エンド・オブ・ジャパンのようです (48)

前スレ1【エンド・オブ・オオアライのようです】※完結済

前スレ2【( ^ω^)戦車道史秘話ヒストリア!のようです】 
( ^ω^)戦車道史秘話ヒストリア!のようです - SSまとめ速報
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前スレ3【( ´Д`)離れ小島の提督さんのようです】
( ´Д`)離れ小島の提督さんのようです - SSまとめ速報
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前スレ4【ウキウキ!!首相の鎮守府訪問!!のようです】※◆L6OaR8HKlk様作品
【艦これ】ウキウキ!!首相の鎮守府訪問!!のようです - SSまとめ速報
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関連作
【('A`)が深海棲艦と戦うようです】
('A`)が深海棲艦と戦うようです - SSまとめ速報
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【('A`)はベルリンの雨に打たれるようです】
('A`)はベルリンの雨に打たれるようです - SSまとめ速報
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【|w´‐ _‐ノv空に軌跡を描くようです】
|w´‐ _‐ノv空に軌跡を描くようです - SSまとめ速報
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─────フィリピン海









「こちら川内!青葉の回収に成功も大破状態、意識不明!自力航行不可能!!」

「姐さんの曳航は頼んだ、道はこちらで切り開く!大和、いくぞ!!」

「ええ、任せて!大和より“第二橋頭堡”、青葉さんの回収に成功しました!これより離脱を開始します!」

「日向より大和、急かしてすまないが全速力で頼む!退路の維持も長くは保たんぞ!!」

「こちら白雪、上空の“球体”より火力投射量さらに増大!当方圧倒的に劣勢───きゃあっ!?」

「し、白雪ちゃんに直撃弾!状態中破を確認にゃしぃ!!」

「神通さんや翔鶴さん同様榛名と日向さんの後ろに隠れてください!……絶対に、今度は、守ります!!」

「榛名さん自分も損傷してるんだから無理しないでよ!あの提督さんなら絶対“いのちだいじに”だろうからさ!」

「中破してる上空母なのに砲撃戦に参加し続けてる貴女が言っても説得力ないわよ瑞鶴。───攻撃隊、全機発艦します」

「こっちも制空隊で併せるで!

とはいえ、こりゃあちょっち不味いかなぁ………!?」

「大鳳より各位!航空戦における数的不利著しく、また敵艦隊並びに“球体”の対空砲火により被害甚大!

空母艦隊、艦載機喪失率5割を越えました!!」

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─────フィリピン海









「こちら川内!青葉の回収に成功も大破状態、意識不明!自力航行不可能!!」

「姐さんの曳航は頼んだ、道はこちらで切り開く!大和、いくぞ!!」

「ええ、任せて!大和より“第二橋頭堡”、青葉さんの回収に成功しました!これより離脱を開始します!」

「日向より大和、急かしてすまないが全速力で頼む!退路の維持も長くは保たんぞ!!」

「こちら白雪、上空の“球体”より火力投射量さらに増大!当方圧倒的に劣勢───きゃあっ!?」

「し、白雪ちゃんに直撃弾!状態中破を確認にゃしぃ!!」

「神通さんや翔鶴さん同様榛名と日向さんの後ろに隠れてください!……絶対に、今度は、守ります!!」

「榛名さん自分も損傷してるんだから無理しないでよ!あの提督さんなら絶対“いのちだいじに”だろうからさ!」

「中破してる上空母なのに砲撃戦に参加し続けてる貴女が言っても説得力ないわよ瑞鶴。───攻撃隊、全機発艦します」

「こっちも制空隊で併せるで!

とはいえ、こりゃあちょっち不味いかなぁ………!?」

「大鳳より各位!航空戦における数的不利著しく、また敵艦隊並びに“球体”の対空砲火により被害甚大!

空母艦隊、艦載機喪失率5割を越えました!!」

「妙高ちゃん、9時方向から接近中の水雷戦隊に制圧射撃で足止め!大鳳ちゃん、今発艦した艦爆隊から一個編隊を妙高ちゃんの砲撃に合わせて突入させて!秋月ちゃんは二人を敵の航空隊から全力で守って!!

衣笠ちゃんと鹿島ちゃんは12時方向のル級3隻と軽巡水鬼に対応!那珂ちゃんが前に出て囮をやる、その間に順に仕留めて!!」


「っく………上等だよ、こちとら元から死ぬまで戦う気だぁ!!」


「天龍ちゃん────うぐっ?!」 


「て、天龍さんと龍田さんが被弾、中破!ど、どうしたら………私、どうしたら………!」


「足柄より支援艦隊、全方面からの敵艦隊による波状攻撃なお激化!上空の“球体”からの砲爆撃も止まる気配なし!

こっちは損傷艦続出だけど掩護射撃は飛ばせないの!?」


《【こんごう】CICより足柄、こちらも全力で飛ばしてるんだ!飛ばしてるんだが……………》


《This is 【Curtis Wilbur】, All missile down!! I repeat, All missile down!!》


《Negative!! 【Chancellorsville】 for All Freet, Enemy AAR is so hard!! Our attack can't break it!!》


《Spear-01より【Shark Head】、さらに“球体”から新たな【黒鳥】が投入された!こっちが撃墜するより向こうが機体を投入するスピードが早いぞ、間もなく【回転木馬】も限界だ!!》


《補給完了した航空隊の再来とオーストラリア並びにグアムからの増援が到着するまでなんとしても高高度航空優勢を維持しろ!!この上【学園艦棲姫】による艦載機群の大量投入なんて起きれば我々の許容範囲を越えるぞ!!》


《まだ越えてないみたいな言い方はやめるヨ!とっくの昔にこっちは限界に…………Fuck, Next 【Black Bird】!! Guys, Fire Fire Fire!!》


《Spear-03より各位、あの四つの“球体”に直接攻撃してみるのはどうだい!?撃墜しちまえば火力は大幅に減退するはずだろうしさ!》


《こちらSwallow-01、とっくの昔に試みてるさ!!だが結局ミサイルが当たりゃしねえ、棲姫の弾幕と合わせて全部撃ち落とされちまう!!》


「こちら妙高、仮に当たったとしても無駄だったかと……我々も出現直後に砲撃を叩き込みましたが、四つ全て傷一つ着かなかったので」


《【こんごう】CICより支援艦隊各位並びに【ロナルド・レーガン】へ通達、基地航空隊を全機発艦し戦域に投入!また、現存する航空隊もこれに合流し戦闘を継続!!


……………っ、なお退却許可条項に“損害の度合い”を認めず!燃料・弾薬の枯渇を除き以後全ての機体は艦娘艦隊の海域離脱まで戦闘を継続されたし!!!》

「こちら榛名、再度被弾!中破しましたが戦闘を継続します………!」 《【黒鳥】が一個編隊【回転木馬】を突破した!来るぞ、迎撃急げ!!》     《艦載機群も来るぞ!対空戦闘よぉーーい!!》
《ミサイルが足りない、補充が間に合わねぇ!!》
  「新たな敵艦隊………ぐぅぅ!?」
「日向さん!?」 《This is Rapier-05, One hit!! One hit!!》
《【あたご】より日向、状況を報告せよ!》
「雷より【あたご】!日向さんがル級の砲撃をもろに受けて………!」
    《基地航空隊損耗率40%台に突入、なお加速度的に増加中!!》 「んにゃしい!?」「こちら妙高、駆逐艦睦月中破!!」《【ロナルド・レーガン】ブリッジより神威、【World turbine】を人数分もって指定座標に急行しろ!》
「大鳳中破!」《神威了解!発艦します!》《Mayday Mayday Mayday───》「妙高さん大破!」
  《秋月大破!対空火網大幅に減退!!》「こんなところで、沈むものですか………!」「あかん、しくった、な……ぁ……」
「すみません、鹿島、大破しました……!」「こちら瑞鶴、加賀と龍城さんが敵艦砲直撃により大破!」
   《Shamrock, 神威のエスコートに移れ!なんとしても守り抜け!!》
  「神通さんが流れ弾に被弾、大破状態に移行!」「っっ!? こちら武蔵、不覚をとった……ここで中破など……!」
  《This is Shamrock-12, Boggy behind!! Help, Help!!》《敵艦載機群射程圏内に到達!!シースパロー攻撃始め!!》
  「大和さんに敵の集中砲火が………た、大破状態を視認!!」《Rapier-20 down!!》
「っ、顔はやめてって言ってんじゃん………!」
  《那珂中破!》
「川内中破!」
   《日向、大破状態に移行!》
《衣笠中破!!》



《【Dora】 Fire!! Enemy shoot inc───

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《【Chancellorsville】 lost. I repeat, 【Chancellorsville】 lost.》




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【エンド・オブ・ジャパンのようです】



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気障ったらしい言い回しだが、光ってのは人間にとって希望の象徴とされている。

宗教絵画で描かれる天国は大抵の場合暖かな光に満ち溢れてるし、神話じゃプロメテウスが「火」という光を与えた結果人間は文明を手に入れた。
月明かりや星明かり、オーロラや虹はいかなる時でも美の象徴であり、それこそ“希望の光”なんて言葉も存在する。

ただ、俺の個人的な見解は別だ。

剣や槍、鏃、盾に鎧、ヤパーヌの刀、どこぞの王様が考案した そいつ自身が最初の犠牲者になっちまったって話の断頭台。より良い鉄を使うほど、より腕のいい職人が鍛えるほど、これらの切っ先は強い輝きを放つ。

銃が開発されてからは、コイツが一回光る度に必ず誰か死ぬようになった。大砲で死ぬ人数が数十人に、航空爆弾で数百人に、ミサイルで数千人に増えた。

それこそこれらが放つ「火」で焼かれる街や村や人なんてもんは、戦場じゃあ一種の風物詩だ。極めつけの核兵器は、街どころか国すら吹っ飛ばせる。

ご覧の通り、戦場では“光”なんざ見ずにすむならそれに越したことはない。伴うのは希望どころか、絶望と死だからな。

例えば今この瞬間俺たちの目の前で、地平線の彼方で瞬く無数の“光”なんかは。

『『『『──────ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ!!!』』』』

('A`;)「砲弾正面、回避急げ!!」

(*;゚∀゚)「Jaworl!!」

深海棲艦の連中による艦砲射撃の発射炎なんかは、その典型だろうよ。

真っ正面から迫ってきていた光弾を、ツーのハンドル捌きがギリギリのところで躱す。髪を数本掠め焦がしながら通過していったそれは後方十数メートルのところで着弾し、乗っているエノクの車体が激しく揺れ一瞬後輪が浮き上がった。

今の揺れ方、そして爆発の大きさから察するにル級Eliteの16inch三連装砲か。こんなことを感覚的に把握できてしまう自分の“成長”に涙が止まらねえよクソッタレめ。

《こちら第9小隊、3号車を砲撃によりロスト!》

《第2小隊、フォースター軍曹の車両がやられました!!》

《こっちは二両まとめてやられたぞ畜生め!!》

《マントイフェル少佐、突撃隊の損耗が20%台に突入しました!どうしますか!?》

(;'A`)「作戦に変更は──ぶっふぉ!?」

今度は目の前の地面で火柱が上がり、大量の土埃を伴った爆風が肺を満たしに来る。ホ級の5inch砲か、重巡以上の等級だったらやばかった……!

(#'A`)「作戦に変更なし、このまま指定ポイントまで前進する!!反転や停止なんざ的になるだけだ!!」

(*゚∀゚)「畏まったぜ“少佐”殿ぉ!!」

('A`#)「ことあるごとに階級強調してくんじゃねえよテメェhンゴッフ!?」

頭上から降り注いできた機銃掃射が、回避運動を取ったエノクの横を駆け抜けていく。

こちらとすれ違う形で上空を飛び去るのは、奴らの艦載機である【Helm】。黒く細長い十余の機影は、間もなくグラーフから飛び立ったBf109-T【メッサーシュミット】に後方から捕捉されその悉くが火の玉と化した。

………にしても、爆風も何もない“銃撃”を機銃座に座ってる人間が鞭打ち症になりかねないほど激しく避ける必要あったのか?しかもツー=アハッツほどの腕前の持ち主が。

(;'A`)「おい今………のぉあ!?」

(*゚∀゚)「いかんぜ“少佐”殿!さっきもそうだが、下手に口出しされちゃあハンドル操作を誤っちまうよ!あーひゃひゃひゃひゃ!!」

ツーの奴はそう言って、高らかに笑いつつ肩を竦めて見せる。

因みに今しがたの“回避”は、最早そもそも避ける必要のある攻撃が飛んできていなかった。

やっぱ悪ふざけかよ!つーか今のに至ってはそれこそ動いた先に砲弾飛んできたらどうするつもりだったんだテメエ!!

リーザ。“戦前”時点での人口は確か3万人前後だったか。

この街について「よく存じていて流暢明晰に語れる」って奴は、推測だが恐らく少数派に違いない。郷土歴史家かこの辺りに選挙区をもつ政治家、あとはせいぜいSUMO並びにヤパーヌ文化愛好家ぐらいのもんだろう。

かく言う俺もSUMO世界大会の開催地になってることは──しかも二回──イヨウ少将から聞いて始めて知ったし、名前や位置さえ下士官時代にこの付近で空挺の実施訓練を行ってなければ知ることはなかったと思う。
なんなら、一時鉄工業の有名どころだったことやブンデスリーガの名選手・ウルフ=キルスタンの出身地であることも知っていたフランス出身の“巻き毛の戦車乗り”の方が、余程リーザのことをよく知っている。

まぁ要は、「よくある田舎町」の一つというワケだ。俺の故郷のように。

《リーザ防衛隊CPより敵側面攻撃中の友軍部隊、応答せよ!貴官らは機動迎撃大隊【Anker】所属で相違なきや!?》

(#'A`)「指揮車・ドク=マントイフェルよりCP、一応“それ”だ!」

世の中は解らない。そんなただの田舎町だった場所が、今や対深海棲艦の最前線地帯の一角にしてドイツ存亡の鍵を握る最重要防衛拠点になっているのだから。

(#'A`)「現被害状況、並びに敵艦隊戦力の編成と展開状況を共有求む!把握している限りで構わない!」

《ああ、神よ!!!》

こちらが名乗ると同時、無線機の向こうからはそんな言葉が何十人分にも及ぶ歓声と共に聞こえてきた。
くっっっだらねえモン有り難がってる暇があるなら、こっちの問いかけにとっとと答えてもらいたいんだが?

(#'A`)「偉大なる“神”の御加護があるならわざわざ俺たちが出向く必要もなかったようだな、全車両・全兵力に反転を指示するが問題無きや?!」

《ま、待ってくれ悪かった!!

当方は駐屯兵力の10%強を喪失!特に基地航空隊の損害は甚大だ、離陸前に艦砲射撃と空襲を受けて3割強の機体をやられた上発信装置が完全に破壊された!!》

始めから真面目にやってくれ。クソ野郎の名前を聞かされ、情報収集が遅れ、こっちは二重に不愉快だ。

《レーダーの反応から敵総数は40個艦隊前後と推定、うちヒト型が約1割に相当!姫・鬼級は見られず、旗艦は敵艦隊の戦力流動傾向や編成からタ級Flagshipであると思われる!》

艦娘二人、或いは深海棲艦2隻で一個分隊。4で小隊、6で艦隊、12で連隊。まぁ、最後のは大規模作戦時の独自編成ぐらいでしか使われない単位だが。

40個艦隊以上となれば、240~250ってところか。ベルリンで軽巡棲姫が随伴として引き連れていた数が50強、この間の大攻勢で確認された艦隊群の最大数が確か140隻前後であったことを考えると、大層な大盤振る舞いと言える。

………マンドクセ。

《敵艦隊は市街地への突入態勢を取っていたが、現在は北西1.5km地点で進軍を停止し牽制射撃のみに留まっている!その際戦力の約4割を西に配置転換させる動きも確認した、旗艦と見られるタ級Flagshipもそちらに移動している!》

《Graf ZeppelinよりAdmiral、偵察機より正面敵艦隊群の情報が入電した。総数25個艦隊前後、主力と思われる艦隊群の中にタ級Flagshipの姿も視認できたそうだ。戦力規模、編成から見てリーザ攻略艦隊の別働隊と見て間違いない》

旗艦直々の迎撃とは光栄さのあまり涙が止まらねえなオイ。益々間隔を短くする砲弾の炸裂音と飛び交う無線をBGMに、全力で思考を巡らせる。

もうちょい上等な脳味噌なら、あの堅物空母にいい加減“提督”呼ばわりさせない方策も併せて考えたいところだが。実際には深海棲艦について考えるだけでも生憎キャパシティはギリギリだ。

(*゚∀゚)「敵別動艦隊との距離、約1.5kmぅ!!」

(#'A`)「HQ、砲兵隊による支援砲撃要請!!」

(=゚ω゚)ノ《要請を受諾したよぅ。───Alle Geschutztore, Feuer!!》

イヨウ少将の二つ返事の直後、ロケットの噴射音と風切り音の不快なオーケストラが頭上を飛び越していく。自走砲パンツァーハウビッツェ2000による榴弾とMLRSのロケット弾が、群れなし唸りを上げて深海棲艦に降り注ぐ。

『『『ガァアアアアアアッ!!!?』』』

(#'A`)「続けて航空攻撃に移る!Glaf、Aquila、全艦載機発艦!!」

《Jawohl!!》

《Ruggero!!》

オーケストラの曲目が連中による苦悶の声と断末魔のクソッタレなアカペラへ移行したところで、今度はレシプロエンジン音が空を駆ける。

ウチのGraf Zeppelinから飛び立ったFw190T改【フォッケウルフ】と、イタリア空母Aquila──つい最近イタリア海軍から派遣されてこの大隊に合流した奴だ──が飛ばしたRe.2001 OR改【アリエテ】が追撃の空爆を叩き込む。

『ヲォオッ!!』

《空母ヲ級より【Mist】の放出が確認されました!迎撃機、上がってきます!》

('A`)「予想済みだ、問題はない」

犇く敵艦隊の中ほどで湧いた、焦がした魚から上がる煙のような色合の“霧”。ホーネットの弾丸やアクィラの矢に相当するナノマシンの集合体は、即座に【Helm】や【Ball】を形作って爆撃を終えたこちらの艦載機隊に食らいつく。

だが、向こうはそもそも爆撃自体を防ぐため事前に発艦させたかった筈だ。そしてこちらの砲撃により生じた“遅れ”は、深海棲艦側が思っている以上に致命的なものだった。

〈テキカンサイキグンハッカンヲカクニン、ゲイゲキセヨ!!〉

〈〈〈ヤヴォール!!〉〉〉

『『『───────!!?!?』』』

フォッケウルフもアリエテも、爆撃機としての性能は“オマケ”に近く制空戦闘こそが本来の役割だ。謂わば現代におけるマルチロール・ファイターのようなものであり、爆撃後のドッグファイトも十分にこなし得る。

『ヲッ、ヲッ………!』

腹に抱えた“重石”を捨てて身軽になった両航空隊は、追いすがってきた敵機から逃げるどころか即座に反転して迎え撃つ。
面食らった敵機群は早々に1割近くを食い千切られて総崩れになり、混乱状態の防空部隊を建て直すべくヲ級達は戦力の逐次投入を強いられる形となった。

《【スツーカ】隊、吼えろ!!》

〈〈〈──────ッッ!!!〉〉〉

両軍の航空隊による乱戦が発生するさらにその上空から、雲を切り裂き降ってくる“ジェリコのラッパ”。Grafが鍛え上げたJu-87【スツーカ】の急降下爆撃隊は、“バトル・オブ・リーゼ”の真っ只中をくぐり抜けて敵艦隊へと肉薄する。

『『『グゴォオオオオオオッ!!?』』』

250kg───正確にはそれに相当する威力の艦娘艦載機用爆弾が突き刺さり、次々と火柱を上げる。ソ連赤軍を震え上がらせた【空の魔王】に匹敵する……かどうかはわからないが、少なくとも魔王様もきっと笑顔で頷くに違いない精度を以てスツーカ隊の爆撃は深海棲艦を狙い撃った。
流石に一撃轟沈に至るケースは稀だが、艤装をピンポイントで破壊される艦が多発しみるみるうちにその火力が減退していく。

『ギィッ────ゴガォッ!?』

(#*゚∀゚)「全車両・全小隊目標地点に到達!!」

(#'A`)「総員降車!展開急げ!!」

へ級Eliteがこっちに向けた主砲が右腕ごとスツーカの爆弾によって吹っ飛ぶ様を後目に、著しく疎らになった砲撃をくぐり抜け俺たちは敵艦隊との距離を一挙に詰める。
ドリフトで急停車したエノクから即座にG36Cを抱えて飛び降りつつ、俺は懐から双眼鏡を取り出し覗き込んだ。

およそ100mほど先、なだらかな斜面が間に続いた小高い丘の上。そこに深海棲艦の別働隊連中が、所狭しと雁首並べ蠢いている。

『『『ォオオオアアアアア…………』』』

('A`)「わぁキモイ」

これが同数の艦娘であったなら………実態が小国を2つ3つ跡形もなく消しされる戦力であるにしろ、光景としてはそこまで異様なものにはならなかっただろう。
一人一人が古の軍艦の戦闘力をその身に宿していても“人数”はあくまで100人そこそこだ。まだ“内地”と呼ぶことが出来た頃のベルリンで反艦娘デモに集まっていたクソバカ連中の方が余程人数はあったし雰囲気もイカれていた。

だが深海棲艦ともなれば、外観の端的なおどろおどろしさにデカさも加わる。最大20mの化け物が100に迫る数で群れ集まり暴れ狂う様は、黙示録の一節として宗教画にすればさぞや映えるだろうよ。

('A`)(………散開してくれた方が“やりやすい”んだがなぁ)

双眼鏡で敵艦隊の陣容を端から端まで眺めつつ、思わずため息をつく。

深海棲艦がその巨体で密集していれば、一見するとかえって一網打尽にしやすくなり悪手のように思える。

だがその実、陸戦ではそもそも寄り集まって押し寄せてくるような大艦隊を“一網打尽”にできるほどの火力を用意すること自体が困難極まりない。一体一体の耐久力が文字通りの軍艦並みの化け物がスクラム組んで押し寄せてくれば、互いが盾となりあって迎撃効率はスツーカばりに急降下する。少なくとも、相当膨大な戦力を結集しない限り“短時間での殲滅”は限りなく不可能に近い。

空を飛ばせば国庫が空になる爆撃機を束で運用する国や艦娘を内陸で交番勤務の真似事をさせるほど大量に配備している国ならいざしらず、首都周りを含めた国土の北半分を丸々失陥し艦娘もようやくレンドリース込で100隻台まで回復したばかりの我らが祖国じゃどだい無理な注文だ。

('A`)「この間は“やりすぎた”か」

(*゚∀゚)「少佐殿、なんか言ったかい?」

('A`)「ただの独り言だ」

故に、現代戦においては定石となる散兵戦術を採ってくれた方が俺としては余程突け込みようがある。

向こうは旗艦に対する艦隊機能の依存が顕著で、旗艦や“知識階級”であるヒト型を複数沈めれば途端に烏合の衆と化す。これは大群であればあるほど顕著であり、また大群であればあるほど戦力の厚さや流れから位置の推測がしやすい。

なので、大きく広がり攻勢に出てくる敵艦隊を基地航空隊と自走砲や戦艦勢の艦砲射撃で牽制しつつ旗艦の位置を割り出し、護衛戦力を引き離した上でこちらの最大火力を叩きつけ一撃必殺。
このやり方なら、敵がどれほどの大艦隊であっても質さえ確保できていれば少数戦力で手早く無力化できるため幾らでも戦いようが出てくる。

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……なのだが、前回の防衛戦ではこれがちょっとばかり“ハマりすぎた”。

(;'A`)(まぁ、あんだけやられて警戒しないほど向こうも間抜けじゃねえよな)

約2400隻。コペンハーゲンとルール地方、ベルゲンを【泊地】化したことで爆発的に兵力を増強した深海棲艦による、ドイツ南部への一大攻勢作戦。恐らく開戦以来最大規模のこの陸上進攻において、しかしながら奴らはあまりに自軍の物量を過信していた。

ベル=ラインフェルト中将の──当時はまだ大佐だったが──指揮下、ただでさえ少数の兵力をさらに薄く広く分散した防衛線。これを一息に押し流そうと、或いはこちらが施す何らかの仕掛けを纏めて踏み潰そうと、向こうもまた大きくフロントラインを広げた上で全方面での総攻撃に移行。

そして、戦力の展開傾向や艦隊の移動法則から割り出された各方面軍の主力群・旗艦隊に、当時まだ出来たてホヤホヤだった俺達【機動迎撃大隊】とイッシ=ストーシュル大佐の下で基地航空隊・空母艦娘艦載機隊と機甲師団を合流・再編させた【混成機械化打撃群】が前線を食い破った上で一挙に強襲をかけ仕留める。

この、“現代のマンシュタイン”が描いた青写真はそのまま一分の相違もなく具現化された。ヤパーヌフリークのイヨウ少将は「ツリノブセ」やら「オケハザマ」やら興奮気味に言ってたが、まぁ名前はどうでもいいだろう。

挙がった“戦果”は………正直50隻をこえたところで面倒になって数えるのを辞めたよ。一週間と経たず滅びを迎えると世界中から思われていた祖国は、寧ろその半分以下の期間で未曾有の大艦隊を消滅させることに成功したわけだ。

その後はご覧の通り。相当なトラウマを植え付けられたらしい連中は、これ以前の散発的な攻勢も含めていかなる時であっても古代ローマのファランクスもかくやの密集陣形で押し寄せ病的に分散・孤立を避けるようになった。

旗艦の位置自体は前以上に容易くとしても、こっちはさっきも言った通りベルリンの一件で壊滅的な打撃を受けて以降戦力は数も質も不足している。下手に策を弄されるより、こうした純粋なソヴィエト赤軍式の物量攻勢を仕掛けられる方が正直かなり手を焼かされる。
  _
( ゚∀゚)《ドク、こちらジョルジュ=オッペル!全小隊が配置についたぜ!》

( <●><●>)《後方にてツン大尉の機甲師団、それとミルナ大尉の別働隊も戦闘準備完了。総攻撃の機会が整ったことは解ってます》

('A`)「よし」

まぁ、あくまで「散兵攻勢と比べて」の話で。

('A`#)「ツン、Bismarck、攻撃を開始しろ!!

Feuer, Feuer!!」

別にこれについても、“やりよう”は幾らでもあるけどな。

ジョルジュ=オッペルとティーマス=ワーカーの報告を聞きつつ、無線越しに号令を下す。直後頭上を、先の砲兵隊によるものより遥かに数を増した風切り音が無数の砲声を残して駆け抜けた。

『『『ォガァアアアアアアッ!!?!?』』』

レオパルド2戦車隊、実に40両超による一斉射撃が丘の上を埋め尽くし、照らし、焦がしていく。コーヘン方面で【混成機械化打撃群】が大いに抵抗してくれているおかげで、【機動迎撃大隊】の保有機甲戦力を全て投入できた結果の濃密な火線構築だ。

大隊のくせに砲兵隊とエノク合わせりゃ余裕で一個機甲師団並の陣容となる点については……まぁ緊急時の臨時編成ってことで一つご容赦願おうか。ズタボロ国家の軍隊じゃ編成単位と実際の部隊規模が違うなんざ日常茶飯事だしな。

《2号車エミ=ナカスガより指揮車、全弾着を確認!敵艦隊にダメージあり!》

ξ#゚⊿゚)ξ《次弾装填、全車続けて撃て!

Feuer!!》

ツンが率いる戦車隊は俺達の後方数キロ地点、深海棲艦や艦娘の視力なら“肉眼”での観測が十分可能な位置に布陣している。当然余裕で艦砲による射程圏内、集結中の時点で攻撃を受けていれば相応の損害は免れなかっただろう。

だが連中の目は、その手前で自分たちに向かって一直線に突っ込んできた“狸”の群れに引き寄せられた。
まぁ南方攻勢の際、“旗艦轟沈”の前兆は基本艦娘部隊載っけたエノクの突貫からだったしな。そりゃあ奴らも警戒するわけだ。

とはいえ、その辺りの事情を加味しても全火力の誘引成功とそれに伴い機甲部隊が無傷で火線構築を完了したことは望外と言う他ないが。………逝った奴も、エノク隊の“損害”も、覚悟していた分よりは「遥かに軽微」なもので済んだ。万々歳といえる。

クソッタレが。

『ヴォオオッ───ブゴォァッ!?』

《Treffer!!》

これだけ派手にぶちかましてれば当然向こうの注意を引く。軽巡ヘ級──デカさから見るにFlagship──が右手の艤装をツンたちに向け、そのままSKC/34型 38cm連装砲弾の直撃によって跡形もなく吹き飛ばされた。

《よし、一撃轟沈!これがドイツ第三帝国が誇る戦艦の力よ、流石よね私!

Kamerad、Admiral!遠慮なく褒めてくれても構わないわ!!》

ξ#゚⊿゚)ξ《うるせー黙ってろまだ戦闘中だよ!!!!》

目一杯胸を反り返らせての超弩級ドヤ顔が容易に想像可能なドイツ軍最強艦娘の物言いに、“Kamerad”の方はブチギレて怒声を張り上げる。

えっ、“Admiral”の方はって?そりゃ勿論、痛む頭を抑えていたとも。

……大隊への定期支給品に頭痛薬を含めるよう少将に談判したほうがいいなこりゃ。

何が厄介かといえば、Bismarkが抱く自信がアイツの実力に対して「適量」であることだ。加えて悪意もなく10歳児がお使いを無難にこなしたことについて親に称賛を求めてるようなもんだから、TPOの問題こそあれ強く静止するのもはばかられる。

まぁ幸い超弩級に鬱陶しいだけでこれといった実害はないのだが。
しかしこれで日本が実装に成功したとかいう新式改装【Drai】が施されたらどうなっちまうんだろうか。ブチ上がった自信とテンションだけで空ぐらい飛べるようになるかもしれない。

《追撃します!

Prinz-Eugen, Feuer!!》

《戦艦Littorio、新しいCommodoroにお力を存分にお見せしましょう!

Fuoco!!》

《ドイツのワインもぉ、なかなかいけますねぇ〜♪この味大好きですぅ〜♪》

《Zara、砲撃開sってPola!?何やってるのあなたは!!?》

Bismarkに続けて、他の四人も砲撃を開始する。

全員がツンの戦車隊に同行しているため距離はせいぜい3kmと少し、艦娘の視力にGlafとAquilaの艦載機による観測補助までつけば「至近距離」と呼んで差し支えないだろう。砲弾は的確に迅速に、戦車隊への攻撃態勢を取っていた敵艦を狙い撃ち薙ぎ倒していく。

……約一名明らかに無線の内容がおかしかったが、仕事自体はこなしているようなので深くは問わない。

胃薬も追加するべきかな畜生。

(;'A`)(ウチも大分濃い方だと思ってたが、イタリア連中も負けず劣らずだよなぁ……)

【東欧連合軍】の設立に伴い独伊両国の鎮守府関連組織や部隊が統合された影響で、俺達の部隊にもイタリア艦娘部隊が合流している。
交流武官だった時代の名残で事前に面識があるベル中将からは大層クセが強いと事前に知らされていたので覚悟はしていた──そもそも艦娘にクセが強くないヤツがいるのか甚だ疑問だ──が、連中は割と高めに設定したハードルを易易と飛び越えてきた。

《敵艦撃破ぁ〜。ご褒美にぃ、もう一本開けちゃいます〜》

ξ;゚⊿゚)ξ《いやここ最前線!戦闘now!!何本持ってきてんのよアンタ!?》

《す、すみません!ツン大尉、本当にすみません!!あとでZaraの方からよく言って聞かせるので!!》

特に、重巡洋艦Polaの“濃さ”は群を抜いている。なにせ四六時中、本当に一秒たりとも手からワイン瓶を放そうとしない。ワインが尽きればビール缶を、ビールがなくなれば工業用や消毒用のアルコールに手を出すことさえ厭わない。

Polaという艦娘の特性なのかと思えば、他の部隊も相当な酒好きとはいえここまでではないらしい。お陰様でこの大隊は常に大量のアルコール類の支給を受けなければならず、輸送の枠を少なからず圧迫してさえいた。

一時は“【機動迎撃大隊】の車両はアルコールをガソリン代わりに使う最新型の戦車を使っている”なんて噂が、大真面目に陸軍内で広がったほどだ。

これでただのアールコール中毒艦娘だったなら、心のこもったお手紙と共にイタリア軍に叩き返してやったところだが。

『ゴ…………ォ…………』

《はい、また1隻ぃ〜》

Bismarkと同じ“厄介なクチ”なのだから、人生はままならない。

《アドミラ〜ル、敵別動艦隊の轟沈数、20隻を超えました〜。損傷ありの艦についてはぁ……多すぎてちょっとわかりませ〜ん》

(*゚∀゚)「少佐殿、多分敵艦隊が受けた損害の出どころは半分ぐらいウチのBismarkとあのPolaだぜ?」

('A`)「眼の前で見てたから知ってるよ」

あれだけ飲み、あれだけ(常時)酔ってるというのに、Polaの射線がブレたのを見たことがない。Polaが狙った獲物を仕留め損なったのを見たことがない。

なんて名前だったっけか、香港出身のデカッ鼻なクンフー・アクションスター。そいつの主演映画よろしく酒を飲めば飲むほど強くなるとでも言うつもりだろうか。
ドイツ軍に派遣されたイタリアの艦娘がケンポーの使い手とはいよいよもってグローバリズムの集大成だなオイ。

《Graf ZeppelinよりAdmiral、偵察機から入電。リーザ包囲中の敵主力艦隊が別動艦隊へ新たに戦力の抽出を開始した》

ともあれ、これで状況が動いた。

('A`)「数は?」

《15〜20個艦隊といったところだな。ヒト型は数えるほどだが非ヒト型は全て“陸棲型”だ、10分と経たずに合流してくるぞ》

('A`)「OK、そのまま監視を継続。Aqilaと共に制空権を死守しろ!

ツー、ドレスデンにカーメンツとフライベルクからの基地航空隊投入を要請してくれ!フライベルクの方は直接ぶつけて足並を乱せ!」

(*゚∀゚)「Ja!!」

《Jawohl》

旗艦直々に別働隊を率い、リーザへの攻撃を大きく鈍化させてまでの対応。向こうは油断してもいなければこっちを甘く見ていたワケでもない。最大限の警戒を持って対処してきていた筈だ。

にもかかわらず、奴らは艦娘を含む戦力に肉薄を許した。派手な“仕掛け”につられて“本命”に無傷で展開され、戦闘開始早々に甚大な損害を受けた。
一連の流れは間違いなく奴らにとって想定外であり、それによって浮足立っている。

(*゚∀゚)「ドレスデンの前線司令部は要請を受諾!基地航空隊が順次出撃開始、最短400秒後には空域に到達の予定!!」

( <●><●>)《機甲部隊による第三次一斉射弾着。新たにホ級Eliteが1隻沈黙、他損傷艦多数。敵艦隊の混乱がさらに拡大したのは解ってます》

(#'A`)「よし!指揮車より前衛小隊各位に伝達、弾薬装填!射撃態勢!!」

俺達にとっての優勢は、敵にとっての苦境。当然打破に動くだろうが、させない。

(#'A`)「────Angriff‼」

ここで、勝負を決する。

腹ばいになっていた地面から立ち上がり、G36Cを構え、引き金を引く。最大有効射程800mに対して“標的”との距離は200m強、向こうのデカさは5mオーバー。おまけに光学サイトの照準補正付きだ。

射撃が特別得意ってわけでもないが、外す道理はない。

『オォンッ!?……ガァァッ!!』

放った弾丸は全て標的──駆逐イ級の右眼周りに着弾し火花を散らす。突然視界を遮られたイ級は面食らったように一瞬仰け反り、すぐにこちらを向いて咆哮する。

元々深海棲艦の駆逐級については、通常種・Elite・Flagship以外に前期型と後期型という分類が存在した。
海上特化………というかほぼ海のみでしか運用不可能な形状のものが前期型、歪な足のようなユニットを生やし、水陸両用とまではいかないにしてもある程度の陸上行動を想定した造りになっているものが後期型と呼ばれる。

だが【泊地】が出来てからしばらく後、“新型”がヨーロッパの各戦線に出現した。

『グォオオッ!!!』

(*#゚∀゚)「イ級、こちらを指向!!」

(#'A`)「前進止めるな、とにかく視界を潰し続けろ!

Feuer, Feuer!!」

それが、目の前のイ級のような“陸棲型”だ。

名前の通り、この型はそれまでの深海棲艦と比較し陸上活動能力が桁外れに向上している。艤装の転換や装備性能の改善というよりは、どうも奴ら自体が根本から「造り直した」代物らしい。

例えばイ級の場合、体の両側面から3対の「脚」を生やしておりこれを用いて歩行・走行する。

形状としてはまんま昆虫のそれをイメージすれば当てはまるが、「節」の部分は連中の甲殻と同じ物質で覆われていて並の火力では容易には破壊できない。
前脚2本はカマキリの鎌のような使い方も想定しているためかやや大きく発達していて、先端も後ろの二対と比較しかなり鋭利だ。

フランスの方じゃ前脚を使い穴を掘っていた姿も目撃されているらしいので、或いは建設重機の役割も担っているのだろうか。12.7cm連装砲をぶっ放せるブルドーザーがあったらさぞや岩盤工事が捗るだろうな。

速度は時速30km前後、後期型のあの取ってつけたような脚部ユニットと比較すれば天と地ほどの差があるが、そこまで高速というわけではない。が、連中には図体のデカさと表皮の頑丈さ、そして軍艦をモチーフとした化け物ゆえの“航行距離”の長さがある。
障害物ガン無視で長時間の無停止行軍が可能となればその機動力は決して馬鹿にならず、しかも駆逐級故に物量も膨大だ。

実際コイツらが最初に確認された北欧戦線は100隻を越える“陸棲型”との接敵から僅か1時間で防衛ラインを食い破られ、ようやく配備されたノルウェー軍最初の艦娘による奮闘もむなしく28時間後にはヴィーケン県全域とノルウェーの首都オスロを失陥した。

俺達東欧連合軍にとっても、その脅威は決して小さなものではない。奴らが仕掛けてきた例の南方攻勢に際しては、機動防御による主力艦隊の殲滅後反転攻勢に移りライプツィヒを奪還するところまで計画は練られていた。
だが現実には、この“陸棲型”と“高機動型チ級”による迅速な戦線の穴埋めでリーザ他数都市への進出が精一杯だったという実情がある。

物量面でも個々の質の面でも圧倒的な劣勢を強いてくる深海棲艦に対して、俺達人類の明確かつ数少ないアドバンテージが陸路における機動力だった。
下半身を車両に換装した【高機動型チ級】や北部で放棄されたバイクや車を乗りこなす“あの”リ級のようなヒト型もいるにはいたが今はまだ少数派であり、ごく局地的にはこの機動力の差を生かして質量双方で上回ることさえしばしばできていた。

その「数少ないアドバンテージ」が“陸棲型”に潰された今となっては、この戦争の行く末はお先真っ暗と言っても過言じゃない。

おめでたい宗教家共が言う「神の試練」とやらがこれならあまりにも厳しすぎるし、向こうが「神の恵み」を受けているならあまりに深海棲艦側への肩入れが酷すぎる。
中東の狂信者共が主張する俺達人間の根絶やしを目的にした「神の審判」として見ても、自分で作ったブツが自分で作った星に厄災バラまいてるのを数世紀薄ぼんやりと眺めた挙げ句ようやく対処するってんなら、あまりに間抜けでウスノロだ。

つまりやはり神はどうしようもないクソ野郎か存在しないかの二択であるという結論が導き出せるので、俺としては必ずしも悪いことばかりじゃないかもしれないが。

『ゥオオオオオッ!!!』

「イ級、口内より主砲展開!砲撃態勢に移行!!」

(#'A`)「ツー!!」

その上で“無神論の補強”以外になにか一つ、血眼にして「不幸中の幸い」を一個無理に上げるとするならば。

(#'A`)「Panzerfaust‼」

(*#゚∀゚)「Jawohl!! Feuer!!」

連中の、非ヒト型の“オツムの出来”については、陸上性能ほど大幅な向上が見られなかった点か。

『グォオオオオオオッ!!!?』

まさに口を開き、俺がいる方めがけて砲弾を吐き出そうとしたイ級。その横っ面を右側から強烈にぶん殴ったのは、ツーが構えたパンツァーファウスト3の一撃だった。

尾のような形をした後部艤装の機銃を使えば、より素早く俺達に攻撃をかけられただろう。飛びかかって白兵に持ち込めば、容易く俺のことなんて捻り潰せた。後方のツンたちへの反撃を続けていれば、角度的にツーがパンツァーファウストを撃っても前脚に射線を遮られて直撃は避けられたはずだ。

だがイ級は、俺たちの露骨な妨害に釣られてこれを一挙に排除しようと短絡的に行動し、姿勢を崩したことでパンツァーファウストの射線が開け、艦砲射撃の為の大きな動作はツーがこれを撃つのに十分な隙となった。

タ級による指示を受けている状態でも、直接の交戦ならこれだけ容易く撹乱すできるワケだ。敏捷性が跳ね上がった分一個体あたりの脅威度も増しはしたが、それでもまだ対処する手段は幾らでも残っている。

何時までそうかは、俺にもわからないが。

「Feuer!!」

『グゴォッ……ギィアッ!!?』

素直に「自身にダメージを通すだけの攻撃」が飛んできた方へと首を向けたイ級を、反対側から別の隊員が放ったパンツァーファウストが殴打する。装甲が砕けひび割れ、口内砲があらぬ方向へと振れ、引き千切られた“歯”が吹っ飛んで地面に転がる。

(#><)「Panzerfaust, Feuer!!」

他の小隊も本格的に交戦を開始したらしく、ビロード=ヴァルネファーの叫び声が爆発音や深海棲艦のうめき声と混ざり合って耳に届く。
奇襲による先制は完璧に成功したな、反撃らしい反撃は今のところない。

『ゴォオオ…………!』

とはいえ、パンツァーファウストは有効打ではあってもある程度の数を揃えなければ「決定打」にはなり得ない。
前衛小隊に配備している分だけなら、全て束にして叩き込んでもせいぜい2、3隻仕留める程度が精一杯だろうな。向こうが反撃態勢を固めれば、計200人前後の歩兵隊なんざ抵抗する間もなく塵芥と化す。

(*#゚∀゚)「イ級、ダメージ有りも継戦能力維持!再度砲撃態勢に移行!!」

(#'A`)「Leberecht、Max、Grecale、Libeccio!!」

「「Jawohl!!」」
「「Ruggero!!」」

だから、「決定打」を別に用意しておいたワケだ。

俺達の後方で無造作に停車し、乗り捨てられているエノク。その裏から駆逐艦が4人、艤装を構えつつ一斉に飛び出す。

「艦隊戦、やってみせるさ! Feuer!!」
「我らの本当の力を見せるわ。 Feuer」

1934型駆逐艦の、Z1 Leberecht MaassにZ3 Max Schultz。

「さぁーケンカだケンカ!ぶっ放すよー、Fuoco!!」
「イタリア駆逐艦の本当の力、教えたげる!! Fuoco!!」

Maestrale級駆逐艦、2番艦のGrecaleと3番艦のLibeccio。

装備は全員あくまで12.7cm連装砲。駆逐艦以外も装備自体はできるがする機会は滅多に無い、艦娘の艤装としては最低火力に位置する。
陸上ゆえ当然魚雷も使用できず、駆逐艦が発揮できる火力は“対深海棲艦”で考えるならたかが知れている。

『ォ゛………オ゛…………』

(#*゚∀゚)「イ級の轟沈を確認!!」

ただ、既に“有効打”によって損傷を受けている敵艦へのトドメとしては、それでも十分だ。

「ジョルジュ大尉!Admiral正面の敵艦、轟沈させたよ!!」
  _
( ゚∀゚)《しっかり見てたぜFreyline!次は俺達の前にいるホ級に一発頼む!》

「ッ! Ja!すぐに行くよ!!」

「……レーベ、いやに張り切ってるわね。

Z3、次の敵艦へ砲撃を開始したわ。効果の程の報告をお願い」

( <●><●>)《軽巡ト級に損害あり。有効なのはわかってます》

《第5小隊よりGrecale、私達の正面にいるロ級への攻撃もお願いできる!?》

「Ruggero♪ Grecale、追加のお仕事入りまーす。えーい!!」

「まだまだぁ、リベの活躍は始まったばかりなんだから!

Fuoco!! Fuoooco!!!」

《Libeccioの砲撃に合わせろ!第8小隊、前進!!》

歩兵小隊に照準を向けている艦を排除すれば、後は自由射撃だ。とにかく手当り次第派手にぶっ放させ、俺達の存在をアピールする。

『グゴッ!? ………ギィアッ!!』

『『『ガァアアアアアッ!!!』』』

( <●><●>)《正面敵別働艦隊、戦車隊・主力艦隊に対する砲撃を大幅に減退させています。非ヒト型の多くが目標を我々に変更しつつ有ることは解ってます》

猛烈な射撃によってレーベたちの存在を認識させたことで、優先順位が変わる………とまではいかないが、俺達への警戒レベルは大幅に引き上げられる。

そりゃそうだろうよ。駆逐艦ゆえに火力は貧弱だが、鼻先に展開していた部隊に艦娘がいると解ったんだ。手早く潰さねえと何されるか解らなくて不安だよな?

にしたって、挑発された4、5隻が反応したのみの状態から中大破艦も含めて数十隻が俺達に砲口を向け始めるのは動きとして露骨すぎるが。現状を予想できてませんでした、慌ててますってのを隠そうともしない。

解りやすい相手で助かるよ。

(#'A`)「ミルナ大尉、Roma、攻撃開始!!」

(#゚д゚ )《Jawohl!!

Alle Morser, beginnen zu Feuer!!》

『『ウゴァッ!!?』』『『ギィッ!!?』』

戦闘区域の南数キロ、ザント川沿いに焼け残っていた雑木林。そこに予め用意した“伏せカード”を、満を持して切る。

敵艦隊全域を覆うようにして降り注ぐ、ミルナ大尉指揮下の迫撃砲弾。パンツァーファウスト同様あくまでも「有効打」に留まるが、なにせ向こうは密集陣形だ。纏まった数が被弾による苦痛から身動ぎの一つ二つもすれば、それだけで艦隊全体の運動を阻害できる。

《Vene、出番がないんじゃないかと不安になったわ。

戦艦・Roma、砲撃を開始する!主砲、撃て!!》

『『『グゴガァアアアアッ!!!?』』』

そして取り分け混乱が激しい箇所に叩き込まれるのは、大尉に同行させたイタリア海軍のV.Veneto級戦艦4番艦・Romaによる主砲一斉射。奴さんやLittorioの装備する50口径381mm三連装砲は散布角が大きく命中率に難アリと聞いていたが、それを感じさせない見事な狙いで幾つかの敵艦が爆炎に包まれる。

流石はイタリア海軍最強と謳われた鎮守府の指揮官にして現東欧海軍統合提督肝いりの艦娘、質は一級品だ。その「一級品」をこんな便利屋扱いの独立愚連隊にブチ込んでいいのかという疑問は浮かぶが。

〈〈〈─────!!!〉〉〉

(*゚∀゚)「フライベルクより基地航空隊到着、敵別動艦隊第二波へ攻撃開始!!」

砲煙が逆巻き、未だグラーフたちと敵空母それぞれの航空隊が入り乱れる上空を、新たに現れたレシプロ機の群れが猛然と突っ切り飛び去っていく。ツーの報告があって間もなく、「丘」の向こう側から爆発音と深海棲艦のくぐもった呻き声が聞こえてきた。

《こちらGraf Zeppelin、敵艦隊第二波に損害発生し進軍大きく遅滞。だがリーザ近郊より今度は【Mist】を相当量確認したぞ、恐らく報復の艦爆隊と思われる!》

('A`)「問題ない。カーメンツ基地航空隊は空域に突入、発艦開始した敵艦爆隊を叩け!」

〈〈〈ヤヴォール!!〉〉〉

最初に展開していた艦隊が40個艦隊余に対しての4割強で100隻に届くかどうか。次に投入された第二波が15〜20個艦隊、最大120隻。

一応「別働隊」と銘打ちはしたが、合計で8割に迫る戦力を旗艦直々に統率・展開させているならそれはもう“主力艦隊”であり、連中は俺達の側を“主戦場”に切り替えたと見て間違いない。

そして、“そんな状態”で尚リーザ周りに貼り付いている戦力があるとすれば、それが砲撃戦を不得手とする艦種───空母群、それも艦爆を主力とした対地・対艦特化の艦隊であることは容易に想像できる。

だからこちらも、カーメンツ航空隊の突入を遅らせていたワケだ。

『『『─────!!?!??』』』

〈テッキゲキツイ!……ナルホド,コレガヤパーヌノキタイノチカラカ!〉

〈スサマジイセンカイセイノウ、“ヤマトダマシイ”オソルベシダナ!!〉

カーメンツに配備された基地航空隊は艦爆隊や友軍輸送機の護衛を主任務とした部隊で、メッサーシュミットとフォッケウルフに加えて日本からレンドリースされた“ゼロ”を多数保有している。また練度についても、リスボン沖やベルリン、南部防衛戦などデカい戦いで鍛え上げられた妖精たちを選抜編成した最精鋭だ。

《AquilaよりAdmiral、カーメンツ航空隊がリーザ方面の敵艦裁機群と交戦開始!圧倒的優勢の模様です!》

東欧連合軍内で最強とまで言われる制空戦闘能力の高さは、伊達じゃない。

('A`)「Graf!モールスでいい、偵察機からリーザ近郊における【Mist】の発生位置を確認できた範囲で全てリーザ基地に共有しろ!

ドク=マントイフェルよりリーザ司令室、機甲戦力と艦娘は動かせるか!?」

《こちらリーザ、レオパルドとプーマの混成ならニ個中隊程度を抽出可能だ!艦娘に関してはG.Garibaldi、Prinz-Eugen、どちらも損害は軽微で戦闘行動に支障はない!》

('A`)「Grafから敵空母の位置情報を送る、攻勢に移れ!護衛の随伴艦もいるだろうから注意しろ!

それと砲兵火力で敵第2艦隊群への横撃も頼みたい!」

《Jawohl!!》

艦隊戦力の大半をこちらに誘引し、位置情報を割り、航空戦力のアタマを抑えた。
事ここに至れば、リーザの防衛兵力を後生大事に温存する必要はなくなった。遠慮なく投入し一挙にタ級たちの退路を塞ぎにかかる。

軽く田舎町の防衛部隊を捻り潰してこちらの防衛線を粉砕する筈が、いつの間にやら追い詰められ寧ろ率いていた大艦隊が包囲殲滅の危機。
タ級がその事実に益々動揺を深くしている様子は、続く敵艦隊の動きから如実に察せられた。

『『『グォオオオオオオンッ!!!』』』

《Graf ZeppelinよりAdmiral、第二敵艦隊群が一斉に反転運動に移っている!目標を再度リーザ攻囲に切り替える模様!》

《リーザ第一臨時砲兵中隊、敵艦隊による砲撃を受けています!照準は滅茶苦茶ですが既に現時点でかなりの火力!!》

別動隊との合流を目指していた、第二艦隊群の総転身。無線じゃ妙に慌てたやり取りが飛び交っているが、俺としては礼の一つも言いたくなるほどの“最悪手”だ。

後衛の残余空母艦隊を守りたいなら、4つ5つ艦隊を選抜してソレラだけを守りに向かわせれば十分な対処を施せた。リーザ制圧による一挙逆転を狙ったなら、後衛艦隊をリスク度外視で突撃させ乱戦に持ち込み稼ぎ出した時間で順次艦隊を反転させたほうが確実だった。
どちらも、非ヒト型の主力が“陸棲型”故の機動力を踏まえれば十分に可能だったと思う。だが連中は、“100隻超の艦隊を密集状態で一斉に方向転換させる”という最悪手によってせっかく得た機動力を自ら殺した。

仮に前者二つの動きを取られていたとしても対処法を用意はしていたが、少なくとも冷や汗の量はもう少し増えていたに違いない。

(#*゚∀゚)「フライベルクより基地航空隊第二波到着!ピルナ発のスツーカ隊、パウツェンからの爆装型メッサーシュミット隊も間もなく!」

('A`#)「そのまま第二艦隊群にぶち込め!とにかく打撃を与え続けろ!!」

〈メイレイヲジュダク、ゼンキトツニュウセヨ!!〉

押し合いへし合いながらノロノロと反転を続けているだろう敵艦隊の頭上から、メッサーシュミットが、フォッケウルフが、スツーカが、油断しきって草を食む羊を見つけた狼の群れのごとく襲いかかる。

本来これを迎え撃つべき敵の航空戦力は、第一群は砲撃戦に巻き込まれた上でAqilaとGrafに、第三群はカーメンツの航空隊とリーザの機甲・艦娘連合部隊によって封じ込めた。第二群自体は航空戦力を保有していない。

数に飽かせて対空砲火を全力でバラまけば振り払えたかもしれないが、密集状態の大艦隊が反転運動の真っ最中とあればそれもまた無理難題だ。

〈ロス、ロス、ロス!!〉

〈オレノ“ラッパ”ヲゾンブンニキケェーー!!〉

〈ヨシ、チョクゲキダ!!〉

『『『グガァアアアッ!!!?』』』

レシプロエンジンの音、ジェリコのラッパ、爆弾の投下音、そして大分恒例行事となってきた、深海棲艦が上げる悲鳴と断末魔の二部合唱。空に撃ち上げられている迎撃火線の量は微々たるもので、歴戦の航空隊を撃ち落とし止めようとするならあの100倍は用意する必要があるだろう。
丘の向こうに広がる光景が、余程一方的な虐殺となっていることは想像に難くない。

( <●><●>)《少佐、カーメンツにイタリア陸軍の第22“陸艦”混成中隊も到着。同隊所属のAquilaもRe.2005 改の爆装型を発艦させたとのこと》

( ゚д゚ )《アンベルク=ブッフホルツにはチェコ・イタリア連合機械化部隊が展開、同地に即席基地航空隊拠点の敷設を完了したとのことだ!Do 17 Z-2並びにSM.79、離陸準備できている!》

('A`#)「投下目標完全自由にて順次突入!効率や短期決着なんて考えなくていい、とにかく手数を優先しろ!!」

(=゚ω゚)《こちらCP、我々も臨時基地航空隊を施設完了した!全機上げていくよぅ!》

『『ガガァッ!!?』』『『グァッ!?』』

最初に大爆撃で突き崩し掻き乱したら、後はひたすら波状攻撃を仕掛けて建て直す隙を与えない。どこまで優勢に戦況を推移させようが物量も火力も未だ圧倒的な差がある、向こうが少しでも“冷静”になる機会を得ればたちまちひっくり返されそのまま押し切られる。

『アァアアアアアッ!!!』

『『『ガァッ─────!!』』』

向こうもそれを思い出したらしい。人間と深海棲艦の力量差、艦娘と深海棲艦の物量差を。ほんの一瞬でも俺達に隙を作れたなら苦もなく勝利を掴めることを。

故にタ級は、隙を作る機会を“前”に求めた。中核艦隊が、ネ級やル級といったヒト型が、混乱し損傷も激しい非ヒト型・随伴艦隊を押しのけて一斉に前衛へ進み出る。

完全に制空権を掌握され混乱も損害拡大速度も著しい第二群、ある程度の統率こそ維持しているものの火力面での優勢が盤石とは言えず乱戦に持ち込まれた第三群は何れも収拾をつけ再度戦力化するのに時間がかかると判断したか。
恐らく、中核艦隊の火力を総動員して最寄りにいる俺達突撃隊を一挙に消し飛ばすつもりだろう。

実際その判断は、先の“最悪手”とは比較にならないほど的確だ。ヒト型は少数とはいえ保有火力、砲爆撃に対する耐久力は何れも非ヒト型と比べ物にならない、2〜3個艦隊分が束になれば歩兵200余名に駆逐艦娘4人なんて欠片も残さず吹き飛ばされる。
鼻先の“楔”さえ砕くことができれば、あとはツンやビスマルクたちの部隊と真っ向から殴り合って強行突破するもよし、牽制で足止めしつつ第一群と第二群を合流反転させて第三群の救助並びにリーザの制圧に取り掛かるもよし、こちらを潰す手段は選り取り見取りだ。

非ヒト型による「壁」を自ら排除し戦車隊と艦隊の砲撃に身を晒すリスクに、十分に見合ったリターンを得られる。タ級自身の采配かより“上位”の存在による指示かは知らないが、失策を十分に取り返す「英断」と言える。

─────まぁ俺達にとっては、その「英断」こそが最大の「隙」に繋がるわけだが。

(#'A`)「Granate Feuer!!」

(#><)「Jawohl!!」

( <●><●>)「Ich verstehe」

第一群中央、それこそ俺の小隊が展開する真正面に非ヒト型共を退かしながら進み出てきた中核艦隊。連中が戦列を整え艤装を構えるよりも早く、ティーマスやビロード、他十数人が一斉にその地点めがけて“砲撃”する。

H&K/HK69擲弾筒。この距離なら十分に運用自体は可能だが、本来グレネードの威力なんざ深海棲艦相手には嫌がらせ以上のものにはなりようがない。

だが、今回これらに装填されているのは、

『ガァッ!!?』『ギャッ───』『アァ、アァアアア…………』

改良型のフラッシュグレネード、閃光弾だ。

(#*゚∀゚)「敵中核艦隊、周辺随伴艦共々動作停止!閃光弾効果大!!」

(#'A`)「駆逐艦隊、並びに残余全小隊の指揮権を一時ビロード少尉に移行する!【イェーガー】各位、突入準備!!」

指示を出しつつ、俺自身腰から取り外した銃剣をG36Cの先に取り付ける。

………Jaeger(狩人)なんざガラじゃないんだがな。巨人と深海棲艦、どちらを駆逐する方が面倒くせえだろうか。

(#'A`)「Los, Los, Los!!」

前へ、前へ、前へ。さして速いとは言えない脚に乏しい筋力を全て注ぎ込み、泥濘で滑らないように最低限の注意は払いつつとにかく突っ走る。周りではジョルジュやティーマスが率いる“狩人”連中も、中核艦隊に狙いを定め疾走しているのが気配で察せられた。

一応G36Cは構えているが、撃つためじゃない。閃光と音で怯んではいるが船体殻が健在である以上撃ったところでダメージはないし、下手な目くらましや妨害をするならビロードたちに任せた上で俺は距離を詰め切ることに集中した方がいい。

じゃあ何故銃を構える必要があるかって?決まってる。

(#'A`)「───Fahr zur Holle」

『………ギィヤッ!?』

連中の青白い肌に、刃を突き立ててやるためだ。

銃剣を振り被った先には、重巡リ級の姿がある。驚愕で見開かれた眼が赤く輝いているのを見るに、Elite種であることが伺えた。

ただ、リスボンやベルリンの“アイツ”とは別の個体だ。仮にそうであるなら同じ状況でも寧ろ爛と笑みを浮かべて反撃の拳を振るってきただろうし、そもそもこんな状況に陥る前に………いや、これについては何ならわざとこうなるまで放置した上で逆境をたっぷりと堪能していたとしてもおかしくないな。

いずれにせよ、“アイツ”がこの場にいなくてよかった。そんな場違いな感想を妙に冷静に懐きつつ、俺はリ級の喉笛に深々と銃剣を突き立てる。

『ア゜ッ゜』

(#'A`)「Down!!」

間髪を入れず射撃。単射モードに切り替えていたG36Cから吐き出された5.56mm弾が、首をぶち抜いて後方へ飛び出す。顔面に渾身の右ストレートでも食らったような勢いで後方へ倒れ込んだリ級にもう一度引き金を引くと、急速に光を失っていく右眼を弾丸がえぐり取った。

船体殻が消えたなら、どうやら死んだ“ふり”ではないようだ。
  _
(#゚∀゚)「伏せろ!!」

『………ッ、グゥ!!』

ジョルジュの叫びに応じて反射的に膝を折る。頭上をフルオートで放たれた火線が通り過ぎ、やや離れた位置にいたル級の船体殻の表面で弾けた。

『ジィアッ!!』

閃光弾の衝撃から立ち直りつつあったらしいソイツは、それを妨げる形で顔面付近に集中したジョルジュの射撃に対して苛立たしげな声を上げる。艤装を構えはするが、視界を弾幕で塞がれて照準は覚束ない。

その隙に、俺は屈んだ姿勢のままル級めがけて駆け出す。距離はせいぜい5メートル、若干の無理をすれば、ヤパーヌのニンジャのような人知を超えたスピードがなくとも1秒とかけず距離は詰められる。

『ッ!? ウォアッ!!』

('A`;)「Verdammt……!」

肉薄し突き出した銃剣はしかし、ル級が咄嗟に地面を滑らせて構えた艤装に阻まれ届かない。

これがル級の厄介なところだ。深海棲艦の中でも取り分け大きな艤装が遮蔽物となり、肉薄しての白兵戦に持ち込んでも刺突や斬撃を通しにくい。膂力がある分重量も苦にならず、こうして死角を突いても気づかれれば瞬く間に防がれる。

『キヒッ………!』
  _
( ゚∀゚)「100ユーロ札でも拾ったか?クソアマ」

『────!!!?』

故にこそ、ル級相手の“白兵戦”は二人一組が基本となるわけだ。
  _
(#゚∀゚)「うぉらぁっ!!」

『コピュッ………クォッ、コホッ………』

俺の“フェイント”を躱し、機銃でバラバラに引き裂いてやろうと勝ち誇った笑みを浮かべていたル級。だが反対側から肉薄してきたジョルジュが脇腹にナイフを突き立てると、途端にその表情は苦痛と驚愕、恐怖で彩られる。

そのまま2度、より深くねじ込まれるナイフ。ル級はその動きに合わせて同じ数だけ身体を痙攣させると、ブクブクと青い血を溢しながら前のめりに崩れ落ちた。

『カァッ………!?』

「Gegner Dawn!!」

『ウグッ、イギャアアアアアッ!!!?』

「Stirb, Stirb……!!」

他の“狩人”たちも、俺達に続いて次々と中核艦隊に白兵を仕掛けていく。重巡ネ級がこめかみにナイフを叩き込まれ絶命し、別のル級は包囲して一斉に飛びかかってきた4人に反撃できず銃剣で滅多刺しにされ悲鳴を上げる。

閃光弾をあっさり食らったことも含めて、向こうは俺達との間で“近接格闘戦”が起こることをまるで予期していなかった。易易と懐を取られ、一個艦隊が突き殺され、刺し殺され、斬り殺された。

特例中の特例であるベルリンはいざ知らず、南部防衛戦の際も白兵突撃はここぞの場面で一定の戦果を上げていた筈だ。にもかかわらずこうも綺麗に「ハマった」のは、未だ俺たちを甘く見てるのか、情報伝達の不足か、或いはタ級自身が“指揮艦”としての資質に難があるためか。

(#><)「Panzerfaust!!」

ξ#゚⊿゚)ξ《Weiter Feuer!! Weiter Feuer!!》

「Z1, Feuer!!」

『『グガァッ!?』』『『ギャッ!!?』』『『ゴガッ………』』

何より幸いだったのは、中核艦隊が非ヒト型を自分たちで周囲から退かしてくれた点だ。射線を通すための措置だとは思うが、白兵戦を仕掛ける際はタッパがデカく踏まれただけでも致命傷になる非ヒト型の脅威度は大きく跳ね上がる。

それらがモーセを前にした海のごとく中核艦隊に道を開けている現状は、砲爆撃による足止めを容易にした。現にビロードの指揮下に残した歩兵隊と駆逐艦隊、ツンやビスマルクらが猛攻撃で動きを縫い止め、周辺艦隊と中核艦隊それぞれの連携をほぼ完全に寸断しつつある。

『ジャッ!!』

「ぐぁっ………」

('A`;)「マッテオ!……クソッ!」

だが、ここまでやって尚俺達が負うリスクは小さくない。結局ヒト型にしろ、白兵戦なら「まだしも勝率が上がる」だけで基本超火力と怪力を備えた化け物であることは変わらないのだから。

リ級を一体刺殺したところで、コンマ1秒にも満たない時間息をついた“狩人”の一人。その文字通りの「一瞬」を突いて、横合いから吹き付けた暴風が乱暴な子供の人形遊びのようにソイツの四肢を引きちぎる。

『ガギィッ!!』

閃光弾の衝撃から、完全に立ち直った雷巡チ級。中核艦隊のデサント・運搬役だったのだろうか、下半身をM1エイブラムスに酷似するキャタピラーへと置き換えたその個体は、未だ煙を銃口から立ち昇らせる両手の対空機銃を今度は俺とジョルジュの方に向けてきた。

チ級の照準が定まり切るより早く、俺もジョルジュも動いている。

といっても、回避は狙っていない。仮に初撃を避けられたとして、たかが人間の脚力がこの至近距離でそのまま機銃掃射から逃げ切ることははっきり不可能だ。

故に俺達が選んだ手段は、防御。

『ズェアッ!!!』

('A`;)「…………ッッ!!!」
  _
(;゚∀゚)「ぐぅおっ………凝りが解れるな畜生!!」

今しがたぶち殺したル級、その手から離れ地面に転がった艤装に飛びつき、構える。重量について一抹の不安はあったが、男二人がかりならなんとか片方を持ち上げ支えることはできた。

大きさ的には人一人分を多い隠せる程度の盾に成人した男二人が密着し縋り付いているせいで大層ひどい絵面になっているだろうが、死ぬよりは安い。

《大尉、ジョルジュ大尉、無事なの!?…Admiralも!》
  _
(;゚∀゚)「生きてるから安心しろレーベ、無愛想な仮面女からマッサージされてるだけだからな!!」

俺への安否確認が“何故か”一拍遅れたLeberechtからの無線にセンスのないジョークを返しつつ、ジョルジュは俺の方を見て腰元と盾越しのチ級を交互に指さしてみせる。

クソッタレな手段だが的確でもあった為、俺は頷き、そして親指を勢いよく下に向けた。

(#'A`)「支給品のチョコ2枚だ!」
  _
(#゚∀゚)「5枚全部に缶詰もつけてやらぁ!!」

『グギッ………!?』

クソ眉毛野郎が叫び、自身のベルトから予備の閃光手榴弾を取り外して盾の向こうへ放り投げる。連続した炸裂音とチ級の呻き声の後に、機銃掃射がピタリと止む。

瞬間俺は盾から手を放し、チ級に向かって駆け出す。

『…………ッ、ギィッ!』

さっきの今で二度目の目くらまし。今度はチ級の方も、ある程度の“心構え”をしていたようだ。
形状ゆえに回避こそできなかったものの咄嗟に目を逸らすなど何かしらの方法でダメージを軽減したらしく、既に動作可能なレベルまでは立ち直っており盲撃ちの態勢ながら気配で俺の方に銃口を向けようとした。
  _
(#゚∀゚)「鬼さんこちらってな!!」

『!? ァアッ!!?』

その動きを、同様に盾の裏から躍り出たジョルジュの射撃が妨げる。ダメージが多少軽減されていたとしても視覚・聴覚ともに盤石から程遠い中で、機銃を構えた先とは反対方向で弾ける銃火。つられて照準がブレるのは無理もない。

増えた“隙”を逃さず、加速する。盾を構えていた分の出遅れを一気に詰め、チ級の車体部分を駆け上がる。

『ウァアッ………!!?』

こんな有様の下半身でも感覚があるのか、気配を察したのかは解らない。何れにせよ最後の足掻きで振り回された機銃からの射撃は、意外な正確さでちょうど“車体”に乗り上げたばかりの俺の頭目掛けて伸びてきた。

('A`;)「ぬぉおおおおっ!!?」

軍人として最低限度の訓練と同様の自己鍛錬はしてきた身ではあるが、こちとらブンデスリーガのエースストライカーやハリウッドのアクションスターのような天性の運動神経を持ち合わせている身体じゃない。
跳躍やスライディングで華麗に回避、とは当たり前だがいかず、不格好に前へ転がるような姿勢で辛うじて躱す。

靴裏を弾丸が削り額を強かに打ち付ける羽目になったが、二回転ほどして止まったところで顔を上げれば、ちょうど鼻先で青白い肌の胴体が無骨な装甲板から生えているという不可思議な光景が広がっていた。

('A`メ#)「っらぁ!!」

『ゲボァッ…………!?』

迷わず下から銃剣を捻り込む。奴の口から溢れ出た生臭え体液が、ビシャビシャと俺の右側頭部から肩口にかけてを伝って流れ落ちていく。ダメ押しで引き金を引くと3点バーストで放たれた弾丸が奴の体内を駆け上り、頭蓋をぶち破る。

(#'A`)「────!!!」

脱力したチ級の胴を蹴り上げて銃剣から外し、グタリと天を仰いだそれを立ち上がりざまに飛び越えて向こう側へ。

チ級が俺とジョルジュへの攻撃を始める直前、背後にいた一つの影。その“艦影”を目にした時点で、俺がチ級の次に狙う標的は決まっていた。

こっちの艦娘は確かに数こそ少ないが、Bismark、Rome、Littorioと戦艦は相応の陣容を展開している。各自の練度も高く、混乱や損害によって艦隊全体の稼働率が大幅に低下している状況で短期決着を狙うなら相当な火力の集中を必要とする。

故に旗艦であろうとも、その轟沈が敗北に直結する立場であろうとも、「最大限の火力」を確保するにあたってその存在は不可欠だ。

一方でヒト型、それも戦艦のElite種となれば耐久力の上がり幅も大きい。Bismarkたちといえど、一撃轟沈はほぼ不可能に近い。相応の損傷を受けた時改めて撤退すれば、リスクに比べてリターンの方が遥かに大きいと向こうは踏んだのだろう。

そしてその事情も、俺達の「白兵突撃」という向こうにとっては理外の戦術で大きく変わった。超至近距離まで生きて肉薄できればという極めてハードルの高い条件を満たさなければならないが、Elite戦艦どころか姫や鬼ですらものの数秒で沈められかねない状況が生まれてしまった。
加えて既に乱戦状態に持ち込まれているため、向こうの最大のアドバンテージである軍艦並みの超火力も封じ込められた。

(#'A`)「CP、【Danger Close】の用意を!!」

ならば旗艦である“ソイツ”が、事故を避けるため離脱を図るのはごく自然な成り行きと言える。

『─────ィアッ!?』

振り向き、俺が追ってきていることに気づいたソイツ────戦艦タ級Eliteの喉から、甲高い悲鳴のような声が上がった。

まるで、俺という“ただの人間”に対して、恐怖を抱いたかのように。

艦隊決戦の要として出張ってきたのだから、タ級Eliteの艤装は当然フル装備だ。友軍相撃の危険を考えればフルバーストは無理にしても、副砲の1、2門で薙ぎ払えば俺が15人いたとしても跡形もなく吹き飛ばせただろう。

だが、奴の艤装の形状が災いした。腰から下を囲うように装着され、重量が極端に下半身に寄ったアンバランスな構造。それに精神的動揺、急激な方向転換、足元の悪さも合わされば、自然“次に起こること”は限定される。

『ウォアッ!!?』

ズルリとタ級の足が滑り、体勢が崩れ、艤装の銃口・砲口が尽く天を仰ぐ。当然、こんな状態で俺への砲撃などできやしない。

転倒こそしなかったが、事ここに至れば差はない。銃剣を腰の辺りに構え直しつつ、一気に泥濘を蹴り上げながら加速する。

( <●><●>)「Guten Tag」

『ギッ───オッ!?』

(#//‰ ゚)「Sit down, Fucking Bitch!!」

『ォオゴ………』

視界の端、右手側で重巡ネ級改が、左手側で戦艦ル級が艤装を俺に向ける。だが前者はティーマスに、後者はアメリカ海兵隊のサイ=ヨーク=ヴォーグルソン大尉にそれぞれ銃剣を突き立てられ沈黙した。

二人のおかげで最後の障害もなくなった。ならばあとは、俺も仕事をこなすだけだ。

(#'A`)「おらよっ!!」

『クヒュッ、グボッ………』

立ち上がり姿勢を正そうと藻掻くタ級Eliteに飛びかかり、喉笛に銃剣をぶっ刺し、そのまま3点バーストを撃ち下ろす。体内を縦に貫いた5.56mm3発が地面で爆ぜたのを確認し銃剣を抜けば、支えを失った身体がドサリと仰向けに倒れる。

最後の“二度撃ち”は、無事奴の顔面を色も見た目もグロテスクなプティングに変えた。

欧州戦線指折りの重要拠点に攻め込んできた大艦隊の旗艦としては大分あっさりした最期だが、まぁ戦場なんてこんなもんだ。映画のように脚本家の意志でご都合主義的に生き残る主人公も、大層な演出と大衆が流す涙のもとで見送られる悪役も存在しない。誰だって運が悪ければ死ぬし、運が良ければ生き残る。

ある意味じゃ、人間社会なんかより遥かに、究極的に平等な場所だ。

(//‰ ゚)「ドク、ナイスだ!!」

('A`)「お褒めに預かり光栄だよ“キャプテン”。だが、勝利の喜びを分かち合うのはもう少し後だ」

駆け寄ってきたサイ大尉に言いながら、俺は腰から発煙筒を一本取り外して着火する。紫色の煙を吹き出すそれを見て大尉は露骨に顔をしかめ、同じく駆け寄ってきたティーマスは相変わらずの無表情で小さく肩を竦めた。

( <●><●>)「貴方がこの状況で【Danger Close】の要請を出すことは解ってました」

('A`)「そいつぁ良かった。走るぞ!!」

(;//‰ ゚)「Jesus………! All guys, Go back, Go back, Go back!!」

Danger Close。元はアメリカ軍等で使われる、前線友軍の至近距離───具体的な距離を示すなら600m以内に存在する目標に対しての砲撃・爆撃要請を意味した無線符号の一つだ。

至近距離どころか敵艦隊の真っ只中に斬り込んでいる状態なので本来の用途としても特に問題はない。ただ俺達東欧連合軍内においては、近隣深海棲艦に対する最大火力の投射、それに伴う目標艦隊群の完全な殲滅・掃討も内容として加えられている。

要は「トドメを刺せ、皆殺しにしろ作戦」発動を告げる合図だ。虎の子中の虎の子であるドレスデンの直属基地航空隊と空軍機も投入するため、符号の通達と敵旗艦の轟沈或いは離脱を示す紫の発煙筒の着火が両方揃わなければ発動されない。

(#=゚ω゚)《MLRS、自走砲、全車射撃準備よし!ドレスデンよりB-25全機、ミュンヘンより3個編隊のA-10が離陸。何れも戦闘域突入まであと40秒だよぅ!》

ξ;゚⊿゚)ξ《戦車隊、艦娘部隊、迫撃砲隊による全面制圧射撃も同時に敢行する!ドク、急いで!!》

(#'A`)「すぐに出る!ビロード、ツー、他前衛部隊も火線を維持しつつ総員後退を開始しろ!!」

そしてこの符号、発動された際基本的には取り消しが効かない。なのでこっからは、旗艦が沈み統率を失い、無秩序に暴れ回りだした敵艦隊の只中を、“Danger Close”が始まるより早く離脱しなければならない。

脱出してから発動すればいいって?冗談、その間に向こうが新たな“旗艦”を選出して統率を取り戻したり、逆に箍が完全に外れてより無秩序に分散なんてされたら目も当てられない。

分厚い皮膚より早い足、こういう“機”は迷う前にまず手にすることが重要なんだよ。

『ギァアアアアアッ!!!』
『ギィ………!!!』

( <●><●>)「左手からイ級陸棲型、後方からチ級の多脚ユニットタイプが接近してきています」

('A`#)「大尉、フラッシュバン!Max!!」

(#//‰ ゚)「Alright!!」
「Jawohl, Feuer!!」

因みに対地攻撃機A-10【サンダーボルト】については、ベルリン陥落に際して艦娘部隊に勝るとも劣らない大打撃を受けたドイツ空軍補充のためにアメリカから大量に譲られたモノをそのままブチ込んでいる。

完成品が北アフリカ経由で取り急ぎ70機届けられた他に東欧連合軍全体に生産ライセンスも共有されており、チェコやイタリア、ポーランドなど工業力を未だ維持している国では量産も開始されている。

この戦闘機の「生みの親」のことを考えると、70年ぶりに“空の魔王”が祖国に凱旋したと言えなくもないのだろうか。

ただA-10がドイツ軍で本格的に配備運用されだした頃には、北欧を蹂躙し尽くした【Black Bird】の活動範囲が欧州全域に広がっていた。
対深海棲艦兵器として非常に貴重な存在ではあっても、制空権を喪失しては運用自体ができない。

ドイツに凱旋した“空の魔王”は、ろくに交戦する機会もなく役立たずの穀潰しへと転落した。

『ゥオオオオォ…………』

《Admiral、イ級の轟沈を確認したわ。既に中大破していたみたいね》

『ッガァッ!?』

( <●><●>)「チ級の追撃、停止したことは見なくても解ってます」

('A`#)「なら後は走るだけだ!……畜生禁煙だけは死んでもしねえぞ!!」

( <●><●>)「少佐の息切れが喫煙習慣から来る肺の機能低下であることも解ってます」

………と、思われていたのだが、例の南部防衛戦に際して止む無く投入されたところ、全機全編隊が【Black Bird】と遭遇し膨大な機銃弾を食らいながら爆撃任務を全うした上で生還するという途轍もない大戦果を達成。
護衛や同じ対地爆撃のために投入されたユーロファイター・タイフーンの生還率が50%前後であったことを踏まえると、損害0%は奇跡的と言っても過言じゃない。

無論、元々空対空戦闘の性能は絶望的で脚も遅い為、【Black Bird】の撃墜は全く出来ない。だがその悪魔的な防弾性能と例え翼をもぎ取られても飛行を続けられる操縦性は、それ自体が奴らにとって凶悪な武器となった。

かくしてA-10【サンダーボルト】は、制空権ガン無視で深海棲艦への爆撃任務を行える貴重な戦闘機として、東欧連合軍の暫定主力戦闘機の地位を手に入れたワケだ。

( ゚д゚#)《Danger Closeまであと10秒!!前衛各位衝撃に備えろ!!》
  _
(#゚∀゚)「こっちだ!お前らで最後だぞ、急げ!!」

('A`#)「わざわざの出迎え感謝するよ!」
  _
(#゚∀゚)「チョコの分はこれでチャラだな!!」

('A`#)「ざけんな!!」

深海棲艦の“群れ”の中から飛び出し、丘を転げ落ちるようにして駆け下りていく中、上空から聞こえてきたのはエンジン音。

第4世代戦闘機の、音速域へ易易と到達する高性能高出力エンジンが奏でるそれとは似ても似つかない代物。豚が鼻を鳴らしている様子を想起させる、ゼネラル・エレクトリカルTF34特有の低く無骨なそれが、幾つも重なって俺たちの方に向かってくる。

《Enemy Freet, Engage》

《All unit, Weapon-Free.

Danger-Close. I repeat Danger-Close Fire mission》

〈エンゲージ!! オールユニット、スタンバイ!!〉

〈〈〈ラジャー!!〉〉〉

12機の【サンダーボルト】、その後ろからはラジコンやプラモデルサイズの双発爆撃機────B-25の100に迫るであろう基地航空隊機が続く。

ちょうど丘を降りきったところで、それらは俺達とすれ違う形で真上を通過した。

(=#゚ω゚)ノ《────Feuer!!!!》

('A`;)「伏せろ!!!!」

イヨウ少将の号令が聞こえると同時、俺も声を限りに叫びつつ身を投げ出すようにして地面に突っ伏し頭を抱える。

『『『『     !!!?!!??』』』』

<('A`<;)「うぉっ…………」

熱風が吹き付けてくる。地面が揺れる。凄まじい数の砲弾が、ミサイルが、航空隊の後を追う形で空を飛翔していることが気配でわかる。
連中の断末魔も上がっているはずだが、そちらは圧倒的な爆発音に呑み込まれる。

<( A <;)「……………終わった、か?」

5分、6分、正確には数えちゃいないが、恐らくそれぐらいの時間を経て揺れと爆風が収まり、俺はゆっくりと立ち上がって振り返る。





('A`)「…………わぁ」

背後を見やれば、彩り豊かな無数の炎が、連中の屍を松明として丘の上で燃え盛っていた。

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