かもしれないね……」


確かにリナちゃんの言うとおり、ミアちゃんはすごく焦っていた。

まだ何も証明出来ていないと……。

もしかしたら……トレーナーになれなかった分を、ブリーダーとして取り戻そうとしているのかもしれない。


リナ『それなのに私……何も知らないのに、無神経なこと言って……ミアちゃんのこと、傷つけちゃったかもしれない……』 || 𝅝• _ • ||

侑「リナちゃん……」

リナ『一人で抱え込んでるときって……周りの全てが自分の敵みたいに見える……。……そんなとき、私の場合は愛さんがいつも傍に居てくれたけど……ミアちゃんは今、一人で苦しんでる……。そう思ったら、私……放っておけなくて……』 || 𝅝• _ • ||

侑「……わかった。一緒にミアちゃんを探そう」

リナ『ホント……?』 || 𝅝• _ • ||

侑「もちろん。リナちゃんのお願いだもん! それに、私もミアちゃんのこと……心配だからさ」

リナ『……ありがとう! 侑さん……!』 || > ◡ <𝅝||


私たちは、ミアちゃんを探すことに決め、


侑「ウォーグル、出てきて」
 「ウォーーッ!!!」


ウォーグルに乗って、空に飛び立つ。


侑「でも……探すって言っても、どこに行けばいいんだろう」


当たり前だけど、行き先を聞いているわけじゃない。ただ、この広いオトノキ地方を闇雲に探すというのも……。


リナ『ミアちゃん……あの様子だとランジュさんを探してるんじゃないかな』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「確かに……。……もしミアちゃんがランジュちゃんを探してるんだとしたら……」

リナ『ランジュさんの行き先がわからないなら、とりあえず近くの大きな街で探すと思う……』 || ╹ᇫ╹ ||


クリスタルケイヴから近い街というと──


侑「ローズシティ……」

リナ『もちろん、あくまで予想だから、いる保証はないけど……』 || ╹ _ ╹ ||

侑「どちらにしろ、ここで待ってても会えないのは間違いないよね。とりあえず、ローズに行ってみよう」
「ブイ」

リナ『うん!』 || > ◡ < ||

侑「ウォーグル、ローズシティまでお願い!」
 「ウォーーグ!!!!」


私たちはローズシティに向かって飛び立つ──





    🎹    🎹    🎹





──ローズシティにたどり着いた私たち。


侑「って言っても……ローズシティは広いよね」
 「ブイ」


イーブイを上着の中に入れて、胸から顔だけ出ている状態にして、歩き始める。


リナ『外周区よりは中央区かな……。ミアちゃん、ポケモンを連れ歩いてはいなかったし……』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「とりあえず……聞き込みしてみようか」


プラチナブロンドのあの髪はローズシティでは目立つと思うし……。

私たちは中央区まで移動し、聞き込みを始める。


侑「あの、すみませーん!」

通行人「ん? なにかな?」

侑「えっと、私と同じくらいの身長のプラチナブロンドの髪をした女の子を探してるんですけど……」

通行人「うーん……この辺りでは見てないかな……」

侑「そうですか……ありがとうございます」


数人同じ調子で聞き込みをしてはみたものの……。


侑「特に収獲はなしだね……」

リナ『ローズにはいないのかな……』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「せめて、どっち方面に行ったかだけでもわかれば……」


こんなことなら、あのとき追いかけておくべきだった。

二人で手をこまねいていると──


 「──あれ? 侑さんとリナさん?」


声を掛けられる。


侑「え?」


振り返ると──


菜々「お二人もローズにいらしてたんですね」

侑「せつ菜ちゃん……?」
 「ブイ♪」


そこに居たのはせつ菜ちゃん──いや、カジュアルな服装で髪は三つ編みに、さらに眼鏡を掛けているから、今は菜々ちゃんモードのようだ。


リナ『せつ菜さん、セキレイにいたんじゃないの?』 || ╹ᇫ╹ ||

菜々「えっと……博士の手伝いをしていたら、「私を手伝ってないで、ちゃんと休みなさい」と言われたので……一旦家に戻ってきたんです。せっかくなので、少し街で買い物でもしようと思って」

侑「でも、なんで菜々ちゃんモード……?」

菜々「この街にいるときは、この格好の方が落ち着くんです。……それに、せつ菜として出歩くと……人の多い場所では目立つので……あはは」


確かに、ローズはセキレイ以上の人口密集地だ。

今もビルの立ち並ぶ街中を、人が行ったり来たりしている。

せつ菜ちゃんほどのトレーナーだと、目立ち過ぎてしまうのかもしれない。


菜々「ところで、お二人はどうしてローズに? 朝から姿が見えないとは思っていましたが……」

侑「あぁ、そうだった……えっとね」


私たちはせつ菜ちゃんに、事情を説明し始める。


菜々「──……ミアさんの行方、ですか……」

リナ『ただ、正直空振りかも……』 || 𝅝• _ • ||

菜々「いえ、人の多い場所で聞き込みをするというのは間違ってないと思います。少なくとも、最後に見たのはクリスタルケイヴなわけですし……補給をするなら、ローズには寄るはずです」

侑「でも、見かけた人も特にいないみたいで……あの髪色なら目立つと思うんだけど……」

菜々「うーん……この街はいろんな人がいますからね。中央区の方だと外国人の方も多いですし……」

侑「……言われてみれば」


プラチナブロンドの女の子は歩いていないけど、確かにちらほらとスーツ姿の外人さんが歩いている。


菜々「中央区には基本的にポケモンがいないので、この国の文化がわからない人でも、安心して訪れることが出来るんです。……だから、実は外国人の方が多い街でもあるんですよ」

侑「そうなんだ……。……でも、確かにこれじゃ、ミアちゃんを見かけてもあんまり印象に残らないかも……」

リナ『いいアイディアだと思ったけど……失敗だったね』 || 𝅝• _ • ||

菜々「むしろ、ミアさんを探すなら、中央区よりも外周区の方がいいかもしれませんよ」

侑「え? どうして?」

菜々「外周区にはポケモンバトルの施設があります。そこでは、ポケモンをレンタルして戦うことが出来る場所もあるんですが……」

リナ『……そっか! ミアちゃんはブリーダーだから……!』 || ╹ᇫ╹ ||

菜々「はい! ミアさんが育てたポケモンをレンタルしている施設もあるので、そういうところでしたら、ミアさんの姿に見覚えがある方もいらっしゃると思うんです!」

侑「なるほど……!」


私はリナちゃんと頷き合う。


リナ『外周区のポケモンバトル施設に行ってみよう!』 || > ◡ < ||

菜々「でしたら、ご案内しますよ!」

侑「いいの? お休み中だったのに……」

菜々「いえ、むしろ手持無沙汰でそわそわしていたので……ご一緒させてください!」

侑「そういうことなら……せつ菜ちゃん、案内お願い!」

菜々「はい! お任せください!」


私たちはせつ菜ちゃんに案内され、外周区のバトル施設へと足を運ぶ。





    🎹    🎹    🎹





せつ菜ちゃんの案内で外周区のポケモン施設へとやってきた私たち。

結論から言うと──ここで聞き込みをする必要はなかった。

何故なら……。


ミア「…………違う……そのポケモンの使い方はそうじゃないって……」


ミアちゃんはバトル場に入ってすぐの観客席で、観戦をしていたからだ。


ミア「Oh, my gosh...なんで、ボクのポケモンを使って負けるんだよ……。レンタル前に能力と覚えてる技を見れば、どういう想定で育てられてるのかもわかるはずなのに……。くそ……ランジュだったら、それくらいすぐに理解してたのに……」


目の前で行われている試合を見ながら、ぶつぶつと文句を言うミアちゃんに向かって、


リナ『ミアちゃん』 || ╹ᇫ╹ ||

ミア「わぁ!?」


リナちゃんが話しかけると、ミアちゃんは驚いて飛び上がる。


ミア「な、なんだ……キミたちか……」

リナ『ごめんなさい……驚かせるつもりはなかった』 || 𝅝• _ • ||

ミア「……いいよ、別に……」

侑「ミアちゃん……どうして、ここに?」

ミア「見てわかんないの? 観戦だよ」

菜々「それはわかりますが……」


ミアちゃんは深く溜め息を吐きながら、


ミア「……ランジュの代わりを探してるんだ……」


そんな風に言う。


リナ『代わり……?』 || ╹ᇫ╹ ||

ミア「ランジュの代わりに……ボクの育てたポケモンの強さを証明してくれる人を探してるんだ……」

侑「じゃあ、ミアちゃんがランジュちゃんのポケモンを用意してた理由って……」

ミア「そうだよ。ランジュにはボクのブリーダーとしての腕を証明してもらうために、ポケモンを用意してた。そして、ランジュはどんなポケモンでも扱いこなせるだけの実力を示すために、ボクにポケモンを要求してきた。……まあ、結局ランジュは投げ出しちゃったけどね」

リナ『どうしてそこまで……』 || ╹ _ ╹ ||

ミア「……キミたちには関係ない」


ミアちゃんはそう言うと、席を立って、この場から去ろうとするけど──


リナ『待って』 || ╹ᇫ╹ ||


リナちゃんはその行く手を阻むように、ミアちゃんの前に浮遊する。


ミア「どいてくれない? 通れないんだけど。ボクは今、忙しいんだ」

リナ『どうしてそこまで……ブリーダーとしての能力を証明することに拘るの……?』 || ╹ _ ╹ ||

ミア「……どけよ」


ミアちゃんは手でリナちゃんを除けようとする、けど──


リナ『今のミアちゃん……すごく、辛そう』 || ╹ _ ╹ ||

ミア「……うるさい」

リナ『私で良ければ話して欲しい……辛そうなミアちゃん……放っておけない』 || ╹ᇫ╹ ||


リナちゃんがそう言いながら、さらに近寄ろうとすると──


ミア「……あぁもう……!! ウザいなぁ!!」


ミアちゃんはリナちゃんを手で強く払いのけ、それによってリナちゃんが近くの席にガンッと音を立てながらぶつかった。


ミア「ぁ……」

侑「り、リナちゃん……!? 大丈夫……!?」

リナ『……平気。私のボディ、頑丈だから』 || ╹ᇫ╹ ||

ミア「…………ごめん。ボク……また……」


ミアちゃんはシュンと顔を伏せる。


リナ『それより大丈夫? 私のボディ、硬いから……ミアちゃん、手……痛くなかった……?』 || ╹ᇫ╹ ||

ミア「…………ごめん……つい熱くなっちゃって……」

リナ『そういうときもある』 || ╹ ◡ ╹ ||

ミア「…………」

リナ『そういうときは……。……ミアちゃん、何か食べたいもの、ある?』 || ╹ ◡ ╹ ||

ミア「食べたいもの……?」





    🎹    🎹    🎹





──ミアちゃんを連れ立って訪れたのは……ローズシティにあるファーストフード店。


菜々「ハンバーガーなんて、久しぶりです……!」


せつ菜ちゃんがおいしそうにハンバーガーに齧り付く。今は見た目が菜々ちゃんだから、ギャップがあってなんだか可愛らしい。


侑「ミアちゃんも、どうぞ♪」


そう言って、トレイの上に置かれたハンバーガーをミアちゃんに手渡す。


ミア「Thanks...」


ミアちゃんは受け取ったハンバーガーの包みを開け、一口食べると──


ミア「……ん……あむ……」


二口、三口と、どんどん食べていく。


ミア「……そういえば……昨日から何も食べてなかった……」

リナ『お腹が空いてると、イライラしちゃうから、そういうときはご飯を食べた方がいいって、彼方さんに教わったんだ。私はもう食べられないけど』 || ╹ ◡ ╹ ||

ミア「……もう……?」


リナちゃんの言葉に、ミアちゃんが怪訝な顔をする。


侑「ミアちゃんは……実はもともと人間なんだ」

ミア「Huh?」

せつ菜「とある事故が原因で、身体を失ってしまったと言いますか……少し説明が難しいんですが……」

ミア「……そうなの?」

リナ『……うん。まあ、でもそれは大した問題じゃない』 || ╹ ◡ ╹ ||


リナちゃんは大した問題ではないと言うけど──


ミア「ご、ごめん……。……ボク、キミのこと……ただの機械だなんて……」

リナ『大丈夫、気にしてないよ。それより、ハンバーガーたくさんあるから、好きなだけ食べて』 || ╹ ◡ ╹ ||

ミア「うん……ありがとう」


ミアちゃんは頷くと、ハンバーガー3つほどをペロりと平らげてしまった。

よほどお腹が空いていたのかもしれない。


リナ『お腹いっぱいになった?』 || ╹ ◡ ╹ ||

ミア「うん……。さっきは……ごめん」

リナ『うぅん。そういうときもある。……ミアちゃん、改めて……どうしてそこまで自分の能力を証明したがるのか、聞いてもいい?』 || ╹ᇫ╹ ||

ミア「……。……ボクはテイラーの家に生まれたのに……戦えないんだ。家族はみんな……ポケモンバトルで素晴らしい成績を残しているのに……ボクだけは、何も残せていない……」

リナ『ポケモンバトルが嫌いなの……?』 || ╹ᇫ╹ ||

ミア「嫌いじゃないさ。……むしろ、小さい頃は……大好きだった。毎日ポケモンバトルの観戦をして、自分だったらこう戦う、ああしたいっていろんなことを考えて……」

リナ『じゃあ、どうして……』 || ╹ _ ╹ ||

ミア「……ある日、テイラー家みんなで一緒にエキジビションを行う機会があったんだ。それが初めての公式戦……ボクのポケモントレーナーとしてのデビュー戦だった。ワクワクしたよ。……でも、ボクはわかってなかったんだ……。テイラーの名が……世間からどれだけ期待されていたのかを……」

リナ『…………』 || ╹ _ ╹ ||

ミア「スタジアム一杯に観客が居て……何千という目が……新たなトレーナーの誕生を待ち望んでいた……。ただ、バトルをするのが好きで、楽しむことしか考えていなかった自分が……それに応えられるのか……。そう思ったら……足が竦んで……バトルフィールドに出て行くことが出来なかった」


──それはまさに、鞠莉博士から聞いた話だった。


ミア「バトルの出来ないテイラー家の娘に……価値なんてない。だから、せめて……自分に出来ることで居場所を作ろうとしたんだ」

リナ『だから……ブリーダーに……』 || ╹ _ ╹ ||

ミア「でも……結果は、ランジュに満足の行く戦いをさせてやれなかった。ランジュを利用してまで、ようやく手が届くと思っていたのに……」

リナ『でも、ミアちゃんの育てたポケモンは本当によく育てられてて。それは嘘偽りない事実』 || ╹ᇫ╹ ||

ミア「……ありがとう。……だけど、トレーナーに気持ちよくバトルをさせてあげられないなら……やっぱり、それじゃダメなんだ」

リナ『ミアちゃん……』 || ╹ _ ╹ ||

ミア「このままじゃ……ボクは何もない……空っぽなんだ……」

リナ『……でも、ミアちゃんはここにいるよ』 || ╹ᇫ╹ ||

ミア「え……?」

リナ『身体があって、声があって、目で、耳で、人やポケモンと触れ合える。言葉で繋がりあえる』 || ╹ᇫ╹ ||


それはもう……リナちゃんには出来ないことだからこそ、強い意味を持った言葉だった。


リナ『私……ミアちゃんが自分のポケモンと一緒に戦う姿、見てみたいな』 || ╹ ◡ ╹ ||

ミア「え……」

リナ『私ね、旅を通して、いろんな人がポケモンと一緒に戦う姿を見てきた。いろんな人がいたけど──みんな、違った。いろんなトレーナーが、いろんな向き合い方で、ポケモンと一緒にいろんな戦いを見せてくれた。最初は侑さんのサポートのために旅に出たけど……今は私も、トレーナーとポケモンが心を通わせて戦う姿を見るのが楽しみの一つなんだ。この人はどんな戦いを見せてくれるんだろうって、ワクワクするんだ』 || ╹ ◡ ╹ ||

侑「リナちゃん……」

ミア「……でも、ダメだよ……。……テイラー家の娘が……そんな、ただしたいからってだけでバトルなんて……」

リナ『私は……ミア・テイラーじゃなくて、ミアちゃんのバトルしてる姿が見たいな』 || ╹ 𝅎 ╹ ||

ミア「……」

リナ『テイラー家がどんなものなのか、私は知らない。だけど、バトルが好きなら、その気持ちをなかったことにしなくていいと思う』 || ╹ 𝅎 ╹ ||

ミア「……でも」

リナ『もし……ミアちゃんがまたトレーナーとして戦うのが怖いなら──私も一緒に今日ここでポケモントレーナーになる』 || ╹ 𝅎 ╹ ||

ミア「……え」


リナちゃんの言葉に反応するように──


 「──ニャー」


私の腰のボールから、ニャスパーが飛び出す。


リナ『侑さん、ニャスパー借りるね』 || ╹ ◡ ╹ ||

侑「もちろん。ニャスパーはリナちゃんのポケモンだしね」

リナ『ミアちゃん、私とポケモンバトルして!』 || ╹ 𝅎 ╹ ||





    📶    📶    📶





──バトル場。


菜々「使用ポケモンは1匹ずつ。どちらかが戦闘不能になった時点で決着です! いいですね?」

ミア「……ボクは……」

リナ『ミアちゃん! 全力で思いっきりバトルしよう! 今はただ、私と私のポケモンだけを見て!』 || > ◡ < ||
 「ニャー」

ミア「……。……わかった」

菜々「それでは……試合──開始です!!」


せつ菜さんの掛け声と共に、バトルが始まる。


リナ『行くよ、ニャスパー!』 || > ◡ < ||
 「ニャー」

ミア「行け……! プリン!」
 「プュ~!!」


私のニャスパーと、ミアちゃんのプリンが対峙する。


ミア「プリン! “ハイパーボイス”だ!」
 「プーーーーユーーーーーーッ!!!!!」

リナ『ニャスパー! “ひかりのかべ”!』 || > ◡ < ||
 「ウニャーー」


飛んでくる“ハイパーボイス”を“ひかりのかべ”でガードする。


ミア「なら、“うたう”だ!」
 「プ~プルルゥ~♪」


心地の良い歌で、ニャスパーを眠らせようとしてくるミアちゃん。


リナ『“しんぴのまもり”!』 || > ◡ < ||
 「ニャー」


なら、こっちは“ねむり”を防ぐ神秘のベールを展開する。


リナ『逆に今度はこっちが眠らせるよ!』 || > ◡ < ||
 「フニャァ~~…」


ニャスパーが眠そうに息を大きく吸い込み、


 「プ、プユ…」


プリンの眠気を誘う。


ミア「“あくび”か……! なら、“ミストフィールド”!」
 「プュ~~!!」


“ミストフィールド”が展開され、プリンの眠気が吹き飛ぶ。

“ミストフィールド”は状態異常を防いでくれるフィールドだから、これでもう、この場にいる2匹は眠らなくなった。

でも、その対応の時間は、こっちの攻撃チャンスになる。


リナ『ニャスパー! “サイコキネシス”!!』 || > ◡ < ||
 「ウニャァーーー」


ニャスパーが耳を全開にし、全力“サイコキネシス”でプリンを吹き飛ばす。


 「プ、プユ~~~!!?」
ミア「プリン……!?」


吹き飛ばされたプリンは、壁にぶつかって跳ね返り──そのまま、天井や壁や床をぽよんぽよんと何度も跳ね返りまくる。


リナ『……い、いくらなんでも、跳ね過ぎのような……?』 || ╹ᇫ╹ ||
 「ウニャ?」

ミア「わざと跳ねてるからね……!」

リナ『!?』 || ? ᆷ ! ||


跳ね返りまくったプリンは──跳ね返る反動を乗せて、ニャスパーへと突っ込んでくる。


ミア「“アイアンローラー”!!」
 「プーーーーリィィーーーーッ!!!!」

 「フニャァァァ~~~~!!!?」
リナ『ニャスパー!?』 || ? ᆷ ! ||


“アイアンローラー”はフィールドすらも破壊する勢いで回転しながら突撃する強力な技。

“ミストフィールド”を破壊しながら、ニャスパーを撥ね飛ばす。


ミア「追撃だ!! “シャドーボール”!!」
 「プーーーリィーーー!!!!」

リナ『さ、“サイケこうせん”!!』 || ˋ ᇫ ˊ ||
 「ウニャァ~~」


吹き飛ばされながらも、サイコパワーで姿勢を維持し、向かってくる“シャドーボール”に空中で“サイケこうせん”を発射して相殺しようとする。


ミア「く……攻撃の相性ではこっちの方が有利なのに……!」

リナ『ニャスパーのサイコパワーはすごいんだよっ!』 || > ◡ < ||


ニャスパーが浮いたまま、次の攻撃に移ろうとした瞬間、


ミア「“じゅうりょく”!!」
 「プュッ!!」

 「フニャ!!!?」
リナ『って、わぁぁぁ!!?』 || ? ᆷ ! ||


ニャスパーが地面に叩き落される。

──ついでに私も地面に落とされる。

板状だから、そのまま液晶部分が地面に押し付けられる。


リナ『ま、前が見えない~~!?』

侑「わぁぁ!? り、リナちゃん!?」

ミア「あ……sorry...」


侑さんがセコンド席から駆け寄ってきて、私を立たせてくれる。


リナ『びっくりした……』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

ミア「大丈夫……?」

リナ『うん、平気! 続けよう!』 || > ◡ < ||


侑さんに持ち上げてもらいながら、試合を続行する。

ニャスパーは地面に落とされちゃったけど──別に地面でも遠距離攻撃は出来る……!


リナ『ニャスパー! “サイコショック”!』 || > ◡ < ||
 「ウーーニャァーー!!!」


プリンの周辺に小さなサイコキューブが大量に出現し──


 「プ、プユユ…!!!」


プリンに向かって、マシンガンのように、降り注ぐ。


ミア「プリン! “ころがる”だ……!」
 「プュ…!!!」


プリンはサイコキューブから逃れるように、高速で転がり、“サイコショック”から逃れて、ニャスパーに迫る。


リナ『ニャスパー! “サイコキネシス”!!』 || ˋ ᇫ ˊ ||
 「ウニャァーー!!!」

 「プユッ!!?」
ミア「プリン!?」


ニャスパーが耳を全開にして、“ころがる”で迫ってくるプリンを壁際へと吹き飛ばす。


ミア「……でも、その技はさっき攻略したぞ!」


確かに、さっきはその勢いでバウンドして、攻撃に利用されちゃったけど──


リナ『今度はバウンドさせないよ!』 || > ◡ < ||
 「ウーーーニャァーーー!!!」

 「プユッ…!!!?」
ミア「な……!?」


プリンは壁にぶつかり、そのまま壁に押し付けられる。


ミア「同じ技なのに、さっきと違う使い方……!?」

リナ『自由な発想があれば可能性は無限大なんだって! 私は旅の中で知ったんだ!』 || > ◡ < ||

ミア「自由な……発想……」

リナ『ニャスパー!! 決めるよ!!』 || > ◡ < ||
 「ウーーーニャァーーーーッ!!!!」

 「プ、プユゥゥーーー…!!!」
ミア「こ、このままじゃ……!」


壁にプリンを押し付け、そのまま試合が決まるかと思ったそのとき、


ミア「……そうだ……!! プリン!! 思いっきり息を吸い込むんだ!!」
 「プュッ…!!!!」


プリンが突然大きく息を吸い込んで──膨らみ始めた。


リナ『え!?』 || ? ᆷ ! ||


一気に巨大化していくプリン。どんどんどんどん大きく膨らみ──


 「ウニャァッ!!!?」


フィールドの中央に居たニャスパーを巻き込んで押しつぶす。

いや、それどころか──


リナ『私たちのところまで来てる!?』 || ? ᆷ ! ||

侑「わ、わぁぁぁ!?」

ミア「って、プリン!? 膨らみすぎだよ!?」

菜々「わぁぁぁ!!? 審判席までぇぇ!!!?」


大きく膨らんだプリンは──このバトルフィールド全体を埋め尽くしてしまった。


侑「ぐ、ぐるじぃ……」

ミア「ぷ、プリン……も、元に戻るんだ……」
 「プュ」


ミアちゃんの指示で、プリンから空気が抜け、ぷしゅるるるるると音を立てながら、風船のように縮んでいく。

そして、縮んだプリンの下から──


 「…ウ、ウニャァ…」


潰されて目を回したニャスパーが居た。


菜々「……た、助かった……。……あ、あれ? ニャスパー……倒れてる……。……に、ニャスパー戦闘不能! プリンの勝ちです! よって、勝者ミアさん!」

ミア「か、勝った……」

リナ『うん……負けちゃった』 || > _ <𝅝||


ただ、結果は負けだけど──


リナ『プリンにあんな戦い方があるなんてびっくりした!』 || > ◡ < ||

ミア「ぼ、ボクも……咄嗟に思いついただけで……」

リナ『戦いの中で、咄嗟に思いつけるのはすごいことだよ!』 || > ◡ < ||

ミア「そ、そうかな……?」

侑「ポケモンと一緒に戦ってると、突然気付いたりするんだよね、新しい戦法とか、技とか!」

菜々「はい! そうして、ポケモンもトレーナーも強くなっていくんです!」

ミア「…………ボクが……プリンの力を引き出したって、こと……?」
 「プュ?」


私はミアちゃんのもとにふよふよと近付いて、訊ねる。


リナ『今のバトル……負けちゃったけど、すっごく楽しかった! ミアちゃんは?』 || > ◡ < ||

ミア「……ボクも楽しかった」

リナ『私、またミアちゃんとバトルしたい!』 || > ◡ < ||

ミア「……ボクもまた──リナとバトルがしたい。それくらい、楽しかった」

リナ『うん! またしよう! 次は負けないから!』 || > ◡ < ||

ミア「……ふふ、またボクが勝つよ!」


ミアちゃんはそう言って笑う。


侑「もうすっかり、ミアちゃんもポケモントレーナーだね♪」

ミア「え?」

菜々「はい! ポケモンと心を通わせて、ポケモンの力を引き出して、戦いに望むその姿を、ポケモントレーナーと言わずして、なんと言うんですか!」

ミア「ボクが……ポケモン……トレーナー……」

リナ『うん! ミアちゃんも! 私も! もうポケモントレーナーだよ!』 || > ◡ < ||

ミア「……リナ……」

菜々「そもそも、ポケモントレーナーなんて、誰かに許可を貰ってなるようなものでもないですしね!」

侑「うん! これからはミアちゃんも、私たちと同じポケモントレーナーだよ!」
 「ブイ♪」


ニコニコと笑う侑さんとせつ菜さんを見て、


ミア「…………こんな……簡単なことだったんだ……」


ミアちゃんは感慨深く言葉を漏らす。


リナ『ミアちゃんは、ミアちゃんのしたいことをすればいいんだよ』 || ╹ ◡ ╹ ||

ミア「…………うん。……やりたいことを、やりもせずに諦めるなんて……それこそ、ボクらしくなかった」


ミアちゃんは自分で自分の言葉に頷いて、


ミア「ボク……もっとバトル……してみたい……! もっと、ポケモントレーナーとして、強くなってみたい……!」

リナ『うん! ミアちゃんなら、きっと出来るよ!』 || > ◡ < ||

ミア「うん……! リナ……ボク、やってみるよ……!」

リナ『うんっ! リナちゃんボード「ファイト、オー!」』 || > ◡ < ||


こうしてまた一人──新しいポケモントレーナーが誕生したのでした。




    🎀    🎀    🎀





──セキレイデパート。


かすみ「あーねぇねぇ! あっちの小物も可愛いよ! しお子、行こう~!」

栞子「ま、待ってください、かすみさん……」

かすみ「なになに~? しお子ったら、もうばてちゃったの?」

栞子「す、すみません……こういう場所に慣れていなくて……」

かすみ「もう……仕方ないなぁ」

歩夢「ちょっと、休憩しよっか」

栞子「すみません……」

かすみ「じゃあ、かすみん、ジュース買ってきますね! おすすめのやつが売ってるんですよ~♪」


かすみちゃんはそう言って、パタパタと駆けて行く。


歩夢「かすみちゃーん! デパートで走っちゃダメだよー!」

かすみ「わかってます~!」


かすみちゃんは元気よく、飲み物売り場へと消えていった。


栞子「……はぁ……」

歩夢「ごめんね、たくさん連れまわしたから、疲れちゃった……?」

栞子「あ、いえ……それは大丈夫なんですが……」

歩夢「ん……。……やっぱり、ランジュちゃんのこと……?」

栞子「……はい」


栞子ちゃんは、クリスタルケイヴから戻ってきてから、問題が解決した割に、あまり元気がなかったというか……浮かない顔をしていたので、気にはなっていた。

かすみちゃんも栞子ちゃんを元気付けるために、こうしてお買い物に誘ったんだろうし……。


栞子「結局のところ……ランジュは何がしたかったのかと思って……」

歩夢「……そうだね」


結局、ランジュちゃんがどうして龍神様を捕まえようとしていたのかはわからず仕舞いだった。

それに……栞子ちゃんとの戦いが終わった後のランジュちゃん、様子がおかしかったし……。


栞子「……当初の問題は解決したのに……すみません」

歩夢「うぅん。ランジュちゃんは栞子ちゃんの幼馴染なんでしょ? 気になって当然だよ」


私も侑ちゃんに元気がなかったら気になっちゃうし、栞子ちゃんがランジュちゃんを気にするのは仕方がないと思う。


栞子「せめて、ランジュがどうしてあんなことをしたのかが、わかればいいんですが……」

歩夢「……それは、本人に聞くしかないよね……。……わかった、私も一緒にランジュちゃんを探すよ!」

栞子「ですが……これ以上、ご迷惑をお掛けするわけには……」

歩夢「迷惑なんかじゃないよ! 栞子ちゃんはもう大切なお友達だもん!」

栞子「お、お友達……!? わ、私がですか……?」

歩夢「もちろんだよ♪ それに、私だけじゃなくて、他のみんなも栞子ちゃんのこと、大切な仲間でお友達だって思ってくれてるよ」

栞子「そう思っていただけているなら……。……嬉しいです」

歩夢「うん♪ 研究所に戻ったら、みんなに相談してみようね♪」

栞子「はい!」





    🎹    🎹    🎹





──その晩。ツシマ研究所。


ミア「リナ……! リナが教えてくれたセキレイバーガー……すごくおいしいよ!」

リナ『気に入ってもらえたなら、よかった』 || > ◡ < ||


ハンバーガーをおいしそうに食べるミアちゃんを見て、


かすみ「って、なんでここにミア子がいるんですか!?」


かすみちゃんが買ってきたであろう大量の紙袋を両手に抱えたまま、驚愕する。


ミア「別にいいだろ?」

かすみ「いやいやいや、昨日まで敵だったじゃん! 何、当たり前みたいな顔して交じってんの!!」

リナ『かすみちゃん、ミアちゃんに酷いこと言っちゃダメ』 || ˋ ᇫ ˊ ||

しずく「そうだよ。仲良くしなきゃ、めっ」

かすみ「なんで、かすみんが怒られてるの!? ってか、しず子、喋って平気なの……?」

しずく「うん。まだ少し違和感はあるけど……普通に喋る分には問題ないよ」


少し声は出しづらそうだけど、しずくちゃんの喉も随分回復してきたようで何よりだ。


かすみ「……むー……」

ミア「なんだよ。まだなんかあんの?」

かすみ「やっぱ、敵がいるのは気になるというかー……」

ミア「はぁ……いちいちキャンキャンうるさいな……。こいぬポケモンかよ」

せつ菜「かすみさんはガーディ……!?」

侑「イワンコもこいぬポケモンだよね」

歩夢「私は……ワンパチが可愛くて好きかも」

しずく「そういえば、遠くの地方にいるパピモッチというポケモンも、こいぬポケモンという分類だった気がします」

かすみ「なんで、こいぬポケモン談義が始まってるの……!?」

ミア「はいはい……わかったわかった、子犬ちゃんの話は後で聞いてあげるから」

かすみ「誰が子犬ですか!?」

善子「もう夜なんだから、あんまり、うるさくしすぎちゃダメよー」

ミア「あははっ、怒られてやんの」

かすみ「かすみんだけじゃないでしょ!?」


なんだか、ミアちゃんがいることで、さらに研究所が賑やかになっている。


栞子「あの……それで、どうしてミアさんが……?」

ミア「ああ、それなんだけど……。……栞子、キミがランジュの行き先に心当たりはないかと思って」

栞子「ランジュの行き先……ですか」

歩夢「あのね、私たちもランジュちゃんを探したいってことを、みんなに相談しようと思ってたんだ」

せつ菜「確かに……ランジュさん、少し様子がおかしかったですもんね」

栞子「はい……。出来れば、どうしてランジュがあんなことをしたのか……理由を知りたくて……」

かすみ「それこそ、ミア子はランジュ先輩と一緒にいたんだから、なんか知ってるんじゃないの?」

ミア「そのミア子って呼び方やめろよ」

かすみ「ミア子はミア子でしょ。いいから、知ってること教えてよ」

ミア「それが人にモノを頼む態度なわけ? 子犬ちゃんは躾がなってないなぁ……」

かすみ「ムッカ……! なんなのこいつ!」

リナ『ミアちゃん、何か知ってることがあったら教えて欲しい』 || ╹ᇫ╹ ||

ミア「リナの頼みなら、いくらでも教えるよ!」

かすみ「ホントなんなんですか!?」

ミア「って言っても……ボクも目的の内容自体を聞いてたわけじゃないよ。ただ、ランジュは栞子のためにレックウザを従える……とか言ってたけど」

栞子「私のため……ですか……?」


ミアちゃんの言葉を聞いて、栞子ちゃんが困惑した表情になる。


栞子「ますますランジュが何をしようとしているのかが、わからなくなってきました……」

かすみ「しお子のためどころか、ランジュ先輩がやってることのせいで、しお子がめちゃくちゃ困ってるんですけどねぇ……」


確かに、ランジュちゃんがやっていることは地方を危険に曝しかねないことだ。

それが栞子ちゃんのため……というのは、確かによくわからない。


侑「どちらにしろ……もう一度、ランジュちゃんを探して会う必要がありそうだね」

歩夢「うん……」

しずく「問題は……そのランジュさんがどこにいるかですが……」

ミア「栞子は幼馴染なんだろ? ランジュが行きそうな場所とかわからないの?」

栞子「と言われても……会うのは久しぶりでしたし……」

かすみ「しお子は、なんだっけ……ずっとトロロイモの上とかいう場所にいたんだっけ……?」

リナ『かゆくなりそう』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

しずく「朧月の洞ね……どんな間違え方なの……」


確かに栞子ちゃんはずっと朧月の洞で生活していたから、ランジュちゃんと会う機会もほぼなかっただろうし……。

そのときふと、歩夢があることに気付く。


歩夢「……そういえば、ランジュちゃんが龍神様を解放するときって……どうやったの? 龍神様は、朧月の洞の結界の中で抑えてたんだよね……?」

せつ菜「言われてみれば確かに……ランジュさんは結界の外から干渉したということですか?」

栞子「いえ……ランジュは朧月の洞に出入りすることは出来るんです」

侑「え、そうなの……?」

栞子「はい。私のピィとは修行時代に会ったことがあって……何度か洞の中に来たこともありました。前に来たのは……それこそ数年前でしたが……」

しずく「では……ランジュさんは朧月の洞の結界内に侵入して、レックウザを解放したということですね」

栞子「はい……。また今回も気まぐれで遊びに来ただけだと思っていたら……私の封印の儀式を邪魔し始め……て……?」


そこまで言いかけて、栞子ちゃんが言葉に詰まる。


歩夢「栞子ちゃん……?」

栞子「そういえば……ランジュ……。朧月の洞にやってきたときに……「約束を果たしに来た」と言っていたような……」

侑「約束……?」

栞子「……」


栞子ちゃんはしばらく考える素振りをしたあと──


栞子「……もしかしたら……ランジュの居場所……わかったかもしれません」


確信めいた顔をしながら、そう言うのだった。




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【セキレイシティ】
 口================== 口

  ||.  |○         o             /||
  ||.  |⊂⊃                 _回/  ||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||.○⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ ●__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :  ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  .||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  .||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  .||
  ||.       /.         回 .|     回  ||
  ||.    _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||. /              o回/         ||
 口==================口



 主人公 侑
 手持ち イーブイ♀ Lv.82 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
      ウォーグル♂ Lv.79 特性:まけんき 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
      ライボルト♂ Lv.80 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
      ニャスパー♀ Lv.77 特性:マイペース 性格:きまぐれ 個性:しんぼうづよい
      ドラパルト♂ Lv.78 特性:クリアボディ 性格:のんき 個性:ぬけめがない
      フィオネ Lv.74 特性:うるおいボディ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:284匹 捕まえた数:12匹

 主人公 歩夢
 手持ち エースバーン♂ Lv.69 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
      アーボ♂ Lv.69 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
      マホイップ♀ Lv.65 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
      トドゼルガ♀ Lv.65 特性:あついしぼう 性格:さみしがり 個性:ものおとにびんかん
      フラージェス♀ Lv.65 特性:フラワーベール 性格:おっとり 個性:すこしおちょうしもの
      ウツロイド Lv.73 特性:ビーストブースト 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 3個 図鑑 見つけた数:263匹 捕まえた数:24匹

 主人公 かすみ
 手持ち ジュカイン♂ Lv.84 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
      ゾロアーク♀ Lv.78 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
      マッスグマ♀ Lv.75 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
      サニゴーン♀ Lv.75 特性:ほろびのボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
      ダストダス♀✨ Lv.74 特性:あくしゅう 性格:がんばりや 個性:たべるのがだいすき
      ブリムオン♀ Lv.76 特性:きけんよち 性格:ゆうかん 個性:ちょっとおこりっぽい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:304匹 捕まえた数:15匹

 主人公 しずく
 手持ち インテレオン♂ Lv.69 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
      バリコオル♂ Lv.68 特性:バリアフリー 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      アーマーガア♀ Lv.68 特性:ミラーアーマー 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ロズレイド♂ Lv.68 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
      サーナイト♀ Lv.69 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ツンベアー♂ Lv.69 特性:すいすい 性格:おくびょう 個性:ものをよくちらかす
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:285匹 捕まえた数:23匹

 主人公 せつ菜
 手持ち ウーラオス♂ Lv.79 特性:ふかしのこぶし 性格:ようき 個性:こうきしんがつよい
      ウインディ♂ Lv.87 特性:せいぎのこころ 性格:いじっぱり 個性:たべるのがだいすき
      スターミー Lv.83 特性:しぜんかいふく 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      ゲンガー♀ Lv.85 特性:のろわれボディ 性格:むじゃき 個性:イタズラがすき
      エアームド♀ Lv.81 特性:くだけるよろい 性格:しんちょう 個性:うたれづよい
      ドサイドン♀ Lv.84 特性:ハードロック 性格:ゆうかん 個性:あばれることがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:212匹 捕まえた数:51匹

 主人公 栞子
 手持ち ピィ♀ Lv.11 特性:メロメロボディ 性格:やんちゃ 個性:かけっこがすき
      ウォーグル♂ Lv.71 特性:ちからずく 性格:れいせい 個性:かんがえごとがおおい
      ウインディ♀ Lv.71 特性:もらいび 性格:さみしがり 個性:のんびりするのがすき
      ゾロアーク♂ Lv.69 特性:イリュージョン 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      イダイトウ♀ Lv.68 特性:てきおうりょく 性格:さみしがり 個性:にげるのがはやい
      マルマイン Lv.69 特性:ぼうおん 性格:きまぐれ 個性:すこしおちょうしもの
 バッジ 0個 図鑑 未所持

 主人公 ミア
 手持ち プリン♂ Lv.75 特性:フレンドガード 性格:のんき 個性:ちょっぴりみえっぱり
 バッジ 0個 図鑑 未所持


 侑と 歩夢と かすみと しずくと せつ菜と 栞子と ミアは
 レポートに しっかり かきのこした!


...To be continued.




 ■Intermission🔔



ランジュ「…………」


──ただ……月を見ていた。

夜空がよく見えるこの場所で、ただ……月を見ていた。

思わず息を飲んでしまうような──大きくて丸く輝く、月を見ていた。

この景色が好きだった。

この月の先に──いると知っていたから。


ランジュ「……栞子……」


手を伸ばす。

でも……今、彼女は──そこにはいない。


ランジュ「…………お友達が……出来たんだものね」


私は伸ばした手を──ギュッと胸の前に引き寄せて……目を瞑った。


ランジュ「…………さようなら……栞子」


そう、言葉にしたとき──まるで、私の心を表すかのように、大きな満月に雲が薄く掛かって、ぼやけ始めた。

こんな月のことを……朧月と呼ぶらしい。

朧月の向こうで、いつも待ってくれていた栞子と──朧月の下でお別れする。


ランジュ「ふふ……皮肉ね」


私は朧月に背を向けて──この場を去る。

いや、去ろうとした……まさに、そのときだった。


 「──ランジュ……!!」


名前を呼ばれた。

この、声は……。

振り返ると──そこには……朧月夜の下で──闇に溶けるような艶のある黒髪の女の子が……私を見ていた。


ランジュ「……栞子」

栞子「ランジュ……やっと、見つけましたよ」


──栞子が……そこに、立っていた。


………………
…………
……
🔔


■ChapterΔ010 『ランジュ』 【SIDE Shioriko】





栞子「──ランジュ……やっと、見つけましたよ」


ランジュは、やはりここにいました。

ランジュの向こうには──薄ぼんやりとした雲の影の中で輝く満月が見えた。


栞子「……月の綺麗な場所があると……言っていましたね。いつか、一緒に見に行きたいと……」

ランジュ「…………」

栞子「確かに、綺麗な満月ですね……夜空以外に何もなくて……とても綺麗に月が見えます」


煌々と光る、星たちと月に見守られたここは──天体観測でも有名な地、流星山。


ランジュ「なんの……用かしら……」

栞子「ランジュに、話を聞きに来ました」

ランジュ「話って……ランジュ、もうレックウザのことは諦めたわ……。……宝珠も、栞子が持ってるんでしょ……?」

栞子「そうではありません。……どうして、ランジュが龍神様を従えようとしていたのか……その理由を、聞きに来たんです」

ランジュ「…………」

栞子「教えてくれませんか……?」

ランジュ「嫌よ……。……だって、栞子……きっと、怒るもの」

栞子「ランジュ……」


ランジュはやはり答えてくれない。

そんな私の後ろから──


ミア「ならせめて、なんで諦めたのかを説明してくれないか? ボクはまだ納得してないぞ」

ランジュ「ミア……」

歩夢「ランジュちゃん……お話……出来ないかな……?」

かすみ「あんな風にいなくなられると後味も悪いですし……」

ランジュ「貴方たちまで……」

ミア「ランジュが言ったんだ。ボクのポケモンを使って、最強を証明するって。勝手に決めて、勝手にいなくなるなよ」

ランジュ「…………」

侑「ランジュちゃん……訳を話してもらえないかな……?」

栞子「ランジュ……お願いします。怒ったりしないので……教えてください」

ランジュ「…………」


ランジュは押し黙っていたけれど──


ランジュ「……月が……見られないから……」


ぽつりぽつりと、話し始めた。


栞子「月……?」

ランジュ「栞子……私と約束したじゃない……。いつか、一緒に月を見ようって……」

栞子「……はい。確かに約束しましたが……」

ランジュ「でも、栞子は……修行を終えた翡翠の巫女は……一生あの朧月の洞の中で、レックウザの世話をするんだって……」

栞子「それは……」

ランジュ「だから、ランジュ……思ったの。そんなレックウザを、ランジュが捕まえて従えることが出来れば……栞子は、翡翠の巫女のお役目から解放されるんじゃないかって……!」

栞子「……! ……まさか、それで……」

ランジュ「だっておかしいじゃない……! どうして栞子だけ、自分のしたいことを何一つ出来ないまま、一生あの洞の中で閉じ込められてなきゃいけないの……? ……せっかく栞子とお友達になれたのに……。……栞子と一緒になんにも出来ないなんて……ランジュは嫌よ……」

栞子「ランジュ……」

ミア「それでは……急にレックウザを諦めたのは……」

ランジュ「圧倒的な強さでないと、レックウザは従ってくれないと思った……それに……」


ランジュは寂しそうな目で、私の後ろにいる歩夢さんたちを見る。


ランジュ「ランジュがいなくても……栞子には、大切にしてくれるお友達が出来たみたいだから……」

栞子「え……?」

ランジュ「栞子には……ランジュしかいないって勝手に思ってたけど……気付いたら、栞子はたくさんの仲間に囲まれてて……」

栞子「…………」

ランジュ「……だから、きっと……もうランジュの出る幕じゃないんだって……思って……」

栞子「………………」


私は一歩前に出る。


ランジュ「……ごめんなさい。……やっぱり、怒ったわよね。お節介なことして……」

栞子「…………ランジュ」

ランジュ「だから、もう……ランジュ、余計なこと、しないから……」

栞子「……ランジュッ!!」

ランジュ「……っ!」


私が大きな声を出すと、ランジュがビクッと身を竦ませた。


栞子「どうして──どうして、ランジュはいつもいつも……私の話を聞かずに、全部自分で決めてしまうんですか……!」

ランジュ「え……」

栞子「歩夢さんたちは、確かに私のことを仲間だと、友人だと言ってくれました……でも、それとランジュが私にとって大切な友人であることは関係ありません……!!」

ランジュ「……! ……で、でも……ランジュ、いつも栞子のこと、怒らせて……」

栞子「だからそれは、ランジュが私の話を聞かずに、全部一人で決めてしまうからです……!」

ランジュ「そ、そうなの……?」

栞子「心配しているなら、最初からそう言ってください……! 何も言ってくれなかったら……わかりません……」


そう言って、ランジュの手を握る。


ランジュ「栞子……」

栞子「……私は……自分という存在は、この地方に存在するシステムのようなものだと思っていました……。だから、この地方のために、自分一人の犠牲で済むなら、それでいいんだと……。でも、私を大切に想ってくれる人たちがいることに気付いて……今はそれだけでは、ダメなのではないかと……結局、誰かを悲しませてしまうのではないかと……考えています」

歩夢「栞子ちゃん……」

栞子「……ランジュは……それに気付くきっかけをくれたんです。確かに最初は驚いてしまいましたが……。だから、怒ってなんかいませんよ」

ランジュ「ホントに……?」

栞子「はい……本当ですよ」


私は頷いて──ランジュを抱きしめた。


栞子「ランジュ、ごめんなさい……。……ずっと、私のことを大切に想ってくれていたのに……気付いてあげられなくて……」

ランジュ「……うぅん。……ランジュの方こそ……上手に伝えられなくて……勝手なことばかりして……ごめんなさい」


やっと、ランジュの気持ちがわかって……私はとても安心していた。





    🎹    🎹    🎹





栞子ちゃんとランジュちゃんのわだかまりが解消されて、やっとランジュちゃんと和解することが出来た。

だけど……問題はまだ残っている。


かすみ「んで……結局どうするの? レックウザは今、人間に対して怒ってるんでしょ?」

栞子「……一度、龍神様と話をしてみようと思っています」

歩夢「龍神様を説得するってこと?」

せつ菜「うまく行くのですか……?」

栞子「それは……わかりません。……もしかしたら、却って怒らせてしまうかも……」

ランジュ「そのときは、ランジュが栞子を守ってあげる!」

栞子「ランジュ……ありがとうございます」

かすみ「そうですね! ここには、優秀なトレーナーがこんなにいるんですから! レックウザがどんなにすごいって言っても、きっとどうにかなりますよ!」

しずく「ふふ、そうだね♪」


かすみちゃんらしい根拠のない自信に、しずくちゃんがクスリと笑う。

でも確かに、私たちがみんなで力を合わせればどうにか出来てしまいそうな気がする。

だけど、そんなかすみちゃんの言葉に、ランジュちゃんは、


ランジュ「え、き、協力……するの……?」


急に困った顔になる。


かすみ「何か問題でもあるんですか……?」

ランジュ「そ、その……ランジュが掻き回しちゃったのに……今更、仲間に入れてなんて……。特に……しずくには、酷いこと言っちゃったし……」

しずく「私は気にしていませんよ」

ランジュ「ら、ランジュが気にするのよぉ……!」

かすみ「めんどくさい人ですねぇ……」

ランジュ「とにかく! 栞子を守るのはランジュの仕事よ! 貴方たちの出る幕はないわ!」

リナ『話が振り出しに戻った……』 ||;◐ ◡ ◐ ||

ランジュ「それに五番勝負はランジュが勝ったんだから、ランジュにその権利はあると思うわ!」

ミア「それを放棄したのもランジュだけどね……」

ランジュ「う……。……と、とにかく、栞子を守るのはランジュの役目なの!!」


ランジュちゃんが子供のようにぷくーっと頬を膨らませる。


歩夢「侑ちゃん……どうしよう……」


歩夢が困り顔で私の方を見つめてくる。

たぶん、栞子ちゃんが一言言えば解決しそうではあるけど……。

ただ私は、少し考えてから──


侑「……ねぇ、ランジュちゃん。それならさ……バトルで決めない?」


そう提案することにした。


ランジュ「バトル……?」

侑「うん。私たちはトレーナーなんだから、困ったときはバトルで決めればいいんじゃないかなって。さっきも言ってたとおり、五番勝負に勝ったのはランジュちゃんだけど、放棄しちゃったのも事実でしょ? なら、最後にもう1戦──私と戦ってくれないかな」

ランジュ「……つまり、それで勝った方が栞子を守るってことね! わかったわ! ミア、ポケモンを用意して!」

ミア「全く忙しいやつだな……。……わかったよ。ちょっと準備するから、待ってもらっていいかい?」

侑「うん、私も準備するね!」


両陣営がバトルの準備をするために、一旦離れる。


栞子「あの……侑さん、すみません……ランジュが最後までわがままを……」

侑「うぅん、気にしないで。ちゃんと白黒つく方法の方が、ランジュちゃんも納得するだろうし……。……それに」

歩夢「それに……?」

侑「みんなはランジュちゃんとバトルしたのに、私だけまだバトルしてないんだもん! 私だって、ランジュちゃんと戦ってみたいよ!」
 「ブイ♪」


あんなにすごい戦いを5回も見せられて、実はずっとうずうずしてたまらなかったんだ。

それに、わかり合うなら、ぶつかり合うのが一番だって、栞子ちゃんの試合を見ていて思ったことだし。


しずく「あはは……侑先輩、本音はそっちですね……」

リナ『侑さんのポケモンバトルマニアが出た』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

歩夢「ふふっ♪ でも、侑ちゃんらしいと思うよ♪」


歩夢がくすくすと笑う。


かすみ「でもでも、侑先輩? やる以上は……」

侑「もちろん! 絶対勝つよ!!」
 「イブイッ!!!」


イーブイも気合い十分に鳴き声をあげる。


せつ菜「そういうことでしたら……侑さん、最後の試合、お願いしますね!」

侑「うん! 任せて!」


私たちの五番勝負は──追加の第六試合……私とランジュちゃんの試合で全てを決することになった。





    🎹    🎹    🎹





ミア「試合形式はこれまでどおり3対3。全てのポケモンが戦闘不能になった時点で決着だ。いいね」

ランジュ「ええ」

侑「うん、わかった」


お互いボールを構える。


ランジュ「絶対ランジュが勝って、ランジュが栞子を守るんだから!」

侑「私も負けるつもりないから!」


月明りが照らす、流星山の下、本当の最終戦の火蓋が──切って落とされた。





    🎹    🎹    🎹





侑「行くよ!! ウォーグル!!」
 「──ウォーーーグッ!!!!」

ランジュ「行きなさい、ゲンガー!」
 「──ゲンガァーーー!!!!」


ランジュちゃんの先発はゲンガー。

1番最初に出てくるゲンガーがよくしてくることと言えば──


ランジュ「ゲンガー! “10まんボルト”!!」
 「ゲンガァーーー!!!」


ランジュちゃんの指示で電撃が届くよりも早く、


侑「“いわなだれ”!!」
 「ウォーーーグッ!!!!」


足元の岩肌を割り砕き、その勢いで飛び出してきた岩石で前方に壁を作り出して、電撃を防ぐ。


ランジュ「! ……へぇ……!」


先発ゲンガーの役割は恐らく、後ろの続くポケモンが動きやすくなるように、削りや補助を行うこと。

わかっていても対処が難しい故に、大会ではよく用いられる戦い方。

攻撃範囲の広いゲンガーが使ってきそうな技はいくつかあるけど……ウォーグルに対して相性が良いのは“10まんボルト”や“こごえるかぜ”。

でも、ウォーグルの特性は多くが“まけんき”か“ちからずく”。ランジュちゃんが“まけんき”の可能性をケアするなら、“10まんボルト”が来ると予想出来た。


ランジュ「なら、“ヘドロウェーブ”!!」
 「ゲンガァーー!!!」


ゲンガーが毒の波を発生させ、岩の壁を溶かし始める。


侑「ウォーグル!」
 「ウォーーーッ!!!」


ウォーグルは岩の陰から上空に飛び出し──


侑「“エアスラッシュ”!!」
 「ウォーーーッ!!!!!」


風の刃をゲンガーに向かって放つ。


ランジュ「“シャドーボール”!!」
 「ゲンガァーーー!!!!」


ランジュちゃんはすぐに上空のウォーグルを指差しながら、“シャドーボール”の指示。

ウォーグルには効果のない技だから、完全に相殺のためだ。

2匹の攻撃がぶつかり合った瞬間──


侑「突っ切れ!! “ブレイブバード”!!」
 「ウォーーーーーッ!!!!!」


そこを一直線に大技で一点突破……!!

猛スピードで突っ込んでくるウォーグルの攻撃を回避しきれず、


 「ウォーーーーグッ!!!!!」

 「ゲンガッ!!!!?」


ゲンガーが吹っ飛ばされる。

防御の低いゲンガー……さらにウォーグルには“いのちのたま”を持たせている。大技の直撃で致命傷のはずだけど──ゲンガーは戦闘不能にはならず、後ろに飛び退きながら、


ランジュ「“10まんボルト”!!」
 「ゲンガァーーーッ!!!!!」


電撃でウォーグルを攻撃してくる。

だけど──


侑「“いわなだれ”!!」
 「ウォーーーグッ!!!!」


再び、岩石による壁を作り出して防御する。


ランジュ「な……!?」

侑「“きあいのタスキ”で1発受け止めてくるの、わかってるよ!」

ランジュ「……!」


“きあいのタスキ”は相手の攻撃によって一撃で倒されるようなダメージを受けたときも、気合いで食いしばることが出来る道具だ。

最初から相手の持ち物を予想出来ていれば、防御も出来る……!


 「ウォーーグッ!!!」


ウォーグルは再び岩の陰から飛び出して、ゲンガーに向かって飛び掛かる。

“きあいのタスキ”で防いだ以上、もうあと一撃でも入れれば、ゲンガーは戦闘不能……!


侑「行け!! ウォーグル!!」
 「ウォーーーッ!!!!」


ウォーグルがゲンガーに向かって一直線に突っ込もうとした瞬間──


 「ゲンガ…!!!!」


ぼわっとゲンガーが黒いオーラに包まれる。


侑「“みちづれ”も読めてるよ……!」

ランジュ「……!」


ウォーグルはそのまま突進せず──ゲンガーの目の前で垂直に飛び上がる。


侑「“そらをとぶ”!!!」

 「ウォーーーーッ!!!!!」

 「ゲンガッ…!!!?」
ランジュ「……!?」


先発ゲンガーの対処の難しさの本質は──“みちづれ”だ。

倒すためには当たり前だけど、ダメージを与えないといけないわけだけど……何も考えずに攻撃すれば“みちづれ”の餌食になるし、“みちづれ”を警戒して攻撃を躊躇っていると、範囲の広い技や補助技を通されて不利な状況に陥ってしまう。

だけど──フェイントを掛けてしまえば“みちづれ”の対処は可能だ。


 「ウォーーーーグッ!!!!」


トドメの一撃を決めようとウォーグルが空中から切り返し、急転直下。

“みちづれ”は連続で使えない技だから、これでまずは1匹……!!

──と、思ったけど、ランジュちゃんは冷静だった。


ランジュ「“かみなり”!!」
 「ゲンガァーーーッ!!!!!」

侑「……!?」


突然目の前に雷撃が落ちる。


侑「しまっ……!?」


“かみなり”は“そらをとぶ”でも避けることが出来ない。

“かみなり”は決して命中率の高い技じゃないから安易に使う技ではないけど──ランジュちゃんは“みちづれ”による1:1交換が出来ないと悟った瞬間、攻撃に切り替えてきた。

しかも、この状況に対して、技選択が完璧だった。

上空のウォーグルは突然発生した雷撃を受け、


 「ウォーーー…」


フラリと落ちてくる。

──が、


 「ウォォォォォォォォォッ!!!!!!!!」


黒焦げのまま、目をカッと見開き、


ランジュ「什么……!?」
 「ゲンガッ…!!?」


そのまま、ゲンガーに向かって突っ込んだ。


侑「ウォーグル……!?」

ランジュ「ゲンガー……!?」


ウォーグルが猛スピードで突っ込んだ衝撃で、朦々と砂煙が巻き上がり──その中で、


 「ウ、ウォー…グ…」
 「ゲンガァ……」


2匹とも戦闘不能になって倒れていた。


侑「ウォーグル……ありがとう。戻って」
 「ウォー…──」


私はボールにウォーグルを戻す。“かみなり”を受けた時点で、体力はもう限界だったはずなのに……持ち前の気合いで、一矢報いてくれた。

何度もウォーグルの勇猛さには救われてきた。……今回も。


ランジュ「……結局相討ちね……。戻って、ゲンガー」
 「ゲンガ…──」


せっかく“みちづれ”を読んで回避したのに、結局相討ちに持ち込まれてしまったのは痛手だけど……それでも、一方的に倒されることを避けられたと考えると、むしろ助かったかもしれない。


ランジュ「まあ、いいわ! 次よ!」


ランジュちゃんがボールを構え、私も同じように次のポケモンのボールを構える。

──さぁ、仕切り直しだ。





    🎀    🎀    🎀





栞子「1匹目は相討ち……侑さん……」

しずく「ですが、決して悪い流れではないと思います……!」

かすみ「というか侑先輩……ランジュ先輩のほとんどの攻撃を予想して防いでませんでしたか……!?」

せつ菜「侑さんは、ポケモンバトルそのものに明るい人ですからね。今回のランジュさんの戦法にも心当たりがあったんだと思いますが……。何より、彼方さんに教えてもらったという防御戦術に磨きが掛かっている気がしますね」

リナ『侑さん、いなしと防御のトレーニングは、家にいる間もずっとしてたからね!』 || > ◡ < ||


リナちゃんの言うとおり、侑ちゃんは旅をしていない間も、防御術のトレーニングだけは欠かさなかった。

戦術に対する知識が多く、トレーナーの癖を読み、防御やいなしに特化した戦い方は、侑ちゃんだけの武器になりつつある。

今回のバトルでも侑ちゃんの長所を生かして戦えている。

しずくちゃんの言うとおり、決して悪い流れじゃない。


歩夢「侑ちゃん……頑張って……!」




    🎹    🎹    🎹





侑「行くよ! ライボルト!!」
 「──ライボォッ!!!!」

侑「メガシンカ……!!」
 「ライボォッ!!!!」


ライボルトを出すと同時に、メガシンカさせる。

対するランジュちゃんは、


ランジュ「行くわよ、ガブリアス!」
 「──ガァァァブ!!!!!」


ドラゴンポケモンのガブリアスだ。

ガブリアスを見た瞬間、


侑「“でんじふゆう”!!」
 「ライボッ!!!」

ランジュ「“じしん”!!」
 「ガァァァブッ!!!!」


ライボルトを浮遊させて、“じしん”を回避する。

絶対にやってくると思った。

だけど、回避を読んでいたのはランジュちゃんも同じで──


ランジュ「“ドラゴンクロー”!!」
 「ガァァァブッ!!!!」


すぐさま踏み込んできて、低空浮遊するライボルトに切りかかってくる。

だけど、ライボルトには必殺技がある──

──ギィンッ!! と音を立て、


ランジュ「……!?」


砂鉄の盾が、ガブリアスの爪撃を弾く。


ランジュ「なによその技……!?」
 「ガァァァブッ…!!!!」


攻撃を弾かれ、出来た隙に──


侑「“ハイパーボイス”!!」
 「ライボォッ!!!!!!」


音波攻撃を叩きこむ。


 「ガァブッ…!!!」
ランジュ「くっ……!!」


ガブリアスは怯む程度で大きなダメージにはなっていないけど、ライボルトのでんき技はガブリアスには効果がない。

守りを固めながら、削っていく方が恐らく効率がいい。

だけど──ここでも、ランジュちゃんの対応は早かった。


ランジュ「铁砂……? 電磁力で操ってるのね……! なら──“かえんほうしゃ”!!」
 「ガァーーーーブッ!!!!!」

 「ライボッ…!!」
侑「や、やば……!? こっちも、“かえんほうしゃ”!!」

 「ライボォッ!!!!」


砂鉄シールドの陰から、“かえんほうしゃ”に向かって“かえんほうしゃ”で対抗する。

どうにか、相殺は出来たけど──


ランジュ「やっぱり……! 炎は困るみたいね!」

侑「く……!」


弱点に気付くのが早い……!

砂鉄シールドは炎を受けると、防御能力が著しく落ちてしまう。これだと、当初の予定の持久戦が一気にやりづらくなる。


かすみ「炎だと困るんですか……?」

せつ菜「確か……一定以上温度が上がると磁性が失われるのではなかったでしょうか」

リナ『熱されると、磁気モーメントが無秩序状態になるから、磁性が失われる。熱消磁って言われる現象』 || ╹ᇫ╹ ||

かすみ「……??」

しずく「えっと……まあ、使えなくなるってことだよ」


ランジュちゃんはすぐにそれに気付き、


ランジュ「仕組みがわかれば対策は簡単よ! “ねっさのだいち”!!」
 「ガァブッ!!!!」


ガブリアスが熱された砂をこちらに向かって飛ばしてくる。


侑「く……“スピードスター”!!」
 「ライボォッ!!!!」


“ねっさのだいち”を吹き飛ばすために、星型のエネルギー弾で対抗するけど──大量の熱砂を全て撃ち落とすことは出来ず、一部が砂鉄シールドに降りかかり──降りかかった部分から、砂鉄が崩れて盾が崩壊していく。

それを好機を言わんばかりに、


ランジュ「今よガブリアス!! “かみくだく”!!」
 「ガァァァブッ!!!!」


ガブリアスがこちらに向かって飛び出してくる。


侑「ライボルト……! ガード!!」
 「ライボッ!!!」


とはいえ、まだシールドが全て崩壊したわけじゃない。

欠けているシールドを、ガブリアスの攻撃を防ぐように、前に展開すると──


 「ガァァァブッ!!!!」


ガブリアスは大口を開けて、鋭い牙をシールドに突き立てる。

それと同時に──ガブリアスが牙を突き立てた場所から、バキリと音を立てて、シールドがひび割れる。


侑「な……!?」


ガブリアスはそのまま、砂鉄シールドを噛み砕き──


ランジュ「“ダブルチョップ”!!」
 「ガァァァブッ!!!!」


盾を突き破りながら、両手でライボルトにチョップを食らわせる。


 「ライボッ…!!!」
侑「なんで、シールドが……!?」


一瞬どうして破られたのかが、理解出来なかったけど──すぐに頭の中で解答にたどり着く。


侑「……! ……“ほのおのキバ”だ……!!」

ランジュ「そうよ! 熱に弱いなら、熱を加えながら攻撃をすればいい!!」


“ダブルチョップ”で受けて、後退るライボルトに、さらにガブリアスが踏み込んでくる。


侑「ライボルト!!」
 「…ライボッ…!!!!」


私の声に反応するように、ライボルトの脚の筋肉の周辺がバチりと“スパーク”し、


 「ガァブッ!!!!」


ガブリアスの“ドラゴンクロー”が空振る。


 「ライボッ…!!!」


気付けば、ライボルトはガブリアスの背後にいた。

筋肉を刺激しての雷速移動だ。

背後を取ったライボルトが、逆にガブリアスに飛び掛かろうとするが──


ランジュ「“じならし”!!」
 「ガァブッ!!!!」

 「ライボッ…!!!?」


ガブリアスは振り向きもせずに地面を揺らして、ライボルトの足を止める。


ランジュ「筋肉を刺激して走る以上、“でんじふゆう”したままじゃ出来ないわよね!」

侑「ぐ……」


ランジュちゃんの言うとおり、雷速移動と“でんじふゆう”は両立出来ない。

強化した筋力で地面を蹴るからこその、あの瞬発力。

浮遊していたら、あんな“こうそくいどう”は出来ない。

“じならし”でよろけて、動きが鈍ったライボルトに向かって──


ランジュ「決めなさい、ガブリアス!!」
 「ガァァァブッ!!!!」


ガブリアスが飛び掛かってくる。

どうする。

砂鉄シールドは攻略された、移動による回避を重視すればじめん技の餌食に、“でんじふゆう”したらガブリアスの機動力から逃げきれない。

そのとき、ふと──ある案が浮かんだ。


侑「ライボルト!! 砂鉄シールドを目の前に展開して!!」
 「ライボッ!!!!」


ライボルトの目の前に砂鉄シールドが展開される。


ランジュ「それはもう攻略してるわ! “ほのおのキバ”!!」
 「ガァァァブッ!!!!」


ガブリアスの牙に炎が宿り──ライボルトの前面に展開されたシールドに牙を立てる。

炎によって熱された砂鉄シールドは──


ランジュ「さぁ、噛み砕きなさい!!」
 「ガァ、ブッ…!!!!」


──砕けなかった。


ランジュ「え……!?」

侑「ライボルト!! “ずつき”で突っ込め!!」
 「ライボォッ!!!!」


ガブリアスがシールドに牙を突き立てた状態のまま、シールドの裏側にいるライボルトの脚部が“スパーク”する。

盾ごと後ろから“ずつき”でガブリアスに叩き付け──


 「ガァブッ…!!!!」


噛み付いた砂鉄シールドごと仰け反り、無防備になったガブリアスの胴体に──


 「ライボッ!!!!」


噛み付いた。


 「ガァァァブッ…!!!!?」


そして、噛み付くと同時に、ライボルトが牙を立てた部分が──パキパキと音を立てながら凍り始めた。

こおりタイプは──ドラゴンポケモンにとって、これ以上ないほどの弱点タイプだ。


 「ガ、ァァァァ…!!!!!」


苦しみ怯むガブリアスに向かって、


侑「“はかいこうせん”!!」
 「ラァァァァイ、ボォォォォォォォ!!!!!!!!」

 「ガァァァァァブッ!!!!!!?」


至近距離から、最大級の破壊の閃光を、ガブリアスに直撃させた。

苦手なこおりタイプの技の直後に、至近距離からの“はかいこうせん”を受けたガブリアスは、


 「ガ、ァ、ブッ…」


さすがに耐えきれず、ゆっくりと仰向けに倒れ、戦闘不能になったのだった。


ランジュ「戻りなさい、ガブリアス……」
 「ガ…ブ…──」

ランジュ「……やられた……っ、“ほのおのキバ”で熱されてる部分を……裏側から“こおりのキバ”で冷やしてたのね……」


ランジュちゃんの言うとおり──私が思いついた作戦は、熱された部分をすぐに冷やして再び磁石に戻すことだった。

熱された牙によって脆くした砂鉄の盾を急激に冷やされ再び硬い盾に戻したら……当たり前だけど、牙が突き刺さって抜けなくなるという寸法だ。


ランジュ「やるじゃない……。……攻略されたことを逆手に取るなんて」

侑「あはは……うまくいくかはイチかバチかだったけどね」
 「ライボ…!!!」


でもこれで、ランジュちゃんの手持ちは残り1匹だ……!


ランジュ「……追い詰められちゃったけど……最後に勝つのはランジュよ!!」


ランジュちゃんは3匹目──最後のポケモンのボールをフィールドへと投げ込む。





    🎹    🎹    🎹





ランジュ「行きなさい、ガルーラ!」
 「──ガルゥッ…!!!」


ランジュちゃんの最後のポケモンはガルーラ。出すと同時に、耳に掛かった髪をかき上げ──それと同時に、“キーストーン”が光り輝く。


ランジュ「メガシンカ!」


ガルーラが光に包まれ──


 「ガァル…!!!」「ガルゥ!!!!」


大きくなった子供がポケットから飛び出してくる。


侑「迎え撃つよ……!」
 「ライボッ…!!」


ライボルトが、砂鉄の盾を構える。


ランジュ「ガルーラ! “ピヨピヨパンチ”!」
 「ガァルッ!!!!」


砂鉄シールドにぶつかった瞬間、ピヨピヨと特徴的な音が鳴る。

だけど、シールドはそれくらいじゃ破れない──が、気付けばシールドの内側に、


 「ガルッ」

侑「……!?」


子供ガルーラの姿があった。

──親が攻撃している間に、潜り込まれた……!?


 「ガルッ!!!」

 「ライボッ…!!!!」


殴り飛ばされ、ライボルトが地面を転がる。


侑「ライボルト……! 大丈夫!?」
 「ライボッ…!!!」


ライボルトはすぐに起き上がるけど……。

まだ小さい子供なのに、自分より大きなライボルトを殴り飛ばすなんて、すごいパワーだ……。


ランジュ「“はかいこうせん”の反動があった分、逃げ遅れたわね」


“はかいこうせん”を使うと、反動でその場から動けなくなる。

そのケアを砂鉄でしようと思っていたけど……目論見が外れてしまった。


侑「でも、もう自由に動けるよ!!」
 「ライボッ!!!」


ライボルトの脚が“スパーク”すると同時に、イカズチを描くように、ガルーラの周囲を高速で走り回り始める。

さっきと違って、でんき技が通る相手である以上、捉えられさえしなければ、いくらでも攻撃のチャンスは作り出せるはず……!

ただもちろん、ランジュちゃんが自由に走り回らせてくれるわけはない。


ランジュ「ガルーラ! “じならし”!!」
 「ガァルッ!!!!」


ガルーラが足を踏み鳴らして“じならし”を起こそうとした瞬間、


侑「“でんじふゆう”!」

 「ライボッ…!!!」


ライボルトは浮き上がって振動攻撃を回避する。

が、ライボルトが浮き上がって減速した瞬間、


 「ガァルッ…!!!!」「ガルッ!!!」


親ガルーラが子ガルーラを、ライボルトに向かって投げ飛ばしてきた。


侑「うそ!?」

ランジュ「“アームハンマー”!!」
 「ガルッ!!!」

 「ライボッ…!!!?」


子供の拳で、浮いていたライボルトが地面に叩き落される。

それに合わせるように──


ランジュ「“じしん”!!」
 「ガァルッ!!!!」

 「ライボッ…!!!!」


ライボルトが“じしん”に巻き込まれる。


侑「ライボルト……!!」

 「ライ…ボ…」


“じしん”は効果てき面だった。ここまでのダメージの蓄積もあって、ライボルトはついにダウン。


侑「ありがとう……戻って、ライボルト」
 「ライ、ボ…──」

ランジュ「さぁ、これで並んだわよ!」


私も残りは1匹のみになった。

最後はもちろん──


侑「行くよ、イーブイ!!」
 「ブイ!!!」


やっと出番かと言わんばかりに、気合いたっぷりに鳴き声をあげながら、私の肩を踏み切ってフィールドに飛び出す。

その首には、試合前に巻いてあげた“シルクのスカーフ”が風にたなびいている。

──泣いても笑っても、これが最後だ。


侑「イーブイ! 勝つよ!!」
 「ブイッ!!!」

ランジュ「いいえ! 勝つのはランジュたちよ!!」
 「ガァルッ!!」「ガルッ!!」





    🎹    🎹    🎹





侑「イーブイ、“わるわるゾーン”!!」
 「ブイ!!!」


周囲が闇の包まれ、その中でイーブイが月光の輝きを身に纏う。

これで物理攻撃は半減される。


ランジュ「このランジュでさえも、見たことない技を使うのね、そのイーブイ! ガルーラ、“いわなだれ”よ!!」
 「ガァルッ!!!!」「ガルッ!!!!」


親子ガルーラが同時に、足元の岩を殴り砕き、巻き上げられた岩がそのままこちらに向かって押し寄せてくる。


侑「“こちこちフロスト”!!」
 「ブイッ!!」


目の前に真っ黒な氷の塊を作り出して、岩を受け止め、


侑「“すくすくボンバー”!!」
 「ブーーィッ!!!」


イーブイの尻尾から飛び出したタネが岩を巻き込みながら急成長する。

“すくすくボンバー”の樹木を壁にしながら一旦様子を見ようと思ったが、


ランジュ「“すてみタックル”!!」
 「ガァルッ!!!」「ガルッ!!!」


親子ガルーラが一緒に、樹木に向かって突撃してきた。


侑「うわぁ!!?」


──ズドンと大きな音が樹木の向こう側から響き渡り、空気を震わせる。

直後──


侑「……うそ」


ミシミシミシ、と音を立てながら、岩を実のように巻き込んでいる樹木がこちらに向かって倒れてくる。


侑「や、やばい……!!」
 「ブイッ…!!!」


巻き込まれまいとイーブイと一緒に樹木の陰から飛び出した、その瞬間、


ランジュ「“アームハンマー”!!」
 「ガァルッ!!!」

侑「!!」


親ガルーラが拳を振り下ろす。


侑「イーブイッ!!」
 「ブイッ!!!」


イーブイは咄嗟に身を捻って避ける。

どうにか拳の直撃は避けられたけど──強烈なスピードで振り下ろされる拳は、地面を割り砕き、


 「ブイッ…!!!」


割り砕かれる地面と共に、イーブイの体が宙を浮く。

さらに──


 「ガルッ!!!」


子ガルーラがイーブイが浮き上がった先で、両手を振り上げて待っていた。


侑「っ……!! “びりびりエレキ”!!」
 「ブーーーィィィッ!!!!」

 「ガルッ…!!!?」


咄嗟に放った“びりびりエレキ”で迎撃を試みるが、


 「ガーールッ…!!!!」

 「ブイッ!!?」


子ガルーラにダメージこそ与えられたものの、完全に攻撃を中断させることは叶わず、イーブイに子ガルーラからの“アームハンマー”が叩き付けられる。


侑「イーブイ!!」


イーブイが地面を跳ねながら転がる。


 「ブ、ブィィ…」


だけど……どうにか、立ち上がる。

戦闘不能にはなっていないけど、相性の悪いかくとうタイプの技を直撃で貰ってしまった──ダメージが大きく、限界ギリギリ。


ランジュ「追い詰めたわよ」
 「ガァルッ」「ガル…ッ」

侑「……っ」


私たちの前にメガガルーラが少しずつ近寄ってくる。

イーブイは戦闘不能寸前。

一方相手は子ガルーラを“まひ”させられているだけ。

絶体絶命……という状況だけど、


 「…ブイッ!!」
侑「うん、わかってるよ!」


不思議と不安ではなかった。

だって、まだ私の相棒の闘志は、消えていないから。

何度もイーブイに──相棒に助けてもらってきた。

だから、きっと今回も、


侑「私たちは……負けないよ!!」
 「ブイッ!!!!」


イーブイが、地を蹴って──飛び出した。


侑「“すてみタックル”!!」
 「ブーーーィィィッ!!!!」

ランジュ「ここで突っ込んできた……!?」


ランジュちゃんも、この土壇場での真っ向からの突進に、驚きはしたものの、冷静に、


ランジュ「“じならし”!!」
 「ガァルッ!!!!」


手堅くイーブイの足を止めようとしてくる。


 「ブイッ…!!!」


だけど、勢いに乗ったイーブイは止まらない。

ちょっとくらいスピードが落ちたっていい。

ガルーラに向かって一直線に走る、イーブイの目の前に、


 「ガル…ッ!!!」


子ガルーラが飛び出してくる。


ランジュ「“けたぐり”!!」
 「ガル…ッ!!!」

 「ブイッ…!!?」
侑「イーブイ!?」


足を払われて、イーブイの体が宙を浮き──勢いに乗ったイーブイの体は地面を転がりながら、


 「ガァル…!!!」


親ガルーラの足元へ……。


ランジュ「……これで終わりよ」
 「ガァル…!!!」

 「ブイ…!!!」


親ガルーラがイーブイを片手で摘まみ上げる。

そして、掴んでいるのとは逆の手を引く。


ランジュ「終わりよ……。“メガトン──」


親ガルーラの拳が引かれる。

狙うなら──今この一瞬しかない。


侑「イーブイッ!!!!」


あの技を見せるときだ。


侑「“とっておき”!!!」
 「ブイッ!!!!」

ランジュ「な……!?」
 「ガルッ!!?」


イーブイの体からエネルギーが溢れて、光り出す。


ランジュ「うそ……!? 技を全部使ったの!? ガルーラ、放しなさい!!」


イーブイはガルーラの目の前でぱぁぁぁっと光り輝き──


 「…ガルッ!!!」


親ガルーラが手を放すのと同時に──光はすぐに消えていった。


ランジュ「え……?」


──当たり前だ。

“とっておき”は覚えている技を全て使わないといけない。

最初は2つしか技を覚えていなかったイーブイも……今はたくさん技を覚えている。


ランジュ「な、なんなのよ……!」


でも──これで、いい。


ランジュ「ガルーラ!! 今度こそ、決め……」


ランジュちゃんの言葉が、止まった。

それも、そのはず。


ランジュ「……い、イーブイは……どこ……!?」
 「ガ、ガァルッ…!!!?」


先ほどまで親ガルーラが掴んでいたはずのイーブイは、フィールド上から姿を消していた。

“とっておき”はただの目くらましだ……!

そして──決めるなら、今しかない。


侑「イーブイ!!! 全力で行くよっ!!!!」


私の声に呼応するように──


 「──ブィィィィィィィィッ!!!!!!!!!!」


親ガルーラの──ポケットの中から眩い光と共に、イーブイの雄叫びが聞こえてくる。


ランジュ「うそっ!? ポケットの中……!?」


そう、イーブイは──親ガルーラの手を離れた瞬間、ガルーラのお腹のポケットに潜り込んで姿を隠していた。

膨れ上がる光を纏いながら、ガルーラの顎下目掛けて、飛び出した。


侑「“ブイブイブレイク”ッ!!!」
 「──ブゥゥゥゥゥイィィィィィィィィッ!!!!!!!!」

 「ガァルッ!!!!?」


真下から、猛烈な突進で顎を突き上げられた親ガルーラは──そのまま、宙に浮きあがり、空中で何回転もしたあと──


 「ガァルッ…!!!!?」


地面に落下し、


 「ガ、ァァル…」


力尽きて、戦闘不能になった。

それと同時に──親が戦闘不能になったことで、メガシンカのパワーも失ったのか、


 「ガ、ガル…」


子ガルーラが元の小さい子供の姿に戻っていく。


 「ブイッ!!!」


攻撃を終え、着地したイーブイが鳴き声をあげると──


 「ガ、ガル…」


子ガルーラは大慌てで、倒れた親ガルーラのポケットの中に逃げ込むのだった。

もう子ガルーラに戦闘の意思はないと見ていいかな。

つまり──


ランジュ「……う、うそ……」

ミア「……ランジュのポケモンは3匹とも戦闘不能。……決着だね」

侑「……いやったぁぁぁ!! 勝ったよ、イーブイっ!!!」
 「ブイィィ♪」


フィールドに駆け出し、イーブイを抱きしめる。

そして、それと同時に──


かすみ「せんぱーいっ!! 信じてましたよ~!!!」

せつ菜「侑さんっ!! やりましたね!!」


かすみちゃんとせつ菜ちゃんが駆け寄ってくる。


侑「うんっ!」


そして、その後ろから、


歩夢「侑ちゃん……!」


駆け寄ってきた歩夢が、二人をすり抜けるようにして、抱き着いてくる。


侑「おとと……」

歩夢「侑ちゃん……かっこよかったよ……。……イーブイも……」
 「ブイ♪」

侑「ふふ……ありがと、歩夢」


抱き着く歩夢の頭を優しく撫でる。


かすみ「ちょ……歩夢先輩だけずるいですよ……!」

せつ菜「そうですね! 喜びを分かち合うときは、みんなでです!!」


かすみちゃんとせつ菜ちゃんも抱き着いてくる。


侑「く、苦しい……」

栞子「み、皆さん……! そんなに一斉に抱き着いたら、侑さんが潰れてしまいます……!」

しずく「ふふ、でもこれくらい元気な方が、私たちらしいかもしれませんね♪」

リナ『確かにそうかもしれない』 || > ◡ < ||


みんなで喜びを分かち合っていると──


ランジュ「…………そっか、ランジュの負けなのね……」


ランジュちゃんが肩を落として、呟く。


ランジュ「……でも、負けは負け。認めるわ。それに……楽しいバトルだったわ。侑」

侑「うん! 私も楽しかったよ!」

ランジュ「今回は……勝ちたかったんだけどな……」


ランジュちゃんはそう言って── 一瞬だけ、栞子ちゃんにチラリと目を配る。


栞子「ランジュ……」

ランジュ「でも……これで、すっきりした! 貴方たち、栞子のこと、お願いね!」


そう言って、踵を返す。


侑「待って待って、ランジュちゃん!」

ランジュ「……何? まだ何かあるの?」

侑「この試合は、どっちが栞子ちゃんを守るかを決めようとしてたわけじゃないよ」

ランジュ「え……?」

ミア「まあ……そうだよね。どっちが守るなんて話してたの、ランジュだけだし」

ランジュ「え、で、でも……」

侑「ランジュちゃん……。私たちと一緒に、栞子ちゃんを守ろう!」


私は、ランジュちゃんに手を差し伸べる。


ランジュ「いや、でも……み、ミア……!」

ミア「とりあえず、勝者の意見を尊重すればいいんじゃない?」

ランジュ「貴方どっちの味方なのよ……!」


ランジュちゃんは困ったようにおろおろしている──


ランジュ「や、やっぱりダメよ……ランジュがいたら、輪が乱れちゃうでしょ……!」

かすみ「はぁ……ランジュ先輩、まだわからないんですか」

ランジュ「え……な、なにが……?」

せつ菜「私たちは皆、ポケモンバトルを通して、全力でぶつかり合った者同士──ランジュさんの強さは私たちが一番理解しています!!」

しずく「これから挑むことになるのは……地方を守ってくれていた伝説の龍神様。今、私たちは……頼もしい仲間を必要としています」

かすみ「かすみんたちはランジュ先輩と一緒に戦いたいって言ってるんですよ!」

ランジュ「で、でも……ランジュは……」

歩夢「ランジュちゃん」


歩夢が前に歩み出て、ランジュちゃんの手を握る。


ランジュ「あ、歩夢……」

歩夢「やっぱり、気が引けちゃう?」

ランジュ「それは……そうよ……。……貴方たちは仲のいいお友達同士で……そこにランジュが入っても……」

侑「じゃあ、ランジュちゃん」


歩夢が握った手の上から──私もランジュちゃんの手を握る。


侑「私たちと──友達になって!」

ランジュ「……え」


ランジュちゃんは私の言葉に目を丸くした。


ランジュ「……いいの……?」

歩夢「うん、こっちからお願いしたいくらいだよ♪」

せつ菜「というより……全力でバトルをしたら、もうそれは強敵と書いてトモと読むんです!! それが習わしですから!」

かすみ「いや、それはなんか意味が違うような……」

しずく「ふふ♪ まあ、どういう友達になるかは、人それぞれでいいんじゃないかな♪」

ランジュ「ランジュも……お友達になっていいの……?」

かすみ「だから、さっきからそう言ってるじゃないですか!」

リナ『戦って、わかり合って、お互いを知って、繋がり合えたら、もうみんな友達だよ!』 || > ◡ < ||


みんなの言葉を聞いて──


ランジュ「…………っ」


ランジュちゃんは目の端に涙を浮かべる。


栞子「ランジュ」


栞子ちゃんが、ランジュちゃんに歩み寄り──抱きしめる。


ランジュ「栞子……」

栞子「みんなで……解決しましょう。……私たちはもう……みんな、お互いを支え合う仲間なんですから」

ランジュ「……うん……っ」


ランジュちゃんは、


ランジュ「……うん……っ」


その言葉を反芻するように、何度も何度も、頷くのだった。





    🎹    🎹    🎹





さて……。

流星山での戦いを終えて──ポケモンたちの回復や休息……それと今度の準備を整えるために、例の如くセキレイシティのツシマ研究所に戻ってきていた。


栞子「……龍脈は、北──もっと正確に言うと、北北西方向に反応を示しています」

かすみ「もうだいぶ地方のあっちこっち回ったよね?」

栞子「そうですね……龍神様が待っている龍脈も……近いかもしれません」

せつ菜「なら、気を引き締めないといけませんね……!」

ランジュ「ランジュに任せなさい! 貴方たちはみーんな、ランジュが守ってあげるんだから!」

ミア「さっきまでの態度が嘘みたいだ……」

ランジュ「だってもうみんなは仲間で、お友達なんだもの!」

しずく「ふふ♪ 頼もしいですね♪」


ランジュちゃんはすっかり元気を取り戻したようで安心する。


せつ菜「それにしても北北西ですか……。……セキレイから北北西と言うと……」

リナ『天睛山くらいかな。クリスタルケイヴはもうすでに行ってるし』 || ╹ᇫ╹ ||

せつ菜「ですね」

かすみ「天睛山……?」

しずく「クロユリシティの北にある活火山のことだよ」

歩夢「あ……確か、竜の顔みたいな形の湖の真ん中にある火山だよね……目みたいに見えるって言う」

せつ菜「はい。通称『竜の瞳』なんて呼ばれています」

侑「そこが次の龍脈なんだね……。それじゃ、朝になったら天睛山に向かおう!」

栞子「はい!」


私たちは新しい仲間を加え……レックウザのもとを目指して──次なる龍脈へと進んでいく。




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【セキレイシティ】
 口================== 口

  ||.  |○         o             /||
  ||.  |⊂⊃                 _回/  ||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||.○⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ ●__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :  ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  .||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  .||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  .||
  ||.       /.         回 .|     回  ||
  ||.    _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||. /              o回/         ||
 口==================口



 主人公 侑
 手持ち イーブイ♀ Lv.82 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
      ウォーグル♂ Lv.79 特性:まけんき 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
      ライボルト♂ Lv.80 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
      ニャスパー♀ Lv.77 特性:マイペース 性格:きまぐれ 個性:しんぼうづよい
      ドラパルト♂ Lv.78 特性:クリアボディ 性格:のんき 個性:ぬけめがない
      フィオネ Lv.74 特性:うるおいボディ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:285匹 捕まえた数:12匹

 主人公 歩夢
 手持ち エースバーン♂ Lv.69 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
      アーボ♂ Lv.69 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
      マホイップ♀ Lv.65 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
      トドゼルガ♀ Lv.65 特性:あついしぼう 性格:さみしがり 個性:ものおとにびんかん
      フラージェス♀ Lv.65 特性:フラワーベール 性格:おっとり 個性:すこしおちょうしもの
      ウツロイド Lv.73 特性:ビーストブースト 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 3個 図鑑 見つけた数:264匹 捕まえた数:24匹

 主人公 かすみ
 手持ち ジュカイン♂ Lv.84 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
      ゾロアーク♀ Lv.78 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
      マッスグマ♀ Lv.75 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
      サニゴーン♀ Lv.75 特性:ほろびのボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
      ダストダス♀✨ Lv.74 特性:あくしゅう 性格:がんばりや 個性:たべるのがだいすき
      ブリムオン♀ Lv.76 特性:きけんよち 性格:ゆうかん 個性:ちょっとおこりっぽい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:305匹 捕まえた数:15匹

 主人公 しずく
 手持ち インテレオン♂ Lv.69 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
      バリコオル♂ Lv.68 特性:バリアフリー 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      アーマーガア♀ Lv.68 特性:ミラーアーマー 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ロズレイド♂ Lv.68 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
      サーナイト♀ Lv.69 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ツンベアー♂ Lv.69 特性:すいすい 性格:おくびょう 個性:ものをよくちらかす
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:286匹 捕まえた数:23匹

 主人公 せつ菜
 手持ち ウーラオス♂ Lv.79 特性:ふかしのこぶし 性格:ようき 個性:こうきしんがつよい
      ウインディ♂ Lv.87 特性:せいぎのこころ 性格:いじっぱり 個性:たべるのがだいすき
      スターミー Lv.83 特性:しぜんかいふく 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      ゲンガー♀ Lv.85 特性:のろわれボディ 性格:むじゃき 個性:イタズラがすき
      エアームド♀ Lv.81 特性:くだけるよろい 性格:しんちょう 個性:うたれづよい
      ドサイドン♀ Lv.84 特性:ハードロック 性格:ゆうかん 個性:あばれることがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:213匹 捕まえた数:51匹

 主人公 栞子
 手持ち ピィ♀ Lv.11 特性:メロメロボディ 性格:やんちゃ 個性:かけっこがすき
      ウォーグル♂ Lv.71 特性:ちからずく 性格:れいせい 個性:かんがえごとがおおい
      ウインディ♀ Lv.71 特性:もらいび 性格:さみしがり 個性:のんびりするのがすき
      ゾロアーク♂ Lv.69 特性:イリュージョン 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      イダイトウ♀ Lv.68 特性:てきおうりょく 性格:さみしがり 個性:にげるのがはやい
      マルマイン Lv.69 特性:ぼうおん 性格:きまぐれ 個性:すこしおちょうしもの
 バッジ 0個 図鑑 未所持

 主人公 ミア
 手持ち プリン♂ Lv.75 特性:フレンドガード 性格:のんき 個性:ちょっぴりみえっぱり
 バッジ 0個 図鑑 未所持

 主人公 ランジュ
 手持ち コジョンド♀ Lv.80 特性:すてみ 性格:むじゃき 個性:イタズラがすき
      ジジーロン♂ Lv.76 特性:ぎゃくじょう 性格:れいせい 個性:ひるねをよくする
      エレキブル♂ Lv.77 特性:でんきエンジン 性格:せっかち 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ローブシン♂ Lv.77 特性:てつのこぶし 性格:ゆうかん 個性:うたれづよい
      ギャラドス♂ Lv.75 特性:じしんかじょう 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      パラセクト♂ Lv.71 特性:しめりけ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 8個 図鑑 未所持


 侑と 歩夢と かすみと しずくと せつ菜と 栞子と ミアと ランジュは
 レポートに しっかり かきのこした!


...To be continued.




■ChapterΔ011 『人とポケモン』 【SIDE Yu】





ツシマ研究所で一晩過ごして……翌日。

私たちは“そらをとぶ”でオトノキ地方の北を目指していた。


せつ菜「皆さん! 見えてきましたよ!」


──せつ菜ちゃん先導のもと飛んでいくと、大きな湖が見えてくる。

空から見たその湖は、確かに竜の頭部を思わせるシルエットをしていて、その竜の目に当たる部分に、火山が見える。


侑「あれが……天睛山」
 「ブイ~…」

かすみ「でもあれ、どこから入るんですか? 上の火口から……?」

せつ菜「いえ、天睛山には奥に繋がる火山洞が外から続いているので、そこから入ることが出来ますよ」

侑「それじゃ、一旦火山洞の入り口に行こう!」
 「イブィ♪」

せつ菜「はい! ご案内します! エアームド!」
 「ムドーー!!!」





    🎹    🎹    🎹





せつ菜ちゃんの言うとおり、天睛山の麓に降りると、大きな洞窟が口を開けていた。

洞窟を見るや否や、


ランジュ「さぁ、貴方たち! 行くわよ! ランジュに付いてきなさい!」


ランジュちゃんが意気揚々と進んでいく。


栞子「あ、ちょっと、ランジュ……! 単独行動しないでください……!」

ミア「やれやれ……」


栞子ちゃんが小走りでランジュちゃんを追いかけ、ミアちゃんが肩を竦めながら後を追う。


せつ菜「私たちも行きましょう。足元が不安定なので、気を付けてくださいね」

かすみ「もう~かすみんたち、これでも地方中旅して回ってるんですよ? 今更、荒れ道程度で転んだり──って、わぁぁぁぁ!!!?」


かすみちゃんが足元のでっぱりに引っ掛かって、盛大にすっ転ぶ。


しずく「か、かすみさん、大丈夫!?」

かすみ「い、痛い~……しず子ぉ~……」

しずく「もう……気を付けないと……」


しずくちゃんが、へたり込むかすみちゃんの頭を撫でる。


歩夢「でも、本当に凸凹だね……」

リナ『舗装された道ではないからね。噴火活動によって、出来た横穴でしかないから』 || ╹ᇫ╹ ||


確かに、道は激しく凹凸があり、段差を登らないといけない場所もある。

私は一段上によじ登ってから、


侑「歩夢、掴まって」

歩夢「うん、ありがとう、侑ちゃん」


歩夢を引っ張り上げる。

全員で協力しながら、奥へと進んでいくと──だんだんと汗ばんでくるのがわかった。


かすみ「……あ、暑い……」

しずく「やはり、活火山だからでしょうか……」

せつ菜「はい。もう少し奥に進むと溶岩が流れている場所もあるので、気を付けてください」

かすみ「溶岩!?」

リナ『触ったら火傷じゃ済まないね』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

かすみ「こんなの人が来るような場所じゃないですよぉ~……」

しずく「弱音吐いてないで頑張って! ほら、背中押してあげるから!」

侑「歩夢、大丈夫? 疲れてない?」

歩夢「うん、平気だよ、ありがとう♪」


高低差のある横穴をひたすら進んでいくと──せつ菜ちゃんの言うとおり、開けた空間へとたどり着く。

先ほども言っていたとおり、壁を伝うように溶岩が流れている場所もあり、洞窟の奥だと言うのにそれなりに明るくて……何より暑い。


ランジュ「栞子、龍脈はここなのかしら?」

栞子「……いえ、反応はもう少し奥ですね……」


栞子ちゃんの手にある“もえぎいろのたま”は光ってはいるものの、他の龍脈の地にたどり着いたときほど強い輝きにはなっていない。


せつ菜「確か……この先に、火口に繋がる道があったはずです」

ミア「そこまで行かないとダメってことか……。ボク、少し疲れてきたよ……」

かすみ「ミア子、鍛え方が足りないんじゃないの~?」

ミア「なんだって? キミだって、さっきすっころんでたじゃないか。体幹不足の子犬ちゃん」

かすみ「だから、子犬じゃないっ!!」

しずく「もう……ケンカしないの……!」

リナ『ミアちゃん、頑張って! もう少しだから!』 || ╹ 𝅎 ╹ ||

ミア「リナが言うなら、頑張るよ!」


リナちゃんに言われると、ミアちゃんは元気よく答えて歩き出す。


かすみ「リナ子の言うことは素直に聞くのに……なんで、かすみんには生意気なのかな……」

侑「あはは……」


思わず苦笑してしまう。


せつ菜「えーっと……あっ、あった! 皆さん! 火口への道は、こちらです!」


せつ菜ちゃんが、道を見つけてみんなを呼び寄せる。

全員でゾロゾロと道へと入っていくと── 一気に気温が上昇するのがわかった。


かすみ「うわ……」

ミア「これは……」


かすみちゃんとミアちゃんが、あまりの熱気に顔を顰める。


栞子「確かに……これはすごい熱気ですね……」

せつ菜「天睛山の火口には溶岩だまりが出来ていることも多いので……この暑さはそれによるものでしょうね」


うだるように蒸し暑い洞窟内を抜けていくと──さほど時間が掛からずに、空間が開ける。

そして、そこには──眼下に湖のように広がった、溶岩が煮えたぎっていた。


かすみ「うひゃぁ……あんなにたくさん溶岩があるの……初めて見ました」

しずく「こんなに広い溶岩だまりがあるなんて……」

ランジュ「栞子、反応は?」

栞子「……間違いありません。ここが龍脈です」


栞子ちゃんの言うとおり、“もえぎいろのたま”は強く光を発していた。

あとは龍脈のエネルギーを集めたら、脱出して──と思った、そのとき、


歩夢「ま、待って……! 溶岩だまりの中央に……何かいるよ……!」

侑「え……!?」


歩夢の言葉に全員が、溶岩だまりの中央部分に目を向けると──

溶岩の上スレスレでとぐろを巻いて目を瞑っているポケモンが、灼熱の赤に照らされながら鎮座していた。

それはまさに──


栞子「龍神様……!」


私たちが探していた、レックウザだった。





    🔖    🔖    🔖





 「──キリュリリュリシィ……」


私の声に反応するかのように、龍神様はゆっくりと目を開け──


 「キリュリリュリシイィィィィィィ……!!!」


雄叫びをあげながら、私たちの前方まで飛翔してくる。


かすみ「ぴゃぁぁぁぁ!!? こっちきたぁ!?」

 「キリュリリュリシイィィィィィィ!!!!」


龍神様が動くだけで、周囲の空気が渦巻き、突風を発生させ、私たちの目の前で大きな体躯をしならせながら静止する。


 「キリュリリュリシイィィィィィィ…」

栞子「龍神様……」


龍神様はただ、目の前にいるだけなのに──強い存在感を放っている。


 「キリュリリュリシイィィィィィィ!!!」 (翡翠の巫女よ、力を返すがいい)

栞子「……力をお返しする前に……龍神様にお話ししたいことがあります」

 「リュリシィ…、リュリキリュリシィ」 (話だと……? 矮小な人の子が我に何を話そうと?)

栞子「この地方の人々に……危害を加えないでいただけませんか」

 「リュリシィ、キリュリリュリシイィィィィィィ…!!!!」 (またその話か? 巫女風情が何様だ!)


龍神様は私の言葉に怒るように咆哮をあげる。


かすみ「め、めっちゃ怒ってるよ……!?」

 「キリュリリュリシイィィィィィィ…!!!! キリュリリュリシイィィィィィィ!!!!」 (巫女よ、貴様も人がポケモンに何をしたかをわかっているだろう。人間のために、これまでどれだけの数のポケモンが命を落とした)

栞子「それは理解しています……ですが、それは過去の話です……! 今生きている人々にまで背負わせる罪科ではないはずです……!」

 「キリュリ…キリュリリュリシイィィィィィィ!!! キリュリリュリシイィィィィィィ!!!」 (過去? よく言ったものだな。人は過ちを繰り返し今でもポケモンの命を奪い、危機に晒しているではないか)

栞子「確かに、そういう人間もいるかもしれません……。ですが、全ての人々がそのような悪しき心を持っているわけではありません……!」

 「キリュシィ、リリュリシィ…キリュリリュリシィ」 (仕える巫女でありながら、あくまで人の肩を持つか……愚かな)

栞子「……そうではありません……。人に、ポケモンに、危害を加える悪しき人間も居ますが……それ以上に、ポケモンを大切に想い、慈しみ、共に生きている人々も大勢いるんです……!」

 「…………」 (…………)

栞子「私は……あの洞の中で過ごしていたら、一生それに気付くことはありませんでした……。ですが、自分の目で……見てきたんです。人とポケモンが、手を取り合い、生きている姿を……」


私は龍神様に、この地方で見てきたものを伝える。


栞子「知っていますか……コメコシティでは、人とポケモンが力を合わせて毎日農業に励んでいます。フソウタウンでは、人のお祭りでありながら、ポケモンのためだけに作られた軽食が存在していました。ダリアでは日々ポケモンと共に生きる文化を学び、ローズではポケモンと共に生きるための技術が研究されているそうです……人は、ポケモンの敵ではないんです」

 「キリュリリュリシィ」 (だから、過去の過ちをなかったことにしろと?)

栞子「そうではありません……! 確かに、人間が戦禍にポケモンを巻き込んだことは事実です……ですが、今の人々はそれを繰り返さないよう、良き隣人として、ポケモンと共存する道を選んで前に進んでいるんです……! 龍神様の目指される世界がポケモンにとってより良き世界であるなら……そこに人間は必要だと、私は感じました」

 「キリュリリュリシィ…」 (ポケモンが生きる世界に、人間が必要だと?)

栞子「そうです。……人間もポケモンも、この地方に住まう仲間です……。……必要なことは、どちらかのためにどちらかを追い出し、滅ぼすことではなく……手を取り合い、共存する道なのではありませんか? この地方を作られたディアンシー様が望んだ世界も、そうだったはずです……違いますか……?」

 「…………」 (…………)

栞子「龍神様……。……もう、龍神様が人間を監視などしなくても……人はポケモンと共に生きることを選び取れるくらい、強くなりました。……ですから……」

 「キリュリリュリシイィィィィィィ…!!!!」 (ならば、先の異変はなんだ!!!)

栞子「……っ!」


龍神様の雄叫びと共に、突風が吹きつけ、私は尻餅をつく。


歩夢「栞子ちゃん……!?」

栞子「へ、平気です……!」


私はすぐに立ち上がる。


 「キリュリリュリシイィィィィィィ!!! キリュリリュリシイィィィィィィ!!!」 (あれこそ、人が起こした災禍に他ならぬ、しかもこの短い間に二度も……!!! それでも尚、貴様は人がポケモンと共に生きることを選び取れていると申すか!!!)

栞子「ですが……勇気ある人たちとポケモンたちが力を合わせて、解決して見せたはずです……!! 人とポケモンが手を取り合い、共に危機を退けた……これは、人とポケモンが共に生きることを選び取っている何よりの証拠ではありませんか!?」

 「キリュリリュリシイィィィィィィ!!!」 (そもそも、人がいなければ起こらなかった災禍ではないか!!!)

栞子「だとしても、人を一方的に傷つけても、人とポケモンの間に溝が深まるだけで、何も解決しません……!!」

 「キリュリリュリシイィィィィィィ!!!」 (だから、滅ぼすのだ、全て……!!!)

栞子「……龍神様でも、そんなことは出来ません」

 「リュリシィ…」 (なんだと……?)

栞子「かつて龍神様が滅ぼした町──ヒナギクシティは……あのとき龍神様が焼き尽くしたことが嘘のように、活気のある町となっていました。人は龍神様が思っている以上にたくましい生き物です……きっと根絶やしになど出来ず、龍神様の怒りを受け、親しき友を失い残された人間たちは……今度はポケモンへの報復を考えるようになる……。……そうしたら、もっと多くの失われなくてよかった命が失われるのではありませんか」

 「…………」 (…………)

栞子「滅びによる平和など……ありえないんです。それは龍神様の御力を持ってしてもです……」

 「キリュリリュリシィ」 (我が力を恐れ、巫女という存在を仕えさせている翡翠の民の言葉とは思えぬな)

栞子「……翡翠の巫女も……翡翠の民も……そして、龍神様、貴方様も……私たちは、今の世界を知らなさすぎた。もう一度言います。今の人々は、ポケモンたちと、良き隣人として手を取り合って生きていくことが出来ます……!」

 「リュリシィ…キリュリリュリシィ」 (仮にそれが真だったとして……貴様の言っていることは、今後も人の起こす厄災がポケモンに降りかからない保証になっていない)

栞子「大丈夫です。……そのときは、勇気ある人たちが、親しきポケモンたちと力を合わせて、世界を守ります」

 「キリュリリュリシィ、リリュリシィ、キリュリリュシィ」 (その保証はどこにあると聞いている。善なる者、悪しき者がいるのは理解しよう。しかし、善なる者が必ず悪しき者に勝つと誰が保証する)

栞子「……大丈夫です」


私は力強く頷いて、後ろにいる仲間たちに目を向ける。


栞子「正しき心を持った人たちが、ポケモンと共に引き出す力は……悪しき力に屈したりしません」

歩夢「栞子ちゃん……」

栞子「私は……この方たちと共に、この地方を巡る中で、それを教わりました」


人とポケモンがお互いを信頼し合い、戦う姿は──信じられないような力を引き出し、驚くような結果をもたらしてくれる。私はそれを知った。それを目の当たりにし──自らも経験した。


栞子「かつて人はポケモンを畏れ……ポケモンは人を恐れていました。……ですが、今は共に生きる仲間としてお互いを認め合い、歩んでいます。……それを否定する権利は誰にもないはずです。例え、龍神様であっても……」

 「…………」 (…………)

栞子「龍神様……もう一度……人を……ポケモンと共に生きる人々を、信じてくれませんか……」

 「…………」 (…………)


龍神様はしばらく黙り込んでいましたが──


 「キリュリリュリシィ」 (ならば……その力とやらを見せてみろ)


そう口にする。


 「キリュリリュリシィ」 (我が力を必要とせずとも、災禍を退けるだけの力があることを示して見せろ。そうしたら、私も認めよう)

栞子「…………」

歩夢「栞子ちゃん……龍神様は、なんて言ってるの……?」

栞子「力を示せと……。……これから先、災いが起こったとしても、人とポケモンが力を合わせて、それを退けるだけの力を持っているということを証明しろと、仰られています」

しずく「それってつまり……」

せつ菜「今ここで龍神様──レックウザを超えてみせろ、ということですね」

ランジュ「簡単に言うと……倒してみろってことかしらね!」

かすみ「わかりやすくていいですね! やってやろうじゃないですか!!」

侑「そうだね。それで認めてもらえるなら、戦おう!」


仲間たちは、力強く頷く。

それに応えるように私も頷く。


栞子「わかりました……力をお見せします。人とポケモンの──キズナの力を」

 「キリュル、リリュリシィ、キリュリリュリシィ」 (ならば巫女よ。力を返せ。その者たちが全力の私に勝てれば、貴様の言葉を信じ、私はこの地を去ろう)

栞子「……皆さん、龍神様に全ての力をお返しします。……よろしいですか?」


皆さんに訊ねると──


ミア「まあ、そうなるよね」

しずく「示す以上、全力を上回らないと証明になりませんからね」

せつ菜「むしろ望むところです!! 人とポケモンの可能性……見せてあげましょう!!」

ランジュ「ま、力が戻ったところでランジュは負けないけどね!」

かすみ「相変わらず自信満々ですねぇ……でも、負けるつもりがないのは、かすみんも同じですけどねっ!」

リナ『繋がる明日のために……私も戦う!』 || > ◡ < ||

侑「大丈夫! ポケモンたちとのキズナがあれば……絶対に負けないから!!」
 「イッブィ!!!」

歩夢「栞子ちゃん」


歩夢さんが、歩み出て私の手を握る。


歩夢「……みんなで、前に進もう。人と……ポケモンと……この世界を生きる、全てのために……」

栞子「……はい!」


私は龍神様に振り返り──


栞子「……力を、お返しします」


手の平に“もえぎいろのたま”を乗せ──龍神様に向かって、差し出した。





    🎹    🎹    🎹





栞子ちゃんの手から“もえぎいろのたま”が浮かび上がり──


 「キリュリリュリシイ…!!!」


レックウザの体の中に吸い込まれていく──珠が完全に取り込まれると、眩い光に包まれる。


 「キリュリリュリシイィィィィィ!!!!!」


雄叫びと共に、光を破るようにして現れたレックウザは、先ほどまでとは違った容姿になっていた。

顎が幅広な刃状になり、その顎や角からは、黄色い光を放つ長い髭が流れるように伸びている。

そして、それと同時に、周囲に先ほどよりも強い風が火道内に吹き荒れ始める。


かすみ「姿が変わりましたよ……!?」

栞子「あれが龍神様の……真のお姿です」

リナ『メガ……レックウザ……』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「メガレックウザ……メガシンカした姿……!」

せつ菜「それにしても……この風は……!」

栞子「龍神様の天候を操る力が発生させているものです……!」

リナ『メガレックウザの特性“デルタストリーム”だよ……! 天候が“らんきりゅう”になってる!』 || ˋ ᇫ ˊ ||

 「キリュリリュリシイィィィィィ!!!!!」

ランジュ「お喋りしてる場合じゃないわ……!! 来るわよ!!」


メガシンカしたレックウザから──風の刃が飛び出してくる。


リナ『“エアスラッシュ”だよ!』 || ˋ ᇫ ˊ ||

かすみ「いや、でかすぎです!?」


かすみちゃんの言うとおり──とてつもない大きさの風の刃が、こちらに向かって一直線に飛んでくる。

避けられない……!? そう思った瞬間、


しずく「バリコオル!! “ひかりのかべ”!!」
 「──…………」


しずくちゃんの繰り出したバリコオルが、巨大な障壁を発生させ、それに直撃した“エアスラッシュ”が轟音を立てる。

どうにか、食い止めたように見えたけど──


 「…………!!」
しずく「威力が……! 強すぎる……!!」


風の刃は障壁に阻まれて霧散するどころか、そのまま少しずつ、障壁に食い込むように前進してくる。


かすみ「加勢しなきゃ……!! サニゴーン!!」
 「──ニゴーーン」

歩夢「ウツロイド!!」
 「──ジェルルップ…」


かすみちゃんと歩夢が同時に手持ちを繰り出し──


かすみ・歩夢「「“ミラーコート”!!」」
 「ニゴーンッ!!!」
 「…ジェルップ」


“ミラーコート”を纏いながら、“ひかりのかべ”に食い込んでくる、“エアスラッシュ”を2匹掛かりで反射する。

だけど反射した、“エアスラッシュ”は、


 「キリュリリュリシイィィィィィ!!!!!」


レックウザに当たる直前で霧散して消えてしまう。


かすみ「き、消えちゃいましたよ……!?」

せつ菜「恐らく、風を操る力で無効化したんだと思われます……!!」

リナ『風を自在に操るポケモンなだけあって、反射しても効果がない……』 ||;◐ ◡ ◐ ||


なんて言っている間にも、レックウザは口にドラゴンタイプのエネルギーを集束し始める。


 「キリュリリュリシイィィィィィ!!!!!」


集束したドラゴンのエネルギーが“りゅうのはどう”となって、こちらに発射される。


しずく「バリコオル……!!」
 「…………!!」


再び、バリコオルが壁を展開し、攻撃の勢いを弱め、


ランジュ「ジジーロン!! “りゅうのはどう”!!」
 「──ジーーーロンッ」


ランジュちゃんの繰り出したジジーロンが、“りゅうのはどう”を放って、レックウザの攻撃を相殺する。

バリコオルの壁もあって、相殺自体は十分に出来ているけど──


ランジュ「相手が浮いてるのが厄介ね……」


なかなかこちらが攻撃に転じるタイミングを計りかねている。

レックウザは溶岩の上に浮いているため、手が出しづらいけど──このまま、手をこまねいていても、埒が明かない。


侑「仕掛けよう……! ウォーグル!!」
 「──ウォーーグッ!!!」

栞子「はい……! 出てきてください、ウォーグル!」
 「──ウォーグ…」


2匹のウォーグルが、ボールから飛び出し、レックウザの両側面を取るように回り込みながら飛んでいく。


 「ウォォォォォ!!!!!」
 「ウォーーグ…!!!」


2匹のウォーグルは翼を構え──


侑「“ダブルウイング”!!」
栞子「“オーラウイング”!」

 「ウォォォォーーグッ!!!!!」「ウォーーーグ…!!!!」


片や力を込めた両翼を叩き付け、片やオーラで強化した翼を叩き付けて攻撃する。


 「キリュリリュリシイ…」


しかし、レックウザは意に介することもなく、


 「キリュリリュリシイィィィィィ!!!!!」

 「ウォーーグ…!!!?」「ウォーーーッ…!!!」


“ぼうふう”を発生させ、2匹のウォーグルたちを退ける。


侑「ウォーグル……!?」


しかも、巻き起こされる“ぼうふう”はそのまま──2匹のウォーグルを風圧で真下に向かって吹き飛ばした。

下ということは──


リナ『溶岩に落ちちゃう!?』 || ? ᆷ ! ||

栞子「ウォーグル……!! 飛んでください……!!」

 「ウォーーグ…!!!」
 「ウォォォォォォッ!!!!」


2匹のウォーグルは懸命に翼を羽ばたかせながら、姿勢を戻そうとするが──勢いが強すぎる。

そのとき、


しずく「バリコオル!! ウォーグルたちの真下に“バリアー”!!」
 「…………」


バリコオルが“バリアー”で作った足場を伸ばすように作り出し、


 「ウォーグ…!!!」
 「ウォォォッ…!!!」


2匹のウォーグルはその上に落ちて跳ねた後、再び飛び立ち始める。


しずく「ま、間に合った……」

栞子「しずくさん……! 助かりました……!」

侑「ありがとう、しずくちゃん……!」

しずく「いえ、ウォーグルたちが無事で何よりです……!」


しずくちゃんの機転のお陰でギリギリ難を逃れる。

そして、


せつ菜「お二人のお陰で──パワーを充填する時間が稼げました……!!」
 「──フゥ…!!!」


いつの間にか、攻撃の準備を整えていたスターミーの体に──宇宙の力があふれだす。


せつ菜「スターミー!! “メテオビーム”!!」
 「フゥ!!!!!」


スターミーから、極太のビームが発射され、洞窟内に光が迸る。

猛スピードで迫る“メテオビーム”に反応しきれなかったのか、


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


攻撃が直撃し、ビームの威力でその巨体ごと、火口内の岩壁に押し付けられる。


せつ菜「一気に決め切りますよ……!!」
 「フゥ…!!!」


壁に叩き付けても、まだ極太ビームは終わらない。


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


レックウザは“メテオビーム”をその体で受けながらも、鳴き声をあげて、口にエネルギーを集束し反撃を試みようとするが──


ランジュ「させないわ!! “りゅうのはどう”!!」
 「ジーーロンッ!!!」

 「キリュリシイィィィィィ…!!!!」


ランジュちゃんのジジーロンが、レックウザが発射するよりも先に“りゅうのはどう”をレックウザの頭部に炸裂させ、技を中断させる。

そして、それと同時に、


せつ菜「これで……トドメです!!」
 「フゥ…!!!!」


せつ菜ちゃんの掛け声と共に、レックウザを壁に押し付けるように発射され続けている“メテオビーム”がさらにもう一段階、その勢いを増して──逃げきれなくなったエネルギーが大爆破を起こした。


かすみ「やりました……!」

侑「さすが、せつ菜ちゃん……!」
 「イブィ♪」

せつ菜「はい! 伝説のポケモンとはいえ、ひこうタイプ……! “メテオビーム”の直撃を食らって、無事ではいられないはずです……!」


爆発によって生じた煙の中から──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…ッッ!!!!!!!!」


爆音が轟き、洞窟内を反響しながら衝撃波となって襲い掛かってくる。


かすみ「ぴゃぁぁぁ!!?」

ランジュ「かすみ、危ない……!?」


衝撃で転がるかすみちゃんを咄嗟にランジュちゃんが受け止める。


ランジュ「大丈夫……!?」

かすみ「は、はいぃ……助かりましたぁ……」

ミア「これは……“ハイパーボイス”か……!?」

侑「みんな、吹き飛ばされないように一塊になって……!!」
 「ブ、ブィィ…!!!」

歩夢「う、うん……!」


全員で身を寄せ合って、衝撃を耐え忍ぶ。


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」

かすみ「ぜ、全然倒れてませんよ……!?」

せつ菜「“メテオビーム”は直撃したはずなのに……!」

リナ『データがほとんどないから、確証はないけど……ダメージを見る限り、“らんきりゅう”にはひこうタイプの弱点をなくす効果があるのかもしれない』 || 𝅝• _ • ||

しずく「やはり、火口の中では、攻撃方法が限定されすぎてしまいます……」


相手は自由自在に空を飛び、さらに風を操って攻撃が出来る以上、このままじゃジリ貧だ……!


かすみ「なら……外におびき出しましょう……!」
 「──カインッ!!!」


かすみちゃんは、サニゴーンをボールに戻す代わりにジュカインをボールから出し、


かすみ「メガシンカ……!!」


“メガブレスレット”を光らせ、ジュカインをメガシンカさせる。


侑「どうするの!?」

かすみ「簡単です……!」


かすみちゃんは上を指差し──


かすみ「上の火口から外に飛び出せば、レックウザも追ってくるはずです!! 行くよ、ジュカイン……!!」
 「カインッ!!!」


かすみちゃんはジュカインの片腕に抱きかかえられながら、飛び出して行く。


しずく「ちょっと!? かすみさん!?」


ジュカインは、軽い身のこなしで、火口内の岩壁を蹴りながらどんどん上昇していく。

だけど──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


レックウザも黙って見ているわけもなく、かすみちゃんたちに向かって、“エアスラッシュ”を飛ばす。


かすみ「しず子!! 援護して!!」

しずく「ああもう……!! バリコオル!! “ひかりのかべ”!!」


かすみちゃんたちに当たる直前で、伸びてきた“ひかりのかべ”によって、“エアスラッシュ”の前進速度が落ち──その隙に、ジュカインは攻撃範囲から離脱するように、さらに上へ……。

その直後、“エアスラッシュ”が先ほどまでかすみちゃんたちが居た岩壁に炸裂し──その場所を抉り取る。


かすみ「しず子ーーー!! ナイスフォローーーー!!」

しずく「む、無茶するんだから……!!」


確かに、かすみちゃんはかなり無茶なことをしているようには見えるけど──


侑「私たちもかすみちゃんに続こう……! このままここに居ても、勝ち目がない……! ウォーグル!!」
 「ウォーグ!!!」


私はウォーグルを呼び寄せ、


せつ菜「ですね……! エアームド!!」
 「──ムドーーー!!!」


せつ菜ちゃんがエアームドの背に乗る。


栞子「私も行きます……!」


そう言って、栞子ちゃんがウォーグルを呼び戻すのと、ほぼ同時に、


ランジュ「栞子! 貴方は危ないから、来た道を戻って外から飛んできて……!」


ランジュちゃんがジジーロンの背に乗りながら、栞子ちゃんに向かって言う。


栞子「え!? で、ですが……!!」

せつ菜「確かに、全員で同時に昇るのは危険かもしれません……! 下は溶岩です……撃ち落とされでもしたら、一巻の終わりです……!」

しずく「ですね……。上に行くのはかすみさんたちに任せて、私たちは下から援護します……!」

侑「ごめん……! お願い……! 私たちが全員抜けたら、歩夢たちは来た道を戻って退避して……!」

歩夢「侑ちゃん……でも……」

侑「大丈夫……! 信じて……!」

歩夢「……わかった」


歩夢は心配そうな表情を浮かべていたけど──私の言葉を聞いて、コクリと頷いてくれた。


侑「せつ菜ちゃん! ランジュちゃん! かすみちゃんに続くよ!」
 「ウォーーグッ!!!!」

せつ菜「はい!!」
 「ムドーーーッ!!!!」

ランジュ「ええ、行くわよ!!」
 「ジーーロンッ!!!!」


気付けばもうかなり上の方まで登っているかすみちゃんたちを追いかけて、私たち3人も飛び立つ。

と同時に──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


私たちに向かって、“りゅうのはどう”が飛んでくる。


しずく「バリコオル!!」

歩夢「ウツロイド!!」

しずく「“ひかりのかべ”!!」
歩夢「“ミラーコート”!!」
 「…………」「──ジェルルップ…」


歩夢としずくちゃんの指示で、レックウザと私たちの間に“ひかりのかべ”が展開され、目の前に飛び出してきたウツロイドが“ミラーコート”で“りゅうのはどう”を弾き飛ばす。


侑「二人とも、ありがとう!!」

せつ菜「今のうちです……!!」


一気に急加速するが──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


レックウザが雄叫びをあげると共に──激しい“ぼうふう”が発生し、私たちの飛行を阻む。


せつ菜「うわぁ……!?」
 「ム、ムドー…!!!」

侑「くっ……!? 頑張って、ウォーグル……!!」
 「ウ、ウォーーーッ…!!!!」


風に煽られながらも、どうにか上を目指すが──あまりに風が強い。


かすみ「か、風が強すぎますぅ~~!!!」
 「カインッ…!!!」


かすみちゃんたちもあまりの暴風に、壁に張り付いたまま動けなくなっている。


侑「このままじゃ……っ!」
 「ブ、ブイ…」

ランジュ「ここはランジュに任せなさい……!! ジジーロン、“たつまき”!!」
 「ジーーロンッ!!!」


そう言いながら、ランジュちゃんのジジーロンが自分を中心とする巨大な“たつまき”を発生させ──“ぼうふう”を防ぐ風の壁を作る。


せつ菜「風が消えました……!」

ランジュ「“たつまき”の目の中なら、風はほとんどない! これなら、上にのぼれるはずよ!」

侑「うん……! 今のうちに、上まで抜けよう!! かすみちゃんも!!」

かすみ「は、はい!! ジュカイン!!」
 「カインッ!!!」


4人で一気に頂上を目指して、急上昇する。

しかし、


 「──キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


下の方で、レックウザが“たつまき”を突っ切って侵入してくる。


ランジュ「く……追ってくるのが早い……!」

侑「ウォーグル、急いで!!」
 「ウォーーッ!!!」


全速力で上へと逃げる──その間にも、


 「キリュリリュリシ…!!」


レックウザの口にエネルギーが集束されていく。


せつ菜「“りゅうのはどう”が来ます……!!」

侑「間に合わない……!!」

ランジュ「くっ……ジジーロン!! “りゅうのはどう”!!」
 「ジーロンッ!!!!」


殿を務めるランジュちゃんたちが下方に向かって、“りゅうのはどう”を発射する。


かすみ「ジュカイン!! かすみんたちも援護するよ!! “りゅうのはどう”!!」
 「カインッ!!!」


そして、私たちの上にいるかすみちゃんたちからも援護射撃が飛んできて、


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


発射される、レックウザの“りゅうのはどう”と衝突し──ぶつかり合った両者のドラゴンのエネルギーが膨張し、爆発した。


ランジュ「くっ……!!」

侑「うわぁ……!?」


下方からの爆発によって、4人と4匹が上空に打ち上げられ──そのまま、火口の外へと放り出される。

爆風に煽られながらも、どうにか体勢を立て直す。


せつ菜「……ぬ、抜けました……!!」

侑「かすみちゃんは……!?」


ハッとして、かすみちゃんを探すと──


かすみ「お、落ちるぅ~~~!!?」
 「カインッ…!!!」


上に吹っ飛んだあと、揚力を持たないかすみちゃんが火口の中に向かって落下を始めていた。


ランジュ「助けないと……!?」


でも、距離がある。それに、ジュカインの体重ごと支えるのは無理だ。

かすみちゃんにジュカインを戻すように指示する……!? 間に合うの……!?

頭の中で、激しく思考する中、


せつ菜「侑さーーーーんっ!!!」


真っ先に動き出したのは、せつ菜ちゃんだった。

声に振り返ると──


せつ菜「受け止めてくださいーーーーいっ!!!」

侑「え!?」
 「ブイ!?」


せつ菜ちゃんがエアームドの背中を踏み切って、私たちに向かって跳んでいた。


侑「わぁぁぁっ!!?」


驚きながらも、咄嗟に手を伸ばして、どうにかせつ菜ちゃんの手首を掴み──せつ菜ちゃんが宙ぶらりん状態になる。


せつ菜「侑さん、ナイスキャッチです!! エアームド!! “こうそくいどう”!!」

 「ムドーーーッ!!!」


せつ菜ちゃんが飛び降りて軽くなった分、機動力を増したエアームドが風を切って飛び出し、


せつ菜「かすみさんっ!! 足場を作ります!!! “てっぺき”!!!」

 「ムドーーーッ!!!!」


鋼鉄の翼を広げながら、垂直に下を向いて、ジュカインに背を向ける。


かすみ「……!! ジュカインッ!! 蹴って!!」
 「カインッ!!!!」


迫ってきたエアームドの背を蹴るようにして──ジュカインは火口周辺の地面へとジャンプする。


侑「やった……! ウォーグル!」
 「ウォーーッ!!!」


そして、そのままかすみちゃんの降り立った場所へと合流していく。


かすみ「た、助かりましたぁ……せつ菜先輩、ありがとうございます……死ぬかと思いましたぁ……」

せつ菜「私も侑さんがキャッチしてくれなかったら、たぶん死んでいたところでした!」

リナ『さらっと、命を懸ける辺り……さすがせつ菜さん……』 ||;◐ ◡ ◐ ||

侑「ちゃんと、キャッチ出来てよかった……」

せつ菜「いえ! ちゃんと受け止めてくれると、信じていましたので!」

ランジュ「感動を分かち合うのもいいけど──お出ましみたいよ」


ランジュちゃんの言葉に、振り返ると──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


火口の外へ飛び出した私たちを追って──レックウザがこちらを見下ろしていた。





    🎹    🎹    🎹





“デルタストリーム”によって、“らんきりゅう”が渦巻く中──急に轟音と共に、閃光が迸った、

ギョッとして、光の落ちたところを見ると──


かすみ「び、び、びっくりしましたぁ……!?」
 「カ、カイン…!!!」


それはジュカインの尻尾に落ちていた。

今のは──


せつ菜「“かみなり”……!?」


“かみなり”がメガジュカインの“ひらいしん”に向かって落下したところだった。

そして、間髪入れずに──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


レックウザが爪を構えて突っ込んでくる。


せつ菜「ウーラオス!!」
 「──ラオスッ!!!」

侑「ドラパルト!!」
 「──パルトッ!!!」

ランジュ「コジョンド!!」
 「──コジョッ!!」


レックウザが勢いを乗せたまま、“ドラゴンクロー”を振りかぶる。

それを──ギィンッ!!! と音を立てながら、


かすみ「斬撃なら、負けませんよ!!」
 「カインッ!!!」


ジュカインが“リーフブレード”で受け止める。

受け止めると同時に、あまりのパワーからか、ジュカインの足元がバキリとひび割れるが──

一瞬動きが止まった瞬間に、レックウザの顎下に潜り込む影──


せつ菜「“ばくれつパンチ”!!」
 「ラオスッ!!!!」

 「リュリシイィィィィィ…!!!!」


ウーラオスの拳が真下からレックウザの顎を跳ね上げる。

跳ねあがったレックウザの頭に向かって──


侑「“ドラゴンアロー”!!」
 「パルトッ!!!!」
 「メシヤーーーッ!!!!」「メシヤーーーッ!!!!」

 「リュシィィィ…!!」


音速の竜矢が直撃し、さらに仰け反らせ──


 「──コジョッ!!!!」


仰け反ったレックウザの上に、跳び上がったコジョンドが──


ランジュ「“とびひざげり”!!」
 「コジョン、ドッ!!!!」

 「キリュリリュシィィィィ…!!!!」


猛烈な蹴りをかまして、レックウザの体躯を地面に向かって蹴り飛ばす。

巨大な体躯が地面に崩れ落ち、大量の土煙を巻き起こしながら、地面を揺らす。


せつ菜「やはり、地上戦なら十分張り合えますね……!」

侑「うん!」


せつ菜ちゃんの言葉に頷くと同時に──土煙の中から、青白い光線が一閃。


 「パルトッ…!!!?」


直撃したドラパルトが氷漬けになる。


侑「ドラパルト……!?」

リナ『今の“れいとうビーム”……!?』 || ? ᆷ ! ||


さらに煙の中から──ジュカインに向かって大の字の業炎が飛び出してくる。


せつ菜「……! ウインディ!! “だいもんじ”!!」
 「──ワォンッ!!!!」


咄嗟にせつ菜ちゃんがウインディを繰り出し、ジュカインを庇って“だいもんじ”で攻撃を相殺する。

と、思ったら──今度は水流が飛び出してきて、


 「ワォンッ…!!!?」


ウインディを吹き飛ばす。


せつ菜「ウインディ……!?」

ランジュ「今度は“ハイドロポンプ”……!?」


多種多様な技に翻弄されている間に──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


レックウザが土煙の中を突っ切り、コジョンドに向かって突っ込んでくる。


ランジュ「太快了……!?」


ランジュちゃんがそのスピードに驚く頃には──


 「コジョッ…!!!」
ランジュ「コジョンド……!」


コジョンドを撥ね飛ばし、そのまま直角に曲がるようにして、天に舞い上がっていく。


せつ菜「今の技は……“しんそく”……!」


空に舞い上がったレックウザは真下を向き、息を吸い込むのが見えた。

──“ハイパーボイス”の予兆。


かすみ「わ、やばっ!?」


あんな上空から、強烈な音波攻撃を放たれたら避ける場所がないし、一網打尽にされてしまう。


侑「ニャスパー!!」
 「──ウニャァーー!!!」

かすみ「……! 加勢します!! ブリムオン!!」
 「──リムオンッ!!」


2匹が同時に上を向き──


 「──キリュリリュシイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!!!!!!!!!!!!!!」

侑・かすみ「「“サイコキネシス”!!」」
 「ウニャァァァァァ!!!!!」「リーーームオーーーーンッ!!!!!!」


爆音に、念動力の衝撃波をぶつける。

2匹のフルパワーの“サイコキネシス”をぶつけ、減衰させてなお──地上に響く音波が脳を揺さぶる感覚に襲われる。


侑「ぐ、ぅぅぅぅっ!!!」

かすみ「ぐぅぅぅぅっ!!! うるさいですぅぅぅぅっ!!!!」

せつ菜「くっ……!!!」

ランジュ「太吵了……!!」


4人で耳を押さえて耐える。

やっと音が収まる頃には、耳がキンキンしていた。


侑「……っ……イーブイ……平気……?」
 「ブ、ブィィ…」


でも、これくらいで済んでよかった。

何も対策をしていなかったら、もっと酷いことになっていたはずだ。

でも、


せつ菜「……皆さんっ!! 次が来ます……!!」


息をつく暇もなく、


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


逆巻く風がレックウザの周囲で複数の風の刃を形成していく。


ランジュ「また“エアスラッシュ”……!」

リナ『でも、今度は複数……!?』 || ? ᆷ ! ||


あれだけの数……捌ききれる……!?

そう思ったけど、


かすみ「ちょうど……こっちも温まってきたところなんですよね……!」
 「カインッ!!!」


かすみちゃんとジュカインが空のレックウザを見上げながら息巻く。


かすみ「侑先輩!! 足場、作ってください!!」

侑「! わかった! イーブイ! “すくすくボンバー”!!」
 「ブイッ!!」


イーブイが、地面にタネを撒き──


かすみ「ジュカイン! 成長させますよ!」
 「カインッ!!!」


ジュカインが背中の栄養満点のタネを地面に落とすと──とてつもないスピードで樹木が成長していく。

成長する樹木の先に乗って、ジュカインとかすみちゃんは一気に上空へと、持ち上げられていく。


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!!!!」


直後、複数発射される、“エアスラッシュ”。


かすみ「ジュカイン!! 集束!!」
 「カインッ!!!!」


ジュカインが腕にソーラーパワーを集束し──集束“ソーラーブレード”を作り出す。


かすみ「かすみんとジュカインに──斬れないものなんて、ありませんっ!!」
 「カインッ!!!」


ジュカインが連続で刃を振るい、次々と降り注いでくる“エアスラッシュ”を斬り伏せる。


ランジュ「かすみ……! すごいわ……!」


全ての“エアスラッシュ”を斬り伏せると同時に──


かすみ「行くよっ!!」
 「カインッ!!!!」


かすみちゃんとジュカインは樹木のてっぺんから、跳躍し──


かすみ「“ソーラーブレード”!!」
 「カインッ!!!!」

 「キリリュリシイィィィィィ…!!!!?」


レックウザの頭部に一太刀を加え──レックウザは痛みに悶えて、大きな鳴き声をあげる。


かすみ「どんなもんですかっ!!」
 「カインッ!!!」


だけど、レックウザはすぐに平静さを取り戻し──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!!!」


大きな尻尾を振るって、


かすみ「……やば!? 逃げ──」


空中にいるかすみちゃんとジュカインに叩き付けた。


侑「フィオネ!! ニャスパー!!」
 「──フィーーッ!!!」「ウニャァ!!!」


ボールから飛び出したフィオネがすぐさま水を噴射し、それをニャスパーが球状にする。

そこに向かって──ザブンッ!!!


かすみ「──ごぼがぼぼ……」


かすみちゃんとジュカインが着水したのを確認すると同時に、サイコパワーを解除し、水球が壊れてザバァと水が流れ出す。


侑「かすみちゃん、大丈夫!?」

かすみ「は、はい……助かりました……」
 「カ、カイン…」

かすみ「でも一発かましてやりましたよ……!」

せつ菜「ですが……まだ、終わりにはしてくれそうにありませんね」

かすみ「へっ?」


レックウザを見やると──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…」


全身に風を纏いながら、こちらに狙いを定めていた。


侑「あの技……!」

せつ菜「前にも見ましたね……!」

リナ『“ガリョウテンセイ”……!?』 || ? ᆷ ! ||


回避の準備を整える暇もなく──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!!!」


レックウザが猛スピードで突っ込んでくる。


せつ菜「ウーラオスッッッ!!!!!!」
 「ラオスッ!!!!!!!」


せつ菜ちゃんとウーラオスが脚を踏み鳴らしながら、私たちの前方に躍り出る。


せつ菜「“あんこくきょうだ”ッッッ!!!!!」
 「ラオスッッッ!!!!!!!」


“ガリョウテンセイ”に合わせるように──ウーラオスが強烈な正拳突きを真正面からぶつける。

インパクトの瞬間、レックウザの軌道が逸れ、私たちのすぐ横の地面に突き刺さるように落下し──

直後、衝撃波が私たちに襲い掛かり、前回同様──全員吹き飛ばされる。

飛ばされながらも、


侑「くっ……!! ウォーグル!!」
 「ウォーーーーッ!!!!」


すぐさま、ウォーグルに掴まり、衝撃と“らんきりゅう”の渦巻く空の中で、


 「ウニャァーーー」「フィオ~~~!!!」

侑「ニャスパー!! フィオネ!! 戻れ!!」


飛ばされている手持ちたちにどうにかボールを投げて、控えに戻す。


ランジュ「な、なんてパワーなの……!?」
 「…ジーロンッ」

せつ菜「そ、逸らすのがやっとです……!」
 「ムドーー…!!!」


ランジュちゃんとせつ菜ちゃんも同じような感じで──


侑「かすみちゃんは!?」


周囲を見回すと──


かすみ「──ぴゃぁぁぁぁぁ!!!?」
 「カインッ…!!!」「リムオン…!!?」


吹っ飛ばされていく、かすみちゃんとジュカイン、それに近くにいたブリムオンの姿が見えた。

かなり吹き飛ばされていて──このままだと、山の麓まで落ちかねない。でも、今度こそ、助けに行くのが間に合わない距離。


侑「かすみちゃんっ!!!」

かすみ「──こ、の、く、ら、い、でぇぇぇぇ……!! ダストダス!!」
 「──ダストダァ!!!!!」


かすみちゃんは空中でダストダスを繰り出し──


かすみ「腕ぇ!! 伸ばしてぇ!!」
 「ダストダァッ!!!!」


ダストダスが腕を目いっぱい伸ばして──どうにか崖を掴む。


かすみ「ブリムオンッ!! “サイコキネシス”!!」
 「リムオンッ!!!!」


そして、無理やりダストダスの体をサイコパワーで浮かして、自由落下を免れる。

山肌に向かって下降しながら──


かすみ「みなさーーーーーんっ!!!!! かすみんが戻るまで、持ちこたえてくださぁぁーーーーーいっ!!!!」


叫び声と共に──かすみちゃんは山の陰に隠れて見えなくなってしまった。


 「キリュリリュリシイィィィィィ…」


レックウザが再び空に飛び立ち、こちらを睨みつけてくる。


侑「みんな、一旦下に降りよう……!」

せつ菜「そうですね……! 空中戦では分が悪いですし……!」

ランジュ「わかったわ……!」


3人で地上に降下し、再びレックウザを見上げる。


侑「強いね……レックウザ……」

ランジュ「あら、怖気付いちゃったの?」

せつ菜「まさか。侑さんがこんなことで諦めるはずありません! ですよね!」

侑「うん……!」


そう言いながら、私たちは次のポケモンを繰り出す。


侑「行くよ、ライボルト!!」
 「──ライボォッ!!!」

せつ菜「ゲンガー!! 出番ですよ!!」
 「──ゲンガァーー!!!」

ランジュ「ギャラドス、出てきなさい」
 「──ギシャァァァァ!!!!」


ポケモンを繰り出すと同時に、私とせつ菜ちゃんは腕を前に構え、ランジュちゃんは髪をかき上げ、耳を外に晒す。


侑・せつ菜・ランジュ「「「メガシンカ!!!!」」」


“キーストーン”が光り輝き──ライボルトがメガライボルトに、ゲンガーがメガゲンガーに、ギャラドスがメガギャラドスへと姿を変える。


せつ菜「向こうは大技を出した直後で、少し動きが落ち着いていますね……!!」

ランジュ「ええ! 今のうちに、パワーで押しきるわよ!!」

侑「まずは、地面に落とす……!!」
 「ライボォッ!!!!!」


ライボルトが稲妻のような速度で走り出し── 一気にレックウザの真下まで移動する。

ライボルトの体はイカズチを引き寄せる導雷針そのものだ。


侑「“かみなり”!!」

 「ライボォッ!!!!」


ライボルトが真下で自身に向かって“かみなり”を落とし、雷撃を直撃させる。


 「キリュリリュリシイィィィィィ…」


レックウザは多少表情を歪めるが──ダメージがそこまで通っている印象も受けない。


侑「やっぱり、“デルタストリーム”の影響ででんきタイプは相性が悪い……」


だけど、私たちの役割は足止めだ。強力な電撃で痺れさせる……!


 「ライボォッ!!!!」


ライボルトが“かみなり”を確実にヒットさせながら──


せつ菜「ゲンガー……!! 行きますよ!!」
 「ゲンガァッ!!!!」


ゲンガーが集束させた特大の“シャドーボール”をレックウザに向かって発射する。

“かみなり”を受け続け、動けないレックウザに“シャドーボール”が炸裂する。


 「キリュリリュリシイィィィィィ………!!!」


影の球が着弾と同時に爆発し、その衝撃で吹き飛ばされ、宙で後退るレックウザ。


ランジュ「ランジュたちの準備も出来たわ……!」
 「ギシャラァァァ!!!!」


私たちが攻撃をしている間に“りゅうのまい”で能力を上げていたギャラドスが──“とびはねる”。


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!」


大きな体躯を躍動させながら、飛び跳ねたギャラドスは──レックウザの真上から落下し、


ランジュ「“かみくだく”!!」
 「ギシャラァァァァ!!!!!!」

 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!!!??」


強靭な顎で、レックウザの刃状の顎を“かみくだく”。

鋭い牙を立てられ──レックウザの顎に、ビシリとヒビが入る。


侑「……! 効いてるよ! ランジュちゃん!」

ランジュ「当然でしょ! ランジュのポケモンなんだから!」

せつ菜「メガシンカのパワーなら十分に渡り合える……! このまま、押し切りましょう!!」


畳みかけようとした、まさにそのとき──


 「キリュリリュリシイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!!」


劈く雄叫びと共に──ギャラドスが噛み付いたままのレックウザが、激しく電撃をスパークさせた。


 「ギシャラァァァ…!!!?」

ランジュ「な……!? “10まんボルト”……!?」


直接電撃を受けたギャラドスは堪らず噛み付いた顎を離してしまい──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


逆にその身をレックウザの鋭い顎で噛みつかれ──


 「ギシャラァァァッ!!!!!?」


そのまま、レックウザは噛み付いたギャラドスごと、山肌に向かって急降下してくる。


ランジュ「ギャラドス……!?」

 「ギ、シャラァァァ……」


レックウザは地面にギャラドスを叩き付け──さらに、


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


至近距離から連続で“エアスラッシュ”を放って、ギャラドスを攻撃する。


 「ギ、シャ、ラァァァァ…」


猛攻により、一気にギャラドスが戦闘不能まで追い込まれる。


ランジュ「侑……!! ギャラドスごと、やりなさい!!」

侑「……っ! ごめん……!! “かみなり”!!」

 「ライボォッ!!!!!」


ライボルトが、ギャラドスごと巻き込んで“かみなり”を発生させる。

“かみなり”の直撃を受け、動きを鈍らせたつもりだったが──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


激しい雷光の中でも、レックウザは動いていた。


 「ラ、ライボッ…!!!!」


雷撃を受けながらも、レックウザ自らの尻尾を打ち鳴らすように振るい──それに呼応するように、ライボルトの足元から大地のエネルギーが噴出して、


 「ライボォォオッッ…!!!?」


ライボルトを吹き飛ばした。


侑「だ、“だいちのちから”……!?」


ライボルトまで一瞬で戦闘不能に──

そのとき、


 「أ̷͕͈͈͆͊̂̀͂̾͂̃̿̂ͅن҉̱͚̬͍̘̟͎̙́̏̉̓́ا̸͈̞̭͎̰͚̥̮̮̱͔̄̓̌͒͂̇́́̑ ل̸̫̝͖̝̘̝͍̦̝͕̈͒̉̄͛ع̴͎͇̗̯͉̳̰̫͚̘͇͙̽̀̄̈́̐̽̃̈́̓́̓ن̷̗̲̠͎͖͖͖͉͂̃̈́̋̌̀̐̑̆͐͊ ي̶͙̙͖̙̘͔͖̬̰͙́̊̂͂̐̃م҉͔͚̳̦̗̍̀̀̌̿̚ك҈̖͍͙͍̞̩̾͂͒̈́̌̿̍̚ͅن҈̰̫͍͙͓̬͚̍̉͊̿̌̚ك҉̲̥̥̮̗̫͕̟̋̔̈̇̅̓́̀̍͆ ا҉̞͙̖͍̭̈̍̏̽ͅل̷͈̫̮͈̙͔̖̠̞͒̽̍͑̎̓̑̉̈͗͊ق̸̩̤̝͓̥̜̜̝̠̐͊͛̍̔̈́̿̍͋̓ي̶͖͎͚͇̥̙̩̊̔͂̅̿ا̴͔̣̗̲̫̳̠̫̙̦̃̉̓͛ͅͅم̸̟͓͇͚̯̜͓̥̮̞͚͆̑̓̌ ب҈͚͎͓̯͖̥̓̈̅̆ͅه̷͚͉̦̝̥̘͉̩͙̥̆̌͂̄̑́̊̽̐͑」


侑「っ……!?」


突然横から、耳を覆いたくなるような、身の毛もよだつ旋律が流れ出す。

それが、ゲンガーの“ほろびのうた”だと気付いたときには──


 「キリュリリュリシイィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!!」

せつ菜「うわぁっ……!?」
 「ゲンガァッ…!!!!?」


“ほろびのうた”を歌うゲンガーを“ハイパーボイス”でピンポイントに攻撃して、音を掻き消しながら、せつ菜ちゃんたちを吹き飛ばす。


侑「せつ菜ちゃん!?」


私はせつ菜ちゃんに駆け寄る。


せつ菜「へ、平気……です……。……あまり、大きく息を吸い込んでからの攻撃ではなかったので……」


せつ菜ちゃんは表情を歪め、耳を押さえながら立ち上がる。

でも、レックウザの“ハイパーボイス”は本来ゴーストタイプには効果がないはずなのに、その衝撃波だけで、ゲンガーごと吹き飛ばした。

トレーナーに当たったのが余波とは言え、せつ菜ちゃんにも少なくないダメージがあったのは目に見えて明らかだった。


ランジュ「侑!! せつ菜!!」

侑・せつ菜「「……!」」


ランジュちゃんの声でハッと顔を上げると──再びレックウザが全身に風を纏い、こちらに狙いを定めていた。

──“ガリョウテンセイ”の構えだ。


リナ『3人とも一旦逃げて!?』 || ? ᆷ ! ||


叫ぶリナちゃん。でも──もうこの距離で狙いを定めたレックウザから逃げる術なんてない。


せつ菜「ウーラオスッ!!!」
 「──ラオスッ!!!」


再びボールから飛び出すウーラオスが構える。


 「──キリュリリュリシイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!!」

せつ菜「“あんこくきょうだ”ァッ!!!」
 「ラオスッ!!!!!!!」


再び真正面から撃ち合う──だけど、今回は咄嗟の判断だったため、完璧に攻撃に威力を乗せ切れなかったのか、


 「ラオ、スッ…!!!!」
せつ菜「……っ……!!」


満足に逸らすことも出来ず──目の前で衝撃波となって、私たちを襲う。


せつ菜「……っ……侑さんっ!!!」

侑「せつ菜ちゃ……!?」


咄嗟に、せつ菜ちゃんが私の盾になるように、衝撃波に背を向けながら、私に飛び付いてきた。

────…………。

…………。

……。

  「ブイッ‼ ブイィィッ!!!!」
 『──うさん──……侑さんっ!! せつ菜さんっ!!』

侑「……ぁ……ぐ、ぅ…………」
 「ブイッ…!!!」

リナ『侑さん……!!』 || > _ <𝅝||


イーブイとリナちゃんが呼び掛ける声で、目が醒めると、全身を鈍器で殴られたかのような激痛に襲われる。

痛みと衝撃で、意識が飛んでいたらしい。

目を開けると──


せつ菜「…………」

侑「……せつ、菜……ちゃ……」


せつ菜ちゃんが私の上に覆いかぶさるように……頭から血を流しながら、気絶していた。


侑「せつ菜……ちゃん……私、を……かば、って……っ……」


ゆっくりと身を起こすと──


ランジュ「ローブシン!!! エレキブル!!! レックウザを侑たちに、近付けさせちゃダメ!!!」
 「ブシンッ!!!!」「キブルッ!!!!」


ランジュちゃんがぼろぼろになりながらも、ポケモンに指示を出し続けて戦っていた。

エレキブルが電撃で牽制し、ローブシンが両手の柱を振るいながら、レックウザを追い払って近寄らせないようにしているところが目に入る。


侑「どれ、くらい……気絶してた……」

リナ『ご、5分くらい……』 || 𝅝• _ • ||


つまりランジュちゃんは5分もの間、私たちを守るために一人であのレックウザの猛攻を捌いていたということだ。

私はボールから、フィオネとニャスパーを出す。


 「フィオ…」「ウニャァ」
侑「リナ……ちゃん……」

リナ『な、なに……?』 || 𝅝• _ • ||

侑「フィオネと、ニャスパーに指示して……せつ菜ちゃんの応急処置……して、あげて……」


私は応急処置道具の入ったバッグをその場に置きながら立ち上がる。


リナ『侑さんも大怪我してる……!!』 || > _ <𝅝||

侑「でも……!! ランジュちゃんをいつまでも、一人で戦わせるわけにいかない……!!」
 「ブイ…!!!」


イーブイと一緒にランジュちゃんのもとへ駆けだす。

その間にも、


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」

 「キブルッ…!!!」


暴れまわるレックウザが、エレキブルの頭を手で掴み持ち上げる。


ランジュ「くっ……!! エレキブル!! “ほうでん”!!」

 「キブルッ!!!!」


エレキブルは逃れるために“ほうでん”するが、レックウザは意にも介さず。


 「キリュリリュリシイィィ!!!!」

 「キブルッ…!!!!」


エレキブルを地面に叩き付けて戦闘不能に追い込む。

そして、爪を構えながら、ランジュちゃんを狙う。


ランジュ「ローブシン!! “ぶんまわす”!!」
 「ブシンッ!!!」


大きな石柱をぶん回して、レックウザの爪を弾くように振るうが──バキンッ!


ランジュ「……っ!!」
 「ブシンッ…!!!」


ローブシンの持っている石柱が、爪撃によって、割り砕かれる。

それと同時に──レックウザの振るった尻尾が、猛スピードで横から薙ぐように迫っていた。


ランジュ「……くっ……!?」

侑「イーブイッ!!! “こちこちフロスト”ッ!!!!」
 「ブゥゥゥーーーイィィィィ!!!!!!」


黒い氷がレックウザとローブシンの間に盾のように迫り出す。

だけど、薙がれる尻尾の勢いを止めることは出来ず──氷をバキバキと割り砕きながら、ランジュちゃんもろとも尻尾を叩き付けられて、吹き飛ばされ──


ランジュ「っ゛……ぅ゛……」

侑「ぐ……っ……」


二人で地面を転がる。


ランジュ「……っ……氷の壁のお陰で……威力がちょっと減った、みたいね……」

侑「大丈夫……? ランジュ、ちゃん……っ……」

ランジュ「お陰様で……ね……」


ランジュちゃんは腕を押さえながらよろよろと立ち上がる。


ランジュ「でも……任せてくれれば、ランジュが……片づけておいたのに……」

侑「あはは、ごめん……心配でさ……」


二人で立ち上がると──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


レックウザがこちらを見下ろしていた。

そして、


 「キリュリリュリシイ…キリュリリュリシィ…」


何かを語りかけてくる。


ランジュ「……ふふ……何言ってるかわかる……?」

侑「……なんとなくは……」


「諦めろ」とか、「力の差は歴然だ」とか、「やはり思ったとおりだ」とか……きっとそういう感じの内容なんだと思う。

でも──


侑「諦めないよ……」


だって、私には──


 「ブイ…!!」
侑「まだ、一緒に戦うポケモンが──相棒がいるから……」

 「…………。キリュリリュリシィ…」


レックウザが身に風を纏う。恐らく──“ガリョウテンセイ”。


 「キリュリリュリシイィィィィィ…」


レックウザがこちらに狙いを定める。

でも、諦める気なんて、さらさら起きなかった。

だって──


侑「……まだ、私たちには……仲間がいるから……!!」


レックウザが、飛び出そうとした瞬間──


 「──ウォーグル!! “ブレイブバード”!!」
 「──アーマーガア!! “ゴッドバード”!!」

  「──ウォォォォォグッ!!!!!!」
  「──ガァァァァァァァッ!!!!!!」

 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!??」


2匹の鳥ポケモンが──レックウザに真横から突撃し、突き飛ばした。


侑「ほらね……!」

しずく「侑先輩!! ランジュさん!!」

栞子「ランジュ!! 侑さん!!」


しずくちゃんと栞子ちゃんがこちらに向かって駆けてくる。


 「キリュリリュリシイィィィィィ…」


レックウザが飛び立とうとするところに向かって──


歩夢「サスケ!! ウツロイド!! “ヘドロウェーブ”!!」
 「シャーーボッ!!!」「──ジェルルップ…」

 「キリュリリュリシイィィィィィ……!!!」


ヘドロの波が襲い掛かり、レックウザが飛び立つことを阻害する。


侑「歩夢……っ」

歩夢「侑ちゃん……!!」


歩夢が駆け寄ってきて、私を支えてくれる。


侑「ナイスタイミング……」

歩夢「ごめんね……こんなにボロボロになるまで……」

 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!!!!!!」


レックウザが咆哮をあげながら、“ヘドロウェーブ”を吹き飛ばすが──


 「──ダメですよっ!!」
  「カインッ!!!!」


極太の光の剣が──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


またしても、レックウザを地面へと叩き落とす。

この攻撃──“ソーラーブレード”……。


侑「かすみ……ちゃん……」

かすみ「皆さん……!! お待たせしました……!!」
 「カインッ!!!!」

 「キリュリリュリシイィィィィィ……!!!!」


度重なる妨害に、レックウザが怒りを顕わにし、体を持ち上げるが──


ミア「Stay there. Jigglypuff, "Gravity".」
 「プュッ」

栞子「ピィ! “じゅうりょく”です!」
 「ピィッ!!!」

 「リュリシイィィィィィ……!!!!」


ぐぐぐっと、レックウザの頭が下がっていく。


ミア「無駄だよ、2匹掛かりで“じゅうりょく”を発生させた」

ランジュ「ミア……!」

ミア「全く何やってるんだ……ボロボロじゃないか……ランジュらしくない」

ランジュ「ホントにね……!」


みんなが──駆けつけてくれた。

もう私はボロボロの満身創痍だけど──


侑「……みんなが居てくれれば……負ける気なんて、これっぽっちもしないよ……!」

 「──その……とおり、です……!」

侑「……!」


声に振り返ると──


せつ菜「……みんなが揃えば……負けることなんて、ありえませんよ……!」

侑「せつ菜ちゃん……!」


せつ菜ちゃんが足を引き摺りながら、こちらに歩み寄ってくる。


リナ『応急処置はした……でも、無理しないで』 || > _ <𝅝||
 「フィオ~」「ウニャァ~」

せつ菜「いえ……寝てなんていられませんよ……皆さんが、いるんですから……!」


これで──全員、揃った。

すごいなと思った。

あんなに絶望的な戦いだったのに、強さを見せつけられたのに、負ける気なんて、これっぽっちもしなかった。

そして、そんな私の気持ちに呼応するかのように──


 「ブィッ…!!!」


イーブイの体が光り輝く。


侑「……うん!」
 「ブイッ!!!!」


イーブイが構えるのを見て、


 「キリュリリュリシイィィィィィ……!!!!」


レックウザもその身に風を纏う。

“ガリョウテンセイ”の構え。

その威力は何度も見たけど──


侑「大丈夫……イーブイとのキズナが、ここにあるから。……旅で出会った全ての人たち、全てのポケモンたちとの繋がりがここにあるから……」
 「ブイッ!!!!!」


イーブイの光がより強く増していく。

イーブイと私の、全部の大好きの気持ちを込めた、この一撃で──証明するから……!!


侑「……人とポケモンのキズナは──負けたりしないって!!!」
 「ブィィィィッ!!!!!!」

 「キリュリリュリシイィィィィィ!!!!!!!!!」


2匹のポケモンが──同時に飛び出した。

片や翡翠色の龍神。

片や人とキズナを交わした、小さきポケモン。

両者が──“ブイブイブレイク”と“ガリョウテンセイ”がぶつかり合う。

巨大な力がぶつかり合い、エネルギーとなって爆ぜ散っている。

風は乱れ、光が周囲を眩く照らす。

ただ、不思議と──確信があった。


 「ブゥゥゥゥイィィィィィッ!!!!!!!」

 「キリュリシイィィィィィ…………!!!!!!!!!」


──私のイーブイは……絶対に負けないって。





    🎹    🎹    🎹





 「キリュリリュリシィ……」


レックウザの姿が……メガレックウザから元の姿に戻るのと同時に──ゆっくりと、その巨体が崩れ落ちたのだった。


侑「…………勝った」


勝つと同時に、身体の力が抜けて倒れそうになる。


歩夢「侑ちゃん……!!」


そんな私を、歩夢が支えてくれる。

そして──


 「ブィィィィッ!!!!」


イーブイが私の胸に飛び込んでくる。

私はそんなイーブイを受け止めて、


侑「ふふ……すごいよ、イーブイ……。……やっぱ、私の最高の相棒だ……」
 「ブイ…♪」


イーブイの頭を撫でながら、ぎゅっと抱きしめた。

そして、みんなが駆け寄ってくる。


かすみ「侑先輩!! やりましたよ!! かすみんたち!!」

しずく「この地方を……守ったんですね……。すごいです……」

せつ菜「仲間と共に、駆け抜けたんです……最後は勝たないと、締まりませんよね……えへへ」

リナ『侑さんっ!! すごかったっ!! みんなも、勝ててよかったっ!! 無事でよかったっ!!』 || > _ <𝅝||

ランジュ「まぁ、ランジュに掛かれば……これくらい朝飯前だったけどね……!」

ミア「全く……キミたちは、本当にPerfectだよ……」

栞子「皆さん……本当に、ありがとうございます……」


栞子ちゃんは私たちに頭を下げ、お礼を言ったあと──ゆっくりとレックウザの方へと歩いて行く。


かすみ「し、しお子……!? 危なくない……!?」

栞子「大丈夫です」


栞子ちゃんはゆっくりとレックウザの前まで進み、目の前で足を止める──

栞子ちゃんの気配を察したのか……レックウザは倒れたまま、ゆっくりと目を開け、栞子ちゃんを見つめる。


 「キリュリリュリシィ…」

栞子「……ありがとうございます。龍神様」

 「キリュリリュリシィ……」

栞子「……それでは……」

 「リュリシィ…キリュリリュリシイィィィィィ…リュリリュリシイィィィィィ…」

栞子「……尊大なお言葉……感謝いたします。……今まで、長きに渡り、この地方を見守ってくださって……ありがとうございました……」


レックウザはその言葉を聞くと、ゆっくりとその身を持ち上げた。


かすみ「わひゃぁ!!? 起きた!? ま、まだやるってんですか!?」

しずく「たぶん、大丈夫だと思うよ」

かすみ「ほ、ホントに……?」

栞子「……はい。本当です」


栞子ちゃんが頷くと──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…」


レックウザは、静かに鳴いて──空へと、飛び立っていった。

遥か、遥か高くへと──


栞子「…………」


栞子ちゃんは──


栞子「…………龍神様」


レックウザの消えていった空を見つめながら……少しだけ、寂しそうな顔をしていたのが、印象的だった。


ランジュ「……栞子」


ランジュちゃんが、栞子ちゃんの背中を叩く。


栞子「……ランジュ」

ランジュ「……今度……一緒に、月を見に行きましょう」

栞子「……はい。喜んで」


栞子ちゃんは、柔らかい笑顔で、ランジュちゃんの言葉に答えるのだった。




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【天睛山】
 口================== 口

  ||.  |○         ●             /||
  ||.  |⊂⊃                 _回/  ||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||.○⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :  ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  .||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  .||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  .||
  ||.       /.         回 .|     回  ||
  ||.    _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||. /              o回/         ||
 口==================口



 主人公 侑
 手持ち イーブイ♀ Lv.84 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
      ウォーグル♂ Lv.80 特性:まけんき 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
      ライボルト♂ Lv.81 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
      ニャスパー♀ Lv.78 特性:マイペース 性格:きまぐれ 個性:しんぼうづよい
      ドラパルト♂ Lv.79 特性:クリアボディ 性格:のんき 個性:ぬけめがない
      フィオネ Lv.75 特性:うるおいボディ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:289匹 捕まえた数:12匹

 主人公 歩夢
 手持ち エースバーン♂ Lv.69 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
      アーボ♂ Lv.70 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
      マホイップ♀ Lv.65 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
      トドゼルガ♀ Lv.65 特性:あついしぼう 性格:さみしがり 個性:ものおとにびんかん
      フラージェス♀ Lv.65 特性:フラワーベール 性格:おっとり 個性:すこしおちょうしもの
      ウツロイド Lv.74 特性:ビーストブースト 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 3個 図鑑 見つけた数:269匹 捕まえた数:24匹

 主人公 かすみ
 手持ち ジュカイン♂ Lv.85 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
      ゾロアーク♀ Lv.78 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
      マッスグマ♀ Lv.75 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
      サニゴーン♀ Lv.76 特性:ほろびのボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
      ダストダス♀✨ Lv.75 特性:あくしゅう 性格:がんばりや 個性:たべるのがだいすき
      ブリムオン♀ Lv.77 特性:きけんよち 性格:ゆうかん 個性:ちょっとおこりっぽい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:311匹 捕まえた数:15匹

 主人公 しずく
 手持ち インテレオン♂ Lv.69 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
      バリコオル♂ Lv.69 特性:バリアフリー 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      アーマーガア♀ Lv.69 特性:ミラーアーマー 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ロズレイド♂ Lv.68 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
      サーナイト♀ Lv.69 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ツンベアー♂ Lv.69 特性:すいすい 性格:おくびょう 個性:ものをよくちらかす
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:292匹 捕まえた数:23匹

 主人公 せつ菜
 手持ち ウーラオス♂ Lv.80 特性:ふかしのこぶし 性格:ようき 個性:こうきしんがつよい
      ウインディ♂ Lv.88 特性:せいぎのこころ 性格:いじっぱり 個性:たべるのがだいすき
      スターミー Lv.84 特性:しぜんかいふく 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      ゲンガー♀ Lv.86 特性:のろわれボディ 性格:むじゃき 個性:イタズラがすき
      エアームド♀ Lv.82 特性:くだけるよろい 性格:しんちょう 個性:うたれづよい
      ドサイドン♀ Lv.84 特性:ハードロック 性格:ゆうかん 個性:あばれることがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:218匹 捕まえた数:51匹

 主人公 栞子
 手持ち ピィ♀ Lv.34 特性:メロメロボディ 性格:やんちゃ 個性:かけっこがすき
      ウォーグル♂ Lv.72 特性:ちからずく 性格:れいせい 個性:かんがえごとがおおい
      ウインディ♀ Lv.71 特性:もらいび 性格:さみしがり 個性:のんびりするのがすき
      ゾロアーク♂ Lv.69 特性:イリュージョン 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      イダイトウ♀ Lv.68 特性:てきおうりょく 性格:さみしがり 個性:にげるのがはやい
      マルマイン Lv.69 特性:ぼうおん 性格:きまぐれ 個性:すこしおちょうしもの
 バッジ 0個 図鑑 未所持

 主人公 ミア
 手持ち プリン♂ Lv.76 特性:フレンドガード 性格:のんき 個性:ちょっぴりみえっぱり
 バッジ 0個 図鑑 未所持

 主人公 ランジュ
 手持ち コジョンド♀ Lv.81 特性:すてみ 性格:むじゃき 個性:イタズラがすき
      ジジーロン♂ Lv.77 特性:ぎゃくじょう 性格:れいせい 個性:ひるねをよくする
      エレキブル♂ Lv.78 特性:でんきエンジン 性格:せっかち 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ローブシン♂ Lv.78 特性:てつのこぶし 性格:ゆうかん 個性:うたれづよい
      ギャラドス♂ Lv.76 特性:じしんかじょう 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      パラセクト♂ Lv.71 特性:しめりけ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 8個 図鑑 未所持


 侑と 歩夢と かすみと しずくと せつ菜と 栞子と ミアと ランジュは
 レポートに しっかり かきのこした!


...To be continued.




■FINAL Chapter 『虹の咲く場所』





──さて、あの後……当たり前だけど、私とせつ菜ちゃんは病院に行くなり即入院だった。

真姫さんからは何をしたらこうなるんだと、こっぴどっく説教を受けたし──答えられないけど──あちこちの骨にヒビが入っているわ、折れているわで当分はベッド生活を余儀なくされた。

特に、せつ菜ちゃんは肺に肋骨が刺さるなどの重傷で、一歩間違えれば相当危ない状況だったらしい。

当の本人は、


せつ菜「……確かに、なんだか息苦しいなとは思っていましたけど……そんなことになっているなんて、全然気付きませんでした!」


なんて無邪気に言うもんだから、真姫さんから私以上にこっぴどく叱られたとかなんとか……。

そして、ランジュちゃんも怪我をしていたらしいけど……私たちよりも酷い傷ではなかったらしく、すぐに退院となったようで……。

最後に──


ランジュ「また、貴方たちに会いに来るわ! そのときはまた勝負しなさい! もちろん、ランジュが全戦全勝だけど!!」

ミア「やれやれ……ま、ランジュらしいけどね」


そう残して去っていった。

その後……ミアちゃんと共に、あちこちの大会で活躍しているという話を風の噂で聞く。

そして、栞子ちゃんは──


歩夢「それじゃ……一度、翡翠の里に帰るんだね」

栞子「はい。……龍神様のことは報告はしましたが……翡翠の民が存在していた理由がなくなってしまったので……。今後、翡翠の民たちがどう生きていくかも含めて、しっかり話し合ってこようと思います」

かすみ「話し合って、最終的にしお子はどうするの?」

栞子「そうですね……。……落ち着いたら……旅に出ようかなと」


栞子ちゃんは……窓の外の空をぼんやりと見つめながら言う。


栞子「私も……皆さんのように、ポケモンたちといろんな世界を見てこようかなと」

歩夢「……うん、いいと思う」

しずく「是非、その旅が終わったら……栞子さんが旅で見て、感じたことを教えてくださいね……!」

栞子「はい、必ず」

せつ菜「旅の中で困ったことがあったら、いつでも連絡してください! 駆けつけますから!」

栞子「ふふ、出来る限り自分で頑張りますが、本当に困ったときはお願いしますね」

侑「ポケモンたちとの旅……! 楽しんできてね!」
 「ブイ♪」

栞子「はい! まだ、もうちょっと先にはなってしまいますが……。……それでも、今から旅立つ日のことを考えるだけでワクワクしています。……素敵な旅が出来そうな予感でいっぱいです」

かすみ「あ、それじゃ、かすみんオトノキ地方のおいしいものの情報いっぱい送ってあげるね!」

栞子「ふふっ、それは楽しみです♪ 是非、お願いしますね♪」

リナ『帰って来るときは言ってね! みんなのスケジュール調整、私がするから♪』 || > ◡ < ||

栞子「はい! よろしくお願いしますね、リナさん♪」


一人一人と言葉を交わして──最後に、


栞子「歩夢さん」


歩夢の手を取る。


栞子「あのとき……朧月の洞で、歩夢さんに会うことが出来てよかった……。……今は、心の底から、そう思っています」

歩夢「栞子ちゃん……。……うん、私も……あのとき、栞子ちゃんに出会えて、本当によかった」

栞子「歩夢さんは……私の人生を変える転機をくれました。……これからは、その機会をくれた歩夢さんに恥じないよう……自分の人生を精一杯生きてみます」

歩夢「ふふっ、大袈裟だよ♪ 栞子ちゃんが栞子ちゃんの好きなように生きてくれれば、私はそれで嬉しいよ」


そう言って、歩夢は栞子ちゃんの頭を優しく撫でる。


栞子「……はい!」


歩夢の言葉に、栞子ちゃんは屈託のない笑顔で頷くのだった。


栞子「……それでは皆さん……短い間でしたが、本当にありがとうございました」


最後にペコリと頭を下げて──栞子ちゃんは私たちのもとから、去って行ったのだった。


かすみ「……しお子……行っちゃった……」

リナ『かすみちゃん、寂しい……?』 || ╹ᇫ╹ ||

かすみ「さ、寂しくなんて……ないもん……」

しずく「ふふ……素直じゃないんだから」


そう言って、しずくちゃんがかすみちゃんの頭をナデナデする。


せつ菜「大丈夫ですよ。旅をしていれば、どこかでばったり会いますから」

かすみ「だ、だから、かすみん寂しくないですって!」


ぷくーっと頬を膨らませるかすみちゃんを見て、みんなでクスクスと笑ってしまう。


侑「あー……私も早く旅に出たいなー……」

歩夢「侑ちゃんは怪我の治療が最優先です」


歩夢がむーっとした顔で見つめてくる。


侑「あはは、わかってるって」

歩夢「ホントにわかってるのかな……」
 「ブイ」

歩夢「イーブイ、ちゃんと見張っててね?」
 「ブイ♪」

侑「あ、それじゃさ……歩夢」

歩夢「?」


私はお父さんとお母さんがお見舞いで持ってきてくれた果物籠の中からリンゴを手に取り、


侑「剥いて……欲しいな」

歩夢「う、うん」

侑「それで、その……あーんって、して欲しいんだけど……」

歩夢「え!? ……い、いいけど……/// 急にどうしたの……?」

侑「……ん、その……さ……」

歩夢「うん」

侑「歩夢……最近ずっと、栞子ちゃんに構ってばっかりだったから……たまには……私にも構ってくれないと、嫌って言うか……」

歩夢「へ……///」

侑「どうしたの……? 顔赤いよ……?」

歩夢「な、なんでもないよ……/// えっと、皮剥く前に、手洗ってくるね……!!」


歩夢がパタパタと病室を出て行く。


侑「あ……ヒバニーリンゴにしてって言うの忘れてた……」


そんなことを言っていると、突然しずくちゃんが近寄ってきて、


しずく「侑先輩…………ありがとうございます」


何故か、お礼と共に深々と頭を下げられた。


侑「へ? ど、どういたしまして……?」

リナ『侑さん、成長した』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

かすみ「それにしても歩夢先輩……めっちゃ顔がニヤけてましたねぇ……」

侑「……? ……??」

せつ菜「侑さん侑さん! 私もヒバニーさんリンゴ食べたいです!」

侑「あ、うん! せつ菜ちゃんの分も剥いてもらおっか!」

リナ『……』 ||;◐ ◡ ◐ ||

かすみ「侑先輩は侑先輩かもですね……」

 「ブイ…」

しずく「……歩夢さんとせつ菜さん……それもありですね……」

侑「……?? ……???」


なんだかよくわからないけど……今日も私たちツシマ研究所の図鑑所有者は仲良しです。





    🎹    🎹    🎹





──さて、退院もして、すっかり元気になった頃……私は歩夢、せつ菜ちゃんと一緒にある人に会いに来ていました。


侑「ここで待ってればいいって、メールには書いてあったんだけど……」
 「ブイ?」

リナ『うん、間違いないよ』 || ╹ᇫ╹ ||


私たちが訪れているここは──音ノ木の麓だ。

しばらく、待っていると──


薫子「──っと……遅くなってごめんね!」


軽く手を上げて謝りながら、薫子さんが現れた。


歩夢「あなたが……栞子ちゃんのお姉さんの、薫子さん……」

薫子「こうして顔を合わせて会うのは初めてだね。話は聞いてるよ、歩夢。妹が世話になったみたいで……ありがとね」

歩夢「いえそんな……私は一緒にいただけなので……」

薫子「それだけで、栞子はすごく心強かったと思うよ。だから、感謝してる」


そう言って、薫子さんは歩夢に頭を下げる。

薫子さんが頭を上げたところで──


せつ菜「それで、お話とは一体何なんでしょうか?」


と、せつ菜ちゃんが訊ねる。


薫子「ああ。まあ、あの後どうなったかって話かな。君たちには聞く権利があると思うからさ」

侑「あの後って言うのは……翡翠の民やリーグのことですか?」

薫子「うん、そんなとこ。まあ、翡翠の民もリーグ側もどっちも大慌てだったみたいだけどね。何百年以上も続いていたレックウザの問題が、まさかこんな形で解決するとは思ってなかったからさ。……もちろん、それはアタシもだけどね」


薫子さんは肩を竦めながら苦笑する。


薫子「翡翠の民は龍神様がいなくなったことで、役割がなくなってかなり困惑してたみたいだけど……栞子がちゃんと事情を説明したら、ひとまず納得はしたって聞いたよ」

歩夢「栞子ちゃんに直接聞いたんじゃないんですか……?」

薫子「まあ、アタシがリーグにいるってボロ出してバレそうってのもあったけど……アタシは翡翠の里を抜けて、外に出ちゃったからね。翡翠の民は基本隠れ里の人たちだから、外界とは関わらないのが通例なんだよ。だから、帰っても肩身が狭い思いをしなくちゃいけないからね。それは御免蒙りたいってこと」

歩夢「そう……なんですか……」


歩夢はそれを聞いて少し複雑そうな顔をする。


薫子「とりあえず、翡翠の民のほとんどはこれからも里で暮らすみたいだけどね。なんだかんだ、自分たちの生活は気に入ってたみたいだし。ただ、翡翠の巫女みたいな風習はなくなっていくはずだよ。なんせ、必要がなくなったわけだからね」


薫子さんはそう言いながら、背後にある大樹を見上げる。


薫子「もう、龍の止まり木から……本当の意味での、龍の咆哮が聞こえることは、ないのかもしれないね……」

侑「きっと……それでいいんだと思います。誰かが見張っていなくても、私たち……この地方に住む、人とポケモンが力を合わせて、平和を守っていかないと」

せつ菜「ですね。いつまでも守られていては、私たちも成長出来ませんし!」

薫子「あはは、違いないね」


薫子さんは軽く笑ってから一呼吸。


薫子「んで、リーグ側なんだけど……翡翠の民から、レックウザがこの地を去った報告は受けたものの……上層部は今でも懐疑的みたいだね」

リナ『まあ、確認する術もないもんね』 || ╹ᇫ╹ ||

薫子「だから、これからも引き続き監視はするのかもしれないけど……ま、いないもんはいないから取り越し苦労なんだけどね。ただ、ミナミ相談役は信じてくれてるみたい。もしかしたら、ずっと続いた翡翠の民との軋轢も少しずつ解消されていくのかもね」


そしたら、アタシもお役御免だ、と付け足しながら、薫子さんは笑う。


歩夢「あの……」

薫子「ん?」

歩夢「栞子ちゃんには……会わないんですか……? きっと、実のお姉さんとなら……会いたがっていると思います……」

薫子「……ふふ、歩夢。君は優しい子だね」

歩夢「……」

薫子「……ちゃんと、アタシの役目を全うしきったら、そのときには会うのも悪くないかもね。その頃には栞子も……いろんな世界を見て、大人になってるだろうしさ」

歩夢「そのときはちゃんと……会ってあげてください……。……家族がずっと会えないなんて……寂しすぎるから……」


やや誤魔化すように言っていた薫子さんも、歩夢の物言いに思うことがあったのか──


薫子「……わかった。全てにケリがついたときは、ちゃんと妹に──栞子に会いに行くよ。……約束する」


真剣な顔で、歩夢に言葉に答えるのだった。


歩夢「はい……お願いします。栞子ちゃんのためにも……薫子さんのためにも」

薫子「……改めて、君が栞子に出会ってくれたこと……本当に感謝するよ」


薫子さんはもう一度、歩夢に頭を下げた。


薫子「……ってわけで、アタシからの話はこんなもんかな。ランジュのこと含めて……今回は本当にありがとう。お陰で、誰も責任を負ったりする必要もなく、解決出来たよ」

せつ菜「万事解決したのなら、何よりです!」

薫子「ホント、迷惑ばっか掛けちゃったから……もし何かあったときは言ってくれたら、いろいろ手を貸すからさ。リーグ側にコネがあると何かと便利だろうし」

リナ『職権濫用』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

薫子「お、いいのかな~? 一番リーグから力を借りたいのは、リナちゃん、君じゃないのかな~?」

リナ『私のこと、知ってたんだ』 || ╹ᇫ╹ ||

薫子「アタシこれでも、結構リーグでいい位置にいるからね」


確かにリナちゃんはプリズムステイツのこともあるし……リーグと繋がりが出来るのは悪い話じゃないのかもしれない。


侑「じゃあ、もし何か協力して欲しいことがあったら……連絡するかもしれません」

薫子「ん、いつでも待ってるよ♪ アタシに出来ることだったら、なんでも協力してあげるからさ♪ そんじゃ、この辺でアタシはお暇するね。仕事も残ってるから!」


そう残して、薫子さんは去っていったのだった。




    👑    👑    👑





さて……全てに決着がついたあと──かすみんはしず子と一緒に、また二人で旅をしています。


かすみ「はふぅ~……温泉気持ちいいし、ご飯もおいしいし……ウラノホシタウン最高~……」

しずく「ふふ♪ よかったね♪」



オトノキ地方の端の端にある町ですけど、温泉旅館で有名って話を聞いてから、ずっと来てみたいって思ってたんですよね!

かすみんの睨んでいたとおり、最高の時間を過ごさせてもらってます。


 「ゾロアーーク♪」「リムオン♪」「グマァ♪」「ニゴー…」「ダストダァ♪」「…カイン」

 「ロズレイ」「ベァァ♪」「ガァァ♪」「サナ」「インテ…」「……♪」


旅館のお部屋でおいしいご飯を食べて元気に鳴くポケモンたち。

サニゴーンやジュカイン、インテレオンなんかは反応こそ淡泊なものの、表情は満足気です。

バリコオルはもともと無口なポケモンですけど、無言で小躍りしてるくらい。

どうやらポケモンたちにも大好評みたいです!


かすみ「ここに住みた~い……」

しずく「それじゃ、何泊かしていく?」

かすみ「でもでも、明日はローズで新しいスイーツが出るんだよね……それも買いに行きたいし……。あ! いい加減ダリアで、にこ先輩にリベンジもしなくちゃ……!!」

しずく「ふふ♪ 大忙しだね♪」


しず子はかすみんの話を聞いて、嬉しそうに笑う。

確かに、行きたい場所は山ほどあります。

いろいろ見てきたけど……それでも、まだまだかすみんは旅をし足りないくらいです。

ただ……。


かすみ「しず子は、どこか行きたい場所とかないの?」

しずく「え?」

かすみ「なんか、かすみんが行きたい場所にばっかり付き合わせちゃってるから……」


行き先はほぼ全てかすみんが決めていて……それなのに移動はしず子のアーマーガアにお願いしちゃうことも多いから、ちょっと申し訳ない気持ちもあります。


かすみ「次はさ、しず子の行きたい場所に行こうよ! かすみん、どこでも付き合うからさ!」


そう提案する。だけど、しず子は──


しずく「うぅん、大丈夫」


首を振る。


かすみ「え、えぇ……? 遠慮しなくていいんだよ? 私としず子の仲でしょ?」

しずく「うぅん、そうじゃなくてね」

かすみ「?」

しずく「……私──行きたい場所には、ちゃんと行けてるから、大丈夫なの」

かすみ「へ?」


そんな場所……行ったっけ……?

かすみんが小首を傾げていると……しず子は小さな声で──


しずく「──私の行きたい場所は……かすみさんの居るところだから──」


──何かを呟いた。


かすみ「え? ご、ごめん……聞こえなかったんだけど……」

しずく「ふふ♪ 聞こえないように言ったからね♪」

かすみ「えぇー!? なにそれ!? 気になるじゃん! 何言ったのしず子!!」

しずく「ふふ♪ 教えてあげない♪」


しず子はイタズラっぽく笑いながら、


しずく「ん~♪ お腹もいっぱいになったし、もう一度温泉にでも入って来ようかな~♪ 行こっか、みんな♪」
 「ロズレ♪」「サナ♪」「ガァァ~♪」「ベァァ」「……♪」


ポケモンたちを引き連れて、温泉の方へと行ってしまう。


かすみ「え、ち、ちょっとぉ!! 教えてよ!! 気になって、今日寝れなくなっちゃうじゃん!」

しずく「ダーメ♪ 自分で気付いてくれないと♪」

かすみ「え~!? も、もう、なんなの~!?」
 「ゾロアーク♪」「グマァ~♪」「ダストダァ♪」「リムオン♪」「ニゴーン…」


しず子の後をぱたぱたと追いかけると、ポケモンたちもニコニコしながら付いてくる。


かすみ「ちょっとぉ! みんなも笑ってないで! こうなったら、力尽くでしず子から聞き出すよ!」

しずく「ふふ、こわ~い♪」


クスクス笑って逃げるしず子、それを追うかすみん、そんな私たちを見ながら──


 「…インテ」「…カイン」


クールな相棒たちが、肩を竦めながら、かすみんとしず子のことを、見守っているのでした。


 主人公 かすみ
 手持ち ジュカイン♂ Lv.85 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
      ゾロアーク♀ Lv.80 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
      マッスグマ♀ Lv.76 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
      サニゴーン♀ Lv.76 特性:ほろびのボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
      ダストダス♀✨ Lv.78 特性:あくしゅう 性格:がんばりや 個性:たべるのがだいすき
      ブリムオン♀ Lv.77 特性:きけんよち 性格:ゆうかん 個性:ちょっとおこりっぽい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:314匹 捕まえた数:15匹

 主人公 しずく
 手持ち インテレオン♂ Lv.70 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
      バリコオル♂ Lv.70 特性:バリアフリー 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      アーマーガア♀ Lv.70 特性:ミラーアーマー 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ロズレイド♂ Lv.70 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
      サーナイト♀ Lv.70 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ツンベアー♂ Lv.70 特性:すいすい 性格:おくびょう 個性:ものをよくちらかす
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:295匹 捕まえた数:23匹




    🎙    🎙    🎙





──ツシマ研究所。


せつ菜「みんな~! ご飯の時間だよ~!」
 「ププリ~」「ピチュピチュ♪」「ピィ~♪」

せつ菜「わっ!? じ、順番にあげるからね~!」
 「プププリン」「ピッチュ♪」「ピィ♪」


元気なベイビィポケモンたちに群がられながらも、どうにか1匹1匹に餌を配っていく。

そんな私の様子を見て、


善子「菜々……別に無理に手伝いに来なくてもいいのよ? 忙しいでしょ?」


ヨハネ博士が肩を竦めながら言う。


せつ菜「いえ! 私は、こうして博士のお手伝いを出来るのが嬉しいんです!」

善子「そう言ってくれるのは嬉しいけど……」

せつ菜「それに……来たる千歌さんとの戦いに備えて、聞きたいこともたくさんありますし!」


最近、私はよくヨハネ博士と一緒に、対千歌さんのための対策と研究を頻繁に行っている。


善子「ふふっ、気合い入ってるわね」

せつ菜「次挑むときは──絶対に勝つつもりですから!」


オトノキ地方の、チャンピオンになるために──

──ヨハネ博士に、チャンピオンマントを羽織った私の姿を、見せるために……。

ひととおり、餌やりを終え、


せつ菜「ですので……今日もよろしくお願いします!」

善子「……わかった。可愛いリトルデーモンの頼みだものね」


そう言いながら、ヨハネ博士がプロジェクターの準備を始める。

これから二人で、千歌さんの試合映像を見ながら研究の時間です!


せつ菜「みんなも! しっかり対策練って、次こそは千歌さんに勝つよ!!」
 「ラオスッ!!!!」「ゲンガァーー!!!」「ドサイッ!!!」「ムドーーー!!!!」「フゥ」「…ワォォォーン!!!」

善子「ふふ、期待してるわよ──菜々」

せつ菜「はいっ!!」


私、菜々は──ポケモントレーナーせつ菜として、前に進んでいます……!

最強のトレーナーを目指して、今日も、これからも────!!


 主人公 せつ菜
 手持ち ウーラオス♂ Lv.86 特性:ふかしのこぶし 性格:ようき 個性:こうきしんがつよい
      ウインディ♂ Lv.89 特性:せいぎのこころ 性格:いじっぱり 個性:たべるのがだいすき
      スターミー Lv.85 特性:しぜんかいふく 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      ゲンガー♀ Lv.87 特性:のろわれボディ 性格:むじゃき 個性:イタズラがすき
      エアームド♀ Lv.83 特性:くだけるよろい 性格:しんちょう 個性:うたれづよい
      ドサイドン♀ Lv.85 特性:ハードロック 性格:ゆうかん 個性:あばれることがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:218匹 捕まえた数:51匹




    🎹    🎹    🎹





ウルトラビーストたちとの戦い、そして龍神様──レックウザとの死闘を終え……全てに決着がついたあと、私もみんなと同じように、また歩夢と旅に出た。

今は──


侑「うわぁ……! 雲海が太陽の光で輝いてるよ!」
 「ブィィ♪」

歩夢「前に来たときは星空が綺麗だったけど……日中は日中で、この雲海に圧倒されちゃうね」
 「シャボ」

リナ『これだけの雲海が見られるのは、この地方でもここくらいしかないからね!』 ||,,> ◡ <,,||


私たちは太陽と月の信仰の地である──“暁の階”を訪れていた。

あ、えっと……今の時間だと正午を過ぎてるから、“黄昏の階”になるんだっけ……?


歩夢「この雲の海の下に……私たちの住んでるオトノキ地方が広がってるんだよね……」

侑「うん。私たちみんなで守った、オトノキ地方が広がってる」

歩夢「ふふ♪ 最初はセキレイの街で、ただ普通に暮らしてただけだったのにね♪」
 「シャボ」

侑「今では……こんなに自由に世界を回って見られる」
 「ブイ」


これも全て、あの日、あのとき──ポケモンたちと一緒に、こうして冒険の旅に出たお陰なんだ。

そんなに前のことではないはずなのに、もう随分昔のことのように思っちゃうなぁ……。


歩夢「なんだか、今更だけど……すごいところまで来られるようになっちゃったね、私たち」

侑「ふふ、ホントにね」


二人で“黄昏の階”に腰掛けて、陽光を照り返して輝く雲海を見つめながら、身を寄せ合う。


歩夢「侑ちゃん」

侑「ん?」

歩夢「私と一緒に……冒険してくれて、ありがとう」

侑「……こちらこそ、一緒に冒険してくれて、いつも一緒にいてくれて……ありがとう、歩夢」

歩夢「うん♪」

リナ『二人だけずるい……私も』 || > _ < ||

侑「ふふ♪ もちろん、リナちゃんも♪ いつもありがとう♪」

歩夢「私たちのこと、ずっと支えてくれてありがとう♪ リナちゃん」

リナ『どういたしまして! 私も二人にはすっごく感謝してる! いつもありがとう!』 ||,,> ◡ <,,||


歩夢とリナちゃんに感謝を伝え──

そして、感謝をしてもし足りない、仲間たちにも──


侑「みんな、出てきて!」

歩夢「一緒に見よ♪」

 「ウォー!!!」「フィ~♪」「ウニャァ~」「パルト♪」「…ライボ」

 「バーース♪」「マホイップ♪」「ゼルガァ…」「ラージェス」「──ジェルルップ…」


ここまで旅を支えてくれた、かけがえのない仲間たち。


侑「みんながいたから……今の私があるんだ」
 「イブィ♪」「フィー♪」「ウォーーグ♪」「パルト~♪」「ウニャニャ」「…ライボ」

歩夢「うん。みんながいてくれたから……ここまで歩いてこられた」
 「シャーボ」「バース♪」「マホマホ♪」「ゼルガ…♪」「ラージェス」「ジェルップ…」


私にはイーブイが、ウォーグルが、ライボルトが、ニャスパーが、ドラパルトが、フィオネが。

歩夢にはサスケが、エースバーンが、マホイップが、トドゼルガが、フラージェスが、ウツロイドが。

仲間たちが──大切なポケモンたちが、支えてくれたから、今の私たちはここにいる。


侑「だから、ありがとう」
 「ブイ♪」


そして──


侑「これからもよろしくね!」
 「イブィ♪」「ウォーグ♪」「…ライボ」「ウニャァ~」「パルト♪」「フィ~」


頼もしい仲間たちの声を聞きながら──美しい雲海を見つめる。


リナ『次はどこへ行く?』 || ╹ ◡ ╹ ||

歩夢「どこに行こっか?」

侑「……そうだなぁ……まだ決めてないけど……。みんなと一緒なら、きっとどこに行っても、嬉しい気持ちで旅が出来ると思う」

歩夢「……ふふ♪ そうだね♪」

リナ『間違いない!』 ||,,> ◡ <,,||


──きっと、この世界にはまだ見ぬ感動が、冒険が、出会いが、私たちを待ってくれていると思う。

これからの私たちが、どこへ向かうかはまだわからないけど──きっと、その先には面白そうな未来が待っているに違いないから。

だから──まだまだ、これからも──新しい冒険の夢を見よう……!

この──ポケットモンスターの世界で……!!


 主人公 侑
 手持ち イーブイ♀ Lv.85 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
      ウォーグル♂ Lv.81 特性:まけんき 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
      ライボルト♂ Lv.82 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
      ニャスパー♀ Lv.78 特性:マイペース 性格:きまぐれ 個性:しんぼうづよい
      ドラパルト♂ Lv.80 特性:クリアボディ 性格:のんき 個性:ぬけめがない
      フィオネ Lv.75 特性:うるおいボディ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:293匹 捕まえた数:12匹

 主人公 歩夢
 手持ち エースバーン♂ Lv.70 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
      アーボ♂ Lv.70 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
      マホイップ♀ Lv.65 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
      トドゼルガ♀ Lv.65 特性:あついしぼう 性格:さみしがり 個性:ものおとにびんかん
      フラージェス♀ Lv.65 特性:フラワーベール 性格:おっとり 個性:すこしおちょうしもの
      ウツロイド Lv.74 特性:ビーストブースト 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 3個 図鑑 見つけた数:273匹 捕まえた数:24匹




    🎹    🎹    🎹





歩夢と二人で雲海を眺めていたら──

──pipipipipipipi!!!!!! と、歩夢の図鑑が鳴り始める。


侑「この音……」
 「ブイ?」

歩夢「もしかして……」
 「シャボ…」


二人で、階段の下の方へ目を向けると──


かすみ「侑せんぱーい!! 歩夢せんぱーい!!」

しずく「お二人とも……こちらにいらっしゃったんですね!!」

せつ菜「まさか、こんなところで全員集合するなんて……!!」


3人の仲間たちが、階を上ってきているところだった。


侑「かすみちゃん! しずくちゃん! せつ菜ちゃん! どうしたの!?」
 「イブィ♪」

せつ菜「チャンピオン戦前の修行で訪れたんですが……偶然、下でかすみさんとしずくさんにお会いしまして……!」

しずく「まさか、侑先輩たちもいるなんて思いませんでした!」

かすみ「やっぱり、かすみんたち図鑑所有者5人……気が合いますね~♪」

歩夢「ふふ♪ そうだね♪ 気付いたら、みんな集まっちゃう♪」


思わず、みんなで顔を見合わせて笑ってしまう。


かすみ「それにしても、絶景ですぅ~♪」

しずく「こんな雲海を……私たちだけで独占しているなんて……とても、贅沢ですね」

せつ菜「本当に……! 今日このタイミングで、ここに来られてよかったです!!」

リナ『それだけじゃないよ』 || ╹ ◡ ╹ ||

侑「それだけじゃない?」

歩夢「どういうこと?」

リナ『東の空を見て!』 || > ◡ < ||

侑「東……?」


そろそろ黄昏時の近付くこの“黄昏の階”で、東を見るということはつまり……私たちが太陽を背に受けながら、東の雲海に目を向けると──


侑「わぁ……!!」
 「ブィィ…!!!」

歩夢「……すごい」
 「シャーボ…」

せつ菜「これは……!」

かすみ「はわぁ~~♪」

しずく「綺麗……」


そこには──雲海の上に、大きなアーチを描くように────虹が咲いていた。

今まで見たことのないような大きな大きな虹が──私たちの目の前で、まるで私たちがここに集まったことを祝うかのように、咲き誇っていた。


歩夢「侑ちゃん……すごいね」

侑「うん……」

しずく「私……こんなに綺麗な虹、初めて見ました……」

かすみ「なんだか……かすみんたちみんなが揃うと、奇跡が起こっちゃうみたいですね!!」

リナ『そうかもしれない♪』 ||,,> ◡ <,,||


そして、この綺麗な虹を見て、


せつ菜「なんだか、この虹を見ていたら、テンションが上がってきてしまいました!! 今にも、走り出したい気分です!!」


せつ菜ちゃんが、嬉しそうに飛び跳ねる。


かすみ「奇遇ですねぇ~、かすみんもちょっとうずうずしてきちゃいましたよ!」

侑「私も私も!」
 「ブイブイ♪」

しずく「ふふ♪ 皆さん、相変わらず元気なんですから♪ でも、今回ばかりは私も同じ気持ちです!」

歩夢「わ、私も……なんだか、じっとしてられない気持ちになってきちゃった……!」


5人みんなで目を合わせて──


かすみ「ふっふっふ……かすみんたちはなんですか……? ポケモントレーナーですよね!!」

侑「ポケモントレーナー同士……!!」

せつ菜「目が合ったときに、やることと言えば……!!」

しずく「ふふっ、今回は私も参戦させてもらいますよ!」

歩夢「でも……5人同時にバトルは出来ないよね……」

せつ菜「なら──今から5人全員総当たりでポケモンバトルをしましょう!!」

侑「それいいっ!! 考えただけで、最っ高にときめいちゃう!!」
 「ブィブィ♪」

歩夢「ええ!? 5人全員で!?」

しずく「す、すごい長丁場になりそうですね……。……ですが、面白そうです♪」

リナ『それじゃあ、私は審判をするね♪』 ||,,> ◡ <,,||

かすみ「順番はどうするんですか?」

せつ菜「もちろん──」

侑「早い物順で!!」
 「イブィ!!」


私とせつ菜ちゃんが同時に駆け出す。


かすみ「あ!? ふ、二人ともずるいです~!!」


だって、いても立ってもいられないんだもん!

せつ菜ちゃんと二人──相対する。


せつ菜「考えてみれば……侑さんとバトルをするのは、侑さんが旅立った直後に、カーテンクリフの麓で戦って以来ですね……!」

侑「言われてみれば……。……あのときは負けちゃったけど、今の私は──私たちは、あのときとは比べ物にならないくらい強いよ!!」
 「ブイッ!!!」

せつ菜「ええ! よく知っていますよ!!」


せつ菜ちゃんがボールを構える。

あのとき、憧れだったせつ菜ちゃんと、今こうして強くなって戦えることが嬉しくて堪らない。


歩夢「侑ちゃーーん!! 頑張ってねーー♪」

しずく「せつ菜さんもーーー!! 頑張ってくださーーい!!」

かすみ「お二人とも頑張ってくださーーーいっ!! あ、でも、かすみんと戦う力は残しておいてくださいね~~!?」


仲間たちの声援を受けながら──


リナ『バトル──スタート!!』 ||,,> ◡ <,,||

せつ菜「行きますよ!! ウインディ!!」
 「──ワォォォォンッ!!!!!」

侑「行くよ!! イーブイ!!」
 「ブイッ!!!!」


イーブイが飛び出した──



──ポケットモンスター、縮めてポケモン。

動物図鑑には載っていない……不思議な不思議な生き物。

その姿は、山に、森に、川に、海に、草原に、街に……うぅん、それどころか宇宙にも、異世界にも……!!

ありとあらゆる場所に生息し、その数は100...200...300...400...うぅん、1000種類以上のポケモンが、今もどこかで出会いを待っている。

ポケモンの種類だけ出会いがあって、それを求めて私たちポケモントレーナーは、今日もこの──ポケットモンスターの世界を生きていく。

そんな素敵なポケットモンスターの世界で──新しい出会いと、夢のような物語は──ときめきは──どんどん広がっていく。


人の数だけ、ポケモンの数だけ紡がれる、出会いと絆の物語──次に物語を紡ぐのは、きっと──あなたの番!





<THE END>


終わりです。お目汚し失礼しました。


長い作品でしたが、少しでもポケモンの世界で侑たちと一緒に旅をしている気分を感じて頂けていればと想います。

ここまで読んで頂き有難う御座いました。

また書きたくなったら来ます。

よしなに。


過去作

善子「一週間の命」
善子「一週間の命」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495318007/)

ダイヤ「吸血鬼の噂」
ダイヤ「吸血鬼の噂」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1562365941/)

曜「神隠しの噂」
曜「神隠しの噂」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1573103874/)

梨子「人魚姫の噂」
梨子「人魚姫の噂」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1598136029/)

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